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肥満者の体重減少、チルゼパチドvs.セマグルチド/NEJM

 非糖尿病の肥満成人において、チルゼパチドはセマグルチドと比較して72週時の体重および胴囲の減少に関して優れていることが、米国・Weill Cornell MedicineのLouis J. Aronne氏らSURMOUNT-5 Trial Investigatorsによる第IIIb相無作為化非盲検並行群間比較試験「SURMOUNT-5試験」の結果で示された。チルゼパチドおよびセマグルチドは、肥満の管理に非常に有効な薬剤である。肥満であるが2型糖尿病は有していない成人において、チルゼパチドとセマグルチドの有効性および安全性を直接比較した臨床試験はこれまでなかった。NEJM誌オンライン版2025年5月11日号掲載の報告。ベースラインから72週時までの体重の変化率を比較 SURMOUNT-5試験は、米国およびプエルトリコの32施設で実施された。対象は、BMI値30以上、またはBMI値27以上かつ肥満関連合併症(高血圧症、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患)を1つ以上有する18歳以上の成人で、糖尿病と診断されている患者、肥満に対する外科手術の既往または予定のある患者などは除外した。 適格患者をチルゼパチド(10mgまたは15mg)群またはセマグルチド(1.7mgまたは2.4mg)群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ週1回72週間皮下投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから72週時までの体重の変化率とした。重要な副次エンドポイントは、ベースラインから72週時までの体重減少が少なくとも10%、15%、20%および25%以上の患者の割合、および胴囲の変化量などとした。体重減少率20.2%vs.13.7%、体重減少25%以上の患者割合31.6%vs.16.1% 2023年4月21日~2024年11月13日に、適格性を評価した948例のうち751例が無作為化され、そのうち750例が少なくとも1回の治験薬投与を受けた。 72週時の体重変化率の最小二乗平均値は、チルゼパチド群-20.2%(95%信頼区間[CI]:-21.4~-19.1)、セマグルチド群-13.7%(-14.9~-12.6)であり、体重に関してチルゼパチドのセマグルチドに対する優越性が示された(推定治療差:-6.5%ポイント、95%CI:-8.1~-4.9、p<0.001)。 72週時の体重がベースラインから少なくとも10%、15%、20%および25%以上減少した患者の割合は、チルゼパチド群がそれぞれ81.6%、64.6%、48.4%、31.6%、セマグルチド群が60.5%、40.1%、27.3%、16.1%であった。 72週時の胴囲の変化量の最小二乗平均値は、チルゼパチド群で-18.4cm(95%CI:-19.6~-17.2)、セマグルチド群で-13.0cm(-14.3~-11.7)であった(p<0.001)。 有害事象は、チルゼパチド群で76.7%、セマグルチド群で79.0%の患者で報告され、両群における主な有害事象は胃腸障害(悪心、便秘、下痢など)であった。重篤な有害事象はそれぞれ4.8%、3.5%に認められた。

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チルゼパチド72週の投与で体重が5%以上減少/リリー・田辺三菱

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、4月11日に発売された持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド[皮下注アテオス])について、プレスセミナーを開催した。プレスセミナーでは、肥満症の基礎情報や肥満症の要因、社会的課題とともに、チルゼパチドの臨床試験であるSURMOUNT-J試験の概要が説明された。肥満症治療は薬物治療・外科治療という新しいアプローチに 「複合的な要因からなる慢性疾患『肥満症』のアンメットニーズ」をテーマに、脇 裕典氏(秋田大学大学院医学系研究科 代謝・内分泌内科学講座 教授)が、肥満症の病態や関係する諸課題について説明した。 過体重およびBMI25以上の肥満者は、全世界で約25億人、わが国では約2,800万人と推計され、成人男性のとくに40~50代で割合が高く、最近では小児の肥満も増加している。 肥満の問題としては、BMI30以上40未満の人では、BMI23以上25未満を基準(ハザード比=1)としたときの全死因の死亡リスクが男性1.36および女性1.37という男女別のコホート研究もある1)。また、肥満はメタボリックドミノの上流に位置し、将来的に慢性腎臓病や糖尿病など重大な健康障害を来すとされている。 肥満および肥満症の要因としては、遺伝的、生理的、環境などさまざまな要因が複合的に関与しているにもかかわらず「自己管理の問題」と考えられがちで、肥満・肥満症のある人は、職場や教育現場のみならず、医療現場においても「スティグマ(偏見や差別)」に直面することがある。また、肥満者自身が自分自身の責任と考えてしまう「セルフ・スティグマ」も指摘されている。 肥満症の定義は、肥満(BMIが25以上)かつ、(1)肥満による耐糖能異常、脂質異常症、高血圧などの11種の健康障害(合併症)が1つ以上ある、または(2)健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に肥満症と診断される。わが国の肥満症の特徴として内臓脂肪蓄積型の肥満が多く、BMIが高値でなくても肥満関連健康障害を伴いやすいという。 肥満症治療の目的は、「減量により健康障害・健康障害リスクを改善し、QOLの改善につなげること」であり、治療では、減量目標を設定し、食事・運動・行動療法を行ったうえで3~6ヵ月を目安に各治療成果を評価する。そして、減量目標が未達成の場合に肥満症治療食の強化や薬物療法、外科療法の導入を考慮するとガイドラインでは明記されている。 ただ、課題としてLook AHEAD研究から集中的な生活習慣介入で短期的に減量しても、長期的に減量した体重を維持できたのは半数未満で、元の体重より増加した例も認められたことから、生活習慣の改善のみで減量した体重を維持するのは困難であることが示唆されている2)。 これは、食欲抑制作用の低下により、満腹感が低下した結果、食欲が亢進すること、基礎代謝が低下し、エネルギー消費量が減少することが指摘され、生活習慣への介入だけでは不十分な可能性もある。 最後にまとめとして、脇氏は「肥満症治療の目標は、減量ではなく、肥満に関連する健康障害の改善とそのリスクの低減であり、QOLの改善である。新たな治療選択肢の登場によって肥満症治療はアプローチや支援を見直すときを迎えている」と従来の治療介入だけではない肥満症治療の選択肢を語り、説明を終えた。72週時点のチルゼパチド投与群は体重が5%以上減少 「第III相臨床試験結果からみる持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド」登場の肥満症市場における意義」をテーマに門脇 孝氏(虎の門病院 院長)が、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの特徴、作用機序、SURMOUNT-J試験の概要について説明を行った。 チルゼパチドは、2024年12月27日に国内製造販売承認を取得し、2025年4月11日に発売された。対象者は、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られないBMI27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害(高血圧、脂質異常症など)を有する者またはBMI35以上の者。 用法・用量について成人では、週1回10mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回10mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量できる。ただし、最大用量は週1回15mgまでとなっている。 この作用機序は、中枢神経系における食欲調節と脂肪細胞における脂質などの代謝亢進により、体重減少作用を示すとされている。 今回の適応承認のために行われたSURMOUNT-J試験は、2型糖尿病を有しない日本人肥満症患者を対象としたプラセボ対照、二重盲検比較試験。主要評価項目は投与72週時点のベースラインからの体重減少であり、チルゼパチド10mg/15mgを週1回投与したときのプラセボ投与に対する優越性を検討した。 対象者は、BMIが27以上35未満で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する患者、またはBMIが35以上で1つ以上の肥満に関連する健康障害を有する患者225例。 その結果、主要評価項目である体重ベースラインから投与72週時までの変化率および投与72週時点の体重について5%以上減少していた患者の割合は、チルゼパチド10mg群および15mg群において、プラセボ群に対し優越性が検証された。投与後72週時の体重のベースラインからの平均変化率は、プラセボ群1.7%減(n=75)に対して、チルゼパチド10mg群17.8%減(n=73)、15mg群22.7%減(n=77)だった。 副次評価項目である投与72週時点の体重が7%以上、10%以上、15%以上、または20%以上減少した患者の割合は、いずれのチルゼパチド群でもプラセボ群と比較し、有意に高かった。 また、ベースラインから投与72週時点のBMIの変化量では、チルゼパチド10mg群では-5.8、15mg群では-7.7、プラセボ群では-0.6だった。そのほか、“Impact of Weight on Quality of Life-Lite Clinical Trials Version”(肥満に関連する生活の質を評価するために開発された20項目)では、チルゼパチド10mg群、15mg群のいずれもプラセボ群と比較し、改善していた。 安全性に関しては、ほかのGLP-1受容体作動薬と同様に、便秘、発熱、悪心、下痢、嘔吐、食欲減退など、主な有害事象は消化器系の症状であった。試験中に確認されたすべての有害事象の割合は、プラセボ群69.3%(n=75)に対し、チルゼパチド10mg群83.6%(n=73)、15mg群85.7%(n=77)であり、死亡などの重篤なものは報告されなかった。

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肝線維化を有するMASH、週1回セマグルチドが有効/NEJM

