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非転移性去勢抵抗性前立腺がんに対するエンザルタミドの第III相試験開始

 アステラス製薬は、12月4日、米国 メディベーション社と共同開発中の経口アンドロゲン受容体阻害剤エンザルタミドについて、非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とした第III相臨床試験(PROSPER 試験)の患者登録を開始したことを発表した。 試験概要を下記にまとめる。 P Patient(患者) 非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者 約1,500名 I Intervention(介入) 標準治療+エンザルタミド(160mgを1日1回投与) C Comparison(比較対照) 標準治療+プラセボ O Outcome(転帰) 無転移生存期間  なお、エンザルタミドは、ドセタキセル(日本商品名:タキソテール、ワンタキソテール)による治療歴を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん、化学療法未治療の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者における、それぞれの全生存期間の延長が認められている。 アステラス製薬は、国内では今年5月に「前立腺癌」の効能・効果で製造販売承認申請を行っている。

602.

成人バーキットリンパ腫、低強度EPOCH-Rベース療法が非常に有効/NEJM

 成人のバーキットリンパ腫の未治療患者に対して、低強度のEPOCH-Rベース治療が非常に有効であることが報告された。米国国立がん研究所(NCI)のKieron Dunleavy氏らが行った非対照前向き試験の結果、明らかになった。バーキットリンパ腫は、小児および成人にみられるアグレッシブなB細胞リンパ腫で、大部分は集中的な抗がん剤療法で治療が可能となっている。ただし現在の治療法は、成人および免疫不全を有する患者では、小児に対するよりも有効性が低い一方、重篤な副作用があった。NEJM誌2013年11月14日号掲載の報告より。連続患者30例を対象に標準レジメンと低強度レジメンについて検討 研究グループは、未治療のバーキットリンパ腫患者について、エトポシド/ドキソルビシン/シクロホスファミド/ビンクリスチン/プレドニゾン+リツキシマブ(EPOCH-R)の低強度療法について、2つのレジメンについて検討した。 1つは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陰性患者を対象に標準的な用量調整併用レジメン(DA-EPOCH-R群)で、もう1つは、HIV陽性患者を対象に低用量で短期間、リツキシマブを2倍量とした併用レジメン(SC-EPOCH-RR群)だった。 連続患者30例(DA-EPOCH-R群19例、SC-EPOCH-RR群11例)が治療を受けた。患者は年齢中央値33歳(範囲:15~88歳)、40歳以上は40%だった。また、疾患リスクは73%が中等度、10%が高度だった。主要中毒事象発生は標準レジメン群22%、低強度レジメン群10% フォローアップ中央値は、DA-EPOCH-R群が86ヵ月、SC-EPOCH-RR群が73ヵ月だった。同時点での無増悪率は、DA-EPOCH-R群95%、SC-EPOCH-RR群100%で、全生存率はそれぞれ100%、90%だった。バーキットリンパ腫での死亡例はなかった。 主要中毒事象は、発熱と好中球減少症で、発生はDA-EPOCH-R群22%、SC-EPOCH-RR群10%でみられた。SC-EPOCH-RR群で腫瘍崩壊症候群が1例の患者でみられたが、治療関連死はみられなかった。 ドキソルビシン/エトポシド、またシクロホスファミドの累積投与量中央値は、標準レジメンのDA-EPOCH-R群よりも低強度強化レジメンのSC-EPOCH-RR群のほうが、それぞれ47%、57%低かった。 著者は、「今回の非対照前向き試験において、散発性あるいは免疫不全関連バーキットリンパ腫では、低強度のEPOCH-Rベース療法が非常に効果的であった」と結論している。

603.

生分解性ポリマー薬剤溶出ステントの実力/BMJ

 米国・ニューヨーク大学のSripal Bangalore氏らはメタ解析にて、冠動脈疾患に対する生分解性ポリマー薬剤溶出ステントの有効性と安全性について、ベアメタルステント(BMS)および耐久性ポリマー薬剤溶出ステントと比較する検討を行った。その結果、標的血管血行再建術の減少について、生分解性ポリマー薬剤溶出ステントは、初期の耐久性ポリマー薬剤溶出ステントよりも優れるが、新世代の耐久性ポリマー薬剤溶出ステントよりも劣性であることなどを明らかにした。BMJ誌オンライン版2013年11月8日号掲載の報告より。耐久性ポリマー、生分解性ポリマー、BMSの無作為化試験をメタ解析 メタ解析は、PubMed、Embase、Centralをデータソースに、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ている耐久性ポリマー薬剤溶出ステント(シロリムス溶出、パクリタキセル溶出、コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出、プラチナ・クロミウム・エベロリムス溶出、ゾタロリムス溶出「Endeavor Sprint」、ゾタロリムス溶出「Resolute Integrity」)、生分解性ポリマー薬剤溶出ステントについて、いずれか同士あるいはBMSと比較している無作為化試験を検索・選定して行われた。 長期有効性(標的血管血行再建術、標的病変血行再建)および安全性(死亡、心筋梗塞、ステント血栓症)について評価した。1年以上のランドマーク解析を評価し、生分解性ポリマー薬剤溶出ステントのほうが長期的ベネフィットがあるかを判定した。 解析には126試験、登録患者10万6,427例、フォローアップ平均2.3年(範囲:0.5~5年)の、合計25万8,544患者・年のデータが組み入れられた。最も有効・安全なのはコバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステント 結果、長期有効性(標的血管血行再建術)について、生分解性ポリマー薬剤溶出ステントは、パクリタキセル溶出ステント(率比:0.66、95%信頼区間[CI]:0.57~0.78)、ゾタロリムス溶出エンデバー(同:0.69、0.56~0.84)よりも優れていたが、新世代の耐久性ポリマー薬剤溶出ステントには優らなかった(例:コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステントと比較した率比は1.03[95%CI]:0.89~1.21)。 同様に、長期安全性(確認されたステント血栓症)について、パクリタキセル溶出ステントよりも優れていたが(同:0.61、0.37~0.89)、コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステントよりも劣性だった(同:2.04、1.27~3.35)。 また、ステント血栓症について1年後ランドマーク解析において、生分解性ポリマー薬剤溶出ステントは、シロリムス溶出ステントよりも優れていたが(同:0.29、0.10~0.82)、コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステントと比べると死亡の増大がみられた(同:1.52、1.02~2.22)。 全タイプのステント全体でみると、新世代耐久性ポリマー薬剤溶出ステント(ゾタロリムス溶出ステント-リゾリュート、コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステント、プラチナ・クロミウム・エベロリムス溶出ステント)が最も有効な(標的血管血行再建術が最も低い)ステントであった。 また、BMSとの比較で、ステント血栓症(率比:0.35、95%CI:0.21~0.53)、心筋梗塞(同:0.65、0.55~0.75)、死亡(同:0.72、0.58~0.90)が有意に低下し、最も安全であったのは、コバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステントだった。 これらの結果を踏まえて著者は、「生分解性ポリマー薬剤溶出ステントは、標的血管血行再建術の減少について、初期の耐久性ポリマー薬剤溶出ステントよりも優れるが、新世代の耐久性ポリマー薬剤溶出ステントよりも劣性である。また、より新しい耐久性ポリマーステント、とくにコバルト・クロミウム・エベロリムス溶出ステントが、有効性と安全性を最も兼ね備えている」と述べ、「より新しい世代の耐久性ポリマーステントに対して優れた臨床アウトカムを有するのだという生分解性ポリマー薬剤溶出ステントの有用性について、試験を行う必要がある」とまとめている。

