サイト内検索|page:31

検索結果 合計:2141件 表示位置:601 - 620

601.

経口コロナ薬2剤、オミクロン下での有効性/Lancet

 香港では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株亜系統BA.2.2が流行している時期に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者へのモルヌピラビルまたはニルマトレルビル+リトナビルの早期投与が、死亡および入院中の疾患進行のリスクを低下したことが、さらにニルマトレルビル+リトナビルは入院リスクも低下したことが、中国・香港大学のCarlos K. H. Wong氏らによる後ろ向き症例対照研究で明らかとなった。SARS-CoV-2オミクロン株に対する経口抗ウイルス薬のリアルワールドでの有効性については、ほとんど示されていなかった。Lancet誌2022年10月8日号掲載の報告。高リスクCOVID-19外来患者を対象に、経口抗ウイルス薬2種の有効性を調査 研究グループは、香港病院管理局(Hong Kong Hospital Authority)のデータを用い、香港でオミクロン株亜系統BA.2.2が主流であった2022年2月26日~6月26日の期間に、SARS-CoV-2感染が確認された18歳以上のCOVID-19非入院患者を特定した。解析対象は、重症化リスク(糖尿病、BMI≧30、60歳以上、免疫抑制状態、基礎疾患あり、ワクチン未接種)を有する軽症患者で、発症後5日以内に外来でモルヌピラビル(800mg 1日2回5日間)またはニルマトレルビル+リトナビル(ニルマトレルビル300mg[推定糸球体濾過量30~59mL/分/1.73m2の場合は150mg]+リトナビル100mg 1日2回5日間)の投与が開始された患者であった。老人ホーム入居者、ニルマトレルビル+リトナビルの投与禁忌に該当する患者は、除外された。 対照群は、入院前にSARS-CoV-2感染が確認され、観察期間中に外来で経口抗ウイルス薬の投与を受けなかった患者のうち、年齢、性別、SARS-CoV-2感染診断日、チャールソン併存疾患指数、ワクチン接種回数に関して傾向スコアがマッチする患者を、1対10の割合で選択した。 主要評価項目は、全死因死亡、COVID-19関連入院、入院中の疾患進行(院内死亡、侵襲的人工呼吸、集中治療室[ICU]入室)。経口抗ウイルス薬投与群と各対照群との比較は、Cox回帰モデルを用いてハザード比(HR)を推定し評価した。いずれも全死因死亡、入院後の疾患進行リスクを低下 COVID-19非入院患者107万4,856例のうち、地域の医療機関で2種類の新規経口抗ウイルス薬のいずれかが開始された患者は1万1,847例(モルヌピラビル群5,383例、ニルマトレルビル+リトナビル群6,464例)で、このうち適格基準を満たし傾向スコアをマッチさせた解析対象集団は、モルヌピラビル群4,983例と対照群4万9,234例、ならびにニルマトレルビル+リトナビル群5,542例と対照群5万4,672例であった。 追跡期間中央値はモルヌピラビル群103日vs.ニルマトレルビル+リトナビル群99日であり、モルヌピラビル群はニルマトレルビル+リトナビル群より高齢者が多く(>60歳:4,418例[88.7%]vs.4,758例[85.9%])、ワクチン完全接種率が低い(800例[16.1%]vs.1,850例[33.4%])傾向があった。 モルヌピラビル群は対照群と比較して、全死因死亡(HR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.61~0.95)および入院中の疾患進行(0.57、0.43~0.76)のリスクが低下したが、COVID-19関連入院のリスクは両群で同等であった(0.98、0.89~1.06)。 一方、ニルマトレルビル+リトナビル群は対照群と比較して、全死因死亡(HR:0.34、95%CI:0.22~0.52)、COVID-19関連入院(0.76、0.67~0.86)、および入院中の疾患進行(0.57、0.38~0.87)のリスクが低下した。 高齢患者においては、経口抗ウイルス薬の早期投与に関連した死亡/入院のリスク低下が一貫して確認された。

602.

ブースター接種はオミクロン関連入院に有効/BMJ

 米国では2022年の当初半年間における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンのブースター接種者は、オミクロン変異株関連のCOVID-19の入院について、プライマリシリーズのみ接種者を上回るベネフィットを得ていたことが、米国疾病予防管理センター(CDC)のKatherine Adams氏らによる検査陰性デザイン・ケースコントロール試験の結果、示された。ブースター接種が推奨される中で、オミクロン変異株は2021年12月26日時点でSARS-CoV-2の優勢な変異株となっており、ブースター接種の有効性に関するデータ提示が必要とされていた。BMJ誌2022年10月11日号掲載の報告。オミクロン株優勢時の入院患者対象にケースコントロール試験 研究グループは、2021年12月26日~2022年6月30日の新型コロナウイルス・オミクロン変異株が優勢だった期間に、米国内18州の21病院を通じて、急性呼吸器症状で入院した成人4,760例を対象にケースコントロール試験を行った。被験者のうち2,385例(50.1%)がCOVID-19の検査確定例(ケース群)で、2,375例(49.9%)が検査陰性のSARS-CoV-2例(コントロール群)だった。 主要なアウトカムは、コロナワクチンのプライマリ+ブースター接種者とプライマリシリーズのみ接種者のCOVID-19関連入院に関する有効性。ケース群vs.コントロール群において、それぞれのレジメンでワクチンを受けた場合とワクチン未接種の場合のオッズ比を比較しワクチンの有効性を評価した。ワクチン有効性の解析は、免疫状態(免疫能正常、免疫不全)で層別化した。主要解析は、すべての種類のコロナワクチンの組み合わせで評価し、副次解析は特定のワクチンについて評価した。免疫状態を問わず、ブースターで対COVID-19関連入院の有効性増大 全被験者4,760例の年齢中央値は64歳(四分位範囲[IQR]:52~75)で、994例(20.8%)が免疫不全だった。プライマリシリーズ+ブースター2回接種者が85例(1.8%)、プライマリシリーズ+ブースター1回接種者が1,367例(28.7%)、プライマリシリーズのみ接種者が1,875例(39.3%)、ワクチン未接種者が1,433例(30.1%)だった。 免疫能正常群において、オミクロン変異株関連COVID-19入院の予防に関するワクチンの有効性は、プライマリシリーズ+ブースター2回接種群が63%(95%信頼区間[CI]:37~78)、プライマリシリーズ+ブースター1回接種群が65%(58~71)、プライマリシリーズのみ接種群が37%(25~47)だった(プライマリシリーズのみ接種群と比較したブースターレジメンプール群のp<0.001)。 ワクチンの有効性は、ワクチンの種類別にみてもプライマリシリーズのみ接種群よりもプライマリシリーズ+ブースター接種群で高かった。BNT162b2(ファイザー製)での有効性は、ブースター2回接種群73%(95%CI:44~87)、ブースター1回接種群64%(55~72)、プライマリシリーズのみ接種群36%(21~48)だった(p<0.001)。mRNA-1273(モデルナ製)でも、それぞれ、68%(17~88)、65%(55~73)、41%(25~54)だった(p=0.001)。 免疫不全群においても、ワクチン有効性はプライマリシリーズ+ブースター1回接種群が69%(95%CI:31~86)、プライマリシリーズのみ接種群が49%(30~63)で有意差が認められた(p=0.04)。

603.

