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スタチンによる血管疾患の1次予防の費用対効果:オランダの調査

プライマリ・ケアにおける血管疾患の1次予防としてのスタチン治療は、低リスク集団では費用対効果がよくないことが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJP Greving氏らの検討で示された。スタチンは、心血管疾患のない集団における心血管/脳血管イベントのリスクを低減することが示されているが、スタチン治療の絶対的なベネフィットを規定するのは、個々のリスク因子よりもむしろ全体としての血管疾患イベントのリスクと考えられている。また、日常診療におけるスタチン服用のアドヒアランスは十分とは言えず、これが費用対効果を損なっている可能性もあるという。BMJ誌2011年4月9日号(オンライン版2011年3月30日号)掲載の報告。低用量スタチンの費用対効果をMarkovモデルで検討研究グループは、血管疾患の1次予防における低用量スタチンの費用対効果を、直近の薬価、服薬アドヒアランス不良(臨床効果は低いがコストは維持)、JUPITER試験(スタチンの1次予防効果に関する最新の大規模臨床試験)の結果を踏まえて検討した。オランダのプライマリ・ケアのデータを用い、血管疾患の既往歴のない45~75歳の健常者の仮説母集団において、10年以内に血管疾患(心筋梗塞、脳卒中)を発症するリスク(10年血管リスク)を、低用量スタチン(連日)群と無治療群で比較した。費用対効果の解析にはMarkovモデルを用いた。パラメータの不確実性については、Monte Carloシミュレーション(1,000回反復)を用いた確率的感度分析を行った。主要評価項目は、10年間の致死的および非致死的な血管疾患の発生、質調整生存年(QALY)、コスト、増分費用対効果比であった。10年血管リスクが低くなるにしたがって費用対効果が低下する傾向無治療に比べ10年間のスタチン治療のコスト/QALYは、10年血管リスクが10%の55歳男性では約3万5,000ユーロ(ほぼ3万ポンド、4万9,000ドルに相当)であった。全般に、増分費用対効果比は血管疾患リスクの増大とともに改善し、55歳男性では、10年血管リスクが25%の場合の約5,000ユーロから、リスク5%の場合の約12万5,000ユーロまでの幅が認められた。また、増分費用対効果比は加齢とともにわずかに低下する傾向がみられた。感度分析では、得られた結果はスタチン治療のコスト、スタチンの有効性、アドヒアランス不良、連日服用の不効用性、モデルの計画対象期間(time horizon)に対し高い感度を示した。著者は、「日常診療では、血管疾患のリスクが低い集団(10年血管リスク<5%)に対する1次予防としてのスタチン治療は、ジェネリック薬のコストが低いにもかかわらず費用対効果がよくないと考えられた」と結論し、「1次予防におけるスタチン使用の費用対効果のいっそうの改善には、スタチン服用のアドヒアランスの向上が求められる」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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スタチンは心房細動を抑制するか?

短期的な試験で示唆されたスタチンの心房細動に対する抑制効果は、長期的な大規模試験の包括的なレビューの結果では支持されないことが、イギリス・オックスフォード大学のKazem Rahimi氏らの検討で明らかにされた。心房細動は最も高頻度にみられる不整脈の一病型であり、加齢とともに増加することが示されている。多くの国では平均余命が延長し、その結果として心不全の発症率が上昇するため、今後、心房細動による世界的な疾病負担が増大する可能性が高い。心臓手術例や除細動施行例に限定されたエビデンスではあるが、スタチンはこれらの患者における心房細動のリスクを3分の1以上も低減する可能性があるという。BMJ誌2011年3月26日号(オンライン版2011年3月16日号)掲載の報告。既報および未報の無作為化対照比較試験のメタ解析研究グループは、スタチンによる心房細動のリスク低減効果を評価するために、既報および未報の無作為化対照比較試験のメタ解析を行った。データベース(Medline、Embase、Cochrane’s CENTRAL)を検索して2010年10月までに報告された試験を抽出した。未報の長期試験のデータは、研究者と連絡を取って入手した。解析の対象は、スタチン投与群と非投与群、あるいはスタチン高用量投与群と標準用量投与群を比較した無作為化対照試験とし、長期試験の場合は100例以上を対象に6ヵ月以上のフォローアップを行った試験とした。現時点では推奨されないが、さらなる検討も既報の13件の短期試験のデータ(4,414例、659イベント)を解析したところ、スタチン治療により心房細動の発症率が39%低下した(オッズ比:0.61、95%信頼区間:0.51~0.74、p<0.001)が、これらの試験間には有意な不均一性(heterogeneity)が認められた(p<0.001)。一方、スタチンと対照を比較した22件の長期大規模試験(10万5,791例、2,535イベント)では、スタチン治療によって心房細動の発症率が低下することはなかった(オッズ比:0.95、95%信頼区間:0.88~1.03、p=0.24、不均一性:p=0.40)(差の検定:p<0.001)。7件の高用量群と標準用量群を比較した、より長期の試験(2万8,964例、1,419イベント)においても、スタチンによる心房細動のリスク低減効果のエビデンスは示されなかった(オッズ比:1.00、95%信頼区間:0.90~1.12、p=0.99、不均一性:p=0.05)。著者は、「既報の短期的な試験で示唆されたスタチンの心房細動に対する抑制効果は、より大規模な既報および未報の試験の包括的なレビューでは支持されなかったため、現時点ではスタチンは心房細動の予防には推奨されない」と結論したうえで、「これらの知見は、一部の患者でみられたスタチンの心房細動抑制効果を排除するものではなく、今後、よくデザインされた無作為化試験を行って検証する価値がある」としている。(菅野守:医学ライター)

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2002~2009年における米国・カナダでのフィブラート系薬剤の処方傾向

