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ランレオチド 腸膵NETのPFS延長/NEJM

 転移性腸膵神経内分泌腫瘍に対し、ソマトスタチンアナログ製剤のランレオチドは無増悪生存期間を有意に延長したことが、英国のロイヤル・フリー病院Martyn E. Caplin氏らによる国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告された。ソマトスタチンアナログ製剤は、神経内分泌腫瘍でホルモン過剰分泌関連症状の治療に用いられることが多い(日本では、商品名ソマチュリンが先端巨大症・下垂体性巨人症を適応症として承認されている)。しかし、その抗腫瘍効果のデータは限定的なものであった。神経内分泌腫瘍は稀少な疾患で、米国における年間発生例は10万人に5例の頻度であるという。NEJM誌2014年7月17日号掲載の報告より。無増悪生存期間を主要エンドポイントにランレオチドvs. プラセボを検討 試験は、進行した高分化型または中分化型で非機能性、グレード1または2(腫瘍増殖指数[Ki-67抗原染色による]<10%)のソマトスタチン受容体陽性の神経内分泌腫瘍を有する患者を対象に行った。腫瘍は膵臓、中腸または後腸由来、もしくは原発不明であった。 研究グループは患者を無作為に、ランレオチドの徐放性水性ゲル製剤Autogel(米国でデポ剤として知られる)120mgもしくはプラセボを投与する群に割り付け、28日間に1回投与を96週間(24ヵ月間、最大24回投与)にわたって行った。 主要エンドポイントは無増悪生存期間で、増悪(固形がん効果判定基準[RECIST] ver.1.0による)または死亡までの期間と定義した。副次エンドポイントは、全生存期間、QOL(欧州がん研究・治療機構[EORTC]質問票QLQ-C30およびQLQ-GI.NET21で評価)、安全性などであった。ランレオチド群の進行または死亡のハザード比0.47 試験には、2006年6月~2013年4月に14ヵ国(欧州12ヵ国、米国、インド)48施設(2次、3次医療施設)で204例が登録された。被験者は、ランレオチド群に101例、プラセボ群に103例が無作為に割り付けられた。大半の患者(96%)は、無作為化前3~6ヵ月において腫瘍の進行はみられなかった。なお、33%の患者が肝腫瘍量が25%超だった。 試験薬曝露期間の中央値は、ランレオチド群24.0ヵ月、プラセボ群15.0ヵ月であった。 増悪が認められたのはプラセボ群58例、ランレオチド群30例、死亡はそれぞれ2例ずつで、主要エンドポイントの無増悪生存期間は、ランレオチド群がプラセボ群と比べて有意に延長した(中央値未到達vs. 18ヵ月、層別化log-rank検定のp<0.001、進行または死亡のハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.30~0.73)。 24ヵ月時点の推定無増悪生存率は、ランレオチド群65.1%(95%CI:54.0~74.1%)、プラセボ群33.0%(同:23.0~43.3%)であった。 事前規定のサブグループ(腫瘍部位別、グレード別、肝腫瘍量別)の治療効果は、信頼区間が広範であった小規模のサブグループを除けば、全体集団の治療効果とおおむね一致していた。 QOLや全生存については、治療群間で有意差はみられなかった。 最も頻度が高かった治療関連の有害事象は、下痢であった(ランレオチド群26% vs.プラセボ群9%)。

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認知症にスタチンは有用か

 アルツハイマー病(AD)や血管性認知症(VaD)へのスタチン治療は、比較的未開拓の領域である。先行文献において、ADではβ-アミロイド(Aβ)が細胞外プラークとして沈着し、Aβ生成はコレステロールに依存することが確認されている。また、VaDの病因に高コレステロール血症が関与していることも知られている。そこで、英国・Belfast Health and Social Care TrustのBernadette McGuinness氏らは、認知症に対するスタチン治療の有益性について、システマティックレビューとメタ解析により検討を行った。Cochrane Database Systematic Review誌オンライン版2014年7月8日号の掲載報告。 研究グループは、スタチンがコレステロールを低下させることから、ADやVaDの治療において有効であることが期待できるとして、臨床的有効性および安全性を評価した。今回の検討では、ADおよびVaDの治療におけるスタチンの効果が、コレステロール値、ApoE遺伝子型、認知レベルに左右されるかどうかを評価した。2014年1月20日時点で、ALOIS、Cochrane Dementia and Cognitive Improvement GroupのSpecialized Register、Cochrane Library、MEDLINEなどを検索。認知症と診断された人に6ヵ月以上スタチンを投与していた二重盲検無作為化臨床比較試験を適格とした。2名の著者がそれぞれデータの抽出と評価を行い、研究グループは必要に応じてデータをプールしメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・検索で特定したのは、4試験(被験者1,154例、年齢50~90歳)であった。著者らは、全試験のバイアスリスクは低いと評価した。・全被験者が、標準的な診断基準によりADがほぼ確実もしく疑いがあった(possible/ probable AD)。また、これらは、ほとんどの被験者でコリンエステラーゼ阻害因子に基づき確認されていた。・全試験が、ADAS-Cogのベースライン時からの変化を主要アウトカムとしていた。プールデータ解析の結果、ADAS-Cogへのスタチンによる有意な有益性は認められなかった(平均差:-0.26、95%信頼区間[CI]:-1.05~0.52、p=0.51)。・また、全試験で、MMSEのベースライン時からの変化が報告されていた。プールデータ解析の結果、MMSEへのスタチンによる有意な有益性はみられなかった(平均差:-0.32、95%CI:-0.71~0.06、p=0.10)。・治療関連の有害事象は、3試験で報告されていた。プールデータ解析の結果、スタチンとプラセボで有意差はみられなかった(オッズ比:1.09、95%CI:0.58~2.06、p=0.78)。・スタチンとプラセボとの間に、行動、全体的機能やADLに有意差はみられなかった。・VaDの治療におけるスタチンの役割について評価した試験は見つからなかった。関連医療ニュース スタチン使用で認知症入院リスク減少 アルツハイマーの予防にスタチン 認知症予防効果を降圧薬に期待してよいのか

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事例13 検査-シスタチンCの査定【斬らレセプト】

解説事例のD007「35」シスタチンCが、C査定(医学的理由による不適当:支払基金)となった。同検査の算定のための留意事項には、「尿素窒素又はクレアチニンにより腎機能の低下が疑われた場合に、3月に1回に限り算定できる」とある。病名を見ると慢性腎不全が確定している。このことから査定の理由は、シスタチンCの適応がないためであったことがわかる。事例の原因は、慢性腎不全といっても腎機能が残っているのではないかとの期待から検査を行ったものであった。しかし、シスタチンCは、腎機能の低下の疑いに対する検査であるので、適用外となるのである。同様に、「糖尿病性腎症」など腎機能の低下が確定している場合には、査定対象となるので留意をお願いしたい。

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PCSK9阻害薬は新たなコレステロール治療薬となりうるのか?(解説:平山 篤志 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(216)より-

