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第3回 「ベジファースト」の第一歩【実践型!食事指導スライド】

第3回 「ベジファースト」の第一歩医療者向けワンポイント解説野菜の摂取量は日々不足しています。『健康日本21』でも1日の野菜の摂取目標量を350gと定めていますが、実際に摂取できている方は少ないのが現実です。『平成28年 国民健康・栄養調査』の結果では、「野菜摂取量の平均値は 276.5g(男性:283.7g、女性:270.5g)であり、この10年間で有意に減少している」と報告されています。最近では、「ベジファースト」という言葉が患者さんの間にも浸透してきています。これは言葉通り、「食事の最初に野菜を食べる」ということです。これによって以下の3つが期待できます。(1)ビタミンやミネラルなどの栄養素の補給緑黄色野菜に含まれる、抗酸化ビタミンであるβ-カロテン(ビタミンA)やビタミンE、ビタミンCをはじめ、ナトリウムの排泄作用があるカリウム、ミネラルが摂取できます。(2)血糖値の上昇緩和と脂質の吸収阻害食物繊維は、水溶性と不溶性の2種類があり、水溶性食物繊維の摂取は糖の吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇の抑制や脂質の吸収阻害に効果的です。また、不溶性食物繊維は、腸内の善玉菌を増やす働きに効果が期待できます。(3)料理のカサや噛みごたえが増加低カロリーである野菜は、カロリーや脂質などを気にせず、料理のボリュームや噛みごたえを増やすことができます。これにより食べ過ぎを予防する働きがあります。しかし、糖尿病患者さんに「野菜を食べましょう」と伝えた場合、実行するハードルが高いと感じる方が多くいます。原因としては、(1)野菜を切るのが面倒くさい、切れない、(2)外食で野菜(サラダ)を頼むと食費がかさむ、(3)野菜が苦手、が挙げられますが、今回は、(1)(2)のハードルを下げるコツを紹介します。(1)「そのまま野菜」を持ち歩くプチトマトやキュウリなどの野菜は、洗ったらそのまま食べることができる「そのまま野菜」です。コンビニやスーパーでも手軽に手に入り、価格も安定しているため、こうした野菜を冷蔵庫にストックしておくことや、外出先で購入することをオススメします。(2)「カット野菜」を手軽にオン!カット野菜は、「栄養価がないのでは?」と懸念される方もいますが、各社のデータによるとビタミンやミネラルの残存率も比較的高いと報告されています。何より、食物繊維は残っているので、「『繊維』を食べる」「ボリュームを増やす」と考えると食べるメリットが出てくると思います。また、価格が安定しているため、購入しやすいのが特徴です。カップラーメンや即席スープに入れる際は、袋を開けて電子レンジで1分ほど加熱することで、ボリュームが抑えられ、たっぷりと入れることができます。(3)「男前サラダ」を作る患者さんの中には、「皿も包丁もまな板も使いたくない」という方がいます。職場などで野菜を安く食べたい場合、カット野菜にドレッシングをかけ、そのまま食べることも良いと思います。しかし、せっかくなので、栄養補給を考慮し、ナッツやサラダチキン、ゆで卵などを投入してみましょう。たんぱく質やビタミンなどが補給できるサラダが作れます。さらに、オリーブオイルを加えることで、余計な塩分を抑えることも可能です。こうした野菜の食べ方は、栄養バランスが全て整うとは言い切れませんが、野菜を食べる習慣を促す第一歩になります。

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第61回

第61回:ALK-TKIの使い分け、irAEへのステロイド長期使用(視聴者からの質問)キーワード肺がんメラノーマALK-TKIアレクチニブirAE動画書き起こしはこちら音声だけをお聞きになりたい方はこちら //playstopmutemax volumeUpdate RequiredTo play the media you will need to either update your browser to a recent version or update your Flash plugin.こんにちは。ダートマス大学腫瘍内科の白井敬祐です。今日はこのプログラムを見てくださっている方からの質問があるので、お答えしたいと思います。1つ目はALKインヒビターをどのように使っているか、ということなんですけども、J-ALEX、Global ALEX study両方で、アレクチニブのPFSの結果がでたので、アレクチニブを1stラインに使うことが多くなっています。ただ、アレクチニブが効かなくなったときはどうするのかということで、リキッドバイオプシーを使って研究を進めるという話を聞いたことあるんですけど、そこに使われるGUARDANTという会社のキット、ALKインヒビター耐性のさまざまなミューテーションについて結果を出してくるので、それを使うことが多くなっています。リキッド・バイオプシーのメリットとしては、病気が進行したときに、繰り返しできる…やはりティシュー・バイオプシーに比べるとやりやすいということなんですけど、ただコストがかかるので、日本では1回の診断につき1回のみと聞いたことがありますが、アメリカでもそれを何回まで許すか、どこまで保険会社が払ってくれるかというのは、まだはっきりしてないようです。数年前にAlice Shaw先生というMGH(Massachusetts General Hospital)の先生が出した論文でも、そういうものを使うことで、kinaseインヒビターをリサイクルできるということがあったので、刻々と変わってく可能性があるものを追跡するというのは、学問的には非常に興味のあるところです。ただ、耐性のミューテーションに対して、この薬が効くとか効かないとか、今一覧表みたいなものが出てるんですけれども、必ずしもそれでは一概には言えないようなこともあるのでそれがまだ難しいところですね。ローラチニブという薬が今、compassionate use、まだFDAには認可されてないけども、そういう特殊なミューテーションがあった場合にはFDAに手紙を書くことで、使うことが許可されるというような状況になっています。効果があることがわかっている薬を、少しでも早く患者さんに届けようというところでしょうか。実際、イピリムマブでも認可数ヵ月前から使いましたし、キイトルーダもそういう状況にありました。もう1つの質問はirAEですね。Immune relaed adverse eventに対してステロイドを長期に使用することがあるかもしれないですけど、どういったところに注意をするかというご質問をいただいたんですけど、ほとんどのirAEのステロイドというのは、僕の印象では9割5分以上は結局中止できるんですけども、確かに中には多発性筋痛症のような感じの方で、5mgとか10mg程度のプレドニゾロンを長く使われている方はいます。何回も7.5とか5とかにテーパリンしようとすると痛みが強くなって日常生活に支障を来たす方はおられますね。そういう方には、骨粗鬆症も考えてビタミンDとカルシウムを飲んでもらったりしてるんですが、それも実際どの程度効果があるのか、わからないところは多いです。あと、やはりホルモン補充…たとえば甲状腺ホルモンとか、副腎不全になってステロイドの補充が必要という人は、ほとんどの場合、長く補充することが必要なようです。2月24日に、NCCNとASCOの共同のirAEに対するガイドラインが出たことは、以前も紹介させていただいたと思うんですけれども。流れとしては昔に乗り比べると、ステロイドから早めにインフリキシマブなどを使うことが多くなってきている印象はあります。抗炎症薬も、新しいものが出てきているので、消化器の先生と一緒に診ながら、新しいインフリキシマブではない抗炎症薬を使っている患者も数人います。この間アジュバントのニボルマブが認可になったんですけれども、クローン病をアクティブに治療されてる方が、StageIIIのメラノーマで来られて、その方は今ニボルマブとクローン病に対するmab(monoclonal antibody)を併用しながら治療しています。どういう結果になるかは、まだわからないですけれど、StageIVに関しては、自己免疫疾患に対するmabを使いながら、メラノーマに対するmabを使っても抗腫瘍効果があったという報告が、ケースレポートレベルでは出ています。大きな臨床試験グループ、ALLIANCEなどではそういう自己免疫疾患がある患者に対する、抗PD-1抗体あるいは抗PD-L1抗体を使うことに対する臨床試験(正確にデータを取ろうということなんですけど)そういう臨床試験も始まるようです。ハーバードとかスローンケタリングになると、たとえば消化器の先生でもirAEのcolitisといった消化器症状を専門にした、若手の研究者の方がたくさん出てきて(います)。そういうことで臨床の知見、経験値は上がってくるものだと考えています。アレクチニブ、未治療ALK陽性非小細胞肺がんに奏効/NEJMShaw AT,et al.Resensitization to Crizotinib by the Lorlatinib ALK Resistance Mutation L1198F.N Engl J Med.2016;374:54-61

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第2回 意識障害 その2 意識障害の具体的なアプローチ 10’s rule【救急診療の基礎知識】

