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エキスパートに聞く!「喘息治療の最新事情(成人編)」Q&A Part2

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。成人気管支喘息について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。嗄声への対処法について教えてください。嗄声は吸入ステロイド薬による喉頭への影響で起こる副作用です。嗄声に対して、うがいは重要ですので吸入のタイミングは、うがいがしやすい洗顔時がよいかと思います。しかしながら、うがいによって喉頭に到達した吸入ステロイド薬が必ずしも除去できるわけではありませんので、その点は念頭に置いていただければと思います。また、食事の直前に吸入することで、喉頭に付着している薬剤が食物とともに胃に送られ、嗄声が軽減されることもありますので、試してみる価値はあるかと思います。製剤的な観点からいうと、一般にエアロゾル製剤は嗄声を来しにくいといえます。なかでもプロドラックのシクレソニド(商品名:オルベスコ)は嗄声の影響が少ないとされていますので、お試しになるのもよいと思います。今後、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)が喘息の適応を取得すると聞いていますが、難治性喘息における効果や使用方法について教えてください。LAMAの知見はそれほど多くありませんが、吸入ステロイド薬でコントロール不十分な症例における上乗せ効果がLABAと同等であることが、最近報告されています。従来、喘息の適応がなかったため、吸入ステロイド薬にまずLAMAを上乗せするということはありませんでしたが、今後、知見が集積し、保険適用も通れば、そのような治療も行われるでしょう。これまでLAMAは、喘息ではβ2刺激薬に比べて効果が弱いと理解されており、LAMAがLABAと比較して同等であるかについてはさらに検討する必要があります。また、COPDを合併する喘息や、LABAで頻脈や振戦などの副作用が出るような患者さんにはLAMAの選択がよいと思います。さらに、喀痰細胞を使った研究で好酸球が少なく、好中球が多い患者さんにはLAMAの有効性が高いという報告もあるので、この点も今後使い分けのポイントになる可能性があります。

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日誌からスマートフォンへ「チェンジ!喘息」患者さんアプリ 一人一人の患者さんの自分に合った治療をサポート