2002~2009年の米国およびカナダにおけるフィブラート系薬剤の処方傾向を調べた結果、米国では特にフェノフィブラート(商品名:リピディル、トライコアなど)を中心に大きく増大したことが認められ、カナダでは約20%と安定的推移を示していたことが報告された。米国Western University of Health SciencesのCynthia A. Jackevicius氏らの観察コホート試験による。Jackevicius氏らは、フェノフィブラート+スタチン療法を評価したACCORD試験でネガティブな結果が公表されて以降、フィブラート系薬剤の使用に関する関心が高まっていること、また臨床的ベネフィットのエビデンスはgemfibrozilやクロフィブラートなど従前薬に傾いているという背景を踏まえ本調査を行った。JAMA誌2011年3月23/30日合併号掲載より。2009年10万人当たりフィブラート系薬剤処方数、米国は730件、カナダは474件同研究グループは、2002年1月~2009年12月の間のフィブラート系薬剤の処方傾向について、IMS Healthデータベースを元に調査を行った。有効性の違い、ブランド品対後発品、米国とカナダの経済状況の違いなどとの関連を調べた。その結果、米国のフィブラート系薬剤処方数は、10万人当たり2002年1月の336件から2009年12月の同730件へと増加しており、その増加幅は117.1(95%信頼区間:116.0~117.9)%だった。一方カナダでは、同402件から474件への増加で、増加幅は18.1(同:17.9~18.3)%だった(P<0.001)。米国ではブランド品優位だがカナダでは後発品が優勢、消費額は米国がカナダの3倍なかでもフェノフィブラートの処方については、米国では10万人当たり2002年1月の150件から2009年12月の同440件に増加し、その増加幅は159.3(同:157.7~161.0)%で、フィブラート系薬剤に占める割合は同期間で47.9%から65.2%に増大していた。カナダにおいては、同321件から429件へとコンスタントな増加であった。また、両国のフェノフィブラートの2008年におけるブランド品対後発品の割合をみたところ、米国では1対0.09であったのに対し、カナダでは1対1.89と後発品処方がブランド品処方を上回っていた。そうしたこともあり、人口10万人・1ヵ月当たりのフェノフィブラートの消費額は、米国では2002年の1万1,535ドルから2009年の4万4,975ドルへと大幅に増大したのに対し、カナダでは同期間で1万7,695ドルから1万6,112ドルへと減少していた。フィブラート系薬剤全体では、2009年の人口10万人当たりの米国での消費額はカナダの3倍であった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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CRP濃度は、スタチンの血管ベネフィットに影響しない:HPS試験サブ解析

ベースラインのC反応性蛋白(CRP)濃度はシンバスタチン(商品名:リポバスなど)治療の血管ベネフィットに影響を及ぼさないことが、Heart Protection Study(HPS)の研究グループが行ったサブグループ解析で示された。CRP濃度に基づく炎症状態はスタチン治療の血管保護効果に影響を及ぼすことが示唆されている。特に、CRP濃度が高い患者はスタチンのベネフィットがより高く、CRPとLDLコレステロール値がいずれも低値の場合は、スタチンは無効との見解もあるという。Lancet誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月28日号)掲載の報告。約2万人をCRP濃度で6群に分類HPS試験は、血管イベントの発生リスクが高い患者に対するスタチン治療の有用性を評価するプラセボ対照無作為化試験。今回、研究グループは、スタチン治療の効果はベースラインのCRP濃度によって異なるとの仮説を検証するサブグループ解析を行った。1994~1997年までにイギリスの69施設から冠動脈疾患、冠動脈以外の血管の閉塞性疾患、糖尿病、降圧薬治療の既往歴のある40~80歳の2万536人が登録され、平均5年間シンバスタチン40mg/日を投与する群(1万269例)あるいはプラセボ群(1万267例)に無作為に割り付けられた。患者は、ベースラインのCRP濃度によって6つの群(<1.25、1.25~1.99、2.00~2.99、3.00~4.99、5.00~7.99、≧8.00mg/L)に分類された。主要評価項目は、重篤な血管イベント(冠動脈死、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術の複合エンドポイント)であった。CRP濃度が最低のグループでもスタチン群が有意に良好無作為割り付け後の重篤な血管イベントの発生率は、シンバスタチン群が19.8%(2,033例)と、プラセボ群の25.2%(2,585例)に比べ相対的に24%(95%信頼区間:19~28)低下した。ベースラインのCRP濃度に比例して複合エンドポイントおよび個々の構成因子の低下率が変化するとのエビデンスは得られなかった(傾向検定:p=0.41)。ベースラインのCRP濃度が<1.25mg/Lの患者においても、重篤な血管イベントはシンバスタチン群[14.1%(239例)]がプラセボ群[19.4%(329例)]よりも有意に29%(99%信頼区間:12~43、p<0.0001)低下した。ベースラインのLDLコレステロール値とCRP濃度の高低の組み合わせで定義された4つのサブグループ間で、相対リスク低下率の不均一性に有意な差を認めなかった(p=0.72)。特に、低LDLコレステロール値/低CRP濃度のグループでは、シンバスタチン群[15.6%(295例)]がプラセボ群[20.9%(400例)]に比べ有意に27%(99%信頼区間:11~40、p<0.0001)低下した。著者は、「この大規模無作為化試験のエビデンスは、ベースラインのCRP濃度がスタチン治療による血管ベネフィットに実質的な影響を及ぼすとの仮説を支持しない」と結論し、「この知見は他のスタチンにも広範に一般化可能と推察される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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脂質モニタリングによる服薬不履行の検出

コレステロール値のモニタリングは、プラバスタチン(商品名:メバロチンなど)治療における完全服薬不履行(complete non-adherence)の検出にある程度は有効だが、部分的服薬不履行(partial non-adherence)の検出能は劣ることが、オーストラリア・シドニー大学のKaty J L Bell氏らの検討で示された。脂質低下薬の服薬遵守(adherence)には患者間にばらつきがみられる。ガイドラインでは、コレステロール値をモニターすることで服薬不履行を評価するよう勧告しているが、脂質モニタリングによる服薬不履行の検出能は不明だという。BMJ誌2011年1月29日号(オンライン版2011年1月21日号)掲載の報告。LIPID試験のデータを用いた解析研究グループは、脂質低下薬治療の服薬不履行の検出におけるコレステロール値モニタリングの正確度(accuracy)を評価するために、服薬不履行に関する三つの評価項目(治療中止、プラセボ群への割り付け、処方薬の服薬率80%未満)を用いて、LIPID(long term intervention with pravastatin in ischaemic disease)試験のコレステロール値に関する2回目の解析を行った。オーストラリアとニュージーランドで実施されたLIPID試験は、冠動脈心疾患の既往歴を有し、総コレステロール値が4.0~7.0mmol/L(≒154.8~270.9mg/dL)の9,014人を対象にプラバスタチン40mg/日とプラセボの有用性を比較する無作為化試験。今回の解析の主要評価項目は、コレステロール値のモニタリングによる服薬不履行検出の感度、特異度、受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)、検査後確率であった。あくまで補助データとして考慮すべきコレステロール値のモニタリングにより、完全服薬不履行がある程度は検出可能であった。治療開始1年の時点で、完全服薬不履行者の50%(1,957/3,937人)、服薬遵守者の6%(253/3,944人)においてLDLコレステロール値が上昇しており、中等度の正確度が得られた(AUC:0.89)。一方、部分的服薬不履行の検出能は低かった。治療1年後にLDLコレステロール値の上昇がみられたのは、部分的服薬不履行者の16%(34/213人)、服薬遵守者では4%(155/3,585人)にすぎず、正確度は劣っていた(AUC:0.65)。服薬不履行の典型的な検査前確率が低(25%)~高(75%)の範囲であったのに対し、脂質測定後の検査後確率については不確定性が持続することが示された。すなわち、LDLコレステロール値に変化がみられない場合、完全服薬不履行者の検査後確率は67~95%で、部分的服薬不履行者では48~89%であった。LDLコレステロール値が1.0mmol/L(≒38.7mg/dL)低下した場合は、完全服薬不履行者の検査後確率は7~40%、部分的服薬不履行者では21~71%であった。著者は、「LDLコレステロール値(あるいは総コレステロール値)のモニタリングは、プラバスタチン治療における完全服薬不履行あるいは服薬中止の検出に中等度の有効性を示したが、部分的服薬不履行の検出能は劣っていた」と結論し、「モニタリングの結果は、患者の服薬遵守状況を慎重に検討する際の補助データとしてのみ考慮すべきであろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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心血管疾患の生涯リスクを予測する新たなQRISKモデル