72歳男性の意識障害:典型的なあの疾患の症例72歳男性。友人と食事中に、椅子から崩れるようにして倒れた。友人が呼び掛けると開眼はあるものの、反応が乏しく救急車を要請した。救急隊到着時、失語、右上下肢の麻痺を認め、脳卒中選定で当院へ要請があった。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:3/JCS、E4V2M5/GCS血圧:188/102mmHg 脈拍:98回/分(不整) 呼吸:18回/分SpO2:95%(RA) 体温:36.2℃ 瞳孔:3/3mm+/+意識障害のアプローチ意識障害は非常にコモンな症候であり、救急外来ではもちろんのこと、その他一般の外来であってもしばしば遭遇します。発熱や腹痛など他の症候で来院した患者であっても、意識障害を認める場合には必ずプロブレムリストに挙げて鑑別をする癖をもちましょう。意識はバイタルサインの中でも呼吸数と並んで非常に重要なバイタルサインであるばかりでなく、軽視されがちなバイタルサインの1つです。何となくおかしいというのも立派な意識障害でしたね。救急の現場では、人材や検査などの資源が限られるだけでなく、早期に判断することが必要です。じっくり考えている時間がないのです。そのため、意識障害、意識消失、ショックなどの頻度や緊急性が高い症候に関しては、症候ごとの軸となるアプローチ法を身に付けておく必要があります。もちろん、経験を重ね、最短距離でベストなアプローチをとることができれば良いですが、さまざまな制約がある場面では難しいものです。みなさんも意識障害患者を診る際に手順はあると思うのですが、まだアプローチ方法が確立していない、もしくは自身のアプローチ方法に自信がない方は参考にしてみてください。アプローチ方法の確立:10’s Rule1)私は表1の様な手順で意識障害患者に対応しています。坂本originalなものではありません。ごく当たり前のアプローチです。ですが、この当たり前のアプローチが意外と確立されておらず、しばしば診断が遅れてしまっている事例が少なくありません。「低血糖を否定する前に頭部CTを撮影」「髄膜炎を見逃してしまった」「飲酒患者の原因をアルコール中毒以外に考えなかった」などなど、みなさんも経験があるのではないでしょうか。画像を拡大する●Rule1 ABCの安定が最優先!意識障害であろうとなかろうと、バイタルサインの異常は早期に察知し、介入する必要があります。原因がわかっても救命できなければ意味がありません。バイタルサインでは、血圧や脈拍も重要ですが、呼吸数を意識する癖を持つと重症患者のトリアージに有効です。頻呼吸や徐呼吸、死戦期呼吸は要注意です。心停止患者に対するアプローチにおいても、反応を確認した後にさらに確認するバイタルサインは呼吸です。反応がなく、呼吸が正常でなければ胸骨圧迫開始でしたね。今後取り上げる予定の敗血症の診断基準に用いる「quick SOFA(qSOFA)」にも、意識、呼吸が含まれています。「意識障害患者ではまず『呼吸』に着目」、これを意識しておきましょう。気管挿管の適応血圧が低ければ輸液、場合によっては輸血、昇圧剤や止血処置が必要です。C(Circulation)の異常は、血圧や脈拍など、モニターに表示される数値で把握できるため、誰もが異変に気付き、対応することは難しくありません。それに対して、A(Airway)、B(Breathing)に対しては、SpO2のみで判断しがちですが、そうではありません。SpO2が95%と保たれていても、前述のとおり、呼吸回数が多い場合、換気が不十分な場合(CO2の貯留が認められる場合)、重度の意識障害を認める場合、ショックの場合には、確実な気道確保のために気管挿管が必要です。消化管出血に伴う出血性ショックでは、緊急上部内視鏡を行うこともありますが、その際にはCの改善に従事できるように、気管挿管を行い、AとBは安定させて内視鏡処置に専念する必要性を考える癖を持つようにしましょう。緊急内視鏡症例全例に気管挿管を行うわけではありませんが、SpO2が保たれているからといって内視鏡を行い、再吐血や不穏による誤嚥などによってAとBの異常が起こりうることは知っておきましょう。●Rule2 Vital signs、病歴、身体所見が超重要! 外傷検索、AMPLE聴取も忘れずに!症例の患者は、突然発症の右上下肢麻痺であり、誰もが脳卒中を考えるでしょう。それではvital signsは脳卒中に矛盾ないでしょうか。脳卒中に代表される頭蓋内疾患による意識障害では、通常血圧は高くなります(表2)2)。これは、脳卒中に伴う脳圧の亢進に対して、体血圧を上昇させ脳血流を維持しようとする生体の反応によるものです。つまり、脳卒中様症状を認めた場合に、血圧が高ければ「脳卒中らしい」ということです。さらに瞳孔の左右差や共同偏視を認めれば、より疑いは強くなります。画像を拡大する頸部の診察を忘れずに!意識障害患者は、「路上で倒れていた」「卒倒した」などの病歴から外傷を伴うことが少なくありません。その際、頭部外傷は気にすることはできても、頸部の病変を見逃してしまうことがあります。頸椎損傷など、頸の外傷は不用意な頸部の観察で症状を悪化させてしまうこともあるため、後頸部の圧痛は必ず確認すること、また意識障害のために評価が困難な場合には否定されるまで頸を保護するようにしましょう。画像を拡大する意識障害の鑑別では、既往歴や内服薬は大きく影響します。糖尿病治療中であれば低血糖や高血糖、心房細動の既往があれば心原性脳塞栓症、肝硬変を認めれば肝性脳症などなど。また、内服薬の影響は常に考え、お薬手帳を確認するだけでなく、漢方やサプリメント、家族や友人の薬を内服していないかまで確認しましょう3)。●Rule3 鑑別疾患の基本をmasterせよ!救急外来など初診時には、(1)緊急性、(2)簡便性、(3)検査前確率の3点に意識して鑑別を進めていきましょう。意識障害の原因はAIUEOTIPS(表4)です。表4はCarpenterの分類に大動脈解離(Aortic Dissection)、ビタミン欠乏(Supplement)を追加しています。頭に入れておきましょう。画像を拡大する●Rule4 意識障害と意識消失を明確に区別せよ!意識障害ではなく意識消失(失神や痙攣)の場合には、鑑別診断が異なるためアプローチが異なります。これは、今後のシリーズで詳細を述べる予定です。ここでは1つだけおさえておきましょう。それは、意識状態は「普段と比較する」ということです。高齢者が多いわが国では、認知症や脳卒中後の影響で普段から意思疎通が困難な場合も少なくありません。必ず普段の意識状態を知る人からの情報を確認し、意識障害の有無を把握しましょう。前述の「Rule4つ」は順番というよりも同時に確認していきます。かかりつけの患者さんであれば、来院前に内服薬や既往を確認しつつ、病歴から◯◯らしいかを意識しておきましょう。ここで、実際に前掲の症例を考えてみましょう。突然発症の右上下肢麻痺であり、3/JCSと明らかな意識障害を認めます(普段は見当識障害など特記異常はないことを確認)。血圧が普段と比較し高く、脈拍も心房細動を示唆する不整を認めます。ここまでの情報がそろえば、この患者さんの診断は脳卒中、とくに左大脳半球領域の脳梗塞で間違いなしですね?!実際にこの症例では、頭部CT、MRIとMRAを撮影したところ左中大脳動脈領域の急性期心原性脳塞栓症でした。診断は容易に思えるかもしれませんが、迅速かつ正確な診断を限られた時間の中で行うことは決して簡単ではありません。次回は、10’s Ruleの後半を、陥りやすいpitfallsを交えながら解説します。お楽しみに!1)坂本壮. 救急外来 ただいま診断中. 中外医学社;2015.2)Ikeda M, et al. BMJ. 2002;325:800.3)坂本壮ほか. 月刊薬事. 2017;59:148-156.コラム(2) 相談できるか否か、それが問題だ!「報告・連絡・相談(ほう・れん・そう)」が大事! この単語はみなさん聞いたことがあると思います。何か困ったことやトラブルに巻き込まれそうになったときは、自身で抱え込まずに、上司や同僚などに声をかけ、対応するのが良いことは誰もが納得するところです。それでは、この3つのうち最も大切なのはどれでしょうか。すべて大事なのですが、とくに「相談」は大事です。報告や連絡は事後であることが多いのに対して、相談はまさに困っているときにできるからです。言われてみると当たり前ですが、学年が上がるにつれて、また忙しくなるにつれて相談せずに自己解決し、後で後悔してしまうことが多いのではないでしょうか。「こんなことで相談したら情けないか…」「まぁ大丈夫だろう」「あの先生に前に相談したときに怒られたし…」など理由は多々あるかもしれませんが、医師の役目は患者さんの症状の改善であって、自分の評価を上げることではありません。原因検索や対応に悩んだら相談すること、指導医など相談される立場の医師は、相談されやすい環境作り、振る舞いを意識しましょう(私もこの部分は実践できているとは言えず、書きながら反省しています)。(次回は6月27日の予定)

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ビタミンD依存症〔Vitamin D-dependent rickets〕

