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1901.

家族歴のある大腸癌患者の再発と死亡リスクは低い

一親等親族に大腸癌患者がいた場合、大腸癌発症リスクは増大するが、癌再発と生存に家族歴がどう影響するか明らかではない。米国・ハーバード大学医学部ダナ・ファーバー癌研究所のJennifer A. Chan氏らは、「ステージIIIの大腸癌患者に大腸癌の家族歴がある場合は、再発と死亡は有意に減少する」と報告した。JAMA誌2008年6月4日号より。術後補助治療を受けた患者1,087例を5年間追跡調査1999年4月~2001年5月に行われた無作為補助的化学療法治験「CALGB 89803」に参加したステージIIIの大腸癌患者1,087例を対象に、前向き観察研究を行った。患者はベースラインで家族歴に関するデータを提供しており、2007年3月までの間、疾患再発と死亡を追跡調査した(追跡期間中央値:5.6年)。主要評価項目は、大腸癌の既往歴の有無に従う、疾患のない生存、再発のない生存および全生存とした。一親等親族に既往歴がある人数が多いほどリスク低下1,087例のうち195例(17.9%)は、一親等親族に大腸癌の家族歴があった。癌再発または死亡は、家族歴のある群195例では57例(29%、95%信頼区間:23~36%)だが、家族歴のない群892例では343人(38%、35~42%)だった。家族歴のない群と比べて、家族歴のある群(一親等親族1人以上)の補正ハザード比は、疾患のない生存0.72(95%信頼区間:0.54~0.96)、再発のない生存0.74(0.55~0.99)、全生存0.75(0.54~1.05)だった。家族歴と、癌再発および死亡のリスク減少の関連は、一親等親族の発症経験者が多いほど強い。家族歴のない群に比べ、既往歴のある親族が1人いた群の、疾患のない生存の多変量ハザード比は0.77(95%CI:0.57~1.04)。既往歴のある親族が2人以上の群では、同0.49(0.23~1.04、家族歴のある親族数の増加傾向P=0.01)で、より大幅なリスク低下が見られた。Chan氏は「補助化学療法を受けているステージIIIの大腸癌患者で、家族に大腸癌の既往歴がある場合は、癌再発と死亡が有意に減少する」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

1902.

広がる「がん診療と心のケア」への要求に 精神腫瘍学の学会推薦講師の全国リスト

サイコオンコロジー学会は、ホームページ上に学会推薦講師(精神腫瘍学)のリストを公開した。同推薦講師は学会世話人、研修会受講経験医師から構成され学会推薦の条件を備えた腫瘍精神学の専門家。推薦講師は、現在全国展開している「がん診療に携わる医師10万人に対する緩和ケア研修会」で、3分の1の時間を占める「心とコミュニケーション」を担当、オファーされた研修会にいって講師を行う。内容は、痛み・気持ちのつらさ・せん妄への対応、コミュニケーションスキルなどからなる。がん患者さんの精神疾患の合併率は高く、末期では5割近くに精神疾患の診断がつくと報告されている。また、精神的な障害が治療方針の混乱、化学療法の障害を招くこともある。サイコオンコロジー学会代表世話人の内富庸介氏(国立がんセンター東病院精神腫瘍学開発部)は、精神的な苦痛(ストレス)も痛みなど身体的な苦痛も不快なものとして脳の同じ部位で認識される。そのため、精神的苦痛と身体的苦痛は相互に影響しており、抗がん剤開始の不安から吐き気が増幅するという現象がみられるのも、その関係が考えられるという。内富氏はまた、がん診療医側もがん患者さんへの告知、特に治療終了の告知に大きな精神的負担を感じていると述べた。同時にがん患者さんと医師など医療提供者との意識のずれを指摘した。がん患者さんのメンタル面のケアと同時にコミュニケーションスキル向上という、実践的な観点から拡大する「がん診療と心のケア」へ新たな支援といえるであろう。(ケアネット 細田雅之)

1903.

