サイト内検索|page:3

検索結果 合計:60件 表示位置:41 - 60

41.

ここから始めよう!みんなのワクチンプラクティス ~今こそ実践!医療者がやらなくて誰がやるのだ~

第1回 ワクチンプラクティスって何?第2回 学ぶべき4つのVとは?第3回 その打ち方は正しいのか? Vaccinological principle (1)第4回 ルールに沿って、しかし速やかに第5回 本当の重要性を知る B型肝炎、ヒブ/小児肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (1)第6回 子供だけに必要なわけじゃない 破傷風、百日咳 Vaccine formulation & VPD (2)第7回 軽んじてはいけない 麻疹・風疹、日本脳炎 Vaccine formulation & VPD (3)第8回 知られざる合併症 水痘、ムンプス Vaccine formulation & VPD (4)第9回 誤解されている HPV、成人肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (5)第10回 教科書には載っていない Vaccinee第11回 4Vで3Cを実践しよう(1) Common schedule & Catch-up schedule第12回 4Vで3Cを実践しよう(2) Communication on vaccine 肺炎球菌、ヒブワクチンが定期接種化されるなど、改善の兆しを見せる日本のワクチン事情ですが、先進国から比べればまだまだ不十分な状況に変わりはありません。正しいワクチン接種によって、多くの小児の命が救われ、麻痺や難聴などの高度障害を減らせるのです。にもかかわらず、接種率の低さ、任意接種扱いのままのワクチンが複数あること、Tdapなどのブースターワクチンの未整備など、問題は山積みです。こういった状況でありながら医学部ではワクチンを単独の教科として時間配分することは少なく、ワクチンに不安を感じる母親とのコミュニケーションが図れず、臨床現場で戸惑うこともあるのではないでしょうか?このコンテンツでは同時接種の可否、接種間隔、望ましい投与経路、副反応、疫学状況や救済制度はどうなっているか、などの問いに一つずつ触れています。現場で悩む医師の拠り所となるべく、正しいワクチンの知識を分かりやすく解説。患者さんの不安を払拭するためのコミュニケーションスキルアップの実演もあります。第1回 ワクチンプラクティスって何?今までワクチンのことを系統立てて学んだことはありますか?ワクチンプラクティスとは積極的にワクチンの正しい知識を学び、積極的に必要なワクチンの提案とコミュニケーション、そして接種を行うことです。このワクチンプラクティスには3つの要素(3C)があります。この3Cを知ることで母子手帳の空欄を埋めるだけという受け身から脱却し、正しいワクチンプラクティスを実践することが出来るのです。第2回 学ぶべき4つのVとは?ワクチンプラクティスを行うためには、どんな知識が必要なのでしょう?学習領域は膨大です。4つのVで整理して考えましょう。 すなわち、Vaccinological principle(ワクチン学の原則)、Vaccine formulation(個別のワクチン製剤)、VPD(ワクチンで予防可能な疾患ワクチンで予防可能な疾患)、そしてVaccinee(ワクチンの被接種者)です。これらを総合的に理解することで、正しいワクチンプラクティスを行うことが出来るのです。第3回 その打ち方は正しいのか? Vaccinological principle (1)ワクチンの投与経路、異なるワクチン同士の投与間隔、同時接種。これらについては日本だけのルールも存在し、正しく理解されてないことが多くあります。ワクチン学的に何が正しいのか理解し、臨床現場ではどう対応すべきか学びましょう。第4回 ルールに沿って、しかし速やかに接種禁忌や副反応、その対応法を知っておきましょう。また、接種注意や見合わせについては、海外のプラクティスとかけ離れた独自の「日本ルール」があります。これらを踏まえておくとどのようなプラクティスを実践すれば良いのかがわかります。第5回 本当の重要性を知る B型肝炎、ヒブ/小児肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (1) B型肝炎ワクチンは水平感染や性行為感染症を防ぐ有効策です。ヒブ/小児肺炎球菌ワクチンは、侵襲性の感染症を防ぐだけでなく、日常診療でも非常に重要な意味を持ちます。個別のワクチンの重要性を理解することでワクチンプラクティスの幅が広がります。第6回 子供だけに必要なわけじゃない 破傷風、百日咳 Vaccine formulation & VPD (2) 10年ごとのブースターが必要な破傷風。ある年齢以上の方は基礎免疫も有していません。また、新生児には致命的な百日咳から小さな命を守るために周りの人々がその免疫を持つ必要があります。成人でもDPTに工夫を施し、ブースター接種を行いましょう。第7回 軽んじてはいけない 麻疹・風疹、日本脳炎 Vaccine formulation & VPD (3)海外では麻疹・風疹の排除達成国が多数ありますが、日本ではワクチン接種率が低いなどの理由で未だに流行し、後遺症で苦しむ方がいます。また日本脳炎の発症は稀ですが、予後は極めて不良です。しかしいずれもワクチン接種を行えば予防可能なVPDなのです。第8回 知られざる合併症 水痘、ムンプス Vaccine formulation & VPD (4)水痘やムンプスは「罹って免疫をつける疾患」ではありません。水痘の感染力は強く、小児病棟の閉鎖が容易に起こります。ムンプスによる難聴は年間3000例発生し、予後も極めて不良です。ワクチンプラクティスで発症を予防し、その誤解を解きましょう。第9回 誤解されている HPV、成人肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (5) その名称から誤解を生むワクチンがあります。いわゆる子宮頸癌ワクチンは未だ子宮頸癌を減らしたというエビデンスがありませんし、成人肺炎球菌ワクチンも市中肺炎の発症を減らせるわけではありません。接種と同時に正しい知識を伝えることが重要です。第10回 教科書には載っていない Vaccinee ワクチンは年齢で一律に打てばいいわけではありません。VPDの感染リスクや、その考え方等を理解しましょう。これらは被接種者で異なり、教科書には載っていません。コミュニケーションを図って情報を集め、正しいワクチンプラクティスを実践しましょう。第11回 4Vで3Cを実践しよう(1) Common schedule & Catch-up schedule接種が必要なワクチンは多数存在します。接種スケジュールを立てる際は早見表を上手に活用しましょう。また、キャッチアップスケジュールを立てる場合際には被接種者ごとにVPDの感染リスクや、ワクチンに対する本人やその保護者の考え方にも耳を傾けることが必要です。4Vを学んでいれば、スケジュールの立案などは恐れるに足りません。第12回 4Vで3Cを実践しよう(2) Communication on vaccineテーマはコミュニケーション。ワクチン接種には必須となります。「詳しい知識がない」、「偏った考えを持っている」、「忌避しようとする方」に対しては非常にデリケートなコミュニケーションが要求されます。まずは正しい知識を伝え、疑問や不安に真摯に応えていきましょう。ワクチンを忌避する保護者の方たちには、「願っているのは子供の健康である」という共通の基盤をもとにコミュニケーションを取り続けることが重要です。

42.

A群髄膜炎の新ワクチン、集団接種で罹患率94%低下/Lancet

 A群髄膜炎菌-破傷風トキソイド結合型ワクチン(PsA-TT)の集団接種は、A群髄膜炎の罹患率を9割以上減少させ非常に有効であることが、チャド・Centre de Support en Sante InternationalのD. M. Daugla氏らにより報告された。PsA-TTは、サハラ砂漠以南のワクチン開発プロジェクトにより開発された。2009年にインドで承認され2010年にはWHOによる安全性と免疫原性の事前承認を得て、現在“アフリカ髄膜炎ベルト地帯”で、本研究にも資金を提供しているビル&メリンダ・ゲイツ財団などの支援の下、接種キャンペーンが展開されているという。Lancet誌オンライン版2013年9月12日号掲載の報告より。PsA-TT接種キャンペーン実施地域で髄膜炎罹患率94%減少 Daugla氏らは、2009年1月~2012年6月のチャドの全国データから、PsA-TT接種キャンペーンの前後におけるA群髄膜炎の罹患率について調べ、同接種の効果について分析した。ワクチン接種キャンペーンを実施した地域では、より綿密な調査を行った。髄膜炎菌は脳脊髄液または中咽頭スワブから採取し、通常微生物・分子法で検査を行った。 2011年12月に10日間にわたって行われたPsA-TT接種キャンペーン中に同接種を受けた人は、チャドの首都N’Djamena周辺の3地域で約180万人(1~29歳)に上った。 分析の結果、2012年の髄膜炎流行期間の髄膜炎罹患率は、大規模なPsA-TT接種プログラムを実施しなかった地域では、10万人当たり43.8(人口870万人中3,809人)だったのに対し、同接種キャンペーンを行った3地域では、10万人当たり2.48(人口230万人中57人)と、粗罹患率で94%の減少(p<0.0001)、罹患率比は0.096(95%信頼区間[CI]:0.046~0.198)と、大幅な減少が認められた。接種都市ではA群血清型髄膜炎の報告例なし、周辺農村地域でも有意に減少 また同3地域ではA群血清型髄膜炎の報告例はなく、さらに首都に近い農村地域では、A群血清型髄膜炎が、ワクチン接種2~4ヵ月前には4,278人中32人(0.75%)に認められたが、ワクチン接種4~6ヵ月後には5,001人中わずか1人だった(補正後オッズ比:0.019、95%CI:0.002~0.138、p<0.0001)。 同研究グループは、「PsA-TTはA群血清型の侵襲性髄膜炎に対し非常に高い効果が認められた」と結論したうえで、「効果の持続期間についてさらなる研究が必要だ」とまとめている。

43.

