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エキスパートに聞く!「糖尿病」Q&A

CareNet.comでは11月の糖尿病特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より糖尿病診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、糖尿病の専門医である3人の先生にご回答いただきました。本宮哲也(もとみや・てつや)氏(もとみや内科クリニック 院長)http://www.motomiya-clinic.jp/専門医が行っている、DPP-4阻害薬と他剤との併用例を教えてください。また、DPP-4阻害薬間での効果の差異や使い分けの基準などがあれば同じくお願いします。1)シタグリプチンは、SU薬、BG薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、インスリン注射、2)アログリプチンとアナグリプチンは SU薬、BG薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、3)ビルダグリプチンおよびリナグリプチンはSU薬、4)テネリグリプチンはSU薬とチアゾリジン薬との併用が可能で症例に応じて薬剤を選択します(2012年11月時点での適応に基づく)。また、Aroda氏ら1)が行った効果の差異検討では、DDP-4阻害薬の最大維持用量の投与によるHbA1c改善率は、ビルダグリプチン -1.06%、アログリプチン -0.69%、シタグリプチン -0.67% という結果でしたが、分析内容が不十分とされ、再検討待ちです。使い分けについては、シタグリプチンは現時点では腎不全には使用できず、アログリプチンは腎不全の程度に応じて用量の調節が必要です。アナグリプチン、ビルダグリプチン、リナグリプチン、テネリグリプチンは腎不全には慎重投与ですが、用量の制限はありません。1)Aroda.VR et al:Clin Ther.2012;34:1247-1258膵臓疾患のある方へのDPP-4阻害薬の投与時の注意点について、教えてください。膵疾患のある方へのDDP-4阻害薬の投与は、急性膵炎と慢性膵炎を区別して考える必要があります。FDA(アメリカ食品医薬品局)は、2006年10月16日から2009年2月9日におけるDDP-4阻害薬の市販後調査で88例(出血性や壊死性の膵炎2例を含む)に急性膵炎が発症した報告を受け、急性膵炎への投与は禁忌とし、使用中に膵炎の発現が疑われた場合は使用を中止するよう推奨しています。しかし、膵炎の既往がある患者さんへのDDP-4阻害薬の使用については、検討や研究はされていないとしています(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部発行 医薬品安全性情報Vol.7 No.23)。また、飲酒家で慢性膵炎で血糖が上昇してきた患者さんへDDP-4阻害薬を使用した場合に、慢性膵炎が悪化したデータや報告は、今のところないようですが、このような患者さんへの投与は慎重に行い、どうしても投与しなければならない時には、膵炎に関する適切なモニタリングが必要と考えます。経口薬治療はどこまで続けるべきなのでしょうか?また、最大何剤まで増やして治療された経験がありますか?第1に、2型糖尿病では腎症の程度により禁忌となる経口糖尿病薬があり、基本的に透析患者、ならびにCcr30mL/分 以下では一部のDDP-4 阻害薬やα-グルコシダーゼ阻害薬を除き、経口糖尿病薬は原則禁忌となります。第2に、複数の経口糖尿病薬を併用しても血糖コントロールが改善せず、内因性インスリン分泌の低下が著明になった場合には、インスリン注射療法へ変更することになります。2012年の ADA/EASD が発表した推奨される2型糖尿病の血糖降下療法によればメトホルミンで治療を開始し、血糖コントロールの改善度、副作用、体重などを3ヵ月毎に慎重に観察しながら、2剤、3剤と経口糖尿病薬を併用し、目標が達成できない場合にインスリン注射療法の導入を勧めています。私は、DDP-4阻害薬をベースに少量のSU薬やメトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬の追加で3剤まで増やしても良好な血糖コントロールにならない場合、インスリン自己注射が可能で、承諾の得られた患者さんにはインスリン療法を導入しております。梅澤慎一(うめざわ・しんいち)氏(医療法人 うめざわクリニック 院長)http://www5d.biglobe.ne.jp/~umecli/index.htmHbA1c7%前後の軽症例への第1選択薬は、どのような選択肢が考えられるでしょうか?HbA1c7%(NGSP値)前後の軽症例の第1選択薬とは、HbA1c値を0.5%程度(良の中央値)下げられる、できるだけ安価で副作用の少ない薬剤を意味するものと解釈します。したがって注射製剤は今回除くこととします。インタビューフォームに記載されていたほとんどの経口血糖降下薬のHbA1c低下効果は、その治験対象の治療前HbA1c値が高いため(8.0% 前後)、軽症例に投与しても添付文書のようには低下しません。万人に単剤でしっかり0.5%下げられる能力が期待できると私が考える薬は、速効型インスリン分泌促進薬のレパグリニド〔商品名:シュアポスト〕(1.5mg/日)、DPP-4阻害薬のビルダグリプチン〔商品名:エクア〕(100mg/日)、テネリグリプチン〔商品名:テネリア〕(20mg/日)、シタグリプチン〔商品名:グラクティブ〕(100mg/日)、〔商品名:ジャヌビア〕(100mg/日)、 アログリプチン〔商品名:ネシーナ〕(25mg/日)、リナグリプチン〔商品名:トラゼンタ〕(5mg/日)、SU薬のグリメピリド〔商品名:アマリール〕(0.5~1.0mg/日)などが該当します。いずれも初回の規定投与量を遵守し、忍容性を見極めての増量が基本です。臓器合併症がない人に限っては、ピオグリタゾンとメトホルミンなどのBG薬が期待できますが、どちらも効果は個人差が強いといえます。病識のない患者さんへの教育・指導のコツやポイントを教えてください。最も重症な病識欠如は通院中断者であることは間違いないでしょう。定期的に中断者リストを作成して、再診を促すハガキを出すことができれば理想的です。診療所など地域に根差した施設では、家族の受診の付き添いで来院する際や風邪などで再初診する機会にさりげなく「最近、糖尿病の方はどうかな?」と声掛けをすることで通院再開に成功するケースもあると思います。内服・注射アドヒアランスの低下などは処方薬の選択、投与法の工夫など医師の役割部分が大きく、認知症などによる飲み忘れ対策では家族の教育(看護師)、一包化調剤の利用(薬剤師)などの多職種との連携が必要になるでしょう。食事運動療法、節酒・禁煙ができないなどの病識の欠如は、個人的な事情もあるので、万人に有効な処方箋はありません。私は“その人が今できることを探して、具体的な方法を提示し、できたら少しでも賛美し、結果にむすびついたら一緒に喜ぶ”、“合併症がでたら大変という脅しはしない”の2項目を念頭に、辛抱強く向かい合うようにしております。BOT導入に際し、スタッフへの教育をどう進めるべきか教えてください。まずはBOTの概念をスタッフに理解してもらうことが大事です。BOTで使用するインスリングラルギン(商品名:ランタス)やインスリンデテミル(商品名:レベミル)などの持効型インスリンの本来の使用目的は、インスリン強化療法の基礎分泌(basal)部分を担うことにありました。そのため持効型インスリンは、速効または超速効型インスリン食前3回投与と組み合わせた使用が一般的です。その後、経口血糖降下剤で効果不十分な2型糖尿病に少量の持効型インスリンを追加する(basal + oral therapy)ことにより、内因性インスリン分泌が回復し、血糖コントロールが改善する事例報告が多く認められ、新たな治療法の概念となっていったものです。 BOTはすでに今行われている治療法を変更しないで、1日1回のインスリン注射を加えることで実行できるため、患者も医療者側も治療法の変更という大きな心理的不安を緩和することができるのです。注射時刻は各薬剤の添付文書に基づきますが、毎日一定の時間に投与すればよく、SU薬を併用しているケースでは1回抜けたくらいで急性代謝失調に陥ることはないという安心感が維持できます。田中啓司(たなか・けいじ)氏(田中内科クリニック)http://www.tanakanaika-clinic.com/BG薬はどのような患者に使うべきでしょうか?また、副作用のマネジメント(乳酸アシドーシスへの対応等)についても教えてください。BG薬は、肝臓で乳酸からの糖新生の抑制、脂肪や筋肉への糖の吸収促進、腸管での糖の吸収抑制、食欲低下作用などが報告されています。適応患者としては、肥満の2型糖尿病で、ある程度コントロールのよい例をよりよくする目的のほか、SU薬やインスリンを多量に使ってもコントロール不良例での改善、さらにそれら薬剤を減量させる目的などで投与することが多いです。乳酸アシドーシスの重大な副作用症状は、「意識障害、嘔吐、倦怠感、過呼吸、腹痛など」です。日本糖尿病学会の「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」は、乳酸アシドーシスに至った例は、各剤の添付文書において禁忌や慎重投与となっている事項に違反した例がほとんどであると報告しています。「腎機能障害患者(透析患者を含む)、過度のアルコール摂取、シックデイ、脱水などの例、心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者、高齢者」とのことです。乳酸アシドーシスへの対応というよりは、投与してよい例か否かを慎重に検討して、乳酸アシドーシスを起こさないことが重要と考えられます。75歳以上の高齢者のHbA1c管理目標値は、他の年代の方と同様でよいでしょうか?また、食事指導は実施すべきでしょうか?日本糖尿病学会では、高齢者の血糖管理目標値を空腹時血糖140mg/dL、HbA1c 7.4%以下(NGSP値)としています。しかし一方で、患者の状態を詳細に把握して個別的な対応を行うことも重要と呼びかけています。高齢者糖尿病は多様性があることを理解して、高齢者でも、非常に元気な例もあれば、予後の限られた例もある。もちろん肥満例では足腰に負担がかかり、ADL低下に至る可能性もあるので食事療法は必要です。しかし、食が細くなっている高齢者もいますので、本人や家族からの聴き取り調査が必要です。また、高齢者糖尿病例は代謝の低下に伴い、突然低血糖になる例もあります。一方で、風邪をひいて急に高血糖になる例もあります。大血管障害は別として、血糖にこだわり細小血管障害を心配するよりも、低血糖や高血糖性昏睡などの直接命に関わる急性合併症を回避することが大切で、全身を診る医療が最も重要と考えます。最近、話題の「糖質制限食」(メリット/デメリットなど)について教えてください。〔メリット〕減量効果:3度の食事の糖質(主食:ごはん、パンなど)を減らすことにより、摂取カロリーが減ります。例えばごはん、大盛り300g → 並200gに変更することにより100g(160Kcal) × 3回 × 30日 = 14,400Kcalとなり、1ヵ月で約2kgの減量につながります。食後血糖改善効果:糖質は、タンパク質や脂肪に比べて吸収が速く、食後の血糖値が高くなります。ひいては血糖コントロール改善効果があります。〔デメリット〕間食が多くなる:ごはん、パンなどは腹もちがよく、極端に減らすことにより次の食事までの間に空腹感が出て、その結果、間食をしてしまう患者さんが多く、肥満や血糖コントロールの乱れにつながります。心血管・内臓負担:当然のことながら、肉や魚の量が増えてしまいます。そのため、タンパク質や脂肪の摂取過剰になります。タンパク質を多く摂ると腎臓に負担がかかり(腎不全では禁忌)、脂肪を多く摂るとコレステロールが高くなり動脈硬化性疾患である心臓病や脳卒中になりやすい可能性があります。

