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Dr.香坂のアカデミック・パスポート 「文献の引き方」から「論文の書き方」まで

第1回 「失神の鑑別疾患を知りたい」マニュアルや教科書の使い方を考える第2回 「利尿薬の量を決めたい」原著論文の使い方を考える第3回 論文を効率的に読む 第4回 前向き研究を読む 第5回 後向き研究を読む第6回 研究スタイルの使い分けの意味を知る第7回 学会発表、論文執筆にチャレンジ 学術的知見を臨床に、臨床の知見を研究に生かす。そんなアカデミックな医師を目指す方のために、臨床の第一線で活躍しながら、臨床研究のスペシャリストでもあるDr.香坂が道筋を指南します。広い話題・狭い話題の調べ方、効率的な論文・研究の読み方、そして、学会発表や論文執筆のやり方をシンプルかつ明快にレクチャーします。臨床が忙しい、現場主義という方に、見てほしい番組です。さあ、アカデミック・ドクターへの第一歩を踏み出してください。第1回 「失神の鑑別疾患を知りたい」マニュアルや教科書の使い方を考えるDr.香坂の研究室にアカデミック・ドクターを目指す1人の医師が「失神の鑑別疾患を知りたい!」と相談に訪れます。教科書、マニュアル、ガイドライン・・・・いろいろなものがあって何をどう調べればいいのかわからなくなったようです。そんな広い話題を調べるにはどうすればいいのか、Dr.香坂がお教えします。第2回 「利尿薬の量を決めたい」原著論文の使い方を考えるDr.香坂の研究室にアカデミック・ドクターを目指す1人の医師が「利尿薬の量を決めるのに、何を見ればいいですか!」と相談に訪れます。前回の広い話題のときにでた「マニュアル」や「ガイドライン」などもみたようですが・・・なかなか決められません。簡単過ぎる「マニュアル」、そして長過ぎる「ガイドライン」。こんな狭い話題を調べるのにちょうどいいこととは?現代ならではwebサービスでの調べ方や原著論文の使い方をDr.香坂が指南。英語が苦手な人でも大丈夫。第3回 論文を効率的に読むいよいよ医学論文の読み方です。有名な医学雑誌の傾向と特徴を紹介。医学絵論文の構成を考察。すると・・・論文は臨床家向けに書かれていない!?臨床に生かすための論文のどこを読むべきか、その読み方をDr.香坂が指南します。第4回 前向き研究を読むここまでで、論文を探し、そして読めるようになってきましたか?そこで、次は“統計”です。統計は複雑で難しく、誰もが1度はぶち当たる壁かもしれません。でも大丈夫!Dr.香坂がプライドをかけてお教えします!まずは、シンプルな比較研究すなわち前向きランダム化研究から始めてみましょう!第5回 後向き研究を読む手っ取り早く研究をするなら「後向き研究」?後向き研究では、条件をそろえてスタートする前向き研究とは異なり、エンドポイントを満たした時点からさかのぼって、データを分析するため、統計的にフェアな状況に当てはめることが重要となります。それが「交絡因子の補正」。えっ?「交絡因子って?」と思ったあなた、Dr.香坂がしっかりとお教えします。そのほか、「ロジスティック回帰分析」「Cox Hazard重回帰分析」など、統計やってる感満載でありながら、単純明快に解説します。第6回 研究スタイルの使い分けの意味を知るこれまで、前向き研究と後向き研究について解説してきました。やはり、前向き研究のほうがエビデンスレベルも高いから、スゴイ?後向き研究はすぐできるし、大したことない?そう思っていませんか?いやいやそんなことはありません!それぞれの研究に、得意・不得意があり、それぞれの研究にメリット・デメリットがあります。そしてそれらはお互いに相補的な役割を果たしています。そのあたりをスッキリとまとめてお教えします。第7回 学会発表、論文執筆にチャレンジアカデミック・ドクターを目指すDr.澤野が、いよいよ学会発表にチャレンジ!でも発表は1週間後。PCを片手に焦ってスライドを作ろうとするのですが、それにDr.香坂が待ったをかけます。そう、まずはPCから離れてアウトラインから始めること!スライド作成から発表の作法まで、学会発表の“キモ”をコンパクトにわかりやすく解説します。そして、学会発表のあとは論文へ。その方法も併せて指南します。

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あれは幻だったのか?RA系阻害薬の“降圧を超えた臓器保護作用”(解説:石上 友章 氏)-648

 米国・ニューヨーク大学のBangalore氏らは、“Renin angiotensin system inhibitors for patients with stable coronary artery disease without heart failure: systematic review and meta-analysis of randomized trials.”と題するメタ解析・システマティックレビューで、『改めて』RA系阻害薬に、降圧効果を超えて虚血性心疾患を抑制する効果がないことを明らかにした。 あえて『改めて』と紹介したのは、言うまでもない。一連のディオバン関連の臨床研究不正の不名誉な嚆矢の1つともいえる、KYOTO Heart Studyが発表された2009年ESC Hotline Commentaryとして、本試験に対する慎重な解釈を表明したのが、Bangalore氏ならびに、筆頭著者のMesserli氏であった1)。共著者の1人であるRuschitzka氏にいたっては、学会場で『These "wonderful" results "were almost too good to be true."』と言い放ったと伝えられている2)。  彼らの直感的なコメントは8年の時を経て、科学的に正当な手法によって堂々と証明された。不正を見抜く確かな洞察力と、洞察を洞察のままでおくことなく自らの手で科学的な手法を用いて証明する、真の科学的態度に最大限の敬意を表したい。本研究の成果は、アブストラクトの最後の一文に凝縮されている。“Evidence does not support a preferred status of RASi over other active controls. ” RA系阻害薬の降圧を超えた臓器保護作用は、作られたエビデンスにほかならなかったのではないのか?

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夜中のトイレ【Dr. 中島の 新・徒然草】(159)

百五十九の段 夜中のトイレ夜中に何回かトイレに起きる、という高齢患者さんの訴えを今までは聞き流していました。が、ついに自分にも夜中に1回はトイレに起きる時が来てしまったのです。周囲の話では、50代ならだいたいそんなもん。それを聞いて安心しておりました。ところが、いつの間にか夜中に3回もトイレに起きるようになってしまいました。2時、3時半、5時とか、そんな感じ。自分としては50代で夜中に1回、60代で2回、70代で3回くらいのトイレかな、と漠然と思っていたのに。完全に人生設計が狂った!50代で3回もトイレに起きていたら、70代になったらどないするねん。人として終わっちまったよ、これは。ところがある日のこと。夕食後にまとめてのんでいる薬のうちの1つが、降圧利尿薬であることに気付きました。ひょっとしてこれのせいか?そう思って、夜ではなく朝にのむようにしてみると。あら不思議、朝までグッスリ!気付いてみれば当たり前ですが、夕食後に降圧利尿薬をのんだら頻回トイレで眠れません。もしかして、そんな些細な事で患者さんたちを苦しめたりしていないか、自分が処方している薬のほうも確認しなくては、と思った次第です。最近は、便利な配合剤の中にそっと利尿薬が入れてあることもあるので、そちらにも注意しなくてはなりませんね。最後に1句利尿剤 夜にのんだら 眠れません

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ランダム化試験としては不十分、実用化にはさらなる検討が必要(解説:桑島 巖 氏)-645

 近年の高血圧治療の傾向として、降圧目標値が低くなっており、その達成のためには多剤併用は避けられなくなっている。そこで、RAS阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬、β遮断薬の標準用量の4分の1ずつを4剤組み合わせたQuadpillという薬剤を作り、その降圧効果をプラセボと二重盲検法で比較したのがこの論文である。 その結果、プラセボに比べて外来血圧は22/13mmHg、24時間血圧は19/14mmHg下降したという。 しかし、症例数が55例、追跡期間がたった4週間と、ランダム化試験としてはかなり不十分である。それをシステマティックレビューを追加して補っている。システマティックレビューといっても本試験と同じく4分の1用量を4剤組み合わせた論文は1論文に過ぎず、これも不十分である。Lancet誌に掲載されるレベルの論文ではないが、話題作りとしては悪くはない。 高齢者では降圧薬以外にも多くの薬を服用している例が多いことを考慮すると、配合剤で服薬錠数を減らすという発想は必要かもしれない。 本試験では症例数が不十分ながら18例中18例(100%)が140/90mmHgの降圧目標値を達成できたと述べている。 配合剤の問題点は、副作用が発現したときのさじ加減が困難なことであるが、おのおのが標準量の4分の1量であれば問題ないであろうというのがQuadpillである。 少量とはいっても、利尿薬、β遮断薬には有害事象の発現の懸念はある。さじ加減を重んじ、病態に応じた高血圧治療を推奨している専門家としては、この論文の結果を臨床医に推奨するには抵抗を感じる。単剤を増量した場合との降圧効果の比較データも欲しいところである。症例数を十分に増やし、もう少し追跡期間も延長して安全性を確認するなど、今後の慎重な研究が望まれる。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第35回

