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妊婦はCOVID-19で中等症以上になりやすい/成育医研・国際医研

 国立成育医療研究センターと国立国際医療研究センター 国際感染症センター・AMR臨床リファレンスセンターの共同研究チームの庄司 健介氏のチームは、妊婦の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における入院例の疫学的・臨床的な特徴を分析した研究を発表した。この研究は、国立国際医療研究センターが運営している国内最大の新型コロナウイルス感染症のレジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を利用したもので、妊婦におけるCOVID-19患者の特徴に関する大規模な報告は日本初となる。妊婦はCOVID-19で中等症になりやすく、家族内感染も多い 研究は、2020年1月~2021年4月までの間に登録された15歳以上~45歳未満女性のCOVID-19入院例4,006人(うち妊婦は254人、非妊婦は3,752人)を対象に実施。研究の結果、妊娠以外の背景を揃えた患者群(妊婦187人、非妊婦935人)を比較したところ、中等症から重症の患者の割合は妊婦群18人(9.6%)、非妊婦群46人(4.9%)と、妊婦群の方の割合が高いことがわかった。また、妊婦におけるCOVID-19患者254人の患者背景を、軽症群224人、中等症から重症群30人に分けて比較したところ、中等症から重症群に至った患者では何らかの基礎疾患がある、または妊娠中期(14週〜)以降の患者が多いことが判明した。そのほか、妊婦の感染経路は家族からの感染が多いことがわかった。研究の概要【背景・目的】妊婦におけるCOVID-19の疫学的・臨床的な特徴の解明が求められる中で、COVIREGI-JPを利用し、(1)妊婦と非妊婦の新型コロナウイルス感染症の疫学的・臨床的な特徴の比較を行うこと、(2)妊婦における新型コロナウイルス感染症の中等症から重症に関連する要因を探索すること、の2つの目的についての検討を実施。【研究概要・結果】・研究対象2020年1月~2021年4月の間にCOVIREGI-JPに登録された15歳以上~45歳未満の女性のCOVID-19患者。・研究方法COVIREGI-JPに登録されている、対象患者の患者背景、重症度、治療内容などのデータを集計・分析。特に妊婦と非妊婦の患者背景を「傾向スコアマッチング解析」手法を用い揃えた上で、重症度を比較。また、妊婦患者を軽症群と中等症から重症群に分け、多変量解析で中等症から重症に関連する要因を探索した。【研究結果】・期間中に3万7,138人の患者情報が登録され、そのうち研究対象となった15歳以上~45歳未満の女性患者は4,006人。そのうち、妊婦は254人、非妊婦は3,752人。・妊婦は非妊婦に比べ、家庭内での感染が多いことがわかった(妊婦の39.4%、非妊婦の19.8%が家庭内でのCOVID-19の接触あり)。・集中治療室に入院した患者のうち、妊婦は6人(2.4%)、非妊婦は45人(1.2%)、死亡例は妊婦1人(0.4%)、非妊婦は3人(0.1%)だった。目的(1):妊婦と非妊婦の新型コロナウイルス感染症の比較・傾向スコアマッチング解析で、患者背景を揃えた妊婦(187人)と非妊婦(935人)の比較では、中等症-重症の割合が妊婦9.6%、非妊婦4.9%(P=0.0155)と、妊婦の方がより重症化している可能性が示唆された。目的(2):妊婦の新型コロナウイルス感染症中等症-重症に関連する要因の探索・妊婦患者254人を、中等症-重症(30人)と、軽症(224人)に分け、その背景を比較したところ、中等症-重症群の方が軽症群に比べて(1)妊娠中期(14週〜)以降の患者の割合が高い(93.1%vs.71.2%)、何らかの基礎疾患のある患者の割合が高い(16.7%vs.4.9%)ということがわかった。・多変量解析でも、中等症-重症群と、軽症群の比較では、妊娠中期以降と、何らかの基礎疾患の存在のオッズ比(95%信頼区間)はそれぞれ5.295(1.215~23.069、P=0.026)、3.871(1.201~12.477、P=0.023)とそれぞれ有意に中等症-重症と関連していることがわかった。 研究グループでは、「わが国の妊婦COVID-19の入院症例の実態が明らかになった。今後、妊婦に対するワクチンを含む予防や治療について考えていく上で、本研究の結果が重要な役割を果たすことが期待される。また、今回の研究はデルタ株やオミクロン株の流行が始まる前のデータであるため、今後デルタ株やオミクロン株などの変異株が妊婦に与えている影響を検討する際の比較対象としても貴重なデータであると考えられる」と今後の診療での活用を示唆している。 なお、この研究は「デルタ株やオミクロン株がまだわが国に存在しない時期に実施されているため、妊婦に対するこれらの変異株の影響については評価できない」としている。

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小児へのCOVID-19ワクチン接種の考え方/日本小児科学会

 12歳以下の小児への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が、わが国でも検討されている中、日本小児科学会(会長:岡明[埼玉県立小児医療センター])の予防接種・感染症対策委員会は、同学会のホームページで「5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」を発表した。 この考え方では、COVID-19の小児流行の現況を説明するとともに、小児へのワクチン接種について重症化予防への期待について記している。感染状況とワクチンに関する知見について 国内の5~11歳のCOVID-19症例の大多数は軽症としながらも、「感染率が同年代人口の1~2%にとどまるなかでも、酸素投与などを必要とする中等症例は散発的に報告されている」と指摘し、「今後、全年齢において感染者数が増加した場合には、ワクチン未接種の小児が占める割合が増加し、小児の中等症や重症例が増える」と注意を喚起している。 また、2歳未満(0~1歳)と基礎疾患のある小児患者では、重症化リスクが増大することを紹介し、「長期化する流行で行動制限が小児に与える直接的および間接的な影響は大きくなる」と懸念を示している。 小児へのCOVID-19ワクチンの現状について、国内で5~11歳を対象とする接種への承認申請は、現時点でファイザー社製のみであり、同ワクチンは従来のワクチンと比べ含有されるmRNAが1/3の製剤で、使用に際し注意が必要であること、海外のデータから、5~11歳の小児に対する同ワクチンの発症予防効果が90%以上と報告されているが、新しい変異ウイルス(オミクロン株など)への有効性を示すデータは十分に得られていないことに注意を喚起している。 そして、米国(2021年11月3日~12月19日)で接種された5~11歳の小児への約870万回のファイザー社製ワクチン接種のデータについて、4万2,504人が自発的な健康状況調査に登録され、その結果2回接種後、局所反応が57.5%、全身反応が40.9%に認められ、発熱は1回目接種後7.9%、2回目接種後13.4%に認められたことを紹介。また、同期間に、米国の予防接種安全性監視システムには、4,249件の副反応疑い報告があり、このうち97.6%(4,149件)が非重篤だったこと、重篤として報告された100件(2.4%) の中で最も多かったのが発熱(29件)、11件が心筋炎と判断されたが、全員が回復したことも合わせて記している。以上から、5~11歳の小児では16~25歳の人と比べて一般的に接種後の副反応症状の出現頻度は低かったと米国でのデータを説明した。小児へのワクチン接種はメリットがあるが、きめ細かい対応も必要 小児のCOVID-19ワクチン接種について、以下の4項目で考えを伝えている。【ワクチン接種の考え方について】1)子どもをCOVID-19から守るためには、周囲の成人(子どもに関わる業務従事者など)へのCOVID-19接種が重要。2)基礎疾患のある子どもへのワクチン接種により、COVID-19の重症化を防ぐことが期待される。基礎疾患を有する子どもへのワクチン接種については、本人の健康状況をよく把握している主治医と養育者との間で、接種後の体調管理などを事前に相談することが望ましいと考える。3)5~11歳の健康な子どもへのワクチン接種は12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義があると考えている。健康な子どもへのワクチン接種には、メリット(発症予防など)とデメリット(副反応など)を本人と養育者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細やかな対応が必要。4)接種にあたっては、接種対象年齢による製剤(12歳以上用と5~11歳用のワクチンでは、製剤・希釈方法・接種量が異なる)の取り扱いに注意が必要と考える。また、集団接種を実施する場合においても、個別接種に準じて、接種前の問診と診察を丁寧に行い、定期接種ワクチンと同様の方法で実施することが望ましい。

