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薬剤の副作用で死亡し、説明不足を問われたケース

癌・腫瘍最終判決判例時報 1591号44-54頁概要脳腫瘍の周術期に抗けいれん薬の投与を受けた女性。退院後しばらくしてから全身に掻痒感を伴う皮疹が出現し、次第に悪化、手術から34日後に薬剤アレルギー、肝機能障害と診断され、抗けいれん薬をはじめとする薬剤が中止された。ところがやがて高熱を発するようになり、中毒疹が出現、中毒性表皮融解壊死症(TEN)と診断されて、手術から46日後に死亡した。裁判では、退院時の「何かあればいらっしゃい」という担当医師の説明が不十分とされ、情報提供義務違反と判断された。詳細な経過経過1988年10月18日右前頭部の髄膜腫手術目的でA大学病院脳神経外科に入院。約20年前の手術時に、薬剤によると思われる皮疹の既往症について申告していた。10月22日抗けいれん薬としてバルプロ酸ナトリウム(商品名:デパケン)開始。10月27日腫瘍摘出手術。10月28日抗けいれん薬をフェニトイン(同:アレビアチン)、フェノバルビタール(同:フェノバール)に変更。11月15日便秘に対しフェノバリン(同:ラキサトール)処方。11月16日術後経過は良好で退院。その後は近医B病院の通院を希望したため、「変わったことがあれば、紹介先のB病院で、すぐみてもらってください」と指示。11月20日頃全身に掻痒感を伴う発疹が出現。11月30日B病院で薬剤アレルギー、肝機能障害の診断を受け、フェニトイン、フェノバルビタール、フェノバリンは中止し、バルプロ酸ナトリウムに変更された。12月2日A大学病院に全身掻痒感を伴う発疹を主訴に外来受診、担当医はフェニトインによる薬剤性湿疹と判断。12月3日高熱を発し、緊急入院。この時点で抗けいれん薬(バルプロ酸ナトリウム)は中止。12月5日次第に症状は悪化し、中毒疹が出現。12月8日中毒性表皮融解壊死症(TEN)と診断され、パルス療法などが行われたが、12月12日全身状態が悪化して心不全により死亡した。当事者の主張患者側(原告)の主張薬剤アレルギー体質であった患者には、より副作用の弱いバルプロ酸ナトリウムを投与するべきであったのに、劇薬・要指示薬であり副作用発生の可能性の強いフェノバルビタール、フェニトインを投与したのは注意義務違反である。1.担当医師は薬剤の副作用に関する説明をまったくしなかったのは説明義務違反である2.退院に際し、「何かあればいらっしゃい」では不適切で、「皮疹がでた場合には連絡するように」あるいは「薬には効果がある反面、副作用というものがあるからたとえば皮膚に斑点がでてきたとか、かゆみとか何か変わったことが起きたら医師に知らせなさい」と説明するべきであり、情報提供義務違反があった病院側(被告)の主張けいれん発作を起こしやすい髄膜腫の術後には、抗けいれん薬の投与は不可欠であり、フェノバルビタールとフェニトインの併用は現在もっとも用いられる投与方法であり適正なものであった。1.担当医師は発症する確率のきわめて低い副作用のことまで説明する義務はない2.患者に不安を与えないように、しかもすべての副作用を漏らさず説明することは困難きわまりないことである。とくに副作用を重視しての説明は、かえって治療効果上好ましくない結果を招来することがあるので、情報提供義務違反とはいえない裁判所の判断1.フェニトイン、フェノバルビタールを投与したことおよびその量、両剤の併用について注意義務違反を認めることは困難である2.フェニトインなどの投与の際に副作用についての説明をしていたからといって、ほかの抗けいれん薬を選択してTENの発症を防ぐことができたということはできないので、説明義務違反とはいえない3.退院に際しては、単に「何かあったらいらっしゃい」という一般的な注意だけでなく、「けいれん発作を抑える薬を出しているが、ごくまれには副作用による皮膚の病気が起こることもあるので、かゆみや発疹があった時にはすぐに連絡するように」という程度の具体的な注意を与えて、早期に異常を発見し、投薬を中止することができるよう指導する情報提供義務があったのに、これを怠った過失がある原告側合計2,200万円の請求に対し、330万円の判決考察このケースは第1審で原告敗訴、すなわち病院側には過失なしと判定されましたが、第2審では「薬剤の副作用に関する説明不足は過失である」と厳しく判断されました。そして、薬剤の効能書に「TEN」発症についての情報が記載されている限り、「医師に対し一般的に知らされている事実」と認定され、たとえ発症の可能性はきわめてまれであっても、十分に予見可能な副作用と判断されることになります。ちなみに病院側は、「一般的に薬剤を投与した場合の薬疹発症率は約1.1%、薬疹を発症した患者のうちTENを発症するのは約0.2%のため、薬剤を投与してTENを発症する確率はわずか0.0022%にすぎない」ため、「そのようなまれな副作用まで説明する義務はない」と主張しましたが、裁判官には受け入れられませんでした。実際の臨床では、このようなごくまれな副作用まできちんと説明する時間的余裕はほとんどないと思います。そして、そのような細かな危険にまでいちいち言及すると、「そんなに怖いことが起きるのなら、この薬は飲みたくありません」という患者さんも少なくないのではないかと思います。この点は病院側の「通常薬剤を投与して発症しうる副作用は多岐にわたっているため、患者に不安を与えないようにしかもすべての副作用を漏らさず説明することは困難極まりない。とくに副作用を重視すると、患者にとって不可欠な治療効果を持った薬剤でさえ、患者の服薬拒否を引き起こす可能性がある」というコメントは理にかなっており、多くの先生方が賛同するのではないかと思います。しかし今回の判決により、「薬を投与後に何かあればいらっしゃい」という説明では不十分であることが示されました。とすれば、今後のわれわれの診療では、「あなたには○○○の効果を持つ薬を出しているが、ごくまれには副作用による皮膚の病気が起こることもあるので、かゆみや発疹があった時にはすぐに連絡するように」と説明し、かつそのことをカルテに記載しなければ、厳密には医療過誤から身を守れないことになります。とはいうものの、日頃われわれが使用する薬剤は何百とあるわけではなく、整理すれば数十種類に落ち着くと思います。そこで頻繁に使用する薬剤については一度効能書を見直し、自分なりの防御策をご検討されてはいかがでしょうか。そして、最近では薬剤師の方から情報提供することによって、若干ながらの保険点数も認められるようになりましたので、身近なスタッフをできる限り動員し、患者さんへの情報提供を進めていくのが得策ではないかと思います。癌・腫瘍

