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学歴はアルツハイマー病リスクと関連/BMJ

 従来の観察研究では、教育歴はアルツハイマー病のリスクと関連することが示されている。スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna C Larsson氏らは、今回、修正可能なリスク因子の代替指標として遺伝学的変量を用いたメンデル無作為化試験を行い、学歴が高いとアルツハイマー病のリスクが低いことを明らかにした。研究の成果はBMJ誌2017年12月6日号に掲載された。アルツハイマー病との関連が示唆される修正可能なリスク因子のデータは、主に観察研究によるものであるため、交絡への脆弱性や逆因果バイアスの可能性があり、より頑健なエビデンスが求められている。アルツハイマー病とリスク因子の関連を検証する無作為化試験 研究グループは、社会経済的、生活習慣/食事、循環代謝、炎症に関する修正可能なリスク因子と、アルツハイマー病の関連を検証するメンデル無作為化試験を行った(欧州連合のホライズン2020などの助成による)。 解析には、4つのゲノムワイド関連研究のデータセット(ADGC、CHARGE、EADI、GERAD)から収集した欧州人家系のアルツハイマー病患者1万7,008例と対照3万7,154例からなるデータと24の修正可能なリスク因子が含まれた。Bonferroni法による閾値p=0.002を「有意差あり」とし、p<0.05の場合は「関連の可能性を示唆するエビデンス」と判定した。学歴が高いとアルツハイマー病のリスクが低減 学歴(終了した教育の期間、大学卒業)はアルツハイマー病と有意に関連することが、遺伝学的に予測された。教育年数のオッズ比(OR)は0.89(95%信頼区間[CI]:0.84~0.93、p=2.4×10-6)、大学卒業(college/university)のORは0.74(95%CI:0.63~0.86、p=8.0×10-5)であり、それぞれアルツハイマー病のリスクが11%、26%低減した。 知性(intelligence)が1標準偏差(SD)高い場合のORは0.73(95%CI:0.57~0.93、p=0.01)であり、知性が高いとアルツハイマー病のリスクが低い可能性を示唆するエビデンスが得られた。 また、喫煙量(1日喫煙本数10本増のOR:0.69、95%CI:0.49~0.99、p=0.04)および25-ヒドロキシビタミンD濃度(血中濃度20%高のOR:0.92、95%CI:0.85~0.98、p=0.01)はアルツハイマー病のリスクが低い可能性が示唆され、コーヒー飲用(1日1杯増のOR:1.26、95%CI:1.05~1.51、p=0.01)はアルツハイマー病のリスクが高い可能性が示唆されるエビデンスが得られた。 アルコール摂取、血清葉酸、血清ビタミンB12、ホモシステイン、循環代謝因子(血糖、インスリン、血圧、脂質など)、C反応性蛋白には、アルツハイマー病との関連は認められなかった。 著者は、「これらのメンデル無作為化による解析結果は、高い学歴はアルツハイマー病のリスクが低いことと関連するとの従来のエビデンスを支持するものである。喫煙とコーヒーは従来の解析とは逆の結果であった」とし、「これらの関連の基盤となる経路を理解するために、さらなる検討を要する」と指摘している。

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妊娠中のビタミンD補充は有益か/BMJ

 妊娠中のビタミンD補充の効果について、カナダ・トロント大学のDaniel E Roth氏らは、無作為化試験を対象としたシステマティックレビューのメタ解析を行った結果、「2017年9月までに行われた試験の大半は、小規模で質が低く、現状では臨床的または政策として勧告するに足りる十分なエビデンスはない」ことを報告した。これまでに行われた多くの無作為化試験およびシステマティックレビューでは、相反する結果が発表され、ビタミンDに関する勧告は医療関連の学術団体の間で大きくばらついているが、WHOは現在、ビタミンD補充を推奨している。Roth氏らは11の母体アウトカムと27の新生児/幼児アウトカムに関する妊娠中のビタミンD補充の効果を評価する検討を行った。BMJ誌2017年11月29日号掲載の報告。43試験、被験者8,406例を包含しメタ解析 研究グループは今回の検討で、試験のアウトカムデータの欠落、未報告あるいは相反する報告がなされていた頻度を明らかにし、継続中または計画中の登録試験の貢献度を明らかにした。 Medline、Embase、PubMed、Cochrane Database of Systematic Reviews、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを発刊から2017年9月時点まで検索。電子的検索で特定されたシステマティックレビューの参照リストや、未発表の継続中または計画中の試験のオンライン試験レジストリの手動検索も行った。 試験選択の適格条件は、妊娠中のビタミンD補充に関する無作為化試験で、対照群がプラセボ、非ビタミンD、ビタミンD補充量600 IU/日以下(またはその等量物)で、ピアレビューが行われている学術誌で発表されたものとした。 検索により43試験(被験者8,406例)が、メタ解析に組み込まれた。サンプルサイズの中央値は133例であった。出産児の3歳時点までの喘息リスク低下については強いエビデンス? ビタミンD補充により、25-ヒドロキシビタミンDの母体/臍帯血血清濃度の上昇が認められたが、用量反応の影響は弱かった。母体の臨床的アウトカムは、ほとんど確認・報告されておらず、入手したデータから有益であるとのエビデンスは示されなかった。 全体で、ビタミンD補充群は、平均出生体重が58.33g(95%信頼区間[CI]:18.88~97.78)増加し(37比較)、在胎不当過小(SGA)のリスクが低かった(リスク比:0.60、95%CI:0.40~0.90、7比較)。しかし、感度解析やサブグループ解析において、それらの確固たる所見はみられなかった。また、早産への効果は認められなかった(1.0、95%CI:0.77~1.30、15比較)。一方で、妊娠中のビタミンD補充が、出産児の3歳時点までの喘息リスクを低下させたとの強いエビデンスが認められた(リスク比:0.81、95%CI:0.67~0.98、2試験)。 しかし、メタ解析に包含された大半のアウトカムのデータは、小規模試験からのものであった。また、バイアスリスクが全体として低かった試験は、8/43試験(19%)に過ぎなかった。 継続/計画中の無作為化試験は5件、1万2,530例あった。著者は、「これらが将来のレビューに寄与する可能性はある」とした上で、「今後は、妊娠に関連した母体の症状(子癇前症など)や出産児の発育、呼吸器系のアウトカムなどの臨床的エンドポイントを調べるようデザインされた、検出力のある試験を行うべきであろう」と提言している。

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抗血栓治療でPPAPは成立するか?(解説:香坂俊氏)-777