不整脈チームで試練の1ヵ月!【臨床留学通信 from NY】第39回

第39回:不整脈チームで試練の1ヵ月!先月は主に不整脈チームに配属されて、病棟のコンサルテーションを担当しました。米国では、心房細動にアミオダロンが使えるところが日本と大きく異なり、それ以外に、dronedarone、dofetilideといった聞きなれない薬も使用したりします。私は大学病院にいた期間が実は短かったため、不整脈研修も短く、大学関連病院にいた際にはアブレーションが可能な施設ではなかったこともあり、心血管インターベンションの素地はあっても、不整脈の専門的な薬剤、植込み型除細動器(ICD)などのデバイスチェックなどは非常に苦手な分野のため、ある意味、試練の1ヵ月でした。たとえば術後の心房細動などは、過去の研究からはリズムコントロールとレートコントロールに差がないこと1)は知ってはいましたが、それでもリズムコントロールを推し進めるのを好む不整脈医もいます。そして日本と比べると、すぐに除細動をするのも多い印象で、とりあえず1回依頼があったら心房細動罹患期間が長くてもトライしたり、逆に、抗不整脈薬を導入する時は、訴訟対策なのか、経食道心エコーなどで左心耳の血栓をかなり慎重に確認したりすることも多いです。米国の医療システム、とくに外来は、日本に比べてはるかに貧弱です。心房細動の頻脈で心不全を来していないような比較的軽症例でも、外来では治療できず、救急外来からほぼ入院となってしまう背景があるため、早めのリズムコントロールをより好むのかもしれません(ただし、早めのリズムコントロールが好ましい、というデータは昨今出てきてはいます2))。私は今、一般循環器内科(general cardiology)フェローの身分ですので、電気生理学(electrophysiology)を選べば、米国で華麗に不整脈医に転身することもできますが、やはり苦手なのでやめておこうと思います。しかし、改めて不整脈を少しかじると、薬物治療ではほかの循環器医がタッチしにくい治療をしたり、増え続ける心房細動のアブレーション、重症心不全のCRT(心室再同期療法)、致死的な心室性不整脈のアブレーション、リードレスペースメーカー、突然死の1次・2次予防のICD、皮下植込み型除細動器(S-ICD)など多彩な仕事があったり、かつカテーテル治療医に比べて夜間に働く必要性が低いことから、本当に魅力的な領域だと思います。参考1)Gillinov AM, et al. Rate Control versus Rhythm Control for Atrial Fibrillation after Cardiac Surgery. N Engl J Med. 2016;374:1911-1921.2)Kirchhof P, et al. Early Rhythm-Control Therapy in Patients with Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2020;383:1305-1316.Column最近私のグループから、妊娠中のコロナワクチン接種に関するメタ解析がJAMA Pediatrics誌に掲載されましたのでご覧ください。筆頭著者の先生から、1年前に直接私のメールアドレスをたどって連絡をいただきました。米国の集中治療(critical care)志望ということで、コロナ関連なら何か指導ができると考えました。そして指導してから3つ目でJAMA系とは、素晴らしいです。私は主にコンセプトと方法論を担当しました。共同筆頭著者の先生は、大学時代のテニス部のダブルスパートナーで小児科医のため、内容のサポートを頼みました。まさにダブルスペーパーと言えると思います。Watanabe A, Yasuhara J, Kuno T, et al. Peripartum Outcomes Associated With COVID-19 Vaccination During Pregnancy: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr. 2022 Oct 3. [Epub ahead of print]

604.

第131回 ワクチン偽装接種で51歳医師逮捕、偽装を依頼した人だけではなく、接種希望者にも生理食塩水接種の言語道断

普通にワクチンの接種に来た人にも偽装を行っていた可能性こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。今週末は、MLBの試合観戦は諦め、茨城県桜川市で無農薬の農園を営む大学の先輩宅へ、泊りがけで農作業の支援に行ってきました。台風で被害があったビニールハウスの補修やトマトの支柱の撤去などを行ったのですが、キャベツ畑に多数のモンシロチョウが乱舞していたのが印象的でした。モンシロチョウは春のイメージですが、キャベツに卵を産み付けるため、秋までは活発に活動するのだそうです。というわけで虫食いだらけのキャベツもお土産にいただいて帰ってきました。しかし、キャベツの芯あたりにヨトウムシというグロテスクな蛾の幼虫が何匹も入り込んでいたのには参りました。スーパーで売られているキャベツには、当然ヨトウムシなど入り込んでいません。それは農薬のおかげと言えます。無農薬農業が“言うは易く行うは難し”であることを実感した次第です。さて今回は新型コロナウイルスのワクチンの接種偽装を行った医師の事件を取り上げます。この事件、接種偽装を、依頼してきた人に対してだけではなく、普通にワクチン接種を受けに来た人にも行っていた可能性もあり、その動機は複雑です。母子3人にワクチンを接種したと偽って接種委託料を詐取10月4日付の全国紙各紙は、愛知県稲沢市の母子3人に新型コロナウイルスワクチンを接種したと偽り同市から接種委託料を詐取した、として警視庁捜査2課が王子北口内科クリニック(東京都北区)のF院長(51)を詐欺と公電磁的記録不正作出及び同供用容疑で再逮捕した、と報じました。各紙報道によれば、F院長は昨年10~12月、稲沢市に住む40代女性と10代の娘2人の計3人について、ワクチン接種をしたとする虚偽の予診票(接種記録)を作成し、同市から接種委託料計約1万4,000円を詐取し、同市経由で国のワクチン接種記録システム(VRS)に虚偽の接種記録を登録させた疑いがある、とのことです。F院長と女性は、数年前にワクチンに否定的な人が集まる投資セミナーで知り合ったそうです。セミナーの仲間内でワクチンを「殺人ワクチン」、接種済み証を「なんちゃって証明」と呼んでいたとの報道もあります。女性は捜査官に対し「人体に悪影響を及ぼすと思っていた。ワクチンを打ったことにしなければ色々な不利益を被ると考え、(接種偽装を)お願いした」と話したとのことです。約230人の接種記録があり、7割以上が北区以外の住民F院長が再逮捕であるのは、今年9月にすでに逮捕されているからです。各紙報道によれば、F院長は、9月12日までに新型コロナウイルスのワクチン接種をしたように装い、自治体から接種委託料をだまし取った詐欺などの疑いで逮捕されています。この時の逮捕容疑は再逮捕の時と同じです。昨年8~12月、札幌市の50代の女性ら家族3人にワクチンを2回ずつ接種したとする予診票を偽造し、国のワクチン接種記録システムに虚偽の接種記録を登録させるなどして、接種委託料計約1万4,000円をだまし取った疑いです。この女性とも投資セミナーで知り合ったとのことです。新型コロナワクチンの接種は、原則、住民票のある自治体で受けることになっていますが、調べでは F院長のクリニックでは2021年7~12月に男女約230人の接種記録があり、7割以上が北区以外の住民で、北海道や広島県などの人が接種を受けた記録があったとのことです。再逮捕の愛知県稲沢市のケースも、北区以外の接種者の中から警視庁が事件としてピックアップしたものと見られます。「接種希望者には生理食塩水を打ったこともある」と供述この事件、一筋縄ではいかないのは、F医師が接種偽装を希望する人だけではなく、一般の人にも本人に伝えず接種偽装をした可能性がある、という点です。毎日新聞等の報道によれば、最初の逮捕後の取り調べで、「接種希望者には生理食塩水を打ったこともある」と供述していたとのことです。F医師は調べに対し「さまざまな人に頼まれてワクチンを打ったことにして予防接種済み証を作った。ワクチンを受けたいという人がいたら、危険性を説明し、それでも受けたい人には生理食塩水を打った」と話していたとのことです。実際、北区保健所には今年1月、同クリニックで接種を受けた複数の区民から「接種したのに抗体値が低い」「生理食塩水を打たれたようだ」といった相談があり、保健所が区民約50人に抗体検査の案内を送ったところ、受検した11人のうち3人は抗体値が低く、接種券を再発行して対応したとのことです。なお、健康被害は確認されていません。容疑は詐欺と公電磁的記録不正作出及び供用接種偽装を頼まれてそれを実行するだけではなく、普通にワクチン接種を希望して来た人にまで、自らの主義、信条を押し付け、黙って生理食塩水を打つとは、医師としては言語道断の行為だと言えるでしょう。キャベツの栽培に農薬を使うかどうかは栽培農家の自由ですが、その栽培農家が「農薬を一切使わないキャベツしか国民は食べてはいけない」と主張し、周囲に押し付けはじめたら、世の中は混乱するでしょう。私自身は、無農薬農法の先輩の手伝いはしますが、ヨトウムシが住んでいるキャベツはさすがに食べる気はしません。農薬の有無よりもキャベツの美味しさを選びます。今から20年ほど前、『買ってはいけない』(週刊金曜日別冊)という書籍がベストセラーになりました。「買ってはいけない」商品の中には、少々強引なロジックでその理由を解説していたものもあったように記憶しています。今回、事件の発端となったワクチン反対派の投資サークルも、『買ってはいけない』を熟読していた人たちなのかもしれません。ところで、F院長の容疑は詐欺と公電磁的記録不正作出及び供用です。詐欺は接種委託料の詐欺です。一方の公電磁的記録不正作出及び供用は、国のワクチン接種記録システム(VRS)に虚偽の接種記録を登録させたことによる罪です。この公電磁的記録不正作出及び供用罪、この連載でも度々登場していますが、皆さんご記憶でしょうか。それは、「第36回 元准教授逮捕の三重大・臨床麻酔部不正請求事件 法律上の罪より重い麻酔科崩壊の罪」でも書いた、三重大の准教授がカルテを改ざんして問われた罪です。他人の事務処理を誤らせる目的で、それに使う電磁的記録を不正に作ったり供したりする罪で、刑法第161条の2に規定されています。電磁的記録不正作出及び供用罪そのものは5年以下の懲役または50万円以下の罰金ですが、公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、10年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。病院の電子カルテであろうが、国のワクチン接種のシステムであろうが、不正に電子データをいじったりするとこの罪に問われることになるので、皆さんも気をつけて下さい。なお、医師としての罪はどうなんだ、ということになりますが、最終的には厚生労働省の医道審議会にかけられ、医師免許取り消し・停止などの行政処分が行われることになるでしょう。それは、これらの罪が確定した後となります。

605.