LDLコレステロール(LDL-C)が心血管イベントの重要なリスクファクターであること、そしてスタチンによるLDL-C値の低下に伴いイベントの発生率が減少したことで、ASCVD(Atherosclerotic Cardiovascular Disease)においてLDL-C値をより低くコントロールすることが目標とされた。 しかし、スタチンを使用しても管理目標値に到達できない患者群があり、これまでは治療薬としてエゼチミブが併用されていたが、それでも不十分であった。 エボロクマブはLDL-C受容体の分解を促進する蛋白であるPCSK9を阻害することで、スタチンの効果を増強しLDL-Cをさらに著明に低下させることを実現した抗体薬である。本薬の使用で、通常の治療に加えて平均57%、LDL-Cを低下させることがDESCARTES試験として発表された。この試験は、スタチンでは明らかにできなかった新たな世界を広げるエボロクマブの可能性を示している。 LDL-Cの低下のエビデンスはすべてスタチンを用いた試験に基づいていることから、AHA/ACCの今回改訂されたガイドラインでは、LDL-Cの管理目標値を設定せず、高用量のスタチンを使用するだけでよいとされた。エボロクマブは、スタチン以外にLDL-Cを低下させることを可能にした薬剤である。スタチンを用いないLDL-Cの低下によりイベントが減少するかを検証できるようになった。 また、スタチン単独ではLDL-C値を70mg/dL以下にすることが困難であったために、さらなる低下がイベントを減少させるのかが明らかでなかった。エボロクマブは、このようなLDL-Cと心血管イベントとの関連についての科学的な疑問を解決できる可能性のある薬剤である。 今後、イベントを検証するFOURIER試験が計画されている。LDL-Cに関する残された謎が解明され、多くのASCVD患者にとってこの薬剤が福音をもたらすのかどうか、2019年の結果に注目したい。

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高力価スタチンが糖尿病発症リスクを増大させる/BMJ

 心血管疾患の二次予防治療としてのスタチン治療について、高力価スタチンのほうが低力価のものよりも、糖尿病の新規発症リスクが中程度だが増大することが報告された。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のColin R Dormuth氏らによる多施設共同観察研究の結果で、「臨床医は二次予防として高力価スタチンを使用する場合は、このリスクについて考慮すべきである」と提言している。スタチンが糖尿病の新規発症リスクを増大することは、先行研究のメタ解析で示されていたが(オッズ比1.09)、高力価vs. 低力価の比較によるリスク増大については確定していなかった。BMJ誌オンライン版2014年5月29日号掲載の報告より。40歳以上13万6,966例について、2年間服用中の発症率を比較 研究グループは共通分析プロトコルを用いて、8本の住民ベースコホート試験およびメタ解析を行った。試験データは、カナダの6行政区および2つの国際データベース(英国、米国)から組み込まれ、被験者は1997年1月1日~2011年3月31日に、新規にスタチン治療を開始した40歳以上の患者合計13万6,966例だった。 各コホート患者は、重大心血管イベントまたは処置のための入院治療後に新規にスタチンを処方された。これら患者についてコホート内症例対照分析にて、高力価スタチン使用患者と低力価スタチン使用患者の糖尿病発症を比較。条件付きロジスティック回帰分析にて、高力価vs. 低力価スタチン薬について服用期間別(2年以下、120日以下、120日超~365日以下、365日超~730日以下)に、糖尿病の新規発症率を算出し、メタ解析的手法にて全試験地点にわたる同発症への影響について評価した。 主要評価項目は、糖尿病新規発症による入院、またはインスリンあるいは経口血糖降下薬の処方とした。高力価のほうが1.15倍増大、リスクが最も高いのは処方開始4ヵ月間 スタチン使用開始2年以内の糖尿病発症率は、カナダ6行政区では2.12~3.40/100患者であった。米国データベースでは2.99/100患者、英国データベースでは1.95/100患者で、総計では13万6,966例のうち3,629例で糖尿病新規発症がみられた。 服用期間別の分析で、2年以内の糖尿病の新規発症率は、高力価スタチンのほうが低力価スタチンと比べて、有意に増大したことが観察された(率比1.15:95%信頼区間[CI]:1.05~1.26、p=0.003)。 その他の期間別では、120日(4ヵ月)以下が率比1.26(95%CI:1.07~1.47、p=0.004)と最も高かった。120日超~365日以下は1.19(同:1.02~1.38、p=0.03)、365日超~730日以下は1.08(同:0.93~1.25、p=0.33)だった。

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心血管疾患高リスク患者への合剤治療、リスク因子の改善はわずか/BMJ

 プライマリ・ケアにおける心血管疾患リスクの高い患者の治療について、推奨されている抗血小板薬、スタチン、降圧薬すべてを組み合わせた固定用量配合剤の利用は、アドヒアランスを改善したが、血圧やコレステロールなどリスク因子の改善はわずかで統計的有意差はみられなかったことが報告された。ニュージーランド・オークランド大学のVanessa Selak氏らによる非盲検無作為化試験IMPACTの結果で、配合剤に対する受容性は一般医(GP)、患者ともに高かったが、一方で投与の中断率が高かったことも報告されている。BMJ誌オンライン版2014年5月27日号掲載の報告より。一般医54人を介して患者513例を対象に、12ヵ月間の配合剤治療vs.通常ケア IMPACT(IMProving Adherence using Combination Therapy)試験は2010年7月~2013年8月に、ニュージーランドのオークランドおよびワイカト地方の一般医54人と、その患者で抗血小板薬、スタチンおよび2種以上の降圧薬治療が推奨されていた心血管疾患リスクの高い(5年リスク15%以上)513例の成人(うち257例は先住民のマオリ)を対象に行われた。 患者は、通常ケアを継続する群と固定用量配合剤治療を受ける群に無作為に割り付けられ12ヵ月間追跡を受けた。配合剤は、アスピリン75mg+シンバスタチン40mg+リシノプリル10mgに、アテノロール50mgまたはヒドロクロロチアジド12.5mgのいずれかを組み合わせた2バージョンがあった。一般医が4種の推奨薬について処方を行い、市中の薬局で調剤が行われ患者に投与された。 主要アウトカムは、12ヵ月時点の患者自身の報告による配合剤治療のアドヒアランス、および血圧、LDL-C値のベースライン時からの平均変化値とした。配合剤群のアドヒアランスは有意に改善したが 12ヵ月の追跡期間を完了したのは、497例(97%)だった。 4種の推奨薬はすべて、通常ケア群よりも配合剤群でアドヒアランスが有意に高かった。アドヒアランス率は81%vs. 46%、相対リスクは1.75(95%信頼区間[CI]:1.52~2.03、p<0.001)で、治療必要数(NNT)は2.9(同:2.3~3.7)だった。 12ヵ月時点の各推奨薬タイプ別アドヒアランスは両群ともに高率だったが、相対的には配合剤群が有意に高率であった。すなわち抗血小板薬は93%vs. 83%(p<0.001)、スタチン94%vs. 89%(p=0.06)、合剤降圧薬89%vs. 59%(p<0.001)、あらゆる降圧薬96%vs. 91%(p=0.02)であった。 これら自己報告のアドヒアランスに関する傾向は、調剤データと一致しており、4種の推奨薬すべての調剤率は、配合剤群79%、通常ケア群47%で、相対リスクは1.67(95%CI:1.44~1.93、p<0.001)だった。 一方で12ヵ月間のリスク因子のコントロール改善については、両群間で統計的な有意差はみられなかった。配合剤群と通常ケア群を比較した変化の差は、収縮期血圧は-2.2mmHg(-4.5 vs.-2.3、95%CI:-5.6~1.2、p=0.21)、拡張期血圧は-1.2mmHg(-2.1 vs.-0.9、同:-3.2~0.8、p=0.22)、LDL-C値は-0.05mmol/L(-0.20 vs.-0.15、-0.17~0.08、p=0.46)だった。 また、心血管イベントの発生数は、配合剤群16例vs. 通常ケア群18例(p=0.73)、また重症有害事象の発生数は99例vs. 93例(p=0.56)でいずれも発現頻度は同程度であった。 配合剤群患者の一般医の89%(227/256例)が試験後サーベイを受けた。固定用量配合剤治療戦略について聞いた結果、同治療開始については91%(206/227例)、血圧コントロールについては82%(180/220例)、コレステロールコントロールは78%(170/218例)、忍容性81%(181/223例)、ローカルガイドラインに従う処方については84%(185/219例)が、「満足」または「とても満足」と回答した。 一方、12ヵ月時点で患者に対して行った服用の簡便性に関する質問の結果(簡便、とても簡便との回答)は、固定用量配合剤群91%(224/246例)、通常ケア群86%(212/246例)で有意差がみられた(p=0.09)。しかし、配合剤群では94例(37%)が投与を中断しており、その理由として最も多かったのは副作用(54/75例、72%)だった。 両群間では、12ヵ月時点でその他脂質の変化、EuroQol-5Dの差、アドヒアランスに対する障害の差についても有意な差はみられていない。

