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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第44回

第44回:CKD(慢性腎臓病)の評価方法監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 2002 年に米国で提唱されたChronic Kidney Disease(慢性腎臓病:CKD)の概念は、現在、世界中に普及し、日常の外来でも多く遭遇します。厚生労働省「平成26年患者調査の概況」によると、国内のCKD総患者数は29万6,000人(男性18万5,000人、女性11万人)とされています。 今回は、CKDの検出や初期評価に関してまとめましたので、参考にしてみて下さい。なお、国内では「CKD診療ガイド」1)や「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」2)が上梓されています。この機会にぜひ併せてご覧ください。 以下、American family physician 2017年12月15日号3)より【CKD定義・重症度分類】本邦指針では、下記の定義が定められている1)。(1)尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか。とくに、0.15 g/gCr 以上の蛋白尿(30 mg/gCr 以上のAlb尿)の存在が重要(2)GFR<60 mL/分/1.73 m2(1)、(2)のいずれか、または両方が3 ヵ月以上持続する。CKDの重症度分類に関しては、2012年KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)において、従来の糸球体濾過量(GFR)のみによる病期分類がGFR と尿蛋白Alb尿を組合せた形式となり、著聞されている通りです。【CKD評価時のClinical recommendation】CKD評価時のClinical recommendationとしては、下記の項目が挙げられている。なお、Evidence RatingはいずれもC(=consensus, disease oriented evidence, usual practice, expert opinion, or case series)である。GFRの初期評価には、血清Cre値と血清Cre値を用いたeGFRを用いるべきである。CKD患者の初期評価における早朝スポット尿のAlb/Cre比は、タンパク尿評価よりも好ましい。血中シスタチンCは、血清Cre値が上昇しているが、既知のCKD、危険因子、Alb尿症も有しない患者において、GFRの減少が偽陽性かどうかを決めるときに測定すべきである。CKDは、eGFRおよびAlb尿症の程度を用いて分類されるべきである。CKDを有する患者は、少なくとも年一回、血清Hb値を測定すべきであり、CKDの重症度でその頻度を増す。骨密度のルーチン評価は、結果が不正確である可能性があるため、eGFR<45mL /分/1.73m2の患者では行わない。ステージ3a~5の CKD(eGFR<45mL /分/1.73m2)の患者評価には、血清Ca、P、副甲状腺ホルモン、ALPおよび25‐ヒドロキシビタミンD値の測定が含まれるべきである。【CKDを疑う際の初期診断アプローチ】下記の表を参考に、CKDのリスクや病因を評価する。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 社団法人 日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」 2) 社団法人 日本腎臓学会編「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」 3) Gaitonde DY, et al. Am Fam Physician. 2017 Dec 15.

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PCI予定のACSにスタチンのローディング投与は有益か/JAMA

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による侵襲的管理(確定診断や冠動脈再建術の系統的評価を目的とした冠動脈造影)が予定されている急性冠症候群(ACS)患者に、アトルバスタチンの周術期ローディング投与を行っても、30日主要心血管イベント(MACE)発生率は低下せず、こうした患者へのアトルバスタチンのローディング投与を日常的に使用することは支持されないことが明らかとなった。ブラジル・Research Institute-Heart HospitalのOtavio Berwanger氏らが、同国53施設で実施した多施設無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「SECURE-PCI試験」の結果を報告した。これまで、大規模無作為化臨床試験において、心血管疾患の1次および2次予防としてのスタチンの有効性および安全性は確立されていたが、ACSで侵襲的管理が予定されている患者において、スタチンのローディング投与の臨床転帰への影響は明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2018年3月11日号掲載の報告。30日MACE発生率をアトルバスタチンとプラセボで比較 研究グループは、2012年4月18日~2017年10月6日に、冠動脈造影に引き続き解剖学的に可能な場合はPCIを施行する予定のACS患者4,191例を、アトルバスタチン群(2,087例)とプラセボ群(2,104例)に無作為に割り付けた。アトルバスタチン群では、PCI施行前と施行24時間後にアトルバスタチン80mgを、プラセボ群では同様にプラセボを投与し、両群ともその後はアトルバスタチン40mg/日を30日間投与した。 主要評価項目は、30日MACE(全死因死亡・急性心筋梗塞・脳卒中・予定外の緊急再血行再建術の複合)発生率。30日アウトカムの最終フォローアップは2017年11月6日であった。ローディング投与の有効性は、無作為化された全例(intention-to-treat集団)を対象に、Cox回帰分析を用いハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)で評価した。30日MACE発生率はローディング投与6.2%、プラセボ7.1%で有意差なし 無作為化を受けた4,191例(平均年齢61.8[SD 11.5]歳、女性1,085例[25.9%])のうち、4,163例(99.3%)が30日間のフォローアップを完遂した。また、2,710例(64.7%)がPCI、333例(8%)が冠動脈バイパス術、1,144例(27.3%)が内科的管理のみを受けた。 30日MACE発生率は、アトルバスタチン群6.2%(130例)、プラセボ群7.1%(149例)で、絶対差0.85%(95%CI:-0.70~2.41%)、HRは0.88(95%CI:0.69~1.11、p=0.27)であった。肝不全の症例は報告されなかったが、横紋筋融解症がプラセボ群でのみ3例(0.1%)報告された。 著者は研究の限界として、PCIが施行されなかったACS患者を組み込んでいること、最終的にACSの確定診断がつかなかった患者が約3%含まれていたことなどを挙げている。