悪性胸膜中皮腫、化学療法のベネフィットはほとんど期待できないが…

積極的症状コントロール(ASC)に化学療法を追加しても、悪性胸膜中皮腫の生存およびQOLにベネフィットはもたらされないことが、英国Leeds総合診療所のMartin F Muers氏らが実施した多施設共同無作為化試験(MS01)で明らかとなった。悪性胸膜中皮腫はほぼ致死的な疾患であり、現状では治療選択肢はほとんどない。これまでASCが推奨されてきたが、化学療法の役割についてはコンセンサスが得られていなかったという。Lancet誌2008年5月17日号掲載の報告。ASC単独とASCに2種類の化学療法レジメンを追加する3群を比較MS01試験には、2001年9月~2006年7月に英国の76施設およびオーストラリアの2施設から悪性胸膜中皮腫409例が登録され、以下の3群に無作為に割り付けられた。ASC単独群(136例):ステロイド薬、鎮痛薬、気管支拡張薬、緩和的放射線照射などを実施、ASC+MVP群(137例):ASCに加えマイトマイシンC 6mg/m2+ビンブラスチン6mg/m2+シスプラチン50mg/m2の3週ごとの投与を1コースとして4コース施行、ASC+V群(136例):ASCに加えビノレルビン30mg/m2を週1回、12週間投与。無作為割り付けはPS(WHO)、組織型、施設により層別化した。フォローアップは無作為割り付け後から3週ごとに21週行い、その後は8週ごとに実施した。症例登録の進捗が遅かったため、主要評価項目である全体の生存率については2つの化学療法併用群を統合してASC単独群と比較した。探索的な解析ではビノレルビンによる生存ベネフィットの可能性示唆解析時には393例(96%)が死亡していた[ASC単独群:132例(97%)、ASC+MVP群:132例(96%)、ASC+V群:129例(95%)]。ASC単独と比較してASC+化学療法の生存ベネフィットは大きくなく、有意差な差は認めなかった(ハザード比:0.89、95%信頼区間:0.72~1.10、p=0.29)。生存期間中央値はASC単独群が7.6ヵ月、ASC+化学療法群は8.5ヵ月であった。探索的な解析では、ASC+V群の生存期間中央値は9.5ヵ月であり、ASC単独に比べ有意差はないものの生存への寄与が示唆された(0.80、0.63~1.02、p=0.08)。ASC+MVP群の生存ベネフィットを示すエビデンスは得られなかった(0.99、0.78~1.27、p=0.95)。事前に設定されたQOLに関する4つのサブスケール[身体機能、疼痛、呼吸困難、全般的健康状態(global health status)]は、治療開始から6ヵ月間のいずれの時点の評価でも各群間に差は見られなかった。Muers氏は、「悪性胸膜中皮腫の管理では、ASCに化学療法を追加しても生存およびQOLに有意なベネフィットはもたらされない」と結論したうえで、「探索的な解析の結果により、1つの治療選択肢としてビノレルビンにシスプラチンやペメトレキセドを併用するアプローチは試みる価値があることが示唆されるが、他の多くの癌と同様に、悪性胸膜中皮腫の場合も新規抗癌剤や分子標的薬がもっとも有望かもしれない」と考察している。(菅野守:医学ライター)

1904.

乳癌補助療法、生存率改善はパクリタキセル週1回投与に軍配

乳癌の標準的化学療法後に用いられる2種類のタキサン系薬剤(ドセタキセルとパクリタキセル)による補助療法は、週1回投与と3週に1度の投与ではどちらの有効性が高いのか? 検証作業に当たっていた米国Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のJoseph A. Sparano氏らによる報告がNEJM誌2008年4月17日号で掲載された。転移性乳癌の女性4,950例を調査研究は、乳癌女性のうち腋窩リンパ節転移が陽性か、リンパ節転移は陰性だがリスクの高い患者4,950例を対象に実施された。患者は無作為化された後、まずドキソルビシン(国内商品名:アドリアシン)とシクロホスファミド(エンドキサン)静脈内投与を3週に1度4サイクル行い、引き続き、パクリタキセルまたはドセタキセルを、3週に1度4サイクル静脈内投与する群と、週1回12サイクル静脈内投与する群に割り付けられた。主要エンドポイントは無病生存率。HER2陰性、エストロゲン受容体陽性でも効果パクリタキセルを3週に1度投与する標準的な用法の群と比べて、無病生存のオッズ比はそれぞれ、パクリタキセル週1回投与群は1.27(P = 0.006)、ドセタキセル3週に1度投与群は1.23(P = 0.02)、ドセタキセル週1回投与群は1.09(P = 0.29)だった。いずれもオッズ比は1以上で、実験的治療群が支持される結果となった。また、標準用法群に比べてパクリタキセル週1回投与のほうが、生存率が改善していた(オッズ比1.32、P = 0.01)。サブグループ(HER2陰性)解析の結果では、エストロゲン受容体が陽性でも、パクリタキセル週1回投与によって無病生存率と全生存率に同様の改善が見られた。パクリタキセル週1回投与群では、同剤の3週に1度投与群に比べてグレード2、3、4の神経障害の発生頻度が高かった(27%対20%)が、研究グループは、「ドキソルビシンとシクロホスファミドによる標準的化学療法の後に補助療法としてパクリタキセルを週1回投与することは、乳癌女性の無病生存と全生存率を改善する」と結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

1905.

