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中年期の体重増減とその後の糖尿病をはじめとする慢性疾患の発症、死亡について、どの程度の関連があるのだろうか。この課題について長期的な観点からの研究報告は少なかった。このテーマについて、フィンランド・ヘルシンキ大学のTimo E Strandberg氏らの研究グループは、約2万3,000人を対象に中年期の体重減少の維持が、その後の健康障害に与える影響について複数のコホート研究から解析した。その結果、中年期の持続的な体重減少は、薬剤などの介入がなくとも長期的に2型糖尿病以外の慢性疾患のリスクの低下や心疾患などの死亡率の低下に寄与することがわかった。この報告は、JAMA Network Open誌2025年5月1日号に掲載された。体重減少を維持できれば心血管疾患やがん、喘息の予防につながる可能性 研究グループは、中年期(40~50歳)の健康な時期におけるBMIの変化と、後年の疾患発症率および死亡率との長期的な関連性を検討することを目的に、英国のホワイトホールII研究(WHII:1985~1988年)、フィンランドのヘルシンキ・ビジネスマン研究(HBS:1964~1973年)、フィンランド公共部門研究(FPS:2000年)の3つのコホート研究のデータ解析を行った。 この3つの研究で参加者の最初の2回の体重測定結果に基づき、中年期のBMIの変化について「BMIが25未満を持続」「BMIが25以上から25未満へ変化」「BMIが25未満から25以上へ変化」「BMIが25以上の持続」の4つのグループに分類した。疾患発症率と死亡率のアウトカムを追跡調査し、データ解析は2024年2月11日~2025年2月20日に行われた。 WHIIとFPSでは、2型糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、がん、喘息、または慢性閉塞性肺疾患を含む新規発症の慢性疾患が評価され、HBSでは全原因の死亡率が評価された。 主な結果は以下のとおり。・3つのコホートの総参加者は2万3,149人。・WHIIからは4,118人(男性72.1%)が参加し、初回受診時の年齢中央値(四分位範囲:IQR)は39(37~42)歳だった。・HBSからは男性2,335人が参加し、初回受診時の年齢中央値(IQR)は42(38~45)歳だった。・FPSからは1万6,696人(女性82.6%)が参加し、初回受診時の年齢中央値(IQR)は39(34~43)歳だった。・追跡期間の中央値(IQR)は22.8(16.9~23.3)年で、初回評価時の喫煙、収縮期血圧、血清コレステロールを調整した後、WHIIの参加者で体重減少を経験した群は、持続的に肥満していた群と比較し、慢性疾患の発症リスクが低下していた(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.35~0.78)。この結果は、アウトカムから糖尿病を除外した後も再現された(HR:0.58、95%CI:0.37~0.90)。・FPSでは追跡期間中央値(IQR)は12.2(8.2~12.2)年で、HRは0.43(95%CI:0.29~0.66)だった。・HBSで体重減少に関連した延長した追跡期間中央値(IQR)は35(24~43)年で、HRは0.81(95%CI:0.68~0.96)であり、死亡率の低下と関連していた。 これらの結果から研究グループは、「手術や薬物療法による体重減少介入がほとんど存在しなかった時代に実施された調査である。中年期の体重減少の維持は、持続的な肥満と比較し、2型糖尿病以外の慢性疾患のリスク低下および全死亡率の低下と関連していた」と結論付けている。