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第81回 週刊誌にトンデモ記事を載せないためコロナ第6波予測で重要視するのは…

医療をテーマにしたフリージャーナリストという立場になると、今回の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)関連では週刊誌からはよくコメントを求められることがある。大概は医師が捉まらない時の代役のようなものである。もっとも1ヵ月前くらいから新規感染者報告数が激減したことにより落ち着いてきたが、ここに来てまたぽつぽつと連絡が入るようになった。しかもそのすべてが判で押したように同じことを聞く。 「第6波はいつ来るんですかね?」こういう未来予測的なものが一番答えにくい。というか、こうしたことはたいてい予測通りにはならない。そもそも今回の新型コロナに関しては感染症専門医ですら悪い意味で何度も予測を外しているはずだ。具体例を挙げるなら、中国でのパンデミック勃発当初、全世界にこれほど広がるとは思っていなかっただろうし、発症前の無症状期に感染力があったというのも意外だったろう。そして比較的容易に飛沫感染するため、これまでの感染症対策としてのマスクの位置付けを大きく変えてしまった。また、ウイルスの生存原理としては変異株で感染力が増せば、ウイルスは弱毒化すると考えられているが、新型コロナの変異株では感染力も毒性も高くなっていると報告されている。唯一良い意味で予測が外れたのは、わずか1年弱でワクチンが登場したことぐらいではないか。そんなこんなもあって前述のような問いには「来る可能性はあるかもしれないが、まったく来ない可能性もあるかも」とぼやかしているが、そう答えると「では、来るとしたらいつですか?」と突っ込まれてしまう。「冬じゃないですか?」と答えると、「冬のいつですか?年内ですか、年明け以降ですか?」と続くので、結局何らかの予測を答えざるを得ない状況に追い込まれる。答えないという手もあるのだが、そうすると時に記者が完全なトンデモ系の人に流れて“トンデモ記事の一丁あがり”になることもある。自分は一応、かなり抑制的に答えているつもりなので、それを防ぐ意味でも答えざるを得なくなる。今私が答えている内容はこんな感じだ。まず、冬期は低湿度・水分摂取量の減少で気道の絨毛の働きが弱くなるため、一般論として多くの人で呼吸器感染症にかかるリスクが高まる。たとえば東京都内で見ると、平均相対湿度が50%台と最も低水準になるのは12月~3月にかけてである。一方、第6波の到来に影響を与えるのが、当然ながらワクチン接種率である。10月27日時点で全人口に占めるワクチン接種完了率は70.6%とついに7割超となった。しかし、デルタ株の基本再生産数5.0~9.5人から算出できる、今時点で必要な接種率は80~89%(集団免疫獲得に必要な全人口に占めるワクチン接種完了者率)とかなり高めで、この達成はかなり難しい。ただ、希望者全員への接種完了は11月中と予想されており、そう考えるとある意味まだフレッシュな抗体を獲得した人がいる年内に第6波は考えにくい。一方、国内で優先接種対象になった医療従事者や高齢者では徐々に抗体価が低下してくる。先日Lancet誌に公表された論文でのファイザーのコミナティ筋注の感染予防効果はワクチン接種5ヵ月後で47%である。その意味でワクチンによる感染予防効果の低下を考えると、優先接種対象者はすでにややリスクが高い状態である。もっとも医療従事者は一般人よりも厳格な感染予防対策を行っており、高齢者はそのほかの年齢層以上に冬期の外出を控えがちになるので、これらの人たちで感染が再燃して拡大する可能性は低いのではないだろうか? また、3回目のブースター接種が年内にスタートすれば、医療従事者や高齢者での感染者増加の可能性はかなり低くなると考えられる。となると高齢者や基礎疾患保有者以外の一般接種が本格化した7月から5~6ヵ月後ということになり、この点からも第6波が到来するとしたら年明けの1月以降と予測される。もっともこの予測に大きく影響を与えるファクターが2つある。1つはこれまた「ワクチン接種率」で、運よく集団免疫達成の80%ラインを超えた場合、第6波はかなり後ろにずれ込むか、来ても小規模なものになる、あるいはベストのシナリオとして「来ない」ということもありうる。もう1つのファクターが「人流の増加」で、新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が全国で解除され、今後極端に人流が増加した場合に第6波到来は年内に前倒しになるかもしれない。だが、いずれにせよワクチン接種率が7割超なのでブレイクスルー感染を考慮しても第5波に比べてかなり規模が小さくなるのではないか。これが正解であるかはわからない。むしろこの予測が良い意味では外れて「第6波到来せず」のシナリオであってほしいと本気で考えている。

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ファイザー社製COVID-19ワクチンの変異株に対する有効性の経時的変化(解説:小金丸博氏)

 ファイザー社製のCOVID-19ワクチンのリアルワールドにおける有効性を評価した後ろ向きコホート研究がLancet誌に報告された。ワクチンの有効性は6ヵ月間持続するのか、デルタ変異株に対しても予防効果はあるのか、といった疑問に対する1つの答えを提示している。 ワクチンのSARS-CoV-2感染に対する有効性は73%(95%信頼区間[CI]:72~74)だったが、ワクチン接種1ヵ月後と5ヵ月後を比べると、88%(同:86~89)から47%(同:43~51)に低下した。この現象はデルタ株、非デルタ株ともに認めており、ワクチンの感染予防効果は変異株の種類にかかわらず、経時的に低下することが示された。 ワクチンのCOVID-19関連の入院に対する有効性は90%(95%信頼区間[CI]:89~92)だった。ワクチン接種6ヵ月後までのデルタ変異株によるCOVID-19関連の入院に対する予防効果は93%(同:84~96)と高率であり、入院予防効果が6ヵ月間は持続することが示された。ワクチンによる入院予防効果がいつまで維持されるのか、今後の研究結果を待ちたい。 2021年6月~7月にかけて世界中でデルタ変異株が流行した。イスラエルや米国からの報告によると、デルタ変異株に対してワクチンの有効性が低下する可能性が示唆されていたが、本研究の結果からは、ワクチン有効性の低下の原因は変異株の影響より、時間経過とともに免疫力が低下したことが主な要因と考えられた。COVID-19ワクチンに関する今後の課題として、新たな変異株に対する有効性の評価や、ブースター(追加)接種スケジュールの確立などが挙げられる。感染予防効果を維持するためにはワクチンのブースター接種は必須と考えられるため、的確なワクチン接種スケジュールの確立のために、さらなる知見の集積が必要である。

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第81回 新型コロナに「新たな変異株」が確認されたロシアの今

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者数が連日3万人を超えるロシアで、デルタ株よりも感染力が強いとみられる変異株の感染が確認された。専門家によると、新たな変異株「AY.4.2」の感染力は、デルタ株を10%程度上回る可能性があり、流行すれば感染者が一層増える懸念がある。ロシア政府の国産ワクチンへのこだわり、国民のワクチンに対する不信や危機意識の薄さが、接種率の低迷(2回目は32%)、ひいては感染拡大の背景にあると指摘されている。国際的に経済活動が活発化しつつある中、ロシア発の新型変異株が拡散するようなことはあってはならない。自国ワクチンと政府に対する国民の不信ロシアは新型コロナのパンデミックに際し、世界初のワクチン生産と接種に動いた。しかし、接種は自国製ワクチンの「スプートニクV」に限定され、その有効性に対する国民の不信感もあり、接種率はすこぶる低調だ。また、9月に実施された総選挙では、野党指導者の身柄拘束や立候補禁止措置、バラ撒き政策など、政府・与党のなりふり構わぬ選挙対策が国民の政治不信を招き、これらもまたワクチン接種率が上がらない一因となっている。ロシア政府は、世界保健機関(WHO)に対し「スプートニクV」の緊急使用の申請をしたが、「承認に必要なデータや法的な手続きに不足がある」との理由で承認されず、ワクチン売り込みで競う中国製ワクチンは、すでに2種類が承認されている。11月8日から始まる米国の新たな入国規制では、入国に必要なワクチン接種証明はWHOの承認を得たものに限られるため、「スプートニクV」の接種証明では入国許可の対象外となる。ロシア政府のワクチン外交に打撃となっていることは想像に難くない。金融市場は活況でも実態経済は悪化の懸念ロシアでは昨年、新型コロナ感染対策として大都市部を中心に外出禁止令などを実施したが、実体経済に悪影響を及ぼしたため、その後は行動制限に及び腰の対応が続いた。しかし、感染拡大に歯止めが掛からない中、プーチン大統領は先ごろ、国内全土の企業や学校などを休みにする「非労働日」を設ける大統領令を発表。モスクワやサンクトペテルブルクでは、生活必需品を扱う店以外の営業を停止するなど経済活動を制限し、不要不急の外出を控えるよう市民に呼び掛けている。金融市場では、原油高や金融引き締めを追い風にルーブル相場や株価は堅調に推移しているものの、実体経済への悪影響が今後の市場環境を激変させる可能性もある。自国ワクチン偏重主義や、国民の信用が得られない政府の在り方がワクチン接種率の低迷をもたらしているロシア。政治と感染症対策が一蓮托生であるということをつくづく思い知らされる。

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6~12歳未満にコロナワクチン半量投与で強い抗体、第III相試験中間解析/モデルナ

