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心筋梗塞のNSAIDsに関連した上部消化管出血に対するPPIの役割(解説:上村 直実 氏)-449

 日本とは異なり欧米では、心筋梗塞(MI)の再発予防のために抗血栓薬を内服している患者の中で、心血管リスクを伴うにもかかわらず、関節痛などの疼痛緩和目的で非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用しているものが非常に多い。抗血栓薬とNSAIDsの併用は、消化管とくに上部消化管出血のリスクが増大することが知られており、消化管出血のハイリスク患者に対してプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用が推奨されているが、リスクが不明な通常患者に対するPPIの有用性は明らかになっていない。 今回、デンマーク全土の入院データベース(DB)のうち30歳以上の初発MIで入院し、退院後30日時点で生存していた患者データを用いた解析研究が報告されている。 入院DBのうち、抗血栓療法を受けていたMI後患者8万2,955例(平均年齢67.4歳、男性64%)のうち、3万5,233例(42.5%)がNSAIDsを1回以上処方されており、3万7,771例(45.5%)がPPI投与を受けていた。平均追跡期間5.1年の間に、消化管出血の発生は3,229例(3.9%)であった。NSAIDs+抗血栓薬における出血の粗発生率(イベント/100人年)は、PPI服用患者1.8、PPI非服用患者2.1であり、抗血栓治療のレジメン、NSAIDsおよびPPIの種類にかかわらず、PPI使用群における補正後消化管出血リスクの低下が認められた(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.54~0.95)。以上の結果から、MI後で抗血栓薬とNSAIDsを併用する場合、薬剤の種類や消化管リスクの高低にかかわらずPPIの併用により消化管出血のリスクを軽減することが示唆された。 最近、欧米や台湾ではおなじみとなってきた全国データベースを用いた大規模コホート研究の結果であり、現状の課題を大ざっぱに把握することに有用である。しかし、臨床現場では、個々の患者背景は千差万別であり、個別化した対応が重要である。

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静脈血栓塞栓症が経口剤単剤で治療可能に

 深部静脈血栓症(DVT)と肺血栓塞栓症(PE)は密接に関連するため、総称して静脈血栓塞栓症(VTE)と呼ばれる。このVTEの治療および再発抑制に対して、選択的直接作用型第Xa因子阻害薬のイグザレルト(一般名:リバーロキサバン)が9月24日に適応追加承認を取得したことを受け、プレスセミナーが10月28日、都内で開催された(主催:バイエル薬品株式会社)。そのなかで、三重大学医学部附属病院 循環器内科科長 山田 典一氏が、日本初の経口シングルドラッグアプローチの有効性と、治療戦略の変化について解説した。VTE治療戦略のパラダイムシフト VTEの発症初期3週間は、PEまたはDVT再発の危険性が高く、初期治療をしっかり行うことが重要である。 従来の治療では、初期治療期にヘパリンなどを静注し、維持治療期から慢性期(長期2次予防)に、唯一の経口抗凝固薬であったワルファリンを投与していた。しかし、ワルファリンの効果発現には5~7日かかるため、投与開始時はヘパリンと併用(ブリッジング)しなければならないことから、山田氏はこの治療について「投与方法が煩雑で、また納豆など食事における注意も必要」と指摘した。 現在、経口剤はワルファリン以外に非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(NOAC)が発売され、血中濃度の立ち上がりが早いエドキサバンとリバーロキサバンの2剤が、VTEの治療および再発抑制に使用可能となっている。 先にVTEに承認されたエドキサバンの投与スケジュールは、初期治療期にヘパリンなどを投与した後、エドキサバンにスイッチする。一方、リバーロキサバンは初期治療期にヘパリンなどを投与せず、最初からリバーロキサバンのみを投与するという、日本で初めての「経口シングルドラッグアプローチ」を可能にした。経口シングルドラッグアプローチの臨床成績 海外で実施されたEINSTEIN PE/DVT試験は、PE 4,833例とDVT 3,449例を、リバーロキサバン群4,150例と標準療法群(エノキサパリンとビタミンK拮抗薬併用)4,131例の2群に無作為化割り付けした非劣性試験である。この試験で、リバーロキサバン群は、有効性主要評価項目である「症候性VTEの累積再発率」において非劣性を示し(HR 0.89、95%CI:0.66~1.19、p<0.001)、また、安全性主要評価項目である「重大な出血または重大ではないが臨床的に問題となる出血事象」の累積事象発現率について、HR 0.93(95%CI:0.81~1.06)で、リバーロキサバンの有効性と安全性が示された。 なお、本試験におけるリバーロキサバンの用法・用量は、初期強化療法では15mg 1日2回、維持療法では20mg 1日1回であった。しかし、PE/DVT患者での推定曝露量は、白人20mg 1日1回と日本人15mg 1日1回が同程度であることから、日本人のPE/DVT患者におけるJ-EINSTEIN PE/DVT試験での維持療法は15mg 1日1回で実施されている。 このJ-EINSTEIN PE/DVT試験では、投与3週間後および予定期間終了時の血栓消失した患者の割合が、リバーロキサバン群で標準療法群の約2倍であったことから、山田氏は、「症例数は限られているが、より高い血栓消失効果が期待できる」と強調した。経口シングルドラッグアプローチにより外来治療が増加 近年、海外ではDVT患者の外来治療が増加しており、現在は半数以上が外来で治療されている。山田氏は「わが国でも、経口シングルドラッグアプローチが可能になり、DVT治療については外来治療が増えていくだろう。入院期間が短縮され入院費用も削減できる」と新しい治療戦略に期待を示し、講演を締めくくった。