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大腸がん手術後の患者さんへの説明

手術のあと大腸がんの手術を受けられた方へ編著:東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学 助教 石黒 めぐみ氏監修:東京医科歯科大学大学院 腫瘍外科学 教授 杉原 健一氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.あなたの受けた手術手術を行った日手術で切除した範囲年月日術式名(受けた手術の名称)きずお腹の創Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.2病理検査の結果深達度□□□□□□大腸癌取扱い規約【第8版】←粘膜大腸(断面)←粘膜下層Tis(粘膜まで)T1(粘膜下層まで)T2(固有筋層まで)T3(漿膜下層まで)T4a(漿膜に露出)T4b(ほかの臓器に浸潤)←固有筋層←漿膜下層←漿膜リンパ節リンパ節転移□ なし□ あり ➡個(□N1 □N2 □N3)以上の結果を総合するとあなたの大腸がんの病理学的進行度(ステージ)はほかの臓器への転移0□ 術前の検査では認めていません□ ほかの臓器への転移が疑われます➡(臓器)ⅠⅡⅢaⅢbⅣと診断されます。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.3【参考】大腸がんの進行度(ステージ)ステージ0粘膜・がんが粘膜の中にとどまっているステージⅠ・がんが粘膜下層あるいは固有筋層までにとどまっている・リンパ節転移がないステージⅡ粘膜下層固有筋層・がんが固有筋層を超えている・リンパ節転移がない漿膜下層漿膜・リンパ節転移があるステージⅢステージⅣⅢa:リンパ節転移が1~3個Ⅲb:リンパ節転移が4個以上・ほかの臓器への転移や腹膜播種がある肝転移Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.リンパ節転移肺転移早期がん進行がん腹膜播種4今後の治療について☑:あなたに当てはまるもの① 大腸がんの「再発」とは?② 大腸がん手術後の定期検査③ 術後補助化学療法④ 一時的人工肛門の閉鎖⑤その他のがんの検診についてCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.5①大腸がんの「再発」とは?a)大腸がんの「再発」とは?・手術でがんをすべて取りきったと思っても一定の割合で再発が起こります。大腸から離れた場所に❝飛び火❞した目に見えない大きさのがん徐々に増えてきて画像に写る大きさのしこりになったもの1cmくらい手術前手術後Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.再発6①大腸がんの「再発」とは?b)大腸がんの再発率・手術のときのステージが進んでいるほど再発する確率(再発率)は高くなります。(%)5030.8%43.240再発率302010013.3%3.7%2.712.124.3結腸がん直腸がん16.75.7ステージⅠステージⅡステージⅢ大腸癌研究会・プロジェクト研究 1991~1996年症例大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版. 大腸癌研究会編(金原出版)より改変Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.7【参考】大腸がんの5年生存率(%)10094.091.68084.877.760.0604018.8200ステージ0ステージⅠステージⅡ ステージⅢa ステージⅢb ステージⅣ大腸癌研究会・大腸癌全国登録 2000~2004年症例大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版. 大腸癌研究会編(金原出版)より改変Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.8①大腸がんの「再発」とは?c)大腸がんの主な再発形式・大腸がんの再発には、以下のようなものがあります。遠隔再発ほかの臓器に再発・肝再発腹膜再発吻合部再発(腹膜播種)お腹の中(腹腔内)に種をまいたように散らばって再発腸をつなぎ合わせた部分に再発局所再発・肺再発もともとがんがあった周囲に再発・その他:脳や骨などCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.9②大腸がん手術後の定期検査a)定期検査はなぜ必要?・大腸がんの再発は、手術で取りきれれば治る可能性があります。・再発が起こっていないかどうかをチェックするために手術後には定期的な検査が大切です。・手術のあと、5年間は定期検査を行います。大腸がんの再発のうち、96%が手術後5年以内に起こります。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.10②大腸がん手術後の定期検査b)定期検査のスケジュール(例)・以下のようなスケジュールに従って定期検査を行います。※ステージや患者さんのからだの状態によって多少異なります。1年2年問診・診察3ヵ月ごと直腸指診【直腸がん】3ヵ月ごと4年5年6ヵ月ごと腫瘍マーカー3年胸部・腹部CT6ヵ月ごと6ヵ月ごと骨盤CT【直腸がん】6ヵ月ごと6ヵ月ごと大腸内視鏡検査1~2年ごと大腸癌治療ガイドライン医師用2014年版. 大腸癌研究会編(金原出版)より改変Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.11③術後補助化学療法a)術後補助化学療法とは?・からだの中に残っているかもしれない見えないがん細胞を攻撃し、再発を防ぐ あるいは 再発を遅らせることを目的として、手術のあとに行う抗がん剤治療のことを「術後補助化学療法」といいます。【術後補助化学療法の対象となる患者さん】・ステージⅢの患者さん・ステージⅡのうち再発する危険性が高いと思われる患者さん・原則として術後1~2ヵ月を目安に開始し、6ヵ月行います。・通常は2~3週おきの外来通院で治療します。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.12③術後補助化学療法b)術後補助化学療法で使用されるレジメン・大腸がんの術後補助化学療法で使用されるレジメンには、以下のようなものがあります。※レジメンとは、使用する薬剤とその組み合わせ、投与する量やスケジュールなど治療の「レシピ」のようなものです。レジメン剤型投与方法投与スケジュール・5-FU+LV療法注射薬2時間かけて点滴週1回×6回その後2週間休む・UFT+LV療法飲み薬内服(1日3回)4週間内服その後1週間休む・カペシタビン療法飲み薬内服(1日2回)2週間内服その後1週間休む・FOLFOX療法注射薬48時間かけて点滴2週間おき・CapeOX療法飲み薬+注射薬点滴は約2時間カペシタビンは内服(1日2回)点滴+2週間内服その後1週間休むCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.13④一時的人工肛門の閉鎖・今回の手術では、以下のような目的で、一時的な人工肛門を造設しました。□腸のつなぎ目を安静に保ち、縫合不全*を予防するため。□ 術後、縫合不全*が起こったため。*縫合不全:腸のつなぎ目がほころびること・腸のつなぎ目が落ち着いたころを見計らって人工肛門を閉鎖する(もとに戻す)手術を行います。・1~2時間程度の手術です。・今回の手術と同様、全身麻酔で行います。・おおよその入院期間:日程度・手術を行う時期の目安:年お腹の壁(腹壁)月ころCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.口側の腸管皮膚筋層腹膜肛門側の腸管14⑤その他のがんの検診についてa)ほかの臓器のがんの検診について・大腸がんにかかったあとも、ほかの臓器のがんにかかる可能性があります。※大腸がん手術後の患者さんがほかの臓器のがんにかかる頻度は1~5%と報告されています。・大腸がんの手術後には、再発のチェックを目的とした定期検査を行いますが、ほかの臓器のがんの検査としては必ずしも十分ではありません。・自治体などで実施されるがん検診は、積極的に受けましょう。大腸がん手術後の定期検査では見つかりにくいがん・胃がん・食道がん・乳がん・子宮がん・前立腺がん大腸がん手術後の定期検査で見つかりやすいがん・肺がんCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.・肝臓がん15⑤その他のがんの検診についてb)別の大腸がんができる可能性があります・大腸がんの手術を受けたあとも、大腸の別の部分に別の大腸がん/大腸ポリープができる可能性があります。※大腸がん手術後の患者さんで、大腸の別の部分に別の大腸がんができる頻度は1~3%と報告されています。これは一般集団に比べておよそ1.5倍高い頻度です。・5年間の「手術後の定期検査」が終了したあとも、2~3年に1回の大腸内視鏡検査を受けることが勧められます。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.16退院後の生活について① 退院後の食生活② 退院後の日常生活③ 退院後の仕事復帰④ 退院後のスポーツやレジャーCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.17①退院後の食生活・原則として食事の内容に制限はありません。・「ゆっくり、よく噛んで、腹八分目」を心がけましょう。【食事のとり方の基本】➊ 規則正しく食事をとりましょう。➋ ゆっくり、よくかんで食べましょう。➌ 一度にたくさん食べすぎないようにしましょう。➍ バランスよく、消化の良いものを中心にとりましょう。➎ 水分をしっかりとりましょう。➏ アルコールはほどほどに。➐ 腸閉塞のサインを知っておきましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.詳しくは24ページ18【参考】一度にたくさん食べ過ぎるとよくない食品・原則として食事の内容に制限はありません。・ただし、以下のような消化されにくい食べ物を一度にたくさん食べると、つまったり流れにくくなったりして、腸閉塞を起こすことがあります。詳しくは24ページ食べ方や調理法を工夫して適量を食べるようにしましょうこんぶ・わかめなどの海藻類ごぼう・れんこんなど繊維質の根菜類きのこ類こんにゃく・よく噛む・こまかく刻む(繊維と垂直に切る)・やわらかく煮込む などまめ類Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.19②退院後の日常生活・退院後2ヵ月ほどはあまり無理をしないほうがよいですが自分の体力の回復に合わせて、徐々に行動範囲を広げていきましょう。・適度に体を動かしましょう。きずおとなしくして創を大事にしていたからといって、きず創の治りやがんの治りがよいわけではありません。適度な運動は体力や筋力を回復させ、胃腸の活動を活発にします。血行をよくし、手術の傷跡の治りもよくします。・まずは散歩や、軽い家事などがよいでしょう。疲れ具合に応じて、出かける時間や距離、作業の量や程度を増やしたりしてみましょう。病院への通院もよいリハビリになります。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.20③退院後の仕事復帰・デスクワーク中心の仕事であれば、手術後1ヵ月程度・からだを動かす仕事であれば、手術後2~3ヵ月程度が復帰の目安です。・軽めの仕事から徐々に始めていくのがよいでしょう。いきなりもとの仕事の内容・量を目指すのではなく、時短勤務や、一時的に仕事の内容を変更すること(外回り→内勤)なども考慮しましょう。・ご家族や職場の人たちのサポートが心身ともに大切です。ひとりで悩まずに、周りの人たちと協力して、手術後の回復期を乗り切りましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.21④退院後のスポーツやレジャー・体を鍛え上げるような激しい運動をする必要はありません。自分の体力に合わせて、好きな運動を生活に取り入れて楽しみましょう。・お腹に力が入るような運動は、手術後2~3ヵ月は控えましょう。腹筋運動、重いものを持ち上げる、ゴルフ、相撲、柔道など。腹壁瘢痕ヘルニアの原因になることがあります。詳しくは25ページ2~3ヵ月は…・もちろん旅行だって楽しめます。とくに制限はありません。はじめのうちはあまり無理のない範囲で楽しみましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.22今後起こりうる手術の影響☑:あなたに当てはまるもの① 腸閉塞(イレウス)② 腹壁瘢痕ヘルニア③ 排便習慣の変化□【結腸がん】□【直腸がん】□【人工肛門】④ 排尿機能障害【直腸がん】⑤ 性機能障害【直腸がん】Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.23①腸閉塞(イレウス)・お腹の手術を受けた後は、癒着などにより、何らかのきっかけで便の通りが突然悪くなることがあります。これを「腸閉塞(イレウス)」といいます。便やガス(おなら)の出が悪くなり、お腹が張ったり、お腹が痛くなったり、嘔吐したりします。・軽い場合は食事をしばらくお休みすれば改善します。それで改善しない場合は、鼻から管を入れて腸の内容物を吸い出したり、手術が必要になる場合もあります。軽いお腹の張りを感じても、便やガス(おなら)が出ている場合は、食事の量を減らして様子を見てください。強い腹痛、嘔吐、排便・排ガスがない などがある場合は、飲食はせずに、ただちに病院に連絡してください。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.24②腹壁瘢痕ヘルニア・お腹の壁(腹筋)を縫い合わせた部分のうち、筋肉に弱いところがあると、そこから腸がお腹の外に脱出することがあります。これを「腹壁瘢痕ヘルニア」といいます。皮膚筋層腹膜小腸・大腸きずお腹に力を入れたり長時間立っていたりすると、お腹の創の付近がポコッと盛り上がり、押すとペコペコします。あおむけに寝たり、お腹の力を抜くことによって、簡単に腸がお腹の中に戻る場合は、日常生活に支障がなければ、治療を急ぐ必要はありません。脱出した腸がねじれて血行が悪くなったりした場合には、強い痛みが起こります。この場合はただちに手術が必要ですので、すぐに病院に連絡してください。・腹壁瘢痕ヘルニアを予防するため、✔ 手術後2~3ヵ月は、腹圧のかかる作業は避けてください。腹筋運動、重いものを持ち上げる、ゴルフ、相撲、柔道など。✔ 太りすぎないように気を付けてください。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.25③排便習慣の変化【結腸がん】・結腸がんの手術では、日常生活に支障が出るような変化はほとんどありません。手術後2~3ヵ月は、やや便通が落ち着かないと感じることもあると思います。時間の経過とともに、少しずつ落ち着いてくるのが一般的です。規則正しい食生活が大切です。とくに朝食はきちんととりましょう。散歩などの適度な運動も効果的です。・便秘・下痢が続くなど、便通にお悩みのときは主治医に相談してください。便を柔らかくする薬や下痢止めなど、いろいろなお薬で改善する場合があります。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.26③排便習慣の変化【直腸がん】・直腸がんの手術では、肛門が残っても、直腸の大部分が切り取られているので、十分に便をためられないために、以下のような排便習慣の変化が見られます。・便の回数が増える・残便感がある・便意をがまんできない・寝ている間やお腹に力を入れたときに便やガスが漏れてしまう※程度には個人差があります。・半年~1年くらいの経過で、徐々に改善してきます。・排便のパターンをつかんで、上手に付き合っていきましょう。対策・夜間や外出時の漏れが心配な場合は、生理用品や尿取りパットを使う。(トイレットペーパーはお尻が荒れてしまうので避ける!)・外出直前の食事は避ける。・駅や外出先では、あらかじめトイレの場所を確認しておく。・シャワートイレがおすすめ(携帯用のものもあります)。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.27③排便習慣の変化【人工肛門】・人工肛門に関する悩みやトラブルがあるときは、「ストーマ外来」で専門の医師・看護師に相談してみましょう。【ストーマ外来のリスト】「日本創傷・オストミー・失禁管理学会」ホームページhttp://www.etwoc.org/stoma.html・人工肛門・人工膀胱をもつ患者さんの会もあります。「日本オストミー協会」ホームページ http://www.joa-net.org/日常生活に役立つさまざまな情報が得られます。・永久人工肛門になった患者さんでは、「直腸膀胱機能障害」(通常は4級)として身体障害者手帳を取得できます。・装具の給付、税の控除などのサービスを受けることができます。・患者さん自身(またはご家族)による申請が必要です。・申請以降に助成が開始されるので、早めに申請の手続きを。・詳しくは、市区町村の福祉担当窓口や、病院の社会福祉士(ソーシャルワーカー)に問い合わせてみましょう。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.28④排尿機能障害【直腸がん】・手術操作による一時的な自律神経のダメージや、がんを取りきるために一部の自律神経を切除したことにより排尿機能に障害が出ることがあります。尿道括約筋対策膀胱● 膀胱のセンサーの障害・尿意がよくわからない・膀胱に尿がたまりすぎてあふれる● 膀胱が収縮する機能の障害・膀胱の壁が固くなって伸びが悪い→あまり尿をためられずにあふれてしまう・押し出す力が弱く、“残尿”が増える・尿意がなくても、一定の時間ごとにトイレに行く。・男性の小用も座ってゆっくりと。・排尿時に下腹部を圧迫する(手で押す+前かがみ)。・症状に応じたお薬で症状が改善する場合があります。・自己導尿(自分で尿道に管を入れて尿を出す)Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.泌尿器科の医師に相談29⑤性機能障害【直腸がん】・手術操作による一時的な自律神経のダメージや、がんを取りきるために一部の自律神経を切除したことにより性機能に障害が出ることがあります。下大静脈腹部大動脈上下腹神経叢下腹神経骨盤神経叢(下下腹神経叢)骨盤内臓神経(勃起神経)直腸への神経枝膀胱への神経枝【男性の場合】・勃起障害・射精障害※女性の場合の性機能への影響はよくわかっていません。・手術の影響による症状です。恥ずかしがらずに主治医に相談しましょう。対策・お薬で改善する場合があります。・専門の医師への相談もできます。Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.泌尿器科の医師に相談30

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イレウスに高圧浣腸・摘便を行ってS状結腸が穿孔し死亡したケース

