サイト内検索|page:9

検索結果 合計:929件 表示位置:161 - 180

161.

コロナワクチン接種後の脳静脈血栓症、VITT併存で重症化/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種後の脳静脈血栓症は、ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)が併存すると、これを伴わない場合に比べより重症化し、非ヘパリン抗凝固療法や免疫グロブリン療法はVITT関連脳静脈血栓症の転帰を改善する可能性があることが、英国・国立神経内科・脳神経外科病院のRichard J. Perry氏らCVT After Immunisation Against COVID-19(CAIAC)collaboratorsの調査で示された。研究グループは、これらの知見に基づきVITT関連脳静脈血栓症の新たな診断基準を提唱している。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月6日号で報告された。VITT有無別の転帰を評価する英国のコホート研究 CAIAC collaboratorsは、VITTの有無を問わず、ワクチン接種後の脳静脈血栓症の特徴を記述し、VITTの存在がより不良な転帰と関連するかを検証する目的で、多施設共同コホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 COVID-19ワクチン接種後に脳静脈血栓症を発症した患者の治療に携わる臨床医に対し、ワクチンの種類や接種から脳静脈血栓症の症状発現までの期間、血液検査の結果にかかわらず、すべての患者のデータを提示するよう要請が行われた。 脳静脈血栓症患者の入院時の臨床的特徴、検査結果(血小板第4因子[PF4]のデータがある場合はこれを含む)、画像所見が収集された。除外基準は設けられなかった。 VITT関連の脳静脈血栓症は、入院期間中の血小板数の最低値が<150×109/L、Dダイマー値が測定されている場合はその最高値が>2,000μg/Lと定義された。 主要アウトカムは、VITTの有無別の、入院終了時に死亡または日常生活動作が他者に依存している患者(修正Rankinスコア3~6点[6点=死亡])の割合とされた。また、VITTの集団では、International Study on Cerebral Vein and Dural Sinus Thrombosis(ISCVT)に登録された脳静脈血栓症の大規模コホートとの比較が行われた。主要アウトカム:47% vs.16% 2021年4月1日~5月20日の期間に、英国43施設の共同研究者から脳静脈血栓症99例のデータが寄せられた。このうち4例は、画像で脳静脈血栓症の明確な所見が得られなかったため解析から除外された。残りの95例のうち、70例でVITTが認められ、25例は非VITTであった。 年齢中央値は、VITT群(47歳、IQR:32~55)が非VITT群(57歳、41~62)よりも低かった(p=0.0045)。女性はそれぞれ56%および44%含まれた。ISCVT群は624例で、年齢中央値37歳(VITT群との比較でp=0.0001)、女性が75%(同p=0.0007)を占めた。 ChAdOx1(Oxford-AstraZeneca製)ワクチンの1回目接種後に脳静脈血栓症を発症した患者が、VITT群100%(70例)、非VITT群84%(21例、残り4例のうち3例はBNT162b2[Pfizer-BioNTech製]の1回目接種後、1例は同2回目接種後)であり、接種から脳静脈血栓症発症までの期間中央値はそれぞれ9日(IQR:7~12)、11日(6~21)だった。 VITT関連脳静脈血栓症群は非VITT関連脳静脈血栓症に比べ、血栓を形成した頭蓋内静脈数中央値が高く(3[IQR:2~4]vs.2[2~3]、p=0.041)、頭蓋外血栓症の頻度が高かった(44%[31/70例]vs.4%[1/25例]、p=0.0003)。 退院時に修正Rankinスコアが3~6点の患者の割合は、VITT群が47%(33/70例)と、非VITT群の16%(4/25例)に比べて高かった(p=0.0061)。また、VITT群におけるこの有害な転帰の頻度は、非ヘパリン抗凝固療法を受けた集団が受けなかった集団に比べて低く(36%[18/50例]vs.75%[15/20例]、p=0.0031)、直接経口抗凝固薬投与の有無(18%[4/22例]vs.60%[29/48例]、p=0.0016)および静脈内免疫グロブリン投与の有無(40%[22/55例]vs.73%[11/15例]、p=0.022)でも有意な差が認められた。 著者は、「VITT関連脳静脈血栓症は他の脳静脈血栓症に比べ転帰が不良であることが明らかとなったが、VITTはChAdOx1ワクチン接種によるきわめてまれな副反応であり、COVID-19に対するワクチン接種の利益はリスクをはるかに上回る」としている。

162.

ヘパリン増量では対応できない重症新型コロナウイルス感染症(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染に対して1~2年前よりは医療サイドの対策は進んでいる。肺を守るステロイド、ECMOなどは状況に応じて広く使用されるようになった。しかし、血栓性合併症についての十分な治療が確立されていない。われわれの経験した過去の多くの血栓症ではヘパリンが有効であった。ヘパリンは内因性のアンチトロンビンIIIの構造を変換して効果を発揮するので、人体に凝固系が確立されたころから調節系として作用していたと想定される。心筋梗塞、不安定狭心症、静脈血栓症など多くの血栓症にヘパリンは有効であった。ヘパリンの有効性、安全性については重層的な臨床エビデンスがある。ヘパリンを使えない血栓症は免疫性ヘパリン惹起血小板減少・血栓症くらいであった。 重症の新型コロナウイルス感染症では、わらにもすがる思いで治療量のヘパリンを使用した。しかし、治療量と予防量のヘパリンを比較する本研究は1,098例を登録したところで中止された。最初から治療量のヘパリンを使用しても生存退院は増えず、ECMOなどの必要期間も変化しなかった。 新型コロナウイルス肺炎が注目された当初、ECMO症例の予後改善の一因にヘパリン投与の寄与が示唆された。本試験は治療量のヘパリンへの期待を打ち砕いた。 本研究は比較的軽症の新型コロナウイルス感染症に対する予防量、治療量のヘパリンのランダム化比較試験と同時に発表された。筆者の友人のHugo ten Cate博士が両論文を包括して「Surviving Covid-19 with Heparin?」というeditorialを書いている。Hugo ten Cate博士が指摘するように、重症化した新型コロナウイルス感染では免疫、細胞、など凝固系以外の因子が複雑に関与した血栓になっているのであろう。早期の血栓にはそれなりに有効なヘパリンも複雑系による血栓には無力であるとの彼の考えは、揺らぎの時期とpoint of no returnを超えた時期を有する生命現象の本質を突いていると思う。

163.

ヘパリン介入のチャンスのある重症化前の新型コロナウイルス感染(解説:後藤信哉氏)

 一般に、疾病は早期介入が重要である。新型コロナウイルスの場合、ウイルス感染という比較的単純な原因が炎症、肺炎などを惹起する。血管内皮細胞へのウイルス浸潤から始まる血栓症も初期の原因は比較的単純である。ウイルス感染に対して生体が反応し、免疫系が寄与する病態は複雑になる。複雑な病態は単純な治療では脱却できない。重症例を確実に入院させるとともに、早期の症例に対する医療介入の意味を示したのが本論文である。重症化していない新型コロナウイルス感染の症例を予防量と治療量のヘパリン群にランダムに分けて予後を検証した。重症化する前に治療量のヘパリンを投与すると、生存退院の可能性が増えることが示された。この論文は重症化前から新型コロナウイルス感染症患者を入院させ、各種の補助治療とともに治療量のヘパリンを投与する価値を示している。2,219例のランダム化比較試験の結果である。重症例と重症化前の症例の差異のメカニズムは不明である。臨床家としてはこのランダム化比較試験の結果は即座に実臨床に取り込むと思う。

164.

新型コロナウイルスにより急性心筋梗塞と脳梗塞のリスクが上昇(解説:佐田政隆氏)

 2021年8月8日に東京オリンピック2020が終了したところであるが、ニュースでは新型コロナウイルスの感染拡大の話題が連日取り上げられている。デルタ株が猛威を振るい各都道府県で新規感染者数の記録が更新され、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の施行地域も拡大している。また、医療現場のひっ迫状態に関する報道も続く。このような中、軽症者のみならず中等症の患者も一部は自宅待機することと、政府の方針が転換された。しかし、軽症者でも急変して死に至ることがあることが報告され、在宅療養者の不安の声がテレビに映し出されている。 では、新型コロナウイルス患者が急変する原因は何か、予測因子は何かを明らかにすることが重要である。以前から、急変は肺炎の増悪ばかりでなく血栓症でないかと多くの指摘があった。 本論文では、スウェーデンの個人識別番号(personal identification numbers)を用いた国家登録データベースが解析された。2020年2月1日~9月14日のCOVID-19感染患者8万6,742例が対象になった。34万8,481例のマッチした対照群と比較検討された。第0病日を除外して2週間のオッズ比は急性心筋梗塞が3.41、脳梗塞は3.63であった。第0病日を含めると2週間のオッズ比は急性心筋梗塞が6.61、脳梗塞は6.74であった。 今回は、静脈血栓塞栓症は解析の対象となっていないが、オッズ比はもっと高くなると思われる。突然の急性心筋梗塞、脳梗塞の発症を予知する診断技術や、抗血栓薬の予防的投与がCOVID-19患者の予後を改善するといったはっきりとしたエビデンスが確立していない現状では、本論文の締めくくりに記載されているようにCOVID-19ワクチン接種を加速するしか解決策はないようである。

165.

