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FDA、心不全治療薬Entrestoを承認

 米国食品医薬品局(FDA)は2015年7月7日、ARBバルサルタンとネプリライシン阻害薬sacubitrilの合剤(商品名:Entresto、Novartis)を心不全治療薬として承認した。 Entrestoは医薬品優先審査プログラムによって審査され、ファストトラック指定を受けた。  Entrestoは8,000例を超える成人被験者の臨床試験で、死亡および心不全による入院を、対照薬であるACE阻害薬エナラプリルに比べ有意に減少させた。被験者のほとんどは、心不全に適応のあるβ遮断薬、利尿薬、鉱質コルチコイド受容体遮断薬による治療を受けていた。  主な副作用は低血圧、高カルシウム血症、腎機能低下。アレルギー反応である血管浮腫も報告されている。血管浮腫については黒人および血管浮腫の既往があった患者に多い。ACE阻害薬との併用は血管浮腫のリスクが上昇するため行わないこと、また、ACE阻害薬との切り替えの際は、36時間間隔を空けるよう勧めるべきだとしている。 心不全は米国において、約5百万人以上が罹患しており、成人の死因および身体障害の第1位の原因である。FDAのプレスリリースはこちら

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Vol. 3 No. 4 高尿酸血症のコントロールと治療薬

土橋 卓也 氏製鉄記念八幡病院はじめに高尿酸血症は、痛風関節炎や痛風腎など尿酸塩沈着症としての病態とは別に高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム(MetS)、慢性腎臓病(CKD)などの生活習慣病と密接に関連することが明らかとなってきた。さらに最近の知見より、高尿酸血症が高血圧や糖尿病発症のリスクとなること、尿酸低下療法によって心血管イベントが抑制されることが報告されるようになった。本稿では、心血管疾患リスクとしての尿酸管理の意義と尿酸降下薬を用いた治療方針について概説する。1. 生活習慣病としての高尿酸血症の実態日本人における高尿酸血症の頻度に関して、尿酸値>7mg/dLで定義される高尿酸血症の頻度は、成人男性で21.5%、女性では50歳未満で1.3%、50歳以降で3.7%と報告されている1)。また、高尿酸血症は高血圧者に高頻度に合併することが知られている。われわれが調査した降圧薬服用者667名(平均年齢66.4歳)における高尿酸血症(尿酸値>7mg/dLまたは尿酸低下薬服用者)の頻度は男性で40.6%、女性で8.6%と男性で高頻度に認められ、特に使用降圧薬が3剤以上の者では37.3%と高頻度であった2)。この要因として、3剤以上の降圧薬を必要とする者は肥満やMetS、CKDなど高尿酸血症を合併する病態が多いこと、尿酸値を上昇させる利尿薬の使用頻度が高いことが挙げられる。すなわち、高尿酸血症は他の危険因子とともに心血管疾患リスクが重積した病態を形成することが多いことから、心血管疾患予防のためのtotal risk managementの一環として管理すべき疾患といえる。2. 高尿酸血症の治療(1) 治療方針日本痛風・核酸代謝学会による高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインが提唱する高尿酸血症の治療方針では、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えている場合、肥満の是正、飲酒制限、プリン体制限などの食事療法、運動など生活習慣修正を指導することが記載されている。痛風関節炎や痛風結節を認めず、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、MetS、CKDなどを合併する例においては、尿酸値が8mg/dL以上に上昇した場合、尿酸低下療法を考慮する。(2) 病型分類に基づく薬剤選択高尿酸血症は、その機序から産生過剰型と排泄低下型に病型分類される(本誌p.36図を参照)に示すように、病型分類を行うためには、尿酸産生量(尿中尿酸排泄量)と尿酸クリアランスを評価する必要がある3)。われわれが、高尿酸血症合併高血圧患者を対象として、24時間家庭蓄尿を用いて病型分類を行ったところ、MetS合併例を含め、約9割が排泄低下型であった4)。日常診療において24時間蓄尿や外来60分法による評価を行うのは困難である。われわれは、日常診療で使用可能な病型分類の指標として随時尿中尿酸/クレアチニン比(UA/Cr)を用いており、随時尿中UA/Crが0.5未満を示す場合、排泄低下型と判断してよいと考えている5)。(3) 尿酸降下薬の選択尿酸生成抑制薬のアロプリノールは尿酸産生過剰型に適した薬剤であり、尿路結石の既往など尿酸排泄促進薬が使用できない症例においても使用される。ただ、腎機能の低下に応じて使用量を減じる必要があり、クレアチニンクリアランス(Ccr)50mL/分以下では100mg/日、30mL/分以下では50mg/日とすべきである。最近発売されたフェブキソスタットやトピロキソスタットは、腎機能低下例においても用量調節が必要なく、使用しやすい薬剤といえる。前述のように高血圧合併高尿酸血症患者の病型はほとんど排泄低下型であることから、ベンズブロマロンなどURAT1阻害薬がより有用であることが多い。実際、アロプリノールを投与中の高血圧患者で随時尿中UA/Crが0.5未満を示し、排泄低下が疑われた15症例において薬剤を排泄促進薬のベンズブロマロンに切り替えたわれわれの検討では、随時尿中UA/Crは0.31から0.51へと有意に上昇し、血清尿酸値も7.3mg/dLから4.7mg/dLへと有意に低下した6)。ベンズブロマロン服用者(平均用量39mg/日)はアロプリノール服用者(平均用量106mg/日)に比し、血清尿酸値が低く(5.6±1.1 vs. 6.6±0.8mg/dL、p<0.01)ガイドラインが提唱する管理目標値≦6mg/dLの達成頻度も61.7%とアロプリノール服用者(18.2%)より高かった2)(本誌p.38図を参照)。これらの結果は、高血圧合併高尿酸血症の治療において尿酸排泄促進薬であるベンズブロマロンがより有用であることを示唆している。ただベンズブロマロンは尿酸排泄量が増加し、尿路結石のリスクが高くなるため、尿のアルカリ化が必要であること、腎機能低下例では作用が減弱するため、アロプリノールを使用するか、両者の少量併用を検討する必要があることに留意する。(4) 尿酸コントロールの目標高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは、尿酸降下薬による治療の目標値として血清尿酸値6.0mg/dL以下に維持することが望ましいとしている(本誌p.35図を参照)。確かに痛風患者の再発予防の観点からは6.0mg/dL以下にすることの根拠が示されているが7)、心血管疾患リスクとしての管理目標は明確でない。本態性高血圧患者を対象とした治療介入試験であるLIFE試験において、血清尿酸値は全体の平均5.6±1.3mg/dLからアテノロール群で0.8±1.2mg/dL、ロサルタン群で0.3±1.2mg/dL上昇しているが、6.0mg/dL前後であっても血清尿酸値上昇により心血管病発症リスクが増加することが示されており8)、高血圧患者における積極的な尿酸管理の重要性が示唆される。心臓手術を受けた高尿酸血症患者(血清尿酸値≧8mg/dL)141例を対象として、フェブキソスタット群とアロプリノール群に無作為に割り付け、血清尿酸値6.0mg/dL以下を目標として治療を行ったNU-FLASH試験における投与6か月後の血清尿酸値6.0mg/dL以下達成率は、フェブキソスタット群で95.8%と、アロプリノール群の69.6%に比し有意に高率であった9)。さらに、フェブキソスタット群では、投与1か月後からeGFRの有意な増加を認めている。このことは、血清尿酸値6.0mg/dL以下を目指した治療が腎機能保持の観点からも有用であることを示唆している。一方、尿酸は強力な抗酸化作用を有していることから、低値であることも心血管疾患リスクとなる報告が散見されており10)、“the lower, the better”とはいえない可能性がある。現時点では血清尿酸値4~6mg/dLが最もリスクの低い値と推測される。女性は血清尿酸値が男性に比し低値であるが、心血管疾患リスクとしての関与は男性より強いことが報告されていることから11, 12)、女性においてはより厳格なコントロールが望ましい可能性がある。おわりに高尿酸血症の心血管疾患リスクとしての意義を認識し、他のリスク因子とともに管理することが重要である。今後、心血管疾患リスクとしての高尿酸血症の治療開始基準および管理目標について検討する臨床試験が望まれる。文献1)冨田眞佐子ほか. 高尿酸血症は増加しているか?性差を中心に. 痛風と核酸代謝 2006; 30: 1-5.2)榊美奈子ほか. 降圧薬服用者における尿酸管理の現状. Gout and Nucleic Acid Metabolism 2013; 37:103-109.3)日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版, メディカルレビュー社,東京, 2010.4)宮田恵里ほか. 高血圧患者における高尿酸血症の実態と尿酸動態についての検討. 血圧 2008; 15: 890-891.5)大田祐子ほか. 高尿酸血症合併高血圧患者における高尿酸血症の慣習的病型分類の有用性について. 痛風と核酸代謝 2012; 36: 9-13.6)大田祐子ほか. 高尿酸血症合併高血圧患者におけるアロプリノールからベンズブロマロンへの変更の有用性. 血圧2008; 15: 910-912.7)Shoji A et al. A retrospective study of the relationship between serum urate level and recurrent attacks of gouty arthritis; Evidence for reduction of recurrent gouty arthritis with antihyperuricemic therapy. Arthritis Rheum 2004;51: 321-325.8)Hoieggen A et al. LIFE Study Group: The impact of serum uric acid on cardiovascular outcomes in the LIFE study. Kidney Int 2004; 65: 1041-1049.9)Sezai A et al. Comparison of febuxostat and allopurinol for hyperuricemia in cardiac surgery patients (NU-FLASH Trial). Circ J 2013; 77: 2043-2049.10)Verdecchia P et al. Relation between serum uric acid and risk of cardiovascular disease in essential hypertension ; PIUMA study. Hypertension 2000; 36: 1072-1078.11)Iseki K et al. Significance of hyperuricemia as a risk factor for developing ESRD in a screened cohort. Am J Kidney Dis 2004; 44: 642-650.12)Holme I et al. Uric acid and risk of myocardial infarction, stroke and congestive heart failure in 417,734 men and women in the Apolipoprotein MOrtality RISk study (AMORIS). J Intern Med 2009; 266: 558-570.

