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インフルエンザの流行状況とワクチン、抗インフルエンザ薬の有効性について(日本臨床内科医学会シンポジウムより)

日本臨床内科医会インフルエンザ研究班 班長 岐阜市河合内科医院 院長 河合直樹氏日本臨床内科医会では、インフルエンザ研究班を組織し、全国の会員による多施設共同試験を2000-01シーズンから行っている。今回は昨シーズン(2011-12年)の結果を発表する。インフルエンザの流行状況インフルエンザ流行は毎年のようにドラスティックな変化を起こしている。当研究会班で調査している過去10シーズンをみると、A型が流行し、少し後にB型が流行するのが典型的なパターンである。2004-05シーズンや2006-07シーズンはA・B 両型が同時流行し、2009-10のパンデミックシーズンでは季節外れの時期に流行したが、最近の2010-11、2011-12シーズンは冬季にA型が流行し、その後B型が流行する典型的パターンに戻っている。A型亜型の流行をみると、2006-07シーズンまではほとんどがH3N2(香港型)であった。しかし、2007-08シーズンはH1N1 (ソ連型)が大流行し、翌2008-09シーズンには、このH1N1 (ソ連型)のほとんどがH275Y変異によりオセルタミビル(タミフル)耐性となっている。そして、2009-10シーズンはH1N1 (ソ連型)に代わりH1N1pdm09(パンデミックウイルス)がすべての年齢層で流行した。H1N1pdm09の流行はその後も続くと予想されたが、翌2010-11シーズンにはH3N2が復活し、H1N1pdm09、H3N2、B型の混合流行となった。昨シーズン(2011-12)はH1N1pdm09が姿を消し、H3N2に置き換わった形となり、H3N2とB型の混合流行となった。図:Key Note Lecture 12ページ 「インフルエンザの型・亜型別内訳」参照このH3N2はすべての年代で前シーズンより増えている。また、H3N2の高齢者層の罹患が過去2シーズン(09-10、10-11)のH1N1pdm09やH3N2よりも増加し、昨シーズンのH3N2罹患者における60歳以上の比率は13.5%と非常に高くなっている点は注目すべきである。すでにH3N2ウイルスに何回もさらされているはずの高齢者層での流行、ワクチンの有効性の低さを考えると、H3N2はこの数年で連続変異が進んでいる可能性がある。B型については、国立感染症研究所のデータによれば、ここ数年Victoria系統が流行していたが、昨シーズン(2011-12)は山形系統が増えてきている。インフルエンザワクチンの発症予防効果本邦のインフルエンザワクチンの発症予防効果については疑問を唱える説もあるが、われわれ臨床家としては予防効果を期待したいところである。当研究班では、過去11シーズン臨床現場におけるワクチン接種の有無によるインフルエンザの発生率を前向き調査している。調査開始後の数シーズンは、接種群において有意に発症が少なかった。2009-10シーズンでは、H1N1pdm09単価ワクチンが、患者の多かった19歳以下で有意に良好な効果を示している。また、2010-11シーズンの3価ワクチンも、H1N1pdm09の比率が高かった成人層で高い効果を示している。昨シーズンは成人層で大きな有効性は確認されていないが、未成年では接種群で発症が少ない傾向がみられているのは、臨床現場としては救いである。研究班ではまた血清HI抗体価によるワクチンの有効性について検討している。これはワクチン接種により、HI抗体価が40倍以上の感染防御水準に被接種者の何%が達するかを調査するものである。2011-12シーズンではH1N1、H3N2とも接種後の40倍以上の抗体価保有率は良好(各々81.5、97.0%)であったがH3N2については、接種前すでに同抗体価保有率は83%あり、ワクチン接種による効果は限定的と思われた。一方、B型はいずれのシーズンでもA型に比べ、接種により感染防御機能水準に達する割合は低く、その傾向は昨シーズンも同様であった。ワクチン株と臨床株の抗原性の差が生じていないか、ここで問題となるのはワクチンのマッチングである。昨年まで使われたH3N2のA/ビクトリア/210/2009株については、マッチングが良好でない旨がすでに関係方面から発表されており、これが現実となった可能性もある。2012-13シーズンではH3N2はA/ビクトリア/361/2011株に変わっている。B型に流行を反映し、山形系統に入れ替わる。今回の株の変更でワクチンの効果が戻る事を期待したい。抗インフルエンザ薬の効果当研究班での昨シーズンの抗インフルエンザ薬の使用状況をみてみると、9歳以下ではオセルタミビルが過半数、ザナミビル(リレンザ)も増えておりラニナミビル(イナビル)も一部使われている。10歳代では原則としてオセルタミビルはハイリスク以外使えないため、ザナミビル、ラニナミビル、ペラミビル(ラピアクタ)という使用頻度である。20歳以上ではオセルタミビル、ラニナミビル、ザナミビルの使用頻度が高く、ペラミビルも使われている。解熱時間をみるとH3N2については、いずれの薬剤でも27~28時間であり、薬剤間でほとんど差がない。H1N1ソ連型のH275Y変異による耐性のため2008-09シーズンにオセルタミビルの小児での解熱時間が延びたものの、その後H1N1(ソ連型)は消失しH1N1pdm09となったことによりオセルタミビルの有効性は戻ってきている。B型での解熱時間は、いずれの薬剤においてもA型よりも長く、31~38時間であった。また、年齢層別にみると、いずれの薬剤においても成人に比べ15歳以下で長い傾向となる。新種ブタH3N2vインフルエンザ新しい情報としては、現在米国で散発的に発生している新種のブタH3N2vインフルエンザがある。今のところブタからの直接感染のみ認められている。ウイルス学的にはヒトのH3N2とは異なるが、H1N1pdm09の遺伝子を一部持っているので今後の動向に注意が必要であるとされている。そのほか、症状は季節性とほぼ同様、迅速診断キットは有用だが偽陰性もみられA型季節性との鑑別できない、季節性ワクチン無効、NA阻害薬オセルタミビルやザナミビルは有効、10歳以下の小児はこのウイルスの免疫を持っていない、などの特徴がある。最近のデータでは306例ほど罹患し、死亡例が9月に入って1例発生したと報じられている*。*シンポジウム開催日(2012年10月7日)現在直近のインフルエンザ流行状況をみると、H3N2、H1N1pdm09、B型といろいろな型が流行し、シーズンによってその様相は大きく変わる。日本ではH1N1pdm09はほぼ消えているが、国外ではまだ流行している地域もある。このように多くの要素があり、来たるシーズンどのような流行になるのか予想は難しい。さらに、米国での新たなH3N2v出現など、今後ともインフルエンザの流行状況からは目を離すことはできないであろう。