新たに開発されたQRISKの心血管疾患に関する生涯リスクスコア(http://www.qrisk.org/lifetime/)は、従来のQRISKモデルの10年リスクスコアでは確認し得ない、より若い年齢層における高リスク例の同定を可能にすることが、イギリス・Nottingham大学プライマリ・ケア科のJulia Hippisley-Cox氏らの検討で示された。QRISK2などのリスク予測アルゴリズムは、通常、心血管疾患の10年絶対リスク≧20%の場合に高リスク例と判定しているが、この20%という閾値では、若年者のうち10年絶対リスクは低いものの相対的に高リスクな例を見逃す懸念がある。生涯リスクによる予測は、特に若年例についてより多くの情報をもたらし、マネジメントの決定やライフスタイルの改善に役立つ可能性があるという。BMJ誌2011年1月8日号(オンライン版2010年12月9日号)掲載の報告。ルーチンのプライマリ・ケア・データを用いた前向きコホート試験研究グループは、心血管疾患の生涯リスクを予測する新たなQRISKモデルを開発し、その妥当性を検証、評価するためのプロスペクティブなコホート試験を実施した。解析には、イングランドとウェールズの一般医(GP)563名からルーチンに登録されたQResearchデータベースのプライマリ・ケア・データを用いた。対象は、1994年1月1日~2010年4月30日までに登録された30~84歳の患者で、心血管疾患の既往歴がなく、スタチンの処方歴がない例とした(導出コホート:234万3,759例、検証コホート:126万7,159例 )。生涯リスクの推算に用いた因子は、喫煙状況、人種、収縮期血圧、総コレステロール/HDLコレステロール比、BMI、冠動脈心疾患の家族歴(60歳未満で発症した一親等内の親族の有無)、Townsend貧困スコア、治療中の高血圧、関節リウマチ、慢性腎疾患、2型糖尿病、心房細動であった。生涯リスクに基づく介入が有益か否かは、さらなる検討を要する検証コホート126万7,159例のデータセットの解析では、生涯リスクが50パーセンタイルの場合の心血管疾患の生涯リスクは31%であり、75パーセンタイルの場合は39%、90パーセンタイルでは50%、95パーセンタイルでは57%であった。検証コホートにおいて生涯リスクモデルあるいは10年リスクモデルのいずれかでリスクが最上位の10%に相当すると判定された例のうち、双方のモデルのどちらもが高リスクと判定した例は14.5%(1万8,385例)にすぎなかった。10年リスクモデルで高リスクと判定された例に比べ、生涯リスクモデルで高リスクと判定された患者は、より若く、少数民族に属する例が多く、冠動脈心疾患の家族歴を有する傾向が強かった。著者は、「新たなQRISKの生涯リスクスコアを用いれば、QRISKモデルの10年リスクスコアでは確認し得ない、より若い年齢層における高リスク例の同定が可能になる」と結論する一方で、「より若い年代でのライフスタイルへの介入は有益な可能性があるが、65歳未満ではその恩恵は小さく、薬物による介入には薬物そのもののリスクが伴う。今後、生涯リスクスコアに基づく介入の費用効果や、このアプローチが許容可能か否かにつき、詳細な検討を行う必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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スタチンの肝機能異常の改善効果が明らかに:GREACE試験事後解析

スタチン治療は、軽度~中等度の肝機能異常患者に対して安全に施行可能で、検査値を改善し心血管疾患罹患率を低下させることが、ギリシャのテッサロニキ・アリストテレス大学Hippokration病院のVasilios G Athyros氏らによるGREACE試験の事後解析で明らかとなった。非アルコール性脂肪肝によると考えられる肝機能異常は、欧米人や日本人の約33%にみられると推定され、スタチンはこのような患者の肝機能や心血管イベントの改善に有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2010年12月4日号(オンライン版2010年11月24日号)掲載の報告。スタチン治療例と非治療例で初回再発リスクの低下効果を評価研究グループは、肝機能検査異常患者に対するスタチン治療の安全性と有効性の評価を目的に、Greek Atorvastatin and Coronary Heart Disease Evaluation(GREACE)試験の事後解析を行った。GREACE試験は、75歳未満、LDLコレステロール>2.6mmol/L、トリグリセリド<4.5mmol/Lの冠動脈心疾患患者1,600例を対象に、テッサロニキ・アリストテレス大学ヒポクラテス病院で実施されたスタチン治療と通常治療(スタチンを含む場合あり)を比較するプロスペクティブな無作為化試験であった。今回の事後解析の主要評価項目は、肝機能異常患者のうちスタチン治療を受けなかった症例に対する、中等度の肝機能異常(血清ALT値、AST値が正常上限値の3倍未満までと定義)を有し、スタチン治療を受けた患者の初回再発心血管イベントのリスク低下効果とした。このリスク低下は、スタチン治療例と非治療例における肝機能正常例の割合で評価した。スタチン治療により心血管イベントの相対リスクが68%低下ベースラインにおいて非アルコール性脂肪肝によると考えられる中等度の肝機能異常を呈した患者437例のうち、スタチン治療(主にアトルバスタチン〈商品名:リピトール〉24mg/日)を受けた群(227例)は検査値が改善した(p<0.0001)のに対し、スタチン治療を受けなかった群(210例)はALT値/AST値がさらに上昇した。心血管イベントは、スタチン治療群の10%(22/227例)で発生(3.2イベント/100人・年)したのに対し、非スタチン治療群では30%(63/210例)に認められ(10.0イベント/100人・年)、スタチン治療による相対リスク低下率は68%であった(p<0.0001)。この肝機能異常患者における心血管疾患に関するベネフィットは、肝機能が正常な患者に比べて大きかった(p=0.0074)。肝機能正常者の心血管イベント発生率は、スタチン治療群14%(90/653例、4.6イベント/100人・年)に対し、非スタチン治療群23%(117/510例、7.6イベント/100人・年)、相対リスク低下率は39%であった(p<0.0001)。スタチン治療群(880例)のうち、肝臓関連の有害事象で治療を中止したのは7例(<1%)であった。著者は、「非アルコール性脂肪肝によると考えられる軽度~中等度の肝機能異常患者に対するスタチン治療は安全に施行可能であり、検査値を改善し心血管疾患罹患率を低下させる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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心筋梗塞既往例に対する強化LDL-C低下療法の有効性と安全性:約1万2,000例の解析

