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VTE予防、薬物療法と間欠的空気圧迫法併用のメリットは?/NEJM

 静脈血栓塞栓症(VTE)の薬物予防法を受けている重症患者において、付加的な間欠的空気圧迫法を薬物予防法のみと比較したが、近位下肢深部静脈血栓症の発生は減少しなかった。サウジアラビアのキング・サウド・ビン・アブドゥルアジーズ健康科学大学のYaseen M. Arabi氏らが、重症患者のVTE予防における薬物予防法と間欠的空気圧迫法併用の有効性を検証した、国際多施設共同無作為化比較試験「Pneumatic Compression for Preventing Venous Thromboembolism trial:PREVENT試験)の結果を報告した。VTE予防において、間欠的空気圧迫法と薬物予防法の併用により深部静脈血栓症の発生が減少するかについてはエビデンスが不足していた。NEJM誌オンライン版2019年2月18日号掲載の報告。ICU入室後48時間以内に薬物予防法のみと間欠的空気圧迫法併用を無作為化 PREVENT試験は2014年7月~2018年8月に、サウジアラビア、カナダ、オーストラリアおよびインドの20施設で行われた。 対象は、参加施設の国内基準に基づく成人(14歳以上、16歳以上または18歳以上)の内科的、外科的または外傷性の重症患者計2,003例で、集中治療室(ICU)入室後48時間以内に、未分画/低分子ヘパリンによるVTEの薬物予防法に加えて毎日18時間以上の間欠的空気圧迫法を受ける間欠的空気圧迫法併用群(991例)と、薬物予防法のみの対照群(1,012例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、週2回の下肢エコーにより検出された新たな近位下肢深部静脈血栓症の発生で、無作為化後の暦日3日後からICU退室・死亡・完全離床・試験28日目までのいずれか最初に生じるまででとした。薬物予防法のみと間欠的空気圧迫法併用とで、深部静脈血栓症の発生に有意差なし 間欠的空気圧迫法の使用時間中央値は22時間/日(四分位範囲:21~23時間/日)、使用期間中央値は7日間(同:4~13日)であった。 主要評価項目の発生は、間欠的空気圧迫群957例中37例(3.9%)、対照群985例中41例(4.2%)であった(相対リスク:0.93、95%信頼区間[CI]:0.60~1.44、p=0.74)。 VTE(肺血栓塞栓症または下肢深部静脈血栓症)は、間欠的空気圧迫法併用群991例中103例(10.4%)、対照群1,012例中95例(9.4%)に生じ(相対リスク:1.11、95%CI:0.85~1.44)、90日後の全死因による死亡はそれぞれ990例中258例(26.1%)および1,011例中270例(26.7%)で確認された(相対リスク:0.98、95%CI:0.84~1.13)。 なお、本研究結果について著者は、検出力が低かったこと、盲検法を実施できなかったこと、各施設が使用した間欠的空気圧迫装置が異なったことなどを挙げて限定的であると述べている。

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andexanet alfa、第Xa因子阻害薬による大出血に高い止血効果/NEJM

 andexanet alfaは、第Xa因子阻害薬の使用により急性大出血を来した患者において、抗第Xa因子活性を著明に低下させ、良好な止血効果をもたらすことが、カナダ・マックマスター大学のStuart J. Connolly氏らが行ったANNEXA-4試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2019年2月7日号に掲載された。andexanet alfaは、第Xa因子阻害薬の中和薬として開発された遺伝子組み換え改変型ヒト第Xa因子不活性体で、2018年、米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認プログラムの下、アピキサバンまたはリバーロキサバン治療中に出血を来し、抗凝固薬の中和を要する患者への投与が承認を得ている。本試験は2016年に中間解析の結果が発表され、現在、エドキサバン投与例を増やすために、継続試験としてドイツで患者登録が続けられ、2019年中には日本でも登録が開始される予定だという。andexanet alfa投与後の抗第Xa因子活性の変化と止血効果を評価 本研究は、北米および欧州の63施設が参加した非盲検単群試験であり、2015年4月~2018年5月の期間に、中間解析の対象となった67例を含む352例が登録された(Portola Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、第Xa因子阻害薬投与から18時間以内に急性大出血を発症した患者であった。被験者には、andexanet alfaが15~30分でボーラス投与され、その後2時間をかけて静脈内投与された。 主要アウトカムは2つで、(1)andexanet alfa投与後の抗第Xa因子活性の変化率、(2)静脈内投与終了から12時間後の止血効果が、事前に規定された基準で「きわめて良好」または「良好」と判定された患者の割合であった。 andexanet alfaの有効性の評価は、大出血が確認され、ベースラインの抗第Xa因子活性が75ng/mL以上(エノキサパリン投与例では0.25IU/mL以上)のサブグループで行った。andexanet alfaの止血効果は82%で良好以上、活性低下は効果を予測せず 対象の平均年齢は77歳で、48例(14%)が心筋梗塞、69例(20%)が脳卒中、67例(19%)が深部静脈血栓症、286例(81%)が心房細動、71例(20%)が心不全、107例(30%)が糖尿病の病歴を有していた。 また、128例(36%)がリバーロキサバン、194例(55%)がアピキサバン、10例(3%)がエドキサバン、20例(6%)がエノキサパリンの投与を受けていた。主な出血部位は、頭蓋内が227例(64%)、消化管が90例(26%)だった。254例(72%)が有効性評価の基準を満たした。 有効性評価では、アピキサバン群(134例)は抗第Xa因子活性中央値がベースラインの149.7ng/mLからandexanet alfaのボーラス投与終了時には11.1ng/mLへと、92%(95%信頼区間[CI]:91~93)低下し、リバーロキサバン群(100例)は211.8ng/mLから14.2ng/mLへと、92%(88~94)低下した。また、エノキサパリン群(16例)は0.48IU/mLから0.15IU/mLへと、75%(66~79)低下した。3剤とも、この効果が静脈内投与終了時まで、ほぼ維持されていた。 andexanet alfaの静脈内投与終了から4、8、12時間後の抗第Xa因子活性中央値のベースラインからの変化率は、アピキサバン群がそれぞれ-32%、-34%、-38%、リバーロキサバン群が-42%、-48%、-62%だった。 andexanet alfaの止血効果の評価は249例で行われた。このうち204例(82%)が、「きわめて良好」(171例)または「良好」(33例)と判定された。これには、アピキサバン群の83%、リバーロキサバン群の80%、エノキサパリン群の87%が含まれ、頭蓋内出血の80%、消化管出血の85%が該当した。 30日以内に49例(14%)が死亡し、34例(10%)に血栓イベントが認められた。全体として、抗第Xa因子活性の低下は止血効果を予測しなかった(AUC:0.53、95%CI:0.44~0.62)が、頭蓋内出血の患者ではある程度の予測因子であった(0.64、0.53~0.74)。 著者は、82%というandexanet alfaの止血効果は、ビタミンK拮抗薬治療に伴う大出血に対するプロトロンビン複合体製剤の試験で観察された72%に匹敵するとした。一方、抗第Xa因子活性低下は頭蓋内出血での臨床効果を予測したとはいえ、抗第Xa因子活性の測定は難しく、実臨床において有用となる可能性はほとんどないだろうと指摘している。

