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オミクロン株XBB.1.5に対する治療薬と2価ワクチンの効果は?/東大

 東京大学医科学研究所の河岡 義裕氏らの研究グループは、新型コロナウイルスのオミクロン株XBB.1.5系統に対して、既存の抗体薬、抗ウイルス薬、並びにmRNAワクチンの有効性をin vitroで検証した。その結果、患者から分離したXBB.1.5に対して、4種類の抗体薬はいずれも効果が見られなかったが、4種類の抗ウイルス薬は高い増殖抑制効果を示したことが明らかとなった。また、2価ワクチン接種者の血漿が、XBB.1.5に対する中和活性を有していることが確認された。本結果は、Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年2月8日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 試験薬剤は、4種類の抗体薬のソトロビマブ、bebtelovimab、カシリビマブ/イムデビマブ、チキサゲビマブ/シルガビマブ、および4種類の抗ウイルス薬のレムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビル、エンシトレルビルである。抗体薬について、FRNT50(ライブウイルス焦点減少中和アッセイで50%のウイルスを中和する血清希釈)を用いて感染阻害効果を評価した。また、抗ウイルス薬について、ウイルスの増殖を阻害するかどうかを、IC50(50%阻害濃度)を用いて評価した。 mRNAワクチンの効果については、1価ワクチン4回接種者(4回目接種から33~57日経過)17例、1価ワクチン4回接種+BA.4/5対応2価ワクチン1回接種者(5回目接種から18~59日経過)18例、1価ワクチン3回接種後にBA.2に感染した人(感染から29~89日後)10例の3群において、被験者から採取された血漿のXBB.1.5に対する中和活性を評価した。接種したワクチンは、ファイザー製もしくはモデルナ製である。 主な結果は以下のとおり。【抗体薬・抗ウイルス薬】・XBB.1.5に対して、4種類のいずれの抗体薬も、本試験におけるFRNT50最大値(>5万ng/mL)で中和活性しなかった。・4種類のすべての抗ウイルス薬が、XBB.1.5に対して高い増殖抑制効果を示し、従来株(武漢由来の株)やBA.2、XBBに対する効果と同程度の効果を維持していた。【ワクチン】・1価ワクチン4回接種者のXBB.1.5に対する中和活性は、従来株やBA.2に対する中和活性より著しく低下していた。17検体中9検体(53%)が検出限界以下であった。・5回目にBA.4/5対応2価ワクチンを接種した人のXBB.1.5に対する中和活性は、従来株やBA.2に対する中和活性より著しく低下していたが、低いながらも中和活性を有していた。・1価ワクチン3回接種後にBA.2にブレークスルー感染した人のXBB.1.5に対する中和活性は、従来株やBA.2に対する中和活性より著しく低下していたが、低いながらも中和活性を有していた。・3群ともに、XBB.1.5に対する中和活性の低下は、XBBに対する中和活性と同程度であった。 本研究により、XBB.1.5は、抗ウイルス薬が有効であり、ワクチンや感染によって誘導される免疫を効果的に回避するが、BA.4/5対応2価ワクチンによって免疫応答を改善できることが示唆された。研究チームによると、XBB.1.5の受容体結合ドメインはACE2に対して高い親和性を有するが、XBBとXBB.1.5は同様の免疫回避能力を示しているため、ACE2結合親和性が、高い感染性と米国における急速な拡大の要因である可能性があると述べている。米国疾病予防管理センター(CDC)が発表したデータによると、2023年2月11日時点での米国におけるXBB.1.5の割合は74.7%で、前週から約10%上昇している。

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ペグIFN-λ、高リスクCOVID-19の重症化を半減/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種者を含むCOVID-19外来患者において、ペグインターフェロンラムダ(IFN-λ)単回皮下投与は、COVID-19進行による入院または救急外来受診の発生率をプラセボ投与よりも有意に減少させた。ブラジル・ミナスジェライスカトリック大学のGilmar Reis氏らTOGETHER試験グループが報告した。NEJM誌2023年2月9日号掲載の報告。ブラジルとカナダで、入院/救急外来受診の発生を比較 TOGETHER試験は、ブラジルとカナダで実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照アダプティブプラットフォーム試験である。研究グループは、ブラジルの12施設およびカナダの5施設において、SARS-CoV-2迅速抗原検査が陽性でCOVID-19の症状発現後7日以内の18歳以上の外来患者のうち、50歳以上、糖尿病、降圧療法を要する高血圧、心血管疾患、肺疾患、喫煙、BMI>30などのリスク因子のうち少なくとも1つを有する患者を、ペグIFN-λ(180μg/kgを単回皮下投与)群、プラセボ群(単回皮下投与または経口投与)または他の介入群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、無作為化後28日以内のCOVID-19による入院(または三次病院への転院)または救急外来受診(救急外来での>6時間の経過観察と定義)の複合とした。主要評価のイベント発生率、ペグIFN-λ群2.7% vs.プラセボ群5.6%、有意に半減 2021年6月24日~2022年2月7日の期間に、計2,617例がペグIFN-λ群、プラセボ群および他の介入群に割り付けられ、ペグIFN-λ群のプロトコール逸脱2例を除外したペグIFN-λ群931例およびプラセボ群1,018例が今回のintention-to-treat集団に含まれた。患者の83%はワクチンを接種していた。 主要アウトカムのイベントは、ペグIFN-λ群で931例中25例(2.7%)に、プラセボ群で1,018例中57例(5.6%)に発生した。相対リスクは0.49(95%ベイズ信用区間[CrI]:0.30~0.76、プラセボに対する優越性の事後確率>99.9%)であり、プラセボ群と比較してペグIFN-λ群で、主要アウトカムのイベントが51%減少した。 副次アウトカムの解析結果も概して一貫していた。COVID-19による入院までの期間はプラセボ群と比較しペグIFN-λ群で短く(ハザード比[HR]:0.57、95%ベイズCrI:0.33~0.95)、COVID-19による入院または死亡までの期間もペグIFN-λ群で短い(0.59、0.35~0.97)など、ほとんどの項目でペグIFN-λの有効性が示された。また、主な変異株の間で、およびワクチン接種の有無で有効性に差はなかった。 ベースラインのウイルス量が多かった患者では、ペグIFN-λ群のほうがプラセボ群より、7日目までのウイルス量減少が大きかった。 有害事象の発現率は、全GradeでペグIFN-λ群15.1%、プラセボ群16.9%であり、両群で同程度であった。

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小児の点滴ルート確保時の疼痛を減らすまさかの方法【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第228回

小児の点滴ルート確保時の疼痛を減らすまさかの方法Pixabayより使用奇抜なタイトルの論文だったので、まさかトップジャーナルとは思っていませんでした。読んだ後に気付きました、すいません。この連載では、私もあえて「誰も知らないマイナー医学雑誌」の論文を読みあさっているワケではないので、誤解なきよう。Lee HN, et al.Effect of a Virtual Reality Environment Using a Domed Ceiling Screen on Procedural Pain During Intravenous Placement in Young Children A Randomized Clinical Trial.JAMA Pediatr. 2023;177(1):25-31.VRゴーグルのゲームってやったことあります? 私は一度、家電量販店でVRゴーグルをかけて崖の上に立ったことがあるのですが、後ろから妻に押されて「殺す気か!」と思ってしまいました。没入感がすごいですよね。そんなVRの世界に入っているタイミングで小児の点滴ルートを確保したら、疼痛が少なくなるんじゃないか、あわよくばバレないんじゃないか、という研究立案をしたのがこの研究です。実際に、小児の気をそらすということが効果的であることは示されていて、VRはその最有力候補だったのです1)。かといって、小児にVRゴーグルを着用してもらうことは困難なので、ドーム型の天井スクリーンを使ったVR環境を実現するというなかなか大掛かりなランダム化比較試験です。対象となったのは、静脈ルート確保が必要な生後6ヵ月~4歳の小児です。主要評価項目は、ベッドに寝かせた後から針が皮膚を貫通するまでの4時点における疼痛スコアとしました。スケールはFLACCという小児用の疼痛スコアを用いました。88人の小児のうち、44人がVR環境、44人が非VR環境にランダム化されました。針を貫通した時点のFLACCスコアの中央値は介入群6.0(四分位範囲:1.8~7.5)、対照群7.0(5.5~7.8)という結果でした。中央値にはさほど差がないように見えますが、順序ロジスティック回帰モデルではVR介入群のほうが疼痛が少ないことが示されました(オッズ比:0.53、95%信頼区間:0.28~0.99、p=0.046)。SNSなどで、子供の気をそらしながらワクチンを一瞬で接種する小児科医の動画を見かけますが、これも同じロジックです。というわけで、小児救急でどんどんVR環境を広めていきましょう!1)Litwin SP, et al. Virtual Reality to Reduce Procedural Pain During IV Insertion in the Pediatric Emergency Department: A Pilot Randomized Controlled Trial. Clin J Pain. 2021 Feb 1;37(2):94-101.

