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ribociclib、HR+/HER2ー閉経前乳がんでOS改善(MONALEESA-7)/ASCO2019

 閉経前のホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がん患者を対象にした、ribociclib+ホルモン療法の第III相二重盲検無作為化比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、米国・UCLA Jonsson Comprehensive Cancer CenterのSara A. Hurvitz氏より発表された。本内容は、NEJM誌2019年6月号に同時掲載されている。試験デザイン・対象:閉経前のHR陽性/HER2陰性の進行乳がん患者で、進行乳がんに対するホルモン療法歴なし、あるいは2ライン以上の化学療法歴のない患者・試験群:ribociclib 600mg/日(経口)+ゴセレリン+アロマターゼ阻害薬またはタモキシフェン(Ribo群)・対照群:プラセボ+ゴセレリン+アロマターゼ阻害薬またはタモキシフェン(Pla群) ribociclibおよびプラセボは3週間連日投与、1週間休薬の28日間隔で投与・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・672例が登録され、Ribo群335例、Pla群337例に割り付けられた。PFSの結果は2018年に報告されている。・追跡期間中央値34.6ヵ月時点(データカットオフは2018年11月30日)における今回の解析では、OS中央値はRibo群では未到達、Pla群で40.9ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.712、95%信頼区間[CI]:0.535~0.948、p=0.00973)。このp値は、事前の解析計画で設定されていた値を下回っており、Ribo群の優越性を示している。また、割り付け後42ヵ月のOS率はRibo群では70.2%、Pla群で46.0%であった。・化学療法の後治療への移行までの期間の中央値は、Ribo群で未到達、Pla群で36.9ヵ月であった(HR:0.596、95%CI:0.459~0.774)。・投薬期間中央値はRibo群で約2年、Pla群で約1年であった。その後さらに15ヵ月の追跡を実施したが、新たな安全性プロファイルは報告されなかった。Grade3以上の有害事象として報告されたのは、好中球減少がRibo群63.5%、Pla群4.5%、肝機能障害がRibo群11%、Pla群6.8%などであった。

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ビタミンDは消化管のがんに有用なのか?(解説:上村直実氏)-1059

 脂溶性ビタミンであるビタミンDはカルシウムとともに骨代謝における重要な役割を担っているが、最近、動物実験において細胞増殖の抑制および細胞死の促進作用を示す成績が報告され、臨床研究においても国立がん研究センターによる住民コホート研究や欧米の観察研究の結果から血中ビタミンD濃度が高値を示す場合はがんの罹患リスクが低下することが報告されており、ビタミンDの補充療法によるがん予防や再発予防効果が期待されている。 今回、ビタミンDの補充に関する介入試験のRCT 2論文がJAMA誌に掲載された。1つは消化管がんの手術後患者を対象として日本で施行されたRCTの結果で、ビタミンDの補充はプラセボ群と比較して、術後の再発に関して統計学的に有意な有効性を示すことができなかった。他方、切除不能大腸がん患者を対象として標準化学療法へのビタミンDの上乗せ効果を検討する目的で米国において施行されたRCTの結果でも、高用量のビタミンDの補充療法は低用量群と比較して大腸がんの増悪抑制効果は認められなかった。すなわち、観察研究の結果からビタミンDの血中濃度とがんのリスクには関連性が疑われるものの、介入試験ではビタミンDの投与ががんの予防や再発抑制に明らかな効果を示すことができなかったといえる。 これら介入試験の結果から認識しなければならないことは、ビタミンDの血中濃度が高い患者はがんのリスクが低いことを示唆している疫学研究の結果は、がんの発症原因やがんの予防効果を証明するものでなく関連性を示すものであることである。観察研究を主体とする疫学研究の結果を解釈する際、病態の原因や疾患の予防効果を論ずることは困難であり、調査因子と疾患の関連性の有無が何に起因するものかを検討する材料とすべきである。一方、介入試験の結果を解釈する際には、研究対象と研究方法に注意すべきである。民族差、性差、年齢など限定された集団における研究成績であることを熟知した解釈が必要である。したがって、コホート研究などの観察研究と介入試験の結果が乖離している、がんに対するビタミンDの影響については、今後、報告された研究結果を慎重に分析したうえでの解釈が必要である。

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ペメトレキセド+シスプラチンのNSCLC術後アジュバントにおける可能性(JIPANG)/ASCO2019

 非小細胞肺がん(NCSLC)の術後アジュバントのプラチナベース化学療法においては、どの組み合わせが最も効果的かは明らかではない。静岡県立静岡がんセンターの釼持 広知氏らは、完全切除非扁平上皮NSCLCの術後補助療法において、ペメトレキセド+シスプラチン(CDDP)とビノレルビン(VNR)+CDDPを比較する無作為化第III相JIPANG Studyを実施。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)のOral Sessionにおいて、その結果を発表した。・対象:StageII~IIIAの完全切除非扁平上皮NSCLC患者・試験薬:ペメトレキセド+CDDP 3週ごと4サイクルまで・対照群:VNR+CDDP 3週ごと4サイクルまで・評価項目:[主要評価項目]無再発生存期間(RFS)、目標HRは0.775[副次評価項目]全生存期間(OS)、治療完遂率、毒性ペメトレキセド+CDDPによる非扁平上皮NSCLCの術後補助療法について検討した主な結果は以下のとおり。・2012年3月~2016年8月に812例が登録され、804例がVNR+CDDP群(402例)とペメトレキセド+CDDP群(402例)に無作為に割り付けられた。・RFS中央値はVNR+CDDPが37.3ヵ月、ペメトレキセド+CDDP群が38.9ヵ月。36ヵ月RFSはVNR群50.2%に対しペメトレキセド+CDDP群51.1%で、生存曲線はほぼ同様であった(HR:0.98、95%CI:0.81~1.20、片側p=0.474)。HRは目標に届かず、ペメトレキセド+CDDP群は主要評価項目を達成しなかった。・EGFR遺伝子変異有無別のRFSをみると、EGFR野生型ではVNR+CDDP群39.9ヵ月に対しペメトレキセド+CDDP群65.2ヵ月と、統計学的に有意ではないがペメトレキセド+CDDP群で良好な傾向であった(HR:087)、一方、EGFR変異型ではVNR+CDDP群30.4ヵ月に対しペメトレキセド+CDDP群24.1ヵ月と、統計学的に有意ではないがVNR+CDDP群が良好な傾向であった(HR:1.38)。・OSは未達であるが、24ヵ月OSはVNR+CDDP群91.8%、ペメトレキセド+CDDP群92.5%、36ヵ月OSはVNR+CDDP群83.5%、ペメトレキセド+CDDP群87.2%であった。・治療完遂率(4サイクル)はVNR+CDDP群72.7%、ペメトレキセド+CDDP群87.9%と、ペメトレキセド+CDDP群で有意に良好であった(p<0.001)。・Grade3以上の血液学的毒性発現はVNR+CDDP群89.4%に対し、ペメトレキセド+CDDP群47.4%と、ペメトレキセド+CDDP群で少なかった。 結語として、ペメトレキセド+CDDP群の優越性は証明されなかったが、その効果はVNR+CDDPと同程度であり、安全性プロファイルも良好なことから、今後ペメトレキセド+CDDPが非扁平上皮NSCLCの術後補助療法の選択肢になり得ることを示唆するとしている。発表者静岡県立静岡がんセンター釼持氏との1問1答この試験を行った背景は? ペメトレキセド+CDDPは進行肺がんでは実績のあるレジメンですが、ペメトレキセドは日本においては術後補助療法としての適応はありません。一方、CDDP+VNRは術後補助療法のスタンダードですが、副作用への配慮が必要です。経験も多く、医師として使いやすいペメトレキセド+CDDPを術後補助療法の選択肢に加えられないかと考えました。非扁平上皮NSCLCのアジュバントでペメトレキセド+CDDPを使うメリットは? 血液毒性が軽いということだと思います。結果はネガティブでしたが、今後は適応拡大の可能性について検討していこうと考えています。EGFR変異の有無で両レジメンの効果の違いが出ていますが、どのようにお考えですか? まだ違いがあるとも言えない状態です。なぜ違いが出たのかバックグラウンドが明らかではありません。現在バイオマーカー研究が進行中であり、その結果が待たれます。※ペメトレキセドは当該術後補助療法として効能・効果の適応がなく、保険診療として適用されないのでご注意ください。

