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PD-1阻害薬のILD、GGOタイプは予後不良?/日本臨床腫瘍学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、非小細胞肺がん(NSCLC)に有効かつ持続的な効果をもたらすが、ICIによる間質性肺炎(ILD)は致死的となる場合もある。しかし、ILDの画像パターンと抗腫瘍効果、さらに患者の生存との関係は明らかになっていない。新潟大学の渡部 聡氏らはPD-1阻害薬治療患者によるILDの放射線学的特徴と臨床結果の後ろ向き観察試験を実施し、その結果を第17回日本臨床腫瘍学術集会で報告した。 2016年1月~2017年10月に、Niigata Lung Cancer Treatment Group(11施設)の診療記録から、1~3次治療でPD-1阻害薬投与を受けたNSCLC患者を評価した。ILDは各施設の担当医が診断し、画像データを元に独立した1名の放射線科医と2名の呼吸器科医がILDの画像分類を行った。リードタイムバイアスを最小限にするため、PD-1阻害薬開始43日時点(PD-1阻害薬開始からILD発症までの中央値)でのランドマーク解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・231例がPD-1阻害薬治療を受けており、ILD発症は33例(14%)であった。・扁平上皮がんの割合はILD非発症群32%に対しILD発症群では52%とILD発症群で有意に高かった。組織型以外の患者背景は両群で同様であった。・ILD発症33例の画像パターンは、COP(cryptogenic organizing pneumonia-like)16例、GGO(ground glass opacities)16例、NOS(pneumonia not otherwise specified)1例であった。・ランドマーク解析による無増悪生存期間(PFS)中央値は、ILD発症群未達、ILD非発症群8.6ヵ月とILD発症群で有意に長かった(p=0.032)。・全生存期間(OS)中央値は、ILD発症群14.8ヵ月、ILD非発症群24.5ヵ月と両群間に差はみられなかった(p=0.611)。・ILDパターン別のOS中央値は、COP未達、GGO7.8ヵ月、NOS3.3ヵ月であり、COPとGGOの比較ではCOPで有意に長かった(COP対GGO、p=0.018)。・ILD発症後のOS中央値は、COP未達、GGO7.3ヵ月、NOS3.3ヵ月であり、COPとGGOの比較ではCOPで長い傾向にあった(COP対GGO、p=0.05)。 渡部氏らは、この試験の結果から、ILDのパターンとPD-1阻害薬治療後の予後に関連が示唆されるとの見解を示した。

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本邦初、高齢者のがん薬物療法ガイドライン発行/日本臨床腫瘍学会

 約3年をかけ、高齢者に特化して臓器横断的な視点から作成された「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」が発行された。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で概要が発表され、作成委員長を務めた名古屋大学医学部附属病院の安藤 雄一氏らが作成の経緯や要点について解説した。なお、本ガイドラインは日本臨床腫瘍学会と日本癌治療学会が共同で作成している。高齢者を一律の年齢で区切ることはせず、年齢幅を持たせて評価 本ガイドラインは「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」に準拠し、臨床試験のエビデンスとともに、益と害のバランス、高齢者特有の価値観など多面的な要因に基づいて推奨の強さが検討された。作成委員会からは独立のメンバーによるシステマティックレビュー、専門医のほか非専門医・看護師・薬剤師・患者からの委員を加えた推奨パネルでの投票により、エビデンスの強さ(4段階)と推奨の強さ(2段階+推奨なし)が決定されている。 対象となる高齢者については、一部のCQを除き具体的な年齢で示すことはしていない。各薬物療法の適応になる基本的な条件を満たしており、PS 0または1、明らかな認知障害を認めず、主な臓器に機能異常を認めない患者が対象として想定されている。“実臨床で迷うことが多い”という観点で12のCQを設定 12のクリニカルクエスチョン(CQ)は、CQ1が総論、CQ2~3が造血器、CQ4~6が消化管、CQ7~9が呼吸器、CQ10~12が乳腺という構成となっている(下記参照)。各CQは実臨床で遭遇し判断に迷うもの、そして臨床アウトカムの改善が見込まれるものという観点で選定。例えば呼吸器のCQ7は、予防的全脳照射(PCI)を扱っており、薬物療法ではないが、実臨床で迷うことが多く重要、との判断から取り上げられた。 推奨パネルでの投票で意見が割れ、最終的な決定にあたって再投票を実施したCQも複数あった。呼吸器のCQ8では、高齢者の早期肺がんに対する術後補助化学療法としてのシスプラチン併用について検討している。報告されている効果は5年生存率で+10%と小さく、1%の治療関連死が報告されている。判断について意見が分かれたが、最終的に、「実施することを明確に推奨することはできない(推奨なし)」とされている。 本ガイドラインでは、関連のエビデンス解説や推奨決定までの経緯についての記述を充実させており、巻末には各CQについて一般向けサマリーを掲載している。患者ごとに適した判断をするために、また患者にリスクとベネフィットを正確に伝えるために、これらの情報を活用することが期待される。独自のメタアナリシスを実施したCQも そもそも高齢者は臨床試験の選択基準から除外されることが多く、エビデンスは全体的に乏しい。評価できるエビデンスがサブグループ解析に限られ、直接高齢者を対象としたRCTは存在しないものが多かった。消化器のCQ5では、70歳以上の結腸がん患者に対する術後補助化学療法について検討しているが、70歳以上へのオキサリプラチン併用療法は、現状の報告から明確な上乗せ効果は確認できず、一方で末梢神経障害の増加が認められることから、「オキサリプラチン併用療法を行わないことを提案(弱く推奨)」している。 独自のメタアナリシスを行ったCQもある。乳がん領域のCQ11では、高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法で、アントラサイクリン系抗がん剤の省略が可能かどうかを検討している。2つの前向き試験(CALGB49907とICE II-GBG52)のメタアナリシスを行い、アントラサイクリン系抗がん剤を省略することで生存期間と無再発生存期間が短縮する可能性が示唆された。その他心毒性についての観察研究結果などのエビデンスも併せて検討された結果、「アントラサイクリン系抗がん薬を省略しないことを提案(弱く推奨)」している。各領域で取り上げられているCQ[総論] CQ1 高齢がん患者において,高齢者機能評価の実施は,がん薬物療法の適応を判断する方法として推奨されるか?[造血器] CQ2 高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か? CQ3 80才以上の高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してアントラサイクリン系薬剤を含む薬物療法は推奨されるか?[消化器] CQ4 高齢者では切除不能進行再発胃がんに対して,経口フッ化ピリミジン製剤とシスプラチンまたはオキサリプラチンの併用は推奨されるか? CQ5 結腸がん術後(R0切除,ステージIII)の70才以上の高齢者に対して,術後補助化学療法を行うことは推奨されるか?行うことが推奨されるとすれば,どのような治療が推奨されるか? CQ6 切除不能進行再発大腸がんの高齢者の初回化学療法においてベバシズマブの使用は推奨されるか?[呼吸器] CQ7 一次治療で完全奏効(CR)が得られた高齢者小細胞肺がんに対して,予防的全脳照射(PCI)は推奨されるか? CQ8 高齢者では完全切除後の早期肺がんに対してどのような術後補助薬物療法が推奨されるか? CQ9 高齢者非小細胞肺がんに対して,免疫チェックポイント阻害薬の治療は推奨されるか?[乳腺] CQ10 高齢者ホルモン受容体陽性,HER2陰性乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬を投与すべきか? CQ11 高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬の省略は可能か? CQ12 高齢者HER2陽性乳がん術後に対して,術後薬物療法にはどのような治療が推奨されるか?

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免疫CP阻害薬のやめ時は?最終サイクル後の30日死亡率/日本臨床腫瘍学会

 進行・難治性がん患者に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用する機会が増えているが、明確な中止基準は確立されていない。2011 national cancer strategy for Englandでは、回避可能な全身性抗がん剤治療(SACT)による害の臨床指標として、30日死亡率を提唱している。今回、一宮市立市民病院 龍華 朱音氏らが、ICI治療の最終サイクル後30日以内に死亡した患者について調査したところ、PS不良の患者にICI治療が選択される傾向があり、また、最終サイクルの治療費が従来の治療の約10倍となっていることが明らかになった。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で報告された。 本研究では、2016年1月~2018年6月にSACTを受けたすべてのがん患者のデータを同定し、最終サイクル後30日以内に死亡した患者を後ろ向きに収集した。ICIの最終サイクル後30日以内に死亡した患者(ICI群)と、主に細胞障害性抗がん剤による従来のSACTの最終サイクル後30日以内に死亡した患者(非ICI群)の2群に分け、死因、臨床的特徴、治療関連因子を比較した。なお、経口抗がん剤および局所動脈/髄腔内注射の投与患者は除外した。 主な結果は以下のとおり。・SACTを受けた1,442例のうち90例が、最終レジメンをICIで治療されていた。・ICIの最終サイクル後30日以内に16.7%(15/90例)が死亡し、ICI以外のレジメンで治療され死亡した1.6%(22/1,352例)より死亡率が高かった。・ICI群の年齢中央値(範囲)は71歳(60~86歳)、男性14例/女性1例、最終サイクル時のECOG PSが0~1が4例、2~4が11例であった。死因は、腫瘍の進行11例、感染症3例、その他(免疫関連肝炎)1例であった。・ICI群は非ICI群と比べて、男女の割合(14/1 vs. 13/9、p=0.028)、PS 2~4の割合(73.3% vs.40.9%、p=0.040)、治療費中央値(821,310円vs.87,610円、p<0.001)が有意に高かった。 龍華氏は、抗がん剤治療後早期死亡を引き起こす主因として、治療関連死および積極的治療適応外の2点を挙げた。また、ICI治療における30日死亡率が高い理由として、細胞障害性抗がん剤に忍容性がない患者にICIが投与されている可能性を指摘した。さらに、医療資源の浪費抑制のために、上記の積極的治療適応外に該当する緩和ケアが有用な患者においては、ICI中止のための適切なガイドラインが必要である、と結論した。 発表後の質疑において、龍華氏は、肺癌診療ガイドライン2018年版では、PS 3~4の患者(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明、PD-L1発現は問わない)へは薬物療法を行わないよう推奨されているが、実臨床では、ICIは免疫関連有害事象が発現しなければ投与できてしまうこと、治療効果が得られず腫瘍増大を来した症例にもPseudo-Progressionであることを期待して4サイクルまで継続しようとするなど、やめ時が難しいという問題を提起した。

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がん免疫療法ガイドライン第2版発刊【Oncologyインタビュー】第9回