FDA、小児へのモデルナとファイザーのBA.4/5対応2価ワクチンを承認

 米国食品医薬品局(FDA)は10月12日、モデルナおよびファイザーのオミクロン株BA.4/5対応の新型コロナウイルス2価ワクチンについて、緊急使用許可(EUA)を修正し、小児への単回追加接種の対象年齢を拡大したことを発表した。モデルナの2価ワクチンは、これまで18歳以上だったものが6~17歳にも承認され、ファイザーの2価ワクチンは、12歳以上だったものが5~11歳にも承認された。それぞれ初回シリーズから最低2ヵ月の接種間隔を経て接種が許可されている。 今回の小児への2価ワクチン承認拡大に伴い、ファイザーの従来の1価ワクチンは、5~11歳に対する追加接種としての使用ができなくなる。ただし、モデルナおよびファイザーの1価ワクチンは、初回シリーズとして、生後6ヵ月以上を対象とした接種は引き続き承認されている。 今回のFDAによる承認は、両社のBA.1対応2価ワクチンの成人における追加接種の臨床試験で評価された免疫反応と安全性に関するデータに依拠している。また、モデルナのBA.4/5対応2価ワクチン単回追加接種の安全性については、12~17歳(約1,300例)、6~11歳(約1,300例)が参加した同社の1価ワクチンの臨床試験に基づいている。追加接種後に最も多く報告された副反応は、注射部位の痛み、発赤、腫脹、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、注射した腕のリンパ節腫脹、悪心/嘔吐、発熱などがあり、BA.4/5対応2価ワクチン接種者も、これと同様の副反応を経験する可能性がある。ファイザーのBA.4/5対応2価ワクチンについても、同社の1価ワクチン接種者と同様の副反応を経験する可能性があるとしている。 日本においては、ファイザーの日本法人が、10月13日付のプレスリリースにて、5~11歳の小児に対するBA.4/5対応2価ワクチンについて、厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。

606.

10月18日 統計の日【今日は何の日?】

【10月18日 統計の日】〔由来〕わが国最初の近代的統計である「府県物産表」に関する太政官布告が公布された日にちなみ、統計の重要性に対する国民の関心と理解を深め、統計調査に対する国民のより一層の協力を求めることを目的に、1973年に閣議了解で定められた記念日。関連コンテンツ統計のそこが知りたい!わかる統計教室臨床研究で役立つ統計解析 ~生存分析を中心に~【お役立ち】感度、特異度、的中率(検査精度の指標)【患者説明用スライド】新型コロナワクチンの有効率とは【患者説明スライド】

607.

第134回 コロナ感染から1年後も続く症状は1年半後もおよそ解消せず/オミクロン株ワクチンは無駄ではない

コロナ感染から1年後も続く症状は1年半時点でもおよそ解消せずそのまま新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状、いわゆるコロナ後遺症(コロナ罹患後症状)はジャニーズ事務所のアイドルも自身のその病状を今や公言するなど1)、世間に広く知られるようになりました。COVID-19流行は2019年の後半から始まっておよそ3年が経ち、コロナ罹患後症状の長期追跡の結果も報告されるようになりました。英国でのそのような長期追跡の新たな報告によると、コロナ罹患後症状が感染から1年後もあるようならその半年後までの解消はおよそ期待できず1年半時点でもそのまま持ち越されるようです2-4)。試験では英国・スコットランドの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者3万3,281人とそうでない6万2,957人が18ヵ月間追跡されました。発症した感染者3万1,486人のうち1,856人(6%)は最後の観察時点(most recent follow-up)で症状がまったく回復しておらず(非回復)、半数近い1万3,350人(42%)はある程度ましになったものの完全回復には至っていませんでした(部分回復)。感染後6ヵ月と12ヵ月時点での記録がある3,744人に限った解析での非回復、部分回復、完全回復は6ヵ月時点ではそれぞれ295人(8%)、1,766人(47%)、1,683人(45%)、12ヵ月時点でもほぼ変化なしのそれぞれ303人(8%)、 1705(46%)、1736人(46%)でした。また、感染後12ヵ月(1年)時点と18ヵ月(1年半)時点での記録がある197人に限った解析での非回復、部分回復、完全回復は1年時点ではそれぞれ21人(11%)、100人(51%)、76人(39%)、1年半時点ではそれぞれ21人(11%)、101人(51%)、75人(38%)でした。今回の結果によると感染から1年後に不調の人のほとんどはその半年後の1年半時点でも回復しないままのようです。無症状の感染と罹患後症状やその他の有害転帰(生活の支障、入院、救急受診、死亡)の関連は認められず、罹患後症状は感染症が重度だった人により生じていました。感染前のワクチン接種で罹患後症状を予防しうるとの一文で報告は締めくくられています2)。オミクロン株ワクチンは無駄ではないModerna社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株BA.1対応ワクチンmRNA-1273.529を追加接種した人の抗体を解析した試験報告5)によると、どうやらオミクロン株対応ワクチンは将来の新参株と戦う準備をも免疫系に備えさせる働きがあるようです6)。試験では26人のリンパ節検体と15人の骨髄検体が解析され、使いまわしのB細胞ではなく新品のB細胞をおそらく起源とするBA.1認識抗体が検出されました。その結果によると、BA.1のような変異株へのワクチン接種は先立つワクチン接種で備わったいわば使い古しのB細胞に免疫が固執(imprinting)してしまうのを乗り越え、新品のB細胞を手配して変異株に順応できるようにする働きがあるようです。また、元祖ワクチン接種を済ませたもののオミクロン株に感染した6人を調べた別の研究7)ではそういう順応が時を経るにつれて成熟していくことが示されています。オミクロン株感染から1ヵ月時点でのそれら6人の抗体はオミクロン株BA.1より元祖株にもっぱらより結合しましたが、感染から半年経つと6人のおよそ半数のB細胞は元祖株よりオミクロン株BA.1により結合する抗体を作るようになっていました6)。つまり感染後の免疫は時とともに成熟しました。新たな流行を引き起こす新参の次世代ウイルス株はその直前に流行った先代株やその先代株へのワクチンの抗原に元祖株より似通い、新参株に直面した免疫はその新参株に最も近い抗原に応じる既存のB細胞をまずは活性化します。よって、目下流行中のウイルス株へのワクチンを用意することは、その上手を行く新参株がやがて出現するにせよ価値があるでしょう6)。参考1)藤ヶ谷太輔、コロナ後遺症に悩むリスナーにメッセージ「僕も不安になりました」/マイナビニュース2)Hastie CE, et al. Nat Commun.2022;13:5663. 3)Long COVID at 12 months persists at 18 months, study shows / Reuters4)Long COVID Features Many Lasting Effects, Study Says / WebMed5)SARS-CoV-2 Omicron boosting induces de novo B cell response in humans. bioRxiv. September 22, 2022. 6)Omicron boosters could arm you against variants that don’t yet exist / Nature7)Evolution of antibody immunity following Omicron BA.1 breakthrough infection. bioRxiv. September 22, 2022.

608.

基礎疾患がある若年者、コロナワクチン後の抗体陽性率高い/成育医療研究センター

 国立成育医療研究センター 感染症科の庄司 健介氏らによって、免疫抑制状態を含む基礎疾患を有する12~25歳の患者における新型コロナワクチン接種後の安全性と抗体価が調査された。その結果、基礎疾患のある患者であっても、ワクチン2回接種後の抗体陽性率は高く、その抗体価は12~15歳の患者のほうが16~25歳の患者よりも高いことが明らかになった。これまでの新型コロナワクチンに関する調査は主に健康な人を対象としており、基礎疾患を有する小児や青年での安全性や抗体価の情報は限られていた。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2022年9月21日掲載の報告。 本調査の対象は、何らかの基礎疾患のある12~25歳の患者で、2021年7~10月にBNT162b2(ファイザー製ワクチン)を2回接種した429例であった。年齢中央値は15.0歳(四分位範囲:13.0~18.0歳)、12~15歳が241例(56.2%)、16~25歳が188例(43.8%)、男性が204例(47.6%)であった。最も多かった基礎疾患は遺伝/染色体疾患/先天奇形(67例、15.6%)で、内分泌/代謝疾患(55例、12.8%)、神経疾患(47例、11.0%)、肝疾患(43例、10.0%)と続いた。なお、基礎疾患が複数ある場合は、主たる基礎疾患を研究者が1つ選択した。免疫抑制状態の患者は138例(32.2%)であった。 安全性は、接種後1週間以内の副反応を紙媒体もしくはウェブを用いたアンケートによって調査し、接種後1ヵ月以内の入院を要する副反応は電子カルテを用いて調査した。抗体価は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体をワクチン接種2週間~4ヵ月後に測定した。年齢(12~25歳、16~25歳)や免疫不全の有無などで比較検討を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン2回接種後、1週間以内の38℃以上の発熱は、12~15歳では35.7%、16~25歳では28.0%であった。免疫機能が正常な患者では36.2%、免疫抑制状態の患者では24.1%であった。・重篤な副反応で入院を要したのは、1回目接種後は0例、2回目接種後は12~15歳で1例(0.4%)、16~25歳で2例(1.1%)であった。いずれの患者も回復して退院した。・ワクチン2回接種後の抗体陽性率は、抗体価を測定した397例中393例(99.0%)であった。12~15歳では552例中221例(99.5%)、16~25歳では175例中172例(98.3%)、免疫機能が正常な患者では264例中264例(100%)、免疫抑制状態の患者では133例中129例(97.0%)であった。・抗体価の幾何平均抗体価は、12~15歳が1603.3 U/mL(95%信頼区間[CI]:1321.8~1944.7 U/mL)、16~25歳が949.4 U/mL(同:744.2~1211.1 U/mL)であった。免疫機能が正常な患者では2106.8 U/mL(同:1017.5~2314.7 U/mL)、免疫抑制状態の患者では467.9 U/mL(同:324.4~674.8 U/mL)であった。・ステロイドや生物学的製剤などの複数の免疫抑制薬を服用している患者では、より低い抗体価を示す傾向があった。 同氏らは、「BNT162b2は、基礎疾患のある小児や青年において、許容可能な安全性を有しつつ免疫原性を高めた。この集団におけるワクチン接種後のまれな副反応を評価するためにはさらに大規模な調査が必要である」とまとめた。

609.