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Vol. 3 No. 4 高尿酸血症と循環器疾患 高血圧とのかかわり

川添 晋 氏鹿児島大学大学院心臓血管・高血圧内科学はじめに高尿酸血症は、痛風関節炎や痛風腎など尿酸塩沈着症としての病態とは別に、心血管疾患のリスクになることが次々と報告され、メタボリックシンドロームの一翼としての尿酸の重要性が認識されるようになってきた。最近では、高尿酸血症が高血圧発症のリスクとなることや、尿酸低下療法によって心血管イベントが抑制される可能性を示唆する報告もなされている。本稿では、血圧上昇や高血圧性臓器合併症と尿酸との関連を疫学と機序の両面から概説するとともに、高血圧症を合併した高尿酸血症に対する薬物治療を行う際の注意すべき点について解説する。高尿酸血症と高血圧血圧上昇と血清尿酸値との疫学の歴史は意外に古い。1800年代後半には、痛風の家族歴を持つ高血圧患者が多いことや、低プリン食が高血圧と心血管病を予防することが報告されている。最近の報告では、高尿酸血症が高血圧発症のリスクとなることが国内外の疫学調査から明らかとなっている。米国における国民健康栄養調査にて、血清尿酸値が上昇するにつれて高血圧の有病率は上昇し、血清尿酸値6.0mg/dL以下では24.5%であるのに対して10.0mg/dLでは84.7%に高血圧が合併していた1)。わが国における調査でも、高血圧患者は男性で34.1%、女性で16.0%に高尿酸血症が合併していたと報告されている2)。高尿酸血症と高血圧発症に関する国内外11研究の成績をまとめたメタアナリシスでは、高尿酸血症患者における高血圧発症の相対リスクは1.41と有意に高く、1mg/dL の尿酸値の上昇により高血圧発症リスクは13%上昇するとの結果であった3)(本誌p.29図を参照)。尿酸値上昇自体が高血圧のリスクとなることが明確に示されたことになる。また小規模の研究ではあるが、アロプリノールによる尿酸降下療法にて24時間血圧が有意に下がるとの介入試験の結果も報告されている4)。尿酸が血圧を上昇させるメカニズムについてもさまざまな知見が得られている(本誌p.30図を参照)5)。尿酸によるNO(一酸化窒素)産生低下とレニン・アンジオテンシン系の産生亢進を伴った血管内皮機能低下に起因した腎血管収縮により血圧が上昇すると報告されている6, 7)。このタイプの高血圧は、食塩抵抗性で尿酸値を下げることにより降圧を認めることが特徴であるが6)、別のタイプもあることが推察されている。高尿酸血症は動脈硬化性変化による腎微小循環障害をきたし、塩分感受性で腎依存性、血清尿酸値非依存性の高血圧が形成される8)。微小循環の損傷に起因する病態においては、直接尿酸が血管平滑筋細胞に対して増殖反応を促し、レニン・アンジオテンシン系を賦活化し、CRPや単球走化性蛋白-1(MCP-1)といった炎症関連物質の産生を刺激することが報告されている9)。高血圧性臓器合併症と尿酸日本高血圧学会やヨーロッパ高血圧学会のガイドラインでは、高血圧性臓器合併症の有無でリスクの層別化を行うことを推奨している。Viazziらは、このような臓器合併症の重症度と血清尿酸値との関連性を横断研究にて検討している。これによると、ヨーロッパ高血圧学会のガイドラインに準拠した高血圧性臓器合併症が重症になるにしたがって、血清尿酸値が高値となっていくことが示されている。さらに古典的心血管危険因子で補正後も、心肥大や頸動脈不整の危険因子となることが示唆されている。またSystolic Hypertension in the Elderly Program(SHEP)10)やThe Losartan Intervention for Endpoint Reduction in Hypertension(LIFE)11) といった大規模臨床試験のサブ解析において、血清尿酸値と心血管イベントの発症との間に関連があることが示されている。われわれは669名の本態性高血圧症を対象に前向きに検討を行い、尿酸値が心血管疾患と脳卒中の発症の予測因子となるかどうかの検討を行った12)。平均7.1年のフォローアップ期間に脳卒中71例、心血管疾患58例が発生し、64例が死亡した。生存曲線では、尿酸値が最も高かった群(8.0mg/dL以上)では有意に脳卒中と心血管疾患の発症が多く(p=0.0120)、死亡率も高かった(p=0.0021)。古典的な心血管疾患のリスク因子で補正した後も、血清尿酸値は心血管疾患(相対リスク1.30, p=0.0073)、脳卒中および心血管疾患(相対リスク1.19, p=0.0083)、死亡(相対リスク1.23, p=0.0353)、脳卒中および心血管疾患による死亡(相対リスク1.19, p=0.0083)の有意な予測因子であった(本誌p.31図を参照)。また、血清尿酸値が心血管疾患リスクに与える影響は、女性においてより強かった。しかしながら、大規模疫学調査のなかには、Framingham Heart研究13)やNIPPON DATA 8014)のように、他の心血管危険因子で補正を行うと血清尿酸値の心血管死に対する影響が減弱するか喪失すると結論づけている報告もいくつか認められる。また血清尿酸値と心血管疾患の間のJカーブ現象の報告もあり15)、この分野に関しては今後のさらなる検討が必要と考えられる。高血圧治療の最終的な目標は臓器合併症、すなわち心血管イベント発症や腎機能悪化に伴う透析などの回避であることはいうまでもない。臓器合併症予防のためには、蓄積されつつある知見を踏まえて、血圧のみならず血清尿酸値も含めた管理を行う必要がある。高血圧症例における高尿酸血症の管理高血圧患者における血清尿酸値上昇が腎障害や心血管事故発症と関連することから、日本痛風・核酸代謝学会による『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』16)に準じて、総合的なリスク回避をめざした6・7・8ルールに基づく尿酸管理が推奨されている(本誌p.32図を参照)。高尿酸血症を合併する高血圧では、血清尿酸値7mg/dL以上でエネルギー摂取制限、運動習慣、節酒等の生活指導を開始する。8mg/dL以上では、生活習慣の修正を行いながら尿酸降下薬の開始を考慮する。降圧療法中の血清尿酸値の目標は6mg/dL以下をめざす。この際、降圧剤が尿酸代謝に及ぼす影響も考慮することが望まれる(本誌p.32図を参照)。サイアザイド系利尿薬やループ利尿薬は高尿酸血症を増長し、痛風を誘発することがあるため注意が必要である。Ca拮抗薬とロサルタンは高血圧患者の痛風発症リスクを減少させることが知られている17)。大量のβ遮断薬およびαβ遮断薬の投与は血中尿酸値を上昇させる。ACE阻害薬、Ca拮抗薬、α遮断薬は血清尿酸値を低下させるという報告と、影響を与えないとする報告がある。ARBの1つであるロサルタンは、腎尿細管に存在するURAT1の作用を阻害することによって血中尿酸値を平均0.7mg/dL低下させる18, 19)。重症高血圧患者におけるβ遮断薬のアテノロールに対するロサルタンの標的臓器保護作用の有意性を示したLIFEでは、ロサルタンの降圧を超えた臓器保護作用のうち29%は尿酸値の改善によることが示唆されている11)。最近使用頻度が増えているARB/利尿薬合剤には、ヒドロクロロチアジド6.25mgまたは12.5mgが使用されているが、尿酸管理の観点からはより低用量の製剤を使用するか、尿酸排泄増加作用を有するARBであるロサルタンを含む合剤の使用が望ましい。高血圧合併高尿酸血症患者の病型は排泄低下型が多いことから、ベンズブロマロンなどURAT1阻害薬が有用であることが多い。キサンチンオキシダーゼ阻害薬のアロプリノールは、これまで唯一の尿酸生成抑制薬として40年間にわたり全世界で用いられてきた。しかしアロプリノールの活性代謝産物であるオキシプリノールは腎排泄性であり、血中半減期が長く体内に蓄積しやすいため、腎機能障害ではオキシプリノールの血中濃度が上昇し20)、汎血球減少症などの重篤な副作用の出現に関係するとされる。高血圧患者には腎機能低下を合併する症例が多いためアロプリノール使用に関してはこの点に注意が必要である。本邦において2011年から臨床使用可能となったフェブキソスタットは、肝腎排泄型であるため腎機能障害者においても用量調節が不要であるとされている。おわりに高尿酸血症が高血圧発症や心血管疾患のリスク因子であるというエビデンスが蓄積されてきている。高血圧診療の場では、糖尿病や脂質異常症などの既知のリスクに加えて、尿酸値も意識して総合的な管理を行うことが求められている。文献1)Choi HK et al. Prevalence of the metabolic syndrome in individuals with hyperuricemia. Am J Med 2007; 120: 442-447.2)宮田恵里ほか. 高血圧患者における高尿酸血症の実態と尿酸動態についての検討. 血圧 2008; 15: 890-891.3)Grayson PC et al. Hyperuricemia and incident hypertension: a systematic review and meta-analysis. Arthritis Care Res 2011; 63: 102-110.4)Feig DI et al. Effect of allopurinol on blood pressure of adolescents with newly diagnosed essential hypertension: a randomized trial. JAMA 2008; 300: 924-932.5)大野岩男. 高血圧のリスクファクターとしての尿酸. 高尿酸血症と痛風 2010; 18: 31-37.6)Mazzali M et al. Elevated uric acid increases blood pressure in the rat by a novel crystal-independent mechanism. Hypertension 2001; 38:1101-1106.7)Sanches-Lozada LG et al. Mild hyperuricemia induces vasoconstriction and maintains glomerular hypertension in normal and remnant kidney rats. Kidney Int 2005; 67: 237-247.8)Watanabe S et al. Uric acid, hominoid evolution,and the pathogenesis of salt-sensitivity. Hypertension 2002; 40: 355-360.9)Johnson RJ et al. A unifying pathway for essential hypertension. Am J Hypertens 2005; 18: 431-440.10)Franse LV et al. Serum uric acid, diuretic treatment and risk of cardiovascular events in the Systolic Hypertension in the Elderly Program (SHEP). J Hypertens 2000; 18: 1149-1154.11)Hoieggen A et al. The impact of serum uric acid on cardiovascular outcomes in the LIFE study. Kidney Int 2004; 65: 1041-1049.12)Kawai T et al. Serum uric acid is an independent risk factor for cardiovascular disease and mortality in hypertensive patients. Hypertens Res 2012: 35: 1087-1092.13)Culleton BF et al. Serum uric acid and risk for cardiovascular disease and death : the Framingham Heart Study. Ann Intern Med 1999;131: 7-13.14)Sakata K et al. Absence of an association between serum uric acid and mortality from cardiovascular disease: NIPPON DATA 80, 1980-1994 . National Integrated Projects for Prospective Observation of Non-communicable Diseases and its Trend in the Aged. Eur J Epidemiol 2001; 17: 461-468.15)Mazza A et al. Serum uric acid shows a J-shaped trend with coronary mortality in non-insulin-dependent diabetic elderly people. The CArdiovascular STudy in the ELderly(CASTEL). Acta Diabetol 2007; 44: 99-105.16)日本痛風・核酸代謝学会. ガイドライン改訂委員会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版. メディカルレビュー社, 東京, 2010.17)Choi HK et al. Antihypertensive drugs and risk of incident gout among patients with hypertension:population based case-control study. BMJ 2012;344: d8190.18)Iwanaga T et al. Concentration-dependent mode of interaction of angiotensin II receptor blockers with uric acid transporter. J Pharmacol Exp Ther 2007; 320: 211-217.19)Enomoto A et al. Molecular identification of a renal urate anion exchanger that regulates blood urate levels. Nature 2002; 417: 447-452.20)佐治正勝. アロプリノール服用患者における血中オキシプリノール濃度と腎機能. 日腎会誌 1996; 38: 640-650.

