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PREVENT時代にCACスコアは何を加えるのか―予測能と臨床的有用性を巡って(解説:野間重孝氏)

 2026年ACC/AHA/Multisociety脂質異常症ガイドラインでは、動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)の1次予防における10年リスク評価に、Predicting Risk of Cardiovascular Disease EVENTS(PREVENT)によるASCVD予測式が採用され、境界域リスク(3%以上5%未満)または中間リスク(5%以上10%未満)でスタチン開始の判断が定まらない場合には、冠動脈石灰化(coronary artery calcium:CAC)スコアを考慮することが推奨された1)。 本研究は、多民族動脈硬化研究(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis:MESA)に登録されたASCVD既往のない45~79歳の6,098例を対象として、PREVENTにCACを加えた場合の予測能を検討したものである。10年間に366例(6.0%)が心筋梗塞または脳卒中を発症し、Harrell C統計量はPREVENT単独の0.73からCAC追加後には0.75となった。改善幅は0.02、カテゴリー別net reclassification improvement(NRI)は0.095であり、著者らは、全リスク層にCACを加えた場合の改善は限定的である一方、境界域および中間リスク群に対する選択的使用は支持されると結論している2)。 一見すると、これはCACの選択的使用を支持する素直な結果にみえる。しかし、本研究を評価するうえで重要なのは、NRI 0.095という数値そのものではなく、どのような患者群がいずれの方向に再分類されたことによって、NRIが正の値となったのかという点である。 ASCVDを発症した366例では、CAC追加による上方再分類18例に対して下方再分類は39例で、event-NRIは-0.057であった。一方、非発症者5,732例では、下方再分類1,097例に対して上方再分類は224例で、nonevent-NRIは+0.152となった2)。全体NRIが0.095という正の値を示したのは、主として非発症者の下方再分類によるものであり、これが集団全体のリスク順位を改善し、C統計量を0.02上昇させた背景にあると考えられる。 event-NRIが負となったのは主として、PREVENTリスク5%以上で、すでにスタチンを含む脂質低下療法を検討すべき群に属していた発症者が、境界域へ下方再分類されたためである。下方再分類された発症者39例のうち、この群が29例(74%)を占めた。これに対し、境界域の発症者では上方再分類14例、下方再分類10例であり、10年発症率もCACスコア0の1.9%から300以上の14.3%まで明瞭に分かれた2)。したがって、event-NRIが負であったことを、境界域におけるCACの有用性の否定と見なすべきではない。むしろこの結果は、CACの役割が全リスク層の再分類ではなく、治療判断の定まらない境界域における追加的な層別化にあることを示唆している。 ただし、わずかなCACが認められるだけで、直ちに高リスクと考えることも適切ではない。CACスコア0超100未満の発症率は3.9%であり、依然として境界域にとどまっていた。明瞭な上方再分類をもたらしたのは主としてCACスコア100以上である2)。したがって、CACスコア0は低リスク側への再分類を支持し、CACスコア100以上は積極的な脂質低下療法を支持する一方、CACスコア0超100未満では、なお他の危険因子と患者の意向を含めた判断が必要となる。 なお、PREVENTによって、年齢、血圧、脂質、糖尿病、喫煙、腎機能などに基づく基礎的リスクはすでに捉えられており、CAC追加によるC統計量の改善幅が0.02にとどまったことは必ずしも意外ではない。予測リスクと実際の発症率との整合性を示す較正勾配は、1が理想とされ、PREVENT単独で1.09、CAC追加後で0.92であった。いずれも信頼区間は1を含んでおり、少なくとも較正勾配からは、CAC追加による明瞭な改善は示されなかった2)。 今回の改善幅を評価するうえで、著者らはKhanらが2023年にJAMAへ報告した冠動脈疾患予測研究を比較対象として挙げている。同研究では、統合コホート方程式(pooled cohort equations:PCE)にCACを加えることにより、冠動脈疾患を評価項目としたC統計量が0.09上昇し、カテゴリー別NRIも0.19改善した3)。これに対して、本研究の主要評価項目は心筋梗塞と脳卒中の複合であり、両者を分けた成績は示されていない。PREVENT-ASCVDを評価するうえでは整合的な設定であるが、冠動脈の解剖学的指標であるCACの付加価値を検討する際には慎重な解釈を要する。今回の改善幅が小さかった背景には、予測モデルの違いだけでなく、アウトカムの定義の違いが関係した可能性もあり、両研究の結果を単純に比較することはできない。 本研究は予測モデルの性能を検討した観察研究であり、CACに基づく治療方針の変更がASCVDイベントを減少させることを示したものではない。検査費用、放射線被曝、偶発所見などを含めた臨床的なnet benefitも検討されていない。また、MESAはPREVENTの開発にも用いられ、CAC追加モデルも同じ集団内で評価されているため、独立した外部集団における検証が必要である2)。欧米より冠動脈疾患が少なく、脳卒中の比重が大きい日本では、冠動脈の指標であるCACのASCVD予測への付加価値は、本研究で示された以上に限定的となる可能性がある4)。 本研究が示したのは、CACの価値が失われたということではない。むしろ、その役割が「すべての人のリスク予測を改善する検査」ではなく、「治療判断の難しい患者を選択的に再層別化する検査」であることを明確にした点に、本研究の意義がある。集団全体の予測能と、個々の患者における意思決定上の有用性とは同じものではない。CACについて問うべきなのは、集団全体の予測能をどれほど高めるかだけではなく、治療判断の定まらない患者に対して、実際に判断を変えうる情報を提供できるかということであろう。

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がん既往CKM症候群でもフィネレノンの効果は一貫(FINE-HEART)/Eur Heart J

心血管・腎・代謝(CKM)症候群では、共通のリスク因子や病態機序を背景にがんを併存する患者が少なくない。しかし、がん既往を有するCKM症候群患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンの有効性・安全性が同様に得られるかは明らかではない。そこで、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMihaly Ruppert氏らは、FINE-HEART統合解析を用いて、がん既往の有無別の臨床像、転帰、フィネレノンの治療反応を検討した。その結果、がん既往は全死亡および全入院リスクの上昇と関連したが、フィネレノンの治療効果はがん既往の有無にかかわらず一貫していた。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月18日号に掲載された。本研究は、FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、FINEARTS-HFの3試験を対象とした、FINE-HEART患者レベル統合解析の事後解析である。対象は、2型糖尿病と慢性腎臓病を有する患者、または左室駆出率が軽度低下もしくは保持された心不全患者の計1万8,991例とした。3試験では、標準治療にフィネレノンまたはプラセボが追加された。がん既往は病歴記録から、追跡中の新規がんは有害事象報告から同定した。主要評価項目は心血管死(死因不明を除く)で、全死亡、心不全入院、全入院、腎複合アウトカム、主要心血管イベント(MACE)、新規心房細動なども評価した。主な結果は以下のとおり。・1万8,991例のうち、ベースライン時にがん既往を有した患者は1,389例(7.3%)であった。がん種は消化管がん18.3%、男性生殖器がん17.1%、腎・尿路がん13.3%などが多く、肥満関連がんは40.5%を占めた。・がん既往あり群はなし群と比較して高齢(72.2歳vs.66.6歳)で、eGFRが低く(52.5 vs.59.5mL/分/1.73m2)、CKMステージ3~4、心房細動、現喫煙または過去喫煙の割合が高かった。・がん既往は、全死亡リスクの上昇(16.3%vs.11.1%、調整ハザード比[aHR]:1.31、95%信頼区間[CI]:1.13~1.52)および初回全入院リスクの上昇(57.8%vs.44.6%、aHR:1.26、95%CI:1.17~1.36)と独立して関連した。・一方、心血管死、心不全入院、MACE、腎複合アウトカム、新規心房細動では、共変量調整後にがん既往による有意差は認められなかった。・ベースライン時にがん既往のない1万7,602例のうち、追跡期間中央値2.9年に915例(5.2%)で新規がんが報告された。フィネレノン投与による新規がん発症(HR:0.95、95%CI:0.83~1.08)およびがん関連死(HR:0.81、95%CI:0.63~1.03)の有意なリスク低下・増加は認められなかった。・フィネレノンの治療効果(心血管死、全死亡、心不全入院、全入院、MACE、腎複合アウトカムなど)は、がん既往の有無にかかわらず一貫していた。・安全性について、重篤な有害事象の発現率はがん既往あり群で高かったが、薬剤による差は認められなかった。高カリウム血症はフィネレノン群で多く認められたものの(がん既往あり:14.4%vs.プラセボ6.1%、がん既往なし:12.7%vs.プラセボ6.2%)、高カリウム血症による死亡はいずれの群でも認められなかった。本研究結果について著者らは、CKM症候群患者においてがん併存は比較的多く、予後不良と独立して関連したが、フィネレノンの治療利益を減弱させなかったとまとめた。また、治療開始時点で余命12ヵ月未満と見なされない場合、がん併存を理由にCKM健康改善を目的としたリスク低減治療の実施を控えるべきではないと述べている。

3.