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認知症発症リスクと心臓疾患との関係

 複数の心血管リスク因子が、認知症やアルツハイマー型認知症(AD)のリスクを増大することが知られるが、心臓疾患が及ぼす影響については不明なままであった。東フィンランド大学のMinna Rusanen氏らによる住民ベースのコホート研究の結果、高齢期の心臓疾患は、その後の認知症やADリスクを増大することが明らかにされた。結果を受けて著者は、「心臓疾患の予防と効果的な治療は、脳の健康や認知機能維持の観点からも重要であると考えられる」とまとめている。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2014年5月13日号の掲載報告。 研究グループは、認知症やADの長期リスクについて、中高年期の心房細動(AF)、心不全(HF)、冠動脈疾患(CAD)との関連を調べるため、住民ベースのコホート研究CAIDE(Cardiovascular Risk Factors, Aging and Dementia)のデータを分析した。CAIDEには、4期(1972、1977、1982、1987年)にわたって無作為に選択された住民合計2,000例が参加。被験者は、25年超後の1998年と2005~2008年の2期に追跡調査を受けていた。 主な結果は以下のとおり。・研究参加者2,000例のうち1回以上の追跡調査を受けていたのは、1,510例(75.5%)であった。そのうち認知症との診断を受けていたのは、127例(8.4%)であった。・全因子補正後の分析の結果、高齢期のAFは、認知症(ハザード比[HR]:2.61、95%信頼区間[CI]:1.05~6.47、p=0.039)、AD(同:2.54、1.04~6.16、p=0.040)の独立リスク因子であった。・アポリポ蛋白E(APOE)ε4を有していない人では、同関連はより強かった。・高齢期HFについても同様にリスクを増大する傾向がみられた。CADではみられなかった。・中年期診断の心臓疾患は、その後の認知症やADリスク増大と関連していなかった。関連医療ニュース 高齢者への向精神薬投与、認知症発症リスクと強く関連 認知症予防効果を降圧薬に期待してよいのか スタチン使用で認知症入院リスク減少

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中~高強度スタチンへのPCSK9阻害薬上乗せ効果を確認/JAMA

 米国・アイオワ大学のJennifer G. Robinson氏らによる第III相無作為化試験LAPLACE-2の結果、中~高強度のスタチン治療を受けている高コレステロール血症患者に対し、PCSK9阻害薬エボロクマブ上乗せ効果は、プラセボおよびエゼチミブ(商品名:ゼチーア)追加よりも、LDL-C値を有意に低下したことが報告された。JAMA誌2014年5月14日号掲載の報告より。エゼチミブおよびプラセボとの比較で12週間治療 中~高強度のスタチン治療を受けている高コレステロール血症患者では、多くが治療目標を達成できず、さらなるLDL-C値低下の非スタチン治療を考慮することが推奨されている。LAPLACE-2は、中~高強度のスタチン治療との組み合わせとして、エボロクマブの12週治療の有効性と安全性を、エゼチミブおよびプラセボとの比較で検討することを目的に行われた。 試験は2013年1月~12月に、17ヵ国198施設から患者を集め、2段階で24治療群のいずれか1つに無作為に割り付けて検討した。 患者(計2,067例)はまず初めに、1日量のスタチン治療が中強度(アトルバスタチン[10mg]、シンバスタチン[40mg]またはロスバスタチン[5mg])、高強度(アトルバスタチン[80mg]、ロスバスタチン[40mg])に無作為化された。 4週間後、患者(1,899例)はスタチン治療に加えて、エボロクマブ(140mgを2週に1回または420mgを月に1回)+プラセボ(2週に1回または月に1回)、エゼチミブ(1日1回10mgまたはプラセボ[アトルバスタチン単独群となるよう])の投与が比較できるように無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは2つとし、ベースライン時からのLDL-C値の低下率について、10~12週の平均LDL-C値による評価(1ヵ月投与群の低下を良好に反映する)と、12週時点のLDL-C値による評価とした。2週に1回投与群66~75%低下、1ヵ月1回投与群63~75%低下 結果、中~高強度のスタチン治療群全体において、エボロクマブ上乗せによるLDL-C値の低下率は、プラセボとの比較において、2週に1回投与群は-66%(ロスバスタチン40mg群)~-75%(アトルバスタチン80mg群)の範囲に及び、月1回投与群では-63%(ロスバスタチン40mg群、アトルバスタチン10mg群)~-75%(アトルバスタチン80mg群)だった。12週時点の評価でみたLDL-C値の低下率も同程度だった。 中強度スタチン治療群(アトルバスタチン10mg群、シンバスタチン40mg群、ロスバスタチン5mg群)についてみると、エボロクマブ2週1回の追加投与によりLDL-C値はベースライン時平均115~124mg/dLから39~49mg/dLへの低下がみられた。月1回投与群では、同123~126mg/dLから43~48mg/dLへの低下がみられた。 高強度スタチン治療群(アトルバスタチン80mg群、ロスバスタチン40mg群)では、同じくエボロクマブ2週1回の追加投与により89~94mg/dLから35~38mg/dLへの低下が、月1回投与群では89~94mg/dLから33~35mg/dLへの低下がみられた。 有害事象の発生は、エボロクマブ、エゼチミブ、プラセボ群でそれぞれ36%、40%、39%で報告された。エボロクマブ投与群で最も頻度が高かった有害事象は、背中の痛み、関節痛、頭痛、筋けいれん、四肢の痛みであった(すべて2%未満)。 結果を踏まえて著者は、「さらなる検討を行い、この治療アプローチの長期アウトカムおよび安全性を確認する必要がある」とまとめている。

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PCSK9阻害薬追加でLDLコレステロール値が改善/NEJM

