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ハイリスク患者の術前説明やリスク評価、どこまでやる? 術式選択の裁量はある?【医療訴訟の争点】第22回

症例本稿では、食道がん患者に対する手術前のリスク評価及び説明のあり方、さらに術後合併症発生後の再手術における術式選択の適否が争われた岡山地裁令和7年5月20日判決を紹介する。<登場人物>患者60歳・男性原告患者の妻及び子ら(相続人)被告地方独立行政法人(市民病院)、担当消化器外科医事案の概要は以下の通りである。平成29年(2017年)1月20日本件患者は他院に入通院してアルコール依存症治療中であったが、発熱、全身倦怠感、低栄養、腹水貯留等の精査加療目的で被告病院へ転院。2月6日上部消化管内視鏡検査により食道がん発見。その後の2月8日、体調を整えるため、もともと入院治療を受けていた病院に転院。2月22日食道がんの治療のため、被告病院へ再入院。2月23日担当医は本件患者に対し、食道がんの病状などについて以下を説明。食道がんは現時点ではStageIと考えられている。この場合、手術が最も確実な治療法であるが、手術が嫌なら放射線、化学療法の治療法もあること手術を行う場合の手術概要手術は患者の協力がなければできない、断酒、禁煙は当然であるが、呼吸訓練も含め努力していただきたいこともある、これらができないのであれば手術に伴うリスクは高くなる、どうするかについては家族とよく相談すること。3月8日担当医は本件患者及び家族に対し、食道がんに対する手術について、以下を説明。StageIの食道がん治療としては、手術、放射線+抗がん剤による治療法があること胸腔鏡下食道亜全摘術など(本件手術1)の手術時間は8時間前後、出血量は200~600mL、入院期間は3~4週間の見込みであること食道がんに対する手術のリスクについては、その合併症によって異なり、手術に関連した合併症による死亡率は2~3%。併存疾患によりその程度は変化するが、食道がん手術において術後の合併症で1番問題となるのは、呼吸器系、とりわけ胸水の貯留、無気肺、肺炎などの発症に起因する呼吸不全があり、一旦起こると長期の管理が必要となること消化管吻合(初回の手術は食道胃吻合術)における縫合不全の発症は、治癒が遷延することがあり、一旦発症すると唾液漏の形をとりなかなか治癒しないで厄介になり、縫合不全の合併症が生じるリスクは約10%であることそのほか、創部の感染、腸管麻痺による腸閉塞など、また健康人でも発症する心筋梗塞、脳卒中などが周術期に偶然発症することがあること3月10日午前9時頃から午後9時30分頃まで本件手術1が施行。患者にはアルコール性肝障害や腹水貯留などが認められていたが、担当医はICG負荷試験を実施しないまま手術が施行した。食道がん術後、人工呼吸管理中の重篤な状態であると判断され、ICUに入室した。3月12日午前6時ころ、心拍数上昇、血圧低下、胃管出血が認められ、循環動態が悪化。担当医は緊急再手術を決定し、午前8時頃から午後6時頃まで、止血術、胃管抜去及び食道再建術(本件手術2)を施行。本件手術2では、出血性ショック状態に近い状況下で、結腸再建及び空腸再建を含む長時間かつ高侵襲な再建術が実施された。3月16日午後4時30分頃、患者の状態はさらに悪化し、担当医は本件患者家族に対し、腸管気腫症が広範囲に発生しており広範囲に腸が壊死している可能性もあり得る、原因除去のための再手術は危険性は極めて大きいが、緊急手術が必要であると説明した上で、午後7時30分頃から午後10時頃にかけて再度の緊急手術(本件手術3)を施行。3月17日患者は多臓器不全により死亡。 実際の裁判結果本件では、以下が主な争点となった。(1)食道がん手術(本件手術1)前にICG負荷試験を実施しなかったこと及びその結果を踏まえた説明を行わなかったことが検査・説明義務違反に当たるか(2)その義務違反と死亡との間に相当因果関係が認められるか(3)術後出血に対する再手術(本件手術2)時に、食道切除と再建を別の機会に行う二期的再建術とするのではなく一期的再建術を選択したことが術式選択義務違反に当たるか(4)その義務違反と死亡との間に相当因果関係が認められるか争点(1)について裁判所は、争点(1)について、本件手術1当時の最新のガイドラインであった『食道癌診断・治療ガイドライン 第3版』(日本癌治療学会編、2012年4月発行)の記載や、関連する医学的知見を指摘した上で、「本件手術1が施行された平成29年3月当時、食道がんの治療方針決定のために、治療方針を患者へ提示し、診断根拠や診断過程などを説明するに当たっては、がんの進行度診断や病巣特性(悪性度)の把握のほか、全身状態の把握・評価が重要とされており、その中でも肝硬変症例については、患者の肝機能ないし肝予備能が保たれているかを確認・判定することが必要・重要であり、ICG負荷試験はそのための重要な検査と位置付けられ、かかる試験の結果、高い数値が出た場合には、術後合併症やそれによる死亡のリスクが高まると理解されていたものと認めるのが相当である」とした。そして、本件患者が、腹部CTで腹水や肝硬変が指摘されていたこと、アルブミン点滴で経過を見たものの、2週間が経っても腹水は減少しつつも依然として貯留していたこと、肝細胞の合成能障害を反映するChEは被告病院受診当初から手術前まで基準値を大幅に下回る値であったこと等を指摘し、「アルコール性の代償性肝硬変の疑いが強く、肝機能が低下していることを示す具体的な所見が認められていたのであり、肝機能ないし肝予備能が保たれているかを慎重に確認・判定する必要があったものというべきであった」とした。その上で、「食道がんに対する治療方針を提案・説明するに当たっては、肝機能ないし肝予備能が保たれているかを確認・把握するためにICG負荷試験を実施した上で、その結果を踏まえて、全身状態の評価、さらにはリスク評価をして、治療方針を本件患者に提示して説明をすべき注意義務を負っていたものと認めるのが相当」とし、特別な事情や理由もないまま、ICG負荷試験を実施せず、適切な全身状態の評価やリスク評価をしないまま、縫合不全になるリスクは10%程度、多臓器不全等で死亡するリスクが2ないし3%程度として、リスクを過小にとどめた説明をしたことに説明義務違反があるとした。争点(2)について裁判所は、本件手術1に先立ち、本件患者にICG負荷試験を実施した場合には、20%を超える相当に高い数値が出る蓋然性があったこと、その場合、本件手術1につき術後合併症発生率は80%以上であり、術後合併症死亡率は15~30%かそれ以上であること、手術以外の治療法として根治的化学放射線療法も適応があったことを指摘し、「これらの説明を受けていれば、本件患者においては、本件手術1をせずに根治的化学放射線療法ないしは放射線単独療法を選択していた高度の蓋然性があり、また、その場合、本件患者が死亡した3月17日時点でなお生存していた高度の蓋然性があると認めるのが相当である」として、説明義務違反と死亡との間の因果関係を認めた。争点(3)について食道切除と再建をそれぞれ分けて2回手術をするか、1回にまとめて手術をするかについて、裁判所は、関連する文献の記載を指摘した上で、「二期的分割手術の適応について明確な基準は確立しておらず、緊急再手術時にどのような方針で手術を行うかについては具体的状況によって対応するしかなく、原則として、手術に当たる医師の現場における合理的な裁量に委ねられるものというべきであるが、ただし、全身状態が悪く、耐術能が十分でないと判断される患者に対しては、一期的再建手術ではなく二期的分割手術を実施すべき場合もあるものと認めるのが相当である」とした。そして、本件患者はそもそも10時間以上にわたる本件手術1を受けてから本件手術2開始までに約35時間しか経っていない状態にあったこと、肝硬変であると確認されていたこと、重症の出血性ショックに陥り、複数の昇圧剤を継続的に大量投与しなければ循環動態等を保つことが困難な状態にあったことを指摘し、「本件患者の全身状態は悪く、耐術能が十分でないと判断される患者であり、その救命を最優先とすべき具体的状況にあったといわなければならない」とした。その上で、「高侵襲かつ長時間を要する一期的再建術から、侵襲の小さい二期的分割手術へと方針を変更するか否かを具体的に検討・判断しなければならなかった」として、「本件手術2の術中の本件患者の状態について、循環動態等を保つことが困難な重篤な状態にあり、救命が最優先であると評価すべきところ、出血については迅速にコントロールができ血圧も安定しているなどと合理性を欠く評価をし、これを前提として胃管抜去後、右側結腸再建及び有茎空腸再建等を行って9時間15分にわたって本件手術2を継続・実施したものであり、術者としての合理的な裁量を逸脱し、術式選択義務に違反したものと認めるのが相当」と判示し、術式選択義務違反を認めた。争点(4)について裁判所は、分割手術の死亡率が一期的手術よりも低い旨が報告されている文献を指摘し、「本件手術2において、再建術まで実施せず、胃管抜去後、食道瘻を造設し、栄養チューブを留置する等して再建術を実施せずに閉腹していれば、正午ころには手術を終えることができ、9時間15分もの長時間にわたり大量の昇圧剤を継続使用することや、結腸・空腸再建術に伴う高い侵襲を回避することができ、本件患者においては、循環不全、呼吸不全等を引き起こすことなく状態が安定していた高度の蓋然性があり、また、その場合、本件患者が死亡した3月17日時点でなお生存していた高度の蓋然性があると認めるのが相当」と判断し、術式選択義務違反と死亡との因果関係を認めた。損害等以上の結果、裁判所は病院及び担当医の責任を認め、患者妻に対して約2,812万円、その余の遺族に対して各55万円の支払を命じた。注意ポイント解説本件は、食道がん手術後に患者が死亡した事案であるが、裁判所が問題としたのは手術手技そのものではなく、「術前のリスク評価及び説明」と「術後合併症発生後の再手術時の術式選択(に関する医師の裁量)」であったが、それぞれ以下の点が注目される。1. 術前のリスク評価と説明について医療訴訟では、説明義務違反のみが認定される場合には自己決定権侵害の慰謝料のみが認められるにとどまり、死亡との因果関係が否定されることも少なくない。しかし本件では、手術以外に有効な代替治療が存在し、適切な説明があれば患者が手術を選択しなかった高度の蓋然性があるとして、死亡結果との因果関係まで認められた点が重要である。本件の裁判所がこのような判断を下した背景には、以下の点があると考えられる。本件患者にアルコール依存症の既往があり、画像検査上も肝硬変を疑わせる所見が存在し、さらに腹水貯留や低アルブミン血症等も認められていたことから、担当医は肝機能障害の存在を十分認識し得たと判断したこと。食道がん手術は消化器外科領域の中でも侵襲の大きい手術の一つであり、肝機能障害を有する患者では術後合併症や死亡リスクが上昇することは広く知られていること。当時の食道がん診療ガイドラインにおいて肝硬変症例に対する術前評価としてICG負荷試験が挙げられていたこと患者の食道がんがStageIであったことに加え、当時すでに根治的化学放射線療法が有力な治療選択肢として存在していたこと裁判所は、ICG負荷試験を実施しなかったこと自体を形式的に問題視したのではなく、肝硬変ないし肝機能障害が疑われる患者に対し、十分なリスク評価を行わないまま死亡率を2~3%程度と説明し、その結果、患者が危険な治療を選択してしまったことを問題視したといえる。したがって、然るべき検査をして適切なリスク評価をした上で、合併症や死亡のリスクを説明しなければ、患者の自己決定に必要な情報提供がなされたとは言えず、説明義務を果たしたとは認められないことを改めて認識する必要がある。2. 術式選択に関する医師の裁量について一般に術式選択は高度に専門的な医療判断であり、複数の合理的選択肢が存在する場合には裁量が広く認められる傾向があり、本判決もこのことを認める判示をしている。しかし本判決は、患者の全身状態、再手術時の循環動態、昇圧剤の使用状況、手術時間、侵襲度等を詳細に検討した上で、「救命を優先すべき局面であった」という事実認定をし、侵襲の大きい一期的再建術を選択したことを裁量の範囲外と評価した。かかる判断において裁判所は、長時間手術後わずか約35時間しか経過していない状況で、さらに約10時間近い再建術を実施したことについて、患者の耐術能との関係を厳しく検討しているが、これは「一期的再建術は危険だから違法である」としたものではなく、「極めてハイリスクな患者に対して救命より根治性を優先した判断」を問題としたものである。ここでは、術式選択について「どちらの術式が正しかったか」という議論ではなく、「当時の患者状態に照らして合理的な判断過程がとられていたか」が問題となっていると言えるため、医療機関としては、ハイリスク患者に対する治療方針決定の際には、カンファレンス記録、説明記録、診療録への記載等を通じて判断根拠を残しておくことが極めて重要である。とくに複数の合理的選択肢が存在する場面では、「なぜその選択肢を採用したのか」という思考過程を後から説明できる状態にしておくことが、訴訟対応上も重要になると言える。医療者の視点本件では、「術前評価の不備」と「術中の術式選択」の2点が問われています。術前評価については、ガイドライン上の基本的な検査であるICG負荷試験を省略し、客観的根拠に乏しい楽観的なリスク説明を行ったことが問題視されました。これは実臨床の感覚に照らしても、患者の自己決定権を担保する説明義務のあり方として不適切であり、裁判所の判断は妥当と受け止められます。一方で、術式選択における裁量逸脱の認定には、臨床現場の医師として悩ましさを覚えます。裁判所は、昇圧剤を大量に使用する重篤な状況下で、高侵襲な一期的再建術を継続したことを裁量逸脱と断じました。たしかに結果から見ればその通りですが、実際の緊急手術の現場では事情が複雑です。二期的再建を選択した場合、長期にわたる生活の質の低下や、癒着による将来の再建手術の困難さが予想されます。そのため、術中の出血がコントロールできていると術者が判断すれば、患者の将来を見据えて一期的に再建を完了させたいと考えるのは、十分にあり得る思考回路です。とはいえ、訴訟においては事後的な客観的データに基づき、救命最優先の局面であったと厳格に評価されます。実臨床で私たちが身を守るためには、ハイリスク症例において術前に最悪の事態を想定しておくことが不可欠です。どの状態に至ればダメージコントロールに切り替えるのか、チーム内で明確な撤退基準を共有し、それを診療録に記録しておく姿勢が求められます。Take home message治療法の説明は、然るべき検査をして適切なリスク評価をした上で行う必要がある。高侵襲手術においては、術式そのものだけでなく、術前リスク評価、代替治療を含めた説明内容、そして合併症発生時の意思決定過程までが後に検証対象となる。特にハイリスク症例においては、「なぜその治療を選択したのか」を説明できる診療録・説明記録を残しておくことが重要である。キーワード食道がん、周術期リスク評価、説明義務、ICG負荷試験、肝硬変合併症例、術後合併症、手術適応、術式選択、二期的再建術、医師の裁量、ハイリスク症例 、意思決定過程 、チームカンファレンス

