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1.

1日1~2杯のお茶でうつ病リスクが低下?

 うつ病は、社会と健康の両方に大きな影響を及ぼす一般的な精神疾患である。お茶の摂取による潜在的な健康効果が示唆されているが、お茶の種類、摂取頻度、摂取量といった飲用パターンがうつ病のリスクと関連しているかどうかは不明であり、とくに異なる集団においては、これまでよくわかっていなかった。台湾・高雄医学大学のSi-Meng Chang氏らは、台湾バイオバンクの登録者2万7,119例のデータを用いて、自己申告による生涯うつ病歴の有病率とお茶の種類、摂取頻度、1日当たりの摂取量との関連性を評価した。Nutrients誌2026年3月5日号の報告。 お茶の種類(完全発酵茶、半発酵茶、非発酵茶)、摂取頻度、1日当たりの摂取量により分類した。自己申告による生涯うつ病歴のデータは、自己記入式質問票を用いて収集した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、お茶の摂取と自己申告による生涯うつ病歴との関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、お茶の摂取量は、自己申告による生涯うつ病歴の有病率の低さとの有意な関連が認められた(オッズ比[OR]:0.736)。・この関連性は、半発酵茶および非発酵茶で認められた(OR:0.674)。しかし、完全発酵茶では認められなかった。・1日1~2杯(350~700mL)のお茶の摂取は、自己申告による生涯うつ病歴の有病率の低さと有意に関連していたが、1日3杯以上の摂取では関連性が認められなかった。・さらに、お茶の摂取頻度に関して、毎日お茶を飲む人は自己申告による生涯うつ病歴の有病率の低さと有意に関連していたが、週に1回または月に1回しかお茶を飲まない人ではそのような関連が認められなかった。・サブグループ解析では、65歳以上の高齢者、糖尿病患者、喫煙者、飲酒者においては、お茶の摂取と自己申告による生涯うつ病歴の有病率低下との関連は認められなかった。・これは、健康状態や生活習慣が、お茶の摂取とうつ病との関連に影響を及ぼす可能性を示唆している。・ただし、交互作用分析では、有意な差は認められなかった。 著者らは「正式な交互作用検定において統計的に有意な差が認められなかったため、これらの結果は探索的なものと見なすべきである」としたうえで、「半発酵茶および非発酵茶を毎日1~2杯摂取することは、自己申告による生涯うつ病歴の有病率低下と関連していた。この関連性には、摂取量や摂取頻度が影響を及ぼすことが示唆された。さまざまな種類のお茶の生物学的メカニズムを解明し、高リスク集団に対する介入戦略を開発するためには、さらなる研究が求められる」としている。

2.

緑茶は肝がんリスクを下げるのか~JACC Study

 緑茶の摂取と肝がんのリスクとの関連について、これまでの報告は一貫していない。今回、日本人成人の大規模な前向きコホート研究であるJACC Studyで、緑茶の摂取が肝がんリスクの低下と関連し、用量反応関係を示したことが報告された。Asian Pacific Journal of Cancer Prevention誌2026年4月号に掲載。 本コホート研究には、1988~90年のベースライン時点で肝がんの既往がなく、40~79歳の4万1,999人(男性1万8,205人、女性2万3,794人)が登録された。検証済みの自己記入式質問票を用いて、個人の社会人口統計学的特性、既往歴、生活習慣を評価し、2009年末まで肝がん発症状況を追跡した。1日当たり緑茶摂取頻度が1杯未満(基準)、2~4杯、5~6杯、7杯以上での肝がんのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)をCox比例ハザードモデルを用いて算出した。年齢、性別、調査地域、学歴、糖尿病・肝疾患・胆のう疾患の既往歴、BMI、飲酒状況、喫煙状況、コーヒー摂取量、運動習慣、歩行量などの潜在的交絡因子を調整した。さらに、コーヒー摂取量、飲酒状況、肝疾患既往歴などの主要な交絡因子については層別化し分析した。 主な結果は以下のとおり。・緑茶の摂取は肝がんのリスク低下傾向と関連しており、多変量解析によるHRは2~4杯で0.87(95%CI:0.61~1.23)、5~6杯で0.87(同:0.61~1.25)、7杯以上で0.61(同:0.40~0.95)となり、1杯未満と比較してリスク低下の傾向がみられた(傾向のp=0.029)。この逆相関は、男性、がん以外の肝疾患既往歴がない人、現在飲酒者で有意だった。・7杯以上の摂取に対する多変量人口寄与割合(PAF)は7.1%(95%CI:0.9~11.4)であった。

3.

不妊治療経験者のがん罹患率は一般女性とほぼ同程度

 不妊治療を受けても女性のがんリスクは高まらないとする新たな研究結果が報告された。研究によると、medically assisted reproduction(MAR、医療的に補助された生殖)を受けた女性での浸潤がんの罹患率は、一般女性と比べて高くないことが明らかになった。ただし、がんの種類によっては若干の違いが見られ、罹患率がやや高いものと低いものがあったという。ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)のビッグデータ健康研究センターのAdrian Walker氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に3月10日掲載された。 Walker氏は、今回の結果は不妊治療を受けている女性にとって安心材料になると述べた上で、「MARを受けた女性は、対象となるがん検診プログラムに引き続き参加するべきだ。また、自分のがんリスクについて医師と相談し、リスクを下げるためにできることを理解することも重要だ」とニュースリリースの中で語った。 今回の研究では、1991年から2018年までの間に生殖補助医療(ART)、排卵刺激および人工授精(IUI/OS)、クロミフェン単独排卵誘発を受けたオーストラリア人女性約41万7,984人の医療記録が解析された。このうち27万4,676人(65.7%、年齢中央値34歳、追跡期間中央値9.42年)はARTを、12万739人(28.9%、年齢中央値34歳、追跡期間中央値11.67年)はIUI/OSを、17万5,510人(42.0%、年齢中央値32歳、追跡期間中央値9.42年)はクロミフェン単独排卵誘発を受けた経験があった。 解析の結果、ART群およびIUI/OS群の浸潤がん全体の罹患率は一般女性とほぼ同等であり、標準化罹患比(SIR)はART群で1.00(95%信頼区間0.98〜1.02)、IUI/OS群で0.99(同0.97〜1.02)であった。クロミフェン単独排卵誘発経験者では、罹患率がわずかに高かった(SIR 1.04、95%信頼区間1.00〜1.07)。がん種別に見ると、子宮がんの罹患率は全ての治療群で一般女性より高く、SIRはART群で1.23、IUI/OSで1.32、クロミフェン単独排卵誘発で1.83であった。さらに、上皮内および浸潤性メラノーマの発生もわずかに高く、SIRは1.07〜1.15の範囲であった。一方、子宮頸がんや気管・気管支・肺のがんの罹患率も低く、SIRは子宮頸がんで0.52〜0.61で、気管・気管支・肺のがんで0.62〜0.70であった。 Walker氏は、「特定の集団で一般集団とは少し異なるがんの発生パターンが見られるのは珍しいことではない。しかし、今回の結果が示すように、それは必ずしも全体的な罹患率の上昇を意味するものではない」と説明している。また、論文の筆頭著者である同研究所のClaire Vajdic氏は、「ほとんどの医療行為は何らかのリスクを伴うものの、今回観察されたがん発生率の増加は非常に小さいものだった」と述べている。 ただし、今回の結果の解釈には注意が必要だと研究グループは強調している。Vajdic氏は、「この研究は、異なる集団間のがん罹患率を比較したものであり、MARとがん発症との因果関係を調べたものではない。そのため、結果を解釈する際には、対象集団がもともと持っているがんリスクも考慮する必要がある」と述べている。 研究グループによると、MARを受けた女性で特定のがんが多く見られた理由には、さまざまな要因が考えられるという。Vajdic氏は、「MARが必要になる女性が有する特徴そのものが、がんの発症に関係している可能性がある」と話す。例えば、子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など、不妊の原因となる疾患の中には、子宮がんや卵巣がんのリスクを高めることが知られているものもある。さらに、不妊治療を受ける女性には、都市部に住んでいる、経済的に余裕がある、肌の色が明るい、喫煙率が低いなどの特徴があり、これらも今回の研究で認められたがんの発生パターンに影響している可能性も考えられるという。 研究グループは、今回の対象者を今後も追跡し、長期的なデータからさらに詳しい知見を得たいとしている。

4.