 米国・モデルナ社は10月25日付のプレスリリースで、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて、12歳未満の小児を対象にした第II/III相試験の中間解析のデータを公表した。公表したのは6歳~12歳未満のコホートで、良好な安全性プロファイルを有するmRNA-1273ワクチン50μg(通常100μgのところ、その半量)を2回投与したところ、強い中和抗体応答を示したという。モデルナは、本解析結果を近く米国食品医薬品局(FDA)をはじめ、海外諸国の規制当局に提出する。 モデルナが6ヵ月~12歳未満の小児を対象に実施している第II/III相試験(KidCOVE試験)では、6ヵ月~2歳未満、2~6歳未満、6歳~12歳未満の3つの年齢層に分け、mRNA-1273ワクチン50μgを2回接種した際の安全性、忍容性、反応原性および有効性を評価している。このうち6歳から12歳未満のコホートには4,753例が登録。第III相COVE試験(18歳以上対象、mRNA-1273ワクチン100μg×2回接種)で得られた若年成人と本コホートを比べたSARS-Cov-2血清中和抗体価の幾何平均比(GMR)は1.5(95%信頼区間[CI]:1.3~1.8)、血清反応率は99.3%だった。2回目接種の1ヵ月後に本コホートで強い免疫応答を示し、主要評価項目である第III相COVE試験を対照群として比較した免疫原性における非劣性を達成した。有害事象の大半は軽度または中等度で、最も一般的な誘発有害事象は、疲労、頭痛、発熱、注射部位の痛みだった。KidCOVE試験では、引き続き6ヵ月~6歳未満の小児の登録を継続し、研究が続いている。 COVID-19ワクチンを巡っては、米国・ファイザー社でも小児を対象とした臨床試験を進めている。同試験では、5~11歳の小児に対し、BNT162b2ワクチンの2回接種後7日以降の発症予防率が90.7%を示すデータが先ごろ公表され、FDAの諮問委員会は10月26日、ファイザー製ワクチンの緊急使用承認(EUA)の対象を5~11歳にも拡大するよう勧告した。

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第83回 小児にCOVID-19抗体は生じ難い~ワクチンは有望で効果91%

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した成人はほとんど(90%超)が抗体反応を示し、それらの抗体は少なくとも12ヵ月間は持続するようです1)。感染を経て抗体ができた成人の更なる感染は7~9割ほど少なくて済むようになることが示されています2,3)。一方、SARS-CoV-2感染(COVID-19)小児のどれほどが抗体を備えるかはわかっていませんでした。無症状や軽症の小児はなおさらそうです。そこでオーストラリアのMurdoch Children’s Research Instituteの感染/免疫研究者Paul Licciardi氏等は同国メルボルンの非入院の無症状か軽症のSARS-CoV-2感染患者108人を募って小児の抗体反応が成人とどう違うかを調べました4,5)。その結果、小児と成人のウイルス量は同程度だったにもかかわらずSARS-CoV-2への抗体ができていた小児の割合は成人のおよそ半分ほどでしかありませんでした。小児57人の年齢中央値は4歳で、それらのうち解析が可能だった54人のおよそ4割(37%;20/54人)にしかSARS-CoV-2への抗体ができていませんでした。成人は51人(年齢中央値37歳)のうち解析が可能だった42人の8割ほど(76%;32/42人)に抗体ができていました。抗体ができていた成人には細胞免疫も認められましたが、小児はそうなっておらず、小児が感染で確かな細胞免疫を確立することは難しいのかもしれません。SARS-CoV-2感染小児のほとんどは無症状か軽症で済んでいて入院を必要とすることはほとんどありません。しかしデルタ変異株をはじめとするSARS-CoV-2変異株の出現を受けて小児のSARS-CoV-2感染は2021年になって増えており、小児の免疫を危ぶむ声も上がっています。SARS-CoV-2に感染しても抗体ができなかった小児は再感染する恐れがあり、抗体ができ難い小児は長い目で見て成人に比べてSARS-CoV-2感染をより許してしまうのかもしれません。今回の結果によると小児をCOVID-19から守るためにワクチン接種を含む手立てを講じる必要があるようです5)。実際COVID-19ワクチンは成人や10代の若者と同様に幼い小児の感染予防の手立てとなりうることが今週開催される米国FDA諮問委員会に先立って先週末に公表された解析結果6,7)で示されています。第II/III相試験の第1集団2,268人の10月8日までのデータ解析の結果、Pfizer/BioNTechのmRNAワクチンBNT162b2は5~11歳小児のCOVID-19発症のほとんどを防ぎました。2,268人は2対1の割合でBNT162b2かプラセボに割り付けられ、BNT162b2投与群は1,518人、プラセボ群はその約半数の750人となりました。先立つ感染経験がない小児のCOVID-19発症数はBNT162b2投与群ではわずか3人でした。一方、プラセボ群はBNT162b2投与群より人数が少ないにもかかわらず16人がCOVID-19を発症し、BNT162b2は先立つ感染経験がない5~11歳小児のCOVID-19発症の90.7%を防ぎました。米国FDAの承認や疾病管理予防センター(CDC)の後押しが得られて事がすべてうまく運べば同国の5~11歳小児へのワクチン接種は来月11月の最初の週かその次の週には可能になるだろうと同国政府感染症対策のリーダーAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)氏は述べています8)。参考1)Feng C,et al. Nat Commun. 2021 Aug 17;12:4984.2)Rovida F,et al. Int J Infect Dis. 2021 Aug;109:199-202.3)Lumley SF, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 11;384:533-540.4)Children with mild COVID-19 may lack antibodies afterward / Reuters5)Reduced seroconversion in children compared to adults with mild COVID-19. medRxiv. October 18, 20216)Pfizer Briefing Document / Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting October 26, 20217)FDA Briefing Document / Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting October 26, 20218)Wuhan research theory 'molecularly impossible': Fauci / abcNEWS

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COVID-19に対する薬物治療の考え方 第9版公開/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、10月11日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第9版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、前回8版以降の新しい知見やエビデンスの追加のほか、抗ウイルス薬、中和抗体薬に関しての追記、とくにソトロビマブが新しく追加された。中和抗体薬の項目をさらに厚く解説 新しく改訂、追加された項目は下記の通り。【抗ウイルス薬】 レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液100mgなど)についてRCTの記載が追加。軽症肺炎例を対象にしたレムデシビル5日投与群、レムデシビル10日投与群、標準治療群の3群に割り付け、11日目の評価にて5日投与群は標準治療群と比較し有意に臨床的改善を認めた患者が多かったものの、10日治療群ではプラセボ群に比し有意差が認められなかった。また、入手方法についても、2021年10月18日より一般流通することが追加された。 ファビピラビル(商品名:アビガン錠200mg)については、海外での臨床報告が追加された。 インドで行われたRCTで、主要評価項目であるPCR陰性化までの期間の中央値がファビピラビル投与群で5日、標準治療群では7日だった(P=0.129)。また、副次評価項目である臨床的軽快までの期間の中央値が前者で3日、後者で5日(P=0.030)だった。 また、国内での臨床報告として発熱から10日以内の中等症I患者156例を対象としたプラセボ対照単盲検RCT(企業治験)では、主要評価項目(解熱、酸素飽和度改善、胸部画像改善、PCR陰性化の複合アウトカム)の達成がファビピラビル群で11.9日、プラセボ群で14.7日であった(P=0.0136)ことが追加された。【中和抗体薬】 新しく特例承認されたソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)が追加された。ソトロビマブはSARS(重症急性呼吸器症候群)に感染した患者から得られた抗体を基にしたモノクローナル抗体。少なくとも1つ以上の重症化リスク因子を持つ軽症COVID-19患者を対象とした第III相のランダム化比較試験では、中間解析においてソトロビマブ500mg単回投与群(291例)では、プラセボ投与群(292例)と比較して、主要評価項目である投与29日目までの入院または死亡が85%減少した(p=0.002)。また、重篤な有害事象は,ソトロビマブ投与群で2%、プラセボ投与群で6%と,ソトロビマブ投与群のほうが少なかった。・投与方法通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ソトロビマブ(遺伝子組換え)として 500mg を単回点滴静注する。・投与時の注意点カシリビマブ/イムデビマブ参照・入手方法本剤は、一般流通は行わず、厚生労働省が所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡される。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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細胞培養由来4価ワクチン、小児で良好なインフル予防効果/NEJM

