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うつ病治療にビタミンD投与は有用か?

 近年、ビタミンD欠乏症とうつとの関連が指摘されており、賛否両論の知見が示されている。イラン・Yazd Shahid Sadoughi University of Medical SciencesのHassan Mozaffari-Khosravi氏らは、ビタミンD欠乏症を認めるうつ病患者におけるビタミンD投与の有用性を検討した。その結果、ビタミンD投与がうつ状態を改善すること、ビタミンDの用量は、15万IUよりも30万IUのほうがより有効であると報告した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2013年6月号の掲載報告。 本研究は、2011~2012年にイラン・イスラム共和国のヤズド市にて、ビタミンD欠乏症を認めるうつ病患者において、ビタミンD製剤の2用量(15万IUおよび30万IU)単回注射による、うつ改善効果を検討することを目的として実施された。対象は、ベックうつ病自己評価尺度II(BDI-II)で17点以上かつビタミンD欠乏症を認める120例であった。被験者をG300群(40例、ビタミンD30万IUを単回筋注)、G150群(40例、同15万IUを単回筋注)、NTG群(40例、何も投与しない)の3群に無作為に割り付け、試験開始3ヵ月後に、うつ状態、血清ビタミンD値、カルシウム値、リン値、副甲状腺ホルモン値を評価した。 主な結果は以下のとおり。・介入後の血清ビタミンD値(中央値)は、G300群で60.2 nmol/L、G150群で54.6 nmol/L、NTG群では28.2 nmol/Lであった(p<0.001)。・介入後、ビタミンD欠乏症は、G300群18%、G150群20%、NTG群91.2%にみられた。・ビタミンDが投与された2群では、血清カルシウム値(中央値)の有意な増加が認められた。・G300群とNTG群の間においてのみ、BDI-IIスコアに有意差が認められ(p=0.003)、ビタミンD投与がうつ状態を改善することが確認された。また、用量については30万IUが安全であること、かつ15万IUに比べて有効であることが示唆された。関連医療ニュース うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」 うつ病治療に「チューインガム」が良い!? アルツハイマー病にビタミンD不足が関連

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母親の血中ビタミンD値、子どもの骨塩量とは無関係/Lancet

 妊娠中の母体における血中ビタミンD値と、その子どもの9~10歳時の骨塩量との関連について大規模集団における検討の結果、有意な関連は認められなかったことが報告された。英国・ブリストル大学のDebbie A Lawlor氏らが、約4,000組の母子について行った前向き調査「エイボン縦断試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2013年3月19日号で発表した。これまでの研究で、妊婦の最大70%がビタミンD不足または欠乏していることが明らかとなっており、また小規模研究において妊婦のビタミンD値が子どもの骨塩量を規定することが示唆され、もしそれが真実であれば重大な公衆衛生上の問題になると危惧されていたという。母親の血中25(OH)D濃度によって3群に分類、子どもの骨塩量との関連を分析 研究グループは3,960組の母子(主としてヨーロッパ出身)について縦断的研究を行い、母親の妊娠中の血中25ヒドロキシビタミンD(25(OH)D濃度と、子どもの骨塩量について、その関係を分析した。 母親の血中25(OH)D濃度は、50.00nmol/L超の場合は十分とし、27.50~49.99nmol/Lを不十分、27.50nmol/L未満を欠乏とした。子どもについては、9~10歳時に二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)にて、頭部を除く全身および脊椎部の骨塩量を測定した。妊娠第3期の測定値を含め、母親の血中25(OH)D濃度と子どもの骨塩量は無関係 被験者のうち全身骨塩量を測定した子どもは3,960人、脊椎部骨塩量を測定したのは3,196人だった。測定時の子どもの平均年齢は9.9歳だった。 母親のうち、血中25(OH)D濃度が十分だったのは2,644人(77%)、不十分だったのは1,096人(28%)、欠乏していたのは220人(6%)だった。 一方で子どもの骨塩量は、母親の血中25(OH)D濃度が十分な群と、不十分・欠乏群との間で有意差は認められなかった。 また子どもの骨塩量は、妊娠第3期の血中25(OH)D濃度との間でも、有意な関連は認められなかった。

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ショーシャンクの空に【心の抵抗力(レジリエンス)】[改訂版]

