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人種項目除外で、より正確な新eGFR算定式を構築/NEJM

 米国タフツ・メディカルセンターのLeseley A. Inker氏ら研究グループが、推算糸球体濾過量(eGFR)の算出に、血清クレアチニンとシスタチンCを組み込み人種項目を除外した新たなeGFR算定式を構築した。同算定式は、血清クレアチニンまたはシスタチンCのいずれかのみを用いて人種項目を除外した新eGFR算定式よりも、予測がより正確で、黒人と非黒人との差も小さかったという。従来のeGFR算定式は、黒人か否かの項目を含んでいるが、人種は社会的要素で生物学的要素ではなく、人種内の多様性を無視するとして、算定式を精査する必要性が高まっていた。NEJM誌オンライン版2021年9月23日号掲載の報告。23試験を基に新しい算定式を構築、12試験で検証 研究グループは、eGFRの算定に血清クレアチニンを用いた10試験(被験者総数8,254例、黒人31.5%)と、血清クレアチニンとシスタチンCを用いた13試験(同5,352例、黒人39.7%)を基に、人種項目を除外した算定式を構築した。 検証データセットは12試験(同4,050例、黒人14.3%)で、新たな算定式によるeGFRと実測GFRを比較した。 新eGFR算定式と従来eGFR算定式を用いて、米国成人の慢性腎臓病(CKD)の有病率とGFRステージを予想した。従来の人種を含む算定式、eGFRが黒人の実測GFRを過大に予測 検証データセットにおいて、年齢、性別、人種を含む従来の血清クレアチニンを用いたeGFR算定式では、eGFRが黒人の実測GFRを過大に予測していることが認められた(過大予測の中央値:3.7mL/分/1.73m2体表面積、95%信頼区間[CI]:1.8~5.4)。非黒人でも程度は小さいが同様の傾向が認められた(中央値:0.5mL/分/1.73m2体表面積、0.0~0.9)。 また従来のeGFR算定式から黒人であるとの補正項目を除外すると、eGFRは黒人の実測GFRを過小に予測することが認められた(過小予測の中央値:7.1mL/分/1.73m2体表面積、5.9~8.8)。 さらに、年齢、性別を含み人種を除外した新eGFR算定式では、eGFRが実測GFRに比べ、黒人で過小に予測され(中央値:3.6mL/分/1.73m2体表面積、1.8~5.5)、非黒人では過大に予測された(中央値:3.9mL/分/1.73m2体表面積、3.4~4.4)。すべてのGFR算定式で、黒人・非黒人ともに、eGFRの85%以上が実測GFR値の30%内に当てはまった。 血清クレアチニンとシスタチンCを用いて人種を除外した新eGFR算定式は、血清クレアチニンのみを用いた新eGFR算定式に比べ、より正確で人種間の差も小さかった。 米国成人のCKD有病率についても、血清クレアチニンのみを用いた新eGFR算定式で、従来eGFR算定式に比べて黒人の予測は上昇し、非黒人では同程度または低下することが認められた。

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新世代MRAのfinerenone、DKDの心血管リスク減/NEJM

 2型糖尿病を合併する幅広い重症度の慢性腎臓病(CKD)患者の治療において、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneはプラセボと比較して、心血管死や非致死的心筋梗塞などで構成される心血管アウトカムを改善し、有害事象の頻度は同程度であることが、米国・ミシガン大学医学大学院のBertram Pitt氏らが実施した「FIGARO-DKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月28日号で報告された。標準的な治療への上乗せ効果を評価 本研究は、48ヵ国の施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化イベント主導型第III相試験であり、2015年9月~2018年10月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(Bayerの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、2型糖尿病を伴うCKDで、添付文書に記載された最大用量のレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(ACE阻害薬、ARB)による治療で受容できない副作用の発現がみられない患者であった。スクリーニング時に、持続性のアルブミン尿の中等度上昇(尿中アルブミン[mg]/クレアチニン[g]比:30~<300)がみられ、推算糸球体濾過量(eGFR)が25~90mL/分/1.73m2(ステージ2~4のCKD)の患者、または持続性のアルブミン尿の高度上昇(尿中アルブミン/クレアチニン比:300~5,000)がみられ、eGFRが≧60mL/分/1.73m2(ステージ1/2のCKD)の患者が解析に含まれた。 被験者は、finerenone(10mgまたは20mg、1日1回、経口)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院の複合とされ、生存時間解析を用いて評価が行われた。副次アウトカムは、腎不全、eGFRのベースラインから4週以降における40%以上の持続的な低下、腎臓が原因の死亡の複合であった。主要アウトカム:12.4% vs.14.2% 7,352例が登録され、finerenone群に3,686例、プラセボ群に3,666例が割り付けられた。全体の平均年齢(±SD)は64.1±9.8歳で、69.4%が男性であった。 ベースライン時に、全体の70.5%がスタチン、47.6%が利尿薬の投与を受けていた。また、97.9%が血糖降下薬の投与を受けており、このうち54.3%がインスリン製剤、8.4%がSGLT2阻害薬、7.5%がGLP-1受容体作動薬の投与を受けていた。試験期間中に、15.8%がSGLT2阻害薬、11.3%がGLP-1受容体作動薬の投与を新たに開始した。 追跡期間中央値3.4年の時点で、主要アウトカムのイベントは、finerenone群が12.4%(458/3,686例)、プラセボ群は14.2%(519/3,666例)で認められ、finerenone群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.76~0.98、p=0.03)。 この主要アウトカムのfinerenone群での利益は、主に心不全による入院(3.2% vs.4.4%、HR:0.71、95%CI:0.56~0.90)がfinerenone群で低かったためであり、心血管死(5.3% vs.5.8%、0.90、0.74~1.09)、非致死的心筋梗塞(2.8 vs.2.8%、0.99、0.76~1.31)、非致死的脳卒中(2.9% vs.3.0%、0.97、0.74~1.26)に差はみられなかった。 副次アウトカムは、finerenone群が9.5%(350例)、プラセボ群は10.8%(395例)で認められた(HR:0.87、95%CI:0.76~1.01)。 担当医の報告による全般的な有害事象の頻度は両群で同程度であり、重篤な有害事象はfinerenone群が31.4%、プラセボ群は33.2%で発現した。高カリウム血症は、finerenone群で頻度が高かった(10.8%、5.3%)が、高カリウム血症による死亡例はなく、高カリウム血症による恒久的な投与中止例(1.2%、0.4%)や入院例(0.6%、0.1%)は、finerenone群で多いものの頻度は低かった。 著者は、「患者の60%以上がベースライン時にeGFR≧60mL/分/1.73m2のアルブミン尿を伴うCKD患者であったことから、尿中アルブミン/クレアチニン比によるスクリーニングで早期にCKDを診断し、この心血管リスクが高く認知度が低い患者集団の転帰を改善するための治療を開始する必要性が浮き彫りとなった」としている。

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心血管1次予防のポリピルにアスピリンは必要か?/Lancet

 心血管疾患の1次予防において固定用量併用療法戦略は、心血管疾患、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術および心血管死を大幅に低減する。カナダ・マックマスター大学のPhilip Joseph氏らPolypill Trialists' Collaborationが、個人被験者データのメタ解析を行い報告した。示されたベネフィットは、心血管代謝のリスク因子に関係なく一貫性が認められたという。無作為化試験において、固定用量併用療法(またはポリピル)は1次予防における心血管疾患の複合アウトカムを低減することが示されている。しかしながら、アスピリンを含むべきか否か、特異的アウトカムへの効果、および主要サブグループでの効果などは明らかになっていなかった。Lancet誌オンライン版2021年8月29日号掲載の報告。メタ解析で固定用量併用療法vs.対照を評価 研究グループは、心血管疾患の1次予防集団について固定用量併用療法戦略vs.対照戦略を検討した大規模無作為化試験(被験者1,000例以上で追跡期間2年以上)に参加した個人被験者データを用いてメタ解析を行った。2種類以上の降圧薬+スタチン(±アスピリン)の固定用量併用療法戦略と対照戦略(プラセボまたは通常ケア)を比較した試験を適格とし包含した。 主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中または動脈血行再建術のいずれかの初発までの期間とした。追加で、個別の心血管アウトカム、全死因死亡をアウトカムに包含した。 アウトカムは、固定用量併用療法戦略群のアスピリン併用有無別で層別化したグループでも評価。効果サイズは、リスク因子に基づく規定サブグループで算出し、Kaplan-Meier生存曲線およびCox比例ハザード回帰モデルを用いて戦略を比較した。アスピリン有無問わず、個別・複合アウトカムが有意に低減 解析には3つの大規模無作為化試験(IPS-3、HOPE-3、PolyIran)が包含され、総計被験者数は1万8,162例であった。平均年齢は63.0歳(SD 7.1)、9,038例(49.8%)が女性であり、集団の推定10年心血管疾患リスクは17.7%(SD 8.7)であった。 追跡期間中央値5年において、主要アウトカムの発生は、固定用量併用療法戦略群276例(3.0%)、対照群445例(4.9%)だった(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.53~0.73、p<0.0001)。主要アウトカムの個別アウトカムについても低減が認められ、HR(95%CI)は心筋梗塞0.52(0.38~0.70)、血行再建術0.54(0.36~0.80)、脳卒中0.59(0.45~0.78)、心血管死0.65(0.52~0.81)であった。 主要アウトカムおよびその個別アウトカムの有意な低減は、アスピリンの有無を問わず固定用量併用療法戦略群の解析で観察されたが、アスピリンを含む戦略群でより低減効果は大きかった。 治療効果は、脂質値や血圧値が異なっていても、また糖尿病、喫煙、肥満の有無を問わず同等であった。 まれではあったが消化官出血の発現頻度が、アスピリンを有する固定用量併用療法戦略群で対照群よりもわずかに高かった(19例[0.4%]vs.11例[0.2%]、p=0.15)。出血性脳卒中(10例[0.2%]vs.15例[0.3%])、致死的出血(2例[<0.1%]vs.4例[0.1%])、消化性潰瘍疾患(32例[0.7%]vs.34例[0.8%])の頻度は固定用量併用療法戦略群で低く、サブグループにおいて両群間に有意差はなかった。めまいの発現頻度が固定用量併用療法戦略群で、有意に高かった(1,060例[11.7%]vs.834例[9.2%]、p<0.0001)。

