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1.

長期的な経済的逆境は認知機能低下や脳構造変化と関連か

 経済的逆境は、精神的なストレスを増大させるだけでなく、脳の老化と関連する可能性があるーーそんな研究結果が報告された。若年成人期から中年期にかけて慢性的に経済的困窮を抱えていたり世帯所得が低かった人は、53歳時点で実施された認知機能検査の成績が低い傾向にあることが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のJacques Wels氏らによるこの研究は、7月23日付で「Innovation in Aging」に掲載された。 持続的な経済的逆境が認知機能の加齢に伴う変化や脳の健康に長期的にどのような影響を及ぼすのかは、十分に明らかになっていない。そこでWels氏らは、英国の1946年出生コホート(2,759人)を対象に、26~53歳時の経済的逆境(世帯所得の低さ、経済的困窮)と、53歳時の認知機能、53歳から69歳までの認知機能の変化との関連を解析した。さらに、69~71歳時に脳MRI検査を受けた一部の参加者では、経済的逆境と高齢期の脳構造との関連も調べた。参加者には、26歳、43歳、53歳時点での世帯所得に加え、36歳、43歳、53歳時点で経済的困窮の有無について質問した。 その結果、世帯所得が低い状態や経済的困窮を経験することが多かった人では、53歳時点における情報処理速度や言語記憶の成績が低かった。これらの人では、53歳以降の言語記憶の低下速度は比較的緩やかだったが、これは53歳時点ですでに認知機能スコアが低かったことによるものと考えられた。さらに、MRI解析からは、持続的な低世帯所得は、脳の萎縮に伴い拡大することが知られている脳室容積の増大と関連することも示された。経済的逆境と脳構造の変化との関連は、男性、幼少期に社会経済的状況が不利だった人、アルツハイマー病の遺伝的リスク因子であるAPOE ε4保有者でより強く認められた。 研究グループは、本研究で対象としたコホートの世代では、男性が家計の担い手と見なされることが多かったため、経済的逆境の影響をより強く受けた可能性があると考察している。また、喫煙や飲酒などの健康に好ましくない生活習慣が多かったことも影響した可能性があるとしている。 Wels氏は、「認知機能の加齢による変化を検討したこれまでの研究の多くは、経済的逆境を単一時点でしか評価していない。本研究では、数十年にわたるデータを用いたことで、認知機能に大きな影響を及ぼすのは一時的な困難ではなく、長年にわたる経済的逆境の積み重ねであることが明らかになった」とニュースリリースで述べている。 一方、論文の上席著者であるUCL公衆衛生・実験医学部門教授のPraveetha Patalay氏は、「今回の結果は、経済的逆境に直面している人々を支援し、慢性的な貧困を減らすことが、将来的な認知機能低下や認知症リスクの低減につながる可能性を示唆している」との見解を示している。

2.

がんの既往歴/家族歴のある女性、原発性肺がんリスク高い

 喫煙歴にかかわらず、がんの既往歴や家族歴を有する成人女性では、新規に原発性肺がんを発症するリスクが有意に高まることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)East BayのCarissa A. Villanueva氏らによる大規模後ろ向き研究で明らかになった。JTCVS Open誌2026年8月号に掲載。 本研究は、Kaiser Permanente Northern Californiaの2010年1月1日〜2022年12月31日の電子健康記録データを用いた。研究開始時点で肺がんの既往がない18歳以上の成人女性で、期間中に1年以上の加入歴を有する約280万例を抽出。喫煙状況、人種/民族、年齢、Charlson併存疾患指数、近隣困窮指数で調整したターゲット最大尤度推定法を用い、がん既往歴または家族歴を有する患者における新規原発性肺がんの有病率比(PR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした成人女性280万例が解析に組み入れられた。・何らかのがん既往歴がある女性では、原発性肺がんの有病率が88%増加した(PR:1.88、95%信頼区間[CI]:1.84〜1.92)。・がんの家族歴がある女性においても、原発性肺がんの有病率増加が認められた(PR:1.23、95%CI:1.20〜1.26)。・とくに、乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの既往歴がある女性において、その後の原発性肺がん有病率増加と有意な関連が示された。 著者らは、「がんの既往歴および家族歴は、将来の原発性肺がん発症リスク上昇と強い関連を示したことから、今回の対象集団においては、喫煙歴だけでは新規原発性肺がんの臨床的疑いを判断するには不十分であることが示唆される。肺がんスクリーニングツールの適用に関するガイドラインの再評価および拡充が賢明だろう」と提言している。

3.

テレビ視聴の多さは脳萎縮と関連

 「テレビばかり見ていると脳がだめになる」という母親の小言は、あながち的外れではないようだ。新たな研究で、テレビを頻繁に視聴することは、複数の脳領域の体積の減少や白質高信号体積の増加と関連することが示された。一方、座位で仕事をすることは、白質高信号体積の減少や複数の脳領域の体積が大きいことと関連していた。白質高信号とは、脳小血管病などによる白質の変化を反映するMRI所見で、白質病変とも呼ばれている。米南カリフォルニア大学(USC)人類進化生物学プログラムのNatan Feter氏らによるこの研究結果は、7月10日付で「Alzheimer’s & Dementia: The Journal of the Alzheimer’s Association」に掲載された。 Feter氏は、「われわれはこれまで、人々に座りっぱなしの時間を減らすよう勧めてきた。しかし今回の結果から、専門家はその推奨を、座位時間だけでなく座っている間の活動内容にも広げる必要があると考えるかもしれない。座位中の活動の種類によって、脳の健康への影響が異なる可能性があるからだ」と述べている。 この研究では、心血管と脳の健康を長期間追跡している「Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)」研究に参加した1,712人(平均年齢53歳、女性57%)のデータを解析し、座位行動と脳構造との関連を検討した。座位行動として、余暇にテレビを見る頻度と座位で仕事を行う頻度を質問票により評価した。また、脳構造の指標として、前頭葉や後頭葉などの皮質領域、視床・尾状核・被殻・淡蒼球から成る皮質下領域に加え、アルツハイマー病(AD)で早期から変化が現れやすい領域(ADシグネチャー領域)、および白質高信号の体積をMRIで測定した。 年齢や性別、身体活動、BMI、糖尿病、喫煙、飲酒などの共変量を調整して解析した結果、テレビを「頻繁に見る」と回答した人は、「ほとんど/全く見ない」と回答した人と比べて、前頭葉、後頭葉、およびADシグネチャー領域の体積が小さいこと、ならびに白質高信号体積が大きいことと関連していた。一方、「いつも座位で仕事を行う」と回答した人では「座位で仕事をほとんど/全くしない」と答えた人と比べて、白質高信号体積が小さいこと、ならびに頭頂葉、後頭葉、および前頭葉の体積は有意に大きいことと関連していた。男女別に解析したところ、座位での仕事が多いことと前頭葉の皮質体積が大きいこととの関連は男性でのみ認められるなど、座位行動と脳構造の指標との関連には男女差が見られた。 研究グループは、「医師は、患者にもっと体を動かすことを勧めるだけでなく、テレビの視聴時間を減らすことについても助言すべきかもしれない。それ以上に望ましいのは、座位で過ごすのであれば、テレビ視聴の代わりに脳を刺激する活動を取り入れることだろう」と述べている。

4.

