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デュルバルマブの小細胞肺がん、FDA承認/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、3月30日、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(一般名:イミフィンジ)が、成人の進展型小細胞肺がんに対する1次治療として標準治療である化学療法(エトポシド+カルボプラチンまたはシスプラチン)との併用療法で、米国において承認されたことを発表した。 今回の米国食品医薬品局による承認は、第III相CASPIAN試験の結果に基づくもの。 CASPIAN試験では2つの主要評価項目を設定し、デュルバルマブと化学療法の併用療法群と化学療法群を比較した。その結果、デュルバルマブと化学療法の併用療法群では、死亡リスクが27%低下し(ハザード比:0.73、95%CI:0.59〜0.91、p=0.0047)、OS中央値は化学療法群の10.3ヵ月に対して13.0ヵ月であった。加えて、デュルバルマブと化学療法の併用療法群において、より高い客観的奏効率が得られたことも示された(化学療法群の58%に対して68%)。なお、デュルバルマブと化学療法の併用療法における安全性および忍容性は、これらの薬剤における既知の安全性プロファイルと一致していた。 また、デュルバルマブと化学療法との併用療法に抗CTLA-4抗体トレメリムマブを追加したもう1つの投与群の解析も完了しているが、こちらの主要評価項目は達成されなかった。詳細なデータは、今後の学会で発表される予定。

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ペムブロリズマブによるMSI-H大腸がん1次治療、無増悪生存期間を改善/Merck

 Merck社は、2020年4月2日、切除不能または転移を有するMSI-H/dMMRの結腸直腸がんに対するキートルーダの1次治療を評価する第III相 KEYNOTE-177試験において、2つの主要評価項目の1つ無増悪生存期間(PFS)を達成したと発表。 独立データ監視委員会(DMC)による中間解析では、化学療法(mFOLFOX6またはFOLFIRI ±ベバシズマブまたはセツキシマブ)と比較し、ペムブロリズマブ単剤療法は統計的に有意で臨床的に意味のあるPFSの改善を示した。 また、同研究のもう1つの主要評価項目である全生存期間(OS)の評価も、DMCの推奨に基づき変更なしで続行される。この試験におけるペムブロリズマブの安全性プロファイルは以前に報告された研究と一致しており、新しい安全性信号は確認されていない。 Merck社は、KEYNOTE-177のデータを世界の規制当局および今後の医療会議で共有するとしている。

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血漿TMBはペムブロリズマブの肺がん治療の効果予測因子となるか/Clin Cancer Res

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブの標準1次治療としての効果の予測に、血漿中の腫瘍遺伝子変異量(pTMB)が有用である可能性が示された。米国・ペンシルベニア大学のCharu Aggarwal氏らによる、転移のあるNSCLC患者を対象としたパイロット試験の結果、pTMB値≧16mut/Mbと無増悪生存(PFS)期間改善の関連が示されたという。また、そのような高pTMB患者のうち、持続的臨床効果(DCB)が期待できない患者の特定に、STK11、KEAP1、PTENおよびERBB2変異の情報が役立つ可能性も示された。著者は「今回の結果は、大規模な前向き研究で検証する必要がある」とまとめている。Clinical Cancer Research誌オンライン版2020年2月26日号掲載の報告。 研究グループは、ペムブロリズマブ単剤または化学療法併用による1次治療を開始する進行NSCLC患者66例を対象に、500遺伝子次世代シークエンシング(NGS)パネルを用いてpTMB値を測定するとともに、RECIST 1.1により有効性を評価し、患者背景、6ヵ月DCB、PFSおよび全生存(OS)との関連を解析した。 主な結果は以下のとおり。・66例中、pTMB値を評価できた患者は52例(78.8%)であった。・pTMB値中央値は、16.8mut/Mb(範囲:1.9~52.5)であった。・DCBが得られた患者群のpTMB値中央値は、DCBが得られなかった患者群よりも有意に高かった(21.3mut/Mb vs.12.4mut/Mb、p=0.003)。・PFS中央値は、pTMB値≧16mut/Mbの患者群で14.1ヵ月、pTMB値<16mut/Mbの患者群で4.7ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.30、95%信頼区間[CI]:0.16~0.60、p<0.001)。・OSは、pTMB値≧16mut/Mbの患者群では中央値未到達、pTMB値<16mut/Mbの患者群では中央値8.8ヵ月であった(HR:0.48、95%CI:0.22~1.03、p=0.061)。・ERBB2exon 20、STK11、KEAP1またはPTENの変異は、DCBが得られなかった患者に多く認められた。 ・pTMB値≧16mut/Mbおよび負の予測因子となる遺伝子変異がないことが、PFS(HR:0.24、95%CI:0.11~0.49、p<0.001)およびOS(HR:0.31、95%CI:0.13~0.74、p=0.009)と関連していた。

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3次医療機関でのがん患者の新型コロナ感染率/JAMA Oncol

 がん患者は治療やモニタリングのために通院機会が多いことから、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染するリスクが高い。さらに化学療法や放射線療法は免疫を抑制する。今回、中国・武漢大学中南病院のJing Yu氏らが、武漢の3次医療機関のがん患者においてSARS-CoV-2感染率と転帰を調査した結果、がん患者の入院および通院がSARS-CoV-2感染の潜在的なリスク因子であることが示唆された。とくに高齢患者(60歳以上)と非小細胞肺がん(NSCLC)患者に感染者が多かったという。JAMA Oncology誌オンライン版2020年3月25日号に掲載。 著者らは、2019年12月30日~2020年2月17日(データカットオフ)に、武漢大学中南病院の放射線・腫瘍科に入院したがん患者1,524例の人口統計学的、臨床的、および治療のデータなどの診療記録を調査した。 主な結果は以下のとおり。・この施設におけるがん患者のSARS-CoV-2感染率は0.79%(1,524例中12例、95%CI:0.3~1.2%)と推定され、同期間に武漢市で報告されたCOVID-19例全体の累積発症率(0.37%、1,108万1,000人中4万1,152人、2020年2月17日のデータカットオフ時点)よりも高かった。・感染患者の年齢中央値は66歳(範囲:48〜78歳)で12例中8例(66.7%)が60歳以上、12例中7例(58.3%)がNSCLCであった。・5例(41.7%)は、化学療法(3例、免疫療法併用/非併用)または放射線療法(2例)のいずれかで治療されていた。・3例(25.0%)がSARSを発症し、1例は集中治療を必要とした。・2020年3月10日時点で、6例(50.0%)が退院し、3例(25.0%)が死亡した。・スクリーニングを受けたがん患者1,524例中228例はNSCLCで、60歳以上のNSCLC患者では、COVID-19の発症率が60歳以下よりも高かった(4.3% vs.1.8%)。

