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ESMO2018レポート 消化器がん

レポーター紹介胃がんに対する後方ライン治療(1)-ATTRACTION-2試験長期成績-切除不能胃がんに対する標準治療は1次治療フルオロピリミジン+白金製剤(HER2陽性の場合にはさらにトラスツズマブ併用)、2次治療パクリタキセル+ラムシルマブである。3次(後方ライン)治療以降は、ニボルマブもしくはイリノテカンが治療選択肢である。ニボルマブは、2レジメン以上の化学療法不応の切除不能胃がん(胃食道接合部がん含む)を対象としたプラセボ群との比較第III相試験(ATTRACTION-2)で有効性が示され、本邦でも2017年9月に胃がんへと適応拡大された。ESMO2018では、ATTRACTION-2のアップデート結果が報告された。2018年2月までの2年間の長期追跡でも、ニボルマブ群はプラセボ群と比較して有意なOS延長が確認され、2年全生存(OS)割合は、ニボルマブ群10.6%、プラセボ群3.2%、2年無増悪生存(PFS)割合は、ニボルマブ群3.8%、プラセボ群0%であった。奏効例のOS中央値26.61ヵ月、2年OS割合61.3%であった。また、SD症例におけるOS中央値は、ニボルマブ群8.87ヵ月、プラセボ群7.62ヵ月(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.52~1.23)であり、有意差はないもののニボルマブ群で良好であった。本結果は、実施臨床でのニボルマブ使用においても実感できる。奏効例では長期奏効が得られることも多く、まさにノーベル賞受賞の最近の報道でなされる“奇跡の薬”との表現にも同意する。一方で胃がんでのニボルマブの奏効率はわずか10%程度であり、治療のメリットが実感できない場面が多いのも事実である。さらに、最近は約10%にhyperprogressionが認められ、むしろdetrimentalに働く集団の存在も示唆されている。抗PD-1抗体薬の効果予測バイオマーカーが必要であり、有効もしくは無効のバイオマーカーがないと、1次・2次治療や補助療法での抗PD-1抗体薬の使用は困難であろう。胃がんに対する後方ライン治療(2)-新たな治療選択肢の登場-TAGS試験(TAS-102 Gastric Study)は、2レジメン以上の前治療歴のある切除不能胃がんに対するTAS-102の有効性を検証したプラセボ対照第III相試験である。結果はすでに本年の世界消化器癌学会議(ESMO-GI)で発表されているが、ESMO2018ではサブグループ解析と腫瘍縮小効果の結果が追加された(TAS-102群:337例、プラセボ群:170例)。主要評価項目であるOS(中央値/12ヵ月OS割合)は、プラセボ群3.6ヵ月/13%に対して、TAS-102群5.7ヵ月/21%(HR:0.69、95%CI:0.56~0.85、p=0.0003)であり、TAS-102群が有意に良好であった。サブグループ解析でも、各サブグループにおいてTAS-102群が良好な結果であった。腫瘍縮小効果はTAS-102群で1例の完全奏効(CR)と部分奏効(PR)12例を認め、奏効割合(ORR)は4%であった。安定(SD)も含めた病勢制御割合(DCR)はTAS-102群44%であり、プラセボ群14%に比べ有意に良好であった。有害事象は、TAS-102群においてgrade 3以上の有害事象が多くみられ(TAS-102 80% vs.プラセボ58%)、好中球数減少(38% vs.0%)や白血球減少(21% vs.0%)、貧血(19% vs.7%)、血小板数減少(6% vs.0%)などの血液毒性が主であった。これら有害事象によるTAS-102の減量・休薬は58%で、13%の症例は試験治療中止となり、16%の症例でG-CSFが投与されていた。本試験より、TAS-102は胃がん後方ライン治療の新たな選択肢として、本邦においても使用可能となるだろう。位置付けはニボルマブと同様になると思われる。有害事象も大腸がんでの報告と同程度であり、胃がんでも比較的スムーズに臨床導入できるだろう。一方で、胃がんと大腸がんの病態の違いには注意が必要である。つまり、胃がんの方がよりaggressiveな病態を呈する患者が多く、経口摂取が困難となるケースも多い。本試験でもTAS-102後の後治療移行率は、TAS-102群25%、プラセボ群26%と両群ともきわめて低率であった。ニボルマブ、TAS-102、イリノテカンをすべて単剤療法として使い切るストラテジーよりも、併用療法の開発が期待される。大腸がん1次治療としてのTriplet療法の再検証-TRIBE2試験-大腸がん1次治療においてFOLFOXIRI+ベバシズマブ療法は、本邦におけるガイドラインでも推奨されるレジメンの1つである。その根拠となったTRIBE試験は、FOLFOXIRI+ベバシズマブ療法(Triplet)とFOLFIRI+ベバシズマブ療法との第III相試験であり、ORR 65% vs.53%(p=0.006)、PFS中央値12.1ヵ月vs.9.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.75、p=0.003)、OS中央値29.8ヵ月vs.25.8ヵ月(HR:0.80、p=0.030)と、いずれもTriplet群が有意に良好であった。しかし本試験では、FOLFIRI群の後治療のオキサリプラチン導入割合が低く、本邦の実地臨床への外挿に疑問の声もあった。ESMO2018では、続編としてTriplet+ベバシズマブ療法を1次治療および2次治療で使用する群(triplet群)と1次治療FOLFOX+ベバシズマブ療法→2次治療FOLFIRI+ベバシズマブ療法を逐次的に行う群(doublet群)を比較した第III相試験(TRIBE2試験)の結果が報告された。すべての治療は最大8コースの施行とされ、その後は、増悪まで5-FU+ベバシズマブ療法継続が実施された。679例が登録され、患者背景は両群に大きな差はなく、RAS変異型60%程度、BRAF変異型10%、右側結腸38%と、一般的な大腸がんのpopulationよりも多い傾向であった。