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EGFR変異陽性肺がんにはTKI単独療法だけでよいのか「NEJ009試験」【肺がんインタビュー】 第41回

第41回 EGFR変異陽性肺がんにはTKI単独療法だけでよいのか「NEJ009試験」EGFR変異陽性非小細胞肺がん1次治療における、ゲフィチニブ単剤とゲフィチニブ+プラチナ併用化学療法を比較した第III相試験「NEJ009試験」の結果がJournal of Clinical Oncology誌で発表された。試験統括医師である東北大学大学院の井上 彰氏に聞いた。EGFR-TKI単剤を上回る治療効果―試験実施の背景について教えていただけますか。われわれは約10年前に、ゲフィチニブ単剤とプラチナ併用化学療法を比較するNEJ002試験を実施しました。その結果、ゲフィチニブの有用性が示され、EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)には、ゲフィチニブなどのEGFR-TKI単剤が標準治療となりました。とはいえ、TKI単剤で病勢が抑えられるわけではなく、その後に化学療法を使うことになります。しかし、NEJ002試験の後解析で、ゲフィチニブ治療の後、3分の1くらいの患者さんが標準化学療法を受けられていないことが明らかになりました。その患者さんたちに、しっかりTKIとプラチナ併用化学療法を使うことができれば、さらに生存成績が改善できるのではないか。では、どうすればTKIとプラチナ併用化学療法をすべて受けられるか、それを検討するためにNEJ005試験を行いました。この試験では、ゲフィチニブとプラチナ併用化学療法を同時に用いる方法と、交互に用いる方法を比較しました。その結果、同時療法は交互療法より手間がかからずに実施でき、さらに安全性は交互療法と同程度、有効性の面では、むしろ同時療法のほうが良好である可能性が示されました。そこで、この同時療法と標準治療となったゲフィチニブ単剤とを比較することとなりました。それがこのNEJ009試験を実施した背景です。―NEJ009試験の概要と主な結果について教えていただけますか。NEJ009試験では、EGFR変異陽性NSCLC初回治療において、ゲフィチニブ+プラチナ併用化学療法という3剤併用群とゲフィチニブ単剤群を比較しました。エンドポイントは、まず無増悪生存期間(PFS)、そして最終的に全生存期間(OS)をみていくデザインで始めました。対象患者は46施設から345例が登録されています。結果、初回治療のPFSはゲフィチニブ単剤群で11.9ヵ月、ゲフィチニブ+化学療法併用群では20.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.490、p<0.001)と、併用群で有意に延長しました。また、奏効率も84%対67%(p<0.001)と、併用群で10%ほど上乗せできています。また、Waterfallプロットで腫瘍縮小率を見ると、効果が深い(deep response)ことがわかります。このようにNEJ009レジメンの初回治療としての能力は、かなり高いことが示されました。また、それが50.9ヵ月対38.8ヵ月(HR:0.722、p=0.021)というOS中央値に反映されたと考えています。この50ヵ月を超える併用群のOSは、肺がんでは今まではあり得なかったような成績です。有害事象については、それぞれの薬剤で既知のものであり、肺がん治療に慣れている先生方であれば、十分対処できるものでした。EGFR変異陽性NSCLCの選択肢の幅を広げる―この試験結果が臨床に与えるインパクトはどのようなものでしょうか。今ではEGFR変異NSCLCの初回治療では多くの方がオシメルチニブを使うでしょう。しかし、どの患者さんでもそれでよいのか。たとえば、体力があって、効果の高い治療を受けたいと希望している患者さんにも、オシメルチニブ一辺倒でよいのかは疑問です。最近の研究成績を見ていると、EGFR-TKI単剤での初回治療の限界が見えてきたのかもしれないと思います。元気で、高い治療効果を望む患者さんには、TKIに化学療法を上乗せするという選択肢を、少なくとも提示しなければいけないと思います。―NEJ009試験はこれで最終報告となりますか。NEJ009と同様のレジメンは、インドの臨床試験でも有効性が示されています。このことからも、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療におけるEGFR-TKIと化学療法の併用の成績については、ある程度結論が付いたと思います。長期追跡データや付随データは出ると考えられますが、NEJ009本体の発表はこれで完了です。―読者の方々にメッセージをお願いします。肺がんでは今、多くの薬剤が開発され、一昔前に比べ、治療しがいのある状態になったと思います。その中で、EGFR変異陽性NSCLCの患者さんに対しては、従来のEGFR-TKI単独に加え、さらに高い効果が得られる可能性のある併用レジメンが、新たな選択肢として、エビデンスを持って現れました。この治療に耐えられる全身状態と本人の要望がある場合には、選択肢として積極的に勧めてよいと考えています。参考Hosomi Y, et al. J Clin Oncol. 2020 Jan 10;38:115-123.

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ニボルマブ・化学療法併用、非小細胞肺がんに対する国内承認申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年2月27日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対するプラチナ製剤を含む2剤化学療法との併用療法による用法及び用量の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表。 今回の承認申請は、化学療法未治療のStage4または再発の非小細胞肺がん患者を対象に実施した多施設国際共同非盲検無作為化第III相臨床試験CheckMate-227のPart1およびPart2の結果に基づいている。

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ペムブロリズマブ併用、転移TN乳がん1次治療でPFS延長/MSD

 MSD株式会社は2020年2月21日、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対する初回治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法の併用療法が、化学療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)を延長したと発表した(第III相KEYNOTE-355試験)。 KEYNOTE-355試験は、化学療法歴のない、手術不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、ペムブロリズマブと化学療法併用の有効性を評価する無作為化比較試験。本試験は2パートからなり、パート2では登録患者847例が、ペムブロリズマブ+3種類の化学療法のうちの1つ(ナブパクリタキセル、パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチンから医師が選択)の併用療法群と、プラセボ+同3種の化学療法のうちの1つの化学療法単独群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、全患者およびPD-L1陽性(CPS≧1およびCPS≧10)患者における全生存期間(OS)とPFS。 今回、独立データ監視委員会(DMC)の中間解析により、CPS≧10のPD-L1陽性患者において、併用療法群で統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるPFSの改善が認められた。ペムブロリズマブの安全性プロファイルはこれまでに報告されている試験で認められているものと一貫しており、新たな安全性の懸念は特定されていない。 同社はプレスリリースの中で、データは今後の学術集会において発表予定としている。また、DMCの推奨に基づき、もう一つの主要評価項目であるOSについても、変更なく評価を継続する。

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オシメルチニブ耐性:メカニズムから頻度、期待される治療まで【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第11回

第11回 オシメルチニブ耐性:メカニズムから頻度、期待される治療まで1)Leonetti A, Sharma S, Minari R, et al. Resistance Mechanisms to Osimertinib in EGFR-mutated Non-Small Cell Lung Cancer. Br J Cancer. 2019;121:725-737.2)G.R.Oxnard, J.C.-H.Yang, H Yu, et al. TATTON: A multi-arm, phase Ib trial of osimertinib combined with selumetinib, savolitinib or durvalumab in EGFR-mutant lung cancer. Ann of Oncol. In press.FLAURA試験の結果、EGFR変異陽性例に対する初回治療はオシメルチニブというコンセンサスが得られたものの、日本ではサブセットに関する賛否両論もある。一方、今後の治療戦略を考えるうえで、オシメルチニブの多彩な耐性機序を整理しておくことは非常に重要であり、今回British Journal of Cancer誌によくまとまったレビューが掲載されているので紹介したい(論文1 Fig 1は必見)。本稿では耐性機序をOn-target / Off-target /組織型の転化に分け、頻度は初回治療・既治療(T790M陽性)に基づいて記載した。末尾にそれぞれに関する治療戦略も付記しているが、多くの治療が前臨床・治験レベルであることはご了解いただきたい。1. On-target(EGFR遺伝子)の獲得耐性頻度 初回治療 7%(FLAURA)   既治療 21%(AURA3)いずれにおいてもC797X変異が最多であり、それ以外にもL792X、G796X、L718Qなどが報告されている。L792Xは他のEGFR変異と併存することが多く、逆にL718QはC797Xとは独立して生じるようで、これらが今後の薬剤選択にどのように影響するのかは現時点で不明。FLAURAでは、T790Mの出現は認められていない。T790M陽性例では、治療期間が短い一因として、耐性時にT790M変異が消失している例が挙げられ、こうした症例ではKRAS変異(最近注目のG12Cではない)やMET遺伝子増幅など他の耐性機序を生じている症例が多かった。2. Off-target(EGFR遺伝子以外)の獲得耐性Off-targetによる耐性は、初回治療としてオシメルチニブを用いた場合に多くなる傾向があり、EGFR変異は保持されたままであることが多い。これは腫瘍のheterogeneityを反映しているのでは、と考察されている。機序は多種多様だが、報告されている中ではMET遺伝子増幅が最多。頻度 初回治療 15%(FLAURA)   既治療 19%(AURA3)またMET遺伝子の近傍に位置するCDK6やBRAFなどの遺伝子増幅を同時に認める症例があるとのこと(Le X, et al. Clin Cancer Res. 2018;24:6195-6203.PMID: 30228210)。近年いくつかの薬剤の有効性が示されているMET exon14 skippingも症例報告レベルではあるが報告されている(Schoenfeld AJ, et al. ASCO 2019. abst 9028.)。ほかにはHER2遺伝子増幅(FLAURA 2%、AURA3 5%)、NRAS変異、KRAS G12S変異、BRAF V600E変異(同3%、3%)、PIK3CA変異(4%、4%)、cyclin D1などcell cycle関連の変異(同12%、10%)、融合遺伝子変異(FGFR・RET/NTRK1・ROS1・BRAFなど3~10%、初回投与では少ない?)などがそれぞれ報告されている。3. 組織型の転化小細胞肺がんへの転化が4~15%でみられ、これらの症例では治療前からRB1やTP53の不活性化が確認されている。最近では扁平上皮がんへの転化も報告されている(治療ラインにかかわらず7%前後、Schoenfeld AJ, et al. ASCO 2019. abst 9028.)。4. 有効な治療方針は?耐性例ではとくに、空間的・時間的な不均一性が問題になることが指摘されている(現時点で何か解決策があるわけではないが)。つまり1ヵ所の再生検のみでは全体を十分に把握できていない可能性がある。一方で上記の頻度は解析材料(組織生検か、リキッドバイオプシーか)にも左右されうることには注意が必要。耐性時点でのT790M変異消失は予後不良とする報告がある(Oxnard GR, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1527-1534.)。耐性機序が多彩であることを踏まえてNEJ009レジメンに倣った化学療法の併用について前臨床での報告がなされている(La Monica S, et al. J Exp Clin Cancer Res. 2019;38:222.)。C797S変異:前臨床の段階だが第4世代EGFR-TKI(EAI045)やアロステリック阻害薬(JBJ-04-125-02)の開発が進行中(To C, et al. Cancer Discov. 2019;9:926-943.)。MET遺伝子増幅/変異に対してはクリゾチニブをはじめとしたc-MET阻害薬の併用やcabozantinibの有効性が少数ながら報告されている(Kang J, et al. J Thorac Oncol. 2018;13: e49-e53.)。HER2遺伝子増幅例に対しては前臨床でオシメルチニブとT-DM1の併用が有望とされている(La Monica S, et al. J Exp Clin Cancer Res. 2017;36:174.)。その他BRAF阻害薬、AXL阻害薬、ベバシズマブ、Bcl-2阻害薬、mTORC阻害薬、CDK4/6阻害薬など多くの薬剤が検討中であるが、総じて臨床データは乏しい。最近ではTATTON試験においてc-MET阻害薬savolitinibやMEK阻害薬selumetinibとの併用が報告された。安全性は確認されたものの、対象が雑多なこともあり有効性について目立った成果は示せていない(Oxnard GR, et al. Ann Oncol. 2020 Jan 24. [Epub ahead of print])。特殊な治療として、本論文の末尾にはCRISPRを用いた‘molecular surgeon’についても紹介されていた(Tang H, et al. EMBO Mol Med. 2016;8:83-85.)。

