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抗線維化作用と免疫調整作用を併せ持つ肺線維症薬「ジャスケイド錠9mg/18mg」【最新!DI情報】第64回

抗線維化作用と免疫調整作用を併せ持つ肺線維症薬「ジャスケイド錠9mg/18mg」今回は、経口ホスホジエステラーゼ(PDE)4B阻害薬「ネランドミラスト(商品名:ジャスケイド錠9mg/18mg、製造販売元:日本ベーリンガーインゲルハイム)」を紹介します。本剤は抗線維化作用と免疫調整作用を有し、PDE4Bに対して高い選択性を持つ阻害薬であり、希少難病である特発性肺線維症および進行性肺線維症患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>特発性肺線維症および進行性肺線維症の適応で、2026年5月18日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはネランドミラストとして1回18mgを1日2回経口投与します。なお、患者の忍容性に応じて、1回9mg 1日2回に減量することができます。<安全性>重大な副作用として、重度の下痢(1.3%)があります。その他の副作用として、下痢(30.8%)、食欲減退、悪心、体重減少(いずれも1%以上10%未満)、心房細動、背部痛(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、抗線維化薬および免疫調整薬と呼ばれる薬です。ホスホジエステラーゼ(PDE)4Bという酵素を阻害することによって、特発性肺線維症および進行性肺線維症の病態形成や進行に関与する反応を抑えます。 2.この薬は光に不安定なため、服用する直前にシートから取り出してください。 3.妊娠する可能性がある女性は、この薬を使用している間および使用終了後4日間は適切に避妊してください。 4.妊娠または妊娠している可能性がある女性は、医師または薬剤師に相談してください。 <ここがポイント!>特発性肺線維症(IPF)は、原因不明で肺が硬くなる特発性間質性肺炎の一種で、国の指定難病です。予後は不良で、未治療の場合の生存期間中央値は3~5年とされています。発症原因は完全には解明されていませんが、加齢、喫煙、生活環境、遺伝的素因などの関与が考えられています。一方、進行性肺線維症(PPF)は、IPF以外の間質性肺疾患のうち、IPFに類似した進行性の線維化を特徴とする疾患群の総称です。これらの肺線維化および炎症の病態形成には、肺に高発現するホスホジエステラーゼ(PDE)4Bが中心的な役割を担っていると考えられています。ネランドミラストは、PDE4Bに対して高い選択性を有する阻害薬です。本剤は、PDE4Bを阻害することで、細胞内セカンドメッセンジャーであるcAMPの濃度を上昇させます。その結果、IPFおよびPPFで過剰に産生される線維化促進性の増殖因子や炎症性サイトカインの発現を抑制し、抗線維化作用および免疫調整作用を発揮すると考えられています。IPF患者を対象とした国際共同第III相試験(FIBRONEER-IPF試験[1305-0014試験])において、主要評価項目である52週時の努力性肺活量(FVC)のベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群-183.5mL(95%信頼区間[CI]:-210.9~-156.1)、本剤9mg群-138.6mL(95%CI:-165.6~-111.6)、本剤18mg群-114.7mL(95%CI:-141.8~-87.5)でした。プラセボ群との調整済み平均値の差は、本剤9mg群では44.9mL(95%CI:6.4~83.3、p=0.0222)、本剤18mg群では68.8mL(95%CI:30.3~107.4、p=0.0005)であり、いずれの用量においてもプラセボ群に対し統計学的に有意な差が認められました。

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RET融合遺伝子陽性NSCLC、セルペルカチニブによるアジュバント療法でEFS改善(LIBRETTO-432)/ASCO2026

 RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、選択的RET阻害薬セルペルカチニブは進行・転移例で有効性が示されている。一方で、早期・局所進行NSCLCに対するアジュバント療法としての有効性と安全性は明らかになっていない。そこで、StageIB~IIIAのRET融合遺伝子陽性NSCLC患者を対象に、アジュバント療法としてのセルペルカチニブの有用性を検証する国際共同第III相試験「LIBRETTO-432試験」が実施された。その結果、セルペルカチニブはプラセボと比較して無イベント生存期間(EFS)を有意に改善することが示された。Jonathan W. Goldman氏(米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校)が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。なお、本研究結果はNEJM誌オンライン版2026年5月31日号に同時掲載された1)。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験・対象:StageIB~IIIAのRET融合遺伝子陽性NSCLC患者で、根治目的の局所治療(手術または放射線療法)後に再発・進行のない患者151例(補助化学療法は許容)・試験群(セルペルカチニブ群):セルペルカチニブ(体重50kg以上では160mg 1日2回、50kg未満では120mg 1日2回)を最長3年 75例・対照群(プラセボ群):プラセボを最長3年(再発・病勢進行時はクロスオーバーを許容) 76例・評価項目:[主要評価項目]治験担当医師評価によるEFS(StageII~IIIA)[副次評価項目]治験担当医師評価によるEFS(StageIB~IIIAの全体集団)、盲検下独立中央判定(BICR)によるEFS、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・主要解析集団は、StageII/IIIAの患者109例(セルペルカチニブ群54例、プラセボ群55例)であった。・主要解析集団の患者背景として、女性(セルペルカチニブ群63.0%、プラセボ群54.5%)、東アジア(それぞれ57.4%、56.4%)、非喫煙者(それぞれ68.5%、69.1%)が多かった。ほぼ全例が手術を受け(それぞれ100%、98.2%)、90%超がアジュバント療法として全身療法を受けていた(それぞれ92.6%、90.9%)。・主要解析集団における治験担当医師評価による2年EFS率は、セルペルカチニブ群91.5%、プラセボ群61.1%であり、セルペルカチニブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.172、95%信頼区間[CI]:0.058~0.509、p=0.0003)。・全体集団においても、治験担当医師評価によるEFSはセルペルカチニブ群で有意に改善した(2年EFS率:93.8%vs.69.6%、HR:0.165、95%CI:0.056~0.485、p=0.0002)。・主要解析集団の治験担当医師評価によるEFSに関するサブグループ解析では、症例数およびイベント数が少ないため解釈には注意が必要であるものの、ほとんどのサブグループで、セルペルカチニブ群で良好な傾向がみられた。・主要解析集団のプラセボ群のうち、16例(29.1%)がセルペルカチニブへクロスオーバーした。・OSデータは未成熟であった。データカットオフ時点で死亡は3例報告され、いずれもセルペルカチニブへクロスオーバーしたプラセボ群の患者であった。・全体集団における安全性について、Grade3以上の有害事象はセルペルカチニブ群66.7%、プラセボ群23.7%に認められた。治療中止に至った有害事象はそれぞれ17.3%、1.3%に認められた。中断・減量に至ったのはそれぞれ88.0%、46.1%であった。・セルペルカチニブ群でとくに多く認められた有害事象(セルペルカチニブ群の50%以上に発現)はALT上昇(セルペルカチニブ群62.7%、プラセボ群18.4%)、AST上昇(60.0%、15.8%)であった。セルペルカチニブのとくに注目すべき有害事象では、過敏症(6.7%、0%)、QT延長(9.3%、1.3%)が報告された。 本研究結果についてGoldman氏は、セルペルカチニブのベネフィットの持続性や、再発様式、中枢神経系の保護作用、クロスオーバーの影響を評価するためには、より長期の追跡が必要であることを指摘しつつ「早期RET融合遺伝子陽性NSCLCにおけるアジュバント療法として、セルペルカチニブは新たな標準治療の1つとなることを支持するものである」とまとめた。

3.

