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EGFR変異肺がん、アファチニブ→オシメルチニブの治療シークエンスを評価/ベーリンガーインゲルハイム

 ベーリンガーインゲルハイムは、2018年8月9日、電子カルテなどの診療情報に基づき、EGFR変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者のシークエンシャル治療の影響を評価する、リアルワールド、レトロスペクティブ研究GioTagの登録を完了したと発表。1次治療アファチニブ2次治療オシメルチニブと、シークエンシャルにEGFR-TKIを投与された患者を登録する。当研究のデータは日本を含む10ヵ国204例で構成されている。 リアルワールドの設定において、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療としてのアファチニブの治療に続いて、抵抗性のT790M変異陽性患者を対象にオシメルチニブを投与した治療期間を主要アウトカムとするこの研究は2017年12月に開始された。 同研究の目的は、これらのEGFR-TKIのシークエンシャル治療の方針と、それによる化学療法の使用開始時期を遅らせることへの影響に関する見識を示し、EGFR変異陽性NSCLCの治療方法に役立つ情報を提供すること。結果は今年後半に発表される予定。

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第3回 耳鼻科からのアモキシシリン・アセトアミノフェン 5日間の処方 (前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?細菌性中耳炎・・・12名全員 佐々木康弘耳鼻科医の処方であり、小児へのペニシリン系抗菌薬投与に加え、アセトアミノフェンの発熱および痛いときの指示から、細菌性中耳炎であると判断しました。急性副鼻腔炎,急性咽頭炎・扁桃炎 ふな3耳鼻科の処方であり、高用量アモキシシリンの処方やカルボシステインの併用があることから中耳炎を第1候補として考えます。ただし、併用薬がある場合や症状の聞き取り、医師の処方の傾向によっては、推測した疾患と異なる場合があるため、急性副鼻腔炎、急性咽頭炎・扁桃炎などの可能性も含めて柔軟に対応できるようにします。副鼻腔炎、中耳炎 中西剛明処方元が小児科であれば肺炎も念頭に入れるなど判断に迷うところですが、耳鼻科なので、副鼻腔炎か中耳炎を疑います。Q2 患者さんに確認することは? (通常の確認事項は除く)副鼻腔炎、中耳炎の症状 柏木紀久急性副鼻腔炎の場合: 鼻汁の色と、口呼吸やいびきがあるかどうか(鼻閉は2歳児ではわからないので)。急性中耳炎の場合: 痛みで眠れていないかどうか、最近、慢性副鼻腔炎や滲出性中耳炎になっていないか。医師からの指示内容 ふな3アモキシシリンの分割処方の可能性も考慮して、5日後の再受診を指示されているかどうか。カルボシステインだけが1日2回になっているため、そのような指示があったか、症状が合致しているか。アレルギーの有無 児玉暁人ペニシリンアレルギーと牛乳アレルギーの有無。痛みのある部位と昼の服用 中西剛明副鼻腔炎の可能性を考慮して眉間の痛みや頭痛、中耳炎であれば耳の痛みについて。昼の薬を保育園で飲ませるのか、家で飲ませるのか。症状や抗菌薬の服薬状況、通園 JITHURYOU中耳炎と推測して対応します。症状がいつ頃からあるのか鼓膜を切開しているかどうか。切開を何回も繰り返している場合、ペネム系内服やセフトリアキソンなどの点滴を検討した方がいいかもしれません。中耳炎を反復していないかどうか。抗菌薬を直近1カ月で使用していないか。集団保育、兄弟の有無。園児間や兄弟間では水平感染が起こりやすく、さらに集団保育ではアモキシシリンの耐性菌の分離頻度が高いため、薬剤変更を提案するのが良いと考えます。なお、保育所への通園は医師の確認が取れないうちは避けるようにしなければならないと思います。Q3 患者さんに何を伝える?抗菌薬を飲みきること 柏木紀久アモキシシリンとカルボシステインは飲みきるように伝えます。再受診を勧める 奥村雪男抗菌薬の治療期間についてDynamedTMで検索すると、2~5歳で中等度の症状がある場合、7日間の継続が推奨されているようなので、再受診して鼓膜所見を診断後、抗生物質の継続必要の有無を判断していただくことを勧めます。副作用と服薬の工夫 清水直明「お薬(アモキシシリン)の影響でお腹がゆるくなるかもしれません。そのために整腸剤も一緒に飲んでいただきますが、お腹が痛くなったり下痢がひどいようであればいつでも遠慮なく連絡してくださいね」「 1回に飲む量が多くなるので、そのまま飲むのが難しかったら、アイスやジャム、プリンなど好きなものに混ぜて飲ませてあげてくださいね」3日後の改善具合 荒川隆之3日間お薬を飲んでも良くならない場合は電話してもらうよう伝えます。「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」(日本感染症学会・日本化学療法学会発行)などでも1次治療の効果判定は3日後が望ましいとされています。服薬時間 ふな3「アモキシシリンとエンテロノン®-Rは毎食後で処方されていますが、通園などでどうしても毎食後に服用できない場合は、朝・帰宅後・就寝前で構いませんので、必ず1日3回の服用を心がけてください」処方医はアモキシシリンの時間依存性やコンプライアンス向上を考慮して、アモキシシリンとエンテロノン®-Rを毎食後で処方したと思われます。ただし、添付文書上の用法は両薬剤とも食後に限定されていません。通園などで「お昼は飲めないから朝と夕だけ飲めばいい」と保護者が判断しないように、「食事にかかわらず、1日3回飲み続けることが重要」だと伝えたいです。日常生活での注意点 JITHURYOUアセトアミノフェンの使用方法(使用頻度)。できるだけ鼻汁をとること。菌量が多いと抗菌薬の活性が低下することが知られているので、ドレナージはするべきです。また、鼓室に鼻汁が流れ込むため鼻をすすることは避けるべきで、鼻のかみかたの指導も一緒に行いたいです。耳漏がある場合、ガーゼなどの交換すること。分泌液をそのままにしておくと、かぶれて炎症を起こす可能性があります。下痢をする可能性があるので、できるだけ消化の良いものを摂らせること。後編では、本症例の疑義照会をする/しない 理由を聞きます。

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BRCA変異乳がんに対するtalazoparibの第III相試験/NEJM

 ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬talazoparibは、標準化学療法と比較して、BRCA1/2遺伝子変異陽性進行乳がん患者の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した。患者報告アウトカムでも、talazoparibの優越性が示唆された。米国・テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのJennifer K. Litton氏らが、第III相の無作為化非盲検試験(EMBRACA試験)の結果を報告した。talazoparibは第I相および第II相臨床試験において、BRCA1/2遺伝子変異陽性進行乳がんに対する抗腫瘍活性を示していた。NEJM誌オンライン版2018年8月15日号掲載の報告。talazoparibと医師選択による標準単剤化学療法を比較 EMBRACA試験は、2013年10月~2017年4月に、16ヵ国145施設で実施された。対象は、BRCA1/2遺伝子変異陽性の進行乳がん(切除不能局所進行乳がん、または転移のある乳がん)患者で、talazoparib(1mg/日)群もしくは医師選択による化学療法単剤(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、ビノレルビンのいずれか連続21日間投与)の標準治療群に2対1で割り付けられた。 主要評価項目はPFSとし、盲検下の独立した中央判定によって評価された。有効性の解析はintention-to-treat集団で実施した。talazoparibで無増悪生存期間が8.6ヵ月に延長 計431例が無作為化され、287例がtalazoparib群に、144例が標準治療群に割り付けられた。PFS中央値は、talazoparib群で標準治療群より有意に延長した(8.6ヵ月vs.5.6ヵ月、疾患増悪または死亡のハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.41~0.71、層別log-rank検定のp<0.001)。全生存期間の中間解析では、死亡HR中央値は0.76(95%CI:0.55~1.06、p=0.11)であった。奏効率は、talazoparib群が標準治療群より高値であった(62.6% vs.27.2%、オッズ比:5.0、95%CI:2.9~8.8、p<0.001)。 Grade3~4の血液学的有害事象(主に貧血)は、talazoparib群で55%、標準治療群で38%に発現し、Grade3の非血液学的有害事象の発現率は、それぞれ32%および38%であった。 患者報告アウトカムではtalazoparibが良好であり、全般的なQOLと乳がん症状スケールのいずれもtalazoparib群で改善し、臨床的に意義のある悪化までの期間が有意に遅延することが認められた。

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FDA、小細胞肺がんにニボルマブ承認。20年ぶり新薬/BMS

 Bristol-Myers Squibb社は、2018年8月17日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)が、プラチナベース化学療法と1つ以上の他の治療ライン後に進行した、転移を有する小細胞肺がん(SCLC)の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)から承認を受けたと発表した。この承認は、ニボルマブの第I/II相CheckMate-032試験の結果に基づくもの。 CheckMate-032試験は、プラチナベースの化学療法後に疾患進行したSCLC患者245例をニボルマブで治療した、進行中の多施設共同複数コホート非盲検試験。これらの患者は、PD-L1発現状態にかかわらず、ニボルマブ3mg/kgを2週間ごと、疾患進行または忍容できない毒性が発現するまで投与された。主要有効性評価項目は盲検化された独立中央評価委員会(BICR)評価による包括的奏効率(ORR)であった。ニボルマブ治療患者の治療期間中央値は1ヵ月(範囲:0〜44.2+ ヵ月)で、17%の患者が6ヵ月以上、9%の患者が1年以上ニボルマブの投与を受けた。 有効性は、プラチナベース化学療法と1つ以上の他の治療ラインの後に疾患進行した109例で評価された。この109例のBICR評価によるORRは12%(109例中13例)、部分奏効12例(11%)、完全奏効1例(0.9%)であった。奏効期間中央値は17.9ヵ月であった。安全性は245例全例で評価され、頻度の高い(20%以上)一般的な有害事象は、疲労(45%)、食欲減退(27%)、筋骨格痛(25%)、呼吸困難(22%)、悪心(22%)、下痢(21%)、便秘(20%)、咳嗽(20%)であった。頻度の高い(2%以上)重篤な有害事象は、肺炎、呼吸困難、胸水貯留および脱水であった。■参考Bristol-Myers Squibb社ニュースリリース■関連記事ニボルマブ、小細胞肺がんに単独およびイピリムマブ併用で有望な効果:CheckMate-032