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第147回 インフル流行、ウイルス干渉説は間違いだった?

この3年間、一般的には感染症と言えば新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のことばかりが取り上げられ、切り口によっては世論が分断するかのようなやり取りがあちこちで繰り広げられてきた。そうした中で私が友人などからよく「医療関係者の言うことはオオカミ少年」と何度か指摘されてきたテーマがある。それは「新型コロナ・インフルエンザ同時流行予測」である。確かにこれは新型コロナ・パンデミックが始まった2020年から言われてきたことだが、少なくとも2022年春までは杞憂に終わっている。しかし、国立感染症研究所の発表によれば、季節性インフルエンザの2023年第4週の定点当たり報告数は10.36人と注意報レベルとなり、第5週はさらに12.66人まで上昇している。第5週時点で都道府県レベルでは沖縄県が47.18人、福井県が35.46人とすでに警報レベルに達しており、大阪府も29.91人と警報レベル目前である。一方、新型コロナの第8波はすでにピークを越え、ここ数日の全国の新規陽性者報告数が3万人を切る状況になっている。とはいえ、この数字が第5波のピークよりも多いことを考えれば、現在の状況は「新型コロナ・インフルエンザ同時流行」と言っていいだろう。では、なぜここに来て同時流行状態となったのだろう?以前よく語られていた新型コロナ・パンデミック後のインフルエンザ流行下火の原因は、ある種のウイルスが流行すると他のウイルスが流行しない、いわば宿主の争奪戦で勝ったものが流行する「ウイルス干渉説」である。しかし、現状を見ればこの説が正しかったとは言えない。また、アメリカでは一足先に昨年10月くらいからインフルエンザが流行し始めた。12月上旬には新型コロナの流行も相まって、米・保健福祉省が「全米の病床使用率が80%超となった」と発表。同月下旬には米政府が抗インフルエンザ治療薬オセルタミビル(商品名:タミフル)の国家備蓄分を各地に配布し始めたほどである。このことをどのように考えれば良いのだろうかと思っていたが、先日ある専門家があくまで私見として次のように語ってくれた。「もし事実だとすれば教科書を書き換えなければならない話ともいえるが、実は日本にとってインフルエンザは土着感染症ではなく、輸入感染症だったのかもしれない」この専門家の話を聞いてから、私も改めていろいろと調べてみた。まず参照したのは世界保健機関(WHO)が公表している全世界的インフルエンザ・サーベイランスデータ「Flunet」である。これを見ると、2019~20年秋冬シーズン以降、最近までインフルエンザが定期的に流行している地域があった。インド、ネパール、バングラデシュなどのいわゆる南アジア地域である。これらの国の中でも若干流行の度合いは異なり、バングラデシュはほぼコロナ以前と同様の流行の波があり、インド、ネパールは2020年夏から2021年冬にかけてはほとんど流行が認められなかったが、それ以外の時期はほぼコロナ禍以前と同様の流行が起きている。ちなみにこれらの国はネパールやインド北部などを除くと、気候上は熱帯に属するため、冬という季節がない。このためインフルエンザの流行は雨季で人が屋内で密集しやすい6~10月くらいに起こる。それを踏まえて出入国管理統計を見ると、2019年はこれらの3ヵ国からの日本入国者は約26万人。これが2020年には約5万4,000人、2021年には約2万7,000人程度まで減少している。2022年6月に岸田 文雄首相は、水際対策としてそれまで停止していた外国人観光客の受け入れを段階的に緩和し始め、最新の2022年11月の出入国管理統計月報を見ると、この南アジア3ヵ国からの入国者はこの月だけで2万人を超えている。ちなみに前述のように、これらの国々では6月ごろからインフルエンザ報告数が増加するのが常だが、やはり2022年もこれは同様だった。日本が入国緩和策を取り始めた6月というのも同時期であったことを考えると、確かに状況的には相関があるし、少なくとも「ウイルス干渉説」よりは説得力があると言えそうである。もっともそれでも現状では「インフルエンザ輸入感染症説」は仮説の域を出てはいない。しかし、もしこの仮説が証明されたとしても、私たちは何らかの具体的な防衛策を立てようもないという現実も悩ましい。だからと言って、こうした地域からの入国者に対する検疫の強化や入国制限はとても合理的とは言えないことは、ほぼ衆目の一致することではないだろうか?結局のところ、われわれには、これまで新型コロナ対策を通じて明らかになった、手指消毒、ワクチン接種、状況に応じたマスク着用を淡々とかつ着実に実行するしかないという着地点しか見いだせない。自分を含む浮気な大衆に、これらの地味で時には鬱陶しいと思う努力を日常生活にどれだけ自然に定着させるか、という課題がより難易度を高めるだけかもしれない。そう思うと、この仮説が証明されることはこれまでの日常的な感染対策に飽き飽きしている今の社会にさらなる分断を生み出すだけかもしれないと、やや暗澹たる気持ちにさえなってしまう。

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高齢者・小児のマネジメントを追加、COVID-19診療の手引き9.0版/厚労省

 2月10日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第9.0版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知を行った。 今版の主な改訂点は以下のとおり。■診療の手引き9.0版の主な改訂点【1 病原体・疫学】・病原体/国内発生状況/海外発生状況の内容を更新【2 臨床像】・臨床像/重症化リスク因子/合併症/小児例の特徴/妊婦例の特徴の内容を更新【3 症例定義・診断・届出】・症例定義/血清診断/届出の内容を更新【4 重症度分類とマネジメント】・序文/軽症/中等症/重症/ECMO/血液浄化療法/妊産婦の管理・図の内容を更新・薬物療法のポイントをレイアウト上新設・高齢者の管理/小児の管理を独立して追加【5 薬物療法】・抗ウイルス薬/中和抗体薬/免疫抑制/調節薬/妊婦に対する薬物療法/日本国内で開発中の主な薬剤の内容を更新【6 院内感染対策】・序文/個人防護具/環境整備/廃棄物/死後のケア・職員の健康管理/医療従事者が濃厚接触者となった場合の考え方・感染予防策を実施する期間/妊婦および新生児への対応の内容を更新【7 退院基準・解除基準】・退院基準/宿泊療養等の解除基準の表をわかりやすく修正※これらのほか個々の文献情報なども更新。

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妊娠中のコロナワクチン接種、出生児の感染/入院を予防/BMJ

