サイト内検索|page:24

検索結果 合計:2204件 表示位置:461 - 480

461.

第152回 新型コロナウイルス、アドバイザリーボードが夏の感染拡大の可能性を指摘/厚生労働省

<先週の動き>1.新型コロナウイルス、アドバイザリーボードが夏の感染拡大の可能性を指摘/厚生労働省2.骨太の方針を閣議決定、防衛費増額とともに子育て支援を強化へ/内閣府3.391項目の規制緩和策を盛り込んだ新たな規制改革実施計画を決定/政府4.ドクターカーの運用に関する全国調査、人員不足が課題/厚労省5.旧優生保護法下での強制不妊手術問題、調査報告書全文が判明/国会6.医療脱毛クリニックが破産手続き、被害者は900人以上に1.新型コロナウイルス、アドバイザリーボードが夏の感染拡大の可能性を指摘/厚生労働省厚生労働省は6月16日に新型コロナウイルス対策を助言する「アドバイザリーボード」を開催した。厚労省の定点把握データに基づき、新型コロナウイルス感染者数が夏の間に一定の拡大が生じる可能性があるとの見解をまとめた。定点把握による感染者数は前週比で1.12倍増加し、全国で36都府県で感染者数は増加していた。会合では高齢者など重症化リスクのある人々に対するワクチン接種の検討を求める一方、基本的な感染対策の重要性も強調された。専門家からは、感染拡大の可能性や医療提供体制についての懸念が述べられた。また、変異ウイルスのオミクロン株の亜系統「XBB」の増加や免疫逃避性の変異などにも注意が必要とされた。これに先立ち、日本小児科学会は6月6日に、新型コロナワクチンの子どもへの接種を「すべての小児に推奨する」と発表しており、「コロナ対策の緩和によって多くの子供が感染する可能性があるため、ワクチン接種は重要であり、重症化を防ぐ手段として有効だ」と主張している。同学会側は、WHOが子供へのワクチン接種を支持しており、複数の研究でも予防効果が確認されていることを指摘している。参考1)第122回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年6月16日)2)コロナ感染「夏に拡大恐れ」=定点把握は前週比1.12倍-「5類」後初会合・厚労省助言組織(時事通信)3)コロナ1カ月で2倍に、沖縄注意 専門家組織「夏に拡大の可能性」(朝日新聞)4)新型コロナワクチン「すべての小児に接種推奨」日本小児科学会(NHK)5)小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方[2023.6追補](日本小児科学会)2.骨太の方針を閣議決定、防衛費増額とともに子育て支援を強化へ/内閣府政府は6月16日に「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。少子化対策の財源について具体的な言及はなく、新たな税負担も考えていないとした。防衛費の財源については増税の実施時期を2025年以降と先送りする方針だが、具体的な財源の確保は困難であり、実現するためには安定した財源が必要とされている。政府は年末までに具体化を進める予定。骨太の方針の中で、社会保障分野については、引き続き経済・財政一体改革の強化・推進を行い、限りある資源を有効に活用して質の高い医療介護サービスを提供するために、医療の機能分化と連携のさらなる推進を行い、医療・介護人材の確保や育成にあたるほか、働き方改革の実現のために医療DXの推進、医療費適正化や地域医療構想の推進のために、地域医療連携推進法人制度の有効活用などの推進が盛り込まれた。介護の分野では、高齢者の自己負担2割の対象者を拡大するか否かを年末に判断することを正式に決めた。参考1)経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~(内閣府)2)政府、骨太の方針を閣議決定 防衛増税後ろ倒し示唆、歳出増ずらり(朝日新聞)3)骨太の方針のポイント 物価安定・賃金上昇狙う 少子化対策 児童手当や育休給付拡充(日経新聞)4)終身雇用など日本の“常識”見直しへ 骨太方針閣議決定(産経新聞)3.391項目の規制緩和策を盛り込んだ新たな規制改革実施計画を決定/政府政府が391項目の規制緩和策を盛り込んだ新たな規制改革実施計画を6月16日の閣議で決定した。この中には、医療データの個人情報を加工すれば同意が不要で研究開発に利用できる法整備や、AIを活用した契約書審査のガイドライン作成、医師の業務を一部看護師にも許可するなど、さまざまな分野での規制緩和が含まれている。また、都市部でもオンライン診療のための診療所を開設できるよう検討し、診療所管理者の常勤要件の緩和や特定行為の範囲拡充も検討する。これにより、医療のデジタル化や効率化が進む見込み。さらに、医療データの2次利用の同意不要化や、在宅患者への薬剤提供体制整備、プログラム医療機器の保険適用の検討なども行われている。この実施計画は2023年中に結論を出す予定。参考1)『規制改革実施計画』[令和5年6月16日閣議決定](内閣府)2)参考資料[内閣府規制改革推進室作成](同)3)規制緩和策 391項目盛り込んだ政府の計画 閣議決定(NHK)4)都市部でも公民館でオンライン診療、年内に結論 新たな規制改革実施計画を閣議決定(CB news)4.ドクターカーの運用に関する全国調査、人員不足が課題/厚労省厚生労働省が行なったドクターカーの運用に関する全国調査の内容が判明した。これによると、24時間体制で運用している病院は全体の約20%に過ぎず、手術可能なドクターカーは約30%、輸血可能なドクターカーは約10%であることが明らかになった。この中で人員不足が主な課題とされており、厚労省は効率的な運用のための指針を策定し、救命率の向上につなげたいと考えている。調査は厚生労働省調査研究事業「ドクターカーの運用事例等に関する調査研究事業」として全国ドクターカー協議会によって実施され、約140病院が回答した。調査によると2021年1月~2022年9月にかけて、ドクターカーで診療された患者は約5万4,800人。しかし、夜間運用や手術能力、輸血能力に関しては課題があり、運用している病院は限られていた。また、ドクターカーの購入費用は装備を含めて1台当たり1,000~4,000万円かかり、国の補助もあるが、病院の負担も大きい。全国ドクターカー協議会は、データ収集と分析を行い、ドクターカーの診療能力向上のために、車内診療の訓練コースなどを設けるなどの取り組みを行っていく考えを示している。参考1)ドクターカー「24時間」運用2割、人員不足など課題…「手術可能」は3割(読売新聞)5.旧優生保護法下での強制不妊手術問題、調査報告書全文が判明/国会旧優生保護法下で障害者らに不妊手術が強制された問題について、衆参両院がまとめた調査報告書原案の全文が判明した。調査では、手術の65%が本人の同意なしに行われ、盲腸など別の手術と偽って手術が行われたり、審査会を開催せずに書類だけで手術を決定するなど、ずさんな実態が浮かび上がった。最年少の被害者は9歳で、児童施設や福祉施設の入所条件として手術が行われた事例も認められた。報告書によれば、旧法に基づき全国で実施された手術は2万4,993件で、本人の同意なしの手術は1万6,475件だった。被害の背景には経済的な困難や家族の意向、福祉施設の入所条件などがあった。報告書の原案は衆参両院に提出され、公表される予定。この問題について、国会の議長や厚生労働委員会の委員長は謝罪の意を表明した。参考1)盲腸と偽り不妊手術、最年少9歳 同意なし65%、旧優生報告判明(東京新聞)2)強制不妊、最年少は9歳 国の報告書全文判明 旧優生保護法、衆参議長提出へ(時事通信)3)旧優生保護法 いきさつなど調べた国会の報告書案まとまる(NHK)6.医療脱毛クリニックが破産手続き、被害者は900人以上に医療脱毛クリニック「ウルフクリニック」が突如として全店舗を休業し、破産手続きの準備を進めていることが明らかになった。クリニックはコース契約を結んだ患者に対する返金も行わず、従業員の給与も未払いのままで、被害総額は約1億8,000万円と推定されている。男性の医療脱毛を扱うウルフクリニックは東京、神奈川、愛知、大阪に5店舗を展開していたが、今年4月に全店舗を休業し、先月末に突然の破産を発表した。被害者たちは、返金対応がずさんであることを、クリニックの会議の録音や返金対応マニュアルから明らかにした。運営会社の幹部の会議の録音データからは、クリニックが自転車操業に陥っており、客からの入金がなくなったために従業員への給与支払いができなくなったことが判明している。被害者は900人以上を上回っており、被害者らは集団訴訟を起こす見込み。参考1)「通い放題」トラブル相次ぐ脱毛サロン、倒産が過去最多に 年度内には業界大手「脱毛ラボ」が破綻、一般利用者3万人に被害(産経新聞)2)「マジ終わった」脱毛クリニック破産手続き準備 被害総額1億8,000万円か 集団提訴へ(テレビ朝日)

462.