消化器最終判決判例時報 1050号118-124頁概要便秘と尿閉を訴えて受診した57歳男性。触診により糞石の存在を認め、糞便性イレウスと診断し、即刻入院させて用指的摘出と高圧浣腸とにより糞石の除去・排便促進に当たったが、病状は改善されなかった。翌日になり腹部膨満・激痛などの症状が発するに及んで、転医の措置を取り、転医先で即日開腹手術を受けたが、糞塊によるS状結腸圧迫壊死および穿孔に原発する汎発性腹膜炎により死亡した。詳細な経過患者情報57歳男性経過1975年4月18日10:00便秘のためおなかが張るという主訴で近医受診。初診時、便秘と尿閉による怒責で体を揺すっていた。腹部を触れてみると下腹部の真ん中から左側の方に凹凸不整の固い腫瘤が認められ、腹が少し張っており、肛門から指を入れると糞石をたくさん触れることができた。血圧は120/80mmHg、脈拍も悪い状態ではなかった。問診によると吐いたことはなかったが、排便、排ガスがなく痛みがあったことがわかり、糞便性イレウスと診断した。約1kgの糞石を摘出し、500mLの高圧浣腸を行ったところ、自力で排便がなされガスも大量に出た。腹部を触るとなお糞石がたくさん存在したが、怒責もなくなり顔色も良くなった。11:00ブドウ糖、ビタミン剤の点滴を1,500mLにより怒責は止み、一般状態が著しく改善したため、帰宅を申し出たが、なお相当量の糞石、大便が残っていることが認められたので入院となった。14:00再び怒責様の訴えがあったので、約100gの糞石を摘出し、再度500mLの高圧浣腸を行ったところ、怒責は消失し、腹部の所見は良好となり自然排尿も認められ、翌朝6:00頃までに自然排便が3回あり、夕食では大量ではないがお粥を食べた。4月19日08:00診察を行ったが前日に比べとくに変化は認められず、朝食にお粥を少量摂取したが、吐き気そのほかの症状は認められなかった。糞石を6個摘出し、腸蠕動促進剤を投与し、高圧浣腸を500mL行ったがまだ疼痛が残っており腹はぺしゃんこにならなかった。しかし、患者からは格別の訴えはなく、食事もお粥を摂取し便通も5回あった。なお1,500mLの点滴を行った。4月20日08:30診察を行ったが特別の変化はなく、午前中点滴を1,500mL行い、この日も症状の悪化もなく食事も3回とり便通も2回あった。4月21日08:30前日同様に診察を行い肛門より指を入れて摘便を行おうとしたが指の届く範囲に便はなかった。腸蠕動促進剤を投与し、高圧浣腸、点滴を行った。12:40妻が病院からの連絡で駆けつけたところ、相当苦しがっており、胃液状のものを嘔吐した。14:30担当医師は急性胃拡張の疑いがあると考え、胃ゾンデを挿入し、胃の検査をしたが異常は認めなかった。さらに腹部が従来にもまして膨満してきた。15:30担当医師は知り合いの病院へ転院を勧めたが、妻は大学病院への転院を希望して担当医師の指示に従わなかった。16:15激痛を訴えたため、鎮痛薬を注射し、大学病院の病床が確保できたという連絡があった。17:00家族の希望通り大学病院に到着後、X線室で呼吸および心停止に陥り、気管内に挿管して蘇生した。19:30大学病院で開腹手術が行われた。術中所見では、横行結腸肝屈曲部、下行結腸、S状結腸に4cm四方角多面体の糞石がぎっしり詰まり、そのため結腸の血流が悪くなってS状結腸が壊死状態となって、直径2cm大および同1cm大の穿孔が2個ずつ発生し、そこから便、あるいはそれに含まれる大腸菌などの細菌類が腹腔内へ流出したために汎発性腹膜炎を併発。4月22日17:15死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張入院初日に肛門部の糞石約1kgを指で排出しているが、その後はほとんど排出していないのだから4月18日、19日の経過によってX線撮影をしたり、手術に移行する手筈を取るべきであったのにしなかった。S状結腸に壊死を起こした患者に高圧浣腸を多用すれば、穿孔を起こすことは十分予測され、容態が変化した場合、白血球数測定などの平易な検査によって容易に判明するのにこれを施行しなかったために腸管の穿孔から汎発性腹膜炎を発症し、死亡した。容態の急変後も胃拡張が原因ではないかと疑い胃の検査をしているが、穿孔の事実をまったく発見できず、それに対する処置および適切な時期に転院が遅れたため、手術が施行されるも手遅れであった。病院側(被告)の主張X線単純撮影によっても糞石が横行結腸まで詰まっていることを確実に知ることは不可能である。また、X線単純撮影はあくまで診断の補助手段にすぎず、糞便による充塞性イレウスとの診断を得ているのだから、X線単純撮影の必要性はとくに認められない。糞が腸に詰まったための充塞性イレウスの場合、治療法としてまず高圧浣腸をかけて排便を促すことが一般的であり、成果も上がっていたのだから高圧浣腸を続けることは当然であって回数からいっても特段の問題となるものではない。また、高圧浣腸による穿孔は非常にまれであり、男性Aの場合、その治療経過からして高圧浣腸が死亡の重要な原因をなしたものとは到底考えられない。容態の急変まではイレウスの手術の絶対的適応ではなかった。そして、担当医師は容態悪化後ただちに他院に転院して手術が行えるように手筈を整えたにもかかわらず、患者の家族がその指示に従わなかったため、大学病院での手術の結果が実を結ばなかったものであり、転院の遅れについては担当医師に責任がない。裁判所の判断1.イレウスにおけるX線単純撮影では、糞石そのものは写らないものの、腸管内のガスは写るものであり、そのガスを観察することにより糞石の詰まっている部位、程度を、触診、打診、聴診に比べて、相当はっきり診断することができるため、X線単純撮影は非常に有効で、かつ実行すべき手段である2.入院時には男性Aの苦痛を取り除くことが先決であってX線撮影をする暇がなかったとしても、その後、容態が急変するまでの間に撮影することは可能であったはずである。内科的治療によって確実に病態の改善がみられたとはいえないにもかかわらず、X線撮影を怠ったためにイレウスの評価を誤り、外科的治療に踏み切らなかった、あるいはそれが可能な病院に転院させなかったために死亡したので、担当医師の過失と死亡との間に相当因果関係がある3.S状結腸の穿孔の原因については、担当医師が腸管の壊死に気づかずに高圧浣腸を行ったために発生した可能性はあるが、それ以上に高圧浣腸が明らかに穿孔の原因となったとする証拠はない4.転院については、担当医師はまったくの素人である患者の家族に重篤な病勢を十分に説明し、できるだけ速やかに転院することを強く勧告するべきであったにもかかわらず、そうした事実が認められないから、家族が転院の指示に従わなかった事実があったとしても担当医師の過失が軽減されることはない原告側合計2,650万円の請求に対し、請求通りの判決考察日常診療において、腹痛を訴える患者にはしばしば遭遇します。こうした場合、詳細な問診と診察により、ある程度診断がつくことが多いと思いますが、中には緊急手術を要するケースもあり、診断および治療に当たっては慎重な対応が要求されることはいうまでもありません。とくに、投薬のみで帰宅させた後に容態が急変した場合などは、本件のように医療過誤に発展する可能性が十分にあります。本件でも問診、触診による診断そのものは誤りではありませんでしたが、その後の治療方針を決定し、経過観察をするうえで、必要な検査が施行されていなかったことが問題となっています。確かに、患者の症状を軽減することが医師としての勤めでありますが、症状が落ち着いた時点で、原疾患の検索のために必要な検査はぜひとも行うべきであり、イレウスで4日間の入院中に一度もX線撮影を行わなかったことはけっして受け容れられることではありません。患者の検査漬けが取り沙汰されている中では、確かに過剰な検査は迎合できるものではありませんが、本件の場合、X線撮影、血算、検尿、心電図、腹部超音波検査、腹部CTなどの実施が必要であったと思われます。これらすべての検査がどの施設でも緊急にできるとは限らないので、裁判でもそこまでは言及していません。だからといって検査をしなくてもよいということにはならず、必要であれば、それらが実施できるほかの病院へ早期に紹介することが求められています。他院への転送義務については、通常、適切な時期に適切な病院へ転院させたかということが裁判では問題になります。しかし、本件のように医師が転院を勧めたにもかかわらず、家族がその指示に従わなかった場合、まったくの素人である患者および患者家族に対して、医師の勧告の方法に問題があり、過失が減じられなかったことは、医師の立場からいえば少々厳しすぎる裁定ではないかと思います。本件の充塞性イレウスとは、糞石による単純性イレウスのことですが、イレウスの中でも比較的まれな症例です。ましてやその糞石が肛門から横行結腸に至るまで詰まっていたのですから、患者は重篤な状態であったことに疑いはありません。外来や病棟でイレウスの患者を治療するにあたって重要なことは、絞扼性イレウスの患者を放置あるいは誤診して、腸管壊死に陥り、汎発性腹膜炎になった場合には、今日の医療をもってしても患者を救うことができない可能性が高いということです。近年、輸液療法の進歩とともに非絞扼性イレウスの保存的療法が広く行われるようになりましたが、治療しているイレウスが絶対に絞扼性でないという確信が持てない場合には、一刻も早く開腹手術を決断すべきです。また、非絞扼性イレウスと診断され、保存的治療で病状の増悪が認められない場合には、イレウスの自然寛解を期待して手術を見合わせることはできますが、保存的治療の限度はせいぜい1週間程度で、それ以上待ってもイレウスが自然寛解する頻度は少なく、大抵の場合手術しないと治らない原因が潜んでいると考えた方がよいと思います。消化器

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アリピプラゾールは急性躁病治療のファーストラインになりうるか

 急性躁病のファーストライン治療は薬物療法であり、まず初めに興奮、攻撃性、危険な行動を迅速にコントロールすることが目的とされている。非定型抗精神病薬アリピプラゾールは、躁病治療において、単独また他剤との併用いずれもが行われている。また、英国精神薬理学会(British Association of Psychopharmacology)のガイドラインでは、単独療法プラセボ対照試験において、アリピプラゾールを含む非定型抗精神病薬は急性躁病また混合性エピソードに有効であることが示唆されたとしている。そこで、英国・Oxford Health NHS Foundation TrustのRachel Brown氏らは、急性躁病症状または混合性エピソードの軽減について、アリピプラゾールの単独または他の抗躁薬との併用治療の有効性と忍容性を評価するとともに、プラセボまたは他剤との比較を行った。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2013年12月17日号の掲載報告。 研究グループは、急性躁病症状または混合性エピソードの軽減について、アリピプラゾールの単独または他の抗躁薬との併用治療の有効性と忍容性を評価するとともに、プラセボまたは他剤との比較を行った。また、アリピプラゾール治療に対する受容性、有害反応、またアリピプラゾール治療患者における全死亡率なども調べた。 評価は、Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Group's Specialised Registerにて2013年7月末以前に発表された文献を検索して行った。また、Bristol-Myers Squibb臨床試験レジスタ、WHO試験ポータル、ClinicalTrials.gov(2013年8月まで)の検索も行った。文献の適格基準は、急性躁病もしくは混合性エピソードの治療において、アリピプラゾールをプラセボあるいは他剤と比較した無作為化試験とした。2人のレビュワーがそれぞれ、有害事象など試験報告データを抽出し、バイアスを評価した。欠落データについては、医薬品製造会社または文献執筆者に問い合わせを行った。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、10試験(被験者3,340例)のデータが組み込まれた。・7試験(2,239例)が、アリピプラゾール単独療法とプラセボを比較したものであった。そのうち2試験が3比較アームを含んだ試験で、1試験はリチウムを(485例)、もう1つはハロペリドール(480例)を用いていた。・2試験は、アリピプラゾールを、バルプロ酸またはリチウムもしくはプラセボに追加した場合を比較したものであった(754例)。1試験は、アリピプラゾールとハロペリドールを比較したものであった(347例)。・全体のバイアスリスクは不明であった。また、大半の試験で被験者の脱落率が高く(8試験の各介入において20%超)、相対的な有効性の推定に影響がある可能性があった。・以上を前提とした解析の結果、アリピプラゾールは、プラセボと比べて、成人と小児・若者の躁症状の軽減に有効であることを示すエビデンス(格差はわずか)が認められた。軽減効果は、3週、4週時点でみられ6週時点ではみられなかった(Young Mania Rating Scale[YMRS]の3週時点のランダム効果による平均差[MD]:-3.66、95%信頼区間[CI]:-5.82~-2.05、6試験・1,819例、エビデンスの質:中程度)。・アリピプラゾールと他剤療法との比較は3試験(1試験は、成人対象のリチウム投与、2試験はハロペリドール)であった。躁症状の軽減について、アリピプラゾールと他剤療法との統計的な有意差は、3週時点(3週時点のランダム効果のYMRS MD:0.07、95%CI:-1.24~1.37、3試験・972例、エビデンスの質:中程度)、および12週までのいかなる時点においても示されなかった。・プラセボと比較して、アリピプラゾールは、運動障害をより多く引き起こしていた(Simpson Angus Scale[SAS]、Barnes Akathisia Scale[BAS]の測定と、参加者が報告したアカシジアによる、エビデンスの質:高度)。抗コリン作用性の薬物による治療を必要としていた患者で、より多く認められた(ランダム効果によるリスク比:3.28、95%CI:1.82~5.91、2試験:730例、エビデンスの質:高度)。・また、アリピプラゾール服用群は、胃腸障害(悪心[エビデンスの質:高度]、便秘)が多く、小児・若者でプロラクチン値の正常下限値以下への低下がみられた。・アリピプラゾールとその他治療とを比較した運動障害との関連に関するメタ解析には有意な不均一性があり、多くはリチウムとハロペリドールのさまざまな副作用プロファイルによるものであった。・3週間時点のメタ解析は、データ不足のためできなかった。しかし12週時点の解析において、ハロペリドールはアリピプラゾールよりも、有意に運動障害の発生が多かったことが、SAS、BASとAbnormal Involuntary Movement Scale(AIMS)、被験者報告のアカシジアの測定によって認められた。・一方12週時点までに、アリピプラゾールとリチウムとの差について、被験者報告のアカンジア(RR:2.97、95%CI:1.37~6.43、1試験・313例)を除き、SAS、BAS、AIMSに関しては研究者による報告はなかった。関連医療ニュース バイポーラの躁症状に対するアリピプラゾールの位置付けは? アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは? うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける?

