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1.

胃がん周術期、デュルバルマブ+FLOTでOS改善(MATTERHORN最終解析)/Lancet

 米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのYelena Y. Janjigian氏らMATTERHORN investigatorsは、切除可能な胃または胃食道接合部腺がん患者を対象とした「MATTERHORN試験」の全生存期間(OS)に関する最終解析結果を報告し、周術期デュルバルマブ+FLOT(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル)療法により、プラセボ+FLOT療法と比較しOSの有意な改善が認められたことを示した。周術期FLOT療法とデュルバルマブの併用は、切除可能な胃または胃食道接合部腺がん患者において無イベント生存期間(EFS)および病理学的完全奏効率を改善することが報告されていた。Lancet誌オンライン版2026年9月9日号掲載の報告。デュルバルマブ+FLOTを術前術後各2サイクル後、デュルバルマブ単剤10サイクル MATTERHORN試験は、日本を含むアジア、欧州、北米および南米の20ヵ国147施設で実施された第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験である。 研究グループは、18歳以上で、組織学的に確認された切除可能な胃腺がんまたは胃食道接合部腺がん(根治手術の適応があるStageII~IVa)を有し、抗がん剤治療歴がなく、ECOG PSが0~1の患者を、デュルバルマブ+FLOT群(デュルバルマブ群)またはプラセボ+FLOT群(プラセボ群)に、地域、臨床的リンパ節転移の有無およびPD-L1発現を層別因子として1対1の割合で無作為に割り付けた。 4週間を1サイクルとして、各サイクルの1日目にデュルバルマブ1,500mgまたはプラセボを静脈内投与し、FLOTを1日目および15日目に併用して、術前に2サイクル、術後に2サイクル投与した。その後は、さらに各サイクルの1日目にデュルバルマブ1,500mgまたはプラセボを単独で10サイクル静脈内投与した。 主要評価項目はEFSで、主要解析結果(データカットオフ:2024年12月20日)は以前に報告されている。重要な副次評価項目はITT集団におけるOSで、今回はOSの最終解析結果(データカットオフ:2025年9月1日)が報告された。 安全性は、試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者を対象に評価し、有害事象について追跡期間終了(試験薬の最終投与後90日目)まで収集した。デュルバルマブ+FLOTで、OSハザード比は0.78 2020年11月17日~2022年9月2日に1,258例が登録された。このうち948例が無作為化され、ITT集団に組み込まれた(デュルバルマブ群474例、プラセボ群474例)。主な患者特性は、年齢中央値62歳(四分位範囲:54~68)、男性が682例(72%)、女性が266例(28%)であった。 デュルバルマブ群で160例(34%)、プラセボ群で192例(41%)が死亡し、デュルバルマブ群はプラセボ群と比較しOSを有意に改善した(ハザード比:0.78、95%信頼区間[CI]:0.63~0.96、p=0.021[有意水準のp<0.0499])。OS中央値は、いずれの群も未到達であった。 24ヵ月時および36ヵ月時のOS率は、デュルバルマブ群がそれぞれ76%(95%CI:71~79)および69%(95%CI:64~73)、プラセボ群が70%(95%CI:66~74)および62%(95%CI:57~66)であった。 試験薬との因果関係が否定できない死亡に至った有害事象は、デュルバルマブ群で475例中6例(1%)、プラセボ群で469例中2例(1%未満)であった。

2.

重度腹膜転移を伴う進行胃がん、mFOLFOX6は選択肢か

腹腔全体に及ぶ大量腹水や輸液補助を要する経口摂取不良を伴う重度腹膜転移を有する進行胃がん患者は、主要な臨床試験から除外されてきた。そこで、愛知県がんセンター薬物療法部の舛石 俊樹氏らは、重度腹膜転移を有するHER2陰性・化学療法未治療の進行胃がん患者を対象に、mFOLFOX6療法を評価する第II相試験「WJOG10517G」を実施した。その結果、mFOLFOX6療法は忍容可能で、治療選択肢となりうることが示された。本研究結果は、Gastric Cancer誌オンライン版2026年8月27日号に掲載された。本研究は、重度腹膜転移を有するHER2陰性・化学療法未治療の進行胃がん患者を対象とした第II相試験である。重度腹膜転移は、腹腔全体に及ぶ大量腹水および/または輸液補助を要する経口摂取不良と定義された。対象患者にmFOLFOX6療法を実施し、主要評価項目は全生存期間(OS)とした。副次評価項目には、大量腹水を有する患者における腹水奏効率、経口摂取不良を有する患者における経口摂取改善率などを設定した。予定サンプルサイズは50例で、OS中央値9ヵ月を検出し、閾値を6ヵ月とする設計であった(片側α=0.05、β=0.2)。また、JCOG1108/WJOG7312Gにおいてフルオロウラシル+ロイコボリン(FL)またはFL+パクリタキセル(FLTAX)で治療された患者データを用い、事前規定された個別患者データ比較解析を行った。主な結果は以下のとおり。・登録患者は51例であった。Performance Status(PS)は0/1/2がそれぞれ3例/40例/8例であった。・主要評価項目であるOS中央値は7.4ヵ月で、片側95%信頼区間[CI]の下限は6.5ヵ月であった。・無増悪生存期間中央値は3.8ヵ月であった。・大量腹水を有する25例における腹水奏効率は36%であった。・経口摂取不良を有する33例のうち、経口摂取の改善が得られた割合は46%であった。・Grade3~4の有害事象で最も多かったのは好中球減少症で、発現割合は51%であった。発熱性好中球減少症は1例(2%)に発現した。治療関連死は認められなかった。・傾向スコア重み付け解析におけるOSのハザード比は、mFOLFOX6療法vs.FL療法で0.76(95%CI:0.56~1.03)、mFOLFOX6療法vs.FLTAX療法で0.87(95%CI:0.64~1.18)であった。本研究結果について著者らは、重度腹膜転移を有する進行胃がん患者に対するmFOLFOX6療法は忍容可能であり、治療選択肢となりうるとまとめている。

3.

1996年から30年の日本における多発性骨髄腫の診断・治療の変遷【温故知新30年】

講師紹介多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)は、形質細胞の腫瘍性増殖を特徴とする造血器悪性腫瘍である。1990年代までは「治癒困難な疾患」であり、生存期間の中央値は約3~4年にすぎなかった。しかし、この30年間で診断技術、支持療法、新規薬剤、免疫療法の著しい進歩により、現在では長期生存が期待できる慢性疾患へと変貌したといえる。日本における多発性骨髄腫診療の発展は、国際的な研究成果を取り入れながら、日本骨髄腫研究会・日本骨髄腫学会や日本血液学会が中心となって診療指針を整備し、新規治療を迅速に臨床へ導入してきた歴史でもある。1996~2005年:MP療法から自家移植・新規薬剤登場前夜1996年ごろの標準治療薬はメルファランを中心とした抗がん剤であり、高齢者ではメルファラン・プレドニゾロン(MP療法)、若年者ではビンクリスチン・アドリアマイシン・デキサメタゾン(VAD療法)による寛解導入後に大量メルファラン療法と自家造血幹細胞移植(ASCT)が行われ始めていた。当時の診断の中心は血清・尿M蛋白、骨髄穿刺、単純X線検査であり、病期分類にはDurie-Salmon分類が広く用いられていた。支持療法も限定的であり、腎障害、感染症、骨病変への対応が治療成績を大きく左右していた。1998年以降、欧米ではサリドマイドの有効性が報告され、日本でもその有効性が認識されるようになった。サリドマイドは骨髄腫に対する最初の免疫調節薬(IMiD)であり、再発・難治例の治療を大きく変えた。当初、個人輸入で用いられたが、その後、サリドマイド製剤等安全管理手順(TERMS®)などが整備され、日本でも保険承認された(2008年)。2000年代前半には診断基準の標準化が進んだ。2003年にInternational Myeloma Working Group(IMWG)が診断基準を提唱し、日本でもこれが採用された。また2005年にはInternational Staging System(ISS)が導入され、血清β2ミクログロブリンとアルブミンによる簡便かつ再現性の高い病期分類が広く普及した。このISSの策定には日本の研究者も大きく貢献している。2006~2017年:プロテアソーム阻害薬・IMiD時代2006年は日本の骨髄腫診療における大きな転換点である。プロテアソーム阻害薬ボルテゾミブが承認され、新規薬剤時代が始まった。ボルテゾミブは再発例で高い奏効率を示し、その後、初回治療にも導入された。2000年代後半にはボルテゾミブを中心とした導入療法がASCT前治療として定着し、完全奏効(CR)率や生存率は大きく改善した。2010年にはレナリドミド、2015年にはポマリドミドが承認され、IMiD治療は新たな時代を迎えた。レナリドミドはサリドマイドより有効性と忍容性に優れ、再発例のみならず、初回治療や維持療法へも適応が拡大された。また2016年には第2世代プロテアソーム阻害薬カルフィルゾミブ、2017年には経口プロテアソーム阻害薬イキサゾミブが承認され、これらの薬剤の登場によって、再発治療の選択肢が急速に増加した。2008~2012年ごろには日本骨髄腫学会による「多発性骨髄腫の診療指針」が整備され、診断・治療アルゴリズムが標準化された。さらに血清遊離軽鎖(free light chain:FLC)測定が日常診療へ導入され、軽鎖型骨髄腫やALアミロイドーシスの診断精度が向上した。2014年のIMWG診断基準改訂はきわめて重要であった。症候性骨髄腫の診断に「Myeloma-defining events」が導入され、従来のCRAB(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)症状に加え、2年以内に80%以上の頻度で臓器症状が出現する患者を抽出するバイオマーカー(myeloma-defining biomarkers)として、骨髄形質細胞60%以上、FLC比100以上、MRIによる骨病変2ヵ所以上の3項目(SLiMと呼ぶ)が含まれた。これによって、臓器障害が出現する前に治療を開始できるようになり、不可逆的な骨障害や腎障害の予防が可能となった。また、FISHによる染色体異常解析が普及し、2015年にはdel(17p)、t(4;14)、t(14;16)などの高リスク遺伝子異常が改訂国際病期分類(R-ISS)に組み込まれ、新規薬剤時代の予後予測ツールとして利用されるようになった。2016~2021年:抗CD38抗体と3剤併用療法の時代2016年以降、モノクローナル抗体の時代が始まった。2016年には抗SLAMF7抗体エロツズマブ、2017年には抗CD38抗体ダラツムマブが承認され、従来の2剤併用療法に抗体薬を組み合わせた3剤併用療法が標準となった。とくにダラツムマブは移植適応・非適応の双方で生存期間の延長を示し、骨髄腫の初回治療を大きく変えた。さらに2020年には抗CD38抗体イサツキシマブも加わり、抗CD38抗体は骨髄腫治療の中心となった。2022年以降:CAR-T・二重特異性抗体2022年、プロテアソーム阻害薬・IMiD・抗CD38抗体を用いた複数治療後の再発・難治性骨髄腫(トリプルクラス抵抗性)に対し、BCMA CAR-Tのイデカブタゲン ビクルユーセル(Ide-cel)とシルタカブタゲン オートルユーセル(Cilta-cel)が承認され、2024年にはBCMA/CD3二重特異性抗体のエルラナタマブ、2025年にはBCMA/CD3二重特異性抗体のテクリスタマブ、GPRC5D/CD3二重特異性抗体のトアルクエタマブが相次いで承認された。多剤治療抵抗性骨髄腫において、これらのT細胞を活用した免疫療法が新たな治療の柱となった。今後5年間の多発性骨髄腫診療の進歩への期待現在、抗CD38抗体を含む4剤併用療法が初回治療の標準となりつつあるが、今後はBCMAやGPRC5Dを標的とした二重特異性抗体やCAR-T細胞療法が、初回治療や早期再発例へも適応が拡大され、より深い奏効と長期寛解が得られる可能性がある。また、CELMoD(cereblon E3 ligase modulator)など新たな作用機序を有する薬剤も実臨床に導入され、薬剤耐性例に対する治療選択肢はさらに広がると考えられる。診断技術の面では、次世代フローサイトメトリーや次世代シークエンスを用いた微小残存病変(MRD)評価が日常診療にさらに広く普及し、治療効果判定だけでなく、治療期間や維持療法の継続・中止を判断する指標として活用されることが期待される。さらに、循環腫瘍DNA(ctDNA)や質量分析法によるM蛋白測定などの低侵襲なバイオマーカーの実用化により、骨髄穿刺に依存しない病勢評価も現実味を帯びてきている。一方、高齢患者の増加に伴い、フレイル評価や患者報告アウトカム(PRO)を取り入れた治療選択がさらに重要となる。高齢者においても治療効果だけでなく、QOLや社会生活の維持を重視した固定期間治療や外来中心の治療戦略が普及すると考えられる。また、感染症予防や支持療法の充実により、免疫療法をより安全に長期間継続できる体制も整備されると思われる。今後5年間の多発性骨髄腫診療は、「免疫療法の最適化」と「個別化医療」の進展により、さらなる治療成績の向上が期待される。

