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KRAS G12C変異陽性NSCLCへのadagrasib、臨床的有効性示す/NEJM

 プラチナベースの化学療法と抗PD-1/抗PD-L1抗体による治療を受けたKRAS G12C変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、経口adagrasibは、臨床的有効性を示し新たな安全性シグナルは認められなかった。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のPasi A. Janne氏らによる、進行固形がん患者を対象に行われている「KRYSTAL-1第I-II相試験」の一部である第II相コホート116例を対象とした検討の結果で、NEJM誌オンライン版2022年6月3日号で発表された。「KRYSTAL-1試験」の第I相-1b試験でKRAS G12C阻害薬adagrasibの臨床的活性および忍容可能な有害事象プロファイルは確認されていた。奏効率、奏効期間、無増悪生存などを検証 同試験第II相コホートでは、プラチナベースの化学療法と抗PD-1または抗PD-L1抗体による治療を受けたKRAS G12C変異陽性のNSCLC患者を対象に、adagrasib(600mg経口投与、1日2回)の投与を評価した。 主要評価項目は、盲検化された独立中央レビューで評価した客観的奏効(OR)。副次評価項目は、奏効期間、無増悪生存(PFS)、全生存(OS)および安全性などだった。奏効期間中央値は8.5ヵ月、無増悪生存期間は6.5ヵ月 2021年10月15日時点で、計116例の適格被験者がadagrasibによる治療を受けており(追跡期間中央値は12.9ヵ月)、うち98.3%が化学療法と免疫療法両方の既治療者だった。 ベースラインで測定可能病変のあった112例中、ORが認められたのは48例(42.9%)だった。奏効期間中央値は8.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.2~13.8)、PFS期間中央値は6.5ヵ月(4.7~8.4)だった。 2022年1月15日時点(追跡期間中央値:15.6ヵ月)で、OS中央値は12.6ヵ月(95%CI:9.2~19.2)だった。 中枢神経系統に安定した転移を認めた既治療患者33例において、頭蓋内OR率は33.3%(95%CI:18.0~51.8)だった。 治療関連の有害事象は97.4%で認められ、うちGrade1/2が52.6%、Grade3以上が44.8%(Grade5の2例を含む)報告された。投薬中止となった患者は6.9%だった。

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ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法のNCSLC1次治療、3年フォローアップ(CheckMate 9LA) /ASCO2022

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法(NIVO+IPI+Chemo)の無作為化第III相CheckMate9LA試験の3年間の追跡で、同レジメンの生存ベネフィットが引き続き観察されている。スペイン・Universidad Complutense de MadridのLuis G. Paz-Ares氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で、解析結果を発表した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間は最低36.1ヵ月であった(データカットオフ2022年2月15日)・3年全生存(OS)率はNIVO+IPI+Chemo群27%、化学療法(Chemo)群19%であった(HR:0.74、95%CI:0.62~0.87)。 ・PD-L1発現別の3年OS率は、PD-L1<1%では25%対15%(HR:0.67)、PD-L1≧1%では28%対19%(HR:0.74)、PD-L1 1~49%では26%対15%(HR:0.70)、PD-L1≧50%では33%対24%(HR:0.75)、といずれもNIVO+IPI+Chemo群で良好であった。・全集団の3年無増悪生存率はNIVO+IPI+Chemo群13%、Chemo群5%であった。・全集団の奏効率はNIVO+IPI+Chemo群38%、Chemo群25%であった。・全集団の奏効期間中央値はNIVO+IPI+Chemo群12.4ヵ月、Chemo群5.6ヵ月であった。・探索的研究における遺伝子変異とOS解析の結果、KRAS、TP53、STK11、KEAP1いずれもNIVO+IPI+Chemo群で良好な傾向だったが、遺伝子異常による違いは見られなかった。・3年追跡でも新たな安全性シグナルは確認されなかった。 発表者のPaz-Ares氏は、この結果は転移を有するNSCLCの1次治療の選択肢としてニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法を支持するものだと述べている。

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HER3-DXd、複数治療歴のあるHER3+乳がんでサブタイプによらず良好な結果/ASCO2022

 既治療のHER3陽性、転移を有する乳がん(mBC)患者を対象とした、HER3標的抗体薬物複合体(ADC)patritumab deruxtecan(HER3-DXd)の日米多施設共同非盲検第I/II相試験(U31402-A-J101)の結果、HR+/HER2-およびHER2+、そしてTNBC患者において、HER3-DXdの有効性と安全性が示された。米国・ダナファーバーがん研究所のIan E. Krop氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。 本試験では用量漸増フェーズ(HER3-DXd 1.6~8.0mg/kgを3週に1回静脈内投与)と用量設定フェーズを順に実施(HER2+12例を含む66例)。続いて行った用量拡大フェーズでは、HER3-high(膜陽性率≧75%)とHER3-low(膜陽性率25~75%)を定義し、サブタイプ別にそれぞれ用量が決められた。HER3-highのHR+/HER2-(6.4mg/kg:31例、4.8mg/kg:33例)、TNBC(6.4mg/kg:31例)、HER3-lowのHR+/HER2-(6.4mg/kg:21例)として、それぞれ3週に1回静脈内投与した。有効性および安全性は3つのフェーズのプール解析により評価された。・対象:進行/切除不能または転移を有するHER3陽性乳がん患者(用量漸増&用量設定フェーズでは2~6ラインの化学療法歴および≧2の進行病変、用量拡大フェーズでは進行病変に対する1~2ラインの化学療法歴)・有効性の評価:サブタイプ別に実施(HR+/HER2-:113例、TNBC:53例、HER2+:14例)・安全性の評価:HER3-DXd4.8mg/kg投与群(48例)、6.4mg/kg投与群(98例)、全例(182例)について実施 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点の年齢中央値はHR+/HER2-:55歳、TNBC:59歳、HER2+:58歳、日本からの参加は71%、87%、100%、進行病変への治療歴数中央値は6.0(2~13)、2.0(1~13)、5.5(2~11)と濃厚な治療歴を有していた。・2021年8月16日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値は31.9ヵ月、治療期間中央値は5.9ヵ月だった。・サブタイプ別の確定奏効率(ORR)は、HR+/HER2-:30.1%(95%信頼区間[CI]:21.8~39.4)、TNBC:22.6%(95%CI:12.3~36.2)、HER2+:42.9%(95%CI:17.7~71.1)だった。・サブタイプ別の奏効持続期間(DOR)中央値は、7.2ヵ月(95%CI:5.3~NE)、5.9ヵ月(95%CI:3.0~8.4)、8.3ヵ月(95%CI:2.8~26.4)だった。・サブタイプ別の無増悪生存期間(PFS)中央値は、7.4ヵ月(95%CI:4.7~8.4)、5.5ヵ月(95%CI:3.9~6.8)、11.0ヵ月(95%CI:4.4~16.4)だった。・治療中止に関連したTEAEは、4.8mg/kg投与群で10.4%、6.4mg/kg投与群で8.2%、全例で9.9%だった。・治療関連のILDは、4.8mg/kg投与群で2.1%、6.4mg/kg投与群で7.1%、全例で6.6%で発生したが、多くがGrade1~2(4.4%)だった。・≧Grade3の好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症は4.8mg/kg投与群に比べ6.4mg/kg投与群で多くみられたが、用量調整により管理可能であり、治療中止には関連しなかった。 ディスカッサントを務めたフランス・Eugene Marquis CenterのVeronique C. Dieras氏は、予後不良の濃厚な治療歴を有する患者群においてHER3-DXdはサブタイプによらず有望な活性を示したとし、最適用量やHER3発現状況の影響等について、さらなる研究が必要とコメントした。