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コロナワクチン有効性、年齢・併存疾患による低下の差は/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンであるChAdOx1-S(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca製)とBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)について、2回接種後20週以上の時点で、COVID-19関連の入院および死亡への有効性の低下は、限定的であることが示された。英国保健安全庁(United Kingdom Health Security Agency)のNick Andrews氏らによる調査の結果で、「高齢者と臨床的にリスクのある成人集団では、有効性の低下が大きかった」とまとめている。英国では、2020年12月からワクチン接種を開始。COVID-19の重症化や死亡への高い効果が実臨床データとして示されているが、2回目接種以降は時間経過とともに効果が低下する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2022年1月12日号掲載の報告。ChAdOx1-SとBNT162b2の2回目接種以降の有効性を評価 研究グループは、test-negativeデザイン法を用いた症例対照研究で、イングランドにおける症候性COVID-19および関連する入院と死亡へのワクチンの効果を推定した。 ChAdOx1-SとBNT162b2の2回目接種以降の有効性を、参加者の年齢(16歳以上[全体]、65歳以上[高齢者]、40~64歳、BNT162b2については16~39歳も設定)および併存疾患等で分類し評価し、B.1.1.7(アルファ)変異株とB.1.617.2(デルタ)変異株に分けて有効性の低下を調べた。年齢や併存疾患等で低下に差、入院・死亡に対する有効性は維持 デルタ変異株による症候性COVID-19へのワクチンの有効性は、全体では、2回目接種後の早期の週にピークに達し(ChAdOx1-S群:2~9週目に67.6%、BNT162b2群:1週目92.3%)、その後20週目までにChAdOx1-S群44.3%(95%信頼区間[CI]:43.2~45.4)、BNT162b2群66.3%(65.7~66.9)に低下した。 有効性の低下は、65歳以上が40~64歳よりも大きかった。65歳以上では、ピークはChAdOx1-S群が1週目で62.0%、BNT162b2群は2~9週目で79.6%であったが、20週目までにそれぞれ38.0%、54.9%に低下していた。40~64歳は、ピークはChAdOx1-S群は2~9週目で62.0%、BNT162b2群は1週目87.7%であったが、20週目までにそれぞれ56.7%、69.2%に低下していた。 接種後20週目以降時点で、入院、死亡に対する有効性はいずれもあまり低下していなかった。同評価時点で、入院に対する有効性はChAdOx1-S群80.0%(95%CI:76.8~82.7)、BNT162b2群91.7%(90.2~93.0)であり、死亡に対する有効性はそれぞれ84.8%(76.2~90.3)、91.9%(88.5~94.3)であった。 また、入院に対するワクチンの有効性の低下は、健康な成人と比べて、65歳以上で臨床的にきわめて脆弱な人および40~64歳で基礎疾患を有する人で大きかった。

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ファイザー製コロナワクチン、5~11歳への接種を承認/厚労省

 厚生労働省は1月21日、ファイザー製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて、用法・用量が異なる「コミナティ筋注 5~11歳用」の製造・販売を特例承認した。オミクロン株が急拡大し、新型コロナの収束の兆しが見えない中、欧米諸国でも小児へのワクチン接種に踏み切る動きがある。国内における接種開始は3月以降になる見通しだ。 ※画像は承認された「コミナティ筋注 5~11歳用」と同製品の海外製造バイアル(提供:ファイザー) 今回承認された「コミナティ筋注 5~11歳用」は、12歳以上に使用されている従来製品との相違点がいくつかあるので注意が必要だ。【形状】5~11歳用:バイアルのキャップ上面がオレンジ色従来製品:バイアルのキャップ上面が紫色【用法・用量】5~11歳用:本剤1.3mLを日局生理食塩液1.3mLで希釈。1 回0.2mLを計2回、通常3週間の間隔で筋肉内に接種。従来製品:本剤0.45mLを日局生理食塩液1.8mLで希釈。初回免疫は1回0.3mLを合計2回、通常3週間の間隔で筋肉内に接種。追加免疫では1回0.3mLを筋肉内に接種。【希釈方法】5~11歳用:希釈後の液は10回接種分(1回0.2mL)を有する。デッドボリュームの少ない注射針または注射筒を使用した場合、10回分を採取可能。従来製品:希釈後の液は6回接種分(1回0.3mL)を有する。デッドボリュームの少ない注射針または注射筒を使用した場合、6回分を採取可能。【接種時期・回数】5~11歳用:原則として、同一の効能・効果をもつ他のワクチンと混同することなく2回接種。従来製品:原則として、同一の効能・効果をもつ他のワクチンと混同することなく2回接種。通常、本剤2回目の接種から少なくとも6ヵ月経過後に3回目の接種が可能。 今回はファイザー製コロナワクチンに対する承認であり、現段階では、国内でこのほかに承認されているモデルナ製ワクチン(スパイクバックス筋注)は12歳以上、アストラゼネカ製ワクチン(バキスゼブリア筋注)は原則として40歳以上とされている。

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コロナワクチン3種、感染・入院・死亡予防効果の経時変化/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する3種類のワクチン、BNT162b2(Pfizer/BioNTech製)、mRNA-1273(Moderna製)、およびAd26.COV2.S(Janssen/Johnson & Johnson製)はいずれも、入院および死亡のリスクを低下させる効果は長期間持続していたが、免疫低下とB.1.617.2(デルタ)変異株出現の両方に起因し、感染予防効果の低下がみられた。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のDan-Yu Lin氏らが、ノースカロライナ州の住民を対象としたサーベイランスデータの解析結果を報告した。米国におけるCOVID-19ワクチンの感染予防効果の持続期間は明らかになっておらず、2021年夏にみられたワクチン接種後の感染増加の原因が、経時的な免疫低下かデルタ変異株の出現か、あるいはその両方かは不明であった。NEJM誌オンライン版2022年1月12日号掲載の報告。住民約1,060万人を対象に3種類のCOVID-19ワクチンの有効性を検証 研究グループは、ノースカロライナ州のCOVID-19サーベイランスシステム(North Carolina COVID-19 Surveillance System)およびワクチンマネジメントシステム(COVID-19 Vaccine Management System)を用い、2020年12月11日~2021年9月8日までの9ヵ月間における、ノースカロライナ州の住民1,060万823人のCOVID-19ワクチン接種とアウトカムのデータを抽出した。 BNT162b2、mRNA-1273およびAd26.COV2.Sの3種類の各ワクチンの有効性について、Cox回帰モデルを用い、COVID-19発症、入院および死亡の現在のリスク低下効果を、ワクチン接種からの経過時間の関数として推定した。3種類とも経時的に感染予防効果は低下したが、入院・死亡の予防効果は持続 mRNAワクチンであるBNT162b2(1回30μg)およびmRNA-1273(1回100μg)の2回接種については、COVID-19に対する有効率は1回目接種2ヵ月後でそれぞれ94.5%(95%信頼区間[CI]:94.1~94.9)および95.9%(95.5~96.2)、7ヵ月後では66.6%(65.2~67.8)および80.3%(79.3~81.2)であった。早期の接種者では、デルタ変異株が優勢となった6月中旬から7月中旬にかけて、BNT162b2およびmRNA-1273ワクチンの有効率がそれぞれ15%ポイント、10%ポイント低下した。 Ad26.COV2.S(5×1010ウイルス粒子)の1回接種では、COVID-19に対する有効率は接種1ヵ月後で74.8%(95%CI:72.5~76.9)であったが、5ヵ月後には59.4%(57.2~61.5)まで低下した。 2種類のmRNAワクチンのほうがAd26.COV2.Sより有効率が高かったものの、3種類のワクチンはすべて、感染予防効果よりも入院および死亡の予防効果が長期にわたり維持されていた。

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進まない追加接種…日医の見解は?

