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危険な飲酒者、日本のプライマリケアにおける超短時間介入は減酒に有効?/BMJ

 プライマリケアにおける、危険な飲酒(hazardous drinking)者のアルコール摂取量を減らすための医師によるスクリーニングと超短時間介入(1分未満)は、スクリーニングのみと比較して飲酒量低減効果は認められなかった。岡山県精神科医療センターの宋 龍平氏らが、実践的なクラスター無作為化比較試験「Education on Alcohol after Screening to Yield moderated drinking study:EASY研究」の結果を報告した。危険な飲酒をしている患者に対する短時間介入はプライマリケアの現場で広く推奨されているが、さまざまな障壁のため実施率は低いままである。超短時間介入は、長時間のアドバイスやカウンセリングと同程度に有効であることを示した研究も一部にはあるが、報告は一貫しておらず、プライマリケアにおいて簡易評価(スクリーニングのみ)と超短時間介入の有効性を直接比較した無作為化試験はなかった。BMJ誌2025年8月12日号掲載の報告。スクリーニング+超短時間介入vs.スクリーニングのみを無作為化試験で評価 研究グループは、危険な飲酒について日常的なスクリーニングや短時間介入、アルコール依存症の治療や自助グループへの参加機会を提供していない西日本4府県(岡山、兵庫、大阪、広島)のプライマリケアクリニック40施設を、ブロック無作為化法によるコンピューター生成の無作為化シーケンスを用い介入群と対照群に無作為に割り付けた。 対象患者は、AUDIT-C(アルコール使用障害同定テスト-飲酒量)スコアが男性5以上、女性4以上の危険な飲酒をしている20~74歳の外来患者とした。 患者および患者報告アウトカムを収集するスタッフは、割り付けについて盲検化された。 介入群では、AUDIT-Cによるスクリーニングに続いて、1分未満で簡単な口頭アドバイスとアルコールに関する情報リーフレットの提供を実施し、対照群ではAUDIT-Cによる簡易評価のみとした。 主要アウトカムは、24週時における直前4週間の総飲酒量、副次アウトカムは12週時における直前4週間の総飲酒量、および12週時ならびに24週時の飲酒行動変容の意欲であった。総飲酒量に有意差なし 2023年6月29日~8月7日に、40施設において計3,537例が研究への参加に同意し、適格患者1,133例が追跡調査の対象集団となった(介入群:21施設531例、対照群19施設602例)。 24週時の総飲酒量は、介入群で1,046.9g/4週(95%信頼区間[CI]:918.3~1,175.4)、対照群で1,019.0g/4週(893.5~1,144.6)であり、群間差は27.8g/4週(95%CI:-149.7~205.4、p=0.75)、Hedges’gは0.02(95%CI:-0.10~0.14)であった。 12週時の総飲酒量は、介入群で1,034.1g/4週(95%CI:919.6~1,148.7)、対照群で979.3g/4週(866.1~1,092.4)であり、群間差は54.9g/4週(95%CI:-104.1~213.9、p=0.49)、Hedges'gは0.04(95%CI:-0.08~0.16)であった。 数値スコアに変換して評価した飲酒行動変容への意欲(高スコアほど変化への意欲が高い)は、12週時(群間差:0.25[95%CI:0.12~0.39]、Hedges'g:0.21[95%CI:0.10~0.33])、24週時(0.19[0.05~0.32]、0.16[0.05~0.28])のいずれにおいても介入群が対照群と比べて高かった。 結果を踏まえて著者は、「日本のプライマリケア現場において、危険な飲酒やアルコール依存症の疑いのある患者の飲酒量を減らすことにおいて、超短時間介入がスクリーニングのみと比べて優れていることを裏付けるエビデンスは見つからなかった」とまとめている。

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米国では30年でアルコール関連がんの死亡が倍増/ASCO2025

 米国では、1990年から2021年までの30年間でアルコール摂取に関連するがん(以下、アルコール関連がん)による死亡数がほぼ倍増しており、男性の死亡数がこの急増の主な原因であることが、新たな研究で明らかになった。米マイアミ大学シルベスター総合がんセンターのChinmay Jani氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO25、5月30日~6月3日、米シカゴ)で発表された。 米国公衆衛生局(PHS)長官は2025年初頭に勧告を発出し、飲酒ががんのリスクを高めることに関する強力な科学的エビデンスがあると米国民に警告した。米国立がん研究所(NCI)によると、アルコールは1987年以来、国際がん研究機関(IARC)によって発がん物質に分類されている。また、米国立毒性学プログラム(NTP)も2000年以来、アルコールはヒトに対する既知の発がん物質とする認識を示している。 Jani氏らは、世界疾病負担(GBD)研究のデータを用いて、1990年から2021年の米国における大量飲酒に起因するがんによる年齢調整死亡率(ASMR)を推定した。大量飲酒は、理論上の最小リスク曝露量を超える飲酒と定義した。がんは、あらゆるがんに加え、食道がん、肝臓がん、喉頭がん、乳がん、大腸がん、口唇・口腔がん、鼻咽頭がん、その他の咽頭がん(中咽頭・下咽頭がん)を対象とした。 その結果、アルコール関連がんによる死亡数は、1990年の1万1,896件から2021年には2万3,207件へと約2倍に増加していた。また、2021年のアルコール関連がんによる死亡の約70%は男性に生じたもので、その数は1万6500件を超えていた。 年齢層別に見ると、男女ともに55歳以上の人では20〜54歳の人に比べてASMRが有意に高かった。がんのASMRに占めるアルコール起因のASMRの割合は、55歳以上の男性における肝臓がんを除き、性別や年齢層を問わず増加傾向を示した。 2021年において、55歳以上の男性でがんのASMRに占めるアルコール起因のASMRの割合が最も高かったのは肝臓がん(38.5%)、次いで鼻咽頭がん(31.8%)、55歳以上の女性では、鼻咽頭がん(18.9%)、中咽頭・下咽頭がん(18.4%)であった。20〜54歳においてこの割合が最も高かったのは男女とも口唇・口腔がんであり、男性で41.8%、女性で26.9%であった。アルコール関連がんによるASMRの年間推定変化率(EAPC)は、55歳以上では男女ともに上昇傾向を示し、男性では2008〜2021年のEAPCが+0.5、女性では2006〜2021年のEAPCが+1.1であった。 Jani氏は、「これは憂慮すべき大幅な増加だ。一般の人だけでなく医療現場でも、飲酒とがんリスクの関連について認識を高める必要がある。喫煙とがんの関連については多くの人が認識しているが、飲酒との関連についての認識はまだ十分に浸透していない」と危機感を表している。なお、NCIの2019年の調査では、米国人の89%が喫煙によりがんリスクが上昇することを認識している一方で、アルコールも同様のリスク因子であることを知っている人はわずか45%に過ぎなかったという。 研究グループによると、アルコールはDNAに損傷を与え、ホルモンレベルを変化させることで、がんリスクを高める可能性があるという。しかし、人々の生物学的差異がアルコール関連がんのリスクにどう影響するかについてはさらなる研究が必要だとしている。マイアミ大学シルベスター総合がんセンターのGilberto Lopes氏は、「アルコールが個人のがんリスクに与える影響は潜在的に修正可能なのだから、この研究がアルコールの持つがんリスクに関する人々の理解を深めるのに役立つことを期待している」とASCOのニュースリリースで述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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救急外来におけるアルコール使用障害マネジメントの課題

 アルコール使用障害は、世界で1億人に影響を及ぼしているといわれており、救急外来への受診につながるケースも少なくない。近年の研究では、救急外来でnaltrexoneを投与することで飲酒行動を効果的に抑制することが示唆されているが、十分に活用されているとはいえない。米国・ペンシルベニア大学のIvan Covarrubias氏らは、救急外来においてnaltrexone投与開始を検討する際、臨床医と患者が直面する障壁およびnaltrexone投与を促進するための介入を特定するため、本研究を実施した。The Journal of Emergency Medicine誌オンライン版2025年1月23日号の報告。 コンテキストインタビューを用いて、救急外来における業務を観察し、2023年11月に臨床医、病院職員、患者を対象に自由記入式インタビューを行い、アルコール使用障害に対する薬物療法開始の阻害因子を特定しようと試みた。2024年3月、ペンシルバニア大学医療システムの職員160人を対象に、混合調査法による調査を実施した(回答率:61%)。本調査では、アルコール使用障害治療のさまざまな要素に対する満足度、潜在的な介入の影響を10段階評価により評価した。 主な結果は以下のとおり。・重大な障壁として、アルコール使用障害のスクリーニングプロトコールの欠如、臨床医による治療選択肢の認知度の低さ、緊急を要さない治療の延長傾向などが明らかとなった。・患者の訴えは、救急外来の不快感、治療選択肢への不慣れさ、フォローアップケアへのアクセス困難が挙げられた。・臨床医は、naltrexone投与に関連する問い合わせへの対応に関して最も不安を感じていた。・効果的な介入として、退院患者に対するnaltrexone処方セットの設定、継続的なケアを促進するための薬物使用ナビゲーターの活用などが特定された。 著者らは「救急外来におけるアルコール使用障害の治療の課題は、多面的な問題であり、患者と臨床医の双方に対する教育的な介入が求められる。さらに、臨床医と患者の双方にとって、プロセスの簡素化および合理化を行う必要がある」と結論付けている。

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映画「シンシン」(その1)【なんで演じると癒されるの?(演技の心理)】Part 2

(2)自分を俯瞰する―メタ認知ディヴァインGは、マクリンに「おれたちは演技することで、人生に向き合えるんだ。おまえだってそうだ」「脱獄した気分にもなれる」「芝居でシャバの世界を味わえるんだ。頭の中で出所できる」と演劇の魅力を語ります。海賊、剣闘士、エジプトの王様などの演技を通して、心の自由を得ることができ、人間として生きている日々の喜びを実感できるということです。これは、演出家のブレントの「プロセスを信じろ」というセリフにも通じます。演劇の更生プログラムは、舞台に立ってうまい演技するという結果ではなく、そこに至るプロセス自体が彼らを救済するということです。また、マクリンは、演技中に他のメンバーが後ろを通ったことで演技に集中できなくなり、怒り出します。けんかになりそうになると、あるメンバーが、「昔おれは、怒りにつぶされてた。ある時、食堂でけんかが起こり、あるやつの喉が切られて血が噴き出てたんだ。だけど、それでも近くにいたおれは平静を装って動かなかった(助けようとしなかった)」と語り出します。そして、「おれたちはもう一度人間になるためにここにいる」と涙ながらに言うのです。2つ目の機能は、自分が自分自身を俯瞰する、メタ認知です。これは、演技というプロセスを通して、なりきる喜びを味わいつつ、日々自分の気持ちや行動を見つめ直すことです。これは、感情のセルフコントロールも促し、人間性を回復させます。人間らしく生きるには、自分の弱さや自分のありのままの感情を俯瞰して気付き、虚勢を張ったり無関心を装ったりせずに、受け入れることが必要だからです。そして、欲望や怒りに身を任せない生き方を選ぶことです。これは、アルコール依存症への心理療法にも通じます。演出家のブレントは、ウォーミングアップで「きみたちにとって最もパーフェクトな場所はどこ? パーフェクトな瞬間はいつ?」「誰かと一緒かな?」「どんな音が聞こえる?」「温度を感じる?」「私を連れて行ってくれるかな」と質問します。すると、それぞれのメンバーが語り出すのですが、あるメンバーは「自分が、(刑務所のそばを流れる)ハドソン川が見える椅子に座ると、向こう岸の山の上に母がいて、降りてくるんだ。そして、おれをずっと見てるんだ」と言います。もちろん彼が想像する母親なのですが、まさに母の視点を通して、自分を俯瞰している心のあり方が見て取れます。ちなみに、このように俯瞰を意識して気付きや受容を促す心理療法は、マインドフルネスと呼ばれます。この詳細については、関連記事1をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「シンシン」(その1)【なんで演じると癒されるの?(演技の心理)】Part 3