がん免疫療法ガイドライン第2版が本年(2019年)3月に発刊された。第1版から2年3ヵ月のスピード改訂である。本版制作の実務を担った日本臨床腫瘍学会がん免疫療法ガイドライン改訂版作成ワーキンググループ長である九州大学 馬場 英司氏に、第2版の改訂ポイントを聞いた。2年3ヵ月(第1版は16年12月、第2版は19年3月に発刊)という短期間で第2版を発刊されていますが、その背景について教えてください。このガイドラインの対象は主に免疫チェックポイント阻害薬で、それらを適正に使用することを目的にしています。この分野は新しい薬剤が次々に登場し、適応疾患も急速に拡大しています。そのため、早めの改訂を行いました。改訂の準備段階で、web版で出すか冊子として出すかを検討しました。当初は部分的なものを想定していましたが、実際に始めてみると改訂すべきボリュームがかなり多いことがわかり、web版ではなく第2版として冊子にしようということとなりました。第1版からの改訂ポイントはどのようなところでしょうか。全体の構成は第1版と同様です。1つ目が「がん免疫療法の分類と作用機序」、2つ目は「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」、最後に「がん免疫療法の癌種別エビデンス」という3つの大項目からなっています。まずがん免疫療法の概論、次に副作用の説明、最後に各臓器における免疫療法の使い方という組み立てです。1つ目の「がん免疫療法の分類と作用機序」は、全体的に大きく変わっていませんが、より詳細な記載になっています。2つ目の「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」については、各項目でボリュームが増しています。なかでも「15.心筋炎を含む心血管障害」については、頻度が高くないという理由から、第1版では独立させていませんでしたが、今回は新たな項目として独立させ、より詳細に記載しました。この分野は腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)と呼ばれ、がん治療、あるいはがんそのものによる循環器系の合併症対策として、腫瘍と循環器との連携の重要性についての認識が高まっています。免疫療法においてもこの分野は重要なものとなっています。3つ目の「がん免疫療法の分類と作用機序」で特徴的なことは「19.高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能の欠損(dMMR)を有する切除不能・転移性の固形癌」を加えたことです。このテーマは第2版作成当初から重要性に注目し、準備していました。MSI-H検査が保険診療で使えるようになったのは、この第2版が出る数ヵ月前(2018年12月)であり、タイミング良く載せられたと思います。このような臓器横断的な遺伝子変化を対象とした治療薬は今後もでてきますので、他学会と協力した取り組みも進めています。副作用対策も治療エビデンスも広範囲にわたります。貴学会内だけでなく、他学会のサポートもあったのでしょうか制作に関わっていただいたのは全部で23名です。適応がん種は幅広いので、日本臨床腫瘍学会のがん種横断的な先生方の協力をいただいています。また、他学会からの協力もいただいており、日本免疫学会から玉田耕治先生、日本臨床免疫学会から鳥越俊彦先生に代表として入っていただき、腫瘍循環器学の分野からは向井幹夫先生にご協力いただきました。医療者の方々に有効に活用いただくためのアドバイスをお願いします。免疫チェックポイント阻害薬は非常に期待されている薬剤である一方、従来の抗がん剤とはまったく異なる副作用が発現します。これらの有害事象を上手にマネジメントしないとせっかくの薬が有効活用できません。また循環器や内分泌など、腫瘍専門家に馴染みの少ない分野の有害事象への対応も必要となります。このガイドラインを活用し、さまざまな臓器の有害事象を頭に入れ、対策に役立てていただきたいと思います。そして、ガイドラインの活用と共に、他の専門家とのネットワーク構築などを進めていただければ、期待される薬剤をさらに有効に活用できると思います。

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ニボルマブ・イピリムマブによるNSCLC術前治療(NEOSTAR)/ASCO2019

 Stage I〜IIIの切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)の50%は再発する。そのような中、免疫チェックポイント阻害薬による術前治療の研究が数多く進行している。ニボルマブ・イピリムマブ併用による術前治療の有効性と安全性を評価する第II相NEOSTAR試験の追跡結果が米国臨床腫瘍学会年次総会(ACO2019)で発表された。・対象:切除可能Stage I~IIIA NSCLC(Single N2)患者・arm A:ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg→ニボルマブ2週ごと3サイクル(NI群)・arm B:ニボルマブ3mg/kg→ニボルマブ2週ごと3サイクル(N群)・評価項目:[主要評価項目]N群とNI群のMPR(Major Pathologic Response、生存しうる腫瘍細胞10%以下)[副次評価項目]毒性、周術期罹患率/死亡率、奏効率(ORR)、無再発生存期間、全生存期間など 主な結果は以下のとおり。・44例が登録され、ニボルマブ単剤(N)群とニボルマブ・イピリムマブ併用(NI)群に無作為に1対1で割り付けられた。・44例中41例(93%)が術前治療を完遂(N群96%、NI群90%)し、39例(89%)が手術を受けた(N群96%、NI群81%)。・ITTグループのMPRはN群17%(4/23例)、NI群33%(7/21例)であった。・手術実施例のMPRはN群19%(4/21例)、NI群44%(7/16例)であった。・ORRはN群22%(5/23例)、NI群19%(14/221例)であった。・頻度の高い治療関連有害事象は、疲労感(N群35%、NI群33%)、ざ瘡様皮疹(N群26%、NI群52%)などであった。

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高齢者進行非小細胞肺がん、膵がん患者に対する早期運動・栄養介入の多施設共同ランダム化第II相試験(NEXTAC-TWO)

 高齢の進行期がん患者の多くは、がん悪液質による疲労、食欲不振、および身体機能の低下を有しているが、効果的な介入が確立されていない。静岡県立静岡がんセンターの内藤 立暁氏らは進行期がんに対する栄養療法および運動療法を組み合わせた早期介入プログラムNEXTAC(The Nutrition and Exercise Treatment for Advanced Cancer program)の第I相試験(NEXTAC-ONE)を実施し、がん悪液質高リスクの高齢患者におけるNEXTACの実現可能性を報告した(Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle, 2018)。この結果に基づきNEXTACによる早期の運動・栄養介入の有効性を評価する多施設共同無作為化第II相NEXTAC-TWO試験が開始された。NEXTAC-TWO試験の実施の背景、設計などについて新潟県立がんセンター新潟病院 三浦 理氏らがBMC Cancer誌オンライン版2019年5月31日号で発表した。NEXTAC介入群と介入なしの対象群に130例の被験者を無作為に割り付け・対象:1次治療として化学療法実施予定の進行期非小細胞肺がん(NSCLC)または膵臓がん患者。年齢70歳以上、PS 2以下で適切な臓器機能を持ち介護を要しない患者・介入群:1次治療開始とともに、BCAA(分岐鎖アミノ酸)含有サプリメント摂取(大塚製薬:インナーパワー)と栄養カウンセリング、低強度在宅運動プログラム、身体活動計により測定された歩数に基づく身体活動量促進プログラムを医師のほか栄養士、理学療法士、看護師より成る多職種チームによる介入を行う・対照群:介入なし・評価項目:[主要評価項目]介護不要生存期間[副次評価項目]栄養状態、除脂肪体重、運動機能、ADL、QOL、全生存期間、安全性など わが国の15施設から130例の被験者を登録する。被験者を介入群と対照群に無作為に割り付け、無作為化から4回(登録時、4±2週、8±2週、12±2週)介入と評価を実施する。層別化因子は、PS(0~1対2)、原発がんの部位(肺と膵)、病期(Stage IIIとIV)、化学療法の種類(ドライバー遺伝子変異に対するキナーゼ療法とその他)など。筆頭著者 三浦 理氏のNEXTAC-TWO試験についてのコメント がん治療、とくに非小細胞肺がんの世界ではドライバー遺伝子変異に対するキナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療開発が非常に活発に行われている。それに伴い、長期生存が得られる症例が増えており、今後はQOLの改善、維持ということが重要視されるだろう。2019年、抗悪液質治療薬であるグレリン誘導体のアナモレリンが臨床導入される予定である。この薬剤は食欲改善効果と共に除脂肪体重増加効果はあるが、筋力の改善、増強は得られがたいことが臨床試験で示唆されている。今まで前向き試験で示されることができなかった多職種介入の有効性が本試験で示されれば支持療法の分野における大きな一歩であると考えられる。本試験はすでに症例登録は終了し観察期間に入っており、結果の公表が待たれる。