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MCL高齢患者、BR-R療法+イブルチニブでPFSが2.3年延長/ASCO2022

 マントル細胞リンパ腫(MCL)の高齢患者は、過度の毒性のため集中的な化学療法や移植には適さない。ランダム化プラセボ対照二重盲検PhaseIIIのSHINE試験は、現在の初発MCL患者に対する標準的治療の一つであるベンダムスチン+リツキシマブ(BR療法)およびリツキシマブ(R)維持療法に、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬(BTKi)イブルチニブを併用することの有用性を見たもの。米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMichael L.Wang氏が結果を発表し、NEJM誌に同時掲載された。・対象:65歳以上のMCL患者。MIPIスコア(低中高リスク)によって層別化され、B(90mg/m2)とR(375mg/m2)6サイクルを投与し、イブルチニブ(560mgを毎日経口投与)群とプラセボ群に1:1でランダム化。CRまたはPRを達成した場合はRの維持を受け、両群で最大12サイクルを8週間ごとに実施。イブルチニブとプラセボは、病気の進行または許容できない毒性になるまで投与。・対照群:BR-R維持療法+プラセボ・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師が評価した無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、次治療までの期間、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2013年5月~2014年11月に日本を含む183施設で523例が登録された。・一次分析時点の追跡期間中央値は84.7ヵ月だった。両群でPFSが大幅に改善され、主要エンドポイントが満たされた(ハザード比:0.75、p= 0.011)。・PFS中央値はイブルチニブ群80.6ヵ月(6.7年)、プラセボ群52.9ヵ月(4.4年)よりも2.3年改善された。・ORRは、イブルチニブ群65.5%、プラセボ群57.6%だった(p=0.0567)。・OSは両群で差がなかった(p=0.648)。・次治療までの時間はイブルチニブ群で未到達だったが、プラセボ群より長い傾向が見られた。イブルチニブ群52例(19.9%)およびプラセボ群106例(40.5%)がその後の抗リンパ腫療法を受けた。・Grade3または4の有害事象の発生率は、イブルチニブ群81.5%、プラセボ群77.3%だった。BTKiの臨床的に重要な有害事象のうち、心房細動はイブルチニブ群13.9%とプラセボ群の6.5%で報告された。出血、高血圧、関節痛の発生率は両群で類似していた。QOLも両群で同様だった。 この結果によって、初発の高齢MCL患者に対するBR療法+R維持療法とイブルチニブの併用は、高齢あるいは自家造血幹細胞移植(ASCT)不適格の未治療MCL患者に対する新たな1次治療となりうることが示された。

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ミスマッチ修復機構欠損を有する局所進行直腸がんに対するPD-1阻害の効果/ASCO2022

 ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を有するStageII/IIIの局所進行直腸がんに対して、術前に抗PD-1抗体dostarlimabを投与することで、その後は放射線療法や手術療法を施行することなく治癒できる可能性があることが、小規模な前向きの第II相試験から明らかになった。米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのAndrea Cercek氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で発表した。 局所進行直腸がんに対しては、術前化学療法と放射線療法および手術療法の併用が標準治療となっている。この治療効果は高いものの、放射線療法や手術療法は患者に大きな負担を強いることになる。また、直腸がん患者の約5~10%はdMMRを有し、このような患者は化学療法に比較的耐性を示しやすい。一方で、チェックポイント阻害薬は、転移のあるdMMRがんに効果があり、10%程度の完全奏効(CR)率を示すことが知られている。同試験ではdMMRを有する直腸がんに対するPD-1阻害が、化学療法、放射線療法、手術療法の代替えになると仮定し、これを検証した。・対象:dMMRを有するStageII/IIIの局所進行直腸がん患者18例・方法:dostarlimabを3週おきに6ヵ月間投与し、その後に画像および内視鏡による評価を行い、臨床的なCRが得られれば手術療法なしに4ヵ月ごとに経過観察、CRが得られなれば化学放射線療法を行い、そこで臨床的なCRとなれば手術療法なしに経過観察、微小残存病変があれば手術療法を施行した(Simonの2段階デザイン)。・評価項目:[主要評価項目]化学放射線療法の有無でのPD-1阻害薬の奏効率(ORR)、化学放射線療法の有無でのPD-1阻害薬の12ヵ月後の病理学的完全奏効(pCR)率または臨床的完全奏効(cCR)率。[副次評価項目]安全性および忍容性 主な結果は以下のとおり。・試験開始時の患者背景は、平均年齢54歳(26-78歳)、腫瘍の深達度がT3/4が14例(78%)、リンパ節陽性が17例(94%)であり、平均腫瘍変異量は67mut/Mb(36-106)であった。・dostarlimabの6ヵ月投与が完了した最初の連続14例について、全例にcCRが得られ、ORRは100%であった。・平均観察期間6.8ヵ月の中で、Grade3/4の有害事象は認められず、化学療法、放射線治療、手術療法が必要になった患者はなく、再発例も認められなかった。

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NSCLC1次治療のNIVO+ IPI、5年生存は24%(CheckMate 227)/ASCO2022

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としてのニボルマブとイピリムマブ(NIVO+IPI)の併用療法は、PD-L1の発現状態を問わず、化学療法と比較して長期的な生存効果を示すことがCheckMate 227試験の5年間追跡結果から示された。この結果は米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)において、米国・Johns Hopkins Kimmel Cancer CenterのJulie R. Brahmer氏が発表した。CheckMate 227試験の5年追跡結果でNIVO+IPI群でのOS改善が継続 CheckMate 227試験の主な5年間追跡結果は以下のとおり。・最小フォローアップは61.3ヵ月であった(データカットオフ2022年2月15日)。・PD-L1≧1%は1189例、PD-L1

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ER+進行乳がん1次治療、パルボシクリブ+レトロゾールのOSの結果は?(PALOMA-2)/ASCO2022

 ER+/HER2-進行乳がんの1次治療として、パルボシクリブ+レトロゾールをプラセボ+レトロゾールと比較した第III相PALOMA-2試験において、副次評価項目である全生存期間(OS)は有意な改善が示されなかったことが報告された。米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのRichard S. Finn氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。 PALOMA-2試験では、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が示されている(追跡期間中央値23ヵ月でのPFS中央値:24.8ヵ月vs.14.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.58、p<0.001)。PFSの最終解析時、OSデータは必要なイベント数(層別log-rank検定で0.74未満のHR検出に390イベント必要)に達しておらず、2021年11月に必要イベント数に達したことからOSの最終解析を実施した。・対象:進行がんに対する治療歴のないER+/HER2-進行乳がんの閉経後女性 666例・試験群(パルボシクリブ群):パルボシクリブ+レトロゾール 444例・対照群(プラセボ群):プラセボ+レトロゾール 222例・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]OS、奏効率、安全性、バイオマーカー、患者報告アウトカム 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、パルボシクリブ群53.9ヵ月(95%CI:49.8~60.8)、プラセボ群51.2ヵ月(95%CI:43.7~58.9)だった(HR:0.956、95% CI:0.777~1.177、片側p=0.3378)。・同意撤回/追跡不能により生存データが得られなかった患者(パルボシクリブ群13%、プラセボ群21%)を除外した事後感度分析では、OS中央値はパルボシクリブ群51.6ヵ月(95%CI:46.9~57.1)、プラセボ群44.6ヵ月(95%CI:37.0~52.3)だった(HR:0.869、95%CI:0.706~1.069)。・化学療法までの期間の中央値は、パルボシクリブ群38.1ヵ月(95%CI:34.1~42.2)、プラセボ群29.8ヵ月(95%CI:24.7~34.8)だった(HR:0.730、95%CI:0.607~0.879)。・PALOMA-1試験とPALOMA-2試験を合わせたOS中央値(追跡期間中央値90ヵ月)は、パルボシクリブ群51.8ヵ月、プラセボ群46.8ヵ月で、HRは0.934(95%CI:0.780~1.120)だったが、無病生存期間12ヵ月超のサブグループでは、パルボシクリブ群64.0ヵ月、プラセボ群44.6ヵ月で、HRは0.736(95%CI:0.551~0.982)であった。 Finn氏は、「OSは数値的には改善したが、統計学的に有意ではなかった。しかしながら、この集団におけるOS中央値が50ヵ月以上であることはHR+乳がんの臨床経過において意味のある改善を示すものであり、それは無病生存期間12ヵ月超の患者で強調される」と述べた。さらに、「PALOMA-2試験では生存データが得られなかった患者の割合が大きく、また2つの群に偏りがあったことで、OSの解釈は限られる」と考察した。