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BRCA変異膵がんの維持治療におけるオラパリブの効果(POLO)/ASCO2019

 現在なお固形がんの中では最も5年生存率が低いのが膵臓がんであり、また治療薬の選択肢が少ないという厳しい現実が横たわっている。しかし、近年、PARP阻害薬が一部の膵臓がんに有効との報告が相次いでいる。 そうしたPARP阻害薬の1つオラパリブが生殖細胞系BRCA(gBRCA)変異を持つ転移のある膵臓がんの1次治療後の維持療法として無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが明らかになった。米シカゴ大学のHedy L. Kindler 氏らが、gBRCA変異陽性進行膵臓がんの1次治療のプラチナ製剤で増悪しなかった患者での維持療法としてのオラパリブの有効性を検討したプラセボ対照二重盲検無作為化比較第III相POLO試験の結果として米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。 同試験の対象は、転移のあるgBRCA変異陽性膵臓がん患者で、1次治療としてプラチナ製剤ベースの化学療法を16週間以上受け、病勢安定(SD)以上だった患者154例。登録患者は1日2回オラパリブ300mg投与群とプラセボ群に3対2で無作為に割り付けられた結果、オラパリブ群が92例、プラセボ群が62例となった。主要評価項目はPFS。副次評価項目は、2次治療までの無増悪生存期間(PFS2)、客観的奏効率(ORR)、健康関連QOL、安全性と忍容性、全生存期間(OS)など。 PFS中央値はオラパリブ群7.4ヵ月、プラセボ群3.8ヵ月で、オラパリブ群で有意な延長が認められた(HR:0.53、95%CI:0.35~0.82、p=0.0038)。データカットオフ日(2019年1月15日)時点でのPFS率はオラパリブ群が32.6%、プラセボ群が19.4%であった。 無作為化からの経過期間とPFS率は、6ヵ月時点でオラパリブ群53%、プラセボ群23%、12ヵ月時点ではそれぞれ34%、15%、18ヵ月時点ではそれぞれ28%、10%、24ヵ月時点ではそれぞれ22%、10%と、オラパリブ群のPFS率は常にプラセボ群の倍以上だった。また、サブグループ解析では1次治療でのSDあるいは奏効にかかわらず、オラパリブ群で良好な傾向だった。 データ成熟度46%時点の中間解析でのOSはオラパリブ群18.9ヵ月、プラセボ群18.1ヵ月(HR:0.91、95%CI:0.56~1.46、p=0.68)。PFS2はオラパリブ群が13.2ヵ月、プラセボ群で9.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.46~1.23、p=0.26)。 腫瘍径が計測可能だった患者での盲検独立中央評価委員会によるORRはオラパリブ群23.1%、プラセボ群11.5%であった。奏効期間(DOR)中央値はオラパリブ群24.9ヵ月、プラセボ群3.7ヵ月と、オラパリブ群では2年以上継続していた。 有害事象発現頻度は全有害事象でオラパリブ群95.6%、プラセボ群93.3%、Grade3以上はそれぞれ39.6%、23.3%であった。オラパリブ群で目立った副作用は、疲労感、悪心、下痢で、Grade3以上で頻度が多かったのは貧血と疲労感だった。 Kindler氏は今回の結果から「BRCA変異を持つ転移のある膵臓がんの1次治療後の維持療法として、オラパリブは新たな標準治療となるだろう」との見解で締めくくった。

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ダラツムマブ追加で、多発性骨髄腫の無増悪生存が改善/NEJM

 自家造血幹細胞移植の適応がない新規診断の多発性骨髄腫患者の治療において、標準治療であるレナリドミド+デキサメタゾンにダラツムマブを併用すると、標準治療単独に比べ病勢進行または死亡のリスクが有意に低減することが、フランス・リール大学のThierry Facon氏らが行ったMAIA試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年5月30日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体であり、直接的な抗腫瘍活性と免疫調節活性を有する。多くの治療歴のある患者への単剤による有効性や、新規診断および再発・難治例への標準治療との併用による有効性が報告されている。多発性骨髄腫で年齢や副作用リスクで移植が適応外の患者が対象 本研究は、北米、欧州、中東、アジア太平洋地域の14ヵ国176施設が参加する非盲検無作為化第III相試験であり、2015年3月~2017年1月に患者登録が行われた(Janssen Research and Developmentの助成による)。 対象は、全身状態(ECOG PS)が0~2の新規に診断された多発性骨髄腫で、年齢(≧65歳)または許容できない副作用が発現する可能性が高い病態の併存により、大量化学療法+自家造血幹細胞移植が適応とならない患者であった。 被験者は、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(ダラツムマブ群)またはレナリドミド+デキサメタゾン(対照群)を投与する群に無作為に割り付けられた。治療は、病勢進行または許容できない副作用が発現するまで継続することとした。 主要評価項目は、無増悪生存(無作為化から病勢進行または死亡までの期間)であった。ダラツムマブ群は無増悪生存が44%改善、CR以上が約2倍、MRD陰性が約3倍に 737例が登録され、ダラツムマブ群に368例、対照群には369例が割り付けられた。全体の年齢中央値は73歳(範囲:45~90)で、65歳未満は8例(両群4例[1.1%]ずつ)のみで、75歳以上が321例(160例[43.5%]、161例[43.6%])含まれた。診断からの経過期間中央値は0.9ヵ月(範囲:0~14.5)だった。 追跡期間中央値28.0ヵ月の時点で、240例が病勢進行または死亡した(ダラツムマブ群97/368例[26.4%]、対照群143/369例[38.8%])。30ヵ月時の無増悪生存率は、ダラツムマブ群が70.6%(95%信頼区間[CI]:65.0~75.4)、対照群は55.6%(49.5~61.3)であり、無増悪生存期間中央値はそれぞれ未到達、31.9ヵ月(28.9~未到達)であった。病勢進行または死亡のハザード比(HR)は0.56(0.43~0.73)であり、ダラツムマブ群で有意に優れた(p<0.001)。 完全奏効(CR)以上(CR+厳格な完全奏効[sCR])の割合は、ダラツムマブ群が47.6%と、対照群の24.9%に比べ有意に良好であった(p<0.001)。また、微小残存病変(MRD)が閾値(白血球105個当たり腫瘍細胞1個)を下回った患者の割合は、ダラツムマブ群が24.2%であり、対照群の7.3%に比し有意に高かった(p<0.001)。 最も頻度の高いGrade3/4の有害事象は、好中球減少(ダラツムマブ群50.0% vs.対照群35.3%)、貧血(11.8% vs.19.7%)、リンパ球減少(15.1% vs.10.7%)、肺炎(13.7% vs.7.9%)であった。 著者は、「これらの知見は、多発性骨髄腫の患者集団全体におけるダラツムマブベースのレジメンの使用を支持する臨床試験のリストに加えられる可能性がある」としている。「ダラツムマブ」関連記事ダラツムマブ併用で、多発性骨髄腫の厳格な完全奏効が改善/Lancet

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尿路上皮がんに対する化学療法後のペムブロリズマブでPFS改善(HCRN GU14-182)/ASCO2019