世界で長寿化が進む一方で不健康な期間も拡大

 世界中で人々はこれまでになく長生きするようになったが、延長した人生の多くを健康問題を抱えながら過ごしているようだ。「The Lancet Public Health」8月号に掲載された研究で、平均寿命と健康寿命の差(morbidity gap)は、1990年の8.8年から2023年には10.7年へと約2年拡大したことが示された。 論文の上席著者である米ワシントン大学医学部のChristopher Murray氏は、「この研究結果は、今後の健康増進は、寿命の延長だけでなく、健康な状態で生きる期間を延ばすことによって実現されることを示唆している。健康的な老化の進展は、寿命だけでなく健康寿命によって評価されるべきであり、不健康な状態で過ごす期間(以下、不健康な期間)を減らすためには、予防、長期的な疾患管理、慢性疾患のケアへの投資を拡充する必要がある」とニュースリリースで述べている。 研究グループは、世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study〔GBD〕2023)のデータを用いて、1990~2023年における204カ国・地域の平均寿命と健康寿命の差の経時的な変化を解析するとともに、この差に寄与する主な疾患やリスク因子についても評価した。 その結果、世界の平均寿命は1990年の64.6歳から2023年には73.8歳へ、健康寿命は55.9歳から63.1歳へと延長した。一方で、平均寿命と健康寿命の差も、1990年の8.8年から2023年の10.7年へと1.9年増加し、不健康な期間も長くなった。世界全体で、平均寿命に占める不健康な期間の割合は、1990年の13.6%から2023年には14.5%へ上昇した。国別では、不健康な期間が最も長かったのは米国で平均14.0年、次いでオーストラリアが13.9年、カナダが13.7年だった。また、1990年から2023年にかけての不健康な期間の拡大は、人生の終末期に集中するのではなく、成人期全体で認められた。さらに、ほぼ全ての国・地域で女性は男性より長生きする一方、不健康な期間も長かった。2023年の不健康な期間は女性が平均12.1年、男性は9.3年だった。 不健康な期間の延長に最も大きく寄与していたのは、腰痛などの筋骨格系疾患で、その次に多かったのはうつ病や不安症などの精神疾患だった。加齢性難聴、転倒や不慮の外傷、その他の非感染性疾患なども主な要因として挙げられた。また、不健康な期間に関連する主なリスク因子は、空腹時の高血糖、高BMI、母子の栄養不良、喫煙であった。 保健指標評価研究所(IHME)のシニアサイエンティフィックライターであるCatherine Bisignano氏は、「世界のほぼ全ての地域で、女性は男性より長生きしているが、その延びた年月の多くを不健康な状態で過ごしている」と指摘する。同氏は、「健康的な老化を実現するためには、障害とともに生きる期間を長引かせる疾患やリスク因子への対策を強化する必要がある。これらに対して予防やより良い長期ケアを早期から行うことは、社会や医療制度、経済に大きな利益をもたらす可能性がある」と述べている。

5.

最大80日間の連続投与が可能な月経困難症治療薬「マルシロン配合錠」【最新!DI情報】第69回

最大80日間の連続投与が可能な月経困難症治療薬「マルシロン配合錠」今回は、月経困難症治療薬「デソゲストレル・エチニルエストラジオール(商品名:マルシロン配合錠、製造販売元:オルガノン)」を紹介します。本剤は、エストロゲンの配合量が従来薬よりも減量されており、エストロゲンに起因する副作用の発現リスクを最小限に抑えることが期待されています。<効能・効果>月経困難症の適応で、2026年6月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>1日1錠を24~80日間連続経口投与し、その後4日間休薬します。以後連続投与と休薬を繰り返します。<安全性>重大な副作用として、四肢、肺、心、脳、網膜などの血栓症があります(1.0%)。その他の副作用として、月経中間期出血(50.7%)、悪心(5%以上)、食欲減退、気分の落ち込み、抑うつ気分、気分変化、頭痛、傾眠、浮動性めまい、前兆を伴わない片頭痛、高血圧、腹部不快感、軟便、腹部膨満、肝機能異常、胆石症、筋骨格硬直、四肢痛、子宮出血、重度月経出血、異常子宮出血、骨盤痛、乳房不快感、乳房痛、乳房腫脹、乳房圧痛、末梢性浮腫、倦怠感、浮腫、体重増加、肝酵素上昇、AST増加、ALT増加(いずれも0.1~5%未満)などがあります。なお、35歳以上で1日15本以上の喫煙者は、心筋梗塞などの心血管系の障害が発生しやすくなるので禁忌です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、黄体ホルモンと卵胞ホルモンの混合ホルモン薬で、排卵抑制作用および子宮内膜増殖抑制作用により、月経時の下腹部痛や腰痛などの症状を改善します。2.1日1錠を24日から最大80日間連続して服用し、その後4日間休薬します。以降は連続して服薬と休薬を繰り返します。3.この薬を避妊目的で使用しないでください。4.飲み始めだけでなく、飲んでいる間はいつでも血栓症にかかる可能性があります。血栓症の症状に注意し、症状が現れたときはすぐに使用を中止し医療機関を受診してください。5.年齢および喫煙量により心血管系の重篤な副作用の危険性が増大するとの報告がありますので、この薬を服用している間は禁煙してください。6.この薬を服用している間は、6ヵ月ごとの検診(血圧・乳房・腹部の検査、臨床検査など)が必要です。7.妊娠または妊娠している可能性がある人は、この薬を使用することはできません。【ここがポイント!】月経困難症は、月経時または月経直前から始まる強い下腹部痛や腰部痛を主症状とし、腹部膨満感、悪心、嘔吐、下痢、頭痛などの症状が現れます。生殖年齢の女性の25%以上に認められ、とくに若年層ほどその頻度は高いといわれています。その多くは機能性月経困難症であり、学校の欠席、集中力の低下、スポーツ活動への支障など、学業や社会生活に影響を及ぼすことが指摘されています。月経困難症の痛みにはプロスタグランジン(PG)が関与しているため、治療の第1選択薬はNSAIDsです。しかし、NSAIDsで十分な鎮痛効果が得られない場合や副作用が問題となる場合には、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)が用いられます。とくに思春期の月経困難症では、日常生活への影響の軽減や子宮内膜症の進行予防の観点から、NSAIDsが有効であってもLEPを併用することがあります。月経困難症に適応のあるLEP製剤には、ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠(ヤーズ配合錠など)、ノルエチステロン・エチニルエストラジオール錠(ルナベル配合錠LD/ULDなど)、レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール錠(ジェミーナ配合錠)があります。投与方法には28日周期でプラセボまたは休薬期間を設けて消退出血を起こす「周期投与」と、長期間にわたり連続して服用する「連続投与」があります。本剤は、有効成分としてデソゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含有するLEP製剤です。経口避妊薬としてすでに発売されているマーベロンと同一成分ですが、エストロゲンに起因する副作用の発現リスクを最小限に抑える目的で、エチニルエストラジオールの配合量が0.03mgから0.02mgに減量されています。また、従来のLEP製剤との違いとして、28日(24日間の服用期間/4日間の休薬期間)から最大80日(80日間の服用期間/4日間の休薬期間)まで連続投与できる点が挙げられます。24~80日の間で、いつ消退出血を起こすかをコントロールできるので、消退出血の頻度を減らすだけでなく、個々の生活スタイルに合わせたスケジュール調整が可能になります。月経困難症の日本人患者を対象とした国内第III相臨床試験(OG8276A-301試験)において、主要評価項目である月経困難症スコア合計(TDS)を指標とするベースラインから84日までの変化量の平均値は、本剤群では-2.50±0.113、プラセボ群で-0.84±0.187でした。群間差(本剤群-プラセボ群)の平均値は、-1.67(両側95%信頼区間:-2.08~-1.26)であり、本剤のプラセボに対する優越性が検証されました。

6.

