サイト内検索|page:8

検索結果 合計:632件 表示位置:141 - 160

141.

LDL-コレステロール:Still “The lower, the better!”(解説:平山篤志氏)

 1994年に発表された4S試験以来、スタチンによるLDL-コレステロール(LDL-C)の低下が心血管イベントを減少させることがすべての試験で示されてきた。ただ、その機序がスタチンのLDL-C低下作用だけによるものなのか? あるいは、抗炎症作用を含めたプレイオトロピック効果が加わることによるのか? 長い間の議論があった。2005年に発表されたIMPROVE-IT試験さらには2017年に発表されたFOURIER試験で、非スタチン製剤の追加投与でLDL-Cを低下させることでイベント減少効果が示され、LDL-C低下の効果から、“The Lower, The Better”という論文がNEJM誌に掲載された。 今回Lancet誌に掲載された韓国で行われたRACING試験は、ロスバスタチンの容量の差で生じるLDL-C低下の相違をエゼチミブの追加投与で補完することでイベントに差がでるかをみた試験であった。結果としてはLDL-C値が十分に両群で低下し(単剤群:67mg/dL、併用群:58mg/dL)イベントに差がなかった。言い換えれば、イベント低下には方法に関係なくLDL-Cを低下させることが重要であるという、“The Lower, The Better”を再確認した試験ということになる。ただ、これまでのすべての試験にはスタチンが基礎薬として組み込まれているので、スタチンのプレイオトロピック効果を否定するものではない。

142.

スタチン服用の日本人患者で発がんリスクが有意に低下

 スタチン製剤の服用によって、日本人の脂質異常症患者の発がんリスクが低下したことが報告された。東京理科大学の前田絢子氏らが、保険請求データを用いた大規模な人口ベースの後ろ向きコホート研究を行い、スタチン製剤と日本人患者における発がんリスクの関係を調査した。近年の調査において、スタチン製剤が特定のがんの発生率を低下させる可能性が示唆されている。しかし、臨床試験では明らかにされておらず、日本人患者での調査も限定的であった。Cancer prevention research誌オンライン版2022年8月2日掲載。スタチンの発がんリスク低下はとくに消化器がんで顕著 本調査の対象は、2006~2015年に脂質異常症と新たに診断された患者。日本の保険請求データを用い、期間中にスタチン製剤を服用開始した群(服用群)と、年齢・性別・診断年に応じて無作為に抽出した非服用群を比較した。解析対象は各群23,746例で平均追跡期間は約2年、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて評価した。 スタチン製剤と日本人脂質異常患者における発がんリスクの関係を調査した主な結果は以下のとおり。・スタチン服用群では、非服用群と比較して、有意に発がんリスクが低下した(調整ハザード比[aHR]:0.85、95%CI:0.72~0.97)。・サブグループ解析において、スタチン服用群の発がんリスクの低下は、とくに消化器がんで顕著であった(aHR:0.79、95%CI:0.63~0.99)

143.

中強度スタチン+エゼチミブ、ASCVD患者で高強度スタチンに非劣性/Lancet

 新たな心血管疾患のリスクがきわめて高いアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者の治療において、中強度スタチン+エゼチミブ併用療法は高強度スタチン単剤療法に対し、3年間の心血管死、主要心血管イベント、非致死的脳卒中の複合アウトカムに関して非劣性で、LDLコレステロール値<70mg/dLを維持している患者の割合が高く、不耐による投与中止や減量を要する患者の割合は低いことが、韓国・延世大学校医科大学のByeong-Keuk Kim氏らが実施した「RACING試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年7月18日号で報告された。韓国26施設の医師主導無作為化試験 RACING試験は、ASCVDの治療において、中強度スタチン+エゼチミブ併用療法は高強度スタチン単剤療法の代替となりうるかの検証を目的とする医師主導の非盲検無作為化試験であり、2017年2月~2018年12月の期間に、韓国の26施設で参加者の登録が行われた(韓国Hanmi Pharmaceuticalの助成による)。 対象は、高強度スタチン単剤療法を要するASCVD確定例(心筋梗塞の既往、急性冠症候群、冠動脈または他の動脈の血行再建術の施行歴、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患のうち少なくとも1つを有する)で、LDLコレステロール値<70mg/dLの患者であった。 被験者は、中強度スタチン+エゼチミブ(ロスバスタチン10mg+エゼチミブ10mg、1日1回、経口)の併用投与を受ける群、または高強度スタチン単剤療法(ロスバスタチン20mg、1日1回、経口)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、intention-to-treat集団における3年間の心血管死、主要心血管イベント(冠動脈または末梢動脈の血行再建術、心血管イベントによる入院)、非致死的脳卒中の複合で、非劣性マージンは2.0%とされた。3年時LDL-C値<70mg/dL:72% vs.58%、不耐による投与中止/減量:4.8% vs.8.2% 3,780例が登録され、併用療法群に1,894例、高強度スタチン単剤群に1,886例が割り付けられた。全体の平均年齢は64歳で、男性が75%を占め、40%に心筋梗塞の既往歴が、66%に経皮的冠動脈インターベンションの施行歴があり、37%は糖尿病であった。無作為割り付け前に、38%が高強度スタチン、36%が中強度スタチン、13%は中強度スタチン+エゼチミブの投与を受けていた。追跡期間中央値は3年で、3,622例(95.8%)が3年の追跡を完了した。 主要エンドポイントは、併用療法群が172例(9.1%)で、高強度スタチン単剤群は186例(9.9%)で発生し(絶対群間差:-0.78%、90%信頼区間[CI]:-2.39~0.83)、非劣性マージンが満たされた。 主要エンドポイントの個々の要素については、心血管死は併用療法群が0.4%、高強度スタチン単剤群は0.3%(ハザード比[HR]:1.34、95%CI:0.46~3.85、p=0.59)、主要心血管イベントはそれぞれ8.1%および8.9%(HR:0.91、95%CI:0.73~1.14、p=0.41)、非致死的脳卒中は0.8%および0.7%(HR:1.07、95%CI:0.52~2.22、p=0.85)で発生した。 1、2、3年時に、LDLコレステロール値<70mg/dLを維持していた患者の割合は、併用療法群がそれぞれ73%、75%、72%であったのに対し、高強度スタチン単剤群は55%、60%、58%で、群間の絶対差は1年時が17.5%(95%CI:14.2~20.7)、2年時が14.9%(11.6~18.2)、3年時は14.8%(11.1~18.4)であり、いずれも併用療法群で有意に優れた(すべてp<0.0001)。 また、試験薬への不耐が原因の投与中止または減量は、併用療法群が4.8%と、高強度スタチン単剤群の8.2%に比べ有意に少なかった(p<0.0001)。 著者は、「これらの知見は、高強度スタチン療法を要すると考えられるが、副作用のリスクが高い、またはスタチン不耐の患者では、スタチンの用量を倍増するのではなく、できるだけ早期に中強度スタチンへのエゼチミブの併用を考慮するアプローチを支持するものである」としている。

144.