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心筋梗塞後の患者にPPIは有益か/BMJ

 心筋梗塞(MI)後で抗血栓薬と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与を受ける患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)投与は、消化管出血リスクの低下と関連することが示された。抗血栓薬、NSAIDs、PPIの種類にかかわらず関連がみられたという。デンマーク・コペンハーゲン大学のAnne-Marie Schjerning Olsen氏らが、同国入院患者データを分析し報告した。著者は今回の結果について、「観察非無作為化試験であり限定的である」としたうえで、MI後でNSAIDs服用を必要とする患者について、PPI投与はベネフィットをもたらす可能性があると述べている。BMJ誌オンライン版2015年10月19日号掲載の報告より。抗血栓薬+NSAIDs服用MI後患者で、PPI服用時の消化管出血リスクを調査 MI後患者へのNSAIDs投与は、心血管リスクを理由に認められていないが、疼痛症状などを理由に広く使用されている。一方で、MI後患者には抗血栓薬およびNSAIDs投与と関連した出血合併症が認められているが、PPIの消化管出血リスクへの影響については明らかではない。 研究グループは、PPIの影響を調べるため、1997~2011年にデンマーク全病院からの入院レジストリデータを集約して分析した。30歳以上の初発MIで入院し、退院後30日時点で生存していた患者を包含。PPIと、抗血栓薬+NSAIDsによる消化管出血リスクの関連を、補正後時間依存的Cox回帰モデルを用いて調べた。PPI非服用患者と比べて出血リスクは0.72 結果、抗血栓治療およびNSAIDs治療を受けるMI後患者それぞれにおいて、PPI使用による消化管出血リスクの低下が認められた。 単剤または2剤抗血栓療法を受けていたMI後患者8万2,955例(平均年齢67.4歳、男性64%)のうち、42.5%(3万5,233例)がNSAIDsを1回以上処方されており、45.5%(3万7,771例)がPPI投与を受けていた。 平均追跡期間5.1年の間に、消化管出血の発生は3,229例であった。NSAIDs+抗血栓療法における出血の粗発生率(イベント/100人年)は、PPI服用患者1.8、PPI非服用患者2.1で、抗血栓治療のレジメン、NSAIDsおよび使用PPIのタイプにかかわらず、PPI使用群における補正後出血リスクの低下が認められた(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.54~0.95)。 これらの結果について著者は、「観察非無作為化試験であり限定的である」と述べたうえで、「結果は、消化管リスクの有無にかかわらず、PPI投与が有益な効果をもたらす可能性があることを示唆するものである。また、MI後患者でNSAIDsを回避できないときは、医師はPPIを処方しても差し支えないことが示唆された」と述べている。