「あ~もう嫌になる!」みなさんは、仕事や人間関係でうまくいかなかったり、移った職場で慣れなくて居心地が悪かったりして、「あ~もう嫌になる!」と絶望的になったことはありませんか?そんな時、みなさんの心に何が起きているのでしょうか?そして、どうしたらこの気持ちから救われるのでしょうか?これらの疑問を踏まえて、今回は、映画「ショーシャンクの空に」を取り上げてみました。舞台は、1940年代後半から1960年代頃までの、とあるアメリカの刑務所。主人公の20年の歳月をかけた刑務所での生活が描かれています。このストーリーを追いながら、メンタルヘルスの視点で、心の抵抗力(レジリエンス)について、いっしょに考えていきましょう。ストレス因子―心の風邪ウイルス主人公のアンディは、もともと若くして有能な銀行員で、妻といっしょに裕福な暮らしをしていました。しかし、彼の妻は不倫をしており、しかも彼女の愛人とともに何者かに銃殺されてしまったのです。そして、彼は、身に覚えのないまま、状況証拠から、妻とその愛人を殺害した罪で終身刑を言い渡され、ショーシャンク刑務所に収容されてしまいます。刑務所では、所長に「命を私に預けろ」と宣告され、全裸にされ乱暴に消毒薬の粉をかけられ、そのまま独房が並ぶ廊下を歩かされます。囚人虐待を予感させます。その後、アンディは男色の囚人たちに目を付けられ、集団で暴行されレイプされます。看守たちは見て見ぬふりの無法状態です。そして、それが刑務所の日常業務の1つのようにして繰り返されるのでした。時には反撃しますが、暴行はとどまるところがなく、まさに絶望的なのでした。アンディのストレスとなる原因(ストレス因子)として、妻の裏切りと喪失、濡れ衣、終身刑、囚人虐待、集団レイプがあげられます。彼はくじけそうになり、精神的に限界に達しようとしていました。私たちも、彼ほどではないにしても、日々の生活の中で、このストレス因子という心の風邪ウイルスにより、心の風邪(うつ)をひいて、ふさぎ込むことはあります。このストレス因子を整理して見ると、対人関係、環境変化、燃え尽き(過剰適応)の3つに大きく分けられます(表1)。表1 ストレス因子の例対人関係環境変化燃え尽き(過剰適応)例職場・学校・地域・家庭でのトラブル離婚、結婚(「マリッジブルー」)喪失、死別(「ペットロス」なども含む)就職(5月病)、退職、解雇、昇進転居、転勤、転職、転校カルチャーショック施設症身体疾患(疼痛、不自由など)育児ノイローゼ介護疲れ(介護ノイローゼ)新人(新入生や新入社員)の張り切り過ぎ(4月病)レジリエンス―心の抵抗力アンディが受けた囚人たちからのレイプの関係とは対照的に、調達屋で友人のレッドとの友情が引き立ちます。この映画の醍醐味の1つとも言えます。アンディはレッドに趣味の鉱物集めのためにとロックハンマーを調達してもらいます。刑務所の中の時間はゆっくりと流れていきます。2年後のある時に、屋根掃除のボランティアが募られました。この時、レッドは「このままだと彼は廃人同然になる」と思い、彼の計らいで、メンバーにアンディが引き抜かれます。レッドはアンディを何とか救いたいと思ったのでした(ソーシャルサポート)。屋根掃除をしているさなか、たまたま看守が遺産相続で愚痴をこぼしているのを小耳にはさんだアンディは、もともと銀行員であった知識を生かし資産運用をアドバイスします。その見返りとして、なんと意を決して、掃除メンバーにビールを振る舞うように申し出るのです(積極性)。まさに、アンディ自身が囚人たちにとっての「救世主」となるのです。アンディの狂気に陥りそうになる中での人間らしさを求める気持ちが伝わってきます。それは、彼を思いやるレッドの存在と同時に、彼がレッドを含め多くの仲間たちへの思いやりです(愛他主義)。ビールを片手に、メンバーたちは、アンディに感謝すると同時に一目置くようになります。その後、その能力を買われたアンディは刑務所職員たちの税理士となり、所長にも大目に見られるようになります。刑務所職員からも一目置かれる存在になり、強姦魔たちは排除されます。アンディは生き生きとし自尊心を取り戻し、図書室の改造や刑務所全体にオペラを流すなど、様々なことに精力的に力を注いでいきます。オペラの歌声が響き渡り、荒みきった囚人たちの心がひと時、潤されるシーンは感動的です。アンディが様々な苦難にくじけずに乗り越えてきた理由が、ストーリーを追っていくうちに見えてきます。それは、彼には、苦難という心の風邪ウイルス(ストレス因子)を撥ね返す心の抵抗力(レジリエンス)が強かったからでした。これから、このレジリエンスという心の抵抗力の要素を、他の登場人物と比べながら、もっと掘り下げていきましょう。スキーマ―生き様という心の習慣図書室の係員であるブルックスは50年という歳月を刑務所で過ごしてきました。一番の古株です。その彼に仮釈放処分が許可されたところから事態が急展開します。彼は出所を拒む気持ちから、仮釈放取り消しを望んで、気が動転して、なんと仲間にナイフを振り回してしまいました(衝動性)。あまりにも長い年月、塀の中にいると逆にその居心地が良くなってしまうのです。もはや塀の外でやっていくだけの自信がないのでした。レッドも気付きます。「ブルックスはここでは教養があり大事にされているが、外ではただの老いた元服役因だ」「あの塀は、最初に憎み、やがて慣れ、最後に頼るようになる」「これは施設慣れ(施設症)だ」(表1)と。ブルックスが刑務所での役割を見出し、そこが自分の居場所であると確信していました。ちょうど風邪ウイルスから体を守るために、マスク、手洗い、うがいをする習慣のように、心の風邪ウイルス(ストレス因子)から心を守るために、私たちはそれぞれが良しとしている心の習慣を持っています(スキーマ)。それは、考え方の癖、生き方、生き様、人生観があります。そして、この心の習慣(スキーマ)が周りから見てあまりにも偏っている場合は、問題が起きてしまいます(認知の歪み)。それはちょうど、風邪を予防しなければならない時に、あえてマスクを付けなかったり、手洗いやうがいをいい加減にしてしまうようなものです。適応障害―心の風邪(うつ)結局ブルックスは出所します。半世紀を経て外の世界が大きく変わったことに驚きます。与えられた仕事であるスーパーマーケットのレジ係に慣れず、上司からは嫌われ、気遣ってくれる仲間もいなくて、新しい生活を送ることがつらくなっていきます。また、「悪夢で眠れない」「不安から解放されたい」と思い詰めていきます。出所後の慣れない生活環境 (ストレス因子)が心の習慣(スキーマ)に合わず、心の風邪をひいています(適応障害)。そして最後は、「おさらばすることにしました」とあっけなく(衝動性)、自宅アパートで首を吊ってしまいます。レッドが後に「ここ(刑務所)で死なせてやりたかった」と言ったように、ブルックスほどにもなると、もはや居場所は刑務所しかなかったのかもしれません。ブルックスは、もともとの衝動性や「刑務所が自分の本当の居場所」という凝り固まり偏った考え(認知の歪み)に、出所後の孤独が重なり、心の抵抗力はとても弱くなっていた(脆弱性)と考えられます(表2)。実際に最近の日本でも、出所しても社会での居場所がないため軽犯罪を繰り返し、再び入所するケースが問題視されています。出所後、彼らにどういう適応環境が提供されるか(ソーシャルサポート)、また彼らがどういう適応環境を見出すことができるか(認知再構築)が大きな課題です。実は、この問題は、精神科病院に長期入院をしている患者にも通じることです。入院期間が年単位の患者ともなると、病院生活がいかに楽かうすうす気付いてしまい、むしろ安住し、居付いてしまうのです。そして、地域や病院の手助けがあるのに、自分で生きていくことを拒むようになります。また、家族も本人が家庭にいないことが当たり前になってしまい、今の生活を続けたいと思い、家族も受け入れに対して強い抵抗を示すようになります。仮に退院しても、本人が新しい生活に慣れず、すぐ再入院してしまうケースも多く、医療関係者の頭を悩ませる1つになっています。表2 脆弱性とレジリエンスの比較脆弱性レジリエンス意味ストレスへの心の脆さ、弱さストレスを撥ね返す心の抵抗力(立ち直る力、打たれ強さ)要素本人(個人)衝動性偏った考え方(認知の歪み)マイナス思考消極性無力感、受身自己本位客観視ユーモア希望を持つプラス思考積極性他者への思いやり(愛他主義)助けを求める能力(社交性)周り(社会)つながりなし(孤独)家族、仲間、地域、職場とのつながりアスピレーション―心のワクチン20年の月日が流れ、新入りトミーが入所します。憎めないトミーにアンディは父親のように接し、勉強を教え、高校卒業資格を取らせます。その後、奇遇にも、トミーはたまたまアンディの妻とその愛人を殺害した真犯人の話を知っていました。ついに、アンディの無実が明るみになります。アンディは、所長に掛け合いますが、所長は全く取り合ってくれません。所長に金銭面での違法な便宜を図り悪事を支えているアンディは、所長にとって、なくてはならない存在にまでなっていたからです。その直後、トミーは密かに射殺されます。そして、アンディは監禁房に入れられてしまいます。アンディが2ヵ月間も監禁房にいて正気が保てたのは、ひとえに彼を希望が支えていたからでした。彼の希望とは、脱獄し、ジワタネホという楽園に行くことでした。このように、「自分の人生をどうしたいのか」というはっきりとした希望、目標、生きがいがあること(アスピレーション)は、苦難を生き抜くための大きな原動力になります。このアスピレーションは、ちょうど、風邪をひかないために、ある一定期間に免疫力を高めるワクチン予防接種のように、心の抵抗力を高める心のワクチンと言えます。レッドが昔、アンディに「希望は危険だ」「塀の中では禁物だ」「正気を失わせる」と言い諭したことがありましたが、非常に対照的です。セルフモニタリング―心を鍛えるようやく監禁房から出た後、アンディは、レッドに漏らします。「自分が妻を死に追いやったも同然だと思う」「こんな私が彼女を死なせた」「そして、もう十分すぎるほどの償いをした」と。自分の運命を受け入れているという前向きな発言です(プラス思考)。「私は運が悪いな」「不運は誰かの頭上に舞い降りるけど、今回は私だった」「それだけのことだけど、油断しちゃったな」とユーモアも交えています。これらの考え方の基になるのは、彼が自分自身を冷静に見つめ直し、客観視していることです(セルフモニタリング)。このセルフモニタリングの能力は、ちょうど、風邪をひかないように体を鍛えて血の巡りをよくするのと同じく、心の風邪をひかないよう心を鍛えて心の血の巡りをよくしていくことであると言えそうです。ただ、この心の鍛えることは、「スポ根(スポーツ根性)」のような単に無理に我慢すること(忍耐力)とは違います。その理由は、単なる我慢強さは、燃え尽き(過剰適応)に陥るリスクを高めてしまうからです(表1)。自分の独房に戻った時、アンディは思い立ちます。脱獄する時が来たと。かつてレッドに調達してもらった大きなポスターが貼られてある独房の壁の向こうには、彼が小さなロックハンマーで密かに20年の歳月をかけて地道に掘った穴が続いていたのです。彼は、自分の運命を受け入れ、さらに時間をかけて打開しようとしていたのでした(積極性)。その穴の向こうには確実に希望がありました。小さな穴道を必死に這いつくばり、最後は塀の外の下水管から這い出ていきます。そして、汚物まみれのアンディは恍惚とします。祝福の雷雨に、汚物と過去に背負ってきた全てのものを洗い流されながら。この映画のクライマックスと言えるシーンです。その後すぐに、アンディの告発によって、所長の悪事が明るみになります。所長は、様々な聖書の一節を引用する偽善者でしたが、駆けつけてくる警察車両を彼は窓から見つつ、壁に刺繍で書かれた聖書の一節が眼に飛び込んできます。「主の裁きは下る。いずれ間もなく」と。見ている私たちには、してやったりの瞬間です。追い詰められた所長は咄嗟にピストル自殺します。ソーシャルサポート―人薬という心のビタミン剤アンディが去った刑務所で喪失感を感じるレッドにも、やがて仮釈放処分が下ります。そして、かつて自殺したブルックスと同じ道を辿っていきます。ブルックスが住んだアパートに住み、ブルックスと同じスーパーマーケットのレジ係の仕事に就きます。長年、刑務所で調達屋としての地位を築いていた彼は、塀の一歩外に出てしまうとただのスーパーのレジ係に過ぎず、自分を必要としてくれる仲間はそこにはいません。レッドは塀の外に出て初めて、ブルックスと同じように正気を失いかけていました。彼は、ブルックスと自分を重ね合わせて思います。「毎日が恐ろしい」「おびえなくて済む安心できる場所へ行きたい」と。その時、かつてアンディが脱獄前に言った言葉を思い出しました。ある場所に行けと。そこは二人が出会う約束の場所でした。それは、まさにレッドにとっての一筋の希望(アスピレーション)でした。希望は、正気を失いかけていたレッドも救ったのでした。希望とは、ポジティブな見通しであり、心の抵抗力(レジリエンス)としてとても重要であることが分かります。また、自分とつながっている人がいること (ソーシャルサポート)も大切であることが分かります。これは、風邪をひかないためのビタミン剤のように、心の風邪をひかないための「人薬(ひとぐすり)」という心のビタミン剤と言えます。ブルックスと比べて、レッドの状況は大きく違っています。アンディが待っていると気付いたことで、レッドは初めて本当の自由を実感したのでした。そして、「希望には永遠の命がある」と思うまでになりました。ブルックスにも、地域で行きつけのお店ができて、顔馴染みの知り合いでもできれば、また状況は変わったかもしれません。表3 心の抵抗力(レジリエンス)の違いブルックスレッドアンディレジリエンス×衝動的×認知の歪み×出所後に孤独△出所後に一時孤独◎アンディとの約束○冷静○仲間思い◎希望を持つ心の抵抗力を高める具体的なコツ私たちは、アンディから心の抵抗力(レジリエンス)を高める様々なコツを学ぶことができました。これらは、それぞれ連動し合い、強め合っています。これから、それらを大きく3つに分けて整理し、具体的に私たちにもできることを考えていきましょう。(1)心を鍛える(セルフモニタリング)1つ目は、心を鍛える、つまりは、自分を冷静に見つめ直す癖を付けること、つまり自己客観視です(セルフモニタリング)。具体的には、自分自身の行動や気持ちを記録したり日記をつけて、心の風邪ウイルス(ストレス因子)を書き出して、言葉にすることです(外在化)。これは、例えば、「神様にいつも見守られている(=いつも見られている)」という信者が神様の視点で自分自身を見る心理でもあります。また、カリスマ歌手である矢沢永吉の熱烈なファンが、「自分は困った時、『永ちゃんだったらどうするんだろう』っていつも考えるんだよ」と語る発想にも似ています。尊敬する人の視点で自分自身を見ることにより、自分自身への気付きを高めていると言えます。また、気持ちが揺らいできたら、そこでわざと自分を実況生中継して、自分自身への気付きを高めるのも手です(マインドフルネス)。例えば、あなたは今お腹が空いてイライラしてレストランで注文した食事を待っているという状況。「『お腹が空いた』と○○(自分の名前)はいら立っている」「なぜかと言うと・・・」と実況中継します。すると、どうでしょう?自分じゃない誰かの視点に立つことで、自分自身の心から距離が取れた感覚(メタ認知)になりませんか?このように、もやもやとした感情を理性的な言葉にすること(外在化)で、理性が、感情の手綱を握ることができるようになります。さらには、お笑いネタのように自分自身に突っ込みを入れること(ユーモア)も良いです。これらは、車の運転や楽器の習い事のように、理屈を頭で理解すると同時に、別の視点や様々な発想(認知パターン)を感覚的に刷り込むトレーニングです。こうして、心を鍛えることで、やがていら立ちも意識しにくくなっていきます。(2)アスピレーション2つ目は、はっきりとした希望、目標、生きがいを持つことです(アスピレーション)。自分は「こうしたい」や「こうなりたい」(ロールモデル)という強い気持ちがあることで、人生をより前向きに(プラス思考)、より積極的に生きて行こうという発想になります。これは、1つ目のコツの自己客観視(セルフモニタリング)が基になっています。例えば、誰かのために何かをした時、「いいように使われた」と損得勘定だけでマイナスに思ってしまったら(外発的動機付け)、同時に「自分を役立てることができた喜びと楽しさがあった」「お仕えすることができて幸せだ」との前向きで積極的な発想も持ち、そして強めていくことです(内発的動機付け)。また、苦しい状況の中に意味を見出すのもコツです。例えば、「あっ、今、自分は試されている」「これは自分の目標に達するための試練だ」と発想を切り替えることです。これらの発想は、全てアスピレーションという希望や目標があることで支えられていると言えます。(3)ソーシャルサポートそして、3つ目は、家族や仲間とのつながりを保つこと、つまりは人薬です(ソーシャルサポート)。そのためには、まず家族や仲間への思いやりが大切であることが分かります。独りぼっちには思いの外、危うさがあります。そして、つながっていることで、自分の役割を見つけ、居場所を見いだすことができます。これらは、アスピレーションである希望や目標をより硬く力強いものにしてくれます。表4 心の抵抗力(レジリエンス)を高めるコツ例心を鍛える(セルフモニタリング)自己客観視言葉にする(外在化)自分への気付きを高める(マインドフルネス)心のワクチン(アスピレーション)希望、目標、生きがい、ロールモデルを持つプラス思考積極性人薬(ソーシャルサポート)家族や仲間とのつながり家族思い、仲間思い自分の役割と居場所の確保自分らしく生き生きと生きる二人が再会するラストシーンは、かつて共に過ごしていた高い塀に囲まれた暗く行き場のない刑務所から一転して、視界が限りなく広がった真っ青な海のビーチです。このシーンは強烈なインパクトで、最高のコントラストでした。もはや見ている私たちにも深い感動と、そして癒しを与えてくれます。私たちの生活に置き換えてみると、私たちも「日常生活」という塀の中にいるのかもしれません。そして、何かに立ち向かっている時や苦しんでいる時に、この映画は心地よく励みになります。「必死に生きるか、必死に死ぬか」とのアンディのセリフがありますが、それは塀の中でも外でも同じことで、いかに自分らしく生き生きと生きるかが大事だというメッセージです。私たち自身も、心の抵抗力(レジリエンス)を高めることで、より生き生きと生きていけるのではないでしょうか?1)「臨床精神医学、レジリエンスと心の科学」(アークメディア)2012年2月号2)「マインドフルネスそしてACTへ」(星和書店) 熊野宏昭