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ロタウイルスワクチンの効果について41試験をレビュー

 英国・Enhance Reviews社のKarla Soares-Weiser氏らは、ロタウイルス下痢症予防に用いられているロタウイルスワクチン接種介入試験の系統的レビューを行った。評価は、現在承認されている、単価ワクチン(RV1、商品名:ロタリックス)、5価ワクチン(RV5、商品名:ロタテック)と、中国のみで使用されている蘭州ラムロタウイルスワクチン(LLR、蘭州生化学製品研究所製)を対象として行われた。Cochrane Library 2012年11月14日の発表報告。 MEDLINE(PubMed経由、1966年~2012年5月)、Cochrane Infectious Diseases Group Specialized Register(2012年5月10日)、CENTRAL(Cochrane Library 2012年5月発表)、などにより文献検索を行い、小児を対象としたワクチン接種とプラセボ(または非接種あるいは他のワクチン接種)とを比較している無作為化試験(RCT)を選択した。 2人のレビュワーが個別に試験適格の評価、データ抽出、バイアスリスク評価を行った。リスク比(RR)、95%信頼区間(CI)を利用して二分データを統合し、小児死亡率による解析を階層化し、GRADEにてエビデンスの質を評価した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしたのは41試験(被験者総計18万6,263例)で、そのうち29試験(同10万1,671例)がRV1を、12試験(同8万4,592例)がRV5を評価したものであった。LLRについては適格試験がみつからなかった。[RV1接種1歳未満児について]・小児死亡率の低い国では、重症ロタウイルス下痢症の86%が予防された(RR:0.14、95%CI:0.07~0.26、被験者4万631人・6試験、エビデンス高)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、ラテンアメリカとフィンランドにわたる大規模多施設試験1試験から、40%と思われる(同:0.60、0.50~0.72、1万7,867例・1試験、エビデンス中)。・小児死亡率の高い国では、重症ロタウイルス下痢症の63%が予防されたと思われる(同:0.37、0.18~0.75、5,414人・2試験、エビデンス中)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、マラウイと南アフリカでの1試験から、34%であると思われる(同:0.66、0.44~0.98、4,939例・1試験、エビデンス中)。[RV1接種2歳児まで]死亡率の低い国では、重症ロタウイルス下痢症の85%が予防された(RR:0.15、95%CI:0.12~0.20、被験者3万2,854人・8試験、エビデンス高)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、37%であると思われる(同:0.63、0.56~0.71、3万9,091例・2試験、エビデンス中)。・死亡率の高い国では、マラウイと南アフリカでの1試験から、重症ロタウイルス下痢症の42%が予防されたと思われる(同:0.58、0.42~0.79、2,764人・1試験、エビデンス中)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、18%であると思われる(同:0.82、0.71~0.95、2,764例・1試験、エビデンス中)。[RV5接種1歳未満児について]・死亡率の低い国では、重症ロタウイルス下痢症の87%が予防されたと思われる(RR:0.13、95%CI:0.04~0.45、被験2,344人・3試験、エビデンス中)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、フィンランドでの1試験から、72%であると思われた(同:0.28、0.16~0.48、1,029例・1試験、エビデンス低)。・死亡率の高い国では、重症ロタウイルス下痢症の57%が予防された(同:0.43、0.29~0.62、5,916人・2試験、エビデンス高)。しかし、すべての原因による重症下痢症エピソードついては、データが不十分であった。[RV5接種2歳児まで]・死亡率の低い国についてのデータがあったのは、4試験であった。3試験から、重症ロタウイルス下痢症の予防は82%と思われた(RR:0.18、95%CI:0.07~0.50、被験3,190人・3試験、エビデンス中)。1試験(フィンランド)から、すべての原因による重症下痢症エピソードについて、96%が予防可能であることがわかった(同:0.04、0.00~0.70、1,029例・1試験、エビデンス低)。・死亡率の高い国では、重症ロタウイルス下痢症の41%が予防された(同:0.59、0.43~0.82、5,885人・2試験、エビデンス高)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、15%であった(同:0.85、0.75~0.98、5,977人・2試験、エビデンス高)。・ワクチンの死亡に対する効果のエビデンスはなかった(18万1,009例、34試験、エビデンス低)。ただし同エンドポイントの検出力はなかった。・重篤な有害事象は、RV1について4,565例(9万9,438例中)、RV5は1,884例(7万8,226例中)で報告された。・腸重積症の報告例は、RV1接種後58例(9万7,246例中)、RV5は34例(8万1,459例中)であった。・重篤な有害事象、とりわけ腸重積症については、RV1またはRV5接種群とプラセボ群で有意な差はみられなかった。・RV1、RV5はロタウイルス下痢症のエピソードを予防する。ワクチンの効果は、死亡率の高い国では低かったが、疾患負荷が高いためであり、絶対的なベネフィットは高い。腸重積症を含む重篤な有害事象のリスク増加は検出されなかったが、導入後サーベイランスはワクチン関連のまれなイベントを検出するためにも必要である。

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小児と成人の季節性インフルエンザワクチン有効率は解析因子で変化

 小児と成人(高齢者を除く)への季節性インフルエンザワクチンの有効性と、その有効性を規定する因子について検証した結果、有効率の推定は、ワクチンのタイプ(弱毒生、不活化)、接種年齢(小児、成人)、ワクチンとウイルス株の適合度、インフルエンザのタイプ、症例確認の手法といった因子次第で変わることが明らかにされた。インフルエンザワクチンの真の有効性レベルについては議論の的となっており、その推定には多くの因子が影響をもたらす可能性があり、米国・Sanofi PasteurのCarlos A Diazgranados氏らがメタ解析にて検証した。Vaccine誌2012年11月7日号の掲載報告。 解析は、小児と成人(高齢者除く)のインフルエンザワクチン予防接種の効果を評価すること、およびワクチンのタイプ、年齢、ウイルス株の適合度、インフルエンザのタイプ、症例確認法のワクチン推定有効率への影響を調べることを目的とした。 2011年10月時点のMedlineとEmBaseを検索し、関連論文の参考文献についてもレビューを行い、季節性インフルエンザワクチンの評価と検査確認されたインフルエンザ発生率を示していた対照試験を適格とした。実験的なチャレンジ後に有効性を評価しているもの、複製データが認められた試験、グループランダム化試験、特定年齢を対象とした試験は除外した。 ワクチンのインフルエンザ予防に関する有効性は、Mantel-Haenszelリスク比(RR)で算出し、ランダム効果モデルを用いて評価した。各比較群のワクチン有効性は、[(1-RR)×100]にて算出した。 主な結果は以下のとおり。・1つ以上の分析が行われていた30試験(計101の分析含む、被験者8万8,468例)が解析に組み込まれた。解析のエビデンスについての不均一性は49%であった。・ワクチンの有効性は、あらゆるウイルス株に対しては65%であり、適合したウイルス株に対しては78%、非適合ウイルス株に対しては55%であった。・弱毒生および不活化ワクチンのいずれもが、非適合ウイルス株に対する予防効果は低かった(それぞれ60%、55%)。・小児においては、弱毒生ワクチン接種のほうが不活化ワクチン接種よりも良好であった(80%vs. 48%)。一方、成人では、不活化ワクチンのほうが弱毒生ワクチンよりも良好であった(59%vs. 39%)。・非適合ウイルス株に対する有効性について、インフルエンザA型(69%)と、インフルエンザB型(49%)では大きな差(20%)があった。・ワクチン有効率の推定は、疾患確認を培養法をベースに行った場合、最も高かった。

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ロタウイルスワクチン予防接種プログラム、導入初年度から明らかなインパクト