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ICDの初移植、除細動テストなしでも転帰同等/Lancet

 植込み型除細動器(ICD)の初移植の際、除細動テストを実施しなくても、実施した場合と比べて、その後のアウトカムについて非劣性であることが明らかにされた。カナダ・マックマスター大学のJeff S Healey氏らが、2,500例について行った単盲検無作為化非劣性試験「SIMPLE」の結果、報告した。除細動テストは広く行われているが、その有効性と安全性について検討した試験はこれまで行われていなかったという。Lancet誌オンライン版2015年2月20日号掲載の報告より。18ヵ国、85ヵ所の病院で試験を実施 研究グループは、2009年1月13日~2011年4月4日にかけて、18ヵ国、85ヵ所の病院を通じ、ICDを初めて移植する患者2,500例を対象に調査を行った。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはICD移植に当たり除細動テストを行い(1,253例)、もう一方の群では除細動テストを行わなかった(1,247例)。 主要有効性分析における評価項目は、不整脈死または適切なショック無効の複合アウトカムだった。非劣性マージンは、非テスト群vs. テスト群の比例ハザードモデルで算出したハザード比が1.5であった場合とし、95%信頼区間(CI)上限値が1.5未満であれば非テスト群は非劣性とした。 また、安全性について、2日、30日時点で有害事象アウトカム集団を評価した。主要アウトカム発生率、安全性アウトカムともに両群で同等 被験者の平均年齢は63歳、男性は81%、追跡期間の平均値は3.1年(SD:1.0)だった。 結果、不整脈死または適切なショックの失敗の発生率は、テスト群が年間8%(104例)に対し、非テスト群が7%(90例)と、非テスト群の非劣性が示された(ハザード比:0.86、95%信頼区間:0.65~1.14、非劣性のp<0.0001)。 死亡、脳卒中、心筋梗塞などの有害事象でみた安全性に関する主要複合アウトカムの初回発生率は、テスト群で6.5%(1,242例中81例)、非テスト群で5.6%(1,236例中69例)と、両群で同等だった(p=0.33)。 除細動テストが直接の原因であると考えられる有害事象のみを対象にした安全性に関する2次複合アウトカムの発生率は、テスト群が4.5%、非テスト群が3.2%だった(p=0.08)。 最も多く認められた有害事象は、強心薬や利尿薬の静注療法を要する心不全で、同発症率はテスト群が2%(1,242例中28例)、非テスト群が2%(1,236例中20例)だった(p=0.25)。

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Vol. 3 No. 2 AF患者の脳卒中にどう対応するか? NOAC服用患者への対応を中心に

矢坂 正弘 氏国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科はじめに非弁膜症性心房細動において新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant : NOAC)の「脳卒中と全身塞栓症予防」効果はワルファリンと同等かそれ以上である1-3)。大出血や頭蓋内出血が少なく、管理が容易であることを合わせて考慮し、ガイドラインではNOACでもワルファリンでも選択できる状況下では、まずNOACを考慮するように勧めている4)。しかし、NOACはワルファリンより脳梗塞や頭蓋内出血の発症頻度が低いとはいえ、その発症をゼロに封じ込める薬剤ではないため、治療中の脳梗塞や頭蓋内出血への対応を考慮しておく必要がある。本稿では、NOACの療法中の脳梗塞や頭蓋内出血時の現実的な対応を検討する。NOAC療法中の急性脳梗塞NOAC療法中の症例が脳梗塞を発症した場合、一般的な脳梗塞の治療に加えてNOAC療法中であるがゆえにさらに2つの点、rt-PA血栓溶解療法施行の可否と急性期抗凝固療法の実際を考慮しなくてはならない。(1) rt-PA血栓溶解療法の可否ワルファリン療法中は適正使用指針にしたがってPTINRが1.7以下であればrt-PA血栓溶解療法を考慮できる5)。しかし、ダビガトラン、リバーロキサバンおよびアピキサバン療法中の効果と安全性は確立しておらず、明確な指針はない。表1にこれまで発表されたダビガトラン療法中のrt-PA血栓溶解療法例を示す6-8)。ダビガトラン療法中の9例のうち中大脳動脈広範囲虚血で190分後にrt-PAが投与された1例を除き、8例で良い結果が得られている。それらに共通するのは、ダビガトラン内服から7時間以後でrt-PAが投与され、投与前APTTが40秒未満であった。ダビガトランの食後内服時のTmaxが4時間であることを考慮すると、rt-PA投与が内服後4時間以降であり、APTTが40秒以下(もしくは前値の1.5倍以下)であることがひとつの目安かもしれない。内服時間が不明な症例では来院時のAPTTと時間を空けてのAPTTを比較し、上昇傾向にあるか、低下傾向にあるかを見極めてTmaxを過ぎているかどうかを判断することも一法であろう。NOAC療法症例でrt-PA血栓溶解療法を考慮する場合は、少なくとも各薬剤のTmax 30分から4時間程度、ダビガトランではAPTTが40秒以下、抗Xa薬ではプロトロンビン時間が1.7以下であることを確認し、論文を含む最新情報に十分に精通した上で施設ごとに判断をせざるを得ないであろう5)。アピキサバンはAPTTやPT-INRと十分に相関しないことに注意する。抗Xa薬では、血中濃度と相関する抗Xa活性を図る方法も今後検討されるかもしれない。表1 ダビガトラン療法中のtPA血栓溶解療法に関する症例報告画像を拡大する(2) 急性期抗凝固療法心原性脳塞栓症急性期は脳塞栓症の再発率が高いため、この時期に抗凝固療法を行えば、再発率を低下させることが期待されるが、一方で栓子溶解による閉塞血管の再開通現象と関連した出血性梗塞もこの時期に高頻度にみられる。したがって、抗凝固療法がかえって病態を悪化させるのではないかという懸念もある。この問題はまだ解決されていないため、現時点では、脳塞栓症急性期の再発助長因子(発症後早期、脱水、利尿薬視床、人工弁、心内血栓、アンチトロンビン活性低下、D-dimer値上昇など)や、抗凝固療法による出血性合併症に関連する因子(高齢者、高血圧、大梗塞、過度の抗凝固療法など)を考慮して、個々の症例ごとに脳塞栓症急性期における抗凝固療法の適応を判断せざるを得ない。われわれの施設では症例ごとに再発の起こりやすさと出血性合併症の可能性を検討して、抗凝固療法の適応を決定している。具体的には感染性心内膜炎、著しい高血圧および出血性素因がないことを確認し、画像上の梗塞巣の大きさや部位で抗凝固療法開始時期を調整している(表2)9)。表2 脳塞栓症急性期の抗凝固療法マニュアル(九州医療センター2013年4月1日版)画像を拡大する(別タブが開きます)出血性梗塞の発現は神経所見とCTでモニタリングする。軽度の出血性梗塞では抗凝固療法を継続し、血腫型や広範囲な出血性梗塞では抗凝固薬投与量を減じたり、数日中止し、増悪がなければ再開する10)。新規経口抗凝固薬、ヘパリン、およびワルファリン(ワーファリン®)の投与量および切り替え方法の詳細も表2に示す。ワルファリンで開始する場合は即効性のヘパリンを必ず併用し、PT-INRが治療域に入ったらヘパリンを中止する。再発と出血のリスクがともに高い場合、心内血栓成長因子である脱水を避けること,低容量ヘパリンや出血性副作用がなく抗凝血作用のあるantithrombin III製剤の使用が考えられる11)。NOAC療法中に脳梗塞を発症した症例で、NOAC投与を考慮する場合、リバーロキサバンとアピキサバンは第III相試験が低用量選択基準を採用した一用量で実施されているので、脳梗塞を発症したからといって用量を増量したり、調節することは適切ではない2,3)。他剤に変更するか、脳梗塞が軽症であれば、あるいは不十分なアドヒアランスで発症したのであれば、継続を考慮することが現実的な対応であろう。一方ダビガトランは第III相試験が2用量で行われ、各々の用量がエビデンスを有しているので、低用量で脳梗塞を発症した場合、通常用量の可否を考慮することは可能である1)。NOAC療法中の頭蓋内出血ここではNOAC療法中の頭蓋内出血の発症頻度や特徴をグローバルやアジアでの解析結果を参照にワルファリン療法中のそれらと対比しながら概説する。(1) グローバルでの比較結果非弁膜症性心房細動を対象に脳梗塞の予防効果をワルファリンと対比したNOAC(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)の4つの研究(RE-LY、ROCKET AF、ARISTOTLE、ENGAGE-AF)においてワルファリン群と比較してNOAC群の頭蓋内出血は大幅に減少した(本誌p.24図1を参照)1-3,12)。(2) アジアでの比較結果各第III相試験サブ解析から読み取れるアジアや東アジアの人々の特徴は、小柄であり、それに伴いクレアチニンクリアランス値が低く、脳卒中の既往や脳卒中発症率が高いことである13-16)。またワルファリンコントロールにおけるtime in therapeutic range(TTR)が低く、PT-INRが低めで管理されている症例が多いにもかかわらず、ワルファリン療法中の頭蓋内出血発症率は極めて高い特徴がある(本誌p.24図2を参照)13-16)。しかし、NOACの頭蓋内出血発症率はワルファリン群より大幅に低く抑えられており、NOACはアジアや東アジアの人々には一層使いやすい抗凝固薬といえよう。(3) NOAC療法中に少ない理由NOACで頭蓋内出血が少ない一番の理由は、脳に組織因子が多いことと関連する16-18)。組織が損傷されると組織因子が血中に含まれる第VII因子と結びつき凝固カスケードが発動する。NOAC療法中の場合は第VII因子が血液中に十分にあるので、この反応は起こりやすい。しかし、ワルファリン療法中は第VII因子濃度が大幅に下がるのでこの反応は起こりにくくなり止血し難い。次にワルファリンと比較して凝固カスケードにおける凝固阻止ポイントが少ないことが挙げられる。ワルファリンは凝固第II、VII、IX、X因子の4つの凝固因子へ作用するが、抗トロンビン薬や抗Xa薬はひとつの凝固因子活性にのみ阻害作用を発揮するため、ワルファリンよりも出血が少ない可能性がある。さらに安全域の差異を考慮できる。ある薬剤が抗凝固作用を示す薬物血中濃度(A)と出血を示す薬剤の血中濃度(B)の比B/Aが大きければ安全域は広く、小さければ安全域は狭い。ワルファリンはこの比が小さく、NOACは大きいことが示されている19)。最後に薬物血中濃度の推移も影響するだろう。ワルファリンはその効果に大きな日内変動はみられないが、ダビガトランは半減期が12時間で血中濃度にピークとトラフがある。ピークではNOAC自身の薬理作用が、トラフでは生理的凝固阻止因子が主となり、2系統で抗凝固作用を発揮し、見事に病的血栓形成を抑制しているものと理解される(Hybrid Anticoagulation)(図)16,17)。トラフ時には生理的止血への抑制作用は強くないため、それが出血を減らすことと関連するものと推測される。図 ハイブリッド抗凝固療法画像を拡大する(4) 特徴NOAC療法中は頭蓋内出血の頻度が低いのみならず、一度出血した際に血腫が大きくなり難い傾向も有するようだ。われわれはダビガトラン療法中の頭蓋内出血8例9回を経験しケースシリーズ解析を行い報告した20)。対象者は高齢で9回中7回は外傷と関連する慢性硬膜下出血や外傷性くも膜下出血などで、脳内出血は2例のみであった。緊急開頭が必要な大出血はなく、入院後血腫が増大した例もなく、多くの転帰は良好であった。もちろん、大血腫の否定はできず、血圧、血糖、多量の飲酒、喫煙といった脳内出血関連因子の徹底的な管理は重要であるが、ダビガトラン療法中の頭蓋内出血が大きくなりにくい機序としては、前述の頻度が低い機序が同様に関連しているものと推定される。(5) 出血への対応1.必ず行うべき4項目基本的な対応として、まず(1)休薬を行うこと、そして外科的な手技を含めて(2)止血操作を行うことである。(3)点滴によるバイタルの安定は基本であるが、NOACでは点滴しバイタルを安定させることで、半日程度で相当量の薬物を代謝できるので極めて重要である。(4)脳内出血やくも膜下出血などの頭蓋内出血時には十分な降圧を行う。2.場合によって考慮すること急速是正が必要な場合、ワルファリンではビタミンK投与や新鮮凍結血漿投与が行われてきたが、第IX因子複合体500~1,000IU投与(保険適応外)が最も早くPT-INRを是正できる。NOACの場合は、食後のTmaxが最長で4時間程度なので、4時間以内の場合は胃洗浄や活性炭を投与し吸収を抑制する。ダビガトランは透析で除去されるが、リバーロキサバンやアピキサバンは蛋白結合率が高いため困難と予測される。NOAC療法中に第IX因子複合体を投与することで抗凝固作用が是正させる可能性が示されている21)。今後の症例の蓄積とデータ解析に基づく緊急是正方法の開発が急務である。抗体製剤や低分子化合物も緊急リバース方法の1つとして開発が進められている。おわりにNOACは非常に有用な抗凝固薬であるが、実臨床における諸問題も少なくない。登録研究や観察研究を積極的に行い、安全なNOAC療法を確立する必要があろう。文献1)Connolly SJ et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151 and Erratum in. N Engl J Med 2010; 363: 1877.2)Patel MR et al. Rivaroxaban versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2011;365: 883-891.3)Granger CB et al. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-992.4)http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf5)日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保険委員会 rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法指針改訂部会: rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第二版 http://www.jsts.gr.jp/img/rt-PA02.pdf6)矢坂正弘ほか. 新規経口抗凝固薬に関する諸問題.脳卒中2013; 35: 121-127.7)Tabata E et al. Recombinant tissue-type plasminogen activator (rt-PA) therapy in an acute stroke patient taking dabigatran etexilate: A case report and literature review, in press.8)稲石 淳ほか. ダビガトラン内服中に出血合併症なく血栓溶解療法を施行しえた心原性脳塞栓症の1例―症例報告と文献的考察. 臨床神経, 2014; 54:238-240.9)中西泰之ほか. 心房細動と脳梗塞. 臨牀と研究 2013;90: 1215-1220.10)Pessin MS et al. Safety of anticoagulation after hemorrhagic infarction. Neurology 1993; 43:1298-1303.11)Yasaka M et al. Antithrombin III and Low Dose Heparin in Acute Cardioembolic Stroke. Cerebrovasc Dis 1995; 5: 35-42.12)Giugliano RP et al. Edoxaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2013;369: 2093-2104.13)Hori M et al. Dabigatran versus warfarin: effects on ischemic and hemorrhagic strokes and bleeding in Asians and non-Asians with atrial fibrillation. Stroke 2013; 44: 1891-1896.14)Goto S et al. Efficacy and safety of apixaban compared with warfarin for stroke prevention in atrial fibrillation in East Asia with atrial fibrillation. Eur Heart J 2013; 34 (abstract supplement):1039.15)Wong KS et al. Rivaroxaban for stroke prevention in East Asian patients from the ROCKET AF trial. Stroke 2014, in press.16)Yasaka M et al. Stroke Prevention in Asian Patients with Atrial Fibrillation. Stroke 2014, in press.17)Yasaka M et al. J-ROCKET AF trial increased expectation of lower-dose rivaroxaban made for Japan. Circ J 2012; 76: 2086-2087.18)Drake TA et al. Selective cellular expression of tissue factor in human tissues. Implications for disorders of hemostasis and thrombosis. Am J Pathol 1989; 134: 1087-1097.19)大村剛史ほか. 抗凝固薬ダビガトランエテキシラートのA-Vシャントモデルにおける抗血栓および出血に対する作用ならびに抗血栓作用に対するビタミンKの影響. Pharma Medica 2011; 29: 137-142.20)Komori M et al. Intracranial hemorrhage during dabigatran treatment: Case series of eight patients. Circ J, in press.21)Kaatz S et al. Guidance on the emergent reversal of oral thrombin and factor Xa inhibitors. Am J Hematol 2012; 87 Suppl 1: S141-S145.