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重症患者へのグルタミン早期投与、死亡率が増加/NEJM

 集中治療室(ICU)に入室した多臓器不全を呈する重症患者では、グルタミンの早期投与によりむしろ死亡率が上昇し、抗酸化薬の投与は臨床転帰に影響を及ぼさないことが、カナダ・キングストン総合病院のDaren Heyland氏らの検討で示された。重篤な病態にある患者は多大な酸化ストレスを受けており、グルタミンや抗酸化物質の投与により死亡率が抑制される可能性が指摘されているが、これまでに得られたデータは相反するものだという。NEJM誌2013年4月18日号掲載の報告。2×2ファクトリアル試験で有効性を評価 研究グループは、重症患者に対する早期のグルタミンや抗酸化物質(セレニウム、亜鉛、βカロチン、ビタミンE、ビタミンC)の投与の有効性を評価するために、2×2ファクトリアルデザインの二重盲検無作為化試験を実施した。 対象は、機械的換気を受けてICUに入室中で、複数の臓器不全を呈する患者とした。これらの患者が、グルタミン群、抗酸化薬群、グルタミン+抗酸化薬群、プラセボ群のいずれかに無作為に割り付けられた。投与はICU入室後24時間以内に開始され、静脈内投与と経腸投与が行われた。 主要評価項目は28日死亡率とした。中間解析が計画されたため、最終解析のp値が0.044未満の場合に統計学的に有意と判定することとした。28日死亡率:グルタミン投与群32.4% vs 非投与群27.2%、院内死亡率:37.2 vs 31.0% 2005年4月~2011年12月までに、カナダ、米国、欧州の40のICUから1,223例の多臓器不全患者が登録され、そのうち1,218例が評価可能であった。 グルタミン群に301例(平均年齢62.5歳、女性36.5%)、抗酸化薬群に307例(63.6歳、42.3%)、グルタミン+抗酸化薬群に310例(64.3歳、41.9%)、プラセボ群には300例(62.8歳、40.7%)が割り付けられた。 28日死亡率は、グルタミン投与群(611例)が非投与群(607例)に比べ高い傾向が認められた(32.4 vs 27.2%、調整オッズ比[OR]:1.28、95%信頼区間[CI]:1.00~1.64、p=0.05)。 院内死亡率(37.2 vs 31.0%、p=0.02)および6ヵ月死亡率(43.7 vs 37.2%、p=0.02)は、グルタミン投与群が非投与群よりも有意に高かった。グルタミンの投与は臓器不全や感染性合併症の発生率には影響を及ぼさなかった。 抗酸化薬投与群(617例)と非投与群(601例)の間に28日死亡率の差は認めず(30.8 vs 28.8%、調整OR:1.09、95%CI:0.86~1.40、p=0.48)、いずれの副次的評価項目についても差はみられなかった。 重篤な有害事象の報告は52件(46例)あり、そのうち試験薬との関連が疑われるのは4件で、発現率には群間で差がなかった(p=0.83)。尿素>50mmol/Lの頻度が、グルタミン投与群で有意に高かった(13.4 vs 4.0%、p<0.001)。 著者は、「多臓器不全を呈する重症患者に対するグルタミンの早期投与は死亡率を上昇させ、抗酸化薬は臨床転帰に影響を及ぼさなかった」と結論し、「種々のサブグループに関する解析を行ったが、グルタミンが有効な患者は同定できなかった。グルタミンの有害性のメカニズムは不明である」としている。

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北欧の夏の日光浴40分/週、高用量ビタミンD3サプリ1ヵ月間摂取と同程度の効果

 夏季の太陽光紫外線およびビタミンDサプリメントは、いずれも北欧の住民にとって重要なビタミンDの補給源であるが、それらの相対的な効果についてはほとんど明らかとなっていなかった。ノルウェー・オスロ大学病院のZ. Lagunova氏らは、無作為化クロスオーバー臨床試験を行い、同地の夏季の太陽光を全身に累積で週に40分間浴びることと、高用量ビタミンD3サプリメントを1ヵ月間摂取することが、同程度の血清25ヒドロキシビタミン(OH)D濃度の達成・維持をもたらすことを報告した。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年4月1日号の掲載報告。 本研究は、経口高用量ビタミンD3サプリメント摂取(2,000 IU/日×30日)と、シミュレーションによる夏季の太陽光紫外線(UV)曝露(週1回のサンベッド・セッションを10回行い総計23.8 SED曝露)の、ビタミンD状態の改善効果について比較することを主な目的とした。 健康なボランティア被験者を無作為に、ビタミンDサプリメントを摂取した後に全身への10回サンベッド・セッションを受ける群(グループ1)、または全身への10回サンベッド・セッションを受けた後にビタミンDサプリメントを摂取する群(グループ2)に割り付け検討した。 主な結果は以下のとおり。・経口高用量ビタミンD3サプリメント摂取により、血清25(OH)D濃度は平均25.3nmol/L(SE ±5.4 nmol/L)上昇した。・シミュレーション夏季UV曝露後も、同程度の上昇が認められた(19.8nmol/L、SE ±5.4 nmol/L)。・試験終了時の、血清25(OH)D濃度は両群で同程度であった。・血清25(OH)D濃度を75nmol/L超達成・維持(症例の55%)するには、2週にわたる全身へのサンベッド・セッションによる総計4.8 SEDの曝露が必要であり、これは経口高用量ビタミンD3サプリメント2,000 IU/日×30日と等しかった。・この値は、オスロの緯度において夏季の正午、累積で週に全身に3.4 SEDの太陽光を浴びること(~40分)と一致することが、著者らの試算により示された。

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乾癬治療のターニングポイント

肉体的、精神的、社会的に大きな苦痛を強いる乾癬(Psoriasis)乾癬Psoriasisの歴史は古く、古代ギリシャの書物にも登場します。その後、19世紀初頭に英国のRobert Willanにより独立疾患として臨床的特徴が紹介されました。乾癬はよく目立つ紅斑、浸潤、鱗屑といったきわめて特徴的な皮膚症状を呈します。死に至る疾患ではないものの、進行すると全身に症状が拡大したり、関節炎を合併して重篤な状態に発展することがあります。患者さんにとっては肉体的のみならず精神的、社会的にも大きな苦痛やハンディキャップを強いられる疾患です。発症には遺伝的素因に加えさまざまな後天的、環境的因子が関与すると考えられています。典型的な乾癬皮疹画像を拡大する重症例(乾癬性紅皮症)画像を拡大する乾癬による関節炎と爪の変化画像を拡大する乾癬の病変部では表皮細胞(ケラチノサイト)の増殖亢進が生じています。そのため、乾癬病変でのケラチノサイトのターンオーバーは3~4日と、正常組織の4週間に比べ著しく短縮しています。その結果ケラチノサイトの角層への成熟・分化が不十分となり、臨床的特徴の一つである銀白色の厚い鱗屑を形成します。また、紅斑は病巣部に浸潤してくるリンパ球が産生するサイトカインにより起こる炎症の結果です。乾癬は病態論の進展に伴って治療法が著しく変化、進展した疾患の一つです。免疫抑制剤シクロスポリンの治療効果が明らかになる以前は、乾癬の発症機序はケラチノサイトの異常(増殖亢進、分化不全)にあると考えられていました。そのためケラチノサイトの増殖亢進の抑制を目的とした治療法が開発されてきました。ケラチノサイト増殖抑制を狙った光線療法の登場1931年にゲッケルマン療法が発表されています。これはコールタール軟膏を塗布して太陽灯(水銀灯紫外線)を照射するという治療法です。日光浴が乾癬を改善することは昔から知られており、機序は不明ながらコールタールの何等かの成分が紫外線の作用を増強し、ケラチノサイトの過剰増殖を減少させることで効果を発揮すると考えられます。炎症を抑制する作用もあると思われます。欧米では今日でも使用される療法ですが、我が国ではほとんど実施されていません。1970年代には別の光線療法であるPUVA療法が発表されました。PUVAとはソラレンPsoralenのPと長波長紫外線UVAを組み合わせた治療名です。ソラレンは光増感物質で長波長紫外線(UVA)を照射されると、励起状態となって反応性が高まり、細胞内DNAの二重螺旋の間に結合して細胞分裂を抑制することが知られています。やはりケラチノサイトの増殖亢進の抑制を目的として始められた治療ですが、炎症(紅斑)を抑制する効果も知られています。紫外線療法は21世紀に入っても進化し、より簡便な方法として中波長紫外線UVBの単独照射法、さらにはUVBに含まれる非常に狭い波長閾の紫外線ナローバンドUVBが照射されるようになりました。日常の診療で効果を発揮しています。ケラチノサイト増殖抑制を狙った薬物療法の登場膿疱化:ステロイドによる副作用その間に薬物療法も進化していきます。1950年代に入り、ステロイド外用療法が登場しました。当初の製剤は抗炎症効果がそれほど強くはなかったものの、従来の外用薬と比べれば確かな効果があり、当時としては大きな朗報でした。それ以降、より強い作用を有する外用ステロイド製剤が次々に開発され、今日まで乾癬外用療法の基本となっています。以前は内服ステロイドを用いることもあったのですが、全身性副作用に加えて、膿胞性乾癬を引き起こすなどの問題もあり、用いられなくなりました。1959年に抗腫瘍薬・免疫抑制薬であるメトトレキサートを乾癬の治療に用いる試みが報告されています。これも当初はケラチノサイトに対する増殖抑制効果を期待したものでしたが、後から考えればリンパ球に対する免疫抑制効果をも併せ持った(むしろこちらが主体?)治療法といえます。日本ではリウマチによく使用されますが、乾癬に対する適応はありません。欧米では乾癬にも使用されています。1975年には、ビタミンA誘導体であるレチノイドの治療成績が報告されました。ビタミンAは上皮組織に作用するビタミンで、ケラチノサイトの増殖および分化をコントロールすることで、効果を発揮すると考えられます。乾癬以外にも多くの角化異常症に使われています。 本邦でも1985年にレチノイドの一種エトレチナートが承認され、現在も乾癬治療薬の選択肢の一つとなっていますが、胎児催奇形性の問題から慎重な投与が求められる薬剤です。1990年代にはビタミンD3外用療法が治療法の一つとして加わりました。そのきっかけは、骨粗鬆症の患者さんにビタミンD3製剤を投与したところ、その患者さんが罹患していた乾癬の皮疹がきれいになったことでした。その少し前にビタミンD3の全く新しい作用(細胞の増殖抑制、分化誘導作用)が明らかにされており、乾癬表皮ケラチノサイトの増殖亢進、分化不全を是正することで効果を発揮することが想定されました。そこで研究が開始され、偶然の臨床的観察から始まった治療法が、新たな乾癬治療外用薬として実を結びました。今日ステロイドと並んで外用療法の主役を担っています。私はこの臨床研究に直接関係しましたが、医学の進歩における偶然の契機の重要性を強く感じた体験となりました。ビタミンD3外用の効果塗布前画像を拡大する塗布4週後 > 印画像を拡大する新たな薬物療法の流れ…自己免疫年代は少し戻りますが、別の治療の流れが起こってきます。1979年に免疫抑制薬シクロスポリン療法の難治性乾癬に対する有効性が報告されました。これは臓器移植を受けた乾癬の患者さんで効果が確認されたことがきっかけとなり、研究が始まったものです。シクロスポリンはTリンパ球の作用を阻害しますから、乾癬の病態におけるTリンパ球の重要性が認識され、免疫異常説が一挙に花開いたといえます。シクロスポリンは本邦でも1992年に乾癬に対する使用が認可され、次に紹介する生物学的製剤の登場まで、難治性症例に対する最も確かな治療法として用いられて来ました。乾癬の病態解明はその後も進展し、現在は自己免疫・炎症説が主流となっています。それには真皮樹状細胞、Th1細胞、Th17細胞が重要で、樹状細胞が産生するIL-12がTh1細胞を、IL-23がTh17細胞を刺激し、IFN-γ、TNF-α、IL-17、IL-22などを産生させます。樹状細胞自身もTNF-αを産生します。これらが複雑なネットワークを形成して反応し合い、炎症を持続させるとともに表皮ケラチノサイトを活性化し、乾癬に特徴的な皮膚症状を示すのです。2010年代に入ると、分子細胞工学的手技を応用した生物学的製剤が登場してきました。インフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブなどです。インフリキシマブ、アダリムマブはTNF-α、ウステキヌマブはIL-12、IL-23といった前述の炎症ネットワークで重要な役割を演じるサイトカインを阻害することで治療効果を発揮します。難治重症例に対する効果は劇的で、乾癬治療の歴史に新たなページを開いたと言えるでしょう。ほかにも多くの生物学的製剤が続々と開発途上にあり、乾癬の治療は今後大きく変わって行くかも知れません。現在の乾癬治療以上、乾癬治療の変遷について述べましたが、現在の治療は、軽症例ではステロイド外用剤とビタミンD3外用剤の単独または併用です。併用の場合にはsequential therapyなど、効果を最大限に発揮させる工夫がなされます。痒みの強い例では抗アレルギー薬の内服を併用します。効果が不十分な例では症例に応じてこれらに紫外線療法やエトレチナートを上乗せします。重症・難治例ではシクロスポリンや生物学的製剤を用います。重症・難治性の評価には皮疹の広がりや強さ、QOLの低下をBSA(Body Surface Area)、PASI(Psoriasis Area Severity Index)、PDI(Psoriasis Disability Index)などで数値化して判断します。おおむねこれらが10以上の例が適応とされます。ただし、関節炎を合併する例では関節症状の進行を予防する意味で、皮疹の程度は軽くても生物学的製剤の使用が勧められます。本邦において使用される製剤種 類一般名製品名剤 形ビタミンD3タカルシトールボンアルファボンアルファハイ外用ビタミンD3カルシポトリオールドボネックス外用ビタミンD3マキサカルシトールオキサロール外用レチノイドエトレチナートチガソン内服免疫抑制剤シクロスポリンネオーラルサンディミュン内服生物学的製剤インフリキシマブレミケード点滴静注生物学的製剤アダリムマブヒュミラ皮下注生物学的製剤ウステキヌマブステラーラ皮下注※ ステロイド外用剤は種類が多いので省略。乾癬にはストロング以上の製剤が必要である。これらの薬剤を使いこなすコツは、副作用をいかに防止するかでしょう。ステロイド外用剤は強いほど効果も確かですが、長期使用による皮膚副作用が避けられません。それを押さえるためにはビタミンD3外用薬との併用が大切で、ステロイドの使用量をできるだけ減らすよう努力します。軽症例の外用薬によるコントロールでは生活指導も大切です。シクロスポリンや生物学的製剤の使用に際しては皮膚がん予防の観点から、紫外線療法との併用は避けるべきです。また感染症とくに結核の合併には注意が必要です。乾癬治療に関わる先生方へ私が皮膚科を始めた昭和40年には弱いステロイド、ゲッケルマン療法、メトトレキサート以外の治療法はまだ存在していませんでした。今日の治療リストを眺めると乾癬研究の進歩の跡は歴然で、まさに夢のようです。とはいえ治療はまだ対症的で副作用の心配も残っており、完全からはほど遠いと言わなければなりません。今後も研究がさらに進歩し、より良い治療法が生み出される事を願っております。

