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361.

プライマリ・ケアで有用な卵巣がん患者早期発見のアルゴリズム開発

 プライマリ・ケアでの卵巣がん患者を見出すアルゴリズムが、英国・ノッティンガム大学プライマリ・ケア部門のJulia Hippisley-Cox氏らによって開発された。同アルゴリズムを用いることで、リスクが最も高い人を早期に発見し、検査受診に結びつける可能性が認められたという。BMJ誌2012年1月28日号(オンライン版2012年1月4日号)掲載報告より。2年間の30~84歳女性の卵巣がん発症・診断を予測可能か、特定のリスク因子で検証 Hippisley-Cox氏らのアルゴリズムは、年齢、卵巣がんの家族歴、卵巣がん以外のがんの既往、BMI値、喫煙、飲酒、社会的階層、食欲不振、体重減少、腹痛、腹部膨満、直腸出血、閉経後出血、頻尿、下痢、便秘、疲労、貧血の有無や状態をリスク因子とするものであった。 アルゴリズムについて、開発のために、大規模プライマリ・ケアデータベースのQResearchに登録する英国およびウェールズの開業医375人からのデータを、および検証のために189人からのデータを得て構成したコホート集団について検討した。 被験者は、2000年1月1日~2010年9月30日の間に登録されていた30~84歳の女性で、基線では卵巣がんと診断されておらず、また食欲不振、体重減少、腹痛、腹部膨満、直腸出血、閉経後出血もなかった。対象者について、2年間での卵巣がん発症・診断を主要評価項目として、Cox比例ハザードモデルを用いて検討した。予測能に優れる年腹部膨満、家族歴、腹痛、閉経後出血など独立予測リスク因子を特定 203万人・年のデータからなる開発コホート群での卵巣がん発症は976例であった。それらに対する独立予測因子は、年齢、卵巣がんの家族歴(リスクが9.8倍高い)、貧血(同2.3倍)、腹痛(同7倍)、腹部膨満(同23倍)、直腸出血(同2倍)、閉経後出血(同6.6倍)、食欲不振(同5.2倍)、体重減少(同2倍)であった。 検証解析の結果、リスク予測因子を用いることによる卵巣がんへの適時診断への変動値(R2統計値、高値ほど価値が高い)は57.6%だった。ROC統計値は0.84、D統計値は2.38だった。 最も高い予測リスクを有する女性の10%が、2年間の全卵巣がん患者の63%を占めていた。 以上を踏まえてHippisley-Cox氏は、「開発したアルゴリズムは、卵巣がんの最大リスク群を早期に検査受診へと誘導できる可能性を持っている。さらなる研究で、最適なアルゴリズム実施の時期、費用対効果、実施による健康アウトカムへの影響などを検討する必要がある」と結論している。

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患者幹細胞を播種した人工気道の移植に成功

患者の自己幹細胞を播種したナノ複合材料で組織工学的にテーラーメードされた人工気道の移植に、スウェーデン・カロリンスカ研究所のPhilipp Jungebluth氏らが成功した。気管腫瘍患者の多くが診断時には切除不能な大きさに達しており、5年生存率は約5%と予後不良だが、安全な気管の再建は困難なため切除可能な場合でも腫瘍の完全切除率は60%に満たないという。同氏らは、2008年に患者の幹細胞を播種したドナー気管の移植を行っているが、サイズが合わないなどの限界があったという。Lancet誌2011年12月10日号(オンライン版2011年11月24日号)掲載の報告。自己骨髄単核細胞播種ナノ複合材料製の人工気道で置換研究グループは、自己幹細胞を播種したナノ複合材料を用いて人工的に作製された気管支移植について報告した。対象は36歳の男性で、遠位気管と主気管支の原発がんに対する減量手術と放射線療法を受けたのち再発した。腫瘍の全摘除術施行後に気道を、事前にバイオリアクターを介し36時間かけて自己骨髄単核細胞を播種したバイオ人工ナノ複合材料で置換した。術後は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)フィルグラスチム10μg/kgとエポエチンβ 4万UIを14日間投与した。フローサイトメトリー、電子顕微鏡、共焦点顕微鏡法を用いたエピジェネティクス検査、多重化サイトカイン検査、miRNA検査、遺伝子発現解析を実施した。合併症、症状、腫瘍の発現は認めず自己幹細胞を再播種しバイオリアクター処置したスキャホールド(人工骨格)に、細胞外マトリックス様の被膜およびCD105陽性細胞を含む増殖性細胞を確認した。合併症は認めず、移植後5ヵ月にわたり症状も腫瘍も発現しなかった。術後、間葉系間質細胞表現型の増加を示す末梢細胞の動員やエポエチン受容体のアップレギュレーション、抗アポトーシス遺伝子、バイオマーカー(miR-34、miR-449)が検出された。これらの知見を再生関連血漿因子の増加と考え合わせると、幹細胞のホーミングや細胞媒介性創傷修復、細胞外マトリックスのリモデリング、移植片の新血管形成が強く示唆された。著者は、「テーラーメードのバイオ人工スキャホールドは、複雑な気道欠損の置換に使用可能である」と結論し、「バイオリアクターによる自己幹細胞の再播種処置や、薬理学的に誘導された部位特異的で移植片特異的な再生能と組織防御能が、良好な臨床的アウトカムの重要な因子となる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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麻酔記録と投与エラーを減らす新システムの有用性