 オミクロン株の急拡大に伴い、首都圏を含む13都県に「まん延防止等重点措置」が決定した中、日本医師会・中川 俊男会長は、3回目の追加接種やエッセンシャルワーカー(社会機能維持者)への優先的対応、オミクロン株の特徴的な症状などについて、国内の現況や諸外国のデータを踏まえ、記者会見で見解を示した。副反応を懸念か、モデルナ製ワクチンに正しい理解を 中川会長は、伸び悩む3回目接種の実施割合に関して、「ワクチンの供給や配送の問題もあるが、比較的確保できているモデルナ製ワクチンについて、国民の理解が十分でないのも(追加接種が進まない)原因の1つかもしれない」と懸念を表した。 モデルナ製ワクチンは、ファイザー製ワクチンと比較して10~20代男性の心筋炎・心膜炎リスクが高いとの報告がある。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に比較するとその可能性は軽微であり、副反応の多くは軽症で済むことが知られている。 会長は、(1)他年代の男性や女性においてそのようなリスクは見られないこと、(2)1・2回目と種類の異なるワクチンを接種すること(交互接種)も可能で、むしろ中和抗体が高くなることなどを説明し、モデルナ製ワクチンの安全性と有効性に正しい理解を求めた。参考)10代・20代の男性と保護者へのお知らせ~新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎について~(厚労省)生活を支えるためには教育現場への優先的対応も不可欠 社会機能を維持するためエッセンシャルワーカーへの追加接種や濃厚接触者の待機期間短縮(10日→6日)など、優先的な対応が呼び掛けられている。政府が示す「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」には、継続が求められる主な業種が示されているものの、医療・福祉関係者ほか具体的な対象は地方自治体や各事業者に任されている現状だ。 中川会長は、東京都で直近1週間の10代以下の感染者数が前の週の6倍に上っていることを挙げ、「保育・教育現場に感染が広がると、(エッセンシャルワーカーを含む)保護者が業務に従事できなくなる恐れがある」と懸念。教育現場を支える学校の教職員や保育士などもエッセンシャルワーカーに含まれることを明確化するよう要請した。 また、小児のワクチン接種について、「子供から家庭感染に広がる懸念もあり、これまで対象とならなかった11歳以下、とくに重症化リスクがある基礎疾患がある子供達に対しても新型コロナワクチンの接種を進めていく必要がある」と指摘した。現在、ワクチン接種を希望する5~11歳の子供が速やかに接種できるような体制整備が進められている。オミクロン株の「軽症」を甘く考えるべきではない 中川会長はオミクロン株の症状について、海外や国内の症例報告を参考に以下の特徴を説明した。(1)嗅覚障害や味覚障害を訴える割合が少なく、発熱・倦怠感・上気道症状が多い(2)割合として重症化率は低いものの、日本の重症度分類を知っておく必要がある 中等症Iは呼吸困難や肺炎所見を示し、中等症IIは酸素投与が必要な症例、重症は人工呼吸器管理またはICUへの入室が必要な症例とされる。よって、肺炎所見がなければ医学的には軽症に分類されるが、個々人にとっては高熱や全身症状、上気道症状など、つらい症状が多い。  続いて同氏は、高齢者の感染者数が少ないことから、現時点で高齢者の重症化リスクは判断すべきでないとし、オミクロン株の重症化リスクはデルタ株の2~3分の1との報告もあるが、COVID-19自体の重症化リスクがインフルエンザより二桁高いことを考慮すると、危機感を持つべき感染症であることは変わらないと説明。 その上で、オミクロン株の感染力の強さから、医療従事者への感染などから医療の提供体制を制限せざるを得ない状況も生じているとし、「今後発生する多数の軽症者に対する医療提供体制を整備するなど、これからもCOVID-19の収束を目指して粘り強く邁進していく」とまとめた。

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医療従事者への3回目接種、コロナ感染リスク99%減/JAMA

 イスラエルの医療従事者を対象に行った試験で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の3回接種者は2回接種者に比べ、中央値39日の追跡期間における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染リスクが有意に低かったことが示された(補正後ハザード比:0.07)。イスラエル・Tel Aviv Sourasky Medical CenterのAvishay Spitzer氏らが医療従事者1,928例を対象に行った前向きコホート試験の結果で、著者は「今回の所見が永続的なものかを確認するために、サーベイランスを続行することが求められる」と述べている。先行研究で、60歳以上へのBNT162b2の3回目接種(ブースター接種)がSARS-CoV-2感染のリスクおよび疾患の重症化を有意に低減することは示されていたが、若年者や医療従事者についてはデータが不足していた。JAMA誌オンライン版2022年1月10日号掲載の報告。イスラエル3次医療センターで、医療従事者1,928例を対象に調査 研究グループは、BNT162b2の2回接種を完了した医療従事者におけるBNT162b2ブースター接種とSARS-CoV-2感染の関連を調べるため、イスラエルのテルアビブにある3次医療センターで、BNT162b2の2回接種歴があり、免疫能が正常の医療従事者1,928例を対象に前向きコホート試験を行った。被験者登録は2021年8月8日~19日に行い、最終フォローアップは同年9月20日だった。 SARS-CoV-2感染の有無は14日ごとの検査で確認し、ベースラインと登録1ヵ月後に、抗スパイク蛋白受容体結合部位IgG抗体力価を測定した。時間依存解析を伴うCox回帰モデルを用いて、BNT162b2のブースター接種者と2回接種者(ブースター未接種)のSARS-CoV-2感染に関するハザード比を求めた。10万人年当たりSARS-CoV-2感染、ブースター接種群12.8、2回接種群116 被験者1,928例は、年齢中央値44歳(IQR:36~52)、女性71.6%(1,381例)で、BNT162bの2回目接種を受けてから試験開始までの日数中央値は210日(IQR:205~213)だった。そのうち、ブースター接種を受けたのは1,650例(85.6%)だった。 中央値39日(IQR:35~41)の追跡期間中に、SARS-CoV-2感染は44例(罹患率:60.2/10万人年)で発生し、うち症候性は31例(70.5%)だった。 感染例の内訳は、ブースター接種群が5例、ブースター非接種群は39例で、罹患率はそれぞれ12.8/10万人年、116/10万人年だった。 時間依存Cox回帰分析では、SARS-CoV-2感染に関する、ブースター接種群のブースター非接種群に対する補正後ハザード比は0.07(95%信頼区間:0.02~0.20)だった。

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塩野義製コロナワクチンの国内第III相試験開始、年度内実用化目指す

 塩野義製薬は1月17日付のプレスリリースで、開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン(S-268019)について、国内で第III相中和抗体価比較試験を開始したことを発表した。2回接種後の免疫原性を指標として、S-268019と既承認ワクチンの比較検証が目的。国内における最終段階の臨床試験となる。同社は、本ワクチンについて3月末までの実用化を目指すとしている。 本試験では、成人および高齢者1,000例を対象に、開発中のワクチンまたは対照薬のアストラゼネカ社の既承認ワクチン(バキスゼブリア筋注)の2回目接種から28日後のSARS-CoV-2に対する中和抗体価について比較検証する。 同社は本試験と並行して、2021年12月25日より、発症予防効果を検証するグローバル第III相臨床試験をベトナムで実施している。今後、国内での承認申請に向けて、これらの試験の進捗と結果に基づき、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)などと継続した協議を行うとしている。 新型コロナウイルスワクチンの開発を巡っては、これまでに発症予防効果の検証を目的とした大規模な臨床試験が実施されてきたが、すでに有効なワクチンが流通し、接種が進む中で、プラセボ対照臨床試験を実施することが困難になりつつある。しかし、世界的にはワクチンの供給量はいまだ十分ではなく、引き続き安全で有効な新規ワクチンの開発が必要とされている。こうした状況の下、ワクチン接種後の中和抗体価を発症予防効果の代替指標として、既承認ワクチンと比較することで、新規ワクチンの評価を行う中和抗体価比較試験を認める流れとなってきている。

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新鮮なネタとしての魚:うつを予防するのは本当か(解説:岡村毅氏)

 魚を食べるとうつにならないというのは本当かという研究である。正確には魚などに多く含まれるオメガ3脂肪酸を多くとるとうつにならないかという研究である。1)魚は健康に良いとされている。2)魚を食べている人は健康そうである。知り合いのAさんもBさんも、ジャンクフードは食べずに日本食を好み、運動をし、そして魚をよく食べている。3)そこで手近な100人くらいの人を調査した。魚を食べているかと、健康状態を聞いた。そしたら魚を食べている人は確かに健康だった。うつも少ない。4)魚はうつを予防する。 …典型的な間違いである。 頑張って魚を食べている人は、健康に気を使っているだろうし、所得も高そうだし、余裕もありそうだ。こうした要因が介在しているから見かけの関係が見えてしまったにすぎない(交絡といいます)。 本当に効果があるのか調べるには、ある地点から前向きにオメガ3脂肪酸を摂取する群、しない群に分けて、その後のうつの発症を調べればよい。その結果は、何とオメガ3脂肪酸群の方がややうつが多かった。 本研究はVITALスタディ(Vitamin D and Omega-3 Trial)という大規模研究の一環である。わかったことは、ビタミンDもオメガ3脂肪酸も、心の健康には何ら効果がなさそうだということであった。 こう書くと、魚なんて食べても意味ないのだ、明日からはカップラーメンと酒だ、と早とちりする人がいるので、強く止めておきたい。要するに自分を大切にしている人は、食生活に気を付けているので健康だということにすぎない。一方で食生活に気を付けても、病気になるときはなることも忘れてはならない。機械じゃないんだ、人間だもの、と言うしかない。 運動とか、魚とか、野菜は健康に良いことは事実だが、それ自体がうつや認知症を予防することはない。同時に、自分のことを大切にして、自堕落な生活はやめた方がよくて(もちろん、したければしてもよい)、魚や野菜をきちんと食べて運動をしましょう、という当たり前の事実があるのだ。 ここで終わっては面白くないのでもう一歩話を進めよう。 人々は「〇〇を食べると病気にならない」という話が大好きである。私の専門分野でいうと、特定の油が認知症予防に効くという一時流行った説を吹き込まれて、高カロリーの油をたくさん摂取している人がたまにいた。「太りますよ、むしろ血管病変を介して認知症になりかねないです」と外来ではやんわりお伝えしている。そもそも〇〇を食べれば病気にならないなどというものは存在しない。していればみんなもう食べているだろう。人間は集団的には合理的な動きをするのだから。 一方で、そういうばかげた話を、怒りをもって眺めている専門家も多いが、それはそれで大人げないとも思う。みんなネタとして捉えて、おしゃべりをしているだけなのである。個人的な見解だが、テレビを真面目に信じている人は10%もいないのではないか? ハイデガーという哲学者は、人々は本質を忘れ(死を忘れ)おしゃべりをして過ごすものだと言ったが、典型的などうでもいいおしゃべりは「食べ物健康談義」であろう。だって誰も傷つけないし、ほどほど盛り上がるし、「某ワクチンが危険だ」みたいな陰謀論のようにどぎつくないから友達をなくすこともないだろう。 問題は本当に信じているごく一部の人だけだ。テレビや週刊誌のビジネスの邪魔はしたくはないが、まともな情報は公共的な組織に提供してほしいものだ。たとえば、厚生労働省は『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』という事業できちんとした情報を提供している。 とても参考になるので一読を勧める。