キシリトールが心血管イベント増加と関連/ESC2026

 人工甘味料のキシリトールは食品や口腔ケア製品などに広く使用されているが、一般集団における長期的な心血管安全性に関するエビデンスは限定的である。今回、カナダ・マギル大学のThomas M. Zheng氏らの研究グループが、北米と欧州の2つの大規模前向き観察コホートのデータを用いて解析した。その結果、血中キシリトール濃度が高い一般集団において、主要心血管イベント(MACE)リスクが有意に上昇することが示された。本研究結果は、ドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)において8月29日に発表された。 研究グループは、カナダの「Canadian Longitudinal Study on Aging(CLSA)」から7,651例(追跡期間6年)、および欧州の「European Prospective Investigation into Cancer(EPIC)-Norfolk研究」から1万59例(追跡期間30年)の計1万7,710例の非標的メタボロミクス(untargeted metabolomics)データを解析した。血中キシリトール濃度により四分位群(Q1~Q4)に分類し、初回MACE(心筋梗塞、脳卒中、死亡の複合)発症リスクとの関連を評価した。解析にはCox比例ハザードモデルを用い、年齢、性別、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙状況などの従来の心血管リスク因子を補正した調整ハザード比(aHR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者1万7,710例(平均年齢60.9歳)において、追跡期間中にCLSAコホートで2,950例、EPIC-Norfolkコホートで5,670例のMACEが発生した。・従来の心血管リスク因子を調整後、血中キシリトール濃度最高四分位群(Q4)は最低四分位群(Q1)と比較して、MACEリスクが有意に高かった。-CLSAコホートにおけるaHR:1.47(95%CI:1.15~1.86、p=0.002)。-EPIC-NorfolkコホートにおけるaHR:1.18(95%CI:1.09~1.27、p<0.0001)。・中間四分位群(Q2・Q3)を含めた解析においても、両コホートで血中キシリトール濃度が高くなるほどMACE発生率が高まる用量依存的な関連が示唆された。・サブグループ解析においても、ベースライン時の患者背景や既存の心血管メタボリック因子にかかわらず、一貫したMACEリスクの増加が認められた。 著者らは、過去の研究で示されたキシリトールの血小板凝集・血栓形成促進作用に触れ1)、明白な心血管リスク因子を持たない1次予防対象者においてもキシリトールが残留リスクを及ぼす可能性があると指摘している。発表者であるMarco Witkowski氏は、「人工甘味料は砂糖より健康に良いと考え消費されており、規制当局からも一般に安全と見なされている。しかし、一般集団における今回の長期的な知見は、われわれがキシリトールの心血管系の安全性についていかに知見が不足しているかを浮き彫りにしている」と、ESCのリリースの中で述べている。そのうえで、製品中のキシリトール含有量が増加し続ける現状を踏まえ、さらなる検証が必要であると結論付けている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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禁煙中の妊婦、産後禁煙維持支援の有効性は?/BMJ

 禁煙維持支援プログラム「BabyBreathe」は通常ケアと比較して、妊娠中に禁煙していた妊婦の産後禁煙維持率を有意に増加させることはなかったが、計画どおり支援プログラムを受けた妊婦のみを対象としたper-protocol解析では有意な増加が示された。英国・University of East AngliaのCaitlin Notley氏らBabyBreathe site research associatesが、プラグマティックな多施設共同無作為化非盲検比較試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「今後なすべきは、プログラムを忠実に実施することや、社会経済的地位の低い集団への適用に重点を置くことだろう」とまとめている。BMJ誌2026年8月18日号掲載の報告。複合的な禁煙維持支援プログラム「BabyBreathe」の有効性を検証 研究グループは、英国の助産サービスを通して対面、電話またはオンラインで募集し、初回妊婦健診予約時にスクリーニングを行い、適格であった妊婦を、募集拠点、パートナーの喫煙状況、禁煙時期(妊娠前または妊娠中)で層別化し、BabyBreatheを用いる介入群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 参加者の適格基準は、16歳以上で、妊娠前12ヵ月以内または妊娠中に完全に禁煙したと報告し、かつ呼気一酸化炭素(CO)濃度測定により禁煙が確認された妊婦であった。 BabyBreatheは、行動変容理論によって裏付けられた複合的な禁煙維持支援プログラムで、妊娠28~32週に訓練を受けた医療従事者(保健師、保健訪問チームのメンバーまたは研究者)が対面、またはビデオ通話や電話で支援し、出生の届け出がなされると再発防止キット「BabyBreatheボックス」が郵送された。キットには、禁煙維持に関するリーフレット、ニコチン置換ガムのサンプルおよび動機付けツールなどが含まれ、自動テキストメッセージ支援システムが作動して応援、意欲を引き出す、あるいは教育的なメッセージが段階的に配信された。また、BabyBreatheのウェブサイト・アプリを介して、個別化された禁煙維持のアドバイス、社会的支援、モチベーション向上ツール、ゲーム要素による報酬が提供された。産後10~14日には2回目の面談が行われ、自動テキストメッセージやウェブサイト・アプリを介した支援は産後最大12ヵ月間継続された。 対照群では、標準的な産前・産後ケアが行われ、妊婦が現在喫煙中であると報告するか、または呼気CO濃度が4ppmを超えた場合は自動的に国民保健サービス(NHS)が委託する禁煙サービスへ紹介された。 主要評価項目は、自己申告による禁煙継続で、産後12ヵ月時の呼気CO濃度測定により生化学的に確認した(妊娠していない場合は7ppm以下、この時点で再度妊娠している場合は4ppm以下)。産後12ヵ月時の禁煙維持、ITT解析ではBabyBreathe群と通常ケア群で有意差なし 2021年9月4日~2023年8月3日に計887人の妊婦が無作為化され、2024年12月に最終追跡調査が行われた。 無作為化後に喫煙が判明した1人を除外した886人がITT解析対象集団に含まれ、産後12ヵ月時の生化学的に確認された自己申告による禁煙維持達成率は、介入群54.9%(242/441人)、対照群49.9%(222/445人)で、有意差は認められなかった(補正後オッズ比[OR]:1.23、95%信頼区間[CI]:0.94~1.60、p=0.13、リスク群間差:4.8%[95%CI:-1.7%~11.2%]、治療必要数[NNT]:21)。 実際に介入を受けた参加者を対象とした事後のper-protocol解析では、産後12ヵ月時の禁煙維持達成率は介入群で有意に高いことが示された(介入群57.6%[200/347人]vs.対照群49.9%[222/445人]、補正後OR:1.36[95%CI:1.02~1.81]、p=0.04、リスク群間差:7.2%[95%CI:0.3~14.1]、NNT:13.9)。 試験に関連した有害事象は認められなかった。

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Lp(a)測定での4つの重要プロセス、Lp(a)研究の第一人者がアドバイス~Lp(a)の今をインタビュー(後編)