多内分泌代謝性卵巣症候群は心筋梗塞や脳卒中のリスクと関連

 若年女性に見られる卵巣関連の内分泌・代謝疾患である多内分泌代謝性卵巣症候群(polyendocrine metabolic ovarian syndrome;PMOS)は、心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇と関連している可能性がある。新たな大規模研究で、PMOSの女性では、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)イベントの発生リスクが、PMOSではない女性と比べて4倍以上高いことが明らかになった。米ペンシルベニア大学病院産婦人科のAnuja Dokras氏らによるこの研究結果は、7月20日付で「The Lancet Obstetrics, Gynaecology, & Women's Health」に掲載された。 Dokras氏は、「この研究結果は、臨床医がPMOS患者の心血管の状態を綿密に追跡・評価することの重要性を示している。また、PMOS患者自身が心血管の健康維持を心がけるとともに、喫煙、運動不足、肥満、高LDLコレステロール(LDL-C)値、糖尿病、高血圧といったリスク因子を管理することも重要である」と述べている。 PMOSでは多くの場合、卵巣内に発育途中の小卵胞が複数見られる。また、アンドロゲンの過剰産生により排卵障害や月経異常、不妊症のほか、代謝異常や心血管疾患のリスクが高まる。研究グループによると、PMOSは妊娠可能年齢の女性の約10~13%に認められるが、そのうちの最大70%は自分がPMOSに罹患していることに気付いていないという。 今回の研究では、Optum社の匿名化医療保険請求データベース(Clinformatics Data Mart Database)を用いて、ASCVDの既往がない18~50歳の女性を対象に、PMOSとASCVDイベントとの関連を検討した。対象者のうち、41万3,450人(平均年齢31.1歳)がPMOSと診断されていた。定期健康診断のICDコードを有し、年齢およびPMOS診断月をPMOS群の女性と一致させた女性206万7,250人を対照群とした。ASCVDは、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患と定義した。 その結果、ASCVDイベント全体の発生のハザード比(HR)はPMOS群で対照群よりも高く、年齢などの交絡因子で調整後もHRは4.40だった。疾患別に解析すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクは約2.5倍、脳卒中発症の前兆となる一過性脳虚血発作(TIA)のリスクは約3.4倍、末梢動脈疾患のリスクは約4倍であることも示された。媒介分析では、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病、肥満などの心血管疾患リスク因子だけでは、PMOSとASCVDとの関連の約3分の1しか説明できないことが示唆された。 PMOSは、もともとは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と呼ばれていたが、2026年5月、国際的なコンセンサスプロセスを経て、PCOSはPMOSへ名称変更された。Dokras氏は、「『多嚢胞性』という言葉は、この疾患の実態を正確に表していなかった。今回の研究で示したように、PMOSの影響は婦人科領域にとどまらない。新しい名称は、内分泌系の複数のホルモンが関与する疾患であることを示している。この名称変更により、臨床医がより包括的な医療を提供できるようになることを期待している」と述べている。

7.

健康的な脳の老化にはDHAが重要~EPAとの比較

 高齢者では脳萎縮が認知機能低下に先行することが多いため、脳構造の評価は神経保護の中間バイオマーカーとなる。近年、n-3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)、とくにドコサヘキサエン酸(DHA)の血中濃度は、脳の構造的完全性との関連が示唆されている。しかし、魚の摂取量が多く、n-3系PUFA濃度がかなり高い日本人のデータは少なく、また、脳構造との関連でDHAとエイコサペンタエン酸(EPA)を比較した研究はほとんどない。今回、滋賀医科大学NCD疫学研究センターの近藤 慶子氏らが、高齢日本人女性においてEPA、DHA、EPA+DHAの血清濃度と脳容積の関連を検討したところ、DHAはEPAよりも灰白質容積との関連が強く、EPAとの関連は限定的なことがわかった。Journal of Nutrition誌オンライン版2026年7月25日号に掲載。 本研究は、滋賀県草津市在住の60~85歳の女性527人(平均年齢:74.2歳)を対象した横断研究である。EPAおよびDHAの血清濃度をガスクロマトグラフィー法により測定した。脳容積(全脳・灰白質・白質・海馬の容積)は、1.5テスラ磁気共鳴画像法を用いて評価した。共分散分析を行い、EPA、DHA、EPA+DHA濃度の四分位に基づいて調整した脳容積の平均値を比較した。共変量には年齢、全頭蓋内容積、BMI、教育年数、喫煙・飲酒状況、歩数、糖尿病、高血圧、スタチン使用を含めた。 主な結果は以下のとおり。・血清DHA濃度は灰白質容積と有意な正相関を示した(傾向のp=0.036)が、血清EPA濃度は相関が認められなかった。EPA+DHA濃度は灰白質容積と正相関の傾向を示した(傾向のp=0.085)。・EPA、DHA、EPA+DHAの血清濃度と、白質容積、全脳容積、海馬容積との間には有意な関連は認められなかった。 今回の結果から、著者らは「DHAが豊富な食事が健康的な脳の老化にとって重要であることが裏付けられた」と結論している。

8.

マイクロプラスチックは心筋梗塞と関連?

 心筋梗塞を起こした人では、血液中からマイクロプラスチックおよびナノプラスチック(MNP)が高い割合で検出され、その濃度も高いことを示すデータが報告された。サピエンツァ大学サンタンドレア病院(イタリア)のPasquale Paolisso氏らの研究によるもので、詳細は7月14日付で「European Heart Journal」に掲載された。喫煙や大気汚染も、MNPの検出と関連があるという。 この論文では、「先行研究により、ヒトの臓器や組織にMNPが存在していることが既に示されている」と、研究背景が記されている。しかし、筆頭著者であるPaolisso氏によると、冠動脈(心臓の筋肉に血液を供給する動脈)の血液中にもMNPが存在するのか、また、喫煙や大気汚染などの環境要因がその存在に影響を与えるのかどうかという点については、「ほとんど知られていなかった」という。そこで同氏らは、冠動脈疾患の疑いのため造影検査を受けた患者61人を対象とする横断研究により、これらを検討した。 61人のうち19人はST上昇型という治療の緊急性が高い心筋梗塞(STEMI)を起こしていた。20人は冠動脈疾患があるものの心筋梗塞は起きていない慢性冠症候群で、22人は冠動脈疾患を認めない比較対照群とされた。MNPの濃度は冠動脈と末梢血管から採血した血液で測定した。大気汚染への曝露については、検査当日と過去2年間のデータを基に評価した。 STEMI群の84%で、血液中からMNPが検出された。これは、慢性冠症候群の40%や対照群の32%よりも有意に高い割合だった(P=0.002)。 MNPの検出には、喫煙や大気汚染との関連も認められた。PM2.5への長期曝露量が多い人や喫煙者では、血液中からMNPが検出されやすかった。喫煙とPM2.5への高い曝露の両方に当てはまる患者では全員からMNPが検出され、反対に、非喫煙者でPM2.5への曝露量が少ない患者では12.5%にとどまった。さらに、多変量解析では、喫煙歴がMNPの検出と独立して関連する唯一の因子だった。 論文の上席著者である同大学のEmanuele Barbato氏は、この研究結果について、「本研究は、MNPが心筋梗塞を引き起こすことを証明するものではない。しかし、大気汚染への曝露、血液中のMNP、そして冠動脈疾患との間に、強い関連性があることが明らかになった」と述べている。また、「喫煙歴と血液中のMNPの検出との間に強固な関連があった。これは、喫煙によってMNPが肺を介して血流に入りやすくなる可能性を示唆している。大気汚染も同じように作用するのかもしれない」と考察を加えている。 ヨハネス・グーテンベルク大学(ドイツ)のAndreas Daiber氏らは、本研究に関連する論説を発表。「MNPが潜在的な健康の脅威として浮上してきている。MNPはこれまで、心血管疾患のリスク因子として過小評価されていたのではないか」と述べている。今回のPaolisso氏らの報告については、「サンプルサイズが小さいという限界点はあるが、MNPが心筋梗塞などの急性心血管イベントと関連している可能性を示す、初期の臨床的エビデンスである」と評している。

9.