(3)助け合おうとする―仲間意識マクリンは、もともと一匹狼で、最初はディヴァインGたちに怒りをむき出しにして、何度も食ってかかっていました。ディヴァインGがマクリンを助けようと思い仮釈放委員会へのレポートを作っても、マクリンは断ろうとします。しかし、毎回メンバーたちが輪になって気付いた自分の弱さやありのままの感情を語り合い、一緒に演技の練習をしていくうちに、マクリンは少しずつ心を開いていきます。やがて、彼は「みんなと一緒にいれば、また自分を信じられるかもしれない」としみじみ言うのです。そんななか、ディヴァインG自身の仮釈放の申請が却下となるなど、いろいろ不遇なことが重なり、ディヴァインGはその絶望から演劇の練習中に「何も進歩していない。何が喜劇だよ。とんだお笑い草だ」と暴言を吐き、逃げ出します。すると、数日してマクリンがディヴァインGのところにやってきて、「今度はおれがおまえの力になりたいんだ。おまえがそうしてくれたように」と言い、手を差し伸べるのです。救う側と救われる側という立場がお互いに入れ替わりながら、彼らはより人間らしくなっていくのでした。3つ目の機能は、助け合おうとする、仲間意識です。これは、演技の練習など共通の目的に向かって一緒に何かをするという相互作用から、お互いに気にかけるようになることです。ここからわかることは、「最初から好きだから助け合う」のではないということです。逆です。「助け合うから好きになる」のです。そして「好きになったからさらに助け合う」のです。これが、友情の心理です。そしてこれは、アルコール依存症などの自助グループにも通じます。なお、友情の詳細については、関連記事2をご覧ください。1)「サイコドラマをはじめよう: 人生を豊かにする増野式サイコドラマ」p.25、増野肇、金剛出版、2024<< 前のページへ■関連記事「ZOOM」「RE-ZOOM」【どうキレキレに冴え渡る?(マインドフルネス)】Part 1ワンピース【チームワーク】

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GLP-1RAで飲酒量が3分の1に減る

 肥満症治療における減量目的でも処方されることのあるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬(GLP-1RA)の使用によって、アルコール摂取量が大きく減少するとする研究結果が報告された。ダブリン大学(アイルランド)のCarel le Roux氏らの研究によるもので、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に論文が1月2日掲載され、また欧州肥満学会議(ECO2025、5月11~14日、スペイン・マラガ)でも発表された。習慣的飲酒者では、GLP-1RA使用開始後約4カ月で飲酒量がほぼ3分の1に減少したという。 GLP-1は、血糖降下作用のほかに、食欲を抑えたり、胃の内容物の排出を遅延させたりする消化管ホルモン。Le Roux氏によると、GLP-1による食欲抑制作用の一部は脳への直接的な働きかけによるものと考えられていて、その作用はアルコールへの欲求を抑えるようにも働く可能性があるという。このような作用を有するため、「本研究に参加し飲酒量が減った肥満患者の多くは節酒をほとんど意識することなく、『楽に』飲酒量を減らせたと報告した」と同氏は述べている。 世界中で飲酒は死亡原因の約4.7%を占めている。問題のある飲酒に対する治療介入は、短期的には高い効果を期待できるが、患者の約70%は1年以内に再発する。一方、これまでにも動物実験などから、GLP-1のアナログ製剤(類似薬)であるGLP-1RAが、アルコールへの渇望を抑える効果のあることが示唆されてきている。しかし、ヒトを対象とした研究は「まだ緒に就いたばかり」だと、研究者らは述べている。 この研究は、BMI27以上でGLP-1RA(セマグルチドまたはリラグルチド)による肥満治療を受けている成人患者262人(平均年齢46歳、女性79%)を対象に実施された。治療開始前の自己申告により、全体の11.8%が非飲酒者、19.8%が機会飲酒者、68.3%が習慣的飲酒者に分類された。 262人中188人が3~6カ月(平均112日)後の追跡調査にも参加した。この約4カ月の間に飲酒量が増加した患者はなく、習慣的飲酒者の場合、飲酒量が68%減少していた。研究者らはこの減少幅を、「アルコール依存症の治療目的で使用される薬剤(ナルメフェン)の効果に匹敵する」としている。 Le Roux氏は、「GLP-1RAは肥満治療に有効であり、肥満に関連するさまざまな合併症のリスクを低減することが示されている。さらに今回の研究では、アルコール摂取量の抑制という、肥満改善とは異なる面での有益な側面についても有望な結果が得られた」と解説。ただし一方で、本研究は参加者数が少数であること、GLP-1RAを使用しない比較対照群を設けていないことなどを、解釈上の留意事項として挙げている。

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メトロニダゾール処方の際の5つの副作用【1分間で学べる感染症】第23回

画像を拡大するTake home messageメトロニダゾールを使用する際には、神経症状を含む5つの重要な副作用を覚えておこう。メトロニダゾールは、嫌気性菌や原虫感染症に対して広く使用される抗菌薬です。しかしその使用に伴っては、いくつかの重大な副作用が報告されています。とくに、長期間の使用に関連する神経学的副作用には注意が必要です。今回は、メトロニダゾールの代表的な5つの副作用について解説します。1. 消化器症状メトロニダゾールの副作用として一般的なものに、消化器症状があります。とくに悪心や嘔気が約12%の患者に発生します。2. 味覚変化(金属味)メトロニダゾールの服用により、口の中で金属のような味覚異常を来すことがあります。これは約15%にみられるもので、食欲低下につながる患者さんも少なくありません。3. 脳症メトロニダゾールは中枢神経系に影響を及ぼすことがあり、とくに長期使用や高用量投与において脳症を引き起こすことがあります。典型的な症状には、運動失調、構音障害、めまい、混乱などが含まれます。MRI検査では、小脳歯状核にT2高信号が認められることがあります。メトロニダゾール使用中に小脳症状を来した場合は、メトロニダゾール脳症を疑う必要があります。4. 末梢神経障害メトロニダゾールの長期使用により、末梢神経障害を引き起こすことがあります。手足のしびれが最も頻度が高い神経学的症状です。多くの場合、薬剤の中止により症状は改善しますが、不可逆的なケースも報告されており、注意が必要です。5. ジスルフィラム様反応メトロニダゾールはアルコールと併用すると、ジスルフィラム様反応(顔面紅潮、頭痛、悪心、嘔吐など)を引き起こすことがあります。メトロニダゾール服用中はアルコール摂取を避けるよう指導することが重要です。以上、メトロニダゾールは一般的に安全に使用される抗菌薬ですが、上記の5つの副作用を念頭に置いておく必要があります。長期的な使用による影響はもちろんですが、なかには短期使用でも脳症や末梢神経障害を来す報告もあるため、注意が必要です。1)Daneman N, et al. Clin Infect Dis. 2021;72:2095-2100.2)Matsuo T, et al. Int J Infect Dis. 2019;89:112-115.3)Sobel R, et al. Expert Opin Pharmacother. 2015;16:1109-1115.4)Karrar HR, et al. J Pharma Res Int. 2021;33:307-317.

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造血幹細胞移植後のLTFUを支える試み/日本造血・免疫細胞療法学会