主要評価項目であるPFS2(2次治療終了までの無増悪生存期間)中央値は、doublet群16.2ヵ月、triplet群18.9ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.57~0.83、p<0.001)とtriplet群で有意に良好であった。1次治療PFSはdoublet群9.9ヵ月、triplet群12.0ヵ月(HR:0.73、p<0.001)、2次治療PFSの中央値はdoublet群5.5ヵ月、triplet群6.0ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.70~1.05、p=0.120)と有意差を認めなかった。doublet群の86%(248/288例)、triplet群の74%(194/261例)が2次治療に移行し、規定された2次治療が、doublet群では88%(FOLFIRI±Bmab)、triplet群では76%(FOLFOXIRI±Bmab)に行われていた。有害事象は既報のとおりで、1次治療における安全性は、grade 3以上の有害事象のうち、下痢(doublet群5% vs.triplet群17%、以下同様)、好中球減少(21% vs.50%)、発熱性好中球減少症(3% vs.7%)で群間差を認めた。本発表は、初回治療におけるtripletの有効性を再現したものと考えられる。doublet群の88%で2次治療に移行できているにもかかわらずtriplet群でPFS2が良好であったことはインパクトが大きいが、その理由は明らかではない。治療早期に強いレジメンを実施し、腫瘍縮小を達成することが生存延長につながっているのであろうか。とくに本試験の対象として多く含まれているRAS/BRAF変異型や右側結腸原発症例で有用である。今後発表されるOS結果にも注目したい。大腸がんに対する免疫療法の明暗-Checkmate142試験とMODUL試験-大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害剤は、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)やミスマッチ修復(mismatch repair:MMR)タンパク発現消失を示すMMR機能欠損(deficient MMR:dMMR)がんとMMR機能欠損を示さないproficient MMR(pMMR)がんに分けて治療開発が行われている。dMMR例は遺伝子変異数(tumor mutation burden:TMB)が多く、腫瘍浸潤性リンパ球(tumor infiltrating lymphocyte:TIL)の強い免疫腫瘍環境を有することから、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できる。CheckMate142試験は抗PD-1抗体薬ニボルマブ(NIVO)単剤療法、NIVOと抗CTLA-4抗体薬イピリムマブ(IPI)との併用療法を検討した第II相試験であり、ESMO2018では1次治療としてのNIVO+IPI併用療法コホートの結果が報告された。本コホートは、dMMR例を対象に、NIVO(3mg/kgを2週間隔)と低用量IPI(1mg/kgを6週間隔)の併用療法であり、既報の同薬剤併用の既治療コホート(NIVO 3mg/kg+IPI 1mg/kgを3週間隔×4回→その後はNIVO 3mg/kgを2週間隔)とは異なったスケジュールである。今回のコホートには45例が登録され、BRAF変異型38%、Lynch症候群18%が含まれていた。主要評価項目である担当医判定によるORRは60%(完全奏効[CR]:3例[7%]を含む)、DCRは84%であった。BRAF変異例17例でも、ORR 71%、DCR 88%と良好だった。解析時点において82%の症例が効果継続中であり、12ヵ月PFS割合77%、OS割合83%と、長期の生存延長効果が期待された。Grade 3以上の重篤な有害事象割合は16%であり、治療中止に至る有害事象も7%と低かった。今回の報告は既治療例通常用量のNIVO+IPIコホートと比較して有効性は同程度、重篤な有害事象は少ない傾向であった。これが、低用量IPIのおかげなのか、それとも初回治療例を対象としたものかはランダム化比較試験でないため確証はないが、個人的には有害事象と有効性のバランスが良い本投与法を実地臨床では使用したい。とくにBRAF変異型も含めた高い有効性は魅力的である。dMMRがんに対するpembrolizumabは本年度中に適応拡大予定であるが、NIVO+IPI療法もdMMR大腸がんに必要なレジメンと考えられる。一方でpMMR大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の治療開発は、いまだ成功していない。MODUL試験は、大腸がんにFOLFOX+ベバシズマブ導入化学療法後の維持療法に関するランダム化比較試験で、バイオマーカーに基づくアンブレラ型試験である。今回、BRAF野生型コホート(コホート2)としてフッ化ピリミジン系薬剤+Bevacizumab(Bmab)とAtezolizumabの併用療法との比較パートの結果が発表された。患者背景はRAS変異型60~65%、dMMR2%であり、本試験はpMMR大腸がんへの免疫チェックポイント阻害剤の有効性を探索する試験と言える。追跡期間中央値18.7ヵ月時点におけるupdate analysisでのPFS中央値は試験治療群7.20ヵ月、標準治療群7.39ヵ月(HR:0.96、95%CI:0.77~1.20、p=0.727)、OS中央値は試験治療群22.05ヵ月、標準治療群21.91ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.66~1.13、p=0.283)と、有意差は認められなかった。ESMO-GIでは後方ラインでのAtezolizumab(+cobimetinib)の第III相試験(COTEZO)もnegativeな結果が報告された。pMMR大腸がんへの免疫療法は、まだまだ暗い闇の中といったところである。

