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COVID-19、軽症者の増悪時にみられた所見―自衛隊中央病院

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」から搬送された、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者104例について、2020年3月24日、自衛隊中央病院がその経過と得られた知見をホームページ上で公開した。CT検査所見の特徴、重症化や他疾患との鑑別におけるマーカーとしての各検査値の有用性など、これまでに報告されている事項をふまえ、自院での症例について考察している。<症例の特徴>平均年齢:68歳(48.75~75)、男性:45.2%国籍:東アジア52.9%を含む、17の国と地域基礎疾患:あり48.1%(心血管系31.7%、内分泌系[甲状腺疾患等]8.7%、糖尿病6.7%、呼吸器系6.7%、がん3.8%)喫煙歴:あり17.3%観察期間:2月25日まで※全例が船内の検疫における咽頭スワブPCR検査でSARS-CoV-2陽性軽症者の多くが症状に変化なく軽快、しかし異常影有の3分の1で増悪 観察期間を通して全く症状や所見を認めなかった症例は全体の31.7%で、軽症例が41.3%、重症例は26.9%。無症候性陽性例が多く、軽症例でも、そのほとんどが一般診療の基準に照らし合わせれば、医療機関を受診するような病状ではなかったと考察している。 しかしこれまでの報告でも指摘されているように、無症候性および軽症例でも、約半数に胸部単純CT検査での異常陰影を認めた。陰影は両側末梢胸膜下に生じるすりガラス様陰影が特徴で、胸部単純レントゲン写真では異常を指摘できない症例が多かった(画像も公開中)。無症候性および軽症例で、CT検査で異常影を認めたうち、約3分の2はそのまま症状が変化することなく軽快し、約3分の1は症状が増悪した。増悪する場合の画像変化は、経過とともにすりガラス様陰影の範囲が広がり、徐々に濃厚なair-space consolidationを呈することであった。<重症度、主な臨床症状(ともに入院時/全観察期間)>重症度無症状:41.3%/31.7%軽症:39.4%/41.3%重症:19.2%/26.9%臨床症状(一部抜粋)発熱:28.8%/32.7%咳嗽:27.9%/41.3%呼吸困難:6.7%/18.3%頻呼吸:15.4%/23.1%SpO2<93%:2.9%/13.5%高齢者ではSpO2低下、若年者では頻呼吸が出現する傾向 無症状あるいは軽微な症状にもかかわらずCT検査で異常陰影を認める病態を「Silent Pneumonia」とし、「Silent Pneumonia」から「Apparent」になる際は、発熱や咳嗽の増悪や呼吸困難の出現ではなく、高齢者ではSpO2の低下、若年者では頻呼吸の出現で気づくことが多かった、としている。症状増悪は初発から7~10日目であることが多く、比較的病状はゆっくりと進行。このため疾患の増悪に気づきにくいおそれがあり、このことが、高齢者の死亡率上昇に関係している可能性がある、と指摘している。 酸素投与が必要となった症例は全体の13.5%であり、そのうちの約半数がいわゆるネーザルハイフローやNPPVなどの高流量酸素投与を必要とした。気管挿管による人工呼吸管理を必要としたのは1例。観察期間中の死亡例はなく、3月24日時点で全員退院している。中等症~重症化しても、適切な酸素投与を実施するなどの対応をとれれば救命可能な症例は多いと考えられるとし、重症例では抗ウイルス薬の投与も実施している。 また血液生化学検査所見について、COVID-19症例ではCRP、LDH、AST、eGFR、Naに有意な差があり、リンパ球減少が観察されるとの報告がある。同院の症例では、無症状あるいは軽症例では検査値異常を認めないことが多かったが、重症例ではリンパ球減少が認められた。多くは陰圧機能のない一般病室に収容、ゾーニングを徹底 多数の患者を受け入れたため、陰圧室は不足し、患者の多くは陰圧機能のない一般病室に収容された。ウイルス量が多く、ネーザルハイフローや人工呼吸器などのエアロゾル発生機器・手技を多く必要とするであろう重症例から陰圧室を使用し、ゾーニングを徹底した。主な予防策は下記の通り:・原則N95マスクを使用・アイガードの徹底に加えて脱衣に熟練を要するワンピース型PPEは用いず、アイソレーションガウン使用を標準とした・挿管時にはPAPR(電動ファン付呼吸用保護具)を装着・平素、感染症診療に携わっていないスタッフに対しては、N95マスクフィットテストやPPE着脱訓練を実施・ゾーニング要領を徹底

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COVID-19肺炎、最大の悪化因子は喫煙歴か

 喫煙歴が、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19肺炎)の最大のリスク因子かもしれない。今回、中国湖北省・華中科技大学のWei Liu氏らは、78例の入院症例における予後別の背景因子を調査した。Chinese Medical Journal誌オンライン版2020年2月28日号に掲載。 本研究は、2019年12月30日~20年1月15日に、武漢の3つの3次病院に入院し、PCR検査で新型コロナウイルス陽性となった患者が登録された。個人データ、臨床検査値、画像所見、臨床データが収集され、統計解析された。患者は臨床タイプによって悪化群と改善・安定群に分類され、ロジスティック回帰分析により、疾患進行のリスク因子を調べた。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19肺炎患者78例が登録された。・入院2週間後の状態評価では、11例(14.1%)が悪化し、67例(85.9%)が改善・安定していた。・悪化群は、改善・安定群と比較して有意に年齢が高かった(中央値:66歳[四分位範囲(IQR):51~70] vs.37歳[同:32~41]、U=4.932、p=0.001)。・悪化群は、喫煙歴のある患者が有意に多かった(27.3% vs.3.0%、x2=9.291、p=0.018)。・最も一般的な初期症状は発熱で、入院時の最高体温は、改善・安定群と比較して悪化群のほうが有意に高かった(中央値:38.2℃[IQR:37.8~38.6] vs.37.5℃[同:37.0~38.4]、p=0.027)。・呼吸不全に陥った患者の割合(54.5% vs.20.9%、x2=5.611、p=0.028)と、呼吸数(中央値:34回[IQR:18~48] vs.24回[同:16~60]、U=4.030、p=0.004)も、改善・安定群より悪化群が有意に多かった。・CRPは、改善・安定群と比較して悪化群で有意に上昇した(中央値:3.89mg/dL[IQR:14.3~64.8] vs.1.06mg/dL[同:1.9~33.1]、U=1.315、p=0.024)。・血清アルブミンは、改善・安定群よりも悪化群で有意に低かった(36.62±6.60 vs.41.27±4.55g/L、U=2.843、p=0.006)。・悪化群の患者は、人工呼吸器などの呼吸補助を受ける可能性が高かった(x2=16.01、p=0.001)。・多変量ロジスティック分析によると、年齢(オッズ比[OR]:8.546、95%信頼区間[CI]:1.628~44.864、p=0.011)、喫煙歴(OR:14.285、95%CI:1.577~25.000、p=0.018)、入院時の最高体温(OR:8.999、95%CI:1.036~78.147、p=0.046)、呼吸不全(OR:8.722、95%CI:1.942~40.000、p=0.016)、アルブミン低値(OR:7.353、95%CI:1.098~50.000、p=0.003)、CRP高値(OR:10.530、95%CI:1.224~34.701、p=0.028)が、疾患進行のリスク因子だった。 本研究で特定されたCOVID-19肺炎の予後に対するリスク因子は、今後の疾患管理に役立つ可能性がある。

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COVID-19重症例、COPDや糖尿病併存が転帰不良

 中国・広州医科大学のWei-Jie Guan氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の併存疾患を層別化し、重篤な有害転帰リスクを評価した。その結果、併存疾患のない患者よりも併存疾患を有する患者で転帰が不良になることを示唆した。また、併存疾患数の多さが転帰不良と相関していたことも明らかにした。The European respiratory journal誌オンライン版3月26日号掲載の報告。 研究者らは2019年12月11日~2020年1月31日の期間、中国本土の31省・市・区の病院、575施設に入院した患者1,590例のデータを分析。複合エンドポイントはICUへの入室、侵襲的換気、死亡で、その到達リスクとして併存疾患の有無と数を比較した。 主な結果は以下のとおり。・患者の平均年齢は48.9歳、686例は女性だった。・全症例の中で重症例は16.0%だった。・全症例の中で8.2%(131例)が複合エンドポイントに到達した。・25.1%(399例)には少なくとも1つの疾患があった。・併存疾患の内訳は高血圧症が最も多く(16.9%)、次いで糖尿病(8.2%)だった。・8.2%(130例)は疾患を2つ以上有していた。・年齢と喫煙歴の調整後では、COPD (ハザード比[HR]:2.681、95%信頼区間[95%CI]:1.424~5.048)、糖尿病(HR:1.59 、95%CI:1.03~2.45)、高血圧症(HR:1.58、95%CI:1.07~2.32)、悪性腫瘍(HR:3.50、95%CI:1.60~7.64)が、複合エンドポイント到達のリスク因子だった。併存疾患数でみると、疾患1つの場合はHR:1.79(95%CI:1.16~2.77)、2つ以上では2.59(95%CI 1.61~4.17)だった。