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中等度~重度の慢性腰痛にトラマドール・アセトアミノフェン配合剤が有用

 トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤徐放性製剤(TA-ER、商品名:トラムセット配合錠)は、2つの有効成分の相乗作用により迅速かつ長期にわたる鎮痛効果を発揮することが示されている。韓国・ソウル大学ボラメ病院のJae Hyup Lee氏らは、第3相二重盲検プラセボ対照並行群間試験により、同製剤が中等度~重度の慢性腰痛の鎮痛と、機能およびQOLの改善においてプラセボより優れており、忍容性も良好であることを明らかにした。Clinical Therapeutics誌オンライン版2013年11月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、慢性腰痛に対するトラマドール塩酸塩75mg/アセトアミノフェン650mg配合剤徐放性製剤(TA-ER)の有効性および安全性を評価することであった。 対象は、従来の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)またはシクロオキシゲナーゼ-2選択的阻害薬で十分なコントロールが得られなかった、中等度~重度慢性腰痛(10cmの視覚的アナログスケールで4cm以上、3ヵ月以上持続)患者245例で、TE-ER群またはプラセボ群に無作為化しそれぞれ4週間投与した。 有効性の主要評価項目は、ベースラインから最終評価時までの疼痛強度の変化率が30%以上の患者の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・疼痛強度の変化率が30%以上の患者の割合は、最大解析対象集団および治験実施計画書に適合した対象集団のいずれの解析においても、TA-ER群がプラセボ群より有意に高かった(p<0.05)。 ・鎮痛成功率は、8日目と15日目においてTA-ER群がプラセボ群より有意に高かった。 ・TA-ER群ではプラセボ群と比較して、韓国版SF-36の身体の日常役割機能、全般的健康および健康状態の変化、韓国版オスウェストリー障害指数の身の回りのことに関する項目で有意な改善を認めた。・疼痛コントロールの患者評価において、「とても良い」と回答した患者の割合は、プラセボ群よりTA-ER群で有意に多かった。・有害事象は、プラセボ群よりTA-ER群で高頻度にみられた。最も多い有害事象は吐き気、めまい、便秘および嘔吐であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用か

 慢性または再発性大うつ病性障害(MDD)患者は、治療選択肢の不足に直面している。韓国・カトリック大学のChi-Un Pae氏らは、慢性または再発性MDD患者におけるアリピプラゾールによる増強療法の有効性と忍容性を評価する、12週間の前向き多施設オープンラベル試験を実施した。その結果、服用中の抗うつ薬へのアリピプラゾールの追加は有効で忍容性も良好であることを報告した。International Clinical Psychopharmacology誌2013年11月号の掲載報告。 本研究では、慢性または再発性MDD患者において、現在服用中の抗うつ薬の効果増強をねらい、用量調節可能なアリピプラゾールを追加した際の有効性と忍容性を評価することを目的に行われた。有効性の主要評価項目は、ベースライン時と最終評価時(12週時)のモントゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)総スコアの差とした。試験期間中に発現した有害事象(AEs)についても記録した。 主な結果は以下のとおり。・MADRS総スコアは、ベースライン時に比べ最終評価時は、有意に低下していた(差:-11.6、p<0.0001)。・最終評価時の奏効率は55.2%、寛解率は41.3%であった。・1週目から最終評価時まで、アリピプラゾールの追加は、寛解と有意な治療反応性に関連していた。・アリピプラゾールを服用した患者の半数以上(55.8%)が試験を完了した。・有害事象のために試験を中止した患者は比較的少なかった。・反応性が不良のために試験を中止した患者はなかった。・主な有害事象は、頭痛、アカシジア、不眠、便秘であった。・最終評価時のアリピプラゾールの平均用量は6.6mg/日であった。・以上を踏まえて著者は「慢性または再発性MDD患者に対し、アリピプラゾールの追加は有効かつ忍容性が良好であると思われる」と結論した。そのうえで「本結果を確認するため、検出力を有する比較試験の実施が求められる」とまとめている。関連医療ニュース うつ病に対するアリピプラゾール強化療法、低用量で改善 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 難治性うつ病に対するアプローチ「SSRI+非定型抗精神病薬」:産業医大

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第1回

第1回:単純性憩室炎では、抗菌薬投与は回復を早めない 憩室炎の患者の多くは、腹痛を主訴に受診します。腹痛は、救急受診の10%程度を占める症状で、見逃すと重症化するものもあり、詳細な病歴と診察が必要とされます。憩室の頻度は高齢者に多く、40歳以下では10%以下ですが、85歳以上には80%以上存在する1)という報告があります。また、一般に西洋人の方が憩室を有する率が高いといわれていますが、食の西洋化によって、日本人にも増えてきていると考えられています2)。単純性憩室炎の患者の食事として勧められている“Clear Liquid Diet” とは、一日1,000kcal程度で、乳製品や脂肪分、食物繊維を含まない食事であり3)、日本では入院中の術後食をイメージしていただければと思います。 以下、本文 American Family Physician 2013年5月1日号1)より単純性憩室炎1.概要炎症が憩室のみに限局する状態であり、複雑性の憩室炎は膿瘍や蜂窩織炎、瘻孔、通過障害、出血や穿孔を伴うものをいう。2.症状 1)主な症状 左下腹部自発痛、圧痛、腹部膨満感、発熱 (「左下腹部のみに限局した痛み」陽性尤度比10.4) 2)その他の症状 食欲不振や、便秘、吐き気(「嘔吐がない」陰性尤度比0.2)、下痢、排尿障害3.検査 1)採血 : 末梢血液や電解質や腎機能などの生化学、尿検査や、CRP測定を行う。 2)CT : 最も有用な画像検査【Grade C】で、診断の決定と、病状の広がりや重症度を判断し、合併症を否定するのによい。 3)下部消化管内視鏡 : 複雑性の患者や高齢者で、症状が治まって4~6週間後に行うとよい。軽症で単純性の憩室炎の場合は、抗菌薬の投与が、回復を早めることはなく【Grade B】、合併症や再発を予防することはない。4.処置 1)経過観察 : 軽症で経口摂取が可能で、腹膜炎の徴候がなければ、Clear Liquid Dietで2、3日経過を見る。 2)入院(内科的対応) : 腹膜炎の徴候があったり、複雑性憩室炎の疑いがあれば、入院も考慮すべきである。 入院患者の治療として、補液や抗菌薬点滴を行う。 限局的に膿瘍があれば、CTガイド下の経皮的ドレナージを考えるべきである。 3)入院(外科的対応) : 急性憩室炎で入院している15~30%は入院中に外科的対応が必要とされる。 ラパロスコピーは開腹術と比較して、短期間の入院ですみ、合併症は少なく、入院中の死亡率も低い。 再発を繰り返す場合の外科的治療については、状態や既往歴、生活状況などを併せて個別的に考えるべきである。 4)再発予防 : 再発を予防するのは、食物繊維の摂取、運動、禁煙と、BMI 30以上の人は減量である。ナッツやコーン類を摂取しないことで、憩室症や憩室炎の発症率を下げる効果はない【Grade B】。本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Wilkins T, et al. Am Fam Physician. 2013 May 1;87:612-620. 2) 福井次矢ほか編.内科診断学.第2版.医学書院;2008.p.866. 3) The John Hopkins hospital/outpatient center clear liquid diet. The John Hopkins Medical Institutions.

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セロトニン3受容体、統合失調症の陰性症状改善に期待:藤田保健衛生大学

 統合失調症患者に対する5-HT3受容体拮抗薬による治療成績は、それぞれの無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験の結果により異なっている。藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らは、5-HT3受容体拮抗薬は統合失調症治療に有効であると仮説を立て、検証を行った。Neuromolecular medicine誌オンライン版2013年7月30日号の報告。 PubMed、コクランライブラリー、PsycINFOから2013年6月15日までに公開された研究を検索した。5-HT3受容体拮抗薬の追加療法とプラセボの追加とを比較したランダム化比較試験から得られた患者データより、系統的レビューとメタ分析を行った。また、ランダム効果モデルを用い、リスク比(RR)、95%信頼区間(95%CI)、標準化平均差(SMD)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・6試験、311例が抽出された。・5-HT3受容体拮抗薬の追加はプラセボと比較しPANSS総スコア(SMD=-1.03、95%CI:-1.70~-0.36、p=0.003、I2=82%、5試験、261例)、陰性症状尺度(SMD=-1.10、95%CI:-1.82~-0.39、p=0.002、I2=84%、5試験、261例)、総合精神病理尺度(SMD=-0.70、95%CI:-1.23~-0.17、p=0.01、I2=73%、5試験、261例)の有意な改善が認められた。しかし、陽性症状尺度では改善が認められなかった(SMD=-0.12、p=0.33)。・全原因による中止(RR=0.80、p=0.50)、無効(RR=0.76、p=0.65)、有害事象(RR=0.84、p=0.75)は両群間で同等であった。・便秘は5-HT3受容体拮抗薬追加により有意に増加した(RR=2.05、95%CI:1.07~3.91、p=0.03、NNH=11、p=0.02)。・統合失調症患者に対する5-HT3受容体拮抗薬追加療法は精神症状(とくに陰性症状)改善に有効であり、忍容性も良好であると考えられる。関連医療ニュース 陰性症状改善に!5-HT3拮抗薬トロピセトロンの効果は? 統合失調症患者にNaSSA増強療法は有用か:藤田保健衛生大学 統合失調症患者へのセロトニン作動薬のアドオン、臨床効果と認知機能を増大

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こどものみかた<下巻> ~シミュレーションで学ぶ見逃せない病気~

第4回「もう大丈夫!子どもの喘鳴」第5回「これですっきり!嘔吐のみかた」第6回「子どもの腹痛 便秘と重症疾患の見極め!」 小児科医でなくても、日常診療や夜間救急・輪番で「こどもを診る」機会のある一般内科医や看護師も多いのではないでしょうか。そんな時、慌てずに対応できていますか?本DVDは、診療所に緊急度の高い小児救急患者が訪れた場面のシミュレーションをふまえ、適切なトリアージ、処置、診断、家族への病状説明、小児専門医への搬送などを身に付ける、小児救急の実践的プログラムです。第4回「もう大丈夫!子どもの喘鳴」小児の小急性疾患のひとつ喘鳴を取り上げます。レクチャーにおける到達目標は3つです。1)小児の喘鳴の鑑別疾患を5つ挙げることができる 2)緊急性を判断し小児科に相談ができる 3)喘鳴の鑑別診断と初期治療を行うことができる番組では、症例動画を参考に喘鳴患者の見た目と呼吸音を理解し、ロールプレイをとおして病歴聴取法やバイタルサインの確認法など学習していきます。本シリーズ恒例のおさらいクイズで喘鳴診療の学習度をチェックしましょう。第5回「これですっきり!嘔吐のみかた」子どもの救急外来で「発熱」に次いで多いのが「嘔吐」です。高熱でお腹が張り嘔吐、咳が出てむせこみ嘔吐、泣きすぎて嘔吐…などコモンな症状に関わらずその原因は様々で、緊急度の高い疾患も潜むため、嘔吐の診断は的確さが求められます。とはいえ焦る必要はありません。ABC(見た目)の確認、バイタルサインの数値化、的確な問診・診察を行い、胃腸炎、腸重積、虫垂炎、髄膜炎、代謝性など嘔吐をきたす疾患を見極める術を学びます。そしておさらいクイズで学習度をチェック!第6回「子どもの腹痛 便秘と重症疾患の見極め!」小児救急の3大主訴のひとつ「腹痛」です。乳幼児は大人のように腹痛を訴えることができません。不機嫌、哺乳力低下、啼泣など子どもの様子から迅速かつ的確にトリアージしなくてはなりません。小児になると便秘による腹痛が大半です。便が出ていても便秘!?激痛が浣腸だけで収まる!といったことも珍しくありません。このように小児の腹痛は便秘や胃腸炎などが多いのですが、虫垂炎、腸重積、鼠径ヘルニア、精巣捻転、紫斑病などを念頭に鑑別する必要があります。ABCで見た目の異常を確認し、虫垂炎や腸重積などの特徴を念頭に便秘と重症疾患を見極める術を学びます。最後のおさらいクイズで学習度をチェックしましょう。