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エキスパートに聞く!「高血圧」Q&A

CareNet.comでは9月の高血圧特集企画を行う中で、会員の先生より「高血圧」に関する質問を募集しました。その中から、特に多くいただいた質問に対し、下澤達雄先生にご回答いただきます。家庭血圧を用いる際の留意点について教えてください。昨年8月に発表された英国の高血圧ガイドラインでは、24時間血圧あるいは家庭血圧を高血圧の確定診断ならびに降圧治療の効果判定に用いることが強く推奨されました。わが国でも家庭血圧測定の指針が高血圧学会より出されており、実臨床でも多くの先生がお使いになっていることが、今回たくさんのご質問をいただいたことからも推察されます。そこで、家庭血圧を用いる際の留意点をいくつか挙げたいと思います。1.信頼性機械そのものの信頼性は診察室で同時に用手法と比較することで確認することができますが、血圧手帳を用いた自己申告による血圧値は必ずしも信頼できません。高知県で行われた調査では実測値と自己申告値には開きがあり、患者は低めに申告することが報告されています。よって、家庭血圧が低い場合でも臓器障害がある場合にはとくに診察室血圧を参考にした降圧治療が必要となります。あるいはメモリー機能をもった家庭血圧計を用い、実測値を医療側が把握できるようにする工夫が必要です。2.家庭血圧の測定方法血圧は複数回測れば必ず異なった値を示します。一般的には数回測ると徐々に低い値となります。高血圧学会の家庭血圧の指針では1日1回でよいと書かれていますが、これはまず患者に家庭血圧を測定させるために簡便な最低限の方法が記載されていると理解しています。すでに家庭血圧を日常的に測定できる患者においては複数回測定し、一番高い値と一番低い値、あるいは平均値を記載してもらうのがいいかと思います。測定時間は服薬直前が望ましいですが、日常生活にあわせてほぼ同じタイミングで測定できる時間を指導しています。3.夜間血圧を反映するか?何がわかるのか?残念ながら夜間血圧は夜間に測定する必要があり、家庭血圧では知ることができません。正しく測定でき、正直に申告された家庭血圧で白衣性高血圧、仮面高血圧がわかることはもちろんですが、曜日による血圧変動(週末ストレスがない場合に血圧が下がる)や睡眠状態との関連を知ることもできます。4.診察室血圧との乖離前述のように白衣性高血圧、仮面高血圧と診断されますが、臓器障害がある場合は高いほうの血圧を目安に治療を行うべきです。血圧変動について教えてください。外来診察毎の血圧変動が大きいと脳血管イベントが多くなることが報告されました。以来、糖尿病の際の血糖の変動が臓器障害と関連づけられています。動物実験でも交感神経を切除して血圧変動を大きくすると、レニン・アンジオテンシン系が亢進して臓器障害が進行することが報告されています。ヒトにおいては長期にわたる一拍ごとの血圧変動をみることは困難であり確立したエビデンスはありませんが、血圧変動は少なくする方が望ましいでしょう。血圧変動が大きい原因として自律神経障害、褐色細胞腫のような器質的な異常のほかに服薬アドヒアランス不良、精神的ストレス、不眠(睡眠時無呼吸)といった要因もあり、医師のみならず看護師、薬剤師などからの患者の病歴、生活歴聴取が必要となります。服薬は管理されているにもかかわらず認知症患者ではとくに血圧変動が大きいことが問題になりますが、多くの場合は多発性脳梗塞を合併している例です。転倒のリスクがなければ認知症の進行、脳梗塞の再発予防を考えて血圧は低い値にコントロールしたいところです。実際には服薬数を増やせないなどの制限があり、合剤を積極的に使ってのコントロールとなります。食塩感受性について教えてください。塩分摂取により血圧が上昇する食塩感受性患者は、上昇しない非感受性患者にくらべ血圧値が同等でも心血管イベントが多いことから、食塩感受性の診断についての質問を多くいただきました。しかし、食塩感受性を診断するには現在のところ入院にて食塩負荷、減塩食を食べさせ、その間の血圧を測定することのほかには確実な方法はないのが現状です。実臨床においては早朝第二尿のナトリウムとクレアチニンを測定することで食塩摂取量を知ることができる(「日本高血圧学会減塩ワーキンググループ報告」日本高血圧学会より入手可能)ので塩分摂取量が多い患者について経時的に観察したり減塩指導の動機付けとして用いることもできます。あるいはサイアザイド系利尿薬に対する血圧反応性も食塩感受性を知る一つの方法です。効果的な減塩指導について教えてください。日本の食文化はみそ、塩、しょうゆの上に成り立っているので、減塩指導はともすれば日本の食文化を否定することにもなりかねません。しかし、現在の一般的食生活を見てみると加工食品がふんだんに使われており、この点を改善指導することで減塩は可能となります。たとえばソーセージ100gに塩は約2g、プロセスチーズでは約3g含まれており、こういった加工食品を減らすことを指導できるでしょう。また、加齢に伴い味覚は低下するため減塩が難しくなります。そこはワサビ、生姜、茗荷、唐辛子、胡椒といったスパイスをうまく使うように指導します。そして、食卓に出された食材に塩、しょうゆを追加でかけないよう、食卓には塩、しょうゆを置かないなどの細かな指導が必要となります。男性患者の場合、食事を実際に作る配偶者への指導も重要で、医師だけでなく看護師、栄養士、薬剤師、検査技師、保健婦など患者に関わるすべての医療従事者の協力体制が有効です。塩分過剰摂取は血圧上昇のみならず血圧が上昇しない場合でも酸化ストレスを増加させ耐糖能異常につながることが動物実験では示されており、摂取量を6g/日程度まで下げることは高血圧の有無にかかわらず有用であると思われます。降圧薬の減量、中止方法について教えてください。血圧のコントロールが良好で、臓器障害がないような場合、また尿中ナトリウムも低めの場合は降圧薬を中止できることもあります。その場合、4~5月位に中止し、夏の暑い間を経過観察し、10~11月から冬の寒い間に血圧が再上昇しないことを確認します。その後も家庭血圧で血圧を経過観察し、年に一回の臓器障害の進展のチェックを行います。多剤併用しており血圧が良好なコントロールの場合、薬剤の減量が可能です。長期にβ遮断薬を使っている場合は心筋虚血のリスクがあるのでβ遮断薬は漸減します。便秘、浮腫、歯肉腫脹、起立性低血圧がある場合はカルシウム拮抗薬の副作用の可能性もあるためカルシウム拮抗薬から減量します。昨今の酷暑ではとくに高齢者や腎機能低下例においては、レニン・アンジオテンシン系抑制剤や利尿薬の減量が必要となる例があります。早朝高血圧の対処方法について教えてください。家庭血圧を測定あるいは24時間血圧にて早朝高血圧が明らかになった場合、最近の研究では夜間高血圧ほどのリスクはないとの報告もありますが、降圧薬の服用時間を調整することでコントロール可能となることがあります。レニン・アンジオテンシン系阻害薬は夕方服用に適した薬剤といえます。ただし、夜間の過度の降圧に注意して少量より開始するのが好ましいでしょう。α遮断薬も有効とする報告もありますが、α遮断薬自体の臓器保護効果が疑問視されており、α遮断薬を追加投与するよりは現在服用しているレニン・アンジオテンシン系阻害薬の服用時間をずらすことが適切と考えます。難治性高血圧の対処方法について教えてください。異なる三系統の降圧薬を十分量を内服しても血圧のコントロールがつかない場合、難治性高血圧と呼ばれます。このような例では服薬アドヒアランス、二次性高血圧の再評価、睡眠時無呼吸の評価をまず行います。服薬アドヒアランスが不良の場合は合剤を用いること、服薬の必要性を再教育すること、服薬想起の道具(ピルボックスなど)が有効といわれており、医師だけでなく薬剤師、看護師、保健婦の協力が必要となります。すでに薬剤を服用している場合、ホルモン検査は薬剤の影響を受けるので評価が難しくなります。実臨床では副腎のCTを先行させてもいいと思います。あるいは十分量の抗アルドステロン薬(スピロノラクトンで75~100mg)を投与し治療的診断を行うことも有用です。腎血管性高血圧についてはMR angiographyが有用でしょう。以上のような精査で問題がない場合、中枢性の降圧薬(レセルピン)を少量朝1回追加することが有用である例を経験しています。あるいはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬をかんきつ類と一緒に服用させる、あるいはヘルベッサーと併用しジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の血中濃度を高めることも有用でしょう。白衣性高血圧の対処方法について教えてください。イギリスのガイドラインでは診察室血圧と24時間血圧、あるいは家庭血圧を用いて高血圧の診断を行い、臓器障害がない場合は白衣性高血圧は薬物介入をせずに年に1回の経過観察をするとしています。24時間血圧を用いて病院来院時のみ高血圧でその他の日常生活の中では全くの正常血圧であり、アルブミン尿も含め臓器障害が認められず、糖尿病などのリスク因子がない場合は薬物介入は必要ないと考えます。しかし、経過観察は必要で、患者には日常生活の中で突然の来客などストレスがかかると血圧が上がっている可能性を話し、徐々に臓器障害が出てくる可能性を説明する必要があるでしょう。白衣性高血圧で患者が薬物介入を希望する場合、抗不安薬も有効です。また、臓器障害がある場合はJSH2009に則って合併する臓器障害に応じて薬物を選択します。その際、心拍数が上昇するといった副作用のない薬物をまず選択します。拡張期血圧の対処方法について教えてください。収縮期血圧が大動脈のコンプライアンスと心拍出量で規定されるのに対し、拡張期血圧は全身の末梢血管抵抗と心拍出量で規定されます。よって高齢者で大血管の硬化が明らかになると収縮期血圧が上昇し脈圧が増大します。心臓の仕事量は収縮期血圧と心拍数の積に比例するため、収縮期血圧が高くなると心筋酸素消費量が増え、心虚血と心不全のリスクが増えます。一方冠動脈は拡張期に灌流されるので、拡張期血圧を下げすぎると、冠血流が低下する危険があります。実際、大規模臨床試験をみても拡張期血圧と心血管イベントにはJカーブに近い現象が認められます。拡張期のみ高い例は若年者に多く認められますが、治療の第一歩は減塩にあります。また個人的経験ですが、10年ほど前にARBが発売された当初、カルシウム拮抗薬やACE阻害薬にくらべ拡張期血圧がよく下がる印象がありましたが、統計的処理はされていません。また当時は利尿薬の使用頻度が低かったというバイアスもあります。現状では拡張期血圧のみを下げるための有効な治療法は生活習慣の改善のほかには確立されていないといえます。合剤の有用性について教えてください。いかなる服薬介入治療もその効果は服薬アドヒアランスに依存することは明白です。それゆえ、われわれは服薬アドヒアランスをよくする努力は惜しむべきではありません。アドヒアランスに関わる因子は複数ありますが、処方する立場として最も簡便にできることは服薬数を減らすことであり、その点において合剤はきわめて有効といえます。現在降圧薬に限らずぜんそく薬、糖尿病薬、高脂血症薬の合剤が日本でも使用可能ですが、海外の現状をみるとまだまだ立ち遅れています。私は実臨床の中で合剤の併用も行いARBの最大容量を合剤として処方し、3種の薬剤を2錠ですませ、患者の経済的負担も軽減するよう努力しています。