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進行膵がん、TCR-T細胞療法が転移巣に著効した1例/NEJM

 米国・Earle A. Chiles Research InstituteのRom Leidner氏らが、KRAS G12Dを標的としたT細胞受容体(TCR)遺伝子治療により腫瘍縮小が得られた転移のある進行膵がん患者について報告した。膵管腺がんは現在の免疫療法に抵抗性を示し、依然として致死率が最も高いという。研究グループは以前、転移のある大腸がん患者の腫瘍浸潤リンパ球からKRAS G12Dを標的としたHLA-C★08:02拘束性TCRを同定し、自家KRAS G12D反応性腫瘍浸潤リンパ球を用いた治療により内臓転移の客観的縮小が観察されたことを報告し(N Engl J Med.2016;375:2255-2262.)、この腫瘍浸潤リンパ球由来のKRAS G12D反応性TCRが、HLA-C★08:02とKRAS G12Dを発現している腫瘍を有する患者の、TCR遺伝子治療として使用できる可能性が示唆されていた。NEJM誌2022年6月2日号掲載の報告。KRAS G12Dを標的としたHLA-C★08:02拘束性TCRを発現するT細胞を移植 患者は71歳女性で、67歳時に膵頭部腺がんと診断され、2018年に術前補助化学療法(FOLFIRINOX療法)、幽門輪温存膵頭十二指腸切除、術後FOLFIRINOX療法、カペシタビン併用放射線療法を実施した。 2019年まで再発なく経過したが肺転移が確認され、無症状で両肺に転移が進行したことから、2020年にピッツバーグ大学で実施された腫瘍浸潤リンパ球療法の臨床試験に参加するも、6ヵ月以内に肺転移の拡大が観察された。分子ゲノム研究の結果、PD-L1発現率(TPS)1%未満、KRAS G12D変異、マイクロサテライト安定、HLA-C★08:02発現などが確認されたことから、2021年6月、KRAS G12Dを標的とする2種類の同種HLA-C★08:02拘束性TCRを発現するよう別々のバッチでレトロウイルスによって形質導入した自家末梢血T細胞による治療を行った。肺転移巣は1ヵ月後で62%、6ヵ月後で72%縮小 細胞注入の5日前にトシリズマブ600mg単回静注、5日前と4日前にシクロフォスファミド30mg/kg/日静注による前処置を行った後、16.2×109個の自家T細胞を単回注入し(0日目)、細胞注入の18時間後に高用量IL-2(60万IU/mL、8時間毎静注)の投与を開始(予定していた6回の投与のうち、6回目は低血圧のため投与は行われず)。11日目に退院し、外来で骨髄増殖因子と血液製剤の投与を受けた。 細胞注入1ヵ月後の最初の追跡調査において、CTにより肺転移巣が62%縮小していることが観察され、RECIST v1.1に基づく部分奏効が得られた。この効果は最新の追跡調査時の細胞注入6ヵ月後も持続しており、RECIST v1.1に基づく腫瘍縮小は72%であった。 また、注入されたTCR改変T細胞は、注入の約1ヵ月後で循環血中の全T細胞の約13%、3ヵ月後で3.3%、6ヵ月後でも2.4%を占めていた。

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進行乳がん治療のパラダイムシフト、HER2低発現患者でT-DXdがPFSを大きく改善(DESTINY-Breast04)/ASCO2022

 HER2低発現で既治療の進行乳がん患者に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が治験医師選択の化学療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。従来HER2陰性に分類されてきた転移を有する乳がん(mBC)患者の約55%がHER2低発現に該当すると報告されている1)。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏が第III相DESTINY-Breast04試験の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。なおDESTINY-Breast04試験の結果は6月5日、New England Journal of Medicine誌に掲載された2)。DESTINY-Breast04試験、全例のOSがT-Dxd群で有意に改善・対象:HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)、1~2ラインの化学療法歴のある切除不能および/または転移を有する乳がん患者(ホルモン受容体陽性[HR+]の場合は内分泌療法抵抗性) 557例 以下の2群に2対1の割合で無作為に割り付け・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 373例・対照群(TPC群):治験医師選択の化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ナブパクリタキセルのいずれか) 184例・層別化因子:HER2発現状態(IHC 1+ vs.IHC 2+/ISH-)、化学療法歴、ホルモン受容体の状態、CDK4/6阻害薬による治療歴・評価項目:[主要評価項目]HR+患者における盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[主要副次評価項目]全例におけるBICRによるPFS、HR+患者および全例における全生存期間(OS)[その他の評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性、HR-患者の探索的解析  DESTINY-Breast04試験の主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点での患者特性は、年齢中央値:T-DXd群58歳vs.TPC群56歳、アジアからの参加:39% vs.36%、IHC 1+:両群で58%、HR+:89% vs.90%、化学療法歴(1ライン):59% vs.54%、CDK4/6阻害薬による治療歴:64% vs.65%だった。・データカットオフ(2022年1月11日)時点での追跡期間中央値は18.4ヵ月。・HR+患者におけるPFS中央値は、T-Dxd群10.1ヵ月vs.TPC群5.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.51(95%信頼区間[CI]:0.40~0.64、p<0.0001)でT-Dxd群で有意に改善した。・全例におけるPFS中央値は、9.9ヵ月vs.5.1ヵ月、HR:0.50(95%CI:0.40~0.63、p<0.0001)でT-Dxd群で有意に改善した。・HR+患者におけるOS中央値は、23.9ヵ月vs.17.5ヵ月、HR:0.64(95%CI:0.48~0.86、p=0.0028)でT-Dxd群で有意に改善した。・全例におけるOS中央値は、23.4ヵ月vs.16.8ヵ月、HR:0.64(95%CI:0.49~0.84、p=0.0010)でT-Dxd群で有意に改善した。・探索的評価項目であるHR-患者におけるPFS中央値は8.5ヵ月vs.2.9ヵ月でHR:0.46(95%CI:0.24~0.89)、OS中央値は18.2ヵ月vs.8.3ヵ月でHR:0.48(95%CI:0.24~0.95)だった。・HER2発現状態、CDK4/6阻害薬治療歴の有無を含むすべてのサブグループで、T-Dxdによるベネフィットが観察された。・HR+患者におけるORRはT-Dxd群52.6% vs.TPC群16.3%、DORは10.7ヵ月vs.6.8ヵ月。HR-患者におけるORRは50.0% vs.16.7%、DORは8.6ヵ月vs.4.9ヵ月だった。・Grade3以上のTEAEはT-Dxd群53% vs.TPC群67%で発生した。・治療期間中央値はT-Dxd群8.2ヵ月vs.TPC群3.5ヵ月、治療中止と関連したTEAEで最も一般的だったのはT-Dxd群がILD/肺炎(8.2%)、TPC群が末梢感覚神経障害(2.3%)だった。・T-Dxd群におけるILD/肺炎はGrade1が3.5%、Grade2が6.5%、Grade3が1.3%、Grade5が0.8%だった。 Modi氏は、mBC患者全体の最大約50%がHER2低発現に該当すると考えられるとし、今回のDESTINY-Breast04試験の結果は新たな治療標的となる患者群を明らかにするとともに、T-DXdがその標準治療となることを示したと結論付けている。