 2025年2月27日~3月1日に第47回日本造血・免疫細胞療法学会総会が開催され、2月28日のシンポジウム「未来型LTFU:多彩なサバイバーシップを支える次世代のケア」では、がん領域におけるデジタルセラピューティクス(Digital Therapeutics:DTx)の有用性および造血幹細胞移植治療におけるDTx開発の試みや、移植後長期フォローアップ(Long Term Follow Up:LTFU)の課題解決のためのICT(Information and Communication Technology)活用と遠隔LTFUの取り組み、さらに主に小児・思春期・若年成人(Children, Adolescent and Young Adult:CAYA)世代の造血幹細胞移植における妊孕性温存と温存後生殖補助医療についての話題が紹介された。造血器腫瘍は多彩なサバイバーシップケアの重要性が増しており、次世代ケアの試みが着々と進められている。同種造血幹細胞移植後のDTx DTxは、治療用アプリによるデジタル技術を用いて、個々の患者の病状に見合った情報をリアルタイムで提供し、患者の行動変容を促して医療効果や医療プロセスの改善を得ることである。新たな介入手段であり情報薬ともいわれ、次回の外来受診までの治療空白をアプリの使用によりフォローし、治療効果を狙う考え方である。 DTxアプリの使用は、QOL、全生存期間(OS)の改善効果が多数報告されており、ドイツではヘルスリテラシーや家族の負担軽減などの改善効果も認められれば薬事承認される。日本では2020年ごろからニコチン依存症や高血圧症、アルコール依存症などを対象疾患としたDTxアプリの使用効果が認められ、薬事承認されている。 固形がん領域では患者の健康状態をアンケート方式で電子的に収集するelectronic Patient Reported Outcome(ePRO)アプリの使用が疾患再発の早期発見・治療につながり、QOL・生命予後の改善が複数のランダム化試験で報告されている。欧州臨床腫瘍学会では2022年のガイドラインでePROアプリのがん診療への導入をGrade 1Aで推奨し、重症や悪化症状に対する臨床医への自動アラート機能を有するePROシステムの使用も推奨している。 岡村 浩史氏(大阪公立大学大学院 医学研究科 血液腫瘍制御学/臨床検査・医療情報医学)らは、2021年に移植患者用アプリを開発し、同種造血幹細胞移植(allogeneic Hematopoietic stem Cell Transplantation:allo-HCT)後の外来通院中患者99例にHCTアプリを導入し、和歌山県立医科大学と共にPilot Studyを実施した。その結果、体温、脈拍数、SpO2、体重、修正Leeスコア(ePRO)、およびこれらの最近の悪化傾向などが移植後重症合併症を早期に予測しうる因子であった。移植後合併症での緊急入院例では入院約10日前から脈拍、SpO2、修正Leeスコアが悪化する体調の変化がみられ、早期探知が可能と考えられた。岡村氏らはHCTアプリのsecond stepとして重症化モデルの精度改善を行い、データ入力1週以内の合併症緊急入院予測モデルの開発を構築する多施設移植後見守りアプリ研究(第II相)を行っている(2025年9月まで約200例を登録する見込み)。患者が装着しているスマートウォッチで収集された身体情報およびePRO(22項目・週1回)への入力データと、医療機関からの診療情報(今後マイナポータルから提供の予定)を集約し、患者の同意の下にデータを解析している。 岡村氏は患者入力によるePROに基づき、将来的には個別症状に合わせた生成AIの利用や、電子カルテとの情報連携、地域医療連携ネットワーク(Electronic Health Record:EHR)、パーソナルヘルスレコード(Personal Health Record:PHR)としての情報連携の強化(病診連携や成人移行時の病院間の連携など)も可能であると考えており、「病院診療情報やePRO、ウエアラブルデバイスによる情報を研究利用し、HCT診療の質を向上させる連携を深めたい」と述べた。医療情報連携、PHRを用いた遠隔LTFUの未来 allo-HCT後の長期生存者の増加に伴い、LTFUの重要性が高まっている。しかし移植実施施設への通院や、非移植実施施設の医療スタッフ教育、移植後合併症に対する総合的な診療体制の構築、小児からのトランジションと継続的フォローアップなど課題は多い。ICTアプローチはLTFUの課題解決において不可欠であり、遠隔医療、およびEHR、PHRをいかに活用するかが重要である。 遠隔医療はICTを用いたリアルタイムのオンライン診療を活用した医療であり、Doctor to Doctor(D to D:専門医→主治医)、Doctor to Patient(D to P:主治医→患者)、Doctor to Patient with Nurse(D to P with N:主治医→患者・看護師)、Doctor to Patient with Doctor(D to P with D:専門医→患者・主治医)の4つのカテゴリーがある。 EHRは、患者同意の下に、患者の基本情報、処方・検査・画像データ等を電子的に共有・閲覧できる。病院間での診療情報の共有が可能になれば、近医での検査結果をあらかじめ医療情報連携で参照してもらい、自宅でD to PのオンラインLTFU受診が可能になる。また紹介先の医療機関から移植実施施設の診療情報にアクセスできることで転医や就職で他県に引っ越す場合、成人科へのトランジションでも切れ目のない医療が提供できる。 全県単位の医療情報ネットワークとして、和歌山県では2013年から、きのくに医療連携システム「青洲リンク」を運用している。平時は、参加病院の電子カルテ、参加診療所の検査結果、参加薬局の調剤情報、画像をインターネットで情報共有し診療を支援する。災害時は、県外にバックアップしている共有情報を活用し災害医療を支援する。参加医療機関は2024年12月25日現在、病院11施設、診療所49施設、同意患者数は約2,700例であり、青洲リンクを利用して相互にデータを参照しながら医療連携を取っている。 和歌山県立医科大学では2020年から紀南病院(和歌山県)とテレビ会議システムで接続する遠隔LTFU外来を開始した。患者は、紀南病院(地域基幹病院)で診察を受け、問診票の記入やバイタルサイン測定、各種検査を行い、その結果を診療情報提供書と共に和歌山県立医科大学(移植実施施設)にFAXで送付する。大学病院の医師はFAXの情報、および青洲リンク活用による紀南病院の診療情報(検査結果、処方、画像)を参照したうえで診療を行う。EHRで診療情報を共有するこの形式は、D to P with Dに該当する。連携先にも医師がいることで対面と遜色ない診察ができ、患者満足度も高く、質の高い遠隔LTFU達成が可能となる。 PHRはスマートウォッチなどデバイスから収集できる日常的な医療情報(脈拍、体重、運動量など)と医療機関での診療情報(検査結果、処方、画像など)、および患者自身が入力する健康情報(血圧、食事量など)を一元化し、デジタルデータとして患者が管理するものである。 青洲リンクではEHRに加えPHRの取り組みも進めており、参加医療機関の診療情報を提供し、患者がスマートフォンで病院の検査結果や処方情報をいつでも見ることが可能なアプリを導入した。PHRを利用した情報提供は、スマートフォンにダウンロードした近隣クリニックでの診療データを、移植実施施設への通院時に見てもらうことができ、またオンライン診療でデータを共有することで遠隔LTFUも可能になる。 西川 彰則氏(和歌山県立医科大学附属病院 医療情報部)は今後、自治体の医療情報連携を基盤としたPHR、移植後ePRO、医療情報、バイタル情報を統合的に集約提供するプラットフォームの構築が望ましいと考えており、allo-HCT後の患者にとっては、利便性が高く連続的なLTFUの体制構築が必須であり、ICTの活用は未来のLTFUにつながる可能性があるとした。妊孕性温存から次のステップへ―がん・生殖医療との協働で目指す造血幹細胞移植後の妊娠・出産 造血器腫瘍は小児がんの約40%を占め、AYA世代では約7%と、成人がんの増加に伴い全体の割合が低下する。CAYA世代の造血器腫瘍の生命予後は改善傾向にあり、長期生存例が増えることで、相対的に妊孕性を含むサバイバーシップケアの重要性が増している。 LTFUのテーマでもある晩期合併症(Late effects)としての性腺障害や不妊はAYA世代にとってがん治療中・治療後の大きな課題であり、2023年の「第4期がん対策推進基本計画」では取り組むべき施策として、CAYA世代の妊孕性温存療法を取り上げている。 がん治療前の妊孕性温存については、2022年8月から対象となる患者への情報提供や意思決定支援ががん診療連携拠点病院の必須要件となった。2024年12月に改訂された『小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン』でも造血器腫瘍治療前のすべての患者に情報提供・意思決定支援を行うことが推奨され、GnRHアゴニストによる卵巣保護や未授精卵子の体外成熟、移植前処置の全身放射線治療時の卵巣・精巣遮蔽についても記載されている。 妊孕性温存における患者の負担は大きく、2021年・2022年には妊孕性温存・温存後生殖補助医療を対象とする助成金制度が全国で均てん化され、研究助成事業も運用されている。全国レジストリである日本がん・生殖医療登録システム(Japan OncoFertility Registry:JOFR)では、本邦におけるがん生殖医療の有効性や実態を調査する目的で、スマートフォン向け患者用アプリFSリンク(Fertility & Survivorship Linkage)をPatient Reported Outcome(PRO)として用い、パートナーシップの状況や挙児の状況を患者自身に提供・更新してもらっている。ただ、AYA世代は身体的・心理的・社会経済的に未自立であり、温存した生殖子の管理やFSリンクの管理は、子供の成長過程のさまざまなトランジションの一環として、成人を迎える頃合いを見計らい親から子へ移行する必要があり、生殖医療担当医と小児がん治療に携わる医師が協働して移行を支援している。妊孕性温存やFSリンクの周知はYouTubeで解説動画を配信し、AYA世代にはLINEを用いて情報提供を行っている。 がん治療後の妊娠可能時期については、厚生労働省から抗がん剤など遺伝毒性のある医薬品の最終投与後の避妊期間に関してのガイダンスが発出されている。造血幹細胞移植後のさまざまな薬剤も妊娠・出産に関わるため、妊娠可能時期についてがん専門薬剤師と共に症例ごとに情報提供している。 移植後の安全な妊娠・出産を検討する際には、胎児や母体のリスクへの対処として適切なワクチン接種と共に移植片対宿主病(Graft Versus Host Disease:GVHD)の管理が必要である。治療薬や放射線治療による合併症にも注意し、妊娠希望例ではLTFUからプレコンセプションケア(妊娠前相談)外来につなげることが重要である。妊孕性喪失後のケアでは、看護師、心理士など多職種による心理・社会的支援を行う。近年、雄のマウスiPS細胞からの卵子生成、またヒトiPS細胞由来の受精卵作製など、生命倫理学的な課題も含め生殖子生成研究の進展が注目されている。 セクシュアリティとパートナーシップ、性機能障害など、患者のさまざまなニーズや悩みに対応するには、地域や院内で患者・家族と生殖医療をつなぐ窓口の一元化が必要である。大阪国際がんセンターではAYA世代サポートチームが妊孕性温存や温存後生殖補助医療の相談窓口になり、効率的な意思決定の支援を行っている。意思決定支援にたけた医療従事者の配置や育成も必要であり、日本がん・生殖医療学会認定ナビゲーター制度も開始された。多田 雄真氏(大阪国際がんセンター 血液内科・AYA世代サポートチーム)は、「日進月歩の生殖医療や移植を受けたサバイバーのアンメットニーズにつなげるために、生殖医療の医師との連携は血液内科移植医やLTFUの看護師にとって重要であり、全国のがん・生殖医療ネットワークを通して顔の見える関係を構築していきたい」と述べた。 allo-HCTではLTFUが不可欠であり、ICTのアプローチをいかに活用するかが重要である。また、移植を受けたサバイバーのニーズはより高度になり、QOLを保ち生きることを目標とした治療が求められている。

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その3)【実はこれが医療保護入院を廃止できない諸悪の根源だったの!?(扶養義務)】Part 2

(2)家族の義務として必要だと社会が思っているから現代は、核家族化しており、子供は成人したら家を出て、親と別居することが多いです。それでも、その子供に何か問題が起きたら、職場やアパート管理会社などから緊急連絡先として親に連絡が行きます。このように、まず親が解決すべきであるとの社会からの圧力があります。この感覚から、子供に障害があれば、たとえ成人していても、親のせいにされます。つまり、社会的には、親も「親扱い」され続けます。2つ目の理由は、社会が家族(親)に責任があり、義務として必要だと思っているからです。強制入院させるかどうかを決めるのは、親の義務である、だからこそ強制入院に家族の同意を得るのは当然と考えます。そして、入院費を支払うのも当然の義務と考えます。逆に、医療保護入院制度が廃止されたら、どうなるでしょうか? たとえば、映画に登場していた摂食障害の患者たちが、入院せずに親と同居または別居している時、万が一死んでしまったら、家族がその責任を親族や世間から問われるでしょう。少なくとも、そう思い込んでいる家族は多いです。一方で、強制入院させていたら、より管理されているため、死亡リスクは低くなる上に、たとえ死亡したとしても、専門的な治療をしても難しかったと捉えられ、少なくとも家族の責任は免れます。そもそも、摂食障害で体重を減らすことは、アルコール依存症で飲酒をやめないこと、もっと言えば宗教上の理由で輸血拒否をすることと本質的には同じ、つまり本人の生き方(嗜癖)の問題です。 治したくないなら、本人の生き方として、死亡リスクも含めて、親ではなく本人がその責任を取るだけの話です。そして、その問題に向き合い、本人が治したいと決意するなら、任意入院すればいいだけの話です。そのはずなのに、それを家族や社会が放っておけないのです。ちなみに、有名人が問題を起こした時、その家族が謝罪会見をしたり、メディアがその家族の家にレポート取材をする風習は、日本独特です。世間に迷惑をかけたら、家族のせいにもされてしまう文化があります。(3)家族の義務として必要だという社会に国が合わせているから実は、2009年の民主党(当時)政権では、国連の障害者権利条約に批准するにあたって、家族(保護者)の同意による強制入院をなくすことが検討されていました。ところが、その後に自公政権が返り咲いたことで、家族の同意をなくすのではなく、逆にそれまでにあった同意する家族の優先順位をなくしてしまい、本人の強制入院に家族が誰でも同意できるように改悪をしてしまったのでした2)。そして、だからこそなおさら国連から改善勧告を受けるという始末になってしまったのでした。なぜ自公政権はそこまでしたのでしょうか?3つ目の理由は、家族の義務として必要だという社会に国が合わせているからです。自民党や公明党は、保守政党であるだけに、これまでの家族同意の権利や義務を重んじる保守的な民意を汲み取るでしょう。これは、介護や育児と同じく、なるべく家族に丸抱えさせようとする考え方です。もちろん、一大巨大産業である精神科病院が所属する団体のロビー活動の影響も大きいでしょう。逆に、医療保護入院制度が廃止されたら、どうなるでしょうか? 医療保護入院による医療費を大きく削減できるというメリットはあります。一方で、その分の入院患者がいなくなってダウンサイジングを余儀なくされる精神科病院とその患者を家で抱え込む家族は国に不満を抱くでしょう。また、その患者たちが戻ってきた地域社会では、治安が不安定になると懸念されるでしょう。少なくとも、そう思う保守的な人は多いでしょう。さらには、厚生労働省の天下り先の1つである強制入院ビジネスがなくなってしまうと懸念されている可能性も考えてしまいます。ちなみに、保守政党である自公政権だからこそ、国民の6割が賛成している選択的夫婦別姓の法整備にも積極的に動こうとしないこともわかります。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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副腎性クッシング症候群〔Adrenal Cushing's syndrome〕