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乾癬治療のターニングポイント 質問/回答

ダーマトロジーエキスパートQ&A「乾癬治療のターニングポイント」において、乾癬治療に関する最新の情報をお送りしてきました。今回は、質問募集期間に視聴者の先生方からいただいた代表的な質問について、吉川邦彦先生にご回答いただきます。ビタミンD3外用剤にステロイド外用剤を併用する場合、どのランクのステロイドを用いるべき?できるだけ強いランクのステロイド(very strongからstrongest)と併用するのがよいと思います。強いステロイドで皮疹をできるだけ速やかにコントロールした上で、週5日はステロイド、週末2日はビタミンD3を使用します。それでコントロールが維持できていれば週5日をビタミンD3、週末をステロイドに、それでも経過良好ならビタミンD3単独でという具合に、段階的にステロイドの使用量を減らしていきます。途中で皮疹が悪化すれば前段階へ戻します(sequential therapy)。弱いステロイドは乾癬に対する効果が不明確なので、ステロイドの強さを減じていくよりは使用頻度、使用量を減じていくのが基本的な考え方です。ただし、顔面や間擦部位等では副作用防止のために弱めのステロイドを使用する必要があります。ビタミンD3外用剤とステロイド外用剤を混合した場合の効果は?効果は期待でき、外国では混合製剤が市販されています。ただし、酸性を示すステロイド製剤が数種類あり、それらとの混合ではビタミンDの分解が起こるため、避ける必要があります。紫外線療法において、照射部位以外の作用について、現在はどう考えられているのでしょうか?広範囲に照射する場合には全身的な免疫抑制効果もあるため、照射部位以外への効果も多少はあります。しかし、確かな作用として期待できるものではありませんから、基本的には照射部位への効果と考えた方がよいでしょう。生物学的製剤の適応、開始の判断基準はどのようなものでしょうか?乾癬の重症度判定基準BSA: Body Surface Area、PASI: Psoriasis Area Severity Index、PDI: Psoriasis Disability Indexなどで10以上を示すと重症例と考え、生物学的製剤の使用を考慮します。関節症状がみられる場合には機能障害防止のため、上記の基準を満たさない例でも早期の使用が勧められています。使用に際しては、結核など重篤な副作用を防止するための除外基準や注意事項が設定されていますから、十分な注意が必要です。インフリキシマブ(商品名:レミケード)などの生物学的製剤、シクロスポリン(商品名:ネオーラルなど)などの免疫抑制剤、エトレチナート(商品名:チガソン)のようなレチノイド、これらはどのように使い分ければよいでしょうか?一般論として言えばエトレチナート、シクロスポリン、インフリキシマブの順で使用を考慮すべきです。それぞれ1段階ずつ治療のランクが上がっていくと考えればよいと思います。後者になるほど、より確かな効果が期待できますが、同時に副作用に対する注意もより重要になるからです。ただし、エトレチナートでは催奇形性や骨、関節への影響、シクロスポリンでは血圧、腎機能への影響、インフリキシマブでは結核や他の慢性感染症、悪性腫瘍等患者さん個々で考慮すべき問題の重要性が異なりますから、使い分けについて一概には言えません。一段階飛ばして選択するケースもありえます。乾癬は治癒しない疾患との考えから、かゆみを抑える程度の治療しかできていませんでした。 生物学製剤で寛解するのでしょうか?寛解はあります。うまく使用し続ければ寛解期間を維持することも可能です。ただし、長期使用に際しては副作用に対する十分な注意が必要です。また、高価な薬剤ですから患者さんの経済的負担に対する配慮も必要です。専門医への紹介のタイミングについて教えてください。外用療法のみでは皮疹のコントロールが十分でなくなった場合、皮疹は少ないが目立つ部位に見られ(額、手、爪など)心理的、社会的ストレスが大きい場合、関節炎が合併している場合(放置すると関節の機能障害を残す)などが専門医へ紹介すべき状態です。皮疹の上に小膿疱が多発する場合はステロイドによる副作用(膿疱性乾癬)の可能性がありますから、やはり専門医に紹介すべきです。ステロイドを長期に外用し続けると白癬などの感染症を合併することもあります。これまでの乾癬皮疹と異なる皮疹が現れた場合は、鑑別のため専門医にコンサルトする必要があります。