 エボロクマブは前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9(PCSK9)を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体である。脂質異常症の治療において、食事療法やスタチン、エゼチミブによる薬物療法に本薬を加えると、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値が有意に低下することが、南アフリカ・ケープタウン大学のDirk J Blom氏らが行ったDESCARTES試験で示された。PCSK9は、主に肝臓で産生されるセリンプロテアーゼで、血中に分泌されて肝臓のLDL受容体に結合し、LDL受容体の分解を促進する。本薬の第II相試験でLDL-Cの改善効果が確認されている。NEJM誌2014年5月8日号(オンライン版2014年3月29日号)掲載の報告。基本治療無効例をプラセボ対照無作為化試験で評価 DESCARTES試験は、エボロクマブを用いた52週間の治療の安全性および有効性を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験。対象は、年齢18~75歳で、LDL-C≧75mg/dL、空腹時トリグリセライド≦400mg/dLの患者とし、全米コレステロール教育プログラム成人治療第3委員会(ATP III)の規定によるリスク分類で層別化した。 この分類に基づいて、4~12週の導入期間に、基本的な脂質低下療法として以下の4つの治療法のいずれかを開始した。1)食事療法、2)食事療法+アトルバスタチン10mg/日、3)食事療法+アトルバスタチン80mg/日、4)食事療法+アトルバスタチン80mg/日+エゼチミブ10mg/日。 導入期間の4週目の評価で、基本治療を行ってもLDL-C値が75mg/dL以上の患者を無作為割り付けの対象とした。4週ごとにエボロクマブ(420mg)を追加投与する群とプラセボを投与する群に2:1の割合で無作為に割り付け、引き続き48週の治療が行われた。 主要評価項目は、52週時における超遠心法で測定したLDL-C値のベースラインからの変化率とした。月1回のエボロクマブ追加投与でLDL-C値が57%低下 2012年1月〜2013年11までに9ヵ国88施設から2,120例が登録された。901例が解析の対象となり、このうち52週の治療を完遂したのは800例(88.4%)だった。 901例の内訳は、食事療法単独群が111例(プラセボ群37例、エボロクマブ群74例)、アトルバスタチン10mg群が383例(129例、254例)、アトルバスタチン80mg群が218例(73例、145例)、アトルバスタチン80mg+エゼチミブ10mg群は189例(63例、126例)であった。 プラセボ群の変化を考慮に入れたエボロクマブ群全体におけるLDL-C値のベースラインからの低下率の最小二乗平均値(±SE)は57.0±2.1%であった(p<0.001)。 基本治療別のエボロクマブ群におけるLDL-C値の低下率の最小二乗平均値は、食事療法単独群が55.7±4.2%,アトルバスタチン10mg群が61.6±2.6%、アトルバスタチン80mg群が56.8±5.3%、アトルバスタチン80mg+とエゼチミブ10mg群は48.5±5.2%であった(すべての比較に関してp<0.001)。 エボロクマブの投与により、アポリポ蛋白B、非高比重リポ蛋白(non-HDL)コレステロール、リポ蛋白(a)、トリグリセライドの値も有意に低下した。また、エボロクマブ群では鼻咽頭炎、上気道感染、インフルエンザ、背部痛が高頻度に認められた。 著者は、「エボロクマブは、さまざまな心血管リスクを有する脂質異常症患者において、食事療法単独、食事療法+低用量アトルバスタチン、食事療法+高用量アトルバスタチン±エゼチミブというガイドラインで推奨されているいずれの脂質低下療法に追加した場合でも、プラセボに比べLDL-C値を57%有意に低下させた」とまとめ、「この結果は、同一レジメンの12週投与に関する第II相試験で認められた効果と一致しており、12~52週まで効果の減弱はないとことが確認された」としている。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第7回

第7回:末梢閉塞性動脈疾患:疑わしければABIを、治療は薬だけでなく運動も 欧米では末梢閉塞性動脈疾患 PAD(peripheral arterial disease)と閉塞性動脈硬化症 ASO(arteriosclerosis obliterans)とはほぼ同義とされますが、日本ではPAD=ASO+閉塞性血栓血管炎TAO(Thromboangiitis obliterans)として区別されてきました。その理由は、江戸時代以降1970年代頃まで日本では、TAOが慢性閉塞性動脈疾患の中心を占めていたためです。最近は高齢社会や食生活を含めた生活様式の変化を背景に、TAOが減少しASOが急増して、慢性動脈閉塞症の95%以上を占めるようになり、日本でもPADという表現をASOとほぼ同義に用いることが多くなりました。ASOは無症候性を含め50~80万人/1.3億(3/1000~5/1000)の患者数と推測され、決して少なくありません1)。 PADとは何か、アウトカムは何か、プライマリ・ケアではどのような状況で疑うか、疑ったとき何をするのか、診断後のケアとしてどのような方法があるかを知ることでケアの幅が広がるかもしれません。 以下、本文 American Family Physician 2013年9月1日号2)よりPAD(末梢閉塞性動脈疾患)1.概要PAD(末梢閉塞性動脈疾患)は大動脈弓以遠の狭小化に至る、動脈硬化性疾患である。重度の全身性動脈硬化を反映し、心血管リスク推定時には冠血管疾患と同等に考えるべき疾患である。間欠性跛行(最もよくある症状で、全患者の10%)・四肢虚血・心血管イベント、それによる死亡を引き起こす。2.診断PADリスクは糖尿病・喫煙のほかに、高血圧・脂質異常症・腎不全がある。複数のリスクまたは間欠性跛行がある患者で、病歴と身体所見は診断に有用である。間欠性跛行は脊柱管狭窄症、末梢神経障害、筋骨格疾患、外傷、深部静脈血栓症と鑑別しなければならない。PADの身体所見には皮膚冷感、四肢遠位脈拍触知不良、腸骨/大腿/膝窩動脈雑音聴取、毛細血管再充満時間の延長、非治癒性創傷、光沢のある皮膚、罹患部の無毛、挙上時の四肢蒼白がある。プライマリ・ケアでの診断においてABI(足関節上腕血圧比) は安価で性能のいい検査(感度 90%、特異度 98%)である。ABIで0.9以下の場合(正常範囲 1.0~1.4)、末梢閉塞性動脈疾患を疑う。MRIやCT血管造影検査は手術を検討するときに検討される。ルーチンのスクリーニングが心血管イベントや全死亡を減らすエビデンスがないことから、USPSTF(米国予防医療サービス専門作業部会)はI statement(エビデンスが欠如している、質が悪い、矛盾するエビデンスがある等の理由で、予防方法のメリットと害のバランスを決めるにはエビデンスが不足していると結論づけられる)にとどめている。しかし、ある高リスクの患者群には有用である可能性がある。米国糖尿病協会は50歳以上のすべての糖尿病患者と50歳未満の高リスク患者がスクリーニングされるべきとしている。3.治療治療は運動と薬物療法である。運動療法は、監督下の運動で歩行距離と時間を延ばす(ほとんどの研究で下肢の体操もしくはトレッドミル歩行で30分を2~3回/週)。薬物療法ではスタチンをLDL 100未満として投与すべき(CHD-equivalent)である。症候性のときには抗血小板薬は心筋梗塞や脳卒中や血管死を減らすため、アスピリンやクロピドレル等の処方が推奨される。ACEIに関してはラミプリルが機能障害治療において有用かもしれないが、咳嗽等で使用できないときに他のACEIへの切り替えでも有用かは、さらなる研究が必要である。外科コンサルトは、運動や薬物療法でも生活を制限するような間欠性跛行が改善しないときに行う。重篤な四肢虚血があるときは緊急コンサルテーションが必要である。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 日本循環器学会ほか.末梢閉塞性動脈疾患治療ガイドライン 2) Duane R, et al. Am Fam Physician. 2013;88:306-310.