世界の乳がん負担、低所得国を中心に2050年まで増加すると予測

 乳がんによる死亡は、不健康な生活習慣などの影響により、今後15年にわたって増加し続けることが、新たな研究で予測された。世界の乳がんによる死亡数は、2023年の76万4,000人から2050年には137万人に増加し、新規罹患数も増加が見込まれたという。米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)のKayleigh Bhangdia氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Oncology」3月号に掲載された。 Bhangdia氏は、「乳がんは、依然として女性の生活や地域社会に深刻な影響を及ぼしている。高所得国では、一般的に検診の普及や早期診断、包括的な治療戦略の恩恵を受けられる。しかし、乳がんの負担は現在、低所得国および低・中所得国へと移りつつある。これらの地域では、乳がんがより進行した段階で診断されるケースが多く、質の高い医療へのアクセスも限られているため死亡率も高い。そのことが、女性の健康分野で達成されてきた進歩を覆い隠してしまう恐れがある」と述べている。 今回の研究では、世界疾病負担研究(GBD)2023のデータを用いて、1990年から2023年までの204の国・地域の乳がんデータを解析し、それを基に2024年から2050年までの罹患者数と死亡数を推定した。 その結果、2023年には世界で約230万人が新たに乳がんと診断され、約76万4,000人が乳がんにより死亡したと推定された。また、2023年時点では、世界の乳がん負担の28.3%が、対策可能な6つのリスク要因と関連していることも明らかになった。それらは、赤肉の摂取(11%)、喫煙(8%)、高血糖(6%)、BMI高値(4%)、飲酒(2%)、運動不足(2%)であった。乳がんによる障害調整生存年(DALY)は約2410万に上ると推計された。 1990年から2023年の間に、低所得国では乳がんの年齢調整罹患率が147.2%増加し、同死亡率も99.3%増加していた。一方、高所得国では罹患率の変化は小さく、死亡率は29.9%低下していた。さらに、若年女性における乳がんの増加という懸念される傾向も明らかになった。1990年以降、20~54歳女性では新規乳がん罹患率が29%上昇した。一方、より高齢の女性では罹患率に大きな変化は見られなかった。ただし世界全体では、55歳以上の女性で診断される新規乳がんは、20~54歳女性の約3倍に上っていた。このほか、2050年までに女性の乳がん新規罹患数は世界で約356万人、死亡数は約137万人に増加することも予測された。 論文の上席著者であるシンガポール国立大学のMarie Ng氏は、「世界の乳がん負担の4分の1以上が、生活習慣の改善によって変えられる6つの要因に関連している。これは、次世代における乳がんリスクを変える大きなチャンスがあることを意味する」と述べている。同氏はさらに、「公衆衛生政策によって既知のリスク要因に対処し、より健康的な選択をしやすい環境を整えること、そして個人レベルで肥満や高血糖の改善に取り組むことが、世界的な乳がん増加を食い止める上で重要だ」と強調している。

5.

『大型血管炎診療ガイドライン』改訂、治療のCQ推奨が新設/日本循環器学会

 大血管炎の高安動脈炎(TAK)や巨細胞性動脈炎(GCA)、そしてバージャー病に関する治療エビデンスや診断基準などをまとめた『2026年改訂版 大型血管炎診療ガイドライン』1,2)が8年ぶりに改訂された。第90回日本循環器学会学術集会(3月20~23日)会期中の3月20日に発刊され、本ガイドラインの研究班長を務めた中岡 良和氏(国立循環器病研究センター研究所副所長/血管生理学部長)が本学術集会プログラム「ガイドラインに学ぶ2」において、改訂点などを解説した。CHCC 2012における疾患分類と本ガイドラインで扱う疾患 血管炎は血管壁に炎症を認める疾患の総称で、多臓器を障害するため診療科横断的に多くの専門医の関与が必要とされる領域である。疾患分類は「CHCC 2012 血管炎の分類基準」に基づき、大型血管炎(TAKとGCA)、中型血管炎(結節性多発動脈炎[PAN]、川崎病)、小型血管炎(免疫複合体型小型血管炎、IGA血管炎ほか)3)とされる。一方で、バージャー病はこの分類には記載されていないが、「難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究」4)の大型血管炎臨床分科会の調査対象であること、循環器医が関与する疾患であること、そして前版(2017年版)でも対象範囲としていたことから、本書でも大型血管炎の2疾患とともにバージャー病を対象疾患とした。ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨を設定 今回、本書で取り扱う大血管炎(TAK、GCA)の2疾患は、希少疾患であるもののエビデンス収集という難しい局面を乗り越え、治療レジメンに対する全9項目のクリニカルクエスチョン(CQ)とそれに対する推奨がPart1(診療ガイドライン)の項で取り扱われている。TAKとGCAはいずれもステロイド(グルココルチコイド:GC)により一時的な寛解に至るものの、減量過程で半数以上に再燃がみられるため、GC治療抵抗性症例の治療選択肢を明らかにするため、ステロイド抵抗性症例に対するCQ推奨が設定された。中岡氏は、「システマティック・レビュー(SR)チームがTAKとGCAのRCT論文をMindsのGRADEシステムに準拠した最新研究などのSR結果をガイドライン発刊に先駆けて論文報告した5)。そして、近年ではステロイド治療に加えて、IL-6阻害薬トシリズマブなどが汎用されるようになったため、エビデンスの確実性や益と害について各CQと推奨で言及している」と説明した。 なお、中型血管炎であるPANも循環器医が臨床現場で遭遇する可能性があること、『ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023』での記載がないことを踏まえ、本書第6章で取り上げている。また、バージャー病はPart2(各疾患の基礎と臨床)でのみの取り扱いであることには注意したい。 次に、本書を手に取るうえで理解しておきたい各疾患の特徴を以下のように示す。―――――――――――――――――――【高安動脈炎(TAK)】・病名:高安動脈炎に統一(大動脈炎症候群、高安病、脈なし病などと呼ばれているため)・患者数:4,642例(2022年度難病受給者証所持者数)・男女比:1対8~9と女性が圧倒的に多い・発症年齢:女性は20歳前後にピーク、男性ははっきりしたピークがない・年齢分布:50代が多い・患者背景:HLA-B52陽性患者が多く、陽性者はグルココルチコイド治療抵抗性症例が多い・合併症:潰瘍性大腸炎罹患者が8%前後存在・地域差:アジアに多く、欧米に少ない【巨細胞性動脈炎(GCA)】・病名:以前は側頭動脈炎、Horton病などが使用されていた・患者数:2,850例(2023年度医療費受給者証所持者数)・男女比:1対2~3で女性がやや多い・年齢分布:50歳以上にみられ、70~80代でピーク・合併症:リウマチ性多発筋痛症が約30~40%にみられる・地域差:欧米に多く、アジアに少ない【バージャー病】・病名:閉塞性血栓血管炎とも呼ばれる・患者数:2,259例(2019年度特定医療費[難病]受給者証所持者数)で、近年減少傾向・男女比:若年発症でヘビースモーカーの男性に好発する・原因:作用機序などは不明だが、喫煙との関連が推察される―――――――――――――――――――TAKでのトシリズマブ併用、GCAの大動脈瘤リスク 上記を踏まえ、TAKの治療について、「治療アルゴリズムでは、まず疾患活動性を評価したうえでステロイド治療を開始する。欧米のガイドラインでは初期から免疫抑制薬を併用することが推奨されているが、本書CQ1(TAKの治療ではどのようなレジメンが有用か?)では、GCの早期減量が必要な症例に対し、トシリズマブ併用を選択肢とする推奨を示した」と強調した。 続いてGCAについて、「全身症状に加え、血管分布に応じて症状が出現する。外頸動脈の領域では血管狭窄に伴い、側頭部の痛み(顎跛行、舌跛行など)がみられる。内頚動脈の領域では失明や脳梗塞の原因になるほか、近年では大動脈瘤などを来すため、循環器領域でも注目されている」と指摘。診断基準は、現状、国内では1990年ACR分類基準が利用されているが、2022年ACR/EULARベースに日本語版の策定を進めているため、従来の1990年ACR分類基準と欧米で用いられている2022年ACR/EULAR分類基準が併記されている。さらに、トシリズマブの適応について「(確定診断ならびに疾患活動性の評価後に)トシリズマブを併用することでステロイドが減量できる点は50歳以上の患者でステロイドによる副作用を回避できるメリットがあるため、治療アルゴリズムにおいて、矢印を太字で示した。なお、昨年のNEJM誌において有用性が示されたJAK阻害薬ウパダシチニブは今回のアルゴリズムには反映されておらず、改めて検討される予定となっている」と説明した。 バージャー病については、「早期診断のため、診断基準の改訂を望む意見が多くあったため、2024年に一度改訂を行っている。本疾患として相違ない症状を呈し、血管画像検査所見が本疾患の特徴と合致し、ほかの疾患と鑑別できれば、診断可能」と解説した。「妊娠・出産」に関するコラムを新設 本書はわが国の大型血管炎の診療レベルを標準化し、日本全国どこにおいても患者が同じような治療を受けられるようにすること、患者の生活の質(QOL)と予後を改善させることを目的とし、大型血管炎の診療に関わる医師、医療専門職および大型血管炎の患者を利用者と想定して作成された。 最後に、今回新たに盛り込まれたコラムのうちTAK患者の妊娠・出産の項目を例に挙げ、「TAKの発症は10~20代の若年女性に多く見られるため、患者に妊娠をすること自体がリスクを伴う現実を伝えることも必要と判断されたため、コラムで妊娠・出産にも触れている。TAKを有する患者では妊娠が禁忌とされていたが、妊娠前に炎症をコントロールすることで妊娠・出産が可能であることや管理の軸について記した」と締めくくった。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