 インフルエンザ流行期の健康な小児/青少年における感染予防では、細胞培養由来4価不活化インフルエンザワクチン(IIV4c、Flucelvax Quadrivalent、英国・Seqirus製)は非インフルエンザワクチンと比較して、インフルエンザワクチン接種歴の有無を問わず良好な有効性が認められ、有害事象の発現は両者でほぼ同様であることが、オーストラリア・メルボルン大学のTerence Nolan氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年10月14日号で報告された。3回の流行期、8ヵ国の無作為化第III/IV相試験 研究グループは、8ヵ国の小児/青少年において、Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞株を用いたIIV4c(A/H1N1、A/H3N2、B/Yamagata、B/Victoria)の有効性、免疫原性、安全性の、非インフルエンザワクチン(髄膜炎菌ACWY[A、C、W-135、Y群]ワクチン)との比較を目的に、観察者盲検化層別無作為化第III/IV相試験を行った(Seqirusの助成による)。 3回のインフルエンザ流行期に、8ヵ国(39施設)で参加者(2~<18歳)が募集された。各流行期の参加国は、シーズン1(2017年の南半球の流行期[~2017年12月31日])がオーストラリア、フィリピン、タイ、シーズン2(2017~18年の北半球の流行期[~2018年6月30日])がエストニアとフィンランドで、シーズン3(2018~19年の北半球の流行期[~2019年6月30日])はエストニア、フィンランド、リトアニア、ポーランド、スペインだった。 参加者は、IIV4cまたは髄膜炎菌ACWYワクチンの接種を受ける群(比較群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。全参加者が、試験ワクチンの1回目の接種を受けた。インフルエンザワクチン接種歴がなく、IIV4c群に割り付けられた2~<9歳の小児は、29日目に2回目の接種を受け、比較群に割り付けられた小児にはプラセボが接種された。有効性と安全性に関して、少なくとも180日間の追跡が行われた。 インフルエンザ様疾患に罹患した参加者は、鼻咽頭拭い液を採取され、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法およびウイルス培養でインフルエンザウイルスの有無が確定された。 主要エンドポイントは、2~<18歳の集団における、最終接種から14日以降、流行期最終日までに検査で確認されたA型またはB型インフルエンザの初回発生であった。有効率は、A/H1N1が80.7%、A/H3N2は42.1%、B型は47.6% 3回の流行期に4,514例(平均[SD]年齢8.8±4.1歳、女性48.5%)が登録され、IIV4c群に2,258例、比較群に2,256例が割り付けられた。全体の65.9%がインフルエンザワクチン接種歴を有し、50.7%が2~<9歳であった。 全体のインフルエンザウイルス感染者は、IIV4c群が7.8%(175/2,257例)、比較群は16.2%(364/2,252例)であり、IIV4c群の有効率は54.6%(95%信頼区間[CI]:45.7~62.1)であった。 A型インフルエンザのうちA/H1N1に対するIIV4c群の有効率は80.7%(95%CI:69.2~87.9)、A/H3N2に対する有効率は42.1%(20.3~57.9)であり、B型インフルエンザに対する有効率は47.6%(31.4~60.0)であった。年齢別、性別、人種別、インフルエンザワクチン接種歴の有無別のサブグループで、IIV4c群の有効性(有効率42.1~82.3%)が一貫して認められた。 免疫原性の評価には721例(2~<9歳、IIV4c群364例、比較群357例)が含まれた。IIV4c群における2つの流行期(シーズン2と3)のワクチン接種後の幾何平均抗体価(GMT)は、A/H1N1で283.5から380.7へ、B/Victoriaで45.3から66.8へ、B/Yamagataでは52.8から108.5へと、それぞれ増加した。比較群では、シーズン2と3で接種後のGMT増加は観察されなかった。 接種後6時間~7日までに非自発的に報告された有害事象の割合は、IIV4c群が51.4%、比較群は48.6%であった。発熱(体温≧38.0℃)は、IIV4c群が5.3%、比較群は4.5%にみられ、重度発熱(≧40.0℃)はそれぞれ0.3%および0.2%で発現した。また、重篤な有害事象は、1.1%および1.3%に認められた。担当医によってワクチン関連と判定された有害事象はなく、試験中止の原因となった有害事象もなかった。 著者は、「IIV4cは、卵を使用しないインフルエンザワクチン製造プラットフォームで作製されており、卵馴化変異の回避や、新型のインフルエンザウイルス発生時の対応に要する時間の短縮など、一定の利点を有する」と指摘している。

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第75回 新たに81件のワクチン健康被害が救済認定、計147件に/厚労省

<先週の動き>1.新たに81件のワクチン健康被害が救済認定、計147件に/厚労省2.国保、高所得者の保険料上限額を年3万円引き上げへ/厚労省3.主治医による小児アレルギーの情報提供が診療報酬の対象に/中医協4.帝王切開を架空請求、沖縄の産婦人科医院長を逮捕/沖縄県警5.贈収賄事件で製薬企業の会員資格停止、再発防止を/製薬協6.日大背任事件、大学理事長にも6,000万円の資金還流か/特捜部1.新たに81件のワクチン健康被害が救済認定、計147件に/厚労省厚生労働省は、22日に「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」を開催し、新型コロナウイルスのワクチン接種後に「アナフィラキシー」などを発症した81例について、予防接種との因果関係を審議し、全件を認定した。今回認定された81件のうち、70件が女性で、男女合わせた年齢別では40代が22件ともっとも多く、その次は20代・50代がそれぞれ15件、30代・60代は11件であった。このうちアナフィラキシーが45件、アナフィラキシー様症状が18件として認定された。これにより、新型コロナワクチン接種に関する健康被害の救済認定は計147人となった。(参考)コロナワクチン接種 81人を救済認定 医療費など支給へ 厚労省(NHK)アナフィラキシーなど「接種が原因」、新たに81人認定…国の救済適用計147人に(読売新聞)資料 副反応疑い報告の状況について(第71回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会)2.国保、高所得者の保険料上限額を年3万円引き上げへ/厚労省厚労省は、22日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、国民健康保険の加入者のうち、高所得者の保険料について、財政基盤の安定化、保険料の国民負担に関する公平性の確保のため、高所得者が保険料の賦課限度額までしか負担しない仕組みを改め、保険料の賦課限度額を引き上げるべきとして、保険料上限を現在の年99万円から3万円引き上げ、102万円とする案を示した。引き上げは、2022年度に実施する方針で、2年ぶりとなる。(参考)国民健康保険 高所得者の保険料上限額 引き上げ案了承(NHK)国民保険料の限度額上げ 厚労省案、3万円増え102万円に(日経新聞)資料 国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について(厚労省)3.主治医による小児アレルギーの情報提供が診療報酬の対象に/中医協厚労省は、22日に開催された中央社会保険医療協議会において、アレルギー疾患を持つ子供の主治医が、生活の注意点などを記載した文書を作り、学校や保育所に提供した場合、新たに診療報酬対象とすることについて提案し、了承された。今後、厚労省は来年4月の診療報酬改定に向け、対象となる学校など施設の範囲、年齢、疾患などの具体的調整を進める。(参考)アレルギー対応保険適用へ 主治医と学校の連携強化 来年4月にも、厚労省(産経新聞)アレルギー疾患の情報提供、診療報酬で評価へ 中医協・総会(CBnewsマネジメント)4.帝王切開を架空請求、沖縄の産婦人科医院長を逮捕/沖縄県警沖縄県警は、帝王切開を行ったように装って診療報酬を受け取った沖縄市内の産婦人科医師を20日に詐欺容疑で逮捕した。この医師は2018年6月に自らが経営する産婦人科医院で、自然分娩の妊婦について、緊急帝王切開術を行ったと偽って診療報酬を請求し、82万円を保険団体から受け取っていた。警察は、関係者からの情報を受け、今年の7月に病院から資料を押収し、捜査を進めて本事件が発覚した。その後の捜査によって、妊婦健康診査でも、実際には診察を行っていないのに、行ったとカルテを偽造し、架空請求を繰り返したことも明らかとなっている。(参考)診療報酬不正で産婦人科医を逮捕 詐欺容疑で沖縄県警(琉球新報)診療報酬だまし取った疑い 沖縄市の産婦人科院長を逮捕(NHK)妊婦健診でも架空請求か 「私一人だけで少なくとも50件」 複数の関係者が証言(沖縄タイムス)5.贈収賄事件で製薬企業の会員資格停止、再発防止を/製薬協日本製薬工業協会は21日の記者会見において、小野薬品工業による資金提供を受けた三重大学の贈収賄事件を受け、再発防止を目的に奨学寄付金の提供の在り方について再徹底するよう通知を発出した。製薬協は、奨学寄付金を自社医薬品に関する臨床研究に対する資金提供の方法として用いないことや、営業部門から独立した組織で利益相反を十分確認のうえ決定することなどの遵守を求めている。日本製薬工業協会は、社員2名が贈賄罪の有罪判決になったのを受け、小野薬品の製薬協の会員資格停止を9月に公表している。(参考)会員会社に対する処分について(製薬協)「処方拡大の見返り」賄賂認定…奨学寄付金の落とし穴(Answers)製薬協 奨学寄附金の在り方再徹底で通知発出 第三者供賄で小野薬品の会員資格停止受け(ミクスonline)6.日大背任事件、大学理事長にも6,000万円の資金還流か/特捜部日本大学附属病院の建て替え工事をめぐって、大学の資金2億円超を流出させた事件で逮捕された大阪の医療法人グループ理事長が、日本大学の理事長に「現金3,000万円を2回渡した」と供述していることが明らかになった。大阪の理事長は、業者選定前に大学側から入手した内部資料を都内の設計事務所に提供したことも明らかになっている。さらに、逮捕された日大元理事が、付属病院の医療機器調達に絡んで大学に約1億5,000万円を不正に支出させた疑いが23日に発覚し、特捜部は真相解明のために捜査を続けている。(参考)日大背任事件 元理事 実態のない契約書作り資金の一部還流か(NHK)「日大理事長に5000万円」複数回提供も供述 理事長は否定(産経新聞)「日大理事長側に6000万円」本人は否定、医療法人元トップ供述(日経新聞)医療機器巡り資金流出か 背任容疑の日大元理事1.5億円、地検解明へ(同)