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統合失調症に対するスタチン併用療法のメタ解析

 統合失調症の陰性症状に対するスタチン併用療法のベネフィットに関しては、相反する結果が報告されている。中国・南京医科大学のHong Shen氏らは、統合失調症の精神症状改善のために、スタチン併用療法が有用であるかについて検討を行った。Psychiatry research誌オンライン版2018年2月5日号の報告。 CENTRAL、PubMed、Embase、MEDLINEよりデータを検索した。検索に使用したキーワードは、スタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、lovastatin、mevastatin、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、cerivastatinおよび統合失調症、統合失調感情障害、精神病とした。包括基準は、統合失調症成人患者を対象とし、PANSSまたはSANSスコアにて評価を行った抗精神病薬とスタチンまたはプラセボのランダム化比較試験(RCT)とした。データの無い報告、同一研究による複数の報告は、除外対象とした。スタチン併用療法の有無にかかわらず、統合失調症患者の精神症状を比較するため、メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・6件のRCTより、339例(治療群:169例、プラセボ群:170例)が抽出された。・全体的な効果については、スタチン併用療法を実施した患者において、PANSSの陽性および陰性症状スコアの有意な低下が認められた。 著者らは「本メタ解析により、スタチン併用療法は、精神症状(陰性症状または陽性症状)を改善可能であることが初めて明らかにされた」としている。■関連記事慢性期統合失調症、陰性症状に有効な補助療法統合失調症への補助療法、その影響は:昭和大認知症にスタチンは有用か

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脳卒中再発予防に望ましいLDL-C値は? J-STARS事後解析

 脳卒中の再発を予防するために望ましいLDLコレステロール値を調べるために、J-STARS研究(Japan Statin Treatment Against Recurrent Stroke、脳血管疾患の再発に対するスタチンの予防効果に関する研究、多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験)の事後解析が実施された。その結果、スタチン使用について調整後、無作為化後のLDLコレステロールが80~100mg/dLの群で、脳卒中および一過性虚血発作の複合リスクが低いことが示された。Stroke誌オンライン版2018年3月6日号に掲載。 本解析では、被験者(n=1,578)を無作為化後最終観察までのLDLコレステロールの平均値で20mg/dLごとにグループ分けした。ベースライン時LDLコレステロール、ベースライン時BMI、高血圧、糖尿病、スタチン使用について調整し、調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を各グループについて分析した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化後最終観察までのLDLコレステロールは、プラバスタチン群で104.1±19.3 mg/dL、対照群で126.1±20.6mg/dLであった。・脳卒中および一過性脳虚血発作、全血管イベントの調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが80~100mg/dLのグループで低かった(傾向のpはそれぞれ0.23、0.25)。・アテローム血栓性梗塞に対する調整HRは、ベースライン時LDLコレステロール値を調整後、スタチン使用により有意に減少した(HR:0.39、95%CI:0.19~0.83)。・アテローム血栓性梗塞、頭蓋内出血の調整HRは、無作為化後LDL-コレステロール値によるサブグループ間で類似していた(傾向のpはそれぞれ0.50、0.37)。・ラクナ梗塞の調整HRは、無作為化後LDLコレステロールが100~120mg/dLのグループで低かった(HR:0.45、95%CI:0.20~0.99、傾向のp=0.41)。

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パンジェノタイプのDAA療法の登場と今後に残された課題(解説:中村郁夫氏)-825

 本論文は、遺伝子型1型および3型のHCVを有するC型慢性肝炎症例に対する、グレカプレビル・ピブレンタスビル併用療法の治療効果および安全性に関するランダム化・オープンラベル・多施設で行われた第III相試験の結果の報告である。合計1,208症例に対し、8週間および12週間投与が行われ、SVR12(治療終了後12週におけるHCV陰性化)の割合は、遺伝子型1型(ENDURANCE-1試験):8週投与群99.1%、12週投与群99.7%。遺伝子型3型:8週投与群/12週投与群とも95%と高率であった。 本論文で検討されたグレカプレビル・ピブレンタスビルの合剤は、本邦初の「IFNフリー・リバビリンフリー・パンジェノタイプ」のDirect-acting Antivirals(DAA)製剤として、昨年の11月にマヴィレット(アッヴィ合同会社)として薬価収載された。従来のDAA併用療法は、1種類の遺伝子型のHCVに対するものであったが、本治療は、いわゆる「パンジェノタイプ」:複数の遺伝子型のHCVに効果のある治療法である。さらに、治療期間が、慢性肝炎症例は8週間、肝硬変症例は12週間と従来のDAA製剤と比べて短縮された。ただし、併用禁忌薬として、アトルバスタチンが含まれている点には注意が必要である。 本邦において、第III相試験まで進んだDAA療法は残り1剤であるという状況、また、遺伝子型3型の症例が欧米と比較してごく少数であるという背景を勘案すると、本邦におけるHCVに対するDAA治療の開発は、いよいよ最終段階を迎えたと考えられる。しかし、今後に残された課題として、DAA療法不成功例に生じた高度の耐性変異に対する治療、また、非代償性肝硬変症例に対する治療の検討が必要である。

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低用量スタチンでの糖尿病リスク~日本のコホート研究

 低用量スタチンを服用している日本人の糖尿病新規発症リスクはこれまで検討されていない。今回、秋田大学医学部附属病院薬剤部の加藤 正太郎氏らは、低用量スタチン服用患者を、高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けて糖尿病新規発症リスクを評価した。その結果、高力価スタチン群では低力価スタチン群と比べ有意に発症リスクが高かった。さらに、ステロイドや免疫抑制薬との併用で発症リスクが上昇するため、注意が必要と指摘している。Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics誌オンライン版2018年2月26日号に掲載。 本研究は、スタチン治療を開始した日本人患者2,554例の後ろ向きコホート研究である。同じスタチンの同じ用量を服用している患者のみ登録し、高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けた。アウトカムはスタチン治療中の糖尿病新規発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・本コホートにおける糖尿病新規発症率は7.4%(n=190)であった。・カプランマイヤー生存曲線により、低力価スタチン服用患者に比べ高力価スタチン服用患者において糖尿病新規発症率が有意に高いことが示された(p<0.001、log-rank検定)。・Cox比例ハザード回帰分析により、糖尿病新規発症リスクを有意に増加させる因子として、ベースライン時の空腹時血糖、高力価スタチン使用、男性、Ca拮抗薬・免疫抑制薬・ステロイドとの併用が特定された。

