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コロナ軽症でも、高頻度に罹患後症状を発症/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染症の急性期後6~12ヵ月の時期における、患者の自己申告による罹患後症状(いわゆる後遺症、とくに疲労や神経認知障害)は、たとえ急性期の症状が軽症だった若年・中年の成人であってもかなりの負担となっており、全体的な健康状態や労働の作業能力への影響が大きいことが、ドイツ・ウルム大学のRaphael S. Peter氏らが実施した「EPILOC試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年10月13日号に掲載された。ドイツ南西部住民270万人ベースの研究 EPILOC試験は、ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州の4つの地域(人口計約270万人)で行われた住民ベースの研究で、2020年10月1日~2021年4月1日にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でSARS-CoV-2陽性と判定された18~65歳の集団が解析の対象となった(バーデン・ビュルテンベルク州Ministry of Science and Artの助成を受けた)。 1万1,710人が解析に含まれた。平均年齢は44.1(SD 13.7)歳、6,881人(58.8%)が女性であった。既存の慢性疾患として、筋骨格系疾患(28.9%)、心血管疾患(17.4%)、神経・感覚障害(16.2%)、呼吸器疾患(12.1%)などがみられた。 SARS-CoV-2による感染症の急性期には、77.5%は医療を必要とせず、19.0%が外来治療を受け、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院を要したのは3.6%であった。平均追跡期間は8.5ヵ月だった。 主要アウトカムとして、症状の頻度が感染症の急性期後6~12ヵ月と急性期以前で比較され、症状の重症度とクラスタリング、リスク因子、全体的な健康の回復や労働の作業能力との関連の評価が行われた。胸部症状、嗅覚/味覚障害、不安/抑うつも20%以上で発現 急性期前にはみられず、急性期後6~12ヵ月の時期に発現した症状クラスターでは、疲労(急激な身体的消耗、慢性疲労など、37.2%[4,213/1万1,312人、95%信頼区間[CI]:36.4~38.1])と、神経認知障害(集中困難、記憶障害など、31.3%[3,561/1万1,361人、30.5~32.2])の頻度が高く、いずれも健康回復や労働能力の低下に最も強く寄与していた。 また、胸部症状(呼吸困難、胸痛など、30.2%[95%CI:29.4~31.0])、不安/抑うつ(睡眠障害、抑うつ気分、不安など、21.1%[20.4~21.9])、頭痛/めまい(19.9%[19.2~20.6])も高頻度にみられ、労働能力に影響を及ぼしていたが、性別や年齢別で多少の差が認められた。 嗅覚/味覚障害(嗅覚の変化、味覚の変化)は23.6%(95%CI:22.9~24.4)、筋骨格系の疼痛(筋肉痛、関節痛、四肢痛)は16.8%(16.1~17.5)、上気道症状(咳嗽、咽頭痛、嗄声)は13.9%(13.3~14.6)で発現した。 日常生活を少なくとも中程度に低下させる新たな症状が発現し、健康回復や労働能力を80%以下に低下させたと考えると、post-COVID症候群の全体の推定値は28.5%(3,289/1万1,536人、95%CI:27.7~29.3)であった。一方、これに該当しない参加者は完全に回復したと仮定すると、post-COVID症候群の発生の推定値は6.5%(3,289/5万457人)で、このうち男性は4.6%(1,145/2万4,959人)、女性は8.4%(2,144/2万5,483人)であった。真の値は、これらの推定値の間と考えられる。 著者は、「このようなcovid後の後遺症(post-covid sequelae)の個人的、社会的な負担の大きさを考えると、適切な治療選択肢を確立し、有効なリハビリテーション法を開発するために、その基礎となる生物学的異常と原因を早急に明らかにする必要がある」としている。

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ビタミンD欠乏で筋力低下→サルコペニア発症の可能性/長寿研ほか

 ビタミンDが欠乏することで、将来的に筋力が低下してサルコペニア罹患率が上昇する可能性を、国立長寿医療研究センター運動器疾患研究部の細山 徹氏や、名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学の水野 隆文氏らの研究グループが発表した。 先行研究において、ビタミンDは加齢性の量的変動やサルコペニアとの関連性が指摘されていたが、それらの多くが培養細胞を用いた実験や横断的な疫学研究から得られたものであり、成熟した骨格筋に対するビタミンDの作用や加齢性疾患であるサルコペニアとの関連性を示す科学的根拠は十分ではなかった。Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle誌2022年10月13日掲載の報告。 研究グループは、国立長寿医療研究センターで実施している老化に関する長期縦断疫学研究「NILS-LSA」のデータを用い、血中ビタミンD量低値の一般住民の4年後の筋力変化や筋量変化、新規サルコペニア発生数などについて検討した。 主な結果は以下のとおり。・NILS-LSAに登録されている1,919人のデータから傾向スコアでマッチさせたビタミンD欠乏群(血中25OHD量が20ng/mL未満、n=384)および充足群(20ng/mL以上、n=384)の比較解析の結果、ビタミンD欠乏群では握力低下が進行した(欠乏群:-1.55±2.47kg、充足群:-1.13±2.47kg、p=0.019)。・サルコペニアの新規発生率は、ビタミンD欠乏群で有意に高かった(欠乏群:3.9%、充足群:1.3%、p=0.039)。・ビタミンD受容体遺伝子Vdrを成熟した筋線維で特異的に欠損させたコンディショナルノックアウト(VdrmcKO)マウスの表現型の解析では、VdrmcKOマウスでは有意な筋力低下を認めた。なお、筋重量、筋線維径、筋線維タイプ、骨格筋幹細胞数など骨格筋の量的形質には影響はみられなかった。・VdrmcKOマウスでは、筋線維の収縮・弛緩に関わる遺伝子Serca1とSerca2aの発現が減少し、骨格筋における筋小胞体Ca2+-ATPアーゼ活性も低下していた。 これらの結果より、研究グループは「ビタミンD欠乏と将来的な筋力低下およびサルコペニア罹患率の上昇には関連性がある可能性があり、成熟筋線維におけるビタミンDシグナルは、筋量には影響を与えないものの筋力発揮へ寄与する」とまとめた。

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統合失調症におけるVRを用いたソーシャルスキルトレーニングの受容性評価

 統合失調症患者に対するソーシャルスキルトレーニング(SST)の新たな治療アプローチとして、シネマティックバーチャルリアリティー(Cine-VR)テクノロジーが注目されている。イタリア・バーリ工科大学のVito M. Manghisi氏らは、統合失調症患者に対するCine-VR介入の受容性を評価するため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者に対するCine-VR介入の良好な受容性が確認された。Games for Health Journal誌オンライン版2022年9月8日号の報告。 研究者らは、自立生活支援のためのSSTリハビリテーションサポートシステムとしてCine-VRベースのプラットフォームを開発し、利便性、ユーザーエクスペリエンス、使用パフォーマンスの観点から、精神疾患患者への受容性を評価した。対象は、18~65歳の統合失調症スペクトラム障害(DSM-5に基づく)患者10例。中等度~重度の知的障害がなく、物質使用障害を認めない患者を対象に含めた。治療後にアンケートを実施し、関連データを自動収集するためのプラットフォームを開発した。 主な結果は以下のとおり。・利便性およびユーザーエクスペリエンスの評価は、「良い」~「優れる」であった。・使用パフォーマンスの向上も認められた。・SSTリハビリテーション介入をサポートする新たな治療アプローチとして、Cine-VRの有効性を評価するさらなる研究が求められる。

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10月26日 弾性ストッキングの日【今日は何の日?】

【10月26日 弾性ストッキングの日】〔由来〕1848年10月26日にウィリアム・ブラウン氏が「弾性ストッキング」の特許をイギリスで取得したことにちなみ、「日本静脈学会 弾性ストッキング・コンダクター養成委員会」が弾性ストッキングを広く一般にPRするために制定。関連コンテンツ浮腫の見分け方、発症形式と部位を押さえよう!【Dr.山中の攻める!問診3step】「災害としてのCOVID-19と血栓症Webセミナー」ホームページで公開中/日本静脈学会浮腫による蜂窩織炎の再発予防、圧迫療法は有効か/NEJM新・夜間頻尿診療ガイドラインで何が変わるか/日本排尿機能学会静脈瘤治療、5年後のQOLと費用対効果を比較/NEJM

