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AZ製ワクチン、2回目の遅延接種は3回接種と同等の高抗体価/Lancet

 新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)の2回接種は、1回目との接種間隔が44~45週と長い遅延接種のほうが、8~12週や15~25週の短い場合に比べ、接種後28日のIgG抗体価が高いことが示された。また、同ワクチン3回接種では、遅延2回接種後と同レベルの高い抗体価が得られること、およびT細胞反応を促進することが認められた。英国・オックスフォード大学のAmy Flaxman氏らが、進行中の2つのChAdOx1 nCoV-19無作為化試験について行った下位試験の結果で、Lancet誌オンライン版2021年9月1日号で発表した。COVID-19ワクチンをめぐっては、供給不足から1回目と2回目の接種間隔が長くなることに対して、一部の国から免疫低下の懸念が示されている。研究グループは、ChAdOx1 nCoV-19の単回投与後の免疫原性の持続性、2回目接種までの期間が延長した場合(44~45週)の免疫、2回目投与から28~38週後にブースター接種を行った3回接種の反応を評価した。18~55歳に、1~2回目接種間隔、3回目接種の反応原性・免疫原性を調査 下位試験は、英国で行われている新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19の第I/II相単盲検無作為化対照試験(COV001)の被験者で、同ワクチン(1回当たり5×1010ウイルス粒子量)の1~2回接種を受けた18~55歳のボランティアを対象とした。2回目遅延接種(初回接種の44~45週後)、または3回目接種(2回接種の28~38週後)を受けた被験者について、反応原性と免疫原性を調べた。 対照として、同I/II相試験(COV001)またはII/III相試験(COV002)で、ChAdOx1 nCoV-19の1~2回接種(1回当たり5×1010ウイルス粒子量)を受けた被験者のデータを比較した。接種後28日抗体価、接種間隔8~12週923EU、44~45週3,738EU 2021年3月11日~21日に、90例が同ワクチン3回目ブースター接種の下位試験に登録された。うち80例について反応原性を、75例について抗体価を、15例についてT細胞反応を調べた。 また、同ワクチン2回接種者321例のうち、1回目接種との間隔8~12週が83%、15~25週が7%、44~45週が9%で、全員について反応原性を調べた。免疫原性については261例について調べ、2回目接種までの間隔の内訳は、8~12週が44%、15~25週が44%、44~45週が11%だった。 ワクチン単回接種の480例については、接種後44~45週までの免疫原性を調べた。1回接種後の約320日に測定した抗体価は、ベースラインに比べ高いレベルを維持していた(ELISA単位(EUs)によるGMTは66.00 EUs[95%信頼区間[CI]:47.83~91.08]vs.1.75 EUs[1.60~1.93])。 1回接種後44~45週で2回目接種を受けたのは32例で、うち30例が免疫原性と反応原性の解析に包含された。2回目接種28日後の抗体価は、1~2回の接種間隔が長い群が、短い群に比べ高かった(総IgG抗体価中央値:接種間隔8~12週が923 EUs[IQR:525~1,764]、15~25週が1,860 EUs[917~4,934]、44~45週が3,738 EUs[1,824~6,625])。 3回接種群について(評価対象はサンプル入手できた73例[81%])は、接種完了28日後の抗体価(総IgG中央値)は3,746 EUs(IQR:2,047~6,420)と、2回接種群の同1,792 EUs(899~4,634)に比べ有意に高値だった(Wilcoxon符号順位検定のp=0.0043)。またT細胞反応についても、3回接種直前から直後にかけて、反応性中央値は200 SFU/100万PBMC(IQR:127~389)から399 SFU/100万PBMC(314~662)に増加した(Wilcoxon符号順位検定のp=0.012)。 反応原性は、遅延2回接種群と3回接種群で、いずれも初回接種後に比べ低かった。

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Novavax社コロナワクチンの供給契約、追加接種への使用も視野に/厚労省

 厚生労働省は9月7日、米国・Novavax社から技術移管を受け、武田薬品工業が国内の生産および流通を行う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関し、日本における薬事承認などを前提に、早ければ2022年初頭から、おおむね1年間で1億5,000万回分の供給を受けることについて、武田薬品工業と契約を締結したと発表した。 武田薬品工業は、Novavax社との提携の一環として、国内自社工場においてCOVID-19ワクチン候補「TAK-019」(海外における開発コード:NVX-CoV2373)の生産能力の整備を進めており、22年初頭の供給開始を目指している。同社は国内臨床試験を実施し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への製造販売承認申請を行い、厚労省の承認取得後、国内供給を開始する予定。 「TAK-019」は、Novavax社の遺伝子組換えたんぱく質ナノ粒子技術により開発されたワクチンであり、これはこれまでにもB型肝炎ワクチンなどで用いられている従来型の種類。 武田薬品工業およびNovavax社では、追加接種への使用も視野にワクチンの開発を行っており、変異株への対応も含まれている。今回の契約締結により、開発が成功すれば当該ワクチンの供給を受けることも可能となる。

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第76回 イスラエルから2報:COVID-19患者の嗅覚回復後ににおいの異常が増加/3回目接種有効

新型コロナウイルス感染(COVID-19)の始まりから嗅覚喪失や味覚喪失があったイスラエルの1,468人を追跡したところ嗅覚はおよそ回復していましたが、これまでとにおいが違う・不快・薬品のようだという愁訴に代表される嗅覚錯誤(parosmia)は逆に増えており、始まりには約10%にしか認められなかったのに約半年(中央値200日)後にはおよそ半数(47%)に認められるようになっていました1,2)。周りの誰もそうし得ないのに焦げたにおいがする(Sometimes I can smell burning but no one else around me can)などの嗅覚の幻覚(phantosmia:幻嗅)も増えており、始まりには嗅覚錯誤と同様に約10%にしか認められなかったのが約半年後には4人に1人(25%)が呈していました。また、半年後に嗅覚はおおむね回復していたとはいえ女性の6割と男性の約半数(48%)の嗅覚水準はCOVID-19前の80%未満にとどまっていました。味覚はたいてい嗅覚より早く回復し、嗅覚が回復して味覚喪失は続いているということはほとんどありませんでした。先立つ幾つかの試験で嗅覚喪失を呈するCOVID-19は軽症で済むらしいと示唆されています。しかし今回の結果によると嗅覚喪失は楽観視できるものではなさそうであり、長引く嗅覚不調は症状が多いことと関連しました。嗅覚喪失はどうやらCOVID-19後遺症の主な目印のようです。少なく見積もっても世界の1,500万人ほどがCOVID-19後の長引く嗅覚不調を被っており、嗅覚錯誤は数百万人にも達しそうです。嗅覚錯誤はどうやら主なCOVID-19後遺症の1つであり、その研究や新たな治療法の開発が必要です。においの異常は身体や精神、はては食生活にも影響するものであり、COVID-19が肉体や精神に及ぼす二次的影響の手当てを世界のどの地域も準備する必要があるでしょう2)。3回目接種がイスラエルで効果ありイスラエル全土でのCOVID-19ワクチン3回目接種が成果を上げているようです3)。同国の保健省(Israel Ministry of Health)のデータを調べたところ、60歳以上高齢者へのPfizerのCOVID-19ワクチンBNT162b2の3回目接種から2週間以上のSARS-CoV-2感染リスクが11分の1以下に下がりました4)。重病リスクも10分の1以下になりました。免疫の低下とデルタ変異株のせいで6ヵ月超前に接種したワクチンの効果が半減し、3回目接種で感染リスクが今回の解析とほぼ同じく10分の1に低下したと仮定するなら、3回目を接種した人の感染の確率は非接種の人の僅か5%です4)。その計算に基づくと今回の解析での3回目接種の予防効果は2回目接種後すぐに匹敵する95%ほどに回復していたようです。先月8月29日にイスラエルは3回目接種の対象を2回目接種から5ヵ月が過ぎた全員に拡大する方針を示しています3,5)。3回目接種の予防効果がどれぐらい続くかは不明であり、これから調べていく必要があります3)。参考1)Loss of smell may be followed by smell distortions / Reuters2)Increasing incidence of parosmia and phantosmia in patients recovering from COVID-19 smell loss. medRxiv. August 31, 20213)Israel’s COVID-19 boosters are preventing infections, new studies suggest / Science4)BNT162b2 vaccine booster dose protection: A nationwide study from Israel / gov.il(August 31, 2021)5)The Vaccination Policy and the New Green Pass that will Take Effect Soon / Israel Ministry of Health

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妊婦のケアを厚く追記した改訂COVID-19診療の手引き/厚生労働省