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高齢者の服薬、併存疾患の組み合わせの確認を/BMJ

 米国・イェール大学医学部のMary E Tinetti氏らは複数の慢性疾患を有する高齢者の、ガイドラインに基づく服薬と死亡の関連を調べた。その結果、とくに心血管薬の生存への影響は、無作為化試験の報告と類似していたが、β遮断薬とワルファリンについて併存疾患によりばらつきがみられたことを報告した。また、クロピドグレル、メトホルミン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)は、生存ベネフィットとの関連がみられなかったという。結果を踏まえて著者は、「併存疾患の組み合わせによる治療効果を明らかにすることが、複数慢性疾患を有する患者の処方せんガイドになるだろう」とまとめている。BMJ誌オンライン版2015年10月2日号掲載の報告より。頻度の高い4疾患併存の高齢者の服薬と死亡の関連を調査 研究グループは、65歳以上の代表的サンプルを全米から集約した住民ベースコホート研究Medicare Current Beneficiary Surveyで、複数慢性疾患を有する高齢者のガイドライン推奨による服薬と死亡を調べる検討を行った。 被験者は、2つ以上の慢性疾患(心房細動、冠動脈疾患、慢性腎臓病、うつ病、糖尿病、心不全、脂質異常症、高血圧症、血栓塞栓症)を有する高齢者8,578例で、2005~2009年に登録、2011年まで追跡した。 被験者は、β遮断薬、Ca拮抗薬、クロピドグレル、メトホルミン、RAS系阻害薬、SSRI、SNRI、スタチン薬、サイアザイド系利尿薬、ワルファリンを服用していた。 主要評価項目は、疾患を有しガイドライン推奨薬を服用していた患者の、非服用患者と比較した死亡に関する補正後ハザード比で、頻度の高い4疾患を有していた患者における死亡補正後ハザード比とした。単疾患では抑制効果が高くても4併存疾患では減弱があることを確認 全体で、各疾患を有する患者の50%以上が、併存疾患にかかわらずガイドライン推奨薬を服用していた。 3年間の追跡期間中の死亡例は、1,287/8,578例(15%)であった。 心血管薬では、β遮断薬、Ca拮抗薬、RAS系阻害薬、スタチンは、対象疾患に関する死亡を抑制することが認められた。たとえば、β遮断薬の補正後ハザード比は、心房細動を有する患者では0.59(95%信頼区間[CI]:0.48~0.72)、心不全患者では0.68(同0.57~0.81)であった。 これら心血管薬の補正後ハザード比は、4つの併存疾患を有する被験者でも類似した値がみられたが、β遮断薬は4併存疾患の組み合わせによりばらつきがみられた。0.48(心房細動/冠動脈疾患/脂質異常症/高血圧)から、0.88(うつ病/冠動脈疾患/脂質異常症/高血圧)にわたっていた。 一方、クロピドグレル、メトホルミン、SSRI、SNRIでは、死亡の抑制効果はみられなかった。 また、ワルファリンは、心房細動(補正ハザード比:0.69、95%CI:0.56~0.85)、血栓塞栓症(0.44、0.30~0.62)を有する患者で、死亡リスクの抑制が認められたが、頻度の高い4併存疾患患者では、その抑制効果が減弱することが確認された。0.85(心房細動/冠動脈疾患/脂質異常症/高血圧)から、0.98(心房細動/うつ病/脂質異常症/高血圧)の範囲にみられた。

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FDA、ダビガトランの中和剤idarucizumabを承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、抗凝固薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)の特異的中和剤idarucizumab(商品名:Praxbind)を迅速承認した。対象はダビガトラン服用中で緊急に抗凝固作用の中和を要する患者。 idarucizumabは初めて承認されたダビガトランの特異的中和薬。ダビガトランに結合し、その作用を無効化する。 idarucizumabの効果と安全性は、ダビガトランを服用した283例の健康成人(抗凝固治療を必要としない成人)による3つの試験で検討された。その結果、idarucizumabが投与された健康成人において、ダビガトランの血中量(非結合型ダビガトランの血漿中濃度を測定)は迅速に減少し、その作用は24時間持続した。また、ダビガトラン服用中で、止血困難な出血が発生した、あるいは緊急手術が必要となった123例の患者による試験が行われた。この進行中の試験では、89%の患者でダビガトランの抗凝固作用が完全に中和され、その作用はidarucizumab投与後 4時間以上持続した。同試験において、idarucizumabの頻度の高い副作用は高カリウム血症、意識錯乱、便秘、発熱、肺炎であった。 ダビガトランの作用中和により、患者は血栓や心房細動による脳卒中のリスクにさらされることになる。そのため、idarucizumabの添付文書では、医療者が医学的に適切だと判断し次第、すみやかに抗凝固療法を再開することを推奨している。FDAのプレスリリースはこちら。

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生体弁で弁尖運動が低下、脳卒中・TIAリスク増大の可能性も/NEJM

 大動脈生体弁の植込みをした患者について調べた結果、弁尖運動の低下が認められ、その発生率はワルファリンによる抗凝固療法を行った患者のほうが、抗血小板薬2剤併用療法を受けた患者に比べ低率であることが判明した。弁尖運動の低下は、抗凝固療法により改善することも確認されたという。米国・Cedars–Sinai Heart InstituteのRaj R Makkar氏らが、約190例の患者について調べ報告した。弁尖運動の低下は、脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の発生リスクを増加する可能性も示唆され、著者は「今回発見した所見の臨床的アウトカムへの影響について、さらなる調査を行う必要がある」と指摘している。NEJM誌オンライン版2015年10月5日号掲載の報告。四次元立体レンダリングCT画像で弁尖運動の低下を判定 今回の検討の背景には、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)後に脳梗塞を発症した患者について、CTにおいて大動脈弁の弁尖運動の低下が確認され、不顕性の弁尖血栓症の懸念が持ち上がったことがある。 研究グループは、TAVR臨床試験の被験者55例と、TAVRまたは外科的大動脈生体弁植込み術を実施した患者に関する2ヵ所の医療機関の単独レジストリ登録者132例を対象に、四次元立体レンダリングCT画像データと、抗凝固療法、脳卒中やTIAを含む臨床的アウトカムに関する情報を得て分析を行った。弁尖運動低下は抗凝固療法で改善 結果、CT画像で弁尖運動の低下が認められたのは、臨床試験被験者55例中22例(40%)、患者レジストリ132例中17例(13%)だった。弁尖運動の低下は、TAVR・外科的植込み術ともに複数種の生体弁で認められた。 弁尖運動低下の発生率は、抗血小板薬2剤併用療法を行った群では臨床試験群55%、レジストリ群29%に対し、ワルファリンによる抗凝固療法を行った群ではともに0%と発生率は有意に低かった(それぞれ、p=0.01、p=0.04)。 被験者のうち追跡CT画像を撮影した患者において、抗凝固療法を受けた11例全例で弁尖運動の低下は改善したが、抗凝固療法を受けていなかった10例では同改善が認められたのは1例のみだった。 弁尖運動の低下による脳卒中またはTIAの発生率については、臨床試験群では有意差はなかったものの、レジストリ群では、弁尖運動が正常な人では115例中1例に対し、弁尖運動低下が認められた人では17例中3例と有意に高率だった(p=0.007)。