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肥満治療のついでにアルコール使用障害も治せる時代が来る? セマグルチド第III相試験の衝撃(解説:永井聡氏)

 肥満症や糖尿病治療の日常臨床では、アルコール使用障害(AUD)の患者にも多く遭遇する。“非”アルコール性である“代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)”では、GLP-1関連薬の効果が期待されている一方、アルコール関連肝疾患(ALD)では「お酒を控えて…」などの一言二言では、まず効果は期待できない。ALDの背景にあるAUDについて治療施設へ受診を勧めても受診が進まず、日常診療でもうまくいかないことが多い。 しかし、セマグルチド投与により「自然と飲酒量が減った」「酒への強い欲求がなくなった」といった事例が報告され、セマグルチド1.0mgのAUDに対する第II相臨床試験(48例、9週間投与)では、アルコール消費量や飲酒に対する「飲酒渇望(craving)」が減少することが報告されていた1)。 今回セマグルチド2.4mgを用いた第III相試験である26週のRCTがLancet誌に報告され、主要エンドポイントである「大量飲酒の日数」が有意に減少し、総アルコール摂取量、飲酒日当たりの飲酒量、飲酒渇望なども減少していた。  この効果は単なる「胃排泄遅延による物理的な飲酒量低下」ではなく、セマグルチドが脳内のドパミン報酬系(腹側被蓋野や側坐核など)に直接抑制的に作用し「飲んでもおいしくない」状態をつくり、アルコールへの強烈な「渇望」が抑制される中枢神経作用が関与していることが基礎研究を含め指摘されている。肥満症治療での「脂っこいものを食べたくなくなる」ことと同様の分子メカニズムと考えられている。 主要エンドポイントのNNTは4.3であり従来のAUD治療薬のNNT>7よりも高く、AUD治療に新たな選択肢として期待される。では、内科でもAUDが肥満症の“ついでに”治療できるようになるのか? というとそれは、まだ時期尚早である。本研究がAUD治療施設で標準的な認知行動療法とともにセマグルチドの投与が行われており、“単に”セマグルチドだけが投与されたわけではない。肥満症でも認知行動療法が重要であることと同様である。また、本研究は、BMI≧30が対象であり、非肥満AUD患者でも安全に同様の治療効果があるのかは明らかではない。26週の投与終了後も、大量飲酒が長期に抑制されるのかについても今後の検証が必要である。 肥満症においては薬物治療中止後の体重のリバウンドは、認知行動療法プログラム中止後よりもはるかに早いことが知られている2)。自由診療での“肥満”治療が、認知行動療法や食事・運動療法を欠いたGLP-1関連薬に“薬物依存”する“危うい現実”を踏まえれば、AUDに対する“安易な”GLP-1関連薬の展開は新たなGLP-1関連薬“依存症”を招きかねない。まさに“元の木阿弥”となってしまうであろう。 GLP-1関連薬は、AUD以外にも喫煙やその他さまざまな依存症への治療が期待されている。しかし野放図に処方されれば、新たな社会問題を来しかねない。肥満症も依存症治療も医学的社会的寛解を達成しうる妥当なパラダイムシフトを願うばかりである。

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肥満のアルコール使用障害、セマグルチドvs.プラセボ/Lancet

 肥満を有する中等度~重度のアルコール使用障害(AUD)患者において、セマグルチド週1回投与により、プラセボと比較してAUDに対する有意な治療効果が認められた。デンマーク・Copenhagen University Hospital-Bispebjerg and FrederiksbergのMette Kruse Klausen氏らが、コペンハーゲンの単施設で実施した26週間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。AUDは、世界の年間死亡者の5%を占めており、新たな治療法の開発が急務となっている。GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドは前臨床試験および初期の臨床試験において、飲酒量を減少させる可能性が示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「今回の結果は、GLP-1受容体作動薬がAUDの新たな治療選択肢となりうることを示唆するこれまでの知見を裏付けるものである」とまとめている。Lancet誌2026年5月2日号掲載の報告。主要エンドポイントは、26週時までの大量飲酒日数の変化 研究グループは、年齢が18~70歳で、『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』に基づきAUDと診断され、かつ国際疾病分類第10版(ICD-10)に従ってアルコール依存症と診断された、アルコール使用障害同定テスト(AUDIT)スコアが15超、BMI値30以上の患者を対象とした。AUDに対する治療を希望する被験者を、セマグルチド群(0.25mgから開始し4週ごとに増量して2.4mgを週1回皮下投与)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、標準的な認知行動療法とともに26週間投与した。 主要エンドポイントは、飲酒量振り返りカレンダー(TLFB)法で推定されたベースラインから26週時までの大量飲酒日の割合の変化であった。ITT集団を対象として、欠測値を多重代入法により補完した反復測定共分散分析(ANCOVA)モデルを用いて評価した。副次エンドポイントは、ベースラインから26週時までの総アルコール摂取量(g)の変化、飲酒をしなかった日数、飲酒日当たりの飲酒量、AUDITスコアなどで、安全性についても評価した。認知行動療法+セマグルチドで大量飲酒が改善 2023年6月10日~2025年2月4日に302例が予備スクリーニングを受け、スクリーニング対象となった135例中108例が登録された(女性53例、男性55例)。全例、1回以上の治療を受け、最終解析に組み込まれた。108例中88例(81%)が試験を完遂した。 主要エンドポイントである大量飲酒日の割合の変化量は、セマグルチド群で平均-41.1%ポイント(95%信頼区間[CI]:-48.7~-33.5)、プラセボ群で-26.4%ポイント(95%CI:-34.1~-18.6)とセマグルチド群で有意に減少した(平均群間差:-13.7%ポイント、95%CI:-22.0~-5.4、p=0.0015)。 副次エンドポイントについても、総アルコール摂取量、飲酒日当たりの飲酒量、AUDITスコアなど複数の項目で、プラセボ群に対するセマグルチド群の有意な効果が示された。 最も多く発現した有害事象は胃腸障害で、悪心の発現割合はプラセボ群の7%に対しセマグルチド群では57%であった。多くの胃腸障害は軽度~中等度で、一過性であった。