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抗体薬物複合体SG、複数治療歴のあるHR+転移乳がんでもPFS改善(TROPiCS-02)/ASCO2022

 内分泌療法、CDK4/6阻害薬、化学療法による複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、抗TROP2抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)が、医師選択治療(TPC)に比べ有意に無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、第III相TROPiCS-02試験で示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。 欧米では、SGは2種類以上の前治療歴を有する転移のあるトリプルネガティブ乳がんに対して承認されている。HR+/HER2-進行乳がんに対しては、第I/II相IMMU-132-01試験において、客観的奏効率(ORR)31.5%、PFS中央値5.5ヵ月、全生存期間(OS)中央値12ヵ月、管理可能な安全性プロファイルが確認されている。今回、HR+/HER2-転移乳がんに対する第III相TROPiCS-02試験の結果が報告された。・対象:HR+/HER2-の転移または局所進行した切除不能の乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注・対照群:TPC(カペシタビン、エリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビンから選択)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS[副次評価項目]OS、ORR、奏効持続期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、患者報告アウトカム、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2022年1月3日)で、SG群272例、TPC群271例であった。内臓転移例は両群共に95%、転移後の6ヵ月以上の内分泌療法歴は両群共に86%、CDK4/6阻害薬治療歴は12ヵ月以下ではSG群59%、TPC群61%、12ヵ月超ではSG群39%、TPC群38%、化学療法歴の中央値は両群共に3ラインだった。・PFS中央値はSG群5.5ヵ月、TPC群4.0ヵ月とSG群で改善し(HR:0.66、95%CI:0.53~0.83、p=0.0003)、6ヵ月PFS率は順に46.1%、30.3%、12ヵ月PFS率は21.3%、7.1%であった。サブグループ解析では、化学療法歴3ライン以上、内臓転移あり、65歳以上を含めて、SG群のPFSベネフィットが示された。・OSは、SG群13.9ヵ月、TPC群12.3ヵ月で有意差はなかったが(HR:0.84、95%CI:0.67~1.06、p=0.14)、今回は1回目の中間解析(全3回予定)であり、まだデータがmatureではなく現在フォローアップ中である。・ORRはSG群21%、TPC群14%(オッズ比:1.63、p=0.03)、CBRはSG群34%、TPC群22%(オッズ比:1.84、p=0.002)とどちらもSG群で高く、DOR中央値はSG群7.4ヵ月、TPC群5.6ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は全体でSG群74%、TPC群60%で、最も多かったのは好中球減少症(SG群51%、TPC群38%)と下痢(9%、1%)だった。SGの安全性プロファイルはこれまでの試験と同様であった。間質性肺疾患はSG群ではみられず(TPC群1%)、心機能不全および左室機能不全は両群共にみられなかった。  今回の結果から、Rugo氏は「複数の治療歴があり治療選択肢が限られている乳がん患者において、SGは統計学的に有意で臨床的に意味のあるベネフィットを示し、可能な治療選択肢として考慮されるべき」と述べた。

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食道がんに対するニボルマブ+イピリムマブとニボルマブ+化学療法が承認/小野薬品・BMS

 小野薬品とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年5月26日、ニボルマブとイピリムマブについて、根治切除不能な進行・再発の食道がんを対象とした併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 また小野薬品は、ニボルマブについて、同適応症に対してニボルマブと化学療法との併用療法に係る一部変更承認も取得した。 今回の承認は、治療歴のない切除不能な進行性、再発または転移のある食道扁平上皮がん患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法およびニボルマブと化学療法の併用療法を、化学療法と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相試験であるCheckMate-648試験の結果に基づいている。 同試験において、あらかじめ計画された中間解析で、ニボルマブによる上記2種類の併用療法が、化学療法と比較して、PD-L1発現率が1%以上の患者および全無作為化患者集団において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(OS)の延長を示した。本試験におけるニボルマブとイピリムマブの併用療法およびニボルマブと化学療法の併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告されている各薬剤のものと一貫していた。

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アテゾリスマブの非小細胞肺がん術後補助療法が承認/中外

 中外製薬は2022年5月26日、アテゾリズマブ(製品名:テセントリク)について、「PD-L1陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法」に対する適応追加の承認を取得した。 PD-L1発現状況の確認は、ロシュ・ダイアグノスティックスの病理検査用キット「ベンタナ OptiView PD-L1(SP263)」によって行う。同検査用キットはコンパニオン診断として2022年5月23日に適応追加の承認を取得している。 今回の承認は、非小細胞肺がんの術後補助療法における第III相臨床試験IMpower010試験の成績に基づいている。同試験は、腫瘍細胞でPD-L1が1%以上発現しているII期~IIIA期の非小細胞肺がんの手術および化学療法を実施後の患者において、支持療法と比較して、アテゾリズマブによる治療が再発または死亡のリスク(無病生存期間、DFS)を34%低下させた(ハザード比:0.66、95%信頼区間:0.50~0.88)。主な副作用(5%以上)は、甲状腺機能低下症、そう痒症、発疹、AST増加、ALT増加、甲状腺機能亢進症、発熱、関節痛等であった。■関連記事アテゾリズマブによるNSCLCアジュバント アジア人の成績(IMpower010)/日本臨床腫瘍学会免疫治療薬による非小細胞肺がん術後アジュバント「IMpower010」アテゾリスマブの非小細胞肺がん術後アジュバントが米国で承認/ロシュアテゾリズマブによるNSCLCアジュバントの成績は?(IMpower010)/ASCO2021

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膀胱がん摘除術後の生存・回復、ロボット支援 vs.開腹術/JAMA