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第95回 ワクチン非接種妊婦のCOVID-19は死産等の一大事をとりわけ招く

妊娠中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)は妊婦自身や赤ちゃんを害し、妊婦がワクチン非接種だととりわけ危険であることが英国・スコットランドのおよそ9万人の追跡調査で示されました1,2)。同国でCOVID-19ワクチン接種が始まった2年前2020年12月8日以降に妊娠したそれら妊婦8万7,694人のうち昨年2021年10月末までにその接種を1回は済ませていたのは2割ほどの1万8,457人のみでした。同国で去年の10月といえばCOVID-19ワクチン接種が広く普及して数ヵ月経ちますが、その月に決まりの回数2回のCOVID-19ワクチン接種を済ませて出産に至った女性の割合は3人に1人足らずの32.3%(1,311/4,064人)です。対照的に、スコットランドの一般人口の出産適齢(18~44歳)女性は実に8割近い77.4%が2021年10月31日までに2回のワクチン接種済みであり、世界のあちこちで生じているのと同様に妊婦がCOVID-19ワクチンを躊躇する厄介な事態に同国も陥っていました2)。しかし妊婦がCOVID-19ワクチンを接種しないのは得策ではなさそうです。調べられたスコットランドの妊婦のうちSARS-CoV-2感染開始から日が浅い間(28日以内)に出産した620人中14人の胎児や新生児が死亡し、それらの死亡のすべてはSARS-CoV-2感染判明時にCOVID-19ワクチンを接種していなかった妊婦に生じていました。ワクチン非接種は妊婦自身にとっても危険です。妊娠中にSARS-CoV-2感染して集中治療(critical care)が必要になった女性のほぼ全員98%がワクチン非接種でした。また、入院が必要になったSARS-CoV-2感染妊婦もほとんど(91%)がワクチン非接種でした。時を同じくして先週13日に発表された別の試験でも同様の結果が得られています3,4)。COVID-19ワクチン接種がまだ普及していない頃の米国の妊婦2万人近く(1万8,335人)が調べられ、それらワクチン非接種の妊婦のSARS-CoV-2感染は早産、死産、普通より小さな赤ちゃん(small for gestational age)の出産により陥りやすいことと関連しました。世界的に妊婦の多くはCOVID-19ワクチン接種に乗り気ではありません。妊婦のCOVID-19は危険と広く認識されていたにもかかわらず認可申請前のワクチン臨床試験では妊婦が除外されており、ワクチン接種開始時点では妊婦ワクチン接種方針に必要な裏付けに事欠いていたことがそのためらいに影響しているかもしれません1)。出産までもう少しの胎児や出産後すぐの新生児の死亡(周産期死亡)がワクチン接種で生じ易くなるなどの誤った情報の流布が妊婦に接種を躊躇させている恐れも指摘されています2)。しかし今や認可後のデータが集まっており、妊婦のCOVID-19ワクチン接種の効果は妊娠していない人と概ね同様なことが示唆されています。スコットランドでの試験でも予防効果が裏付けられており、SARS-CoV-2感染妊婦にワクチン接種済みはほとんどおらず僅か11%ほどで、感染の大半(77.4%)は感染発生時点でワクチン非接種の妊婦に生じていました1)。それに、COVID-19ワクチンの臨床試験参加中に図らずも妊娠した女性のデータ5)や接種の普及で蓄積したデータで妊婦への接種の安全性に心配はなさそうなことが今や判明しています。スコットランドの試験でも同様で、接種妊婦全般や出産前の28日以内に接種した妊婦の周産期死亡や早産は幸いにも増えておらず、妊婦一般と大差ありませんでした。妊婦のワクチン接種は妊婦自身と赤ちゃんをCOVID-19の害から守るのに不可欠だと著者は言っています6)。参考1)Stock SJ,et al. Nat Med. 2022 Jan 13.2)COVID-19 starkly increases pregnancy complications, including stillbirths, among the unvaccinated, Scottish study shows / Science3)Piekos SN, et al. Lancet Digit Health. 2022 Jan 13.4)Maternal COVID-19 infection increases risks of preterm birth, low birth weight and stillbirth / Eurekalert5)Hillson K, et al.. Lancet. 2021 Nov 6;398:1683-1684.6)Covid-19 linked to complications during pregnancy / University of Edinburgh

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第85回 オミクロン株の濃厚接触者、待機期間10日に短縮/厚労省

<先週の動き>1.オミクロン株の濃厚接触者、待機期間10日に短縮/厚労省2.COVID-19入院・死亡リスク89%減、経口薬パクスロビドを承認申請3.令和2年度の救急車出動件数が減少、大きく減少したのは?4.令和4年度の診療報酬改定について諮問/厚労省5.2020年度の保険医療機関の指定取り消し19件、前年から微減6.東京大学で刺傷事件、逮捕されたのは医学部志望の高校生1.オミクロン株の濃厚接触者、待機期間10日に短縮/厚労省政府は14日に、新型コロナウイルス「オミクロン型」の濃厚接触者における待機期間を、現在の14日間から10日間に短縮すると決め、通知を出した。医療従事者などについては、待機6日目のPCR検査が陰性であれば待機を解除することも可能としている。これにより、エッセンシャルワーカーの感染増によって社会機能が低下するのを防ぐ。海外でも同様に、オミクロン株の潜伏期間が短い点から、アメリカでは感染者の隔離期間を10日間から最短5日間に変更しており、濃厚接触者でもワクチン接種を3回受けていて無症状ならば隔離を不要としている。(参考)濃厚接触者の待機期間短縮など 全国の自治体に通知 厚生労働省(NHK)新型コロナ 6日目陰性、待機解除 警察・消防・介護などの濃厚接触者(毎日新聞)濃厚接触者の待機、10日に短縮 米英より制限厳しく(日経新聞)新型コロナウイルス感染症の感染急拡大が確認された場合の対応について(厚労省 事務連絡 令和4年1月14日一部改正)2.COVID-19入院・死亡リスク89%減、経口薬パクスロビドを承認申請ファイザーは14日、COVID-19に対する経口抗ウイルス薬候補「PF-07321332/リトナビル錠(商品名:パクスロビド)」の製造販売承認を厚労省に申請した。今回の申請は特例承認を目指し、日本人も参加している国際共同第II/III相EPIC-HR試験の結果に基づいている。同試験では、外来治療の対象となる重症化リスクの高いCOVID-19患者において、本剤が入院または死亡のリスクをプラセボと比較して89%(症状発現から3日以内の服用)および88%(同5日以内)減少させることが示された。また、有害事象の発現割合は本剤とプラセボで同程度(23%vs.24%)だった。承認が得られた場合、200万人分の治療薬を供給することを日本政府と合意している。(参考)新型コロナ ファイザー、飲み薬申請 「パクスロビド」 承認なら2例目(毎日新聞)ファイザー、コロナ飲み薬を承認申請 来月にも国内承認(日経新聞)3.令和2年度の救急車出動件数が減少、大きく減少したのは?消防庁は「令和3年版 救急・救助の現況」を発表した。昨年度の救急出動件数(消防防災ヘリコプターを含む)は593万5,694件(対前年比10.6%減)で、搬送人員は529万5,727人(同11.4%減)だったことを明らかにした。うちほとんどを救急自動車による救急出動が占める。救急自動車による救急出動件数の内訳を事故種別ごとにみると、急病が64.9%(前年65.3%)、一般負傷が16.0%(同15.3%)、交通事故が6.2%(同6.5%)などとなった。前年と比較すると、軽症(外来診療)が大きく減少したとされる。救急出動件数・搬送人員ともに12年ぶりに減少していた一方で、現場到着所要時間は全国平均で約8.9分(前年比+0.2分)、病院収容所要時間(入電から医師引継ぎまでに要した時間)は約40.6分(前年比+1.1分)と延伸していた。(参考)救急車搬送人員、前年比で68万4,178人減 総務省消防庁総務省消防庁が「救急・救助の現況」公表(CBnewsマネジメント)4.令和4年度の診療報酬改定について諮問/厚労省厚労省は2022年度診療報酬改定に向けて、「議論の整理案」を12日の中医協総会で提出し、14日に出した修正版が了承された。これに対しては21日まで意見募集を行い、公聴会をオンラインで開く予定。中には、急性期病床の「医療・重症度・看護必要度」の心電図モニターの項目など、詳細が決まっていないものもあり、今後変更される可能性がある。(参考)22年度診療報酬改定を諮問、厚労相「議論の整理」了承、21日まで意見募集(CBnewsマネジメント)2022年度改定の項目固まる!急性期一般1の新加算、看護必要度、かかりつけ医機能評価などの行方は?―中医協総会(1)(Gem Med)令和4年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(厚労省)5.2020年度の保険医療機関の指定取り消し19件、前年から微減厚労省は13日、「令和2年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況について」を公表した。コロナウイルスの感染拡大のため、指導・監査の件数は大幅減少したものの、保険医療機関の指定取り消しなどは19件と前年度の21件から微減にとどまり、指定取り消しの原因の内訳(架空請求、付増請求、振替請求、二重請求など)に大きな変化はなかった。厚労省は、個別指導、新規個別指導、適時調査の実施を見合わせており、実施件数は大幅に減少しているが、21年度の個別指導などは状況を見ながら実施しているという。(参考)保険医療機関の指定取り消し、20年度も例年並み 厚労省、コロナ対応で集団的個別指導はゼロ(CBnewsマネジメント)コロナ禍で指導・監査の件数は大幅減少したが、保険指定取り消し等に大きな変化なし―2020年度指導・監査実施状況(Gem Med)6.東京大学で刺傷事件、逮捕されたのは医学部志望の高校生15日、大学入学共通テストの受験生が集まる東京大学において、医学部進学を希望する高校2年生が、会場にいた高校生の男女2人と成人男性の背中を相次いで切り付けたとして殺人未遂容疑で逮捕された。医学部進学実績で有名な名古屋の私立高校に通う17歳の少年で、前日から自宅に戻らないと両親が警察に捜索願を出していた。犯行前、東京メトロ・南北線の東大前駅の複数箇所でぼや騒ぎが発生しており、少年は刃渡り12センチの包丁、ナイフ、折り畳み式ののこぎり、着火剤、可燃性の液体を所持していたという。本人は容疑を認めており、「医者になるために東大を目指して勉強を続けてきたが、1年ぐらい前から成績が上がらず自信をなくしてしまった」と学業不振を悩んでの犯行をほのめかしている。(参考)《東大刺傷》「俺は東大を受験するんだ!」凶行に及んだ男子生徒(17)は医学部進学実績全国No.1の超エリート男子校生だった(文春オンライン)「人殺して切腹しようと考えた」名古屋の17歳少年を現行犯逮捕 東大前で受験生ら刺傷事件 包丁、ナイフ、のこぎりも所持(東京新聞)東大前刺傷で逮捕の少年、直前にメトロ車内で放火図る…「うまくいかなかった」(読売新聞)