乳癌予後予測の精度アップと治療戦略改善にゲノム情報統合が有効

デューク大学(米国)ゲノム研究所のChaitanya R. Acharya氏らは、「遺伝子発現プロファイルの活用が乳癌の予後予測と治療戦略に有益をもたらす」として、ゲノム情報と臨床像および病理学的危険因子(米国で「Adjuvant! Online」と呼ばれている乳癌再発リスクのオンラインシミュレーションシステムの集約情報)を統合し、初期乳癌の予後予測の精度アップと治療戦略改善が図れるかどうかを検討した。JAMA誌2008年4月2日号より。補助化学療法の初期乳癌患者964例対象の後ろ向き研究本研究は、補助化学療法対象となった初期乳癌患者を対象とした後ろ向き研究。マイクロアレイ・データに対応した964例(最初の解析患者群として573例をセット、検証群として391例をセット)の乳房腫瘍サンプルが用いられた。患者は全員、臨床病理学的所見に基づき再発危険スコアに割り付けられ、再発危険スコアとの一致パターン入手と、臨床病理学的予後モデルでの予後予測の精度を高めるため、発癌経路と腫瘍生物学/微小環境状態を現す署名付け(signature)が行われた。化学療法反応の予測因子も、初期乳癌での臨床特異性との関連を特徴づけるため実施された。主要評価項目は、無再発生存と薬物療法への感受性予測を洗練する初期乳癌の遺伝子発現シグネチャーと臨床病理学的変数。再発リスク予測の精度を高める予備的証拠が得られた573例のデータセットで、発癌経路と腫瘍生物学/微小環境状態のパターンを示す予後に有意なクラスタが同定された。乳癌の下位表現型を示す低リスク(ログランク検定P=0.004)、中リスク(ログランク検定P=0.01)と高リスク(ログランク検定P=0.003)の各クラスタ。例えば低リスク群(6つの予後的に有意なクラスタのうち)クラスタ4の患者は、クラスタ1(ログランク検定P=0.004)、クラスタ5(ログランク検定P=0.03)の患者に比べて無再発生存が下位だった。クラスタ4の患者の無再発生存の中央値は、クラスタ5の16ヵ月(95%信頼区間:10.5~27.5ヵ月)よりも、クラスタ1の19ヵ月(7.5~24.5ヵ月)よりも少なかった。 多変量解析の結果からは、ゲノムクラスタの独立した予後的価値が確認された[低リスク(P=0.05)、ハイリスク(P=0.02)]。これら再発リスクパターンの再現性と有効性は検証群でも、クラスタは同一ではなかったが確証された。また予後臨床ゲノムクラスタは、一般的に用いられる細胞毒性治療にユニークな感受性パターンを持つことも明らかとなった。Acharya氏らは、「これらの結果は、臨床リスク階層化に遺伝子発現シグネチャーを組み入れることで予後予測の精度を高めることができるという予備的証拠となる。治療戦略の細分化のためこのアプローチの価値を前向き研究で検証する必要がある」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

1906.

結腸・直腸癌の肝転移に対する手術+化学療法は適格例、切除例に有効

結腸・直腸癌の肝転移に対し、手術と術前・後の化学療法を併用すると適格例および切除例の無増悪生存率(PFS)が改善することが、Bernard Nordlinger 氏らEORTC Intergroupの検討で明らかとなった。毎年、世界で約100万人が結腸・直腸癌と診断され、その40~50%に肝転移がみつかる。転移巣が切除可能な場合は5年生存率は35%に達するが、切除しても75%が再発するという。そのため、再発リスクを低減させるアプローチの探索が進められている。Lancet誌2008年3月22日号掲載の報告。術前FOLFOX4+手術+術後FOLFOX4群と手術単独群を比較研究グループは、結腸・直腸癌の切除可能肝転移例(転移巣数≦4)を対象に、手術+術前・後化学療法と手術単独を比較する無作為化対照比較試験を実施した。今回の報告は、プロトコールに規定されていない時点での中間解析によるPFSの最終データについてであり、全生存率は含まれない。2000年10月~2004年7月の間に11か国の78施設から364例が登録され、FOLFOX4(フルオロウラシル/ロイコボリン+オキサリプラチン)を6コース施行後に手術を行い、さらにFOLFOX4を6コース実施する群(182例)と手術単独群(182例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目はPFSのハザード比≦0.71とした。intention-to-treat解析のほか、適格例(併用群:171例、単独群:171例)および切除例(併用群:151例、単独群:152例)に限定した解析も行った。ITT解析ではPFSに有意差なし、適格例、切除例で有意に改善術前FOLFOX4施行(中央値6コース)後は151例(83%)が切除可能であり、115例(63%)が術後FOLFOX4(中央値6コース)を受療した。手術単独群では152例(84%)が切除可能であった。3年PFSは、単独群の28.1%に対し併用群は35.4%と7.3%増加したが、ハザード比は0.79であり有意差を認めなかった(p=0.058)。一方、適格例の3年PFSは、単独群28.1%、併用群36.2%と8.1%増加(ハザード比:0.77、p=0.041)し、切除例ではそれぞれ33.2%、42.4%と9.2%増加(ハザード比:0.73、p=0.025)しており、いずれも有意な差が見られた。解析時までに単独群で75例が、併用群では64例が死亡した。回復可能な術後合併症の頻度は、単独群(16%、27/170例)よりも併用群(25%、40/159例)で高かった(p=0.04)。手術関連の死亡例は単独群2例、併用群1例であった。Nordlinger 氏は、「FOLFOX4による化学療法と肝転移巣切除術は併用可能であり、適格例および切除例では再発のリスクを低減する」と結論している。なお、同じ号の本論文に対するコメントで、米国MDアンダーソン癌センターのScott Kopetz 氏とJean-Nicolas Vauthey氏は、ITT解析では有意差がないこと、適格例と切除例の解析は事前にプロトコールに規定のない後付け解析である点に着目し、「本試験では、術前・後の化学療法の併用によるPFSに対するポジティブな効果は証明されていない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

1907.