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上顎歯肉に付着させる口腔咽頭カンジダ症治療薬「オラビ錠口腔用50mg」【下平博士のDIノート】第19回

上顎歯肉に付着させる口腔咽頭カンジダ症治療薬「オラビ錠口腔用50mg」今回は、「ミコナゾール付着錠(商品名:オラビ錠口腔用50mg)」を紹介します。本剤は、口腔内にミコナゾールを持続的に放出する1日1回1錠の口腔粘膜付着型製剤であり、全身的な副作用の低減とアドヒアランスの向上が期待されています。<効能・効果>本剤は、カンジダ属による口腔咽頭カンジダ症の適応で、2018年9月21日に承認され、2019年2月4日より販売されています。<用法・用量>通常、成人にはミコナゾールとして50mgを1日1回1錠、上顎歯肉(犬歯窩)に付着させます。本剤の使用期間は、原則14日間です。<副作用>国内第III相臨床試験では、本剤を1日1回1錠、14日間口腔内に付着した結果、62例中18例(29.0%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、味覚異常5例(8.1%)、適用部位不快感3例(4.8%)、腹部不快感、悪心各2例(3.2%)でした(承認時)。錠剤付着部位における粘膜刺激性の副作用(本剤の物理的刺激によると考えられる適用部位不快感を含む)が62例中8例(12.9%)で報告されています。<患者さんへの指導例>1.カンジダ菌の増殖を抑えることで、口腔咽頭カンジダ症を治療する薬です。2.上顎の犬歯の上部にある歯ぐきのくぼみに薬を置き、上唇の上から30秒ほど指で軽く押さえてしっかり付着させてください。薬をなめたり、かんだりしないでください。3.薬を取り換えるときは、前日の薬が残っていた場合は取り除いてから、反対側の歯ぐきのくぼみに新しい薬を付着させてください。4.食べ物の味が変わったなどの体調変化がありましたら、主治医か薬局までご相談ください。5.本剤を付着させたまま飲食をしても構いませんが、ガムなどの本剤を剥がす恐れのある飲食物は避けてください。<Shimo's eyes>口腔咽頭カンジダ症は、主にカンジダ菌(Candida albicans)を起因菌とする真菌感染症です。免疫低下状態の患者さんで発症しやすく、舌の疼痛・灼熱感、味覚異常、嚥下困難、白苔形成、紅斑病変、口角炎などの症状が生じます。従来、口腔咽頭カンジダ症は抗真菌薬による全身療法または局所療法が行われています。局所療法としてはミコナゾールの経口用ゲルが承認されていますが、1日4回塗布する必要があり、アドヒアランスが維持できないこともあります。本剤は、ミコナゾールの新剤形医薬品で、添加物に生体付着性物質の濃縮乳タンパク質を用いたことによって、口腔粘膜に長時間付着させることが可能です。ミコナゾールを口腔内に持続的に放出し、最小発育阻止濃度以上の唾液中ミコナゾール濃度を長時間維持できることから、用法は1日1回となっています。ミコナゾールはCYP3A4およびCYP2C9を阻害するので、ゲル剤と同様に、ワルファリンカリウムやリバーロキサバン、アゼルニジピンなど多くの薬剤が併用禁忌となっています。また、スルホニル尿素系血糖降下薬との併用では、作用増強による低血糖に注意が必要です。口腔咽頭カンジダ症はHIVや悪性腫瘍など、免疫不全を生じる疾病に随伴しやすい疾患ですが、そのような患者さんは多剤服用の傾向にあるので、併用薬のチェックに漏れがないように気を付けなければなりません。なお、本剤は乾燥剤入りのボトル包装品(14錠入)で、湿度の影響を受けやすいのでボトル包装品のまま交付します。使用のたびにボトルのキャップをしっかり締め、直射日光と湿気を避けて室温で保管するように伝えましょう。

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心房細動は待つのではなく見つけに行く時代(解説:矢崎義直 氏)-993