日本のがん死亡率低下も、大腸がん・膵がん・子宮頸がんは依然高水準

 日本では全がんの年齢調整死亡率(ASR)が着実に低下している一方で、大腸がん、膵がん、子宮頸がんなど一部のがん種では依然として国際的に高い死亡率が続いていることが明らかになった。胃がんと肝がんでは大幅な改善が認められたものの、予防や検診による死亡率低下が期待されるがん種において十分な成果が得られていない実態が浮き彫りとなった。国立がん研究センターの片野田 耕太氏らによる本研究の結果はJapanese Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年3月5日号に掲載された。 研究では、国際がん研究機関(IARC)のGlobal Cancer Observatoryデータベースおよび各国の人口動態統計を用い、日本、韓国、米国、英国、カナダ、オーストラリアなどの高所得国における1980~2024年のがん死亡率の推移を比較した。解析対象は全がんに加え、胃がん、大腸がん、肝がん、膵がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮体がんだった。肝がん・胃がんは日本の成功事例 歴史的に日本で死亡率が高かった胃がんと肝がんについては、長期的に大幅な減少がみられ、欧米諸国との国際格差は大幅に縮小した。とくに女性の肝がん死亡率については、日本が欧米諸国を下回る水準にまで低下した。著者らはこの背景として、B型・C型肝炎ウイルス検査の全国的な実施、妊婦へのHBs抗原検査、さらには直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の普及といった一連の肝炎対策が有効に機能したと考えられ、WHOが掲げる2030年までのC型肝炎排除目標に向け、国際的なモデルケースになり得る、としている。 一方、胃がんも日本における死亡率は低下し続けているものの、韓国の減少速度には及ばなかった。日本ではヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用拡大など1次予防が進む一方、韓国では内視鏡検診を中心とした2次予防が強力に推進されている。また、韓国では国家健康保険制度により検診データが一元管理されているのに対し、日本では職域検診の精度管理やデータ統合に課題が残ることが示唆された。大腸がん・膵がん・子宮頸がんは深刻な高水準 大腸がん死亡率は1980年代には欧米のほうが高かったが、その後減少が進んだ。これに対し日本では明確な低下傾向がみられず、近年では比較対象国の中でも高い水準となっている。韓国も近年減少傾向に転じており、日本との差が広がっている。 膵がんは、日本において男女とも死亡率の上昇が続いており、国際的にみても高い水準が際立っている。早期発見が困難で予後不良な疾患であるが、喫煙や2型糖尿病が重要なリスク因子であり、禁煙や糖尿病管理といった1次予防の重要性が改めて示された。 子宮頸がんにおいても、日本の相対的な立ち位置は悪化した。欧米諸国や韓国では死亡率が大幅に減少した一方、日本では高止まりが続いている。HPVワクチンの積極的勧奨の中止と再開の経緯もあって接種率はいまだ不十分であり、ワクチン接種と検診の双方を速やかに強化する必要性が示された。乳がん・肺がんでも改善が緩やか 女性の乳がん死亡率は欧米では着実に低下している一方、日本では増加傾向が続き、差は縮小している。男性の肺がんでも欧米に比べて死亡率低下が緩やかであり、近年では日本の死亡率が欧米を上回る状況となっている。一部のがんでは予防を強化する必要性 本研究により、日本の全がんのASRは他国と同様に引き続き低下していることが示された。とくに、かつて日本の死亡率の高さの要因となっていた胃がん、肝がんで持続的な低下がみられ、欧米諸国との差は縮小し、女性の肝がんでみられるように一部では逆転している。一方で、日本は大腸がん、膵がん、および子宮頸がんにおいて依然として最も高い死亡率を示している。女性の乳がんおよび男性の肺がんでは、日本における低下の遅れ、あるいは継続的な増加により、死亡率が欧米諸国の水準に近づいている。これらのがんの多くでは、1次予防および2次予防の方法が確立されており、胃がん、肝がんで達成された死亡率低下を再現するために、予防対策を強化する必要性が示唆される。

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1次予防における脂質低下療法の指標としてapoBは費用対効果に優れる(解説:佐田政隆氏)

 高コレステロール血症、高血圧、喫煙、糖尿病、肥満などが心臓病の危険因子であることは現代では当たり前となっているが、1948年に米国で開始されたフラミンガム研究によって初めて明らかにされた。 コレステロールや中性脂肪といった脂質は疎水性であり、アポ蛋白と結合して「リポ蛋白」と呼ばれる球状の複合体粒子として血液中を運搬される。 リポ蛋白粒子の中で、LDLは末梢にコレステロールを供給する動脈硬化惹起性の「悪玉」、HDLは末梢からコレステロールを引き抜く「善玉」として知られている。LDL中のコレステロール値や、総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたnon-HDLコレステロール値が、冠動脈疾患のリスク評価や脂質低下療法の指標として現在広く用いられている。 最近の研究では、LDLの中でも粒子サイズが大きいものは動脈硬化惹起性が低い一方、粒子が小さいものは血管壁の隙間に入り込みやすく動脈硬化のリスクを大幅に高めることがわかってきた。大型LDL粒子が多い場合、LDLコレステロール値としては高く検出される一方、小型LDL粒子が多い場合、動脈硬化惹起性が高いにもかかわらずLDLコレステロール値としては低く検出されることが問題視されてきた。 apoBはLDLを形成するアポ蛋白であるが、個々のLDL粒子に1個存在するために、apoB値を測定すればLDL粒子数を評価することができる。メタボリックシンドロームなど代謝的に不健康な状態ではLDLコレステロール値とapoB値が乖離しており、リスクの予測や脂質低下療法の指針として、LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールより、apoBのほうが優れていることが報告されてきた。最近発表された2026年版AHA/ACC脂質異常症管理ガイドラインでも、apoB測定がIIa(脂質低下療法中)もしくはIIb(脂質低下療法をしていない場合)として推奨されている(エビデンスレベルB-NR)。日本においても、apoB測定は「脂質異常症(高脂血症)」の診療で保険が適用される。しかし、apoB測定に関する費用対効果に関する評価はまだなされておらず、実臨床ではほとんど用いられていないのが現状である。 そこで本研究では、1次予防としてスタチン治療が適格な米国成人25万人を対象としてシミュレーションモデルを行い、LDLコレステロール値、non-HDLコレステロール値、apoB値を目標とした場合の脂質低下療法の費用対効果を比較検討した。 目標値としてLDLコレステロール値(100mg/dL未満)を用いる場合と比較してnon-HDLコレステロール値(118mg/dL未満)を用いるほうが、質調整生存年が965QALY改善し、費用が210万ドル削減された。 apoB値(78.7mg/dL未満)を目標にすると、non-HDLコレステロール値を目標とする場合と比較して質調整生存年が1,324QALY増加し、費用が4,020万ドル増加した。増分費用効果比(ICER)は、約3万ドル/1QALYであり、米国や日本で、費用対効果が良いと判断される基準を下回っていた。 現在、冠動脈疾患のリスク評価と脂質低下療法の戦略決定にはLDLコレステロール値が圧倒的に主流として使われている。「急性冠症候群などハイリスク症例ではLDLコレステロールを55mg/dLや40mg/dLを目標にした積極的な脂質低下療法が必要だ」と、PCSK9阻害薬の講演会で何度も強調されている。しかし、LDLコレステロール値を大きく低下させても冠動脈疾患を引き起こす患者がいるのも事実である。今後、各種の前向き研究が行われて、LDLコレステロール値ばかりでなく、apoBや最近注目されているLp(a)、高感度CRP値を指標にして、有効な冠動脈疾患の予防法が開発されていくことが望まれる。その場合、費用対効果も考慮する必要がある。

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頻回増悪を示すCOPD、astegolimabが好酸球数によらず増悪を抑制か(ALIENTO・ARNASA併合解析)/ATS2026

 既存の維持療法によっても増悪リスクが残存する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者が存在し、新たな治療選択肢が求められている。IL-33受容体であるST2を標的とするモノクローナル抗体astegolimabは、頻回増悪歴を有するCOPD患者を対象として、開発が進められている。本剤について、海外第IIb相試験「ALIENTO試験」および国際共同第III相試験「ARNASA試験」が実施されており、米国胸部学会国際会議(ATS2026 International Conference)において、2試験の併合解析結果をJadwiga A. Wedzicha氏(英国・インペリアル・カレッジ・ロンドン)が報告した。併合解析の結果、astegolimab 2週ごと投与は、ベースライン時の血中好酸球数にかかわらず、主要評価項目の中等度または重度のCOPD増悪の年間発現率をプラセボと比較して低下させ、忍容性も良好であることが示された。本解析結果は、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌オンライン版2026年5月18日号に同時掲載された1)。 なお、ALIENTO試験およびARNASA試験の結果は、Lancet誌オンライン版2026年5月18日号に掲載された2)。astegolimab 2週ごと投与は、ALIENTO試験において主要評価項目を達成したが、ARNASA試験では主要評価項目を達成しなかった。 ALIENTOは海外第IIb相試験、ARNASAは国際共同第III相試験であり、いずれも頻回増悪歴を有するCOPD患者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。対象は、12ヵ月間に中等度または重度のCOPD増悪を2回以上経験し、modified Medical Research Council(mMRC)グレード2以上で、最適化された維持療法を受けている患者とした。ベースライン時の血中好酸球数、慢性気管支炎の有無、喫煙歴を問わず組み入れられた。対象患者は、astegolimab 476mgを2週ごとに投与する群(Q2W群)、4週ごとに投与する群(Q4W群)、プラセボを投与する群(プラセボ群)に1:1:1の割合で割り付けられ、52週間の治療を受けた。主要評価項目は、52週時点までの中等度または重度のCOPD増悪の年間発現率とした。副次評価項目は、St. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)-C合計スコアの変化、重度のCOPD増悪の年間発現率、中等度または重度増悪の初回発現までの期間、気管支拡張薬投与後1秒量(FEV1)の変化、E-RS:COPD合計スコアなどとした。なお、今回の併合解析は事前規定されたものである。 主な結果は以下のとおり。・併合解析のmodified ITT集団は、Q2W群892例、Q4W群896例、プラセボ群888例であった。患者背景は各群でおおむねバランスがとれていた。平均年齢はそれぞれ66.76歳、67.10歳、67.14歳、男性の割合は60.3%、60.2%、60.4%であった。・血中好酸球数の平均値は、Q2W群183.5/μL、Q4W群187.6/μL、プラセボ群176.5/μLであった。血中好酸球数300/μL以上の患者は、それぞれ13.9%、13.1%、11.4%であった。・52週時点までの中等度または重度のCOPD増悪の年間発現率は、Q2W群1.04、Q4W群1.07、プラセボ群1.22であった。プラセボ群に対するレート比は、Q2W群0.85(95%信頼区間[CI]:0.76~0.96、p=0.0077)、Q4W群0.88(95%CI:0.78~0.99、p=0.0265)であった。・事前規定されたサブグループ解析において、ベースライン時の血中好酸球数、喫煙歴などのほとんどのサブグループで、Q2W群の中等度または重度のCOPD増悪の減少が一貫して認められた。プラセボ群と比較したレート比は、血中好酸球数150/μL未満では0.82、150/μL以上では0.88、300/μL未満では0.87、300/μL以上では0.73であった。・重度のCOPD増悪の年間発現率は、Q2W群0.15、プラセボ群0.22で、プラセボ群に対するレート比は0.68であった(95%CI:0.52~0.87、名目上のp=0.0028)。・52週時点でSGRQ-C合計スコアがベースラインから4点以上改善した患者の割合は、Q2W群がプラセボ群より高かった(オッズ比:1.35、95%CI:1.11~1.64、名目上のp=0.0029)。・SGRQ-C総スコアのベースラインからの変化量、気管支拡張薬投与後FEV1の変化量、E-RS:COPD総スコアの変化量については、明確な群間差は示されなかった。・安全性評価集団における100人年当たりの有害事象発現率は、Q2W群365、Q4W群403、プラセボ群408であった。重篤な有害事象はそれぞれ100人年あたり39、41、48であった。 本併合解析について、Wedzicha氏は「astegolimab 2週ごと投与は、頻回増悪歴を有するCOPD患者において良好なリスク・ベネフィットプロファイルを示した」とまとめた。