前編では、Lp(a)の第一人者であるDr. Florian Kronenberg氏(オーストリア・インスブルック医科大学遺伝疫学研究所 教授/所長)が治療薬のない状況であっても「Lp(a)測定が重視される」のか、Lp(a)が心血管疾患(CVD)イベントの生涯リスクに及ぼす影響を中心に解説した。後編では、Lp(a)測定が失速した30年前の出来事の振り返り、1次予防への測定意義や日本の医療への期待などについて語った。※前編はこちら(8月18日公開:5人に1人はLp(a)高値、CVD死を見落とさないために)INDEX30年前の出来事と、現代における科学的証明の歴史CVDの1次予防にもLp(a)測定が有用専門家が伝えたい4つの重要プロセス測らない理由なんてあるのか?スクリーニングで世界に先駆ける、日本へ期待すること―30年前の出来事と、現代における科学的証明の歴史なぜ、Lp(a)測定が失速してしまったのか。それは1990年代にアメリカで行われた大規模な研究において、「Lp(a)と心血管アウトカムには関連性がない」という結果が報告されたことが要因でした。しかし後になって、当時の測定法には技術的な問題があり、それがこのような否定的な結果につながったのではないかと考えられるようになりました。この研究結果により、Lp(a)研究は一度完全に死にかけました。私がこの分野に関わり始めた頃も、周囲から「その分野はやめなさい、もう死んだ分野だから」と言われたものです。しかし、私は遺伝子データから「Lp(a)高値の人は遺伝的に心血管リスクが高いはずだ」という確信を持っていたため、研究を続けました。その後、大きな転機が訪れました。デンマークの研究グループが10万人規模の膨大なビッグデータを持って(われわれの研究に)参入してきたのです。彼らのデータを解析した結果、Lp(a)が高い人は将来明らかに心血管イベントを起こしていることが判明しました1)。さらに、彼らが私たちの遺伝子解析手法をその10万人に適用したところ、遺伝子変異とLp(a)高値、そして心血管疾患の間に強固な因果関係があることが完全に証明されたのです。その後、『2022年EAS Lp(a)コンセンサスステートメント』の作成にあたって、イギリスの「UKバイオバンク」が持つ50万人規模のデータを解析したところ、その結果も同様の方向性を示していました。現在では欧米だけではなく、日本を含めた世界中の研究グループが同様の関連性を確認しており、世界基準の事実となっています。―CVDの1次予防にもLp(a)測定が有用2025年にブリュッセルで開催され、『Brussels International Declaration on Lp(a) Testing and Management』2)の策定につながった「Lp(a) Global Summit」において、Lp(a)測定を心血管疾患(CVD)の1次予防として行う費用対効果に関する世界初の解析結果が発表され3)、Lp(a)を広くスクリーニングすることで、多くの心筋梗塞や虚血性脳梗塞を回避し、結果として医療費の大幅な削減につながることが証明されたのです。たとえば、20~30代の若者が自身のLp(a)が高値だと知ったとしたら、「血圧をしっかり下げよう」「禁煙しよう」「糖尿病を予防しよう」という強力なモチベーションにもなります。当然ながら、心筋梗塞や脳梗塞を経験した2次予防の患者さんがLp(a)を知ることもきわめて重要です。現実として、心筋梗塞後の患者の一部で、1年後にコレステロール低下薬の服用を止めてしまっているというデータがあります。しかし、自分が「Lp(a)高値という高リスクを抱えている」と知っていれば、将来の再発を防ぐために“従来のリスク因子に対する治療を継続する”強い動機となり、結果としてアドヒアランスの向上にもつながります。つまり、Lp(a)測定はCVDリスクの1次予防と2次予防の双方に重要と言えるのです。Lp(a) Global Summitでの一枚後方左から2番目がKronenberg氏、前方左から3番目には斯波 真理子氏が写る画像を拡大する繰り返しになりますが(前編参照)、心血管イベントの絶対的な生涯リスクは、Lp(a)が高かったとしてもほかの従来の一般的なリスク因子(高LDL-C、高血圧、糖尿病、過体重、不健康な生活習慣など)を減らすことで低減させることができるため、Lp(a)自体は生活習慣で下げることができなくても、「ほかの従来の一般的なリスク因子を徹底的に管理しようという意識を高める」というアプローチを取ることができます。「Lp(a)は現在の薬で下げられないのに、なぜ測るのか?」という疑問を持つ人が医療者の中にも存在しますが、「Lp(a)が高くて下げられないからこそ、ほかの従来の危険因子を徹底的に管理しようという意識を高めるために、今すぐ測定すべきだ」というのが私の答えです。Lp(a)値を把握せず、従来のリスク因子に対する治療も十分に行わないというのは、まったく意味がありません。―専門家が伝えたい4つの重要プロセスそこで、多くの国際的なガイドラインとも一致する、私が皆さんにお伝えしたい重要なアドバイス4点を紹介しましょう。1.全員、人生で少なくとも一度はLp(a)を測定すべきである2.リスク評価の際は、Lp(a)の値だけでなく、全体のバランス、患者の全体像、そのほかのリスク因子も含めて総合的に判断する3.Lp(a)が高値である場合は、ほかのコントロール可能なリスク因子(高LDL-C、高血圧、糖尿病、喫煙など)を徹底的に治療・管理する4.Lp(a)高値がみつかった場合は、その「家族(親、子、兄弟姉妹)」も機会があれば早めに検査を行う測定タイミングは、初めて脂質プロファイル(健康診断などの血液検査)を取るときが理想的で、早ければ早いほどいいでしょう。Lp(a)は遺伝的要因が非常に強いため、家族歴こそが最大のヒントになります。もしご家族や親戚に若くして心筋梗塞や脳卒中を起こされた方がいる場合は、Lp(a)高値が関連している可能性が疑われます。ぜひ、そのような患者さんにLp(a)測定を強くお勧めします。次にLp(a)の基準値(カットオフ値)の考え方について解説しましょう。Lp(a)のリスクは、ある数値を境に白黒はっきり分かれるようなカットオフ値(閾値)ではなく、数値が高くなるにつれてリスクが上昇していく“連続的なもの”として捉える必要があります4)。たとえば、122nmol/Lだから安全で、127nmol/Lだから危険、という単純な生物学的区切りはありません。測定法や標準化の違いによって105や125という数字のブレは生じますが、本質的なリスクに大差はありません。絶対的な一律の区切りが必要なのではなく、患者個人の全体的なリスク(糖尿病などの有無や既往歴)に応じて、個別に数値を評価し対応する必要があるものです。LDL-Cの基準値も、まったくリスクのない人であれば欧州では「116mg/dL未満」が目安ですが、心筋梗塞の既往があれば「55mg/dL未満」、さらに、同時に末梢動脈疾患(PAD)などを合併していれば「40mg/dL未満」と患者背景やリスク因子の重なりによって目標値が変わるように、Lp(a)も同様に、ほかのリスク因子と合わせて総合的に判断すべきです。―測らない理由なんてあるのか?実際に心イベントを繰り返した患者さんが、「ガイドラインで推奨されていたのに、なぜ何年も前にLp(a)を検査してくれなかったのか」と医師に不満を訴えるような事例は世界で起きています。同様のことを繰り返さないためにも医師への啓発を進め、Lp(a)測定を通常の診療プロセスに組み込む必要があります。さらにポジティブなニュースとして、現在、Lp(a)自体を劇的(80~90%)に低下させる新薬の臨床試験が進んでいます。最終的な試験結果を待つ必要がありますが、これが承認されれば、2次予防の患者さんに対してさらなるイベント再発を防ぐ強力な選択肢を提供できるようになります。―スクリーニングで世界に先駆ける、日本へ期待すること日本のスクリーニングは間違いなく他国の一歩先を行っています。日本には成人健康診査のみならず、小児期という非常に早い時期から検診が行われているケースもあると聞きました。これは国として大変重要な取り組みであり、今後Lp(a)のスクリーニングを導入していく上でも、素晴らしい土台です。これは私にとっても大きな学びとなり、欧州に戻ったらぜひ共有したいと思っています。しかし、「スクリーニングが行われていること」は一側面に過ぎず、「スクリーニング結果を踏まえ、どのように対応(治療・管理)するか」という点においては、まだギャップ(課題)があると感じています。これは日本に限った問題ではなく、世界中で直面している課題でもあります。政策立案者にとっては、常に自国のデータが重要となるため、一般住民を対象とした大規模コホートを構築し、「Lp(a)高値の有病率」「 Lp(a)が日本でもリスク因子である」ことを示す予後データを構築することが望まれます。後者についてはLEAP研究5)をはじめ、質の高い研究によるデータが多ければ多いほど、医療コミュニティでLp(a)が受け入れられる可能性は高くなります。日本には企業健診など、素晴らしいスクリーニングシステムがありますよね。肉体労働者から事務職まで(幅広い職域を)含む代表的な集団を雇用している大企業に研究協力してもらえれば、多数の対象者を迅速かつ低コストで集めることができます。このときに必要なのはLp(a)測定にかかる追加費用のみです。もちろん将来的には、医師がLp(a)測定を行うようになることが重要です。現在、日本動脈硬化学会が主導するLp(a)に関するコンセンサスステートメントが間もなく発刊される予定だと聞いています。これは欧米のガイドラインの「成人は生涯に少なくとも一度は必ずLp(a)を測定すべき」と完全に整合性の取れた内容になるでしょう。また、順天堂大学の三井田 孝氏らが日本国内での測定法の標準化を先導されていますが、国際的にもIFCC(国際臨床化学臨床検査医学連合)が中心となって、Lp(a)測定の標準化を進める取り組みが動いています。これらが整えば、次は実装段階に入っていきます。今後、日本からLEAP研究5)やLp(a)JAPAN study6)のサブ解析結果や心血管リスクに関する大規模な試験などが発信されれば、政策提言や医療者を説得する上でも非常に強力な材料になるでしょう。スクリーニングのさらなる普及を含め、日本における今後の発展に大いに期待しています。 参考 1) Kamstrup PR, et al. Circulation. 2008;117:176-184. 2) Kronenberg F, et al. Atherosclerosis. 2025;406:119218. 3) Morton JI, et al. Atherosclerosis. 2025:409:120447. 4) Kronenberg F, et al. Eur Heart J. 2022;43:3925-3946. 5) Yamada T, et al. J Atheroscler Thromb. 2026;33:1049-1059. 6) Kataoka Y, et al. Eur Heart J. 2026 May 24. [Epub ahead of print]

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認知症のない期間、高血圧・糖尿病・喫煙の3因子で13年短縮

