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GABAA受容体修正にアリール・ピラゾール誘導体

 イタリア・チッタデッラ大学のMaria Paola Mascia氏らは、異なる分子構造(柔軟vs.制約的)で特徴づけられ、リモナバントやAM251と化学的結びつきのある複数のアリール・ピラゾール誘導体について、GABAA受容体機能の修正能力を調べた。結果、その構造特性により、GABAA受容体で異なる活性を示すことが明らかにされた。2014年6月15日号(オンライン版2014年4月1日号)の掲載報告。 研究グループはアフリカツメガエルの卵母細胞を用いて、複数のアリール・ピラゾール誘導体の組換え型α1β2γ2LGABAA受容体機能を修正する能力を調べた。2電極電圧クランプ法を用いて、6Bio-R、14Bio-R、NESS 0327、GP1aとGP2a(0.3~30μM)の影響について評価が行われた。 主な結果は以下のとおり。・6Bio-R、14Bio-Rは、GABA誘発Cl-電流を強化した。・NESS 0327、GP1aとGP2aは、GABAA受容体機能に影響を及ぼさなかったが、6Bio-Rに対して拮抗作用を有した。さらにNESS 0327は、リモナバントによって引き起こされるGABAA受容体機能の強化を阻害した。・ベンゾジアゼピン結合部は、これら合成物の活性に関与するように思われた。・たとえば、フルマゼニルは6Bio-Rによって引き起こされるGABAA受容体機能の強化を拮抗させた。NESS 0327はロラゼパム、ゾルピデムの活性を低下させたが、その一方で、“典型的”なGABA作動性修飾物質(プロパノール、麻酔薬、バルビツール、ステロイド)の活性を拮抗させなかった。・α1β2受容体において6Bio-RはGABA作動性機能を強化したが、フルマゼニルは、6Bio-Rにより引き起こされる活性を拮抗することが可能であった。・GABAA受容体でのアリール・ピラゾール誘導体の活性は、それらの分子構造に依存する。これらの合成物は、αβγ結合部位、γサブユニットを伴わないα/β部位の両部位に結合しており、抗けいれん効果を有する可能性がある薬剤構造の提供につながる可能性がある。関連医療ニュース 統合失調症の病因に関連する新たな候補遺伝子を示唆:名古屋大学 抗認知症薬の神経新生促進メカニズムに迫る:大阪大学 統合失調症、双極性障害で新たに注目される「アデノシン作用」  担当者へのご意見箱はこちら

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BPSD治療にベンゾジアゼピン系薬物治療は支持されるか

 米国・テキサス大学サンアントニオ校のRajesh R. Tampi氏らは、認知症の行動・心理症状(BPSD)に対するベンゾジアゼピン系薬物治療の有効性と忍容性に関する、無作為化試験のシステマティックレビューを行った。その結果、現状の入手できたデータは、限定的ではあるが、BPSDへのベンゾジアゼピン系薬物治療をルーチンに行うことを支持しないものであったことを報告した。ただし特定の状況では使用される可能性があることも示唆されている。American Journal of Alzheimer's Disease and Other Dementias誌オンライン版2014年3月6日号の掲載報告。 研究グループは、ベンゾジアゼピン系薬物の使用について入手可能なデータを要約することを目的に、BPSD治療に関する無作為化試験をレビューした。5大主要データベース(PubMed、MEDLINE、PsychINFO、EMBASE、Cochrane Collaboration)をシステマティックに検索して行った。 主な結果は以下のとおり。・レビューの結果、無作為化試験5本が得られた。・ジアゼパムとチオリダジン(国内発売中止)を比較したもの1試験、オキサゼパム(国内未発売)とハロペリドールまたはジフェンヒドラミンを比較したもの1試験、アルプラゾラムとロラゼパムを比較した1試験、ロラゼパムとハロペリドールを比較した1試験、筋注(IM)ロラゼパムとIMオランザピン(国内未発売)またはプラセボと比較した1試験であった。・5試験のうち4試験のデータにおいて、BPSD治療の有効性について試験薬間の有意差は示されていなかった。・残る1試験で、チオリダジンがジアゼパムよりもBPSD治療についてより有効である可能性(better)が示唆されていた。・また1試験では、プラセボと比較した場合に試験薬の有効性がより高かった(greater)。・忍容性については、試験薬間で有意差はみられなかった。しかし5試験のうち2試験において、約3分の1の被験者が試験途中で脱落していた。・入手データの分析の結果、限定的ではあるが、BPSD治療についてベンゾジアゼピン系薬物のルーチン使用は支持されなかった。しかし、BPSDを有する人で他の向精神薬使用が安全ではない場合、もしくは特定の向精神薬についてアレルギーや忍容性の問題が顕著である場合はベンゾジアゼピン系薬物が使用される可能性があった。関連医療ニュース ベンゾジアゼピン使用は何をもたらすのか 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性