1 疾患概要2 各タイプ別の病因、診断、治療3 主たる診療科4 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)1 疾患概要■ 概念・定義ビタミンD依存症は、ビタミンDの代謝異常症であり、本症の理解のために、ビタミンD代謝について理解しておく必要がある。ビタミンDは食物から摂取されるほか、ビタミンとしては例外的に、皮膚において紫外線のエネルギーを利用して生合成される1)。ビタミンDには構造の異なるD2(菌類由来)とD3(動物由来)があるが、生物学的にはほぼ同等の活性であり、この2つを合わせて「ビタミンD」と呼ぶ。ビタミンDが生理的作用を発揮するためには、水酸化を受ける必要がある。すなわち、食物として摂取されたビタミンDおよび皮膚で生合成されたビタミンDは、まず肝臓において25位が水酸化されて25(OH)Dとなり、さらに、腎臓において1α位が水酸化されて、1α,25(OH)2Dとなる(図1)1)。1α,25(OH)2Dは最も強い生物活性を有するので「活性型ビタミンD」と呼ぶ。血中25(OH)D濃度は体内のビタミンDの貯蔵量を反映するので、ビタミンD欠乏症の診断に用いられる2)。活性型ビタミンDの血中濃度は、副甲状腺ホルモン(PTH)、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)やリン濃度により厳密にコントロールされている1)。画像を拡大する食物として摂取されたビタミンDおよび皮膚で生合成されたビタミンDは、まず肝臓において25水酸化酵素(CYP2R1あるいはCYP27A1)により25位が水酸化されて25(OH)Dとなり、さらに、腎臓において1α水酸化酵素(CYP27B1)により1α位が水酸化されて、1α,25(OH)2Dとなる。1α,25(OH)2Dは標的細胞に存在するビタミンD受容体(VDR)と結合して、遺伝子の発現を調節する。薬剤代謝酵素CYP3A4の恒常活性化により、1α,25(OH)2Dは不活性な1α,23,25(OH)3Dあるいは4-beta-25(OH)2Dに代謝される。また、24位の水酸化は、ビタミンDに特異的な不活化の経路と考えられている。ビタミンD依存症は、生理量の天然型ビタミンDでは作用が不足する病気で、「ビタミンD不応症」とも呼ばれる。腎臓の1α水酸化障害がみられる場合をビタミンD依存症1型(1A型)、ビタミンD受容体に異常のある場合をビタミンD依存症2型という3)。両疾患とも常染色体劣性遺伝形式を示す。このほか、ビタミンD抵抗性を伴うが、病気の本態は腎臓からのリンの漏出である低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病(低リン血症性くる病)がある。すなわち、ビタミンD依存症とビタミンD抵抗症はともに、代謝や受容機構の異常によりビタミンD作用が発揮されにくい疾患であるが、別疾患であり、本稿では、ビタミンD依存症のみを取り扱う。また、小児の疾患はくる病で、成人期では骨軟化症であり、ビタミンD依存性くる病・骨軟化症と呼ばれることも多いが、本稿ではこの両者をまとめてビタミンD依存症と呼ぶこととする。■ 疫学ビタミンD依存症1・2型ともに非常にまれで、国内では合わせて数十名ほどの報告がある。遺伝子変異の種類としては、2つの遺伝子ともに50種類程度と報告されている4,5)。ともに、指定難病、小児慢性特定疾病となっている。2 各タイプ別の病因、診断、治療病因、診断などはサブタイプに分けて記述する。■ ビタミンD依存症1型(vitamin D-dependent rickets type 1, pseudovitamin D deficiency rickets, OMIM264700)ビタミンD依存症1型は、腎臓における25(OH)D-1α水酸化酵素活性の障害のため、活性型ビタミンDが産生されず、生後早期よりビタミンD欠乏症を呈する。英語では、dependencyという言葉を使用せず、偽性ビタミンD欠乏性くる病などと呼ばれることもある。本酵素はシトクロムP450に属するので、コードする遺伝子はCYP27B1と命名されている。ビタミンDの活性化障害が病態であるので、生理量のビタミンDには抵抗するのに対し(4週間の3,000~4,000単位ビタミンD治療に反応しない)、活性型ビタミンDを用いれば生理量(0.01~0.05μg/kg)で治癒させうる。1961年に最初にPraderらにより報告された、通常、常染色体劣性遺伝形式をとる疾患である。まれな疾患であり、わが国では十数例程度報告されている。しかし、フランス系カナダ人には多い。ヒト-1α水酸化酵素遺伝子構造が明らかにされて、ビタミンD依存症1型の遺伝子診断が可能である3)。活性型ビタミンD合成の鍵酵素であるビタミンD-1α水酸化酵素は、その発現がきわめて低いため、酵素自身の単離精製が困難であった。しかし、1997年、分子生物学的手法を用いて複数のグループにより本酵素のcDNAがクローニングされた。1α水酸化酵素遺伝子(CYP27B1)の発現は、1α,25(OH)2Dおよび線維芽細胞増殖因子23(FGF23)により負の制御を、PTHにより正の制御を受けている。1α位の水酸化が行われる部位は近位尿細管であるが、ビタミンD結合タンパク質(DBP)と複合体を形成した25(OH)Dは、近位尿細管細胞の刷子縁に発現しているメガリンにより近位尿細管細胞内に取り込まれる。取り込まれた25(OH)Dは、ミトコンドリアで1α位あるいは24位が水酸化される。この結果、産生された1α,25(OH)2Dおよび24,25(OH)2は、血中に放出される。症状としては、O脚などの下肢変形のほか、筋力低下が著しく処女歩行が遅れ、身長、体重の増加不良がみられる。臨床検査では低カルシウム血症、低リン血症、高ALP(alkaline phosphatase)血症、血中PTH高値が認められる。血中25(OH)Dは通常では正常で、血中1α,25(OH)2D値は低値をとる。治療としては、病初期にはビタミンD欠乏症の治療に準ずるが、活性型ビタミンDの維持療法が必要である。たとえば、アルファカルシドール(商品名:アルファロール、ワンアルファほか)0.01~0.05μg/kg・分1とする。■ ビタミンD依存症1B型(vitamin D hydroxylation-deficient rickets type 1B, pseudovitamin D deficiency rickets due to 25-hydroxylase deficiency, OMIM600081)25水酸化酵素(CYP2R1)の異常により、ビタミンDに不応性を示す疾患で、現在までに10家系に満たない症例しか報告されていない、とてもまれな疾患である6)。非常に低い血清25(OH)D値を呈し、重症のビタミンD欠乏症との鑑別が困難である。なお、CYP27A1も25位の水酸化を行う酵素として報告されているが、疾患との関係は不明である。■ ビタミンD依存症2型(vitamin D-dependent rickets type 2, hereditary vitamin D-resistant rickets, OMIM277440)VDR遺伝子に異常があり、活性型ビタミンDの作用が発揮されない病気をビタミンD依存症2型と呼ぶ。ビタミンD受容体異常が本疾患の本態であるので、まずビタミンD受容体(VDR)に関して解説する。VDRはステロイドホルモン受容体スーパーファミリーに属する核タンパクの一種である。アミノ基末端側にDNA結合領域が、カルボキシル基末端側にホルモン結合領域が存在する。DNA結合領域は、8個のシステインが2個の亜鉛結合指(zinc finger)を形成し、標的遺伝子のプロモーター領域に存在するビタミンD応答配列(vitamin D response element:VDRE)に結合する。ホルモン結合領域は、疎水性の高い“ポケット”を形成し、リガンドである1α,25(OH)2Dと結合する。さらに、ホルモン結合ドメインは二量体形成にも関与している。活性型ビタミンDが結合したVDRは、retinoid X受容体(RXR)と異種二量体を形成し、標的遺伝子のプロモーター上にあるVDREを認識して直接結合する。VDREにリガンド結合型VDRが結合すると、種々のコアクチベーター複合体がリクルートされ、転写が活性化される。VDRに異常があるので、生理量の活性型ビタミンD治療に抵抗する、くる病あるいは骨軟化症がみられる(図2)。また、無治療の場合、低カルシウム血症が重度となり、テタニーや痙攣を呈することが多い。半数程度に禿頭を伴う。生化学的に、低カルシウム血症と二次性副甲状腺機能亢進症を認めるにもかかわらず、通常血中1α,25(OH)2D濃度は上昇しており、受容体異常によるホルモン抵抗症の像を呈する。ビタミンD欠乏性くる病でも血中1α,25(OH)2D濃度が上昇することがあり、また、症状の軽快に比較的大量の活性型ビタミンD投与が必要な場合があるので、鑑別診断は慎重に行う必要がある。画像を拡大するビタミンD依存症2型患者のVDRの分子学的異常は、1988年にHughesらにより初めて2家系が報告されて以来、現在のところ50種類程度が明らかにされている5)。DNA結合ドメインのpoint mutationが最も多い。VDRに異常がなく、同様な病態を示す場合をビタミンD依存症2Bとして区別する場合があるが、その本態は不明であり、本稿では割愛する。治療はビタミンDの大量療法が基本であるが、その量は症例によりさまざまである。持続する低カルシウム血症に対しては、経静脈的あるいは経口的にカルシウムを十分投与する。VDRの機能がまったく喪失していると考えられる場合には、カルシウムの十分な補充が基本となる7)。処方例としては、アルファカルシドール1~5μg/kg・分1~2、乳酸カルシウム3~6g・分3などが挙げられるが、検査データなどを指標に用量の調整が必要である。自然寛解する症例の報告もある。■ ビタミンD依存症3型2018年、薬剤代謝酵素CYP3A4の異常によるくる病が、ビタミンD依存症3型として報告された8)。本変異は、活性型変異と考えられ、本来の代謝酵素の24位水酸化酵素より強力に1α,25(OH)2Dを代謝するために、ビタミンDに不応を示す。新しい疾患単位であり、今後、臨床像がより明らかにされていくものと期待される。■ 鑑別診断ビタミンD欠乏性くる病、ビタミンD抵抗性低リン血症性くる病・骨軟化症、腎性骨異栄養症(CKD-MBD)などがある。3 主たる診療科小児科、産科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。4 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター ビタミンD依存性くる病・骨軟化症の診断指針(PDF)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ビタミンD依存性くる病/骨軟化症(医療者、一般利用者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター ビタミンD依存性くる病(医療者、一般利用者向けのまとまった情報)1)Glorieux FH, et al. Bonekey Rep. 2014;3:524.2)日本小児内分泌学会 編集. 小児内分泌学 改訂第2版.診断と治療社;2016.p.480-484.3)Michalus I, et al. Clin Genet.2018. [Epub ahead of print]4)Durmaz E, et al. Clin Endocrinol. 2012;77:363-369.5)Malloy PJ, et al. Mol Genet Metab. 2014;111:33-40.6)Molin A, et al. J Bone Miner Res. 2017;32:1893-1899.7)Tamura M, et al. PLoS One. 2015;10:e0131157.8)Roizen JD, et al. J Clin Invest. 2018.[Epub ahead of print]公開履歴初回2018年05月22日

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抗血小板薬2剤併用、CABG後グラフト開存率を改善/JAMA