 高血圧、糖尿病、喫煙といった血管リスク因子は認知症や早期死亡に関連することが知られているが、これらが重複した際、認知症を発症せずに過ごせる期間(認知症のない生存期間)がどれほど短縮するのかは明らかでなかった。中国・清華大学のJiaqi Hu氏らの研究グループは、米国の大規模な動脈硬化リスクコミュニティ研究の解析から、中年期における血管リスク因子の蓄積が認知症のない生存期間を最大12.6年短縮させることを明らかにした。Neurology Open Access誌2026年9月号に掲載。 本研究では、米国4地域で実施された「Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究」の参加者のうち、55歳時点で認知症がない1万2,409例(平均年齢56.2歳、女性56.0%)を対象に前向きコホート研究を行った。ベースライン時(1990~92年)における3つの主要な血管リスク因子(糖尿病、高血圧、現喫煙)の保有数(0~3個)を評価し、2022年まで継続的に追跡調査した。追跡期間中央値26.3年における認知症発症および認知症のない死亡について、競合リスクを考慮した制限付き平均生存期間(RMST)解析を用いて、55歳から95歳までの期間における「認知症のない生存期間」を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に3,008例が認知症を発症し、5,238例が認知症を発症せずに死亡した。・血管リスク因子が0個の群と比較して、3個の群では認知症の発症リスクが2.69倍(ハザード比[HR]:2.69、95%信頼区間[CI]:1.94~3.73)、認知症のない死亡リスクが5.61倍(HR:5.61、95%CI:4.67~6.74)と有意に上昇した。・55歳から95歳までの認知症のない生存期間は、血管リスク因子が0個の群で平均30.1年(95%CI:29.9~30.4)であったのに対し、1個で26.3年、2個で21.0年、3個の群では17.5年(95%CI:16.3~18.7)とリスク因子の増加に伴い段階的に短縮した(最大12.6年の短縮)。・認知症のない生存期間には性別や人種による差も観察され、リスク因子3個の群では女性(18.1年)が男性(16.6年)より長く、白人(19.6年)に比べて黒人(16.0年)で短かった。 著者らは、中年期の血管リスク管理によって認知症のない生存期間を最大12.6年延ばせる可能性があると指摘している。血管リスクが認知症発症と早期死亡の双方に及ぼす影響を「年数」という指標で提示することは、心血管と脳の健康を共に維持する予防戦略において、患者の動機付けに役立つアプローチになると結論付けている。

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長期的な経済的逆境は認知機能低下や脳構造変化と関連か

 経済的逆境は、精神的なストレスを増大させるだけでなく、脳の老化と関連する可能性があるーーそんな研究結果が報告された。若年成人期から中年期にかけて慢性的に経済的困窮を抱えていたり世帯所得が低かった人は、53歳時点で実施された認知機能検査の成績が低い傾向にあることが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のJacques Wels氏らによるこの研究は、7月23日付で「Innovation in Aging」に掲載された。 持続的な経済的逆境が認知機能の加齢に伴う変化や脳の健康に長期的にどのような影響を及ぼすのかは、十分に明らかになっていない。そこでWels氏らは、英国の1946年出生コホート(2,759人)を対象に、26~53歳時の経済的逆境(世帯所得の低さ、経済的困窮)と、53歳時の認知機能、53歳から69歳までの認知機能の変化との関連を解析した。さらに、69~71歳時に脳MRI検査を受けた一部の参加者では、経済的逆境と高齢期の脳構造との関連も調べた。参加者には、26歳、43歳、53歳時点での世帯所得に加え、36歳、43歳、53歳時点で経済的困窮の有無について質問した。 その結果、世帯所得が低い状態や経済的困窮を経験することが多かった人では、53歳時点における情報処理速度や言語記憶の成績が低かった。これらの人では、53歳以降の言語記憶の低下速度は比較的緩やかだったが、これは53歳時点ですでに認知機能スコアが低かったことによるものと考えられた。さらに、MRI解析からは、持続的な低世帯所得は、脳の萎縮に伴い拡大することが知られている脳室容積の増大と関連することも示された。経済的逆境と脳構造の変化との関連は、男性、幼少期に社会経済的状況が不利だった人、アルツハイマー病の遺伝的リスク因子であるAPOE ε4保有者でより強く認められた。 研究グループは、本研究で対象としたコホートの世代では、男性が家計の担い手と見なされることが多かったため、経済的逆境の影響をより強く受けた可能性があると考察している。また、喫煙や飲酒などの健康に好ましくない生活習慣が多かったことも影響した可能性があるとしている。 Wels氏は、「認知機能の加齢による変化を検討したこれまでの研究の多くは、経済的逆境を単一時点でしか評価していない。本研究では、数十年にわたるデータを用いたことで、認知機能に大きな影響を及ぼすのは一時的な困難ではなく、長年にわたる経済的逆境の積み重ねであることが明らかになった」とニュースリリースで述べている。 一方、論文の上席著者であるUCL公衆衛生・実験医学部門教授のPraveetha Patalay氏は、「今回の結果は、経済的逆境に直面している人々を支援し、慢性的な貧困を減らすことが、将来的な認知機能低下や認知症リスクの低減につながる可能性を示唆している」との見解を示している。

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がんの既往歴/家族歴のある女性、原発性肺がんリスク高い

 喫煙歴にかかわらず、がんの既往歴や家族歴を有する成人女性では、新規に原発性肺がんを発症するリスクが有意に高まることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)East BayのCarissa A. Villanueva氏らによる大規模後ろ向き研究で明らかになった。JTCVS Open誌2026年8月号に掲載。 本研究は、Kaiser Permanente Northern Californiaの2010年1月1日〜2022年12月31日の電子健康記録データを用いた。研究開始時点で肺がんの既往がない18歳以上の成人女性で、期間中に1年以上の加入歴を有する約280万例を抽出。喫煙状況、人種/民族、年齢、Charlson併存疾患指数、近隣困窮指数で調整したターゲット最大尤度推定法を用い、がん既往歴または家族歴を有する患者における新規原発性肺がんの有病率比(PR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした成人女性280万例が解析に組み入れられた。・何らかのがん既往歴がある女性では、原発性肺がんの有病率が88%増加した(PR:1.88、95%信頼区間[CI]:1.84〜1.92)。・がんの家族歴がある女性においても、原発性肺がんの有病率増加が認められた(PR:1.23、95%CI:1.20〜1.26)。・とくに、乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの既往歴がある女性において、その後の原発性肺がん有病率増加と有意な関連が示された。 著者らは、「がんの既往歴および家族歴は、将来の原発性肺がん発症リスク上昇と強い関連を示したことから、今回の対象集団においては、喫煙歴だけでは新規原発性肺がんの臨床的疑いを判断するには不十分であることが示唆される。肺がんスクリーニングツールの適用に関するガイドラインの再評価および拡充が賢明だろう」と提言している。

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テレビ視聴の多さは脳萎縮と関連

 「テレビばかり見ていると脳がだめになる」という母親の小言は、あながち的外れではないようだ。新たな研究で、テレビを頻繁に視聴することは、複数の脳領域の体積の減少や白質高信号体積の増加と関連することが示された。一方、座位で仕事をすることは、白質高信号体積の減少や複数の脳領域の体積が大きいことと関連していた。白質高信号とは、脳小血管病などによる白質の変化を反映するMRI所見で、白質病変とも呼ばれている。米南カリフォルニア大学(USC)人類進化生物学プログラムのNatan Feter氏らによるこの研究結果は、7月10日付で「Alzheimer’s & Dementia: The Journal of the Alzheimer’s Association」に掲載された。 Feter氏は、「われわれはこれまで、人々に座りっぱなしの時間を減らすよう勧めてきた。しかし今回の結果から、専門家はその推奨を、座位時間だけでなく座っている間の活動内容にも広げる必要があると考えるかもしれない。座位中の活動の種類によって、脳の健康への影響が異なる可能性があるからだ」と述べている。 この研究では、心血管と脳の健康を長期間追跡している「Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)」研究に参加した1,712人(平均年齢53歳、女性57%)のデータを解析し、座位行動と脳構造との関連を検討した。座位行動として、余暇にテレビを見る頻度と座位で仕事を行う頻度を質問票により評価した。また、脳構造の指標として、前頭葉や後頭葉などの皮質領域、視床・尾状核・被殻・淡蒼球から成る皮質下領域に加え、アルツハイマー病(AD)で早期から変化が現れやすい領域(ADシグネチャー領域)、および白質高信号の体積をMRIで測定した。 年齢や性別、身体活動、BMI、糖尿病、喫煙、飲酒などの共変量を調整して解析した結果、テレビを「頻繁に見る」と回答した人は、「ほとんど/全く見ない」と回答した人と比べて、前頭葉、後頭葉、およびADシグネチャー領域の体積が小さいこと、ならびに白質高信号体積が大きいことと関連していた。一方、「いつも座位で仕事を行う」と回答した人では「座位で仕事をほとんど/全くしない」と答えた人と比べて、白質高信号体積が小さいこと、ならびに頭頂葉、後頭葉、および前頭葉の体積は有意に大きいことと関連していた。男女別に解析したところ、座位での仕事が多いことと前頭葉の皮質体積が大きいこととの関連は男性でのみ認められるなど、座位行動と脳構造の指標との関連には男女差が見られた。 研究グループは、「医師は、患者にもっと体を動かすことを勧めるだけでなく、テレビの視聴時間を減らすことについても助言すべきかもしれない。それ以上に望ましいのは、座位で過ごすのであれば、テレビ視聴の代わりに脳を刺激する活動を取り入れることだろう」と述べている。