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ESMO2018レポート 肺がん

レポーター紹介ESMO(European Society for Medical Oncology)2018はドイツのミュンヘンで、2018年10月19~23日の期間に行われた。今年は9月に世界肺癌学会がカナダのトロントで行われたこともあり、昨年のESMOと比べると少しトピックスが少ない印象ではあったが、2万8千人が参加し、多くの演題が報告された。肺がん領域でのトピックスをいくつか紹介する。分子標的治療薬のトピックスオシメルチニブの耐性機序EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者で、1次治療としてEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)で治療された後、耐性遺伝子の1つであるT790M変異が陽性であった場合に、第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブもしくはプラチナ製剤+ペメトレキセドに割り付けられる第III相試験であるAURA3の試験における、耐性メカニズムについて報告された。ベースラインの血漿サンプルでEGFR遺伝子変異陽性であり、耐性後に血漿検体の評価ができた73例の検討では、49%でT790Mの消失を認め、C797Sが14%で認められた。(Papadimitrakapoulou V, et al, LBA51)また、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者で、1次治療として第1世代のEGFR-TKIとオシメルチニブを比較する第III相試験であるFLAURA試験における耐性メカニズムについても報告された。第1世代のEGFR-TKIで治療され、ベースラインの血漿でEGFR遺伝子変異が陽性であった129例の検討では、T790M陽性が47%と最も多く、METの増幅が4%、PIK3CAの変異が3%で認められた。また、オシメルチニブ群で血漿のEGFR遺伝子変異が陽性であった91例の検討では、METの増幅が15%で最も多く、C797X変異が7%、PIK3CA変異が7%で認められた(Ramalingam SS, et al LBA50)。血漿での検討ではあるが、オシメルチニブの耐性メカニズムの検討として重要な報告であったと考える。ALESIAアジアで行われた、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの初回治療として、クリゾチニブとアレクチニブを比較する第III相試験の結果が報告された。本試験には187例が登録され、125例がアレクチニブ(600mgを1日2回内服)群に、62例がクリゾチニブ群に割り付けられた。主要評価項目である研究者による評価の無増悪生存期間(PFS)は、アレクチニブ群で有意に良好であった(PFS中央値、アレクチニブ群:未到達、クリゾチニブ群:11.1ヵ月、ハザード比[HR]:0.22、95%信頼区間[CI]:0.13~0.38、p<0.0001)。また、Grde3以上の毒性においても、アレクチニブ群では28.8%でみられたのに対し、クリゾチニブ群で48.8%であり、毒性においてもアレクチニブ群で軽いことが3つ目の第III相試験でも確認された(Zhou C, et al. LBA10)。ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんにおけるアレクチニブの有効性が改めて確認された一方で、日本のみアレクチニブの用量が異なることが、今後のALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんの治療開発において、問題となることが危惧される。免疫チェックポイント阻害薬のトピックスPACIFIC試験の全生存期間に関する探索的検討III期の非小細胞肺がんに対し、化学放射線療法後にデュルバルマブとプラセボを比較する第III相試験であるPACIFIC試験において、SP263で評価したPD-L1の発現によるサブグループ解析の結果が報告された。PFSにおいては、PD-L1が1%以上の集団、PD-L1が1%未満の集団ともにデュルバルマブ群で良好な結果であった。しかし、全生存期間(OS)においては、PD-L1が1%以上の集団ではデュルバルマブ群で良好な結果であったが、PD-L1が1%未満の集団ではプラセボ群で生存曲線が上回る結果であった(Faivre-Finn C, et al. 1363O)。PD-L1の発現評価が可能であったのは全体の60%強であり、またそのうちのサブグループ解析であるため、この結果の解釈には注意が必要であり、この結果をもってPD-L1が1%未満にはデュルバルマブの効果が低いという結論には至らない。しかし、化学放射線療法施行例において、PD-L1発現と予後の結果については今後も検討を行う必要があることが示唆されると考える。IMpower130IV期の非扁平上皮非小細胞肺がんの初回治療として、カルボプラチン+ナブパクリタキセル+アテゾリズマブの3剤併用療法後にアテゾリズマブの維持療法(Atezo+CnP)とカルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法後に支持療法もしくはペメトレキセドの維持療法(CnP)を比較する第III相試験の結果が報告された。主要評価項目の1つである研究者評価のPFS(遺伝子変異陰性患者での)はAtezo+CnPで有意に良好であった(PFS中央値、Atezo+CnP:7.0ヵ月、CnP:5.5ヵ月、HR:0.64[95%CI:0.54~0.77]、p<0.0001)。またもう1つの主要評価項目であるOS(遺伝子変異陰性患者での)においても、Atezo+CnPで有意な改善を認めた(OS中央値、Atezo+CnP:18.6ヵ月、CnP:13.9ヵ月、HR:0.79[95%CI:0.64~0.98]、p=0.033)。EGFRもしくはALK陽性の患者において、PFSとOSともにカルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せ効果は認められなかった。遺伝子変異陰性の非小細胞肺がんに対する、初回治療としての、プラチナ製剤を含む併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せ効果が再確認された結果であった。一方で、遺伝子変異陽性の患者に対する、プラチナ製剤を含む併用療法に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果については、いまだ不明のままである。大規模な比較試験の結果が待たれる。(Cappuzzo F, et al. LBA53)B-F1RST局所進行または転移性非小細胞肺がん患者における、アテゾリズマブ単剤の単群第II相試験の結果が報告された。本試験の主解析として、血液検体を用いたtumor mutation burden(bTMB)のカットオフを16とした解析が含まれている。152例のITT集団のうち、バイオマーカーの評価可能でmaximum somatic allele frequency≧1%の患者が119例であり、bTMB≧16の患者は28例であった。bTMB≧16の患者での奏効割合が28.6%に対し、bTMB<16の患者では奏効割合4.4%であった。また、PFSはbTMB≧16群でよい傾向であったものの、統計学的な有意差は認めなかった(PFS中央値、bTMB≧16:4.6ヵ月、bTMB<16:3.7ヵ月、HR:0.66[95%CI:0.42~1.02]、p=0.12)。本試験のみで、bTMBのバイオマーカーとしての有効性の評価は難しいが、高い期待が持てる結果とはいえない。現在、bTMBが高い集団に対する第III相試験が進行中であり、その結果が待たれる。(Kim ES, et al. LBA55)

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ペムブロリズマブ、単剤と化療併用で頭頸部扁平上皮がん1次治療のOS改善(KEYNOTE-048)/ESMO2018