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物質使用障害(SUD)のリスク低減にGLP-1受容体作動薬は有効か(解説:小川大輔氏)

 物質使用障害(SUD:Substance Use Disorder)は、特定の物質の使用を制御できなくなり、健康上の問題や社会生活への支障があっても使用を続けてしまう慢性・再発性の疾患である。アルコール(お酒)やタバコ(ニコチン)のほか、処方薬(睡眠導入剤、鎮痛剤など)、覚醒剤、大麻、コカイン、オピオイドなど、脳に作用するさまざまな物質によって引き起こされる。 今回、GLP-1受容体作動薬と米国退役軍人の糖尿病患者におけるSUDリスクの関係を調査した研究結果が発表された1)。電子カルテのデータを用いて、各種SUDの新規発症と、既存SUD患者の臨床アウトカム(救急外来、入院、死亡、過量摂取、自殺念慮・試み)を調査したところ、GLP-1受容体作動薬の使用は新規および既存のSUDのリスク低減に関連している可能性が報告された。 この研究により、GLP-1受容体作動薬はSUDの予防と治療の両面で有望な役割を果たす可能性が示唆された。しかし、対象が米国退役軍人という特定集団に限定されるため一般化には注意しなければならない。またSGLT2阻害薬を比較薬とした観察研究であるため、今後さらなる臨床試験が必要である。 SUDの治療は、単に物質の使用をやめるだけでなく、心身の健康や社会生活の回復を目指す多角的なアプローチが必要である2)。それはSUDが「意志の弱さ」から生じるものではなく、脳の機能が変化した疾患であるからである。SUDは専門的な治療と継続的なサポートが不可欠な疾患であり、GLP-1受容体作動薬はその治療の一助になるかもしれない。

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第311回 妊娠中のつわりとの関連で知られるホルモンが飲み過ぎを防ぐらしい

妊娠中のつわりとの関連で知られるホルモンのGDF15が、酒量の制限にどうやら携わることがドイツでのビール祭り(オクトーバーフェスト)の参加者を含む検討で示されました1,2)。GDF15は吐き気や食べ物を嫌がることに携わる脳領域(最後野)に限って発現するタンパク質複合体に結合します。妊娠初期のGDF15急増と関わる吐き気は、慣れない食物や傷んだ食物を食べないようにして胎児に害が及ばないようにする働きがあると考えられています。GDF15は妊娠していない人にもあり、肥満の人に多いことが示されています。栄養状態、代謝ホルモン、体重が変化しても一定のままであるものの、げっ歯類での検討で摂食抑制効果が示されています。それゆえGDF15は肥満治療に役立ちそうであり、実際、太っている成人の摂食を減らす効果が長時間作動型GDF15受容体作動薬LY3463251の第I相試験で確認されています3)。ただし取るに足る体重低下はあいにく認められませんでした。今や世界中に広まる西洋食での摂取エネルギーの5~10%を占めるアルコールは、多臓器や発達中の胎児に害を及ぼしうる毒物でもあります。妊婦に吐き気を催させる働きに示されるように、GDF15は毒物感知に携わり、その摂取を止めさせ、再びその毒物が口に入らないようにする役割も担うようです。ゆえに毒物の側面をもつアルコールはGDF15によって制御されているかもしれません。その予想を裏付ける結果として、アルコールでGDF15生成が増えることが肝細胞やマウスでの検討で示されています4)。ヒトでも同様かもしれず、デンマークでの野外音楽フェスティバル(ロスキレ・フェスティバル)に参加して一週間大量に飲酒した若い男性の血中のGDF15上昇が認められています5)。その試験に携わった同国のコペンハーゲン大学の内分泌学者Matthew Gillum氏らは、GDF15が飲酒で作られてアルコール飲料の欲求を減らすように働くと仮説を立ててさらに調べてみました。まずは12人の医学部生に協力してもらい、5杯分に相当するアルコール(60g)を1回きり摂取してもらいました。するとGDF15血中濃度は上昇せずむしろ低下しました。一方、オクトーバーフェストで過飲を続けた3人のGDF15は上昇傾向を示しました。3人は連続する3日間に各々が1日に1Lのジョッキおよそ7杯(3人合わせて平均22杯)のビールを飲んでいます。アルコール依存患者のGDF15値も高く、どうやらGDF15の上昇は短期ではなく続けざまの過飲で生じるようです。GDF15の上昇にどんな働きがあるかといえば、Gillum氏の仮説のとおり、飲み過ぎの抑制に一役買っているようです。英国の50万人超を追跡しているUK Biobankの遺伝情報と生活習慣の記録を解析したところ、GDF15が結合する受容体の一部のGFRALを損なわせる変異を有する人は、そうでない人に比べてアルコールをより多く摂取していました。また、GDF15はマウスの飲酒を減らしました。GDF15が携わる経路の増強がアルコール乱用やアルコール関連肝疾患の治療に役立つかどうかのさらなる検討を今回の結果は後押しするでしょう。アルコール依存症患者は生来のGDF15がすでにだいぶ上昇していることからGDF15経路を鈍くする抵抗性があるのかもしれず、GDF15経路の別口でのさらなる活性化が必要かもしれません。とはいうものの、2型糖尿病患者のインスリン抵抗性をインスリンの投与で解決できるように、内因性GDF15が過剰でもその働きをさらに高めてGDF15感受性低下を克服できる望みはあると著者は言っています。参考1)Justesen JM, et al. bioRxiv. 2026 Mar 9. [Epub ahead of print]2)Hormone linked to morning sickness may help reduce alcohol intake / Science3)Benichou O, et al. Cell Metab. 2023;35:274-286.4)Chung HK, et al. Sci Rep. 2017;7:17238.5)Demant M, et al. Eur J Endocrinol. 2021;185:23-32.

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GLP-1受容体作動薬、物質使用障害の予防や治療に有効か/BMJ

 GLP-1受容体作動薬の使用は、さまざまな物質使用障害(SUD)の発症リスク低下と一貫して関連し、複数の物質タイプにわたる幅広い予防効果があること、また、SUD既往患者においても有害な臨床アウトカムのリスク低下に関連していることが、米国退役軍人省セントルイス・ヘルスケアシステムのMiao Cai氏らによる観察研究の結果で示された。GLP-1受容体作動薬の使用がアルコール、タバコ、大麻使用障害の発症および再発リスクを低下させることが示されていたが、他の物質に関するエビデンスや、SUD既往患者の臨床アウトカムの改善に有効かどうかを評価する大規模研究は不足していた。著者は、「今回のデータは、GLP-1受容体作動薬がさまざまなSUDの予防と治療の両方において潜在的な役割を果たす可能性を示唆しており、さらなる評価が必要である」とまとめている。BMJ誌2026年3月4日号掲載の報告。退役軍人の医療記録を用いて8件の実薬対照比較試験をエミュレーション 研究グループは、米国退役軍人省の電子医療記録を用いて新規投与開始者に関する8件の実薬対照標的試験エミュレーション(target trial emulation)を行った。内訳は、SUD既往のない患者における新規SUD発症に関する7試験(プロトコール1)と、SUD既往患者における有害アウトカムに関する1試験(プロトコール2)であった。 2型糖尿病を有する米国退役軍人60万6,434例をベース集団とし、患者を2つのプロトコールのいずれかに割り付け、最大3年間追跡した。 プロトコール1(主要試験)では、GLP-1受容体作動薬新規投与開始者12万4,001例およびSGLT2阻害薬新規投与開始者40万816例の計52万4,817例が、プロトコール2では、それぞれ1万6,768例および6万4,849例の計8万1,617例が対象となった。 主要アウトカムは、アルコール、大麻、コカイン、ニコチン、オピオイドの使用障害、その他のSUD発症、およびこれらの複合アウトカムとした。SUD既往患者における有害アウトカムには、SUD関連の救急外来受診、SUD関連入院、SUD関連死、薬物過剰摂取、自殺念慮または自殺企図などが含まれた。 ハザード比(HR)および3年間の純リスク差(NRD、1,000人当たり)を、逆確率重み付けを用いた原因特異的Cox生存モデルに基づいて報告した。アルコール、大麻、コカイン、ニコチン、オピオイド、他のSUD発症リスクの低下と関連 SGLT2阻害薬の開始と比較し、GLP-1受容体作動薬の開始は以下の使用障害のリスク低下と関連していた。・アルコール(HR:0.82[95%信頼区間[CI]:0.78~0.85]、NRD:-5.57[95%CI:-6.61~-4.53])・大麻(0.86[0.81~0.90]、-2.25[-3.00~-1.50])・コカイン(0.80[0.72~0.88]、-0.97[-1.37~-0.57])・ニコチン(0.80[0.74~0.87]、-1.64[-2.19~-1.09])・オピオイド(0.75[0.67~0.85]、-0.86[-1.19~-0.52]) また、主要アウトカムとした、その他のSUD発症(0.87[0.81~0.94]、-1.12[-1.68~-0.55])、複合アウトカム(0.86[0.83~0.88]、-6.61[-7.95~-5.26])のリスク低下も認められた。 SUD既往患者では、GLP-1受容体作動薬の投与開始は、次のリスク低下と関連していた。・SUD関連救急外来受診(HR:0.69[95%CI:0.61~0.78]、NRD:-8.92[-11.59~-6.25])・SUD関連入院(0.74[0.65~0.85]、-6.23[-8.73~-3.74])・SUD関連死(0.50[0.32~0.79]、-1.52[-2.32~-0.72])・薬物過剰摂取(0.61[0.42~0.88]、-1.49[-2.43~-0.55])・自殺念慮または自殺企図(0.75[0.67~0.83]、-9.95[-13.14~-6.77]) 治療アドヒアランスに基づく解析でも、新規SUD発症およびSUD既往患者における有害アウトカムの両方について、治療開始に基づく解析と一貫した結果が示された。