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スタチンによる糖尿病発症の危険因子~日本のPMSデータ

 スタチン使用と糖尿病や高血糖症リスクの増加との関連について、慶應義塾大学薬学部の橋口 正行氏らが、日本の市販後調査(PMS)データベースを使用したコホート内ケースコントロール研究で検討した。その結果、脂肪肝および高尿酸血症を併存している患者で、スタチン使用により糖尿病や高血糖症の発症が増加する可能性が示唆された。Clinical Pharmacology in Drug Development誌オンライン版2018年2月20日号に掲載。 データベースには、スタチンを使用している2万6,849例と他の脂質降下薬を使用している5,308例の高脂血症患者が含まれていた。本研究には、1種類以上のスタチンを使用し、スタチンの明確な投薬歴があり、糖尿病ではない患者が参加した。ケースは、スタチン使用中に糖尿病もしくは高血糖症が発症した患者で、各ケースに対して20例のコントロールを無作為に選択しマッチさせた。スタチン使用中の糖尿病および高血糖症のリスク上昇に関連する因子として、性別、年齢、BMI、スタチン使用期間、併存疾患、併用薬、臨床検査値などを検討した。スタチンに関連する糖尿病もしくは高血糖症は、基準範囲を超える異常な血糖値上昇により同定した。 主な結果は以下のとおり。・1万9,868例が試験対象基準を満たし、そのうち24例がケース(スタチン使用中に糖尿病もしくは高血糖症を発症)群の患者であった。・糖尿病もしくは高血糖症の発症について、脂肪肝(調整オッズ比:16.10)および高尿酸血症(調整オッズ比:28.96)の2つの併存疾患因子が抽出された。・非アルコール性脂肪肝は、糖尿病、肥満、インスリン抵抗性と関連し、高尿酸血症は生活習慣と関連していた。

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インフルエンザ感染後1週間以内は急性心筋梗塞が増える(解説:佐田政隆氏)-816

 特異度の高い検査でインフルエンザ感染が正確に確認された1万9,729人をフォローしたところ、感染1週間以内の急性心筋梗塞により入院する数が、それ以降の1年間に比較して、約6倍に増えるというカナダからの観察研究である。 動脈硬化プラークの進展と破綻の病態に、炎症が中心的な役割を担っていることが明らかになっている。インフルエンザ感染による急性炎症が、プラーク破裂とその後の血栓性閉塞の誘因になったと思われる。その原因としてはインフルエンザ感染とその後の強い炎症反応が、交感神経を活性化させ、凝固能を亢進させたり、内皮機能を低下させたり、血小板の活性化につながったのかもしれない。また、全身状態の悪化、飲水困難により、低酸素、脱水、低血圧などが冠動脈閉塞につながったのかもしれない。また、体調不良のため、スタチンやアスピリンを休薬してしまったことが発症につながった可能性もある。 しかし、ウイルスのサブタイプ別にみると、インフルエンザA型で5.17倍、インフルエンザB型で10.11倍、RSウイルスで3.51倍のリスク増加と違いがあり、ウイルス感染がプラーク破綻と閉塞の病態に何らかの生物学的影響をもたらしたことが考えられる。このような臨床データの科学的な根拠を明らかにするために、モデル動物を用いた基礎研究が望まれる。 いずれにせよ、インフルエンザ感染で自宅待機している時は、急性心筋梗塞の発症リスクが高いので、胸部症状などあったら、我慢せずに、救急車ですぐに医療機関を受診することが重要と思われる。

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高齢者のスタチン非順守に関連する因子~メタ分析

 高齢者のスタチン服用における非順守や中断には、非白人、喫煙、低収入、高い患者負担金、1次予防などが関連することを、オーストラリア・Monash大学のRichard Ofori-Asensoらが報告した。著者らは「金銭的・社会的バリア、疾患リスクに関する患者の認識、ポリファーマシーなど、潜在的に修正可能な因子を対象とした介入によって、高齢者のスタチン服用を改善する可能性がある」としている。The Journals of Gerontology誌Series Aオンライン版2018年1月19日号に掲載。 本研究では、2016年12月12日までに公表された、高齢者(65歳以上)のスタチンの非順守や中断に関連する因子を報告した英語論文について系統的レビューを行った。データはランダム効果メタ分析を用いて統合した。 主な結果は以下のとおり。・45論文、13ヵ国180万人以上の高齢スタチン服用者のデータを分析した。・スタチン服用非順守の増加に関連する因子のオッズ比(95%信頼区間)  黒人もしくは非白人:1.66(1.39~1.98)  女性:1.08(1.03~1.13)  現在喫煙:1.12(1.03~1.21)  高い患者負担金:1.38(1.25~1.52)  新規の服用者:1.58(1.21~2.07)  併用する心血管用薬が少ない:1.08(1.06~1.09)  1次予防:1.49(1.40~1.59)  呼吸器疾患の存在:1.17(1.12~1.23)  うつ病の存在:1.11(1.06~1.16)  腎疾患なし:1.09(1.04~1.14)・スタチン服用中断の増加に関連する因子のオッズ比(95%信頼区間)  低収入:1.20(1.06~1.36)  現在喫煙:1.14(1.06~1.23)  高い患者負担金:1.61(1.53~1.70)  薬剤数が多い:1.04(1.01~1.06)  認知症の存在:1.18(1.02~1.36)  がんの存在:1.22(1.11~1.33)  呼吸器疾患の存在:1.19(1.05~1.34)  1次予防:1.66(1.24~2.22)  高血圧なし:1.13(1.07~1.20)  糖尿病なし:1.09(1.04~1.15)