心筋梗塞の既往歴を有する患者に対する高用量スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、通常用量に比べLDL-Cを低下させ、重篤な血管イベントも抑制することが、Study of the Effectiveness of Additional Reductions in Cholesterol and Homocysteine (SEARCH)共同研究グループが行った無作為化試験で示された。スタチン療法の大規模な無作為化対照比較試験では、LDL-C値が平均未満の患者でもLDL-C低下療法による閉塞性血管イベントのリスク低下がみられ、リスクの低下度はLDL-C低下の程度と相関することが示されている。この知見から、LDL-C低下療法をより強化すれば、さらに大きなベネフィットがもたらされることが示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版2010年11月9日号)掲載の報告。心筋梗塞既往例約1万2,000例で、スタチン高用量群と通常用量群を比較SEARCH共同研究グループは、心血管リスクが高い患者における強化スタチン療法の有効性と安全性の確立を目的に、二重盲検無作為化試験を実施した。対象は、心筋梗塞の既往歴のある18~80歳の患者1万2,064例で、スタチン療法を受けているか、その適応が明らかである症例であった。すでにスタチン療法を受けている場合は総コレステロール値が少なくとも3.5mmol/Lとなるように、受けていない場合は4.5mmol/Lとなるよう治療が行われた。患者は、シンバスタチン(商品名:リポバスなど)80mg/日あるいは20mg/日を投与する群に無作為に割り付けられ、フォローアップ期間が終了するまで2、4、8、12ヵ月後、その後は6ヵ月ごとに検査が行われた。主要評価項目は、重篤な血管イベント(冠動脈死、心筋梗塞、脳卒中、動脈血行再建術)とし、intention-to-treat解析を行った。ミオパチーが増加したものの、安全に施行可能高用量(80mg/日)群に6,031例が、通常用量(20mg/日)群には6,033例が割り付けられた。平均フォローアップ期間6.7(SD 1.5)年の間に、通常用量群に比べ高用量群でLDL-C値が平均0.35(SE 0.01)mmol/L低下した。重篤な血管イベントの発現率は、高用量群が24.5%(1,477/6,031例)、通常用量群は25.7%(1,553/6,033例)と、高用量群で6%低下したが有意な差は認めなかった(リスク比:0.94、95%信頼区間:0.88~1.01、p=0.10)。出血性脳卒中(高用量群 vs, 通常用量群:0.4% vs. 0.4%)、血管死(9.4% vs. 9.5%)、非血管死(6.6% vs. 6.6%)の発現率には明らかな差を認めなかった。ミオパチーは、通常用量群では2例(0.03%)にみられたのに対し、高用量群では53例(0.9%)で発現した。著者は、「通常用量群に比べ高用量群でLDL-Cが0.35mmol/L低下し、重篤な血管イベントが6%抑制されたが、これは既報の知見と一致する。ミオパチーが増加したものの、強化LDL-C低下療法は他の薬物療法と安全に併用可能と考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

569.

強化LDL-C低下療法の心血管イベント抑制効果:約17万例のメタ解析

スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は安全に施行可能で、1.0mmol/L(38.7mg/dL)低下で重篤な血管イベントの年間発生率を5分の1以下にまで抑制することが、Cholesterol Treatment Trialists’(CTT)共同研究グループによるメタ解析で明らかとなった。標準的スタチン療法によるLDL-C低下療法は、広範な心血管疾患において閉塞性血管イベントのリスクを低減することが示されている。また、観察研究ではコレステロール値が低いほど冠動脈疾患のリスクが低下することも示されており、LDL-Cをさらに低下させることで、より大きなリスクの低下が得られる可能性が示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版11月9日号)掲載の報告。26試験を対象に強化スタチン療法の平均リスク低下率を評価CTT共同研究グループは、スタチンを用いた強化LDL-C低下療法の安全性および有効性を評価する目的で、26の無作為化試験に参加した約17万例の個々のデータに基づくメタ解析を行った。解析の対象は、参加者1,000例以上、治療期間2年以上の無作為化試験で、高用量と低用量の強化スタチン群を比較した試験(5試験、3万9,612例、フォローアップ期間中央値5.1年)および標準的スタチン群と対照群とを比較した試験(21試験、12万9,526例、フォローアップ期間中央値4.8年)であった。それぞれのタイプの試験群ごとに、1年後における平均リスク低下率とともにLDL-Cの1.0mmol/L(38.7mg/dL)低下による平均リスク低下率を算出した。LDL-Cの閾値はなく、低下させるほど予後が良好な可能性2種類の用量の強化スタチン療法の比較試験では、1年後のLDL-C値は、高用量群が低用量群に比べ0.51mmol/L低下していた。低用量強化スタチン群に比べ、高用量強化スタチン群では重篤な血管イベントのリスクが15%低下し、有意な差が認められた(95%信頼区間:11~18%、p<0.0001)。なかでも、冠動脈死/非致死的心筋梗塞のリスクが13%(同:7~19%、p<0.0001)、冠動脈血行再建術のリスクは19%(同:15~24%、p<0.0001)、虚血性脳卒中リスクは16%(同:5~26%、p=0.005)低下した。2種類の用量の強化スタチン療法の比較試験におけるLDL-C 1.0mmol/L低下によるリスク低下は、標準的スタチンと対照の比較試験の場合と同等であった。二つのタイプの試験を合わせると、LDL-C 1.0mmol/L低下による重篤な血管イベントの低下率はあらゆるタイプの症例で類似しており、低用量強化スタチン群や対照群よりも高用量強化スタチン群や標準的スタチン群で有意に低下していた[発生率比(RR):0.78、95%信頼区間:0.76~0.80、p<0.0001]。全26試験を合わせると、低用量強化スタチン群や対照群に比べ高用量強化スタチン群や標準的スタチン群で、LDL-C 1.0mmol/L低下による全死因死亡率が10%低下し(RR:0.90、95%信頼区間:0.87~0.93、p<0.0001)、特に冠動脈心疾患死(同:0.80、99%信頼区間:0.74~0.87、p<0.0001)や他の心臓に起因する死亡(同:0.89、同:0.81~0.98、p=0.002)の有意な低下の影響が大きく、脳卒中死(同:0.96、95%信頼区間:0.84~1.09、p=0.5)や他の血管に起因する死亡(同:0.98、99%信頼区間0.81~1.18、p=0.8)の影響は認めなかった。LDL-C低値の場合でも、高用量強化スタチン群や標準的スタチン群と低用量強化スタチン群や対照群の間で、がんや他の非血管系の原因による死亡(RR:0.97、95%信頼区間:0.92~1.03、p=0.3)、発がん率(同:1.00、同:0.96~1.04、p=0.9)には有意な差は認められなかった。著者は、「スタチンによる強化LDL-C低下療法は安全に施行可能で、心臓発作、血行再建術、虚血性脳卒中の発生率のさらなる低減効果をもたらし、1.0mmol/L低下による重篤な血管イベントの年間発生率を5分の1以下にまで抑制する」と結論し、「LDL-Cの閾値のエビデンスはないが、2~3mmol/Lを低下させることで約40~50%のリスク低下が得られる可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

570.