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認知症高齢者5人に1人が抗コリン薬を使用

 認知症を有する人に対する抗コリン薬の使用は、認知機能に悪影響を及ぼす。しかし、米国のコミュニティベースにおける認知症高齢者の抗コリン薬治療の頻度やその使用に関連する因子については、これまでほとんど検討されていなかった。米国・ヒューストン大学のSneha D. Sura氏らは、認知症高齢者における抗コリン薬の使用状況と使用に関連する因子を明らかにすることを目的に、米国民の非入院患者の代表的な集団であるMedical Expenditure Panel Surveys (MEPS)の2005~2009年のデータをレトロスペクティブに解析した。その結果、認知症高齢者の5人に1人が抗コリン薬を使用しており、その使用に気分障害、尿失禁および居住地域が関連していることを報告した。Drugs & Aging誌オンライン版2013年7月24日号の掲載報告。 地域在住の65歳以上の認知症患者を対象に、研究期間中の抗コリン薬の毎年の使用頻度、抗コリン薬使用に関連する因子について評価した。Anticholinergic Drug Scale(ADS)を用いて抗コリン薬を特定し、臨床的に意味のある抗コリン薬の使用(ADSレベル2または3)と関連する予測因子を明らかにするため、Anderson Behavioral Modelの概念的枠組みの範囲で多重ロジスティック回帰解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・MEPSの研究期間中、認知症高齢者は年間で合計156万人(95%信頼区間[CI]:134~173万人)いることが認められた。・認知症高齢者の約23.3 %(95%CI:19.2~27.5)が、臨床的に意味のある抗コリン薬の使用(ADSレベル2または3)を行っていた。・抗コリン薬の使用を必要とする因子の中でも、気分障害(オッズ比[OR]:2.19、95%CI:1.19~4.06)と尿失禁(同:6.58、2.84~15.29)に対して、より抗コリン薬を使用する傾向がみられた。・より高用量の抗コリン薬を使用する確率は、北東地域に在住している患者に比べ西部地域に在住している患者のほうが有意に低かった(OR:0.41、95%CI:0.17~0.95)。・以上より、認知症高齢者の5人に1人が臨床的に意味のある抗コリン薬の使用を行っていることが明らかになった。また、気分障害、尿失禁および居住地域が抗コリン薬の使用と有意に関連していることが示された。・この結果を踏まえて、著者は「臨床的に意味のある抗コリン薬に焦点を当て、薬物使用の質改善に向け一丸となった努力が求められる」と提言している。関連医療ニュース 抗精神病薬と抗コリン薬の併用、心機能に及ぼす影響 統合失調症治療にベンゾ併用は有用なのか? ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性

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アルツハイマー病、46.8%で不適切な薬剤が処方

 フランス・トゥールーズ大学のFrancois Montastruc氏らは、アルツハイマー病(AD)患者における潜在的に不適切な医薬品(potentially inappropriate medication:PIM)の処方実態を調べた。その結果、AD患者の2人に1人がPIMを処方されていること、そのなかでも脳血管拡張薬の頻度が多いことを報告した。そのうえで著者は、「AD患者への処方に際し、疾患特性および処方薬の薬力学/薬物動態学的プロファイルが十分に考慮されていないことも示唆された」と結論している。これまで、AD患者におけるPIMの使用に関する研究はほとんどなかった。European Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2013年4月16日号の掲載報告。 本研究は、軽度~中等度のADと診断された地域住民における、PIM処方の頻度およびそれに関連する臨床的因子を明らかにすることを目的に実施した。解析対象としたのは、専門施設で治療を受けているフランス人のADコホートを対象とした4年間の多施設共同前向き試験「REAL.FR試験」に登録された患者データ。PIMについてはLaroche listで評価し、多変量ロジスティック解析により関連する因子を検討した。 主な結果は以下のとおり。・AD患者684例が試験に登録された。平均年齢は77.9 ±6.8歳、女性が486例(71.0%)であった。・Laroche listに基づくと、PIMが1回以上処方されていた患者の割合は46.8%(95%CI:43.0~50.5%)であった。・処方されていたPIMは脳血管拡張薬が最も多く、全処方の24.0%(95%CI:20.9~27.3%)を占めていた。次いで、アトロピン製剤(17.0%、95%CI:14.1~19.8%)、長時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤(8.5%、95%CI:6.4~10.6%)の順であった。・アトロピン製剤投与患者の16%にコリンエステラーゼ阻害薬の使用がみられた。・多変量解析の結果、女性(オッズ比[OR]:1.5、95%CI:1.1~2.2)と、多剤服用(5種類以上、OR: 3.6、95%CI:2.6~4.5)の2つのみがPIM処方と関連する因子であった。関連医療ニュース ・抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か? ・日本人の認知症リスクに関連する食習慣とは? ・入院期間の長い認知症患者の特徴は?:大阪大学

