106.
15年前の腹腔内の忘れ物pixabayより使用例えば緊急手術時、腹腔内にガーゼや針などが忘れられて残ってしまい、それが何年も後になって膿瘍や腹膜炎を発症して……という事例が報告されます。そのため、閉創前にガーゼの数などをきっちりと数える必要があります。Kastiunig T, et al.Intra-abdominal foreign body as unexpected discovery mimicking suspicious malignancy.J Surg Case Rep. 2021 Jun; 2021(6): rjab248.今回報告されたのは、「え、それを忘れちゃったの!?」という1例です。63歳の男性が、吐き気、嘔吐、便秘で入院してきました。既往歴は、15年前の虫垂切除術くらいです。腹部CTを撮影すると、回腸末端近くの右腹部に、腹部症状の原因となっている腫瘤性病変がありました。開腹手術を受けると、3×5cmの異物が見つかりました。愛護的に除去されました。さて、これは一体なんだろうか……。「あれ、これってゴム手袋じゃない?」そう、しわくちゃになった手術用手袋が、腹腔内に残っていたのです。15年前の虫垂切除術で、一体どのタイミングで手袋が腹腔内に残留していたのか、謎です。閉創前に「へい、あとはよろしく!」と手袋を脱いでポイと腹腔内に投げたわけではないでしょうけど……。術後経過は良好で、患者さんは後遺症なく退院することができました。ちなみに、腹部外科医人生で、1~2回くらいは”置き忘れ”を経験するとされているので1)、どれだけ注意していても、最後の最後で起こり得るインシデントだということを認識する必要があります。また、緊急手術ではそのリスクが高くなります2)。さらに、大量出血があると視覚的に見逃しのリスクが増えますので、やはり頻度が高くなるそうです。1)Szymocha M, et al. Leaving a foreign object in the body of a patient during abdominal surgery: still a current problem. Przegl Chir. 2019;91:35–40.2)Sonarkar R, et al. Textiloma presenting as a lump in abdomen: a case report. Int J Surg Case Rep. 2020;77:206–9.