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家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)〔FH:familial hypercholesterolaemia〕

1 疾患概要■ 定義家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia:FH)は、low-density lipoprotein(LDL)受容体経路に関わる遺伝子変異のために、LDL代謝に遅延を来し、高LDL-C血症による動脈硬化が若年齢より進行する遺伝病である。FHは、高low density lipoprotein (LDL)コレステロール血症、皮膚および腱黄色腫、若年性動脈硬化症による冠動脈疾患を三主徴とし、LDL受容体経路に関わる遺伝子の1つのアレルに病的変異を持つものをFHヘテロ接合体、2つのアレルに病的変異を持つものを、FHホモ接合体という1)。■ 疫学FHホモ接合体患者は以前には100万人に1人の頻度とされていたが、現在は30万人に1人以上の頻度であると推定されている。FHホモ接合体は、指定難病とされ、令和元年の受給者証所持者数は320人である。■ 病因FHは、LDL受容体経路に関わる遺伝子の変異、すなわち、LDL受容体の病的遺伝子変異、あるいはPCSK9の機能獲得型変異、アポリポタンパクBの病的遺伝子変異により、LDL受容体蛋白が欠損しあるいはその機能が大きく障害されて、高LDL-C血症が引き起こされる先天的疾患である。通常は血漿LDLの約70%が肝臓で代謝される。FHホモ接合体患者では約10%に低下しており、低下の程度に反比例して血漿LDL濃度は上昇し、血管壁へのコレステロールの沈着のリスクが高まる。■ 症状身体所見としては、皮膚や腱にLDL由来のコレステロールが沈着し、皮膚黄色腫、腱黄色腫と呼ばれる。黄色腫の頻度は、LDL-C値の上昇の度合いと期間の長さに比例する。黄色腫は、皮膚では肘関節、膝関節の伸側、手首、臀部など、機械的刺激が加わる部位に多く発生する(図1)。腱黄色腫はアキレス腱のものが一番良く知られており、診断に用いられるが、手背伸筋腱にも発生する。図1 HoFH患者の皮膚黄色腫所見画像を拡大する■ 分類LDL受容体経路に関わる遺伝子の変異による遺伝病であり、原因遺伝子としてはLDL受容体の病的変異が1番多いが、PCSK9機能獲得型変異、アポリポタンパクBの病的変異も報告されている。同一の遺伝子の同じ変異が2つ存在する真性ホモ接合体、同じ遺伝子に異なった変異を認める複合ヘテロ接合体、別の遺伝子に変異を認めるダブルヘテロ接合体もFHホモ接合体と考えられている(図2)。図2  FHホモ接合体の遺伝子変異の組み合わせ■ 予後FHホモ接合体の動脈硬化症としては、大動脈弁上狭窄、弁狭窄、冠動脈狭窄が乳幼児期に出現し、進行する。未治療では30歳までに狭心症、心筋梗塞、突然死を引き起こすことが知られている。胸部大動脈、腹部大動脈や肺動脈にも強い動脈硬化を引き起こす。そのため、冠動脈狭窄に対するPCI、CABG、大動脈弁上狭窄・弁狭窄に対する大動脈弁置換術が必要になる例も多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)血清LDL-C値は370~1,000mg/dLである。FHの血清中に増加しているコレステロールは主にLDLであり、IIa型の高脂血症病型を示す例が多い。身体症状としては、皮膚黄色腫の存在、家族歴として両親がFHヘテロ接合体であることなどが、診断上の根拠となる。線維芽細胞やリンパ球におけるLDL受容体活性の低下(正常の20%以下)、LDL受容体遺伝子変異により診断を下すことも可能であるが、正確な診断をするには、遺伝子解析を行うことが重要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FHホモ接合体の治療の基本は、冠動脈疾患など若年齢から起きる動脈硬化症の発症および進展の予防であり、早期診断と適切な治療が最も重要である。FHホモ接合体のLDL-C値の治療目標値は、一次予防で100mg/dL、二次予防で70mg/dLである。これらの目標値に向けて、多くの薬剤やLDLアフェレシス治療を組み合わせ、LDL-C値をできる限り低下させることが重要である。また、動脈硬化の危険因子である、糖尿病、高血圧、高トリグリセリド血症などは、厳格にコントロールする。FHホモ接合体は、薬剤に対する反応性が悪いことが多いが、まずはスタチンを開始、増量、さらにエゼチミブを加えてその反応性を観察する。さらにPCSK9阻害薬エボロクマブ(商品名:レパーサ)140mgを2週間に1回皮下注射で行う。FHホモ接合体の中でもLDL受容体活性がまったくないタイプ(negative type)では効果を認めないが、活性がわずかに残っているタイプ(defective type)であればある程度の効果が期待できる3)。効果が十分でない場合には、エボロクマブ420mgのオートミニドーザーを用いて2週間に1回皮下注射で行う。これらの薬剤の効果が十分でない場合、MTP阻害薬ロミタピド(同:ジャクスタピッド)が適応になる。MTP阻害薬は、開始前に脂肪摂取制限の栄養指導を行い、5mgから徐々に増量する。LDL-Cの低下効果とともに、下痢や肝機能障害などの副作用をチェックしながら、至適用量を決定する。さらに、LDL-C値のコントロールを行うためには、1~2週間に1回のLDL-アフェレシス治療が必要な場合も多い。FHホモ接合体に対する薬物療法は、LDLアフェレシス開始前の乳幼児に対して行い、LDLアフェレシス開始後の患者に対しては、治療施行にて低下したLDLの再上昇を抑制する補助的な目的で行う。4 今後の展望1)Angiopoietin-Like Protein 3(ANGPTL3)抗体医薬(evinacumab)ANGPTL3は、機能低下型変異により、低LDL-C、低TG、低HDL-C血症を示し、冠動脈疾患リスクも低いことが知られていた。ANGPTL3抗体医薬が、FHホモ接合体に効果があることが示され、全世界で治験が進行中である4)。2)PCSK9 siRNA(inclisiran)siRNAを用いてPCSK9の産生を抑制する薬剤の開発が行われている5)。1回の注射で6ヵ月間、LDL-C値の低下を認める薬剤であり、すでに欧州で承認されており、わが国では治験が進行中である。5 主たる診療科小児科、代謝内科、循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「原発性脂質異常症に関する調査研究班」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)原発性脂質異常症の予後調査(PROLIPID)(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本動脈硬化学会 家族性高コレステロール血症について(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本動脈硬化学会 家族性高コレステロール血症紹介可能施設(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難治性家族性高コレステロール血症患者会(患者とその家族および支援者の会)1)Defesche JC,et al. Nat Rev Dis Primers. 2017;3:17093.2)Nohara A, et al. J Atherosclr Thromb. 2021;28:665-678.3)Raal FJ, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017;5:280-290.4)Dewey FE, et a. N Engl J Med. 2017;377:211-221.5)Ray KK, et al. N Engl J Med. 2017;376:1430-1440.公開履歴初回2021年8月30日