第164回 ワクチン否定派がコロナワクチン接種に踏み切った、ある薬の功罪

先日、久しぶりに会った友人から次のように言われた。「半年ほど肩こりがひどかったんだけど、近くのクリニックに行って薬をもらって飲んだら、驚くほど良くなってさ。本当にびっくり。いつもお前(筆者)に『薬を不当に悪者にするな』と言われていたけど、その意味がよくわかった」ちなみにこの友人は大の医療機関嫌い、薬嫌いである。もちろんワクチンはもってのほかという人物である。ただし、余計なワクチン陰謀論にはまっていないことだけは唯一の救いでもある。約1年前に会った時は新型コロナウイルス感染症のワクチンも接種していなかったが、この肩こりが治ったのを機に新型コロナワクチンを接種したと聞いて驚いた。これほど人は変わるものかと思いながら話を聞いていると、彼が微妙に引っかかることを口にした。「その肩こりの薬がすごいのよ。気分もすっきりしてさ」嫌な予感がした。さりげなく、どのような薬を飲んでいるのかを尋ねてみると、ごそごそとカバンから取り出して見せてくれた。ああ、やっぱりか。2錠ほどすでに服用済みのシートには、はっきりと「デパス0.5mg」と印刷されていた。精神安定薬のデパスこと、エチゾラムという薬そのものに罪はないし、個人的にもまったく恨みつらみもない。しかし、本連載の読者にはもはや言うまでもなく、依存をはじめとする問題が少なくない薬である。「うん? どうした? なんかまずい薬?」友人は私の表情の変化に気付いてしまったらしい。私がとっさに「まあ、効果が強めの薬だからね。肩こりが治ったのなら、次の受診の時に先生と話して、薬を終わりにするのも選択肢の1つかな」と言ったのに対し、「うん、そのつもり。治ったのに薬を飲み続ける必要もないしね」とにっこり笑ったのを見て、少し安堵した。しかし、非医療従事者と医療の話をするのは本当に難しい。とりわけこの友人のように医療不信を根底に抱えた人だと余計に気を遣う。しかも、この薬がきっかけで、今まで拒否していた新型コロナワクチンの接種まで至ったならば、なおさらである。そんなこんなで久しぶりにNDBオープンデータを開いてみた。最新の令和2年度のレセプト情報によると、デパスの汎用規格である0.5mg錠の外来(院外)処方量は約2億5,334万錠。同データの精神神経用剤の分類では堂々の第1位である。この数字は年々減少してはいるが、ジェネリック品(以下、GE)で最も処方が多いエチゾラム錠0.5mg「トーワ」の外来(院外)処方量が約9,830万錠であり、先発品であるデパスはダブルスコアで上回っている。昨今のGE使用促進策、とくに後発医薬品調剤体制加算の影響で処方量の多い薬ほどGEに切り替えが進んでいる。GE登場から約半年で、数量ベースで先発品の約7割がGEに置き換わるというアメリカ市場に限りなく近い状況が日本でも珍しくなくなった。にもかかわらず、デパスについてはこの“有様”である。念のためNDBオープンデータをざっと眺めまわしてみたが、GE登場から10年以上経過してもなお、先発品の処方量が、同一規格で適応症も同じGEの最多処方量の銘柄を上回っているのはデパスと認知症治療薬のアリセプトD錠5mg(一般名・ドネペジル)くらいだ。実際、過去に私がデパスの依存性問題を取材した際、「この薬の場合、GEに切り替えようとしても服用者が拒否をしがち。『デパスという名前が入っていないと嫌』とまで言われる」という趣旨の話を複数の薬剤師から聞かされている。まさにこれこそ依存の極みと言っても過言ではないだろう。そしてNDBオープンデータの性別・年齢別の処方量を見ると、相変わらず70~80代前半にボリュームゾーンがある。ざっくり言えば、現役世代の頃に服用し始めた人が依存性のために止められず、キャリーオーバーしていると捉えるのが最も妥当な解釈だろう。しかし、肩こりを訴えた現役世代にポンとこの種の薬が処方されてしまう現象がいまだあることにはやや首をかしげざるを得ない。そんなこんなをつらつら思ってしまったのは、厚生労働省で6月12日に開催された「医薬品の販売制度等に関する検討会」での議論に関する報道を目にしたからである。報道によると、同検討会では若年者で増加しているOTC薬の鎮咳薬や総合感冒薬の濫用問題に関して、防止策としてこれらOTC薬の“小包装化”を厚生労働省が提案。これに賛同する医師側委員などと、家庭内常備薬として大包装販売を訴える販売者側が意見対立したというもの。厚生労働省の提案には一理あるが、改めてこのデパスの問題に遭遇し、データで現実を俯瞰すると、それと同時というか、むしろその前にやらなければならないことがあるのでは? と思うのだが。

463.

個別化がんワクチン+ペムブロリズマブ併用の結果に新たな期待/モデルナ・メルク

 Moderna(米国)とMerck(米国とカナダ以外ではMSD)は、2023年6月5日付のプレスリリースで、切除された高リスク悪性黒色腫患者に対する個別化がんワクチンmRNA-4157/V940と抗PD-1治療薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の併用療法について、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、遠隔転移または死亡のリスクを65%減少させたと発表。本結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で報告された。 なお、本試験の主要評価項目である無再発生存期間(RFS)については、2022年12月、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用治療で、ペムブロリズマブ単独と比較し再発または死亡のリスクが44%減少した、と発表されている。 試験概要と結果は以下のとおり。 無作為化非盲検第IIb相試験であるKEYNOTE-942試験には、StageIII/IVの悪性黒色腫患者157例が登録された。完全な外科的切除後、患者は無作為にmRNA-4157/V940(mRNA-4157[1mg]を合計9回筋肉内投与)とペムブロリズマブ(200mgを3週間ごとに最大18サイクル[約1年間])を併用する群と、ペムブロリズマブを約1年間単独で投与する群に、2:1で割り付けられ、再発または許容できない毒性が発現するまで治療が継続された。主要評価項目はRFSで、副次評価項目は遠隔転移のない生存期間(DMFS)と安全性である。 本研究の主要な副次評価項目であるDMFSについて、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示し、遠隔転移または死亡のリスクを65%減少させた(ハザード比[HR]:0.347、95%信頼区間[CI]:0.145~0.828、片側検定のp=0.0063)。 mRNA-4157/V940で観察された有害事象は、第I相試験で報告されたものと一致していた。また、ペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告された試験で観察されたものと一致していた。治療に関連した重篤な有害事象は、mRNA-4157/V940とペムブロリズマブの併用群では25%、ペムブロリズマブ単独群では18%で認められた。すべてのグレードにおける主な有害事象は、疲労(60.6%)、注射部位疼痛(55.8%)、悪寒(50.0%)であった。 これに対し、Modernaの上級副社長兼がん治療開発責任者のKyle Holen氏は「遠隔転移や遠隔再発を来すと予後不良である。これらのデータは、ネオアンチゲン療法の可能性を広げる結果となった。他のがん種に対しても期待できるだろう」と述べた。 さらにMerckの上級副社長兼グローバル臨床開発担当のEric H. Rubin氏は「これらDMFSの結果は以前に第IIb相試験のRFSで観察されたデータに基づいており、今年後半にModernaと協力して第III相試験を開始することを楽しみにしている」と展望を語った。

464.

第167回 帯状疱疹ワクチンで認知症発現率低下 / タウリンでより健康に長生きできるかも

無作為化試験様の解析で帯状疱疹ワクチンと認知症が生じ難いことが関連おのずと無作為化試験のようになった英国・ウェールズの2集団の比較で帯状疱疹ワクチンzostavax接種と認知症が生じ難いことの関連が示されました1)。同地では2013年9月1日からzostavaxの接種が始まりました。zostavaxは80歳までの人にどうやらより有効とのことで、1933年9月2日以降に生まれた80歳未満の人が接種の対象となり、1933年9月2日より前に生まれた人は対象外でした。その日を挟む1925~42年生まれの約30万人(29万6,603人)の電子診療情報が解析され、zostavax接種対象の人はそうでない人に比べて認知症の発現率が8.5%低いことが示されました。接種対象者のうち実際に接種したのは半数ほどであることを踏まえた解析結果によるとワクチン接種は認知症発現率の約20%(19.9%)低下をもたらしました。生まれが1933年9月2日以降かその前かで区切った2集団の誕生日以外の全般的な違いといえばzostavax接種対象かそうでないかのみであり、その2集団はおのずから無作為化試験のような集団となっています。とはいえあくまでも診療録の解析結果であり、その効果の確証には試験が必要です。より新しい帯状疱疹ワクチンの試験がいくつか進行中で、それらの被験者の認知機能を検査してみたらどうだろうと著者は言っています2)。アミノ酸・タウリン補給でマウスの寿命が伸び、中年サルの体調が改善真核生物の世界で最も豊富なアミノ酸の1つであるタウリンはイカやタコそれに貝類などに多く含まれ、多くの栄養ドリンクやエナジードリンクの成分としても知られ、サプリメントとしても販売されています。ヒトにとってタウリンは準必須アミノ酸で、合成できるものの発達に十分な量を作ることができない幼いころには体外から取り込まねばなりません3)。幼いころのタウリン不足は老化関連疾患と関連する骨格筋、眼、中枢神経系(CNS)機能障害を引き起こします。そのタウリンの体内の巡りが老化に伴って減ることがマウス、サル、さらにはヒトで認められ、タウリンの体内の巡りを増やすことでマウスの健康で生きられる期間や寿命が伸び、中年サルの体調が改善しました4,5,6,7)。マウスやサルで認められたようなタウリンの健康増進効果がヒトでも期待しうることも英国の試験の記録の解析で示唆されました。解析されたのは英国・ノーフォーク州でのEPIC-Norfolk試験の被験者1万人超(1万1,966人)の記録で、血中のタウリンやタウリン関連代謝物が多いことはより痩身であることを示す体型指標と関連しました。また、2型糖尿病の有病率が低いこと、糖濃度が低いこと、炎症指標であるC反応性タンパク質(CRP)が少ないことなどとも関連し、タウリン欠乏のヒトの老化への寄与に見合う結果が得られています。アスリートやそうでない人を募って実施した試験で運動が血中のタウリンやタウリン関連代謝物を増やしうることも確認され、運動の健康向上効果のいくらかにタウリンやタウリン関連代謝物が寄与しているという予想に沿う結果も得られています。しかし早まってタウリンを補給するのは得策ではありません。ヒトがタウリンを補給することで健康が改善するかどうかや寿命が伸びるかどうかはわかっておらず、店頭で売られているタウリン含有サプリメントを健康維持や老化を遅らせることを目当てに早まって服用すべきでないと著者は言っています7)。タウリンの健康や寿命への効果は無作為化試験で検証しなければなりません5)。参考1)Causal evidence that herpes zoster vaccination prevents a proportion of dementia cases, May 25 2023. medRxiv.2)Does shingles vaccination cut dementia risk? Large study hints at a link / Nature3)MCGAUNN J, et al. Science. 2023;1010:380.4)SINGH P, et al. Science. 1012;380:eabn9257.5)Taurine May Be a Key to Longer and Healthier Life / Columbia University6)Amino acid in energy drinks makes mice live longer and healthier / Science7)Taurine supplement makes animals live longer - what it means for people is unclear / Nature

465.