 動脈系血栓予防(冠動脈疾患など)に最適とされている薬剤はアスピリンである。静脈系血栓予防(深部静脈血栓や心房細動など)には長らくワルファリンが用いられてきた。では、冠動脈疾患に心房細動が合併したりして、その2つを一度に行わなければならないときはどうするか? 数年前までは何も考えずこの2剤を併用してきた。2016年の流行語にPPAP(PEN-PINAPPLE-APPLE-PEN:ペンパイナッポーアッポーペン)というものがあったが、まさに・動脈系血栓予防にはASPIRIN・静脈系血栓予防にはWARFARIN・それをくっつけASPIRIN-WARFARIN-APPLE-PENといった塩梅である(苦しいですが、年の瀬なので許してください)。 しかし冠動脈疾患の治療にステントが使われるようになると、インターベンション治療(PCI)を行った患者にはアスピリンに2剤目の抗血小板薬(クロピドグレルやプラスグレル)をかぶせなければならなくなった。いわゆるDAPT(Dual AntiPlatelet Therapy:抗血小板2剤併用療法)である。すると、例えばステント治療を行った心房細動患者にはDAPTに加えさらにワルファリンを投与することになり「ちょっと多いかもな」ということになる。これが杞憂でないことはWOESTという医師主導の臨床試験で立証され、3剤で行くよりもアスピリンを抜いた2剤(クロピドグレル+ワルファリン)のほうが出血イベントが半分程度になることがわかった(DOI)。 その後、ワルファリンの代替薬としてNOAC(Non-Vitamin K Oral Anticoagulant:非ビタミンK経口抗凝固薬)が使われる時代になり、メーカーがこうした臨床試験に協力してくれるようになった。そうした流れの中で初代NOACであるダビガトランを用いて行われたのがRE-DUAL PCI試験である(これより前にリバーロキサバンでPIONNEER AF-PCI試験が行われており[DOI、さらにアピキサバンでもAUGUSTUS試験が現在行われている)。 結果の詳細は別記事(CareNet該当記事参照)に譲るが、・ダビガトラン 150mg BID+P2Y12阻害薬単剤(2剤)・ダビガトラン 110mg BID+P2Y12阻害薬単剤(2剤)・ワルファリン+DAPT(3剤併用) の3群で比較され、WOESTとほぼ同様の結果が得られている。 掲載誌のEditorialにはこれまでの3つの試験(WOEST、PIONNEER、RE-DUAL)のメタ解析が掲載されているが、出血イベントに関する安全性はもちろんのこと(OR:0.49、95%CI:0.34~0.72)、2剤のほうが虚血イベント抑制に関しても有利でありそうだ(OR:0.80、95%CI:0.58~1.09)という結果が示されている。これは、出血に伴い血栓傾向が強まることを考え合わせると(以下の3つのメカニズムによる)首肯できる結果である。(1)抗血小板薬や抗凝固薬の中止を余儀なくされる(2)出血そのものが炎症反応を惹起する(3)輸血や止血手技でも同様に炎症反応が惹起される 昨今、効果に差を見出すのではなく(Efficacy Trial)、安全性やQOLの確保に重点をおいた減算型の臨床試験が多く行われているが、RE-DUALもその好例といえる(3剤から2剤に引いても安全ですよということを明示)。今後おそらくこの領域では、安易な足し算の発想(PPAP式?)で3剤併用が行われることは【圧倒的】に少なくなることが予想される。

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加齢黄斑変性の5年発症リスク、出生世代ごとに減少

 米国・ウィスコンシン大学マディソン校のKaren J. Cruickshanks氏らは、ビーバーダム眼研究およびビーバーダム子孫研究のデータを解析し、加齢黄斑変性(AMD)の5年発症リスクは20世紀の出生世代ごとに減少してきていることを明らかにした。著者は、「このリスク低下を説明する因子は不明である」としたうえで、「しかしながらこのパターンは、心血管疾患および認知症のリスク低下の報告と一致しており、高齢となったベビーブーム世代(1946~64年生まれ)は前の世代に比べ、高齢でも網膜が健康である可能性を示唆している」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年11月16日号掲載の報告。 研究グループは、AMDの5年発症リスクが世代により低下しているかを明らかにし、リスク改善に寄与する因子を特定する目的で、ビーバーダム眼研究(1988年3月1日~1990年9月15日、1993年3月1日~1995年6月15日)およびビーバーダム子孫研究(2005年6月8日~2008年8月4日、2010年7月12日~2013年3月21日)のデータを解析した。これらは地域住民を対象とした研究で、ウィスコンシン州ビーバーダム市の43~84歳(1987~88年当時)の住民、およびその子孫で2005~08年時に21~84歳の住民が登録された。 解析対象は、登録時の眼底写真でAMDを発症するリスクが認められた4,819例(ベースライン時の平均年齢[±SD]54[±11]歳、男性2,117例[43.9%]、女性2,702例[56.1%])。2016年2月18日~2017年6月22日にデータを解析し、2017年9月22日に追加の解析を終えた。 Wisconsin Age-related Maculopathy Grading Systemを用い、眼底写真からAMDを分類。主要評価項目は5年追跡時におけるAMDの発症で、発症は萎縮型または滲出型黄斑変性、色素上皮異常を伴うドルーゼン、または色素上皮異常を伴わない軟性ドルーゼンの存在と定義した。 主な結果は以下のとおり。・年齢および性別で調整したAMDの5年発症率は、「最も偉大な世代」(1901~24年生まれ)が8.8%、「沈黙の世代」(1925~45年生まれ)が3.0%、「ベビーブーム世代」(1946~64年生まれ)1.0%、「ジェネレーションX」(1965~84年生まれ)0.3%であり、各世代は前の世代よりAMD発症が60%超減少した(相対リスク:0.34、95%信頼区間[CI]:0.24~0.46)。・AMD発症リスク低下と世代との関連は、年齢、性別、喫煙、教育、運動、non-HDL コレステロール濃度および高感度CRP値、ならびに非ステロイド性抗炎症薬・スタチン・マルチビタミンの使用について調整後も有意なままであった(相対リスク:0.40、95%CI:0.28~0.57)。

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せん妄と関連する薬剤は

 これまで、集中治療室(ICU)内でのせん妄に関する研究はよく行われているが、ICU外のデータは限られている。米国・Methodist Dallas Health SystemのAnthony Cahill氏らは、非クリティカルケア病棟(NCCA:non-critical care areas)におけるせん妄の発生率および関連する危険因子をプロスペクティブに評価を行った。The journal of trauma and acute care surgery誌オンライン版2017年10月16日号の報告。 IRB承認後、2015年12月~2016年2月まで都市のレベルI外傷センターにおいてプロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、外傷外科医により指定されたNCCAに入院したすべての患者とした。退院まで12時間ごとのせん妄評価(CAM:Confusion Assessment Method)と、せん妄発生(CAM+)患者の重症度を定量化するCAM-Sを実施した。患者背景、検査値データ、入院時の薬物リストを分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者148例中、CAM+患者12例(8%)、CAM-患者136例(92%)であった。・CAM+患者の平均CAM-Sは、7±3であった(平均年齢:52±20歳、男性率:45%)。・65歳以上の患者では、9例(21%)がCAM+であった。・せん妄と関連する薬剤は、albuterol(p=0.01)、アトルバスタチン(p=0.01)、デュロキセチン(p=0.04)、セルトラリン(p=0.04)、葉酸(p=0.01)、チアミン(p=0.01)、ビタミンD(p<0.001)、ハロペリドール(p=0.04)、メトプロロール(p=0.02)、バンコマイシン(p=0.02)であった。・せん妄と関連する異常な検査値は、アルブミン(p=0.03、OR:7.94、CI:1.1~63.20)、カルシウム(p=0.01、OR:4.95、CI:1.5~16.7)、ナトリウム(p=0.04、OR:3.91、CI:1.13~13.5)、ヘマトクリット(p=0.04)、平均血中ヘモグロビン濃度(p<0.05、OR:5.29、CI:1.19~23.46)であった。 著者らは「本研究では、NCCA入院患者の8%でせん妄が発生し、65歳以上の発生率は21%に上昇した。NCCA患者において同定された多くのリスク因子は、ICU患者での報告と一致しているが、これまでせん妄発生に関連していなかったリスク因子をCAM+患者が有していた。せん妄に対するNCCA患者のスクリーニングが考慮されるべきである」としている。■関連記事せん妄に対する非定型 vs.定型 vs.プラセボうつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤はたった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能