 転移のある尿路上皮がん(mUC)に対してプラチナベースの抗がん剤治療後の抗PD-1抗体ペムブロリズマブ単剤によるメンテナンス治療の効果が、第II相の二重盲検比較試験の結果として、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)において、米国・マウントサイナイ医科大学のMatt D. Galsky氏より発表された。試験デザイン・対象:mUCに対する1次治療として、プラチナ系抗がん剤をベースとする化学療法を受け、8サイクル投与までに病勢安定(SD)もしくは腫瘍縮小効果(CR/PR)のあった患者・試験群:ぺムブロリズマブ200mg/body、3週間ごと最長24ヵ月まで投与・対照群:プラセボ、3週間ごと最長24ヵ月まで投与(病勢進行があった場合は、ペムブロリズマブへのクロスオーバー許容)・評価項目:[主要評価項目]irRECIST(immune-related RECIST)を用いた無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]RECIST 1.1を用いたPFS、奏効率(ORR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・2015年12月~2018年11月に107例が登録され、ぺムブロリズマブ群55例、プラセボ群52例に割り付けられた。・RECIST1.1を用いたPFSの中央値は、ペムブロリズマブ群5.4ヵ月、プラセボ群3.2ヵ月と、ペムブロリズマブ群が良好な結果を示した(HR:0.64、95%CI:0.41~0.98、p=0.038)。・RECIST1.1によるORRは、ペムブロリズマブ群22%(CR 9%)、プラセボ群12%(CR 0%)であった。・Grade3~4の全有害事象発現率は、ぺムブロリズマブ群で53%、プラセボ群で35%であった。(6月8日 タイトルおよび記事内容を修正いたしました)

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日本のAYA世代がん患者が終末期ケアに望むこと

 2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省)が改訂され、本人が望むエンドオブライフ・ケア(EOLケア)がいっそう推進されているが、国立がん研究センター 中央病院の平野 秀和氏らは、日本のAYA世代(思春期・若年成人、15~39歳)のがん患者が、どのようなEOLケアを選好するのか、初となる調査を行った。同センターによれば、日本のAYA世代では、年間約2万人ががんの診断を受けているという。Journal of Pain and Symptom Management誌オンライン版2019年5月8日号掲載の報告。AYA世代がん患者349例について評価 研究グループは、多施設共同で行っているAYA世代がん患者に対する総合的ながん対策の在り方に関する研究調査(経験やニードの実態をアンケート等で調査)の一環として、EOLケアの選好について評価した。 AYA世代がん患者のEOLケアの選好についての主な結果は以下のとおり。・AYAがん患者計349例(AYAがん患者213例、AYAがんサバイバー136例)について、評価した。有効回答率は86%(296/344例)であった。・「予後を知りたい」との選好が53%(180/338例)、「治癒不能ながんで、かなりの毒性があり効果は限定的だが対症療法的な化学療法を受けたい」との選好が88%(301/341例)、「EOL期には自宅で積極的な緩和ケアを受けたい」との選好が61%(207/342例)であった。・多変量解析で、「予後を知りたい」という選好は、小児世代以外で正の関連が認められた(OR:3.05、p=0.003)。また、化学療法既往とは負の関連が認められた(OR:0.23、p=0.009)。・「治癒不能ながんで、かなりの毒性があり効果は限定的だが対症療法的な化学療法を受けたい」という選好は、積極的ながん治療を受けている状態と正の関連がみられた(OR:1.74、p=0.03)。・「EOL期には自宅で積極的な緩和ケアを受けたい」という選好は、不安と正の関連がみられた(OR:1.72、p=0.04)。・著者は、「これらの所見は、医療従事者が日本のAYA世代がん集団のEOLケアに関する選好を、よりよく理解するのに役立つだろう」とまとめている。

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アパルタミド、転移のある去勢抵抗性前立腺がんでPFS延長(TITAN)/ASCO2019

 日本でも転移のない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)患者の治療薬として承認されたアンドロゲン受容体阻害薬アパルタミド(商品名:アーリーダ)に関して、転移を有する去勢感受性前立腺がん(mCSPC)を対象にアンドロゲン除去療法(ADT)と併用するプラセボ対照無作為化比較第III相臨床試験TITANの結果を、BC Cancer and Vancouver Prostate CentreのKim N. Chi氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で報告した。アパルタミド群で無増悪生存期間に有意な延長 同試験の対象はドセタキセル投与歴や限局性前立腺がん治療にかかわらず、ADT継続中に1ヵ所以上の転移巣を認めたPS0~1の前立腺がん患者1,052例。登録患者はベースのADTにアパルタミド(240mg/日経口)を併用したアパルタミド群525例とプラセボを併用したプラセボ群527例に割り付けられた。主要評価項目は画像診断上の無増悪生存期間(rPFS)と全生存期間(OS)、副次評価項目は化学療法開始までの期間、痛みの増悪までの期間、オピオイドの慢性使用までの期間、骨関連事象までの期間。 rPFS中央値はアパルタミド群が未到達、プラセボ群で22.1ヵ月と、アパルタミド群で有意な延長が認められた(HR:0.48、95%CI:0.39~0.60、p<0.0001)。24ヵ月時点でのrPFS率はアパルタミド群が68%、プラセボ群が48%だった。rPFS延長効果は人種差、年齢、ドセタキセル治療歴の有無、がんの大きさなどといったサブグループ別にかかわらず認められた。 24ヵ月時点でのOS率はアパルタミド群が82%、プラセボ群が74%で、アパルタミド群で有意な延長が認められた(HR:0.67、95%CI:0.51~0.89、p=0.0053)。 副次評価項目はアパルタミド群、プラセボ群いずれも未到達だが、化学療法開始までの期間はアパルタミド群で有意な延長が確認され(p<0.0001)、その一方で痛みの増悪までの期間はで両群間で有意差は認めなかった(p=0.1173)。 有害事象発現頻度はアパルタミド群が96.8%、プラセボ群が96.6%、Grade3以上の有害事象発現頻度はアパルタミド群が42.2%、プラセボ群が40.8%でほぼ同等であった。 FACT-Pで測定した健康関連QOLは両群間で違いは認められなかった。なお、この結果を受けて同試験の独立データモニタリング委員会は、プラセボ+ADT群の患者に対しては、アパルタミド+ADTへの切り替え機会を提供するよう勧告している。 今回の結果についてKim氏は「ドセタキセルによる前治療歴の有無などにかかわらず、広範囲なmCSPC患者でADTに加えてアパルタミドの併用が支持される」との結論を述べた。

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FOLFOXIRI+BV、大腸がん1~2次治療でOS延長(TRIBE2)/ASCO2019