 心房細動は最もメジャーな不整脈の1つであるが、無治療だと塞栓症のリスクが高く、とくに心原性脳梗塞は重症化し死亡率も高い。心房細動を早期に診断し、適切な抗凝固療法を行うことが重要であるが、症状のない心房細動も多く、定期的な通常の心電図検査では検出が困難なこともある。そこで、心房細動のスクリーニングとして長時間の心電図モニタリングが可能なシステムの開発が進んでいる。 mSToPS試験(mHealth Screening to Prevent Strokes trial)は自己装着型の2週間記録可能なパッチ型心電計を使用し、心房細動の新規検出率を検討した。対象は年齢が75歳以上、もしくは高血圧や糖尿病などのリスクを1つ以上持った55歳以上の男性か65歳以上の女性とし、過去に心房性不整脈の既往があれば除外した。被験者の募集はAetnaやMedicareなどの医療保険システムに登録されている対象者に、郵便もしくはeメールで試験参加を勧誘した。オンラインで同意が得られれば試験に登録され、患者データなどはネット経由で得るという、登録が完全にデジタル化された新しい試みと言える。この方法により、通常の治験登録よりも登録時間を短縮でき、コストも抑えられ、普段治験とは疎遠なpopulationにもアプローチでき、よりリアルワールドに近い対象を選出できるという利点がある。 最終的に2,659例(平均年齢72.4歳、38.6%が女性)が選出され、パッチ型心電計を早期に装着する群(先行開始群)と4ヵ月遅らせて装着する群(遅延開始群)に無作為に割付をした。登録後4ヵ月の時点では、先行開始群が遅延開始群と比較し、心房細動の検出率が有意に高かった(3.9% vs.0.9%、絶対差:3.0%、95%信頼区間:1.8~4.1%)。また、この先行開始群と遅延開始群を合わせた症例の中で合計30分以上パッチ型心電計を使用し、解析ができた1,738例(全体の65.4%)を1年間フォローした。これらとマッチさせたコホート群3,476例と心房細動の検出率を比較しところ、パッチ型心電計使用群の方が、心房細動を多く検出した(6.7/100人年 vs.2.6/100人年、絶対差:4.1、95%信頼区間:3.9~4.2)。そのほか、パッチ型心電計使用群で抗凝固薬開始率、循環器科外来受診率が高かったが、心房細動による救急外来受診や入院率に差はなかった。 本試験の結論として、パッチ型心電計は心房細動発症のハイリスク群において、心房細動の検出に有用である事が示された。このように今後、長時間心電図モニタリングにより早期の心房細動の診断が可能となり、適切な治療が行われれば、脳梗塞や死亡率の減少など、clinical outcomeの改善も期待される。 一方、長時間心電図モニタリングにはまだ課題も残されている。1つは、心電計の装着率の問題である。本試験中にパッチ型心電計を少しも使用しなかった症例が917例、全体の34.5%に及ぶ。また心電計を装着した症例のうち40例がパッチによる皮膚炎を起こし、うち32例が装着中止を余儀なくされている。モニタリング期間は長ければ長いほど、当然心房細動の検出率は上がってくるが、アドヒアランスの問題も念頭に置かなければならない。 また、本試験では、長時間のモニタリングのおかげで、通常の心電図検査では到底捉えることのできなかったであろう短い持続時間の心房細動が多く検出されている。何分以上、もしくは何時間以上持続した心房細動を塞栓症のリスクと考えるかまだ明確な答えはない。 このように長時間心電図モニタリングならではの課題もあるが、その症例の塞栓症のリスク、出血のリスク、年齢、心房細動の持続時間を考慮し、抗凝固療法の適応を決める必要がある。

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抗凝固薬の選択~上部消化管出血とPPIの必要性(解説:西垣和彦氏)-985

抗凝固薬の宿命 “出血しない抗凝固薬はない”。もともと抗凝固薬自体に出血をさせる力はないが、一旦出血したら止血するのに時間がかかるために出血が大事をもたらすこととなる。そもそも出血傾向をもたらすことが抗凝固薬の主作用であるので至極自明なことではあるのだが、直接経口抗凝固薬(DOAC)だけでなくビタミンK依存性凝固因子の生合成阻害薬であるワルファリンを含めて、“凝固薬自体が出血を起こさせた”と理解している方がいかに多いことか。 近年、わが国だけでなく欧米においても、心房細動により生成される心内血栓が遊離して塞栓となる心原性脳血栓塞栓症には多大な配慮を行っている。この理由として、この心原性脳血栓塞栓症の発症自体は年間3~4%と低い発症率と推定されてはいるが、脳梗塞の他の病態であるアテローマ性やラクナ梗塞と同程度の頻度があり決して少なくないという点、さらに一旦発症すると非常に大きな血栓塊であることが多いため、2割が急死、4割が要介護4以上という悲惨な病状に追い込まれ、由緒正しい重度の寝たきりとなる危険性があるためである。このことは、わが国だけでなく国際的にも医療費の膨大に頭を悩ませている関係者においても、由々しき疾患であることは間違いない。そこで、抗凝固薬をなるべく多くの心房細動患者に投与し、少しでも寝たきりとなる症例を減らそうということになるが、すべからく前述の消化管出血への適切な対応が問題として浮上してくる。この、抗凝固薬の宿命ともいえる命題に対して、(1)最も上部消化管出血が少ない抗凝固薬はどれか?(2)上部消化管出血をプロトンポンプ阻害薬(PPI)は本当に予防できるのか? の2点をコホートで検証したのが本論文である。本論文のポイントは? 本論文は、2011年1月1日~2015年9月30日までにおけるメディケア受益者のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究である。比較した抗凝固薬は、アピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバン、そしてワルファリンの4剤で、上部消化管出血の頻度を比較し、PPI併用あるいはPPIなしで上部消化管出血の予防効果も比較している。主要評価項目は、上部消化管出血による入院とし、抗凝固療法1万人年当たりの補正後発生率およびリスク差(RD)、発生率比(IRR)を算出。解析対象は、新規に抗凝固薬が処方された171万3,183件、164万3,123例(平均76.4歳、追跡65万1,427人年、女性56.1%、心房細動患者74.9%)。 PPI併用のなかった75万4,389人年で、上部消化管出血の発生は7,119件、補正後発生率115件/1万人年であった。薬剤別では、リバーロキサバン144件/1万人年、アピキサバン73件/1万人年、ダビガトラン120件/1万人年、ワルファリン113件/1万人年であり、上部消化管出血発生率はリバーロキサバンが最も高率、アピキサバンはダビガトラン、ワルファリンよりも有意に低かった。 PPI併用のある26万4,447人年では、上部消化管出血の発生は2,245件、補正後発生率は76件/1万人年であり、PPI併用なしと比較して上部消化管出血による入院を大きく減らした(IRR:0.66)。このことは、抗凝固薬の種類によらず(アピキサバン[IRR:0.66、RD:-24]、ダビガトラン[IRR:0.49、RD:-61.1]、リバーロキサバン[IRR:0.75、RD:-35.5]、ワルファリン[IRR:0.65、RD:-39.3])、いずれにもPPIは有効であった。本論文の意義と読み方 本論文の結論は、以下の2点である。(1)上部消化管出血による入院率は、リバーロキサバンで最も高く、アピキサバンで最も低い。(2)各抗凝固薬いずれもPPIは有効であり、上部消化管出血による入院率を低減させる。 メディケア受益者のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究は、これまでも抗凝固薬に関連した多くの報告をしており、抗凝固薬の特性から到底割り付け困難と思われるワルファリンとの大規模無作為比較試験の結果を補正するリアルワールドの実臨床に則したデータを示してきた。DOAC間ではリバーロキサバンがアピキサバンに比べて明らかに大出血率が高い(HR:1.82)ことは以前にも報告されており1)、同じデータベースに基づくだけに結論が同じとなることは必定、新鮮味がないことは否めない。メディケアは、65歳以上の高齢者と障害者のための米国医療保険であり、国が運営する制度であるが、メディケアを受給できる人は一定の条件を満たす特別な米国人であることを忘れてはならない。あくまでも、保険請求のあった主観的な事後報告のコホート試験である。医師の薬剤選択によるバイアスや他の雑多な患者選択特性をプロペンシティ・スコア・マッチングでそろえて比較した試験であるので、エビデンスレベルとしてはお世辞にも決して高くはない。また何よりも抗凝固薬に対する大規模比較試験では、人種差や医療レベルの違いが副作用としての消化管出血の頻度に大きく影響することもすでに指摘されており、この論文の結果そのものがわが国でも当てはまるとは限らないことを強調したい。PPIの強力な上部消化管出血予防効果には既存の報告からも疑問の余地はないが、果たして万人に必要か否か、どのような患者に必要なのかという命題が依然残ることは致し方ない。最後に 確かに、近年報告される抗凝固薬を比較した大規模試験においては、リバーロキサバンの易出血性を結論付けている報告が多く、ある意味人種差を超越している。このことから、ある程度リバーロキサバンの持つ薬剤特性を捉えている可能性はあるが、DOAC相互を直接比較した無作為比較試験はいまだないことから、今なお断言できない。この命題から答えを導き出すには、わが国での製薬業界が定めた自主規制という名の行き過ぎたレギュレーションが大きな弊害となっていると憂慮するのは、私だけだろうか。