 8月31日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3版」を公開した。 今回の改訂では、主に以下の5点が追記・修正された。【2 臨床像の「5.小児例の特徴」の重症度、家族内感染率などについて一部追記】 最新(2021年8月時点)の陽性患児の特徴などが追加された。【4 重症度分類とマネジメントの「5.妊産婦の管理」の項を追加】 追加項目では、自宅療養中の妊婦の訪問時の確認事項、妊婦への指導事項のほか、妊婦搬送の判断の注意点、産科的管理以外のバイタルの留意事項、COVID-19患者の妊婦から産まれた新生児への検査が追加された。【同「自宅療養者に対して行う診療プロトコール」「経口ステロイド薬投与における留意点」などについて追記】 自宅療養・宿泊療養を行っている患者で酸素投与の適応となる場合の経口ステロイド薬投与における留意点」として、ステロイド投与を行う際の病状評価および治療適応の判断では、原則として自宅に赴いた往診医や宿泊施設内における担当医師などによる対面診療のもと、処方することを推奨(処方例:デキサメタゾン 6mg 分1 10日間または症状軽快まで)している。また、緊急時対応のために事前処方や内服の目安(例:咳嗽などの呼吸器症状があり、SpO2 93%以下)などが記されている。その際、電話、オンラインなどで医師が指示したり、フォローアップすることが望ましいと詳しい項目が記載されている。【5 薬物療法の各種薬剤の項目(レムデシビル、バリシチニブなど)に一部追記】 レムデシビルの保険適用(2021年8月4日)や「腎機能障害のある患者への投与」が追加され、重度の腎機能障害がある患者には投与は推奨されないが、治療の有益性が上回ると判断される場合のみに投与とされた。また、「バリシチニブ」について、入院患者1,525人を対象とした二重盲検試験(COV-BARRIER)の結果、主要評価項目の人工呼吸管理/死亡に至った割合に差は認められなかったが、治療開始28日以内の死亡はバリシチニブ群で有意に低かった試験結果が追加された。【6の院内感染対策の「表6-1」「1.個人防護具」「5.患者寝具類の洗濯」「8.職員の健康管理」などについて一部追記】 「表6-1 感染防止策」の確定例の感染防止策を実施する期間が大きく改訂され、発症者と人工呼吸器など要した患者に場合分けされ記載された。 「1.個人防護具」では、エアロゾルが発生しやすい状況として、歯科口腔処置、非侵襲的換気、ネーザルハイフロー、生理食塩水を用いた喀痰誘発、下気道検体採取、吸引を伴う上部消化管内視鏡などが追加された。 「5.患者寝具類の洗濯」では、患者が使用したリネン類の洗濯について、具体的かつ詳細な洗濯法が追加された。 「8.職員の健康管理」では、参考として「医療従事者が濃厚接触者となった場合の外出自粛の考え方」が新たに追加された。 なお、本手引きは5月以降、毎月追加改訂がなされているので、下記のリンクなどより確認をいただきたい。

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小児マラリア、ワクチン+化学予防で入院・死亡を大幅抑制/NEJM

 合併症のない臨床的に軽症の小児マラリアの予防治療において、季節性のRTS,S/AS01Eワクチン接種は化学予防に対し非劣性であり、RTS,S/AS01Eワクチンと化学予防の併用はワクチン単独および化学予防単独と比較して、軽症マラリア、重症マラリアによる入院、マラリアによる死亡を大幅に抑制することが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のDaniel Chandramohan氏らが西アフリカで行った臨床試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月25日号で報告された。ブルキナファソとマリの無作為化対照比較試験 研究グループは、西アフリカのブルキナファソとマリの小児を対象に、RTS,S/AS01Eを用いた季節性ワクチン接種の季節性化学予防に対する非劣性と、RTS,S/AS01Eワクチンと化学予防の併用は、このうち一方による単独療法と比較して優越性を有するかを検証する目的で、二重盲検無作為化対照比較試験を実施した(英国・Joint Global Health Trialsと米国・PATH Malaria Vaccine Initiativeの助成を受けた)。 2017年4月1日の時点で、生後5~17ヵ月の小児がいる試験地域内の全世帯が対象となった。6,861例の小児が登録され、このうち2,287例がsulfadoxine/pyrimethamine+amodiaquine(年4回投与)とRTS,S/AS01Eワクチンのプラセボの接種を受ける群(化学予防単独群)、2,288例がRTS,S/AS01Eワクチン接種と化学予防薬のプラセボの投与を受ける群(ワクチン単独群)、2,286例が化学予防+RTS,S/AS01Eワクチン接種を受ける群(併用群)に無作為に割り付けられた。RTS,S/AS01Eワクチンは、5回(2017年4月、5月、6月、2018年6月、2019年6月)接種された。 5,920例(化学予防単独群1,965例、ワクチン単独群1,988例、併用群1,967例)が、割り付けられた介入の初回投与を受け、3年間のフォローアップが行われた。2020年3月31日の時点で、それぞれ1,716例(87.3%)、1,734例(87.2%)、1,740例(88.5%)がフォローアップを終了した。接種後の熱性痙攣は回復、髄膜炎の発現はなかった 合併症のない臨床的マラリア(体温37.5℃以上または直近48時間以内の発熱の既往、かつ熱帯熱マラリア原虫[Plasmodium falciparum]による原虫血症[≧5,000/mm3])は、1,000人年当たり化学予防単独群で305イベント、ワクチン単独群で278イベント、併用群で113イベント認められた。 ワクチン単独群の、化学予防単独群との比較における予防効果のハザード比は0.92(95%信頼区間[CI]:0.84~1.01)であり、事前に規定された非劣性マージン(1.20)を満たしたため、3年間を通じたワクチン接種の化学予防に対する非劣性が確認された。 一方、併用群では、化学予防単独群との比較における臨床的なマラリアの予防効果は62.8%(95%CI:58.4~66.8)であり、世界保健機関(WHO)の定義による重症マラリアに伴う入院の予防効果は70.5%(41.9~85.0)、マラリアによる死亡の予防効果は72.9%(2.9~92.4)であった。 また、併用群では、ワクチン単独群との比較における臨床的なマラリアの予防効果は59.6%(95%CI:54.7~64.0)、WHO定義の重症マラリアによる入院の予防効果は70.6%(42.3~85.0)、マラリアによる死亡の予防効果は75.3%(12.5~93.0)だった。 ワクチン接種後に熱性痙攣が5例(ワクチン単独群3例、併用群2例、初回接種[プライミング]後3例、追加接種[ブースター]後2例)で発現したが、いずれも回復し、後遺症は認められなかった。8例(化学予防単独群4例、ワクチン単独群3例、併用群1例)で臨床的に髄膜炎が疑われたが、いずれも確定されなかった。また、RTS,S/AS01Eワクチン接種者で、入院や死亡が男児よりも女児で多いとの証拠は得られなかった。 著者は、「アフリカの季節性マラリアがみられる広範な地域では、マラリアのコントロールが現在も不十分であるため、季節性の化学予防と季節性のRTS,S/AS01Eワクチン接種の併用は有望な予防法となる。サヘル地域やサブサヘル地域のマラリアの負担が大きい地方では、今後、これらの併用の最適な方法を検討する必要があるだろう」としている。

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第69回 最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省