6.

脳ケアスコア「BCS」が高いほど脳卒中発症リスクが低い

 米マサチューセッツ総合病院のEvy M. Reinders氏らは、脳卒中リスクの地理的・人種的差異を探る前向きコホート研究(Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke;REGARDS)のデータを解析。修正可能な12項目の因子を評価する「脳ケアスコア(Brain Care Score;BCS)」が良好であるほど、脳卒中発症リスクが低いことを見いだした。詳細は「Neurology」に12月18日掲載された。 この研究では、REGARDS参加者のうち、ベースラインで脳卒中の既往がなく、BCSスコア算出に必要なデータに欠落のない1万861人(平均年齢63.2±8.4歳、女性57.4%、黒人30.6%)を解析対象とした。解析に際しては、米国では脳卒中リスクに人種差があることから、黒人と白人を層別化して比較検討した。 BCSスコアは、脳卒中や認知症、老年期うつ病のリスクに関連している、BMI、血圧、血糖値、コレステロール、喫煙・飲酒・食事・運動・睡眠習慣、ストレスなど、修正可能な12項目を評価する。スコア範囲は0~21点で、スコアが高いほど脳ケアが優れていることを意味する。本研究の解析対象者のベースライン値は14.4±2.4で、黒人(13.8±2.5)は白人(14.7±2.3)より低値だった(P<0.001)。 中央値15.9年の追跡で696件の脳卒中(虚血性、出血性、およびくも膜下出血)が発生した。カプランマイヤー解析での脳卒中累積発生率は全体で6.2%であり、人種別でも黒人・白人ともに6.2%であった。交絡因子(年齢、性別、収入、教育歴、医療保険、居住地域など)を調整した解析からは、黒人ではBCSスコアが5点高いごとに脳卒中リスクが53%低い(ハザード比〔HR〕0.47〔95%信頼区間0.36~0.61〕)という有意な関連が認められた。それに対して白人では25%のリスク低下にとどまり(HR0.75〔同0.62~0.92〕)、関連の強さに有意差があった(P=0.0045)。 脳卒中のタイプ別の解析では、虚血性脳卒中では全体解析と同様の傾向が観察された。一方、出血性脳卒中に関しては症例数が少ないため不確実性が大きく、統計学的に有意な関連が見られなかった。 Reinders氏は、「身体的要因、生活習慣要因、および社会心理学的要因を統合して脳の健康状態を測るBCSスコアを用いた検討により、特に黒人などの脳卒中リスクの高い集団で、生活習慣の改善がより大きなリスク抑制につながる可能性が示唆された」と総括している。 なお、1人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

7.

62万人の解析で見えてきた、日本人のバレット食道リスクとは

 「バレット食道」は、胃酸などの逆流によって食道の粘膜が本来とは異なるタイプの細胞(円柱上皮)に置き換わる状態を指す。この状態は、将来的に食道腺がんの発生母地になることが知られている。今回、日本人約62万人の大規模データを解析した研究から、胃食道逆流症(GERD)や食道裂孔ヘルニアなどが、日本人におけるバレット食道のリスク因子である可能性が示された。研究は、静岡県立総合病院消化器内科の平田太陽氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏、名古屋市立大学大学院医学研究科の中谷英仁氏らによるもので、詳細は2月6日付で英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。 近年、欧米を中心に食道腺がんの増加が報告されており、その主要な前段階とされるバレット食道への関心が高まっている。日本を含む東アジアでは、長い範囲に及ぶ長区域バレット食道(LSBE)や、それを背景とした食道腺がんは従来まれと考えられてきたが、近年は増加傾向が指摘されている。これまで、バレット食道のリスク因子として、高齢、男性、肥満、喫煙に加え、GERDや食道裂孔ヘルニアなどが報告されてきた一方、ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)感染は保護的に働く可能性も示唆されている。しかし、生活習慣やピロリ菌の疫学は欧米と日本で異なり、日本人集団における大規模な検証は限られていた。そこで本研究では、日本人一般集団62万人超のデータを用い、バレット食道の発症率とリスク因子を検討した。 健康保険請求データや健診情報などを統合した静岡県市町国保データベース(SKDB)を用い、後ろ向きコホート研究を実施した。対象は2012年4月~2021年9月に市町村国保へ加入し、12カ月以上の連続加入が確認され、バレット食道の既往がない個人とした。新規発症は保険請求データで定義し、年齢、性別、併存疾患、生活習慣、GERDや食道裂孔ヘルニア、ピロリ菌感染歴、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)、ならびにヒスタミン-2受容体拮抗薬(H2RA)などの酸分泌抑制薬の使用を調整した、時間の経過を考慮して発症リスクを評価する統計手法(Cox比例ハザードモデル)を用いて解析した。 本研究の最終的な解析対象は62万125人となり、追跡期間の中央値は6.2年だった。観察期間中に1,577人がバレット食道と診断され、新規発症率は10万人年あたり46.4例だった。 まず1つずつの因子との関連を検討し(単変量解析)、そのうえで複数の要因を同時に調整した解析(多変量解析)を行った。GERDと酸分泌抑制薬使用は互いに関連が強い(強力な酸分泌抑制薬であるPPI/P-CABはGERDの第一選択薬である)ため、両者を別々に含めた2つの解析モデルで検討した。その結果、年齢(50~79歳)、男性、末梢血管疾患、肝疾患、食道裂孔ヘルニア、ならびにGERDまたはPPI/P-CAB使用が一貫して発症リスクの上昇と関連していた。一方、ピロリ菌感染歴やH2RA使用については、モデルによって関連の有無が異なった。なお、酸分泌抑制薬使用やピロリ菌感染歴がリスク上昇と関連した点について著者らは、薬やピロリ菌そのものが直接リスクを高めると単純に解釈すべきではないとし、背景にあるGERDの重症度や、ピロリ菌除菌後の胃酸分泌の変化などが影響している可能性を指摘している。また、身体活動は単変量解析では関連したものの、多変量解析では有意差を示さなかった。 著者らは、「バレット食道の発症リスク因子について、本研究においては肥満や喫煙、飲酒といった生活習慣因子は他の要因を調整すると明確な関連は認められず、GERDや食道裂孔ヘルニアなどの逆流関連因子の影響がより重要である可能性が示唆された」と述べている。これらの結果は、日本人における内視鏡サーベイランスの対象選択に新たな視点を与える可能性があるとしている。 本研究での発症率(10万人年あたり46.4例)は、数値上は欧米の報告と同程度だが、診断基準の違いに注意が必要である。日本では、全長の短い短区域バレット食道(SSBE)が主流で、内視鏡医の判断で1cm未満の非常に短いものまで診断に含まれることがある。一方、欧米では一般に1cm以上の長さと組織検査による確認という厳格な基準が用いられる。そのため、発症率やリスク因子の単純な国際比較には慎重な解釈が求められる。 なお、本研究の限界として、診断は保険請求データに基づいており、組織学的情報が含まれていない点や、短区域バレット食道(SSBE)と長区域バレット食道(LSBE)の区別ができない点、診断漏れの可能性などが挙げられる。また、家族歴や遺伝的素因といった臨床情報や、ピロリ菌感染状態(現在感染か除菌後かなど)を詳細に評価できていない点も限界である。さらに、本研究は観察データに基づくものであるため、因果関係を断定することはできない。