第35回:急性単関節炎の診断アプローチ監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 以前、多関節炎の鑑別(第29回)についての記事を掲載しましたが、今回は単関節炎の診断アプローチについて取り上げます。 単関節炎のcommonな原因としては変形性関節症・痛風・外傷が挙げられますが、プライマリ・ケア領域では全身性疾患の早期症状として単関節炎を診る可能性もあります。そのため、関節炎の評価に加えて「もう一歩踏み込んだ診察・病歴聴取」を行うことが診断の鍵となります。 以下、American Family Physician 2016年11月15日号 より1) 急性単関節炎の背景に潜む病態の手掛かりをつかむために、包括的な病歴と身体所見が必要となる。病歴聴取では次の項目がとくに大切である。年齢、随伴症状、併存疾患、内服歴、関節に関する既往症、外傷歴、ダニ刺傷の既往、静脈注射の使用歴、痛風の家族歴、性交歴、渡航歴、普段の食事内容、飲酒歴、職業歴など。また労作時に関節炎の症状が悪化するものの、安静時には改善する場合は物理的な原因が考えられる。一方、安静時でも症状が増悪する場合は炎症性疾患の可能性があり、その場合は朝のこわばりを認めることもある。以下、代表的な疾患やアプローチの仕方について述べる。1)頻度の多い疾患である変形性関節症は労作で症状増悪するのが典型的である。朝のこわばりを認めることがあるものの、30分以内に改善する。また安静時にこわばりの再発を認めることがある(Gelling現象)。しかし、関節リウマチと比較して変形性関節症における朝のこわばりの持続時間は短く、関節リウマチでは症状が45分以上も続く。2)典型的な痛風発作は夜間に始まり、24時間以内に症状はピークへ達する。また疼痛や発赤、腫脹を引き起こす。肥満、高カロリー食の摂取、アルコール摂取歴、そしてループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬の内服歴は、痛風発作を疑う手掛かりとなる。外傷を契機に痛風発作が起きる可能性もあり、化膿性関節炎と非常によく似た臨床症状を呈することがある。3)先行する関節痛症状が感染を示唆することがある。そのため本当に単関節の症状なのかどうか判断することは大切である。なお、淋菌性関節炎は遊走性の関節炎と腱鞘炎症状が先行する。4)末梢関節の炎症を伴う軸骨格の炎症性関節炎(例:仙腸関節炎)は、脊椎関節炎を示唆する。脊椎関節炎は、しばしば単関節炎として症状が現れ、遊走性または波及的に関節から関節へ進展する。その他の症状(筋腱付着部の痛みやソーセージ様に腫脹する指趾炎)がないかを患者へ尋ねることは重要である。またぶどう膜炎を認める患者や、尿道炎を認める患者(Reiter症候群)もいる。5)皮膚症状の病歴と乾癬の家族歴から、単関節炎を呈する乾癬性関節炎を病状早期に疑うこともある。以上のように、それぞれの疾患の特徴を押さえることで、診断につながる重要な手掛かりを得ることができる。※本内容にはプライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Becker JA, et al. Am Fam Physician. 2016;94:810-816.

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安定冠動脈疾患にRAS阻害薬は他剤より有効か/BMJ

 心不全のない安定冠動脈疾患の患者に対するレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の投与は、プラセボとの比較では心血管イベント・死亡のリスクを低減するものの、Ca拮抗薬やサイアザイド系利尿薬などの実薬との比較では、同低減効果は認められなかった。また、対プラセボでも対照集団が低リスクの場合は、同低減効果は認められなかった。米国・ニューヨーク大学のSripal Bangalore氏らが、24の無作為化試験についてメタ解析を行い明らかにし、BMJ誌2017年1月19日号で発表した。心不全のない安定冠動脈疾患患者へのRAS阻害薬投与については、臨床ガイドラインでは強く推奨されているものの、最近の現行治療への上乗せを検討した試験結果では、対プラセボの有効性が示されなかった。非心不全・冠動脈疾患患者100例以上、追跡期間1年以上の試験を対象にメタ解析 研究グループは、PubMed、EMBASE、コクラン・ライブラリCENTRALを基に、2016年5月1日までに発表された、心不全のない(左室駆出分画率40以上または臨床的心不全なし)安定冠動脈疾患を対象に、RAS阻害薬とプラセボまたは実薬を比較した24の無作為化試験についてメタ解析を行い、RAS阻害薬の有効性を検証した。 対象とした試験は100例以上の該当患者を含み、また追跡期間は1年以上だった。アウトカムは死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、血行再建術、糖尿病発症、有害事象による服薬中止だった。RAS阻害薬は死亡率14.10/1,000人年超の集団で有効 分析対象とした試験の総追跡期間は、19万8,275人年だった。 RAS阻害薬群はプラセボ群に比べ、全死因死亡(率比:0.84、95%信頼区間[CI]:0.72~0.98)、心血管死(0.74、0.59~0.94)、心筋梗塞(0.82、0.76~0.88)、脳卒中(0.79、0.70~0.89)、また、狭心症(0.94、0.89~0.99)、心不全(0.78、0.71~0.86)、血行再建術(0.93、0.89~0.98)のリスクをいずれも低減した。一方で実薬との比較では、いずれのアウトカム発生リスクの低減は認められなかった。率比は全死因死亡1.05(95%CI:0.94~1.17、交互作用のp=0.006)、心血管死1.08(0.93~1.25、p<0.001)、心筋梗塞0.99(0.87~1.12、p=0.01)、脳卒中1.10(0.93~1.31、p=0.002)などだった。 ベイズ・メタ回帰分析の結果、RAS阻害薬による死亡・心血管死リスクの低減が認められたのは、対照群のイベント発生率が高値の集団(全死因死亡14.10/1,000人年超、心血管死7.65/1,000人年超)だった試験のみで、低値の集団だった試験では同低減効果は認められなかった。 著者は、「心不全のない安定冠動脈疾患患者において、RAS阻害薬の心血管イベントおよび死亡の抑制は、プラセボ対照群の試験でのみみられ、実薬対照群の試験ではみられなかった。またプラセボ対照群においても、RAS阻害薬の有益性は、主に対照群のイベント発生率が高かった試験では認められたものの、低い場合は認められなかった」と述べている。そのうえで、「その他の実薬対照を含めてRAS阻害薬が優れていることを支持するエビデンスはない」とまとめている。

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日本初のARB/CCB/利尿薬の3剤合剤降圧薬を発売

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:青野 吉晃、以下「日本ベーリンガーインゲルハイム」)とアステラス製薬株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長CEO:畑中 好彦、以下「アステラス製薬」)は2016年11月18日、「ミカルディス錠」(AT1受容体拮抗薬(ARB)、持続性カルシウム拮抗薬(CCB)アムロジピンベシル酸塩およびチアジド系利尿薬ヒドロクロロチアジド(HCTZ)の3剤合剤「ミカトリオ配合錠」の発売を発表した。 ミカトリオ配合錠は、日本で初めてのレニンアンジオテンシン系阻害薬、カルシウム拮抗薬、少量利尿薬の3成分を含有した配合剤。従来のARB/CCB配合剤やARB/HCTZ配合剤に比べ、高い降圧効果が24時間持続することが期待できるという。 また、ミカトリオ配合錠は、これまでのテルミサルタン製剤と同様に、日本ベーリンガーインゲルハイムが製造し、アステラス製薬が販売を行い、両社で共同販促を行っていく。(ケアネット 細田 雅之)関連リンク新薬情報:ミカトリオ配合錠

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小規模試験で効果超大のときには要注意(解説:折笠 秀樹 氏)-607