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かかりつけ医も知っておきたい、コロナ罹患後症状診療の手引き第2版/厚労省

 厚生労働省は、2022年6月に公開した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1.1版)」を改訂し、第2版を10月14日に発表し、全国の自治体や関係機関などに周知を行った。 主な改訂箇所としては、・第1章の「3.罹患後症状の特徴」について国内外の最新知見を追加・第3~11章の「2.科学的知見」について国内外の最新知見を追加・代表的な症状やキーワードの索引、参考文献全般の見直しなどが行われた。 同手引きの編集委員会では、「はじめに」で「現在、罹患後症状に悩む患者さんの診療や相談にあたる、かかりつけ医などやその他医療従事者、行政機関の方々に、本書を活用いただき、罹患後症状に悩む患者さんの症状の改善に役立ててほしい」と抱負を述べている。1年後に多い残存症状は、疲労感・倦怠感、呼吸困難、筋力低下/集中力低下 主な改訂内容を抜粋して以下に示す。【1章 罹患後症状】「3 罹患後症状の特徴」について、タイトルを「罹患後症状の頻度、持続時間」から変更し、(罹患者における研究)で国内外の知見を追加。・海外の知見 18報告(計8,591例)の系統的レビューによると、倦怠感(28%)、息切れ(18%)、関節痛(26%)、抑うつ(23%)、不安(22%)、記憶障害(19%)、集中力低下(18%)、不眠(12%)が12ヵ月時点で多くみられた罹患後症状であった。中国、デンマークなどからの研究報告を記載。・国内の知見 COVID-19と診断され入院歴のある患者1,066例の追跡調査について、急性期(診断後~退院まで)、診断後3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月で検討されている。男性679例(63.7%)、女性387例(36.3%)。 診断12ヵ月後でも罹患者全体の30%程度に1つ以上の罹患後症状が認められたものの、いずれの症状に関しても経時的に有症状者の頻度が低下する傾向を認めた(12ヵ月後に5%以上残存していた症状は、疲労感・倦怠感(13%)、呼吸困難(9%)、筋力低下/集中力低下(8%)など。 入院中に酸素需要のあった重症度の高い患者は、酸素需要のなかった患者と比べ3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。 入院中に気管内挿管、人工呼吸器管理を要した患者は、挿管が不要であった患者と比べて3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。 罹患後症状に関する男女別の検討では、診断後3ヵ月時点で男性に43.5%、女性に51.2%、診断後6ヵ月時点で男性に38.0%、女性に44.8%、診断後12ヵ月時点で男性に32.1%、女性に34.5%と、いずれの時点でも罹患後症状を1つでも有する割合は女性に多かった。(非罹患者と比較した研究) COVID-19非罹患者との比較をした2つの大規模コホート研究の報告。英国の後ろ向きマッチングコホート研究。合計62の症状が12週間後のSARS-CoV-2感染と有意に関連していて、修正ハザード比で大きい順に嗅覚障害(6.49)、脱毛(3.99)、くしゃみ(2.77)、射精障害(2.63)、性欲低下(2.36)のほか、オランダの大規模マッチングコホート研究を記載。(罹患後症状とCOVID-19ワクチン接種に関する研究)(A)COVID-19ワクチン接種がCOVID-19感染時の罹患後症状のリスクを減らすかどうか(B)すでに罹患後症状を認める被験者にCOVID-19ワクチン接種を行うことでどのような影響が出るのか、の2点に分け論じられている。(A)低レベルのエビデンス(ケースコントロール研究、コホート研究のみでの結果)では、SARS-CoV-2感染前のCOVID-19ワクチン接種が、その後の罹患後症状のリスクを減少させる可能性が示唆されている。(B)罹患後症状がすでにある人へのCOVID-19ワクチン接種の影響については、症状の変化を示すデータと示さないデータがあり、一定した見解が得られていない。「5 今後の課題」 オミクロン株症例では4.5%が罹患後症状を経験し、デルタ株流行時の症例では10.8%が罹患後症状を経験したと報告されており、オミクロン株流行時の症例では罹患後症状の頻度は低下していることが示唆されている。揃いつつある各診療領域の知見 以下に各章の「2.科学的知見」の改訂点を抜粋して示す。【3章 呼吸器症状へのアプローチ】 罹患後症状として、呼吸困難は20〜30%に認め、呼吸器系では最も頻度の高い症状であった。年齢、性別、罹患時期などをマッチさせた未感染の対照群と比較しても、呼吸困難は胸痛や全身倦怠感などとともに、両者を区別しうる中核的な症状だった。【4章 循環器症状へのアプローチ】 イタリアからの研究報告では、わずか13%しか症状の完全回復を認めておらず、全身倦怠感が53%、呼吸困難が43.4%、胸痛が21.7%。このほか、イギリス、ドイツの報告を記載。【5章 嗅覚・味覚症状へのアプローチ】 フランス公衆衛生局の報告によると、BA.1系統流行期と比較し、BA.5系統流行期では再び嗅覚・味覚障害の発生頻度が増加し、嗅覚障害、味覚障害がそれぞれ8%、9%から17%に倍増した。【6章 神経症状へのアプローチ】 中国武漢の研究では、発症から6ヵ月経過しても、63%に疲労感・倦怠感や筋力低下を認めた。また、発症から6週間以上持続する神経症状を有していた自宅療養者では、疲労感・倦怠感(85%)、brain fog(81%)、頭痛(68%)、しびれ感や感覚障害(60%)、味覚障害(59%)、嗅覚障害(55%)、筋痛(55%)を認めたと報告されている。【7章 精神症状へのアプローチ】 罹患後症状が長期間(約1年以上)にわたり持続することにより、二次的に不安障害やうつ病を発症するリスクが高まるという報告も出始めている。【8章 “痛み”へのアプローチ】 下記の2つの図を追加。 「図8-1 COVID-19罹患後疼痛(筋痛、関節痛、胸痛)の経時的変化」 「図8-2 COVID-19罹患後疼痛の発生部位」 COVID-19罹患後に身体の痛みを有していたものは75%で、そのうち罹患前に痛みがなかったにも関わらず新規発症したケースは約50%と報告されている。罹患後、新規発症した痛みの部位は、広範性(20.8%)、頸部(14.3%)、頭痛、腰部、肩周辺(各11.7%)などが報告され、全身に及ぶ広範性の痛みが最も多い。 【9章 皮膚症状へのアプローチ】「参考 COVID-19と帯状疱疹[HZ]の関連について」を追加。ブラジルでは2017〜19年のCOVID-19流行前の同じ間隔と比較して、COVID-19流行時(2020年3〜8月)のHZ患者数は35.4%増加した。一方、宮崎での帯状疱疹大規模疫学研究では、2020年のCOVID-19の拡大はHZ発症率に影響を与えなかったと報告。    【10章 小児へのアプローチ】 研究結果をまとめると、(1)小児でも罹患後症状を有する確率は対照群と比べるとやや高く、特に複数の症状を有する場合が多い、(2)年少児は年長児と比べて少ない、(3)症状の内訳は、嗅覚障害を除くと対照群との間に大きな違いはない、(4)対照群においてもメンタルヘルスに関わる症状を含め、多くの訴えが認められる、(5)症例群と対照群との間に罹患後症状の有病率の有意差を認めない、(6)小児においてもまれに成人にみられるような循環器系・呼吸器系などの重篤な病態を起こす可能性があるといえる。【11章 罹患後症状に対するリハビリテーション】 2022年9月にWHOより公表された"COVID-19の臨床管理のためのガイドライン"の最新版(第5版)では、罹患後症状に対するリハビリテーションの項が新たに追加され、関連する疾患におけるエビデンスやエキスパートオピニオンに基づいて、呼吸障害や疲労感・倦怠感をはじめとするさまざまな症状別に推奨されるリハビリテーションアプローチが紹介されている。 なお、本手引きは2022年9月の情報を基に作成されており、最新の情報については、厚生労働省などのホームページなどから情報を得るように注意を喚起している。