 チカグレロル+アスピリンによる抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は、アスピリン単剤に比べ、冠動脈バイパス術(CABG)後1年時の伏在静脈グラフトの開存率を改善することが、中国・上海交通大学医学院附属瑞金医院のQiang Zhao氏らが行った多施設共同試験(DACAB試験)で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年4月24日号に掲載された。CABG後の伏在静脈グラフトの開存に及ぼす、アスピリン+P2Y12受容体拮抗薬によるDAPTの効果については、いくつかの小規模な短期的臨床試験で相反する結果が報告されているという。1年後のグラフト開存率を3群で比較 研究グループは、CABG後の伏在静脈グラフトの開存におけるチカグレロル+アスピリンおよびチカグレロル単剤の効果を、アスピリン単剤と比較する非盲検無作為化試験を実施した(AstraZeneca社の助成による)。 対象は、年齢18~80歳の待機的CABGの適応例であった。緊急血行再建術、他の心臓手術の併用、CABG後にDAPTまたはビタミンK拮抗薬を要する患者や、重篤な出血のリスクを有する患者は除外された。 被験者は、CABG後24時間以内にチカグレロル(90mg×2回/日)+アスピリン(100mg/日)、チカグレロル単剤(90mg×2回/日)、アスピリン単剤(100mg/日)を投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、1年間の治療が行われた。 主要アウトカムは、1年後の伏在静脈グラフトの開存(FitzGibbon分類:GradeA[狭窄<50%])とし、割り付け情報を知らされていない審査委員会が独立に判定を行った。探索的な事後解析として、グラフト非閉塞(GradeA+B[狭窄≧50%])の評価も行った。開存の評価には、マルチスライスCT血管造影法または冠動脈血管造影法を用いた。 2014年7月~2015年11月の期間に、中国の6つの3次病院に500例が登録された。2剤併用群に168例、チカグレロル単剤群に166例、アスピリン単剤群には166例が割り付けられた。1年グラフト開存率:88.7%、82.8%、76.5% ベースラインの全体の平均年齢は63.6歳で、91例(18.2%)が女性であった。461例(92.2%)が試験を完遂した。 1年時のグラフト開存率は、併用群が88.7%(432/487グラフト)、チカグレロル単剤群が82.8%(404/488グラフト)、アスピリン単剤群は76.5%(371/485グラフト)であった。併用群とアスピリン単剤群の差は12.2%(95%信頼区間[CI]:5.2~19.2)であり、有意な差が認められた(p<0.001)のに対し、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群の差は6.3%(-1.1~13.7)と、有意差は認められなかった(p=0.10)。 7日時のグラフト開存率には、併用群とアスピリン単剤群(94.9 vs.91.1%、p=0.11)、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(94.3 vs.91.1%、p=0.17)のいずれの比較においても、有意な差はみられなかった。 事後解析では、1年時のグラフト非閉塞率は、併用群がアスピリン単剤群に比べ高かった(89.9 vs.80.6%、p=0.006)が、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(86.1 vs.80.6%、p=0.17)には差がなかった。また、7日時の非閉塞率は、併用群とアスピリン単剤群(95.3 vs.92.8%、p=0.26)、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(95.7 vs.92.8%、p=0.16)のいずれの比較においても、有意な差はなかった。 主要有害心血管イベント(MACE:心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中)は、併用群が3例(1.8%)、チカグレロル単剤群が4例(2.4%)、アスピリン単剤群は9例(5.4%)で発現し、大出血は併用群が3例(1.8%)、チカグレロル単剤群は2例(1.2%)に認められた。 著者は、「相対的な出血リスクの評価には、患者数を増やしたさらなる検討を要する」としている。

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第1回 外食で陥りがちな“1人前”の落とし穴【実践型!食事指導スライド】

第1回 外食で陥りがちな“1人前”の落とし穴医療者向けワンポイント解説その1杯、本当に「1人前」ですか?普段の食生活で、問題となってくるのが主食です。主食量を意識することで、カロリーや糖質量などに大きく違いが出てくるため、栄養指導などでも、主食量についての分量をお話しする機会も多くあります。1回量を考えて食べている糖尿病患者さんも多くいますが、そんな患者さんたちでも気付かない落とし穴、「自分の1人前と外食での一人前の違い」があります。一般的に、自宅などで食べる1人前に比べ、外食で提供される「1人前」は圧倒的に量が多くなっています。とくに主食(米飯、麺類、パン類)は顕著です。患者さんの多くは、その落とし穴に気付かず、当たり前のように1人前として食べてしまい、知らないうちにバランスを崩している場合があります。また、外食での量の誘惑に負けてしまい、「ちょっと多いかな…」と思いつつ、食べる量が増えてしまうこともあります。今回は、外食の中でも丼物、うどん、そばといった単品で急いで食べるメニューに特化し、外食の主食量を調べました。牛丼並は、店によって320g、230gと設定が異なりますが、いずれにしても確実に家で食べる1膳(約150g、3単位)よりも多くなります。うどんやそばの場合も同様です。こうした丼物、麺類は「急いで食べる」シチュエーションで選ぶことが多いため、普段よりも多くの量を食べても満足感が低いことが多く、さらに「大盛り」を求める場合もあります。これを防ぐ最大の方法は、「ゆっくり食べること」なのですが、それを伝えても実行できない患者さんのほうが多いのが実情です。ここで食行動変化を起こさせるポイントは、「トッピングをすること」です。トッピングとしては、低カロリーでビタミンやミネラル食物繊維を含むネギやほうれん草、わかめ類、タンパク質が豊富な卵などがお薦めです。ご飯や麺の量を増やすのではなく、トッピングをすることで栄養バランスが整うほか、噛みごたえや食感の変化が生まれ、満足度を高めることができます。外食が多い患者さんには、「外食での主食は多く摂取しがちであること」「せめて主食量だけは、家で食べている量を思い出して調整すること」「丼や麺類は、トッピングをすること」をポイントに指導されると、食行動が変わりやすくなります。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第44回

第44回:CKD(慢性腎臓病)の評価方法監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 2002 年に米国で提唱されたChronic Kidney Disease(慢性腎臓病:CKD)の概念は、現在、世界中に普及し、日常の外来でも多く遭遇します。厚生労働省「平成26年患者調査の概況」によると、国内のCKD総患者数は29万6,000人(男性18万5,000人、女性11万人)とされています。 今回は、CKDの検出や初期評価に関してまとめましたので、参考にしてみて下さい。なお、国内では「CKD診療ガイド」1)や「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」2)が上梓されています。この機会にぜひ併せてご覧ください。 以下、American family physician 2017年12月15日号3)より【CKD定義・重症度分類】本邦指針では、下記の定義が定められている1)。(1)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。とくに、0.15 g/gCr 以上の蛋白尿(30 mg/gCr 以上のAlb尿)の存在が重要(2)GFR<60 mL/分/1.73 m2(1)、(2)のいずれか、または両方が3 ヵ月以上持続する。CKDの重症度分類に関しては、2012年KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)において、従来の糸球体濾過量(GFR)のみによる病期分類がGFR と尿蛋白Alb尿を組合せた形式となり、著聞されている通りです。【CKD評価時のClinical recommendation】CKD評価時のClinical recommendationとしては、下記の項目が挙げられている。なお、Evidence RatingはいずれもC(=consensus, disease oriented evidence, usual practice, expert opinion, or case series)である。GFRの初期評価には、血清Cre値と血清Cre値を用いたeGFRを用いるべきである。CKD患者の初期評価における早朝スポット尿のAlb/Cre比は、タンパク尿評価よりも好ましい。血中シスタチンCは、血清Cre値が上昇しているが、既知のCKD、危険因子、Alb尿症も有しない患者において、GFRの減少が偽陽性かどうかを決めるときに測定すべきである。CKDは、eGFRおよびAlb尿症の程度を用いて分類されるべきである。CKDを有する患者は、少なくとも年一回、血清Hb値を測定すべきであり、CKDの重症度でその頻度を増す。骨密度のルーチン評価は、結果が不正確である可能性があるため、eGFR<45mL /分/1.73m2の患者では行わない。ステージ3a~5の CKD(eGFR<45mL /分/1.73m2)の患者評価には、血清Ca、P、副甲状腺ホルモン、ALPおよび25‐ヒドロキシビタミンD値の測定が含まれるべきである。【CKDを疑う際の初期診断アプローチ】下記の表を参考に、CKDのリスクや病因を評価する。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 社団法人 日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」 2) 社団法人 日本腎臓学会編「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」 3) Gaitonde DY, et al. Am Fam Physician. 2017 Dec 15.

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ビタミンDのがん予防効果、日本人で確認/BMJ

 血中ビタミンD濃度が高い集団は男女とも、がん全体の罹患リスクが低いことが、日本人を対象に国立がん研究センターのSanjeev Budhathoki氏らが実施したJapan Public Health Center-based Prospective(JPHC)研究で示された。研究の成果は、BMJ誌2018年3月7日号に掲載された。ビタミンDは、さまざまな抗腫瘍性の特性を持つ強力な生物活性化合物の前駆物質として、がんの予防効果をもたらすとの説がある。血中ビタミンD濃度が上昇すると、大腸がんや肺がんの罹患リスクが低下する傾向がみられることが報告されているが、他の部位のがんやがん全体のエビデンスには一貫性がなく、アジア人のデータは十分でないという。血中濃度別の罹患リスクを評価するネステッドケースコホート研究 研究グループは、JPHC研究のデータを用いて、診断前の血中ビタミンD濃度と、がん全体および部位別のがん罹患リスクの関連を評価するネステッドケースコホート研究を行った(国立がん研究センターなどの助成による)。 JPHC研究の参加者(40~69歳)のうち、ベースラインの質問票に回答し、血液サンプルが得られた3万3,736人をベースコホートとした。このうち、3,301人が2009年12月31日までにがんに罹患した。また、ベースコホートからランダムに選択した4,044人をサブコホートとした。サブコホートには、がん患者が450人含まれた。 血漿25-ヒドロキシビタミンD(25-OHビタミンD)濃度の季節による変動を考慮して、サブコホートを男女別に4分位に分けた(罹患数が130未満のがんは3分位)。重み付きCox比例ハザードモデルを用い、血漿25-OHビタミンD濃度が最も低い集団を基準として、血漿濃度別のがん全体および部位別のがんに関して、多変量で補正したハザード比(HR)を算出した。ほぼすべての部位の罹患リスクが低下傾向 がん患者はサブコホートに比べ、平均年齢が高く(56.2[SD 7.5] vs.53.7[7.9]歳)、男性が多く(52.4 vs.34.2%)、重度喫煙者や重度飲酒者が多く、糖尿病既往歴やがん家族歴の頻度が高かった。また、サブコホートでは、血漿サンプルの採取時期が夏/秋の集団のほうが冬/春に比べ、25-OHビタミンD濃度中央値が高く、濃度が高い集団のほうが低い集団に比べ高齢で、余暇身体活動量が多く、がん家族歴の頻度が低いなどの傾向がみられた。 血漿25-OHビタミンD濃度とがん全体の罹患リスクには逆相関の関係が認められ、血漿濃度が最も低い集団と比較した2番目に低い集団、3番目に低い集団、最も高い集団の多変量補正HRは、それぞれ0.81(95%信頼区間[CI]:0.70~0.94)、0.75(0.65~0.87)、0.78(0.67~0.91)であった(傾向検定:p=0.001)。 部位別のがんのうち、肝がんで血漿濃度と罹患リスクに逆相関の関係がみられ、血漿濃度が最も低い集団と比較した多変量補正HRは0.70(95%CI:0.44~1.13)、0.65(0.40~1.06)、0.45(0.26~0.79)と、濃度が高くなるほど低下した(傾向検定:p=0.006)。ほぼすべての部位のがんで、罹患リスクが低下する傾向がみられた。 サブグループ解析では、男女の間に、25-OHビタミンDの効果の差はなかった。また、感度分析では、がん患者全体から部位別のがん患者を1部位ずつ交互に除外して再解析を行ったところ、いずれの解析でも、HRはがん全体と比較してほとんど変化せず、25-OHビタミンDによるがん全体の罹患リスク低減効果は、個々の部位のがんに対する小さな効果の積み重ねの結果である可能性が示唆された。 著者は、「これらの知見は、ビタミンDがさまざまな部位のがんの予防効果を有するとの仮説を支持するものである」としている。