1 疾患概要■ 定義クッシング症候群は、副腎皮質から慢性的に過剰産生されるコルチゾールにより、中心性肥満や満月様顔貌といった特徴的な臨床徴候を示し、糖・脂質代謝異常、高血圧などの合併症を伴う疾患である。手術により治癒が期待できる内分泌性高血圧症の1つである。 広義のクッシング症候群は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)依存性クッシング症候群(下垂体性のクッシング病や異所性ACTH産生腫瘍など)とACTH非依存性クッシング症候群(副腎性クッシング症候群)に大別され、本稿では副腎性クッシング症候群について解説する。■ 疫学厚生省特定疾患副腎ホルモン産生異常症調査研究班による全国実態調査では、日本全国で1年間に約50症例の副腎性クッシング症候群の発症が報告されている。CT検査などが行われる機会が増えた現在では、副腎偶発腫を契機に診断される症例が増加していると考えられる。副腎腺腫によるクッシング症候群の男女比は1: 4と女性に多く、30~40代に好発する。■ 病因副腎皮質の腺腫やがんなどにおいてコルチゾールが過剰産生される。その分子メカニズムとしてcAMP-プロテインキナーゼA(protein kinase A:PKA)経路およびWNT-βカテニンシグナル経路の異常が示されている。顕性クッシング症候群を生じる症例の約85%で症例の副腎皮質腺腫において、PKAの触媒サブユニットをコードするPRKACA(protein kinase A catalytic subunit α)遺伝子、およびアデニル酸シクラーゼを活性化することによりcAMP産生に関わるタンパク質をコードするGNAS(α subunit of the stimulatory G protein)遺伝子、WNTシグナル伝達経路の細胞内シグナル伝達因子であるβカテニンをコードするCTNNB1(β catenin)遺伝子の変異を認めることが報告されている。■ 症状クッシング症候群に特異的な症状として、中心性肥満(顔、頸部、体幹のみの肥満)、満月様顔貌、鎖骨上および肩甲骨上部の脂肪沈着(野牛肩:buffalo hump)、皮膚の菲薄化、皮下溢血、赤色皮膚線条、近位筋萎縮による筋力低下があり「クッシング徴候」と言う。その他、耐糖能異常、高血圧、脂質異常症や性腺機能低下症、骨粗鬆症、精神障害、ざ瘡、多毛を認めることもある。■ 分類副腎腫瘍によるもの、副腎結節性過形成によるものに大別される。副腎腫瘍には副腎皮質腺腫、副腎皮質がんがあり、副腎結節性過形成にはACTH非依存性大結節性過形成(primary bilateral macronodular adrenal hyperplasia:PBMAH)、原発性色素性結節状副腎皮質病変(primary pigmented nodular adrenocortical disease:PPNAD)が含まれる。顕性クッシング症候群のうちPBMAH、PPNADの頻度は併せて5.8%とまれである。また、クッシング徴候を欠くがコルチゾール自律分泌を認める症例を「サブクリニカルクッシング症候群」と言う。■ 予後副腎皮質腺腫によるクッシング症候群は、治療によりコルチゾールを正常化できた症例では同年代とほぼ同程度の予後が期待できる。治療しなければ、感染症や心血管疾患のリスクが増加し、予後に影響することが示されており、早期発見、治療が重要である。一方、副腎皮質がんはきわめて悪性度が高く、急速に進行し、肝臓や肺などへの遠隔転移を認めることも多く予後不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)クッシング徴候や副腎偶発腫、また、治療抵抗性の糖尿病、高血圧、年齢不相応の骨粗鬆症を認めた際は、クッシング症候群を疑い精査を行う。まず、病歴、服薬状況の問診によりステロイド投与による医原性クッシング症候群を除外し、血中コルチゾール濃度に影響を及ぼす薬剤(表)の使用を確認する。表 クッシング症候群の診断に影響する可能性がある薬剤(左側は一般名、右側は商品名)画像を拡大する血中コルチゾール濃度は視床下部から分泌されるCRHの調節により早朝に高値になり、夜間には低値になる日内変動を示す。クッシング症候群ではCRHの調節を受けないため、コルチゾールの日内変動は消失し、デキサメタゾン内服により抑制されない。そのため、24時間尿中遊離コルチゾール高値、デキサメタゾン1mg抑制試験で翌朝血清コルチゾール値≧5μg/dL、夜間血清コルチゾール濃度≧5μg/dLのうち、2つ以上あればクッシング症候群と診断する。さらに早朝の血漿ACTH濃度を測定し、測定感度以下(<5μg/mL)に抑制されていれば副腎性クッシング症候群と診断する。図に診断のアルゴリズムを示す。図 クッシング症候群の診断アルゴリズム画像を拡大するただし、うつ病、慢性アルコール依存症、神経性やせ症、グルココルチコイド抵抗症、妊娠後期などでは視床下部からのCRH分泌増加による高コルチゾール血症(偽性クッシング症候群)を呈することがあり、抗てんかん薬内服ではデキサメタゾン抑制試験で偽陽性を示すことがあるため、注意が必要である。副腎腫瘍の有無の検索のため腹部CT検査を行う。副腎皮質腺腫は脂肪成分が多いため、単純CT検査で辺縁整、内部均一な10HU未満の低吸収値を認める。直径4cm以上で境界不明瞭、内部が出血や壊死で不均一な腫瘍の場合は副腎皮質がんを疑い、MRIやFDG-PETなどさらなる精査を行う。PBMAHでは著明な両側副腎の結節性腫大を認め、PPNADでは副腎に明らかな腫大や腫瘍を認めない。コルチゾールの過剰産生の局在診断のため131I-アドステロール副腎皮質シンチグラフィを行う。片側性副腎皮質腺腫によるクッシング症候群では、健側副腎に集積抑制を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)副腎皮質腺腫では腹腔鏡下副腎摘出術を施行することで根治が期待できる。術後、対側副腎によるコルチゾール分泌の回復までに6ヵ月~1年を要するため、その間は経口でのグルココルチコイド補充を行う。手術困難な症例や、片側副腎摘出術後の再発例、著明な高コルチゾール血症による糖代謝異常や精神異常、易感染性のため術前に早急なコルチゾールの是正が必要な症例に対しては、副腎皮質ステロイドホルモン合成阻害薬であるメチラポン(商品名:メトピロン)、トリロスタン(同:デソパン)、ミトタン(同:オペプリム)が投与可能である。11β-水酸化酵素阻害薬であるメチラポンは可逆性で即効性があることから最もよく用いられている。副腎皮質がんでは開腹による腫瘍の完全摘出が第1選択であり、術後アジュバント療法として、または手術不能例や再発例に対しては症状軽減のためミトタンを投与する。ミトタンは約25~30%の奏効率とされているが、副作用も少なくないため有効血中濃度を維持できない症例も多い。PBMAHでは、症状が軽微な症例や腫大副腎の左右差もあり、合併症などを考慮して症例ごとに片側あるいは両側副腎摘出術や薬物療法による治療方針を決定する。一部の症例でみられる異所性受容体に対する阻害薬が有効な場合もあるが、長期使用による成績は報告されていない。PPNADでは、顕性クッシング症候群を発症することが多いため、両側副腎全摘が第1選択となる。サブクリニカルクッシング症候群では、副腎腫瘍のサイズや増大傾向、合併症を考慮して症例ごとに経過観察または片側副腎摘出術を検討する。4 今後の展望唾液コルチゾール濃度は、外来での反復検査が可能で、遊離コルチゾール濃度との相関が高いことが知られており、欧米では、夜間の唾液コルチゾール濃度がスクリーニングの初期検査として推奨されているが、わが国ではまだ保険適用ではなくカットオフ値の検討が行われておらず、今後の課題である。また、2021年3月に11β-水酸化酵素阻害薬であるオシロドロスタット(同:イスツリサ)の使用がわが国で承認された。メチラポンと比べて服用回数が少なく、多くの症例で迅速かつ持続的にコルチゾールの正常化が得られるとされており、長期使用成績の報告が待たれる。5 主たる診療科内分泌内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本内分泌学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生省特定疾患副腎ホルモン産生異常症調査研究班 副腎ホルモン産生異常に関する調査研究(医療従事者向けのまとまった情報)1)出村博ほか. 厚生省特定疾患「副腎ホルモン産生異常症」調査研究班 平成7年研究報告書. 1996;236-240.2)Lacroix A, et al. Lancet. 2015;386:913-927.3)Yusuke S, et al.Science. 2014;344:917-920.4)Rege J, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2022;107:e594-e603.5)日本内分泌学会・日本糖尿病学会 編. 内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医研修ガイドブック. 診断と治療社;2023.p.182-187.6)Nieman Lk, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2008;93:1526-1540.公開履歴初回2025年1月23日