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ASCO2019レポート 泌尿器腫瘍

レポーター紹介# LBA2 転移性ホルモン感受性前立腺がんにおけるエンザルタミドの生存期間延長効果Sweeney C, et al. J Clin Oncol 37, 2019米国臨床腫瘍学会(ASCO)は毎年Plenary sessionとして時代を変える結果となった臨床試験を4題選択し、学会3日目にほかのsessionは行わず、単独で最も収容人数の多い会場で演題発表を行う。泌尿器がんでこの名誉あるPlenary sessionに選ばれたのが、ENZAMET試験であった。エンザルタミドは、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)においてドセタキセル後でもドセタキセル前であってもプラセボと比較し生存期間(OS)の延長効果が示され、日本でも保険償還されている。2019年2月のASCO-GUでは、ARCHES試験の結果が報告され、転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)においての画像上の無増悪生存期間(rPFS)の延長効果が報告され、アビラテロン+プレドニゾロン療法と同様にホルモン感受性期での使用のメリットが示されていた。今回ASCO2019で報告されたのは、オーストラリア・ニュージーランドの臨床試験グループが主導する国際共同臨床試験で、mHSPCに対し非ステロイド系抗アンドロゲン薬 (NSAA)とエンザルタミドをランダム化比較し、OSの延長効果を検証するデザインであった。このENZAMET試験において観察期間中央値34ヵ月時点における中間解析が報告された。対象患者は、転移量(High/Low volume)、早期ドセタキセルの計画(あり/なし)、Performance status(0~1/2)、骨修飾薬(あり/なし)、合併症(少ない/多い)、施設で割り付け調整され、テストステロン抑制療法に加えて通常のNSAA(ビカルタミド、フルタミド、lilutamide)を行う群と、エンザルタミド160mgを行う群の2群に分けられた。ARCHES試験と異なりドセタキセルの併用が許容されており、約45%が併用していた。プライマリエンドポイントの3年OSは、NSAA群で72%、エンザルタミド群で80%であり、ハザード比(HR)0.67(95%信頼区間[CI]:0.52~0.86、p=0.002)であった。セカンダリーエンドポイントの、PSA無増悪生存期間のHRは0.39(95%CI:0.33~0.47)であった。計画的に設定されたサブグループであるドセタキセルの併用群と非併用群の治療成績も発表され、非併用群では3年OSはNSAA群70%、エンザルタミド群83%(HR:0.53[95%CI:0.37~0.75])であったのに対し、併用群では75%と74%(HR:0.90[95%CI:0.62~1.31])であり、エンザルタミドの上乗せ効果は不明瞭であった。有害事象は、ドセタキセル併用なしでは倦怠感Grade2が3%から10%に増加する程度で、エンザルタミドの既報と大差はなかったが、ドセタキセルと併用した場合は知覚神経障害と爪の変化、流涙、倦怠感が増加した。この試験は、発表と同時にNew England Journal of Medicine誌にもオンライン出版された。mHSPCの標準治療は、転移量の多いHigh volume症例では早期ドセタキセルとアビラテロン+プレドニゾロン療法のいずれかであったが、本試験により転移量の少ないLow volume症例も含めたmHSPCの新たな治療オプションが選択可能となった。# 5006 転移性ホルモン感受性前立腺がんに対するアパルタミドの無増悪生存期間延長効果Chi KN, et al. J Clin Oncol 37, 2019アパルタミドはアンドロゲン受容体拮抗薬として遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)の標準治療として、日本でも2019年3月に承認となった新規ホルモン製剤である。ASCO2019では、mHSPCにおいてプラセボと比較した二重盲検国際第III相試験であるTITAN試験の結果がOral abstract sessionで報告された。mHSPCの症例のうち、アンドロゲン抑制療法+プラセボ群は527例、アンドロゲン抑制療法+アパルタミド群は525例であり、High volume症例は両群とも60%程度含まれていた。プライマリエンドポイントは、rPFS(α=0.005)とOS(α=0.045)の2つ設定しており、今回はrPFSの最終解析とOSの中間解析であった。2年rPFS割合はプラセボ群48%、アパルタミド群68%であり、HR:0.48(95%CI:0.39~0.60、p<0.0001)と有意にアパルタミド群で良好な結果となった。OSの中間解析ではα<0.009で有効性ありと判断される解析計画であり、観察期間中央値約22ヵ月の現時点において、2年OS割合はプラセボ群74%、アパルタミド群82%、HR:0.67(95%CI:0.51~0.89、p=0.0053)であった。独立データモニタリング委員会は、盲検下での試験継続は倫理性に問題が生じると判断し、盲検解除とプラセボ群にクロスオーバーでのアパルタミド投与を推奨した。rPFSやOSのサブグループ解析から、本試験前のドセタキセルの有無や腫瘍量によらず、アパルタミド群に良好な結果であった。有害事象は、All gradeで皮疹8.5% vs.27%、甲状腺機能低下症1.1% vs.6.5%など、アパルタミド群で多い傾向はあったが、痙攣は0.4% vs.0.6%と両群で差はなく、健康関連QOLも2群の差は認められなかった。ENZAMET試験とTITAN試験は、ほぼ同じmHSPCを対象として新規アンドロゲン受容体拮抗薬の有効性が再現性をもって証明されたが、薬剤の使い分けを要する臨床像は明らかではない。# 4504 尿路上皮がん化学療法後のペムブロリズマブ維持療法の可能性Galsky MD, et al. J Clin Oncol 37, 2019尿路上皮がんに対するペムブロリズマブ療法は、KEYNOTE-045試験の結果を受けてがん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がんに対し、日本でも2017年12月に承認された。1次治療のプラチナ併用療法は、シスプラチンの蓄積毒性の懸念から8サイクル程度までで終了することが一般的である。非小細胞肺がんでは、プラチナ併用療法後にペメトレキセドやエルロチニブを用いたswitch maintenance(1次治療で用いた薬剤から変更して維持療法を行うこと)の有効性が第Ⅲ相試験で示されており、今回の報告はその可能性を尿路上皮がんで評価したランダム化第II相試験である。転移性の尿路上皮がんを初回治療としてプラチナ併用療法を8コース以下で行い、病勢安定以上の効果を得ている症例を対象に、プラセボ群とペムブロリズマブ群にランダム化し、以後の治療を行った。プライマリエンドポイントはPFSであり、中央値は3.2ヵ月 vs.5.4ヵ月(HR:0.64[95%CI:0.41~0.98]、p=0.038)と有意に腫瘍進行を遅らせた。何らかの重篤な有害事象が生じた症例は、プラセボ群35%、ペムブロリズマブ群53%であり、有害事象の増加は否めないが、生存期間の延長が可能となるかどうか、第III相試験での検証が待たれる有望な結果であった。# Poster Discussion 肉腫様腎がんの新たな治療戦略Brugarolas J. Poster Discussion 3rd June, 2019肉腫様腎がんは2~11%の割合でさまざまな組織型に混在し、淡明細胞がんと比較すると予後不良であり、既存の血管新生阻害薬の効果も限定的である。ASCO2019では、大規模第III相試験の追加解析が3報報告され、ポスターディスカッションが企画された。IMmotion151試験からアテゾリスマブ+ベバシズマブ療法(#4512)、CheckMate214試験からニボルマブ+イピリムマブ療法(#4513)、ハーバード大学の後方視解析(#4514)、KEYNOTE-426試験からペムブロリズマブ+アキシチニブ療法(#4500)の治療成績をレビューした。これらの比較第III相試験はいずれもスニチニブを対照群としており、PFSはIMmotion151試験では中央値8.3ヵ月 vs.5.3ヵ月(HR:0.52[95%CI:0.34~0.79])、CheckMate214試験では8.4ヵ月 vs.4.9ヵ月(HR:0.61[95%CI:0.38~0.97])、KEYNOTE-426試験では1年PFS割合で57% vs.26%(HR:0.54[95%CI:0.29~1.00])と報告された。OS中央値は、IMmotion151試験では21.7ヵ月 vs.15.4ヵ月(HR:0.64[95%CI:0.41~1.01])、CheckMate 214試験では31.2ヵ月 vs.13.6ヵ月(HR:0.55[95%CI:0.33~0.90])、KEYNOTE-426試験では未報告である。ハーバード大学からの後方視コホートでは、肉腫様腎がんで免疫チェックポイント阻害薬を使用した症例と使用しなかった症例のOSは、中央値24.5ヵ月 vs.10.3ヵ月(adjusted 0.43[95%CI:0.30~0.63]、p<0.0001)と報告されていた。奏効割合は、IMmotion151試験では全組織型で41%であったのに対し肉腫様腎がんでは59%、CheckMate 214試験では53%と75%、KEYNOTE-426試験では65%と72%と報告され、肉腫様腎がんでの免疫チェックポイント阻害薬併用療法の効果は全体集団よりインパクトが大きい可能性が示唆された。肉腫様腎がんではProgrammed death-ligand 1(PD-L1)の発現割合が高いことや、遺伝子ではSETD2やTP53、NF2、BAP1などの変異が多く、またTumor Mutation Burdenや遺伝子不安定性が高いことが過去に報告されており、これらの免疫チェックポイント阻害薬の効果が高まる要因となっていると考えられる。Brugarolas氏は未解決の問題として、肉腫様腎がんの最適な治療レジメンがどれか、肉腫様腎がんのみの前向き試験が必要かどうか、肉腫成分の比率は治療経過に影響を与えるか、免疫療法に効果を示すメカニズムに関してなど、さまざまな課題があるものの、肉腫様腎がんは免疫チェックポイント阻害薬のよい適応となるだろう、と結んだ。

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ASCO2019レポート 消化器がん(Upper GI)

レポーター紹介今年のASCOも消化器がん領域では免疫チェックポイント阻害薬が主役であった。胃がん初回化学療法におけるペムブロリズマブの効果を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。また、ポスターセッションでは、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果をより高めるために、血管新生阻害薬との併用効果を検討したり、食道がん術前化学放射線療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した試験が多く認められた。膵臓がんでは、gBRCA陽性患者に対するPARP阻害薬のメンテナンス治療の効果をみた試験の結果がプレナリーセッションで報告された。また、支持療法では、消化器がんで用いることが多い、50mg/m2以上のCDDPを使用する患者に対して、4剤併用の有効性を検証したJ-FORCE試験が報告された。LBA-4007 胃がん初回化学療法KEYNOTE-062試験(Non-colorectal, Oral presentation)胃がんにおける免疫チェックポイントの位置付けは、3次治療以降でのニボルマブの単剤投与であり、昨年報告されたKEYNOTE-061試験の結果では、2次治療としてのペムブロリズマブは、パクリタキセル単剤に対してCPS(Combined Positive Score:腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞でのPD-L1陽性割合)が1%以上の胃がんでの優越性を示すことはできなかった。今回は初回化学療法例を対象に、5-FU(あるいはカペシタビン)+CDDP療法(C群)に対する、ペムブロリズマブ併用療法(C+P群)の優越性と、単剤療法(P群)の非劣性を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。対象はCPS 1%以上の切除不能再発胃がんで、763例が登録された。日本を含む東アジアからは約25%が登録され、欧州・米国・オーストラリアからの登録が約60%と多数を占めた。主要評価項目は4つあり、C群に対するP+C群の無増悪生存期間(PFS)の優越性(≧CPS 1)、全生存期間(OS)の優越性(≧CPS 1)および(≧CPS 10)、P群のOSでの非劣性(≧CPS 1)であった。C群とP群の比較においては、OS中央値、12ヵ月OS割合、24ヵ月OS割合は、C群とP群でそれぞれ11.1ヵ月と10.6ヵ月、46%と47%、そして19%と27%であり、HR:0.91(99.2%CI:0.69~1.18)と、HRの信頼区間の上限は、あらかじめ決めておいた非劣性マージン1.20を下回ったため、P群の非劣性が示された。探索的な検討であるが、≧CPS 10の患者群では、24ヵ月生存割合がC群とP群で22%と29%と、よりP群で良好な結果であった。しかし、PFS中央値は、C群とP群で6.4ヵ月と2.0ヵ月、12ヵ月PFS割合は19%と14%と、P群で不良な傾向であった。後治療はP群で52.8%実施されていることから、後治療を含めた治療により、長期生存が得られていると考えられた。C群とC+P群の比較では、OS中央値はC群とC+P群でそれぞれ11.1ヵ月と12.5ヵ月、12ヵ月OS割合は46%と53%、24ヵ月OS割合は19%と24%であり、HR:0.85(95%CI:0.70~1.03、p=0.046)と、統計学的に有意な生存期間の延長は認められなかった。驚いたことに、≧CPS 10の患者群でも両者のHRは0.85であり、より有効性が期待できる手段においてもC+P群の効果は変わらなかった。有害事象はいずれの群も許容される範囲内であった。まず、CPSにて対象を絞っても、他のがん種で示されているような、プラチナ併用初回化学療法に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用効果が胃がんでは示せなかったこと、C+P群で思ったほど治療効果が持続していないこと、KEYNOTE-061試験で示されたCPSでの対象選択が、併用群では打ち消されていることなど、いくつかのポイントがクエスチョンとして挙がってくるが、今後の検討が必要である。非劣性が示され、CPS 1以上の胃がんでの初回化学療法の選択肢となりうるとされたペムブロリズマブも、効果のある症例は長く持続するが、半数の患者が2ヵ月で病勢進行を来している。従来の化学療法を受ける機会を逸しないためにも、対象は慎重に選択されるべきで、CPS 10以外にも効果のありそうな対象が絞り込める情報が必要である。また、薬剤コストの面についても問題が指摘されており、臨床的意義についてディスカッションが必要である。また、現在実施中である、ATTRACTION-4試験(胃がん初回化学療法SOX/XELOX±ニボルマブ)、CheckMate-649試験(胃がん初回化学療法XELOX/FOLFOX±ニボルマブ、およびニボルマブ+イピリムマブ)の比較試験の結果がどうなるのか、同じ結果なのか、異なる結果になるのか、大変興味深い。消化管がんに対する免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬、放射線療法の併用(Non-colorectal, Developmental therapeutics, poster)KEYNOTE-062試験の結果で、改めて消化管がんの研究者が思ったことは、胃がんは免疫原性が低い、CPSも堅牢なバイオマーカーではなく、化学療法との併用も微妙で、より強力な治療が必要、である。以前より、ニボルマブ(Nivo)とラムシルマブの併用が有効性を高めることが報告されていたり、肝細胞がんでのペムブロリズマブとレンバチニブとの併用で、奏効割合の改善が報告されたりしていたが、同様に、免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の併用療法を検討した、Nivoとレゴラフェニブ(Rego)の併用Phase I試験の結果が報告された(#2522)。REGONIVO試験では、標準投与量のNivoにRegoを通常量の半量である80mgより併用し、毒性をみながら増量し安全性をみる試験である。Regoが腫瘍関連マクロファージ(TAM)を抑えることで免疫抑制状態を解除し、抗腫瘍効果を高めるということが報告されている。胃がん、大腸がんそれぞれ25例が登録されたが、Rego 80mgとRego 120mgのコホートでは用量制限毒性(DLT)を認めず、160mgへ増量された。160mgのコホートでは、3例中3例にDLT(皮膚毒性、蛋白尿、消化管穿孔)が認められ、また120mgのコホートでも継続投与にて頻繁にGrade3の皮膚毒性が認められたため、Rego 80mgが推奨投与量とされた。奏効割合はマイクロサテライト安定(MSS)大腸がんに対して36%、胃がんに対して44%と高い効果を認め、さらなる治療開発が期待されている。また、胃がん初回化学療法例に対して、XELOX療法に抗PD-1抗体であるcamrelizumabを併用し、4~6回投与した後、XELOXを休止、血管新生阻害薬であるapatinibとcamrelizumabの併用療法によるメンテナンスを行うPhase II試験(#4031)では奏効割合58.6%、食道扁平上皮がんの初回化学療法例に対するリポソーマルパクリタキセルと、ネダプラチンにcamrelizumabとapatinibの併用を評価したPhase II試験(#4033)では奏効割合80%と報告されている。いずれも併用により毒性が強くなるため、血管新生阻害薬の単剤での投与量を大幅に減量する必要があるが、有効性は、探索的な検討ながら、良好にみえる。さらなる結果を待って、使いどころを検討する必要がある。肺がんなど他がん腫ですでに示されている、放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬の探索的な試験の結果が報告されている。韓国からは食道扁平上皮がんに対する術前化学放射線療法にペムブロリズマブを併用したPhase II(#4027)が報告された。病理学的完全奏効割合(pCR)は46.1%と高く、懸念された間質性肺炎は認められなかったが、手術症例26例中2例がARDSなどの肺障害により死亡しており、術前のペムブロリズマブの影響が懸念された。また食道胃接合部腺がんに対しては、欧米での標準治療の1つである術前カルボプラチン+パクリタキセル+放射線療法に、PD-L1抗体であるアベルマブを併用し、術後にもアベルマブを継続するPhase I/II試験(#4041)が行われ、7例のPhase I部分のみの発表であったが、重篤な毒性はなく、pCR割合も43%と比較的良好であった。また、術前化学放射線療法後に切除を行った食道胃接合部腺がんの術後にデュルバルマブを1年投与するPhase II試験(#4058)では、重篤な有害事象はないと報告されている。今後の免疫療法は、“併用療法”“周術期”といったところへシフトしていくと思われる。LBA4 膵臓がんに対するPARP阻害薬メンテナンス:POLO試験(Plenary session)PARP阻害薬であるオラパリブは、生殖細胞系列遺伝子のBRCA(gBRCA)に変異のある乳がんや卵巣がんに用いられているが、他がん腫での検討はまれである。POLO試験では、gBRCA1/2に変異のある進行膵がんに対してプラチナ併用化学療法を行い、進行がみられなかった患者をオラパリブとプラセボに割り付け、メンテナンス治療としての有効性をみた試験である。gBRCA1/2変異は、3,315例の患者をスクリーニングし、247例(7.4%)に認められ、うち、92例がオラパリブ群、62例がプラセボ群に割り付けられた。前治療はFOLFIRINOXが約80%と多く、治療効果も群間で差異はなかった。主要評価項目である無増悪生存期間中央値はオラパリブ群7.4ヵ月、プラセボ群3.8ヵ月であり、HR:0.53と有意に改善が認められた。生存期間を評価するにはイベントは不十分であるが、中央値オラパリブ群18.9ヵ月、プラセボ群18.1ヵ月と差を認めなかった。有害事象は予想されたものであった。また、すべてのサブグループにて同様の傾向であった。日本ではこの試験は実施されておらず、この結果が今後の日常診療にどのように取り込まれるのか、今後注目される。#11503 標準的制吐薬に対するオランザピンの上乗せ効果を検証したJ-FORCE試験(Symptom and Survivorship, Oral presentation)高度催吐性化学療法(Highly Emetogenic Chemotherapy:HEC)における標準制吐療法である、アプレピタント(APR)、セロトニン受容体拮抗薬、デキサメタゾン(DEX)にオランザピン(OLZ)10mgを併用することが遅発期の制吐に有効であることが証明されているが、眠気が問題点であった。この試験では予備的試験を行ったうえ、OLZ:5mgを試験治療群とし、プラセボ群に対する、遅発期(CDDP投与開始24時間後から120時間以内)の嘔吐完全抑制割合における優越性を検証した。705例が登録され、試験治療群が354例、プラセボ群が351例、患者背景は、55歳以上が80%以上、男性が65%、肺がん(50%)、食道がん(20%)、婦人科がん(10%)、その他であった。主要評価項目である遅発期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の66%に対して、試験治療群が79%(p<0.001)と有意に優れた結果であった。また、副次的評価項目である急性期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の89%に対して、試験治療群が95%(p=0.002)、全期間の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の64%に対して、試験治療群が78%(p<0.001)と有意に良好な結果であった。試験治療群の有害事象のうち、全グレード(Grade3)の眠気が43%(0.3%)、めまいが8%(0%)と口腔内乾燥が21%(0%)と有意に多かったが、両群ともにGrade4は認めなかった。しかしながら、治療期間中の生活経過記録の解析結果から、試験治療群はプラセボ群と比較して有意(p<0.05)に良好であったことが示され、新たな標準治療であることが示された。日本の支持療法研究グループで行われた臨床試験が、世界の標準治療を塗り替えた非常に意義深い試験である。今回のASCOでも依然として免疫チェックポイント阻害薬の演題が多数を占めた。単剤の治療の時代から、併用療法や集学的治療へシフトしている。また、免疫細胞療法などの演題も多数認められ、新時代の到来を予感させられる。また、J-FORCE試験がOral Presentationに選ばれるなど、支持療法のエビデンス創出が日本でも盛んになってきており、今後にも期待したい。