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Aβ沈着は認知機能にどのような影響を与えるか

 米国・ピッツバーグ大学のBeth E. Snitz氏らは、認知症発症前のアミロイドβ(Aβ)沈着が認知機能低下と関連しているか否かを検討した。その結果、画像検査で認知症が確認される前の段階で、Aβ沈着が認められる患者は認められない患者に比べて実行機能が大きく低下していることを報告した。Neurology誌オンライン版2013年3月20日号の掲載報告。 認知症を発症していないがAβ沈着が高頻度(55%)に認められる超高齢者(90~100歳)のコホートにおいて、画像検査で確認される前の認知機能低下とAβ沈着との関連について検討を行った。Ginkgo Evaluation of Memory Study(GEMS)に登録され、試験を完了し認知症を認めない194例(平均年齢:85.5歳、範囲:82~95)を対象に、PIB(Pittsburgh compound B)-PETを施行した。また、神経画像検査の7~9年前のGEMS登録時に完了したさまざまな神経心理学的検査を基に、Aβ沈着の状況と実行機能との横断的関連を検討した。さらに、毎年認知機能を評価し、線形混合モデルを用いて長期的な評価も行った。 主な結果は以下のとおり。・2009年にAβ沈着が確認された症例についてGEMSスクリーニング期(2000~2002年)の状況をみたところ、Stroop test(p<0.01)、Raven's Progressive Matrices(p=0.05)において実行機能の低下、空間能力レベルの低下傾向が認められた(p=0.07)。・長期解析の結果、Rey-Osterrieth図形テストにおける即時再生および遅延再生、意味流暢性、Trail-Making TestのパートAおよびBにおいて有意な直線の傾きが認められた。・すなわち、Aβ沈着が認められる患者は認められない患者に比べて、画像検査で確認される前の段階で、実行機能が相対的に大きく低下していることが示された(ps<0.05)。・Aβ沈着が高頻度に認められる超高齢者では、視覚的記憶、意味流暢性、精神運動速度などの認知機能が低下しており、これは画像検査で認知症が確認される7~9年前から始まっていることが示された。・すなわち、Aβ沈着が認められる患者と認められない患者における、実行機能を主とする非記憶領域平均の差は、画像検査で認知症が確認される7~9年前に検出しうると考えられた。関連医療ニュース ・ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性 ・抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か? ・認知症患者に対する抗精神病薬処方の現状は?