<先週の動き>1.最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省2.COVID-19受け入れ病床増加に向け、新たな協力要請/東京都3.ワクチンが行き渡る11月に向け、規制緩和策を提言/内閣府4.税負担が重い医療機関への軽減策を国に要望/日医5.社会保障給付費、123兆円と過去最高に/厚労省6.宿直頻度が週1回を超えている病院は新規許可得られず/日医1.最新版手引き(第5.3版)に妊産婦の管理追加/厚労省厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5.3版」を新たに発出した。これまでの知見に加えて、「妊産婦の管理」の項を追加し、無症状・軽症で自宅療養・宿泊療養中の妊婦の診療・看護する医療者は、「呼吸状態、心拍数や呼吸数とその変化などの急速な症状の進行を疑う症状」「産科的異常を示唆する症状」の確認が必要とされた。また、自宅療養者に対して行う診療プロトコール、経口ステロイド薬投与における留意点なども追加されている。<主な改訂部分>20-21ページ:「5.小児例の特徴」の重症度、家族内感染率等について一部追記42ページ:「5.妊産婦の管理」の項を追加44ページ:自宅療養者に対して行う診療プロトコール、経口ステロイド薬投与における留意点等について追記48-59ページ:各種薬剤の項目(レムデシビル、バリシチニブ等)に一部追記60-67ページ:「表6-1」「1.個人防護具」「5.患者寝具類の洗濯」「8.職員の健康管理」等について一部追記(参考)コロナ診療の手引きに「妊産婦の管理」の項を追加 厚労省が第5.3版を事務連絡(CBnewsマネジメント)2.COVID-19受け入れ病床増加に向け、新たな協力要請/東京都東京都は2日に開かれた東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議において、都内の医療機関に対するCOVID-19患者の受け入れ病床確保要請の結果、1日の時点で150床増の6,117床となったことを報告した。このうち重症者向け病床は465床で、73床増加している。今回、改正感染症法に基づいて東京都と厚労省が共同してさらなる協力要請が行われたが、目標の7,000床に向けて、要請を受けた医療機関側の人員不足など厳しい現状が浮かんだ。重症患者のさらなる増加に備えた重症病床の確保や、回復期支援病床の増床により、転院支援などを推進することで都内病床の活用促進などを求めている。3日に開催された経済諮問会議では、民間議員から、臨時の医療施設の設置や宿泊療養施設における医療提供体制の強化などがただちに取り組むべき課題とされたほか、約70万人の潜在看護師の活用など、対応への参画を促すことも提案された。(参考)感染症法第16条の2に基づく協力要請(東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議)東京の確保病床6117床に 国と都が初要請、目安の7000床には届かず(東京新聞)3.ワクチンが行き渡る11月に向け、規制緩和策を提言/内閣府内閣府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が3日に開催され、11月を目途にワクチンが行き渡った後について、「ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?」と題した提言が尾身 茂会長から示された。これによると、ワクチンの効果と限界や、諸外国の知見を踏まえ、国内ですべての希望者がワクチン接種を終えたとしても、集団免疫の獲得は困難という見解だ。努力によって到達し得るワクチン接種率が60代以上は85%、40~50代は70%、20~30代は60%になったとしても、引き続き、人々の生活や社会経済活動の制限が一定程度は必要であるとし、“ワクチン・検査パッケージ”として、接種証明書やPCR検査・抗原定量検査の陰性証明書を活用し、経済社会活動の制限を緩和する仕組みを提案した。さらに今後の感染状況も含め、議論していくことを求めた。また、同日に開かれた経済財政諮問会議でも、民間議員からは感染拡大・重症化の防止と経済社会活動を両立する「新しい国民生活の姿」の実現に向けて、ロードマップを早急にとりまとめるべきだと提言があった。(参考)ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?(新型コロナウイルス感染症対策分科会)ワクチン・検査パッケージを提言 分科会、旅行や入院面会で活用(東京新聞)ワクチン・検査活用で制限緩和=旅行、大規模イベント容認―分科会提言・新型コロナ(時事ドットコム)4.税負担が重い医療機関への軽減策を国に要望/日医日本医師会は、1日に18項目からなる「2022年度医療に関する税制要望項目」を発表し、本要望を8月25日に厚労省に提出したことを報告した。消費税負担の大きな医療機関は、「軽減税率による課税取引に改める」ことを含めた見直しを、診療所など小規模な医療機関はこれまで通り非課税として、診療報酬での補填の継続を求めた。このほか、医師少数区域等に所在する医療機関の固定資産税・不動産取得税の税制措置の創設なども要望に入れられた。(参考)令和4年度医療に関する税制要望について(日医online)日本医師会の税制改正要望 消費税負担の大きな医療機関「軽減税率による課税取引」に見直し検討を(ミクスonline)5.社会保障給付費、123兆円と過去最高に/厚労省厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は3日に2019年度の「社会保障費用統計」を公表した。これによると、2019年度の社会保障給付費総額は123兆9,241億円で、対前年度増加額は2兆5,254億円と、伸び率は2.1%増となった。1人当たりの社会保障給付費は98万2,200円となる。社会保障給付費を部門別に見ると、「医療」は40兆7,226億円(32.9%)、「年金」は55兆4,520億円(44.7%)、「福祉その他」は27兆7,494億円で同22.4%となった。高齢化の進行で、右肩上がりの状況が続いており、今後負担の分担をめぐって議論になると思われる。(参考)令和元(2019)年度「社会保障費用統計」の概況取りまとめを公表します~社会保障給付費、過去最高を更新~(国立社会保障・人口問題研究所)年金 医療 介護などの社会保障給付費 123兆円余りで過去最高(NHK)6.宿直頻度が週1回を超えている病院は新規許可得られず/日医日本医師会は1日に、日本医師会が実施した「医師における宿直許可の取組に関する調査」の結果を報告した。医師の働き方改革で2024年4月より医師の時間外労働の上限規制が適用されるところ見据え、2019年7月以降に医師の宿直許可について申請・相談を行った医療機関の事例を収集した調査が行われた。2021年4〜5月にかけて、全国8,221病院と6,418有床診療所を対象とした本結果によると、約6割弱の医療機関が労働基準監督署の宿直許可を得たと回答した。また、許可を得られたあるいは許可を得らえる見込みと回答した医療機関では医師一人当たりの宿直頻度が「週1回以下」の医療機関が93.3%だった。一方、不許可となった医療機関では、医師一人当たりの宿直頻度が週1回を超えているなど、宿直許可基準が厳しく適用されているとの見解を示した。日本医師会では、産婦人科領域において、全国の分娩件数の約半数が大学病院などから宿日直医師の派遣を受けて産科診療所が取り扱っているため、大学病院等からの医師の派遣が制限されてしまえば、産科診療所での分娩が成り立たなくなるとして、危機感を示した。(参考)医師における宿直許可の取組に関する調査結果について(日医online)

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COVID-19ワクチン接種率向上にリマインダーが有効

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進むにつれ、ワクチンの効果や安全性に疑問を持ち接種を避けるいわゆる「ワクチン忌避者」の存在が各国で問題となっている。忌避者を接種につなげるために効果的なコミュニケーション戦略についての研究結果が、Nature誌オンライン版2021年8月2日号に掲載された。 UCLA アンダーソン・スクール・オブ・マネジメントで行動経済学を専門とするHengchen Dai氏らによる本研究では、メールによるリマインダーとその内容がワクチン接種率向上にどの程度寄与するのかを調査した。 研究者らは、2021年1月29日からUCLAの医療システムから抽出したワクチン接種対象者に対象に、接種予約の案内メール送付から1日後(n=9万3,354例)および8日後(n=6万7,092例)にリマインダーを配信した。解析は5月25日に終了した。主要評価項目はリマインダー受信後6日以内の初回接種の予約、副次評価項目は受信後4週間以内の初回接種だった。 登録者は、リマインダーを受け取る群(受信群)と受け取らない群(不受信群)に、4:1の比率で無作為に割り付けられた。受信群にはリマインダーの内容によって行動が変わるかを調査するために、さらに2つの要素を追加した。1つめは「心理的所有感を誘発するメッセージ(UCLA Health:(参加者の名前)さん、COVID-19ワクチンがUCLA Healthで入手できるようになりました。uclahealth.org/scheduleで予防接種の予約をして、今すぐ接種を受けてください)」、もう1つは「ワクチンの有効性に関する2分間の動画メッセージ」で2要素の組み合わせによって4群に無作為に割り付けられた(基本リマインダーのみ:1万8,629、所有感メッセージ:1万8,592、有効性メッセージ:1万8,757、所有感+有効性メッセージ:1万8,627)。1回目のリマインダーから7日以内に予約・接種した人等を除いた6万7,092例を対象に2回目のリマインダーを送付した。全群において年齢、性別、人種のバランスがとれていることを確認した。 主な結果は以下のとおり。・1回目のリマインダーによって、受信群の不受信群と比較した予約率は6.07%、接種率は3.57%上昇した。2回目のリマインダーによって、各1.65、1.06%上昇した。・1回目のリマインダーでは予約・接種共に所有感メッセージが有効だった。一方で、有効性に関するメッセージには効果が見られなかった。・受信群と不受信群の初回接種率の差は8週間後でも続いていた。 研究者らは「全タイプのリマインダーが接種率を上昇させることがわかり、特に心理的所有感を誘発するメッセージが有効なことがわかった。2回目のリマインダーの効果は1回目に比べて落ちたが、対象にワクチン接種に懐疑的な人の割合が増えているだろうことを考慮すると、一定の効果を発揮した。また、リマインダーを受け取ることの効果が長期に持続したという事実は、この間に対象者が多くの情報に触れていたであろうことを考慮すると驚きに値する」とし、「行動科学的な洞察を使うことで、ワクチン接種を低コストで増加、スピードアップすることができる」としている。