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1日の歩数が多いほど、死亡リスクは低下/JAMA

 1日に歩く歩数が多いほど全死因死亡リスクは低下することが、米国・国立衛生研究所(NIH)のPedro F. Saint-Maurice氏らによる、同国サンプル成人をベースとした検討で示された。一方で、1日の総歩数で調整後の、歩行強度と死亡とには有意な関連はみられなかったという。JAMA誌2020年3月24日号掲載の報告。加速度計装着評価を受けた4,840例を対象に、歩数、歩行強度と死亡の関連を評価 研究グループは、歩行数と歩行強度および死亡との用量依存の関連を調べるため、全米健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey)の被験者で、2003~06年に最長7日間加速度計による装着測定評価を受けた4,840例を対象に試験を行った。 加速度計測定による1日の歩数、歩行強度を調べ、全死因死亡リスクの関連を検証した(死亡については2015年12月まで追跡)。歩行強度(歩調[歩/分])の評価は3要素(歩調の延長[60歩/分で2分以上など]、30分間最大値[peak30]、1分間最大値[peak1])を用いた。加速度計測定データは、ベースラインの7日間で入手できたものをベースとした。 主要アウトカムは、全死因死亡だった。副次アウトカムは、心血管疾患(CVD)死とがん死だった。ハザード比(HR)、死亡率、および95%信頼区間(CI)は、年齢、性別、人種/民族、教育レベル、食事状況、喫煙状態、BMI、自己申告の健康状態、運動能の制限、病歴(糖尿病、脳卒中、心疾患、心不全、がん、慢性気管支炎、肺気腫)で補正し、3次スプラインと四分位分類を用いて推算した。歩行強度と死亡の関連はみられず 被験者は総計4,840例(平均年齢56.8歳、女性は2,435例[54%]、肥満者1,732例[36%])で、加速度計の装着期間は平均5.7日、1日平均14.4時間で、1日平均歩数は9,124歩だった。平均追跡期間10.1年中の死亡は1,165例で、うちCVDが406例、がんは283例だった。 補正前全死因死亡率は、1日の歩数が4,000歩未満の群(655例、うち死亡419例)で76.7/1,000人年、同4,000~7,999歩群(1,727例、488例)で21.4/1,000人年、同8,000~1万1,999歩群(1,539例、176例)で6.9/1,000人年、同1万2,000歩以上群(919例、82例)で4.8/1,000人年だった。4,000歩/日群と比べて、8,000歩/日群(HR:0.49、95%CI:0.44~0.55)、1万2,000歩以上群(0.35、0.28~0.45)は、全死因死亡リスクが有意に低かった。 一方で、peak30別にみた補整前全死因死亡率は、18.5~56.0歩/分群(1,080例、うち死亡406例)で32.9/1,000人年、56.1~69.2歩/分群(1,153例、207例)で12.6/1,000人年、69.3~82.8歩/分群(1,074例、124例)で6.8/1,000人年、82.9~149.5歩/分群(1,037例、108例)で5.3/1,000人年だった。総歩行数/日で補正後、歩行強度が増大しても死亡の低下はみられなかった(peak30の最高vs.最低四分位範囲の死亡HR:0.90、95%CI:0.65~1.27、傾向のp=0.34)。

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B群髄膜炎菌ワクチンの用途と限界(解説:吉田敦氏)-1206

 髄膜炎菌感染症は、保菌者の咽頭から感染し、進行の速い重篤な菌血症・髄膜炎・臓器不全を来す疾患であり、公衆衛生上も重大な脅威である。12種類の血清群が知られているが、血清群A、B、C、W、Yが原因となることが多く、本邦における統計ではY、B、C、Wの順であった1)。ただし血清群の内訳は地域によって異なることが特徴で、海外で導入されていたACWYの4価ワクチン(莢膜多糖体と蛋白の結合型ワクチン)が本邦で使用可能になったのは2015年である*。しかしながらB群の莢膜多糖体はヒトのneural cell adhesion moleculeなどと類似しているため免疫原性が低く、自己免疫の発症も懸念され、結合型ワクチンでなくリコンビナントワクチン(4CMenB)が開発された。商品名Bexseroは4CMenBの一つで、B群髄膜炎菌の生存と病原性に関わる4種類の抗原を含んでいる。 B群が流行の主体を占めるオーストラリアで、今回Bexsero接種による高校生を対象としたランダム化比較試験が行われた。高校1年、2年相当の生徒について、接種から1年後の髄膜炎菌(血清群A、B、C、W、X、Yのいずれか)の保菌率をプライマリーアウトカム、各血清群の保菌率と陰性からの陽転化をセカンダリーアウトカムとした。さらに高校3年生では髄膜炎菌保菌に関わるリスクファクターの評価が行われた。 結果として、ワクチン接種群、対照群にはそれぞれ1万1千人以上の生徒が割り付けられた。研究期間中および研究終了後1年余りまで髄膜炎菌感染症を発症した生徒はいなかったものの、プライマリーアウトカム、セカンダリーアウトカムはどちらも2群間で差はなく、ワクチン接種による保菌率の低下を示すことはできなかった。なお高校3年生は1年生と比較して保菌のオッズ比は2.75であり、喫煙や、パブへの出入りといった他者との密接な接触の機会の増加が関与していると推測された。 髄膜炎菌は小児~若年成人でとくに感受性が高いことが知られ、ACWYのワクチンを小児のワクチンプログラムに含めている国も多い。英国では2015年より4CMenBワクチンを小児の接種プログラムに含め、一方で米国では16~23歳(最も望まれるのは16~18歳)の青少年に接種を推奨している。本検討の意図は、接触機会が増え、保菌率が上昇する前の青少年にBexsero接種を行い、この集団での以後の髄膜炎菌保菌を低下させるのみならず、他集団の感染を減らす集団免疫herd immunityを期待することにあった。 研究が行われた規模、および咽頭保菌を検出するための遺伝子的手法については、満足できる内容と方法と思われる。NEJM誌の同号には、英国において乳児にBexseroを接種した場合、接種後数年間のB群髄膜炎菌感染症発生は予想よりも75%減少したという報告が掲載されており2)、本研究で報告された結果とは対照をなしている。しかしながらB群髄膜炎菌の表面抗原は多様であり、4種類の抗原のいずれかでカバーするという期待は理論上のもので、実際の株の抗原性とは距離があることや、保菌の消失までは至らない可能性はこれまでにも指摘されていた。一方で、蛋白のエピトープの交差性から、ほかの血清群への効果も期待されていた。 現在16~23歳の青少年に推奨されている4CMenBには、菌の消失までではなく、集団発生を防ぐという意図もあった。つまり4CMenBは、どの集団に、どこまでの予防を期待して用いるかが問われるワクチンといえるであろう。加えて本邦においては、2015年に山口県で開催された大規模な世界スカウトジャンボリーで6例の髄膜炎菌感染症例の発生があったように(血清群はW群)3)、今後もマスギャザリングによる髄膜炎菌感染症の集団発生が危惧されている。ACWY結合型ワクチンの導入によって相対的にB群髄膜炎菌の占める割合が高くなっている国・地域がある中、世界的なB群髄膜炎菌感染症の制圧戦略に並行して、わが国においても本菌の十分な監視と対策が欠かせないと考える。*商品名メナクトラ。2歳以上の小児、成人に対し任意接種となっており、髄膜炎菌の流行地域へ渡航する場合と侵襲性髄膜炎菌感染症のハイリスク者(無脾症・脾臓摘出後、補体欠損症、免疫抑制患者、HIV感染者)での接種が推奨されている。

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禁煙をし続けるために本当に必要なこと(1)【新型タバコの基礎知識】第17回

第17回 禁煙をし続けるために本当に必要なこと(1)Key Points禁煙とは、新型タバコも含めてタバコをすべて止め続けること依存症から脱出するために必要なスキルは、「知る」ということタバコ産業は意図的にタバコの依存性を高めてきた「タバコ会社による搾取がいかにひどいか」を「知る」ことで、より簡単に「タバコを止め続ける」ことができるようになるまずは、新型タバコ時代の禁煙の定義とは何か、明確にしておきたいと思います。作家マーク・トウェインが「禁煙は簡単だ。私はこれまで何千回も禁煙した」と語った、というのは有名な笑い話ですが、ここで語られたマーク・トウェインの禁煙は、私の考える禁煙ではありません。「禁煙とは、新型タバコも含めてタバコをすべて止め続けること」だと考えています。タバコを一本でも吸ってしまうとニコチン依存症の脳内回路が回りだし、容易に喫煙を再開してしまうため、「禁煙し続けてもらう」のは大変なことです。新型タバコ時代になり、禁煙の定義すら難しくさせられてしまっています。「禁煙できました!アイコスにしました」という患者の声を多く聞くようになりました。残念ながら、これも禁煙とは言えません。禁煙し続けてもらうために、禁煙とは何かも含めて、医療者からうまく情報提供しつつ、禁煙支援・禁煙指導を継続的に繰り返し実施していく必要があります。禁煙し続けてもらうために必要なスキルとは何か。人に言われていったん止めることができたとしても、長く止め続けることは難しいものです。禁煙は続けてもらわなければ、禁煙とは言えません。ニコチン依存だけでなく、アルコール依存や違法薬物依存等さまざまな依存症から脱出するために必要なスキルは、「知る」ということです。自分から知ろうとするということが、回り道のようで、止め続けるための近道となります。図1は、現在までの50年間に、タバコ会社がどのようにタバコを変えてきたのか、代表的な9つの手法を示したものです。長年にわたるタバコ問題研究者の取り組みや、タバコ病訴訟などで公開されたタバコ会社の内部文書*1等の分析から、明らかにされた驚くべき事実です。*1:Truth Tobacco Industry Documentsのウェブサイトでは1400万件におよぶタバコ会社の内部文書が公開されている。また、British American Tobacco Documents Archiveのウェブサイトでは600万ページ分のブリティッシュ・アメリカン・タバコ社の内部文書が公開されている。画像を拡大するタバコ産業は、意図的にタバコへの依存性を高めてきたということが分かっています。タバコに含まれるニコチン自体を増やしてニコチン依存症になりやすくしたことに加えて、さらにアンモニアなどの添加物によりニコチンが脳に届けられやすくなるようにしました。メンソールや香料を加えることで、煙でむせないように、のどがイガイガしにくいように、そしてより女性や子ども、今までタバコを吸ったことがない人が吸いやすくなるようにしてきました。フィルターの横に穴をあけて空気を取り込めるようにすることで煙をより深く吸い込みやすいように、ニコチンが直接届くようにもしてきました。50年前のタバコと比べて、現在のタバコは、吸いはじめた人をより早くニコチン依存症にすることができ、女性や子どもからも受けがよくなったというわけです。日本ですでにブレークしてしまった加熱式タバコは、タバコを改造してきたタバコ会社が製造・販売しているタバコ商品です。実は、加熱式タバコは、タバコがずっと改変されてきたという歴史のなかの1ページに相当します。タバコ会社はもうずっと前から、タバコの害が明らかになってからも、意図的に積極的な広告宣伝、販売促進活動そしてロビー活動を行ってきました。そのため、タバコのことを悪く言いにくい空気が作られてきたのです。タバコ会社が意図的に何十年もかけて、情報操作してきた影響が積み重なって、人々のタバコ問題に対する認識が形作られています。タバコ会社は、タバコを吸うのは文化であって、タバコを吸う権利がある、他人にとやかく言われるようなことでない、と人々が思うように仕向けてきたのです。従来から、タバコ産業は知識人や専門家を広告塔として活用してきました。図2は1931年に米国で使われたタバコ広告ですが、医師がタバコを勧めています。現在の日本でも、いまだに医師などの専門職が広告や宣伝、販売促進活動に活用されています。現在では、タバコの害がはっきりと実証されているわけですから、タバコを勧めるような態度をとる医師や知識人の罪は非常に重いといえるでしょう。画像を拡大するタバコ産業はずっと社会的に不利な状況の若者をターゲットにしてきました。タバコ産業の内部文書の分析から、先進国において、社会経済的に恵まれない状況の若者を主要なターゲットとしていることが分かっているのです。先進国だけでなく発展途上国も含むすべての国において、タバコ産業によるタバコ広告は、喫煙を女性の解放のシンボルとして印象付けることによって、とくに低学歴で社会経済的に不利な若い女性を喫煙させるように仕向けてきました*2。*2:David A, Esson K, Perucic A, Fitzpatrick C. Tobacco use: equity and social determinants. In Blas E, Kurup A (eds): Equity, social determinants and public health programmes. Geneva, Switzerland: World Health Organization 2010; 199-217.学歴というのは、人の社会経済状況を表すとされる代表的な要因です。もちろん例外もありますが、一般に学歴と所得などさまざまな社会的要因は相関しています。学歴別に喫煙率をみると、図3のように中卒や高卒の者における喫煙率が高く、大卒や大学院卒の者における喫煙率が低くなっていると分かります。この関連は、世界中の先進国で観察されています。人は誰でもまわりにいる人から影響を受けます。学校や職場の仲間がタバコを吸っていたら、タバコを吸いやすくなってしまうのです。タバコ会社は意図的に喫煙者の多い組織や集団をターゲットにして囲い込もうとしてきました。画像を拡大するいかにタバコを魅力的にみせて、若者や女性、まだ吸ってない人に吸わせるか? どうやって喫煙者をより強固なニコチン依存にして、やめられないようにするか? どうすればタバコの害が軽視されるようになるか? タバコ産業はずっと注力してきたのです。また、意図的に愛煙家というような言葉を使って、タバコを吸う人と吸わない人を分断して対立させるようにも仕向けてきた経緯があります。それにのってはいけないのです。タバコ会社がこれまでやってきたこと、すなわち「タバコ会社による搾取がいかにひどいか」を「知る」ことで、より簡単に「タバコを止め続ける」ことができるようになると考えます。第18回は、「禁煙をし続けるために本当に必要なこと(2)」です。