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レパーサ新剤形発売。9分で投与可能に

 アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社(本社:東京、代表取締役社長:スティーブ・スギノ)とアステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:畑中好彦)は2018年1月12日、抗PCSK9モノクローナル抗体エボロクマブ(商品名:レパーサ皮下注40mgシリンジ、レパーサ皮下注140mgペン)への追加剤形として「レパーサ皮下注420mgオートミニドーザー(AMD)」の発売を開始した。レパーサは、心血管イベントの発現リスクが高く、スタチンで効果不十分な家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症の治療に適応される。 ニュースリリースによれば、レパーサ皮下注420 mg AMDは、手のひらに収まるコンパクトサイズで、薬剤が充填されたカートリッジと、専用の自動注入器から構成されている。従来のシリンジまたはペン製剤では420mgの投与に140 mg剤形を用いて3回の皮下注射の必要があったところ、AMD 製剤は、1回9分かつハンズフリーで投与でき、歩行、手を伸ばす、腰を曲げるといった日常の軽い動作の妨げにならない。また、投与の際に注射針が見えにくい製品設計になっている。

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REVEALはHDLコレステロールの効果を明らかにできたのか?(解説:平山 篤志 氏)-786

 高LDLコレステロール血症と同様に低コレステロール血症が冠動脈疾患のリスク因子であることは広く知られていた。LDLコレステロールを低下させることによって、冠動脈イベントが低下することは、スタチンの試験だけでなく、コレステロール吸収阻害薬やPCSK9阻害薬を用いた試験で示されている。では、HDLコレステロールを上昇させることによってイベントを低下させることが可能ではないか? ターゲットとなったのは、コレステリルエステル転送蛋白(CETP)で、その働きは高比重リポ蛋白(HDL)中のコレステリルエステルを超低比重リポ蛋白(VLDL)や低比重リポ蛋白(LDL)に転送する働きを有している。このCETPを阻害することにより、HDLコレステロールの上昇が認められることから、CETP阻害薬が開発され、torcetrapibの臨床試験が行われたのである。すでに2007年に報告されたようにイベントは逆に増加した結果となった。血圧の上昇がイベントを増加させた可能性があるとして、さらにevacetrapib、dalcetrapibの臨床試験が行われたが、いずれも有効性を示すことができなかった。 CETP阻害薬の最後として期待された試験が今回発表されたanacetrapibを用いたREVEAL試験であった。本試験では、ASCVDの3万の患者を対象に冠動脈イベントの発症を一次エンドポイントとした試験で、初めてCETP阻害薬であるanacetrapibの有意なイベント低下効果を示したのであった(HR:0.91、95% confidence interval [CI]:0.85~0.97、P=0.004)。 しかし、CETP阻害薬によりLDLコレステロール低下効果を認めたことからHDLコレステロールを上昇させた効果であると結論できなかった。REVEAL試験は有効性を示したが、HDLコレステロールの意義を示した結果ではなかった。より強力なLDLコレステロール低下効果のある薬剤がある現状では、anacetrapibは薬剤として上市されることはないであろう。

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スタチン長期投与で頸動脈硬化進行を抑制

 スタチンの頸動脈内中膜複合体厚(IMT)の進行抑制効果は、脳梗塞の既往がない欧米人でのみ確認されている。今回、心原性脳梗塞症以外の脳梗塞を発症した日本人において、プラバスタチン(10mg/日、日本における通常用量)の頸動脈IMTへの影響を検討した結果、5年間で頸動脈IMTの進行を有意に抑制したことを国立循環器病研究センターの古賀 政利氏らが報告した。本結果から、低用量(10mg/日)でも長期投与により頸動脈硬化進行を抑制し、アテローム血栓性脳梗塞の再発予防につながることが示唆された。Stroke誌オンライン版2017年11月30日号に掲載。 本研究は、プラバスタチンの脳卒中再発予防効果を検討する多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験であるJ-STARS(Japan Statin Treatment Against Recurrent Stroke、主任研究者:松本 昌泰氏)研究のサブスタディ(J-STARS Echo)である。登録された864例のうち、ベースライン時に超音波検査がなかった71例を除外し、プラバスタチン(10mg/日)を投与する群(プラバスタチン群)に388例、スタチンを投与しない群(コントロール群)に405例を無作為に割り付けた。主要アウトカムは5年間の観察期間における総頸動脈IMTの変化で、反復測定のための混合効果モデル(mixed-effects models for repeated measures)を用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインでの特性は、National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコア(中央値、0[四分位範囲:0~2]vs.1[同:0~2]、p=0.019)を除いて、2群間に有意な差異はなかった。・ベースラインIMT(平均±SD)は、プラバスタチン群では0.887±0.155mmであり、コントロール群では0.887±0.152mmであった(p=0.99)。・プラバスタチン群での5年時のIMTの年次変化は、コントロール群と比較し有意に減少した(0.021±0.116 vs.0.040±0.118mm、p=0.010)。4年目までは有意な差はみられなかった。