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日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。 首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・134万5,457人月のフォローアップ期間中(平均:32.0±7.5ヵ月、中央値:35ヵ月)に新たに抗認知症薬を使用した患者は、2,365人(5.6%)であった。・12ヵ月間の新規抗認知症薬使用率は、1.9±0.1%(1群:0.9±0.1%、2群:2.1±0.1%、3群:3.2±0.2%、4群:3.6±0.3%、p<0.0001)であった。・高齢および女性に加え、以下の薬剤の使用は、新規抗認知症薬使用と有意な関連が認められた。 ●スタチン(HR:0.82、95%CI:0.73~0.92、p=0.001) ●降圧薬(HR:0.80、95%CI:0.71~0.85、p<0.0001) ●非ステロイド性気管支拡張薬(HR:0.72、95%CI:0.58~0.88、p=0.002) ●抗うつ薬(HR:1.79、95%CI:1.47~2.18、p<0.0001) ●脳卒中後の治療薬(HR:1.45、95%CI:1.16~1.82、p=0.002) ●インスリン(HR:1.34、95%CI:1.01~1.78、p=0.046) ●抗腫瘍薬(HR:1.12、95%CI:1.01~1.24、p=0.035) 著者らは「本レトロスペクティブコホート研究により、高齢者における慢性疾患に対する治療薬と新規抗認知症薬使用との関連が特定された。これらの結果は、実臨床における認知症の臨床診断や医療政策を立案するうえで役立つであろう」としている。

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ネットワークメタ解析・システマティックレビューは語る―スタチンの1次治療は副作用を考慮しても病気予防に利得あり―(解説:島田俊夫氏)

 スタチンは高コレステロール血症の2次治療に広く使われ、有害作用として横紋筋融解症が最もよく知られている。利益・損失をトレードオフの視点から見ると利益が勝るエビデンスが多く、2次治療は素直に受け入れられている。逆に、まったく自覚症状のない1次治療は患者の多くが自分が病になる実感もなく、高リスクに晒されているとの懸念もなく、マスメディアの影響を受けやすい1)。そのうえ、スタチンの1次治療はエビデンスが乏しいこともあり、治療を受ける患者を納得させにくい。 高コレステロール血症に対するスタチンによる1次治療のエビデンスは、既存データを巧みに利用するネットワーク・メタアナリシス(NMA)/システマティックレビュー(SYSR)の利用に注目が集まっている2)。 2021年6月10日にBMJに発表されたTing Cai氏らの論文は、NMA/SYSRに基づく高コレステロール血症の1次治療目的での大規模な無作為化比較試験(RCT)を選択・吟味してNMAを行った報告である。時宜を得た研究で臨床の立場から興味深く、私見を交え解説する。 本研究はRCT62件、約12万例、追跡期間平均3.9年の研究に基づくネットワークメタ解析で心血管疾患の既往のない成人を対象にスタチン群と非投与群を比較検討し、さらに投与量、種類の異なるスタチン治療を比較してRCTを特定した。主要評価項目は一般的有害事象:自己申告による筋症状、臨床的に確認された筋障害、肝機能障害、腎機能不全、糖尿病、眼症状、および副次評価項目は有効性指標としての心筋梗塞、脳卒中と心血管疾患死亡とした。 データ解析はペアワイズメタ解析を行い、スタチン群と非投与群の評価項目のオッズ比、95%信頼区間を算出し、1年間治療を受けた患者1万人当たりのイベント数の絶対リスク差を推定した。さらに、スタチンの種類による有害事象を比較するためにネットワークメタ解析を行い、Emaxモデルで有害事象の用量反応性を評価した。 アトルバスタチン、lovastatin、ロスバスタチンは有害事象との関連は認めたが種類による差はなかった。肝機能障害に関してはアトルバスタチンで用量反応性の関与が認められたが、残りのスタチンに関しての結論は出ていない。副次評価項目はフォレストプロットに示すごとく有意に抑制されている。 スタチンの1次治療に関しては将来、起こりうるイベントの抑制効果を予測することは困難でしかも重要なうえにRCTによる前向き研究で実証するには多くの費用・時間・患者の参加が必要となる。それゆえNMA/SYSRによる手法への期待は大きい。本論文は1次治療における薬物治療の評価法に一石を投じるNMA/SYSRのこれから利用の道しるべになると考える。1次治療においても軽度の副作用はあるが利益が勝るため投与を拒む理由はないと結論している。

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心血管疾患の1次予防、スタチンは有益性・有害性のバランス良好/BMJ

 心血管疾患の1次予防において、スタチンの有害事象リスクは心血管疾患の予防効果を上回るものではなく、有益性と有害性のバランスは概して良好であることが示唆された。一方で、安全性の懸念を考慮し治療開始前にスタチンの種類や投与量を調整することを支持するエビデンスは限定的だったという。英国・オックスフォード大学のTing Cai氏らが、ネットワークメタ解析によるシステマティックレビューの結果を報告した。現行のスタチンの種類および投与量に関する推奨事項は、異なるレジメンの多様な有害事象は考慮せず、脂質低下効果に基づくものとなっていることから、研究グループは心血管疾患の1次予防におけるスタチンと有害事象の関連性、種類や投与量別にどのような関連性があるのかを調べた。BMJ誌2021年7月14日号掲載の報告。無作為化比較試験62件、約12万例についてメタ解析 研究グループは、過去のシステマティックレビューおよび2020年8月までに発表された論文をMedline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsで検索し、心血管疾患の非既往成人を対象に、スタチンvs.非スタチン治療を検討した、または種類や投与量が異なるスタチン治療を比較した無作為化比較試験を特定した。 主要評価項目は、一般的な有害事象(自己申告の筋症状、臨床的に確認された筋障害、肝機能障害、腎機能不全、糖尿病、眼症状)、副次評価項目は有効性の指標としての心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡であった。 ペアワイズメタ解析を行い、スタチンvs.非スタチンの各評価項目のオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出し、1年間の治療を受けた患者1万人当たりのイベント数の絶対リスク差を推定した。また、異なる種類のスタチンの有害事象を比較するため、ネットワークメタ解析を行うとともに、各スタチンの有害事象の用量反応性をEmaxモデルに基づくメタ解析を行い評価した。 計62件の無作為化比較試験、12万456例が解析に組み込まれた。追跡期間は平均3.9年であった。肝機能障害リスクのORは1.33、眼症状は1.23 スタチンは、臨床的に確認された筋障害ならびに糖尿病との関連は認められなかったが、自己申告の筋症状(21試験、OR:1.06[95%CI:1.01~1.13]、絶対リスク差:15[95%CI:1~29])、肝機能障害(21試験、1.33[1.12~1.58]、8[3~14])、腎機能不全(8試験、1.14[1.01~1.28]、12[1~24])、眼症状(6試験、1.23[1.04~1.47]、14[2~29])のリスク増加がみられた。ただし、リスクの増加は、主要心血管イベントのリスク減少を上回るものではなかった。 アトルバスタチン、lovastatin、ロスバスタチンはそれぞれ、いくつかの有害事象と関連していたが、スタチンの種類による有意差はほとんど認められなかった。肝機能障害に対するアトルバスタチンの効果については用量反応性が認められたが、他のスタチンについては有害事象の用量反応性について結論が得られなかった。

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介護負担を考慮しβ遮断薬貼付薬の内服への切り替えを提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第40回

 今回は、貼付薬から内服薬へ切り替えた事例を紹介します。貼付薬は、内服薬の拒否・困難なケースでも治療が継続できて便利ですが、ほかの薬剤を問題なく内服できている場合は、貼付薬が1つ入っていることが返って手間になることもあります。患者情報90歳、女性(施設入居)基礎疾患発作性心房細動、心不全、高血圧症、脂質異常症、骨粗鬆症介護度要介護1服薬管理施設職員が管理処方内容1.エプレレノン錠25mg 1錠 分1 朝食後2.アゾセミド錠30mg 1錠 分1 朝食後3.ジゴキシン錠0.125mg 0.5錠 分1 朝食後4.ワルファリンカリウム錠1mg 3錠 分1 朝食後5.エナラプリル錠5mg 1錠 分1 朝食後6.エルデカルシトールカプセル0.5μg 1カプセル 分1 朝食後7.ピタバスタチン錠1mg 1錠 分1 朝食後8.ニコランジル錠5mg 2錠 分2 朝夕食後9.酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後10.ビソプロロールテープ剤4mg 1枚 夕に貼付本症例のポイントこの患者さんは、服用薬剤は多いものの、「長生きは薬のおかげ」と服薬負担は感じていませんでした。しかし、貼付薬の交換時に、皮膚の掻痒感を我慢している様子があることを介護職員より聴取しました。そこで患者さんに話を聞いたところ、「かゆみはあるけれど、先生から勝手にやめないように言われているから我慢している」と考えていたことを聞き出すことができました。また、介護職員からは、職員配置の少ない夕方の貼付薬の介助は負担が大きいということも聞きました。そこで、本人と介護職員の負担を軽減するため、貼付薬を内服にまとめる提案をすることにしました。ビソプロロール貼付薬と内服薬の換算目安下記表の頻脈性心房細動を対象とした第III相検証試験(二重盲検並行群間比較試験)において、ビソプロロールフマル酸塩錠2.5mgとビソプロロール貼付薬4mg、ビソプロロールフマル酸塩錠5mgとビソプロロール貼付薬8mgの比較が行われています。この試験結果によると、ビソプロロールフマル酸塩錠2.5mg≒ビソプロロール貼付薬4mgですので、内服薬への切り替えは可能と考えました。画像を拡大する処方提案と経過本人および介護者の負担状況をトレーシングレポートにまとめて医師に提出し、現行のビソプロロール貼付薬4mgからビソプロロールフマル酸塩錠2.5mg内服への切り替えを提案しました。その際、換算の根拠として、上記の試験結果の表を共有しました。訪問診療の開始前に、医師よりトレーシングレポートの内容に処方を変更すると回答を得ました。そこで、翌日より内服薬に変更し、看護師と血圧・心拍数の変動についてモニタリングすることにしました。切り替えてから14日経過しても大きな変動はなく状態は安定しており、現在も内服薬として継続中です。ビソノテープインタビューフォームビソノテープ トーアエイヨー医療関係者向け情報