麻酔薬に関する記録と投与エラーを減らすために開発された、マルチモードシステム「SAFERSleep」は、臨床でのエラー改善に有用なことが前向き非盲検無作為化臨床試験による評価の結果、報告された。記録の改善が主であったという。ニュージーランドのオークランド大学麻酔学部門のAlan F Merry氏らが、BMJ誌2011年10月8日号(オンライン版2011年10月4日号)で発表した。SAFERSleepは、ニュージーランド、英国のいくつかの病院で使用中で、特にオークランドの市立病院では2005年以来ほとんどの麻酔薬を対象として使用しているという。作業効率と無菌性を促進する新システム試験は、主要な第3次の高度機能紹介病院の5つの手術室で、同意を得た麻酔医89人が管理していた1万764例の薬剤投与があった1,075の症例について、新しいシステムと従来の手動記録による管理との比較が行われた。新しいシステムには、作業効率と無菌性を促進するため特注の薬品トレイと用途に見合ってデザインされたワゴンから構成され、一般的に使用される麻酔薬はあらかじめ充填されており、大きく読みやすいカラーコードラベルが貼付されている。バーコードリーダーはコンピュータ、スピーカー、タッチパネルとリンクしており、投与の直前に耳と目で選んだ麻酔薬を確認することができ、麻酔記録が自動的に編集され、もし投与開始15分以内に抗菌薬が投薬されない場合、また特定の手順、特に投薬前にラベルのスキャンニングがされていない場合、スクリーンと音声で警告が発せられる仕組みとなっていた。主要評価項目は、静脈注射の記録と投与のエラーの複合(直接観察、記録とバイアル中身との不一致の複合と断続的な視覚刺激への反応とした。副次評価項目には、患者のアウトカム、麻酔医の作業と作業負荷評価の解析、麻酔記録の読みやすさの評価、新システムの手順遵守の評価、参加者へのそれぞれのシステムのアンケート評価などが含まれた。読みやすい記録編集機能が麻酔医に好評、患者アウトカムと作業負荷は従来どおり投与エラーの全体平均は、100投与につき、新システムは9.1件(95%信頼区間:6.9~11.4)に対し、従来法は11.6件(同:9.3~13.9、9投与に1件)だった(格差のP=0.045)。新システムで最も多かったのは記録のエラーで、投与エラーはわずかだった。しかし、従来法と比較するとその差は有意ではなかった。投与エラーの割合は、麻酔医が新システムの2つの鍵となる原理(投与前バーコードスキャニング、音声喚起)を活用しなかった場合と比べて、常に活用した場合はより低かった。エラー平均は100投与につき、6.0件(同:3.1~8.8)vs. 9.7件(8.4~11.1)だった(P=0.004)。断続的な視覚刺激への反応は、新システムでは12%(58/471)、従来法では9%(40/473)だった(P=0.052)。新システムの記録はより読みやすく、麻酔医に好まれた。特に、長期、複雑、緊急の症例について評価が高かった。患者アウトカムや、麻酔医の作業負荷については新システムと従来法とに差は認められなかった。

364.

新しく開発された静脈血栓塞栓症リスク予測モデルQThrombosis

英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らは、高リスクの静脈血栓塞栓症患者が特定可能な新しいリスク予測モデルQThrombosisを開発したことを報告した。同モデルのアルゴリズム変数は患者もよく知る、また一般開業医がルーチンに記録している簡易な臨床指標から成る。Hippisley-Cox氏は「アルゴリズムは一般診療所の臨床コンピュータシステムに組み込むことができ、入院や薬物療法開始以前に、患者が静脈血栓塞栓症リスク増大の可能性があるかを判断できるだろう」と結論している。BMJ誌2011年8月20日号(オンライン版2011年8月16日号)掲載報告より。イングランドとウェールズの診療データベースからリスク予測モデルを開発Hippisley-Cox氏らは、一般診療所からルーチンに収集されている臨床データを用い、前向きオープンコホート研究にて、新しい静脈血栓塞栓症のリスク予測モデルの開発に取り組んだ。具体的には、イングランドとウェールズの564の一般診療所から収集されているQResearchデータベースに登録されていた、過去12ヵ月以内に妊娠記録あるいは静脈血栓塞栓症の病歴がなく、経口抗凝固薬の処方歴のない25~84歳の患者のデータ(2004年1月1日~2010年4月30日分)で、リスク因子を導き出すためのコホート(導出コホート)231万4,701例、検証コホート124万602例を抽出し使用した。アウトカムは、静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症または肺塞栓症)の発症が診療録に記載されていたか、死亡記録の原因とリンクしていた場合とした。導出コホートの検証では、Cox比例ハザードモデルにて導出されたリスク因子について1年時点と5年時点の評価が行われた。検証コホートでは、検定と識別力の検証が行われた。モデル、リスク因子の妥当性が認められる導出コホートでの静脈血栓塞栓症の発生は、同コホート総計1,009万5,199人・年で1万4,756例が認められた(1万人・年につき14.6)。検証コホートでは、同463万2,694人・年で6,913例が認められた(1万人・年につき14.9)。男女から成る最終モデルに含まれた独立予測因子は、年齢、BMI、喫煙状態、静脈瘤、うっ血性心不全、慢性腎臓病、がん、慢性閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、過去6ヵ月以内の入院、抗精神病薬を処方されているであった。著者らは女性の最終モデルには、さらに経口避妊薬、抗がん薬のタモキシフェン、ホルモン補充療法を含めた。それらリスク予測因子の妥当性検証を検証コホートにて行った結果、R2統計値は5年時点で女性33%、男性34%だった。同じく5年時点のD統計値は女性が1.43、男性が1.45。ROC統計の結果は、男女いずれも0.75であり、モデルは適切に調整されたものであることが示された。