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加齢黄斑変性の5年発症リスク、出生世代ごとに減少

 米国・ウィスコンシン大学マディソン校のKaren J. Cruickshanks氏らは、ビーバーダム眼研究およびビーバーダム子孫研究のデータを解析し、加齢黄斑変性(AMD)の5年発症リスクは20世紀の出生世代ごとに減少してきていることを明らかにした。著者は、「このリスク低下を説明する因子は不明である」としたうえで、「しかしながらこのパターンは、心血管疾患および認知症のリスク低下の報告と一致しており、高齢となったベビーブーム世代(1946~64年生まれ)は前の世代に比べ、高齢でも網膜が健康である可能性を示唆している」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年11月16日号掲載の報告。 研究グループは、AMDの5年発症リスクが世代により低下しているかを明らかにし、リスク改善に寄与する因子を特定する目的で、ビーバーダム眼研究(1988年3月1日~1990年9月15日、1993年3月1日~1995年6月15日)およびビーバーダム子孫研究(2005年6月8日~2008年8月4日、2010年7月12日~2013年3月21日)のデータを解析した。これらは地域住民を対象とした研究で、ウィスコンシン州ビーバーダム市の43~84歳(1987~88年当時)の住民、およびその子孫で2005~08年時に21~84歳の住民が登録された。 解析対象は、登録時の眼底写真でAMDを発症するリスクが認められた4,819例(ベースライン時の平均年齢[±SD]54[±11]歳、男性2,117例[43.9%]、女性2,702例[56.1%])。2016年2月18日~2017年6月22日にデータを解析し、2017年9月22日に追加の解析を終えた。 Wisconsin Age-related Maculopathy Grading Systemを用い、眼底写真からAMDを分類。主要評価項目は5年追跡時におけるAMDの発症で、発症は萎縮型または滲出型黄斑変性、色素上皮異常を伴うドルーゼン、または色素上皮異常を伴わない軟性ドルーゼンの存在と定義した。 主な結果は以下のとおり。・年齢および性別で調整したAMDの5年発症率は、「最も偉大な世代」(1901~24年生まれ)が8.8%、「沈黙の世代」(1925~45年生まれ)が3.0%、「ベビーブーム世代」(1946~64年生まれ)1.0%、「ジェネレーションX」(1965~84年生まれ)0.3%であり、各世代は前の世代よりAMD発症が60%超減少した(相対リスク:0.34、95%信頼区間[CI]:0.24~0.46)。・AMD発症リスク低下と世代との関連は、年齢、性別、喫煙、教育、運動、non-HDL コレステロール濃度および高感度CRP値、ならびに非ステロイド性抗炎症薬・スタチン・マルチビタミンの使用について調整後も有意なままであった(相対リスク:0.40、95%CI:0.28~0.57)。

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1型糖尿病の臓器障害に、RA系阻害薬は有効か?(解説:石上友章氏)-776

 糖尿病は、特異的な微小血管障害をもたらすことで、腎不全、網膜症、神経障害の原因になる。糖尿病治療のゴールは、こうした合併症を抑制し、健康長寿を全うすることにある。RA系阻害薬に、降圧を超えた臓器保護効果があるとされた結果、本邦のガイドラインでは、糖尿病合併高血圧の第1選択にRA系阻害薬が推奨されている。しかし、臨床研究の結果は、必ずしもRA系阻害薬の降圧を超えた腎保護効果を支持しているわけではない。ONTARGET試験・TRANSCEND試験1,2)を皮切りに、最近ではBMJ誌に掲載された報告3)(腎保護効果は、見せかけだった~RA系阻害薬は『万能の妙薬』ではない~)も、観察研究ではあるが、否定的な結果に終わっている。 1型糖尿病の腎保護については、ミネソタ大学のMauerらのRASS試験4)が、決定的な結果を報告している。本研究では、ARB(ロサルタン)、ACEI(エナラプリル)とplaceboの3群に分けた対象で、腎保護作用を検討している。本研究の特筆すべき点は、腎保護効果について、腎生検標本を用いて、厳密に評価していることにある。その結果は、メサンギウム分画容積をはじめとした、すべての病理学的評価指標に、3群間で差が認められなかった。 この結果を受けて、NKF(米国腎臓財団)によるKDOQI Clinical Practice Guideline For Diabetes And CKD/2012 Updateには、6章の6.1として、“We recommend not using an ACE-I or an ARB for the primary prevention of DKD in normotensive normoalbuminuric patients with diabetes.(1A)”とされた5)。この一文には、RA系阻害薬の糖尿病性腎障害抑制作用は、病理学的な変化をもたらすほどの効果はなく、微量アルブミン尿のような不正確な指標で評価された、見かけ上の効果でしかないとの意味が込められている。 英国・ケンブリッジ大学のM Loredana Marcovecchioらが行い、NEJM誌2017年11月2日号に掲載されたAdDIT試験は、スタチンとACE阻害薬を試験薬とし、2×2要因デザインで行われたRCTである。結果は、両試験薬ともに、primary endpointを達成することはできなかった。副次評価項目である、微量アルブミン尿の累積発症率には有意差が認められたが、EBMの原則に従って、著者らはこの結果を採用しなかった。しかしながら、“Many secondary outcomes in the published protocol were exploratory but considered to be clinically relevant in this population of adolescents.”とは、「夢の続きを見ていたい」という著者らの率直な心情の吐露なのかもしれない。