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統合失調症に対するベンゾジアゼピン、最新レビュー知見

 統合失調症に対するベンゾジアゼピンの有効性と安全性について、システマティックレビューの結果、単独療法あるいは併用療法ともに投与に関する確実なエビデンスは現時点では確認できなかったことが、ドイツ・ミュンヘン工科大学付属病院Rechts der Isar ClinicのMarkus Dold氏らにより報告された。ベンゾジアゼピンの超短時間の鎮静効果、および急性期の興奮状態の統合失調症患者に対し鎮静のための投与を考慮すべきであるというエビデンスの質は低かったことが示されたという。Cochrane Library 2012年11月14日の発表報告。 研究グループは2011年2月に、以前に行った文献調査(2005年3月)のアップデートを行った。文献検索はCochrane Schizophrenia Groupの試験レジスターを対象とし(言語の規制なし)、関連研究の参考文献調査や、不明データを入手するため論文著者への連絡なども行った。選択適格基準は、統合失調症や統合失調症様精神病(両方またはどちらか)の薬物療法として、ベンゾジアゼピン(単独、併用含む)と抗精神病薬またはプラセボを比較した全無作為化試験とした。解析はMDとCLのレビュワーが独立的に行った。二分変数アウトカムについてリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出し、連続データを平均差(MD)と95%CIを用いて解析し、組み込んだ試験(バイアスリスクツール適用)からの事前選択アウトカムをそれぞれ評価した。 主な内容は以下のとおり。・レビューには、34試験(2005年解析より3試験増)、2,657例が組み込まれた。大半の試験は、サンプル数が少なく、短期試験で、アウトカムデータが不完全であった。・プラセボと比較したベンゾジアゼピン単独療法に関する試験は8試験であった。・重大臨床的効果がみられなかった被験者の割合は、ベンゾジアゼピン群とプラセボ群で有意な差はみられなかった(382例、6試験、RR:0.67、95%CI:0.44~1.02)。評価結果は、全身・精神状態のさまざまな評価スケールが用いられており整合性がなかった。・抗精神病薬単独療法とベンゾジアゼピン単独療法とを比較した試験は14試験であった。・重大臨床的効果の評価において、統計的に有意な差がみられた試験グループはなかった[(30分)44例、1試験、RR:0.91、95%CI:0.58~1.43、(60分)44例、1試験、0.61、0.20~1.86、(12時間)66例、1試験、0.75、0.44~1.30、(プール短時間試験)112例、2試験、1.48、0.64~3.46]。・抗精神病薬群と比べてベンゾジアゼピン群のほうが、20分、40分時点で至適な鎮静を得られた被験者が有意に多かった。全身・精神状態や副作用の発生について、有意な群間差は確認できなかった。・抗精神病薬+ベンゾジアゼピンを併用した増強療法と抗精神病薬単独療法とを比較した試験は20試験であった。重大臨床的効果があり統計的に有意な改善が示される可能性があったのは、併用療法での最初の30分だけであった[(30分)45例、1試験、RR:0.38、95%CI:0.18~0.80、(60分)45例、1試験、0.07、0.00~1.03、(12時間)67例、1試験、0.85、0.51~1.41、(プール短時間試験)511例、6試験、0.87、0.49~1.54]。・全身・精神状態の解析は、30分、60分時点での至適な鎮静を除いて、群間差は示されなかった[(30分)45例、1試験、RR:2.25、95%CI:1.18~4.30、(60分)45例、1試験、1.39、1.06~1.83]。・ベンゾジアゼピン治療に対する忍容性は、全体に漸減率が測定されたことで問題はないようであった。副作用は概してあまり報告がなかった。統合失調症でのベンゾジアゼピン治療(とくに長期的な併用戦略)のエビデンスを明らかにするために、さらなる質の高い規模の大規模な研究プロジェクトが求められる。関連医療ニュース ・ベンゾジアゼピン系薬剤の使用で抗精神病薬多剤併用率が上昇?! ・アルツハイマー病の興奮、抗精神病薬をどう使う? ・ベンゾジアゼピン認知症リスクの関連

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(34)〕 高齢者の不安―古くて新しい問題

本論文は、ベンゾジアゼピンの新規使用が認知症発症の危険因子であるという報告である。認知症の前駆期あるいは初期には抑うつが多くみられることから、ベンゾジアゼピンを処方される機会も多いはずだという批判に対して、本研究では抑うつ症状も統制した多変量解析の結果も示しており、この点もぬかりがない。 さて、高齢者へのベンゾジアゼピンの使用は古くからある難問である。例えばベンゾジアゼピン系薬剤の使用は、高齢者の大腿骨近位部骨折のリスクを大幅に増加させる1)。高齢者へのベンゾジアゼピンの使用を積極的に推奨するガイドラインはないと思われる。一方で、現実にはプライマリケアの領域では不安を訴える高齢者がそれこそ毎日受診していることだろう。このような場合、伝統的にエチゾラム少量投与などが行われることが多いようだ。一応触れておくと、不安障害は過小評価されるべきではなく、不安障害が心血管系合併症を伴うことで有意に死亡率を上昇させるという報告2)もある。 ガイドライン上は否定されるが、ベンゾジアゼピンは、わが国だけではなく現実には多く処方されているようだ。各国の高齢者が当該薬品を使用している(フランスで30%、カナダとスペインで20%、オーストラリアで15%)というIntroductionの記載は率直であり、興味深い。 高齢者の不安が根深いものであることにも配慮が必要だ。老年期に失うものは多く、地位、収入、健康、仲間、自立、居住設備、生命などがあげられる3)。精神病理学者の桜井図南男は「老人は不安に取り囲まれているといってよいと思う」と述べ、同時に「老人の心は、自分が老人になってみないと本当にはわからない」とも述べている4)。結論としては、やはり高齢者へのベンゾジアゼピンの使用は推奨されない、となるのだが、長年臨床現場では多用されていることの背景に少し触れてみた。 なお、不安が長期にわたる、不安内容が妄想的である、等の場合は精神科へ紹介していただきたい。このような場合はむしろベンゾジアゼピンを処方しない治療組立が必要になるかもしれない。いずれにしても、高齢者が不安を感じない世の中になってほしいものである。