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がんの静脈血栓予防は必要かな?(解説:後藤信哉氏)-982

 日本では静脈血栓症が欧米に比較して圧倒的に少ない。遺伝子型として活性化プロテインC抵抗性を示す血液凝固因子のLeiden型変異がいないことが理由の1つと想定されるが、その他の生活習慣も寄与しているかもしれない。静脈血栓症の圧倒的多数には血栓性素因がある。日本の高齢者に初発の静脈血栓症を認めた場合には、悪性腫瘍が隠れている可能性が高い。静脈血栓症例に対する悪性腫瘍スクリーニングは重要である。 悪性腫瘍一般に予防的抗凝固療法を考える必要はない。本研究ではKhorana scoreを用いて血栓リスクの高いがん、血小板数、白血球数、BMIなどから静脈血栓リスクの高い症例を選別してランダム化比較試験を行った。ランダム化比較試験による「標準治療転換」の前には「標準治療」が確立されている必要がある。がんの症例の静脈血栓予防における標準治療は確立されていない。そこでプラセボとの比較試験になった。アピキサバンはXa阻害薬なので当然重篤な出血イベントを増加させた。血栓イベントも低下した。科学的には「アピキサバンは血栓リスクのある悪性腫瘍の症例にて重篤な出血イベントを減少させ、血栓イベントを低減させた」との結果を得た。もともと確立されていなかった「標準治療」が本研究により確立されたわけではない。ランダム化比較試験を計画するのであれば「標準治療を確立する」、ないし「標準治療を転換」すべくデザインを考えるべきである。

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がん患者の静脈血栓塞栓症予防、アピキサバンが有望/NEJM

 がん患者は静脈血栓塞栓症のリスクが高いとされる。カナダ・オタワ大学のMarc Carrier氏らAVERT試験の研究グループは、中等度~高度の静脈血栓塞栓症リスク(Khoranaスコア≧2)を有し、化学療法を開始した外来がん患者では、アピキサバンにより静脈血栓塞栓症の発生が抑制されることを示し、NEJM誌オンライン版2018年12月4日号で報告した。Khoranaスコアは静脈血栓塞栓症のリスクが高いがん患者を同定し、予防治療により便益を得ると考えられる患者の選定に役立つ可能性がある。また、直接経口抗凝固薬は、がん患者の血栓予防薬として、利便性や費用も含め、非経口薬よりも優れる可能性が示唆されている。静脈血栓塞栓症の予防におけるアピキサバンの有用性を評価 本研究は、化学療法を開始した外来がん患者の静脈血栓塞栓症の予防におけるアピキサバンの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験である(カナダ保健研究機構およびBristol-Myers SquibbとPfizerの提携組織の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、新規に診断されたがんまたは完全/部分寛解後に進行した既知のがんを有し、治療期間が最短でも3ヵ月の化学療法を新たに開始する患者であった。Khoranaスコア(0~6点、点数が高いほど静脈血栓塞栓症のリスクが高い)は、≧2(中等度~高度のリスク)とした。 被験者は、アピキサバン(2.5mg×2回/日)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要な有効性評価項目は180日後の静脈血栓塞栓症(近位深部静脈血栓症、肺塞栓症)の発現であり、主な安全性評価項目は大出血エピソードとした。 2014年2月~2018年4月の期間に、カナダの13施設で574例(アピキサバン群291例、プラセボ群283例)が無作為割り付けの対象となり、563例(288例、275例)が修正intention-to-treat解析に含まれた。静脈血栓塞栓症の発生率はアピキサバン群が有意に低い 全体の平均年齢は61歳、女性が58.2%であった。がん種は多い順に、婦人科がん(25.8%)、リンパ腫(25.3%)、膵がん(13.6%)であった。転移病変を有する固形がんの患者が、アピキサバン群に73例、プラセボ群には67例含まれた。治療期間中央値はそれぞれ157日、155日、追跡期間中央値は両群とも183日だった。 追跡期間中の静脈血栓塞栓症の発生率は、アピキサバン群が4.2%(12/288例)と、プラセボ群の10.2%(28/275例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.26~0.65、p<0.001)。治療期間中の静脈血栓塞栓症の発生率は、それぞれ1.0%(3例)、7.3%(20例)であり、アピキサバン群で有意に低かった(0.14、0.05~0.42)。 一方、大出血エピソードの発生率は、アピキサバン群は3.5%(10/288例)であり、プラセボ群の1.8%(5/275例)に比し有意に高かった(HR:2.00、95%CI:1.01~3.95、p=0.046)。治療期間中の大出血の発生率は、それぞれ2.1%(6例)、1.1%(3例)であり、有意差は認めなかった(1.89、0.39~9.24)。 死亡率はアピキサバン群が12.2%(35例)、プラセボ群は9.8%(27例)であった(HR:1.29、95%CI:0.98~1.71)。死亡した62例中54例(87%)の死因は、がんまたはがんの進行に関連していた。 著者は、「全生存に差がないのは、最も一般的な死因である進行がんの患者が多かったという事実を反映している可能性がある。静脈血栓塞栓症の予防が死亡率の低減に結びつくのが理想だが、この課題に取り組むには、異なるデザインの、より大規模な試験を要するだろう」としている。