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改訂版QDiabetesで2型糖尿病の10年リスクを予測/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らが、2型糖尿病の絶対リスクを定量化する、モデルA~Cの3つの改訂版QDiabetesリスクモデルを開発・検証した。モデルAは血液検査を必要とせず、空腹時血糖値(モデルB)またはHbA1c(モデルC)を測定すべき患者の特定に利用でき、モデルBの2型糖尿病10年リスク予測は、介入や積極的な追跡調査を必要とする患者の特定に有用であるという。著者は、「臨床現場でモデルを使用する前に、血糖値をより完全に収集したデータセットで、モデルBとCの付加的な外部検証が必要だろう」とまとめている。BMJ誌2017年11月20日号掲載の報告。英国プライマリケア患者1,150万例のデータから予測モデルを開発 研究グループは、男性および女性の2型糖尿病10年リスクを推定するため、新たなリスク因子を加えた改訂版QDiabetes-2018予測アルゴリズムを作成し、その性能を現在使用している方法と比較する前向きコホート研究を行った。 QResearchデータベースに登録している一般診療所1,457施設のデータを用い(このうち1,094施設はスコアの開発に、363施設はスコアの検証に使用)、ベースライン時に糖尿病ではない25~84歳の1,150万例のデータを解析した。このうち、887万例を開発コホート、263万例を検証コホートとした。 開発コホートでは、Cox比例ハザードモデルにより、男女別に10年評価のリスク因子を抽出した。リスク因子は、すでにQDiabetesに含まれている年齢・民族・貧困・BMI・喫煙歴・糖尿病の家族歴・心血管疾患・高血圧治療歴・定期的なコルチコステロイド使用と、新たなリスク因子として非定型抗精神病薬、スタチン、統合失調症/双極性障害、学習障害、妊娠糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群を検証した。追加モデルには、空腹時血糖値とHbA1cを組み込んだ。検証コホートでは、男女別に、また年齢・民族・ベースライン時の疾患状態のサブグループ別に、較正と識別能を評価した。 主要評価項目は、一般診療所の診療録に記載された2型糖尿病の発症とした。改訂版は3種、空腹時血糖値を組み込んだモデルの識別能が最も高い 2型糖尿病の発症は、開発コホートでは4,272万観察人年において17万8,314件、検証コホートでは1,432万観察人年において6万2,326件が確認された。新規リスク因子のすべてが、本モデルの適格基準を満たし、モデルAには、年齢・民族・貧困・BMI・喫煙歴・糖尿病の家族歴・心血管疾患・高血圧治療歴・定期的なコルチコステロイド使用と、新規リスク因子の非定型抗精神病薬、スタチン、統合失調症/双極性障害、学習障害、妊娠糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群が組み込まれた。モデルBはモデルAに空腹時血糖値を、モデルCはモデルAにHbA1cを加えた。 A~Cの3つのモデルは、検証コホートにおいて良好な結果が得られ識別能が高かった。女性では、モデルBにおいてR2(2型糖尿病診断までにモデルで説明される変量)63.3%、D統計量2.69、C統計量0.89、男性ではそれぞれ58.4%、2.42、0.87であった。このモデルBは、現在National Health Serviceで推奨されている空腹時血糖値またはHbA1cに基づく診療との比較において、感度が最も高かった。ただし、空腹時血糖値、喫煙歴、BMIの完全なデータがあったのは、患者の16%のみであった。

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糖尿病医と循環器医の連携を考える

 2017年11月17日、都内にて「糖尿病患者さんの合併症予防・進展リスク低減に向けた糖尿病・循環器領域の連携の重要性と現状」と題するセミナー(主催:サノフィ株式会社)が開かれた。 演者のローレンス・A・レイター氏(セント・マイケルズ病院 内分泌学・代謝学/トロント大学 医学・栄養学 教授)は、循環器医のもとに運ばれてくる患者に糖尿病が隠れている可能性に触れ、糖尿病・循環器領域の連携の必要性や脂質管理の重要性について語った。 以下、セミナーの内容を記載する。急性心筋梗塞患者の約3割に、未診断の糖尿病 糖尿病の死因第1位は心血管疾患だが、糖尿病と気付かれずに心血管イベントを発症する患者さんも、実は多いのかもしれない。ある研究では、急性心筋梗塞を発症した糖尿病既往のない患者200例を、あらためて検査したところ、27%が糖尿病、39%は耐糖能異常を有していたことが明らかとなっている。循環器医のもとに運ばれてくる患者の中には、かくれ糖尿病が存在しているのかもしれない。かくれ糖尿病を見つけ出すのは難しいが、少なくともすでに糖尿病と診断されている患者さんは積極的に治療する必要があるだろう。糖尿病治療は、多元的アプローチが主流 その際の代表的な治療ターゲットはHbA1c値だが、ACCORD試験などをきっかけに、従来の血糖値を下げるだけの治療は見直されてきた。現在は、血糖値だけではなく、血圧、肥満、運動、脂質、禁煙などの複合的管理が主流だ。 米国糖尿病協会(ADA)も、「生活習慣の改善」「血糖コントロール」「血圧」「抗血小板療法」「脂質異常症の管理」などの多元的アプローチを推奨しており、すでに高い有用性が認められている。糖尿病患者の脂質管理は、世界的に厳格な方向へ このうち、「脂質異常症の管理」について、日本と海外との違いをみていく。日本における糖尿病患者のLDL-C管理目標値は、1次予防で120mg/dL未満、2次予防で100mg/dL未満だが、海外ではどうか。2017年、米国臨床内分泌学会(AACE)は新しいカテゴリーとして「Extreme risk群」を設け、糖尿病患者の2次予防においては、55mg/dL未満という目標値を掲げた。レイター氏の祖国であるカナダでも、糖尿病の罹病期間が長い患者は77mg/dL未満が目標値だ。糖尿病患者の脂質管理は、世界的に、より厳格な方向へシフトしている。 しかし、スタチン単独で目標値に到達できない糖尿病患者が多いのも事実だ。この点で、いまPCSK9阻害薬の有用性が注目されている。糖尿病患者におけるPCSK9阻害薬の有用性 糖尿病患者を対象にしたODYSSEY DM INSULIN試験において、PCSK9阻害薬であるアリロクマブ(商品名:プラルエント)の有用性が示されている。試験対象は、心血管イベントリスクが高く、スタチン最大用量で治療されている脂質異常症患者でインスリン治療中でもある糖尿病患者517例。主要アウトカムの「2型糖尿病患者のLDL-C変化率」は、アリロクマブ群がプラセボ群に比べて、49%の低下を示した(p<0.0001)。インスリン併用による新規の有害事象も報告されていない。この試験は、PCSK9阻害薬の糖尿病患者における有用性が示された点で意義深いといえる。診療科を越えた包括的治療が求められる 糖尿病患者の脂質管理が心血管イベント抑制につながることは、過去の大規模臨床試験からも明らかである。この点でPCSK9阻害薬は、イベント抑制を考慮した治療手段として有用だろう。さらに最近では、新規血糖降下薬による心血管イベント抑制効果が、複数報告されてきている。今後いっそう糖尿病、循環器といった、診療科を越えた包括的治療が求められる。 演者のレイター氏は、「糖尿病患者の心血管イベントリスク抑制のためにどのような治療選択が望ましいか、日本でも診療科を越えたさらなる議論が必要となるだろう」と述べ、講演を終えた。