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J&Jコロナワクチン、ギラン・バレー症候群発症が約4倍/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するAd26.COV2.Sワクチン(Janssen/Johnson & Johnson製)の接種により、ギラン・バレー症候群の発症リスクがわずかではあるものの統計学的に有意に高まることが、米国食品医薬品局(FDA)のEmily Jane Woo氏らの解析で明らかとなった。FDAは、承認後安全性サーベイランスにおいてAd26.COV2.Sワクチン接種後のギラン・バレー症候群発症に関し懸念を示していた。なお、著者は今回の結果について、「受動的な報告システムと推定症例の定義の限界があり、確定診断を下すための医療記録の分析が終わるまでは予備的なものと考えなければならない」との見解を述べている。JAMA誌オンライン版2021年10月7日号掲載の報告。ワクチン有害事象報告システム(VAERS)のデータを解析 研究グループは、米国のワクチン有害事象報告システム(VAERS)を用い、2021年2月~7月の期間で、Ad26.COV2.Sワクチン接種後に発生したギラン・バレー症候群と推定される症例を特定し、患者背景、臨床所見ならびに関連病歴などについて調査した。 報告率を推定するとともに、ワクチン接種データと自然発生率の公表データを用いて、年齢で層別化したワクチン接種後42日および21日のリスク期間でO/E(observed to expected)解析を行った。O/E解析では、自発的な報告による観察値と、標準化された症例定義に基づいて推定・公表された一般集団(ワクチン未接種者)におけるギラン・バレー症候群の自然発生率に基づく期待値の率比を算出した。自然発生率と比較すると、ワクチン接種後の報告例は約4倍多い 2021年7月24日時点で、VAERSにおいてAd26.COV2.Sワクチン接種後のギラン・バレー症候群(推定)発症の報告は130例確認された。年齢中央値は56歳(四分位範囲[IQR]:45~62歳)、65歳未満が111例(86.0%)、男性が77例(59.7%)であった。ワクチン接種後発症までの期間中央値は13日(IQR:10~18日)で、105例(81.4%)が21日以内、123例(95.3%)が42日以内に発症した。121例(93.1%)は重篤で、うち1例は死亡した。 米国成人におけるワクチン接種回数は約1,320万9,858回であることから、推定粗報告率は接種10万回当たり1例であった。42日間のリスク期間における全体の推定率比は4.18(95%信頼区間[CI]:3.47~4.98)となり、18歳以上の成人を対象とした最悪シナリオ解析の場合、推定絶対頻度として10万人年当たり6.36の増加に相当した(自然発生では10万人年当たり約2、ワクチン接種後は10万人年当たり約8.36[147万2,162人年で123例の報告に基づく])。いずれのリスク期間においても、18~29歳を除くすべての年齢層で率比が上昇していた。

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コロナワクチン3回目接種の有効率95.6%、第III相試験結果/ファイザー

 米国・ファイザーは10月21日に発表したプレスリリースで、同社の新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンについて、3回目のブースター接種の効果を検証した第III相臨床試験の結果、95.6%の有効性を示したことを公表した。ファイザー製ワクチンを巡っては、米国においては9月22日より、65歳以上および重症化リスクが高い18〜64歳、SARS-CoV-2への頻繁な曝露を伴う18〜64歳へのブースター接種がすでに実施されているほか、日本を含むワクチン使用国で検討が進んでいる。ファイザーは、「本結果はブースター接種のメリットを示すさらなるエビデンスを提供するものだ」とコメントしている。 第III相臨床試験は、16歳以上で、ファイザー/BioNTech製ワクチンをすでに2回接種済みの1万人超を対象に実施。参加者の年齢中央値は53歳で、参加者の55.5%が16歳~55歳、65歳以上は23.3%だった。2回目接種までと同量のワクチン(30μg)を接種する3回目ブースター群とプラセボ群に1:1で無作為に割り付けた。2回目投与からブースターまたはプラセボ投与までの中央値は約11ヵ月。有症状のCOVID-19発症については、ブースターまたはプラセボ投与の7日後から測定され、フォローアップ期間の中央値は2.5ヵ月だった。期間中に確認されたCOVID-19症例は、ブースター群で5例、プラセボ群では109例で、相対ワクチン有効率は95.6%(95%信頼区間[CI]:89.3~98.6)だった。有害事象プロファイルは、ほかのワクチンの臨床安全性データと同程度で、安全性に関する懸念は特定されなかった。 ファイザーは、今回のデータを国内外の規制当局に提出し、ブースター接種の必要性を裏付ける論拠としたい考えだ。

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新型コロナワクチン接種後のリンパ節腫脹はPET陽性になる【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第196回

新型コロナワクチン接種後のリンパ節腫脹はPET陽性になるphoto-acより使用私の職場で、新型コロナワクチン接種後に腋窩リンパ節が腫大した看護師さんがいました。当時そこまで知見が集まっていなかったものの、稀ながらこういう副反応もあることを海外の文献で読みました。しかし、がん診療においては解釈に注意が必要です。Schapiro R, et al.Case report of lymph node activation mimicking cancer progression: A false positive F 18 FDG PET CT after COVID-19 vaccination.Curr Probl Cancer Case Rep . 2021 Dec;4:100092.40代女性が、2011年末に左乳がんと診断されました。乳房切除術と、左センチネルリンパ節の摘出を受け後、タモキシフェンの投与が行われました。その後、骨転移を指摘され、レトロゾール、パルボシクリブ、デノスマブによる治療を開始しました。定期的にPET CT検査を受け、次第に臨床的効果が得られている状態でした。しかし、2021年1月の定期的PET CT検査で、左腋窩リンパ節および大胸筋下のリンパ節に集積がみられました。転移を疑っていろいろと検査を受けることになりましたが、生検前にリンパ節が正常サイズに戻っていることがわかりました。あれれ?おかしいぞ。よくよく聞いてみると、患者さんは2021年1月のPET CT検査の1週間前、左腕にモデルナ社製の新型コロナワクチン接種を受けており、これがPET CT偽陽性の原因だったと考えられました。新型コロナワクチン接種後のリンパ節腫脹については、本当に注意が必要で、とくにがん診療をされている医師は安易に転移の診断をしないよう注意が必要です。

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第80回 身近なコロナ死から考える、ワクチン接種キャンペーンへのもやもや感