HDL-C低値は、心血管疾患の治療ターゲットか?:JUPITER試験サブ解析

HDLコレステロール(HDL-C)値の測定は、初回心血管疾患のリスクの評価には有用だが、HDL-C値はスタチン治療でLDL-Cが著明に低下した患者の残存血管リスクの予測因子ではないことが、アメリカ・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らが行ったJUPITER試験のサブ解析で明らかとなった。HDL-C値は心血管イベントの発症と逆相関を示す。スタチンは心血管疾患の治療薬として確立されているが、スタチン治療を行ってもなお残存する血管リスクはHDL-C値が低いことである程度説明でき、HDL-Cの不足は治療ターゲットとなる可能性が指摘されている。Lancet誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月22日号)掲載の報告。JUPITER試験のエンドポイントを、HDL-C値の四分位に分けて解析研究グループは、高用量スタチン治療でLDL-C値が著明に低下した患者においても、HDL-C値と心血管イベントの発症とは逆相関の関係を示すかについて解析を行った。JUPITER試験の対象は心血管疾患の既往歴のない非糖尿病の成人で、ベースライン時のLDL-C値<3.37mmol/L、高感度C反応性蛋白(hs-CRP)値≧2mg/Lの者であった。これらの参加者が、ロスバスタチン20mg/日を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。今回の解析では、対象をHDL-C値とアポリポ蛋白A1値の四分位に分けて、JUPITER試験の主要評価項目である非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術、心血管死について評価した。ロスバスタチン群では、HDL-C値と血管リスクは関連しない17,802例を対象とした主解析では、エンドポイントの発現率はロスバスタチン群がプラセボ群に比べ44%低下した(p<0.0001)。プラセボ群[8,901例(50%)、治療時のLDL-C中央値2.80mmol/L]では、HDL-C値と血管リスクはベースライン時(四分位の最低値群に対する最高値群のハザード比:0.54、95%信頼区間:0.35~0.83、p=0.0039)および治療時(同:0.55、同:0.35~0.87、p=0.0047)ともに有意な逆相関を示した。これに対し、ロスバスタチン群[8,900例(50%)、治療時のLDL-C中央値1.42mmol/L]では、HDL-C値と血管リスクはベースライン時(四分位の最低値群に対する最高値群のハザード比:1.12、95%信頼区間:0.62~2.03、p=0.82)および治療時(同:1.03、同:0.57~1.87、p=0.97)ともに有意な関連はなかった。アポリポ蛋白A1値は、プラセボ群ではエンドポイントの発現率と強い相関を示したのに対し、ロスバスタチン群では関連はほとんど認めなかった。著者は、「HDL-C値の測定は初回心血管疾患のリスクの評価には有用であるが、HDL-C値はスタチン治療でLDL-Cが著明に低下した患者の残存血管リスクの予測因子ではない」と結論したうえで、「現在までのところ、この仮説を支持する有望なデータはないが、コレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬などには可能性が残っているため、無作為化試験で検証する必要があるだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

571.

糖尿病性網膜症の進行を抑制する薬物療法

2型糖尿病患者の網膜症進行に対する薬物療法の効果を検討した結果、強化血糖コントロールと、抗高脂血症薬併用療法で進行率の低下が認められたことが報告された。一方、強化血圧コントロールによる効果は認められなかった。報告は、「ACCORD」試験被験者のサブグループ「ACCORD Eye」被験者データを解析した結果による。これまでのデータで、血糖、コレステロール、血圧という全身性因子が、糖尿病性網膜症の発症および進行に重要な影響を及ぼしている可能性が示唆されていたことを受けて行われた。NEJM誌2010年7月15日号(オンライン版2010年6月29日号)より。ACCORDサブグループ対象に解析無作為化試験「ACCORD」(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)は、2型糖尿病を有し心血管疾患リスクが高く、各種薬物療法を受けている1万251例が参加して行われた。被験者は、血糖コントロールの強化治療(目標<6.0%)もしくは標準治療(同7.0~7.9%)を受け、さらに脂質異常症に対する治療として抗高脂血症薬の併用投与[フェノフィブラート(商品名:リピディルなど)1日1回160mg+シンバスタチン(商品名:リポバスなど)]か単独投与(プラセボ+シンバスタチン)を、あるいは収縮期血圧コントロール[目標<120mmHg(強化群)か<140mmHg(標準群)]を受けた。これら治療の糖尿病性網膜症に対する4年時点の効果について、サブグループ「ACCORD Eye」(2,856例)を対象に評価が行われた。評価は、ETDRS(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study)重症度スケール(7方向の立体眼底写真を17段階で評価、高段階ほど重症)で3段階以上の進行、あるいはレーザー光凝固術または硝子体切除術を余儀なくされた糖尿病性網膜症の発症について検討された。強化血糖コントロールのオッズ比0.67、抗高脂血症薬併用療法のオッズ比は0.604年時点の糖尿病性網膜症の進行率は、強化血糖コントロール群は7.3%だったのに対し、標準血糖コントロール群は10.4%だった。強化血糖コントロール群の補正後オッズ比は0.67(95%信頼区間:0.51~0.87、P=0.003)。抗高脂血症薬治療別では、併用群は6.5%だったのに対し、単独群は10.2%だった。併用群の補正後オッズ比は0.60(0.42~0.87、P=0.006)。一方、血圧コントロールについては、強化血圧コントロール群10.4%、標準血圧コントロール群8.8%で、強化血圧コントロール群の補正後オッズ比は1.23(0.84~1.79、P=0.29)だった。(医療ライター:武藤まき)

572.