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第119回 健康保険証を2024年度の秋に廃止へ/厚労省

<先週の動き>1.健康保険証を2024年度の秋に廃止へ、丁寧な対応を求める声も/厚労省2.新型コロナ・インフル同時流行に向けタスクフォース立ち上げ/厚労省3.自治体による公立病院への財政補助の見直しを/財務省4.2024年度からの医療費適正化計画の見直しに着手/厚労省5.複数の医師の退職で腎移植が不可能に/京都府立医大6.第8次医療計画で、在宅医療でのリハビリや栄養指導との連携強化を/厚労省1.健康保険証を2024年度の秋に廃止へ、丁寧な対応を求める声も/厚労省河野太郎デジタル大臣が10月13日の記者会見において、再来年の秋までに健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードと一体化すると発表した。総務省によると、マイナンバーカードの申請枚数は7,072万枚余り(10月11日時点)で、申請率は56.2%となっている。岸田内閣では、今年6月に閣議決定した「骨太の方針」で、保険証の原則廃止を目指すとしていたが、廃止の期限を24年秋と明示し、事実上の義務化に踏み込んだ形。政府は、マイナ保険証によって利用者が個人向けの専用サイト「マイナポータル」で診療履歴や薬の使用歴などが確認できるようになるほか、確定申告の医療費控除が簡単になるなどメリットを訴え、普及を高めるよう働きかけている。(参考)マイナ・保険証一体化 デジタル化遅れに危機感(毎日新聞)河野デジタル相 健康保険証を24年秋に廃止 国民や医療従事者の理解得られるよう取り組む(ミクスオンライン)埼玉で「地域医療」崩壊の恐れ? 「マイナ保険証の資格確認」に開業医ら反対、廃業検討も…何が起きている(埼玉新聞)オンライン資格確認等システム参加「義務化の撤回」を求める(埼玉保険医新聞)2.新型コロナ・インフル同時流行に向けタスクフォース立ち上げ/厚労省厚生労働省は、今年の冬に新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行に向け、関係する団体・学会と国や地方の行政機関と連携しながら取り組むため、「新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォース」を立ち上げ、第1回会合を10月14日に開催した。これに先立ち、10月13日の新型コロナウイルス感染症対策分科会の後に開催された記者会見で、尾身茂会長は「『第8波』は第7波以上の高い波になる」として、「感染拡大時の対策のあり方について早急に議論をすべき」との見解を示しており、これに応える形で開催された。タスクフォースでは、同時感染が生じた場合、ピーク時には発熱患者の合計が1日75万人が想定されるとし、重症化リスクの高い人を優先し、低リスクの人は症状が軽ければ「すぐの受診」は避けて自宅で検査キットを活用するなど検討している。(参考)第1回新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォース(厚労省)第19回 新型コロナウイルス感染症対策分科会(内閣府)加藤厚労相、新型コロナ・インフル同時流行対策を発表…オンライン診療の活用呼びかけ(読売新聞)「コロナ第8波、第7波以上に」 尾身氏、議論呼びかけ(毎日新聞)3.自治体による公立病院への財政補助の見直しを/財務省財務省は、財政制度等審議会の財政制度分科会を10月13日に開催した。この中で、政府が、新型コロナウイルス感染対策で、政府から地方自治体にさまざまな形で補助金が交付されており、このため地方自治体の財政はプライマリーバランスの黒字が続いている。このため、コロナ対策の補助金の支給で、公立病院の経営状況について、公立病院全体の経常損益はコロナ前の2019年度は984億円の赤字が、翌年度には黒字に転換し、2021年度に3,296億円の黒字となったことを指摘した。参加した委員からは、これ以上の国の財政悪化を防ぐためにも、地方における社会保障費の抑制や地方自治体の公立病院への財政の繰り出しを求めた。政府は公立病院の経営改善を求めており、多額の補助金によって、公立病院の経営改革が阻害されることがあってはならないとし、経営強化プランを踏まえた取組を着実に進めていく必要があると指摘した。(参考)財務省、公立病院への繰り出しを疑問視 黒字転換したのに同水準を維持(CB news)地方財政(財務省 財政制度分科会)地方財政 参考資料(財務省 財政制度分科会)4. 2024年度からの医療費適正化計画の見直しに着手/厚労省厚生労働省は、10月13日に社会保障審議会医療保険部会を開催した。この中で医療費適正化計画の見直しに関する論点を提案した。医療費適正化計画は医療費の抑制や医療の効率的な提供の推進を目的に、2008年度から開始されており、2024年度から新たに第4期が開始されることになっている。この中で、現行の第3期医療費適正化計画の目標に対する進捗状況では、最終年度の2023年に80%が目標とされていた後発医薬品の使用促進は2020年度に79.6%とほぼ達成されていたものの、目標値が70%であった特定健診の実施率は53.4%と伸び悩んでいた。厚生労働省は、第4期医療費適正化計画に向けた論点として、新たに取り組むべき目標として、2025年には団塊の世代が全員後期高齢者となることを背景に、複合的なニーズを有する高齢者への医療・介護の効果的・効率的な提供と医療資源の効果的・効率的な活用を挙げた。(参考)医療費適正化計画に高齢者保健事業・介護予防を 厚労省が医療保険部会に論点提案(CB news)医療費適正化計画の見直しについて(社会保障審議会医療保険部会)5.複数の医師の退職で腎移植が不可能に/京都府立医大京都府立医大病院で、腎臓移植手術を行なっていた医師6名のうち5名が退職したため、今年の春以降、移植が行えなくなっていることが明らかとなった。京都府内では腎臓移植手術のシェアの9割以上を占めており、国内有数の施設であった。退職した医師らは移植外科に所属しており、転職や留学などのため相次いで退職。今年5月には診療科のトップの准教授も退職したため、医師は残り1人となり、移植手術が実施不可能になった。大学側は「できるだけ早期に手術を再開できるよう努力したい」としている。(参考)「腎臓移植」手術数は府内トップの病院だが…医師5人退職、手術できない事態に(読売新聞)腎臓の移植手術担う医師5人が相次ぎ退職、手術できず 京都府立医科大病院(京都新聞)6.第8次医療計画で、在宅医療でのリハビリや栄養指導との連携強化を/厚労省厚生労働省は第8次医療計画の策定に向けて、在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループを10月14日に開催した。この中で、在宅医療の現場で、救急医療機関と消防機関など、地域でのネットワーク作りが十分ではなく、情報共有が難しい状況であることや、緊急時に、即座に入院が可能な病院が必要とされ、在宅療養後方支援病院のほか、在宅療養支援病院が役割を担っているケースもあるので、後方支援機能を検討することになった。このほか、在宅医療の提供体制に、訪問リハビリテーションや訪問栄養食事指導を加えることとし、これらの職種を含め、多職種の連携を加えることを了承した。(参考)次期指針での在宅医療提供体制、訪問リハなど項目追加 厚労省WG了承、次回取りまとめへ(CB news)第7回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ 資料(厚生労働省)

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10月4日 徒歩の日【今日は何の日?】

【10月4日 徒歩の日】〔由来〕徒歩の語呂合わせから日常生活で歩く習慣をつけ、健康になることを目的に宮崎県宮崎市の「徒歩を楽しむ会」(代表・貞原信義氏)が2004年に制定。関連コンテンツ歩行しづらいときの症状チェック【患者説明用スライド】原因不明の足の痛み、プライマリでPADを疑うポイントは?おすすめの運動は何ですか?【患者説明用スライド】高齢女性、1日4,400歩でも死亡率低下、強度は関連せず認知症予防に歩行時間が大きく寄与~日本人1万4千人のデータ