 中等度または重度の肝線維化を有する代謝機能障害関連脂肪肝炎(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis:MASH)の治療において、プラセボと比較してGLP-1受容体作動薬セマグルチドの週1回投与は、肝臓の組織学的アウトカムを改善するとともに、有意な体重減少をもたらすことが、米国・Virginia Commonwealth University School of MedicineのArun J. Sanyal氏らが実施したESSENCE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年4月30日号で報告された。37ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 ESSENCE試験は、中等度~重度の肝線維化を有するMASHの治療におけるセマグルチドの有効性と安全性の評価を目的とする進行中の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年5月~2023年4月に日本を含む37ヵ国253施設で患者を登録した(Novo Nordiskの助成を受けた)。今回は、最初の800例に関する中間解析の結果を公表した。 年齢18歳以上、生検で確定したMASHで、ステージF2またはF3の肝線維化を有する患者を、セマグルチド(2.4mg)を週1回皮下投与する群またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は240週とし、この中間解析は72週目に行った。 主要エンドポイントは、肝線維化の悪化を伴わない脂肪肝炎の消失、および脂肪肝炎の悪化を伴わない肝線維化の改善とした。脂肪肝炎の消失、肝線維化の改善とも有意に優れた セマグルチド群に534例、プラセボ群に266例を割り付けた。全体の平均(±SD)年齢は56.0(±11.6)歳で、女性が57.1%、白人が67.5%であった。平均BMIは34.6(±7.2)で、2型糖尿病患者が55.9%含まれた。肝線維化はステージF2が31.3%、ステージF3が68.8%だった。 72週の時点で、肝線維化の悪化を伴わない脂肪肝炎の消失の割合は、プラセボ群が34.3%であったのに対し、セマグルチド群は62.9%と有意に高かった(推定群間差:28.7%ポイント[95%信頼区間[CI]:21.1~36.2]、p<0.001)。 また、脂肪肝炎の悪化を伴わない肝線維化の改善を示した患者の割合は、プラセボ群の22.4%に比べ、セマグルチド群は36.8%であり有意に良好だった(推定群間差:14.4%ポイント[95%CI:7.5~21.3]、p<0.001)。消化器系有害事象の頻度が高い 副次エンドポイントの解析では、体重の変化量(セマグルチド群-10.5%vs.プラセボ群-2.0%、推定群間差:-8.5%ポイント[95%CI:-9.6~-7.4]、p<0.001)、および脂肪肝炎の消失と肝線維化の改善の両方を達成した患者の割合(32.7%vs.16.1%、16.5%ポイント[10.2~22.8]、p<0.001)が、セマグルチド群で有意に優れた。 一方、36-Item Short Form Health Survey(SF-36)の体の痛み(bodily pain)のベースラインから72週目までの平均変化量(0.9 vs.-0.5、推定群間差:1.3%ポイント[95%CI:0.0~2.7]、p=0.05)は、セマグルチド群で痛みの程度が低い傾向がみられたが、統計学的に有意な差を認めなかった(事前に、p<0.0045を満たす場合に有意差ありと判定することと定めたため)。 重篤な有害事象は、セマグルチド群で13.4%、プラセボ群でも13.4%に発現した。試験中止に至った有害事象は、それぞれ2.6%および3.3%に認めた。最も頻度の高い有害事象は両群とも消化器系のもので、悪心(36.2%vs.13.2%)、下痢(26.9%vs.12.2%)、便秘(22.2%vs.8.4%)、嘔吐(18.6%vs.5.6%)がセマグルチド群で多かった。 著者は、「MASHの生物学的特性に基づくと、脂肪肝炎が消失すると肝線維化が抑制されると予測され、線維化のステージが高いことは不良なアウトカムと関連するため、ステージの低下はとくに重要と考えられる」「本試験の知見と先行研究の結果を統合すると、ステージF2またはF3の肝線維化を有するMASHの治療におけるセマグルチドの有益性が支持される」「セマグルチドは肝硬変患者にも安全に使用できるが、肝硬変における有効性は確立していないため、MASH患者では肝硬変のスクリーニングを行って、それに応じた治療を行うことが重要である」としている。

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統合失調症の新たなアプローチとなるか? ムスカリン受容体作動薬KarXTのRCTメタ解析

 統合失調症は、陽性症状、陰性症状、認知関連症状を特徴とする複雑な精神疾患である。xanomelineとtrospiumを配合したKarXTは、ムスカリン受容体を標的とし、ドパミン受容体の遮断を回避することで、統合失調症治療に潜在的な有効性をもたらす薬剤である。エジプト・ Assiut UniversityのHazem E. Mohammed氏らは、KarXTの有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMC Psychiatry誌2025年3月31日号の報告。 2024年10月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)をPubMed、Scopus、Web of Science、Cochraneデータベースより、システマティックに検索した。KarXTによる治療を行った成人統合失調症患者を対象としたRCTを分析に含めた。エビデンスの質の評価はGRADEフレームワーク、バイアスリスクはCochrane Risk of Bias 2.0ツールを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・4つのRCT、690例をメタ解析に含めた。・KarXTは、プラセボと比較し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計スコアの有意な低下(平均差:−13.77、95%信頼区間[CI]:−22.33〜−5.20、p=0.002)、陽性症状および陰性症状のサブスケールスコアの有意な改善を示した。・PANSSスコアの30%以上低下の割合も有意な増加が認められた(リスク比:2.15、95%CI:1.64〜2.84、p<0.00001)。・さらに、KarXTは良好な安全性プロファイルを有しており、嘔吐や便秘などの副作用は、軽度かつ一過性であった。・注目すべきことに、KarXTは、従来の抗精神病薬で頻繁に認められる体重増加や錐体外路症状との有意な関連が認められなかった。 著者らは「KarXTの独特な作用機序および忍容性は、統合失調症治療における満たされていないニーズを解決する可能性を示唆している。今後の研究において、KarXTの長期的有効性、遅発性の副作用、既存治療との有効性比較を検討していく必要がある」と結論付けている。

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患者ナビゲーション導入でリスクを有する患者の大腸内視鏡検査受診率がアップ

 患者に対する個別サポートが、大腸がんリスクを有する患者の大腸内視鏡検査受診率を高めるのに役立つことが新たな研究で示唆された。免疫学的便潜血検査(FIT検査)によるスクリーニングで大腸がんリスクが判明した後に大腸内視鏡検査を受けた人の割合は、患者ナビゲーターが割り当てられた人の方が、単に検査結果を知らされただけの人よりも高かったという。米アリゾナ大学がんセンター人口科学副所長のGloria Coronado氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に4月1日掲載された。 患者ナビゲーションとは、米国の複雑な医療制度の中で患者が円滑かつ適切に医療を受けられるように支援する制度のことであり、その役割を担う人は患者ナビゲーターと呼ばれる。米疾病対策センター(CDC)による地域予防サービスガイド(Guide to Community Preventive Services)では、患者ナビゲーションの導入が推奨されている。しかし、患者ナビゲーションが、大腸がんリスクを有する人における大腸内視鏡検査の受診率向上に寄与しているのかどうかは不明である。 大腸がん検診では、毎年のFIT検査か、10年ごとの大腸内視鏡検査を選択することができる。大腸内視鏡検査は侵襲的な検査であり、準備として強力な下剤を服用する必要があるため、多くの人がFIT検査を選択する。しかし、便の中に血液やがんの遺伝物質が見つかった場合には、ただちに大腸内視鏡検査を受ける必要がある。Coronado氏は、患者がフォローアップの大腸内視鏡検査を遅らせた場合、大腸がんで死亡するリスクが7倍高くなると指摘する。Coronado氏は、「FIT検査で異常が確認された患者は、大腸がんの発症リスクやがんが進行してから発見されるリスクが高まる。そのため、できるだけ早く大腸内視鏡検査を受けることが重要だ」と話す。 Coronado氏らは今回、FIT検査の結果が陽性だった患者を対象に、患者ナビゲーターを割り当てることで大腸内視鏡検査の受診率が向上するのかを調査した。対象として、米ワシントン州西部で32カ所のクリニックを運営する連邦政府認定医療センターであるシーマーコミュニティーヘルスセンターの50〜75歳の患者985人が登録された。対象者は、患者ナビゲーターを割り当てられる群(患者ナビゲーション群)と、検査結果だけを知らされる通常ケア群にランダムに割り付けられた。 患者ナビゲーターは、FIT検査で陽性と判定された患者が大腸内視鏡検査を受けるようにするために、平日の午前8時から午後6時の間に最大で6回、患者に連絡を取ることを試みた。12回試みても連絡が取れなかった患者には、フォローアップの手紙を送付した。通常ケア群に対しては、最大2回の電話と大腸内視鏡検査の予約を促す手紙の送付という従来の方法が取られた。 967人を対象にITT解析が行われた(患者ナビゲーション群479人、通常ケア群488人)。このうち、フォローアップの大腸内視鏡検査を受けた患者の割合は、患者ナビゲーション群で55.1%、通常ケア群で42.1%であり、患者ナビゲーション群の方が高かった(リスク差13.0%、95%信頼区間6.5〜19.4)。また、患者ナビゲーション群では、通常ケア群に比べて大腸内視鏡検査を受けるまでの期間も平均27日短縮された。 こうした結果を受けてCoronado氏は、「本研究により、患者ナビゲーターがFIT検査で異常が認められた患者を支援することでフォローアップの大腸内視鏡検査の受診率が向上し、検査を受けるまでの時間も短縮されることが明らかになった。このプロセスを通じてのガイダンスにより、がんが早期発見され、患者の生存率が向上する可能性がある」と述べている。また同氏は、「患者ナビゲーションを標準化することで、クリニックは患者に検査結果を通知し、大腸内視鏡検査の重要性を理解できるように支援する手順を確立できる」と話している。

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終末期の「身の置きどころのなさ」への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第100回