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第2回 小児へのアモキシシリン 分2 10日間の処方 (後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?Q2患者さんに確認することは?Q3患者さんに何を伝える?Q4 疑義照会をする?しない?(状況によっては)疑義照会するアモキシシリンを分3にできないか疑義照会 荒川隆之アモキシシリンの1日3回投与をお勧めします。カルボシステインは通常体重1kgあたり0.02g製剤量を3回投与なので、処方から計算上は16.5kgとなります。2歳女児の平均体重10~13kgより少し大きいでしょうか?「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」(日本感染症学会・日本化学療法学会発行)では、小児の咽頭・扁桃炎に対してアモキシシリンは10~20mg/kgを1日3回投与とありますので、16.5kgならば1回165~330mgを1日3回投与となります。本症例の場合、1回量は280mgとなり適正と考えられるのですが1日2回投与です。Wessels MR. Streptococcal pharyngitis. N Engl J Med. 2011; 364: 648-655. などにおいてもアモキシシリンは1日1~2回投与とありますが、アモキシシリンは時間依存性であり半減期が1.2時間と短いこと、また飲み忘れなども考え合わせると、JAID/JSCのガイドラインどおり1日3回10日間の投与が良いのではないかと考えます。母親の観点からの意見 わらび餅患児は保育園に通っているのでしょうか。保育園に与薬を依頼することができないのかもしれないですが、あのカサ高いアモキシシリン10%散を2歳児に飲ませることは大変で、分2だと1回飲ませるのに失敗したときのロスは大きいです。もう少し年齢が高ければ分2でも良いですが、1~2歳は必要性が理解できないので与薬が大変です。子供の普段の薬に対する忍容性がどうか、または保育園へ与薬依頼できるか母親へ確認し、分3にできるか医師に相談します。昼服用が可能なら疑義照会 柏木紀久保護者への確認で服薬支援が得られるならばRp.1~2を分3にするように疑義照会します。今回は昼服用を意図的に避けているようなので、お昼に服用できないとのことであれば「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011」(日本小児感染症学会)の「A群溶血性レンサ球菌による咽頭・扁桃炎の抗菌薬療法」の項、「推奨される抗菌薬療法」にある「アモキシシリン 30~50mg/kg/日 分2~3 10日間」から疑義照会しません。下痢対策 キャンプ人下痢を起こしやすいので、牛乳アレルギーなどがない場合は整腸剤の処方の検討も依頼します。アモキシシリン以外の処方について疑義照会 中西剛明アモキシシリン服用後にすぐに解熱する場合が多いので、他の薬は使わなくても済む可能性を患者さんに説明して、アモキシシリン以外の薬が不要という申し出があれば、処方取り消しのための疑義照会を行います。薬剤特有の臭いに配慮 中堅薬剤師1日3回、または4回投与を提案し、1日3回にするならばRp.2と合わせて朝・夕・寝る前で処方してもらいます。なお、アモキシシリンは開封後、時間経過すると次第に独特の臭いが強まりますので、開封後時間が経過していない商品で調剤します。あまり動きのない店舗であれば、分包品を採用します。小児の場合、矯味の問題でアドヒアランスが低下することはよくあるので、アモキシシリンの服薬アドヒアランスが低い子供にはセフェム系のセフジトレンピボキシルやセフジニルなどの提案も良いと思います。低カルニチン血症※を考慮して、ピボキシル基を含まないセフジニルを推奨することもあります。※ピボキシル基を有する抗菌薬によりカルニチン排泄が亢進し、低カルニチン血症に至ることがあり、小児(特に乳幼児)では血中カルニチンが少ないため、血中カルニチンの低下に伴う低血糖症状(意識レベル低下、痙攣など)に注意する3)。処方日数について 清水直明初回で10日分の処方は、抗菌薬の効果判定をせずに漫然と投与していると捉えられ、保険で査定される可能性があります。実際、私の勤務先では、初回投与で7日を超える抗菌薬の処方は査定されました。日数を短縮し(3~4日程度)、再度来院して1次効果を確認してから、継続投与の処方を行うほうが良いと考えます。疑義照会をしない分2投与は迷うが... 児玉暁人アモキシシリンの分2投与を疑義照会するかどうか迷うところです。「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011」の「A群溶血性レンサ球菌による咽頭・扁桃炎の抗菌薬療法」では分2~3となっているのと、Wessels MR. Streptococcal pharyngitis. N Engl J Med. 2011; 364: 648-655. にStreptococcal Pharyngitisの総説があり、アモキシシリン分2あるいは分1の記載もあることから、A群溶血性レンサ球菌であれば服用完遂を優先して分2のままでも良いかもしれません。協力メンバーの意見をまとめました今回の抗菌薬処方で患者さんに確認することは・・・(通常の確認事項は除く)ペニシリンアレルギーがあるか・・・5名溶連菌の検査を受けたかどうか・・・3名咽頭痛、苺舌など症状の有無・・・2名患者さんに伝えることは・・・アモキシシリンは症状が改善しても10日間しっかり飲みきること・・・12名全員小分けにして飲んだりアイスや乳製品などに混ぜてもよいこと・・・4名腹痛や下痢などの副作用について説明する・・・3名発熱時の水分補給の重要性を説明する・・・2名アモキシシリン以外は、症状によっては無理に服用する必要はないことを伝える・・・2名疑義照会については・・・(状況によっては)疑義照会する アモキシシリン分2処方について、患者背景を確認し、できれば分3~4になるよう疑義照会する・・・6名アモキシシリン以外の薬が不要との申し出があれば、処方取り消しの提案をする・・・1名下痢対策として、整腸剤の処方依頼をする・・・1名 疑義照会をしない アモキシシリンは分2でも分3と同様の効果が得られることが報告されているので、疑義照会しない・・・2名1)国立感染症研究所感染症情報センター. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは. NIID国立感染症研究所.2)西本幸弘ら. 感染症により誘発される免疫疾患. 新領域別症候群25 感染症症候群(第2版)下. 2013: 742-748.3)(独)医薬品医療機器総合機構". ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖について. "独立行政法人 医薬品医療機器総合機構.

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添付文書改訂:ゼルヤンツ錠/トレリーフ錠/リムパーザ錠【下平博士のDIノート】第7回

ゼルヤンツ錠5mg画像を拡大する<使用上の注意>過去の治療において、ほかの薬物療法(ステロイド、免疫抑制薬または生物製剤)による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与します。<用法・用量>導入療法では、通常、成人に、トファシチニブとして1回10mgを1日2回、8週間(効果不十分な場合はさらに8週間)投与し、維持療法では1回5mgを1日2回経口投与します。なお、維持療法中に効果が減弱した患者、過去の薬物治療において難治性の患者(TNF阻害薬無効例など)では、1回10mgを1日2回投与することができます。感染症リスクの増加が予想されるので、本剤とTNF阻害薬などの生物製剤や、タクロリムス、アザチオプリンなどの強力な免疫抑制薬(局所製剤以外)との併用はできません。<Shimo's eyes>関節リウマチ治療薬として用いられてきたJAK阻害薬のトファシチニブに、国の指定難病である潰瘍性大腸炎の適応が追加されました。潰瘍性大腸炎の国内患者数は、2016年までの10年間で約1.9倍に増えました。2016年11月にメサラジン錠(商品名:リアルダ錠1200mg)、2017年12月にブデソニド(同:レクタブル2mg注腸フォーム)が相次いで発売され、海外で広く使用されているベドリズマブ(同:エンタイビオ点滴静注)も2018年7月に承認取得しています。治療選択肢が増えることにより、治療の目標となる寛解導入や寛解維持が以前より容易になることが期待されます。また、個々の患者さんの症状・生活習慣・経済状況などに合わせた治療で、より患者さんのQOL向上が見込めるでしょう。トレリーフ錠/OD錠25mg画像を拡大する<用法・用量>通常、成人にゾニサミドとして、1日1回25mgを経口投与します。<Shimo's eyes>ゾニサミドはもともと抗てんかん薬として開発され、のちにパーキンソン病治療薬として開発された薬剤です。抗てんかん薬としてはエクセグランの商品名で、パーキンソン病治療薬としてはトレリーフの商品名で、効能・効果と用法・用量を区別して発売されています。レビー小体型認知症のパーキンソニズムは、パーキンソン病のパーキンソニズムと原因や症状が同じであることから開発が進められ、追加承認となりました。ゾニサミドは、ドパミンレベルを上昇させることで、レボドパの抗パーキンソン作用を増強・延長し、レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムを改善します。通常、レボドパ含有製剤との併用療法で使用されると予想できます。レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムを適応症とする初めての薬なので、患者さんの新たな選択肢として治療への貢献が期待されます。リムパーザ錠100mg/150mg画像を拡大する<使用上の注意>(1)本剤の術前・術後薬物療法としての有効性および安全性は確立していません。(2)アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬およびタキサン系抗悪性腫瘍薬を含む化学療法歴のある患者を対象とします。(3)承認された体外診断薬などを用いた検査により、生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異(病的変異または病的変異疑い)を有することが確認された患者に投与します。<用法・用量>通常、成人にはオラパリブとして300mgを1日2回、経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。100mg錠と150mg錠の生物学的同等性は示されていないため、300mgを投与する際に100mg錠を使用することはできず、100mg錠は減量時のみ使用します。<Shimo's eyes>オラパリブは、DNA損傷応答(DDR)機能を標的とした新規の作用機序を持つ、世界初のPARP阻害薬です。DNAの相同組換え修復機構が機能していないがん細胞に対して特異的に細胞死を誘導します。もともとは白金系抗悪性腫瘍薬感受性の再発卵巣がん治療薬として発売されましたが、今回の適応追加により、国内で初めて、BRCA遺伝子陽性の遺伝性乳がん治療薬として使用されることになりました。BRCA遺伝子は、アンジェリーナ・ジョリーさんが陽性であったことでも知られています。本剤は、悪心・嘔吐が高頻度で認められているため、服薬指導の際に、脱水が起こらないように水分補給や食事の工夫などのアドバイスができるとよいでしょう。

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オシメルチニブ、NSCLCのCNS病変への効果(AURA3)/JCO