利尿薬の処方カスケードを発見し、高尿酸血症薬の中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第49回

 今回は、処方カスケードを起こしやすい薬剤の代表である利尿薬と高尿酸血症治療薬に関する提案です。処方カスケードを発見するには処方順序や経緯を知ることが重要です。薬歴に処方開始の理由やその後のフォロー内容をまとめておくことで、処方カスケードを食い止めるきっかけになります。患者情報90歳、男性(施設入居)基礎疾患左放線冠脳梗塞、認知症、高血圧服薬管理施設職員処方内容1.オルメサルタンメドキソミル・アゼルニジピン配合錠HD 1錠 朝食後2.クロピドグレル錠50mg 1錠 朝食後3.ラベプラゾール錠10mg 1錠 朝食後4.アトルバスタチン錠10mg 1錠 朝食後5.フェブキソスタット錠10mg 1錠 朝食後本症例のポイントこの患者さんは脳梗塞の既往があるものの、施設内独歩が可能で、排泄や食事も自立していて、ADLは良好でした。血圧の推移は130〜140/70〜80であり、現行の治療薬で安定していました。高尿酸血症治療薬を服用していますが、痛風発作の既往はありません。代理で訪問診療に同行することになったため、担当薬剤師の薬歴を確認したところ、「OP:尿酸値のフォロー、過去にアゾセミド服用」とありました。記録をさかのぼって確認すると、過去に下腿浮腫のためアゾセミド錠30mgを服用していたことがわかりました。その1ヵ月後の血液検査では尿酸値:11.3mg/dLと高値であったことから、フェブキソスタット10mgが追加されていました。その2週間後には下腿浮腫は消失したため、アゾセミドは中止となっていました。<薬歴から考察したこと>(1)アゾセミドによる尿酸値上昇→フェブキソスタット追加アゾセミドなどのループ利尿薬は、尿酸と同じトランスポーターを競合的に阻害するため、尿酸排泄が低下したと考えられる。利尿作用により腎糸球体ろ過量が減少し、尿酸排泄が低下した可能性もある1)。これらの作用により尿酸値が上昇し、フェブキソスタットが追加されたのではないか。(2)アゾセミド中止後の高尿酸血症の治療評価が必要今回の尿酸値上昇は、原発の高尿酸血症の可能性は低く、アゾセミドによる二次性の高尿酸血症と考察した。そのためアゾセミド中止後の尿酸値のフォローは重要であり、純粋なフェブキソスタットの治療評価とはせずに、継続の必要性を検討する必要がある。以上のことから、高尿酸血症の治療評価を医師に直接提案することとしました。処方提案と経過医師に、上記の(1)(2)の考察を共有し、都合のよいタイミングで採血を行って高尿酸血症の治療評価ができないか相談しました。ちょうど定期採血のタイミングであったことから、すぐに尿酸値や腎機能を評価することとなりました。2週間後の診療で共有された血液検査の結果は、尿酸値:3.6mg/dL、Scr:0.89mg/dL、BUN:17.5mg/dLであり、フェブキソスタットは中止となりました。その後の定期採血結果でも、尿酸値:6.7mg/dLと基準値内を推移していて、関節痛の症状や母趾の腫脹などの痛風症状もなく、無症状で経過しています。薬歴には、「OP:高尿酸血症治療管理 ●月●日〜フェブキソスタット中止(中止時の尿酸値:3.6mg/dL→中止後の尿酸値:6.7mg/dL)。再上昇に注意して要モニタリング」と変更の経緯とその後のフォロー内容を残しました。1)ダイアート錠 インタビューフォーム

145.

同時懸濁による配合変化が生じたため最適処方を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第48回

 今回は、経管投与のトラブルを解決した処方提案を紹介します。薬剤を経管投薬する際は簡易懸濁法がとても便利ですが、崩壊・懸濁の可否に加えて、同時懸濁による配合変化も事前に確認しましょう。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患アテローム血栓性脳梗塞、右内頚動脈狭窄症、認知症、膀胱がん術後服薬管理施設職員処方内容1.クロピドグレル錠75mg 1錠 朝食後2.アスピリン腸溶錠100mg 1錠 朝食後3.イルソグラジン口腔内崩壊錠4mg 1錠 朝食後4.ロスバスタチン口腔内崩壊錠2.5mg 1錠 朝食後5.酸化マグネシウム錠330mg 4錠 朝夕食後6.センナ・センナ実顆粒 1g 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんは、直近で脳梗塞を急性発症して入院し、内服調整ののち退院しました。退院処方では抗血小板薬が2剤追加されていました。大脳が広範囲にわたって梗塞していたことから意識障害があり、むせこみも強いことから、経鼻胃管を挿入して経管投薬を継続する指示となっていました。退院してまもなく、施設看護師より経鼻チューブが詰まりやすいのでどうにかならないかという相談がありました。施設を訪問し、退院処方の内容を確認していると、簡易懸濁法による薬剤投与にいくつか問題があることに気付きました。<簡易懸濁法での薬剤投与の問題1)>(1)簡易懸濁法に適していない薬剤があるセンナ・センナ実顆粒(商品名:アローゼン顆粒)は簡易懸濁法で崩壊・懸濁しづらく、通過困難から経鼻チューブを詰まらせていた可能性がある。(2)複数薬の同時懸濁で配合変化の問題がある酸化マグネシウムは崩壊・懸濁後の液性が強アルカリ(pHが約10)となり、配合変化において問題となる薬剤の代表格である。本事例においては、クロピドグレルが酸化マグネシウムとの同時懸濁によりクロピドグレル(イオン形)から水に難溶性で粘性のあるクロピドグレル(分子形)に変化したことで、チューブを閉塞させた可能性がある。また、経管投与量自体が減少している可能性もある。2)そこで、簡易懸濁法による投与を最適化するための提案をトレーシングレポートと電話で実施することにしました。処方提案と経過医師に、上記の問題(1)(2)より、現行の処方薬では簡易懸濁法による投与が困難であること説明しました。改善策として、(1)簡易懸濁が困難なセンナ・センナ実顆粒を、簡易懸濁可能なピコスルファートナトリウム錠2.5mgに変更することを提案しました。また、(2)クロピドグレル錠と酸化マグネシウム錠に関しては、同時懸濁による配合変化を避けるため、酸化マグネシウム錠の処方コメントとして、別包にして同時に懸濁しない旨を処方箋に追記するよう依頼しました。医師より、その場で承認が得られたため、当日中に変更内容を反映した対応を開始しました。その後は、経鼻チューブの閉塞もなく、排便コントロールも安定していることを確認し、現在もモニタリングしています。1)藤島一郎監修, 倉田なおみ編集. 内服薬 経管投与ハンドブック 〜簡易懸濁法可能医薬品一覧〜 第3版. じほう;2015.2)Aoki M, et al. J Pharm Health Care Sci. 7;18: 2021.

146.