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リファキシミンの腸内細菌叢への調整作用で肝性脳症を抑える

 2018年1月31日、あすか製薬株式会社は、同社が販売する経口難吸収性抗菌薬リファキシミン(商品名:リフキシマ)の処方制限が昨年12月に解除され、長期投与が可能となったことを機に、都内において肝性脳症に関するプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、「『肝性脳症』診断・治療の最新動向 腸内細菌への働きかけによる生存率向上への兆し」をテーマに、吉治 仁志氏(奈良県立医科大学 内科学第三講座 教授)を講師に迎え、レクチャーが行われた。原因不明の認知症10%に潜む肝性脳症 はじめに、認知症の概要が語られた。2025年には、認知症患者が推定730万人になると予想される。そして、認知症の原因ではアルツハイマー型が一番多く、次いで脳血管性型、レビー小体型と続き、そのほか原因不明も全体の1割(70万人以上)を占めるという。現在の『認知症疾患診療ガイドライン』では、認知症と鑑別が必要な疾患として、「ビタミン欠乏症」「甲状腺機能低下症」「神経梅毒」「肝性脳症」「特発性正常圧水頭症」の5つが規定されている。なかでも「肝性脳症」では、認知症やうつ病と同じように睡眠異常、指南力低下、異常行動、物忘れなど共通する症状がみられ、正確に診断されていない例もあると指摘した。 肝性脳症は、肝臓の線維化によりアンモニアの分解能が落ちることで、アンモニアが体内に蓄積され、さまざまな認知機能を障害する。その原因となる肝細胞障害、とくに肝硬変はC型肝炎ウイルスによるものが多く、そのウイルス保菌者数は年齢に比例して増加することから、肝性脳症が発症した場合、認知症と診断されている例もあると示唆した。服薬アドヒアランスを上げるリファキシミン 肝性脳症の症状は、人格・行動の微妙な変化から始まり、判断力の低下、睡眠の不規則、見当識障害、興奮・せん妄、昏睡状態へと進展する。典型的な患者の訴えでは、「頭がボーッとする」「足がつまずく」「手が震える」などが聞かれ、家族の訴えでは「目つきがおかしい」「おかしなことを言う」「食事を摂らない」などがある。 本症の診断では、身体所見など一般的な診断のほかに、認知症との鑑別のためナンバーコネクション、ブロックデザインテストなども行われ、「本症を疑った場合、アンモニア値の検査も重要」と吉治氏は述べる。 本症の治療では、これまで合成二糖類、カルニチン・亜鉛、BCAA製剤などの治療薬が使われてきたが、服用のしにくさや副作用などでアドヒアランスは決して良好とはいえなかった。 そこで、今回長期投与が可能になったリファキシミンは、こうした問題に対応し、他の治療薬の減量・削減の可能性、全身症状の改善、医療コストの削減などで期待されている。リファキシミンの作用機序は腸管内でのアンモニアの産生を防ぐことで、血中濃度が低下し、脳へのアンモニア移行を減少、肝性脳症を改善し、便と共に排泄される作用を持つ。リファキシミンは欧米では30年以上前より使用されてきたが、わが国では2016年に保険適用となった。 エビデンスでは、リファキシミンは使用群とプラセボ群との比較で、本症の再発を0.42ポイント有意に軽減したほか1)、5年間の長期投与でも肝硬変患者の生存率を改善したことが報告されている2)。リファキシミンの腸内細菌叢の調整機能 次に、わが国で増えている肥満型の肝硬変患者に触れ、現在1,000万人と推定される非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の患者のうち、約200万人が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に移行すると考えられ、今後の肝硬変の患者数増加に警鐘を鳴らした。 さらに最近の話題として、腸内細菌叢について語った。この細菌叢のバランスの崩れから起こる疾患として、NAFLD、NASH、肝硬変、炎症性腸疾患などを挙げ、近年この腸内細菌叢の構成に注目が集まっているという。 肝硬変患者に、実際にリファキシミンを投与した前後で腸内細菌叢を調べた結果、細菌叢の多様性に変化はなかったものの、属レベルでは、肝硬変患者で増加するとされていた細菌が減少したと自験例を報告した3)。また、リファキシミンは、腸内細菌モジュレーターとして、肝硬変患者の予後を改善することが示唆されると期待を寄せた。 最後に吉治氏は、「今後、リファキシミンの腸内細菌叢の調整機能も踏まえ、日本人の長期投与効果の研究を行い、日本発のエビデンスを出していきたい」と今後の展望を語り、セミナーを終了した。

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境界性パーソナリティ障害治療におけるω3脂肪酸とバルプロ酸併用

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者に対するオメガ3(ω3)脂肪酸の有効性について、いくつかのエビデンスが報告されている。以前行われたBPD患者43例を対象とした12週間のランダム化比較試験において、バルプロ酸単独療法と比較し、イコサペント酸エチル(EPA)およびドコサヘキサエン酸エチル(DHA)とバルプロ酸の併用療法の有効性が評価されている。併用療法は、バルプロ酸単独療法(対照群)との比較で、衝動性行動制御、怒りの噴出、自傷行為など、いくつかのBPD症状に対し、より有効であった。イタリア・トリノ大学のPaola Bozzatello氏らは、ω3脂肪酸の投与中止後、両群間の有効性の差が維持されているかを評価するため、24週間のフォローアップ試験を行った。Clinical drug investigation誌オンライン版2018年1月5日号の報告。 12週間のランダム化比較試験を完了した34例に対し、フォローアップを行った。12週間の試験後に両群間で有意な差を認めた評価尺度を用い、フォローアップ期間の開始時および終了時に評価を行った。評価尺度には、境界性パーソナリティ障害重症度指数(Borderline Personality Disorder Severity Index:BPDSI)の「衝動性(impulsivity)」および「怒りの噴出(outbursts of anger)」の項目、バラット衝動性尺度(Barratt Impulsiveness Scale-Version 11:BIS-11)、自傷行為インベントリ(Self Harm Inventory:SHI)が含まれた。統計分析には、反復測定による分散分析(ANOVA)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間終了時、併用療法群内では、評価を行った4つの尺度すべてにおいて有意な差が維持されていたが、群間比較では、怒りの噴出のみで有意な差が維持されていた。・フォローアップ期間中の忍容性に関しては、臨床的に有意な副作用は認められなかった。 著者らは「BPD患者に対するバルプロ酸とω3脂肪酸の併用療法は、怒りのコントロールに関して、併用中止後も継続的な効果を示した」としている。■「DHA効果と脳」関連記事EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

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脳内出血後の院内死亡、ワルファリンvs. NOAC/JAMA

 脳内出血(ICH)患者の院内死亡リスクを、発症前の経口抗凝固薬(OAC)で比較したところ、OAC未使用群に比べ非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)あるいはワルファリンの使用群で高く、また、NOAC使用群はワルファリン使用群に比べ低いことが示された。米国・デューク大学メディカルセンターの猪原拓氏らが、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)による登録研究Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke)のデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、明らかにした。NOACは血栓塞栓症予防としての使用が増加しているが、NOAC関連のICHに関するデータは限られていた。JAMA誌オンライン版2018年1月25日号掲載の報告。脳内出血患者約14万1,000例で、抗凝固療法と院内死亡率との関連を解析 研究グループはGWTG-Strokeに参加している1,662施設において、2013年10月~2016年12月にICHで入院した患者を対象に、ICH発症前(病院到着前7日以内)の抗凝固療法による院内死亡率について解析した。 抗凝固療法は、ワルファリン群・NOAC群・OAC未使用群に分類し、2種類の抗凝固薬(ワルファリンとNOACなど)を用いていた患者は解析から除外した。また、抗血小板療法については、抗血小板薬未使用・単剤群・2剤併用(DAPT)群に分類し、3群のいずれにも該当しない患者は解析から除外した。 解析対象は14万1,311例(平均[±SD]68.3±15.3歳、女性48.1%)で、ワルファリン群1万5,036例(10.6%)、NOAC群4,918例(3.5%)。抗血小板薬(単剤またはDAPT)を併用していた患者は、それぞれ3万9,585例(28.0%)および5,783例(4.1%)であった。ワルファリン群とNOAC群は、OAC未使用群より高齢で、心房細動や脳梗塞の既往歴を有する患者の割合が高かった。NOAC群は、未使用群よりは高いがワルファリン群よりも低い 急性ICHの重症度(NIHSSスコア)は、3群間で有意差は確認されなかった(中央値[四分位範囲]:ワルファリン群9[2~21]、NOAC群8[2~20]、OAC未使用群8[2~19])。 補正前院内死亡率は、ワルファリン群32.6%、NOAC群26.5%、OAC未使用群22.5%であった。OAC未使用群と比較した院内死亡リスクは、ワルファリン群で補正後リスク差(ARD)9.0%(97.5%信頼区間[CI]:7.9~10.1)、補正後オッズ比(AOR)1.62(97.5%CI:1.53~1.71)、NOAC群でARDは3.3%(97.5%CI:1.7~4.8)、AORは1.21(97.5%CI:1.11~1.32)であった。 ワルファリン群と比較して、NOAC群の院内死亡リスクは低かった(ARD:-5.7%[97.5%CI:-7.3~-4.2]、AOR:0.75[97.5%CI:0.69~0.81])。 NOAC群とワルファリン群の死亡率の差は、DAPT群(NOAC併用群32.7% vs.ワルファリン併用群47.1%、ARD:-15.0%[95.5%CI:-26.3~-3.8]、AOR:0.50[97.5%CI:0.29~0.86])において、抗血小板薬未使用群(NOAC併用群26.4% vs.ワルファリン併用群31.7%、ARD:-5.0%[97.5%CI:-6.8%~-3.2%]、AOR:0.77[97.5%CI:0.70~0.85])より数値上では大きかったが、交互作用p値は0.07で統計的有意差は認められなかった。 なお、著者は、GWTG-Strokeの登録データに限定していることや、NOAC群の症例が少なく検出力不足の可能性があることなどを、研究の限界として挙げている。