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ペグフィルグラスチムの自動投与デバイス国内臨床試験開始/協和キリン

 協和キリンは、ペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)の自動投与デバイスに関する国内臨床試験を本年2月19日に開始した。 ペグフィルグラスチムは持続型G-CSF製剤。がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制を適応症とし2014年より日本にて販売している製品で、がん化学療法を行った翌日以降に医療機関にて投与が行われる。 ペグフィルグラスチムが翌日に自動投与される仕組みを搭載した同デバイスをがん化学療法と同日に使用することにより、ペグフィルグラスチム投与のための通院が不要となり、患者の通院負担、さらには医療従事者の負担の軽減にもつながることを期待している。 同試験は、第I相多施設共同非対照非盲検試験で、対象はがん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制。主要評価項目は安全性で、予定被験者数は30例である。第I相臨床試験の位置づけだが、本臨床試験のデータを使用し厚生労働省へ製造販売承認申請を行う予定だという。

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日本人HER2+早期乳がんへのトラスツズマブ、長期予後解析(JBCRG-cohort study 01)

 日本人のHER2陽性早期乳がん患者に対する、周術期のトラスツズマブ療法による5年および10年時の予後への影響が評価された。大規模試験において予後改善が示されてきたが、日本人患者における長期的有効性は明らかではない。また、新たな抗HER2薬などが登場する中で、治療を強化すべき患者と、軽減すべき患者の判断基準が課題となっている。そのため、治療選択のための再発予測モデルの構築が試みられた。天理よろづ相談所病院の山城 大泰氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年2月14日号掲載の報告より。 本研究は、浸潤性HER2陽性乳がんStageI~IIICと組織学的に診断され、周術期にトラスツズマブによる治療を少なくとも10ヵ月以上受けた20歳以上の患者を対象とした観察研究。主要評価項目は無病生存期間(DFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・2009年7月~2016年6月の間に、国内56施設から2,024例を登録。適格基準を満たさなかった43例を除き、1,981例が解析対象とされた。・ベースライン時の治療歴は、術前化学療法を35.4%、術後化学療法を99.6%が受けていた。トラスツズマブ投与は術前のみが1.3%、術前および術後が22.2%、術後のみが76.5%であった。乳房温存術を51.6%、乳房切除術を48.4%が受けていた。また、術後ホルモン療法は48.2%、術後放射線療法は57.5%が受けていた。・追跡期間中央値は80.9ヵ月(5.0~132.2ヵ月、平均80.2ヵ月)。・5年DFS率は88.9%(95%信頼区間[CI]:87.5~90.3%)、10年DFS率は82.4%(95%CI:79.2~85.6%)。・5年OS率は96%(95%CI:95.1~96.9%)、10年OS率は92.7%(95%CI:91.1~94.3%)。・多変量解析により、再発のリスク因子は≧70歳、≧T2、臨床的に認められたリンパ節転移、組織学的腫瘍径>1cm、組織学的に認められたリンパ節転移(≧n2)、および術前治療の実施であった。・標準治療下での5年再発率は、構築された再発予測モデルでスコアが3以上の患者で10%超と推定された。 著者らは、単群の観察研究データに基づくことの限界に触れたうえで、この再発予測モデルがStageI~IIICの患者の治療選択を改善する可能性があると結んでいる。

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化学療法の毒性リスクが最も低い患者は?/Cancer

 化学療法を受けるがん患者の毒性リスクに関して、栄養状態がキーを握ることが報告された。米国・フォックス・チェイスがんセンターのEfrat Dotan氏らが、固形腫瘍を有する高齢者において、治療前のBMI値、アルブミン値ならびに過去6ヵ月の意図しない体重減少(UWL)と、化学療法の毒性との関連を評価した結果、BMIが高くアルブミン値正常でGrade3以上の毒性リスクが低くなることが示されたという。著者は、「高齢のがん患者において、栄養状態が罹病率と死亡率に直接影響を及ぼすことが示された」とまとめ、「栄養マーカーの臨床的重要性を明らかにし、今後、介入していくためにも、さらなる研究が必要である」と提言している。Cancer誌オンライン版2020年1月24日号掲載の報告。 研究グループは、前向き多施設研究で化学療法を受けた65歳以上の高齢者について2次解析による検討を行った。 治療前に、高齢者機能評価、BMI値、アルブミン値、およびUWLのデータを収集し、多変量ロジスティック回帰モデルにより、栄養因子とGrade3以上の化学療法毒性リスクとの関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は750例で、年齢中央値は72歳、ほとんどがStageIVのがんであった。・治療前のBMI中央値は26、アルブミン中央値は3.9mg/dLであった。・約50%の患者がUWLを報告し、10%超のUWLがみられた患者は17.6%であった。・多変量解析の結果、10%超のUWLとGrade3以上の化学療法毒性リスクとの間に関連性は認められなかった(補正後オッズ比[AOR]:0.87、p=0.58)。・一方、BMI 30以上では、Grade3以上の化学療法毒性リスクが減少する傾向がみられ(AOR:0.65、p=0.06)、アルブミン低値(≦3.6mg/dL)では、Grade3以上の化学療法毒性リスクの増加と関連した(AOR:1.50、p=0.03)。・BMIとアルブミンを組み合わせて解析した結果、BMI 30以上かつアルブミン値正常の患者において、Grade3以上の化学療法毒性が最も低いことが示された(AOR:0.41、p=0.008)。

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オランザピン研究の最新レビュー

 多くのエビデンスによってオランザピンは、米国で発売されている抗精神病薬の中で、クロザピンを除き最も効果的な薬剤の1つであるといわれている。しかしオランザピンは、代謝関連の副作用(とくに体重増加)の問題が報告されている。誘発される体重増加をコントロールするための戦略を明らかにすることで、オランザピンの臨床的有用性を再評価できると考えられる。米国・コロンビア大学のAmir M. Meftah氏らは、2008年と2009年に行ったレビュー以降のオランザピンに関する最近のエビデンスをレビューし、統合失調症およびその他の疾患への使用、オランザピン20mg/日超の安全性について検討を行った。Postgraduate Medicine誌オンライン版2020年1月3日号の報告。 2008年~2019年7月までのオランザピンに関する英語文献をPubMedより検索した。最初の検索で見落とした可能性のある他のレポートについて、レビュー文献を調査した。研究の有効性、安全性のデータに基づき評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・オランザピンの使用は減少している可能性があるが、全体的には一般的に用いられている。・オランザピンは、有効性および体重増加や代謝関連の副作用の両方が報告され続けている。・最近の研究では、神経性食欲不振や化学療法誘発性悪心に対する治療にオランザピンが支持されている。・オランザピン20mg/日超の高用量に関するエビデンスは限られている。・食事のカウンセリングや運動などの非薬理学的介入は、抗精神病薬による体重増加への効果的な介入であると考えられる。・トピラマート、メトホルミン、オランザピンとsamidorphanの組み合わせも有用であると考えられる。 著者らは「オランザピンは、有用な抗精神病薬ではあるが、注意深くモニタリングする必要がある。オランザピンによる体重増加を緩和するための利用可能なさまざまなオプションを比較し、薬理学的治療と非薬理学的治療の相乗効果を評価するために、さらなる研究が必要とされる」としている。