BA.4/5対応2価ワクチンの第II/III相試験、7日後データ/ファイザー

 米国・Pfizerは10月13日付のプレスリリースで、同社のオミクロン株BA.4/5対応の新型コロナウイルス2価ワクチンについて、18歳以上における臨床試験の初期データを発表した。2価ワクチン追加接種から7日後に被験者から採取した血清で、オミクロン株BA.4/5に対する中和抗体反応が、追加接種前よりも大幅に上昇したことが確認され、若年層と高齢者ともに、同社の起源株に対する1価ワクチンよりも、BA.4/5への予防効果が期待できることが示唆された。 同社が実施したBA.4/5対応2価ワクチンの第II/III相試験では、55歳以上で1価ワクチン3回+2価ワクチン(30μg)で4回目接種して7日後の血清(40例)と、同年齢層で1価ワクチン3回+1価ワクチン(30μg)で4回目接種して7日後の血清(40例)とが比較された。また、18~55歳の1価ワクチン3回+2価ワクチンで4回目接種して7日後の血清(40例)も採取され、若年層と高齢者の2価ワクチンの反応も比較された。2価ワクチン接種群の3回目と4回目の接種間隔は約11ヵ月であったが、1価ワクチン接種群の3回目と4回目の接種間隔は約6ヵ月であった。この差にもかかわらず、中和抗体価のベースラインは各群でおおむね同程度だった。被験者のうち新型コロナの既往・現病歴がある人とない人は、各群で均等に層別化された。免疫原性は、SARS-CoV-2ライブウイルス蛍光焦点還元中和アッセイ(FFRNT)を用いて評価された。 主な結果は以下のとおり。・2価ワクチンの追加接種を受けた被験者は、追加接種前よりもオミクロン株BA.4/5に対する中和抗体反応が大幅に増加し、18~55歳と55歳以上の両群で同等の反応が認められた。・55歳以上の4回目接種で、1価ワクチン群と2価ワクチン群を比べると、2価ワクチン群のBA.4/5に対する中和抗体反応がより増加していた。・2価ワクチンは忍容性が高く、初期データでは1価ワクチンと同等の良好な安全性プロファイルが示された。 同社は、2価ワクチンの追加接種から1ヵ月後の反応を測定した追加データについて、数週間以内に得られる見込みだとしている。

610.

4回目接種後、高齢者の入院予防効果はどれだけ上がるか/BMJ

 中等症~重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンの有効性は、3回目接種後に経時的に低下したが、4回目接種が推奨されたほとんどのサブグループで追加ブースター接種により改善することが、米国疾病予防管理センター(CDC)のJill M. Ferdinands氏らが実施した検査陰性デザインによる症例対照研究で示された。COVID-19のBNT162b2(ファイザー製)/mRNA-1273(モデルナ製)ワクチンは、有効性が経時的に低下し追加接種で上昇することが臨床研究で示唆されているが、この傾向が年齢、免疫不全状態、ワクチンの種類や接種回数でどのように変化するかは不明であった。今回の結果を受けて著者は、「3回目ワクチン接種の推奨と追加ブースター接種の検討が推奨される」とまとめている。BMJ誌2022年10月3日号掲載の報告。約89万人を対象とした検査陰性デザインによる症例対照研究 研究グループは、2021年1月17日~2022年7月12日の期間に、VISIONネットワークに参加している米国10州の病院261施設、272の救急診療部(ED)または救急診療所(UCC)119施設に入院または受診した、COVID-19様疾患のためSARS-CoV-2検査を受けた18歳以上の成人89万3,461例について解析した。 主要評価項目は、BNT162b2またはmRNA-1273ワクチンの有効性の低下であった。オミクロン変異株流行期、デルタ変異株流行期およびデルタ変異株流行前の期間に分け、暦週と地理的地域を条件とし、年齢、人種、民族、地域のウイルス循環、免疫不全状態、ワクチン接種について調整したロジスティック回帰モデルで推定した。オミクロン株流行期の有効性、3回目接種後<2ヵ月が最も高く4~5ヵ月後には低下 病院に入院したCOVID-19症例4万5,903例とSARS-CoV-2検査陰性のCOVID-19様疾患21万3,103例(対照)を、ED/UCCを受診したCOVID-19症例10万3,287例とSARS-CoV-2検査陰性のCOVID-19様疾患53万1,168例を比較した。 オミクロン株流行期において、病院に入院を要するCOVID-19に対するワクチンの有効性は、3回目接種後<2ヵ月では89%(95%信頼区間[CI]:88~90)であったが、4~5ヵ月後には66%(63~68)に低下した。また、COVID-19によるED/UCC受診に対するワクチンの有効性は、3回目接種後<2ヵ月で83%(82~84)であったが、4~5ヵ月後には46%(44~49)に低下した。 ワクチンの有効性の低下は、若年や免疫不全状態ではない集団などすべてのサブグループで認められたが、免疫不全状態の集団でより顕著であった。 ブースター接種が推奨されるほとんどの集団において、4回目接種後にワクチンの有効性は増加した。65歳以上における入院に対する有効性は、3回目接種後8ヵ月以上で45%であったのが、4回目接種後2ヵ月で76%に増加した。

611.

塩野義のコロナ治療薬、発症予防検証の第III相試験を12月に開始

 塩野義製薬は、10月11日に行われたR&D Day 2022にて、同社が開発中の新型コロナウイルス(COVID-19)経口治療薬ensitrelvir(S-217622)について、症状の発生抑制効果を検証するため、SARS-CoV-2感染症患者(初発患者)の同居家族を対象とした第III相臨床試験(SCORPIO-PEP試験)を、日本と米国などで2022年12月より開始する予定であることを発表した。また、6~12歳未満の軽症・中等症を対象とした日本での第III相試験や、入院患者を対象とした米国、欧州などでの第III相試験を、ともに2022年11月から実施することなども明らかにした。 説明会資料によると、COVID-19発症予防効果の検証のための第III相試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照試験にて、日本と米国、そのほか数ヵ国の2,040例を対象に実施される。SARS-CoV-2に感染した初発患者の同居家族に対して、ensitrelvir投与群とプラセボ群とを比較し、投与開始から10日間後のCOVID-19症状の発症抑制効果を検証する。本試験は、2023年7~9月での症例集積完了を目指している。 なお、ensitrelvirのマウス感染モデルでの予防効果試験では、SARS-CoV-2感染24時間前に用量128mg/kg、64mg/kg、32mg/kgの3パターンで本剤を単回皮下投与して比較した結果、投与量64mg/kg以上(感染時血漿中濃度2.99μg/mL)で致死抑制効果が認められたとし、予防的にensitrelvirを投与することにより、SARS-CoV-2感染マウスの生存率が改善した。 ensitrelvirの小児への臨床試験については、6~12歳未満の軽症・中等症を対象に、錠剤投与による試験を国内で11月に開始するほか、0~6歳未満を対象として、顆粒製剤を使ったグローバル第III相試験を計画している。12~18歳未満については、国内とグローバルで実施中の第II/III相試験結果を基に、日米欧の適応取得を検討している。 また、同社の開発する新型コロナワクチン(S-268019)については、年内に承認申請を行う方針を明らかにした。変異株への対応として、S-268019臨床試験検体における追加免疫時の中和抗体価は、ファイザー製ワクチンによる追加免疫時の中和抗体価と同程度だという。なお、オミクロン株の遺伝子情報を基にした抗原製造プロセスの検討は最終段階にあるとしている。

612.

第15回 「全国旅行支援」は感染対策ムードに勝てるか?