 切除不能大腸がんにおける、1~2次治療でのFOLFOXIRI+ベバシズマブ(BV)療法と、1次治療FOLFOX+BV、2次治療FOLFIRI+BVの治療シークエンスとを比較した第III相TRIBE2試験の結果、FOLFOXIRI+BV療法が奏効率、PFSおよびOSを有意に改善した。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、同試験のアップデートデータをイタリア・Azienda Ospedaliera Universitaria PisanaのChiara Cremolini氏が発表した。 TRIBE2試験は、切除不能大腸がんの1~2次治療における3剤併用+BV(トリプレット群)と2剤併用+BVの逐次療法(ダブレット群)という2つの治療戦略の有効性を評価する非盲検無作為化第III相試験。被験者は、以下の2群に1:1の割合で無作為に割り付けられた(各併用療法はそれぞれ最大8サイクル)。【ダブレット群】FOLFOX+BV→維持療法として5-FU+BV(PDまで)→FOLFIRI+BV→5-FU+BV療法(PDまで)【トリプレット群】FOLFOXIRI+BV→5-FU+BV(PDまで)→FOLFOXIRI+BV→5-FU+BV(PDまで) 主要評価項目は、「無作為化から、2次治療のPD(2次治療なし、あるいは1次治療でのPDから3ヵ月以内に2次治療が開始されなかった場合は1次治療のPD)または死亡のいずれかが最初に生じるまでの期間」として定義される無増悪生存期間2(PFS2)。副次評価項目は、全生存期間(OS)、1次治療/2次治療それぞれにおけるRECISTによる奏効率(RR)、安全性などであった。 主な結果は以下のとおり。・2015年2月~2017年5月の間に、イタリアの58施設で、30~75歳、ECOG PS≦2(71歳以上はPS=0)の679例(ダブレット群/トリプレット群:340例/339例)の切除不能大腸がん患者が組み入れられた。年齢中央値:61歳/60歳、ECOG PS 0:85%/86%、右側原発:38%/38%、アジュバント化学療法歴有:2%/2%、同時性転移:89%/89%、肝限局転移:29%/32%、RAS変異型:65%/63%、BRAF変異型:10%/10%。・追跡期間中央値30.6ヵ月で、1次治療後のPD(PD1)が594例(303/291) 、2次治療後のPD(PD2)が514例(272/242)、OSイベントが408例(217/191)で報告された(データカットオフは2019年3月1日)。・トリプレット群ではダブレット群と比較して、1次治療のPFS中央値(9.8ヵ月 vs.12.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.63~0.88、p<0.001)およびRR(50% vs.62%、オッズ比:1.61、95%CI:1.19~2.18、p=0.002)、PFS2中央値(17.5ヵ月 vs.19.1ヵ月、HR:0.74、95%CI:0.62~0.88、p<0.001)を有意に改善した。・PD1後に2次治療を受けたのは、ダブレット群で86%(うちFOLFIRI+BV:78%、FOLFIRI:10%)、トリプレット群で81%(うちFOLFOXIRI+BV:59%、FOLFOXIRI:9%)であった。・2次治療のPFS中央値 は、5.6ヵ月 vs.6.2ヵ月、HR:0.87(95%CI:0.73~1.04、p=0.112)で有意差はなかった。しかしper protocol解析(324例)の結果、トリプレット群で2次治療のPFSを有意に延長した(5.8ヵ月 vs.6.5ヵ月、HR:0.76、95%CI:0.60~0.97、p=0.025)。・OS中央値(予備解析、イベント数は60%)は、トリプレット群で有意に延長した(22.6ヵ月 vs. 27.6ヵ月、HR:0.81、95%CI:0.67~0.98、p=0.033)。・Grade3/4の有害事象のうち、トリプレット群で多くみられた項目は、1次治療:下痢(5% vs.17%、p<0.001)、好中球減少症(21% vs.50%、p<0.001)、発熱性好中球減少症(3% vs.7%、p=0.050)、2次治療:神経毒性(0% vs.5%、p=0.004)であった。

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5剤目のEGFR変異陽性非小細胞肺がん治療薬「ビジンプロ錠15mg/45mg」【下平博士のDIノート】第26回

5剤目のEGFR変異陽性非小細胞肺がん治療薬「ビジンプロ錠15mg/45mg」今回は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)「ダコミチニブ水和物(商品名:ビジンプロ錠15mg/45mg)」を紹介します。本剤は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体(HER)2および4のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。<効能・効果>本剤は、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん(NSCLC)の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年3月1日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはダコミチニブとして1日1回45mgを経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量し、副作用が現れた場合には、添付文書に記載されている基準を考慮して休薬、減量または中止します。本剤とCYP2D6基質の薬剤(デキストロメトルファンなど)を併用すると併用薬の血中濃度が上昇する恐れがあり、また、PPIなどの胃内pHを上昇させる薬剤を併用すると本剤の血中濃度が低下して有効性が減弱する可能性があるため、それぞれ併用注意となっています。<副作用>化学療法歴のないEGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLC患者を対象とした非盲検無作為化国際共同第III相試験において、本剤が投与された227例(日本人患者40例を含む)中220例(96.9%)に副作用が認められました。主な副作用は、下痢193例(85.0%)、爪囲炎140例(61.7%)、口内炎(口腔内潰瘍形成、アフタ性潰瘍など)135例(59.5%)、ざ瘡様皮膚炎111例(48.9%)、発疹・斑状丘疹状皮疹・紅斑性皮疹など82例(36.1%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として間質性肺疾患(2.2%)、重度の下痢(8.4%)、重度の皮膚障害(31.7%)、肝機能障害(28.6%)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、EGFRというタンパク質などの働きを抑えることで、がん細胞の増殖を抑えます。2.空咳、発熱など風邪のような症状が現れ、息切れや息苦しさを感じた場合には使用を中止し、すぐに受診してください。3.飲み始めに下痢が生じることが多いので、下痢止め薬が処方されている場合は持ち歩くようにしてください。脱水予防のため、水、白湯、お茶、スポーツドリンクなどでこまめに水分を補給しましょう。4.バランスのよい食事を心掛け、調理をする際は消化をよくするように工夫してください。乳製品、繊維質や脂質が多い食品、香辛料やコーヒー、アルコールなどの刺激物はなるべく控えましょう。5.薬を飲み続けていると、爪周囲や口腔内の赤み、腫れ、痛みなどが生じることがあります。患部は清潔に保ち、日常生活に支障がある場合はご相談ください。6.吹き出物や発疹などの皮膚症状が生じることがあります。症状の予防や軽減のため、低刺激の保湿剤によるスキンケアをこまめに行い、外出時は紫外線対策をしましょう。<Shimo's eyes>NSCLCは肺がん症例の約85%とされており、日本人のNSCLC患者の30~40%にEGFR遺伝子変異があるといわれています。本剤は、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)、エルロチニブ(同:タルセバ)、アファチニブ(同:ジオトリフ)、オシメルチニブ(同:タグリッソ)に続く、国内で5剤目のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)です。優先審査品目に指定され、申請から7ヵ月での承認となりました。本剤は、EGFRやHER2、HER4のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害することにより、EGFR遺伝子変異陽性のがん細胞の増殖を抑制すると考えられています。本剤で治療を行うためには、既存のEGFR-TKIと同様にEGFR遺伝子変異検査を実施する必要があります。臨床試験では副作用が高頻度で認められたため、患者さんには事前に発現率が高い副作用の好発時期を知らせておくことが重要です。個人差はありますが、投与を開始してから副作用が発現するまでの時期として、下痢は2ヵ月程度(中央値6日)、ざ瘡などの皮膚障害は4ヵ月程度(中央値9日)、口内炎や爪囲炎は6ヵ月間程度(それぞれの中央値9日、29日)が目安となります。投与初期から発現する可能性が高いので、それぞれの副作用への対策法も伝えるように心掛けましょう。NSCLCは分子標的薬の登場により着実に予後が改善しています。治療選択肢となる分子標的薬も増えたため、それぞれの薬剤の副作用プロファイルや用法を確認し、患者さんが安心して治療に専念できるように積極的にフォローしましょう。