ブラシ検査で口腔扁平上皮がんを高精度に検出

 新たな研究で、口腔扁平上皮がん(OSCC)を1時間以内に診断できる非侵襲的なブラシ検査が、がんの検出率向上につながる可能性が示された。ブラシで採取した細胞からRNAを抽出し、対象とする遺伝子のmRNA発現量を調べる多遺伝子アッセイ「qMIDSV3」により、OSCCを感度95.7%、特異度95.1%で検出できたという。英ロンドン大学クイーン・メアリー校分子口腔腫瘍学教授のMuy-Teck Teh氏らによるこの研究結果は、6月23日付で「Biomarker Research」に掲載された。 米国がん協会(ACS)によると、米国では2026年に、口腔・中咽頭がんの新規患者数は約6万480人、これらのがんによる死亡者数は約1万3,150人になると予測されている。また、研究グループによると、口腔がん患者の53%はステージ4になってから診断されている。ステージ4はがんが最も進行した状態で、治療の成功率も低くなる。口腔・中咽頭がんのリスクが高いのは、喫煙者、多量飲酒者、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染者である。さらに、日光曝露も、特に口唇がんリスクを高める。 口腔がんの診断では、舌や歯茎、頬、扁桃などから組織を採取する生検が必要となる。そのため、特に繰り返し検査が必要な場合には、患者だけでなく医師も生検の実施に消極的になりがちだという。 過去の研究では、マイクロバイオプシーを用いた多遺伝子アッセイであるqMIDSV2の有効性が検討された。今回の研究では、マイクロバイオプシーの代わりにブラシ検査を用いた多遺伝子アッセイ(qMIDSV3)でも同等の診断精度が得られるのかが検討された。qMIDSV3では、丸いブラシを使って口腔内の疑わしい病変から細胞を採取する。その後、採取した細胞からRNAを抽出し、OSCCとの関連が知られている2つの遺伝子(INHBA、S100A16)と、発現量を標準化するための2つの参照遺伝子(YAP1、POLR2A)の、計4遺伝子のmRNA発現量を測定し、その結果をアルゴリズムで解析して悪性指数を算出し、がんの可能性を評価する。 今回の研究では、545人の患者から採取した1,090検体を解析し、ブラシ検査の有効性を検証した。解析の結果、この検査のOSCC検出の感度は95.7%、特異度は95.1%であり、偽陽性率は4.9%、偽陰性率は4.3%であった。 Teh氏は、「ブラシによる細胞採取検査の性能がマイクロバイオプシーに匹敵したことには本当に驚いた。これは、この4つの遺伝子が示す生物学的シグナルの一貫性が極めて高いため、ブラシで採取した表層の剥離細胞からでも十分検出できることを示唆している」と述べている。その上で、「患者は、分子診断に基づくトリアージのために、従来のマイクロバイオプシーのような、低侵襲ではあるものの組織採取を伴う検査を受ける必要がなくなる」と強調している。研究グループは、qMIDSV3を導入することで、不必要な外科的組織生検の最大90%を回避できる可能性があると推定している。 Teh氏は、「口腔がんの生存率は、どれだけ早期に発見できるかに直接関係している。しかし、現行の診断方法は大まかで、疑わしい病変が見つかった患者の多くは、最終的に良性であるにもかかわらず、生検を受けることになる。qMIDSV3は、こうした状況を変える可能性がある。この検査を用いれば、臨床医は患者を迅速かつ非侵襲的に、高い精度でトリアージできるようになる。さらに重要なのは、繰り返し実施できるため、前がん病変が持続する患者を定期的かつ系統的に経過観察し、従来よりもはるかに早い段階で口腔がんを発見できる可能性があることだ」とニュースリリースで述べている。 ロンドン大学クイーン・メアリー校は現在、この検査を実用化するための商業パートナーを探しており、適切な提携先が見つかれば、約2年以内の市場投入が可能になるとしている。

10.

CKDの生命予後・腎予後に対するmGFR評価の意義とeGFRの有用性(解説:浦信行氏)

 腎機能評価にはmGFRが最も有用であるが、その煩雑性から生命予後・腎予後との関連を示した成績は少ない。スウェーデンの成人のイオヘキソールを用いたmGFR値とこれらの関連を後ろ向きに評価し、併せてeGFRの有用性を後ろ向きに評価した成績がJAMA誌オンライン版で発表され、追跡期間中央値5.9年の概要がジャーナル四天王(2026年7月3日配信)に掲載された。その結果、mGFR90の群に対してmGFR60ですでに死亡率は1.21倍、腎代替療法導入では実に2.85倍の高頻度であった。この成績はmGFRで60がCKDの閾値であることを明らかにした意義のある研究である。 評価の簡便性により実臨床で頻用されるeGFRでの評価も同時に行っており、mGFRを基準として予後評価を行っている。最も頻用されている血漿クレアチニン値で算出したeGFRcrとシスタチンCで評価したeGFRcysの両者を検討したが、クレアチニンは筋肉量の影響を受け、シスタチンCは炎症、喫煙、肥満、ステロイド治療などの影響を受ける。その結果算出されたeGFRcrは筋肉量減少で実際より高値になり、eGFRcysは肥満などで高値を示す。結果的に両eGFRの平均値がmGFRでの成績に一致した。したがって、サルコペニアや肥満などの背景を有する例に対しては、両者を測定することが重要との成績である。 この報告はmGFRの予後評価における有用性を示した優れた論文であるが、eGFRについてはすでに英国のバーミンガム大学を中心とした多施設共同研究で正確な腎機能変化の評価にはクレアチニンとシスタチンCの両者を用いた方法が優れることを3年間の前向き研究で明らかにし、ジャーナル四天王(2026年4月2日配信)にその概要が掲載されている。中等度CKDのクレアチニンとシスタチンCを半年ごとに測定し、Log変換した値を用いてeGFRの3年間のスロープを評価した結果、eGFRcrとeGFRcys各々で評価した値よりは両者を併用した値が基準値であるmGFRにより近似していたと報告されており、両者を同時評価することの重要性を示唆している。日本腎臓学会でも評価方法は異なるが両者を用いたeGFRの同時評価を先行して行ってイヌリンクリアランスと対比し、2012年のCKD診療ガイドラインに両者の平均eGFRの正確度が高いと報告している。しかし、両者の平均値で評価するのも症例によっては限界がある。 超高齢化社会を迎えたわが国ではサルコペニアなどによりeGFRcrが極端に高値の場合も珍しくない。両者の併用の意義は理解できるが、症例の病態やADLを考慮した評価も念頭に置く必要があると考える。

11.