下肢の創傷処置後に発症したガス壊疽は医療ミスであると判断されたケース

外科最終判決判例タイムズ 495号167-176頁概要交通事故によって右脛骨・腓骨複雑骨折、約30cmの右下腿挫創を受傷した44歳女性。来院後直ぐに生理食塩水2,500mLを用いてデブリドマンを行い、ドレーン2本を留置して縫合後、下腿の鋼線牽引を行った。ところが、受傷後1週間目の抜糸時に強烈な悪臭を発し、ガス壊疽を発症していることが判明。右下腿切断を余儀なくされた。詳細な経過患者情報とくに既往症のない44歳女性経過1973年10月22日16:00自転車に乗って交差点を直進中、出会い頭に貨物自動車と衝突し、道路端の溝に落ちて受傷。16:20救急病院に到着。意識は清明で、血圧110/70mmHg、脈拍88/分。右脛骨・腓骨複雑骨折、右下腿部挫創と診断。とくに右下腿の挫創はひどく、長さ約30cm、筋肉、骨に達する不整形の傷口であり、内部は泥や土砂で著しく汚染されていた。ただちに創部に対し生理食塩水2,500mLを用いたデブリドマン(所要時間約30~40分)を行い、ドレーンを2本残して創傷を縫合した。下腿骨折に対しては鋼線牽引を行い、感染予防の抗菌薬、破傷風トキソイドを投与した。10月24日ドレーンからは排液がなかったので抜去。10月29日縫合部位の抜糸を行ったところ、傷口から特異かつ強烈な悪臭がみられガス壊疽と診断。生命の危険があると判断し、右大腿の切断手術を行った。当事者の主張患者側(原告)の主張ひどく汚染された骨折であったのだから、ガス壊疽発症を予防する注意義務があるのに、病院側は十分なデブリドマンを行わず、しかも創傷を開放性に処置しなかったためにガス壊疽を発症し、右大腿切断を余儀なくさせた。病院側(被告)の主張下肢挫創に対し30~40分もの時間を費やして十分なデブリドマンを行っているので医師に落ち度はない。本件のようなガス壊疽は相当の注意を払っても防ぎようがない。裁判所の判断事故直後からひどく汚染されていた右下腿挫創は、通常の医師がみればガス壊疽の危険性がきわめて高い状態であったことを容易に予見できた。そのため、まず創傷部位の徹底したデブリドマンを行うべきであり、デブリドマンの徹底さに自信がなければ創傷を開放性に処置すべき注意義務があるのに、担当医師はガス壊疽が発症する割合は低いものと軽信し、適切な初期診療を行わず右大腿切断へ至ったのは過失である。原告側4,660万円の請求に対し、2,937万円の判決考察外傷を扱う第一線の医師にとりまして、このケースはとても厳しい判決内容だと思います。汚染された創部に対し、通常の創傷処置を施してはいるものの、「ガス壊疽発症・下腿切断」という最悪の結果だけに注目して医療過誤と判定されたようなものだと思います。そもそも、医療技術の進歩や抗菌薬の発達にともなって、ベテランの整形外科医でさえもガス壊疽に遭遇するチャンスは少なくなったようですが、ひとたびガス壊疽を発症すると、医事紛争へと発展する危険があるということを考えておく必要があります。本件のように交通事故で運ばれた患者さんの右下腿に、長さが30cmにも及ぶざっくりと割れたような挫創があり、しかも土や砂がこびりついて汚染がひどければ、誰でも感染予防を第一に考えて徹底的なデブリドマンを行い、とりあえずは傷を縫合して抗菌薬、破傷風トキソイドなどを投与する、というのが普通の考え方だと思います。今回の担当医師は、生理食塩水2,500mLを用いてブラシによる創部洗浄を行い、土砂をできる限り取り除き、ドレーンを2本留置して創部を縫合しました。もちろん、感染症予防のために抗菌薬を投与し、破傷風トキソイドも注射し、毎日包帯交換を行って創部の確認をきちんとしていたはずです。そして、ドレーンからの排液はみられなかったため、受傷後2日目にはドレーンを抜去、創部に感染傾向はないことを確認しながら受傷7日目の抜糸へと至りました。その後、抜糸の時にはじめてガス壊疽発症に気付いたことになります。裁判官は、「デブリドマンの徹底さに自信がなければ創傷を開放性に処置すべき注意義務がある」と判断しましたが、はたして、ざっくりと口を開けた30cmにも及ぶ筋肉や骨にまで達した下腿の傷を、「ガス壊疽が心配だ」という理由で最初から縫合しないで開放創にするということができるでしょうか。もし最初から開放創とした場合には、創部の乾燥による2次的な神経損傷や筋肉の障害が引き起こされ、長期的にみた予後として下肢の筋力低下、尖足などが予想されるため、ほとんどの医師はまず縫合を試みると思います。すなわち、受傷直後のひどく汚染された創をみて、のちのち感染症のおそれはあるけれども、あえて開放創として下肢の筋力低下や尖足を招くよりも、いったんは縫合して様子をみる、という治療方法を選択するのが一般的だと思います。しかも、500mLの生理食塩水を5本も使って洗浄・デブリドマンを施していますので、処置としては十分といえるレベルではないでしょうか。「デブリドマンの徹底さに自信がなければ・・・」と裁判官はいいますが、自分の処置に完璧な自信を持つというのはとても難しく、結果が悪かったことに注目して医師にすべての責任を求めるという考え方にはどうしても納得がいきません。このように、本件は医師の立場では到底承服できない点が多々ありますが、一方で判決が確定した背景には、もう一つきわめて重要な要素がありました。それはこのコーナーでもたびたび取り上げている、「カルテの記載不備」です。担当医師のカルテには、受傷1週間後のガス壊疽発症に気付くまで、創部を観察した記載はほとんどありませんでした。本件は日本でも一流とされている総合病院で発生した事故でしたので、おそらく、毎日創部の消毒・包帯交換を行っていたと推測されます。ところが、抜糸するまで創部の感染傾向はみられなかったことをきちんとカルテに記載していなかったために、「ひどく汚染された創なのにきちんと経過観察をしていないではないか」という判断につながったと思われます。日頃の臨床では、何か陽性所見があれば必ずカルテに記載すると思いますが、異常がみられなければ(陰性所見は)あえてカルテには記載はしない、という先生方が多いと思います。本件でも担当医師は、「毎日傷をみて異常がないことを確認していた。カルテに何も書かないということは異常はないことと同じである」と主張しましたが、そのことを裏付ける書面は一切存在しないため、裁判では採用されませんでした。もし、抜糸に至るまでのカルテ記載のなかで、「創部に発赤・腫脹なし。感染傾向なし」という記載があれば、「毎日の診療の中でガス壊疽を含む創部感染に注意を払っていた」ということが証明され、「ガス壊疽発症は不可抗力である」という考え方にも説得力があることになり、「デブリドマンの徹底さに自信がなければ創傷を開放性に処置すべき注意義務がある」などという理不尽な判決には至らなかった可能性が高いと思います。あらためて、日々のカルテ記載はきわめて重要であることを痛感しますし、もし医事紛争へと発展した場合には、自分の身を守る唯一無二の証拠は「カルテ」であることを再認識させられる貴重なケースです。外科

44.

百日咳ワクチン接種の副反応・かゆみを伴う硬結、その予後は?