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頭頸部扁平上皮がん1次治療にペムブロリズマブが新たなスタンダードに(KEYNOTE-048)/ASCO2019

 転移のある頭頸部がんでは従来から治療薬の選択肢が少ないことで知られ、免疫チェックポイント阻害薬の登場により全生存期間(OS)の延長効果が認められるようになったことが注目されている。 これまで頭頸部がん1次治療としてのペムブロリズマブ+化学療法はセツキシマブ+化学療法に比べて、PD-L1発現陽性およびすべての集団でOSを改善することがオープンラベル無作為化比較第III相臨床試験「KEYNOTE-048」の最終解析からわかった。同試験についてオーストラリアのPeter MacCallum Cancer Centreの Danny Rischin氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。頭頸部扁平上皮がんでの新たな標準治療であることを支持 同試験の対象は、未治療の再発または転移のある頭頸部(中咽頭、口腔、喉頭)扁平上皮がん患者882例。登録患者はペムブロリズマブ3週ごと最大35サイクルに300例、ペムブロリズマブ+化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+5-FU)3週ごと6サイクル後にペムブロリズマブ3週ごと(最大35サイクル)に281例、EXTREME試験と同じセツキシマブ+化学療法(前述に同じ)3週ごと6サイクル後にセツキシマブ毎週投与の301例に無作為に割り付けられた。 主要評価項目はPD-L1陽性スコア(CPS)20以上、CPS1以上、頭頸部扁平上皮がん全患者でのOS、盲検下独立中央判定委員会が評価した無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目はCPS20以上、CPS1以上、全患者での6ヵ月PFS率、12ヵ月PFS率、奏効率、ベースラインからのQOLスコアの変化、安全性であった。 ペムブロリズマブ+化学療法群とセツキシマブ+化学療法の比較では、CPS20以上のOS中央値はペムブロリズマブ+化学療法群14.7ヵ月、セツキシマブ+化学療法群11.0ヵ月で、ペムブロリズマブ+化学療法群が有意なOS延長効果を示した(HR:0.60、95%CI:0.45~0.82、p=0.0004)。CPS1以上のOS中央値はそれぞれ13.6ヵ月、10.4ヵ月で、ペムブロリズマブ+化学療法群の有意なOS延長効果が認められた(HR:0.65、95%CI:0.53~0.80、p<0.0001)。全患者でのOSの比較ではHR0.72(0.60~0.87)、OS中央値はペムブロリズマブ+化学療法群が13.0ヵ月、セツキシマブ+化学療法群が10.7ヵ月で有意な延長効果を示した。また、ペムブロリズマブ+化学療法群のOSは全サブグループで優れていた。 PFS中央値は、CPS20以上でペムブロリズマブ+化学療法群が5.8ヵ月、セツキシマブ+化学療法群が5.2ヵ月でHR0.73(0.55~0.97、p=0.0162)、CPS1以上では両群とも5.0ヵ月、HR0.82(0.67~1.00)で、いずれも有意差は認められなかった。奏効率はCPS20以上で、ペムブロリズマブ+化学療法群が42.9%、セツキシマブ+化学療法群が38.2%、CPS1以上ではそれぞれ36.4%、35.7%だった。なお奏効期間中央値はCPS20以上でそれぞれ7.1ヵ月、4.2ヵ月、CPS1以上でそれぞれ6.7ヵ月、4.3ヵ月だった。 一方、ペムブロリズマブ単独群とセツキシマブ+化学療法群との比較では、頭頸部扁平上皮がん全患者のOS中央値はそれぞれ11.5ヵ月、10.7ヵ月でHR0.83(0.70~0.99、p=0.0199)。CPS20以上でのOS中央値はペムブロリズマブ単独群が14.8ヵ月、セツキシマブ+化学療法群が10.7ヵ月、HR0.58(0.44~0.78)、CPS1以上でのOS中央値はそれぞれ12.3ヵ月、10.3ヵ月、HR0.74(0.61~0.90)。 PFS中央値はそれぞれ2.3ヵ月、5.2ヵ月でHR1.34(1.13~1.59)。奏効率はペムブロリズマブ単独群が16.9%、セツキシマブ+化学療法群が36.0%だった。 全有害事象発現率はペムブロリズマブ単独群が96.7%、ペムブロリズマブ+化学療法群が98.2%、セツキシマブ+化学療法群が99.7%。グレード3以上の有害事象は、それぞれ54.7%、85.1%、83.3%だった。 この結果について、Rischin氏はペムブロリズマブ+化学療法は「セツキシマブ+化学療法に比べ、CPS20以上、CPS1以上、さらに全患者でOSを改善し、同等の安全性プロファイルを示した」と述べるとともに、「ペムブロリズマブ単剤はCPS20以上、CPS1以上の患者でのOSは優れており、全患者では非劣性であった。また安全性は良好であった」と評した。そのうえで「このデータはペムブロリズマブ+化学療法、ペムブロリズマブ単独療法は再発および転移のある頭頸部扁平上皮がんでの1次治療の新たな標準治療であることを支持している」と結論付けた。