第6回日本臨床腫瘍学会学術集会プレスセミナー

2008年3月20、21日に福岡国際会議場において開催された「第6回日本臨床腫瘍学会学術集会」に先立ち、19日にプレスセミナーが開催された。そのなかで、「承認相次ぐ分子標的治療薬-世界標準を見据えて-」についてレポートする。初めに、東京医科大学病院呼吸器外科の坪井正博氏より、非小細胞肺癌:エルロチニブ<上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤>が紹介された。国内外の臨床成績、ガイドラインの位置づけ、ゲフィチニブとの違いを紹介した。両剤とも、効果の得られやすい症例に使用したほうが良いと考えられ、その効果が期待できる集団として女性、非喫煙者などをあげたが、まだ明確な根拠はないという。エルロチニブは2次、3次治療として期待できる薬剤ではあるが、肺障害のリスクなどもあるため、リスクとベネフィットのバランスを患者さんと相談しながら薬剤選択することが重要とまとめた。続いて、東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科の薄井紀子氏より慢性骨髄性白血病(以下CML):分子標的療法の現状と課題が紹介された。薄井氏は、CMLの病態・治療についての概要、分子標的薬イマチニブ<ABLチロシンキナーゼ阻害剤>の治療成績、耐性の問題を紹介した。続いて新規チロシンキナーゼ阻害剤、ダサチニブ、ニロチニブなどについて、それぞれの特徴を交えて解説した。最後に薄井氏は、イマチニブをきちんと使うことが一番重要であり、イマチニブ耐性・無効例には変異に応じた薬剤を選択する時代になってくるだろう、その治療法はデータに基づき、きちんと選択しなければならないと結んだ。次に、国立がんセンター東病院内科の大津敦氏より、大腸がん:セツキシマブが紹介された。セツキシマブは2008年3月現在、未承認であることを冒頭に述べ、EGFRについて解説した。続いてセツキシマブの作用機序、特徴、海外・国内臨床成績、安全性を紹介し、大腸がん領域において、アバスチン、セツキシマブの登場により、本邦も海外と同じレベルの治療が出来るようになる、とまとめた。まとめとして、癌研究会有明病院化学療法科の畠清彦氏が、それぞれの講演におけるポイントを紹介し、さらに新規分子標的薬承認に向けて今後わが国において必要とされる対応について述べた。最後のディスカッションにおいては、韓国に比べて日本における申請から承認までの期間が長いこと、治験が中国や韓国に流れていること、分子標的治療薬では医療費が高額となり治療を続けられない患者さんが存在することなど、今後、解決していくべき問題があがった。

1908.

初のヒト顔面部分移植18ヵ月後のアウトカム

フランス・リヨン大学のJean-Michel Dubernard氏らは2005年11月27日、初めてとなるヒト顔面の部分同種移植術を女性患者に対して行った。患者は、同年3月28日に飼い犬に顔面を食いちぎられ、鼻、上下の口唇、頬、顎を失った38歳女性。レシピエントは脳死女性。その事実は2006年初頭にドナーも同席しての記者会見で公表され、世界中のマスメディアで報じられたのでご記憶の方もいるかもしれない。その移植後18ヵ月時点までの予後に関する報告がNEJM誌12月13日号に掲載された。皮膚感覚は術後6ヵ月、運動機能は10ヵ月で回復本ケースでは、術後免疫抑制治療はthymoglobulins、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾンの組み合わせで行われた。患者自身の造血幹細胞は術後4日目と11日目に注入。拒絶反応については、センチネル植皮片、顔面皮膚、口腔粘膜からの生検にて確認、機能回復の状況は、感覚・運動機能検査を毎月実施し評価された。また移植の前後には心理的サポートも提供されている。術後、軽い接触に対する感受性(定位モノフィラメント評価法を利用)と、温冷に対する感受性は移植後6ヵ月で標準状態に戻った。運動機能の回復はそれより遅れ、口を完全に閉じることができたのは10ヵ月後だった。移植顔面の機能・美容両面で満足移植された顔面に対する心理的受容は機能の向上に伴って進んだ。拒絶反応は移植後18日目と214日目に出現したが、やがて消失した。ただしイヌリンクリアランスの低下が認められたため、14ヵ月目に免疫抑制処方計画をタクロリムスからシロリムスに変更している。拒絶反応が繰り返し起こるのを予防するため、10ヵ月目に体外光化学療法が導入。それ以降、拒絶反応は起こっていない。初の部分顔面移植を受けたこの女性患者は、術後18ヵ月現在、機能面、美容面ともにおいて満足しているという。(朝田哲明:医療ライター)

1909.

C型肝炎肝硬変の血小板減少症に対するeltrombopagの寄与を確認

血小板新生を促進する新しい経口活性型トロンボポエチン受容体作用薬であるeltrombopagは、がん化学療法やC型肝炎ウイルスに関連した血小板減少症の治療薬として期待され、臨床試験が進められている。本論はデューク大学(イギリス)のJohn G. McHutchison氏ら研究グループによるもので、同剤の、HCV関連肝硬変に伴う血小板減少症患者の抗ウイルス治療に対する寄与を評価したもの。NEJM誌2007年11月29日号より。eltrombopag投与群は用量依存的に血小板が増加血小板数が20,000以上70,000未満(単位:立方ミリメートル;/mm3)のHCV関連肝硬変患者74例を、eltrombopag(1日30、50または75mg)投与群とプラセボ群にランダムに割り付け4週間にわたって連日投与された。主要評価項目は、4週目の血小板数が100,000/mm3以上であることとした。試験ではさらにその後12週間、eltrombopagあるいはプラセボを継続投与しながら、ペグインターフェロンとリバビリンによる抗ウイルス治療を開始した。4週目にデータが有効だった例では、血小板数は用量依存的に100,000/mm3以上に増加した。内訳は、プラセボ投与群が18例中0例、30mg投与群12例中9例(75%)、50mg投与群19例中15例(79%)、75mg投与群21例中20例(95%)だった(P

1910.