スタチンの思わぬ効果・有害事象

スタチンの想定されていない効果および有害事象について検討する、英国人男女200万人超を対象とする前向きコホート研究が、英国ノッティンガム大学プライマリ・ケア部門のJulia Hippisley-Cox氏らにより行われた。思わぬ効果として、食道がんリスク低下の有益性が認められた一方、様々な有害事象リスク上昇との関連が確認されたという。BMJ誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月20日号)掲載より。スタチン各種、用量、投与期間ごとに効果・有害事象を定量化Hippisley-Cox氏らは、スタチンの思わぬ効果・有害事象について、種類・用量・投与期間別に定量化することを目的とし、イングランドおよびウェールズの開業医(GP)368人の診療データをQResearch databaseから収集し検討した。200万4,692例分の患者データ(30~84歳)のうち、スタチン服用新規患者は、22万5,922例(10.7%)だった。処方の内訳は、15万9,790(70.7%)がシンバスタチン(商品名:リポバスなど)、5万328例(22.3%)がアトルバスタチン(商品名:リピトール)、8,103例(3.6%)がプラバスタチン(商品名:メバロチンなど)、4,497例(1.9%)がロスバスタチン(商品名:クレストール)、3,204例(1.4%)がフルバスタチン(商品名:ローコールなど)だった。検討された主要評価項目は、心血管疾患の初回発生、中等度~重度ミオパシー、中等度~重度肝機能障害、急性腎不全、静脈血栓塞栓症、パーキンソン病、認知症、関節リウマチ、白内障、骨粗鬆症性骨折、胃がん、食道がん、大腸がん、肺がん、メラノーマ、腎臓がん、乳がん、前立腺がん。食道がんリスク低下、肝機能障害・急性腎不全・ミオパシー・白内障リスク増大スタチンとの関連が有意ではなかったのは、パーキンソン病、関節リウマチ、静脈血栓塞栓症、認知症、骨粗鬆症性骨折、胃がん、大腸がん、肺がん、メラノーマ、腎臓がん、乳がん、前立腺がんの各リスク。食道がんリスクについては低下が認められた。一方で、中等度~重度肝機能障害、急性腎不全、中等度~重度ミオパシー、白内障のリスクは増大することが認められた。有害事象は、スタチンの種類を問わず同等にみられた。ただし肝機能障害についてはフルバスタチンでリスクが高かった。用量反応効果は、急性腎不全、肝機能障害で明瞭だった。服用期間中の全リスク増加は、最初の1年目が最も高かった。白内障リスクは男女とも、服用中止後1年以内で標準に戻った。食道がんのリスクは、女性は1年以内に男性は1~3年以内で標準に戻った。急性腎不全リスクは、男女とも1~3年以内に、肝機能障害リスクは、女性は1~3年以内に男性は3年以降に標準に戻った。心疾患リスク20%閾値に基づく5年予防NNT(治療必要数、対患者1万例)は、女性の場合、心血管疾患が37例(95%信頼区間:27~64)、食道がんは1,266例(850~3,460)だった。男性はそれぞれ、33例(24~57)、1,082例(711~2,807)だった。一方、5年NNH(有害必要数、対患者1万例)は、女性の場合、急性腎不全が434例(284~783)、中等度~重度ミオパシーは259例(186~375)、中等度~重度肝機能障害136例(109~175)、白内障33例(28~38)だった。男性のNNHは、ミオパシーのNNHが91例(74~112)だった以外は、全体として女性と同等だった。Hippisley-Cox氏は、「食道がん以外の有益性は証拠立てることができなかったが、有害事象については母集団に潜在する事象が確認でき定量化できた。さらに、有害事象の最もリスクの高い患者をモニターできるよう個別リスクのさらなる検討を進める必要がある」と結論している。

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スタチン投与中の糖尿病例において最低限到達しなければならないLDLコレステロール値は?

糖尿病合併例におけるLDLコレステロール値の管理目標値は120mg/dL未満が推奨されているが、アドヒアランス不良のため、コントロールが不十分な例も少なくはない。フルバスタチンが投与された高コレステロール血症合併糖尿病患者の大規模市販後調査の結果より、心イベント発症抑制のためにはLDLコレステロール値を最低限180mg/dL未満に管理することが重要であることが、東京医科大学 小田原雅人氏より第53回日本糖尿病学会学術集会にて発表された。これはフルバスタチンが投与された高コレステロール血症の長期投与時における心イベント発症率とその危険因子を検討した市販後調査Lochol Event Monitoring(LEM) Studyの糖尿病患者におけるサブ解析より得られた知見。3,000例を超える糖尿病と高コレステロール血症の併発例を3年以上追跡 LEM StudyはHMG-CoA還元酵素阻害薬フルバスタチン(販売名:ローコール)20~60mg/日が投与された高コレステロール血症患者を一次予防群で5年、二次予防群で3年追跡した調査。2000年4月1日から2002年3月31日まで中央登録方式で21,139症例が登録され、その内19,084例が安全性評価対象例とされた。LEM Studyの結果は2009年に開催された第41回日本動脈硬化学会学術集会において発表されているが、今回、糖尿病合併の有無で層別解析した結果が発表された。評価対象例のうち、糖尿病患者は3,325例(17.4%)、非糖尿病患者は15,759例(82.6%)であり、高血圧合併例、心疾患合併例は糖尿病患者群で多かった。糖尿病合併の有無にかかわらず、LDLコレステロール値、総コレステロール値、トリグリセリド値はフルバスタチン投与前より有意に低下した。255例に心イベントが発現し、糖尿病患者群で2.1倍多く発現していた(p

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併用脂質低下療法の心血管イベント抑制効果:ACCORD

心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者に対するスタチン療法で、併用療法を行っても単独療法と比べて、イベント抑制効果は認められないことが、ACCORD試験から報告された。本論は、3月に行われた米国心臓病学会ACCで発表、NEJM誌2010年4月29日号(オンライン版2010年3月14日号)に掲載された。5,500例を、併用群・単独群に無作為化し4.7年追跡ACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)試験は、心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者10,251例が参加する、厳格な降圧管理あるいは脂質管理が及ぼす影響を検討するために行われている試験。本論は、厳格な脂質管理の検討(ACCORD lipid trial:ACCORD Lipid)について報告したもので、5,518例が参加した。試験登録は、2001年1月~2005年10月に行われた。被験者は、オープンラベル2×2で無作為に、シンバスタチン(商品名:リポバスなど)+fenofibrateの併用療法群(2,765例)か、シンバスタチン+プラセボの単独療法群(2,753例)に割り付けられ追跡された。主要転帰は、非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管系死亡の複合。平均追跡期間は、4.7年だった。両群にイベント発生の有意差認められず被験者平均年齢は62歳、女性が31%、37%が心血管イベントの既往があり、約60%が試験登録以前からスタチンを服用していた。結果、主要転帰の年間発生率は、併用群2.2%、単独群2.4%で、有意差は認められなかった(ハザード比:0.92、95%信頼区間:0.79~1.08、P=0.32)。また、副次転帰(主要転帰+うっ血性心不全による入院等、主要な心血管イベント、脳卒中など)も両群で有意差は認められなかった。年間死亡率も、併用群1.5%、単独群1.6%(ハザード比:0.91、95%信頼区間:0.75~1.10、P=0.33)だった。交互作用の可能性はある事前規定のサブグループ解析の結果、脂質低下の強化療法は、男性には有益だが、女性にはかえって有害となるかもしれない結果が示された。主要評価項目について、男性は併用群11.2% vs. 単独群13.3%だったが、女性では同9.1% vs.6.6%と逆転していた(交互作用P=0.01)。また脂質による交互作用の可能性も示され、基線でトリグリセリド値が高く(≧204mg/dL)・HDLコレステロール値が低かった(≦34mg/dL)患者は他のいずれの脂質群とも比べて併用療法が有益であることが示された。研究グループは、「シンバスタチン単独療法と比較して、シンバスタチン+fenofibrateの組合せによる併用療法が、致死的心血管イベント、非致死的心筋梗塞・脳卒中のイベントを抑制することは認められなかった。この結果は、心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者に対し、ルーチンで併用療法を用いることを支持しないものである」と結論している。(医療ライター:武藤まき)