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コロナ診療報酬の臨時的な取扱いが延長・新設/日医

 日本医師会常任理事の長島 公之氏は、2022年9月28日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いが厚生労働省より示されたことを報告した。発熱外来の特例的加算が10月31日まで延長 2022年9月30日までを期限として算定可能な特例的加算である「2類感染症患者入院診療加算(250点)」および「電話や情報通信機器による療養上の管理に係る点数(147点)」は、1ヵ月延長して2022年10月31日まで引き続き算定が可能となる(新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて[その77])。1. 2類感染症患者入院診療加算(250点) 診療・検査医療機関(発熱外来)において、新型コロナウイルス感染症であることが疑われる患者に対し、必要な感染予防策を講じた上で外来診療を実施した場合に「2類感染症患者入院診療加算(250点)」の算定が可能となる。なお、「院内トリアージ実施料(300点)」と併せて550点が算定できる。2. 電話や情報通信機器による療養上の管理に係る点数(147点) 自宅・宿泊療養中の新型コロナウイルス感染症患者のうち重症化リスクの高い者に対し、保健所などから健康観察に係る委託を受けている保険医療機関または診療・検査医療機関の医師が、電話などを用いて診療を行った場合に「電話や情報通信機器による療養上の管理に係る点数(147点)」の算定が可能となる。なお、上記の「2類感染症患者入院診療加算(250点)」も算定できる。入院患者の2つの特例的加算が新設 疾患別リハビリテーションが必要な患者や、回復後も引き続き入院管理が必要な患者に関する2つの特例的加算が新設された(新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて[その76])。1. 2類感染症患者入院診療加算(250点) 入院中の新型コロナウイルス感染症患者に対し、必要な感染予防策を講じた上で疾患別リハビリテーションを実施した場合に「2類感染症患者入院診療加算(250点)」の算定が可能となる。2. 救急医療管理加算1の100分の200に相当する点数(1,900点) 新型コロナウイルス感染症から回復した後、引き続き入院管理が必要な患者が退院に関する基準を満たし、入院の勧告・措置が解除された後、最初に転院した保険医療機関における入院日を起算日として30日を限度として、「救急医療管理加算1」の100分の200に相当する点数(1,900点/日)の算定が可能となる。

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前十字靱帯損傷、リハビリより外科的再建術が有効/Lancet

 膝関節の不安定性による症状が持続している非急性期の前十字靱帯(ACL)損傷患者の管理法として、外科的再建術はリハビリテーションと比較して、臨床効果(KOOS4)が優れ費用対効果も良好であることが、英国・オックスフォード大学のDavid J. Beard氏らが実施した「ACL SNNAP試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年8月20日号で報告された。英国の実践的無作為化対照比較試験 ACL SNNAP試験は、膝関節の不安定性の症状が持続する非急性期のACL損傷患者において、再建手術と非外科的治療のどちらが最適な管理法であるかの検証を目的とする実践的な無作為化対照比較試験であり、2017年2月~2020年4月の期間に、英国の29ヵ所の国民保健サービス(NHS)セカンダリケア病院の整形外科で参加者の募集が行われた(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価計画の助成を受けた)。 対象は、ACL損傷による持続性の症状を伴う膝の問題(不安定性)を有する患者であった。緊急手術を示唆する特徴を持つ半月板の病変や、重度の変形性関節症(Kellgren-Lawrence分類のGrade3または4)を有する患者は除外された。 被験者は、手術(再建術)またはリハビリテーション(理学療法:治療後に不安定性が持続する場合は、再建術が可能とされた)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、無作為化の時点から18ヵ月後の膝関節損傷・変形性関節症アウトカムスコア-4領域版(KOOS4)(0~100点、点数が高いほど健康状態が良好)とされた。KOOS下位尺度もすべて良好 316例が登録され、外科的再建術群に156例、リハビリテーション群に160例(1例でデータを確認できなかった)が割り付けられた。全体の平均年齢は32.9(SD 9.8)歳で、外科的再建術群で男性の割合が高かった(71% vs.62%)。34%はACL損傷から4ヵ月以内、66%は4ヵ月以上であり、22%は1年以上が経過していた。ベースラインの平均KOOS4は、外科的再建術群が45.7(SD 19.6)点、リハビリテーション群は43.3(18.1)点だった。 また、外科的再建術群では、実際に手術を受けたのは72%(113/156例)で、28%(43例)はこれを受けなかった(26%[11例]は手術待機、40%[17例]はリハビリテーションを選択)。リハビリテーション群の41%(65/160例)は、症状が持続したため再建術を受けた。手術までの期間中央値は、外科的再建術群が113日、リハビリテーション群で再建術を受けた患者は237日であった。 主要アウトカム評価のintention to treat集団は248例で、外科的再建術群が128例、リハビリテーション群は120例であった。18ヵ月時の平均KOOS4は、外科的再建術群が73.0 (SD 18.3)点、リハビリテーション群は64.6(SD 21.6)点で、補正後平均群間差は7.9点(95%信頼区間[CI]:2.5~13.2)であり、外科的再建術群で有意に良好だった(p=0.0053)。 また、18ヵ月時のKOOSの下位尺度は、いずれも外科的再建術群で優れた(疼痛[p=0.020]、症状[p=0.0020]、日常生活動作[p=0.0022]、スポーツ/余暇活動[p=0.043]、膝関連の生活の質[p=0.0065])。 一方、外科的再建術がリハビリテーションよりも費用対効果が優れる確率について解析したところ、外科的再建術は1質調整生存年(QALY)を得るのに要する費用が3万ポンド(72%の確率)の場合に最も費用対効果が優れる選択肢であった。これは、1例当たりの医療費は外科的再建術のほうが高額(3,186 vs.2,169ポンド、群間差:1,017ポンド、95%CI:557~1,476、p<0.001)であるにもかかわらず、アウトカムが優れていたこと(1例当たり1.03 vs.0.98 QALY、p=0.17)の結果であった。 介入に関連する合併症は、外科的再建術群で1件、リハビリテーション群で2件認められ、臨床イベントはそれぞれ10例で11件および11例で12件発現し、両群間に差はなかった。 著者は、「より長期のACL損傷(もはや急性期ではない)の患者との共有意思決定では、ACLの外科的再建術は非手術的な方法よりも良好な結果をもたらす可能性があることを提示し、理由を問わず患者が手術を望まない場合は、非手術的な治療でも損傷は改善され、後日、外科的再建術を行う選択肢も残されていることを、再確認する必要がある」と指摘している。

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診療科別、専門医の平均取得数は?/1,000人アンケート

 2018年からスタートした新専門医制度は、昨年初の機構認定の専門医が誕生し、新制度への移行が進む予定となっている。一方、サブスぺ領域の認定や、学会認定の専門医との位置付けなど、課題も多く指摘されている。CareNet.comの20~50代の会員医師1,000人を対象に、現在の専門医取得状況や今後の取得・更新意向について聞いた(2022年7月28日実施)。専門医の取得数が多い傾向がみられた診療科は? 全体で、専門医取得数を2つ以上と回答した医師は51%だった。少数派ではあったが、1.7%の医師が6つ以上と回答した。年代別にみると、30代では2つ以上と回答したのが42.3%だったのに対し、40代では62.5%まで増加、40代と50代はほぼ横ばいだった。 診療科別にみた専門医取得数の平均値(中央値)は以下のとおり。消化器は外科・内科ともに専門医取得数が多かったほか、神経内科や腎臓内科も高い傾向がみられた。一方、精神科や皮膚科では少ない傾向がみられた。消化器外科[n=24]:3.4(3)神経内科[n=26] :3.0(3)消化器内科[n=58]:3.0(3)腎臓内科[n=25]:2.9(3)感染症内科[n=4]:2.8(3)腫瘍科[n=10]:2.7(2.5)外科[n=33]:2.7(2)脳神経外科[n=25]:2.6(3)循環器内科[n=59]:2.5(2)糖尿病・代謝・内分泌内科[n=31]:2.4(2)呼吸器内科[n=34]:2.2(2)心臓血管外科[n=11]:2.1(2)救急科[n=10]:1.9(2)整形外科[n=55]:1.9(2)産婦人科[n=18]:1.9(2)形成外科[n=11]:1.8(1)内科[n=183]:1.7(2)血液内科[n=8]:1.6(2)小児科[n=45]:1.6(2)呼吸器外科[n=4]:1.5(1.5)リハビリテーション科[n=12]:1.5(1)放射線科[n=27]:1.5(1)総合診療科[n=15]:1.5(1)病理診断科[n=9] :1.4(2)耳鼻咽喉科[n=15]:1.3(1)泌尿器科[n=20] :1.3(1)その他[n=21]:1.2(1)麻酔科[n=27] :1.1(1)眼科[n=16]:1.0(1)膠原病・リウマチ科[n=7]:1.0(1)皮膚科[n=22] :0.8(1)精神科[n=76] :0.8(1)臨床研修医[n=59]:0.3(0)58%の医師が持っている専門医をすべて更新予定と回答 現在持っている専門医資格について聞いた質問では、認定内科医が24.5%と最も多く、総合内科専門医(18.8%)、外科専門医(8.4%)が続いた。新専門医制度の基本19領域と認定内科医、総合内科専門医以外の資格(“その他”として自由回答)を持つと回答した医師も14.4%おり、各学会認定の多様な専門医資格を取得している状況がわかる。 今後の更新予定については、現在持っている専門医資格について、58.6%の医師が「資格をすべて更新予定」と回答。「一部は更新しない予定」は3.0%、「すべてを更新しない予定」は1.1%に留まった。専門医取得による給与・待遇の向上があったと回答したのは14% 専門医を取得することによるメリットについては、「知識向上やスキルアップができた」が39.6%と最も多く、「開業時に役立った(15.8%)」「他の医師・スタッフから信頼が得られた(14.6%)」という回答が続いた。「給与や待遇が向上した」と回答したのは14.1%だった。 一方のデメリットについては、「受験料、更新料、学会参加などで費用がかかる」が36.3%と最も多く、「学会での単位取得など、時間的な負担が大きい(31.3%)」「評価システムへの登録等、手続きが煩雑(15.7%)」といった時間・手間等の負担を挙げる声が多く上がった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。会員医師の専門医取得状況は―医師1,000人に聞きました