 フィンランド国立健康福祉研究所(THL)のTuija Leino氏らは、同国で2010年に導入されたロタウイルスワクチン予防接種プログラムの初年度の影響について推定評価を行った。その結果、重症度、病院での治療、ロタウイルス胃腸炎の型について明らかに管理コントロールできたことを報告した。Vaccine誌オンライン版2010年11月1日号の掲載報告。 研究グループは、ロタウイルスワクチン予防接種プログラム導入後初年度のフィンランドにおける、病院で治療された急性胃腸炎の負荷について、および重症ロタウイルス疾患の負荷について推定することを目的とした。また、接種したワクチンによって生じた免疫が非特異的な疾患負荷をも防御するという仮説を検討するというワクチン探索的研究の意図も目的に含んだ。 ロタウイルス関連のアウトカムは、ICD 10コードを用いてコーディングされた国立病院退院レジスターに登録されるデータに基づいた。 5歳未満児の急性胃腸炎またはロタウイルス胃腸炎による入院および外来症例の発生率を、プログラム導入前(1999~2005年)とプログラム開始後(2010年)とで比較した。 利用したICD 10コードは、A00~A09、R11、K52であった。 主な結果は以下のとおり。・プログラム導入前と比較した導入後の疾患負荷の減少率は、1歳未満児において、入院ロタウイルス胃腸炎患児においては80.3%(95%CI:74.5~84.7)であり、感染性胃腸炎の総入院患者負荷でみた場合は同一年齢グループで53.9%(同:49.8~57.7)であった。・同じく外来患者についても、それぞれ78.8%(同:48.4~91.3)、12.5%(同:7.1~17.7)の減少がみられた。・ロタウイルス胃腸炎に対する2010年ロタウイルスシーズン前のワクチン接種の全体的なインパクトは、97%(同:90.7~99.0)であった。・ロタウイルス胃腸炎と細菌未特定だがロタウイルス胃腸炎とみなされた症例について、ともに総発症数が減少した場合に獲得可能な総疾患負荷の住民ベース推計は、1歳未満児のロタウイルス胃腸炎入院で1,000人・年当たり10.5であった。一方で、診断特異的発生率はその半分以下の4.9であった。・総疾患負荷は、ワクチン導入後は診断症例よりもエンドポイントとして、より価値があるが、本研究は、ワクチン導入後のフォローアップが非常に短期であり限定的なものである。

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MMRワクチン2回接種高率地域では、耳下腺炎流行を3回目の接種でコントロール可能

 MMRワクチン2回接種率の高い地域では、耳下腺炎流行時に3回目の接種を行うことで、接種後すみやかに発生率の減少がみられ、流行のコントロールに有用である可能性が示された。米国CDCのIkechukwu U Ogbuanu氏らが、耳下腺炎流行コントロールに対するMMRワクチン3回目接種の影響を評価した初の試験結果として報告した。米国では2009~2010年に北東部の宗教コミュニティにおいて、MMRワクチン2回接種率が高率であったにもかかわらず耳下腺炎の大規模な流行が発生した。その際、同地域の学生に対し、流行のコントロール効果を目的にMMRワクチンの3回目の接種が行われた。Pediatrics誌オンライン版2012年11月5日号の掲載報告。 MMRワクチンの3回目の接種に関する試験は、3校の6~12学年の学生に対して行われた。 ベースライン評価とフォローアップ評価、および医師の症例報告によって、耳下腺炎罹患率(接種前後3週間の期間について算出)をモニタリングした。 主な結果は以下のとおり。・試験適格であった学生2,265例のうち、2,178例(96.2%)に対し追加接種に関する文書を提供した。接種を選択した学生は高率(1,755例、80.6%)であった。・6~12学年全体の耳下腺炎罹患率は、ワクチン接種前は4.93%であったが、接種後は0.13%に低下した(p<0.001)。・コミュニティ全体の罹患率は、介入後75.6%まで低下した。・罹患率の低下は全年齢群でみられたが、ワクチン接種を行った11~17歳群での低下は、その他のどの年齢群よりも有意に大きかった(96.0%)。・有害事象発生の報告は、MMRワクチン接種1回目または2回目の既存報告の範囲内、もしくはより低率であった。

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ハイリスク群へのPCV13接種の費用対効果は?/BMJ

 多くの国で侵襲性肺炎球菌感染症のハイリスク患者には23価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV23)の予防的投与が推奨されているが、欧州委員会は最近、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の適応を50歳以上の成人まで拡大した。オランダ・フローニンゲン大学のMark H Rozenbaum氏らは、ハイリスク患者に対するPCV13接種の費用対効果について検証した。BMJ誌2012年11月10日号(オンライン版2012年10月26日号)掲載より。2歳以上のイギリス人ハイリスク患者を対象にコスト、QALYを評価 経済解析は保険者視点によるコホートモデルを用いて行われ、対象は、2歳以上のイギリス人で、慢性腎臓病、脾臓の機能不全、HIV感染症、免疫系の易感染、慢性の心臓・肝臓・呼吸器系の疾患、糖尿病などで侵襲性肺炎球菌感染症のリスクが高い者であった。 主要評価項目はコスト、質調整生存年(QALY)、増分費用効果比(ICER)とした。非肺炎球菌菌血症に対するPCV13の有効性が実証されれば費用対効果が高い可能性 PCV13を用いた新生児ワクチン接種プログラムによる間接効果の増大は、一方でハイリスク群の予防可能な疾患負荷を減らすことが可能であることを意味する。 ベース症例の条件(ハイリスク群の非肺炎球菌菌血症に全体的な効果が認められず、ハイリスクワクチン接種プログラムは新生児接種プログラム後の2~3歳で開始する)下では、増分費用効果比は最大ハイリスク群でQALY当たり3万ポンド(3万7,216ユーロ、4万8,210ドル)以上になると推定された。 しかし、もしワクチンが非肺炎球菌菌血症の予防に効果がない、あるいはワクチンを新生児PCV13プログラム開始と同時とした場合は、ハイリスク患者への接種は(より)費用対効果に優れている可能性があるとしている。 感度解析では、費用対効果はとくに集団ベネフィットと有効性の推定において感度が高かった。 これらの結果からRozenbaum氏らは、ベース症例前提条件下では、高い費用対効果が可能と考えられるリスク群への肺炎球菌ワクチン接種プログラムは考えにくいとしたうえで、この不確定さは、非肺炎球菌菌血症に対するPCV13の有効性を実証することによって、かなり減少される可能性はあると報告した。

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ロタウイルスワクチン接種は、ローコストでハイリターン

 ロタウイルスワクチン接種は、わずかなコストにより、相当な疾患負担を減少することが、カナダ・トロント大学のDavid N Fisman氏らによる検討の結果、報告された。ロタウイルス胃腸炎は世界中の小児における罹患率と死亡率の要因となっており、カナダを含む高所得国では、高い罹患率とヘルスケア利用は大きな負担となっている。カナダでは現在、2種のロタウイルスワクチン(商品名:ロタリックス、ロタテック)が承認されているが、これまで経済効果については調査されていなかったという。Vaccine誌オンライン版2012年10月26日号の掲載報告。 研究グループは、2つのモデル(マルコフ連鎖モンテカルロ法シミュレーションと、ブリティッシュコロンビア州小児のロタウイルス胃腸炎に関する動的伝播モデルシミュレーション)による経済解析を行った。モデルは、疾患自然史、疫学情報、ワクチンの有効性およびコスト、医療費について入手可能な最善のデータに基づいて示され、ヘルスケア利用、ワクチン普及率は経験的推定値とすり合わせて調整した。それら予測値の検証について、決定論的・確率論的感度解析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・小児のロタウイルス胃腸炎に対する予防接種は、小児への接種100人につき63~81人の感染を防御することが予測された。外来患者については、相当数を防御すると予測された。・2種のワクチンはともに、小児への接種100人につき1~2件の入院を防御すると予測された。・ワクチン接種は、ヘルスケアコストを増加すると予測された。・ロタリックスによる予防接種はおよそ1感染防御につき10ドルのコストを要し、2,400ドルQALYを獲得する可能性が示された。ロタテックは、コストが多いが効果は低く、優先的に選ばれない可能性が示された。・それらの可能性は、広範囲の感度解析でも揺るがなかった。