 相対リスク0.2以下(リスク低下80%以上)という超大効果をもたらした統計学的有意のランダム化比較試験のうち、その後追試として大規模試験が実施されたケース44件について、統計学的有意結論の相違が調査された。 相対リスク0.2以下で統計学的有意(p<0.05)であっても、追試として実施された大規模試験で結論が覆った(非有意となった)ケースは43%(=19/44)もあった。ほぼ半数で、結論が後に覆ったことになる。なお、元の超大効果を示したのは小規模試験、すなわち例数中央値99例、イベント数中央値14件にすぎなかった。 追試の大規模試験でも結論が変わらなかったのは57%(=25/44)あり、関節リウマチに対する生物学的製剤、急性心筋梗塞に対する硝酸薬、高血圧に対するサイアザイド系利尿薬などが含まれていた。また、追試の大規模試験でも相対リスクが同じく0.2以下と超大だったのは、16%(=4/25)しかなかった。 100例程度の小規模試験で、しかも超大効果(リスク低下80%以上)を示す臨床試験は要注意ということだ。統計学的有意でないと出版されないこともあり、出版された小規模試験は超大効果を示していることが多い。超大効果は偶然だったかもしれないし、バイアスを含み試験の質が低かった可能性も否めないだろう。だから、小規模試験は注意しないといけない。

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プライマリケアでの高リスク処方を減らすには/BMJ

 プライマリケアでの高リスク処方減少に、どのような介入が有効か。英国・ダンディー大学のBruce Guthrie氏らは、教育的介入とフィードバックを行う介入、さらにフィードバックに行動変容を促す介入を加えた3つの方法を比較するクラスター無作為化試験を行った。結果、教育的介入では有意な減少効果はみられなかったが、フィードバックを加味した2つの介入は教育的介入との比較で12~14%減少し、高リスク処方減少に有効であることが認められたという。医療やアウトカムの質の向上や安全対策では、審査とフィードバックを行う介入が有効であることが示されているが、処方安全の観点ではエビデンスはほとんどなかった。また、これまでのフィードバック試験では、方法論的に限界があった。BMJ誌オンライン版2016年8月18日号掲載の報告。教育的介入 vs.フィードバックも実施 vs.さらに行動変容介入も 試験は、スコットランドの3つの衛生局区域からプライマリケア医262/278例(94%)が参加して行われた。被験者を3群に無作為に割り付け、第1(通常介入)群には、教育的介入として、患者特定の検索をサポートする教育的教材を電子メールで送付した(88例)。第2(フィードバック介入)群には、通常介入に加えて、高リスク処方の実施率が年4回、試験期間中計5回にわたって電子メールで送られた(87例)。第3(フィードバック+理論的行動変容介入)群には、前者2つの介入に加えてさらに、フィードバックの際に、行動変容要素が組み込まれた介入が行われた(87例)。 主要アウトカムは、患者レベルでみた、抗精神病薬、NSAIDs、抗血小板薬の高リスクに関する6つの処方(1:75歳以上の患者における経口抗精神病薬の処方割合、2:65歳以上で利尿薬とACE阻害薬またはARB治療を受ける患者における経口NSAIDの処方割合など)の複合であった。副次アウトカムは、6つの処方それぞれの評価であった。 主要解析は、15ヵ月時点で評価した、2つのフィードバック介入群の第1群と比較した高処方の割合であった。副次解析では、それぞれの介入による即時の変化傾向を調べた。フィードバックの有用性を確認 主要解析の結果、高リスク処方(主要アウトカム)は、通常介入群では6.0%(3,332/5万5,896例)から5.1%(2,845/5万5,872例)への減少であったが、フィードバック介入群では5.9%(3,341/5万6,194例)から4.6%(2,587/5万6,478例)への減少が認められた(通常介入と比較したオッズ比[OR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.80~0.96、p=0.007)。また、フィードバック+行動変容介入群では、6.2%(3,634/5万8,569例)から4.6%(2,686/5万8,582例)への減少が認められた(0.86、0.78~0.95、p=0.002)。 副次解析において、本試験の介入前に、高リスク処方が減少傾向にあったことが認められた。そのうえで各介入の介入前と介入後の影響を調べた結果、通常介入の教育的介入では、介入前にみられた減少傾向に影響を与えていないことが判明した。一方、フィードバックを求めた2つの介入では、介入前よりも介入後に、有意に急速な減少が認められた。 これらの結果を踏まえて著者は、「処方の安全性データのフィードバックは、高リスク処方減少に効果的である。介入は、電子カルテが一般的に使用されるようになっているかどうかで実施可能である」と述べている。

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スルホニル尿素(SU)薬と低血糖―essential drugとしてのグリクラジドを再考する―(解説:住谷 哲 氏)-577

 世界保健機関(WHO)が発行している資料に、Model lists of essential medicines(EML)がある。WHOが認定した必須医薬品(essential drugs)のリストで、1977年に初版が発行され、その後2年ごとに改訂されている。最新の19版は2015年に発行された1)。薬剤選択の基準は“disease prevalence and public health relevance, evidence of clinical efficacy and safety, and comparative costs and cost-effectiveness”とされ、血糖降下薬としてリストアップされているのは、ヒトインスリン、メトホルミン、そして本論文で議論されているSU薬のグリクラジドのみである。2011年の17版までは長らくSU薬としてグリベンクラミドが挙げられていたが、2013年の18版からグリクラジドに変更された。全世界的に高齢2型糖尿病患者数が激増していることが変更の背景にあり、SU薬の中で低血糖の頻度が少なく安全性が高いことが、グリクラジドが選択された主な理由である2)。 本論文は、その点について疑問を提出した点で意義がある。腎機能低下およびSU薬投与量の増加が低血糖のリスクとなるのはほぼ常識であり、いわば付け足しのデータと考えてよい。問題は、WHOのお墨付きを得たグリクラジドが、essential drugとしてふさわしくないのか否かである。 本論文は、英国のCPRDデータベースに基づく観察研究である。インスリン以外の血糖降下薬が投与された18歳以上の患者12万803例を約4年にわたり観察した。70~79歳が対象患者の24.0%、80歳以上が23.5%を占めており、対象患者の約半数は70歳以上の高齢者であった(原著 表1)。9万2,005例(76.2%)はメトホルミン単剤投与であったが、注目すべきは、全対象患者の中で80歳以上の76.7%、70~79歳の76.3%がメトホルミンの単剤投与であった(原著 付属表A)。低血糖はRead code(診療所での疾患登録のための符牒)において低血糖と登録された場合または随時血糖値<3.0mmol/L(54mg/dL)が記録された場合と定義した。その結果、低血糖の頻度は、腎機能にかかわらずSU薬よりメトホルミンが少ない、腎機能が低下すれば増加する、SU薬の投与量が増加すれば増加する、ことが確認された。前述のように、これらはほとんど常識である。おそらく著者らの主眼は、グリメピリド、グリベンクラミド、グリピジド、トルブタミドおよびグリクラジドそれぞれの低血糖リスクを比較した表4(原著)にあると思われる。 それぞれのSU薬のメトホルミンに対する調整後HRは、グリメピリド1.97[95%信頼区間:1.35~2.87]、グリベンクラミド7.48[同:4.89~11.44]、グリピジド2.11[同:1.24~3.58]、トルブタミド1.24[同:0.40~3.87]、グリクラジド2.50[同:2.21~2.83]であり、グリベンクラミドを除いた他のSU薬の低血糖リスクは同等であり、とくにグリクラジドが少ないとはいえない、とするのが著者らの主張である。 しかし、この多変量解析の結果には少し疑問が残る。グリクラジドは、その代謝産物が血糖降下作用を有さないことから(inactive metabolites)、腎機能低下患者(これは高齢者と言い換えてもよい)に対するSU薬の第1選択薬として推奨されている。このことは、SU薬を処方された患者の80%以上にグリクラジドが処方された結果にも反映されている(原著 表4)。したがって、腎機能低下患者(つまり低血糖のリスクが高い患者)においては他のSU薬ではなくグリクラジドが処方された可能性が高く、各SU薬の調整HRを計算する際には腎機能(eGFR)による調整が必要と考えられるが、なされていない。eGFRの代替として「ループ利尿薬の使用」が独立変数として組み込まれているが適切ではないと思われる。 わが国では「第3世代のSU薬」として一世を風靡したグリメピリドが、おそらく現時点においても最も処方されているSU薬と思われる。グリクラジドとグリメピリドのどちらが低血糖を起こしやすいか、との疑問に対してはランダム化比較試験(RCT)により厳密に評価することが必要である。これについて検討したものにGUIDE(GlUcose control In type 2 diabetes: Diamicron MR vs.glimEpiride)試験がある3)。両薬剤の安全性を評価するためにクレアチニンクリアランス>20mL/minの患者が対象とされた。使用されているのがグリクラジド徐放剤(Diamicron MR)であるのと研究資金供与がServier(Diamicron MRの発売元)である点には注意が必要であるが、厳密に評価した結果、グリクラジドの低血糖の頻度はグリメピリドの約50%と結論された。 低血糖のリスクはあるが、血糖コントロールのためにはどうしてもSU薬が必要な患者は少なからず存在する。しかし、低血糖は広義には1つのsurrogate endpointと考えられる。UKPDS33において細小血管障害を抑制することが証明されたことから4)、低血糖のリスクにもかかわらず、グリベンクラミドは血糖降下薬として長く使用されてきた。ADVANCE試験は、厳密にはグリクラジドの有効性を検討した試験ではないが5)、グリベンクラミドと同じくグリクラジドが細小血管障害を抑制することをほぼ証明したといってよい。グリメピリドには細小血管障害を抑制したエビデンスはない。したがって、筆者は本論文の結果に基づいて、グリクラジドをessential drugとするWHOの見解を変更する必要はないと考える。