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CHA2DS2-VAScスコアの応用って?~JAMA掲載に値するか~(解説:西垣 和彦 氏)-430

JAMAって? 世の中には、あまた医学雑誌がある。その中でも最高峰に位置するのが、このJAMA(The Journal of the American Medical Association:米国医師会雑誌)である。インパクトファクター(impact factor: IF)は、2014年には54.420と上昇し、臨床医学総合誌では第1位の座を堅持している。しかしながら、インパクトファクターは、自然科学・社会科学分野の学術雑誌を対象として、その雑誌の影響度、引用された頻度を測る指標であるが、あくまでWeb of Scienceに収録された、特定のジャーナルの「平均的な論文」の被引用回数にすぎない。JAMA誌の記事の採択率は、依頼した記事も依頼していない記事もまとめて、年間6,000本受け取るうちのおおよそ8%であり、最難関の雑誌であることは間違いない。しかし、しょせん米国医師会雑誌であり、専門性がない臨床医学総合誌であるので、読者層はおのずから幅広くなり、インパクトファクターが高くなることは必然である。最近、このJAMA誌において、その独自性と総合雑誌であるがゆえに、頭を抱えたくなるような論文が掲載される例が多々目に付く。この論文もその範囲にあるのかもしれない。CHA2DS2-VAScスコアの真意 心房細動は、発作性であっても持続性~慢性であっても、また、心房細動の持続時間とも関係なく、心原性脳血栓塞栓症を発症させるに十分な血栓塞栓(フィブリン血栓)を生成させる可能性がある。しかも、心原性脳血栓塞栓症がいったん発症すると、ほかのアテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞の予後とは比較にならないほど重症となり、20%が死亡、40%が要介護4度あるいは5度の寝たきりの状態となる。さらに、急性期に命を取り留めたとしてもその後の5年生存率は30%と、がんなどの予後に匹敵するほど著しく予後不良なため、心原性脳血栓塞栓症は“ノック・アウト型脳梗塞”と呼ばれる。よって、心原性脳血栓塞栓症の最も重要なポイントは、心原性脳血栓塞栓症をいかに発症させないようにするかであるが、これまで心原性脳血栓塞栓症予防のための抗凝固薬は、約50年前の1962年に発売されたワルファリンのみで、ほかに選択の余地がなかった。しかも、このワルファリンは、経験豊富な循環器専門医でさえもその副作用である出血の点で安心して処方できない、非常にハードルの高い薬剤である。よって、ワルファリン投与により、副作用を上回る有効性を担保する患者を層別化する目的で、心房細動患者の血栓塞栓症リスクを評価しスコア化したのがCHA2DS2-VAScスコアなのである。 本論文の臨床的な意義は? 本論文は、デンマークのレジストリデータを用い、心房細動のない心不全患者の場合でもCHA2DS2-VAScが虚血性脳卒中、血栓塞栓症、心不全診断後1年以内の死亡を推定することができるかどうか、心不全患者4万2,987例を対象にして検討された研究である。その結果、CHA2DS2-VAScスコアの高い(≧4)患者では、血栓塞栓症の絶対リスクは心房細動の存在にかかわらず高値であった。 しかし、この結果は、CHA2DS2-VAScスコアの中に心不全の項目が要素として入っていることと臨床的な見地から、当然といえば当然の結果であり、予期された結論であったと考える。しかも、CHA2DS2-VAScスコアという使用目的が異なるスコアを心房細動のない心不全患者の層別化に用いるには、推定精度は中等度であったことからも無理があり、臨床的に使用する意義は少ない。結論として 今回のこの論文を通じて、次の3点が結論としてみえてくる。1)心房細動のない心不全患者に対し、抗凝固療法を行うべきか否かは、出血のリスク層別化スコアであるHAS-BLED等も考慮すべきであり、この論文ではCHA2DS2-VAScスコアで層別化できるかやってみたにすぎない。したがって、今後ガイドラインに何ら影響するほどの論文ではない。2)今後、あらためて心房細動のない心不全患者の虚血性脳卒中や血栓塞栓症の因子を分析し、より精度の高いスコアを考案したうえで、新規スコアを使って層別化された患者群に対して、抗凝固薬投与で虚血性脳卒中や血栓塞栓症、死亡が減らせるかどうかの大規模無作為化比較試験の実施が必要である。3)JAMA誌の採択基準は依然不明であり、その臨床的意義すら窮する論文も存在する。