 スウェーデン、イエーテボリで行われた先行研究において、1990年代に水酸化アルミニウムを含む沈降精製の百日咳トキソイドワクチンを接種した小児約7万6,000人のうち745例で、接種部位に持続性のかゆみを伴う硬結の発現がみられたことが報告されている。サールグレンスカ大学病院のAnette Gente Lidholm氏らは、当該小児の、ワクチンによって引き起こされたアルミニウムアレルギーの予後を調査した。Contact Dermatitis誌2013年5月号の掲載報告。 先行研究では硬結の副反応が報告された745例のうち、495例にアルミニウムアレルギーについてのパッチテストが行われた。Lidholm氏らは、それらテストを受けた被験児に対して、同一方法によるパッチテストを5~9歳時に行った。 主な結果は以下のとおり。・先行研究では、アルミニウムアレルギーについてのパッチテストを受けた495例のうち、376例(76%)で陽性反応が認められていた。・今回の5~9歳時の再テストには、初回テストで陽性反応が認められた被験児のうち241例が参加した。・再テストの結果、241例のうち186例(77%)で、アルミニウムに対する接触性アレルギーが明白にはみられなくなっていた。・ワクチン接種部位にかゆみを有していなかった小児の大半で、陰性のテスト結果が共通してみられた。・陰性のテスト結果は、年齢、初回接種からの期間、初回パッチテストでの反応の強さとも関連していた。・以上の結果を踏まえて著者は、「アルミニウムに対するパッチテストの反応性は、消失あるいは減弱するようである」と結論した。

45.

世界の死因は過去20年で大きく変化、心疾患やCOPD、肺がんなどが主因に/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の死因別死亡率の動向について、米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのRafael Lozano氏らがGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。世界の死因で感染症などは大幅に減少 GBD2010において研究グループは、世界187ヵ国から入手可能な死因に関わるあらゆるデータ(人口動態、言語剖検、死亡率サーベイランス、国勢調査、各種サーベイ、病院統計、事件・事故統計、遺体安置・埋葬記録)を集め、1980~2010年の年間死亡率を235の死因に基づき、年齢・性別に不確定区間(UI)値とともに算出し、世界の死因別死亡率の推移を評価した。 その結果、2010年に世界で死亡した人は5,280万人であった。そのうち最大の統合死因別死亡率(感染症・母体性・新生児期・栄養的)は24.9%であったが、同値は1990年の34.1%(1,590万/4,650万人)と比べると大幅に減少していた。その減少に大きく寄与したのが、下痢性疾患(250万人→140万人)、下気道感染症(340万人→280万人)、新生児障害(310万人→220万人)、麻疹(63万人→13万人)、破傷風(27万人→6万人)の死亡率の低下であった。 HIV/AIDSによる死亡は、1990年の30万人から2010年は150万人に増加していた。ピークは2006年の170万人であった。 マラリアの死亡率も1990年から推定19.9%上昇し、2010年は117万人であった。 結核による2010年の死亡は120万人であった。2010年の世界の主要死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDS 非感染症による死亡は、1990年と比べて2010年は800万人弱増加した。2010年の非感染症死者は3,450万人で、死亡3例のうち2例を占めるまでになっていた。 また2010年のがん死亡者は、20年前と比べて38%増加し、800万人であった。このうち150万人(19%)は気管、気管支および肺のがんであった。 虚血性心疾患と脳卒中の2010年の死亡は1,290万人で、1990年は世界の死亡5例に1例の割合であったが、4例に1例を占めるようになっていた。なお、糖尿病による死亡は130万人で、1990年のほぼ2倍になっていた。 外傷による世界の死亡率は、2010年は9.6%(510万人)で、20年前の8.8%と比べてわずかだが増加していた。その要因は、交通事故による死亡(2010年世界で130万人)が46%増加したことと、転倒からの死亡が増加したことが大きかった。 2010年の世界の主要な死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDSであった。そして2010年の世界の早期死亡による生命損失年(years of life lost:YLL)に影響した主要な死因は、虚血性心疾患、下気道感染症、脳卒中、下痢性疾患、マラリア、HIV/AIDSであった。これは、HIV/AIDSと早期分娩合併症を除き1990年とほぼ同様であった。下気道感染症と下痢性疾患のYLLは1990年から45~54%減少していた一方で、虚血性心疾患、脳卒中は17~28%増加していた。 また、主要な死因の地域における格差がかなり大きかった。サハラ以南のアフリカでは2010年においても統合死因別死亡(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が早期死亡要因の76%を占めていた。 標準年齢の死亡率は一部の鍵となる疾患(とくにHIV/AIDS、アルツハイマー病、糖尿病、CKD)で上昇したが、大半の疾患(重大血管系疾患、COPD、大半のがん、肝硬変、母体の障害など)は20年前より減少していた。その他の疾患、とくにマラリア、前立腺がん、外傷はほとんど変化がなかった。 著者は、「世界人口の増加、世界的な平均年齢の上昇、そして年齢特異的・性特異的・死因特異的死亡率の減少が組み合わさって、世界の死因が非感染症のものへとシフトしたことが認められた。一方で、サハラ以南のアフリカでは依然として従来死亡主因(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が優位を占めている。このような疫学的な変化の陰で、多くの局地的な変化(たとえば、個人間の暴力事件、自殺、肝がん、糖尿病、肝硬変、シャーガス病、アフリカトリパノソーマ、メラノーマなど)が起きており、定期的な世界の疫学的な死因調査の重要性が強調される」とまとめている。

47.

5価ロタウイルスワクチンの有効性、1回接種88%、2回接種で94%に

 5価ロタウイルスワクチン(RV5、商品名:ロタテック)について、3回接種を完了していなくても、ロタウイルス胃腸炎に対し有効性を示すことが報告された。米国・OptumInsight EpidemiologyのWang FT氏らが、3回接種を完了しなかった乳児を追跡した結果で、著者は「規定接種を完了しなかった場合のベネフィットを考えるうえで意義ある結果が得られた」と述べている。Pediatr Infect Dis J誌オンライン版2012年9月25日号の掲載報告。 大規模な国民健康保険金請求データベースを利用して、2コホートの乳児[RV5とジフテリア破傷風・百日咳混合ワクチン(DTaP)との同時接種を受けた乳児、DTapのみ接種の乳児]を、2007~2008年のロタウイルス・シーズン(1月1日~5月31日)間に追跡し、ロタウイルス胃腸炎またはあらゆる原因による胃腸炎で医療機関を受診した症例を特定した。 RV5の初回接種児、2回接種児のワクチンの有効性について、入院、救急外来受診、外来受診の減少を推定評価した。 主な結果は以下のとおり。・RV5初回接種児は4万2,306例、比較群のDTaP初回接種児は2万8,417例であった。RV5の2回接種児は4万3,704例、DTaPの2回接種児は3万1,810例であった。・RV5の1回接種による、ロタウイルス胃腸炎入院と救急外来受診に対する有効性は88%であった。全原因による胃腸炎入院と救急外来受診については44%であった。・RV5の2回接種による、ロタウイルス胃腸炎入院と救急外来受診に対する有効性は94%であった。全原因による胃腸炎入院と救急外来受診については40%であった。関連医療トピックス ・ロタウイルスの血清型と流行【動画】 ・子どもの問題行動に対する行動予防モデルSWPBISの影響 ・学校でのワクチン接種プログラムに対し、多くの開業医が自院経営面への影響を懸念

48.