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第309回 臨床医が扱い慣れたGLP-1薬なら依存症治療の敷居を低くできそう

セマグルチドやチルゼパチドなどのGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)の使用が、アルコールやその他の薬物乱用を生じ難くするらしいことを示す大規模観察試験結果がまた1つ報告されました1-4)。BMJ誌に今回報告されたのは、米国の2型糖尿病の退役軍人の解析結果です。言わずもがなGLP-1薬は膵臓の受容体に働いてインスリン分泌を促します。しかしそれだけでなく、脳でも作用することが知られ、薬物乱用やアルコール依存を促す脳の報酬回路へのGLP-1薬の働きが盛んに検討されています4)。試験ではそのように脳でも働くGLP-1薬か、腎臓でもっぱら働くエンパグリフロジンなどのSGLT2阻害薬を使い始めた60万例超の経過が調べられました。3年間追跡したところ、薬物依存症の既往がない人のGLP-1薬使用は大麻、アルコール、コカイン、ニコチン、オピオイドの依存症の発生率がSGLT2阻害薬使用に比べて14%低いことと関連しました。すでに依存症の人の薬物乱用と関連した救急科受診、入院、オーバードーズの割合の比較でもGLP-1薬使用に分があり、SGLT2阻害薬に比べてそれぞれ約30%、25%、40%低いことが示されました。薬物乱用と関連する死亡や自殺念慮/自殺企図もGLP-1薬使用群がより少なく、SGLT2阻害薬群に比べてそれぞれ50%と25%低い割合で済んでいました。依存症へのGLP-1薬の効果は無作為化試験でも示されつつあります。昨年2月にはアルコール依存患者の飲酒量を減らすセマグルチド週1回注射の効果を裏付けた無作為化試験が報告されています5)。進行中の試験もあり、GLP-1薬の類いのmazdutideのアルコール依存治療を調べているプラセボ対照無作為化第II相試験がLillyの手によって実施されています。結果は今夏8月に判明するようです6)。セマグルチドの別の無作為化試験も米国立薬物乱用研究所(NIDA)医師のLorenzo Leggio氏の主導で進行中です7)。Leggio氏は、たいていが治療されないままのアルコール依存症の治療にGLP-1薬の類いが光明をもたらしうると考えています4)。日本もおよそ似たような状況と思われますが、Leggio氏によるとアルコール依存症患者のほぼ全員の98%は米国で承認されているアルコール依存治療薬を手にしていません。その原因の一端は臨床医のほとんどが依存症治療薬に精通していないことにあるとLeggio氏は言っています。アルコール依存症とは対照的に、糖尿病患者のほとんどの85%超は米国で承認された治療を受けており、臨床医はGLP-1薬を含む糖尿病薬の扱いに手慣れています。GLP-1薬が誰にでも効くというわけにはいかないでしょうが、もし効果の裏付けが済んでGLP-1薬による依存症治療が承認されたら専門医限定という垣根を超えて普及するだろうとLeggio氏は示唆しています。それに、糖尿病治療として社会的により受け入れられているGLP-1薬なら依存症の薬物治療への偏見も減らせるかもしれません4)。米国などでは承認されているnaltrexoneなどのめぼしい依存症治療薬が未承認の日本では、あくまでも有効性が確立して承認されればの話ですが、臨床医が扱いに慣れたGLP-1薬による依存症治療はとくに重宝されそうです。参考1)Cai M, et al. BMJ. 2026;392:e086886.2)GLP-1 diabetes drugs linked to reduced risk of addiction and substance-related death / Eurekalert3)GLP-1 medications get at the heart of addiction: study / Eurekalert4)GLP-1 drugs linked to lower addiction rates in large study of veterans / Science5)Hendershot CS, et al. JAMA Psychiatry. 2025;82:395-405.6)ClinicalTrials.gov(NCT06817356)7)ClinicalTrials.gov(STAR)

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日本におけるアルコール使用障害に対する薬物療法の開始率はどの程度か

 アルコール使用障害(AUD)は、世界的に広く認められる疾患である。しかし、薬物療法が行われている患者の割合は依然として低いままである。また、日本におけるAUDに対する薬物療法開始パターンは、これまで十分に解明されていなかった。京都大学の北村 美智氏らは、日本で新たにAUDと診断された患者における薬物療法開始の累積発生率を定量化し、評価を行った。Alcohol and Alcoholism誌2026年1月14日号の報告。 日本の保険請求データベースを用いて記述的研究を実施した。2012~21年度にかけて新たにAUDと診断された20~64歳の成人を対象とした年次コホートを作成した。薬物療法開始の累積発生率は、死亡を競合リスクとして、推定した。 主な結果は以下のとおり。・本研究の対象患者数は1万3,936例。・2012~21年度のコホート全体での平均年齢は43.3~44.8歳、各コホートでの男性の割合は72.6~79.3%であった。・コホート登録時(0日目)における薬物療法開始の累積発生率は、2012年度の18.0%から2021年度には35.2%に上昇した。・1年間の対応する累積発生率は、それぞれ28.1%と44.9%であった。・アカンプロサート(2013年度)とナルメフェン(2018年度)の承認および日本のAUD治療ガイドライン(2018年度)の策定に伴い、薬物療法開始はそれぞれ前年比で顕著に増加した。 著者らは「薬剤処方前にAUDの診断を義務付ける日本の保険償還制度により、今回観察された発症率は過大評価されている可能性があるものの、薬物療法の開始件数は他国で報告されている件数を上回り、2012年度以降着実に増加している。新薬の導入とガイドラインの普及により、治療開始が加速し、治療方法が大きく変化したと考えられる。これらの知見は、臨床医や政策立案者が根深い治療ギャップを埋めるうえで役立つ可能性がある」と結論付けている。

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アルコール依存症の再発率はどの程度?

 アルコール依存症は、早期死亡や障害の主要な要因である。インドでは、男性の約9%にアルコール依存症がみられるといわれている。アルコール依存症の短期アウトカムには、いくつかの臨床的要因が関与している可能性がある。インド・Jawaharlal Institute of Postgraduate Medical Education and ResearchのSushmitha T. Nachiyar氏らは、アルコール依存症患者の短期アウトカムについて調査を行った。Indian Journal of Psychological Medicine誌オンライン版2025年9月26日号の報告。 対象は、ICD-10 DCR基準に基づくアルコール依存症男性患者122例。アルコール依存症の重症度(SADQ)、断酒動機(SOCRATES)、全般認知能力(MoCA)、前頭葉認知能力(FAB)などの社会人口学的および臨床的パラメーターに基づき評価した。その後、過去30日間の飲酒について、タイムライン・フォローバック法を用いて1ヵ月および3ヵ月時点でフォローアップ調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・患者の平均年齢は40.6±7.6歳。・アルコール摂取期間は18.56±7.22年、平均摂取量は1日当たり14.14±8.62単位であった。・SADQスコアは25.13±12.01であり、中等度の依存症と評価された。・MoCAスコアが低かった患者は67.2%(82例)、FABスコアが低かった患者は22.1%(27例)。・1ヵ月後の再発率は約30%、3ヵ月後の再発率は50%であった。・1ヵ月後の再発率と関連していた因子は、依存症発症時の年齢が若いことであった(p=0.012)。・3ヵ月時点で禁酒の継続と関連する因子は、既婚(p=0.040)、過去の禁酒歴(p=0.003)、MoCAスコア(26超)の高さ(p=0.042)であった。 著者らは「アルコール依存症患者の約30%は1ヵ月以内に再発し、50%は3ヵ月後までに再発することが確認された。依存症発症時の年齢が若いことは、1ヵ月後の再発を予測し、既婚であること、過去の禁酒歴、全般認知能力が良好であることは3ヵ月後の禁酒を予測することが示唆された」としている。