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発作性夜間血色素尿症〔PNH : paroxysmal nocturnal Hemoglobinuria〕

発作性夜間血色素尿症のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 定義発作性夜間血色素尿症(発作性夜間ヘモグロビン尿症、paroxysmal nocturnal hemoglobinuria: PNH)は、血管内溶血を特徴とする後天性の血液疾患で、PIG-A遺伝子に変異を有する造血幹細胞がクローン性に増加するために発症する。■ 疫学欧米におけるPNHの発症頻度は100万人あたり15.9人とされているが、わが国では100万人あたり3.6人ときわめてまれである〔1998年(平成10年)度の厚生労働省の疫学調査研究班による〕。男女比はほぼ1:1で、わが国における診断時年齢は20~60代(平均年齢45.1歳)と、広く分布する。欧米例では血栓症の合併が多いのに対し、わが国では造血不全症状が主体になることが多い。■ 病因PIG-A遺伝子に変異があると、GPIアンカー型の膜蛋白の発現が低下する。補体制御蛋白CD55やCD59もGPIアンカー型膜蛋白であり、PIG-A遺伝子の変異があるとその発現が低下する。このように、PIG-A遺伝子変異のためにCD55やCD59の発現を欠失した血球をPNH型血球と呼ぶ。PNH型血球は補体に対する感受性が高まっており、血管内溶血を生じやすい。PNH型血球が選択されて増加する機序は完全には解明されていないが、まずPIG-A遺伝子変異の入った造血幹細胞が免疫学的な攻撃を免れて相対的に増加し、さらに何らかの別な遺伝子異常が加わってクローン性に増加するものと考えられている。■ 症状典型的には、血管内溶血による貧血と褐色尿(ヘモグロビン尿)が症状の主体となる。溶血性貧血に伴い、全身倦怠感、労作時の息切れ、黄疸がみられる。ウイルス感染などによって補体が活性化されると溶血発作が生じ、急激な貧血の進行をみる。溶血で生じたヘモグロビン尿は、腎障害を引き起こし、むくみなどが生じる。また、深部静脈血栓症や肺塞栓症などの血栓症をしばしば合併する。わが国のPNH患者は造血不全を合併する頻度が高く、貧血に加えて白血球や血小板数の減少がみられることがある(汎血球減少)。汎血球減少がみられる患者においては、感染症や出血のリスクも増加している。■ 分類1)臨床的PNH:溶血所見がみられるもの古典的PNH:末梢血のPNH型血球の比率が高く、溶血症状あるいは血栓症状が顕著。骨髄不全型PNH:骨髄が低形成で汎血球減少を呈する型。再生不良性貧血―PNH症候群とも呼ばれる。混合型PNH2)PNH型血球を有する骨髄不全症:明らかな溶血所見を欠くが、末梢血に少数のPNH型血球が検出され、再生不良性貧血あるいは骨髄異形成症候群の診断基準を満たすもの。PNH型血球陽性の骨髄不全症では、抗胸腺免疫グロブリンやシクロスポリンなどによる免疫抑制療法に反応して血球が増加することが多い。■ 予後わが国におけるPNH患者の診断後の平均生存期間は32.1年、50%生存期間も25.0年と長く、慢性の疾患といえる。この間、溶血発作を反復したり、造血不全、腎障害などが徐々に進行したりするため、QOLは必ずしもよくない。死亡原因としては出血、感染、血栓症が多く、骨髄異形成症候群などの造血器腫瘍への移行、腎障害、および血栓症が予後を大きく左右する。近年、中等症以上の患者に対して、補体C5に対するヒト化モノクローナル抗体のエクリズマブ(商品名:ソリリス)が積極的に用いられるようになった。こういった治療法の進歩によって、患者のQOLと生命予後の改善が期待されている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 主な検査と診断血液検査、尿検査によって血管内溶血の所見を確認する。貧血、網状赤血球数増加、血清LDH値上昇、血清間接ビリルビン値上昇、血清ハプトグロビン値低下、尿潜血(ヘモグロビン)反応陽性は、血管内溶血を疑う所見である。PNHの診断には、フローサイトメトリーを用いたPNH型血球(CD55、CD59を欠損する血球)の検出が不可欠である。古典的なHam試験と砂糖水試験は、最近ではフローサイトメトリーにとって代わられている。FLAER法を用いたフローサイトメトリーでは、非常に高感度にPNH型血球を定量できる(保険診療外)。さらに骨髄検査によって、PNH型血球陽性の造血不全症(再生不良性貧血や骨髄異形成症候群)との鑑別や、PNHの病型分類を行う。