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ポンペ病〔Pompe Disease〕

1 疾患概要■ 定義ポンペ病(OMIM232300)は糖原病II型(GSD-II)であり、1932年ポンペにより報告された。ポンペ病はライソゾームに局在する酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の酵素欠損によりライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積する。■ 疫学遺伝形式として、常染色体劣性遺伝形式をとり、頻度は約4万人に1人といわれている。■ 病因ポンペ病では酸性α-グルコシダーゼの酵素欠損により、ほぼすべての臓器にグリコーゲンが蓄積する。肝臓、筋肉、心臓、消化器系の平滑筋、膀胱、腎臓、脾臓、血管、シュワン細胞などの細胞、組織に蓄積する。内耳の絨毛にも蓄積するために難聴も呈する。肥大型心筋症は、乳児型のポンペ病では特徴的な症状である。骨格筋の組織変化は、筋の種類、部位によりさまざまで、グリコーゲンの蓄積の程度、障害度は異なる。病初期は小さい空胞が認められ、徐々にリポフスチン、ミトコンドリア膜などが大量に蓄積し、オートファゴゾームが形成される。とくにfast-twitch type 2線維に多くみられる。組織の線維化に伴い、年齢と共に二次的な組織変化を認め、酵素治療しても不可逆的変化を来す。オートファゴゾーム内にグリコーゲンが大量に蓄積している。■ 症状ポンペ病の発症は、患者により異なり、0~60代までいずれの年齢にも発症する。臨床的には(1)乳児型、(2)遅発型(小児型、成人型)に分類される(表1)。画像を拡大する1)乳児型通常、患児は生後1.6~2ヵ月で哺乳力の低下、発育障害、呼吸障害、筋力低下などの症状を呈し、発症する。平均診断年齢は生後4~5ヵ月である(図1)。心肥大が病初期より著明であり(図2)、心エコー上心筋の肥大、心電図ではhigh voltage、short P-R intervalなどを呈する。年齢とともに運動発達の遅れが著明となり、頸定も難しく、寝返り、座位もできない。腱反射の低下、舌が大きく、肝臓も中等度に腫大している。酵素補充療法を施行しないと、通常は平均6~8.7ヵ月で死亡する。1歳を超えて生存する患者は少ない。画像を拡大する画像を拡大する2)遅発型患者の発症年齢は残存酵素活性により異なる。生後1歳頃から62歳まで報告されている。筋力低下、歩行障害、朝の頭痛、特徴的な上ずった言葉、顔面筋の萎縮、呼吸障害、ガワーズ徴候などが比較的初期症状である(図3)。主に骨格筋、呼吸筋、舌筋、横隔膜筋、四肢の筋がさまざまな程度で障害を受ける。心筋を障害するタイプは、小児型といわれる非定形型のタイプで障害する。患者は徐々に呼吸障害、構音障害、歩行障害が強くなり、人工呼吸器の装着、車いす状態となり、最後は呼吸障害、気胸、肺炎などを合併して死亡する。通常、発症年齢は27~36歳、診断年齢は34~41歳、人工呼吸器使用年齢は37~47歳、車いす使用年齢は平均41歳である。画像を拡大する■ 分類臨床的には、前述のように乳児型と遅発型(小児型、成人型)に分類される(表1)。■ 予後とくに乳児型では心筋、ならびに骨格筋など全身の組織に蓄積することにより、心肥大、筋力低下を来し、通常心不全を呈し2歳までには死亡する。遅発型では筋力低下に伴う歩行障害から呼吸筋麻痺を来し、人工呼吸器をつける状態で肺炎、気胸などを合併し、死亡する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断としては、1)臨床的診断、2)病理学的診断、3)生化学的診断(酵素活性、バイオマーカーなど)、4)遺伝子診断などがある。1)臨床的診断(表2)特徴的な臨床症状のほか、乳児型では心電図、心エコー、血清CPKの高値を認める。遅発型でも筋力低下、血清CPK、アルドラーゼの高値を認める。心電図ではPR間隔の短縮、QRSの高電位などがみられる。筋CT、MRIは筋の萎縮、変性を評価するのに重要である。小児型、成人型では椎骨脳底動脈領域に動脈瘤を形成しやすい。画像を拡大する2)病理学的診断ポンペ病の病理学的診断は生検筋でのライソゾーム内でのグリコーゲンの蓄積に伴う空胞化で特徴づけられる。成人型ではあまり組織変化が顕著でない症例もある。乳児型では筋線維が大小不同、筋線維の崩壊、オートファジーの形成、ライソゾーム内に著明なグリコーゲンの蓄積、PAS陽性物質の蓄積が認められる。成人型でも軽度であるが、PAS陽性、酸性ホスファターゼ染色陽性である。電顕所見ではライソゾームが巨大化し、ミエリン様封入体の蓄積もみられる。筋原線維の断裂なども著明である。3)生化学的検査(1)酵素活性の測定酸性α-グルコシダーゼの活性は、人工基質である蛍光基質4- methylumbelliferone誘導体を用いて、患者乾燥濾紙血、あるいはリンパ球、皮膚線維芽細胞で測定して著明に低下する。確定診断として、リンパ球、皮膚線維芽細胞で測定する。患者の診断は比較的、酵素診断で可能であるが、正常者の中にはpseudodeficiencyもおり、正常値の20~40%の酵素活性を示す。日本人の頻度は多く、約50人に1人といわれ、遺伝子診断により患者と鑑別する。保因者は約50%の活性であり、pseudodeficiencyとの鑑別も重要である。出生前診断も可能である。(2)尿中のバイオマーカーの測定ポンペ病患者の尿では、オリゴサッカライドが排泄され、4糖を液体クロマトグラフィー、あるいはタンデムマスで測定する。4)遺伝子診断酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子は染色体の17q25.2-q25.3に局在する。GAA遺伝子は28kbでエクソンは20存在する。現在まで200以上の遺伝子変異が報告されている。最も多い変異は、乳児型あるいは成人型の一部でみられるc-32-13T>Gの遺伝子変異であり、欧米患者では約75%を占める。C1935C>Aは台湾に多く、cdel.525,delexon18変異はオランダなどのヨーローッパ諸国に多い。日本人ではc.1585_1589TC>GT、c1798C>Tが多くみられる変異として報告されている。pseudodeficiencyの遺伝子型としてはc1726G>A(p.G576S)、c2065 G>A (pE689K)が知られている。酵素活性は正常の20~40%程度を示す。頻度としては両者とも正常人の3~4%の頻度で見い出されている。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)最近、遺伝子工学により作成されたヒト型酵素アルグルコシダーゼα(商品名:マイオザイム)の酵素補充療法について、早期の治療による臨床症状の改善が報告されている。また、早期診断・治療のために新生児マス・スクリーニングの有用性が報告されている。ポンペ病の治療は、大きく分類して下記のような治療が挙げられる。1)対症療法●乳児型(1)心不全に対しての治療心筋の肥大、横隔膜の挙上などは呼吸障害の要因にもなる。心不全に対する強心薬、利尿薬などの投与、脱水に対する補液が必要。胸部X線、心エコーで病状をフォローする。(2)呼吸管理肺炎、細菌感染など起こしやすい。抗菌薬(マクロライド系)の投与、去痰薬の投与、排痰補助装置などのほか、必要に応じて酸素投与を行う。末期では人工呼吸器の装着をする。(3)嚥下障害に対する管理チューブ栄養などを行う。(4)リハビリテーション酵素補充療法とともに歩行訓練、四肢の運動などを補助する。(5)栄養管理嚥下できない患児に対しては、チューブ栄養、高蛋白食を基本として、高ビタミン、ミネラルを与える。●遅発型(1)呼吸管理初期のうちはタッピング、CPAP、人工呼吸管理など病状に応じて行う。呼吸状態を評価し、感染の予防、抗菌薬の投与、去痰薬の投与、CPAP、人工呼吸管理が必要。(2)嚥下障害の管理嚥下性肺炎の防止。(3)歩行障害に対しての管理歩行のためのリハビリ、装具の着装。(4)栄養管理高蛋白食、高ビタミン食、嚥下困難なときは刻み食、流動食。(5)感染症に対する管理感染症の管理、抗菌薬の投与。2)酵素補充療法酸性α-グルコシダーゼは、マンノース-6-リン酸あるいはIGF-IIレセプターを介して細胞内に効率良く取り込まれ、とくに肝臓、脾臓などの網内細胞に取り込まれる。しかし、心筋、あるいは骨格筋への取り込みは少ない。ポンペ病では、20mg/kgの高単位の酵素を投与することにより筋肉内に強制的に取り込みをさせている。早期治療した患者では著しい臨床症状の改善が認められている。Kishnaniは、乳児型ポンペ病(18例)において、52週の治療研究で95%の死亡率低下と侵襲的呼吸器装着を有意に低下させることができたと報告している。また、新生児マス・スクリーニングで発見され、生後1ヵ月以内に治療した患者では著明な成果が得られており、生存期間は、ほぼ正常な臨床経過を得ている。一方、遅発型の臨床試験では20mg/kg、2週間に1回の酵素補充療法により、6分間歩行ならびに呼吸機能の悪化を防ぐことができたと報告されている。ポンペ病の場合は、酵素に対する抗体産生により酵素治療に反応するgood responderあるいはpoor responderの症例が存在する。4 今後の展望1)シャペロン治療ファブリー病と同様にポンペ病患者の皮膚線維芽細胞レベルではN-butyldeoxynojirimycin(NB-DNJ)の添加により、一部の遺伝子変異のある患者で酸性α-グルコシダーゼ活性が50%以上、上昇する。しかし、いまだ臨床試験のレベルまでは達成していない。2)遺伝子治療レンチウイルスあるいはAAVベクターを用いてのin vivoポンペ病マウスでの遺伝子治療の成功例が報告されている。また、骨髄幹細胞へのex vivoでの遺伝子治療について、Lentiウイルスベクターを用いたポンペ病マウスへの治療に関しても報告されている。3)新生児スクリーニング乳児型のポンペ病では、とくに早期診断が治療と結びつき、重要と考えられる。台湾のChienらは20万6,088名の新生児を乾燥濾紙血を用いてマス・スクリーニングを行い、5名の患者を見出し、かつ生後1ヵ月以内に酵素補充療法を施行した結果、心拡大、筋に組織変化の改善を認め、いずれの症例も正常な発達ならびに呼吸障害を認めず、新生児スクリーニングの著明な成果を報告している。わが国でもパイロット的に新生児スクリーニングの開発が行われている。乳児型の早期診断、治療の重要性を示した貴重な成果と考えられる。5 主たる診療科小児科、神経内科、リハビリテーション科など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究に関する情報日本ポンペ病研究会(医療従事者向け情報と一般利用者向けのまとまった情報)難病情報センター(医療従事者向け情報と一般利用者向けのまとまった情報)患者会情報全国ポンペ病患者と家族の会1)Hirschhorn R, et al. Glycogen Storage Disease Type II: Acid-Alpha Glucosidase (Acid Maltase) Deficiency. In: Scriver CR et al, editors. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed. NY: McGraw-Hill; 2001. p.3389-3420.2)Engel AG, et al. Neurology. 1973; 23: 95-106.3)Kishnani PS, et al. J Pediatr. 2006; 148: 671-676.4)衞藤義勝. ポンペ病(糖原病II型):診断と治療社.2009

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血清ビタミンD値と小児アトピーの重症度、統計学的に有意な関連は認められない

 血清25ヒドロキシビタミンD値と小児アトピー性皮膚炎の重症度との関連について、統計学的に有意な関連はみられないことが、米国・ウィスコンシン医科大学のYvonne E. Chiuらによる検討の結果、報告された。両者の関連については、逆相関の関連性が示唆されていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2013年2月14日号の掲載報告。 研究グループは、血清25ヒドロキシビタミンD値とアトピー性皮膚炎重症度について、統計学的に有意な関連が認められるかを評価することを目的に、断面研究を行った。 1~18歳のアトピー性皮膚炎患者を被験者とし、SCORAD(Severity Scoring of Atopic Dermatitis)と血清25ヒドロキシビタミンD値を測定し、単変量試験および多変量モデルを用いて統計学的解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・97例が登録され、94例が解析に組み込まれた。・被験者のうち、ビタミンD欠乏(血清25ヒドロキシビタミンD<20ng/mL)であったのは37例(39%)、不足(同21~29ng/mL)は33例(35%)、充足(同≧30ng/mL)は24例(26%)であった。・血清25ヒドロキシビタミンD値とSCORADの関連は、有意ではなかった(r=-0.001、p=0.99)。・多変量モデル解析の結果、血清25ヒドロキシビタミンDが低値であることと有意な関連が認められたのは、3歳以上(p<0.0001)、黒人(p<0.001)、冬季(p=0.084)であった。・一方で著者は本検討結果について、自然光曝露、ビタミンD摂取、アトピー性治療についてコントロールできていないこと、一時点のみを捕えた調査であることから限界を指摘した。その上で、今回検討した小児集団では、血清25ヒドロキシビタミンD値とアトピー性皮膚炎重症度について有意な関連はみられないと結論した。

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ダビガトラン、VTEの延長治療に有効、出血リスクも/NEJM