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ベンゾジアゼピン認知症リスクの関連:PAQUID試験

 ベンゾジアゼピンの新規使用により認知症リスクが増大することが、フランス・ボルドー・セガレン大学のSophie Billioti de Gage氏らが実施したPAQUID試験で示された。多くの先進国では、診療ガイドラインの有無にかかわらず、高齢者へのベンゾジアゼピンの処方が広く行われ、習慣化している場合も多いという。ベンゾジアゼピンの短期投与の効果はよく知られているが長期投与の有害作用は明確ではなく、認知機能に対する遅発性の有害作用(認知機能低下、認知症)をもたらす可能性が、症例対照試験やコホート試験で指摘されている。BMJ誌2012年10月27日号(オンライン版2012年9月27日号)掲載の報告。認知症リスクを前向きコホート試験で評価 PAQUID試験は、加齢に伴う脳の変化の検討を目的に、南フランスで実施されたプロスペクティブなコホート試験。1987~1989年に、ジロンド県とドルドーニュ県に居住する65歳以上の一般住民から無作為に選ばれた3,777人が登録された。 今回の検討では、登録開始から3年間はベンゾジアゼピン系薬剤を使用しておらず、5年目までに認知症を発症していない住民1,063人(平均年齢78.2歳)を解析の対象とした。フォローアップ期間15年、ハザード比は1.60 15年のフォローアップ期間中に253人が認知症と診断された。ベンゾジアゼピンの新規使用により認知症のリスクが有意に増大した[多変量調整後ハザード比(HR):1.60、95%信頼区間(CI):1.08~2.38]。うつ症状の存在を考慮した感度分析でも同様の関連を認めた(HR:1.62、95%CI:1.08~2.43)。 フォローアップ期間中にベンゾジアゼピンの使用を開始した参加者のプール解析では、認知症の発症との有意な関連が認められた(HR:1.46、95%CI:1.10~1.94)。補足的なコホート内症例対照研究を行ったところ、ベンゾジアゼピン使用者は非使用者に比べ認知症のリスクが50%以上増大していた[調整オッズ比(OR):1.55、95%CI:1.24~1.95]。 使用歴があるが現在は使用していない者(OR:1.56、95%CI:1.23~1.98)と、現在使用中の者(OR:1.48、95%CI:0.83~2.63)の認知症リスクはほぼ同じだったが、有意差は前者にのみ確認された。 著者は、「ベンゾジアゼピンの新規使用により認知症リスクが増大することが示された」と結論し、「医師は有害事象の可能性を考慮しつつ、過度な頻用は慎むよう患者に注意をうながすべき」と指摘する。

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認知症のエキスパートドクターが先生方からの質問に回答!(Part2)