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ACC/AHA開発の心血管疾患リスク予測式の予測能は高い/JAMA

 米国心臓病学会・米国心臓協会(ACC/AHA)が開発したアテローム性心血管疾患(CVD)リスク予測式について、CVDや糖尿病の既往がなくLDL-C値が70~189mg/dLの白人や黒人を含む1万例超の大規模コホートに当てはめて検証した結果、同式による予測値と、実際の発生率は近似値で予測能は高いことが示された。米国・アラバマ大学のPaul Muntner氏らが報告した。JAMA誌2014年3月29日号掲載の報告より。CVDや糖尿病歴なし、LDL-C値が70~189mg/dLの1万例超について分析 研究グループは、2003年~2007年に、Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke(REGARDS)試験に参加した45~79歳について、2010年12月まで追跡調査を行った。そのうち、臨床的アテローム性CVDや糖尿病歴がなく、LDL-C値が70~189mg/dLでスタチンを服用していない1万997例を対象に、ACC/AHAのアテローム性CVDリスク予測式の適合性について分析した。 さらに被験者の中で、メディケア加入者(3,333例)については、メディケアの保険請求データに基づく分析も行った。5年CVDの発生予測値と実測値は近似 追跡期間中に発生したアテローム性CVDイベント数は338件(冠動脈疾患192件、脳卒中146件)だった。 ACC/AHAのリスク予測式で、10年アテローム性CVDリスクが5%未満の群では、5年アテローム性CVDイベントについて、発生予測値1.9/1,000人年に対し、実際の発生率も1.9(95%信頼区間[CI]:1.3~2.7)/1,000人年だった。 同じく5~7.5%未満群では、発生予測値4.8/1,000人年に対し、実際の発生率も4.8(95%CI:3.4~6.7)/1,000人年。同7.5~10%未満群では、それぞれ6.9/1,000人年、6.1(同:4.4~8.6)/1,000人年。同10%以上群では、それぞれ15.1/1,000人年、12.0(同:10.6~13.6)/1,000人年だった。C統計値は0.72だった。 メディケア加入者についての分析では、追跡期間中に発生したアテローム性CVDイベント数は234件だった。また、同予測式で10年アテローム性CVDリスクが7.5%未満の群では、5年同イベント予測値は4.0/1,000人年、実際の発生率は5.3(同:2.8~10.1)で、C統計値は0.67だった。

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スタチン投与対象者はガイドラインごとに大きく異なる/JAMA

 臨床ガイドラインによって、スタチン投与の対象となる人は大きく異なることが判明した。2013年に発表された新たな米国心臓病学会と米国心臓協会(ACC/AHA)ガイドラインを順守した場合には、55歳以上男性コホートの約96%に相当する一方で、従来の米国高脂血症治療ガイドライン(Adult Treatment Panel III:ATP III)に則した場合は、スタチン投与の対象者は男性の52%に留まるという。オランダ・エラスムス大学医療センターのMaryam Kavousi氏らが、約5,000例のコホート試験を基に分析して明らかにした。JAMA誌2014年4月9日号掲載の報告より。「Rotterdam Study」の被験者4,854例を対象に各臨床ガイドラインを適用 研究グループは、オランダのロッテルダム在住の55歳以上に行った住民ベースの前向きコホート試験「Rotterdam Study」の被験者4,854例を対象に、各臨床ガイドラインを適用した場合のスタチン投与対象者を割り出すなどの検討を行った。被験者の平均年齢は、65.5歳(SD 5.2)だった。 結果、同集団に対してACC/AHAガイドラインを順守した場合、スタチン投与の対象となったのは男性の96.4%(1,825例)と女性の65.8%(1,523例)だった。 一方、ATP IIIガイドラインを適用した場合、男性52.0%(985例)、女性35.5%(821例)に、欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインでは、66.1%(1,253例)、39.1%(906例)と、いずれもACC/AHAガイドラインとの間に大きな格差があった。3種ガイドラインのリスクモデル、イベント発生を過剰予測 また、ACC/AHAリスクモデルでは、男性の動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)イベント発生率の予測値は21.5%だったのに対し、実際の累積ASCVDイベント発生率は12.7%、女性ではそれぞれ11.6%と7.9%と、予測値が実測値を上回っていた。ATP IIIモデル、ESCモデルでも、冠動脈性心疾患(CHD)やアテローム動脈硬化性心血管疾患(CVD)死亡イベントについて、同様の過大予測が認められた。 ACC/AHAリスクモデルのASCVDに関するC統計量は、男性が0.67、女性が0.68だった。ATP IIIモデルのCHDに関するC統計量は、それぞれ0.67と0.69、ESCモデルのCVD死亡に関するC統計量は、それぞれ0.76と0.77と、いずれも改善の余地があったという。

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多発性硬化症におけるシンバスタチン高用量の有用性/Lancet

 二次性進行型多発性硬化症(MS)患者に対し、シンバスタチンの高用量投与により、全脳萎縮率は約4割低下することが明らかにされた。英国・ロンドン大学のJeremy Chataway氏らが、140例の二次性進行型MS患者を対象に行った第II相臨床試験の結果で、忍容性、安全性も良好であり、第III相試験を進める根拠が得られたと報告した。二次性進行型MSについては満足いく治療法がなく障害を有しているのが現状である。シンバスタチンは血管性疾患に広く用いられており、安全性プロファイルに優れ、免疫調整や神経保護の特性を有していることが知られていた。Lancet誌オンライン版2014年3月18日号掲載の報告より。シンバスタチン80mgを24ヵ月投与 Chataway氏らは2008年1月28日~2011年11月4日の間に、英国3ヵ所の神経科学センターを通じ、18~65歳の二次性進行型MS患者140例を対象に、二重盲検無作為化比較試験を行った。被験者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはシンバスタチン80mgを、もう一方にはプラセボをそれぞれ24ヵ月間投与した。被験者の平均年齢は51~52歳、女性の割合は69~70%だった。 主要アウトカムは、容積MRI検査による年換算全脳萎縮率だった。シンバスタチン群とプラセボ群の年換算全脳萎縮率の差は-0.254ポイント その結果、年換算全脳萎縮率は、プラセボ群0.584%(標準偏差:0.498)に対し、シンバスタチン群は0.288%(同:0.521)と有意に低率だった。同萎縮率の補正後群間格差は-0.254ポイント(95%信頼区間:-0.422~-0.087、p=0.003)で、年換算43%の減少だった。 なお、重度有害事象の発生率は、プラセボ群で14例(20%)、シンバスタチン群で9例(13%)であり、両群で有意差はなかった。 これらの結果を踏まえて研究グループは、「第III相臨床試験の実施を支持するものだった」と結論づけた。