8.

EGFR変異NSCLC、オシメルチニブ+化学療法の日本人解析結果(FLAURA2)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブ+化学療法はオシメルチニブ単剤と比較して、日本人集団においても無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)が良好であった。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」の日本人集団の結果を栁谷 典子氏(がん研究会有明病院)が報告した。日本人集団のOSの解析結果は、2025年11月に開催された第66回日本肺癌学会学術集会でも報告されていたが、今回はさらに詳細な結果が報告された。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:未治療の局所進行/転移EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失またはL858R)の非扁平上皮NSCLC成人患者557例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例)評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OSなど 日本人集団の解析結果は以下のとおり。なお、PFSのデータカットオフは2023年4月、OS・安全性・曝露期間・次治療のデータカットオフは2025年6月であった。・解析対象は併用群47例、単独群47例であった。男性の割合はそれぞれ34%、51%であり、年齢中央値はそれぞれ68歳(範囲:39~83)、65歳(同:33~79)であった。中枢神経系転移を有する割合はそれぞれ38%、40%であった。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、併用群49%/51%、単独群66%/34%であった。日本人集団はグローバル集団と比較して、年齢が高く、前喫煙者が多いという特徴があった。・PFS中央値は併用群24.8ヵ月、単独群16.4ヵ月であり、日本人集団でも併用群が良好であった(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.28~0.86)。・1年、2年時のPFS率は、併用群がそれぞれ83%、64%であり、単独群がそれぞれ63%、30%であった。・OS中央値は併用群48.3ヵ月、単独群34.3ヵ月であり、日本人集団でも併用群が良好であった(HR:0.60、95%CI:0.36~1.03)。・2年、3年、4年時のOS率は、併用群がそれぞれ85%、65%、52%であり、単独群がそれぞれ65%、41%、33%であった。・データカットオフ時点(2025年6月)において、試験治療を継続していた患者の割合は併用群28%(オシメルチニブ28%、ペメトレキセド6%)、単独群15%であった。・併用群は化学療法フリー期間が長かった。各薬剤の曝露期間中央値は、併用群はオシメルチニブ28.5ヵ月、ペメトレキセド5.5ヵ月、プラチナ製剤2.8ヵ月であった。単独群のオシメルチニブは16.0ヵ月であった。・次治療を受けた患者の割合は併用群75%、単独群86%であった。最初の次治療の内訳は、併用群では化学療法が多く(プラチナ製剤を含む化学療法40%、プラチナ製剤を含まない化学療法33%)、単独群ではプラチナ製剤を含む化学療法が多かった(71%)。・安全性について、主解析後の2年間の観察期間において、新たな間質性肺疾患の発現はなく、安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。 なお、グローバル集団における既報の主要結果1)は以下のとおり。・PFS中央値(併用群vs.単独群)25.5ヵ月vs.16.7ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.49〜0.79、p<0.001)・1/2年PFS率(同上)80%/57%vs.66%/41%・OS中央値(同上)47.5ヵ月vs.37.6ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.61〜0.96、p=0.02)・2/3/4年OS率(同上)80%/63%/49%vs.72%/51%/41% 本結果について、栁谷氏は「オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異陽性進行NSCLCの1次治療として確立した推奨治療である。FLAURA2試験では、オシメルチニブ+プラチナ製剤+ペメトレキセド併用療法がオシメルチニブ単剤と比較してOSを有意に延長し、日本人集団でもOSの改善傾向が示された。これらの結果は、併用療法が1次治療として強く推奨される選択肢であることを支持する」と述べている。

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高血圧診断後の生活習慣改善は心血管リスク低下と関連するか

 高血圧患者約2.6万例を対象とした大規模前向きコホート研究において、生活習慣と心血管疾患および2型糖尿病リスクの関連を検討した結果、健康的な生活習慣の実践は、降圧薬使用の有無にかかわらずこれらのリスク低下と関連しており、高血圧診断後であっても生活習慣の改善度が高いほどベネフィットが大きいことが、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのZixin Qiu氏らによって示された。JAMA Network Open誌2026年3月2日号掲載の報告。 一般集団では、健康的な生活習慣の順守により心血管疾患の予防が可能であることが示唆されている。しかし、高血圧患者において健康的な生活習慣の長期的な順守や診断後の変化と心血管疾患の発症リスクとの関連を検討した研究は限られている。そこで研究グループは、2つの大規模前向きコホートのデータを用いて、高血圧診断後の生活習慣および診断前後の生活習慣の変化と、心血管疾患および2型糖尿病の発症リスクとの関連を検討した。 解析には、Nurses' Health Study(NHS、1986~2014年)およびHealth Professionals Follow-Up Study(HPFS、1986~2014年)において新たに高血圧と診断された参加者が含まれた。追跡期間は、心血管疾患についてはNHSで2020年6月30日まで、HPFSで2016年6月30日まで、2型糖尿病については両コホートとも2019年12月31日までとした。 健康的な生活習慣とは、(1)質の高い食事(代替健康食指数[AHEI-2010]の上位5分の2)、(2)非喫煙、(3)中~高強度の身体活動(150分/週以上)、(4)節度あるアルコール摂取(男性30g/日以内、女性15g/日以内)、(5)適正なBMI(18.5~24.9)の5項目と定義した。生活習慣要因は2~4年ごとに再評価され、各項目を満たすごとに1点を加算し、生活習慣スコア(範囲:0[最も不健康]~5[最も健康])として評価した。主要アウトカムは心血管疾患(致死性/非致死性の冠動脈疾患と脳卒中)および2型糖尿病の新規発症とした。 主な結果は以下のとおり。・合計2万5,820例の高血圧新規発症者が解析対象となった(平均年齢60.6歳、女性72.6%)。診断時の生活習慣スコアの中央値は3(四分位範囲[IQR]:2~4)であった。・追跡期間中央値24年(IQR:23~25)で、心血管疾患3,300例、2型糖尿病2,529例の発症を認めた。・生活習慣スコアが最も高い群(5)は最も低い群(0~1)と比較して、心血管疾患発症リスクは約51%低く(調整ハザード比[aHR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.39~0.61)、2型糖尿病発症リスクは約79%低かった(aHR:0.21、95%CI:0.14~0.30)。・40歳時点で生活習慣スコアが最も高い群(5)では、最も低い群(0~1)と比較して、平均余命が最大8.2年長いと推定された。・高血圧診断後に生活習慣スコアが低値(0~3)から高値(4~5)に改善した群は、常に低い群と比較して、心血管疾患(aHR:0.88、95%CI:0.79~0.98)および2型糖尿病(aHR:0.56、95%CI:0.48~0.65)の発症リスク低下と関連していた。・逆に、診断後に生活習慣スコアが高値から低値に低下した群では、常に高値を維持した群と比較して、心血管疾患(aHR:1.14、95%CI:1.00~1.30)および2型糖尿病(aHR:1.75、95%CI:1.45~2.10)の発症リスク上昇と関連していた。・生活習慣スコアが1点上昇するごとに、心血管疾患(aHR:0.90、95%CI:0.86~0.95)および2型糖尿病(aHR:0.79、95%CI:0.75~0.83)の発症リスク低下と関連していた。・総合解析では、降圧薬使用の有無にかかわらず、生活習慣スコアが高いほど心血管疾患および2型糖尿病の発症リスクが低いことが示された。 研究グループは「これらの結果は、健康的な生活習慣を取り入れることで、高血圧の自然経過を大きく変える可能性を示唆している」とまとめた。