 再発または転移性の頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)治療では、プラチナ製剤による化学療法後の2次治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ、ニボルマブの有効性が確認されており、本邦ではニボルマブが2017年3月に適応を取得している。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、HNSCCの1次治療におけるペムブロリズマブ単剤および、化学療法との併用療法が、抗EGFR抗体セツキシマブと化学療法の併用療法と比較して全生存期間(OS)を改善することが明らかになった。イェールがんセンターのBarbara Burtness氏が発表した第III相KEYNOTE-048試験の中間解析結果より。 KEYNOTE-048試験は、局所治療で治癒不能、全身治療歴のない再発/転移性の中咽頭、口腔、喉頭の扁平上皮がん患者(ECOG PS:0~1、PD-L1発現測定のための腫瘍組織があり、中咽頭のHPVステータス[p16]が既知)を対象に行われたオープンラベル無作為化試験。患者は、ペムブロリズマブ単剤群(P群):3週おきにペムブロリズマブ200mgを35サイクルまで投与ペムブロリズマブ+化学療法併用群(P+C群):3週おきにペムブロリズマブ200mg、カルボプラチンAUC5またはシスプラチン100mg/m2、5-FU 1,000mg/m2/日の4日間投与を6サイクル、その後はペムブロリズマブ200mgを35サイクルまで投与セツキシマブ+化学療法併用群(E群):セツキシマブを初回のみ400mg/m2、その後は250mg/m2/週投与、3週おきにカルボプラチンAUC5またはシスプラチン100mg/m2、5-FU 1,000mg/m2/日の4日間投与を6サイクル、その後はセツキシマブ250mg/m2を毎週投与の3群に、ECOG PS 、PD-L1発現(TPS≧50%/<50%)、p16ステータス(陽性/陰性)を層別化因子として1:1:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、CPS≧20、CPS≧1および全集団における全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は6ヵ月/12ヵ月PFS率、奏効率、安全性など、探索的項目は奏効期間(DOR)だった。今回は、PFSの最終解析結果、OSの中間解析結果が発表されている。 主な結果は以下のとおり。・2015年4月~2017年1月までの間に882例の患者が組み入れられた(P群:301例/P+C群:281例/ E群:300例)。・2018年6月13日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値はP群:11.7ヵ月/P+C群:13.0ヵ月/ E群:10.7ヵ月)。・患者背景は、年齢中央値がP群:62歳/P+C群:61歳/E群:61歳、男性83%/80%/87%、ECOG PS1が全群で61%、p16陽性が21%/21%/22%、PD-L1発現はTPS ≥50%が22%/24%/22%であった。・結果はP群 vs.E群とP+C群 vs.E群に分けて発表された。[ペムブロリズマブ単剤群(P群)vs.セツキシマブ+化学療法併用群(E群)] ・OS中央値は、CPS ≧20の患者において14.9ヵ月 vs. 10.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.45~0.83、p=0.0007)、CPS≧1において12.3ヵ月 vs. 10.3ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.64~0.96、p=0.0086)といずれもP群で有意に改善した。・PFS中央値は、CPS ≧20の患者において3.4ヵ月 vs. 5.0ヵ月(HR:0.99、95%CI:0.75~1.29、p=0.5)とP群で延長されなかった。試験計画に基づき、それ以上のPFS解析は行われなかった。・CPS ≧20の患者において、ORR は23% vs. 36%、DOR中央値は20.9ヵ月 vs.4.2ヵ月、CPS≧1においてORR は19% vs. 35%、20.9ヵ月 vs.4.5ヵ月であった。・Grade 3 以上の薬剤関連有害事象の発生率は17% vs. 69%であった。[ペムブロリズマブ+化学療法併用群(P+C群) vs.セツキシマブ+化学療法併用群(E群)]・中間解析時点でのOS中央値は、CPS ≧20およびCPS≧1の患者においてP+C群で有意な改善は見られなかった。全集団における解析では、13.0ヵ月 vs. 10.7ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.63~0.93、p=0.0034)とP+C群で有意に改善した。・全集団におけるPFS中央値は、4.9ヵ月 vs. 5.1ヵ月(HR:0.92、95%CI:0.77~1.10、p=0.2)とP+C群で延長されなかった。・全集団におけるORR は36% vs. 36%、DOR中央値は6.7ヵ月 vs.4.3ヵ月であった。・Grade 3 以上の薬剤関連有害事象の発生率は71% vs. 69%であった。 Burtness氏は、「ペムブロリズマブを単剤で使うべきか、化学療法と併用するべきかはPD-L1発現に依存する可能性があり、現在この疑問に答えるための分析を行っている」と話している。また、ディスカッサントを務めたJean-Pascal Machiels氏(Cliniques universitaires Saint-Luc)は、ペムブロリズマブ単剤群と対照群のカプランマイヤー曲線が7ヵ月目付近で交差しており、その差がCPS≧1の患者においてよりクリアであることを指摘。「ペムブロリズマブ+化学療法併用群と対照群ではそのような差はみられない」と話した。

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IV期扁平上皮がんへの免疫療法+化学療法併用について(解説:小林英夫氏)-950

 肺がんの組織型は非小細胞がんが多くを占め、とりわけ扁平上皮がんと腺がんが中心となっている。1980年代までは扁平上皮がん、なかでも肺門型(中枢型)の扁平上皮がんが多かったが、その後徐々に腺がんが多数となり、扁平上皮がんを診療する機会が減少していた。ところが近年になり、以前の肺門型扁平上皮がんではなく、肺野末梢に発生する扁平上皮がんを経験する機会が増加してきている。なぜ再増加しているのか理由は定かではない。また、切除不能であるIV期の非小細胞肺がんの治療面では、2000年代以降になり遺伝子変異陽性の腺がんに対しチロシンキナーゼ阻害薬などの分子標的治療薬が急速に普及し、腺がんの標準治療は大きく変化してきた。一方で、IV期扁平上皮がん治療に有効な分子標的薬は導入できておらず、細胞障害性抗腫瘍薬または免疫チェックポイント阻害薬が現時点における治療の主役だが、まだまだ十分な効果は得られていない状況にある。 本論文は、非扁平上皮がんに対する治療としてプラチナ製剤を含む化学療法+ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)が生存期間延長をもたらす可能性が示された既報を受けて、扁平上皮がんへの同併用療法の効果を検証した二重盲検無作為化第III相試験である。全例がカルボプラチンをベースにした化学療法を受け、その半数にペムブロリズマブ、残りの群はプラセボが投与され、両群が比較検討された。主要エンドポイントである全生存期間中央値は、ペムブロリズマブ群15.9ヵ月がプラセボ群11.3ヵ月に比べ有意に延長した。無増悪生存期間中央値もペムブロリズマブ群が6.4ヵ月で、プラセボ群4.8ヵ月に比し良好であった。ペムブロリズマブ群がプラセボ群を上回ることはある程度予想された結果と考えられる。一方、投与薬剤が増えるため有害事象発現も重要課題で、有害事象による治療中止はペムブロリズマブ群が高かった(13.3 vs.6.4%)。治療関連死はそれぞれ3.6%、2.1%にみられた。 2018年ノーベル生理学・医学賞受賞により、がんの免疫療法、チェックポイント阻害薬がますます脚光を浴びている。かつて日本で話題になった丸山ワクチンのような免疫療法と現在の免疫チェックポイント阻害薬はまったく別の機序で作用しており、チェックポイント阻害薬が著効する症例も数多く報告されている。しかし同薬が万能薬ではないことも事実であり、今後、扁平上皮がん治療のキードラッグとしてどのような投与法が最適なのか、まさに研究が進行している。

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「がんだけ診ていればよい時代」は終わった?日本腫瘍循環器学会開催