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インフルエンザの乳児、細菌性髄膜炎と菌血症のリスクは非常に低い

 乳児のインフルエンザ罹患症状は重篤な細菌感染症と似通っており、腰椎穿刺のような侵襲的検査が行われる。しかし、インフルエンザが細菌性髄膜炎を併発するとのエビデンスは限られており、それでも腰椎穿刺が行われるのは、実施が考慮される時点でインフルエンザの診断が確立されていない場合がほとんどであるからとされる。オーストラリア・国立ワクチン予防接種疾患研究・サーベイセンターのGulam Khandaker氏らは、腰椎穿刺の実施およびその必要性を考慮するにあたって、インフルエンザを有した小児と、その他の呼吸器感染症を有した小児とを比較する後ろ向き研究を行った。 研究グループは、オーストラリア シドニーのウェストミード小児病院で、冬季1シーズン中に検査確認されたインフルエンザまたはその他の呼吸器ウイルス感染症(ORVIs、RSウイルスは除外)を有したすべての小児について、後ろ向きカルテレビューを行った。 侵襲的検査(主として腰椎穿刺、血液培養も対象とする)の実施例をインフルエンザ群と非インフルエンザ群で比較し、その必要性を検討した。 また、細菌性髄膜炎または菌血症の同時罹患率も調べた。 主な結果は以下のとおり。・対象患児294例中、51%が検査確認されたインフルエンザ患児であり、49%がORVIs(パラインフルエンザウイルス34%、アデノウイルス15%)患児であった。・インフルエンザ群のうち、18%が腰椎穿刺を、71%が血液培養を受けていた。一方、ORVIs群はそれぞれ6.3%、55.5%であった(いずれもp<0.01)。・インフルエンザ群のほうがORVIs群よりも、入院中に腰椎穿刺を受けている傾向が認められた。ORVIsと比較するとインフルエンザのケースでは、入院時に腰椎穿刺を行う可能性は3倍以上に上った。・多変量解析の結果、インフルエンザの診断は、腰椎穿刺(p=0.02)、血液培養(p=0.05)を実施に関してそれぞれ強力な因子であった。・インフルエンザを有した患児で、菌血症を伴ったのは1例(0.9%)であった。髄膜炎を有した患児はいなかった。・インフルエンザが入院時にベッドサイド検査で確認されている場合は、臨床医は安心感から腰椎穿刺を行わない傾向がある。一方で、もし髄膜炎が臨床的に疑われるようであれば、それに応じた対応をしなければならない。・しかし、インフルエンザやORVIsで入院した小児では、細菌性髄膜炎と菌血症のリスクは非常に低いことが認められた。本知見について、大規模な試験設定でのシステマティックレビューを行う必要がある。

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耳下腺炎ワクチンの接種は、男性の精巣炎リスクを有意に減少する/NEJM

  12歳以上の男性で、耳下腺炎ワクチンの2回投与を受けた人は、受けなかった人に比べ、耳下腺炎を発症しても、合併症の精巣炎を発症するリスクを有意に減少することが報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のAlbert E. Barskey氏らが、2009~2010年にかけて、ニューヨーク地域などのユダヤ教徒コミュニティで流行した、3,500人超の耳下腺炎発症例について調べて明らかにしたもので、NEJM誌2012年11月1日号で報告した。米国では2005年までに、耳下腺炎ワクチン接種によって同罹患率は99%以上減少したものの、2006年には同ワクチン接種をした人の中で耳下腺炎が大流行した。その後、同様の集団発生が世界各地で報告されている。13~17歳が全体の27%、うち男性は78%と高率 研究グループは、2009年6月28日~2010年6月27日の間に、ニューヨーク地域(ニューヨーク市、ニューヨーク州北部の2郡、ニュージャージー州の1州)で報告された、耳下腺炎症例3,502人について調査を行った。 臨床検体の得られた1,648人中50%が、検査によって耳下腺炎が確定された。被験者のうち97%が、ユダヤ教徒コミュニティに属していた。 年齢・性別で比較すると、13~17歳が全体の27%で、そのうち男性が78%と、発症割合の偏りが認められた。ワクチン2回接種群の精巣炎発症率は4%、非接種群は11% ワクチン接種が確認できた13~17歳の患者884人について精査したところ、89%が2回摂取で、8%が1回摂取だった。また、そのうち合併症が認められたのは140人で、最も多かったのは精巣炎であり、12歳以上の男性1,771人の7%にあたる120人に認められた。 12歳以上の男性のうちワクチン接種を2回受けていた人の精巣炎発症率は4%と、受けていなかった人の11%に比べ低率だった(p=0.04)。また、18歳以上の同発症率は9%だったのに対し18歳未満では4%、入院率もそれぞれ2%と1%と、18歳以上で有意に高率だった(それぞれ、p<0.001、p=0.001)。 伝播経路については、ユダヤ系男子校で集中していた。そこでは生徒たちが対面で激論を交わす時間を多く過ごしていた。 著者は「集団発生の疫学的特徴は、耳下腺炎の強度の曝露が、とくに男子校で伝播促進されたこと、またこうした患者ではワクチン接種による防御能を圧倒したことが示唆された。2回接種率が高かったことが疾患の重症度と、曝露が強度ではない人への伝播を抑制した」とまとめている。

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ロタウイルスワクチン、市販後の有効性モニタリングで大切なこと

 スペインでは2006年に、2種の経口弱毒生ロタウイルスワクチンが、6ヵ月未満児のために認可された。そのワクチン有効性について最近のデータで、ばらつきがある可能性が示されたという。スペイン・カステロン公衆衛生センターのJuan B Bellido-Blasco JB氏らは、このことはロタウイルスワクチンの有効性に関する市販後モニタリングに重大な局面をもたらすものだとして、症例対照研究を行った。Vaccine誌オンライン版2012年10月25日号の掲載報告。 2009年にカステロンにて生後2~35ヵ月児を対象に、ロタウイルスワクチンの有効性を評価した。可能な限りの選択バイアスと関連特異度を評価するため、二次的観察と反事実的観察として、ロタウイルス性下痢症状に対する肺炎球菌ワクチン接種の「有効性」を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ロタウイルス胃腸炎が確認された小児は71例で、ロタウイルス以外が原因であった対照群は261例であった。・各児の予防接種状況、投与量、投与日について地方予防接種レジストリにて評価した結果、ロタウイルス性下痢症状を呈した患児のワクチン接種率は低かった(2.8%)。・対照群のワクチン接種率は21.8%であった。・ロタウイルスワクチンを1回以上接種した場合の有効性は87.7%(45.5~99.7%)であった。・解析を非入院児に限定した場合の同有効性は、わずかに低くなり83.5%(25.4~96.3%)であった。・予想されたことではあるが、肺炎球菌ワクチンのロタウイルス感染症に対する保護効果は認められなかった。・ワクチン有効性の市販後モニタリングは、EDICSのような伝染性胃腸炎発生を住民ベースの研究と組み合わせた予防接種情報システムが適している。

1951.