 EGFR-TKI治療で疾患進行を来したEGFR T790M変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)における第III相試験(AURA3)から、事前に設定されたCNS病変に対するオシメルチニブの有効性を化学療法(プラチナ+ペメトレキセド)と比較したサブ解析の結果を中国・Guangdong General HospitalのYi-Long Wu氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2018年7月30日号で発表した。・対象:EGFR-TKIの1次治療で疾患進行したCNS転移のあるEGFR T790M変異NSCLC患者・試験群:オシメルチニブ80mg/日・対照群:化学療法(プラチナ+ペメトレキセド)3週ごと6サイクル・評価項目:[主要評価項目]盲検下中央独立判定によるCNS客観的奏効率(CNS ORR)[副次評価項目]CNS病勢コントロール率(CNS DCR)、CNS奏効期間(CNS DOR)、CNS無増悪期間(CNS PFS)、CNS腫瘍縮小 解析は、ベースライン時に測定可能および/または測定不可能なCNS病変のある患者を「全分析セット(CNS full analysis set)」、1つ以上の測定可能なCNS病変のある患者のみの「評価可能セット(CNS evaluable for response set)」の2グループで行われた。 主な結果は以下のとおり。・AURA3試験の全対象患者のうち、CNS病変を有する「全分析セット」は116例(オシメルチニブ群75例、プラチナ+ペメトレキセド群41例)、「評価可能セット」は46例(オシメルチニブ群30例、プラチナ+ペメトレキセド群16例)であった。・「評価可能セット」のCNS ORRはオシメルチニブ群70%、プラチナ+ペメトレキセド群31%であった(OR:5.13、95%CI:1.44~20.64、p=0.015)。・「全分析セット」のCNS ORRはオシメルチニブ群40%、プラチナ+ペメトレキセド群17%であった(OR:3.24、95%CI:1.33~8.81、p=0.014)。・「全分析セット」のCNS DORはオシメルチニブ群8.9ヵ月、プラチナ+ペメトレキセド群5.7ヵ月であった。・「全分析セットの」CNS PFSはオシメルチニブ群11.7 ヵ月、プラチナ+ペメトレキセド群5.6ヵ月であった(HR:0.32、95%CI:0.15~0.69、p=0.004)。

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パンクレリパーゼは膵がん患者の生存期間を延長する可能性

 パンクレリパーゼの投与により膵がん患者の生存期間が延長したことが、東京大学の斎藤 友隆氏らの研究によって明らかになった。Pancreas誌2018年8月号に掲載。 膵外分泌不全は膵がん患者の栄養状態を悪化させる疾患であるが、それに対する膵酵素補充療法の役割については評価が十分にされていない。そこで、膵がん患者への膵酵素補充療法の役割を評価するために、著者らは多施設非盲検ランダム化比較試験を実施した。 本研究では、化学療法を受けている切除不能な膵がん患者を、パンクレリパーゼ群と非パンクレリパーゼ群にランダムに割り当てた。パンクレリパーゼ群には、酵素活性が4万8,000ユニットのパンクレリパーゼを毎回の食事で投与した。ベースラインでは、NBT-PABA試験が行われた。主要評価項目は8週時点でのBMI変化、副次評価項目は全生存期間と8週時点での栄養状態変化とした。 主な結果は以下のとおり。・2014年5月~2016年5月の間で、88人の膵がん患者に対してNBT-PABA試験が行われ、患者の膵機能は通常の90%に低下していた。・8週時点でのBMI変化は、パンクレリパーゼ群で0.975、非パンクレリパーゼ群で0.980であり、両者に有意差は認められなかった。・栄養状態に関しても、両者で有意差は認められなかった。・全生存期間中央値は、パンクレリパーゼ群で19.0ヵ月、非パンクレリパーゼ群で12.0ヵ月であった。(p=0.070)

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H/dMMR大腸がんに迅速承認/BMS

 Bristol-Myers Squibb社は、2018年7月11日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)3mg/kgとイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)1mg/kgの併用療法が、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療後に病勢進行したMSI-HまたはdMMRの転移を有する大腸がん(mCRC)患者(成人および12歳以上の小児)の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得したことを発表。 この承認は、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、またはイリノテカンを含む化学療法による治療歴を有するMSI-Hまたは dMMRのmCRC患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法を評価した進行中の第II相CheckMate-142試験のデータに基づくもの。同併用療法は、FDAのブレークスルーセラピーに指定され、優先審査の対象となっていた。 CheckMate-142試験の同併用療法コホートには、1ライン以上の治療が行われたMSI-H/dMMRのmCRC患者が組み入れられ、ニボルマブ3mg/kgとイピリムマブ1mg/kgを3週ごと4回投与され、その後ニボルマブ単剤3mg/kgを2週間ごと、病勢進行または忍容できない有害事象が認められるまで投与された。有効性解析は、フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療歴を有する患者(全119例中82 例)および全登録患者の両方において実施された。 フルオロピリミジン、オキサリプラチンおよびイリノテカンによる治療歴を有する患者82例の、独立放射線評価委員会(IRRC)の評価によるニボルマブ・イピリムマブ併用療法のORRは46%(82 例中38 例、CRは3例3.7%、PRは35例43%)であった。全登録患者119例でのORRは、49%(119例中58例、CR5例4.2%、PRは53例45%)であった。奏効が得られた58例のDOR中央値は未達(1.9~23.2+ヵ月)、奏効患者の83%で6ヵ月以上、19%で12ヵ月以上奏効が持続した。 なお、ニボルマブ単剤療法についても、同様の対象患者に対し、2017年8月に迅速承認されている。■参考Bristol-Myers Squibb社プレスリリースCheckMate-142試験(JCO)CheckMate-142試験(Clinical Triakls.gov)■関連記事ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H大腸がんで有効性/ASCO-GI2017ニボルマブ、MSI-H転移性大腸がんに迅速承認/FDA いよいよ臨床へ、がん種を問わないMSI-H固形がんをどう診断し、治療していくか

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NSCLC 1次治療、化療にペムブロリズマブ併用でQOL改善(KEYNOTE-189)/日本臨床腫瘍学会

 未治療の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対する国際共同無作為化第III相試験(KEYNOTE-189)のQOL評価で、ペムブロリズマブ+化学療法化学療法単独と比べてQOLを維持・改善することが示された。関西医科大学の倉田 宝保氏が、第16回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月19~21日、神戸)のセミプレナリーセッションで発表した。 KEYNOTE-189は、未治療の非扁平上皮NSCLC患者616例を、ペムブロリズマブ群(ペムブロリズマブ200mg+ペメトレキセド500mg/m2+カルボプラチンAUC5またはシスプラチン75mg/m2、3週ごと4サイクル、その後はペムブロリズマブ200mg+ペメトレキセド500mg/m2を3週ごと)と、プラセボ群(ペムブロリズマブ群のペムブロリズマブをプラセボに置き換え)に2対1に無作為に割り付けた試験である。主要評価項目である全生存と無増悪生存は、それぞれハザード比(HR)が0.49、0.52と、ペムブロリズマブ群で有意に改善、副次評価項目の全奏効率も47.6%とプラセボ群の18.9%に対して有意に高く、有害事象はほぼ同様であったことが報告されている。 今回、KEYNOTE-189において、患者報告アウトカム(PRO)を1回以上報告した602例を対象に、欧州がん治療研究機構(EORTC)のQOLに関するアンケートQLQ-C30およびQLQ-LC13を用いてQOLを評価した。主要評価項目は、12週および21週のQLQ-C30 全般的健康状態(GHS)/QOLスコアのベースラインからの変化と、QLQ-LC13咳嗽・胸痛・呼吸困難の複合スコアの悪化までの期間。 その結果、QLQ-C30 GHS/QOLスコアの12週での変化は、ペムブロリズマブ群で+1.0、プラセボ群で-2.6、その差は3.6(95%CI:-0.1~7.2、p=0.053)であった。また、21週での変化の差は5.3(95%CI:1.1~9.5、p=0.014)とプラセボ群が有意に低かった。咳・胸痛・呼吸困難の複合スコアの悪化までの期間の中央値は、ペムブロリズマブ群が未到達(95%CI:10.2ヵ月~未到達)、プラセボ群が7.0ヵ月(95%CI:4.3ヵ月~未到達)で、HRは0.81(95%CI:0.60~1.09、p=0.161)であった。■関連記事NSCLC 1次治療、ペムブロリズマブ併用でOS延長:第III相試験/NEJM

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ASCO2018レポート 消化器がん(肝胆膵)