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2型糖尿病に降圧治療は有効か/JAMA

 2型糖尿病患者に対する降圧治療は、全死因死亡や心血管疾患のほか、脳卒中、網膜症、アルブミン尿などのリスクを改善することが、英国・オックスフォード大学のConnor A. Emdin氏らの検討で示された。糖尿病患者は平均血圧が高く、血圧の上昇は糖尿病患者における大血管障害および細小血管障害のリスク因子として確立されている。一方、糖尿病患者への降圧治療の是非や目標血圧値については、現在もさまざまな議論が続いている。JAMA誌2015年2月10日号掲載の報告。降圧治療と血管疾患の関連をメタ解析で評価 研究グループは、2型糖尿病患者における降圧治療と血管疾患の関連を評価するために系統的レビューを行い、メタ解析を実施した。対象は、1966~2014年に発表された糖尿病患者を含む降圧治療の大規模無作為化対照比較試験に関する論文とした。 本研究では、介入試験のメタ解析の指針であるPRISMAガイドラインで推奨されているアプローチが用いられた。2人のレビューワーが別個に患者背景や血管アウトカムのデータを抽出した。ベースラインおよび達成された血圧値別のアウトカムを評価し、固定効果モデルを用いてメタ解析を行った。 主要評価項目は、全死因死亡、心血管イベント、冠動脈心疾患イベント、脳卒中、心不全、網膜症、アルブミン尿の新規発症または増悪、腎不全の8項目とした。収縮期血圧の10mmHg低下における相対リスク(RR)、1,000人年当たりのイベントの絶対リスク減少率(ARR)および10年間の治療必要数(NNT)を算出した。6項目でリスク改善、薬剤クラス別の差はほとんどない バイアスのリスクが低いと判定された40試験に参加した10万354例が解析の対象となった。収縮期血圧の10mmHgの低下により、主要評価項目のうち以下の6項目のリスクが有意に改善した。 全死因死亡(RR:0.87、95%信頼区間[CI]:0.78~0.96/1,000人年当たりのイベントのARR:3.16、95%CI:0.90~5.22/10年NNT:32、95%CI:19~111)、心血管イベント(0.89、0.83~0.95/3.90、1.57~6.06/26、17~64)、冠動脈心疾患イベント(0.88、0.80~0.98/1.81、0.35~3.11/55、32~284)。 脳卒中(0.73、0.64~0.83/4.06、2.53~5.40/25、19~40)、網膜症(0.87、0.76~0.99/2.23、0.15~4.04/45、25~654)、アルブミン尿(0.83、0.79~0.87/9.33、7.13~11.37/11、9~14)。 ベースラインの平均収縮期血圧が≧140mmHgと<140mmHgの試験に分けて解析したところ、降圧治療により≧140mmHgの試験でRRが有意に減少し、<140mmHgの試験では有意な変化のない項目として、全死因死亡、心血管疾患イベント、冠動脈心疾患イベント、心不全が挙げられた(交互作用のp値がいずれもp<0.1)。 降圧薬のクラス別の解析では、全体としてアウトカムとの関連はほとんどなかった。例外として、利尿薬により心不全のRRが有意に減少した(RR:0.83、95%CI:0.72~0.95)が、これにはALLHAT試験の影響が大きかった。また、ARB薬も心不全のRRを有意に低減させた(0.61、0.48~0.78)が、データは2つの試験に限られ、信頼区間の間隔が広かった。これに対し、カルシウム拮抗薬(CCB)は他のクラスの薬剤に比べ心不全のRRが有意に高かった(1.32、1.18~1.47)。 一方、CCBは脳卒中のリスクを有意に低下させた(RR:0.86、95%CI:0.77~0.97)が、β遮断薬はこれを増大させた(1.25、1.05~1.50)。また、ARBは他の薬剤に比べ全死因死亡のリスクが相対的に低かった(0.81、0.66~0.99)が、これにはLIFE試験の影響が大きかった。なお、バイアスのリスクが高いと判定された1試験と不明と判定された3試験を加えると、薬剤のクラスによるアウトカムの差はほぼなくなった。 著者は、「2型糖尿病患者では、降圧治療により全死因死亡や心血管疾患のほか、脳卒中、網膜症、アルブミン尿のリスクも改善した。これらの知見は、2型糖尿病患者への降圧薬の使用を支持するものである」とまとめ、「脳卒中、網膜症、アルブミン尿のリスクが高い糖尿病患者では、収縮期血圧をさらに130mmHgへと低下させると、これらのリスクが減少することが示唆された」としている。

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DENERHTN研究は腎交感神経焼灼術の降圧効果の有効性をどこまで明らかにしたか(解説:冨山 博史 氏)-309