 妊娠中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン2回接種は、出生児の生後6ヵ月間における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)デルタ株への感染と入院に対し高い有効率を示し、オミクロン株の感染と入院に対しても中等度の予防効果が認められた。また、3回目のワクチン接種によりオミクロン株に対する有効率が上昇したこと、ワクチン2回接種の有効率は、母親の妊娠第3期での接種で最も高く、生後8週を過ぎると低下していた。カナダ・トロント大学のSarah C. J. Jorgensen氏らが、オンタリオ州の地域住民を対象とした検査陰性デザイン研究の結果を報告した。SARS-CoV-2中和抗体は、妊娠中の感染やワクチン接種により臍帯血、母乳、乳児血清に存在することが明らかになっており、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種が、乳児のSARS-CoV-2感染および入院リスクを低下する可能性を示唆する新たなエビデンスが示されていた。BMJ誌2023年2月8日号掲載の報告。生後6ヵ月未満児約8,800例について、母親の妊娠中のワクチン接種との関連を解析 研究グループは、ICES(旧名称:Institute for Clinical Evaluative Sciences)のデータベースを用い、カナダで最も人口の多いオンタリオ州において2021年5月7日~2022年3月31日の期間に生まれ、2021年5月7日~2022年9月5日の期間にSARS-CoV-2の検査を受けた生後6ヵ月未満児を特定し解析を行った。COVID-19ワクチン接種データベース(COVaxON)を用いて母親の妊娠中のワクチン接種状況を調べ、デルタ株またはオミクロン株の感染が検査で確認された乳児を症例群、検査が陰性であった乳児を対照群として、乳児のデルタ株またはオミクロン株の感染または入院に対するワクチン有効率を多変量ロジスティック回帰モデルにより解析した。 乳児8,809例が適格基準を満たし、症例群はデルタ株99例、オミクロン株1,501例、対照群はそれぞれ4,365例、4,847例が含まれた。妊娠中の2回接種、乳児のオミクロン株感染/入院に対する有効率は45~53% 母親が妊娠中にワクチンを2回接種した場合の有効率は、乳児のデルタ株感染に対して95%(95%信頼区間[CI]:88~98)、デルタ株感染による入院に対して97%(73~100)であり、オミクロン株感染に対しては45%(37~53)、オミクロン株感染による入院に対しては53%(39~64)であった。 また、妊娠中のワクチン3回接種の有効率は、オミクロン株感染に対して73%(95%CI:61~80)、オミクロン株感染による入院に対して80%(64~89)であった。 乳児のオミクロン株感染に対するワクチン2回接種の有効率は、妊娠第1期(47%、95%CI:31~59)または第2期(37%、24~47)と比較して、妊娠第3期で最も高かった(53%、42~62)。また、出生~生後8週までは57%(44~66)であったが、生後16週以降には40%(21~54)へ低下していた。

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中等症~重症の化膿性汗腺炎、セクキヌマブ2週に1回投与が有効/Lancet

 中等症~重症の化膿性汗腺炎患者において、セクキヌマブの2週ごとの投与は安全性プロファイルが良好で、化膿性汗腺炎を速やかに改善し、投与52週後まで有効性が維持されることが示された。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのAlexa B. Kimball氏らが、日本を含む40ヵ国219施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SUNSHINE試験」および「SUNRISE試験」の結果を報告した。中等症~重症の化膿性汗腺炎に対して利用可能な治療選択肢は、わずかしかないのが現状である。Lancet誌オンライン版2023年2月3日号掲載の報告。セクキヌマブ300mgを2週ごとまたは4週ごと皮下投与vs.プラセボ SUNSHINE試験およびSUNRISE試験の対象は、1年以上、中等症~重症の化膿性汗腺炎(2ヵ所以上の解剖学的部位に、合計5つ以上の炎症性病変)を有する18歳以上で、試験期間中、市販の外用消毒剤を化膿性汗腺炎病変部位に毎日使用することに同意した患者を適格とした。ベースラインで20以上の瘻孔がある患者、併用禁止薬(全身性生物学的免疫調整薬、生ワクチン、または他の治験薬)による治療が必要な活動性皮膚疾患を有する患者などは除外した。 両試験において適格患者を、セクキヌマブ300mgを2週ごと皮下投与する群(2週ごと群)、同4週ごと皮下投与する群(4週ごと群)、またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、投与16週後のHiSCR(ベースラインと比較して膿瘍および炎症性結節の数が50%以上減少し、かつ膿瘍数の増加がなく、かつ排膿性瘻孔数も増加がない場合と定義)を達成した患者の割合とした。両試験ともプラセボと比較しセクキヌマブ2週ごと投与で有意に改善 2019年1月31日~2021年6月7日の期間に、SUNSHINE試験では676例がスクリーニングされ、うち541例(80%、女性304例[56%]、男性237例[44%]、平均年齢36.1±11.7歳)が解析対象となった。2週ごと群が181例(33%)、4週ごと群180例(33%)、プラセボ群180例(33%)である。 同期間にSUNRISE試験では687例がスクリーニングされ、543例(79%、女性306例[56%]、男性237例[44%]、平均年齢36.3±11.4歳)が解析対象となった。2週ごと群180例(33%)、4週ごと群180例(33%)、プラセボ群183例(34%)。 HiSCR達成患者の割合は、SUNSHINE試験ではプラセボ群34%(多重代入法でのHiSCR達成患者数平均値は60.7/180例)に対し、2週ごと群で45%(81.5/181例)(オッズ比[OR]:1.8、95%信頼区間[CI]:1.1~2.7、p=0.0070)と有意に高率であったが、4週ごと群は42%(75.2/180例)(1.5、1.0~2.3、p=0.042、有意水準はp=0.025)でありプラセボ群との間に有意差は認められなかった。 一方、SUNRISE試験では、プラセボ群31%(183例中57.1例)に対し、2週ごと群42%(76.2/180例)(OR:1.6、95%CI:1.1~2.6、p=0.015)、4週ごと群46%(83.1/180例)(1.9、1.2~3.0、p=0.0022)で、両群とも有意に高率であった。 HiSCRを達成した患者の割合は、52週時の試験終了まで維持された。 投与16週後までの主な有害事象は両試験とも頭痛であり、発現率はSUNSHINE試験で2週ごと群9%(17例)、4週ごと群11%(20例)、プラセボ群8%(14例)、SUNRISE試験でそれぞれ12%(21例)、9%(17例)、8%(15例)であった。両試験とも、試験に関連した死亡は報告されなかった。両試験におけるセクキヌマブの安全性プロファイルは、これまでの報告と一貫しており、新たな、または予期しない安全性上の所見は認められなかった。

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サブスペフェロー面接本番!日本人カテーテル医の魅力をどう売り込むか【臨床留学通信 from NY】第44回

第44回:サブスペフェロー面接本番!日本人カテーテル医の魅力をどう売り込むかさて、今回はマサチューセッツ総合病院(MGH)の面接当日の様子を紹介します。フェローシップ申請サイトのERASが12月7日にオープンする前にさっさと決めてしまいたいという思いもあって、先行して行われるMGHの面接に全力で臨みました。オンライン面接となれば、普通は部屋を明るくして自分の印象を良くするものですが、私は家の中が騒々しいため、やむなく病院の当直室で、やや暗めの光の中で行いました。Program Director、Associate Program Directorと呼ばれる2人との同時面接で、開始時間は先方が空いてる時間帯をいくつか提示され、その中から選ぶ形でした。多くのかしこまった面接はコーディネーターにあたる方から連絡が来て、何人かの候補者と同時に面接をするのが普通なのですが、今回はそれと異なり私1人だけであり時間もフレキシブルでした。おそらく内部候補者でスポットが埋まらず、ERASがオープンする前では私以外に候補者がいなかったのでしょう。逆にこれを大きなチャンスと捉え、少し気楽に、誰かとの比較ではなく自分自身の今までの日本での経験や、なぜ米国に来たのかということ、これから先何をしたいかということを純粋に伝えればいいという風に考えました。レジデントや通常のフェローの場合は、「なぜ内科なの? なぜ循環器なの? 循環器の何がしたいの?」とかいう質問も多いですし、“What are your strength and weakness?” “Why our program?”といった質問もあります。しかし、フェローシップのサブスペシャルティともなると、そのような細かいことは聞かれません。また、もし初めて米国に来るために内科の面接を受けるならば、経験がないため英語力も見られているでしょう。私の英語も問題はないとは言えませんが、そこはいわゆる“Tell me about yourself.”に対して、事前に用意して繰り返し練習した内容をスラスラと伝えました。Zoomのため、カンペのようにいくつかのポイントをPCのキーボードの上に置いておき、たとえば“What questions do you have?”といったよくある質問にも、焦らずいくつか答えられるようにしておきました。もちろん「バケーションはどれくらいですか?」とか、「夜終わるの遅いんですか?」といった質問は禁忌です。日本国内の医師はほぼ面接は皆無、どこの病院に行っても基本はウェルカムであることから、こういった就職面接というのは日本語でもやっていないのにどうしたもんだ、という心境でしたが何とか乗り切りました。今回は循環器の中のサブスペシャルティのカテーテル治療であり、一般のフェローとは違ったスキル、かつ日本的な丁寧なカテーテル治療ができる、というのも魅力的に思わせるようにしました。いかに自分を売り込むか、魅力的な候補者か、プログラム側がその候補者を取った場合にどんなメリットがあるかを伝える必要があり、日本人にはなかなか難しいところとも言えます。おおむねプログラム側も通常は和やかな雰囲気にしてくれますので、雰囲気が良かったかどうかで出来は決まりませんが、日本でのカテーテル治療、臨床研究の経験を活かし、米国に来たのはさらなるアカデミックキャリアを築くため、という一本道を伝えきりました。面接を終えると、その直後はサンクスギビングで連絡は途絶え、その間は次の面接の準備をしていました。そしてついに、休み明けの月曜に、“I would like to offer you the position of the interventional cardiology fellowship at MGH beginning 7/2024”というメールが来た時は、4年半の米国での苦労が少し報われたような、張り詰めていた緊張も少し和らいだ気がしました。Column5~11歳を対象としたCOVID-19のワクチンの有効性を述べた論文が、JAMA Pediatrics誌に掲載されたため紹介させていただきます。本誌には昨年にも2本掲載され、今回3本目になります。Reviewerもしっかりしていて、いろいろ学ぶことができました。この論文について、米国のトップニュースメディアの1つであるABCからも取材を受けました。Watanabe A, Kuno T, et al. Assessment of Efficacy and Safety of mRNA COVID-19 Vaccines in Children Aged 5 to 11 Years: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr. 2023;e226243.ABC News:COVID-19 vaccines are safe and effective for kids, according to new data