レポーター紹介2018年度のASCOも例年と同様に、コーミックプレイス@シカゴにて開催された。消化器がんの中でも肝胆膵領域における注目演題についていくつか報告する。肝細胞がん肝細胞がんにおいて、最も注目された演題は、肝細胞がんにおける2次治療としてラムシルマブとプラセボを比較した第III相試験のREACH-2試験である。ラムシルマブは、以前にも肝細胞がんのソラフェニブ不応・不耐の症例を対象としてプラセボと比較した第III相試験を行い、主要評価項目である生存期間は達成しなかったが、AFPが400ng/mL以上の症例で良好な生存期間の延長が示され、今回、AFPが400ng/mL以上の症例を対象としたやり直しの第III相試験を行った。あまり例のない第III相試験であるが、今回は生存期間の有意な延長(生存期間の中央値:ラムシルマブ群8.5ヵ月 vs.プラセボ群7.3ヵ月、ハザード比0.710(95%CI:0.531~0.959)を認め、主要評価項目を達成した。しかも、全体で292例、ラムシルマブ群197例、プラセボ群97例と、比較的少ない患者数で、ポジティブな結果が得られている。また、生存期間のサブグループ解析を見ても、女性以外ではほぼラムシルマブで良好であり、ソラフェニブの2次治療として有用性が示された。無増悪生存期間もラムシルマブで有意に良好(中央値:2.8ヵ月 vs.1.6ヵ月、ハザード比0.452、95%CI:0.339~0.603、p<0.0001)であり、奏効割合もラムシルマブ群4.6%、プラセボ群1.1%と良好で、病勢制御割合もそれぞれ59.9%と38.9%であり、有意に良好であった。Grade3以上の有害事象はラムシルマブ群で高血圧を高率に認めたが(ラムシルマブ群10.7% vs.プラセボ群3.2%)、忍容性は良好であった。ラムシルマブは、肝細胞がんにおいてバイオマーカーでセレクトした患者を対象として、初めて延命効果を示した薬剤であり、また、マルチキナーゼ阻害薬以外の抗体薬である。そのほか、注目された演題としては、Poster Presentationではあるが、切除不能な肝細胞がんに対するVEGFR阻害薬と抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体の併用療法で、ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法とレンバチニブとペムブロリズマブの併用療法である。ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法は、まだ23例と限られた対象での解析であるが、奏効割合(RECIST1.1)が65%と驚異的な成績が示されている。これまでの標準治療であるソラフェニブの奏効割合5~10%と比べると、約10倍の奏効割合である。また、全Gradeの有害事象も食欲減退33%、疲労33%、蛋白尿26%、高血圧21%と、他剤と比べて忍容性も良好であった。これらの有望な結果から、現在、肝細胞がんの初回化学療法例を対象として、ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法とソラフェニブを比較した第III相試験(NCT03434379)が進行中である。レンバチニブとペムブロリズマブの併用療法は、さまざまながん腫において有効性が期待され開発が進行中である。腎細胞がんではBreakthrough TherapyとしてFDAでも取り上げられており、肝細胞がんに対しても期待されて、第Ib試験が行われた。第I相パートにおいて、6例の患者で投与量規制毒性がないことを確認し、拡大コホートで、初回化学療法の患者24例に投与された。主な有害事象は食欲減退、高血圧であった。最良効果判定にて、増悪と判定された例はなく、ほとんどすべての症例で縮小傾向であった。また、多くの症例で、奏効が長期間続いており、いわゆる“durable response”も認められた。このように、これまでの標準治療であるソラフェニブでは、延命効果は得られるが、なかなか腫瘍縮小効果が得られないと言っていた時代から、約半数の症例で縮小が期待できる時代に突入した。今後の肝細胞がんの化学療法は、これらのVEGF阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が中心に開発が進んでいくことが予測されている。胆道がん進行胆道がんに対する1次化学療法のゲムシタビン+シスプラチン併用療法(GC)とゲムシタビン+S-1併用療法(GS)を比較した第III相試験(JCOG1113)がPoster Discussionで日本から報告された。生存期間(中央値)は、GC療法13.4ヵ月、GS療法15.1ヵ月(ハザード比0.945、95%CI:0.777~1.149、p=0.0459 非劣性)と非劣性が示され、胆道がんの初回化学療法の1つのoptionとして位置付けられた。そのほか、胆道がんの初回化学療法例を対象として、GC+ナブパクリタキセルとGC療法を比較する第III相試験がSWOGで進行中であり、今後の有望な併用療法として注目されていた。膵がん膵がん術後の補助療法として、modified FOLFIRINOXとGEMを比較した第III相試験、切除可能膵がんとBorderline resectable(切除可能境界)膵がん患者における術前化学療法と術前化学放射線療法の有用性を検討した第III相試験、転移性膵がんの1次治療としてFOLFIRINOXを増悪まで継続するか、FOLFIRINOX後5-FU+ロイコボリンの維持療法に移行するか、ゲムシタビンとFOLFIRIの逐次治療のどれが良いかを検討するランダム化第II相試験の3演題がOral Presentationとして報告された。術後補助療法としては、海外では、ゲムシタビンが標準治療として行われている。今回は、R0切除が行われた膵がん切除後の患者を対象として、modified FOLFIRINOX(イリノテカンの投与量を150mg/m2に減量したレジメン)とゲムシタビンを比較した第III相試験の結果が報告された。主要評価項目である無病生存期間(中央値)は、modified FOLFIRINOX群で21.6ヵ月、ゲムシタビン群で12.8ヵ月(ハザード比0.58、95%CI:0.46~0.73、p<0.0001)であり、有意に良好な結果が示された。また、生存期間(中央値)もmodified FOLFIRINOX群で54.4ヵ月とゲムシタビン群で35.0ヵ月(ハザード比0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.003)であり、有意に良好な結果であった。有害事象に関して、下痢、末梢神経障害、疲労、嘔吐、口内炎、手足症候群やG-CSFの使用率はmodified FOLFIRINOX群で高率に認められていたが、忍容性はあり、十分に管理可能であった。したがって、全身状態の良好な膵がん切除後の患者に対する補助療法として、modified FOLFIRINOXは標準治療として位置付けられるであろうと報告された。では、日本でも術後補助療法はmodified FOLFIRINOXが標準治療になるだろうか? 日本では、術後補助療法として、S-1とゲムシタビンを比較した第III相試験が行われており、S-1群で、有意に良好な無再発生存期間(中央値:S-1 22.9ヵ月、ゲムシタビン11.3ヵ月、ハザード比0.60、95%CI:0.47~0.76、p<0.0001)と生存期間(中央値:S-1 46.5ヵ月、ゲムシタビン25.5ヵ月、ハザード比0.57、95%CI:0.44~0.72、p<0.0001)が報告されている。S-1単剤でもmodified FOLFIRINOXと同様の成績が得られていること、有害事象はS-1が良好であることを考慮すると、日本において標準的な補助療法がmodified FOLFIRINOXにすぐに置き換わることはないと思われる。しかし、今後、切除不能膵がんにしか適応がないFOLFIRINOXを切除後の補助療法として使用できるように試みることは必要かもしれない。切除可能膵がんとBorderline resectable膵がん患者における術前化学療法と術前化学放射線療法の有用性を検討した第III相試験(PREOPANC)が報告された。切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんが約半数ずつ含まれるような対象に対して、まず切除を行い、術後補助化学療法としてゲムシタビン6サイクルを行う群(immediate surgery群)127例と、術前にゲムシタビンを2回投与後、ゲムシタビン併用放射線療法(ゲムシタビン1,000mg/m2にて3投1休、放射線36Gy/15 fraction)を行い、再度ゲムシタビンを2回投与して切除し、術後に補助化学療法としてゲムシタビンを4サイクル行う群(術前療法群)119例を比較した第III相試験である。切除割合は、それぞれ72%と60%であり、immediate surgery群でやや高率であったが、R0切除割合は、それぞれ31%と63%であり、術前療法群で有意に高率であった(p<0.001)。無病生存期間、遠隔転移再発までの期間、局所再発までの期間も、術前療法群で良好であった。生存期間はまだpreliminaryな結果ではあるが、それぞれ13.7ヵ月と17.1ヵ月であり、ハザード比0.74、p=0.074と術前療法群で良好な傾向が示されており、最終解析が期待される結果であった。ただし、本試験では、切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんが混在した試験であり、評価が難しい。Borderline resectable膵がんに対しては、すでに第II/III相試験の結果、術前治療の有用性も報告されているが(Jang JY, et al. Ann Surg. 2018;215-222.)、切除可能膵がんにおける術前治療の有用性は明らかにされていない。今後、切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんのそれぞれのコホートでの解析も行われると思われるが、切除可能膵がんにおける術前治療の有用性に関して十分な回答が得られない可能性もある。転移性膵がんの1次治療としてFOLFIRINOX 12サイクル後、経過観察する群(FOLFIRINOX群)、FOLFIRINOX 8サイクル後5-FU+ロイコボリンの維持療法に移行し、増悪時にFOLFIRINOXを再開する群(FOLFIRINOX/5-FU群)、ゲムシタビンとFOLFIRI3を2ヵ月ごとに交互に投与する群(FOLFIRI3/Gem群)のいずれが良いかを検討するランダム化第II相試験(PANOPTIMOX)がOral Presentationとして報告された。この試験のコンセプトは、大腸がんでのオキサリプラチンの“stop and go”の投与方法が膵がんでも示すことができるかどうかを検討したものである。主要評価項目である6ヵ月の無増悪生存割合は、FOLFIRINOX群47.1%、FOLFIRINOX/5-FU群44.0%、FOLFIRI3/Gem群34.1%で、FOLFIRINOX群とFOLFIRINOX/5-FU群は同等であり、FOLFIRI3/Gem群は有効性が低いことが示された。また、Grade3~4の末梢神経障害は、FOLFIRINOX群で10.2%に対して、FOLFIRINOX/5-FU群で18.7%と高率であったが、結果的にFOLFIRINOX/5-FU群でオキサリプラチンの投与量が増え、治療強度が強くなったためと考察されている。進行膵がんの1次治療として、FOLFIRINOXによる導入化学療法を4ヵ月行い、5-FU+ロイコボリンの維持療法を行うことは、実施可能で有効な可能性が示され、今後、FOLFIRINOXとFOLFIRINOX+5-FU+ロイコボリンの維持療法を比較する第III相比較試験が必要であると結論付けられた。この試験の結果、FOLFIRINOXにおけるオキサリプラチンの“stop and go”の投与方法は、今後、検討されるべき課題の1つだと思われた。膵神経内分泌腫瘍テモゾロマイドとカペシタビンの併用療法(CAPTEM)とテモゾロマイド単独(TEM)を比較したランダム化比較第II相試験が報告された。これまでに、CAPTEMは30~70%と非常に高い奏効割合が報告され、注目されてきたレジメンである。標準治療であるエベロリムスやスニチニブ以外の化学療法歴がなく、12ヵ月以内に進行が確認された切除不能膵神経内分泌腫瘍の患者142例が対象として行われた。主要評価項目である無増悪生存期間(中央値)は、CAPTEM群22.7ヵ月、TEM群で14.4ヵ月、ハザード比0.58(95%CI:0.36~0.93)、p値も0.023と有意に良好であった。生存期間もCAPTEM群で有意に良好であった(中央値:CAPTEM群 未到達、TEM群38.0ヵ月、ハザード比0.41(95%CI:0.21~0.82、p=0.012)。この試験は、有望視されていたCAPTEM療法が、ランダム化比較試験において、無増悪生存期間の延長のみならず、生存期間の延長まで示されたものであり、今後、膵神経内分泌腫瘍の治療の重要な選択肢の1つとなるものと思われる。まとめASCO2018では、肝細胞がんの2次化学療法におけるラムシルマブ、膵がん切除後の補助療法としてのmodified FOLFIRINOXが、今後、標準治療として位置付けられてくることが予測される。また、そのほかにも有望な治療法の開発も進行中であり、肝胆膵領域の化学療法の開発も活気づいている。