 直接トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)による抗凝固療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)の延長治療として有効であり、大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高いことが、カナダ・マクマスター大学のSam Schulman氏らの検討で示された。VTE治療はビタミンK拮抗薬が標準とされ、複数の血栓エピソードなど再発のリスク因子を有する場合は長期投与が推奨されるが、大出血のリスクとともに頻回のモニタリングや用量調整を要することが問題となる。ダビガトランは固定用量での投与が可能なうえ、頻回のモニタリングや用量調節が不要で、VTEの治療効果についてワルファリンに対する非劣性が確認されており、初期治療終了後の延長治療に適する可能性がある。NEJM誌2013年2月21日号掲載の報告実薬対照非劣性試験とプラセボ対照優位性試験の統合的解析 RE-MEDY試験は、初期治療終了後のVTE延長治療におけるダビガトラン(150mg、1日2回)のワルファリンに対する非劣性を検証する実薬対照試験であり、RE-SONATE試験はダビガトラン(150mg、1日2回)のプラセボに対する優位性を評価するプラセボ対照試験。 両試験ともに、対象は年齢18歳以上、症候性の近位型深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)と診断され、標準的抗凝固薬による初期治療を終了した症例とした。 RE-MEDY試験では、有効性のハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が2.85を超えない場合、および18ヵ月後のVTE再発のリスク差が2.8ポイント以内の場合に非劣性と判定した。ACSのリスクにも留意すべき RE-MEDY試験には、2006年7月~2010年7月までに33ヵ国265施設から2,856例が登録され、ダビガトラン群に1,430例(平均年齢55.4歳、女性39.1%)、ワルファリン群には1,426例(同:53.9歳、38.9%)が割り付けられた。また、RE-SONATE試験には、2007年11月~2010年9月までに21ヵ国147施設から1,343例が登録され、ダビガトラン群に681例(平均年齢56.1歳、女性44.1%)、プラセボ群には662例(同:55.5歳、45.0%)が割り付けられた。 RE-MEDY試験では、VTE再発率はダビガトラン群が1.8%(26例)と、ワルファリン群の1.3%(18例)に対し非劣性であった(HR:1.44、95%CI:0.78~2.64、非劣性検定:p=0.01、リスク差:0.38ポイント、95%CI:-0.50~1.25、非劣性検定:p<0.001)。 大出血の頻度はダビガトラン群が0.9%(13例)と、ワルファリン群の1.8%(25例)に比べほぼ半減したものの有意な差はなかった(HR:0.52、95%CI:0.27~1.02、p=0.06)。一方、大出血または臨床的に重要な出血の頻度はダビガトラン群で有意に減少した(HR:0.54、95%CI:0.41~0.71、p<0.001)。急性冠症候群(ACS)がダビガトラン群の0.9%(13例)にみられ、ワルファリン群の0.2%(3例)に比べ有意に高頻度であった(p=0.02)。 RE-SONATE試験のVTE再発率はダビガトラン群が0.4%(3例)と、プラセボ群の5.6%(37例)に比べ有意に良好であった(HR:0.08、95%CI:0.02~0.25、p<0.001)。大出血の発生率はそれぞれ0.3%(2例)、0%であったが、大出血または臨床的に重大な出血の発生率は5.3%(36例)、1.8%(12例)とダビガトラン群で有意に高値を示した(HR:2.92、95%CI:1.52~5.60、p=0.001)。ACSは両群に1例ずつ認められた。 著者は、2つの試験の結果を踏まえ、「ダビガトランによる抗凝固療法はVTEの延長治療として有効である。大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高かった」とまとめている。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(64)〕 女性のカルシウムサプリメント・カルシウム錠の投与は諸刃の剣(投与は慎重に!)

カルシウムはヒトを含む生物の体内に存在する最も豊富なミネラルの一つであり、かつ最も重要な体内の高精度な情報伝達のメッセンジャーとしても利用されている。血清カルシウムのレベルは厳格に調節されており、カルシウム摂取量が不足している場合は、腸管からより効果的に吸収され、腎臓でのカルシウムの保持力の亢進により、この不足が補われる。不足が続けば骨格プールからカルシウムがさらに動員され、骨が脆弱となり、骨折が起こりやすくなる。このため、とくに高齢者や閉経後の女性では、骨折予防のためカルシウム摂取と活性ビタミンD服用が伝統的に勧められてきた1)。ところが、カルシウム摂取不足、カルシウムサプリメントの使用を含むカルシウムの過剰摂取について、総死亡、心血管死亡、虚血性心疾患死亡を増加させる可能性や2), 3)、一部のがんの発生を抑制する可能性4), 5)まで指摘されるに至り、議論は複雑さを増している。 2013年度BMJ誌に掲載されたスエーデン・ウプサラ大学のKarl Michaelsson氏の女性を対象とした前向きコホート試験は、この異論の多い問題に一石を投じている。食事由来のカルシウム摂取に関しては、多変量解析モデルにおいてカルシウム摂取600mg未満の低摂取群では総死亡、心血管疾患死亡、虚血性心疾患死亡、脳卒中死亡のすべてでハザード比が増加し、死亡リスクの有意な増加を示した。一方、食事由来カルシウム摂取が1,400mg/日以上の高摂取群では総死亡、心血管疾患死亡、虚血性心疾患死亡でハザード比が増加し、死亡リスクの有意な増加を示したが、脳卒中死亡に関しては有意差を認めなかった。食事由来カルシウム摂取600mg/日未満群では年齢調整、調整ハザード比はそれぞれ総死亡に関して1.53、1.43と有意に高かったが、カルシウム錠併用群ではそれぞれ0.59、0.49で有意差を認めなかった。カルシウム含有サプリメント群ではそれぞれ1.45、1.17で有意差を認めなかった。また、食事由来カルシウム摂取1,400mg/日以上群では年齢調整、調整ハザード比はそれぞれ総死亡に関して1.30、1.17で年齢調整ハザード比のみ有意に高かった。カルシウム錠併用群ではそれぞれ2.65、 2.57といずれもハザード比は大きくなり、有意に高かった。カルシウム含有サプリメント使用群ではそれぞれ1.85、1.51で調整ハザード比のみ有意に高かった。 以上からカルシウム低摂取、カルシウム高摂取が総死亡、心血管死亡、虚血性心疾患死亡を、カルシウム低摂取が脳卒中死亡を含んだ死亡リスクを高めることは疑う予知がないと考える。しかし、低カルシウム摂取群にカルシウム錠を追加投与した場合に総死亡のハザード比が低下し、有意差が消失したことから、カルシウム錠の有用性が脳卒中予防を含め期待できるかもしれない。逆にカルシウム高摂取群でのカルシウム錠の追加投与はハザード比を大きくし、死亡リスクを増大させる。少なくともカルシウム摂取は600mg~1,400mgの範囲を守り、摂取過剰、不足に注意を払うことが重要になる。カルシウム低摂取ケースは例外としてカルシウム錠の投与を行うことが好ましいが、それ以外のケースでは安易なカルシウムサプリメント・カルシウム錠の投与を慎むことが治療の上で考慮すべきポイントと考える。しかしながら、周辺構造モデルによる感度分析の結果によれば600mg未満のカルシウム低摂取群においての死亡リスク上昇は時間依存性交絡因子によるバイアスの影響による可能性が疑われた。 しかし、この論文で疑問のすべてが解決したわけでない。今後さらなる研究が病態解明のため必要である。

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外陰部硬化性苔癬にはプロアクティブな維持療法が効果的であり安全

 外陰部硬化性苔癬(VLS)のプロアクティブな維持療法について、局所ステロイド治療で症状が安定した後、週に2回の0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏(商品名:フルメタほか)を56週間塗布した結果、寛解維持と再発防止が得られ、効果的で安全な治療オプションであることが示された。イタリア・フェラーラ大学のA. Virgili氏らが、無作為化試験の中間結果を報告した。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年2月12日号の掲載報告。 外陰部硬化性苔癬の慢性化や再発は、局所ステロイド治療で効果が得られた後の、長期間にわたる症状管理において問題となる。研究グループは、プロアクティブな治療(週2回の0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏塗布)の効果を、1日1回の局所ビタミンEあるいはコールドクリーム塗布との比較で、3ヵ月間の局所ステロイド治療後の寛解維持と再発リスクの低下について調べた。 被験者はまず12週間のアクティブ治療期に登録され、1日1回の0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏塗布を受けた。その後、寛解が得られた患者は52週間の維持治療期に登録され、無作為に週2回の0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏塗布群、1日1回のコールドクリーム塗布、1日1回の局所ビタミンE治療群に割り付けられた。 主要有効性指標は、再発率と再発までの平均期間であった。 主な結果は以下のとおり。・試験登録された被験者は27例であった。アクティブ治療期後に、完全(あるいはほぼ完全)な寛解を得た25例が維持治療期に入った。・52週の維持治療期終了までに、再発を認めたのは10例(40%)であった。5例(55.6%)はビタミンE群、5例(62.5%)はコールドクリーム群であった。・一方で同期間に、0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏塗布群での再発はみられなかった。・再発率は、ビタミンEおよびコールドクリーム両治療群のほうが、プロアクティブな治療群よりも有意に高率であった。・ビタミンEおよびコールドクリーム治療群の再発までの平均期間は同一で、21.6週であった。

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日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき

 日本人労働者を対象とした研究の結果、抑うつ度は、教育レベルならびに収入と有意な関連があり、栄養面では葉酸摂取と有意な関連があることが明らかにされた。国立国際医療研究センターの宮木幸一氏らが、本邦初の研究報告として発表したもので、「葉酸の摂取増を図る運動が、メンタルヘルスに関する社会的格差の問題解消に結びつく可能性がある」と報告した。Nutrients誌2013年2月18日号の掲載報告。 世界的に、社会経済状況(SES)と健康アウトカムとの関連は注目されており、これまで、低SES群は高SES群と比べて健康によいとされる栄養成分の摂取量が低いことなどが報告されていた。食事摂取量に関する先行研究では、葉酸と心血管疾患や大腸がん、うつ病、認知機能との関連を示す報告が複数ある。研究グループは、葉酸の摂取は収入による影響を受けることが考えられるとして、SESと葉酸摂取量および健康アウトカムとの関連を調べることを目的とした。なお先行研究では、収入などと葉酸摂取量を検討したものはあるが、教育との関連を検討したものはないという。本研究は、文部科学省助成研究であるJ-HOPE研究(Japanese study of Health, Occupation and Psychosocial factors related Equity:労働者コホート「仕事の健康に関する調査」)の参加者(13コホート、1万4,534人)のうち、製造業の大企業(京都に本社があり全国に21支社がある)の従業員約2,500人に本検討参加への同意を呼びかけ行われた。SESは自己記入式質問票を、葉酸摂取量はBDHQを用いて調査した。摂取量と交絡因子との関連性の評価にあたっては重回帰分析と層別解析を行い、摂取量が健康アウトカムに及ぼす影響を表すためにパス解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・研究対象の日本人労働者コホート(同意を得た)は、2,266人であった。平均年齢は43.4±9.8歳、平均BMI値は23.1±3.3、女性は241人(10.6%)であった。・教育レベルと世帯収入は、葉酸摂取量および抑うつ度(日本語版K6スケールで評価)と有意に関連していた(p<0.05)。・年齢、性、総エネルギー摂取量で補正後、教育年数は葉酸摂取量に有意な影響を及ぼしていることが認められた(β=0.117、p<0.001)。・構造方程式モデリング(SEM)解析の結果、葉酸摂取量は、教育レベルならびに抑うつ度について、統計的に有意で強い間接的な影響があることが示唆された(p<0.05、直接的影響は56%)。・被験者のうち、日本人に推奨される葉酸の1日の摂取量(RDA)240μg/日を摂取していた人は63.6%であった。関連医療ニュース ・うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」 ・統合失調症患者の脳組織喪失に関わる脂肪酸、薬剤間でも違いが ・認知症の進行予防にビタミンEは有効か?