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版、主な改訂点5つ/日本動脈硬化学会

 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版が5年ぶりに改訂、7月4日に発刊された。本ガイドライン委員長の岡村 智教氏(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学 教授)が5日に開催されたプレスセミナーにおいて動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の変更点を紹介した(主催:日本動脈硬化学会)。 今回の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の改訂でキーワードとなるのが、「トリグリセライド」「アテローム血栓性脳梗塞」「糖尿病」である。これを踏まえて2017年版からの変更点がまとめられている動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の序章(p.11)に目を通すと、改訂点が一目瞭然である。なお、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版のPDFは動脈硬化学会のホームページより誰でもダウンロードできる。<動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の主な改訂点>1)随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG)の基準値を設定した。2)脂質管理目標値設定のための動脈硬化性疾患の絶対リスク評価手法として、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患をエンドポイントとした久山町研究のスコアが採用された。3)糖尿病がある場合のLDLコレステロール(LDL-C)の管理目標値について、末梢動脈疾患、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)合併時、または喫煙ありの場合は100mg/dL未満とし、これらを伴わない場合は従前どおり120mg/dL未満とした。4)二次予防の対象として冠動脈疾患に加えてアテローム血栓症脳梗塞も追加し、LDL-Cの目標値は100mg/dL未満とした。さらに二次予防の中で、「急性冠症候群」「家族性高コレステロール血症」「糖尿病」「冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併」の場合は、LDL-Cの管理目標値は70mg/dL未満とした。5)近年の研究成果や臨床現場からの要望を踏まえて、新たに下記の項目を掲載した。 (1)脂質異常症の検査 (2)潜在性動脈硬化(頸動脈超音波検査の内膜中膜複合体や脈波伝播速度、CAVI:Cardio Ankle Vascular Indexなどの現状での意義付) (3)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH) (4)生活習慣の改善に飲酒の項を追加 (5)健康行動倫理に基づく保健指導 (6)慢性腎臓病(CKD)のリスク管理 (7)続発性脂質異常症動脈硬化性疾患予防ガイドライン改訂に至った主な理由 1)について、「TGは食事の摂取後は値が上昇するなど変動が大きい。また空腹時でも非空腹時でも値が高いと将来の冠動脈疾患や脳梗塞の発症や死亡を予測することが国内の疫学調査で示されている。国内の疫学研究の結果およびESC/EASガイドラインとの整合性も考慮して、空腹時採血:150mg/dL以上または随時採血:175mg/dL以上を高TG血症と診断する」とコメントした(参照:BQ5)。 2)については、吹田スコアに代わり今回の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では久山町研究のスコアを採用している。その理由として、同氏は「吹田スコアの場合、研究アウトカムが心筋梗塞を含む冠動脈疾患発症で脳卒中が含まれていなかった。久山町研究のスコアは、虚血性心疾患と、脳梗塞の中でとくにLDL-Cとの関連が強いアテローム血栓性脳梗塞の発症にフォーカスされていた点が大きい」と説明(参照:BQ16)。 3)については、ESC/EASガイドラインでの目標値、国内のEMPATHY試験やJ-DOIT3試験の報告を踏まえ、心血管イベントリスクを有する糖尿病患者の一次予防において、十分な根拠が整っている(参照:FQ24)。 4)については、国内でのアテローム血栓性脳梗塞が増加傾向であり、再発予防が重要になるためである。また二次予防の場合、糖尿病の合併がプラーク退縮の阻害要因となることなどから「これまで厳格なコントロールは合併症などがあるハイリスクの糖尿病のみが対象だったが、今回の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版より糖尿病全般においてLDL-C 70mg/dL未満となった」と解説した。 5)の(7)続発性脂質異常症は新たに追加され(第6章)、他疾患などが原因で起こる続発性なものへの注意喚起として「続発性(二次性)脂質異常症に対しては、原疾患の治療を十分に行う」とし、甲状腺機能低下症など、続発性脂質異常症の鑑別を行わずに、安易にスタチンなどによる脂質異常症の治療を開始すると横紋筋融解症などの重大な有害事象につながることもあるので注意が必要、と記載されている。<続発性脂質異常症の原因>1.甲状腺機能低下症 2.ネフローゼ症候群 3慢性腎臓病(CKD)4.原発性胆汁性胆嚢炎(PBC) 5.閉塞性黄疸 6.糖尿病 7.肥満8.クッシング症候群 9.褐色細胞腫 10.薬剤 11.アルコール多飲 12.喫煙――― このほか同氏は、「LDL-Cのコントロールにおいて飽和脂肪酸の割合を減らすことが重要(参照:FQ3)」「薬物開始後のフォローアップのエビデンスレベルはコンセンサスレベルだが、患者さんの状態を丁寧に見ていくことは重要(参照:BQ21)」などの点を補足した。 2007年版よりタイトルを“診療”から“予防”に変更したように、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版は動脈硬化性疾患の予防に焦点を当てて作成されている。同氏は「すぐに薬物治療を実行するのではなく、高リスク病態や他疾患の有無を見極めることが重要。治療開始基準と診断基準は異なるので、あくまでスクリーニング基準であることは忘れないでほしい」と締めくくった。

147.

無症候性内頚動脈狭窄症に対する内科治療の高い発症抑制効果が確認された(解説:高梨成彦氏)

 本研究では内科治療を適用されたNASCET 70~99%の無症候性高度頸動脈狭窄症患者において、同側脳卒中の発症率が5年間で4.7%と、過去の報告よりも低く抑えられたことが報告された。 観察期間中のスタチンと降圧薬のアドヒアランスはそれぞれ70.7%、88.5%と高い水準に保たれており、血中LDLコレステロール濃度と血圧は正常範囲内に管理されていた。近年の進歩した内科治療によって脳卒中の発症率が低く抑えられたと考えられる。 この結果を踏まえると、無症候性頸動脈狭窄症については発見時の狭窄度だけを根拠に血行再建術を適用することはできないだろう。本研究ではNASCET 90%以上の狭窄をhigh-grade stenosisと分類して狭窄度の進行を観察している。そして同側脳卒中を発症した患者のうち24.1%が観察中にhigh-grade stenosisに進行した患者で、12.8%は閉塞を来した患者であった。 無症候性高度頸動脈狭窄症患者の中でも狭窄が進行した患者については脳卒中発症リスクが高く、血行再建術の適応がある可能性が示唆される。 他の研究では、超音波検査で低輝度を呈するプラークを認めた患者では同側脳卒中発症の相対危険度が2.31と高かったという報告(Gupta A, et al. Stroke. 2015;46:91-97.)や、経頭蓋ドップラーでembolic signalを認めた患者では同側脳卒中発症の相対危険度が6.37と高かったという報告(Markus HS, et al. Lancet Neurol. 2010;9:663-671.)がある。 無症候性頸動脈狭窄症患者に対しては基本的に内科治療を適用し、前述のような狭窄度以外の因子を考慮して脳卒中発症の危険性が高いことが予想される患者を選択し、血行再建術の適応を判断する必要があるだろう。

148.

COVID-19治療の薬物相互作用による有害事象、半数はチェッカーで特定可能

 COVID-19感染流行初期にはドラッグ・リポジショニングと呼ばれる、別の疾患に対して開発・承認された薬剤が投与されてきた。2022年6月末現在、国内ではCOVID-19治療薬として8つの薬剤が承認されているが、世界のCOVID-19患者における薬物相互作用(DDI)に起因する有害事象を特定することを目的としたシステマティック・レビューがJAMA Network Open誌2022年5月号に掲載された。 イタリア・サレルノ大学のValeria Conti氏らによる本研究は、以下の手順で行われた。1)欧州医薬品庁(EMA)とイタリア医薬品庁のウェブサイト、ClinicalTrials.govデータベース、および文献データを参照し、パンデミック時に使用されたすべての医薬品を特定。2)Drugs.com、COVID-19 Drug Interactions、LexiComp、Medscape、およびWebMDの薬物相互作用チェッカーを使用して、1)で特定された各薬剤に関連するDDIの可能性を検索。3)PubMed、Scopus、Cochraneで2020年3月1日~2022年2月28日に発表された論文から、CODID-19患者のDDIに関連する有害事象を検索。4)3)で特定されたDDIが2)のツールを使用することで特定され得たかどうかを評価。 主な結果は以下のとおり。・全体で1297例の患者が登録された、計20の研究が解析に含まれた。46種類の薬剤による56種類のDDIの可能性が特定された。・58種類の薬物の組み合わせによる、575件のDDIが報告された。58種類の薬物組み合わせのうち15(26%)は分析したすべてのツールで特定可能であり、29(50%)は少なくとも1つのツールで特定可能、14(24%)は特定不可能だった。・最も深刻なDDIはアミオダロンとロピナビル・リトナビル、シンバスタチンとロピナビル・リトナビルとの併用によるもので、Medscapeでは禁忌(2[3%])、WebMDでは併用禁止(2[4%])と分類された。・最も一般的な有害事象はQT間隔の延長で、他の有害事象と併発した場合は8例の死亡につながった。

149.