胃癌術後患者の補助化学療法に関する日本発エビデンス:ACTS-GC

経口フッ化ピリミジン系薬剤(S-1)に関して、日本国内の109医療機関、患者1,059人が参加して行われたACTS-GC試験(Adjuvant Chemotherapy Trial of TS-1 for Gastric CancerTS-1:胃癌術後補助化学療法比較試験 http://acts-gc.jp/index.html)の結果が、NEJM誌11月1日号に掲載された。筆頭執筆者は北里大学の桜本信一氏。治癒的切除術が施行された胃癌患者に対するS-1を用いた補助化学療法の有用性を評価したもの。ステージIIまたはIIIの胃切除術後患者に経口S-1錠投与ACTS-GCは2001年10月から2004年12月にかけて、D2リンパ節郭清を伴う胃切除術を受けたステージIIまたはIIIの日本人の胃癌患者を、術後にS-1投与による補助化学療法を受けた(投与群)529例と、手術療法のみの(手術単独群)530例にランダムに割り付け行われた。投与群は術後6週間以内に投与を開始し、1年間継続。処方計画は原則として、経口S-1錠80mg/m2/日を4週間投与した後2週間休薬する6週間周期で構成された。主要エンドポイントは全生存率。3年全生存率は投与群80.1%、手術単独群70.1%患者登録終了後1年時点の最初の中間解析で、S-1投与群が手術単独群よりも高い全生存率を示した(P=0.002)。そのため効果・安全性評価委員会の勧告に基づき試験は中止されている。追跡調査データの解析によって、3年全生存率は、S-1投与群が80.1%、手術単独群が70.1%で、S-1投与群の対手術単独群死亡ハザード比は0.68だった(95%信頼区間:0.52-0.87、P=0.003)。S-1投与群で比較的よくみられたグレードIIIまたはIVの有害事象は、食欲不振(6.0%)、悪心(3.7%)、下痢(3.1%)だった。これらから研究グループは、「東アジア人でD2郭清を施行した局所進行性胃癌患者に対するS-1を用いた補助化学療法は効果的である」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

1911.

頭頸部扁平上皮癌の導入化学療法に関する第3相無作為化試験

頭頸部扁平上皮癌はアメリカでは、成人で新たに癌と診断される者のうちの5%を、世界的には8%を占め、初期ステージでは根治も期待される疾患である。標準治療は化学療法(手術+放射線療法)だが、最適な治療スケジュールが確立しておらず、薬物療法+放射線療法の導入化学療法が実質的に標準治療となっている。薬物療法ではシスプラチン+フルオロウラシル(PF)療法が、局所進行例での有益性から標準とされているが、ドセタキセル(タキソール)を加えたTPF療法の有益性に関する臨床試験が進行中である。その第3相無作為化試験の結果がNEJM誌10月25日号に掲載された。TPF療法+放射線療法とPF療法+放射線療法を比較TAX 324と名付けられた本試験は、TPF療法後に放射線療法を行う方法と、従来型のPF療法後に放射線療法を行う方法とを比較するもので、501例の頭頸部扁平上皮癌患者をいずれかに無作為に割り付け行われた。患者はいずれも、遠隔転移は認められないが切除不能な腫瘍を有するステージ3あるいは4の臓器保存対象者。TPFあるいはPF療法を受けた後、週1回のカルボプラチン投与と週5日の放射線療法を受け比較された。主要エンドポイントは全生存率。TPF療法+放射線療法を新たな標準治療に追跡調査は最低2年、69%の患者で3年以上行われた。その結果、TPF群でPF群よりも有意に多数の患者が生存していた。死亡に対するハザード比は0.70(P=0.006)。3年時の生存率はPF群で48%なのに対しTPF群は62%、生存期間(中央値)はPF群30ヵ月に対しTPF群71ヵ月と推定された(P=0.006)。TPF群のほうがPF群よりも局所管理が良好で(P=0.04)、遠隔転移の発生率は両群で有意差がなかった(P=0.14)。好中球減少症と発熱性好中球減少症の発生率は、TPF群のほうが高かった。PF群では、血液系の有害事象のため、化学療法の実施が頻繁に遅延された。以上の結果を踏まえTAX 324研究グループは、TPF療法+放射線療法の有意性を結論付け、臨床家に新たな標準治療と考えるべきであると提起した。(武藤まき:医療ライター)

1912.