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ASCO2018レポート 乳がん-2

レポーター紹介高齢者におけるトラスツズマブ単独治療の意義:RESPECT試験高齢のHER2陽性乳がん患者に対して術後補助療法として、トラスツズマブ単独または化学療法と併用した群とで比較した本邦からの無作為化第III相試験である。これは名古屋大学の澤木 正孝先生がPIとなって進めていた試験である。一般的に無作為化比較試験の対象から除外されている70歳以上(80歳以下)の方を対象としている点が特筆すべきポイントである。PSにもよるが高齢者ではやや化学療法を行いにくい、しかしHER2陽性乳がんは予後不良なためできるだけ治療は行いたいという臨床上のジレンマがある。もしトラスツズマブ単独でも化学療法併用と同等の効果があれば、わざわざ毒性の高い治療を選択しなくてもいいのではないかという思いは皆持っているかも知れない。また高齢化社会がますます進んでいく中で、70歳以上の割合は明らかに増加していくため、このような試験の立案はとても重要にみえる。本試験は優越性試験でも非劣性試験でもなく、主要評価項目の優劣の判定域を臨床医のアンケート結果に基づいて設定したという点もユニークである。統計学的有意性=臨床的有用性ではないことはどのような試験であっても理解しておかなければならないが、本試験ではまさに臨床上の実を取ったという訳である。計275例の患者が割り付けされ、StageIが43.6%、StageIIAが41.7%、リンパ節転移陰性が78.5%と比較的早期がんが多くを占めていた。HR陽性は45.9%とやや少なかった。3年のDFSはH+CT94.8%に対してH単独89.2%で有意差はなかった(HR:1.42、0.68~2.95、p=0.35)。いずれの群もイベント数が少なく予後良好であった。H単独でも十分な治療効果があったのか、もともと予後が良かったのかは明らかではないが、HER2陽性乳がんの性質を考えると、H単独でも高齢者において比較的良い予後改善効果があったというべきだろうか。QOLに関しては術後1年ではHのほうが良いが3年では差がなくなっていた。最近注目されているDe-escalationという考え方からすると非常に良い結果だったとは言える。PSの良い70代は、本来さらに生存が期待できるので、3年より長期の経過も知りたいところである。QOLは化学療法レジメンによっても多少異なる可能性があり、近年では3cm以下のn0では、個人的にはPTX+HER12サイクルのみのレジメンも積極的に用いていて、しびれがなければ高齢者でも比較的使いやすい印象がある。論文化されるのを待ちたいが、少なくとも早期HER2陽性乳がんの一部ではHRの状況にかかわらず、H単独のオプションを提示してもよいだろう。アントラサイクリンとタキサンの順序は重要か?局所進行HER2陰性乳がんに対してAとTの順序の違いを比較する第II相試験で、NeoSAMBA試験と呼ばれる。ブラジルからの報告である。FAC(500/50/500)3サイクルおよびドセタキセル(100)3サイクルを、A先行とT先行で比較するため118例の患者が無作為に割り付けられた。HR陽性が70%以上であった。結果は、中断、輸血、G使用は同等であったが、減量はT先行で少なかった。Grade3以上の有害事象は、T先行で急性過敏反応が多く、A先行で高血圧、感染、筋関節痛が多かった。pCRはT先行で高く、DFS(HR:0.34、1.8~0.64、p<0.001)、OS(HR:0.33、0.16~0.69、p=0.002)ともにT先行で良好であった。本試験は単施設の第II相試験であり、局所進行がんに限定されている。しかし、薬剤の送達やpCR率は、過去の試験でも一貫してT先行で良好であり、やはりT先行を術前術後の化学療法の標準と考えたほうが良さそうである。ただし、経験上注意点が1つある。増殖率のきわめて高いTNBCでは、ときにタキサンでまったく効果がなく、治療中に明らかな増大を示すものがある。そのため、T開始から1~2サイクルでそのような傾向がみられたら、ちゅうちょせずにAに変更することが勧められる。DC(ドセタキセル75/シクロホスファミド600)の有用性ドイツから、HER2陰性乳がんにおける2つの第III試験であるWSG Plan B試験(ECx4-Dx4 vs.DCx6)とSUCCESS C試験(FECx3-Dx3 vs.DCx6)の統合解析の結果が報告された。Aを含む群2,944例、DC群2,979例と大規模である。中央観察期間62ヵ月でDFSにまったく差はなかった。サブタイプ別にみても、Luminal A-like、Luminal B-like、Triple negativeともにまったく差は認められなかった。ただし、pN2/pN3ではAを含む群でDFSは良好であった(HR:0.69、0.48~0.98、p=0.04)。SABCS2016の報告で、DBCG07-READ試験(ECx3-Dx3 vs. DCx6)の結果を紹介したが、一貫したデータである。したがって、pN2/pN3以外では、もはやAは不要かもしれない。また、以前から述べていることだが、乳がん術後補助療法において、4サイクル以上行って優越性を示しているレジメンは今のところみられず、DCは4サイクルで十分なのではないかと考えている。6サイクルのTCは毒性の面からやはり相当大変だと思われる。パクリタキセル類似の微小管重合促進作用を持つutideloneの有用性アントラサイクリンとタキサン不応性の転移性乳がんに対してカペシタビン(CAP)のみとutidelone(UTD1)を追加した群を比較した中国における第III相試験で、OSの結果が報告された。utideloneはepothiloneのアナログで、微小管を安定させ、血管新生を阻害する薬剤である。UTD1+CAPがCAP単独に比べてPFS、ORRがを改善していることはすでに報告されている。対象としては化学療法レジメンが4つまでと規定している。UTD1+CAPではCAPは1,000mg/m2(CAPのみの群では1,250)であり、UTD1は30mg2を最初の5日間ivを行い3週を1サイクルとしていて、患者は2:1に割り付けられている(CAP+UTD1 270例、CAP 135例)。PFSはUTD1+CAPで著明に改善しており(HR:0.47、0.37~0.59、p<0.0001)、OSもUTD1+CAPで良好であった(HR:0.72、0.57~0.93、p<0.0093)。安全性に関してはグレード3以上の末梢神経障害の割合がUTD1+CAPで25。1%と高い(CAP0.8%)。すでにFDAで認可されているixabepiloneでは、治療終了後6週間で末梢神経障害は改善しているようだが、UTD1においてはどうだろうか。また、安全性プロファイルも限られた情報しか提示されていなかったため、もう少し詳細をみてみたい。しかし、これだけ少数例の検討にもかかわらず明確にOSに差が出ていたため紹介することとした。今後同薬剤がどのように使われていくのか見守りたい。未発症BRCA保有者における乳房MRIの重要性未発症のBRCA変異保有者に対して、乳房MRIによるサーベイランスがリスク低減手術に代わるオプションとなりうるかを検討した試験(トロントMRIスクリーニング試験)である。1997年7月~2009年6月までに乳がんや卵巣がん未発症のBRCA変異保有者380例が登録され、年1回のマンモグラフィとMRIが行われた。研究中40例(41腫瘍)に乳がんが発見された(BRCA1/2各20例、年齢中央値48[32~68]歳)。18例は以前に卵管・卵巣摘出術が行われていた。がん診断までの期間中央値は14(8~19)年であり、脱落例はなかった。発見契機はMRI 38例、マンモグラフィ6例、中間期1例でありTステージは大半が1cm以内の発見であった(2cm以上は1例のみ)。n+は4例に認められた。化学療法は13例に行われた。遠隔再発による死亡は2例、他がんによる死亡が4例(自殺1例、卵巣がん1例、腹膜がん2例)で、遠隔転移を来した2例の腫瘍の特徴はBRCA1/3cm/グレード2/ER+PR-HER2-/n1、およびBRCA2/0.7cm/グレード2/ER+PR-HER2-/n0であった。カプラン・マイヤー法による10年間の乳がん特異的生存率は94.6%と良好であり、乳房MRIスクリーニングはリスク低減手術に代わる重要なオプションであることが証明されたと結んでいる。この研究は、未発症のBRCA1/2保有者に今後の対策について話し合う際に非常に貴重な資料となる。Li-Fraumeni症候群における全身MRIによるがん早期発見の評価:LIFSCREEN試験フランスからの報告である。乳がんの約1%に認められることが知られているLi-Fraumeni症候群(TP53胚細胞変異)では、小児期からさまざまな悪性腫瘍を発症しやすく、有効なスクリーニングの手段が必要である。がん発症リスク上昇の懸念から被曝は極力避けたいため、以前から全身MRIの有用性が報告されているが、本研究は国を挙げての無作為化比較試験であり、実に素晴らしいと言わざるを得ない。アームAは身体所見、脳MRI、腹部-骨盤超音波検査、乳房MRI+乳房超音波、血算であり、アームBはアームAの検査に全身MRI(拡散強調画像)を加えたものである。計105例が無作為に割り付けられ、18歳以上が80%以上、女性が70%以上を占め、家族歴のない患者が約半数であった。少なくとも3年以上の経過観察が行われた。全身MRIでは肺がん3例、脈絡叢がん1例(肺転移)、副腎皮質がん1例(超音波でも同定)、乳がん3例(乳房MRIでも同定)、脊髄グリオーマ1例が発見され、一方、骨髄腫1例、顎の骨肉腫1例、乳がん1例が発見されなかった。3年という短期間では両群でOSに差はなかった。全身MRIではとくに肺がんの発見率が良いようである。フランスでは、本試験の結果を基に、全身MRIをスクリーニング手段としてガイドラインに追加している。しかし多くの放射線科医が全身MRIの読影に慣れていないという大きな問題が存在する。また、全身MRIのプロトコールはさまざまであり、放射線科医は見逃しを少しでも減らし疾患の鑑別をしたいがために、どうしても長い撮像時間のプロトコールを組みたがるが、腫瘍があることが前提の精密検査ではなくスクリーニングであることを十分認識し、受診者負担、撮影装置の占有時間を少しでも減らすため撮像時間を可能な限り短縮したいものである。本報告では具体的な撮像法がわからなかったため、論文化された時点で撮像法の詳細を確認したい。

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ホルモン抵抗性乳がんへのアベマシクリブ+フルベストラント(MONARCH-2)/ASCO2018