■ 重症度分類と指定難病特発性造血障害に関する調査研究班では、溶血所見に基づいた重症度分類を作成している。これによると、ヘモグロビン7g/dL未満または定期的な赤血球輸血を必要とする貧血か、あるいは血清LDHが正常上限の8~10倍程度の高度な溶血を認める場合を「重症」、ヘモグロビン10g/dL未満の貧血か、あるいは血清LDHが正常上限の4~5倍程度の中等度の溶血を認める場合を「中等症」とし、これに該当しない場合を「軽症」としている。ただし、血栓症の既往があれば、溶血の程度に関わらず「重症」とされる。平成27年1月から、PNHは「難病患者に対する医療等の法律」による指定難病となった。これにより、中等症以上の患者の医療費負担が大幅に軽減されるようになった。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)PNHの根治を目指す治療法は同種造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)のみであるが、この治療法自体のリスクが大きいために、適応は若年で、かつ重症の骨髄不全症を伴う場合に限られる。さまざまな感染症が溶血発作の引き金になるため、日常生活では感染症の予防が重要である。溶血が長期にわたると、尿から鉄が失われるために鉄欠乏になったり、需要の増大のために葉酸欠乏になったりするので、血清フェリチン値や葉酸値をみながら鉄や葉酸の補充を検討する。溶血発作時には少量の副腎皮質ステロイドを用いることがあるが、糖尿病の発症や易感染性などの副作用のため、長期的な使用の有用性については意見が分かれる。貧血が高度の場合は赤血球輸血を行う。溶血により生じた遊離ヘモグロビンによる腎障害を防止するためには、輸液や利尿剤を用いるほか、高度の溶血発作時には人ハプトグロビン(商品名:ハプトグロビン)を投与することもある。血栓症の予防と治療には、ヘパリンやワーファリン製剤による抗血栓療法を行う。骨髄不全型PNHでは、蛋白同化ホルモンや免疫抑制剤が用いられる。最近、保険適用となったエクリズマブ(同:ソリリス)は、補体溶血を抑制することによって、貧血をはじめとするさまざまな臨床症状を劇的に改善する。この薬剤には血栓症の予防効果もみられる。重症例では積極的適応、中等症では相対的適応とされる。ただし、エクリズマブ治療導入の際には、点滴治療を定期的、継続的に行う必要があること、エクリズマブを中止する際には高度の溶血発作が生じうること、髄膜炎菌など一部の感染症に対する免疫能の低下が起こりうること、および高額な薬剤であることを十分に説明し、髄膜炎菌に対するワクチンの接種を行ってから開始する。エクリズマブ治療開始後に、LDHが低下したにもかかわらず貧血の改善が乏しい場合には、赤血球の膜上に蓄積した補体による血管外溶血あるいは骨髄不全の合併を考える。エクリズマブ治療には、PNHに合併した骨髄不全の改善効果は期待できない。PNH患者の妊娠に関しては、血栓症による流産のリスクが高く、また貧血もしばしば高度になる。平成26年度に、特発性造血障害調査に関する調査研究班および日本PNH研究会によって「妊娠ガイドライン」が作成された。このガイドラインでは、妊娠前の治療状況や血栓症の既往の有無によって、ヘパリンあるいはエクリズマブの使用が推奨されている。4 今後の展望病態面では、PNH型血球クローン増加の機序、血栓症がみられる機序などに関し、さらなる研究の進展が期待される。治療に関しては、エクリズマブの登場によってPNHの治療戦略が刷新された。今後、エクリズマブ不応例への対応や、血管外溶血が顕在化してくる症例に対する治療、妊娠管理などに関して、さらなる知見の集積と指針の充実が待たれる。現在、エクリズマブ以外にも補体系を標的とした新薬の開発が進んでおり、今後、PNH患者のQOLや予後のさらなる改善が期待される。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 発作性夜間ヘモグロビン尿症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)特発性造血障害調査に関する調査研究班(診療の参照ガイドがダウンロードできる)日本血液学会(血液専門医研修施設マップで紹介先の候補を検索できる)日本PNH研究会(患者向けと医療者向けのかなり詳しい情報)患者会情報NPO法人PNH倶楽部(PNH患者と家族の会)公開履歴初回2013年02月28日更新2015年10月13日

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なぜ心房細動ばかりが特別扱い?(解説:後藤 信哉 氏)-424