第151回 はしか感染の拡大、ワクチン接種率低下に警鐘/国立感染症研究所

<先週の動き>1.はしか感染の拡大、ワクチン接種率低下に警鐘/国立感染症研究所2.骨太方針の原案、賃上げ継続と少子化対策を強化/経済財政諮問会議3.急性期充実体制加算未届け出の病院、手術実績が主な理由と判明/中医協4.新マイナンバーカード導入と母子健康手帳の統合を決定/内閣府5.ゲノム医療法が成立、ゲノム解析による新薬開発を促進へ/国会6.初の経口人工妊娠中絶薬、オンライン診療では処方不可、入院可能な有床施設で使用を/厚労省1.はしか感染の拡大、ワクチン接種率低下に警鐘/国立感染症研究所新型コロナウイルス感染の沈静化とともに、はしか感染が各地で相次いでいることが報じられている。国立感染症研究所などの報告によると、今年1月から6月1日までの感染者数は計11人に達しており、去年の報告者数を上回り、注意喚起を行っている。国内土着のウイルスの報告ではないため、新型コロナウイルスの水際対策の緩和により、海外から入国してきた渡航者によって持ち込まれたウイルスが広がったとされている。はしかは非常に感染力が強く、免疫がない大人でも重い症状が出ることがある。症状としては、高熱や発疹が現れ、肺炎や中耳炎を合併することもあり注意が必要。特別な治療薬はなく、先進国でも千人に1人が死亡すると言われ、感染は空気感染や飛沫感染、接触感染によって広がる。わが国ではワクチン接種が進んでおり、世界保健機関(WHO)も「排除状態」と認定しているが、入国制限の緩和に伴い、茨城、東京、神奈川、大阪、兵庫などで感染者が報告されている。専門家は接種率の低下と感染者増加の関連性を指摘し、ワクチン接種を呼びかけている。とくに1回目の接種率が93.5%、2回目の接種率が93.8%であり、前年度より減少していることが指摘され、未接種者への対応が急がれる。参考1)【医療機関のみなさまへ】麻しん発生状況に関する注意喚起[2023年5月23日現在](国立感染症研究所)2)はしか感染、各地で相次ぐ 専門家「大人でも重い症状」(日経新聞)3)大阪市で2人のはしか感染確認 2020年以来(毎日新聞)4)はしか急増中!ワクチン2回打ってる?大人世代は特に要注意!23歳~51歳に迫る危機(毎日放送) 2.骨太方針の原案、賃上げ継続と少子化対策を強化/経済財政諮問会議政府の経済財政諮問会議は7日、「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太方針)の原案を示した。新型コロナウイルス感染症の対応から一転して、財政健全化への姿勢を強調する内容となった。また、長年据え置かれてきた賃金の引き上げを持続的なものとし、中間層の復活を促すために、リスキリング支援や税制対応策などの具体策も含まれている。さらに子ども・子育て政策も抜本的に強化され、少子化の傾向を反転させる政策の充実を図るとしている。医療面では、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に変更されたことに伴い、医療体制、公費支援など段階的に通常体制へ移行を進めるとともに、来年度の診療報酬と介護報酬の同時改定で、物価高騰や賃金の引き上げへの対応、患者負担の抑制を踏まえ、「必要な対応」を取る方向性を盛り込んだ。そのほか、医薬品については、革新的な医薬品の開発強化などイノベーションを推進する一方、長期収載品などの自己負担のあり方の見直し、バイオシミラーの使用促進、後発医薬品などの安定供給確保、後発医薬品の産業構造の見直しを盛り込んでいる。一方、財政の健全性を保つために黒字化目標は維持しつつ、中期的な経済財政の枠組み作りのための検証も行われる。この原案は与党との調整を経て、今月中に閣議決定される予定。参考1)経済財政運営と改革の基本方針2023(仮称)原案(経済財政諮問会議)2)物価高と患者負担抑制への対応を併記、骨太原案 24年度のトリプル改定で(CB news)3)「骨太の方針」原案 “賃上げ持続” “少子化反転へ対策強化”(NHK)4)コロナで緩んだ財政を「平時に」 骨太の原案、社会保障費減に懸念も(朝日新聞)3.急性期充実体制加算未届け出の病院、手術実績が主な理由と判明/中医協厚生労働省は、6月8日に中央社会保険医療協議会の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」を開催した。この中で、令和4年度に行われた実態調査の結果報告が行われ、2022年度の診療報酬改定で新設された施設基準の「急性期充実体制加算」を届け出ていない病院が、取得できない理由として「手術実績」が主な理由であることが明らかにされた。届け出をしていない理由について病床規模別に集計したところ、200床以上の病院で手術実績を挙げる割合が最も高かった。また、急性期充実体制加算の未取得の400床以上の病院では「門内薬局、敷地内薬局」が設置されているためと回答する施設もあった。急性期充実体制加算は、手術件数の実績や感染防止対策、早期回復などが要件とされており、加算を届け出ている病院の方が入院期間が短く、病床利用率が高い傾向もみられた。急性期充実体制加算と総合入院体制加算とは、一方の算定しか認められないため、「どちらの加算を取得すべきか」を悩む病院も少なくないが、より点数の高い「急性期充実体制加算」に移行を選択して、「総合入院体制加算」で要件となっていた分娩対応・精神科対応を廃止する病院が一部にあることが問題視されている。参考1)令和5年度 第2回 入院・外来医療等の調査・評価分科会(厚労省)2)急性期充実加算、届け出の課題「手術実績」「200-399床」「400床以上」でトップに(CB news)3)スーパーICU評価の【重症患者対応体制強化加算】、「看護配置に含めない看護師2名以上配置」等が大きなハードル-入院・外来医療分科会(2)(Gem Med)4.新マイナンバーカード導入と母子健康手帳の統合を決定/内閣府6月9日に政府はデジタル施策に関する「重点計画」を閣議決定した。重点計画では、2026年中にプライバシーに配慮した新しいマイナンバーカード(マイナカード)を導入し、今年度中に母子健康手帳とマイナカードの一体化を一部自治体で始めることが盛り込まれているほか、マイナンバー制度におけるトラブルに対応するための安全対策も取り入れられている。また、各種証明書との一体化も計画されており、健康保険証は2024年秋に廃止され、運転免許証の機能もマイナカードに統合される。今後は、マイナカードの利用機会を拡大し、トラブルに対しては万全の対策を実施する。さらに、オンラインでの本人確認にもマイナカードを使用する方針が示された。参考1)令和5年度「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(デジタル庁)2)今回の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の主なポイント(同)3)母子手帳、免許証…マイナとの一体化が続々 「重点計画」閣議決定(朝日新聞)4)マイナカード利用機会拡大 26年に新カード発行、閣議決定(東京新聞)5.ゲノム医療法が成立、ゲノム解析による新薬開発を促進へ/国会6月9日、遺伝情報を活用したゲノム医療の推進と差別防止を目指す「ゲノム医療法」が与野党の賛成多数により参院本会議で可決・成立した。この法律は遺伝情報に基づく治療の推進と差別の防止を目指しており、ゲノム医療の研究と開発を進め、遺伝情報や健康情報の管理・活用の基盤整備を行う。法律には、医師や研究者がゲノム情報の取得や管理に関して守るべき指針も含まれている。ゲノム医療は、個人の遺伝情報を解析し、病気の診断や最適な治療法や薬の選択に役立つ一方、保険や雇用、結婚などでの差別や不利益の懸念があり、とくにがん患者の40%以上が懸念を示しており、3%以上が遺伝情報による差別的な扱いを経験したと回答している。遺伝情報に基づく差別などに対しては、罰則のある法律が必要とする意見もあり、具体的な事例や罰則の必要性について検討が進められることが期待されている。参考1)良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律案(参議院)2)ゲノム医療法成立…難病治療・遺伝差別防止 国費投入(読売新聞)3)ゲノム医療法 参院本会議で可決・成立 差別防止なども掲げる(NHK)6.初の経口人工妊娠中絶薬、オンライン診療では処方不可、入院可能な有床施設で使用を/厚労省厚生労働省は、国内で初めて承認された経口の中絶薬「メフィーゴパック」(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)について、母体保護法指定医師の確認下での投与が必要であり、病院や有床診療所での使用が必要であると発表した。この薬はオンライン診療では処方できず、緊急対応が可能な施設で使用する必要がある。厚労省は適正な使用体制を確立するまで、「入院可能な有床施設」での使用を求めている。また、医療現場に対しては、適切な管理と医療連携体制の確立を呼びかけている。この経口中絶薬には重大な副作用のリスクがあり、使用者は下腹部痛、嘔吐、重度の子宮出血、感染症などに注意する必要がある。厚労省は使用者向けに留意事項を示し、オンライン診療ではなく医療機関に来院する必要があることを強調している。参考1)いわゆる経口中絶薬「メフィーゴパック」の適正使用等について(厚労省)2)ミフェプリストン及びミソプロストール製剤の使用にあたっての留意事項について(同)3)初の経口人工妊娠中絶薬、厳格運用で慎重スタート(産経新聞)4)経口の中絶薬「メフィーゴパック」、母体保護法指定医師の確認下で、病院・有床診での投与が必要、オンライン診療で処方不可?厚労省(Gem Med)

466.

コロナ感染2年後、18%に罹患後症状/BMJ

 感染前にワクチン未接種であった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染者の約18%に、感染後2年まで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状が認められ、未感染者と比較して感染者には症状の過剰リスクがあることが、スイス・チューリッヒ大学のTala Ballouz氏らが実施した「Zurich SARS-CoV-2 Cohort研究」のデータ解析で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年5月31日号で報告された。スイスの人口ベースの前向き縦断コホート研究 Zurich SARS-CoV-2 Cohort研究は、スイス・チューリッヒ州の一般住民を対象とする進行中の前向き縦断コホート研究である。研究グループは同データを用いて、SARS-CoV-2感染者における罹患後症状に関連する長期的な症状および健康アウトカムの評価を行った(Swiss School of Public Health[SSPH+]の助成を受けた)。 SARS-CoV-2感染が確認された感染前ワクチン未接種の成人参加者1,106例(年齢中央値50.0歳[四分位範囲[IQR]:35.0~66.0]、女性51.2%)と、未感染の成人参加者628例(65.0歳[45.0~72.0]、51.3%)が解析に含まれた。 主要アウトカムは、感染から6、12、18、24ヵ月時点の自己報告による健康状態およびCOVID-19関連症状の推移と、未感染の参加者と比較した感染後6ヵ月時点での症状の過剰リスクであった。1割以上が無症状と有症状を交互に繰り返した SARS-CoV-2感染から6ヵ月の時点で、感染者の22.9%(95%信頼区間[CI]:20.4~25.6)が、完全に回復していないと報告した。その後、未回復と報告した患者の割合は、12ヵ月時には18.5%(16.2~21.1)、24ヵ月時には17.2%(14.0~20.8)へと減少した。 自己報告による健康状態の変化の評価では、多くの感染者が経時的に、回復を続けている(68.4%、95%CI:63.8~72.6)か、全体として改善している(13.5%、10.6~17.2)と答えた。一方、5.2%(3.5~7.7)は健康状態が悪化している、4.4%(2.9~6.7)は回復と健康障害を繰り返していると報告した。 また、経時的に、COVID-19関連症状の点有病率も減少し、重症度は軽減した。24ヵ月の時点で、症状を訴えたのは18.1%(95%CI:14.8~21.9)だった。 感染者の8.9%(95%CI:6.5~11.2)が、フォローアップの4つの時点(6、12、18、24ヵ月)のすべてで症状を報告し、12.5%(9.8~15.9)は、無症状と有症状の時期を交互に繰り返していた。味覚・嗅覚の変化や労作後倦怠感などの過剰リスクが高い 症状の有病率は、6ヵ月の時点で感染している参加者のほうが、この時点で未感染の参加者よりも高かった(補正後群間リスク差:17.0%、95%CI:11.5~22.4)。 未感染者と比較した感染者における個々の症状の過剰リスク(補正後群間リスク差)は、2~10%の範囲であった。感染者で最も過剰リスクが高かった症状は、味覚・嗅覚の変化(9.8%、95%CI:7.7~11.8)、労作後倦怠感(PEM)(9.4%、6.1~12.7)、集中力低下(8.3%、6.0~10.7)、呼吸困難(7.8%、5.2~10.4)、記憶障害(5.7%、3.5~7.9)、疲労(5.4%、1.2~9.5)の順であった。 著者は、「COVID-19の罹患後症状の負担軽減に資する、効果的な介入法を確立するための臨床試験が求められる」としている。

467.