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アルコール消費量と自殺リスクとの関係~メタ解析

 アルコール使用は、個人レベルにおける確立された自殺のリスク因子であるが、これが人口レベルで反映されているかは不明である。アルコールの有害な使用の削減について進捗状況を測る国際的な枠組みで用いられている、人口レベルの総アルコール消費量の指標である1人当たりアルコール消費量(APC)が自殺と関連しているとすれば、自殺予防の取り組みにおいて、アルコールは有用な目標となる可能性がある。カナダ・トロント大学のKatherine Guo氏らは、APCと自殺死亡率の間に関連があるかどうか、また関連がある場合には性別によって違いがあるかどうかを評価するため、メタ解析を実施した。JAMA Network Open誌2025年9月2日号の報告。 2025年2月24日までに公表されたAPCと自殺の関連を測定した独自の定量的研究をEmbase、Medline、PsycINFO、Web of Scienceより検索した。対象研究は、前後比較デザインを含む縦断的観察研究または横断的生態学的デザインによるオリジナルの定量的研究、関連性の尺度を示した研究とした。最終的に合計304件の研究が特定された。データ抽出は、1人のレビューアーで行い、2人目のレビューアーによりクロスチェックを行った。バイアスリスクは、Risk of Bias in Nonrandomized Studies of Exposure tool、エビデンスの質は、GRADEを用いて評価した。システマティックレビューおよびメタ解析は、PRISMAに従い実施した。APCと自殺死亡率の関連性のプール推定値を算出するため、ランダム効果メタ解析を実施した。性差の有無は、ランダム効果メタ回帰を用いて評価した。主要アウトカムは、1人当たりのアルコール消費量(リットル)として測定したAPCと自殺死亡率との関連とした。 主な結果は以下のとおり。・主要解析には合計13件の研究を含めた。・人口レベルでは、APCが1リットル増加するごとに自殺死亡率が3.59%(95%信頼区間:2.38~4.79)増加することが明らかとなった。・性差を示すエビデンスは、認められなかった。 著者らは「本システマティックレビューおよびメタ解析において、APCの増加は人口レベルでの自殺死亡率の上昇と関連しており、この関連は男女間で同様であった。したがって、APCは包括的な国家自殺予防戦略において検討すべき有用な目標となる可能性がある」と結論付けている。

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シロシビンによるうつ病改善効果、5年後も持続

 「シロシビン」の大うつ病性障害(以下、うつ病)に対する効果は、最長で5年間持続する可能性のあることが、新たな研究で示唆された。シロシビンはマジックマッシュルームと呼ばれるキノコに含まれている幻覚作用のある成分である。初期のシロシビンに関する臨床試験を追跡調査したこの研究では、試験参加者の3分の2が試験から5年が経過した後もうつ病の完全寛解を保っていたことが判明したという。米オハイオ州立大学コロンバス校幻覚剤研究教育センター所長のAlan Davis氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Psychedelic Studies」に9月4日掲載された。 Davis氏は、「5年が経過した今でも、ほとんどの人はこの治療法が安全で、有意義かつ重要で、生活の改善を促すものだと見なしている」と語っている。同氏はまた、「治療後に起こり得ることを詳細に理解することは重要だ。結果がどうであれ、このような臨床試験に参加したことで彼らの人生が改善されたことを示していると思う」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 米国立補完統合衛生センターによると、シロシビンはアルコール依存症、不安症、うつ病の治療に有効である可能性のあることが、研究で示されている。Davis氏らが2021年に発表した臨床試験では、24人のうつ病患者が心理療法との併用でシロシビンの2回投与を受け、症状が有意に軽減したことが確認された。 今回の研究では、これら24人のうち、試験終了後5年間の追跡調査に同意し、精神的・感情的健康状態を測定する一連のオンラインアンケートに回答した18人が対象とされた。主要評価項目は、ベースラインから5年後の追跡調査時までの臨床医が評価した抑うつ症状のスコアの変化であった。 その結果、追跡調査に参加しなかった6人は寛解していないと仮定した上で解析に含めても、67%の参加者が治療後少なくとも5年間は寛解状態を維持していることが明らかになった。また、不安症状や日常生活の機能障害が改善していることも示された。さらに、参加者に対するインタビューでは、心の持ち方、感情面の健康、人間関係における前向きな変化が長期にわたり続いていることが報告された。 研究グループは、追跡調査時の参加者の健康状態は、5年前のシロシビンによる治療だけで得られたものではないと指摘している。なぜなら、追跡調査参加者のうち、臨床試験以降もうつ病関連の治療を受けていなかったのはわずか3人であり、残りの参加者は、抗うつ薬を使用したり、心理療法を受けたり、幻覚剤を服用したりしていたからだ。しかし、参加者へのインタビューでは、この試験に参加したことで、参加者はうつ病を状況に応じて対処することが可能な疾患として認識するようになったことが示唆された。 Davis氏は、「参加者は、うつ病が再発するかどうかにかかわらず、全体的にポジティブな感情や熱意を抱く能力が高まったと感じていた。多くの人が、こうした変化が抑うつ気分に見舞われた際の対処法に大きな変化をもたらしたと報告していた」と話している。 ただしDavis氏は、本研究はサンプル数が少なく、参加者の経験に基づいて結論を導き出すのは困難であることを認めている。それでも同氏は、「この結果は、うつ病に対するシロシビン療法の潜在的かつ永続的な好影響を垣間見せてくれる」と述べている。

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日本人アルコール関連肝疾患に対するナルメフェンの影響

 完全な禁酒は、アルコール関連肝疾患(ALD)マネジメントにおいて重要である。しかし、多くの患者が禁酒の達成または維持に難渋しており、ハームリダクション戦略、とくにアルコール摂取量を減らすための薬理学的介入への関心が高まっている。オピオイド受容体モジュレーターであるナルメフェンは、アルコール依存症患者の飲酒量減少に対する有効性を示している薬剤であるが、ALDにおける肝パラメーターへの影響については、実臨床において、これまで十分に検討されていなかった。奈良県立医科大学の花谷 純一氏らは、ALD患者に対するナルメフェンの有効性および安全性、飲酒量、肝機能、肝予備能の変化に焦点を当て、評価を行った。Hepatology Research誌オンライン版2025年8月16日号の報告。 2019年9月〜2023年12月に奈良県立医科大学でナルメフェン治療を行ったALD患者21例を対象に、レトロスペクティブ観察研究を実施した。アルコール摂取量、肝機能検査、肝予備能、アルコール使用障害同定テスト(AUDIT)スコアに関するデータは、ベースライン時および治療開始6ヵ月後に収集した。有害事象も記録した。 主な結果は以下のとおり。・ナルメフェン投与開始後1ヵ月以内に、重度の飲酒日数および総アルコール摂取量の有意な減少が認められた。・これらの減少は、肝機能パラメーターの改善を伴っていた。・しかし、肝予備能には統計的に有意な変化は認められなかった。・有害事象のほとんどは軽度から中等度(Grade1または2)であり、重篤な有害事象は認められなかった。 著者らは「ナルメフェンは、ALD患者のアルコール摂取量を減少させ、肝機能を改善するための安全かつ効果的な薬理学的選択肢であると考えられる」とし、「これらの調査結果は、完全な禁酒を達成できない人に対する危害軽減アプローチの一部として、ナルメフェンの使用を支持するものである」と結論付けている。

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第258回 スマホ保険証は9月19日から開始、院内体制の整備と患者周知を/厚労省