 ホルモン受容体(HR)陽性乳がんでは、エストロゲンの刺激によりサイクリンD1が発現し、CDK4/6が活性化され、その結果として細胞周期が進行する。選択的CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブは、1日2回連日投与される経口薬であり、CDK4/6を持続的に阻害することで、細胞周期の停止が持続し、腫瘍細胞の老化やアポトーシスがもたらされると考えられる。 アベマシクリブは、HR陽性HER2陰性の進行乳がん患者において、単剤(MONARCH-1試験)、フルベストラントとの併用(MONARCH-2試験)、非ステロイド性アロマターゼ阻害(NSAI)との併用(MONARCH-3試験)による有効性および忍容性が示されている。ベルギー・University Hospitals LeuvenのPatrick Neven氏は、今回、MONARCH-2試験の参加者のうち、閉経前/閉経期の患者における有効性と安全性のデータを報告した。 MONARCH-2試験は、HR陽性HER2陰性進行乳がん女性において、アベマシクリブ+フルベストラントとフルベストラント単剤の有用性を比較する国際的な二重盲検プラセボ対照ランダム化第III相試験である。1ラインの術前内分泌療法中または術後内分泌療法中か終了後1年以内に再発し、化学療法歴のない患者を対象とした。 被験者は、アベマシクリブ(150mg[試験開始時は200mg、後に修正]、1日2回、経口、連日投与)+フルベストラント(500mg、筋肉内注射、1サイクルを28日とし、1サイクル目のDay1、15、2サイクル目以降はDay1)またはプラセボ+フルベストラントを投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、治験医判定による無増悪生存(PFS)とした。副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、臨床的有用性率(CBR)、安全性などであった。 本試験には、2014年8月~2015年12月に、日本を含む19ヵ国142施設に669例が登録された。このうち、閉経前/閉経期の患者は114例で(年齢60歳未満で自然月経がみられる患者はGnRHアゴニストの投与が求められた)、アベマシクリブ群が72例、プラセボ群は42例だった。追跡期間中央値はそれぞれ20.4ヵ月、19.6ヵ月。ベースラインの年齢中央値は、アベマシクリブ群が46歳、プラセボ群は47歳であり、アジア人がそれぞれ70.8%、57.1%、白人が19.4%、38.1%を占めた。 全体のITT集団(669例)における治験医判定のPFS期間中央値は、アベマシクリブ群が16.4ヵ月と、プラセボ群の9.3ヵ月よりも7.1月延長した(HR:0.553、95%CI:0.449~0.681、p<0.0000001)。独立中央判定委員会による盲検下の評価でも、アベマシクリブ群にPFSのベネフィットが認められた(HR:0.460、95%CI:0.363~0.584、p<0.000001)。  閉経前/閉経期集団(114例)の治験医判定PFS期間中央値は、アベマシクリブ群は未到達であったが、プラセボ群の10.5ヵ月との間に有意な差が認められた(HR:0.446、95%CI:0.264~0.754、p<0.002)。独立中央判定委員会の盲検下の評価でも、アベマシクリブ群でPFSのベネフィットが確認された(HR:0.432、95%CI:0.236~0.793、p<0.005)。また、アロマターゼ阻害薬の投与歴のない閉経前/閉経期集団(92例)における治験医判定PFS期間中央値は、アベマシクリブ群は未到達であったものの、プラセボ群の11.3ヵ月に比し有意に良好であった(HR:0.451、95%CI:0.245~0.833、p=0.009)。 閉経前/閉経期集団におけるアベマシクリブ群の腫瘍縮小効果は深く、かつ高度であった。すなわち、ORRは、ITT集団(114例)ではアベマシクリブ群が43.1%(CR:2.8%)、プラセボ群は19.0%(CR:0%)、測定可能病変例(79例)ではそれぞれ60.8%(CR:0%)、28.6%(CR:0%)であった。また、CBRは、ITT集団がそれぞれ77.8%、69.0%、測定可能病変例では、74.5%、71.4%であった。Neven氏は、「われわれが知る限り、これは内分泌療法抵抗性乳がんにおける最も良好な結果である」と指摘している。 閉経前/閉経期集団における有害事象による治療中止は、アベマシクリブ群が4例(5.6%)、プラセボ群は0例、減量はそれぞれ28例(39.4%)、1例(2.4%)にみられた。重篤な有害事象は、アベマシクリブ群が8例(11.3%)、プラセボ群は2例(4.8%)にみられた。 アベマシクリブ群では治療関連有害事象が98.6%に発現し、そのうちGrade 3が56.3%、Grade 4は5.6%であった。アベマシクリブ群で頻度の高い有害事象として、下痢(87.3%)、好中球減少(59.2%)、白血球減少(43.7%)などがみられた。Grade 3の下痢の割合は11.3%で、Grade 4は認めず、好中球減少はそれぞれ39.4%(発熱性好中球減少の1例を含む)、2.8%に発現した。 Neven氏は、「アベマシクリブ+フルベストラント+GnRHアゴニスト療法は、閉経前/閉経期の患者において、実質的なPFSの改善と腫瘍縮小効果をもたらし、化学療法の導入を遅らせることが示された。下痢は管理可能で、可逆的であり、GnRH追加による新たな有害事象は認めなかった」とまとめた。■参考ASCO2018 Abstract※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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閉経前乳がん術後ホルモン療法は何を選択すべきか-SOFT+TEXT統合解析から(解説:矢形寛氏)-884

 ホルモン受容体陽性乳がんにおいて、ホルモン治療は生存率向上に重要な役割を果たしている。しかし、閉経前ではその治療法にタモキシフェン単独(TAM)、タモキシフェン+卵巣機能抑制(TAM+OFS)、そしてアロマターゼ阻害剤+卵巣機能抑制(AI+OFS)の3通りがあり、どれを選択するかは悩ましい。なぜなら、後者になるにつれて治療効果も上がりそうであるが、一方で、短期的有害事象のみならず、長期的な身体への影響も大きくなりうるからである。したがって、治療効果が高いのでなければ、有害事象の少ない治療法を選択する方向で考えることになる。 本研究では、SOFT試験とTEXT試験を統合解析したもので、今後の臨床に重要な知見を与えてくれるものである。この解釈についてはすでにケアネットの学会報告サン・アントニオ乳がんシンポジウム2017のところで述べたが、再確認しておきたい。 まず治療効果においてとくに重要なのは、遠隔再発と全生存率である。8年間の遠隔再発の差はTAM+OFSとAI+OFSで2%であり、統計学的有意差が認められた。しかし全生存率はまったく差はみられていない。サブ解析も含めてトータルに考えると、いわゆる一般的な予後因子が不良であるほど治療効果の差は開くことになる。40歳未満あるいは40代前半で化学療法を行うようなハイリスクに対して、OFSの上乗せを提案するというスタンスでよいであろう。40代後半では、化学療法によりほぼ閉経状態となり、TAM単独でも問題ないだろう。さらに腫瘍径も大きくリンパ節転移個数が多いとなれば、AI+OFSを選択する根拠となる。明確な選択基準はないが、専門医はバランスよく治療方針を決定するのが賢明である。

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転移のある大腸がんの3次治療、新たなVEGFR阻害薬が有効/JAMA

 転移を有する大腸がんの3次治療の選択肢は少ない。中国・同済大学上海東病院のJin Li氏らは、2ライン以上の化学療法を施行後に病勢が進行した転移を有する大腸がんの治療において、経口血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)阻害薬fruquintinibが、プラセボに比べ全生存(OS)期間を統計学的に有意に延長することを示した(FRESCO試験)。研究の成果は、JAMA誌2018年6月26日号に掲載された。fruquintinibは、高い選択性を持つVEGFR-1、-2、-3の低分子阻害薬であり、腫瘍の増殖と関連する血管新生を抑制する。中国人患者で有効性と安全性をプラセボと比較 FRESCOは、中国の28施設で行われた二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験である(Hutchison MediPharmaなどの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、全身状態(ECOG PS)が0/1で、2ライン以上の前化学療法歴がある、転移を有する大腸がん患者であった。VEGF阻害薬やEGFR阻害薬による前治療は許容されたが、他のVEGFR阻害薬の前投与歴のある患者は除外された。 被験者は、fruquintinib(5mg/日)またはプラセボを1日1回経口投与する群に、2対1の割合でランダムに割り付けられた。治療は、1サイクルを28日として21日間投与後7日間休薬し、病勢進行、耐用不能な毒性の発現、試験脱落となるまで継続された。 主要エンドポイントはOSであった。有効性の副次エンドポイントは、無増悪生存(PFS:ランダム割り付け時から病勢進行または死亡までの期間)、客観的奏効率(ORR:完全奏効[CR]+部分奏効[PR])、病勢コントロール率(DCR:CR+PR+8週以上持続する安定[SD])とし、奏効期間(DOR)、安全性の評価も行った。 2014年12月~2016年5月の期間に、416例(平均年齢54.6歳、女性38.7%)が登録され、fruquintinib群に278例、プラセボ群には138例が割り付けられた。404例(97.1%)が試験を完遂した。OSが約3ヵ月、PFSが約2ヵ月延長、1例でCR ベースライン時に、男性がプラセボ群で多かった(56.8 vs.70.3%)。両群とも、ほとんどの患者が複数の転移巣(95.3 vs.97.1%)を有し、肝転移(66.5 vs.73.9%)を有する患者が多かった。VEGF阻害薬(30.2 vs.29.7%)およびEGFR阻害薬(14.4 vs.13.8%)の投与歴、K-ras変異の頻度(56.5 vs.53.6%)は両群で同等だった。 OS期間中央値は、fruquintinib群が9.3ヵ月と、プラセボ群の6.6ヵ月に比べ有意に延長した(死亡のハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.51~0.83、p<0.001)。OSのサブグループ解析では、ほぼすべてのサブグループでfruquintinib群が良好であった。 PFS期間中央値も、fruquintinib群が3.7ヵ月と、プラセボ群の1.8ヵ月に比し有意に長かった(病勢進行と死亡のHR:0.26、95%CI:0.21~0.34、p<0.001)。PFSのサブグループ解析では、すべてのサブグループでfruquintinib群が優れた。 ORR(4.7 vs.0%、p=0.01)およびDCR(62.2 vs.12.3%、p<0.001)も、fruquintinib群が有意に優れ、同群ではCRが1例、PRが12例に認められた。データカットオフ日に、奏効例のほとんどが病勢進行に至らず治療継続中であり、それゆえDOR中央値には未到達であった(データカットオフ時点でのDORは5.6ヵ月)。 Grade3/4の治療関連有害事象は、fruquintinib群が61.2%、プラセボ群は19.7%に発現した。重篤な有害事象はそれぞれ15.5%、5.8%に認められ、入院または入院の延長を要する重篤な有害事象は14.4%、5.1%にみられた。fruquintinib群で頻度の高いGrade3/4の治療関連有害事象として、高血圧(21.2%)、手足皮膚反応(10.8%)、蛋白尿(3.2%)が認められた。 著者は、「中国以外の地域での有効性を評価するために、さらなる検討を要する」としている。