第48回 「全ワクチン拒否」の医師は勤務可能?

新型コロナはともかく麻疹などは?Unsplashより使用某組合消防本部で、新型コロナワクチン接種を受けなかった30代の職員に対し、「接種拒否者」として廊下脇で業務をさせていたことが報道されました。接種したくないということで打たなかった人を「ワクチン拒否者」と表現することは字面としては間違ってはいないのですが、日本語としてはトゲのある言葉だなと感じます。さて、私たち医療従事者においてもワクチン接種率は当然ながら100%ではありません。副反応がかなり強く出てしまい、1回目で終了した人もいれば、アレルギー体質で最初から接種を希望しなかった人もいます。3回目接種以降の接種率は段階的に低下しており、私の知り合いもフルで接種を続けている人は全体の半数くらいです。新型コロナワクチンに限らず、患者さんと接触する以上、そのほかの感染症に対する免疫を有しているかどうかは病院の安全を守る上でも重要になります。具体的には、麻疹、風疹、水痘、ムンプス、B型肝炎です。私が医学生の頃は、これらの接種歴・罹患歴がなければ臨床実習はできなかったと記憶していますが、現在も法的には解釈が難しいところがあります。ワクチン未接種を理由とした不利益は法的に禁止麻疹や風疹など、ありとあらゆるワクチンが未接種の状態で、現場で働きたいという医師がいた場合、法的には可能でも現実的にはちょっと厳しいかもしれません。接種しないと働けないとする法的根拠は明示できず、むしろ雇用者は従業員に対して「ワクチン接種拒否を理由とした不利益がないように」扱われるべきとされています(予防接種法第9条)。―――つまり、話し合いや職場配置転換などで対応するしかないのが現状です。かといって、正当な理由でない「自然派志向」によるワクチン未接種で、それによって患者に感染を広げてしまったような場合、そちらの責任のほうが問われかねません。ただ、その医師から感染したというコンタクトトレースができない場合、そのような責任に至ることもないでしょう。クリニックを経営している医師の中に、新型コロナ以外のワクチンも含めて強固なワクチン反対派もいます。自分が経営者であることから、現状は法的な対応が難しいと思われます。

468.

エムポックス、ワクチン2回接種で優れた予防効果/NEJM

 全米の電子健康記録(EHR)データを用いた症例対照試験の結果、エムポックス(日本では2023年5月26日に感染症法上の名称を「サル痘」から「エムポックス」に変更)患者は対照患者よりも、天然痘/エムポックスワクチン(modified vaccinia Ankara[MVA]ワクチン、商品名:JYNNEOS、Bavarian Nordic)の1~2回接種を受けていないことが示唆された。米国疾病予防管理センター(CDC)のNicholas P. Deputy氏らが報告した。米国では2023年3月1日時点でエムポックスが3万例超報告され、とくにトランスジェンダー、ゲイ、バイセクシャル、男性間性交渉者で流行が認められている。JYNNEOSは、2019年にFDAが承認し(1回0.5mL皮下投与)、2022年8月9日には緊急使用(1回0.1mL皮内投与)が認められた。しかし、リアルワールドでの有効性データはいずれの投与についても限定的であった。NEJM誌オンライン版2023年5月18日号掲載の報告。エムポックス成人患者を症例群、HIV感染者を対照群として試験 研究グループは、Epic Researchの全米EHRデータベース「Cosmos」を基に症例対照試験を行い、医療ケアを要するエムポックス成人患者について、ワクチン接種の有効性を評価した。 症例群は、エムポックス診断コード、オルソポックスウイルスまたはエムポックスウイルス陽性の検査結果が認められた患者とした。対照群は、2022年8月15日~11月19日にHIV感染症の新規診断またはHIV感染の事前曝露予防薬の処方が確認された患者とした。 条件付きロジスティック回帰モデルで、交絡因子補正後のオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定。ワクチン有効性は(1-症例群ワクチン接種ORと対照群ワクチン接種ORの比)×100で算出した。ワクチン2回接種シリーズの有効性は66.0% 症例群2,193例と対照群8,319例において、ワクチン2回接種(完全接種)を受けていたのは、症例群25例に対し対照群335例で、同集団の推定補正後ワクチン有効性は66.0%(95%CI:47.4~78.1)だった。 また、ワクチン1回接種(部分的接種)を受けていたのは、症例群146例、対照群1,000例で、同集団の推定補正後ワクチン有効性は35.8%(95%CI:22.1~47.1)だった。 筆者は、「今回の試験結果では、JYNNEOSワクチンはエムポックスの予防に有効であること、2回接種シリーズがより優れた予防効果をもたらすことが示唆された」とまとめている。

469.

年代ごとの麻疹・風疹の予防接種制度

麻疹含有ワクチンの定期予防接種と年齢1972年9月30日以前に生まれた方は定期接種の機会がありません。任意接種としてMR(麻疹・風疹混合)ワクチン、麻疹ワクチンの接種が可能です。1回0回 個別接種2回個別接種※※ 1990年(平成2年)4月2日~2000年(平成12年)4月1日生まれは特例措置で中学1年、高校3年生相当年齢に2回目接種(2回目を受けていない人もいる)出生 1歳小学校入学(就学前1年間に接種)幼児期に医療機関で個別接種(1回)1990年(平成2年)4月2日生まれ0回1972年(昭和47年)40歳10月1日生まれ厚生労働省. 第4回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会配付資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000015044.html)より作成Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.風疹含有ワクチンの定期予防接種と年齢1979年4月1日以前に生まれた男性と1962年4月1日以前に生まれた女性は定期接種の機会がありません。定期接種対象の年齢の方以外も任意接種としてMR(麻疹・風疹混合)ワクチン、風疹ワクチンの接種が可能です。男性1回0回 個別接種2回個別接種※※ 1990年(平成2年)4月2日~2000年(平成12年)4月1日生まれは特例措置で中学1年、高校3年生相当年齢に2回目接種(2回目を受けていない人もいる)女性出生 1歳小学校入学(就学前1年間に接種)幼定期接種対象児2019年~2025年3月期抗体価の低い方が対象に 中学生接個(HI抗体価(1:8以下)種 別 の時に0回率 接 医療機関で低中学生の時に個別接種種い学校で( (1回)集団接種1 接種率低い(1回)回)接種率高い1990年(平成2年)4月2日生まれ1979年(昭和54年)40歳4月2日生まれ1987年(昭和62年)10月2日生まれ1962年(昭和37年)4月2日生まれ国立感染症研究所 感染症疫学センター. 風疹に関する疫学情報:2023年4月26日現在(https://www.niid.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/rubella-top/2145-rubella-related/8278-rubella1808.html)より改変Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

470.