終末期の「身の置きどころのなさ」への対応今回は記念すべき100回ですね。先日、これまでの連載を見返す機会があったのですが、いろんな話題を扱ってきたなあと感慨深かったです。ここまで続けてこられたのも、質問や感想を下さる読者の皆さまのおかげです。どうもありがとうございます。これからも緩和ケアの臨床に役立つ話題や、知っておくとより緩和ケアに興味が湧くことを発信してまいります。今回の質問お看取りが近い患者さん、身の置きどころがない様子で苦しそうで、家族も心配しています。入院を勧めることも考えるのですが、予後が短いことは確実なので、できれば最後まで自宅で過ごさせてあげたい気持ちもあり、悩んでいます。今回は100回記念らしい、緩和ケアの実践で非常に重要なご質問を頂きました。この「終末期の身の置きどころのなさ」は、緩和ケアの教科書では「Terminal restlessness」と表現されています。多くの場合、患者はせん妄のような意識障害の状態で、じっと横になっていられないような様子です。見るからに苦しそうで、話すことのできる患者さんなら「きつい、きつい」と言っている方を多く経験しました。ご家族が心配するのも当然です。こうした状況に対して、まずは介入可能な病態や症状を検討します。と言っても、多くの場合は原疾患が進行し、日単位で亡くなりそうな状況だからこそ生じている症状なので、原因を見つけて介入したら改善した、といった成功体験はありません。ただ、見逃すと申し訳ない点、具体的には不快な身体症状(痛み、呼吸困難など)の緩和は十分か、尿閉や便秘はないか、薬剤によるせん妄が生じていないか、を改めて確認します。可逆的な要因がないことを確認し、予後が日単位であれば、薬剤の投与を考えるのが現実的な対応策です。具体的にはベンゾジアゼピンと抗精神病薬との投与を検討します。ベンゾジアゼピン単剤だとせん妄を悪化させる可能性があるため、ハロペリドールなどの抗精神病薬を併用することが多いです。病状的に内服が難しいことが大半なので、皮下もしくは静脈注で投与します。この場合のベンゾジアゼピンは深い鎮静というよりも、少しうとうとさせることで身の置きどころのない症状を和らげることを企図したものです。具体的にはミダゾラムを調節型鎮静と同じように使用します。在宅だとすぐに注射薬が準備できない場合もあるかもしれません。その際はジアゼパムやブロマゼパムの坐薬で急場をしのぐことも検討します。ひとまず緊急避難的に症状を落ち着けたうえで、ご家族と丁寧な対話をするよう心掛けましょう。お看取りが近いことの共有や、ケアの目標についてこれまでを振り返りながら考えることも大切です。身の置きどころのなさは「緩和ケア的緊急事態」です。ぜひ、対応法を復習してみてください。今回のTips今回のTips終末期の身の置きどころのなさは「緩和ケア的緊急事態」。適切に症状を緩和し、本人・家族とコミュニケーションを図りましょう。

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第261回 ほぼほぼ生き残り確定の零売薬局(後編) 憲法違反の指摘や「処方箋医薬品以外はOTC医薬品とするシンプルな制度」導入の提案など零売規制への反対相次ぐ

衆議院厚生委員会の附帯決議で法律の方針が180度転換こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。前回、久しぶりに零売について書いたので、以前利用した零売薬局を久しぶりに訪れてみました(「第127回 アマゾン処方薬ネット販売と零売薬局、デジタルとアナログ、その落差と共通点(後編)」参照)。以前と同様、腰痛用にロコアテープを購入、ついでに「零売薬局が規制でなくなる、と聞いたのですが?」と店頭の薬剤師(女性)に聞いてみました。すると、「そういう話は我々も聞いていますが、法律やルールに則ってやっていますので、なくならないと思います。実際、ニーズも高く都内の店舗もここ数年で増やしていますし」との答え。国会での細かな議論については知らないようでしたが、最前線の薬剤師に規制への危機感は感じられませんでした。さて、厚生労働省が今回の薬機法等改正法案で「原則禁止」にしようと目論んでいた零売が、衆議院厚生委員会において「セルフメディケーション推進の政策方針に逆行することがないよう」「国民の医薬品へのアクセスを阻害しないよう」といった附帯決議が採択されたことで法律の方針が180度転換、生き残りに向けて光が見えてきました。その背景にはいったい何があったのでしょうか。「法改正が将来にわたり違憲のそしりを受けないか慎重に審議すべき」と立民議員まず考えられるのは「憲法違反」の可能性です。前回書いたように、今年1月、零売規制が薬剤師の権利を侵害するなどとして、薬剤師らが国を相手取り訴訟を起こしました。原告の薬剤師の一人は記者会見で、裁判で「これまで国から出された通知には法的根拠がないことの確認を求める。さらに、零売の規制は憲法上の『職業選択の自由』や『表現の自由』を侵害し、国民の医薬品アクセスも阻害するものと主張」するとしていました。担当弁護士も「当該改正法が憲法違反に該当すると考える余地がある」と説明しました。また、4月11日付の薬事日報によれば、4月9日の衆院厚労委員会において立憲民主党の早稲田 夕季議員は、零売は「緊急時の手段として非常に有益で、法制化してまで対処する必要があるのか疑問」と訴えるとともに、零売に関する行政訴訟を5月に控えていることを踏まえ、「法改正が将来にわたり違憲のそしりを受けないか慎重に審議すべき」と話したそうです。こうした意見に対して、福岡 資麿厚生労働相は「緊急時等のやむを得ない場合に薬剤師と相談した上で、必要最小量の数量を販売する本来の趣旨に則って経営している薬局はこれまで通り継続できる。必要最小限かつ合理的な規制措置で行っていきたい」、「施行に向けて関係者の意見を聞きながら、省令やガイドライン等の策定により周知を図りたい」、「零売は国民の緊急時に医薬品へのアクセスを確保するために必要な制度だ。改正法が成立した際にはこの考えのもとで運用し、求められる対応も分かりやすい形で示したい」などと答えたとのことです。法案提出時の「原則禁止」の“勢い”が完全に削がれた答弁と言えます。うがった見方をすれば、法案提出後に内閣法制局に再確認して、「憲法違反」の可能性を指摘されたのかもしれません。厚労省が処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売、いわゆる零売を公式に認めたのは2005年厚労省が処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売、いわゆる零売を公式に認めたのは、2005年とそんなに昔のことではありません。それ以前は法令上での明確な規定がなく、一部薬局では医療用医薬品の販売がごく普通に行われていました。零売を容認するきっかけとなったのが2005年4月の薬事法改正です。医薬品分類を現在の分類に刷新するとともに「処方箋医薬品以外」の医療用医薬品の薬局での販売を条件付きで認める通知を発出しました。同年3月30日の厚労省から発出された「処方せん医薬品等の取扱いについて」(薬食発第0330016号 厚生労働省医薬食品局長通知)は、「処方せん医薬品以外の医療用医薬品」は、「処方せんに基づく薬剤の交付を原則」とするものであるが、「一般用医薬品」の販売による対応を考慮したにもかかわらず、「やむを得ず販売せざるを得ない場合などにおいては、必要な受診勧奨を行った上で」、薬剤師が患者に対面販売できるとしました。零売に当たっては、1)必要最小限の数量に限定、2)調剤室での保管と分割、3)販売記録の作成、4)薬歴管理の実施、5)薬剤師による対面販売――の順守も求められることになりました。2005年4月施行の薬事法改正は、処方箋医薬品の零売を防ぐことも目的の一つでした。それまでの「要指示医薬品」と、全ての注射剤、麻薬、向精神薬など、医療用医薬の約半分以上が新たに「処方箋医薬品」に分類されたわけですが、逆に使用経験が豊富だったり副作用リスクが少なかったりなど、比較的安全性が高い残りの医薬品が「処方箋医薬品以外の医薬品」(ただし原則処方箋必要)に分類され、零売可能となったわけです。現在、日本で使われる医療用医薬品は約1万5,000種類あり、このうち半分の約7,500種類は処方箋なしでの零売が認められています。鎮痛剤、抗アレルギー薬、胃腸薬、便秘薬、ステロイド塗布剤、水虫薬など、コモンディジーズの薬剤が中心で、抗生剤や注射剤はありません。また、比較的新しい、薬効が強めの薬剤も含まれません(H2ブロッカーはあるがPPIはない等)。その後、通知によって不適切な広告・販売等で零売を行う薬局を牽制2005年の通知の内容は2014年3月18日に厚労省から発出された「薬局医薬品の取扱いについて」(薬食発0318第4号 厚生労働省医薬食品局長通知)に引き継がれました。しかし、本通知の趣旨を逸脱した不適切な広告・販売方法が散見されるとして、2022年8月5日、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売方法等の再周知について」(薬生発0805第23号 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)が発出され、「処方箋がなくても買える」、「病院や診療所に行かなくても買える」といった不適切な広告・販売方法等で零売を行う薬局を問題視、牽制してきました。その延長線にあるのが今回の薬機法等改正案というわけです。とはいうものの、そもそも明確な法規制がなく、昔から“既得権”として行われ、薬の販売方法として一定の役割を担っていた零売を、原則禁止としてしまうのは無理があるように感じます。厚労省もそのことは重々わかっていたからこそ、これまで法律ではなく通知による“緩い”コントロールに留めてきたのでしょう。重大な健康被害があったわけでもないのに、法規制は明らかに“行き過ぎ”の感は否めません。今年に入って零売規制への批判高まる零売生き残りの光が見えてきたもう一つの背景として考えられるのは、マスコミなど世間からの批判の声です。薬機法等改正案が国会に提出される直前の2月5日、日本総研は調査部主任研究員の成瀬 道紀氏によるレポート「零売規制の妥当性を問う」を公表しました。同レポートは、「零売は、病院や診療所を受診せずとも処方箋医薬品以外の医療用医薬品を入手でき、患者にとって利点がある。とりわけ、処方箋医薬品以外の医療用医薬品は、OTC医薬品(市販薬)よりも費用対効果が高い製品が多い」とそのメリットを説く一方、「零売は販売時に医師の関与がないため、薬剤師による患者指導が不十分な場合は、患者の健康に悪影響を与え得る懸念が指摘されている」と問題点にも言及、その上で、「今求められるのは、第1に、薬剤師の職能の尊重である。もちろん、薬剤師自身が自己変革に取り組む努力も不可欠である。第2に、医療用医薬品というわが国特有の区分を廃止してダブルスタンダードを解消し、処方箋医薬品以外の医薬品はOTC医薬品として薬局で薬剤師が堂々と販売できるようにすることである」と提言しました。ちなみに、日本総研の成瀬氏は3月13日に開かれた参議院予算委員会公聴会に公述人として出席、「零売の原則禁止は改正案から削除すべき項目であり、改正すべきは関連通知」と述べています。「零売という言葉は明治時代には存在し、当時は薬局間での薬の売買の方法だった」3月17日付の日本経済新聞朝刊も、「自分の病は自分でも診よう」と題する大林 尚編集委員の記事を掲載、処方箋医薬品以外の医療用医薬品(いわゆる現在、零売可能な医薬品)について、「7千種類の類似薬は原則、処方箋不要にしてOTC薬にひっくるめる」という成瀬氏の改革案を紹介しています。それによって、「患者は安くて効き目のよい薬を身近に入手できる。これは、類似薬を健康保険の適用から外す保険制度改革と表裏の関係にある。最大の効用は年間1兆円の保険医療費の節約だ。医師はその資格にふさわしい病の治療に専念し、患者は処方箋目的の『お薬受診』をやめる。医療機関に入る初診・再診料や処方箋料、また調剤薬局に取られる技術料のムダも省ける」と書くとともに、「ところが厚労省は供給側重視を鮮明にしている。類似薬に処方箋を求める規制について行政指導から法で縛る制度への格上げをもくろみ、今国会に関連法案を出した。与野党を問わず、政治家がこの規制強化の不合理さを主体的に理解すれば法案修正は可能である。硬い岩盤をうがつべく、立法府の力をみせてほしい」と、零売規制が時代に逆行した政策だと指摘しています。さらにAERA DIGITALも3月20日、「『零売薬局』なら処方箋ナシで『病院の薬』が買える ニーズがあるのになぜ『規制強化』が進むのか」と題する記事を配信しています。同記事は零売が規制強化に向かう現状をリポートするとともに、「零売という言葉は明治時代には存在し、当時は薬局間での薬の売買の方法だった」という歴史についても言及、金城学院大薬学部の大嶋 耐之教授の「昔の薬剤師は、街のお医者さん的な存在で、薬だけではなく病気や健康に関するさまざまな相談を聞いてアドバイスをしてくれた。利用者のセルフメディケーション(自分自身の健康に責任を持ち、軽度な不調は自分で手当てすること)にも貢献していたんです。そうした関係が成り立っているなら、零売は『患者にとって良いこと』とも言えると思います」というコメントを紹介、「規制強化の動きの一方で、零売のメリットを訴える声もある。▽医療費削減につながる▽病院で処方される薬より安い場合があり、経済的負担が軽減する▽どうしても医療機関に行けないときに助けてもらえる、など」と零売擁護を訴えています。日本総研は「処方箋医薬品以外はOTC医薬品とするシンプルな制度」を提案こう見てくると、零売規制は、単に「薬局に処方箋医薬品以外の医療用医薬品を売らせるかどうか」という単純な問題ではなく、医師や薬剤師の役割分担、国民のセルフメディケーションの意識改革、無駄な医療費削減等にも関わる大きな問題だということがわかります。ことは、OTC類似薬の保険適用外しとも関連してきます。前述したように日本総研の成瀬氏は、レポート「零売規制の妥当性を問う」で医療用医薬品という日本特有の区分を廃止し、処方箋医薬品以外はOTC医薬品とする諸外国と同様のシンプルな制度とすることを提案、「医療用医薬品という区分が廃止され、ダブルスタンダードが解消されれば、零売という概念そのものがなくなる」と書いています。もっとも、それが実現した時に重要な役割を担うはずの薬剤師の団体、日本薬剤師会自体は薬機法等改正法案に賛成し、零売にも否定的で弱腰な点が気になりますが……。「処方箋医薬品以外はOTC医薬品とするシンプルな制度」は一見大胆なようですが、とても理にかなった提案だと思います。薬機法等改正案成立後の政省令や通知類、そして社会保障改革に関する自民党、公明党、日本維新の会の3党協議で検討が進められるOTC類似薬の保険外しなど(「第253回 石破首相・高額療養費に対する答弁大炎上で、制度見直しの“見直し”検討へ……。いよいよ始まる医療費大削減に向けたロシアン・ルーレット」参照)、医薬品を巡る今後の議論の行方に注目したいと思います。