「全国旅行支援」が開始10月11日から、旅行代金を一部補助する観光支援策である「全国旅行支援」がスタートしました。ポスト「Go To トラベル」としての位置付けです。さらに、海外からの水際対策としての入国者の上限を撤廃して、外国人の個人旅行を解禁しました。1日当たり5万人の入国者上限を撤廃しています。インバウンドによる観光業勃興の起爆剤となるかどうか、重要な局面になるでしょう。さて、全国旅行支援の割引率は40%となります。上限額は、公共交通機関利用付き宿泊は1泊1人当たり8,000円、宿泊・日帰りは1泊・1日当たり5,000円です。また、飲食店などに使えるクーポンも、平日3,000円・休日1,000円の補助が出ます(表)。クーポンも含めると1日当たり最大1万1,000円分が補助されることになります。これは、デカイです。表. 全国旅行支援(筆者作成)コロナ禍以降、まだ旅行に行っていない医療従事者も多いと思います。もし今回の「全国旅行支援」を検討されるのであれば、急いだほうがよいかもしれません。すでに旅行予約サイトがつながりにくくなったり、業者によっては予算上限に達しており、受付を終了しているところもあります。東京都は、準備が間に合わず10月20日開始となっています。大人数で旅行に行く際、そのうちの1人がワクチン接種証明や検査陰性証明を提示できない場合、自治体によっては全員割引対象外となる「連帯責任」のケースが発生するそうです。地域によっては細かいトラブルが生じるかもしれませんね。感染対策ムードとの綱引きさて、確かに新型コロナの感染は減少していますが、まだ決して低い水準にあるとは言えません。さらに、第8波の懸念も出始めています。人の移動が増える年末から感染者数が増加し始め、1月上旬あたりにピークが到来するのではないか、と予想している専門家も多いです。厚生労働省は、外国人観光客だけでなく、国内旅行においても3密の回避や換気、マスク着用などの対策を呼び掛けています。マスク着用については、国内外で温度感が異なるため、外国人観光客との間でマスク着用を巡ってトラブルにならなければよいですね。感染対策を行いながら、こうした緩和ムードと付き合っていくことになりますが、政府が全国旅行支援をすすめながら、自粛を呼びかけるなどのダブルスタンダードにならないことを祈るばかりです。

613.

新型コロナワクチン未接種者の特徴とは?

 世界中で新型コロナワクチンの接種やブースター接種が進められる中、まだ1度もワクチンを接種していないワクチン未接種者が存在する。これらの人々には共通の特性があるのだろうか。スコットランドにおいて未接種者の特性を調べたPublic Health Scotland所属のSafraj Shahul Hameed氏らによる研究結果がLancet誌2022年9月24日号 CORRESPONDENCEに掲載された。 2022年8月10日までに、スコットランドに住む約440万人の成人のうち、349万7,208人がCOVID-19ワクチンの3回接種を完了している。Hameed氏らは、2019年1月1日以降にスコットランドの国民保健サービス(NHS)と少なくとも1回のやりとりがあった、ワクチン接種記録がない人を未接種者と定義した。 ワクチン接種対象者として記録された471万2,810例のうち、84万2,029例(17.9%)に接種の記録がなかった。このうち8万6,489例(10.3%)に免疫性の禁忌、接種の同意が得られない、体調不良、患者による接種拒否など、未接種の理由が記録されていた。記録された理由の約5分の1が免疫性の禁忌だった。 研究所の記録から、パンデミック開始以降に少なくとも1回COVID-19のPCR検査を受け、かつ接種記録のない25万4,049例が確認された。病院以外の処方記録から2019年1月1日以降に何らかの薬を処方された、接種記録のない41万6,499例を特定した。28万5,647例の未接種者が予定外の医療機関受診(NHS 24、家庭医の時間外診察、スコットランド救急サービスのいずれか1つ以上)をしており、13万3,569例の未接種者が少なくとも1回の入院を経験していた。上記のデータのいずれにもワクチン接種の記録がない26万8,740例が確認された。 スコットランドでCOVID-19ワクチン接種の記録がない57万3,289例の成人が、2019年1月1日以降にNHSと少なくとも1回接触していることが確認された。ワクチン接種プログラムの開始以降に死亡した人、および未接種の理由として免疫性の禁忌が記録されている人を除外し、2022年8月10日時点で、COVID-19のワクチン接種の記録がない49万4,288例を未接種者として特定した。 この未接種者コホートは、男女比がほぼ同じ、年齢分布も男女ともほぼ同じで、平均年齢は42.4歳であった。多くは都市部に住んでおり、29.0%がScottish Index of Multiple Deprivation(雇用や所得など7領域の総合指標)のスコアが最も低い地域に居住していた(接種者は18.7%)。 家庭医の記録によると、未接種者のうち29万8,866/49万4,288例(60.5%)が併存疾患を有していない(接種者は198万8,751/384万7789例[51.7%])一方で、5万5,122/49万4,288例(11.2%)が3つ以上の併存疾患を持っていた(接種者は48万1,019/384万7,789例[12.5%])。未接種者で最も多く報告された併存疾患は、慢性呼吸器疾患(15.7%)、うつ病(12.8%)、高血圧症(10.6%)であった。 未接種者の5人に1人(10万3,505例[20.9%])が中枢神経系に関連する疾患の薬を処方されており(接種者は65万5,531例[17.0%])、さらにうち3分の1以上(4万179/10万3,505例[38.8%])が抗うつ薬を処方されていた。 多変量ロジスティック回帰分析により、ワクチン接種動向を予測する可能性が最も高い因子を同定した。男性、貧困度が高い、大都市圏在住、中枢神経系疾患の薬を処方されている、3つ以上の併存疾患があることは未接種と最も関連していたが、いくつかの併存疾患(高血圧、糖尿病、慢性呼吸器疾患など)を持つ人は、ワクチン接種を受ける可能性が高かった。 英国の過去のデータでは、年齢の上昇と併存疾患はCOVID-19死亡率を上げる最も広く認識されているリスク要因の一つだが、併存疾患を多く持つ人々は、未接種のリスクが高いままであった。 著者らは「本分析により、人口規模の過大推定の可能性を考慮しても、スコットランドの成人人口のかなりの割合がワクチン未接種であることが明らかになった。また、ワクチン未接種状態の予測因子も明らかになり、国のワクチン接種戦略の改訂に役立てることができる」としている。

614.