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 1

今回のキーワード障害者権利条約医療保護入院制度法律の抜け穴判断基準入院費精神医療審査会家族調整市町村長同意前回(その1)は、強制入院の1つである医療保護入院について詳しく説明しました。実は、この医療保護入院は、もはや世界で日本だけにしかなく、障害者権利条約に従っていないと国連から改善勧告がなされています1)。また、精神科医が所属する基幹学会(日本精神神経学会)からは、すでに医療保護入院を廃止すべきであるとの見解が示されています2)。つまり、日本ならではの医療保護入院という制度が障害者への人権侵害を招いており、しかもそれに私たちがあまり気付いていないという衝撃の事実です。どういうことでしょうか?今回(その2)は、映画「クワイエットルームにようこそ」を通して、医療保護入院制度の問題点を明らかにして、強制入院ビジネスの不都合な真実に迫ります。医療保護入院制度の問題点とは?まず、医療保護入院制度の問題点を、病院、家族、地域の3つの立場からそれぞれ明らかにしてみましょう。(1)強制入院の裁量権が病院に独占明日香が強制入院させられた精神科病院は、民間病院でした。実際に、精神科病院の8割以上は民間病院です。よくよく考えると、本来、行動制限のような人権侵害ができるのは警察などの公権力に限られています。しかし、精神障害に限っては、私人(民間病院)がほぼ独断ですることが可能になっています。1つ目の問題点は、強制入院の裁量権が精神科病院に独占されていることです。それを可能にする「法律の抜け穴」を、大きく3つ挙げてみましょう。a.医療保護入院の判断基準が曖昧明日香が入院していた女子病棟には、さまざまな人が入院していました。たとえば、おそらく統合失調症で、何らかの妄想によって自分の髪の毛を燃やしたり暴れる人です。この場合は、措置入院の要件にもなっている「自傷他害のおそれ」があるため、強制入院が必要であると多くの人が納得できます。一方、摂食障害で、食事を食べない、食べても吐くために、超低体重になっている人も何人かいました。確かに、摂食という点では自立不全ではありますが、程度の問題になるため、自傷他害ほど白黒つけられません。また、判断能力が保たれている場合は、本人の意思で体重を減らしていることになります。本人の意思でお酒を飲み続けるアルコール依存症と、「本人の意思」という生き方の問題(嗜癖)としては同じです。ちなみに、アルコール依存症だけではさすがに強制入院の対象になりません。なお、摂食障害が嗜癖である理由については、関連記事1をご覧ください。1つ目の「法律の抜け穴」は、医療保護入院の判断基準が曖昧であることです。その1でも説明しましたが、強制入院の要件は、自傷、他害、自立不全によって「自他への不利益が差し迫っている」ことです。自傷と他害は明確ですが、自立不全は程度の問題になるため、明確ではありません。そもそも、根拠となる精神保健福祉法では「医療及び保護のため」としか記載されていません。つまり、入院が必要と精神科医(精神保健指定医)が独断し、家族が同意すれば、誰でも強制入院させることができます。これは、実はとんでもない権力です。しかも、現在では入院したあとに家族が同意を撤回しても、医療保護入院は継続できるという行政解釈がなされてしまいました3)。ますますとんでもない状況になっています。次のページへ >>

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酔っ払い? ン? 元酔っ払い?【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第2回

酔っ払い? ン? 元酔っ払い?Point外傷の病歴や、疑う所見を入念に確認すべし。時間経過で症状の改善が確認できるか?普段の飲酒後とは異なる腹部症状や、意識変容がないか?症例45歳男性。夜中の1時に歓楽街の路地裏で嘔吐を繰り返し、体動困難となっていたところを通行人に発見され救急搬送された。来院時は吐物まみれで臭いも酷かったが、本人は本日の飲酒は大した量でないという。頭部CTで頭部内病変がないことのみ確認し、外来の診察室で寝かせておくことにした。数時間後に様子を伺いに行くと嘔気・嘔吐が改善していないどころか頻呼吸、頻脈も認め、強い腹痛を訴えていた。慌てて施行した血液検査でアニオンギャップ開大のアシドーシスを認め、速やかにビタミンB1と糖の補充、補液を開始した。半年前に妻に捨てられてから自暴自棄となりアルコール漬けの日々を送っていたが、来院3日前から食欲不振があり、景気付けにと繁華街に繰り出したとのことだった。入院時のスクリーニングでCAGE 3点とアルコール依存症が疑われため、ベンゾジアゼピンの予防内服も開始し、本人に治療希望あったため精神科受診の手配もすすめられた。おさえておきたい基本のアプローチ酔っ払い患者だから、と門前払いしたり先入観をもったりするのは避け、むしろ普段より検査も多めにして、慎重に診察にあたり表1に挙げた疾患の可能性を評価しよう。表1 急性アルコール中毒を疑った際の鑑別疾患実際の診療現場では、患者は指示に応じないどころか悪態をつくなど、とても診察どころではない状況も多々あるが、モニター装着のうえ人目につく場所でこまめに様子を観察しよう。意識レベルの経時的な改善がなければ、ほかの原因を考慮すべきだ1)。図1にERでの対応の流れの一例を提示する。図1 ERでの対応の流れの一例画像を拡大する救急の原則はABCの確保にあり、泥酔患者に対してもまずは気道、呼吸、循環が安定していることを確認するようにしたい。外傷診療で生理学的異常、その後解剖学的異常を評価する流れに似ている。アルコール自体で呼吸抑制を来すには血中アルコール濃度(blood alcohol level:BAL)が400mg/dL以上とされ、めったに出くわさないが、吐物などによる窒息の危険は高く、気道確保の必要性について常に考慮しておく。友達が酔っぱらっていたら仰臥位に寝かさずに、昏睡体位をとろう。意識障害の対応の基本である血糖checkも忘れないようにする。糖尿病や肝硬変が背景になければアルコール自体による低血糖の発症は多くないのだが、小児ではその危険性が増すため2)、誤って口にしてしまった場合などではとくに注意したい。血糖補正の際は、ウェルニッケ脳症予防のために、ビタミンB1の同時投与も忘れずに。酔っ払いにルーチンに頭部CTをとっても1.9%しかひっかからない3)。したがって表2のように、外傷の病歴や、頭部外傷、頭蓋底骨折を疑う所見を認める際に頭部CTを施行するようにする。中毒患者では頸椎骨折の際に頸部痛や神経所見があてにならないケースがあるので、頸部もあわせてCTで評価してしまおう。表2 頭部CTを早期に施行すべき場合頭蓋底骨折を示唆する所見がある(raccoon's eye、バトル徴候、髄液漏、鼓膜出血)頭蓋骨骨折が触知できる大きな外力(転倒などではない)による外傷歴があり、意識変容を認めるBALで予測されるよりも意識状態が悪い意識レベルが著明に低下(GCS※≦13)しており、頭部外傷の病歴や懸念があるGCSが低下していく神経局在症状がある※GCS(Glasgow Coma Scale)落ちてはいけない・落ちたくないPitfallsBALはルーチンで測定しないアルコール中毒自体の診断にBALを測定する意義は限定的で、そもそも筆者の施設では測定ができない。GCSの低下をきたすのはBAL≧200mg/dLであったという前向き研究の結果があり4)、前述のように意識障害の鑑別としてアルコール以外の要因を考慮するきっかけにはなる。PointBAL測定は意識障害にほかの鑑別を要するときに直接の測定が困難な場合、浸透圧ギャップ(血清浸透圧-計算上の浸透圧:通常では体内に存在していない物質分の浸透圧が上昇しているため、ギャップが開大する)から算出が可能であり、とくにエタノール以外のアルコール属中毒の際に参考となる。くれぐれも飲酒運転を警察に密告するために用いてはならない。直接治療に関連のない行為を行い、その結果を本人の同意なく第三者に伝えることは守秘義務違反に抵触する。酔い覚ましに…だけの補液は推奨されない二日酔いの朝イチは3号液+ビタミン剤の点滴に限る…なんて先輩からアドバイスを受けたことがある者は少なからずいるだろうが、アルコールの代謝を担うアルコール脱水素酵素は少量のアルコールで飽和状態になってしまうため、摂取した量にかかわらず、体内では20〜30mg/dL/時程度の一定の速度でしかアルコールを代謝できない。Point補液は泥酔患者のER滞在時間を短縮しないアシドーシスや膵炎合併、脱水症など、それ以外に補液を施行すべき病態があれば別だが、泥酔患者でアルコールの代謝を早める目的のみで補液を施行することに効果はなく、ER滞在時間を短縮する結果とはならないことが報告されている5)。アルコール常習犯への対応は慎重に急性アルコール中毒にルーチンで血液検査を行う必要はないが、とくにアルコール依存患者や肝不全合併患者では、血液検査で肝機能や電解質(低マグネシウム血症や低カリウム血症)を確認する。合併症の1つであるアルコール性ケトアシドーシス(alcoholic ketoacidosis:AKA)は、アニオンギャップ開大のアシドーシス所見が決め手ではあるが、嘔吐による代謝性アルカローシス、頻呼吸による呼吸性アルカローシスを合併し、解釈が単純ではない場合がある。ここ数日経口摂取できていない、嘔気・嘔吐、腹痛があるなどの臨床症状から積極的に疑うようにしたい。AKAの治療は脱水の補正と糖分の補充であり、それ自体では致死的な病態とならない。経過でアシドーシスが改善してこないようなら表3の鑑別疾患も念頭に置きたい。なお、ケトン体の存在の確認に試験紙法による尿検査を使用しても、血中で増加しているβヒドロキシ酪酸は反応を示さないので注意されたい。表3 アルコール性ケトアシドーシス(AKA)の鑑別疾患糖尿病性ケトアシドーシス重症膵炎メタノール、エチレングリコール中毒特発性細菌性腹膜炎ワンポイントレッスンアルコール離脱症候群アルコール常用者で、飲酒から6時間以上間隔が空いた際に出現する交感神経賦活症状(発汗、頻脈など)、不眠、幻視、嘔気・嘔吐、手指振戦、強直間代性発作で鑑別に挙げる。診断基準はDSM-5で定められているので参照いただきたい。慢性的なアルコール飲酒は脳内のGABAA受容体の感受性低下とNMDA受容体の増加を起こしており、アルコール摂取の急激な中止により興奮系であるNMDA受容体が活性化して症状が出現する。図26)のような時間経過で振戦せん妄へと移行していくが、早期に治療介入することで予防できる。図2 アルコール離脱症候群の重症度と時間経過画像を拡大する軽症症状は見逃がされやすく、またけいれんは飲酒中断後早期から生じ得るため注意が必要だ。治療の基本はベンゾジアゼピン系で、アルコールと同様にGABAA受容体に作用させ興奮を抑制させる。けいれん発作中ならジアゼパム(商品名:セルシン、ホリゾン)5〜10mgの静注を行うが、ルート確保困難な際はこだわらず、ミダゾラム(同:ドルミカム)10mgの筋注・口腔内・鼻腔内投与を行う。内服投与の際には、より作用時間の長いジアゼパム(代謝産物まで抑制効果を有する)やクロルジアゼポキシドを選択すればよい。アルコールの嗜好歴がある患者が入院する際には、アルコール依存のスクリーニングに有用7)なCAGE質問スクリーニング(表4)8)を用いて離脱予防の適応を判断しよう。表4 CAGE質問スクリーニング画像を拡大するウェルニッケ・コルサコフ症候群、脚気心慢性のアルコール摂取状態ではアルコール代謝においてビタミンB1が消費されるようになり、まともな食事を摂らなくなることも合わさりビタミンB1欠乏症を生じる。このうち神経系異常を引き起こしたものがウェルニッケ・コルサコフ症候群(dry beriberi)、心血管系異常を引き起こしたものを脚気心(wet beriberi)で、両者のオーバーラップも起こり得る。ウェルニッケ脳症は急性で可逆的とされる脳症のため積極的に疑い治療介入をしたいところだが、古典的3徴とされる眼球運動障害(眼球麻痺・眼振)、意識変容、失調のすべてを満たすものは16%だったとの報告もあり9)、これにこだわると見逃しやすい。Caineらが報告した診断基準(表5)は感度85%、特異度100%と報告されており10)、ぜひとも押さえておきたい。ビタミンB1は水溶性で必要以上の量は腎排泄されるので、疑えば治療doseである高用量チアミンで治療開始してしまおう。表5 ウェルニッケ脳症診断基準勉強するための推奨文献Sturmann K, et al. Alcohol-Related Emergencies: A New Look At An Old Problem. Emergency Medicine Practice. 2001;3:1-23.Muncie HL, et al. Am Fam Physician. 2013;88:589-595.参考1)Nore AK, et al. Tidsskr Nor Laegeforen. 2001;121:1055-1058.2)Lamminpaa A. Eur J Pediatr. 1994;153:868-872.3)Godbout BJ, et al. Emerg Radiol. 2011;18:381-384.4)Galbraith S, et al. Br J Surg. 1976;63:128-130.5)Homma Y, et al. Am J Emerg Med. 2018;36:673-676.6)Kattimani S, Bharadwaj B. Ind Psychiatry J. 2013;22:100-108.7)Fiellin DA, et al. Arch Intern Med. 2000;160:1977-1989.8)Ewing JA. JAMA. 1984;252:1905-1907.9)Harper CG, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1986;49:341-345.10)Caine D, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1997;62:51-60.執筆