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CAR-NK細胞、再発/難治性CD19陽性がんに有効/NEJM

 キメラ抗原受容体(CAR)を導入されたナチュラルキラー(NK)細胞は、再発または難治性のCD19陽性がん患者の治療において高い有効性を示し、一過性の骨髄毒性がみられるものの重大な有害事象は発現せず、相対的に安全に使用できる可能性があることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのEnli Liu氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2020年2月6日号に掲載された。CAR導入細胞療法では、すでに抗CD19 CAR-T細胞療法のB細胞がんの治療における著明な臨床的有効性が確認されている。一方、CAR-T細胞は重大な毒性作用を誘発する可能性があり、細胞の作製法が複雑である。抗CD19 CARを発現するように改変されたNK細胞は、これらの限界を克服する可能性があるという。進行中の第I/II相試験の初期結果 研究グループは、再発/難治性のCD19陽性がんの治療におけるCAR-NK細胞の有効性と安全性を評価する目的で、第I/II相試験を進めており、今回は最初の11例の結果を報告した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 解析には、再発/難治性CD19陽性がん(非ホジキンリンパ腫または慢性リンパ性白血病[CLL])の患者11例が含まれた。患者は、臍帯血由来のHLAミスマッチ抗CD19 CAR-NK細胞の投与を受けた。 NK細胞への遺伝子導入には、抗CD19 CAR、インターロイキン-15、安全スイッチとしての誘導型カスパーゼ9をコードする遺伝子を発現させたレトロウイルスベクターを用いた。この細胞を体外で増殖させ、リンパ球除去化学療法を行った後、3つの用量のCAR-NK細胞(用量1:1×105、用量2:1×106、用量3:1×107/kg体重)の1つが単回投与された。最大耐用量には未到達、奏効率は73% 2017年6月~2019年2月の期間に15例が登録され、4例(増悪、移植片対宿主病、検出可能病変の不在、製剤への細菌混入が各1例)が治療を受けなかった。11例の年齢中央値は60歳(範囲:47~70)、女性が4例で、前治療レジメン数中央値は4(3~11)であった。用量は、用量1が3例、2と3が各4例だった。 5例がCLL(リヒター症候群へ形質転換、移行期へ進行の2例を含む)、6例がリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫2例、濾胞性リンパ腫4例)であった。CLLの5例全例に増悪の既往歴があり、イブルチニブの投与歴があった。また、リンパ腫の6例のうち、4例は自家造血幹細胞移植後の増悪で、2例は難治性病変を有していた。 CAR-NK細胞の投与後に、サイトカイン放出症候群や神経毒性、血球貪食性リンパ組織球症は発現しなかった。また、患者と製剤はHLAミスマッチにもかかわらず、移植片対宿主病は発生しなかった。 予測どおり、全例で一過性の可逆的な血液学的毒性イベントがみられ、主にリンパ球除去化学療法関連のものであったが、CAR-NK細胞の寄与の評価はできなかった。好中球減少は、Grade3が2例、Grade4が8例に、リンパ球減少はGrade4が10例にみられた。腫瘍崩壊症候群は認められず、Grade3/4の非血液学的毒性も発現しなかった。最大耐用量には達しなかった。 追跡期間中央値13.8ヵ月(範囲:2.8~20.0)の時点で、8例(73%)で客観的奏効が得られた。このうち7例(CLL 3例、リンパ腫4例)で完全寛解が達成され、1例ではリヒター症候群に転換した腫瘍の寛解が得られたものの、CLLは持続した。すべての用量で、効果の発現は迅速で、投与から30日以内にみられた。 CAR-NK細胞の増殖は、投与から3日という早い時期にみられ、12ヵ月以上低値で持続した。CAR-T細胞で報告されているのと同様に、奏効例は非奏効例に比べ、早期のCAR-NK細胞の増殖の程度が高かった(投与後28日時のゲノムDNAコピー数中央値:3万1,744 vs.903コピー/μg、p=0.02)。 また、インターロイキン-6や腫瘍壊死因子αなどの炎症性サイトカインの値は、ベースラインに比べて増加しなかった。 著者は、「本研究で使用したリンパ球除去化学療法レジメンは、多くのCAR-T細胞研究が用いているものとほぼ同様で、客観的奏効にある程度寄与している可能性はあるが、本研究の患者は登録時に化学療法抵抗性の病変を有していたと考えられることに注意するのが重要である」と指摘している。

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【延期:日時未定】ブルーリボンキャラバン~もっと知ってほしい大腸がんのこと2020 in 東京~

【開催延期のお知らせ】2020年2月18日付で案内いたしました大腸がん疾患啓発に係る市民公開講座 「ブルーリボンキャラバン~もっと知ってほしい大腸がんのこと 2020 in 東京」 につきまして、今般の新型コロナウイルスの感染拡大の状況を鑑み、開催が<延期>されることになりました。今後の開催予定につきましては、随時、下記ホームページ等にてお知らせします。(2月21日)https://www.cancernet.jp/28277************************************************************<元のご案内文> 2020年3月20日(金・祝)に、大腸がん疾患啓発イベント「ブルーリボンキャラバン~もっと知ってほしい大腸がんのこと~」が開催される。同イベントは、大腸がんの診断・検査から外科的治療・薬物療法について広く知ってもらうことを目的に、国際的な大腸がん啓発月間である3月に毎年開催されている。会場は、東京医科歯科大学M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂で、予約申し込み不要・参加費無料。当日は、来場者全員にオリジナル冊子「もっと知ってほしい大腸がんのこと」が配布される。また、ブルーを身に着けて来場した方には粗品のプレゼントも用意されている。 開催概要は以下のとおり。【日時】2020年3月20日(金・祝)《セミナー》 13:00~16:50《ブース展示》12:00~17:00【場所】東京医科歯科大学 M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45【参加費】無料【予定内容】《セミナー》総合司会 中井 美穂氏(アナウンサー/認定NPO法人キャンサーネットジャパン理事)13:00~13:05 開会挨拶 三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 がん先端治療部)13:05~13:20 講演1「15分で学ぶ!大腸がんの基礎知識」  岡崎 聡氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)13:20~13:45 講演2「いろいろ選べる、大腸の検査」 福田 将義氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 光学医療診療部)13:45~14:10 講演3「大腸がんの手術療法~開腹手術からロボット手術まで~」 絹笠 祐介氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 大腸・肛門外科)14:10~14:30 休憩(20分)14:30~14:50 講演4「大腸がん薬物療法の現状」 石川 敏昭氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)14:50~15:05 体験談「家族の立場から」 酒田 亜希氏(大腸がん患者さんのご家族)15:05~15:30 講演5「大腸がん治療における放射線療法の位置づけ」 伊藤 芳紀氏(昭和大学病院 放射線治療科)15:30~15:55 講演6「がんゲノム医療とは? 大腸がんに対して何ができるのか?」 砂川 優氏(聖マリアンナ医科大学病院 腫瘍内科/ゲノム医療推進センター)15:55~16:10 休憩(15分)16:10~16:45 Q&A「Q&Aトークセッション 質問票にお答えします!」 座長:杉原 健一氏(大腸癌研究会 会長/東京医科歯科大学名誉教授)  パネリスト:演者16:45~16:50 閉会挨拶 植竹 宏之氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科)《ブース展示》12:00~17:00会場では、大腸がんの検査・治療に使用する機器などのブース展示を開催します。展示スペースはどなたでもご自由にご観覧いただけます。[出展協力]・東京医科歯科大学 医学部附属病院 がん相談支援センター/がんゲノム診療科・東京医科歯科大学 医学部附属病院 臨床栄養部・東京医科歯科大学 歯学部口腔保健学科・東京都立中央図書館・オリンパスメディカルサイエンス販売株式会社・株式会社メディコン・ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社・アミン株式会社・コヴィディエンジャパン株式会社・アルフレッサファーマ株式会社・公益財団法人日本オストミー協会/若い女性オストメイトの会 ブーケ【問い合わせ先】ブルーリボンキャンペーン事務局 認定NPO法人キャンサーネットジャパン〒113-0034 東京都文京区湯島1-10-2 御茶ノ水K&Kビル 2階TEL:03-5840-6072(平日10~17時)FAX:03-5840-6073MAIL:info@cancernet.jp【共催】東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科/大腸・肛門外科/がん先端治療部/大学院 未来がん医療プロフェッショナル養成プラン【後援】東京医科歯科大学医師会/東京都/文京区/東京都医師会/日本癌治療学会/日本臨床腫瘍学会/大腸癌研究会/公益社団法人 日本オストミー協会/NPO法人ブレイブサークル運営委員会/認定NPO法人西日本がん研究機構詳細はこちら

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ドウベイト配合錠の未治療HIV感染症患者に対する2剤治療は患者負担を軽減させるか