4.

gBRCA病的バリアントを有する若年早期乳がん、周術期化学療法の種類と生存アウトカムの関係

 生殖細胞系列BRCA1/2病的バリアントを有する40歳以下のHER2陰性(HER2-)早期乳がん患者において、周術期化学療法のレジメン間で生存アウトカムに統計学的な有意差はみられないことが、国際多施設共同後ろ向きコホート研究(BRCA BCY Collaboration研究)の結果で示された。イスラエル・Sheba Medical CenterのRinat Bernstein-Molho氏らが、European Journal of Cancer誌オンライン版2026年8月11日号に報告した。 本研究では、2000~2020年にStageI~IIIのHER2-乳がんと診断された40歳以下のBRCA1/2病的バリアント保持者を対象に、アントラサイクリン+タキサン系、アントラサイクリン系(タキサンなし)、非アントラサイクリン系の各術前/術後化学療法による無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を評価した。また、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)においてはプラチナ製剤の使用とアウトカムとの関連も評価した。 主な結果は以下のとおり。・109施設から4,200例が解析対象となり、うち58.7%がTNBCであった。・追跡期間中央値は8.1年(四分位範囲:4.7~12.6年)であった。・使用された化学療法レジメンの割合は、アントラサイクリン+タキサン系が74.4%、アントラサイクリン系(タキサンなし)が19.3%、非アントラサイクリン系が6.3%であった。また、TNBCでは19.8%でプラチナ製剤が投与されていた。・多変量調整後、アントラサイクリン系(タキサンなし)とアントラサイクリン+タキサン系との間で、DFS(調整ハザード比[aHR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.73~1.05)およびOS(aHR:1.20、95%CI:0.87~1.67)に有意差は認められなかった。・同様に、アントラサイクリン系(タキサンなし)と非アントラサイクリン系の比較においても、DFS(aHR:1.07、95%CI:0.82~1.38)およびOS(aHR:1.16、95%CI:0.68~2.00)に有意差は認められなかった。・TNBC症例において、プラチナ製剤の使用とアウトカム改善の間に関連はみられなかった。 著者らは今回の結果について、同患者集団における化学療法のde-escalation戦略を評価する今後の前向き研究に有益な情報をもたらすものとしている。

5.

転移大腸がん1次治療への高用量ビタミンD3上乗せ、PFSを延長せず/JAMA

 未治療の転移を有する大腸がん(mCRC)の1次治療において、高用量ビタミンD3の補充は標準用量のビタミンD3の補充と比較して無増悪生存期間(PFS)を延長しないことが、米国・ダナファーバーがん研究所のKimmie Ng氏らによる第III相「SOLARIS(Alliance A021703)試験」の結果で示された。前臨床研究および疫学研究により、大腸がんにおけるビタミンDの抗悪性腫瘍薬としての役割が示され、第II相SUNSHINE試験では、標準用量と比較して高用量ビタミンD3の補充はPFSを改善する可能性が示唆されていた(13ヵ月vs.11ヵ月、多変量補正後ハザード比[HR]:0.64、片側95%信頼区間[CI]:0~0.90、p=0.02)。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年8月3日号に掲載された。米国の無作為化第III相試験 SOLARIS試験は、米国の151施設で実施した二重盲検無作為化第III相試験である(米国国立がん研究所[NCI]の助成を受けた)。2019年10月~2022年12月に、年齢18歳以上で、未治療の切除不能な局所進行または転移を有する大腸がん患者を登録した。 被験者455例(年齢中央値59歳[四分位範囲[IQR]:50.0~68.0]、女性181例[39.8%])に、血管新生阻害薬ベバシズマブ(2週ごと)とともに、標準化学療法としてmFOLFOX6(5-フルオロウラシル/ロイコボリン+オキサリプラチン)またはFOLFIRI(5-フルオロウラシル/ロイコボリン+イリノテカン)を投与した。 これらの患者を、高用量ビタミンD3(負荷用量:8,000 IU/日×14日間投与後、4,000 IU/日)(228例)または標準用量ビタミンD3(400 IU/日)(227例)を投与する群に無作為に割り付け、病勢進行、耐用不能な毒性、同意の撤回のいずれかが発生するまで継続投与した。 主要評価項目はPFS(log-rank検定で評価)であった。副次評価項目は、客観的奏効率、全生存期間(OS)および毒性などであった。奏効率、OSにも差はない 原発巣は、左結腸が高用量群38.2%、標準用量群39.8%、右結腸がそれぞれ35.1%および33.6%、直腸が21.5%および20.4%であった。多くの患者が、基礎化学療法としてmFOLFOX6を受けた(高用量群85.8%、標準用量群84.2%)。 追跡期間中央値20ヵ月の時点で、PFS中央値は高用量群が11.8ヵ月(95%CI:10.3~13.3)、標準用量群は10.3ヵ月(95%CI:9.4~12.2)であり、両群間に有意な差を認めなかった(片側log-rank検定のp=0.25)。 また、客観的奏効率(高用量群51%[95%CI:44~58]vs.標準用量群44%[37~50]、p=0.12)およびOS中央値(25.6ヵ月vs.27.0ヵ月、HR:1.05、95%CI:0.81~1.36、片側log-rank検定のp=0.66)にも、両群間に有意差はみられなかった。Grade3以上の好中球減少、高血圧が高頻度 Grade3以上の毒性の発生に関して、両群間に臨床的に意義のある差を認めなかった。Grade3の有害事象は高用量群で115例(54.2%)、標準用量群で109例(52.2%)、Grade4はそれぞれ34例(16.0%)および31例(14.8%)、Grade5は5例(2.4%)および6例(2.9%)に発現した。高用量群におけるGrade5の有害事象のうち試験治療に関連したものはなかった。 最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球減少(高用量群67例[31.6%]vs.標準用量群62例[29.7%])、高血圧(42例[19.8%]vs.49例[23.4%])、白血球減少(19例[9.0%]vs.9例[4.3%])、末梢性感覚神経障害(19例[9.0%]vs.7例[3.3%])、下痢(16例[7.5%]vs.10例[4.8%])であった。 ビタミンD関連の有害事象(全Grade)として、高カルシウム血症(高用量群7例[3.3%]vs.標準用量群3例[1.4%])、高リン血症(7例[3.3%]vs.10例[4.8%])、腎結石(3例[1.4%]vs.0例)などがみられた。 著者は、「これらの知見に基づき、未治療のmCRC患者に対し、標準化学療法に高用量のビタミンD3を追加することは推奨できない」としている。また、SUNSHINE試験との間に結果の相違がみられたことの説明の1つとして、ベースラインの血漿25(OH)Dが本試験で高かった点(両群中央値21.8ng/mL vs.17.6ng/mL)を挙げ、「ベースラインの25(OH)D値が低いほど、ビタミンD3補充に対する反応が大きいことが知られており、したがって本試験の患者は高用量ビタミンD3補充療法から、それほど大きな恩恵を受けなかった可能性がある」と指摘している。

6.