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事例022 モビコール配合内用剤の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説処方箋にて投与したマクロゴール4000、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム(商品名:モビコール)配合内用剤HD(以下「同剤」と略す)が、「突合点検結果連絡書」にてB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)が適用されて査定になりました。審査結果の理由などには、過剰と判断されたのは調剤薬局のコメントに基づくものと記載されていました。同剤は年齢に応じて投与量が異なるため、年齢区分に気を付けて添付文書を調べてみると投与量は添付文書の範囲内でした。審査結果の理由などをよく確認すると、調剤薬局コメントに「夕食後1回」と記載されていたことが確認できました。医師に確認すると、服用方法を1日3回に変更したが、処方箋入力時の誤りに気付かなかったとのことでした。同剤の1日量としては添付文書の範囲内ですが、1回量としては過剰になっていたのです。調剤薬局のコメントという思わぬところから過剰であると判断されて査定となったものと推測します。既存の処方入力システムでは、添付文書の用法用量を超える場合にはアラートが表示される仕様になっていましたが、服用方法までチェックできていませんでした。処方入力システムには服用量と方法の組み合わせにより過剰処方になりかねない院内採用薬剤に対して、警告を表示させるよう改修しました。医師には、医学的に必要がある場合には、その旨のコメント入力をいただくことをお願いして査定対策としました。

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フェリチン値から必要のない鉄剤を見極めて中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第66回

 鉄欠乏性貧血の治療において、「いつまで鉄剤を続けるべきか」「どのような投与方法が最適か」というのは薬剤師による処方提案の重要なポイントです。今回の症例では、高齢患者さんの鉄剤服用の必要性を血液検査データから見極め、さらに適切な投与スケジュールについて最新の英国ガイドラインを参考に提案しました。とくに注目すべきは、鉄剤投与後のヘプシジン上昇が次の鉄吸収を阻害するメカニズムに基づいた「1日1回投与」や「隔日投与」の有効性です。新しい知見では、従来の「分2投与」から「隔日投与」へ変更することで、患者さんの服薬負担を減らしながらも同等かそれ以上の治療効果が期待できることが示されています。貧血が改善し、フェリチン値が十分な状態であれば、鉄剤の中止も視野に入れることができます。患者情報95歳、女性(外来患者)ADL自立、要介護1、デイサービスなど利用なし身長:145cm、体重:40kg基礎疾患高血圧、鉄欠乏性貧血、低カリウム血症服薬管理通院時は娘と来局、自己管理可能処方内容1.アムロジピンOD錠2.5mg 1錠 分1 朝食後2.エチゾラム0.5mg 1錠 分1 就寝前3.クエン酸第一鉄錠50mg 2錠 分2 朝夕食後4.アスパラカリウム錠 1錠 分1 朝食後処方提案までの経過この患者さんは、鉄欠乏性貧血に対してクエン酸第一鉄を服用中でしたが、「薬の粒が大きく服薬が困難」との相談があり、評価を実施しました。お薬手帳から少なくとも半年以上の鉄剤服用が確認できましたが、客観的な血液検査値による貧血状態は不明でした。検査データを確認したところ、以下の結果が得られました。<介入当初の採血結果>ヘモグロビン:12.8mg/dL(正常範囲内)平均赤血球容積:97.5(正常範囲内)フェリチン:203.5ng/mL(十分量の鉄貯蔵を示す)血清鉄:71μg/mL(正常範囲内)総鉄結合能:277(正常範囲内)これらの検査結果から、患者さんの鉄欠乏性貧血は改善し、貯蔵鉄も十分蓄積されていることが明らかになりました。なお、消化器症状(嘔気や便秘悪化)などの鉄剤による副作用はありませんでした。鉄剤の服用方法について調査したところ、英国消化器学会のガイドラインでは、分2投与より分1投与が推奨され、隔日投与も許容されていることも確認しました1)。鉄投与後にヘプシジンが上昇し、約24時間鉄吸収が低下するため、1日1回投与や隔日投与のほうが吸収効率が高いという新たな知見に基づく推奨です。処方提案とその後の経過服薬情報提供書を用いて、医師に以下の内容を提案しました。1.検査結果に基づく客観的評価フェリチン値が203.5ng/mLと鉄貯蔵が十分であるヘモグロビン値も12.8mg/dLと正常範囲内である2.服薬アドヒアランスの問題粒子径が大きく服用困難である患者の服薬負担軽減の必要性がある3.提案内容鉄欠乏性貧血の改善が認められるため、鉄剤の服用を中止または隔日投与に変更することで、服薬回数を減らして負担を軽減医師の診察で、提案内容と検査結果を踏まえ、フェリチン値も充足していることから鉄剤の服用継続の必要性がないと判断され、処方中止となりました。その後、患者さんからは動悸や息切れ、倦怠感などの貧血症状は報告されず、経過は良好です。服薬回数減少とともに服薬負担が軽減され、QOL向上に繋がりました。1)Snook J, et al. Gut. 2021;70:2030-2051.