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昔の日本人は偉かった!(解説:後藤信哉氏)-766

 第2次世界大戦後の荒廃の中でも、研究意欲を持ち続けた日本人研究者は多かった。岡本 彰祐・歌子ご夫妻は特筆されるべき存在である。線溶系に着目して彼らが開発した薬剤にトラネキサム酸がある。開発の経緯は『世界を動かす日本の薬』(岡本 彰祐 編著. 築地書館. 2001年)に詳しい。線溶を担うプラスミンの酵素機能を阻害する画期的薬剤である。筆者の世代の臨床医は、止血にアドナ・トランサミンを使うことが多かった。論理的には止血効果を期待できる薬剤であるためだ。日本は巨大企業が利益を独占するEvidence Based Medicineの論理に乗り遅れた。せっかくの薬剤もエビデンスがないとして広く使用されない現状にある。 英国人は視座が時間的に広い。Antithrombotic Trialists’ Collaboration、Cholesterol Treatment Trialists’ Collaborationにて過去の臨床データを徹底的に集めていることは、読者も広くご存じと思う。今回はAntifibrinolytic Trials Collaborationにて線溶阻害薬の臨床データを徹底して集めた。本研究は止血効果があると想定されたトラネキサム酸に、臨床的にも止血効果があることを40,138例ものメタ解析にて示した。 日本人の記憶は短いとされる。岡本 彰祐・歌子ご夫妻の御功績はトラネキサム酸にとどまらず、現在のNOACのもとになった選択的トロンビン阻害薬アルガトロバンの開発にも及ぶ。日本血栓止血学会では両先生の御功績を記念して岡本賞(Shosuke Award、Utako Award)の顕彰を始めた。こつこつ努力して素晴らしいものづくりをするが、宣伝が下手な日本人研究者の業績を拾い上げた英国は、大英帝国の余力を持った戦略国家である。NOACのみならずスタチンも日本の発明である。医学の世界における日本の貢献は特筆すべきである。あらためて「昔の日本人は偉かった!」

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本邦初のIFNフリー・リバビリンフリー・パンジェノタイプのDAA療法の登場(解説:中村 郁夫 氏)-765

 本論文は、重度の腎機能低下HCV症例に対するグレカプレビル・ピブレンタスビル併用療法の治療効果および安全性に関する多施設・オープンラベルで行われた研究結果の報告である。ステージ4および5の腎機能障害例(遺伝子型 1、2、3、4、5、6型)に対し12週間の治療を行った結果、SVR率98%と高い効果を示した。 本邦において、重度腎機能低下例に投与可能なDAA製剤は、従来、アスナプレビル・ダクラタスビル療法、および、エルバスビル・グラゾプレビル療法の2種であった。しかし、アスナプレビル・ダクラタスビル療法は、治療期間が24週間と長期であり、また、エルバスビル・グラゾプレビル療法では、腎機能低下例に関しては、米国のデータのみが示されるにとどまっていた。 一方、グレカプレビル・ピブレンタスビル療法の本邦における治験では、重度腎機能低下例(透析症例を含む)が含まれているうえに、治療期間が8~12週間と、従来のDAA製剤と比較して短縮された(また、添付文書において、腎移植例に用いられる免疫抑制薬のタクロリムスが、併用注意薬に含まれていない)。 さらに、従来のDAA併用療法は、1種類の遺伝子型のHCVに対するものであったが、本治療は、いわゆる「パンジェノミック」:複数のHCV遺伝子型に効果のある治療法であり、その点からも興味深い研究である。 このグレカプレビル・ピブレンタスビルの合剤は、本邦初の「IFNフリー・リバビリンフリー・パンジェノタイプ」のDAA製剤として、2017年の11月下旬にマヴィレットの商品名で薬価収載される予定である。ただし、併用禁忌薬として、アトルバスタチンが含まれている点には注意が必要である。本邦におけるHCVに対するDAA治療は、いよいよ最終段階を迎えたと考えられる。

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思春期1型糖尿病に、ACE阻害薬やスタチンは有用か/NEJM