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自転車通勤は負傷リスクを上げるか?/BMJ

 自転車通勤は、公共交通機関や自動車による通勤と比較して、がんの診断や心血管イベント、死亡が少ない一方で、負傷で入院するリスクが高く、とくに輸送関連事故による負傷リスクが高いことが、英国・グラスゴー大学のClaire Welsh氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年3月11日号に掲載された。英国では、自転車通勤は傷病への罹患や死亡のリスクが低いとされてきた。また、国民の自転車通勤への理解の主な障壁は、主観的および客観的な交通の危険性だが、これまでに得られた自転車と負傷に関するエビデンスの質は高くないという。通勤手段別の負傷リスクを評価する前向きコホート研究 研究グループは、自転車通勤と負傷のリスクの関連を評価する目的で、地域住民ベースの前向きコホート研究を行った(Chest, Heart, and Stroke Association Scotlandの助成による)。 解析には、UK Biobankのデータが用いられた。対象は、英国の22の地域から登録された通勤者23万390人(平均年齢52.4歳、女性52.1%)。典型的な一日で、往復の通勤に利用する輸送方式別に比較した。 徒歩、自転車、徒歩を含む混合型(非活動型+徒歩)、自転車を含む混合型(自転車+他の輸送方式)の通勤と、非活動型(自動車/エンジン駆動の乗り物、公共交通機関)の通勤とを比較した。 主要アウトカムは、初回の負傷による入院とした。自転車移動距離が長いと、負傷リスクも高い 5,704人(2.5%)が、自転車が主な通勤の輸送方式と答えた。非活動型通勤者(17万8,976人[77.5%])と比較して、自転車通勤者は年齢がわずかに若く、BMIが低く、白人男性が多く、現喫煙者や心血管疾患、糖尿病、がん、長期の疾患の病歴を持つ者が少なかった。 フォローアップ期間中央値は8.9年(IQR:8.2~9.5)で、この間に全体で1万241人(4.4%)が負傷による入院または負傷で死亡(29人)した。負傷の内訳は、自転車通勤が397人(7.0%)、非活動型通勤は7,698人(4.3%)だった。負傷の発生率は、自転車通勤が1,000人年当たり8.06件と、非活動型通勤の1,000人年当たり4.96件に比べて高く(p<0.001)、自転車を含む混合型通勤(6.99件/1,000人年)でも高い傾向がみられた。 社会人口統計学や健康、生活様式に関連する主要な交絡因子を補正すると、自転車通勤は非活動型通勤に比べ、負傷のリスクが高かった(ハザード比[HR]:1.45、95%信頼区間[CI]:1.30~1.61)。自転車を含む通勤でも、同様の傾向が認められた(1.39、1.29~1.50)。徒歩は、負傷のリスク上昇とは関連がなかった。 自転車通勤と自転車を含む通勤では、通勤中の自転車での移動距離が長いほど、負傷のリスクが高くなったが、非活動型通勤では、通勤距離は負傷のリスクとは関連しなかった。また、自転車通勤は、外的要因が輸送関連事故の場合は、負傷者数が非活動型通勤の約3.4倍多く(発生率比:3.42、95%CI:3.00~3.90、p<0.001)、自転車を含む通勤でも約2.6倍だった(2.62、2.37~2.91、p<0.001)。 自転車通勤と自転車を含む通勤は、自転車以外での通勤に比べ、心血管疾患(HR:0.79、95%CI:0.69~0.90)、がんの新規診断(0.89、0.84~0.94)、全死因死亡(0.88、0.78~1.00)のリスクが低かった。また、10年間に1,000人が自転車または自転車を含む通勤に変更した場合、負傷による新規入院は26件(1週間以内の入院23件、1週間以上の入院3件)増加するのに対し、がんの新規診断は15件減少し、心血管イベントは4件、死亡は3件減少すると推定された。 著者は、「これらの自転車通勤のリスクは、活動的な通勤による健康上の有益性との関連において考察すべきであり、英国における自転車のより安全な基盤設備の必要性を強調するものである」と指摘している。

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毎日1個の卵、アジア人は心血管疾患リスク低下の可能性/BMJ

 卵の中等度の消費(最大1日1個まで)は、心血管疾患全般のリスクを増加させず、アジア人ではむしろリスクを低下させる可能性があることが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のJean-Philippe Drouin-Chartier氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年3月4日号に掲載された。卵の消費と心血管疾患リスクの関連は、この10年間、激しい議論を呼ぶ主題となっているが、これまでに得られた知見では結論が出ていないという。コホート研究とこれを含むアップデートメタ解析 研究グループは、卵の摂取と心血管疾患リスクの関連を評価する目的で前向きコホート研究を行い、この研究結果を含めたアップデートメタ解析を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 米国の3つのコホート研究(Nurses’ Health Study[NHS、1980~2012年]、NHS II[1991~2013年]、Health Professionals’ Follow-Up Study[HPFS、1986~2012年])のデータが用いられた。ベースライン時に心血管疾患や2型糖尿病、がんに罹患していない集団(NHS[女性]8万3,349例、NHS II[女性]9万214例、HPFS[男性]4万2,055例)が解析に含まれた。 卵摂取の頻度で6つの群(月1個未満、月1~4個未満、週1~3個未満、週3~5個未満、週5~7個未満、1日1個以上)に分けた。卵は、卵黄を含む全卵とし、焼いた製品(例 ケーキ)や液状卵、卵白のみの場合は除外された。 主要アウトカムは、初発の心血管疾患(非致死的心筋梗塞、致死的冠動脈性心疾患、脳卒中)とした。 次いで、今回の研究と既報の前向きコホート研究のアップデートメタ解析が行われた。卵消費量が相対的に低い点に留意 米国の3つのコホート研究では、最長32年のフォローアップ期間(554万人年以上)に、1万4,806例が初発の心血管疾患を発症した。卵の消費量は、多くの参加者が週に1~5個未満だった。 卵の摂取量が多い参加者ほど、BMIが高く、身体活動が少なく、喫煙者が多かった。また、卵摂取量の多い参加者は、スタチン治療の割合や心筋梗塞の家族歴が少なく、2型糖尿病が多かった。さらに、高い卵摂取量は、高いカロリー摂取量と関連し、未加工の赤身肉、ベーコン、その他の加工肉、精製穀物、ジャガイモ、高脂肪分牛乳、コーヒー、砂糖入り飲料の摂取量が多かった。 多変量統合解析では、卵摂取と関連のある生活様式や食事因子で補正すると、1日1個以上の卵消費は、初発心血管疾患のリスクと関連しなかった(1日1個以上と月1個未満の比較のハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.82~1.05、p=0.16、1日1個増加のHR:0.98、0.92~1.04)。冠動脈性心疾患(p=0.22)および脳卒中(p=0.53)にも有意な関連は認められなかった。 一方、アップデートメタ解析では、この研究を含む28件の前向きコホート研究(日本のNIPPON DATA80、NIPPON DATA90などのデータを含む)が対象となった。 このアップデートメタ解析(リスク指標[risk estimate]33個、参加者172万108例、心血管疾患イベント13万9,195件)では、1日の卵摂取が1個増えても、心血管疾患リスクは増加しなかった(統合相対リスク[RR]:0.98、95%CI:0.93~1.03、I2=62.3%)。同様に、卵摂取量が最も多い集団と少ない集団の間にも、心血管疾患リスクには差がなかった(0.99、0.93~1.06、52.9%)。 冠動脈性心疾患(リスク指標21個、参加者141万1,261例、イベント5万9,713件、統合RR:0.96、95%CI:0.91~1.03、I2=38.2%)および脳卒中(22個、105万9,315例、5万3,617件、0.99、0.91~1.07、71.5%)についても、1日の卵摂取が1個増えた場合のリスクに差はなかった。いずれの疾患も、最高摂取量集団と最低摂取量集団の間にリスクの差はみられなかった。 卵摂取の1日1個増加と心血管疾患リスクの関連に関する地理的な層別解析(相互作用のp=0.07)では、米国(RR:1.01、95%CI:0.96~1.06、I2=30.8%)と欧州(1.05、0.92~1.19、64.7%)のコホートでは関連がなかったのに対し、アジア人のコホート(リスク指標10個、参加者68万5,147例、イベント9万100件、0.92、0.85~0.99、I2=44.8%)では逆相関の関係が認められた。 著者は、「この研究に含まれるコホートの平均的な卵消費量は相対的に低い。週に1~5個未満の参加者が多く、1日1個以上の参加者は相対的に少ないため、結果を解釈する際は、この消費レベルを考慮する必要がある」と指摘している。