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第262回 蠕動運動を促し、炎症を防ぐ腸神経の圧感知タンパク質を発見

蠕動運動を促し、炎症を防ぐ腸神経の圧感知タンパク質を発見加圧や運動に応じて腸の運動を調節し、病的な腸の炎症を鎮める神経のタンパク質が同定されました1)。平滑筋の息が合った収縮と弛緩、すなわち蠕動運動によって食物が腸を下っていきます。神経細胞が腸の蠕動を支えることは100年以上も前から知られていますが、いったいどうやってそうするのかはよくわかっていませんでした2)。免疫細胞のイオンチャネルPIEZO1が呼吸で加わる力を感知する役割を担い、肺での炎症を誘発することが先立つ研究で示されています3)。PIEZO1が胃腸の蠕動にも寄与するかもしれないとハーバード大学の免疫学の助教授Ruaidhri Jackson氏らは想定し、マウスやヒトの腸の神経を調べてみました。すると、PIEZO1を生成する遺伝子の活発な発現が認められました。神経伝達物質のアセチルコリンを放出して腸の筋肉の収縮を誘発する興奮性神経でPIEZO1は盛んに発現していました。正常なマウスの腸は加わる圧が高まるほど収縮します。一方、PIEZO1遺伝子を欠くマウスの腸組織は圧が加わっても収縮できず、PIEZO1が加圧センサーとして腸の動きを助けることが判明しました。マウスのPIEZO1発現細胞を活性化したところ、腸内の小さなガラス玉が通常のマウスに比べて2倍早く排出されました。一方、腸のPIEZO1発現神経を薬品で働かないようにすると消化がよりゆっくりになりました。すなわちPIEZO1発現神経は腸の内容物の排出を早める働きを担うようです。揺れや他の臓器との接触によって腸に圧を加えうる運動が排便を促すことが随分前から知られています。その作用にもPIEZO1が関わっているらしく、PIEZO1遺伝子を有するマウスは回し車を10分も走れば排便しましたが、PIEZO1が損なわれると運動に応じた腸の運動亢進が認められませんでした。炎症性腸疾患(IBD)も炎症刺激により腸の運動を高めることが知られています。IBDマウスでもPIEZO1は排便を促す働きを担うようであり、PIEZO1が働かないようにすると排便が遅くなりました。しかしPIEZO1を失って生じる影響は排便の遅れだけではなく、先立つ研究で免疫細胞のPIEZO1欠損が肺炎症を減らしたのとはいわば真反対の副作用をもたらしました。すなわち腸神経のPIEZO1欠損は意外にもIBD症状の悪化を招きました。PIEZO1欠損マウスはPIEZO1が正常なマウスに比べてより痩せ、腸粘液やその生成細胞を失っていきました。腸神経PIEZO1欠損マウスでの炎症悪化は、平滑筋の活性を促すのみならず抗炎症作用も担うアセチルコリンが乏しくなることに起因するようです。IBDが引き起こす炎症でPIEZO1が活動することで腸神経は炎症を鎮めるアセチルコリンをどうやら盛んに作れるようになり、同時にIBDの特徴である腸運動の亢進ももたらすのだろうとJackson氏は予想しています2)。今回の成果は腸神経のPIEZO1の活性調節でIBDが治療できるようになる可能性を示唆しています。また、便秘や下痢などの腸運動が絡む病気の治療の開発にも役立ちそうです。ただし、PIEZO1は諸刃の剣で、場所柄で一利一害あるようです。腸神経のPIEZO1欠損がIBD悪化を招きうることを示した今回の結果とは対照的に、免疫系のマクロファージのPIEZO1を省くことはIBDの進行をむしろ防ぎうることが最近の別の研究で示されています4)。その結果は上述した肺での免疫細胞のPIEZO1の働きと一致します。PIEZO1狙いの治療はその存在場所によって働きが異なりうることを念頭において取り組む必要があるのでしょう。 参考 1) Xie Z, et al. Cell. 2025 Mar 20. [Epub ahead of print] 2) Study Identifies Gut Sensor That Propels Intestines To Move / Harvard Medical School 3) Solis AG, et al. Nature. 2019;573:69-74. 4) Wang T, et al. Cell Mol Gastroenterol Hepatol. 2025:101495.

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OTC薬の乱用と精神症状発症リスクとの関係

 市販(OTC)薬の入手しやすさは、現代の医療システムにおいて重要な役割を果たしており、個人が軽度の健康課題を自身で管理できるようになっている。しかし、覚醒剤、下剤、鎮痛薬、麻薬の含有製剤など、一部のOTC薬には、誤用や乱用につながりやすい薬理学的特性がある。不適切な用量、期間、適応症に伴う誤用、精神活性作用やその他の違法な目的のための非治療的な使用に伴う乱用は、依存症や中毒につながるリスクがある。イタリア・G. D'Annunzio UniversityのAlessio Mosca氏らは、既存のエビデンスを統合し、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、充血除去薬の誤用と精神症状の発症との関係を包括的に検討した。Current Neuropharmacology誌オンライン版2025年2月18日号の報告。 PubMed、Scopus、Web of Scienceのデータベースを用いて関連研究を特定し、システマティックレビューを実施した。検索ワードには、ジフェンヒドラミン、プロメタジン、クロルフェニラミン、ジメンヒドリナート、デキストロメトルファン、プソイドエフェドリン、コデインベースの鎮咳薬、乱用、誤用、渇望、依存症を用いた。レビューおよび動物実験の研究は除外した。PRISMAガイドラインに従い、データを収集した。 主な結果は以下のとおり。・2,677件中46件の関連研究を分析した。・抗ヒスタミン薬、デキストロメトルファン、その他のOTC薬を乱用すると、妄想、幻覚、思考障害などの精神症状を引き起こす可能性が示唆された。・とくにデキストロメトルファンは、精神疾患の慢性傾向と関連していた。・他の薬剤は、一般的に急性の薬剤誘発性精神症状を引き起こした。 著者らは「OTC薬の乱用は、公衆衛生に幅広い影響を及ぼす。OTC薬の乱用およびそれが重大な精神疾患を引き起こす可能性に対処するために、意識向上や具体的な介入の必要性が示唆された」と結論付けている。

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わが国初のエムポックス治療薬「テポックスカプセル200mg」【最新!DI情報】第36回

わが国初のエムポックス治療薬「テポックスカプセル200mg」今回は、テコビリマト水和物「テコビリマト水和物(商品名:テポックスカプセル200mg、製造販売元:日本バイオテクノファーマ)」を紹介します。本剤は、エムポックスも適応とするわが国初の抗ウイルス薬で、公衆衛生上の危機に瀕した際の治療薬として期待されています。<効能・効果>痘そう、エムポックス、牛痘、痘そうワクチン接種後のワクチニアウイルスの増殖による合併症の適応で、2024年12月27日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人および小児には、以下の用法および用量で14日間、食後に経口投与します。体重13kg以上25kg未満:テコビリマトとして200mgを1日2回12時間ごと体重25kg以上40kg未満:テコビリマトとして400mgを1日2回12時間ごと体重40kg以上120kg未満:テコビリマトとして600mgを1日2回12時間ごと体重120kg以上:テコビリマトとして600mgを1日3回8時間ごと <安全性>副作用として、頭痛(10%以上)、浮動性めまい、上腹部痛、腹部不快感、下痢、悪心、嘔吐(1%以上)、ヘマトクリット減少、ヘモグロビン減少、白血球減少症、血小板減少症、食欲減退、肝機能検査値上昇、不安、うつ病、不快気分、易刺激性、パニック発作、注意力障害、味覚不全、脳波異常、不眠症、片頭痛、傾眠、錯感覚、心拍数増加、動悸、口腔咽頭痛、腹部膨満、アフタ性潰瘍、口唇のひび割れ、便秘、口内乾燥、消化不良、おくび、鼓腸、胃食道逆流性疾患、排便回数減少、口の錯感覚、触知可能紫斑病、全身性そう痒症、発疹、そう痒性皮疹、関節痛、変形性関節症、悪寒、疲労、びくびく感、倦怠感、疼痛、発熱、口渇(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、天然痘、エムポックス、牛痘に対して使用されます。2.この薬は、痘そうワクチン接種後のワクチニアウイルスの増殖による合併症に使用されます。3.この薬は、症状が発現した後、速やかに使用します。<ここがポイント!>エムポックスは、1970年にザイール(現:コンゴ民主共和国)で初めてヒトへの感染が確認されたオルソポックスウイルス属のエムポックスウイルスによる感染症です。以前は「サル痘」と呼ばれていましたが、2023年に感染症法上の名称がエムポックスに変更されました。エムポックスウイルスには、コンゴ盆地型(クレードI)と西アフリカ型(クレードII)の2系統があります。クレードIはクレードIIに比べて死亡率が高く、それぞれ10%程度および1%程度の致死率が報告されています。最近では、アフリカを中心にクレードIの蔓延があり、WHOは2024年8月に国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言しました。日本国内では、2022年に国内1例目の患者が報告されて以降、2025年3月までに合計252例が報告されています。天然痘(痘そう)は、1980年5月にWHOによって世界根絶が宣言され、日本でも定期種痘が中止されています。そのため、多くの人々が天然痘に対して免疫を持っておらず、今後、生物テロなどによる天然痘ウイルスの再出現によるアウトブレイクが発生した場合には、その対策が重要な課題となる可能性があります。テコビリマトはオルソポックスウイルス属のエンベロープの形成および細胞外への放出に関与するVP37タンパク質と宿主細胞の輸送タンパク質(Rab9 GTPaseおよびTIP47)との相互作用を阻害することにより、感染細胞からのウイルス放出を阻害します。本剤は、痘そう、エムポックス、牛痘、痘そうワクチン接種後のワクチニアウイルスの増殖による合併症に対するヒトでの有効性を評価する試験は行われていませんが、非臨床試験において抗ウイルス作用が示されたことから、主に公衆衛生上の危機に瀕した際、または危機に瀕する見込みがある際に使用される薬剤として承認されました。なお、本剤は、欧州などでの承認申請において提出した資料に基づき、審査および調査を迅速に進めるよう厚生労働省より依頼があったものです。また、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」の支援を受けて開発されました。