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EMPA-REG OUTCOME試験のサブ解析:SGLT2阻害薬は糖尿病腎症の進展を抑制する(解説:吉岡 成人 氏)-561

エンパグリフロジンによる糖尿病腎症の進展阻止 SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンが、心血管イベントの既往がある2型糖尿病患者において心血管死、総死亡を抑止することを示したEMPA-REG OUTCOME試験のサブ解析が第76回米国糖尿病学会で発表され、その詳細がNew Engl J Med誌に掲載された(オンライン版2016年6月14日号)。 顕性腎症の発症(尿アルブミン>300mg/gCr)、推定GFR(eGFR)が45mL/min/1.73m 2以下となり血清クレアチニン値が倍増する、腎代替療法の導入、腎疾患による死亡の4つのアウトカムを「腎症の発症・進展」として、Cox比例ハザードモデルによる解析を行った結果、腎症の発症・進展がエンパグリフロジン投与群で12.7%(4,124例中525例)、プラセボ群18.8%(2,061例中388例)でエンパグリフロジンでの有意なリスク低下が確認された(ハザード比0.61、95%信頼区間:0.53~0.70、p<0.001)。対象者のeGFRは30mL/min/1.73m2以上で、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAS)阻害薬が80%に、利尿薬が58%に処方されている。顕性腎症への進行、血清クレアチニン値の倍加、腎代替療法導入の各項目単独でもエンパグリフロジンは有意にリスクを低下させた。しかし、腎症を伴わない患者が早期腎症(尿アルブミン≧30mg/gCr)に至るリスクは軽減されていない(エンパグリフロジン群:51.5%、プラセボ群:51.2%、ハザード比0.95、95%信頼区間:0.87~1.04、p=0.25)。腎症の進展と発症に関わるメカニズムは違うのか エンパグリフロジン投与群では、投与量(10mg、25mg)にかかわらず、一過性にeGFRが2~3mL/min/1.73m2低下するが、その後回復傾向を示している。一方、プラセボ群ではeGFRが経時的に緩やかに低下している。 糖尿病では、尿糖の排泄に伴い近位尿細管でのグルコース量が増加すると、SGLT2の作用によりグルコースとともにNa+の再吸収が活性化するため、遠位尿細管にある傍糸球体装置の緻密斑(macula densa)に到達するNa、Clが減少し、GFRの低下によるClの減少と同様な事態が生じる。そこで、尿細管糸球体フィードバック(TGF:tubuloglomerular feedback)機構のシグナルが作動し、糸球体の輸入細動脈を拡張させて糸球体内圧を上昇させるために糸球体過剰濾過がもたらされる。一方、SGLT2阻害薬が投与されると、グルコースの再吸収は阻害され、近位尿細管でのNa+の再吸収も減少し、緻密斑に到達するNa、Clが増加する。そのため、GFRの低下が改善された状態と同様な状況となり、輸入細動脈の拡張が解除されて糸球体内圧の過剰濾過が是正されるというのである。このTGF機構の回復が、腎症の進展を抑止したのではないかと推察されている。 心血管イベントの既往がある2型糖尿病患者における腎症の進展が、エンパグリフロジンで抑止されうることは示された。しかし、早期腎症の発症抑止にはつながらない可能性も同時に示唆された。今後は、その背景にある病態の解明が待たれる。

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SPRINT試験:frailな高齢者でも厳格な降圧が有用であることを示した点で画期的、ただし腎機能の悪化や有害事象も起こりやすい(解説:桑島 巖 氏)-540

 今回のSPRINTサブ解析では、75歳以上の高齢者高血圧では収縮期血圧140mmHg未満を目指す標準降圧群よりも、120mmHg未満の厳格降圧群のほうが生命予後の改善に良好であることを示した点で画期的である。サブ解析とはいえども対象数は2,636例と、解析には十分堪えられる症例数であり、信頼性は高い。 厳格降圧群で実際に達成された血圧値は、厳格群で123.4/62.0mmHgであることから、後期高齢者では収縮期血圧120~130mmHgが好ましく、拡張期血圧への配慮は不要であることを示唆している。かつて、拡張期血圧が80mmHg以下では死亡率が増加するというJ-カーブ仮説がまことしやかに流布していたことを考えると、今昔の感がある。 本試験の特徴は、frailtyについても詳細に検討しており、参加者の55%以上がless fit(頑強でない)であることや、歩行速度が遅い症例も28%前後含まれており、試験の対象のfrailtyが一般社会の後期高齢者の頻度とは差がないことが示されている。この点、頑強な高齢者ばかりを対象とした研究ではないといえるが、結果を読み解くうえで、frailな例や歩行速度の遅い症例は試験からの脱落率も高いことに注意が必要である。 全死亡を除いた1次エンドポイントは、厳格降圧群のほうが標準降圧群に比べて34%減少を示しており、NNTは27とかなり低い数値である。1次エンドポイントの中でも心不全抑制率が顕著である。しかし、もともとCKDを有していなかった症例において、厳格降圧群において腎機能悪化症例が、3倍以上増えたことは注意しておく必要がある。また、厳格降圧による有用性は心筋梗塞や脳梗塞といった一般的な心血管合併症ではなく、心不全というこれまでのトライアルではしばしば2次エンドポイントとされてきた疾患であることの解釈が難しい。おそらく、降圧利尿薬の有効性が発揮されているのであろう。 また、SPRINT試験では脳卒中既往例や糖尿病例は含まれていないことから、もともと心機能が低下している症例が高血圧という後負荷が軽減されたことで、心不全の抑制に有効であったとも解釈できる。 frailtyのサブ解析では、frailになるほどエンドポイント発症率が経過とともに高くなっていることが示されているが、興味あることにfrailな症例ほど厳格降圧の1次エンドポイント抑制効果が大きくなるという結果は、意外である。ただ、厳格治療群のほうが、低血圧、失神、電解質異常、急性腎障害が多いという結果は、後期高齢者ではただ積極的に血圧を下げるだけではなく、これらの有害事象が起こりやすいことを念頭に置きながら、きわめて慎重な対応が必要であることを示唆している。