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経口抗凝固薬+PPIで、上部消化管出血による入院率低下/JAMA

 経口抗凝固療法における上部消化管出血による入院発生率は、リバーロキサバンを処方された患者で最も高く、アピキサバンが処方された患者で最も低かった。いずれの抗凝固薬も、プロトンポンプ阻害薬(PPI)との併用で同入院発生率は低下することが示された。米国・ヴァンダービルト大学のWayne A. Ray氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。PPIの併用は、経口抗凝固療法でしばしば起こる潜在的に重篤な合併症である上部消化管出血のリスクに影響を与える可能性が示唆されていた。JAMA誌2018年12月4日号掲載の報告。アピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバン、ワルファリンのPPI非併用/併用について解析 研究グループは、メディケア受給者を対象として、2011年1月1日~2015年9月30日の間に、PPI非併用/併用療法で抗凝固薬(アピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバン、ワルファリン)を使用している患者の、上部消化管出血による入院発生率を解析した。 主要評価項目は、上部消化管出血による入院とし、抗凝固療法1万人年当たりの補正後発生率およびリスク差(RD)、発生率比(IRR)を算出した。 抗凝固薬を投与された新規エピソード171万3,183件を有する164万3,123例の患者が、本研究に組み込まれた(平均[±SD]年齢76.4±2.4歳、女性65万1,427人年[56.1%]、適応症は心房細動が87万330人年[74.9%])。PPI非併用下ではリバーロキサバンが高く、アピキサバンが低い PPI非併用で抗凝固薬を使用した75万4,389人年において、上部消化管出血による入院は7,119件で、補正後発生率は115件/1万人年(95%信頼区間[CI]:112~118)であった。 抗凝固薬の薬剤別では、リバーロキサバン(1,278件)が144件/1万人年(95%CI:136~152)、アピキサバン(279件)が73件/1万人年(IRR:1.97[95%CI:1.73~2.25]、RD:70.9[59.1~82.7])、ダビガトラン(629件)が120件/1万人年(IRR:1.19[1.08~1.32]、RD:23.4[10.6~36.2])、ワルファリン(4,933件)が113件/1万人年(IRR:1.27[1.19~1.35]、RD:30.4[20.3~40.6])で、リバーロキサバンが最も高率であった。 また、アピキサバンの入院発生率は、ダビガトラン(IRR:0.61[95%CI:0.52~0.70]、RD:-47.5[-60.6~-34.3])およびワルファリン(IRR:0.64[0.57~0.73]、RD:-40.5[-50.0~-31.0])よりも有意に低かった。 抗凝固薬にPPIを併用した26万4,447人年においては、上部消化管出血による入院は2,245件で、補正後発生率は全体で76件/1万人年であった。PPI非併用と比較し、上部消化管出血による入院のリスクは、全体(IRR:0.66、95%CI:0.62~0.69)、アピキサバン(IRR:0.66[0.52~0.85]、RD:-24[95%CI:-38~-11])、ダビガトラン(IRR:0.49[0.41~0.59]、RD:-61.1[-74.8~-47.4])、リバーロキサバン(IRR:0.75[0.68~0.84]、RD:-35.5[-48.6~-22.4])、ワルファリン(IRR:0.65[0.62~0.69]、RD:-39.3[-44.5~-34.2])のいずれも低かった。

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Dr.小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版

心房細動に関する重要な情報を厳選!簡潔!わかりやすい!執筆は、ブログ『心房細動な日々』で有名な小田倉弘典氏。最新文献の解説にとどまらず、「日本の臨床に与える影響」も掲載。  パパパッと!わかる。※著者COI : 内容に関連し、開示すべき利益相反関係にある企業などはありません(2013年4月以降)プロフィール※ブログ『心房細動な日々』:毎日心房細動の情報を更新!第1回~第100回のコンテンツ一覧はこちら

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心房細動をどこまで追いかけるか?(解説:香坂俊氏)-960

心房細動(AF)が塞栓性脳梗塞の原因であることは広く知られている(最近は国家試験でもよくこの内容が出題される)。そして、脳梗塞ハイリスク患者(CHADSスコア 2点以上など)に抗凝固療法を行うと、その発症を60~70%(!)カットできることも知られている。このことを踏まえて、心房細動を早期に見つけようという動きが世界的に盛んになっている。従来からの心筋梗塞や脳梗塞の予防というと、血圧を下げる、コレステロールを下げる、運動する、などという項目が並ぶことが多かった。が、汎用性は高いものの、これらの内容でカットできるイベント発症リスクは10~20%程度であり、この数値と比べるとハイリスクAF症例に対する抗凝固療法の強さは際立つ。今回の研究では、そのAFの早期検出を行うべく、ウエアラブル心電図(ECG)パッチの配布を行い、その検証を行った。試験のデザインは、ランダム化による即時モニタリング群(試験登録後即時に開始)とdelayedモニタリング群(4ヵ月遅れて開始)の比較である。その結果であるが、・新規AFの4ヵ月発見率は、即時モニタリング群3.9%、delayedモニタリング群0.9%であった。・そしてその後、パッチによる心電図モニタリングは、新規の抗凝固薬の開始(5.7 vs.3.7例/100人年)や循環器科の外来受診(33.5 vs.26.0例/100人年)に結びついた。注目すべきはこの研究の対象となった方々であるが、Inclusion Criteriaには・75歳以上、あるいは55歳以上(女性は65歳)で1つ以上のリスク因子がある方とされており、明らかにCHADS-VAScスコア2点以上というところを意識している。今後もこうしたウエアラブルデバイスの進展を踏まえ、「誰をより積極的にみていくか」ということが重要な課題になると思っているが、やみくもにスクリーニングを進めるのではなく、 そのモニタリングの結果を踏まえて治療方針が変わるというところを意識する必要があるものと考えられる(この研究でもしもCHADS-VASc 1点以下の人を対象としたとして、仮に無症候のAFが見つかってもなにもすることがない)。