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PCI後早期のLDL-C値55mg/dL未満達成でMACEリスク激減/日本循環器学会

 欧州心臓病学会(ESC)および欧州動脈硬化学会(EAS)のガイドラインでは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の二次予防において、非常に高リスクな患者にはLDLコレステロール(LDL-C)55mg/dL未満、きわめて高リスクな場合には40mg/dL未満という目標値を推奨している1)。しかし、日本人患者においてこれほど厳格な管理が実際に予後を改善するかは十分に検証されていなかった。現在、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、二次予防の目標値は、原則100mg/dL未満、ハイリスク者で70mg/dL未満と設定されている2)。 日本人冠動脈疾患(CAD)患者における超低LDL-C目標達成の臨床的意義を検証するため、国内3施設による多施設共同研究が実施された。その結果、PCI後にLDL-C値55mg/dL未満、さらには40mg/dL未満を早期に達成することで、主要心血管イベント(MACE)のリスクが有意に減少することが示された。3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて、国立循環器病研究センターの片岡 有氏が発表した。なお、本結果はAtherosclerosis誌オンライン版2026年3月23日号に掲載された3)。 本試験では、2017年1月~2022年8月の期間にPCIを施行され、3年以上の臨床フォローアップが可能であったCAD患者2,560例を対象とした。PCIから2ヵ月後のLDL-C測定値を「達成値」と定義し、その後の予後との関連を評価した。主要評価項目はMACE(心血管死、非致死性自然発症心筋梗塞、脳卒中、および臨床的に誘発された非標的病変への冠血行再建術)の発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・解析対象の2,560例のうち、2ヵ月時点で目標LDL-C値55mg/dL未満を達成していたのは780例(30.4%)、40mg/dL未満を達成していたのは251例(全体の9.8%)であった。・55mg/dL未満の群では、2型糖尿病の合併率や喫煙歴が他の群よりも有意に高かった。主治医がこれらのハイリスク症例に対して、より強力な脂質低下療法を積極的に行った結果、LDL-C値が低下したと考えられる。・LDL-C値55mg/dL未満の達成群では、強力な脂質低下療法が行われており、スタチンが98%、エゼチミブが62%、PCSK9阻害薬が5%で使用されていた。また、達成群の68%がこれら薬剤の併用療法を受けていた。・LDL-C値70mg/dL以上の群(794例、29%)と比較して、55mg/dL未満を達成した群ではMACE発生リスクが有意に減少した(ハザード比[HR]:0.38、95%信頼区間[CI]:0.28~0.51、p<0.001)。・55mg/dL未満達成群の中での比較において、40mg/dL未満に到達した群(251例)は、40~54mg/dL(529例)の群と比較して、MACEリスクがさらに58%減少した(HR:0.42、95%CI:0.19~0.90、p=0.027)。55mg/dL以上の群と比較した場合、40mg/dL未満達成群のHRは0.20(95%CI:0.10~0.41、p=0.001)であった。・サブグループ解析の結果、年齢、性別、糖尿病の有無、慢性冠症候群/急性冠症候群の別にかかわらず、LDL-C値40mg/dL未満の達成による一貫したリスク低減効果が認められた。 本研究の結果について片岡氏は、「日本人においても、PCI後2ヵ月というきわめて早い段階でLDL-C値40mg/dL未満まで強力に低下させる『Strike Early-Strike Strong Lipid-Lowering(早期強力脂質低下)』戦略を実践することが、その後の長期的な心血管予後を劇的に改善する鍵となるだろう」と締めくくった。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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高血圧の修正可能なリスク因子、日本人で最も影響が大きいのは?

 高血圧の1次予防において、修正可能なリスク因子の特定と優先順位付けが重要であるが、日本人における高血圧症の発症に関する修正可能なリスク因子の人口寄与割合(PAF)に関するデータが不足している。そこで、大規模データベースを用いた検討が実施され、日本人集団における高血圧症の発症で、人口寄与が最も大きい修正可能なリスク因子は、肥満であることが示された。本研究結果は、Hypertension Research誌オンライン版2026年3月4日号で、責任著者の金子 英弘氏(東京大学循環器内科)らによって報告された。 本研究は、DeSCデータベースを用いた後ろ向きコホート研究である。解析対象は、ベースライン時に高血圧症の既往がない106万9,948人(年齢中央値56歳、男性43.7%)とした。修正可能なリスク因子(肥満、睡眠障害、現喫煙、脂質異常症、習慣的飲酒、身体活動不足、糖尿病)と高血圧症の発症との関連について、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。また、それぞれの因子のPAFを算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象の年齢中央値は56歳、男性の割合は43.7%であった。・追跡期間中央値は3.64年で、11万6,690件の高血圧症の発症が記録された(全体の発症率は1万人年当たり290.8)。・多変量解析の結果、評価したすべての修正可能リスク因子は高血圧症の発症と有意に関連していた。各因子に関するハザード比、95%信頼区間は以下のとおり。 肥満:1.35、1.33~1.37 現喫煙:1.23、1.21~1.25 糖尿病:1.22、1.19~1.25 睡眠障害:1.15、1.13~1.16 習慣的飲酒:1.10、1.08~1.12 脂質異常症:1.05、1.04~1.06 身体活動不足:1.05、1.04~1.06・対象集団全体におけるPAFが最も高かったのは肥満であった。各修正可能なリスク因子のPAFは以下のとおり。 肥満:6.36% 睡眠障害:4.11% 現喫煙:3.39% 脂質異常症:2.74% 習慣的飲酒:2.10% 身体活動不足:1.93% 糖尿病:1.55%・肥満のPAFは年齢層が下がるほど高く、40歳未満で15.10%、40~64歳で7.93%、65歳以上で3.70%であった。・肥満のPAFは女性では5.02%であったのに対し、男性では7.93%と高値を示した。・評価したすべての修正可能リスク因子を総合したPAFは、40歳未満で31.39%、40~64歳で24.60%、65歳以上では12.22%であった。・性別でみると、すべての修正可能なリスク因子を総合したPAFは、女性が14.45%であったのに対し、男性では26.37%と高かった。 本研究結果について、著者らは「日本人集団における高血圧症の発症で、人口寄与が最も大きい修正可能なリスク因子は、肥満であることが示された。また、修正可能なリスク因子の影響は、高齢者よりも若年・中年者、女性よりも男性において大きかった」と述べた。また「高血圧の生涯負担を軽減するためには、包括的な生活習慣への介入が重要であり、とくに若年・中年者、男性を主な対象とし、肥満対策に重点を置くべきである」としている。