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新型コロナワクチン、6~7月の有効率は95%/感染研

 国立感染症研究所は8月31日、ワクチンを接種して14日以上経過した者は未接種者と比較し感染のオッズが有意に低かったことから、さまざまな変異株が流行する状況においても国内承認ワクチンは有効であることを示唆した。また、ワクチンの接種回数、(短期的には)接種からの期間の長さによって有効率が高くなる傾向も明らかにした。ワクチン有効率を症例対照研究での調整オッズ比から推定 現在、ファイザー社およびモデルナ社のmRNAワクチンの有効性は90%以上、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンも有効性は70%程度と報告されているが、変異株出現により有効性の低下が指摘されている。そこで、国立感染症研究所は、5つの医療機関の発熱外来など新型コロナウイルス検査を受けた患者を対象として、症例対照研究(test-negative design)を行った。 今回の報告は2021年6月9日~7月31日の暫定結果で、対象者はPCR検査陽性者が症例群、陰性者が対照群に分類された。検査前には基本属性、新型コロナワクチン接種歴などを含むアンケートが実施された。また、発症から14日以内、いずれか1症状のある者(37.5℃以上の発熱、全身倦怠感、寒気、関節痛、頭痛、鼻汁、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難感、嘔気・下痢・腹痛、嗅覚味覚障害)に限定して解析が行われた。 ワクチン接種歴については、「未接種」「1回接種のみ」「2回接種」の3つに区分。さらに、接種後の期間を考慮するため「未接種」「1回接種後13日目まで」「1回接種後14日から2回接種後13日目まで(partially vaccinated)」「2回接種後14日以降(fully vaccinated)」の4つのカテゴリーに区分した。ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比と95%信頼区間(CI)を算出。また、ワクチン有効率は多変量解析から得られた調整オッズ比を使用し、(1-オッズ比)×100%で推定した。多変量解析における調整変数としては、先行研究を参照し、年齢、性別、基礎疾患の有無、医療機関、カレンダー週、濃厚接触歴の有無、過去1ヵ月の新型コロナウイルス検査の有無をモデルに組み込んだ。ワクチン有効率、ワクチン2回接種14日以降では95%・都内5医療機関の発熱外来などを受診した成人1,525 例が調査に同意。そのうち除外基準に該当する者を除く1,130例(うち陽性者416例[36.8%])を解析した。・年齢中央値は33歳(範囲:20~83)、男性は546例(48.3%)、女性は584例(51.7%)で、267例(23.6%)が何らかの基礎疾患を有していた。・ワクチン接種歴について、未接種者は914例(83.4%)、1回接種者は141例(12.9%)、2回接種者は41例(3.7%)だった。・調整オッズ比は1回接種者では0.52(95%CI:0.34~0.79)、2回接種者では0.09(同:0.03~0.30)だった。・接種からの期間別の調整オッズ比は、「1回接種13日目まで」が0.83(同:0.51~1.37)、「1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)」が0.24(同:0.12~0.47) 「2回接種14日以降(fully vaccinated)」では、0.05(同:0.00~0.28)だった。・今回の解析ではワクチン接種歴不明例・接種日不明例を対象から除外したが、未接種として解析に含めた場合も調整オッズ比は同様だった。・ワクチン有効率は「1回接種13日目まで」は17% (同:-37~49%)、「1回接種14日以降2回接種13日まで(partially vaccinated)」では76%(同:53~88%)、「2回接種(接種からの期間を問わない)」では91%(同:70~97%)、「2回接種14日以降(fully vaccinated)」では95%(同:72~100%)だった。 なお、研究者らは留意すべき点として、「ワクチンの有効性は、流行状況、各変異株の割合、感染対策の緩和、ワクチン接種からの期間(免疫減衰の可能性)などの要素が影響している可能性があり、総合的に、経時的に判断すべき。一方で、本報告では1回接種13日目までは有効性が認められず、これは先行研究と一致する結果であった」とし、「本調査はあくまでも迅速な情報提供を目的としている暫定的な解析であり、今後もより詳細な解析を適宜行い、変異株や感染対策の緩和の影響、免疫減衰の可能性などをみていくために、経時的に評価していくことが重要。調査期間においては、アルファ株からデルタ株の置き換わり期であり、デルタ株が大部分を占めるようになった際の有効性についても今後検討していく必要がある」としている。

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シノバック製ワクチン、ガンマ株蔓延下のブラジルで有効性検証/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のγ変異株(ブラジル型)が広くまん延している状況下で、70歳以上の集団における不活化全粒子ワクチンCoronaVac(中国Sinovac Biotech製)の2回接種者は非接種者と比較した場合、2回目接種から14日以降における症候性の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症に対するワクチン有効率は47%であり、COVID-19関連の入院に対する有効率は56%、死亡に対する有効率は61%との研究結果が、スペイン・ISGlobalのOtavio T. Ranzani氏らによって報告された。研究の詳細は、BMJ誌2021年8月20日号に掲載された。サンパウロ州で、診断陰性例コントロール試験 研究グループは、γ変異株まん延下のブラジル・サンパウロ州(地方自治体数645、人口4,600万人、70歳以上人口323万人)の高齢者を対象に、CoronaVacワクチン接種の有効性を評価する目的で、診断陰性例コントロール試験(negative case-control study)を行った(外部からの研究助成は受けていない)。 対象は、サンパウロ州の居住者で、COVID-19の症状がみられる70歳以上の集団であった。2021年1月17日~4月29日の期間に、4万4,055人が逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)によるSARS-CoV-2の検査を受け、2万6,433人が陽性(症候性COVID-19)、1万7,622人はCOVID-19の症状がみられるものの陰性(コントロール)であった。 年齢、性別、自己申告の人種、居住する地方自治体、COVID-19様疾患の既往、RT-PCR検査日(±3日)に関して、症例(陽性者)1人に対しコントロール(陰性者)を最大で5人までマッチさせた(症例1万3,283人、コントロール4万2,236人)。 マッチング集団のCoronaVacワクチン接種者と非接種者で、症候性COVID-19(RT-PCR検査で確定)と、これに伴う入院および死亡の比較が行われた。年齢層が高いほど有効率が低下 CoronaVacワクチン非接種者との比較における、2回接種者の症候性COVID-19に対する調整後のワクチン有効率(発症予防効果)は、2回目の接種から0~13日が24.7%(95%信頼区間[CI]:14.7~33.4、p<0.001)、14日以降は46.8%(38.7~53.8、p<0.001)であった。 また、COVID-19関連入院に対するワクチン有効率は、2回目の接種から0~13日が39.1%(95%CI:28.0~48.5、p<0.001)、14日以降は55.5%(46.5~62.9、p<0.001)であり、死亡に対するワクチン有効率はそれぞれ48.9%(34.4~60.1、p<0.001)および61.2%(48.9~70.5、p<0.001)であった。 2回目接種から14日以降のワクチン有効率は、最も若い年齢層(70~74歳)で優れており、年齢層が高くなるに従って低下した。すなわち、症候性COVID-19のワクチン有効率は70~74歳が59.0%(43.7~70.2)、75~79歳が56.2%(43.0~66.3)、80歳以上は32.7%(17.0~45.5)であり、入院のワクチン有効率はそれぞれ77.6%(62.5~86.7)、66.6%(51.8~76.9)、38.9%(21.4~52.5)、死亡のワクチン有効率は83.9%(59.2~93.7)、78.0%(58.8~88.3)、44.0%(20.3~60.6)だった。 著者は、「COVID-19の流行に対応した集団予防接種キャンペーンの一環としてCoronaVacを使用する場合は、ワクチンの供給を優先し、2回接種完了者数を最大限に増やす必要がある」としている。

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第73回  HPVワクチン普及と勧奨早期再開は地方医師会の腕の見せ所?

一歩前進なのか、それともまだ停滞なのか? 定期接種のワクチンに組み入れられながら、2013年6月以降、実に8年以上も「積極的な接種勧奨の差し控え」が続いているヒトパピロ―マウイルス(HPV)ワクチン。8月31日の閣議後の記者会見で田村 憲久厚労相は厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で積極的な接種勧奨の再開に向けて議論をする準備を進めていくとの方針を明らかにした。すでにこのワクチンの存在意義を揺るがす、とりわけ安全性面に関する新たなエビデンスが登場するとは考えにくい。その意味で個人的には積極的接種勧奨の再開はもう政治決断でも良いのではないかと思うが、中止の際は専門家の意見を聴取したうえでの判断だったことを考えれば、再度分科会に諮るというのは役所の手続き上外せないのだろう。これを受けた各紙の報道は以下のようなものだ。読売新聞だけは会見の日の早朝に関係各所からの取材で裏を取ったとみられる記事を出した翌日、田村厚労相が再開を表明した旨のごく一行程度の短信を発信している。「子宮頸がんワクチン接種 『積極勧奨』の再開、議論」(朝日新聞)「子宮頸がんワクチン『積極勧奨』検討 田村厚労相」(産経新聞)「子宮頸がんワクチンの積極勧奨検討 厚労相が正式表明」(日本経済新聞)「子宮頸がんワクチン、積極的な接種呼びかけ再開に議論準備」(毎日新聞)「子宮頸がんワクチンの『接種勧奨』再開を検討へ…近く厚労相表明」(読売新聞)各記事を読めばわかる通り、どこも淡々と記事化している。もし「副反応が…」と言いたければ、メディアの習性として必ずこの後に論評的な記事が掲載されるのだが、そういったものは今のところ1本もない。少なくとも上記の大手紙は積極的な接種勧奨の再開に向けてほぼ足並みが揃ったと言っていい。一方で私個人はここ最近の各地方ブロック紙、地方紙の報じ方も気になった。首都圏や関西圏を除けば、まだまだ地方紙の影響力は小さくないからだ。そこでこの再開報道が出る直前の1年間(2020年8月28日~2021年8月29日)に地方紙がどう報じてきたか、新聞記事データベースで「子宮頸がん AND ワクチン」のキーワードで検索してみた。対象となったのは地方紙44紙。検索の結果、出てきた記事は136件だった。もっとも地方紙の場合、自社のマンパワーでカバーできない記事は、共同通信や時事通信といった通信社の記事をそのまま掲載することも少なくない。そこでそうした配信記事をまずはカウントしてみた。まず通信社記事として最も多く掲載されていたのは、昨年10月に大阪大学の研究グループがHPVワクチンの接種勧奨差し控えによる子宮頸がん罹患者や死亡者の推計を発表したことに関する記事が16件。このほかは、世界保健機関(WHO)が昨年11月に子宮頸がんの撲滅に向け、HPVワクチン接種率を2030年までに15歳以下の女子の90%にまで高めることを盛り込んだ新たな目標を発表したとの記事が13件、昨年10月に厚労省が都道府県に対し、HPVワクチンの定期接種対象者に情報伝達するように通知したことを受けて接種者が増加しているとの現状を報じた記事が12件、9価のHPVワクチン発売の記事が10件、接種勧奨の中止によりHPVワクチンの定期接種の機会を逃した人を救済する独自のキャッチアップ制度を青森県平川市がスタートさせたという記事が5件など。このほかにも、採用した新聞社が5社未満の通信社記事もいくつかあり、136件の記事のうち約半数強は通信社による記事だった。各地方紙が独自に配信した残る約半数の記事をざっと眺めまわすと、主要な記事としてはおおむね2つのカテゴリーがあることが分かった。まず一つは前述の昨年10月の厚労省の通達を受けて、各都道府県の市区町村による接種対象者向けの情報発信の現状とそれに伴う接種者の増加を報じたもの、もう一つは各地の医師会や医師個人がHPVワクチン接種率向上に向けて行っている取組みや呼びかけを紹介したものだ。前者はある種、国の動きに応じた一時的なニュースともいえるが、後者は情報を発信する医師会や医師個人、それを報じる記者個人の努力に依存した結果とも言える。後者のような記事は、検索対象とした44紙で平均すると1年間に2~3紙当たり1記事程度に過ぎないが、接種勧奨中止の影響で国や地方自治体からの情報発信が限られる中、一般向けの情報としては発信当事者が思っている以上に実は受け手にとって重要な情報源となっている可能性は少なくない。国はこれまでHPVワクチンの積極的な接種勧奨再開に当たって「国民の理解を得ることが重要」との主張を繰り返してきたが、その「国民の理解」をどのような指標で測るのかは明確にしてこなかった。もっとも単純な政党支持率などと違って、医療のような医療従事者と医療受益者との情報の非対称性が著しい領域では、個別政策に対する国民の支持を定量的指標で測るというのは非常に困難ではある。その意味でもし「国民の理解」を間接的に定量化できる指標があるとするならば、それは「現情勢下でのHPVワクチンの接種率向上」ぐらいだろう。昨年10月の通達に基づく地方自治体からの接種対象者への情報発信は、前述のように記事化されるほど接種率向上に役に立ったと言える。ただ、その際に使われたリーフレットには、HPVワクチンに関する情報を詳細に紹介しながらも「現時点で国は積極的な接種勧奨をしていない」とのただし書きが付くなんとも分かりにくい物になっている。その意味では接種勧奨再開に動きそうな今だからこそ、その動きを確実化あるいは加速化させるために、首都圏のような大都市部よりも互いに顔が見えやすい地方の医師会や医師個人、地方メディア同士による連携したHPVワクチンに関する情報発信が重要な局面になっていると改めて思っている。