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オラパリブ・アビラテロン併用で去勢抵抗性前立腺がんのPFS改善/ASCO2018

 既治療の転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対して、抗アンドロゲン薬・アビラテロンにPARP阻害薬オラパリブを上乗せする効果を対プラセボで比較した無作為化第II相臨床試験の結果を、英国・The Christie and Salford Royal HospitalのNoel Clarke氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で報告した。 同試験の対象はドセタキセルの前治療を受けたmCRPCで、化学療法施行は2ライン以内、第2世代抗アンドロゲン製剤での治療歴のない患者。登録患者はアビラテロン1日1回経口1,000mg服用をベースに、オラパリブを1日2回300mgを併用したオラパリブ群とプラセボを併用したプラセボ群に割り付けられた。主要評価項目は画像診断上の無増悪生存期間(rPFS)、副次評価項目は相同組み換え修復遺伝子変異(HRRm)別のrPFS、2次治療までの無増悪生存期間(PFS2)、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、末梢血中循環腫瘍細胞陽性転化率、安全性。登録症例は142例で、両群に71例ずつ割り付けられた。 rPFS中央値はオラパリブ群が13.8ヵ月、プラセボ群で8.2ヵ月で、オラパリブ群で有意な延長が認められた(HR:0.65、95%CI:0.44~0.97、p=0.034)。 HRRmは21例(全体の15%)で認められた。HRRm症例でのrPFS中央値はオラパリブ群が17.8ヵ月、プラセボ群が6.5ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.26~2.12)、生殖細胞検査と血漿検査のいずれか、あるいは双方で変異がないと診断された野生型(HRRpc)のrPFS中央値はオラパリブ群が13.1ヵ月、プラセボ群が6.4ヵ月(HR:0.67、95%CI:0.40~1.13)、生検腫瘍組織で変異がないと診断された野生型(HRRwt)のrPFS中央値はオラパリブ群が15.0ヵ月、プラセボ群が9.7ヵ月(HR:0.52、95%CI:0.24~1.15)。HRRmの有無とrPFSに相関は認められなかった。 また、PFS2中央値はオラパリブ群が23.3ヵ月、プラセボ群で18.5ヵ月(HR:0.79、95%CI:0.51~1.21、p=0.28)、OS中央値はオラパリブ群が22.7ヵ月、プラセボ群で20.9ヵ月であった(HR:0.91、95%CI:0.60~1.38、p=0.66)。 ORRはオラパリブ群が27%、プラセボ群が32%、末梢血中循環腫瘍細胞陽性転化率はオラパリブ群が50%、プラセボ群が46%であった。 Grade3以上の有害事象発現頻度はオラパリブ群が54%、プラセボ群が28%。オラパリブ群で発現頻度が高かった主な有害事象は悪心、貧血、背部痛、便秘、無力症などで、Grade3以上としては貧血が最も多かった。 Clarke氏は「オラパリブとアビラテロンの併用は、アビラテロン単剤に比べ、有意なrPFS延長効果が得られた一方、有害事象の発現頻度は高まった。この結果を基に第III相試験を計画している」と説明した。※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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ASCO2018レポート 肺がん-1

レポーター紹介2018 ASCO(American Society Clinical Oncology)Annual Meetingが、2018年6月1日~5日、米国・イリノイ州シカゴで開催された。第54回を数える今回の年次総会には、世界中からがん医療に関わる医師、看護師、薬剤師、患者、製薬企業などが多数参加しており、がんに関する幅広い研究成果や教育講演に接することができた。ここ数年、肺がん領域は毎年標準治療を変えるエビデンスが創出されているが、今年のASCOでもその勢いは続き、今年のガイドラインに掲載されうるエビデンスが多数報告された。免疫療法の到達点非小細胞肺がんの2次治療において、ニボルマブがドセタキセルに対して歴史的な勝利をおさめて3年ほどで、PD-L1高発現の患者集団の1次治療においてペムブロリズマブがプラチナ併用療法を凌駕することが示された。そして昨年末のESMO IO、今年に入ってからのAACR、そしてASCOと立て続けに、PD-L1の発現によらず、免疫チェックポイント阻害薬が1次治療を席巻するエビデンスが報告された。KEYNOTE-042PD-L1 TPS 1%以上の進行非小細胞肺がん患者を対象に、ペムブロリズマブとプラチナ併用療法を比較した第III相試験である。同様の患者集団に対しては、すでにニボルマブを用いたCheckMate 026試験が実施されており、ニボルマブは化学療法と同等であったが優越性を示すことはできなかった。KEYNOTE-042においてはそれに反して、hazard ratio 0.81(95%信頼区間:0.71~0.93)と統計学的にも有意に、ペムブロリズマブ単剤が化学療法に勝る結果が報告された。生存期間中央値では、ペムブロリズマブ群が16.7ヵ月、化学療法群が12.1ヵ月であった。CheckMate 026との違い、とくにニボルマブとペムブロリズマブの薬剤としての有効性の違いがあるのか、という点に注目が集まる結果である。試験の詳細を比較すると、KEYNOTE-042試験において、PD-L1 TPS 50%以上の患者集団の割合が高いこと、試験が免疫チェックポイント阻害薬未承認の国を中心として実施されているため、後治療でのクロスオーバーの割合が低いこと、などの点を考慮すると、薬剤の違いよりも他の相違点が結果に影響しているという考察がなされている。また、PD-L1 TPS 1~49%のサブセットにおいては、ペムブロリズマブの有効性は必ずしも化学療法よりも明らかに優れる結果ではなかったことから、化学療法実施不可の患者を除き、KEYNOTE-189で示された化学療法+ペムブロリズマブの選択が妥当とする見解が主流である。いずれにせよ、PD-L1陰性を除き、すべての非小細胞肺がん患者に対して免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の使用を支持する結果が得られたことに高い評価が集まった。Pembrolizumab(pembro)versus platinum-based chemotherapy(chemo)as first-line therapy for advanced/metastatic NSCLC with a PD-L1 tumor proportion score(TPS)≧1%:Open-label, phase 3 KEYNOTE-042 study.(Abstract No: LBA4)Gilberto LopesKEYNOTE-407AACRで非扁平上皮非小細胞肺がんに対して実施されたKEYNOTE-189試験の結果が報告され、PD-L1の発現によらずプラチナ併用療法+ペムブロリズマブが新たな標準治療となる方向性が示された。KEYNOTE-407試験は、扁平上皮非小細胞肺がんに対して、PD-L1の発現によらずプラチナ併用療法+ペムブロリズマブの有効性を検証した第III相試験である。559人の患者を登録した本試験の結果、Co-primary endpointのOSとPFSともにペムブロリズマブ併用群が有意に生存を延長するという結果が得られた。OSではhazard ratio 0.64(95%信頼区間:0.49~0.85)、PFSではhazard ratio 0.56(95%信頼区間:0.45~0.70)であった。サブセット解析ではPD-L1の発現割合が高いほど有効性が増す傾向が示されたものの、PD-L1の発現によらない全集団でのOS、PFSの優越性が認められていることの意義は大きく、扁平上皮非小細胞肺がんの新たな標準治療が創出された試験となった。Phase3study of carboplatin-paclitaxel/nab-paclitaxel(Chemo)with or without pembrolizumab(Pembro)for patients(Pts)with metastatic squamous(Sq)non-small cell lung cancer(NSCLC).(Abstract No: 105)Luis G. Paz-AresIMpower 131PD-L1阻害薬であるアテゾリズマブとプラチナ併用療法を用いた試験のうち、扁平上皮非小細胞肺がんを対象としたものがIMpower 131試験である。本試験はアテゾリズマブ、カルボプラチン、パクリタキセルのArm A、アテゾリズマブ、カルボプラチン、アブラキサンのArm B、カルボプラチン、アブラキサンのコントロールとしてのArm Cを含む、3群のランダム化試験である。今回報告されたのは、その中でもArm BとArm Cの比較である。primary endpointであるPFSのhazard ratio 0.71(95%信頼区間:0.60~0.85)と、統計学的に有意な無増悪生存期間の延長が示された。一方、OSの中間解析も併せて報告されたがイベント数が不足しており、若干アテゾリズマブ群が良い傾向がみられたが、最終解析の結果を待つ必要がある結果であった。IMpower131: Primary PFS and safety analysis of a randomized phase III study of atezolizumab + carboplatin + paclitaxel or nab-paclitaxel vs carboplatin + nab-paclitaxel as 1L therapy in advanced squamous NSCLC.(Abstract No: LBA9000)Robert M. JotteCheckMate 227ニボルマブ、イピリムマブ併用療法、ニボルマブ、化学療法の併用療法、そして標準治療としての化学療法の3群のランダム化試験であるCheckMate 227試験からは、今回PD-L1陰性の進行非小細胞肺がん患者において化学療法化学療法+ニボルマブを比較した解析結果が報告された。PFSのhazard ratioが0.74(95%信頼区間:0.58~0.94)と、ニボルマブと化学療法の併用によって、PD-L1陰性の患者集団においても無増悪生存期間が延長されるという結果が示されている。CheckMate 227試験に関しては、AACRにおいてTumor Mutation Burden(TMB)が高い患者集団におけるニボルマブ、イピリムマブ併用療法の良好な成績が報告されるなど、さまざまな解析が進行中である。最も重要な全集団におけるニボルマブ+化学療法の有効性に関する解析結果はまだ行われておらず、結果が待たれる。Nivolumab(Nivo)+platinum-doublet chemotherapy(Chemo)vs chemo as first-line(1L)treatment(Tx)for advanced non-small cell lung cancer(NSCLC)with<1% tumor PD-L1 expression:Results from CheckMate-227.(Abstract No: 9001)Hossein Borghaei