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原発性局所多汗症の関連因子は?/神戸大

 原発性局所多汗症は、温熱や精神的な負荷、またそれらによらずに大量の発汗が起こり、日常生活に支障を来す状態と定義されている。本邦における過去の調査では、患者の大部分が医療機関を受診していない可能性が示唆されており、関連のある因子を特定することは、未治療の患者を発見し適切な医療介入を行ううえで有用と考えられる。神戸大学の福本 毅氏らは、多施設共同の横断的質問紙調査(KOBE study)を行い、原発性局所多汗症の関連因子について検討した。Frontiers in Medicine誌2026年2月9日号の報告。 本研究では、2024年4月~7月に日本国内の24の皮膚科医療機関のいずれかを受診し、質問票に回答した5~64歳の患者を対象とした。関連因子を探索するため、単変量および多変量ロジスティック回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・計3,617例が解析に組み入れられた。原発性局所多汗症の有病率は15.0%(3,617例中544例)であった。・潜在的な関連因子の中でオッズ比(OR)が高かったのは、順に腋臭症(OR:5.440)、乾癬(OR:1.830)、湿性耳垢(OR:1.780)、HADS-A(Hospital Anxiety and Depression Scale - Anxiety subscale)スコアで不安障害が確定的(OR:1.780)、HADS-Aスコアで不安障害の疑い(OR:1.460)、喫煙(OR:1.450)であった。・ROC曲線解析の結果、原発性局所多汗症を疑うに当たりHADS-Aスコア6が最適なカットオフ値であることが示された。

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老いに対する不安が老化を加速させる可能性も

 「心配ばかりしているとしわが増える」と言われるが、その影響は、しわの増加だけにはとどまらないかもしれない。新たな研究で、年を取ることに対して不安を抱いている女性は老化が早く、老化への恐れが細胞レベルでの老化を加速させていることが示唆された。米ニューヨーク大学(NYU)グローバル公衆衛生学大学院のMariana Rodrigues氏らによるこの研究は、「Psychoneuroendocrinology」2月号に掲載された。Rodrigues氏らは、「老いへの恐れは、その人の実年齢の積み重ねよりも速いスピードで身体の老化を招くことが分かった」と結論付けている。 Rodrigues氏は、「われわれの研究は、主観的な体験が老化の客観的な指標に影響を及ぼしている可能性があることを示唆している。老化に対する不安は、単なる心理的問題ではなく、実際に健康への影響を伴いながら身体に痕跡を残すのかもしれない」とニュースリリースの中で指摘している。 今回の研究では、米国の中年層を対象としたMidlife in the United States(MIDUS)研究に参加した726人の女性のデータを用いて、老化に対する不安と生物学的老化との関連が評価された。老化に対する不安は、魅力度の低下、健康状態の低下、生殖機能の老化の3つの領域で測定された。また、生物学的年齢は、第2世代のエピジェネティック指標であるGrimAge2、DunedinPACEを用いて評価された。 その結果、健康が衰えることへの不安が強いほど、DunedinPACEが0.07標準偏差(SD)高く、これは統計学的に有意であった。しかし、飲酒や喫煙などの健康行動を調整すると、有意性は失われた。このことから、健康の衰えに対する不安が強い人の健康行動の変化が老化速度に影響している可能性が示唆された。また、加齢に対する不安の累積量が多いことも、DunedinPACEの0.07SD高いことと有意に関連していた。しかし、慢性疾患や健康行動を調整すると、関連は有意ではなくなった。一方で、女性としての魅力が失われることや妊孕性の低下に対する不安は、老化の加速には関連していなかった。研究グループは、「これは、健康に関する不安は長期にわたって持続しやすい一方で、美しさや妊孕性に関する不安は年齢とともに薄れていくためかもしれない」との見方を示している。 Rodrigues氏らはこの分析結果について、「精神的な健康状態と身体的な健康状態が生涯にわたって密接に結び付いていることを改めて示したものだ」と説明している。またRodrigues氏は、「中年期の女性は、年老いた親の介護など複数の役割を担っている可能性もある。家族が年齢を重ね、病気になるのを目の当たりにすることで、自分にも同じことが起こるのではないかと心配する人がいるのかもしれない」と言う。 論文の上席研究者でNYUグローバル公衆衛生大学院社会・行動科学分野のAdolfo Cuevas氏は、「われわれの研究によって、老いに対する不安は老化の生物学的な仕組みを形作っていると考えられる、測定可能かつ修正可能な心理的要因であることが明らかになった」とニュースリリースの中で述べている。ただし研究グループは、老化速度に影響する要因が他にも存在する可能性は除外できないとして、慎重な解釈を求めている。 研究グループは、不安がもたらすこのような潜在的な影響について、今後さらなる研究で調べる必要があるとの見解を示している。Rodrigues氏は、「誰もが老化を経験する。われわれは、社会が規範や構造的要因、人間関係を通じて老いの課題にどのように向き合うのかについて、議論を始める必要がある」と話している。

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日本人の腸内細菌叢、世界と異なる特徴は?

 ヒトの腸内細菌叢(マイクロバイオーム)は、宿主の免疫や代謝、健康状態と密接に関わっている。東京大学の西嶋 傑氏らの研究グループは、日本人5,000人以上の腸内メタゲノムデータを解析し、世界37ヵ国と比較した。その結果、日本人の腸内細菌叢にはビフィズス菌が豊富であり、9割が海藻の分解酵素を持つという独自の特徴や、腸内細菌叢の構成には特定の薬剤が大きく影響することなどが判明した。Proceedings of the Japan Academy, Series B誌2026年2月号に掲載。 本研究では、疾患(Disease)、薬剤(Drug)、食習慣(Diet)、アルコール、喫煙、睡眠などの生活習慣(Daily life)、などの詳細な情報と腸内細菌データを統合して収集した大規模オミクス研究基盤である「Japanese 4Dマイクロバイオームコホート」を用いて、日本人5,466人(平均年齢65.9±13.2歳、男性56.9%)の腸内メタゲノムデータを、世界37ヵ国3万1,695人のデータを比較解析し、日本人の独自性を特定した。さらに、1,500項目以上の変数を用いて、細菌叢の多様性に寄与する要因を評価した。 主な結果は以下のとおり。・日本人の腸内には、他の高所得国と比較してビフィズス菌(Bifidobacterium属)が豊富に存在することが認められた。これは日本人に乳糖不耐症が多く、乳製品を摂取して消化されない乳糖が腸に到達し、ビフィズス菌の増殖を促進する可能性が示唆されている。・日本人において、ノリやワカメなどの海藻に含まれる多糖類を分解する酵素遺伝子を持つ個人の割合が約90%に達し、欧米諸国(0~16.7%)より圧倒的に多かった。・腸内細菌叢の構成には、生活習慣よりも薬剤の影響が大きかった。関連の強い順に、胃腸薬、糖尿病薬、抗菌薬/抗ウイルス薬であった。・プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は腸内細菌の多様性を上昇させる一方で、口腔内に多い細菌(レンサ球菌[Streptococcus属]、Lactobacillus属など)が腸内で増加し、日和見感染症の原因となる多剤耐性菌(肺炎桿菌[Klebsiella pneumoniae]、Enterococcus faecium、肺炎球菌[Streptococcus pneumoniae]など)の定着を促進するリスクが示された。・5種類以上の多剤併用により、有益な短鎖脂肪酸(SCFA)産生菌(Roseburia属、Dorea属、Faecalibacterium属、Alistipes属、Coprococcus属、Eubacterium属など)が減少し、日和見病原菌が増加して、腸内細菌叢の多様性が低下することが示された。 本研究により、日本特有の文化的・遺伝的背景によって形成された、集団特異的な腸内細菌叢の特徴が示された。著者らは、とくに高齢者における不要な薬剤の使用中止を含む薬物療法の最適化が、腸内環境の健全性を維持するうえで不可欠だと指摘し、国際的な腸内細菌叢データセットの構築は、精密医療(プレシジョンメディシン)を推進する鍵となるだろうとまとめている。