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5~11歳児へのコロナワクチン、MIS-C低減/筑波大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック初期では、小児が感染しても、成人より軽い症状を呈する傾向があることが研究で示されていた。しかし、パンデミックの進行に伴い、呼吸不全、心筋炎、COVID-19 に続発する小児多系統炎症性症候群(MIS-C)など、重症化や合併症を発症するリスクがあることが新たに示唆されている。5~11歳の小児への新型コロナウイルスmRNAワクチンの有効性と安全性を評価するため、筑波大学附属病院 病院総合内科の渡邊 淳之氏らの研究グループにより、系統的レビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種により新型コロナ感染、入院およびMIS-Cなどのリスク低減が認められ、ワクチン接種による局所的な有害事象の発現率は高かったが、心筋炎を含む重篤な有害事象の発現頻度は低く、ほとんどの有害事象が数日以内に消失したことが明らかとなった。本研究は、JAMA Pediatrics誌オンライン版2023年1月23日号に掲載された。 本研究では、2022年9月29日までの小児におけるコロナワクチンの有効性または安全性を評価するすべての無作為化比較試験(RCT)および観察研究を、PubMedとEmbaseのデータベースから検索し、さらに、特定した論文の参考文献を含む2次資料を追加検索し、関連する論文を包括的に収集した。コロナワクチンについては、ファイザー製またはモデルナ製のmRNAワクチンに限定し、投与量を抽出した。主要評価項目は、症状の有無にかかわらないSARS-CoV-2感染、副次評価項目は、有症状のSARS-CoV-2感染、COVID-19関連疾患による入院、MIS-C、ワクチン接種による有害事象とした。有効性と安全性の評価項目の未調整/調整オッズ比を抽出し、ランダム効果モデルで統合した。有害事象については発現率の詳細を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2件のRCT、15件の観察研究(コホート研究12件、ケースコントロール研究3件)の合計17件を解析した。ワクチン接種児1,093万5,541例(平均年齢または中央値:8.0~9.5歳、女性:46.0~55.9%)、ワクチン未接種児263万5,251例(同:7.0~9.5歳、女性:44.3~51.7%)であった。追跡期間の中央値は7~90日。・ワクチン2回接種児は未接種児と比較して、次の評価項目のリスク低下と関連していた。 -症状の有無にかかわらないSARS-CoV-2感染(オッズ比[OR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.35~0.64) -有症状のSARS-CoV-2感染(OR:0.53、95%CI:0.41~0.70) -COVID-19関連疾患による入院(OR:0.32、95%CI:0.15~0.68) -MIS-C(OR:0.05、95%CI:0.02~0.10)・ワクチン接種はプラセボと比較して、あらゆる有害事象のリスク上昇と有意に関連した(OR:1.92、95%CI:1.26~2.91)。日常生活を妨げる有害事象のリスク上昇との関連は非有意だった(OR:1.86、95%CI:0.39~8.94)。・ワクチン接種による有害事象について、ほとんどのワクチン接種児は、1回目の接種(5万5,949例中3万2,494例[86.3%、95%CI:74.1~93.3%])と2回目の接種(4万6,447例中2万8,135例[86.3%、95%CI:73.8~93.4%])で少なくとも1つの局所有害事象を経験した。接種児の約半数が全身性有害事象を発現した。・日常生活に支障を来す有害事象は、1回目の接種で4.9%(95%CI:3.1~7.7%)、2回目の接種で8.8%(95%CI:5.4~14.2%)確認された。・心筋炎は、1回目の接種で100万分の1.3(929万1,923例中12例)、2回目の接種で100万分の1.8(731万6,924例中13例)の確率で認められた。

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モデルナ製コロナワクチン、対象年齢引き下げに向け承認事項一部変更申請

 モデルナ・ジャパンは2023年2月9日付のプレスリリースで、スパイクバックス筋注(一般名:コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン[SARS-CoV-2])の接種対象年齢を、現在の「12歳以上」から「6歳以上」に引き下げるため、厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。 今回の承認事項一部変更申請は、「スパイクバックス筋注(1価:起源株)」の6~11歳における初回免疫、「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.1)」と「スパイクバックス筋注(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」の6~11歳における追加免疫を対象としたものである。 同社代表取締役社長の鈴木 蘭美氏は、「COVID-19は日本の公衆衛生にとって引き続き脅威となっています。接種対象の年齢を拡大し、より幅広い世代にワクチンをお届けし、COVID-19から守れるようにすることは大変重要と考えております。一刻も早く国民の皆さまにお届けできるよう、厚生労働省などと協力し、全力を尽くしてまいります」と述べている。

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2月14日 予防接種記念日【今日は何の日?】

【2月14日 予防接種記念日】〔由来〕1790(寛政2)年の今日、秋月藩(福岡県朝倉市)の藩医・緒方春朔が、初めて天然痘の人痘種痘を行い成功させたことから、「予防接種は秋月藩から始まった」キャンペーン推進協議会が制定した。関連コンテンツ今、知っておきたいワクチンの話ワクチン・予防【COVID-19 関連情報まとめ】子宮頸がん撲滅に向けて:HPVワクチン接種の意義とは風疹にいま一度気を付けろっ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】アナフィラキシー? 迅速に判断、アドレナリンの適切な投与を!【救急診療の基礎知識】

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新型コロナ、米0~19歳の感染症による死因1位

 新型コロナウイルス感染症による死亡は、昨年7月までの1年間において米国の0~19歳の全死因の8位、感染症または呼吸器疾患による死亡では1位だったことがわかった。英国オックスフォード大学のSeth Flaxman氏らによる本研究の結果は、JAMA Network Open誌2023年1月30日号に掲載された。 研究者らは、米国疾病対策予防センター(CDC)のWide-Ranging Online Data for Epidemiologic Research(WONDER)データベースを使い、2020年4月1日~2022年8月31日まで、12ヵ月の期間ごとにCOVID-19の死亡率を算出。0~19歳および年齢区分(1歳未満、1~4歳、5~9歳、10~14歳、15~19歳)別に、死亡総数、人口10万当たりの粗死亡率、全死因に対する死因順位を算出し、2019年、2020年、2021年の主要なCOVID-19以外の死因による死亡数と比較した。オミクロン株が流行の中心で、ワクチンを利用することができ、非薬物による介入が限られている時期を代表させるため、データのある直近の2021年8月1日~2022年7月31日を抽出した。 この期間に、米国全体におけるCOVID-19による死亡者数は36万例を超えた(人口10万人当たり109例)。このうち0歳~19歳の小児および若年者は821例だった(人口10万人当たり1.0例)。この年少および若年層におけるCOVID-19による死亡リスクはほかの年齢層よりも大幅に低いが、この年代はそもそも死亡自体がまれであり(0~19歳では10万人当たり49.4例、1~19歳では10万人当たり25.0例:2019年)、COVID-19の死亡負担をCOVID-19以前における他の重要な原因と比較することで検討した。 主な結果は以下のとおり。・0~19歳のCOVID-19による死亡は821例であり、粗死亡率は全体で人口10万人当たり1.0、年齢層ごとにU字型カーブを描いており、1歳未満は4.3、1~4歳は0.6、5~9歳は0.4、10~14歳は0.5、15~19歳は1.8だった。・2021年8月1日~2022年7月31日におけるCOVID-19の死亡率は、米国における0~19歳の10大死因のうち、全死因の8位、疾患関連死因(不慮の事故、暴行、自殺を除く)の5位、感染症または呼吸器疾患による死亡の1位だった。COVID-19による死亡はこの年齢層の全死因の2%を占めた。 研究者らは「本研究の結果は、COVID-19が小児および若年層の主要な死因であったことを示唆している。さらに、過少報告や他疾患による死亡原因の一因としてのCOVID-19の役割を考慮しないなど、さまざまな要因があるため、これらの推定値はCOVID-19の真の死亡負担を控えめにしている可能性がある。将来、SARS-CoV-2が持続的に流行すると考えられる状況においては、適切な医薬品および非医薬品の介入(ワクチン、換気、空気清浄)が、ウイルスの伝播を制限し、小児・若年患者の重症化を軽減する上で引き続き重要な役割を果たすと思われる」としている。