はじめに 今回、Lancetに難治性高血圧に対する腎交感神経焼灼術の効果を評価した、多施設前向き研究(DENERHTN試験)の結果が報告された。腎交感神経焼灼術は高血圧、心不全、腎機能障害、不整脈などに対する有用な治療法である可能性が注目されている。とくに高血圧に関しては、メタ解析にてその有効性が報告されている1)。 一方、その有効性に否定的な報告もある2)3)。治療手技、疾患の病態などの見地から、腎交感神経焼灼術の効果を検証するにはいくつかの問題点が存在し、腎交感神経焼灼術の効果に対する意見が分かれる一因となっている4)5)。 今回の報告に関して、下記に示す腎交感神経焼灼術の効果を検証する試験における、問題事項と対比してコメントを記載する。試験の概要 DENERHTN試験は、難治性高血圧降圧治療における腎交感神経焼灼術の有用性を検証する前向きランダム化比較試験で、フランスの高血圧管理に特化した15の医療センターで実施された。 腎交感神経焼灼術の有無についてはオープンラベルであるが、エンドポイント評価は中央解析にて盲検化され実施された。1,416例の難治性高血圧要精査症例から101例の試験適合症例が選別された。難治性高血圧診断、腎交感神経焼灼術の降圧効果評価には24時間血圧測定が使用された。対象は、腎交感神経焼灼術+SSAHT (Standard stepped-care antihypertensive treatment)実施群(後述)と、SSAHTのみ実施群(対照群)に振り分けられた。 治療開始6ヵ月後に、腎交感神経焼灼術+SSAHT実施群(n=48)では-15.4mmHgの24時間収縮期血圧の低下を認め、SSAHTのみ実施の対照群(n=51)では-9.5mmHgであり、前者で有意に大きい降圧を認めた。両群間の降圧薬服用数、服薬アドヒアランスに有意な差を認めなかった。腎交感神経焼灼術の有用性を検証するこれまでの試験の研究限界とDENERHTN試験1.腎交感神経焼灼術実施の無作為化 有名な腎交感神経焼灼術の有効性を検証した多施設研究であるSYMPLICITY HTN-3では、対照としてシャム手術を実施した2)。しかし、こうしたシャム手術の実施は倫理的にも限界があり、盲検法を実施するには限界がある。 DENERHTN試験では、腎交感神経焼灼術実施についてはオープンラベル無作為化とし、代わりに治療効果評価(24時間血圧測定)は、盲検化(腎交感神経焼灼術実施群か対照群か情報を知らない条件で中央解析センターにて血圧記録を解析)を実施した。2.難治性高血圧の診断 血圧はさまざまな要因で変動するため、難治性高血圧の診断が十分でない研究も存在する。24時間血圧測定による血圧重症度評価、利尿薬を含む3剤以上の降圧薬併用、服薬アドヒアランスの確認、生活習慣の改善実施の有無、腎機能を含め2次性高血圧除外の評価方法などが問題となる。 DENERHTN試験では、試験登録後4週間は indapamide 1.5mg、ramipril 10mg、 amlodipine 10mgが処方され、血圧レベル評価は24時間血圧測定で評価された。腎機能を含む2次性高血圧のスクリーニングが実施され、さらにCT・MRにて腎動脈狭窄の有無が事前評価された。このように適切な難治性高血圧の評価が実施された研究である。3.対照群の治療 経過観察において血圧の変動が生じるため、対照群・腎交感神経焼灼術実施群とも経過観察中の降圧薬治療の取り扱い方が問題となる。 DENERHTN試験ではSSAHT が実施されている。本方法は、追加降圧薬としてspironolactone 25mg、bisoprolol 10mg、prazosin 5mg、rilmenidine 1mgの使用がプログラムされ、降圧薬追加の適応は月ごと測定の家庭血圧にて決定されるプロトコルであった。しかし、本研究では腎交感神経焼灼術実施の有無の無作為化は24時間測定血圧を基に実施された。また、両群間で血圧低下に有意な差を確認できたのは24時間測定収縮期血圧であり、家庭血圧には有意な差(収縮期血圧降下度:-15.4 mmHg vs. -11.5 mmHg、p=0.300)を認めなかった。4.除神経の評価 除神経術成功の有無を評価する方法は腎臓におけるnoradrenalineのspilloverの測定であるが、腎動静脈noradrenaline濃度を測定する必要があり実用的でない。その他有効な評価方法は確立されていない。 DENERHTN試験でも除神経成功の有無は確認されていない。上述のSYMPLICITY HTN-3(本試験では腎交感神経焼灼術の降圧効果は否定的であった)では、熟練者でない術者が腎交感神経焼灼術を実施したため、除神経が確実でなかったことが懸念されている。 DENERHTN試験では、熟練者の管理の下で腎交感神経焼灼術が実施されている。また、最近の検討で、腎遠心神経は腎動脈遠位側でその分布が腎動脈内腔側を走行することが示された。ゆえに、今後、腎動脈遠位側で焼灼術が施行可能なデバイスを使用したか、腎動脈遠位側の焼灼を実施したかを確認することも必要であろう。DENERHTN試験ではSimplicityカテーテルが使用されており、手技的に腎動脈遠位側の焼灼が可能であるが、手技的詳細は記載されていない。5.治療効果評価方法 項目2でも記載したが治療効果評価には24時間血圧測定が必要である。その他、臓器障害として、左室肥大、脈波速度、腎機能などが効果判定の指標として使用されているが、確立された効果判定の指標はない。また、イベント抑制を検討した長期前向き研究はない。 DENERHTN試験では降圧効果の評価は24時間血圧測定にて実施され、同時に服薬アドヒアランスも確認されている。腎機能の変化は両群同等であった。まとめ DENERHTN試験は、腎交感神経焼灼術実施の盲検化は施行されていないが、治療効果評価は盲検化された試験であり、バイアスは小さい試験と考えられる。また、難治性高血圧の診断、血圧変化評価も24時間測定血圧が用いられ妥当と考えられる。ゆえに、本試験の難治性高血圧降圧治療としての腎交感神経焼灼術の有効性を支持する結果の意義は大きい。 しかし、従来の降圧効果の評価指標である診療室血圧、家庭血圧には対照群と有意な差を認めていない。ゆえに、現時点での腎交感神経焼灼術の降圧効果は有意であっても降圧薬の効果と対比すると小さい可能性が否定できない。 本試験でも従来の試験と同様に除神経成功の可否が評価されていない。今後、確実な除神経が実施された場合の降圧効果の評価が必要である。 その他の問題点は、治療後の降圧薬数は両群で同等であったが、降圧薬追加の適応は24時間血圧でなく家庭血圧で決定されたこと、対照群がシャム手術群でないことである。

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RA系阻害薬使用中の高齢者への抗菌薬ST合剤使用で突然死!(解説:浦 信行 氏)-277

RA系阻害薬は、RA系を阻害することによるアルドステロン低下が高K血症を引き起こすことはよく知られた事実であり、致死性の不整脈を惹起することを念頭に置いた使用が望まれる。ST合剤(トリメトプリム。スルファメトキサゾール合剤)はわが国ではバクタ、バクトラミン、セプテリンの商品名で市販されており、それなりに汎用されている薬剤である。このたび、カナダのFralick氏らは、RA系阻害薬使用中の高齢者への、抗菌薬であるST合剤の使用が突然死のリスクを上げることをBMJ誌に報告した。 アモキシシリン使用例を対照とすると、ST合剤併用の突然死のリスクは7日目で1.38倍、14日目で1.54倍と有意に上昇するとの結果である。成分中のトリメトプリムの化学構造がK保持性利尿薬のアミロライドに類似しており、腎臓の遠位ネフロンに存在するアミロライド感受性の上皮型Naチャネルを抑制し、Na利尿を促進し、K利尿を抑制して、血清K濃度を上昇させる。ST合剤単独使用でも、投与例の80%に0.36 mEq/L以上の血清K濃度を上昇させ、6%に5.4 mEq/L以上の高K血症を引き起こすことが報告されている1)。 また、高齢者においてアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬使用例に各種K保持性利尿薬を併用すると、高K血症による入院のリスクは20倍になることも報告されている2)。著者らは、以前よりこの点に着目しており、ACE阻害薬使用例におけるST合剤の使用が、高K血症のリスクを6.7倍に上昇させることをすでに報告していた3)。その結果、本研究で示されるように、最終アウトカムである突然死のリスクが有意に増加するという重大な事実を明示した。 バクタ配合薬の添付文書は2012年8月に改訂されており、重大な副作用の(13)に高カリウム血症、低ナトリウム血症(頻度不明)と記載されている。しかし、相互作用、併用注意の項でRA系阻害薬やK保持性利尿薬併用時の注意喚起は記載されておらず、突然死の可能性を示す記載もない。高齢者は潜在的な腎機能低下を合併しやすく、その結果、腎代謝であるST合剤の血中濃度の上昇とK排泄能低下から、そのリスクが高まると考えられる。しかし、非高齢者においてもこのリスクは十分考慮されなければならない。

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肥満者の降圧治療、心血管効果に差はない/Lancet

 降圧治療の心血管イベントへの影響は、痩せている患者と肥満患者で、降圧薬の選択によって大きく変わることはほとんどないことが示された。オーストラリア・シドニー大学のAndrew Ying氏らが、無作為化試験22試験・13万5,715例の被験者データをメタ解析した結果、報告した。本検討は、標準体重の人と比べて肥満者の降圧による心血管ベネフィットが、選択した薬によって異なるのではないかとの仮説に基づき行われたものであった。Lancet誌オンライン版2014年11月4日号掲載の報告より。22試験13万5,715例のデータを分析 研究グループは、降圧治療の心血管リスクに対する影響について、ベースライン時のBMI値で分類した患者間で比較を行った。 Ovid Medline、Embaseなどを介して1966年1月1日~2014年5月1日に発表された降圧治療に関する無作為化試験で、BMI値の主要心血管イベントまたは死亡への交互作用を報告していたものを特定し、試験の被験者個人データを用いて、種々のクラスの降圧レジメン間の比較を行った。比較検討は主要6つ(ACE阻害薬vs.プラセボ、Ca拮抗薬vs.プラセボ、強化療法vs.標準療法、ACE阻害薬vs.利尿薬またはβブロッカー、Ca拮抗薬vs.利尿薬またはβブロッカー、ACE阻害薬vs.Ca拮抗薬)について行った。また、BMI値の分類は、3分類(25未満、25~30未満、30以上)または連続変数分類で行った。 検索の結果、分析は31の異なる治療比較が行われていた22試験・13万5,715例の個人データに基づき行われた。主要心血管イベントの発生例は、1万4,353件であった。高度肥満者ではACE阻害薬が若干の保護効果を期待できる? 主要6比較において、BMI値3分類間の保護効果が降圧薬のクラスによって異なるというエビデンスは示されなかった(すべての傾向p>0.20)。 BMI値を連続変数として分析した場合、ACE阻害薬が、Ca拮抗薬(BMI値が5増すごとのハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.89~0.98、p=0.004)、利尿薬(同:0.93、0.89~0.98、p=0.002)よりも、わずかだが保護効果が認められた。 一方でメタ回帰分析の結果、BMI値と収縮期血圧の低下におけるリスク低下との関連性は示されなかった。また、これまでの報告とは対照的に、BMI値と、Ca拮抗薬の有効性(vs.利尿薬)との相関も認めることができなかった。 著者は、「結論として、今回の分析は、降圧治療効果の修正因子としてBMI値は影響はあるだろうとの洞察を十分に与えるものである。ACE阻害薬は最もBMI値によって異なる効果があると思われ、おそらくBMIがより高値な人では心血管保護効果がわずかだがあると思われる。しかし、十分な説得力のあるエビデンスはない。また、データ的に、臨床に変化を提供するような強力なケースはなく、とくに肥満患者向けにというクラスの降圧薬はない」とまとめている。

211.