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ビタミンDはがんを予防するのか?/BMJ

 ビタミンDの血中濃度とがんリスクに因果関係は存在するのか。ギリシャ・University of IoanninaのVasiliki I Dimitrakopoulou氏らは、同関連を明らかにするため、大規模遺伝子疫学ネットワークのデータを用いたメンデルランダム化試験にて検討を行った。その結果、評価を行った7種のがんいずれについても、線形の因果関係を示すエビデンスはほとんどなかったという。ただし、臨床的に意味のある効果の関連を、完全に否定はできなかった。BMJ誌2017年10月31日号掲載の報告。大規模遺伝子疫学ネットワークを用いて、7種のがんについて関連を評価 検討は、がんにおける遺伝的関連とメカニズム(Genetic Associations and Mechanisms in Oncology:GAME-ON)、大腸がんの遺伝的研究・疫学コンソーシアム(Genetic and Epidemiology of Colorectal Cancer Consortium:GECCO)、前立腺がんのゲノム変異に関する研究グループ(Prostate Cancer Association Group to Investigate Cancer Associated Alterations in the Genome:PRACTICAL)とMR-Baseプラットホームを通じて、がん患者7万563例とその対照8万4,418例のデータを入手し評価を行った。 がん患者の内訳は、前立腺がん2万2,898例、乳がん1万5,748例、肺がん1万2,537例、大腸がん1万1,488例、卵巣がん4,369例、膵臓がん1,896例、神経芽細胞腫1,627例であった。 ビタミンDと関連する4つの一塩基遺伝子多型(rs2282679、rs10741657、rs12785878、rs6013897)を用いて、血中25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)のマルチ多型スコアを定義し評価した。 主要アウトカムは、大腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、神経芽細胞腫の発生リスクで、逆分散法を用いて特異的多型との関連を評価した。尤度ベースアプローチでの評価も行った。副次アウトカムは、性別、解剖学的部位、ステージ、組織像によるがんサブタイプに基づく評価であった。関連を示すエビデンスはほとんどない 7種のがんおよびそのサブタイプすべてにおいて、25(OH)Dマルチ多型スコアとの関連を示すエビデンスは、ほとんどなかった。 具体的に、25(OH)D濃度を定義した遺伝子の25nmol/L上昇当たりにおけるオッズ比は、大腸がん0.92(95%信頼区間:0.76~1.10)、乳がん1.05(0.89~1.24)、前立腺がん0.89(0.77~1.02)、肺がん1.03(0.87~1.23)であった。この結果は、その他2つの解析アプローチの結果と一致していた。なお、試験の相対的効果サイズの検出力は中程度であった(たとえば、大部分の主要がんアウトカムについて、25(OH)Dの25nmol/L低下当たりのオッズ比は1.20~1.25であった)。 著者は、「これらの結果は、既報文献と合わせて、がん予防戦略として、ビタミンD不足の広範な集団スクリーニングとその後の広範にわたるビタミンDサプリメントの推奨をすべきではないとのエビデンスを提供するものであった」とまとめている。

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がん治療の末梢神経障害、皮膚障害に指針/日本がんサポーティブケア学会

 Supportive care。日本では支持療法と訳されることが多い。しかし、本来のSupportive careは、心身の異常、症状の把握、がん治療に伴う副作用の予防、診断治療、それらのシステムの確立といった広い意味であり、支持療法より、むしろ支持医療が日本語における適切な表現である。2017年10月に行われた「第2回日本がんサポーティブケア学会学術集会」のプレスカンファレンスにおいて、日本がんサポーティブケア学会(JASCC)理事長 田村和夫氏はそう述べた。『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き』発刊 JASCC神経障害部門部会長である東札幌病院 血液腫瘍科 平山泰生氏が『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き』発刊について紹介した。 がん薬物療法の進化によるがんの治療成績向上と共に、抗がん剤による副作用も対処可能なものが増えてきている。しかし、本邦における4,000例以上のがん患者の追跡調査では、化学療法終了後1ヵ月以内の神経障害の発生頻度は7割、6ヵ月以降でも3割であった。神経障害はいまだに患者を苦しめているのが現状である。 この神経障害に対する有効な薬物は明らかではない。JASCCが行った調査では、がん専門医の神経障害に対する処方は、抗けいれん薬(97%)、ビタミンB12(78%)、漢方薬(61%)、その他抗うつ薬、消炎鎮痛薬、麻薬など、さまざまな薬剤を用いており、薬剤の有効性かわからない中、医療現場の混乱を示唆する結果となった。 一方、米国では2004年にASCOによる「化学療法による末梢神経障害の予防と治療ガイドライン」が発行されている。しかし、ビタミンB12、消炎鎮痛薬などの記載がないなど日本の状況とは合致していない。そのため、本邦の現状を反映した臨床指針が望まれていた。 Mindsの作成法に準じて作られた『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き』では、この分野のエビデンスが少ないため、ガイドラインとは銘打たず"手引き"としている。同書には薬物の有効性に関するクリニカルクエスチョンも掲載されており、ビタミンB12、漢方、消炎鎮痛薬、麻薬など、日本でしか使われていないような薬剤についても記載がある。「がん薬物用法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」出版を目指す JASCC皮膚障害部門部会長である国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科の山崎直也氏が「がん薬物用法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」の出版について紹介した。 がん治療の外来への移行、抗がん剤開始時期の早期化、生存期間の延び、長期間にわたり社会と触れ合いながら治療を受けるがん患者が増えている。一方で、分子標的薬をはじめ、皮膚有害事象を発現する薬剤も増えている。このような社会で生きるがん患者にとって、アピアランスケアは非常に重要な問題である。 皮膚障害の治療に対するエビデンスは少なく、世界中が医療者の経験値で対応しているのが現状である。そのような中、昨年(2016年)がん患者の外見支援に関するガイドラインの構築に向けた研究班により「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」が作成された。さらに、目で見てすぐわかる多職種の医療者に伝わるようなものをという考えから、JASCC皮膚障害部門を中心に「がん薬物用法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」を作成している。 その中では、最近の分子標的薬の皮膚障害を中心に取り上げているが、治療進歩の速さを鑑み、免疫チェックポイント阻害薬についても収載。総論、発現薬剤といった基本的事項に加え、重要な重症度評価およびそれに対する診断・治療のポイントを、症状ごとに症例写真付きで具体的に説明している。年内には発売できる見込みだという。

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ワルファリンの可能性(解説:後藤信哉氏)-756

 日本は、非弁膜症性心房細動などにいわゆるNOACsが多く使用されている国である。しかし、世界の抗凝固薬の標準治療は安価なワルファリンである。日本では2mg/日で開始すれば多くの場合、INR 2以下くらいにコントロールできる。 30年ワルファリンを使用している筆者には経験がないが、2mg/日でも過剰でINRが延長してしまう症例がいるらしい。まれに2mg/日ではINRが延長せず、漸増させて10mg/日程度が必要な症例は経験する。圧倒的多数の症例は2mg/日で問題なく、一部に過剰、過小の症例がいる原因にワルファリンの代謝が寄与するとされる。血漿蛋白に結合していないワルファリンが肝臓で活性型に転換する。その酵素はチトクロームP450のCYP2C9とされる。ビタミンK還元酵素複合体にも遺伝子型に応じた酵素活性の差異がある。 この2種の酵素の遺伝子型を事前に知っていれば、ワルファリンの初期投与量、維持量を個人ごとに予測できる、との仮説が過去に臨床的に検証された。2本のNEJM誌の論文の結果は相互に矛盾していた。 今回JAMA誌に発表された論文では対象を膝または腰の置換術にして症例を均質化した。その結果、予想どおり、遺伝子型を考慮に入れたワルファリン治療において重篤な出血が少なく、INR 4以上の過剰投与も避けられた。 疾病一般の予後が改善して、時代は「平均的症例の標準治療」、「One dose fit all」を目指すEBMの時代から、個別症例の最適治療を目指す「Precision Medicine」に転換しようとしている。主作用と副作用イベント発症率相関性のあるバイオマーカーとしてのPT-INRがあるワルファリンは、個別最適化に向いた薬剤である。抗凝固効果のポテンシャルは選択的抗トロンビン薬、抗Xa薬よりも大きく、薬剤の価格は安い。丁寧に使用すれば安全性も高い。安い薬を日本人医師の職人魂にて個別最適化して使用すれば、有効、安全、安価な医療を実現できる。 日本の圧倒的多数は2mg/日にて大きな問題はないと考えるが、遺伝子型により特殊な少数例を弁別できるので日本での応用性もあると考える。