 2018年11月3~4日、都内にて第1回日本腫瘍循環器学会学術集会が開催され、盛んな議論が行われた。「がんだけ診ていればよい時代」は終わった 日本腫瘍循環器学会理事長の小室 一成氏は、理事長講演で以下のように述べた。 がんと心血管疾患の関係は以前からみられる。近年、がん治療の進歩が生存率も向上をもたらした。そこに、がん患者の増加が加わり、がんと心血管疾患の合併は増加している。さらに、抗がん剤など、がん治療の副作用は、心血管系合併症のリスクを高め、生命予後にも影響することから、がん患者・サバイバーに対する心血管系合併症管理の重要性が増している。実際、乳がん患者の死因は、2010年に、がんそのものによる死亡を抜き、心血管疾患が第1位である。 がん治療において重要な心血管系合併症の1つは心機能障害である。心機能障害を起こす抗がん剤は数多い。アドリアマイシンによる心筋症は予後が悪いことで知られている。また、免疫チェックポイント阻害薬による心筋炎も、発症率は少ないが、いったん発症すると重篤である。もう1つの大きな問題は、がん関連血栓症(cancer associated thrombosis:CAT)として注目されている、血栓塞栓症である。がん患者では血液凝固系が活性化されているが、そこに、抗がん剤による血栓症や内皮細胞傷害のリスクが加わり、がん患者はさらに血栓塞栓症になりやすくなる。また、血栓塞栓症を合併したがん患者の予後は不良である。血栓塞栓症は、がん外来化学療法患者の死亡の10%を占め、死因の第2位となっている。 そのような中、海外では、90年代から、学会の設立、ガイドラインの発行など、さまざまな取り組みが始まっている。わが国では昨年(2017年)10月に日本腫瘍循環器学会が設立された。同学会では、がん患者・サバイバーのために、腫瘍と循環器の専門医が一緒に活動し、疫学・レジストリ研究、基礎研究・臨床研究の推進、診療指針(ガイドライン)の策定、医療体制の整備、教育研修に取り組んでいく。求められる腫瘍および循環器専門医のチームワーク 日本腫瘍循環器学会副理事長で第1回学術集会の会長である畠 清彦氏は、会長講演で以下のように述べた。 がん対策基本法が制定されて、どの地域でも標準治療が受けられるようになり、全体に底上げされて、今までになかったようなサポート体制が出来上がった。一方で、がん患者はどんどん高齢化し、心血管系合併症も増加している。しかし、がん専門施設での循環器内科医不足など、腫瘍循環器の分野は十分とは言えない。多くの薬が登場する中、心臓血管障害の問題があっても、その対策は各施設に任されている状況である。 また、最近の分子標的治療薬をはじめとする抗がん剤は、短期間の観察で承認される。長期的にどのような副作用が出るか報告が必要となる。心血管系の副作用を正確に報告するためにも、循環器と腫瘍の専門家が協調する必要がある。今後、さらに腫瘍専門医と循環器専門医のチームワークが求められるであろう。

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マクロファージ免疫CP阻害薬、再発・難治性リンパ腫に有望/NEJM

 中悪性度および低悪性度のリンパ腫の治療において、マクロファージ免疫チェックポイント阻害薬Hu5F9-G4(以下、5F9)は、リツキシマブとの併用で有望な抗腫瘍活性をもたらし、臨床的に安全に投与できることが、米国と英国の共同研究で示された。米国・スタンフォード大学のRanjana Advani氏らが、NEJM誌2018年11月1日号で報告した。5F9は、マクロファージ活性化抗CD47抗体であり、腫瘍細胞の貪食を誘導する。CD47は、ほぼすべてのがんで過剰発現している抗貪食作用(“do not eat me[私を食べないで]”)シグナルであり、マクロファージなどの食細胞からの免疫回避を引き起こす。5F9は、リツキシマブと相乗的に作用してマクロファージが介在する抗体依存性の細胞貪食を増強し、B細胞非ホジキンリンパ腫細胞を除去するとされる。3+3デザインを用い3種の用量で漸増する第Ib相試験 研究グループは、再発または難治性の非ホジキンリンパ腫患者を対象に、5F9+リツキシマブの安全性と有効性を明らかにし、第II相試験の推奨用量の提示を目的とする第Ib相試験を行った(Forty Sevenと米国白血病・リンパ腫協会の助成による)。 対象は、CD20の発現がみられるB細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]または濾胞性リンパ腫)で、再発または2ライン以上の前治療歴のある難治性の患者であった。全身状態(ECOG PS)は0~2とした。3+3デザインを用いて、3種の用量にそれぞれ最少3例を登録した。用量制限毒性の評価は投与開始から28日まで行った。 5F9は、全例に初回用量1mg/kg体重を静脈内投与し、1週間後からの維持用量を10、20、30mg/kg(週1回)と増量した。リツキシマブは、1サイクル目は第2週から毎週375mg/m2体表面積を静脈内投与し、2~6サイクル目は毎月1回投与した。推奨維持用量は30mg/kg、36%で完全奏効 2016年11月~2017年10月の期間に、再発・難治性のDLBCL患者15例と、濾胞性リンパ腫患者7例の合計22例が登録された。5F9の維持用量別の症例数は、10mg/kgが3例、20mg/kgが6例、30mg/kgが13例となった。 全体の年齢中央値は、59歳(範囲:44~82)、男性が12例(55%)で、21例(95%)がECOG PS 0/1、4例(18%)が自家幹細胞移植を受けていた。前治療数中央値は4(範囲:2~10)であり、21例(95%)がリツキシマブ抵抗性で、14例(64%)は直近の治療レジメンに抵抗性であった。 治療期間中央値は22週(範囲:1.7~70.7、治療中の患者を含む)で、22例全例が2剤の投与を受けた。1例が、治療開始から約2週時に有害事象(特発性血小板減少性紫斑病)により投与中止となり、有効性の評価ができなかったが、非奏効例として解析に含まれた。3例が死亡し、全死因死亡率は14%だった。 有害事象は、主としてGrade1または2であった。頻度の高い有害事象は、悪寒、頭痛、貧血、およびinfusion-related reactionsであった。貧血(予測された標的作用)は、5F9の初回投与と維持投与を調節することで軽減された。 用量制限副作用は3例(20mg/kg群の1例[Grade3の肺塞栓症]、30mg/kg群の2例[Grade4の好中球減少、Grade3の特発性血小板減少性紫斑病])に認められたが、最大耐用量には到達せず、第II相試験の5F9の推奨用量は30mg/kgとした。 5F9の初回用量1mg/kgと維持用量30mg/kgにより、循環血中の白血球と赤血球のCD47受容体占有率はほぼ100%となった。 11例(50%)で客観的奏効(完全奏効+部分奏効)が得られ、8例(36%)で完全奏効が達成された。客観的奏効率と完全奏効率は、DLBCL患者でそれぞれ40%と33%、濾胞性リンパ腫患者では71%と43%であった。奏効までの期間中央値は1.7ヵ月(範囲:1.6~6.6)で、フォローアップ期間中央値がDLBCL患者6.2ヵ月、濾胞性リンパ腫患者8.1ヵ月の時点で、奏効例の91%(10/11例)で奏効が持続しており、奏効期間中央値には未到達だった。 著者は、「新たなマクロファージ活性化抗CD47抗体は、リツキシマブとの併用で安全に投与が可能であり、持続的な完全奏効をもたらすことが示された」としている。現在、第II相試験が進行中だという。