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日本のワクチン史を変えた煉獄さん【Dr.倉原の“俺の本棚”】第50回

【第50回】日本のワクチン史を変えた煉獄さん著者の木下 喬弘先生は、”手を洗う救急医Taka”というTwitterアカウントで有名な人です。AbemaTVに出たり、議員と会ったり、いろいろな活動をされているので、目にしたことがある人も多いはずです。彼は、「こびナビ」と「みんパピ!」の副代表をされていますが、ここ最近の目標には、新型コロナワクチンの情報を適切に正しく国民に伝えること、そしてHPVワクチンの積極的勧奨の再開を進めること、がありました。後者については、「みんパピ!」の尽力もあって、本当に勧奨が再開されることになりました。政府を動かすってすごい話ですよ、みなさん。『みんなで知ろう! 新型コロナワクチンとHPVワクチンの大切な話』木下 喬弘/著. ワニブックス. 2021年11月発売Taka先生は、とにかく行動力と発言力の炎上力の塊のような人で、私には持っていないものばかりを持っているカリスマ性があります。昔はよくSNSで炎上していましたが、炎上した炎を体にまとって煉獄 杏寿郎ばりに「俺の責務を全うする!」と言いながら強くなっちゃいますから、結構無敵です。この本は、帯以外には炎は出てきませんので、落ち着いて読めます。さすがTaka先生、国民にわかりやすく丁寧な文章で書いてくれています。また、決してエビデンスを押し付けた感じにならず、ワクチンの歴史を踏まえ、どのように今後みなさんに理解してもらうかまでの戦略が細かく書かれてあります。個人的には、HPVワクチンの積極的勧奨に際し、ワクチン接種後に車いす生活になった女性の手紙を掲載しているのが心に刺さりました。数年、数十年経って、あのときワクチン事情ってこうだったんだよ、という振り返りにも役立ちそうな1冊です。『みんなで知ろう! 新型コロナワクチンとHPVワクチンの大切な話』木下 喬弘 /著.出版社名ワニブックス定価本体1,300円+税サイズ四六判刊行年2021年

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第91回 モルヌピラビル承認報道、新聞各紙が伝え損ねた重要ポイント

年末からここ最近にかけてどうにも報道での扱いが気になって仕方がないものがある。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の軽症患者でも使える世界初の経口薬・モルヌピラビル(商品名・ラゲブリオ)のことである。これまで軽症者で使える経口薬がなかったせいもあり、メディアではまさにフィーバー状態だ。一方、SNS上では虚実入り混じった情報が飛び交う。正直溜息が出て仕方がない。まず、各社の第一報を見てみよう。「『モルヌピラビル』新型コロナの飲み薬として正式に承認」(NHK)「メルク製のコロナ飲み薬を厚労省が特例承認 軽症者向け、国内初」(朝日新聞)「国内初、コロナ飲み薬を承認 米メルク製」(産経新聞)「厚労省、コロナ飲み薬初承認 軽症、中等症向けモルヌピラビル」(毎日新聞)「コロナ軽症飲み薬、国内初承認 週明けにも使用開始」(日本経済新聞)「国内初のコロナ飲み薬『モルヌピラビル』を特例承認…厚労省、年内分として20万回分配送へ」(読売新聞)ご存じのようにモルヌピラビルは(1)軽症・中等症I、(2)重症化リスク因子が1つでもある、(3)発症から5日以内の投与に限定、(4)催奇形性があるため妊婦には使えない、という縛りがある。私個人がもし第一報を書くとしても、この4点は最低限であり、かつ読者に具体的にイメージを沸かせるためには、重症化リスクは最低でも1つは例示し、催奇形性についても噛み砕いて触れることをポイントに挙げる。これらを踏まえたうえで、4項目に各1点、合計4点満点で各社の第一報を採点すると、満点はなく3点がNHK、2点が朝日新聞、読売新聞、1点が産経新聞、毎日新聞、日本経済新聞。NHKは重症化の具体例にまったく言及がなく、朝日新聞は発症から5日以内の点と催奇形性の表現への甘さ、読売新聞は重症化リスクの具体例の言及がなく、催奇形性に具体的には言及していないところが減点。残りの3社には言及するのも疲れる。多くの人が知っているように、読者は記事を読み流すので一度に全部書いたとて覚えてはくれない。たとえば、繰り返し“重症化リスクがある人のみ”と書いても、重症化リスクがない新型コロナの軽症感染者が「先生、あの新聞に書いてあった飲み薬出してください」というのは目に見えている。それだからこそ重要な点については繰り返し触れる必要があり、第一報はそれなりに情報を盛り込んでおかねばならないはずだ。また、読者に与える印象からも表現は問われる。たとえば、発症から5日以内の部分も読売新聞の「発症5日目までに飲み始める必要がある」と、朝日新聞の「発症から5日以内で効果が期待できる」では読者の受ける印象は相当違う。ちなみに私は今回の件で『重症化リスクの具体例提示』と『発症5日以内の服用開始必須』を一般読者に伝えることはかなり重要だと思っている。というのも重症化リスクのある人が、新型コロナを疑われる症状を自覚しながら放置や我慢で受診を先延ばしすると、せっかくの服用機会を逃し、ワクチン未接種者では致命的になる恐れさえもあるからだ。だからこそ報道は読者自身が「重症化リスクのある人間に該当するかどうか」をイメージできる具体例が必要であり、5日以内という切迫感も伝えねばならない。また、流通が律速段階になることも忘れてはならない。新型コロナ患者が発生する可能性がある医療機関や薬局は国から供給委託を受けたMSD社が開設した「ラゲブリオ登録センター」に事前登録し、必要になったらセンターに供給を依頼して、1~2日で医薬品卸を通じて薬が届けられるという「タイムラグ」がある。これを考慮すると余計のこと、発症から5日目までの服用という情報は大きな意味を持つ。さて、一方SNS上では、「まあよくもそんなモノを…」と思いたくなる重箱の隅突きのような情報も飛び交っている。こうした情報は「アンチ・モルヌピラビル派=ファビピラビル・イベルメクチン礼賛派」による「外資系薬叩き」が主なものだ。その第一の槍玉にあげられているのが「催奇形性」である。実際、モルヌピラビルの添付文書では、妊娠したラットでの実験から、器官形成期のラットで、ヒトでのモルヌピラビル代謝成分(NHC:N-ヒドロキシシチジン)の臨床曝露量の8倍で催奇形性や胚・胎児の死、3倍以上で胎児の発育の遅れ、器官形成期の妊娠ウサギでは18倍以上で胎児体重が低値になることがわかっている。一般的に催奇形性実験では、ヒトで臨床曝露量の10倍以内で催奇形性が示される場合は要注意であることは確かだ。その意味ではモルヌピラビルでは注意が必要で、実際妊婦や妊娠している可能性がある女性での投与は禁止されている。また、同じ理由で妊娠可能な女性が服用する際は投与中と投与終了後一定期間(臨床試験段階では最低4日間)の避妊が求められている。もっともこうしたモルヌピラビルを批判する人たちの一部が擁護するファビピラビルでも催奇形性が指摘されているのは周知のことで、しかもこちらの場合はヒトの臨床曝露量以下でマウス、ラット、ウサギに加え、ヒトに近い霊長類のサルでも催奇形性が認められているのだからはるかに危険である。また、やはりSNS上で騒がれているのが、モルヌピラビルの変異原性試験の結果である。ご存じのように遺伝子に突然変異を起こす可能性、いわば発がん性を評価する試験だが、添付文書では細菌を使って行うと陽性反応が認められ、げっ歯類を用いた2種の変異原性試験で変異原性は認められず、in vitroとラットで染色体異常を起こすかどうか調べた小核試験は陰性だったことが記載されている。もともと細胞の世代交代の早い細菌ではごくごく小さな突然変異は起こりやすい。しかし、細胞の世代交代が遅い齧歯類で実験した結果では異常は認められないため、この試験結果があってもヒトではとくに問題がないと考えるのが妥当な解釈である。さらに言えば、モルヌピラビルの服用期間が最大5日間ということを考えても、突然変異が継続して発がんに至る可能性は極めて低いということになる。いやはや皆さん、こんな揚げ足取りをするのだと感心してしまったが、逆に言えば報道がより正確な情報を伝えるためには、場合によってこうした非臨床試験の結果にも目を配り、その解釈も伝える必要があるという点では冷ややかに横目で眺めているわけにもいかないと、気を引き締め始めている。