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早期トリプルネガティブ乳がんに対するペムブロリズマブ+術前化学療法:pCR率が13.6%増加(解説:下村昭彦氏)-1209

 本試験は、臨床病期IIからIIIの早期トリプルネガティブ乳がん(triple negative breast cancer:TNBC)に対して術前化学療法にペムブロリズマブを追加する効果を病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)率と無イベント生存期間を用いて評価した第III相試験であり、ペムブロリズマブ群でpCR率64.3%(95%CI:59.9~69.5)、プラセボ群で51.2%(95%CI:44.1~58.4)と、ペムブロリズマブ群で有意に良好であった。 メラノーマで最初に有効性が示された免疫チェックポイント阻害薬も、あっという間にさまざまながん種で有効性が示され、他がん種ではすでに日常臨床で多く使われるようになった。乳がんにおいてもその有効性が期待されていたが、昨年の欧州臨床腫瘍学会で発表されたKEYNOTE-119が示すように、免疫原性が高いとされるTNBCであっても単剤での有効性は示せていない。転移TNBCにおいてはすでに抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブとアルブミン結合パクリタキセルの有効性が示され、国内でも承認されている。また、転移TNBCに対するペムブロリズマブと化学療法併用の有効性もプレスリリースされており、転移TNBCにおいては免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用は重要な選択肢の1つとなっている。 早期乳がんにおいては、TNBCを対象として複数の試験が行われた(行われている)。本試験はその1つである。TNBCにおいてはpCRが予後のサロゲートマーカーとなることが知られており、本試験においてもpCR率においてペムブロリズマブ群で良好であることが示された。EFSは中間解析であるが、ペムブロリズマブ群で良好であった。ほかに早期TNBCの術前化学療法に対するアテゾリズマブの上乗せを検証する試験も行われており、免疫チェックポイント阻害薬は今後早期TNBCの重要な治療選択になってくる。 一方で、早期がんに免疫チェックポイント阻害薬を使うことには一定の注意も必要である。本試験においてはペムブロリズマブ群で甲状腺機能低下が13.7%で認められている。免疫チェックポイント阻害薬による甲状腺機能低下は改善しないことが多く、生涯にわたる甲状腺ホルモンが必要になるケースも少なくない。Grade3を超える副腎機能低下も1.3%に認められている。頻度は低いが、重篤でありマネジメントに注意が必要な有害事象である。論文では報告されていないが、免疫チェックポイント阻害薬では劇症型I型糖尿病など対応を誤ると生命に危険が及ぶ有害事象も発生する。術前化学療法は治癒を目指して行う治療であるからこそ、今後実臨床で行うようになった際には、適応をきちんと決め、薬物療法に習熟した医師が適切に有害事象のマネジメントを行う必要がある。 とはいえ、乳がんにおいては免疫チェックポイント阻害薬の開発はしばらくホットな話題になりそうだ。HER2陽性乳がんに対する術前化学療法との併用や、ホルモン受容体陽性乳がんに対するホルモン療法およびCDK4/7阻害薬との併用など、バイオロジーに基づいたさまざまな臨床試験が行われている。バイオロジーの理解と併せて、今後も注目していきたい。

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ニボルマブ+イピリムマブ、化学療法との併用で非小細胞肺がんに承認申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年3月26日、抗PD-L1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)と抗CTLA-4抗体イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)について、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、プラチナ製剤を含む 2 剤化学療法(プラチナ・ダブレット)との併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表。 今回の承認申請は、小野薬品とブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)が、PD-L1発現レベルおよび腫瘍の組織型にかかわらず、化学療法未治療の進行・再発のNSCLC患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法にプラチナ・ダブレット化学療法を追加した併用療法を、プラチナ・ダブレット化学療法と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-9LA試験)の結果に基づいている。 本試験の中間解析の結果、ニボルマブとイピリムマブにプラチナ・ダブレット化学療法を追加した治療群は、プラチナ・ダブレット化学療法群と比較して、主要評価項目である全生存期間の有意な延長を達成した。本試験における併用療法群の安全性プロファイルは、化学療法未治療のNSCLC治療において免疫療法と化学療法との併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。

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乳がん術前化療から手術までの日数と術後合併症

 乳がん治療において術前化学療法(NAC)が増えているが、化学療法から手術までの期間(TTS)はさまざまである。今回、米国・オレゴン健康科学大学のThomas L. Sutton氏らが、術後合併症におけるTTSの影響を評価したところ、28日未満のTTSが術後創合併症の危険因子であることが示された。ただし、合併症のほとんどは軽微で、外来で治療されていた。American Journal of Surgery誌オンライン版2020年3月10日号に掲載。 本研究は2011年1月~2016年12月に自施設でNACを受けた女性を対象とした後ろ向きレビューで、術後創合併症について調査し多変量解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・対象の455例におけるTTS中央値は30日(範囲:11〜228)であった。・多変量解析では、TTSが28日未満の場合、創合併症のオッズが70%高かった(p<0.05)。・年齢の増加が創合併症との関連が最も強かった(p<0.0001)。・創合併症の大部分(80例、83%)は外来で治療された。

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抗がん剤の末梢神経障害、凍結手袋の効果は?/Ann Oncol