婦人科腫瘍の循環器合併症~血栓症と高血圧~/日本婦人科腫瘍学会

 婦人科がんと循環器疾患の関連は深い。第68回日本婦人科腫瘍学会学術集会にて、大阪がん循環器病予防センターの向井 幹夫氏は「婦人科腫瘍学と腫瘍循環器学の連携」と題し、両者の密接な関係について紹介した。婦人科腫瘍とがん関連血栓症(CAT) 婦人科腫瘍患者は、閉経後の動脈硬化リスク上昇に加え、卵巣摘出後の外科的閉経や薬物治療により心血管イベントリスクが増大する。中でも、CATへの対応は婦人科腫瘍の診療においてきわめて重要である。 がんはTissue Factor(TF)やサイトカイン、さらにマイクロパーティクルを分泌して凝固系を活性化し血栓を形成する。がんはこの血栓を利用して転移するのである。がん自体による血栓形成以外に、薬剤による血栓形成も問題となる。婦人科がんで汎用される内分泌薬やパクリタキセル、タキサンなどの化学療法薬は血栓症合併リスクが高い。 日本の固形がん1万例における静脈血栓塞栓症(VTE)の発症を前向きに調べたCancer VTE Registryによれば、全体集団では5.9%、婦人科腫瘍では5.5%にVTEが認められた。また、婦人科腫瘍800例超におけるVTEの発症と危険因子を調べたGOTIC-VTE試験では、全体のVTE発症は5.8%、卵巣・卵管・腹膜がんでは13.7%に上る。その多くは無症候性であり、近位部よりも遠位部が多かった。婦人科腫瘍における脚の腫れは治療によるリンパ浮腫とみなされがちだが、末梢の血栓が隠れているケースは多いと、向井氏は注意を促す。 『肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン』2025年改訂版では、がん関連VTEに関する記載が追加された。そこでは、活動性がん患者の肺血栓塞栓症/中枢型深部静脈血栓症(DVT)の治療は、がんが治癒しない/活動性がなくならない限り継続を考慮すること、中枢型DVTの延長治療には低用量DOACを考慮することなどが記載されている。婦人科腫瘍とがん関連高血圧(Onco-Hypertension) がん治療関連高血圧では、がん由来のサイトカインや化学療法の血管内皮障害により、通常の高血圧より急速に病態が重篤化する。通常5年かかるプラーク形成が、これらの薬剤では1年程度で起こる可能性があるという。 血管新生阻害薬は投与直後から血圧を上昇させ、長期使用で血管内皮の障害を引き起こす。そのほかプラチナ系薬、アルキル化薬、PARP阻害薬、アロマターゼ阻害薬など婦人科腫瘍の治療で汎用される抗がん剤には血圧を上昇させるものが多い。 『高血圧管理・治療ガイドライン』2025年改訂版では、担がん患者の項が追加され、がんと高血圧の双方向性や治療ステップが示されている。そこでは、がん治療患者の降圧治療開始時期と降圧目標、降圧薬の第1選択、治療抵抗性への対応などが取り上げられている。 婦人科腫瘍における循環器合併症の管理には、ライフステージ、性ホルモン、血栓・出血リスクといった婦人科特有の課題がある。より良い循環器疾患の合併症管理には、婦人科腫瘍医と循環器医の情報共有と連携が大きな鍵を握ることは間違いない。

7.

進行扁平上皮肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬+血管新生阻害薬の二重特異性抗体ivonescimabの効果(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 非小細胞肺がん(NSCLC)の約25~30%を占める扁平上皮がんは、腺がんと比較して治療選択肢が限定的であり、肺がん領域の大きな課題である。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)により予後は改善したものの、長期生存を期待できる症例は依然として限られている。 腺がんにおいて抗腫瘍効果を発揮してきたベバシズマブなど血管新生阻害薬の併用は、扁平上皮がんにおいては中枢型病変や空洞形成、大血管侵襲に伴う致死的な出血リスクとなっている。 このような背景の中、注目されているのがPD-1とVEGFの両方を標的とする二重特異性抗体(bispecific antibody)ivonescimabである。ivonescimabは、PD-1とVEGFの両方が存在する腫瘍微小環境において結合親和性が飛躍的に高まる協調的結合(cooperative binding)という特殊な構造特性を有する。全身性のVEGF阻害による毒性を抑えつつ、腫瘍局所で強力な免疫活性化と血管正常化を同時に引き起こす設計となっている。 本稿で取り上げるHARMONi-6試験は、未治療の進行扁平上皮NSCLCを対象にivonescimab+カルボプラチン+パクリタキセルの有効性と安全性を、対照群であるチスレリズマブ(PD-1阻害薬)+カルボプラチン+パクリタキセルと比較検討した第III相試験である。すでに無増悪生存期間(PFS)の延長が報告されているが、今回全生存期間(OS)の中間解析結果が公表された。結果として、中国における既存の標準治療を対照群として死亡リスクを34%低減させ、OS中央値27.9ヵ月という数字のインパクトはきわめて大きい。 さらに注目すべきは、PD-L1陰性例においてもハザード比(HR)0.64とOS延長効果が示された点である。PD-L1陰性群では従来のICI療法の効果を認めにくいが、VEGF阻害による抗腫瘍免疫の誘導・血管正常化とPD-1阻害が抵抗性を克服したものと考える。 扁平上皮がんに対するベバシズマブ投与は、致死的出血のリスクから実臨床では避けられていた。本試験において、ivonescimab群のGrade3以上の出血発生率は3%(対照群は1%)であった。適応基準では「明らかな腫瘍壊死・空洞形成があり大出血リスクが高いと判断された症例」や「大血管侵襲例」は除外されているが、ベースラインで空洞を認めた症例(ivonescimab群24例)においても、認められた気道出血はすべてGrade1~2の軽度なものであったと報告されている。筆者らは扁平上皮がんに対しても血管新生阻害薬を安心して届けられるといったメッセージを残しているが、その出血の頻度から日本の実臨床で投与するには一抹の不安が残る。 ivonescimabのメリットを考えると、サブグループ解析において、PD-L1 TPS<1%(HR:0.64)や転移部位数3ヵ所以上(HR:0.47)の患者群できわめて良好な傾向がみられた。PD-L1陰性で腫瘍量が多く、複数臓器に転移を認める扁平上皮がんに遭遇した際、従来治療では効果を期待できずに頭を悩ませていたことだろう。このような「ICI単独/併用では不十分な群」に対して、ivonescimab+化学療法は強力な第1選択となる可能性がある。 注意が必要なのは、本試験では登録患者の93%が男性であり、女性の割合がきわめて低い点や、75歳以上の高齢者やPSが2以上のフレイル症例は除外されている点などである。また中国の50施設で実施された地域限定の試験であり、日本の肺がん症例にそのまま当てはめることは難しく、現在進行中のグローバル第III相試験「HARMONi-3試験」の成果が待たれる。 もう1つ注意が必要なのは、対照群として選択されているチスレリズマブである。同薬は中国や欧州で承認されている抗PD-1抗体であるが、日本や米国で最も広く使われている標準治療はKEYNOTE-407に基づくペムブロリズマブである。チスレリズマブ+化学療法群のOS中央値23.7ヵ月は良好な成績ではあるが、本邦の標準治療に対する直接的な比較ではない点は差し引いて考えるべきである。

8.

HER2+局所進行/転移乳がんへの二重HER2阻害療法と併用の1次化学療法、エリブリンvs.タキサンの最終OS解析(JBCRG-M06/EMERALD)/ESMO Open

 HER2陽性(HER2+)局所進行/転移乳がんに対して、二重HER2阻害療法(トラスツズマブ+ペルツズマブ)と併用する1次化学療法として、エリブリンと医師選択のタキサンを比較した第III相JBCRG-M06/EMERALD試験の最終解析の結果、全生存期間(OS)中央値が6年を超え、2群間に有意差は認められなかったことが示された。福島県立医科大学の佐治 重衡氏らがESMO Open誌8月号に報告した。本試験ではすでに、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)においてエリブリンがタキサンに非劣性を示したことが報告されている。 本試験では、HER2+局所進行/転移乳がん患者をエリブリン群または医師選択のタキサン(ドセタキセルまたはパクリタキセル)群に無作為に1:1の割合で割り付け、1次化学療法としてトラスツズマブ+ペルツズマブと併用した。PFSは2023年6月30日まで、OSは2024年12月31日まで評価した。生存アウトカムは、エリブリン群とタキサン群で比較し、循環腫瘍DNA(ctDNA)によるPIK3CA変異(E542K、E545K、H1047R、N345Kの単一ヌクレオチド変異)またはHER2増幅(ERBB2コピー数>2.5)の検出状況に応じて比較した。 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、エリブリン群が78.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:64.3~未到達)、タキサン群が未到達で、ハザード比は1.25(95%CI:0.92~1.71、p=0.19)であった。・60ヵ月OS率は、エリブリン群が59.7%、タキサン群が65.2%であった。・患者全体および治療群ごとのいずれにおいても、ctDNA PIK3CA変異陽性例ではOS中央値および60ヵ月OS率が数値的に低く、ctDNA HER2増幅陽性例では高かった。・治療群とctDNA PIK3CA変異またはctDNA HER2増幅の状態との間に統計学的に有意な相互作用は認められなかった。・PFSについても同様の傾向が観察された。

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進行卵巣がんにおけるカルボプラチン腹腔内投与の位置付け/日本婦人科腫瘍学会