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mRNAワクチン、初回接種後2週間は要注意/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNAワクチンは、2回接種により症候性感染と重症化に対する高い有効性が認められることが示された。ただし、1回接種の場合、とくに高齢者では接種直後は有効性が低かった。カナダ・ICESのHannah Chung氏らが、診断陰性例コントロール試験の結果、明らかにしたもので、結果を踏まえて著者は、「mRNAワクチンの症候性感染に対する効果は、1回接種では中程度であることから、とくに初回接種後最初の2週間(高齢者ではさらに長い期間)は効果がないこと、マスク着用や物理的距離、社会的な集まりを避けるなどの推奨されている公衆衛生対策を継続して行うべきであることを、人々に伝える必要がある」と指摘している。BMJ誌2021年8月20日号掲載の報告。有症者約32万例でmRNAワクチンの有効性を評価 研究グループは、SARS-CoV-2の症候性感染および重症化に対するワクチンの有効性を検証する目的で、診断陰性例コントロール試験を実施した。対象は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状があり2020年12月14日~2021年4月19日にSARS-CoV-2検査を受けた16歳以上のオンタリオ州の住民32万4,033例であった。 主要評価項目は、RT-PCR法による症候性SARS-CoV-2感染(検査陽性)、ならびに症候性感染の重症化(入院または死亡)で、検査データはOntario Laboratories Information System、アウトカムはCase and Contact Management system、Canadian Institute for Health Information's Discharge Abstract DatabaseおよびOntario Registered Persons Database、ワクチン接種状況はオンタリオ州の一元化されたCOVID-19ワクチン情報システムであるCOVaxONを用いて特定した。なお、対象ワクチンは、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)およびmRNA-1273(Moderna製)とし、ChAdOx1(Oxford-AstraZeneca製)の接種者は除外した。 多変量ロジスティック回帰モデルを用い、検査陽性例と検査陰性例(ワクチン未接種者を参照群とする)でワクチン接種状況を比較した。高い効果が得られるのは初回接種後14日以降、2回目接種後7日以降 症状があり検査を受けた32万4,033例中、5万3,270例(16.4%)が検査陽性で、2万1,272例(6.6%)は少なくとも1回のワクチン接種を受けていた。検査陽性例のうち、2,479例(4.7%)が入院(2,035例)または死亡(444例)した。 1回目のワクチン接種後14日以降に確認された症候性感染に対するワクチンの有効性は60%(95%信頼区間[CI]:57~64)であり、14~20日後は48%(41~54)であったが、35~41日後には71%(63~78)に上昇した。一方、2回目のワクチン接種後7日以降に確認されたワクチンの有効性は91%(89~93)であった。 1回目のワクチン接種後14日以降に確認された入院または死亡に対するワクチンの有効性は70%(95%CI:60~77)であり、1回目接種14~20日後は62%(44~75)であったが、35日以降には91%(73~97)に上昇した。一方、2回目のワクチン接種後7日以降に確認された同ワクチンの有効性は98%(88~100)であった。 70歳以上の成人では、1回目接種後の期間が短い間はワクチンの有効性が低く、28日後以降で若年者の14日後以降に相当する有効性が得られた。また、2回接種後は、E484K変異(ガンマ株)に対して高い有効性を示すことが確認された。

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新型コロナ変異株「ミュー株」国内で2例確認/厚労省

 WHOが8月30日、感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される「注目すべき変異株(VOI)」に位置付けたことを発表した「ミュー株」について、厚生労働省は9月1日、これまでの検疫結果を改めて集計したところ、今年6月および7月に空港検疫で新型コロナウイルスの検査で陽性が確認された2例がミュー株と確認されたことを発表した。 WHOが8月31日に公表した週報によると、コロンビアで今年1月に初めて報告されたB.1.621系統の変異株が、8月30日にVOIと位置付けられ、ミュー株と命名された。これを受け、厚労省が国内の新型コロナウイルス感染症患者について国立感染症研究所の検査の結果を遡及的に調べたところ、2例がミュー株に該当したという。2例は空港検疫で確認され、▽6月26日にアラブ首長国連邦から成田空港に到着した40代女性▽7月5日に英国から羽田空港に到着した50代女性。いずれも無症状であった。

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モデルナ混入異物はステンレス片、接種後死亡は「相互関係なく偶発的」

 武田薬品工業は9月1日、同社が輸入および日本国内への供給を行う製造販売承認を取得している「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」について、ワクチン製造元であるモデルナ社との共同ステートメントを発表した。複数のワクチン接種会場から、モデルナワクチンの特定のロットでバイアル内に異物があるとの報告を受けて調査を進め、当該バイアルから得られた粒子状物質を詳細に分析した結果、ステンレススチールであると同定されたという。ワクチン接種後の死亡事例については、「現時点では、接種の因果関係があることは確認されておらず、相互関係なく偶発的に生じたもの」という認識を示した。 モデルナワクチンを巡っては、8月に複数の接種会場から未使用の状態において異物の混入があるとの報告を受け、8月26日付で3つの対象ロット番号「3004667(約57万回接種分)」「3004734(約52万回接種分)」「3004956(約54万回接種分)」について、使用を見合わせるよう通知。厚生労働省によると、8月31日現在で、大規模接種会場と職域接種会場合わせて、全国901会場に約162万回分が配布されていた。 モデルナ社およびワクチン委託生産拠点であるスペインのROVI社と共に調査を進めたところ、ワクチン製造ラインのモジュールに取り付けられた2つの金属部品の設置不具合による摩擦によって粒子状の物質が混入した可能性が高いことがわかったという。この粒子状物質は「316ステンレススチール」で、心臓の人工弁や関節置換、金属製の縫合糸やステープルなどに用いられる。 武田薬品工業によると、ワクチン薬液内にステンレススチールがごく少量存在したとしても、被接種者の健康や安全に対する過度のリスクや、ワクチンのベネフィット・リスク評価への悪影響はないとの見立てだ。また、注射針を通過できる大きさの粒子状金属が仮に筋肉内に注入されてしまった場合、局所的な反応を引き起こす可能性があるものの、注射部位以外での副反応を起こす可能性は低いと考えられるという。 今回の問題に関連して、ワクチン接種後の2件の死亡事例が報道などで取りざたされているが、共同ステートメントでは、「現時点では、これらの死亡事例とモデルナ社製ワクチン(ロット番号3004734)接種の因果関係があることは確認されていない。現在のところ相互の関係なく偶発的に生じたものと考えられる」との認識を示しつつ、因果関係の有無について正式な調査を実施する重要性についても言及している。