<先週の動き> 1.スマホ保険証は9月19日から開始、院内体制の整備と患者周知を/厚労省 2.新型コロナ感染者、今年最多の3.3万人超 変異株「ニンバス」全国で拡大/厚労省 3.緊急避妊薬の市販化、対面販売義務と面前服用で数ヵ月後販売へ/厚労省 4.治療アプリで慢性疾患医療に変革、アルコール依存症でも/CureApp 5.医療費48兆円で過去最高更新 高齢化で入院費膨張、伸び率は鈍化/厚労省 6.再生医療で女性が死亡、都内クリニックに初の緊急停止命令/厚労省 1.スマホ保険証は9月19日から開始、院内体制の整備と患者周知を/厚労省厚生労働省は9月19日から、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」の機能を搭載したスマートフォン(スマホ)による資格確認を全国の医療機関・薬局で順次開始する。専用リーダーを導入した施設で利用可能となり、対応機関にはステッカーが掲示される予定。患者は事前にマイナポータルを通じてスマホにマイナカードを追加登録しておく必要があり、窓口での初期設定は医療機関の負担になるため避けるよう求められている。スマホでの資格確認に失敗した場合には、マイナポータルにログインし資格情報を画面提示する代替手段も認められ、法令改正で新たに規定された。これにより従来のカード持参が不要となるが、初回利用時は真正性確認の観点からマイナカード併用を求める声も医療界からは出ている。実証事業では大きな支障はなかったが、利用率は1%未満と低調。スマホ設定が難しいという声が患者から寄せられる一方、カードを出す手間が省け受付が円滑になる利点も確認された。厚労省は導入支援として汎用カードリーダー購入費を補助し、病院は3台、診療所や薬局は1台まで半額(上限7,000円)を補填する。医師や医療機関にとっては、今後の診療報酬加算(医療DX推進体制整備加算)におけるマイナ保険証利用率基準引き上げを踏まえ、対応が経営上も不可避となる。中央社会保険医療協議会(中医協)では「導入を拙速に進めれば窓口混乱を招く」との懸念が示され、国民への周知徹底とマニュアル整備を要請。対応できる施設は当面限られるとみられ、現場には患者説明やトラブル対応の負担が予想される。医療従事者は制度改正を理解し、来院前準備の重要性を患者に伝えることが求められる。 参考 1) マイナ保険証の利用促進等について(厚労省) 2) 「スマホ保険証」9月19日から全国で順次開始、対応可能な施設にはステッカー掲示へ(読売新聞) 3) スマホを用いた資格確認が2025年9月から順次開始(日経メディカル) 4) スマホ保険証を9月19日から運用開始 汎用カードリーダーの専用ページ、8月29日に開設(CB news) 5) 2025年9月19日の「スマホマイナ保険証」利用開始に向け法令を整理、スマホマイナ保険証対応医療機関はステッカー等で明示-中医協・総会(Gem Med) 2.新型コロナ感染者、今年最多の3.3万人超 変異株「ニンバス」全国で拡大/厚労省新型コロナウイルスの感染が全国的に拡大し、厚生労働省によると8月18~24日の新規感染者数は3万3,275人と前週比5割増で、今年最多を記録した。定点医療機関当たり8.73人で10週連続の増加となり、宮崎21.0人、鹿児島16.8人、長崎14.8人など九州を中心に高水準が続く。愛知2,045人、東京1,880人など大都市圏でも増加が顕著だった。国立健康危機管理研究機構は、国内で検出されたコロナ株の約8割がオミクロン株派生の「ニンバス(NB.1.8.1)」に置き換わったと報告。強烈なのどの痛みが特徴とされ、新学期に伴い10代以下への拡大が懸念される。各地でも警戒が強まっており、新潟では1医療機関当たり12.2人と前週比1.5倍に急増し、インフルエンザ注意報基準を上回った。宮城も10.0人と急増、静岡は7ヵ月ぶりに全県に注意報を発令し、東部がとくに多い。熊本は906人で全国平均を上回り、宮崎も589人と1.5倍に増加し、患者の4割が高齢者、3割が未成年だった。鹿児島でも患者数が1週間で958人に達し、強い咽頭痛を訴えるケースが目立っている。厚労省や自治体は「重症化リスクは従来株と大差ないが、感染拡大防止が重要」とし、手洗い・換気・マスクの着用徹底を呼びかけている。とくに新学期を迎える子ども世代や高齢者との接触には注意が必要で、感染症流行の二重負担を避けるためにも、医療機関には今後の外来・入院需要への対応力が問われる。 参考 1) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況(厚労省) 2) コロナ感染者数3万人上回る 前週から5割増加(CB news) 3) 新型コロナ感染者数、ことし最多…10週連続の増加 変異株「ニンバス」のどの強い痛みが特徴(日テレ) 3.緊急避妊薬の市販化、対面販売義務と面前服用で数か月後販売へ/厚労省厚生労働省の専門部会は8月29日、緊急避妊薬レボノルゲストレル(商品名:ノルレボ)の市販化を了承した。医師の処方箋なしで薬局・ドラッグストアで購入が可能となり、区分は要指導(特定要指導)医薬品となる予定。販売については、年齢制限なし・保護者の同意不要で、研修修了薬剤師による対面販売とその場での服用(面前服用)を原則義務付ける。性交後72時間以内の単回内服で妊娠阻止率は約80%、WHOは必須医薬品としてOTCを推奨している。国内では試験販売(2023年度145薬局→2024年度339薬局)を経て、承認審査が進み、正式承認・体制整備後の数ヵ月後から販売を開始する。価格は未定だが試験販売では7,000~9,000円となっていた。販売店舗は厚労省が一覧を公表する予定。面前服用は転売防止などが目的だが、プライバシー侵害やアクセス阻害の懸念もあり、一定期間後に見直しを検討するという。購入時は身分証確認、薬剤師説明→服用、3週間後の妊娠確認を推奨。性暴力が疑われる場合はワンストップ支援センターと連携する。市販化まで約9年を要した背景には、乱用懸念・性教育の遅れ・薬剤師体制などの議論があった。専門家は、緊急避妊薬は最終手段であり、低用量ピル活用やコンドーム併用(STI対策)など平時の避妊行動の対策も求めている。 参考 1) 緊急避妊薬のスイッチOTC化について[審査等](厚労省) 2) 緊急避妊薬の薬局販売承認へ 診察不要に、年齢制限なし(日経新聞) 3) 「緊急避妊薬」医師の処方箋なくても薬局などで販売へ(NHK) 4) 面前服用、販売する薬局数…緊急避妊薬のアクセス改善に課題(毎日新聞) 4.治療アプリで慢性疾患医療に変革、アルコール依存症でも/CureAppアルコール依存症治療の新たな選択肢として、沢井製薬は9月1日から国内初の「減酒」治療補助アプリ「HAUDY(ハウディ)」の提供を開始する。開発は医療IT企業CureAppが担い、国から医療機器として承認を受け、公的医療保険の適用対象となる。患者は日々の飲酒量や体調をスマホに記録し、アプリから助言を受ける仕組みで、データは医師と共有され診察時の行動の振り返りや目標設定に活用される。医師の処方に基づき利用され、自己負担は3割で月額約2,400~3,000円、最大6ヵ月使用が可能。専門医でなくとも治療支援ができる点も特徴で、治験では飲酒量の多い日の減少効果が確認されている。背景には、依存症診療における診察時間の短さや治療継続の難しさがある。アプリは患者と医師のコミュニケーションを補完し、より早期の介入を後押しすると期待される。沢井製薬は、ジェネリック医薬品依存から脱却し、デジタル医療機器を新たな収益源とする戦略を強調している。一方、デジタル治療の普及は高血圧分野でも進展する。日本高血圧学会は『高血圧管理・治療ガイドライン2025』を改訂し、血圧管理アプリによる介入を初めて推奨に盛り込んだ。推奨の強さは「2」、エビデンスの強さは「A」とし、降圧薬に匹敵する効果や費用対効果も確認されている。生活習慣改善や共同意思決定を重視する中で、治療アプリは患者と医師の信頼関係を深めるツールとして位置付けられている。アルコール依存症や高血圧といった慢性疾患領域で、治療アプリが相次ぎ制度化されることは、臨床現場にデジタル治療導入を促し、診療報酬体系や医療経済にも影響を与えるとみられる。 参考 1) アルコール依存症患者のための「減酒」アプリ、沢井製薬が9月提供開始…公的医療保険の適用対象に(読売新聞) 2) 国内初の減酒治療アプリ 沢井製薬が9月1日から販売 専門医でなくても依存症患者に対応(産経新聞) 3) アルコール依存症の治療支援アプリ 医療機器として国が初承認(NHK) 4) 高血圧管理・治療ガイドライン改訂 治療アプリを推奨「患者と医療者がしっかり話し合って共同で降圧」(ミクスオンライン) 5) 高血圧管理・治療ガイドライン2025(日本高血圧学会) 5.医療費48兆円で過去最高更新 高齢化で入院費膨張、伸び率は鈍化/厚労省厚生労働省は8月29日、2024年度の概算医療費(速報値)が48兆円に達し、前年度比1.5%増で過去最高を更新したと発表した。増加は4年連続だが、伸び率は前年の2.9%から鈍化し、コロナ禍前の水準に近付きつつある。概算医療費は労災や全額自費を除いた、公的保険・公費・患者負担を集計したもので、国民医療費の約98%を占める。診療種類別では、入院が2.7%増の19.2兆円と全体を押し上げ、入院外(外来・在宅)は0.9%減の16.3兆円と4年ぶりに減少した。歯科は3.4兆円で3%超の伸び、調剤は8.4兆円で1%強の増加となった。医療機関別では病院25.9兆円(2.0%増)、診療所9.6兆円(1.0%減)で、とくに大学病院は4.2%増と高度医療の影響が大きかった。一方、個人病院は22%減少した。国民1人当たりの医療費は38万8,000円(前年より8,000円増)。75歳以上は97万4,000円に達し、75歳未満(25万4,000円)との差は約4倍に拡大している。高齢化が医療費を押し上げる構造が鮮明となった。疾患別では、新型コロナ関連の医療費は2,400億円と前年度比4割以上減少。感染症流行が落ち着いたことが全体の伸び率鈍化につながった。後発医薬品の普及も進み、ジェネリックの数量シェアは90.6%と初めて9割を超えた。厚労省は「高齢化と医療の高度化の影響は続き、医療費は今後も増加傾向にある」と指摘。入院費膨張や人材確保など医療機関の経営への影響は避けられず、診療報酬や医療提供体制の在り方が改めて問われている。 参考 1) 「令和6年度 医療費の動向」~概算医療費の年度集計結果~(厚労省) 2) 医療費、過去最高の48兆円 4年連続で増加 厚労省(時事通信) 3) 厚労省 令和6年度の医療費の概算48兆円 4年連続で過去最高更新(NHK) 4) 24年度の医療費48兆円、4年連続過去最大 伸び率は鈍化(CB news) 6.再生医療で女性が死亡、都内クリニックに初の緊急停止命令/厚労省厚生労働省は8月29日、東京都中央区の「東京サイエンスクリニック」(旧ティーエスクリニック)で自由診療として再生医療を受けた外国籍の50代女性が死亡した事例を受け、同院に対して再生医療等安全性確保法に基づく緊急命令を出し、当該治療の一時停止を命じた。死亡例を契機とした同法に基づく緊急命令は初めてとなる。併せて、治療に用いた特定細胞加工物を製造した「コージンバイオ株式会社 埼玉細胞加工センター」に対しても製造停止を命じた。厚労省は原因究明を進める方針を示している。厚労省の発表によると、今月20日、同クリニックで慢性疼痛治療を目的に、患者本人の脂肪組織から取り出した間葉系幹細胞を増殖させ、点滴で静脈投与する自由診療が実施された。治療中に女性は急変し、急速に心停止に陥り、搬送先で死亡が確認された。27日、クリニックから法第18条に基づく「疾病等報告」が提出され、死因はアナフィラキシーショックの可能性と説明されたが、原因は未確定であり、さらなるリスク防止のため緊急命令が発出された。命令は、当該クリニックが提供する治療計画「慢性疼痛に対する自己脂肪由来間葉系幹細胞による治療」および類似の細胞加工を用いた再生医療の提供を全面的に停止するもの。加えて、埼玉細胞加工センターにも、同様の製造方法による特定細胞加工物の一時停止を命じた。厚労省は立ち入り検査や詳細な原因究明を進め、再発防止策を徹底するとしている。また、死亡事例後、医療機関および運営法人は名称変更を届け出ていた。22日に「ティーエスクリニック」から「東京サイエンスクリニック」に、25日には「一般社団法人TH」から「一般社団法人日本医療会」に変更されている。厚労省は経緯を精査し、透明性の確保に努める方針。今回の措置について厚労省は「患者が死亡し、その原因が未解明である以上、再生医療との関連が否定できず、さらなる疾病発生を防ぐ必要がある」と説明。再生医療の安全性確保を最優先課題として取り組む姿勢を強調した。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について(厚労省) 2) 再生医療を受けた患者、アナフィラキシーショックで死亡か…医療機関は一時停止の緊急命令受ける(読売新聞) 3) 自由診療の細胞投与で50代女性死亡 クリニックに治療停止命令(毎日新聞) 4) 再生医療で50代女性死亡 厚労省が都内のクリニックに治療停止命令(朝日新聞)