 2025年12月に卵巣がんの1次化学療法としてカルボプラチンの腹腔内(IP)投与が保険収載された。本年(2026年)7月に開催された第68回日本婦人科腫瘍学会学術講演会では、同がんにおけるIPカルボプラチンの可能性について、岡山大学の長尾 昌二氏が最新の臨床知見を基に紹介した。大規模試験が示した卵巣がんにおけるIP化学療法の可能性 PARP阻害薬や抗体薬物複合体(ADC)の登場により急速に変化する卵巣がん治療においてIP化学療法はどのような役割を担えるのか。長尾氏が研究代表者を務めたiPocc試験は、カルボプラチン腹腔内投与の有効性を前向き無作為化比較試験で証明し、世界的にも高く評価されている。その成果はNEJM Evidence誌に掲載され、日本におけるIPカルボプラチンを保険収載に導いた。 IP化学療法の目的は、腹腔内に播種したがん組織に対して高濃度の抗がん薬を直接曝露させることで、局所治療としての効果を最大化することである。先駆けとなったのはGynecologic Oncology Group(GOG)が実施した3つの大規模無作為化比較試験である。シスプラチンの静注(IV)とIPを比較したGOG104試験、パクリタキセルのIVとシスプラチンのIPを比較したGOG114試験、パクリタキセルのIVとIPを比較したGOG172試験。いずれの試験でもIP投与の生存メリットが示された。その後のメタアナリシスではIV療法に比べIP療法が死亡リスクを約20%低下(ハザード比[HR]:0.79)させるという結果を出している。 これらの結果を受けて、米国国立がん研究所(NCI)は卵巣がんに対してIP化学療法を推奨するアナウンスメントを出した。しかし、IP療法は実臨床に広く普及することはなかった。試験デザイン上の問題、標準治療の変化、シスプラチンの毒性、カテーテルトラブルの頻度などが普及を阻んだ大きな要因だと長尾氏は指摘する。IPカルボプラチンの有効性を立証した日本発のiPocc試験 IP化学療法の課題を乗り越えるべく、使用薬剤とその薬理学的特性の再検討が世界的に行われた。その結果、IP投与は薬剤によってまったく異なる薬理学的傾向を持つことが明確になる。 プラチナ製剤は分子量が比較的小さく水溶性であるため、IP投与後急速に吸収される。IP投与により腹腔内濃度は血漿中の20倍程度に達したのち、速やかに血中に移行し、IVと同等の血中濃度が維持される。一方、パクリタキセルは分子量が大きく脂溶性であるため、腹膜からの吸収は緩徐で腹腔内に長時間とどまる。そのため腹腔内のAUCは血漿中の1,000倍近くとなる。腹膜から吸収されやすいプラチナ製剤などによるIP投与は全身治療としての特性も有しているのではないかと長尾氏は述べる。 こうした知見を背景に、IPカルボプラチンの有用性を検証する複数の国際試験が行われた。しかし、北米や欧州で行われた試験では良好な結果は出なかった。そのような状況のなかで、日本発のiPocc試験が注目を集める結果を示す。 iPocc試験は、新たに診断されたFIGO StageII~IVの上皮性卵巣がんを対象として行われた。この試験では幅広い患者群に対し、dose dense TC(パクリタキセル+カルボプラチン)のIV投与(以下、ddTC IV)とカルボプラチンをIP投与としたdose dense TC(以下ddTC IP)を比較した。その結果、OSでは有差が得られなかったものの、PFSのHRは0.83(95%信頼区間[CI]:0.69〜0.99)とddTC IP群で有意な改善を示した(p=0.04)。 サブグループ解析では残存腫瘍の大きさにかかわらず、ddTC IP群で良好な傾向が示されている。IP投与で懸念されていたカテーテル感染症および腹痛の発現は、9.5%と34.1%であった。IPカルボプラチンの実臨床での活用方法──岡山大学のアルゴリズム PARP阻害薬やADCが標準化された現在の卵巣がん治療において、IP療法をどのように位置付けるかは、卵巣がん治療における重要な戦略的課題の1つと言える。 岡山大学では独自の治療アルゴリズムによりIPカルボプラチンが運用されている。診察時腹腔鏡でプラチナ感受性が期待できる漿膜性や類内膜型の組織型を選択する。腹膜切除をせずに初回腫瘍縮小手術(PDS)でR0(肉眼的残存なし)切除が達成できた症例にはIPポートを留置し、ddTC IP療法を実施する。また、術前化学療法(NAC)から中間的腫瘍減量術(IDS)と進む症例では術前と術後にddTC IPを実施する。 IPカルボプラチンは単なる薬剤投与方法の追加にとどまらず、進行卵巣がん全身治療の有望な選択肢として大きな意味を持つと考えられる。また、iPocc試験の検体を用いた、さらなる研究も行われており、IPカルボプラチンは卵巣がん治療において今後も選択の幅を広げていくと長尾氏は結んだ。

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高齢者DLBCL診療における治療強度の考え方【高齢者がん治療 虎の巻】第11回

講師紹介<今回のPoint>高齢者DLBCLでは暦年齢のみで判断せず、G8などのスクリーニングと高齢者機能評価(GA)でfit/unfit/frailを評価し、治療強度を検討する。層別化に応じて、fitには治癒を目指す標準治療、unfitにはR-miniCHOPなどの減量レジメンを検討する。frailでは治療目標を再確認し、低強度治療または緩和的治療を含めて個別に判断する。Pola-R-CHP療法は初発DLBCLの標準治療の一つであるが、80歳を超える患者では臨床試験のエビデンスが限られる。心機能、併存症、本人の希望を確認し、減量投与を含めて慎重に検討する。<症例>82歳、男性。2ヵ月前から頸部リンパ節腫大と食欲低下、体重減少を認め、近医から紹介された。頸部リンパ節生検の結果、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)と診断され、免疫染色の結果、Non-GCB型(Hans分類)に分類された。PET-CTを撮影したところ、腹腔内リンパ節にも病変を認め、臨床病期はLugano分類でStage III、LDH高値、ECOG Performance Status(PS)1で、国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)はhigh-intermediate riskだった。併存症は高血圧症、持続性心房細動、慢性心不全、2型糖尿病で、抗凝固薬、利尿薬、経口血糖降下薬を内服していた。退職後は自宅近くの畑仕事を日課としており、発症前のADLは自立、買い物や通院も自力で可能だった。最近は倦怠感のため畑に出る頻度が減っているが、身の回りのことは自立している。G8は11点、Charlson Comorbidity Index(CCI)は慢性心不全1点、糖尿病1点の計2点であった。本人は「また畑に出られるようになりたい。治る可能性があるなら、できる治療は受けたい」と話している。一方、家族は「年齢も心臓も心配なので、強い治療は避けたほうが良いのではないか」と不安を示している。高齢者DLBCLの治療方針悪性リンパ腫は高齢者に好発する代表的な造血器腫瘍であり、本邦では年間約3万6,000人が新たに診断され、その多くを70代から80代の患者が占めます1)。組織型としてはDLBCLが最も多く、高齢DLBCL患者を診療する機会は年々増加しています。DLBCLは高齢者であっても、薬物療法によって治癒が目指せる疾患ですが、若年者に比べて予後が不良であることが多く、その背景には生物学的要因や臨床的要因が複雑に絡み合っていると考えられています。『造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)』には、高齢者DLBCLに対する標準治療として、80歳未満に対しては若年者と同様の治療法が、80歳以上の高齢者に対しては、用量あるいはコース数を減らしたR-CHOP療法が妥当な治療選択肢の一つであると記載されています2)。高齢者機能評価(GA)に基づく治療強度の決定高齢者DLBCLでは、暦年齢のみで治療強度を決定するのではなく、患者個々の予備能を評価したうえで治療方針を定めることが重要です。『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』でも、初発高齢者DLBCLの治療方針の判断にGAを行うことが弱く推奨されています3)。GAは、身体機能(ADL・IADL)、併存症、認知機能、栄養状態、社会的サポートなどを多面的に評価する手法であり、これにより患者をfit(標準治療に忍容性がある)、unfit(標準治療は困難だが減量治療は可能)、frail(緩和的対応が中心)に層別化します。簡便なスクリーニングには本症例でも用いられているG8などが、より包括的な評価には総合的なGAが活用されます。fitと判断される患者には、若年者と同様に治癒を目指した標準治療が推奨されます。一方、unfitやfrailと判断される患者では、毒性を軽減しつつ一定の有効性を確保する目的で減量レジメンが選択され、なかでもR-miniCHOP療法が代表的な選択肢です。Peyradeらによる第II相試験では、80歳以上のDLBCL患者に対し、標準量の約半量に減量したR-miniCHOP療法が、忍容性良好でありながら治癒も期待できることが示され、高齢者に対する標準的選択肢の一つとして位置付けられています4)。Pola-R-CHP療法という新たな選択肢近年、初発DLBCLに対する治療は大きく変化しました。第III相POLARIX試験では、R-CHOP療法のビンクリスチンを抗体薬物複合体であるポラツズマブ ベドチン(商品名:ポライビー)に置き換えたPola-R-CHP療法が、従来のR-CHOP療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、本邦でも初発DLBCLに対する標準治療の一つとして位置付けられるようになりました5)。サブグループ解析では、60歳以上の高齢者やIPI高リスク群、Non-GCB(ABC)型などでPola-R-CHP療法の相対的な有用性が示唆されています。本症例のような高齢・Non-GCB型のDLBCLは、Pola-R-CHP療法の効果が期待される集団と考えられます。ただし、POLARIX試験の対象は18〜80歳であり、80歳を超える高齢者は含まれていません。したがって、本症例のような80歳を超える患者にどこまで適応を広げてよいかは、現時点で明確なエビデンスがありません。近年は80歳以上を含む実臨床でのデータ(リアルワールドデータ)が少しずつ報告されつつあり6)、ポラツズマブ ベドチンに併用するCHPを適切に減量することで、80歳以上でもPola-R-CHP療法を安全に実施しうる可能性が示されています。一方で、心機能低下例などアントラサイクリンの使用が難しい症例も少なくなく、適応は個々の予備能と併存症を踏まえて慎重に判断する必要があります。本症例への治療方針本症例を改めて整理すると、82歳と高齢であり、PS 1、ADLは自立していますが、G8 11点、CCI 2点で、機能的にはおおむねunfitに近い状態と評価できます。本人は治癒を目指した治療を希望していますが、持続性心房細動や慢性心不全といった心疾患を有し、ドキソルビシンによる心毒性のリスクには十分な注意が必要です。また、組織型はNon-GCB型であり、Pola-R-CHP療法の上乗せ効果が期待しやすい点は、治療選択の後押しとなります。以上を踏まえると、治療開始前に心エコーなどで心機能を評価し、ドキソルビシンの使用が許容される場合には、CHPを適切に減量したPola-R-CHP療法も選択肢となります。ただし、80歳を超える患者はPOLARIX試験の対象外であることから、現時点では実臨床データに基づく慎重な判断が必要です。もし心機能低下が明らかな場合には、ドキソルビシンを含まないレジメンも検討する必要があります。いずれの場合も、本人・家族の意向と予備能を共有しながら、治療強度を個別に最適化していく姿勢が重要です。G-POWER研究:日本の高齢DLBCLに合ったGAを目指して高齢DLBCLに対するGAの活用は国際的に進んでいますが、海外のデータをそのまま日本の実臨床に当てはめることには限界があります。生活環境、家族支援、医療アクセス、入院・外来治療の体制、介護保険を含む社会制度は国によって異なるためです。現在、国内において70歳以上の高齢DLBCL患者を対象に、GAの意義を明らかにする多施設前向き観察研究(G-POWER研究)が進められています7)。本研究では、G8、ADL、IADL、認知機能、うつ状態、併存症、Clinical Frailty Scaleなどを評価し、初回治療の内容、有害事象、治療完遂、予後との関連を検討します。日本の高齢DLBCL患者において、どのGA項目が治療選択や有害事象予測に本当に役立つのかを明らかにすることは、今後の実臨床に直結する課題です。GAを「評価して終わり」にせず、治療を支える具体的な介入につなげるためにも、本邦独自のエビデンス構築が期待されます。 1) がん情報サービス:全国がん登録 2) 日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版 2024年版. 金原出版. 2024. 3) 日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会編. 高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版. 南江堂. 2026. 4) Peyrade F, et al. Lancet Oncol. 2011;12:460-468. 5) Tilly H, et al. N Engl J Med. 2022;386:351-363. 6) Yamada T, et al. Ann Hematol. 2025;104:5191-5200. 7) UMIN-CTR:臨床登録試験情報(G-POWER研究)