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オピオイド中止によって増大するリスクとは?/BMJ

 オピオイド治療を受けている退役軍人保健局の患者では、処方の中止により過剰摂取または自殺による死亡リスクが増大し、治療期間が長い患者ほど死亡リスクが高いことが、米国退役軍人局精神保健自殺予防部のElizabeth M. Oliva氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年3月4日号に掲載された。米国では、オピオイドの過剰摂取やオピオイド使用障害による死亡の増加に伴い、オピオイド処方関連リスクの軽減戦略が求められており、リスクがベネフィットを上回った時点での治療中止が推奨されている。その一方で、長期の治療を受けている患者では、治療中止後の有害事象(過剰摂取による死亡、自殺念慮、自傷行為、薬物関連イベントによる入院や救急診療部受診)の増加が報告されている。約140万例の観察研究 研究グループは、オピオイド治療の中止またはオピオイド治療の期間と、過剰摂取または自殺による死亡の関連を評価する目的で、観察研究を行った(米国退役軍人局精神保健自殺予防部の助成による)。 対象は、2013~14年の会計年度(2012年10月1日~2014年9月30日)に、米国の退役軍人保健局の施設を受診し、オピオイド鎮痛薬の外来処方を受けた退役軍人の患者139万4,102例であった。過剰摂取の薬物には、オピオイドのほか、鎮静薬、アセトアミノフェン、その他の薬物中毒が含まれた。オピオイド治療を中止した患者と、継続した患者を比較した。 多変量Cox非比例ハザード回帰モデルを用いて、過剰摂取または自殺による死亡(主要アウトカム)を評価し、主な共変量としての治療期間別(30日以下、31~90日、91~400日、400日以上)のオピオイド中止の交互作用を検討した。開始後と中止後最低3ヵ月間は、リスク低減の取り組み強化 全体の平均年齢は約60歳、女性が約8%で、ほぼ半数が既婚者、61%が都市部居住者であった。また、半数強が3つ以上の医療診断を受けており、アルコール使用障害の診断は約10%、ニコチン使用障害の診断は約22%の患者が受けていた。最も頻度の高い精神疾患は、うつ状態と心的外傷後ストレス障害だった。 79万9,668例(57.4%)がオピオイド治療を中止し、59万4,434例(42.6%)は治療を継続した。2,887例が、過剰摂取(1,851例)または自殺(1,249例)により死亡した。オピオイド治療の期間が30日以下の患者は32.0%、31~90日は8.7%、91~400日は22.7%、400日以上は36.6%であった。 オピオイド治療中止と治療期間には交互作用が認められ(p<0.001)、治療期間が長い患者ほど治療中止後の過剰摂取または自殺による死亡リスクが高いことが示唆された。治療を中止した患者における過剰摂取または自殺による死亡リスクのハザード比(他のすべての共変量を参照値として比較)は、治療期間30日以下が1.67、31~90日が2.80、91~400日が3.95、400日以上は6.77であった。 過剰摂取または自殺による死亡リスク増加の他の独立の関連因子として、長時間作用型/短時間作用型オピオイドの処方(トラマドールとの比較)、医療診断数、精神疾患の診断、薬物使用障害(ニコチンを除く)などが挙げられた。一方、高齢、女性、既婚は低リスクの独立の関連因子だった。 また、生命表の記述的データでは、過剰摂取または自殺による死亡はオピオイドの開始と中止の双方の直後に増加し、発生率が低下するまで約3~12ヵ月を要すると示唆された。 著者は、「オピオイド治療の開始後および中止後は、それぞれ少なくとも3ヵ月間は、リスク軽減の取り組み(患者モニタリング、自殺および過剰摂取の防止)を強化する必要がある」と指摘している。

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視力と認知症との関係

 視力の低下と認知症リスクとの関連を調査した縦断的エビデンスの結果は一致していない。香港中文大学のAllen T. C. Lee氏らは、誤分類、逆因果関係、健康上の問題や行動による交絡因子に関連するバイアスとは無関係に、高齢者の大規模なコミュニティーコホートにおける視力低下と認知症発症率との関連を調査した。The Journals of Gerontology誌Series Aオンライン版2020年2月11日号の報告。中等度から重度の視覚障害は認知症の潜在的な予測因子である可能性 ベースライン時に認知症でない地域在住高齢者1万5,576例を対象に、認知症発症について6年間フォローアップを行った。認知症診断は、ICD-10または臨床的認知症尺度(CDR)1~3に従って実施した。ベースラインおよびフォローアップ時の視力評価には、スネレン視力表を用いた。人口統計(年齢、性別、教育、社会経済的地位)、身体的および精神医学的併存疾患(心血管リスク、眼科的状態、聴覚障害、運動不足、うつ病)、ライフスタイル(喫煙、食事、身体活動、知的活動、社会活動)についても評価した。 視力低下と認知症発症率との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・6万8,904人年以上のフォローアップ期間中に、1,349例が認知症を発症した。・ベースライン時の視力低下は、人口統計、健康上の問題、ライフスタイルで調整した後でも、また3年以内の認知症発症を除外した場合でも、6年後の認知症発症率の高さと関連が認められた。・正常な視力の高齢者と比較した、視力低下の重症度別の認知症ハザード比は、以下のとおりであった。 ●軽度視力低下の認知症ハザード比:1.19(p=0.31) ●中等度視力低下の認知症ハザード比:2.09(p<0.001) ●重度視力低下の認知症ハザード比:8.66(p<0.001) 著者らは「中等度から重度の視覚障害は、認知症の潜在的な予測因子およびリスク因子である可能性がある。臨床的な観点から、視力が低下している高齢者に対する認知症リスク評価のさらなる必要性が示唆された」としている。