2012年10月、アストラゼネカ株式会社とアステラス製薬株式会社は、喘息患者を対象にした無料アプリ「チェンジ喘息!アプリ」の提供を開始した。そこで、当アプリ開発に携わったアストラゼネカ株式会社プライマリケア事業部 太田篤氏に、開発の背景とその狙いについて聞いた。喘息治療の問題点を解決するために喘息治療の問題点は二つ。治療アドヒアランスと医師・患者間のコミュニケーションである。この二つの問題点のサポートを目的にアステラスと共同でアプリを開発したという。本邦の喘息の治療アドヒアランスは、1年間継続受診率30%程度と低い。多くの患者さんは症状が良くなると治療が終了したと判断し、服用を中断してしまう。その間、気道炎症は悪化し、症状の増悪を招き、最悪の場合は喘息死にいたる。また、医師・患者間のコミュニケーションについても、患者さん自身の状況が医師に上手く伝えられないなど医師と患者さんの間にギャップが存在することが明らかになっている。アラート機能が改善する治療アドヒアランス向上主なアプリ機能お薬服用入力機能(アラート機能付き)喘息状態入力機能グラフ機能ソーシャルネットワーク機能喘息の長期管理には継続的な服薬が重要であることはいうまでもない、しかし、忙しい日常生活の中、服薬を忘れてしまうことも少なくない。そこで、確実な服薬をサポートするため、毎日決まった時間に服用タイミングを知らせるアラート機能を付けた。また、服薬時間が異なる複数の薬剤を服用するというケースも少なくないが、このアラートは薬剤ごとに設定できる。喘息手帳は家に置いたままだが、常に持ち歩くというスマートフォンの特性を生かした実用的な機能である。薬剤の服用時間を設定できるアラート機能薬剤ごとに時間設定することも医師・患者間コミュニケーションを改善するグラフ機能適切な喘息治療のためには、服薬状況と喘息症状が医師と患者さんの間で共有されなければならない。しかし、患者さんは医師を前にすると自分の状態を上手く伝えられない傾向がある。そのため、服薬状況と喘息症状が経時的にグラフ化される機能を付けた。服薬状況は“はい”か“いいえ”で入力(薬剤ごとの入力も可能)。喘息状態とその時の気分を入力は、選択ボタンをクリックするだけで、データが自動的にグラフ化される。簡便で誰でも使える設計である。診察時に患者さんがこの情報を医師に見せることで、服薬状況とその際の状態が客観的な情報として共有される。また、グラフを見せることが患者さんにとって話しやすい環境を作る効果もあるようだ。その日の体調や喘息状態のコメントを入力コメントはグラフ化されて見ることができ、アバターを通した発言として共有化される入力情報のグラフ表示喘息の変動性をカバーする機能喘息は変動性疾患であり、毎日服薬していても、気候の変化など何らかの増悪要因に晒されると、急激に悪くなることがある。そのため、アプリには毎日の天気予報が出る。また、花粉飛散状況や湿度などから割り出される喘息指数も表示される。症状の変化を予測することは困難だが、このように予め情報を知ることができると対処方法はまったく異なってくるという。天気予報と喘息指数が表示される患者さん同士で情報共有し治療モチベーション向上もう一つの機能として、このアプリを使っている患者さん達の状態や服薬状況が参照できるソーシャルネットワーク機能がある。同じ環境にいる人たちと情報を共有することで使用を継続できるようになる。また、患者さんは絶えず自分の境遇を理解して欲しいと願っている。ほかの患者さんが頑張っている様子を見たり、体験を共有することで、連帯感が得られ、治療へのモチベーション向上も期待できる。喘息の状態と治療薬服用状況を共有できる喘息の継続教育もサポート近年、喘息治療における患者さん教育の重要性が訴えられている。このアプリをダウンロードすると、アストラゼネカ社とアステラス社が運営する喘息患者向け情報サイト「チェンジ!喘息」へも容易にアクセスできる。アプリを使うことで継続的な喘息教育もサポートされる訳である。ITが喘息の長期管理を進化させる最後に今後の展開について聞いた。今回のアプリでは、従来にはなかった“患者さんからのメッセージ発信”の第一歩を作ったが、急速な進化を遂げているソーシャルネットワーク機能の活用は今後も様々な方向で考えたいという。同アプリは10月の公開後から多くのダウンロードがあり、医師からも「困っていた継続服薬に役立つ」といった声が寄せられるなど好評だという。口頭での情報交換から喘息日誌に、そして今デジタルへと情報媒体の変化が起こっている。ITの進化が喘息長期管理に及ぼす影響は今後も加速してくであろう。

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エキスパートに聞く!「喘息治療の最新事情(成人編)」Q&A Part1