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「痛み」の診療に関する緊急アンケート その4 ~非がん性痛に対するオピオイド使用実態【整形外科編】~

対象ケアネット会員の整形外科医師208名方法インターネット調査実施期間2012年8月16日~8月23日Q1.非がん性の痛みに対し、オピオイドを使用することはありますか?Q2. Q1 で「B.使用しない」とお答えになった先生にお伺いします。非がん性の痛みに対し、オピオイドを使わない理由を教えてください。(いくつでも)Q3.今後、非がん性の痛みに対し、オピオイドの使用を継続、または新たに使い始めるにあたって、必要な情報がありましたら、教えてください。(自由記入)【必要な情報(一部抜粋)】保険でけずられないか?/便秘、吐き気に対する予防薬投与の保険適応について、はっきりした返答がほしい。慢性疼痛症例にオピオイドを使用した場合に、離脱できるのか?/処方をやめるに際しての患者のうまい誘導の仕方。/依存症とやめ方に不安あり、既往先行品との違いを説明ほしい/休薬の具体例副作用への対応/副作用の防止方法を具体的に教えてください。/副作用情報/副作用の発生率/副作用軽減のための対策使い方/適応/どのような患者に処方したらよいのかが分からない。/どの程度の疼痛に対してオピオイドが適応になるのか 術後鎮痛についてガイドラインみたいなオピオイド使用のマニュアルがあれば知りたいです。信頼できるメーカーからの説明がほしい他のクスリが効かない場合【ご意見(一部抜粋)】長期に使用するのに問題がある副作用がなくなればテレビ新聞などでよくでてくればみなもなれて使えるようになる。年数が必要オピオイドの適応症例があれば、使用する予定である

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インタビュー:ときわ病院 精神神経科・内科 宮澤 仁朗氏 ~剤形から考える抗精神病薬の服薬アドヒアランス~

統合失調症治療では、患者が積極的に治療に参加することで服薬アドヒアランスの向上を促し、再燃・再発の抑制が期待できるといわれている。治療参加の方法の1つとして、患者自身による薬剤や剤形の選択があげられる。現在、抗精神病薬は各製品ごとに様々な剤形が販売されているが、2012年5月、非定型抗精神病薬のアリピプラゾール(製品名:エビリファイ)の新たな剤形として口腔内崩壊錠(以下、OD錠)が発売された。薬物治療の選択肢がさらに増えた現状を踏まえ、患者の剤形選択の現状や、今後の剤形開発に対する期待などについて、ときわ病院 精神科 宮澤仁朗氏にお話を伺った。宮澤氏はこれまでに、数々の抗精神病薬の治験に携わり、新しい剤形の開発時のアドバイザーとして活躍するなど、積極的に新薬に関する考察を述べられている。■剤形選択に関する現状と課題――実際の臨床現場において患者さんは剤形選択に関してどのような認識をお持ちなのでしょうか。宮澤 2009年に統合失調症の患者さんを対象に実施された、剤形に関するアンケートの調査結果(n=135)1)によると、56%の方が服用している薬剤の剤形について医師から説明を受けていない、と考えていることが示されています。また、一方で、自分で服用する薬剤の剤形を選択したいと回答した患者さんは72%にも上ることもわかっています。理想と現実にギャップがありますね。医師は、実際には説明を行っていたとしても、患者さんがそれを認識していない可能性も考えられ、コミュニケーションにはさらに注意を払う必要があるでしょう。しかし、一方で、現状では、精神科医師の不足や診療報酬等の関係から、1人の患者さんにかけられる時間は限られており、我々医師の努力に加えて、制度面の整備も必要ではないかと思います。■各剤形をどのように使い分けるのか?~宮澤氏の場合~――自分で剤形を選択したいと考える患者さんが多いようですが、それぞれの剤形の特徴について教えてください。宮澤 急性期と維持期に分けて考える必要があります。急性期では、病識がなく、興奮が見られるなど激しい症状を呈する患者さんも多いため、いかに確実に薬剤が体内に取り込まれるか、という視点が重要となります。そのため、OD錠や液剤などに対する医療者、看護者のニーズがとても高いです。一方、維持期においては、薬剤の有効性、安全性を考慮しつつ、患者さんがきちんと服用できる薬剤が求められます。そのため、患者さんの好みやライフスタイルに合わせてできる限り患者さんご自身に選択していただくことが重要となってきます。――具体的には?宮澤 たとえば、通常の錠剤は、ある程度病識があり、水と一緒に服用することで「服薬している」という実感がほしいと訴える患者さんなどに処方することが多いです。液剤は錠剤・散剤などを飲みにくいと感じ、個別包装の簡便さを好む患者さんに適していると感じています。ところが、中には被毒妄想が生じる方もいるので、その点は注意が必要かもしれません。持続性の注射剤は、決して服薬アドヒアランスは悪くないけれどたまに服用し忘れるような方に対し勧め、患者さん自ら選択されることも少なくありません。しかし、もっとも患者さんのニーズが高いと感じるのは、OD錠です。OD錠には様々なタイプがありますが、1日1回の内服で水を必要とせず、口に含んだ瞬間、瞬時に溶けるタイプのものが好まれています。このタイプのOD錠は服用の簡便さからアドヒアランスの向上も期待できます。今後、主流となっていくと思います。■OD錠はどのような患者に有用か?――非定型抗精神病薬のOD錠には2種類ありますが。宮澤 ある程度、硬度が保たれているタイプと口に含むと瞬時に溶けるタイプがあります。前者は薬局等の自動分包機にもかけられ、多少の湿度で溶けることはありません。一方、後者は、手掌、手指に汗をよくかく方などには向かないかもしれません。しかし、スーパー救急(精神科救急)などの現場では、口に入れるとスッと溶けてしかも甘みがあるこのタイプの薬剤はとても重要です。5月に発売されたアリピプラゾールのOD錠(製品名:エビリファイOD錠)はこのタイプです。――OD錠は、実際、どのような患者さんに適しているのでしょうか。宮澤 先ほど説明しました救急・急性期病棟に入院となった患者さんのほかにも、外来通院されている患者さんにも適しています。水が必要ないことから外出先での服用が容易になります。嚥下が困難な高齢者や女性の患者さんにも勧められると思います。また、抗精神病薬単剤で治療している方も他の剤形からの変更のメリットが大きいのではないかと思います。たとえば、アリピプラゾールは、1日1回の服用で急性期、維持期いずれにおいても有効性が認められており、私が診ている統合失調症の維持期の患者さんでは、比較的、胃腸薬や便秘薬など他の薬剤を併用せずに単剤で治療している方も多いため、OD錠への変更により受ける恩恵が大きいと考えられます。逆に併用薬が多い患者さんではあまりメリットは感じられないかもしれません。――今後も、新しい剤形が追加されていくようですが、どのようなことを期待されますか。宮澤 今回のように、急性期、維持期いずれにおいても有用性が認められている薬剤のOD錠化は、患者さん、医療者双方の選択肢の幅が広がったことを意味し、大変意義深いと考えます。また、今後も、非定型抗精神病薬で新たな剤形が追加されることにより、患者さん、医療者の細かい二-ズに沿った薬剤選択が可能になっていくと思います。昨今の課題である服薬アドヒアランスの向上をめざして、我々医師は、患者さんの飲み心地に、より配慮した治療戦略が求められていくのではないでしょうか。(聞き手=ケアネット) 1)統合失調症患者さんを対象に実施したインターネット調査2009年 医療法人 ときわ病院ホームページhttp://www4.ocn.ne.jp/~tokiwahp/