無症候性高度頸動脈狭窄症、外科的介入なしの脳梗塞発症率は?/JAMA

 外科的介入を受けなかった無症候性高度頸動脈狭窄症患者において、頸動脈病変に関連した同側の急性虚血性脳卒中の推定発生率は5年間で4.7%であることが、米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニア(KPNC)のRobert W. Chang氏らによる後ろ向きコホート研究で示された。近年、医療が進歩しており、また、内科的治療と外科的治療の最新の比較データがないため、無症候性高度頸動脈狭窄症の最適な管理方法は不確かである。著者は、「今回の知見は、無症候性高度頸動脈狭窄症患者に対する外科的治療と内科的治療に関する意思決定に役立つだろう」とまとめている。JAMA誌2022年5月24日号掲載の報告。無症候性で狭窄率70~99%の高度頸動脈狭窄症患者3,737例について調査 研究グループは、KPNC(医療センター/病院21施設、会員450万人以上の統合医療システム)のデータを用い、2008~12年の間に無症候性高度頸動脈狭窄症(Society of Radiologists in Ultrasound Consensus基準、またはNASCET法で70~99%狭窄)と診断された患者で、同側の頸動脈インターベンション(頸動脈内膜切除術または頸動脈ステント留置)歴ならびに過去6ヵ月以内の脳卒中または一過性脳虚血発作既往歴がない成人患者を対象に、2019年12月31日まで追跡した。 主要評価項目は、頸動脈病変に関連した同側の急性虚血性脳卒中(脳梗塞)の発生であった。死亡、KPNC会員脱退または同側の頸動脈インターベンション実施があった時点で打ち切りとした。 2008~12年に頸動脈狭窄症のスクリーニングを受けた9万4,822例のうち、3,737例(平均[±SD]年齢73.8±9.5歳、男性57.4%)、標的動脈4,230本が適格基準を満たした。同側脳梗塞の平均年間発症率は0.9% 3,737例(標的動脈4,230本)のうち、2,314例(標的動脈2,539本)は試験終了時点までにインターベンションを受けていなかった。 平均追跡期間4.1±3.6年において、インターベンション前の同側脳梗塞は129例133件発生し、平均年間発症率は0.9%(95%信頼区間[CI]:0.7~1.2)であった。 Kaplan-Meier法による同側脳梗塞の5年累積発生率は、インターベンションを受けた患者で4.7%(95%CI:3.9~5.7)、受けなかった患者で4.1%(3.3~5.0)であった。 多変量Cox回帰分析では、年齢(10歳増加することに補正後ハザード比[HR]は1.25、95%CI:1.02~1.53、p=0.03)、ベースラインの超高度病変(NASCET法で90~99%狭窄またはPSV≧350cm/s)(補正後HR:1.73、95%CI:1.06~2.84、p=0.03)、非同側脳梗塞の既往(2.81、1.63~4.84、P<0.001)が同側脳梗塞に関連する有意な独立変数として認められた。 また、追跡期間中のスタチンの使用は、脳梗塞のリスク低下と関連していた(補正後HR:0.38、95%CI:0.21~0.72、p=0.003)。

150.

血圧コントロールのため慢性心不全治療の見直しを提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第47回

 今回は、心不全患者の降圧薬の処方提案について紹介します。高血圧が理由でデイサービスの利用に影響が生じた場合は降圧だけに着目しがちですが、慢性心不全の標準治療薬を見直して心不全そのものをコントロールすることで、血圧やうっ血などの改善も兼ねられます。患者情報70歳、女性(グループホーム入居)基礎疾患慢性心不全(HFrEF)、心房細動、狭心症、高血圧服薬管理施設管理処方内容1.クロピドグレル錠75mg 1錠 朝食後2.ジゴキシン錠0.125mg 1錠 朝食後3.ランソプラゾール口腔内崩壊錠15mg 1錠 朝食後4.カンデサルタン錠4mg 1錠 朝食後5.フロセミド錠20mg 1錠 朝食後6.アトルバスタチン錠5mg 1錠 朝食後7.カルベジロール錠2.5mg 1錠 朝食後8.スピロノラクトン錠25mg 1錠 朝食後本症例のポイントこの患者さんは、最近は収縮期血圧が170~180台と高値が持続するようになり、下腿浮腫も増強したことからフロセミド錠20mgが開始となりました。下腿浮腫は軽減しましたが、血圧は高値で横ばいの状態が続き、デイサービスの利用や入浴の制限などがかかったことから、施設スタッフより医師に降圧薬追加の依頼がありました。そこで、医師よりCa拮抗薬を追加しようと思っているがどの薬がいいか、と相談がありました。確かに血圧だけを下げるのであればCa拮抗薬が妥当ですが、現在の患者さんの状態や治療薬などから、ほかの薬剤でうまくコントロールできないか検討することにしました。まず、基礎疾患とその治療をみると、HFrEFの治療として標準治療薬であるARBのカンデサルタン、β遮断薬のカルベジロール、MR拮抗薬のスピロノラクトンを服用しています。また、下腿のうっ血治療として直近でフロセミド錠が追加されています。現行の薬剤の増量やCa拮抗薬の追加によって降圧を図るという方法もありますが、うっ血症状が最近現れるようになったことから心不全治療薬の再考も選択肢となります。「2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」の治療アルゴリズムのとおり、ARBからARNIへ基本薬の変更を行うことは、血圧のコントロールに加え、心不全の管理としても有効ではないかと考えました。処方提案と経過医師に、「Ca拮抗薬の追加も選択肢の1つですが、降圧とともにうっ血症状の管理が必要なため、心不全管理の観点からカンデサルタンをARNIのサクビトリルバルサルタンに変更してみるのはどうですか」と提案しました。心不全診療ガイドラインの改訂についてはPDFファイルでその場で医師と共有してARNIの位置づけを再確認し、提案内容で2週間様子をみようと承諾を得ることができました。翌日の朝よりカンデサルタンからサクビトリルバルサルタン100mg 朝食後に切り替えとなり、開始4日目から血圧は130/80台で安定するようになりました。その後も過度に血圧が下がることはなく、下腿浮腫の増悪や体重増加もなく経過は安定しています。日本循環器学会 / 日本心不全学会.2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版

151.

PCSK9阻害薬、エゼチミブは心血管リスクを低減/BMJ

 エゼチミブまたはPCSK9阻害薬は、忍容最大用量のスタチン投与中あるいはスタチン不忍容の、心血管リスクがきわめて高い/高い成人において、非致死的な心筋梗塞(MI)および脳卒中を抑制可能なことが示された。同リスクが中程度および低い患者では認められないという。米国・Houston Methodist DeBakey Heart & Vascular CenterのSafi U. Khan氏らがシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。BMJ誌2022年5月4日号掲載の報告。スタチンの有無を含めて心血管リスクへの影響をネットワークメタ解析 研究グループは、エゼチミブおよびPCSK9阻害薬が心血管アウトカムに及ぼす影響を、忍容可能な最大用量のスタチン治療を受けている成人またはスタチン不忍容の成人において比較する検討を行った。 Medline、EMBASE、Cochrane Libraryを2020年12月31日時点で検索し、被験者500例以上、追跡期間6ヵ月以上のエゼチミブとPCSK9阻害薬の無作為化対照試験を特定。頻度論的な固定効果ネットワークメタ解析とGRADE(grading of recommendations, assessment, development, and evaluation)によるエビデンスの確実性の評価を行った。 結果には、5年間治療を受けた患者1,000人当たりの非致死的MI、非致死的脳卒中、あらゆる原因の死亡、および心血管死の相対リスク(RR)と絶対リスクが含まれた。ベースラインで受けていた治療および心血管リスクの閾値別に、一定のRR(ネットワークメタ解析から推定)を想定の下で絶対リスク差を推算。1次および2次予防における心血管リスクはPREDICTリスク計算法で算出した。 患者を、心血管リスクが「低い」~「きわめて高い」に分類。ガイドラインパネルとシステマティックレビューの著者により、最小重大差(MID)はMIが1,000例当たり12例、脳卒中が1,000例当たり10例と定められた。心筋梗塞、脳卒中の発生を抑制 検索により、スタチン治療を受けている成人8万3,660例が参加する、エゼチミブとPCSK9阻害薬を評価した14試験が特定された。 スタチンへのエゼチミブ追加は、MI(RR:0.87[95%信頼区間[CI]:0.80~0.94])および脳卒中(0.82[0.71~0.96])を抑制したが、あらゆる原因による死亡(0.99[0.92~1.06])、心血管死(0.97[0.87~1.09])は抑制しなかった。 同様に、スタチンへのPCSK9阻害薬追加は、MI(RR:0.81[95%CI:0.76~0.87])および脳卒中(0.74[0.64~0.85])を抑制したが、あらゆる原因による死亡(0.95[0.87〜1.03])または心血管死(0.95[0.87~1.03])は抑制しなかった。 また、被験者のリスク分類別に見ると、きわめて高い心血管リスク成人において、PCSK9阻害薬の追加投与がMI(16/1,000例)、脳卒中(21/1,000例)を抑制すると思われた(中程度~高い確実性)。これに対してエゼチミブの追加投与は、脳卒中(14/1,000例)は抑制するようであったが、MI(11/1,000例)は抑制するもののMIDに到達しなかった(中程度の確実性)。 PCSK9阻害薬とスタチンへのエゼチミブ追加は、脳卒中(11/1,000例)を抑制するようであったが、MI(9/1,000例)は抑制するもののMIDに到達しなかった(低い確実性)。スタチンとエゼチミブへのPCSK9阻害薬の追加は、MI(14/1,000例)、脳卒中(17/1,000例)ともに減じるようであった(低い確実性)。 心血管リスクが高い成人においては、PCSK9阻害薬の追加投与は、おそらくMI(12/1,000例)、脳卒中(16/1,000例)は抑制しうることが示唆された(中程度の確実性)。エゼチミブの追加投与は、おそらく脳卒中(11/1,000例)は抑制しうるようであったが、MI(8/1,000例)はMIDに到達しなかった(中程度の確実性)。 PCSK9阻害薬とスタチンにエゼチミブを追加しても、MIDを達成するアウトカムの減少は得られなかったが、エゼチミブとスタチンにPCSK9阻害薬を追加すると、脳卒中(13/1,000例)は抑制しうることが示唆された。 これらの結果は、スタチン不忍容の患者でも一致していた。中程度および低い心血管リスクの集団では、スタチンにPCSK9阻害薬またはエゼチミブを追加しても、MIおよび脳卒中へのベネフィットは、ほとんど/まったく得られなかった。