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本庶 佑氏が語るがんと共生する未来

 ノーベル生理学・医学賞受賞が決まった、本庶 佑氏(京都大学高等研究院副院長/特別教授)が、2018年11月1日、都内の日本医師会館で、「驚異の免疫力」と題して特別講演を行った。本講演では、がん免疫療法の現状と課題、そして将来への展望が語られた。PD-1阻害薬への期待と現状の課題 本庶氏が発見した抗PD-1抗体とその応用による「免疫療法」は、ヒト個人の免疫力・体力によってがん細胞を殺す新たな治療法だ。ノーベル賞受賞のきっかけとなったPD-1阻害によるがん免疫治療は、1)すべての種類のがんに効く可能性が高い、2)投与を止めても数年以上有効なので再発が少ない、3)がん細胞を直接攻撃せず、免疫系を活性化するので副作用があっても軽い、という理由から画期的な治療法だと、本庶氏は自信を持って紹介した。 また、今後の展望として「PD-1抗体による治療はこれからのがん治療法の第1選択になるだろう」と期待を語った。免疫療法は、がん治療の初期に使うほうが効果が高く、副作用も少ない可能性があり、従来行われている化学療法・放射線療法・外科手術は、患者の免疫力を弱めてしまうため、導入のタイミングには注意が必要だという。 免疫療法の基礎研究における当面の課題としては、メラノーマなど著効するがん種もあるが、一般的な有効率は30%程度であるため、有効率を向上させることや、有効例・無効例を投与前・直後に判定する方法の開発などが残されている。また、臨床現場の課題としては、がん専門医の免疫分野における知識不足を指摘し、「ときどき重大な副作用を見逃したり、死ななくてもいい患者さんを救えなかったりするという問題が起こる」と、とくに副作用対応プロトコルの充実が急務だと強調した。有効性に対する免疫系の影響と進行中の試験 PD-1阻害療法の有効性予測マーカーとしては、腫瘍遺伝子の変異率が高いことが1つ挙げられるが、必ずしも高いとは限らないという。「最も重要なのは、個人の間の免疫力の違い。しかし、これに関しては非常に幅があり、遺伝子を解析しただけでわかるほど免疫系は単純でない。われわれの知識はまだまだ不足している」と語った。 有効性に関して、「キラーT細胞が腫瘍細胞にどれだけ集まるか、キラーT細胞の活力がどれだけ高いかという2つの問題がある」と課題を呈した。腫瘍細胞に存在するキラーT細胞は、PD-1阻害薬によって活性化され、その結果、腫瘍細胞自身が放出したケモカインに、さらにリンパ節で活性化されたキラーT細胞が引き寄せられる。「PD-1阻害薬は、リンパ節から腫瘍細胞へキラーT細胞が移入することで能力が発揮されるので、リンパ節を取れば取るほどいい、という認識は間違っている」と指摘した。 次に、現在行っている試験として、「低分子薬とPD-1阻害薬を組み合わせると、さらに強力ながん免疫治療の開発が可能になるかもしれない。たとえば、抗体の用量を減らしたり、有効性を向上させたりできるのではないかと考えている」と一部を紹介した。「希望的観測として、現在がん免疫療法の割合は全体からみるとわずかだが、これから次第に免疫療法が増えていき、2024年にはPD-1阻害薬関連の売上高は4兆円を超えるといわれている。将来的に、がん治療の主流になり、がんは完全になくさなくてもよく、自分の体力とのバランスで共存することも、がん治療の1つの目標になるかもしれない」と展望を語った。 現在、PD-1阻害薬との組み合わせによるがん治療は、米国だけで1,000件以上の試験が行われている1)。最も多いのは、CTLA-4抗体と組み合わせたもので、ほかにも、化学療法、放射線療法などと組み合わせた試験が行われている。本庶氏は、「今世紀中にがん死はなくなる可能性が出てきた」と期待を表し、講演を終えた。

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免疫CP阻害薬、心血管障害スクリーニングの結果/腫瘍循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の免疫関連有害事象(irAE)としての心血管障害は、報告数は少ないものの、発症すると重篤化する。しかし、真の発生頻度や種類、発生時期については明らかになっていない。国際医療福祉大学三田病院の古川 明日香氏らは、腫瘍循環器学会において、同院の腫瘍循環器外来におけるICI使用時における心血管障害イベントのスクリーニングの意義について発表した。 スクリーニングの検証は、Active Screening Protocolを作成して行われた。このProtocolは、ICI投与開始前に腫瘍循環器外来を予約。ベースライン(投与開始前)、投与開始後、定期的に、血液学的検査(CK、CK-MB、トロポニンI、BNP、D-dimerなど)、心電図、胸部レントゲン、心エコー検査のフォローアップを行うというもの。 対象は2018年10月31日までに同院でICIの投与を受けたがん患者。対象患者は、Passive Consultation群(ICI投与後、心血管障害出現時に同科紹介となったケース)と、Active Screening群(投与開始前からプロトコールに準じてモニタリングしたケース)に分けて評価された。評価項目は、イベント(症候性で循環器治療介入を要するもの)、心血管関連検査異常(循環器特異的治療介入を要しない検査値のみの異常のもの)であった。 主な結果は以下のとおり。・同院でICI投与を受けた症例は91例。そのうちPassive Consultation群は28例、Active Screening群は63例であった。・Passive Consultation群では、2例7.1%に致死的イベントを認めた。・Active Screening群では、27例42.9%に心血管関連検査異常を認めたが、致死的イベントは認めなかった。・検査異常出現までの日数は、平均30.4日と比較的早期の発現が多かった。・治療開始前の心血管疾患既往・合併の有無による心血管関連検査異常の発生に差は認めなかった。・重篤化した症例では、症状に出現に先行してCK上昇を認めており、CK上昇を放置すると、その後 心筋傷害が進行する可能性が示唆された。 Active Screeningにより、心血管関連検査異常を確認できた。また、CK上昇の早期発見と介入により、致死的イベントを回避できる可能性が示唆された。治療開始前の心血管疾患合併の有無にかかわらず、プロトコール化されたモニタリングが重要であると考えられる。