 2020年1月31日、ヴィーブヘルスケア株式会社は、同日発売となった抗ウイルス化学療法剤「ドウベイト配合錠」(一般名:ドルテグラビルナトリウム・ラミブジン)に関するメディアセミナーを開催した。その中で、ヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大学キャンパスの松下 修三氏が、「HIV/AIDS いまどうなっている?」と題して講演を行った。ドウベイト配合錠のメリットは他剤との相互作用の減少 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症に対する、多剤併用療法(ART)は、異なる機序の薬剤を併用してHIVの量を減少させる。これまで未治療のHIV感染症患者には、一般的に、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、プロテアーゼ阻害薬(PI)、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)の中から「キードラッグ」として1剤と、「バックボーン」として核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)2剤とを組み合わせた3剤を併用し、治療を実施していた。 今回発売された「ドウベイト配合錠」は、INSTIのドルテグラビルとNRTIのラミブジンの2剤の配合剤で、1錠のみで治療が可能となる。この治療法は、「ドウベイト配合錠」のみが承認を受けているものであり、ドルテグラビルの抗ウイルス効果や薬剤耐性のつきにくさにより実現された。患者が服用する薬剤を3剤から2剤に減らすことで、副作用や、他剤との相互作用を減少させるというメリットがあると考えられる。ドウベイト配合錠は治療ニーズに合った剤形 松下氏は講演の中で、早期診断、早期治療により、HIVに感染した患者の寿命の低下を防ぐことができると強調した。また同氏は、患者が歳を重ねると他の疾患により、さまざまな薬剤の併用が必要になるケースがあることにも触れ、その際には相互作用が少ない薬剤が適していると述べた。 配合錠という剤形で服薬アドヒアランス向上への寄与が考えられ、薬剤数を減らすことで相互作用の減少が見込まれる、「ドウベイト配合錠」。早期治療や相互作用の減少に寄与する薬剤となるのか、また、HIV治療の新たな一手として患者の負担を軽減させる薬剤となるのか、ますます注目が集まるだろう。