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最も安全な薬剤溶出ステントが明らかに/BMJ

 薬剤溶出ステント(DES)の安全性と有効性は、種類間で異なり、エベロリムス溶出ステントとResoluteゾタロリムス溶出ステントが他のDESに比べて安全性が高く、現状最も安全なステントであることが明らかになった。ポーランド・ニコラス・コペルニクス大学のEliano P Navarese氏らが、60件の無作為化試験について行ったメタ解析の結果、報告した。BMJ誌オンライン版2013年11月6日号掲載の報告より。被験者総数6万人超について、死亡や心筋梗塞、ステント血栓症リスクなどを比較 冠動脈ステントは、冠動脈疾患患者の治療としてベアメタルステント(BMS)よりも有効なDESを用いて広く行われている。DES間では、第2世代の耐久性ポリマーステントは、第1世代の耐久性ポリマーステントやBMSよりも安全であることが示されているが、生分解性ポリマーステントの有効性と安全性プロファイルについては議論の的となっていた。 そこで研究グループは、種々のDESを試験対象に含む60の無作為化試験(被験者総数6万3,242例)についてメタ解析を行った。解析に組み込まれたDESは、次のとおり。●シロリムス溶出ステント(第1世代耐久性ポリマーステント)●パクリタキセル溶出ステント(第1世代耐久性ポリマーステント)●エベロリムス溶出ステント(第2世代耐久性ポリマーステント)●Endeavor ゾタロリムス溶出ステント(第2世代耐久性ポリマーステント)●Resolute ゾタロリムス溶出ステント(第2世代耐久性ポリマーステント)●バイオリムス溶出ステント(生分解性ポリマーステント) 安定性冠動脈疾患または急性冠症候群でDES留置術を行った患者について、安全性と有効性を比較した。主要アウトカムは、安全性については死亡、心筋梗塞、確定的または可能性の高いステント血栓症のいずれかとした。有効性については、標的病変または標的血管再血行再建術とした。心筋梗塞リスクが少なかったのはResoluteゾタロリムス溶出ステントとエベロリムス溶出ステント 1年後の死亡率は、DESの種類間の格差はなかった。心筋梗塞リスクについては、Resoluteゾタロリムス溶出ステント、 Endeavor ゾタロリムス溶出ステント、エベロリムス溶出ステント、シロリムス溶出ステントが、パクリタキセル溶出ステントに比べ、発症リスクを29~34%減少した。 なかでもResoluteゾタロリムス溶出ステントとエベロリムス溶出ステントの、パクリタキセル溶出ステントに対する心筋梗塞発症に関するオッズ比は、それぞれ0.66(95%信頼区間:0.46~0.91)と0.67(同:0.53~0.81)だった。 さらに心筋梗塞発症リスクについては、生分解性ポリマー使用バイオリムス溶出ステントが、エベロリムス溶出ステントに比べ、29%増大した(オッズ比:1.29、同:1.02~1.69)。 一方で、生分解性ポリマー使用バイオリムス溶出ステントと比較して、Endeavor ゾタロリムス溶出ステントとパクリタキセル溶出ステントは、ステント血栓症のリスクを有意に増大した。 有効性のエンドポイントについては、Endeavor ゾタロリムス溶出ステントとパクリタキセル溶出ステントで、標的病変または標的血管再血行再建術の実施率が増大したが、その他のDESではいずれも同等だった。 安全性については、ベイズ確率曲線による解析の結果、エベロリムス溶出ステントと Resoluteゾタロリムス溶出ステントが、他の溶出ステントに比べ、最も安全性が高いことが明らかになった。

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自家幹細胞移植、中悪性度非ホジキンリンパ腫の地固め療法として有効/NEJM

 自家幹細胞移植は、高中リスクおよび高リスクのびまん性中悪性度(aggressive)非ホジキンリンパ腫(NHL)の地固め療法として有効であることが、米国・ロヨラ大学医療センターのPatrick J Stiff氏らが行ったSWOG9704試験で示された。NHL治療は、「リツキシマブ時代」と呼ばれる状況下で、さらなる予後改善に向けさまざまな治療アプローチの探索が進められている。国際予後指標(IPI)により、診断時に持続的寛解の可能性が50%未満の患者の同定が可能となり、自家幹細胞移植の早期治療への導入が図られているが、高リスク例に対する地固め療法としての有効性は、その可能性が指摘されながらも長期にわたり確立されていなかった。NEJM誌2013年10月31日号掲載の報告。導入療法奏効例での有用性を無作為化試験で評価 SWOG9704試験は、米国のSWOG、ECOG、CALGBおよびカナダNCIC-CTGに所属する40施設が参加した無作為化試験。対象は、年齢15~65歳、生検でNHLが確認され、IPIで年齢調整リスクが高中または高と判定されたびまん性aggressive NHL患者であった。 1999年8月15日~2007年12月15日までに397例が登録され、導入療法としてシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン(prednisone)(CHOP)療法またはリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)療法が5コース施行された。このうち奏効が得られた患者が、地固め療法としてさらに3コースの導入療法レジメンを施行する群(対照群)または1コースの導入療法レジメン施行後に自家幹細胞移植を行う群(移植群)に無作為に割り付けられた。 有効性に関する主要エンドポイントは、2年無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)であった。高リスク群では、OSも有意に改善 適格基準を満たした370例のうち、導入療法が奏効した253例が無作為割り付けの対象となった(移植群125例、対照群128例)。370例の患者背景は、年齢中央値51(18.3~65.9)歳、男性59%で、B細胞リンパ腫が89%、T細胞リンパ腫は11%であった。 追跡期間中に病態が進行または死亡した患者は、移植群が46/125例、対照群は68/128例で、推定2年PFSはそれぞれ69%、55%であった。リスクスコアで調整したCox回帰モデルによる多変量解析では、ハザード比(HR)は1.72(95%信頼区間[CI]:1.18~2.51、p=0.005)であり、移植群が有意に良好だった。 死亡例数は移植群が37例、対照群は47例で、2年OSはそれぞれ74%、71%であり、両群に差は認めなかった(HR:1.26、95%CI:0.82~1.94、p=0.30)。 探索的解析では、高中リスク例と高リスク例で治療効果が異なることが示された。すなわち、高中リスク群の2年PFSは、移植群が66%、対照群は63%と同等であった(p=0.32)が、高リスク群ではそれぞれ75%、41%であり、有意差が認められた(p=0.001)。2年OSも、高中リスク群では移植群が70%、対照群は75%と差は認めなかった(p=0.48)のに対し、高リスク群では移植群が82%と、対照群の64%に比べ有意に良好だった(p=0.01)。 予測されたように、移植群では対照群に比べGrade 3/4の有害事象が多くみられた。治療関連死は移植群が6例(5%)(肺障害3例、出血と腎不全1例、感染症1例、多臓器不全1例)、対照群は3例(2%)(心血管障害1例、感染症1例、原因不明1例)に認められた。 著者は、「自家幹細胞移植の早期導入により、導入療法で奏効が得られた高中および高リスク患者のPFSが改善された」とまとめ、「対照群の再発例62例(48%)のうち29例(47%)にサルベージ療法として化学療法や移植が行われており、これがOSに有意差がなかった理由と考えられる」と指摘している。

606.