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。成人気管支喘息について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。高齢者にも吸入が十分可能な薬剤について教えてください。まず、ドライパウダー製剤とエアロゾル製剤の違いについてよくご理解いただき、各製剤を使い分けていただく必要があります。ただし、いずれの製剤でも十分な吸入指導は必須です。とくに高齢者の場合、一度説明をしても理解していないケースや忘れてしまうケースもあるので、繰り返しの吸入指導がきわめて重要です。ドライパウダー製剤ではある程度の吸気流量が必要ですので、吸気筋力が低下した高齢者にはエアロゾル製剤が有用です。ただ、エアロゾル製剤は速い速度で噴射される薬剤をゆっくり吸入する必要があり、手技に若干難しさがあります。うまく吸入できない高齢者では、スペーサーを併用していただければと思います。また、高齢者では認知症で吸入剤がうまく使えない、あるいは関節リウマチなどでエアロゾルが押せない方もいます。そのような場合には、介助者や家族にも吸入指導を行い、患者さんの吸気に合わせてエアロゾル製剤を口に吹き込むことで治療効果が得られます。最初から吸入ステロイド薬(ICS)/長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤で治療すべき患者さんと、吸入ステロイド薬のみでよい患者さんの判別方法について教えてください。呼吸機能検査が可能な場合、気流閉塞(閉塞性障害)が強くみられる患者さんには吸入ステロイド薬単剤よりも配合剤が適しているかもしれません。また、自覚症状が強い(とくに夜間眠れないような症状が続いている)患者さんにも、配合剤のほうがよいかと思います。しかしながら、吸入ステロイド薬単剤でもよくなる患者さんも多くおられますので、高価な配合剤の乱用は避けていただきたいと思います。難治性喘息に対する“奥の手”について教えてください。吸入ステロイド薬や配合剤を投与しても効果が乏しい、または悪化するような場合、製剤を変えることで改善することがしばしばあります。そのため、難治性喘息と思われるケースでは複数の薬剤を試していただき、それでも効果が不十分な場合には、ロイコトリエン受容体拮抗薬や徐放性テオフィリン製剤を併用してください。また、粒子径の大きいドライパウダー製剤で効果が不十分な場合には、粒子径の小さいエアロゾル製剤を上乗せすると、奏効することも少なくありません(ただし保険の査定にはご注意ください)。また、咳が強い難治性喘息の患者さんに対しては、トロンボキサン合成酵素阻害薬やトロンボキサンA2受容体拮抗薬が奏効することがあるので検討するとよいでしょう。さらに、近年は胃食道逆流症(GERD)の合併例が増加しており、そのような症例ではGERD治療薬を上乗せすることで、咳が改善することもしばしばあります。とはいえ、吸入手技を徹底するだけで症状がよくなることもありますので、基本に立ち返り、あらためて吸入指導を行っていただくことも重要だといえます。

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Dr.倉原の 喘息治療の不思議:知られざる喘息のリスク因子