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多剤併用の高齢者、他の薬剤継続もスタチン中止で心血管リスク増

 高齢者の多剤併用(ポリピル)は主要な健康問題に発展するため、近年問題になっている。処方薬を中止すれば薬の使用を減らすことができる一方、臨床転帰への影響は不確かなままである。そこで、イタリア・University of Milano-BicoccaのFederico Rea氏らがスタチン中止によるリスク増大の影響について調査を行った。その結果、多剤併用療法を受けている高齢者において、ほかの薬物療法を維持しつつもスタチンを中止すると、致命的および非致命的な心血管疾患発生の長期リスクの増加と関連していたことが示唆された。JAMA Network Open誌2021年6月14日号掲載の報告。 研究者らはイタリア・ロンバルディア地域在住で多剤併用を受けている65歳以上を対象に、他の薬剤を維持しながらスタチンを中止することの臨床的意義を評価することを目的として、スタチン中止に関連する致命的および非致命的転帰のハザード比(HR)と95%信頼区間[CI]を推定した。対象者は2013年10月~2015年1月31日の期間(2018年6月30日までフォローアップ)に、スタチン、降圧薬、糖尿病治療薬、および抗血小板薬を継続服用していた患者。データはロンバルディ地域の医療利用データベースから収集し、2020年3~11月に分析した。また、スタチン中止後最初の6ヵ月間にほかの治療法を維持した患者とスタチンも他剤も中止しなかった患者について、傾向スコアによるマッチングを行った。 主な結果は以下のとおり。・全対象者は多剤併用の高齢者2万9,047例だった(平均年齢±SD:76.5±6.5歳、男性:1万8,257例[62.9%])。また、5人に1人が虚血性心疾患(5,735例[19.7%]を、12人に1人が脳血管疾患(2,280例[7.9%])を併存しており、そのほかにも心不全(2,299例[7.9%])や呼吸器疾患(2,354例[8.1%])があった。・全例のうちスタチンを中止するも他剤を継続したのは5,819例(平均年齢±SD:76.5±6.4歳、男性:2,405例[60.0%])で、傾向スコアでマッチングさせ4,010例が評価対象となった。 ・スタチン中止群の患者はすべて維持した群と比較して入院リスクが高く、心不全ではHR:1.24(95%CI:1.07~1.43)、心血管疾患の発生はHR:1.14(同:1.03~1.26)、あらゆる原因による死亡ではHR:1.15(同:1.02~1.30 )だった。・年齢や性別、臨床プロファイルなどの層別分析によると、スタチン中止の効果が各カテゴリー間で有意に不均一であるという証拠は示されなかった。・negative exposure analysisによれば、プロトンポンプ阻害薬の中止が死亡率に影響を及ぼしたという証拠は得られなかった(HR:1.08、同:0.95~1.22)。

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簡易懸濁法に合わせた薬剤への変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第37回

 2020年の診療報酬改定において、簡易懸濁法導入時の薬剤師の活動が評価され、経管投薬支援料が新設されました。簡易懸濁法を導入するには、服薬管理の手順の確認や問題点の整理など薬剤師の積極的な介入が必要です。今回は、簡易懸濁法導入の際に処方提案を行った事例を紹介します。患者情報80歳、女性(グループホーム入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症、高血圧症、慢性便秘症介護度要介護3服薬管理施設職員が管理障害自立度B-2認知症自立度IIIb処方内容 ※嚥下困難のため粉砕指示あり1.ドネペジル錠5mg 1錠 分1 朝食後2.ベニジピン錠4mg 1錠 分1 朝食後3.カンデサルタン錠4mg 1錠 分1 朝食後4.アトルバスタチン錠10mg 1錠 分1 朝食後5.エスゾピクロン錠1mg 1錠 分1 就寝前本症例のポイント介入時の患者さんは、日中は怒りっぽい様子で夜間も大声を出し、食事などの介護拒否があるなど介護負担が大きい状況でした。また、嚥下機能も低下していて、服薬時に錠剤がそのまま口中に残っていることが多いため、施設職員がすべて粉砕して、食事に混ぜて服薬させていました。この施設では同様の理由で粉砕指示となっている施設利用者が半数を占めていたため、介護負担が大きく、粉砕時の曝露に不安を覚える職員も多くいました。そこで、主任介護士と相談のうえで簡易懸濁法導入のための勉強会とデモンストレーションを実施したところ、溶解が容易な口腔内崩壊錠に統一して懸濁投与にしたいという意向を聞き取りました。提案前の整理内容1)興奮を抑えるためにドネペジルの中止を検討ドネペジル錠5mgを入居前から長期的(開始時期不明)に服用していて、賦活化作用から過覚醒状態となっている可能性があると考えました。患者家族・施設側としても本人らしさを失うような治療は望んでいません。そこで、ドネペジルの治療効果よりも薬物有害事象の問題が大きいと考え、暴力行為などが問題になる前にドネペジルの中止を提案することにしました。2)口腔内崩壊錠への変更を検討簡易懸濁法導入のため、降圧薬とスタチンを当薬局採用の口腔内崩壊錠へ変更することを検討しました。ベニジピン錠4mg→アムロジピン口腔内崩壊錠5mg 1錠カンデサルタン錠4mg→オルメサルタン口腔内崩壊錠20mg 1錠アトルバスタチン錠10mg→ピタバスタチン口腔内崩壊錠2mg 1錠3)エスゾピクロン錠からゾルピデム口腔内崩壊錠への変更を検討粉砕したエスゾピクロン服用時の苦味あるいは起床時まで残る苦味が、不機嫌や食事拒否に影響しているのではないかと考えました。エスゾピクロンはゾピクロンと比較して苦味が軽減した薬剤ですが、依然として苦味を感じる患者は多いです1)。そこで、短時間作用型薬剤かつ口腔内崩壊錠のあるゾルピデムを提案することにしました。処方提案と経過訪問診療に同行し、ラウンド前の会議で医師に上記の提案を直接伝えたところ、1)のドネペジルの件は介護士との協議後に中止の承認を得ました。2)の口腔内崩壊錠への変更についても承認いただき、変更後のバイタル推移や患者さんの状況を慎重に確認していくことになりました。なお、事前に勉強会を行っていたこともあり、介護士の簡易懸濁の手技に問題はなく、患者さんからも好意的に受け入れられました。3)の提案については、エスゾピクロンの苦味が不機嫌や食事拒否につながるのは意外な悪影響だと注目され、変更して様子を見るという条件で承認を得ることができました。変更して1週間後には患者さんの易怒性や介護拒否はなくなり、介護負担も減少したことが介護士との会話で確認できました。血圧も乱れることなく140/80台で推移しています。肝心の服薬管理も簡易懸濁法導入により、粉砕・開封・食事への混入時の施設職員への曝露や薬剤ロスを減らすことができました。1)日病薬誌. 2017;53:192-196.

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生活習慣病に対する薬物療法の実効的カバレッジが上昇

 生活習慣病リスク因子に対する、薬物療法の実効的カバレッジ(保健システムを通して、実際に人々に健康増進をもたらすことができる割合)が上昇していることが、医薬基盤・健康・栄養研究所の池田 奈由氏らによって明らかにされた。LDLなどのコレステロール値はスタチン系薬剤によって効果的に抑えられている一方、降圧薬および糖尿病治療薬の有効性を改善するにはさらなる介入が必要だという。Journal of Health Services Research & Policy誌2021年4月号の報告。 保健システム評価指標を用い、日本における高血圧症、糖尿病および脂質異常症治療に対する健康介入の実効的カバレッジについて、その傾向を分析した。 過去15回にわたる国民健康・栄養調査(2003~17年)から、40~74歳の9万6,863人の横断的データを取得した。高血圧症、糖尿病および脂質異常症の治療必要性は、診断基準値と同等以上のバイオマーカーを示すこと、または投薬があるかどうかで規定した。投薬治療を受けた患者において、実際にバイオマーカーが低下する見込みのある割合を治療効果および実効的カバレッジとして定義し、最近傍マッチングにて推定した。 主な結果は以下のとおり。・2003~17年における年齢調整罹患率は、およそ高血圧症40%、糖尿病7%、脂質異常症33%のまま推移した。・2013~17年に治療された患者における平均治療効果は、収縮期血圧14.8mmHg(95%信頼区間:14.2~15.4)低下、HbA1c 1.2%ポイント(0.8~1.6)低下、非高密度リポタンパク質コレステロール57.9mg/dL(56.6~59.2)低下であった。・2003~07年における実効的カバレッジ(高血圧症:48.4%[44.7~52.0]、糖尿病:43.8%[35.7~51.8]、脂質異常症:86.3%[83.1~89.5])に対し、2013~17年(高血圧症:76.2%[74.2~78.2]、糖尿病:74.7%[71.0~78.5]、脂質異常症:94.6%[93.3~95.9])では、有意に上昇していた。