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COVID-19患者の同居家族、エンシトレルビルで発症予防/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状発現後72時間以内に、患者の同居家族に対してエンシトレルビルを投与することにより、接触者のCOVID-19発症を抑制できることが示された。米国・バージニア大学のFrederick G. Hayden氏らSCORPIO-PEP(Stopping Covid-19 Progression with Early Protease Inhibitor Treatment for Post-Exposure Prophylaxis) Study Teamが、日本を含む5ヵ国共同で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照試験「第III相SCORPIO-PEP試験」の結果を報告した。エンシトレルビルは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)3CLプロテアーゼの経口阻害薬であり、本邦においては軽症~中等症COVID-19の治療薬として承認されている。これまで、COVID-19患者の同居家族に対する曝露後予防薬として承認された抗ウイルス薬はなかった。NEJM誌2026年5月14・21日合併号掲載の報告。COVID-19発症後72時間以内に、家庭内接触者を無作為化 研究グループは、COVID-19患者(指標患者)の同居家族で試験実施機関においてSARS-CoV-2陰性が確認された12歳以上の家庭内接触者を、指標患者の症状発現後72時間以内にエンシトレルビル(1日目に375mg、2~5日目に125mgを1日1回経口投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、修正ITT集団(mITT集団:無作為化され、中央検査機関においてベースラインでSARS-CoV-2のRT-PCR検査が陰性、かつ試験薬を少なくとも1回投与されたすべての参加者)における、試験薬投与後10日以内のCOVID-19発症(中央検査機関でRT-PCR検査が陽性、かつ事前に規定された14のCOVID-19の症状のうち少なくとも1つが48時間以上持続と定義)とした。エンシトレルビル群はプラセボ群と比較しCOVID-19発症リスク67%減 試験は、2023年6月~2024年9月中旬に、米国、アルゼンチン、日本、南アフリカ共和国、ベトナムで行われた。 計2,387例の家庭内接触者が無作為化され(エンシトレルビル群1,194例、プラセボ群1,193例)、このうち中央検査機関においてベースラインでSARS-CoV-2陰性が確認されたエンシトレルビル群1,030例、プラセボ群1,011例が有効性解析対象集団(mITT集団)となった。 試験参加者の平均年齢は42.4歳で、71.1%は指標患者の症状発現後48時間以内に無作為化され、37.0%は重症COVID-19の危険因子(肥満、喫煙、65歳以上など)を少なくとも1つ有していた。 mITT集団における10日目までのCOVID-19発症率は、エンシトレルビル群2.9%、プラセボ群9.0%であり、エンシトレルビル群で有意に低かった(リスク比:0.33、95%信頼区間:0.22~0.49、p<0.001)。 試験中の有害事象の発現割合は両群で類似しており(エンシトレルビル群15.1%、プラセボ群15.5%)、主な有害事象は頭痛、下痢、鼻咽頭炎、咳、疲労、およびインフルエンザであった。重篤な有害事象の発現割合も同じで(各群0.2%)、COVID-19に関連する入院や死亡は報告されなかった。 なお、著者らは、家庭内感染の可能性には世帯の規模、マスク着用習慣、社会的距離の確保など複数の要因が影響する可能性があるが、これらのデータを収集できなかった点で結果は限定的だとしている。

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日本人成人の1日の食事の料理数と心血管疾患リスクの関連

 日本食の「一汁三菜」に代表される、料理の品数が多い食習慣は、心血管疾患による死亡率の低下など、日本人の健康長寿に寄与する因子として注目されている。今回、北海道大学の高林 早枝香氏らが2018〜19年の国民健康・栄養調査のデータを用いた横断研究を行った結果、1日の全食事の料理の数(NDAM)が多い食習慣は、脂質異常症や肥満、高血圧などの心血管リスク因子の低下と関連している可能性が示された。Nutrition Journal誌2026年5月号に掲載。 本研究は、2018〜19年の国民健康・栄養調査に参加した20歳以上の男女2,900人を対象とした横断研究である。NDAMは、飲料を除くすべての料理および食品を含む1日の食事記録(秤量記録法)に基づいて算出された。性別ごとにNDAMに基づいて参加者を4つのグループに分類した。年齢、一人暮らし、居住地域、職業、運動習慣、喫煙習慣、飲酒習慣、総エネルギー摂取量を調整したポアソン回帰モデルを用いて、多変量相対リスクを推定した。 主な結果は以下のとおり。・NDAMが高い参加者は、高齢、非喫煙者、身体活動量が多い傾向があった。・男性では、NDAMが最も少ないグループ1よりNDAMが多いグループ2~4は脂質異常症のリスクが有意に低かった。・女性では、NDAMが最も少ないグループ1と比較して、最も多いグループ4は過体重・肥満リスクが有意に低かった。さらに、NDAMが中程度のグループ2~3では、最も少ないグループ1と比較して高血圧のリスクが低かった。・しかしこれらの関連は、ボンフェローニ補正後には統計学的有意性を維持しなかった。 本結果から、著者らは「料理の品数が多い食事は、日本人成人においていくつかの心血管リスク因子と逆相関している可能性がある」と結論している。

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ライフスタイル関連の認知症危険因子――Lancetの14の危険因子を読み解く(その4)【外来で役立つ!認知症Topics】第41回