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肥満DM患者に胃バイパス手術を加える必要性は?/JAMA

 肥満を伴う2型糖尿病患者に対して、生活習慣介入に力点を置いた医学的管理のみを行った場合と比べて、ルーワイ胃バイパス術を併用したほうが、5年追跡時点の糖尿病の3つの評価項目(HbA1c、脂質、収縮期血圧)は、有意に良好さを維持していたことが示された。米国・ミネソタ大学のSayeed Ikramuddin氏らが、2つの無作為化試験「Diabetes Prevention Program」と「LookAHEAD試験」(それぞれ介入期間は2年)の被験者の観察フォローアップの延長試験の結果、報告した。ルーワイ胃バイパス術は、糖尿病をターゲットとした治療として有効性が確立しているが、効果の持続性については明らかになっていなかった。JAMA誌2018年1月16日号掲載の報告。複合エンドポイント(HbA1c、脂質、収縮期血圧)の達成割合を比較 研究グループは、米国と台湾の4地点(ミネソタ大学、コロンビア大学医療センター、メイヨークリニック、台湾国立大学病院/ Min Sheng General Hospital)で行われた無作為化試験の被験者のうち、適格要件(HbA1c値8.0%以上、BMI値30.0~39.9)を満たした120例(2008年4月~2011年12月に登録)について、5年間の観察フォローアップを行った(最終評価は2016年11月)。 被験者には、2年間にわたる「Diabetes Prevention Program」と「LookAHEAD試験」をベースとした、生活習慣介入に力点を置いた医学的管理(体重記録管理、食事療法、運動療法)と、ルーワイ胃バイパス術の併用(60例)または非併用(60例)が行われた。 主要評価項目は、5年時点の米国糖尿病協会規定の3つの複合エンドポイント(HbA1c値7.0%未満、LDLコレステロール値100mg/dL未満、収縮期血圧130mmHg未満)の達成割合であった。5年時点で達成割合は、併用群23%、非併用群は4% 無作為化試験の被験者(120例)の当初の特性は、平均年齢49歳(SD 8)、女性が60%であった。5年間のフォローアップを完了したのは98例(82%)であった。 生活習慣修正のみ介入(非併用)群と胃バイパス術併用群の、ベースライン特性は類似していた。平均BMI値はそれぞれ34.4(SD 3.2)、34.9(3.0)、HbA1c値は9.6%(1.2)、9.6%(1.0)であった。 5年時点で、3つの複合エンドポイントを達成していたのは、胃バイパス術併用群13例(23%)に対し非併用群は2例(4%)であった(差:19%、95%信頼区間[CI]:4~34、p=0.01)。 5年目に、HbA1c値7.0%未満を達成していたのは、胃バイパス術併用群31例(55%)に対し非併用群は8例(14%)であった(差:41%、95%信頼区間[CI]:19~63、p=0.002)。 一方で、胃バイパス術併用群のほうが、重篤な有害事象の発生が多かった(66例 vs.38例)。頻度が高かったのは消化管イベント、手術関連の合併症(狭窄、小腸閉塞、リークなど)であった。胃バイパス術併用群で甲状腺ホルモンの上昇が大きかったが、ビタミンB12欠乏について差はみられなかった。 なお結果について著者は、「いずれにせよエフェクトサイズは5年間で減少しているので、さらなるフォローアップを行い、改善の持続性を確認する必要がある」とまとめている。

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日本人のビタミンD摂取量と脳卒中死亡が逆相関

 ビタミンDの心血管の健康に及ぼす重要性に関する報告が増えている。今回、JACC研究(The Japan Collaborative Cohort Study)で日本人集団における食事でのビタミンD摂取量と脳卒中・冠動脈疾患死亡リスクの関連を調べたところ、ビタミンD摂取量が脳卒中死亡と逆相関することが示唆された。Stroke誌オンライン版2018年1月8日号に掲載。 本研究は、40~79歳の健康成人5万8,646人(男性2万3,099人、女性3万5,547人)を対象とした前向き研究で、追跡期間中央値は19.3年(1989~2009年)。食事によるビタミンD摂取量を自記式食物摂取頻度調査で評価した。ビタミンD摂取量で分類し、死亡のハザード比および95%信頼区間を計算した。 主な結果は以下のとおり。・96万5,970人年の追跡期間中、脳卒中による死亡は1,514例、冠動脈疾患による死亡は702例報告された。・ビタミンD摂取量は、脳卒中全体、とくに脳実質内出血による死亡リスクとの間に逆相関が示されたが、冠動脈疾患による死亡リスクとは示されなかった。・ビタミンD摂取量が最低のカテゴリー(110IU/日未満)に対する、最高のカテゴリー(440IU/日以上)の多変量ハザード比(95%信頼区間)は、脳卒中全体で0.70(0.54~0.91、傾向のp=0.04)、脳実質内出血では0.66(0.46~0.96、傾向のp=0.04)であった。

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高齢者のCaやビタミンD補給、骨折を予防せず/JAMA

 自宅で生活する高齢者について、カルシウム、ビタミンD、またはその両方を含むサプリメントの使用は、プラセボや無治療と比較して骨折リスクの低下と関連しないことが、中国・天津病院のJia-Guo Zhao氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果で明らかにされた。骨粗鬆症関連の骨折による社会的および経済的負荷が世界的に増加しており、骨折を予防することは公衆衛生上の大きな目標であるが、カルシウム、ビタミンDまたはそれらの併用と、高齢者における骨折の発生との関連性については、これまで一貫した結果が得られていなかった。著者は、「施設外で暮らす一般地域住民である高齢者に対し、こうしたサプリメントの定期的な使用は支持されない」と結論付けている。JAMA誌2017年12月26日号掲載の報告。カルシウム/ビタミンDとプラセボ/無治療を比較した無作為化試験についてメタ解析 研究グループは、PubMed、Cochrane Library、Embaseを用い、「カルシウム」「ビタミンD」「骨折」のキーワードで2016年12月24日までに発表された論文を系統的に検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。 組み込まれた研究は、50歳以上の地域在住高齢者を対象とした、カルシウム・ビタミンD・カルシウム+ビタミンD併用サプリメントとプラセボまたは無治療とで骨折の発生を比較した無作為化臨床試験。なお、新たに公表された無作為化試験の追加検索を、2012年7月16日~2017年7月16日の期間で実施した。 2人の独立した研究者がデータを抽出し、研究の質を評価した。メタ解析では、ランダム効果モデルを用いてリスク比(RR)、絶対リスク差(ARD)、95%信頼区間(CI)を算出した。 主要評価項目は股関節骨折で、副次評価項目は非脊椎骨折、脊椎骨折および全骨折であった。カルシウム、ビタミンD、またはその併用は、骨折リスクと関連なし 33件の無作為化試験(計5万1,145例)が、基準を満たし組み入れられた。プラセボ/無治療と比較し、カルシウム/ビタミンD使用と股関節骨折リスクとの有意な関連は認められなかった。カルシウム使用群のRR:1.53(95%CI:0.97~2.42)、ARD:0.01(95%CI:0.00~0.01)、ビタミンD使用群のRR:1.21(95%CI:0.99~1.47)、ARD:0.00(95%CI:-0.00~0.01)。 同様に、カルシウム+ビタミンD併用群も股関節骨折リスクと関連していなかった(RR:1.09[95%CI:0.85~1.39]、ARD:0.00[95%CI:-0.00~0.00])。また、カルシウム、ビタミンD、またはカルシウム+ビタミンD併用は、非脊椎骨折、脊椎骨折または全骨折の発生とも有意な関連は確認されなかった。 サブグループ解析の結果、これらの結果は、カルシウム/ビタミンDの用量、性別、骨折歴、食事からのカルシウム摂取量、ベースライン時の血清25-ヒドロキシビタミンD濃度にかかわらず一貫していることが示された。

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スクリーニング実施で高齢女性の骨折リスクが低減/Lancet