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各非定型抗精神病薬の抗精神病薬関連便秘リスク〜米国FDA有害事象報告

 抗精神病薬に関連する便秘は、日常診療において多くの患者にみられる副作用であるが、その研究は十分に行われているとはいえない。便秘は、患者の身体的健康に影響を及ぼすだけでなく、疾患負担に対する心理的ストレスを増大させる要因となるため、一層の注意が求められる。中国・Affiliated Guangji Hospital of Soochow UniversityのSidi He氏らは、米国FDA有害事象報告システムより、抗精神病薬関連の便秘に関する潜在的なリスクを分析した。Expert Opinion on Drug Safety誌オンライン版2025年2月17日号の報告。 FDA有害事象報告システム(FAERS)データベースより、2017年1月〜2022年12月に報告された抗精神病薬関連便秘の有害事象報告を収集した。報告オッズ比(ROR)および95%信頼区間(CI)は、症例/非症例法を用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・期間中に報告された便秘症例562件は、非定型抗精神病薬に起因する副作用であった。・アリピプラゾールとziprasidoneを除く他の非定型抗精神病薬は、便秘リスクと有意な関連が認められた(各々、p<0.05)。・RORは、amisulprideが最も高く(ROR:4.07)、次いでパリペリドン(ROR:2.73)、クエチアピン(ROR:1.83)、クロザピン(ROR:1.61)、オランザピン(ROR:1.50)の順であった。・リスペリドンは、便秘への影響が最も低かった(ROR:0.71)。 著者らは「クロザピン、オランザピン、amisulpride、クエチアピン、パリペリドンは、便秘リスクとの相関が認められた。一方、リスペリドンは、胃腸機能に対する影響が最も少ないことが示唆された。抗精神病薬関連便秘の継続的なモニタリングには、他のデータベースと組み合わせたFAERSデータベース分析が不可欠である」と結論付けている。

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血液検査でIBSの原因食品を特定、症状改善に貢献

 血液検査によって過敏性腸症候群(IBS)患者の症状を引き起こし得る食品を特定し、食事から除去できる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。この血液検査の結果に基づく食事療法を実践したIBS患者の約60%で腹痛が軽減したのに対し、偽(シャム)の食事療法を実践した群ではその割合が約42%にとどまったという。米ミシガン大学消化器病学・肝臓病学主任のWilliam Chey氏らが実施した研究で、詳細は「Gastroenterology」に1月31日掲載された。 Chey氏は、「この血液検査はさらなる検証が必要だが、医療従事者が、個々のIBS患者に最適な食事アドバイスを提供する『精密栄養(プレシジョン・ニュートリション)』のアプローチに一歩近づく可能性がある」と述べている。研究グループによると、特定の食品がIBSの症状を悪化させ、発作を引き起こす可能性があることはよく知られているという。 この血液検査(inFoods IBS)は、18種類の食品に対する被験者の免疫グロブリンG(IgG)抗体レベルを調べることで、IBSの症状を悪化させる可能性のある食品を特定するもの。IgG抗体レベルが上昇を示した食品については、それを食事から除去することで症状が軽減する可能性が高いと考えられる。対象とされた食品は、小麦、オーツ麦、ライ麦、全卵、酵母、牛乳、紅茶、キャベツ、トウモロコシ、グレープフルーツ、蜂蜜、レモン、パイナップルなどであった。 Chey氏らは、IBS患者から提供された血液サンプルで検査を行い、1種類以上の食品がIgG抗体陽性で、1日の平均腹痛強度スコア(11.0点満点)が3.0~7.5点だった238人を、8週間にわたり、血液検査の結果に基づきIgG抗体陽性となった食品を除去する食事療法を実践する群(実験食群)と偽の食事療法を実践する群(シャム食群)にランダムに割り付けた。シャム食群は、例えばクルミにIgG抗体陽性を示した場合には食事からアーモンドを除外するなど、陽性となった食品に近い食品を控えるよう指示された。 223人を対象に解析した結果、主要評価項目とした、治療期間の最後の4週間のうちの2週間以上で腹痛の30%以上の軽減を達成した対象者の割合は、実験食群で59.6%、シャム食群で42.1%であり、両群間に統計学的に有意な差が認められた(P=0.02)。また、IBSのタイプ別(便秘型IBS、混合型IBS〔便秘と下痢を頻回に繰り返す〕)に主要評価項目を達成した対象者の割合を見ると、便秘型IBSでは実験食群67.1%、シャム食群35.8%、混合型IBSでは66%と29.5%であり、どちらのタイプのIBSでも実験食群の方が症状改善の割合が高いことが示された。 研究グループは、「除去食は、抗炎症薬に頼らずにIBSを治療するのに役立つが、広範囲の食品が制限対象となるため実践が難しい場合が多い」と指摘する。それに対し、この血液検査を用いれば、患者個人の検査結果に基づき特定の食品のみを除去のターゲットにすることが可能になる。本論文の上席著者で、米クリーブランド・クリニック消化器疾患研究所のAnthony Lembo氏は、「われわれの食生活は複雑で、症状を誘発し得る食品の特定が困難な場合がある。この血液検査は、IBS患者が自身の症状を悪化させる食品を特定するのに役立つだろう」と述べている。 なお、本研究は、この検査を開発したBiomerica社の資金提供により行われた。また、この血液検査は、現時点では米食品医薬品局(FDA)の認可を受けていない。

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腹部膨満感への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第96回

腹部膨満感への対応緩和ケア領域では、「お腹が張る」という主訴は「腹部膨満感」として議論されます。腹水が原因となることが多いですが、ほかにも便秘や消化管閉塞など、さまざまな要因が考えられます。腹部膨満感を訴える患者に対して、どのようなアプローチをすると良いのでしょうか?今回の質問終末期の肝臓がん患者の訪問診療を担当しています。先日、「お腹が張って苦しい」と相談を受けました。腹水が溜まり緊満していたので、腹水を抜いたのですが、それでもすっきりしないようです。「少しはラクになった」と言うのですが、ほかにどのようなことができるでしょうか?「腹水を抜いたが、すっきりしない腹部膨満感」。私も同じような症例を経験したことがあります。腹水を抜くと腹部膨満感が和らぐことも多いだけに、「きちんと抜けたのになぁ…」と患者さんと一緒にがっかりしました。こうした場合、腹部膨満感の“原因”に立ち返ることが重要です。冒頭でも述べたとおり、腹部膨満感は腹水だけでなく、消化管閉塞、便秘、腸管ガス貯留といった腸内容物の貯留、腹腔内腫瘍の増大といった多くの原因から生じます。そして、さらに腹水の原因を検討すると、がん患者であればがん性腹膜炎が多いものの、肝不全や腎不全などの併存症からも生じます。腹部膨満感の原因が腹水であれば、腹腔穿刺や利尿剤といった対応で解消されるはずですが、そのほかの原因によるものであれば腹水を抜いただけではラクになりません。すべての原因に対するアプローチを説明すると大変な分量になるので、私が「あまり知られていないけれど、試す価値がある」と考える対応法をいくつか紹介しましょう。1)トリアムシノロンの腹腔内注入トリアムシノロンはステロイドの注射薬です。腹水を抜いた後、腹腔内に注入することで腹腔穿刺の間隔が延長したという報告があります1)。腹部膨満が主に腹水によるもので、頻回に腹腔穿刺を要する患者の際は考慮すると良いでしょう。2)消化管閉塞への対応悪性腫瘍の場合は物理的な閉塞を解除することが難しいですが、消化管の分泌抑制効果を期待してオクトレオチドを使ってみるケースがあります。ブチルスコポラミンといった抗コリン薬での代用も可能です。ただ、必ず効果があるわけではないので、期待する効果が得られなければ中止しましょう。3)腹部の筋緊張への対応腹腔内の腫瘤が増大して刺激している、などの原因による、腹部の筋緊張を伴う腹部膨満感です。難治性になりやすく、対応が難しいのですが、腹部の緊張を取る目的でジアゼパムのようなベンゾジアゼピン系や、腹膜への刺激に対する鎮痛補助薬としてリドカインを用いることを検討します。在宅診療の場合、上記に述べたすべてに対応するのは難しいかもしれません。各施設の体制に合わせ、可能な範囲で検討いただければと思います。いずれにせよ、腹部膨満感の“原因”をしっかり考えることが重要です。今回のTips今回のTips腹部膨満感は原因を考え、原因に応じたアプローチをしましょう。1)Mackey JR, et al. J Pain Symptom Manage. 2000;19:193-199.