前回は、病理の進行を直接抑える「表街道」と、脳の予備能を高める「援護射撃」という視点で各因子を紐解いてきた。「Lancetの14の危険因子を読み解く」シリーズの完結編となる今回は、日常の選択が脳の未来を左右する6つの因子を整理する。脳の「炎症」を助長する因子今回取り上げる6つの因子のうち、肥満、喫煙、過度な飲酒、そして大気汚染の4つは、主に神経炎症や酸化ストレスを介して認知症の悪化を加速させる危険因子である。肥満:伝統的な食事で予防中年期の肥満は、認知症のリスクを最大3倍も増加させる。肥満の原因は、高カロリーやジャンクフードといった不適切な食生活、運動不足、睡眠不足、慢性ストレスなどである。脳への悪影響のメカニズムとして、運動不足やストレスに加え、睡眠時無呼吸症候群に伴う低酸素刺激、さらにはミクログリア炎症などの脳内炎症との関連も注目されている。計画的な体重減少は認知機能を改善させる。減量には食事や運動が基本だが、最近ではセマグルチドなど、いわゆる「痩せ薬」の有用性も注目されている。ただし、筋肉喪失と骨の脆弱化を防ぐために、年間3~4kg程度の緩やかな体重減少に留めるのが望ましい。ここで興味深いデータがある。先進諸国の肥満率を比較すると、アメリカが42.9%と最高であるのに対し、日本は最低の4.9%というものである1)。その背景には、伝統的な食生活と活動的なライフスタイルが指摘されている。前者は、日本食が地中海食と同様に生活習慣病予防食である事と関連するだろう。後者については勤勉を尊ぶ日本人の伝統的な価値観が関わっているのかもしれない。喫煙:禁煙5年でリスクをリセット今現在の喫煙者は非喫煙者に比べて、認知症リスクが30~50%高い。やはり喫煙は「やめるしかない」のである。以前からCOPD予防の文脈で、禁煙すれば呼吸器系がクリーニングされると知られていた。認知症に関しても、禁煙の効果を示す報告がある。印象的なのは、禁煙の5~7年以内に、吸わない者と同程度まで認知症のリスクが低下するという報告だ2)。なお禁煙による体重の増加には留意したい。禁煙しても体重が増加すればリスク低減効果は相殺されてしまう。治療では、薬理学的治療と行動療法が組み合わされる。最近では電子タバコが良いとも言われるが、実は酸化ストレスと脳の慢性炎症をもたらす点では、従来のタバコとあまり変わらない。過度な飲酒:不定期の大量飲酒に注意飲酒については適切な基準の把握が欠かせない。純アルコール10g (ビールで200mL 日本酒で0.5合、焼酎で40mL)を1単位とした場合、1週間に14単位を超える飲酒は認知症リスクを大幅に増加させる。飲酒の安全基準には男女差があり、男性は1日2単位、女性では1日1単位である。過度の飲酒は、記憶関連の大脳領域を萎縮させ、脳内のメッセージ伝達能力を障害する。さらに高血圧や心臓病、脳卒中のリスクを増加させる。注意すべきは、定期的な飲酒以上に、不定期に大量飲酒するほうが脳への悪影響が大きいことである。飲酒の認知機能への影響について、興味深い大規模なコホート研究がある3)。軽度~中等度の継続的な飲酒者は、ずっと非飲酒者より認知症のリスクが低減する。さらに、飲酒量を多量から中等量へと節酒することで、ずっと飲まない者に比べて認知症のリスクがさらに低下するという。もっとも、認知症予防のために、わざわざ飲酒を開始すべきではないことは言うまでもない。大気汚染:PM2.5とレビー小体型認知症大気汚染、とくにPM2.5は、認知症の危険因子だと認識される。それが脳に到達するのに3つの経路が考えられる。まず肺から血液吸収され脳に至るもの、次に鼻から直接脳に到達するもの、そして血流を通して脳に至って血液脳関門(BBB)を破壊するものである。PM2.5は高齢者にとってとくに危険だが、この濃度は交通量の多い道路周辺で最高である。しかし主要道路から100メートル離れるごとに曝露量は10~15%軽減し、300メートルで30~40%低減する。大通りを避けて住宅街の裏道の利用が望ましい。また室内で空気清浄機を活用すると、PM2.5を半分以下にできる。ところでPM2.5について斬新な最近の報告がある5)。PM2.5がレビー小体型認知症(DLB)の病理学的特徴であるαシヌクレインの異常な折り畳みを引き起こし、PM2.5の曝露量が多いとDLBやパーキンソン病発症リスクが高まるという。脳への「インプット」を阻害する因子残る2つの孤独と視力障害は、脳へのインプットを阻害する因子であり、これらへの対策は認知予備能を高める側面が強い。孤独:脳の萎縮を防ぐ「社会との接点」孤独とは主観的な感覚であり、社会的孤立は交流のない状態だが、いずれも認知機能低下と強く関連する。孤独感は全認知症リスクを31%増加させる。アルツハイマー病で14%、血管性認知症で17%、軽度認知障害で12%の増加をもたらす。また社会的孤立は孤独とは独立に26~50%の増加をもたらす。孤独感が単なる「気持ちの持ちよう」というレベルではないことを示す脳画像研究がある4)。前頭前野背外側部などの大脳部位は、共感や思いやりとの関連が知られているが、これらの脳部位の萎縮と、孤独が相関するという。つまり、共感・思いやりと孤独は表裏一体をなす脳活動なのだろう。対策としては、共通の関心事に基づくグループ参加が最も効果的だとされる。筆者が経験的に良いと思うのは、ペット(ペットロボットも含む)、趣味(読書、ガーデニング、手作業)のグループを探すこと。あるいは図書館や学校(登校・放課後の見守り)などのボランティア、地域で日常的に行われているラジオ体操などもいいだろう。視力低下:認知負荷を強いる「見えにくさ」の罠視力障害のある高齢者は正常視力の人と比べ、認知症発症リスクが1.5~2.3倍高い。想定されるメカニズムとして、視覚障害により脳への感覚入力が減少し、視覚処理領域の神経萎縮が起こり、脳刺激の減少、神経細胞の消失と連鎖していくことが考えられる。また視力障害と認知低下は、基礎的なプロセスに共通性があるかもしれない。たとえば脳血管障害、アミロイドβ蓄積、慢性炎症や神経変性である。さらに、視力低下により他の認知的リソースを使って情報を得なければならないため、本来の認知能力がその分減るとする「認知負荷仮説」も考えられる。目というと視力と考えがちだが、最近では「コントラスト感度」、つまり明暗を判別する能力が重要だとされる6)。たとえば夜間の活動には、高いコントラスト感度が必要だ。また照度が低い状態や、霧、眩しさのある状況ではその感度が鈍り、転倒・転落や交通事故のリスクが高まる。視力障害への対応は、白内障手術や眼鏡処方、低視力リハビリテーションが代表的である。これらにより、臨床リスクを30%低減できる可能性がある。今回をもって「Lancetの14の危険因子を読み解く」シリーズは終了となる。繰り返しになるが、この危険因子とはアルツハイマー病のみならず、すべての認知症に対するものである。また危険因子は、古典的なアミロイド仮説に関連するもののみならず、認知予備能仮説のように最大限に脳を守る・活用していくという方向に大別される。 1) WorldAtlas. The Most Obese Countries In The World In 2024. 2) Chen H, et al. Smoking Cessation, Weight Change, and Risk of Dementia: A Prospective Cohort Study. medRxiv. 2025 Nov 6. [preprint] 3) Jeon KH, et al. Changes in Alcohol Consumption and Risk of Dementia in a Nationwide Cohort in South Korea. JAMA Netw Open. 2023;6:e2254771. 4) Lam JA, et al. Neurobiology of loneliness: a systematic review. Neuropsychopharmacology. 2021;46:1873-1887. 5) Zhang X, et al. Lewy body dementia promotion by air pollutants. Science. 2025;389:eadu4132. 6) Risacher SL, et al. Visual contrast sensitivity in Alzheimer's disease, mild cognitive impairment, and older adults with cognitive complaints. Neurobiol Aging. 2013;34:1133-1144.

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間欠性跛行を伴う末梢動脈疾患の初期治療【日常診療アップグレード】第56回

間欠性跛行を伴う末梢動脈疾患の初期治療問題67歳男性。1年前から歩行時に右ふくらはぎ痛がある。5~10分間安静にすると痛みは改善するが、現在は犬の散歩や早足で歩くことが次第に困難になってきた。喫煙歴はない。既往歴は冠動脈疾患、駆出率低下を伴う心不全(HFrEF:Heart Failure with reduced Ejection Fraction)、高血圧、脂質異常症である。服用中の薬剤は、アスピリン、メトプロロール、バルサルタン、スピロノラクトン、ダパグリフロジン、アトルバスタチンである。血圧128/74mmHg、脈拍68回/分、整である。末梢動脈の拍動は両側の大腿動脈で2+、右膝窩動脈および右足背動脈の拍動は1+である。足は温かく、潰瘍は認められない。足関節上腕血圧比(ABI:Ankle Brachial Index)は、左が0.94、右が0.76である。LDLコレステロールは58mg/dL。シロスタゾールを投与した。

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肥満は「累積」が重要、BMI単独では心血管リスクと関連せず