標準治療+サリドマイドは高齢の多発性骨髄腫の治療に進歩の時代を開く

1960年代から多発性骨髄腫の治療に用いられてきたメルファラン+プレドニゾン(MP)療法は、大量化学療法が施行できない高齢患者の標準治療として現在も広範に使用されている。一方、サリドマイドは再発あるいは治療抵抗性の多発性骨髄腫に対して実質的な抗腫瘍効果を示すことが報告されているが、新規例における有効性は明らかにされていない。 フランス骨髄腫研究グループ(IFM)のThierry Facon氏らは、未治療の高齢患者を対象に、MP療法、MP+サリドマイド(MPT)療法、中等量メルファラン(100mg/m2)+自家造血幹細胞移植(MEL100)(ミニ移植)の有用性を比較検討するために無作為化試験(IFM 99-06)を実施した。10月6日付Lancet誌掲載の報告から。65~75歳の症例を3つの治療群に無作為割り付け対象は、未治療のstage II~III(Durie-Salmon判定基準)の多発性骨髄腫で、年齢65~75歳の症例とした。65歳未満でも大量化学療法適応外の症例およびstage Iのうち高リスクstage Iの基準を満たす症例は試験に含めた。2000年5月~2005年8月までに447例が登録され、MP群に196例、MPT群に125例、MEL100群に126例が無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存率、副次評価項目は奏効率、無増悪生存期間(PFS)、病勢進行後の生存期間、有害事象とした。MPにサリドマイドを併用すると、生存期間がMPよりも約1.5年延長フォローアップ期間(中央値)51.5ヵ月の時点における生存期間中央値は、MP群が33.2ヵ月、MPT群が51.6ヵ月、MEL100群が38.3ヵ月であった。PFSは、MP群が17.8ヵ月、MPT群が27.5ヵ月、MEL100群が19.4ヵ月であり、病勢進行後の生存期間はそれぞれ11.4ヵ月、13.4ヵ月、14.1ヵ月であった。生存期間は、MPTレジメンがMP(ハザード比:0.59、p=0.0006)およびMEL100(同:0.69、p=0.027)よりも有意に優れていた。MEL100とMPの間には有意な差は認めなかった(同:0.86、p=0.32)。Facon氏は、「MP+サリドマイド療法を未治療の高齢多発性骨髄腫患者の治療の基準とすべき強力なエビデンスがもたらされた」と結論し、「標準的MP療法よりも優れた治療法を発見する試みは40年間も失敗してきたが、MPT療法は高齢患者に対し進歩の時代を開くものだ」と記している。(菅野 守:医学ライター)

1913.

小細胞肺癌では予防的全脳照射を標準治療とすべき

小細胞肺癌は肺癌全体の13%を占める予後不良の疾患で、化学療法による長期生存は期待できない(2年生存率:1977年1.5%→2000年4.6%)。また共通して脳転移がみられるのが特徴で、診断時に少なくとも18%に脳転移があり2年間で80%近くに達する。 脳転移は予後不良を示す。維持化学療法では転移を防げず、発症後の全脳照射治療も有効ではない。しかし予防的全脳照射の有効性は多数のメタアナリシスによって示されている。そこで欧州癌研究治療機関(EORTC)の肺癌グループは、本治療を実行に移すため無作為化試験を行った。NEJM誌8月16日号の報告から。照射群と対照群に無作為割り付け脳転移までの時間を検証試験対象は、化学療法に反応を示した18~75歳の進展型小細胞肺癌の患者286例。予防的全脳照射治療群と追加治療を行わない対照群にランダムに割り付け、症候性脳転移までの時間をエンドポイントとした。あらかじめ定義した脳転移を示唆する症状が現れた場合はCTもしくはMRIで検査を実施した。脳転移のリスク低下、生存期間延長を確認試験の結果、予防的全脳照射は症候性脳転移の発生率を低下させ、無疾患生存期間および全生存期間を延長することが確認された。照射群の症候性脳転移のリスクは低く(ハザード比0.27、P

1914.

食習慣は大腸癌発病に加え再発にも深く関与

大腸癌発病と食事の因果関係については知られているが、患者の予後における食事の影響については明らかにされていない。アメリカ・ボストンのダナ・ファーバー癌研究所のJeffrey A. Meyerhardt氏らは、食パターンと大腸癌生存者の再発率および死亡率との関連に着目して、前向き観察研究を実施した。JAMA誌8月15日号の報告から。III期大腸癌患者1,009例を追跡調査対象患者は1999年4月~2001年5月の間に、無作為化補助化学療法試験(CALGB 89803)に登録されたIII期の大腸癌患者1,009例。補助化学療法中および治療後6ヵ月間の食習慣についてアンケートを行い、確認された慎重食パターン(prudent pattern)と西洋食パターン(Western pattern)の2つの食パターンと、癌再発および死亡について分析した。慎重食パターンは果物、野菜、鶏肉、魚をよく摂取することが、一方の西洋食パターンは肉、油脂、精製された穀物、デザート類の摂取率が高い。西洋食パターンと再発率、死亡率との関連を確認追跡期間5.3年(中央値)の間に、集団全体として324例の患者が癌再発、223例が癌再発で死亡、28例が癌再発以外の要因で死亡しており、西洋食が大腸癌再発や死亡と関連していることが明らかとなった。五分位比較による西洋食パターンの最小摂取群と最大摂取群の患者の、無疾患生存の補正ハザード比(AHR)は3.25(95%信頼区間2.04- 5.19)、無再発生存AHRは2.85(同1.75-4.63)、全生存AHRは2.32(同1.36-3.96)だった(いずれもP<0.001)。西洋食パターンに偏ったことによる無疾患生存の低下は、性、年齢、ステージ、BMI、身体活動レベル、基線PSあるいは治療による差異はなかった。対照的に慎重食パターンは、癌再発および死亡率との関連は認められなかった。以上の結果を踏まえMeyerhardt氏らは、「手術および補助化学療法を受けたIII期大腸癌患者が西洋食をより多く摂取することは、再発と死亡率を高める可能性がある。そのような食事のどの構成要素が最も強く関連しているのか、さらなる研究によって明らかにする必要がある」と結論づけた。(武藤まき:医療ライター)

1915.