心筋梗塞を経験した人は認知機能の低下が速い

 心筋梗塞の既往がある人は認知機能の低下が速く、認知機能障害へ進行するリスクも高いことを示すデータが報告された。心筋梗塞を経験していない人と比較して、認知機能障害に進行するリスクが、1年当たり約5%高いという。米オハイオ州立大学のMohamed Ridha氏らの研究によるもので、詳細は「Stroke」に5月14日掲載された。 この研究は、脳卒中リスクの地理的・人種的差異を検討する疫学研究(REGARDS)のデータを用いて行われた。追跡開始時点(ベースライン)で認知機能障害が記録されていた人や、解析に必要なデータのない人などを除外し、2万923人(年齢中央値63歳〔四分位範囲57~70〕、女性57.2%)を、中央値10.1年(四分位範囲7.0~12.1)追跡して、認知機能の低下速度と認知機能障害の発生リスクを心筋梗塞の既往の有無で比較した。対象者は毎年1回、電話による6項目の課題から成る認知機能のスクリーニング(スコア範囲0~6)を受け、スコアが5点未満の場合に認知機能障害と判定された。 ベースラインにおいて、全体の10.4%に心筋梗塞の既往が認められた。その内訳は、自己申告があるが心電図異常は認められないケース(自己申告による心筋梗塞)が5.2%、自己申告と心電図異常がともに認められるケース(臨床的心筋梗塞)が1.3%、自己申告はないが心電図異常が認められるケース(無症候性心筋梗塞)が3.8%だった。 認知機能に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧、糖尿病、腎機能、冠動脈疾患、心房細動、教育歴、収入、抑うつ傾向、居住地域など)を調整後、心筋梗塞の既往のある人はその既往のない人よりも、認知機能障害のリスクが1年当たり4.8%高いことが示された(オッズ比〔OR〕1.048〔95%信頼区間1.025~1.072〕)。心筋梗塞を経験した自覚のない無症候性心筋梗塞のみを対象とした解析でも、ほぼ同様のリスク上昇が観察された(OR1.047〔同1.010~1.085〕)。 男女別に解析した結果、男性では、全ての心筋梗塞の既往が認知機能障害リスクと有意に関連していた。一方、女性では、自己申告による心筋梗塞と無症候性心筋梗塞は認知機能障害リスクとの関連が有意だったが、臨床的心筋梗塞については非有意だった。研究者らは、「無症候性心筋梗塞は女性に多いため、この結果は重要だ」としている。 論文の筆頭著者であるRidha氏は、これらの結果の総括として、「米国民の間では認知症や認知機能低下による負担が増大していることから、心筋梗塞のような心血管疾患が脳の健康にどのような影響を与えるかを理解することが欠かせない」と述べている。また、「心筋梗塞の既往のある患者を診る臨床医は、認知機能の低下を抑制するためにできることを伝える必要がある」と付け加えている。

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アレルギーや喘息で、がんリスクは上がる?下がる?〜JPHC研究

 アレルギーや喘息に伴う過敏な免疫反応や慢性炎症が、がん発症に防御的に働くのか、あるいは促進するのかについては、依然として議論されている。今回、国立がん研究センターの平林 万葉氏らが、日本人の多目的コホート研究(JPHC Study)から得られたデータを用いて前向き観察研究を実施したところ、アレルギーや喘息の既往はがん全体のリスクとは関連しないものの、喫煙男性では大腸がん、非喫煙女性では子宮頸がんのリスク上昇と関連することが示された。Cancer Medicine誌2026年7月号に掲載。 参加者は、自記式質問票で、医師からアレルギー、喘息、またはその両方(以下、アレルギー/喘息)と診断されたことがあるかを回答し、2013年12月まで追跡された。アレルギー/喘息の既往歴の組み合わせと、全体および部位別がんリスクとの関連について、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。また、喫煙状況によるサブグループ解析も実施した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に1万7,679例でがんが確認され、6.5%にアレルギー/喘息の既往歴があった。・アレルギー/喘息の既往歴と、日本人集団におけるがん全体の罹患リスクとの間に関連は認められなかった。・部位別に見ると、アレルギー/喘息の既往歴と甲状腺がんとの間に境界線上の関連が認められた(HR:1.54、95%CI:1.00〜2.35)。・サブグループ解析の結果、喫煙歴がありアレルギー/喘息の既往歴のある男性では、大腸がんのリスク上昇が認められた(HR:1.30、95%CI:1.03〜1.63)。・一方、喫煙歴がなくアレルギー/喘息の既往歴のある女性では、子宮頸がんのリスク上昇が示された(HR:1.98、95%CI:1.01〜3.86)。 著者らは「日本人集団においてアレルギーや喘息、またはその両方の既往歴とがんリスクとの関連は認められなかったが、一部の部位のがんとの関連が示され、さらなる調査が必要」としている。

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不規則な食事時間が老化を早める!?

 国立長寿医療研究センターの木下 かほり氏らの研究グループは、地域在住高齢者を対象に、食事時間の不規則性と生物学的老化の潜在的バイオマーカーGrowth Differentiation Factor-15(GDF-15)との関連、およびそれに対する食事の質の媒介効果を評価した。その結果、食事時間が不規則な高齢者は、規則的な高齢者と比較して年齢が有意に若いにもかかわらず、血清GDF-15が高く、食事の質が低いことが明らかになった。本研究結果は、European Geriatric Medicine誌2026年6月16日号オンライン版掲載の報告。 近年、不規則な食事時間が健康に及ぼす影響について注目されているが、生物学的老化の指標であるGDF-15と食事時間の不規則性との関連については十分に解明されていない。そこで本研究は、食事時間の不規則性とGDF-15との関連を検討し、その関連が栄養素密度の低下といった食事の質の低さによって説明できるかどうかを明らかにすることを目的とした。 研究グループは、東浦研究1)に参加した65歳以上で障害のない地域在住高齢者378例を対象に横断研究を実施。対象患者の食事習慣(規則的/不規則)は面接により評価した。食事の質については、3日間の食事記録から算出したNutrient-Rich Food Index(NRF9.2)に基づく栄養素密度のスコアを用いて評価した。また、食事時間の不規則性、食事の質、血清GDF-15の関連について、年齢、性別、併存疾患数、睡眠時間、身体活動、喫煙状況、就労状況、総エネルギー摂取量を調整した媒介分析(Mediation analysis)を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり・食事時間が不規則な群の年齢は、規則的な群に比べて有意に若かった(平均年齢±SD:73.3±4.6歳vs.75.1±5.6歳、p=0.014)。・食事時間が不規則な群では欠食率が高く、最も欠食が多かったのは朝食で、昼食、夕食と続いた。・共変量調整後、食事時間が不規則な群は規則的な群と比較して、GDF-15が有意に高く(最小二乗平均値、95%信頼区間[CI]:1,161.4pg/mL[1,063.4~1,270.2] vs. 1,028.0pg/mL[988.4~1,068.9]、p=0.009)、細胞レベルでの老化が早いことが示された。・食事時間が不規則な群は、規則的な群に比べて食事の質(NRF9.2スコア)が有意に低かった(798.3点[781.7~815.0]vs. 823.2点[815.9~830.6]、p=0.008)。・媒介分析の結果、食事の質(栄養素密度)は食事時間の不規則性とGDF-15高値との関連を部分的に説明する要因であり、その媒介割合は14.5%であった(p=0.021)。・NRF9.2スコアの分散に対する各食品群の寄与をLMG(Lindeman-Merenda-Gold)法で評価したところ、野菜(24.2%)の寄与が最も大きく、次いで魚介類(14.5%)、卵(13.4%)の順であった。・魚介類の摂取量は、規則的な群と比較して不規則な群で有意に少なかった(32.0g/1,000kcal vs. 40.3g/1,000kcal、p=0.013)。 研究者らは「横断研究であるため因果関係を明らかにできなかったものの、食事時間が不規則な高齢者は血清GDF-15が高く、その関連の約15%が食事の質の低さ(魚介類などの摂取量の少なさ)によって説明できることを初めて示した」とし、「本結果は、仕事などで食事時間が不規則になる高齢者であっても、食事の質改善が生物学的老化の進行抑制に役立つかどうかを検証する縦断研究や介入研究にむけた重要な知見を提供している」と述べ、また「将来的には、食事時間が不規則な人々を対象とした食事戦略の構築を後押しする可能性がある」と結んでいる。