重症化前のCOVID-19入院患者、ヘパリン介入で転帰改善/NEJM

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の治療において、治療量のヘパリンを用いた抗凝固療法は通常の血栓予防治療と比較して、集中治療室(ICU)における心血管系および呼吸器系の臓器補助なしでの生存退院の割合を改善し、この優越性はDダイマー値の高低を問わないことが、カナダ・トロント大学のPatrick R. Lawler氏らが実施した、3つのプラットフォーム(ATTACC試験、ACTIV-4a試験、REMAP-CAP試験)の統合解析で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月4日号で報告された。中等症入院患者の適応的マルチプラットフォーム試験 研究グループは、治療量の抗凝固療法はCOVID-19による非重症入院患者の転帰を改善するとの仮説を立て、これを検証する目的で、非盲検適応的マルチプラットフォーム無作為化対照比較試験を行った(ATTACC試験はカナダ保健研究機構[CIHR]など、ACTIV-4a試験は米国国立心臓・肺・血液研究所[NHLBI]など、REMAP-CAP試験は欧州連合[EU]などによる助成を受けた)。本研究では、2020年4月21日~2021年1月22日の期間に、9ヵ国121施設で患者登録が行われた。 対象は、中等症のCOVID-19で、登録時に入院を要するが、臓器補助は必要とせずICUへの入室が不要な患者であった。被験者は、治療量のヘパリンを用いた抗凝固療法を受ける群、または通常の血栓予防薬の投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは臓器補助離脱日数とし、院内死亡(最も不良なアウトカム、-1点)と、最長で21日までの生存退院時における心血管系または呼吸器系の臓器補助なしの日数(0~21点)を合わせた順序尺度(ICUでの介入と生存を反映し、点数が高いほどアウトカムが良好)で評価された(21日までに臓器補助なしで生存退院した場合は22点[最良のアウトカム]と判定された)。このアウトカムの評価は、全例およびベースラインのDダイマー値別に、ベイズ流統計モデルを用いて行われた。 本研究は、1,398例の適応的解析においてDダイマー値の高値集団と低値集団の双方で、治療量抗凝固療法群が事前に規定された優越性の中止基準に到達したため、2021年1月22日、データ安全性監視委員会の勧告により患者登録が中止された。1,000例当たり大出血7件増、臓器補助なし生存退院40例増 ベースラインの平均年齢(±SD)は、治療量抗凝固療法群が59.0±14.1歳、通常血栓予防薬群は58.8±13.9歳、男性がそれぞれ60.4%および56.9%であった。最終解析には2,219例(治療量抗凝固療法群1,171例、通常血栓予防薬群1,048例)が含まれた。治療量抗凝固療法群のうちデータが得られた1,093例では、94.7%(1,035例)が低分子量ヘパリン(ほとんどがエノキサパリン)の投与を受けていた。通常血栓予防薬群は、71.7%が低用量の、26.5%が中用量の血栓予防薬の投与を受けた。 治療量抗凝固療法群で、通常血栓予防薬群に比べ臓器補助離脱日数が増加する事後確率は、98.6%(補正後オッズ比中央値:1.27、95%信用区間[CrI]:1.03~1.58)であった。21日までに臓器補助なしで生存退院した患者は、治療量抗凝固療法群が1,171例中939例(80.2%)、通常血栓予防薬群は1,048例中801例(76.4%)、補正後絶対差中央値は4.0ポイント(95%CrI:0.5~7.2)であり、抗凝固療法群で良好だった。 治療量抗凝固療法群で臓器補助離脱日数が優越する事後確率は、Dダイマー高値(各施設の基準値上限の≧2倍)の集団で97.3%、同低値(同<2倍)の集団で92.9%、同不明の集団では97.3%であった。 大血栓イベント/死亡(心筋梗塞、肺塞栓症、虚血性脳卒中、全身性動脈塞栓症、院内死亡の複合)は、治療量抗凝固療法群で8.0%(94/1,180例)、通常血栓予防薬群で9.9%(104/1,046例)に発現した。大出血はそれぞれ1.9%(22/1,180例)および0.9%(9/1,047例)、致死的出血は3例および1例にみられた。頭蓋内出血やヘパリン起因性血小板減少症は認められなかった。 著者は、「これらの知見に基づくと、治療量抗凝固療法は通常血栓予防薬と比較して、中等症COVID-19入院患者1,000例当たり、大出血イベントを7件増やす一方で、40例に臓器補助なしでの生存退院を追加的にもたらす可能性が示唆される」としている。

166.

重症COVID-19患者へのヘパリン介入、転帰を改善せず/NEJM

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療において、治療量のヘパリンを用いた抗凝固療法は通常の血栓予防治療と比較して、生存退院の確率を向上させず、心血管系および呼吸器系の臓器補助なしの日数も増加させないことが、カナダ・トロント大学のEwan C. Goligher氏らが行った、3つのプラットフォーム(REMAP-CAP試験、ACTIV-4a試験、ATTACC試験)の統合解析で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2021年8月4日号に掲載された。重症ICU入室患者の適応的マルチプラットフォーム試験 本研究は、治療量の抗凝固療法は重症COVID-19患者の転帰を改善するとの仮説の検証を目的とする非盲検適応的マルチプラットフォーム無作為化対照比較試験であり、2020年4月21日~12月19日の期間に10ヵ国393施設で参加者が募集された(REMAP-CAP試験は欧州連合[EU]など、ACTIV-4a試験は米国国立心臓・肺・血液研究所[NHLBI]など、ATTACC試験はカナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。 対象は、重症のCOVID-19患者(疑い例、確定例)で、重症の定義は集中治療室(ICU)で呼吸器系または心血管系の臓器補助(高流量鼻カニュラによる酸素補給、非侵襲的/侵襲的機械換気、体外式生命維持装置、昇圧薬、強心薬)を要する場合とされた。被験者は、治療量のヘパリンを用いた抗凝固療法を受ける群、または各施設の通常治療に準拠した血栓予防薬の投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは臓器補助離脱日数とされ、院内死亡(−1点)と最長で21日までの生存退院における心血管系または呼吸器系の臓器補助なしの日数(0~21点)を合わせた順序尺度で評価された。 本研究は、適応的中間解析で治療量抗凝固療法群が事前に規定された無益性の判定基準を満たしたため、2020年12月19日に患者登録が中止された。離脱日数は95.0%、生存退院は89.2%の確率で、通常治療より劣る 1,103例が登録され、治療量抗凝固療法群に536例(平均年齢[±SD]60.4±13.1歳、男性72.2%)、通常血栓予防薬群に567例(61.7±12.5歳、67.9%)が割り付けられた。主要アウトカムのデータは1,098例(534例、564例)で得られた。 臓器補助離脱日数中央値は、治療量抗凝固療法群が1点(IQR:-1~16)、通常血栓予防薬群は4点(-1~16)で、補正後オッズ比(OR)は0.83(95%信用区間[CrI]:0.67~1.03)であり、無益性(OR<1.2と定義)の事後確率は99.9%、劣性(OR<1と定義)の事後確率は95.0%、優越性(OR>1と定義)の事後確率は5.0%であった。 また、生存退院の割合は両群で同程度だった(治療量抗凝固療法群:62.7%、通常血栓予防薬群:64.5%、補正後OR:0.84[95%CrI:0.64~1.11]、無益性の事後確率:99.6%、劣性の事後確率:89.2%)。 大血栓イベント(肺塞栓症、心筋梗塞、虚血性脳血管イベント、全身性動脈血栓塞栓症)の割合は、治療量抗凝固療法群で少なかった(6.4% vs.10.4%)が、大血栓イベント/死亡(大血栓イベント+院内死亡の複合)の割合は両群で同程度であった(40.1% vs.41.1%)。また、大出血は、治療量抗凝固療法群で3.8%、通常血栓予防薬群で2.3%に発現した。 著者は、「今回の共同研究は、個々の独立プラットフォームではありえないほど迅速に、有害な可能性のある無益性の結論に到達することを可能にした」とし、「重症COVID-19患者では、複数の臓器系で凝固活性の亢進が示されているが、重症COVID-19の発症後に治療量の抗凝固療法を開始しても、確立された疾患過程の結果を改善するには遅過ぎる可能性がある。また、肺に著明な炎症がある場合、治療量の抗凝固療法は肺胞出血の増悪をもたらし、転帰の悪化につながる可能性がある」と指摘している。

167.