【日本癌治療学会2012】腎がん治療の過去と未来

 第50回日本癌治療学会学術集会(2012年10月25日~27日)のシンポジウム「泌尿器がん治療の過去と未来」にて、金山博臣氏(徳島大学大学院HBS研究部泌尿器科学)は、「腎がん:サイトカイン、分子標的治療など」と題して、腎がんのサイトカイン療法および分子標的治療の歴史と現在の標準治療、今後の展望について講演を行った。●サイトカイン療法の時代 日本では2008年に腎がんに対して最初の分子標的治療薬であるソラフェニブが承認されるまで、腎がんの治療はインターフェロンα(IFNα)または低用量インターロイキン2(IL-2)、あるいは両剤の併用療法によるサイトカイン療法が中心であった。 肺転移を有する淡明細胞がんを対象としたIL-2とIFNα併用療法の多施設共同研究(Akaza H, et al. Jpn J Clin Oncol. 2010; 40: 684-689)によると、全症例での奏効率は35.7%、NC以上は73.8%と腫瘍縮小効果が高く、6ヵ月時点での無増悪生存率は60%以上であり、奏効した症例ではその効果が長く持続することが示された。 また、1,463例を対象としてサイトカイン療法の予後を検討した日本の40施設の共同研究(Naito S, et al. Eur Urol. 2010; 57: 317-325)の成績によると、生存期間中央値21.4ヵ月、5年生存率22.5%であり、poor riskの患者群でも生存期間中央値9.8ヵ月という良好な成績が得られている。 金山氏は、これらの分子標的治療が登場する以前の日本の腎細胞がんのエビデンスをまとめ、IFNαや低用量IL-2、あるいはその併用療法によるサイトカイン療法は、肺転移を伴う淡明細胞がんに対して有効であり、転移巣の切除や腎摘除術が予後の改善に寄与したと述べた。その他の治療(ミニ移植、ペプチドワクチン療法、樹状細胞療法)ではサイトカイン以上の有効性を示すエビデンスは得られなかった。●分子標的療法の時代 日本では現在、VEGFR-チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)としてソラフェニブ、スニチニブ、およびアキシチニブ、mTOR阻害薬としてエベロリムスとテムシロリムスの5剤が承認されている。金山氏は、それらの薬剤の主要なエビデンスをレビューした。 転移性の淡明細胞がんの患者750例を対象とし、ファーストライン治療においてスニチニブとIFNαを比較した第III相試験(Motzer RJ, et al. N Engl J Med. 2007; 356: 115-124)の結果から、スニチニブはIFNαに比べ無増悪生存期間(PFS)を有意に延長させ(ハザード比0.42、95%CI:0.32~0.54、p<0.001)、奏効率もスニチニブ群で有意に高い(Central reviewにて、31% vs. 6%、p<0.001)ことが示された。Grade 3/4の倦怠感の発現率はIFNα群で高く、下痢はスニチニブ群で多かったが、QOLの評価はスニチニブ群で有意に良好であった。 N Engl J Med誌の同じ号には、サイトカイン療法に抵抗性を示す進行淡明細胞がん患者903例を対象として、ソラフェニブとプラセボを比較した第III相試験(Escudier B, et al. N Engl J Med. 2007; 356: 125-134)の結果が掲載された。それによると、PFS中央値はソラフェニブ群5.5ヵ月に対しプラセボ群2.8ヵ月(ハザード比0.44、95%CI:0.35~0.55、p<0.01)であった。2005年5月の解析時の全生存期間(OS)でも延長が認められたが(ハザード比0.72、95%CI:0.54~0.94、p=0.02)、統計学的に有意ではなかった。主なソラフェニブによる有害事象は、下痢、発疹、倦怠感、手足症候群であった。 Poor riskの淡明細胞がん患者626例を対象に、ファーストライン治療においてmTOR阻害薬のテムシロリムス、IFNαの単剤、および両剤の併用療法を比較した第III相試験(Hudes G, et al. N Engl J Med. 2007; 356: 2271-2281)の結果によると、テムシロリムス群はIFNα群に比べて、OS(ハザード比0.73、95%CI:0.58~0.92、p=0.008)、およびPFSともに有意な延長が認められた。一方で、併用療法群はIFNα群に比べて有意なOSの延長は示されなかった。IFNα群、テムシロリムス群、併用群の生存期間中央値はそれぞれ7.3ヵ月、10.9ヵ月、および8.4ヵ月であった。テムシロリムス群の有害事象として、発疹、末梢浮腫、高血糖、高脂血症が多く出現したが、重篤な有害事象の発症頻度はIFNα群に比べて低かった。 転移性腎細胞がん患者649例を対象として、ファーストライン治療で抗VEGF抗体のベバシズマブ+IFNαの併用療法とIFNαを比較した第III相試験(Escudier B, et al. Lancet. 2007; 370: 2103-2111)によると、併用群で有意なPFS中央値の延長が認められた(10.2ヵ月 vs. 5.4ヵ月、ハザード比 0.63、95%CI:0.52~0.75、p=0.0001)。併用群で多く認められたGrade 3以上の有害事象は倦怠感と無力症であった。 また、スニチニブやソラフェニブによる治療後に増悪した転移性腎細胞がん患者410例を対象に、エベロリムスとプラセボを比較した第III相試験(Motzer RJ, et al. Lancet. 2008; 372: 449-456)では、エベロリムス群で有意なPFSの延長が示された(4.0ヵ月 vs. 1.9ヵ月、ハザード比0.3、95%CI:0.22~0.40、 p

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新規ワクチン導入は既存ワクチン接種に影響を及ぼさない

 国の予防接種プログラムへの新規ワクチン導入に際しては、その効果や保健医療制度への影響について異議を唱える声が聞かれる。とくに既存ワクチン接種への影響について疑念を持つ向きがある。カナダ・マックマスター大学のShearer JC氏らは、新規ワクチン導入の既存ワクチン接種への影響について187ヵ国の状況を調べた。Vaccine誌オンライン版2012年10月22日号の掲載報告。 予防接種システムの実行についてDTPワクチン接種を代替指標とし、新規ワクチンの導入が、乳児の既存予防接種プログラムであるDTPの3回接種の変化と関連するかを調べた。 DTPワクチン3回接種について、多変量国家間縦断混合効果モデルを利用して解析した。 主な結果は以下のとおり。・1999~2009年の187ヵ国のDTPワクチン3回接種について調査した。・DTPワクチン3回接種を制御する因子として、肝炎ウイルスワクチン、Hibワクチン、ロタウイルスワクチンとの間でごくわずかな関連が見つかった。・むしろ、接種頻度や接種率の変動は、国の発展や保健医療制度の変数(武力紛争、出産前ケアサービス範囲、乳児死亡率、個人負担の割合、1人当たりの総医療費用を含む)と関連していた。・新規導入ワクチンによるDTPワクチン3回接種への影響は認められなかった。新規ワクチンの導入や混合ワクチンの導入にあたっては、免疫獲得や保健医療制度への影響をモニタリングすべきである。