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B群髄膜炎菌ワクチン、侵襲性髄膜炎菌感染症で高い予防効果/NEJM

 スペインでは2015年9月、4成分の蛋白ベースのB群髄膜炎菌ワクチン(4CMenB、Bexsero)が自費接種できるようになった。スペイン・Instituto de Investigacion Sanitaria de NavarraのJesus Castilla氏らは、生後60ヵ月未満の小児における4CMenBの有効性の評価を行い、完全接種(2回以上)した集団では、すべての血清群による侵襲性髄膜炎菌感染症に対する有効率が76%に達し、部分接種(1回)でも54%であることを示した。研究の成果は、NEJM誌2023年2月2日号で報告された。スペインのマッチド症例対照研究 本研究は、小児における4CMenBによる侵襲性髄膜炎菌感染症の予防効果の評価を目的とするスペインの全国的なマッチド症例対照研究であり、2015年10月5日~2019年10月6日に検査で侵襲性髄膜炎菌感染症が確認された生後60ヵ月未満の小児が解析の対象となった。 個々の症例を、生年月日が同じまたはその前後の日に出生した同じ出生地、同じ居住地の4例の対照とマッチさせた。症例と対照の4CMenBワクチン接種状況を、多変量条件付きロジスティック回帰を用いて比較し、マッチドオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。ワクチンの有効性は、(1-補正後マッチドOR)×100の式に基づき、有効率(%)として推算した。 症例群306例と対照群1,224例が解析に含まれた。症例群には、B群髄膜炎菌感染症が243例(79.4%)、B群以外の血清群による髄膜炎菌感染症が35例含まれ、対照群ではそれぞれ972例、140例が含まれた。症例群の35例(11.4%)が少なくとも1回の4CMenBの接種を受け、16例(5.2%)は完全接種(製薬企業の推奨に従い2回以上の接種を受けていることと定義)、18例(5.9%)は部分接種であった。生後24ヵ月未満で有効率が高い すべての血清群による侵襲性髄膜炎菌感染症に対する4CMenBの完全接種の有効率は76%(95%CI:57~87)であり、部分接種の有効率は54%(18~74)であった。完全接種の重症髄膜炎菌感染症に対する有効率は71%(43~86)だった。 完全接種者では、2015~17年(有効率92%[95%CI:43~99])および2017~19年(72%[47~85])の双方で有効率が高かった。また、有効率は、生後24~59ヵ月(53%[1~78])の小児に比べ生後24ヵ月未満(88%[68~95])で高率であった。 少なくとも1回の4CMenB接種を受けた小児の有効率は、B群髄膜炎菌感染症で64%(95%CI:41~78)、B群以外の血清群による髄膜炎菌感染症で82%(21~96)であった。 遺伝子に基づく髄膜炎菌抗原分類システム(gMATS)による解析では、4CMenBが有効と期待された血清群Bの株が症例群の44例で検出されたが、いずれも接種を受けていなかった。 著者は、「このエビデンスは、小児の侵襲性髄膜炎菌感染症が問題となり、その予防が優先される国で、予防接種プログラムに4CMenBを含めることを決定する際に有用と考えられる」としている。

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第134回 全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府