CareNet.comでは10月の認知症特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より認知症診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、朝田 隆先生にご回答いただきました。今回は残りの5問について回答を掲載します。6 アルツハイマー病と血管性認知症を簡単に鑑別する方法はあるか? 血管性認知症の具体的な治療方法は?6 この鑑別方法は認知症医療の基本と言えるテーマですね。鑑別については、血管性認知症では片麻痺をはじめとする神経学的な所見があり、その発症と認知症の発症との間に時間的な密着性があることが基本かと思います。そのうえで、段階的な悪化や、障害される認知機能の不均等さ(斑認知症)などの有無が鑑別のポイントになるでしょう。ところで、かつてはわが国で最も多いのは血管性認知症で、これにアルツハイマー病が次ぐとされていました。ところが最近では、両者の順位が入れ替わったとされます。また実際には、両者が合併した混合型認知症が最も多いともいわれます。それだけに、この鑑別は二者択一の問題から、両者をどう攻めたら効率的かの方略を考えるうえでの基本、という新たな意味を持つようになったと思います。7 アルツハイマー病とてんかんとの鑑別点は?7 認知症もどきの「てんかん」は最近のトピックスになっていますね。てんかんはややもすると子どもの病気というイメージがありましたが、最近では初発年齢が高くなる傾向があり、患者数も高齢者に多いという事実が知られるようになりました。てんかんも、明らかなけいれんを伴うタイプであれば、認知症との鑑別は簡単です。ところが、けいれん発作がないタイプのてんかんもあります。とくに海馬付近に発作の焦点をもつケースでは、主症状が健忘ということが少なくありません。注意深く観ているとそのような人では、時に数秒から数分、「ぼーっ」として心ここにあらずという状態が生じがちです。これが家族や同僚など周囲の人に気づかれていることも少なくありません。本人にはこのような発作中のことは、ほぼ記憶に残りません。また傍目には普通に過ごしているように見える時であっても、本人はぼんやりとしか覚えていないことがあります。このような状態が、周囲の人には認知症ではないかと思われてしまうのです。8 薬物治療を開始する際、専門医にアルツハイマー病の診断をしてもらうべきか? また、精神科へ紹介すべきなのはどのようなケースか?8 これもまた悩ましい問題ですね。と言いますのは、すごく診断に迷うような例外的なケースは別ですが、最も多い認知症性疾患はアルツハイマー病ですから、普通の認知症と思われたら、即アルツハイマー病という診断になるかもしれません。それなのにいちいち専門医にアルツハイマー病の診断をしてもらうべきなのか?というのもごもっともなことです。しかし、時としてアルツハイマー病と誤診されるものに、たとえば意味性認知症や皮質基底核変性症など、各種の変性性認知症があります。あるいは正常圧水頭症も、最大の可逆性認知症に位置づけられるだけに要注意です。臨床経過、神経心理学的プロフィール、神経学的所見、脳画像所見などから、これらとの鑑別がついているという自信があれば、紹介は不要でしょう。逆に、何となくひっかかりを覚えたら、必ず専門医に相談するようにされていれば、後悔を生まないことでしょう。次に、精神科医であれば誰でも認知症が診られるというわけではありません。しかし、他科の医師との比較で精神科医が得意とするのは、幻覚妄想などの精神症状や攻撃性・不穏興奮などの行動異常(両者を併せてBPSD)への対応でしょう。とくに暴力が激しくなった認知症のケースでは自傷他害の危険性も高いですから、早めに対応設備のある精神科の専門医に依頼されるようにお勧めします。9 抗アルツハイマー病薬の使い分けは? また、増量、切り替え、追加のタイミングは?9 ここでは、現在わが国で流通している抗アルツハイマー病薬の特徴と処方の原則を述べます。これらの薬剤は、コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬に二分されます。前者にはドネペジル(商品名:アリセプト)、ガランタミン(同:レミニール)、リバスチグミン(同:イクセロン、リバスタッチ)の3種類があります。後者はメマンチン(同:メマリー)です。前者について、どのようなタイプのアルツハイマー病患者にはどの薬が適切といったエビデンスレベルは今のところありません。総じて言えば、どれもそう変わらない、同レベルと言っても大きな間違いではないでしょう。たとえ専門医であっても、3つのうちのどれかで始めてみて、効果がないとか副作用で使いづらい場合に、次はこれでというパターンが一般的かもしれません。増量法は、それぞれ異なりますが、ガランタミン、リバスチグミンの場合は、副作用のために最大用量の24mg/日、18mg/日まで増量せずに中間用量を維持した方がよい場合もあります。適応については、ドネペジルは軽症から重症まですべての段階のアルツハイマー病に適応があります。野球のピッチャーにたとえるなら先発完投型と言えます。これに対してガランタミン、リバスチグミンは軽度と中等度例を適応としますので、先発ながら途中降板のピッチャーです。NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンについては、中等度と高度の例が適応ですからリリーフ専門のピッチャーと言えるでしょう。使用上の特徴として、コリンエステラーゼ阻害薬は複数処方できませんが、コリンエステラーゼ阻害薬と本剤の併用は可能なことがあります。この薬は原則として1週間ごとに増量していきます。ところが、わが国では15~20mg/日の段階で、強い眩暈や眠気などの副作用を来す例が少なくないことがわかっています。この副作用を防止するために、2~4週間毎に増量する方法を勧める専門医もいらっしゃいます。10 BPSDに対する抗不安薬や気分安定薬などの上手な使い方は?10 BPSDに対する治療の基本は薬物治療ではなく、対応法の工夫・環境調整やデイケアも含めた非薬物療法にあります。薬物は、それらでだめな場合に使うセカンドチョイスと位置づけたほうがよいと思われます。その理由として、せん妄や幻覚・妄想など精神面のみならず、錐体外路症状そして転倒などの副作用があります。また高齢者では10種類以上の薬剤を服用していることも珍しくありませんから、処方薬を加えることでさまざまな副作用を生じるリスクは指数関数的に上昇します。そうは言っても薬物治療が求められるのは、暴言・暴力、不眠・夜間の興奮、幻覚・妄想などのBPSDが激しいケースでしょう。このような場合に向精神薬を処方するとしたら、とくに以下の点を考慮してください。筋弛緩・錐体外路症状などの易転倒性を惹起する可能性、それに意識障害を起こす危険性です。そうなると、ほとんどの抗精神病薬(メジャートランキライザー)、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬は使えません。また三環系の抗うつ薬も同様です。そこで、あくまで私的な方法ですが、私は漢方薬を好んで使います。抑肝散、抑肝散加陳皮半夏などが主です。抗不安薬では、鎮静効果を狙って非ベンゾジアゼピン系のタンドスピロン、睡眠薬としてはむしろ睡眠・覚醒のリズム作りを狙ってラメルテオンを使うことがあります。こうした薬剤で無効なときには、バルプロ酸やカルバマゼピンといった抗てんかん薬も使います。どうにもならない激しい暴力・攻撃性には最後の手段として、スルトプリドをごくわずか(20~30mg/日)処方します。多くの場合、適応外使用ですから、このことをしっかり説明したうえで処方すべきでしょう。