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潰瘍性大腸炎の粘膜治癒、歯みがき頻度と関連

 潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸粘膜に慢性的な炎症が生じる炎症性腸疾患(IBD)の一つである。今回、日本人のUC患者275人を対象とした研究で、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒(内視鏡で大腸粘膜の炎症が認められない状態)の達成と関連することが示された。一方、残存歯数との関連は認められなかった。研究は、済生会今治病院内科の八木専氏、愛媛大学総合健康センターの古川慎哉氏らによるもので、詳細は5月28日付の「Digestive Diseases and Sciences」に掲載された。 近年、口腔内細菌叢と腸内細菌叢が相互に影響し合う「口腔-腸軸(oral-gut axis)」への関心が高まっており、口腔環境とIBDとの関連を示す報告が増えている。歯周病やう蝕(虫歯)、歯の喪失はUCやクローン病との関連が報告されているほか、歯みがきは口腔内の細菌量や炎症を減らし、腸内環境や全身の炎症反応にも影響を及ぼす可能性があると考えられている。一方で、口腔ケアとUCの病勢との関連については十分に検討されていない。また、UCでは粘膜治癒が長期寛解や良好な予後につながる重要な治療目標とされている。こうした背景から著者らは、UC患者における残存歯数および歯みがき頻度と、粘膜治癒との関連を検討した。 著者らは、2015~2019年に愛媛県内の医療機関で診療を受けたUC患者275人を対象に横断解析を行った。質問票を用いて生活習慣や口腔の健康状態を調査し、残存歯数は20本以下、21~27本、28本の3群、歯みがき頻度は1日1回以下、2回、3回以上の3群に分類した。粘膜治癒はMayo内視鏡スコア(MES)0と定義し、ロジスティック回帰分析を用いて関連を検討した。多変量解析では年齢、性別、BMI、喫煙、飲酒、プレドニゾロン(ステロイド薬)使用の有無、罹病期間、病変範囲などで調整した。 対象患者の年齢中央値は50.7歳で、58.2%が男性だった。粘膜治癒(MES 0)を達成していた患者は24.7%だった。 残存歯数と粘膜治癒との間に有意な関連は認められなかった。一方、歯みがき頻度別にみると、粘膜治癒率は1日1回以下の群で15.4%、1日2回の群で24.8%、1日3回以上の群で32.1%と、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒率は上昇する傾向を示した。 年齢や性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、プレドニゾロン使用、罹病期間、病変範囲などを調整したロジスティック回帰分析でも、歯みがき頻度は粘膜治癒と独立して関連していた(調整オッズ比 2.87、95%信頼区間 1.19~7.29、傾向性のP値=0.021)。 本研究では、日本人UC患者を対象に、歯みがき習慣と粘膜治癒との関連が検討された。その結果、歯みがき頻度が高いほど粘膜治癒と関連する一方、残存歯数との関連は認められなかった。著者らは、残存歯数は過去の口腔状態を反映する指標であり、現在の炎症活動とは一致しない一方、歯みがき頻度は口腔内環境を介して腸に影響する「口腔-腸軸」に関与する可能性があると考察している。また、UCでは症状と内視鏡所見が必ずしも一致しないことから、口腔衛生は主に粘膜炎症に関与している可能性が示唆される。 著者らは、「本研究は横断研究であり因果関係を示すものではないが、歯みがきは患者自身が日常的に実践できる簡便な生活習慣である。今後、前向き研究や介入研究で関連が確認されれば、口腔ケアがUC患者の病勢コントロールを支援する新たなアプローチとなる可能性がある」と述べている。今回の結果については、消化器疾患の管理における口腔環境の重要性を示唆するものと強調した。 なお、本研究では、歯みがき習慣や残存歯数が自己申告であることから情報バイアスの可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

15.

中年期の筋トレ習慣が糖尿病リスク低下につながる

 中年期を通して筋力トレーニングを続けている人は、2型糖尿病(T2DM)のリスクが42%低いことが明らかになった。さらに、筋トレとともに有酸素運動を行い、テレビ視聴時間が短い人では、より大きなリスク低下が認められた。浙江大学(中国)のTianyue Zhang氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に6月22日掲載された。 有酸素運動によるT2DMのリスク抑制に関しては豊富なエビデンスがあるのに対して、筋トレのエビデンスは多くなく、特に長期間の前向き研究に基づく知見は少ない。Zhang氏らはこの点について、米国の看護師健康調査(NHSおよびNHS II)と医療従事者対象調査(HPFS)のデータを用いた検討を行った。 14万3,715人(平均年齢56.0±10.5歳、女性78.3%)を19.2±5.0年追跡したところ、1万38人がT2DMを新規発症していた。 筋トレの週当たりの実施時間で、対象者を5群(0時間、0~0.5時間、0.5~1時間、1~2時間、2時間以上)に分けてT2DMリスクを比較したところ、筋トレを週2時間以上実施している群は、交絡因子(年齢、性別、人種、喫煙・飲酒・有酸素運動の習慣、摂取エネルギー量、食事の質、糖尿病家族歴、閉経前/後など)を調整後、筋トレを行っていない群に比べて、T2DMリスクが27%低いことが示された(ハザード比〔HR〕0.73〔95%信頼区間0.66~0.81〕)。また、筋トレ時間が長いほど、T2DMリスクが低いという関連も認められた(傾向性P<0.001)。 次に、追跡期間中のトレーニング量の変化との関連を検討した結果、中年期を通じて週0.5時間以上のトレーニングを維持していた群(一貫して「高」の群)は、一貫して「低」の群に比べてT2DMリスクが42%低かった(HR0.58〔同0.45~0.74〕)。トレーニング量が「低」から「高」に増加していた群(HR0.79〔0.66~0.94〕)、「高」から「低」に減少していた群(HR0.82〔0.67~0.99〕)も有意なリスク低下が見られた。しかし、追跡期間中のトレーニング量が変動していた群と一貫して「低」の群の間で、T2DMリスクに有意差は認められなかった(HR1.02〔0.86~1.21〕)。 続いて、有酸素運動や座位行動(テレビ視聴時間)を考慮した解析を実施。筋トレを週に1時間以上、有酸素運動を15MET時/週以上、テレビ視聴時間は1日2時間未満という3条件を満たす群は、いずれも満たさない群に比べて、T2DMリスクが62%低いことが分かった(HR0.38〔0.34~0.42〕)。 Zhang氏らは、これらの結果は、糖尿病予防の生活習慣に関する推奨事項に筋トレを重要な要素として含めることを支持するものだとしている。 本報告について、米ノースウェル・ヘルスのShirin Jaggi氏は、「この研究により、筋トレが糖尿病予備群や2型糖尿病の予防に非常に重要な役割を果たしていることが明確になった」と論評。また、今回の研究結果はトレーニング量だけでなく、長期的に継続することの重要性を示唆しているとの見方を示し、「30分であれ、1時間であれ、2時間であれ、トレーニングの時間をその時間まで伸ばしたら、その状態を維持することが大切だ」と述べている。

16.