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ロタウイルス遺伝子型の頻出、G3P[8]型が約6割

 ロタウイルスは、世界的にみても乳幼児における重度の下痢の最も主要な原因であるが、2009~2011年にタイ国で最も猛威をふるったロタウイルスの遺伝子型はG3P[8]型であり、約6割を占めていたことが明らかになった。タイ・Chulalongkorn UniversityのMaiklang O氏らの報告による(Southeast Asian J Trop Med Public Health誌2012年7月号)。なお、関連報告(2007~2009年動向調査)によると、前2年間のG3P[8]型の出現頻度は0.6%であり、最も頻出していたロタウイルス遺伝子型はG1P[8]型で約5割だったことが報告されている。 2009年6月~2011年5月の間の、タイの小児におけるロタウイルスA群の出現率と季節分布について調査した。同期間中に、急性胃腸炎または下痢症状で入院した乳幼児からサンプルを収集した。 主な結果は以下のとおり。・収集した562サンプルのうち、ロタウイルスA群の検出率(RT-PCR法による)は250例(44.5%)であった。・最も出現率が高かった遺伝子型は、G3P[8](60.4%)であった。次いでG1P[8](39.2%)、G2P[4](0.4%)であった。・関連報告の2007年7月~2009年5月の動向では、A群の検出率(RT-PCR法による)は557サンプル中158例(28.4%)であった。遺伝子型の出現率は、G1P[8](49.4%)が最も高率であり、G9P[8](22.2%)、G2P[4](20.2%)、G3P[8](0.6%)と続いていた。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・新生児における牛乳アレルギーの臨床的特徴 ・5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

1954.

新生児における牛乳アレルギーの臨床的特徴

 牛乳アレルギー(CMA)を疑う食物関連症状の臨床的所見は、早産児であることや消化器外科手術のような根本的要因に影響を受けると報告された。昭和大学の宮沢氏らによる報告。 CMAは新生児における消化器症状の原因の一つである。これまで、早期乳児期におけるIgEを介したアレルギー反応とCMAとの関連は示唆されているものの、臨床的所見と発症機序は確立していなかった。Allergol Int誌オンライン版 2012年10月25日号掲載報告。 本試験は先行研究のフォローアップとして実施された。53施設の新生児集中治療室に第2弾のアンケートが送られ、患者背景、発症年齢、臨床的所見や臨床検査の結果が回収された。主な結果は以下のとおり。・出生体重中央値は2,614g、妊娠期間中央値は36.9週であった。・症例のうち、40%で生後6日以内に症状が生じ、90%で消化器症状が生じた。主な消化器症状は、嘔吐、血便、腹部膨満であった。・特異的IgE試験、リンパ球刺激試験、および糞便中好酸球検査は、それぞれ、88%、23%、55%で実施された。その結果、陽性率はそれぞれ30%、84%、75%であった。・食物経口負荷試験(OFC)は確定診断のために26%で実施された。・新生児でCMAを疑う食物関連症状の臨床所見は、一般的な即時型食物アレルギーとは異なり、早産児であることや消化器外科手術のような根本的要因に影響を受けた。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・睡眠時間の増減が子どもの情緒・落ち着きに与える影響 ・5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

1955.

ある製薬メーカーのケースからを考える「研究者の業務効率化」とは?

9月8日(土)東京大学・本郷キャンパスにおいて山本雄士氏(株式会社ミナケア 代表取締役)主催による第5回の「山本雄士ゼミ」が開催された。今回は、ケーススタディとして「ワイス・ファーマシューティカルズ」(Wyeth Pharmaceuticals: Spurring Scientific Creativity with Metrics)を取り上げ、製薬メーカーにおける経営マネジメントなどについてディスカッションした。山本雄士ゼミは、ハーバード・ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した山本氏をファシリテーターに迎え、ケーススタディを題材に医療の問題点や今後の取組みをディスカッションによって学んでいく毎月1回開催のゼミである。イントロダクション冒頭、山本氏よりケーススタディ企業の概要が説明され、「研究部門長の改革で優れている点は何か?」と「研究開発の目標数を増やすメリット・デメリット」の2つのテーマの提起のあと、ディスカッションに入った。ワイス社は、1860年代にアメリカで創業された企業で何度かの合併・買収を繰り返しながら大きくなっていった製薬メーカ(現在ワイス社は買収されて存在しない)。2005年時点で売上高は約180億ドル、世界的な主力製品の関節リウマチ治療薬や乳幼児向け肺炎球菌ワクチンなど、バイオ医薬品とワクチンなどに強い会社である。企業の研究部門改革の成功例をみる同社が低迷する新開発商品の倍増を目指し、テコ入れを行った「新たな働き方(NWW)」の経緯が今回のケースの内容である。2001~2002年にかけて創薬の初期段階である新規化合物が伸びたこと、試験への進展率が上がったことなどケースから読み取れる事例の報告後、山本氏より「数字で管理するメリットは何か?」との問題提起をうけて、ディスカッションが始まった。参加者からは、「経営戦略がたてやすい」、「研究・開発の管理が容易になる」、「報酬増の目安が表示される」などの意見が出された。次に「NWWが成功したポイントは?」という問いに「モチベーションの見える化」や「報酬の連帯性=組織の強化」、「作業プロセスの効率化」、「スピード感の向上」などの意見が出された。製薬メーカーの本質とは何か山本氏より問題提起として「創薬研究はアートといえるかどうか?」という問題が投げかけられ参加者は、「アートである」と「研究の成果である」の2つに分かれ、ディスカッションが行われた。かたや「薬のターゲットを決めることが創造的作用である」から、かたや「偶然に左右される産物をどのように管理するのか」など双方からさまざまな意見が寄せられた。次に山本氏から「製薬企業の強みとは何か?」という質問に参加者からは、「needs(需要)とseeds(供給)の調整ができる」や「サポートの充実、安定供給ができる」、「患者への責任を持っている」など企業の本質に関わる話題まで多くの回答が寄せられた。これらの内容を踏まえて、企業のサプライチェーン(供給連鎖)の話題や最近の創薬研究の動き(研究の外注化やベンチャーの買収)などがミニレクチャーされた。研究が主体の企業の在り方ケーススタディに戻り、ワイス社がNWWでターゲットの開発目標数を12から15個に増やしたことの賛否について山本氏が質問。これに対し、参加者からは「高めの目標設定は理解できる」や「難しい目標設定ではない」などの賛成意見と「収益の改善に効果がない」や「質が低下する」などの反対意見が出され、ディスカッションが行われた。そして、同社がNWWのおかげで急激な開発速度で目標が達成された経緯を検討、研究者の働き方に関する議論へと進展した。ディスカッションでは、企業統治について本社主導の「統制型」か部門ごとの「分権型」かに分かれて行われた。統制型では、管理しやすく、遂行型業務には適しており、全体最適化がしやすい反面、調整が難しかったり、目標が高くなるきらいがあるなどの意見がでた。一方で、分権型では、部門の自律性が図れると同時に権限が強くなり、フレキシブルな対応ができる反面、目標が低くなり、責任の所在が曖昧になる、全体最適化が難しいなどの意見が出された。結論として、こうした分類は簡単に割り切れるわけではなく、規模や業務内容に応じて選択する必要があること、基準化された正解はないことを確認した。最後にまとめとして、山本氏が「研究・開発に関して、知識の部分というのは管理化・プロトコル化できるが、暗黙知の部分は手順化が難しい。しかし、社内や学内研修や知識の共有化を通じてツール化することは可能であり、今後、この暗黙知の部分も会社なり、大学なり研究組織は、ツール化して組織内にどんどん導入する時にきている」と示唆を述べ、今回のゼミを終えた。

1956.