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クローン病〔CD : Crohn’s disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義クローン病(Crohn’s disease: CD)は消化管の慢性肉芽腫性炎症性疾患であり、発症原因は不明であるが、免疫異常などの関与が考えられる。小腸、大腸を中心に浮腫や潰瘍を認め、腸管狭窄や瘻孔など特徴的な病態を生じる。■ 疫学主として若年者(10代後半~30代前半)に好発する。年々増加傾向にあり、わが国のCDの有病率は最近15年間で約4倍に増加、患者数4万人以上と推測され、日本では1.8:1.0の比率で男性に多い。現在も増加していると考えられる。■ 病因原因はいまだ不明であるが、遺伝的素因と食事などの環境因子の両者が関与し、消化管局所の免疫学的異常により、慢性の肉芽腫性炎症が持続する多因子疾患である。喫煙が増悪因子とされている。ほかに長鎖脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、精製糖質の過剰摂取などが増悪因子として想定されている。■ 症状主症状は腹痛(70%)、下痢(80%)、体重減少・発熱(40~70%)である。肛門病変はCD患者の半数以上にみられ、先行する場合も多い(36~81%)。検査値の異常として、炎症所見(白血球数、CRP、血小板数、赤沈)の上昇、低栄養(血清総蛋白、アルブミン、総コレステロール値の低下)、貧血を示す。■ 分類正しい治療を考える上で、病変部位、疾患パターン、活動度・重症度の把握が重要である。病変部位は小腸型、小腸大腸型、大腸型の3つに大きく分類される。日本では小腸型20%、小腸大腸型50%、大腸型30%とされている。疾患パターンとして炎症型、狭窄型、瘻孔形成型の3通りに分類することが国際的に提唱されている。さらに疾患活動性として、症状が軽微もしくは消失する寛解期と、症状のある活動期に分けられる。重症度を客観的に評価するために、CD活動指数CDAI(表1)、IOIBDなどがあるが、日常診療に適した重症度分類は現在のところまだないため、患者の自覚症状、臨床所見、検査所見から総合的に評価する。画像を拡大する■ 予後CDは再燃、寛解を繰り返し慢性に経過する疾患である。病初期は消化管の炎症が中心であるが、徐々に狭窄型・瘻孔型へ移行し、手術が必要となる症例が多い。2000年に提唱されたCDの分類法であるモントリオール分類(表2)では発症時年齢、罹患範囲、病気の性質により分類されている。病型や病態は罹患期間により比率が変化し、Cosnes氏らは診断時に炎症型が85%であっても、20年後には88%が狭窄型から瘻孔型へ移行すると報告している 。累積手術率は発症後経過年数とともに上昇し、生涯手術率は80%以上になるという報告もある。海外での累積手術率は10年で34~71%である。わが国の累積手術率も、10年で70.8%、初回手術後の5年再手術率は16~43%、10年で26~67%と報告されている。とくに瘻孔型では手術率、術後再発率とも高くなっている。死亡率に関しては、Caravanらのメタ解析によるとCDの標準化死亡率は1.5(1.3~1.7)と算出されている。死亡率は過去30年で減少傾向にあるが、CDの死亡率比は一般住民よりやや高いとの報告がある。わが国では、やや高いとする報告と変わらないとする報告があり、死亡因子としては肝胆道疾患、消化管がん、肺がんが挙げられている。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断基準厚生労働省の診断基準(表3)に沿って診断を行う。2018年に改訂した診断基準(案) ではCDAI(Crohn’s disease activitiy index)や合併症、炎症所見、治療反応に基づくECCO(European Crohn’s and colitis organisation )(表4)の分類に準じた重症度分類(軽症、中等症、重症)が記載されている。画像を拡大する■ 診断の実際若年者に、主症状である腹痛(70%)、下痢(80%)、体重減少・発熱(40~70%)が続いた場合CDを念頭に置く。肛門病変はCD患者の半数以上にみられ、先行する場合も多い(36~81%)。血液検査にて炎症所見、低栄養、貧血がみられたら、CDを疑い終末回腸を含めた下部消化管内視鏡検査および生検を行う。診断基準に含まれる特徴的な所見および生検組織にて、非乾酪性類上皮肉芽腫が検出されれば診断が確定できる。病変の範囲、治療方針決定のためにも、上部消化管内視鏡検査、小腸X線造影検査を行うべきである。CDと鑑別を要する疾患として、腸結核、腸型ベーチェット病、単純性潰瘍、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)潰瘍、感染性腸炎、虚血性腸炎、潰瘍性大腸炎などがあるため、服薬歴の確認・便培養・ツベルクリン反応およびクォンティフェロン(QFT)、病理組織検査を確認する。診断のフローチャートを図に示す。画像を拡大する1)画像検査所見(1)下部消化管内視鏡検査、小腸バルーン内視鏡検査検査前に、問診やX線にて強い狭窄症状がないか確認する。60~80%の患者では大腸と終末回腸が罹患する。病変は非連続性または区域性に分布し、偏側性で介在部はほぼ正常である。活動性病変として、縦走潰瘍と敷石像が特徴的な所見である。小病変としてはアフタや不整形潰瘍が認められる。(2)上部消化管内視鏡検査胃では、胃体上部小弯側の竹の節状外観、前庭部のたこいぼびらん・不整形潰瘍が認められる。十二指腸では、球部と下行脚に好発し、多発アフタ、不整形潰瘍、ノッチ様陥凹、結節状隆起が認められる。(3)消化管造影検査(X線検査)病変の大きさや分布、狭窄の程度、瘻孔の有無について簡単に検査ができる。所見の特徴は、縦走潰瘍、敷石像、非連続性病変、瘻孔、非対称性狭窄(偏側性変形)、裂孔、および多発するアフタがある。(4)その他近年、機器の性能向上および撮影技法の開発により、超音波検査、CT、MRIにより腸管自体を詳細に描出することが可能となった。小腸病変の診断に、経口造影剤で腸管内を満たし、造影CT検査を行うCT enterography(CTE)や、MRI撮影を行うMR enterography(MRE)が欧米では広く用いられており、わが国の一部の医療施設でも用いられている。撮影法の工夫により大腸も同時に評価ができるMR enterocolonography(MREC)も一部の施設では行われており、検査が標準化されれば、繰り返し行う場合も侵襲が少なく、内視鏡が到達できない腸管の評価にも有用と考えられる。2)病理検査所見CDには病理診断上、絶対的な基準となるものがなく、種々の所見を組み合わせて診断する。生検診断をするにあたっては、その有無を多数の生検標本で連続切片を作成し検討する。組織学的所見として重要なものは(1)全層性炎症像、(2)非乾酪性類上皮肉芽腫の検出、(3)裂溝、(4)潰瘍である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)CDは発症原因が不明であり、経過中に寛解と再燃を繰り返すことが多い。CDの根治的治療法は現時点ではないため、治療の目標は病勢をコントロールし、炎症を繰り返すことによる患者のQOL低下を予防することにある。そのため薬物療法、栄養療法、外科療法を組み合わせて症状を抑えるとともに、栄養状態を維持し、炎症の再燃や術後の再発を予防することが重要である。■ 内科治療(主に薬物治療として)活動期の治療と寛解期の治療に大別される。活動期CDの治療方針は、疾患の重症度、病変範囲、合併症の有無、患者の社会的背景を考慮して決定する。初発のCDでは、診断および病変範囲、重症度の確定と疾患に関する教育や総合的指導のため、専門医にコンサルトすることが望ましい。また、ステロイド依存や免疫調節薬の投与経験がない場合においても、生物学的製剤の投与に関しては専門医にコンサルトすべきである。わが国における平成30年度 CD治療指針、および各治療法の位置づけ(表5)を示す。画像を拡大する1)5-ASA製剤CDに適応があるのはメサラジン(商品名:ペンタサ)、サラゾスルファピリジン(同:サラゾピリン)の経口薬である。治療指針においては軽症~中等症の活動期の治療、寛解維持療法、術後再発予防のための治療薬として推奨されている。CDの寛解導入効果および寛解維持効果は限定的であるが有害性は低い。腸の病変部に直接作用し炎症を抑えるため、製剤の選択には薬剤の放出機序に注意して病変範囲によって決める必要がある。2)ステロイド(GS)5-ASA製剤無効例、全身症状を有する中等症以上の症例で寛解導入に有効である。関節症状、皮膚症状、眼症状などの腸管外合併症を有する場合や、発熱、CRP高値などの全身症状が著明な場合は、最初からステロイドを使用する。寛解維持効果はないため、副作用の面からも長期投与は避けるべきである。ステロイド依存となった場合は、少量の免疫調節薬(アザチオプリン〔AZA〕、6-メルカプトプリン〔6-MP〕)を併用し、ステロイドからの離脱を図る。軽症あるいは中等症例の回盲部病変の寛解導入には、全身性副作用を軽減し局所に作用するブデソニド(同:ゼンタコート)9mg/日の投与が有効である。3)免疫調節薬(AZA、6-MPなど)免疫調節薬として、AZA(同:イムラン、アザニン)、6-MP(同:ロイケリン)が主なものであり、AZAのみ保険適用となっている。AZAと6-MPは寛解導入、寛解維持に有効であり、ステロイド減量効果を有する。欧米の使用量はAZA 2.0~3.0mg/kg/日、6-MP 50mg/日または1.5mg/kg/日であるが、日本人は代謝酵素の問題から用量依存性の副作用が生じやすく、欧米より少量のAZA(50~100mg/日)、6-MP(20~50mg/日)が投与されることが多い。チオプリン製剤の副作用の中で、服用開始後早期に発現する重度の急性白血球減少と全脱毛がNUDT15遺伝子多型と関連することが明らかとされている。2019年2月よりNUDT15遺伝子多型検査が保険適用となっており、初回チオプリン製剤治療前には本検査を施行し、表6に従ってチオプリン製剤の適応を判断することが推奨される。AZA/6-MPの効果発現は緩徐で2~3ヵ月かかることが多いが、長期に安定した効果が期待できる。適応としてステロイド減量効果、難治例の寛解維持目的、瘻孔病変、術後再燃予防、抗TNF-α抗体製剤を使用する際の相乗効果があげられる。画像を拡大する4)抗体製剤(1)抗TNF-α抗体製剤わが国ではインフリキシマブ(同:レミケード)、アダリムマブ(同:ヒュミラ)が保険適用となっている。抗TNF-α抗体製剤は、CDの寛解導入、寛解維持に有効で外瘻閉鎖維持効果を有する。適応として、中等症~重症のステロイド・栄養療法が無効な症例、重症例で膿瘍や狭窄がない治療抵抗例、抗TNF-α抗体製剤で寛解導入された症例の寛解維持療法、膿瘍がコントロールされた肛門病変が挙げられる。早期に免疫調節薬と併用での導入が治療成績がよいとの報告があるが、副作用と医療費の問題もあり、全例導入は避けるべきである。早期導入を進める症例として、肛門病変を有する症例、穿孔型の症例、若年発症が挙げられる。(2)抗IL12/23p40抗体製剤2017年5月より中等症から重症の寛解導入および維持療法としてウステキヌマブ (同:ステラーラ)が使用可能となっている。導入時のみ点滴静注(体重あたり、55kg以下260㎎、55kgを超えて85kg以下390㎎、85kgを超える場合520㎎)、その後は12週間隔の皮下注射もしくは活動性が高い場合は8週間隔の皮下注射であり、投与間隔が長くてもよいという特徴がある。また、安全性が高いことも特徴である。腸管ダメージの進行があまりない炎症期の症例に有効との報告がある。肛門病変への効果については、まだ統一見解は得られていない。(3)抗α4β7インテグリン抗体製剤2018年11月より中等症から重症の寛解導入および維持療法としてベドリズマブ (同:エンタイビオ)が使用可能となっている。インフリキシマブ同様0週、2週、6週で投与後維持療法として8週間隔の点滴静注 (30分/回)を行う。抗TNF-α抗体製剤failure症例よりもnaive症例で寛解導入および維持効果を示した報告が多い。日本での長期効果の報告に関してはまだ症例数も少なく、今後のデータ集積が必要である。5)栄養療法活動期には腸管の安静を図りつつ、栄養状態を改善するために、低脂肪・低残渣・低刺激・高蛋白・高カロリー食を基本とする。糖質・脂質の多い食事は危険因子とされている。「クローン病診療ガイドライン(2011年)」では、栄養療法はステロイドとともに主として中等症以上が適応となり 、痔瘻や狭窄などの腸管合併症には無効である。1日30kcal/kg以上の成分栄養療法の継続が再発防止に有効であるが、長期にわたる成分栄養療法の継続はアドヒアランスの問題から困難であることも少なくない。総摂取カロリーの半分を成分栄養剤で摂取すれば、寛解維持に有効であることが示されており、1日900kcal以上を摂取するhalf EDが目標となっている。6)抗菌薬メトロニダゾール、シプロフロキサシンなどの抗菌薬は中等度~重症の活動期の治療薬として、肛門部病変の治療薬として有効性が示されている。病変部位別の比較では小腸病変より大腸病変に対して有効性が高いとされる。7)顆粒球・単球吸着療法(granulocyte/monocyte apheresis: GMA)2010年より大腸病変のあるCDに対しGMAが適応拡大となった。GMAは単独治療の適応はなく、既存治療の有効性が乏しい場合に併用療法として考慮すべきである。施行回数は週1回×5回を1クールとして、最大2クールまで施行する。8)内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilatation: EBD)CDは、経過中に高い確率で外科手術を要する疾患であり、手術適応の半数以上は腸管狭窄である。EBDは手術回避の目的として行われる内視鏡的治療であり、治療指針にも取り上げられている。適応としては、腸閉塞症状を伴う比較的短く(3cm以下)屈曲が少ない良性狭窄で、深い潰瘍や瘻孔を伴わないものである。適応外としては、細径内視鏡が通過する程度の狭窄、強度に屈曲した狭窄、長い狭窄、瘻孔合併例、炎症や潰瘍が合併している狭窄である。■ 外科的治療CDの外科的治療は内科的治療で改善しない病変のみに対して行い、QOLの改善が目的である。腸管病変に対する手術では、原則として切除をなるべく小範囲とし、小腸病変に対しては可能な症例では狭窄形成術を行い、腸管はなるべく温存する。5年再手術率16~43%、10年で32~76%と高く、可能な症例では腹腔鏡下手術が有効である。緊急手術、穿孔、広範囲膿瘍形成、複数回の開腹手術既往、腸管外多臓器への複雑な瘻孔などは開腹手術が選択される。厚生労働省研究班治療指針によるCDの手術適応は表7の通りである。完全な腸閉塞、穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症は緊急に手術を行う。狭窄病変については、活動性病変は内科治療、線維性狭窄で口側拡張の著しいもの、短い範囲に多発するもの、狭窄の範囲が長いもの、瘻孔を伴うもの、狭窄症状を繰り返すものは手術適応となる。肛門病変は、難治性で再発を繰り返す痔瘻・膿瘍が外科的治療の対象となる。治療として、痔瘻根治術、シートン法ドレナージ、人工肛門造設(一時的)、直腸切断術が選択される。治療の目標は症状の軽減と肛門機能の保持となる。画像を拡大する4 今後の展望現在、各種免疫を ターゲットとした治験が行われており、進行中の治験を以下に示す。グセルクマブ(商品名:トレムフィア):抗IL-23p19抗体(点滴静注および皮下注射製剤)Upadacitinib:JAK1阻害薬(経口)E6011:抗フラクタルカイン抗体(静注)Filgotinib:JAK1阻害薬(経口)BMS-986165:TYK2阻害療法(経口)5 主たる診療科消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究に関するサイト難病情報センター CD(一般利用者と医療従事者向けの情報)東京医科歯科大学消化器内科 「潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター」(一般利用者向けの情報)JIMRO IBD情報(一般利用者と医療従事者向けの情報)患者会に関するサイトIBDネットワーク(IBD患者と家族向け)1)日比紀文 監修.クローン病 新しい診断と治療.診断と治療社; 2011.2)難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班プロジェクト研究グループ 日本消化器病学会クローン病診療ガイドライン作成委員会・評価委員会.クローン病診療ガイドライン: 2011.3)NPO法人日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編.潰瘍性大腸炎の診療ガイド. 第2版.文光堂; 2011.4)日比紀文.炎症性腸疾患.医学書院; 2010.5)渡辺守.IBD(炎症性腸疾患を究める). メジカルビュー; 2011.公開履歴初回2013年04月11日更新2020年03月09日