COX-2のrofecoxib、結腸直腸癌のアジュバント療法でも心血管有害事象増加

関節炎治療薬のCOX-2選択的阻害薬rofecoxib(商品名Vioxx)は、心血管有害事象を増加するおそれがあるとして2004年に全世界で販売が停止された。 一方でCOX-2には、癌の進行を遅らせる可能性があるとされている。David J. Kerr氏らVICTOR Trial Group(Vioxx in Colorectal Cancer Therapy: Definition of Optimal Regime)は、この特性に着目して行った、結腸直腸癌の再発低下を目的とするrofecoxib投与治験について、患者の心血管有害事象に関する報告を行った。詳細はNEJM誌7月26日号に掲載。ステージIIとIII の結腸直腸癌2,434例対象に無作為化プラセボ対照対象は、結腸直腸癌ステージIIまたはIIIの患者で、rofecoxibの無作為化プラセボ対照試験に参加した2,434例。心血管系の重篤な血栓性イベントの有害事象すべてが検討され、持続的なリスクを評価するため、試験終了24ヵ月後までの心血管イベント報告を含んで行われた。rofecoxibの投与は、腫瘍切除術、化学療法あるいは放射線療法といった加療が行われた後に、25mg/日で開始された。心血管イベントの相対リスクは1.50本試験はrofecoxibの販売停止で当初予定より早く終了となっている。実薬治療の継続期間の中央値は7.4ヵ月間。追跡調査期間中央値は投与群(1,167例)33.0ヵ月、プラセボ群(1,160例)33.4ヵ月だった。確認された23件の心血管イベントのうち16件がrofecoxib投与群で、治療期間中かもしくは治療期間後14日以内で発生していた。推定相対リスクは2.66(P=0.04)。Antiplatelet Trialists' Collaborationエンドポイント(心血管系・出血・原因不明による死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞ならびに脳出血の複合発生率)の解析では、相対リスク(未調整)は1.60だった(P=0.37)。また試験終了後2年以内に14件の心血管イベントが報告され、このうち6件がrofecoxib投与群だった。全体の相対リスク(未調整)は1.50と報告されている(P=0.24)。さらに、治療期間中もしくは治療期間後14日以内にrofecoxib投与群4例とプラセボ群2例で血栓症による死亡が確認され、追跡期間中にrofecoxib投与群1例とプラセボ群5例の心血管イベントによる死亡が確認された。Kerr氏らは、結腸直腸癌に対するアジュバント療法としての投与でも、rofecoxibは心血管系有害事象の増加と関連していたと結論している。(武藤まき:医療ライター)

1916.

進行結腸・直腸癌に対するCAIROレジメン投与、同時or逐次どちらが有用か?

進行結腸・直腸癌に対する化学療法の至適レジメンについては、first-line治療のみならずsecond-line、third-line治療をも視野に入れ、最も有効な薬剤の組み合わせとその効果的な投与法の探索が進められている。進行結腸・直腸癌に対する標準的治療薬であるフルオロウラシル(5-FU)に、塩酸イリノテカン(CPT-11)およびオキサリプラチン(L-OHP)を併用するアプローチは生存期間の延長など臨床的ベネフィットをもたらすことが示されている。 オランダ・ラドボウド大学ナイメーヘン医療センターのMiriam Koopman氏らは、5-FUの代わりに経口フッ化ピリミジン薬であるカペシタビン(CAP)を用い、CPT-11、L-OHPの3剤の組み合わせ(CAIRO)に関する2つの投与法の有用性を評価する無作為化第III相試験を実施した。7月14日付Lancet誌に掲載された報告から。CAP→CPT-11→CAP+L-OHP vs. CAP+CPT-11→CAP+L-OHP2003年1月~2004年12月の間に、オランダの74施設から進行結腸・直腸癌820例が登録され、次の2つのレジメンに無作為に割り付けられた。(1)first-line:CAP、second-line:CPT-11、third-line:CAP+L-OHP(逐次投与群、410例)、(2)first-line:CAP+CPT-11、second-line:CAP+L-OHP(同時投与群、410例)。主要評価項目は全生存率とした。生存期間中央値は、逐次投与群が16.3ヵ月、同時投与群が17.4ヵ月であり、有意な差は認められなかった(p=0.3281)。逐次投与群に対する同時投与群のハザード比は0.92(95%信頼区間:0.79-1.08、p=0.3281)と有意差は認めなかった。また、1年生存率も、それぞれ64%、67%と同等であった(p=0.38)。first-line治療においては、同時投与群で無増悪生存期間(5.8 vs. 7.8ヵ月、p=0.0002)、全体の奏効率(CR+PR)(20 vs. 41%、p<0.0001)、腫瘍増殖抑制率(CR+PR+SD)(74 vs. 87%、p<0.0001)が有意に優れていた。CAIROの逐次投与法は確立された治療法全体のgrade 3~4の有害事象は、grade 3の手足症候群の頻度が逐次投与群で有意に多く見られたが(13 vs. 7%、p=0.004)、それ以外については両群間に差は認めなかった。first-line治療に限ると、重篤な有害事象の頻度は逐次投与群のほうが少なかった。これらの結果から、Koopman氏は「CAIROの同時投与法の全生存率が逐次投与法を凌駕することはなかった。逐次投与法は結腸・直腸癌に対する確立された治療法であることが改めて確認された」と結論している。また、同氏は「分子標的治療薬の導入によって進行結腸・直腸癌の治療選択肢や転帰は大きく変化しているが、全身療法の根幹が抗癌剤であることに変わりはない」と考察している。(菅野 守:医学ライター)

1917.