「尿路感染症はとりあえずキノロン」の医師へST合剤を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第41回

 今回は、尿路感染症にはフルオロキノロン薬を第1選択と考える医師に対し、代替薬としてST合剤をどのように提案したのか紹介します。フルオロキノロン薬は使いやすい抗菌薬ですが、経口第3世代セフェム系抗菌薬と同様に薬剤耐性に注意が必要です。医師は使用経験が少ない代替薬には抵抗があるものですが、薬剤師が共同でモニタリングする姿勢を示すことで、医師の治療選択肢を増やすことができました。患者情報70歳、女性(施設入居)基礎疾患高血圧症、骨粗鬆症介護度要介護1服薬管理施設職員が管理処方内容1.アムロジピンOD錠5mg 1錠 分1 朝食後2.カンデサルタンシレキセチル錠4mg 1錠 分1 朝食後3.ラロキシフェン塩酸塩錠60mg 1錠 分1 朝食後4.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイント訪問診療に同行した際、施設看護師より、昨日から患者さんに倦怠感・頻尿・濃尿・尿臭があると相談を受けました。医師より、尿路感染症の可能性が高く、抗菌薬治療が必要なので、レボフロキサシン500mgを5日間処方しようと思うがどうかと聞かれました。医師としては、尿路感染症に対しては長年フルオロキノロン薬をほぼ一択で処方しており、治療効果も満足していることから、今回もレボフロキサシンでよいだろうという認識でした。フルオロキノロン薬は組織移行性に優れた広域抗菌薬であり、また1日1回服用と服薬負担も少ない薬剤ですが、薬剤耐性が問題となっています。そこで下記のポイント(1)、(2)を整理して代替薬の提案をすることにしました。なお、βラクタム系の抗菌薬に関しては、医師より菌種のカバーや治療成績から積極的には使用したくないと回答を得ています。(1)フルオロキノロン薬の薬剤耐性と相互作用の懸念近年の報告において、尿路感染症の主要な起炎菌である大腸菌のフルオロキノロン耐性率は40%となっています。薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの目標である「25%以下」を大きく超えており、今後も薬剤耐性対策として適正使用を進め、使用量を減らす必要があります。また、この患者さんは便秘治療で酸化マグネシウムを服用していますが、フルオロキノロン薬との相互作用が問題となります。同時服用ではキレート形成による吸収低下から抗菌効果が減弱する可能性があるため、時間をずらして服用することになりますが、服薬時刻を指定すると施設側の介護負担が増大するため、他剤へ変更するほうがよいと考えました。(2)代替薬としてST合剤を検討ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠)は、腸内細菌科細菌を広くカバーしており、消化管吸収や前立腺などの組織移行性も良好な薬剤です。そのため、尿路感染症においては腎機能低下や妊娠などの問題がなければ第1選択薬となります。ただし、ワルファリンカリウムやフェニトイン、レパグリニド、メトトレキサートなどとの相互作用があり、併用が困難な場合もあるため注意が必要です。幸いこの患者さんは相互作用がある薬剤の服用はなく、腎機能も年齢相応(Scr:0.75mg/dL、推算CCr:47.38mL/min、K値:3.5mEq/L)であることから、治療薬候補として妥当と考えました。処方提案と経過上記のポイント(1)、(2)を医師に伝えてST合剤を提案したところ、使用経験が少ないので不安もあるとのことでしたが、薬剤師と施設スタッフの共同モニタリングを行うことで安心してもらい、スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠 4錠 分2、7日間の処方となりました。医師としては、フルオロキノロン薬の大腸菌の耐性化が全国的に進んでいることに驚かれ、今後の治療選択肢としてST合剤やセファレキシン、セファクロルも考慮するとのことでした。治療開始2日目の夜より患者さんの頻尿や尿臭の訴えが改善し、その後も有害事象はなく経過も順調だったため、7日間でST合剤による治療は終了となりました。薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2020. 厚生労働省健康局結核感染症課;2021.高山義弘 著. 高齢者の暮らしを守る 在宅感染症診療. 日本医事新報社;2020.

168.

発熱ない尿路感染疑い男性への抗菌薬、7日間vs.14日間/JAMA

 発熱がなく、細菌性尿路感染症(UTI)が疑われる男性の抗菌薬治療では、投与終了から14日以内のUTI症状の消失に関して、シプロフロキサシンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールの7日間投与は14日間投与に対し非劣性であり、UTI症状の再発割合には有意な差がないことが、米国・ミネアポリス退役軍人局保健医療システムのDimitri M. Drekonja氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年7月27日号で報告された。非劣性を検証する米国の無作為化プラセボ対照試験 本研究は、発熱がみられないUTI男性における抗菌薬の7日間投与の14日間投与に対する非劣性の検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2014年4月~2019年12月の期間に米国退役軍人局の2つの医療センターで参加者の登録が行われた(米国退役軍人局Merit Review Programの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の男性で、発熱がなく、症候性UTIへの進展が予測され、シプロフロキサシンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールの7~14日間投与が予定されている患者であった。これらの薬剤が選択された理由は、米国退役軍人局医療センターにおける男性外来患者のUTI治療の90%を、これらの抗菌薬が占めるとの報告に基づく。 参加者は、担当医によって処方された抗菌薬を7日間投与後に、当該抗菌薬をさらに7日間投与する群、またはプラセボを7日間投与する群に無作為に割り付けられた。抗菌薬およびプラセボは1日2回投与された。 主要アウトカムは、抗菌薬投与終了から14日の時点でのUTI症状の消失とされた。非劣性マージンは10%であった。主解析は、as-treated集団(28回[14日間×1日2回]の投与のうち26回以上を受け、連続2回以上の非投与がない)で行われ、2次解析にはアドヒアランスを問わず無作為化された全患者が含まれた。UTI症状の再発割合:9.9% vs.12.9% 272例(年齢中央値69歳[IQR:62~73])が無作為化の対象となり、全例が試験を完了した。14日間投与群に136例、7日間投与群(プラセボ群)に136例が割り付けられた。主要アウトカムのas-treated解析には254例(93.4%)が含まれた。処方された抗菌薬は、シプロフロキサシンが57%(156/272例)、トリメトプリム/スルファメトキサゾールが43%(116/272例)だった。 症状消失の割合は、7日間投与群が93.1%(122/131例)、14日間投与群は90.2%(111/123例)であり、7日間投与群の14日間投与群に対する非劣性が確認された(群間差:2.9%、片側97.5%信頼区間[CI]:-5.2~∞)。また、2次解析における症状消失の割合は、7日間投与群が91.9%(125/136例)、14日間投与群は90.4%(123/136例)であり、非劣性の基準を満たした(群間差:1.5%、片側97.5%CI:-5.8~∞)。 UTI症状の再発の割合は、7日間投与群が9.9%(13/131例)、14日間投与群は12.9%(15/123例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:-3.0%、95%CI:-10.8~6.2、p=0.70)。 有害事象は、7日間投与群が20.6%(28/136例)、14日間投与群は24.3%(33/136例)で発現した。糖尿病を有する患者(64例)で血糖値の異常が、ワルファリン投与を受けている患者(10例)でワルファリン用量への影響がみられた。最も頻度の高い有害事象は下痢だった(7日間投与群9%、14日間投与群9%)。 著者は、「これらの知見は、発熱を伴わないUTIの男性患者における、シプロフロキサシンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールの7日間投与を支持するものである」としている。

169.