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プラチナ抵抗性または不応性卵巣がんにchiauranib+パクリタキセルがPFSを延長(CHIPRO)/ASCO2026

 プラチナ抵抗性または難治性卵巣がんに対し、Aurora Bキナーゼなどを標的とするマルチキナーゼ阻害薬chiauranibとweeklyパクリタキセルの併用が、無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に延長した。全生存期間(OS)全体では有意差はみられなかったものの、後治療を受けなかった患者などで良好な生存ベネフィットが示されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Xiaohua Wu氏(中国・復旦大学 上海がんセンター)が発表した。 中国における卵巣がんは年間6万例以上が新たに診断され、3万例以上が死亡している。初期治療の15%がプラチナ抵抗性であり、初期治療後3年以内に70%が再発する。chiauranibは、腫瘍細胞の増殖に関わるAurora B阻害、腫瘍抑制性免疫微小環境の再プログラム化、血管新生阻害という3つの経路を標的として抗腫瘍効果を発揮するように設計されたチロシンキナーゼ阻害薬である。第II相試験でプラチナ抵抗性卵巣がんに有望な結果が得られたことから第III相試験CHIPRO試験が実施された。・試験デザイン:第III相無作為化比較試験・対象:プラチナ抵抗性または不応性で既治療(前ライン数1~5)の上皮性卵巣がん、卵管がん、または原発性腹膜がん・試験群:chiauranib(連日投与)+ weeklyパクリタキセル(1サイクル3週で最大6サイクル)→chiauranibによる維持療法(CP群、228例)・対照群:プラセボ+weeklyパクリタキセル(同上)→プラセボによる維持療法(PP群、231例)・評価項目:[主要評価項目]独立審査委員会(IRC)判定によるPFS、OS[副次評価項目]治験医師判定によるPFS、奏効率(ORR)、疾患コントロール率、奏効期間、QOL、安全性 主な結果は以下のとおり。・対象患者には高悪性度漿液性卵巣がんが多数(CP群78.9%、PP群81.8%)含まれた。化学療法のライン数3以上はCP群とPP群でそれぞれ27.6%と27.7%、PARP阻害薬治療歴は51.3%と58.4%、VEGF/VEGFR阻害薬治療歴は70.2%と71.0%であった。・IRC判定のPFS中央値は、PP群の2.69ヵ月に対し、CP群では4.57ヵ月であり、CP群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.427、95%信頼区間[CI]:0.34~0.54、p<0.001)。・CP群のベネフィットはすべてのサブグループで一貫して認められた。・OS中央値は、CP群12.09ヵ月、PP群12.12ヵ月であり、両群間に統計学的有意差は認められなかった(HR:0.932、95%CI:0.73〜1.20、p=0.583)。・試験後に後治療を受けなかった集団のOS中央値をみると、PP群の4.70ヵ月に対し、CP群では7.39ヵ月と、CP群で有意な改善が認められた(HR:0.599、95%CI:0.39~0.91、p=0.016)。・IRC判定によるORRは、PP群の14.3%に対し、CP群では32.0%とCP群で有意に高かった(p<0.001)。・Grade3以上の有害事象はCP群では90.4%、PP群では54.3%に発現した。CP群で頻度の高い試験治療下における有害事象は白血球減少症、好中球減少症、貧血などの血液毒性であった。血管新生阻害薬でみられる蛋白尿、高血圧による治療中断はなかった。

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プラチナ抵抗性卵巣がんに対するrelacorilant+nab-パクリタキセル、タキサン既治療例でも良好な結果(ROSELLA試験)/ASCO2026

 プラチナ抵抗性再発卵巣がん(Platinum-Resistant Ovarian Cancer、以下PROC )に対するグルココルチコイド受容体拮抗薬relacorilantとnab-パクリタキセルの併用は、全集団およびタキサン既治療群において生存ベネフィットを示した。relacorilantの第III相試験であるROSELLA試験についてLucy Gilbert氏(カナダ・McGill University)が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。 コルチゾールがグルココルチコイド受容体(GR)を介して伝えるシグナルは、腫瘍細胞の化学療法に対する感受性を低下させることが明らかとなっている1)。グルココルチコイド受容体拮抗薬であるrelacorilantは、がん細胞の化学療法への感受性を回復させる作用が期待されている。同試験では、PROC患者を対象に、標準治療の1つであり、事前の支持療法にステロイドを必要としないnab-パクリタキセルへのrelacorilantの上乗せ効果が検証された。・試験デザイン:国際共同第III相試験・対象:PROC患者(プラチナ最終投与から6ヵ月以内に進行)・試験群:nab-パクリタキセル 80mg/m2(28日サイクルの1・8・15日目)+relacorilant 150mg(nab-パクリタキセル投与の前日・当日・翌日[サイクル1の前日投与はなし]) 188例・対照群:nab-パクリタキセル 100mg/m2(28日サイクルの1・8・15日目) 193例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]治験担当医によるPFS、奏効率、奏効期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・前治療ライン数3の患者が4割超、2以上の患者は9割を超えていた。・relacorilant+nab-パクリタキセル群は、BICR判定によるPFS、OS共に有意な改善を示した(PFSのハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.54~0.91、p=0.0076、OSのHR:0.65、95%CI:0.51~0.83、p=0.0004)。・OSのサブグループ解析において、タキサン既治療群では、relacorilant+nab-パクリタキセル群が対照群よりも良好な傾向を示した。タキサン既治療全集団のOSのHRは0.65(95%CI:0.51~0.83)、タキサンなし期間6ヵ月以下集団では0.6(同:0.31~1.15)、タキサンなし期間6ヵ月超集団では0.66(同:0.51~0.86)であった。・relacorilant+nab-パクリタキセル群の新たな安全性プロファイルは確認されなかった。同群で発現頻度の高い有害事象は好中球減少、貧血、倦怠感、悪心など化学療法由来のものが中心であった。 Gilbert氏は、今回の結果から、予後不良なPROC患者にとって、relacorilantはバイオマーカーによる患者選択を必要としない新たな治療選択肢となり得ると結論づけた。

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初発または再発の進行dMMR/MSI-H子宮体がんにdostarlimab+化学療法は長期PFSベネフィットを維持(RUBY)/ASCO2026

 ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)または高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する初発または再発の進行子宮体がん患者に対し、dostarlimabと化学療法の併用療法は、長期にわたる無増悪生存(PFS)ベネフィットを維持した。また、混合治癒モデル(mixture cure model[MCM解析])による推定治癒割合は50%を超えることが示された。 この結果はENGOT-EN6-NSGO/GOG-3031/RUBY試験の4年長期追跡および治癒モデリングに関する事後解析によるもの。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Matthew A. Powell氏(米国・ワシントン大学)が発表した。 同疾患に対するdostarlimabと化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル[CP])の併用は、RUBY試験において全生存期間(OS)およびPFSの有意な改善を示したが1,2)、長期の結果や治癒可能性については明らかにされていなかった。・試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検多施設共同第III相試験・対象:未治療または再発進行子宮体がん・試験群:dostarlimab+カルボプラチン+パクリタキセル 3週ごと6サイクル→dostarlimab 6週ごと3年以内(dostarlimab+CP群、245例)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル 3週ごと6サイクル→プラセボ 6週ごと3年以内(プラセボ+CP群、249例)・評価項目[主要評価項目]治験担当医評価のPFS、OS[副次評価項目]BICR評価のPFS、PFS2、全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値55.6ヵ月となるdMMR/MSI-H集団の追加追跡の結果、プラセボ+CP群のPFS中央値7.7ヵ月に対し、dostarlimab+CP群は依然として未到達であることが示された(ハザード比[HR]:0.30、95%CI:0.17~0.52)。・48ヵ月PFS割合はプラセボ+CP群の15.7%に対し、dostarlimab+CP群は57.9%であった。・条件付きPFS解析の結果、1年間進行がなかった患者における1~4年の3年PFS割合は88.6%、2年間進行がなかった患者における2~4年の2年PFS割合は91.7%であった。・条件付きOS解析の結果、1年間生存した患者における1~4年の3年OS割合は84.0%、2年間生存患者における2~4年の2年OS割合は88.0%であった。・混合治癒モデルを用いて4年時点の長期生存患者の割合(cure rate)を解析したところ、プラセボ+CP群では14%、dostarlimab+CP群では54%と推定された。・dostarlimab+CP群の主な試験治療下における有害事象(TEAE)は、脱毛(50.0%)、疲労(46.2%)、悪心(46.2%)、末梢神経障害(42.3%)、関節痛(36.5%)などであり、同群でもっとも頻度の高い免疫関連有害事象(irAE)は甲状腺機能低下症で15.4%であった。 本試験結果はGynecologic Oncology誌2026年5月29日オンライン版に同時掲載されている。

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転移TN乳がん1次治療におけるDato-DXd、TROPION-Breast02の日本人サブ解析/日本乳癌学会