進行膵がんのnab-PTX+GEM療法、新たな標準治療のエビデンス/NEJM

 局所進行・転移性膵腺がんの1次治療において、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(ナブパクリタキセル、nab-PTX)+ゲムシタビン(GEM)併用療法は、GEM単独療法に比べ高い有効性をもたらすことが、米国・Translational Genomics Research InstituteのDaniel D. Von Hoff氏らの検討で示された。GEMは、1997年以降、切除不能な局所進行・転移性膵がんの1次治療の標準治療とされている。この間に、多くの薬剤が第2相試験で有望な結果を示したが、第3相試験で生存期間の有意な改善効果を達成したのはGEM+エルロチニブと、オキサリプラチン+イリノテカン+フルオロウラシル+ロイコボリン(FOLFIRINOX)だけであった。nab-PTX+GEM併用療法は、第1/2相試験で転移性膵がんに対する実質的な臨床効果が確認されていた。NEJM誌オンライン版2013年10月16日号掲載の報告。nab-PTX+GEM併用療法の効果を評価 研究グループは、切除不能局所進行・転移性膵がんの1次治療におけるnab-PTX+GEM併用療法とGEM単独療法の有用性を比較する無作為化第III相試験を実施した。対象は、年齢18歳以上、全身状態(PS)がKarnofskyスコア≧70で、前化学療法を受けていない局所進行・転移性膵がん患者であった。 初回コースは、nab-PTX+GEM併用群がnab-PTX 125mg/m2(体表面積当たり、30~40分で静脈内投与)+GEM 1,000mg/m2(静脈内投与)を第1、8、15、29、36、43日に投与し、GEM単独群はGEM 1,000mg/m2を週1回、8週中7週に投与した。2コース目以降は両群とも、4週を1コースとして第1、8、15日に投与した。 治療は、病態進行(PD)または許容されない有害事象が発現するまで継続され、per-protocol解析およびクロスオーバーは不可とした。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)であった。OS中央値はnab-PTX併用群が8.5ヵ月でGEM単独群は6.7ヵ月 2009年5月~2012年4月までに、北米、欧州、オーストラリアの11ヵ国151施設から861例が登録され、nab-PTX併用群に431例(年齢中央値62歳、女性43%)が、GEM単独群には430例(63歳、40%)が割り付けられ、それぞれ421例、402例が実際に治療を受けた。 OS中央値はnab-PTX併用群が8.5ヵ月と、GEM単独群の6.7ヵ月に比べ有意に延長した(死亡のハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.62~0.83、log-rank検定のp<0.001)。1年生存率はnab-PTX併用群が35%、GEM単独群は22%で、2年生存率はそれぞれ9%、4%であった。 両群の生存曲線は治療開始から1.8ヵ月後には分離し始め、生存率25%時の生存期間中央値はnab-PTX併用群が14.8ヵ月と、GEM単独群の11.4ヵ月に比べ3.4ヵ月の延長が認められた。 独立審査委員会判定によるPFS中央値は、nab-PTX併用群が5.5ヵ月、GEM単独群は3.7ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.58~0.82、log-rank検定:p<0.001)、ORRはそれぞれ23%、7%(p<0.001)であり、いずれも有意な差が認められた。病勢コントロール率(CR+PR+16週以上持続するSD)はそれぞれ48%、33%(p<0.001)であった。nab-PTXをGEMと併用するとGEM単独に比べ有意に改善 OS、PFSに関する事前に規定されたサブグループ解析では、ほとんどのサブグループにおいてnab-PTX併用群がGEM単独群よりも良好であった。 最も頻度の高いGrade 3以上の有害事象は、好中球減少(nab-PTX併用群:38%、GEM単独群:27%)、疲労(17%、7%)、末梢神経障害(17%、1%)であった。発熱性好中球減少はnab-PTX併用群の3%、GEM単独群の1%にみられた。nab-PTX併用群におけるGrade 3以上の末梢神経障害は、いずれも29日(中央値)後までにはGrade 1以下に改善した。 著者は、「nab-PTXをGEMと併用することで、GEM単独に比べOS、PFS、ORRが有意に改善した。nab-PTX併用により末梢神経障害や骨髄抑制の頻度が上昇したが、いずれも回復した」とまとめ、「併用群では、nab-PTXの追加によりGEMの累積投与量が増加し、治療期間の延長や総投与量の増加が達成されたことが、高い有効性をもたらしたと考えられる」と考察している。

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DES留置後の再内皮化と内皮機能の関係~OCTとAch負荷試験からの検討~

 ZES(ゾタロリムス溶出ステント)は、PES(パクリタキセル溶出ステント)よりも内皮機能が保持されること、および新生内膜によるstent strut被包と内皮機能保持には関係があることが、名古屋ハートセンターの村瀬 傑氏らによって示唆された。Catheterization and Cardiovascular Interventions誌オンライン版7月30日号掲載の報告。 これまで、DES(薬剤溶出ステント)留置後の再内皮化と内皮機能については、報告されていた。しかし、DES留置後の再内皮化と内皮機能との関係については、調べられていなかった。本研究では、DES留置(PES 7病変、ZES 7病変)9ヵ月後に、OCT(optical coherence tomography)による再内皮化の評価およびアセチルコリン負荷試験による内皮機能測定が行われた。 主な結果は、次のとおり。・ZES群、PES群の患者背景に有意な差は認められなかった。・ZES群はPES群に比較し、stent strutsが新生内膜により高度に被包されていた(ZES:0.27±0.14mm vs PES:0.17±0.18mm、p<0.01)。また、不完全密着率も低かった(ZES:0% vs PES:2.7%、p<0.01)。・ZES群はPES群に比較し、アセチルコリン誘発血管収縮が低かった(ZES:28.6% vs PES:57.1%、p<0.01)。・スパズム発生群とスパズム非発生群で比較すると、発生群は、被包率が低かった(スパズム発生:0.21±0.19mm vs スパズム非発生:0.25±0.14mm、p<0.01)。

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女性にも薬剤溶出ステントは有効か?/Lancet

 冠動脈疾患の男性患者だけでなく女性患者においても、薬剤溶出ステント(DES)はベアメタルステント(BMS)に比べ有効性と安全性が優れることが、スイス・ベルン大学病院のGiulio G Stefanini氏らの検討で確認された。冠動脈疾患の治療におけるDESの安全性と有効性はさまざまな無作為化試験で検討されているが、登録患者に占める女性の割合が約25%と低いため、女性におけるDESの有用性を評価する十分なパワーを有する単一の試験はないという。Lancet誌オンライン版2013年9月2日号掲載の報告。日本人女性患者を含む26試験の統合解析 研究グループは、女性におけるDESの有用性を評価するために、2000~2013年に実施された26件のDESに関する無作為化試験に参加した女性のデータを収集し、統合解析を行った。解析には、日本のRESET試験(3,197例、女性23%、2012年)が含まれた。 BMS、旧世代DES[シロリムス溶出ステント(Cypher)、パクリタキセル溶出ステント(Taxus)]、新世代DES[エベロリムス溶出ステント(Xience、Promus)、ゾタロリムス溶出ステント(Endeavor、Resolute)、バイオリムス溶出ステント(Biomatrix、Nobori)、シロリムス溶出ステント(Yukon)]の3群に分けてアウトカムを解析した。 安全性の主要評価項目は、死亡と心筋梗塞の複合エンドポイントとし、副次評価項目は、ステント血栓症(疑い例を含む)であった。有効性の主要評価項目は標的病変再血行再建術の施行とした。死亡/心筋梗塞:12.8 vs 10.9 vs 9.2%、ステント血栓症:1.3 vs 2.1 vs 1.1% 26試験に参加した4万3,904例のうち女性は1万1,557例(26.3%)で、BMS留置例が1,108例(9.6%)、旧世代DES留置例が4,171例(36.1%)、新世代DES留置例は6,278例(54.3%)であった。 全体の平均年齢は67.1歳で、BMI 28.1、糖尿病31.2%、高血圧75.6%、高コレステロール血症67.6%、喫煙者26.7%、冠動脈疾患家族歴39.5%、心筋梗塞の既往19.0%、PCI施行歴20.6%、CABG施行歴5.0%、多枝病変28.8%であった。平均フォローアップ期間は2.9年だった。 留置後3年時の安全性の複合エンドポイントの累積発生率は、BMS留置例が12.8%(132例)、旧世代DES留置例が10.9%(421例)、新世代DES群は9.2%(496例)であった(全体:p=0.001、旧世代と新世代DESの比較:p=0.01)。ステント血栓症の発症率は、BMS留置例が1.3%(13例)、旧世代DES留置例が2.1%(79例)、新世代DES群は1.1%(66例)だった(同:p=0.01、p=0.002)。 3年時の標的病変再血行再建術の施行率は、BMS留置例が18.6%(197例)、旧世代DES留置例が7.8%(294例)、新世代DES群は6.3%(330例)であり、DESの使用により有意に低下した(全体:p<0.0001、旧世代と新世代DESの比較:p=0.005)。これらの結果は、多変量解析にてベースラインの患者背景で調整しても変わらなかった。 著者は、「女性患者では、BMS留置例に比べDES留置例で長期的な有効性と安全性が優れ、新世代DESは旧世代DESに比べ良好な安全性を示した」と結論し、「新世代DESは女性患者における経皮的冠動脈再建術の標準治療とみなされる」と指摘している。

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ALK陽性肺がん第3相試験、日本人の結果は

 クリゾチニブ(商品名:ザーコリ)のPhase III試験PROFILE 1007 では、進行ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)2次治療において、クリゾチニブは標準的化学療法であるペメトレキセド(同:アリムタ)またはドセタキセル(同:タキソテール)に比べ、有意に無増悪生存期間(PFS)および奏効率(ORR)を改善した。この試験の日本人のサブ解析が、第11回日本臨床腫瘍学会にて近畿大学腫瘍内科の中川和彦氏から発表された。 PROFILE1007試験は日本を含む21ヵ国105施設で登録されたALK陽性NSCLC患者347例を対象に行われている。日本人は69例 と、そのうち約20%を占めている。日本人における割り付けはクリゾチニブ群40例、化学療法群29例(ペメトレキセド16例、ドセタキセル13例)であった。 日本人のPFS中央値はクリゾチニブ群で7.7ヵ月(over all 7.7ヵ月)に対し、化学療法群4.2ヵ月(over all 3.0 ヵ月)、HR=0.47(over all 0.49)、p=0.0062(over all p<0.001)で有意に改善していた。 また、ORRはクリゾチニブ群73.0%(over all 65.3%)に対し、化学療法群28.0%(over all 19.5%)、HR=2.7(over all 3.4)、p=0.0001(over all p<0.0001)と、こちらも有意に改善していた。このようにクリゾチニブは、日本人のALK陽性非小細胞肺がんにおいてもPFS、ORRともに著明に改善する事が明らかになった。 一方、日本人の有害事象発現は、クリゾチニブ群はover allと比較して全般的に高かった。主な有害事象項目はover allと同様、眼症状、悪心・嘔吐、下痢などで、その多くはGrade1~2であった。しかし、間質性肺障害で2例の治療関連死があり、その2例はいずれも日本人患者であった。 有害事象の頻度は日本人で高いものの、効果面も安全性もover allと同様の傾向であり、このサブ解析の結果は日本人における進行ALK陽性非小細胞肺がんでの効果と安全性を支持する一つのデータだといえよう。*クリゾチニブ:500mg/日、ペメトレキセド:500mg/m2 3週毎、ドセタキセル:75mg/m2 3週毎)