はじめに喘息の患者さんを診療する場合、発作を起こさないようにコントロールすることが重要です。そのため、喘息治療薬を使いこなすだけでなく、患者さんの喘息発作の誘発因子を避ける必要があります。喘息発作のリスク因子として有名なのは、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎と同様のアレルゲンです。たとえば、スギ花粉、ブタクサ、ハウスダスト、ダニなどが挙げられます。しかし、世の中にはこんな因子によって喘息を起こすことがあるのか?という“軽視されがちなもの”や“知られざるもの”があります。教科書的なリスク因子はさておき、少し「へぇ」と思えるようなものを紹介しましょう。ストレス呼吸器内科医以外には実はあまり知られていませんが、ストレスは喘息のリスク因子として教科書的に重要です。これには炎症性サイトカインの産生亢進が関与していると考えられています。呼吸器疾患を診療している医師の間でも、ストレスは意外と軽視されがちなリスク因子だと思います。Busse WW, et al. Am J Respir Crit Care Med. 1995;151:249-252.徹夜明けや過労などの身体的ストレスによっても喘息発作が起こりやすいことが知られています。受験前、面接前、入社前、五月病といった精神的ストレスによっても喘息発作を起こすことがあります。私もそういった患者さんを何人か外来で診ています。世界的にも最大規模のストレスとして数多くの研究がなされたアメリカ同時多発テロ事件では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と喘息の関連が指摘されています。Shiratori Y, et al. J Psychosom Res. 2012;73:122-125.Centers for Disease Control and Prevention (CDC). MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2002;51:781-784.水泳喘息に対する呼吸リハビリテーションの一環として水泳が知られていますが、その反面、水泳そのものが喘息のリスクではないかと考える研究グループもあります。しかしながら、メタアナリシスではその関連は強いとは結論づけられていません。私の外来にも、ある水泳競技をしていた喘息患者さんがいました。その患者さんが引退後に吸入ステロイド薬のステップダウンができたのは、水泳をやめたからなのかどうか、いまだに答えは出ていません。Paivinen MK, et al. Clin Respir J. 2010;4:97-103.Goodman M, et al. J Asthma. 2008;45:639-647.ちなみにスキューバダイビングは喘息のリスク因子ではないかという議論もありますが、現時点では明らかな答えは出ていません。スキューバダイビングでは、温度や呼吸動態の急激な変化が呼吸機能上よくないと考えられています。Koehle M, et al. Sports Med. 2003;33:109-116.感情負の感情(怒り、悲しみなど)は前述のストレスと同じ機序で喘息のリスク因子と考えられていますが、これにはあまりエビデンスはありません。自宅で怒りを爆発させて喘息発作を起こし救急搬送されてきた患者さんを一度診たことがあります。これはおそらく怒鳴り散らしたことが主な原因でしょうが。ちなみに、面白い映像を見た場合と面白くない映像を見た場合を比較すると、面白い映像を見た場合に気道過敏性が有意に改善したという報告もあります。Kimata H. Physiol Behav. 2004;81:681-684.その一方で、あまり笑うと喘息発作を誘発するのではないかという報告もありますので、あまり感情の起伏は喘息にとってよくないものかもしれませんね。Liangas G, et al. J Asthma. 2004;41:217-221.排便トイレできばりすぎて、喘息発作を起こすことがあるそうです。これについてもリスク因子といえる研究はありません。個人的には一度も排便喘息を診たことはありません(問診が甘かったのかもしれませんが)。排便によってアセチルコリンの分泌が誘発され、これによって気管支攣縮を惹起するのではないかと考えられています。Rossman L. J Emerg Med. 2000 ;18:195-197.Ano S, et al. Intern Med. 2013;52:685-687.鼻毛これもリスク因子として書くにはかなり強引な気もしますが、結論からいうと鼻毛は長いほうがよいです。アレルギー性鼻炎の患者さんにおける喘息の発症に鼻毛の密度が与える影響について解析した論文があります。これによれば、鼻毛の密度の低さは喘息発症の有意な因子であると報告されています。厳密には鼻毛の“長さ”と“密度”は異なるのかもしれませんが……。Ozturk AB, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2011;156:75-80.おわりにこれ以外にも、症例報告レベルも含めると、アイスクリーム、くしゃみ、温泉、オリンピックなど数多くの喘息のリスク因子や喘息発作を誘発する因子があります。本稿でなぜ珍しい因子を記載したかといいますと、実は喘息診療においては多くのヒントが患者さんとの会話の中にあるのです。「実は最近インコを飼い始めたんです」、「おととい引っ越ししたばかりなんです」、「そういえば先月からシャンプーを東洋医学系の製品に変えたんです」・・・などなど。実はアレルゲンが明らかな喘息の場合、原因を回避すればよくなることがあります。何年も吸入ステロイド薬を使わなくても済むケースもあります。

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速報レポート よりよい吸入アドヒアランスをサポートする1アクションの新規吸入デバイス「エリプタ」

グラクソ・スミスクライン株式会社は、2013年12月9日、24時間の効果を1日1吸入で維持する新規の吸入ステロイド/長時間作用性β2刺激配合薬「レルベア エリプタ」を発売した。「レルベア エリプタ」は、24時間の呼吸機能改善効果と1日1吸入という利便性を併せ持つという利点だけでなく、1アクションの新規吸入デバイス「エリプタ」を採用している。気管支喘息の治療は、有用性の高い新しい薬剤の開発とともに進歩している。しかしながら、本邦の2011年の大規模研究では、過去1ヵ月間に喘息症状を経験している患者さんの割合は、成人で62%である1)。また、欧米でも良好に管理できていない(Uncontrolled Asthma)喘息患者は約5割との報告もある2)。このように十分な長期管理が実現できていない実態が多数報告されている。これらの問題を解決するには、患者さんの治療アドヒアランスの向上が不可欠であり、そのためには、医療者の吸入指導と共に吸入デバイスの操作性向上が重要な要素だといえよう。しかしながら、従来のドライパウダー製剤では、吸入を行うまでに、デバイスを適切にセットする行程が必要であった。複雑な操作を必要とする場合には、患者さんの理解不足や誤解による吸入不備も少なくなかったという。つまり、簡便で確実な吸入を可能とするデバイスが待ち望まれていたわけである。今回採用された「エリプタ」は、カバーを開けるだけの1アクションという簡便な操作で吸入が可能であり、これまでのドライパウダー製剤が抱えていた課題の解決に大きく近づいたデバイスといえる。ケアネットでは、この新デバイスに注目し、グラクソ・スミスクライン株式会社の協力をいただき、新規吸入デバイス「エリプタ」の吸入指導ムービーを紹介させていただくこととした。動画提供:グラクソ・スミスクライン株式会社参考文献1)足立満ほか.アレルギー・免疫2012;19:1562-1570.2)Demoly P, et al. Eur Respir JRev.2012;21:66-74.