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ASCO- GI 2020レポート 消化器がん

インデックスページへ戻るレポーター紹介今回、2020年1月23日~25日に米国・サンフランシスコにおいて開催されたASCO GI 2020に参加し、すでに現地速報という形で注目演題を報告させていただいているが、音声などが乱れたこともあり、補足とともにそこで取り上げることができなかった演題を報告させていただきます。DAY1 Cancers of the Esophagus and StomachOral SessionRESONANCE試験:The Randomized, Multicenter, Controlled Evaluation of S-1 and Oxaliplatin (SOX) as Neoadjuvant Chemotherapy for Chinese Advanced Gastric Cancer Patients.(abstract #280)Chen L, et al.中国から発表された局所進行胃がんに対する術前S-1/オキサリプラチン併用療法(SOX)の有効性に関する無作為化第III相試験である。本試験はStageII/IIIの切除可能胃がんおよび接合部がんを対象とし、手術+術後SOX療法(AC群:adjuvant group)に対する術前SOX療法+手術+術後補助化学療法(NC群:Neoadjuvant group)の優越性を検証した。AC群は術後補助化学療法としてSOX療法を8サイクル施行し、一方NC群は術前SOX療法を2~4サイクル施行後に手術を行い、術後SOX療法は術前投与を含め計8サイクル施行する。SOX療法は共にS-1(80~120mg/day、day1~14、3週ごと)およびオキサリプラチン(130mg/m2、day1、3週ごと)である。主要評価項目は3年間の無病生存割合(3y-DFS)であった。772例が登録され、各群に386例が割り付けられた。両群間の患者背景に偏りはなく、cT3はNC群:AC群=64%:66%、cT4はNC群:AC群=12%:13%であり、cStageIIはNC群:AC群=39%:42%、cStageIIIはNC群:AC群=61%:58%であった。NC群において術前SOX療法は91.9%において投与完遂し、術後補助化学療法を含め8サイクル投与が53.2%において完遂可能であったのに比し、AC群における8サイクル投与完遂率は47.7%であった。R0切除率はNC群においてAC群よりも有意に良好であり(94.8% vs.83.8%)、NC群では46.4%にダウンステージングを認め、術後病理学的完全奏効(pCR)を23.6%に認めた。コメント中国で実施された局所進行胃がんに対する術前SOX療法の有効性を検証した第III相試験の第1報である。主要評価項目である3y-DFSの結果はいまだ不明であるが、術前SOX療法を施行することによりR0切除率の向上とダウンステージングが示唆された。ただし、抄録とR0切除率や治療奏効割合(pRR)の結果が異なるなどいくつか気になる点があり、評価には最終的な報告を待つ必要があると考える。POSTER SessionAPOLLO-11試験:Feasibility and pathological response of TAS-118 + oxaliplatin as perioperative chemotherapy for patients with locally advanced gastric cancer(abstract #351)Takahari D, et al.進行胃がんに対するTAS-118(S-1+ロイコボリン)とオキサリプラチンの併用療法(TAS-118/L-OHP)は、2019世界消化器がん会議(WCGC)においてS-1/CDDP併用療法との比較第III相試験(SOLAR試験)として公表されているが、今回、局所進行胃がん症例に対する周術期化学療法での忍容性を検討する単群第II相試験であるAPOLLO-11試験(UMIN000024688)の第1報が報告された。本試験はリンパ節転移を伴うcT3-4局所進行胃がんを対象とし、術前治療としてTAS-118(80~120mg/日、day1~7、2週ごと)およびL-OHP(85mg/m2、day1、2週ごと)併用療法を4コース施行後、胃切除+D2郭清が実施され、術後補助化学療法としてTAS-118単剤x12コース(Step1)もしくはTAS-118/L-OHP併用療法x8コース(Step2)が行われた。主要評価項目は(1)術前TAS-118/L-OHP併用療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性と(2)術後補助化学療法の忍容性であり、今回の報告では(1)術前TAS-118/L-OHP併用療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性結果が報告された。45例が登録され、術前TAS-118/L-OHP併用療法4コースが完遂されたのが40例(89%)であり、最終的に43例(96%)において外科的切除が完遂可能であった。患者背景は年齢中央値=64歳、男性=82%、胃原発/接合部がん=89%/11%、腸型/びまん型=69%/31%、cT3/4a=29%/71%、cN1/2/3=56%/38%/7%、臨床病期IIB/IIIA/IIIB/IIIC=24%/36%/33%/7%であった。術前化学療法における各薬剤の相対薬物濃度(RDI)中央値はTAS-118=91.7%、L-OHP=100.0%であった。術前TAS-118/L-OHP併用療法におけるGrade3以上の有害事象として、下痢(17.8%)、好中球減少症(8.9%)、食欲不振(4.4%)、口腔粘膜炎(4.4%)、白血球減少症(2.2%)、悪心(2.2%)、倦怠感(2.2%)を認めた。R0切除率は95.6%(90%CI:86.7~99.2%)であった。術後標本による病理学的治療効果(Grade1b-3)を62.2%(90%CI:48.9~74.3%)に認め、うち病理学的完全奏効割合(pCR)は13.3%であり、ダウンステージが68.9%(90%CI:55.7~80.1%)の症例において得られた。コメント局所進行胃がんに対する術前TAS-118/L-OHP併用療法に関する初めての報告であり、術前化学療法およびその後の胃切除+D2郭清術の忍容性が確認された。今後、術後補助化学療法パートの忍容性結果が報告予定であり、長期予後と合わせてその結果が期待される。EPOC1706試験:An open label phase 2 study of lenvatinib plus pembrolizumab in patients with advanced gastric cancer(abstract #374)Kawazoe A, et al.KN-061試験(胃がん2次治療)やKN-062試験(胃がん1次治療)の結果よりPD-L1陽性胃がんに対するペムブロリズマブ単剤療法の奏効割合は約15%と報告されている。一方、マルチキナーゼ阻害薬であるレンバチニブは腫瘍関連マクロファージを減少させ、CD8陽性T細胞の浸潤を増強することによる抗PD-1抗体の抗腫瘍効果増強が報告されており、進行胃がんに対するレンバチニブ/ペムブロリズマブ併用療法の単群第II相試験であるEPOC1706試験(NCT03609359)の結果が報告された。本試験は進行胃がんを対象とし、レンバチニブ(20mg/日内服)とペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)の併用療法を病勢進行や毒性などの理由による治療中止まで継続するスケジュールで実施された。主要評価項目は担当医判定による全奏効割合(ORR)である。29例が登録され、患者背景は年齢中央値=70歳、男性=90%、腸型/びまん型=52/48%、初回治療/2次治療=48/52%、HER2陽性=17%、dMMR/pMMR=7/93%、EBV陽性=3%、PD-L1 CPS≧1/<1=66/34%であった。腫瘍縮小効果は非常に良好であり、主要評価項目である担当医判定によるORRはCR1例を含む69%(95%CI:48~85%)、病勢制御割合(DCR)は100%(95%CI:88~100%)であった。無増悪生存期間中央値は7.1ヵ月(95%CI:4.2~10.0)、生存期間中央値には至っていなかった。レンバチニブによる有害事象としてGrade3以上の高血圧(38%)、蛋白尿(17%)を認め、ほとんどの症例においてレンバチニブの1段階以上の減量が必要であったが、減量により毒性はマネジメント可能であった。コメント進行胃がんに対する、非常に切れ味良好な腫瘍縮小効果を認める新規併用療法である一方、immatureではあるがその効果の継続が治療継続期間中央値6.9ヵ月(範囲:2.8~12.0)、PFS 7.1ヵ月と限られており、今後の追加報告が期待される。ATTRACTION-2試験 3年フォローアップ:A phase 3 Study of Nivolumab in Previously Treated Advanced Gastric or Gastric Esophageal Junction Cancer(abstract #383)Chen LT, et al.2レジメン以上の化学療法に対して不応の切除不能進行再発胃がん・接合部がんを対象にニボルマブの有効性をプラセボ比較で検証した第III相試験であるATTRACTION-2試験の3年追跡結果報告である。2017年のLancet誌報告時のニボルマブ投与群の生存期間中央値(mOS)は5.26ヵ月、1年生存割合(1y-OS)は26%であり、2018年のESMOで発表された2年追跡結果における2y-OSは10.6%、2年無増悪生存割合(2y-PFS)は3.8%であった。今回新たに1年間の追加観察期間を設けた報告において、ニボルマブ群の3y-OSは5.6%、3y-PFSは2.4%であった。ニボルマブ群の15例とプラセボ群の3例が3年以上の長期生存を認めており、プラセボ群の3例のうち2例は病勢進行後にニボルマブによる加療を受けていた。ニボルマブ群のうち、最良効果(BOR:best overall response)がCRもしくはPRであった32例(9.7%)の生存期間中央値は26.88ヵ月であり、1y-OSは87.1%、2y-OSは61.3%、3y-OSは35.5%であった。BORがSDであった76例(23%)の生存期間中央値は8.87ヵ月であり、1y-OSは36.1%、2y-OSは7.4%、3y-OSは3.0%であった。ニボルマブ群のうち55.5%の症例において免疫関連の有害事象を認め、これら免疫関連有害事象を認めた症例のmOSは7.95ヵ月であり、認めなかった症例のmOSは3.81ヵ月であった(HR=0.49)。コメント今回、3年の観察期間を設けた報告によりニボルマブ投与によって3年以上の長期生存を得られる症例が5%程度いることが示唆され、またBORがCRもしくはPRとなりえる約10%程度の症例においては、約3分の1において3年以上の生存が得られる可能性が示唆された。毒性に関して、ほとんどの場合、既報のごとくニボルマブによる治療開始後3ヵ月以内に発生していたが、なかには治療開始後2年以上の経過の後に免疫関連有害事象として肺障害や腎障害が出現したケースも認め、ニボルマブ投与に当たってはその投与終了後にも免疫関連有害事象の出現に関して引き続き注意が必要であることが示唆された。MSI status in > 18,000 Japanese pts:Nationwide large-scale investigation of microsatellite instability status in more than 18,000 patients with various advanced solid cancers.(abstract #803)Akagi K, et al.本邦におけるMSI-Hの頻度に関して、2018年12月~2019年11月の1年間にMSI検査キット(FALCO)による解析が実施された2万5,789例を対象に検討。2万5,563例(99.1%)で解析可能であり、うち959例(3.75%)がMSI-Hであった。MSI-Hは10~20代の若年者(7.43%)および80代以上の超高齢者(5.77%)において認める傾向が強く、また既報のごとく早期病期(StageI~III)に比べ進行期(StageIV)においてその頻度は少なかった(StageI~III:StageIV=6.02%:3.05%)。がん種別のMSI-Hの頻度は子宮体がん(17.00%)、小腸がん(9.23%)、胃がん(6.73%)、十二指腸がん(5.79%)、大腸がん(3.83%)、NET/NEC(3.60%)、前立腺がん(3.04%)、胆管がん(2.26%)、胆嚢がん(1.55%)、肝がん(1.15%)、食道がん(1.00%)、膵がん(0.74%)であった。コメントMSI-H腫瘍に関して、既報と照らし合わせても最も多くの対象で検討した非常に貴重な報告であり、日本人MSI-H腫瘍の状況を反映していると考える。DAY2 Cancers of the Pancreas, Small Bowel, and Hepatobiliary TractOral SessionPROs from IMbrave150試験:Patient-reported Outcomes From the Phase 3 IMbrave150 Trial of Atezolizumab + Bevacizumab Versus Sorafenib as First-line Treatment for Patients With Unresectable Hepatocellular Carcinoma.(abstract #476)Galle PR, et al.切除不能肝細胞がんの1次治療例を対象に、標準治療であるソラフェニブに対するアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)/ベバシズマブ(抗VEGF抗体)併用療法の優越性がESMO-Asia 2019において報告されており、主要評価項目である生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の両エンドポイントにおいてアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法が有意に良好であった(OS-HR:0.58、p=0.0006、PFS-HR:0.59、p<0.0001)。今回、副次評価項目である患者報告(PRO:patient-reported outcomes)によるQOL評価、身体機能評価、症状評価(疲労感、疼痛、食欲低下、下痢、黄疸)の結果が発表された。評価はEORTC QLQ-C30およびQLQ-HCC18により行われ、治療中は3週ごとに、治療中止後は3ヵ月ごとに1年間実施された。92%以上の症例においてアンケートが回収可能であり、QOL、身体機能、症状の悪化までの期間(TTD:time to deterioration)はいずれもアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法においてソラフェニブより良好であった。コメント切除不能肝細胞がんに対する1次化学療法において、新たな標準療法であるアテゾリズマブ/ベバシズマブ併用療法のソラフェニブに対する有効性および安全性が報告された。本邦においても早期の臨床導入に期待したい。Poster SessionStudy117:A Phase 1b Study of Lenvatinib Plus Nivolumab in Patients With Unresectable Hepatocellular Carcinoma(abstract #513)Kudo M, et al.切除不能肝臓がんに対する標準治療の一つであるレンバチニブと、ソラフェニブ治療後の治療選択肢であるニボルマブの併用療法の至適投与量を検討した第Ib相試験である。本試験はBCLC(Barcelona Clinic Liver Cancer) Stage B(肝動脈化学塞栓療法が不応)またはStage C、Child-Pugh分類Aの切除不能肝臓がん症例を対象に、レンバチニブ(12mgもしくは8mg/day)+ニボルマブ(240mg、2週ごと)併用療法を投与した。本試験はPart1とPart2で構成され、Part1では用量制限毒性(DLT:dose-limiting toxicities)を評価目的に6例登録し、Part2はexpansion cohortとして全身化学療法歴のない切除不能肝臓がん患者が24例登録された。主要評価項目は忍容性および併用療法の安全性である。患者背景は年齢中央値=70歳、男性=80%、BCLC Stage B/C=57%/43%、Child-Pugh 5/6=77%/23%、B型肝炎/C型肝炎/アルコール性/不明/その他=20%/20%/30%/23%/6.7%、肝外病変あり/なし=43%/57%である。レンバチニブによる毒性中止を2例(6.7%)に認め、ニボルマブによる毒性中止を4例(13.3%)に認めた。頻度の高い有害事象として手足症候群(60%)、発声障害(53%)、食欲低下(47%)、下痢(47%)、蛋白尿(40%)を認めたが、Grade3以上の有害事象は手足症候群(3.3%)、発声障害(3.3%)、食欲低下(3.3%)、下痢(3.3%)、蛋白尿(6.7%)であった。担当医評価による腫瘍縮小割合(ORR)は76.7%であり、Part2登録例における腫瘍縮小が得られるまでの期間は1.87ヵ月であり、無増悪生存期間(PFS)中央値は7.39ヵ月であった。コメント切除不能肝臓がんの治療に関して、マルチキナーゼ阻害薬(レゴラフェニブ、レンバチニブ)と免疫check point阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブ)の併用療法が検討されており、本学会においてもほかにレゴラフェニブ/ペムブロリズマブ併用療法に関する発表があった(#564)。その中でもレンバチニブ/ペムブロリズマブ併用療法に関しては、AACR2019で発表された第Ib相試験であるKEYNOTE-524/Study 116試験(#CT061/18)の中間解析結果に基づき、切除不能肝臓がんの1次治療としてFDAよりBreakthrough Therapy指定を受けており、今後の追加報告が期待される。PACS-1 study:A Multicenter Clinical Randomized Phase II Study of Investigating Duration of Adjuvant Chemotherapy with S-1 (6 versus 12 months) for Patients with Resected Pancreatic Cancer. (abstract #669)Yamashita Y, et al.本邦における膵がん術後補助化学療法としてのS-1至適投与期間を検討した無作為化第II相試験。本試験は膵がん切除後例(T1-4、N0-1、M0)を対象とし、術後補助化学療法としてS-1内服を半年間投与する群と1年間投与する群に1:1の割合で割り付けされた。主要評価項目は2年間の生存割合(2y-OS)である。両群間の患者背景に偏りはなかった。術後S-1半年投与群は64.7%において治療完遂が可能であったが、1年間投与群においては44.0%が完遂可能であった。生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)において、統計学的有意差はないものの術後S-1投与期間は半年間群のほうが1年間群より良好な傾向であった。(2年OS:半年間群 vs.1年間=71% vs.65% [HR=1.239、 p=0.3776 ])、( 2年DFS:半年間群 vs.1年間=57% vs.51%[HR=1.182、p=0.3952]) コメント膵がん術後補助化学療法としてのS-1至適投与期間は6ヵ月と考える。DAY3 Cancers of the Colon, Rectum, and AnusOral SessionJCOG1007(iPACS):A randomized phase III trial comparing primary tumor resection plus chemotherapy with chemotherapy alone in incurable stage IV colorectal cancer:JCOG1007 study(abstract #7)Kanemitsu Y, et al.切除不能StageIV大腸がんのうち無症状症例に対して、原発切除を化学療法に先行して行うことの優越性を検証した無作為化第III相試験である。本試験は腫瘍による狭窄などの症状を有さず、待機手術としての原発切除を予定できる治癒切除不能のStageIV大腸がん初回治療例を対象とし、標準治療であるA群:オキサリプラチンベース(FOLFOX/CapeOX)+ベバシズマブ併用療法群とB群:原発切除後にオキサリプラチンベース(FOLFOX/CapeOX)+ベバシズマブ併用療法を受ける群に無作為割り付けされた。主要評価項目は全生存期間である。当初770例を目標に試験が開始されたが、症例登録が伸びなかったために統計設定が見直され280例を登録目標とされたが、160例登録時の初回中間解析の結果、試験群であるB群の生存曲線が対照群であるA群を下回っていたため途中中止となり今回結果が発表された。両群間の患者背景に偏りはなかった。主要評価項目である全生存期間においてA群:B群=26.7ヵ月:25.9ヵ月(HR=1.10、one-sided p=0.69)であり、B群の優越性は認めなかった。副次評価項目であるPFSはA群:B群=12.1ヵ月:10.4ヵ月(HR=1.08)であり、原発切除先行群(B群)において術後死亡例を3例(4%)に認めた。コメント今回の結果より、腫瘍随伴症状を有さないStageIV大腸がんに対して、一律に原発切除を化学療法に先行して行うことは推奨されず、同症例に対しては化学療法の先行を検討すべきと考える。同様の対象に対して、欧州において無作為化比較試験(SYNCHRONOUS試験-ISRCTN30964555、CAIRO4試験)が進行中であり、今後これらの報告にも注意が必要と考える。BEACON CRC QoL:Encorafenib plus cetuximab with or without binimetinib for BRAF V600E-mutant metastatic colorectal cancer:Quality-of-life results from a randomized, three-arm, phase III study versus the choice of either irinotecan or FOLFIRI plus cetuximab(abstract #8)Kopetz S, et al.治療歴を有するBRAF V600E遺伝子変異陽性進行再発大腸がん例に対する治療としてMEK阻害薬であるビニメチニブ、BRAF阻害薬であるエンコラフェニブおよび抗EGFR抗体であるセツキシマブの3剤併用療法と、エンコラフェニブとセツキシマブの2剤併用療法、セツキシマブと化学療法の併用(対照群)を比較する第III相試験であるBEACON CRC試験における患者報告によるQOL評価と最新の生存データが発表された。本試験の結果はすでに2019年9月にNEJM誌において報告されており、全生存期間の中央値は対照群で5.4ヵ月、3剤併用群で9.0ヵ月(HR=0.52、pレポーター紹介インデックスページへ戻る