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ASCO2019レポート 肺がん

レポーター紹介2019年のASCO、とくに肺がん領域は、このところ続いた免疫チェックポイント阻害薬による新境地の開拓の連続とは異なり、比較的おとなしいエビデンスの報告が主体であった。その中でも、RELAY試験の中川先生、JIPANG試験の劔持先生、COMPASS試験の瀬戸先生、そして大規模な外科切除データに基づく発表が注目された津谷先生といった日本人演者のOral presentationが多数報告され、活況を呈した。今回はその中から、とくに注目すべき演題について概観したい。RELAY試験EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの患者を対象に、試験治療としてのエルロチニブとラムシルマブの併用療法を標準治療としてのエルロチニブと比較したRELAY試験の結果が報告された。本試験には、Exon19欠失変異、Exon21 L858R変異があり、PS 0-1、血管新生阻害薬の一般的な適格規準を満たし、脳転移のない患者が合計449例登録された。主要評価項目はPFS、副次評価項目は安全性、OS、奏効割合などが設定されている。本試験はこれまでのEGFR-TKIと血管新生阻害薬の試験に比べ多数の症例が登録されており、また、アジア例が77%、そのうち日本人が多数を占めるという点も特徴的である。主要評価項目であるPFS中央値は、試験治療群で19.4ヵ月、標準治療群で12.4ヵ月、ハザード比は0.591(95%信頼区間0.461~0.760)であり、有意にエルロチニブ+ラムシルマブ併用群が良好な成績であった。探索的に実施されたPFS2の解析でも、ハザード比0.690(95%信頼区間0490~0.972)であった。安全性に関しては、Grade 3以上の有害事象が試験治療群で72%、標準治療群で54%報告されており、両者の違いは多くは高血圧であり、皮膚障害などの有害事象はCTCAE Gradeでは大きな違いを認めなかった。脳転移のない患者集団であることは考慮する必要があるものの、PFSの中央値でオシメルチニブのFLAURA試験と同等の結果が得られたことは、今後明らかになる全生存期間の解析に期待が持たれる結果であった。ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの患者を対象に、試験治療としてゲフィチニブとカルボプラチン+ペメトレキセド療法を併用する治療と、標準治療としてのゲフィチニブを比較するPhase III試験の結果が、インドから報告された。本試験には、Exon 19欠失変異、Exon 21 L858R変異があり、PS 0~2の患者が350例登録された。主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、安全性、奏効割合などであった。本試験に登録された患者の年齢中央値は50代半ばであり、PSに関しては2の患者が21~22%登録されており、わが国で実施されたNEJ009試験とは患者集団が異なる可能性が高い試験である。PFS中央値は試験治療群で16ヵ月、標準治療群で8ヵ月であり、ハザード比0.51(95%信頼区間0.39~0.66)と、良好な成績であった。OSについては試験治療群の中央値は到達しておらず、ハザード比は0.45(95%信頼区間0.31~0.65)であり、副次評価項目ながら併用療法群が良好な結果であった。NEJ009試験で話題となったゲフィチニブ、カルボプラチン+ペメトレキセド療法がPDとなった後のPSや腫瘍量などについての情報は開示されなかったものの、同様にOSを延長する結果が得られたことは評価に値する。ただ、FLAURA試験の結果でオシメルチニブが初回治療で注目されており、オシメルチニブを基本として今回と同様のデザインでどのような結果が得られるか、注目がさらに集まっている。JCOG1210/WJOG7813L試験75歳以上の高齢者を対象として、試験治療としてのカルボプラチン+ペメトレキセド療法と標準治療ドセタキセルと比較したPhase III試験である、JCOG1210/WJOG7813L試験の結果も報告されている。本試験には未治療、PS 0~1の75歳以上の非扁平上皮非小細胞肺がん患者433例が登録され、試験治療としてカルボプラチン+ペメトレキセド併用療法とその後の維持療法が、標準治療としてドセタキセル単剤療法が実施された。主要評価項目はOSの非劣性であり、非劣性マージンはハザード比で1.154に設定された。登録された患者の年齢中央値は78歳、試験治療群では最高87歳、標準治療群では最高88歳の高齢患者が登録されている。OSは中央値で試験治療群が18.7ヵ月、標準治療群が15.5ヵ月、ハザード比は0.850(95%信頼区間は0.684~1.056)であり、カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法のドセタキセルに対する非劣性が証明された。安全性については、試験治療群で貧血が多い傾向にあり、標準治療群で白血球減少、好中球減少が多い傾向を認め、治療関連死はそれぞれ2例ずつ報告されている。FACT-LCを用いたQOL評価では、試験治療群が良いことが示されている。非劣性が証明され、かつ有害事象やQOLでも試験治療群が想定されたとおり良好な結果であったことを受け、カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法とそれに続くペメトレキセド維持療法が、75歳以上の高齢者における標準治療と考えて問題ない結果であった。サブセット、フォローアップ今回、肺がん領域では、主たる結果が発表済みの試験においても盛んにサブセット解析、フォローアップ解析の結果が報告された。IMpower150試験は、進行期非小細胞肺がんにおいて、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブにアテゾリズマブを上乗せすることの優越性を示したPhase III試験である。本試験ではこれまでのベバシズマブを用いた試験の結果を受け、肝転移の有無が層別化因子に加えられていた。今回報告された肝転移の有無で分けられたサブセット解析では、肝転移を有する症例で、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法に対し、アテゾリズマブを加えることで、PFS、OSのハザード比がそれぞれ0.41(95%信頼区間0.26~0.62)、0.52(95%信頼区間0.33~0.82)と、いずれも明らかに改善していることが認められた。AACRでは、KEYNOTE189試験において、層別化因子には含まれていなかったものの肝転移の有無でのサブセット解析結果が報告されており、同様に肝転移症例でも有効であることが示されている。肝転移症例が予後不良であることはすでに報告されており、この患者集団においてもプラチナ併用療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法の意義を示すエビデンスが積み重ねられている。一方、フォローアップデータとしては、KEYNOTE189試験のアップデート、PACIFIC試験のアップデート等が報告され、いずれも良好な傾向が維持されていることが示されている。なかでも注目を集めたのはLate breakingで報告されたKEYNOTE001試験の5年生存のデータである。KEYNOTE001試験は、ペムブロリズマブのPhase I試験であり、この中から同薬の安全性や至適投与量のデータだけでなく、PD-L1のTPSカットオフについての知見も得られている。今回報告された5年生存のデータでは、未治療患者、治療歴のある患者それぞれについて、PD-L1発現別のサブセットを含め長期生存のデータが評価された。5年生存割合は、未治療患者では23.2%、治療歴あるセカンドライン以降の患者では15.5%であった。すでにニボルマブの長期生存のデータが報告されており、既治療の患者集団での成績は大きく異ならない印象であった。一方、未治療の患者における23.2%の5年生存割合はこれまで報告されていなかった情報であり、初回治療から免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合の5年生存割合の新たな指標として受け止められる結果であった。PD-L1 TPS別の解析結果でも、PD-L1 50%以上の集団では、未治療、既治療問わず、5年生存割合が25%を超えるという驚くべき結果であった。ただし、Phase I試験のデータであるなど、対象となった患者集団は日常臨床の患者集団とは異なる、具体的にはより状態が良い可能性もあり、この結果が一般臨床でも再現されるかは、今後の追加情報を待つ必要がある。周術期治療NEOSTAR:術前のニボルマブ+イピリムマブ併用療法の有効性と安全性を評価するPhase II試験である。本試験には、切除可能Stage I~IIIA(Single N2)症例44例が登録され、ニボルマブ単剤療法とニボルマブ+イピリムマブ併用療法にランダム化された。主要評価項目はMajor Pathologic Response(<10% viable tumor)とされた。両群併せて手術検体が得られた41例中10例(29%)、ニボルマブ単剤では20%、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法では43%でMPRが達成されていた。有害事象に関しては、ニボルマブ群1例でbronchopleural fistulaとそれに伴う肺臓炎による死亡例が報告されており、それ以外にも、肺臓炎、低酸素血症、低マグネシウム血症、下痢などがGrade 3の有害事象として報告されている。免疫チェックポイント阻害薬による術前導入療法については、本試験以外にも複数実施されており、注目が高まっている。評価手法として用いられたMPRについて、従来からあるpCRを含めた病理学的効果判定の意義や、長期生存のデータとの関連性等について今後さらなる解析が必要と考えられる。JIPANG:Stage II~IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がんの術後化学療法として、試験治療としてシスプラチン+ペメトレキセド併用療法を、標準治療であるシスプラチン+ビノレルビン併用療法と比較したPhase III試験である。本試験には、完全切除後のpStage II-IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がん患者804例が登録され、性別、年齢、pStage、EGFR遺伝子変異の有無、施設を層別化因子としてランダム化された。主要評価項目は無再発生存期間、副次評価項目はOS、安全性等とされ、優越性試験のデザインで実施された。無再発生存期間の中央値は、試験治療群で38.9ヵ月、標準治療群で37.3ヵ月、ハザード比は0.98(95%信頼区間0.81~1.20)であり、試験治療の優越性は証明されなかった。安全性に関しては、Grade 3以上の有害事象の発生頻度は、試験治療群で47.4%、標準治療群で89.4%であり、試験治療群がより良好な結果であった。確かに優越性は証明されなかったものの、有効性は大まかには同等といえ、かつ安全性においてもシスプラチン+ペメトレキセドが良好な傾向を示したことが、会場でも話題になっていた。分子標的薬今回のASCOではMET阻害薬のデータが複数報告された。capmatinibとtepotinibは従来からMET exon14 skipping変異に対する有効性が報告されており、今回もそのフォローアップならびに追加データが示された。capmatinibに関しては、MET amplificationに対しても開発が進められている。MET阻害薬の発表と同時に、クリゾチニブを中心としたMETに対するTKIの耐性機序についても小数例ながら報告が行われており、EGFR等と並んで耐性機序の克服についても将来的には課題となってくることが示唆された。EGFRについては、通常のEGFR-TKIでは効果が限定されるExon 20 insに対する治療薬である、TAK788のPhase I試験の有効性と安全性が報告された。一方、EGFR等Driver oncogeneに対する治療の耐性因子としてMETに対する治療開発も盛んであり、今回ADCであるTeliso-V、EGFRとc-METのbispecific抗体であるJNJ-61186372についても発表があった。EGFR遺伝子変異陽性患者におけるADCであるTeliso-Vとエルロチニブの併用療法、EGFRとc-METを標的とする抗体療法によって、EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおける新たな治療戦略が開拓されることが期待されている。最初に記載したとおり、今回のASCO肺がん領域では、いくつかの重要なPhase III試験の結果発表とともに、免疫チェックポイント阻害薬による術前治療、新たな分子標的薬等、近い将来の標準治療の変革を示唆する情報が多数報告された。今後の各学会、来年のASCOに期待したい。

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胃がん、ペムブロリズマブによる1次治療の結果(KEYNOTE-062)/ASCO2019