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パクリタキセル、薬物動態ガイド下投与で有害事象減少

 がん化学療法の有害事象の抑制に朗報となる知見が寄せられた。中国・同済大学上海肺科病院のJie Zhang氏らは、進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対するカルボプラチン・パクリタキセル併用療法時のパクリタキセルの投与量について、体表面積に基づいた量と個別の薬物動態ガイド下での量を比較する、前向き無作為化臨床試験を行った。その結果、薬物動態ガイド下でのパクリタキセル投与は治療効果に悪影響を及ぼすことなくGrade4の血液毒性およびGrade2の神経障害を有意に低下させることが認められたという。British Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2019年5月11日号掲載の報告。 研究グループは、1次化学療法を受けるStage IIIB/IVのNSCLC患者319例を登録し、3週ごとのカルボプラチン・パクリタキセル併用療法を実施。1サイクル目をパクリタキセル175mg/m2で実施後、体表面積に基づいた量を投与する群(BSA群)と、血漿中パクリタキセル濃度が0.05μmol/Lを超える時間(PTXTc>0.05)が26~31時間になるよう薬物動態ガイド下で投与する群(PK群)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、Grade4の血液毒性、副次評価項目は神経障害、客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)である。 主な結果は以下のとおり。・2サイクル以上の化学療法を完了した患者は275例(86%)であった(BSA群140例、PK群135例)。・1サイクル目におけるパクリタキセルの曝露(PTXTc>0.05)は平均37時間(範囲18~57時間)であった。・2~4サイクルの間、PK群はBSA群と比較しパクリタキセルの平均投与量(128 mg/m2 vs.161mg/m2、p<0.0001)および平均曝露(29時間 vs.35時間、p<0.0001)が有意に低かった。・PK群はBSA群と比較し、Grade4の血液毒性(15% vs.24%、p=0.004)、Grade4の好中球減少症(15% vs.23%、p=0.009)、およびGrade2の神経障害(8% vs.21%、p=0.005)の発現率が有意に低かった。・PK群とBSA群で、ORR(32% vs.26%、p=0.28)およびOS(21.0ヵ月vs.24.0ヵ月、p=0.815)は同程度であった。・PFSはPK群でわずかに改善した(4.67ヵ月vs.4.17ヵ月、p=0.026)。

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経済毒性を日本人がん患者対象に要因別に評価した結果

 先ごろ約3,500万円の医薬品が登場し社会的関心を集めたが、高額な治療費・医薬品費がどのような“副作用”をもたらすのか。愛知県がんセンター中央病院の本多 和典氏らは、米国で開発されたがん患者の経済毒性(financial toxicity)を測定するツール「COmprehensive Score for Financial Toxicity:COST」の日本語版を作成し、これまで予備的研究として日本人がん患者におけるCOSTツールの使用可能性を少数例で評価していた。その実績を踏まえて今回、同氏らはCOSTツールを用いて日本人がん患者の経済毒性を評価する前向き調査を行い、日本人がん患者における経済毒性を要因別に評価した。著者は、「今回の結果は、日本におけるがん対策政策にとって重要な意味を持つだろう」とまとめている。Journal of Global Oncology誌2019年5月号掲載の報告。経済毒性が高い項目は非正規雇用やがんによる退職など 研究グループは、2ヵ月以上化学療法を継続している20歳以上の固形がん患者を対象に、アンケート用紙と医療記録を用い、COSTツールの質問項目に加えて社会経済的な項目に関するデータを収集して解析した。 日本人がん患者における経済毒性を要因別に評価した主な結果は以下のとおり。・191例に協力を依頼し、156例(82%)から回答を得た。・156例の内訳は、大腸がん77例(49%)、胃がん39例(25%)、食道がん16例(10%)、甲状腺がん9例(6%)、頭頸部がん4例(3%)、その他11例(7%)であった。・COSTスコア(低スコアほど経済毒性が高いことを示す)の中央値は21(0~41)、平均値±SDは12.1±8.45であった。・多変量解析の結果、COSTスコアと正の相関(すなわち経済毒性が低い)を示した項目は、高齢(β:0.15/歳、95%CI:0.02~0.28、p=0.02)と世帯貯蓄の多さ(β:8.24/1,500万円、95%CI:4.06~12.42、p<0.001)であった。・COSTスコアと負の相関(経済毒性が高い)を示した項目は、非正規雇用(β:-5.37、95%CI:-10.16~-0.57、p=0.03)、がんによる退職(β:-5.42、95%CI:-8.62~-1.37、p=0.009)、がんの治療費を何らかの方法で捻出(β:-5.09、95%CI:-7.87~-2.30、p<0.001)であった。

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リキッドバイオプシーの次なる展開は?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第7回

第7回 リキッドバイオプシーの次なる展開は?1)Rothwell DG, et al. Utility of ctDNA to support patient selection for early phase clinical trials: the TARGET study. Nat Med. 2019;25:738-743.その他、参考文献としてLeighl NB, et al. Clinical Utility of Comprehensive Cell-free DNA Analysis to Identify Genomic Biomarkers in Patients with Newly Diagnosed Metastatic Non-small Cell Lung Cancer. Clin Cancer Res. 2019 Apr 15. [Epub ahead of print]Akamatsu H, et al. Clinical significance of monitoring EGFR mutation in plasma using multiplexed digital PCR in EGFR mutated patients treated with afatinib (West Japan Oncology Group 8114LTR study). Lung Cancer. 2019;131:128-133.Lin CC, et al. Outcomes in patients with non-small-cell lung cancer and acquired Thr790Met mutation treated with osimertinib: a genomic study. Lancet Respir Med. 2018;6:107-116.Blakely CM, et al. Evolution and clinical impact of co-occurring genetic alterations in advanced-stage EGFR-mutant lung cancers. Nat Genet. 2017;49:1693-1704.Chae YK, et al. Detection of Minimal Residual Disease Using ctDNA in Lung Cancer: Current Evidence and Future Directions. J Thorac Oncol. 2019;14:16-24.Bettegowda C, et al. Detection of circulating tumor DNA in early- and late-stage human malignancies. Sci Transl Med. 2014;19;6:224ra24.肺がん領域ではEGFR-TKI耐性例におけるT790M変異検出目的で広く浸透したリキッドバイオプシー。最近では毎月のように論文発表がなされているが、今後どのような方向性が検討されているのか。最近の研究を基に解説する。1)について英国での前向き研究。2つのパートからなり、今回はリキッドバイオプシーの忍容性を組織診断と比較したパートA部分(100例)が報告された。他の検討項目として、cell-free DNA(以下、cfDNA)解析結果の信頼性、結果報告までの日数、臨床応用の可能性、費用が挙げられている。対象は進行期悪性腫瘍で、患者数の多い順に大腸がん、乳がん、非小細胞肺がん、原発不明がんとなっている(これらの合計が67例)。過去の化学療法歴の中央値は2であった。がん関連遺伝子641個を収載したパネルを用い、cfDNA検体の解析成功率は99%、組織検体の成功率は95%であった(late lineの患者が多く含まれていることもあり、組織検体の採取時期がやや古い:2/3の患者で1年以上前、36%の患者で3年以上前)。結果報告までの日数中央値は、cfDNAで33日(範囲20~80日)、組織検体で30日と、かなり遅い印象である。組織検体と血液検体の一致率(変異陰性例も含む)は74.5%。約2割では組織で検出された変異が血液では確認できなかった。何らかの変異が確認されたのは41例。乳がん、原発不明がん、小細胞肺がんでは80%以上の症例で変異陽性とされたが、まったく変異が陰性のがん腫もあり、がん種による陽性率の差が示唆されている。変異陽性例では対応する阻害剤の第I相試験に参加可能であったが、確認された41例のうち参加者は11例にとどまった(17例では施設で該当治験がなかったことが不参加の理由)。11例の奏効率は36%。非小細胞肺がん患者では13例中9例(69%)で何らかの変異が検出され、4例がEGFR阻害剤、1例がMEK阻害剤を投与された。解説多くのドライバー変異が同定され、それぞれに対応する分子標的薬がすでに保険承認されている肺がんと異なり、他がん腫ではバイオマーカーの同定、薬剤開発に苦労しているものもある。そのような状況において、低侵襲に広範囲な変異を確認できるリキッドバイオプシーの実用可能性を示したのが本論文である。ただし現場ではHER2/HER3変異陽性例に対するneratinibのバスケット試験(Hyman DM. Nature. 2018.)のように、cfDNAの結果のみでも参加可能な試験が増えており、診断精度という観点ではそれほど新規性が高いわけではない。ただし肺がんにおいてもオシメルチニブやALK阻害剤の多彩な耐性機序などが昨今明らかになっており、リキッドバイオプシーを用いた臨床研究の実現可能性や介入の対象などはより多くの議論が交わされていくと思われる。臨床への応用という観点で、本論文における1ヵ月という結果報告までの時間(turn-around time:TAT)はとても厳しいと思われるが、Guardant360を用いたLeighlらの最近の報告(Leighl NB. Clin Cancer Res. 2019.)では導入が進むにつれTATが短縮し、最終的な中央値は9日とされている。「近い将来、どのような対象について介入が必要か」であるが、昨今注目されている話題の1つは慢性骨髄性白血病(CML)など血液腫瘍で実地応用されている治療早期のmolecular responseが長期予後を予測するという知見であり、肺がんでも国内外を問わず、すでに多数の報告が出そろっている(Akamatsu H, Lung Cancer. 2019.、Lin CC, Lancet Respir Med. 2018.)。また早期症例も含め、リキッドバイオプシーを用いた再発予測が画像より早期に可能ではないか、という指摘も多くなされており(Blakely CM, Nat Genet. 2017.)、これらに対する介入が検討されている(ChaeYK, J Thorac Oncol. 2018.)。一方で、cfDNAの陽性率が進行期においても腫瘍量に比例することはかなり前から示されており(Bettegowda C, Sci Transl Med. 2014.)、本研究でも2割では組織検体でのみ変異が検出されていることに注意は必要である。リキッドバイオプシーは測定・結果返却のシステムさえ整えば、(費用は別として)臨床でのハードルが高くないため、今後はより多数例の大規模な解析が報告されると思われる。本論文の後半で示されているが、彼らはそうした情報をwebで共有する計画を進めており(eTARGET)、将来的にこうしたデータベースを基にした研究・臨床への応用が準備されているようである。適切なバイオマーカーを有する患者に対する分子標的薬の効果の高さは皆が認めるところであり、本邦でも早急にこのような試みが検討されるべきであろう。