第130回 BA.4/5対応2価ワクチン特例承認、予想された現場の混乱と大量廃棄が現実に

オミクロン株BA.4/5対応の2価ワクチンを特例承認こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLBも日本のプロ野球もいよいよポストシーズンに入りました。ダルビッシュ 有投手が所属するサンディエゴ・パドレスはナショナル・リーグでまだ生き残っており、12日(日本時間)からの地区シリーズでロサンゼルス・ドジャースと対戦します。予定では13日の第2戦に先発します。かつて所属し、苦い経験のあるドジャース(2017年に所属、ワールドシリーズで2回敗戦投手に)相手に、ねじ伏せるような好投を期待したいと思います。一方、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷 翔平選手は、15勝9敗、34本塁打、95打点で今シーズンを終え、シーズンの規定投球回数と規定打席数もクリアしました。それはそれでファンとしては大変喜ばしいのですが、やはりMLB選手の真価はワールドシリーズに進出し、勝ち切ってこそだと思います。来シーズンにはせめてポストシーズンまでは進出して欲しいですが、ジョー・マドン監督を追い出した自分勝手なペリー・ミナシアンGM(球場で携帯ばかりいじっています)や、監督代行から監督に昇格したフィル・ネピン監督(采配が淡白なわりに退場が多い)では、来年もそんなには期待できないかもしれません。さて、新型コロナウイルスのワクチンですが、厚生労働省は10月5日、米・ファイザーの従来株とオミクロン株BA.4/5に対応した追加接種用の2価ワクチンを特例承認しました。そして、10月7日、厚労省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会はこの2価ワクチンを、予防接種法上の特例臨時接種に位置付けることを承認しました(生後6ヵ月~4歳を対象としたファイザーのワクチン[従来型ワクチン]も5日に特例承認され、7日の同分科会で臨時接種とし、5歳以上と同じ「努力義務」に位置付けられています)。現在の感染の主流になっているBA.5に対応するワクチンなので、こちらも喜ばしいニュースではあります。しかし、確保可能となった新しいワクチンを、中長期的な戦略もなく税金を湯水のように投入し、次々と承認していく国の姿勢については少々首をかしげざるを得ません。「“旧改良ワクチン”は廃棄処分となるのでしょうか」新型コロナウイルスのワクチンについては今年の夏以降、本連載でも度々取り上げて来ました。「第122回 米国では使わない2価の“旧改良ワクチン”を日本は無理やり買わされる?国のコロナワクチン対策への素朴な疑問」(2022年8月17日公開)では、米国ではBA.4/5対応のワクチンにシフトしているのに、日本がBA.1対応の“旧改良ワクチン”をまず承認する方針であることに対し、「米国と比べて周回遅れ」と指摘しました。9月に入ると事態は動き、ファイザーが日本でもBA.4/5対応の“新改良ワクチン”の製造販売の承認を厚労省に申請しました。この“新改良ワクチン”が今回特例承認された2価ワクチンです。このときは、「第125回 医療DXの要「マイナ保険証」定着に向けて日医を取り込む国・厚労省の狙いとは(後編)かかりつけ医制度の議論を目くらましにDX推進?」(2022年9月7日公開)で、「“新改良ワクチン”がもうすぐ出るのに、“旧改良ワクチン”を積極的に打とうという人が現れるでしょうか。また、“新改良ワクチン”を承認したら、国が契約して買ってしまった(と思われる)“旧改良ワクチン”は廃棄処分となるのでしょうか」と書きました。こうした危惧は、どうやら現実のものとなりそうです。「BA.1かBA.4/5のいずれか早く打てるワクチンで1回接種を」と厚労省ファイザーの従来株とオミクロン型BA.4/5に対応した2価ワクチンは、10月13日以降、準備ができた自治体から順次接種が開始されるとのことです。2、3回目接種を終えた人の追加接種に使用可能で、対象は12歳以上、前回接種から少なくとも5ヵ月経過後に接種できる、とされました。ただ、厚労省は10月7日、新しいワクチンを含む新型コロナウイルスワクチンの接種間隔を短縮する案について、9月19日に開く専門部会で薬事審査すると発表しています。というわけで、早ければ10月中にも接種間隔は3ヵ月に短縮化される方向です(4回接種済みの60歳以上も3ヵ月後に接種可能に)。接種間隔短縮議論の背景には、高齢者にBA.4/5に対応したワクチンを早めに接種してもらいたいことや、若者を中心に相変わらず接種が進んでいないこと、ワクチン余りなどがあるようです。9月20日から高齢者に対する接種が始まったばかりのオミクロン型BA.1に対応したワクチンに続き、BA.4/5対応ワクチンも登場したことで、接種可能なワクチンの種類が増えることになります(モデルナもBA.4/5対応ワクチンを承認申請中)。厚労省は「BA.1かBA.4/5のいずれか早く打てるワクチンで1回接種を」と呼びかける方針とのことですが、国民や現場の混乱は始まっています。BA.1対応ワクチンは廃棄か?頭悩ませる自治体10月7日付の毎日新聞は、「第8波、ワクチンに思わぬ課題」と題する記事で「厚労省はいずれも従来のワクチンを上回る重症化予防効果があると説明し、扱いに差を付けず、使用期限が早く来るものを優先して使うことを推奨する。ただ、住民がワクチンの種類を選べるようにするかどうかは自治体の判断に委ねる(中略)。東京都墨田区役所には、住民からの問い合わせが相次いでいる」と書いています。そして同記事は、「BA.5対応は10月中旬以降、自治体への配送が始まる。一方、BA.1対応ワクチンの在庫を使い切るには10月末までかかる可能性がある。担当者は『BA.5対応への切り替えが遅いと、区民が接種を先延ばしして接種率が下がりかねない』と懸念する。現在、接種の予約は半分程度しか埋まっていない。一方で『BA.1対応の在庫を余らせて廃棄するわけにはいかない」と頭を抱えている』」と自治体担当者の悩みを伝えています。オミクロン型未対応の従来型ワクチンは既に大量廃棄の道へ報道等によれば厚労省は自治体に対し、BA4/5対応ワクチンは約4,300万回分を供給する配分計画を示しています。既に約3,700万回分の供給が決まっているBA.1対応ワクチンと混在することになります。9月20日から使い始めたばかりのBA.1対応のワクチンはどうみても相当数廃棄になる可能性が高そうです。BA.1対応ワクチンの廃棄以前に、オミクロン型に対応していない従来型ワクチンも大量廃棄が始まっています。10月6日付の朝日新聞は「従来型ワクチン大量廃棄へ」と題する記事で、「朝日新聞が20の政令指定都市に取材したところ、9月下旬の(従来型ワクチンの)在庫は約220万回分。(中略)。予約は少なく、在庫の多くは使われないとみられている」と書いています。政治家の決断でお金をドブに捨てる政策が多過ぎるオミクロン対応型ワクチンの登場で、従来型のニーズがなくなるのは理解できます。しかし、今年8月の段階で米国においてBA.4/5対応ワクチンの実用化が近づいていたのに、BA.1対応ワクチンの承認をことさら急いだ理由がよくわかりません。8月時点ではBA.4/5対応ワクチンの日本での確保の目処が立ってなかったからでしょうか。だからといって、無駄になるかもしれないワクチンに巨額の税金を使っていいということにはなりません。喜ぶのはファイザーやモデルナなどの米国企業と米国政府だけです。新型コロナウイルスワクチンの予防接種はすべて国費で賄われます。「とにかく最善を最短で」というのもわかりますが、首相や内閣官房、厚労省ももう少し冷静で的確な判断ができなかったのかと思います。現状、自治体におけるBA.1対応ワクチンの接種予約は低調と言われています。BA.1対応ワクチンとBA.4/5対応ワクチンのうち、「どちらの方がオミクロン型BA.5に効果があるかの評価は定まっていないからどちらでも」と言われても、普通に考えればBA.4/5対応ワクチンでしょう。よりいい新製品がまもなく打てるのに、旧製品をわざわざ急いで打つ人はいません。国は国産コロナワクチンの開発や、国産の新薬開発に莫大な税金を投じ、ドブに捨ててきました。それらの政策の中には、「国民のため」なのか時の首相の「”やってる感”のため」なのかわからないものも多々ありました(コロナ対策に限らず、安倍 晋三元首相の国葬もそうした印象を受けました)。政治家(とくに首相)には、自分の決断で使うお金の出処が、自分の貯金ではなく税金である、という自覚をもっと持っていただきたいと思う今日この頃です。

615.

BA.5の中和抗体高いのは?未感染の3回接種者vs.感染後の2回接種者/感染研

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染とワクチンの組み合わせにより誘導されるハイブリッド免疫は、SARS-CoV-2再感染に対して優れた免疫防御を与えることが報告されている。一方で、ハイブリッド免疫の質と持続性は、感染したウイルス株や、接種ワクチンの種類、ワクチン接種間隔、ワクチン接種と感染の間隔などさまざまな要因の組み合わせにより変動する可能性が指摘されている。国立感染症研究所が9月27日に発表した研究によると、ワクチン接種や感染による抗体保有者の血清を用いて、各種変異株に対する中和抗体価の比較試験を行った結果、未感染のワクチン3回接種者は、感染後にワクチンを2回接種し、接種から半年程度経過したハイブリッド免疫を持つ者よりも、優れた中和能を有することなどが明らかになったという。 本調査では、2021年12月~2022年2月に実施された「第三回および第四回新型コロナウイルス感染症に対する抗体保有率調査」に参加した1万6,296例から、ワクチン未接種の感染者(38例、0.2%)、感染後にワクチンを2回接種した者(146例、0.9%)、感染歴のない2回ワクチン接種者(1万2,019例、73.8%)、感染歴のない3回ワクチン接種者(1,255例、7.7%)が同定された。感染とワクチン接種回数、接種からの経過期間の組合せにより誘導される変異株に対する中和抗体価を評価するため、感染から5~7ヵ月経過した未接種感染者(19例)、最終ワクチン接種から5~7ヵ月経過した感染後2回接種者(19例)、最終ワクチン接種から1ヵ月以内のワクチン3回接種者(30例)の検体を選抜し、各種変異株に対する血清中和抗体価が比較された。中和試験では、2倍階段希釈した血清を分離ウイルス(祖先株、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.5、BA.2.75)と混合し、5日間培養後、細胞変性効果の有無により中和活性を評価した。また、中和試験の結果を用いて、祖先株およびオミクロンの各株の抗原性の違いを評価するために抗原地図が作成された。 主な結果は以下のとおり。・感染後2回接種者は、ワクチン未接種感染者に比べて、祖先株に対する中和抗体価だけでなく、BA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5のいずれのオミクロン株に対しても高い中和抗体価を示した。・未感染3回接種者は、祖先株およびBA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5のいずれのオミクロン株に対しても、感染後2回接種者に比べて、高い中和抗体価を示した。・3回接種直後の者は、最終ワクチン接種から半年程度経過した感染後2回接種者よりも、いずれの変異株に対しても高い中和抗体が誘導されていることが示された。・抗原地図によると、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5は、祖先株からの抗原距離が離れており、中でもBA.5は最も祖先株と抗原性が異なるウイルスであることが明らかになった。・3回接種者の血清において、BA.5に対する中和抗体価は、祖先株に対する中和抗体価に比べて10分の1ほど低くなっていた。 著者は本結果について、感染歴のある者にワクチンを接種することにより、感染ウイルス株やワクチン株だけでなく、直近のオミクロン亜系統株に対しても中和能を有する抗体を誘導できるとする一方で、最終ワクチン接種から半年程度経過した感染後2回接種者のハイブリッド免疫の液性免疫は、未感染3回接種者よりも優れているとは限らないとしている。また、祖先株と抗原性が最も異なるBA.5は、ワクチン免疫を最も回避しやすいウイルスであると考えられるため、オミクロン株対応型ブースターワクチンの導入が有益である可能性が示唆された。今後の調査では、今回検体が入手できなかった3回目接種から5~7ヵ月経過した者や、4回目接種者の血清中和抗体価の評価も重要であると述べている。なお、デジタル庁ワクチン接種記録システムによると、国内におけるワクチン3回接種者の割合は、10月4日時点で全人口の約65%となっている。

616.