 肥満が心臓病などのリスクを高めることは古くから知られているが、肥満の程度と肥満該当期間の積である「肥満の累積負荷」の方が、より重要なことを示唆する研究結果が報告された。この累積負荷を考慮に入れた場合、ある一時点のBMIの高さは、心筋梗塞や脳卒中のリスクとの関連が有意でなくなるという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院および米ハーバード大学のAlexander Turchin氏らによる研究の結果であり、詳細は「PLOS ONE」に4月8日掲載された。 この研究は、米国で行われている看護師健康調査(NHS)と医療従事者対象調査(HPFS)のデータを用いて行われた。1990~1999年の間に1回以上、BMI25超(米国の基準では過体重、日本国内の基準では肥満に該当)が記録されていた13万6,498人(平均BMI27.2)を解析対象とした。肥満の累積負荷は、過剰なBMI(25超に相当する値)と、その持続期間(年数)を掛け合わせ、面積として評価した。その四分位数に基づき全体を4群に分類し、性別・年齢層別に心血管イベント(心筋梗塞と脳卒中)の発生リスクを比較した。 2000年から中央値16.7年(四分位範囲12.5~17.8)追跡したところ、1万2,048人(8.8%)に心血管イベントが発生した。四分位群ごとの累積イベント発生率は、女性では第1四分位群から順に、2.62%、2.89%、3.35%、3.53%、男性では13.45%、15.09%、16.80%、17.99%だった。 交絡因子(年齢、性別、人種/民族、喫煙習慣、ベースラインのBMI、糖尿病、高血圧、心不全、動脈硬化性疾患の既往歴および糖尿病または動脈硬化性疾患の家族歴など)の影響を調整後、肥満の累積負荷の第1四分位群と第4四分位群との間に有意なリスク差が認められた。例えば、女性については、35歳未満(ハザード比〔HR〕1.60〔95%信頼区間1.05~2.44〕)と35~50歳(HR1.27〔同1.01~1.58〕)で有意差が観察され、男性では35~50歳(HR1.57〔1.22~2.03〕)と50~65歳(HR1.23〔1.02~1.48〕)において有意差が認められた。 全体的に若年成人において肥満の累積負荷の影響が強く見られ、50歳以上の女性と65歳以上の男性は関連が非有意だった。なお、肥満の累積負荷を考慮に入れた解析では、ベースラインのBMIは性別・年齢層にかかわらず、イベントリスクと有意な関連が見られなかった。 これらの結果を基にTurchin氏らは、一時点においてBMIが高いという情報も警告のサインに違いないが、心臓や血管へのダメージは、過剰な体重による負荷が長く続くほど大きくなると述べている。また、本研究では若年成人で肥満の累積負荷の影響がより強く認められたことに関して研究者らは、肥満は永続的なことではなく修正可能なリスクであることを強調。Turchin氏も、「われわれの研究結果は、ある一時点において肥満であっても体重を減らせば、健康状態が改善する可能性があることも示唆している」としている。 なお、本研究はイーライリリー社の資金提供を受けて実施された。

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若年性認知症、そのリスク因子は?

 65歳未満で発症する若年性認知症は、重要な健康上の問題である。しかし、認知症のリスク因子に関する知見の多くは、65歳以降で発症した晩年期認知症の研究から推測されたものである。米国・ミネソタ大学のKatherine Giorgio氏らは、若年性認知症とさまざまな人口統計学的因子、臨床的因子および生活習慣因子との関連性を調査し、それらの推定値を晩年期認知症の場合と比較した。The Lancet Healthy Longevity誌2026年3月号の報告。 英国および米国における5つの地域ベースの縦断的コホート研究(UKバイオバンク、ARIC[Atherosclerosis Risk in Communities Study]研究、フラミンガム心臓研究、多民族アテローム性動脈硬化症研究[Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis]、ホワイトホールII研究)のデータを統合し、標準化した。認知症は、各コホートのプロトコールに従い、入院記録および死亡記録に基づき、臨床評価の有無にかかわらず確認した。リスク因子には、性別、自己申告による人種または民族(ヒスパニック、白人、黒人、アジア人、その他)、学歴、高血圧、糖尿病、肥満、高コレステロール血症、うつ病、過度の飲酒、喫煙、運動不足を含めた。年齢を時間軸とし、時間変動係数を用いたCox回帰モデルを用いて、若年性認知症と晩年期認知症のハザード比(HR)を推定し、発症年齢によってHRが異なるかを検証した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中(中央値13.7年[四分位範囲:12.9~14.4])に、参加者54万4,442例において、若年性認知症を発症したのは807例、晩年期認知症は1万4,253例の発症が確認された。・女性は、男性と比較し、若年性認知症リスクが低かった(HR:0.70、95%信頼区間[CI]:0.61~0.80)。・若年性認知症リスクの上昇と独立して関連していた因子は、黒人と白人の人種(HR:1.61、95%CI:1.23~2.11)、小学校卒業以下の学歴(HR:1.99、95%CI:1.67~2.38)、糖尿病(HR:2.45、95%CI:1.99~3.03)、うつ病(HR:2.73、95%CI:2.34~3.20)、喫煙(HR:1.86、95%CI:1.56~2.22)、肥満(HR:1.24、95%CI:1.04~1.48)、運動不足(HR:1.33、95%CI:1.11~1.59)、過度の飲酒(HR:1.22、95%CI:1.01~1.47)であった。・高血圧ステージ1(HR:1.19、95%CI:0.97~1.47)、高血圧ステージ2(HR:1.16、95%CI:0.94~1.43)、高コレステロール血症(HR:1.11、95%CI:0.92~1.34)は、正の効果推定値を示したが、統計的に有意ではなかった。・人種、運動不足、過度の飲酒を除くすべてのリスク因子は、晩年期認知症よりも若年性認知症との関連性が強かった。 著者らは「若年性認知症の発症における修正可能なリスク因子の重要性が示された。若年性認知症の1次予防における優先度の高いターゲットを特定するためにも、本結果は今後の研究の指針となりうる」としている。

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乾癬は皮膚だけの病気ではない? 重症度と心血管リスクが関連

 乾癬は皮膚に症状が現れる慢性炎症性疾患だが、近年では全身性炎症を背景に心血管疾患リスクの上昇との関連も指摘されている。今回、日本人乾癬患者を対象に、心血管リスク評価に用いられる久山町スコアで解析した結果、乾癬の重症度が高いほど心血管リスクが高いことが示された。研究は、東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の小林愛里氏、照井仁氏(現:米カリフォルニア大学サンフランシスコ校)らによるもので、詳細は「Immunological Medicine」に3月17日付で掲載された。 乾癬は慢性炎症性皮膚疾患であり、近年では心血管疾患との関連が注目されている。乾癬患者では高血圧や脂質異常症などのリスク因子が多く、重症例ほど心血管リスクが高いとされ、日本人においても関連が報告されている。一方で、従来の欧米人での臨床データから作成された評価法では日本人における乾癬患者の心血管リスクを過小評価する可能性がある。そこで本研究では、日本人に適した久山町スコアを用いて乾癬重症度と心血管リスクとの関連を検討した。 久山町スコアは福岡県久山町の住民データ(久山町研究)に基づき、日本人の10年間の心血管疾患発症リスクを予測する指標である。本研究では、乾癬患者における心血管リスクと重症度との関連を検討するため、久山町スコアを用いた単施設の後ろ向き研究を実施した。2010年から2022年にかけて東北大学病院を受診した40~79歳の乾癬患者119人を対象とし、糖尿病、慢性腎臓病、心血管疾患など既存疾患のある48人を除外した71人を解析対象とした。乾癬の重症度はPASI(Psoriasis Area and Severity Index)スコアで評価し、血圧、脂質プロファイル、喫煙歴などに基づき、対象者を低・中・高リスク群に分類した。群間比較にはWilcoxon検定を用い、年齢や性別、血圧、脂質プロファイルなどで調整したロジスティック回帰分析により高リスクの予測因子を検討した。 解析の結果、乾癬の重症度が高いほど心血管リスクが高いことが示され(p=0.003)、特にPASIスコアが10を超える男性では中~高リスク群に分類される割合が高かった(p=0.049)。女性では重症度と心血管リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 血圧や脂質プロファイルなどのリスク因子と心血管リスクとの関連を検討したところ、中~高リスク群では収縮期血圧の上昇(p=0.011)やHDLコレステロールの低下(p=0.017)がみられた。さらにロジスティック回帰分析の結果、収縮期血圧は心血管リスクの独立した予測因子として同定された(p=0.026)。乾癬の罹病期間と心血管リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 さらに、性別や年齢で見ると傾向に違いがみられ、特に40代男性では脂質異常がリスク上昇に関与する可能性が示唆された。 著者らは、本研究により久山町スコアを用いることで乾癬患者の心血管リスクを把握できることが示されたと述べている。特に若年層では、血圧やコレステロールの管理がリスク低下に重要であると指摘している。また、乾癬は皮膚疾患にとどまらない全身性の病気であることから、皮膚科医はかかりつけ医や循環器医と連携し、積極的にリスク管理を進めることが望ましいと強調している。 なお、本研究の限界として、単施設の後ろ向き研究で対象が少なく、治療内容や疾患期間の影響も排除できない点が挙げられる。著者らは、より大規模な研究での検証が望まれると指摘している。

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ネランドミラスト、日本人IPF/PPFでもFVC低下を抑制/日本呼吸器学会

 厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会は2026年4月27日に、ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬ネランドミラスト(商品名:ジャスケイド)について、特発性肺線維症(IPF)および進行性肺線維症(PPF)を効能・効果として承認することを了承した。これは、主に国際共同第III相試験「FIBRONEER-IPF試験」1)および「FIBRONEER-ILD試験」2)の結果に基づくものである。第66回日本呼吸器学会学術講演会では、両試験の日本人集団の結果が報告された。西岡 安彦氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部 呼吸器・膠原病内科学分野)が両試験の日本人集団を対象とした併合解析結果を報告し、近藤 康博氏(愛知医科大学 呼吸器・アレルギー内科)がFIBRONEER-ILD試験の日本人PPF患者サブグループ解析結果を報告した。 FIBRONEER-IPF試験は、%FVC(努力肺活量の予測値に対する実測値の割合)が45%以上で、%DLCO(一酸化炭素肺拡散能の予測値に対する実測値の割合)が25%以上のIPF患者を対象とした。FIBRONEER-ILD試験は、IPF以外の間質性肺疾患(ILD)と診断され、HRCTで10%超の線維化を認め、%FVCが45%以上、%DLCOが25%以上のPPF患者を対象とした。両試験とも、対象患者をネランドミラスト9mgを1日2回投与する群(9mg群)、ネランドミラスト18mgを1日2回投与する群(18mg群)、プラセボ群に1:1:1の割合で割り付けた。両試験の日本人集団は281例(IPF 135例、PPF 146例)で、主要評価項目は52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量、主要な副次評価項目は治験期間中におけるIPF/ILDの初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生までの期間とした。【2試験の併合解析】 2試験の併合解析の主な結果は以下のとおり。・日本人集団281例の男性の割合は68.3%、平均年齢68.6歳、平均体重63.5kgで、喫煙歴ありの割合は71.2%であった。ベースライン時にニンテダニブによる治療を受けていた患者は45.2%、ピルフェニドンによる治療を受けていた患者は4.6%であった。全体集団と比較して、体重が低く、喫煙歴ありが多く、ピルフェニドン使用者が少ない傾向にあった。・日本人集団における52週時のFVCのベースラインからの変化量(調整平均値)は、プラセボ群-158.3mL、9mg群-105.9mL、18mg群-70.5mLであった。プラセボ群との差は、9mg群52.4mL(95%信頼区間[CI]:-19.1~123.9)、18mg群87.8mL(同:18.0~157.7)であり、18mg群でFVC低下抑制効果がより大きい傾向となった。・日本人集団における主要な副次評価項目のイベント発生割合は、プラセボ群37.3%(31/83例)に対し、9mg群24.7%(23/93例)、18mg群17.1%(18/105例)であり、プラセボ群に対するハザード比(HR)は、それぞれ0.71(95%CI:0.41~1.23)、0.45(95%CI:0.25~0.81)であった。・主要な副次評価項目を構成する各イベントのプラセボ群に対するHRおよび95%CIは、以下のとおりであった。<初回急性増悪または死亡>9mg群:0.62(0.29~1.31)18mg群:0.30(0.12~0.73)<呼吸器疾患による初回入院または死亡>9mg群:0.72(0.41~1.24)18mg群:0.43(0.23~0.77)<死亡>9mg群:0.66(0.25~1.78)18mg群:0.45(0.15~1.35)・主な有害事象(いずれかの群で20%以上に発現)は、下痢(プラセボ群19.3%、9mg群36.6%、18mg群38.1%)、上咽頭炎(それぞれ15.7%、23.7%、23.8%)、COVID-19(それぞれ16.9%、36.6%、38.1%)であった。投与中止に至った下痢はそれぞれ0%、1.1%、3.8%にみられた。【FIBRONEER-ILD試験】 FIBRONEER-ILD試験の日本人集団における主な結果は以下のとおり。・日本人集団146例の男性の割合は56.2%、平均年齢67.6歳、平均体重60.3kgで、喫煙歴ありの割合は50.9%であった。UIP(通常型間質性肺炎)パターン/UIP-likeパターンを有する割合は83.6%であり、ベースライン時にニンテダニブによる治療を受けていた患者は42.5%であった。全体集団と比較して、体重が低く、喫煙歴ありが多く、UIP/UIP-likeパターンが多い傾向にあった。・PPFの分類は、分類不能型特発性間質性肺炎(uIIP)32.2%、自己免疫性ILD 30.1%、特発性非特異性間質性肺炎が12.3%、線維性過敏性肺炎が11.6%、その他が13.7%であり、全体集団と比較して、uIIPが多く線維性過敏性肺炎が少ない傾向にあった。・日本人集団における52週時のFVCのベースラインからの変化量(調整平均値)は、プラセボ群-179.2mL、9mg群-68.9mL、18mg群-122.3mLであった。プラセボ群との差は、9mg群110.3mL(95%CI:9.6~211.0)、18mg群56.9mL(同:-43.5~157.2)となった。・日本人集団における主要な副次評価項目のイベント発生割合は、最終データベースロック時において、プラセボ群47.8%(22/46例)に対し、9mg群28.6%(14/49例)、18mg群27.5%(14/51例)であり、プラセボ群に対するHRは、それぞれ0.71(95%CI:0.37~1.36)、0.54(同:0.27~1.07)であった。・最終データベースロック時において、主要な副次評価項目を構成する各イベントのプラセボ群に対するHRおよび95%は、以下のとおりであった。<初回急性増悪または死亡>9mg群:0.49(0.21~1.16)18mg群:0.33(0.13~0.86)<呼吸器疾患による初回入院または死亡>9mg群:0.71(0.37~1.36)18mg群:0.54(0.27~1.07)<死亡>9mg群:0.51(0.18~1.49)18mg群:0.48(0.16~1.41) これらの結果について、西岡氏は探索的な解析であり日本人の患者数が少ないという限界を指摘しつつ「FIBRONEER-IPF試験およびFIBRONEER-ILD試験の日本人集団の併合解析において、ネランドミラスト18mg 1日2回投与は、52週時のFVC低下を抑制し、主要な副次評価項目およびその構成要素の発生リスクを抑制する傾向を示した。また、今回示したすべての評価項目で、ネランドミラスト18mg 1日2回投与がより良好な有効性を示した。日本人患者におけるネランドミラストの有効性および安全性は全体集団と一貫していた」とまとめた。また、近藤氏は「ネランドミラストはFIBRONEER-ILD試験の日本人患者において、プラセボと比較して52週時のFVC低下を抑制し、試験期間中の臨床アウトカムのリスクを数値的に抑制した。これらの結果は、FIBRONEER-ILD試験の全体集団の結果と一貫していた」とまとめた。<FIBRONEER-IPF試験の概要>・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験・対象:%FVCが45%以上で、%DLCOが25%以上の40歳以上のIPF(12ヵ月以内のHRCTに基づく診断を受け、UIPまたはUIP-likeパターンを有する)患者1,177例試験群1(9mg群):ネランドミラスト9mg、1日2回  392例試験群2(18mg群):ネランドミラスト18mg、1日2回  392例対照群(プラセボ群):プラセボ 393例・評価項目[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生<FIBRONEER-ILD試験の概要>・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験・対象:%FVCが45%以上で、%DLCOが25%以上の18歳以上のPPF(12ヵ月以内のHRCTに基づき10%以上の線維化が認められたIPF以外のILD)患者1,176例試験群1(9mg群):ネランドミラスト9mg、1日2回  393例試験群2(18mg群):ネランドミラスト18mg、1日2回  391例対照群(プラセボ群):プラセボ 392例・評価項目[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生

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高血圧管理・治療ガイドライン2025(8):新型タバコ【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q166

高血圧管理・治療ガイドライン2025(8):新型タバコQ166高血圧症でかかりつけの40代男性。1箱/日の喫煙をしており、禁煙指導を試みたが「加熱式タバコだから大丈夫」と無関心な状態。本当に大丈夫だろうか?