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第23回 高齢糖尿病患者の骨折リスク、骨粗鬆症にどう対応する?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第23回 高齢糖尿病患者の骨折リスク、骨粗鬆症にどう対応する?Q1 糖尿病患者で骨折リスクが高くなる要因は?糖尿病患者では、糖尿病のない人と比べて骨折のリスクが高くなります。インスリン作用不足や糖化最終産物の蓄積による骨質の低下や、バランス感覚の悪化や視力低下による易転倒性などが要因として考えられています。血糖コントロール不良で推移している人は骨粗鬆症を併発しやすくなります。HbA1c値が7.5~8.0%以上のコントロール不良の糖尿病患者では、HbA1c値が7.5%未満のコントロール良好群と比較して骨折のリスクが1.6倍上昇していました。インスリン使用者では1.8倍上昇していたと報告されています1)。HbA1c 値が7.5%以上のコントロール不良の状態で、腎症や網膜症などの合併症を有し、さらにインスリン治療を必要とする糖尿病患者では骨折リスクが上昇すると考えられ、骨粗鬆症の検査を行うことが推奨されます。Q2 どのように骨折リスクを判定しますか?自分でできる骨折リスクの判定方法として、FRAX®(fracture risk assessment tool)があります(表)。この評価法は、2008年2月にWHO(世界保健機関)が発表しました。インターネットでアクセスし、指定された質問項目に答えると自動的に算出されます。今後10年以内に骨粗鬆症による主要骨折を起こす可能性が15%以上の場合には、リスク大と判断し薬物治療の開始が推奨されます。この評価法は40~90歳の方を対象としていますが、75歳以上の方は、年齢のみで高リスクと判断されてしまうため、参考程度とします。なお、罹病期間が5~10年の2型糖尿病患者では、実際の骨粗鬆症性骨折の発生はFRAX®値の1.2倍、10年以上の罹病期間を有する場合には1.5倍を呈していました。大腿骨近位部骨折の発症は5年未満でも1.4倍、10年以上では2.1倍と報告されています2)。罹病期間の長い2型糖尿病患者は、FRAX®で算出された骨折リスクよりもさらに骨折しやすいと考えられます。画像を拡大するQ3 どのように骨粗鬆症を診断しますか?骨粗鬆症の診断には骨密度検査が必須であり、さらに測定部位と方法が重要です。通常は大腿骨近位部(頚部または全体)と腰椎(L2-L4)の骨密度をDXA法(dual-energy X-ray absorptiometry)で測定して判断します。しかし、DXA装置を有する医療機関は限られており、手軽に計測できない場合も多いです。そのため、手を用いたMD(microdensitometry)法や、踵で測定する定量的超音波測定法、小型のDXA装置で橈骨のみ測定する検査などが利用されています。ただしこれらはあくまでもスクリーニング検査であり、実際の体幹部DXAでの診断と乖離を認める場合も少なくありません。リスクを要する患者さんに対しまずは簡易的な検査を行い、異常を指摘された場合にさらなる精査としてDXAを施行することが望ましいでしょう。治療効果の判定は、6ヵ月~1年に一度、体幹部DXAによる骨密度測定を施行します。機種により若干の誤差が生じるため、同一の装置・機種で追跡し、同一部位による判定が望ましいです。高齢糖尿病患者では動脈硬化による腹部大動脈の石灰化や椎体の変形等が椎体骨密度に反映されてしまい、実際より高い骨密度の計測値を示すことがあるため、DXAを施行すると同時に椎体のX線撮像を行うことも重要です。無症状の新規椎体骨折、いわゆる「いつのまにか骨折」の出現がないか確認することも必要です。Q4 どのように骨粗鬆症の薬物療法の開始を判断し、治療薬を選択しますか? 糖尿病患者において骨折予防のための薬物治療を開始する場合は、原発性骨粗鬆症に対する薬物治療開始基準(図)を参考にします。骨折の既往が無くても、1)大腿骨近位部骨折の家族歴を有すること、2)FRAX®での10年以内の骨折(主要骨折)確率が15%以上であることの2項目を満たす時には薬物治療開始が推奨されます。これに加え、「糖尿病の罹病期間が長く、HbA1c 値が7.5%以上のコントロール不良の状態を呈し、インスリン治療を必要とする場合」は薬物治療の開始を考慮して良いと考えます。画像を拡大するポリファーマシーの患者さんに骨粗鬆症治療薬を追加する場合には、慎重に検討する必要があります。ADLが低下し寝たきり状態の方や、認知症の合併により服薬管理が困難な方は、原則として新規導入を見合わせています。ただし、ADLが良好ならば、年齢に関係なく、転倒や骨折のリスクが高い場合は積極的に骨粗鬆症治療を行うべきと考えます。1年に一度のビスホスホネート注射製剤や、6ヵ月に一度の抗RANKL(receptor activator of nuclear factor κB ligand)抗体製剤などの導入は、ポリファーマシー対策にもなります。なお、ビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体製剤等は、腎機能低下例や透析施行例では使用できない場合があるため、薬剤開始前に腎機能評価を行います。高齢者糖尿病の腎機能評価は、筋肉量の影響を受けにくい血清シスタチンC値を参考にします。シスタチンC値>1.5 mg/Lを呈する場合は、ビスホスホネート製剤の新規導入は原則禁忌と考えています。その場合には選択的エストロゲン受容体調節薬(SERMs:Selective Estrogen Receptor Modulators)等の使用を検討します。活性型ビタミンD3製剤は、転倒予防効果が期待できる上、比較的管理しやすいため広く使用されています。既存骨折を認めずADLの良好な方であれば良い適応と考えられますが、腎機能の低下した患者さんでは用量の調整が必要です。尿中Ca/Cr比>0.3の場合には減量を考慮します。スポット尿で簡単に計測できるため、6ヵ月に一度程度確認することを推奨しています。ビスホスホネート製剤の長期臨床投与成績を示した報告では、6~9年程度継続しても安全性には問題がないとされています3, 4)。しかし、ビスホスホネート製剤による骨密度増加効果は、腰椎では長期に持続するものの、大腿骨近位部では3~5年でプラトーに達すると言われています。そのため、まずは5年くらい経過観察し、加療中に大腿骨近位部骨折や椎体骨折などを来たした時や、骨量の増加が期待できない時は抗RANKL抗体製剤などへの変更を考えるのが良いでしょう。一方、アメリカのガイドラインでは、既存の骨折がなく大腿骨近位部の骨密度が骨粗鬆症領域を脱した場合には、ビスホスホネート製剤を休薬して経過観察し、2~3年毎に再評価するよう提示しています5)。骨吸収抑制薬のビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体製剤などは、長期使用によって顎骨壊死や非定型骨折のリスクが増加することが指摘されています。ただし骨粗鬆症に対する経口ビスホスホネート治療に関連する顎骨壊死の発生率は1年間で人口10万人当たり0.2人程度とも言われます。しかも口腔衛生管理を適切に行うことで発症を予防できます。抜歯やインプラントなど顎骨に直接影響を及ぼす処置をする場合には、処置前後2~3ヵ月休薬して様子を見ます。非定型骨折は、ビスホスホネート製剤の使用にてその発症の相対リスクが上昇するといわれています。しかし、非定型骨折の頻度は、大腿骨近位部骨折の1%程度にとどまり、その絶対リスクはビスホスホネート製剤投与に伴う大腿骨近位部骨折およびその他の骨折リスクの減少と比較して、非常に小さいとも報告されています6)。薬物使用による骨折発症予防のベネフィットと、有害事象発症のリスクのバランスを考えながら、個々の患者さんにとって適正な治療方針を選択すべきと考えます。1)Schneider AL, et al. Diabetes Care 2013; 36: 1153-1158.2)Leslie WD, et al. J Bone Miner Res 2018; 33: 1923-1930.3)Eriksen EF, et al. Bone 2014; 58: 126-135.4)Black DM, et al. J Bone Miner Res 2015; 30: 934-944.5)Alder RA, et al. J Bone Miner Res 2016; 31: 16-35.6)Black DM, et al. N Eng J Med 2020; 383: 743-753.