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胎児・乳児・小児期のタバコ曝露と小児乾癬のリスク

 タバコは成人の乾癬における関連要因として知られているが、小児の乾癬においても同様であることが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のJonathan Groot氏らは、同国出生コホートから2万5,812例のデータを集め、胎児期、乳児期(月齢6ヵ月まで)、小児期(11歳まで)のタバコ曝露と小児乾癬の関連を調べた。その結果、胎児期のタバコ曝露が線形にリスクを増大することが示唆され、小児乾癬においてもタバコが発症原因の役割を果たす可能性が示されたという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年1月20日号掲載の報告。 研究グループは、デンマーク出生コホートの参加者データを集めて、胎児期、乳児期、小児期のタバコ曝露が小児乾癬のリスクを増大するかを検討した。 データは、おおよそ在胎12週時および月齢6ヵ月時(乳児期)と11歳時(小児期)に集められ、完全データを得られた2万5,812例について、タバコ曝露と小児乾癬との関連オッズ比(OR)を推算して評価した。 なお、本研究はアウトカム状況の報告が母親によってなされている、という点から結果は限定的であるとしている。 主な結果は以下のとおり。・小児期の乾癬リスクが、胎児期にタバコに曝露していた集団で観察された(補正後OR:1.39、95%信頼区間[CI]:1.06~1.82)。・毎日の喫煙(紙巻きタバコ)量が多いほど、曝露反応関係が観察された(1日16本以上喫煙の補正後OR:2.92、95%CI:1.20~7.10、傾向のp=0.038)。・乳児期(補正後OR:1.17、95%CI:0.76~1.79)、および小児期(補正後OR:1.10、95%CI:0.77~1.58)のタバコ曝露との関連性は、出生前曝露で調整後は減弱することが示された。

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慢性呼吸器疾患死が世界的に増加、死亡率は低下/BMJ

 1990~2017年の期間に、慢性呼吸器疾患による年間総死亡数は18%増加したが、年齢標準化死亡比は年間2.41%低下し、社会人口統計学的特性(SDI)と慢性閉塞性肺疾患(COPD)、塵肺症、喘息による死亡率との間には負の相関がみられ、SDIが低い地域は疾病負担が多大であることが、中国・華中科技大学のXiaochen Li氏らによる195の国と地域のデータの解析で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年2月19日号に掲載された。慢性呼吸器疾患による死亡や健康損失に関するこれまでの研究は、限られたデータに基づいており、地域も限定的だという。GBD 2017のデータを系統的に分析 研究グループは、1990~2017年の世界195の国と地域の年齢別、性別の慢性呼吸器疾患による死亡と障害調整生命年(DALY)の経時的、空間的な傾向を評価する目的で、系統的な分析を行った(National Key R&D Program of Chinaなどの助成による)。 ベイズメタ回帰分析のツールであるDisMod-MR 2.1を用いて、「世界疾病負担研究(GBD)2017」のデータから、慢性呼吸器疾患の死亡率とDALYを推算した。ガウス分布による一般化線形モデルを用いて、年齢標準化死亡比の推定年間変化率を算出した。 死亡率とDALYは、社会人口統計学的特性(SDI)で層別化した。SDIは、国民1人当たりの所得と学歴、合計特殊出生率による複合指標であり、5つの段階(高、高中、中、低中、低)に分けた。スピアマンの順位相関係数を用いて、SDIと死亡率の関連の強度と傾向を評価した。また、曝露データから、慢性呼吸器疾患のリスク因子を解析した。喫煙、環境汚染、高BMIへの曝露の抑制が喫緊の課題 1990~2017年の慢性呼吸器疾患による年間DALYは、9,720万~1億1,230万にわたっていた。この間に、喘息や塵肺症ではDALYが改善したが、COPDや間質性肺疾患/肺サルコイドーシスでは悪化した。 慢性呼吸器疾患による年間総死亡数は、1990年の332万人(95%不確定区間[UI]:301万~343万)から、2017年には391万人(379万~404万)まで、18.0%増加した。 一方、同時期の慢性呼吸器疾患による年齢標準化死亡比は、平均で年間2.41%(95%UI:2.28~2.55)減少し、1990年と2017年の双方で男女間に大きな差が認められた。27年間で、年間年齢標準化死亡比は、COPDで2.36%(2.21~2.50)、塵肺症で2.56%(2.44~2.68)低下したのに対し、間質性肺疾患/肺サルコイドーシスは0.97%(0.92~1.03)増加した。 慢性呼吸器疾患による死亡数および年間死亡率の変動には、195の国と地域でかなり大きなばらつきが認められた。 27年間の死亡率とDALYの地域差、および改善の不均衡な分布の原因となる要因の評価では、SDIとCOPD、塵肺症、喘息による死亡の間に負の相関が認められた。低SDIの地域は、死亡率とDALYが最も高かった。 喫煙は、この間一貫してCOPDおよび喘息による死亡の主要なリスク因子であった。粒子状物質による環境汚染は、低SDI地域においてCOPDによる死亡の主要な寄与因子であった。2013年以降は、高BMIが喘息の最も重要なリスク因子となった。 著者は、「死亡率やDALYには、喫煙、環境汚染、高BMIなどのリスク因子が寄与していると推定され、これらへの曝露を抑制するために緊急の取り組みが必要である」としている。

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喫煙者の高い認知症リスク、禁煙3年で軽減~大崎コホート研究

 禁煙と認知症リスクの変化について米国のARIC研究の結果が報告されているが、今回、東北大学のYukai Lu氏らが、日本の前向き研究である大崎コホートにおける縦断的分析の結果を報告した。本研究では、3年以上禁煙した場合、認知症発症リスクは非喫煙者と同じレベルまで低下することが示唆された。European Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年2月15日号に掲載。 本研究の対象は65歳以上の日本人1万2,489人で、5.7年間追跡調査を実施した。2006年に喫煙状況およびその他の生活習慣の情報を質問票にて収集した。認知症発症に関するデータは、公的介護保険のデータベースから取得した。Cox比例ハザードモデルを使用し、認知症の多変量調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(95%CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・6万1,613人年の追跡調査の間に、認知症が1,110例(8.9%)に発症した。・現在喫煙者は非喫煙者に比べて認知症リスクが高かった(HR:1.46、95%CI:1.17~1.80)。・元喫煙者の認知症リスクは、禁煙2年以下では依然高かった(HR:1.39、95%CI:0.96~2.01)が、禁煙3年以上では喫煙による認知症リスクの増加が軽減された。禁煙年数ごとの多変量HR(95%CI)は、禁煙3~5年で1.03(0.70~1.53)、6~10年で1.04(0.74~1.45)、11~15年で1.19(0.84~1.69)、15年以上で0.92(0.73~1.15)だった。