 根治的膀胱摘除術を受けた転移のない膀胱がん患者において、体腔内尿路変向術(ICUD)を伴うロボット支援根治的膀胱摘除術(RARC)は開腹膀胱全摘除術(ORC)と比較し、術後90日間の生存および入院不要の院外療養日数を統計学的に有意に増加することが、英国・シェフィールド大学のJames W. F. Catto氏らによる医師主導型多施設共同第III相無作為化非盲検試験「iROC試験」の結果、示された。近年、RARCの実施頻度が増加しているが、ORCと比較して回復を改善するかどうかは不明であった。なお著者は、「今回示された両群の差については、臨床的意義があるかどうかまだ不確かである」と述べている。JAMA誌オンライン版2022年5月15日号掲載の報告。転移のない膀胱がん患者338例をロボット群または開腹群に無作為化 研究グループは、2017年3月~2020年3月の間に、英国内の9施設にて転移のない膀胱がん患者を登録した。適格基準は、転移のない尿路上皮・扁平上皮・腺がんまたは特殊型膀胱がん(≦N1)で、根治的膀胱摘除術の適応となる成人(18歳以上)患者であった。 適格患者338例を、ICUDを伴うRARC(ロボット)群(169例)またはORC(開腹)群(169例)に、尿路変向の種類および施設で層別化して無作為に割り付け、90日後、6ヵ月後および12ヵ月後に追跡調査を実施した(最終追跡調査日:2021年9月23日)。 主要評価項目は術後90日以内の生存および院外療養日数(術後入院期間・再入院・死亡の評価を意味する)、副次評価項目は合併症、有害事象、健康関連QOL、障害、全生存期間等を含む20項目であった。生存・院外療養日数中央値、ロボット群82日、開腹群80日で有意差あり 338例中317例が根治的膀胱摘除術を受けた(ロボット群161例、開腹群156例)。患者背景は平均年齢69歳、女性67例(21%)、術前化学療法歴107例(34%)、回腸導管再建282例(89%)であった。 主要評価項目の解析対象は305例(96%)で、術後90日以内の生存・院外療養日数中央値は、ロボット群82日(IQR:76~84)、開腹群80日(72~83)であった(補正後群間差:2.2日、95%信頼区間[CI]:0.50~3.85、p=0.01)。 血栓塞栓性合併症(1.9% vs.8.3%、群間差:-6.5%[95%CI:-11.4~-1.4])および創傷合併症(5.6% vs.16.0%、-11.7%[-18.6~-4.6])は、ロボット群が開腹群より低頻度であった。 開腹群では、ロボット群より5週後の健康関連QOLが不良であった(平均EQ-5D-5Lスコアの群間差:-0.07、95%CI:-0.11~-0.03、p=0.003)。また、5週後の障害も大きかったが(WHO DAS 2.0スコアの群間差:0.48、95%CI:0.15~0.73、p=0.003)、12週以降には有意差はなくなった(同:0.38、0.09~0.68、p=0.01)。 追跡期間中央値18.4ヵ月(IQR:12.8~21.1)において、ロボット群と開腹群とでがん再発(29/161例[18%]vs.25/156例[16%])および全死因死亡(23/161例[14.3%]vs.23/156例[14.7%])はいずれも有意差は認められなかった。

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高リスク早期乳がんへの術後アベマシクリブ、HR0.68でiDFS改善(monarchE Cohort 1)/ESMO BREAST 2022

 日本および欧州(EMA)での承認の対象である、腋窩リンパ節転移個数や腫瘍径といった臨床現場で判定しやすい特徴により定義された再発リスクの高いホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)早期乳がん患者に対して、術後薬物療法としてのCDK4/6阻害薬アベマシクリブと内分泌療法併用のベネフィットが示された。ドイツ・Evang. Kliniken Essen-MitteのMattea Reinisch氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)でmonarchE試験Cohort 1の有効性データを報告した。[monarchE試験 Cohort 1]・対象:HR+/HER2−の初発乳がん、遠隔転移なし・腋窩リンパ節転移陽性の症例(閉経状況問わず)、術前/術後の化学療法は許容・Cohort 1(全体の91%):腋窩リンパ節転移(pALN)が4個以上またはpALN1~3個かつGrade3の病変または腫瘍径≧5cm・試験群:アベマシクリブ150mg×2/日+標準的術後内分泌療法。アベマシクリブは最長2年間投与(アベマシクリブ+ET群:2,555例)・対照群:標準的術後内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、LH-RHアゴニストなど。薬剤は主治医選択)(ET群:2,565例)・評価項目:[主要評価項目]無浸潤疾患生存期間(iDFS)[副次評価項目]遠隔無転移生存期間(DRFS)、全生存期間(OS)、安全性、患者報告アウトカムなど Cohort 1における主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の臨床病理学的特徴は両群でバランスがとれていた(pALN≧4個:アベマシクリブ+ET群65.6% vs.ET群65.1%、Grade3:41.6% vs.40.9%、腫瘍径≧5cm:23.5% vs.23.6%)。・データカットオフは2021年4月1日、追跡期間中央値は28ヵ月。・2年間に到達せず治療が中止されたのはアベマシクリブ+ET群17.8% vs. ET群17.0%だった。・iDFSはアベマシクリブ+ET群で有意に改善し(ハザード比[HR]:0.680、95%信頼区間[CI]:0.572~0.808、Nominal p<0.0001)、2年iDFS率はアベマシクリブ+ET群92.6% vs.ET群89.6%、3年iDFS率は88.6% vs. 82.9%(3年後の絶対ベネフィット:5.7%)だった。・DRFSも有意な改善が認められ(HR:0.669、95%CI:0.554~0.809、Nominal p<0.0001)、2年DRFS率は94.1% vs.91.2%、3年DRFS率は90.2% vs. 85.7%(3年後の絶対ベネフィット:4.5%)だった。・主な再発部位は骨・肝臓・肺といった遠隔転移で、その発生率はアベマシクリブ+ET群で低かった(71.9% vs.75.6%)。・安全性解析結果は、アベマシクリブの既知の安全性プロファイルと一致した。 Reinisch氏は、ルーチンの乳がん診断の一環として特定可能な定義による再発高リスクのHR+/HER2−早期乳がん患者において、術後薬物療法としてのアベマシクリブと内分泌療法の併用が、遠隔転移のリスク低減を含む、浸潤性疾患リスクの臨床的に意義ある低減を示したとまとめている。

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第108回 「かかりつけ医」の制度化めぐり、日本医師会と財務省の攻防本格化