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の新規感染者報告数が急激な減少を続けている。10月18日の全国での新規感染者報告数は230人。この日の東京都の新規感染者報告数は29人。これ以前に東京都で同じ数の新規感染者報告だったのは2020年6月22日だから、実に1年4ヵ月ぶりの低水準である。この感染者急減の原因については諸説あるが、ワクチン接種の進展が一因であるだろうということは多くの専門家の共通した認識のようだ。10月20日公表の日本国内でのワクチン接種完了率は68.3%、高齢者に限ると90.2%にものぼる。全世界での接種完了率で見ても、日本はすでにアメリカ、イギリス、フランス、ドイツも追い抜いている。ワクチン接種の本格スタートが先進国の中でも遅かったとの指摘はあったものの、その後は先頭集団に追いつき、一部は追い抜くというこの結果は、高度経済成長期に見せた「日本らしさ」なのかとも思ったりする。もっとも従来から国が希望者への2回接種を11月中までに完了したいと言っていることを考えれば、これから接種スピードは減速し、徐々にプラトーになることは自明である。そうした中で、現在本格接種が最も遅くなった若年層へのワクチン接種率向上策が一部の自治体で行われている。「若年層のワクチン接種率向上へパソコンなどあたるキャンペーン」 (長野県、NHK)「泉佐野市、ワクチン接種完了でピーチポイント 若年層に動機付け 、4600人に」 (Aviation Wire.jp)「ワクチン接種率向上へ マツダ車などをプレゼント 広島県」 (広島ホームテレビ)「ワクチン接種で石垣島旅行が当たる! 浦添市が接種率向上に向けキャンペーン」 (沖縄テレビ放送)若者向けにインセンティブを用意したキャンペーンを行うのは、若年世代は重症化する危険性が低いために新型コロナを自分事としてとらえきれない、また若年ゆえに長期的な副反応などへの懸念が起きやすいことなどから、ワクチン忌避がほかの年代と比べて多いと指摘されていることも影響しているだろう。たとえば、東京都が行ったアンケート調査結果でも若年層に接種忌避の割合が高いことが明らかになっている。こうした「モノで釣る」的なことに対してはさまざまな意見があるだろう。私個人についていえば、賛成半分、反対半分なのである。そもそも今回、日本でワクチン接種が始まった後に感染力が高い変異株・デルタ株が登場している。米国疾病予防管理センター(CDC)が試算したデルタ株の基本再生産数は5~9.5人。ここから計算すると集団免疫獲得のために求められる接種率は80~89%になる。ところが現在世界を見回しても、接種完了率80%を超えているのは、アラブ首長国連邦(UAE)とポルトガル、地中海の小国マルタしかない。この事実だけでも接種完了率80%以上を実現するのは容易ではないことは明らか。とりわけ人口が1億人を超える日本にとって難易度は高いと言わざるを得ない。そうした中で少なくとも80%を実現するためには、既成概念にとらわれていてはいけないというのがインセンティブ政策へ一定の賛意を示す理由である。一方で反対とも考えてしまう理由は、行政施策の平等性の観点からである。民間企業の戦略ならまだしも、行政施策で特定層に限定したインセンティブ供与は不公平と言うべきである。しかも、今回の新型コロナに対するmRNAワクチンは「副反応自慢大会」とまで言われるほど、SNS上では各人が経験した副反応経過が書き込まれている。高齢ほど発熱などの副反応は軽いと言われているものの、高齢者の中にも副反応経験者はそこそこにいる。それだけ苦痛を伴うものを自ら進んで接種した人ではなく、ワクチン接種をためらっている人にインセンティブを与えるのは、いわば「ゴネ得」にもなりかねない。その意味では若年層へのワクチン接種インセンティブ政策を行う自治体には、ぜひともほかの年代層へも広く薄くて良いので何らかのメリットを提供してほしいと思うのである。また、接種率向上という意味で地方自治体に今一度奮起してほしいことがある。それはアナフィラキシーなどの理由以外で1回接種に留まっている人、あるいは高齢層での未接種者に対する再度の啓発・勧奨アプローチである。現状のように65歳以上の高齢者での接種完了率が90.2%にまで達していることを考えれば、対象者は絞り込みやすいだろう。さらに付け加えれば、接種の優先順位も影響したと思われるが、基礎疾患などがあれば重症化や死に至る可能性がある40代、50代の接種率も向上可能な余地がまだ残されていそうだ。まあ、このように思う理由の一つには最近の私個人の経験も影響している。先週、私用のため東海地方の某市の安ホテルに宿泊していた時のことだ。午前3時半過ぎに珍しく中途覚醒してスマホを手に取った際、LINEにしばらく連絡を取っていなかった中学の同級生からメッセージが着信していることに気づいた。寝ぼけ眼でメッセージを開くと次のように書いてあった。「○○、コロナで亡くなったって、明日お通夜で明後日告別式です」○○は52歳で私の中学、高校の同級生だ。基礎疾患があることは本人からは聞いていたのでリスクは高かったのだろうが、後に聞いたところ入院後すぐ重症化してECMOを装着し、2ヵ月間も眠り続けて力尽きたとのこと。通夜に参列した同級生などによると、たまたま間に合わなかったのか、本人が避けていたのか、単に面倒で後回しになっていたのかはわからないが、ワクチンは未接種だったという。いまさら言っても詮無き事ではあっても、もし接種していたらと考えずにはいられない。私事をつらつら書いて恐縮だが、彼とは6年間も同じ学校にいたが、中学も高校も1学年で350人超というマンモス学校だったので同じクラスになったことは一度もない。ただ、中学1年生の時はクラスが隣同士。中学時代は体育の授業が男女別で2クラス合同なので互いに見知ってはいた。中学は各種運動部を中心とする任意参加の部活動と、全員がどれかに参加する文化系の必修クラブがあった。自分の部活動は水泳部、必修クラブは写真クラブ。彼の部活動はテニス部だった。ちなみに中総体といわれる全国中学校体育大会の地元の予選は、水泳競技以外がほぼ1週間程度のメイン日程の中で集中的に行われ、そこから2週間ほど経ってから水泳競技だけが行われる。ということで、私の場合は中学3年間、メイン日程中は写真クラブの活動が中心だった。カメラを持って各競技場に配置され、3年間担当したのが今回亡くなった彼が所属していたテニス会場だった。中学1年時に撮影に行った際は同じクラスにテニス部員がいなかったこともあり、自分は昼食時に同じ中学のテニス部員たちが陣取っていた場所からちょっと離れたところに座り込み一人で弁当を食べていた。2、3口ほど食べた時、いきなり背中に誰かがぶつかった。振り返ると体育の授業で見知っていた彼が、自分の背中をこっちの背中にくっつけてニッコリ笑いながら自分の弁当を食べ始めた。背中をくっつけ合いながら互いに弁当をほおばって時々会話をした。テニス部OBが差し入れたジュースが余った時にわざわざ持ってきてくれたのも彼だ。心細かった時の事なので、この時のことははっきり覚えている。そんな彼も中年になり、肥満気味になり頭部も薄くなった。でも相変わらず性格は明るかった。最後に会った時も前歯が欠けたままガハガハ笑いながらタバコを吸っていた。今回、LINEをくれた同級生から教わった葬祭場に連絡を取り供花の手配をしたが、そんな花が最も似合わない中年男性の彼に花を贈ることになるなんて思いもしなかった。もうこんな思いはごめんである。だからこそ自分も今一度、一般向けにどのようなワクチン情報を発信すべきかと思いを巡らしている。

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ブレークスルー感染、重症化因子に肥満や心疾患

 ブレークスルー感染で重症化する患者の特性は何か。米国で行われた研究結果がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版9月7日号に掲載された。 イエール医科大学のPrerak V. Juthani氏らはイエール大学のヘルスケアシステムのデータを使い、SARS-CoV-2感染が確認された入院患者を対象としたシステマティックレビューを行った。2021年3月23日~7月1日にSARS-CoV-2で入院した患者(入院時にPCR検査で陽性)を対象とした。接種したワクチンはmRNA-1273(モデルナ製)、BNT162b2(ファイザー製)、Ad.26.COV2.S(Janssen製)で、ワクチンの完全接種は症状発現または検査陽性より少なくとも14日前にワクチン接種を完了(モデルナ製、ファイザー製は2回、Janssen製は1回)していること、とした。 主な結果は以下のとおり。・イエール大学の関連病院に入院した969例の陽性患者のうち 172 例(18%)が入院時に少なくとも 1 回ワクチンを接種していた。このうち103例は部分接種(モデルナ製またはファイザー製1回)、15例は完全接種ながら接種から14日が経過しておらず、54例が完全接種でブレークスルー感染と認定された。・ブレークスルー感染の54例の重症度を評価したところ、25例(46%)が無症状、4例(7%)が軽度、11例(20%)が中等度、14例(26%)が重症または重篤だった。・重症・重篤患者の年齢中央値は80.5(IQR:76.5~85.0)歳で、14例中4例が集中治療を必要とし、1例が人工呼吸を必要とし、3例が死亡した。・重症・重篤患者14例の既往症は、過体重(BMI25kg/m2以上、n=9)、心血管疾患(n=12)、肺疾患(n=7)、悪性腫瘍(n=4)、2型糖尿病(n=7)、免疫抑制剤の使用(n=4)などであった。14例中13例がファイザー製を接種していた。 著者らは、以下のようにまとめている。・入院患者の5分の1が少なくとも1回のワクチン接種を受けていたが、その多くは完全接種ではなく、ワクチンの高い感染予防や重症化予防効果が確認された。・ブレークスルー感染例の4分の1が重症化したことは、ワクチンの有効性を減じる変異株の出現や高齢、過体重、免疫抑制剤の使用などの合併症を持つ患者ではワクチンに対する免疫反応が効かないなど、さまざまな因子を反映していると考えられる。・ファイザー製接種者はモデルナ製やJanssen製に比べ、ブレークスルー感染後の重症化例が多かった(2021年5月17日までにコネチカット州で配布されたワクチンはファイザー製135万8,175、モデルナ製104万4,420、Janssen製26万7,000)。・今後の研究では、ブレークスルー感染者のワクチン応答が不十分である因子を特定し、緩和することが必要である。

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第80回 保険医協会が各党に要請した「現場・患者目線」のコロナ政策

19日に公示された衆議院選挙。続くコロナ禍の中で、各政党が掲げる医療政策などの主張が報道されているが、医療者側が発信する要望はあまり報じられていない。10万人の医師・歯科医師が加入する全国保険医団体連合会のうち、近畿ブロックに加盟する8つの医科・歯科の保険医協会は、衆議院解散(10月14日)前の10月8日、新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制と公衆衛生行政の拡充を求める要請書を、各政党に送付した。要望は6つの大項目からなっており、以下で詳しく紹介する。1.新興感染症から人々の生命・健康を守る国の「公的責任」をより発揮していただきたい新興感染症という生命と健康の危機に人々が見舞われる今日、人々を守るのは国の義務。「自助・共助」であってはならない。新型コロナウイルス感染症が生じさせるあらゆる危機(疾患自体によるものに止まらず、雇用・経営・保育・福祉等生活上の危機も含む)に対して、常に公的責任を発揮した政治の実現を望む。2.感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の謳う「良質かつ適切な医療」をすべての新型コロナウイルス感染症患者に保障していただきたい(1)1床でも多く、病床が確保できるように―日常から空床で準備しておく病床数を増やす。―感染拡大期には一般病床でも感染症患者を受け入れることになるため、一般病床の運営基準を見直す。―2次医療圏内の各医療機関の感染拡大時における役割分担をあらかじめ想定しておく。連携の中心は公立・公的病院が担えるようにする。―地域医療構想を活用した病床数コントロール策を抜本的に見直す。とりわけ、高度急性期・急性期を減らし、回復期へ移行させる方針はやめる。―医師数抑制策を転換し、医師数全体をOECD(経済協力開発機構)諸国並みに増員する。研修過程において、すべての医師に標準的な感染症対策の知見を身につけさせると共に、感染症専門医の育成を強化する。―第6波に向け、各都道府県における臨時医療施設の設置に対し、国として財政補助を行う。療養環境を可能な限り病院に近づける。(2)病床逼迫時の地域における医療・福祉・生活の保障が行えるように―診療所を含めたすべての医療機関が参加する感染症対策の体制を日常から構築しておく。構築する体制はせめて行政区単位、可能であれば日常生活圏域単位とする。―自宅療養の患者に対する医学管理は行政機関と地区医師会を窓口とした地域の医療機関が連携して担う。―宿泊療養施設は可能なまでに病院に近い療養環境と医療の提供を可能にし、すべての都道府県で中和抗体療法も行えるようにする。―自宅療養、宿泊療養を支える地域の医療機関に対し、休業補償も含めた十分な支援体制と、必要に応じた検査の実施を公費で保障する。3.保健所の危機を克服し、地域住民の生命を守る体制を再構築する(1)保健所と地域の医療者が連携して自宅療養者・入院待機者の生命を守る体制が確立できるよう、財政的・人的保障を行う。(2)自宅療養者への生活支援は、市町村が担えるよう財政的・人的保障を行う。(3)政令市保健所のうち、行政区保健所を統合した自治体において、当面、感染症対策機能を行政区単位で担えるようにする。4.PCR検査体制の拡充について(1)人々が自ら感染を拡げないために、主体的に気軽に無料で検査を行える仕組みを構築する。5.インフルエンザとの同時流行に備え、ワクチン接種の啓発と確保を(1)希望する人にワクチンが行き渡るように確保する(2)地域の医療機関において簡便に季節性インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の鑑別・診断が行えるよう、同時迅速診断キットの供給を推進する。6.新型コロナワクチンについて、第16クール以降の供給見通し、供給スケジュールの全体像を早急に示すこと(1)いつまでに供給が行われるのか全体の見通しを供給スケジュールとして提示するとともに、第16クール以降のワクチン供給量を早急に明示する。(2)ワクチンを接種できない人たちに対する差別的取り扱いがなされないようにする。とりわけワクチン接種証明を、社会福祉をはじめとした公共サービスの利用条件とすることがないようにする。要請はいずれも切実な医療者の声を反映した内容である。与野党に関係なく、コロナ政策においてはぜひとも医療現場の願いと声に真摯に耳を傾け、本当に求められている政策を実現してほしい。