肥満合併高血圧に対してどの降圧薬が優れているか?:BPLTTCによるメタ解析(解説:桑島 巌 氏)-276

BPLTTCは世界で最も信頼性の高いメタ解析グループであり、近年相次いで降圧薬に関するメタ解析結果を発表している。 本論文は、以前から問題にされていた肥満に合併した降圧薬に対する心血管合併症予防効果について、4種類の降圧薬(ACE阻害薬、Ca拮抗薬、降圧利尿薬、β遮断薬)のうちどの薬剤が最も優れているかについて、22トライアル約13万5,715人のデータから検討した結果である。 その結果、ACE阻害薬はプラセボと比較した場合、有意性が若干認められたが、連続変数としてみた場合にはその有意性は消失していた。 ACE阻害薬のCa拮抗薬に対する優位性はBMI 30以上の高度肥満に限定していたが、5kg体重上昇ごとの連続変数としてみた場合にはACE阻害薬の優位性が観察された。 このように肥満度ごとの比較と、連続変数として比較した場合に乖離がみられることから、結果は偶然性の可能性もあるとして、著者らは肥満に対する降圧薬の有効性には大きな差はみられなかったと結論している。むしろどのBMIレベルでも降圧に依存して心血管イベントリスクが減少することから、降圧薬の種類にかかわらず降圧そのものが重要ということになる。

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ADVANCE-ON試験:一定期間の降圧治療の有無でも、長期的な心血管イベント発症に影響(解説:桑島 巌 氏)-260

2型糖尿病合併高血圧患者で、大血管障害を予防するためには、血糖管理に加えて、厳格な血圧管理が非常に重要であることは、UKPDS38という有名な臨床試験で証明されていた。しかし、厳格血圧コントロールといっても平均144/82mmHg、通常血圧管理群154/87mmHgという高いレベルでの比較だった。  2007年に発表されているADVANCE試験は、2型糖尿病合併高リスクの症例で平均145/81mmHg、41%が140/90mmHg未満の正常血圧症例を含む症例でのACE阻害薬+利尿薬の心血管合併症(macro, micro)予防効果をプラセボ治療群と比較した試験である。その平均4.4年間の結果では、厳格なACE阻害薬+利尿薬による血圧管理が、プラセボに比べて大血管および細小血管障害を有意に抑制したことが報告されている1)。また、血糖管理に関しても、HbA1c6.5%未満の厳格管理が、標準管理群よりも心血管イベント抑制に有用であることも示されていた。 今回発表のADVANCE-ON試験は、試験終了後ランダム化を終了したあと、さらに血圧管理試験では平均5.9年間、血糖管理試験では5.4年間延長して観察された結果である。延長期間中にはすでに厳格血圧管理群と通常管理群における血圧値の差は消失しており、血糖値もHbA1c6.5%未満の厳格血糖管理群と通常管理群の間でも差は消失していたという。 このことは糖尿病合併高血圧患者における4.4年間における降圧薬治療の違いが、試験終了後5~6年間までも全死亡や心血管死に強く影響することを示した試験として興味深い。 一方、血糖コントロールに関しての厳格管理群と通常管理群との間には、全死亡、心血管死、大血管イベント発症に差はみられず、長期的なメリットは保証されなかった。すなわち血糖管理の遺産効果(legacy effect)について否定的な結果となった。 これら一連の臨床試験結果は、糖尿病患者においては厳格な血圧管理こそ重要であることをあらためて教えてくれる。

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糖尿病患者への降圧治療、長期死亡リスク減/NEJM

 オーストラリア・ジョージ国際保健研究所のSophia Zoungas氏らは、ADVANCE試験被験者について試験後フォローアップしたADVANCE-ON試験6年時点の結果を発表した。2型糖尿病患者への降圧治療および強化血糖コントロール介入の、長期的なベネフィットについて評価した本検討において、降圧治療の死亡に対する有益性は介入終了後も減弱はするものの明白に認められた。その一方で、強化血糖コントロールの影響については、長期的な死亡および大血管イベントに対する有益性のエビデンスが認められなかったという。NEJM誌オンライン版2014年9月19日号掲載の報告より。ADVANCE被験者を試験後フォローアップ ADVANCE試験は、心血管疾患リスク因子を有する55歳以上の2型糖尿病患者1万1,140例を対象に行われた試験。ACE阻害薬ペリンドプリル(商品名:コバシルほか)+利尿薬インダパミド(同:テナキシル、ナトリックス)の併用療法による降圧治療による死亡の抑制効果が認められた一方、目標HbA1c値6.5%以下とした強化血糖コントロールの死亡に対する抑制効果は示されなかった。 研究グループは、同試験参加者を試験終了後にフォローアップ(ADVANCE-ON試験)。主要エンドポイントは、全死因死亡、主要大血管イベントであった。 ADVANCE試験において被験者は、ペリンドプリル+インダパミド併用またはプラセボ、厳格または標準血糖コントロールを受ける群に無作為に割り付けられていた。降圧群のリスク低下は維持、強化血糖コントロール群はやはりリスク低下みられず ADVANCE試験の被験者1万1,140例のベースライン時特性は同等であった。ADVANCE-ON試験には、そのうち8,494例が参加。追跡期間中央値は、降圧群5.9年、強化血糖コントロール群5.4年であった。試験後初回受診時までに、ADVANCE試験中にみられた両群間の血圧値および血糖値の差は認められなくなっていた。 結果、試験中に降圧群で認められた全死因死亡および心血管死リスクの有意な低下は、試験終了後も減弱はしていたものの維持されたことが認められた。リスク低下のハザード比は、全死因死亡は0.91(95%信頼区間[CI]:0.84~0.99、p=0.03)、主要大血管イベントは0.88(同:0.77~0.99、p=0.04)であった。 一方、強化血糖コントロール群と標準血糖コントロール群間の全死因死亡または主要大血管イベントリスクの差は、フォローアップ期間中において観察されなかった。ハザード比は、全死因死亡1.00(95%CI:0.92~1.08)、主要大血管イベント1.00(同:0.92~1.08)であった。

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最も頻度の高い報告は「皮膚症状」― 「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」改訂版を公表

 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、8月29日に「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」の改訂版を公表した。 8月17日までの副作用報告を追加した本改訂版の発表にあたっては、予想された尿路・性器感染症に加え、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹などの重篤な副作用がさらに増加していることが明らかになったとのことである。 同委員会では、「現時点では必ずしも因果関係が明らかでないものも含まれている」としたうえで、「これら副作用情報をさらに広く共有することにより、今後、副作用のさらなる拡大を未然に防止することが必要と考えRecommendationと具体的副作用事例とその対策を報告した」としている。 ■Recommendation1.インスリンやSU 薬等インスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。インスリンとの併用は治験で安全性が検討されていないことからとくに注意が必要である。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2.高齢者への投与は、慎重に適応を考えたうえで開始する。発売から3ヵ月間に65歳以上の患者に投与する場合には、全例登録すること。3.脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬との併用は推奨されない。4.発熱・下痢・嘔吐などがある時ないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。5.本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、必ず副作用報告を行うこと。6.尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。7.原則として、本剤は当面ほかに2剤程度までの併用が推奨される。 ■副作用の事例と対策(抜粋)・重症低血糖 114例(うち12例が重症例)の低血糖が報告され、とくに重症例のうち9例がインスリン併用例とのことである。また、低血糖は、必ずしも高齢者に限らず比較的若年者にも生じていることに注意すべき。インスリン、SU薬または速効型インスリン分泌促進薬を投与中の患者への併用の際は、あらかじめそれら薬剤の減量を検討することが必要。・ケトアシドーシス 4例の報告例。インスリンの中止、極端な糖質制限、清涼飲料水多飲などが原因。SGLT2阻害薬の投与に際し、インスリン分泌能が低下している症例への投与では、ケトアシドーシス発現に厳重な注意を図るとともに、栄養不良状態、飢餓状態の患者や極端な糖質制限を行っている患者への投与では、ケトアシドーシスを発症させうることに一層の注意が必要。・脱水・脳梗塞など 重症の脱水が15例報告され、さらに12例の脳梗塞も報告されたほか、SGLT2阻害薬投与後の心筋梗塞・狭心症が6例報告された。また、脱水と関連して、高血糖高浸透圧性非ケトン性症候群も2例報告された。 脱水への注意として、SGLT2阻害薬投与開始時のみならず、発熱・下痢・嘔吐などがある時ないし食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には、万全の注意が必要であり、SGLT2阻害薬は必ず休薬するなど、患者にもあらかじめよく教育が必要。・皮膚症状 皮膚症状は薬疹、発疹、皮疹、紅斑など非重篤なものを含めれば500例以上(重篤例80例以上)が報告され、最も頻度の高い副作用として報告されている。すべてのSGLT2阻害薬で皮膚症状の報告がある。SGLT2阻害薬投与後1日目からおよそ2週間以内に発症し、投与後早期より十分な注意が必要になるとのこと。皮疹を認めた場合には、速やかに皮膚科医にコンサルトすることが重要。・尿路・性器感染症 尿路感染症120例以上、性器感染症80例以上が報告されている。SGLT2阻害薬投与開始後、数日~2ヵ月後に起こる場合もあり、期間の幅が広い。質問紙の活用を含め適宜問診・検査を行って、発見に努めること。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルトすることが重要。 SGLT2阻害薬の使用にあたっては、「適応を十分考慮したうえで、添付文書に示されている安全性情報に十分な注意を払い、また、本Recommendationを十分に踏まえて、とくに安全性を最優先して適正使用されるべき」と注意を喚起している。●詳しくは、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」から

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「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」で副作用事例と対応策を公表