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免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第1回

第1回 免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か?免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が標準治療の一部となり、今後プラチナ併用療法との3~4剤併用がPD-L1発現レベルにかかわらず検討されるようになる。一方で、根治に導かれる対象はまだまだ少なく、増悪後の治療戦略は今後の検討課題である。前治療で有効性の高い薬剤の再投与はre-challengeと称され、小細胞肺がんにおけるプラチナ併用療法のre-challenge(Inoue A, Lung Cancer 2015)や遺伝子変異陽性例に対するチロシンキナーゼ阻害剤の再投与(Asahina H, Oncology 2010)が第II相試験レベルで行われてきた。ICIについて、先行する悪性黒色腫では単群第II相試験が複数報告され、初回治療と遜色のない効果のみならず安全性も忍容可能であることが報告されているものの、肺がんを含んだ報告はこれまでcase report(Hakozaki T, BMC Cancer 2018)が散見される程度であった。しかしながら2018年に入って徐々に新規の報告が増えてきており、今回その中から2報を取り上げる。1)Fujita K, et al. Retreatment with pembrolizumab in advanced non-small cell lung cancer patients previously treated with nivolumab: emerging reports of 12 cases.Cancer Chemotherapy and Pharmacology.2018;81:1105-1109.2)Bernard-Tessier A, et al. Outcomes of long-term responders to anti-programmed death 1 and anti-programmed death ligand 1 when being rechallenged with the same anti-programmed death 1 and anti-programmed death ligand 1 at progression.Eur J Cancer.2018;101:160-1641)について本邦から、12例の後方視的ケースシリーズニボルマブ(Nivo)既治療例に対するペムブロリズマブ(Pembro)の効果:ORR 8.3%と、やや期待外れではあるものの、約4割で病勢制御が得られている。2例が12ヵ月以上の長期奏効を呈しており、1例は前治療NivoでもPRが得られている一方、2例目は前治療Nivoの最良効果はPDであった。2)についてフランスから、ICI(PD-1/L1阻害剤)の第I相試験に参加した13例に同じICIを再投与したもの(プロトコール規定による前向き研究)。ORRは25%、PFS中央値は12ヵ月。1)、2)いずれも少数例の研究であり、これらをすぐさま実臨床に援用はできない。悪性黒色腫の報告も含めて、現時点では「再投与の安全性は問題なさそう」というのが最も明らかなことと思われる。今後、標準的な細胞障害性化学療法との比較試験が必要になってくると思われるが、下記のようないくつかの議論が必要である。どのような対象で再投与が有効なのか。有効例を対象にした2)の方が再投与の有効性は高いようにもみえるが、1)では初回不応例に再投与が有効性を示している。同じICIがよいのか、もしくはPD-1→PD-L1阻害剤のように変更したほうがよいのか。免疫関連有害事象(以下、irAE)を生じていても再投与は可能なのか。この点については、1)、2)とも詳細が不明である。ICIの再投与については国内外で臨床試験が進行中である(たとえばWJOG9616L:試験事務局 寺岡 俊輔@和歌山県立医科大学)。今後の情報集積が期待される。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H/dMMR大腸がん1LでORR60%(CheckMate-142)/ESMO2018

 MSI-H/dMMの転移を有する大腸がん(mCRC)患者の1次治療として、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法が持続的な治療効果を示したことが明らかになった。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、米国・USC Norris Comprehensive Cancer CenterのHeinz-Josef Lenz氏により第II相CheckMate-142試験の新たな解析結果が発表された。 なお、米国では同試験別コホートからのデータに基づき、化学療法歴のある上記患者対象にニボルマブ単剤療法が2017年8月、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が2018年7月に、米国食品医薬品局(FDA)からそれぞれ承認されている。 今回結果が発表されたコホートでは、治療歴のないMSI-H/dMMのmCRC患者において、病勢進行、死亡、または忍容できない毒性が認められるまで、ニボルマブ(3mg/kgを2週間間隔)とイピリムマブ(1mg/kgを6週間間隔)が投与された。主要評価項目は治験担当医評価による奏効率(ORR)で、副次評価項目は盲検独立中央委員会(BICR)評価によるORR、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などであった。 主な結果は以下のとおり。・45例の患者が組み入れられ、51%が男性、年齢中央値は66歳であった。ECOG PSは0(56%)/1(44%)、診断時の臨床病期はI~III期(62%)/IV期(38%)、リンチ症候群の患者が18%含まれ、PD-L1発現率は≧1%(27%)/<1%(58%)/不明(16%)。変異の有無についてはBRAF/KRAS野生型が29%、BRAF変異型が38%、KRAS変異型が22%、その他は不明であった。・追跡期間中央値13.8ヵ月(9~19ヵ月)で、治験担当医評価によるORRは60%、DCRは84%であり、3例(7%)で完全奏功(CR)、24例(53%)で部分奏功(PR)が確認された。PD-L1発現状態やBRAF/KRAS変異、リンチ症候群の有無によらず、奏功が得られていた。・データカットオフ時点で、DOR中央値は未達であった。奏効が得られた患者の82%で効果が持続中であり、74%で6ヵ月以上奏功が持続していた。 ・PFS中央値、OS中央値はともに未達であり、12ヵ月PFS率は77%(95%信頼区間[CI]: 62.0~87.2)、12ヵ月OS率は83%(95%CI:67.6~91.7)であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)は78%の患者で発現し、多くみられた項目は、そう痒症(24%)、甲状腺機能低下症(18%)、無力症(16%)、関節痛(13%)であった。Grade3/4のTRAEは16%の患者で発現したが、治療中止に至ったのは7%と低く、忍容可能と考えられた。■参考CheckMate142試験(Clinical Trials.gov)■関連記事ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H/dMMR大腸がんに迅速承認/BMSニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H大腸がんで有効性/ASCO-GI2018ニボルマブ、MSI-H転移性大腸がんに承認/FDA※医師限定肺がん最新情報ピックアップDoctors’Picksはこちら