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NOAC併用で大出血リスクが増大する薬/JAMA

 非弁膜症性心房細動で非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)を服用する患者において、アミオダロン、フルコナゾール、リファンピシン、フェニトインの併用は、NOAC単独と比較して、大出血リスクの増大と関連する。台湾・桃園長庚紀念医院のShang-Hung Chang氏らが、台湾の全民健康保険データベースを用いて非弁膜症性心房細動患者計9万1,330例について後ろ向きに分析した結果を報告した。NOACは、代謝経路を共有する薬物と併用して処方される頻度が高く、大出血リスクを高める可能性がある。今回の結果を踏まえて著者は、「NOACを処方する臨床医は、他剤との併用によるリスクの可能性を考慮しなければならない」とまとめている。JAMA誌2017年10月3日号掲載の報告。台湾の非弁膜症性心房細動患者9万1,330例について分析 研究グループは、台湾の全民健康保険データベースを用いて、2012年1月1日~2016年12月31日(最終フォローアップ)の間に、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンのNOAC処方を1種以上受けた非弁膜症性心房細動患者9万1,330例を対象に、後ろ向きコホート研究を行った。被験者は、NOAC単独または併用(アトルバスタチン、ジゴキシン、ベラパミル、ジルチアゼム、アミオダロン、フルコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、posaconazole、シクロスポリン、エリスロマイシンまたはクラリスロマイシン、dronedarone、リファンピシン、フェニトイン)投与を受けていた。 主要アウトカムは大出血で、頭蓋内出血、消化管、泌尿器またはその他部位での出血と診断を受けて入院または緊急部門を受診した症例と定義した。 NOAC単独または他剤併用のperson-quarter(暦年の各四半期における各被験者の曝露時間)における大出血の補正後発生率の差を、Poisson回帰分析を用いた推算で評価。また、傾向スコアを用いて治療重み付けの逆数を算出し評価した。アミオダロン、フルコナゾール、リファンピシン、フェニトイン併用で有意に増大 対象の9万1,330例は、平均年齢74.7歳(SD 10.8)、男性55.8%、NOACの処方内訳は、ダビガトラン4万5,347例、リバーロキサバン5万4,006例、アピキサバン1万2,886例であった。 大出血を呈したのは、NOAC処方44万7,037 person-quarterにつき4,770件であった。全person-quarterにおいて、最も併用が多かったのはアトルバスタチン(27.6%)で、ジルチアゼム(22.7%)、ジゴキシン(22.5%)、アミオダロン(21.1%)と続いた。 NOACとアミオダロン、フルコナゾール、リファンピシン、フェニトインとの併用は、NOAC単独と比較し、大出血の補正後発生率比(1,000人年当たり)が有意に増大した。NOAC単独38.09 vs.アミオダロン併用52.04(差:13.94[99%信頼区間[CI]:9.76~18.13])、NOAC単独102.77 vs.フルコナゾール併用241.92(138.46[80.96~195.97])、NOAC単独65.66 vs.リファンピシン併用103.14(36.90[1.59~72.22])、NOAC単独56.07 vs.フェニトイン併用108.52(52.31[32.18~72.44])であった(すべての比較のp<0.01)。 大出血の補正後発生率比は、NOAC単独と比較して、アトルバスタチン(差:-14.38[99%CI:-17.76~-10.99])、ジゴキシン(-4.46[-8.45~-0.47])、エリスロマイシンまたはクラリスロマイシン(-39.78[-50.59~-28.97])の併用群では有意に低下した。 ベラパミル、ジルチアゼム、シクロスポリン、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、posaconazole、dronedaroneの併用群では有意な差は認められなかった。

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妊婦のマルチビタミン摂取、児のASDリスク減/BMJ

 妊娠中のマルチビタミン・サプリメントの摂取は、出産児の知的障害を伴う自閉症スペクトル障害(ASD)と、逆相関となる可能性が示された。米国・ドレクセル大学のElizabeth A. DeVilbiss氏らが、スウェーデン・ストックホルムの登録住民をベースにした前向き観察コホート研究の結果を報告した。著者は、「母体栄養と自閉症発症への影響を、さらに詳しく調査することが推奨される」とまとめている。母体のマルチビタミン、鉄分または葉酸のサプリメント摂取が、出産児のASDを予防するかについて、これまでの観察研究では一貫したエビデンスは得られていない。ASDの原因は知的障害の有無によって異なるが、認知機能レベルをベースに栄養サプリメントとASDの関連を調べた研究は、ほとんどなかった。BMJ誌2017年10月4日号掲載の報告。マルチビタミン、鉄分、葉酸サプリの摂取とASDとの関連を調査 研究グループは、住民レジスターから試験サンプルとして、1996~2007年に生まれた4~15歳の子供とその母親のペア27万3,107例を特定し、2011年12月31日まで追跡調査を行った。被験者の母親は、妊娠中の初回受診時に、マルチビタミン、鉄分、葉酸のサプリメントの摂取について報告していた。 主要評価項目は、2011年12月31日までのレジスターデータで確認された、知的障害の有無を問わずASDと診断された子供の割合で、多変量ロジスティック回帰分析にてオッズ比を算出して栄養サプリメントとASDの関連を評価した。兄弟姉妹および傾向スコア適合群を対照とする検討も行った。鉄分または葉酸サプリメントの摂取では逆相関の関連は認められず 知的障害を伴うASDの有病率は、母体マルチビタミン摂取群0.26%(158/6万1,934例)、栄養サプリメント非摂取群0.48%(430/9万480例)であった。 栄養サプリメント非摂取群との比較において、母体マルチビタミン摂取群は鉄分や葉酸の追加摂取を問わず、知的障害を伴うASDのオッズ比が低かった(オッズ比:0.69、95%信頼区間[CI]:0.57~0.84)。同様の結果は、傾向スコア適合対照群でも認められた(0.68、0.54~0.86)。兄弟姉妹対照群においても認められたが(0.77、0.52~1.15)、信頼区間値が1.0を超えており統計的に有意ではなかった。 鉄分または葉酸サプリメントの摂取では、ASD有病率と逆相関を示す、一貫したエビデンスはみられなかった。

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日本初、ワルファリンでの出血傾向を迅速に抑える保険適用製剤