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プライマリ・ケアで有用な卵巣がん患者早期発見のアルゴリズム開発

 プライマリ・ケアでの卵巣がん患者を見出すアルゴリズムが、英国・ノッティンガム大学プライマリ・ケア部門のJulia Hippisley-Cox氏らによって開発された。同アルゴリズムを用いることで、リスクが最も高い人を早期に発見し、検査受診に結びつける可能性が認められたという。BMJ誌2012年1月28日号(オンライン版2012年1月4日号)掲載報告より。2年間の30~84歳女性の卵巣がん発症・診断を予測可能か、特定のリスク因子で検証 Hippisley-Cox氏らのアルゴリズムは、年齢、卵巣がんの家族歴、卵巣がん以外のがんの既往、BMI値、喫煙、飲酒、社会的階層、食欲不振、体重減少、腹痛、腹部膨満、直腸出血、閉経後出血、頻尿、下痢、便秘、疲労、貧血の有無や状態をリスク因子とするものであった。 アルゴリズムについて、開発のために、大規模プライマリ・ケアデータベースのQResearchに登録する英国およびウェールズの開業医375人からのデータを、および検証のために189人からのデータを得て構成したコホート集団について検討した。 被験者は、2000年1月1日~2010年9月30日の間に登録されていた30~84歳の女性で、基線では卵巣がんと診断されておらず、また食欲不振、体重減少、腹痛、腹部膨満、直腸出血、閉経後出血もなかった。対象者について、2年間での卵巣がん発症・診断を主要評価項目として、Cox比例ハザードモデルを用いて検討した。予測能に優れる年腹部膨満、家族歴、腹痛、閉経後出血など独立予測リスク因子を特定 203万人・年のデータからなる開発コホート群での卵巣がん発症は976例であった。それらに対する独立予測因子は、年齢、卵巣がんの家族歴(リスクが9.8倍高い)、貧血(同2.3倍)、腹痛(同7倍)、腹部膨満(同23倍)、直腸出血(同2倍)、閉経後出血(同6.6倍)、食欲不振(同5.2倍)、体重減少(同2倍)であった。 検証解析の結果、リスク予測因子を用いることによる卵巣がんへの適時診断への変動値(R2統計値、高値ほど価値が高い)は57.6%だった。ROC統計値は0.84、D統計値は2.38だった。 最も高い予測リスクを有する女性の10%が、2年間の全卵巣がん患者の63%を占めていた。 以上を踏まえてHippisley-Cox氏は、「開発したアルゴリズムは、卵巣がんの最大リスク群を早期に検査受診へと誘導できる可能性を持っている。さらなる研究で、最適なアルゴリズム実施の時期、費用対効果、実施による健康アウトカムへの影響などを検討する必要がある」と結論している。

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選択的ニューロキニン1受容体拮抗型制吐剤 ホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド)

がん化学療法に伴う悪心・嘔吐に対する制吐剤として、選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬であるホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド点滴静注用150mg、以下プロイメンド)が、2011年12月9日に発売された。本剤は、2009年12月に発売された経口制吐剤アプレピタント(商品名:イメンドカプセル)のプロドラッグ体の注射剤である。がん化学療法における制吐療法の現状と課題抗がん剤の有害事象の1つである悪心・嘔吐は、患者さんのQOLを著しく低下させ、治療継続を妨げる大きな要因となる。その発現時期により、抗がん剤投与後24時間までに発症する「急性」の悪心・嘔吐と、24時間以降に発症する「遅発性」の悪心・嘔吐に分けられ、急性には主にセロトニンが、遅発性には主に中枢でのサブスタンスPが関与するとされている。急性の悪心・嘔吐については、1990年代に発売された5HT3受容体拮抗薬により大きく改善されたが、遅発性の悪心・嘔吐には抑制効果が不十分であった。その後、サブスタンスPとNK1受容体の結合を阻害するアプレピタントが、急性および遅発性の悪心・嘔吐に対して高い有効性が認められ、2009年12月に発売された。さらに、2010年4月、半減期が長く遅発性の悪心・嘔吐にも効果を示す5HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンが発売され、同年5月には日本癌治療学会から制吐薬適正使用ガイドラインが発行されたことにより、制吐療法への関心が高まった。しかし、患者さんが症状を訴えられずにいたり、近年普及してきている外来化学療法では、患者さんが自宅に戻るため悪心・嘔吐症状が把握しにくいなど、症状を見逃す可能性も少なくない。今後、患者さんの症状を拾い上げるためのさらなる工夫が必要と思われる。一方、アプレピタントは経口剤であることから、咽頭・喉頭・食道がんなどの患者さんでは服用が難しく、また、患者さんの認識不足や飲み忘れにより、処方しても服用されないことが懸念されることや、抗がん剤には点滴静注で投与される薬剤も多いことなどから、医療現場では注射剤の発売が期待されていた。注射剤により確実に投与可能今回、発売されたプロイメンドは、アプレピタントのプロドラッグ体であり、静脈内投与後、速やかにアプレピタントに代謝される注射剤である。そのため、経口剤の服用が困難な患者さんにも投与可能であり、飲み忘れを懸念することなく確実に投与できる。本剤1回点滴静注投与によって、急性・遅発性ともに、アプレピタント3日間投与と同等の効果が得られることが海外第Ⅲ相二重盲検比較試験において示されている。国内では、グラニセトロン(iv)+デキサメタゾンリン酸エステル(iv)の2剤併用群(標準治療群)と、この2剤にプロイメンドを追加した3剤併用群(プロイメンド群)を比較した第Ⅲ相二重盲検比較試験において、全期間における有効率がプロイメンド群64.2%と、標準治療群47.3%に比べて有意に(p<0.05)高い有効率が得られた。なお、本試験では26.4%に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主な副作用は、便秘(9.2%)、ALT(GPT)上昇(6.9%)、しゃっくり(5.7%)、注入部位疼痛・滴下投与部位痛(5.2%)などであった(承認時)。また、重大な副作用として、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、穿孔性十二指腸潰瘍、アナフィラキシー反応が報告されている(アプレピタントでの報告を含む)。ガイドラインにおける推奨2010年5月発行の制吐薬適正使用ガイドラインでは、高度催吐リスクの抗がん剤・レジメン、中等度催吐リスクの抗がん剤・レジメンのうちカルボプラチン、イホスファミド、イリノテカン、メトトレキサートなどを使用する際には、アプレピタント+5HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用が推奨されている。すでに米国など世界30ヵ国以上でプロイメンドが発売されており、ASCOガイドライン(2011年改訂版)やNCCNガイドライン(2011年3月改訂版)には、プロイメンド+5HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用が追記されている。わが国の制吐薬適正使用ガイドラインにおいても、次回改訂時に追記されることが予想される。がん化学療法におけるQOL改善と治療継続に期待プロイメンドの登場により、アプレピタントが服用困難ながん患者さんへの投与が可能となった。また、患者さんの服薬コンプライアンスによらず、確実に投与できることも大きなメリットと言えよう。医療者側においても、点滴ラインから一連の投与を行うレジメンに組み込みやすいと思われる。がん化学療法においては、薬剤・レジメンの催吐リスク、性別、年齢、前治療などを考慮した適切な制吐剤により悪心・嘔吐を予防することが、がん治療の継続につながる。プロイメンドが、より多くのがん患者さんにおけるQOLの改善、がん化学療法の継続に貢献することが期待される。