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新型コロナとインフルのワクチン接種間隔、現時点の考え方/日医

 今冬の季節性インフルエンザワクチンの供給予定量とそれに伴う予約の設定についての留意点、新型コロナウイルスワクチン接種との接種間隔の考え方について、日本医師会の釜萢 敏常任理事は9月1日の定例会見で情報提供を行った。昨シーズンと比較すると供給量減る見込み、予約の組み立てに注意を 今冬の季節性インフルエンザワクチンの供給予定量は、8月時点で約2,567万本から約2,792万本(1mLを1本に換算)の見込みであり、昨シーズンより減る見通しとなっている。同日開催された厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会)において示された1)。とくに接種開始の10月供給量が少なく、供給時期が12月2週目まで続くことから、例年と比較して後ろにずれる見込みという。 昨年は供給量3,342万本に対し使用量は3,274万本と製造効率等がとくに良好だったために供給量が多く、使用量も平成8年以降最大となっていた。しかし一昨年は供給量2,964万本に対し使用量は2,825万本となっており、昨年と比較すると少ないが、例年の使用量に相当する程度は供給される見込みという2)。 釜萢氏は、「11~12月には増えていく見込みとなっているが、接種開始の10月の供給量が少ない。“早く打ちたい”という方への情報提供が重要になる。各医療機関が自分のところに供給されるワクチンの見通しを把握したうえで、希望される方への予約を設定していく必要がある」と説明。とくに小児(13歳未満)の場合は2回接種が推奨されるため、それを踏まえた予約の組み立てをお願いしたいと呼びかけた。新型コロナワクチンは他のワクチンと前後2週間の接種間隔が必要 また、現在接種が進む新型コロナウイルスワクチンとの接種間隔についても留意が必要になる。9月1日時点で、わが国では新型コロナウイルスワクチンは他のワクチンと前後2週間の接種間隔をとることとされている3)。同氏は、「たとえばファイザー社のワクチンは1回目と2回目の間隔が3週間となっており、この間にインフルエンザワクチン接種をスケジュールすることは難しい」とした。 一方、米国疾病予防管理センター(CDC)では、以前は他のワクチンと前後2週間の接種間隔をとることが推奨されていたが、現在では変更され、新型コロナウイルスワクチンを他のワクチンの接種タイミングと関係なく接種することが可能とされている4)。釜萢氏は日本でも今後変更される可能性はあるが、現時点では前後2週間の接種間隔が必要なことに留意が必要とした。

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ファイザーワクチン後の重篤な有害事象リスク、感染後より低い/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の接種は、ほとんどの臨床的に重要な有害事象のリスク増大とは関連しておらず、ワクチン接種と心筋炎の過剰リスクとの関連は認められたが(10万人当たり1~5件)、これら心筋炎を含めた重篤有害事象リスクは、SARS-CoV-2感染後のほうが大幅な増大が認められた。イスラエル・Clalit Research InstituteのNoam Barda氏らが、イスラエルの半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析を行い報告した。NEJM誌オンライン版2021年8月25日号掲載の報告。イスラエル国民データを基に、臨床的に重要な有害事象のリスクを解析 研究グループは、イスラエルで最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータ(イスラエル国民の約52%が加入)を用い、2020年12月20日~2021年5月24日にBNT162b2ワクチン接種を受けた人(接種群)、ならびにワクチン接種者と人口統計学的および臨床的特徴をマッチングさせたワクチン未接種者(対照群)を対象として、BNT162b2ワクチンの安全性を評価した。 臨床的に重要な短期および中期の潜在的な有害事象(発熱、倦怠感、局所注射部位反応などの軽度の有害事象は含まない)について、Kaplan-Meier法を用いてワクチン接種後42日目の各有害事象のリスク比とリスク差を算出。また、SARS-CoV-2感染者と非感染者をマッチさせ、同様の解析を行った。心筋炎リスク、ワクチン接種vs.未接種群は約3倍、感染者vs.非感染者では約18倍 解析対象は、ワクチン接種群および対照群で各88万4,828例、SARS-CoV-2感染者群および非感染者群で各17万3,106例であった。 ワクチン接種は、心筋炎(リスク比[RR]:3.24[95%信頼区間[CI]:1.55~12.44]、リスク差:2.7件/10万人[95%CI:1.0~4.6])、リンパ節腫脹(2.43[2.05~2.78]、78.4件/10万人[64.1~89.3])、虫垂炎(1.40[1.02~2.01]、5.0件/10万人[0.3~9.9])、および帯状疱疹感染(1.43[1.20~1.73]、15.8件/10万人[8.2~24.2])のリスク上昇と強い関連が認められた。 一方で、SARS-CoV-2感染者は非感染者と比較し、心筋炎(RR:18.28[95%CI:3.95~25.12]、リスク差:11.0件/10万人[95%CI:5.6~15.8])のほか、急性腎障害(14.83[9.24~28.75]、125.4件/10万人[107.0~142.6])、肺塞栓症(12.14[6.89~29.20]、61.7件/10万人[48.5~75.4])、頭蓋内出血(6.89[1.90~19.16]、7.6件/10万人[2.7~12.6])、心膜炎(5.39[2.22~23.58]、10.9件/10万人[4.9~16.9])、心筋梗塞(4.47[2.47~9.95]、25.1件/10万人[16.2~33.9])、深部静脈血栓症(3.78[2.50~6.59]、43.0件/10万人[29.9~56.6])、不整脈(3.83[3.07~4.95]、166.1件/10万人[139.6~193.2])の大幅なリスク上昇が認められた。

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新しい病気の登場(解説:後藤信哉氏)

 人類は時代に応じて各種疾病と戦ってきた。ペストの時代があり、結核の時代があり、心血管病の時代があった。数の多い疾病に対して、発症メカニズムを解明し、予防、治療手段を開発してきた。新型コロナウイルスも人類が克服すべき疾病である。ワクチンは新型コロナウイルス感染に対する人類の反撃の第一歩である。 ヒトの細胞にウイルスの蛋白を作らせる新型コロナウイルスワクチンも歴史的な医学の進歩として記録されるだろう。しかし、革新的ワクチン特有の副反応も見つかってきた。ワクチンによる免疫血栓症(vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia:VITT)も新規に出現した問題である。実証的な英国医学では理論よりも現実を注視する。英国の規制当局は、ワクチン接種を担う医師たちにワクチン接種後の脳静脈洞血栓症の報告を依頼した。本研究では2021年4月1日から5月20日までに報告された99例の脳静脈血栓症のまとめである。70例はVITTとされた。新しい病気に対する新しいワクチンなので、どんな合併症がどれだけ起こるか、誰も知らない。新型コロナウイルス感染による死亡を減らせるのであれば、まずワクチンを使ってみよう! しかし、合併症があれば、公開してみんなで議論しよう! というのは英国人の良いところである。 新しい病気の新しいワクチンによる合併症の治療法は誰も知らない。VITTに類似した血栓症であるヘパリン惹起血小板減少・血栓症ではヘパリンは増悪因子となる。ヘパリン以外の抗凝固薬は効くかもしれないし、免疫グロブリンは有効かもしれない。よくわからないけれども、わかるところだけは公開しようとの英国の姿勢を反映した論文である。しかし、厄介な病気が増えたものだ。ペスト、結核、心血管病のように、予防、治療の基本が明確になるまでどのくらいかかるのだろうか?

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第73回 中外製薬ロナプリーブ記者説明会で気になった「確保量」「デリバリー」「高齢者優先」