<先週の動き>1.全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府2.かかりつけ医機能を制度化へ、かかりつけ医機能報告制度創設/厚労省3.新型コロナワクチン、無料接種は4月以降も継続、次回は今年の秋から/厚労省4.健康保険証廃止で「マイナ保険証」ない人には資格確認書を提供/政府5.臓器移植を無許可あっせんでNPO法人理事を逮捕、法外な料金も問題に/警視庁6.未承認薬の緊急避妊薬やイベルメクチンのアフィリエイト広告で逮捕/兵庫県警1.全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府政府は、2月10日に一定の収入(年収153万円以上)を超えるの75歳以上の高齢者の健康保険料の引き上げを含む、「全世代社会保障法案」(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案)を閣議決定した。少子高齢化で財政が厳しい中、子ども・子育て支援の拡充、高齢者医療を全世代で公平に支えあうための高齢者医療制度の見直し、医療保険制度の基盤強化、医療・介護の連携機能および提供体制などの基盤強化を柱としている。具体的には「出産育児一時金」が今年の4月から50万円に引き上げられる財源について、75歳以上の高齢者にも財源の一部を負担してもらうほか、一定の年収を超える75歳以上の高齢者の保険料を現在の66万円を2024年度に73万円、2025年度に80万円と段階的に引き上げる。さらに74歳までの前期高齢者の医療費を現役世代が支援する仕組みでも、大企業の健康保険組合の負担を増やす一方で、中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ」の負担を軽くする。この他、都道府県に対して、医療費適正化計画の立案の段階から、保険者と協議を行うことで、医療費適正化に向けた都道府県の役割、責務を明確化する。現在開会中の通常国会に提出し、成立を目指す。施行期日は、一部を除いて2024年4月1日となる。(参考)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(厚労省)75歳以上医療保険料引き上げ、法案閣議決定 年収153万円超から(毎日新聞)75歳以上の医療保険料、引き上げへ 政府 全世代型法案を閣議決定(JOINT)2.「かかりつけ医機能報告」を創設、かかりつけ医機能が制度化へ/厚労省政府は2月10日、かかりつけ医機能の制度整備などを盛り込んだ「全世代社会保障法案」(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案)を閣議決定した。現行の医療機能情報提供制度を変更して、新たに「かかりつけ医機能報告制度」が創設される。厚生労働省によれば、慢性疾患を有する高齢者や継続的に医療を必要とする患者を地域で支えるために定められた機能([1]日常的な診療の総合的、継続的実施、[2]時間外診療、[3]急変時や入院時に患者を支援、[4]在宅医療の提供、[5]介護サービスなどとの連携など)について、医療機関から都道府県に報告を求める。都道府県知事はそのデータを確認し、地域の関係者との協議の場に報告するとともに公表する。厚生労働省は、かかりつけ医機能の報告が医療機関を縛るものではないとしており、必ずしもかかりつけ医制度を義務化するものではないとの立場。厚生労働省は医療法を改正して、2025年4月1日の施行を目指す。(参考)かかりつけ医機能が発揮される制度整備について(厚労省)「かかりつけ医機能」発揮へ制度整備、法案閣議決定 厚労相「地域で機能提供できる体制構築」(CB news)自民党厚労部会 全世代社会保障法案を部会長一任で了承 かかりつけ医機能の「確認」は行政行為にあらず(ミクスオンライン)「かかりつけ医」制度化、何が論点? 武藤正樹医師に聞く(上) 政府は患者登録制は見送り(東京新聞)「かかりつけ医」制度化、何が論点? 武藤正樹医師に聞く(下) 総合診療医の育成支援を(同)3. 新型コロナワクチン、無料接種は4月以降も継続、追加接種は今年の秋に実施/厚労省厚生労働省は2月8日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を開催し、今年3月末に無料接種の期限を迎える新型コロナウイルスワクチン接種について、4月以降もすべての接種対象者の無料接種を継続する方針を固め、さらに2023年度の追加接種の方針について、以下の通りとりまとめた。追加接種の対象者は高齢者などの重症化リスクがある人を優先するが、重症化リスクが高くない人であっても重症化が発生するため、引き続き無料接種を継続する。接種時期は、前回から1年が経過する今年秋から冬に実施予定だが、重症化リスクのある人については秋を前に接種を行う。また、子ども(5~11歳)や乳幼児(6ヵ月~4歳)は、接種開始から時間が短いため、接種期間を延長する。(参考)2023年度以降の新型コロナワクチンの接種の方針についての議論のとりまとめについて(厚労省)2023年度以降の新型コロナワクチンの接種の方針について(同)新型コロナワクチン、4月以降も無料接種継続へ 次回は今秋冬に(毎日新聞)新型コロナワクチン 秋から冬に次の接種 基本方針まとまる(NHK)コロナワクチン接種スケジュール「毎年秋冬が妥当」厚労省が厚科審部会に方針案提示(CB news)4.健康保険証廃止で「マイナ保険証」ない人には資格確認書を提供/政府政府は、2024年秋に行う健康保険証の廃止と、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への切り替えを前に、「マイナ保険証」の普及に向けて、取得を呼びかける広報を行っているが、2月5日時点マイナンバーカードの保有率は68.1%だが、健康保険証としての利用登録率は59.3%とまだ低い(2023年2月5日時点)。このため政府は、2024年の健康保険証の廃止後もマイナンバーカードを紛失した人や未取得の人が保険診療を受けられるように、保険証の情報を記載した「資格確認書」を提供する方向で検討を開始した。また、新生児についても、出生届の提出時に申請を受け付け、1歳未満の乳児には顔写真がないカードを交付する方針。政府は、具体化に向けてさらに検討を行い、法案を今国会に提出する見込み。(参考)“マイナ保険証”ない人には「資格確認書」提供で調整 政府(NHK)健康保険証廃止後の保険診療で具体案取りまとめ 政府(同)マイナ保険証未取得者に資格確認書 24年保険証廃止で政府調整(毎日新聞)マイナンバーカード交付状況について(総務省)政策データダッシュボード(ベータ版)(デジタル庁)5.臓器移植を無許可あっせんでNPO法人理事を逮捕、法外な料金も問題に/警視庁ベラルーシの病院での臓器移植を無許可であっせんしたとして、警視庁生活環境課は2月9日までに、NPO法人「難病患者支援の会」(横浜市)の理事を臓器移植法違反の疑いで逮捕した。同法人も同じ容疑で書類送検となる見込み。報道によると逮捕された菊池仁達容疑者らは、厚生労働省の許可を得ずに、臓器移植を希望する患者に対して海外渡航での臓器移植を斡旋し、手術後に合併症などで死亡するなど被害が出ているほか、費用を払い込んだにもかかわらず移植が行われず、死亡した患者の遺族へ返金がなされていないなど被害が発生していた。加藤厚労大臣は、記者会見でこの事件について「事実だとすれば大変遺憾」だとして、国内でも他に同様の事案が無いか、調査していく考えを示した。さらに「同様の事案が生じないよう、臓器提供に関する正確な情報を発信していく」と強調した。日本臓器移植ネットワークによれば、日本国内のドナー数は100万人当たり0.62とアメリカの41.88やドイツの11.22など世界各国に比べて、提供件数が低いままであり、今回のように待機患者が海外を目指すケースが後を絶たない。2008年の国際移植学会で「移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすること」という主旨のイスタンブール宣言が出されたことで、わが国でも2009年に改正臓器移植法が成立し、2010年7月に全面施行となっている。(参考)臓器あっせん、患者は徹底捜査求める「移植費用の行方解明して」(読売新聞)臓器あっせん、別の日本人患者も死亡…ベラルーシで肝臓・腎臓を同時移植(同)相場の2倍要求か 臓器移植、無許可あっせん容疑の理事(日経新聞)「不透明」な海外移植あっせん 増えぬドナー、減らぬ希望者が背景に(朝日新聞)6.未承認薬の緊急避妊薬やイベルメクチンのアフィリエイト広告で逮捕/兵庫県警兵庫県警生活経済課は2月9日、緊急避妊薬やうつ病の治療薬など未承認の医薬品のアフィリエイト広告をインターネット上に掲載したとして、医薬品医療機器法(未承認医薬品の広告禁止)違反の疑いで、群馬県高崎市の男性(39)を逮捕した。調べによると、男性は副業でアフィリエイト(ネット広告)用のウェブサイトを複数開設し、アフィリエイト仲介業者を通して、毎月10万円前後の報酬を得ていた。Webサイトには、未承認の緊急避妊薬、抗うつ薬に加え、新型コロナウイルス感染症治療薬として未承認の「イベルメクチン」も掲載されていた。厚生労働省は2021年8月に医薬品医療機器等法を改正しており、医薬品等の誇大広告の規制の強化を打ち出している。第66条の条文には「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」とされている。規制対象は、広告主だけではなく、広告代理店・アフィリエイターなどの個人も対象となる。また、健康食品・サプリメント、健康・美容器具であっても、医療品のような効果を訴求して、薬機法に抵触する表現をすると医薬品であるとみなされ、課徴金の対象となる可能性があり、課徴金として「売上額」の4.5%を支払う必要がある。(参考)未承認の緊急避妊薬などをネット広告に 県警が群馬の男逮捕「本当に悪いのは輸入代行者」(神戸新聞)医薬品等の広告規制について(厚労省)アフィリエイト広告のしくみと法規制(国民生活センター)薬機法改正のポイントを分かりやすく解説!企業は何を対策すべき?(Letro)

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オミクロン株XBB.1.5、感染力・免疫逃避能ともに増強/東大

 米国疾病予防管理センター(CDC)が発表したデータによると、米国では2022年12月より新型コロナウイルスのオミクロン株XBB.1.5の感染が急激に増加し、2023年2月4日時点で全体の66.4%を占めている。XBB.1から派生したXBB.1.5は、日本でも感染例が確認されており、今後の感染拡大が懸念されている。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究グループは、オミクロン株XBB.1.5のウイルス学的特徴を、流行動態、感染性、免疫抵抗性などの観点から解析し、XBB.1.5はXBB.1と比べて、実効再生産数(Re)が1.2倍高いことや感染力が高まっていること、さらに血清中の中和抗体に対してBA.2やBA.5よりもきわめて高い免疫逃避能を持つことを明らかにした。本結果は、Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年1月31日号のCORRESPONDENCEに掲載された。新型コロナ・オミクロン株XBB.1.5はXBB.1と比べて3倍高い感染力 新型コロナウイルスのオミクロン株XBB.1.5のウイルス学的特徴を、流行動態、感染性、免疫抵抗性などの観点から解析した主な結果は以下のとおり。・米国内のウイルスゲノム取得情報を基に、ヒト集団内におけるオミクロン株BQ.1.1、BQ.1、XBB.1、XBB.1.5のそれぞれについて実効再生産数を推定したところ、XBB.1を基準とすると、BQ.1.1、BQ.1は同等かわずかにそれ以下であったのに対し、XBB.1.5はXBB.1の1.2倍高かった。・スパイクタンパク質と感染受容体ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)との結合を検証したところ、XBB.1.5のスパイクタンパク質のACE2への結合力が、BA.2の6倍、XBB.1の4倍高かった。・ウイルスの感染性について、XBB.1.5はXBB.1と比べて3倍高い感染力を示した。・XBB.1.5の免疫逃避能について、ワクチン接種後にBA.2にブレークスルー感染した人の血清においてBA.2の20倍、BA.5にブレークスルー感染した人の血清においてBA.5の9.5倍、血清中の中和抗体に対して強い抵抗性を示した。XBB.1.5とXBB.1の抵抗性の強さは同程度だった。 著者は本結果について、新型コロナウイルスのオミクロン株XBB.1.5は、XBB.1と同様の高い免疫逃避能を保持しつつ、スパイクタンパク質に新たにS486P変異を獲得したことで、XBB.1よりも強くACE2と結合できるようになり、その感染力を高めたと考えられるという。今後、XBB.1.5の流行は全世界に拡大していくことが予想され、第9波の主体になる可能性も懸念されており、これを回避するために有効な感染対策を講じることが肝要だとしている。

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第146回 5類移行もマスク着用緩和も、政府の忖度は医療者よりSNS民?