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米成人の半数がスタチン治療を受ける時代に?/NEJM

 米国心臓病学会および米国心臓協会(ACC/AHA)は昨年11月、関連するガイドラインを改訂したが、デューク大学臨床研究所のMichael J. Pencina氏らは、その影響について調べた。結果、スタチン治療が適格となる患者が1,280万人増大し、米国成人(40~75歳)の約半数(48.6%)5,600万人がスタチン治療対象者となることが推算されたという。増大者のうち大半は心血管疾患を有さない高齢者であった。NEJM誌オンライン版2014年3月19日号掲載の報告より。ACC/AHA新ガイドラインの影響を調査 新ガイドラインでは、心血管疾患既往成人についてはコレステロール値を問わず治療を推奨することが示されている。また、一次予防については、LDL値190mg/dL以上の患者についてスタチン治療を推奨することに加えて、70mg/dL以上で糖尿病または心血管疾患10年リスク7.5%以上のすべての成人にスタチン治療を推奨することが盛り込まれた。 Pencina氏らは、全米健康・栄養調査(NHANES)のデータを用いて、脂質異常症治療のサポートガイドラインとして推奨されてきたthe Third Adult Treatment Panel(ATP III)との比較で、新ガイドラインをベースとした場合の、スタチン治療推奨が適格となる米国成人数を推算することを試みた。 具体的には、2005~2010年のNHANESデータと、40~75歳の米国成人1億1,540万人を推定のベースに用いて調べた。スタチン治療適格者、以前より1,280万人増加し米成人の48.6%と推算 結果、スタチン治療適格となる米国成人は、ATP IIIガイドラインでは4,320万人(37.5%)であったが、新ガイドラインでは5,600万人(48.6%)に増大することが示唆された。増大者1,280万人のうち大半(1,040万人)は、心血管疾患を有さない成人だった。 また、心血管疾患を有さずスタチン治療を受けていない60~75歳の高齢者において、スタチン治療適格となる割合は、男性についてはATP IIIでの30.4%から新ガイドラインでは87.4%に、女性については21.2%から53.6%にそれぞれ増加することが示唆された。これらの増大をもたらす要因は、主として治療推奨の層別化要因としての「心血管イベント10年リスク」が単独で盛り込まれたことによるものであった。 新たなスタチン治療適格者は、女性よりも男性が多く、血圧が高めだがLDL値が顕著に低いという特徴が浮かび上がった。 ATP IIIガイドラインと比較して、新ガイドラインは、より高齢で、将来心血管イベントを有する可能性が高いが(感度が高い人)、同時に将来心血管イベントが起きる可能性が低い(特異度が低い)人も多数含まれることが示唆された。

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静脈うっ滞性潰瘍、圧迫療法+シンバスタチンは有意

 静脈うっ滞性潰瘍の治療について、標準治療の創傷ケアや圧迫療法に加えてシンバスタチン(商品名:リポバスほか)40mgの連日投与を行うことで、治癒率、治癒までの時間およびQOLを有意に改善することが、フィリピン・Jose R. Reyes Memorial Medical CenterのM.T.P. Evangelista氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告された。British Journal of Dermatology誌オンライン版2014年2月7日号の掲載報告。 静脈うっ滞性潰瘍の標準治療は圧迫療法だが、薬物療法が補助的治療として用いられる可能性がある。シンバスタチンは、創傷治癒効果がある可能性が示唆されていたが、これまで静脈うっ滞性潰瘍への使用について、検討されていなかった。 研究グループは、標準治療と併用した場合のシンバスタチンの有効性と安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。主要アウトカムは、潰瘍治癒の割合、治癒までの時間、治癒した皮膚の総面積、皮膚の状態による生活の質指数(dermatology life quality indices:DLQI)であった。 主な結果は以下のとおり。・66例の患者が無作為化を受け、32例がシンバスタチン群に、34例が対照群に割り付けられた。・潰瘍5cm以下の患者で治癒した人は、シンバスタチン群100%であったのに対し、対照群は46%であった(RR:0.11、95%信頼区間[CI]:0.02~0.77)。・同患者で治癒までに要した平均期間は、シンバスタチン群6.89±0.78週に対し、対照群は8.40±1.13週であった(p=0.0001)。・潰瘍5cm超の患者においては、シンバスタチン群の治癒率は50%、治癒までに要した平均期間は9.17±1.07週であった。一方、プラセボ群で治癒した人はいなかった(RR:0.5、95%CI:0.28~0.88)。・シンバスタチン群は、治療後処置を受けたDLQIが有意に低かった(p=0.0004)。・副作用の報告はなかった。

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認知症予防効果を降圧薬に期待してよいのか

 最近の研究において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)には降圧効果だけでなく、認知症に対する薬効もあることが示唆されている。はたして、ARBに認知症予防効果を期待できるのか。台湾国立大学のWei-Che Chiu氏らはこの答えを明らかにすべく同国住民ベースのコホート研究を行った。その結果、ARBは、血管系リスクが高い人の認知症リスクを低減することが示唆された。また、累積投与量が高い患者ほど、認知症およびそのサブタイプ(アルツハイマー病等)に対して、より高い予防効果がみられたという。Journal of Hypertension誌オンライン版2014年1月8日号の掲載報告。 研究グループは、認知症およびそのサブタイプへのARBの効果を調べることを目的に、台湾国民健康保険の研究データベースを利用した住民ベースのコホート研究を行った。ペア適合したARB服用患者と非服用患者、合計2万4,531例について、1997~2009年に個別に追跡して認知症発症例を特定し、ARBと認知症、アルツハイマー病、血管性認知症の関連を分析した。評価は、Cox比例ハザート回帰分析にて、ハザード比と95%信頼区間(CI)を算出して行った。 主な結果は以下のとおり。・11年の追跡期間中に認知症の発症が特定されたのは、ARB服用群1,322例(5.4%)、非服用群2,181例(8.9%)であった。・認知症およびサブタイプ別にみたARB服用群の多変量補正ハザード比は、認知症0.54(95%CI:0.51~0.59)、アルツハイマー病0.53(同:0.43~0.64)、血管性認知症0.63(同:0.54~0.73)であった。・累積投与量については、1日量1,460以上の患者で、同値未満の患者と比べて、有意なリスク減少がみられた(ハザード比:0.37vs. 0.61、p<0.05)。関連医療ニュース 新たなアルツハイマー病薬へ、天然アルカロイドに脚光 スタチン使用で認知症入院リスク減少 認知症に対するアロマテラピー、効果はあるか

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冠動脈CT:カルシウム容積スコアと密度スコア(コメンテーター:近森 大志郎 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(164)より-

冠動脈カルシウム・スコアは従来の冠危険因子に加えて、心血管疾患イベント(心臓死・心筋梗塞・脳梗塞など)の独立したリスク因子として確立している。しかしながら、冠動脈石灰化は中膜に出現し、スタチンによる治療過程にて密度が亢進するとの基礎的報告もあることから、冠動脈プラーク病変の治癒過程を反映しているとの意見もある。このことは、冠動脈石灰化の容積と密度を合わせて評価している、従来のカルシウム・スコア(Agatston)の弱点となる可能性がある。 Criquiらは45~84歳の約3,400例を対象とした観察研究であるMESA(Multi-Ethinic Study of Atherosclerosis)試験の冠動脈石灰化のデータを再評価した。すなわち、従来のカルシウム・スコアを、カルシウム容積スコアと、4ポイントに半定量化したカルシウム密度スコアに分別して、心血管イベントとの関連性について検討した。 7.6年の追跡期間中に、175例の冠動脈イベントと90例のその他の心臓イベント、合わせて計265例の心血管イベントが発生した。多変量解析では、カルシウム容積スコアと冠動脈イベントおよび心血管イベントとの間には正の相関を認め、スコアが1標準偏差増大すれば、ハザード比はそれぞれ1.81および1.68へと増大することが判明した。これに対して、カルシウム密度スコアは冠動脈イベントおよび心血管イベントに対して負の相関を示し、スコアが1標準偏差増大すれば、ハザード比は0.73および0.71へと減少することが示された。さらに、これらのイベント予測は、従来のカルシウム・スコアと比較してカルシウム容積スコアとカルシウム密度スコアを別々に評価した予測モデルの方が優れていることが示された。 本研究は、基礎データおよび病態生理の見地から批判されていた、従来のカルシウム・スコアの弱点を臨床的に初めて実証したという点で重要である。心血管疾患イベントを予測する他の臨床病態因子として、負荷誘発性心筋虚血が挙げられるが、本指標は虚血の深さと広さが相乗的にリスクを増大する方向で作用することが知られている。これに対して、カルシウム・スコアは相反する方向に作用する因子を内在しており、このことが本指標の有用性を低下させている可能性がある。例えばNayaらはPET検査により負荷誘発性心筋虚血が認められない約900例を経過観察したところ、PETで評価した冠血流予備能はリスク層別化に有用であるが、従来のカルシウム・スコアは無効であったと報告している(Naya M et al. J Am Coll Cardiol. 2013; 61: 2098-2106.)。 Criquiらの報告は、密度の高い冠動脈の石灰化は心血管イベントに対して保護的に作用する、という興味深い概念を支持する研究結果である。しかしながら、肝心のカルシウム密度スコアについては、初期のMESA試験における冠動脈CTの再検討であり、半定量化されたデータに過ぎない。 今後、臨床の現場で有効となるためには、カルシウム密度測定の洗練化および標準化が必須である。次に、冠動脈イベントを保護するカルシウム密度スコアのカットオフ・ポイントを明らかにする必要がある。以上が確立すれば、冠動脈CTによって評価されるカルシウム密度スコアの臨床的有用性が高まると推測される。