『ボストン便り』(第42回)「神奈川県不活化ポリオワクチン政策の顛末」

星槎大学共生科学部教授ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー細田 満和子(ほそだ みわこ)2012年10月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。紹介:ボストンはアメリカ東北部マサチューセッツ州の州都で、建国の地としての伝統を感じさせるとともに、革新的でラディカルな側面を持ち合わせている独特な街です。また、近郊も含めると単科・総合大学が100校くらいあり、世界中から研究者が集まってきています。そんなボストンから、保健医療や生活に関する話題をお届けします。(ブログはこちら→http://blog.goo.ne.jp/miwakohosoda/)*「ボストン便り」が本になりました。タイトルは『パブリックヘルス 市民が変える医療社会―アメリカ医療改革の現場から』(明石書店)。再構成し、大幅に加筆修正しましたので、ぜひお読み頂ければと思います。●不活化ポリオワクチン接種のスタート2012年9月1日から、ポリオの予防接種は、それまでの生ポリオワクチンから、不活化ポリオワクチンに転換しました。今まで受けてきた、生/不活化ワクチンの数によって、今後受けなくてはならない不活化ワクチンの数は様々になります。さらに11月からは、不活化ポリオワクチンとDPT(ジフテリア、百日咳、破傷風混合ワクチン)を合わせた4種混合が導入されます。また、現在は任意接種のインフルエンザ菌b型(ヒブ)や肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルスなども定期接種にすべきという意見も強くあり、自費で接種を希望される保護者も少なくありません。このようにしてワクチン接種のスケジュールはますます複雑になってきますが、確実に予防接種が遂行されるようにと、各地の自治体は保護者に対する説明や広報の活動を行っています。行政職員達の忙しさは容易に想像されますが、ただし、いままでも地方自治体は、生ポリオワクチンに対する危惧からの接種拒否や接種控えがおこり、接種率が低下するという問題に直面し、職員は対応に苦慮していました。この背景は、いままでの「ボストン便り」で何度も触れたように、ポリオの会や一部の小児科医の働きかけによって、生ポリオワクチンにより100万人に3~4名程度(公式には1.4人)が実際にポリオに罹患してしまうこと、それを避けるためには不活化ワクチンを接種するという方法がとられることが、広く知られるようになってきたからです。こうして、安全性の高い不活化ポリオワクチンを子どもに受けさせたいと思う親御さんが増えたのです。一部の医療機関で個人輸入として使用されていた不活化ポリオワクチンは有料で、医療機関によっても異なりますが1回4,000円から6,000円で、3回受けると12,000円から18,000円になります。生ワクチンなら公費で無料なのにもかかわらず、多くの親御さんたちが有料の不活化ワクチンを選んできました。安全なワクチンを受けたいという当然の事を主張する保護者に対して、これまでほとんどの行政は、「生ワクチンを打ってください」とか、「もう少しで不活化になります」と苦し紛れで対応してきました。しかし、こうした事からやっと解放されると、忙しさの中で職員達はむしろ喜んでいるのではないかとも推察されます。しかし、このような対応をせずに、不活化を希望する親御さんに対しては、それを提供できる体制を整えてきた自治体があります。神奈川県です。神奈川県では黒岩祐治知事の決断で、2011年末から、不活化ポリオワクチン体制を独自に整えてきました。これは国が不活化ポリオワクチンに切り替えたために2012年8月31日をもって終了しましたが、ここではその動きを振り返ってみたいと思います。●神奈川県知事の決断神奈川県では従来、生ポリオワクチンの接種率は100%に近く、毎年約8万人が接種していました。ところが、2011年10月の時点で、1万7000人が無接種という事態に陥りました。黒岩氏はこの急激な接種率の低下を、生ポリオワクチンによってポリオに罹ることを恐れた親御さんたちの気持ちだと受けとめました。さらに黒岩氏は、かつて厚生労働省の予防接種部会の構成員を務めたこともあり、世界の感染症状況にも関心が高く、当時、中国の新疆ウイグル地区で野生株由来のポリオの集団感染が報告されたことにも危機感を持っていました。ポリオは、世界で99%は解消されましたが、あと1%の壁がなかなか破れず、いまだ撲滅されていない感染症なのです。万が一にでもポリオが発生したら大変なことになってしまいます。そこで黒岩氏は、当時国内未承認であった不活化ポリオワクチン接種を、県独自の判断として実施することを決断したのです。ところが、この黒岩氏の決断に対して、厚生労働大臣である小宮山洋子氏は、2011年10月18日の閣議後の記者会見において、「望ましいと思っていない」と批判しました。「国民の不安をあおって、生ワクチンの接種を控えて免疫を持たない人が増える恐れがある」と。こうして国と県とでワクチン政策に関する対立が起こった形になりました。確かに、中国で集団感染が報告されるように、ポリオは未だ終わっていない世界の大問題ですから、ワクチン未接種の子どもたちがいたら大変なことが起きる、という小宮山氏の発言は大いにうなずけるものがあります。しかし、ポリオを発症する危険性のある生ワクチンを接種すべきいうことは、どうしても理解できません。なぜなら、予防接種によってポリオに罹ることのない不活化ワクチンがあるからです。どうして接種控えをしているのかというと、親は、万にひとつでも、生ワクチンでポリオを発症するようなことがあったら子どもに申し訳ないと思うからです。この不活化ワクチンを望む親御さんたちの気持ちは、黒岩氏には届いていても、小宮山氏には届いていないようでした。●神奈川県職員の奔走神奈川県が独自に不活化ポリオワクチンの接種をすると決めても、県職員の足並みは必ずしも揃っていたわけではありませんでした。当時の状況を良く知る方の話によると、当初、県立病院に入院している重症の子どもだけを対象に接種するということでお茶を濁そうとしていた職員もいたといいます。しかし、実務の担当者は、知事の熱意と「お母さん達からの心の叫び」に応えるために、急ピッチで準備をしました。ここでは、こうした県職員の方々へのヒアリングを基に、神奈川県における不活化ポリオワクチン体制について、ワクチンの確保、医師の確保、そして場所の確保という観点からみてみます。まず、ワクチンの確保についてです。不活化ポリオワクチンは、当時は国の薬事承認や国家検定をまだ受けていない未承認薬でした。よって医師たちは「薬監証明」を取って、未承認薬の不活化ポリオワクチンを輸入し、子どもたちに接種していました。この「薬監証明」は、医師が個人でとることはできても、県がとって輸入するということは、制度上できないものです。そこで、県の担当者は、厚生労働省の担当者と交渉した結果、解決策を見出しました。それは、神奈川県で接種に携わる医師の名簿を作成し、その医師がワクチンを使うということで厚生労働省から「薬監証明」を出してもらうという仕組みです。このエピソードから、厚生労働省は、表向きの制度論上は不活化ポリオワクチンに渋い顔をしていたものの、運用上は生ワクチンからの切り替えを容認していたことがうかがえます。次に、医師の確保についてです。担当者は、神奈川県立こども医療センターと上足柄病院から、接種をしてくれる医師を出してもらい、県立病院機構に非常勤職員として所属してもらうことにしました。ただし県立子ども医療センターは、ここが最後の砦という感じの重症のお子さんがたくさんいらっしゃるので、なかなか医師を出してはくれませんでした。しかし、比較的高齢の医師達に非常勤で来てもらうということで、やっと最後には合意を取り付けることができました。この県立病院機構の非常勤の医師達が、不活化ポリオワクチンを輸入するということで「薬監証明」をとり、接種できる体制にしました。最後に場所の確保についてです。予防接種の場所として、県の4か所の保健福祉事務所が使われることになりました。その際は、具体的な手順の調整が大変だったといいます。どんな順路にするか、エレベーターや階段は十分に行き来できるスペースがあるか、きょうだいを連れてくる人もいるだろうから、その子たちが待っている場所はどうするかなど。あらゆる可能性を考えて、接種場所の準備をしたということでした。このようにして整備されてきた不活化ポリオワクチン接種体制ですが、接種価格についても議論になりました。その結果、安易に無料化しない、ということで1回6,000円になりました。それは、神奈川県内で独自に不活化ポリオワクチンの接種を行っている医師達に配慮するためです。医師達は補償などのことも含めて、自分でリスクを考えつつ、赤ちゃんのために不活化ワクチンを個人輸入してきました。そこに県が無料でポリオワクチンを接種する事にしたら、医師達は受診してくれる子どもたちを失うことになります。不活化ワクチンを有料で提供するのは、「県も独自にドロをかぶってやる」という県の姿勢を示すためにも必要だったのです。●不活化ポリオワクチンの開始不活化ポリオワクチンの予約は2011年12月15日から開始され、2012年3月31日で終了しました。この間に申し込みをした予防接種希望者は、5,647人でした。申し込みの取り消しも3,033人いましたので、実際に接種をした数は2,614人でした。この2,614人の接種希望者が、不活化ワクチンを1回ないしは2回接種したので、合計の接種実施回数は4,036回となりました。この4,036回の接種の裏には、さまざまなドラマがありました。不活化ポリオワクチンの接種は、2012年1月から始まりましたが、インフルエンザが大流行したので、1月と2月は1日に25人くらいしか接種できませんでした。その結果、4月の中旬の時点では、848人の接種しか終わっていませんでした。そこで4月中旬以降は、7か所に接種場所を増やして、1日60人くらいのペースで対応してきました。また、初めてのことなので接種前の問診は時間をかけてやったといいます。さらに接種した後も会場で30分は休んでもらうようにしました。もちろん小さな子が30分飽きずに待っていられるような遊び場も会場に設置しました。4月のある日、平塚市の不活化ポリオワクチンの接種会場を訪ねました。ゆったりとしたスペースで、保護者の方が安心した様子でワクチンを赤ちゃんに受けさせていました。半数以上の方がカップルで来ていて、子どもの健康に父親も母親も一緒に取り組んでいこうとしている様子がうかがえました。●独自体制の不活化ポリオワクチンを終えて神奈川県の不活化ポリオワクチン提供体制の整備は、市町村や医師達にもさまざまな影響を与えました。市町村は、国の意向に従って生ポリオワクチンを推進することになっていますから、神奈川県の独自の動きに対して戸惑いを隠せないことは明らかです。そこで神奈川県では、市町村に「迷惑がかからないように」気を付けてきたそうです。市町村の推奨する生ワクチンに不安のある方だけを対象に、その方々の受け皿として生ポリオワクチンを提供するという姿勢を貫き、市町村の保健行政を「邪魔しない」ことを示しました。また、神奈川県内では、県が不活化を始めた事でやりやすくなったと考えて、民間の病院や診療所でも不活化ポリオワクチンを輸入して提供するところが増えてきました。この影響は、県の不活化ワクチンの体制に影響を及ぼしました。わざわざ遠い県の施設に行くまでもなく、近くのクリニックで受けられるようになったからと、予約のキャンセルが相次いだのです。すべてがこの理由という訳ではありませんが、最終的には、3,033人が申し込みの取り消しをしました。価格がほぼ同じならば、県の施設でも近くのクリニックでも同じという事で、保護者は利便性を選んだのでしょう。県の当初のもくろみ通り、民間の医療機関への配慮が生きてきた訳です。一連の不活化ワクチン接種において、ワクチンの安全性が問題になったという報告や重篤な副反応の報告は1例もありませんでした。●ワクチン問題は終わらない今回、全国的に公費での不活化ワクチンが導入されることになりましたが、ワクチン問題はこれで終わったわけではありません。二つの点から指摘したいと思います。ひとつ目は、予防接種の受け手の側の問題です。お母さんたちは、赤ちゃんのリスクを減らそうとして生ワクチンを避けて不活化ワクチンを求めましたが、せっかく予約をとったからといって、赤ちゃんに38度の熱があっても予防接種を受けにくるお母さんもいたといいます。担当者がいろいろ説明すると、「いいから打てよ」「ごちゃごちゃ言ってないで、黙って打てよ」などと言われることもあったといいます。体調がよくないのにワクチンを打ったとしたら、赤ちゃんにとってのリスクが逆に高まってしまうことが、なかなか理解されないのでしょう。不活化ポリオワクチンが始まり、やがて4種混合が加わり、現在の任意接種も次々に法定接種化しそうな状況の中で、ワクチンや健康一般に対する保護者の持つ知識や情報は、限りなく重要なものになってきます。言われたことに従う、話題になっているから飛びつく、ということでは子どもの健康は守れません。親御さん達には、自分が守るのだという自覚を持って、ワクチンの効果もリスクも勘案した上で、判断できるようになる必要があると思います。これはヘルスリテラシーといわれるもので、今後、保護者の方がヘルスリテラシーの重要性に気づき、学んでゆくことが課題になると思われます。ふたつ目は、ワクチン行政の問題です。なぜ10年以上も前から、多くの感染症専門家が生ポリオワクチンから不活化ポリオワクチンへ移行すべきと表明していながらも、なかなか変わらなかったのか、ということを明らかにしなくてはなりません。その原因を放置していては、また同じことが起きるでしょう。また、国産の4種混合ワクチンが開発されたとのことですが、症例数が十分であったかなど、審査の経緯に対する疑問の声も上がっています。この点に関しては、機会を改めて検証してみたいと思います。●地域から変わることへの期待「行政や国の対応に、このやり方がベストというものはない」と、神奈川県の担当者はおっしゃっていました。また、「大変でしたけど、今となってはいい経験でした」とも。それは、これまで医療は国が音頭をとってすることが多いと思っていたけれど、地域でできる事も多い、ということが分かったからでした。地域の住民に応えるためには、地域行政は独自に動くべきなのだ、という意識を行政職員が持つことはとても貴重だと思います。この方は、インタビューの最後にこのようにおっしゃっていました。「これ(不活化ポリオワクチン:筆者挿入)は『誰も反対できない話』なんです。みんな、早く不活化にするように思っているんです。それはお母さんたちの心の叫びだからです。この叫びの声に応えたいんです。神奈川は、知事がいたからできたんです。黒岩さんでなければできなかったでしょうね。すごい知事が来たもんで、部下はきついですけどね。」住民と近い場所にいる地域の行政が、住民の気持ちに沿った政策をすべきと声をあげて、自ら動いてゆくことで、国を動かすような大きな力となってゆくことがあるでしょう。これからの地域の動きへの期待は高まり、目が離せません。謝辞:本稿の執筆に当たっては、神奈川県の職員の方々に貴重なお話をうかがい、資料提供をして頂きました。この場を借りて御礼を申し上げます。また、ナビタスクリニックの谷本哲也医師には、医学的な表記を監修して頂き、感謝いたします。略歴:細田満和子(ほそだ みわこ)星槎大学教授。ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー。博士(社会学)。1992年東京大学文学部社会学科卒業。同大学大学院修士・博士課程の後、02年から05年まで日本学術振興会特別研究員。コロンビア大学公衆衛生校アソシエイトを経て、ハーバード公衆衛生大学院フェローとなり、2012年10月より星槎大学客員研究員となり現職。主著に『「チーム医療」の理念と現実』(日本看護協会出版会)、『脳卒中を生きる意味―病いと障害の社会学』(青海社)、『パブリックヘルス市民が変える医療社会』(明石書店)。現在の関心は医療ガバナンス、日米の患者会のアドボカシー活動。