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クリゾチニブ、ALK融合遺伝子陽性進行NSCLCの2次治療として有効/NEJM

 既治療の未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、ALKのチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるクリゾチニブ(商品名:ザーコリ)は、標準的な化学療法よりも優れた有用性を持つことが、米国・マサチューセッツ総合病院のAlice T Shaw氏らの検討で示された。日本も参加した本試験の報告は、米国臨床腫瘍学会(ASCO、シカゴ市)期間中の2013年6月1日にNEJM誌オンライン版に掲載された。ALKは、NSCLC、未分化大細胞リンパ腫、小児神経芽細胞腫などのがん種で確認されているチロシンキナーゼであり、NSCLCの約5%にみられるALKの染色体再配列は肺がんの分子サブタイプに規定されている。クリゾチニブは、ALK、ROS1、METを標的とする低分子の経口TKIで、すでに2つの単群試験で優れた臨床効果が確認されている。標準的な単剤化学療法と非盲検無作為化試験で比較 研究グループは、進行NSCLCの治療におけるクリゾチニブと標準的化学療法の有用性を比較する非盲検無作為化第III相試験を行った。 対象は、プラチナ製剤ベースの化学療法による1レジメンの前治療歴があるALK融合遺伝子陽性の局所進行・転移性NSCLC患者であった。これらの患者が、クリゾチニブ(250mg)を1日2回経口投与する群または標準的な化学療法[3週を1コースとしてペメトレキセド(PEM、500mg/m2)もしくはドセタキセル(DOC、75mg/m2)を静注投与]を施行する群に無作為に割り付けられた。 化学療法群のうち病勢進行(PD)となった患者は、クリゾチニブへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目はPFS(無増悪生存期間)であった。PFS中央値が2倍以上に延長、肺がん症状、QOLも有意に改善 2010年2月~2012年2月までに347例が登録され、クリゾチニブ群に173例(年齢中央値51歳、男性43%、PS0 42%、腺がん95%、転移性95%)、化学療法群には174例(49歳、45%、37%、94%、91%)が割り付けられた。化学療法群のうち99例(57%)にPEMが、72例(41%)にはDOCが投与された。 PFS中央値はクリゾチニブ群が7.7ヵ月と、化学療法群の3.0ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.37~0.64、p<0.001)。クリゾチニブ群のPEM群に対するPFS中央値のHRは0.59(95%CI:0.43~0.80、p<0.001)、DOC群に対するHRは0.30(95%CI:0.21~0.43、p<0.001)だった。 奏効率はクリゾチニブ群が65%であり、化学療法群の20%(PEM群29%、DOC群7%)よりも有意に良好であった(p<0.001)。全生存期間(OS)の中間解析では、両群間に有意な差は認めなかった(HR:1.02、95%CI:0.68~1.54、p=0.54)。 有害事象は、クリゾチニブ群で視覚障害(60%)、下痢(60%)、悪心(55%)、嘔吐(47%)、便秘(42%)、肝アミノトランスフェラーゼ値上昇(38%)の頻度が高く、化学療法群では悪心(37%)、疲労感(33%)、便秘(23%)、脱毛(20%)、呼吸困難(19%)が高頻度にみられた。 患者の自己申告による肺がん症状(咳嗽、呼吸困難、胸痛)の増悪までの期間中央値は、クリゾチニブ群が5.6ヵ月であり、化学療法群の1.4ヵ月に比べ有意に延長した(HR:0.54、95%CI:0.40~0.71、p<0.001)。ベースラインからのQOLの改善効果もクリゾチニブ群が化学療法群よりも良好だった(p<0.001)。 著者は、「クリゾチニブは、既治療のALK融合遺伝子陽性の進行NSCLCの治療において、標準的化学療法よりも優れた有用性を持つことが示された」と結論し、「クリゾチニブによる明確なOSの改善効果が得られなかったのは、クロスオーバーが交絡因子となっているためと考えられる」と指摘している。

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基準通り抗がん剤を投与したにもかかわらず副作用で急死した肺がんのケース

癌・腫瘍最終判決判例時報 1734号71-82頁概要息切れを主訴としてがん専門病院を受診し、肺がんと診断された66歳男性。精査の結果、右上葉原発の腺がんで、右胸水貯留、肺内多発転移があり、胸腔ドレナージ、胸膜癒着術を行ったのち、シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用化学療法が予定された。もともと軽度腎機能障害がみられていたが、初回シスプラチン、塩酸イリノテカン2剤投与後徐々に腎機能障害が悪化した。予定通り初回投与から1週間後に塩酸イリノテカンの単独投与が行われたが、その直後から腎機能の悪化が加速し、重度の骨髄抑制作用、敗血症へといたり、化学療法開始後2週間で死亡した。詳細な経過患者情報12年前から肥大型心筋症、痛風と診断され通院治療を行っていた66歳男性経過1994年3月中旬息切れが出現。3月28日胸部X線写真で胸水を確認。細胞診でclass V。4月11日精査治療目的で県立ガンセンターへ紹介。外来で諸検査を施行し、右上葉原発の肺がんで、右下肺野に肺内多発転移があり、がん性胸膜炎を合併していると診断。5月11日入院し胸腔ドレナージ施行、胸水1,500mL排出。胸膜癒着の目的で、溶連菌抽出物(商品名:ピシバニール)およびシスプラチン(同:アイエーコール)50mgを胸腔内に注入。5月17日胸腔ドレナージ抜去。胸部CTで胸膜の癒着を確認したうえで、化学療法を施行することについて説明。シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用療法を予定した(シスプラチン80mg/m2、塩酸イリノテカン60mg/m2を第1日、その後塩酸イリノテカン60mg/m2を第8日、第15日単独投与を1クールとして、2クール以上くり返す「パイロット併用臨床試験」に準じたレジメン)。医師:抗がん剤は2種類で行い、その内の一つは新薬として承認されたばかりでようやく使えるようになったものです。副作用として、吐き気、嘔吐、食欲低下、便秘、下痢などが生じる可能性があります。そのため制吐薬を投与して嘔吐を予防し、腎機能障害を予防するため点滴量を多くして尿量を多くする必要があります。白血球減少などの骨髄障害を生じる可能性があり、その場合には白血球増殖因子を投与します患者:新薬を使うといわれたが、具体的な薬品名、吐き気以外の副作用の内容、副作用により死亡する可能性などは一切聞いていない5月23日BUN 26.9、Cre 1.31、Ccr 40.63mL/min。5月25日シスプラチン80mg/m2、塩酸イリノテカン60mg/m2投与。5月27日BUN 42.2、Cre 1.98、WBC 9,100、シスプラチンによる腎機能障害と判断し、輸液と利尿薬を継続。6月1日BUN 74.1、Cre 2.68、WBC 7,900。主治医は不在であったが予定通り塩酸イリノテカン60mg/m2投与。医師:パイロット併用臨床試験に準じたレジメンでは、スキップ基準(塩酸イリノテカンを投与しない基準)として、「WBC 3,000未満、血小板10万未満、下痢」とあり、腎機能障害は含まれていなかったので、予定通り塩酸イリノテカンを投与した。/li>患者:上腹部不快感、嘔吐、吃逆、朝食も昼食もとれず、笑顔はみせるも活気のない状態なのに抗がん剤をうたれた。しかもこの日、主治医は学会に出席するため出張中であり、部下の医師に申し送りもなかった。6月3日BUN 67.5、Cre 2.55、WBC 7,500、吐き気、泥状便、食欲不振、血尿、胃痛が持続。6月6日BUN 96.3、Cre 4.04、WBC 6,000、意識レベルの低下および血圧低下がみられ、昇圧剤、白血球増殖因子、抗菌薬などを投与したが、敗血症となり病態は進行性に悪化。6月8日懸命の蘇生措置にもかかわらず死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用投与当時は副作用について十分な知識がなく、しかも抗がん剤使用前から腎機能障害がみられていたので、腎毒性をもつシスプラチンとの併用療法はするべきではなかった2.塩酸イリノテカンの再投与塩酸イリノテカン再投与前は、食欲がなく吐き気が続き、しかも腎機能が著しく低下していたので、漫然と再投与を行ったのは過失である。しかも、学会に出席していて患者の顔もみずに再投与したのは、危険な薬剤の無診察投与である2.インフォームドコンセント塩酸イリノテカン投与に際し、単に「新しい薬がでたから」と述べただけで、具体的な薬の名前、併用する薬剤、副作用、死亡する可能性などについては一切説明なく不十分であった。仮にカルテに記載されたような説明がなされたとしても、カルテには承諾を得た旨の記載はない病院側(被告)の主張1.シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用投与シスプラチン、塩酸イリノテカンはともに厚生大臣(当時)から認可された薬剤であり、両者の併用療法は各臨床試験を経て有用性が確認されたものである。抗がん剤開始時点において、腎機能は1/3程度に低下していたが、これは予備能力の低下に過ぎず、併用投与の禁忌患者とされる「重篤な腎障害」とはいえない2.塩酸イリノテカンの再投与塩酸イリノテカン研究会の臨床試験実施計画書によれば、2回目投与予定日に「投与しない基準」として白血球数の低下、血小板数の低下、下痢などが記載されているが、本件はいずれにも該当しないので、腎機能との関係で再投与を中止すべき根拠はない。なお当日は学会に出席していたが、同僚の呼吸器内科医師に十分な引き継ぎをしている2.インフォームドコンセント医師は患者や家族に対して、詳しい説明を行っても、特段の事情がない限りその要旨だけをカルテに記載し、また、患者から承諾を得てもその旨を記載しないのが普通である裁判所の判断1. 腎機能悪化の予見可能性抗がん剤投与前から腎機能障害が、シスプラチンの腎毒性によって悪化し、その状態で塩酸イリノテカンの腎毒性によりさらに腎機能が悪化し、骨髄抑制作用が強く出現して死亡した。もし塩酸イリノテカンを再投与していなければ、3ヵ月程度の余命が期待できた。2. 塩酸イリノテカンの再投与塩酸イリノテカン再投与時、腎機能は併用療法によって確実に悪化していたため、慎重に投与するかあるいは腎機能が回復するまで投与を控えるべきであったのに、引き継ぎの医師に対して細かな指示を出すことなく、主治医は学会に出席した。これに対し被告はスキップ基準に該当しないことを理由に再投与は過失ではないと主張するが、そもそもスキップ基準は腎機能が正常な患者に対して行われる併用療法に適用されるため、投与直前の患者の各種検査結果、全身状態、さらには患者の希望などにより、柔軟にあるいは厳格に解釈する必要があり、スキップ基準を絶対視するのは誤りである。3. インフォームドコンセント被告は抗がん剤の副作用について説明したというが、診療録には副作用について説明した旨の記載はないこと、副作用の説明は聞いていないという遺族の供述は一致していることから、診療録には説明した内容のすべてを記載する訳ではないことを考慮しても、被告の供述は信用できない。原告側合計2,845万円の請求に対し、536万円の判決考察本件のような医事紛争をみるにつけ、医師と患者側の認識には往々にしてきわめて大きなギャップがあるという問題点を、あらためて考えざるを得ません。まず医師の立場から。今回の担当医師は、とてもまじめな印象を受ける呼吸器内科専門医です。本件のような手術適応のない肺がん、それも余命数ヵ月の患者に対し、少しでも生存期間を延ばすことを目的として、平成6年当時認可が下りてまもない塩酸イリノテカンとシスプラチンの併用療法を考えました。この塩酸イリノテカンは、非小細胞肺がんに効果があり、本件のような腺がん非切除例に対する単独投与(第II相臨床試験;初回治療例)の奏効率は29.8%、パイロット併用試験における奏効率は52.9%と報告されています。そこで医師としての良心から、腫瘍縮小効果をねらって標準的なプロトコールに準拠した化学療法を開始しました。そして、化学療法施行前から、BUN 26.9、Cre 1.31、クレアチニンクリアランスが40.63mL/minと低下していたため、シスプラチンの腎毒性を考えた慎重な対応を行っています。1回目シスプラチンおよび塩酸イリノテカン静注後、徐々に腎機能が悪化したため、投与後しばらくは多めの輸液と利尿薬を継続しました。その後腎機能はBUN 74.1、Cre 2.68となりましたが、初回投与から1週間後の2回目投与ではシスプラチンは予定に入らず塩酸イリノテカンの単独投与でしたので、その当時シスプラチン程には腎毒性が問題視されていなかった塩酸イリノテカンを投与することに踏み切りました。もちろん、それまでに行われていたパイロット併用試験におけるスキップ基準には、白血球減少や血小板減少がみられた時は化学療法を中止しても、腎障害があることによって化学療法を中止するような取り決めはありませんでした。したがって、BUN 74.1、Cre 2.68という腎機能障害をどの程度深刻に受け止めるかは意見が分かれると思いますが、臨床医学的にみた場合には明らかな不注意、怠慢などの問題を指摘することはできないと思います。一方患者側の立場では、「余命幾ばくもない肺がんと診断されてしまった。担当医師からは新しい抗がん剤を注射するとはいわれたが、まさか2週間で死亡するなんて夢にも思わなかったし、副作用の話なんてこれっぽっちも聞いていない」ということでしょう。なぜこれほどまでに医師と患者側の考え方にギャップができてしまったのでしょうか。さらに、死亡後の対応に不信感を抱いた遺族は裁判にまで踏み切ったのですから、とても残念でなりません。ただ今回の背景には、紛争原因の一つとして、医師から患者側への「一方通行のインフォームドコンセント」が潜在していたように思います。担当医師はことあるごとに患者側に説明を行って、予後の大変厳しい肺がんではあるけれども、できる限りのことはしましょう、という良心に基づいた医療を行ったのは間違いないと思います。そのうえで、きちんと患者に説明したことの「要旨」をカルテに記載しましたので、「どうして間違いを起こしていないのに訴えられるのか」とお考えのことと思います。ところが、説明したはずの肝心な部分が患者側には適切に伝わらなかった、ということが大きな問題であると思います(なお通常の薬剤を基準通り使用したにもかかわらず死亡もしくは後遺障害が残存した時は、医薬品副作用被害救済制度を利用できますが、今回のような抗がん剤には適用されない取り決めになっています)。もう一つ重要なのは、判決文に「患者の希望を取り入れたか」ということが記載されている点です。本件では抗がん剤の選択にあたって、「新しい薬がでたから」ということで化学療法が始まりました。おそらく、主治医はシスプラチンと塩酸イリノテカンの併用療法がこの時点で考え得る最良の選択と信じたために、あえて別の方法を提示したり、個々の医療行為について患者側の希望を聞くといった姿勢をみせなかったと思います。このような考え方は、パターナリズム(父権主義:お任せ医療)にも通じると思いますが、近年の医事紛争の場ではなかなか受け入れがたい考え方になりつつあります。がんの告知、あるいは治療についてのインフォームドコンセントでは、限られた時間内に多くのことを説明しなければならないため、どうしても患者にとって難解な用語、統計的な数字などを用いがちだと思います。そして、患者の方からは、多忙そうな医師に質問すると迷惑になるのではないか、威圧的な雰囲気では言葉を差し挟むことすらできない、などといった理由で、ミスコミュニケーションに発展するという声をよく聞きます。中には、「あの先生はとても真剣な眼をして一生懸命話してくれた。そこまでしてくれたのだからあの先生にすべてを託そう」ですとか、「いろいろ難しい話があったけれども、最後に「私に任せてください」と自信を持っていってくれたので安心した」というやりとりもありますが、これほど医療事故が問題視されている状況では、一歩間違えると不毛な医事紛争へと発展します。こうした行き違いは、われわれすべての医師にとって遭遇する可能性のあるリスクといえます。結局は「言った言わないの争い」になってしまいますが、やはり患者側が理解できる説明を行うとともに、実際に患者側が理解しているのか確かめるのが重要ではないでしょうか。そして、カルテを記載する時には、いつも最悪のことを想定した症状説明を行っていること(本件では抗がん剤の副作用によって死亡する可能性もあること)がわかるようにしておかないと、本件のような医事紛争を回避するのはとても難しくなると思います。癌・腫瘍