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そろそろ旅行に!本当にお得な航空券の予約法教えます【医師のためのお金の話】第52回

こんにちは。自由気ままな整形外科医です。私の最近のマイブームは旅行です。コロナ禍に何を不謹慎な!と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、旅行業界は感染予防のために不断の努力を続けています。厚労省の指導も入っているので、感染症予防対策も格段に進歩しました。医療者は昨年から大変な思いをして働いてきた方も多く、かつほぼ全員がワクチン接種済みですから、たまに息抜きしても罰は当たらないでしょう。中~遠距離の旅行でお世話になるのは航空機です。医師の皆さんはANAかJALの国内大手キャリアのマイレージサービス会員が多いと思います。学会出張などで国内路線を多用するヘビーユーザーはそちらがお得ですが、旅行ぐらいしか利用しない私のような層には、格安航空会社(LCC)が選択肢に入ります。LCC料金に最も影響を与えるオプションとは!?私はコロナ禍前には毎年2~3回ほど国内外に家族旅行に行っていました。大人数で利用するため、航空料金はシビアに見ます。最近では国内大手キャリアもかなり安くなりましたが、それでもまだLCCのほうが安いケースが多いようです。LCCの基本料金は劇的に安く設定されていますが、そこからどこまで「オプション」を付けるのかが悩みの種です。LCCは席の指定や規定以上の荷物持ち込みなど、さまざまなものが「オプション」となって追加料金がかかることが多いのですが、料金に最も大きな影響を与えるのは「日程変更可能プラン」のオプションです。ホテルや新幹線では当たり前のこの「無料の日程変更」、航空会社では不可のことが多いです。数ヵ月先の予約をすることも多いので、日程変更ができないのは大きなストレス要因です。私たち医師は、受け持ち患者さんの急変等で予定どおりに出発できない可能性が一般の方よりも高く、そのリスクを考えると、できれば日程変更が可能なプランにしておきたいところです。長年オプション料金を払い続けていたのに…私も例に漏れず、安心感を求めて日程変更が可能なオプションを付けることが多かったです。幸いにも緊急事態が発生することはなかったのですが、今年になって日程変更をせざるを得ない事件が発生しました。むむっ。でも、この日のためにこれまでオプション料金を払い続けてきたようなものです。自分の先見の明を誇らしく思いながら日程を変更しようとすると、トンデモナイ事実が発覚しました。そのオプションの内容をよく見ると、確かに日程変更の手数料は無料なのですが、その際には「“現在の料金”と“購入時の料金”の差額が必要」だったのです。予定日直前の変更なので現在の料金はハンパなく高騰していました。結果、購入時の料金とほぼ同額の追加料金を請求されたのです…。今回のケースでは、変更手数料無料のオプション料金は2,800円で、オプションなしの基本プランの変更手数料は3,000円でした。オプションを追加すると何度でも無料で変更可能でお得だと思っていたのですが、まさか差額が必要だとは…。日程変更は、料金が高騰する出発直前であることが多いでしょう。3,000円の日程変更手数料より追加料金のほうが圧倒的に高くなります。日程変更無料のオプションはほとんど意味がなかったのです…。1回1名当たりのオプション料金は3,000円ですが、往復×家族の人数分の合計金額となるとばかになりません。しかも実質的には使えないオプションを毎回付けており、かなりの金額をドブに捨てていたことになります。これはいただけないですね。潔く最安の基本プランでいこう!LCCはかなり安い金額で移動できるのでとても便利です。しかし、航空料金に大きな影響を与える日程変更オプションは、実質的にはほとんど使えないので追加する必要はないでしょう。これまで何十回も格安航空会社を利用してきたにもかかわらず、このことを知らなかったのは非常にもったいなかったと反省しました。皆さんもLCCを検討する際には、潔くオプションを付けない最安の基本プランにすることをお薦めします!

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コロナワクチンの感染抑制効果、デルタ株では低下/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのワクチン接種について、アルファ変異株と比較してデルタ変異株のほうが感染減少が少なく、ワクチンの有効性は経時的に低下したことが示された。また、感染発端患者の診断時PCRサイクル閾値(Ct)値は、感染減少を部分的に説明するのみであることも明らかにされた。英国・オックスフォード大学のDavid W. Eyre氏らが、後ろ向き観察コホート研究の結果を報告した。SARS-CoV-2のデルタ(B.1.617.2)変異株の出現以前は、ワクチン接種によりウイルス量が減少し、感染したワクチン接種者からのSARS-CoV-2の伝播が抑制したとみなされていた。ワクチン接種により感染リスクはさらに低下しているが、デルタ変異株に感染したワクチン接種者と未接種者のウイルス量は同程度であることが判明し、ワクチン接種が感染をどの程度予防するのか疑問視されていた。NEJM誌オンライン版2022年1月5日号掲載の報告。SARS-CoV-2感染患者約11万人とその接触者約15万人について解析 研究グループは、英国の接触者検査データを用い、SARS-CoV-2に感染した成人患者(発端患者)と、その接触者を対象に後ろ向き観察コホート研究を実施した。 多変量ポアソン回帰法により、ウイルス感染とワクチン接種状況(発端患者および接触者について)の関連を調べるとともに、この関連性がアルファ(B.1.1.7)変異株およびデルタ変異株で、また2回目のワクチン接種からの経過期間によってどう変化するのかを検討した。 発端患者10万8,498例と、その接触者で検査を受けた14万6,243例のうち、5万4,667例(37%)がPCR検査でSARS-CoV-2陽性であった。ワクチン接種後の感染患者からの感染減少は、アルファ変異株と比べデルタ株で低下 ワクチン接種済みでアルファ変異株に感染した発端患者では、BNT162b2ワクチン(Pfizer/BioNTech製)またはChAdxOx1 nCoV-19(AZD1222)(AstraZeneca製)の2回接種は、いずれのワクチンでもワクチン未接種者と比較し、接触者のPCR陽性率の低下と関連していることが認められた(BNT162b2の補正後率比:0.32[95%信頼区間[CI]:0.21~0.48]、ChAdxOx1 nCoV-19の同0.48[0.30~0.78])。 ワクチン接種によるデルタ変異株の感染減少は、アルファ変異株と比較して小幅であった。その感染減少幅は、BNT162b2ワクチン2回接種後(未接種者と比較した補正後率比:0.50、95%CI:0.39~0.65)のほうが、ChAdxOx1ワクチン2回接種後(0.76、0.70~0.82)より大きかった。 ワクチンに関連した2つの変異株の感染率低下について、発端患者のCt値(ウイルス量の指標)の変化が占める割合は7~23%であった。デルタ変異株の感染減少は、ワクチン2回接種後に経時的に低下し、ChAdxOx1 nCoV-19ワクチン接種を受けた発端患者では12週までにワクチン未接種者と同等レベルとなり、BNT162b2ワクチン接種を受けた発端患者では大幅な減弱が認められた。接触者におけるワクチン予防効果は、ワクチン2回接種後3ヵ月間で同様に低下した。