 ワルファリン服用者の急性重篤出血時や、重大な出血が予想される手術・処置の際に、出血傾向を迅速に抑制する日本初の保険適用製剤として、乾燥濃縮人プロトロンビン複合体(商品名:ケイセントラ静注用)が9月19日に発売された。発売に先立ち、15日に開催されたCSLベーリング株式会社による記者発表において、矢坂 正弘氏(国立病院機構九州医療センター脳血管センター 部長)が、本剤の開発経緯や臨床成績、位置付けについて講演した。その内容をお届けする。ケイセントラは厚生労働省への早期開発要望により開発 ワルファリンは直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)より適応が広く、腎機能が低下している高齢者など幅広い患者に使用できる。しかし、ワルファリン投与中は頭蓋内出血を発症しやすく、大出血時には休薬などの処置に加え、ビタミンKの投与、新鮮凍結血漿の投与が行われる。これらの投与に関して矢坂氏は、ビタミンKは緊急止血には間に合わず、新鮮凍結血漿は800mL~1Lの投与が必要だが心不全を防ぐためにゆっくり投与せざるを得ず、また輸血による感染症のリスクもあったことを指摘した。 今回発売されたケイセントラは乾燥濃縮人プロトロンビン複合体であり、1996年にドイツで承認されて以降、欧州各国で承認され、2017年1月時点で米国を含む42の国と地域で承認されている。日本では、2011年に厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会」の開発要望募集で日本脳卒中学会が早期開発要望書を提出し、厚生労働省がCSLベーリング社に開発を要請、今年3月に「ビタミンK拮抗薬投与中の患者における、急性重篤出血時、又は重大な出血が予想される緊急を要する手術・処置の施行時の出血傾向の抑制」を効能・効果として承認された。30分以内の速やかなPT-INRの是正効果においてケイセントラの非劣性が確認された ケイセントラの臨床試験成績について、矢坂氏はまず、海外で実施された2つの第III相試験を紹介した。1つは、ビタミンK拮抗薬投与中に急性重篤出血を来した患者を対象に、全例にビタミンKを静脈内投与し、ケイセントラ投与もしくは血漿投与に無作為に割り付け、止血効果と速やかなPT-INRの是正効果を比較した無作為化非盲検非劣性多施設共同試験である。本試験で、投与終了後30分以内にPT-INRが1.3以下に低下した患者の割合は、ケイセントラ群が62.2%で血漿群の9.6%に対して非劣性が確認された。また、投与開始から24時間までの止血効果が有効であった患者の割合についても、ケイセントラ群が72.4%と血漿群の65.4%に対して非劣性が確認された。 もう1つは、ビタミンK拮抗薬投与中で緊急の外科手術または侵襲的処置を要する患者を対象とした無作為化非盲検非劣性多施設共同試験で、全例にビタミンKを投与し、ケイセントラ投与もしくは血漿投与に無作為に割り付けた。試験の結果、投与終了後30分以内にPT-INRが1.3以下に低下した患者の割合は、ケイセントラ群55.2%、血漿群9.9%、また投与開始から外科手術または侵襲的処置終了までの間に止血効果が有効であった患者の割合は、ケイセントラ群89.7%、血漿群75.3%と、どちらも血漿群に対しケイセントラの非劣性が確認された。 また、日本人を対象とした国内の第III相試験では、ビタミンK拮抗薬療法に起因する抗凝固状態で急性重篤出血を来した、あるいは外科手術または侵襲的処置を要する患者に対して、ビタミンKとケイセントラ投与により、PT-INR中央値はベースラインの3.13から、投与終了後30分で1.15に減少した。 最後に矢坂氏は、「ワルファリンは幅広い適応を持っているので今後も使われていく薬剤だが、注意すべきは出血性合併症」と述べ、ケイセントラの発売で「ワルファリン治療中の大出血時、緊急手術が必要な場合にワルファリン作用の緊急是正に使用できるようになり、非常に期待される」と締め括った。

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AF患者の経口抗凝固療法、教育的介入で増加/Lancet

 心房細動患者への経口抗凝固療法に関して、多角・多面的な教育介入により同療法を受ける患者の割合が有意に増加したことが、ルーマニア・キャロルダビラ医科大学のDragos Vinereanu氏らが5ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、中国、インド、ルーマニア)を対象に行った国際クラスター無作為化試験「IMPACT-AF試験」の結果、示された。心房細動患者は脳卒中を発症するリスクが高いが、経口抗凝固療法で予防は可能であり、現行ガイドラインでも推奨されている。しかし、適応患者への同療法が十分に行われていない状況が報告されており、とくに中所得国において過少で、任意抽出集団を対象に調べた投与患者の割合は、東ヨーロッパ・南米・インドでは40%未満、中国では11%にとどまるという。研究グループはこれらの国々における教育介入のインパクトを評価した。Lancet誌オンライン版2017年8月25日号掲載の報告。医療提供者と患者に啓発、Webやeメール、SNSを活用 IMPACT-AF試験では、心房細動を有し経口抗凝固療法が適応(CHA2DS2-VAScスコア2以上、またはリウマチ性心臓弁膜症)の18歳以上の患者を包含したクラスターを、質的改善の教育介入を受ける群(介入群)または通常治療群(対照群)に、無作為に1対1の割合で割り付けた。無作為化は、eClinicalOS電子データ収集システムを用いて中央コーディングセンターで行われた。 介入は、医療提供者および患者の両者に対して行われ、定期的なモニタリングとフィードバックを伴った。患者・家族に対しては小冊子やウェブベースのビデオ教材を用いた啓発を行い、医療提供者には定期的なeメール送付で系統的レビューや関連論文、ウェブカンファレンスやオンラインセミナー、コーディングセンターとの質疑応答ができる掲示板の案内などを行った。介入は経口抗凝固療法の導入と継続を奨励することに焦点が置かれていた。 主要アウトカムは、ベースラインから教育介入1年時点までの、経口抗凝固療法を受けた患者の割合の変化であった。1年間で介入群12%増に対し対照群3%増、オッズ比は3.28 2014年6月11日~2016年11月13日の間に、5ヵ国の48クラスター(ブラジル8、その他各国10クラスター)、患者計2,281例(アルゼンチン343例、ブラジル360例、中国586例、インド493例、ルーマニア499例)が登録された。追跡期間は中央値12.0ヵ月(IQR:11.8~12.2)。 介入群において、経口抗凝固療法を受けた患者の割合は、ベースライン時68%(804/1,184例)から1年時点80%(943/1,184例)へ増大した(変化:12%)。一方、対照群は64%(703/1,092例)から67%(732/1,092例)への増大であった(同3%)。両群の変化の絶対差は9.1%(95%信頼区間[CI]:3.8~14.4)であり、オッズ比(OR)は3.28(95%CI:1.67~6.44、補正後p=0.0002)であった。 抗凝固療法に関する主な副次アウトカムをみると、ベースラインと1年時点いずれにおいても同療法を受けていた患者の割合は介入群と対照群で有意差はなかったが(補正後OR:1.68、p=0.10)、介入群においてわずかだがビタミンK拮抗薬の使用率が低下した変化がみられた(87%から78%、対照群は78%で推移)。また、同療法をベースラインでは受けていなかったが1年時点では受けていた患者の割合は、介入群48%、対照群18%であった(補正後OR:4.60、95%CI:2.20~9.63、p<0.0001)。 副次臨床的アウトカムのうち、Kaplan-Meier法で推定した脳卒中の発生は、対照群と比べて介入群で減少したことが示された(HR:0.48、95%CI:0.23~0.99、log-rank検定p=0.0434)。同値は補正後Coxモデルの評価でも変わらなかったが、CI値の上下限値幅が大きかった(HR:0.49、95%CI:0.21~1.13、p=0.09)。なお、全死因死亡、複合アウトカム(脳卒中・全身性塞栓症・大出血)、大出血の発生は、両群で差はなかった。

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抗凝固薬の中和薬:マッチポンプと言われないためには…(解説:後藤 信哉 氏)-715

 手術などの侵襲的介入時におけるヘパリンの抗凝固効果はプロタミンにより中和可能であり、経口抗凝固薬は外来通院中の症例が使用しているので、ワルファリンの抗凝固効果は新鮮凍結血漿により即座に、ビタミンKの追加により緩除に中和できることを知っていても、中和薬の必要性を強く感じる場合は少なかった。止血と血栓は裏腹の関係にあるので、急性期の血栓、止血の両者を管理する必要のある症例の多くは入院症例であり、その多くは調節可能な経静脈的抗凝固療法を受けていた。 モニタリングせずに使用する経口抗トロンビン、抗Xa薬(いわゆるNOACs、DOACs)は、血栓イベントリスクの高い機械弁、僧帽弁狭窄症では使われていない。緊急手術が必要な状態になった場合、重篤な出血が薬剤により惹起されたとき、薬剤投与を中止して止血できるまで、どの程度の時間が必要であるかがわからない。プロトロンビンを濃縮した血液製剤などを使うと直感的に止血を実感できる。本研究ではトロンビンの酵素作用を直接阻害するダビガトランに中和抗体を作用させれば、即座に抗トロンビン効果は消失することを示した。臨床的な止血効果をおそらく医師は現場で実感したと想定するが、臨床試験にて有効性を数値で示すことはできなかった。 血液凝固カスケードは液相の反応が広く知られるが、現実の血液凝固の重要部分は活性化血小板膜上にて起こる。Xaは血小板上のプロトロンビナーゼ複合体の形成に未知の複雑なメカニズムで作用するので、Xaのおとりではプロトロンビン時間が正常化しても血栓イベントは増えるような結果であった。ダビガトランの抗体の作用は、Xa阻害薬の中和薬よりは作用が直線的である。それでも、「抗凝固薬を不必要に多用して、自然歴ではない出血イベントを多発させ、抗凝固薬の中和薬を多用する」のは、マッチポンプ的で患者にも社会にも不利益をもたらす。抗Xa薬の中和薬よりは直線的だがダビガトラン抗体に価値があるのかどうか、現時点では筆者にもわからない。 放置すれば近未来ほぼ確実に血栓イベントが起こる症例に、抗凝固薬を限局的に使用する世界が筆者には効率的に思える。