日医がかかりつけ医についての“新しい”考え方公表こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。連休後半は、大学の山のクラブの先輩が居住する長野県・原村に行って来ました。毎年、冬の八ヶ岳登山の時に、ベースキャンプとして宿泊させてもらう私の“別荘”です。先輩は1ヵ月ほど前から喉の痛みと違和感が続き、諏訪の病院で上部消化管の内視鏡検査を受けることになり、私が一緒に住んでいる犬と留守番をすることになったのです。検査の結果、食道に潰瘍状の病変が見つかりました。病理組織検査の結果待ちとなったのですが、少々嫌な予感がします。茨城に住む別の先輩も一昨年、III期の食道がんが見つかり、化学療法と組み合わせた大層な外科手術を受けています。身近な山仲間に食道がんが頻発しているのは、年齢と言ってしまえばそれまでですが、長年の飲酒や喫煙というリスクファクターの他に、ひょっとしたら長年の登山もがんのリスクになるということなのでしょうか……。ちょっとやれやれな週末でした。さて今回は、日本医師会が公表した、日医のかかりつけ医についての“新しい”考え方、『国民の信頼に応えるかかりつけ医として』について書いてみたいと思います。日医の中川 俊男会長は4月27日の定例記者会見で、診療所開業医を取り巻く社会の変化を踏まえ、かかりつけ医のあり方について改めて『国民の信頼に応えるかかりつけ医として』1)を取りまとめたと話し、その内容について解説しました。『国民の信頼に応えるかかりつけ医として』は「かかりつけ医」を、「患者さんが医師を表現する言葉」とした上で、「『かかりつけ医』は患者さんの自由な意思によって選択されます。どの医師が『かかりつけ医』かは、患者さんによってさまざまです。患者さんにもっともふさわしい医師が誰かを、数値化して測定することはできません。(中略)患者さんに信頼された医師が、『かかりつけ医』になるのです。患者さんと『かかりつけ医』の信頼関係にもとづいて、全国でさまざまな形のかかりつけ医機能が発揮されています。わたしたち医師は、かかりつけ医機能をさらに深化させるとともに、より温かみのあるものにしていきます」としています。「新しい医療技術の研鑽を積み、最善の治療を選択」そして、「かかりつけ医」の「努め」として、患者からいつでも何でも相談してもらえるよう、しっかりコミュニケーションを取って診察することや、その結果を分かりやすく伝えて治療目標を患者と共有すること、必要なときに適切なタイミングで適切な専門の医師や医療機関につなぐこと、だと定義。「かかりつけ医を中心に地域の医師がチーム一丸となって患者さんを支え」「日々、新しい医療技術の研鑽を積み、患者さんおよびご家族とともに最善の治療を選択」する、としています。また、地域社会での「かかりつけ医機能」については、健康相談や予防接種、健診などの社会的な活動や、警察医といった行政活動。災害時の地域の医療支援活動。地域の医師と連携して24時間365日、相談・受診に応じる体制を取るとともに、在宅当番医や休日・夜間の急患センター業務を担うこと、を挙げています。中川会長は、本文書を4月22日に岸田 文雄内閣総理大臣と面談した際に手渡し説明、都道府県医師会、郡市区医師会、会員には手紙2)を添えて送付したとのことです。財務省が“先制攻撃”、制度化提言新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって浮き彫りになった診療所開業医の役割や機能。中でも「かかりつけ医」の機能や制度化を巡っては、本連載でもこの1年間に「第59回 コロナ禍、日医会長政治資金パーティ出席で再び開かれる? “家庭医構想”というパンドラの匣」「第68回 「骨太」で気になった2つのこと かかりつけ医制度化拒む日医は開業医の質に自信がない?」「第97回 2022年診療報酬改定の内容決まる かかりつけ医、報酬は従来路線踏襲も制度化に向けた議論本格化へ」と、何度か取り上げてきました。2022年の診療報酬改定の議論の過程では、財務省や経済財政諮問会議が「かかりつけ医」の制度化を迫りましたが、具体的な議論にまでは進まず、改定後に持ち越されました。そして改定直後の4月13日、財務省は“先制攻撃”として、財政制度等審議会の分科会3)で「かかりつけ医」を認定する制度をつくることを提言しました。これは、政府が6月ごろにまとめる「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)への反映を目指してのものと言えます。コロナ禍の反省踏まえ認定制度と登録制を段階踏んで検討せよ財政制度等審議会の分科会は、「かかりつけ医機能の強化の取組が実体面で実効性を上げていたとは言えない状況下で、新型コロナの感染拡大を迎えた」「発熱等の症状が生じた患者は、まずはかかりつけ医等の地域での身近な医療機関に電話相談し、相談する医療機関に迷う場合には『受診・相談センター』に電話相談して、発熱外来の案内を受けて受診する仕組みが目指された。しかし、かかりつけ医等がいないこと、『受診・相談センター』に連絡がつながりにくいこと、加えて発熱外来を実施する医療機関名の公表を促すことにしていたにもかかわらず、実際には地域の医師会の合意等を得られない等で公表が進まなかったこと等から、発熱患者等が円滑に診療を受けられない状況が生じた」と、コロナ禍で浮き彫りになった外来医療体制の問題点を指摘しています。その上で、今後について「制度的対応が不可欠であり、具体的には、1)地域の医師、医療機関等と協力している、2)休日や夜間も患者に対応できる体制を構築している、3)在宅医療を推進しているといった、かかりつけ医機能の要件を法制上明確化したうえで、これらの機能を備えた医療機関をかかりつけ医として認定するなどの制度を設けること、こうしたかかりつけ医に対して利用希望の者による事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導入していくことを、段階を踏んで検討していくべきである」と、制度化と登録制の創設を提言しています。英国のGP(General Practitioner)制度を多分に意識した仕組みと言えます。2013年の合同提言の定義との違いは?今回の日医の「かかりつけ医」に対する“新しい”考え方の公表は、こうした制度化の動きを牽制したものと言えます。中川会長はこの日の記者会見で、財務省が創設を提言している「かかりつけ医」の制度化について、「医療費抑制のために国民の受診の門戸を狭めるようなことであれば認められない」と述べたとのことです。日医が関与した「かかりつけ医」の定義としては、2013年8月に日本医師会と四病院団体協議会が合同提言した『医療提供体制のあり方』が使われてきました。その中では「かかりつけ医」を「なんでも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義しています。機能面としては今回の考え方と概ね同じと言えますが、中川会長は、「合同提言は、病床機能をどうするかが大きなテーマだったが、今回はかかりつけ医に焦点を当てたもの」として、1)かかりつけ医は患者が医師を表現する言葉である、2)患者ごとにかかりつけ医が異なり、患者にふさわしい医師が誰かを、数値化して測定することはできない、3)患者が信頼できる医師が、かかりつけ医であることを明示、の3点が合同提言との違いであると説明したとのことです。注目される「骨太の方針2022」「患者側の表現」「測定することはできない」「患者が決める」とは、制度化への反対を前提とした論理構成と言えるでしょう。とは言うものの、「みんなでこれからも頑張ります」という精神論的色彩が強く、コロナ禍で明らかとなった診療所開業医の機能不全を解消する具体的な仕組みは提案されていません。財務省の提言に対抗するものとしては弱過ぎる印象です。そもそも「かかりつけ医」を持つ患者は5割ほどに過ぎないと言われています。今はあれこれ用意されている「かかりつけ医」関連の診療報酬も、「患者が決める(選ぶ)」医師だけにしか支払われない仕組みになったら医師側は逆に困ると思うのですが、どうでしょう。本連載でも何度も書いてきたように、今や財務省の意向は岸田首相の考えだとも言えます。岸田首相は4月13日の経済財政諮問会議で、「コロナ禍での経験や受診行動の変容を踏まえ、かかりつけ機能が発揮される制度整備や新たに導入したリフィル処方の使用促進など、医療・介護サービス改革の継続・強化に取り組む」と述べています。翌15日の衆院厚生労働委員会では、「かかりつけ医」のあり方について「機能を明確化しつつ、患者と医療者、双方にとってその機能が有効に発揮されるための具体的な方策を検討する」との考えを示しています。経済財政諮問会議が6月にまとめる予定の「骨太の方針2022」に記載される「かかりつけ医」の内容によっては、制度化の議論が一気に進む可能性があります。そうなれば、コロナ禍を経験しても何も変えようとしなかった日本医師会は、本当に正念場を迎えることになるでしょう。参考1)国民の信頼に応えるかかりつけ医として/日本医師会2)日本医師会「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」について3)財政制度等審議会 財政制度分科会 議事要旨等/財務省

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免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療の心毒性、どう回避する?【見落とさない!がんの心毒性】第11回