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非がん性慢性疼痛へのオピオイド、副作用対策と適切な使用のポイント~ガイドライン改訂

 慢性疼痛はQOLを大きく左右する重要な問題であり、オピオイド鎮痛薬はその改善に重要な役割を果たす。一方、不適切な使用により乱用や依存、副作用が生じる可能性があるため、適切な使用が求められている。そこで、2024年5月に改訂された『非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン改訂第3版』1)の作成ワーキンググループ長を務める井関 雅子氏(順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 教授)に、本ガイドラインのポイントを中心として、オピオイド鎮痛薬の副作用対策と適切な使用法について話を聞いた。新規薬剤が追加、特殊な状況での処方や副作用対策などが充実 2017年に改訂された前版の発刊以降に、非がん性慢性疼痛に対して新たに使用可能となった薬剤・剤形が複数登場したことなどから、時代に即したガイドラインの作成を目的として『非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン改訂第3版』が作成された。井関氏は、今回の改訂のポイントとして以下を挙げた。1.新しい薬剤・剤形の追加 前版の発刊以降に慢性疼痛に使用可能となった薬剤として、トラマドール速放部付徐放錠(商品名:ツートラム)、オキシコドン徐放錠※(商品名:オキシコンチンTR錠)が追加され、オピオイド誘発性便秘症に対して使用可能となった薬剤として、ナルデメジン(商品名:スインプロイク)が追加された。 ※:非がん性慢性疼痛に適応を有するのはTR錠のみ2.特殊な状況でのオピオイド鎮痛薬処方の章の追加 妊娠中の患者、高齢患者、腎機能障害患者、肝機能障害患者、睡眠時無呼吸症候群患者、労働災害患者、AYA世代患者へのオピオイド鎮痛薬処方に関するクリニカルクエスチョン(CQ)を新設した(CQ9-1~9-7)。3.構成の変更 オピオイド鎮痛薬は慢性疼痛の管理に幅広く使われることから、オピオイド鎮痛薬への理解を深めてから使用してほしいという願いをこめ、第1章に「オピオイドとは」、第2章に「オピオイド鎮痛薬各論」を配置し、内容を充実させた。なお、オピオイド鎮痛薬の強さは「弱オピオイド(トラマドール、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、コデイン)」「強オピオイド(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル)」に分類し(CQ1-4、p32表6)、使い方や考え方の違い、副作用についてまとめた。4.オピオイド誘発性便秘症への末梢性μオピオイド受容体拮抗薬の追加 オピオイド誘発性便秘症に対し、末梢性μオピオイド受容体拮抗薬のナルデメジンが使用可能となったことから、CQを追加した(CQ5-5)。便秘の管理が重要、ナルデメジンの使用を強く推奨 オピオイド鎮痛薬による治療中には、悪心・嘔吐、便秘、眠気などの副作用が高頻度に出現する。ただし、井関氏は「悪心・嘔吐はオピオイド鎮痛薬の使用開始・増量から2週間以内に発現することが多いため、制吐薬などを使用することで管理可能である」と述べる。本ガイドラインでも、耐性が形成されるため1~2週間で改善することが多いこと、オピオイド鎮痛薬による治療開始時や増量時には制吐薬を予防的に投与することを検討してよいことが記載されている。 一方で、「便秘についてはオピオイド鎮痛薬による治療期間を通してみられるため、管理が重要である」と井関氏は話す。オピオイド誘発性便秘症については、新たに末梢性μオピオイド受容体拮抗薬のナルデメジンが使用可能となっている。そこで、本ガイドラインではCQが設定され、一般緩下薬で改善しないオピオイド誘発性便秘症に対して、ナルデメジンの使用を強く推奨している(CQ5-5)。ナルデメジンを使用するタイミングについて、井関氏は高齢者ではオピオイド鎮痛薬の使用前から、酸化マグネシウムなどの一般緩下薬を使用している場合も多いことに触れ、「まずは酸化マグネシウムなどの一般緩下薬を少量使用し、効果が不十分であれば、増量するよりもナルデメジンの併用を検討するのがよいのではないか」と考えを述べた。突然増強する痛みにオピオイド鎮痛薬は非推奨 非がん性慢性疼痛を有する患者において、突然増強する痛み(がん性疼痛でみられる突出痛とは管理が異なることから区別される)が生じることも少なくない。この突然増強する痛みに対して、本ガイドラインでは「安易にオピオイド鎮痛薬を使用すべきではない。オピオイド鎮痛薬による治療中にレスキューとしてオピオイド鎮痛薬を使用することは、使用総量の増加や乱用につながる可能性が高く、推奨されない」としている。これについて、井関氏は「オピオイド鎮痛薬に限らず、突然増強する痛みに対して即時(数分以内など)に効果がみられる薬剤は存在しないため、痛みの期間と薬効のタイムラグが発生してしまう。なかなか薬で太刀打ちできるものではないため、患部を温める、さすってみるなど、非薬物療法を考慮してほしい」と述べた。また、井関氏は「突然増強する痛みに対して、慢性疼痛に適応のない短時間作用性のオピオイド鎮痛薬をすることは、治療効果が出ないだけでなく、依存や副作用が生じるため避けなければいけない」と指摘した。 井関氏は、オピオイド鎮痛薬の適切な使用に向けて、がん患者のがん性疼痛と非がん性慢性疼痛をしっかり区別することが重要であると話す。がん患者の場合、がん性疼痛以外にも術後の痛み、化学療法後の痛み、放射線治療後の痛みなどさまざまな非がん性慢性疼痛が存在するが、これらを区別せずに強オピオイド鎮痛薬が使用されることが散見されるという。これについて、井関氏は「非がん性慢性疼痛に適応のない強オピオイドの速放性製剤を用いると、血中濃度の変動も大きく、依存になりやすいため非常に危険である」と指摘した。また、がん患者に限らず、たとえば帯状疱疹による痛みに対して「痛いと言われるたびにどんどん増量してしまうのも不適切使用である」とも語った。井関氏は、適切な使用のために「オピオイド鎮痛薬の特性と慢性疼痛という病態をしっかり理解したうえで、オピオイド鎮痛薬を使ってほしい」と述べた。適切な使用のために心がけるべき4つのポイント 最後に、オピオイド鎮痛薬の適切な使用に向けて心がけるべきポイントを聞いたところ、井関氏は以下の4点を挙げた。1.長期投与・高用量を避ける 投与期間は6ヵ月までとし、強オピオイドの場合は標準的にはモルヒネ換算で60mgまで、最大でも90mgまでとする。疼痛が改善して減薬する場合には、短いスパンで観察することなどにより退薬症状を出さないようにする。2.不適切使用を避ける たとえば、がん患者の非がん性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合は、これまでがんに直接起因する痛みへの処方の経験があったとしても、非がん性慢性疼痛に処方するための正規のステップを踏んで、企業のeラーニングを受講して慢性疼痛の知識を持ち、処方資格を得るべきである。がん患者であっても、非がん性慢性疼痛に適応のない速放性製剤を非がん性慢性疼痛に用いることは、依存を招くため許容されない。3.若年患者への処方は慎重に判断する 若年患者では依存症のリスクが高いため、できるだけオピオイド鎮痛薬以外の治療法を検討する。4.QOLを低下させない 眠気が強いようであれば減量する、便秘の対策をしっかりと行うなど、QOLを下げない工夫をする。

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ALK陽性NSCLCへの術後アレクチニブ、日本人サブグループ解析(ALINA)/日本臨床腫瘍学会

 ALK阻害薬アレクチニブは、2024年8月28日に「ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法」に対する適応追加承認を取得している。本承認は、ALK融合遺伝子陽性完全切除非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に実施された国際共同第III相試験「ALINA試験」1)の結果に基づくものである。本試験の用量は、切除不能な進行・再発ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対する承認用量(1回300mg、1日2回)の2倍量となる1回600mg、1日2回であり、日本人集団における安全性や薬物動態に関する解析が求められていた。そこで、ALINA試験の日本人集団の有効性、安全性、薬物動態について解析が行われ、堀之内 秀仁氏(国立がん研究センター中央病院)が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIB〜IIIA(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ(1回600mg、1日2回、2年間または再発まで) 130例(日本人15例)・対照群(化学療法群):シスプラチン(不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビン(3週ごと4サイクルまたは再発まで) 127例(日本人20例)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[その他の評価項目]中枢神経系再発に対するDFS、全生存期間、安全性など[薬物動態解析]アレクチニブとその主要代謝物の血漿中薬物濃度 今回は日本人集団の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・日本人集団の患者背景は全体集団と同様であったが、病期についてStageIBの患者は含まれなかった。StageIB/II/IIIAの割合は、アレクチニブ群0%/13%/87%(全体集団:11%/36%/53%)、化学療法群0%/35%/65%(同:9%/35%/55%)であった。・DFSイベントはアレクチニブ群27%(4例)、化学療法群35%(7例)に認められた(ハザード比:0.47、95%信頼区間:0.13~1.67[全体集団では、同:0.24、0.13~0.43])。・アレクチニブとその主要代謝物の薬物動態パラメータ(Tmax、Cmax、AUC0-8h)について、ALINA試験の日本人集団とALEX試験(切除不能な進行・再発ALK融合遺伝子陽性NSCLC患者を対象とした海外第III相試験)の非日本人集団を比較した結果、いずれも両集団に有意差はみられなかった。・アレクチニブとその主要代謝物のトラフ濃度について、ALINA試験の日本人集団と非日本人集団を比較した結果、両集団に有意差はみられなかった。・日本人集団の安全性の結果は、全体集団と同様であった。日本人集団の全例に少なくとも1件の有害事象が認められたが、その多くはGrade1~2であった。Grade3~4の有害事象はアレクチニブ群33%(5/15例)、化学療法群40%(8/20例)に認められた。・投与中止に至った有害事象は、化学療法群が10%(2/20例)に発現したが、アレクチニブ群は0例であった。ただし、日本人集団ではアレクチニブ群の有害事象による減量が53%(8/15例)と高率であり(全体集団は26%[33/128例])、用量強度(dose intensity)中央値は日本人集団では75%であった(全体集団は99%)。減量に至った有害事象の内訳はCPK増加(2例)、ALT増加、AST増加、血中ビリルビン増加、便秘、湿疹、倦怠感、筋骨格硬直、斑状丘疹状皮疹(各1例)であった。 本結果について、堀之内氏は「日本人患者に対してアレクチニブを1回600mg、1日2回投与した結果、薬物動態パラメータは非日本人集団と同様であった。DFSについて、全体集団と同様に日本人集団でもアレクチニブ群が良好な傾向にあった。日本人患者に対するアレクチニブ1回600mg、1日2回投与は忍容性が良好であり、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。日本人集団の安全性のデータは、全体集団と同様であった」とまとめた。本試験の日本人集団でアレクチニブの減量が多かったことについて、「日本では1回300mg、1日2回の用量での使用に慣れていることから、有害事象が発現した際に減量に至りやすかったのではないかと考えている」と考察した。 本発表後に実施されたプレスリリースセッションでは、有害事象発現時の対応について、堀之内氏は「海外では減量ではなく中断して再開することで、有害事象の管理が可能である場合も存在することが知られており、本試験でも全体集団では減量の前にまず中断して経過をみられている事例が報告されている。有害事象発現時には、まずは中断し、それでも管理が難しい場合に減量とするのが良いのではないか」と考えを述べた。