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3回目接種でオミクロン株への中和抗体が大きく増加/NEJM

 新型コロナウイルスのmRNAワクチン2回接種から6ヵ月以降に3回目の接種を受けると、オミクロン株に対する中和抗体価が大きく上昇することが、米国・ロックフェラー大学のFabian Schmidt氏らの研究で示された。また、ワクチン未接種の既感染者においても、mRNAワクチンの接種によりオミクロン株に対する中和抗体価が大きく上昇した。NEJM誌オンライン版2021年12月30日号のCORRESPONDENCEに掲載。 著者らは、新型コロナウイルスのワクチン接種または感染、もしくはその両方で曝露された47人における169の血漿検体において、武漢株とオミクロン株に対する中和抗体価を測定した。 主な結果は以下のとおり。・mRNAワクチンのBNT162b2(ファイザー製)もしくはmRNA-1273(モデルナ製)を2回接種後1.3ヵ月における血漿検体では、オミクロン株に対する50%中和抗体価(NT50)は武漢株に対するNT50に比べ127±66(平均±SD)倍低く、接種後5ヵ月では27±17倍低かった。しかしながら、2回目接種から約6ヵ月後に3回目接種を受けた約1ヵ月後には、武漢株に対するNT50が26倍、オミクロン株に対するNT50は38倍と大きく増加した。・ワクチン未接種の既感染者の血漿検体では、オミクロン株に対するNT50は武漢株に対するNT50に比べ、感染後1ヵ月で58±51倍低く、感染後6ヵ月で32±23倍低かった。しかしながら、既感染者にmRNAワクチンを接種すると接種前に比べ、武漢株に対するNT50が238倍、オミクロン株に対するNT50が154倍と大きく増加した。・既感染者でワクチンを接種していない人の多くと、mRNAワクチン2回接種のみの人は、オミクロン株に対するNT50は低いもしくは検出不能であった。

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日本ではアルツハイマー病新薬は承認されず【コロナ時代の認知症診療】第11回

審議での厚労省見解をどうみるか米国に続き日本での承認が期待されたaducanumabだが、それは叶わなかった。2021年12月22日、厚労省によるaducanumab(商品名:アデュヘルム点滴静注、バイオジェン・ジャパン)の審議の結果、本剤の有効性は明確に判断できない、今後の臨床試験の結果がでれば再度審議するという結果になった。その理由として、1)2つの第III相試験の結果に一貫性がない、2)脳内アミロイドプラーク低下の臨床的意義が確立していない、3)本剤投与により脳の浮腫や出血を生じる、の3点が挙げられた。まず1)はその通りであり反論がない。つまり最近の抗認知症薬の承認には、世界のグローバルレベルで再現性をもって有意性が確認されることが必要である。かつての各国レベルの承認から、今日ではグローバル基準が当然になってきた印象がある。とくに本剤のような薬なら世界中どこでもの再現性は不可欠だろう。2)については、それはそうだが…と、正直頭を抱える気持ちになる。なぜならアルツハイマー病の原因はいまだに不明だ。もっとも主たるバイオマーカー候補がアミロイドとタウである。しかし原因不明である以上、これらは仮説にすぎない。だが現実には、この仮説に沿って、とりあえずはここを攻めようと今日までaducanumabのようなアミロイドを除去する薬の開発に世界中でしのぎが削られてきた。にもかかわらず2)のように言われてしまっては、こうしたアミロイド仮説に沿う薬は、今後も一切日の目を見ないのではないか? と思えてくる。3)については、脳血管周囲に生じる出血や浮腫(ARIA-EやH)があるからという理由は少々納得できかねる。これらは本来の作用の一部、つまり副作用でなく想定できる副反応的なものである。すなわちコロナ予防ワクチンでいえば発熱や痛みのようなものだろう。これが認められない理由であるなら、アミロイドβ仮説に沿うものは皆ダメになりかねない。というのは、aducanumabはアミロイドを溶かし出すのが目標の薬だから、脳実質だけでなく脳内血管の壁にあるアミロイドを溶かす結果、ARIAが起こるのは当たり前である。言うまでもなく、副反応も副作用もないほうがいい。これをさておいても3)は「副作用(副反応)があるからだめ」と読まれかねない。費用や投与のやめどきは? 実臨床での課題さてこの厚労省見解以外に、仮に今のまま使うとなったら、実際いくつかの難しさが考えられる。入手するには、承認された米国から個人輸入するしかないだろう。これは日本のみならず米国以外の国は皆同じである。そこで個人輸入を代行してくれる国際的な組織立ち上げの話もあった。しかし我が国の当局はこれを認めないようだ。この壁は、個人の意志でなすのが個人輸入であるのに、それを代行する組織が介在するのは本来の狙いに反するからだと聞いている。次に値段の問題がある。当初米国での年間費用が640万円とされ驚かれた。最近ではこれが300万円台と報道されている。体格が米国人に劣る日本人だと200万円以下になるのではと、筆者は関係者の話から試算している。さらに数少ない専門医のもとで点滴を月に1度、約30分かけてやるというのも当事者、家族にはなかなかハードルが高い。専門医以外に、近所のかかりつけ医でもできるようになればこれは改善できるだろう。もうひとつは投与のやめどきである。すでにコリンエステラーゼ阻害薬については議論されヨーロッパなどでかなり確立しているようだ。継続審議はどうなる!?最後に継続審議してもらうには、aducanumabの新たな治験データが必要である。正攻法は新たなグローバル治験の体制を立てて、また1年半以上フォローすることだろう。しかし筆者の山勘ながら今から始めても3年後に終わるかどうか? 一方で本剤の第IV相試験は2020年秋に始まり、すでに1年あまり経過している。このデータもまた審議資料になるだろうか? 一方で患者・家族の要望の声も大切であろう。というのは過去にアリセプトに後続したコリンエステラーゼ阻害薬の承認を思い出すからである。承認のために最初に検討された治験成績はいまいちだったようだ。しかしこの時は家族会などの嘆願運動もあって紆余曲折の末に承認されたという記憶がある。すでに米国では第2の疾患修飾薬も審議中だと聞く。今後は開発に拍車がかかって行くと思われる。その中から疑いなく承認される有望な新薬の登場が心待ちにされる。

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「3高」から「4低」、そして「3生」へ【Dr. 中島の 新・徒然草】(408)

四百八の段 「3高」から「4低」、そして「3生」へついに新型コロナの第6波がやってきました。大阪医療センターの職員の中にも、PCR陽性者や濃厚接触者が出始めていて、現場から人が足りなくなりつつあります。ちょっと前の沖縄を追いかけている感じと言いましょうか。コロナ患者の数自体は多くないのに、医療者の数が不足して通常医療ができなくなる、そういったタイプの医療崩壊なのかもしれません。ワクチンを打ち、細心の注意を払っている人にまで感染してしまうオミクロン、恐るべし!さて、タイトルの「3高」や「4低」について述べましょう。「3高」というのは、私くらいの年代の人間がバブルの頃によく使っていた言葉です。女性が男性に求める要素のことで、「高学歴、高身長、高収入」のことを指しました。さすがにイケイケドンドンの時代だったので、ポジティブな言葉が並んでいます。最近知ったのは、「4低」という言葉。これまた不景気な現代を反映しているのか、ネガティブな響きが否めません。中身は「低姿勢、低燃費、低依存、低リスク」というものだそうです。「低姿勢」というのは、他人に対して威張らない人というもの。たとえば、買い物などでやたら店員さんに偉そうにしゃべる男性は減点されてしまいます。逆に、誰に対しても低姿勢な人は好感度大! 次に「低燃費」というのは、飲み会などにあまり参加せず、酒やタバコにもお金を使わない人。確かに、昭和の頃は「家1軒分飲んでしまった」みたいな話は珍しくありませんでしたが、令和の時代には流行りません。「低依存」というのは、妻に依存しない人のこと。これまた昭和の時には「家の事はなにもしない」という男性ばかりでしたが、今は掃除洗濯炊事などの家事をどんどんやる男性が好まれます。当然といえば当然ですね。そして「低リスク」。公務員とか大きな会社勤めなど、不況でも失業する可能性の低い職業が好まれるということです。強気な「3高」に比べると、「4低」のほうはいかにも弱気な印象ではありますが、時代が進んでより現実的になった気もします。というのは、いくら高収入だったとしても、それを全部アルコールやギャンブルに費やしていたら何も残らないわけですから。あと、本人の努力でどうにかなるものの割合が「3高」と「4低」との間で違っているというのもポイントかもしれません。3高だと、高学歴こそ本人の努力次第ですが、高身長はいくら努力してもどうにもなりません。一方、「4低」のうち、低姿勢、低燃費、低依存は、3つともちょっとした心掛けで実現可能です。低リスクについても、「公務員だったら何でもいい!」というなら何とかなりそうですね。ところが「4低」という言葉も少し古くなり、今は「3生」が求められる時代なのだとか。これは生存力、生活力、生産力の3つを合わせたものだそうです。生存力とは「家庭内でトラブルが起こったときに対処できる力」、生活力とは「妻に依存したり親に頼ったりせずにやっていける力」、そして生産力は「何もないところから新しいものを生み出す力。人脈があり人望が厚い」と説明にはありました。生存力をもう少しわかりやすく説明すると、「人間関係のトラブルや経済問題、健康問題など、家庭で起こった事に対処する力」だと思います。一方、生産力というのはピンと来ません。説明文からイメージすると「勤めていた会社が倒産して無職になってしまっても、その状況から人脈や人望を生かして食べていけるだけの収入を得る力」ということでしょうか。そういう力があれば重宝するのは確かです。でも、私なら生産力の代わりに生命力を持ってくるかな。「心身共にタフで、ちょっとやそっとの事でめげないタフさ」といった意味を込めて。調べてみると、ほかにも「3平」「3温」「3強」「3優」など、今までにもいろいろな言葉が提唱されてきたようです。これらも知っておくと、何かの雑談に使えるかもしれませんね。ということで最後に1句「3生」を 学んで1つ 年が明け