抗体カクテルに過大な期待かける菅首相こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末は、渋谷のPARCO劇場に、宮藤 官九郎作・演出の「愛が世界を救います(ただし屁が出ます)」を観に行きました。劇場内はマスク着用で私語禁止というなかなかに厳しい環境でしたが、相変わらずの、くだらなくて笑い満載の芝居(クドカンによればロックオペラだそうです)を楽しんできました。もっとも、底に流れるテーマは、分断と多様性で、過激な笑いとともに提示されるクドカンのメッセージには考えさせられるものがありました。劇場の斜向かいは、「予約なしワクチン接種」で話題となった渋谷区立勤労福祉会館で接種初日だったのですが、観劇後は既に大混乱は収まっていました。それにしても、ワクチン接種を高齢者優先にしたことは最善だったのでしょうか。検証し直す必要もありそうです。さて、今回は菅 義偉首相が治療法の切り札として過大とも言える期待をかける抗体カクテル療法、中外製薬のロナプリーブについて考えてみたいと思います。ロナプリーブ投与可能場所がどんどん拡大菅首相は8月17日、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の対象県拡大を説明する記者会見で、抗体カクテル療法について「重症化リスクを7割も減らすことができる画期的な薬です。政府としては、十分な量を確保しており、今後、病院のみならず、療養するホテルなどでも投薬できるよう、自治体と協力を進めていく方針」と述べ、投与可能場所の拡大を大きくアピールしました。翌18日には、宿泊療養施設・入院待機施設での投与を認める事務連絡が発出されています。その1週間後、8月25日の記者会見でも菅首相は、「新たな中和抗体薬は、重症化を防止する高い効果があります。既に1,400の医療機関で1万人に投与しています。これまで入院患者のみを対象にしていましたが、多くの人に使いやすくなるよう、外来で使うことも可能とし、幅広く重症化を防いでいきます」と述べ、同日、今度は一定の条件を満たした医療機関において、外来診療による日帰りでの投与も認める事務連絡を発出しました。7月の承認段階では入院患者限定でしたが、投与可能な施設がどんどん広がっていったわけです。軽症や中等症の自宅療養の患者が激増する中、発症前〜中等症Iに有効とされるこの薬に過大な期待をかけざるを得ない、菅首相と政府の苦しい事情が透けて見えます。外来にまで拡大された日の翌日、8月26日に中外製薬がロナプリーブに関するメディア等向け説明会を電話会議形式で開きました。発症7日以内の軽症、中等症1で重症化リスク因子を持つ人対象抗体カクテル療法は、2種類の抗体を混ぜ合わせて投与することで、新型コロナウイルスの働きを抑える薬剤です。アメリカのトランプ前大統領の治療にも使われ(「第27回 トランプ大統領に抗体カクテル投与 その意味と懸念」参照)、去年11月に米食品医薬品局(FDA)が緊急使用を許可しました。ちなみにこの緊急使用許可は改定され、この8月から抗体カクテルは濃厚接触者等、コロナウイルスに曝露した一部の未発症の人にも使用できるようになっています。日本では、開発した米国のバイオテクノロジー企業、リジェネロン・ファーマシューティカルズ社と契約したロシュ社とライセンス契約を結んだ中外製薬が承認申請を行い、厚生労働省が7月19日に特例承認をしています。添付文書の効能・効果には、「臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと」とされています。また、「用法・用量に関連する注意」には「臨床試験において、症状発現から8日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない」と書かれています。つまり、発症から7日以内の軽症・中等症Iの患者で重症化リスク因子を持つ人が対象ということになります。なお、承認時の評価資料などによれば、これまでに報告されている有効性は、入院および重症化・死亡の抑制(70%以上)、 症状改善までの期間短縮(約4日)、ウイルス量の減少(高ウイルス群で抑制効果)などとなっています。濃厚接触者への適応拡大や皮下注射も検討中と中外製薬26日の中外製薬のメディア等向け説明会では、奥田 修代表取締役社長が出席し、「デルタ株がまん延し、治療薬の需要が世界的に高まっているが、日本政府からの要請に応じて、必要な供給量を確保したい」と述べ、政府が容認した外来診療での投与に対応するためにも必要な量を確保する考えを示しました。また、今後は米国で認められている濃厚接触者に対する予防的投与について適応拡大として申請する方向で国と協議していることや、点滴に限定して認められている投与方法について皮下注射でも使えるよう申請を検討する考えも示しました。さらに、同社は米アテア社が創製し、ロシュ社と共同開発した経口タイプのRNAポリメラーゼ阻害薬「AT-527」も軽症から中等症の患者を対象に国内で最終段階の治験を進めており、2022年に申請予定であることも明らかにしました。ロナプリーブの日本の確保量は本当に十分なのか?説明会に同席し、新型コロナ感染症の現状とロナプリーブについて説明した東邦大学医学部の舘田 一博教授は「ロナプリーブが承認され、その有効性が確認されてきている。臨床の先生方から、本当に多くの期待が寄せられてきている。外来投与ができるようになり、自宅などで経過を観察しなければならないような、まさに使ってほしい人たちに投与できるのは大きい」と述べ、説明会は全体として新型コロナウイルス感染症の今後の治療に期待を抱かせる内容でした。しかし、気になった点もいくつかありました。一つはロナプリーブの確保量です。2021年5月に中外製薬がロナプリーブの2021年分確保について日本政府と合意した際、「年内20万人分、当面7万人分」という報道がありました。その後、7月の承認の際や、菅首相の記者会見の際などに確保量についての質問が度々行われてきたのですが、明確な数字は公表されていません。この日も奥田社長は「具体的な数字は政府との契約上明かすことはできない。政府と連携しながら、必要な供給量をロシュ社から確保するため努力している」と述べるにとどまりました。なお、8月17日の記者会見で菅首相は確保量について質問を受けた際、具体的な数字は示さず、「政府としては十分な量を確保しています。これは私が指示して確保しています」と述べています。「私が」とわざわざ強調している点が気になります。投与場所を拡大し、軽症、中等症Iに広く使えるようにしたのに、途中で“弾切れ”になったのでは、首相のメンツは丸つぶれです。誰も“十分な量”の具体的な数字を明かさない、明かせないのは、国(首相)が過度な要求をし、中外製薬が供給元のロシュとタフな交渉をしているからかもしれません。年内20万人分という数字は今の感染状況を考えると、いかにも足りない気がします。抗体カクテル療法の普及・定着がある程度進んだ段階で、ワクチンのように「足りません」という事態にならなければいいのですが…。対象患者はロナプリーブまで辿りつけるか?もう一つ気になったのは、本当に必要とする患者に、タイムリーに抗体カクテル療法が提供されるのか、というデリバリーの問題です。適応は発症7日以内の軽症、中等症Iの患者ですが、現在、この状態の患者の多くが自宅療養を余儀なくされ、コロナを治療する医療機関にアクセスできない状況です。重症化リスクのある人に、悪化する前、あるいは発症7日を過ぎる前に、ロナプリーブを点滴静注できる医療機関や施設の早急の整備が求められます。しかし、現実には、自宅待機が長引き、入院した段階では発症1週間が過ぎてしまっている人が少なくありません。ロナプリーブにはアナフィラキシーの報告もあり、厚生労働省は投与施設に24時間健康観察を十分にできる体制を確保するよう求めています。病院のベッドが中等症、重症で埋まっている現状では、宿泊療養施設・入院待機施設などで対応するしかありませんが、この人材不足のなか、24時間体制の構築は難しいところです。今回の説明会で舘田教授は「ロナプリーブ・ステーションのような施設も必要だ」と話していましたが、ロナプリーブを本当に効果的に使うには、“野戦病院”的施設の検討に加え、軽症者治療に特化した治療ステーションの整備も必要でしょう。ワクチン同様、結局は高齢者優先になってしまうのでは?最後に、もう1点気になったのは、投与対象に「発症7日以内の軽症、中等症Iで重症化リスク因子を持つ人」と、「重症化リスク因子」が入っている点です。単純に考えれば、重症化リスク因子のあるなしにかかわらず、軽症、中等症Iに打ってしまえばいいわけですが(濃厚接触者への適応拡大も検討中ですし)、そうはできないのは、確保量や投与場所、そして費用の問題があるからでしょう。重症化リスク因子は、65歳以上、悪性腫瘍、COPD、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満(BMI 30以上)、喫煙などとなっています。そうすると、結局、ワクチン接種と同様、高齢者が優先されるケースが多くなり、若者はまた後回しにされる状況が起きてくるかもしれません。デルタ株の蔓延に伴い、基礎疾患がなくても重症化する人も増えています。そうした状況の中、「ロナプリーブを打っていれば…」という人が、若年者を中心に増えていくことが懸念されます。それもこれも、「確保量」と「デリバリー」次第です。そもそも「十分な確保量」があるなら、重症化リスク因子は大目に見て、軽症者にもどんどん投与して欲しいものです。ところで、現在は国費で賄われているロナプリーブ投与ですが、仮に新型コロナが5類感染症となり、治療が保険診療になれば、自己負担は3割負担で約6万円(米国での医療費約20万円)と高額になるかもしれません。そうなった時にこの治療法が現場でどう使われるかも気になるところですが、それについてはまた機会を改めて書きたいと思います。