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ファイザー製ワクチン後の心筋炎、発症率と重症度/NEJM

 イスラエルの大規模医療システムにおいて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)を1回以上接種した人の推定心筋炎罹患率は2.13/10万人で、16~29歳の男性の罹患率が最も高く、重症度は軽症~中等症だったという。イスラエル・Rabin Medical Center・Beilinson HospitalのGuy Witberg氏らが、1回以上接種者250万人超を調べた結果を報告した。心筋炎発症とCOVID-19のmRNAワクチン接種との関連を示唆する報告がされているが、これまで頻度や重症度について大規模な調査は行われていなかった。NEJM誌オンライン版2021年10月6日号掲載の報告。イスラエルで、初回ワクチン接種日から42日までの心筋炎罹患率を分析 研究グループは、イスラエル最大の医療組織(HCO)「Clalit Health Services」のデータベースから、mRNAワクチンBNT162b2を1回以上接種し、心筋炎の診断を受けた患者を抽出した。心筋炎の診断は、米国疾病管理予防センター(CDC)の定義に基づき、循環器専門医が判断した。 患者の電子健康記録から、症状、臨床経過、アウトカムを要約。Kaplan-Meier法で、初回ワクチン接種日から42日までの心筋炎罹患率を分析した。16~29歳・男性の推定罹患率が最も高く10.69/10万人 ワクチン接種をした16歳以上のHCO会員250万人超において、心筋炎の診断基準に適合した症例は54例だった。ワクチン1回以上接種者の推定罹患率は、2.13/10万人(95%信頼区間[CI]:1.56~2.70)だった。推定罹患率が最も高かったのは、16~29歳の男性で、10.69/10万人(6.93~14.46)だった。 心筋炎の重症度は、76%が軽症で、22%が中等症だった。心原性ショックとの関連が認められたのは1例だった。 心筋炎発症後、中央値83日の追跡期間中、病院再入院は1例で、退院後に原因不明の死亡が1例報告された。入院中に心エコー検査で左室機能不全が認められたのは14例で、そのうち退院時点で同機能不全を有していたのは10例、うち5例はその後の検査で正常な心機能が確認された。

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ファイザー製ワクチン後の心筋炎、非接種者と比較した発症率/NEJM

 mRNAワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)接種後の心筋炎の罹患率は、低率だが、とくに若い男性の2回接種者で増大すること、また臨床症状は概して軽症であったことを、イスラエル・Hadassah Medical CenterのDror Mevorach氏らが同国保健省のモニタリングデータを分析して報告した。イスラエルでは2021年5月31日時点で、約510万人がmRNAワクチン・BNT162b2の完全接種を受けている。同国保健省は、有害事象のモニタリングにおいて心筋炎が報告された早期の段階から積極的なサーベイランスを行っていたという。NEJM誌オンライン版2021年10月6日号掲載の報告。初回接種・2回目接種後のリスク差などを評価 研究グループは2020年12月20日~2021年5月31日のイスラエル保健省のデータベースから、臨床・検査データや退院サマリー、電子カルテを後ろ向きにレビューし、全心筋炎について、Brighton Collaboration定義を用いて分類した。 心筋炎の罹患に関する分析では、ワクチン初回接種後と2回目(21日後)接種後の罹患率を、リスク差を算出して比較。診断確実性とは独立した、ワクチン初回接種後21日以内、2回接種後30日以内の、観察/予測罹患率の標準化罹患率比を算出して評価した。また、2回目接種後30日の率比を、ワクチン非接種者との比較によって求め評価した。2回目接種後の標準化罹患率比は全体では5.34 心筋炎症状が認められた304例のうち、21例は別の診断名が付いていた。それらを除く283例のうち、BNT162b2ワクチン接種後の発症例は142例で、うち136例がdefinitive/probableに分類された。 definitive/probable例のうち129例(95%)が軽症と判断されたが、劇症だった1例は死亡している。 ワクチン1回目と2回目接種後のリスク差は、全体では1.76/10万人(95%信頼区間[CI]:1.33~2.19)で、16~19歳男性で最も差が大きく13.73/10万人(8.11~19.46)だった。 過去のデータに基づく予測値と比較した2回目接種後の標準化罹患比は5.34(95%CI:4.48~6.40)で、16~19歳男性の2回目接種後が最も高く13.60だった(9.30~19.20)。 ワクチン完全接種者の2回目接種後30日の、ワクチン非接種者に対する心筋炎発症に関する率比は2.35(95%CI:1.10~5.02)で、16~19歳男性で8.96(4.50~17.83)と最も高く、6,637人中1人の割合で発症していた。

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第80回 「首相≒財務省」vs.「厚労省≒日本医師会」の対立構造下で進む岸田政権の医療政策