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慢性腰痛の介入、段階的感覚運動リハビリvs.シャム/JAMA

 慢性腰痛患者に対する単施設で行った無作為化試験において、段階的感覚運動リハビリテーション(graded sensorimotor retraining)はシャム・注意制御介入と比較して、18週時点の疼痛強度を有意に改善したことが、オーストラリア・Neuroscience Research AustraliaのMatthew K. Bagg氏らによる検討で示された。慢性疼痛への、痛みと機能の感知に関する神経ネットワークの変化の影響は明らかにされていない。今回の結果について著者は、「疼痛強度の改善は小さく、所見が標準化可能なものかを明らかにするためには、さらなる検討が必要である」としている。JAMA誌2022年8月2日号掲載の報告。12週間の臨床セッション+自宅トレーニングの介入効果を検証 研究グループは、慢性腰痛患者において、段階的感覚運動リハビリテーション(RESOLVE)の疼痛強度への効果を明らかにするため、プライマリケアおよび地域住民から非特異的な慢性(3ヵ月以上)腰痛を有する参加者を集めて並行2群無作為化試験を行った。 合計276例の成人が、オーストラリアのメディカルリサーチ研究所1施設で臨床医による介入またはシャム・注意制御介入を受ける(対照)群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。無作為化は2015年12月10日~2019年7月25日に行われ、フォローアップが完了したのは2020年2月3日であった。 介入群(138例)は、腰痛時の運動や身体活動の教育および支援を行うためにデザインされた12週間の臨床セッションと自宅トレーニングに参加するよう要請された。対照群(138例)は、介入群と期間は同じだが、教育や運動および身体活動は注視されていない12週間の臨床セッションと自宅トレーニングに参加するよう要請された。また、対照群には、シャムレーザーおよび短波ジアテルミーが背部に、またシャム非侵襲的脳刺激などが施術された。 主要アウトカムは、18週時の疼痛強度で、11ポイント評価尺度(範囲:0点[痛みなし]~10点[想像しうる最悪の痛み])で測定し、両群間の臨床的意味のある最小差(1.0ポイント)を評価した。18週時の疼痛強度、介入群で臨床的意味のある改善を確認 無作為化を受けた276例(平均年齢46[SD 14.3]歳、女性138例[50%])において、261例(95%)が18週のフォローアップを完了した。 平均疼痛強度は、介入群がベースライン5.6点から18週時3.1点に、対照群は5.8点から4.0点に変化がみられた。 18週時の推定平均群間差は-1.0ポイント(95%信頼区間[CI]:-1.5~-0.4)で、介入群の良好な改善が認められた。

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日本人アルツハイマー病高齢者の手段的日常生活動作に対する影響

 鹿児島大学の田平 隆行氏らは、地域在住のアルツハイマー病(AD)高齢者における認知機能障害の重症度による手段的日常生活動作(IADL)の特徴を明らかにするため、生活行為工程分析表(PADA-D)を用いた検討を行った。IADLの工程を詳細に分析した結果、著者らは、地域在住のAD高齢者において重症度による影響の有無といった工程の特徴を明らかにできるとし、IADLのリハビリテーションやケアが在宅での生活を継続するうえで役立つ可能性を報告した。International Psychogeriatrics誌オンライン版2022年7月15日号の報告。 日本の医療センターおよびケアセンター13施設より募集した地域在住のAD高齢者115例を対象に、横断的研究を実施した。認知機能障害の重症度はMMSEを用いて3群(軽度:20以上、中等度:20未満10以上、重度:10未満)に分類し、共変量で調整した後、IADLスコアとPADA-DのIADL 8項目について群間比較を行った。PADA-Dの各IADL項目に含まれる5つの実行可能なプロセスの割合を比較した。 主な結果は以下のとおり。・IADLスコアは、交通手段の使用および金銭管理能力を除き、AD重症度と共に独立した低下が認められた。とくに買い物(F=25.58)、電話を使用する能力(F=16.75)、服薬の管理(F=13.1)において認められた。・PADA-Dの工程ごとの調査では、いくつかの工程は認知機能障害の重症度による影響を受ける場合、受けない場合があることが明らかとなった。・たとえば、調理において、献立は重症度の影響を受けるが(ES=0.29)、食材の準備は影響を受けなかった。

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ゴルフ中に突然のめまい!VADに注意!!【知って得する!?医療略語】第16回