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抗肥満薬としてのGLP-1受容体作動薬セマグルチドの有効性(解説:住谷哲氏)-1375

 高血圧、高脂血症および2型糖尿病などの生活習慣病の多くは肥満と関連している。さらに肥満を改善すれば高血圧、高脂血症および2型糖尿病の改善がみられることも少なくない。高血圧には降圧薬、高脂血症にはスタチンやフィブラート製剤、2型糖尿病には血糖降下薬が使用可能であるが、肥満に対する治療薬としてわが国で認可されているのは食欲抑制剤としてのマジンドール(商品名:サノレックス)のみである。肥満大国の米国ではこれに加えて、腸管からの脂肪吸収を抑制するリパーゼ阻害薬であるorlistat(商品名:Xenical)、中枢神経系に作用するphentermine/topiramate(商品名:Qsymia)、naltrexone/bupropion(商品名:Contrave)も販売されているがいずれも副作用が問題で長期使用できる薬剤ではない。 インクレチン関連薬であるGLP-1受容体作動薬は血糖降下薬として開発されたが、体重減少作用を有することから抗肥満薬として以前から注目されてきた。リラグルチドは抗肥満薬(商品名:Saxenda)としてすでにわが国以外の多くの国で認可されている。本論文はセマグルチドの抗肥満薬としての有効性と安全性を検討した国際第III相試験プログラムSemaglutide Treatment Effect in People with Obesity(STEP)の一つであるSTEP 1についての報告である。その結果は、セマグルチド2.4mgの週1回投与は68週後にプラセボと比較して約15%の体重減少をもたらした。head to head試験の結果を待つ必要があるが、SCALE試験1)で報告されたリラグルチド3.0mg投与による体重減少率はプラセボ群と比較して-4.5%であったのに対し、本試験ではプラセボ群と比較して-12.4%でありセマグルチド2.4mg投与による体重減少率がリラグルチド3.0mg投与より大きいと思われる。 Googleで「GLP-1ダイエット」と入力して検索すると249,000件がヒットした(2021年4月11日現在)。その多くは楽に痩せる注射としてGLP-1受容体作動薬を紹介している。この問題については2020年日本糖尿病学会が「GLP-1 受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」として警告を発している2)。現時点で2型糖尿病患者以外への投与は論外であるが、本剤を使用することが有益である肥満患者のためにも、わが国でも抗肥満薬としてのGLP-1受容体作動薬が認可されることを期待したい。

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先天性腎性尿崩症〔Congenital nephrogenic diabetes insipidus〕

1 疾患概要■ 概念・定義腎性尿崩症(Nephrogenic Diabetes Insipidus:NDI)は、腎尿細管におけるAVP(Arginine Vasopressin)の作用不足のために尿濃縮障害を呈し、そのために多尿(尿の過剰産生)と多飲(過度の口渇)を呈する疾患群である。NDIは、成因により先天性と二次性に分けられる。先天性NDIは、AVPのV2受容体やAVP依存性水チャンネルのアクアポリン-2の遺伝子異常などにより発症する。二次性NDIは、低カリウム血症、高カルシウム血症、腎泌尿器疾患、薬剤(炭酸リチウムほか)、アミロイドーシスなどに伴って発症する。先天性NDIは難病指定を受けている。本稿では主に先天性NDIについて述べる。■ 疫学わが国の関連学会会員を対象とした全国規模の腎性尿崩症の頻度調査(2009~2010年)では、173例のNDIが確認され、そのうち15例はリチウム製剤に起因する二次性NDIであった1)。■ 病因と分類NDIの原因は、先天性と二次性に大別されるが、二次性はさらに、薬剤性、腎泌尿器疾患によるもの、その他、などに区分される(表12))。表1 腎性尿崩症の原因2)1.先天性1)X連鎖潜性遺伝(劣性遺伝)性 AVPR22)常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)性 AQP23)常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性 AQP24)その他2.電解質異常1)高カルシウム血症2)低カリウム血症3.薬剤性リチウム、デメクロサイクリン、アンホテリシン B、アミノグリコシド系薬剤、メトキシフルレンなど4.腎泌尿器疾患1)慢性腎不全2)逆流性腎症、間質性腎炎3)異形成腎、髄質嚢胞性腎疾患、ネフロン癆4)ファンコニー症候群(シスチン蓄積症、他)、バーター症候群5)尿路閉塞5.その他1)サルコイドーシス2)アミロイドーシス3)シェーグレン症候群4)鎌状赤血球症5)浸透圧利尿(糖、マンニトール、ナトリウム)6)ACEI/ARB fetopathy**は著者改変1)AVPによる集合管における尿濃縮の機序V2受容体は7回膜貫通型Gタンパク質共役受容体で、腎集合管主細胞の血管膜側細胞膜に発現している。AVPがV2受容体に結合するとGタンパクとアデニル酸シクラーゼの活性化を生じ、cAMPが産生される。cAMPはプロテインキナーゼA(PKA)を介して、輸送小胞膜上にホモ4量体で水チャンネルを形成しているアクアポリン-2をリン酸化する。リン酸化されたアクアポリン-2を載せた小胞は管腔側細胞膜へ移動し、エクソサイトーシスにより細胞膜と融合することで管腔と主細胞間に水チャンネルが開通する。主細胞の血管側細胞膜上でアクアポリン-3、4により恒常的に開通している水チャンネルの作用と併せて、管腔側から血管側へ水が再吸収されて尿が濃縮される(図)。図 腎尿細管主細胞におけるV2受容体とアクアポリンによる水の再吸収(著者作成)画像を拡大する2)先天性NDI(a)遺伝形式と発症機序先天性NDIの90%以上はX連鎖潜性遺伝(劣性遺伝)である。約9%の患者は常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)であり、1%は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)である。X連鎖潜性遺伝(劣性遺伝)NDIの95%にはAVPのV2受容体遺伝子AVPR2に病的バリアントを認め、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)NDIの約95%にはアクアポリン-2遺伝子AQP2に病的バリアントを認める。軽症または部分型の先天性NDIは、AVPR2遺伝子異常に報告されることが多いが、顕性遺伝(優性遺伝)形式をとるAQP2遺伝子異常によるものも報告されている。(b)AVPR2の遺伝子異常AVPのV2受容体遺伝子AVPR2はヒトではX染色体上に位置していて、3つのエクソンからなる。この遺伝子の病的バリアントによるNDIの発症は、男性100万人に4人程度の発症率で認められている。報告されている200種以上のバリアントには特定の集積部位は認められない。機能解析がなされているミスセンス例の多くは、misfoldingによるtrafficking障害によりバリアントタンパクが膜に到達できないことによる。バリアントの種類によっては、部分的にAVP作用が保たれる例も存在する。2012年の厚生労働省研究班の全国調査では、遺伝子解析が実施された62例のうち、AVPR2異常が43例を占めた1)。(c)AQP2の遺伝子異常アクアポリン-2の遺伝子AQP2はヒトでは12q13に位置し、4つのエクソンよりなる。常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式と常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式の双方が報告されている。2012年の厚生労働省研究班の全国調査では、遺伝子解析が実施された62例のうち、AQP2異常が5例を占めた1)。(d)ACEI/ARB fetopathy遺伝性ではないが先天性NDIが、妊娠中に降圧薬ACEI/ARBを内服した母体から出生した児に発生することが報告されている3)。薬剤による影響がその原因であるので二次性でもある。3)二次性 NDI以下の原疾患・原因により引き起こされるNDIであり、主に、年長児や成人に発症する。(a)腎泌尿器疾患慢性腎不全、間質性腎炎、慢性尿路閉塞などの腎尿細管機能低下を招来する腎泌尿器疾患は尿濃縮力を低下させ、NDIを呈する。(b)電解質異常高カルシウム血症,低カリウム血症に伴う尿濃縮障害によるNDIが知られている。(c)薬剤性 NDI躁状態治療薬(炭酸リチウム)、抗リウマチ薬(ロベンザリット二ナトリウム)、抗 HIV 薬(フマル酸テノホビルジソプロキシル)、抗菌薬(イミペネム・シラスタチンナトリウム、アムホテリシン、塩酸デメクロサイクリン)、抗ウイルス薬(ホスカルネットナトリウム水和物)などによるNDIが知られている。リチウムについては、glycogen synthase kinase 3(GSK3)を抑制することにより、AVP感受性アデニル酸シクラーゼ活性が低下して細胞内cAMP産生が低下し、AVP作用が減弱するとされている。(d)その他頻度は低いがアミロイドーシス,サルコイドーシスなどの全身疾患もNDIの原因となる。■ 症状多尿が共通した症状であるが、患者の年齢により徴候が異なる。先天性NDIの徴候を述べる。(1)胎児期:母体の羊水過多。(2)新生児期:生後数日頃から、原因不明の発熱およびけいれんを来す。高浸透圧血症、高ナトリウム血症を呈す。(3)幼児期~成人:多尿(3~20L/日、乳幼児では体表面積あたりの尿量が2,500mL/m2以上)とそれに伴う多飲を呈す。軽症例では、心因性多飲として経過観察されていたり、多尿に気付かれず夜尿のみを訴えることもある。体重増加不良、便秘を呈すこともある。■ 予後1)中枢神経系口渇に対して自らの意思で飲水できない新生児、乳幼児や意識障害を伴う例では、特に診断前には高張性脱水(高ナトリウム血症)を来し、中枢神経系の不可逆的な障害を残すことが多い。新生児では初発症状が高ナトリウム血症による痙攣のこともある。2012年の厚生労働省研究班による全国調査では、先天性NDIの約1割に精神発達遅滞を認めた。乳幼児期を過ぎれば自律的に水分摂取が可能となるので、意識障害時を除いて高張性脱水による中枢神経合併症を生じることはないとされる。2)腎泌尿器系現在のところ、NDIの多尿を適切に改善させる治療法がないので、長期間の多尿による腎泌尿器系の合併症が約半数の患者にみられる。水尿管を含む水腎症、膀胱尿管逆流症の併発により腎機能低下を招来する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)先天性腎性尿崩症の診断基準は、主要症状である多尿、検査所見として尿浸透圧の低値とAVPへの無反応/反応低下、鑑別診断と遺伝学的検査よりなっている(表24))。これには軽症または部分型NDIを診断するための重症度分類も含まれている1)。先天性NDIの診断年齢は、1歳未満が半数以上を占めているが、1~4歳で診断される例も1~2割を占める。表2 先天性腎性尿崩症の診断基準4)と重症度分類1)画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)多尿に見合う適切な量の水分摂取、腎への溶質負荷を軽減するための塩分・蛋白質の摂取制限、サイアザイド系利尿薬や非ステロイド系抗炎症薬の投与が行われる。小児期には、まず塩分制限を行い、効果が不十分な場合に蛋白制限を追加するが、成長障害に十分な注意を払わなければならない。サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロサイアザイドで2~4 mg/kg/日)は、利尿により生じる軽度の体液量減少がレニン・アルドステロン・アンギオテンシン系や交感神経系を賦活して近位尿細管におけるNaと水の再吸収を促進することで、結果的にAVPの作用部位である集合管への水・電解質の負荷を軽減し、逆説的に尿量減少効果を呈すると考えられている。サイアザイド系利尿薬の投与により、尿量は、1/2~1/3程度に減少する。効果が不十分な場合、AVPR2遺伝子異常によるNDIではインドメタシンや選択的COX-2 阻害薬が有効とされるが、近年、長期の選択的COX-2阻害剤投与が心臓の副作用を招くことが明らかにされた。部分的NDIではAVPへの反応性が残存しているので、高容量のDDAVPとサイアザイドの併用による治療が可能な場合がある。4 今後の展望AVPR2バリアントやAQP2バリアントでは、タンパクの細胞質移送が障害されていることが明らかになっているので、種々の薬剤のシャペロン作用により、バリアント蛋白の細胞質内での滞留を解除する試みがなされているが、実用には至っていない5)。5 主たる診療科新生児科、小児科、内科、泌尿器科、腎臓内科、神経内科、神経小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 先天性腎性尿崩症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報腎性尿崩症 友の会(患者とその家族および支援者の会)1)腎性尿崩症の実態把握と診断・治療指針作成に関する研究(研究代表者 神崎 晋). 平成21~23年度総合研究報告書. 2012.2)根東義明. 日腎会誌. 2011;53:177-180.3)Miura K,et al. Pediatric Nephrology.2009;24:1235–1238.4)先天性腎性尿崩症.難病医学研究財団 難病情報センター.(2021年3月1日閲覧)5)Bernier V, et al. J Am Soc Nephrol.2006;17:232-243.公開履歴初回2021年04月13日