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COVID-19への治療薬の考え方/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:舘田 一博)は、今般の新型コロナウイルス感染症の治療に関し、「COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方 第1版」を2月26日に公開した。 本指針は、現時点で収集されている知見より抗ウイルス薬に関するわが国における暫定的な指針を示すのが目的。そして、抗ウイルス薬の使用にあたっては、現在わが国ではCOVID-19に適応を有する薬剤は存在しないことを前提に、行うことのできる治療は、国内ですでに薬事承認されている薬剤を適応外使用することであり、使用では各施設の薬剤適応外使用に関する指針に則り、必要な手続きを行うことになるとしている。抗ウイルス薬の対象と開始のタイミング 現時点では、患者の臨床経過の中における抗ウイルス薬を開始すべき時期は患者が低酸素血症を発症し、酸素投与が必要であることが必要条件。そのうえで次の4点を考慮する。1)おおむね50歳未満の患者では肺炎を発症しても自然経過の中で治癒する例が多いため、必ずしも抗ウイルス薬を投与せずとも経過を観察してよい。2)おおむね50歳以上の患者では重篤な呼吸不全を起こす可能性が高く、死亡率も高いため、低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった段階で抗ウイルス薬の投与を検討する。3)糖尿病・心血管疾患・慢性肺疾患、喫煙による慢性閉塞性肺疾患、免疫抑制状態などのある患者においても上記2)に準じる。4)年齢にかかわらず、酸素投与と対症療法だけでは呼吸不全が悪化傾向にある例では抗ウイルス薬の投与を検討する。抗ウイルス薬の選択 現時点でのわが国における入手可能性や有害事象などの観点より次の2剤を治療薬として提示。今後、臨床的有効性や有害事象などの知見の集積に伴い、COVID-19の治療のための抗ウイルス薬の選択肢や用法用量に関し新たな情報が得られる可能性が高い。●ロピナビル・リトナビル ロピナビルはHIV-1に対するプロテアーゼ阻害剤として有効性が認められ、シトクロームP450の阻害によりロピナビルの血中濃度を保つためリトナビルとの合剤として使用。・投与方法(用法・用量)1)ロピナビル・リトナビル(商品名:カレトラ配合錠):400mg/100mg経口12時間おき、10日間程度2)ロピナビル・リトナビル(同:カレトラ配合内用液):400mg/100mg(1回5mL)経口12時間おき、10日程度*上記は抗HIV薬としての承認用量であるが、高濃度のEC50を示す可能性があり、用量については有害事象のモニターと合わせ今後の検討が必要・投与時の注意点:(1)本剤の有効性に関し、適切な重症度や投与開始のタイミングは不明(2)使用開始前にはHIV感染の有無を確認し、陽性の場合には対応について専門家に相談(3)リトナビルによる薬剤相互作用があるため、併用薬に注意する(4)錠剤の内服困難者に内用液を使用する場合、アルコール過敏がないか確認する また、本指針には、国立国際医療研究センターでの本剤使用7症例の臨床経過(2020年2月21日まで)のほか、海外での臨床報告なども記載されている。●ファビピラビル 本剤は「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(但し,他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)」に限定して承認。本剤のCOVID-19への使用実績は無い。・投与方法(用法・用量) ファビピラビル(同:アビガン)を3,600mg(1,800mgBID)(Day1)+1,600mg(800mgBID)(Day2以降)、最長14日間投与。・投与時の注意点:(1)本剤の有効性に関し、適切な重症度や投与開始のタイミングに関しては不明(2)以下の薬剤については、薬物相互作用の可能性があることから、本剤との併用には注意して使用する:1)ピラジナミド、2)レパグリニド、3)テオフィリン、4)ファムシクロビル、5)スリンダク(3)患者の状態によっては経口投与が極めて困難な場合も想定される。その場合は55°Cに加温した水を加えて試験薬懸濁液を調製する(簡易懸濁法)。被験者に経鼻胃管を挿入し、経鼻胃管が胃の中に入っていることを胸部X線検査で確認した後、ピストンを用いて懸濁液をゆっくりと注入する。その後、5mLの水で経鼻胃管を洗浄する(4)動物実験において、本剤は初期胚の致死および催奇形性が確認されていることから、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しない(5)妊娠する可能性のある婦人に投与する場合は、投与開始前に妊娠検査を行い、陰性であることを確認した上で、投与を開始する。また、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中および投与終了後7日間はパートナーと共に極めて有効な避妊法の実施を徹底するよう指導する。なお、本剤の投与期間中に妊娠が疑われる場合には、直ちに投与を中止し、医師などに連絡するよう患者を指導する(6)本剤は精液中へ移行することから、男性患者に投与する際は、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中および投与終了後7日間まで、性交渉を行う場合は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう指導する。また、この期間中は妊婦との性交渉を行わせない(7)治療開始に先立ち、患者またはその家族などに有効性および危険性(胎児への曝露の危険性を含む)を十分に文書にて説明し、文書で同意を得てから投与を開始する(8)本剤の投与にあたっては、本剤の必要性を慎重に検討する 指針では以上の他にも、「COVID-19に対する治療に使用できる可能性のある抗ウイルス薬にはレムデシビル、インターフェロン、クロロキンなどがあるが、それらの効果や併用効果に関しては今後の知見が待たれる」と期待を寄せている。

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医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(2)【新型タバコの基礎知識】第16回

第16回 医師団体・政治家・行政担当者のための新型タバコに対処する方法(2)Key Pointsタバコ対策が不十分な日本では、電子タバコによるハーム・リダクションを検討する前に、紙巻タバコへの規制を強化すべき通常、商品から規制値を超えるホルムアルデヒドが検出されると、その商品は回収されることとなるが、タバコは回収されない特別扱い新型タバコも含めた「タバコの煙」全てを有害物質だと判定し、タバコ対策を進めていくことが必要今回は、まず(加熱式タバコではない)電子タバコに対する規制方策について紹介します。次に、現実社会におけるタバコや新型タバコの扱いについて検討し、新型タバコも含めたタバコの有害性についてどういう捉え方ができるのか、国際がん研究機関(IARC)の判断をみていき、新型タバコへの対処方法について考えてみたいと思います。※加熱式タバコと電子タバコの違いについては、第1回および第2回を参照ください(加熱式タバコを含まない)電子タバコに対する規制は今どうなっている?新型タバコといっても、加熱式タバコではない、電子タバコの規制については国際的に一致した見解が得られていないのが現状です。英国政府は電子タバコを医薬品として承認して、ハーム・リダクションの手段として積極的に活用する方針であるのに対して、米国では若年者における電子タバコの蔓延による悪影響が考慮され、規制が強化されてきています。こうした背景には、各国におけるタバコ対策の進捗状況の違いがあります。英国には、国際的にトップランナーとしてタバコ対策を進めてきた実績があります。タバコ1箱当たりのタバコ税が約900円と高く設定されており、飲食店やホテル等のサービス産業も含め、屋内を全面禁煙化することが罰則付きで法律により定められています。英国ではタバコ対策はかなり進められているが、それでもまだタバコを吸っている人に対してどうするか、という文脈で、電子タバコの禁煙効果に期待が集まっているわけです。しかし、電子タバコに禁煙させる効果があるとは証明されていません。また、電子タバコにも有害性がないわけではありません(第10回記事参照)。分かっていないことも多いのです。そのため、米国など多くの国で電子タバコへの規制強化が検討されています。タバコ対策が十分に進んでいない国であればあるほど、電子タバコがタバコ対策や社会に悪影響を与える可能性があると考えられます。英国と比べて、日本のタバコ対策はかなり不十分といえるでしょう。日本では、電子タバコによるハーム・リダクションを検討する前に、まず本丸である紙巻タバコへの規制を強化することが重要です。日本ではタバコは安すぎるし、屋内禁煙は徹底できておらず、脱タバコ・メディアキャンペーンはほぼ実施されていないのです。この現状では、ハーム・リダクションとして新型タバコを導入することよりも、これらのタバコ対策を進めることが優先されるものと考えられます。他の商品とタバコとで異なるアルデヒド検出への対応タバコからは5,000種類以上の化学物質、70種類以上の発がん性物質が放出されており、中でもタバコの煙から多量に検出されるホルムアルデヒドは、発がん性などのタバコの有害性を形づくる主要な有害物質の一つです。通常、商品から規制値を超えるホルムアルデヒドが検出されると、その商品は回収されることとなります(図)。規制値を下回るレベルであったとしても発生原因が調査され、健康被害に配慮した厳格な対応が取られ、回収されているのです。しかし、タバコの場合には、これとは全く異なった対応となっています。すべてのタバコ製品から規制値をはるかに上回るレベルのホルムアルデヒドが検出されており、日本だけでも年間10万人以上がタバコが原因で死亡しており、非常に多くの重篤な健康被害が発生していると分かっているものの、タバコは回収とはならないのです。画像を拡大するそれはなぜか。タバコだから、です。たばこ事業法などの法律の下、タバコは通常の商品ではなく、タバコとして扱われます。本来であれば(在るべき姿としては)、タバコは有害性が実証された段階で禁止されていてしかるべきものです。しかし、タバコの有害性が実証された1950~60年代には、タバコ利権が巨大過ぎて、タバコを禁止できませんでした。その後、世界のタバコ使用を減らすことができていればタバコ利権が弱まり、タバコを禁止する方向へと話を進められたかもしれません。しかし、現実には世界のタバコ消費量は近年拡大しており、タバコ産業の利権は1950~60年代当時よりもはるかに巨大なものとなっているのです。「タバコの煙」自体が有害物質と認定されているこのように歪められたタバコへの対応を改善してタバコのない社会を目指すために、次に示す考え方は参考にできるのではないでしょうか。国際がん研究機関(IARC)は、科学的根拠に基づき、「タバコの煙」自体を有害物質(発がん性物質)だと判定しています。この判定の根拠となったデータは、現実社会における人々の記録です。人々が「タバコの煙」を吸ったかどうか記録され、その人が追跡され、がんにかかったかどうかが調べられてきたのです。そのようなデータを沢山集め、科学的根拠に基づいて「タバコの煙には発がん性がある」と判定したのです。実は、これまでの50年以上にわたるタバコのリスク研究全部をもってしても、紙巻タバコの有害性の全容は分かっていません。途中のメカニズムには不明な点もありますが、タバコの煙を吸うと、肺がん、心筋梗塞や脳卒中などの病気になってしまうと分かっているのです。ここで重要な予防の観点は、途中のメカニズムがどうであろうと、とにかくタバコの煙を吸うのを防ぐことができれば、病気を防げるということです。人々をがんなどの病気から守るためにも、われわれは人々を「タバコの煙」からできるだけ遠ざけなければなりません。具体的には、禁煙支援を実施したり、受動喫煙を防止するために屋内を禁煙にしたり、学生にタバコの害を教えたり、社会的にタバコは許容できるものではないとの規範を広めたり、タバコを規制する法律を作ったりしていかなければならないのです。「タバコの煙」自体を有害物質だと判定し、タバコの害についての認識を共有したことが、世界的なタバコ対策の発展へとつながっているのです。新型タバコにはまだ長期間の記録がありません。新型タバコの研究は難しく、新型タバコによって病気になるリスクはしばらく解明されないかもしれません。しかし、第5回でみたように、新型タバコからは明らかに有害物質が出ています。新型タバコからも「タバコの煙(もしくはエアロゾル)」が出ているのです。その「タバコの煙(エアロゾル)」自体を、由来がどのタバコだろうとも、規制の対象であるとすべきだと考えられます。新型タバコに対してどのように規制していけばいいのか、これから最良の対応方法を模索していかなければならないと思います。第17回は、「禁煙をし続けるために本当に必要なこと(1)」です。

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日本人男性の食事と死亡率、60年でこう変わった

 日本人の食事の欧米化が進んでいるが、過去60年間の食事パターンはどの程度変化しているのだろうか。また、それは冠動脈疾患の死亡率に関連しているのだろうか。久留米大学の足達 寿氏らは、Seven Countries Studyの中の日本人コホートである田主丸研究(久留米大学による久留米市田主丸町住民の疫学調査)において、栄養摂取量の変化と冠動脈リスク因子または死亡率の関係を調査した。Heart and Vessels誌オンライン版2020年1月29日号に掲載。 本研究では40~64歳の男性すべてを登録し、被験者数は、1958年628人、1977年539人、1982年602人、1989年752人、1999年402人、2009年329人、2018年160人であった。1958~89年は24時間思い出し法、1958~89年は食事摂取頻度調査票を用いて、食事摂取パターンを評価した。 主な結果は以下のとおり。・1日当たりの総エネルギー摂取量は、2,837kcal(1958年)から2,096kcal(2018年)に減少した。・炭水化物摂取量の全体に対する割合は84%から53%に著しく減少したが、脂肪摂取量の割合は5%から24%に大幅に増加した。・年齢調整後の平均コレステロール値は167.9mg/dLから209.4mg/dLに急激に上昇し、BMIも21.7から24.4に増加した。・喫煙率は69%から30%に減少した。・脳卒中およびがんによる死亡率は低下したが、心筋梗塞および突然死による死亡率は低いまま安定していた。