モデルナ製ワクチン後の急性期副反応に備えた、予診票の確認ポイント/自衛隊中央病院

 自衛隊東京大規模接種センターにおける「COVID-19 ワクチンモデルナ筋注」接種者約20万人のデータについて、急性期副反応の詳細を速報としてまとめたデータを自衛隊中央病院がホームページ上で公開した。本解析では急性期副反応を「同センター内で接種後経過観察中(最大30分間)に、何らかの身体的異常を自覚し、同センター内救護所を受診したもの」と定義し、得られた経験・知見を可能な限り医療従事者と共有することで、今後のCOVID-19ワクチン接種の対応向上に資することが目的としている。<解析の対象と方法>・2021年5月24日~6月15日に行われたワクチン接種者20万8,154人を対象(すべて1回目接種)。・ワクチン接種者の基礎的臨床情報は、厚生労働省より配布される「新型コロナワクチン予診票」を用いて収集・解析。・急性期副反応発症者については全件調査を行い、非発症者についてはランダムサンプリングによる調査を行った。非発症者の母集団平均値の95%信頼区間の許容誤差が2%以下になるよう、サンプルサイズを設定した(n=3,000)。・急性期副反応に関する詳細は、同センター救護所で使用した医療記録を用いて収集・解析を行った。アナフィラキシーの診断は、ブライトン分類に基づき2名の医師(内科医および救急医)により判定した。 主な結果は以下のとおり。・急性期副反応は、合計395件(0.19%)確認された。センター内における急性期副反応発生者のうち、合計20件(0.01%)が他医療機関へ救急搬送された。ブライトン分類を用いてアナフィラキシーと診断されたのは0件であった。・急性期副反応発症者の平均年齢は70才、非発症者数の平均年齢は69才で、両群において年齢分布に統計学的有意差は認めなかった(p=0.867)。・発症者の72.9%が女性であり、非発症者(44.6%)と比較し有意に高値であった(オッズ比[OR]:3.3、95%信頼区間[CI]:2.7~4.2、p<0.001)。・甲状腺疾患(OR:2.8、95%CI:1.6~5.0、p<0.001)、喘息(OR:3.6、95%CI:2.2~5.7、p<0.001)、悪性腫瘍(OR:1.9、95%CI:1.1~3.3、p=0.02)、食物または薬剤に対するアレルギーの既往(OR:7.9、95%CI:6.1~10.2、p<0.001)、過去ワクチン接種時の副反応の既往(OR:2.0、95%CI:1.4~2.9、p=0.001)がある接種者については、急性期副反応の発症リスクが高い傾向にあった。一方、抗凝固薬/抗血小板薬の使用中の接種者は、発症リスクが低い傾向にあった(OR: 0.4、95%CI:0.3~0.8、p=0.003)。・急性期副反応として観察された最も多い症状は、めまい・ふらつき(98 件、24.8%)であり、続いて動悸(71 件、18.0%)であった。発赤・紅斑・蕁麻疹等などの皮膚症状は 58 件(14.7%)に認めた。呼吸困難感を訴えたものは 17 件(4.3%)であった。ブライトン分類を用いてアナフィラキシーと診断されたのは、0 件であった。・発症者395件中、バイタルサインが観察された発症者は203件。バイタルサイン異常として最も高率に観察されたのは、接種後の高血圧で、収縮期血圧180mmHg以上または拡張期血圧110mmHg以上を伴う高血圧は、34件(16.7%)に認めた。低血圧は4件(2.0%)に認め、いずれもアナフィラキシーの基準は満たさず、発症エピソードや徐脈の合併から迷走神経反射と診断された。・救急搬送が実施された20件の急性期副反応の症状としては、6件(30.0%)に頻呼吸を認め、5件に持続する高血圧(収縮期血圧>180mmHgまたは拡張期血圧>110mmHg)を認めた。いずれもアナフィラキシーの基準は満たさなかった。 本解析の結果から、急性期副反応を予測するための予診票確認時におけるポイントは、性別(女性)、基礎疾患の有無(甲状腺疾患、喘息、悪性腫瘍)、食物または薬剤に対するアレルギーの既往、過去ワクチン接種時に体調不良を起こした既往と考えられる。また、急性期副反応発生者の16.7%に高血圧を認めた点について、迷走神経反射による低血圧よりも高率に認められていると指摘。mRNAワクチン接種後経過観察中に二次性高血圧が発生するとの報告1)があることに触れ、とくに高齢者では心血管病の既往がある場合も少なくないため、ワクチン接種に伴うアナフィラキシーや迷走神経反射における低血圧のみならず、接種後高血圧に関しても、十分な注意と対策が必要としている。 本報告における全接種者の平均年齢が69歳と比較的高齢であることに留意を求め、今後若年者についても解析を続けていく予定とされている。また同報告では、遅発性皮膚副反応についても、自験例について提示している。

170.

介護負担を考慮しβ遮断薬貼付薬の内服への切り替えを提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第40回

 今回は、貼付薬から内服薬へ切り替えた事例を紹介します。貼付薬は、内服薬の拒否・困難なケースでも治療が継続できて便利ですが、ほかの薬剤を問題なく内服できている場合は、貼付薬が1つ入っていることが返って手間になることもあります。患者情報90歳、女性(施設入居)基礎疾患発作性心房細動、心不全、高血圧症、脂質異常症、骨粗鬆症介護度要介護1服薬管理施設職員が管理処方内容1.エプレレノン錠25mg 1錠 分1 朝食後2.アゾセミド錠30mg 1錠 分1 朝食後3.ジゴキシン錠0.125mg 0.5錠 分1 朝食後4.ワルファリンカリウム錠1mg 3錠 分1 朝食後5.エナラプリル錠5mg 1錠 分1 朝食後6.エルデカルシトールカプセル0.5μg 1カプセル 分1 朝食後7.ピタバスタチン錠1mg 1錠 分1 朝食後8.ニコランジル錠5mg 2錠 分2 朝夕食後9.酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後10.ビソプロロールテープ剤4mg 1枚 夕に貼付本症例のポイントこの患者さんは、服用薬剤は多いものの、「長生きは薬のおかげ」と服薬負担は感じていませんでした。しかし、貼付薬の交換時に、皮膚の掻痒感を我慢している様子があることを介護職員より聴取しました。そこで患者さんに話を聞いたところ、「かゆみはあるけれど、先生から勝手にやめないように言われているから我慢している」と考えていたことを聞き出すことができました。また、介護職員からは、職員配置の少ない夕方の貼付薬の介助は負担が大きいということも聞きました。そこで、本人と介護職員の負担を軽減するため、貼付薬を内服にまとめる提案をすることにしました。ビソプロロール貼付薬と内服薬の換算目安下記表の頻脈性心房細動を対象とした第III相検証試験(二重盲検並行群間比較試験)において、ビソプロロールフマル酸塩錠2.5mgとビソプロロール貼付薬4mg、ビソプロロールフマル酸塩錠5mgとビソプロロール貼付薬8mgの比較が行われています。この試験結果によると、ビソプロロールフマル酸塩錠2.5mg≒ビソプロロール貼付薬4mgですので、内服薬への切り替えは可能と考えました。画像を拡大する処方提案と経過本人および介護者の負担状況をトレーシングレポートにまとめて医師に提出し、現行のビソプロロール貼付薬4mgからビソプロロールフマル酸塩錠2.5mg内服への切り替えを提案しました。その際、換算の根拠として、上記の試験結果の表を共有しました。訪問診療の開始前に、医師よりトレーシングレポートの内容に処方を変更すると回答を得ました。そこで、翌日より内服薬に変更し、看護師と血圧・心拍数の変動についてモニタリングすることにしました。切り替えてから14日経過しても大きな変動はなく状態は安定しており、現在も内服薬として継続中です。ビソノテープインタビューフォームビソノテープ トーアエイヨー医療関係者向け情報

171.

VEGFR-TKIの心毒性、注意すべきは治療開始○ヵ月【見落とさない!がんの心毒性】第4回

第4回はチロシンキナーゼ阻害薬(TKI:Tyrosine Kinase Inhibitor)の心毒性メカニズムと管理法に、草場と森山が解説します。はじめに血管は、酸素や栄養素の供給、炎症部位への細胞輸送など、ヒトのからだにとって必要不可欠な組織です。血管形成は胎生期より始まり、出生後には創傷治癒や月経などの生理的機能、がんや糖尿病などの疾病と深くかかわっています。VEGFR-TKIとは?血管内皮細胞増殖因子VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)のファミリーにはVEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、 胎盤増殖因子(PIGF)-1、PIGF-2があり、これらは細胞表面に発現するVEGF受容体(VEGFR)-1、VEGFR-2、VEGFR-3、 NRP(neuropilin)1、NRP2のチロシンキナーゼ型受容体と結合して、下流のシグナル伝達経路を活性化することにより、血管内皮細胞の増殖・分化・遊走や血管透過性の調整など血管新生において中心的な働きをします(図1)。(図1)VEGFRシグナルとVEGFR-TKI画像を拡大する多くのがんにおいて、VEGFRを介したシグナル伝達経路の活性化は、がんの増殖や進展に促進的に働きます。VEGFRなどのチロシンキナーゼ型受容体のリン酸化を阻害するTKIは「血管新生阻害薬」の一つとして、様々ながんの治療に用いられています。VEGFR-TKIの種類VEGFR-TKI は、主な標的分子であるVEGFR以外にも複数の分子の機能を阻害します。以下に各薬剤の主な標的分子、本邦での適応疾患を(表1)に示します。(表1) VEGFR-TKI の主な標的分子と適応疾患主な心毒性とリスク因子VEGFは、血管拡張作用を有する一酸化窒素とプロスタサイクリンを増加させ、血管収縮作用を有するエンドセリン-1産生を抑制するため、VEGFの機能が阻害されると血圧が上昇すると考えられています1)。そのため、VEGFR-TKIでは高血圧の頻度が高く(15~40%)、治療開始後2ヵ月以内に発症・増悪する場合が多いのが特徴です。また、微小血管の毛細血管床の密度低下や腎臓におけるメサンギウム細胞・内皮細胞障害なども高血圧発症に関与するとされています1)。リスク因子として、高血圧症の既往、NSAIDsやエリスロポエチン製剤との併用が報告されており2)、時に高血圧緊急症に至る場合があるため、適切な治療が必要です。また、心筋障害・心不全(~5%)、血栓塞栓症(0.6~11.5%)、QT延長(0.6~13.4%)などの心血管毒性も見られます3)。がん患者を対象とした研究のメタ解析でもVEGFR-TKIは、心不全、血栓塞栓症のリスク因子と報告されているのです4)5)。そのほか、倦怠感(35~50%)、下痢(30~70%)、手足症候群などの皮膚毒性(15~70%)、肝機能障害(5~50%)の頻度が高いです。管理法予防・治療の基本は、がん治療の効果を維持しながら、毒性のリスクを減らすことを目指します。VEGFR-TKIのみを対象とした心血管毒性の管理法の研究は少なく、特異的な管理法は未確立のため、通常の心血管リスク管理が重要です。高血圧診療の目標は、早期診断と血圧管理であり、リスク因子(高血圧の既往と現在の血圧など)の評価と既存の高血圧の治療は、VEGFR-TKI投与前に開始しましょう。投与開始後は、重篤な合併症を避けるために血圧上昇の早期発見と治療が重要で、通常の高血圧治療と同様に、ACE阻害薬、ARB、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬が推奨されています6)。VEGFR-TKIはCYP3A4により代謝されるため、CYP3A4阻害作用を有する降圧剤(非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)との併用は避ける必要があります。心機能の低下した心不全患者では、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬を第一選択とします6)また、VEGFR-TKIは下痢の頻度が高く、利尿剤による脱水を助長する危険性もあります。利尿剤には電解質異常、二次性QT延長のリスクがあるため慎重に用います。重症高血圧があらわれた場合は、循環器専門医と連携して、頻繁なモニタリングと治療効果の評価を行うとともに、VEGFR-TKIの休薬・減量・再開について検討しましょう。心不全診療では、心不全症状発現前の心機能低下を早期発見する為に定期的な心エコー評価を行います。がん治療関連心筋障害を合併した場合は循環器専門医と相談しレニン・アンギオテンシン系阻害薬、β遮断薬などを開始します6)。血栓塞栓症診療では、下肢の浮腫やD-dimer上昇などの血栓症を疑う所見が見られた際に下肢静脈エコーで深部静脈血栓症の評価を行い、臨床的に肺塞栓症を疑う場合は胸部造影CTを行います。静脈血栓塞栓症の診断に至った際は、症例ごとに出血・血栓症のリスクを評価して抗凝固療法の適応を判断します。腎機能正常例では、ワルファリンよりも出血リスクが低い直接経口抗凝固薬(DOAC)が推奨されます6)。心不全や血栓塞栓症の症例において、がん治療を休止・中止すべきかどうかはがん治療医と循環器専門医が連携して判断する必要があります。おわりに近年、悪性腫瘍の領域において、精力的な薬剤開発と良好な抗腫瘍効果から、VEGFR-TKIはがん治療に広く用いられるようになってきました。それに伴い、心血管毒性の管理の重要性が増しており、がん治療医と循環器専門医との緊密な連携がより重要になっているのです。1)Li W, et al. J Am Coll Cardiol. 2015;66:1160-1178. 2)Robinson ES ,et al . Semin Nephrol. 2010;30:591-601.3)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.4)Ghatalia P, et al. Crit Rev Oncol Hematol. 2015;94:228 -237.5)Abdel-Qadir H, et al. Cancer Treat Rev. 2017;53:120-127.6)Zamorano JL, et al. Eur Heart J. 2016;37:2768-2801.講師紹介