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クリゾチニブ、ALK融合遺伝子陽性進行NSCLCの2次治療として有効/NEJM

 既治療の未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、ALKのチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるクリゾチニブ(商品名:ザーコリ)は、標準的な化学療法よりも優れた有用性を持つことが、米国・マサチューセッツ総合病院のAlice T Shaw氏らの検討で示された。日本も参加した本試験の報告は、米国臨床腫瘍学会(ASCO、シカゴ市)期間中の2013年6月1日にNEJM誌オンライン版に掲載された。ALKは、NSCLC、未分化大細胞リンパ腫、小児神経芽細胞腫などのがん種で確認されているチロシンキナーゼであり、NSCLCの約5%にみられるALKの染色体再配列は肺がんの分子サブタイプに規定されている。クリゾチニブは、ALK、ROS1、METを標的とする低分子の経口TKIで、すでに2つの単群試験で優れた臨床効果が確認されている。標準的な単剤化学療法と非盲検無作為化試験で比較 研究グループは、進行NSCLCの治療におけるクリゾチニブと標準的化学療法の有用性を比較する非盲検無作為化第III相試験を行った。 対象は、プラチナ製剤ベースの化学療法による1レジメンの前治療歴があるALK融合遺伝子陽性の局所進行・転移性NSCLC患者であった。これらの患者が、クリゾチニブ(250mg)を1日2回経口投与する群または標準的な化学療法[3週を1コースとしてペメトレキセド(PEM、500mg/m2)もしくはドセタキセル(DOC、75mg/m2)を静注投与]を施行する群に無作為に割り付けられた。 化学療法群のうち病勢進行(PD)となった患者は、クリゾチニブへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目はPFS(無増悪生存期間)であった。PFS中央値が2倍以上に延長、肺がん症状、QOLも有意に改善 2010年2月~2012年2月までに347例が登録され、クリゾチニブ群に173例(年齢中央値51歳、男性43%、PS0 42%、腺がん95%、転移性95%)、化学療法群には174例(49歳、45%、37%、94%、91%)が割り付けられた。化学療法群のうち99例(57%)にPEMが、72例(41%)にはDOCが投与された。 PFS中央値はクリゾチニブ群が7.7ヵ月と、化学療法群の3.0ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.37~0.64、p<0.001)。クリゾチニブ群のPEM群に対するPFS中央値のHRは0.59(95%CI:0.43~0.80、p<0.001)、DOC群に対するHRは0.30(95%CI:0.21~0.43、p<0.001)だった。 奏効率はクリゾチニブ群が65%であり、化学療法群の20%(PEM群29%、DOC群7%)よりも有意に良好であった(p<0.001)。全生存期間(OS)の中間解析では、両群間に有意な差は認めなかった(HR:1.02、95%CI:0.68~1.54、p=0.54)。 有害事象は、クリゾチニブ群で視覚障害(60%)、下痢(60%)、悪心(55%)、嘔吐(47%)、便秘(42%)、肝アミノトランスフェラーゼ値上昇(38%)の頻度が高く、化学療法群では悪心(37%)、疲労感(33%)、便秘(23%)、脱毛(20%)、呼吸困難(19%)が高頻度にみられた。 患者の自己申告による肺がん症状(咳嗽、呼吸困難、胸痛)の増悪までの期間中央値は、クリゾチニブ群が5.6ヵ月であり、化学療法群の1.4ヵ月に比べ有意に延長した(HR:0.54、95%CI:0.40~0.71、p<0.001)。ベースラインからのQOLの改善効果もクリゾチニブ群が化学療法群よりも良好だった(p<0.001)。 著者は、「クリゾチニブは、既治療のALK融合遺伝子陽性の進行NSCLCの治療において、標準的化学療法よりも優れた有用性を持つことが示された」と結論し、「クリゾチニブによる明確なOSの改善効果が得られなかったのは、クロスオーバーが交絡因子となっているためと考えられる」と指摘している。

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基準通り抗がん剤を投与したにもかかわらず副作用で急死した肺がんのケース