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降圧薬+スタチンの降圧効果:PHYLLIS試験の2次解析

スタチンは、血清コレステロールの低減、また特異的(多面的)と思われる保護作用で心血管予防に寄与する。一方でいくつかの試験で、降圧効果も発揮するとの報告があるが、付加的防御機構として公表するには、試験に方法論的な限界があるともされている。そこでイタリア・Milano-Bicocca大学臨床・予防医学部門のGiuseppe Mancia氏ら研究グループは、以前に報告したスタチン併用による頸動脈の内膜-中膜厚の進行抑制を検討した試験PHYLLISから、24時間自由行動下血圧を基にした2次解析を行い、スタチンに付加的な降圧効果が認められるかを検討した。BMJ誌2010年4月17日号(オンライン版2010年3月25日号)掲載より。高血圧と脂質異常症を有する508例を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験PHYLLIS(Plaque Hypertension Lipid-Lowering Italian Study)は、無作為化プラセボ対照二重盲検試験で、イタリアの13病院から軽度高血圧と脂質異常症を有する、45~70歳の患者508例が参加し行われた。被験者は、降圧治療にスタチンを追加し併用投与する群(スタチン併用群)、また追加投与しない群(降圧薬単独群)に無作為化された。降圧療法は、ヒドロクロロチアジド(商品名:ニュートライド)25mgを1日1回、もしくはfosinopril 20mgを1日1回にて、スタチン追加併用投与はプラバスタチン(同:メバロチン)40mgを1日1回で行われた。被験者の平均治療期間は2.6年。本解析では、その間の年1回の診察室血圧、自由行動下血圧を主要評価項目とした。スタチン併用にさらなる降圧効果認められず結果、降圧薬単独群(254例、総コレステロールの低下はわずかだった)、スタチン併用群(253例、総コレステロールとLDLコレステロールは顕著に持続的に減少)の両群とも、診察血圧はクリアカットに持続的に収縮期および拡張期とも降圧が図られていた。24時間血圧、日中・夜間血圧についても同様だった。降圧はスタチン併用群の方が、やや劣った。しかし期間中の両群間の差は、1.9mmHg(95%信頼区間:-0.6~4.3、P=0.13)を上回ることはなかった。Mancia氏は「24時間自由行動下血圧を基に解析した結果、スタチン追加併用に、さらなる降圧効果は認められなかった」と結論している。

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スタチン治療中の脂質異常症、甲状腺ホルモン製剤eprotirome投与でLDL低下

脂質異常症はアテローム性動脈硬化性の心血管疾患のリスクを増大し、なおかつ大半はスタチン療法のみでは寛解が望めない。甲状腺ホルモン製剤は、血清低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールレベルを低下させると同時に、リポ蛋白代謝に有益な作用をもたらす可能性が期待され、脂質低下薬としての可能性が期待されている。そこで米国ジョンズ・ホプキンス大学内分泌・代謝学部門のPaul W. Ladenson氏らのグループは、甲状腺ホルモン製剤eprotirome(KB2115)の有効性をプラセボ対照で検討した。NEJM誌2010年3月11日号より。脂質異常症患者を対象に無作為試験を実施Ladenson氏らは、甲状腺ホルモン製剤のLDLコレステロール低下に関する安全性と有効性を評価するため、シンバスタチン(商品名:リポバスなど)またはアトルバスタチン(同:リピトール)の投与を受けている高コレステロール血症患者を対象に、多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。患者はスタチンに加えて、eprotirome(1日当たり25、50、100μg量)またはプラセボの投与を受けた。副次転帰を、血清アポリポ蛋白B、トリグリセリド、Lp(a)リポ蛋白レベルの変化とし、患者は試験期間中、心臓、骨、下垂体に起こり得る有害事象についてモニタリングされた。スタチン投与患者のLDLレベル低下に有用スタチン治療に加えた投与は、12週間行われた。血清LDLコレステロール値は、ベースラインの141mg/dL(3.6mmol/L)から、eprotirome 25μg量/日、50μg量/日、100μg量/日、プラセボでそれぞれ127、113、99、94mg/dL(3.3、2.9、2.6、2.4mmol/L)まで低下した(ベースラインからの平均低下率はそれぞれ7%、22%、28%、32%)。同様の変化は、血清アポリポ蛋白B、トリグリセリド、Lp(a)リポ蛋白でも同様の低下がみられた。eprotirome 投与と関連した心臓、骨における有害作用はみられなかった。また、eprotirome 投与を受けた患者でサイロキシン値は低下したが、血清中の甲状腺刺激ホルモンならびにトリヨードサイロニン値に変化はみられなかった。研究グループは12週に及ぶ本試験の結果、スタチン治療中患者への甲状腺ホルモン製剤eprotiromeの投与により、アテローム形成リポ蛋白の低下が認められたと報告している。(医療ライター:朝田哲明)

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スタチン治療により糖尿病発症リスクがわずかに増大、診療方針には変更なし