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米国2019-nCoV感染1例目、発熱・咳症状9日目に肺炎/NEJM

 中国・湖北省武漢市でアウトブレークが始まった新型コロナウイルス「2019-nCoV」は、瞬く間に拡大し複数の国で新たな感染例の確認が報告されている。米国疾病管理予防センター(CDC)のMichelle L. Holshue氏らは、2020年1月20日に米国で確認された1例目の感染例について、疫学的および臨床的特徴の詳細をNEJM誌オンライン版2020年1月31日号で発表した。その所見から、「本症例で鍵となるのは、パブリックな注意喚起を見た後に患者が自発的に受診をしたこと、患者の武漢市への渡航歴を地域の医療提供者および郡・州・連邦の公衆衛生担当官が共有し、感染拡大の可能性を認識して、患者の迅速な隔離と検査および入院を許可したことだ」と述べ、「本症例は、急性症状を呈し受診したあらゆる患者について、臨床家が最近の渡航歴または病人との接触曝露歴を聞き出し、そして2019-nCoVのリスクがある患者を適切に識別し迅速に隔離して、さらなる感染を抑制する重要性を強調するものである」とまとめている。渡航歴を考慮し、ただちにクリニックからCDCへと報告が上がる 米国の2019-nCoV感染1例目は、1月19日にワシントン州スノホミッシュ郡の緊急ケアクリニックを受診した35歳男性。咳、主観的発熱の既往は4日間。クリニックに入ると待合室でマスクを着け、約20分待った後、診察室に入った。患者は、家族に会いに武漢市に行き15日に帰ってきたことを申し出、米国CDCの注意喚起を見て、自身の症状と渡航歴を鑑み受診したと話した。高トリグリセライド血症歴はあったが、健康な非喫煙者だった。 診察の結果、熱は37.2度、血圧134/87mmHg、心拍110回/分、酸素飽和度96%。ラ音を認めたため胸部X線検査を行ったが異常は認められなかった。迅速インフルエンザウイルス検査(A、B)の結果は陰性。鼻咽頭スワブ検体を採取し(あらゆる結果が48時間以内に判明する)、渡航歴を考慮してただちに郡・州の保健当局に通知。州当局は臨床担当医とともにCDCの緊急オペレーションセンターに通知した。患者が武漢海鮮卸売市場には行っておらず病人との接触もないと話したが、CDCは「persons under investigation」を基に要検査例と判断。ガイダンスに従い、鼻咽頭および口咽頭スワブ検体を収集。患者は退院したが家族とは隔離し郡保健所がモニタリングにあたった。 翌1月20日にリアルタイムPCR検査の結果、2019-nCoV陽性が確認された。患者は郡医療センターに隔離入院となった。入院時も入院後もバイタルはほぼ安定、しかし入院5日目に肺炎を呈す 患者は入院時、持続性乾性咳嗽と2日間の悪心および嘔吐の既往を認めたが、息切れ、胸痛の訴えはなく、バイタルサインは正常範囲を示していた。入院後、支持療法(悪心に対する2Lの生理食塩水とオンダンセトロン投与)を受けたが、入院2~5日目(疾患6~9日目)のバイタルサインはほとんどが安定していた。 入院2日目に腹部不快感と下痢症状を呈するが翌日に回復。入院3日目に胸部X線検査を行ったが、異常所見を認めなかった。しかし、入院5日目(疾患9日目)の夜から呼吸器症状に変化がみられ、胸部X線検査で左肺下葉に肺炎の所見を認めた。入院6日目に酸素吸入を開始、バンコマイシン、セフェピムの投与も開始。その日の胸部X線検査で両肺に陰影、ラ音を認める。担当医は他施設での報告例を参照し、7日目の夕方に治験中の抗ウイルス薬remdesivirの静脈投与を開始。有害事象は観察されなかった。同日夕方にバンコマイシン投与は中止、セフェピムは翌日に中止している。 入院8日目(疾患12日目)に患者の臨床症状は改善し、支持療法も中止となった。入院11日目の1月30日現在も入院は続いているが、熱は低下(36度台)し、重症度が低下した咳を除き、あらゆる症状が改善した。

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低線量ボリュームCT検診、肺がん死を抑制/NEJM

 肺がんのリスクが高い集団において、ボリュームCTによる検診を受けた集団は、これを受けなかった集団に比べ、10年間の肺がんによる死亡率が低下し、肺がんを示唆する検査結果に対しフォローアップ処置を行う割合も低いことが、オランダ・エラスムス医療センターのHarry J de Koning氏らが行った「NELSON試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年2月6日号に掲載された。全米肺検診試験(NLST)は、低線量CTによる肺がん検診(年1回で3回)は従来の胸部X線に比べ、肺がん死亡率を20%低減したと報告している。一方、このような肺がん検診の死亡に関する有益性を示した無作為化試験のデータは限られているという。オランダとベルギーの地域住民ベース無作為化試験 研究グループは、低線量ボリュームCTを用いた検診により、高リスクの男性参加者の追跡期間10年時の肺がん死亡率を25%以上低下させることを目標に、地域住民ベースの無作為化対照比較試験を実施した(オランダ保健研究開発機構などの助成による)。 2003年と2005年に参加者登録が行われた。対象は、喫煙歴が1日15本以上を25年以上または1日10本以上を30年以上の現喫煙者または元喫煙者(禁煙から10年以内)であった。オランダとベルギーの4地域に居住する50~74歳の男性1万3,195例(主解析)と女性2,594例(サブグループ解析)が解析に含まれた。 参加者は、低線量ボリュームCTによる検診(ベースライン、1、3、5.5年)を受ける群または受けない群(対照群)に無作為に割り付けられた。 オランダとベルギーの全国レジストリと連携し、がんの診断と死亡の日付・原因に関するデータを入手した。判定委員会は、可能な場合に、肺がんが死亡の原因であることを確認した。2015年12月31日までに、すべての参加者が最短追跡期間10年に達した。女性のほうが利益が大きい可能性も 男性は、検診群が6,583例、対照群は6,612例であった。両群とも、年齢中央値は58歳(IQRは検診群55~63、対照群54~63)で、喫煙歴中央値は38.0 pack-years(IQRは両群とも29.7~49.5)だった。 男性では、合計2万2,600件のCT検査が行われ、平均検診受診率は90.0%(95%信頼区間[CI]:76.9~95.8)であった。9.2%(2,069/2万2,600件)で、検診検査アウトカムを決定する前に、体積倍加時間を算出するための再CT検査が行われた。最終的に、2.1%(467/2万2,600件)が陽性で、呼吸器科医による精密検査を受け、肺がん検出率は0.9%(203/2万2,600件)であった。また、陽性反応適中度は43.5%だった。 追跡期間10年時の肺がんの発生率は、検診群が1,000人年当たり5.58人(がん341個)、対照群は1,000人年当たり4.91人(がん304個)であった(率比:1.14、95%CI:0.97~1.33)。肺がんの59.0%(203/344個)が検診で検出され、12.8%(44/344個)は中間期がんであった。 10年間で、検診群の156例、対照群の206例が肺がんで死亡した。肺がん死亡率は、検診群が1,000人年当たり2.50、対照群は1,000人年当たり3.30であり(10年時の累積肺がん死亡率の率比:0.76、95%CI:0.61~0.94、p=0.01)、検診群で有意に低下した。8年および9年時の率比もほぼ同じで、検診群で有意に良好だった。 10年全死因死亡率は、検診群が1,000人年当たり13.93、対照群は13.76であった(率比:1.01、95%CI:0.92~1.11)。 一方、女性では、追跡期間10年の肺がん死亡率の率比は0.67(95%CI:0.38~1.14)であった。また、7年時の率比は0.46(0.21~0.96)、8年時は0.41(0.19~0.84)、9年時は0.52(0.28~0.94)であり、男性に比べ良好な傾向が認められた。 著者は、「ボリュームCT検診は、良好なアウトカムを損なわずに、偽陽性や不要な精密検査を減少させることが可能と考えられる」とまとめ、「女性は男性よりも利益が大きいと示唆されるが、本試験では女性は相対的に参加者が少ないサブグループであった。他のサブグループと共に、女性に関する研究を進める必要がある」と指摘している。

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日本人高齢男性における飲酒と認知機能との関係

 大量の飲酒は、認知機能障害のリスク因子として知られているが、適度な飲酒においても同様の影響が認められるかどうかは、よくわかっていない。これまでの観察研究では、とくに高齢者において、中程度の飲酒による認知機能への潜在的なベネフィットが報告されているが、アジア人ではこの影響が実証されていなかった。滋賀医科大学のAli Tanweer Siddiquee氏らは、認知障害のない日本人高齢男性を対象に、飲酒レベルと認知機能との関連について調査を行った。Alcohol誌オンライン版2020年1月7日号の報告。 飲酒と認知機能との関連を調査するため、進行中のプロスペクティブ人口ベース研究である滋賀動脈硬化疫学研究(SESSA)の断面データを用いた。65歳以上の男性585人を対象に、週ごとのアルコール摂取量の情報を収集し、摂取量に応じて分類した。飲酒歴の分類は、元飲酒者、非常に軽度(14g/日未満)、軽度(14~23g/日)、中程度(24~46g/日)、重度(46g/日超)とした。認知機能の測定には、Cognitive Abilities Screening Instrument(CASI)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・年齢、教育、BMI、喫煙、運動、高血圧、糖尿病、脂質異常症で調整したロジスティック回帰モデルでは、全体および領域特有の認知機能のCASIに、飲酒歴の有無による、有意な差が認められなかった。・元飲酒者は、非飲酒者と比較し、全体の認知機能(多変量調整平均CASIスコア:88.26±2.58 vs.90.16±2.21)および抽象化、判断の領域(多変量調整平均CASIスコア:8.61±0.57 vs.9.48±0.46)において、CASIスコアが有意に低かった。 著者らは「日本人高齢男性では、飲酒と認知機能との間に、有益または不利益な影響は認められなかった。しかし、元飲酒者の認知機能が低いことから、飲酒を中止した要因を特定するための今後の調査が必要である」としている。

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