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アルツハイマー病の興奮、抗精神病薬をどう使う?

 アルツハイマー病患者にしばしばみられる精神症状や興奮、攻撃性に苦慮することは少なくない。このような症状に対し抗精神病薬が使用されることもあるが、使用中止による症状再発の危険性は確立されていない。Devanand氏らは、アルツハイマー病患者の精神障害や興奮に対する抗精神病薬の使用を中止した際の再発リスクを検証した。N Engl J Med誌2012年10月18日号の報告。 精神障害や興奮、攻撃性により抗精神病薬リスペリドンを16週間投与されたアルツハイマー病患者を対象としたオープンラベル試験。リスペリドンによる治療に反応した患者を二重盲検により以下3群に割り付けた。第1群はリスペリドンを32週間継続投与、第2群はリスペリドン投与を16週間行った後、プラセボを16週間投与、第3群はプラセボを32週間投与。主要評価項目は精神障害および興奮の再発までの期間とした。主な結果は以下のとおり。・180例の患者がリスペリドンの投与を受けた(平均用量:0.97㎎/日)。・精神障害や興奮の重症度は減少したが、錐体外路症状の軽度な増加が認められた。112例の患者が治療反応基準を満たし、そのうち110例に無作為化が行われた。・無作為化後、最初の16週では、プラセボ投与群はリスペリドン投与群と比較し、再発率が高かった(60% [第3群:24例/40例] vs 33% [第1、2群:23例/70例];p=0.004、プラセボ群のハザード比:1.94、 95%CI:1.09 ~3.45;p=0.02)。・次の16週間では、プラセボに切り替えた群はリスペリドン継続投与群と比較して、再発率が高かった(48% [第2群:13例/27例] vs 15% [第1群:2例/13例];p=0.02、ハザード比:4.88、95% CI:1.08~21.98;p=0.02)。・少ない患者数での比較ではあるが、無作為化後の各群における有害事象および死亡率について、とくにはじめの16週において有意な差は認められなかった。・精神障害や興奮のためリスペリドンを4~8ヵ月投与されたアルツハイマー病患者では、リスペリドン中止と症状再発リスクとの関連が認められた。関連医療ニュース ・せん妄はアルツハイマー病悪化の危険因子! ・認知症患者に対する抗精神病薬処方の現状は? ・ベンゾジアゼピン系薬剤の使用で抗精神病薬多剤併用率が上昇?!