 国内の進行・再発胃がんでの免疫チェックポイント阻害薬の使用は、化学療法無効後のニボルマブ、同じく化学療法無効後の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)例に対するペムブロリズマブがそれぞれ単剤療法で承認されている。ただ、現時点ではこうした進行・再発胃がんでの1次治療で承認されている免疫チェックポイント阻害薬は存在しない。KEYNOTE-062、胃がんのペムブロリズマブ1次治療の有効性を評価 そうした中、進行胃・胃食道接合部腺がんに対する1次治療での抗PD-1抗体ペムブロリズマブの有効性を評価した第III相試験「KEYNOTE-062」の結果から、PD-L1陽性(CPS1以上)の患者で、ペムブロリズマブ単独療法は標準治療の化学療法に対して、全生存期間(OS)で非劣性、CPS10以上では臨床的に意義のある改善を示すことがわかった。また、ペムブロリズマブと化学療法の併用は、化学療法単独に対してOSで優越性を示せなかった。スペインVall d’Hebron University Hospital and Institute of OncologyのJosep Taberneroがシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で報告した。 同試験の対象はPS0~1でHER2/neuタンパク陰性、PD-L1陽性(CPS1以上)の局所進行で手術不能あるいは転移のある胃がん・胃食道接合部腺がん患者763例。登録患者はペムブロリズマブ単独群256例、ペムブロリズマブ+化学療法(シスプラチン+5FUあるいはカペシタビン)群257例、プラセボ+化学療法群250例に無作為に割り付けられた。いずれの群も毒性による忍容性の限界、病勢進行、患者本人および医師による中断決定まで投与が実施された。 主要評価項目はOS、無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は客観的奏効率(ORR)、安全性。 ペムブロリズマブ単独群とプラセボ+化学療法群との比較では、CPS1以上でのOS中央値はペムブロリズマブ単独群10.6ヵ月、プラセボ+化学療法群11.1ヵ月で、ペムブロリズマブ単独療法は化学療法単独に対して非劣性だった(HR:0.91、95%CI:0.69~1.18)。一方でCPS10以上では、OS中央値がそれぞれ17.4ヵ月、10.8ヵ月で有意なOS改善が認められた(HR:0.69、95%CI:0.49~0.97)。ただ、PFSについてはCPS1以上でのPFS中央値はペムブロリズマブ単独群が2.0ヵ月、プラセボ+化学療法群が6.4ヵ月(HR:1.66、95%CI:1.37~2.01)、CPS10以上でそれぞれ2.9ヵ月、6.1ヵ月(HR:1.10、95%CI:0.79~1.51)で化学療法に対するペムブロリズマブの優越性は示せなかった。ORRはCPS1以上でそれぞれ14.8%、37.2%、CPS10以上で25.0%、37.8%だった。胃がんの1次治療におけるペムブロリズマブは化学療法と同等のベネフィット ペムブロリズマブ+化学療法群とプラセボ+化学療法群の比較では、CPS1以上でのOS中央値はペムブロリズマブ+化学療法群が12.5ヵ月、プラセボ+化学療法群が11.1ヵ月(HR:0.85、95%CI:0.70~1.03、p=0.046)、CPS10以上ではそれぞれ12.3ヵ月、10.8ヵ月(HR:0.85、95%CI:0.62~1.17、p=0.158)で、いずれも化学療法単独に対するペムブロリズマブ+化学療法の優越性は示せなかった。PFS中央値はCPS1以上でペムブロリズマブ+化学療法群6.9ヵ月、プラセボ+化学療法群6.4ヵ月(HR:0.84、95%CI:0.70~1.02、p=0.039)、CPS10以上でそれぞれ5.7ヵ月、6.1ヵ月であった(HR:0.73、95%CI:0.53~1.00)。ペムブロリズマブ+化学療法群のORRはそれぞれCPS1以上で48.6%、CPS10以上で52.5%であった。 全有害事象発現頻度はペムブロリズマブ単独群が54%、ペムブロリズマブ+化学療法群が94%、プラセボ+化学療法群が92%、Grade3以上の有害事象発現頻度はそれぞれ16%、71%、68%となり、ペムブロリズマブ単独では良好な安全性で、ペムブロリズマブ+化学療法と化学療法のみでは同等だった。なお、いずれの群でもこれまで知られていない副作用の発現は認められなかった。 Tabernero氏は「CPS1以上のPD-L1陽性進行胃がん・胃食道接合部がんの1次治療ではペムブロリズマブは化学療法と同等、CPS10以上ではより良好なOSベネフィットがあり、忍容性ではペムブロリズマブが良好」と最終結論を述べた。

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IV期NSCLCにおける放射線治療と免疫CP阻害薬の相乗効果

 切除不能な局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する化学放射線同時療法の維持治療にデュルバルマブが適応になるなど、放射線治療と免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせは相乗効果をもたらすとされる。しかし、IV期NSCLCにおける放射線治療の意義を明確に示した報告は少ない。埼玉医科大学国際医療センターの山口央氏らは、放射線療法(RT)の治療歴がその後のニボルマブ(抗PD-1抗体)の治療効果や予後に影響を与えるかを後方視的に解析した。Thoracic Cancer誌2019年4月号の掲載報告。 2016年2月~2017年12月に既治療の進行NSCLC患者124例にニボルマブが投与された。この研究では、それらの患者をニボルマブ開始前に何らかの放射線治療歴のある群(RT群)と放射線治療歴のない群(非RT群)に分け比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・124例中RT群は66例(53%)で、脳以外への照射が52例(42%)、胸部への照射は40例(32%)であった。・ニボルマブ治療期間の中央値は4サイクルであった。・ニボルマブ治療全体(124例)の客観的奏効率(ORR)は28.0%、病勢コントロール率(DCR)は58.4%であった。・RT群のORRは36.4%、非RT群は19%で、RT群で有意に高かった。・ニボルマブの治療効果はとくに脳以外に照射歴のある非腺がん患者(59例)および扁平上皮がん患者(38例)で高く、非腺がんのORRは48.3%、DCRは87.1%、扁平上皮がんのORRは52.6%、DCRは84.2%であった。・多変量解析では放射線治療歴と喫煙歴が無増悪生存期間(PFS)の独立した予後因子であった。・脳以外に照射歴のある非腺がん患者(59例)を対象とした予後解析ではRT群は非RT群に比べPFSと全生存期間が有意に延長していた。 RTはニボルマブ治療との相乗効果を示し、進行NSCLC患者のORR、PFSを改善することが確認された。RT治療歴は、ニボルマブの治療効果に関する予後良好因子の1つ考えられる。

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がんゲノム医療の今

 手術や放射線治療では根治できないと判断された進行固形がんにおけるがん薬物療法は、正常細胞とがん細胞との“生物学的な違い”をターゲットにする「分子標的薬」や「免疫チェックポイント阻害薬」が主流になりつつある。わが国におけるがんゲノム医療の現状は、どのようになっているのだろうか。 2019年4月、中外製薬株式会社が「第1回 がんゲノム医療に関する基礎メディアセミナー」を都内にて開催した。そこで、土原 一哉氏(国立がん研究センター 先端医療開発センター トランスレーショナルインフォマティクス分野 分野長)が講演を行った。米国に引けを取らないがん遺伝子検査 従来のがん薬物療法は、がん種を診断した後、そのがんに承認されている薬を使っていく形式だが、将来的には治療前に遺伝子診断を行うことで、患者さんにとって最もメリットの高い治療が効率的に選ばれる時代になることが期待されている。 ヒトゲノムの解析コストは、次世代シーケンサーの登場とともに劇的に低下しているが、全ゲノムシークエンスを実臨床に用いるには、解析結果から変異を抽出する作業やクオリティコントロールに高いコストがかかるため、もう少し時間がかかると言われている。検査の効率化を目指して、任意のゲノムを選択的に読み取るターゲットシークエンスや全エクソンシークエンスなども並行して開発が進んでおり、治療の選択に必要なバイオマーカーの研究も進展している。 「“日本のゲノム医療は米国と比較して遅れている”と言われる傾向にあるが、米国が承認したがん関連遺伝子検査は日本でも1年以内に承認されており、現在わが国で全国的に使えるものに関しては、日米でそれほど大きな差はない」と土原氏は説明した。整備されるがんゲノム医療の実施体制 わが国におけるがんゲノム医療の実施体制は整えられつつあり、2019年4月現在、全国に「がんゲノム医療中核拠点病院」が11ヵ所、「がんゲノム医療連携病院」が156ヵ所設置されている。中核拠点病院は、がんゲノム医療を牽引する高度な機能を有する医療機関として、連携病院は、中核拠点病院と連携して遺伝子検査結果を踏まえた医療を実施する医療機関として、国が指定した。 これにより、均てん化されたがんゲノム医療の提供が可能になり、質の高い遺伝子検査や公的保険の整備、説明・同意手順の標準化による患者保護などの、がんゲノム医療のベストプラクティスが目指されている。また、「がんゲノム情報管理センター」が国立がん研究センター内に設置され、中核拠点病院などから得られたゲノム情報や臨床情報をデータベースとして集約し、今後の診療や研究開発に役立てることが目標とされている。がんゲノム医療は拡大しつつあるが、まずは安全性が第一 従来から、エビデンスに基づいた承認薬によるがんゲノム医療は全国の保険医療機関で実施されており、最近は「遺伝子プロファイル検査」の導入も検討されるようになった。これは、中核拠点病院などで実施された患者の遺伝子検査結果などをもとに、専門家会議で総合的に判断し、医学的に効果が期待できる未承認薬を臨床試験や適応外使用として考慮するというもので、今後の適応拡大への足掛かりとして位置付けられている。 がん治療において、結果的に治療薬の効果が得られなかった場合、身体への侵襲性やコストなどを考えると、患者にとって非常にデメリットが大きい。医療経済的な側面を考えても、今後そういったミスマッチを減らしていくのは大きなポイントだという。 同氏は「新しい薬を使う際、その薬が効くか効かないかより、安全性が担保されているのか、予期せぬ副作用への対処法が確立されているのかをまず確認しなければならない。新しい薬の使い方は、わが国の医療全体で確立していくべき。これは、ゲノム解析だけでは解決できない」と慎重な姿勢を示した。がんゲノム医療の情報を医療機関で制御することも必要 1回の検査で複数の変異遺伝子を調査できる「がん遺伝子パネル検査」は、現在薬事承認の段階で、今年度中の保険適用が目指されている。2017年には日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本癌学会が合同で『次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス(第1.0版)』を発刊した。しかし、本ガイダンスは遺伝子パネル検査が先進医療として認められる前に発刊されたため、現場での経験などを踏まえ、より使いやすいよう今年度に改訂予定だという。 「現在は、最先端医療を支えるための体制として、まず仕組みを作った段階。ゲノム医療についてTVなどで報道されると、医療現場にはさまざまな質問が寄せられる。患者が情報に溺れないよう、医療者側は正しい認識を持ち、患者に方向性を示すことも必要」と呼びかけた。がんゲノム医療の今後の課題はすでに見えてきている 遺伝子異常の“臨床的意義付け”に関する情報は日々更新されており、3ヵ月前の情報はすでに古くなっている可能性がある。診断をする際、最新の情報にどうアクセスするか、さらに、検査結果を伝えた後の患者などに、その情報をどう伝えていくかなどの方法を今後検討していく必要がある。 より確実な治療効果を予測するためには、多数例のゲノム情報と治療効果を含む臨床情報の集積が求められる。新しい技術をどれだけ早くコストをかけずに実現するのかはがんゲノム医療の当面の課題だが、研究と臨床のインターバルは短くなってきており、現在研究中の技術が実臨床に移るのはそう遠くない未来と考えられている。 同氏は「保険診療などの堅牢な規制と先進医療などの柔らかな規制を組み合わせて、より柔軟な枠組みが必要。新しい技術については、費用対効果の検証をどれだけ早く系統的に行うかなど、課題はひとつひとつ解決していかなくてはならないが、現段階においては安全性が最優先であることを念頭に置いてほしい。また、患者にはゲノム医療がすべての人に効果があるわけではないことをあらかじめ理解してもらう必要がある。医療者側は常に最新情報のアップデートをしていってほしい」と講演を締めくくった。

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進行性多巣性白質脳症、ペムブロリズマブで臨床的改善/NEJM

 進行性多巣性白質脳症(PML)の患者に対し、PD-1阻害薬ペムブロリズマブ投与により8例中5例で脳脊髄液(CSF)中のJCウイルス量が減少し、臨床的改善や安定化につながったことが示された。米国・国立神経疾患・脳卒中研究所のIrene Cortese氏らによる試験の結果で、著者は「PML治療における免疫チェックポイント阻害薬のさらなる研究の根拠が得られた」とまとめている。NEJM誌2019年4月25日号掲載の報告。ペムブロリズマブ2mg/kgを4~6週間ごと、1~3回投与 PMLは、JCウイルスが原因の脳の日和見感染症で、免疫機能が回復できなければ通常は致死的である。PD-1は、ウイルスクリアランスの障害に寄与する可能性がある免疫応答の制御因子であることが知られている。しかし、PD-1阻害薬ペムブロリズマブがPML患者において、抗JCウイルス免疫活性を再活性化しうるかは明らかになっていなかった。 研究グループは、「ペムブロリズマブはJCウイルス量を低下し、CD4陽性細胞およびCD8陽性細胞の抗JCウイルス活性を上昇させる」との仮説を立て試験を行った。 PMLの成人患者8例に対し、ペムブロリズマブ2mg/kgを4~6週間ごとに、1~3回投与した。被験者には、それぞれ異なる基礎疾患が認められた。in vitroでCD4陽性、CD8陽性の抗JCウイルス活性の上昇も確認 被験者はいずれも、少なくとも1回の投与を受け、3回超の投与は受けなかった。 全8例で、ペムブロリズマブによる末梢血中とCSF中のリンパ球におけるPD-1発現の下方制御が認められた。 5例については、PMLの臨床的改善や安定化が認められ、CSF中のJCウイルス量の減少と、in vitroのCD4陽性細胞およびCD8陽性細胞の抗JCウイルス活性の上昇も認められた。 一方で残りの3例については、ウイルス量や、抗ウイルス細胞性免疫応答の程度について、意味のある変化はみられず、臨床的改善も認められなかった。