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“簡単・確実”吸入指導 デバイス別ポイント

当コンテンツは、東濃中央クリニック大林浩幸氏のご協力をいただき、「患者さん目線で見た、吸入指導の実際とピットホール」(  医薬ジャーナル社)に収録されている吸入指導ムービ-をご提供いただき制作いたしました。喘息長期管理薬を中心に、一部COPD治療薬を含む吸入デバイスの操作方法をご紹介しております。大林浩幸氏コメント丁寧に吸入指導を行ったつもりでも、再診時に、患者さんが正しい吸入操作を出来るようになっていないことを経験します。その一因は、各吸入デバイス添付の操作手順説明書の用い方にあります。これらの説明書は、操作手順が静止画で順に並べられています。ところが、この吸入操作の1過程と1過程の間(静止画と静止画の間)は、患者さん自身が想像して埋めることになり、ここに盲点があり、ピットホールが生まれます。吸入指導は動的にあるべきで、指導者自身の実践と動画がより効果的です。東濃中央クリニック 院長 大林浩幸

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喘息マネジメントの穴埋めるチオトロピウム(ERS2013)

 2013年9月7~12日、スペインのバルセロナで行われたERS(European Respiratory Society:欧州呼吸器学会)Annual Congressにて、標題テーマが議論された。 簡便な評価ツールや新たな薬剤の登場などにもかかわらず、コントロール不良の喘息(Uncontrolled asthma)の頻度は50%以上といまだ高い1)。デンマークUniversity of Southern DenmarkのSoren Pedersen氏は、「10年前と比較するとわずかに改善しているものの、依然として状況は変わらない。また、これは多くの国で同じ状況である」と述べた。同氏はまた「このようなケースでは、吸入ステロイド(以下ICS)や吸入ステロイド・長時間作用性β2刺激薬合剤(以下ICS/LABA)を吸入していてもコントロール不良であり、これを補う薬物療法として現在の選択肢以外にも有効な手段が望まれる」と述べた。 そのような中、新たな治療選択肢として、COPD治療薬として広く用いられている抗コリン薬チオトロピウム(商品名:スピリーバ2.5μレスピマット)の喘息に対する有効性が注目されている。チオトロピウムの喘息への使用については、重症例のICS/LABAや軽症・中等症例でのICSへのアドオンなど、いくつかの試験でその有効性が示されてきた2)3)。なかでもICS/LABAコントロール不良の重症持続型喘息でのチオトロピウムの有効性を示す大規模二重盲検試験PrimoTinATMの結果が昨年(2012年)発表されているが4)(http://www.carenet.com/news/journal/carenet/31588)、今回のERSでは、中用量のICSでコントロールが得られない中等症持続型喘息に対する第3相試験Mezzo-TinATMの結果が、オランダUniversity of GroningenのHuib Kerstjens氏から発表された。 MezzoTinA-asthma 試験は、チオトロピウムレスピマット5μg群(以下チオトロピウム5μg群)、チオトロピウムレスピマット2.5μg群(以下チオトロピウム2.5μg群)、それにLABAであるサルメテロール(商品名:セレベント)50μg(50μgx2回/日投与)群を合わせた3つのActive treatment群とプラセボ群間で行われた。試験はダブルブラインド、ダブルダミーの並行群間比較で、中用量ICSの維持療法を継続しながら、24週にわたり各群の薬剤を追加投与し、その後3週間フォローアップするというものだ。プライマリエンドポイントは呼吸機能改善評価として24週後のピークFEV1*、同時期のトラフFEV1、そして臨床的評価として同時期のACQ*(asthma controlled questionnaire:喘息管理質問表)スコアの改善で、Trial1および2の2つの試験結果から解析されている。 患者条件は ・中等量ICS(ブデソニド換算400~800mg)単独、またはICS/LABAの使用にもかかわらずコントロール不良の中等症持続型喘息(LABAは試験期間中は中止) ・年齢18歳~75歳の男女 ・非喫煙者または過去に喫煙歴(10pack-years以下)がある非喫煙者 ・サルブタモール(短時間作用性β2刺激薬)400mg投与前の%FEV1*60%~90% ・気道可逆性(サルブタモール400mg投与後のFEV1の改善)12%以上かつ200mL以上など。