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世界で長寿化が進む一方で不健康な期間も拡大

 世界中で人々はこれまでになく長生きするようになったが、延長した人生の多くを健康問題を抱えながら過ごしているようだ。「The Lancet Public Health」8月号に掲載された研究で、平均寿命と健康寿命の差(morbidity gap)は、1990年の8.8年から2023年には10.7年へと約2年拡大したことが示された。 論文の上席著者である米ワシントン大学医学部のChristopher Murray氏は、「この研究結果は、今後の健康増進は、寿命の延長だけでなく、健康な状態で生きる期間を延ばすことによって実現されることを示唆している。健康的な老化の進展は、寿命だけでなく健康寿命によって評価されるべきであり、不健康な状態で過ごす期間(以下、不健康な期間)を減らすためには、予防、長期的な疾患管理、慢性疾患のケアへの投資を拡充する必要がある」とニュースリリースで述べている。 研究グループは、世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study〔GBD〕2023)のデータを用いて、1990~2023年における204カ国・地域の平均寿命と健康寿命の差の経時的な変化を解析するとともに、この差に寄与する主な疾患やリスク因子についても評価した。 その結果、世界の平均寿命は1990年の64.6歳から2023年には73.8歳へ、健康寿命は55.9歳から63.1歳へと延長した。一方で、平均寿命と健康寿命の差も、1990年の8.8年から2023年の10.7年へと1.9年増加し、不健康な期間も長くなった。世界全体で、平均寿命に占める不健康な期間の割合は、1990年の13.6%から2023年には14.5%へ上昇した。国別では、不健康な期間が最も長かったのは米国で平均14.0年、次いでオーストラリアが13.9年、カナダが13.7年だった。また、1990年から2023年にかけての不健康な期間の拡大は、人生の終末期に集中するのではなく、成人期全体で認められた。さらに、ほぼ全ての国・地域で女性は男性より長生きする一方、不健康な期間も長かった。2023年の不健康な期間は女性が平均12.1年、男性は9.3年だった。 不健康な期間の延長に最も大きく寄与していたのは、腰痛などの筋骨格系疾患で、その次に多かったのはうつ病や不安症などの精神疾患だった。加齢性難聴、転倒や不慮の外傷、その他の非感染性疾患なども主な要因として挙げられた。また、不健康な期間に関連する主なリスク因子は、空腹時の高血糖、高BMI、母子の栄養不良、喫煙であった。 保健指標評価研究所(IHME)のシニアサイエンティフィックライターであるCatherine Bisignano氏は、「世界のほぼ全ての地域で、女性は男性より長生きしているが、その延びた年月の多くを不健康な状態で過ごしている」と指摘する。同氏は、「健康的な老化を実現するためには、障害とともに生きる期間を長引かせる疾患やリスク因子への対策を強化する必要がある。これらに対して予防やより良い長期ケアを早期から行うことは、社会や医療制度、経済に大きな利益をもたらす可能性がある」と述べている。

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最大80日間の連続投与が可能な月経困難症治療薬「マルシロン配合錠」【最新!DI情報】第69回

最大80日間の連続投与が可能な月経困難症治療薬「マルシロン配合錠」今回は、月経困難症治療薬「デソゲストレル・エチニルエストラジオール(商品名:マルシロン配合錠、製造販売元:オルガノン)」を紹介します。本剤は、エストロゲンの配合量が従来薬よりも減量されており、エストロゲンに起因する副作用の発現リスクを最小限に抑えることが期待されています。<効能・効果>月経困難症の適応で、2026年6月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>1日1錠を24~80日間連続経口投与し、その後4日間休薬します。以後連続投与と休薬を繰り返します。<安全性>重大な副作用として、四肢、肺、心、脳、網膜などの血栓症があります(1.0%)。その他の副作用として、月経中間期出血(50.7%)、悪心(5%以上)、食欲減退、気分の落ち込み、抑うつ気分、気分変化、頭痛、傾眠、浮動性めまい、前兆を伴わない片頭痛、高血圧、腹部不快感、軟便、腹部膨満、肝機能異常、胆石症、筋骨格硬直、四肢痛、子宮出血、重度月経出血、異常子宮出血、骨盤痛、乳房不快感、乳房痛、乳房腫脹、乳房圧痛、末梢性浮腫、倦怠感、浮腫、体重増加、肝酵素上昇、AST増加、ALT増加(いずれも0.1~5%未満)などがあります。なお、35歳以上で1日15本以上の喫煙者は、心筋梗塞などの心血管系の障害が発生しやすくなるので禁忌です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、黄体ホルモンと卵胞ホルモンの混合ホルモン薬で、排卵抑制作用および子宮内膜増殖抑制作用により、月経時の下腹部痛や腰痛などの症状を改善します。2.1日1錠を24日から最大80日間連続して服用し、その後4日間休薬します。以降は連続して服薬と休薬を繰り返します。3.この薬を避妊目的で使用しないでください。4.飲み始めだけでなく、飲んでいる間はいつでも血栓症にかかる可能性があります。血栓症の症状に注意し、症状が現れたときはすぐに使用を中止し医療機関を受診してください。5.年齢および喫煙量により心血管系の重篤な副作用の危険性が増大するとの報告がありますので、この薬を服用している間は禁煙してください。6.この薬を服用している間は、6ヵ月ごとの検診(血圧・乳房・腹部の検査、臨床検査など)が必要です。7.妊娠または妊娠している可能性がある人は、この薬を使用することはできません。【ここがポイント!】月経困難症は、月経時または月経直前から始まる強い下腹部痛や腰部痛を主症状とし、腹部膨満感、悪心、嘔吐、下痢、頭痛などの症状が現れます。生殖年齢の女性の25%以上に認められ、とくに若年層ほどその頻度は高いといわれています。その多くは機能性月経困難症であり、学校の欠席、集中力の低下、スポーツ活動への支障など、学業や社会生活に影響を及ぼすことが指摘されています。月経困難症の痛みにはプロスタグランジン(PG)が関与しているため、治療の第1選択薬はNSAIDsです。しかし、NSAIDsで十分な鎮痛効果が得られない場合や副作用が問題となる場合には、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)が用いられます。とくに思春期の月経困難症では、日常生活への影響の軽減や子宮内膜症の進行予防の観点から、NSAIDsが有効であってもLEPを併用することがあります。月経困難症に適応のあるLEP製剤には、ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠(ヤーズ配合錠など)、ノルエチステロン・エチニルエストラジオール錠(ルナベル配合錠LD/ULDなど)、レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール錠(ジェミーナ配合錠)があります。投与方法には28日周期でプラセボまたは休薬期間を設けて消退出血を起こす「周期投与」と、長期間にわたり連続して服用する「連続投与」があります。本剤は、有効成分としてデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含有するLEP製剤です。経口避妊薬としてすでに発売されているマーベロンと同一成分ですが、エストロゲンに起因する副作用の発現リスクを最小限に抑える目的で、エチニルエストラジオールの配合量が0.03mgから0.02mgに減量されています。また、従来のLEP製剤との違いとして、28日(24日間の服用期間/4日間の休薬期間)から最大80日(80日間の服用期間/4日間の休薬期間)まで連続投与できる点が挙げられます。24~80日の間で、いつ消退出血を起こすかをコントロールできるので、消退出血の頻度を減らすだけでなく、個々の生活スタイルに合わせたスケジュール調整が可能になります。月経困難症の日本人患者を対象とした国内第III相臨床試験(OG8276A-301試験)において、主要評価項目である月経困難症スコア合計(TDS)を指標とするベースラインから84日までの変化量の平均値は、本剤群では-2.50±0.113、プラセボ群で-0.84±0.187でした。群間差(本剤群-プラセボ群)の平均値は、-1.67(両側95%信頼区間:-2.08~-1.26)であり、本剤のプラセボに対する優越性が検証されました。

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多内分泌代謝性卵巣症候群は心筋梗塞や脳卒中のリスクと関連