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linaclotideが慢性便秘症状を有意に改善:2つの無作為化試験の結果より

 米国で新規開発された便秘型過敏性腸症候群および慢性便秘の経口治療薬である、C型グアニリル酸シクラーゼ受容体作動薬のlinaclotideについて、有効性と安全性を検討した2つの無作為化試験の結果が報告された。米国・ベス・イスラエル医療センターのAnthony J. Lembo氏らが、約1,300人の慢性便秘患者について行ったもので、NEJM誌2011年8月11日号で発表した。linaclotide 145μg/日と290μg/日を12週間投与 研究グループは、慢性便秘患者1,276人について、12週間にわたり、2つの多施設協同無作為化プラセボ対照二重盲検試験(試験303と試験01)を行った。研究グループは被験者を無作為に3群に分け、linaclotide 145μg/日、linaclotide 290μg/日、プラセボを、それぞれ1日1回、12週にわたり投与した。 主要有効性エンドポイントは、週3回以上の自発的な排便(CSBM)と、12週のうち9週以上で試験開始時点よりも自発的排便回数が週1回以上増加したことが認められた、の2つとした。有害事象についてもモニタリングされた。主要有効性エンドポイント達成、linaclotide群16~21%に対しプラセボ群は6%以下 その結果、主要有効性エンドポイントに達したのは、試験303と試験01それぞれで、linaclotide 145μg群については21.2%と16.0%、linaclotide 290μg群は19.4%と21.3%だった。これに対しプラセボ群は3.3%と6.0%であり有意に低率だった(linaclotide群とプラセボ群の全比較についてP<0.01)。 1週間の排便回数、腹部不快感、鼓脹などを評価した副次エンドポイントについては、いずれのlinaclotide群とも、その割合はプラセボ群より有意に高率だった。 なお、有害事象については下痢を除き全試験群で同程度であった。両linaclotide群で下痢による試験中止は4.2%だった。 研究グループは、「これら2つの大規模な第III相試験において、linaclotideは慢性便秘患者の腸・腹部症状を改善し、重度の便秘を有意に軽減した。さらなる試験により、linaclotideの潜在的な長期リスクおよびベネフィットを評価する必要がある」と結論している。

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プライマリ・ケアにおける肥満に有効な薬物療法のエビデンス:CONQUER試験

診察室ベースのライフスタイル介入にphentermine+トピラマート療法を併用するアプローチは、プライマリ・ケア医が施行し得る肥満に有用な治療法となる可能性があることが、アメリカ・デューク大学医療センターのKishore M Gadde氏らの検討で示された。肥満は寿命を短縮し、心血管疾患やがんなどによる死亡率を上昇させるとともに、2型糖尿病の約90%が過体重に起因し、肥満者における高血圧の頻度は正常体重者の5~6倍に達するとされる。中枢性ノルエピネフリン放出薬であるphentermineはアメリカでは抗肥満薬として広く用いられ、抗てんかん薬トピラマートは単剤で2型糖尿病や高血圧を有する肥満者に対する体重減少効果が確認されているが、用量依存性に神経精神関連の有害事象がみられるという。Lancet誌2011年4月16日号(オンライン版2011年4月11日号)掲載の報告。2つの用量とプラセボを比較する第III相試験CONQUER試験の研究グループは、2つ以上のリスク因子を有する過体重あるいは肥満者を対象に、体重減少や代謝リスクの低減を目的とした食事療法やライフスタイル変容の補助療法としてのphentermine+トピラマート療法の有効性と安全性を評価するプラセボ対照無作為化第III相試験を実施した。2007年11月1日~2009年6月30日までにアメリカの93施設から、18~70歳の過体重あるいは肥満者(BMI 27~45kg/m2)で、高血圧、脂質異常、糖尿病/糖尿病前症、腹部肥満のうち2つ以上の併存症がみられる者が登録された。これらの患者が、プラセボ群、phentermine 7.5mg+トピラマート 46.0mgを1日1回経口投与する群(低用量群)、あるいはphentermine 15.0mg+トピラマート92.0mgを1日1回経口投与する群(高用量群)に、2:1:2の割合で無作為化に割り付けられ、56週の治療が行われた。主治医、患者、試験資金の出資者には治療割り付け情報はマスクされた。主要評価項目は、体重の変化率および5%以上の体重減少の達成者率とし、intention-to-treat解析を行った。体重減少:1.4 vs. 8.1 vs. 10.2kg、5%体重減少率:21 vs. 62 vs. 70%2007年11月1日~2009年6月30日までに2,487例が登録され、プラセボ群に994例、低用量群に498例、高用量群には995例が割り付けられた。解析の対象となったのは、それぞれ979例、488例、981例であった。治療56週の時点で、ベースラインからの体重の変化は、プラセボ群が-1.4kg(最小2乗平均:-1.2%、95%信頼区間:-1.8~-0.7)、低用量群が-8.1kg(同:-7.8、-8.5~-7.1、p<0.0001)、高用量群は-10.2kg(同:-9.8%、-10.4~-9.3、p<0.0001)であり、プラセボ群に比べ実薬群で有意な体重減少効果が認められた。5%以上の体重減少が得られた患者の割合は、プラセボ群が21%(204/994例)、低用量群が62%(303/498例)(オッズ比:6.3、95%信頼区間:4.9~8.0、p<0.0001)、高用量群は70%(687/995例)(同:9.0、7.3~11.1、p<0.0001)であり、プラセボ群に比し実薬群で有意に高かった。10%以上の体重減少は、それぞれ7%(72/994例)、37%(182/498例)(同:7.6、5.6~10.2、p<0.0001)、48%(467/995例)(同:11.7、8.9~15.4、p<0.0001)と、実薬群で有意に優れた。高頻度にみられた有害事象は、口渇(ドライマウス)[プラセボ群2%(24/994例)、低用量群13%(67/498例)、高用量群21%(207/995例)]、知覚異常[同:2%(20/994例)、14%(68/498例)、21%(204/995例)]、便秘[同:6%(59/994例)、15%(75/498例)、17%(173/995例)]、不眠[5%(47/994例)、6%(29/498例)、10%(102/995例)]、眩暈[3%(31/994例)、7%(36/498例)、10%(99/995例)]、味覚障害[1%(11/994例)、7%(37/498例)、10%(103/995例)]であった。うつ病関連の有害事象がそれぞれ4%(38/994例)、4%(19/498例)、7%(73/995例)に、不安関連有害事象は3%(28/994例)、5%(24/498例)、8%(77/995例)に認められた。著者は、「診察室ベースのライフスタイル介入にphentermine+トピラマート療法を併用するアプローチは、プライマリ・ケア医が施行し得る肥満に有用な治療法となる可能性がある」と結論し、本試験の利点として、1)51%が3つ以上の体重関連の併存症を有し、多くが複数の治療法を受けている患者集団で体重減少の効果を確認できたこと、2)軽度のうつ症状がみられ、多くが広範な抗うつ薬の使用で安定を維持している患者や、大うつ病発作の既往歴(1回のみ)のある患者も含まれること、3)自殺傾向のある患者もその企図がない場合は除外しなかったことを挙げている。(菅野守:医学ライター)

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教授 白井厚治先生「「CAVI」千葉県・佐倉から世界へ 抗動脈硬化の治療戦略」