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遅発性ジスキネジア治療に期待される薬剤は

 遅発性ジスキネジア(TD)は、ドパミン受容体アンタゴニストによる抗精神病薬治療を受けている患者で起こりうる。TDは、その有病率と患者の生活への悪影響にもかかわらず、確立された治療法がなく、薬理学的治療の比較対照試験によるエビデンスも限られている。米国・ペンシルベニア大学のStanley N. Caroff氏らは、TDまたは薬物誘発性運動障害の治療に関する文献レビューを行った。Expert review of neurotherapeutics誌オンライン版2017年7月31日号の報告。 2007~16年に発表されたTDに関する英語論文を、PubMedから“tardive dyskinesia”(TD)もしくは“drug-induced movement disorder”(薬物誘発性運動障害)および“treatment”の語句で検索した。選択したのはTD治療のための薬理学的作用を評価した研究で、合計26件(メタ解析:5件、RCT:12件、オープンラベル:9件)をレビューした。 専門家の主な解説は以下のとおり。・TDの治療には段階的なアプローチが必要である。・TD治療前に、抗精神病薬の最適化を検討すべきである。・いくつかの最近の研究データからは、抗精神病薬の切り替え、またはアマンタジン、レベチラセタム、piracetam、ゾニサミド、プロプラノール、ビタミンB6、特定の規制されていない漢方薬の使用でTD改善の可能性が示されているが、これらの改善意義は不明であり、RCTによるさらなる検討が必要である。・また、新規の小胞モノアミントランスポーター2阻害薬の第III相試験による最近のエビデンスでは、TD症状の重症度に対する有意な効果が認められ、これらの薬剤が、今後のTD治療を変える可能性があることを示唆している。■関連記事遅発性ジスキネジアへの対処に新たな知見遅発性ジスキネジアが発現するD2受容体占有率は:慶應義塾大学統合失調症のEPS発現にカルバマゼピン処方が関連

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幼児へのビタミンDはかぜ予防に有用か?/JAMA

 健康な1~5歳児に、毎日のビタミンDサプリメントを2,000IU投与しても、同400IUの投与と比較して、冬期の上気道感染症は減らないことが、カナダ・セント・マイケルズ病院のMary Aglipay氏らによる無作為化試験の結果、示された。これまでの疫学的研究で、血清25-ヒドロキシビタミンDの低値とウイルス性上気道感染症の高リスクとの関連を支持するデータが示されていたが、冬期のビタミンD補給が小児のリスクを軽減するかについては明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は「ウイルス性上気道感染症予防を目的とした、小児における日常的な高用量ビタミンD補給は支持されない」とまとめている。JAMA誌2017年7月18日号掲載の報告。冬期の最低4ヵ月間、高用量(2,000IU) vs.標準用量(400IU)投与で評価 検討は、オンタリオ州トロント市(北緯43度に位置)で、複数のプライマリケアが参加する研究ネットワーク「TARGet Kids!」に登録された1~5歳児を対象とし、2011年9月13日~2015年6月30日に行われた。 研究グループは参加児703例を、2,000IU/日のビタミンDサプリメントを受ける群(高用量群349例)または同400IU/日を受ける群(標準用量群354例)に無作為に割り付けて追跡した。サプリメントの投与は保護者の管理の下、登録(9~11月)からフォローアップ(翌年4~5月)の間、冬期(9月~翌年5月)の最低4ヵ月間に行われた。 主要アウトカムは、冬期の間に、保護者によって採取された鼻腔用スワブ検体によりラボで確認されたウイルス性上気道感染症例とした。副次アウトカムは、インフルエンザ感染症、非インフルエンザ感染症、保護者報告による上気道疾患、初回上気道感染症までの期間、試験終了時の血清25-ヒドロキシビタミンD値であった。上気道感染症発症に有意差なし、初回発症までの期間も有意差みられず 無作為化を受けた703例(平均年齢2.7歳、男児57.7%)のうち、試験を完遂したのは699例(99.4%)であった。 小児1例当たりに確認された上気道感染症の報告数は、高用量群1.05回(95%信頼区間[CI]:0.91~1.19)、標準用量群1.03回(同:0.90~1.16)で、両群間に統計的有意差はみられなかった(発症率比[RR]:0.97、95%CI:0.80~1.16)。 初回上気道感染症までの期間についても、統計的有意差は示されなかった。具体的な同期間は、高用量群は3.95ヵ月(95%CI:3.02~5.95)、標準用量群3.29ヵ月(同:2.66~4.14)。また、保護者報告による上気道疾患についても有意差はなかった(高用量群625件 vs.標準用量群600件、発症RR:1.01、95%CI:0.88~1.16)。 試験終了時の血清25-ヒドロキシビタミンD値は、高用量群48.7ng/mL(95%CI:46.9~50.5)、標準用量群は36.8ng/mL(同:35.4~38.2)であった。

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脳卒中リスク、ビタミンC摂取と反比例

 日本人における食事での抗酸化ビタミンの摂取と脳卒中発症の関連についてJPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study、主任研究者:津金昌一郎氏)で検討したところ、非喫煙者においてビタミンC摂取と脳卒中全体および脳梗塞発症との逆相関が認められた。European journal of clinical nutrition誌オンライン版2017年7月12日号に掲載。 本研究は、45~74歳の8万2,044人の日本人男女に対し、1995~1997年に食事摂取頻度調査票を用いて調査した。2009年末までの98万3,857人年の追跡期間中、脳卒中全体では3,541人、脳梗塞は2,138人に発症した。 主な結果は以下のとおり。・心血管リスク因子および選択された生活習慣因子の調整後、食事によるα-カロチン、β-カロチン、α-トコフェロール、ビタミンCの摂取量と脳卒中全体および脳梗塞の発症との間に逆相関はみられなかった。・現在の喫煙状況で層別化したところ、非喫煙者では食事によるビタミンC摂取量と脳卒中全体の発症とに逆相関がみられたが、喫煙者ではみられなかった。ビタミンC摂取の最低五分位に対する最高五分位の多変量ハザード比は以下のとおり。 非喫煙者:0.81(95%CI:0.68~0.96、傾向のp=0.03) 喫煙者 :1.03(95%CI:0.84~1.25、傾向のp=0.55)・脳梗塞については、非喫煙者の多変量ハザード比は0.76(95%CI:0.60~0.96、傾向のp=0.02)、喫煙者では1.00(95%CI:0.78~1.28、傾向のp=0.61)であった。

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X染色体遺伝性低リン血症〔XLH:X-linked hypophosphatemic rickets〕