 若年女性に見られる卵巣関連の内分泌・代謝疾患である多内分泌代謝性卵巣症候群(polyendocrine metabolic ovarian syndrome;PMOS)は、心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇と関連している可能性がある。新たな大規模研究で、PMOSの女性では、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)イベントの発生リスクが、PMOSではない女性と比べて4倍以上高いことが明らかになった。米ペンシルベニア大学病院産婦人科のAnuja Dokras氏らによるこの研究結果は、7月20日付で「The Lancet Obstetrics, Gynaecology, & Women's Health」に掲載された。 Dokras氏は、「この研究結果は、臨床医がPMOS患者の心血管の状態を綿密に追跡・評価することの重要性を示している。また、PMOS患者自身が心血管の健康維持を心がけるとともに、喫煙、運動不足、肥満、高LDLコレステロール(LDL-C)値、糖尿病、高血圧といったリスク因子を管理することも重要である」と述べている。 PMOSでは多くの場合、卵巣内に発育途中の小卵胞が複数見られる。また、アンドロゲンの過剰産生により排卵障害や月経異常、不妊症のほか、代謝異常や心血管疾患のリスクが高まる。研究グループによると、PMOSは妊娠可能年齢の女性の約10~13%に認められるが、そのうちの最大70%は自分がPMOSに罹患していることに気付いていないという。 今回の研究では、Optum社の匿名化医療保険請求データベース(Clinformatics Data Mart Database)を用いて、ASCVDの既往がない18~50歳の女性を対象に、PMOSとASCVDイベントとの関連を検討した。対象者のうち、41万3,450人(平均年齢31.1歳)がPMOSと診断されていた。定期健康診断のICDコードを有し、年齢およびPMOS診断月をPMOS群の女性と一致させた女性206万7,250人を対照群とした。ASCVDは、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患と定義した。 その結果、ASCVDイベント全体の発生のハザード比(HR)はPMOS群で対照群よりも高く、年齢などの交絡因子で調整後もHRは4.40だった。疾患別に解析すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクは約2.5倍、脳卒中発症の前兆となる一過性脳虚血発作(TIA)のリスクは約3.4倍、末梢動脈疾患のリスクは約4倍であることも示された。媒介分析では、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、肥満などの心血管疾患リスク因子だけでは、PMOSとASCVDとの関連の約3分の1しか説明できないことが示唆された。 PMOSは、もともとは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と呼ばれていたが、2026年5月、国際的なコンセンサスプロセスを経て、PCOSはPMOSへ名称変更された。Dokras氏は、「『多嚢胞性』という言葉は、この疾患の実態を正確に表していなかった。今回の研究で示したように、PMOSの影響は婦人科領域にとどまらない。新しい名称は、内分泌系の複数のホルモンが関与する疾患であることを示している。この名称変更により、臨床医がより包括的な医療を提供できるようになることを期待している」と述べている。

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健康的な脳の老化にはDHAが重要~EPAとの比較

 高齢者では脳萎縮が認知機能低下に先行することが多いため、脳構造の評価は神経保護の中間バイオマーカーとなる。近年、n-3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)、とくにドコサヘキサエン酸(DHA)の血中濃度は、脳の構造的完全性との関連が示唆されている。しかし、魚の摂取量が多く、n-3系PUFA濃度がかなり高い日本人のデータは少なく、また、脳構造との関連でDHAとエイコサペンタエン酸(EPA)を比較した研究はほとんどない。今回、滋賀医科大学NCD疫学研究センターの近藤 慶子氏らが、高齢日本人女性においてEPA、DHA、EPA+DHAの血清濃度と脳容積の関連を検討したところ、DHAはEPAよりも灰白質容積との関連が強く、EPAとの関連は限定的なことがわかった。Journal of Nutrition誌オンライン版2026年7月25日号に掲載。 本研究は、滋賀県草津市在住の60~85歳の女性527人(平均年齢:74.2歳)を対象した横断研究である。EPAおよびDHAの血清濃度をガスクロマトグラフィー法により測定した。脳容積(全脳・灰白質・白質・海馬の容積)は、1.5テスラ磁気共鳴画像法を用いて評価した。共分散分析を行い、EPA、DHA、EPA+DHA濃度の四分位に基づいて調整した脳容積の平均値を比較した。共変量には年齢、全頭蓋内容積、BMI、教育年数、喫煙・飲酒状況、歩数、糖尿病、高血圧、スタチン使用を含めた。 主な結果は以下のとおり。・血清DHA濃度は灰白質容積と有意な正相関を示した(傾向のp=0.036)が、血清EPA濃度は相関が認められなかった。EPA+DHA濃度は灰白質容積と正相関の傾向を示した(傾向のp=0.085)。・EPA、DHA、EPA+DHAの血清濃度と、白質容積、全脳容積、海馬容積との間には有意な関連は認められなかった。 今回の結果から、著者らは「DHAが豊富な食事が健康的な脳の老化にとって重要であることが裏付けられた」と結論している。

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マイクロプラスチックは心筋梗塞と関連?

 心筋梗塞を起こした人では、血液中からマイクロプラスチックおよびナノプラスチック(MNP)が高い割合で検出され、その濃度も高いことを示すデータが報告された。サピエンツァ大学サンタンドレア病院(イタリア)のPasquale Paolisso氏らの研究によるもので、詳細は7月14日付で「European Heart Journal」に掲載された。喫煙や大気汚染も、MNPの検出と関連があるという。 この論文では、「先行研究により、ヒトの臓器や組織にMNPが存在していることが既に示されている」と、研究背景が記されている。しかし、筆頭著者であるPaolisso氏によると、冠動脈(心臓の筋肉に血液を供給する動脈)の血液中にもMNPが存在するのか、また、喫煙や大気汚染などの環境要因がその存在に影響を与えるのかどうかという点については、「ほとんど知られていなかった」という。そこで同氏らは、冠動脈疾患の疑いのため造影検査を受けた患者61人を対象とする横断研究により、これらを検討した。 61人のうち19人はST上昇型という治療の緊急性が高い心筋梗塞(STEMI)を起こしていた。20人は冠動脈疾患があるものの心筋梗塞は起きていない慢性冠症候群で、22人は冠動脈疾患を認めない比較対照群とされた。MNPの濃度は冠動脈と末梢血管から採血した血液で測定した。大気汚染への曝露については、検査当日と過去2年間のデータを基に評価した。 STEMI群の84%で、血液中からMNPが検出された。これは、慢性冠症候群の40%や対照群の32%よりも有意に高い割合だった(P=0.002)。 MNPの検出には、喫煙や大気汚染との関連も認められた。PM2.5への長期曝露量が多い人や喫煙者では、血液中からMNPが検出されやすかった。喫煙とPM2.5への高い曝露の両方に当てはまる患者では全員からMNPが検出され、反対に、非喫煙者でPM2.5への曝露量が少ない患者では12.5%にとどまった。さらに、多変量解析では、喫煙歴がMNPの検出と独立して関連する唯一の因子だった。 論文の上席著者である同大学のEmanuele Barbato氏は、この研究結果について、「本研究は、MNPが心筋梗塞を引き起こすことを証明するものではない。しかし、大気汚染への曝露、血液中のMNP、そして冠動脈疾患との間に、強い関連性があることが明らかになった」と述べている。また、「喫煙歴と血液中のMNPの検出との間に強固な関連があった。これは、喫煙によってMNPが肺を介して血流に入りやすくなる可能性を示唆している。大気汚染も同じように作用するのかもしれない」と考察を加えている。 ヨハネス・グーテンベルク大学(ドイツ)のAndreas Daiber氏らは、本研究に関連する論説を発表。「MNPが潜在的な健康の脅威として浮上してきている。MNPはこれまで、心血管疾患のリスク因子として過小評価されていたのではないか」と述べている。今回のPaolisso氏らの報告については、「サンプルサイズが小さいという限界点はあるが、MNPが心筋梗塞などの急性心血管イベントと関連している可能性を示す、初期の臨床的エビデンスである」と評している。