東邦大学医療センター佐倉病院内科学講座の教授で、前院長。医局のモットーは総合力と専門性を両方備えた医師育成。一人でも多くを救うこと。加えて先端医療の開発をモットーにしている。最近では、血管機能検査CAVIの開発に参画し、国内から海外にも発信。肥満症治療については脂肪細胞、脂質代謝の基礎研究から心理学まで動員して新しい治療システムを構築中。動脈硬化の分野で新しい治療体制の扉を開く動脈硬化は、地味な分野ですが、ご存知のとおり、脳梗塞、心不全、さらには腎不全をもたらし大きく個人のQOLを低下させ、また社会的損失も大きい疾患です。これに対し、病変動脈、静脈の直接的治療を循環器グループが担う一方、「動脈」が水道管でなく、生きた機能を持った臓器とし見、それに細胞生物学と代謝学を応用して治療・予防法を打ち立てるというのが夢でした。実は、癌は最近の治療学の進歩は著しいのを目の当たりあたりにしますが、30年前には不治の印象が強く、生命現象そのものの解明が必要で、とても自分の能力では歯が立たないと思い避けたのも事実です。動脈硬化なら多少とも代謝学的側面から治療できるのではないかと思ったりもしました。これまで、副院長6年、院長3年と病院の経営面にも携わりましたが、医療現場は人間が担うものであり、かつ科学性を保って運営されるべきもので、根本原則は、病気を見ることと変わらないと思いました。みんなして誠意を尽くし、精一杯がんばれば、経営のほうが、なんだかんだといっても人の作った制度の運用ですから、患者さんがいる限り、道は開けると思います。しかし、対疾病への取り組みは、神が創った摂理と破綻への挑戦ですから、数段難しいと思います。でも、全身全霊、日々、改革、改良に向けやり続けるのが、医師の誠意だと思います。それには、効率よくみんなが取り組めるセンター方式が必要と、糖尿病・内分泌・代謝センターを9年前に立ち上げました。場所、人の問題で、思い立って3年ほどかかりましたが、皆さんの協力でできました。そのころから、病棟と外来が一体となった継続看護治療システムも導入され、看護師も病棟での看護結果が外来でどのように効果が出ているのか確認しあい、フィードバックをかけるシステムが導入、大きかったのは、患者さん全員に、「ヘルスケアファイル」という手書きのファイルをお渡しし、代謝要因の変化と日常生活管理がどのように結びつくかをグラフで表すシステムを導入したことです。患者と医師のみでなく、家族にも分り、医療スタッフも採血者、受付、看護師、栄養士も一目瞭然に個々の病態が把握でき、互いにコミュニケーションが取れやすくなったのがよかったです。若い研修医にとっても数年の治療経過を見れば、病態がわかり最大の教科書にもなっています。診療体制を分りやすく、すっきり整えることは、生活習慣病と呼ばれる一連の疾患にとても有用と思います。若い医師も情熱を持った人たちが幸運にも集まり、地に足をつけ、真に役立つ研究を進めてくれたのも、推進力になってくれました。動脈硬化発生機序の解明とCAVIの開発研究学会のマニュアル、ガイドラインは大切ですが、大学病院の使命はその先を見つめることにあります。その眼は、字づらで覚えたことではなく、自然との対話、すなわち研究の基盤なくして開かれないと思います。ささやかながら病理、細胞培養実験から、動脈硬化とコレステロールの関係は直接ではなく、コレステロール自身が酸化され、オキシステロールになると強力な組織障害性をもち、慢性炎症が引きおこすとしました。これに基づき、強力な抗酸化作用を持つ脂質低下剤プロブコール投与による糖尿病性腎症の抑制効果を見いだしました。結局、末期腎硬化症は動脈硬化と同じような機序で起こると考えたからです。また、動脈硬化の臨床研究には、簡便で経時的に測定できる指標が必要ですが、これまで必ずしも十分なものがなかったわけです。これに対して、血管弾性を直接反映するCAVIという検査法の開発に携わったところ、これまで見えなかった部分がどんどん見えるようになりました。これは、内科の循環器、代謝チーム、それに生理機能検査部が一体となり、精力的に仕事をしてきた結果です。循環動態を把握するうえで、血管抵抗を反映することがわかり、これは血圧計に匹敵する意味を持つわけで、まだまだその妥当性をさまざまな角度から検証する必要がありましたが、循環器、代謝領域の疾患や、薬物治療成績が英文論文となり、世界に向けて発信し始めたところです。今後、日常診療の中から、動脈硬化治療が見出される可能性もあり、楽しみです。肥満・メタボリックシンドロームへの低糖質食、フォーミュラー食の応用を中心に、チーム医療体制を確立動脈硬化診療は診断に加え、予防と治療が究極目標ですが、動脈硬化の主な原因として肥満の意味は大きく、糖尿病、高血圧、脂質異常を伴い、所謂メタボリックシンドロームを引き起こします。すでに当院では15年前から肥満への取り組みをチームで始めており、治療として低糖質食、その極みとして安全で効果のあるフォーミュラー食を実施しています。今、欧米では低糖質がよいとの論文が出始めましたが、当院では、入院時にも低糖質食を用いています。またフォーミュラー食は必須アミノ酸を含むたんぱく質とビタミン、ミネラルをパウダーにしたものを水で溶かして、飲んでもらうものです。それによる減量効果特に、内臓脂肪の減少度が高く、それに伴い代謝改善度も一般通常食より効果があり、そのメカニズムは、動物実験でも検証中です。脂肪細胞自身のインスリン感受性関連分子の発現が上がっていることが確認されました。研究面では脂肪細胞から分泌されるサイトカイン、分子、酵素、さらに脂肪細胞分化に加えて、「人」の行動様式にも興味を持ち、毎月、オベシテイカンファランスを開き、内科医、栄養士、看護師は無論のこと、精神科医、臨床心理士も加わり、症例への総合的アプローチを試みています。肥満が解消できない理由に、ハイラムダー型と呼ばれるパーソナリテイを持つ人が肥満患者さんに多いことも見出されました。また、入院中に、何らかの振り返りができ、周囲との関係も客観化できるようになると、長期予後がよいことも見出しており、メンタルサポートは必須と思われます。このような成功例に遭遇すると、チーム全体が活気づくのも不思議です。これから、これらチームのバックアップで肥満外科治療も始まります。患者さんデータを集約したヘルスケアファイルで真の地域連携の夢を糖尿病を中心とした生活習慣病は、結局、本人の自己努力に大きく依存します。人は決して命令で動くものでなく、自分で納得、わかって初めて真の治療が始まります。その際、さまざまな情報を錯綜させないために、1冊のノートをつくり、なるべくグラフ化、マンガで示す方式で、病態理解をはかっています。これをヘルスケアファイルと呼んでいます。きちんとしたデータの推移をみて、各種職域の人が適切なアドバイスができます。また、もっと重要なことは、患者本人が自分の経過を一覧すると、そこから、自分の特性が分かるというものです。医療者自身にも勉強になり、多職種の方々がのぞきこむことによって、患者さん個々の蓄積データに基づき、最適なアドバイスができるというメリットがあります。これは、病院内の代謝科、循環器、神経内科などにとどまらず、眼科とも共通に使えますが、さらに、これで院外の施設とも、真に患者さん中心の医療ができます。できれば、全国国民全員が持つべきで、これで、医療費削減、効率化、医学教育もでき、これを如何に全国的に広めてゆくか楽しみ考えているところです。若い医師へのメッセージ:自分の医学を打ちたてる現在、各種疾患は、学会がガイドラインなどを決め、医療の標準化が進み、それはそれで、一定のレベルにまであげることでは意味があるでしょう。現場に立てば、ほとんどがそれを基礎に幾つかのバリアンスがあり、物足りないはずです。確かに一杯本もあり、インターネットでも知識はふんだんに得られます。でも、結局医師は、自分の医学を自分で打ち立てるのが原則でしょう。決して独断に走れというのではなく、ささやかでも、自分のデータをまとめ、自分として言えるファイルを作ることです。それは、先輩の先生から呟きとしておそわりました、教えてくれるのを待っていたって本当のところは教えられないし、頭を下げても教えてもらえることは少なく、自分で、縦軸、横軸を引き、そこにプロットさせ因果関係を探れといわれましたが、その通りです。ささやかでも、自分の経験症例をまとめておき、そこから何が発信できるか日夜思考錯誤してください。それが、許される余裕と良き指導者がいるところで、研修はすべきでしょうし、後期研修もそんな環境で自己研鑽することが大切でしょう。専門分野の選考は、社会的にニーズが高いところに向かうべきで、無論雰囲気も大切ですが、はやり、楽というよりは、皆が困っているところに入り込こむ勇気が大切でしょう。そこで、頑張れば、面白く楽しく医師生活をやって行けるでしょう。今後も、佐倉病院でなければ、できないことに向けて頑張ってまいります。お待ちしています。質問と回答を公開中!

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遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン注」がん化学療法に伴う貧血に対する効能追加で承認申請

中外製薬株式会社は19日、遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン注」(一般名:エポエチン ベータ〔遺伝子組換え〕)の、がん化学療法に伴う貧血に対する効能追加の承認申請を厚生労働省に行ったと発表した。今回の申請の主体となる国内第Ⅲ相臨床試験は、がん化学療法施行により貧血を呈したがん患者を対象とした二重盲検比較試験として実施され、エポジン注36,000IUまたはプラセボを週1回、12週間投与し、有効性、安全性について検討したもの。エポジン注を投与した患者では、プラセボを投与した患者さんと比較して、主要評価項目である理論輸血率の有意な低下が認められたという。また、エポジン注を投与した患者において認められた副作用は、血圧上昇・高血圧、便秘、下痢等が主なものであったとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.chugai-pharm.co.jp/generalPortal/pages/detailTypeHeader.jsp;jsessionid=ZDUIDT4HYX2NWCSSUIHCFEQ?documentId=doc_16432&lang=ja

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アステラス製薬、米国アイアンウッド社とLinaclotide(リナクロチド)に関するライセンス契約締結

アステラス製薬株式会社は10日、米国の医薬品会社アイアンウッド社と同社が米国にて便秘型過敏性腸症候群および慢性便秘の治療薬として開発中の「Linaclotide(リナクロチド、一般名)」について、日本およびインドネシア、韓国、フィリピン、台湾、タイ(以下「契約地域」)での開発、販売に関する独占的なライセンス契約を締結したと発表した。リナクロチドは、1日1回投与の経口C型グアニル酸シクラーゼ(GC-C)受容体作動薬。本化合物は、腸粘膜上皮細胞上のGC-C受容体と結合し、細胞内の環状グアノシン一リン酸(cGMP)産生を亢進させ、腸内腔の水分分泌と腸内移送を亢進し、便秘を改善する。また、細胞外に分泌したcGMPにより腹痛を軽減させるという特徴を併せもっている。アイアンウッド社は現在、米国において便秘型過敏性腸症候群ならびに慢性便秘を対象とした第3相臨床試験を実施しているとのこと。今回の契約により、同社は契約地域におけるリナクロチドの独占的開発・販売権を取得する。また同社は、契約地域におけるリナクロチドの臨床開発、承認取得、販売に関する全ての費用を負担するという。なお、日本での臨床開発は今後実施される予定。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/linaclotide.html