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アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の長期曝露、ミツバチの生態行動に影響

 過去20年間に多くの国でミツバチやその他の受粉行動をする昆虫が急激に減少した。背景には、寄生ダニ駆除を目的とした、コリン作動性シグナル伝達に作用する有機リン酸系の農薬(殺虫剤)の影響が言われている。英国・ニューキャッスル大学のSally M. Williamson氏らは、それら殺虫剤の長期曝露がミツバチの行動にどのような影響を及ぼすのか、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬を用いた検証試験を行った。その結果、AChE阻害薬の長期曝露により毛づくろい行動(働かなくなる)や排便回数が増えるなど、ミツバチの生理機能や行動に変化がもたらされたことが確認されたという。Frontiers in Physiology誌オンライン版2013年2月5日号の掲載報告。 コリン作動性シグナル伝達は、大半の臓器の神経筋機能において必須である。そのコリン作動性シグナル伝達をターゲットとする神経毒性の殺虫剤が致死量に達しないまま曝露されると巧みなメカニズムで昆虫の行動に変化をもたらす可能性がある。研究グループは、採餌において高度な行動連鎖がみられるミツバチについて、殺虫剤の曝露により採餌が障害され、コロニー(群れ)の状態が不良となる可能性があるのではないかと仮定し、AChE阻害薬を用いてミツバチの行動への影響を調べた。成虫の働きバチに致死量未満のAChE阻害薬のショ糖合成液を24時間摂取させ、歩行、動きの停止、毛づくろい、混乱行動を15分間観察した。 主な結果は以下のとおり。・いずれのAChE阻害薬も10nM濃度において、ミツバチの行動に同様の影響を及ぼした。毛づくろいの行動が著しく増え、頭部の毛づくろい行動の頻度にも変化がみられた。・農薬のクマホスは用量依存的に行動に影響を及ぼし、1μM濃度で腹部の毛づくろいや排便といった倦怠症状を引き起こした。・生化学アッセイにより、4種類の化合物(クマホス、アルジカルブ、クロルピリホス、ドネペジル)またはそれらの代謝物が、ミツバチにおいてAChE阻害薬として作用することを確認した。・さらに、AChE阻害薬の曝露に反応して、2種類のAChE阻害薬の転写発現レベルが、脳および消化管組織において選択的にアップレギュレートされていることもわかった。・以上の結果から、コリン作動性シグナル伝達に作用する殺虫剤は、微妙であるが重大な生理学的影響を及ぼし、生存の減少に結びついている可能性が示された。■関連記事認知症に対する非定型抗精神病薬処方、そのリスクは?ドネペジル+メマンチン、アルツハイマー病への効果はどの程度?アルツハイマー病にビタミンD不足が関連コリンエステラーゼ阻害薬の副作用、全世界の報告を分析

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Dr.清水のおいしい栄養療法

第1回 「栄養療法のスゴイところ!」第2回 「病院はガイコツだらけ!」第3回 「問診と身体診察でできる低栄養の評価」第4回 「アルブミンを使いこなそう!」第5回 「どうする?必要エネルギー量」第6回 「栄養の中身に気を配ろう!」第7回 「栄養の経路の考え方!」第8回 「栄養の経路の実例」第9回 「末梢静脈栄養の考え方(1)」第10回「末梢静脈栄養の考え方(2)」第11回「中心静脈栄養     メニューを決めるステップ」 このDVDは、これから「栄養療法をやってみよう」という方が入門編として気楽に学べる分かりやすい内容になっています。第1回「栄養療法のスゴイところ!」栄養療法は、低栄養の解消だけが目的ではありません。“褥瘡”や“MRSA”が治りやすい体を作ったり、NSTの活動により病院経営を増収させる、といった効果もあります。第1回では薬物療法とは違う、栄養療法の「スゴイところ」を紹介します。第2回「病院はガイコツだらけ!」たった一日の禁食がどれほど患者さんの体に影響するかご存知ですか?実は、太っていても低栄養になっている患者さんがいます。見た目だけでは判断しにくい低栄養。自分の担当患者さんを“隠れガイコツ”にしたくない方は、必見です。第3回「問診と身体診察でできる低栄養の評価」患者さんの栄養状態は、「誰でも、簡単に」評価できます。今日からできる、問診と身体診察での栄養状態の評価を紹介します。第4回「アルブミンを使いこなそう!」アルブミンを使いこなすと、栄養状態だけではなく、他の疾患を診断する力もつきます。「低アルブミンだけど低栄養ではない」という鑑別疾患を見分けるコツと、誤りがちな「アルブミンの落とし穴」を紹介。アルブミンを、徹底的に使いこなしましょう !第5回「どうする?必要エネルギー量」個々の患者さんに合った「一日分の必要エネルギー量」の算出方法を解説。最初は大変ですが、数をこなすうちに慣れてゆくので、まずは自分が担当している患者さんに実践してみましょう !第6回「栄養の中身に気を配ろう!」実は、ブドウ糖だけの点滴では、栄養補給は不十分です。ブドウ糖、つまり糖質だけの栄養だと、人体には何がおこるのか?どんな栄養を、どんな配分で患者さんに供給するのか?栄養の「中身」を組み立てる基本を解説します。第7回「栄養の経路の考え方!」ところで・・・「経口」「経鼻チューブ」「経腸チューブ」「末梢静脈(点滴)」・・・はたして、どの経路を選択することが、目の前の患者さんにとって最善なのでしょうか。患者さんの状態にあった経路選択の考え方と、目指すべき目標について解説。第8回「栄養の経路の実例」臨床現場では、さまざまな患者さんに栄養を投与していかなくてはいけません。「嘔吐や下痢がある患者さん」「脳梗塞で意識はないが胃は正常に活動している患者さん」等、具体的な5つの症例を元に、リスクを避けた的確な投与経路の選択の仕方を学びます。第9回「末梢静脈栄養の考え方(1)」病気が治った時すぐに退院できる“体”を作っておくためには、末梢静脈栄養をどのように組み立てたら良いのか。「考え方(1)」では、4つの構成要素のうち2つ、「糖質」「タンパク質(アミノ酸)」についてを、製剤名や投与量も含めて具体的に解説 !第10回「末梢静脈栄養の考え方(2)」脂肪乳剤を点滴しないと、たった2週間で大変なことに・・ ? 点滴による栄養補給、「考え方(2)」では、「脂質」「ビタミン」について。末梢静脈栄養を効果的に使って、患者さんを必須脂肪酸欠乏や乳酸アシドーシスから守るコツ、教えます ! 番組の最後に、清水先生はこの製剤をこの量で投与していますよ、という“メニュー例”があります。要チェック !第11回「中心静脈栄養 メニューを決めるステップ」どんな時に、中心静脈栄養に踏み切るの ? どのようにメニューを決めていくの ? さあ、考え方はもう勉強済みです。これまで学んできたことをもとに、中心静脈のメニューをつくってゆきましょう !

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膝OA患者へのビタミンD3 vs.プラセボ、2年間投与の効果は?/JAMA

 米国・タフツメディカルセンターのTimothy McAlindon氏らは、症候性変形性膝関節症(膝OA)患者に対して2年間にわたり、十分量のビタミンD3サプリメントとプラセボとを投与し比較検討した無作為化試験の結果、サプリメント群はプラセボ群と比較して、膝の痛みの程度や軟骨減少について、低下はみられなかったことを報告した。膝OAには効果的な内科的治療法はないが、一部の試験でビタミンDが、軟骨や関節周辺骨の障害の、進行を防ぐ可能性があることが示唆されていた。JAMA誌2013年1月9日号掲載より。症候性膝OA患者146例を対象に無作為化プラセボ対照二重盲検試験 2年間にわたった無作為化プラセボ対照二重盲検試験は、症候性膝OA患者146例を対象に行われた。被験者は、タフツメディカルセンターで2006年3月~2009年1月の間に試験登録され、プラセボを投与される群か、血清レベルが36ng/mL超となるようビタミンD3サプリメント(2,000 IU/d)の漸増投与を受ける群(投与群)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、WOMAC疼痛スコア(0~20、0:疼痛なし、20:疼痛最大)で評価した膝の疼痛度、およびMRI測定による軟骨減少とした。副次エンドポイントには、身体的機能、膝機能(WOMAC機能スケール0~68で評価、0:障害なし、68:障害最大)、軟骨の厚さ、骨髄病変、X線でみた関節裂隙幅などが含まれた。膝の痛み、軟骨減少への投与群の有意な効果はみられず 被験者146例は、平均年齢62.4歳(SD 8.5)、61%(57例)が女性、79%(115例)が白人だった。ベースラインにおいて、膝の疼痛度は、投与群(平均6.9、95%CI:6.0~7.7)のほうが、プラセボ群(同:5.8、5.0~6.6)よりもわずかだが高かった(p=0.08)。また、膝機能は、投与群(同:22.7、19.8~25.6)のほうが、プラセボ群(同:18.5、15.8~21.2)よりも有意に低かった(p=0.04)。 被験者のうち、試験を完了したのは85%だった。 血清25ヒドロキシビタミンD値の上昇は有意差がみられ、投与群は平均16.1ng/mL[95%信頼区間(CI):13.7~18.6]に対し、プラセボ群は平均2.1 ng/mL(同:0.5~3.7)だった(p<0.001)。 しかし、膝の疼痛度は両群ともに低下し、投与群は-2.31(95%CI:-3.24~-1.38)、プラセボ群は-1.46(同:-2.33~-0.60)だったが、追跡期間中いずれの時点でも両群間の有意差は認められなかった。 軟骨量の割合は、両群ともに同程度減少し、投与群は平均-4.30(95%CI:-5.48~-3.12)、プラセボ群は平均-4.25(同:-6.12~-2.39)だった(p=0.96)。 副次エンドポイントについてはいずれも両群間の有意差は認められなかった。

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うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」