152.

第28回 原因は1つとは限らない【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)検査で異常値をみつけたからといって今回の原因とは限らない。2)検査で異常が認められないからといって異常なしとは限らない。3)症状を説明し得るか、結論付ける前に再考を!【症例】81歳男性。意識障害自宅で反応が乏しいところを仕事から帰宅した息子が発見し救急要請。●受診時のバイタルサイン意識20/JCS血圧148/81mmHg脈拍92回/分(整)呼吸18回/分SpO295%(RA)体温36.1℃瞳孔4/3.5 +/+既往歴認知症、高血圧、脂質異常症、便秘、不眠内服薬ドネペジル塩酸塩、トリクロルメチアジド、アトルバスタチンカルシウム水和物、酸化マグネシウム、ゾルピデム酒石酸塩所見顔面の麻痺ははっきりしないが、左上肢の運動障害あり検査の異常が今回の原因とは限らない採血、心電図、X線、CTなどの検査を行い異常がみつかることは、よくあります。特に高齢者の場合にはその頻度は高く、むしろまったく検査に異常が認められないことの方が多いでしょう。しかし、異常を認めるからといって今回の主訴の要因かというとそんなことはありません。腎機能障害、肝機能障害、貧血、電解質異常、中には急を要する場合もありますが、症状とは関係なく検査の異常が認められることはよくあるものです。そのため、検査結果は常に病歴や身体所見、バイタルサインを考慮した結果の解釈が重要です。以前から数値や所見が変わっていなければ、基本的には今回の症状とは関係ないことが多いですよね。慢性腎臓病患者のCr、Hb、心筋梗塞の既往のある患者の心電図など、けっして正常値でありません。急性の変化か否かが、1つのポイントとなりますので、以前の検査結果と比較することを徹底しましょう。検査で異常が認められないから原因ではないとは限らないコロナ禍となり早2年が経過しました。抗原検査、PCRなど何回施行したか覚えていないほど、皆さんも検査の機会があったと思います。抗原陰性だからコロナではない、PCR陰性だからコロナではない、そんなことないことは皆さんもよく理解していると思います。頭痛患者で頭部CTが陰性だからクモ膜下出血ではない、肺炎疑い患者でX線所見陰性だから肺炎ではない、CRPが陰性だから重篤な病気は否定的、CO中毒疑い患者の一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)が正常値だからCO中毒ではないなど、例を挙げたらきりがありません。皆さんも自身で施行した検査結果で異常の1つや2つ、経験ありますよね?!原因が1つとは限らない今回の症例の原因、皆さんは何だと思いますか? もちろんこれだけでは原因の特定は難しいかもしれませんが、高齢男性の急性経過の意識障害で麻痺もあるとなると脳梗塞や脳出血などの脳卒中が考えやすいと思います。低血糖や大動脈解離、痙攣なども“stroke mimics”の代表であるため考えますが、例えばMRI検査を実施し、画像所見が光っていたらどうでしょうか? MRIで高信号な部分があるのであれば、「原因は脳梗塞で決まり」。それでよいのでしょうか?脳梗塞の病巣から症状が完全に説明できる場合にはOKですが、「この病巣で意識障害来すかな…」「こんな症状でるのかなぁ…」こんなことってありますよね。このような場合には必ず「こんなこともあるのだろう」と思考停止するのではなく、他に症状を説明し得る原因があるのではないかと再考する必要があります。この患者さんの場合には、脳梗塞に加え低栄養状態に伴うビタミン欠乏、ゾルピデム酒石酸塩による薬剤性などの影響も考えられました。ビタミンB1欠乏に伴うウェルニッケ脳症は他疾患に合併することはけっして珍しくありません1)。また、高齢者の場合には「くすりもりすく」と考え、常に薬剤の影響を考える必要があります。きちんと薬は飲んでいるのに…患者さんが訴える症状が、内服している薬剤によるものであると疑うのは、どんなときでしょうか?新規の薬剤が導入され、その後からの症状であれば疑うことは簡単です。また、用法、用量を誤って内服してしまった場合なども、その情報が得られれば薬剤性を疑うのは容易ですよね。意外と見落とされがちなのが、腎機能や肝機能の悪化に伴う薬効の増強や電解質異常などです。フレイルの高齢者は大抵の場合、食事摂取量が減少しています。数日の単位では大きな変化はなくても、数ヵ月の単位でみると体重も減少し、食事だけでなく水分の摂取も減少していることがほとんどです。そのような場合に、「ご飯は食べてますか?」と聞くだけでは不十分で、具体的に「何をどれだけ食べているのか」「数ヵ月、半年前と比較してどの程度食事摂取量や体重が変化したか」を確認するとよいでしょう。「ご飯は食べてます」という本人や家族の返答をそのまま鵜呑みにするのではなく、具体的に確認することをお勧めします。骨粗鬆症に対するビタミンD製剤による高Ca血症、利尿薬内服に伴う脚気心、眠剤など、ありとあらゆる薬の血中濃度が増加することに伴う、さまざまな症状が引き起こされかねません。薬の変更、追加がなくても「くすりもりすく」を常に意識しておきましょう。最後に高齢者は複数の基礎疾患を併せ持ち、多数の薬剤を内服しています。そのような患者が急性疾患に罹患すると検査の異常は複数存在するでしょう。時には検査が優先される場面もあるとは思いますが、常にその変化がいつからのものなのか、症状を説明しうるものなのか、いちいち考え検査結果を解釈するようにしましょう。1)Leon G. Clinicians Who Miss Wernicke Encephalopathy Are Frequently Called Defendants. Toxicology Rounds. Emergency Medicine News. 2019;41:p.14.

153.