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利尿薬に低用量ドパミンを上乗せするメリットは?:腎機能障害を有する急性心不全患者/JAMA

 急性心不全で腎機能障害を有する患者に対し、利尿療法に低用量ドパミン(商品名:イノバンほか)または低用量のBNP製剤ネシリチド(国内未承認)のいずれの追加療法を行っても、利尿療法単独の場合と比べて、うっ血除去の強化および腎機能改善への有意な効果は示されなかったことが報告された。米国・メイヨークリニックのHorng H. Chen氏らによる大規模な多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「ROSE」からの報告で、先行研究の小規模試験では、いずれもアウトカム改善の可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。低用量ドパミン群と低用量ネシリチド群に急性心不全患者360例を割り付け ROSE(Renal Optimization Strategies Evaluation)試験は、プラセボ(利尿療法単独)と比較として、(1)利尿療法+低用量ドパミン(2μg/kg/分)、(2)利尿療法+低用量ネシリチド(0.005μg/kg/分、ボーラスなし)の2つの治療戦略がそれぞれ、腎機能障害を有する急性心不全患者のうっ血除去を強化する可能性、および腎機能を改善する可能性があるとの仮説を検証することを目的とするものであった。 2010年9月~2013年3月に北米26地点で被験者を登録し、急性心不全で入院し腎機能障害(15~60mL/分/1.73m2)が認められた360例を、入院から24時間以内に無作為化した。被験者は非盲検下に1対1の割合で、低用量ドパミン治療戦略群と低用量ネシリチド治療戦略群に割り付けられ、さらに各群患者は無作為二重盲検下に2対1の割合で、実薬治療群とプラセボ群に割り付けられた。 主要エンドポイントは、72時間累積尿量(うっ血除去のエンドポイント)、登録から72時間までの血清シスタチンC値の変化(腎機能のエンドポイント)などを含んだ複合とした。低用量ドパミン群も低用量ネシリチド群も有意な効果はみられず 低用量ドパミン群122例、低用量ネシリチド群119例を、プールプラセボ群119例と比較した。 結果、プラセボと比較して、低用量ドパミン追加投与の、72時間累積尿量に関する有意な効果はみられなかった。同値は低用量ドパミン群8,524mL(95%信頼区間[CI]:7,917~9,131)vs. プラセボ群8,296mL(同:7,762~8,830)で、両群差は229mL(同:-714~1,171)だった(p=0.59)。 また、血清シスタチンC値の変化に関する有意な効果もみられなかった。同値は低用量ドパミン群0.12mg/L(95%CI:0.06~0.18)vs. プラセボ群0.11mg/L(同:0.06~0.16)で、両群差は0.01mg/L(同:-0.08~0.10)だった(p=0.72)。 同様に、低用量ネシリチド追加投与についても、両エンドポイントに関する有意な効果がみられなかった。72時間累積尿量は、低用量ネシリチド群8,574mL(95%CI:8,014~9,134)vs. プラセボ群8,296mL(同:7,762~8,830)で、両群差は279mL(同:-618~1,176)だった(p=0.49)。血清シスタチンC値の変化は、低用量ネシリチド群0.07mg/L(同:0.01~0.13)vs. プラセボ群0.11mg/L(同:0.06~0.16)で、両群差は-0.04mg/L(同:-0.13~0.05)だった(p=0.36)。 副次エンドポイント(うっ血除去、腎機能あるいは臨床的アウトカムに関する)についても、低用量ドパミン群と低用量ネシリチド群の効果を示すものは認められなかった。

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Vol. 2 No. 1 これからの血管内治療(EVT)、そして薬物療法