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新型コロナウイルスの血栓対策(解説:後藤信哉氏)-1374

 当初肺炎が主病態と考えられた新型コロナウイルス感染症であるが、症例が蓄積されるとともに主な病態は血管系におけるimmunothrombosisであることがわかってきた。結果として静脈血栓症、脳梗塞などの典型的な血栓症の病態を呈することもあるが、血栓形成の開始機序は明確に異なる。成長メカニズムには相同性と特殊性があると想定される。静脈血栓症、心筋梗塞などの動脈血栓症を標的として抗血小板薬、抗凝固薬が開発されてきたが、新型コロナウイルス感染に対する至適抗血栓療法は現時点では未知である。 欧米では静脈血栓リスクが一般に高いためICUに入る症例では全例抗凝固療法を受けるのが普通であった。静脈血栓予防と治療では用量が異なる。血栓治療量は血栓症に対して使用される。新型コロナウイルス感染では、一般的な静脈血栓の有無の判定に用いるD-dimerが陽性のことが多い。ならば血栓予防量と治療量のランダム化比較試験を企画しても倫理的問題は起こらない。本研究では新型コロナウイルス感染にてICUに入院した症例における予防量と治療量の抗凝固療法が比較された。 新型コロナウイルスの血栓形成メカニズムはわからない。動脈硬化も経過の長いimmunothrombosisと考えれば、心筋梗塞などの動脈硬化・血栓性疾患の発症予防・治療に有効なスタチンも新型コロナウイルス感染のimmunothrombosisに有効かもしれない。このスタチンの有効性も探索的に検討された。 日本以外の諸国では静脈血栓症予防・治療の標準治療として低分子ヘパリンが確立されている。低分子ヘパリンのうち、エノキサパリンを1日40mgの固定用量として使用する群と、体重1kg当たり1mgにて使用する群にランダムに振り分けた。有効性の1次エンドポイントとして静脈あるいは動脈血栓症・ECMO使用・死亡の複合エンドポイントを用いた。ICUに入院する新型コロナウイルス感染は怖い。30日以内の1次エンドポイント発現率は予防量低分子ヘパリン群にて44.1%、用量を増やしても発現率は45.7%であった。圧倒的多数の有効性1次エンドポイントは死亡に直結した。心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓が多いわけではない。病態の主因がimmunothrombosisであっても、現在われわれがもっている抗凝固介入では予後を大きく改善できない。 遠回りかもしれないが、新型コロナウイルス感染によるimmunothrombosisのメカニズムを解明し、予後不良に寄与する因子を解明し、その因子に対する選択的治療薬の開発が必要である。抗血栓薬開発は既存の心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓に対しては出揃った感があるが、新型コロナウイルスに対しては基本に立ち返って革新的創薬が必須であることを本研究は示したことになる。

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既治療の進行尿路上皮がん、enfortumab vedotinが有望/NEJM

 プラチナ製剤ベースの化学療法と、プログラム細胞死-1(PD-1)/プログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)阻害薬による治療歴のある局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の治療において、enfortumab vedotinは標準化学療法と比較して、全生存(OS)期間と無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、Grade3以上の治療関連有害事象の頻度は同程度であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のThomas Powles氏らが実施した「EV-301試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年3月25日号に掲載された。プラチナ製剤ベースの化学療法とPD-1/PD-L1阻害薬による治療後に病勢が進行した進行尿路上皮がん患者の治療法は限られており、ほとんど効果はないとされる。enfortumab vedotinは、ネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であり、ネクチン-4に特異的な完全ヒトモノクローナル抗体と、微小管形成の阻害薬であるモノメチルアウリスタチンEで構成される。ネクチン-4は、尿路上皮がんで高発現している細胞接着分子であり、腫瘍細胞の成長と増殖に寄与すると考えられている。OSを評価する国際的な第III相試験 研究グループは、局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の治療におけるenfortumab vedotinの有用性を評価する目的で、国際的な非盲検第III相試験を行った(Astellas Pharma USとSeagenの助成による)。本試験には、日本を含む19ヵ国191施設が参加した。 対象は、年齢18歳以上、組織学的または細胞学的に尿路上皮がんと確定され、画像所見で転移を有するまたは切除不能な進行病変が確認され、全身状態(ECOG PS)が0または1で、プラチナ製剤を含む化学療法による治療歴があり、PD-1/PD-L1阻害薬による治療中または治療終了後に病勢が進行した患者であった。 被験者は、enfortumab vedotin(1サイクルを28日として、1、8、15日目に1.25mg/kg体重)を投与する群、または担当医が選択した標準化学療法(ドセタキセル、パクリタキセル、vinflunineのいずれかを、1サイクル21日の1日目に投与)を施行する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントはOSとした。全奏効率、病勢コントロール率も良好 608例(年齢中央値68歳[範囲:30~88]、男性77.3%)が無作為化の対象となり、enfortumab vedotin群に301例、化学療法群に307例が割り付けられた。内臓転移は、enfortumab vedotin群が77.7%、化学療法群は81.7%に、肝転移は両群とも30.9%に認められた。 データカットオフの時点(2020年7月15日)で、301例(enfortumab vedotin群134例、化学療法群167例)が死亡していた。事前に規定された中間解析時のフォローアップ期間中央値は11.1ヵ月であった。解析の結果、OS期間中央値はenfortumab vedotin群が12.88ヵ月と、化学療法群の8.97ヵ月に比べ有意に延長し、死亡リスクが30%低下した(死亡のハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.56~0.89、p=0.001)。1年OS率はそれぞれ51.5%および39.2%だった。 PFS期間中央値は、enfortumab vedotin群は5.55ヵ月であり、化学療法群の3.71ヵ月と比べて、進行または死亡のリスクが38%有意に改善した(進行または死亡のHR:0.62、95%CI:0.51~0.75、P<0.001)。また、全奏効率は、それぞれ40.6%および17.9%であり、enfortumab vedotin群で有意に優れた(p<0.001)。完全奏効率は4.9%および2.7%、病勢コントロール率は71.9%および53.4%(p<0.001)であった。 治療関連有害事象の発生率は、enfortumab vedotin群が93.9%、化学療法群は91.8%と、両群で同程度であった。また、Grade3以上の治療関連有害事象の発生率は、それぞれ51.4%および49.8%であった。enfortumab vedotin群で頻度の高いGrade3以上の有害事象は、斑状丘疹状皮疹(7.4%)、疲労(6.4%)、好中球数の減少(6.1%)であり、治療関連有害事象による減量が32.4%、投与中断が51.0%、投与中止は13.5%で認められた。 著者は、「OSのサブグループ解析では、女性でenfortumab vedotinの有効性が示されなかった(HR:1.17、95%CI:0.72~1.89)。これは、試験に参加した女性が22.7%と少なく、この疾患の人口統計学的プロファイルを反映していると考えられる」としている。