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末梢動脈疾患(PAD)の症状改善にメトホルミンは無効(解説:小川大輔氏)

 末梢動脈疾患(Peripheral Artery Disease;PAD)は、動脈に脂肪やコレステロールが蓄積する動脈硬化によって、腹部大動脈から下肢の動脈が狭くなり血流が制限される疾患である。これにより、歩行時の足の痛み(間欠性跛行)などの症状が生じる。症状はゆっくりと現れることが多いが、急激に悪化する場合もある。主な原因は動脈壁への脂肪、コレステロールなどの蓄積、いわゆるアテローム性動脈硬化と考えられている。PADの患者は動脈硬化を原因とする狭心症や脳梗塞を合併することが多いため、下肢だけでなく全身の動脈硬化症の評価も必要となる。 PADの治療としては、禁煙、生活習慣病の管理、運動療法、薬物療法、血行再建術などがある。PADの最大の原因は喫煙であり、禁煙は必須の治療である。糖尿病、高血圧症、脂質異常症があればそれらの治療も行う。運動療法は血流改善や新しい血管(側副血行路)の発達を促すため、痛みが生じない範囲でのウォーキングなどの運動は有効である。血行再建術は、運動療法やシロスタゾールなどの薬物療法で症状の改善が見られない場合や重症の場合に検討される。カテーテル治療(血管内治療)やバイパス手術はPADの部位や患者の状態を考慮して実施される。 PADは歩行障害を引き起こす重篤な循環器疾患であり、効果的な治療法が限られている。そこで今回非糖尿病のPAD患者に対し、2型糖尿病の治療薬であるメトホルミンを6ヵ月間投与し、歩行能力に与える効果を検証したランダム化二重盲検試験が実施された1)。その結果、メトホルミンはPAD患者の歩行能力改善には効果がないと結論付けられた。 メトホルミンは主に肝臓での糖新生を抑制したり、筋肉や脂肪組織でのブドウ糖の取り込みを促進したりすることによって血糖値を下げる効果がある。その他、血管内皮細胞におけるAMP活性化プロテインキナーゼの活性化、酸化ストレスの抑制、内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化などの作用も報告されている2)。メトホルミンのこれらの“pleiotropic effects”による血管内皮機能の改善により、PAD患者の血流改善や歩行時間延長を期待され、この試験が実施された。 メトホルミンがPAD患者の歩行能力改善に効果がなかった理由として、喫煙率が約30%と高かったことや、インスリン抵抗性の強くない症例が多かったこと、また観察期間が6ヵ月と短かったことなどが考えられる。その他の可能性として、著者らはPAD患者の骨格筋や血管内皮でAMP活性化プロテインキナーゼがすでに最大活性化されているため、メトホルミンの追加効果が得られなかった可能性を考察している。 いずれにしても今回の研究でPADの歩行障害に対するメトホルミンの効果はないことが示された。今後は異なる作用機序を持つ治療薬の開発や、PADの複雑な病態に対処する新たなアプローチの研究が求められる。またそれ以前に、完全禁煙や肥満の是正、厳格な血圧管理など、現状できることをまずはきちんと行うことが重要である。

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身体活動習慣を維持することが中年期の累積ストレスの少なさと関連

 成人期の初期から日常的に運動などで体を使っていないと、中年期に入った時点で累積ストレスによる身体への影響が強く現れるとする研究結果が報告された。オウル大学(フィンランド)のMaija Korpisaari氏らが、累積ストレスの程度を意味する「アロスタティック負荷」をスコア化して過去の身体活動習慣との関連を検討した結果であり、詳細は「Psychoneuroendocrinology」2月号に掲載された。 この研究で検討したアロスタティック負荷とは、慢性的なストレスによって引き起こされる心身の生理学的な消耗を指す。アロスタティック負荷の標準化された評価方法はまだ確立されていないが、本研究では先行研究を基に、13項目(BMI、ウエスト周囲長、血圧、血清脂質、空腹時血糖値、HbA1c、心拍数、高感度C反応性蛋白、コルチゾールなど)からスコア化する指標と、より絞り込んだ5項目からスコア化する指標を用いて評価した。 解析対象は1966年にフィンランドで生まれ、31歳および46歳になった時点で調査に参加した3,358人(男性42.6%)。世界保健機関(WHO)の身体活動に関するガイドラインの推奨(週に中~高強度運動を150分以上)を満たしているか否かに基づき、全体を以下の4群に分類した。一つ目は31歳と46歳のいずれの時点においてもガイドラインの推奨を満たしていた運動維持群(12.4%)、二つ目はいずれの時点においてもガイドラインの推奨を満たしていなかった非運動群(55.4%)、三つ目は31歳時点では満たしていなかったものの46歳時点では満たしていた運動量増加群(19.4%)、四つ目は31歳時点では満たしていたものの46歳時点では満たしていなかった運動量減少群(12.8%)。 結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、教育歴、婚姻状況、仕事上のストレスの認識)の影響を調整し、運動維持群を基準とする解析の結果、身体活動量が少ない群ではアロスタティック負荷が強いことが明らかになった。例えば13項目のスコアでは、非運動群は負荷が18%高く、運動量減少群は10%高いことが示された。また5項目のスコアでは、非運動群は17%高く、運動量減少群は有意差がなかった。運動量増加群に関しては、13項目の指標と5項目の指標のいずれにおいても、運動維持群と有意差がなかった。 論文の筆頭著者であるKorpisaari氏は、「この研究結果は、身体活動はライフステージの特定の時期のみに重要というわけではなく、成人期を通して習慣的に運動を続けることで、慢性的なストレスの有害な影響から身体を守ることができる可能性を示唆している」と述べている。ただし研究者らは、この関連性を確認し、身体活動がストレス負荷をどのように軽減するかをより深く理解するため、さらなる研究の必要性も指摘している。

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未破裂脳動脈瘤のある健康な人、全死亡リスクが5倍に

 MRIの普及に伴い、症状のない未破裂脳動脈瘤(UIA)が偶然発見される機会が増加している。しかし、偶然発見されたUIAを持つ人の長期的な死亡率や死因については、これまで十分に解明されていなかった。佐賀大学の緒方 敦之氏らが実施した、脳ドック受診者を対象とした前向きコホート研究「The Kashima Scan Study」の結果、偶然UIAが発見された健康な人は、UIAがない人と比較して全死亡リスクが約5倍高く、その主な死因は動脈瘤の破裂ではなく悪性腫瘍であることが判明した。Stroke and Vascular Neurology誌オンライン版2026年2月24日号に掲載。 本研究では、2005年12月~2011年11月に脳ドックを自費で受診した神経学的に健康な成人1,670例(平均年齢57.7歳[範囲23~84]、男性47.5%)を対象とした。平均追跡期間8.7年(SD 2.3)において、MRIおよびMRAで診断されたUIAの有無と死亡率の関連性を、年齢、性別、高血圧、糖尿病、喫煙習慣などの要因を調整したCox比例ハザードモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・全対象者1,670例のうち90例にUIAが認められた。UIA群90例(5.4%)、非UIA群1,580例(94.6%)。・追跡期間中に36例が死亡した。全死因死亡は、UIA群で7例(死亡率:7.8%)、非UIA群で29例(同:1.8%)であり、UIA群で死亡率が有意に高かった(p=0.002)。・多変量解析の結果、UIAの存在は死亡リスクの有意な上昇と独立して関連していた(調整ハザード比[HR]:4.95、95%信頼区間[CI]:2.14~11.4)。・全死因のうち、最も多かったのは悪性腫瘍(15例)であった。悪性腫瘍による死亡は、UIA群の死亡例の57%(4/7例)、非UIA群の38%(11/29例)を占めた。・UIA群の死亡例(7例)のうち、動脈瘤破裂による死亡は1例のみであった。 本研究の結果、偶然見つかったUIAを持つ神経学的に健康な人は死亡リスクが著しく高いことが示された。著者らはこの原因として、動脈瘤形成に関与する「全身性の炎症状態」が、心血管疾患やがんの発症・進行という共通の病理学的経路を介している可能性を指摘している。UIAが発見された人に対しては、従来の動脈瘤の経過観察だけでなく、より集中的な健康モニタリングや総合的なリスク因子管理が有益である可能性を示唆している。