加糖飲料の摂取は肝細胞がん・肝内胆管がんのリスク増加と関連

 11件の長期追跡研究に参加した150万人以上の成人の食事データを解析した研究で、加糖飲料の日常的な摂取は肝細胞がん(HCC)および肝内胆管がん(ICC)のリスク増加と関連することが示された。米国立がん研究所(NCI)のCody Watling氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月10日掲載された。 肝がんは世界で3番目に多いがん死亡の原因である。肝がんの主な組織型で最も多いのはHCCで、肝がん全体の75〜85%を占めている。研究の背景情報によると、HCCの主なリスク因子には、B型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)の慢性感染、過度の飲酒、喫煙、アフラトキシン類汚染食品の摂取、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、糖尿病、肥満などの代謝性疾患が含まれるが、HCCの35%は既知のリスク因子では説明できないという。肝臓は主要な代謝器官であり、解毒において重要な役割を果たしていることから、食事などの外因性因子による影響を受けやすいと考えられる。 こうした点を踏まえて今回の研究では、がん発症を長期追跡した11件の前向きコホート研究のデータを用いて、人工甘味料入り飲料(ASB)および加糖飲料(SSB)の摂取と、肝がん全体、HCCおよびICCの発症リスクとの関連を検討した。ASBにはダイエットソーダやダイエットコーラ、その他の低カロリー甘味飲料が含まれた。一方、SSBにはコーラ、炭酸飲料、カフェインレス炭酸飲料、ジュース類などが含まれた。 11件のコホート研究のうち、10件は米国のコホート、残る1件はヨーロッパのコホートを対象としたもので、いずれの研究参加者もベースライン時点でがんの既往がなかった。研究参加者は1980~2009年に各コホート研究へ登録され、その後、2000~2019年まで追跡された。追跡期間中央値は11.4~31.4年で、参加者の総計は151万8,411人(平均年齢57.8歳、女性58.2%)に上った。 追跡期間中央値17.8年の間に、2,811人(HCC:1,699人、ICC:444人)が肝がんを発症した。解析の結果、ASBの摂取量が1日1杯増加しても肝がん全体、HCCおよびICCの有意なリスク増加は認められなかった。また、SSB摂取量が1日1杯増加しても肝がん全体のリスクとの関連は認められなかったが、HCC(ハザード比1.10、95%信頼区間1.03~1.18)およびICC(同1.15、1.00~1.32)のリスク増加と関連していた。糖尿病の有無による有意な効果修飾は認められなかった。 ただし研究グループは、この結果はSSBが肝がんの原因であることを証明するものではないと強調している。それでもなお、SSBの摂取が長期的な健康リスクと関連するというこれまでの証拠を補強するものだとの見方を示している。

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禁煙成功には“自信”が重要?働く世代対象の禁煙支援研究

 禁煙支援では、ニコチン依存の強さが禁煙成功に影響するとされているが、本人の「禁煙できる」という自信も重要かもしれない。今回、日本の企業向け禁煙プログラム参加者を対象とした研究で、禁煙への自信の高さが、加熱式たばこ利用者を含め禁煙成功と関連する可能性が示された。研究は北里大学大学院医療系研究科の吉原翔太氏らによるもので、詳細は5月19日付の「Journal of Medical Internet Research(JMIR)」に掲載された。 スマートフォンアプリやニコチンガム・パッチを用いた禁煙支援が広がる中、禁煙成功に関わる要因への関心が高まっている。ニコチン依存度に加え、「禁煙できる」という心理的要因の重要性も指摘されているが、加熱式たばこ利用者を含めた検討は限られていた。こうした背景から、著者らは企業向け禁煙プログラム参加者を対象に、ニコチン依存度や禁煙への自信と禁煙成功との関連を検討した。 著者らは、日本の38社で実施された企業向け禁煙プログラムに参加した労働者のデータを用いて研究を行った。この禁煙プログラムでは、12週間、デジタル・ピアサポートアプリ「みんチャレ」(A10Lab Inc.)と、参加者の喫煙量に応じて提供量を調整したニコチンガム・ニコチンパッチを併用した。アプリでは匿名グループチャットを通じ、参加者同士が禁煙の進捗や写真、コメントなどを共有した。ニコチン依存度は起床後最初の喫煙までの時間で評価(30分以内を高依存、30分超を低依存と定義)し、禁煙への自信は0~10点で評価(中央値を基準に高低2群に分類)した。解析では、紙巻きたばこ利用者、加熱式たばこ利用者、両者の併用者ごとに、ニコチン依存度や禁煙への自信と禁煙成功との関連を検討した。禁煙成功は、4週間以上の禁煙継続と定義した。 解析対象は2,143人で、平均年齢は46.5歳、約90%が男性だった。全体の禁煙成功率は53.8%だった。禁煙成功群では、禁煙への自信が高い傾向を示したほか、アプリ投稿頻度やグループメンバーからの承認数も多かった。 禁煙への自信が高い参加者では、禁煙成功率は63.4%で、自信が低い参加者の47.6%を上回った。自信が低い群と比べた禁煙成功の調整オッズ比(OR)は1.81(95%信頼区間〔CI〕 1.55~2.12)だった。この関連は、紙巻きたばこ利用者、加熱式たばこ利用者、併用者のいずれでも認められた。一方、ニコチン依存度と禁煙成功との有意な関連が認められたのは紙巻きたばこ利用者のみだった。 また、紙巻きたばこ、加熱式たばこ、併用のいずれでも、「ニコチン依存度が低く、禁煙への自信が高い群」で最も禁煙成功率が高かった。さらに、ニコチン依存度が高くても、禁煙への自信が高い群では高い禁煙成功率がみられた。 著者らは、たばこの種類を問わず、禁煙への自信の高さが、禁煙成功と関連する重要な要因である可能性が示唆されたとしている。 なお、著者らは、本研究の限界点として、禁煙成功を自己申告で評価しており客観的検証を行っていないことに加え、対象の大半が日本の大企業に勤務する男性だったため、結果の一般化には注意が必要と述べている。

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ピロリ除菌後の胃がん、喫煙が独立したリスク因子

 Helicobacter pylori(H. pylori)除菌に成功した後も胃がんが発症するリスクは残存し、喫煙が独立したリスク因子であることが、日本の全国規模コホート研究で示された。現在喫煙者における毎日の飲酒は、非喫煙・非飲酒者と比較して胃がんリスクのさらなる上昇と関連していた。朝日生命成人病研究所 附属病院の新井 絢也氏らによる本研究はHelicobacter誌2026年5・6月号に掲載された。 研究グループは、2014~23年の日本の医療保険請求データおよび健康診断データを用いて、後ろ向きコホート研究を実施した。H. pylori除菌に成功した患者を対象に、除菌開始から1年後を追跡開始時点として、最終保険記録日、胃がん発症、死亡のいずれか早い時点まで追跡した。主要評価項目は、除菌成功から1年以上経過後に発症した胃がんとした。対象は5万9,274例(平均年齢64.9歳、男性44.6%)で、平均追跡期間は3.66年であった。胃がん発症およびリスク因子の評価には、Kaplan-Meier法および年齢・性別で調整したCox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に649例(1.44%)が胃がんを発症し、5年累積発症率は1.47%であった。男性および除菌時の高齢は胃がん発症率の有意な上昇と関連していた(p<0.001)。・さまざまな生活習慣因子を検討した結果、喫煙のみが胃がんリスクの上昇と独立して関連しており、調整ハザード比(aHR)は1.37(95%信頼区間[CI]:1.05~1.78)であった。さらに、現在喫煙者における毎日の飲酒は、非喫煙・非飲酒者と比較して胃がんリスクのさらなる上昇と関連し、aHRは1.80(95%CI:1.22~2.66)であった。 著者らは「本研究の結果から、H. pylori除菌成功後も胃がんリスクは残存し、喫煙は除菌後の胃がんリスク上昇と関連していることが示された。禁煙がこの集団におけるリスク低減に寄与する可能性がある。本結果は、年齢、性別といった特性とともに、喫煙、飲酒といった生活習慣因子を考慮することが、リスク層別化に基づいた検診戦略の設計に有用である可能性を示唆している。ただし、本研究は後ろ向き観察研究であるという制限があり、因果関係の確立には今後のさらなる検証が必要である」とした。