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特発性拡張型心筋症〔DCM : idiopathic dilated cardiomyopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義拡張型心筋症(idiopathic dilated cardiomyopathy: DCM)は、左室の拡張とびまん性の収縮障害を特徴とする進行性の心筋疾患である。心不全の急性増悪を繰り返し、やがて、ポンプ失調や致死性不整脈により死に至る。心筋症類似の病像を呈するが、病因が明らかで特定できるもの(虚血性心筋症や高血圧性心筋症など)、全身疾患との関連が濃厚なもの(心サルコイドーシスや心アミロイドーシスなど)は特定心筋症と呼ばれ、DCMに含めない。■ 疫学厚生省特発性心筋症調査研究班による1999年の調査では、わが国における推計患者数は約1万7,700人、有病率は人口10万人あたり14.0人、発症率は人口10万人あたり3.6人/年とされる。男女比は2.5:1で男性に多く、年齢分布は小児から高齢者まで幅広い。■ 病因DCMの病因は一様ではない。一部のDCMの発症には、遺伝子異常、ウイルス感染、自己免疫機序が関与すると考えられているが、その多くがいまだ不明である。1)遺伝子異常DCMの20~30%程度に家族性発症を認めるが、孤発例でも遺伝要因が関与するものもある。心機能に関与するどのシグナル伝達経路が障害を受けても発症しうると考えられており、心筋のサルコメア構成蛋白や細胞骨格蛋白をコードする遺伝子異常だけでなく、Caハンドリング関連蛋白異常の報告もある。2)ウイルス感染心筋生検検体の約半数に、何らかのウイルスゲノムが検出される。コクサッキーウイルス、アデノウイルス、C型肝炎ウイルスなどのウイルスの持続感染が原因の1つとして示唆されている。3)自己免疫機序βアドレナリン受容体抗体や抗Caチャネル抗体といったさまざまな抗心筋自己抗体が、患者血清に存在することが判明した。DCMの発症・進展に自己免疫機序が関与する可能性が指摘されている。■ 症状本疾患に疾患特異的な症状はない。初期には無症状のことが多いが、病状の進行につれて、労作時息切れ、易疲労感、四肢冷感などの左心不全症状を認めるようになり、運動耐容能は低下する。また、動悸、心悸亢進、胸部不快感といった頻脈・不整脈に伴う症状を訴えることもある。一般には、低心拍出所見よりもうっ血所見が前景に立つことが多い。両心不全へ至ると、全身浮腫、頸静脈怒張、腹水などの右心不全症状が目立つようになる。右心機能が高度に低下している重症例では、左心への灌流低下から、肺うっ血所見を欠落する例があり、重症度判断に注意を要する。■ 予後一般に、DCMは進行性の心筋疾患であり、予後は不良とされる。5年生存率は、1980年代には54%と低かったが、最近では70~80%にまで改善したとの報告もある。標準的心不全治療法が確立し、ACE阻害薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬といった心筋保護薬の導入率向上がその主たる要因と考えられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)DCMの診断は、特定心筋症の除外診断を基本とすることから、二次性心筋症を確実に除外することがDCMの診断に直結する。■ 身体所見一般に、収縮期血圧は低値を示すことが多く、脈圧は小さい。聴診所見では、心尖拍動の左方偏移、ギャロップリズム(III・IV音)、心雑音および肺ラ音の聴取が重要である。■ 胸部X線多くの症例で心陰影は拡大するが、心胸郭比は低圧系心腔の大きさに依存するため、正常心胸郭比による本疾患の除外はできない。心不全増悪期には、肺うっ血像や胸水貯留を認める。Kerley B line、peribronchial cuffingが、肺間質浮腫所見として有名である。■ 心電図疾患特異度の高い心電図所見はない。ST-T異常、異常Q波、QRS幅延長、左室側高電位、脚ブロック、心室内伝導障害など、心筋病変を反映した多彩な心電図異常を呈する。また、心筋障害が高度になると、不整脈を高頻度に認めうる。■ 血液生化学検査心不全の重症度を反映し、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびその前駆体N末端フラグメントであるNT-proBNPの上昇を認める。また、交感神経活性の指標である血中カテコラミンや微小心筋障害を示唆するとされる高感度トロポニンも上昇する。低心拍出状態が進行すると、腎うっ血、肝うっ血を反映し、クレアチニンやビリルビン値の上昇を認める。■ 心エコー検査通常、びまん性左室収縮障害を認め、駆出率は40%以下となる。心リモデリングの進行に伴い、左室内腔は拡張し、テザリングや弁輪拡大から機能性僧帽弁逆流の進行をみる。最近では、僧帽弁流入血流や組織ドップラー法を用いた拡張能の評価、組織ストレイン法を用いた収縮同期性の評価など、より詳細な検討が可能になっている。■ 心臓MRI検査シネMRIによる左室容積や駆出率計測は、信頼度が高い。ガドリニウムを用いた心筋遅延造影パターンの違いによるDCMと虚血性心筋症との鑑別が報告されており、心筋中層に遅延造影効果を認めるDCM症例では、心イベントの発生率が高く、予後不良とされる。■ 心筋シンチグラフィ123I-MIBGシンチグラフィによる交感神経機能評価では、後期像での心臓集積(H/M比)の低下や洗い出し率の亢進を認める。201Tlあるいは99mTc製剤を用いた心筋シンチグラフィでは、patchy appearanceと呼ばれる小欠損像を認め、その分布は、冠動脈支配に一致しない。心電図同期心筋SPECTを用いて、左室容積や駆出率も計測可能である。■ 心臓カテーテル検査冠動脈造影は、冠血管疾患、虚血性心筋症の除外を目的として施行される。血行動態の評価目的に、左室内圧測定や左室造影による心収縮能評価、肺動脈カテーテルを用いた右心カテーテル検査も行われる。左室収縮能(最大微分左室圧: dP/dtmax)の低下、左室拡張末期圧・肺動脈楔入圧の上昇、心拍出量低下を認める。■ 心筋生検DCMに特異的な病理組織学的変化は確立されていない。典型的には、心筋細胞の肥大、変性、脱落と間質の線維化を認める。心筋炎や心サルコイドーシス、心ファブリー病などの特定心筋症の除外目的に行われることも多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)DCMに対する根本的な治療法は確立していない。そのため、(1) 心不全、(2) 不整脈、(3) 血栓予防を治療の根幹とする。左室駆出率の低下を認めるため、収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠する。■ 心不全の治療1)心不全の生活指導生活習慣の是正を基本とする。適切な水分・塩分摂取量および栄養摂取量の教育、適切な運動の推奨、禁煙、感染予防などが指導すべきポイントとされる。2)薬物療法収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠し、薬剤を選択する。心臓のリバースリモデリングおよび長期予後改善効果を期待し、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)といったレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬とβ遮断薬、抗アルドステロン薬を導入する。原則として、β遮断薬は、カルベジロールあるいはビソプロロールを用い、忍容性のある限り、少量より漸増する。さらに、うっ血症状に応じて、利尿薬の調節を行う。急性増悪期には、入院下に、強心薬・血管拡張薬といったより高度な点滴治療を行う。3)非薬物療法(1)心室再同期療法(CRT)左脚ブロックなど、心室の収縮同期不全を認める症例に対し、心室再同期療法が行われる。除細動機能を内蔵したデバイス(CRT-D)も普及している。心拍出量の増加や肺動脈楔入圧の低下、僧帽弁逆流の減少といった急性期効果だけでなく、慢性期効果としての心筋逆リモデリング、予後改善が報告されている。CRTによる治療効果の乏しい症例(non-responder)も一定の割合で存在することが明らかになっており、その見極めが課題となっている。(2)陽圧呼吸療法、ASVわが国では、心不全患者に対するASV(adaptive servo ventilation)換気モード陽圧呼吸療法の有用性が多く報告されており、自律神経活性の改善、不整脈の減少、運動耐容能およびQOLの向上、心および腎機能の改善などが期待されている。しかし、海外で行われた大規模臨床試験ではこれを疑問視する研究結果も出ており、いまだ議論の余地を残す。(3)心臓リハビリテーション“包括的心臓リハビリテーション”の概念のもと、運動のみならず、薬剤、栄養、介護など各領域からの多職種介入による全人的心不全管理が急速に普及している。(4)和温療法遠赤外線均等温乾式サウナを用いた低温サウナ療法が、心不全患者に有用であるとの報告がある。心拍出量の増加、前負荷軽減、肺動脈楔入圧の低下といった急性効果のみならず、慢性効果として、末梢血管内皮機能の改善、心室性不整脈の減少も報告されている。(5)僧帽弁形成術・置換術、左室容積縮小術高度の僧帽弁逆流を伴うDCM例では、僧帽弁外科的手術を考慮する。しかしながら、その有効性は議論の余地を残すところであり、左室容積縮小術の1つに有名なバチスタ手術があるが、中長期的に心不全再増悪が多いことから、最近は推奨されない。(6)左室補助人工心臓(LVAD)重症心不全患者において、心臓移植までの橋渡し治療、血行動態の安定を目的として、LVAD装着が考慮されうる。2011年以降、わが国でも植込型LVADが使用可能となり、装着患者のQOLが格段に向上した。現在、植込型LVAD装着下に長期生存を目指す“destination therapy”の是非に関する議論も始まっており、今後、重症心不全治療の選択肢の1つとして臨床の場に登場する日も近いかもしれない。しかし、ここには医学的見地のみならず、医療倫理や医療経済、日本人の死生観も大きく関わっており、解決すべき課題も多い。(7)心臓移植重症心不全患者の生命予後を改善する究極の治療法である。わが国における原疾患のトップはDCMである。不治の末期的状態にあり、長期または繰り返し入院治療を必要とする心不全、β遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA3度ないし4度から改善しない心不全、現存するいかなる治療法でも無効な致死的重症不整脈を有する症例が適応となる。(8)緩和医療高齢化社会の進行につれ、有効な治療効果の得られない末期心不全患者へのサポーティブケアが、近年注目されつつある。このような患者のエンドオブライフに関し、今後、多職種での議論・検討を重ねていく必要がある。■ 不整脈の治療致死性不整脈の同定と予防が重要となる。DCMによる心筋障害を基盤として発生し、心不全増悪期により出現しやすい。また、電解質異常も発生要因の1つである。そのため、心不全そのものの治療や不整脈誘発因子の是正が必要である。DCMにおける不整脈治療には、アミオダロンがよく使用される。カテーテルアブレーションが選択されることもあるが、確実に突然死を予防できる治療手段は植込型除細動器(ICD)であり、症候性持続性心室頻拍や心室細動既往を有する心不全患者の二次予防あるいは一部の心不全患者の一次予防を目的として適応が検討される。また、心房細動も高率に合併する。これまでリズムコントロールとレートコントロールで死亡率に差はないと考えられてきたが、近年これを否定するメタアナリシス結果もでており、さらなる研究結果が待たれる。■ 血栓予防治療非弁膜症性心房細動合併例では、ワルファリンのみならず、新規経口抗凝固薬の使用が考慮される。また、左室駆出率30%以下の低心機能例では、心腔内血栓の予防目的に抗凝固療法が望ましいとされるが、新規経口抗凝固薬の適応はなく、ワルファリンが選択される。4 今後の展望現在のところ、確立された根本治療法のないDCMにおける究極の治療法は、心臓移植であるが、わが国では、深刻なドナー不足により汎用性の高い治療法としての普及にはほど遠い。そのため、自己の細胞あるいは組織を用いた心筋再生治療の研究・臨床応用が進められている。しかしながら、安全な再生医療の確立には、倫理面などクリアすべき課題も多く、医用工学技術を応用した高性能・小型化した人工機器の開発研究も進められている。5 主たる診療科循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性拡張型心筋症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)友池仁暢ほか. 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009−2010年度合同研究班報告).2)奥村貴裕, 室原豊明. 希少疾患/難病の診断・治療と製品開発. 技術情報協会; 2012:pp1041-1049.3)奥村貴裕. 心不全のすべて.診断と治療(増刊号).診断と治療社;2015:103.pp.259-265.4)松崎益徳ほか. 慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版).循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告).5)許俊鋭ほか. 重症心不全に対する植込型補助人工心臓治療ガイドライン.日本循環器学会/日本心臓血管外科学会合同ガイドライン(2011-2012年度合同研究班報告).公開履歴初回2014年11月27日更新2016年05月31日