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危険な飲酒者、日本のプライマリケアにおける超短時間介入は減酒に有効?/BMJ

 プライマリケアにおける、危険な飲酒(hazardous drinking)者のアルコール摂取量を減らすための医師によるスクリーニングと超短時間介入(1分未満)は、スクリーニングのみと比較して飲酒量低減効果は認められなかった。岡山県精神科医療センターの宋 龍平氏らが、実践的なクラスター無作為化比較試験「Education on Alcohol after Screening to Yield moderated drinking study:EASY研究」の結果を報告した。危険な飲酒をしている患者に対する短時間介入はプライマリケアの現場で広く推奨されているが、さまざまな障壁のため実施率は低いままである。超短時間介入は、長時間のアドバイスやカウンセリングと同程度に有効であることを示した研究も一部にはあるが、報告は一貫しておらず、プライマリケアにおいて簡易評価(スクリーニングのみ)と超短時間介入の有効性を直接比較した無作為化試験はなかった。BMJ誌2025年8月12日号掲載の報告。スクリーニング+超短時間介入vs.スクリーニングのみを無作為化試験で評価 研究グループは、危険な飲酒について日常的なスクリーニングや短時間介入、アルコール依存症の治療や自助グループへの参加機会を提供していない西日本4府県(岡山、兵庫、大阪、広島)のプライマリケアクリニック40施設を、ブロック無作為化法によるコンピューター生成の無作為化シーケンスを用い介入群と対照群に無作為に割り付けた。 対象患者は、AUDIT-C(アルコール使用障害同定テスト-飲酒量)スコアが男性5以上、女性4以上の危険な飲酒をしている20~74歳の外来患者とした。 患者および患者報告アウトカムを収集するスタッフは、割り付けについて盲検化された。 介入群では、AUDIT-Cによるスクリーニングに続いて、1分未満で簡単な口頭アドバイスとアルコールに関する情報リーフレットの提供を実施し、対照群ではAUDIT-Cによる簡易評価のみとした。 主要アウトカムは、24週時における直前4週間の総飲酒量、副次アウトカムは12週時における直前4週間の総飲酒量、および12週時ならびに24週時の飲酒行動変容の意欲であった。総飲酒量に有意差なし 2023年6月29日~8月7日に、40施設において計3,537例が研究への参加に同意し、適格患者1,133例が追跡調査の対象集団となった(介入群:21施設531例、対照群:19施設602例)。 24週時の総飲酒量は、介入群で1,046.9g/4週(95%信頼区間[CI]:918.3~1,175.4)、対照群で1,019.0g/4週(893.5~1,144.6)であり、群間差は27.8g/4週(95%CI:-149.7~205.4、p=0.75)、Hedges’gは0.02(95%CI:-0.10~0.14)であった。 12週時の総飲酒量は、介入群で1,034.1g/4週(95%CI:919.6~1,148.7)、対照群で979.3g/4週(866.1~1,092.4)であり、群間差は54.9g/4週(95%CI:-104.1~213.9、p=0.49)、Hedges'gは0.04(95%CI:-0.08~0.16)であった。 数値スコアに変換して評価した飲酒行動変容への意欲(高スコアほど変化への意欲が高い)は、12週時(群間差:0.25[95%CI:0.12~0.39]、Hedges'g:0.21[95%CI:0.10~0.33])、24週時(0.19[0.05~0.32]、0.16[0.05~0.28])のいずれにおいても介入群が対照群と比べて高かった。 結果を踏まえて著者は、「日本のプライマリケア現場において、危険な飲酒やアルコール依存症の疑いのある患者の飲酒量を減らすことにおいて、超短時間介入がスクリーニングのみと比べて優れていることを裏付けるエビデンスは見つからなかった」とまとめている。

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米国では30年でアルコール関連がんの死亡が倍増/ASCO2025

 米国では、1990年から2021年までの30年間でアルコール摂取に関連するがん(以下、アルコール関連がん)による死亡数がほぼ倍増しており、男性の死亡数がこの急増の主な原因であることが、新たな研究で明らかになった。米マイアミ大学シルベスター総合がんセンターのChinmay Jani氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO25、5月30日~6月3日、米シカゴ)で発表された。 米国公衆衛生局(PHS)長官は2025年初頭に勧告を発出し、飲酒ががんのリスクを高めることに関する強力な科学的エビデンスがあると米国民に警告した。米国立がん研究所(NCI)によると、アルコールは1987年以来、国際がん研究機関(IARC)によって発がん物質に分類されている。また、米国立毒性学プログラム(NTP)も2000年以来、アルコールはヒトに対する既知の発がん物質とする認識を示している。 Jani氏らは、世界疾病負担(GBD)研究のデータを用いて、1990年から2021年の米国における大量飲酒に起因するがんによる年齢調整死亡率(ASMR)を推定した。大量飲酒は、理論上の最小リスク曝露量を超える飲酒と定義した。がんは、あらゆるがんに加え、食道がん、肝臓がん、喉頭がん、乳がん、大腸がん、口唇・口腔がん、鼻咽頭がん、その他の咽頭がん(中咽頭・下咽頭がん)を対象とした。 その結果、アルコール関連がんによる死亡数は、1990年の1万1,896件から2021年には2万3,207件へと約2倍に増加していた。また、2021年のアルコール関連がんによる死亡の約70%は男性に生じたもので、その数は1万6500件を超えていた。 年齢層別に見ると、男女ともに55歳以上の人では20〜54歳の人に比べてASMRが有意に高かった。がんのASMRに占めるアルコール起因のASMRの割合は、55歳以上の男性における肝臓がんを除き、性別や年齢層を問わず増加傾向を示した。 2021年において、55歳以上の男性でがんのASMRに占めるアルコール起因のASMRの割合が最も高かったのは肝臓がん(38.5%)、次いで鼻咽頭がん(31.8%)、55歳以上の女性では、鼻咽頭がん(18.9%)、中咽頭・下咽頭がん(18.4%)であった。20〜54歳においてこの割合が最も高かったのは男女とも口唇・口腔がんであり、男性で41.8%、女性で26.9%であった。アルコール関連がんによるASMRの年間推定変化率(EAPC)は、55歳以上では男女ともに上昇傾向を示し、男性では2008〜2021年のEAPCが+0.5、女性では2006〜2021年のEAPCが+1.1であった。 Jani氏は、「これは憂慮すべき大幅な増加だ。一般の人だけでなく医療現場でも、飲酒とがんリスクの関連について認識を高める必要がある。喫煙とがんの関連については多くの人が認識しているが、飲酒との関連についての認識はまだ十分に浸透していない」と危機感を表している。なお、NCIの2019年の調査では、米国人の89%が喫煙によりがんリスクが上昇することを認識している一方で、アルコールも同様のリスク因子であることを知っている人はわずか45%に過ぎなかったという。 研究グループによると、アルコールはDNAに損傷を与え、ホルモンレベルを変化させることで、がんリスクを高める可能性があるという。しかし、人々の生物学的差異がアルコール関連がんのリスクにどう影響するかについてはさらなる研究が必要だとしている。マイアミ大学シルベスター総合がんセンターのGilberto Lopes氏は、「アルコールが個人のがんリスクに与える影響は潜在的に修正可能なのだから、この研究がアルコールの持つがんリスクに関する人々の理解を深めるのに役立つことを期待している」とASCOのニュースリリースで述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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救急外来におけるアルコール使用障害マネジメントの課題

 アルコール使用障害は、世界で1億人に影響を及ぼしているといわれており、救急外来への受診につながるケースも少なくない。近年の研究では、救急外来でnaltrexoneを投与することで飲酒行動を効果的に抑制することが示唆されているが、十分に活用されているとはいえない。米国・ペンシルベニア大学のIvan Covarrubias氏らは、救急外来においてnaltrexone投与開始を検討する際、臨床医と患者が直面する障壁およびnaltrexone投与を促進するための介入を特定するため、本研究を実施した。The Journal of Emergency Medicine誌オンライン版2025年1月23日号の報告。 コンテキストインタビューを用いて、救急外来における業務を観察し、2023年11月に臨床医、病院職員、患者を対象に自由記入式インタビューを行い、アルコール使用障害に対する薬物療法開始の阻害因子を特定しようと試みた。2024年3月、ペンシルバニア大学医療システムの職員160人を対象に、混合調査法による調査を実施した(回答率:61%)。本調査では、アルコール使用障害治療のさまざまな要素に対する満足度、潜在的な介入の影響を10段階評価により評価した。 主な結果は以下のとおり。・重大な障壁として、アルコール使用障害のスクリーニングプロトコールの欠如、臨床医による治療選択肢の認知度の低さ、緊急を要さない治療の延長傾向などが明らかとなった。・患者の訴えは、救急外来の不快感、治療選択肢への不慣れさ、フォローアップケアへのアクセス困難が挙げられた。・臨床医は、naltrexone投与に関連する問い合わせへの対応に関して最も不安を感じていた。・効果的な介入として、退院患者に対するnaltrexone処方セットの設定、継続的なケアを促進するための薬物使用ナビゲーターの活用などが特定された。 著者らは「救急外来におけるアルコール使用障害の治療の課題は、多面的な問題であり、患者と臨床医の双方に対する教育的な介入が求められる。さらに、臨床医と患者の双方にとって、プロセスの簡素化および合理化を行う必要がある」と結論付けている。