HPVワクチン接種を受けた少女、その後の性交渉に変化はみられるのか?

 HPVワクチン接種を受けた少女と受けなかった少女について、その後3年間の性交渉に関連した受診動向について後ろ向きに比較した結果、接種群の複合アウトカムリスク(妊娠/性感染症の検査または診断、避妊カウンセリング)の増大は、認められなかったことが報告された。米国のHMOカイザーパーマネント南東部ヘルスリサーチセンターのBednarczyk RA氏らによる報告で、これまでHPVワクチン接種後の性交渉の変化について自己申告に基づくサーベイ調査はあったが、臨床的指標を用いた調査はこれが初めてだという。Pediatrics誌オンライン版2012年10月15日号の掲載報告。 大規模なマネジドケア組織からの長期的電子データを用い、後ろ向きコホート研究の手法にて、思春期に接種が推奨されているワクチン接種後の性交渉関連臨床アウトカムを評価した。 2006年7月~2007年12月の間にマネジドケア組織に登録された11~12歳の少女を、思春期ワクチン(4価HPVワクチン)接種の有無で分類。2012年12月31日まで3年間追跡し、アウトカム(妊娠/性感染症の検査または診断、避妊カウンセリング)について評価した。受診行動や人口統計学的特性について補正後、多変量ポアソン回帰分析にて発生率比率を推定比較した。 主な結果は以下のとおり。・コホートには、1,398人の少女が組み込まれた(HPVワクチン接種者493人、非接種者905人)。・複合アウトカムリスク(すべての妊娠/性感染症の検査または診断、避妊カウンセリング)について、HPVワクチン接種群での有意な上昇はみられなかった。・補正後発生率比は1.29(95%CI:0.92~1.80)、発生率差は1.6/100人・年(95%CI:-0.03~3.24)であった。・クラミジア感染症に関する発生率差(0.06/100人・年、95%CI:-0.30~0.18)、妊娠診断に関する発生率差(0.07/100人・年、95%CI:-0.20~0.35)について、臨床的に意味ある絶対差はほとんど示されなかった。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・睡眠時間の増減が子どもの情緒・落ち着きに与える影響 ・5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

1958.

妊娠17週未満の胎児心エコーの評価は?

 アメリカのMoon-Grady氏らによって、胎児心エコー(FE)について、妊娠早期(17週未満)と妊娠中期(17~23週)の正確性について比較が実施された。妊娠17週未満の胎児心エコー図はカリフォルニア大学で入手し、5年以上にわたって後ろ向きに解析された。FEは解剖学的に細部が評価できるかどうか、カラーパルスドプラ評価が実証できるかどうかで検証された。J Am Soc Echocardiogr 誌オンライン版10月16日号掲載報告。 主な結果は以下のとおり。・試験期間中に17週未満の妊娠早期であった139例が対象となった(平均妊娠期間:14週、範囲:12週0日目~18週6日目)。追加の経膣超音波検査は139例中14例(10%)で実施された。・113名は妊娠早期と妊娠中期でFEを実施した。そのうち27例(24%)で妊娠早期に正確な胎児心エコー図が得られ(95%CI:17~33%)、76例(67%)が妊娠中期で得られた(同: 58~75%)・多くの妊娠早期のFEのうち、肺静脈のカラーパルスドプラ評価は成功しなかった。・肺静脈のカラードプラ評価が除外された場合、妊娠早期のFEでの検証は80例(71%)で実証され(95%CI:62~78%)、妊娠中期では97例(86%)で実証された(同:78~91%)。・妊娠早期のFEにおいて、20例で心臓病が懸念された。主要な先天性心疾患は見逃されなかったものの、4例において妊娠中期のFEおよび生後に心室中隔欠損症が発見された。・肺静脈の評価を除いて、妊娠早期のFEは多くの患者でほぼ正確であった。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・睡眠時間の増減が子どもの情緒・落ち着きに与える影響 ・5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

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5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

 5価ロタウイルスワクチン(RV5、商品名:ロタテック)について、3回接種を完了していなくても、ロタウイルス胃腸炎に対し有効性を示すことが報告された。米国・OptumInsight EpidemiologyのWang FT氏らが、3回接種を完了しなかった乳児を追跡した結果で、著者は「規定接種を完了しなかった場合のベネフィットを考えるうえで意義ある結果が得られた」と述べている。Pediatr Infect Dis J誌オンライン版2012年9月25日号の掲載報告。 大規模な国民健康保険金請求データベースを利用して、2コホートの乳児[RV5とジフテリア・破傷風・百日咳混合ワクチン(DTaP)との同時接種を受けた乳児、DTapのみ接種の乳児]を、2007~2008年のロタウイルス・シーズン(1月1日~5月31日)間に追跡し、ロタウイルス胃腸炎またはあらゆる原因による胃腸炎で医療機関を受診した症例を特定した。 RV5の初回接種児、2回接種児のワクチンの有効性について、入院、救急外来受診、外来受診の減少を推定評価した。 主な結果は以下のとおり。・RV5初回接種児は4万2,306例、比較群のDTaP初回接種児は2万8,417例であった。RV5の2回接種児は4万3,704例、DTaPの2回接種児は3万1,810例であった。・RV5の1回接種による、ロタウイルス胃腸炎入院と救急外来受診に対する有効性は88%であった。全原因による胃腸炎入院と救急外来受診については44%であった。・RV5の2回接種による、ロタウイルス胃腸炎入院と救急外来受診に対する有効性は94%であった。全原因による胃腸炎入院と救急外来受診については40%であった。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・子どもの問題行動に対する行動予防モデルSWPBISの影響 ・学校でのワクチン接種プログラムに対し、多くの開業医が自院経営面への影響を懸念

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わが国の医療関連無過失補償制度を概観する~その運用と問題点について~