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第4世代統合失調症治療薬KarXT、その安全性は〜メタ解析

 既存の薬剤とは異なる作用機序、より高い有効性および忍容性を有する新しい抗精神病薬に対するニーズは大きい。2024年9月、米国FDAは、急性期精神症状を伴う成人統合失調症患者を対象とした3つの二重盲検ランダム化プラセボ対照試験に基づきxanomelineとtrospiumを配合したKarXTを、新たな統合失調症治療薬として承認した。xanomelineは、直接的なドーパミンD2受容体阻害作用を持たない、M1/M4ムスカリン受容体二重作動薬である。このxanomelineと末梢ムスカリン受容体拮抗薬であるtrospiumを組み合わせたKarXTは、xanomeline関連の末梢ムスカリン受容体活性化による有害事象を軽減することが示唆されている。藤田医科大学の岸 太郎氏らは、統合失調症患者に対するKarXTの安全性および忍容性アウトカムを明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2025年1月29日号の報告。 急性期精神症状を伴う成人統合失調症患者を対象とした3つの二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のランダム効果モデルペアワイズメタ解析を実施した。 主な内容は以下のとおり。・KarXTは、プラセボと比較し、すべての原因による治療中止、有害事象による治療中止、シンプソンアンガス評価尺度(SAS)スコアの変化、薬原性アカシジア評価尺度(BAS)スコアの変化、体重の変化、BMI変化、血圧変化、血清総コレステロール変化、血糖値変化、QTc間隔の変化および頭痛、傾眠、不眠、めまい、アカシジア、興奮、頻脈、胃食道逆流症、下痢、体重増加、食欲減退の発生率が同等であった。・KarXTは、プラセボと比較し、1つ以上の有害事象、口渇、高血圧、嘔気・嘔吐、消化不良、便秘、血清トリグリセライド上昇の発生率が高かった。・とくにKarXTは有効性に関して、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)総スコア、PANSS陽性症状サブスケールスコア、PANSS陰性症状サブスケールスコアの改善において、プラセボよりも優れた有用性が認められた。

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尿路上皮がんの遺伝子異常に基づく治療薬「バルバーサ錠3mg/4mg/5mg」【最新!DI情報】第34回

尿路上皮がんの遺伝子異常に基づく治療薬「バルバーサ錠3mg/4mg/5mg」今回は、経口FGFRチロシンキナーゼ阻害薬「エルダフィチニブ(商品名:バルバーサ錠3mg/4mg/5mg、製造販売元:ヤンセンファーマ)」を紹介します。本剤は、日本国内で初めてかつ唯一の遺伝子異常に基づく尿路上皮がん治療薬であり、FGFR遺伝子異常を有する患者の予後の改善が期待されています。<効能・効果>本剤は、がん化学療法後に増悪したFGFR3遺伝子変異または融合遺伝子を有する根治切除不能な尿路上皮がんの適応で、2024年12月27日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはエルダフィチニブとして1日1回8mgを2週間経口投与し、それ以降は1日1回9mgを経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。<安全性>重大な副作用として、網膜剥離(12.6%)、角膜障害(5.2%)、高リン血症(78.5%)、重度の爪障害(爪甲剥離症[23.0%]、爪囲炎[11.9%]、爪ジストロフィー[8.1%]など)、手足症候群(30.4%)、急性腎障害(3.0%)があります。その他の副作用は、下痢(54.8%)、口内炎(45.9%)、食欲減退、味覚不全、口内乾燥、脱毛症、皮膚乾燥、爪甲脱落症、ALT増加(いずれも20%以上)、貧血、低ナトリウム血症、ドライアイ、霧視、流涙増加、眼球乾燥症、鼻出血、悪心、便秘、嘔吐、口腔内潰瘍形成、爪変色、爪の障害、疲労、無力症、AST増加、体重減少(いずれも5%以上20%未満)、結膜炎、副甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症、視力低下、視力障害、眼瞼炎、白内障、血管石灰化、鼻乾燥、肝細胞融解、高ビリルビン血症、肝機能異常、腹痛、消化不良、発疹、爪線状隆起、湿疹、乾皮症、そう痒症、皮膚亀裂、爪痛、爪破損、皮膚剥脱、皮膚病変、皮膚毒性、過角化、爪の不快感、皮膚萎縮、粘膜乾燥、血中クレアチニン増加(いずれも5%未満)、手掌紅斑、爪床出血(いずれも頻度不明)があります。本剤は、ラットを用いた胚・胎児発生に関する試験において、胚・胎児死亡、着床後胚損失率高値および催奇形性が報告されています。そのため、妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与されます。妊娠可能年齢にある女性には、服用中および服用中止後1ヵ月間は妊娠を避けるよう指導します。また、男性には、服用中および服用中止後1ヵ月間は避妊するよう指導します。<患者さんへの指導例>1.この薬は、遺伝子異常を持つ線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)というタンパク質の働きを阻害することにより、がん細胞の増殖を抑える抗悪性腫瘍薬です。2.がん化学療法後に増悪したFGFR3遺伝子変異または融合遺伝子を有する根治切除不能な尿路上皮がんに用いられます。3.PD-1/PD-L1阻害薬による治療が可能な場合には、これらの治療が優先されます。4.妊婦または妊娠している可能性のある人は、必ず医師または薬剤師に伝えてください。5.視力の低下など目の異常が現れた場合には、ただちに受診してください。<ここがポイント!>尿路上皮がんは、腎盂、尿管、膀胱、尿道などに発生するがんであり、とくに膀胱に多く認められます。根治的切除が不可能、もしくは転移を有する尿路上皮がんの治療は薬物療法が主体となり、化学療法や免疫チェックポイント阻害薬が用いられます。転移を有する尿路上皮がんと診断された患者の約20%は、FGFR遺伝子異常を有しています。エルダフィチニブは、1日1回経口投与されるFGFRチロシンキナーゼ阻害薬であり、尿路上皮がんに対する日本国内で初めてかつ唯一の遺伝子異常に基づく治療薬です。FGFR1~4のキナーゼ活性を阻害し、FGFR3融合遺伝子を有するヒト膀胱がん細胞株(RT-112およびRT-4)に対して増殖抑制作用を示します。PD-1/PD-L1阻害薬を含む治療歴のあるFGFR遺伝子異常を有する根治切除不能な尿路上皮がん患者を対象とした国際共同第III相試験(BLC3001試験コホート1)において、主要評価項目である全生存期間(OS)の中央値は、本剤群で12.06ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.28~16.36)、化学療法群で7.79ヵ月(95%CI:6.54~11.07)であり、本剤群でOSが有意に延長し、死亡リスクが36%低下しました(ハザード比:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.0050、非層別log-rank検定)。

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3月は心筋梗塞・脳梗塞に要注意!?医療ビッグデータで患者推移が明らかに/MDV

 メディカル・データ・ビジョンは、自社の保有する国内最大規模の診療データベースを用いて急性心筋梗塞と脳梗塞に関するデータを抽出し、それぞれの患者数の月別推移、10歳刻みの男女別患者数、65歳以上/未満の男女別併発疾患患者比率を公表した。調査期間は2019年4月~2024年3月で、その期間のデータがそろっていた377施設を対象とした。2~3月に急増、慢性疾患を併存する患者は要注意 本データを用いて急性心筋梗塞と脳梗塞の患者数と季節性について検証したところ、2019年度が最も高い水準で推移しており、以降の年度はやや低下傾向にあるものの、季節的な変動は共通し、冬季では2~3月に急増する傾向がみられた。「急性心筋梗塞」「脳梗塞」それぞれの患者数月別推移を見る※2020年5月の患者数の落ち込みは、コロナ禍による救急医療の逼迫や、医療機関の受け入れ制限による診断・治療の機会の減少が影響している可能性があるという。 また、65歳以上の心筋梗塞ならびに脳梗塞患者の併存疾患として、男女ともに高血圧症、食道炎を伴う胃食道逆流症、便秘、高脂血症があり、高血圧症については男女ともに6割を超えていた。 この結果を踏まえ、加藤 祐子氏(心臓血管研究所付属病院循環器内科 心不全担当部長/心臓リハビリテーション科担当部長)は、「寒暖差による血圧変動に加え、年度末のストレスや生活リズムの乱れが影響を与えている可能性がある」と指摘。「寒暖差は自律神経のバランスを乱しやすく、血管を収縮させ、血液粘稠度が高くなるなどの変化を起こしやすいと考えられる。冬場は身体活動が低下している人も多い」と説明した。また、自律神経のバランスを保ち、急な気温変化にも堪えない体をつくり、心筋梗塞や脳梗塞の最大のリスクである高血圧のコントロールのためにも、「毎日合計30分はすたすた歩き、収縮期血圧120mmHg未満(リラックスした状態で測定)を目指しましょう」とコメントを寄せている。

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