49.

DTaPワクチン5回接種後のワクチン効果持続期間は?

 ジフテリア破傷風・無細胞性百日咳(DTaP)混合ワクチンの5回目接種後、その効果は時間経過に伴い低下し、1年経過するごとに百日咳に罹患するリスクは平均42%増加することが報告された。米国・Kaiser Permanente Vaccine Study CenterのNicola P. Klein氏らがケースコントロール試験の結果、明らかにした。米国では、小児に対し、DTaPワクチンの5回接種を行っているが、5回接種後のワクチン効果の持続期間については不明だった。NEJM誌2012年9月13日号掲載の報告。百日咳が確認された277例と、そのコントロール群2種を比較研究グループは、米国カリフォルニア州の健康保険プラン「Kaiser Permanente Northern California」の加入者で、2006~2011年にDTaPの5回接種を受けており、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)検査を受けた子どもを対象にケースコントロール試験を行った。PCRで百日咳の陽性が確認された277例と、そのコントロール群として、(1)DTaPワクチンの5回接種を受けたPCR陰性の小児3,318例、(2)年齢や性別、人種などをマッチングさせた小児6,086例を設定し、比較した。なお、調査期間中の2010年には大規模発生が起きており、その対象児も含まれている。百日咳に対する防御能は5年間で減弱結果、PCR陽性群はPCR陰性群やマッチング群に比べ、DTaPワクチン5回目接種を受けてから、より長い日数が経過していた(それぞれ、p<0.001、p=0.005)。DTaPワクチン5回目接種を受けてから、時間の経過とともにPCR陽性者の割合は増加し、接種後1~2年で2.4%、3~4年で10.4%、6~8年で18.5%だった。PCR陽性群とPCR陰性群を比較した場合、DTaPワクチン5回目接種を受けてから1年経過するごとに、百日咳罹患に関するオッズ比は1.42(95%信頼区間:1.21~1.66)と、同罹患リスクは毎年42%増加することが示された。著者は、「DTaPワクチン5回接種後、百日咳に対する防御能は5年間で減弱した」と結論している。

50.