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ブラシ検査で口腔扁平上皮がんを高精度に検出

 新たな研究で、口腔扁平上皮がん(OSCC)を1時間以内に診断できる非侵襲的なブラシ検査が、がんの検出率向上につながる可能性が示された。ブラシで採取した細胞からRNAを抽出し、対象とする遺伝子のmRNA発現量を調べる多遺伝子アッセイ「qMIDSV3」により、OSCCを感度95.7%、特異度95.1%で検出できたという。英ロンドン大学クイーン・メアリー校分子口腔腫瘍学教授のMuy-Teck Teh氏らによるこの研究結果は、6月23日付で「Biomarker Research」に掲載された。 米国がん協会(ACS)によると、米国では2026年に、口腔・中咽頭がんの新規患者数は約6万480人、これらのがんによる死亡者数は約1万3,150人になると予測されている。また、研究グループによると、口腔がん患者の53%はステージ4になってから診断されている。ステージ4はがんが最も進行した状態で、治療の成功率も低くなる。口腔・中咽頭がんのリスクが高いのは、喫煙者、多量飲酒者、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染者である。さらに、日光曝露も、特に口唇がんリスクを高める。 口腔がんの診断では、舌や歯茎、頬、扁桃などから組織を採取する生検が必要となる。そのため、特に繰り返し検査が必要な場合には、患者だけでなく医師も生検の実施に消極的になりがちだという。 過去の研究では、マイクロバイオプシーを用いた多遺伝子アッセイであるqMIDSV2の有効性が検討された。今回の研究では、マイクロバイオプシーの代わりにブラシ検査を用いた多遺伝子アッセイ(qMIDSV3)でも同等の診断精度が得られるのかが検討された。qMIDSV3では、丸いブラシを使って口腔内の疑わしい病変から細胞を採取する。その後、採取した細胞からRNAを抽出し、OSCCとの関連が知られている2つの遺伝子(INHBA、S100A16)と、発現量を標準化するための2つの参照遺伝子(YAP1、POLR2A)の、計4遺伝子のmRNA発現量を測定し、その結果をアルゴリズムで解析して悪性指数を算出し、がんの可能性を評価する。 今回の研究では、545人の患者から採取した1,090検体を解析し、ブラシ検査の有効性を検証した。解析の結果、この検査のOSCC検出の感度は95.7%、特異度は95.1%であり、偽陽性率は4.9%、偽陰性率は4.3%であった。 Teh氏は、「ブラシによる細胞採取検査の性能がマイクロバイオプシーに匹敵したことには本当に驚いた。これは、この4つの遺伝子が示す生物学的シグナルの一貫性が極めて高いため、ブラシで採取した表層の剥離細胞からでも十分検出できることを示唆している」と述べている。その上で、「患者は、分子診断に基づくトリアージのために、従来のマイクロバイオプシーのような、低侵襲ではあるものの組織採取を伴う検査を受ける必要がなくなる」と強調している。研究グループは、qMIDSV3を導入することで、不必要な外科的組織生検の最大90%を回避できる可能性があると推定している。 Teh氏は、「口腔がんの生存率は、どれだけ早期に発見できるかに直接関係している。しかし、現行の診断方法は大まかで、疑わしい病変が見つかった患者の多くは、最終的に良性であるにもかかわらず、生検を受けることになる。qMIDSV3は、こうした状況を変える可能性がある。この検査を用いれば、臨床医は患者を迅速かつ非侵襲的に、高い精度でトリアージできるようになる。さらに重要なのは、繰り返し実施できるため、前がん病変が持続する患者を定期的かつ系統的に経過観察し、従来よりもはるかに早い段階で口腔がんを発見できる可能性があることだ」とニュースリリースで述べている。 ロンドン大学クイーン・メアリー校は現在、この検査を実用化するための商業パートナーを探しており、適切な提携先が見つかれば、約2年以内の市場投入が可能になるとしている。

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CKDの生命予後・腎予後に対するmGFR評価の意義とeGFRの有用性(解説:浦信行氏)

 腎機能評価にはmGFRが最も有用であるが、その煩雑性から生命予後・腎予後との関連を示した成績は少ない。スウェーデンの成人のイオヘキソールを用いたmGFR値とこれらの関連を後ろ向きに評価し、併せてeGFRの有用性を後ろ向きに評価した成績がJAMA誌オンライン版で発表され、追跡期間中央値5.9年の概要がジャーナル四天王(2026年7月3日配信)に掲載された。その結果、mGFR90の群に対してmGFR60ですでに死亡率は1.21倍、腎代替療法導入では実に2.85倍の高頻度であった。この成績はmGFRで60がCKDの閾値であることを明らかにした意義のある研究である。 評価の簡便性により実臨床で頻用されるeGFRでの評価も同時に行っており、mGFRを基準として予後評価を行っている。最も頻用されている血漿クレアチニン値で算出したeGFRcrとシスタチンCで評価したeGFRcysの両者を検討したが、クレアチニンは筋肉量の影響を受け、シスタチンCは炎症、喫煙、肥満、ステロイド治療などの影響を受ける。その結果算出されたeGFRcrは筋肉量減少で実際より高値になり、eGFRcysは肥満などで高値を示す。結果的に両eGFRの平均値がmGFRでの成績に一致した。したがって、サルコペニアや肥満などの背景を有する例に対しては、両者を測定することが重要との成績である。 この報告はmGFRの予後評価における有用性を示した優れた論文であるが、eGFRについてはすでに英国のバーミンガム大学を中心とした多施設共同研究で正確な腎機能変化の評価にはクレアチニンとシスタチンCの両者を用いた方法が優れることを3年間の前向き研究で明らかにし、ジャーナル四天王(2026年4月2日配信)にその概要が掲載されている。中等度CKDのクレアチニンとシスタチンCを半年ごとに測定し、Log変換した値を用いてeGFRの3年間のスロープを評価した結果、eGFRcrとeGFRcys各々で評価した値よりは両者を併用した値が基準値であるmGFRにより近似していたと報告されており、両者を同時評価することの重要性を示唆している。日本腎臓学会でも評価方法は異なるが両者を用いたeGFRの同時評価を先行して行ってイヌリンクリアランスと対比し、2012年のCKD診療ガイドラインに両者の平均eGFRの正確度が高いと報告している。しかし、両者の平均値で評価するのも症例によっては限界がある。 超高齢化社会を迎えたわが国ではサルコペニアなどによりeGFRcrが極端に高値の場合も珍しくない。両者の併用の意義は理解できるが、症例の病態やADLを考慮した評価も念頭に置く必要があると考える。

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心筋梗塞を経験した人は認知機能の低下が速い

 心筋梗塞の既往がある人は認知機能の低下が速く、認知機能障害へ進行するリスクも高いことを示すデータが報告された。心筋梗塞を経験していない人と比較して、認知機能障害に進行するリスクが、1年当たり約5%高いという。米オハイオ州立大学のMohamed Ridha氏らの研究によるもので、詳細は「Stroke」に5月14日掲載された。 この研究は、脳卒中リスクの地理的・人種的差異を検討する疫学研究(REGARDS)のデータを用いて行われた。追跡開始時点(ベースライン)で認知機能障害が記録されていた人や、解析に必要なデータのない人などを除外し、2万923人(年齢中央値63歳〔四分位範囲57~70〕、女性57.2%)を、中央値10.1年(四分位範囲7.0~12.1)追跡して、認知機能の低下速度と認知機能障害の発生リスクを心筋梗塞の既往の有無で比較した。対象者は毎年1回、電話による6項目の課題から成る認知機能のスクリーニング(スコア範囲0~6)を受け、スコアが5点未満の場合に認知機能障害と判定された。 ベースラインにおいて、全体の10.4%に心筋梗塞の既往が認められた。その内訳は、自己申告があるが心電図異常は認められないケース(自己申告による心筋梗塞)が5.2%、自己申告と心電図異常がともに認められるケース(臨床的心筋梗塞)が1.3%、自己申告はないが心電図異常が認められるケース(無症候性心筋梗塞)が3.8%だった。 認知機能に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧、糖尿病、腎機能、冠動脈疾患、心房細動、教育歴、収入、抑うつ傾向、居住地域など)を調整後、心筋梗塞の既往のある人はその既往のない人よりも、認知機能障害のリスクが1年当たり4.8%高いことが示された(オッズ比〔OR〕1.048〔95%信頼区間1.025~1.072〕)。心筋梗塞を経験した自覚のない無症候性心筋梗塞のみを対象とした解析でも、ほぼ同様のリスク上昇が観察された(OR1.047〔同1.010~1.085〕)。 男女別に解析した結果、男性では、全ての心筋梗塞の既往が認知機能障害リスクと有意に関連していた。一方、女性では、自己申告による心筋梗塞と無症候性心筋梗塞は認知機能障害リスクとの関連が有意だったが、臨床的心筋梗塞については非有意だった。研究者らは、「無症候性心筋梗塞は女性に多いため、この結果は重要だ」としている。 論文の筆頭著者であるRidha氏は、これらの結果の総括として、「米国民の間では認知症や認知機能低下による負担が増大していることから、心筋梗塞のような心血管疾患が脳の健康にどのような影響を与えるかを理解することが欠かせない」と述べている。また、「心筋梗塞の既往のある患者を診る臨床医は、認知機能の低下を抑制するためにできることを伝える必要がある」と付け加えている。

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アレルギーや喘息で、がんリスクは上がる?下がる?〜JPHC研究