しかし、何と間の悪い時期にわかりにくいことをするのだろう。政府が来月上旬に実施予定と報じられているマスク着用推奨の変更である。「間が悪い」と言ったのは、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染症法上の分類を5類に移行する時期にこの「政策」を実行することである。ちなみにあえてカギカッコをつけたのは、マスク着用は以前から法的拘束力がなく、政府の呼びかけに過ぎないからである。新型コロナの5類移行は、あくまで現在の主流株であるオミクロン株亜系統の性質とワクチン接種の進展に応じた行政的取り扱いの変更が主軸である。これに対し、マスク着用のうんぬんは医学的見地からの感染リスク低減策であり、本質的に医学的な問題である。にもかかわらず、政府側が明らかに5類移行に絡めていることは「間が悪すぎる」のである。新型コロナによる重症化・死亡リスクが当初と比べかなり低下しているとは言え、感染経路が変わったわけでもなく、むしろ感染力は強まっている。そして基礎疾患を有する者や高齢者にとっては未だに命の危険にさらされる感染症である。この状況で行政上の取り扱いと医学的感染リスク低減策の緩和を同時に行えば、シンプルに「新型コロナ、もはや一切恐るるに足らず」と曲解されかねない。すでにその兆候はSNS上では見え始めている。たとえば、ちょうどこの時期にコクランがウイルス性呼吸器感染症に対する、マスクを含む各種物理的介入に関するシステマティック・レビューの結果を報告している。簡単に結果だけを見れば、サージカルマスクの着用と非着用で比較してインフルエンザや新型コロナの感染リスクはほとんど変わらないというものになる。もっともこの論文の結論の冒頭で著者が言っているのは「試験のバイアスリスクの高さ、評価項目のばらつき、物理的介入のアドヒアランスの低さなどから確たる結論を導き出せない」ということである。にもかかわらず、SNS上では「コクランがマスクは無効と認めた」とのツイートが飛び交っている。また、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが先ごろ入学式・卒業式でのマスク着用に対して示した考え方は、「一定の感染リスクはあるが、一生に一度の式典であるため、リスクに対する合意形成や可能な限りの対策が実施されればマスク非着用は選択肢の1つ」というものだ。医学的知見と社会的状況の両面を考えた苦心が見える着地点である。しかし、これには感染が広がるのではないかというごく当たり前の懸念と同時に、まるでマスク非着用の全面的解禁の視点になっているものもある。さらには元東京都知事で現参議院議員の猪瀬 直樹氏のように「感染症専門家たちのエラそうな言い方」との揶揄もある(私には猪瀬氏本人の言い様のほうが何十倍もエラそうに読めてしまうのは気のせいか)。この5類移行とマスク着用の緩和がほぼ同時期に実行されると、どのような事態になるだろうか? おそらく社会全体では新型コロナに対する警戒が緩み、それに伴う感染拡大は十分に想定されるシナリオだろう。だが、それ以上に医学的見地は棚上げでとにかく結論ありきでマスクを外したい人と、いまだリスクにおびえてマスクが手放せない人との間で社会的分断が一層進んでしまうことのほうがより深刻な問題となってくるだろう。政府は一応、感染リスクが高くマスク着用が望ましいシーンなどを示すとしている。しかし、そもそもこれまでもその周知が徹底していたとは言い難い。たとえば、私にしては珍しく国・お役所のやることを評価したのが、以前本連載でも取り上げた屋外でのマスク着用に関する広報CMだが、このようなものを5類移行前に十分に発信しながら、その後の状況を見て政府として緩和の方向性を考えるほうがはるかに無難だと思うのだが。しかし、現在の報道だとわずか1ヵ月後にはマスク着用の推奨基準が緩和される。ここで一気に感染対策が緩んで感染が拡大し、感染者報告がピークになり始めた時に5類移行となったらどうなるだろう? そして、すでに多くの医療従事者が指摘しているように5類移行後に新型コロナに対する医療提供体制が一気に拡大する可能性はそれほど高くない。まるで医療崩壊を意図的に起こそうとしているかのようなタイムスケジュールにも思えてしまう。そして社会各所では「うちではマスクの着用をお願いしております」vs.「政府が不要と言っただろう」のバトルが展開される。そしてより困ったケースだと、「政府はマスク不要と言っただろう」と言うのと同じ口が「政府がワクチンについて言うことは信用できない」と口にする御仁たちがわんさか湧いてくることだ。まあ、現実になってほしくないシナリオなのだが、私自身は正直かなり強い懸念を抱いている。

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抗原検査の感度、オミクロン株感染直後は低いのか/阪大

 新型コロナウイルス感染症のオミクロン株流行下において、感染直後における抗原定性検査の感度が低下する可能性が指摘されていた。大阪大学感染症総合教育研究拠点の村上 道夫氏らの多施設共同研究グループは、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)のクラブの選手やスタッフを対象に、同一日かつ同一個人に行われたPCR検査と抗原定性検査の結果を比較評価した。本研究の結果、PCR検査と比べた抗原定性検査の感度は63%(95%信頼区間[CI]:53~73%)、特異度は99.8%(95%CI:99.5~100.0%)であり、症状の有無や感染してからの日数は、PCR検査と比べた抗原定性検査の感度に影響しないことが明らかになった。BMJ Open誌2023年1月30日号に掲載の報告。 抗原定性検査はPCR検査より安価なため、頻度高く検査を行うことが可能だが、オミクロン株に対して感染直後の感度が低下する可能性が指摘されていた。本研究では、抗原定性検査とPCR検査を比較するため、2022年1月12日~3月2日の期間に、同日に採取した検体を用いて両検査656件を行い、結果を比較した。迅速抗原検査キットはアボットのPanbio COVID-19 Antigenラピッドテスト、または、ロシュ・ダイアグノスティックスのSARS-CoV-2ラピッド抗原テストを使用し、鼻腔スワブ検体を用いた。PCR検査で使用されたサンプルの種類は、唾液または鼻腔スワブであった。 主な結果は以下のとおり。・656例のうち、抗原定性検査とPCR検査の両方が陽性だったのは65例、抗原定性検査が陰性でPCR検査が陽性だったのは38例、抗原定性検査が陽性でPCR検査が陰性だったのは1例、両方が陰性だったのは552例だった。・PCR検査と比較した抗原定性検査の感度は0.63(95%CI:0.53~0.73)、特異度は0.998(95%CI:0.995~1.000)であった。・PCR検査が陽性であった103例のうち、74例(71.8%)は有症状であった。・感度と発症から検査までの期間との間に有意な関連は認められなかった(Cramer's V=0.146、p=0.837)。・感度はワクチン接種の有無と有意な関連は認められなかった(Cramer's V=0.220、p=0.073)。・ワクチン接種者(70例)を対象とした層別解析では、感度と発症から検査までの期間との間に有意な関連は認められなかった(Cramer's V=0.084、p=0.955)。同様に、アボットの迅速抗原検査キットを使用した人(45例)を対象とした層別解析(Cramer's V=0.181、p=0.688)や、PCR検査のサンプルが唾液だった人(80例)の層別解析(Cramer's V=0.087、p=0.895)でも、感度と発症から検査までの期間との間に有意な関連は認められなかった。 著者らは、抗原定性検査の特異度は、両検査で陰性であった症例数の報告が実際の数よりも少なかった可能性があり、過小評価であった可能性があるとしているが、本結果によってPCR検査の結果と比較した抗原定性検査の感度は、感染から検査までの期間や症状発現の有無とは無関係であることが示唆された。プロスポーツチームのような集団における感染リスクの低減には、抗原定性検査のコストはPCR検査の約10分の1であるためより頻繁に実施することができ、高い感染制御効果が期待できるという。

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インフル家庭内感染率、コロナ流行前の2.31倍に/JAMA