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第14回 内科からのST合剤の処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?Escherichia coli(大腸菌)・・・11名全員Staphylococcus saprophyticus(腐性ブドウ球菌)※1・・・8名Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)・・・3名Proteus mirabilis(プロテウス・ミラビリス)※2・・・2名※1 腐性ブドウ球菌は、主に泌尿器周辺の皮膚に常在しており、尿道口から膀胱へ到達することで膀胱炎の原因になる。※2 グラム陰性桿菌で、ヒトの腸内や土壌中、水中に生息している。尿路感染症、敗血症などの原因となる。大腸菌か腐性ブドウ球菌 清水直明さん(病院)若い女性の再発性の膀胱炎であることから、E.coli、S.saprophyticusなどの可能性が高いと思います。中でも、S.saprophyticusによる膀胱炎は再発を繰り返しやすいようです1)。単純性か複雑性か 奥村雪男さん(薬局)再発性の膀胱炎と思われますが、単純性膀胱炎なのか複雑性膀胱炎※3 なのか考えなくてはいけません。また、性的活動が活発な場合、外尿道から膀胱への逆行で感染を繰り返す場合があります。今回のケースでは、若年女性であり単純性膀胱炎を繰り返しているのではないかと想像します。単純性の場合、原因菌は大腸菌が多いですが、若年では腐性ブドウ球菌の割合も高いとされます。※3 前立腺肥大症、尿路の先天異常などの基礎疾患を有する場合は複雑性膀胱炎といい、再発・再燃を繰り返しやすい。明らかな基礎疾患が認められない場合は単純性膀胱炎といQ2 患者さんに確認することは?妊娠の可能性と経口避妊薬の使用 荒川隆之さん(病院)妊娠の可能性について必ず確認します。もし妊娠の可能性がある場合には、スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠(ST合剤)の中止、変更を提案します。妊婦の場合、抗菌薬の使用についても再度検討する必要がありますが、セフェム系薬の5~7 日間投与が推奨されています2)。ST合剤は相互作用の多い薬剤ですので、他に服用している薬剤がないか必ず確認します。特に若い女性の場合、経口避妊薬を服用していないかは確認すると思います。経口避妊薬の効果を減弱させることがあるからです。副作用歴と再受診予定 中堅薬剤師さん(薬局)抗菌薬の副作用歴と再受診予定の有無を確認し、医師からの指示がなければ、飲み切り後に再受診を推奨します。また、可能であれば間質性膀胱炎の可能性について医師から言われていないか確認したいところです。中高年女性だと過活動膀胱(OAB)が背景にあることが多いですが、私の経験では、若い女性では間質性膀胱炎の可能性が比較的あります。ストレス性やトイレを我慢してしまうことによる軽度の水腎症※4のようなケースを知っています。※4 尿路に何らかの通過障害が生じ、排泄されずに停滞した尿のために腎盂や腎杯が拡張し、腎実質に委縮を来す。軽症の場合は自然に軽快することが多いが、重症の場合は手術も考慮される。相互作用のチェック 奥村雪男さん(薬局)併用薬を確認します。若年なので、薬の服用は少ないかも知れませんが、ST合剤は蛋白結合率が高く、ワルファリンの作用を増強させるなどの相互作用が報告されています。併用薬のほか、初発日や頻度 ふな3さん(薬局)SU薬やワルファリンなどとの相互作用があるため、併用薬を必ず確認します。また、単純性か複雑性かを確認するため合併症があるか確認します。可能であれば、初発日と頻度、7日分飲みきるように言われているか(「3日で止めて、残りは取っておいて再発したら飲んで」という医師がいました)、次回受診予定日、尿検査結果も聞きたいですね。治療歴と自覚症状 わらび餅さん(病院)可能であれば、これまでの治療歴を確認します。ST合剤は安価ですし、長く使用されていますが、ガイドラインでは第一選択薬ではありません。処方医が20歳代の女性にもきちんと問診をして、これまでの治療歴を確認し、過去にレボフロキサシンなどのキノロン系抗菌薬を使ってそれでも再発し、耐性化や地域のアンチバイオグラムを考慮して、ST合剤を選択したのではないでしょうか。発熱がないとのことですが、自覚症状についても聞きます。メトトレキサートとの併用 児玉暁人さん(病院)ST合剤は妊婦に投与禁忌です。「女性を見たら妊娠を疑え」という格言(?)があるように、妊娠の有無を必ず確認します。あとは併用注意薬についてです。メトトレキサートの作用を増強する可能性があるので、若年性リウマチなどで服用していないか確認します。また、膀胱炎を繰り返しているとのことなので、過去の治療歴がお薬手帳などで確認できればしたいところです。Q3 疑義照会する?する・・・5人複雑性でない場合は適応外使用 中西剛明さん(薬局)疑義照会します。ただ、抗菌薬の使用歴を確認し、前治療があれば薬剤の変更については尋ねません。添付文書上、ST合剤の適応症は「複雑性膀胱炎、腎盂腎炎」で、「他剤耐性菌による上記適応症において、他剤が無効又は使用できない場合に投与すること」とあり、前治療歴を確認の上、セファレキシンなどへの変更を求めます。処方日数について 荒川隆之さん(病院)膀胱炎に対するST合剤の投与期間は、3日程度で良いものと考えます(『サンフォード感染症ガイド2016』においても3日)。再発時服用のために多く処方されている可能性はあるのですが、日数について確認のため疑義照会します。また、妊娠の可能性がある場合には、ガイドラインで推奨されているセフェム系抗菌薬の5~7日間投与2)への変更のため疑義照会します。具体的には、セフジニルやセフカペンピボキシル、セフポドキシムプロキセチルです。授乳中の場合、ST合剤でよいと思うのですが、個人的にはセフジニルやセフカペンピボキシル、セフポドキシムプロキセチルなど小児用製剤のある薬品のほうがちょっと安心して投薬できますね。あくまで個人的な意見ですが・・・妊娠している場合の代替薬 清水直明さん(病院)もしも妊娠の可能性が少しでもあれば、抗菌薬の変更を打診します。その場合の代替案は、セフジニル、セフカペンピボキシル、アモキシシリン/クラブラン酸などでしょうか。投与期間は7 日間と長め(ST合剤の場合、通常3 日間)ですが、再発を繰り返しているようですので、しっかり治療しておくという意味であえて疑義照会はしません。そもそも、初期治療ではまず選択しないであろうST合剤が選択されている段階で、これまで治療に難渋してきた背景を垣間見ることができます。ですので、妊娠の可能性がなかった場合、抗菌薬の選択についてはあえて疑義照会はしません。予防投与を考慮? JITHURYOUさん(病院)ST合剤は3日間の投与が基本になると思いますが、7日間処方されている理由を聞きます。予防投与の分を考慮しているかも確認します。しない・・・6人再発しているので疑義照会しない 奥村雪男さん(薬局)ST合剤は緑膿菌に活性のあるニューキノロン系抗菌薬を温存する目的での選択でしょうか。単純性膀胱炎であれば、ガイドラインではST合剤の投与期間は3日間とされていますが、再発を繰り返す場合、除菌を目的に7日間服用することもある3)ので、疑義照会はしません。残りは取っておく!? ふな3さん(薬局)ST合剤の投与期間が標準治療と比較して長めですが、再発でもあり、こんなものかなぁと思って疑義照会はしません。好ましくないことではありますが、先にも述べたように「3日で止めて、残りは取っておいて、再発したら飲み始めて~」などと、患者にだけ言っておくドクターがいます...。Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?服用中止するケース 清水直明さん(病院)「この薬は比較的副作用が出やすい薬です。鼻血、皮下出血、歯茎から出血するなどの症状や、貧血、発疹などが見られたら、服用を止めて早めに連絡してください。」薬の保管方法とクランベリージュース 柏木紀久さん(薬局)「お薬は光に当たると変色するので、日の当たらない場所で保管してください」と説明します。余談ができるようなら、クランベリージュースが膀胱炎にはいいらしいですよ、とも伝えます。発疹に注意 キャンプ人さん(病院)発疹などが出現したら、すぐに病院受診するように説明します。処方薬を飲みきること 中堅薬剤師さん(薬局)副作用は比較的少ないこと、処方分は飲み切ることなどを説明します。患者さんが心配性な場合、副作用をマイルドな表現で伝えます。例えば、下痢というと過敏になる方もいますので「お腹が少し緩くなるかも」という感じです。自己中断と生活習慣について JITHURYOUさん(病院)治療を失敗させないために自己判断で薬剤を中止しないよう伝えます。一般的に抗菌薬は副作用よりも有益性が上なので、治療をしっかり続けるよう付け加えます。その他、便秘を解消すること、水分をしっかりとり、トイレ我慢せず排尿する(ウォッシュアウト)こと、睡眠を十分にして免疫を上げること、性行為(できるだけ避ける)後にはなるべく早く排尿することや生理用品をこまめに取り替えることも説明します。水分補給 中西剛明さん(薬局)尿量を確保するために、水分を多く取ってもらうよう1日1.5Lを目標に、と説明します。次に、お薬を飲み始めたときに皮膚の状態を観察するように説明します。皮膚障害、特に蕁麻疹の発生に気をつけてもらいます。Q5 その他、気付いたことは?地域の感受性を把握 荒川隆之さん(病院)ST合剤は『JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015』などにおいて、急性膀胱炎の第一選択薬ではありません。『サンフォード感染症ガイド2016』でも、耐性E.coli の頻度が20%以上なら避ける、との記載があります。当院においてもST合剤の感受性は80%を切っており、あまりお勧めしておりません。ただ、E.coli の感受性は地域によってかなり異なっているので、その地域におけるアンチバイオグラムを把握することも重要であると考えます。治療失敗時には受診を JITHURYOUさん(病院)予防投与については、説明があったのでしょうか。また、間質性膀胱炎の可能性も気になります。治療が失敗した場合は、耐性菌によるものもあるのかもしれませんが、膀胱がんなどの可能性も考え受診を勧めます。短期間のST合剤なので貧血や腎障害などの懸念は不要だと思いますが、繰り返すことを考えて、生理のときは貧血に注意することも必要だと思います。間質性膀胱炎の可能性 中堅薬剤師さん(薬局)膀胱炎の種類が気になるところです。間質性膀胱炎ならば、「効果があるかもしれない」程度のエビデンスですが、スプラタストやシメチジンなどを適応外使用していた泌尿器科医師がいました。予防投与について 奥村雪男さん(薬局)性的活動による単純性膀胱炎で、あまり繰り返す場合は予防投与も考えられます。性行為後にST合剤1錠を服用する4)ようです。性行為後に排尿することも推奨ですが、カウンターで男性薬剤師から話せる内容でないので、繰り返すようであれば処方医によく相談するようにと言うに留めると思います。後日談(担当した薬剤師から)次週も「違和感が残っているので」、ということで来局。再度スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠1回2錠 1日2回で7日分が継続処方として出されていた。その後、薬疹が出た、ということで再来局。処方内容は、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩2mg錠1回1錠 1日3回 毎食後5日分。スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠は中止となった。1)Raz R et al. Clin Infect Dis 2005: 40(6): 896-898.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会.JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015.一般社団法人日本感染症学会、2016.3)青木眞.レジデントのための感染症診療マニュアル.第2版.東京、医学書院.4)細川直登.再発を繰り返す膀胱炎.ドクターサロン.58巻6月号、 2014.[PharmaTribune 2017年5月号掲載]