グイグイとは進められなかった菅政権こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末は、NHK BSでMLB中継を1日2試合ずつ観ていたらあっという間に終わってしまいました。MLBは今、リーグチャンピオンシップシリーズの真っ最中です。ナショナルリーグは昨年同様、ロサンゼルス・ドジャースとアトランタ・ブレーブスが戦っているのですが、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督の顔が自民党の甘利 明幹事長に瓜二つなのが気になって仕方ありません。ひょっとしたら、ドジャースの勝敗と自民党の衆院選での勝敗がリンクしてくるかも…と思いながら、私は1995年からワールドシリーズ優勝から遠ざかっているブレーブスを応援しています。さて、今回は岸田 文雄新総理大臣が取るであろう医療政策について、ちょっと考えてみたいと思います。この連載では、昨年秋、菅 義偉総理大臣が誕生したときに、その医療政策の行方を予想しました(「第23回 実は病院経営に詳しい菅氏。総理大臣になったらグイグイ推し進めるだろうこと(前編)」「第24回 オンライン診療めぐり日医と全面対決か?菅総理大臣になったらグイグイ推し進めるだろうこと(後編)」)。この時は、「公立・公的病院の再編・統合」と「オンライン診療の推進」に特に力を入れるのではないか、と書きました。概ね方向性は正しかったのですが、いかんせん菅氏は1年しか総理の座にいなかったので、その進捗状況は“グイグイ”とまではいかなかったようです。コロナ対策を担当する3閣僚が全員交代菅氏から政権を引き継いだ岸田首相ですが、9月4日の岸田内閣の組閣に当たっては、閣僚の配分が自民党内の派閥の駆け引きで決まったため、「派閥政治への先祖返り」(政治学者・原 彬久氏。朝日新聞10月5日朝刊)などと揶揄されました。私も岸田首相が自身で得意だと語る「人の話を聞くこと」とはこういうことだったのか、と得心した次第です。コロナ対策を含む医療政策を担当する3閣僚についても、派閥への配分を行ったこともあって、全員が交代しました。厚生労働大臣は田村 憲久氏から後藤 茂之氏に、緊急事態宣言に関する法律を所管する経済財政・再生担当大臣は西村 康稔氏から山際 志郎氏に、ワクチン接種推進担当大臣は河野 太郎氏から堀内 詔子氏に代わりました。重要ポストであるにも関わらず、新任の3人はいずれも初入閣です。「コロナ対応の司令塔機能が曖昧」との批判に応えた人事か初入閣の3人で大丈夫か、と心配の声も上がっているようです。しかし、菅政権でのコロナ対応については、検査や医療提供体制を担当する厚労大臣と、緊急事態宣言、ワクチン接種を担当する大臣が別で機能が分散し、司令塔機能が曖昧だったとの批判も強かったのも事実です。まだあまりキャラの立っていない初入閣3人で、仲良く結束して頑張って欲しい、という意図のようです。岸田首相は新内閣が発足した4日の記者会見で、「ワクチン、医療、検査の取り組みの強化もついて対応策の全体像を早急に国民の皆さんに示すよう、3閣僚に指示した」と語りました。そのコロナ対策ですが、政府は15日、第6波を想定した今後の新型コロナ対策の骨格を決めました。骨格は、感染力が今夏の第5波より2倍になっても対処できる医療提供体制の整備を基本とし、「幽霊病床」の実態把握と解消、国の権限で国立・公立・公的病院に専用病床確保、年内に3回目ワクチン接種開始などの施策を盛り込んでいます。11月には対策の全体像をまとめるとのことです。幸いなことに、菅前首相が辞任を表明した頃からコロナの患者数は減少傾向に入り、現在でも患者数は最低レベルで推移しています。そのため、新内閣のコロナ対策はまだドタバタを経験しないで済んでいます。岸田首相のコロナ対策については、衆院選における与野党の政策にも大きな差異はないことから、しばらくは様子見でいいと思います。岸田首相の医療政策の“ブレーン”は?むしろ、現時点で医療関係者が気にしておくべきは、岸田首相の医療政策を指南する“ブレーン”ではないでしょうか。10月5日の日本経済新聞朝刊は、「コロナ対策 初入閣3人で 『厚労省の壁』少ない3人で対処」と題した記事で、「自民党内では厚労省の新型コロナ対策に関し『従来の方針や法令の整合性を理由に、抜本的な改革に慎重だった』との見方がある」として、「菅政権でワクチン担当を別に置いたのも、官邸主導にするためだった。後藤氏は党側でコロナ対策を議論してきた。霞が関の論理を熟知する旧大蔵省出身で、厚労官僚の壁を打破させる狙いが透ける」と書いています。「厚労官僚の壁を打破」したいのは自民党だけではありません。財務省も方向性は若干異なるものの、同じスタンスと言えます。10月8日のMEDIFAX webは、「岸田政権発足、22年度改定への影響は」と題する記事で新任の鈴木 俊一財務大臣ついて、次のように書いています。「鈴木財務相は党の総務会長などを務め、厚労分野の政策を議論する党の社会保障制度調査会長なども歴任してきた。その鈴木氏は就任会見で、『社会保障の受益と負担のアンバランス』を構造的な問題として指摘。社会保障の持続可能性を担保するため、財政健全化の重要性を強調した」。財政健全化とは医療費を含む社会保障費の適正化に他なりません。こうした閣僚人事の他にも、医療関係者を驚かせた官僚人事がありました。財務省で長らく厚労予算を見てきた宇波 弘貴氏(前・財務省主計局次長)が首相秘書官になったのです。今回の首相秘書官人事では財務省から2人を起用した一方で、厚労省からはとっていません。宇波氏は、医療費を含む社会保障関係費の増大に主計局主計官(厚生労働第一担当)の頃から警鐘を鳴らし、病床の再編による効率化の必要性を強く訴えてきた人物です。地域医療構想についても「うまくいかない場合は、より強い方策を取るべき」と語ったこともありました。医療政策は財務省主導で進む可能性こう見てくると、岸田首相は医療政策を財務省主導で進めたいと考えているようです。これからの対立構造を単純化するとしたら、「首相≒財務省」 vs. 「厚労省≒日本医師会」でしょうか。では、どんな政策になるのでしょう。そのヒントになるのが、本連載の「第56回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの(後編)」「第59回 コロナ禍、日医会長政治資金パーティ出席で再び開かれる? “家庭医構想”というパンドラの匣(後編)」でも紹介した、財務省主計局が4月15日、社会保障制度の見直しについて議論する財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会長=榊原 定征・前経団連会長)において示した、「社会保障等」に関する資料1)です。この資料、医療については、「効率的で質の高い医療提供体制の整備」「新型コロナウイルス感染症への対応」「全世代型社会保障改革の残された課題」「薬剤費の適正化」の4項目について述べられており、中でも2022年度診療報酬改定に向けては、「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」との方向性を明示しています。2022年の診療報酬改定の議論が本格化してきましたが、なかなか進まない地域医療構想や地域における病院の役割分担、そして「かかりつけ医」の制度化などを、日本医師会の反対などを押しのけながら、どこまでグイグイと推し進めることができるかが、岸田政権下での医療政策の見どころだと思います。財務事務次官が「文藝春秋」にバラマキ批判の寄稿財務省ということでは、折しも、財務省の矢野康 治事務次官が今月発売の「文藝春秋(11月号)」に寄稿した「財務次官、モノ申す『このままでは国家財政が破綻する』」が各方面に波紋を広げています。寄稿は最近の与野党の政策論争について、「数十兆円もの大規模な経済対策が謳われ、一方では、財政収支黒字化の凍結が訴えられ、さらには消費税率の引き下げまでが提案されている。まるで国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話が聞こえてきます」と批判、「バラマキ合戦は、これまで往々にして選挙のたびに繰り広げられてきました。でも、国民は本当にバラマキを求めているのでしょうか」と疑問を投げかけています。コロナ対策についても、「いま日本国内で真に強く求められているのは、『金を寄越せ、ばらまけ』というよりも、いざという時の病床確保であり、速やかなワクチン接種であり、早期の治療薬の提供であり、ワクチン・パスポートなどの経済活動をうまく再起動させるためのイグニション(点火装置)の方です。これらは、カネ以前の問題であったり、すでに財政措置は終わっているものであったり、民主導でやらざるを得ないものであったりなど、巨額の財政出動(公助)を必要とするものではありません」と言い切っています。この寄稿については、与野党から猛反発が沸き起こったようですが、鈴木財務大臣は12日、閣議後の会見で、矢野氏は「麻生太郎前財務相に了解を得ていた」と話し、読んだ印象は「財政健全化に向けた一般的政策論」であり「今までの政府の方針に基本の部分で反するようなものではない」と語ったそうです。官僚が与野党の政策を批判することは極めて異例のことで、問題視する向きもあるようですが、私自身は寄稿の内容は全くの正論だと思いました。いずれにせよ、こうした正論が財務省事務次官から一般人に対して発せられ、その発信を財務大臣も岸田首相(テレビ番組で「いろんな意見が出てくる。これは当然あっていい」とコメントしています)も一応“認めた”ということは、医療を含め、今後のさまざまな政策に少なからぬ影響を及ぼすかもしれません。まずは、次期診療報酬改定での「かかりつけ医」の制度化や、外来機能報告制度の議論に注目したいと思います。参考1)財政制度分科会(令和3年4月15日開催)資料一覧/財務省

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新型コロナの日本初のレプリコン(次世代mRNA)ワクチン、第I相試験開始/VLPセラピューティクス・ジャパン

 新型コロナウイルス感染症に対する日本初となるレプリコン(次世代mRNA)ワクチン(VLPCOV-01)の第I相試験を開始したことを、VLP Therapeutics Japan合同会社(以下、VLPセラピューティクス・ジャパン)が12日、発表した。レプリコンワクチンとは少量の接種で十分な抗体が作られる自己増殖型mRNAワクチン レプリコン(次世代mRNA)ワクチンとは、少量の接種で十分な抗体が作られる自己増殖型のmRNAワクチン。レプリコンワクチンは現行のmRNAワクチンの10~100分の1程度の接種量となることから、短期間で日本の全人口分の製造が可能となることや、副反応の低減が期待される。現行のワクチンは新型コロナウイルス表面にある突起状のSタンパク質全体を抗原とするが、レプリコンワクチンはSタンパク質のうちウイルスが人の細胞に結合して感染する受容体結合部位(RBD)のみを抗原にしている。そのため、レプリコンワクチンは不要な抗体を作らないことによる高い安全性、多様なRBDへの抗体産生による変異株への効果も期待されるという。 第I相試験では、20~65歳の健康成人男女45名を対象とし、自己増殖型のmRNAワクチンであるレプリコンワクチン(VLPCOV-01)を2回筋肉内接種した時の安全性と免疫原性(有効性)を検討する。被験者を用量が異なる3群(各15名)に分け、0.5mLを2回、4週間隔で接種する。本試験の中間解析結果を踏まえ、2022年春に第II/III相試験および65歳以上の高齢者も対象とする第I相試験の続きを開始する予定。 VLPセラピューティクス・ジャパンは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)および厚生労働省の支援のもと、国内6機関(医薬基盤・健康・栄養研究所、大分大学、大阪市立大学、国立国際医療研究センター、国立病院機構名古屋医療センター、北海道大学)と協力し、国産コロナワクチンの研究開発・臨床試験を進めている。なお、VLPCOV-01の治験薬は富士フイルム株式会社が製造している。■VLP Therapeutics Japan合同会社(代表職務執行者:赤畑 渉)2020年に米国VLP Therapeutics, Inc.の100%子会社として設立。■米国VLP Therapeutics, Inc.(CEO:赤畑 渉)2013年に世界の「満たされていないメディカル・ニーズ」に応え、従来のワクチン療法を一変する革新的な治療法を開発するために赤畑氏が設立。