1 疾患概要■ 定義X染色体遺伝性低リン血症(X連鎖性低リン血症性くる病)は、X連鎖性優性遺伝形式を示し、腎尿細管でのリン酸再吸収障害に基づく過リン酸尿、低リン血症、ビタミンD活性化障害、骨石灰化障害を呈する遺伝性疾患である。骨石灰化障害は、成長軟骨帯閉鎖以前に発症するものを「くる病」、成人期のものを「骨軟化症」と呼ぶ。本症はビタミンD欠乏性くる病・骨軟化症とは異なり、天然型ビタミンD投与により完治しないことから、しばしばビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症とも呼ばれる。■ 疫学詳細は不明であるが、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「ホルモン受容機構異常に関する調査研究班」の全国調査から、わが国における年間発症症例数は117例(95%信頼区間 75-160)と推定されている。■ 病因・病態本症はX染色体に存在するPHEX(phosphate-regulating gene with homologies to endopeptidases on the X chromosome)遺伝子の機能喪失に基づく。PHEX遺伝子は主として骨芽細胞や骨細胞に発現している。本症の原因であるPHEXの機能喪失は骨におけるFGF23の過剰産生をもたらし、このFGF23作用の過剰が尿中リン酸排泄増加による低リン血症やビタミンDの活性化障害を引き起こす(図1)。PHEXの機能喪失がFGF23の過剰産生をもたらす機序は明確になっていない。画像を拡大するFGF23は主として骨芽細胞や骨細胞で産生され、近位尿細管におけるIIa型およびIIc型のナトリウム/リン酸共輸送担体の発現を減少させることによりリン酸再吸収を抑制し、血清リン値を低下させる。また、FGF23は、ビタミンDの活性化酵素である1α水酸化酵素の発現を抑制して不活性化酵素である24水酸化酵素の発現を誘導することにより、活性型のビタミンDである1,25(OH)2Dの血中濃度を低下させる。1,25(OH)2Dの低下に伴う腸管でのリン吸収の抑制は血清リン値をさらに低下させる。リンはカルシウム(Ca)とともにハイドロキシアパタイトの主要構成成分であるため、本症における慢性的な低リン血症は、骨石灰化障害であるくる病や骨軟化症をもたらす。低リン血症性くる病・骨軟化症の中には、本症以外にもFGF23作用の過剰による疾患群が存在し、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と総称される(表)。画像を拡大する■ 症状尿中リン酸排泄増加、低リン血症、骨変形やO脚、関節腫脹、低身長、骨単純X線像としての杯様変化や毛羽立ちなどのくる病所見を認め、くる病はビタミンD抵抗性である。ビタミンDの活性化障害が存在するため、低リン血症が存在するにもかかわらず血中1,25(OH)2D値は上昇しない。ほかのくる病・骨軟化症と同様に、血清ALP値は上昇する。多くの場合、副甲状腺ホルモン(PTH)値は正常である。見逃されがちな症状として歯の異常が挙げられ、本症の患者はエナメル質欠損や象牙質石灰化障害、歯根膿瘍などを示す。成人では筋力低下や骨痛が主徴となる。また、後縦靱帯骨化症や腱付着部症(enthesopathy)をしばしば認める。■ 予後従来行われてきたリン酸製剤と活性型ビタミンDを用いた治療により本症患者の成長障害はある程度改善するが、成人身長は平均を下回る場合が多い。また、骨変形の完全な防止は困難であり、筋力低下や骨痛のため服薬が中止できないことが少なくない。前述したように、後縦靱帯骨化症や石灰化を伴うenthesopathyを合併しやすい。また、長期にわたる活性型ビタミンDの投与により尿中Ca排泄が増加し、腎機能に影響を及ぼす場合がある。2019年より、新規治療薬としてヒト型抗FGF23モノクローナル抗体(商品名:クリースビータ)が使用可能となったことから、今後、本疾患の予後が変化する可能性がある。2 診断骨石灰化障害であるくる病や骨軟化症には、本症のようなFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症のほか、ビタミンD欠乏性くる病やビタミンD依存症I型・II型、薬剤性くる病・骨軟化症、ファンコーニ症候群など、さまざまな疾患が含まれる。そこで、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「ホルモン受容機構異常に関する調査研究班」では、日本内分泌学会・日本骨代謝学会との合同で、「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」を作成し1)、学会ホームページ上で公開している。このマニュアルでは、くる病・骨軟化症の症例に遭遇したときには、まず血清リン値を評価し、低リン血症が存在すれば血中FGF23値の測定を行う。血清リン値の基準値は年齢で異なるので、注意が必要である。くる病・骨軟化症患者で低リン血症が存在し、血中intact FGF23値が30pg/mL以上であれば、FGF23関連くる病・骨軟化症と診断する(図2)。FGF23関連くる病・骨軟化症の診断または治療効果判定を目的としたFGF23の測定は、2019年より保険適用となっている。表に示した通り、FGF23関連くる病・骨軟化症には本症以外にもさまざまな疾患が含まれるので、腫瘍性骨軟化症などとの鑑別のために詳細な家族歴の調査が必要となるが、しばしば孤発例も報告されており、診断に苦慮する場合がある。こうした症例ではPHEX遺伝子検査が有用である。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症をはじめとするFGF23関連低リン血症性くる病においては、尿中リン酸排泄増加に加えビタミンD活性化障害を伴うため、従来、中性リン酸塩と活性型ビタミンDの併用投与が行われてきた。経口リン酸製剤(例:ホスリボン配合顆粒など)は20~60mg/kg/日を数回に分割して投与する。リン投与が過剰になると消化器症状や副甲状腺機能亢進症のリスクが高まる。活性型ビタミンDとしては通常、アルファカルシドール(1αOHD3)0.03~0.05μg/kg/日で開始し、血清Ca値や尿中Ca排泄を指標に投与量を調節する。成人における治療法は確立していない。活性型ビタミンD投与が長期にわたるため、腎エコー上、腎石灰化が高頻度に認められるが、腎機能の低下を来すことはまれである。近年、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症に対する新規治療薬として、ヒト型FGF23モノクローナル抗体ブロスマブが使用可能となった。XLHに対しては、成人患者では4週毎に1 mg/kg(ただし90 mg以下)を、小児患者では2週毎に0.8 mg/kgを皮下投与する。在宅自己注射も可能となっている。リン製剤や活性型ビタミンD投与による治療からブロスマブ投与に切り替える際には、それまでの治療を中止して血清リン値が低値になっていることを確認しなくてはならない。ブロスマブは血清リン値や症状に応じて増減するが、最高用量は2mg/kg/回(ただし90 mg以下)である。4 今後の展望2019年以降、血中FGF23測定が保険適用となり、ブロスマブが使用可能となったことから、XLHの診療は大きく変化しつつある。ブロスマブの導入により、XLHにおける身長予後や合併症が改善するかどうか、今後の検討が待たれる。5 主たる診療科小児科、内分泌内科、整形外科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療研究情報難病情報センター ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター 原発性低リン血症性くる病(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会XLH Network(米国にある本疾患の患者会サイト。英文だが日本語選択も可能)1)Fukumoto S, et al. Endocr J. 2015;62:665–671.2)Carpenter TO, et al. J Bone Miner Res. 2011;26:1381–1388.3)Haffner D, et al. Nat Rev Nephrol. 2019;15:436–455.4)Carpenter TO, et al. New Engl J Med. 2018;378:1987–1998.5)Imel EA, et al. Lancet. 2019;393:2416–2427.公開履歴初回2017年06月13日更新2022年02月03日

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ワルファリン服用者の骨は脆い?(解説:後藤 信哉 氏)-676