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切除後NSCLCの再発および生存に対する体細胞変異の影響(JME)/ASCO2018

 次世代シークエンス(NGS)により、手術後の非小細胞肺がん(NSCLC)における体細胞変異を検討した、本邦の多施設前向き肺がん分子疫学研究JME(Japan Molecular Epidemiology for lung cancer)。副次評価項目である、体細胞変異と無再発生存期間(RFS)および全生存期間(OS)との関係について、近畿中央胸部疾患センター 田宮 朗裕氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会ASCO2018で発表した。 研究対象はStage I~IIIBのNSCLC。2012年7月~2013年12月までに43施設から集められた876の外科的切除標本で、48のがん関連遺伝子と5つのがん関連遺伝子増幅が評価された。追跡期間中央値は48.4ヵ月。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は70歳。男性が876例中419例。・病期はStage Iが 618例でもっとも多く、II、III、IV はそれぞれ131例、104例、23例であった。・2つ以上の体細胞変異を有する患者は876例中146例であった。・術後化学療法は876例中309例に実施された。・RFSの予後因子は、変異数(0または1つ対2つ以上、HR:0.609、p<0.0105)、年齢(70歳未満対70歳以上、HR:0.641、p=0.0008)、性別(男性対女性、HR:1.460、p=0.0381)、病理病期([Stage I対II、HR:0.332、p<0.0001]、[I対IIIまたはIV、HR:0.157、p<0.0001]、[II対IIIまたはIV、HR:0.486、p<0.0001])であった。・OSの予後因子は年齢(70歳未満対70歳以上、HR:0.590、p=0.0025)、アジュバント化学療法の施行(なし対あり、HR:2.029、p=0.0001)、EGFR変異(陰性対陽性、HR:2.223、p<0.0006)、病理病期([Stage I対II、HR:0.408、p<0.0001]、[I対IIIまたはIV、HR:0.151、p<0.0001]、[II対IIIまたはIV、HR:0.371、p<0.0001])であった。 RFSの長さに影響するのは、早期Stageと若年齢、変異数。OSの長さに影響するのは、早期Stageと若年齢とともに、EGFR変異陽性、アジュバント化学療法施行であった。とくに病期はRFS、OSの双方に影響が大きく、肺がんの進行度合いは、遺伝子変異以上に予後に影響を及ぼすことが明になった。筆頭著者である田宮 朗裕氏との1問1答【この研究を実施した背景は?】 JME研究は、喫煙者と非喫煙者のdriver mutationを含む体細胞変異との相関をみている試験ですが、今回はその中で遺伝子変異が予後に対して、どう影響するかを調べたものです。【結果についてコメントいただけますか】 体細胞変異が多いほど予後も悪いのではないかという想定していました。RFSについては、想定通り、体細胞変異が多いほど予後不良でしたが、OSについては想定通りの結果にはなりませんでした。その1つの理由としては、EGFR-TKIの有効性が高いことから、EGFR変異陽性患者の予後が良好であったことが影響していると考えられます。また、術後化学療法の有無が大きく予後に影響したことも想定外でした。【今回の研究の成果についてコメントいただけますか】 早期肺がんの発がんに関係する研究は従来後ろ向きのものが多かったのですが、今回は前向きで解析しています。今回の前向き研究で、体細胞変異と予後の関係を多変量で解析できたこと、そして術後確定病理と予後の関係が前向きに証明されたことは意義があると思います。■参考ASCO2018 AbstractJME研究(JCO)※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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PD-L1発現1%未満のNSCLC1次治療、ニボルマブ+化学療法でPFS改善(CheckMate-227)/ASCO2018

 ニボルマブおよびニボルマブベースのレジメントと化学療法を比較した、無作為化オープンラベル第III相CheckMate-227試験。本年の米国がん研究会議年次集会(AACR2018)およびN.Engl.J.Med誌にて、高腫瘍変異(TMB-H)患者においてニボルマブ+イピリムマブ群が化学療法単独に比べ有意にPFSを改善した結果が発表されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)では、米国Fox Chase Cancer CenterのHossein Borghaei氏により、PD-L1(TPS)1%未満の患者におけるニボルマブ+化学療法化学療法単独群を比較した無増悪生存期間(PFS)の結果が発表された(最低追跡期間は11.2ヵ月)。試験デザイン・試験対象:PD-L1発現1%以上および1%未満のStageIVまたは再発NSCLCの初回治療患者・試験群:ニボルマブ+イピリムマブ群     ニボルマブ単独群(TPS1%以上)     ニボルマブ+化学療法群(TPS1%未満)・対照群:化学療法(組織型により選択)単独・評価項目 [複合主要評価項目]高TMB(≧10/メガベース)患者におけるニボルマブ+イピリムマブ群対化学療法群のPFS、PD-L1発現(≧1%)患者におけるニボルマブ+イピリムマブ群対化学療法群の全生存期間(OS) [副次評価項目]高TMB(≧13/メガベース)かつPD-L1発現(TPS1%以上)患者におけるニボルマブ単独群対化学療法群のPFS、高TMB(≧10/メガベース)患者におけるニボルマブ+化学療法群対化学療法群のOS、PD-L1なしまたは低発現(TPS1%未満)患者におけるニボルマブ+化学療法群対化学療法群のPFS。そのほか奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者はニボルマブ+化学療法群177例と化学療法単独群186例に割り付けられた・全体のPFSは、ニボルマブ+化学療法群5.6ヵ月に対し、化学療法単独群4.7ヵ月、1年PFS率はそれぞれ、26%と14%であった(HR:0.74、95%CI:0.58~0.94)・PFSをTMB別にみると、TMB-H(10mut/メガベース以上)では、それぞれ6.2ヵ月と5.3ヵ月、1年PFS率は27%対8%(HR:0.56、0.35~0.91)であり、低TMB(TMB-L=10mut/メガベース未満)では、両群共に4.7ヵ月、1年PFS率は18%対16%であった(HR:0.87、0.57~1.33)・全体のORRは、ニボルマブ+化学療法群36.7%に対し、化学療法単独群23.1%であった。・ORRを腫瘍変異負荷(TMB)別にみると、TMB-Hでは、それぞれ60.5%と20.8%、TMB-Lでは27.8%と22.0%であった・全Gradeの治療関連有害事象は、ニボルマブ+化学療法群92%に対し、化学療法単独群では77%。Grade3/4ではそれぞれ52%と35%であった

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HR+HER2-リンパ節転移-乳がん患者における化学療法の意義(TAILORx)/ASCO2018

 米国では、乳がん全体の約半数をホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性、リンパ節転移陰性乳がんが占め、治療として術後化学療法が推奨されているが、多くの患者が過剰治療を受けている可能性がある。21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)を用いた再発スコア(RS)の妥当性を検証する前向き試験では、低RSの場合は内分泌療法(ET)単独でも再発率は低く、高RSでは化学療法(Chemo)併用のベネフィットが大きいことが示されているが、RSが中間値の患者における化学療法のベネフィットは不明であった。 米国・Montefiore Medical CenterのJoseph A. Sparano氏らは、HR陽性HER2陰性リンパ節転移陰性乳がんの治療におけるバイオマーカーに基づくChemo治療パラダイムの確立を目的に、21遺伝子アッセイによるRSが中間値の患者において、ET単独とET+Chemoを比較する第III相試験(TAILORx試験)を実施した。 2006年4月〜2010年10月の期間に、年齢18〜75歳の浸潤性乳がんで、HR陽性HER2陰性、リンパ節転移陰性の患者が登録され、RSによって低RS(0〜10点、1,629例、ET単独、A群)、中間RS(11〜25点、6,711例)、高RS(26〜100点、1,389例、ET+Chemo、D群)に分けられた。さらに、中間RSの患者は、ET単独を施行する群(B群)またはET+Chemoを施行する群(C群)にランダムに割り付けられた。 主要エンドポイントは、ランダム化の対象となった中間RS(B群、C群)における無浸潤性乳がん生存(IDFS)であった。非劣性デザインとし、IDFSのハザード比(HR)の非劣性マージンは1.322とした。 中間RSの患者の年齢中央値は55歳、33%は50歳以下であった。63%は腫瘍サイズが1~2cm、57%は組織学的悪性度が中等度であり、MINDACT基準による臨床的リスクは、74%が低リスク病変、26%は高リスク病変だった。 追跡期間中央値7.5年におけるIDFSのHRは1.08(95%CI:0.92~1.24、p=0.26)で、事前に規定されたHRの非劣性マージン(1.322)を超えなかったことから、B群のC群に対する非劣性が確認され、主要エンドポイントは満たされた。同様に、遠隔無再発生存期間(DRFI)(HR:1.10、95%CI:0.85〜1.41、p=0.48)、無再発生存期間(RFI)(HR:1.11、95%CI:0.90〜1.37、p=0.33)、全生存期間(OS)(HR:0.99、95%CI:0.79〜1.22、p=0.89)についても、B群のC群に対する非劣性が示された。 9年時の遠隔再発のイベント発生率は、A群が3%、B+C群が5%、D群は13%であった。また、B群とC群のIDFS率、DRFI率、RFI率、OS率の差は、いずれも1%未満だった。 RS 11〜25点(B群、C群)の50歳以下の患者(2,216例)においてChemoのベネフィットの評価を行ったところ、RS 16〜20点の患者ではB群に比べC群でIDFS率が9%低く、RS 21〜25点の患者ではIDFS率が6%低かった。RS 11〜15点の50歳以下の患者では、Chemoによるベネフィットのエビデンスは認められなかった。 Sparano氏は、「RSが11〜25点の患者では、ET単独のET+Chemoに対する非劣性が示され、RS 0〜10点ではET単独による9年時の遠隔再発率はきわめて低かった(2〜3%)が、25〜100点では術後にET+Chemoを行っても再発によるイベント発生率が高く、より有効性の高い治療の探索が求められる。RS 16〜25点では、50歳以下の患者にある程度のChemoのベネフィットが認められ、このうち21〜25点の患者でChemoによる遠隔再発の抑制効果が高かった」とまとめ、「Chemoのベネフィットが期待できないサブグループでは、意思決定過程を共有し、ベネフィットとリスクについて注意深く話し合ったうえで、Chemoを控えるようにすべきである」と指摘した。■参考ASCO Abstract■関連記事ASCO2018乳がん 会員聴講レポート※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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