172.

脳静脈洞血栓症患者の血小板減少症、COVID-19流行前はまれ/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の以前には、脳静脈洞血栓症(CVST)患者におけるベースラインの血小板減少症の頻度は低く、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)や血小板第4因子(PF4)/ヘパリン抗体の発生もきわめてまれであったことが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのMayte Sanchez van Kammen氏らの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2021年7月2日号で報告された。COVID-19ワクチンであるChAdOx1 nCov-19(AstraZeneca/Oxford)およびAd.26.COV2.S(Janssen/Johnson & Johnson)の接種後4~28日以内に、血小板減少症を併発するCVSTを発症した症例が報告されており、その根本的な病理学的機序として、PF4/ヘパリン抗体に関連する免疫介在性反応が提唱されている。7ヵ国7病院の検体の後ろ向き記述的解析 研究グループは、COVID-19の世界的流行以前にCVSTと診断された患者において、入院時の血小板減少症、HIT、PF4/ヘパリン抗体の発現の頻度を明らかにする目的で、レトロスペクティブな記述的解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 解析には、フィンランド、オランダ、スイス、スウェーデン、メキシコ、イラン、コスタリカの国際脳静脈洞血栓症コンソーシアムに参加している7つの病院から得られた、1987年1月~2018年3月の期間にCVSTと診断された患者の検体が用いられた。 865例で、ベースラインの血小板数のデータが得られた。このうち93例のサブセットで、以前の試験(2009年9月~2016年2月)で採取された凍結血漿検体を用いてPF4/ヘパリン抗体の解析が行われた。 主要アウトカムは、入院時の血小板減少症(血小板数<150×103/μL)、HIT(担当医の診断による)、PF4/ヘパリンIgG抗体(光学濃度[吸光度]>0.4、過去に血漿検体を採取した患者のサブセット)の頻度とされた。血小板減少症8.4%、HIT 0.1%、PF4/ヘパリン抗体0% 865例(年齢中央値40歳[IQR:29~53]、女性70%)のうち、73例(8.4%、95%信頼区間[CI]:6.8~10.5)が血小板減少症であり、751例(86.8%)が正常血小板数(150~450×103/μL)、41例(4.7%)は血小板増加症(>450×103/μL)であった。 血小板減少症73例の重症度の内訳は、軽症(血小板数100~149×103/μL)が52例(6.0%)、中等症(50~99×103/μL)が17例(2.0%)、重症(<50×103/μL)は4例(0.5%)だった。 PF4/ヘパリン抗体を伴うHITは、1例(0.1%、95%CI:<0.1~0.7)にみられた。また、血漿検査が行われた93例の便宜的な検体のサブセットでは、8例(9%)に血小板減少症(軽症6例、中等症2例)が認められ、PF4/ヘパリン抗体がみられた患者はいなかった(0%、95%CI:0~4)。抗PF4 IgGの光学濃度中央値は0.106(IQR:0.088~0.142、範囲:0.064~0.357)だった。 著者は、「これらの知見は、ChAdOx1 nCoV-19およびAd26.COV2.S COVID-19ワクチンと、血小板減少症を伴う脳静脈洞血栓症との関連性を調査する際に、有益な情報をもたらす可能性がある」としている。

173.

第22回 痛み診療のコツ・治療編(2)光線療法(1)【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第22回 痛み診療のコツ・治療編(2)光線療法(1)前回は、知覚神経と交感神経を同時にブロックする代表的な応用範囲の広い硬膜外ブロックについてお話しました。今回は、理学療法の中でもとくに高齢患者さんに好まれている光線療法ついて述べたいと思います。高齢社会を反映して、帯状疱疹後神経痛や脊椎術後疼痛症候群など本来の疾病が治癒した後に、強い痛みだけが取り残されることも稀ではありません。いわゆる難治性慢性疼痛患者さんの数が、高齢者の人口の増加に比例して急激に増加しています。痛みを訴える患者さんにおいては、病態は類似していても、痛みの性質や程度は個々の患者さんによって実に多様です。そのために、疼痛緩和療法も神経ブロック療法、薬物療法、各種理学療法、インターベンショナル治療など患者さんに合った有効な治療法に苦慮する機会も少なくありません。とくに最近では、高齢者を含めて血液抗凝固薬を服用する患者さんが増加しており、神経ブロックを回避しなくてはならない状況も少なくありません。しかも、痛みで悩まされている患者さんにとっては、より痛みの少ない治療法を望む声も多く見られます。このような背景を考慮すると、疼痛を訴えられている患者さんにとって光線療法は非常に有用な治療法であり、痛みの緩和を得られる機会も想像以上に多くみられます。今回はこの光線療法について解説いたします。光線療法機器の分類(1)低出力半導体レーザーGa-Al-As半導体をレーザー光源とした低出力半導体レーザーには、ソフトレーザリーJQ310、マルチレーザー5 MLF-601、メディアレーザーソフトパルス10などが市販されています。(2)ハロゲンランプ治療器自然灯の一種、ハロゲンランプを光源として、フィルターによって近赤外線のみを出力する装置です。アルファビームALB-200H、スーパーライザーHA-2200LEシリーズ、スーパーライザーPXシリーズのほか、家庭用としても使用できるスーパーライザーminiシリーズなどが使用されています。また、最近では、スーパーライザーPXシリーズも市販され、さらに性能を上げています。(3)キセノンライト治療器ストロボライト光源のキセノン励起光を利用したキセノンライトは、可視光よりも近赤外光を多く発光するので、近赤外線光源として利用されています。ベータエクセルXe10は、パルスモードを有する上、低周波通電機能もあり、光線療法と低周波治療を同時に施行できる特徴があります。光線療法の鎮痛作用機序レーザーの生体への影響は熱作用、光作用が基本になっています。その作用により、以下の効果が期待されています。(1)血流改善作用レーザー光による血管への直接作用、交感神経反射の減弱化、軸索反射による血管拡張などが考えられています。(2)神経伝達抑制作用脊髄後根線維の自発放電発射増加の減少作用、C線維の脱分極の抑制作用などが報告されています。(3)抗炎症作用関節リウマチ患者さんの膝関節滑膜炎症所見が、レーザー照射によって軽減されることが報告されています。(4)創傷治癒作用創傷治癒の促進が実験的、臨床的に認められています。(5)下行性疼痛抑制系の賦活ナロキソンによりレーザー鎮痛効果が抑制されることから、内因性オピオイドや、下行性疼痛抑制系の関与が考えられています。(6)その他神経細胞膜の安定化作用、免疫機能の賦活、筋緊張の緩和などが認められており、鎮痛作用の補助になりそうです。レーザー治療の対象疾患レーザー治療の鎮痛作用機序から考えて、以下のような疾患に有効性が認められています。 帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛、筋・筋膜性疼痛、頭痛、外傷性頸部疼痛症候群、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、腰痛症、術後疼痛症候群、非定形顔面痛、関節リウマチ、肩関節周囲炎、膝関節症などで、実に多岐にわたっています。初期の疼痛緩和療法を怠ると、一生痛みが持続することも稀ではありません。できるだけ早期に鎮痛対策をとることが、その後の痛みの遷延を和らげるという認識が大切です。光線療法が疼痛治療の一環として取り入れられ、多少なりとも痛みに苦しむ患者さんの疼痛緩和療法に役立てられれば幸いです。次回は、痛みとリハビリテーション療法について説明したいと思います。1)花岡一雄他. 日本医師会雑誌.2012:140;2352-23532)花岡一雄他監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S177-178

174.