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映画「シンシン」(その1)【なんで演じると癒されるの?(演技の心理)】Part 2

(2)自分を俯瞰する―メタ認知ディヴァインGは、マクリンに「おれたちは演技することで、人生に向き合えるんだ。おまえだってそうだ」「脱獄した気分にもなれる」「芝居でシャバの世界を味わえるんだ。頭の中で出所できる」と演劇の魅力を語ります。海賊、剣闘士、エジプトの王様などの演技を通して、心の自由を得ることができ、人間として生きている日々の喜びを実感できるということです。これは、演出家のブレントの「プロセスを信じろ」というセリフにも通じます。演劇の更生プログラムは、舞台に立ってうまい演技するという結果ではなく、そこに至るプロセス自体が彼らを救済するということです。また、マクリンは、演技中に他のメンバーが後ろを通ったことで演技に集中できなくなり、怒り出します。けんかになりそうになると、あるメンバーが、「昔おれは、怒りにつぶされてた。ある時、食堂でけんかが起こり、あるやつの喉が切られて血が噴き出てたんだ。だけど、それでも近くにいたおれは平静を装って動かなかった(助けようとしなかった)」と語り出します。そして、「おれたちはもう一度人間になるためにここにいる」と涙ながらに言うのです。2つ目の機能は、自分が自分自身を俯瞰する、メタ認知です。これは、演技というプロセスを通して、なりきる喜びを味わいつつ、日々自分の気持ちや行動を見つめ直すことです。これは、感情のセルフコントロールも促し、人間性を回復させます。人間らしく生きるには、自分の弱さや自分のありのままの感情を俯瞰して気付き、虚勢を張ったり無関心を装ったりせずに、受け入れることが必要だからです。そして、欲望や怒りに身を任せない生き方を選ぶことです。これは、アルコール依存症への心理療法にも通じます。演出家のブレントは、ウォーミングアップで「きみたちにとって最もパーフェクトな場所はどこ? パーフェクトな瞬間はいつ?」「誰かと一緒かな?」「どんな音が聞こえる?」「温度を感じる?」「私を連れて行ってくれるかな」と質問します。すると、それぞれのメンバーが語り出すのですが、あるメンバーは「自分が、(刑務所のそばを流れる)ハドソン川が見える椅子に座ると、向こう岸の山の上に母がいて、降りてくるんだ。そして、おれをずっと見てるんだ」と言います。もちろん彼が想像する母親なのですが、まさに母の視点を通して、自分を俯瞰している心のあり方が見て取れます。ちなみに、このように俯瞰を意識して気付きや受容を促す心理療法は、マインドフルネスと呼ばれます。この詳細については、関連記事1をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「シンシン」(その1)【なんで演じると癒されるの?(演技の心理)】Part 3

(3)助け合おうとする―仲間意識マクリンは、もともと一匹狼で、最初はディヴァインGたちに怒りをむき出しにして、何度も食ってかかっていました。ディヴァインGがマクリンを助けようと思い仮釈放委員会へのレポートを作っても、マクリンは断ろうとします。しかし、毎回メンバーたちが輪になって気付いた自分の弱さやありのままの感情を語り合い、一緒に演技の練習をしていくうちに、マクリンは少しずつ心を開いていきます。やがて、彼は「みんなと一緒にいれば、また自分を信じられるかもしれない」としみじみ言うのです。そんななか、ディヴァインG自身の仮釈放の申請が却下となるなど、いろいろ不遇なことが重なり、ディヴァインGはその絶望から演劇の練習中に「何も進歩していない。何が喜劇だよ。とんだお笑い草だ」と暴言を吐き、逃げ出します。すると、数日してマクリンがディヴァインGのところにやってきて、「今度はおれがおまえの力になりたいんだ。おまえがそうしてくれたように」と言い、手を差し伸べるのです。救う側と救われる側という立場がお互いに入れ替わりながら、彼らはより人間らしくなっていくのでした。3つ目の機能は、助け合おうとする、仲間意識です。これは、演技の練習など共通の目的に向かって一緒に何かをするという相互作用から、お互いに気にかけるようになることです。ここからわかることは、「最初から好きだから助け合う」のではないということです。逆です。「助け合うから好きになる」のです。そして「好きになったからさらに助け合う」のです。これが、友情の心理です。そしてこれは、アルコール依存症などの自助グループにも通じます。なお、友情の詳細については、関連記事2をご覧ください。1)「サイコドラマをはじめよう: 人生を豊かにする増野式サイコドラマ」p.25、増野肇、金剛出版、2024<< 前のページへ■関連記事「ZOOM」「RE-ZOOM」【どうキレキレに冴え渡る?(マインドフルネス)】Part 1ワンピース【チームワーク】

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GLP-1RAで飲酒量が3分の1に減る

 肥満症治療における減量目的でも処方されることのあるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬(GLP-1RA)の使用によって、アルコール摂取量が大きく減少するとする研究結果が報告された。ダブリン大学(アイルランド)のCarel le Roux氏らの研究によるもので、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に論文が1月2日掲載され、また欧州肥満学会議(ECO2025、5月11~14日、スペイン・マラガ)でも発表された。習慣的飲酒者では、GLP-1RA使用開始後約4カ月で飲酒量がほぼ3分の1に減少したという。 GLP-1は、血糖降下作用のほかに、食欲を抑えたり、胃の内容物の排出を遅延させたりする消化管ホルモン。Le Roux氏によると、GLP-1による食欲抑制作用の一部は脳への直接的な働きかけによるものと考えられていて、その作用はアルコールへの欲求を抑えるようにも働く可能性があるという。このような作用を有するため、「本研究に参加し飲酒量が減った肥満患者の多くは節酒をほとんど意識することなく、『楽に』飲酒量を減らせたと報告した」と同氏は述べている。 世界中で飲酒は死亡原因の約4.7%を占めている。問題のある飲酒に対する治療介入は、短期的には高い効果を期待できるが、患者の約70%は1年以内に再発する。一方、これまでにも動物実験などから、GLP-1のアナログ製剤(類似薬)であるGLP-1RAが、アルコールへの渇望を抑える効果のあることが示唆されてきている。しかし、ヒトを対象とした研究は「まだ緒に就いたばかり」だと、研究者らは述べている。 この研究は、BMI27以上でGLP-1RA(セマグルチドまたはリラグルチド)による肥満治療を受けている成人患者262人(平均年齢46歳、女性79%)を対象に実施された。治療開始前の自己申告により、全体の11.8%が非飲酒者、19.8%が機会飲酒者、68.3%が習慣的飲酒者に分類された。 262人中188人が3~6カ月(平均112日)後の追跡調査にも参加した。この約4カ月の間に飲酒量が増加した患者はなく、習慣的飲酒者の場合、飲酒量が68%減少していた。研究者らはこの減少幅を、「アルコール依存症の治療目的で使用される薬剤(ナルメフェン)の効果に匹敵する」としている。 Le Roux氏は、「GLP-1RAは肥満治療に有効であり、肥満に関連するさまざまな合併症のリスクを低減することが示されている。さらに今回の研究では、アルコール摂取量の抑制という、肥満改善とは異なる面での有益な側面についても有望な結果が得られた」と解説。ただし一方で、本研究は参加者数が少数であること、GLP-1RAを使用しない比較対照群を設けていないことなどを、解釈上の留意事項として挙げている。

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メトロニダゾール処方の際の5つの副作用【1分間で学べる感染症】第23回

画像を拡大するTake home messageメトロニダゾールを使用する際には、神経症状を含む5つの重要な副作用を覚えておこう。メトロニダゾールは、嫌気性菌や原虫感染症に対して広く使用される抗菌薬です。しかしその使用に伴っては、いくつかの重大な副作用が報告されています。とくに、長期間の使用に関連する神経学的副作用には注意が必要です。今回は、メトロニダゾールの代表的な5つの副作用について解説します。1. 消化器症状メトロニダゾールの副作用として一般的なものに、消化器症状があります。とくに悪心や嘔気が約12%の患者に発生します。2. 味覚変化(金属味)メトロニダゾールの服用により、口の中で金属のような味覚異常を来すことがあります。これは約15%にみられるもので、食欲低下につながる患者さんも少なくありません。3. 脳症メトロニダゾールは中枢神経系に影響を及ぼすことがあり、とくに長期使用や高用量投与において脳症を引き起こすことがあります。典型的な症状には、運動失調、構音障害、めまい、混乱などが含まれます。MRI検査では、小脳歯状核にT2高信号が認められることがあります。メトロニダゾール使用中に小脳症状を来した場合は、メトロニダゾール脳症を疑う必要があります。4. 末梢神経障害メトロニダゾールの長期使用により、末梢神経障害を引き起こすことがあります。手足のしびれが最も頻度が高い神経学的症状です。多くの場合、薬剤の中止により症状は改善しますが、不可逆的なケースも報告されており、注意が必要です。5. ジスルフィラム様反応メトロニダゾールはアルコールと併用すると、ジスルフィラム様反応(顔面紅潮、頭痛、悪心、嘔吐など)を引き起こすことがあります。メトロニダゾール服用中はアルコール摂取を避けるよう指導することが重要です。以上、メトロニダゾールは一般的に安全に使用される抗菌薬ですが、上記の5つの副作用を念頭に置いておく必要があります。長期的な使用による影響はもちろんですが、なかには短期使用でも脳症や末梢神経障害を来す報告もあるため、注意が必要です。1)Daneman N, et al. Clin Infect Dis. 2021;72:2095-2100.2)Matsuo T, et al. Int J Infect Dis. 2019;89:112-115.3)Sobel R, et al. Expert Opin Pharmacother. 2015;16:1109-1115.4)Karrar HR, et al. J Pharma Res Int. 2021;33:307-317.

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