腎交感神経除神経術の長期降圧効果と安全性(解説:冨山博史氏)

概要 既報のSPYRAL HTN-ON MED試験は、試験開始前の少なくとも6週間、安定した用量で1~3種類の降圧薬を服用しても診察室収縮期血圧が150~180mmHgであり、かつ24時間平均収縮期血圧が140~170mmHgの範疇の症例を対象に、無作為、単盲検、Shamコントロール試験として実施された1)。同試験では、術後6ヵ月の腎交感神経除神経術の有意な降圧効果を報告している1)。今回の試験(ON-MED長期試験)は、その後の追跡研究であり、SPYRAL HTN-ON MED試験対象例の試験開始時、術後24ヵ月、36ヵ月の診察室血圧、24時間平均血圧を評価し、腎交感神経除神経術の長期降圧効果と安全性を検証した。 今回のON-MED長期試験では、腎交感神経除神経術実施群では、36ヵ月後に実施された24時間血圧評価では、Shamコントロール群と比較して、午前平均収縮期血圧は11.0mmHg、夜間平均収縮期血圧は11.8mmHgと有意に低値を示した。両群間の降圧薬処方数は平均3であり、有意差は認めなかった。臨床的意義 1.基礎研究では、腎交感神経除神経術後の腎交感神経再生が示されている。この再生は腎交感神経除神経術後長期の降圧作用を減弱させることが懸念されていた。しかし、本ON-MED長期試験では36ヵ月後も腎交感神経除神経術が有意な降圧効果を示すことが示された。また、腎交感神経除神経術後の腎動脈狭窄も確認されなかった。 2.これまでの腎交感神経除神経術の降圧効果を検証した試験の多くは、Shamコントロール群と比較して、術後6ヵ月に収縮期血圧4~8mmHg前後の降圧効果を示した。一方、降圧薬による降圧効果は一般に収縮期血圧10~15mmHgであり、腎交感神経除神経術の降圧効果の有効性の限界が指摘されていた。しかし、本ON-MED長期試験の降圧度は収縮期血圧11mmHgであり、腎交感神経除神経術の長期降圧効果は降圧薬治療に近い有効性を有する可能性が示唆された。試験の限界 1.症例数が80例と比較的少ない。 2.本試験のプロトコールでは、試験期間中の降圧治療の目標は、診察室収縮期血圧で140mmHg未満であった。しかし、ON-MED長期試験における36ヵ月後の診察室収縮期血圧は除神経群で143mmHg、Shamコントロール群で151mmHgであった(論文、表1、図2より推察)。また、両群間の降圧薬処方数は平均3であった。ゆえに、両群とも十分な降圧薬処方が実施されなかった可能性がある。 3.SPYRAL試験では、対照群が降圧薬を服用するON-MED試験1)と、服用しないOFF-MED試験2)が実施されている。今回のON-MED長期試験は、このON-MED試験において腎交感神経除神経術後の長期(36ヵ月)降圧効果が、Shamコントロール群に比して24時間平均収縮期血圧で10mmHg大きいことを示した。しかし、ON-MED試験の術後6ヵ月の降圧はShamコントロール群に比し7.4mmHg低値を示し1)、OFF-MED試験の術後6ヵ月の降圧度の両群の差5mmHgより大きかった2)。上述のごとく、これまでの腎交感神経除神経術の降圧効果を検証した試験の多くは、術後6ヵ月にShamコントロール群と比較して、24時間平均収縮期血圧で5mmHg前後の降圧効果を示し、本ON-MED長期試験の術後6ヵ月の降圧効果より小さい。ゆえに、ON-MED長期試験の結果のみでは、腎交感神経除神経術の長期降圧効果が降圧薬に近い有効性を有するかは結論できない。

154.

腎デナベーションは有効・安全か:SPYRAL HTN-ON MED試験の3年成績/Lancet

 高周波腎除神経(腎デナベーション)は、偽処置(シャム)と比較し降圧薬の併用を問わず、3年間、臨床的に意味のある持続的な降圧をもたらし、安全性の懸念もなかった。ドイツ・ザールラント大学のFelix Mahfoud氏らが、無作為化シャム対照単盲検概念実証試験「SPYRAL HTN-ON MED試験」の長期追跡結果を報告した。腎デナベーションは、降圧薬服用中の患者において血圧を低下することが示されているが、無作為化試験での長期安全性および有効性に関するデータは不足していた。著者は、「高周波腎デナベーションは、高血圧患者の管理において補助的な治療手段となり得るものである」とまとめている。Lancet誌2022年4月9日号掲載の報告。降圧薬でコントロール不良の高血圧患者、腎デナベーションvs.シャム 研究グループは、米国、ドイツ、日本、英国、オーストラリア、オーストリア、ギリシャの25施設において、20~80歳の血圧コントロール不良の高血圧患者を登録した。適格基準を、1~3種の降圧薬を6週間以上服用している状況下で、診察室収縮期血圧(SBP)150mmHg以上180mmHg未満、診察室拡張期血圧(DBP)90mmHg以上、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)によるSBP平均値が140mmHg以上170mmHg未満の患者とし、腎血管造影後、高周波腎デナベーション群またはシャム群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 患者および血圧評価者は、無作為化12ヵ月後まで盲検下に置かれ、シャム群は12ヵ月後の追跡調査来院後にクロスオーバー可とした。 主要評価項目は、術後6ヵ月時におけるABPMによる24時間平均SBPのベースライン(第2スクリーニング来院)からの変化量の治療群間差で、intention-to-treat解析を行った。長期有効性は、36ヵ月のABPMおよび診察室での血圧測定を使用して評価し、降圧薬の使用についても調査した。また、安全性は36ヵ月後まで評価した。3年後に腎デナベーションで有意に降圧、ベースラインからの変化量の群間差10mmHg 2015年6月22日~2017年6月14日の期間に、登録患者467例のうち適格基準を満たした最初の80例が、腎デナベーション群(38例)またはシャム群(42例)に無作為に割り付けられた。 ABPMによる平均SBPおよびDBPは、腎デナベーション群でベースライン時から有意に低下し、降圧薬の治療強度が同等であるにもかかわらず、24ヵ月および36ヵ月時の血圧の低下はシャム群と比較して有意に大きかった。降圧薬のクラスと用量を考慮した薬剤負荷は、36ヵ月時で腎デナベーション群2.13剤(SD 1.15)、シャム群2.55剤(SD 2.19)であり(p=0.26)、腎デナベーション群で77%(24/31例)、シャム群で93%(25/27例)が36ヵ月時に服薬を継続していた。 36ヵ月時のABPMによる24時間平均SBPのベースラインからの変化量(±SD)は、腎デナベーション群(30例)で-18.7±12.4mmHg、シャム群(32例)で-8.6±14.6mmHgであった(補正後群間差:-10.0mmHg、95%信頼区間[CI]:-16.6~-3.3、p=0.0039)。 また、36ヵ月時の腎デナベーション群とシャム群の群間差は、ABPMによるDBPSで-5.9mmHg(95%CI:-10.1~-1.8、p=0.0055)、朝のSBPで-11.0mmHg(-19.8~-2.1、p=0.016)、夜間のSBPで-11.8mmHg(-19.0~-4.7、p=0.0017)であった。 腎デナベーションに関連した短期または長期的な安全性の問題は確認されなかった。

155.

スタチンへのアリロクマブ追加、AMI患者の冠動脈プラーク退縮に有効/JAMA

 急性心筋梗塞患者において、高強度スタチン療法へのアリロクマブ2週ごと皮下投与の追加により、プラセボと比較して非梗塞関連冠動脈のプラーク退縮が有意に増大することが、スイス・ベルン大学のLorenz Raber氏らが実施した医師主導の多施設共同無作為化二重盲検比較試験「PACMAN-AMI試験」の結果、示された。冠動脈プラークは、プラーク量や脂質含有量が多く、線維性被膜が薄いことが特徴で、破裂しやすく有害心イベントを引き起こす。スタチンは、冠動脈アテローム性硬化の進行を抑制することができるが、スタチン治療にPCSK9阻害薬アリロクマブを追加した場合のプラーク量や組成に対する効果は、これまでほとんど不明であった。JAMA誌オンライン版2022年4月3日号掲載の報告。アリロクマブvs.プラセボ併用投与、52週後にIVUS、NIRS、OCTで評価 研究グループは、2017年5月9日~2020年10月7日の期間に、スイス、オーストリア、デンマークおよびオランダの9施設において経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施した急性心筋梗塞患者300例を登録。アリロクマブ(150mg、2週ごと皮下投与)群(148例)またはプラセボ群(152例)に無作為に割り付け、それぞれ高用量スタチン(ロスバスタチン20mg)に加える投与を、責任病変に対するPCI施行後24時間以内に開始し52週間行った。最終追跡調査日は2021年10月13日である。 ベースラインおよび52週後に、血管内超音波(IVUS)、近赤外線分光法(NIRS)、光干渉断層法(OCT)を用いて非梗塞関連冠動脈2本のアテローム性動脈硬化を評価した。 主要評価項目は、IVUSで測定したアテローム容積率のベースラインから52週までの変化とした。主な副次評価項目は、NIRSで測定した長軸4mm当たりのLipid Core Burden Index(LCBI:数値が高いほど脂質含有量が多い)最大値(maxLCBI4mm)、ならびにOCTで測定した線維性被膜厚最小値(FCTmin:数値が小さいほど被膜が薄くプラークが脆弱)、それぞれのベースラインから52週までの変化とした。アリロクマブ併用で非責任病変のプラークの脆弱性に関する指標が有意に改善 無作為化された300例(平均[±SD]年齢 58.5±9.7歳、女性18.7%、LDL-コレステロール値 152.4±33.8mg/dL)のうち、265例(88.3%)で冠動脈537ヵ所のIVUS検査が実施された。 52週時におけるアテローム容積率の平均変化量は、アリロクマブ群が-2.13%、プラセボ群が-0.92%であった(群間差:-1.21%、95%信頼区間[CI]:-1.78~-0.65、p<0.001)。また、maxLCBI4mmの平均変化は、それぞれ-79.42、-37.60(群間差:-41.24、95%CI:-70.71~-11.77、p=0.006)、FCTminの平均変化はそれぞれ62.67μm、33.19μm(群間差29.65μm、95%CI:11.75~47.55、p=0.001)であった。 有害事象は、アリロクマブ群で70.7%、プラセボ群で72.8%に認められた。 著者は、「アリロクマブが、この集団の臨床転帰を改善するかどうかをさらに研究する必要がある」とまとめている。