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喘鳴をみたら喘息?【喘息・COPDのここが知りたい!】第1回

皆さま、こんにちは。神奈川県川崎市にあります日本鋼管病院という地域の総合病院で呼吸器内科医として働いています田中 希宇人(たなか きゅうと)と申します。ネット上では「キュート先生」の名前で医療情報発信を行っています。川崎南部地域は肺がん・COPD・喘息など、呼吸器疾患の患者さんが多く、呼吸器の症状で困っている方を10年以上診療してきています。喘息・COPDのガイドラインはしっかり策定されておりますが、すべての患者さんがガイドラインに当てはまるわけではありません。本連載では、それらのガイドラインの隙間を埋めるような実臨床で役立つ内容、悩む状況などについて一緒に考えていきたいと思います。ぜひご意見やご感想もお寄せいただけますと幸いです。喘鳴をみたら喘息?はじめに:その喘鳴をどう診ますか?日常診療において、患者さんが「ゼーゼーする」「ヒューヒューいう」と訴えて来院された際、真っ先に頭に浮かぶのは「喘息」ではないでしょうか。実際に喘息は非常に頻度の高い疾患であり、その症状の1つに「喘鳴(ぜんめい)」があります。喘鳴とは、気道が狭くなることで「ゼーゼー」や「ヒューヒュー」といった異常な呼吸音が連続的に発生する状態を指します。この音は、狭くなった気道を空気が無理に通過する際に生じる振動によるものです。喘鳴は、聴診器を使わなくても聞こえることもあります。息を吸う時に聞かれる「吸気性喘鳴」と吐く時に聞かれる「呼気性喘鳴」があります。音が聞こえるタイミングや、気道のどの部分が狭くなっているかで病気を推測できる場合があります。しかし「All that wheezes is not asthma(喘鳴がすべて喘息とは限らない)」1,2)という言葉があります。ガイドラインには「喘息の治療法」については詳しく書いてありますが、「この喘鳴が本当に喘息なのか」という診断や鑑別プロセスについては、多くを語ってくれません。ましてや、目の前の患者さんが「喘息なのか」については教えてくれません。本連載では、ガイドラインの行間に隠れた、実臨床での「診療のコツ」をお伝えしていきたいと考えています。第1回は多くの先生方が最も迷いやすく、かつ見逃してはならない「喘鳴の鑑別」について深掘りしていきます。喘鳴の「音」を解剖する:stridorとwheeze聴診器を当てて何か「音がする」だけで満足してはいけません。その異常な音が「いつ」「どこで」聞こえるかが、診断の最大のヒントになります。外来診療では長い時間がとれないため、患者の頸部で聴診します。深呼吸で、呼気は勢いよく最後の最後まで吐ききってもらいます。典型的な喘息の喘鳴は、呼気終末に聴取されます。喘鳴が聞かれる場合に、まず重要なのは音が吸気時(息を吸うとき)に強いのか、呼気時(吐くとき)に強いのかという点です。呼気性喘鳴(wheeze)主に末梢気道が狭窄しているサインです。喘息やCOPDの典型的な音です。吸気性喘鳴(stridor)主に上気道・中枢気道の閉塞を示唆します。喉頭浮腫、声帯機能不全、異物、気管腫瘍などが疑われます。もし吸気時に強い「ヒュー」という音が聞こえたなら、それは喘息の増悪ではなく「上気道の緊急事態」かもしれません。この見極め一つで対応が劇的に変わります。次に、聞かれる音がmonophonic(単音性)なのか、polyphonic(多音性)かということがわかると、さらに病気が絞られます。monophonic聴診してどこの部位で聞いても同じ高さの「ピー」という音が聞こえる状態。これは、特定の太い気道が1点で狭まっている、腫瘍や異物などの病態の可能性を考えます。polyphonic胸のあちこちで異なる高さの音が混ざって聞こえる状態。これは喘息のように、肺全体であちこちの気道が狭くなっている病態を示します。喘息と間違えやすい3つの病態咳・息切れ・喘鳴などの症状があると「喘息」が疑われ、呼吸器外来を受診することが多いです。そこで気を付けなければいけない、喘息と間違えやすい代表的な3つの疾患を紹介しましょう。(1)心不全最も頻度が高く、かつ命にかかわるのが心不全です。左心不全による肺水腫で気管支粘膜が浮腫を起こすと、喘息そっくりの喘鳴が聴取されます。見分けるポイントがいくつかあります。喘息の喘鳴は「夜間・早朝」に強く認められますが、心不全は「横になる時(臥位)」に症状が悪化します。また、心不全徴候であるIII音の聴取、下腿浮腫や頸静脈怒張の有無、X線で心拡大やバタフライシャドウ、採血でBNP高値などをあわせて確認します。喘息の既往がある高齢者が「最近ゼーゼーがひどい」と受診した場合、じつは心不全がベースにあるケースは珍しくありません。喘息とうっ血性心不全が合併していることがあり、私も気管支拡張薬、ステロイド、利尿薬、降圧薬を同時に投与したことがあります。(2)声帯機能不全(VCD)喘息と考えて吸入ステロイドや気管支拡張薬など各種吸入薬を使ってもまったく症状が改善しない「難治性喘息」の中に紛れ込んでいるのが、声帯機能不全(Vocal Cord Dysfunction:VCD)です。本来、息を吸うときに開くはずの声帯が上手に開かない病態です。VCDによる喘鳴が最も強く聞こえるのは「胸」ではなく「首」です。また、喘息増悪(発作)時にはSpO2が低下することが多いですが、VCDでは正常に保たれていることが多いのも特徴です。「吸入薬が効かない」と訴える方や、心理的ストレスを抱える方では、VCDの可能性を考え耳鼻科医に診察してもらうことも重要です。(3)中枢気道病変(腫瘍・異物)ときどき呼吸器外来で診るのが、肺がんや気管支結核、あるいは高齢者の誤嚥による異物などが原因の喘鳴です。肺がん・気管支がんなどの悪性腫瘍、異物などによる物理的閉塞による喘鳴は「片側だけ」「ある特定の部位だけ」で聞こえます。喘鳴は全肺野で聞かれるはず、という思い込みを捨て、左右の胸の音を丁寧に聞き比べるとわかることがあります。また、喘息増悪で聞かれる喘鳴は、比較的急な経過で聴取されますが、悪性腫瘍が原因の場合には徐々に症状が強くなることが特徴です。喫煙歴のある高齢者の喘鳴で安易に「喘息やCOPDが原因」と決めつけるのは危険です。X線やCTでの精査を躊躇してはいけません。喘鳴を正しく見極めるためのコツ喘鳴が聴取される患者さんで喘息か他疾患の病態かで迷ったとき、実際の医療現場で行っているいくつかのコツを紹介しましょう。(1)SABA(短時間作用性β2刺激薬)に対する反応をみるまず比較的簡単にできるのが、喘息増悪に準じてメプチンなどのSABAをネブライザーで吸入させ、その場で喘鳴が消失あるいは軽減するかを確認することです。これは、非常に有用な診断的治療になります。喘息であれば反応が良いはずですが、心不全や腫瘍による気道の物理的狭窄では反応が乏しいことがわかります。(2)「いつもの喘鳴」との違いを聞いてみる喘息増悪を繰り返す患者さんが一番自分の状態をわかっています。しかし、喘息患者さんでも別の病気を合併することがあります。「今回の症状は、今までの喘息発作と同じ感じですか?」という一言が、別の病気を見つけるカギになることがあります。患者さんが感じる「今回はなんか違う、息が吸い込みにくい感じがする」といった症状には注意が必要です。(3)喘鳴の起こり方を探る喘息の増悪は何かをきっかけに発作的に起こりますが、COPDや心不全の増悪は、動いたときの息切れが先行し、徐々に症状が悪化することが多いです。そのようなきっかけ、安静時の喘鳴なのか労作時の喘鳴なのか、など喘鳴の起こり方を探ってみましょう。おわりに:診断の「質」が治療の「質」を決める喘息治療の進歩により、多くの患者さんが発作を経験せずに平穏に過ごせるようになりました。喘息死も私が研修医だった20年前に比べるとだいぶ減りました。しかし、その一方で咳・息切れ・喘鳴のような症状がある場合に、「とりあえず喘息として吸入薬を出す」ことが、本来見つけるべき他の疾患を見逃すリスクを生んでいる側面もあります。「喘鳴=喘息」という思考をいったんやめて、聴診器から聞こえる音の正体を疑ってみる姿勢が第一歩です。正しい診断が下されれば、正しい治療につながります。そこで既存のガイドラインがさらに活きてくるものと考えています。 1) Jackson C. BMQ. 1865;16:86 2) Kaminsky DA. Chest. 2015;147:284-286.

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ストレスや悲しみはがんリスクと関連しない

 長年にわたり、強い心理的ストレスや悲しみ、あるいはネガティブな性格はがんを引き起こし得ることが、ウェルネス分野や医療現場で広く信じられてきた。しかし、大規模な国際研究により、個人の精神状態はがんの発症とほとんど関係がない可能性が示された。フローニンゲン大学医療センター(オランダ)のLonneke van Tuijl氏らによるこの研究は、「Cancer」に3月23日掲載された。 この研究では、複数コホートを統合した大規模データベースであるPsychosocial Factors and Cancer Incidence(PSY-CA)コンソーシアムを用いて、心理社会的要因とがん(乳がん、肺がん、前立腺がん、大腸がん、喫煙関連がん、アルコール関連がん)の発症との関連が検討された。対象は、ベースライン時に少なくとも1つの心理社会的要因が測定されていた42万1,799人。検討された要因は、知覚された社会的支援(perceived social support;PSS)、喪失体験、パートナーの有無(既婚、離婚、独身など)、神経症傾向、全般的な精神的苦痛であった。 その結果、対象とした心理社会的要因と全がん、乳がん、前立腺がん、大腸がん、アルコール関連がんとの間に有意な関連は示されなかった。一方、最近の喪失体験、PSS低値、およびパートナーがいないこと(独身や離婚者など)は、肺がんリスクのわずかな上昇と関連していた。しかし、関連因子を調整すると、知覚されたPSS低値とパートナーがいないことについては関連が弱まる、または消失した。一方で、パートナーがいないことと喫煙関連のがんとの関連は、因子の調整後も認められた。神経症傾向および全般的な精神的苦痛は、いずれのがんとも関連を示さなかった。 研究グループは、ストレスそのものが細胞をがん化させるわけではないが、ストレスに対する対処行動は影響し得ると結論付けている。例えば、困難な状況にある人は、喫煙や飲酒、不健康な食生活に陥りやすく、これらが実際のがんリスクの主要因であると考えられる。Van Tuijl氏は、「さらに、観察された小さな影響の多くは、不健康な行動によって説明されることが多い」と述べている。 メンタルヘルスを良好に保つことは、生活の質(QOL)や疾病からの回復において重要であるが、本研究は、それががん発症の主要な要因ではないことを示した。Van Tuijl氏は、「PSY-CAコンソーシアムはここ数年、メンタルヘルス不調やその他の心理社会的ストレスががん発症リスクを高めるという広く信じられている考えを検証してきた。本研究の結果は、この広く信じられている考えを明確に支持するものではなかった」とニュースリリースでコメントしている。 研究グループはさらに、この結果は、がん患者が自身の病気を過去のストレスに結び付けて罪悪感や自責の念を抱くことを防ぐ一助となる可能性があると指摘している。