 凍結手袋(frozen gloves)は、抗がん剤治療に伴う手足などの末梢神経障害の予防に有用なのか。オランダ・Maxima Medical Center Eindhoven and VeldhovenのA.J.M. Beijers氏らは、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に対する凍結手袋の予防効果を検討した無作為化試験を行い、凍結手袋を着用した患者と非着用患者でEORTC QLQ-CIPN20スコアに差はみられなかったものの、着用により手の神経障害症状が軽減され、QOLの改善が示されたと報告した。ただし著者は、「今回の試験では着用群の3分の1が治療終了前に試験を中止しており、その点で留意が必要である」と述べ、「今後の研究では、CIPN予防について四肢低体温法に力を注ぐべきであろう」とまとめている。Annals of Oncology誌2020年1月号掲載の報告。 抗がん剤治療中に凍結手袋を着用する群と着用しない群に無作為に割り付け 研究グループは、患者のQOLに影響を及ぼすCIPNを予防するため、化学療法中の凍結手袋着用の有効性および安全性を検討した。2013年2月~2016年5月に腫瘍内科でオキサリプラチン、ドセタキセルまたはパクリタキセルによる治療を開始するがん患者を、治療中に凍結手袋を両手に着用する(FG)群と着用しない(対照)群に無作為に割り付けた。 CIPNおよびQOLは、ベースライン(t0)、3サイクル後(t1)、化学療法終了時(t2)および化学療法終了6ヵ月後(t3)の4時点で、EORTC QLQ-CIPN20およびQLQ-C30を用いた患者の自己報告に基づき評価した。  抗がん剤の末梢神経障害に対する凍結手袋の予防効果を検討した主な結果は以下のとおり。・各群90例、計180例が登録された。ほとんどが大腸がんまたは乳がんの治療を受けた。・FG群において、31例(34%)は主に不快感のため試験を中止した。・intention-to-treat解析では、FG群と対照群との間でEORTC QLQ-CIPN20スコアに重要な差は示されなかったが、FG群は対照群と比較して、指/手のチクチク感(β=-10.20、95%信頼区間[CI]:-3.94~-3.14、p=0.005)、手の力の低下による瓶やボトルを開ける際の問題(β=-6.97、95%CI:-13.53~-0.40、p=0.04)が減少した。・per-protocol解析でも同様の結果で、指/手のうずくような痛みや灼熱感(β=-4.37、95%CI:-7.90~-0.83、p=0.02)および手のけいれん(β=-3.76、95%CI:-7.38~-0.14、p=0.04)が減少した。・t1での指/手のチクチク感の差異は、臨床的に関連していた。・FG群は対照群よりQOL(β=4.79、95%CI:0.37~9.22、p=0.03)および身体機能(β=5.66、95%CI:1.59~9.73、p=0.007)が良好であった。・用量減量による差異は観察されなかった。

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トラスツズマブ デルクステカン、HER2陽性乳がんに国内承認/第一三共

 2020年3月25日、第一三共株式会社は「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」の効能・効果で、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ点滴静注用100mg)の製造販売承認を取得した。 トラスツズマブ デルクステカンの有効性と安全性は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療を受けたHER2陽性の再発・転移を有する乳がん患者を対象としたグローバル第II相臨床試験(DESTINY-Breast01、北米、欧州および日本を含むアジアで実施)の結果により確認された。独立中央判定委員会による奏効率は60.9%、奏効期間中央値は14.8ヵ月であり、持続的な腫瘍縮小効果が示されている。トラスツズマブ デルクステカンを条件付き早期承認制度のもとで迅速承認、使用上の留意事項発出 トラスツズマブ デルクステカンは、日本において医薬品条件付き早期承認制度のもと優先審査品目に指定され、2019年9月に製造販売承認を申請していた。米国では、米国食品医薬品局(FDA)より迅速審査のもとで2019年12月に「転移性の乳がんに対する治療として2つ以上の抗HER2療法を受けたHER2陽性の手術不能又は転移性乳がん」を適応として承認され、2020年1月より販売を開始している。 なお、厚生労働省では、トラスツズマブ デルクステカンは臨床試験において間質性肺疾患があらわれ、死亡例が報告されていること、国内での臨床試験症例が限定的であることから、同日(2020年3月25日)付で使用にあたっての留意事項を発出。適正使用を求めている。・製品名:エンハーツ点滴静注用100mg・一般名:トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)・効能・効果:化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)・用法・用量:通常、成人にはトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回5.4mg/kg(体重)を90分かけて3週間間隔で点滴静注する。なお、初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。・承認条件:1. 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。2. 化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌患者を対象に実施中の第III相試験における本剤の有効性及び安全性について、医療現場に適切に情報提供すること。3. 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。・製造販売承認取得日:2020年3月25日・製造販売元:第一三共株式会社

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高齢NSCLC患者におけるカルボプラチンとペメトレキセドの有用性(JCOG1210/WJOG7813L)/JAMA Oncol

 高齢者の進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の1stライン化学療法の中で、ドセタキセル単剤(DOC)は標準療法の1つである。一方、非高齢者の非扁平上皮NSCLCの1次治療としてはカルボプラチン+ペメトレキセドからペメトレキセドの維持療法(CBDCA/PEM)が、広く使われている。そのような中、進行非扁平上皮NSCLCの高齢患者に関して、CBDCA/PEM療法のドセタキセル単剤療法との非劣性を評価する多施設オープンラベル第III相試験が実施された。JAMA Oncology誌2020年3月12日オンライン版掲載の報告。・対象:化学療法未治療の75歳以上のStageIII/IVまたは再発非扁平上皮NSCLC・試験薬:カルボプラチン(AUC5)+ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと4サイクル→ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと病勢悪化まで(CBDCA/PEM群)・対照薬:ドセタキセル60mg/m2 3週ごと病勢悪化まで(ドセタキセル群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効割合(ORR)、症状スコア、有害事象などCBDCA/PEM群の非劣性マージンは、OSハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限1.154に設定された。 主な結果は以下のとおり。・登録された433例の年齢中央値は78歳であった。・OS中央値は、ドセタキセル群(217例)15.5ヵ月、CBDCA/PEM群(216例)18.7ヵ月であった(HR:0.850、95%CI:0.684~1.056、非劣性p= 0.003)。・PFSもCBDCA/PEM群で長かった(HR:0.739、95%CI:0.609~0.896)。・Grade3/4の白血球減少および好中球減少症の発現率、発熱性好中球減症の発現率はCBDCA/PEM群で低かった(それぞれ28.0%対68.7%、46.3%対86.0%、4.2%対17.8%)・一方、Grade3/4の血小板減少症および貧血の発現率はCBDCA/PEM群で高かった(それぞれ25.7%対1.4%、29.4%対1.9%)・減量の頻度はCBDCA/PEMで少なかった。 カルボプラチン・ペメトレキセド併用とペメトレキセドの維持療法は、高齢の非扁平上皮NSCLCの1次治療においてドセタキセルとの非劣性が証明された。著者らは、同レジメンはこれらの患者集団への有効な選択肢であるとしている。