試験期間中のロイコトリエン受容体拮抗薬、去痰剤、抗アレルギー薬などの使用は許可された。呼吸器疾患、心血管疾患を含む喘息以外の明らかな併存症のあるもの、試験開始前に内服ステロイド治療を受けた患者は除外された。 試験患者数は、Trial1 1,070例、Trial2 1,030例の総計2,100例。4群間の患者バックグラウンドは同様で、平均年齢43.1歳、平均ACQスコア2.18、気道可逆性22.4%、1秒率*(FEV1/FVC)65.8%、罹病期間は21.8年と長期にわたっていた。使用薬剤は、ICS以外ではLABAが60%と最も多く、その他はロイコトリエン受容体拮抗薬が10%、テオフィリンが4%であった。 試験結果は、 ・24週後のピークFEV1:チオトロピウム5μg群247mL、同2.5μg群285mL、サルメテロール群258mL、プラセボ群62mL。プラセボからの増加はそれぞれ、185mL、223mL、196mLで、対プラセボp値はいずれの群とも<0.0001と有意に増加していた。 ・24週後のトラフFEV1:チオトロピウム5μg群119mL、同2.5μg群152mL、サルメテロール群87mL、プラセボ群 -27mL。プラセボからの増加はそれぞれ、146mL、182mL、114mLで、対プラセボp値はいずれの群とも<0.0001と有意に増加していた。 ・ACQスコアの改善:ACQレスポンダー(ACQスコア0.5点以上改善)の割合は、チオトロピウム5μg群64.3%、同2.5μg群64.5%、サルメテロール群66.5%、プラセボ群 57.7%。対プラセボORはそれぞれ1.32、1.33、1.46で、p値はそれぞれ0.035、0.031、0.039といずれの群ともプラセボに比べ有意に改善していた。 ・有害事象発現率は、チオトロピウム5μg群57.3%、同2.5μg群58.2%、サルメテロール群54.3%、プラセボ群59.1%。重篤な有害事象の発現はそれぞれ2.1%、2.3%、2.0%、2.7%と各群ともプラセボと同等であった。 Kerstjens氏は、「チオトロピウムについてのわれわれの疑問は、喘息に対する効果は重症持続型に限られるか?LABAとの効果比較は?などであった。今回の試験で、チオトロピウムレスピマットは、プラセボと比較し、両用量ともピークFEV1、トラフFEV1を有意に増加させ、ACQレスポンダーを有意に増加させていた。この結果から、チオトロピウムレスピマットは、ICS/LABAおよび高用量ICSの適応である重症持続型だけではなく、中等量ICS単独の適応である中等症持続型喘息への追加投与も効果的であることが示された。また、以前の試験結果と同じく、われわれの試験データでもチオトロピウムレスピマットの効果はサルメテロールと同等であることが示された。今回の試験結果は、チオトロピウムの追加投与によって、ガイドラインに則った治療をしても症状が改善しない多くの喘息患者にとって、意義ある結果だといえる」と述べた。※チオトロピウムの効能・効果は、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)に基づく諸症状の緩解」であり、気管支喘息は承認外ですのでご注意ください。*FEV1:最大努力呼気の際に呼出開始から最初の1秒で呼出される肺気量。ピークFEV1は薬剤投与後、最も呼吸機能が上がった時点での数値、トラフFEV1は最も呼吸機能の下がった時点での数値。*ACQ:喘息管理質問表スコアasthma control questionnaire。7つの質問から構成され、0~6点の7段階で評価される(0をトータルコントロール、0.75未満をウェルコントロール)。治療後に1.5以上上昇した場合を“著明改善”、1.0以上を“中等度改善”、0.5以上を“やや改善”と定義した。スコアが大きいほど重症となる。*1秒率(FEV1/FVC):FEV1と努力肺活量(FVC)の比率。閉塞性喚気障害の診断指標。FEV1/FVC<70%が閉塞性喚気障害の基準となる。*%FEV:FEV1実測値/FEV1予測値(FEV1予測値=性別、身長、年齢から算出)1) Demoly P et al. Eur Respir Rev. 2012;21:66-74.2) Perters SP et al. N Engl J Med. 2010;363:1715-1725.3) Kerstjens HA et al. J Allergy Clin Immunol. 2011;128:308-314.4) Kerstjens HA et al. N Engl J Med. 2012;367:1198-1207.