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合成麻薬は心にも身体にも恐ろしい!(解説:後藤信哉氏)-946

 米国は競争社会である。経済格差が深刻化するなかで、絶望的に生きる人が多い国であることは長く住んでみるとわかる。心が病んでいる国では麻薬などの広がりを抑えることが難しい。麻薬中毒症例には合成麻薬としてのカンナビノイドが使用される。各種の重篤な疾病の末期には人工的に多幸感、鎮痛が必要な症例もいるかもしれない。大麻中に含まれるカンナビノイドを合成して医療応用に使おうという方向性は日本にもある。 しかし、本論文はカンナビノイドが心に作用するのみならず、身体にも破滅的副作用を惹起することを示している。ワルファリンはvitamin K依存性の凝固因子の機能的完成を阻害する。強力な抗凝固作用が継続すれば致死となる。その効果を利用したbrodifacoumは殺鼠剤として使用される。このbrodifacoumが合成麻薬に混入して、肝臓における酵素反応の競合を介して重篤な出血イベントを起こすことを本研究は示している。 薬は怖い。分子は小さいが、ナノメートルスケールのわずかな変化がマイクロメートルスケールの細胞、メートルスケールの人体と増幅される。必要な症例に十分なモニタリング下での使用という原則が何よりも重要である。

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至適用量って、わからないのね?(解説:後藤信哉氏)-944