脳梗塞の再発を予防するために:老刑事のように心房細動を追う(解説:香坂俊氏)

この原稿を読んでいる方の「4人に1人」は今後の人生のどこかで脳梗塞を経験することになる。上記はAmerican Heart Association(AHA)をはじめとする世界の主要学会が脳梗塞予防の啓蒙活動でしばしば用いる文言であるが、確かに「4人に1人」と言われるとずっしりと重みを感じられる方も多いのではないだろうか。が、残念ながら脳梗塞予防のために行動に移せることはそれほど多くはない。血圧やコレステロールを下げ、健全なライフスタイルを実施し、禁煙や減塩食を心掛ける、といったところだろうか。このあたりの危険因子は過去四半世紀の公衆衛生分野の先生方の献身的な努力により危険因子として浮き彫りにされ、すでに医療の現場でもそのコントロールに向けての努力が広く実践されるに至っている。そこにここ10年来、心房細動に対する抗凝固療法が脚光を浴びている。なにしろ60~70%近く脳梗塞イベントをカットできるというのだから(前述の個々の危険因子に対する介入は5~10%といったところで、累積で30~50%程度のイベントカットを目指している)、抗凝固療法を適切に実施できれば脳梗塞「4人に1人」を「10人に1人」くらいの割合に下げることも夢ではない。そこで、現在の問題はどのように心房細動を拾ってくるかというところに焦点が当てられている。心房細動の半分程度は潜在性(あるいは発作性)と考えられており、1回や2回心電図をとったくらいでは見つけられないということが知られている。今回取り上げるSTROKE-AFでは、すでに脳梗塞を起こした患者496例(平均年齢67歳、CHADS VASc 4~6点程度)を対象に、植込み型の心電図記録計(insertable cardiac monitorいわゆるループレコーダー)を用いる(ICM群)か、通常のケアを続行する(コントロール群)か、というところでランダム化を行い、その後1年間の心房細動の検出率を比較した。そしてその後1年間で、ICM群では7倍多く心房細動が検出されたという結果を得ている(12.1% vs.1.8%)。この結果をどう捉えるか? 心房細動は執念深く追い続ける必要がある、ということに尽きる。以前より3秒程度の記録しか残さない通常の心房細動の記録では検査として不十分だということは言われてきており、一部の診療ガイドラインでは心房細動が強く疑われるケース(動悸症状を繰り返したり、原因不明の失神症例)ではこのICMを積極的に用いるように推奨されているが、ここに「原因不明の脳梗塞」という項目も近い将来加わることになるかもしれない。ただ、このSTROKE-AFではまだ心房細動の検出率が比較されたにすぎず、今後本格的な抗凝固療法を使った介入試験が組まれていくものと思われる。その結果を待つ必要があるし、さらに発達著しいデジタルデバイス(スマートウォッチ)が今後ICMに取って代わる可能性もあり、そのあたりも注視していくべきだろう。

175.

「リクシアナ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第60回

第60回 「リクシアナ」の名称の由来は?販売名リクシアナ®錠15mgリクシアナ®錠30mgリクシアナ®錠60mgリクシアナ®OD錠15mgリクシアナ®OD錠30mgリクシアナ®OD錠60mg一般名(和名[命名法])エドキサバントシル酸塩水和物(JAN)効能又は効果○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制 ○静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制 ○下記の下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術用法及び用量画像を拡大する警告内容とその理由1.本剤の投与により出血が発現し、重篤な出血の場合には、死亡に至るおそれがある。本剤の使用にあたっては、出血の危険性を考慮し、本剤投与の適否を慎重に判断すること。本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はないため、本剤投与中は、 血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。これらの徴候が認められた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。2.脊椎・硬膜外麻酔あるいは腰椎穿刺等との併用により、穿刺部位に血腫が生じ、神経の圧迫による麻痺があらわれるおそれがある。併用する場合には神経障害の徴候及び症状について十分注意し、異常が認められた場合には直ちに適切な処置を行うこと。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)〈効能共通〉1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.出血している患者(頭蓋内出血、後腹膜出血又は他の重要器官における出血等)[出血を助長するおそれがある。]3.急性細菌性心内膜炎の患者[血栓剥離に伴う血栓塞栓様症状を呈するおそれがある。] 〈非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制、静脈血栓塞栓症(深部静脈 血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制〉4.腎不全(クレアチニンクリアランス15mL/min未満)のある患者5.凝血異常を伴う肝疾患の患者〈下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制〉6.高度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者※本内容は2021年7月14日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年3月改訂(第12版)医薬品インタビューフォーム「リクシアナ®錠15mg/錠30mg/錠60mg、リクシアナ®OD錠15mg/OD錠30mg/OD錠60mg」2)第一三共MedicaL Library:製品一覧

176.