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チオトロピウムはCOPD増悪や入院のリスクを低下させる

 チオトロピウムはCOPD患者の増悪や入院のリスクを有意に低下させることがテキサス大学健康科学センターのAntonio Anzueto氏らにより報告された。Respiratory Medicine誌オンライン版2013年8月19日号の掲載報告。 増悪はCOPDの転帰を大きく左右する。本研究では、米国の臨床試験に登録されている患者を対象に、COPDの増悪および増悪に関連した入院に対するチオトロピウムの効果を評価した。 データは、COPD患者を対象に行われた6つの無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験(試験期間6~12ヵ月)から集めた。増悪の定義は1)2つ以上の呼吸器症状が増加または発症して3日以上続いた場合、2)全身ステロイドや抗菌薬(またはその両方)による治療が必要となった場合とした。これらの患者における初回の増悪、入院、増悪発現率を6ヵ月、1年時点で検討した。 主な結果は以下とおり。・6ヵ月時点の調査対象は4,355例[チオトロピウム2,268例、プラセボ2,087例、平均年齢:66.5歳、1秒量(FEV1)=1.03L(対標準1秒量:35.5%)]であった。・1年時点の調査対象は2,455例[チオトロピウム1,317例、プラセボ1,138例、平均年齢:65.5歳、1秒量(FEV1):1.03L(対標準1秒量:37.0%)]であった。・チオトロピウムはプラセボと比較して、初回増悪までの期間、および増悪による初回入院までの期間をそれぞれ有意に延長させた。 ●6ヵ月時点(ハザード比 [HRs]:0.80、0.65 それぞれp<0.001) ●1年時点(ハザード比 [HRs]:0.73、0.55 それぞれp<0.001)・チオトロピウムはプラセボと比較して、増悪発現率と入院率をそれぞれ有意に低下させた。 ●6ヵ月時点(ハザード比 [HRs]:0.79、0.64 それぞれp<0.01) ●1年時点(ハザード比 [HRs]:0.78、0.56 それぞれp<0.01)・チオトロピウムはベースラインにおける吸入ステロイドの使用の有無に関係なく、増悪リスクを有意に低下させた。・チオトロピウムと心臓系のイベントリスク増加との関連は認められなかった。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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