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早期乳がんへの術前nab-PTX、DFSを改善/JCO

 GeparSepto試験では、早期乳がん患者のネオアジュバント治療として、アルブミン懸濁型パクリタキセルの週1回投与(weekly nab-PTX)が、従来の溶媒型パクリタキセルの週1回投与(weekly sb-PTX)に比べ、病理学的完全寛解率を有意に改善することが示されている。今回、ドイツ・Helios Klinikum Berlin-BuchのMichael Untch氏らは、本試験の長期アウトカムとして、invasive disease-free survival(iDFS)などを報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年5月13日号に掲載。 本試験では、組織学的に確認された原発性乳がん患者を、weekly nab-PTX 150mg/m2(試験修正後は125mg/m2)またはweekly sb-PTX 80mg/m2に1:1の割合で無作為に割り付けた。両群とも、エピルビシン90mg/m2+シクロホスファミド600mg/m2を3週ごとに4サイクル投与した。HER2陽性例には、化学療法と並行して、トラスツズマブ(初期用量8mg/kg、その後3週ごとに6mg/kg)とペルツズマブ(初期用量840mg、その後3週ごとに420mg)の投与を1年間継続した。 主な結果は以下のとおり。・nab-PTX群606例、sb-PTX群600例で、計1,206例が治療を開始した。・追跡期間中央値49.6ヵ月(範囲:0.5~64.0ヵ月)以降、243のiDFSに関わるイベントが報告された(sb-PTX群143イベント、nab-PTX群100イベント)。・4年時点で、nab-PTX群ではsb-PTX群と比べて有意にiDFSが高かった(84.0% vs. 76.3%、ハザード比:0.66、95%CI:0.51~0.86、p=0.002)が、全生存率は有意な差はなかった(89.7% vs.87.2%、ハザード比:0.82、95%CI:0.59~1.16、p=0.260)。・治療関連末梢性感覚ニューロパチー(PSN)の長期フォローアップの結果、nab-PTX 150mg/m2と比べて125mg/m2でPSNが改善するまでの期間の中央値が有意に減少した。

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APT試験のHER2陽性乳がん、術後パクリタキセル+トラスツズマブの長期転帰/JCO

 Adjuvant Paclitaxel and Trastuzumab(APT)試験は、腫瘍径が小さなHER2陽性乳がんに対する術後化学療法としてのパクリタキセル・トラスツズマブ併用療法について検討した第II相試験。これまでに主要解析の3年無病生存率(DFS)は98.7%であることが示されていたが、今回、長期追跡(7年)の結果が米国・ダナ・ファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏らにより発表された。長期予後はきわめて良好であったこと、また、腫瘍径が小さなHER2陽性乳がんの内因性サブタイプは腫瘍径が大きなHER2陽性乳がんと類似していることや、パクリタキセル誘発性末梢神経障害(TIPN)に関連する一塩基多型(SNP)について明らかになったという。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年4月2日号掲載の報告。APT試験におけるHER2陽性乳がん7年DFSは93.3% 研究グループは、APT試験の長期予後について解析するとともに、腫瘍径が小さなHER2陽性乳がんの生物学ならびにTIPNの発症と関連する遺伝要因を明らかにする目的で探索的解析を行った。APT試験の対象は腫瘍径3cm以下、リンパ節転移陰性のHER2陽性乳がん患者で、パクリタキセル(80mg/m2)+トラスツズマブを12週間、その後トラスツズマブを9ヵ月間投与された。 主要評価項目はDFS、副次評価項目は無再発率(RFI)、乳がん特異的生存率および全生存率(OS)であった。探索的解析として、保存組織を用いnCounterシステムによるPredictor Analysis of Microarray 50(PAM50)遺伝子解析(Prosigna法)を行い、内因性サブタイプの分類と再発リスクスコア(ROR)を算出するとともに、TIPNに関連するSNP遺伝子型判定を行った。 APT試験のHER2陽性乳がんについて解析した主な結果は以下のとおり。・2007年10月~2010年9月に、計410例が登録された。・追跡期間中央値6.5年において、DFSイベント発生は23件であった。・7年DFSは93.3%(95%CI:90.4~96.2)で、4例(1.0%)は遠隔再発であった。・7年OSは95.0%(95%CI:92.4~97.7)、7年RFIは97.5%(95%CI:95.9~99.1)であった。・PAM50解析(278例)では、HER2 enrichedが65.5%と大半を占め、luminal Bが13.7%、luminal Aが12.6%、basal-likeが7.9%であった。・遺伝子型判定(230例)の結果、Grade2以上のTIPN(10.4%)患者においてTIPNのリスク増加と関連するSNP、rs3012437が同定された。

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DS-8201、HER2陽性乳がん第II相臨床試験の結果/第一三共

 第一三共株式会社とアストラゼネカは、HER2陽性の再発または転移のある乳がん患者を対象とした抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の第II相臨床試験(DESTINY-Breast01)において、臨床的意義のある効果が示されたと発表。 同試験は、T-DM1治療を受けたHER2陽性の再発または転移のある乳がん患者253例を対象とした北米、欧州および日本を含むアジアにおけるグローバル第II相臨床試験。同試験の主要評価項目である客観的奏効率は、2019年4月に医学雑誌「The Lancet Oncology」にて公表された本剤の日米共同第1相臨床試験の結果と同様の傾向が認められた。また、本試験において安全性上の新たな懸念は認められなかった。 同剤は、米国食品医薬品局より、HER2陽性の再発・転移性乳がん治療を対象として画期的治療薬(Breakthrough Therapy)指定およびファストトラック指定を受けている。また、厚生労働省よりがん化学療法後に増悪したHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発胃がんに対する治療として先駆け審査指定を受けている。 同試験結果の詳細は、今後、学会にて公表する予定とのこと。