 免疫療法が適応とならない未治療の局所再発・切除不能/転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象に、ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)の1次治療としての有効性と安全性を治験責任医師選択の化学療法(ICC)と比較した国際第III相TROPION-Breast02試験における日本で登録された38例での解析結果を、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が第34回日本乳癌学会学術総会で報告した。 本試験では、ITT集団において全生存期間(OS)および盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)が、Dato-DXd群で有意な改善が認められたことがESMO2025で報告されている。・対象:免疫療法が適応とならない未治療の局所再発・切除不能/転移TNBC・試験群:Dato-DXd(3週ごと6mg/kg点滴静注)・対照群:ICC(パクリタキセル、nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチンから選択)・評価項目:[主要評価項目]OS、BICRによるPFS[副次評価項目]治験担当医師評価によるPFS、BICRによる奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・ITT集団644例のうち日本で登録された患者は38例(Dato-DXd群:17例、ICC群:21例)であった。・患者背景について、日本の集団ではICC群の選択薬剤がITT集団と比べてnab-パクリタキセルが少なく、多くの医師がパクリタキセルを選択していた。・BICRによるPFS中央値は、Dato-DXd群が15.0ヵ月とICC群の7.0ヵ月より改善し(ハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.19~1.01)、ITT集団と同様であった。・OS中央値は、Dato-DXd群24.0ヵ月、ICC群18.5ヵ月でITT集団とほぼ同様であった(HR:0.55、95%CI:0.22~1.30)。・BICRによるORRは、少数例ではあるもののDato-DXd群64.7%、ICC群23.8%であった。DoR中央値は順に、20.3ヵ月(95%CI:4.6~NR)と5.8ヵ月(同:4.2~NR)であった。・毒性について、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止例はDato-DXd群が12%、ICC群が16%とICC群のほうが多かった。TRAEは、Dato-DXd群では脱毛、悪心、口内炎、角膜炎など眼症状が多く発現し、脱毛は全体集団に比べて日本の集団で多かった。 佐治氏は、「例数は少ないが、日本サブセットでもDato-DXdは効果および安全性ともITT集団と同様のデータが示された」とまとめ、「日本の患者においてもITT集団のデータを基に説明したり、投与することが可能」と述べた。

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進行・再発子宮体がん、ペムブロリズマブ+化学療法の長期OS結果(NRG-GY018)/ASCO2026

 進行または再発の子宮体がんに対し、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法はミスマッチ修復機能欠損(dMMR)およびミスマッチ修復機能正常(pMMR)のいずれのコホートにおいても、標準的な化学療法単独と比較して長期的な全生存期間(OS)の改善効果を維持した。 第III相無作為化比較試験NRG-GY018の長期追跡によるOSおよび後治療に関する解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Ramez N. Eskander氏(米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校)が発表した。 ペムブロリズマブと化学療法の併用は、MMRステータスに関わらず無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善することが同試験で示されている1)。今回の発表ではdMMRおよびpMMRコホートにおけるOSアップデートと後治療による影響に関する検証結果が報告された。・試験デザイン:第III相無作為化比較試験・対象:StageIII/IVまたは測定可能病変の有無を問わないStageIVB、あるいは再発病変を有する子宮体がん(術後補助化学療法歴がある場合は試験開始12ヵ月以上前に完了していること)・試験群:ペムブロリズマブ(200mg)+パクリタキセル(175mg/m2)+カルボプラチン(AUC 5)を3週ごと6サイクル投与後、維持療法としてペムブロリズマブ(400mg)を6週ごと最大14サイクル投与(ペムブロリズマブ群)・対照群:プラセボ+パクリタキセル(175mg/m2)+カルボプラチン(AUC 5)を3週ごと6サイクル投与後、維持療法としてプラセボを6週ごと最大14サイクル投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]治験医師判定によるPFS[副次評価項目]dMMRおよびpMMRコホートにおけるOS、試験治療後のICI治療状況など 主な結果は以下のとおり。[dMMRコホート]・割り付けは222例、追跡期間中央値は49ヵ月であった。・OS中央値は両群ともに未到達であったが、プラセボ群と比較してペムブロリズマブ群は有意な改善を示した(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.34~0.92、p=0.0124)。48ヵ月OS割合はペムブロリズマブ群78.6%に対し、プラセボ群は60.4%であった。・進行後にICIによる治療を受けた割合はプラセボ群の93.2%に対し、ペムブロリズマブ群では34.1%であった。[pMMRコホート]・割り付けは588例、追跡期間中央値は44ヵ月であった。・OS中央値はプラセボ群の35.1ヵ月に対し、ペムブロリズマブ群は44.4ヵ月で、ペムブロリズマブ群で良好な傾向が維持されていた(HR:0.86、95%CI:0.69~1.08、p=0.1072)。・進⾏後にICI治療による後治療を受けた割合は、プラセボ群81.1%に対しペムブロリズマブ群では42.9%であった。 今回の長期追跡データにより、進行・再発子宮体がんにおけるペムブロリズマブ+化学療法のOSベネフィットが裏付けられた。プラセボ群において高頻度でICIによる後治療が行われたにもかかわらず、ペムブロリズマブの上乗せが持続的な⽣存改善をもたらすことが⽰されたとEskander氏は結んだ。

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ASCO2026 レポート 老年腫瘍(前編)

レポーター紹介ここ数年、ASCO Annual Meetingでは、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)や、GAで明らかになった脆弱性に対するサポートの有用性を検証する研究が発表され、老年腫瘍学の領域を大いに盛り上げてきた。ASCO2026では、日常診療を大きく変えるような重要な試験(pivotal study)は多くなかったものの、高齢患者をどのように評価して治療選択に結びつけるか、GAを忙しい日常診療の中でどう使える形にするか、さらに、がんを患う高齢者(以下、高齢がん患者)に多い老年症候群にどのように介入するか、という観点から興味深い研究が報告されていた。その中から、筆者が興味深いと感じた研究を抜粋して紹介する。高齢がん患者をどう評価するか - 「fitかどうか」ではなく「どこが脆弱か」をみる高齢がん患者の診療で最も悩ましいのは、「この患者さんに標準的ながん治療を行ってよいのか」という問いである。暦年齢だけで判断すべきではないことは、すでに多くの医療者が理解している。しかし、では何をもって積極的治療に適していると判断し、何をもって慎重な治療選択が必要と考えるべきなのか。この問いに答えるのは、日常診療でも臨床試験でも、いまだに簡単ではない。この問いに答えるために、欧州の老年腫瘍学では、GAを用いて高齢がん患者を、fit、vulnerable、frailと分類することがある。しかし、もともとfitやfrailは老年医学の用語であり、腫瘍学の用語ではない。老年医学では、『自立度』を軸として、「健常(fit)」、「要介護状態(disability)」、その中間を「フレイル(frailty)」と分類することが多い(注:老年医学の領域でも定義は定まっていない)。一方、腫瘍学では、『がん治療の適応』を軸として、「若年者と同じ標準治療ができる(fit)」、「非常に弱い治療や緩和・支持療法ならできる(frail)」、その中間を「用量などを調整した弱い治療ならできる(vulnerable)」と分類することが多い(図)。図 日常診療における高齢者の分類方法画像を拡大する脆弱な高齢者に対するエプコリタマブ+R-mini CVP(#7002)この問題を考えるうえで、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する脆弱な高齢者を対象としたエプコリタマブ+R-miniCVPに関する試験は興味深かった1)。脆弱な高齢者を対象として、アントラサイクリンを抜いたR-miniCVP(リツキシマブ+減量シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン)に抗CD3/CD20二重特異性抗体であるエプコリタマブを併用する治療の有用性を評価した第II相試験が実施された。特筆すべきは、脆弱な高齢者を定義する際に、simplified Geriatric Assessment(sGA)というツールを用いたところである。sGAでは、年齢(閾値:80歳)、日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)、併存症(CIRS-Gを使用)を組み合わせて、患者をfit、unfit、frailに分類する。DLBCL患者に用いられてきた簡便なツールであり、予後と関連することが示されている2)。本試験の中間解析において、この集団におけるエプコリタマブ+R-miniCVPの有望な結果が示されたが、老年腫瘍学的には、高齢者機能評価の一種であるsGAを用いて対象集団を定義したという点が興味深い。すなわち、この試験におけるunfit/frailとは、漠然と「高齢で弱っている患者」を指す言葉ではなく、標準的なアントラサイクリンを含んだレジメンに適しているかどうかを高齢者機能評価で規定したという点で興味深いのである。一方で、sGAは実用的である反面、分類は大まかであると言える。たとえば80歳以上であれば、ADL、IADL、併存症に大きな問題がなくてもfitには分類されない。より多面的に高齢がん患者を評価する試みも必要である。高齢がん患者をより多面的に分類するツール(FI-CGA-10)の検討(#1656)このような問題意識に対して、日本から高齢がん患者をより多面的に分類するツールの有用性を評価する研究が報告された3)。治療方針決定前にGAを実施された高齢者1,630例を対象として、日本の研究グループが開発したツール「FI-CGA-10」が、予後を予測するかを評価した前向きコホート研究である。FI-CGA-10は、認知機能、気分、コミュニケーション能力(視力+聴力)、移動能力、転倒、栄養、ADL、IADL、社会支援の有無、併存症の10領域から構成される。その合計点数に基づき、患者をfit、pre-frail、frailに分類する4)。本研究の結果、fit群をreferenceとすると、pre-frail群の死亡ハザード比は2.26、frail群では5.06であった。また、年齢、性別、がん種、病期を含むモデルにFI-CGA-10を加えることで、1年全生存率の予測精度を示す指標(C-index)は、0.70から0.76に改善した。ここまでは単なる予後因子解析にみえるが、重要なのは、FI-CGA-10が「どのような患者が脆弱なのか」を、単一の指標ではなく複数の領域から評価している点である。高齢患者の評価では、Performance Statusや年齢だけでは不十分であり、身体機能、日常生活機能、栄養状態、認知・心理面、社会的背景などを含めて総合的に捉える必要があることは以前から指摘されてきた。FI-CGA-10は、そのようなGAの考え方を、実際に予後予測に利用できる形に整理した試みといえる。すなわち、「どのような評価を用いれば高齢患者を分類できるのか」という問いに対して、本研究はGAを基盤とした多面的評価が有力な選択肢であることを示している。前編まとめこのようにASCO2026では、高齢患者をどのように分類し、治療判断に結びつけるか検討する演題が複数報告されていた。ただし、ここで重要なのは、「予後が悪い患者」と「治療から利益が得られない患者」は同じではないという点である。FI-CGA-10でfrailと分類されたからといって、必ずしも治療強度を下げるべきとは言えず、G8低値だからといって、特定の治療を控えるべきとも限らない。高齢がん患者の評価は、治療の可否を機械的に決めるための「線引き」ではなく、患者の医学的・機能的状況を整理し、奏効率や生存期間中央値だけでは捉えきれない治療の利益と負担を共有するための「対話の土台」と捉えるべきである。治療によって何を得たいのか、どの程度の有害事象や通院負担を許容できるのか、残された時間をどのように過ごしたいのかによって、適切な選択は大きく異なる。どの高齢患者が積極的治療に適しているのか。その問いに対する明快な答えはまだない。しかし、ASCO2026で報告された一連の研究は、fit、unfit、frailなどの分類で単純に線を引くのではなく、患者の脆弱性を多面的に評価し、その人にとって意味のある治療選択を考えるShared Decision Makingにつなげることの重要性を示していたと言える。後編に続く1)Chihara D, et al. Phase 2 trial of epcoritamab in combination with rituximab-mini CVP for older unfit/frail or anthracycline-ineligible adult patients with newly diagnosed diffuse large B-cell lymphoma: Interim futility analysis.2)Merli F, et al. Simplified Geriatric Assessment in Older Patients With Diffuse Large B-Cell Lymphoma: The Prospective Elderly Project of the Fondazione Italiana Linfomi. J Clin Oncol. 2021;39:1214-1222.3)Nishijima TF, et al. Validation of a 10-item frailty index based on a comprehensive geriatric assessment (FI-CGA-10) for predicting survival in older adults with cancer.4)Nishijima TF, et al. A 10-Item Frailty Index Based on a Comprehensive Geriatric Assessment (FI-CGA-10) in Older Adults with Cancer: Development and Construct Validation. Oncologist. 2021;26:e1751-e1760.