 脳卒中予防は重要である。Framingham研究は、地域住民の34年間という長期の観察により、脳卒中のリスク因子として、心房細動、心不全、冠動脈疾患、高血圧などの重要性を示した。近未来の脳卒中発症予測法は、近未来の心筋梗塞発症予測法よりも信頼性が高い。 実際、「非弁膜症心房細動」症例の、近未来の脳卒中リスク予測に用いるCHA2DS2-VASc scoreを構成する、心不全、高血圧、高齢、糖尿病、脳卒中の既往、血管病、性差のうち、心不全、血管病、高血圧が心房細動の有無にかかわらず脳卒中発症の独立した危険因子であることは、Framingham研究からも明らかにされていた。実際、脳卒中発症に関わる「心不全」の寄与は、「心房細動」の寄与に匹敵する。CHA2DS2-VASc scoreが心房細動を合併した症例の脳卒中予防のみでなく、一般的な脳卒中発症予測にも利用価値があるのではないかと考えるのは、きわめて自然である。Framingham研究が、脳卒中の発症における心房細動の重要性をすでに示しているので、予測因子に「心房細動」を含まないCHA2DS2-VASc scoreの脳卒中予測能力は、非心房細動例では心房細動例よりも不安定であろうという仮説も論理的である。 本研究は、およそ20%の心房細動例を含む4万2,987例の心不全症例を対象とした。抗凝固療法を受けている症例は除外されている。心不全発症後1年以内における虚血性脳卒中、全身塞栓症、死亡率と CHA2DS2-VASc scoreの関係が、心房細動例と非心房細動例において検証された。予想のとおりであるが、いずれのエンドポイントも心房細動の有無にかかわらず、CHA2DS2-VASc scoreの高い症例におけるイベント発症率が高かった。本研究は、新規発症の「心不全例」のうち、抗凝固療法を受けていない症例を対象としているが、CHA2DS2-VASc scoreは、脳卒中、全身塞栓症、死亡率の予測に、心房細動の有無にかかわらず役立つことを示して興味深い。 われわれは以前、日本において、心筋梗塞後、脳卒中後、心房細動の症例を登録して8,000例を超えるデータベースを構築した。CHADS 2 scoreは、1年間の観察期間内の心筋梗塞の発症予測には役立たなかったが、脳卒中、死亡率の予測には有用であることを示した1)。CHA2DS2-VASc scoreにしてもCHADS 2 scoreにしても、心房細動症例に限局せず、近未来の脳卒中、死亡率と関連していることは、臨床医は再認識すべきである。今回のJAMA誌の論文は、CHA2DS2-VASc scoreにかかわらず、脳卒中イベントよりも死亡率が近未来のイベントとしてインパクトが大きいことを示した。実際、過去のRE-LY試験、ENGAGE TIMI 48試験など、心房細動を対象としたNOAC開発試験においても、脳卒中発症率よりも近未来の死亡率が高かったことを再認識すべきである。新規開発された経口抗凝固薬が過剰宣伝されると「CHA2DS2-VASc scoreは心房細動症例以外の症例でも脳卒中予防に役立つ」、「CHA2DS2-VASc scoreは近未来の死亡予測に役立つ」など、いわゆるNOAC販売に繋がらない重要な臨床情報が十分に伝達されない。 ヒトの一生は「心房細動」の有無で大きな影響を受けるものではないことを再認識すべきである。

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CHA2DS2-VAScスコア、心不全患者にも有用/JAMA

 心房細動(AF)患者の脳卒中リスク層別化に有用なCHA2DS2-VAScスコアが、AFの有無を問わない心不全(HF)患者にも有用であることが明らかにされた。デンマーク・オールボー大学のLine Melgaard氏らによる検討の結果、同患者でスコアと虚血性脳卒中、血栓塞栓症、死亡のリスクとの関連がみられたという。また、非AF患者のほうがAFを有する患者と比べて、同スコアが高いほど血栓塞栓症の合併絶対リスクが高いことも認められた。一方で、予測精度は中程度であり、HF患者におけるスコアの臨床的な有用性は確定的なものではないと著者は述べている。JAMA誌2015年8月30日号掲載の報告より。AF有無を問わない4万2,987例のHF患者を対象に検証 CHA2DS2-VAScスコアの判定は、うっ血性心不全(1点)、高血圧(1点)、75歳以上(2点)、糖尿病(1点)、脳卒中/TIA/血栓塞栓症(2点)、血管系疾患(心筋梗塞既往、PAD、大動脈プラーク:1点)、65~74歳(1点)、性別(女性:1点)で行う。 研究グループは、このCHA2DS2-VAScスコア判定を用いて、AFを問わないHF患者集団の虚血性脳卒中、血栓塞栓症、死亡を予測可能か調べた。 検討には、デンマークレジストリより全国前向きコホート試験のデータを用いた。被験者は、2000~12年にHF発症の診断を受け抗凝固薬治療を受けていなかった4万2,987例(うちAFを有した患者が21.9%)であった。最終フォローアップは、2012年12月31日だった。 被験者について、ベースラインのAF有無で分けたうえでCHA2DS2-VAScスコア判定を行い(最高9点とし、高スコアほど高リスクと判定)、死亡リスクの比較を考慮した分析を行った。主要評価項目は、HF診断後1年以内の虚血性脳卒中、血栓塞栓症、死亡であった。4点以上では、AF有無を問わず血栓塞栓症リスクが高い 非AF患者において、HF診断後1年以内の各指標疾患の発生は、虚血性脳卒中3.1%(977例)、血栓塞栓症9.9%(3,187例)、死亡21.8%(6,956例)であった。 いずれも高スコア群ほどリスクは高く、スコア別(1点~6点)にみたそれぞれの発生率は、虚血性脳卒中はAF患者群で4.5%、3.7%、3.2%、4.3%、5.6%、8.4%、非AF患者群で1.5%、1.5%、2.0%、3.0%、3.7%、7%。全死因死亡はAF患者群で19.8%、19.5%、26.1%、35.1%、37.7%、45.5%、非AF患者群で7.6%、8.3%、17.8%、25.6%、27.9%、35.0%であった。 CHA2DS2-VASc高スコア(4点以上)群では、血栓塞栓症の絶対リスクが、AFの有無にかかわらず高値であった(AFあり9.7% vs.AFなし8.2%、相互作用に関するあらゆるp<0.001)。 C統計値と陰性適中率は、CHA2DS2-VAScスコアの実行性が今回のAFありなしHF集団では中程度であることを示すものであった。虚血性脳卒中の1年C統計値は、AFあり0.67(95%信頼区間[CI]:0.65~0.68)、AFなし0.64(同:0.61~0.67)、1年陰性適中率それぞれ92%(95%CI:91~93%)、91%(同:88~95%)であった。