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「エポジン注」が化学療法に伴う貧血を対象とする第III相臨床試験で主要評価項目を達成

中外製薬株式会社は30日、がん化学療法施行に伴う貧血を予定適応症として開発中の遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン注」(一般名:エポエチン ベータ〔遺伝子組換え〕)の第III相臨床試験において、主要評価項目である理論輸血率が有意に低下する結果が得られたことを発表した。この試験は、がん化学療法施行により貧血を呈したがん患者を対象とした二重盲検比較試験で実施し、エポエチン ベータ36000IU またはプラセボを週1回、12週間投与し、有効性、安全性を評価したもの。エポエチン ベータを投与した患者では、主要評価項目の理論輸血率がプラセボを投与した患者と比較して有意に低下した。また、エポエチン ベータを投与した患者において認められた副作用は、血圧上昇・高血圧、便秘、下痢等が主なものだったという。なお、今回の試験に基づく効能・効果の追加承認申請は2009年中に実施の予定とのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.chugai-pharm.co.jp/generalPortal/pages/detailTypeTable.jsp;jsessionid=2LGDVIDHSCD1MCSSUIHCFEQ?documentId=doc_14288&lang=ja

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メルビン錠の単独療法が可能に 一部変更承認取得

大日本住友製薬株式会社は20日、経口血糖降下剤「メルビン錠 250mg」(一般名:メトホルミン塩酸塩)において、2 型糖尿病患者に対する単独療法を可能とする「効能・効果」および「用法・用量」の一部変更承認を取得したと発表した。メトホルミン塩酸塩は、1961 年に国内承認を取得したビグアナイド系経口血糖降下剤。現在は2 型糖尿病の治療に用いられているが、1977 年からは、「SU 剤が効果不十分な場合あるいは副作用等により使用不適当な場合に限る」という使用制限が加えられていた。一方、欧米では、メトホルミン塩酸塩の有用性を示す多数の臨床成績が集積され、かつ、日本のような使用制限はなく2 型糖尿病治療の第一選択薬に位置付けられ、幅広く処方されている。今回の一部変更承認は、医療現場からの要望に応えたもので、2 型糖尿病患者に対する薬剤の選択肢が増加することにより、糖尿病治療への効果が期待される。詳細はプレスリリースへhttp://www.ds-pharma.co.jp/news/pdf/ne20090520.pdf

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胃腸障害に対する効果的な薬剤投与順とは?:DIAMOND試験

プライマリ・ケアにおける胃腸障害の管理では、制酸薬→H2受容体拮抗薬(H2RA)→プロトンポンプ阻害薬(PPI)の順に投与する治療戦略がその逆順で投与する戦略よりも費用効果に優れることが、オランダで実施されたDIAMOND試験によって明らかとなった。プライマリ・ケアでは、胃腸障害治療は医師の作業負担が大きく、医療コストもかさむことがわかっている。コンセンサスやガイドラインはあるものの、最も費用効果に優れる初期管理の戦略は依然として経験に基づくものだという。Radboud大学ナイメーヘン医療センターのCorine J van Marrewijk氏が、Lancet誌2009年1月17日号で報告した。制酸薬→H2RA→PPIと、PPI→H2RA→制酸薬を比較研究グループは、プライマリ・ケアにおける新規発症胃腸障害の初期管理の治療戦略として、ステップアップ戦略(制酸薬→H2RA→PPIの順で投与)とステップダウン戦略(PPI→H2RA→制酸薬の順で投与)の比較を行う二重盲検無作為化対照比較試験を実施した。対象は、新規発症の胃腸障害でかかりつけ医を受診した18歳以上の症例とした。2003年10月~2006年1月までに664例が登録され、ステップアップ群に341例が、ステップダウン群には323例が無作為に割り付けられた。各ステップの治療期間は4週とし、症状が持続するか4週以内に再発した場合に次のステップへ進むこととした。主要評価項目は6ヵ月後における症状軽減および費用効果であった。費用効果はステップアップ群で優れるが、最初にPPIを投与したほうが効果発現は早い評価可能なエンドポイントに到達した症例は、ステップアップ群が332例、ステップダウン群が313例であった。脱落のおもな理由はフォローアップの非完遂であった。6ヵ月後の治療成功例はステップアップ群が238例(72%)、ステップダウン群は219例(70%)であり、有意な差は認めなかった(オッズ比:0.92、95%信頼区間:0.7~1.3)。医療コストの平均値は、ステップダウン群の245ユーロに対しステップアップ群は228ユーロと費用効果が有意に優れた(p=0.0008)。この差はおもに薬剤費によるものであった。少なくとも1つ以上の有害事象が報告された症例は、ステップアップ群が94例(28%)、ステップダウン群は93例(29%)と同等であった。全例に主症状以外の胃腸症状、下痢、便秘、味覚障害などの軽度の有害事象が見られた。著者は、「プライマリ・ケアにおける新規発症胃腸障害の初期治療では、ステップアップ戦略とステップダウン戦略の治療成功率は同等であったが、前者のほうが費用効果が優れた」と結論する一方で、「プライマリ・ケアでは重要な情報」として、「PPIを最初に投与する経験的な戦略のほうが効果が早く現れ、とくに胃食道逆流症状の見られる症例でその傾向が顕著であった。ジェネリック医薬品の制酸薬を用いた場合は、費用効果の差は小さくなった」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ファスティックとスターシスにチアゾリジン系薬剤との併用療法の効能追加

アステラス製薬株式会社は24日、味の素株式会社と共同で開発を進めていた速効型食後血糖降下剤「ファスティック」と「スターシス」(一般名:ナテグリニド)のチアゾリジン系薬剤との併用療法について22日に効能追加の承認を取得したと発表した。ファスティックとスターシスは、いずれもアミノ酸誘導体からなる速効・短時間型のインスリン分泌促進作用を特長とする経口血糖降下剤。1999年8月の発売以来、2型(インスリン非依存型)糖尿病における食後血糖推移の改善を効能効果として、単剤あるいはα-グルコシダーゼ阻害剤、ビグアナイド系薬剤との併用で糖尿病治療に供されていた。今回、同社がチアゾリジン系薬剤との併用療法に関する日本人での臨床試験を実施し、効能追加の承認取得に至ったという。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/post-38.html

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新規抗肥満薬tesofensine、減量効果は既存薬の約2倍

新規抗肥満薬tesofensineの0.5mg/日24週投与は、既存薬の約2倍という有望な体重減少効果と良好な有害事象プロフィールを示すことが、デンマークで実施された無作為化第II相試験で判明した。同国Copenhagen大学生命科学部門のArne Astrup氏が、Lancet誌2008年11月29日号(オンライン版2008年10月23日号)で報告した。0.5mg群と1.0mg群で効果は同等、有害事象は0.5mg群で良好既存の抗肥満薬の平均的な体重減少効果は、食事療法とプラセボの組み合わせに比べ6ヵ月で3~5kgほどしかなく、肥満者にはより効果的な薬物療法が必要とされている。tesofensineはノルアドレナリン、ドパミン、セロトニンのシナプス前での取り込み阻害薬であり、パーキンソン病およびアルツハイマー病の肥満患者において意図せずに体重減少効果を認めた。この試験では食事療法やライフスタイルの変更指導は行っておらず、14週の投与で約4%とシブトラミンやリモナバンと同等の体重減少効果が得られ、血圧や気分への影響は見られなかった。そこで、研究グループはデンマークの5つの肥満管理センターにおいて、肥満患者に対するtesofensineの有効性および安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験を実施した。203例の肥満患者(BMI: 30~40kg/m2)が、エネルギー制限食とともにtesofensine 0.25mg(52例)、0.5mg(50例)、1.0mg(49例)あるいはプラセボ(52例)を1日1回24週間投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は体重の変化率とした。無作為割り付けされた全例のうち少なくとも1回は実薬あるいはプラセボの投与を受けた患者を解析対象とした(intention-to-treat解析変法)。161例(79%)が治療を完遂した。24週後の平均体重減少率は、プラセボ群の2.0%(SE 0.60)に対し、tesofensine 0.25mg群は4.5%(SE 0.87)、0.5mg群は9.2%(SE 0.91)、1.0mg群は10.6%(SE 0.84)と有意な改善効果が認められた(p<0.0001)。tesofensine投与群で高頻度に見られた有害事象は、ドライマウス、悪心、便秘、固形便、下痢、不眠であった。24週の治療終了後に、tesofensine 0.25mg群と0.5mg群はプラセボ群に比べ収縮期/拡張期血圧の有意な上昇は認めなかったが、0.5mg群では心拍数が7.4拍/分増加した(p=0.0001)。著者は、「tesofensine 0.5mg群と1.0mg群は既存の抗肥満薬の約2倍の体重減少効果を示し、両群間に大きな効果の差は認めなかった。0.5mg群は、1.0mg群に比べ血圧上昇、有害事象、治療中止例が少なく、血行動態に及ぼす影響はシブトラミンと同等かわずかに低かった」とまとめ、「tesofensine 0.5mg/日の24週投与は、有望な体重減少効果と良好な有害事象プロフィールを示した。今後、大規模な第III相試験で確認する必要がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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ひょっとして抗うつ薬のほうが禁煙補助薬より有効かも?