 ワルファリン以外の抗凝固薬としてトロンビン阻害薬、Xa阻害薬が開発された。ワルファリンと異なり「用量調節不要!」と当初宣伝された。しかし、心房細動の脳卒中予防以外の適応拡大においてリバーロキサバンでは「節操がない」ほど各種用量が選択された。2.5mg×2/日の用量は急性冠症候群(ATLAS TIMI 51)、冠動脈疾患・末梢血管疾患(COMPASS)では有効性が示された(重篤な出血合併症は増加したが…)。同一用量が心不全では有効性を示せなかった(COMMANDER HF)。 今回は、COMMANDER HFのような収縮機能の阻害された心不全を含む内科疾患の入院症例における、症候性静脈血栓塞栓症・静脈血栓塞栓が疑われる死亡の複合エンドポイントとした試験が、リバーロキサバン10mg/日とプラセボにて比較された。1万2,024例を対象としたランダム化比較試験にてリバーロキサバン群では重篤な出血は多く、血栓イベントは少なめだったが1次エンドポイントとしてはプラセボ群と差がなかった。「適応拡大」のための用量設定根拠が明確とはいえない試験の繰り返しの結果、Xa阻害薬を追加すれば血栓イベントは予防するっぽく、出血は増えることがわかった。ランダム化比較試験は本来普遍的な科学としての仮説検証試験であったはずではあるが、用量が揺らげば普遍性も揺らぐことがあらためてわかった。

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周術期の脳梗塞予防:卵円孔はターゲットとなりうるか?(解説:香坂俊氏)-941

 心臓には卵円孔foramen ovaleという部位が存在する。いや、「存在していた」と書くべきだろうか? 胎生期にはこの卵円孔が開いており、母体(胎盤)から回ってくる新鮮な血液をそのまま右房から左房へと流し込む役割を果たしている。しかし、胎児が母体の外に出て、最初の自発呼吸を行うや否やダイナミックに血行動態は変化し、左房側から卵円孔はFlap(蓋)をあてられ閉鎖してしまう。 しかし、この卵円孔にあてられた蓋はそれほど強固なものではなく、4人に1人くらいは押せば空く状態が維持されている。それでも普段は左房側の圧が右房側の圧よりも高いので問題ないのだが、たとえば息んだり咳をしたりして胸腔内圧が上がった時など、右房側の圧が一時的に左房側を上回ってパタパタと蓋が開いてしまうことがある。これが卵円孔開存(PFO:patent foramen ovale)と呼ばれる状況である。 このPFOがいま脳梗塞予防のターゲットとして注目を浴びている。右房側を流れている血液は静脈系の血液であり、ゆっくりと流れているので、ときどき下肢から血栓を運んできてしまう。普通はそうした小さな血栓は肺でフィルターされるのだが、PFOがあると(少ない確率ではあるが)血栓が直接動脈系に流れ込んできて脳梗塞などの動脈系の塞栓症を起こすことがあるとされている。 今回の論文では、このPFOを心臓手術のときについでに閉じてしまったらどうだろう、という仮説を後ろ向きに全米の手術データを用いて検証したものであり、非常にpromisingな解析結果が得られている。ただ、デザインが後ろ向きであるので、そのメインメッセージは「現場の医師が適切と考えた症例についてPFOを閉じていくことはよさそうだ」というお墨付き的な範疇に留まる。 昨今の画像技術の進歩によって、周術期の脳梗塞が思いのほか多いことがわかってきている(MRIは本当によく脳梗塞を見つける)。われわれの行ったレジストリ研究でも、冠動脈インターベンションの際に臨床的に重要な脳梗塞合併症が0.3%の症例でみられた(抄録、論文11月現在in press)。そのため、ハイリスク患者に対する積極的な抗凝固療法の施行などがハイリスク患者に関して議論されるようになってきているが、今回の結果を踏まえると、その議題の中にPFOの扱いに関する項目も足していったほうがよさそうである。PFOそのものを経皮的にカテーテルで閉じることも可能となってきており、ますます注目を集めるようになっており、今後の適応に関する議論の展開が注目されている。

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非心臓手術後の心房細動患者の血栓塞栓症リスクは?【Dr.河田pick up】

 循環器内科医は非心臓手術後に生じた心房細動に関するコンサルトを受けることが多い。心房細動は術後のストレスで生じただけなのか、また、術後ということもあり、抗凝固薬を継続すべきなのかの判断が難しいことが多い。今回は、非心臓手術後に発症した心房細動患者における血栓塞栓症リスクについてデンマークのグループが評価した論文を紹介したい。 非心臓手術後に発症した心房細動に対する長期の血栓塞栓症リスクはよくわかっておらず、脳梗塞の予防に関しての十分なデータがない。コペンハーゲン大学病院のJawad H. Butt氏らは、非心臓手術後に新たに発症・診断された心房細動患者における血栓塞栓症リスクを、非外科手術、非弁膜性心房細動患者と比較した。Journal of American College of Cardiology誌オンライン版2018年10月23日号に掲載の報告。 著者らはデンマークのナショナルレジストリを用いて、1996~2015年の間に非心臓手術後に心房細動を発症したすべての患者を同定した。これらの患者を、年齢、性別、心不全/高血圧/糖尿病/血栓塞栓症、虚血性心疾患の既往、診断年をマッチさせた、外科手術と関連しない非弁膜症性心房細動患者と1対4の割合で比較した。長期の血栓塞栓症リスクについては、多変量Cox回帰モデルを用いて解析された。 非心臓手術を受けた患者のうち、6,048例(0.4%)が術後の入院中に心房細動を発症した。頻度が多かったのは胸部・肺、血管、腹部手術であった。合計3,830例の術後心房細動患者を15,320例の非弁膜症性心房細動患者とマッチさせた。経口抗凝固薬は、退院後30日の時点で24.3%と41.3%の患者でそれぞれ投与されていた(p<0.001)。血栓塞栓症の長期リスクは両群で同様であった(千人年当たり、31.7イベントと29.9イベント、ハザード比[HR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.85~1.07)。フォローアップ期間中の抗凝固療法は、術後心房細動群(HR:0.52、95%CI:0.40~0.67)と非弁膜症性心房細動群(HR:0.56、95%CI:0.51~0.62)のいずれにおいても血栓塞栓症イベントリスクを同様に低下させていた。 著者らは非心臓手術後新規に診断された心房細動は、非弁膜症性心房細動と同様に血栓塞栓症の長期リスクがあると結論づけている。 術後の心房細動は一過性であり、予後は良いと考えられがちだが、今回の結果から、術後の心房細動に対しても非弁膜症性心房細動と同じようにリスクに応じた抗凝固療法を行う必要があると考えられる。術後のストレスに伴う心房細動か一過性か、そうでないのかを判断するのは非常に難しい問題だといえる。(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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