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ROS1陽性肺がんの血栓塞栓イベント/Lung Cancer

 オーストラリアの6施設がROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の静脈および動脈血栓塞栓症(TE)の発生率、転帰に関するプール解析を行った。Lung Cancer誌オンライン版2020年1月22日号の掲載報告。 主な結果は以下のとおり。・登録患者42例の患者のうち、20例(48%)がTEを経験した。・TEの内訳は、動脈塞栓症1例(2%)、肺塞栓症13例(31%)、深部静脈血栓症12例(29%)であった。・TE患者のうち、6例(30%)が複数のイベントを経験した。・TEは診断期前・中・後いずれの時期にも発現した。・TEはまた治療戦略に関係なく発生した。・TE合併患者の全生存期間中央値は、TE合併患者21.3ヵ月、TE非合併患者では28.8ヵ月であった(HR:1.16、95%CI:0.43~3.15)。・化学療法1次治療群の全奏効率(ORR)は、TE合併患者で50%、TE非合併患者では44%であった。・標的治療薬1次治療群のORRは、TE合併患者で67%、TE非合併患者で50%であった。 ROS1融合遺伝子陽性肺がんでは、治療戦略に関係なく、診断期間を超えてTEリスクが持続的することがリアルワールドデータで示された。著者らは、ROS1融合遺伝子陽性肺がんでは、1次血栓予防の検討が推奨されると述べている。

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トラスツズマブ エムタンシン既治療のHER2陽性転移乳がんに対するtrastuzumab deruxtecan(DESTINY-Breast01):単アームの第II相試験で奏効率は60.9%(解説:下村 昭彦 氏)-1184

 本試験は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)既治療のHER2陽性乳がんにおけるtrastuzumab deruxtecan(DS-8201a, T-DXd)の有効性を検討した単アーム第II相試験である。主要評価項目である独立中央判定委員会による奏効率(objective response rate:ORR)は60.9%と非常に高い効果を示した。病勢制御率(disease control rate:DCR)は97.3%、6ヵ月以上の臨床的有用率(clinical benefit rate:CBR)は76.1%であった。 ご存じのように、2018年のASCOで第I相試験の拡大コホートの結果が発表され、HER2陽性乳がんにおいて奏効率が54.5%、病勢制御率が93.9%と非常に高い効果が報告され、治療効果が期待されていた薬剤の1つである。T-DXdは抗HER2抗体であるトラスツズマブにトポイソメラーゼ阻害剤であるexatecanの誘導体を結合した新しい抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)製剤である。1抗体当たりおよそ8分子の殺細胞性薬剤が結合しており、高比率に結合されている。 HER2陽性転移乳がんの標準治療は、1次治療でペルツズマブ+トラスツズマブ+タキサン療法、2次治療でT-DM1が行われていることが多い。3次治療以降はトラスツズマブ+化学療法もしくはラパチニブ+化学療法などが行われることが多く、治療効果は限定的であった。こういった日本を含む世界の現状から、T-DXdは非常に期待されている薬剤であり、2019年12月には米国食品医薬品安全局による承認を受けている。国内でもすでに承認申請が行われており、早期の承認が待たれている。また、T-DXdは国内企業が開発しており、学会発表や論文の筆頭・共著に国内の研究者が多数参加していることが特徴である。 一方で注意も必要である。Grade3以上の有害事象は50%以上の症例で確認されている。血液毒性や悪心嘔吐が頻度の高い有害事象であるが、13.6%で薬剤性肺障害が報告されている(Grade3は1例のみ)。薬剤の特性として肺障害が起きやすいことは指摘されていたが、実際に投与された症例でも薬剤性肺障害の頻度が高いことが示されている。治療関連死のリスクもあるため、今後実臨床下で使用する際には十分薬物療法の経験を積んだ専門医が治療に関わる必要があるだろう。 現在、T-DM1後の症例を対象として抗HER2薬+化学療法と直接比較を行う第III相試験、T-DM1との直接比較を行う第III相試験が行われており、目を離せない薬剤である。

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化学療法誘発性悪心・嘔吐にオランザピン5mgは有効か(J-FORCE)/Lancet Oncol

 オランザピンは、化学療法誘発性悪心・嘔吐にアプレピタント、パロノセトロン、デキサメタゾンの3剤からなる標準制吐療法への追加が推奨されるが、その用量は10mgである。オランザピン5mgは、複数の第II相試験で10mgと同等の活性と良好な安全性プロファイルが示されている。国立がん研究センター中央病院の橋本 浩伸氏らは、シスプラチンベース化学療法による悪心・嘔吐の予防における、オランザピン5mg追加の有効性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相J-FORCE試験を実施した。Lancet Oncology誌オンライン版2019年12月11日号掲載の報告。 J-FORCE試験は国内26施設で行われた。対象は、シスプラチン(50mg/m2以上)の初回治療を受ける、造血器悪性腫瘍を除く悪性腫瘍患者。年齢は20~75歳。ECOG PSは0〜2。対象患者は、アプレピタント、パロノセトロン、デキサメタゾンに加え、オランザピン5mg/日またはプラセボを投与する群に1対1に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、完全奏効(遅延期[24~120時間]において嘔吐がなく、レスキュー薬を使用しない)患者の割合とした。 主な結果は以下のとおり。・2017年2月9日~2018年7月13日に、710例の患者が登録された。・356例がオランザピン5mg群に、354例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。・完全奏効患者の割合は、オランザピン5mg群79%(354例中280例)、プラセボ群66%(351例中231例)と、オランザピン5mg群で有意に多かった(p<0.0001)。・オランザピン群で、治療に関連したGrade3の便秘、Grade3の傾眠がそれぞれ1例に発現した。 筆者らは、「標準制吐療法であるアプレピタント、パロノセトロン、デキサメタゾンへのオランザピン5mgの追加は、シスプラチンベース化学療法患者の新たな標準制吐療法となりうる」と述べている。

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Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 医療関連感染症編