世界中で一般的に用いられている禁煙治療の薬剤は3つある。1つは経口禁煙補助薬バレニクリン酒石酸塩(チャンピックス;2008年1月承認)、あとの2つは抗うつ薬で、bupropionとノルトリプチリン(ノリトレン)である。このうちノルトリプチリンをめぐる試験結果で、禁煙補助剤+ノルトリプチリンが、禁煙補助剤単独よりも有効とする報告があり、「それが事実なら、禁煙補助剤+ノルトリプチリンはバレニクリンよりも有効では」と、英国バーミンガム大学プライマリ・ケア/公衆衛生部門のPaul Aveyard氏らが、最適治療選択を目的とするプラセボ対照無作為化試験を実施した。BMJ誌2008年5月31日号(オンライン版2008年4月27日号)掲載より。禁煙補助剤+ノルトリプチリンをプラセボ対照無作為化試験試験は英国の国民健康保険NHS(National Health Service)対象の禁煙治療クリニックで行われた。1日10本以上喫煙する18歳以上の禁煙希望者を試験適格者として参加者を募集。ノルトリプチリン・禁煙補助剤禁忌や他の抗うつ薬を服用している者を除外し対象として901例が選定された。参加者は無作為で禁煙補助剤+ノルトリプチリン(445例)もしくはプラセボ服用群(456例)に割り付けられた。禁煙補助剤の選択は対象者に行ってもらい、服薬を厳守してもらえるよう書面での情報提供や看護師による電話相談サポートを提供して実施。服薬は、禁煙開始日の1~2週前から開始。最初の3日間は25mg/日、続く4日は50mg/日、以後最大投与量として75mg/日を最大6週間、その後1週間減量投与し、試験トータル8週間として行われた。主要評価項目は6ヵ月時点で禁煙が続いているか、副次評価項目は12ヵ月時点で禁煙が続いているか、薬物の使用状況、副作用重症度評価、ニコチン離脱症状と喫煙衝動。併用療法の有効性確認できず6ヵ月時点で禁煙できていたのは、ノルトリプチリン群72例(16%)、プラセボ群55例(12%)、相対リスクは1.34(95%信頼区間:0.97~1.86)だった。 12ヵ月時点では、ノルトリプチリン群49例(11%)、プラセボ群40例(9%)で、相対リスクは1.87(0.84~1.26)。禁煙開始日以降に禁煙補助剤+薬剤(両群中央値75mg/日)を行っていたのは、ノルトリプチリン群337例(79%)、プラセボ群325例(75%)で、服薬の割合はプラセボ群のほうがノルトリプチリン群よりも低かった。副作用に関しては、口渇や便秘を訴えたのはノルトリプチリン群のほうがプラセボ群よりも顕著に高かった。ただし発汗や薬物効果への疑念を呈した割合については僅差だった。喫煙衝動は両群ともほぼ変わらない。ただしノルトリプチリン群のほうが抑うつ感や不安が抑えられていたが、離脱症状のスコアは全体として相違はなかった。これらからAveyard氏は、「ノルトリプチリン、禁煙補助剤はいずれもそれぞれに禁煙治療に効果的である。しかし組み合わせての併用療法は単独療法ほどの効果はなく、併用療法が単独療法より効果的であるとのエビデンスは得られなかった」と結論づけた。

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オピオイド誘発性便秘にmethylnaltrexoneは有効

モルヒネなどオピオイド鎮痛薬の治療は癌など進行疾患の疼痛緩和に有効な半面、患者を苦しめる副作用として便秘を伴う。本論は、そうしたオピオイド誘発性便秘を改善するために開発されたmethylnaltrexoneの、第III相試験の報告。皮下投与の安全性と効果を検証した米国サンディエゴ・ホスピス・緩和医療研究所のJay Thomas氏らは、「methylnaltrexoneは速やかに排便を誘発し、オピオイドの鎮痛作用への影響もないようだ」としている。NEJM誌2008年5月29日号より。末期患者133例を対象にプラセボ対照試験methylnaltrexoneは末梢のμオピオイド受容体拮抗剤で、血液脳関門を通過しにくいため、中枢神経でのオピオイドの鎮痛効果に影響しないとされている。試験では、オピオイドを2週以上投与されてオピオイド誘発性便秘となり、安定用量オピオイドと応急的な緩下薬服用を3日以上続けても便通のない末期患者133例を、2週間にわたり1日おきにmethylnaltrexone(0.15mg/kg)皮下投与またはプラセボを投与するよう無作為に割り付けた。共通主要転帰は、試験薬の第1回服用後4時間以内の便通(排便)と、初回服用から4回のうち2回以上で4時間以内に便通があったこととした。この段階を完了した患者は、その後3ヵ月の非盲検延長試験に進んだ。初回投与で4時間以内に48%が便通再開第1回服用後4時間以内に便通があったのは、methylnaltrexone群の48%に対してプラセボ群では15%だった。また最初の4回の服用のうち2回以上で、4時間以内に応急的な緩下薬なしで便通があったのは、methylnaltrexone群の52%に対してプラセボ群は8%だった(両群間比較のP

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prucaloprideは重度の慢性便秘に有効で心血管作用も見られない

本論は、重度の慢性便秘に対し開発された選択的高親和性5-hydroxytryptamine4(5-HT4)受容体作動薬prucaloprideの有効性を検証していた、米国・メイヨー・クリニックのMichael Camilleri氏らによる第III相試験の報告。「prucaloprideは腸機能を高め、重度慢性便秘症状を軽減した。心配されていた重大な心血管への影響はなかった」としている。NEJM誌2008年5月29日号より。12週間にわたり620例対象にプラセボ対照試験prucalopride の有効性は、重度の慢性便秘(自発的な完全排便が週2回以下)の患者620例を対象に12週間にわたり検討された。多施設共同無作為化プラセボ対照試験検討並行群間第3相試験。患者は1日1回、プラセボまたはprucalopride 2mgないしprucalopride 4mgを投与。主要有効性エンドポイントは、12週間で、平均して週3回以上の自発的な完全排便があった患者の割合。副次的有効性エンドポイントは、患者記入による日記とアンケートの結果とした。また有害事象と臨床検査数値、心血管作用についてもモニタリングされた。排便回数も重症度の実感も有意に改善週3回以上の自初的な完全排便があった患者の割合は、prucalopride 2mg群では30.9%、prucalopride4mg群は28.4%だったが、プラセボ群は12.0%だった(両群間比較のP

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自己血糖測定は無益であるばかりか患者のうつ病悪化をもたらす

自己血糖測定は、血糖コントロールに有益な影響を及ぼさないばかりか、うつ病を増幅する――。新規の非インスリン治療の2型糖尿病患者を対象に、セルフモニタリングが、血糖コントロール、および患者の治療に対する姿勢、満足度に及ぼす効果を検討していたMaurice J O’Kane氏らESMON studyグループは、このような調査結果を報告した。BMJ誌2008年5月24日号(オンライン版2008年4月17日号)掲載より。セルフモニタリング群と対照群を1年間追跡ESMON studyは、自己血糖測定を行うよう介入を行った群(セルフモニタリング群)と非介入群(対照群)とを比較するプロスペクティブな無作為化試験である。70歳未満で新規に2型糖尿病と診断された184例(うち男性は111例)が参加。二次性糖尿病患者、インスリン治療対象者、自己血糖測定の経験がある者は除外された。セルフモニタリング群(96例、うち男性55例)と対照群(88例、うち男性56例)に無作為化された参加者は、3ヵ月に1回の間隔で1年間追跡調査が行われた。両群とも、同一内容の教育プログラムを受講した後、セルフモニタリング群にのみ付加的な教育が課せられた。主要評価項目は、HbA1c、心理的指標、経口血糖降下剤服用の有無、BMI、および報告された低血糖の頻度。両群間の基線値はほとんど差がなく、平均年齢はセルフモニタリング群57.7歳(SD:11.0)vs. 対照群60.9歳(11.5)。HbA1cは8.8%(2.1)vs. 8.6%(2.3)。ただしBMIについては、34(7)vs. 32(6.2)でセルフモニタリング群のほうが高かった。追跡期間中いずれに時点でも有意差認められず結果は、追跡調査期間中のいずれの時点でも、両群間に有意差は認められなかった。HbA1c(SD)は6.9%(0.8)vs. 6.9%(1.2)(P=0.69、差異に対する95%信頼区間:0.25%~0.38%)。BMIは33.1(6.4)vs. 31.8(6.0)(基線BMIに対する調整P=0.32)。経口血糖降下薬の使用や低血糖の頻度の報告数にも有意差は認められなかった。ただし、うつ病に関するスコア(well-beingアンケートに基づくサブスケールで測定)がセルフモニタリング群で6%高まっていた(P=0.01)。これらの結果から、「自己血糖測定が、血糖コントロールに有益な影響を及ぼすことはない。かえってうつ病悪化に結びつく」と結論している。

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