9月29日(土)、帝京大学医学部(板橋キャンパス)において第3回医療法学シンポジウムが開催された。当日は全国より医師、医療従事者をはじめ約60名が参加した。今回はテーマに「医療関連無過失補償制度」を掲げ、医師、弁護士が制度の概要、現状、問題点をレクチャー、最後にパネルディスカッションを行った。※「無過失補償制度」とは、医療事故で障害を負った場合、医師に過失がなくても、患者に補償金が支払われる制度のことである。現在、わが国に存在する医療関連無過失補償制度は、1)予防接種健康被害救済制度、2)臨床研究、治験薬に係る補償制度、3)医薬品副作用被害救済制度、4)産科無過失補償制度の4つがある。シンポジウムでは、各制度が作られる原因となった訴訟等背景の事情から制度概要とその問題点についてまとめ、今後の医療紛争処理制度のあるべき姿を検討した。医療関連無過失補償制度の5つの概要はじめに「総論 わが国の医療提供体制と医療紛争処理制度」をテーマに山田奈美恵氏(東京大学医学部附属病院総合研修センター特任助教:医師)が、医療紛争処理制度の全体像を説明するとともに、諸外国の処理制度との比較を解説した。わが国で医療紛争が発生する要因として、多くは患者と患者家族の心理状況が、大きな影響を与えていること、それは患者と医療者が向き合う場が圧倒的に不足している中で起こるものであることが説明された。また、世界的な流れとして北欧を中心に「無過失補償制度」が導入されていることなどが紹介された。次に「予防接種健康被害救済制度」をテーマに神田知江美氏(帝京大学医療情報システム研究センター客員講師、かすが法律事務所:医師、弁護士)が、わが国の予防接種事情と問題が起った場合の救済制度について説明した。日本の予防接種の本格導入は、戦後からのスタートであり、世界標準から見るとわが国は「ワクチン後進国」である現状を指摘。過去に起こった予防接種に起因するさまざまな訴訟例を通じて、医療者に課される注意義務や救済制度の成り立ちなどを詳説した。続いて「臨床研究、治験薬に係る補償制度」をテーマに大磯義一郎氏(浜松医科大学医学部教授(医療法学)、帝京大学医療情報システム研究センター客員教授、加治・木村法律事務所:医師、弁護士)が、「臨床研究、治験薬」段階での補償制度について、制度の内容等を説明した。現在、薬事法で副作用報告は法定化されている。しかし、「副作用」や「有害事象」といった用語の意味が、一般市民の理解と異なっていることは問題であること。そして、治験薬の補償については「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令)」で規定されており、この省令が拠り所となっていること。一方、臨床研究に係る補償制度は、法律ではなく倫理指針で規定されていること、まだ試行錯誤している最中であることを指摘した。次に「医薬品情報と副作用被害救済制度」として渡邊清高氏(国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報提供研究部医療情報コンテンツ研究室長:医師)が、主に抗がん剤の副作用が副作用被害救済の対象となるかという視点から解説を行った。「スモン事件」などの過去の薬害事件とその救済事例を述べるとともに、薬害では製薬メーカーの拠出金で救済されるのに対し、抗がん剤では「重篤な副作用発現頻度」「適正使用の未確立」「因果関係証明の困難」などの理由により、救済対象となっていないと指摘。現在、厚生労働省の審議会で議論が行われているが、制度化にはいたっていないと報告した。最後に「産科医療補償制度」として山崎祥光氏(井上法律事務所:弁護士、医師)が、同制度の内容や運用の実際を報告した。同制度は、産科に関係する民事事件の多発と産科の訴訟リスク、産科医の急激な減少から2009年に制度発足したものであり、各医療機関が民間保険会社と協力し、被害に応じて被害者等が医療機関から補償を受けるものである(運営:日本医療機能評価機構)。たとえば脳性麻痺など、民事訴訟であれば立証の段階で時間がかかる疾患もこの制度であれば、患者と家族に速やかな補償ができるなど恩恵は計り知れない。また、日本医療機能評価機構が審査を行うことで医療機関、患者・家族に異論を差しはさむ余地のない原因分析も行われている。現在2014年の制度見直しに向けて、掛金額、補償対象の範囲など見直しが進められている。「今後、こうした制度が他の疾患分野にも普及することを望む」と述べ、レクチャーを終了した。パネルディスカッション後半では、会場とのパネルディスカッションを開催。大磯義一郎氏をファシリテーターに、渡邊清高氏、山崎祥光氏が再登壇するとともに新たに小島崇宏氏(北浜法律事務所:弁護士、医師)を加え、会場から寄せられる質問に丁寧に回答をしていた。国民の生命・健康を具体的に守る基本法がないために、現在のような医療崩壊や医師の不足を招いたと思う。医療環境の整備をしないうちに、医師などの監督強化をしても逆効果だと考える。こうした現状をどのように思うか、考えをお聞かせ願いたい。大磯過去の経緯を俯瞰すると医師側で発言の機会を逸した結果、司法の側で制度設計をされてしまった感がある。本質的には医師の側から、患者救済は積極的にアピールしていかなくてはいけないと考えている。山崎たとえば産科医療補償制度では、医師の側の意見が、制度の準備段階できちんと入らなかったことに問題がある。制度設計の段階で主張すべきところはすべきと思う。渡邊医師が社会とコミュニケーションをしていないのが問題だと考える。医療に関する言葉の定義がされてこなかったこともあり、今後は患者側にわかってもらう医療を目指す必要がある。小島重篤な合併症でも医療側からの公表データが少ないように思う。医療側の情報の開示をもとに補償をきちんとすることが必要。山崎氏の講演であった産科医療補償制度の「現物支給」について聞かせて欲しい。また、明日からすぐできる患者救済方法が、あるかどうかも回答いただきたい。山崎「現物支給」とは医療費が無料ということ。申請しないと支給されない点が問題。医療側でそうした患者補助のリストなどを患者側に提供できたらいいと思う。渡邊通常、医師個人と患者個人で話をする機会が多いと思う。経済的な視点だけでは解決しないので、全体的なサポートの仕組みを作ることが重要。地域で救済のパッケージを渡す仕組みを自治体等が作っておくことが大事。大磯個別・具体的な地域のリソースを、優良な情報として必要としている個々の患者に提供することが患者救済に役立つ。刑事責任とのリンクについて大磯諸外国と比較して日本だけ、突出して医療の領域に司法が介入しているのは問題。山崎刑事責任とリンクすると制度設計としての「無過失責任補償」からも遠くなる。小島完全に刑事責任は免責とするのではなく、個々のケースによって判断・運用されるべき。大磯医療側がきちんと患者側にインフォームド・コンセントを行い、コンセンサスをとっておくことが大切。産科医療補償制度の改正の主眼は何か?山崎再設計では保険者との関係の見直し、掛金の配分の見直し(とくに介護費用の増額、できれば損害賠償と後遺障害事例の補償額の取り決め)、掛金は社会で担保するものであるから増やすためにコンセンサスが必要。小島補償範囲の拡大については、マンパワーの問題で難しい。医療側からの政策提言の必要性最後に古川俊治氏(慶應義塾大学法務研究科教授・医学部外科教授:弁護士、医師、参議院議員)が、「医療は政策で誘導され、決定される。そのため、政策提言をたくさん医療の側からも出してほしい。無過失責任制度が実現できれば素晴らしいが、国の逼迫した財政の中でどう財源を確保するかが重要。メリハリをつけて支出するために、対象疾患の絞り込みなどが必要となる。こうしたシンポジウムで、今後の医療の在り方や医師、医療従事者が輝ける医療を考えていきたい」と閉会の挨拶を述べ、シンポジウムは終了した。医療法学に関係するセミナー、シンポジウム等はこちら。11月10日・11日 現場からの医療改革推進協議会12月2日 医療事故調シンポジウム~真相究明と責任追及(懲罰、刑事罰)は両立するのか~〔主催:一般社団 全国医師連盟〕

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