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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例解説

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症腰椎圧迫骨折の急性期に、NSAIDs抵抗性の侵害受容性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を段階的に導入して十分な鎮痛効果が得られ、痛みの緩和だけでなくADLの改善が達成された症例である。高齢者の腰椎圧迫骨折後の5年生存率は30%との報告(Lau E, et al. J Bone Joint Surg Am. 2008; 90: 1479-1486)もあり、腰椎圧迫骨折による疼痛(とくに体動時痛)→安静臥床の遷延→廃用症候群→寝たきり→誤嚥性肺炎→生命危機という経過が考えられる。オピオイド鎮痛薬は最も強力な鎮痛薬であることから、痛みの程度に応じて使用しADLを改善することはきわめて重要な意義を持つ。さらに、オピオイド鎮痛薬の導入にあたっては嘔気や便秘といった副作用対策も予防的に行われており、患者のオピオイド鎮痛薬に対する忍容性も達成されていた。本症例のように腰椎圧迫骨折後に痛みが遷延することは決して珍しくはない。しかしながら、このような遷延する痛みが骨折に伴う侵害受容性疼痛だといえるだろうか。言い換えると、「遷延する痛みが器質的な原因の結果として妥当であるか否か」ということだが、これは必ずしも明確に妥当であるとは言えないことが多い。確かに、本症例では、通常組織傷害が治癒すると考えられる3ヵ月を経過しても、体動とは無関係な持続痛が徐々に増悪・拡大しており、当初の腰椎圧迫骨折だけが痛みの原因とは考えにくい。したがって、われわれは非特異的腰痛症と診断した。このような症例に対して、オピオイド鎮痛薬の効果が明確では無いにもかかわらず、オピオイド鎮痛薬をやみくもに漸増し、さらに頓用薬を併用していたことは不適切であるといわざるを得ない。オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、1. Analgesia (オピオイド鎮痛薬を適切に使用し痛みを緩和させること)、2. Activities of daily living(オピオイド鎮痛薬の使用はADLを改善するためであることを医師が理解し患者に教育すること)、3. Adverse effects(オピオイド鎮痛薬による副作用対策を十分に実施すること)、4. Aberrant drug taking behavior(精神依存や濫用を含む不適切な使用を常に評価し、患者教育を行うこと)の頭文字をとって4Asという注意事項が知られている。本症例は急性期のAnalgesiaとAdverse effectsへの対処は適切であったと考えられるが、腰椎圧迫骨折から3ヵ月が経過した慢性期での対応については検討の余地がある。日本ペインクリニック学会が発行した「非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン」では、オピオイド鎮痛薬の使用目的として、痛みを単に緩和するだけでなくADLを改善するために使用することを推奨している。したがって、組織修復(骨癒合)がある程度進んだであろう時期には、痛みが残存している状況でもオピオイド鎮痛薬を増加させずに運動療法の導入やADL改善の意義について教育すべきであったと考えられる。このことは、慢性腰痛に対して長期安静がred flagとして認識されていることと同義である。よって本症例で慢性期に痛みが残存しておりオピオイド鎮痛薬を増量しても痛みが緩和しないことから、医師が安静を指示していたことは適切であるとは言い難い。また、器質的障害による疼痛(侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛)に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合には精神依存や濫用を引き起こしにくいことが基礎研究によって示されているが、この知見は言い換えるとオピオイド鎮痛薬を非器質的な疼痛に対して使用する場合には精神依存を防止し難いことを意味する。また、オピオイド鎮痛薬の血中濃度が乱高下すると精神依存を形成しやすい。したがって、日本ペインクリニック学会の指針でも、オピオイド鎮痛薬は器質的障害が明確な疼痛疾患に対して使用し、その使用時にはオピオイド鎮痛薬の血中濃度を一定にするために徐放製剤(2013年3月現在、非がん性慢性疼痛に対して保険適応を持つ製剤は、デュロテップMTパッチ®、トラムセット®、ノルスパンテープ®である)を使用することが推奨されている。また、このようなオピオイド鎮痛薬を使用する場合にも、非がん性慢性疼痛に対しては一日量として経口モルヒネ製剤120mg換算までにとどめることも推奨されている。これは、鎮痛薬を増量することとQOLの改善効果が必ずしも線形相関にはならず天井効果が現れることがあり、高用量では精神依存や濫用への懸念があるからである。さらに、オピオイド鎮痛薬の使用期間が長くなればなるほど精神依存や濫用、不適切使用が増加することも報告されており、オピオイド鎮痛薬の使用期間は可能な限り短期間にとどめなければならない。このほか、患者自身が鎮痛薬を管理する能力が低下している場合には、家族など患者の介護者にオピオイド鎮痛薬についての知識を教育し、その管理に関与するように指導することも重要である。本症例をまとめると、急性期の腰椎圧迫骨折に対してオピオイド鎮痛薬を早期から導入し、疼痛緩和とADLの改善を達成したことは適切であった。慢性期の腰痛に対して、オピオイド鎮痛薬を増量するとともに頓用させていた点は不適切であった。したがって、オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、治療指針などの推奨事項を十分に理解したうえで適切に使用し、そのことを患者に教育しなければならない。つまり、オピオイド鎮痛薬に対する精神依存や濫用の形成から患者を保護することは医師の義務であると同時に、これらが疑われる患者やオピオイド鎮痛薬の不適切使用が認められる患者に対しては、痛みの重症度にかかわらずオピオイド鎮痛薬を処方しないことは医師の権利であると考えている。

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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例経過

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症自転車で転倒して腰部を打撲した直後から、腰部の持続痛と体動時の激痛を自覚し臥床して過ごしていた。近医整形外科を受診したところ腰椎レントゲン検査によって第4腰椎圧迫骨折と診断され、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を処方された。しかし疼痛、とくに体動時痛が非常に強いことから1%リン酸コデイン40mgを処方されたものの、疼痛に変化がなかった。そこで、転倒のエピソードから2週間目に塩酸モルヒネ散20mgを導入された。吐き気と便秘に対しては適切に制吐剤や緩下剤が使用されたため、オピオイド鎮痛薬による副作用はなかった。効果不十分のためモルヒネは30→50→60mgまで約2週間かけて漸増され、転倒から約1ヵ月後には持続痛と体動時痛のいずれも著明に改善し、日中も臥床して過ごしていた状態から体動時痛が増強しない程度に家事を行えるまでにADLは改善した。残存している痛みに対してモルヒネが漸増され、20~30mgずつ増量されると1~2週間程度は疼痛が緩和するが再び増悪することを繰り返すようになった。さらに、主治医から疼痛が増強しないように安静にするように指導されたことと、患者本人が体動時痛を過度に恐れることから、再び日中もほぼ臥床して過ごすようになりADLは低下していった。また、疼痛が増強した際の頓用薬には当初NSAIDsが処方されていたが、疼痛の増強の訴えに応じてモルヒネを頓用するように指導されていた。転倒から6ヵ月目にはモルヒネの服薬量は200mgになっていたが日中も臥床していることが多くなり家事のほとんどは夫が担当し、痛み以外に緩下剤に抵抗性の便秘や口渇、不眠も出現していた。モルヒネの頓用をしても鎮痛効果を実感していなかったが1日に数回はモルヒネの頓用を続けていた。転倒から約9ヵ月後、オピオイド鎮痛薬に抵抗性の難治性腰痛として当科を紹介され夫とともに受診した。当院受診時に下肢痛はなかったが、転倒当初の腰部に限局した疼痛ではなく腰背部全体の疼痛を訴え、痛みの増減は体動とは無関係であった。疼痛部位の感覚低下はなかった。また、両下肢の筋力低下は認められなかった。痛みの訴え以外には、不眠(入眠困難感と中途覚醒)を強く述べたが、夫から日中はしばしば傾眠傾向であることや夜間はいびきをかいて寝ていることが聴取された。患者本人は気分の落ち込みが強いが食欲はあり、夫が作った食事を食べておりADLの低下・不活動状態と相まって体重は増加していた。腰部MRIでは第4腰椎椎体に圧迫骨折所見があるが、新鮮な炎症所見や偽関節はなかった。現在の腰背部痛は、腰椎圧迫骨折に伴う侵害受容性疼痛ではなく、痛みの原因として妥当な器質的な障害を伴わない非特異的腰痛と診断した。オピオイド鎮痛薬の鎮痛効果を実感していないにもかかわらず、定期内服に加えて頓用を繰り返しており、オピオイド鎮痛薬の不適切使用(aberrant drug taking behavior)状態と評価した。モルヒネの頓用を禁止するとともに、1日量200mgから30mgずつ1週間毎に漸減し、夫にもモルヒネを中心とした鎮痛薬についての知識を教育しそれらの管理を患者と一緒に行うように指導した。加えて、痛みを理由とした行動制限を解除すること(具体的には、日中の臥床時間を減らすこと、積極的に家事に参加するようにすること)を指導し、ADLの改善とともに行動目標(散歩、ショッピング、家事全般)を段階的に増加させていった。当院初診から4ヵ月程度で腰痛は軽度残存しているが許容範囲内であり、不眠は解消した。モルヒネは漸減・中止でき、ADLおよびQOLは転倒前の状態に回復した。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(81)〕 パーキンソン病にはより積極的な運動療法介入を