癌・腫瘍最終判決判例時報 1734号71-82頁概要息切れを主訴としてがん専門病院を受診し、肺がんと診断された66歳男性。精査の結果、右上葉原発の腺がんで、右胸水貯留、肺内多発転移があり、胸腔ドレナージ、胸膜癒着術を行ったのち、シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用化学療法が予定された。もともと軽度腎機能障害がみられていたが、初回シスプラチン、塩酸イリノテカン2剤投与後徐々に腎機能障害が悪化した。予定通り初回投与から1週間後に塩酸イリノテカンの単独投与が行われたが、その直後から腎機能の悪化が加速し、重度の骨髄抑制作用、敗血症へといたり、化学療法開始後2週間で死亡した。詳細な経過患者情報12年前から肥大型心筋症、痛風と診断され通院治療を行っていた66歳男性経過1994年3月中旬息切れが出現。3月28日胸部X線写真で胸水を確認。細胞診でclass V。4月11日精査治療目的で県立ガンセンターへ紹介。外来で諸検査を施行し、右上葉原発の肺がんで、右下肺野に肺内多発転移があり、がん性胸膜炎を合併していると診断。5月11日入院し胸腔ドレナージ施行、胸水1,500mL排出。胸膜癒着の目的で、溶連菌抽出物(商品名:ピシバニール)およびシスプラチン(同:アイエーコール)50mgを胸腔内に注入。5月17日胸腔ドレナージ抜去。胸部CTで胸膜の癒着を確認したうえで、化学療法を施行することについて説明。シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用療法を予定した(シスプラチン80mg/m2、塩酸イリノテカン60mg/m2を第1日、その後塩酸イリノテカン60mg/m2を第8日、第15日単独投与を1クールとして、2クール以上くり返す「パイロット併用臨床試験」に準じたレジメン)。医師:抗がん剤は2種類で行い、その内の一つは新薬として承認されたばかりでようやく使えるようになったものです。副作用として、吐き気、嘔吐、食欲低下、便秘、下痢などが生じる可能性があります。そのため制吐薬を投与して嘔吐を予防し、腎機能障害を予防するため点滴量を多くして尿量を多くする必要があります。白血球減少などの骨髄障害を生じる可能性があり、その場合には白血球増殖因子を投与します患者:新薬を使うといわれたが、具体的な薬品名、吐き気以外の副作用の内容、副作用により死亡する可能性などは一切聞いていない5月23日BUN 26.9、Cre 1.31、Ccr 40.63mL/min。5月25日シスプラチン80mg/m2、塩酸イリノテカン60mg/m2投与。5月27日BUN 42.2、Cre 1.98、WBC 9,100、シスプラチンによる腎機能障害と判断し、輸液と利尿薬を継続。6月1日BUN 74.1、Cre 2.68、WBC 7,900。主治医は不在であったが予定通り塩酸イリノテカン60mg/m2投与。医師:パイロット併用臨床試験に準じたレジメンでは、スキップ基準(塩酸イリノテカンを投与しない基準)として、「WBC 3,000未満、血小板10万未満、下痢」とあり、腎機能障害は含まれていなかったので、予定通り塩酸イリノテカンを投与した。/li>患者:上腹部不快感、嘔吐、吃逆、朝食も昼食もとれず、笑顔はみせるも活気のない状態なのに抗がん剤をうたれた。しかもこの日、主治医は学会に出席するため出張中であり、部下の医師に申し送りもなかった。6月3日BUN 67.5、Cre 2.55、WBC 7,500、吐き気、泥状便、食欲不振、血尿、胃痛が持続。6月6日BUN 96.3、Cre 4.04、WBC 6,000、意識レベルの低下および血圧低下がみられ、昇圧剤、白血球増殖因子、抗菌薬などを投与したが、敗血症となり病態は進行性に悪化。6月8日懸命の蘇生措置にもかかわらず死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用投与当時は副作用について十分な知識がなく、しかも抗がん剤使用前から腎機能障害がみられていたので、腎毒性をもつシスプラチンとの併用療法はするべきではなかった2.塩酸イリノテカンの再投与塩酸イリノテカン再投与前は、食欲がなく吐き気が続き、しかも腎機能が著しく低下していたので、漫然と再投与を行ったのは過失である。しかも、学会に出席していて患者の顔もみずに再投与したのは、危険な薬剤の無診察投与である2.インフォームドコンセント塩酸イリノテカン投与に際し、単に「新しい薬がでたから」と述べただけで、具体的な薬の名前、併用する薬剤、副作用、死亡する可能性などについては一切説明なく不十分であった。仮にカルテに記載されたような説明がなされたとしても、カルテには承諾を得た旨の記載はない病院側(被告)の主張1.シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用投与シスプラチン、塩酸イリノテカンはともに厚生大臣(当時)から認可された薬剤であり、両者の併用療法は各臨床試験を経て有用性が確認されたものである。抗がん剤開始時点において、腎機能は1/3程度に低下していたが、これは予備能力の低下に過ぎず、併用投与の禁忌患者とされる「重篤な腎障害」とはいえない2.塩酸イリノテカンの再投与塩酸イリノテカン研究会の臨床試験実施計画書によれば、2回目投与予定日に「投与しない基準」として白血球数の低下、血小板数の低下、下痢などが記載されているが、本件はいずれにも該当しないので、腎機能との関係で再投与を中止すべき根拠はない。なお当日は学会に出席していたが、同僚の呼吸器内科医師に十分な引き継ぎをしている2.インフォームドコンセント医師は患者や家族に対して、詳しい説明を行っても、特段の事情がない限りその要旨だけをカルテに記載し、また、患者から承諾を得てもその旨を記載しないのが普通である裁判所の判断1. 腎機能悪化の予見可能性抗がん剤投与前から腎機能障害が、シスプラチンの腎毒性によって悪化し、その状態で塩酸イリノテカンの腎毒性によりさらに腎機能が悪化し、骨髄抑制作用が強く出現して死亡した。もし塩酸イリノテカンを再投与していなければ、3ヵ月程度の余命が期待できた。2. 塩酸イリノテカンの再投与塩酸イリノテカン再投与時、腎機能は併用療法によって確実に悪化していたため、慎重に投与するかあるいは腎機能が回復するまで投与を控えるべきであったのに、引き継ぎの医師に対して細かな指示を出すことなく、主治医は学会に出席した。これに対し被告はスキップ基準に該当しないことを理由に再投与は過失ではないと主張するが、そもそもスキップ基準は腎機能が正常な患者に対して行われる併用療法に適用されるため、投与直前の患者の各種検査結果、全身状態、さらには患者の希望などにより、柔軟にあるいは厳格に解釈する必要があり、スキップ基準を絶対視するのは誤りである。3. インフォームドコンセント被告は抗がん剤の副作用について説明したというが、診療録には副作用について説明した旨の記載はないこと、副作用の説明は聞いていないという遺族の供述は一致していることから、診療録には説明した内容のすべてを記載する訳ではないことを考慮しても、被告の供述は信用できない。原告側合計2,845万円の請求に対し、536万円の判決考察本件のような医事紛争をみるにつけ、医師と患者側の認識には往々にしてきわめて大きなギャップがあるという問題点を、あらためて考えざるを得ません。まず医師の立場から。今回の担当医師は、とてもまじめな印象を受ける呼吸器内科専門医です。本件のような手術適応のない肺がん、それも余命数ヵ月の患者に対し、少しでも生存期間を延ばすことを目的として、平成6年当時認可が下りてまもない塩酸イリノテカンとシスプラチンの併用療法を考えました。この塩酸イリノテカンは、非小細胞肺がんに効果があり、本件のような腺がん非切除例に対する単独投与(第II相臨床試験;初回治療例)の奏効率は29.8%、パイロット併用試験における奏効率は52.9%と報告されています。そこで医師としての良心から、腫瘍縮小効果をねらって標準的なプロトコールに準拠した化学療法を開始しました。そして、化学療法施行前から、BUN 26.9、Cre 1.31、クレアチニンクリアランスが40.63mL/minと低下していたため、シスプラチンの腎毒性を考えた慎重な対応を行っています。1回目シスプラチンおよび塩酸イリノテカン静注後、徐々に腎機能が悪化したため、投与後しばらくは多めの輸液と利尿薬を継続しました。その後腎機能はBUN 74.1、Cre 2.68となりましたが、初回投与から1週間後の2回目投与ではシスプラチンは予定に入らず塩酸イリノテカンの単独投与でしたので、その当時シスプラチン程には腎毒性が問題視されていなかった塩酸イリノテカンを投与することに踏み切りました。もちろん、それまでに行われていたパイロット併用試験におけるスキップ基準には、白血球減少や血小板減少がみられた時は化学療法を中止しても、腎障害があることによって化学療法を中止するような取り決めはありませんでした。したがって、BUN 74.1、Cre 2.68という腎機能障害をどの程度深刻に受け止めるかは意見が分かれると思いますが、臨床医学的にみた場合には明らかな不注意、怠慢などの問題を指摘することはできないと思います。一方患者側の立場では、「余命幾ばくもない肺がんと診断されてしまった。担当医師からは新しい抗がん剤を注射するとはいわれたが、まさか2週間で死亡するなんて夢にも思わなかったし、副作用の話なんてこれっぽっちも聞いていない」ということでしょう。なぜこれほどまでに医師と患者側の考え方にギャップができてしまったのでしょうか。さらに、死亡後の対応に不信感を抱いた遺族は裁判にまで踏み切ったのですから、とても残念でなりません。ただ今回の背景には、紛争原因の一つとして、医師から患者側への「一方通行のインフォームドコンセント」が潜在していたように思います。担当医師はことあるごとに患者側に説明を行って、予後の大変厳しい肺がんではあるけれども、できる限りのことはしましょう、という良心に基づいた医療を行ったのは間違いないと思います。そのうえで、きちんと患者に説明したことの「要旨」をカルテに記載しましたので、「どうして間違いを起こしていないのに訴えられるのか」とお考えのことと思います。ところが、説明したはずの肝心な部分が患者側には適切に伝わらなかった、ということが大きな問題であると思います(なお通常の薬剤を基準通り使用したにもかかわらず死亡もしくは後遺障害が残存した時は、医薬品副作用被害救済制度を利用できますが、今回のような抗がん剤には適用されない取り決めになっています)。もう一つ重要なのは、判決文に「患者の希望を取り入れたか」ということが記載されている点です。本件では抗がん剤の選択にあたって、「新しい薬がでたから」ということで化学療法が始まりました。おそらく、主治医はシスプラチンと塩酸イリノテカンの併用療法がこの時点で考え得る最良の選択と信じたために、あえて別の方法を提示したり、個々の医療行為について患者側の希望を聞くといった姿勢をみせなかったと思います。このような考え方は、パターナリズム(父権主義:お任せ医療)にも通じると思いますが、近年の医事紛争の場ではなかなか受け入れがたい考え方になりつつあります。がんの告知、あるいは治療についてのインフォームドコンセントでは、限られた時間内に多くのことを説明しなければならないため、どうしても患者にとって難解な用語、統計的な数字などを用いがちだと思います。そして、患者の方からは、多忙そうな医師に質問すると迷惑になるのではないか、威圧的な雰囲気では言葉を差し挟むことすらできない、などといった理由で、ミスコミュニケーションに発展するという声をよく聞きます。中には、「あの先生はとても真剣な眼をして一生懸命話してくれた。そこまでしてくれたのだからあの先生にすべてを託そう」ですとか、「いろいろ難しい話があったけれども、最後に「私に任せてください」と自信を持っていってくれたので安心した」というやりとりもありますが、これほど医療事故が問題視されている状況では、一歩間違えると不毛な医事紛争へと発展します。こうした行き違いは、われわれすべての医師にとって遭遇する可能性のあるリスクといえます。結局は「言った言わないの争い」になってしまいますが、やはり患者側が理解できる説明を行うとともに、実際に患者側が理解しているのか確かめるのが重要ではないでしょうか。そして、カルテを記載する時には、いつも最悪のことを想定した症状説明を行っていること(本件では抗がん剤の副作用によって死亡する可能性もあること)がわかるようにしておかないと、本件のような医事紛争を回避するのはとても難しくなると思います。癌・腫瘍