第150回 改正マイナンバー法可決、来年秋に健康保険証は廃止、マイナンバーカードに1本化/国会

<先週の動き>1.改正マイナンバー法可決、来年秋に健康保険証は廃止、マイナンバーカードに1本化/国会2.コロナの検査数の水増しで183億円の補助金請求、取り消しへ/東京都3.電子カルテ共有化を2024年度から開始/医療DX推進本部4.30年ぶりに看護師の確保指針を初改定へ/厚労省5.2025年までに地域医療構想の実現を確実に/経済財政諮問会議6.子宮頸がん予防に関する報告書を国立がん研究センターが公表1.改正マイナンバー法可決、来年秋に健康保険証は廃止、マイナンバーカードに1本化/国会2024年秋に現行の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードと1本化する、改正マイナンバー法など改正関連法が6月2日に、参議院本会議で賛成多数で可決、成立した。これにより「マイナ保険証」が導入され、高齢者や障害者などマイナカードの取得が困難な人々には「資格確認書」が発行される。また、マイナンバー法の改正により、マイナンバーカードは年金受給者の預貯金口座とひもづけられるほか、行政機関がマイナンバーを活用できる範囲が広がることも含まれている。その一方で、マイナ保険証に他人の情報と誤ってひもづけされるトラブルが相次いでいる問題に関しては、再発防止が求められている。参考1)マイナンバー法等の一部改正法案について(厚労省)2)いまの健康保険証、24年秋に原則廃止 改正マイナンバー法が成立(朝日新聞)3)マイナンバーカードと健康保険証が一体化へ 改正法可決・成立(NHK)2.コロナの検査数の水増しで183億円の補助金請求、取り消しへ/東京都東京都の新型コロナウイルスのPCR検査などの無料検査事業で不正が発覚し、11の事業者に対して補助金交付の取り消しなどの処置が行われたことが明らかとなった。東京都によると、新型コロナウイルスの無料検査事業で初の不正発覚となった。不正を行った事業者は検査数の水増しを行い、補助金を不正に受け取ろうとしたとされ、不正に申請された額はおよそ183億円で、そのうち17億円がすでに交付されていた。東京都は補助金を受け取った事業者に対して返還命令を出した上で、不正な申請をした11の事業者には、補助金交付決定の取り消しなどを行っている。参考1)令和4年度PCR等検査無料化事業補助金 交付決定の取消し等について(東京都)2)無料PCR検査で11業者が不正 183億円補助取り消し 東京都(朝日新聞)3)東京都のコロナ無料検査事業、不正申請183億円(日経新聞)3.電子カルテ共有化を2024年度から開始/医療DX推進本部政府は、6月2日に医療分野のデジタル化を議論する第2回医療DX推進本部を首相官邸で開催し、「医療DX」の工程表を発表した。2024年度から「全国医療情報プラットフォーム」を順次運用し、全国の医療機関や薬局で電子カルテの情報の共有を開始する。さらに電子カルテの導入を推進し、30年までにほぼすべての医療機関での導入を目指す。24年度中にプラットフォームを構築し、調剤情報など共有できる情報を徐々に増やしていくほか、電子カルテの導入については、厚生労働省は診療所などが使いやすい標準型の電子カルテの規格を定め、2030年までにほぼすべての医療機関で導入を完了し、電子カルテの情報共有がすべての医療機関で可能となるようにする予定。また、来年度の診療報酬改定に向けて、医療機関の事務作業の効率化を図るため、共通のプログラムを開発し、コスト削減に取り組む。診療報酬改定DXは、2026年度から本格的に実施し、診療報酬の算定や患者の窓口負担の自動計算を行う共通算定モジュールが提供される。参考1)第2回 医療DX推進本部(内閣府)2)医療DX加速へ 全国で患者情報共有 24年度からシステム稼働(朝日新聞)3)電子カルテ情報、来年度から共有 政府が医療DX工程表(日経新聞)4.30年ぶりに看護師の確保指針を初改定へ/厚労省厚生労働省は、5月29日に医道審議会・保健師助産師看護師分科会の検討部会を開催し、策定から約30年間、1度も見直しをしていない「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」の改正に向け、議論を始めた。現行指針は1992年に制定され、看護師の人材確保や養成、処遇改善、資質向上、就業促進などが基本的な方針として記載されている。しかし、看護現場の状況が変わっているため、改定が求められており、自民党の厚生労働部会・看護問題小委員会も指針改定を要望していた。部会では少子高齢化の進展に伴い看護師などの確保が非常に重要であり、新興感染症への対応も考慮して指針改定が決定された。議論は、今年秋に告示される基本指針の改正に向けて進められる。また、指針の名称も「看護『婦』等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」から「看護『師』等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」に改められる予定。参考1)第1回医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師等確保基本指針検討部会(厚労省)2)看護師の確保指針を初改定へ 今秋にも、少子高齢化で(東京新聞)3)30年ぶりに「看護師等確保」基本指針見直し、少子高齢化が進む中での看護職員確保策、専門性向上支援策などが鍵-看護師確保基本指針検討部会(Gem Med)5.2025年までに地域医療構想の実現を確実に/経済財政諮問会議政府が5月26日に開催した経済財政諮問会議で、地域医療構想に関する議論が行われた。この中で、民間議員は実効性を担保するために法制上の措置を講じるべきだと主張、目標年限の2025年に向けて都道府県の権限強化だけでは不十分と指摘し、地域医療介護総合確保基金やかかりつけ医機能報告制度の見直しを求めた。さらに診療報酬・介護報酬改定にあたっては、タスク・シフト/シェアや地域包括ケアシステムの重要性を強調し、徹底した給付見直しを指示するよう要請した。さらに地域医療構想の実現や医療・介護提供体制の構築を進めるよう意見が出された。厚生労働省が5月25日に開催した「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」の資料によれば、公立・公的医療機関などで具体的対応方針の再検証が必要とされた医療機関については、対応方針の「検証済み」(「措置済み」を含む)の割合が、3月は医療機関単位58%、病床単位62%。昨年9月の53%、56%に比べて進捗が確認されている。参考1)社会保障分野における経済・財政一体改革の重点課題とマイナンバー制度の利活用拡大(経済財政諮問会議)2)地域医療構想調整会議における検討状況等調査の報告(厚労省)3)地域医療構想、協議・検証未開始は約3000施設 地域医療構想調整会議で外来・在宅医療の実態に即した議論も必要(日経メディカル)4)2025年度に全国の病床数総量は119万床で「必要量と一致」するが、地域ごとの過剰・過少がある―地域医療構想・医師確保計画WG(1)(Gem Med)6.子宮頸がん予防に関する報告書を国立がん研究センターが公表国立がん研究センターは、子宮頸がんの予防方法についての報告書を公表した。報告書では、HPVワクチンの接種と子宮頸がん検診の重要性を強調し、わが国では子宮頸がんの死亡率が他の先進国より高いことを指摘した。報告書によれば、近年の20~30代の若年層で子宮頸がんの発症率が上昇しており、HPV感染ががんの原因の95%を占めているという。しかし、依然として国内のHPVワクチンの接種率は低く、検診受診率も43.7%にとどまっている。報告書では、子宮頸がんは予防可能ながんであり、ワクチンと検診の両方を受ける必要があることを訴えている。本報告書は「ファクトシート」の名称で国立がん研究センターの下記のホームページで公開されている。参考1)子宮頸がんとその他のヒトパピローマウイルス(HPV) 関連がんの予防ファクトシート 20232)子宮頸がんの対策を 最新の報告書公表 国立がん研究センター(NHK)3)子宮頸がん、もっと知って 「ワクチン・検診で予防を」-高い死亡率・国立センター報告書(時事通信)

471.

第47回 コロナ後遺症の新たな定義

定義を明確にすべきという論調Unsplashより使用日本ではCOVID-19後に持続的に起こる医学的な影響のことを「罹患後症状」と定めています。手引き1)では「COVID-19罹患後に、感染性は消失したにもかかわらず、他に明らかな原因がなく、急性期から持続する症状や、あるいは経過の途中から新たに、または再び生じて持続する症状全般」と定義されています。英語論文では、PASC(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection)、Long COVIDなどと呼ばれています。そもそもこの病態を明らかにするためには、コンセンサスある定義が必要なのですが、いまだにナラティブな位置付けになっています。信頼性の高いデータセットを用いてこれを提唱した報告がJAMAに掲載されました2)。12症状をスコアリング85施設において、SARS-CoV-2感染30日以内の2,248例、30日以降の6,398例、そして非感染の1,118例の合計9,764例が登録されました。年齢中央値は47歳(IQR 35~60歳)でした。頻度が2.5%以上だった37の症状について解析されました。PASCスコアに寄与する症状を抽出し、LASSO回帰により1~8の範囲で重み付けを行い、対応スコアを有する12の症状を表のように定めました。脱毛は有意なスコア因子には含まれませんでした。表. PASCスコア(参考資料2より引用)感染から30日を超えた場合のPASCの割合は、オミクロン株流行期ではそれ以前よりも低いという結果でした(17%[95%信頼区間[CI]:15~18]vs.35%[95%CI:34~37])。また、オミクロン株によるPASCは、ワクチン接種を受けていない参加者よりもワクチン接種を完了した参加者のほうが低頻度でした(16% vs.22%)。まとめ今回のスコアはあくまで提唱であるため、今後これが実臨床において有用かどうか検証を重ねられていくことになるでしょう。それにしても、脱毛が有意なスコアリングとしてエントリーされなかったのは意外でした。参考文献・参考サイト1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版2)Thaweethai T, et al. Development of a Definition of Postacute Sequelae of SARS-CoV-2 Infection. JAMA. 2023 May 25. [Epub ahead of print]

472.

北里大、コロナへのイベルメクチン第III相の論文公表

 北里大学が主導して実施した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象としたイベルメクチンの第III相臨床試験「CORVETTE-01」の結果については、2022年9月に同大学によって、主要評価項目においてプラセボとの統計学的有意差がなく、有効性が認められなかったことが発表されていた1)。本試験の結果が、Frontiers in Medicine誌2023年5月22日号に掲載された。イベルメクチン群とプラセボ群でコロナ陰性化に有意差は認められなかった 軽症~中等症COVID-19患者に対するイベルメクチンの有効性と安全性を検証するための多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験「CORVETTE-01」は、2020年8月~2021年10月の期間に、RT-PCR検査でCOVID-19と診断された国内の221例を対象に実施された。試験期間中は、アルファ株とデルタ株が優勢であった。被験者は20歳以上で、SpO2が95%以上、体重40kg以上とした。対象者をイベルメクチン群とプラセボ群に1対1で割り付け、イベルメクチン(200μg/kg)またはプラセボを絶食下で単回経口投与した。主要評価項目は、SARS-CoV-2に対するRT-PCR検査結果が陰性になるまでの期間とし、層別log-rank検定およびCox回帰モデルを用いて検証した。 新型コロナウイルス感染症患者に対するイベルメクチンの有効性と安全性を検証した主な結果は以下のとおり。・被験者のベースラインは、イベルメクチン群(106例)では、平均年齢47.9歳(SD 15.1)、男性68.9%、73.6%が肺炎を発症し、9例(8.5%)がワクチンを接種していた。プラセボ群(106例)では、平均年齢47.5歳(SD 15)、男性62.3%、肺炎発症が72.6%、ワクチン接種済7例(6.6%)であった。・RT-PCR検査陽性から治験薬の投与までの期間は、イベルメクチン群とプラセボ群ともに2.7日(SD 1.1)であった。・RT-PCR検査の陰性化について、イベルメクチン群とプラセボ群の間に有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.96※、95%信頼区間[CI]:0.70~1.32、p=0.785)。※HR<1ではプラセボが有利、HR>1ではイベルメクチンが有利。・RT-PCR検査が陰性化するまでの期間の中央値は、イベルメクチン群では14.0日(95%CI:13.0~16.0)、プラセボ群では14.0日(12.0~16.0)だった。・最長45日間の追跡調査期間において、イベルメクチン群で82.1%(87例)、プラセボ群で84%(89例)がRT-PCR検査陰性を達成した。・患者登録日から15日目までで、イベルメクチン群(17.9%)とプラセボ群(21.7%)では、同程度の割合で症状の悪化がみられた(オッズ比:0.77、95%CI:0.38~1.54、p=0.462)。・有害事象について、イベルメクチン群では29例(27.1%)、プラセボ群では28例(26.2%)で報告された。Grade3以上の有害事象は、イベルメクチン群1例(CPK上昇)、プラセボ群2例(肝機能障害)で発現した。試験中止に至る治療起因性有害事象はなかった。本試験追跡期間中における患者の死亡も報告されなかった。 本結果により、軽症~中等症COVID-19患者に対するイベルメクチンは、RT-PCR検査陰性化までの期間の短縮にはつながらないことが示された。

473.