 ACE阻害薬およびスタチンは、思春期1型糖尿病患者のアルブミン/クレアチニン比(ACR)の経時的な変化に影響を及ぼさないことが、英国・ケンブリッジ大学のM Loredana Marcovecchio氏らが行ったAdDIT試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年11月2日号に掲載された。青少年期の1型糖尿病患者では、腎疾患や心血管疾患の長期的なリスク因子である微量アルブミン尿や顕性アルブミン尿の発現に先立って、思春期のアルブミン排泄量の急速な増加がみられる。成人1型糖尿病患者では、ACE阻害薬およびスタチンが頻用されているが、思春期患者での評価は十分でないという。ACR上位3分の1の患者を2×2要因デザイン試験で評価 研究グループは、アルブミン排泄量の多い思春期1型糖尿病患者は、ACE阻害薬およびスタチンによりベネフィットが得られるとの仮説を立て、これを検証するために2×2要因デザインによる二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った(国際若年性糖尿病研究財団[JDRF]などの助成による)。 10~16歳の思春期1型糖尿病患者4,407例をスクリーニングの対象とし、ACRが上位3分の1の1,287例を同定した。このうち443例が、4つのレジメン(ACE阻害薬+プラセボ[111例]、スタチン+プラセボ[112例]、ACE阻害薬+スタチン[111例]、プラセボ+プラセボ[109例])の1つに無作為に割り付けられ、年齢、性別、糖尿病罹病期間などのベースラインの患者背景の差が最小となるよう調整が行われた。 2つの介入の主要評価項目はアルブミン排泄量の変化とし、2~4年間、6ヵ月ごとの受診時に早朝尿検体を3回採取してACRを算出し、曲線下面積(AUC)で表した。 主な副次評価項目は、微量アルブミン尿の発現、網膜症の進行、糸球体濾過量の変化、脂質値、心血管リスクの指標(頸動脈内膜中膜厚、高感度C反応性蛋白値、非対称性ジメチルアルギニン値)などであった。主要評価項目を達成できず 2009年5月~2013年8月の期間に、3ヵ国(英国、カナダ、オーストラリア)の32施設で患者登録が行われた。フォローアップ期間中央値は2.6年だった。 ACRのAUCに及ぼすACE阻害薬(効果:-0.01、95%信頼区間[CI]:-0.05~0.03)およびスタチン(効果:0.01、95%CI:-0.02~0.05)の効果は有意ではなかった。2剤の併用にも有意な効果を認めなかった。 ACE阻害薬は、プラセボと比較して微量アルブミン尿の発症率が低かった(p=0.046)が、主要評価項目に関する結果が陰性であったことと、統計解析の計画にも有意差はなかったことから、この発症率の低さは有意ではないと判定した(補正ハザード比[HR]:0.57、95%CI:0.35~0.94、p=0.03[有意水準:p<0.01])。 スタチンの使用により、総コレステロール値、LDLコレステロール値、非HDLコレステロール値、トリグリセライド値、アポリポ蛋白B/A1比が有意に低下した。一方、ACE阻害薬、スタチンともに、頸動脈内膜中膜厚、その他の心血管マーカー、糸球体濾過量、網膜症の進行には有意な影響を及ぼさなかった。 服薬レジメンへのアドヒアランスは全体で75%であった。重篤な有害事象の頻度は全群でほぼ同様で、予想外のものは報告されなかった。 著者は、「ACE阻害薬とスタチンによる早期介入のベネフィットの可能性を評価するには、これらのコホートのフォローアップを今後も行う必要があるだろう」としている。

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せん妄と関連する薬剤は

 これまで、集中治療室(ICU)内でのせん妄に関する研究はよく行われているが、ICU外のデータは限られている。米国・Methodist Dallas Health SystemのAnthony Cahill氏らは、非クリティカルケア病棟(NCCA:non-critical care areas)におけるせん妄の発生率および関連する危険因子をプロスペクティブに評価を行った。The journal of trauma and acute care surgery誌オンライン版2017年10月16日号の報告。 IRB承認後、2015年12月~2016年2月まで都市のレベルI外傷センターにおいてプロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、外傷外科医により指定されたNCCAに入院したすべての患者とした。退院まで12時間ごとのせん妄評価(CAM:Confusion Assessment Method)と、せん妄発生(CAM+)患者の重症度を定量化するCAM-Sを実施した。患者背景、検査値データ、入院時の薬物リストを分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者148例中、CAM+患者12例(8%)、CAM-患者136例(92%)であった。・CAM+患者の平均CAM-Sは、7±3であった(平均年齢:52±20歳、男性率:45%)。・65歳以上の患者では、9例(21%)がCAM+であった。・せん妄と関連する薬剤は、albuterol(p=0.01)、アトルバスタチン(p=0.01)、デュロキセチン(p=0.04)、セルトラリン(p=0.04)、葉酸(p=0.01)、チアミン(p=0.01)、ビタミンD(p<0.001)、ハロペリドール(p=0.04)、メトプロロール(p=0.02)、バンコマイシン(p=0.02)であった。・せん妄と関連する異常な検査値は、アルブミン(p=0.03、OR:7.94、CI:1.1~63.20)、カルシウム(p=0.01、OR:4.95、CI:1.5~16.7)、ナトリウム(p=0.04、OR:3.91、CI:1.13~13.5)、ヘマトクリット(p=0.04)、平均血中ヘモグロビン濃度(p<0.05、OR:5.29、CI:1.19~23.46)であった。 著者らは「本研究では、NCCA入院患者の8%でせん妄が発生し、65歳以上の発生率は21%に上昇した。NCCA患者において同定された多くのリスク因子は、ICU患者での報告と一致しているが、これまでせん妄発生に関連していなかったリスク因子をCAM+患者が有していた。せん妄に対するNCCA患者のスクリーニングが考慮されるべきである」としている。■関連記事せん妄に対する非定型 vs.定型 vs.プラセボうつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤はたった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能

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