 高齢女性の骨折リスクを評価する地域ベースのスクリーニングプログラムは、骨折全般の発症は抑制しないものの、大腿骨近位部骨折のリスク低減には有効であることが、英国・イースト・アングリア大学のLee Shepstone氏らが実施したSCOOP試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年12月15日号に掲載された。骨粗鬆症およびその関連骨折については、有効な評価法や薬物療法があるが、英国では現在、骨折リスクのスクリーニングは提唱されていない。FRAXによるスクリーニングと通常管理を比較 SCOOP試験は、高齢女性の骨折予防スクリーニングプログラムの有用性を評価するプラグマティックな非盲検無作為化対照比較試験(Arthritis Research UKと英国医学研究協議会[MRC]の助成による)。 対象は、70~85歳の女性で、骨粗鬆症治療薬(ビタミンDとカルシウムは除く)を処方中の女性は除外したが、過去にこれら薬剤の投与歴のある女性は可とした。また、試験への参加が不適当と判断された場合(認知症、終末期の状態、近親者を亡くしたばかりなど)も除外することとした。 被験者は、骨折リスク評価ツール(Fracture Risk Assessment Tool:FRAX)を用いたスクリーニングプログラムを受ける群(スクリーニング群)、または通常管理を受ける群(対照群)に無作為に割り付けられた。スクリーニング群のうち、FRAXで10年の大腿骨近位部骨折リスクが高いと判定された女性には、高リスク例として治療が推奨された。 主要アウトカムは、5年時の骨粗鬆症関連骨折を1つ以上発症した女性の割合とした。事前に規定された副次アウトカムは、1つ以上の大腿骨近位部骨折、すべての臨床的骨折、死亡のほか、不安や健康関連QOLに及ぼすスクリーニングの効果が含まれた。骨粗鬆症関連骨折、臨床的骨折、不安、QOLには差がない 2008年4月15日~2009年7月2日に、英国の7地域(バーミンガム、ブリストル、マンチェスター、ノリッチ、シェフィールド、サウサンプトン、ヨーク)の100のGP(general practitioner)施設から1万2,483例が登録され、スクリーニング群に6,233例、対照群には6,250例が割り付けられた。スクリーニング群のうち898例(14%)が、高リスク例として治療が推奨された。1年時の骨粗鬆症治療薬の使用率は、スクリーニング群が15%と、対照群の4%に比べて高く、とくに高リスク例での使用率は6ヵ月の時点で78%に達していた。 スクリーニング群は対照群と比較して、5年時の骨粗鬆症関連骨折率(12.9% vs. 13.6%、ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.85~1.03、p=0.178)および臨床的骨折率(15.3% vs.16.0%、HR:0.94、95%CI:0.86~1.03、p=0.183)に有意な差は認められなかったが、大腿骨近位部骨折率(2.6% vs.3.5%、HR:0.72、95%CI:0.59~0.89、p=0.002)は有意に低かった。 5年時の死亡率(8.8% vs.8.4%、HR:1.05、95%CI:0.93~1.19、p=0.436)は両群間に差はなく、不安の発症率(p=0.515)にも差はみられなかった。また、EQ-5DおよびSF-12で評価したQOLも両群で同等であった。 著者は、「FRAXを用いた地域ベースのスクリーニングは実行可能であり、大腿骨近位部骨折の発症率を低減する可能性があるが、この知見の解釈には注意を要する」とまとめ、「現在、費用対効果の解析が進行中だが、本試験は、英国や他の地域で大腿骨近位部骨折の発症を低減する可能性を有する有望な骨折管理戦略をもたらすものである」としている。

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心房細動患者の脳卒中予防に対するDOACのメタ解析/BMJ

 心房細動(AF)患者に対する直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の脳卒中予防効果について、英国・ブリストル大学のJose A. Lopez-Lopez氏らがネットワークメタ解析による有効性、安全性および費用対効果の解析を行い、BMJ誌2017年11月28日号で発表した。解析の結果、DOACはクラスとしてワルファリンよりも、AF患者の脳卒中および死亡リスクを抑制し、国際標準比(INR)2.0~3.0維持用量での大出血および頭蓋内出血に関してより安全であり、数種のDOACはコスト高にもかかわらずネットベネフィットが認められることが示された。予想される増分純便益(incremental net benefit:INB)は、アピキサバン5mgを1日2回投与が最も高く、次いでリバーロキサバン20mgを1日1回、エドキサバン60mgを1日1回、ダビガトラン150mgを1日2回であったという。ネットワークメタ解析で23試験を包含し有効性、安全性、費用対効果を解析 検討は、Medline、PreMedline、Embase、The Cochrane Libraryをデータソースとし、AF患者の脳卒中予防効果に対するDOAC、ビタミンK拮抗薬または抗血小板薬の使用を評価した、公表されている無作為化試験をシステマティックレビュー検索して行われた。 検索により、患者9万4,656例が関与した23試験が適格基準を満たし、解析に組み込まれた。このうち、INR 2.0~3.0目標達成用量についてDOACとワルファリンを比較検討していたのは13試験であった。また、解析に包含された介入法は27種あった。 被験者は、平均年齢70.0歳、男性63.3%、BMI値28.0、脳卒中既往20.2%(いずれも中央値)などであった。また、ワルファリン群の治療期間中に占めたTTR(time in therapeutic range)の割合は、中央値63.8%(範囲:45.1~83.0)であった。大半のアウトカムでアピキサバン5mgの1日2回投与が最高位にランク 有効性と安全性に関する解析の結果、ワルファリンと比較して脳卒中または全身性塞栓症リスクを抑制したのは、アピキサバン5mgを1日2回(オッズ比[OR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.66~0.94)、ダビガトラン150mgを1日2回(0.65、0.52~0.81)、エドキサバン60mgを1日1回(0.86、0.74~1.01)、リバーロキサバン20mgを1日1回(0.88、0.74~1.03)であった。DOAC間における比較では、ダビガトラン150mgを1日2回よりも、エドキサバン60mgを1日1回(1.33、1.02~1.75)、リバーロキサバン20mgを1日1回(1.35、1.03~1.78)が、脳卒中または全身性塞栓症リスクが高いとのエビデンスが認められた。 全死因死亡リスクは、ワルファリンと比較して、すべてのDOACで抑制効果が認められた。 大出血リスクは、ワルファリンと比較して、アピキサバン5mgを1日2回(0.71、0.61~0.81)、ダビガトラン110mgを1日2回(0.80、0.69~0.93)、エドキサバン30mgを1日1回(0.46、0.40~0.54)、エドキサバン60mgを1日1回(0.78、0.69~0.90)で低かった。頭蓋内出血リスクは、ほとんどのDOACでワルファリンよりも大幅に低かった(ORの範囲:0.31~0.65)。一方で消化管出血リスクがワルファリンよりも高いDOACが一部で認められた(ダビガトラン150mgを1日2回のOR:1.52[95%CI:1.20~1.91]、エドキサバン60mgを1日1回のOR:1.22[1.01~1.49]など)。 アピキサバン5mgを1日2回は、大半のアウトカムについて最高位にランクしており、ワルファリンとの比較によるINBは7,533ポンドで、費用対効果も最も認められた(その他投与群のINBは、ダビガトラン150mgを1日2回が6,365ポンド、リバーロキサバン20mgを1日1回が5,279ポンド、エドキサバン60mgを1日1回が5,212ポンド)。 著者は、「ネットワークメタ解析はDOACの直接比較の試験を不要なものとし、AF患者における脳卒中予防に関する選択肢を知らしめてくれるものである」と述べ、「作用機序が類似するDOACの中で、アピキサバンの常用量が最も有効かつ安全であり、費用対効果があると思われた」とまとめるとともに、「さらなる長期データで安全性に関する洞察を深め、DOACからベネフィットを得られない患者を特定し、各DOACの中和薬を開発することが重要である」と指摘している。

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学歴はアルツハイマー病リスクと関連/BMJ

 従来の観察研究では、教育歴はアルツハイマー病のリスクと関連することが示されている。スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna C Larsson氏らは、今回、修正可能なリスク因子の代替指標として遺伝学的変量を用いたメンデル無作為化試験を行い、学歴が高いとアルツハイマー病のリスクが低いことを明らかにした。研究の成果はBMJ誌2017年12月6日号に掲載された。アルツハイマー病との関連が示唆される修正可能なリスク因子のデータは、主に観察研究によるものであるため、交絡への脆弱性や逆因果バイアスの可能性があり、より頑健なエビデンスが求められている。アルツハイマー病とリスク因子の関連を検証する無作為化試験 研究グループは、社会経済的、生活習慣/食事、循環代謝、炎症に関する修正可能なリスク因子と、アルツハイマー病の関連を検証するメンデル無作為化試験を行った(欧州連合のホライズン2020などの助成による)。 解析には、4つのゲノムワイド関連研究のデータセット(ADGC、CHARGE、EADI、GERAD)から収集した欧州人家系のアルツハイマー病患者1万7,008例と対照3万7,154例からなるデータと24の修正可能なリスク因子が含まれた。Bonferroni法による閾値p=0.002を「有意差あり」とし、p<0.05の場合は「関連の可能性を示唆するエビデンス」と判定した。学歴が高いとアルツハイマー病のリスクが低減 学歴(終了した教育の期間、大学卒業)はアルツハイマー病と有意に関連することが、遺伝学的に予測された。教育年数のオッズ比(OR)は0.89(95%信頼区間[CI]:0.84~0.93、p=2.4×10-6)、大学卒業(college/university)のORは0.74(95%CI:0.63~0.86、p=8.0×10-5)であり、それぞれアルツハイマー病のリスクが11%、26%低減した。 知性(intelligence)が1標準偏差(SD)高い場合のORは0.73(95%CI:0.57~0.93、p=0.01)であり、知性が高いとアルツハイマー病のリスクが低い可能性を示唆するエビデンスが得られた。 また、喫煙量(1日喫煙本数10本増のOR:0.69、95%CI:0.49~0.99、p=0.04)および25-ヒドロキシビタミンD濃度(血中濃度20%高のOR:0.92、95%CI:0.85~0.98、p=0.01)はアルツハイマー病のリスクが低い可能性が示唆され、コーヒー飲用(1日1杯増のOR:1.26、95%CI:1.05~1.51、p=0.01)はアルツハイマー病のリスクが高い可能性が示唆されるエビデンスが得られた。 アルコール摂取、血清葉酸、血清ビタミンB12、ホモシステイン、循環代謝因子(血糖、インスリン、血圧、脂質など)、C反応性蛋白には、アルツハイマー病との関連は認められなかった。 著者は、「これらのメンデル無作為化による解析結果は、高い学歴はアルツハイマー病のリスクが低いことと関連するとの従来のエビデンスを支持するものである。喫煙とコーヒーは従来の解析とは逆の結果であった」とし、「これらの関連の基盤となる経路を理解するために、さらなる検討を要する」と指摘している。