第133回 パキロビッド投与後のCOVID-19再燃は免疫障害に起因するのではなさそう

Pfizer社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)プロテアーゼ阻害薬・パキロビッドパック(Paxlovid、以下パキロビッド)投与が済んだ後のSARS-CoV-2感染(COVID-19)再燃(再発症やSARS-CoV-2再検出)は心配されていた免疫反応の障害によるのではないらしいことが米国政府研究者の試験で示唆されました1-3)。米国メリーランド州のNIH Clinical Centerや同国のその他の病院で進行中の試験の被験者を調べたその結果によるとパキロビッド投与5日間は短すぎてSARS-CoV-2への確実な免疫反応を引き出せないという仮説はどうやら的外れなようです2)。Clinical Infectious Diseases誌に先週6日に掲載されたその研究ではパキロビッド使用後にCOVID-19再燃を被った6例と再燃症状なしのCOVID-19患者6例が調べられました。COVID-19再燃患者6例はCOVID-19ワクチンの追加接種まで済ませており、最初の発症から4日以内にパキロビッドを使い始め、その後にCOVID-19症状が再発しました。比較対照群であるCOVID-19非再燃6例もワクチン追加接種済みでした。COVID-19再燃患者6例も対照群の6例も最初の感染や再燃の時に入院を要する重病には陥らずに済みました。それら12例の病状の経過や血液/鼻ぬぐい液を解析した結果、パキロビッドを効かなくすると思しき変異は幸いにもCOVID-19再燃患者に認められませんでした。SARS-CoV-2スパイクタンパク質への抗体はどの患者でも豊富で、COVID-19再燃患者の抗体確立の遅れを示す所見はありませんでした。SARS-CoV-2特異的なT細胞反応も確かであり、COVID-19再燃患者のその反応は非再燃患者を上回っていました。昔ながらの手法の培養でCOVID-19再燃患者6例を調べたところ自己免疫疾患で免疫不全の1例から感染可能なSARS-CoV-2が検出されました。また、ウイルスの細胞侵入をおよそ10倍高める成分・ポリブレン添加による培養でCOVID-19再燃患者6例を調べたところ昔ながらの手法より多い4例からSARS-CoV-2が同定されました。それらの結果によると再燃症状はSARS-CoV-2の名残りのRNAへの確固たる細胞反応を一因とするのであって免疫反応の障害がウイルス複製を許してしまうことに起因するのではなさそうです。COVID-19再燃患者から感染可能なSARS-CoV-2が検出されたことから隔離を要する場合があるかもしれません。それに、免疫反応が不十分な免疫不全の人へのより長期のパキロビッド治療を検討する臨床試験が必要なようです2)。参考1)Epling BP, et al.Clin Infect Dis. 2022 Oct 6:ciac663. [Epub ahead of print]2)Findings suggest COVID-19 rebound not caused by impaired immune response / Eurekalert3)COVID rebound after Pfizer treatment likely due to robust immune response, study finds / Reuters

617.

免疫抑制患者、ブースター接種50日以降に入院・死亡リスク増/JAMA

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタ変異株とオミクロン変異株が優勢であった時期に、ワクチンの初回および追加接種を受けた集団では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に起因する肺炎による入院や死亡の発生率が低く、複数回接種により重症COVID-19関連疾患の予防効果がもたらされた可能性があることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJ. Daniel Kelly氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年9月26日号で報告された。米国の後ろ向きコホート研究 研究グループは、米国の退役軍人健康管理局で治療を受けた経験のある集団を対象に、ワクチンの初回接種と追加接種後における重症COVID-19関連疾患の発生の評価を目的に、後ろ向きコホート研究を行った(米国退役軍人省などの助成を受けた)。 試験期間は2021年7月1日~2022年5月30日で、参加者はワクチン(BNT162b2[ファイザー製]、mRNA-1273[モデルナ製]、Ad26.COV2.S[ヤンセン製])の初回接種と追加接種を受けた。 161万719例が解析に含まれた。このうち男性が147万8,476例(91.8%)、女性は13万2,243例(8.2%)で、全体の年齢中央値は71歳(四分位範囲[IQR]:61~76)、110万280例(68.4%)が65歳以上で、113万3,785例(70.4%)は高リスクの併存疾患を有しており、15万8,684例(9.9%)は免疫抑制の状態であった。また、146万7,879例(91.1%)は、初回と追加で同じmRNAワクチンの接種を受けていた。免疫抑制状態の患者では経時的な効果が確認できず 24週の追跡期間中に、161万719例中2万138例でワクチン突破型(追加接種後に検査で確定された症候性COVID-19の診断と定義)のCOVID-19(125.0件[95%信頼区間[CI]:123.3~126.8]/1万人)が発現した。また、1,435例でCOVID-19に起因する肺炎による入院または死亡(8.9件[8.5~9.4]/1万人)が、541例で重症COVID-19肺炎による入院または死亡(3.4件[3.1~3.7]/1万人)が認められた。 高リスク集団におけるCOVID-19肺炎による入院または死亡の発生率は、65歳以上では1.9件(95%CI:1.4~2.6)/1万人であり、高リスクの併存疾患を有する集団では6.7件(6.2~7.2)/1万人、免疫抑制状態の集団では39.6件(36.6~42.9)/1万人であった。 COVID-19肺炎による入院または死亡の集団のサブグループ解析では、追加接種後24週までに、ワクチン接種の5つの組み合わせ(BNT162b2の3回接種、mRNA-1273の3回接種、Ad26.COV2.Sの2回接種、異なるmRNAワクチンの接種、Ad26.COV2.SとmRNAワクチンの接種)で、経時的な累積発生率に差はみられず、全般に発生率は低かった。 高リスク集団の経時的な解析では、免疫抑制状態の患者は免疫抑制のない患者と比較して、追加接種後51~100日(1~50日との比較でp=0.004)および101~150日(同p<0.001)のCOVID-19肺炎による入院または死亡のリスクが有意に高かった。この傾向は、BNT162b2の3回接種(追加接種後51~100日:p=0.02、同101~150日:p=0.002)およびmRNA-1273の3回接種(p=0.22、p=0.006)を受けた患者でも認められた。一方、65歳以上や高リスク併存疾患を有する集団では、このような傾向はみられず有効性が保持されていた。 著者は、「この研究は、デルタ変異株およびオミクロン変異株(BA.1、BA.2、BA.2.12.1)を含むSARS-CoV-2が米国で優勢であった時期に行われており、ワクチンの追加接種は、ウイルスが進化しても引き続きCOVID-19による重症疾患に対する予防効果をもたらしたことが示唆される」としている。

618.

コロナ診断1週目のリスク、心筋梗塞17倍・脳梗塞23倍/Circulation

 英国・国民保健サービス(National Health Service:NHS)のデータに基づき、ブリストル大学のRochelle Knight氏ら多施設共同による、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の動脈血栓塞栓症、静脈血栓塞栓症、およびその他の血管イベントの長期的な発生リスクについて大規模な後ろ向きコホート研究が実施された。その結果、COVID-19の既往がある人は既往がない人と比較して、COVID-19診断から1週目の動脈血栓塞栓症の発症リスクは21.7倍、静脈血栓塞栓症の発症リスクは33.2倍と非常に高く、27〜49週目でも、それぞれ1.34倍、1.80倍のリスクがあることが判明した。とくに患者数の多かった急性心筋梗塞と虚血性脳卒中では、COVID-19診断後1週目に、それぞれ17.2倍、23.0倍リスクが増加していた。Circulation誌2022年9月20日号掲載の報告。 本研究では、英国のイングランドおよびウェールズにて、全住民の電子カルテ情報を基に、2020年1月1日~12月7日(新型コロナワクチン導入以前)におけるCOVID-19診断後の血管疾患について検討された。COVID-19診断後の動脈血栓塞栓症イベント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中など)、静脈血栓塞栓症イベント(肺血栓塞栓症、下肢深部静脈血栓症、門脈血栓症、脳静脈血栓症など)、その他の血管イベント(心不全、狭心症、くも膜下出血など)の発生率を、COVID-19の診断を受けていない人との発生率を比較し、Cox回帰分析にて調整ハザード比(aHR)が推計された。 主な結果は以下のとおり。・イングランドおよびウェールズの成人約4,800万人のうち、COVID-19の診断から28日以内に入院したのは12万5,985人、入院しなかったのは131万9,789人であった。・イングランドでは、4,160万人年の追跡期間中に、26万279件の初回動脈血栓塞栓症と5万9,421件の初回静脈血栓塞栓症が発生した。・初回動脈血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:21.7(95%信頼区間[CI]:21.0〜22.4)、27〜49週目aHR:1.34(95%CI:1.21〜1.48)。・初回静脈血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:33.2(95%CI:31.3~35.2)、27〜49週目aHR:1.80(95%CI:1.50~2.17)。・動脈血栓塞栓症の多くは、急性心筋梗塞(12万9,799件)、もしくは虚血性脳卒中(12万8,539件)であった。・急性心筋梗塞は、COVID-19診断後1週目aHR:17.2(95%CI:16.3~18.1)と非常に高く、27〜49週目aHR:1.21(95%CI:1.03~1.41)となっている。・虚血性脳卒中は、COVID-19診断後1週目aHR:23.0(95%CI:22.0~24.1)と非常に高く、27〜49週目aHR:1.62(95%CI:1.42~1.86)となっている。・静脈血栓塞栓症の多くは、肺血栓塞栓症(3万1,814件)、もしくは深部静脈血栓症(2万5,267件)であった。・肺血栓塞栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:33.2(95%CI:30.7~35.9)と非常に高く、2週目aHR:9.97まで低下するも、3~4週目aHR:10.5に一時的に増加し、27〜49週目aHR:1.61 (95%CI:1.23~2.12)となっている。・深部静脈血栓症は、COVID-19診断後1週目aHR:10.8(95%CI:9.32~12.5)と非常に高く、2週目aHR:4.00まで低下するも、3~4週目aHR:4.80に一時的に増加し、27〜49週目aHR:1.99(95%CI:1.49~2.65)となっている。 さらに本研究では、COVID-19の重症度、人口統計学的特性、既往歴によるサブグループ解析も行われ、白人よりも黒人やアジア系のほうがハザード比が高く、過去に血栓塞栓症の既往がある人よりも既往がない人のほうが高いということが認められた。COVID-19診断後49週目における全人口の動脈血栓塞栓症リスクの推定増加率は0.5%(7,200人相当)、静脈血栓塞栓症リスクの推定増加率は0.25%(3,500人相当)だという。