156.

糖尿病患者の非HDL-C値低下に有効なスタチンは?/BMJ

 英国・マンチェスター大学のAlexander Hodkinson氏らはネットワークメタ解析の結果、中用量および高用量のロスバスタチン、ならびに高用量のシンバスタチンとアトルバスタチンが、糖尿病患者の非HDLコレステロール(非HDL-C)値を中等度低下させるのに最も有効であることを示した。糖尿病患者における心血管疾患の1次予防および2次予防の基本はLDL-C値の低下であるが、非HDL-C値に対するスタチンの有効性を比較したエビデンスは不足していた。著者は、「主要ターゲットとして非HDL-C値の低下を用いると心血管疾患の予測精度が向上する可能性があることから、今回の結果は、糖尿病患者において非HDL-C値の低下に最も有効なスタチンの種類と強度に関する指針に役立つと考えられる」とまとめている。BMJ誌2022年3月24日号掲載の報告。無作為化比較試験42件のベイジアンネットワークメタ解析 研究グループは、Medline、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびEmbaseを用いて2021年12月1日までに公表された研究を検索し、1型または2型糖尿病の成人患者を対象に、プラセボを含むさまざまな種類と用量のスタチンを比較した無作為化試験を適格研究としてシステマティックレビューとネットワークメタ解析を行った。 主要評価項目は、非HDL-C値の変化とし、総コレステロール値とHDL-C値から算出した。副次評価項目は、LDL-C値および総コレステロール値の変化、主要心血管イベント(非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞、心血管疾患死)、有害事象による中止などである。 ランダム効果モデルを用いたベイジアンネットワークメタ解析により、非HDL-Cに対するスタチン(低用量、中用量、高用量)の治療効果を平均差および95%信用区間(CrI)で評価した。また、サブグループ解析では、主要心血管イベントリスクが高い患者を低リスクまたは中等度リスクの患者と比較した。エビデンスの確実性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-analysis)を用いて評価した。 成人患者計2万193例が参加した無作為化比較試験42件から、1万1,698例がメタ解析に組み込まれた。中・高用量ロスバスタチン、高用量のシンバスタチンとアトルバスタチンが有効 プラセボと比較して非HDL-C値の低下が大きかったのは、ロスバスタチンの高用量(平均差:-2.31mmol/L、95%CrI:-3.39~-1.21)と中用量(-2.27、-3.00~-1.49)、高用量シンバスタチン(-2.26、-2.99~-1.51)、高用量アトルバスタチン(-2.20、-2.69~-1.70)であった。アトルバスタチンとシンバスタチンはいずれの用量においても、また、低用量のプラバスタチンも、同様に非HDL-C値の低下に有効であった。 主要心血管イベントの高リスク患者4,670例においては、高用量アトルバスタチンにより非HDL-C値が最も低下した(-1.98、95%CrI:-4.16~0.26、累積順位曲線下面積64%)。高用量シンバスタチン(-1.93、-2.63~-1.21)ならびに高用量ロスバスタチン(-1.76、-2.37~-1.15)は、LDL-C値の低下に最も有効な治療選択肢であった。 プラセボと比較して、中用量アトルバスタチンで非致死的心筋梗塞の有意な減少が確認された(相対リスク:0.57、95%信頼区間:0.43~0.76、試験数4件)。中止、非致死的脳卒中および心血管死については、有意差は認められなかった。

157.

REAL-CADサブ解析で日本人の2次予防に最適なLDL-C値が明らかに/日本循環器学会

 LDLコレステロール(LDL-C)値について、“The lower, the better(低ければ低いほど良い)”という考え方があるが、日本人の冠動脈疾患(CAD)患者には必ずしも当てはまらないかもしれない。今回、日本人の安定CAD患者における最適なLDL-C目標値を検討すべく、REAL-CADの新たなサブ解析を行った結果を、第86回日本循環器学会学術集会(2022年3月11~13日)で佐久間 理吏氏(獨協医科大学病院 心臓・血管内科/循環器内科)が発表した。REAL-CADサブ解析により“The lower, The better”がアジア人で初めて検証 REAL-CADは、2010年1月31日~2013年3月31日に登録された20~80歳の日本人安定CAD患者の男女1万1,105例を対象に、ピタバスタチンによる積極的脂質低下療法と通常療法を比較したランダム化試験。ピタバスタチン1mg/日を1ヵ月以上服用するrun-in期間後、LDL-C値120mg/dL未満の参加者をピタバスタチン1mg群と4mg群に1:1でランダム化し、6ヵ月後のLDL-C値と5年間の心血管アウトカムを評価した。1次エンドポイントは、心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞、緊急入院を要する不安定狭心症のいずれか)の発生。REAL-CAD試験により、ピタバスタチン4mg投与による積極的治療のイベント抑制効果が認められ、アジア人において“The lower, The better”が検証された初のエビデンスとなった。 今回のREAL-CADの新たなサブ解析では、欧米人に比べて日本人の安定CAD患者は心血管リスクが低く、心血管イベント発生率も低いことを踏まえ、LDL-C値をそれ以上下げても心血管イベントの発症に影響しない最適な目標値、すなわち「閾値」の調査が行われた。今回のREAL-CADサブ解析では、人為的な閾値(LDL-C:0mg/dL)を共変量に含めた多変量Coxモデルを用いて、ハザード比(HR)が一定とされるLDL-C値の閾値を40~100mg/dLまで10mg/dL刻みで設定して分析を行い、モデルの適合性を対数尤度で評価した。 REAL-CADサブ解析で“The lower, The better”を検証した主な結果は以下のとおり。・ベースラインの年齢中央値は68.1±8.3歳、男性が82.8%、65歳以上が67.7%を占めた。・平均LDL-C値は、ベースラインで87.8±18.8mg/dL、6ヵ月後で81.1±21.6mg/dL(ベースラインから-6.6±19.1mg/dL)だった。・1次エンドポイント(心血管イベントの複合発生率)では、LDL-Cの閾値を70mg/dLと設定したときモデルの適合度が最も良好であった。このモデルにおいて、LDL-Cが10mg/dL増加した場合の調整HRは1.07(95%信頼区間:1.01~1.13)だった。・上記モデルによって標準化された1次エンドポイントの5年リスクは、LDL-C値が70mg/dLに低下するまでは単調に減少し、それ以下になるとLDL-C値とは無関係に減少することが明らかになった。 日本人の安定CAD患者において、心血管イベントの2次予防のためにスタチンを投与する場合、LDL-Cの閾値は70mg/dLが適切である可能性が示された。佐久間氏は「本結果は、新しい脂質低下戦略を提供するかもしれない」と発表を締めくくった。

158.