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イリノテカン塩酸塩水和物、膵臓がんに国内承認

 日本セルヴィエとヤクルト本社は、イリノテカン塩酸塩水和物(商品名:オニバイド)について、「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な膵癌」を効能・効果として、2020年3月25日、国内製造販売承認を取得しました。 同剤は、有効成分であるイリノテカンをポリエチレングリコール(PEG)で修飾したリポソームに封入した製剤であり、2020年3月現在、世界21ヵ国で販売されている。国内では 2019年3月に日本セルヴィエが製造販売承認申請を行い、この度、承認を取得した。

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非扁平上皮NSCLC、ペムブロリズマブ+化学療法の1次治療第III相試験アップデート(KEYNOTE-189)/JCO

 転移を有する非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、ペムブロリズマブ+化学療法の第III相KEYNOTE-189試験の結果が更新された。Journal of Clinical Oncology誌2020年3月9日号オンライン版掲載の報告。 同試験の対象は、再発・転移のある無治療のStageIV非扁平上皮NSCLC患者616例。登録患者は、ペムブロリズマブ(3週ごと最大35サイクル)+化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセドの3週ごと4サイクル後、ペメトレキセド3週ごと)群410例とプラセボ+化学療法(ペムブロリズマブ併用群と同一用法・用量)群206例に無作為に割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は23.1ヵ月であった(2018年9月21日時点)。・全生存期間(OS)中央値は、ペムブロリズマブ+化学療法群22.0ヵ月、化学療法群10.7ヵ月で、ハザード比(HR)は0.56(95%CI:0.45〜0.70)であった。・PD-L1発現別のOS HRは、TPS≧50%では0.59、TPS1~49%では0.62、TPS<1%では0.52であった。・無増悪生存期間(PFS)は、ペムブロリズマブ+化学療法群9.0ヵ月、化学療法群4.9ヵ月で、HRは0.48(95%CI:0.40~0.58)であった。・PD-L1発現別のPFS HRは、TPS≧50%では0.36、TPS1~49%では0.51、TPS<1%では0.64であった。・Grade3〜5の有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ+化学療法群では71.9%、化学療法群では66.8%であった。 筆者らは、転移を有する非扁平上皮NSCLC1次治療におけるペムブロリズマブと化学療法併用の生存ベネフィットはPD-L1発現レベル、肝臓/脳転移の有無にかかわらず確認されたとしている。

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上部尿路上皮がん、術後化学療法で無病生存率改善/Lancet

 局所進行上部尿路上皮がん(UTUC)患者の治療において、腎尿管全摘除術後のゲムシタビン+プラチナ製剤併用による術後補助化学療法は、これを行わない場合に比べ無病生存(DFS)率を改善することが、英国・ランカシャー州教育病院国民保健サービス(NHS)ファンデーショントラストのAlison Birtle氏らの検討「POUT試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年3月5日号に掲載された。UTUCはまれな疾患で、膀胱上皮がんに比べて各病期の予後が不良とされる。UTUC患者の治療では、根治的腎尿管全摘除術後の術後化学療法の有益性に関して、国際的な合意は得られていないという。術後化学療法の有用性を評価する無作為化試験 本研究は、英国の71施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2012年6月~2017年11月の期間に患者登録が行われた(Cancer Research UKの助成による)。 対象は、年齢16歳以上、糸球体濾過量(GFR)≧30mL/分で、UTUCの根治的腎尿管全摘除術(画像上または肉眼的に異常と判定されたすべてのリンパ節の郭清を含む)を受け、術後のStageが筋層非浸潤性(pT2~pT4、N any)またはリンパ節転移陽性(pT any、N1~3)で、非転移性(M0)の病変を有し、組織学的に移行上皮がんが主の患者であった。 被験者は、サーベイランスを受ける群、または術後90日以内に、21日を1サイクルとする化学療法を4サイクル受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。化学療法は、シスプラチン(CDDP、70mg/m2)またはカルボプラチン(CBDCA、AUC 4.5または5)が第1日に、ゲムシタビン(GEM、1,000mg/m2)が第1日と第8日に静脈内投与された。 主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)集団におけるDFS(割り付け時から初回の再発、転移、死亡までの期間)の割合とした。 本試験は、261例を登録した時点で、事前に規定された中間解析において有効性に関する早期終了の基準を満たしたため、患者登録が中止された。再発/死亡リスクが55%低減 71の参加施設中57施設から261例が登録された。化学療法群に132例、サーベイランス群には129例が割り付けられ、割り付け後にデータの使用への同意を撤回した化学療法群の1例を除く260例(ITT集団)が解析に含まれた。 ベースラインの全体の年齢中央値は68.5歳(IQR 62.0~74.1)、女性が32%含まれた。94%がpT2~pT3、91%がN0で、64%がGFR≧50mL/分であった。腫瘍部位は腎盂が35%、尿管が34%、両方が30%で、術式は開放手術が15%、腹腔鏡手術が82%、ロボット手術が2%であり、顕微鏡的切除断端陽性率は12%だった。フォローアップ期間中央値は30.3ヵ月(IQR:18.0~47.5)。 実際に化学療法を受けたのは126例で、割り付け後にGFRが低下したため76例中16例(21%)がCDDPからCBDCAに、割り付けから治療開始前にGFRが上昇したため50例中1例(2%)がCBDCAからCDDPに切り替えた。 DFS関連イベントの発生率は、化学療法群が27%(35/131例)と、サーベイランス群の47%(60/129例)と比較して有意に低く、相対リスクが55%改善された(ハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.30~0.68、log-rank検定のp=0.0001)。 3年DFS率は、化学療法群が71%(95%CI:61~78)、サーベイランス群は46%(36~56)であり、両群間の推定絶対差は25%(11~38)であった。DFS期間中央値は、化学療法群は未到達、サーベイランス群は29.8ヵ月だった。また、転移または死亡のリスクは、化学療法群で52%低下した(HR:0.48、95%CI:0.31~0.74、log-rank検定のp=0.0007)。 Grade3以上の急性治療関連有害事象は、化学療法群が44%(55/126例、GEM+CDDP 44%[31/71例]、GEM+CBDCA 44%[24/55例])、サーベイランス群は4%(5/129例)で認められた(p<0.0001)。化学療法群では、Grade3以上の好中球数の減少(36%)、血小板数の減少(10%)、悪心(6%)、発熱性好中球減少(6%)、嘔吐(6%)がサーベイランス群よりも多く、重篤な有害事象は32%にみられた。治療関連死の報告はなかった。 QOL(EORTC QLQ-C30、EQ-5D-5L)は、化学療法期間中とその直後(3ヵ月時、p=0.0028)は化学療法群で不良であったが、6ヵ月後にはこの差は解消した。 著者は、「プラチナ製剤ベースの化学療法は、UTUC患者の腎尿管全摘除術後の標準的な補助化学療法と考えられる」としている。