成人肺炎診療ガイドラインを先取りした肺炎の予防戦略/日本呼吸器学会

 肺炎は日本人の死因の5位に位置する主要な疾患である。高齢になるにつれて発生率、死亡率が高くなり、65歳以上の高齢者が死亡者全体の95%以上を占めている。したがって、高齢者肺炎の予防が重要といえる。本邦において、医療関連肺炎(HCAP)では肺炎球菌に加えて口腔内連鎖球菌、嫌気性菌が多かったという報告もあり1)、高齢者肺炎の予防戦略は「肺炎球菌ワクチン」と「口腔ケア」が2本柱といえる。改訂中の成人肺炎診療ガイドラインでは、これに対応して「肺炎の予防に口腔ケアを推奨するか」というCQ(クリニカルクエスチョン)が設定され、システマティックレビュー(SR)が実施された。ワクチンについては、すでに確立された予防戦略と判断されたことから、2017年版の内容が引用され、「インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種」が推奨された。そこで、第63回日本呼吸器学会学術講演会において丸山 貴也氏(三重県立一志病院 院長)は、肺炎診療ガイドラインの改訂にあたって実施した口腔ケアのSRの結果や、それに基づく委員会での推奨、ワクチンに関する最新の情報について紹介した。成人肺炎診療ガイドラインで口腔ケアのCQ設定 改訂中の成人肺炎診療ガイドラインでは、「肺炎の予防に口腔ケアを推奨するか」というCQが設定され、人工呼吸器関連肺炎(VAP)/非VAP、クロルヘキシジン使用/不使用に分けてSRが実施された。その結果、非VAPについて、クロルヘキシジン不使用の口腔ケア実施群で、非実施群と比べて肺炎による死亡が有意に減少し、肺炎発症率も有意に低下した。以上の結果などから、推奨は「実施することを弱く推奨する」とする予定と報告された。今回、“弱く”推奨するとなっているのは、認知症や精神疾患などによって口腔ケアの実施が難しい場合が考えられるためであるという。したがって、丸山氏は「口腔ケアにはしっかりとしたエビデンスがあり、原因微生物とストラテジーもはっきりしている。侵襲性も少ないことから、ぜひ実践してほしい」と述べた。成人肺炎診療ガイドラインではワクチン併用接種を引き続き推奨 現行の成人肺炎診療ガイドライン2017では、「高齢者の肺炎予防において、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種は推奨されるか」というCQが設定され、併用接種が強く推奨されている2)。改訂中の成人肺炎診療ガイドラインでは、すでに確立された予防方法として2017年版でのSRの結果を引用しながら、新たなワクチンについても解説するという。 インフルエンザウイルスに感染すると、気道や全身に変化が起こり、肺炎球菌などへの2次感染が生じやすくなる。実際に、本邦においてインフルエンザウイルス感染により入院した患者の合併症として肺炎が最も多く、36.4%を占めていた。また、インフルエンザ関連肺炎の原因微生物として、肺炎球菌が多く、死亡例の80%が肺炎を合併し、インフルエンザ関連肺炎の死亡率は9.5%であった。多変量解析によっても肺炎の発症がインフルエンザウイルス感染の予後規定因子として特定されており3)、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用接種が重要といえる。 肺炎球菌ワクチンについて、日本呼吸器学会と日本感染症学会の合同委員会は、2023年3月24日に「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第4版)」を公表している。そこでは、65歳以上の健康な高齢者については「定期接種の機会を利用してPPSV23(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)を接種」、ハイリスク者については「PCV13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)またはPCV15接種後1年以内のPPSV23接種を検討(とくに免疫不全者には推奨)」としている4)。改訂中の成人肺炎診療ガイドラインでは、この内容を追随する予定と報告された。

474.

第148回 新型コロナ定点感染者数を初公表、緩やかな増加傾向/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ定点感染者数を初公表、緩やかな増加傾向/厚労省2.国内で麻疹患者を複数確認、国内でも流行を懸念/厚労省3.GLP-1ダイエットの健康被害、日本医師会も問題視4.国立健康危機管理研究機構の設立へ、衆議院を通過/国会5.高度急性期偏重の診療報酬改定で、2次救急医療に悪影響か/中医協6.次世代医療基盤法改正案が成立、医療ビッグデータの利用促進へ/内閣府1.新型コロナ定点感染者数を初公表、緩やかな増加傾向/厚労省厚生労働省は、5月19日に定点把握による新型コロナウイルス感染症の感染状況データを初めて公表した。全国の約5,000の医療機関から報告された1週間の感染者数は1万2,922人で、1医療機関当たりの平均患者数は2.63人だった。東京、神奈川、埼玉、千葉の推移をみると、都道府県ごとの感染者数は増加しており、特に沖縄県が最も多い6.07人だった。厚労省はこれまでの感染者数と比較して、緩やかな増加傾向が続いていると分析している。また、新たに始められた「新規入院者数」の発表では、1週間で2,330人の新規入院があり、前週と比べてほぼ横ばい。厚労省では、今後も定点把握を通じて感染状況を把握し、対策を進める方針。(参考)新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報:発生動向の状況把握(国立感染症研究所)新型コロナ「緩やかな増加傾向」 厚労省が定点把握で初発表(東京新聞)コロナ定点把握 5類変更後初めて公表 新規患者数 8-14日の1週間分 厚労省(CB news)新型コロナ「定点把握」全国の感染状況データ 初の発表 厚労省(NHK)2.国内で麻疹患者を複数確認、国内でも流行を懸念/厚労省感染力が強い「麻疹」の感染者が国内で複数確認され、厚生労働省が注意喚起を行っている。今月に入って確認された感染者は、インドから帰国した30代男性と、東京都在住の男女2人で、同じ新幹線の車内にいたことで感染経路が特定されている。海外との往来の増加により、国内での感染例が増加する可能性が懸念されており、厚労省は海外渡航者へ注意喚起とワクチン接種を呼びかけている。麻疹は非常に感染力が強く、免疫力のない人が感染するとほぼ100%発症する。感染経路は空気感染のため、手洗いやマスクでは予防できない。麻疹の治療は対症療法であり、ワクチン接種が有効とされている。しかし、国内でのワクチン接種率は目標の95%を下回っており、国内での流行の懸念が高まっている。加藤厚生労働大臣は、5月16日の記者会見で麻疹の症状を有する場合は麻疹を疑い、医療機関を受診のための移動の際は公共交通機関の利用を控えるよう呼び掛けている。厚労省は、自治体や医療機関に対し、麻疹に対する注意喚起を行い、同省のホームページやSNSなどで国民に向けた情報の提供をしている。(参考)加藤大臣会見概要[令和5年5月16日](厚労省)国内での麻しん流行を懸念、発熱や発疹のある者は麻しんを疑った行動・診療を!医療従事者は2回の予防接種歴確認を-厚労省(Gem Med)「麻しん疑われる時は受診前に医療機関に連絡を」相次ぐ感染者の確認を受け 加藤厚労相(CB news)はしか、国内で複数の感染者確認 同じ新幹線車両に乗り合わせ(朝日新聞)はしか相次ぎ、厚労相「症状あれば交通機関の利用控えて」…感染者が不特定多数と接触か(読売新聞)3.GLP-1ダイエットの健康被害、日本医師会も問題視糖尿病治療薬のセマグルチド(商品名:リベルサス)が「飲むだけで痩せられる薬」として処方され、健康被害が相次いでいることが5月18日に一般報道された。ダイエット目的でのGLP-1受容体作動薬の処方は、美容クリニックやオンラインクリニックで行われている。しかし、吐き気やめまいなどの副作用が出現するほか、急性膵炎で入院する人も報告されている。本来、セマグルチドは糖尿病の治療薬であり、ダイエットの薬としての厚生労働省の承認はなく、適応外使用となる。オンライン診療での医師の診察は短時間で行われ、医師とは対面もなく検査もされないまま処方薬が自宅へ配送されており、TwitterなどのSNSでも副作用の訴えが多く寄せられている。現在、美容クリニックやオンライン診療での糖尿病の薬の処方は自由診療で行われているため、現状では規制が難しい状況であり、日本医師会もこれを問題視し、繰り返しこの行為の問題を表明している。同会では今後、処方を正しく行うための法整備が必要と訴えている。(参考)「飲むだけで痩せられる」糖尿病の薬を“痩せる薬”として処方 副作用で吐き気やめまいなど健康被害相次ぐ…入院する人も(TBS)自由診療における糖尿病治療薬の不適切使用に対する見解示す(日医)自由診療におけるオンライン診療の不適切事例について(医薬品の適応外使用)(同)4.国立健康危機管理研究機構の設立へ、衆議院を通過/国会次の感染症に備えるため、アメリカのCDC(疾病対策センター)をモデルとして、内閣感染症危機管理統括庁や厚生労働省に科学的知見を提供するため、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合して新たな専門家組織「国立健康危機管理研究機構」を設立する法案が国会に提出されていた。この5月18日に衆議院本会議で採決が行われ、自民、公明党などの賛成多数で可決された。今後、参議院に送付されて採決で成立すれば、法案に基づいて設立される。設立は令和7年度以降に予定されている。(参考)国立健康危機管理研究機構について(厚労省)国立健康危機管理研究機構(仮称)と地方衛生研究所等の連携強化(同)国立健康危機管理研究機構法案(衆議院)日本版CDC法、衆院通過 司令塔新設案、参院審議へ(東京新聞)5.高度急性期偏重の診療報酬改定で、2次救急医療に悪影響か/中医協厚生労働省は5月17日に中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を開催した。来年度から始まる第8次医療計画のうち新興感染症を除く5事業について、診療報酬の在り方の議論を始めた。診療側が問題提起したのは救急医療。去年の診療報酬の改定では、高度急性期医療を評価する「急性期充実体制加算」の新設によって、「総合入院体制加算」(診療科として精神科、小児科、産婦人科の標榜が施設基準)から急性期充実体制加算の算定に移行するため、医療機関側が精神科や産科を廃止するなど地域の2次救急の維持・運営に支障が生じていると指摘があった。本来は100万人に1つの3次救急施設を整備する方針だったが、すでに国内には300施設存在し、さらに増加傾向が続いており、診療側は医療計画がゆがんでいないか、診療報酬以外の財政措置も考慮すべきだと主張した。また、診療報酬の評価方法を見直し、2次救急の評価を充実させる必要があると訴えた。その他、高齢者の救急患者については、急性期以外の医療機関での対応を促す仕組みを強化すべきだと指摘があった。(参考)総合入院体制加算の届け出1年間で35%減 厚労省、周産期医療への影響を注視(CB news)二次救急医療機関への評価充実要望、中医協で診療側 支払側「高齢の救急患者は急性期以外で」(同)総合入院体制加算⇒急性期充実体制加算シフトで産科医療等に悪影響?僻地での訪問看護+オンライン診療を推進!-中医協総会(Gem Med)中央社会保険医療協議会 総会[第545回](厚労省)6.次世代医療基盤法改正案が成立、医療ビッグデータの利用促進へ/内閣府医療ビッグデータの利用を促進するため、今国会に内閣府が提出していた次世代医療基盤法(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)の改正法案が、5月17日に開かれた参議院本会議で可決・成立した。この法律は、病院などから提供された医療情報を加工し、研究開発などに活用するために、個人情報保護法の特例法として平成29年に制定されていた。現行法では個人情報の保護のため制限があり、これまでの利用実績は20数件と少なく、新薬の研究開発などに活用しにくいという課題があった。このため経団連や日本製薬工業協会などからは改正を求める声が上がっていた。新たに成立した改正次世代医療基盤法では、匿名化したままでより精緻な医療データを新薬の開発などに利用に活用することが可能となる。具体的には、血圧や体重などの検査値の提供範囲を拡大し、創薬や副作用の早期把握などに活用することが期待されている。また、個人情報保護のため新たな制度が導入され、元の医療情報から患者本人を直接特定できないように、個人情報の保護と情報漏えいの防止強化にも取り組むことになる。(参考)「次世代医療基盤法」とは(内閣府)精緻な医療データを製薬利用へ 法改正、個人情報は配慮(日経新聞)医療データ活用へ 改正次世代医療基盤法 参院本会議で成立(NHK)世代医療基盤法の見直し(経団連)

475.