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56歳男性・胸部CTで気管支拡張と粘液栓、疑うべきは?【腕試し!内科専門医バーチャル模試】

56歳男性・胸部CTで気管支拡張と粘液栓、疑うべきは?56歳の男性。喘息のため近医に通院中。喫煙歴はない。吸入薬をステップアップしても喘息のコントロールが不良であり、胸部単純X線で右中肺野に透過性低下を認めたため紹介受診となった。血液検査にて好酸球増多(2,578/μL)、胸部X線で右中肺野に棍棒状のコンソリデーションを認め、胸部CTで右肺上葉と中葉の中枢気管支拡張と粘液栓が確認された。喀痰検査で、茶褐色の気管支型粘液栓が喀出された。

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加熱式タバコは2型糖尿病罹患と関係するか/JIHS

 近年、紙巻タバコに代わり加熱式タバコ(HTP)での喫煙が増えている。HTPの健康への影響のエビデンスはまだ少ないが、糖尿病罹患との関連はあるのだろうか。このテーマについて、国立健康危機管理研究機構(JIHS)の胡 歓氏らの研究グループは職域多施設研究(J-ECOHスタディ)から約3万人を追跡調査した。その結果、HTPのみで喫煙している人は、紙巻タバコのみで喫煙している場合と比較し、2型糖尿病発症のリスク低下と関連していなかったことがわかった。American Journal of Preventive Medicine誌オンライン版4月7日号に掲載。喫煙者の糖尿病罹患リスクは非喫煙者と比べ高い 研究グループは、J-ECOHスタディのベースライン時(2018年4月~2019年3月)に2型糖尿病を有していなかった参加者2万9,584人(男性82.5%、平均年齢45.9歳[標準偏差9.9])を対象に調査を行った。参加者は、自己申告によるタバコの喫煙状況に基づき、非喫煙者、元喫煙者、紙巻タバコのみで喫煙する者、HTPのみで喫煙する者、および紙巻タバコとHTPの両方で喫煙する者の5群に分類した。2型糖尿病の新規発症は、2019~25年に実施された健康診断で特定された。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定はCox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・14万797人年の追跡期間中、2,141人が2型糖尿病を発症した(1,000人年当たり15.2)。・喫煙する群(1,000人年当たり18.5~21.7)では、喫煙歴のない群(1,000人年当たり11.3)と比較し、糖尿病の罹患率が高かった。・喫煙歴のない群と比較して、HTPのみで喫煙する群(HR:1.61、95%CI:1.39~1.86)、紙巻タバコとHTPの両方で喫煙する者(HR:1.76、95%CI:1.48~2.09)、および紙巻タバコのみで喫煙する者(HR:1.53、95%CI:1.34~1.74)は、糖尿病罹患のリスクが高かった。・喫煙歴のある人の中で、HTPのみで喫煙する人の糖尿病リスクは、紙巻タバコのみで喫煙する人とほぼ同等だった(HR:1.01、95%CI:0.86~1.18)。これは、追跡期間中にリスクの有意な低下が認められなかったことを示唆している。・すべてのタバコ喫煙グループで、1日当たりのタバコ製品の喫煙量と糖尿病リスクとの間に用量反応関係が認められた。 研究グループは、この結果から「HTPのみで喫煙している人(そのほとんどが過去に紙巻タバコの喫煙経験あり)において、追跡期間中、HTPのみでの喫煙は紙巻タバコのみでの喫煙と比較して、2型糖尿病のリスク低下とは関連していなかった。本研究の結果では、リスクの上昇がHTP使用の独立した影響によるものか、あるいは過去の紙巻タバコ曝露の残留効果によるものかを区別できないため、HTP使用者と紙巻タバコ喫煙者との間で糖尿病リスクが時間経過とともに異なるかどうかを評価するには、より長期の追跡調査が必要である」と結論付けている。

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生活習慣病予防、朝と夕どちらに運動するのが効果的?

 運動を行う時間帯の違いが、健康状態に異なる影響を及ぼす可能性のあることを示唆するデータが報告された。朝に運動をしている人は、遅い時間帯に運動をしている人よりも、肥満や2型糖尿病などの有病率が低いという。米マサチューセッツ大学チャン医学部のPrem Patel氏らが3月29日、米国心臓病学会学術集会(ACC.26、3月28~30日、ニューオーリンズ)で発表した。 Patel氏はこの研究の目的を、「どんな運動でもしないよりはした方が良いことは既に分かっているが、われわれは運動を行う最適なタイミングがあると考え、その特定を試みた」と解説。そして、「朝の時間帯に運動を行える人は、心血管代謝疾患の有病率が低い傾向にあるようだ」と述べている。 この研究には、米連邦政府のサポートで行われている大規模疫学研究「All of Us」の参加者1万4,489人のデータが用いられた。研究参加者は、手首型のウェアラブルデバイスを装着して1年間にわたり生活した。この期間中、1分おきに心拍数が把握され、15分以上にわたり心拍数の上昇が続いていた場合に、運動をしていたと判定。その時間帯のパターンに基づき、参加者全体をいくつかのカテゴリーに分類した上で、疾患との関連を解析した。 疾患リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、睡眠時間、所得水準など)を調整した解析の結果、遅い時間に運動する習慣のある群に比較して、朝に頻繁に運動している群は、心血管代謝疾患を有する人が少なかった。例えば、肥満は35%、2型糖尿病は30%、高血圧は18%、高コレステロール血症は21%、冠動脈疾患は31%少なかった。これらの関連は、1日の総運動量とは独立したものであった。 研究者らによると、この結果は、ウェアラブルデバイスを介して長期間収集したデータに基づき、運動量と運動のタイミングを評価した初めての大規模研究の報告だという。Patel氏は、「これまでの研究は主に、運動量、運動時間、運動強度といった点に注目してきた。しかし今では米国人の3人に1人がウェアラブルデバイスを所有しているため、分単位のデータも取得できる。その結果、新たな視点で解析できる可能性が広がった」と話している。 ただし本研究は、運動をする時間帯と疾患との関連性を示しているにすぎず、朝の運動が健康の改善につながるという因果関係を示すものではない。また、仮に朝の運動がより良い健康効果をもたらすとしても、そのメカニズムは不明である。Patel氏によると、ホルモン分泌や睡眠習慣、遺伝的背景などが、本研究で観察された関連性に何らかの役割を果たしている可能性があり、さらに個人の行動や心理的側面も関係している可能性もあるという。同氏は、「朝の運動は1日を通してエネルギーレベルを高め、より健康的な食生活につながるのかもしれない」と考察を述べた上で、「あるいは単に、朝の運動を習慣としている人には、健康により注意している人が多いというだけのことかもしれない」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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5月5日 熱中症対策の日【今日は何の日?】

【5月5日 熱中症対策の日】〔由来〕「立夏」(5月5日頃)の頃から熱中症患者の報道が出始めることから、早期の注意と熱中症予防にはこまめな水分補給が大切であることの啓発を目的に「熱中症ゼロへ」プロジェクト(日本気象協会)と日本コカ・コーラが共同で2014年に制定。関連コンテンツ第26回 夏の猛暑、実はあなたの老化を「喫煙レベル」で加速させていた!今すぐできる対策とは?【NYから木曜日】小児の熱中症【すぐに使える小児診療のヒント】第36回 重症熱中症には“Active Cooling”を!【救急診療の基礎知識】根性より水分!?令和の夏を生き抜く医学的戦略?【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】熱中症診療ガイドラインの分類に最重症群「IV度」を追加

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