 アレルギーや喘息に伴う過敏な免疫反応や慢性炎症が、がん発症に防御的に働くのか、あるいは促進するのかについては、依然として議論されている。今回、国立がん研究センターの平林 万葉氏らが、日本人の多目的コホート研究(JPHC Study)から得られたデータを用いて前向き観察研究を実施したところ、アレルギーや喘息の既往はがん全体のリスクとは関連しないものの、喫煙男性では大腸がん、非喫煙女性では子宮頸がんのリスク上昇と関連することが示された。Cancer Medicine誌2026年7月号に掲載。 参加者は、自記式質問票で、医師からアレルギー、喘息、またはその両方(以下、アレルギー/喘息)と診断されたことがあるかを回答し、2013年12月まで追跡された。アレルギー/喘息の既往歴の組み合わせと、全体および部位別がんリスクとの関連について、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。また、喫煙状況によるサブグループ解析も実施した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に1万7,679例でがんが確認され、6.5%にアレルギー/喘息の既往歴があった。・アレルギー/喘息の既往歴と、日本人集団におけるがん全体の罹患リスクとの間に関連は認められなかった。・部位別に見ると、アレルギー/喘息の既往歴と甲状腺がんとの間に境界線上の関連が認められた(HR:1.54、95%CI:1.00〜2.35)。・サブグループ解析の結果、喫煙歴がありアレルギー/喘息の既往歴のある男性では、大腸がんのリスク上昇が認められた(HR:1.30、95%CI:1.03〜1.63)。・一方、喫煙歴がなくアレルギー/喘息の既往歴のある女性では、子宮頸がんのリスク上昇が示された(HR:1.98、95%CI:1.01〜3.86)。 著者らは「日本人集団においてアレルギーや喘息、またはその両方の既往歴とがんリスクとの関連は認められなかったが、一部の部位のがんとの関連が示され、さらなる調査が必要」としている。

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不規則な食事時間が老化を早める!?

 国立長寿医療研究センターの木下 かほり氏らの研究グループは、地域在住高齢者を対象に、食事時間の不規則性と生物学的老化の潜在的バイオマーカーGrowth Differentiation Factor-15(GDF-15)との関連、およびそれに対する食事の質の媒介効果を評価した。その結果、食事時間が不規則な高齢者は、規則的な高齢者と比較して年齢が有意に若いにもかかわらず、血清GDF-15が高く、食事の質が低いことが明らかになった。本研究結果は、European Geriatric Medicine誌2026年6月16日号オンライン版掲載の報告。 近年、不規則な食事時間が健康に及ぼす影響について注目されているが、生物学的老化の指標であるGDF-15と食事時間の不規則性との関連については十分に解明されていない。そこで本研究は、食事時間の不規則性とGDF-15との関連を検討し、その関連が栄養素密度の低下といった食事の質の低さによって説明できるかどうかを明らかにすることを目的とした。 研究グループは、東浦研究1)に参加した65歳以上で障害のない地域在住高齢者378例を対象に横断研究を実施。対象患者の食事習慣(規則的/不規則)は面接により評価した。食事の質については、3日間の食事記録から算出したNutrient-Rich Food Index(NRF9.2)に基づく栄養素密度のスコアを用いて評価した。また、食事時間の不規則性、食事の質、血清GDF-15の関連について、年齢、性別、併存疾患数、睡眠時間、身体活動、喫煙状況、就労状況、総エネルギー摂取量を調整した媒介分析(Mediation analysis)を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり・食事時間が不規則な群の年齢は、規則的な群に比べて有意に若かった(平均年齢±SD:73.3±4.6歳vs.75.1±5.6歳、p=0.014)。・食事時間が不規則な群では欠食率が高く、最も欠食が多かったのは朝食で、昼食、夕食と続いた。・共変量調整後、食事時間が不規則な群は規則的な群と比較して、GDF-15が有意に高く(最小二乗平均値、95%信頼区間[CI]:1,161.4pg/mL[1,063.4~1,270.2] vs. 1,028.0pg/mL[988.4~1,068.9]、p=0.009)、細胞レベルでの老化が早いことが示された。・食事時間が不規則な群は、規則的な群に比べて食事の質(NRF9.2スコア)が有意に低かった(798.3点[781.7~815.0]vs. 823.2点[815.9~830.6]、p=0.008)。・媒介分析の結果、食事の質(栄養素密度)は食事時間の不規則性とGDF-15高値との関連を部分的に説明する要因であり、その媒介割合は14.5%であった(p=0.021)。・NRF9.2スコアの分散に対する各食品群の寄与をLMG(Lindeman-Merenda-Gold)法で評価したところ、野菜(24.2%)の寄与が最も大きく、次いで魚介類(14.5%)、卵(13.4%)の順であった。・魚介類の摂取量は、規則的な群と比較して不規則な群で有意に少なかった(32.0g/1,000kcal vs. 40.3g/1,000kcal、p=0.013)。 研究者らは「横断研究であるため因果関係を明らかにできなかったものの、食事時間が不規則な高齢者は血清GDF-15が高く、その関連の約15%が食事の質の低さ(魚介類などの摂取量の少なさ)によって説明できることを初めて示した」とし、「本結果は、仕事などで食事時間が不規則になる高齢者であっても、食事の質改善が生物学的老化の進行抑制に役立つかどうかを検証する縦断研究や介入研究にむけた重要な知見を提供している」と述べ、また「将来的には、食事時間が不規則な人々を対象とした食事戦略の構築を後押しする可能性がある」と結んでいる。

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潰瘍性大腸炎の粘膜治癒、歯みがき頻度と関連

 潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸粘膜に慢性的な炎症が生じる炎症性腸疾患(IBD)の一つである。今回、日本人のUC患者275人を対象とした研究で、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒(内視鏡で大腸粘膜の炎症が認められない状態)の達成と関連することが示された。一方、残存歯数との関連は認められなかった。研究は、済生会今治病院内科の八木専氏、愛媛大学総合健康センターの古川慎哉氏らによるもので、詳細は5月28日付の「Digestive Diseases and Sciences」に掲載された。 近年、口腔内細菌叢と腸内細菌叢が相互に影響し合う「口腔-腸軸(oral-gut axis)」への関心が高まっており、口腔環境とIBDとの関連を示す報告が増えている。歯周病やう蝕(虫歯)、歯の喪失はUCやクローン病との関連が報告されているほか、歯みがきは口腔内の細菌量や炎症を減らし、腸内環境や全身の炎症反応にも影響を及ぼす可能性があると考えられている。一方で、口腔ケアとUCの病勢との関連については十分に検討されていない。また、UCでは粘膜治癒が長期寛解や良好な予後につながる重要な治療目標とされている。こうした背景から著者らは、UC患者における残存歯数および歯みがき頻度と、粘膜治癒との関連を検討した。 著者らは、2015~2019年に愛媛県内の医療機関で診療を受けたUC患者275人を対象に横断解析を行った。質問票を用いて生活習慣や口腔の健康状態を調査し、残存歯数は20本以下、21~27本、28本の3群、歯みがき頻度は1日1回以下、2回、3回以上の3群に分類した。粘膜治癒はMayo内視鏡スコア(MES)0と定義し、ロジスティック回帰分析を用いて関連を検討した。多変量解析では年齢、性別、BMI、喫煙、飲酒、プレドニゾロン(ステロイド薬)使用の有無、罹病期間、病変範囲などで調整した。 対象患者の年齢中央値は50.7歳で、58.2%が男性だった。粘膜治癒(MES 0)を達成していた患者は24.7%だった。 残存歯数と粘膜治癒との間に有意な関連は認められなかった。一方、歯みがき頻度別にみると、粘膜治癒率は1日1回以下の群で15.4%、1日2回の群で24.8%、1日3回以上の群で32.1%と、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒率は上昇する傾向を示した。 年齢や性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、プレドニゾロン使用、罹病期間、病変範囲などを調整したロジスティック回帰分析でも、歯みがき頻度は粘膜治癒と独立して関連していた(調整オッズ比 2.87、95%信頼区間 1.19~7.29、傾向性のP値=0.021)。 本研究では、日本人UC患者を対象に、歯みがき習慣と粘膜治癒との関連が検討された。その結果、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒と関連する一方、残存歯数との関連は認められなかった。著者らは、残存歯数は過去の口腔状態を反映する指標であり、現在の炎症活動とは一致しない一方、歯みがき頻度は口腔内環境を介して腸に影響する「口腔-腸軸」に関与する可能性があると考察している。また、UCでは症状と内視鏡所見が必ずしも一致しないことから、口腔衛生は主に粘膜炎症に関与している可能性が示唆される。 著者らは、「本研究は横断研究であり因果関係を示すものではないが、歯みがきは患者自身が日常的に実践できる簡便な生活習慣である。今後、前向き研究や介入研究で関連が確認されれば、口腔ケアがUC患者の病勢コントロールを支援する新たなアプローチとなる可能性がある」と述べている。今回の結果については、消化器疾患の管理における口腔環境の重要性を示唆するものと強調した。 なお、本研究では、歯みがき習慣や残存歯数が自己申告であることから情報バイアスの可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

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