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認知症患者に対する抗精神病薬処方の現状は?

 認知症患者の治療では、問題行動や精神症状をコントロールするために抗精神病薬が処方されることもある。英国における認知症患者の死亡数に関する報告によると、抗精神病薬の処方と関連付けられた認知症患者の年間死亡数は約1,800名といわれている。英国のChild氏らは、認知症患者に対する抗精神病薬処方を制限することの意義について検討を行った。BMC Psychiatry誌オンライン版2012年9月25日号の報告。 本研究は、メドウェイのプライマリケアトラスト(PCT)におけるプライマリケア施設で実施された。2つのステージによる介入を行った。まず、抗精神病薬が処方されている認知症患者を特定するため、薬剤師がプライマリケア情報システム(認知症登録を含む)を検索した。次に、プライマリケア医により抗精神病薬が処方された認知症患者の対象薬剤のレビューを行うため、専門薬剤師がデータ検索で特定した。主な結果は以下のとおり。・59施設の認知症登録患者1,051例のうち、低用量の抗精神病薬が処方されていた患者は161例(15.3%)であった。・グループホームなどに入居している認知症患者は、自宅で生活している方と比較し、抗精神病薬の処方率が約3.5倍高かった(25.5%[118/462] vs 7.3%[43/589]、p<0.0001[Fisherの正確確率検定])。・認知症患者に対し低用量の抗精神病薬処方を行っていなかった施設は26件だった。・低用量の抗精神病薬が処方されていた161例のうち、91例は治療中に精神保健サービス等に参加していた。残りの70例について、薬局主導で抗精神病薬の処方を見直した結果、43例(61.4%)で中止または減量することができた。関連医療ニュース ・ベンゾジアゼピン系薬剤の使用で抗精神病薬多剤併用率が上昇?! ・難治性うつ病に対するアプローチ「SSRI+非定型抗精神病薬」 ・AD患者におけるパッチ剤切替のメリットは?

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睡眠呼吸障害がある高齢女性、認知障害・認知症の発症リスク1.85倍に

高齢女性の睡眠呼吸障害は、軽度認知障害や認知症の発症リスクを1.85倍に増大することが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のKristine Yaffe氏らが、認知症の認められない高齢女性約300人を対象とする前向き観察試験を行った結果によるもので、JAMA誌2011年8月10日号で発表した。反復性覚醒や間欠性低酸素血症を特徴とした睡眠呼吸障害は高齢者によくみられ、これまでの断面調査で、低い認知能力との関連が示唆されているものの、認知障害発症につながるかどうかについては明らかにされていなかった。認知症のない高齢女性298人を、平均4.7年追跡研究グループは、2002年1月~2004年4月にかけて、認知症の認められない高齢女性298人[平均年齢82.3歳(SD 3.2)]について、終夜睡眠ポリグラフィを行い、2006年11月~2008年9月に測定された認知状態(正常、認知症、軽度認知障害)との評価を行った。睡眠呼吸障害の定義は、睡眠中1時間につき無呼吸・低呼吸指数15以上とし、多変量解析にて、年齢、人種、ボディマス指数、教育レベル、喫煙の有無、糖尿病・高血圧症の有無、薬物療法の有無(抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、非ベンゾジアゼピン系抗不安薬)、基線での認知スコアについて補正を行い、低酸素症、睡眠の分断および持続が、軽度認知障害や認知症の発症リスクと関連しているかを調べた。追跡期間の平均値は4.7年だった。認知障害などの発症、睡眠障害のない人では約31%、ある人では約45%その結果、睡眠呼吸障害の認められない193人では、軽度認知障害や認知症を発症したのは60人(31.1%)だったのに対し、同障害が認められた105人では47人(44.8%)であり有意に高率だった(補正後オッズ比:1.85、95%信頼区間:1.11~3.08)。また、酸素脱飽和指数の上昇(15回/時以上)や無呼吸・低呼吸時間が睡眠時間の7%超の場合も、いずれも軽度認知障害や認知症の発症リスク増大との関連が認められた。それぞれ補正後オッズ比は1.71(95%信頼区間:1.04~2.83)、2.04(同:1.10~3.78)だった。一方で、睡眠の分断(覚醒回数/時、覚醒時間を低中高に分類し評価)および睡眠持続時間(総睡眠時間を低中高に分類し評価)についてはいずれも関連が認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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