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全年齢対象の非ホジキンリンパ腫に対するR-CHOP療法、強化療法vs.標準療法/Lancet

 びまん性大細胞型B細胞性非ホジキンリンパ腫に対するR-CHOP療法の全年齢を対象とした強化療法(毎2週投与)について、標準療法(毎3週投与)と比べて有意な改善を示さなかったことが報告された。英国・ロイヤルマーズデンNHS財団トラストのDavid Cunningham氏らが第3相無作為化試験の結果、報告した。これまでに、2004年に60歳以上を対象とした試験でCHOP強化療法(毎2週×6サイクルvs. 毎3週×6サイクル)の全生存の改善が示されていた。ただし、その後日本で行われた強化療法(毎2週×8サイクル)を検証した小規模試験では改善が示されず、またCHOP+エトポシド療法の検討においても全年齢の全生存改善は示されなかった。Lancet誌オンライン版2013年4月22日号掲載より。毎14日投与と毎21日投与を比較 本検討は、新たにびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された未治療の患者における、リツキシマブとシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン(R-CHOP)療法の全年齢層におけるベネフィットを検討することを目的とした。 対象は、英国内119施設でステージIA~IVと診断された18歳以上の患者とし、R-CHOP毎14日×6サイクル+リツキシマブ毎14日×2サイクルを受ける群(R-CHOP-14)と、R-CHOP毎21日×8サイクルを受ける群(R-CHOP-21)に1対1の割合で無作為に割り付け(マスキングなし)検討した。 主要評価項目は、全生存期間(OS)とした。 R-CHOP-14群は、シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン2mg、リツキシマブ375mg/m2を1日に、経口プレドニゾロン100mg/m2を1~5日に、これを毎14日×6サイクルし、続いてリツキシマブ375mg/m2/日の毎14日×2サイクルを投与した。 R-CHOP-21群は、シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン1.4mg(最大2mg)、リツキシマブ375mg/m2を1日に、経口プレドニゾロン40mg/m2を1~5日に、これを毎21日×8サイクル投与した。2年OS達成、R-CHOP-14群82.7%、R-CHOP-21群80.8%で有意差はない 1,080例が、R-CHOP-21群(540例)、R-CHOP-14群(540例)に割り付けられた。 追跡期間中央値46ヵ月(IQR:35~57)において、2年OS達成は、R-CHOP-14群82.7%(95%信頼区間[CI]:79.5~85.9)、R-CHOP-21群80.8%(同:77.5~84.2)で有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.70~1.15、p=0.3763)。2年無増悪生存にも有意差は認められなかった(75.4%vs. 74.8%、HR:0.94、95%CI:0.76~1.17、p=0.5907)。 また両群ともに、国際予後指標高値、予後不良の分子的特性、発生細胞を予測するベネフィットは示されなかった。 グレード3または4の好中球減少症の発現が、R-CHOP-21群で高く(60%vs. 31%)、同群では予定されていなかった遺伝子組換え型顆粒球コロニー刺激因子の投与が行われた。一方、R-CHOP-14群ではグレード3または4の血小板減少症の発現頻度が高かった(9%vs. 5%)。その他に発熱性好中球減少症(11%vs. 5%)、感染(23%vs. 18%)のグレード3または4の有害事象の発現頻度が高かった。 非血液学的有害事象の頻度は、両群で同程度であった。 これらの結果を踏まえて著者は「R-CHOP-14はR-CHOP-21よりも有効ではなく、R-CHOP-21が依然として標準的なファーストライン療法である」と結論している。

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DA-EPOCH-R療法、原発性縦隔B細胞性リンパ腫に高い効果/NEJM

 DA-EPOCH-R(用量調整エトポシド/ビンクリスチン/シクロホスファミド/ドキソルビシン/プレドニゾン+リツキシマブ)療法は、原発性縦隔B細胞性リンパ腫の治療として、放射線療法を行わなくとも高い治癒率をもたらすことが、米国国立がん研究所(NCI)のKieron Dunleavy氏らの検討で示された。原発性縦隔B細胞性リンパ腫はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)のサブタイプで、結節硬化型ホジキン病と密接な関連を持ち、若年者に多く、巨大な縦隔腫瘤を形成する。標準治療は確立されておらず、免疫化学療法だけでは不十分なため縦隔への放射線照射による地固め療法がルーチン化しているが、遅発性の重篤な有害事象が懸念されるという。NEJM誌オンライン版2013年4月11日号掲載の報告。前向き単群第II相試験を、その他の後ろ向き解析と比較 研究グループは、原発性縦隔B細胞性リンパ腫の治癒率を改善し、放射線療法を不要にする治療戦略の開発を目的に、G-CSF(フィルグラスチム)併用下DA-EPOCH-R療法のプロスペクティブな単群第II相試験を実施した。 未治療の原発性縦隔B細胞性リンパ腫に対し、フィルグラスチム投与下にDA-EPOCH-R療法を6コースまたは8コース施行した。4コースおよび6コース目の終了時に病変の評価を行った。4~6コース目に20%以上の減量を要した場合は8コースまで治療を継続し、この間の減量が20%以下の場合は6コースで治療を終了することとした。 比較のために、スタンフォード大学医療センターの2007~2012年の診療記録の中から、放射線療法は施行されずにDA-EPOCH-R療法を受けた未治療の原発性縦隔B細胞性リンパ腫患者のデータを抽出し、レトロスペクティブな解析を行った。放射線療法なしでEFS 93%、OS 97%を達成、リツキシマブ追加の効果も確認 NCIの前向き第II相試験には、1999年11月~2012年8月までに51例(年齢中央値30歳、腫瘍径5~18cm、女性59%)が登録された。65%がbulky腫瘍(≧10cm)で、78%に乳酸脱水素酵素(LDH)上昇を認め、29%はStage IVであった。90%が6コースで治療を終了した。 スタンフォードの後ろ向き試験には16例[年齢中央値33歳(p=0.04)、腫瘍径7~18cm、女性56%]が登録された。bulky腫瘍(56%)、LDH上昇(69%)、Stage IV(44%)の頻度はNCI第II相試験と同等であったが、節外病変が有意に少なかった(53 vs 19%、p=0.02)。 NCI前向きコホートでは、フォローアップ期間中央値63ヵ月の時点で無イベント生存率(EFS)が93%、全生存率(OS)は97%であった。スタンフォード後ろ向きコホートでは、フォローアップ期間中央値37ヵ月におけるEFSは100%、OSも100%で、放射線治療を受けた患者はいなかった。 遅発性の合併症や心毒性は観察されなかった。フォローアップ10ヵ月から14年までの間に、2例(4%)を除く全例がDA-EPOCH-R療法により完全寛解に到達した。非完全寛解の2例は放射線療法を受けフォローアップ期間中は無病状態が維持された(1例は後に急性骨髄性白血病で死亡)。 なお、リツキシマブを併用しないDA-EPOCH療法の第II相試験(18例)では、フォローアップ期間中央値16年におけるEFSが67%、OSは78%であり、リツキシマブの追加によってEFS(p=0.007)、OS(p=0.01)が有意に改善することも確認された。 著者は、「DA-EPOCH-R療法は、原発性縦隔B細胞性リンパ腫の治療において、放射線療法を必要とせずに高い治癒率をもたらす」と結論付けている。また、確定的なエビデンスを得るために、小児を対象とするDA-EPOCH-R療法の国際的な臨床試験がすでに開始されているという。

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デュロキセチン、がん化学療法薬による末梢神経障害に伴う疼痛を緩和/JAMA

 セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬デュロキセチン(商品名:サインバルタ)が、疼痛を伴う化学療法薬誘発性の末梢神経障害の軽減に有効なことが、米国・ミシガン大学のEllen M. Lavoie Smith氏らが実施したCALGB-170601試験で示された。タキサン系、プラチナ製剤、ビンカ・アルカロイド系、ボルテゾミブなどの化学療法薬により、がん患者の約20~40%に疼痛を伴う末梢神経障害が発現し、治療終了後も数ヵ月~数年にわたり持続する場合があるが、有効な治療法は確立されていない。同氏らは、第III相試験で疼痛を伴う糖尿病性神経障害に対する有効性が示されているデュロキセチンが、化学療法薬誘発性末梢神経障害に伴う疼痛の軽減にも有効ではないかと考えたという。JAMA誌2013年4月3日号掲載の報告。神経障害性疼痛の軽減効果をプラセボ対照クロスオーバー試験で評価 CALGB-170601試験は、化学療法薬誘発性末梢神経障害に伴う疼痛に対するデュロキセチンの効果を評価する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー第III相試験。 対象は、25歳以上、化学療法薬(パクリタキセル、オキサリプラチン、ドセタキセル、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル、シスプラチン)によって誘発された末梢神経障害と診断され、治療終了後3ヵ月以上持続するGrade 1以上の神経障害性の疼痛(NCI-CTCAE ver3.0)を伴う患者とした。がん種や進行度は問わなかった。 これらの患者が、化学療法薬および疼痛リスクで層別化されたのち、デュロキセチン治療後にプラセボ投与に切り替える群(A群)またはプラセボ投与後にデュロキセチン治療に切り替える群(B群)に無作為に割り付けられた。両群とも5週の治療を行い、2週休薬後にクロスオーバーしてさらに5週の治療を行った。投与量は第1週が30mg/日、第2~5週は60mg/日とした。 疼痛の重症度の評価には、簡易的疼痛評価用紙短縮版(Brief Pain Inventory-Short Form)の疼痛スコアを用いた(疼痛なしを0とし、重症度を1~10で評価)。とくにオキサリプラチンによる疼痛に有効な可能性が 2008年4月~2011年3月までに220例(平均年齢59歳、女性63%、パクリタキセル40%、オキサリプラチン59%、乳がん38%、消化器がん56%)が登録され、A群に109例、B群には111例が割り付けられた。フォローアップは2012年7月まで行われた。 最初の5週の治療における疼痛スコアの低下は、デュロキセチン治療(A群)が平均1.06[95%信頼区間(CI):0.72~1.40]と、プラセボ(B群)の0.34(95%CI:0.01~0.66)に比べ有意に優れていた(p=0.003)。低下した疼痛スコアの両群間の差は0.73(95%CI:026~1.20)だった。 最初の5週の治療で疼痛が軽減したと答えた患者の割合は、デュロキセチン治療が59%と、プラセボの38%に比べ高かった。デュロキセチン治療の30%が疼痛は不変とし、10%は増大したと答えた。 クロスオーバー後の治療期間中の疼痛スコアの低下は、プラセボ(A群)が0.41(95%CI:0.06~0.89)、デュロキセチン治療(B群)は1.42(95%CI:0.97~1.87)であり、低下した疼痛スコアの差は1.01(95%CI:0.36~1.65)であった。 著者は、「デュロキセチン治療はプラセボに比べ、化学療法薬誘発性の末梢神経障害による疼痛の軽減効果が統計学的、臨床的に有意に良好であった」と結論し、「探索的解析では、デュロキセチンはタキサン系薬剤よりもオキサリプラチンによる末梢神経障害性疼痛に有効な可能性が示唆された」と述べている。

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SYNTAX中・高スコア患者の標準治療はCABGとすべき/Lancet

 左冠動脈主幹部病変および3枝病変を有する患者を対象として、冠動脈バイパス術(CABG)と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を比較した無作為化試験「SYNTAX」の最終5年フォローアップの成績が、ドイツ・Herzzentrum Universitat LeipzigのFriedrich W Mohr氏らにより発表された。同試験についてはこれまで、1年時点(主要エンドポイントMACCEについてPCI群はCABG群に対して非劣性を達成せず)、3年時点(MACCEほか心筋梗塞発生、血行再建術がPCI群で有意に高い)の各成績が示されていた。今回の5年時点でも両群のイベント発生率の格差が認められたこと、とくに心筋梗塞発生、血行再建術がPCI群で有意に高いことなどが示された。研究グループは「SYNTAXスコアが中あるいは高の複雑病変患者の標準治療はCABGとすべきである」と結論し報告をまとめている。Lancet誌2013年2月23日号の掲載報告。3枝病変あるいは左冠動脈主幹部病変患者をCABGまたはPCIに無作為化 SYNTAX試験は、欧米85の施設で被験者を登録して行われたネステッド無作為化試験で、心臓外科医とインターベンション専門医の医療チームがスクリーニング時に、いずれの治療にも適合性があるとみなした患者は無作為に割り付け、どちらか一方のみが適切であると判断した患者についてはその治療群に割り付けた。 適格となった患者は無作為に1対1の割合で、第1世代パクリタキセル溶出性ステントによるPCIを受ける群またはCABGを受ける群に割り付けられた。PCIが適切と判断された患者はPCI群へ、CABGが適切と判断された患者はCABG群へ割り付けられた。 主要エンドポイントは、主要心臓・脳血管有害イベント(MACCE)であり、Mohr氏らはintention-to-treatをベースとしたKaplan-Meier解析で5年時点の成績を分析した。5年時点もMACCE、心筋梗塞、血行再建がPCI群で有意に高い 適格被験者は1,800例であり、CABG群に897例が、PCI群に903例が割り付けられたが、無作為化後CABG群50例、PCI群11例が試験参加の同意を取り下げた。ベースラインでの両群被験者の特性はほぼ同等であり、SYNTAXスコアはCABG群29.1(SD 11.4)、PCI群28.4(同11.5)だった。追跡1年目の抗血小板薬の服用はPCI群で高かったが、5年時点ではアスピリン服用者の割合について両群の有意差はなかった。ただし抗血小板併用療法を受けている患者はPCI群で高かった。 5年時点のKaplan-Meier解析によるMACCEは、CABG群26.9%、PCI群37.3%だった(p<0.0001)。 心筋梗塞(CABG群3.8% vs PCI群9.7%、p<0.0001)、血行再建(同13.7% vs 25.9%、p<0.0001)は、PCI群で有意に高かった。 全死因死亡(同11.4% vs 13.9%、p=0.10)、脳卒中(同3.7% vs 2.4%、p=0.09)については両群で有意な差はみられなかった。 SYNTAXスコア別に解析した結果、低スコア(0~22)群ではMACCEは、CABG群28.6%、PCI群32.1%と有意差はみられなかった(p=0.43)。 なお、左冠動脈主幹部病変の患者についても、5年時点のMACCEについて有意差はみられなかった(CABG群31.0%、PCI群36.9%、p=0.12)。 一方、SYNTAXスコアが中スコア(23~32)群、高スコア(≧33)群ではPCI群でMACCEの発生が有意に高かった。中スコア群の発生率はCABG群25.8%、PCI群36.0%(p=0.008)、高スコア群では26.8%、44.0%(p<0.0001)だった。 以上の結果を踏まえて著者は、「複雑な病変(SYNTAX中・高スコア)患者についてはCABGを引き続き標準治療とすべきである」と結論。また「病変部がそれほど複雑でない(SYNTAX低スコア)患者や左冠動脈主幹部病変の患者(SYNTAX低・中スコア)では、PCIは選択肢となりうる」と述べ、「複雑な多枝冠動脈疾患を有する患者については必ず、心臓外科医とインターベンション専門医の両者による考察と話し合いを行い、至適治療のコンセンサスを得るようにしなければならない」と提言している。

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消化管神経内分泌腫瘍〔GI-NET : gastrointestinal neuroendocrine tumor〕