第66回 医療法等改正、10月からの業務範囲拡大で救急救命士の争奪戦勃発か

今年の医療法等改正をおさらいこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。予想通り、7月12日から東京都は4回目の緊急事態宣言に突入しました。沖縄県に出されていた同宣言も延長となりました。オリンピック開催を至上命令として、マッチポンプのようにコロコロと変わる政府の施策に、国民の多くはさすがに辟易としてきているようです。7月13日に読売新聞社が公表した同社世論調査によれば、菅内閣の支持率は37%、昨年9月の内閣発足以降最低だった前回(6月4~6日調査)から横ばいです。一方、不支持率は53%(前回50%)に上がり、内閣発足後で最高となったそうです。中でも東京の菅内閣の支持率は28%で、全国平均の37%と比べて9ポイント低かったそうです。進まないワクチン接種や、酒提供に関して金融機関からの働き掛け方針の撤回など、政府の右往左往ぶりは既に末期症状かもしれません。さて、こんな時は野球観戦です。昨日(7月13日)は、MLBオールスターゲームのホームランダービーを朝から観戦していました。初出場のロサンゼルス・エンゼルスの大谷 翔平選手は、残念ながら1回戦でワシントン・ナショナルズのフアン・ソト選手に敗れてしまいました。それにしても、対戦後、ハアハア息をする大谷選手を見て、ホームランダービーの過酷さがわかりました。他の出場選手よりも息が荒かったのは、デンバーの球場が標高1,600mと高地にあり高度順応ができなかったからか、他の選手の心肺機能の方が高かったからかわかりませんが、あの対戦を2回連続(2019年と今年)制したニューヨーク・メッツのピート・アロンソ選手は本当にすごいです。さて、新型コロナ感染症による緊急事態宣言とオリンピック開催を巡る騒動の陰で、これからの医療現場に大きな影響を及ぼす法律改正が行われていました。今回は”事件”から少々離れて、それについて簡単におさらいしておきたいと思います。医療現場に大きな影響を及ぼす法律改正とは、ずばり医療法等の改正です。法律案の名称は「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」。医師の労働時間の短縮や新興感染症の感染拡大時における医療提供体制の確保など、医療現場が直面するさまざまな課題を解決するためにつくられた法律案です。関連する法律も医療法をはじめ、医師法や歯科医師法、診療放射線技師法、臨床検査技師等に関する法律、臨床工学技士法、救急救命士法と幅広く、それぞれの法律の改正を一括するかたちで、「……医療法等の一部を改正する法律案」として審議されてきました。2024年度からの時間外労働規制に向けた「医師の働き方改革」この医療法等改正法は5月21日の参議院本会議で可決・成立しました。柱は大きくは3つです。1)医師の働き方改革勤務医の時間外労働規制が2024年度から適用されることを受け、「長時間労働の医師の労働時間短縮および健康確保のための措置の整備」が講じられます。具体的には、勤務医が長時間労働となる医療機関での「医師労働時間短縮計画」の作成が義務付けられます。また、地域医療の確保や研修を集中的に実施する観点からやむを得ず、規定よりも多い上限時間を適用する医療機関を都道府県知事が指定する制度がつくられます。指定された医療機関では連続勤務時間の制限といった健康確保措置が求められます。2)各医療関係職種の専門性の活用次に「各医療関係職種の専門性の活用」です。 これも「医師の働き方改革」に関連したもので、医師の負担軽減を目的に、4つの医療関係職種の業務範囲を拡大し、タスクシフト・シェアを推進することになりました。診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士の4職種の資格法が改正されています。いずれも施行は今年10月1日からで、医師が働く現場にすぐに影響が出るのは、このタスクシフト・シェアでしょう。これについては、あとからもう少し詳しく解説します。なお、「専門性の活用」については医師の養成課程の見直しも行われています。2025年4月から共用試験合格が医師国家試験の受験資格要件となります。また、同試験に合格した医学生は医師法第17条(医師でなければ、医業をなしてはならない)の規定にかかわらず、大学が行う臨床実習において、医師の指導監督のもとで医業(つまり診療)を行えるようになります。この措置は2023年4月からの施行です。医療計画に新興・再興感染症医療提供体制に関する事項追加そして法改正のもう一つの柱が、3)地域の実情に応じた医療提供体制の確保です。新型コロナウイルス感染症の感染拡大で露呈した医療提供体制のさまざまな課題に対応するため、2024年度からの第8次医療計画に「新興感染症等の感染拡大時における医療」の確保に関する事項が追加されます。具体的には、現行は「5疾病・5事業および在宅医療」の医療計画の記載事項が、「5疾病・6事業および在宅医療」に改められます。これまで、医療計画の中に、新興・再興感染症の感染拡大への対応が記載されていなかったのは国・厚生労働省の怠慢としか言いようがありませんが、とにかくそれに関する事項が追加されたことは評価したいと思います。また、2022年度からは、高度な医療機器など医療資源を重点的に活用する外来等について報告を求める「外来機能報告制度」が創設されます。これまで入院医療については「病床機能報告制度」があったのですが、それが外来にも拡大されるわけです。入院医療に加え外来医療も医療機能の分化と連携を進めるのが狙いとされています。外来機能報告制度の施行は2022年4月で、報告を基に、地域医療構想と同様不足する外来医療機能の確保といった問題を「地域の協議の場」などで話し合い、調整することになります。放射線技師、検査技師、臨床工学技士、救急救命士の業務拡大の中身さて、前述のように、こうしたさまざまな改革の中で、すぐに現場に影響を及ぼしそうなのが、医療関係職種の業務範囲拡大によるタスクシフト・シェアでしょう。何せこれまで医師にしかできなかった業務を他職種に任せることができるのですから。診療放射線技師法、臨床検査技師等に関する法律、臨床工学技士法、救急救命士法の改正により、各職種に新たに認められる業務は以下です(政省令改正で済むものを除く)。診療放射線技師造影剤を使用した検査・RI検査(放射性医薬品を用いる検査)のための静脈路確保RI検査医薬品を注入するための装置接続と操作RI検査医薬品投与終了後の抜針・止血医師・歯科医師が診察した患者に対する、その医師等の指示に基づく、医療機関以外の場所に出張して行う超音波検査臨床検査技師採血に伴う静脈路確保と、電解質輸液(ヘパリン加生理食塩水を含む)への接続静脈路を確保し、成分採血のための装置接続と操作、終了後の抜針・止血超音波検査に関連する行為としての静脈路確保、造影剤接続・注入、造影剤投与終了後の抜針・止血臨床工学技士手術室等で生命維持管理装置を使用して行う治療における▼静脈路確保と装置や輸液ポンプ・シリンジポンプとの接続▼輸液ポンプ・シリンジポンプを用いた薬剤(手術室等で使用する薬剤に限る)投与▼当該装置や輸液ポンプ・シリンジポンプに接続された静脈路の抜針・止血心・血管カテーテル治療における生命維持管理装置を使用して行う治療に関連する業務として、身体に電気的負荷を与えるための当該負荷装置操作手術室での鏡視下手術における体内に挿入されている内視鏡用ビデオカメラの保持、術野視野を確保するための内視鏡用ビデオカメラ操作救急救命士現行法における「医療機関に搬送されるまでの間(病院前)に重度傷病者に対して実施可能な救急救命処置」について、救急外来(救急診療を要する傷病者が来院してから入院に移行するまで〈入院しない場合は帰宅するまで〉に必要な診察・検査・処置等を提供される場)においても実施可能に救急救命士の業務範囲拡大は医療関係団体からの強い要望で実現最後の救急救命士の業務範囲拡大は、日本医師会、日本救急医学会、四病院団体協議会から要望が出され、厚労省の「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」で議論がされてきました。一部には救急救命士が一定の医行為を実施することに強く反対する意見もあったそうですが、最終的には医師の負担軽減に必要、として了承されました。法改正が施行される今年10月1日からは、重度傷病者が搬送先医療機関に入院するまでの間、または入院を要さない場合はその医療機関に滞在している間、医療機関に勤務する救急救命士は特定行為を含む救急救命処置ができることになります。実際の運用面の議論も開始救急救命士法の改正を受け、厚労省は6月4日「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」を開催し、救急救命士が救急外来において処置を実施する際の運用面の議論が行われています。この中では、救急救命士の質を担保するために医療機関に設置する委員会の詳細や、 救急救命士への院内研修項目なども提案されました。つまり、病院が救急救命士を救命救急業務に就かせるには相応の組織を設けたうえで、研修等の実施が必須になるようです。運用スタートまで3ヵ月を切っており、秋口までには詳細が決まると思いますが、他の職種のタスクシフト・シェアと比べても患者の生死に直結する業務だけに、拙速な議論だけは避けてもらいたいものです。救急救命士の効果的な活用は、急性期病院の命運を握る救急救命士が救急外来で働くことは、医師の仕事量の軽減だけでなく、病院経営にとっても大きなプラスになると考えられます。人件費の高い医師でなく、救急救命士を多数雇うことで、コストを抑えつつ救急外来を回すことができるからです。しかも、救急部門の充実は、病院が急性期病院として生き残るための経営の要でもあります。救急救命士の効果的な活用は、今後の急性期病院の命運を握ると言えるでしょう。実際、今回の法改正が行われる前から、救急救命士を雇用する病院は増加傾向のようで、病院勤務を志望する救急救命士も増えていると聞きます。来年にかけ、救急救命士の争奪戦が本格化しそうな気配です。

177.

COVID-19ワクチンの血栓性合併症にIgGは有効なのか?(解説:後藤信哉氏)

 COVID-19 pandemicは持続している。ワクチンは切り札と理解されているが、ウイルスベクターのワクチンでは血栓イベントの合併がまれとはいえ発症する。血栓性合併症に対して抗凝固療法とIgGbの併用が推奨されている。カナダではウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19を、ワクチンによる血栓症が少ないとされた55歳以上に使用した。それでも63~72歳の症例に血栓イベントが発症した。血栓イベントは2例が下肢動脈血栓症、1例が脳静脈洞血栓症であった。3例ともヘパリンと血小板第4因子に対する抗体(いわゆるHIT抗体)を認めた。IgG投与によりHIT抗体は減少した。 本研究は3例の経験にすぎない。しかし、世界のCOVID-19 pandemic抑制に期待されるワクチンでもまれに重篤な血栓イベントを起こすこと、血栓イベントに対してまったく対応法がないわけではないことを示している。ワクチンによる血栓症ではいわゆるHIT抗体が高いとされていた。HITであれば、血栓症に対してヘパリンを使うわけにはいかない。アルガトロバンなどの他の抗凝固薬に転換された。しかし、抗凝固薬転換のみでは血小板数は活性化しなかった。HITではHIT抗体による血小板活性化がFcRg受容体刺激を介して起こる。そこで大量のIgGを添加すれば病態を改善できる可能性がある。本研究の対象は3例であり、臨床イベントを標的とした研究ではないが、3例の血小板数、HIT抗体量などを丁寧に計測してIgG療法の有効性を示唆した。 筆者はワクチン反対論者ではない。積極的ワクチン接種がCOVID-19 pandemic克服への唯一の希望と思っている。ワクチンによる合併症はまれである。しかし、0(ゼロ)ではない。ワクチンには血栓イベントなど致死的な合併症のリスクはあるが、臨床医は確立された治療がなくても類似病態を参考にベストを尽くす。すべての合併症が治るとは言わない。しかし、合併症が起こったら、その実態を社会で共有し、対応策をみんなで考えることが大事である。 本論文は、まれだが致死的合併症に対してでも医師がベストを尽くして対応している、カナダ社会の健全性を示す論文として評価できる。

178.