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第66回 ノーベル生理学・医学賞の米国での反響と免疫CP阻害薬の致死的副作用【侍オンコロジスト奮闘記】

第66回:ノーベル生理学・医学賞の米国での反響と免疫CP阻害薬の致死的副作用キーワードノーベル生理学・医学賞免疫チェックポイント阻害薬Daniel Y,et al. Fatal Toxic Effects Associated With Immune Checkpoint Inhibitors.JAMA Oncol. 2018 Sep 13.[Epub ahead of print]

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ESMO2018 会員レポート

2018年10月19日から23日までESMO2018が開催される。この重要な会議における、実用的な情報をニュートラルに提供するため、ケアネットでは会員現役ドクターによる聴講レポートを企画。現在そして今後のがんの診療トレンドを順次紹介していく。現地ミュンヘンからオンサイトレビューレポート一覧レポーター

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免疫CP阻害薬の治療効果と便秘の関係

 近年、腸内細菌叢にある宿主免疫制御が報告され、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果との相関が注目されている。また、腸内細菌叢は排便習慣により変化することが報告されている。非小細胞肺がん(NSCLC)患者における便通異常と、ICIの治療効果の関連性について後ろ向きに検討した京都府立医科大学の研究結果が、片山 勇輝氏らにより第16回日本臨床腫瘍学会で報告された。 対象は京都府立医科大学附属病院でICI治療を行ったNSCLC40例。ICI投与前後1週間で3日以上の便秘もしくは緩下剤の内服歴を有する患者を便秘群と定義し、便秘群と非便秘群においてICIの治療効果を評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療成功期間(TTF)中央値は便秘群で31.5日、非便秘群で204日と、便秘群で有意な短縮を示した(p=0.0032)。・病勢制御率(DCR)は便秘群で20.0%、非便秘群で78.8%と、便秘群で低い結果であった(p=0.00083)。・全生存期間(OS)は便秘群で79日、非便秘群で511日と、便秘群で有意な短縮を示した(p=0.0017)。 片山氏は、NSCLCのICIの治療効果や予後と患者の便通異常に有意な相関を認めた。このことは、ICI治療開始時の便通異常がICIの治療効果を予測しうる新たなバイオマーカーの1つである可能性を示した、としている。 以下、発表者 片山 勇輝氏(現在は京都鞍馬口医療センター)との一問一答この試験の実施背景として排便習慣に着目した理由はどのようなものですか? 2016~17年にかけて、悪性黒色腫において腸内細菌叢と免疫治療の効果についてのデータが発表されてきました。免疫チェックポイント阻害薬が奏効したメラノーマ患者では、腸内細菌叢が多様性に富んでいたという報告もあります。 一方、免疫チェックポイント阻害薬の使用機会が多いものの、肺がんでは、腸内細菌叢との関係は明らかではありません。ただ、腸内細菌叢の測定にコストがかかることもあり、まだ現実的ではありません。腸内細菌叢と排便習慣は関連性も示されていることから、簡便なマーカーとして排便習慣が使えないかと考え、このような研究を行いました。免疫チェックポイント阻害薬治療成功期間(TTF)全生存期間(OS)とも非便秘群で有意に長いという結果でしたが、これは臨床でどう考えるべきでしょうか。 従来、EGFR変異陽性例や、悪液質も含め全身状態の悪い例では免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいといわれていましたが、便秘もそういったマーカーの1つなのではないかと考えられます。非便秘、つまり排便良好は腸内細菌叢が良好だということでしょうか。 排便習慣といっても、カルテで回数を追跡したにとどまりますので、単純に非便秘イコール良好な腸内細菌叢の形成とはいえないと思います。今後の研究はどのようにお考えですか? 今回の研究は後ろ向きですが、今後は、前向きに排便習慣を確認しながら腸内細菌叢の関連も一緒に調査したいと考えています。ただ、がんではオピオイド誘発性の便秘になりがちですし、殺細胞性抗がん剤により腸内細菌叢も乱れますので、こういった交絡因子を除外することが必要だと思います。この点を明らかにためにも、今後のさらなる検討が必要だと思います。※医師限定肺がん最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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アテゾリズマブ、小細胞肺がんのOS、PFS改善(IMpower133)/NEJM

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)患者の1次治療はプラチナ化学療法とエトポシドの併用だが、20年以上大きな進歩はみられておらず、全生存期間(OS)中央値は10ヵ月程度である。一方で、小細胞肺がんは腫瘍変異負荷が高いことから、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待されている。そこで、小細胞肺がんに対する、カルボプラチン・エトポシドへの免疫チェックポイント薬アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)の追加効果を評価する第III相試験IMpower133が行われている。同試験の中間解析の結果がNEJM誌2018年9月25日号で発表された。アテゾリズマブ群のOSが有意に改善 IMpower133は、未治療のES-SCLC患者403例を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検第I/III相試験。・対象:全身治療未実施のES-SCLC患者(症状がない既治療のCNS病変を有する患者を含む)・試験薬:アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル・対照薬:プラセボ+カルボプラチン+エトポシド、21日ごと4サイクル・評価項目:治験医師評価による無増悪生存期間(PFS)およびOS 主な結果は以下のとおり。・201例がアテゾリズマブ群に、202例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は13.9ヵ月であった。・OSはアテゾリズマブ群12.3ヵ月、プラセボ群10.3ヵ月と、有意にアテゾリズマブ群で良好であった(HR:0.70、95%CI:0.54~0.91、p=0.007)。・1年OS率はアテゾリズマブ群52.7%、プラセボ群38.2%であった。・PFSはアテゾリズマブ群5.2ヵ月、プラセボ群4.3ヵ月と、有意にアテゾリズマブ群で良好であった(HR:0.77、95%CI:0.62~0.96、p=0.02)。・サググループをみてもこのアテゾリズマブ群で良好な結果であった。・安全性プロファイルは、すでに個々の薬剤で報告されているものと同様であった。 ES-SCLC患者の1次治療において、カルボプラチン・エトポシドへのアテゾリズマブの追加はOSおよびPFSを有意に改善した。 なお、この試験結果は、同時に第19回世界肺癌学会(WCLC2018)で発表された。

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