パーキンソン病は運動障害のほかにも、うつや無為、不眠、便秘などの非運動症状など、多様な症状を示す神経変性疾患で、薬物治療によっても進行を食い止めることができないのが現状である。  最近、運動療法が身体機能、筋力、平衡機能、歩行のスピードなどを改善することが指摘されている。著者らはParkFit programを開発し、32の施設より586人の活発な運動がみられないHoehn-Yahr 分類3以下の患者を対象に、2年間の追跡研究を行った。ParkFit programとは、月ごとにコーチがより活発なライフスタイルを個別指導し外来でフィードバックを行うものである。586人のパーキンソン病患者を、ParkFit群と一般的な機能訓練を行う群に二分して追跡した。  1次エンドポイントは、LASA physical activity questionnaire (LAPAQ) である。LAPAQは、患者が屋外での歩行、サイクリング、ガーデニング、家事、スポーツなどの活動を、1週間に何時間行ったかを記録させ追跡期間中の平均をみるもので、高いスコアほど身体活動をよく行ったことになる。  2次エンドポイントは、6分間の歩行テストによる身体の健康状態、QOLに関する質問による回答、患者による記録と加速度計による身体活動の評価である。 結果は、1次エンドポイントについては、ParkFit群と一般的な機能訓練との間で差はなかった。しかし、2次エンドポイントについては、ParkFit群で身体の身体活動性と健康状態が有意に改善した。ただし、QOLに関しては差がなかった。  LAPAQは広汎な日常活動を評価できるスケールで、著者らは以前、パーキンソン病は健常者に比べLAPAQスコアが29%低下していることを示した。今回の結果が示すところは、パーキンソン病の活動性を改善させるには、ParkFit program以上に強力な介入が必要であるということである。しかし、ParkFitで身体活動性と健康状態が有意に改善した点は評価できる。

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痛みと大脳メカニズムをさぐる

神経障害性疼痛の大脳レベルのメカニズム神経障害性疼痛のメカニズムについては、末梢神経の一次ニューロンあるいは脊髄レベルでの研究が非常に進んだのですが、その一方で大脳レベルでのメカニズムも明らかにされてきています。脳の一次体性感覚野と一次運動野には、体部位再現地図(somatotopy)があり、身体各部位からの感覚入力や身体各部位への運動指令の出力を担う脳領域が決まっています。神経障害に伴って末梢神経からの入力がなくなると、その地図が描き換わることがわかっています。具体的には、腕を切断された後に起こる幻肢痛の患者さんの体部位再現地図を調べてみると、手の領域がなくなってしまい、その代わり手の領域の隣にある顔の領域が拡大しています。脊髄損傷の患者さんの場合では、足の領域や腰の領域がなくなる代わりに顔や手の領域が拡大しています。神経障害性疼痛を発生している患者さんは体部位再現地図の描き換えが明確に現れますが、神経障害があっても痛みのない方は描き換えが非常に少ないことがわかっており、体部位再現地図の描き換えが、痛みの発症に関わっていると考えられています。リハビリテーションなどにより神経の入力を増やす治療を行うと、体部位再現地図は再び描き直されて、それとともに痛みが軽減してくることもわかっています。体部位再現地図の描き換えは、末梢からの感覚入力がなくなった神経系のために脳の神経細胞のスペースを使うのは無駄である、その代わり感覚入力のある神経系に利用してもらおう、という生体の代償的な反応と考えられます。なぜ、脳の地図が描き換わると痛みが起こるのかは今のところわかっていません。描き換わるときに、エラーとして痛みの信号を発生してしまうのだと考えられます。 画像を拡大する新しいリハビリテーションの可能性神経リハビリテーションにはさまざまなものがありますが、従来から行われている理学療法や作業療法以外に、私たちの施設では鏡を使った治療を行っています。対象となるのは、脊髄損傷や腕の切断あるいは腕神経叢引き抜き損傷といった運動麻痺を伴う神経障害性疼痛の患者さんです。身体の中央に鏡を立て掛けて健常な手あるいは足を動かすと、あたかも鏡の中で患肢が動いているようなイメージを作ることができます。この鏡を使ったイメージトレーニングにより、脳内の地図が新たに描き換えられることが示されています。われわれはこの治療法で痛みや患肢の運動麻痺が軽減した患者さんをたくさん経験しています。画像を拡大するさらに、より有効な治療法として、リハビリテーション支援ロボットスーツを開発しています。健肢の運動を、人工筋肉によって麻痺している患肢に模倣させる装置です。鏡の治療では視覚的な入力だけですが、リハビリテーション支援ロボットスーツでは実際に患肢が運動をします。したがって、視覚的な情報だけではなくて、筋肉の伸び縮みや関節の屈伸といった体性感覚情報も脳にフィードバックされるので、より強力に運動のイメージを脳内につくることができると期待しています。これから患者さんの協力を得て、臨床応用を進めたいと計画しています。痛みの破局的思考痛みと一次体性感覚野、運動野の関連性は明らかになってきたものの、実際の患者さんでは心理的要因が強く影響します。痛みの事を何度も考えてしまう、痛みを必要以上に大きな存在と考えてしまう、自分が感じている痛みは救い(治療法)がないと考えてしまう、などの性格的な傾向を持つ方がいます。こういった考え方を痛みの破局的思考と呼んでいますが、このような患者さんでは、心の問題が痛みの認識を歪め、不眠や不安、痛みに対する恐怖、抑うつ症状を引き起こし、その結果、行動制限が生じ、ひいては身体機能障害をもたらすという悪循環が起こります。近年では、このような心の問題による痛み悪化のメカニズムに、脳の扁桃体、島皮質、前頭前野という理性・感情・気分を司る領域が関連しているという事も明らかになっています。画像を拡大する脊髄刺激療法の有用性最後に脊髄刺激療法のお話をさせていただきます。神経障害性疼痛で薬物療法抵抗性であったり、あるいは高齢の患者さん等で副作用が忍容できない症例では、脊髄刺激療法を施行します。脊椎硬膜外腔に電気のリードを入れて脊髄を刺激することによって、疼痛を感じている範囲に電気的な刺激を与えて痛みを緩和させる治療法です。鎮痛効果のメカニズムとしては、痛み情報を伝える神経伝達物質の分泌を抑える、抑制性の神経伝達物質の分泌を促進する、脊髄レベルで神経細胞の興奮を抑える、といった作用が報告されています。障害されている神経レベルよりも上位の脊髄領域を電気刺激することで鎮痛効果が得られる患者さんがたくさんいますので、大脳レベルでも効果を発揮しているのではないかとわれわれは考えています。まず電気リードだけを硬膜外腔に挿入して治療効果の確認をし、効果が得られれば皮下に電気の発生装置であるジェネレーターを植え込みます。患者さんは自宅でも痛みが強くなったときにスイッチを入れることで痛みを緩和できます。合併症は、非常にまれですが感染が起こる可能性があります。薬物療法と違って眠気や便秘などの副作用は起こりません。最近は治療機器が進歩して小型化され、10年くらい電池寿命があるジェネレーターも使用できるようになり、より有用性が高くなっています。このように、研究の進歩により痛みのメカニズムが解明されると共に日々新たな治療法が開発されています。

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神経障害性疼痛の実態をさぐる

神経障害性疼痛が見逃されているたとえば熱いものを触ったり、刃物で切れば痛みを感じる。そういう通常の痛みを「侵害受容性疼痛」といいます。末梢神経の終末にある侵害受容器が刺激されたときに感じる痛みです。侵害受容性疼痛の中には炎症に伴って起こる炎症性疼痛も含まれますが、これらを合わせて生体を守るための生理的な疼痛と呼んでいます。一方、「神経障害性疼痛」は、末梢神経から脊髄、さらに大脳に至るまでの神経系に何かの障害が起こったときに、エラーとして生じる痛みです。生体を守る意義はなく、病的な疼痛と考えられています。このように、神経障害性疼痛と炎症性疼痛は区別して考える事になっています。ただし、臨床的には炎症が遷延し持続的に痛みのシグナルが入力されるような状態では、神経系はエラーとしての過敏性を獲得するため、炎症性疼痛が続いた結果起こる痛みと神経障害性疼痛は明確に区別できないと考えられています。多くの神経障害性疼痛は痛みの重症度が高く、患者さんのQOLは著しく低下します。神経障害性疼痛は、まだまだ医療者に浸透していない痛みの概念です。神経障害性疼痛であることが疑われないで治療されているケースも多くみられ、神経障害性疼痛には特別なスクリーニングが必要だと考えます。神経障害性疼痛のスクリーニング痛みと一口にいっても、ナイフで刺された時の痛みと、炎や熱に手をかざした時の痛みは、おのずと性質が違ってきます。神経障害性疼痛の患者さんの多くは、「ヒリヒリと焼けるような痛み」「電気ショックのような痛み」「痺れたような痛み」「ピリピリする痛み」「針でチクチク刺されるような痛み」といった特徴的な性質の痛みを訴えます。一方、炎症性疼痛の患者さんでは、ズキズキする、ズキンズキンするといった、明らかに痛みの性質が異なった訴えをします。痛みの性質の違いは、痛みの発生メカニズムの違いを表していると考えられています。患者さんの自覚的な訴えから痛みの種類を鑑別するために、痛みの問診票が各国で開発されています。私たちはドイツでつくられた「PainDETECT」の日本語版を許可を得て開発し、その妥当性の検証試験を行っています。痛みの性質、重症度、場所、範囲、時間的変化を1つの質問用紙に記入する形のもので、臨床で使いやすい問診票になっています。侵害受容性疼痛なのか神経障害性疼痛なのか、あるいは両方が混合している疼痛なのかを分類することができます。画像を拡大する痛みの具体性を評価する痛みのスクリーニングにおいて、痛みの性質と共に痛みの具体性を評価することが重要です。たとえば捻挫をした患者さんにどこが痛いか聞くと、「足首のここが痛い、足首を伸ばすと痛い」と明確な答えが得られます。これは痛みの具体性が高いといえます。一方、器質的な異常を伴わない非特異的腰痛や、外傷後の頸部症候群(むち打ち症)では、「腰のあたりが全体的に痛い」とか、「何となく首の周りが痛い」といった部位を特定しにくい漠然とした痛みを訴えることがあります。そのような場合は痛みの具体性が低いと評価します。痛みの具体性が高いときには身体的な問題、器質的な異常があり、痛みの具体性が低い場合は器質的な異常がない(少ない)と判断し、心因性疼痛の要素の有無を考えます。器質的異常の有無は薬物療法の適応を考える際に重要なポイントになりますので、痛みの性質と共に具体性を聞くことは非常に有用です。神経障害性疼痛が合併しやすい疾患神経障害性疼痛が多く見られる疾患は、糖尿病性ニューロパチー、帯状疱疹後神経痛、脊柱管狭窄症です。たとえば帯状疱疹では、神経にウイルスが棲んでいて神経の炎症や障害が起きます。日本での大規模な調査研究で、これまで神経障害性疼痛ではないと考えられていた腰痛や膝関節症を含む多くの慢性疼痛患者さんの中にも、神経障害性疼痛が含まれていることがわかってきました。首から背中、腰の痛みを訴える患者さんの実に約8割が、神経障害性疼痛だろうと推察される報告もあります。手術後の痛みは意外に調べられていない領域です。傷が治れば痛くないと医療者が思っているので、患者さんが痛みを訴えにくい環境があるようです。開胸手術後は6~8割、乳腺の術後には5~6割、鼠径ヘルニアの術後では3~4割の患者さんが傷が治った後にも痛みを持っていることがわかっています。もちろん手術後に遷延する痛みの病態のすべてが神経障害性疼痛ではありません。術後遷延痛には、神経障害性疼痛とも炎症性疼痛ともいえない独特のメカニズムがありそうだ、ということが分子生物学的な病態研究によってわかってきています。薬物療法による神経障害性疼痛の治療神経障害性疼痛の治療は、侵害受容性疼痛とは治療戦略がまったく異なります。基本的に消炎鎮痛薬は効果がありません。神経障害性疼痛の第一選択薬はCa2+チャネルα2δリガンドであるプレガバリン(商品名:リリカ)と三環系抗うつ薬です。第二選択薬としては、抗うつ薬セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のうちの一つであるデュロキセチン(商品名:サインバルタ)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)、抗不整脈薬メキシレチン(商品名:メキシチールほか)です。第三選択薬は、麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)です。まず初めにプレガバリンか三環系抗うつ薬を用います。効果が不十分であれば、いずれかに切り替えるか併用する。プレガバリンは添付文書では、朝と夕方に内服することになっていますが、私たちは就寝前の服用を勧めています。神経障害性疼痛の患者さんは痛みが強く不眠を訴える方が多いのですが、プレガバリンによる眠気の作用を逆に利用した服用方法です。プレガバリンの眠気は鎮静によって生じるものではなく、生理的な睡眠作用であることがわかっています。そのためか、患者さんもぐっすり眠れたという満足感を持つことが多いようです。そして第一選択薬で効果が不十分な場合は、第二選択薬への切り替え、あるいは第二選択薬との併用を行います。ただし三環系抗うつ薬とデュロキセチンの併用では、副作用として興奮・せん妄等のセロトニン症候群を起こす危険性があるので、三環系抗うつ薬とデュロキセチンは基本的に併用はしません。第二選択薬が無効な場合は、第三選択薬として麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)を使います。非がん性の慢性疼痛に対して使えるオピオイド鎮痛薬は、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(商品名:トラムセット)とフェンタニル貼付剤(商品名:デュロテップMTパッチ)が主なものです。ブプレノルフィン貼付剤(商品名:ノルスパンテープ)は変形性関節症、腰痛症のみが保険適応となっています。オピオイドは最も高い鎮痛効果を期待できますが、長期間使った場合に便秘や吐き気、日中の眠気などの副作用が問題になります。オピオイド鎮痛薬に対して精神依存を起こす患者さんもまれにですがいます。そのため、第一選択薬、第二選択薬が無効な場合にのみ使うことが推奨されています。オピオイド鎮痛薬使用における注意点非がん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使い方は、がん性疼痛とは異なります。がん性疼痛の場合は、上限を設けずに患者さんごとに投与量を設定し、痛みが続いている間は使い続けます。痛みが発作的に強まったときには頓用薬も用います。一方、非がん性の疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合は、経口のモルヒネ製剤換算で120mgを上限に設定することが推奨されています。オピオイド鎮痛薬の使用期間は極力最少期間にとどめ、痛みが強くなったときの頓用は推奨されていません。これらのオピオイド鎮痛薬の使用に制限を設けている理由は、すべて精神依存の発症リスクを抑えるためです。がん性疼痛と非がん性疼痛では、オピオイド鎮痛薬の使い方の原則が違うことをご理解いただきたいと思います。オピオイド鎮痛薬の精神依存は、器質的な痛みの患者さんでは基本的に発症しないことがわかっています。器質的ではない疼痛、すなわち痛みの具体性の低い患者さんでは精神依存を起こす可能性が高まるので、オピオイド鎮痛薬を積極的に使用すべきではないと考えています。うつ病や不安障害といった精神障害を合併している患者さんも、オピオイド鎮痛薬による精神依存を発症しやすいことがわかっています。最も強い鎮痛効果を求めるときは、われわれはオピオイド鎮痛薬とプレガバリンを併用しています。プレガバリンには抗不安作用があり、それがオピオイド鎮痛薬による吐き気の発生に対する予期不安を抑制し、制吐効果が期待できます。オピオイド鎮痛薬と三環系抗うつ薬の併用も強い鎮痛効果が期待できますが、吐き気、眠気、抗コリン作用による口渇などを相乗的に増強してしまうため推奨していません。