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eGFRが30未満は禁忌-メトホルミンの適正使用に関する Recommendation

 日本糖尿病学会「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」は、5月12日に「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」の改訂版を公表した。 わが国では、諸外国と比較し、頻度は高くないもののメトホルミン使用時に乳酸アシドーシスが報告されていることから2012年2月にRecommendationを発表、2014年3月に改訂を行っている。とくに今回は、米国FDAから“Drug Safety Communication”が出されたことを受け、従来のクレアチニンによる腎機能評価から推定糸球体濾過量eGFRによる評価へ変更することを主にし、内容をアップデートしたものである。メトホルミン使用時の乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴1)腎機能障害患者(透析患者を含む)2)脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態3)心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者4)高齢者 高齢者だけでなく、比較的若年者でも少量投与でも、上記の特徴を有する患者で、乳酸アシドーシスの発現が報告されていることに注意。メトホルミンの適正使用に関するRecommendation まず、経口摂取が困難な患者や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし、以下の事項に留意する。1)腎機能障害患者(透析患者を含む) 腎機能を推定糸球体濾過量eGFRで評価し、eGFRが30(mL/分/1.73m2)未満の場合にはメトホルミンは禁忌である。eGFRが30~45の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与とする。脱水、ショック、急性心筋梗塞、重症感染症の場合などやヨード造影剤の併用などではeGFRが急激に低下することがあるので注意を要する。eGFRが30~60の患者では、ヨード造影剤検査の前あるいは造影時にメトホルミンを中止して48時間後にeGFRを再評価して再開する。なお、eGFRが45以上また60以上の場合でも、腎血流量を低下させる薬剤(レニン・アンジオテンシン系の阻害薬、利尿薬、NSAIDsなど)の使用などにより腎機能が急激に悪化する場合があるので注意を要する。2)脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取などの患者への注意・指導が必要な状態 すべてのメトホルミンは、脱水、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐などの胃腸障害のある患者、過度のアルコール摂取の患者で禁忌である。利尿作用を有する薬剤(利尿剤、SGLT2阻害薬など)との併用時には、とくに脱水に対する注意が必要である。 以下の内容について患者に注意・指導する。また、患者の状況に応じて家族にも指導する。シックデイの際には脱水が懸念されるので、いったん服薬を中止し、主治医に相談する。脱水を予防するために日常生活において適度な水分摂取を心がける。アルコール摂取については、過度の摂取を避け適量にとどめ、肝疾患などのある症例では禁酒する。3)心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者 すべてのメトホルミンは、高度の心血管・肺機能障害(ショック、急性うっ血性心不全、急性心筋梗塞、呼吸不全、肺塞栓など低酸素血症を伴いやすい状態)、外科手術(飲食物の摂取が制限されない小手術を除く)前後の患者には禁忌である。また、メトホルミンでは軽度~中等度の肝機能障害には慎重投与である。4)高齢者 メトホルミンは高齢者では慎重に投与する。高齢者では腎機能、肝機能の予備能が低下していることが多いことから定期的に腎機能(eGFR)、肝機能や患者の状態を慎重に観察し、投与量の調節や投与の継続を検討しなければならない。とくに75歳以上の高齢者ではより慎重な判断が必要である。「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」からのお知らせはこちら。

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2度目の改訂版を発表-SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation

 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、5月12日に「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」の改訂版を公表した。SGLT2阻害薬は、新しい作用機序を有する2型糖尿病薬で、現在は6成分7製剤が臨床使用されている。 Recommendationでは、75歳以上の高齢者への投与を慎重投与とするほか、65歳以上でも老年症候群の患者には同様としている、また、利尿薬との併用については、「推奨されない」から「脱水に注意する」に変更された。そのほか、全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には、血糖値が正常に近くともケトアシドーシスの可能性を考慮し、血中ケトン体の確認を推奨している。 今回の改訂は、1年9ヵ月ぶりの改訂となるが、その間に報告された副作用情報や高齢者(65歳以上)に投与する場合の全例特定使用成績調査による、高齢者糖尿病における副作用や有害事象の発生率や注意点について、一定のデータが得られたことから、改訂されたものである。 本委員会では、「これらの情報をさらに広く共有することにより、副作用や有害事象が可能な限り防止され、適正使用が推進されるよう、Recommendationをアップデートする」と表明している。Recommendation1)インスリンやSU薬などインスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2)75歳以上の高齢者あるいは65~74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。3)脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合にはとくに脱水に注意する。4)発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。5)全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスの可能性があるので、血中ケトン体を確認すること。6)本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、必ず副作用報告を行うこと。7)尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。副作用の事例と対策(抜粋)重症低血糖 重症低血糖の発生では、インスリン併用例が多く、SU薬などのインスリン分泌促進薬との併用が次いでいる。DPP-4阻害薬の重症低血糖の場合にSU薬との併用が多かったことに比し、本剤ではインスリンとの併用例が多いという特徴がある。SGLT2阻害薬による糖毒性改善などによりインスリンの効きが急に良くなり低血糖が起こっている可能性がある。このように、インスリン、SU薬または速効型インスリン分泌促進薬を投与中の患者へのSGLT2阻害薬の追加は、重症低血糖を起こす恐れがあり、あらかじめインスリン、SU薬または速効型インスリン分泌促進薬の減量を検討することが必要である。また、これらの低血糖は、比較的若年者にも生じていることに注意すべきである。 インスリン製剤と併用する場合には、低血糖に万全の注意を払い、インスリンをあらかじめ相当量減量して行うべきである。また、SU薬にSGLT2阻害薬を併用する場合には、DPP-4阻害薬の場合に準じて、以下のとおりSU薬の減量を検討することが必要である。 ・グリメピリド2mg/日を超えて使用している患者は2mg/日以下に減じる ・グリベンクラミド1.25mg/日を超えて使用している患者は1.25mg/日以下に減じる ・グリクラジド40mg/日を超えて使用している患者は40mg/日以下に減じるケトアシドーシス インスリンの中止、極端な糖質制限、清涼飲料水多飲などが原因となっている。血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスの可能性がある。とくに、全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には血中ケトン体を確認する。SGLT2阻害薬の投与に際し、インスリン分泌能が低下している症例への投与では、ケトアシドーシスの発現に厳重な注意が必要である。同時に、栄養不良状態、飢餓状態の患者や極端な糖質制限を行っている患者に対するSGLT2阻害薬投与開始やSGLT2阻害薬投与時の口渇に伴う清涼飲料水多飲は、ケトアシドーシスを発症させうることにいっそうの注意が必要である。脱水・脳梗塞など 循環動態の変化に基づく副作用として、引き続き重症の脱水と脳梗塞の発生が報告されている。脳梗塞発症者の年齢は50~80代である。脳梗塞はSGLT2阻害薬投与後数週間以内に起こることが大部分で、調査された例ではヘマトクリットの著明な上昇を認める場合があり、SGLT2阻害薬による脱水との関連が疑われる。また、SGLT2阻害薬投与後に心筋梗塞・狭心症も報告されている。SGLT2阻害薬投与により通常体液量が減少するので、適度な水分補給を行うよう指導すること、脱水が脳梗塞など血栓・塞栓症の発現に至りうることに改めて注意を喚起する。75歳以上の高齢者あるいは65~74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合や利尿薬併用患者などの体液量減少を起こしやすい患者に対するSGLT2阻害薬投与は、注意して慎重に行う、とくに投与の初期には体液量減少に対する十分な観察と適切な水分補給を必ず行い、投与中はその注意を継続する。脱水と関連して、高血糖高浸透圧性非ケトン性症候群も報告されている。また、脱水や脳梗塞は高齢者以外でも認められているので、非高齢者であっても十分な注意が必要である。脱水に対する注意は、SGLT2阻害薬投与開始時のみならず、発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には万全の注意が必要であり、SGLT2阻害薬は必ず休薬する。この点を患者にもあらかじめよく教育する。また、脱水がビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの重大な危険因子であることに鑑み、ビグアナイド薬使用患者にSGLT2阻害薬を併用する場合には、脱水と乳酸アシドーシスに対する十分な注意を払う必要がある(「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」)。皮膚症状 皮膚症状は掻痒症、薬疹、発疹、皮疹、紅斑などが副作用として多数例報告されているが、非重篤のものが大半を占める。すべての種類のSGLT2阻害薬で皮膚症状の報告がある。皮膚症状が全身に及んでいるなど症状の重症度やステロイド治療がなされたことなどから重篤と判定されたものも報告されている。皮膚症状はSGLT2阻害薬投与後1日目からおよそ2週間以内に発症している。SGLT2阻害薬投与に際しては、投与日を含め投与後早期より十分な注意が必要である。あるSGLT2阻害薬で皮疹を生じた症例で、別のSGLT2阻害薬に変更しても皮疹が生じる可能性があるため、SGLT2阻害薬以外の薬剤への変更を考慮する。いずれにせよ皮疹を認めた場合には、速やかに皮膚科医にコンサルトすることが重要である。とくに粘膜(眼結膜、口唇、外陰部)に皮疹(発赤、びらん)を認めた場合には、スティーブンス・ジョンソン症候群などの重症薬疹の可能性があり、可及的速やかに皮膚科医にコンサルトするべきである。尿路・性器感染症 治験時よりSGLT2阻害薬使用との関連が認められている。これまで、多数例の尿路感染症、性器感染症が報告されている。尿路感染症は腎盂腎炎、膀胱炎など、性器感染症は外陰部膣カンジダ症などである。全体として、女性に多いが男性でも報告されている。投与開始から2、3日および1週間以内に起こる例もあれば2ヵ月程度経って起こる例もある。腎盂腎炎など重篤な尿路感染症も引き続き報告されている。尿路感染・性器感染については、質問紙の活用を含め適宜問診・検査を行って、発見に努めること、発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすることが重要である。 本委員会では、SGLT2阻害薬の使用にあたっては、「特定使用成績調査の結果、75歳以上では安全性への一定の留意が必要と思われる結果であった。本薬剤は適応やエビデンスを十分に考慮したうえで、添付文書に示されている安全性情報に十分な注意を払い、また本Recommendationを十分に踏まえて、適正使用されるべきである」と注意を喚起している。「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」からのお知らせはこちら。

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PATHWAY-2試験:治療抵抗性高血圧例の治療に非常に参考になるが、解釈には十分な注意が必要な研究結果(解説:桑島 巖 氏)-525

 カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬/ARB、サイアザイド系利尿薬の3剤併用しても、降圧不十分な高血圧は治療抵抗性と呼ばれるが、日常診療でもしばしば遭遇し、次に何を追加するべきかに悩むことは少なくない。一般にはα遮断薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬のいずれかを選択することになるが、その優劣に関するRCTによるエビデンスはほとんどなかった。 PATHWAY-2試験は、抗アルドステロン薬が、最も降圧効果に優れているという結果を示した点で、そのような疑問に1つの示唆を与えてくれる臨床研究である。とくに、ベースライン時の血漿レニン活性が低い例ほど降圧率が高いという結果は、低レニンを呈する副腎過形成によるアルドステロン分泌過多による高血圧では、スピロノラクトンが有効であることを示唆している。 しかし、本試験には注意すべき重大な点がいくつかある。 まず、eGFR<45mL/分の慢性腎臓病合併例は完全除外されており、対象例の平均eGFR 91.1±26.8という腎機能良好な症例のみの成績である点は認識すべきである。 一般に、治療抵抗性高血圧は、多かれ少なかれ腎障害が進行した症例にみることが多く、そのような例では抗アルドステロン薬によって高カリウム血症を誘発したときに死に至ることもある。本研究のエンドポイントは疾患発生や死亡ではないので、この点は明らかにできない。また、試験期間も1年間と短い。 とくに、心不全に対する抗アルドステロン症の有用性を証明したRALES試験では、試験結果発表後、爆発的にスピロノラクトンの処方が増加し、高カリウム血症による合併症および死亡率が増加したことを想起する必要がある1)。 本試験は臨床的に意義があるが、結果の解釈と臨床への適用に当たっては十分な注意が必要である。

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収縮能が保持された心不全(HFpEF)に対する心房間シャントデバイスの効果は?(解説:佐田 政隆 氏)-522

 心不全症状が認められるものの、左室収縮能が保持された心不全(heart failure with preserved left ventricular ejection fraction:HFpEF)が、循環器診療において、現在、非常に問題になっている。HFpEFは心不全患者の約半数を占め、その予後は不良といわれている。左室収縮能が低下した心不全(heart failure with reduced left ventricular ejection fraction:HFrEF)に対しては、レニン・アンジオテンシン系阻害薬やβ遮断薬、利尿薬が有効であることが確立している。HFpEFに対しても、これらの薬物を用いて大規模臨床研究がいくつも行われてきたが、有効性を示すエビデンスは得られていない。 HFpEFの病態は、左室拡張末期圧ならびに左房圧の上昇、とくに労作時の上昇が息切れなどの自覚症状に直結するとされている。僧帽弁狭窄症も左房圧の上昇が病態生理的に重要である。僧帽弁狭窄症に心房中隔欠損症が合併するとLutembacher症候群として有名であるが、左房から右房へシャントが生じることで左房圧ならびに症状が軽減し、重篤な肺うっ血や肺水腫が起こりにくいことが報告されている。 そこで、米国のCorvia Medical社は、人工的に左房→右房シャント、すなわち、心房中隔に孔を作成するデバイスを開発した。本研究は、HFpEFを対象にして、このデバイスのパフォーマンスと安全性を確認するためのオープンラベルの第I相試験である。 左室駆出率が40%以上あり、肺動脈楔入圧が安静時に15mmHgより大、運動時に25mmHgより大になる患者が対象となった。66例中64例で植込みに成功し、周術期合併症はなかった。6ヵ月後、NYHA分類、6分間歩行距離、座位での運動時間が有意に改善した。また、右心カテーテルが施行できた59例中42例で、安静時もしくは運動時の肺動脈楔入圧の低下が確認できた。59例中23例では、安静時、運動時とも低下がみられたそうである。 本研究からは、このデバイスのHFpEF患者に対する有効性と安全性が期待されるが、少人数でしかも短期間の観察結果である。多くの症例を対象にした、長期観察試験が必要である。自覚症状の改善も、プラシーボ効果が大きかった可能性がある。侵襲的な治療であり、二重盲検は難しいとしても、患者、効果判定医は、カテーテルを用いて治療をしたのか、カテーテルは施行したが治療しなかった(シャム手術)のかを知らされるべきではないと思われる。 見た目のHDLコレステロールを上昇させるCETP阻害薬のように、短期的にバイオマーカーを改善するものの、長期的な予後を改善しない、もしくは悪化させる事例が過去にも多くみられた。個人的には、人為的に作成した左→右シャントが、将来、右心不全や肺高血圧をもたらし、長期予後は決して良くないのではないかという印象を持っている。今後の開発の経過を注意深く見守りたい。