第16回 ゴルフ中に突然のめまい!VADに注意!!ゴルフがきっかけで脳梗塞になるなんてことがあるのですか?そうなんです。水泳のクロールやテニス、カイロプラクティスなども若年性脳梗塞を引き起こすことがありますよ。いずれも椎骨動脈解離(VAD:vertebral artery dissection)が原因です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】VAD【日本語】椎骨動脈解離【英字】vertebral artery dissection【分野】脳神経【診療科】脳神経外科・救急【関連】椎骨動脈解離性動脈瘤 VADA:vertebral artery dissecting aneurysm実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。めまいの鑑別診断で見逃せない疾患の1つに椎骨動脈解離(VAD)があります。見逃すと脳幹梗塞や小脳梗塞、くも膜下出血に至ることもあります。そんなVADは、筆者の経験上、研修医の先生に質問しても、あまり認知されていない疾患ですが、救急外来でめまいの診療をしていると、VADは決して稀な疾患ではありません。しかし、VADという疾患の存在を知らなければ疑うこともできません。また、必ずしも一般的な頭部画像検査ではVADが診断出来るとは限らず、きちんと疑うことができなければ、それに応じたMRオーダーが出来ず、末梢性めまいと誤診してしまう可能性もあります。そこで、今回はVADについて、診断の観点からフォーカスしたいと思います。VADとはVADは脳動脈解離の1つです。脳動脈解離の発症頻度は、椎骨脳底動脈系:頸動脈系=3:1と椎骨脳底動脈系が高く、さらに椎骨脳底動脈系の解離の90%が椎骨動脈です。発症様式は、解離に伴う椎骨動脈内の狭窄で虚血を来す場合と、椎骨動脈の解離部分が瘤状化し椎骨動脈瘤を発症(椎骨動脈解離性動脈瘤)、それが破裂する出血性のものがあります。初期症状は後頸部痛や肩こりで、多くは片側ですが、解離が脳底動脈に及び、脳底動脈の解離であれば頸部痛が両側性になる可能性も十分あります。また、筆者の経験上は頸部痛や肩こりの程度はさまざまで頭重感程度の方もいます。ただ、普段は肩こりや頸部痛が無い人が、めまいで来院し、普段は経験していない肩こりや頸部痛、頭重感を呈している際には、VADの可能性を十分に想定します。VADの主な原因VADの病因は、特発性から外傷性(交通事故・頸椎骨折等)、スポーツ、血管炎、マルファン症候群の結合組織病などさまざまですが、頸部の捻転を伴う動作が発症契機として指摘されています。とくに頸部を急に捻る動きや過伸展を伴うスポーツ、たとえばゴルフや水泳のクロールやサーフィン、テニスやカイロプラクティスなどで症例報告があります。2020年にはくしゃみ直後の発症も報告されています。これは筆者の推測ですが、頸椎の横突孔を通過する椎骨動脈は、頸部の過伸展や捻転動作により、横突孔周囲の骨と強く接触し、ずり応力により血管壁が損傷し解離を来しやすいのではないかと推測しています。頸動脈系よりもVADが圧倒的に多いのは、椎骨動脈の解剖的な構造に由来するのではないかと考えています。VAD診断にはMRのVRFAやBPASが役立つVADの画像診断の上で留意したいのは、虚血発症のVADが必ずしも脳梗塞まで至っていないことがある点です。このため、発症して間もないVADを頭部単純CTでは診断できないのはもちろんですが、頭部MRIでも拡散強調画像で急性期脳梗塞病変を指摘できないことがあります。これは梗塞まで至っていない虚血状態の病態があることによります。そこで頭頸部MRAも併用しますが、椎骨動脈は先天的な左右差も多く、MRAで椎骨動脈が狭窄や途絶しかけているように見えても、椎骨動脈の低形成という場合も少なくありません。このときに参考になるのが、BPAS(basi-parallel anatomical scanning)です。BPASはMRAの撮影法の1つです。MRAが血管内の血流信号(≒血管内腔)を反映するのに対し、BPASは椎骨脳底動脈の外観を表示します。BPASとMRAで示される血管径に明らかな乖離があるとすれば、椎骨動脈に解離腔の存在を疑う、あるいは解離部分の瘤状化を疑う手がかりとして有用です。ただし、BPASで有用な情報を得られない症例も存在し、近年は新たな撮像方法として、可変フリップ角 (VRFA:variable refocusing flip angle)を利用したVRFA-3D-TSE法も登場し、より診断精度の向上が期待されます。しかし、どれほど診断機器が発達しても、まずは疾患を疑わなければ始まりません。VADの診断には病歴聴取がとても重要だと思います。急性のめまいの患者さんの診療においては、症状出現前に頸部の過伸展や捻転イベントがなかったか詳しく問診します。また、これまで経験のない片側の肩こりや頸部痛の有無も確認します。ただし、VADの全例に誘因や頸部痛・後頭部痛があるとは限りませんのでその点は注意が必要です。ですが、少なくとも問診や症状からVADを否定できず、検査前確率が高いと考える場合は、放射線技師と相談し、MRI撮影の依頼時にBPASやVRFAを検討いただくことをお薦めします。最後に筆者がヒヤッとした症例をご報告します。その患者さんはバレリーナで、バレエ中に首を過度に反らしたときに突然のめまいが出現しました。初期対応した医師の診断は、アナムネとCTで異常がないことを理由に良性発作性頭位めまい症(BPPV)と診断したようでしたが、帰宅後も症状持続に改善がなく、患者さんは翌日の内科外来を受診しました。発症状況からVADを否定できないと判断し、BPASも含めた頭部MRを実施したところ、椎骨動脈解離が見つかり緊急入院しました。VADは、受診後にくも膜下出血を来し心機能停止で再搬送されたケースも報告されています。めまいを訴える患者を末梢性めまいと結論付ける前に、中枢性めまいの可能性を慎重に否定する必要があります。なお、近年は脳動脈解離として頸動脈解離とVADが一括りに語られる傾向があり、筆者は少々違和感を持っています。同じ脳動脈解離でも、VADと頸動脈系では臨床像が異なるのがその理由で、現場の実務ではそれぞれの臨床像を知っておく必要があると考えています。1)戌亥 章平ほか. 臨床神経. 2020;60:573-580.2)沖山 幸一ほか. 脳卒中の外科. 2014;42:196-202.3)徳元 一樹ほか. 臨床神経. 2014;54:151-157.4)寺崎 修司ほか. 脳卒中. 1996;18巻:70-73.

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肩関節鏡視、術後90日以内の有害事象は1.2%/BMJ

 肩関節鏡視下手術は、英国で一般的に行われるようになっているが、有害事象のデータはほとんどないという。同国オックスフォード大学のJonathan L. Rees氏らは、待機的な肩関節鏡視下手術に伴う有害事象について調査し、90日以内の重篤な有害事象のリスクは低いものの、再手術(1年以内に26例に1例の割合)などの重篤な合併症のリスクがあることを示した。研究の詳細は、BMJ誌2022年7月6日号に掲載された。英国の約29万件の手術のコホート研究 研究グループは、待機的な肩関節鏡視下手術における重篤な有害事象の正確なリスクを推定し、医師および患者に情報を提供する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]オックスフォード生物医学研究センター[BRC]の助成による)。 解析には、英国国家統計局の市民登録死亡データを含むイングランド国民保健サービス(NHS)の病院エピソード統計(Hospital Episode Statistics)のデータが用いられた。 対象は、2009年4月1日~2017年3月31日の期間に、16歳以上の26万1,248例に施行された28万8,250件の肩関節鏡視下手術(肩峰下除圧術、腱板修復術、肩鎖関節切除術、肩関節安定化術、凍結肩関節授動術)であった。 主要アウトカムは、術後90日以内の入院治療を要する重篤な有害事象(死亡、肺塞栓症、肺炎、心筋梗塞、急性腎障害、脳卒中、尿路感染症)の割合とされた。深部感染症は腱板修復術で高い 全体の年齢中央値は55歳(IQR:46~64)で、手技別の年齢中央値は、肩関節安定化術の27歳(IQR:22~35)から腱板修復術の61歳(53~68)までの幅が認められた。47.8%が女性であった。試験期間を通じて、肩峰下除圧術の件数は減少したが、これを除く肩関節鏡視下手術の件数は増加していた。 肩関節鏡視下手術後90日以内の有害事象(再手術を含む)の発生率は、1.2%(95%信頼区間[CI]:1.2~1.3)と低く、81例に1例の割合であり、肩関節安定化術の0.6%(95%CI:0.5~0.8)から凍結肩関節授動術の1.7%(1.5~1.8)までの幅が認められた。年齢、併存症、性別で調整すると、手技の種類による影響はみられなくなった。 最も頻度の高い有害事象は肺炎(発生率:0.3%、95%CI:0.3~0.4)で、303例に1例の割合であった。一方、最もまれな有害事象は肺塞栓症(0.1%、0.1~0.1)で、1,428例に1例の割合だった。 1年以内に再手術を要した患者は3.8%(95%CI:3.8~3.9)と比較的高く、26例に1例の割合であり、肩関節安定化術の2.7%(95%CI:2.5~3.0)から凍結肩関節授動術の5.7%(5.4~6.1)までの幅がみられた。 深部感染症に対する追加手術は全体で0.1%(95%CI:0.1~0.1)と低く、1,111例に1例の割合であったが、腱板修復術に伴う深部感染症の発生率は0.2%(0.2~0.2)と高く、526例に1例の割合だった。 著者は、「膝関節鏡視下手術に比べて90日以内の肺炎の発生率が高かった理由は不明であり、今後、その原因の解明と予防法の確立が求められる。また、今後の研究では、腱板修復術に伴う感染症の増加に関連する因子の検討も行うべきであろう」としている。