世界の5歳未満児死亡の最新動向:2000~2010年

 2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向調査の結果、全体に減少はしていたものの、医学的に死因が特定され割合が約3%であったこと、減少には感染症による死亡減少が大きく寄与していたことなどが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学(米国)のLi Liu氏らによる調査の結果で、「小児生存戦略はもっと、感染症や新生児期の主因など死亡原因へ目を向けなくてはならない。2010~2015年以降の減少をより迅速なものとするには、最も頻度の高い共通した死因、特に肺炎と早産の合併症の減少を促進することが必要だ」と報告。「質の高いデータを集めて推定方法を強化する継続的努力が、将来の改善にとって必須である」と結論している。「Lancet誌2012年6月9日号(オンライン版2012年5月11日号)掲載報告より。5歳未満児死亡の約4割が新生児、死因別では64%が感染症で死亡 Liu氏らは、2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向を調査するため、生後0~27週間の新生児、1~59ヵ月の5歳未満児の死亡総数のアップデートデータを集めて解析した。データは各国固有の死因区分が適用されているため、各国間のデータ適合を図ったり、死亡率が高い国に対して同様の多変量ロジスティック回帰モデルなどを作成適用するなどして調整を図り、インドと中国に関しては、国別モデルを作成し検討した。 集計結果から地域と世界の推定値を導き出した。 結果、2010年の5歳未満児死亡760万人のうち、64.0%(487万9,000人)は感染症が原因であった。また死亡の40.3%(307万2,000人)は新生児だった。医学的に立証できた5歳未満児の死亡原因はわずか2.7% 新生児死亡の主な原因は、早産の合併症[14.1%、107万8,000人、誤差範囲(UR):0.916~1.325]、分娩関連合併症(9.4%、71万7,000人、UR:0.610~0.876)、敗血症または髄膜炎(5.2%、39万3,000人、UR:0.252~0.552)だった。 幼児では、肺炎(14.1%、107万1,000人、UR:0.977~1.176)、下痢(9.9%、75万1,000人、UR:0.538~1.031)、マラリア(7.4%、56万4,000人、UR:0.432~0.709)が最も多かった。 一方で、関連データ同定の努力にもかかわらず、2010年に医学的に立証できた5歳未満児の死亡原因はわずか2.7%(20万5,000人)にとどまった。 2000~2010年の間の世界の5歳未満児死亡の減少は200万人で、肺炎(45万1,000人減)、はしか(36万3,000人減)、下痢(35万9,000人減)が全体的な減少に寄与していた。 国連のミレニアム開発目標4(2015年までに5歳未満乳幼児死亡率を1990年の3分の1に低減)達成に十分な年率で減少していたのは、破傷風、はしか、AIDS、マラリア(アフリカ)のみであった。

51.

無細胞百日咳を含む混合ワクチンの熱性痙攣リスク、てんかんリスクは?

ジフテリア破傷風・無細胞百日咳/ポリオ/ヘモフィルスインフルエンザb型菌(DTaP-IPV-Hib)混合ワクチンの接種後リスクについて、接種当日の熱性痙攣のリスクが、3ヵ月齢での接種第1回目、5ヵ月齢での接種第2回目当日のリスクは4~6倍に増大することが報告された。しかし、絶対リスクは小さく、てんかんのリスクについては増大は認められなかった。デンマーク・Aarhus大学のYuelian Sun氏らが、約38万人の乳幼児について行ったコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月22・29日号で発表した。これまで、全細胞百日咳ワクチンは熱性痙攣リスクを増大することが知られていたが、無細胞百日咳ワクチンについての同リスクとの関連は明らかではなかった。ワクチン接種後の熱性痙攣リスクと初回接種後てんかんリスクを評価研究グループは、デンマークで2003年1月1日~2008年12月31日に生まれた37万8,834人を対象に、2009年末まで追跡調査を行った。主要アウトカムは、生後3ヵ月、5ヵ月、12ヵ月で接種されるDTaP-IPV-Hibワクチン接種後7日以内(0、1~3、4~7日)の熱性痙攣発症と、初回ワクチン接種後のてんかんの発症(ハザード比)についてであった。自己対照ケースシリーズ法(SCCS)を用いて、相対罹患率を割り出した。結果、被験者のうち、生後18ヵ月以内に熱性痙攣を発症したのは7,811人だった。そのうち初回ワクチン接種後7日以内に発症したのは17人(0.8人/10万人・日)、第2回接種後の同発症は32人(1.3人/10万人・日)、第3回接種後の同発症は201人(8.5人/10万人・日)だった。初回ワクチン接種当日の熱性痙攣リスクは6倍、第2回接種当日の同リスクは4倍に全体として、ワクチンの1~3回接種後7日以内の熱性痙攣発症リスクは、参照コホートと比べて有意な増大は認められなかった。しかし、初回ワクチン接種当日(ハザード比:6.02、95%信頼区間:2.86~12.65)、第2回接種当日(同:3.94、2.18~7.10)で同リスクは有意に増大することが認められた。ただし、第3回接種当日の同発症リスクの増大はみられなかった。SCCSによる分析結果も、同様だった。てんかんの発症については、7年間の追跡調査期間中、ワクチン非接種群で131人、ワクチン接種群で2,117人の発症が認められた。ワクチン接種後3~15ヵ月に、てんかんであると診断されたのは813人(1,000人・年当たり2.4)、その後に診断されたのは1,304人(同1.3)だった。接種群と非接種群との比較で、てんかん発症リスクは、ワクチン接種後3~15ヵ月では低く(ハザード比:0.63、95%信頼区間:0.50~0.79)、その後は同等だった(同:1.01、0.66~1.56)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

52.

重大な食品汚染物質PFCは、子どものワクチン接種効果を半減

重大な食品汚染物質であることが明らかとなっているペルフルオロ化合物(PFC)は、子どもの免疫力を低下することが明らかとなった。米国・ハーバード大学公衆衛生院のPhilippe Grandjean氏らが、約600人の子どもの血中PFC値とワクチン効果との関連について行った、前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、5歳時で同値が高い子どもは、7歳時のジフテリア破傷風抗体レベルの低下するなどが認められたという。PFCは防水・防虫剤として食品包装材などに広く使われている。これまでの研究で、免疫応答が低下した齧歯目モデルの血中濃度と同レベルの血中濃度が米国人においても認められるが、PFC曝露の健康被害への影響については十分には解明されていなかった。JAMA誌2012年1月25日号掲載報告より。出生前後の血中PFC値と、5歳、7歳時の血中ワクチン抗体レベルとの関連を分析研究グループは、PFC曝露が幼児期のワクチン接種に対する免疫応答に影響するかを調べるため、1999~2001年にかけて、フェロー諸島で生まれた単胎児656例について追跡調査を行った。被験児の母親について妊娠32週時点で、および出生した被験児が5歳時に血中PFC値の測定をそれぞれ行った。被験児は全員、ジフテリア破傷風などの予防接種を受けており、その血中ワクチン抗体レベルを5歳時、7歳時に調べ、PFC値との関連を分析した。被験児のうち587例が2008年まで追跡された。母親の血中PFOSレベルが2倍高い群では、5歳時のジフテリア抗体濃度は39%減少結果、PFCのうち最も血中レベルが高かったのは、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)だった。この結果は、以前に報告された弁国での研究結果と同じだった。母親のPFCレベルと5歳児の抗体レベルとの逆相関が最も強かったのは、PFOSレベルで、母親の同値が2倍増大すると、子どもの5歳時のジフテリア抗体レベルは、39%減少(95%信頼区間:-55~-17)した。また、子どもの5歳時の主なPFCレベルが2倍増大すると、7歳時のジフテリア破傷風の抗体レベルは49%(同:-67~-23)減少した。5歳時点で血中PFOS濃度と血中PFOA濃度が2倍増大すると、7歳時の抗体レベルが臨床的防御値である0.1 IU/mLを下回るオッズ比は、ジフテリアについては2.38(同:0.89~6.35)、破傷風については4.20(同:1.54~11.44)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

53.