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小細胞肺がんの1次治療、アテゾリズマブ+化学療法の患者評価(IMpower133)/Ann Oncol

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)へのカルボプラチン+エトポシド(CP/ET)+抗PD-L1抗体アテゾリズマブの併用の1次治療に関する「IMpower133試験」の安全性および患者報告アウトカムの評価結果が、米国・メイヨー・クリニックのA.S. Mansfield氏らにより示された。アテゾリズマブ+CP/ETレジメンはプラセボ+CP/ETと安全性プロファイルが同様であり、患者報告の健康関連QOL(HRQoL)に重大な影響は与えないことが示された。結果を踏まえて著者は、「示されたデータは、ES-SCLC 1次治療としてのアテゾリズマブ+CP/ETのベネフィット・リスクプロファイルを明確に示すもので、同レジメンを新たな標準治療として支持することをさらに裏付けるものであった」とまとめている。Annals of Oncology誌2020年2月号掲載の報告。  IMpower133試験において患者は、CP/ETに加えてアテゾリズマブまたはプラセボの21日/サイクルを4サイクル受け(導入期)、その後アテゾリズマブまたはプラセボを、病勢進行またはベネフィットがなくなるまで投与された(維持期)。有害事象(AE)の評価と、治療期間中3週間ごとにEuropean Organisation for the Research and Treatment of Cancer(EORTC)の生活の質に関する質問票(Core 30[QLQ-C30]とQLQ-LC13)を用いた評価が行われた。  主な結果は以下のとおり。 ・全AEおよびGrade3~4のAE、重篤なAEの発現頻度は、両フェーズ(導入期、維持期)ともに、アテゾリズマブ群とプラセボ群で同程度であった。・免疫関連AEの発現頻度は、両フェーズともにアテゾリズマブ群でより高率であった。導入期は28% vs.17%、維持期は26% vs.15%であった。・免疫関連AEで最も発現頻度が高かったのは、発疹(導入期:11% vs.9%、維持期:14% vs.4%)、甲状腺機能低下症(4.0% vs.0%、10% vs.1%)であった。・生活の質低下に関連した患者報告に基づく治療関連症状の変化は、導入期では概して同程度であり、変化のほとんどは維持期で認められた。・患者報告に基づく機能およびHRQoLは、治療開始後に両群で改善したが、アテゾリズマブ群ではHRQoLの改善がより顕著かつ持続的に認められた。

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NSCLCの術後補助化学療法、適正レジメンは?(TORG 0503)/Lung Cancer

 日本発の、非小細胞肺がん(NSCLC)術後補助化学療法の適正レジメンが示された。完全切除されたStage IB、IIおよびIIIAのNSCLCでは、術後補助化学療法が標準治療であるが、これまで最適な化学療法レジメンは決定されていない。日本医科大学呼吸器内科の久保田馨氏らは、これらの患者において望ましいプラチナベースの第3世代レジメンを選択する「TORG0503試験」を実施した。その結果、ドセタキセル+シスプラチン併用療法とパクリタキセル+カルボプラチン併用療法が、術後補助化学療法として安全に施行できることが示された。結果を踏まえて著者は、「次の臨床試験では、対照としてドセタキセル+シスプラチン併用療法を選択する」と述べている。Lung Cancer誌オンライン版2019年3月号の掲載報告。 研究グループは、完全切除されたStage IB、IIA、IIB、IIIAのNSCLC患者を、ドセタキセル(60mg/m2)+シスプラチン(80mg/m2)併用療法を3サイクル行う群(A群)と、パクリタキセル(200mg/m2)+カルボプラチン(AUC 6)併用療法を3サイクル行う群(B群)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は2年無再発生存割合、主な副次評価項目は全生存期間(OS)、有害事象(忍容性、毒性)などとした。 主な結果は以下のとおり。・111例(A群58例、B群53例)が無作為に割り付けられた。両群の患者背景は類似していた。・3サイクルの化学療法を完遂した患者の割合は、A群で93%(54/58例)、B群で92%(49/53例)であった。・両群で治療に関連した死亡は認められなかった。・2年無再発生存割合は、A群で74.5%(95%信頼区間[CI]:68.6~80.4)、B群で72.0%(95%CI:65.7~78.3)であった。・また、5年無再発生存割合はA群で61.6%、B群で46.0%であった。・2および5年OSは、A群で89.7%および73.9%、B群で86.9%および67.5%であった。

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薬局に影響を与える医科診療報酬改定項目【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第43回