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新学期に向けてCOVID-19感染対策の提言/感染研

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のデルタ株の猛威に社会が混乱している。とくに小児などの低年齢層のCOVID-19感染者数の増加により、新学期を前に学校・塾などの教育機関は、生徒を受け入れるべきか、リモートで授業を行うべきかの判断に悩み、その扱いは全国的に感染の強弱もあり一律ではない。 こうした状況の中で国立感染症研究所は、「乳幼児から大学生までの福祉施設・教育機関(学習塾等を含む)関係者の皆様への提案」を8月26日に公開した。 提案では、教職員の感染予防法の習熟やICTの活用の推進、ワクチン接種、体調確認アプリの活用など具体的な取り組みが示されている。中学生以上では部活などで広がる可能性 はじめに代表的な所見として下記の8つを示している。・10代以下の感染者数が増加傾向にある。保育所・幼稚園において、これまで保育士・教員における感染の検出が主であったが、園児の感染例が増加している・とくに小学生を中心とする授業の場で、教職員を発端とした、比較的規模の大きなクラスターが複数発生した・小学校において、児童を端緒とした、同じクラス内などの規模の小さな感染伝播は多く見受けられたが、児童間の感染伝播が規模の大きなクラスターに至ったケースは確認できなかった・障害児通所支援事業所での感染が各地で散発しており、長期化する場合がある・学習塾における比較的規模の大きなクラスターが散見される・中学生以上では、部活動など・寮生活において、適切なマスク着用や身体的距離の確保などの感染予防策の不十分な生徒・学生間の長時間に渡る交流が、感染伝播に寄与していた。とくに部活動などにおいて、最近は大会や遠征時のクラスターが複数発生した・感染しても無症状・軽症が多く行動範囲も広い大学生は市中で感染が拡大する要因の一部を占める・とくにデルタ株流行後、小児から家庭内に広がるケースが増えている予防は、今までの感染予防策の徹底とワクチン接種の両輪で 次に共通する対策に関する提案として、具体的な事項が示されている。・初等中等段階ではやむを得ず学校に登校できない児童生徒などに対する学びの保障を確保することを主目的として、加えて高等学校・大学ではオンライン(オンデマンド)の促進により、理解をより高める側面を含めて、ICTなどを活用した授業の取組を進める・教職員(塾を含む)それぞれがCOVID-19の感染経路に基づいた適切な予防法、消毒法について習熟し、園児・児童・生徒・学生、保護者、自施設に出入りする関係者に対して正しく指導できるようにする・上記を目的とした、地域の感染管理専門家(感染管理認定看護師など)からの指導・協力を仰ぐ体制を構築する・教職員、園児・児童・生徒・学生は、全員が出勤・登園・登校前の体調の確認、体調不良時のすみやかな欠席連絡および自宅待機時の行動管理をより徹底する。中学生以下の有症時には受診を原則とする・各施設の健康管理責任者は、当該施設の教職員、園児・児童・生徒・学生がCOVID-19の検査対象になった場合の情報を迅速に把握する。対象者の検査結果判明まで、範囲を大きく、たとえばクラス全体として、園児・児童・生徒・学生・教職員などに対して感染予防に関する注意喚起を厳重に行う・対象者が陽性となった場合の施設のスクリーニング検査の実施と施設内の対策は保健所からの指示に従う。流行状況などによって、保健所による迅速な指示が困難な場合には、クラス全体など幅広な自宅待機と健康観察、有症状時の医療機関への相談を基本に対応する。体調確認アプリ(例:N-CHAT)や抗原定性検査の活用は、施設における発生時の自主的な対応として有用である・教室、通学バス(移動時全般)、職員室などにおける良好な換気の徹底に努める。施設内では、効率的な換気を行うための二酸化炭素センサーの活用も推奨される・塾では児童・生徒・学生・講師などの体調管理を徹底した上で、密にならない工夫とともに換気の徹底(とくに入れ替わり時。場合によって二酸化炭素センサーの活用)、リモート授業の活用も検討することが推奨される・人の密集が過度になるリスクが高いイベント(文化祭、学園祭、体育祭など)においては延期や中止を検討し、感染リスクの低い、あるいはリスクを低減できると考えられたイベントについては事前の対策を十分に行う・教職員は、健康上などの明確な理由がなければ、新型コロナワクチン接種を積極的に受ける・部活動については日々の体調の把握や行動管理への注意を基本とした活動を行う一方で、やむを得ず県境をまたいだ遠征が必要な場合には、2週間前から引率者、児童・生徒における上記注意事項の遵守を強化し、出発前3日以内(できるだけ出発当日)を目途に、抗原定量検査あるいはPCR検査を受ける・大会遠征時には教職員を含む引率者や児童・生徒ともに、競技外での他校との交流は部活動の範囲に留める・これまで以上に保健所との連携(報告や相談)を強化する。保健所が多忙を極める場合、とくに発生時の対応については、当センター(感染研)は保健所と連携を取りながら施設へ助言を行うことも可能である

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科学的情報早期共有の重要性(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染のすべてが解明されているわけではない。予防ワクチンの副反応もすべてが解明されているわけではない。生命現象は複雑精妙な調節系であり、基本原理は未知である。実際に疾病にかかってみる、あるいは実際にワクチンを受けてみる、ことにより反応を実証的に積み重ねていかないと正解にはたどり着けない。法律、規制のYes/Noはヒトが決めることができる。しかし、規制当局が承認した薬剤、ワクチンがすべての症例に有効、安全であるわけではない。アストラゼネカ(AZ)ワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)では血栓症の発症がファイザー、モデルナワクチンよりも多いように報道されている。AZワクチンによる血栓症についても実態を正確に把握する必要がある。NEJMは、世界で最も信頼されている医学雑誌である。本研究は約1,600万人の50歳以上の症例と約800万人の50歳以下の、最低1回AZワクチンを受けた症例からワクチンによる血栓症を疑われた294例の専門家による解析結果である。実際に、ワクチンによる免疫血栓症(vaccine induced immuno-thrombosis:VIIT)を疑われた症例のうち、170例は確実にVIIT、50例はVIIT疑いとされた。VIIT発症者の中間年齢は48歳、ワクチン接種から発症までの期間の中間値は14日であった。リスクの高い症例を事前予測する性別などのリスク因子を明確にすることはできなかった。VIITによる死亡率は22%であった。死亡率の高い症例は脳静脈洞血栓症、経過中の血小板減少、経過中のフィブリノゲン減少などであった。本研究は英国における経験である。健常者のワクチン接種により致死的合併症が起こることを容認できないヒトもいるかもしれない。VIITの死亡率22%を容認できないヒトもいるかもしれない。世の中にはいろいろな考えるのヒトがいるものだ。しかし、2千万人以上のワクチン接種の経験を速やかに論文発表してpublic domainにする英国には強さを感じる。結果を数値にして公表してしまえば、メディアでも国会でも数値を客観的事実として共有するのみである。 大東亜戦争初戦にてマレー沖にて最新鋭戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスが日本海軍航空隊により沈没されたことに首相チャーチルは戦慄したという。しかし、時の政府にとって不利な結果を即座に議会に報告している。一見、不利に思えることでも事実を公表することによって道がひらかれる。AZワクチンのVIIT発症リスクは事実であるが、英国におけるラフな発症率は200程度/2,000万人以上でリスクは少ない。新型コロナ感染拡大を抑えるためには早急なワクチン接種が必要で、VIITリスクはワクチンのメリットに比較すれば著しく少ない。事実は数値にて社会で共有することが大事である。

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第75回 感染経験のデルタ株防御効果はワクチンよりずっと高い

新型コロナウイルス感染(COVID-19)を経た人のデルタ変異株の感染しやすさは先立つ感染なしのPfizerワクチンBNT162b2接種2回完了者に比べてずっと低く、発症も入院もより免れていることがイスラエルの試験で示されました1)。試験ではイスラエル人およそ250万人のデータベースが解析され、今夏(6月1日~8月14日)のデルタ変異株感染率は先立つ新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染なしで今年初め(1~2月)にワクチン接種2回目を済ませた人の方が感染を経験したワクチン非接種の人に比べて6~13倍高いという結果が得られました。また、感染経験者は先立つ感染なしのワクチン接種完了者に比べてCOVID-19発症率はわずか27分の1、COVID-19関連入院率は8分の1で済んでいました。試験の結果は人間の生来の免疫系の優秀さを物語るものですが、Pfizerワクチンや他のCOVID-19ワクチンの重症化や死亡を防ぐ効果は健在です。ワクチンを接種していない人がワクチン接種の代わりにあえて感染するなどもってのほかであり、そんなことをすれば死人がでるでしょう2)。被験者のCOVID-19関連死亡は一例もなく、今回の試験でも幸いにしてワクチンは重病を防ぐ効果を依然として維持していることが伺えました。感染経験とワクチン接種が組み合わさればデルタ変異株をいっそう寄せ付けなくなることも示されました。感染経験があってワクチンを1回接種した人の再感染率は感染経験のみでワクチン非接種の人に比べておよそ半分で済んでいたのです。その結果は、感染経験がある人へのPfizerやModernaのmRNAワクチン2回接種の必要性の検討を前進させるでしょう。SARS-CoV-2感染経験があればワクチン接種推奨の対象外ということにはいまのところなってはおらず、米国は感染を経験した人も決まりの回数のワクチンを接種することを推奨しています。日本でも感染経験がある人に決まりの回数が接種されています3)。しかし今回の試験結果によると感染を経験した人へのmRNAワクチンの接種はひとまずは1回で十分かもしれません。Scienceのニュースによると、ドイツ、フランス、イタリア、イスラエルなどでは感染を経験した人へのワクチン接種はひとまず1回きりとなっています2)。感染経験者がワクチンを1回接種すれば現在出回るどのワクチンもそれだけでは到達し得ない防御レベルを身につけうるとScripps Researchの著名研究者Eric Topol氏は述べています2)。参考1)Comparing SARS-CoV-2 natural immunity to vaccine-induced immunity: reinfections versus breakthrough infections. medRxiv. August 25, 2021.2)Having SARS-CoV-2 once confers much greater immunity than a vaccine-but no infection parties, please / Science3)厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」

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