1 疾患概要■ 概念・定義消化管神経内分泌腫瘍は原腸系組織に存在する神経内分泌細胞由来の腫瘍群(neuroendocrine tumor: NET)である。消化管NETは、悪性度が低いものから高いものまで多彩であるにもかかわらず、これまで消化管カルチノイドの呼称でひとまとめに扱われてきたが、2010年以降、生物学的悪性度を指標としたWHO分類に従って扱われるようになってきている。本稿では、WHO分類に従ったデータは乏しいため、以下、消化管カルチノイド腫瘍として報告されてきた知見を示す。■ 疫学わが国における消化管カルチノイド腫瘍の発生頻度は、直腸(39%)、胃(27%)、十二指腸(15%)の順である。欧米では、小腸、虫垂での発生頻度が高い。■ 病因消化管粘膜の腺底部に存在する内分泌細胞が腫瘍化し、粘膜下層を主座としながら腫瘤を形成するため、粘膜下腫瘍様の形態を呈する。■ 症状(1)無症状で発見されることが多い。(2)腫瘍増大による腹痛、腸閉塞、下血で発見されることもある。(3)生理活性物質(セロトニン、ヒスタミンなど)を産生する腫瘍の肝転移例では、カルチノイド症候群と呼ばれる皮膚紅潮、喘息様発作、下痢、右弁膜傷害の症状がみられることがある。■ 分類1)WHO分類腫瘍細胞の核分裂像や細胞増殖マーカー(Ki-67)の発現指数に基づいて表1のようにNET grade 1、NET grade 2、Neuroendocrine carcinoma(NEC)に分類される。2)TNM分類腫瘍の深達度(T因子)、リンパ節転移の有無(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)を評価し、腫瘍の進行度(病期)をI~IVの4段階に分類するもの。3)Rindi分類胃NETは他の消化管NETと比べ悪性度の低いものが多く、疾患背景や高ガストリン血症の有無でType I~IIIと低分化型内分泌細胞がんの4グループに分けるRindi分類が有用である(表2)。画像を拡大する画像を拡大する■ 予後1)胃NETType I、Type IIの胃NETは、高ガストリン血症を伴わないType III胃NETに比べ転移率が低く(I:4.9%、II:30%、III:62.5%)、5年生存率(I:正常生命期待値、II:87%、III:79%)は、明らかに良好である。Type IVの胃NETは、WHO分類のNECに相当し、予後が悪い。2)その他の消化管NET胃以外の消化管NETでは、予後予測因子が明らかでない。腫瘍径が1cmを超えた場合、転移率が20%以上とする報告が多い。米国の報告では、5年生存率が局所限局で79.7%、近傍進展で50.6%、遠隔転移を有する症例で21.8%である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1)血液検査カルチノイド症候群を疑う場合は、血中セロトニン、尿中5-ヒドロキシインドール酢酸の測定を行う。機能性NETの場合は、疑うホルモンの血清値の測定を行う。2)画像診断内視鏡検査では、黄白色調の表面平滑な粘膜下腫瘍として観察されることが多い。確定診断は生検による組織診断で行う。転移の有無は、腹部超音波、CT、MRIなどの検査で行う。内視鏡的切除を行う場合には、超音波内視鏡検査による腫瘍の深達度が有用である。3)病理特徴的な細胞像(好酸性微細顆粒状の細胞質、円形~卵円形の均一な小型核、細胞分裂はまれ)と胞巣形態を呈する。銀染色やクロモグラニン免疫染色が有用である。NETのグレード分類には細胞増殖マーカーKi67の免疫染色が行われる。4)その他欧米では血中クロモグラニンA値を腫瘍マーカーとして用い、ソマトスタチン受容体シンチグラフィーを病変の検出に用いられているが、日本では未承認である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)外科的または内視鏡的切除(1)胃NET高ガストリン血症を伴うtype I、IIの腫瘍は2cm未満の場合、まず内視鏡治療を試み、病理組織学的に細胞異型が強い腫瘍の残存や脈管浸潤を認める場合には、外科的切除を追加する。腫瘍が2cm以上あるいは個数が6個以上、あるいは腫瘍が固有筋層に浸潤している場合は、リンパ節郭清を含む外科的切除を行う。Type III、IVの腫瘍は胃がんに準じた外科切除を行う。(2)その他の消化管NET筋層浸潤を伴わない1cm以下の腫瘍では、内視鏡的切除か筋層を含む局所切除を行う。筋層浸潤を伴わない1~2cmの腫瘍では、広範な局所切除または所属リンパ節郭清を含む腸管の部分切除を行う。筋層浸潤を伴う腫瘍または2cm以上の腫瘍では、広範なリンパ節転移を含む根治的切除術を行う。2)化学療法5-FU、ドキソルビシン、ストレプトゾトシン、インターフェロン、シクロホスファミドが投与されるが有効性は低い。肝転移巣に対して肝動脈塞栓術が有効な場合がある。NECは、小細胞がんに準じてシスプラチン+エトポシド、シスプラチン+イリノテカンが投与される(わが国ではすべて未承認)。3)カルチノイド症候群に対する治療ソマトスタチン誘導体であるオクトレオチド(商品名:サンドスタチン)は、NETからのセロトニンやヒスタミンの放出を抑制し、カルチノイド症候群でみられる症状(前述)を改善する。4 今後の展望消化管NETの解釈は、さまざまな分類によって取り扱われ混乱していたが、2010年に新しい WHO分類が提唱され、今後徐々にその分類に沿った治療成績や予後が明らかになり、データが整理されていくと思われる。治療の原則は、腫瘍の根治的切除と再発予防であるが、欧米で検討されているソマトスタチンアナログなど抗腫瘍効果が期待される新薬もNETの集約的治療に加わってくるかもしれない。5 主たる診療科消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療に関する情報サイトNET Links(一般向け、医療従事者むけのサイト)患者会情報しまうま倶楽部(患者・患者の家族の会)

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低悪性度非ホジキンリンパ腫の1次治療、B-RがR-CHOPよりも有用/Lancet

 ベンダムスチン+リツキシマブ併用療法(B-R)は、低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫の1次治療において、従来の標準治療であるシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン(CHOP)+リツキシマブ(R-CHOP)併用療法よりも、有効性および安全性が優れることが、ドイツ・Justus Liebig大学病院のMathias J Rummel氏らStudy group indolent Lymphomas(StiL)の検討で示された。米国では、毎年、約6万6,000人が新規に非ホジキンリンパ腫と診断され、そのうち約40%が低悪性度リンパ腫、約3~10%がマントル細胞リンパ腫だという。現在、欧米における進行期低悪性度非ホジキンリンパ腫および高齢マントル細胞リンパ腫の標準的な1次治療はリツキシマブと化学療法(ほとんどがCHOP)の併用療法だが、再発や難治性の病変にはB-R療法が有効なことが確認されている。Lancet誌オンライン版2013年2月20日号掲載の報告。B-RのR-CHOPに対する非劣性を無作為化試験で検証 研究グループは、低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫に対するB-RのR-CHOPに対する非劣性を検証する多施設共同非盲検無作為化試験を実施した。 対象は、年齢18歳以上、新規に診断されたStage III/IVの低悪性度非ホジキンリンパ腫またはマントル細胞リンパ腫で、PS(WHO)0~2の症例とした。これらの患者が、リンパ腫の組織学的サブタイプで層別化されたのち、ベンダムスチン(90mg/m2静注、第1、2日、4週毎)またはCHOP(シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン1.4mg/m2を第1日に投与、プレドニゾン100mg/日は第1~5日目に投与、3週毎)を投与する群に割り付けられ、最大6コースまで施行することとした。両群とも、第1日目にリツキシマブ375mg/m2が投与された。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とし、per-protocol解析を行った。3年後のPFSの非劣性のマージンは10%とした(たとえば、R-CHOP群のPFSが50%の場合、B-R群が40%以上であれば非劣性と判定)。これにより、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限値が1.32を超えない場合に非劣性と判定された。PFS中央値のHR:0.58(95%CI:0.44~0.74)、脱毛:0% vs 100%、血液毒性:30% vs 68% 2003年9月1日~2008年8月31日までに、ドイツの81施設から549例が登録され、B-R群に274例が、R-CHO群には275例が割り付けられ、それぞれ261例(年齢中央値64歳、Stage IV 77%、マントル細胞リンパ腫18%)、253例(同:63歳、78%、19%)が評価可能であった。 フォローアップ期間中央値45ヵ月の時点で、PFS中央値はB-R群が69.5ヵ月(四分位範囲:26.1~未到達)、R-CHOP群は31.2ヵ月(同:15.2~65.7)であり、HRは0.58(95%CI:0.44~0.74、p<0.0001)であった。 耐用性もB-D群がR-CHOP群よりも良好だった。すなわち、3コース以上の治療を受けた患者のうち、脱毛はB-D群が0%であったのに対しR-CHOP群は100%(p<0.0001)であった。また、血液毒性がそれぞれ30%、68%(p<0.0001)、感染症が37%、50%(p=0.0025)、末梢神経障害が7%、29%(p<0.0001)、口内炎は6%、19%(p<0.0001)であった。紅斑性皮膚反応の頻度はB-R群のほうが高かった(16% vs 9%、p=0.024)。 著者は、「PFS中央値については、B-R群のR-CHOP群に対する非劣性とともに優位性も示され、耐用性もB-R群が良好であった。未治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫およびマントル細胞リンパ腫の1次治療では、R-CHOPよりもB-Rが好ましいと考えられる」と結論し、「今後は、B-R療法の有効例に対するRによる維持療法の有用性を評価する臨床試験を行う必要があるだろう」と指摘している。

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