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術後のAcute Pain Serviceを利用できない患者には経口オピオイド療法を

 術後痛など急性痛に対応するAcute Pain Service(APS)を受けない、すなわち局所麻酔法や患者自己管理鎮痛法を受けることができない患者は、激しい術後疼痛に苦しむ。こうした患者に対しては経口オピオイド療法が有効であり、治療アルゴリズムは外科病棟で実行可能であることがドイツ・ミュンスター大学病院のE.M. Pogatzki-Zahn氏らによる前向き観察研究で示された。Der Schmerz誌オンライン版2013年1月17日号の掲載報告。 耳鼻咽喉科、外傷外科および一般外科で手術を受ける患者を対象に、徐放性(CR)オキシコドン、速放性(IR)ヒドロモルフォンを含む経口オピオイド、および非オピオイド性鎮痛薬からなる経口療法を実施した。 手術当日術前および手術後12時間毎に最高4日間、CRオキシコドンを投与した。疼痛スケール(0~10)が安静時3または体動時5を上回り患者の希望があった場合、IRヒドロモルフォンで治療した。 手術当日および手術後4日間の計5日間アンケートを用いて評価した。また、同様の調査を手術後6ヵ月および12ヵ月に行った。 主な結果は以下のとおり。・計275例が登録された(耳鼻咽喉科163例、外傷外科82例、一般外科30例)。・疼痛スケール中央値は、安静時3以下および体動時5以下であった。・外傷外科手術を受けた患者は、耳鼻咽喉科手術および一般外科手術を受けた患者と比較してより多くのCRオキシコドンを必要とした(p<0.001)。・一般外科および外傷外科手術を受けた患者は、耳鼻咽喉科手術を受けた患者より便秘の頻度が高かった。・嘔吐は手術の種類に関係なく、手術当日20~30%からその後は10%以下まで減少した。・重篤な有害事象は観察されなかった。・手術前のうつ病スコアが高かった患者はそうでない患者に比べ、手術直後により大きな痛みを報告した。・手術後6ヵ月および12ヵ月に持続性の術後痛を訴えた患者は、それぞれ11例(15.7%)および7例(14.9%)であった。これらの患者は、手術後1日目の急性痛が大きかった。

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ワクワク ! 臨床英会話

1.受付対応2.初めての問診 3.家族の病気 4.生活習慣  5.出産歴 6.女性特有の問題 7.アレルギー 8.薬 9.予防接種 10.風邪  11.頭痛12.呼吸困難13.腹痛  14.糖尿病 15.便秘 16.腰痛  17.関節痛 18.骨折 もしも英語しか話せない患者さんが来院したらドキドキしませんか?この教材は、ドキドキを“ワクワク”に変えてもらおうと企画されました。特に外来で使える英語を重視して、ネイティブが自然に理解出来る表現を多数紹介しています。そして、プログラムの一番の特長はパペットたちと一緒に「練習」するコーナー。楽しみながら、何度も練習できるので、いつの間にか自然な表現が身についてしまいます。もちろん、伊藤彰洋先生の「日本人が間違えやすい医学英語」のワンポイント解説も見逃せません。すぐに使える臨床英会話を楽しくマスターしましょう !収録タイトル1. 受付対応 Reception ~笑顔が大切、受付対応~2. 初めての問診 History Taking ~初めての問診~3. 家族の病気 Family History ~ご家族の病気も教えてください~4. 生活習慣 Social History ~もっと知りたいあなたの生活習慣~5. 出産歴 OB History ~出産経験はありますか?~6. 女性特有の問題 GYN History ~女性の悩み、知っていますか?~7. アレルギー Allergies ~アレルギーはありますか?~8. 薬 Medication ~どんなお薬を使ってますか?~9. 予防接種 Immunization ~予防接種は受けましたか?~10 .風邪 Cold ~よくある風邪だと思うんですが・・・~11. 頭痛 Headache ~頭痛って、意外と心配です~12. 呼吸困難 Difficulty Breathing ~息が苦しくて、苦しくて~13. 腹痛 Abdominal Pain ~お腹が痛いんです~14. 糖尿病 Diabetes Mellitus ~糖尿病が気になるこの頃~15. 便秘 Constipation ~便秘の予防にイイことは?~16. 腰痛 Back Pain ~腰が痛くて、痛くて~17. 関節痛 Joint Pain ~関節痛で仕事もできず…~18. 骨折 Fracture ~骨が折れた!~

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明解!Dr.浅岡の楽しく漢方

乾燥肌には辛い季節そろそろ更年期かしら・・・鼻水が止まらない 乾燥肌には辛い季節「便秘が解消したらニキビも良くなった」「せっかく調子の良かったアトピー性皮膚炎が、不規則な生活で悪化してしまった」などは、よくあること。肌は内臓の鏡といわれるように、からだ全体の不調や気候が原因で皮膚症状が悪化する患者さんは多いものです。皮膚症状はとても治療の難しい分野であり、漢方の処方においても様々な処方が用意されています。木枯らしが吹いて空気が乾燥する季節。冬になって増えるのは皮膚の乾燥によるトラブル。お年寄りの掻痒症やアトピー性皮膚炎の悩みを、漢方ではどのように解決するのでしょう?そろそろ更年期かしら・・・のぼせ、イライラ、鬱傾向、月経不順、めまい…。中年女性にとってとても辛い更年期障害は、西洋医学的には「ホルモンの異常」としてとらえられています。「不定愁訴」といわれるこれらの症状はその名のとおり発現や症状が不定であり、治療がなかなか難しいところではないでしょうか。しかしこれまで学習してきた「東洋医学のものさし」、具体的には「気逆」「気鬱」などの「気」の異常、或いは「血」の異常、「水」の異常、といった「気・血・水」の概念を使って分析してみると、これらの症状はとてもわかりやすいのです。診断がつけば各々の症状に効く生薬から処方を選択することができます。鼻水が止まらない春の国民病とも言われるアレルギー性鼻炎、花粉症。漢方では小青竜湯がとても有名です。もしかすると「小青竜湯は花粉症の薬」と思われている先生方も多いかもしれません。ところが、それは間違いです。漢方は疾患名に対して薬を選択するのではなく「患者さんの状態」と「構成生薬の作用」で処方を選択することはこれまでの回でも出てきました。それでは、小青竜湯が効かない患者さんに対して一体どうすれば良い?ということになってしまいます。“この薬が花粉症にも用いられるの!?”と感じる意外で、目からウロコが落ちるような処方があるかもしれません。

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明解!Dr.浅岡の楽しく漢方

冷え症や生理痛に悩んでいるの東洋医学の概念「気・血・水」。今回はこの中の「血」にスポットをあてます。「血」の異常、東洋医学では『お血』と『血虚』の2種に大別されます。お血とは血の巡りが悪くて、その結果様々な症状を引き起こすこと。血虚とは貧血、ではなくて血によって運ばれる栄養分が体のすみずみにまで配られないことによって現れる症状のこと。女性にとってとても辛い冷え症や生理痛・・・この症状でお悩みの方は少なくないはず。東洋医学では、こんな症状の治療にこの「血」の概念をあてはめて考えます。お腹が痛い ―お腹と心の深い関係―今回のテーマは腹部疾患。なかでも西洋医学的には解決が難しい『過敏性腸症候群』を中心に解説します。「断腸の思い」「ガッツ(腸)がある奴」の例えの通り、古来よりお腹と精神との関りは明白。ということは「お腹の調子が悪い=気持ちに問題がある」と考えられませんか?こんな時、漢方治療はとても効果的。下痢に下痢止め、便秘に下剤、ではなくて東洋医学的に患者さんの「状態」を踏まえて診断します。お腹が痛い患者さんに対し、気持ちや心の問題をよく考えることはとても大事なこと。“気”の概念を中心に、考えてみましょう。足腰に力が入らない東洋医学の概念の中で「五臓」という言葉があったのを覚えていますか?「心・肺・肝・脾・腎」でもこれは解剖学的な臓器のことではありませんでしたね。今回はその中から「腎」に効く処方をご紹介。腎臓疾患ではありませんのでお間違いなく!では一体何か? → 「腎」とは、生物が生まれつき持っている精気、つまりenergyのこと。「腎」の力が失われると、足腰に力が入らなくなったり、夜中におしっこが近くなったりする。こんな患者さんに優れた効果を発揮する漢方処方をお教えします。

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