COVID-19に関連した血栓症の発症メカニズムは従来の血栓症とは異なる?(解説:後藤信哉氏)

 心筋梗塞のような動脈系の血栓症でも、深部静脈血栓症のような静脈系の血栓症でも、ヘパリンは血栓イベント発症予防効果を示してきた。従来、医師が治療に貢献してきた血栓症のうち、出血イベントリスクの欠点はあっても、ヘパリンの増量により制圧できない血栓症はなかったと言っていい。COVID-19の感染に起因する血栓症は従来の血栓症とは様子が異なる。まず、ICUへの入院例として予防的なヘパリン投与を全例受けているのに、高率に症候性の静脈血栓症が起きてしまう。本研究が初めてではないが、予防量より多い治療量のヘパリンを用いても血栓イベントを防げないことが示唆されている。本研究の治療量抗凝固薬としてはヘパリンのみでなく、安定している症例では選択的Xa阻害薬リバーロキサバンも用いられた。ヘパリンに限らず、選択的Xa阻害薬を静脈血栓症の治療量で用いても有効性のエンドポイントには差がなく、出血リスクは増えた。 COVID-19 thrombosisでは、従来の血栓症予防、治療に有効性を示した薬剤のうち、ヘパリンの増量では十分に予防できず、本研究では選択的Xa阻害薬も十分な有効性を発揮できないことが示された。COVID-19 thrombosisの本態は従来の血栓症とは本質的に異なるのかもしれない。 動脈硬化巣破綻などの血管壁の機能異常から起こる動脈血栓症とも、血流のうっ滞などを原因とする従来の静脈血栓症とも異なるメカニズムが、COVID-19 Thrombosisには寄与しているのかもしれない。従来型の抗凝固薬、抗血小板薬は無効というわけではないが、強力に有効ではない。COVID-19 thrombosisの本質に迫る治療標的の設定が必須である。

179.

AZ製ワクチン接種後の血栓症の診療の手引き・第2版/日本脳卒中学会・日本血栓止血学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まり、全国で一般市民に対しても接種が急速に進んでいる。その一方で、2021年3月以降、アストラゼネカ社アデノウイルスベクターワクチン(商品名:バキスゼブリア)接種後に、異常な血栓性イベントおよび血小板減少症を来すことが報道され、4月に欧州医薬品庁(EMA)は「非常にまれな副反応」として記載すべき病態とした。また、ドイツとノルウェー、イギリスなどからもバキスゼブリア接種後に生じた血栓症のケースシリーズが相次いで報告され、ワクチン接種後の副反応として血小板減少を伴う血栓症が問題となった。この血栓症は、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と類似した病態と捉えられ、VITTやVIPITという名称が用いられた(本手引きでは血小板減少症を伴う血栓症[TTS]を用いる)が、本症の医学的に適切な名称についてはいまだ議論があるところである。 海外では、国際血栓止血学会、米国血液学会などからTTSに関する診断や治療の手引きが公開されており、WHOからも暫定ガイドラインが発表された。海外と医療事情が異なるわが国には、これまで本疾患に対する診療の手引きは存在しなかったため、日本脳卒中学会と日本血栓止血学会は、COVID-19ワクチンに関連した疾患に対する診断や治療をまとめ、日常診療で遭遇した場合の対応方法を提言するために2021年6月に「アストラゼネカ社COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き・第2版」(2021年6月)を作成、公開した。まれだが発症すると致死的なTTS TTSの特徴は1)ワクチン接種後4~28日に発症する、2)血栓症(脳静脈血栓症、内臓静脈血栓症など通常とは異なる部位に生じる)、3)血小板減少(中等度〜重度)、4)凝固線溶系マーカー異常(D-ダイマー著増など)、5)抗血小板第4因子抗体(ELISA法)が陽性となる、が挙げられる。TTSの頻度は1万人~10万人に1人以下と極めて低いが、これまでに報告されたTTSの症例は、出血や著明な脳浮腫を伴う重症脳静脈血栓症が多く、致死率も高い。また、脳静脈血栓症以外の血栓症も報告されているので、極めてまれな副反応であるが、臨床医はTTSによる血栓症を熟知しておく必要がある。目次はじめに1 TTSの診断と治療の手引きサマリー 1)診断から治療までのフローチャート 2)候補となる治療法2 TTSの概要 1)TTSとは 2)ワクチン接種後TTSの発症時期と血栓症の発症部位3 TTSとHITとの関連4 TTSの診断 1)TTSを疑う臨床所見  2)検査 3)診断手順 4)鑑別すべき疾患と見分けるポイント5 TTSの治療 1)免疫グロブリン静注療法 2)ヘパリン類 3)ヘパリン以外の抗凝固薬 4)ステロイド 5)抗血小板薬 6)血小板輸血 7)新鮮凍結血漿 8)血漿交換 9)慢性期の治療おわりに 付1)血栓症の診断 付2)脳静脈血栓症の治療 血栓溶解療法(局所および全身投与)/血栓回収療法/開頭減圧術/抗痙攣薬 付3)COVID-19ワクチンとは 文献 同手引きでは「おわりに」で「TTSは新しい概念の病態であり、確定診断のための抗体検査(ELISA法)の導入、治療の候補薬の保険収載、さらにはワクチンとの因果関係の解明など、多くの課題が残されている。今後、新たな知見が加わる度に、本手引きは改訂していく予定」と今後の方針を記している。

180.

トファシチニブ、COVID-19肺炎入院患者の予後を改善/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺炎で入院した患者の治療において、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬トファシチニブはプラセボと比較して、28日以内の死亡または呼吸不全のリスクを抑制し、安全性に大きな差はないことが、ブラジル・Hospital Israelita Albert EinsteinのPatricia O. Guimaraes氏らが実施した「STOP-COVID試験」で示された。NEJM誌オンライン版2021年6月16日号掲載の報告。ブラジル15施設の無作為化プラセボ対照比較試験 研究グループは、COVID-19肺炎入院患者の治療におけるトファシチニブの有効性と安全性を評価する目的で、二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行った(Pfizerの助成による)。本試験では、2020年9月16日~12月13日の期間に、ブラジルの15施設で患者登録が行われた。 対象は、年齢18歳以上、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染が確定され、画像検査(胸部CTまたはX線)でCOVID-19肺炎の証拠が認められ、入院から72時間未満の患者であった。被験者は、トファシチニブ(10mg、1日2回)またはプラセボを経口投与する群に無作為に割り付けられ、14日間または退院まで投与された。 主要アウトカムは、28日時点での死亡または呼吸不全とされた。米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の疾患重症度に関する8段階順序尺度(点数が高いほど、病態の重症度が高い)で、6点(入院中に非侵襲的換気または高流量酸素装置による換気を受けている)、7点(入院中に侵襲的機械換気または体外式膜型人工肺[ECMO]の装着を受けている)、8点(死亡)の場合に、主要アウトカムを満たすと定義された。全死因死亡には差がない 289例が登録され、144例がトファシチニブ群、145例はプラセボ群に割り付けられ、それぞれ2例および3例が試験薬の投与を受けなかった。全体の平均年齢は56歳で、34.9%が女性であった。COVID-19の診断から無作為化までの期間中央値は5日だった。 ベースラインの全体のBMI中央値は29.7で、50.2%が高血圧、23.5%が糖尿病を有しており、75.4%が酸素補充療法、78.5%が糖質コルチコイド、77.9%が予防的抗凝固療法、20.8%が治療的抗凝固療法を受けていた。入院中に89.3%が糖質コルチコイドの投与を受けた。 28日の時点での死亡または呼吸不全の発生率は、トファシチニブ群が18.1%(26/144例)と、プラセボ群の29.0%(42/145例)に比べ有意に低かった(リスク比:0.63、95%信頼区間[CI]:0.41~0.97、p=0.04)。 28日時の全死因死亡の発生率は、トファシチニブ群が2.8%(4/144例)、プラセボ群は5.5%(8/145例)であり、両群間に差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.49、95%CI:0.15~1.63)。 プラセボ群と比較したトファシチニブ群の8段階順序尺度スコアの比例オッズは、14日の時点で0.60(95%CI:0.36~1.00)、28日時は0.54(0.27~1.06)であった。 重篤な有害事象は、トファシチニブ群が14.1%(20例)、プラセボ群は12.0%(17例)で発現した。とくに注目すべき有害事象は、トファシチニブ群で深部静脈血栓症、急性心筋梗塞、心室頻拍、心筋炎が1例ずつ認められた。重篤な感染症の発生率は、トファシチニブ群3.5%、プラセボ群4.2%であった。また、死亡を除き、試験薬投与中止の原因となった有害事象は、それぞれ11.3%および3.5%でみられ、最も頻度の高かった原因はアミノトランスフェラーゼ値上昇(4.2%、0.7%)と、リンパ球減少(2.8%、1.4%)だった。 著者は、「ACTT-2試験(バリシチニブ+レムデシビルはレムデシビル単剤に比べ、とくに高流量酸素補充または非侵襲的機械換気を受けている患者で、回復までの期間を短縮)と本試験の結果を統合すると、JAK阻害薬は、侵襲的機械換気を受けていないCOVID-19肺炎患者の新たな治療選択肢となることを示すエビデンスがもたらされた」としている。

検索結果 合計:929件 表示位置:161 - 180