 ワルファリンは、ビタミンK依存性の凝固因子の機能的完成を阻害する抗凝固薬である。ワルファリン服用者にはビタミンKの摂取制限を指導する。ビタミンKは「ビタミン」であるため、摂取制限により「ビタミン」不足の症状が起こる場合がある。ビタミンKを必要とする生体反応として骨代謝は重要である。ワルファリンはビタミンK依存性の凝固蛋白の機能的完成を阻害して、血液凝固を阻害する。骨の石灰化に必須のオステオカルシンの活性化にもビタミンKが必要である。ビタミンK摂取制限、ワルファリンの服用により、出血以外に骨粗鬆症も懸念される。もともと高齢で骨が弱い症例が、ワルファリン治療の対象となる。臨床的仮説として「ワルファリンの服用者では非服用者よりも骨粗鬆症性骨折が増える」とするのは妥当である。 本研究は香港の無名化臨床データベースを用いた。ワルファリンとダビガトランの服用はランダム化されていない。リスク因子などをそろえるpropensity matchを行っているが、臨床医がワルファリンまたはダビガトランを選択した個別の理由があると考えると、リスク因子がそろってワルファリン群とダビガトラン群がランダムに割り付けられていないことが本研究の限界である。2年程度の観察にて、骨粗鬆症性骨折はダビガトラン群の1.0%、ワルファリン群の1.5%に起こった。ランダム化比較試験が示した年間3%以上の重篤な出血の半分以下ではあるが、ワルファリン使用例では骨折にも注意が必要である。 50年の経験を有するワルファリンの欠点を、臨床医は十分に理解している。心房細動症例に起こる心原性脳塞栓症は予防したい。しかし、抗凝固薬には欠点がある。ワルファリンの欠点のうち、一部はNOACsにより改善できた。しかし、重篤な出血を起こすNOACsは安心して長期服用できる薬ではない。ブームに乗ってNOACsの使用推奨をするよりも、NOACsの出血の問題を克服できる次世代の薬剤開発に、時間とエネルギーを割くべきである。 本研究では香港の無名化(annotated)臨床データを用いている。電子カルテから個人を特定できる情報をすべて抜き取って院内のサーバーに蓄積する。そのannotatedな臨床データを日本中から集めて解析すれば、日本のデータを使って多くのclinical questionに関する回答を不完全ながら得ることができる。これはアカデミアの研究というよりも、コンピューターによる自動化で可能な事務仕事といえるレベルでできる。オープンソースにして誰もが解析可能とすれば、日本の臨床研究の質を楽に、一気に引き上げることができる。法整備ができれば、電子カルテ業界は競ってpopulation scienceのデータ化を容易にできるシステムを作ると思う。多くの人が自分でデータベースを操作してみれば、臨床医も「エビデンス」の限界を直感できるであろう。技術的には十分可能と思うので、あとは国民のコンセンサスの問題である。

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授乳婦はビタミンD欠乏リスクが4倍

 授乳中の女性はそうでない女性と比較して、ビタミンD欠乏症になるリスクが有意に高いことがドイツの横断的研究から明らかになった。 ビタミンD欠乏症による健康への有害性は認知されてきているものの、授乳婦におけるビタミンDの状態に関する研究はこれまであまり実施されてこなかった。 2017年4月19日にInternational Breastfeeding Journalに掲載されたSandra Gellert氏(ドイツ・ハノーファー大学)らによる研究では、German“Vitamin and mineral status among German women”studyから、124例の授乳婦と同数の年齢およびサンプル採取時期をマッチさせた妊娠・授乳をしていない女性について横断的研究を実施した。参加者は2013年4月~2015年3月にかけて登録され、ビタミンDのサプリメントは摂取していなかった。 その結果、授乳婦におけるビタミンD欠乏症(血清25(OH)D濃度25.0nmol/L未満)は26.6%を占め、ビタミンD不足(50.0nmol/L未満)でみると75.8%であり、これらは対照群より有意に高かった(対照群はそれぞれ12.9%、p=0.007、58.9%、p=0.004)。多重ロジスティック回帰分析によると、授乳婦のビタミンD欠乏リスクは対照群の4倍であった(オッズ比[OR]:4.0、95%信頼区間[CI]:1.8~8.7)。 一方で、血清25(OH)D濃度が適正範囲内(75.0~124.9nmol/L)であった授乳婦はわずか5.6%しかいなかった。また、ビタミンD過剰症はいずれの群でも認められなかった。 ビタミンD不足および欠乏の発生にはいずれの群においても季節性が認められた。授乳婦では、夏が最も適正範囲内の値である割合が高く、冬と春は欠乏リスクが高かった(OR:2.6、p=0.029)。また、住んでいる地域によってもリスクに差がみられた。 著者らは、授乳婦のビタミンD欠乏は乳児に影響を与える可能性があるため、十分な摂取もしくは日照時間が得られない場合にはサプリメントで補うことも選択肢になりうることを指摘した。しかしながら、適切なビタミンD濃度を得るためにどのくらいの用量のビタミンDサプリメントが必要なのかについては、さらなる検討が必要である、と記している。

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AFの抗凝固療法での骨折リスク、ダビガトランは低減/JAMA

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の抗凝固療法では、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)がワルファリンに比べ骨粗鬆症による骨折のリスクが低いことが、中国・香港大学のWallis C Y Lau氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月21日号に掲載された。ワルファリンは、骨折リスクの増大が確認されているが、代替薬がないとの理由で数十年もの間、当然のように使用されている。一方、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)ダビガトランは、最近の動物実験で骨体積の増加、骨梁間隔の狭小化、骨代謝回転速度の低下をもたらすことが示され、骨粗鬆症性骨折のリスクを低減する可能性が示唆されている。リスクを後ろ向きに評価するコホート試験 本研究は、香港病院管理局が運営するClinical Data Analysis and Reporting System(CDARS)を用いて2つの抗凝固薬の骨粗鬆症性骨折リスクをレトロスペクティブに評価する地域住民ベースのコホート試験である。 CDARSの登録データから、2010年1月1日~2014年12月31日に新規にNVAFと診断された患者5万1,946例を同定した。このうち、傾向スコアを用いて1対2の割合で背景因子をマッチさせた初回投与例8,152例(ダビガトラン群:3,268例、ワルファリン群:4,884例)が解析の対象となった。 ポアソン回帰を用いて、2群の骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折および椎体骨折のリスクを比較した。罹患率比(IRR)および絶対リスク差(ARD)と、その95%信頼区間(CI)を算出した。転倒、骨折の既往例でリスク半減 ベースラインの全体の平均年齢は74(SD 11)歳、50%(4,052例)が女性であった。平均フォローアップ期間は501(SD 524)日だった。この間に、104例(1.3%)が骨粗鬆症性骨折を発症した(ダビガトラン群:32例[1.0%]、ワルファリン群:72例[1.5%])。初回投与から骨折発症までの期間中央値は、ダビガトラン群が222日(IQR:57~450)、ワルファリン群は267日(81~638)だった。 ポアソン回帰分析において、ダビガトラン群はワルファリン群に比べ骨粗鬆症性骨折のリスクが有意に低いことが示された。すなわち、100人年当たりの発症割合はそれぞれ0.7、1.1であり、100人年当たりの補正ARDは-0.68(95%CI:-0.38~-0.86)、補正IRRは0.38(0.22~0.66)であった(p<0.001)。また、投与期間が1年未満(1.1 vs.1.4/100人年、p=0.006)、1年以上(0.4 vs.0.9/100人年、p=0.002)の双方とも、ダビガトラン群のリスクが有意に低かった。 転倒、骨折、これら双方の既往歴がある患者では、ダビガトラン群のリスクが統計学的に有意に低かった(1.6 vs.3.6/100人年、ARD/100人年:-3.15、95%CI:-2.40~-3.45、IRR:0.12、95%CI:0.04~0.33、p<0.001)が、これらの既往歴がない患者では両群間に有意差は認めなかった(0.6 vs.0.7/100人年、ARD/100人年:-0.04、95%CI:0.67~-0.39、IRR:0.95、95%CI:0.45~1.96、p>0.99)(交互作用検定:p<0.001)。 事後解析では、ダビガトラン群は無治療の患者との比較でも、骨粗鬆症性骨折リスクが有意に良好であった(ARD/100人年:-0.62、95%CI:-0.25~-0.87、IRR:0.52、95%CI:0.33~0.81)。 著者は、「これら2つの薬剤と骨折リスクの関連の理解を深めるには、無作為化試験を含め、さらなる検討を要する」と指摘している。

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