第1回 医療関連感染症診療の原則と基本第2回 カテーテル関連血流感染症第3回 カテーテル関連尿路感染症第4回 院内肺炎第5回 手術部位感染第6回 クロストリジウム・ディフィシル感染症第7回 免疫不全と感染症第8回 発熱性好中球減少症第9回 細胞性免疫不全と呼吸器感染 あの医療者必携のベストセラー書籍「感染症プラチナマニュアル」のレクチャー版!岡秀昭氏による大人気番組「感染症プラチナレクチャー」の第2弾は医療関連感染症編です。医療関連感染症は、どの施設でも避けることのできない感染症であり、その対策にはすべての医療者が取り組まなくてはなりません。この番組では、医療関連感染症診療の原則と、その診断・治療・予防について臨床の現場で必要なポイントに絞って岡秀昭氏が解説していきます。2019年4月の診療報酬改定で、抗菌薬適正使用を推進するため、入院患者を対象とした「抗菌薬適正使用支援加算」が新設されています。その中心を担うAST(抗菌薬適正使用推進チーム)やICTはもちろん、その他の医療者の教育ツールとしてもご活用ください。さあ、ぜひ「感染症プラチナマニュアル2019」を片手に本番組をご覧ください。※書籍「感染症プラチナマニュアル」はメディカル・サイエンス・インターナショナルより刊行されています。該当書籍は以下でご確認ください。amazon購入リンクはこちら ↓【感染症プラチナマニュアル2019】第1回 医療関連感染症診療の原則と基本初回は、医療関連感染症診療の原則と基本について解説します。基本的に原則は市中感染症編と“いっしょ”です。この番組を見る前にDr.岡の感染症プラチナレクチャー市中感染症編 第1回「感染症診療の8大原則」をご覧いただくとより理解が深まります。ぜひご覧ください。入院患者の感染症は鑑別診断が限られるため、一つひとつ確認しながら進めていけば、診断は比較的容易です。まずは、その鑑別診断について、考えていきましょう。第2回 カテーテル関連血流感染症今回のテーマはカテーテル関連血流感染症(CRBSI:catheter related blood stream infection)です。重要なことは、医療関連感染のCRBSIは「カテーテル感染」ではなく、「血流感染」であるということです。そのことをしっかりと頭に入れておきましょう。番組では、CRBSIの定義、診断、治療そして予防について詳しく解説します。第3回 カテーテル関連尿路感染症今回のテーマはカテーテル関連尿路感染症(CAUTI:Catheter-associated Urinary Tract Infection)です。院内感染が疑われた患者さんに膿尿・細菌尿がみられたら尿路感染症と診断していませんか?とくに医療関連感染で起こる尿路感染症は、特異的な症状を呈さないことも多く、Dr.岡でさえ、悩みながら、自問しながら、診断する大変難しい感染症です。その感染症にどう立ち向かうか!明快なレクチャーでしっかりと確認してください。第4回 院内肺炎今回のテーマは院内肺炎(HAP:hospital-acquired pneumonia)です。医療関連感染である院内肺炎は診断が非常に難しく、また、死亡率が高く、予後の悪い疾患です。その中で、どのように診断をつけ、治療を行っていくのか、診断の指針と治療戦略を明快かつ、詳細に解説します。また、医療ケア関連肺炎(HCAP:Healthcare-associated pneumonia)に関するDr.岡の考えについてもご説明します。第5回 手術部位感染今回のテーマは手術部位感染(SSI:Surgical Site Infection)です。手術部位感染の診断は簡単でしょうか?確かに、手術創の感染であれば、見た目ですぐに感染を判断することができますが、実は「深い」感染はかなり診断が難しく、手術部位や手術の種類によって対応も異なります。もちろん、手術を行った科の医師が対応すべきことですが、基本的なことについて理解しておきましょう。第6回 クロストリジウム・ディフィシル感染症今回はクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI:Clostridium Difficile Infection)です。院内発症の感染性腸炎はほとんどがCDIであり、それ以外だと非感染性(薬剤、経管栄養など)になります。CDIの診断と抗菌薬治療、そして感染予防について、明快にレクチャーします。とくに抗菌薬選択に関しては、アメリカのガイドラインだけに頼らない、岡秀昭先生の経験を基にした臨床での対応方法をお教えします。第7回 免疫不全と感染症免疫不全だからといって、ひとくくりにして、一律に広域抗菌薬を開始したり、やみくもにβ-Dグルカンやアスペルギルス抗原をリスクのない患者で測定するようなプラクティスをしていませんか?本当に重要なのは、まずは、どのような免疫不全かを判断すること。そのうえで、起こりうる病態、病原微生物を考えていきましょう。第8回 発熱性好中球減少症今回は発熱性好中球減少症(FN: Febrile Neutropenia)についてです。発熱性好中球減少症は診断名ではなく、好中球が減少しているときにおこる発熱の状態のことです。白血病やがんの化学療法中に起こることがほとんどです。FNは感染症エマージェンシーの疾患ですので、原因微生物や、臓器を特定できなくても、経験的治療を開始します。どの抗菌薬で治療を開始すべきか、またどのように診断をつけていくのか、治療効果の判断は?そして、また、その治療過程についてなど、岡秀昭先生の経験を交え、詳しく解説します。第9回 細胞性免疫不全と呼吸器感染最終回!今回は細胞性免疫不全者の呼吸器感染(肺炎)について、解説します。細胞性免疫不全者の呼吸器感染は、多様な微生物が原因となりうるため、安易に経験的治療を行わず、まずは微生物のターゲットを絞ることが重要となります。番組では、原因となる微生物の分類、そして、臨床像やCT画像で微生物を鑑別するポイントや、必要となる検査など、臨床で必要となる知識をぎゅっとまとめて、しっかりとお教えします。

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乳がん治療、ガイドラインに従わないときの生存率

 乳がん治療において、ガイドラインで推奨される治療を受け入れない乳がん患者もいる。もしガイドラインに従わない場合、生存率にどの程度影響するのだろうか。今回、シンガポールゲノム研究所のPeh Joo Ho氏らは、大規模な乳がん患者集団において推奨治療の非順守の予測因子および生存率への影響を検討した。その結果、ガイドラインで推奨された手術や放射線療法を順守しない場合、全生存が2倍以上悪化し、ガイドラインによる適切な治療に従うことの重要性が強調された。また、高齢患者でも同様の結果が得られ、推奨治療により恩恵を受ける可能性が示唆された。Scientific Reports誌2020年1月28日号に掲載。 本研究の対象は、2005~15年にシンガポールで乳がんと診断された患者のうち、転移のない乳がん患者1万9,241例で、3,158例(16%)が診断後10年以内に死亡した(生存期間中央値:5.8年)。シンガポールの公立病院では、一般にNCCNガイドラインとザンクトガレン2005コンセンサスに従っている。ロジスティック回帰を用いた治療非順守と因子との関連、パラメトリック生存モデルフレームワークを用いた治療非順守が全生存に及ぼす影響を検討した。 主な結果は以下のとおり。・治療非順守率が最も高かった治療は化学療法(18%)であった。・化学療法、放射線療法、内分泌療法が順守されない予測因子は、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移、サブタイプ(放射線療法を除く)であった。・手術拒否に関連する因子は、年齢とサブタイプであった。・治療非順守は、手術(ハザード比[HR]:2.26、95%信頼区間[CI]:1.80~2.83)、化学療法(HR:1.25、95%CI:1.11~1.41)、放射線療法(HR:2.28、95%CI:1.94~2.69)、内分泌療法(HR:1.70、95%CI:1.41~2.04)において全生存が悪化した。・ガイドラインが通常適用されない高齢患者でも同様の結果が得られた。

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進行非小細胞肺がんへの初回治療としての免疫治療薬併用療法について(解説:小林英夫氏)-1176

 2018年のノーベル医学賞を受賞された本庶 佑博士が発信されたがん免疫療法は、実地臨床でも急速に普及している。肺がん治療の柱は、手術療法、化学療法(殺細胞性抗悪性腫瘍薬)、放射線療法、さらに1990年代以降に加わった分子標的治療薬の4者が基本である。この分子標的治療薬の中でも腫瘍細胞が宿主免疫機構から逃避する機序を阻害する、そして本来有している免疫応答機能を回復・保持する治療薬が免疫チェックポイント阻害薬(がん免疫療法)である。治療の4本柱をどのように使い分けるか、またどう組み合わせれば治療効果をより高めるかについて、これまでもそして現在も精力的な検討がなされている。 本論文はがん免疫療法薬の中から、抗PD-1(programmed cell death 1、プログラム細胞死1)抗体であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)と、抗CTLA-4(cytotoxic T lymphocyte antigen 4、細胞傷害性Tリンパ球抗原4)抗体であるイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用効果を検討している。両者の併用は他の悪性腫瘍に有効であることがすでに報告されている。結果は、進行非小細胞肺がんの初回治療としてニボルマブ+イピリムマブ併用群は、白金製剤を主とした化学療法群よりもOS(overall survival、全生存率)が優れることが確認された。ただ、本論文は大規模研究(CheckMate-227)のpart 1報告であるため、設定した対象群や方法のすべてが結果章で記載されておらず、やや消化不良な側面もある。また本報告の要約は、「ニボルマブ+低用量イピリムマブ、NSCLCのOS有意に改善(CheckMate-227)/ESMO2019」(2019年10月22日配信)でもう少し詳しく掲載されている。 本結果の最大の注目点はPD-L1発現レベルの多寡を問わず、化学療法よりも免疫療法併用群が臨床的に意味のあるOS改善を示したことにある。すなわち、有効性を期待できる症例が大きく増加する可能性が示唆されたことが大きな成果であろう。そして、免疫療法薬同士にとどまらず、他の治療法との組み合わせも含めて肺がん治療はまだまだ発展が期待できる。 ちなみに、本研究には日本のデータも含まれているが、現時点では本邦におけるヤーボイは肺がんへの適応は未取得であり、これからの追加取得が待ち遠しい。

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卵巣がん初回治療後の維持療法でオラパリブ+ベバシズマブはPFSを延長も、日本の臨床現場への適応は一部施設に限るか(解説:前田裕斗氏)-1173