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その1)【なんで精神科病院に入院しなきゃいけないの?なんで閉じ込められたり縛られたりするの?(強制入院)】Part 1

今回のキーワード医療保護入院措置入院行動制限身体拘束隔離通信制限皆さんは、強制入院と聞くと何をイメージしますか? ちょっと怖いイメージでしょうか? それでは、なぜ強制的に入院させられるのでしょうか? さらに、なぜ病室に閉じ込められたり縛られたりするのでしょうか?今回は、強制入院をテーマに、映画「クワイエットルームにようこそ」を取り上げます。この映画は、精神科病院での入院生活の日常をポップでコミカルに描きながらも、実はさりげなく強制入院のあり方への疑問も投げかけています。まずは、医療監修の視点も加えて、ツッコミを入れながら解説してみましょう。なんで強制的に入院させられるの?主人公は明日香。28歳のフリーライター。ある時、目が覚めると、知らない白い部屋で自分が縛られていることに気付きます。そして、遠くで女性の叫び声が聞こえてきます。いきなり、ホラーな展開です。彼女はわけがわからず、不安におののきます。しばらくして看護師がやってきて、そこが精神科病院の閉鎖病棟であり、彼女は強制入院をさせられ、身体拘束をされていると聞かされます。まず、なぜ彼女は強制的に入院させられているのでしょうか? その理由(要件)を大きく3つ挙げてみましょう1)。(1)自他への不利益が差し迫っている明日香は、担当看護師から「アルコールと睡眠薬の過剰摂取によって昏睡状態になっているところを、同居人の方に発見されて、ここに来たんです」と聞かされます。1つ目の理由は、自他への不利益が差し迫っていることです。このような自分を傷つけること(自傷)のほかに、暴力など他人を傷つけること(他害)、摂食や排泄などの身辺自立が困難であること(自立不全)が挙げられます。(2)精神障害がある明日香は、酔った勢いで「私はひどい女」「私には価値なんかないんだから」と泣き叫び、同居人宅の2階から飛び降りようとしていました。また、救急病院で胃洗浄をされている時、「死なせてください」と言っていました。その後、意識が戻ったところで、担当看護師から「希死念慮にとらわれた気分変調症の疑いがあるって聞きましたけど。簡単に言えば、自殺願望ですね」と説明されます。2つ目の理由は、精神障害があることです。気分変調症は、うつ病や双極性障害と同じ気分障害の1つです。このほかに、統合失調症や認知症などが挙げられます。逆に言えば、ただの酔っ払い、ハンガーストライキ、純粋な犯罪など合理的な理由がある場合は、精神障害によるものではないため、強制入院の対象にはなりません。(3)判断能力が著しく低い明日香は、救急病院で胃洗浄の処置を受けますが、ベッドの空きがなかったために、意識が戻る前に精神科病院に転院となります。これは、かなりレアケースです。本来は、意識が戻ったところで、医師(多くは精神科医)が判断能力を評価し、精神科病院への転院が必要か判断します。3つ目の理由は、判断能力が著しく低いことです。これは自他に不利益となっている自覚がないことであり、明日香のような意識障害のほかに、認知機能障害、病識欠如が挙げられます。逆に言えば、自覚できて入院に同意している場合は、任意入院となり、強制入院にはなりません。また、たとえばリストカット(自傷)をするのはすっきりするだけのためと自覚して常習的にやっている場合(情緒不安定性パーソナリティ障害)や、悪酔いから覚めて我に返り謝罪や反省の弁を述べている場合(アルコール依存症)は、判断能力が保たれているため、外来通院は勧められますが、強制入院の対象にはなりません。次のページへ >>

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アルコール飲み放題が飲酒問題に及ぼす影響はどの程度か

 国立国際医療研究センターの若林 真美氏らは、レストランやバーでのアルコール飲み放題と問題のあるアルコール消費パターンとの関連を調査した。BMJ Open誌2024年12月3日号の報告。 COVID-19パンデミック中の2022年2月の日本における社会と新型タバコに関するインターネット調査研究プロジェクト(JASTIS研究)のデータを用いて、横断的研究を実施した。問題のあるアルコール消費パターンは、アルコール使用障害スクリーニング(AUDIT)で特定した。飲酒対象者1万9,585人(男性の割合:55%、平均年齢:48.3歳)をAUDITスコアに基づき、問題のない飲酒(AUDITスコア:0〜7)、問題のある飲酒(同:8以上)、危険な飲酒(同:8〜14)、アルコール依存症疑い(同:15以上)の4つに分類した。AUDITの設問3で2以上のスコアの場合、過度な飲酒と判断される。説明変数は、COVID-19パンデミック中の過去12ヵ月間(2021年2月〜2022年2月)における定額制のアルコール飲み放題の利用歴とした。定額制飲み放題の利用と問題のある飲酒または過度な飲酒、危険な飲酒またはアルコール依存症疑いとの関連を分析した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19パンデミック中に定額制のアルコール飲み放題を利用した人は、利用していない人と比較し、問題のある飲酒(多変量バイナリーロジスティック回帰による調整オッズ比:4.64、95%信頼区間[CI]:4.24〜5.07)および過度な飲酒(同:3.65、95%CI:3.33〜4.00)である可能性が高かった。・定額制のアルコール飲み放題を利用した人は、危険な飲酒(多項ロジスティック回帰による調整相対リスク比:3.40、95%CI:3.06〜3.77)およびアルコール依存症疑い(同:8.58、95%CI:7.51〜9.80)との関連が認められた。 著者らは「全体として、定額制のアルコール飲み放題は、危険な飲酒やアルコール依存症疑いを含む、過度な飲酒や問題のある飲酒と関連していることが明らかとなった」と結論付けている。

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日本人双極症外来患者におけるアルコール依存症合併率とその要因〜MUSUBI研究

 双極症は、躁状態とうつ状態の変動を特徴とする精神疾患であり、心理社会的な問題を引き起こす。再発を繰り返すことで認知機能が低下するため、継続的な治療により寛解状態を維持することが重要である。双極症患者は、アルコール依存症を合併することが多く、治療アドヒアランスの低下や自殺リスクの増加に影響を及ぼすことが知られている。しかし、日本人双極症外来患者におけるアルコール依存症のリアルワールドにおける臨床的要因はわかっていない。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本人双極症外来患者におけるアルコール依存症合併率を調査し、そのリスク因子を特定するため検討を行った。Frontiers in Psychiatry誌2024年11月7日号の報告。 日本精神神経科診療所協会および日本臨床精神神経薬理学会の共同プロジェクトであるMUSUBI研究のデータを使用し、双極症患者2,392例を対象に、観察研究を実施した。アルコール依存症の有病率および双極症患者の社会人口統計学的特徴を明らかにしたのち、多変量解析を用いて、アルコール依存症のリスク因子を特定した。 主な結果は以下のとおり。・日本人双極症外来患者のアルコール依存症有病率は5.7%であった。・男性の有病率は7.6%、女性の有病率は3.1%。・二項ロジスティック回帰分析では、アルコール依存症と有意に関連していた因子は、双極症I型、躁状態、他の精神疾患の合併、男性、自殺念慮であることが明らかとなった。・性別による層別化分析では、アルコール依存症は、男性よりも女性において自殺念慮との強い関連が示唆された。・本研究の限界として、横断的研究デザインの観察研究であるため、因果関係を判断できない、入院患者の情報が含まれていない点が挙げられる。 著者らは「日本人の双極症外来患者におけるアルコール依存症の合併率は、一般人口よりも高く、とくに男性でより高かった。さらに、アルコール依存症と自殺念慮との関連は、男性よりも女性において強かった。双極症外来患者では、躁状態とアルコール依存症との間に強い関連が示唆された。これらの結果は、アルコール依存症合併の双極症治療を行う臨床医にとって有用である。今後、よりロバストなエビデンスを得るためには、より大規模な集団を対象とした研究が求められる」としている。

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第240回 消費者向け「遺伝子検査」を受けて思わず動揺!その分析結果とは