2020年度診療報酬改定の個別改定項目が1月末に決定し、2月に点数や割合が決まりました。薬剤師的には、対人業務へのシフトをどう行うかという点が気になって仕方ありませんが、病院やクリニックを対象とした医科診療報酬でも、薬局が関わる項目が新設・変更されています。主な新設項目は、「退院時薬剤情報連携加算」と「連携充実加算」があり、変更項目は「後発医薬品使用体制加算」です。これらが薬局とどのように関わってくるのか紹介します。退院時薬剤情報連携加算まず、「退院時薬剤情報連携加算」についてです。これは医療機関が、入院前の内服薬を変更・中止した患者について、患者またはその家族などの同意を得て、その理由や変更後の患者の状況などを文書により薬局に提供した場合に、60点加算できるというものです。この加算は、入院前と入院後で処方薬が変更されているということが条件です。入院をきっかけにそんなに処方薬を変えるの? と思う方もいるかもしれませんが、実は変更促進のための「薬剤総合評価調整加算」というカラクリがあります。これは従来から存在する加算で、2種類以上の薬剤を実際に削減できた場合に250点算定できましたが、今回の改定で2段階に変更され、評価・調整の取り組みを行えば実際の減薬はなくても100点が算定できるようになります。低いハードルを設定することで着手しやすくなり、入院時の減薬をより後押しすることになるのだと想像できます。重複投与および多剤投与の対応と医薬連携が加速し、病院と薬局双方がWin-Winになる仕組みとなりそうです。よく処方箋を受ける病院やクリニックに対して、積極的に薬局から今後の連携を提案してみるとよいのではないでしょうか。連携充実加算次に、外来での抗がん剤治療の質を向上させる目的で新設された「連携充実加算」です。対象は、外来でがん治療を受ける患者さんです。要件として、医師の指示に基づき、治療の目的および治療の進捗などを文書により薬局に提供したうえで、薬局薬剤師が患者の状態を踏まえて必要な指導を行った場合に、連携充実加算として150点を月1回に限り所定点数に加算できます。算定する病院には施設基準などのさまざまな要件が設定されていて、「化学療法のレジメンを公開すること」「薬局などを対象とした研修会を年1回は実施すること」「薬局や患者からの相談に対応する体制を整備すること」などが求められています。なお、薬局側もレジメンを把握して必要な指導を実施して、医療機関にフィードバックすることが求められていることは言うまでもなく、そのための「特定薬剤管理指導加算2」が新設されます。がん治療の場が病院から地域に移り、働きながら治療を行う患者さんが増えているため、薬剤師が医療機関と連携し、患者さんをサポートする体制づくりは急務となるでしょう。後発医薬品使用体制加算最後に、「後発医薬品使用体制加算」についてです。医科の後発医薬品使用体制加算は加算1が85%以上で「45点」、加算2が80%以上で「40点」、加算3が70%以上で「35点」、加算4が60%以上で「22点」でしたが、今回の改定で2点が上乗せされ、加算1が85%以上で「47点」、加算2が80%以上で「42点」、加算3が70%以上で「37点」となり、加算4は廃止となります。2点上乗せは継続して後発医薬品を採用している医療機関への評価なのだと思いますが、70%以下だと1点も取れなくなるため、医療機関の後発医薬品使用の後押しになることは間違いなく、薬局の在庫や医師への提案が変わることもあるでしょう。薬局薬剤師はどうしても調剤報酬改定に目が行きがちですが、上記のように医科診療報酬改定が薬局に影響を及ぼすこともありますのでぜひご確認ください。