中村 正人 氏東邦大学医療センター大橋病院循環器内科はじめに冠動脈インターベンションの歴史はデバイスの開発と経験の蓄積の反映であるが、末梢血管の血管内治療(endovascular treatment: EVT)も同じ道を歩んでいる。対象となる血管が異なるため、冠動脈とは解剖学的、生理学的な血管特性は異なるが、問題点を解決するための戦略の模索は極めて類似している。本稿では、末梢血管に対するインターベンションの現況を総括しながら、今後登場してくるnew deviceや末梢閉塞性動脈硬化症に対する薬物療法について展望する。EVTの現況EVTの成績は治療部位によって大きく異なり、大動脈―腸骨動脈領域、大腿動脈領域、膝下血管病変の3区域に分割される。個々の領域における治療方針の指標としてはTASCIIが汎用されている。1.大動脈―大腿動脈 この領域の長期成績は良好である。TASCⅡにおけるC、Dは外科治療が優先される病変形態であるが、外科治療との比較検討試験で2次開存率は外科手術と同様の成績が得られることが示されている1)。解剖学的外科的バイパス術は侵襲性が高いこともあり、経験のある施設では腹部大動脈瘤の合併例、総大腿動脈まで連続する閉塞病変などを除き、複雑病変であってもEVTが優先されている(図1、2)。従って、完全閉塞性病変をいかに合併症なく初期成功を得るかが治療の鍵であり、いったん初期成績が得られると長期成績はある程度担保される。図1 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢画像を拡大するDistal bypass術により救肢を得た透析例が数年後、膝部の難治性潰瘍で来院。腸骨動脈から大腿動脈に及ぶ完全閉塞を認めた(a)。ガイドワイヤーは静脈bypass graftにクロスし(b)、腸骨動脈はステント留置、総大腿動脈はバルーンによる拡張術を行った。Distal bypass graftの開存(黒矢印)と大腿深動脈の血流(白矢印)が確認された(c)図2 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢(つづき)画像を拡大する2.大腿動脈領域 下肢の閉塞性動脈硬化症の中で最も治療対象となる頻度が高い領域である。このため、関心も高く、各種デバイスが考案されている。大腿動脈は運動によって複雑な影響を受けるため、EVTの成績は不良であると考えられてきた。しかし、ナイチノールステントが登場し、EVTの成績は大きく改善し適応は拡大した。EVTの成績を左右する最も強い因子は病変長であり、バルーンによる拡張術とステントの治療の比較検討試験の成績を鑑み、病変長によって治療戦略は大別することができる。(1)5cm未満の病変に対する治療ではバルーンによる拡張術とステント治療では開存性に差はなく、バルーンによる拡張を基本とし、不成功例にベイルアウトでステントを留置する。(2)病変長が5cm以上になると病変長が長いほどバルーンの成績は不良となるが、ステントを用いた拡張術では病変長によらず一定の成績が得られる。このためステントの治療を優先させる。(3)ステントによる治療も15cm以上になると成績が不良となりEVTの成績は外科的バイパス術に比し満足できるものではない2)。開存性に影響する他の因子には糖尿病、女性、透析例、distal run off、重症虚血肢、血管径などが挙げられる。また、ステント留置後の再狭窄パターンが2次開存率に影響することが報告されている3)。3.膝下動脈 この領域は、長期開存性が得難いため跛行肢は適応とはならない。現状、重症虚血肢のみが適応となる。本邦では、糖尿病、透析例が経年的に増加してきており、高齢化と相まって重症虚血肢の頻度は増加している。重症虚血肢の血管病変は複数の領域にわたり、完全閉塞病変、長区域の病変が複数併存する。本邦におけるOLIVE Registryでも浅大腿動脈(SFA)単独病変による重症虚血肢症は17%にとどまり、膝下レベルの血管病変が関与していた(本誌p.24図3を参照)4)。この領域はバルーンによる拡張術が基本であり、本邦では他のデバイスは承認されていない。治療戦略で考慮すべきポイントを示す。(1)in flowの血流改善を優先させる。(2)潰瘍部位支配血管すなわちangiosomeの概念に合わせて血流改善を図る。(3)末梢の血流改善を創傷部への血流像(blush score)、または皮膚灌流圧などで評価する。従来、straight lineの確保がEVTのエンドポイントであったが、さらに末梢below the ankleの治療が必要な症例が散見されるようになっている(図4)。創傷治癒とEVT後の血管開存性には解離があることが報告されているが5)、治癒を得るためには複数回の治療を要するのが現状である。この観点からもnew deviceが有用と期待されている。治癒後はフットケアなど再発予防管理が主体となる。図4 足背動脈の血行再建を行った後に切断を行った、重症虚血肢の高齢男性画像を拡大する画像を拡大する新たな展開薬剤溶出性ステントやdrug coated balloon(DCB)の展開に注目が集まっており、すでに承認されたものや承認に向け進行中のデバイスが目白押しである。いずれのデバイスも現在の問題点を解決または改善するためのものであり、治療戦略、適応を大きく変える可能性を秘めている。1.stent 従来のステントの問題点をクリアするため、柔軟性に富みステント断裂リスクが低いステントが開発されている。代表はLIFE STENTである。ステントはヘリカル構造であり、RESILIENT試験の3年後の成績を見ると、再血行再建回避率は75.5%と従来のステントに比し良好であった6)。リムス系の薬剤を用いた薬剤溶出性ステントの成績は通常のベアステントと差異を認めなかったが、パクリタキセル溶出ステントはベアメタルステントよりも有意に良好であることが示されている7)。Zilver PTXの比較検討試験における病変長は平均7cm程度に限られていたが、実臨床のレジストリーでも再血行再建回避率は84.3%と比較検討試験と遜色ない成績が示されている8)。Zilver PTXは昨年に承認を得、市販後調査が進行中である。内腔がヘパリンコートされているePTFEによるカバードステントVIABAHNは柔軟性が向上し、蛇行領域をステントで横断が可能である。このため、関節区域や長区域の病変に有効と期待されている9)。これらのステントの成績により、大腿動脈領域治療の適応は大きく変化すると予想される。膝下の血管に対しては、薬剤溶出性ステントの有効性が報告されている10)。開存性の改善により、創傷治癒期間の短縮、再治療の必要性の減少が期待される。2.debulking device 各種デバイスが考案されている。本邦で使用できるものはないが、石灰化、ステント再狭窄、血栓性病変に対する治療成績を改善し、non stenting zoneにおける治療手段になり得るものと考えられている。3.drug coated balloon(DCB) パクリタキセルをコーティングしたバルーンであり、数種類が海外では販売されている。ステント再狭窄のみでなく、新規病変に対しバルーン拡張後に、またステント留置の前拡張に用いられる可能性がある。膝下の血管病変は血管径が小さく長区域の病変でステント治療に不向きである上に開存性が低いためDCBに大きな期待が寄せられている。このデバイスも開存性を向上させるデバイスである。成績次第ではEVTの主流になり得ると推測されている。4.re-entry device このデバイスは治療戦略を変える可能性を秘めている。現在、完全閉塞病変に対してはbi-directional approachが多用されているが、順行性アプローチのみで手技が完結できる可能性が高くなる。薬物療法の今後の展開薬物療法は心血管イベント防止のための全身管理と跛行に対する薬物療法に分類されるが、全身管理における治療が不十分であると指摘されている。また、至適な服薬治療が重要ポイントとなっている。1.治療が不十分である 本疾患の生命予後は不良であり、5年の死亡率は15~30%に及ぶと報告され、その75%は心血管死である。このことは全身管理の重要性を示唆している。しかし、2008年と2011年に、有効性が期待できるスタチン、抗血小板薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の投薬が、虚血性心疾患の症例に比し末梢動脈閉塞性症の症例では有意に低率であると米国から相次いで報告された11, 12)。この報告によると、虚血性心疾患を合併しているとわかっている末梢閉塞性動脈硬化症ではスタチンの無投薬率が42.5%であったのに対し、虚血の合併が不明の末梢閉塞性動脈硬化症では81.7%が無投薬であった12)。本邦においても同様の傾向と推察される。本疾患の無症候例も症候を有する症例と同様に生命予後が不良であるため、喫煙を含めた全身管理の重要性についての啓発が必要である。2.いかに管理すべきか? PADを対照に薬物療法による予後改善を検討した研究は少なくサブ解析が主体であるが、スタチンは26%、アスピリンは13%、クロピドグレルは28%、ACE阻害薬は33%リスクを軽減すると報告されている13)。さらに、これら有効性の高い薬剤を併用するとリスクがさらに低減されることも示されている12)。冠動脈プラークの退縮試験の成績は末梢閉塞性動脈硬化症を合併すると退縮率が不良であるが、厳格にLDLを70mg/dL以下に管理すると退縮が得られると報告されており14)、PADでは厳格な脂質管理が望ましい。 抗血小板薬に関しては、最近のメタ解析の結果によると、アスピリンは偽薬に比しPAD症例で有効性が認められなかった15)。一方、CAPRIE試験のサブ解析では、PAD症例に対しクロピドグレルはアスピリンに比しリスク軽減効果が高いことが示されている16)。今後、新たなチエノピリジン系薬剤も登場してくるが、これら新たな抗血小板薬のPADにおける有効性は明らかでなく、今後の検討課題である。また、本邦で実施されたJELIS試験のサブ解析では、PADにおけるn-3系脂肪酸の有効性が示されている17)。 このように、サブ解析では多くの薬剤が心血管事故防止における有効性が示唆されているが、単独試験で有効性が実証されたものはない。さらには、本邦における有効性の検証が必要になってこよう。3.再狭窄防止の薬物療法 シロスタゾールが大腿動脈領域における従来のステント留置例の治療成績を改善する。New deviceにおける有用性などが今後検証されていくことであろう。おわりにNew deviceでEVTの適応は大きく変わり、EVTの役割は今後ますます大きくなっていくものと推測される。一方、リスク因子に関しては、目標値のみでなくリスクの質的な管理が求められることになっていくであろう。文献1)Kashyap VS et al. The management of severe aortoiliac occlusive disease Endovascular therapy rivals open reconstruction. J Vasc Surg 2008; 48: 1451-1457.2)Soga Y et al. 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