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ASCO-GI2019レポート

レポーター紹介2019年1月17日~19日まで、米国・サンフランシスコにて米国臨床腫瘍学会消化器がん会議(ASCO-GI)が開かれた。今年は連日雨で、とくに1日目は風が強く、一部の国内線はキャンセルになるほど天候が良くなかった。そんな中、連日朝7時から始まるRapid-Fire Abstract Sessionには多くの聴衆が詰め掛けていた。本稿では、Oral Presentation、Rapid-Fire Abstract Session、Poster Presentationから注目すべき演題をいくつか紹介し、<マイコメント>として私見も述べさせていただく。KEYNOTE-181試験(abstract #2)進行性食道がんの2次治療として免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブが有効であるかを検証したKEYNOTE-181試験の結果が報告された。事前にプレスリリースされていたため、試験結果がpositiveであることはわかっていたが、詳細の発表について注目が集まった。1次治療後の進行性食道がん(扁平上皮がんまたは腺がん)628例が1:1にペムブロリズマブ群(200mg、3週ごと)と化学療法群(PTX、DTX、またはIRI)に分けられた。プライマリ・エンドポイントは3つ、PD-L1 CPS(combined positive score)≧10での全生存期間、扁平上皮がんでの全生存期間、全症例での全生存期間であった。扁平上皮がんの割合が、ペムブロリズマブ群63%、化学療法群65%、PD-L1 CPS≧10の症例は、それぞれ34%と37%であった。PD-L1 CPS≧10において、全生存期間中央値は9.3 vs.6.7ヵ月(HR:0.69、p=0.0074)で、ペムブロリズマブ群で有意に良好であった。一方、扁平上皮がんにおいては、8.2 vs.7.1ヵ月(HR:0.78、p=0.0095)とペムブロリズマブ群で中央値は良好であったが、事前に設定した統計解析上では統計学的に有意差がない結果となった。しかしながら、奏効率は良好で、PD-L1 CPS≧10で21.5% vs.6.1%、扁平上皮がんでも16.7% vs.7.4%とペムブロリズマブ群で高い奏効率であった。毒性評価においては、ペムブロリズマブ群においてこれまで同様の毒性がみられた程度であった。マイコメント統計学的にはPD-L1 CPS≧10症例だけにおいてペムブロリズマブの優越性が示されたが、扁平上皮がんにおいても臨床的有用性を認めるような結果であった。今後、本邦においてどのような対象に薬事承認がされるのかが注目される。PD-L1 CPS≧10であれば腺がんでもペムブロリズマブが有用であることになるが、CPS≧10におけるサブ解析では、腺がん症例におけるHRが1.0付近であり、有用であるかどうかには慎重な判断が必要であろう。CPS≧10かつ扁平上皮がん症例が確実な“responder”のようにみえる。ACTS-CC 02試験(abstract #484)本邦から大腸がん術後補助化学療法のレジメンを検証した第III相試験の結果が報告された。N2を有するHigh-risk StageIII結腸がんの症例を対象に、UFT/LV療法(5週ごと、5コース)とSOX(オキサリプラチン100mg/m2、3週ごと、8コース)療法が比較検証され、プライマリ・エンドポイントは無病生存期間であった。966例が1:1にランダム化され、UFT/LV群でStageIIIB/IIIC(TNM分類7th)が51%/48%、SOX群で49%/50%であった。フォローアップ期間中央値58.4ヵ月、396イベントが確認され、3年無病生存率は、それぞれ60.6% vs.62.7%でHR:0.90、p=0.278とSOXレジメンの優越性は証明されなかった。サブグループ解析では、Nファクター、Stageにおいて進行症例ほどSOX群が良好の傾向を認めたが、統計学的に有意な差は示されなかった。マイコメント本邦で汎用されているSOXレジメンが結腸がん術後補助化学療法レジメンとして加わるかを検証した重要な試験であった。残念ながらnegativeな結果となったが、StageIII結腸がんに対するオキサリプラチンの上乗せ効果が否定された結果ではないと判断する。オキサリプラチンの量が100mg/m2ではなく、130mg/m2であったらどうだったか? 『大腸癌治療ガイドライン』が2019年版に改訂されたが、補助療法のpreferredレジメンはCapeOXまたはFOLFOXである。TAS-102±Bev比較試験(abstract #637)デンマークからTAS-102にベバシズマブ(Bev)を上乗せする効果を検証した比較試験の結果が報告された。TAS-102+BevレジメンはC-TASK FORCE試験(Kuboki Y, et al. Lancet Oncol. 2017;1172-1181.)で有用性が示されているが、Bevの上乗せ効果に関してはこれまで比較試験がなく、エビデンスがない状態であった。80例の症例が、TAS-102群41例、TAS-102+Bev群39例にランダム化され、プライマリ・エンドポイントとして無増悪生存期間が評価された。両群とも約60%の症例が3次治療まで受けており、80~85%の症例で前治療までにBevが使用され、約60%がRAS変異型であった。無増悪生存期間中央値は、TAS-102群で2.6ヵ月、TAS-102+Bev群で5.6ヵ月、HR:0.51、p=0.01で統計学的有意にTAS-102+Bev併用群で良好であった。全生存期間中央値はそれぞれ6.7ヵ月、10.3ヵ月、奏効率は0%、3%であった。毒性評価では、TAS-102群に比べてTAS-102+Bev群で好中球減少、下痢、発熱性好中球減少症が多い傾向だった。この試験のほかに、TAS-102+Bevレジメンを評価した本邦の第II相試験の結果が2つ報告されていた。TAS-CC3試験(abstract #617)では奏効率6.3%、無増悪生存期間中央値4.5ヵ月、全生存期間中央値9.2ヵ月、BiTS試験(abstract #647)では奏効率0%、無増悪生存期間中央値4.3ヵ月、全生存期間中央値8.7ヵ月であった。マイコメントTAS-102+Bevレジメンは本邦のC-TASK FORCE試験で有効性が示されたものの、試験の症例数の少なさから施設によってはレジメン登録が難しいところもあったことであろう。Bev併用効果を検証した前向き試験が望まれていた中での大変貴重な試験結果である。少数例の第II相試験ではあるが、positiveな結果はTAS-102+Bevの日常臨床での使用を大きくサポートするものであり、本邦からの2つの第II相試験結果も既報と同様のものであることから、TAS-102+Bevはほぼ確立したレジメンとして考えてよいであろう。Prep-02/JSAP-05試験(abstract #189)切除可能膵がんにおける周術期治療に関する重要な試験結果が本邦より報告された。現在の標準治療である術後補助化学療法S-1に対して、術前ゲムシタビン+S-1(GS)併用療法(3週ごと)2コースの追加により予後延長効果が得られるかを検証した試験である。S-1治療群の2年生存率を35%、GS併用療法群の2年生存率を50%として、α-エラー0.05、パワー0.8で、両群で360症例が必要のところ、364症例が登録された。本試験は第II/III相試験であり、第II相試験パートでは切除率が検証され、S-1治療群(術前化学療法なし)82%のところGS併用療法群93%と良好な結果が示され、その後第III相パートに進んだ。S-1治療群180症例のうち129症例で治癒切除が施行され、GS併用療法群では182症例のうち140症例で治癒切除が施行された。プライマリ・エンドポイントの全生存期間中央値は、S-1治療群で26.65ヵ月、GS併用療法群で36.72ヵ月、HR:0.72(95%CI:0.55~0.94、p=0.015)で、術前GS併用療法の有用性が示された。手術に関するファクター(出血量、手術時間、合併症など)において両群に有意な差は認めなかった。病理学的評価では、pN1症例がS-1治療群で81.5%であったのに対し、GS併用療法群で59.6%と有意に低かった。また、再発形式では、肝転移再発が47.5% vs.30.0%とGS併用療法群で有意に低かった。マイコメント本邦の切除可能膵がんの標準治療を変えうる、とても重要な試験結果である。術前にGS療法2コースを行うことで、これほど大きな生存期間延長効果が得られたことは正直驚きであった。今後、日常臨床で本試験結果をどのように反映させるか、各施設での議論が必要になるが、試験結果の詳細・論文発表にも注目すべきである。まとめ今年は全体的に上部(1日目)や肝胆膵領域(2日目)に注目演題が集まっており、下部(3日目)の演題に話題性は乏しかったものの、日本からの臨床試験の発表もあり、蓋を開けてみれば連日面白い学会であった。食道がんの標準治療として今後免疫チェックポイント阻害薬が入ってくることや、本邦の膵がん診療の標準治療が変わりうる演題があり、これらの演題に関する今後の論文発表に注目すべきである。

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膵がん死を減らせるか? 膵がん切除後の補助療法:mFOLFIRINOXかゲムシタビンか(解説:上村直実氏)-998

 消化器領域のがんでは感染症である肝がんと胃がんによる死亡者が激減し、著明な増加を示していた大腸がん死亡者数も肺がんと同様にプラトーに達し減少に転じている。その中で早期発見が困難でかつ発見時には手術不能例が多い膵がんによる死亡者数のみが年間3万人を超えて増加の一途をたどっている。膵がん死を防ぐ方法としては、完治できる外科的手術が理想的であるが、早期に発見された切除可能膵がんでも手術単独の5年生存率はわずか10%とされており、生存率の向上を目的として、術前・術後の補助療法が模索されているが、とくに局所病変が切除可能で転移に乏しい患者に対する術後の補助療法は必須となっている。 このたび、フランスとカナダで施行された第III相試験(RCT)の結果として、切除可能膵がん患者に対する術後補助療法として、毒性の強いFOLFIRINOX(フルオロウラシル/ロイコボリン+イリノテカン+オキサリプラチン併用)の用量を調整したmodified FOLFIRINOXと欧米における標準治療であるゲムシタビン(GEM)を比較した結果、前者がより有効であることがNEJM誌に報告された。mFOLFIRINOX群の無病3年生存率39.7%がGEM群の21.4%に比べて有意に延長した結果は今後に期待を持てる数字といえる。一方、日本では欧米の評価と異なりGEMとともに標準治療とされているS-1の評価が必要であると考えられる。 いずれにせよ、わが国における今後の膵がん対策として、実地医家など第一線の診療現場と専門医を有する中核施設の協力体制による早期発見システム(尾道方式など)の構築が必要であり、一方、補助化学療法としては、GEMとS-1を標準治療として有効性を示す新規薬剤の模索が進行中であるが、今後、MSI-highの膵がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有用性が早急に検討されることが期待される。

257.