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EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症〔EBV-HLH:EB virus-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義EBV-HLHは、EBVの初感染または再活性化(感染細胞の再増殖)に伴い、しばしば急激な経過で病勢が進展する重篤な疾患である。血球貪食性リンパ組織球症(HLH)は血球貪食症候群と同義で、高サイトカイン血症を背景に、持続する発熱、血球減少、肝脾腫、播種性血管内凝固(DIC)、高フェリチン血症および骨髄などに血球貪食組織球増多を来す症候群である。HLHは、「HLH-2004ガイドライン」に基づき診断され、遺伝性HLHと、感染症や膠原病、悪性腫瘍などに続発する二次性HLHに大別される。EBV-HLHは二次性HLHのうち最も頻度が高く、また感染症関連HLHの中でも最も重症である。広義のEBV-HLHは、EBVの活動性感染がありHLHの診断基準を満たすものと定義される。一方、わが国におけるEBV-HLHは、通常基礎疾患のない患者において、EBVが主にCD8陽性T細胞に感染し、クローン性に増殖した初感染の急性重症型を指し(狭義のEBV-HLH)、重症伝染性単核症(IM)やEBV感染を契機に発症する遺伝性HLH、慢性活動性EBV感染症(CAEBV)やEBV関連T/NK細胞腫瘍に合併するHLHとは区別される。以下、狭義のEBV-HLHを中心に概説する。■ 疫学日本・韓国・中国・台湾などの小児と若年成人に報告が多い。日本国内での偏在はない。特定の遺伝的素因は解明されていない。全国調査からわが国における発症数は、年間約50例と推定される。小児の平均発症年齢は3.9歳で初感染EBV-HLHがほとんどである。近年、初感染年齢の上昇に伴い、患児の年齢層も上がりつつある。成人では特にHLHを初発とするEBV関連リンパ腫の除外が必須である。■ 病因初感染EBV-HLHでは、EBV感染CD8陽性T細胞がクローン性に増殖し、IFN-γ、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインが多量に産生され、マクロファージが活性化して血球貪食が誘導される。患者はEBV特異免疫に異常反応性を有することが想定されているが、治癒後には健常既感染者となる。B細胞が主たる感染標的である場合は、伝染性単核症(IM)として通常は予後良好だが、宿主にX連鎖リンパ増殖症候群などの原発性免疫不全症があると致死性IMとなる。再活性化に伴って発症するEBV-HLHの基礎疾患であるCAEBVでは、EBVがT細胞やNK細胞に感染し、この感染細胞が免疫による排除から逃れてクローン増殖し臓器に浸潤し、多彩な臨床症状を惹起する。■ 症状持続する発熱、リンパ節腫脹、肝脾腫と汎血球減少、凝固異常、肝機能障害、高LDH血症などを認める。急速に進行する汎血球減少とDICから多臓器障害に至る例もまれではない。■ 予後EBV-HLHはウイルス関連HLHの中でも特に予後不良であり、支持療法だけでは多くの場合、致死的経過をとる。初回治療にはHLH-2004プロトコールなどの化学療法が行われ、90%以上が寛解する。10%弱は再燃するが多くは再寛解する。死亡率は約1%で晩期再発はない。治療抵抗性を示す場合に同種造血細胞移植が行われる。診断時の高ビリルビン、および高フェリチン血症が予後不良因子として報告されている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)Histiocyte SocietyのHLH国際診断基準をもとに、日本小児感染症学会からEBV-HLHの診断基準が作成されている(表)。表 EBV-HLH診断基準以下の1と2のいずれも満たす1.EBウイルスDNAは末梢血中に増加している2.以下の8項目のうち、初発時5つ以上、再燃・再発時3つ以上を満たす1)発熱≧38.5℃2)脾腫3)血球減少(末梢血の少なくとも2系統に以下の異常あり):ヘモグロビン<9.0g/dL、血小板<100,000/μL、好中球<1,000/μL4)高卜リグリセリド血症(空腹時≧265mg/dL)または低フィブリノーゲン血症(≦150mg/dL)5)NK細胞活性低値または欠損6)血清フェリチン≧500ng/mL7)可溶性IL-2受容体≧2,400U/mL8)骨髄、脾臓、またはリンパ節に血球貪食像あり、悪性所見なし付記1)診断に有用な所見:(a)髄液の細胞増多 (単核球) および/または髄液蛋白増加(b)肝で慢性持続性肝炎に類似した組織像2)診断を示唆する他の所見:髄膜刺激症状、リンパ節腫大、黄疸、浮腫、皮疹、肝酵素上昇、低蛋白・低Na血症、VLDL値上昇、HDL値低下3)発症時に上記の基準をすべて満たすわけではなく、経過と共にいくつかを満たすことが少なくない。基準を満たさない場合は注意深く観察し、基準を満たした(同時期に症状・所見が揃った)時点で診断する。(日本小児感染症学会 監修.慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患診療ガイドライン. 診断と治療社;2016.p.11.より引用)診断には、EBV関連抗体価(FA法)による感染既往の評価や、リアルタイムPCR法などによる末梢血中のEBVDNAの定量が重要である。EBV-HLHでは、血球成分中や血清および血漿中のEBVDNA量が著しく上昇し、IM患者よりも高値を示すことが多い。なお、骨髄生検での血球貪食像は初期には目立たないことがある。組織診断にはin situ hybridization(ISH)によるEBV-encoded small RNA(EBER)の検出が有用である。蛍光抗体や免疫組織染色によるEBV感染細胞の同定、およびEBV terminal repeat probeを用いたSouthern blot法、あるいはT細胞受容体の遺伝子再構成検査によるクローナリティの検索も、重症IMやCAEBVなどとの鑑別に有用な指標となる。また、家族歴や基礎疾患の有無、発症前の症状などの病歴を詳細に聴取し、必要に応じて遺伝性HLHを除外するための検索(遺伝子解析など)を進める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)小児のEBV初感染による伝染性単核症(B細胞感染)とは異なり、治療介入の必要ない自然軽快は極めてまれである。EBV-HLHの治療は、クローン増殖した感染細胞の制御と、これに対して過剰に反応した免疫担当細胞および、これに伴う高サイトカイン血症の制御が中心となる。治療中にもかかわらず急変し致死的経過をとることがあるため、がん化学療法と同種造血細胞移植の可能な施設との連携も重要である。HLH-2004プロトコールにはステロイド、エトポシド、シクロスポリンAに加えて髄腔内へのメトトレキサートとステロイドの投与を用いた多剤併用化学療法が提示されている。わが国の全国調査では、初回治療として60%がHLH-2004に準じた治療を受け、30%がステロイド療法、10%がIVIG療法や対症療法のみでの治療を選択されていた。90%の症例がこの初回治療で寛解が得られていることから、二次がんの危険性があるエトポシドを全例に使用する必要はないかもしれない。しかし、治療の遅れが致死的な経過をもたらす可能性もあり、追加治療のタイミングを逃すことがないように発熱の推移や血球変化、凝固異常の進行などに十分注意する必要がある。血中EBVの経時的定量がEBV-HLHの病勢の評価、治療効果の判定に有用とされる。発症から1~2ヵ月以内のステロイドやシクロスポリンAの減量中などに再燃の可能性があるが、その場合でもステロイド、エトポシド、シクロスポリンAの3剤併用療法で再寛解する可能性がある。また、症状が沈静化してからも約10%が再燃し、初回と同様な治療が必要になる。半年以内はIL-18、IL-12などのIFN-γ関連サイトカイン産生が持続するため、経過観察を行いながらシクロスポリンAが継続される。一方で、3剤併用療法が無効な場合、多剤併用化学療法、さらに同種造血細胞移植が考慮される。多剤併用化学療法に推奨可能な実績のあるレジメンは現時点では存在せず、CHOPおよびエトポシド、THP-COP、シタラビンなどが用いられている。また、EBV-HLHに対するリツキシマブの有効性が報告されているが、その適応については感染細胞を考慮した作用機序や効果の詳細な解明、議論が必要である。4 今後の展望EBV-HLHに対するHLH-2004プロトコールの有用性は明らかであるが、生物学的製剤の適応と評価は十分でない。また、同種造血細胞移植の時期と方法などについても、今後の検討が必要である。2018年11月に難治性の遺伝性HLHに対する初の特異的な治療薬として完全ヒト型抗IFN-γ抗体であるemapalumab(商品名:GAMIFANT)が米国で承認された。二次性HLHに対する有効性は現時点では不明であるが、IFN-γを過剰産生する活性化CD8陽性T細胞が病態形成の中心的役割を果たすEBV-HLHにおいても効果が期待されている。また、HLHモデルマウスにおいては、JAK1/2阻害剤など、複数のサイトカインシグナル伝達を同時に阻害する薬剤の有効性が示唆されている。今後、これらの抗サイトカイン療法を含めた、EBV-HLHに対する最適な治療戦略を確立する必要がある。5 主たる診療科小児科、血液内科、感染症内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター 血球貪食性リンパ組織球症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)日本小児感染症学会. 慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン2016. 診断と治療社;2016.2)Henter JI, et al. Pediatr Blood Cancer. 2007;48:124-131.3)Filipovich AH, et al. Hematol Oncol Clin North Am. 2015;29:895-902.4)Ishii E, et al. Int J Hematol. 2007;86:58-65.5)Kogawa K, et al. Pediatr Blood Cancer. 2014;61:1257-1262.公開履歴初回2020年03月09日