日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、SGLT2阻害薬の発売開始から約1ヵ月の副作用報告を受け、6月13日に「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表した。発表によると、報告された副作用として、当初予想された尿路・性器感染症に加え、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹など重篤な副作用が発症しているとのことである。同委員会では、「現時点では必ずしも因果関係が明らかでないものも含まれている」としたうえで、「今の時点でこれらの副作用情報を広く共有することにより、今後、副作用のさらなる拡大を未然に防止することが必要と考えRecommendationと具体的副作用事例とその対策を報告した」としている。■Recommendation1.SU 薬などインスリン分泌促進薬やインスリンと併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2.高齢者への投与は、慎重に適応を考えたうえで開始する。発売から3ヵ月間に65歳以上の患者に投与する場合には、全例登録すること。3.脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬との併用は推奨されない。4.発熱・下痢・嘔吐などがあるとき、ないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には休薬する。5.本剤投与後、皮疹・紅斑などが認められた場合にはすみやかに投与を中止し、副作用報告を行うこと。6.尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。7.原則として、本剤はほかに2剤程度までの併用が当面推奨される。■副作用の事例と対策(抜粋)●重症低血糖24例(うち4例が重症例)の低血糖が報告され、多数の糖尿病薬を使用している患者にさらに追加されている場合が多くみられた。併用薬はSU薬、インスリンに加えて、ほかの作用機序の薬剤も含まれている。SGLT2阻害薬の添付文書にあるように、スルホニルウレア剤、速効型インスリン分泌促進剤またはインスリン製剤と同剤を併用する場合は、低血糖のリスクを軽減するためあらかじめスルホニルウレア剤などの併用剤の減量を検討する必要がある。とくに、SU薬にSGLT2阻害薬を併用する場合には、DPP-4阻害薬の場合に準じて、以下の通りSU薬の減量を検討することが必要。グリメピリド2mg/日を超えて使用している患者は2mg/日以下に減じるグリベンクラミド1.25mg/日を超えて使用している患者は1.25mg/日以下に減じるグリクラジド40mg/日を超えて使用している患者は40mg/日以下に減じる●ケトアシドーシス1例の報告例。本例では極端な糖質制限が行われていた。SGLT2阻害薬の投与に際し、インスリン分泌能が低下している症例への投与では、ケトアシドーシス発現に厳重な注意を図るとともに、同時に栄養不良状態、飢餓状態の患者や極端な糖質制限を行っている患者への投与ではケトアシドーシスを発現させうることに注意が必要。●脳梗塞3例(うち2例重篤、1例非重篤)の報告。脱水が脳梗塞発現に至りうることに改めて注意を喚起し、高齢者や利尿剤併用患者などの体液減少を起こしやすい患者に対するSGLT2阻害薬の投与は、十分な理由がある場合のみとし、とくに投与初期には体液減少に対する十分な観察と適切な水分補給を必ず行い、投与中はその注意を継続する。また、脱水がビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの重大な危険因子であることに鑑み、ビグアナイド薬使用患者にSGLT2阻害薬を併用する場合には、脱水と乳酸アシドーシスに対する十分な注意が必要。参考「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」からhttp://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=20●全身性皮疹・紅斑全身性皮疹が7例(うち6例は重篤)の報告、全身紅斑または紅斑性皮疹が4例(うち3例が重篤)の報告。SGLT2阻害薬投与後、1~12日目で発症。SGLT2阻害薬との因果関係が疑われ、投与に際しては十分な注意が必要。SGLT2阻害薬の使用にあたっては、「適応を十分考慮したうえで、添付文書に示されている安全情報に十分な注意を払い、また、本Recommendationを十分に踏まえて、とくに安全性を最優先して適正使用されるべき」と注意を喚起している。●詳しくは、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」からhttp://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=48

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「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表

 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、SGLT2阻害薬の発売開始から約1ヵ月間の副作用報告を受けたことを踏まえ、6月13日に「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表した。 発表によると、報告された副作用として、当初予想された尿路・性器感染症に加え、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹など重篤な副作用が発症しているとのことである。 同委員会では、「現時点では必ずしも因果関係が明らかでないものも含まれている」としたうえで、「今の時点でこれらの副作用情報を広く共有することにより、今後、副作用のさらなる拡大を未然に防止することが必要と考えRecommendationと具体的副作用事例とその対策を報告した」としている。Recommendation 1. SU 薬等インスリン分泌促進薬やインスリンと併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2. 高齢者への投与は、慎重に適応を考えたうえで開始する。発売から3ヵ月間に65歳以上の患者に投与する場合には、全例登録すること。3. 脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬との併用は推奨されない。4. 発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には休薬する。5. 本剤投与後、皮疹・紅斑などが認められた場合には速やかに投与を中止し、副作用報告を行うこと。6. 尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。7. 原則として、本剤はほかに2剤程度までの併用が当面推奨される。  さらに同委員会は、SGLT2阻害薬の使用にあたっては「適応を十分に考慮したうえで、添付文書に示されている安全情報に十分な注意を払い、また、本Recommendationを十分に踏まえて、とくに安全性を最優先して適正使用されるべき」と注意を喚起している。●詳しくは、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」から■「SGLT2阻害薬」関連記事SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

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治療抵抗性高血圧に対する効果の比較、腎除神経術vs擬似的手技/NEJM

 治療抵抗性高血圧に対する腎デナベーション(腎除神経術)の降圧効果を、盲検下でプラセボ(擬似的手技:シャム)と比較した「SYMPLICITY HTN-3」試験の結果が、同研究グループの米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDeepak L. Bhatt氏らにより発表された。6ヵ月時点の評価において、腎除神経術による有意な降圧は認められなかったという。先行研究の非盲検試験では、カテーテルベースの腎除神経術の降圧効果が示唆され、現在80ヵ国以上で臨床導入されている。しかし先行研究は、サンプルサイズが小さく、限定的な24時間血圧の評価で、盲検化不足、シャム対照の不足といった、試験結果の信頼性を損なう多くの点が散見されていた。本試験は、先行研究の方法論の問題を解消するようデザインされた、前向き単盲検無作為化シャム対照試験であった。NEJM誌オンライン版2014年3月29日号掲載の報告より。全米88施設で535例対象、前向き単盲検無作為化試験で検討 SYMPLICITY HTN-3試験は、18~80歳の治療抵抗性高血圧患者を無作為に2対1の割合で、腎除神経術群とシャム群に割り付けて行われた。無作為化以前に患者は、利尿薬を含む3剤以上併用の降圧療法(最大投与量あり)を受けていた。 主要有効性エンドポイントは、6ヵ月時点で評価した診察室血圧の変化で、副次有効性エンドポイントは、24時間血圧平均値の変化であった。 主要安全性エンドポイントは、主要イベントの複合だった(死亡、末期腎不全、末端臓器障害による塞栓症イベント、腎血管系合併症の複合、または1ヵ月時点の高血圧クリーゼ、あるいは6ヵ月時点での新規の70%以上の腎動脈狭窄)。 2011年10月~2013年5月に全米88施設で、1,441例がスクリーニングを受け、そのうち535例(37.1%)が試験に登録され無作為化を受けた(腎除神経術群364例、シャム群171例)。6ヵ月時点の診察室血圧、24時間血圧とも有意差示されず、安全性も 結果、6ヵ月時点の収縮期血圧値の変化(±SD)は、腎除神経術群-14.13±23.93mmHg、シャム群-11.74±25.94mmHgで、両群ともベースライン時から有意な変化が認められた(p<0.001)。腎除神経術群のシャム群に対する差は-2.39mmHgで、群間の有意差は認められなかった(95%信頼区間[CI]:-6.89~2.12mmHg、優越性マージン5mmHgのp=0.26)。 24時間血圧平均値の変化(収縮期血圧)は、それぞれ-6.75±15.11mmHg、-4.79±17.25mmHg、群間差は-1.96mmHgで有意差は認められなかった(95%CI:-4.97~1.06mmHg、優越性マージン2mmHgのp=0.98)。 同様に安全性についても、主要有害イベントの発生は腎除神経術群5/361例(1.4%)、シャム群1/171例(0.6%)で、群間の有意差は認められなかった(%差のp=0.8)。

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検査所見の確認が遅れて心筋炎を見落とし手遅れとなったケース