第160回 インフルの集団感染、新型コロナの教訓はいずこに!?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の教訓は生かされていないのか? 宮崎県でのインフルエンザ集団発生の報道を知って、そう思った。1つの高校で教職員・生徒を合わせて491人ものインフルエンザの感染者が発生したとの一報を目にした時は、正直「冗談だろう? もしかして新型コロナと間違えた?」と思った。集団発生が起きた高校の生徒数はわからないが、宮崎県内の高校のデータを参照すると、全日制高校の生徒数は最大規模でも約1,600人。多くは700~900人規模かそれ以下である。ざっくり計算をすると、集団発生が起きた高校では2~4人に1人がインフルエンザに感染したことになる。となると基本再生産数が約2のインフルエンザではなく、5以上と報告されているオミクロン株による新型コロナではないかと考えてしまったのだが、この時期の呼吸器感染症ではPCR検査による鑑別はしているはずで、やはりインフルエンザということなのだろう。ただ、立ち止まって考えてみれば、不思議はないのかもしれない。まず、報道されているように、きっかけはどうやら体育祭のようだ。前回の記事でも触れたように、文部科学省が4月1日から「学校での教職員・生徒のマスク着用を原則不要」と通知した中、体育祭では教職員・生徒の多くがマスクを外していた可能性がある。その環境で人と人とが密着しやすい体育祭を行えば、集団発生が起こりやすいのは確かだ。ここであえて言及すると、この高校の体育祭で教職員・生徒の多くが実際にマスク非着用だったとしても、私はこれを批判するつもりはない。とはいえ、近年、1つの学校で短期間にこれだけのインフルエンザ患者が発生したケースは、少なくとも私個人は記憶にない。そしてここまでの集団発生の主たる原因は、マスク非着用での体育祭実施よりも、コロナ禍でインフルエンザの流行がかなり抑えられた結果、多くの人でインフルエンザに対して免疫が失われていたからではないだろうか。これに高校生がインフルエンザワクチンの定期接種の対象者ではないこと、仮に昨秋以降にワクチン接種をした人がいたとしても季節外れで効力が失われていることを考え併せると、今回の集団発生はおおむね説明がつくのかもしれない。では、ここからは私がこの事例でどんな「教訓」が生かされていないと考えているかに話の軸を移していきたい。ここでは釈迦に説法となるが、改めてインフルエンザの特徴を整理しよう。潜伏期間は1~3日無症候割合は10%ほどで、こうしたケースではウイルス量は低い感染力(ウイルス排出量)のピークは発症後この特徴を踏まえれば、今回の集団発生は、他者への感染が起きやすい環境と集団免疫の喪失に加え、この教職員・生徒の中に症状があるのに体育祭に参加した人がいるということだ。まさに私が指摘したいのはこの点である。コロナ禍を通じて、繰り返し叫ばれたのは「風邪様症状のある人は外出を控えて」というメッセージだ。コロナ禍当初には、OTCの風邪薬のCMで有名だった「風邪でも絶対休めないあなたへ」というキャッチコピーもついに消えた(このコピーについては2016年から問題が指摘されていたが、変更されたのは2020年3月ごろ。当該製薬企業は「TVCMの放映期間ならびにキャンペーンが終了したため修正した」と説明している)。残念ながら、今回の集団発生ではこのメッセージが守られていなかった可能性があると考えざるを得ない。集団発生の時期は新型コロナの感染症法上「5類化」後であり、この高校では久々の体育祭だったかもしれない。ならば教職員・生徒共に無理を押してでも参加したい気持ちがあったのだろうと想像する。しかし、ちょっとした“油断”がこれだけの事態を招いてしまう。今はコロナ禍を経た過渡期だが、同時にこれまでに得た教訓を踏まえ、社会がより良い方向に定着していくための重要な時期でもある。たとえば、コロナ禍で得られた重要な教訓・経験の1つはリモート化・オンライン化である。これを活用して体育祭の実況中継によるハイブリット開催も可能だったはず。数少ない貴重なイベントだからこそ、体調不良の教職員・生徒が少しでも安心して休め、かつ疎外感を抱かないようそこまで配慮しても良かったのではと思う。しかも、以前よりもこうしたことは低コストでできる。もちろん現場で参加する高揚感や充実感にはかなわないのは確かだが、そうしたサポートがないより遥かにマシなはず。そして社会がコロナ禍明けで「湧いている」ようにも見える今こそ、コロナ禍の教訓をいかに社会に定着させるかを改めて再認識する必要がある。そのためには途方もない地味な努力の継続が求められるだろう。たとえば「風邪様症状のある人は家で休もう」と言い続けることはその1つだ。これはある種、医療関係者だけでなく社会全体にとって「苦痛」な作業となる。しかし、これをあきらめたら、私たちは新型コロナに真の敗北を喫することになる。

476.

第45回 麻疹の接種歴も抗体価も知らぬ医師

茨城県と東京都で成人麻疹8年前から日本は麻疹排除状態になり、麻疹はどちらかといえば輸入感染症としての側面を持つようになっています。茨城県でインドから持ち込まれた麻疹ウイルスに感染した事例が報告され、これと疫学的リンクがある2例が東京都でも発生したことが報道されました。新幹線のグリーン車で感染したらしいので、学会などで移動が増えているこの時期、医師の皆さんもご注意ください。接種歴を知らない医療従事者私は感染制御チームに所属しているので、麻疹の接種歴や抗体価のデータをどのように管理すればよいか日々試行錯誤しているのですが、医療従事者の中には、自分が麻疹にかかったことがあるかどうか・ワクチンを接種したことがあるかどうか・抗体価は十分あるかどうか、知らない人が結構います。意識が高い人は、印刷したデータをネームプレートに入れています。病院実習のときにワクチン接種歴を聞かれて、不十分と判断された大学では接種をすすめていたでしょう。しかし、それすらも記憶にない医師が結構多くて、びっくりします。家族が妊娠したときに、風疹については少し興味を持ってくれる人が多いようですが、麻疹はあまり興味を持たれません。混合ワクチンを接種している世代が増えてきましたが、私のように中途半端な世代もまだまだ多いと思います(表)。アフターコロナで流行国へ渡航することが増えると、麻疹ワクチンを1回のみで接種している人たちが感染するパターンが増えてくるかもしれません。画像を拡大する表. 麻疹ワクチン接種歴(筆者作成1))麻疹には特異的な治療法がなく、対症療法が中心になります。そのため、できるだけ感染しないようワクチンによる予防が重要になります。麻疹による死亡のほとんどは肺炎か脳炎です。まずは接種歴と抗体価の把握をワクチン接種歴や、麻疹・風疹・水痘・流行性耳下腺炎の抗体価については、ご自身で把握しておくことが望ましいですが、とくに医局人事で病院を転々とする人は、途中でデータが紛失してしまうこともあるため注意してください。参考文献・参考サイト1)一般社団法人日本ワクチン産業協会. 予防接種に関するQ&A集

477.

コロナワクチンの有効性、40試験のメタ解析結果

 将来の第9波到来を見越した新型コロナ対策として、これまでのブースター接種のタイミングや接種用量などを評価しておく必要がある。伊・Fondazione Bruno Kessler(FBK)のFrancesco Menegale氏らはワクチンの有効性(VE)の経時的変化を数学的に説明できれば、流行時に応用できる可能性があると考え、新型コロナウイルスのデルタ株およびオミクロン株に対するVEとして、VEの半減期や効果減退率に関する調査を実施した。その結果、ワクチン初回接種とブースター接種後の時間経過とともにVEが急速に低下することを示唆した。JAMA Network Open誌2023年5月3日号掲載の報告。 本研究では論文検索データベースとしてPubMedとWeb of Scienceを使用。検索開始から2022年10月19日までの期間に、新型コロナウイルス感染や症候性疾患に対する経時的なVEの推定値を報告した論文からプレプリントまでを抽出してシステマティックレビューならびにメタ解析を行った。なお、各論文で使用されていた主なワクチンはBNT162b2(ファイザー社/ビオンテック社)、mRNA-1273(モデルナ社)だった。 主な結果は以下のとおり。・検索した結果、799件の論文、査読付きジャーナルに掲載された149件のレビュー、35件のプレプリントが該当し、そのうちの40件が分析に使用された。・オミクロン株感染と症候性疾患に対するワクチン初回接種のVEに関する推定値は、最終投与から6ヵ月で20%未満だった。・ブースター接種は、初回接種の投与直後に得られたレベルに匹敵するまでにVEを回復させた。しかし、ブースター接種9ヵ月後のオミクロン株に対するVEは、感染症および症候性疾患に対して30%未満だった。・症候性感染に対するVEが半減するのは、デルタ株では316日(95%信頼区間[CI]:240~470日)、オミクロン株では87日(95%CI:67~129日)と推定された。・また、VEを若年層(18歳未満)と高齢者(60歳以上)で比較したところ、推定値での差はみられなかった(39.2%[95%CI:34.0~44.4] vs.38.7%[95%CI:14.4~63.1])。 研究者らは「本結果は、将来のワクチン接種プログラムの適切な目標とタイミング構築に役立つ可能性がある」としている。

478.