HIV感染の母親から生まれた非感染乳児、Hibなど抗体低値だがワクチン投与反応は良好

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染する母親から生まれたHIV非感染の乳児は、出生時のインフルエンザ菌b型ワクチン(Hib)や百日咳、肺炎球菌などの抗体値が、HIV非感染の母親から生まれた乳児に比べ、低いことが明らかになった。同時に、そうした乳児の、ルーチンのワクチン投与に対する反応は良好だったことも示されたという。英国Imperial College LondonのChristine E. Jones氏らが、南アフリカで100人超の妊婦とその乳児について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月9日号で発表した。母親がHIV感染の乳児、Hib、百日咳、肺炎球菌、破傷風の抗体値がいずれも低値Jones氏らは、2009年3月3日~2010年4月28日にかけて、南アフリカの首都ケープタウン近郊の旧黒人居住区であるカエリチャで、HIV感染・非感染の妊婦109人とその乳児について、地域ベースのコホート試験を行った。対象者のうち、HIVに感染する母親は47人(43%)だった。出生後に検査を行った幼児でHIV非感染だった100児について、出生時と出生後16週間の時点で抗体値を調べ比較した。これら被験者100児のうち、HIV感染の母親から生まれた乳児は46児だった。出生時の検査では、母親HIV感染群は非感染群に比べ、Hib(母親HIV感染群:0.37mg/L、 vs. 非感染群:1.02 mg/L、p<0.001)、百日咳(同16.07 FDA U/mL vs. 36.11 FDA U/mL、p<0.001)、肺炎球菌(同17.24mg/L vs. 31.97 mg/L、p=0.02)、破傷風(同0.08 IU/mL vs. 0.24 IU/mL、p=0.006)の抗体値が、いずれも低かった。ルーチン予防接種後の百日咳と肺炎球菌の抗体値は、母親HIV感染群の方が高値母親についても比較したところ、HIV感染群(46人)は非感染群(58人)に比べ、Hib(HIV感染群:0.67mg/L vs. 非感染群1.34mg/L、p=0.009)と、肺炎球菌(同33.47mg/L vs. 50.84mg/L、p=0.03)の抗体値は低かった。百日咳や破傷風の抗体値については、両群で同等だった。一方で、母親がHIV感染者の乳児はルーチンの予防接種に対する反応は良好だった。百日咳(母親HIV感染群:270.1 FDA U/mL vs. 非感染群:91.7 FDA U/mL、p=0.006)と肺炎球菌(同47.32mg/L vs. 14.77mg/L、p=0.001)については、母親HIV感染群の幼児の方が、接種後の抗体値が高かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

54.

ワクチン接種時の幼児に対する解熱薬のルーチンな予防投与は推奨されない

幼児に対するワクチン接種時のパラセタモール(別名アセトアミノフェン)の予防投与により、発熱の発症率は有意に低減するものの、ワクチン抗原に対する抗体反応を減弱させる場合があることがわかった。チェコ共和国・防衛大学陸軍保健科学部のRoman Prymula氏らの検討で判明したもので、同氏は「それゆえ、パラセタモールのルーチンの予防投与は推奨されない」としている。発熱はワクチン接種後の正常な炎症反応の一種だが、高熱や熱性痙攣の緩和を目的に解熱薬の予防投与が推奨されることがあるという。Lancet誌2009年10月17日号掲載の報告。パラセタモールの予防投与群と非予防投与群を比較する無作為化試験研究グループは、パラセタモールの予防投与がワクチン接種時の幼児の発熱やワクチン反応に及ぼす影響を評価する無作為化対照比較試験を実施した。チェコ共和国の10施設から459人の健常な幼児(登録時:生後9~16週、追加接種時:生後12~15ヵ月)が登録され、ワクチン接種後24時間以内に6~8時間毎にパラセタモールを3回予防投与する群(226人)あるいは同薬剤の予防投与を行わない群(233人)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は38℃以上の発熱の解熱効果とし、副次評価項目は免疫原性の獲得とした。予防投与群で、いくつかのワクチン抗原における抗体価の幾何平均値が有意に低下両群とも発熱が39.5℃を超える例はまれであった[初回接種時:予防投与群<1%(1/226人)、非予防投与群1%(3/233人)、追加接種時:予防投与群2%(3/178人)、非予防投与群1%(2/172人)]。少なくとも1回のワクチン接種後に38℃以上の発熱が見られた幼児は、予防投与群[初回接種時:42%(94/226人)、追加接種時:36%(64/178人)]が、非予防投与群[初回接種時:66%(154/233人)、追加接種時:58%(100/172人)]よりも、有意に少なかった。初回接種後の抗体価の幾何平均値(geometric mean concentration; GMC)は、10種の肺炎球菌ワクチンの血清型、抗ジフテリア抗体、抗破傷風抗体などで、予防投与群が非予防投与群よりも有意に低かった。追加接種後も、非予防投与群に比べ予防投与群で、全肺炎球菌ワクチン血清型、抗破傷風抗体、抗ジフテリア抗体の低い抗体価GMCが持続していた。著者は、「ワクチン接種時の解熱薬の予防投与により発熱をきたす幼児は有意に少なくなったが、いくつかのワクチン抗原に対する抗体反応を減弱させるため、ルーチンの予防投与は推奨すべきでない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

55.

武田薬品がノバルティスからHibワクチンを導入へ

武田薬品工業株式会社は26日、スイス・ノバルティス社と、インフルエンザ菌b型(以下、「Hib」)による感染症の予防を目的としたワクチン(以下、Hibワクチン)の導入に関する契約を締結したと発表した。今回、同社が導入するHibワクチン(製品名:Vaxem Hib)は、無毒化したジフテリア毒素と結合させることで免疫原性を高め、乳幼児においても有効に抗体を産生できるようにしたもの。今回の契約により、同社は、ノバルティス社製Hibワクチンの国内における独占的開発および企業化に関する権利と、同ワクチンを用いた各種混合ワクチンの全世界における開発、製造および企業化に関する権利を有することになるという。また、同社が海外において他社と共同で当該混合ワクチンを企業化する場合は、ノバルティス社が優先交渉権を有するとのこと。なお、本契約に基づき、同社はノバルティス社に対し契約一時金1億円を支払うとともに、販売時マイルストーンならびに販売額に応じたロイヤルティを支払うという。詳細はプレスリリースへhttp://www.takeda.co.jp/press/article_34370.html

56.

3種混合ワクチン接種の公式報告は実態反映せず

小児に対する3種混合ワクチンの実施状況は、実態調査に基づくデータと各国の公式報告の間に乖離が見られ、目的志向型かつ業績志向型のグローバル イニシアチブが過大な公式報告を助長している可能性があることが、ワシントン大学(アメリカ)健康基準/評価研究所のStephen S Lim氏らが行った系統的な解析で明らかとなった。Lancet誌2008年12月13日号掲載の報告。長年の懸案事項を検証子どものおもな死因を、ワクチンで予防可能な疾患が占める国は多い。それゆえ、小児予防接種の実現は保健システムの最重要事項とされ、「ミレニアム開発目標」にもMDG4として含まれる。小児予防接種の実施率向上を目指し、これまでにUniversal Childhood Immunisation(UCI)キャンペーンやGlobal Alliance on Vaccines and Immunisations(GAVI)などのグローバル イニシアチブを通じて多額の資金が投じられてきた。しかし、UCIやGAVIの予防接種サービス支援(ISS)のような目的志向型かつ業績志向型のイニシアチブは過大な報告を助長する可能性があるとの懸案が、長きにわたり存在するという。研究グループはこの懸案の検証を行った。193ヵ国における1986~2006年の入手可能な全データを用いてジフテリア/破傷風/百日咳3種混合ワクチン(DTP3)の粗実施率の傾向を系統的に検討した。また、各国の公式なDTP3実施報告と、実態調査に基づく実施率のずれを解析することで、UCIやGAVI ISSなどのグローバル ヘルス イニシアチブがDTP3実施の過大な報告を助長しているか否かを評価した。DTP3の粗実施率は段階的に改善、公式報告は実態とは異なる実態調査に基づくDTP3の粗実施率は、1986年の59%から1990年には65%、2000年には70%、2006年には74%にまで増加した。UCI期間中のDTP3実施の公式報告と、調査に基づく実施率には実質的な乖離が認められた。また、CAVI ISSによって、DTP3実施の公式報告と調査による実施率の差が有意に拡大した。2006年までに、公式報告によるDTP3接種小児の推定人数1,390万人に加えて、GAVI ISSの資金提供を受けた51ヵ国で新たに740万人の小児がDTP3の接種を受けた。調査で判明したDTP3接種を受けた小児の増加人数に基づいて解析を行ったところ、これに必要なGAVI ISSの提供資金は1億5,000万ドルと推算されたが、実際の支出額は2億9,000ドルに達していた。著者は、「実態調査に基づくDTP3予防接種の施行率は段階的に改善したが、各国の公式報告やWHO/UNICEFの推定から示唆されるレベルには達していなかった」と総括し、「小児予防接種が目的志向型のグローバル イニシアチブの主導で推進され、実績に基づいて資金提供が行われる時代においては、健康指標の独立かつ競争可能な(contestable)モニタリング法を確立することが急務である」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

57.