循環器最終判決判例時報 1698号98-107頁概要潰瘍性大腸炎に対しステロイドを投与されていた19歳男性。4日前から出現した頭痛、吐き気、血の混じった痰を主訴に近医受診、急性咽頭気管支炎と診断して抗菌薬、鎮咳薬などを処方した。この時胸部X線写真や血液検査を行ったが、結果は後日説明することにして帰宅を指示した。ところが翌日になっても容態は変わらず外来再診、担当医が前日の胸部X線写真を確認したところ肺水腫、心不全の状態であった。急性心筋炎と診断してただちに入院治療を開始したが、やがて急性腎不全を合併。翌日には大学病院へ転送し、人工透析を行うが、意識不明の状態が続き、初診から3日後に死亡した。詳細な経過患者情報19歳予備校生経過1992年4月10日潰瘍性大腸炎と診断されて近所の被告病院(77床、常勤内科医3名)に入院、サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリン)が処方された。1993年1月上旬感冒症状に続き、発熱、皮膚の発赤、肝機能障害、リンパ球増多がみられたため、被告病院から大学病院に紹介。2月9日大学病院に入院、サラゾピリン®による中毒疹と診断されるとともに、ステロイドの内服治療が開始された。退院後も大学病院に通院し、ステロイドは7.5mg/日にまで減量されていた。7月10日頭痛を訴えて予備校を休む。次第に食欲が落ち、頭痛、吐き気が増強、血の混じった痰がでるようになった。7月14日10:00近所の被告病院を初診(以前担当した消化器内科医が診察)。咽頭発赤を認めたが、聴診では心音・肺音に異常はないと判断(カルテにはchest clearと記載)し、急性咽頭気管支炎の診断で、抗菌薬セフテラムピボキシル(同:トミロン)、制吐薬ドンペリドン(同:ナウゼリン)、鎮咳薬エプラジノン(同:レスプレン)、胃薬ジサイクロミン(同:コランチル)を処方。さらに胸部X線写真、血液検査、尿検査、喀痰培養(一般細菌・結核菌)を指示し、この日は検査結果を待つことなくそのまま帰宅させた(診察時間は約5分)。帰宅後嘔気・嘔吐は治まらず一段と症状は悪化。7月15日10:30被告病院に入院。11:00診察時顔面蒼白、軽度のチアノーゼあり。血圧70/50mmHg、湿性ラ音、奔馬調律(gallop rhythm)を聴取。ただちに前日に行った検査を取り寄せたところ、胸部X線写真:心臓の拡大(心胸郭比53%)、肺胞性浮腫、バタフライシャドウ、カーリーA・Bラインがみられた血液検査:CPK 162(20-100)、LDH 1,008(100-500)、白血球数15,300、尿アセトン体(4+)心電図検査:心筋梗塞様所見であり急性心不全、急性心筋炎(疑い)、上気道感染による肺炎と診断してただちに酸素投与、塩酸ドパミン(同:イノバン)、利尿薬フロセミド(同:ラシックス)、抗菌薬フロモキセフナトリウム(同:フルマリン)とトブラマイシン(同:トブラシン)の点滴、ニトログリセリン(同:ニトロダームTTS)貼付を行う。家族へは、ステロイドを服用していたため症状が隠されやすくなっていた可能性を説明した(この日主治医は定時に帰宅)。入院後も吐き気が続くとともに乏尿状態となったため、非常勤の当直医は制吐薬、昇圧剤および利尿薬を追加指示したが効果はなく、人工透析を含むより高度の治療が必要と判断した。7月16日主治医の出勤を待って転院の手配を行い、大学病院へ転送。11:00大学病院到着。腎不全、心不全、肺水腫の合併であると家族に説明。14:00人工透析開始。18:00容態急変し、意識不明となる。7月17日01:19死亡確認。当事者の主張患者側(原告)の主張1.病因解明義務初診時に胸部X線写真を撮っておきながら、それを当日確認せず心筋炎、肺水腫を診断できなかったのは明らかな過失である。そして、胸部X線で肺水腫があれば湿性ラ音を聴取することができたはずなのに、異常なしとしたのは聞き漏らしたからである2.転院義務初診時の病態はただちに入院させたうえで集中治療を開始しなければならない重篤なものであり、しかも適切な治療設備がない被告病院であればただちに治療可能な施設へ転院させるべきなのに、病因解明義務を怠ったために転院措置をとることができなかった初診時はいまだ危機的状況とまではいえなかったので、適切な診断を行って転院措置をとっていれば救命することができた病院側(被告)の主張1.病因解明義務初診時には急性咽頭気管支炎以外の異常所見がみられなかったので、その場でX線写真を検討しなかったのはやむを得なかった。また、心筋炎があったからといって必ず異常音が聴取されるとはいえないし、患者個人の身体的原因から異常音が聴取されなかった可能性がある2.転院義務初診時の症状を急性咽頭気管支炎と診断した点に過失がない以上、設備の整った病院に転院させる義務はない。仮に当初から心筋炎と診断して転院させたとしても、その重篤度からみて救命の可能性は低かったさらに大学病院の医師から提案されたPCPS(循環補助システム)による治療を家族らが拒否したことも、死亡に寄与していることは疑いない裁判所の判断当時の状況から推定して、初診時から胸部の異常音を聴取できるはずであり、さらにその時実施した胸部X線写真をすぐに確認することによって、肺水腫や急性心筋炎を診断することは可能であった。この時点ではKillip分類class 3であったのでただちに入院として薬物療法を開始し、1時間程度で病態の改善がない時には機械的補助循環法を行うことができる高度機能病院に転院させる必要があり、そうしていれば高度の蓋然性をもって救命することができた。初診患者に上記のような判断を求めるのは、主治医にとって酷に過ぎるのではないかという感もあるが、いやしくも人の生命および健康を管理する医業に従事する医師に対しては、その業務の性質に照らし、危険防止のため必要とされる最善の注意義務を尽くすことが要求されることはやむを得ない。原告側合計7,998万円の請求に対し、7,655万円の判決考察「朝から混雑している外来に、『頭痛、吐き気、食欲がなく、痰に血が混じる』という若者が来院した。診察したところ喉が赤く腫れていて、肺音は悪くない。まず風邪だろう、ということでいつも良く出す風邪薬を処方。ただカルテをみると、半年前に潰瘍性大腸炎でうちの病院に入院し、その後大学病院に移ってしまった子だ。どんな治療をしているの?と聞くと、ステロイドを7.5mg内服しているという。それならば念のため胸部X線写真や採血、痰培をとっおけば安心だ。ハイ次の患者さんどうぞ・・・」初診時の診察時間は約5分間とのことですので、このようなやりとりがあったと思います。おそらくどこでも普通に行われているような治療であり、ほとんどの患者さんがこのような対処方法で大きな問題へと発展することはないと思います。ところが、本件では重篤な心筋炎という病態が背後に潜んでいて、それを早期に発見するチャンスはあったのに見逃してしまうことになりました。おそらく、プライマリケアを担当する医師すべてがこのような落とし穴にはまってしまうリスクを抱えていると思います。ではどのような対処方法を採ればリスク回避につながるかを考えてみると、次の2点が重要であると思います。1. 風邪と思っても基本的診察を慎重に行うこと今回の担当医は消化器内科が専門でした。もし循環器専門医が患者の心音を聴取していれば、裁判官のいうようにgallop rhythmや肺野の湿性ラ音をきちんと聴取できていたかも知れません。つまり、混雑している外来で、それもわずか5分間という限定された時間内に、循環器専門医ではない医師が、あとで判明した心筋炎・心不全に関する必要な情報を漏れなく入手することはかなり困難であったと思われます。ところが裁判では、「いやしくも人の生命および健康を管理する医業に従事する医師である以上、危険防止のため必要とされる最善の注意義務を尽くさなければいけない」と判定されますので、医学生の時に勉強した聴打診などの基本的診察はけっしておろそかにしてはいけないということだと思います。私自身も反省しなければいけませんが、たとえば外来で看護師に「先生、風邪の患者さんをみてください」などといわれると、最初から風邪という先入観に支配されてしまい、とりあえずは聴診器をあてるけれどもざっと肺野を聞くだけで、つい心音を聞き漏らしてしまうこともあるのではないでしょうか。今回の担当医はカルテに「chest clear」と記載し、「心音・肺音は確かに聞いたけれども異常はなかった」と主張しました。ところが、この時撮影した胸部X線写真にはひどい肺水腫がみられたので、「異常音が聴取されなければおかしいし、それを聞こえなかったなどというのはけしからん」と判断されています。多分、このような危険は外来患者のわずか数%程度の頻度とは思いますが、たとえ厳しい条件のなかでも背後に潜む重篤な病気を見落とさないように、慎重かつ冷静な診察を行うことが、われわれ医師に求められることではないかと思います。2. 異常所見のバックアップ体制もう一つ本件では、せっかく外来で胸部X線写真を撮影しておきながら「急現」扱いとせず、フィルムをその日のうちに読影しなかった点が咎められました。そして、そのフィルムには誰がみてもわかるほどの異常所見(バタフライシャドウ)があっただけに、ほんの少しの配慮によってリスクが回避できたことになります。多くの先生方は、ご自身がオーダーした検査はなるべく早く事後処理されていることと思いますが、本件のように異常所見の確認が遅れて医事紛争へと発展すると、「見落とし」あるいは「注意義務違反」と判断される可能性が高いと思います。一方で、多忙な外来では次々と外来患者をこなさなければならないというような事情もありますので、すべての情報を担当医師一人が把握するにはどうしても限界があると思います。そこで考えられることは、普段からX線技師や看護師、臨床検査技師などのコメデイカルと連携を密にしておき、検査担当者が「おかしい」と感じたら(たとえ結果的に異常所見ではなくても)すぐに医師へ報告するような体制を準備しておくことが重要ではないかと思います。本件でも、撮影を担当したX線技師が19歳男子の真っ白なX線写真をみて緊急性を認識し、担当医師の注意を少しでも喚起していれば、医事紛争とはならないばかりか救命することができた可能性すらあると思います。往々にして組織が大きくなると縦割りの考え方が主流となり、医師とX線技師、医師と看護師の間には目にみえない壁ができてセクショナリズムに陥りやすいと思います。しかし、現代の医療はチームで行わなければならない面が多々ありますので、普段から勉強会を開いたり、症例検討会を行うなどして医療職同士がコミュニケーションを深めておく必要があると思います。循環器

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急性心不全治療には新たな展開が必要では?(コメンテーター:平山 篤志 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(166)より-

増加しつつある心不全患者に対して、β遮断薬やRA系抑制薬に加え、更なる予後改善のために急性期からの介入試験が行われるようになった。しかし、トルバプタンやネチリシドを用いた大規模臨床試験では、いずれの薬剤も、急性期の症状改善は得られても予後改善効果は認められなかった。そこで、長期予後を最終評価とする大規模試験ではなく、予後と関連する腎機能保護効果をサロゲートエンドポイントした臨床試験が行われるようになった。 しかしこのROSE試験においても、利尿薬単独療法の場合と比べて、低用量ドパミンまたは低用量のBNP製剤ネシリチドいずれの追加療法も、うっ血除去の強化および腎機能改善への有意な効果は示さなかった。 急性心不全では、本試験のように少数を対象とした試験で効果があっても、多施設試験では有効性が認められていない。施設間で対象とする急性心不全の病態が多様であり、有効な薬剤の効果を多様性が上回ってしまうためではないかと考える。今後の急性心不全の治療の試験のあり方を考慮すべきかもしれない。

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利尿薬に低用量ドパミンを上乗せするメリットは?:腎機能障害を有する急性心不全患者/JAMA

 急性心不全で腎機能障害を有する患者に対し、利尿療法に低用量ドパミン(商品名:イノバンほか)または低用量のBNP製剤ネシリチド(国内未承認)のいずれの追加療法を行っても、利尿療法単独の場合と比べて、うっ血除去の強化および腎機能改善への有意な効果は示されなかったことが報告された。米国・メイヨークリニックのHorng H. Chen氏らによる大規模な多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「ROSE」からの報告で、先行研究の小規模試験では、いずれもアウトカム改善の可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。低用量ドパミン群と低用量ネシリチド群に急性心不全患者360例を割り付け ROSE(Renal Optimization Strategies Evaluation)試験は、プラセボ(利尿療法単独)と比較として、(1)利尿療法+低用量ドパミン(2μg/kg/分)、(2)利尿療法+低用量ネシリチド(0.005μg/kg/分、ボーラスなし)の2つの治療戦略がそれぞれ、腎機能障害を有する急性心不全患者のうっ血除去を強化する可能性、および腎機能を改善する可能性があるとの仮説を検証することを目的とするものであった。 2010年9月~2013年3月に北米26地点で被験者を登録し、急性心不全で入院し腎機能障害(15~60mL/分/1.73m2)が認められた360例を、入院から24時間以内に無作為化した。被験者は非盲検下に1対1の割合で、低用量ドパミン治療戦略群と低用量ネシリチド治療戦略群に割り付けられ、さらに各群患者は無作為二重盲検下に2対1の割合で、実薬治療群とプラセボ群に割り付けられた。 主要エンドポイントは、72時間累積尿量(うっ血除去のエンドポイント)、登録から72時間までの血清シスタチンC値の変化(腎機能のエンドポイント)などを含んだ複合とした。低用量ドパミン群も低用量ネシリチド群も有意な効果はみられず 低用量ドパミン群122例、低用量ネシリチド群119例を、プールプラセボ群119例と比較した。 結果、プラセボと比較して、低用量ドパミン追加投与の、72時間累積尿量に関する有意な効果はみられなかった。同値は低用量ドパミン群8,524mL(95%信頼区間[CI]:7,917~9,131)vs. プラセボ群8,296mL(同:7,762~8,830)で、両群差は229mL(同:-714~1,171)だった(p=0.59)。 また、血清シスタチンC値の変化に関する有意な効果もみられなかった。同値は低用量ドパミン群0.12mg/L(95%CI:0.06~0.18)vs. プラセボ群0.11mg/L(同:0.06~0.16)で、両群差は0.01mg/L(同:-0.08~0.10)だった(p=0.72)。 同様に、低用量ネシリチド追加投与についても、両エンドポイントに関する有意な効果がみられなかった。72時間累積尿量は、低用量ネシリチド群8,574mL(95%CI:8,014~9,134)vs. プラセボ群8,296mL(同:7,762~8,830)で、両群差は279mL(同:-618~1,176)だった(p=0.49)。血清シスタチンC値の変化は、低用量ネシリチド群0.07mg/L(同:0.01~0.13)vs. プラセボ群0.11mg/L(同:0.06~0.16)で、両群差は-0.04mg/L(同:-0.13~0.05)だった(p=0.36)。 副次エンドポイント(うっ血除去、腎機能あるいは臨床的アウトカムに関する)についても、低用量ドパミン群と低用量ネシリチド群の効果を示すものは認められなかった。

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