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胃がんリスク因子の年齢別解析、ピロリ感染と喫煙が高齢で増加

 胃がんは依然として世界的ながん死亡の主要な原因の1つであり、その発症には感染、生活習慣、遺伝など複数の要因が関与する。中国の病院を対象とした後ろ向き研究により、胃がん患者におけるリスク因子の分布が年齢層によって異なる可能性が示された。Frontiers in Oncology誌2026年1月22日号掲載の報告。 本研究では、中国南部の複数の3次医療機関で診断された胃がん患者903例を対象とし、アンケート調査により生活習慣や臨床背景に関する情報を収集した。解析対象は、18~30歳(50例)、31~55歳(163例)、56歳以上(690例)の3つの年齢群に分類された。評価項目には、Helicobacter pylori(H. pylori)感染、喫煙歴、肥満、萎縮性胃炎、食習慣、既往歴、胃がん家族歴などが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・年齢群によってリスク因子の分布に明確な違いが認められた。H. pyloriの感染率と喫煙率は年齢とともに有意に増加した。・燻製・焼いた食品の摂取は、とくに高齢者において胃がんリスクと有意な関連を示した(オッズ比[OR]:2.05、95%信頼区間[CI]:1.29~3.27、p=0.002)。肥満および果物・野菜の摂取量不足は統計的に有意な関連を示さなかった。・高齢群では、H. pylori感染、喫煙、燻製・焼いた食品の摂取といった環境要因への長期曝露が多く、これらが累積的に胃がん発症リスクを高めている可能性が示唆された。・一方、若年患者ではこれらの生活習慣関連因子の影響は比較的小さく、相対的に家族歴やその他の要因が重要となる可能性が示された。 研究者らは、本研究の臨床的意義として、年齢層に応じた予防介入の必要性を挙げている。具体的には、高齢者ではH. pylori感染検査と除菌プログラム、若年~中年期ではH. pylori除菌、禁煙指導、食習慣の改善などを実施することで、将来的な胃がん発症リスクの低減につながる可能性があるとした。

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全国データで見えた舌がんの実像

 舌がんは、舌に発生する口腔がんの一つで、進行すると発話や嚥下に大きな影響を及ぼす。日本では舌がんの全国的な動向は十分に把握されてこなかったが、今回、全国レセプトデータを用いた解析により、舌がんが女性の特定年齢層で増加している可能性が示された。研究は、稲毛病院整形外科の城戸優充氏、京都府立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室の辻川敬裕氏らによるもので、詳細は1月18日付で「Cancer Medicine」に掲載された。 舌がんの罹患率は世界的に増加しており、特に若年層や女性での増加が懸念されている。しかし日本では、舌がんは口腔・咽頭がんとして一括して統計化されており、全国的な実態は十分に把握されていない。国民皆保険制度のもと、95%以上の保険請求を網羅するレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)は、全国疫学研究に適したデータ基盤である。舌切除術が全病期で標準治療であることから、本研究では手術コード(医科K415および歯科J018)に基づき舌がん手術を新規症例の代替指標として用い、全国的な舌がん罹患の年次推移および年齢・性別別の特徴を明らかにすることを目的とした。 本研究では、医科(2014~2022年)および歯科(2016~2022年)のレセプトデータを用い、全体ならびに年齢階級別の男女比を算出した。さらに、人口10万人年あたりの手術率について、性別および年齢階級別に人口学的ピークの解析を行った。年次推移については、手術件数を線形回帰モデルで、手術率をポアソン回帰モデルで解析し、年次リスク比(RR)を推定した。なお、RR>1.0は人口10万人年あたりの手術率が年々増加していること、RR<1.0は減少していることを示す。 2016~2022年の医科・歯科レセプトデータを用いた解析では、年間平均4,470.7件の手術が実施されていた(手術率:3.4件/10万人年)。男女比は全体で1.6:1であり、男性がやや優勢であることが示された。年齢階層別の男女比は、40歳未満ではほぼ1:1であったのに対し、60~70歳代では2.0:1となり男性優位の傾向が顕著に認められた。 手術率は、男性では75~79歳でピーク(12.0件/10万人年)を示し、女性では75~84歳でピーク(5.9件/10万人年)を示した。年齢調整後の手術件数(医科)は2014年から2022年にかけて有意に増加していた。 さらに年齢調整した手術率は、女性全体(RR=1.020、P<0.0001)および全体集団(RR=1.010、P=0.0006)で有意な増加を示した。年齢階級別の解析では、女性の40~44歳(RR=1.083、P=0.0001)および60~64歳(RR=1.055、P=0.0005)で有意な増加が認められた。 本研究の結果から、特定の年齢層(中高年)の女性で、舌がんが増えている可能性が浮かび上がった。著者らは、「本研究で示された中高年女性での舌がん手術率の増加傾向は、今後、喫煙や飲酒などの修正可能なリスク因子に関する啓発を含め、女性を意識した予防・早期対応の重要性を示唆する結果といえる」と述べている。 なお、本研究の限界として、レセプトデータを用いた解析であり、再手術や疾患分類の誤差、病期や生活習慣など患者背景を考慮できていない点を挙げている。また歯科レセプトの観察期間が短く、結果の解釈には注意を要するとしている。

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男性の性機能障害、3つのリスク因子とは/順大

 不妊治療開始前の新婚または結婚予定男性の約5人に1人が性機能障害を有することが、日本の単施設研究で明らかになった。順天堂大学医学部附属浦安病院の谷口 歩氏らによる研究成果は、Reproductive Medicine and Biology誌2026年1月号に掲載された。 本研究は、新婚男性または結婚予定男性の性機能の現状を把握することを目的とした横断研究であり、2014年10月~2018年6月に順天堂大学医学部附属浦安病院および関連クリニックで各種不妊検査を受けた男性719例を対象とした。患者を直接面接し、患者自身が障害を感じているか否かの自己申告に基づく二分法判定により、勃起障害(ED)、射精障害、性欲減退、または複数の症状を有する者を性機能障害とした。年齢、性的状況、精液所見、喫煙状況、血液検査などの患者特性を評価し、性機能障害群と性機能正常群間で各種因子を比較して、単変量解析および多変量解析により性機能障害のリスク因子を特定した。 主な結果は以下のとおり。・対象となった719例は、平均年齢35.5±6.5歳、平均BMI 22.8±3.0kg/m2であった。113例(15.7%)が喫煙者であった。・719例中139例(19.3%)に性機能障害が認められ、内訳はEDが88例(12.2%)、射精障害が66例(9.1%)、性欲減退が35例(4.9%)であった(重複あり)。・性機能障害群では、単変量解析では年齢、アルブミン値、肝酵素、トリグリセライド、血糖値、精液量に有意差が観察されたが、多変量解析の結果、年齢、BMI、うつ症状を評価するベック抑うつ質問票スコアが、性機能障害の独立したリスク因子として特定された。 研究者らは「本研究により、高齢、肥満、うつ症状を呈する男性は、不妊治療開始前に性機能障害を経験する可能性が高いことが示された。新婚男性の約5人に1人という高い頻度で性機能障害が認められたことは、妊娠を希望するカップルにとって重要な知見である。これらの結果は、不妊治療開始前に、男性の性機能評価とリスク因子の把握が重要であることを示唆している。今後は、これらのリスク因子に対する早期介入や予防的アプローチの検討が、男性の生殖機能向上と治療成功率の改善につながる可能性がある」としている。

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