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スタチンの中でピタバスタチンを選んだ狙い【処方まる見えゼミナール(眞弓ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(眞弓ゼミ)スタチンの中でピタバスタチンを選んだ狙い講師:眞弓 久則氏 / 眞弓循環器科クリニック院長動画解説50歳の男性に処方されたのは、ニコチン酸誘導体、フィブラート、スタチン。患者さんが脂質異常症であるのはすぐわかりますが、原則禁忌のフィブラートとスタチンが併用されているのにはどんな背景があるのでしょうか?また、数あるスタチンの中でピタバスタチンを選択した理由は?眞弓久則先生がこの処方に込めた意図を、若手薬剤師たちが教室で明らかにしていきます。

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知らないと悲劇?毎朝血糖値測定を欠かさない患者【スーパー服薬指導(5)】

スーパー服薬指導(5)知らないと悲劇?毎朝血糖値測定を欠かさない患者講師:近藤 剛弘氏 / 元 ファイン総合研究所 専務取締役動画解説脂質異常症を併発する糖尿病患者が来局。コレステロールと中性脂肪が改善しないと、スタチン系の処方が変更されたが、薬剤師は併用薬との相互作用に気づき…

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ICU入室COVID-19へのエノキサパリン、中等量vs.標準量/JAMA

 集中治療室(ICU)に入室した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対し、予防的抗凝固療法としてエノキサパリンの中等量(1mg/kg/日、クレアチニン・クリアランス値により調整)の投与は同標準量(40mg/日)の投与と比べ、30日以内静脈または動脈血栓症・体外式膜型人工肺(ECMO)の使用・死亡の複合アウトカムについて、有意差は認められなかった。イラン・Iran University of Medical SciencesのParham Sadeghipour氏ら「INSPIRATION無作為化試験」研究グループが約600例の患者を対象に行った試験結果を報告した。COVID-19重症患者において、血栓性イベントの報告頻度は高い。抗血栓予防療法の強度を高めることに関するデータは限定的であり、今回の検討が行われた。研究グループは、「結果は、ICU入室COVID-19患者に対して非選択的に中等量の予防的抗凝固療法をルーチン投与することを支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2021年3月18日号掲載の報告。イラン10ヵ所の医療センターで試験 研究グループはイランの大学医療センター10施設を通じて、ICUに入室したCOVID-19患者を対象に、2×2要因デザインを用いて多施設共同無作為化試験を行った。 本試験で被験者は、エノキサパリン中等量(体重120kg未満でクレアチニン・クリアランス値30mL/分超に対し、1mg/kg/日)または同標準量(40mg/日)による予防的抗凝固療法と、スタチンまたはプラセボ(第2の仮説、本論では結果報告なし)を、それぞれ投与(両群の投与量について、体重とクレアチニン・クリアランス値に応じて調整)。割り付け治療は、30日間のフォローアップ完遂まで行うよう計画された。 被験者の募集期間は2020年7月29日~11月19日で、主要アウトカムの30日間フォローアップの最終日は2020年12月19日だった。 有効性の主要アウトカムは、30日以内の静脈または動脈血栓症・ECMOの使用・死亡の複合だった。試験の適格基準を満たし割り付け試験薬を1回以上投与された被験者を対象に分析を行った。 事前に規定した安全性に関するアウトカムは、BARCによる大出血(タイプ3または5)の非劣性評価(非劣性マージン:オッズ比[OR]1.8)、重症血小板減少症(血小板数:20×103/μL未満)などだった。大出血発生率も非劣性示せず 600例が無作為化を受け、主要解析には562例(93.7%)が含まれた(年齢中央値62歳[範囲:50~71]、女性は237例[42.2%])。 主要有効性アウトカムの発生は、中等量群126例(45.7%)、標準量群126例(44.1%)だった(絶対リスク差:1.5%[95%信頼区間[CI]:-6.6~9.8、OR:1.06[95%CI:0.76~1.48]、p=0.70)。 大出血の発生は、中等量群7例(2.5%)、標準量群4例(1.4%)で、ORは1.83(片側97.5%CI:0.00~5.93)と非劣性は示されなかった(非劣性のp>0.99)。重症血小板減少症の発生は、中等量群でのみ6例(2.2%)で認められた(6 vs.0、リスク差:2.2%[95%CI:0.4~3.8]、p=0.01)。

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心血管リスク因子のないSTEMIは死亡リスクが高い/Lancet

 標準的な心血管リスク因子(SMuRFs:高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙)のないST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者は、少なくとも1つのSMuRFsを有する患者と比較して全死因死亡のリスクが有意に高く、とくに女性で顕著である。オーストラリア・Royal North Shore HospitalのGemma A. Figtree氏らが、スウェーデンの心疾患登録研究であるSWEDEHEART研究を用いた後ろ向き解析結果を報告した。心血管疾患の予防戦略はSMuRFsを標的とすることが重要であるが、SMuRFsのない心筋梗塞はまれではなく、SMuRFsを有していない患者の転帰についてはよく知られていなかった。著者は、「早期死亡リスクの上昇は、ガイドラインで示された治療を追加することで弱まる。今回得られた所見は、ベースラインでのリスク因子や性別にかかわらず、心筋梗塞発症直後のエビデンスに基づいた薬物療法の必要性を強調するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年3月9日号掲載の報告。STEMI患者約6万2千例を対象にSMuRFsの有無別で死亡率を解析 研究グループはSWEDEHEART研究のデータを用い、SMuRFsの有無にかかわらずSTEMI成人患者の臨床特性と転帰について、全体および性別ごとに解析した。冠動脈疾患の既往歴がある患者は除外された。 主要評価項目は、STEMI発症後30日以内の全死因死亡、副次評価項目は30日以内の心血管死、心不全および心筋梗塞であった。各評価項目は、退院まで、ならびに12年間の追跡終了時まで調査。多変量ロジスティック回帰モデルを用いて院内死亡率を比較し、Cox比例ハザードモデルおよびカプランマイヤー法により長期転帰を比較した。 解析対象は、2005年1月1日~2018年5月25日の期間に登録されたSTEMI患者6万2,048例であった。このうち、診断を要するSMuRFsを認めなかったのは9,228例(14.9%)で、年齢中央値はSMuRFsあり群68歳(四分位範囲:59~78)、SMuRFsなし群69歳(60~78)であった。SMuRFsなしで30日死亡リスクは約1.5倍、とくに女性は一貫して死亡率が高い SMuRFsなし群はあり群と比較して、経皮的冠動脈インターベンション実施率は類似していたが(71.8% vs.71.3%)、退院時におけるスタチン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬の投与率は有意に低かった。 発症後30日以内の全死因死亡リスクは、SMuRFsなし群で有意に高かった(ハザード比:1.47、95%信頼区間[CI]:1.37~1.57、p<0.0001)。30日以内の全死因死亡率が最も高かったのはSMuRFsがない女性(17.6%、381/2,164例)で、次いでSMuRFsあり女性(11.1%、2,032/1万8,220例)、SMuRFsなし男性(9.3%、660/7,064例)、SMuRFsあり男性(6.1%、2,117/3万4,600例)の順であった。 SMuRFsなし群における30日以内の全死因死亡リスクの上昇は、年齢、性別、左室駆出率、クレアチニン、血圧で補正後も有意であったが、退院時の薬物療法(ACEI/ARB、β遮断薬、スタチン)を組み込んだ場合は減弱した。 さらに、SMuRFsなし群はあり群と比較して、院内の全死因死亡率が有意に高かった(9.6% vs.6.5%、p<0.0001)。30日時点の心筋梗塞および心不全は、SMuRFsなし群で低かった。全死因死亡率は、男性では8年強、女性では追跡終了時である12年後まで、SMuRFsなし群が一貫して高いままであった。

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