消費者向け(Direct-to-Consumer:DTC)遺伝子検査について目にしたことがある医療者も少なくないだろうと思う。私もこれまでネット上で目にはしていたが、眉唾モノとの印象が強く、完全無視を決め込んでいた。しかし、ある取材でこれを受けなければならなくなった。編集者が「早い・安い」で申し込んだ検査キットが届いたのは、今から約1ヵ月前。検査キットと言っても唾液採取のための容器とその補助装備、さらにID・パスワードが書かれた紙が入っていただけだ。まず、そのID・パスワードで検査会社のウェブサイトにアクセスし、個人情報や生活習慣、飲酒・喫煙歴、両親の出身地、自分と親の既往歴などについての簡単なアンケートに回答する。そのうえで同封されていた容器に自分の唾液を充填し、ポストに投函。翌日には検体が無事届いたとのメールが入り、それから1週間で自分のメールアドレスに検査結果終了の案内メールが届いた。体質分析の結果早速アクセスしてみた。200項目超の体質の項目を見る。大まかな項目は以下のとおり。基礎代謝量…高  肥満リスク…低  筋肉の発達能力…高短距離疾走能力…低  有酸素運動適合性…低  運動による減量効果…高アルコール代謝…普通  酒豪遺伝子(意味不明だが)…普通  二日酔い…低アルコール消費量…多  アルコール依存症リスク…中  ワインの好み…赤肌の光沢…低  肌のしわ…多  AGA発症リスク…低まあ、基礎代謝に関しては高いのかどうかわからないが、かつて幼少期の娘からは「お父さんと一緒に寝ていると、お布団の中がコタツを最強にした感じで、冬でも汗をかく」と言われたことがある。体質では「登山家遺伝子」なる項目もあり、そこは“高所登山家タイプ”となっていた。体質の食習慣に関する評価項目では、なぜか芽キャベツと甘いものは好まないとの評価だった(私は仕事場近くの焼き鳥・焼きとん屋に行き、野菜串焼きに芽キャベツがあると喜んで注文し、ムシャムシャ食べてしまうのだが…)。飲酒については、実生活と明確に異なるのは、私の好みのワインは「白」という点だ。肌については自覚がある。男性型脱毛症(AGA)の発症は確かに今のところその兆しはない。しかし、ここまで来ると、大きなお世話と言いたくもなる。いずれにせよ当たらずとも遠からずというか、当たっていると言えるものもあれば、明らかに違うと言えるものもある。ただ、自分の体のことはわかっているようで、わかっていない部分もあるので何とも言えない。性格分析の結果そして性格についても分析があり、同じ項目について事前アンケートの結果と検査結果が並列で記載がある。こちらもアンケート結果と検査結果がほぼ同一のものもあれば違うものもある。どちらかといえばほぼ同一のものがほとんどである。そして「総合性格タイプ」は、持ち前のタフな精神力で、自分の好奇心に従って未知の世界へどんどん飛び込んでいける“サバイバルYouTuber”タイプとの評価である。まあ、当たっていると言えなくもないが、同時にYouTuberと一緒にされるのもなんだかなという感じである。165疾患のリスク、その結果は…さてこの検査の本丸、というか受ける人の多くが気にするであろうと考えられるのが疾患リスクである。私の受けた検査では、「予防」なる大項目があり、さらに一般疾患と各種がんの合計165疾患についてリスクが表示されている。このリスク表示、疾患ごとにオッズ比のような数値と大、中、小の3段階の定性的表現で発症リスクが示してあった。がんの項目を見ていくと、ほとんど問題はなさそうである。が、後半にスクロールしている手が止まった。多発性骨髄腫の発症リスクが「大」とある。思わず「はあ?」と声が漏れてしまった。一瞬動揺してしまうと同時に、検査結果を見る当事者をそういう心理状況に置く結果通知をラーメン店の券売機にある「小」「並」「大」にも似たざっくりした表現で示された腹立たしさも入り混じった何とも言えない不快感である。さて当然のことながら多発性骨髄腫を知らぬわけはない。化学療法が奏功しやすい血液がんの中でも難治で知られるがんである。少なくとも数年前の5年相対生存率は50%未満だ。ちなみにこれ以外でも一般疾患では、痛風、狭心症、そしてなぜか慢性C型肝炎もリスク大と判定された(というか、C型肝炎に未感染であることはたまたま最近行ったある検査で判明している)。だが、やはり多発性骨髄腫のリスク大のインパクトが一番大きい。発症するとかなりの痛みを伴うことや激烈な化学療法が必要になること、そして治癒もコントロールも難しいことがわかっているからだ。もっともDTC遺伝子検査は、正確に言えば遺伝子そのものを調べているわけではなく、「一塩基多型(SNP、スニップ)」と疾患に関する相関を調べた研究を基にリスク判定しているため、各種固形がんや遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)のような発症や増悪に関与する遺伝子変異の検査に比べれば、当たるも八卦当たらぬも八卦の域であることは私自身も百も承知である。ただ、実はちょっとだけ安堵感もあった。血液内科専門医の皆さんならご存じのように、昨今、この疾患では新薬開発が活発で治療選択肢も増えているからだ。治療法によっては5年相対生存率も60%近くまで伸びている。そんなこんなで日本血液学会の「造血器腫瘍診療ガイドライン2023」に記載された多発性骨髄腫のパートを改めて通読してみた。私にとってこれはこれで改めて知識の整理ができる利点もあった。ただ、ガイドラインで示されている治療の実際は、やはり文字で読んでいるだけでもきつそうである。とはいえ、今後本当に多発性骨髄腫を発症したとしても「あの時、ああいう結果が出てたしな」という感じで受け止められると考えれば、この検査が自分にとって無意味だったとまでは言えない。神社でおみくじを引いて、「凶」と出た直後にケガをしたら、「おみくじは凶だったし」と自分を納得させようとすることとどこか似ている。一部の専門家がDTC遺伝子検査の持つ不確実性を踏まえ、「占い」と評してしまうのはそうしたところにも起因しているのかもしれない。ただし、私のように割り切れる人はどれだけいるだろうか? 気弱な人、生真面目な人ならばそうは簡単に割り切れない危険性は十分にある。そのように考えると、まったく科学的根拠がないわけではないとはいえ、ただ唾液を投函してこのような結果が示されるという今の在り方は、もう少し改善することも必要なのではないかとも考え始めている。

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医師の飲酒状況、ALT30超は何割?年齢が上がるほど量も頻度も増える?/医師1,000人アンケート

 厚生労働省は2024年2月に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」1)を発表し、国民に向けて、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を推進している。こうした状況を踏まえ、日頃から患者さんへ適切な飲酒について指導を行うことも多い医師が、自身は飲酒とどのように向き合っているかについて、CareNet.com会員医師1,025人を対象に『医師の飲酒状況に関するアンケート』で聞いた。年代別の傾向をみるため、20~60代以上の各年代を約200人ずつ調査した。本ガイドラインの認知度や、自身の飲酒量や頻度、飲酒に関する医師ならではのエピソードが寄せられた。「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」の認知度 Q1では、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」の認知度について4段階で聞いた。全体では、認知度が高い順に「内容を詳細に知っている」が7%、「概要は知っている」が27%、「発表されたことは知っているが内容は知らない」が23%、「発表されたことを知らない」が43%であり、約60%が本ガイドラインについて認知していた。各年代別でもおおむね同様の傾向だった。診療科別でみると、認知度が高かったのは、外科、糖尿病・代謝・内分泌内科、消化器科、精神科、循環器内科/心臓血管外科、内科、腎臓内科の順だった。ALT値が30U/L超の医師は16% Q2では、医師自身の直近の健康診断で、肝機能を示すALT値について、基準値の30U/L以下か、30U/L超かを聞いた。日本肝臓学会の「奈良宣言」により、ALT値が30U/Lを超えていたら、かかりつけ医を受診する指標とされている2)。「ALT値30U/L超」は167人で、全体の16%を占めていた。年代別の結果として、30U/L超の人の割合が多い順に、50代で22%、60代以上で21%、40代で17%、30代で14%、20代で7%となり、年齢が上がるにつれて30U/L超の人の割合が多くなる傾向にあった。年齢が上がるにつれて、1回の飲酒量が増加 Q3では、1回の飲酒量について、単位数(1単位:純アルコール20g相当)を聞いた。お酒の1単位の目安は、ビール(5度)500mL、日本酒(15度)180mL、焼酎(25度)110mL、ウイスキー(43度)60mL、ワイン(14度)180mL、缶チューハイ(5度)500mL3)。 年代別では、「飲まない」と答えたのが、多い順に50代で32%、40代で30%、30代で26%、60代で22%、20代で15%だった。各年代で最も多く占めたのは、20代、30代、60代では「1単位未満」で、それぞれ36%、36%、32%であった。40代と50代では「1~2単位」が多くを占め、それぞれ32%と26%だった。 ALT値が30U/L超の人の場合では、「飲まない」と答えたのが、多い順に30代で33%、50代で23%、40代で22%、60代で9%、20代で0%だった。また、1回に「5単位以上」飲む人の割合は、30 U/L以下と30 U/L超を合わせた全体では5%だったが、30U/L超の人のみの場合では2倍以上の12%となり、顕著な差がみられた。30U/L超の人では、年齢が上がるにつれて、1回の飲酒量が増加する傾向がみられた。年齢が上がるにつれて、飲酒頻度が増加 Q4では、現在の飲酒頻度を7段階(毎日、週に5・6回、週に3・4回、週に1・2回、月に1~3回、年に数回、飲まない)で聞いた。全体で最も割合が多かったのは「飲まない」で22%であり、次いで「月に1~3回」で16%であった。ALT値が30U/L超の人の場合では、最も割合が多かったのは「週に3・4回」で19%、次いで「飲まない」と「毎日」が同率で16%だった。 全体の年代別では、20代で最も割合が多かったのは「月に1~3回」で37%、次いで「週に1・2回」が20%、30代では「飲まない」が21%、「年に数回」が19%、40代では「飲まない」が25%、「週に5・6回」と「週に3・4回」が同率で15%、50代では「飲まない」が29%、「週に1・2回」が15%、60代以上では「毎日」が24%、「飲まない」が21%であった。とくに60代以上の頻度の高さが顕著だった。 ALT値30U/L超の人の年代別では、20代で最も割合が多かったのは「週に1・2回」と「月に1~3回」で同率の36%、30代では「週に3・4回」と「飲まない」が同率の23%、40代では「週に3・4回」が25%、50代では「毎日」と「飲まない」が同率で23%、60代では「毎日」が28%、次いで「週に1・2回」が21%であった。20代と60代以上では「飲まなない」の割合の低さがみられ、30代と50代では「飲まない」が23%となり節制する人の割合が比較的多く、50代と60代以上で「毎日」の人の割合が20~30%となり、飲酒頻度が上がっている状況がみられた。 ALT値30U/L超の人においてQ3とQ4の結果を総合的にみると、20代は飲まない人の割合が低いものの、飲酒量と飲酒頻度は比較的高くない。また、30代は量と頻度を共に節制している人の割合が高い。60代以上と50代で、量と頻度が共に高い傾向がみられた。30~40代は飲酒の制限に積極的 Q5では、現状の飲酒を制限しようと思うかを聞いた。全体では、「制限したい」は21%に対し、「制限しない」は49%で2倍以上の差が付いた。ALT値30U/L超の人では、「制限したい」は28%に対し、「制限しない」は53%であった。ALT値30U/L超の人で「制限したい」が高かったのは、40代で42%、次いで20代で36%だった。また、30代はすでに飲酒していない人が37%で、年代別で最も多かった。 Q6では、Q5で「飲酒を制限したい」と答えた217人のうち、どのような方法で飲酒を制限するかを4つの選択肢から当てはまるものすべてを選んでもらった。人気が高い順に、「飲酒の量を減らす」が56%、「飲酒の頻度を減らす」が55%、「ノンアルコール飲料に代える」が36%、「低アルコール飲料に代える」が27%となり、量と頻度を減らすことを重視する人が多かった。自身が経験した飲酒のトラブルなど Q7では、自由回答として、飲酒に関するご意見や、自身が経験した飲酒のトラブルなどを聞いた。多くみられるトラブルとして、「記憶をなくした」が最多で15件寄せられ、「二日酔いで翌日に支障が出た」「屋外で寝た」「転倒してけがした」「嘔吐した」「暴れた」「救急搬送された」「アルコール依存症の治療をした」などが年齢にかかわらず複数みられた。自身の飲酒習慣について、「なかなかやめられない」「飲み過ぎてしまう」といった意見も複数あった。そのほか、医師ならではの飲酒に関するエピソードや社会的な側面からの意見も寄せられた。【医師ならではのエピソード】・研修医の時に指導医と潰れた(30代、その他)・医師でアルコール依存になる人が多いため、飲まなくなりました(30代、皮膚科)・アルコール依存症の患者さんをみているととても飲む気にはなれない(30代、麻酔科)・正月の救急外来は地獄(30代、糖尿病・代謝・内分泌内科)・科の飲み会の際に病院で緊急事態が発生すると、下戸の人間がいると非常に重宝されます(40代、循環器内科)・飲酒をすると呼び出しに対応できない(60代、内科)・雨の中、帰宅途中、転倒し意識がなくなり、自分の病院に搬送され大騒ぎでした(60代、脳神経外科)・勤務医時代は飲まないと仲間が働いてくれなかったが、開業して、健康に悪いものはもちろんやめた(70代以上、内科)【社会的な側面や他人への影響】・喫煙があれだけ批判されるなら飲酒も同じぐらい批判されるべきと考える(20代、臨床研修医)・日本では以前は飲酒を強要されることがあったが、米国留学中は飲酒を強要されることはなく、とても快適な時間だった(40代、病理診断科)・日本人は酔っぱらうことが多く、見苦しいし、隙もできる。グローバルスタンダードではありえない(50代、泌尿器科)・テレビCMでアルコール飲料が放映されていることに違和感がある(60代、神経内科)アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。医師の飲酒状況/医師1,000人アンケート