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第82回 コロナ感染後の後遺症にワクチンが有効

今月はじめに世界保健機関(WHO)が定義した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症をワクチンが予防のみならずその発生後の投与で治療しうることもフランスでの試験で示されました。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に確かにまたは恐らく感染した患者のその発症か無症状感染の診断確定からたいてい3ヵ月間に、代替診断が不可能な疲労・息切れ・認知機能障害などの症状が生じて少なくとも2ヵ月間続くことをWHOはCOVID-19後遺症(post COVID-19 condition)と定義しました1)。症状はCOVID-19の発症初期からひと続きのこともあればCOVID-19がいったん収まってから新たに発生することもあり、たいてい日常生活に影響を及ぼします。また、症状は小康と悪化を繰り返すか再発するかもしれません。COVID-19患者のほとんどは感染発覚時の症状が済めば感染前の健康を取り戻します。しかしCOVID-19患者の10人に1人、ともすると5人に1人はWHOが定義したような数週間から数ヵ月にも及ぶ後遺症に陥ることがこれまでの試験で示唆されています1)。先月にLancet Infectious Diseases誌に発表された英国での試験によるとワクチンを接種済みであればたとえSARS-CoV-2に感染してもそういう後遺症を生じ難くなるようです。試験ではワクチン接種済みの97万1,504人のうち2,370人(0.2%)がSARS-CoV-2に感染し、ワクチン接種済みだと28日以上の後遺症の発現率が約半分で済んでいました2,3)。ワクチンの効果はその予防にとどまりません。COVID-19後遺症に陥ってからの接種でその症状がより改善することがLancet誌掲載予定の試験結果で示されました4)。試験には恐らくまたは確かにSARS-CoV-2感染して症状が3週間を超えて続くフランスの患者910人が参加しました。それらの半数の455人は試験の観察期間の開始から60日以内に最初のSARS-CoV-2ワクチンを接種し、残り455人は接種しないままでした。観察期間の開始から120日後時点のワクチン接種群の後遺症は非接種群に比べてより緩和しました。また、17%の患者の後遺症は解消に至っており、非接種群のその割合8%をおよそ2倍上回りました。受け入れがたい症状の患者の割合はワクチン非接種群では46.4%と半数近かったのに対してワクチン接種群では5人に2人ほど(38.9%)で済んでいまいた。ワクチン接種群で入院を要した深刻な有害事象の発生率はわずか0.4%であり、COVID-19後遺症患者へのワクチン接種の安全性も確認されました。結論としてワクチンがCOVID-19後遺症の症状を改善することを示したことに加え、COVID-19後遺症が体内のどこかに居続けるウイルスや体内をめぐるウイルス断片に起因しうるという仮説も支持されました4)。参考1)A clinical case definition of post COVID-19 condition by a Delphi consensus, 6 October 2021 / WHO 2)Antonelli M,et al. Lancet Infect Dis. 2021 Sep 1;S1473-3099.00460-6. [Epub ahead of print] 3)Double vaccination halves risk of Long COVID / King’s College London4)Efficacy of COVID-19 Vaccination on the Symptoms of Patients With Long COVID: A Target Trial Emulation Using Data From the ComPaRe e-Cohort in France. pre-prints with THE LANCET. 29 Sep 2021.

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第74回 年内承認となるか?コロナ経口治療薬と抗体カクテルの予防適応

<先週の動き>1.年内承認となるか?コロナ経口治療薬と抗体カクテルの予防適応2.3回目ワクチン、12月からファイザー製で開始/厚労省3.第6波に向け、入院患者受け入れ体制2割増を/厚労省4.コロナ受け入れ病床確保の補助金の検証を/財務省5.コロナ特例診療報酬の廃止で補助金を交付、日医も評価6.行き届かない交付金、医師の働き方改革にも活用を/厚労省1.年内承認となるか?コロナ経口治療薬と抗体カクテルの予防適応米国食品医薬品局(FDA)は14日、米・メルクが開発中のCOVID-19経口治療薬モルヌピラビルについて、11月末に諮問委員会の会合を開き、効果や安全性を検証すると発表した。この結果を踏まえて緊急使用許可の可否が判断され、承認されれば、世界初の新型コロナ経口治療薬となる。メルクは承認を前提に、米政府に170万回分を供給する契約を結んでおり、日本政府も年内の特例承認を見据え、在庫を調達する方向で同社側と協議している。また、中外製薬は11日に、「カシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ点滴静注セット)」を用いた抗体カクテル療法について、予防薬および無症状の感染者に対する治療薬として適応拡大申請を行ったことをプレスリリースで公表した。こちらも年内の特例承認を目指す。(参考)コロナ飲み薬、年内にも登場 ウイルス増殖防ぐ―米メルクや塩野義が開発(時事ドットコム)コロナ飲み薬、米FDAが11月末に安全性検証…日本政府は調達する方向で協議中(読売新聞)【速報】コロナ予防と「無症状」にも 抗体カクテルの適用拡大申請(FNNプライムオンライン)2.3回目ワクチン、12月からファイザー製で開始/厚労省堀内 詔子ワクチン担当相は15日、3回目接種に使用する分として来年1月までに412万回分のファイザー・ビオンテック社「コミナティ筋注」を全国に配分することを決定し、都道府県に割り当てる量や配送スケジュールなどを通知した。接種は年内に開始する見込み。岸田 文雄首相は12日の衆参両院代表質問で、3回目のブースター接種も全額公費で負担する方針を示した。(参考)3回目の接種に向け約412万回分の配分決定 堀内ワクチン相(NHK)3回目ワクチン412万回分、11月に自治体へ配送 ファイザー製(毎日新聞)ワクチン3回目接種も全額公費負担へ 感染者は減少、人出は増加(東京新聞)新型コロナワクチン追加接種(3回目接種)に使用するファイザー社ワクチンの配分(3回目第1クール)について(厚労省)3.第6波に向け、入院患者受け入れ体制2割増を/厚労省政府は15日に新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、今冬に予想される第6波の感染拡大に向けた対策の骨子をまとめた。変異株の感染力が2倍となったことを想定し、今夏ピーク時の1.2倍の患者を受け入れられる入院医療体制の整備を行う。また、感染力が3倍になったときには国民に強い行動制限を求め、一般診療を制限して病床を確保する方針も明らかにした。病床確保に当たっては、現行法の下での国・都道府県知事に与えられた権限を最大限活用する。国立病院機構法・地域医療機能推進機構法に基づく「要求」を始め、大学病院や共済病院などへの要請も含め、国の権限を発動し、公的病院の専用病床をさらに確保する見込み。(参考)冬の感染対策、政府が骨格 入院受け入れ、第5波の1.2倍に(毎日新聞)第6波、感染力2倍想定 首相、「幽霊病床」の改善指示(日経新聞)資料 第79回 新型コロナウイルス感染症対策本部(内閣府)4.コロナ受け入れ病床確保の補助金の検証を/財務省11日、財務省は財政制度等審議会の財政制度分科会を開催し、COVID-19患者向け病床確保の補助金を受け取った医療機関の収支状況について検討した。感染拡大によって、2020年の医業収益は前年度に比べ平均で3.6億円減少していたが、新型コロナ関係の補助金によって、黒字幅は6.6億円と前年度の0.2億円より大きく改善した。これについて出席した委員からは、受け入れ実態を調べるために病床利用率のデータ公開を求める意見や、医療の提供体制の見直しを議論すべきといった意見が出された。(参考)コロナ病床確保の病院、補助金で黒字拡大…実際には受け入れ困難なケースも(読売新聞)“コロナ病床確保の医療機関への補助金 検証を” 財務省審議会(NHK)コロナ補助金で病院利益増 20年度平均6億円、財政審「検証必要」(毎日新聞)資料 医療機関に対する新型コロナ関連補助金の『見える化』(財務省)5.コロナ特例診療報酬の廃止で補助金を交付、日医も評価厚労省は、特例で認められていた医療機関における新型コロナウイルス感染防止に対する診療報酬の廃止に伴い、新たな補助金についての通知を都道府県に発出した。対象となる経費は、10月1日~12月末までに新型コロナ感染拡大防止対策に要した賃金、謝金、会議費、旅費や医療材料などの消耗品費、備品購入費など。以前から勤務している人や通常の医療提供に対する人件費は対象外となった。上限額は病院・有床診療所は10万円、無床診療所は8万円。11月1日から厚労省ホームページで電子申請を受け付ける。これについて、日本医師会は医療側の要望が受け入れられたとして評価している。(参考)「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金」のご案内(厚労省)令和3年10月以降の政府の新型コロナウイルス感染症に関する医療機関への支援策に一定の評価(日本医師会)6.行き届かない交付金、医師の働き方改革にも活用を/厚労省厚労省は、11日に医療介護総合確保促進会議を開催し、2020年度における地域医療介護総合確保基金の交付状況を公表した。医療従事者の確保・養成に関する事業や地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設の整備に関する事業には759億円が交付されたが、2020年度にスタートした勤務医の労働時間短縮に向けた体制の整備に関する事業は28億円の交付で、中にはゼロ%の自治体があることが指摘された。医師の働き方改革が実行される2024年度に向けて勤務医の労働時間短縮を進めるために、一層の活用を求める意見が出された。(参考)勤務医の労働時間短縮にも医療介護総合確保基金の活用を、2024年度からの新医療計画等に向け総合確保方針を改正―医療介護総合確保促進会議(Gem Med)医師の労働時間短縮事業、29都道府県が未交付(日経メディカル)資料 第15回医療介護総合確保促進会議(厚労省)

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