世界初のRSVワクチン承認/FDA

 グラクソ・スミスクライン/GSKは、2023年5月3日、RSウイルス(RSV)ワクチン「Arexvy」について、60歳以上におけるRSVに関連する下気道疾患の予防を目的として米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得したことを発表した。本承認は、60歳以上を対象とした第III相試験「AReSVi-006試験」の結果に基づくもの。RSVは、米国において65歳以上の年間約17万7千例の入院、約1万4千例の死亡を引き起こしていると推定されている。日本においては、60歳以上の年間約6万3千例の入院、約4千例の死亡を引き起こしていると推定されている。 AReSVi-006試験は、60歳以上の2万4,966例を対象とした国際共同プラセボ対照第III相試験。本試験において、ワクチンのRSVに関連する下気道疾患に対する統計学的有意かつ臨床的に重要な有効性(82.6%)が示され、主要評価項目が達成された。また、特定の心肺系疾患や内分泌代謝系疾患など、注目すべき併存疾患を有する高齢者での有効性は94.6%であった。RSVに関連する重症下気道疾患に対する有効性は94.1%であった。また、安全性についても良好な安全性プロファイルを示した。多く認められた有害事象は、注射部位疼痛、疲労、筋肉痛、頭痛、関節痛であった。これらはおおむね軽度から中等度であり、一過性であった。 今回、FDAの承認を取得したRSVワクチン「Arexvy」は、RSVの宿主細胞との膜融合に関与するfusion(F)タンパク質について、立体構造を安定させた組換え膜融合前(prefusion)Fタンパク質とGSK独自のAS01Eアジュバントを組み合わせて作製されたワクチンである。米国での発売開始は、2023~24年のRSV流行シーズン前を見込んでいるとのこと。

479.

第159回 5類移行でマスク着脱議論が再び炎上、それって誰の何のため?

5月8日から、ついに新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は、感染症法上の5類扱いとなった。とは言っても、多くの一般人にとっては5月7日と5月8日で一気にガラリと生活が変わるわけではないだろう。ただ、接客が伴う各種業界ではこの日を機に以下のようにさまざまな変化が起こることが報じられている。『ローソン店員のマスク着用は「任意」に、一方で高島屋は「継続」 新型コロナ「5類」変更でも分かれる対応』(TBS)『「3年間お世話になりました」処分か保管?アクリル板どうする「5類移行」正式決定』(テレビ朝日)こうした身近な変化から、多くの人はいわゆる「コロナ禍」という言葉が有していた深刻さから徐々に解放されていくのだろう。そんな最中、国内でホテルリゾート業を営む星野リゾート代表取締役社長の星野 佳路氏は、5月8日から同社従業員が一斉にマスクを外すとTwitterで宣言し、いわゆる炎上案件になったことを一部の人はご存じかと思う。このツイートは文字通り読むと、従業員に一斉にマスク外しを指示したようにも読めてしまうのだが、ほかの記事を読むと、どうやら完全一律というわけではなさそうである。そんな最中、SNSで知人がある投稿をしていたのに目が留まってしまった。彼はこの星野リゾートの件をフックに「これでもマスクを外せない人は、一生顔を隠して生きていくの?」という記述とともに、学校で教職員や来訪する保護者のマスク外しが進んでおらず、これでは同調圧力で子供は外せないだろうという趣旨の書き込みをしていた。さらに「『外すのも付けるのも自由』なんて言うのは無責任の極み」ともダメ押しで記述していた。「大人が外せなければ、子供は…」のくだりは概ね同意はできるが、そのほかに関しては、私個人としてはなかなか賛同できず、ついコメント欄に書き込みし、数日間にわたって応酬となった。最終的には互いに穏便なところに落ち着いたが、改めて思ったのはこの問題の根深さである。この3年間、新型コロナに関しては嵐のように大量のニュースが流れた。その時々で伝わった情報を理解しつつも、状況が頻繁に変化するため、多くの人が混乱しただろう。私なりにいまだに残るこのウイルスの厄介さを箇条書きにすると以下のようになる。感染力が既存の感染症の中でもかなり高いほうに分類される重症化・死亡リスクが集団によって大きく異なる短期間で感染の主流をなすウイルス株(変異株)が入れ替わったウイルス株の入れ替わりとともにワクチンの効果が変動した(とくにオミクロン株出現以降)感染力のピークが発症前にあるなかでも最後の性質は、今回のユニバーサル・マスク対策の根拠となっている。また、日常会話の飛沫で容易に感染してしまうことから、人との接触を避けることが対策の核となり、飲食業を中心に一部の業態が深刻なダメージを被った。ちなみに前述の知人も飲食業ではないが、深刻なダメージを食らった業種の人である。その意味で社会の中でもコロナ禍に対する「恨み」にはかなりの濃淡がある。一方、感染症法上の5類になったところでウイルスそのものは根絶されたわけでも何でもなく、重症化・死亡リスクの高い人たちは依然として一定の警戒が必要である。その結果、そうした人の中にはなかなかマスクを手放せない人もいる。これらを総合すると、新型コロナを巡る問題はどうしても社会の分断を招きやすい性質を有してしまう。私自身は以前、屋内も含めたマスク着用を“個人の判断”とした政府の宣言に対し、その伝え方には一言モノ申したが、宣言そのものについてはまったくその通りだと思っている。いわずもがな、個々人の置かれた環境や保有するリスク因子はかなり異なるからだ。前述の知人の主張をざっくりまとめると、子供がマスクを外しやすくなるように、この5類化を機に学校では教職員や来訪する保護者は半ば強制的かつ一律的にマスクを外すことを求めている(少なくとも私はそう受け取って応酬した)。しかし、これはかなり困難な話だ。学校にも一定数はいるはずの重症化・死亡リスクの高い人に対し、公権力はリスクが上昇する方向への行動変容を強いることはできないからだ。文部科学省の都道府県・指定都市教育委員会の教育長などへの通知でも原則は「マスクの着用を求めないことを基本とする」としつつも、「基礎疾患があるなど様々な事情により、感染不安を抱き、マスクの着用を希望したり、健康上の理由によりマスクを着用できない児童生徒もいることなどから、学校や教職員がマスクの着脱を強いることのないようにすること」と付記している。もっとも知人が指摘する大人が醸し出してしまう「同調圧力」もまったくわからないわけではない。ただ、学校の場合、もう一つの難しい問題は、基本的に年功序列システムが維持されている組織であること。何かというと、学校長が比較的高齢であるため新型コロナでの重症化・死亡リスクが高い集団に分類される可能性が高く、トップがマスクを外しにくい可能性も少なくないからだ。いずれにせよ新型コロナに関して現時点の知見が維持される限り、私自身の主張が今後も大きく変わることはない。一方、一律的に常時マスクを外して元の生活にシンプルに戻りたいと考える人の気持ちもわからないわけではない。多分、今後は医療従事者の皆さんもこうした一般人の思いと医学・公衆衛生学的な知見が軽く火花を散らす局面にたびたび遭遇するだろう。これは「コロナ禍」ならぬ「ポスト・コロナ禍」とも言うべきだろうか?

480.

第44回 WHO緊急事態宣言解除、「コロナ禍終了」でOK?

緊急事態宣言が解除コロナ禍3年経って、ようやくWHOの緊急事態宣言が解除されました。感染症としての動向・予防策・治療の予測が可能となり、また以前ほど肺への毒性が強くないということで、国際的に脅威として対応し続けるよりもウィズコロナを選択するという意味合いが含まれています。しかし、「もう怖い感染症ではない」と誤認を招くのではないかという懸念もあります。実際、WHOは緊急事態宣言の解除に当たって注意を付記しています。それは以下のようなものです。「“The worst thing any country could do now is to use this news as a reason to let down its guard, to dismantle the systems it has built, or to send the message to its people that COVID19 is nothing to worry about”(今、どの国も一番やってはいけないことは、このニュースを理由に警戒を解き、構築したシステムを解いて、国民にCOVID-19は心配ないとメッセージを送ることだ)」"The worst thing any country could do now is to use this news as a reason to let down its guard, to dismantle the systems it has built, or to send the message to its people that #COVID19 is nothing to worry about"-@DrTedros— World Health Organization (WHO) (@WHO) May 5, 2023 日本では結構「緊急事態宣言が終了」というニュースが好意的に報道されたため、「5類」移行期とぴったりマッチしたこともあり、「もう大丈夫」という希望を持った人が多いと思います。ウィズコロナを続けていく上で、感染したら大変なことになるという警戒は以前ほど必要ありませんが、「一気に感染対策をゼロに」という時代が戻ってきたわけではありません。「希望は持ってよいが、油断はできない」というのがWHOの本音でしょう。日本は、欧米と違って非常に低い致死率でCOVID-19を抑えることができました。これはひとえに、日本国民の感染予防意識の高さと医療アクセスの良さによるものだろうと思っています。しかしその反作用として、苦しめられたという思いを持っている国民が多いのも事実です。患者数が増えれば、同じような医療逼迫を繰り返すことになる構図は変わりませんが、もはやそれは「禍」ではなく、1つの日常と受け取られることになるのかもしれません。医療従事者の努力私たち医療従事者は、まさに力戦奮闘、よく頑張りました。不気味な肺炎を起こす感染症には、二度と遭遇したくありません。「“At one level, this is a moment for celebration. We have arrived at this moment thanks to the incredible skill and selfless dedication of health and care workers; The innovation of vaccine researchers and developers; The tough decisions governments have had to make in the face of changing evidence; And the sacrifices that all of us have made as individuals, families, and communities to keep ourselves and each other safe”(ある意味、祝福の瞬間です。私たちがこの瞬間に立つことができたのは、医療・介護従事者の驚くべき技術と献身のおかげです。ワクチンの研究者や開発者の革新性、変化するエビデンスに直面しながらも政府が下した難しい決断、そして、私たち全員が、自身とお互いの安全を守るために、個人として・家族として・コミュニティとして、犠牲を払ってきたことによるものです)」"At one level, this is a moment for celebration.We have arrived at this moment thanks to the incredible skill and selfless dedication of health and care workers;The innovation of vaccine researchers and developers;The tough decisions governments have had to make in the face…— World Health Organization (WHO) (@WHO) May 5, 2023 コロナ禍を締めくくって感傷的になっているさなか、第9波がやってきてまた国内が混乱するということもあるかもしれません。感染対策も一気にゼロというわけではないため、各医療機関で少しずつ引き算していく苦労がしばらくは続くでしょう。とりあえず、情報発信する側に立ってきた人間として、コロナ禍はできるだけ後世に伝えていきたいと思っています。

検索結果 合計:2204件 表示位置:461 - 480