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プラチナ感受性再発卵巣がんに対するmirvetuximab soravtansine+カルボプラチンの結果(MIROVA/AGO-OVAR 2.34)/ASCO2026

 プラチナ感受性進行再発卵巣がんに対し、新たな抗体薬物複合体(ADC)であるmirvetuximab soravtansine(MIRV)とカルボプラチンの併用療法が高い抗腫瘍効果を示した。しかし、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の延長は示されなかった。 プラチナ感受性進行再発卵巣がんに対し、カルボプラチン・MIRV併用療法の実行可能性(feasibility)と有効性を評価する国際共同無作為化第II相試験の初回解析結果が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表された。発表者はPhilipp Harter氏(ドイツ・Ev. Kliniken Essen-Mitte)。 MIRVは卵巣がんに高発現している葉酸受容体α(FRα)を標的としたADCである。同剤はプラチナ抵抗性のFRα高発現高悪性度漿液性卵巣がんにおいて、PFSおよび全生存期間(OS)の有意な改善を示している1)。 その一方で、プラチナ感受性卵巣がんにおけるカルボプラチンとの併用や維持療法としての役割、高悪性度漿液性以外の組織型における治療効果は十分に確立されていない。今回発表されたのは、FRα高発現のプラチナ感受性再発卵巣がんコホートにおける初回解析結果である。・試験デザイン:国際共同無作為化第II相試験・対象:既治療のFRα高発現進行再発卵巣がん、卵管がん、または腹膜がん(FRαパターンスコア2+、プラチナ最終治療から再発までの期間[TFIp]>3ヵ月)・試験群:カルボプラチン(AUC5)+MIRV 6mg/kg(調整理想体重)投与後にMIRVによる維持療法(MIRV併用群75例)・対照群:カルボプラチン+PLD、またはカルボプラチン+ゲムシタビン、カルボプラチン+パクリタキセル(1:1にランダム化)後に経過観察またはPARP阻害薬による維持療法(標準化学療法群70例)・評価項目:[主要評価項目]治験担当医師判定によるPFS[副次評価項目]安全性、客観的奏効率(ORR)、OS、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・患者の組織型は高悪性度漿液性卵巣がんが標準化学療法群とMIRV併用群でそれぞれ85.7%と81.3%、BRCA野生型が87.1%と84.0%、前治療ライン数が1が54.3%と48.0%、ベバシズマブ既治療が75.7%と78.7%、PARP阻害薬既治療が70.0%と64.0%、TFIp>12ヵ月が67.1%と66.7%であった。・標準化学療法群では維持治療として42.9%にPARP阻害薬が投与されていた。・主要評価項目であるPFS中央値は、標準化学療法群で9.79ヵ月、MIRV併用群で9.53ヵ月で、両群に差は示されなかった(ハザード比[HR]: 1.0、95%信頼区間:0.68~1.46、p=0.996)。・ORRは標準化学療法群32.8%(CR 4.3%、PR 24.3%)に対し、MIRV併用群では66.2%(CR 4.0%、PR 58.7%)とMIRV併用群で高かった。・サブグループ解析を見ると、前治療ライン数1(HR:0.64)、同1~2(HR:0.76)、BRCA変異陽性(HR:0.45)集団でMIRV併用群に良好な傾向がみられたが、前治療ライン数2超の集団では標準化学療法群が良好であった(HR:5.73)。・全般的なQOL評価では両群に差は認められなかったが、サブグループを見ると悪心・嘔吐、食欲不振、末梢神経障害ではMIRV併用群が不良であった。・MIRV群で頻度の高い有害事象(AE)は、神経障害(53%)、霧視(49%)、血小板減少症(47%)、悪心(41%)などであった。・MIRV併用群における毒性による治療中止は22.7%であった。 MIROVA試験において、高いORRを示したが、主要評価項目であるPFSの延長には反映されなかった。末梢神経障害から、維持療法のMIRV用量(6mg/kg)が最適か否かを検証するFLORENZA試験が進行中である。さらに、患者集団背景を均一にした国際共同臨床試験(GOG-3078/ENGOT-ov76/GLORIOSA試験)も現在進行中である。

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ASCO2026 レポート 乳がん

レポーター紹介[目次]persevERA試験SERENA-6試験JCOG1919E (AMBITION)試験SAKK96/12 REDUSE試験OPTIMA試験PRO-MOTE試験はじめに2026年5月29日~6月2日までシカゴで開催されたASCO年次総会は、「The Science and Practice of Translation: Improving Cancer Outcomes Worldwide」がテーマで、研究成果を臨床に迅速に届け、地域社会や資源の限られた国々へ広げる取り組みが強調された。航空運賃の高騰、円安、米国内のインフレなど学会参加コストの上昇から、日本からの参加者はコロナ前と比べてあまり戻っていない印象だが、それでも多くの研究者と交流できた。また、6月3日に台風チャンミーが日本を直撃し、多くの国際線・国内線が欠航になる中、帰国に影響があった参加者も多かったようである。私は外来日の関係で帰国が1日早かったので、幸い影響を受けなかった。今回は直接日常臨床を変える試験は多くなかったが、将来の開発の方向性を考えるうえで重要だと考えられた6試験を紹介する。目次に戻るpersevERA試験:ESR1で絞り込まない経口SERDの可能性persevERA試験は、ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)転移乳がん(MBC)の1次治療として、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)のgiredestrant+パルボシクリブ療法とレトロゾール+パルボシクリブ療法を比較した第III相試験である。すでにプレスリリースで公開されているようにnegative studyであった。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)は、giredestrant群33.1ヵ月、レトロゾール群28.2ヵ月でハザード比[HR]:0.89(95%信頼区間[CI]:0.76~1.05、p=0.1553)と数値的な延長を示したが、統計学的有意差には至らず、また副次評価項目の全生存期間(OS)は未成熟で明確な差はなかった。奏効率と臨床的ベネフィット率はほぼ同等で、奏効期間は経口SERD群でやや長かった。主な有害事象は好中球減少、貧血などで、両群とも管理可能だった。ESR1変異を有する集団における有効性のデータの多い経口SERDにおいて、本試験ではESR1変異の有無が適格基準となっていない点が特徴である。同様のセッティングで行われる他剤の結果などを含めて、経口SERDの今後の開発の方向性に影響する試験といえるだろう。目次に戻るSERENA-6試験:ctDNAでのESR1変異検出後の早期スイッチSERENA-6試験は、アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬併用療法を受けるHR+HER2-MBC患者で、血中ctDNA検査によりESR1変異が検出され、画像上病勢進行(PD)がない時点でcamizestrantに早期スイッチするか、AIを継続するかをPFSをエンドポイントとして検証したランダム化第III相試験である。主要評価項目の結果は昨年のASCOのplenaryで発表され、AI継続群に比べ、camizestrant+CDK4/6阻害薬群はPFSが7.6ヵ月延長(16.8ヵ月vs.9.2ヵ月)し、HR:0.45(95%CI:0.34~0.59)と統計学的有意差を示した。今回は副次評価項目である2次PFS(PFS2)の結果が報告され、25.7ヵ月vs.19.1ヵ月、HR :0.63(95%CI:0.46~0.86、p=0.00373)と、PFSでの効果がそのままPFS2に持ち越されていた。総ctDNAのクリアランス率は51%vs.2%と差が顕著で、化学療法/ADCフリー生存期間が延長し、患者報告アウトカムも改善した。ESR1変異出現を2〜3ヵ月に1回検査する必要があり、検査費用やモニタリング体制、検査に対する患者の不安が課題となる。臨床増悪時にスイッチする戦略や他の併用との比較は行われておらず、米国食品医薬品局(FDA)での審査においても試験デザインに対する懸念が報告されている(でも、試験開始前にFDAと相談してこのデザインになったのでは?)。日本での承認も見込まれるが、ESR1検査の保険適用や体制の整備が必要であり、今後の適正導入に向けた議論が求められる。目次に戻るJCOG1919E (AMBITION)試験:HR+HER2-乳がんにおける免疫療法日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が実施したJCOG1919E(AMBITION)試験は、HR+HER2-進行乳がん患者281例を対象に、パクリタキセル+ベバシズマブに免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブを上乗せする意義を検討した第III相試験である。JCOG乳がんグループ初の医師主導治験であり、研究事務局の愛知県がんセンター原 文堅先生が発表された。主要評価項目のPFSはアテゾリズマブ併用群12.4ヵ月vs.対照群11.2ヵ月(HR:0.876、95%CI:0.670~1.145、p=0.168)と有意差を示さず、免疫療法追加の恩恵は確認できなかった。OSは39.1ヵ月vs.31.2ヵ月(HR:0.804、p=0.091)と数値的な延長傾向が認められたが統計学的有意差は認められなかった。安全性はおおむね既知のプロファイルに一致し、免疫関連有害事象は追加されたものの管理可能であった。HR+HER2-乳がんは免疫学的に“cold”とされており、VEGF阻害薬+細胞障害性抗がん薬+免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の組み合わせでも効果は限定的であった。HR+HER2-MBCにICIを併用した日本から初めての無作為化第III相試験であり、現在進行中のトランスレーショナルリサーチにより、ICI追加のメリットの得られるサブグループの同定に期待したい。目次に戻るSAKK96/12 REDUSE試験:デノスマブ投与間隔を12週に延長MBCに対する支持療法の試験も紹介する。SAKK96/12 REDUSE試験は、骨転移を有する転移乳がんおよび去勢抵抗性前立腺がん患者1,380例を対象に、デノスマブ120 mgを4週間ごと(従来)と12週間ごとの維持投与にランダム化した非劣性試験である。主要評価項目は初回症候性骨関連事象までの期間であり、12週投与群のハザード比は1.023(90%CI: 0.874~1.197)で非劣性の閾値1.20を下回り、中央値はどちらも約56.5ヵ月と同等であった。副次評価項目では12週群で低カルシウム血症や顎骨壊死が有意に少なく、OSも大きな差はなかった。試算では投与間隔延長により薬剤費が約半減し、スイスでは年間1,500万CHF程度の医療費削減が見込まれる。日本でもデノスマブは骨関連事象予防の標準薬であり、12週投与への変更は患者の通院負担を軽減し、医療資源の効率化につながる。また骨修飾薬には非定型骨折など特徴的な有害事象があり、今後は12週間隔投与が標準となると考えられるが、論文化されたデータを確認して日常臨床に適用していきたい。目次に戻るOPTIMA試験:PAM50を用いた遺伝子検査による化学療法削減OPTIMA試験は、臨床的に高リスクと判断されるHR+HER2-早期乳がん患者約4,400例を対象に、従来の術後化学療法を一律に行う群と、50遺伝子のPAM50(Prosigna)検査結果に基づき化学療法の有無を決める群を比較した国際ランダム化非劣性試験である。対象は40歳以上で最大9個のリンパ節転移を認める症例まで含まれ、約2/3がリスクスコア60以下であった。浸潤乳がん再発または死亡のない生存期間は両群でほぼ同等で、試験群は化学療法群に対して5年時点の差が1.5%以下に収まり非劣性が確認された。低リスク腫瘍では化学療法の恩恵はごくわずかであり、100人中2人程度しか再発予防効果が得られないことが示された。この50遺伝子検査は、卵巣機能抑制下の40歳以上閉経前女性や4〜9個のリンパ節転移を有する症例でも補助化学療法の省略判断に活用できる。日本で用いられる21遺伝子検査(Oncotype DX)はリンパ節転移陰性もしくはリンパ節転移3個までの患者を対象とした臨床試験を有し、日本では保険適用ではないが多くの試験のあるMammaPrintも同様である。リンパ節転移4個以上9個までの、従来再発高リスクと考えられ、基本的に術後化学療法を提案していた患者が含まれている点が本試験の特徴である。一方で、検査費用(これは他のパネルも同様)やフォローアップ期間が63%の患者で5年以下と短いこと、40歳未満の若年者が除外されている点に留意が必要である。目次に戻るPRO-MOTE試験:日本最大規模のePRO試験最後にPRO-MOTE試験を紹介する。本試験は、日本の49施設が参加した進行がん患者501例を対象とする電子的患者報告アウトカム(ePRO)システムの実用性を検証したランダム化試験である。乳がんのみを対象とした試験ではないが、日本から報告された最大規模のePRO試験でありここで紹介する。神戸大学の清田 尚臣先生が発表された。PRO-MOTE試験はスマートフォンアプリによる週1回の症状報告と医師へのアラート送信を行う介入群と、通常診療のみの対照群を比較し、主要評価項目にEORTC QLQ-C30による24週時点のグローバルヘルスステータス(GHS)およびOSを設定した。中間解析ではePRO群のGHSは対照群に対して平均−0.61ポイント(95%CI:−3.03~1.82、p=0.625)と有意差がなく、OSもHR:0.91(95%CI:0.70~1.19、p=0.48)と差がなかった。一方でアンケート回答率は90%前後と高く、機能領域や症状の多くでePRO群に有利な改善がみられた。サブグループ解析では明確な恩恵を示す集団は見出されなかったが、デジタルツールの高い受容性と症状評価の質向上が示された。日本初の大規模ePRO試験として価値は高いものの、OSやGHSを主要エンドポイントとする設計では差が検出されず、今後のePRO研究では何をエンドポイントとして設定すべきか(症状制御や治療継続性など)について問題提起する報告であった。目次に戻る