ニボルマブ、食道がん第III相試験でOS延長(ATTRACTION-3)/小野薬品

 小野薬品工業株式会社は、2019年1月9日、ニボルマブ(商品名: オプジーボ)について、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む併用療法に不応または不耐となった切除不能な進行または再発食道がん患者を対象に実施した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(ATTRACTION-3:ONO-4538-24/CA209-473)の最終解析において、ニボルマブ群が化学療法群(ドセタキセルまたはパクリタキセル)と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を示したと発表。 ニボルマブは、切除不能な進行または再発食道がんにおいて、腫瘍細胞のPD-L1発現を問わない集団全体においてOSの有意な延長を示した世界で初めての免疫チェックポイント阻害薬となる。なお、本試験の結果については、今後、関連学会にて公表する予定とのこと。

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75歳以上の日本人進行非小細胞肺がん患者への免疫療法、有効性と安全性/日本肺癌学会2018

 75歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療の有効性と安全性については、議論が定まっていない。日本人高齢NSCLC患者を対象に、免疫療法の影響を評価した後ろ向き多施設共同研究の結果が、2018年11月29日、第58回日本肺癌学会学術集会で岡山大学病院の久保 寿夫氏により発表された。 本研究では、2015年12月~2017年12月に、日本国内の7つの医療機関でペムブロリズマブあるいはニボルマブによる治療を受けた進行NSCLC患者434例について後ろ向きに分析を行った。無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)のほか、PS、PD-L1発現状態、血清アルブミン値、G8スコアによる生存期間の比較、安全性などが評価された。 G8は高齢者の治療方針を決める際などに、高齢者機能評価を行うべき患者を抽出するために用いられる簡易スクリーニングツールで、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)も高齢者研究での使用を必須としており1)、食事摂取量や体重減少などについての8項目からなる。本研究では診療記録を用いた評価のため、「同年齢の人と比べて、自分の健康状態をどう思いますか」という質問項目を除く7項目の修正版が用いられた。 主な結果は以下のとおり。・434例の患者のうち、100例が75歳以上(中央値:79歳、範囲:75~90歳)であった。 うちPS 3の5例については除外された。・男性が77例(81.1%)、PD-L1発現<1%:4例(4.2%)/ 1~49%:10例(10.5%)、≧50%:26例(27.4%)、不明:55例(57.9%)であった。・組織学的所見は、非扁平上皮がん55例(57.9%)、扁平上皮がん40例(42.1%)。・20例(21.1%)で1次治療としてICIが投与され、75例(78.9%)で2次治療以降に投与されていた。67例(70.5%)がニボルマブ、28例(29.5%)がペンブロリズマブによる治療を受けていた。・ECOG PS0:16例(16.8%)/ PS1:60例(63.2%)/ PS2:19例(20.0%)、修正G8スコアの中央値は11.5(範囲:5.5~15.5)であった。・PFS 中央値は1次治療群で6.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:1.6~7.7)、2次治療以降群では2.9ヵ月(95%CI:1.9~4.6)であった。・生存期間中央値(MST)は1次治療群で8.7ヵ月(95%CI:7.9~NR)、2次治療以降群では15.5ヵ月(95%CI:5.5~NR)であった。・ORRは1次治療群で35.0%(CR:0例、PR:7例、SD:6例、PD:5例、NE:2例)、2次治療以降群で20.0%(CR:0例、PR:15例、SD:18例、PD:31例、NE:11例)であった。・MSTを各層別因子ごとに比較した結果、PSと修正G8スコアによる有意な差が認められた: PS 0~1 vs.PS 2:17.8ヵ月 vs.3.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.23、95%CI:0.11~ 0.46、p<0.01) 修正G8スコア ≧11 vs.<11:NR vs. 8.2ヵ月(HR:2.17、95%CI:1.11~4.17、 p = 0.02)・Grade2以上の免疫関連有害事象発生率は23.3%(甲状腺疾患:4.2%、間質性肺疾患:10.5%)であった。 久保氏は、本研究の観察期間は短く、後ろ向きの検討であることに触れたうえで、「ICI は75歳以上の患者においても良好な治療効果を認め、有害事象も忍容可能なものであった。また、PS良好例やG8スコア高値の患者で予後良好であった」とまとめている。 今後ICIと細胞障害性抗がん剤との併用療法導入にあたっては、「併用療法が有効な患者集団を抽出するために、G8などの高齢者機能評価の有用性を改めて評価する必要がある。実臨床では、今回の検討でもPS良好例では予後良好な傾向がみられており、高齢者においてもまずはPSを1つの指標として治療選択を考えていくべきではないか」とコメントした。■参考1)日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)ホームページ「高齢者研究委員会」■関連記事高齢者への抗がん剤治療は有効か―第19回 肺がん医療向上委員会※医師限定肺がん最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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本庶 佑氏ノーベル賞授賞式に…世界のがん治療に進化を与えた日本の研究

 2018年のノーベル生理学・医学賞を共同受賞した、本庶 佑氏(京都大学高等研究院 特別教授)とJames P. Allison氏(テキサス州立大学 MDアンダーソンがんセンター 教授)が、12月10日、授賞式に出席した。本庶氏と同じく京都大学出身で、現在、腫瘍内科医として、米国でがん臨床に携わるダートマス大学 腫瘍内科 准教授の白井敬祐氏に聞いた。―米国での「がん免疫治療に関する発見」のノーベル生理学医学賞受賞の反響は? ニューヨークタイムスなどの一流紙でも取り上げられるなど、多くのメディアで報道されています。新聞の切り抜きを持って来院し、「この薬は私には使えないか」「これは私が使っている薬か」などと尋ねる患者さんも多くなりました。医療者のみならず、患者さんや家族、サバイバーといった一般の方に対しても大きな反響があります。 この発見から開発されたPD-1阻害薬やCTLA-4阻害薬について、現在はTVでも大々的にCMが流されており、一般の方の知名度も高いと思います。ちなみに、CTLA-4およびPD-1へのモノクローナル抗体を開発したのは、ダートマス大学の免疫学の研究者が創立したMedarex社であり、その辺りにも縁を感じます。―白井先生は京都大学出身ですが、本庶先生の講義を受けられていたとか・・・ 在学当時、本庶先生の講義も受けていました。生化学の授業だったのですが、とても厳格な先生という印象でした。英語の発音にもこだわっておられましたね。米国に来てからは、本庶先生がボストンで講義をされたときに聴講に伺い、ご挨拶させていただきました。―この発見が生み出した免疫チェックポイント阻害薬のがん治療への影響は? 私の専門であるメラノーマと肺がんだけ見ても大きな影響があります。たとえば、StageIVのメラノーマについて、以前であれば、まずベストサポーティブケアが頭に浮かぶほど予後不良な疾患でした。しかし、PD-1阻害薬やCTLA-4阻害薬が登場し、効果が期待できるようになりました。私も、StageIVでPD-1阻害薬ニボルマブとCTLA-4阻害薬イピリムマブの併用療法で完全奏効(CR)となったケースを経験しています。これらの薬剤の登場で、患者さんへの説明の仕方もまったく変わりました。 また、肺がんについても米国では大きな意義がある薬剤です。ドライバー遺伝子変異がある非小細胞肺がん(NSCLC)の患者さんには、分子標的薬が非常によく奏効しますが、米国では治療対象となるドライバー遺伝子変異患者の割合は少ないのです。日本の非小細胞肺がんの約半数にEGFR変異が認められますか、米国におけるEGFR変異は5~10%程度です。一方、米国のNSCLCで、PD-1阻害薬のバイオマーカーの1つであるPD-L1強陽性の患者さんは、3分の1を占めるとされます。実際、私のNCSLC患者さんで、脳転移があったにもかかわらず、ニボルマブの投与で3年間CRが持続している患者さんがいます。しかも、ほとんど副作用がなくフルタイムで働いておられます。 このように、日本以上に免疫チェックポイント阻害薬の役割は大きく、今回の発見はがん治療に非常に大きな意味を持つものだといえます。

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いよいよ臨床へ、がん種を問わないMSI-H固形がんをどう診断し、治療していくか

 2017年の米国FDAでの承認に続き、本邦でもがん種横断的な免疫チェックポイント阻害薬による治療法が臨床現場に登場する日が近づいている。がん種によって頻度が異なる高度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の固形がんを有する患者を、どのように診断して治療につなげていくのか。2018年11月16日、都内で「キイトルーダとがん種を横断したMSI診断薬利用の意義と今後の医療に与えるインパクト」と題したメディアセミナーが開催され(主催:株式会社ファルコホールディングス)、吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科長)が講演した。MSI-Hの固形がんに強烈に効く可能性がある薬 米国で39のがん種、1万例以上を対象とした研究で、MSI-Hの固形がんは27がん種、3.8%で確認されている1)。全体でみると大きなポピュレーションとは言えないが、「これまでの試験結果から、MSI-Hの固形がん患者に対するペムブロリズマブの効果は“著効”と言えるもので、膵がんなどの一般的に予後が悪いがん種でも完全奏効する例が確認された意義は大きく2)、今までの治療体系を大きく変えるものと言える」と吉野氏。対象となる患者を確実に診断していくことの重要性を指摘した。MSI検査は腫瘍部組織のみで可能。ただし慎重になるべき症例も MSI-H固形がんに対するペムブロリズマブの適応拡大に先立ち、本邦では2018年9月10日にMSI検査キット(FALCO)がコンパニオン診断薬として製造販売承認を取得し、12月1日より保険適用されている (保険点数は2,100点)。FDAの承認ではコンパニオン診断薬の指定はなく、がん種横断的なコンパニオン診断薬が承認されたのは世界初。従来法では、正常部と腫瘍部の組織が必要だったが、本キットを使った検査では腫瘍部の組織のみで検査可能な点が特徴だという。吉野氏は、「腫瘍部の組織だけで検査可能なため、MSI検査を追加するに当たり、検体採取について現場で新たな手順を加える必要がないことは大きい」と話した。 ただし、腫瘍組織のみで判断することに慎重になるべき症例も存在する。本検査法では、マルチプレックスPCR法による電気泳動波形を目視で判定するが、特定のがん種で正常範囲として設定された波形とのズレが小さく、腫瘍組織のみでの判断が難しい場合があるという。吉野氏は「大腸がんでは正常範囲とのズレが大きく、明らかな波形の違いがみられるが、子宮がんや卵巣がん、乳がんなどではズレが小さく、判断が難しいケースが確認された。そのような場合は、正常部との比較が必要になる」と話し、特にこれらのがん種では慎重な対応を求めている。MSI-Hを有する固形がんにペムブロリズマブの適応を追加 固形がんにおけるMSI-H頻度については、子宮内膜がんや胃がん、大腸がんや膵がんなど、婦人科系・消化器系がんで高い傾向が報告されている2,3)。しかし日本人では消化器がん以外のデータがほとんどなく、まずはそのデータを蓄積していく必要性を吉野氏は指摘した。米国のデータでは、悪性リンパ腫や急性骨髄性白血病(AML)など12のがん種ではMSI-Hが確認されていない1)。「がん種横断的といってもどこまで検査すべきか、現状では世界的に指針がない。患者さんにとっては非常に大きな問題であることは間違いなく、どのように適正使用を促していくかは大変大きな問題。何らかの形で国際的なコンセンサスを取り、レコメンデーションを発出していく必要があると考えている」と同氏はコメントした。 また、「臓器横断的なゲノムスクリーニングに対する知識の習得」を目的とした医師・CRC向けのe-leaningシステム(e Precision Medicine Japan)を紹介し、MSI-H(MMR genes)を含む各ドライバー遺伝子別のエビデンスや薬剤承認状況等の把握・学習に役立ててほしいと話した。 なお、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は2018年11月29日、ペムブロリズマブの適応に、「進行・再発のMSI-Hを有する固形がん」を追加することを了承した(化学療法後に増悪しており、標準的な治療が困難な場合に限る)。近く承認が見込まれている。

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