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移植の予後に、筋肉の「質」が影響する可能性/京都大学

 造血器腫瘍治療で行われる同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)において、患者の筋肉の質及び量が移植後の予後に関係する可能性があるという。京都大学の濱田 涼太氏らによる本研究と結果はTransplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2022年6月19日号に掲載され、京都大学は7月12日にプレスリリースを発表した。 骨格筋量の減少は、移植後の生存に影響を及ぼすことが複数の研究グループから報告されているが、このような骨格筋量の減少はコンピュータ断層撮影(CT)などを用いて評価されるため、脂肪変性が進行した「質の悪い」骨格筋においては骨格筋量が過大評価されてしまい、正確な評価が出来ていない可能性があるという。 研究者らは、京都大学医学部附属病院で実施された同種造血幹細胞移植後の患者186例のデータを用いて、大腰筋の臍の高さの断面積と平均CT値から算出される大腰筋質量指数(PMI)とX線画像密度(RD)を用いて、それぞれ筋肉の量と質を判断した。 主な結果は以下のとおり。・17~68歳(中央値49)の成人患者186例を対象に 、同じ性・年齢群の中で最も低い四分位値(下位 25%)の患者を低 PMI 群と低 RD 群に割り付けた。46例(24.7%)が低PMI群に、49例(26.3%)が低RD群に割り付けられた。・初診からallo-HSCTまでの経過期間中央値は7ヵ月(範囲:2~46ヵ月)、95%の患者がECOG-PS(0-1)良好であった。・低RDは、移植後の非再発死亡率増加の有意な因子であった(調整後ハザード比[HR]:2.54、95%信頼区間[CI]:1.42~4.51、p

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ブタ心臓のヒトへの異種移植手術、初期の経過は良好/NEJM

 米国・メリーランド大学医療センターのBartley P. Griffith氏らの研究チームは、2022年1月7日、実験的なブタ心臓のヒトへの異種移植手術を世界で初めて行った。患者は、自発呼吸が可能になるなど良好な経過が確認されたが、約2ヵ月後の3月8日に死亡した。臓器不足の解消につながると期待された遺伝子編集ブタ心臓の移植の概要が、NEJM誌オンライン版2022年6月22日号に短報として掲載された。ECMO導入重症心不全の57歳男性 患者は、慢性的な軽度の血小板減少症、高血圧症、非虚血性心筋症を有し、僧帽弁形成術の既往歴がある57歳の男性で、左室駆出率(LVEF)10%の重症心不全により入院となった。複数の強心薬の投与が行われたが、入院11日目には大動脈内バルーンポンプが留置され、23日目には末梢静脈-動脈体外式膜型人工肺(ECMO)が導入された。 患者は、4つの心臓移植プログラムの審査を受けたが、いずれも許可されなかった。研究チームは、実験的な異種移植が、内科的治療や静脈-動脈ECMOの継続に劣る可能性はないと考え、米国食品医薬品局(FDA)に申請を行い、承認を得た。 今回、実施された異種移植の方法は、拒絶反応を起こさないよう10の遺伝子が編集されたブタドナー(Revivicor製)、免疫抑制薬であるヒト化抗CD40モノクローナル抗体KPL-404(Kiniksa Pharmaceuticals製)、XVIVO心臓灌流システム(XVIVO Perfusion製)を組み合わせた心臓保存療法である。移植後の初期経過:洞調律維持、拒絶反応なし 移植後、乏尿性急性腎不全が持続したため、腎代替療法が施行された。2日目には気管チューブが抜管され、胸部X線写真では肺野が明瞭に描出された。強心薬投与の必要はなく、移植後4日目にECMOから離脱した。 移植後6日目のSwan-Ganzカテーテル抜去前に、低用量ニカルジピンの投与下で、平均収縮期血圧は130~170mmHg、平均拡張期血圧は40~60mmHgで、肺動脈圧は収縮期32~46mmHg、拡張期18~25mmHgであり、中心静脈圧は6~13mmHgだった。心拍出量は5.0~6.0L/分で、体表面積当たりの1回拍出量は65~70mL/m2であった。また、異種移植心は70~90拍/分で洞調律を維持し、LVEFは55%以上を保持していた。 移植後12日目に腹膜炎が発症し、回復したものの非経口栄養に移行した。悪液質が悪化し、体重は入院時の85kgから術後の最低値で62kgまで減少した。 免疫抑制薬として、KPL-404のほかに、移植後1日目からミコフェノール酸モフェチルが投与されたが、顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)による治療で重度の好中球減少症が発現したため21日目に中止され、35日目からはタクロリムスの投与が開始された。 ドナー特異的抗体の値は、免疫抑制薬の導入後もベースラインを下回っており、移植後47日目まで低値で推移したが、43日目の免疫グロブリンの静脈内投与でIgG値が急激に上昇し、IgM値も上昇した。血清トロポニンI値は移植後に上昇したが、24日目にはベースラインの値に戻り、その後35日目に急激に上昇し始めた。 移植後34日目の心内膜心筋生検では、拒絶反応は認められなかった。患者は、心血管系のサポートなしにリハビリテーションが可能であり、異種移植心は拒絶反応を示すことなく正常に機能した。 移植後43日目に、傾眠が強くなり、気管挿管が行われた。予防対策を行っていたにもかかわらず、胸部X線と気管支鏡検査でウイルスまたは真菌感染を示唆する所見が得られた。また、微生物無細胞DNA(mcfDNA)検査では、ブタサイトメガロウイルス(pCMV)(suid herpesvirus 2とも呼ばれる)の顕著な増加が認められ、ウイルス感染の可能性が懸念された。ドナーの脾臓と患者の末梢血単核細胞(PBMC)を用いて定量的ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)による検証を行ったところ、両方の検体ともpCMV陽性であり、ドナーがpCMVに潜伏感染していた可能性が示唆された。47日目には、気管抜管が行われ、患者は室内でのリハビリテーションを再開した。異種移植の失敗:検死所見は典型的な異種移植の拒絶反応とは一致せず 移植後48日目、患者は109日ぶりにベッドから解放された。しかし、49日目、軽度の腹部不快感と膨満感に伴い、血清乳酸値が8時間で4mg/dLから11.2mg/dLに上昇し、低血圧が発生したため気管挿管が行われた。肢端チアノーゼが発現し、移植後初めて心拍出量の低下が示唆された。 心エコー図検査でLVEFは65~70%を示したが、左室壁厚(1.7cm)と右室壁厚(1.4cm)の著明な増大、および左室内腔サイズ(3.2~3.5cm)の縮小が認められ、global longitudinal strainの値は劇的に低下(悪化)した。患者家族と相談し、49日目の夕方、静脈-動脈ECMOが再導入された。 移植後50日目の2回目の心内膜心筋生検では、抗体関連型拒絶反応や急性細胞性拒絶反応はみられなかったが、赤血球漏出および浮腫による局所毛細血管損傷が認められた。トロポニンI値は上昇していた。異種移植心由来無細胞DNA(xdcfDNA)値は、異種移植心特異的IgG値やIgM値と共にピークに達していたことが、後に判明した。抗体関連型拒絶反応の非典型的な発現を疑い、治療が開始された。 移植後56日目の3回目の心内膜心筋生検では、病理学的抗体関連型拒絶反応(国際心肺移植学会[ISHLT]のGrade1)が確認された。間質への赤血球漏出や浮腫は、前回の生検時に比べて少なかったが、心筋細胞の40%が壊死していた。 研究チームは、異種移植心に不可逆的な損傷が生じていると判断し、患者家族と相談して移植後60日目に生命維持装置を停止させた。検死では、心臓の重量が移植時の328gから600gに増加していた。心筋細胞や心臓内皮細胞などの所見は、典型的な異種移植の拒絶反応とは一致せず、このような損傷をもたらした病態生理学的なメカニズムの解明に向けた研究が進行中だという。 著者は、「異種移植心の機能不全に、患者の重度の体力減退と術後の複雑な経過が重なり、移植後60日目に、それ以上の高度な支持療法は行わないこととなった」と結んでいる。

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最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM

最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM高齢者の2割には病気がないことを知っていますか?今から備えればまだ間に合うかもしれません。日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性は約87歳。でも、元気に自立した生活を送ることができる期間である「健康寿命」は、男性なら約72歳、女性なら約75歳と報告されています。日本人は最後の約10年を、支援や介護を受けて生きているのです。これらの現実をどうしたら変えられるか、最後の10年を人の助けを借りず健康に暮らすためにはどうしたらよいのか、その答えとなるのが「5つのM」。カナダおよび米国老年医学会が提唱し、「老年医学」の世界最高峰の病院が、高齢者診療の絶対的指針としているものです。【5つのM】Mobility……からだMind……こころMulticomplexity……よぼうMedications……くすりMatters Most to Me……いきがいニューヨーク在住の専門医が、この「5つのM」を、質の高い科学的エビデンスにのみ基づいて徹底解説。病気がなく歩ける「最高の老後」を送るために、若いうちからできることすべてを考えていきます。著者の山田氏のメッセージ私はこれまで全米最大の老年医学科を持つマウントサイナイ医科大学で仕事をする機会を得て、老年医学に関するさまざまなことを学んできましたが、その学びは「目から鱗」の連続でした。中でも、本書で用いた「5つのM」の視点が、レジデントや医学生の教育に極めて有効であることを目の当たりにしてきました。本書でご紹介した「5つのM」は、老年医学の臨床現場では毎日のように口にされるフレームワークです。そんな中、これは医学生やレジデントの教育だけでなく、患者教育にも有効活用できると思ったのがきっかけで、それがこの書籍の発刊につながりました。本書では、この「5つのM」のフレームを用いて、老化の過程とその予防法についてまとめました。本書は一般書ではありますが、1年以上かけて255本以上の老年医学領域の学術論文をもとに執筆しており、医療者の方にも老年医学のエッセンスを学んでいただくのに十分ご満足いただける内容になっているのではないかと思います。また、高齢になりさまざまな病気を抱えながら後悔をされる患者さんの姿を何度も目にしてきた経験から、「後悔しないためにできること」をたくさん詰め込んでおり、患者さんの予防医療教育などにもご活用いただけるのではないかと思っています。高齢者の診療にあたる医療者の方、そうでなくとも老化や老化予防にご関心のある方に、ぜひ手にとっていただければと思っています。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM定価1,980円(税込)判型四六判頁数394頁発行2022年6月著者山田 悠史(マウントサイナイ医科大学 老年医学科フェロー)

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筋肉量減少に、睡眠の満足感・夕食時刻・朝食の有無が関連/日本抗加齢医学会

 加齢とともに減少する筋肉量がどのような生活習慣と関連するのか、東海大学の増田 由美氏らが比較的健康な成人男子を調査し解析した結果、睡眠の満足感との有意な関連が示された。睡眠時間との関連は有意ではなかったという。さらに、60歳未満では20時までの夕食摂取、60歳以上では毎日の朝食摂取が筋肉量の維持に効果的であることが示唆された。第22回日本抗加齢医学会総会(6月17~19日)で発表した。筋肉量は睡眠障害の自覚レベルと飲酒に有意に関連 本研究の対象は、2014年4月1日~2020年6月30日に東海大学医学部付属東京病院で抗加齢ドックを受診した成人男性160名のうち、睡眠時無呼吸症、脳血管障害、肝機能障害の治療中の5名を除いた155名。In-bodyによる筋肉量、BMI、HDLコレステロール、LDLコレステロール、アディポネクチンを検査し、自記式質問票による睡眠時間(6時間未満/6時間以上)、睡眠障害の自覚レベル、喫煙習慣・飲酒習慣・運動習慣・朝食の有無、夕食開始時刻(18時以前/18~20時/20時以降)、入眠剤の服用の有無について、筋肉量との関係を相関分析および重回帰分析で検討した。さらに、60歳未満76名と60歳以上79名の2群に分け、各群において睡眠、朝食摂取、夕食時刻と筋肉量との関係を調べた。 筋肉量が睡眠などの生活習慣とどのように関連するのか調査し解析した主な結果は以下のとおり。・年齢、BMI、入眠剤の服用、喫煙習慣を調整した場合、睡眠障害の自覚レベル(睡眠の満足感)、飲酒が筋肉量と有意に関連していた。・60歳未満では、睡眠障害の自覚レベルが悪いほど、また夕食開始時刻が遅いほど、筋肉量が有意に減少した。・60歳以上では、睡眠障害の自覚レベルが悪いほど、また朝食を毎日摂取していない場合に筋肉量が有意に減少した。 増田氏は、本研究の結果から良質な睡眠による筋肉疲労の回復を示唆する可能性、睡眠の満足感が睡眠リズムの障害を反映している可能性を考察している。睡眠リズムの障害があると成長ホルモンの分泌低下や、グリア細胞の機能低下があることが報告されているという。なお本研究の限界として、横断研究であり、対象者数が少なく、運動強度を設定していないことなどを挙げている。

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第114回 療養病床の終焉、実態に即した「慢性期重症治療病床」へ

「療養病床の終焉がすぐそこに近づいてきた」。日本慢性期医療協会(日慢協)の武久 洋三会長は、会長職としては最後の定例記者会見となる5月19日、刺激的な発言をした。「今では療養病床は、病床の実態が療養ではなく、慢性期重症治療病床となっている。もはやこのような病床は療養病床とは言えない」との見解を述べた。療養病床の入院患者は、決して療養が必要な患者ではなく、むしろICU(集中治療室)に近いような重度の高齢者がほとんどであるとの現状認識を示したうえで、病床の名前を実態に即した「慢性期重症治療病床」にただちに変更すべきであると提案した。重症高齢患者を短期間の治療で日常生活に戻す役割に療養病床の変遷を見ると、まず1983年に特例許可老人病棟が導入され、1992年に療養型病床群が創設された。2000年には療養病棟入院基本料が新設され、現在に至っている。以前は療養が必要な病床として、高齢の寝たきり患者の受け入れを主に担っていたが、2006年に医療区分が導入され、重症である医療区分2・3患者の割合は「療養病棟入院基本料1」(以下、療養1)で8割以上、「療養病棟入院基本料2」(以下、療養2)で5割以上が求められている。2010年には療養病棟入院基本料が再編され、20対1の療養1と、25対1の療養2という看護師配置基準が入った。2018年に、25対1をやめ、20対1に一本化することが決定。介護保険制度の施行などにより、療養病床の役割は「重度の高齢患者を受け入れ、短期間の治療で日常生活に戻す」ことになっている。実際、日慢協会員病院は、療養1で50%以上の患者を日常生活に戻している実績がある。療養病床の「療養」という言葉には「養生」のイメージが強いが、現状は「治療」の要素が強い。それにもかかわらず、療養病床と呼ばれていることに対して、武久会長は異を唱えたわけだ。「療養的な病床はもうやめなさいということ」2022年度診療報酬改定も、療養病床が「治療」の病床でない場合は評価しない方針を示している。療養病床である地域包括ケア病棟に対して、救急医療提供などを行わない場合は入院料を5%減算するなど、複数の減算規定が盛り込まれた。「5%減算されたら、病院によっては収支トントン状態が少々赤字に転じる可能性がある。10%減算されると、完全に赤字になる」と武久会長。療養病棟入院基本料の経過措置病棟は、今回の改定でそれまでの15~25%減算となった。武久会長は「要するに、もうやめなさいということだ」と述べた。武久会長が2008年に日本療養病床協会の会長に推挙された際の条件として、協会名を日本慢性期医療協会にすることをお願いして現在の協会名に改称された。そして14年が経過し、武久会長は「会の名称を変えたのは正しかった。療養病床という病床名を慢性期重症治療病床に変えるべきだ」と訴えた。目指すは地域の医療ニーズに応えられる多機能化そのうえで、「急性期医療だけでは日本の医療制度は完遂しない。そして全床療養病床だけの病院は消滅するだろう。地域の高齢の慢性期患者や要介護者の急変も治療できないような病院は、地域で必要とされなくなる」と指摘。「これからの会員病院は慢性期多機能病院として、地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟を配置し、2次救急指定を取って自宅・居住系施設などの入所者の急変時対応を行い、地域多機能病院として地域の信頼を得る努力をするべきだ」と提言した。病院は看取りの場ではない。病院は治療の場である。治る見込みがある患者を治療する場である。看取りは介護医療院などで慎重に行うべきだろう。武久会長の考えは、療養病床を持つ病院に対して、地域の医療ニーズに応じた多機能化を求めている。

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