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映画「路上のソリスト」(その1)【それが幸せ?なんで保護されたくないの?(ホームレスの心理)】Part 1

今回のキーワード統合失調症認知機能低下ホームレス支援施設自然化合理主義自然主義ホームレスと聞いて、皆さんはどんなイメージを持っていますか? 気の毒、そしてやはり衛生上や臭いの問題でしょうか? そんな彼らのなかに、支援施設を勧められても望まない人や、いったん施設に入ってもしばらくしてまた路上に戻ってくる人がいます。なぜでしょうか? つまり、なぜ保護されたくないのでしょうか? はたして、ホームレスを続けることは幸せなのでしょうか?今回は、映画「路上のソリスト」を取り上げます。この映画は、実話に基づいており、ホームレスの生き様や助けようとする主人公の葛藤には、リアリティがあります。この映画を通して、ホームレスの心理に迫ってみましょう。なんでホームレスになるの?舞台は大都会のロサンゼルス。大手新聞の人気コラムニストのロペスは、ネタ探しのためにたまたま通りかかった殺風景な公園で、みすぼらしくて風変りな身なりの中年男性に釘付けになります。彼は、弦が2本しかない壊れたバイオリンを巧みに奏でていたのでした。そして、そばにはガラクタの荷物を大量に積んだカートがあり、明らかにホームレスなのでした。興味を抱いたロペスは彼に話しかけます。彼の名前はナサニエル。かつてジュリアード音楽院に通っていたことを聞き出します。なぜ彼は権威ある名門校にいたのに、今は路上で暮らしているのでしょうか?ロペスは、ナサニエルの物語をコラムの連載記事にしようと思い立ち、彼への密着取材を始めます。しかし、ナサニエルの話は、唐突でまとまりなく一方的です。姉の連絡先がわかり、ロペスが電話してわかったことは、彼は若い頃に頭の中で聞こえてくる声に悩まされ、その音楽院を中退し、家では母親に毒を盛られたと言い張り、その後に家出をして行方不明になっていたということでした。つまり、彼は統合失調症を発症しており、幻聴、被害妄想、滅裂によって、社会生活が送れなくなり、長い間ホームレスになっていたのでした。実際に、精神科医によるホームレスの調査研究によると、うつ病40%、統合失調症15%、アルコール依存症15%で、彼らの多くに精神障害があります1)。また、知的水準においては、彼らの約30%が知的障害(IQが70未満)です2)。境界知能についての割合は明らかにされていませんが、正規分布において知的障害の約3倍が境界知能(IQが70以上85未満)であることから、彼らのほとんどが知的障害か境界知能であることが推測できます。つまり、ホームレスになってしまう原因は、もともと健常知能(IQが85以上)ではないことに加えて精神障害を発症することで、認知機能が低下して社会生活が困難になってしまうからです。次のページへ >>

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日本のプライマリケアにおける危険な飲酒やアルコール依存症患者のまん延状況

 岡山県精神科医療センターの宋 龍平氏らは、日本のプライマリケア患者における危険な飲酒と潜在的なアルコール依存症との関係を調査し、患者の変化への準備状況や他者の懸念に対する患者の意識を評価した。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2024年4月4日号の報告。 2023年7〜8月、クラスターランダム化比較試験の参加者を対象としたスクリーニング調査として、多施設横断的研究を実施した。対象は、20〜74歳のプライマリケア診療所の外来患者。危険な飲酒とアルコール依存症疑いの有病率、患者の変化への準備状況、他者の懸念に対する患者の意識を評価するため、アルコール依存症チェックシート(AUDIT)および自己記入式アンケートを用いた。 主な結果は以下のとおり。・診療所18施設から参加した1,388例のうち危険な飲酒またはアルコール依存症の疑いと特定された人は、22%(95%信頼区間[CI]:20〜24)であった。・AUDITスコアが増加すればするほど、変化への対応が増加した。・AUDITスコアが8〜14の人のうち、医師を含む他者が過去1年間の飲酒について懸念を指摘したと報告した人の割合は、わずか22%(95%CI:16〜28)であった。AUDITスコアが15以上の人では、74%であった。 著者らは、「本調査より、日本のプライマリケア現場における普遍的または高リスクのアルコールスクリーニングおよび短期的介入の必要性が示唆された」としている。

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映画「チャーリーとチョコレート工場」【夢の国は「中毒」の国!?その「悪夢」とは?(嗜癖症)】Part 2

4人の子供たちはなんで脱落したの?-3つの嗜癖症先ほどの4人とチャーリーを含む5人の子供たちとその親が工場見学をするさなか、1人ずつトラブルに巻き込まれ、いなくなっていきます。そのたびに、従業員の小人たちがどこからともなく大群で現れ、その子供の問題点を歌とダンスで揶揄します。それでは、4人が脱落したわけをそれぞれの歌の歌詞から解き明かし、嗜癖症の視点で3つに分けて説明しましょう。(1)チョコレートにハマってやめられない―物質の嗜癖症チョコレート工場の内部には、公園があり、木、川、滝、そして地面の草のすべてがチョコレートでできていました。ウォンカから「川のチョコは素手で触らないで」言われますが、食いしん坊のオーガスタスは感激のあまり、その言いつけ(制限)を聞き入れず、それをすくって飲もうとして誤って川に落っこちます。そして、泳げないため、そのままチョコレートのパイプに吸い上げられ、チョコレートの加工部屋に流されてしまったのでした。その時の歌詞は「食い意地張った嫌われ者」でした。1つ目は、何かを体に摂取することにハマってやめられない、つまり物質の嗜癖症です。これは、彼のようなむちゃ食い症(摂食障害)のほかに、食べ吐き(摂食障害)、アルコール依存症、カフェイン依存症、ニコチン依存症、薬物依存症などが挙げられます。(2)買い物またはゲームにハマってやめられない―行動の嗜癖症何でも欲しがるベルーカは、工場でくるみ割りをするリスたちを見て感激し、ペットとして欲しがります。しかし、ウォンカから売り物ではないと言われたため、力ずくで手に入れようと、リスを捕まえます。すると、リスたちから反撃され、くるみの殻の焼却炉に通じるダストシューターの穴に落とされてしまうのでした。その時の歌詞は「鼻つまみ者」でした。ゲーマーでメカに詳しいマイクは、チョコレートを瞬間移動させる転送機を見て、それが実は大発明であることをウォンカに説きます。しかし、ウォンカはチョコレートの転送しか興味を示さず、マイクはそれに腹を立て、無謀にもゲーム感覚で自分が転送機の中に入ります。しかし、設定がうまく行っておらず、転送されたマイクは小さくなってしまったのでした。その時の歌詞は「心は空っぽ」でした。2つ目は、何かをすることにハマってやめられない、つまり行動の嗜癖症です。映画では描かれていませんでしたが、ベルーカのような買い物依存症(オニオマニア)は、手に入れたら興味を失い、また新しい何かを手に入れようとします。手に入る瞬間の快感や万能感を味わいたいために繰り返します。もはや、買うために買っている状態です。行動の嗜癖症は、この買い物依存症やゲーム依存症のほかに、ギャンブル依存症、ため込み症、抜毛症、醜形恐怖症、情緒不安定性パーソナリティ障害、窃盗症(クレプトマニア)、性嗜好障害(パラフィリア)、セックス依存症(ニンフォマニア)などが挙げられます。(3)ちやほやされることにハマってやめられない―人間関係の嗜癖症いつも1番が大好きなバイオレットは、工場の研究室で世界初となる「フルコースディナーが味わえるガム」の試作品を見つけます。そして、ウォンカから「まだ未完成だし、いくつかの点で問題が…」と忠告されたのに、それを振り切って食べてしまいます。すると、試作品の副作用で彼女の体はブルーベリーのように青紫に変色して大きく膨れ上がり身動きが取れなくなってしまったのでした。その時の歌詞は「噛んでばっかり」でした。3つ目は、人と何かでかかわることにハマってやめられない、つまり人間関係の嗜癖症です。これは、彼女のような「承認中毒」のほかに、「正義中毒」(過剰バッシング)、ミュンヒハウゼン症候群(作為症)、共依存、ひきこもり、モラルハラスメント・DVなどが挙げられます。なお、嗜癖症とは、あることが好きになりやめられなくなり困ってしまう病態です。やめられる(コントロールできる)なら単純な嗜癖、できないなら嗜癖症と区別します。なお、世界保健機関(WHO)の診断基準(ICD-11)ではDisorders due to substance use or addictive behaviors、米国精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)ではAddictive Disorderとそれぞれ表記され、依存症を包括しています1,2)。また、表2のそれぞれの疾患は、厳密には別の疾患グループに分類されているもの(※と表示)や、エビデンス不足で疾患概念としてまだ確立していないもの(※※と表示)もありますが、この記事では嗜癖の要素を踏まえて「嗜癖症スペクトラム」としてまとめています。※の表示:厳密には別の疾患グループに分類されているもの※※の表示:エビデンス不足で疾患概念としてまだ確立していないもの<< 前のページへ | 次のページへ >>

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