 うつ病では悲哀感、希望喪失、易刺激性、身体機能障害などの特徴がみられ、数週間にわたり重症の症状を呈する。また、気分変調症は軽度の抑うつ気分が漫然と続いた状態である。うつ病の治療には、精神療法、薬物療法、光線療法などがあるが、これまでの臨床的および経験的エビデンスから、適切な食事が抑うつ症状を軽減しうることが示唆されている。オランダ領アンティル・Saint James School of MedicineのFaisal Shabbir氏らは、食事が抑うつに及ぼす影響について考察した。神経伝達物質であるセロトニンの低下はうつ病の一因であるが、セロトニンの前駆体であるトリプトファンを多く含む食事の摂取が抑うつ症状の軽減に有用であることを示唆した。Neurochemistry international誌オンライン版2013年1月7日号の報告。トリプトファンの含有量が少ない食事を摂取しているとうつに陥る可能性 トリプトファンを多く含む食事が抑うつ症状の軽減に有用であることを示唆した主な知見は以下のとおり。・脳内で合成される神経伝達物質のセロトニン(5-HT)は、気分緩和、満足感、睡眠の調節などに重要な役割を果たしている。5-HTを多く含む果物や野菜があるが、血液脳関門の存在により5-HTは中枢神経系に容易に到達できない。しかしながら、5-HTの前駆体であるトリプトファンは容易に血液脳関門を通過できる。・トリプトファンは、ビタミンB6誘導体であるピリドキサールリン酸存在下で、トリプトファンハイドロキシダーゼおよび5-HTPデカルボキシラーゼにより5-HTに変換される。・タンパク質の多い食品であっても、必須アミノ酸は体内でつくることができないため、トリプトファンの含有量が少ない食事を摂取しているとうつに陥る可能性がある。・たとえば月経前後の女性、心的外傷後ストレス障害、慢性疼痛、がん、てんかん、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、薬物依存など、うつに陥りやすい状況にある患者ではトリプトファンを多く含む食事の摂取が重要である。・中枢神経におけるトリプトファンのバイオアベイラビリティは炭水化物の欲求に関連するが、炭水化物を多く含む食事はインスリン反応の引き金となりトリプトファンのバイオアベイラビリティを高める。・セロトニン再取り込み阻害薬は(SSRI)は、抑うつ症状を呈する肥満患者に処方されるが、これらの患者ではセロトニン濃度が厳格に調節されず、モノアミンオキシダーゼ阻害薬と併用した際には生命を脅かす有害事象が発現する可能性がある。しかし、トリプトファンを多く含む適切な食事を摂取することでセロトニン合成が調節されうる。・以上より、さまざまな神経変性疾患で観察される抑うつ症状に対し、セロトニン神経伝達を助ける上でトリプトファンを多く含む食事とビタミンB6は臨床的に重要と言える。ただし、うつに対するセロトニン神経伝達を修飾する薬理学的介入は、従来と変わらず臨床的に重要な事項である。また、うつの病態にはその他にもいくつかの分子メカニズムが関わっている可能性がある。関連医療ニュース ・うつ病予防に「脂肪酸」摂取が有効? ・うつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」 ・認知症の進行予防に有効か?「ビタミンE」

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静脈血栓塞栓症に対する4つの新規経口抗凝固薬vs.従来薬/BMJ

 ビタミンK拮抗薬と比較して、新規経口抗凝固薬は急性静脈血栓塞栓症の再発リスクは同程度であり、全死因死亡も同程度であるが、リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)については出血リスクを減少することが、カナダ・マギル大学のBenjamin D Fox氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、示された。BMJ誌2012年11月24日号(オンライン版2012年11月13日号)掲載より。リバーロキサバン、ダビガトラン、キシメラガトラン、アピキサバンvs.ビタミンK拮抗薬 研究グループは、新規経口抗凝固薬[リバーロキサバン、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)、キシメラガトラン(開発中止)、アピキサバン(同:エリキュース)]について、急性静脈血栓塞栓症における有効性を批判的にレビューすることを目的とした。 試験選択基準は、ビタミンK拮抗薬との比較による無作為化試験とし、2012年4月時点におけるMedline、Embase、Cochrane Libraryをデータソースとして文献の検索と、関連研究の手動検索および専門家への聞き取りを行った。 解析では、イベント再発、重大出血、全死因死亡をアウトカムとした。有効性と安全性について9試験を組み込みレビューとメタ解析 選択基準を満たした9試験を組み込み、有効性については1万6,701例、安全性については1万6,611例のデータに基づき評価を行った。有効性と安全性のデータは、各経口抗凝固薬で階層化した。 結果、静脈血栓塞栓症の再発率は、すべての新規薬と従来薬(ビタミンK拮抗薬)との間で有意な差はみられなかった。・リバーロキサバン(4試験) 相対リスク(RR):0.85、95%信頼区間(CI):0.55~1.31・ダビガトラン(2試験) RR:1.09、95%CI:0.76~1.57・キシメラガトラン(2試験) RR:1.06、0.62~1.80・アピキサバン(1試験) RR:0.98、0.20~4.79 リバーロキサバンは従来薬よりも重大出血を抑制したが、他の新規抗凝固薬は抑制しなかった。・リバーロキサバン RR:0.57、95%CI:0.39~0.84・ダビガトラン RR:0.76、95%CI:0.49~1.18・キシメラガトラン RR:0.54、0.28~1.03・アピキサバン RR:2.95、0.12~71.82 全死因死亡率は、すべての新規薬と従来薬との間で有意な差はみられなかった。・リバーロキサバン RR:0.96、95%CI:0.72~1.27・ダビガトラン RR:1.00、95%CI:0.67~1.50・キシメラガトラン RR:0.67、0.42~1.08・アピキサバン RR:6.89、0.36~132.06 リバーロキサバンとダビガトランの補正後間接比較の結果は、静脈血栓症(0.78、0.49~1.24)、重大出血(0.75、0.41~1.34)、全死因死亡(0.96、0.59~1.58)いずれのエンドポイントについても、どちらがその他の薬よりも優るのかというエビデンスは得られなかった。 Fox氏は、「大規模な対照無作為化試験の必要性は残されたままである」とまとめている。

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認知症の進行予防にビタミンEは有効か?

 アルツハイマー型認知症(AD)および軽度認知障害(MCI)進行予防としてのビタミンEについて、ベネフィットがあるという確実なエビデンスはみつからなかったと、英国・サセックス大学のNicolas Farina氏らが報告した。結果を受けて著者は、「今後の試験では、ADにおけるビタミンEの評価をα‐トコフェロールに限定しないで行うべきかもしれない」と提言している。本研究は、ビタミンEにはフリーラジカルを消失する抗酸化作用があり、一方でフリーラジカルがADなど病理学的な認知障害プロセスに寄与するとのエビデンスがあることを踏まえて行われた。Cochrane database of systematic reviews 2012年11月14日掲載の報告。認知症進行予防としてビタミンEとプラセボを比較 Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group(ALOIS)、The Cochrane Library、MEDLINEなどSpecialized Register(2012年6月25日時点)で、「Vitamin E」「vitamin-E」「alpha-tocopherol」の単語を用いて文献検索を行い、非交絡で二重盲検の無作為化試験(ADまたはMCI患者を対象に、あらゆる投与量でのビタミンE投与とプラセボを比較した試験)を同定した。レビュワー2名が個別に選択基準を適用して試験の質を評価し、データの抽出と解析を行った。各転帰尺度は無作為化された患者ごとに調べ、データ抽出をできる患者がいなくなった時点で解析を行った。プール解析は試験間で比較可能な転帰尺度が不足していたため行われなかった。 主な内容は以下のとおり。・認知症進行予防のためのビタミンE投与の選定基準を満たしたのは3試験だけであった(AD集団について2試験、MCI集団について1試験)。・1つ目のAD試験(佐野、1996)では著者は、ビタミンE投与(2,000 IU/日)は若干のベネフィットがあったこと[2年以内の、死亡・施設収容・CDR(Clinical Dementia Rating)スコア3のエンドポイントに達成した患者がより少なく、基本日常生活動作の低下も少なかった]を報告していた。・投与を完了した患者において、エンドポイント達成について、ビタミンE群58%(45/77)に対しプラセボ群は74%(58/78)であった[オッズ比(OR):0.49、信頼区間(CI):0.25~0.96]。・2つ目のAD試験(Lloret、2009)は、酸化ストレスとの関連でビタミンE(800 IU/日)投与の認知障害の進行に対する効果を検討したものであった。結果、ビタミンE投与で患者は酸化ストレスマーカーが低下したが、MMSEスコア変化率(ベースラインから6ヵ月間、対プラセボ)の有意差は認められなかった。・MCI試験(Petersen、2005)の主要な目的は、MCIからのADを含む認知症の変化・進行までの時間についてビタミンE投与(2,000 IU/日)の効果を検討したものであった。結果、被験者総計769例のうち214例が認知症へと進行し、そのうち212例はADがほぼ確実もしくはその可能性が高いと分類された。・MCIからADへの進行の可能性についてビタミンE群とプラセボ群で有意差はみられなかった(ハザード比:1.02、95%CI:0.74~1.41、p=0.91)。

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毎日のマルチビタミン剤服用、がんリスク抑制効果はわずか/JAMA

 毎日のマルチビタミン剤服用の効果は、総合的にみたがんリスク抑制については、わずかであるが有意であることが示された。しかし個別にみると有意差はなく、またがん死亡の抑制も有意差は示されなかった。ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバードメディカルスクールのJ. Michael Gaziano氏らが、米国男性(医師コホート)を10年間追跡した無作為化試験「Physicians' Health Study II」の結果、報告した。マルチビタミン剤は最も一般的な栄養補助食品で米国では成人の3人に1人が服用しているという。しかしこれまで、マルチビタミン剤摂取と、総合的あるいは特異的がんの発生率および死亡率との関連を検討した観察研究は行われていなかった。JAMA誌2012年11月14日号掲載報告より。50歳以上男性医師1万4,641例を追跡し、前立腺がん、大腸がんなどとの関連を調査 試験は、マルチビタミンサプリメントの長期服用が男性における総合的あるいは特異的ながんイベントリスクを減少するのかを比較検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、1997年に開始され、2011年7月1日まで追跡した。 登録被験者は米国医師1万4,641例(無作為化時点でがん既往歴のあった1,312例含む)で、試験開始時50歳以上(平均年齢64.3歳、SD 9.2)であった。 主要アウトカムは、すべてのがん(非黒色腫皮膚がんは除く)で、副次アウトカムには前立腺がん、大腸がん、他の部位特異的ながんなどが含まれた。ベースラインでのがん病歴有無でも検討、病歴ありの人では有意に抑制 追跡期間中央値11.2年(範囲:10.7~13.3)の間に、2,669例のがん発生が確認された(前立腺がん1,373例、大腸がん210例含む)。 総合的がんリスクは、毎日のマルチビタミン服用群のほうがプラセボ群と比較して統計的に有意に抑制された[1,000人・年当たりマルチビタミン群17.0 vs. プラセボ群18.3、ハザード比(HR):0.92(95%信頼区間:0.86~0.998)、p=0.04]。  しかし、特異的がんリスク抑制については、いずれも有意な差はみられなかった。前立腺がん(同9.1 vs. 9.2、0.98、0.88~1.09、p=0.76)、大腸がん(同:1.2 vs. 1.4、0.89、0.68~1.17、p=0.39)、その他、肺がん(p=0.26)、血液がん(p=0.10)、膵臓がん(p=0.45)、リンパ腫(p=0.40)、白血病(p=0.33)、黒色腫(p=0.42)であった。 また、がん死亡リスクについても有意な差はみられなかった(同:4.9 vs. 5.6、0.88、0.77~1.01、p=0.07)。 ベースラインでがん病歴のあった1,312例の検討では、マルチビタミン服用群のほうが総合的がんリスクは有意に抑制されたが(HR:0.73、0.56~0.96、p=0.02)、がん病歴のなかった1万3,329例の検討では有意ではなかった(同:0.94、0.87~1.02、p=0.15、相互作用p=0.07)。

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