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高齢者NSCLCにおけるペムブロリズマブの成績/ELCC2019

 ペムブロリズマブの3つ無作為化比較試験KEYNOTE-010、024、042のプール解析の結果、高齢の非小細胞肺がん(NSCLC)患者では、ペムブロリズマブでの全生存期間が化学療法を有意に上回った。この研究は3件の臨床試験の高齢(75歳以上)患者264例と75歳未満の患者2,292例の結果を比較したもので、九州がんセンターの野崎 要氏らが欧州肺癌学会(European Lung Cancer Congress 2019)で発表した。対象患者はPD-L1(TPS)1%以上であり、高齢患者の半数はPD-L1(TPS)50%以上であった。 主な結果は以下のとおり。・PD-L1(TPS)1%以上の高齢患者における化学療法群と比較したペムブロリズマブ群の全生存期間(OS)のHRは0.76(95%CI:0.56~1.02)であった。 ・PD-L1(TPS)50%以上の高齢者のOSにおいてもペムブロリズマブ群が化学療法群に比べ改善した(HR:0.41、95%CI:0.23~0.73)。・高齢患者と若年者を比較した1年OS率は、PD-L1 (TPS)1%で53.7%対54.9%、PD-L1 (TPS)50%以上で61.7%対61.7%と、共に同程度であった。・ペムブロリズマブ群高齢患者の治療関連有害事象(TRAE)の頻度は、化学療法群に比べ少なかった(68%対94%)。Grade3~5のTRAEも、ペムブロリズマブ群で少なかった(24%対61%)。・高齢患者における免疫関連有害事象およびインフュージョンリアクションはペムブロリズマブ群で多くみられた(25%対7%)ものの、その頻度は若年者と同様であった(25%)。

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局所進行胃がん周術期療法、FLOT vs.ECF/ECX/Lancet

 切除可能な局所進行胃・胃食道接合部腺がんの治療において、ドセタキセルベースの3剤併用レジメンによる術前後の化学療法は標準レジメンと比較して、全生存期間(OS)を1年以上延長することが、ドイツ・UCT-University Cancer Center FrankfurtのSalah-Eddin Al-Batran氏らが行ったFLOT4-AIO試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年4月11日号に掲載された。術前後のエピルビシン+シスプラチン+フルオロウラシル(ECF)の有用性を示した大規模臨床試験(MAGIC試験)以降、いくつかのレジメンが検討されたが、いずれも不成功に終わっている。ドセタキセルベースの化学療法では、転移を有する胃・胃食道接合部腺がんにおける有効性が報告されている。FLOT4-AIOはFLOT群とECF/ECX群のレジメンに無作為割り付け FLOT4-AIOは、ドイツの38施設で実施された第II/III相非盲検無作為化試験であり、今回は第III相の結果が報告された(German Cancer Aid[Deutsche Krebshilfe]などの助成による)。 対象は、組織学的に確定された臨床病期cT2以上またはリンパ節転移陽性(cN+)、あるいはこれら双方で、遠隔転移がなく、切除可能な腫瘍を有する患者であった。 被験者は、次の2つのレジメンに無作為に割り付けられた。FLOT群:術前と術後に、2週を1サイクルとして4サイクルずつ、ドセタキセル(50mg/m2)+オキサリプラチン(85mg/m2)+ロイコボリン(200mg/m2)/フルオロウラシル(2,600mg/m2、24時間静注)を1日目に投与。ECF/ECX群(対照群):術前と術後に、3週を1サイクルとして3サイクルずつ、エピルビシン(50mg/m2、1日目)+シスプラチン(60mg/m2、1日目)+フルオロウラシル(200mg/m2、持続静注、1~21日)またはカペシタビン(1,250mg/m2、経口投与、1~21日)を投与。ECF/ECX群のフルオロウラシルかカペシタビンかの選択は担当医が行った。 主要アウトカムはOS(優越性)とし、intention-to-treat解析を実施した。FLOT群はECF/ECX群よりOSが15ヵ月延長 2010年8月~2015年2月の期間に716例が登録され、FLOT群に356例(年齢中央値62歳、男性75%)、ECF/ECX群には360例(62歳、74%)が割り付けられた。フォローアップは2017年3月に終了した。 実際に術前化学療法を開始したのは、FLOT群352例(99%)、ECF/ECX群353例(98%)で、全サイクルを完了したのはそれぞれ320例(90%)、326例(91%)であった。また、術後化学療法を開始したのはFLOT群213例(60%)、ECF/ECX群186例(52%)で、全サイクル完了はそれぞれ162例(46%)、132例(37%)だった。 投与中止の理由は、病勢進行/無効/早期死亡がFLOT群46例(13%)、ECF/ECX群74例(21%)、患者の要望がそれぞれ59例(17%)、62例(17%)、毒性が35例(10%)、47例(13%)であった。 手術開始は、FLOT群345例(97%)、ECF/ECX群341例(95%)、腫瘍手術が行えたのは、それぞれ336例(94%)、314例(87%)であった。断端陰性(R0)切除の達成は、FLOT群が301例(85%)と、ECF/ECX群の279例(78%)に比べ有意に高かった(p=0.0162)。 OS中央値は、FLOT群がECF/ECX群よりも有意に延長した(50ヵ月[95%信頼区間[CI]:38.33~未到達]vs.35ヵ月[27.35~46.26]、ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.63~0.94、p=0.012)。2、3、5年全生存率は、FLOT群がそれぞれ68%、57%、45%、ECF/ECX群は59%、48%、36%であった。このFLOTの治療効果は、すべてのサブグループで一致して認められた。また、無病生存期間中央値もFLOT群で有意に優れた(30ヵ月 vs.18ヵ月、0.75、0.62~0.91、p=0.0036)。 治療に関連する可能性のあるGrade3/4の有害事象のうち、FLOT群で多かったのは、感染症(18 vs.9%)、好中球減少(51 vs.39%)、下痢(10 vs.4%)、末梢神経障害(7 vs.2%)であり、ECF/ECX群で多かったのは、悪心(7 vs.16%)、嘔吐(2 vs.8%)、血栓塞栓イベント(3 vs.6%)、貧血(3 vs.6%)であった。また、治療関連の重篤な有害事象(手術のための入院期間中のものも含む)の発現状況は、両群で同等であった(FLOT群97例[27%]vs.ECF/ECX群96例[27%])。毒性による入院は、それぞれ89例(25%)、94例(26%)に認められた。 著者は、「本試験の結果は、有効な治療選択肢の幅を広げるものである」としている。