 米国5州のコホート試験で、2021-2022インフルエンザシーズン中のインフルエンザA(H3N2)ウイルス家庭内感染率は50.0%と、2017~20年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前のシーズン(2017-2018、2018-2019)の同感染率20.1%に比べ、家庭内感染リスクは有意に上昇(2.31倍)していたことが報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のMelissa A. Rolfes氏らによる検討で、著者は「さらなる検討を行い、関連性の要因を明らかにする必要がある」と述べている。JAMA誌オンライン版2023年1月26日号掲載の報告。感染者の同居家族、インフルエンザ検査を5~10日間実施 研究グループは、2021-2022インフルエンザシーズン中の家庭内インフルエンザ感染リスクと、COVID-19パンデミック前のインフルエンザシーズン中の同リスクを比較する前向きコホート試験を行った。 COVID-19パンデミック前シーズンの米国内2州(テネシー、ウィスコンシン)と、2021-2022シーズン中の4州(テネシー、アリゾナ、ニューヨーク、ノースカロライナ)を対象とした。 家庭内で最初に検査で確定されたインフルエンザA(H3N2)ウイルス感染者を1次症例とし、同居する家族には試験登録後5~10日間にわたり、毎日の自己採取による鼻腔ぬぐい液でインフルエンザウイルス遺伝子検査を実施するとともに、症状に関する日誌を記録してもらった。 主要アウトカムは、COVID-19パンデミック前シーズンと比較した2021-2022シーズン中の家庭内での検査確定インフルエンザA(H3N2)ウイルス感染の相対リスクだった。リスクは、年齢、ワクチン接種状況、1次症例との接触頻度、家庭内密度により補正し推算した。また、年齢、ワクチン接種状況、1次症例との接触頻度別のサブグループ解析も行った。家庭内感染率、COVID-19パンデミック前は20.1%、パンデミック後は50.0% 解析には、COVID-19パンデミック前シーズン中の1次症例152例(年齢中央値13歳、女性52.0%、黒人3.9%)と同居家族353例(33歳、54.1%、2.8%)、2021-2022シーズン中の1次症例84例(10歳、52.4%、13.1%)と同居家族186例(28.5歳、63.4%、14.0%)が含まれた。 COVID-19パンデミック前シーズン中に、1次症例からインフルエンザA(H3N2)に感染した同居家族は20.1%(71/353例)だったのに対し、2021-2022シーズン中は50.0%(93/186例)だった。 2021-2022シーズンのCOVID-19パンデミック前シーズンに対する、インフルエンザA(H3N2)ウイルス家庭内感染の補正後相対リスクは2.31(95%信頼区間[CI]:1.86~2.86)だった。

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乳がん患者のリアルワールドでのコロナワクチン効果/JCO

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの臨床試験には、積極的ながん治療を受けている乳がん患者が含まれていない。今回、イタリア・ジェノバ大学のMarco Tagliamento氏らが、リアルワールドの乳がん患者におけるワクチン接種の効果を調査したところ、乳がん患者においてもワクチン接種がCOVID-19罹患率および死亡率を改善することが示された。また、欧州におけるオミクロン株流行期の間、乳がん患者におけるCOVID-19重症度は低いままだった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年1月31日号に掲載。 本研究では、OnCovidレジストリ参加者を対象に、プレワクチン期(2020年2月27日~11月30日)、アルファ-デルタ期(2020年12月1日~2021年12月14日)、オミクロン期(2021年12月15日~2022年1月31日)における乳がん患者のCOVID-19の病態と死亡率を比較した。28日致死率(CFR28)およびCOVID-19重症度を、出身国、年齢、併存疾患の数、Stage、COVID-19診断後1ヵ月以内の抗がん剤治療で調整し、ワクチン未接種患者とワクチン接種(2回接種または追加接種)患者を比較した。 主な結果は以下のとおり。・2022年2月4日までに613例が登録された。・ホルモン受容体陽性が60.1%、HER2陽性が25.2%、トリプルネガティブが14.6%で、61%が限局/局所進行であった。年齢中央値は62歳(四分位範囲:51~74歳)、31.5%が2つ以上の併存症あり、69%が喫煙歴なしだった。診断時期は、63.9%がプレワクチン期、26.8%がアルファ-デルタ期、9.3%がオミクロン期だった。・CFR28の解析では、3つの流行期で死亡率は同等だった(順に13.9%、12.2%、5.3%、p=0.182)が、COVID-19重症度は3つの流行期にわたって有意な改善がみられた。アルファ-デルタ期およびオミクロン期のワクチン未接種患者は、プレワクチン期の患者(ワクチン未接種)とアウトカムが同等だった。・ワクチン接種による解析対象患者566例のうち、ワクチン接種患者は72例(12.7%)、未接種患者は494例(87.3%)だった。・ワクチン接種患者は未接種患者に比べて、CFR28(オッズ比[OR]:0.19、95%信頼区間[CI]:0.09~0.40)、入院(OR:0.28、95%CI:0.11~0.69)、COVID-19合併症(OR:0.16、95%CI:0.06~0.45)、COVID-19に対する治療の必要度(OR:0.24、95%CI:0.09~0.63)、酸素療法の必要度(OR:0.24、95%CI:0.09~0.67)において改善していた。

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コロナワクチン接種者と未接種者、情報源の違いは?/筑波大

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンを接種するかどうかを決定しておらず「様子見」していた人のうち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報を「職場/学校」「LINE」から得ている人はその後のワクチン接種率が高く、「インターネットニュース」「動画共有サイト(YouTubeなど)」から得ている人は接種率が低かったことを、筑波大学の堀 大介氏らが明らかにした。Environmental health and preventive medicine誌オンライン版2023年2月2日掲載の報告。 過去の研究によって、COVID-19に関する情報をテレビのニュース番組や新聞から得ている人はワクチン接種意向が高いなど、情報源の種類と接種意向との関連が報告されていた。しかし、ワクチンが接種可能になった後に実際にワクチンを接種したかどうかは不明のため、ワクチン接種の意思決定プロセスにおける情報源の種類の影響は明らかではなかった。そこで研究グループは、ワクチンを接種するかどうかまだ決めていない人において、使用しているCOVID-19に関する情報源とその後のワクチン接種の有無との関連を明らかにするため調査を実施した。 研究グループは、「日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS)」で得られたデータを解析した。対象は、医療者ではなく、健康な、18~64歳のインターネット調査会社の登録モニターであった。 本研究は2段階で行われ、まずワクチンの集団接種開始前の2021年2月8日~25日に「様子見してから接種したい」と回答した2万6,000人が組み込まれた。除外基準(年齢、基礎疾患、すでにワクチンの接種意向を決めていた、など)を満たしている人を除外した後、集団接種開始後の2021年9月27日~10月29日にCOVID-19に関する情報の入手源や接種状況などを5,139人(年齢中央値42.8歳[±12.2歳]、女性55.7%)に聴取した。情報入手源は、家族、友人、職場/学校、医療者、著名人、専門家、官公庁のホームページ、学術機関のホームページ、動画共有サイト、LINE、Twitter、Facebook、Instagram、インターネットニュース、新聞、雑誌、書籍、テレビのニュース番組、テレビのワイドショー、ラジオの20種類であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった5,139人中、実際にワクチンを接種した人(予約済み、接種意向あり含む)は85.7%であった。・COVID-19に関する情報の入手源は、テレビのニュース番組(78.8%)、インターネットニュース(69.1%)の順で多かった。最も少なかったのは、Facebook(4.0%)であった。・多変量ロジスティック回帰分析の結果、職場/学校から情報を得ている人のワクチン接種の調整オッズ比[aOR]が1.49(95%信頼区間[CI]:1.18~1.89)、LINEのaORが1.81(同:1.33~2.47)と高く、インターネットニュースのaORが0.69(同:0.55~0.86)、動画共有サイトのaORが0.62(同:0.48~0.82)と低かった。・若年、失業、低学歴、低収入、インフルエンザワクチン未接種、COVID-19ワクチンへの不安の強さが、COVID-19ワクチン未接種と関連していた。 これらの結果から、研究グループは「COVID-19ワクチンの接種を様子見していた人の意思決定において、情報源の種類が重要な役割を果たしていた。ワクチン接種を促すにあたって、情報源の特性を理解し、適切に活用することが重要である」とまとめた。

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