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循環器内科 米国臨床留学記 第8回

第8回 肺動脈圧ワイヤレス・モニタリングデバイスCardioMEMs心不全患者の再入院を減らすことは、日米を問わず重要な課題です。CardioMEMsは、近年FDAに承認された、心不全患者の肺動脈圧をモニタリングする植込み型のデバイスです。肺動脈圧は心不全と相関があると考えられており、CardioMEMsが測定した患者の肺動脈圧のデータを基に利尿薬などを調整することが可能となります。2011年にLancet誌に報告されたCardioMEMS Heart Sensor Allows Monitoring of Pressure to Improve Outcomes in NYHA Class III Heart Failure Patients(CHAMPION)試験のデータに基づき、2014年にFDAの承認を取得しました(図1、2)。CHAMPION試験は、NYHAクラス3以上の心不全かつ12ヵ月以内に入院歴がある患者を対象とした、多施設共同前向き無作為化試験ですが、CardioMEMs植込み群は対照群に比べて、入院が37%も減るという良好な結果を示しました(Lancet誌2016年1月30日号に発表された論文では、31ヵ月のフォローアップで心不全の入院は48%の減少)。St. Jude Medical社のウェブサイトによると、再入院が78%減少し、死亡率も57%減少となっています(ただし、データはAHA、ACCのabstractに基づく)。 図1 画像を拡大する 図1 CardioMEMs(米国の25セント硬貨と比較) 図2 画像を拡大する 図2 CardioMEMs植込み前の肺動脈造影(左)と植込み後のCardioMEMs(右)素晴らしい技術と成績なのですが、問題となっているのがコストで、1台当たり1万8,000ドル(約200万円)と高額です。先日、高齢者や一部の障害者に対する公的な医療保険制度であるメディケアは、11州(とVA病院)でCardioMEMsを保険適応外とすることを発表しました。われわれの施設でのCardioMEMs植込み実施例は、過去1年間で数例にとどまっています。その理由として考えられるのが、コストと患者のコンプライアンスの低さです。米国では日本と比べて、内服や食事療法を含めた生活習慣の改善に対するコンプライアンスの悪い患者が多くみられます。米国の循環器内科医も、CardioMEMsで再入院を減らすことができるとわかっていても、内服遵守や食事制限、体重測定などの生活習慣改善に対する努力を行わない患者に高額なデバイスを植え込むことには抵抗があるようです。前述のCHAMPION試験のデータでは、対象患者の平均BMIが30です。平均で30ですから、大半が肥満患者です。彼らが食事制限を守れないのは容易に想像できます。ご存じのとおり、体重管理は心不全の治療にきわめて重要です。米国でも日本でも同じなのかもしれませんが、心不全で入退院を繰り返す患者の多くは体重をこまめに測ってくれませんし、こちらでは体重計を持っていないと言う患者もよく見受けられます。コンプライアンスが悪くても、肺動脈圧の上昇を感知できれば、心不全を早めに検知できるのは理解できます。ただ、個人的には高額なデバイスを植え込む前に、患者には体重計を買ってもらい体重がある程度増えれば医師に連絡するくらいの努力はしてもらいたいと思ってしまいます。また、CardioMEMsを断る患者さんもいます。ペースメーカーやICDと違い、CardioMEMsは治療を行うデバイスではありません。モニタリング目的のデバイスは患者の症状を改善するわけではありませんから、患者側も抵抗があるようです。いずれにしても、今後CardioMEMsがどれぐらい普及していくかは、公的保険や保険会社がどの程度償還してくれるかにかかっているのかもしれません。

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新たな心不全治療法、それは心房間シャント形成術(解説:香坂 俊 氏)-516

心不全の分野ではここ最近目立った進歩がみられていない。とくにHFPEF(heart failure with preserved ejection fraction;左室収縮能が保持されたタイプの心不全)には、実をいうと、有効な治療法すら存在しない。自分たちの急性心不全のデータベースでもいろいろと調べてはいるが、わかったことといえば「利尿薬の使い過ぎはよくない」ということくらいだ。HFPEFを普通の心不全だと思って利尿薬を使うと、腎不全を起こす危険率が3倍にも達していた1)。こうした状況下で、思いがけない治療法を提案する本論文が現れた。カテーテルを使って左心房と右心房の間にシャントの形成を行うというのである(V-waveシャント;下図参照)。図 V-waveシャントデバイス     14F Mullinsシースを用いて、まず左房側の入口部のみをシースから出して      漏斗部を広げて引っかける。その後、シースを外すと右房側に出口部が展開される。HFPEFでは、心臓や大血管の硬化が進んでおり(加齢に伴う線維化が主因とされている)、運動などで負荷がかかったときにすぐに左室・左房内の圧が上がってしまい、肺うっ血を来す。そうしたときに、圧を左房から右房へと逃がすため、このV-waveシャントを導入するというわけである。かなり思い切った発想だが、これまで動物モデルや症例報告レベルではいくつか報告が出ており、また上記のMullinsシースを使った心房中隔の穿孔は、心房細動のためのカテーテルアブレーション(肺静脈焼灼術)等で循環器内科では比較的広く行われるようになっている。今回のこの臨床試験では、V-waveシャントデバイスが68例のHFPEF患者に導入されている。半年間フォローした結果、半分以上の症例(50~70%)において安静時と運動時の肺動脈楔入圧(≒左房圧)の低下や自覚症状の改善を認めるに至った。ちなみに、手技関連の合併症は0%であり、きわめて安全に行われた。この意味するところは何か? V-waveシャントデバイスは最初のハードルをクリアしたということである。新規デバイスの承認には長い道のりを経なくてはならないが、今後適切な臨床的なアウトカムの評価が行われ、長らく治療法のヒントすらつかめなかったHFPEFの予後の改善につながるようであれば、とくに高齢者の方に対して大いなる福音となる(HFPEF患者は高齢であることが知られており、この試験登録患者の平均年齢も69歳である)。

180.

HOPE-3試験:仮説が不明で、かえって混乱を招く結果となった臨床試験(解説:桑島 巖 氏)-513

 本試験の仮説がよくわからない。HOPE試験のようにACE阻害薬の“降圧を超えた心血管合併症予防効果”をARB検証するのであれば、サイアザイド利尿薬を併用せずに行うべきであったし、正常高値に対する降圧の有用性を検証するのであれば、ヒドロクロロチアジドではなく、降圧効果の確実なサイアザイド類似薬であるクロルタリドンあるいはインダパミドを併用するなり、降圧薬の用量調整をするなりして、さらに厳格に収縮期血圧で120mmHg前後まで下げるべきであった。本試験では降圧目標を設定しておらず、ただARBとサイアザイド利尿薬の固定用量を用いた場合のイベント抑制効果という、中途半端な試験である。 リスクも低く、血圧も高くない(正常高値)症例に対して、ARBと降圧利尿薬固定用量を長期間投与することはメリットがあるか否かを検証したかったとすれば、当然メリットがないことは予想された。本試験の結果は、血圧が高いほど、あるいは高リスクほど厳格な降圧が有用であり、低リスク高血圧例での積極的降圧の有用性は乏しい、という結果を示したBPLTTC試験やSPRINT試験の結果とは矛盾しない。ただし、低リスク正常高値血圧の有用性を検証するには5年間は短すぎる。 本試験の対象は非常に複雑で、ウエスト・ヒップ比が高い症例、HDLコレステロール値が低い症例、糖代謝異常、喫煙、冠疾患家族歴を有する例を対象としているが、このような肥満症例では、生活習慣の改善、あるいは脂質低下療法が有効であり、降圧治療の有用性はあまり期待できないことはある程度予想できた。 本試験では、2×2方式で行われているため、試験の仮説がかなり分散している点は否めない。このような脂質代謝障害のある症例で、コレステロール低下療法の有用性を確認したいスポンサー企業の意図を垣間見る試験ともいえなくもない。事実、ロスバスタチンの有用性が認められている。 プラセボ群との血圧値の差は、収縮期 6.0/拡張期 3.0mmHgであり、実薬群の達成血圧は、128/76前後である。下げてもメリットはないともいえるし、この程度の降圧ではメリットはあまりなく、下げるなら120mmHgまで必要かもしれないことを示しているともいえる。 本試験から得られる結論としては、低リスクの症例では、血圧143以上でなければ降圧薬追加によるメリットはない。ただし、低リスクで血圧が正常であっても、さらに120mmHgまで下げた場合のメリットは否定できない。また、さらに長期間(たとえば10年)降圧薬を投与すればメリットはあるかもしれない。 なんとも中途半端なトライアルである。2×2で、自社製品のカンデサルタンとロスバスタチンの配合薬のメリットを出そうとしたスポンサーのもくろみがあったのかもしれない。科学的にはあまり意味がなく、かえって混乱を招きかねない。

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