米国FDA、小児用3種混合ワクチンDAPTACELの5回目接種分を承認

サノフィ・アベンティスグループのワクチン事業部門であるサノフィパスツールは、ジフテリア破傷風、百日咳の予防を目的とした4~6歳の小児に対するDAPTACELワクチン(ジフテリア破傷風トキソイド、無細胞型百日咳沈降精製ワクチン)の5回目接種が、米国医薬品食品局により承認されたと発表した。DAPTACELワクチンは2002年に4回接種ワクチンとしてFDAの承認を取得、現在は2,4,6ヶ月齢と15-20ヶ月齢に接種されている。今回の承認により5回接種すべてに対する承認を取得した。詳細はプレスリリースへhttp://www.sanofi-aventis.co.jp/live/jp/ja/layout.jsp?scat=D85FC173-8D5D-4C22-94DB-93D72F0A86EC

58.

ワクチン接種は疾患発現減少に功を奏したか?

アメリカにおける全国的なワクチン接種プログラムの勧告は、対象疾患発現の減少、排除または根絶を目標に行われている。その目標は果たされているのか。CDC(疾病予防管理センター)のSandra W. Roush氏らワクチン予防接種専門調査委員会(Vaccine-Preventable Disease Table Working Group)は、2005年までに行われてきた13疾患対象の予防的なワクチン接種について、勧告・実行前後の罹患率および死亡率の比較を行った。JAMA誌11月14日号掲載の報告から。ワクチン対象13疾患の死亡率、罹患率を過去と現在で比較検証された13ワクチン対象疾患は、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、はしか、耳下腺炎、風疹(先天性風疹症候群を含む)、侵襲性のインフルエンザ桿菌b型(Hib)、急性B型肝炎、A型肝炎、水痘、肺炎球菌性肺炎と天然痘。ワクチン勧告前の基線データは、主要なデータソースからの代表的・歴史的に有名なデータとし、それらと直近の罹患率(2006年)、死亡率(2004年)とを比較した。主要評価項目は、疾患発現の症例数、死亡数と疾患による入院数。症例数は最低を記録するに至っているジフテリア、耳下腺炎、百日咳、破傷風は、1980年以前の状況よりも、ワクチン接種の勧告・実行によって、症例数は92%以上減少、死亡数は99%以上減少していた。地域流行性のポリオウイルス、はしか、風疹の伝染は、米国内では排除された。天然痘は、世界的に根絶に至っている。A型肝炎、急性B型肝炎、インフルエンザ桿菌b型、水痘を含む1980年以降にターゲットとされてきた大半のワクチン接種対象疾患については、症例数、死因数とも80%以上減少していた。侵襲性の肺炎球菌性肺炎は症例数は34%、死因数は25%減少していた。委員会は、「大部分のワクチン接種で予防可能とされる疾患の症例数は、最低を記録するに至っている。入院および死亡についても、減少は著しい」と述べ、ワクチンはバイオメディカルおよび公衆衛生の最も偉大な業績の1つであり、今後もワクチン開発・資金調達・調査・評価・配布に努力していくべきと結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

59.

健康・福祉サービスの充足は受給者の「権利」認識不足解消から

発展途上国の中でも特に社会・経済的地位の低い人々が、権利として与えられているはずの健康・福祉サービスを十分に受け取ることができていないのは、そもそもサービスを受け取れるという認識不足が原因ではないか。世界銀行(アメリカ・ワシントン)南アジア人財開発部門のPriyanka Pandey氏らは、世界でアフリカ・サハラ以南に次いで貧困層が多いインド(全人口の35%が1日1ドル未満で暮らす)を対象に、情報資源に乏しい農村部の人々に情報をもたらすことで、どれぐらいサービス送達量に変化が生じるのかを調査した。JAMA誌10月24日号掲載の報告から。インドでクラスタ無作為化試験本研究は地域ベースのクラスタ無作為化試験で、2004年5月~2005年5月の間、インド北部のUttar Pradesh州105村を対象とした。低カーストおよび中~高位カーストの世帯を含む497世帯の介入群と548世帯の対照群が、系統的サンプリング法で選択され行われている。介入群には、村単位で4~6回の公的ミーティングが開催され、権利として与えられている保健サービスおよび教育サービスと、村の自治権に関する情報が伝えられた。対照群には何も行われていない。主要評価項目は、助産師訪問の有無、妊婦が受ける権利を与えられている出生前検査と破傷風予防接種および出生前補助食品の授受、乳児が受けることができる予防接種、超過学費の請求、村議会会議の開催、そして村での発展的な動きとされた。1年後には介入群と対照群にかなりの違いが試験開始時は介入群と対象群で、健康・福祉サービスの送達状況に有意差は見られなかったが、1年後には両群間にかなりの違いが生じていた。出生前検査では30%以上の差が(P < 0.001)、破傷風予防接種27%以上(P < 0.001)、出生前補助食品24%以上(P = 0.003)、乳児予防接種25%以上(P = 0.004)が認められ、超過学費の請求は介入群で8ルピー減少した(P < 0.001)。また、村議会会議開催は21%以上の差(P = 0.01)があった。助産師訪問と村での発展的な動きについての改善は認められなかったが、前記の認められた有意な改善は、世帯のカーストの高低を問わず見られた。Pandey氏らは、「情報伝達を強化する教育的介入が、サービスの送達を改善することにつながるようだ」と結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

60.

民間保険加入小児に生じているワクチン投与格差

米国では最近5年間で小児および思春期の若者へのワクチンが倍増した。髄膜炎、3種混合(破傷風ジフテリア-百日咳)、A型肝炎、インフルエンザ、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)など新たにもしくは拡大推奨されたワクチンを、小児全員に投与するための公的セクターのコストは7.5倍(1995年155ドル→2007年1,170ドル)に膨らんだという。 ワクチン投与は罹患率の低下など効果をもたらす一方、州の政策立案者や臨床家から、ワクチン接種をカバーしないタイプの民間保険に加入する小児(2000年時点で約14%)の問題が指摘されるようになった。彼らのワクチンコストは州がカバーすることになっているが、その適用に格差が生じているというのである。 ハーバード大学メディカルスクール&ハーバード・ピルグリム・ヘルスケアのGrace M. Lee氏らは、格差の実態と原因を調査。JAMA誌8月8日号に詳細が報告された。州担当者にワクチン購入・供給について聞き取り本研究は、各州の予防接種プログラム・マネジャーへの2段階の聞き取り調査によって行われた。州保健局に雇用される予防接種プログラム・マネジャーは、公的資金で必要なワクチンを購入し、公的セクター(保健所など)や民間クリニックの臨床家に配布する役割を果たしている。第1 段階の調査は2005年11月~12月にかけて、それぞれ異なる資金調達方針を掲げる9人のマネジャーに対する、1時間に及ぶ質的な質問項目からなる電話インタビュー。第2段階は2006年1月~6月にかけて、全国50州のマネジャーを対象とする電話と書面による調査が行われた。回答が得られたのは48州(96%)。格差の原因は資金調達システムにその結果、髄膜炎ワクチンについて、公的資金での購入・供給を民間クリニックに対して行っていないと回答したのが30/43州(70%)、公的セクターにしていないと回答したのは17/43州(40%)に上った。肺炎球菌ワクチンについてはそれぞれ24/48州(50%)、8/48州(17%)だった。また10の州で、新規ワクチン購入資金が限られていることを理由に2004年~2006年前半の間に、私的保険加入小児が公的資金で購入した新規ワクチンを接種できないように州の政策を変更していた。米国では、保険未加入およびメディケイドなど公的保険に加入する小児へのワクチン投与は連邦政府が資金を提供するVFCプログラムによって保障される。マネジャーはこのVFC資金、セクション317と呼ばれる資金と、州が割り当てる予算でワクチンを購入するのだが、調査ではマネジャーから「私的保険加入児の前には連邦および州政府の財源不足という壁が立ちふさがっている」との指摘が相次いだ。こうした結果を踏まえLee氏らは、「子どもたちがすべてのワクチン接種を受けられるような資金調達システムの戦略が必要だ」と提起した。(武藤まき:医療ライター)

検索結果 合計:60件 表示位置:41 - 60