小児癌生存者は有害事象リスクの負荷に応じた医学的監視が必要

小児癌患者の生存率は、治療に付随する多発性の晩期障害を伴いながらも改善をみている。しかし、小児癌生存者に関する研究の大半は、1つの晩期障害にだけ着目されていた。そこでオランダ・Emma Children's Hospital/Academic Medical CenterのMaud M. Geenen氏らの研究グループは、生存者の大規模かつ長期的な医学的追跡調査を行い、小児癌治療後のすべての健康予後悪化のリスクを評価することを試みた。JAMA誌6月27日号の報告から。5年生存患者を専門クリニックで追跡調査研究グループは、1966年から1996年の間に1つの施設で治療を受けた小児癌患者のうち、5年生存者1,362例について後ろ向きコホート研究を実施した。治療後有害事象を医学的に評価するため、全生存者を晩期障害の専門クリニックに招き、2004年1月以前に出現した有害事象をすべて重症度に応じて等級分けした。主要評価項目は、調査終了時の重症度別有害事象の治療特異的有病率と、等級分けで「serve」あるいは「high」にスコアされた疾患と各治療法との相対リスク。この追跡調査の終了時の生存者は94.3%(追跡調査期間中央値17.0年)、年齢中央値は24.4歳だった。特に放射線療法受療生存者は「serve」「high」な晩期障害の負荷を有する生存者の75%に1つ以上の有害事象があり、24.6%に5つ以上の有害事象があった。加えて40%の生存者で、少なくとも1つの「重篤な」あるいは「致命的・障害を伴う」有害事象が見られた。「serve」あるいは「high」のスコア群には、放射線療法だけを受けた生存者が55%、化学療法だけを受けた生存者が15%観察された、これらの補正相対リスクは、手術療法だけを受けた生存者群(25%)と比較して、それぞれ2.18(95%信頼区間:1.62-2.95)、0.65(95%信頼区間:0.46-0.90)だった。また、骨腫瘍の生存者(64%)が最も多く観察され、最も少なかったのは白血病またはウィルムス腫瘍(各12%)だった。小児癌生存例のかなりの割合、特に放射線療法後のケースにおいて、青年期にはすでに「serve」あるいは「high」にスコアされる晩期障害に苦しんでいることが明らかになったことからGeenen氏らは、「小児癌生存者のリスクに応じた生涯にわたる医学的監視の必要性を強く意味づける結果だ」と結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

1918.

術前化学療法で非小細胞肺癌の5年生存率が5%上昇

1990年代半ばに2つの小規模な試験が有望な成績を報告して以来、非小細胞肺癌(NSCLC)に対する術前補助化学療法(neo-adjuvant chemotherapy; NAC)の検討が活発に進められている。6月9日付Lancet誌に掲載されたヨーロッパのIntergroupによる多施設共同無作為化試験の結果は、NACは手術単独に比べ全生存率を改善したものの有意差はなかった。しかし、この最新データを加えたNACの無作為化試験全体の解析によれば、今回の成績は5年生存率を5%引き上げるものだという。英国Addenbrooke’s HospitalのDavid Gilligan氏の報告。NAC完遂率75%、奏効率49%、病変のdown-stagingは 31%切除可能なNSCLCが、手術単独群とプラチナ製剤ベースの化学療法を3コース施行後に手術を受けるNAC群に無作為に割り付けられた。NACは、無作為化の前に6つのレジメンの中から主治医が選択した。1997年7月~2005年7月の間に、ヨーロッパの70施設から519例が登録され、そのうち261例が手術単独群に、258例がNAC群に割り付けられた。stageは Iが61%、IIが31%、IIIが7%であった。NACの完遂率は75%であり、feasibleとみなされた。また、奏効率は49%と良好であり、病変進行は2%にすぎなかった。31%の症例で病変のdown-stagingが得られた。全生存率の差はないが、最新のエビデンスに強い影響を及ぼす成果完全切除率は手術単独群80%、NAC群82%と両群間に差はみられなかった。NAC群で術後の合併症が増加することはなく、QOLの低下も認めなかった。また、両群間に全生存率の差はなかった(ハザード比:1.02、95%信頼区間: 0.80-1.31、p=0.86)。生存期間中央値(MST)および5年生存率の推計値は、手術群がそれぞれ55か月、45%、NAC群が54か月、44%であった。Gilligan氏は、「今回の成績をこれまでのNACの無作為化試験のデータに統合して解析したところ、NACにより12%の相対的な生存ベネフィットが得られ、これは5年生存率の5%の上昇に相当する」と考察を加え、「全生存率に有意差はなかったとはいえ、本試験の成績は最新のエビデンスに強い影響を及ぼすものと思われる」としている。(菅野 守:医学ライター)

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