がん治療は大きく進歩しており、がんの生物学的特性が明らかになるにつれ、疾患の臓器特性を超えた臓器横断的治療が開発され承認されるようになりました。今回は前回の予告通り、臓器横断的治療における心毒性についてのアンケート結果をお示しいたします。ここでは、免疫チェックポイント阻害薬と放射線療法に焦点を当てます。さらに、がんゲノム医療の進歩により遺伝子変異の解析が進み、それに伴い開発されたTRK阻害薬(NTRK(neurotrophic receptor tyrosine kinase)融合遺伝子陽性固形がんに投与される)による心毒性や、同じ薬剤でも投与される臓器別に異なる副作用が発生するなど新たな問題が出現しているようです。これからのがん治療は、ゲノム関連も含めた病院全体を巻き込んだ臓器横断的な診療科の協力が必要となっています。免疫チェックポイント阻害薬における心毒性第9回、第10回でお届けしてきた読者アンケートからも見えてきたのは、多くの読者においてやはり免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による心毒性の影響に関心があることでした。このICIに関する点については第5回「免疫チェックポイント阻害薬:“予後に影響大”の心筋炎を防ぐには?」(塩山 渉氏、筆者)で解説しました。ICIは臓器横断的に発症する悪性腫瘍に適応が拡大することで、がん治療に大きな変化をもたらしました。その一方で、全身に及ぶ免疫関連副作用(irAE)が大きな問題となっています。irAEに対応するためには、腫瘍科医のみならず、免疫専門医、内分泌内科医、神経内科医、循環器科医、さらには呼吸器内科医や皮膚科医など幅広い医療スタッフの参加が必要です。irAE症例によっては救急治療医の参加も必要ですね!がん免疫療法において、ICI療法の中心は血管新生阻害薬や放射線療法を併用する複合免疫療法へ移行しており、心毒性においてirAEに併用療法による副作用が加わりその管理がより複雑化しています。しかし複合免疫療法は、がん免疫における血管新生阻害因子の作用が解明したことから生み出されており、血管・がん・免疫に共通点があるところなどは腫瘍循環器医として非常に興味深く感じています。放射線関連心血管合併症(RACD:Radiation Associated Cardiovascular diseases)第7回では「進化する放射性治療に取り残されてる?new RTの心毒性対策とは」(志賀 太郎氏)について解説しました。免疫療法と同様に臓器横断的に用いられる放射線治療は、その有効性から使用頻度が急速に増加している反面、やはりRACDが大きな問題となりつつあります。とくに遅発性に出現することから、その病態や対応に関して多くの腫瘍科医や循環器科医に十分理解されているとは言えない病態でした。このような背景の元で2021年9月に開催された第4回日本腫瘍循環器学会学術集会で、このRACDに関するシンポジウムが日本心血管インターベンション治療学会との共催で開催され、とても好評でした。今後は、放射線治療医の先生方が主体となり日本放射線腫瘍学会でも日本腫瘍循環器学会との共催プログラムの開催が決定しています。課題としては、放射線治療後晩期障害に対するフォローアップ診療の構築が成されていない点でしょうか。学会間交流をきっかけに異業種間連携の拡がりを期待し、将来的には連携網の発達により実地医家への連携発展を期待します。また、実地医家の方との連携が深まる事で、放射線治療後晩期障害のすくい上げに繋がる「放射線治療後の遠隔期・長期的フォローアップ」の仕組み作りに結び付く事を期待します。循環器医(心血管インターベンション専門医)における放射線障害と放射線治療医の放射線障害の概念は微妙に異なっていたようです。さらに、がん治療において放射線療法は腫瘍科医ではなく放射線治療医が行うことから、両者の間にも微妙な隙間があったかもしれません。その一方で、小児・AYA世代がんサバイバーにおける放射線化学療法による晩期合併症は、心毒性のみならず内分泌毒性、神経毒性、そして二次発生がんなど多くの問題点を有しています。今後は、腫瘍循環器医は急性期・慢性期そして晩期心毒性などを通じて腫瘍科医、放射線治療科、そして小児科の間をつなぐ役割を果たすことが期待されています。今回のアンケート結果(前編、中編含む)でご紹介した内容以外にもたくさんのご意見をいただき誠にありがとうございました。紙面の関係から一部のご紹介となりました。がんと循環器における関係は、2017年の日本腫瘍循環器学会設立を機に、国や学会レベルでも学際領域の連携が進み、基礎・臨床・疫学研究への支援が加速しています。今回の企画により、今まで触れることのなかった多くの皆さまにおかれましてOnco-Cardiology(腫瘍循環器学)が身近なものになりましたら幸いです。第二部では、症例編として症例クイズ形式にて臨床で難渋した例など興味ある事柄について解説していく予定です。臨床の現場で毎日がん診療を行っている私どもにとって、総論だけでは語りつくせないたくさんの事柄やさまざまな問題点がございます。そして、同じく第一線で診療をなさっておられる読者の皆さまはさらに多くの疑問をお持ちなのではないでしょうか。読者の皆さまの声、リクエストは以下よりお待ちしております。講師紹介

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食道扁平上皮がんに対する1次治療における新たな抗PD-L1阻害薬sintilimabの有用性(解説:上村直実氏)

 切除不能進行・再発食道扁平上皮がんに対するファーストライン治療は、シスプラチンを中心とした白金製剤と5-FUないしはパクリタキセルの2剤併用化学療法であったが、最近、1次治療から化学療法に免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1阻害薬)を加えたレジメンの有用性が次々と報告され、日常診療における治療方針が急激に変化している。すなわち、最近のランダム化比較試験の結果、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、camrelizumab、toripalimabと化学療法の併用群が化学療法単独群と比較して安全性に差を認めない一方、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に延長することが示されている。今回は、すでに報告されている4剤と同様の試験デザインによって、5番目の抗PD-L1阻害薬であるsintilimabの切除不能食道扁平上皮がんに対する同様の有効性がBMJ誌に報告されている。 わが国の臨床現場でも食道学会ガイドラインに記載されるとともに、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とペムブロリズマブ(同:キイトルーダ)が保険収載され、切除不能食道がんに対する1次治療における有用性が実際の診療において役に立つ体制が整備されつつあると思われる。ただ一方では、これら高価な抗PD-L1阻害薬によるOSの延長期間は3ないしは4ヵ月間であるが、コストパフォーマンスの観点からこの延命期間がコストに適合したものかどうか議論されていることも事実である。 最後に、筆者のコメントでは必ず述べているが、日本における食道がん診療は欧米と異なる保険診療体制の下「がんの早期発見」による死亡率低下に注力しており、内視鏡検査により小さな早期がんを発見し、内視鏡的切除により根治することが可能となっていることを強調したい。

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IDH1変異陽性AML、ivosidenib併用でEFS延長/NEJM

 イソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)をコードする遺伝子に変異のある急性骨髄性白血病と新たに診断された患者の治療において、ivosidenibとアザシチジンの併用療法はプラセボとアザシチジン併用と比較して、無イベント生存期間(EFS)を有意に延長し、発熱性好中球減少症や感染症の発現頻度は低いものの好中球減少や出血は高いことが、スペイン・Hospital Universitari i Politecnic La FeのPau Montesinos氏らが実施した「AGILE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年4月21日号で報告された。20ヵ国155施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 研究グループは、IDH1変異陽性急性骨髄性白血病の治療における、アザシチジン治療へのivosidenib追加の安全性と有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験を行い、2018年3月~2021年5月の期間に、20ヵ国155施設で参加者を登録した(Agios PharmaceuticalsとServier Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 対象は、18歳以上、新規のIDH1変異陽性急性骨髄性白血病と診断され、強力な導入化学療法が適応とならず、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)performance-statusスコア(0~4点、点数が高いほど機能障害度が高い)が0~2点の患者であった。 被験者は、ivosidenib(500mg、1日1回、経口投与)+アザシチジン(75mg/m2体表面積、28日サイクルで7日間、皮下または静脈内投与)、またはプラセボ+アザシチジンの投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントはEFSであり、無作為化の時点から、治療不成功(24週までに完全寛解が達成されない)、寛解後の再発、全死因死亡のいずれかまでの期間と定義された。完全寛解、客観的奏効、IDH1変異消失の割合も良好 146例が登録され、ivosidenib群に72例(年齢中央値76.0歳[範囲:58.0~84.0]、女性42%、二次性25%)、プラセボ群に74例(75.5歳[45.0~94.0]、49%、28%)が割り付けられた。 追跡期間中央値12.4ヵ月の時点におけるEFSは、ivosidenib群がプラセボ群に比べ有意に長かった(治療不成功、寛解後の再発、死亡のハザード比[HR]:0.33、95%信頼区間[CI]:0.16~0.69、p=0.002)。また、無イベント生存割合は、ivosidenib群が6ヵ月時40%、12ヵ月時37%で、プラセボ群はそれぞれ20%および12%と推定された。 追跡期間中央値15.1ヵ月時の全生存期間中央値は、ivosidenib群が24.0ヵ月と、プラセボ群の7.9ヵ月に比し有意に延長した(死亡のHR:0.44、95%CI:0.27~0.73、p=0.001)。 完全寛解の割合は、ivosidenib群が47%(95%CI:35~59)であり、プラセボ群の15%(8~25)よりも高率だった(オッズ比[OR]:4.8、95%CI:2.2~10.5、p<0.001)。また、完全寛解の期間中央値はそれぞれ未到達(95%CI:13.0~評価不能)および11.2ヵ月(95%CI:3.2~評価不能)、12ヵ月時の完全寛解割合は88%および36%、完全寛解までの期間中央値は4.3ヵ月(範囲:1.7~9.2)および3.8ヵ月(1.9~8.5)であった。 客観的奏効(完全寛解、血球数の回復を伴わない完全寛解、部分寛解、形態学的に白血病ではない状態)の割合は、ivosidenib群が62%(95%CI:50~74)と、プラセボ群の19%(95%CI:11~30)に比べ有意に高かった(OR:7.2、95%CI:3.3~15.4、p<0.001)。奏効期間中央値は、それぞれ22.1ヵ月(95%CI:13.0~評価不能)および9.2ヵ月(6.6~14.1)だった。 完全寛解または部分的な血球数の回復を伴う完全寛解の検体におけるIDH1変異消失の割合は、ivosidenib群が52%、プラセボ群は30%であり、骨髄単核細胞からのIDH1変異消失のデータがある患者におけるIDH1変異消失を伴う完全寛解の割合は、それぞれ33%および6%(p=0.009)であった。 全グレードの有害事象は、両群で貧血(ivosidenib群31%、プラセボ群29%)、発熱性好中球減少(28%、34%)、好中球減少(28%、16%)、血小板減少(28%、21%)、悪心(42%、38%)、嘔吐(41%、26%)の頻度が高く、出血イベント(41%、29%)と感染症(28%、49%)も高頻度に認められた。Grade3以上の有害事象では、貧血(25%、26%)、発熱性好中球減少(28%、34%)、好中球減少(27%、16%)、肺炎(23%、29%)、感染症(21%、30%)の頻度が高かった。全グレードの分化症候群は、14%および8%に認められた。 著者は、「ivosidenib+アザシチジン併用療法は、優れたIDH1変異消失割合とともに持続的で深い奏効をもたらし、健康関連QOLや輸血依存離脱も良好であったことから、変異型IDH1蛋白を標的とする治療の有用性が明らかとなった」とまとめ、「今後、ベネトクラクスをベースとする治療との比較や、これらのレジメンの併用を評価する試験が期待される」としている。

699.

進行食道扁平上皮がん1次治療、化療にsintilimab併用でOS延長/BMJ

 進行または転移のある食道扁平上皮がんの1次治療において、シスプラチン+パクリタキセル併用療法へのsintilimab上乗せは、プラセボと比較し全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間を有意に延長することが示された。中国・Peking University Cancer Hospital and InstituteのZhihao Lu氏らが多施設共同無作為化二重盲検第III相試験「ORIENT-15試験」の結果を報告した。進行または転移のある食道扁平上皮がんの1次治療は、これまで標準ガイドラインに従いプラチナ製剤を含む2剤併用化学療法に限られてきたが、一部の無作為化試験では、1次化学療法後に進行した食道扁平上皮がんに対して抗PD-1抗体単剤療法が有効であることが示されていた。BMJ誌2022年4月19日号掲載の報告。進行食道扁平上皮がん患者659例においてOSを評価 研究グループは、2018年12月14日~2021年4月9日の期間に、中国の66施設および中国外(フランス、スペイン、米国、オーストラリア)の13施設において、18歳以上の未治療進行または転移のある食道扁平上皮がん成人患者659例を、化学療法に加えてsintilimab(体重60kg未満は3mg/kg、体重60kg以上は200mg)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた(sintilimab群327例、プラセボ群332例)。化学療法は、当初、シスプラチン75mg/m2+パクリタキセル175mg/m2の3週間ごと併用投与であったが、後に治験担当医師がシスプラチン+パクリタキセルまたはシスプラチン+5-FU(800mg/m2、1~5日目)のいずれかを選択できるよう修正された。 主要評価項目は、全患者およびPD-L1陽性(CPS≧10)患者におけるOSであった。 無作為化された659例中、616例(93%)がシスプラチン+パクリタキセル、43例(7%)がシスプラチン+5-FUの投与を受けた。sintilimab+化学療法群のOS期間、4ヵ月以上有意に延長 中間解析(データカットオフ日2021年4月9日)において、OS期間中央値は全患者でsintilimab群16.7ヵ月、プラセボ群12.5ヵ月(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.51~0.78、p<0.001)、PD-L1陽性患者でそれぞれ17.2ヵ月、13.6ヵ月(0.64、0.48~0.85、p=0.002)であり、いずれもsintilimab群で有意に延長した。 また、PFS期間中央値も、全患者でsintilimab群7.2ヵ月、プラセボ群5.7ヵ月(HR:0.56、95%CI:0.46~0.68、p<0.001)、PD-L1陽性患者でそれぞれ8.3ヵ月、6.4ヵ月(0.58、0.45~0.75、p<0.001)であり、いずれもsintilimab群で有意に延長した。 治療関連有害事象の発現率は、sintilimab群98%(321/327例)、プラセボ群98%(326/332例)、Grade3以上の治療関連有害事象の発現率はそれぞれ60%(196/327例)、55%(181/332例)であった。

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ニボルマブ+化学療法の非小細胞肺がん術前補助療法を申請/小野・BMS

 小野薬品工業は、2022年4月25日、ニボルマブ(製品名:オプジーボ)について、化学療法との併用療法による切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の術前補助療法に対する効能又は効果に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。 今回の承認申請は、切除可能なNSCLC患者の術前補助療法として、ニボルマブと化学療法の併用療法を評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相試験であるCheckMate-816試験(ONO-4538-55)の結果に基づいている。 同試験において、ニボルマブと化学療法の併用療法の3回投与は、化学療法単独と比較して、本試験の主要評価項目である無イベント生存期間(EFS)および病理学的完全奏効(pCR)で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した。また、安全性プロファイルは、これまでにNSCLC患者を対象としたニボルマブおよび化学療法の各薬剤または併用療法の試験で報告されているものと一貫していた。

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