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ブースター接種、オミクロン株に対する発症・入院予防効果は?

 オミクロン株に対するワクチンの有効性について、発症予防効果はデルタ株と比較して低く、投与後の期間に応じてさらに低下する一方で、入院予防効果は2回目接種後6ヵ月以降も約50%となり、3回目接種により約90%まで高まるというデータが報告された。英国・UK Health Security Agency(UKHSA)が2021年12月31日にオミクロン株に関する大規模調査結果を公開した。オミクロン株感染者の発症に対するワクチン有効率は?(種類・回数・経過期間ごと) デルタ株と比較したオミクロン株の症候性COVID-19に対するワクチン有効率(VE)が、診断陰性例コントロールデザインを用いて推定された。2021年11月27日~12月24日までに検査を受けたオミクロン株感染20万4,036例とデルタ株感染16万9,888例のデータを使用している。 ファイザー製、モデルナ製、アストラゼネカ製の各社ワクチンごとの2回目および3回目接種後(交互接種含む)の発症予防効果は以下の通り:2回目接種後・すべてのワクチン、すべての期間において、発症予防効果はデルタ株と比較してオミクロン株で低かった。・アストラゼネカ製ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果は、2回目投与10~14週間後には約30%だったが、20週間後にはなくなっていた(VE=0%以下)。・ファイザー製またはモデルナ製ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果は2回目投与2~4週間後には約60~70%だったが徐々に低下し、20週間後には約10%だった。3回目接種後・1~2回目をアストラゼネカ製、3回目にファイザー製またはモデルナ製接種の場合、オミクロン株に対する発症予防効果は3回目投与2~4週後に約60~70%となり、5~9週間後には約50~60%だった。・1~2回目をファイザー製、3回目にファイザー製またはモデルナ製接種の場合、オミクロン株に対する発症予防効果は3回目投与2~4週後に約65~75%となり、5~9週間後には約55~70%だった。オミクロン株感染者の入院に対するワクチン有効率は?(回数・経過期間ごと) オミクロン株感染による症候性COVID-19入院に対するワクチン有効率(VE)が推定された。ワクチンの種類を問わず(全種類の統合データ)、接種回数と経過期間ごとのワクチンによる入院予防効果は以下の通り:・1回目接種後≧4週間:52%・2回目接種後2~24週間:72%・2回目接種後≧25週間:52%・3回目接種後≧2週間:88%オミクロン株による入院リスク、ワクチン接種状況による違いは? 入院リスクの評価には、2021年11月22日~12月26日までに英国で発生したオミクロン株感染52万8,176例とデルタ株感染57万3,012例のデータが使用された。うちオミクロン株感染3,019例とデルタ株感染1万3,579例が、検体採取から14日以内に救急受診または入院していた。 ワクチン接種状況ごとの、陽性後14日以内の救急受診・入院に対するハザード比(HR)は以下の通り(未接種/1回目のワクチン接種から<28日のHR1.00を対照として):1回目のワクチン接種から≧28日オミクロン株:HR1.02(95%CI:0.72~1.44)/デルタ株:HR 0.42(95%CI:0.36~0.48)2回目のワクチン接種から≧14日オミクロン株:HR0.35(95%CI:0.29~0.43)/デルタ株:HR 0.18(95%CI:0.17~0.19)3回目のワクチン接種から≧14日オミクロン株:HR0.19(95%CI:0.15~0.23)/デルタ株:HR 0.15(95%CI:0.13~0.16) 上記より、オミクロン株感染で入院するリスクは、ワクチン接種を受けていない人と比較して、ワクチンを2回接種した人の方が65%低く、3回のワクチン接種を受けた人の間ではさらに低かった(81%)。なお、これらの分析において併存疾患や重症度は反映されていないことに注意が必要。

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単回投与の中国製コロナワクチン、予防効果は57.5%~第III相試験/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルス5型ベクターワクチン「Ad5-nCoV」(中国・カンシノ・バイオロジクス[康希諾生物]製)の単回投与について、健康な18歳以上成人における有効性および安全性が示された。接種後28日以降のPCR検査確定・症候性COVID-19の予防効果は57.5%であり、また、重篤有害事象の発生率は0.1%でプラセボと同等であったという。カナダ・ダルハウジー大学のScott A. Halperin氏らが、第III相の国際二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2021年12月23日号掲載の報告。ワクチン接種後28日以降の症候性COVID-19予防効果を検証 試験は、アルゼンチン、チリ、メキシコ、パキスタン、ロシアの試験センターで18歳以上を登録して行われた。被験者は、不安定または重度の内科的・精神的基礎疾患がなく、検査確定の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染歴が認められず、妊娠または授乳中でない、アデノウイルス・ベクター、コロナウイルス、またはSARS-CoV-2ワクチンの未接種者だった。 研究グループは、インフォームドコンセントによる了承を得たのち、全参加者から全血を採取(25mL)、参加者を無作為に1対1の割合で2群に分け、一方にはAd5-nCoVワクチンを(5×1010vp/mLを0.5mL)、もう一方にはプラセボを、それぞれ投与した。試験担当者および参加者は割り付けを知らされなかった。 被験者とは毎週連絡を取り(eメール、電話またはテキストメッセージ)、あらゆるCOVID-19の症状を申告してもらい、申告があった場合は症状の種類を問わず、SARS-CoV-2検査を行った。 主要な有効性評価目的は、2021年1月15日時点でワクチン接種後28日以上であった全参加者について、ワクチン接種後28日以降の、PCR検査で確定された症候性COVID-19に対する予防効果。主要な安全性評価目的は、試験ワクチンを接種された全参加者における、ワクチン接種後の重篤有害事象または診療を要した非特定有害事象(MAAE)の発生とした。症候性COVID-19予防のワクチン有効性は57.5% 試験登録は、パキスタンで2020年9月22日に、メキシコは11月6日、ロシアとチリは12月2日、アルゼンチンは12月17日に、それぞれ開始された。2021年1月15日にエンドポイント例が150例に達した時点で、最終的な主要有効性解析が行われた。 Ad5-nCoVワクチンの1回投与の、接種後28日以降のPCR検査確定・症候性COVID-19に対する有効性は57.5%(95%信頼区間[CI]:39.7~70.0、p=0.0026)だった(参加者2万1,250例、追跡期間中央値45日[IQR:36~58])。 有効性解析時点で行われた安全性の主要解析(参加者3万6,717例)では、重篤有害事象の発生率は、プラセボ群0.1%(1万8,354例中10例)、Ad5-nCoV群0.1%(1万8 ,363例中14例)で有意差はなく、MAAEの発生率もそれぞれ2.2%(同411例)、2.4%(同442例)で有意差は認められなかった。なお、重篤有害事象で試験ワクチンに関連すると考えられるものは両群ともに報告されなかった。 安全性に関し、より詳しく追跡した拡張コホートでは、非自発的な全身性有害事象の報告について有意差が認められた(Ad5-nCoV群1,004/1,582例[63.5%]、プラセボ群729/1,572例[46.4%]、p<0.0001)。うち頭痛の頻度が最も高かった(Ad5-nCoV群699例[44%]、プラセボ群481例[30.6%]、p<0.0001)。 また、注射部位の有害事象に有意差がみられ(Ad5-nCoV群971/1,584例[61.3%]、プラセボ群314/1,573例[20.0%]、p<0.0001)、そのうち頻度が最も高かったのは注射部位疼痛だった(Ad5-nCoV群939例[59%]、プラセボ群303例[19%])。

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