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がん患者の再発VTEへのtinzaparin vs.ワルファリン/JAMA

 急性静脈血栓塞栓症(VTE)を呈した担がん(active cancer)患者に対し、低分子ヘパリン製剤tinzaparinは、ワルファリンとの比較においてVTE再発を抑制しなかったことが報告された。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のAgnes Y. Y. Lee氏らが、900例を対象とした国際多施設共同無作為化試験の結果、報告した。複合アウトカム評価による本検討では、全死因死亡と重大出血抑制との関連は示されなかったが、臨床的に意味のある非重大出血の抑制は認められた。著者は、「再発VTリスクが高い患者で結果が異なるかについて、さらなる検討を行う必要がある」と述べている。JAMA誌2015年8月18日号掲載の報告。32ヵ国164施設900例を対象に無作為化試験 急性VTEを呈した担がん患者の治療については、先行研究の単施設大規模試験の結果を踏まえて、ワルファリンよりも低分子ヘパリンが推奨されている。 今回研究グループは、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、北米、中米、南米の32ヵ国164施設で被験者を登録し、tinzaparin vs.ワルファリンの有効性と安全性について検討した。試験期間は2010年8月~2013年11月、無作為化非盲検試験にて試験アウトカムの評価は盲検化中央判定にて検討した。 被験者は、担がん状態(組織学的または細胞診で確認がされており、次のいずれかに当てはまる患者:(1)過去6ヵ月間にがんと診断、(2)再発、局所進行または転移性、(3)過去6ヵ月間にがん治療、(4)非完全寛解の造血器腫瘍)、客観的診断による近位部型深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症を有し、余命は6ヵ月超、抗凝固薬の禁忌なしの18歳以上成人であった。無作為に2群に割り付け、一方にはtinzaparin 175 IU/kgが1日1回6ヵ月投与(tinzaparin群449例)。もう一方は6ヵ月間の従来療法群として、最初の5~10日間tinzaparin 175 IU/kg 1日1回を投与したのち、ワルファリン単独投与でINR2.0~3.0を維持した(ワルファリン群451例)。 フォローアップ訪問が、7、14、30日、以後30日間ごとに180日時点まで行われ、また再発VTEの徴候や症状がみられないか、スタッフによる電話フォローが、月ごとの訪問後2週目に行われた。 主要有効性アウトカムは、中央判定による再発DVT、致死的または非致死的肺塞栓症、2次性VTE発生の複合とした。安全性アウトカムは、重大出血、臨床的に意味のある非重大出血、全死因死亡などだった。tinzaparin群の再発VTE、有意な抑制は認められず 結果、再発VTEの発生は、tinzaparin群31/449例、ワルファリン群45/451例だった。6ヵ月間の累積発生率は、tinzaparin群7.2% vs. ワルファリン群10.5%で、有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.41~1.03、p=0.07)。 同様に、重大出血(12例 vs.11例、HR:0.89、95%CI:0.40~1.99、p=0.77)、全死因死亡(150例 vs.138例、1.08、0.85~1.36、p=0.54)でも有意差はみられなかった。 一方で臨床的に意義のある非重大出血の発生については、tinzaparin群の有意な低下が認められた(49/449例 vs.69/451例、HR:0.58、95%CI:0.40~0.84、p=0.004)。

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