スクリーニング実施で高齢女性の骨折リスクが低減/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2018/01/10

 

 高齢女性の骨折リスクを評価する地域ベースのスクリーニングプログラムは、骨折全般の発症は抑制しないものの、大腿骨近位部骨折のリスク低減には有効であることが、英国・イースト・アングリア大学のLee Shepstone氏らが実施したSCOOP試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年12月15日号に掲載された。骨粗鬆症およびその関連骨折については、有効な評価法や薬物療法があるが、英国では現在、骨折リスクのスクリーニングは提唱されていない。

FRAXによるスクリーニングと通常管理を比較
 SCOOP試験は、高齢女性の骨折予防スクリーニングプログラムの有用性を評価するプラグマティックな非盲検無作為化対照比較試験(Arthritis Research UKと英国医学研究協議会[MRC]の助成による)。

 対象は、70~85歳の女性で、骨粗鬆症治療薬(ビタミンDとカルシウムは除く)を処方中の女性は除外したが、過去にこれら薬剤の投与歴のある女性は可とした。また、試験への参加が不適当と判断された場合(認知症、終末期の状態、近親者を亡くしたばかりなど)も除外することとした。

 被験者は、骨折リスク評価ツール(Fracture Risk Assessment Tool:FRAX)を用いたスクリーニングプログラムを受ける群(スクリーニング群)、または通常管理を受ける群(対照群)に無作為に割り付けられた。スクリーニング群のうち、FRAXで10年の大腿骨近位部骨折リスクが高いと判定された女性には、高リスク例として治療が推奨された。

 主要アウトカムは、5年時の骨粗鬆症関連骨折を1つ以上発症した女性の割合とした。事前に規定された副次アウトカムは、1つ以上の大腿骨近位部骨折、すべての臨床的骨折、死亡のほか、不安や健康関連QOLに及ぼすスクリーニングの効果が含まれた。

骨粗鬆症関連骨折、臨床的骨折、不安、QOLには差がない
 2008年4月15日~2009年7月2日に、英国の7地域(バーミンガム、ブリストル、マンチェスター、ノリッチ、シェフィールド、サウサンプトン、ヨーク)の100のGP(general practitioner)施設から1万2,483例が登録され、スクリーニング群に6,233例、対照群には6,250例が割り付けられた。スクリーニング群のうち898例(14%)が、高リスク例として治療が推奨された。1年時の骨粗鬆症治療薬の使用率は、スクリーニング群が15%と、対照群の4%に比べて高く、とくに高リスク例での使用率は6ヵ月の時点で78%に達していた。

 スクリーニング群は対照群と比較して、5年時の骨粗鬆症関連骨折率(12.9% vs. 13.6%、ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.85~1.03、p=0.178)および臨床的骨折率(15.3% vs.16.0%、HR:0.94、95%CI:0.86~1.03、p=0.183)に有意な差は認められなかったが、大腿骨近位部骨折率(2.6% vs.3.5%、HR:0.72、95%CI:0.59~0.89、p=0.002)は有意に低かった。

 5年時の死亡率(8.8% vs.8.4%、HR:1.05、95%CI:0.93~1.19、p=0.436)は両群間に差はなく、不安の発症率(p=0.515)にも差はみられなかった。また、EQ-5DおよびSF-12で評価したQOLも両群で同等であった。

 著者は、「FRAXを用いた地域ベースのスクリーニングは実行可能であり、大腿骨近位部骨折の発症率を低減する可能性があるが、この知見の解釈には注意を要する」とまとめ、「現在、費用対効果の解析が進行中だが、本試験は、英国や他の地域で大腿骨近位部骨折の発症を低減する可能性を有する有望な骨折管理戦略をもたらすものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)