第105回 COVID-19後の長患いの予防や治療を見つける試験が進行中

ワクチン2回接種後14日以上経ってから新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)した約3,000人(3,090人)を調べたところ、感染後の長引く症状(COVID-19後遺症)の発現率はワクチン非接種感染者に比べて41%低いことが示されました1)。COVID-19後遺症、すなわちCOVID-19以外では説明がつかない4週間を超えて続く症状があったと答えた人の割合はワクチン接種済み群では9.5%、非接種群では14.6%でした。そのようなCOVID-19後の長患いを減らすワクチン以外の手段の検討も始まっています2)。Merck & Coの飲み薬molnupiravir(モルヌピラビル)がCOVID-19患者の入院を阻止したり回復を早めたりできるかどうかの検討を含む英国オックスフォード大学主催のPANORAMIC試験3)では治療後3ヵ月と6ヵ月の経過が調べられます。試験の主眼ではありませんがそれらのデータが集まれば同剤で後遺症が生じ難くなるかどうかを知ることができそうです。Pfizerの飲み薬paxlovid(パクスロビド)の試験2つでも被験者の6ヵ月間の追跡が含まれています。比較的軽症のCOVID-19患者にもっぱら使われるそれらの抗ウイルス薬の検討のみならずCOVID-19入院患者の治療の長期の効果も調べられています。世界保健機関(WHO)主催の国際試験SOLIDARITYのヘルシンキ大学担当部分がその一つで、COVID-19治療の先駆けremdesivir(レムデシビル)で治療されたCOVID-19入院患者の1年間の追跡結果がまもなく揃うと研究者は見込んでいます。SOLIDARITY試験の他の2つの治療の追跡もなされています。1つは免疫抑制を担う抗TNF薬infliximab(インフリキシマブ)、もう1つは血管の炎症を鎮めうるチロシンキナーゼ阻害剤imatinib(イマチニブ)です。退院したCOVID-19患者の長期経過を改善しうる治療を見つけることを目指す英国での大規模試験HEAL-COVID4)では心血管標的薬2つが検討されています。1つは抗凝固薬apixaban(アピキサバン)で、もう1つは血管の炎症を鎮めると考えられているコレステロール低下薬アトルバスタチン(atorvastatin)です。退院間近の患者に試験に参加するかどうかを尋ね、退院後1年間の再入院や死亡がそれら薬剤の使用で減らせるかどうかが調べられています。退院したCOVID-19患者の再入院は少なくなく、退院後半年足らずのうちに3人に1人近い29%は再入院する羽目に陥っており、およそ8人に1人(12%)は命を落としています4,5)。COVID-19患者が入院を終えた後の死亡の最も確からしい原因は心肺系への影響であろうとHEAL-COVID試験を率いるケンブリッジ大学の集中治療医Charlotte Summers氏は述べています。シカゴ大学の呼吸器医師Ayodeji Adegunsoye氏はCOVID-19で入院して酸素投与を必要とした患者の肺に感染後だいぶ経ってから瘢痕病変・線維化組織が増えうることを観察しており、そのような患者への免疫抑制剤sirolimus(シロリムス)の試験を始めています2)。線維化を促す細胞が肺に集まるのをシロリムスが防いでくれることを同氏は期待しています。参考1)Risk of Long Covid in people infected with SARS-CoV-2 after two doses of a COVID-19 vaccine: community-based, matched cohort study. medRxiv. February 24, 20222)Can drugs reduce the risk of long COVID? What scientists know so far / Nature3)PANORAMIC / UNIVERSITY OF OXFORD4)HEAL-COVID / HEAL-COVID5)Epidemiology of post-COVID syndrome following hospitalisation with coronavirus: a retrospective cohort study. medRxiv. January 15, 2021

159.

精神科入院患者へのベンゾジアゼピン使用に対するCOVID-19の影響

 オーストラリア・Cumberland HospitalのNancy Zaki氏らは、COVID-19が急性期精神医学においてベンゾジアゼピンの使用増加に影響を及ぼすかについて、検討を行った。Australasian Psychiatry誌オンライン版2022年2月10日号の報告。 2019~20年の2年間にわたり、2つの急性期精神科入院患者ユニットにおけるベンゾジアゼピン使用率を評価した。同時期における経口アトルバスタチン使用率を比較対象として使用した。 主な結果は以下のとおり。・2020年の総入院患者数は減少したものの、2020年4月~12月のベンゾジアゼピン使用量は、2019年の同時期と比較し、有意な増加が認められた。・パンデミックの制限が緩和された後、使用量はさらにピークを迎えていた。これは、救急でのメンタルヘルス症状および急性期精神科入院の割合の高さによるものであると考えられる。・COVID-19による退院制限も、喫煙のさらなる制限につながっていた。 著者らは「COVID-19パンデミックにより、ベンゾジアゼピン使用は増加した。パンデミックが急性の精神医学的症状に及ぼす影響を理解するためには、より多くの研究が求められる」としている。

160.

家族性高コレステロール血症、世界的に診断遅れ/Lancet

 ホモ接合性家族性高コレステロール血症(HoFH)患者について、38ヵ国を対象に調べたところ、世界的に診断年齢が高く、とくに非高所得国では、十分な治療がなされず初回の主要心血管有害イベントが20代で発生している現状が示された。オランダ・アムステルダム大学のTycho R. Tromp氏ら、HoFH患者の治療を行う医師らによるHoFH International Clinical Collaborators(HoFH国際臨床共同研究グループ)が明らかにし、Lancet誌オンライン版2022年1月28日号で発表した。38ヵ国、88ヵ所の医療機関で751例の患者を検証 研究グループは、38ヵ国、88ヵ所の医療機関を通じて、臨床または遺伝的にHoFHの診断を受けた751例の患者についてレジストリを作成し、後ろ向きコホート試験を行った。 HoFH患者の臨床・遺伝的特徴と、治療の現状、アウトカムへの影響を検証した。初回主要CV有害イベント発生、高所得国で中央値37.0歳、非高所得国では同24.5歳 被験者751例のうち565例(75%)で、両アレル病原性変異体が報告された。診断年齢中央値は12.0歳(IQR:5.5~27.0)だった。被験者751例のうち、女性は389例(52%)。人種が報告された527例のうち、白人は338例(64%)、アジア人は121例(23%)、黒人または混合人種は68例(13%)だった。 HoFH診断時点の65例(9%)で、すでにアテローム性心血管疾患(ASCVD)または大動脈弁狭窄の主な症状が認められた。 全体で、治療前のLDLコレステロール中央値は14.7mmol/L(IQR:11.6~18.4)だった。詳細な治療内容が得られた患者534例のうち、491例(92%)がスタチンを、342例(64%)がエゼチミブを、243例(39%)がリポ蛋白アフェレーシスをそれぞれ服用していた。 治療中のLDLコレステロール中央値は、非高所得国が9.3mmol/L(IQR:6.7~12.7)に対し、高所得国では3.93mmol/L(2.6~5.8)と低かった。3種以上の脂質低下療法(LLT)の実施率は、非高所得国より高所得国で高く(24% vs.66%)、その結果、ガイドライン推奨LDLコレステロール目標値の達成率も高所得国で高かった(3% vs.21%)。 初回主要心血管有害イベントの発生年齢は、非高所得国では中央値24.5歳(IQR:17.0~34.5)と、高所得国の中央値37.0歳(同:29.0~49.0)より10歳以上若い年齢で発生していた(補正後ハザード比:1.64、95%信頼区間:1.13~2.38)。 これらの結果を踏まえて著者は、「複数のLLTの実施率が高いほどLDLコレステロール値は低く、より良いアウトカムと関連する。治療レジメン、LDLコレステロール値のコントロール、および心血管イベントのない生存については、世界的に重大な格差が存在しており、こうした不平等を減らし、HoFHのすべての患者のアウトカムを改善するためには、世界的な健康政策の批判的な再評価が必要だ」としている。

検索結果 合計:632件 表示位置:141 - 160