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デュルバルマブ、切除可能胃がんの周術期治療で承認/AZ

 アストラゼネカは2026年6月19日、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が、「胃がんにおける術前・術後補助療法」の適応で厚生労働省の承認を取得したと発表した。これにより同薬は、日本で初めてかつ唯一の切除可能胃がんに対する周術期免疫療法として使用可能となった。 胃がんは世界で年間約100万人が新たに診断される主要ながんの1つであり、日本でも罹患数第3位、死亡数第4位を占める。切除可能症例では手術と周術期治療が治癒を目指す標準的アプローチであるものの、依然として再発率は高く、さらなる予後改善が課題となっている。 今回承認されたレジメンは、デュルバルマブとFLOT療法(フルオロウラシル、レボホリナート、オキサリプラチン、ドセタキセル)を組み合わせた周術期治療(D-FLOTレジメン)である。用法・用量は、術前および術後にそれぞれ最大2回、4週間間隔でデュルバルマブ1,500mgをFLOT療法と併用投与し、その後デュルバルマブ単剤を4週間間隔で最大10回投与する。 今回の承認は国際第III相MATTERHORN試験の結果に基づくもの。同試験は、切除可能なStageII~IVAの胃がんまたは食道胃接合部がん患者948例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照国際共同第III相試験である。患者はデュルバルマブ+FLOT群またはプラセボ+FLOT群に割り付けられ、主要評価項目は無イベント生存期間(EFS)とされた。 計画された中間解析では、デュルバルマブ併用群は対照群と比較して病勢進行、再発または死亡のリスクを29%低下させた(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.86、p<0.001)。EFS中央値は対照群の32.8ヵ月に対し、デュルバルマブ群では未到達であった。24ヵ月時点のEFS率は67.4%対58.5%と、デュルバルマブ群で良好な結果が示された。 さらに最終全生存期間(OS)解析では、死亡リスクが22%低下した(HR:0.78、95%CI:0.63~0.96、p=0.021)。3年生存率はデュルバルマブ群69%、対照群62%であり、経時的に生存曲線の乖離が拡大する傾向が認められた。OSベネフィットはPD-L1発現状況にかかわらず確認された。 安全性については既知のプロファイルと概ね一致していた。Grade3以上の有害事象発現率はデュルバルマブ群71.6%、対照群71.2%と同程度であり、手術完遂率にも大きな差はみられなかった。 日本人サブグループ解析では、デュルバルマブ群40例、プラセボ群46例が登録され、有効性および安全性はいずれも全体集団と同様の傾向を示した。 愛知県がんセンターの室 圭氏は、「周術期D-FLOTレジメンは日本の患者にも新たな治療選択肢となり、周術期免疫療法が新たな標準治療となる可能性がある。切除可能胃がん治療における大きなパラダイムシフトである」とコメントした。また、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)胃がんグループ代表の吉川 貴己氏も、「依然として高い再発率を背景に、より強力な周術期治療が求められていた。本承認は切除可能胃がん患者の予後改善に向けた重要な選択肢となる」と期待を示した。 今回の承認により、切除可能胃がんに対する周術期治療戦略は、化学療法単独から免疫療法併用へと移行する可能性がある。【製品概要】(下線部が今回より追加)製品名:イミフィンジ点滴静注120mg、イミフィンジ点滴静注500mg一般名:デュルバルマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:・切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法・切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌・非小細胞肺癌における術前・術後補助療法・進展型小細胞肺癌・限局型小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法・治癒切除不能な胆道癌・進行・再発の子宮体癌・膀胱癌における術前・術後補助療法・胃癌における術前・術後補助療法

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腹膜播種を伴う胃がん、腹腔内パクリタキセル追加でOS延長(DRAGON-01)

 腹膜播種を伴う胃がんは予後不良であり、1次治療として全身化学療法が行われるものの全生存期間(OS)中央値は1年未満にとどまる。中国で実施された第III相ランダム化比較試験DRAGON-01において、腹腔内パクリタキセルを静脈内パクリタキセル+S-1療法に追加することで、OSが有意に延長することが報告された。JAMA Oncology誌オンライン版2026年5月21日号掲載の報告。 パクリタキセルは腹膜腔内で高濃度を長時間維持できることから、腹腔内投与による局所制御向上が期待されてきた。DRAGON-01試験は、中国9施設で実施された多施設共同第III相比較試験であり、対象は胃腺がんかつ腹腔鏡で確認された腹膜転移を有し、腹膜外転移および既治療歴のない成人患者であった。 患者はIP群(パクリタキセル50mg/m2静注+パクリタキセル20mg/m2腹腔内+S-1)とPS群(パクリタキセル70mg/m2静注+S-1)に2対1で割り付けられた。主要評価項目はOS、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、安全性、コンバージョン手術施行率などであった。 主な結果は以下のとおり。・222例(IP群148例、PS群74例)が解析対象となった。年齢中央値は59歳、腹膜播種指数(PCI)中央値は15で、比較的進行した腹膜病変を有する集団であった。・追跡期間中央値72.2ヵ月時点で、OS中央値はIP群19.4ヵ月、PS群13.9ヵ月で、IP群で有意な延長を示した(ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.50~0.90)。・PFS中央値はIP群11.2ヵ月、PS群7.2ヵ月でこちらもIP群で有意な延長を示した(HR:0.72、95%CI:0.54~0.96)。・3年OS率はIP群25.0%、PS群12.2%であり、長期生存割合にも差がみられた。・コンバージョン手術施行率はIP群50.7%に対しPS群35.1%、ベースラインで腹膜細胞診陽性だった患者の陰性化率はIP群83.6%に対しPS群52.6%と、いずれもIP群で高かった。・Grade3/4の有害事象はIP群38.5%、PS群41.9%で発生し、両群に大きな差はなかった。主な重篤有害事象は好中球減少、白血球減少、貧血などであり、治療関連死亡は認められなかった。・IPポート関連合併症は27.0%に認められたが、多くは試験初期に発生しており、施設経験の蓄積による改善が示唆された。 著者らは、「静脈内パクリタキセル+S-1療法への腹腔内パクリタキセル追加は、重篤な毒性を増加させることなく、OSを有意に改善した」と結論付けた。一方で、本試験には現在標準となりつつある免疫チェックポイント阻害薬併用療法が導入されておらず、PD-L1やMSI情報も未取得であった。今後は免疫療法との併用を含めた検証が必要とされる。

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