619.

ファイザーのBA.4/5対応2価ワクチン、6ヵ月~4歳用1価ワクチン承認/厚生労働省

 厚生労働省は10月5日、ファイザーのオミクロン株BA.4/5に対応した追加接種用の新型コロナウイルス2価ワクチンについて承認事項の一部変更の特例承認をしたこと、および同社の生後6ヵ月~4歳用の新型コロナウイルス1価ワクチンを特例承認したことを発表した。コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5) 接種対象者が12歳以上であるオミクロン株BA.4/5対応の2価ワクチンの販売名は「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」となる。一部変更承認の概要として、起源株およびオミクロン株BA.4/5のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む2価ワクチンが追加され、有効成分のトジナメランはSARS-CoV-2の起源株を、リルトジナメランはオミクロン株BA.1を、ファムトジナメランはオミクロン株BA.4/5のスパイクタンパク質をコードするmRNAだとしている。9月12日に承認された「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」の有効成分はトジナメランおよびリルトジナメラン、今回承認された「コミナティRTU筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」の有効成分はトジナメランおよびファムトジナメランとなっている。 本剤の用法・用量は、追加免疫として、1回0.3mLを筋肉内に接種する。なお、接種間隔については、通常、前回の接種から少なくとも5ヵ月経過した後に接種を行うことができるとしているが、接種間隔の短縮について現在検討が成されており、10月下旬までに結論を得るという。 本剤の添付文書によると、変異株に対する中和抗体生産能として、マウスに1価(起源株)製剤を21日間隔で2回投与し、その1ヵ月後に1価(起源株)製剤、2価(起源株・オミクロン株BA.1)製剤または2価(起源株・オミクロン株BA.4/5)製剤を1回投与したところ、3回目投与から1ヵ月後、いずれの群でも起源株、デルタ株およびオミクロン株(BA.1、BA.2、BA.2.12.1およびBA.4/5)に対する中和抗体産生が認められ、オミクロン株BA.4/5に対する中和抗体価は、1価(起源株)製剤群および2価(起源株・オミクロン株BA.1)製剤群よりも2価(起源株・オミクロン株BA.4/5)製剤群で高値を示したとしている。コミナティ筋注6ヵ月~4歳用 生後6ヵ月~4歳用1価ワクチンの一般名は「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(有効成分名:トジナメラン)」、販売名は「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用」となる。用法・用量は、本剤を日局生理食塩液2.2mLにて希釈し、1回0.2mLを合計3回、筋肉内に接種する。2回目は通常、3週間の間隔で、3回目は2回目の接種から少なくとも8週間経過した後に接種するとしている。 本剤の添付文書によると、6ヵ月~4歳の小児(6~23ヵ月群:82例、2~4歳群:143例)を対象としたC4591007試験第II/III相パートにおいて、本剤3μgを3回目接種後1ヵ月のSARS-CoV-2血清中和抗体価を評価した結果、6~23ヵ月群の幾何平均抗体価(GMT):1,406.5(両側95%信頼区間[CI]:1,211.3~1,633.1)、2~4歳群のGMT:1,535.2(95%CI:1,388.2~1,697.8)となり、本剤30μgを2回接種した16~25歳群に対して免疫ブリッジングの成功基準を満たしたとしている。また、6~23ヵ月群1,776例、2~4歳群2,750例が参加した安全性の評価では、治験薬接種後7日間の主な副反応の発現状況として、6~23ヵ月群では注射部位圧痛、食欲減退、傾眠、易刺激性、発熱(38.0℃以上)、2~4歳群では注射部位疼痛、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、発熱(38.0℃以上)が報告されている。 なお、オミクロン株BA.4/5対応の2価ワクチンについては、10月5日に、モデルナ・ジャパンも同社の「mRNA-1273.222」を、18歳以上を対象とした追加接種用ワクチンとして、厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことをプレスリリースにて発表した。

620.

第14回 インフルエンザが流行すると、結局発熱外来が逼迫する構図

インフルエンザシーズンにおける混乱さて、インフルエンザシーズンとCOVID-19の第8波がやって来るのかどうかが、喧々囂々と議論が交わされています。もちろん、波がやって来ないに越したことはないのですが、どの専門家も「来るだろう」と言っています。次に到来するウイルスが、BA.5程度の変異株であれば、広くワクチン追加接種を行うことで、死亡者数を少なくすることができると思われます。諸外国のように、さらに感染者が増えてくると、ハイブリッド免疫を有する人が多くなるので、そこまでインパクトのない波になるかもしれません。現在多くの自治体では、新型コロナの自己検査を行い、その結果が陽性なら陽性者登録センターに連絡する形になっていますが、インフルエンザシーズンにおいて新型コロナが陰性であれば、皆さんどうするでしょうか?引き続き高熱が出ていたら、インフルエンザの検査をしたいと思う人が多いかもしれません(個人的には、このあたりをどうガイダンスするかだと思っていますが…)。COVID-19の自己検査が陰性であった場合、熱がある人はおそらく発熱外来に通されることになるでしょう。インフルエンザとCOVID-19の交差が起こってしまいますが、この動線を分離できる医療機関はほとんどないと思います。インフルエンザの抗原検査キットのOTC化を現場として1つ問題提起したいのは、インフルエンザの自己検査ができるようにしてほしいという点です。抗原定性キットをドラッグストアなどで購入できるよう、是非とも解禁していただきたい。COVID-19の抗原定性検査キット市販は特例的に承認されたものですが、インフルエンザ抗原検査キットを承認しないというのは、いささか不自然です。2つとも同じ検査法ですから、患者さんにとってテクニカルに検査がしにくいということもありません。自己検査は十分可能でしょう。また、現在は抗原定性検査に、COVID-19とインフルエンザの両方が測定可能な同時検査キットが登場しており、すでに薬事承認を受けています(表)1)。これが一般的に広く普及すれば、1回のぬぐい液で2つのウイルスを調べることが可能です。画像を拡大する表. COVID-19とインフルエンザの両方が検査可能な薬事承認抗原定性検査(参考文献1より筆者作成)規制改革推進会議 第8回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループでは、厚生労働省とこのようなやり取りが行われています(一部日本語表現を変更)2)。「冬を念頭に置く中で、今度はインフルエンザのほうも出てくる可能性があるのではないかと思っております。インフルエンザについても抗原検査キットと一緒に検査できるようなキットも考えうるところだと思います。コロナに比べると、現時点では感染症法上の位置付けとしても、エビデンス上もインフルエンザのほうがまだリスクが低いということだと思います。そうであるとすると、インフルエンザに関してもOTC化をすることも考えられるのではないかと思いますが。」という専門委員の質問に対して、厚労省(厚生労働省大臣官房審議官)は、以下のような回答をしています。「今回のコロナの検査キットOTC化というのは現下のパンデミックの状況に鑑み、特例的に対応を進めております。インフルエンザのキットのOTC化というのは、現時点で予定はしておりません。」参考文献・参考サイト1)厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の体外診断用医薬品(検査キット)の承認情報2)内閣府 規制改革推進会議 第8回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ 議事概要

検索結果 合計:2141件 表示位置:601 - 620