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がん患者のCOVID-19~非がん患者と比べて/Lancet Oncol

 中国およびその他の地域では、SARS-CoV-2による重症急性呼吸器症候群が発生している。がん患者は化学療法や手術などの抗がん治療によって引き起こされる全身性の免疫抑制により、易感染状態であることが多い。そのため、SARS-CoV-2についても感染リスクが高く、さらに感染後も予後不良の可能性がある。 中国の国立呼吸器疾患臨床研究センターと国家衛生健康委員会が協力し、中国全土でCOVID-19症例を観察する前向きコホートを構築した。2020年1月31日のデータカットオフの時点で、31の地方行政区域から2,007例の症例を収集。記録不十分な417例を除外し、1,590例のCOVID-19症例を分析している。Lancet Oncology誌2020年3月1日号では、その中から、がん患者について分析している。・COVID-19患者1,590例のうち18例(1%、95%CI:0.61~1.65)にがんの既往があり、これは285.83/100,000人(0.29%、2015年がん疫学統計)という中国人全体のがんの発生率よりも高かった。・COVID-19を合併した18例のがん患者内訳をみると、最も頻度が高いのは肺がん(5例、28%)であった。・重症イベント(ICU入院、要侵襲的換気または死亡)は、がん患者では39%(18例中7例)に観察されたが、非がん患者では8%(1,572例中124例)で、がん患者で有意に重症イベントのリスクが高かった(p=0.0003)。・重症イベントはさらに、1ヵ月以内に化学療法または外科手術を受けた患者では75%(4例中3例)、受けていない患者では43%(14例中6例)と、化学療法または外科手術を受けた患者でリスクが高かった。・重症イベントまでの時間を評価すると、がん患者では中央値13日、非がん患者では43日で、がん患者のほうが急速に悪化することが明らかになった(年齢調整後HR:3.56、95%CI:1.65~7.69、p<0.0001)。

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ニボルマブ、食道がんとMSI-High大腸がんに国内承認/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年2月21日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道癌」と「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」の効能又は効果の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。 食道がんに対する承認は、フッ化ピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む併用療法に不応または不耐の食道がん患者を対象に実施した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(ATTRACTION-3試験)の結果に基づいている。同試験の結果、ニボルマブ群は、化学療法群(ドセタキセルまたはパクリタキセル)と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)で統計学的に有意な延長を示した。ニボルマブ群の生存ベネフィットは、PD-L1発現レベルにかかわらず認められた。また、同試験におけるニボルマブの安全性プロファイルは、これまでに報告された臨床試験のものと一貫しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。 MSI-High結腸・直腸がんに対する承認は、フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法による治療中または治療後に病勢進行した、もしくは同治療法に忍容性がなかった再発または転移のあるMSI-Highまたはミスマッチ修復欠損(dMMR)を有する結腸・直腸がん患者を対象に実施した多施設国際共同非盲検第II相臨床試験(CheckMate-142試験)のニボルマブ単剤コホートによる結果に基づいている。同試験でニボルマブは、主要評価項目である治験担当医師の評価による奏効率(ORR)において有効性を示した。同試験におけるオプジーボの安全性プロファイルは、これまでに報告された臨床試験のものと一貫しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。

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早期TN乳がん、ペムブロリズマブ+術前化学療法が有望/NEJM

 早期トリプルネガティブ乳がん患者に対し、ペムブロリズマブ+術前化学療法はプラセボ+術前化学療法に比べ、手術時の病理学的完全奏効率が約14%ポイント有意に高いことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らが行った第III相無作為化比較試験の結果、示された。追跡期間中央値15.5ヵ月後の病勢進行を認めた被験者の割合も、ペムブロリズマブ+術前化学療法を行った群で低かったという。先行試験で早期トリプルネガティブ乳がん患者における、ペムブロリズマブの有望な抗腫瘍活性と忍容可能な安全性プロファイルが示されていたが、術前化学療法へのペムブロリズマブ追加が、手術時の病理学的完全奏効(浸潤がんなし・リンパ節転移陰性と定義)を得られる患者割合を有意に増大するかについては不明であった。NEJM誌2020年2月27日号掲載の報告。4サイクルのペムブロリズマブ3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチン投与 試験は、未治療のStageIIまたはIIIのトリプルネガティブ乳がん患者を2対1で無作為に2群に割り付けて行われた。一方の群には、術前補助療法として4サイクルのペムブロリズマブ(200mg)3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチンを投与(784例)。もう一方の群には、同サイクルのプラセボ3週間ごと+パクリタキセルとカルボプラチンを投与した(390例)。その後、両群に、4サイクルのペムブロリズマブまたはプラセボの追加投与と、ドキソルビシン-シクロホスファミドまたはエピルビシン-シクロホスファミドの投与を行った。 根治手術後にも術後療法として、ペムブロリズマブまたはプラセボの3週間ごと投与を最大9サイクル行った。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における根治手術時における病理学的完全奏効と無イベント生存期間だった。病理学的完全奏効の推定治療差は約14%ポイント 初回中間解析では、無作為化された最初の患者602例のうち、根治手術時における病理学的完全奏効が認められたのは、ペムブロリズマブ群64.8%(95%信頼区間[CI]:59.9~69.5)、プラセボ群51.2%(44.1~58.3)だった(推定治療群間差:13.6%ポイント、95%CI:5.4~21.8、p<0.001)。 追跡期間中央値15.5ヵ月後(範囲:2.7~25.0)において、根治手術不能の病勢進行や局所/遠隔再発または2次原発がんの発生、全死因死亡のいずれかを認めたのは、ペムブロリズマブ群784例中58例(7.4%)、プラセボ群390例中46例(11.8%)であった(ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.43~0.93)。 全治療段階において、Grade3以上の治療関連有害事象の発生は、ペムブロリズマブ群では78.0%、プラセボ群が73.0%であり、うち死亡例はそれぞれ3例(0.4%)と1例(0.3%)であった。

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