 進行期IIIまたはIVの進行卵巣がんにおける、初回治療(腫瘍減量術などの手術+プラチナ・タキサン[TC]・ベバシズマブ[以後Bevと表記])後の維持療法について、Bev単独とBev+オラパリブ(以後Olaと表記)を比較したRCTである。結果はprogression-free survival(無増悪生存期間、PFS)についてBev+Ola群で有意に長いという結果が出た(中央値、22.9ヵ月vs.16.6ヵ月)。 現在日本での進行卵巣がん初回治療における化学療法としては、dose-dense TC(TC療法のやり方の1つ)またはTC+Bevが行われることが多い。一方、初回治療後に行う維持化学療法には従来はBevという選択肢しかなかったが、SOLO1試験においてプラチナ製剤使用後にBRCA遺伝子に異常がある群でOlaのPFS改善効果が非常に高かったことから、日本でも初回治療の際にBRCA遺伝子変異を調べ、陽性の場合TC→Olaを行う施設も増えてきている。つまり、維持療法まで視野に入れると現状日本ではTC+Bev→BevまたはTC→Olaの2つの選択肢があることになる。 こうした日本の現状を考えると、今回のPAOLA-1試験はTC+Bevに対するOlaの上乗せ効果をみたものであり、TC→Olaを行った群がないことから日本の臨床現場において今回の結果がどのように利用されるかは未知数である。少なくともTC+Bev→Bevを採用している施設ではOlaを上乗せする選択肢を検討することになるだろう。その場合の注意点として、あくまで延長しているのはPFSであり、Overall Survival(全生存期間、OS)でないこと、そして新規薬剤の上乗せによくある話だが、医療費がかかることは考慮する必要がある。 また、BRCA変異が陰性でhomologous-recombination deficiency(相同組み換え修復異常、HRD)も陰性またはステータス不明の群ではBev+OlaのPFS延長効果は認められなかった。HRDについては臨床現場ベースで使用にたえうる検査は少なくとも日本では存在せず、一般に利用不可能であることを考えると、HRDの日本における頻度を調査する研究か、実際に日本でTC+Bev→Bev+Olaの効果をみた研究が待たれる。PARP阻害剤には今回のOlaparibの他にも多様な薬剤が存在するほか、免疫チェックポイント阻害剤を用いた臨床試験も進んでおり、薬剤によってはHRD陰性のサブグループでも疾患増悪または死亡リスクが有意に低くなるという結果も報告されている。上記のように卵巣癌の化学療法は現在研究が進むホットな分野である一方、OSの延長効果はなく、副作用や、医療費の問題があり、バランスをとることも求められる。今後も展開に目が離せない領域と言えるだろう。

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骨髄異形成症候群〔MDS : myelodysplastic syndromes〕

1 疾患概要■ 概念・定義骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes: MDS)は、造血幹細胞のクローン性の後天的な疾患で、造血細胞(リンパ球を除く)の異形成と呼ばれる形態異常を特徴とする。末梢血ではさまざまな程度の血球減少を来すが、(1)1血球系統以上に10%以上の異形成像が見られる、(2)特徴的な染色体異常を有する、(3)骨髄での芽球比率は20%未満の、いずれかあるいは1つ以上を認めるものと定義される。■ 疫学1)MDSの発症頻度わが国では発病者数は年間に10万人あたり3~10人とされ、患者数は平成10年の厚生労働省の特発性造血障害調査研究班の報告では7,100人で、年齢の中央値は欧米と比較して若干若年層に多く、64歳である。男女比は1.9:1。2)MDSの病型MDSは一般的に骨髄の芽球比率および異形成により分類される(表1、変更点は後述)。わが国での特徴的なところは「単独del(5q)の骨髄異形成症候群」および「環状鉄芽球を伴う不応性貧血」とWHO分類で定義されている病型が欧米に比べ少ない点である。画像を拡大する■ 病因最近までMDSの原因は不明とされてきたが、ゲノム解析により病型に偏った遺伝子変化が報告されつつあり、たとえば「環状鉄芽球を伴う不応性貧血」におけるSF3B1やMDSの白血病化に伴うSETBP1の変化が知られつつある。一般的には表2に示すように、エピジェネテイックな変化に関係する遺伝子変化が、MDS発症と深くかかわっていることが知られつつある。また、染色体変化は予後を推定する重要な因子である。画像を拡大する■ 症状血球減少による症状が中心であり、貧血はほぼ必発で、48%は汎血球減少、18%が貧血+血小板減少、17%が貧血+白血球減少、13%は貧血のみである。血球減少により、出血傾向(血小板減少)、易感染(好中球減少)、貧血症状(赤血球減少)がさまざまな程度でみられる。■ 分類MDSの分類は骨髄での芽球比率、環状鉄芽球の頻度および異形成が多血球系統に及ぶか否かにより分類されるが、異形成の頻度は血液専門家によっても判読が異なることがある。単独del(5q)の骨髄異形成症候群は5q-染色体異常による。従来の分類からの名称変更は以下の通りである。従来のWHO-2008からの名称変更点は、RCUDはMDS-SLD(MDS with single lineage dysplasia)、RCMDはMDS-MLD(MDS with multi-lineage dysplasia)、RAEBはMDS-EB(MDS with excess blasts)に変更され、暫定病型として小児不応性血球減少症が設定された。これにより、2008年WHO分類のRCUDの一部はMDS-RSとして判定される例がある(表1、3)。これらのMDS分類とは別に、放射線治療や他の悪性腫瘍などに対する抗がん剤投与後にみられるものは治療関連骨髄系腫瘍として急性骨髄性白血病の分類として扱われる。画像を拡大する■ 予後予後は減少血球数、骨髄での芽球比率、染色体異常の様式による(表4)。なお、簡便にMDS FoundationのHP(http://www.mds-foundation.org/ipss-r-calculator/)にて計算できる。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)血球減少、とくに貧血がみられた場合にはMDSも念頭に置く。通常、軽度の高色素性大球性貧血を呈し、さまざまな頻度で好中球減少や血小板減少を伴う。MDSが疑われたならば、骨髄穿刺にて血球の異形成像および芽球比率を検討し病型診断を行うとともに(表1)、染色体異常を調べ、予後を検討する。さらに、MDSの診断基準を満たさない血球減少については最近提唱されている分類も参考にする(表5)。従来用いられていたIPSSでは、治療選択に重要な役割を持つことを期待して考案されたが、2012年に提唱されたIPSS-R(表4)では、個々の患者における予後がより詳細に検討できる。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療は従来のIPSSによる大まかな治療方針が推奨される。IPSSのLowおよびIntermediate-1は低リスクMDSとして、Intermediate-2およびHighは高リスクMDSの治療が行われる(図1、2)。低リスクMDSにおける造血幹細胞移植術は、反復する感染症や輸血依存の患者が対象となる。治療は従来のIPSSによる大まかな治療方針が推奨される。IPSSのLowおよびIntermediate-1、IPSS-RではVery Low、LowおよびIntermediateは低リスクMDSとして、高リスクMDSはIPSSでIntermediate-2およびHigh、IPSS-RではIntermediate、High、Very Highの分類に基づき治療が行われる(図1、2)。IPSS-R Intermediate に分類された患者については、年齢、performance status、血清フェリチン値、血清LDH値などの追加の予後因子を評価することにより、2つのリスク群のどちらで管理してもよい。低リスクMDSにおける造血幹細胞移植術は、反復する感染症や輸血依存の患者が対象となる。■ 低リスクMDSに対する治療(図1)この群では5q-染色体異常がみられたならば免疫調整薬であるレナリドミド(商品名:レブラミド)が第1選択となる。単独の5q-MDSに対しては貧血の改善は90%以上が期待され、さらに一部の患者では染色体異常の消失を含む寛解が望める。血清エリスロポエチン濃度が500mU/mL 未満の患者ではエリスロポエチン投与も効果が期待される。また、免疫抑制剤のシクロスポリンの有効性も確認されている(保険適用外)。これらの治療に無効で輸血依存の場合は脱メチル化薬であるアザシチジン(同:ビダーザ)も考慮される。低リスク患者の治療目標は輸血依存からの回避である。画像を拡大する■ 高リスクMDSに対する治療(図2)この群の治療では、造血幹細胞移植術の適応となるか(一般的に65歳未満)、強力化学療法が可能であるかにより、治療法が設計される。これら以外および移植後の再発に対してアザシチジンを用いることもある。MDSの輸血依存例では、鉄過剰症の治療として血清フェリチンおよび輸血量を勘案し、腎機能が許す範囲で経口除鉄剤が用いられる。貧血および血小板減少例では、その程度(年齢による違いあり)により適宜輸血療法が行われ、低リスクMDS患者で好中球減少に伴う感染症に対し顆粒球コロニー刺激因子を用いることもある。治験段階として免疫療法であるWT1ワクチン療法が行われているが、HLA抗原が一致しないと用いることができない。高リスク患者の治療目標は白血病移行からの回避(あるいは無白血病期間の延長)である。画像を拡大する4 今後の展望一般的にMDS患者は高齢者が多い。徐々に骨髄非破壊的造血幹細胞移植術を用いた移植が比較的高齢者にも試みられているが、感染症を含む移植合併症や再発を克服する試みもある。また、アザシチジン無効例に対する新たな治療薬や経口アザシチジンの開発も進められ、さらなる治療法の開拓が期待される疾患である。2012年に発表されたIPSS-Rによる個別化治療が推進されるとともに、病型の進展に伴う遺伝子変化が次々と報告され、これらの遺伝子変化を標的とする治療法の開発が期待される。5 主たる診療科血液内科あるいは血液腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報特発性造血障害に関する調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)がん情報サービス 骨髄異形成症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報Japan MDS Patient Support Group(患者とその家族および支援者の会)1)NCCN guideline. Myelodysplastic Syndromes V.2. 2018.骨髄異形成症候群(日本語版PDF)公開履歴初回2013年02月28日更新2020年01月28日mds_00

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