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大気汚染物質への長期曝露は冠動脈疾患の進行と関連

 大気汚染への長期曝露は、たとえ曝露レベルが中等度であっても冠動脈疾患(CAD)の進行と関連することが、新たな研究で示された。大気汚染物質であるPM2.5および二酸化窒素(NO2)への曝露レベルが高い人ほど、心臓のCT画像で評価した冠動脈石灰化スコア(CACS)とプラーク負荷が高かったという。トロント大学(カナダ)医療画像学分野のKate Hanneman氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月9日掲載された。 Hanneman氏によると、本研究の対象者における大気汚染物質への10年間の曝露量中央値は、カナダの現行の空気質基準を大きく下回っていたという。同氏は、「現行の空気質基準値を下回る曝露レベルであっても、大気汚染物質への長期曝露はCADの進行と独立して関連していた。このことは、現行の規制では必ずしもCADの発症や進行を十分に防げない可能性を示している。大気汚染は、血圧、コレステロール値、喫煙と並ぶ、修正可能な心血管リスク因子として位置付けられるべきだ」と述べている。 研究グループによると、過去の研究では、大気汚染物質が心血管疾患の主要な環境リスク因子であることが示されている。今回の研究では、2012年から2023年の間にトロントの3つの主要な病院で心臓CT検査を受けた成人1万1,128人(平均年齢59.1歳、男性51.7%)のCT画像を用いて、大気汚染物質への長期曝露とCAD進行との関連を性別ごとに評価した。対象者のうち7,313人が冠動脈造影検査を受けていた。CAD進行は、CT画像からCACS、プラーク総負荷、および70%以上の狭窄(閉塞性CAD)の有無により評価した。大気汚染曝露は、過去10年間の居住地ベースでのPM2.5およびNO2の平均曝露量として推定した。 10年間の大気汚染物質曝露の中央値は、PM2.5が7.5μg/m3、NO2が13.4ppbだった。解析の結果、PM2.5曝露量が1μg/m3増加するごとにCACSが10.7%上昇し、プラーク総負荷のカテゴリーが1段階上がるオッズが12.5%増加し、閉塞性CADのオッズが22.6%増加することが示された。また、NO2が1ppb増加するごとに、CACSが1.5%上昇し、プラーク総負荷のカテゴリーが1段階上がるオッズは2.2%、閉塞性CADのオッズは3.6%増加した。性別ごとに解析すると、大気汚染物質への長期曝露は、女性では閉塞性CADリスクの有意な上昇と関連していた(PM2.5:オッズ比1.81、P=0.048、NO2:オッズ比1.06、P=0.04)。一方、男性では、大気汚染物質への長期曝露とCAD進行との間に有意な関連は認められなかった。 Hanneman氏は、「本研究は、高所得国に典型的な中程度の大気汚染曝露レベルの集団を対象に、心臓CTを用いて大気汚染物質への曝露とCAD進行との関連を示した最大規模の研究の一つである。評価にはCACSだけでなく、プラーク総負荷や閉塞性CADも含まれていた」と述べている。 Hanneman氏は、「冠動脈アテローム性動脈硬化において、このような低い曝露レベルでも測定可能なシグナルが検出されるという事実は、大気汚染物質による心血管系への有害な影響に明確な安全閾値が存在しない可能性を示唆している。また、比較的空気がきれいとされる国々の住民であっても、環境曝露による心血管リスクは無視できない水準にある可能性がある」と述べている。

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震災後の住まい、6年後の孤立リスクに差

 災害後の生活再建では、住まいの確保が重要な課題となる。今回、東日本大震災後の東北地域住民を対象とした大規模研究により、震災から6年後の住居形態が社会的孤立と関連していたことが分かった。特に男性では、賃貸住宅で孤立リスク上昇、被災地で住宅再建した場合にはリスク低下との関連が示された。研究は、岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座(いわて東北メディカル・メガバンク機構兼務)の事崎由佳氏らによるもので、詳細は5月13日付の「BMJ Public Health」に掲載された。 東日本大震災では、多くの住民が家屋被害や転居を経験し、慣れ親しんだ地域や人間関係の喪失による社会的孤立が懸念されてきた。社会的孤立は、社会的ネットワークの縮小や他者との接触不足を示す指標であり、心血管疾患、抑うつ症状、認知機能低下などとの関連が報告されている。震災後の研究でも、孤立が抑うつ症状や死亡リスク上昇と関連することが示されている一方、被災後の住居形態と孤立の関係を長期的に検討した研究は限られていた。こうした背景から、著者らはいわて東北メディカル・メガバンク機構の地域住民コホート調査を用い、震災6年後の住居形態と社会的孤立との関連を検討した。 著者らは、いわて東北メディカル・メガバンク機構の地域住民コホート調査(TMM CommCohort Study)に参加した人のうち、岩手県住民1万6,610人(男性5,828人、女性1万782人、平均年齢59.4±11.1歳)を対象に解析を行った。震災6年後の住居形態を、震災前からの自宅、仮設・みなし仮設住宅、賃貸住宅など8種類に分類した。社会的孤立はLubben Social Network Scale-6(LSNS-6)を用いて評価し、12点未満を孤立と定義した。住居形態と社会的孤立との関連について、性別および65歳未満/65歳以上で層別化した上で、多変量ロジスティック回帰分析により調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。解析では、喫煙、飲酒、既往歴、就労状況、抑うつ症状に加え、ベースライン時点の社会的孤立も調整因子として考慮した。 震災6年後の時点で、社会的孤立の割合は男女とも賃貸住宅居住者で高く、男性48.0%、女性36.0%だった。男性では、仮設・みなし仮設住宅や災害公営住宅でも社会的孤立が多くみられた。 多変量解析の結果、男性では賃貸住宅に住む人で社会的孤立リスク上昇との関連が認められ、特に65歳未満で顕著だった(OR 1.87、95%CI 1.06~3.28)。一方、65歳未満で被災地に住宅を再建した男性では、社会的孤立リスク低下との関連が示された(OR 0.41、95%CI 0.20~0.86)。 また、65歳以上の男性では、仮設・みなし仮設住宅居住者で社会的孤立リスク上昇との関連がみられたが、この関連はベースライン時点の社会的孤立を調整すると有意ではなくなった。女性では、65歳以上で親族・知人宅に住む人を除き、住居形態と社会的孤立との有意な関連は認められなかった。 著者らは、災害後の住居形態が社会的孤立の重要な決定因子となる可能性があり、その影響は性別や年齢によって異なると結論付けている。その上で、災害復興時の住宅政策では、住居確保だけでなく、地域のつながりやコミュニティの維持、脆弱な集団への配慮といった社会的側面を組み込む重要性を強調している。 なお、著者らは本研究の限界点として、住居形態と社会的孤立を同時点で評価しており因果関係を断定できないこと、観察研究であるため残余交絡を否定できないこと、さらに東日本大震災特有の状況であり他災害への一般化に限界があることなどを挙げている。

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