スタチン治療により、糖尿病の発症リスクがわずかながら増大するものの、心血管疾患のリスクを有する患者や心血管疾患患者の診療方針を変更するほどではないことが、イギリスGlasgow大学Glasgow心血管研究センターのNaveed Sattar氏らによるメタ解析で示された。スタチンのプラセボ対照試験における糖尿病の発症率は、JUPITER試験ではロスバスタチン群で高かったのに対し、WOSCOPS試験ではプラバスタチン群で低いなど相反する知見が得られている。これによりスタチンの長期使用の安全性に疑問が生じたため、系統的な検討が求められていた。Lancet誌2010年2月27日号(オンライン版2010年2月17日号)掲載の報告。1,000例以上の大規模な無作為化試験のメタ解析研究グループは、スタチンの使用と糖尿病発症の関連性について、公表されたデータと未発表のデータを用いてメタ解析を行った。データベース(Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials)を用いて、1994~2009年までに実施されたスタチンの無作為化対照比較試験を検索した。1,000例以上が登録され、1年以上のフォローアップが両群で等しく行われた試験のみを解析の対象とした。臓器移植患者や血液透析を要する患者の試験は除外した。糖尿病発症リスクが9%増大したが、絶対リスクは低い13のスタチンに関する試験(ASCOT-LLA、HPS、JUPITER、WOSCOPS、LIPID、CORONA、PROSPER、MEGA、AFCAPS TexCAPS、4S、ALLHAT-LLT、GISSI HF、GISSI PREVENZIONE)が同定された(合計91,140例)。平均4年間に4,278例が糖尿病を発症した(スタチン群2,226例、対照群2,052例)。スタチン治療により糖尿病の発症リスクが9%増大した(オッズ比:1.09、95%信頼区間:1.02~1.17)。試験間の不均一性はほとんど認めなかった[I(2)=11%]。メタ回帰分析では、スタチンによる糖尿病の発症リスクはより高齢の患者を対象とした試験で高かったが、ベースライン時のBMIやLDLコレステロール値の変化はリスクに影響を及ぼさなかった。4年間のスタチン治療を255例(95%信頼区間:150~852例)に対して行うと、1例が糖尿病を発症することが示され(スタチン群:12.23/1,000人・年、対照群:11.25/1,000人・年)、絶対リスクは低かった。著者は、「スタチン治療により糖尿病の発症リスクがわずかに増大したが、絶対リスクは低く、冠動脈イベントの低減効果と比べてもリスクは低かった」と結論し、「心血管疾患のリスクが中等度~高度の患者や心血管疾患患者の診療方針を変更する必要はない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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多発性硬化症に対する経口クラドリビン、2年間の有効性確認

日本では白血病の抗がん剤としてのみ承認されている免疫抑制薬クラドリビン(商品名:ロイスタチン)は、リンパ球サブタイプを選択的に標的とする特徴を有する。ロンドン大学クイーンズ・メアリー校のGavin Giovannoni氏ら「CLARITY」研究グループは、再発寛解型多発性硬化症患者への有効性を評価する、第III相試験である短期コース経口療法の96週間(24ヵ月間)の結果を報告した。NEJM誌2010年2月4日号より。再発寛解型多発性硬化症患者1,326例を対象に研究グループは、障害のEDSSスケール(Expanded Disability Status Scale、0~10の範囲で、スコアが高いほど障害の程度が高い)スコアが5.5以下で、過去1年間に1回以上の再発を経験した再発寛解型多発性硬化症患者1,326例を対象に無作為化試験を行った。被験者は、経口クラドリビンを累積投与量で3.5mg/kg体重投与される群、同5.25mg/kg体重投与される群、またはプラセボを投与される群に1:1:1となるよう割り付けられた。試験期間96週のうち、最初の48週での投薬は4コース(クラドリビン3.5mg/kg群は2コース+プラセボ2コース)行われた(投薬日数計8~20日間/年)。その後の48週以降に2コース(48週時点と52週時点)投与が各群に行われた(プラセボ群にはプラセボ投与、他の2群にはクラドリビン投与)。主要エンドポイントは、96週時点での再発率とした。試験を完了したのは1,184例(89.3%)、解析はintention-to-treatにて行われた。3.5mg群、5.25mg群とも再発率・障害進行とも有意に低下、ただし有害事象も高頻度クラドリビン投与群はいずれの用量群も、年間再発率がプラセボ群より有意に低下した。それぞれ3.5mg群0.14、5.25mg群0.15、プラセボ群0.33だった(両比較ともP

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スタチン併用療法ではniacinがエゼチミブを凌駕

スタチン単独療法患者の脂質プロファイルを改善する併用療法としては、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールを高める併用療法と、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールを低下させる併用療法の2つがある。ウオルター・リード米軍医療センターのAllen J. Taylor氏らの研究グループは、それぞれの併用療法の臨床効果を比較した有効性比較試験ARBITER-6 HALTSの結果について発表した。NEJM誌2009年11月26日号(オンライン版2009年11月16日号)より。スタチン単独療法患者を、niacin併用群とエゼチミブ併用群に無作為割り付けARBITER-6 HALTSは前向き無作為化平行群オープンラベル試験で行われた。冠疾患または同等の冠疾患リスクがあり、長期間スタチン療法を受けていて、LDLコレステロール値が100mg/dL(2.6mmol/L)以下、かつ、HDLコレステロール・レベルが男性は50mg/dL未満、女性は55mg/dL未満(男女各1.3、1.4mmol/L)を達成していた患者が登録された。被験者は、徐放性製剤niacin(目標:2,000mg/日)またはエゼチミブ(10mg/日)(商品名:ゼチーア錠)を併用投与するようランダムに割り付けられた。主要評価項目は、14ヵ月後の平均総頸動脈内膜中膜厚の基線からの変化とした。試験は、208例が試験を完了した時点で実施された解析で有効性が認められ、早期終了されている。平均・最大頸動脈内膜中膜厚ともniacin群で有意に低下14ヵ月の追跡期間中、niacin群の平均HDLコレステロール値は、18.4%増え50mg/dLとなった(P

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スタチンの長期服用者、胆石による胆嚢摘出術リスクがおよそ4割減

スタチンの長期服用者は、胆石による胆嚢摘出術リスクが、およそ4割減少するようだ。スタチンによって肝臓コレステロール生合成が低下し、そのため、コレステロール胆石の発症リスクが減ると考えられてはいたが、この点に関するヒトを対象にした試験はほとんどなかった。スイスBasel大学臨床薬理・毒性学のMichael Bodmer氏らが、大規模ケース・コントロール試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2009年11月11日号で発表した。ケース群とコントロール群、計13万人超を分析Bodmer氏らは、1994~2008年にかけて、胆石の診断を受け胆嚢摘出術を行った2万7,035人(ケース群)と、年齢や性別などをマッチングした10万6,531人(コントロール群)について、ロジスティック回帰分析を行った。被験者のうちスタチンを服用していたのは、ケース群2,396人と、コントロール群8,868人だった。胆石の診断を初めて受けた日からさかのぼって90日以内に、スタチンの処方を受けていた人のうち、その通算処方回数別に、胆嚢摘出術リスクを比較した。また、通算処方回数が20回以上の人を、スタチン長期服用者と定義した。スタチン長期服用者は胆嚢摘出術リスクが0.64倍にスタチンを長期服用していたのは、ケース群3.2%、コントロール群3.7%だった。スタチン長期服用者の、非長期服用者に対する胆嚢摘出術に関する補正後オッズ比は、0.64(95%信頼区間:0.59~0.70)だった。同補正後オッズ比は、年齢や性別、ボディマス指数(BMI)、スタチンのクラス別でも、いずれも0.6前後だった。スタチン服用者の非服用者に対する同補正後オッズ比は、スタチンの通算処方回数が増すごとに減少していた。処方回数が1~4回の群では、同補正後オッズ比は1.10(同:0.95~1.27)、5~19回では0.85(同:0.77~0.93)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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