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CAR-T療法が臨床へ、まずは2~3施設でスタート

 CAR-T療法が、白血病や悪性リンパ腫に対する治療として実臨床で使用される日が近づいてきた。2019年3月、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法として国内で初めて、チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)が製造販売承認を取得した。これを受けて4月18日、都内でメディアセミナー(主催:ノバルティス ファーマ)が開催された。 セミナーでは、豊嶋 崇徳氏(北海道大学大学院医学研究院血液内科 教授)、平松 英文氏(京都大学医学部附属病院小児科 講師)が登壇。CAR-T療法(キムリア)の適応症である再発・難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)について、それぞれ実臨床での展望を示した。CAR-T細胞の製造と、実際のCAR-T療法の流れとは CAR-T療法の実施には、まずはじめに患者の末梢血から白血球が採取される。これは成分献血装置を用いた白血球アフェレーシスによって1~2時間かけて、T細胞を含む白血球成分が採取される。凍結保存処理後、米国の製造施設に輸送される。 製造過程では、T細胞の遺伝子改変→細胞増殖→品質チェックというプロセスを経て、病院に製造されたCAR-T細胞(キムリア)が届けられる(最短で5~6週間程度)。患者には、体内のリンパ球を減らしてCAR-T細胞を増殖しやすくするために、リンパ球除去化学療法と呼ばれる前治療が施され(3~4日間)、その後、キムリアが点滴により輸注される(単回投与)。輸注後は通常1~2ヵ月の入院を経て、その後は外来で経過観察が行われる。CAR-T療法(キムリア)のDLBCLへの有効性を確認、ただし慎重な適応判断が必要 DLBCLは悪性リンパ腫の中で最も頻度が高く、約30~40%を占める。本邦における総患者数は約2万1,000人。あらゆる年齢で発症するが、とくに高齢になるにつれ増加する。ただし、小児では他のがんの発症が少ないため高い割合を示す。 標準治療としてR-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)療法が確立されている。しかし、約50%の患者では無効か、再発する。これらの患者の次なる治療法は自家造血幹細胞移植だが、適応があるのはその半数以下で、さらに奏効した患者でも再発がありうる。 こうした再発・難治性DLBCL患者に対するこれまでの救援化学療法の生存期間中央値は、6.3ヵ月1)。対するCAR-T療法であるキムリアの生存期間中央値は、日本人を含む第II相JULIET試験の結果12ヵ月で、奏効率は52%(うち完全奏効:40%)であった2)。 豊嶋氏はこの結果について、「12ヵ月時点の生存率という観点でみると、25%→50%に改善したという結果。すべての患者さんにとって“夢の治療法”とはいえないだろう。奏効する場合は1回の治療で効果が得られ、QOLも高い可能性がある。しかし、状態や進行速度によって、そもそもこの治療に進める患者さんは限られる。さらに製造の待ち時間、製造不良のリスクもある」として、患者やその家族に過度の期待を持たせることに対しては強い懸念を示した。 臨床試験で多く発現したCAR-T療法(キムリア)の有害事象は、サイトカイン放出症候群(58%で発現、中等症以上は22%)、脳症(21%で発現、中等症以上は12%)など。低ガンマグロブリン血症に伴う免疫グロブリン補充療法は30%で実施された。有害事象による死亡事例はなかったが、「身体に対する治療負担の重さという観点でいえば、自家ではなく、同種造血幹細胞移植と近い。実臨床ではかなり慎重な有害事象のコントロールが必要になるだろう」と述べた。CAR-T療法(キムリア)はB-ALLでも奏効例では高い効果、しかし輸注に至らない例も 本邦におけるALLの総患者数は約5,000人。診断時の年齢中央値は15歳で、好発年齢は2~3歳。そして小児ALLの8割以上がB細胞性(B-ALL)と報告されている。1次治療は寛解導入療法・地固め療法・維持療法からなる多剤併用療法である。80~90%が2~3年にわたるこの強力な1次治療によって完全寛解に到達するが、小児患者の約20%で再発する。再発・難治患者の生存可能性は、小児で16~30%に留まる。 平松氏は、承認の根拠となった第II相ELIANA試験3)の日本人成績について詳細を紹介した。日本人患者は、8例(5~24歳、前治療歴3~7回)が登録された。うち、製品不適格(製造されたが、うまく増殖しなかった)1例、製造を待機するうちに原病が悪化した1例を除く6例に、実際にCAR-T療法のキムリアが投与された。 結果は、3例で完全寛解、1例で血球数回復が不十分な完全寛解が得られた。他2例では効果なしであった。同氏は、「寛解が得られた4例ではすべて微小残存病変も陰性。これは非常に高い効果」と話した。 一方で、6例中5例が重症サイトカイン放出症候群を発症。集中治療室での濃厚な治療が必要となった。「全例が治療に反応しコントロールできたが、院内連携を強化し、新たな有害事象の発現を関連部門の医師が迅速に共有する必要がある」とした。CAR-T療法(キムリア)はまず国内2~3施設で開始、ピーク時で年間250人の患者を想定 最後に登壇したノバルティスファーマ オンコロジージャパン プレジデントのブライアン グラッツデン氏は、発売後の見通しについて説明。CAR-T療法のキムリアによる治療を行う医療機関は、細胞採取の品質確保や副作用管理について同社がトレーニングを実施し、認定した施設に限定するとした。発売初期、国内では2~3施設を予定しており、ピーク時の患者数はCAR-T細胞の製造におけるキャパシティもあり年間250人を想定しているという。また、薬価はまだ決定されていないが、米国で導入された「成功報酬型」の支払い方式は日本では採用されない見通しであることも示された。

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放射線療法による口内炎の疼痛、有効な含嗽薬は?/JAMA

 頭頸部放射線療法を実施している患者において、doxepin含嗽あるいはジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽は、プラセボと比較し、含嗽後最初の4時間の口腔粘膜炎の疼痛を有意に軽減させたものの、その効果は臨床的に意味のある最小の差より小さかった。米国・Mayo Clinic HospitalのTerence T. Sio氏らが、doxepin含嗽またはジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽の有効性を評価する第III相無作為化試験「Alliance A221304」の結果を報告した。doxepin含嗽により口腔粘膜炎関連の疼痛が軽減することが無作為化試験で示されているが、一般的に広く用いられているジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽については、無作為化プラセボ対照比較試験やCochraneレビューで使用を支持するエビデンスは示されていなかった。JAMA誌2019年4月16日号掲載の報告。2つの含嗽とプラセボで、口腔粘膜炎の疼痛スコアを比較 研究グループは、2014年11月1日~2016年5月16日の期間で、米国の30施設において、根治的頭頸部放射線療法を実施し口腔粘膜炎の疼痛スコア(範囲0~10)が4点以上の患者275例を、doxepin含嗽群92例、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群91例、プラセボ群92例に無作為に割り付け、最大28日間追跡した。 主要評価項目は、doxepin含嗽またはジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽を単回投与後4時間における、プラセボ含嗽と比較した全口腔粘膜炎の疼痛の軽減とし(曲線化面積によって確認、ベースライン時の疼痛スコアで補正)、臨床的に意味のある最小差は変化量3.5点とした。 副次評価項目は、眠気、不快な味、刺すような痛み(刺痛)および灼熱痛。すべての評価尺度は0点(最小)~10点(最大)とした。含嗽後4時間以内の疼痛スコアは低下するも臨床的に意味のある最小差に達せず 無作為化された275例(年齢中央値61歳、女性58例[21%])のうち、227例(83%)が試験を完遂した。 投与後最初の4時間以内の口腔粘膜炎の疼痛スコアは、doxepin含嗽群で11.6点、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群で11.7点、プラセボ含嗽群で8.7点の低下が確認された。群間差は、doxepin含嗽群vs.プラセボ含嗽群で2.9点(95%信頼区間[CI]:0.2~6.0、p=0.02)、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群vs.プラセボ含嗽群で3.0点(95%CI:0.1~5.9、p=0.004)であった。プラセボ含嗽群と比較して、doxepin含嗽群のほうが眠気(1.5点、95%CI:0~4.0、p=0.03)、不快な味(1.5点、95%CI:0~3.0、p=0.002)、刺すような痛みと灼熱痛(4.0点、95%CI:2.5~5.0、p<0.001)が多く報告された。 Grade3(最大)の有害事象は、doxepin含嗽群で3例(4%)、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群で3例(4%)、プラセボ含嗽群で2例(2%)報告された。倦怠感は、doxepin含嗽群で5例(6%)確認されたが、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群では確認されなかった。 著者は研究の限界として、化学療法の種類や放射線療法の範囲など他の要因が関与している可能性などを挙げ、「両含嗽法の長期的な有効性と安全性についてさらに評価する必要がある」とまとめている。

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