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妊娠中のビタミンD補充は有益か/BMJ

 妊娠中のビタミンD補充の効果について、カナダ・トロント大学のDaniel E Roth氏らは、無作為化試験を対象としたシステマティックレビューのメタ解析を行った結果、「2017年9月までに行われた試験の大半は、小規模で質が低く、現状では臨床的または政策として勧告するに足りる十分なエビデンスはない」ことを報告した。これまでに行われた多くの無作為化試験およびシステマティックレビューでは、相反する結果が発表され、ビタミンDに関する勧告は医療関連の学術団体の間で大きくばらついているが、WHOは現在、ビタミンD補充を推奨している。Roth氏らは11の母体アウトカムと27の新生児/幼児アウトカムに関する妊娠中のビタミンD補充の効果を評価する検討を行った。BMJ誌2017年11月29日号掲載の報告。43試験、被験者8,406例を包含しメタ解析 研究グループは今回の検討で、試験のアウトカムデータの欠落、未報告あるいは相反する報告がなされていた頻度を明らかにし、継続中または計画中の登録試験の貢献度を明らかにした。 Medline、Embase、PubMed、Cochrane Database of Systematic Reviews、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを発刊から2017年9月時点まで検索。電子的検索で特定されたシステマティックレビューの参照リストや、未発表の継続中または計画中の試験のオンライン試験レジストリの手動検索も行った。 試験選択の適格条件は、妊娠中のビタミンD補充に関する無作為化試験で、対照群がプラセボ、非ビタミンD、ビタミンD補充量600 IU/日以下(またはその等量物)で、ピアレビューが行われている学術誌で発表されたものとした。 検索により43試験(被験者8,406例)が、メタ解析に組み込まれた。サンプルサイズの中央値は133例であった。出産児の3歳時点までの喘息リスク低下については強いエビデンス? ビタミンD補充により、25-ヒドロキシビタミンDの母体/臍帯血血清濃度の上昇が認められたが、用量反応の影響は弱かった。母体の臨床的アウトカムは、ほとんど確認・報告されておらず、入手したデータから有益であるとのエビデンスは示されなかった。 全体で、ビタミンD補充群は、平均出生体重が58.33g(95%信頼区間[CI]:18.88~97.78)増加し(37比較)、在胎不当過小(SGA)のリスクが低かった(リスク比:0.60、95%CI:0.40~0.90、7比較)。しかし、感度解析やサブグループ解析において、それらの確固たる所見はみられなかった。また、早産への効果は認められなかった(1.0、95%CI:0.77~1.30、15比較)。一方で、妊娠中のビタミンD補充が、出産児の3歳時点までの喘息リスクを低下させたとの強いエビデンスが認められた(リスク比:0.81、95%CI:0.67~0.98、2試験)。 しかし、メタ解析に包含された大半のアウトカムのデータは、小規模試験からのものであった。また、バイアスリスクが全体として低かった試験は、8/43試験(19%)に過ぎなかった。 継続/計画中の無作為化試験は5件、1万2,530例あった。著者は、「これらが将来のレビューに寄与する可能性はある」とした上で、「今後は、妊娠に関連した母体の症状(子癇前症など)や出産児の発育、呼吸器系のアウトカムなどの臨床的エンドポイントを調べるようデザインされた、検出力のある試験を行うべきであろう」と提言している。

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抗血栓治療でPPAPは成立するか?(解説:香坂俊氏)-777

 動脈系血栓予防(冠動脈疾患など)に最適とされている薬剤はアスピリンである。静脈系血栓予防(深部静脈血栓や心房細動など)には長らくワルファリンが用いられてきた。では、冠動脈疾患に心房細動が合併したりして、その2つを一度に行わなければならないときはどうするか? 数年前までは何も考えずこの2剤を併用してきた。2016年の流行語にPPAP(PEN-PINAPPLE-APPLE-PEN:ペンパイナッポーアッポーペン)というものがあったが、まさに・動脈系血栓予防にはASPIRIN・静脈系血栓予防にはWARFARIN・それをくっつけASPIRIN-WARFARIN-APPLE-PENといった塩梅である(苦しいですが、年の瀬なので許してください)。 しかし冠動脈疾患の治療にステントが使われるようになると、インターベンション治療(PCI)を行った患者にはアスピリンに2剤目の抗血小板薬(クロピドグレルやプラスグレル)をかぶせなければならなくなった。いわゆるDAPT(Dual AntiPlatelet Therapy:抗血小板2剤併用療法)である。すると、例えばステント治療を行った心房細動患者にはDAPTに加えさらにワルファリンを投与することになり「ちょっと多いかもな」ということになる。これが杞憂でないことはWOESTという医師主導の臨床試験で立証され、3剤で行くよりもアスピリンを抜いた2剤(クロピドグレル+ワルファリン)のほうが出血イベントが半分程度になることがわかった(DOI)。 その後、ワルファリンの代替薬としてNOAC(Non-Vitamin K Oral Anticoagulant:非ビタミンK経口抗凝固薬)が使われる時代になり、メーカーがこうした臨床試験に協力してくれるようになった。そうした流れの中で初代NOACであるダビガトランを用いて行われたのがRE-DUAL PCI試験である(これより前にリバーロキサバンでPIONNEER AF-PCI試験が行われており[DOI、さらにアピキサバンでもAUGUSTUS試験が現在行われている)。 結果の詳細は別記事(CareNet該当記事参照)に譲るが、・ダビガトラン 150mg BID+P2Y12阻害薬単剤(2剤)・ダビガトラン 110mg BID+P2Y12阻害薬単剤(2剤)・ワルファリン+DAPT(3剤併用) の3群で比較され、WOESTとほぼ同様の結果が得られている。 掲載誌のEditorialにはこれまでの3つの試験(WOEST、PIONNEER、RE-DUAL)のメタ解析が掲載されているが、出血イベントに関する安全性はもちろんのこと(OR:0.49、95%CI:0.34~0.72)、2剤のほうが虚血イベント抑制に関しても有利でありそうだ(OR:0.80、95%CI:0.58~1.09)という結果が示されている。これは、出血に伴い血栓傾向が強まることを考え合わせると(以下の3つのメカニズムによる)首肯できる結果である。(1)抗血小板薬や抗凝固薬の中止を余儀なくされる(2)出血そのものが炎症反応を惹起する(3)輸血や止血手技でも同様に炎症反応が惹起される 昨今、効果に差を見出すのではなく(Efficacy Trial)、安全性やQOLの確保に重点をおいた減算型の臨床試験が多く行われているが、RE-DUALもその好例といえる(3剤から2剤に引いても安全ですよということを明示)。今後おそらくこの領域では、安易な足し算の発想(PPAP式?)で3剤併用が行われることは【圧倒的】に少なくなることが予想される。

320.

加齢黄斑変性の5年発症リスク、出生世代ごとに減少

 米国・ウィスコンシン大学マディソン校のKaren J. Cruickshanks氏らは、ビーバーダム眼研究およびビーバーダム子孫研究のデータを解析し、加齢黄斑変性(AMD)の5年発症リスクは20世紀の出生世代ごとに減少してきていることを明らかにした。著者は、「このリスク低下を説明する因子は不明である」としたうえで、「しかしながらこのパターンは、心血管疾患および認知症のリスク低下の報告と一致しており、高齢となったベビーブーム世代(1946~64年生まれ)は前の世代に比べ、高齢でも網膜が健康である可能性を示唆している」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年11月16日号掲載の報告。 研究グループは、AMDの5年発症リスクが世代により低下しているかを明らかにし、リスク改善に寄与する因子を特定する目的で、ビーバーダム眼研究(1988年3月1日~1990年9月15日、1993年3月1日~1995年6月15日)およびビーバーダム子孫研究(2005年6月8日~2008年8月4日、2010年7月12日~2013年3月21日)のデータを解析した。これらは地域住民を対象とした研究で、ウィスコンシン州ビーバーダム市の43~84歳(1987~88年当時)の住民、およびその子孫で2005~08年時に21~84歳の住民が登録された。 解析対象は、登録時の眼底写真でAMDを発症するリスクが認められた4,819例(ベースライン時の平均年齢[±SD]54[±11]歳、男性2,117例[43.9%]、女性2,702例[56.1%])。2016年2月18日~2017年6月22日にデータを解析し、2017年9月22日に追加の解析を終えた。 Wisconsin Age-related Maculopathy Grading Systemを用い、眼底写真からAMDを分類。主要評価項目は5年追跡時におけるAMDの発症で、発症は萎縮型または滲出型黄斑変性、色素上皮異常を伴うドルーゼン、または色素上皮異常を伴わない軟性ドルーゼンの存在と定義した。 主な結果は以下のとおり。・年齢および性別で調整したAMDの5年発症率は、「最も偉大な世代」(1901~24年生まれ)が8.8%、「沈黙の世代」(1925~45年生まれ)が3.0%、「ベビーブーム世代」(1946~64年生まれ)1.0%、「ジェネレーションX」(1965~84年生まれ)0.3%であり、各世代は前の世代よりAMD発症が60%超減少した(相対リスク:0.34、95%信頼区間[CI]:0.24~0.46)。・AMD発症リスク低下と世代との関連は、年齢、性別、喫煙、教育、運動、non-HDL コレステロール濃度および高感度CRP値、ならびに非ステロイド性抗炎症薬・スタチン・マルチビタミンの使用について調整後も有意なままであった(相対リスク:0.40、95%CI:0.28~0.57)。

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