365.

喘息患者への気管支拡張薬vs. プラセボvs. 無治療

喘息患者を対象とした前向き実験的試験で報告されるプラセボ効果の客観的および主観的効果結果への影響について、気管支拡張薬とプラセボ(2種類)と無治療とを比較して検討した二重盲検クロスオーバーパイロット試験の結果、客観的なFEV1を指標とした結果ではプラセボ群に改善は認められなかったが、主観的な患者評価では気管支拡張薬とプラセボに有意差は認められなかったことが報告された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院/ハーバードメディカルスクールのMichael E. Wechsler氏らが米国国立補完代替医療センターから助成を受け行った試験報告で、NEJM誌2011年7月14日号で発表された。4つの介入群の客観的指標および主観的評価の変化を比較Wechsler氏らによるパイロット試験は、積極的介入としてアルブテロール吸入(サルブタモール、商品名:サルタノールインへラー、アイロミールエアゾール)と、プラセボ吸入、シャム鍼治療、無治療の4つの介入後の急性変化について比較された。被験者は、79人がスクリーニングを受け、そのうち症状が中等度で適格基準を満たした46例で、連続する4回の受診(3~7日間隔)で4つの介入を無作為に1回ずつ受けた。この介入を1ブロックとして、合計3ブロックの介入(被験者の受診回数は合計12回)が実施された。12回の受診時には毎回、客観的反応の測定として、介入後に各20分の2時間にわたるスパイロメトリーが行われFEV1最大値を測定。また主観的反応の測定として、症状の改善認知度をスコア0~10のビジュアルスケールを用いて回答してもらうとともに、受けた介入が実際の治療と思うかプラセボと思うかも回答してもらった。客観的評価の差は有意、しかし主観的評価の有意差は気管支拡張薬 vs.プラセボに認められず試験を完了したのは39例であった。結果、FEV1が、アルブテロール吸入群では20%増加したのに対し、他の3つの介入群はそれぞれ約7%の増加であった(P<0.001)。しかし、患者評価の結果では気管支拡張薬とプラセボ間に有意差は認められなかった。改善したと回答した患者は、アルブテロール吸入群は50%、プラセボ吸入群は45%、シャム鍼治療群は46%であった。ただし、3群とも無治療群(21%)よりは改善したと回答した人が有意に多かった(P<0.001)。結果を踏まえてWechsler氏は、「プラセボ効果は、臨床的に意味があり、積極的な薬物療法の効果についてライバルとなり得る。臨床管理および調査デザインの視点から、患者評価は信頼できないものであるが、客観的評価を確認するために臨床試験の基本項目とするのであれば、治療をしなかった患者群の評価も基本項目に入れるべきであろう」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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持続型赤血球造血刺激因子製剤エポエチン ベータ ペゴル(商品名:ミルセラ)

 エポエチン ベータ(遺伝子組換え)(商品名:エポジン)に1分子の直鎖メトキシポリエチレングリコール(PEG)を結合させた、長時間持続型の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)である「エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)」(商品名:ミルセラ)が、2011年4月「腎性貧血」を適応として承認された。赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療の課題 腎性貧血は、腎機能障害によるエリスロポエチン産生能低下による貧血である。わが国ではその治療にESAが使用されるようになってから既に20年を越え、透析患者のみならず透析治療導入前の保存期慢性腎不全患者においても、ESAは腎性貧血治療薬として広く普及している。現在、透析患者約30万人のうち、約8割がESAによる貧血治療を受けていると考えられている。 従来のESAは血中半減期が短く、頻繁に投与する必要がある。透析患者では、通常、週3回透析がありESAもその際に投与できるため、通院回数が増えることはないが、保存期や腹膜透析の場合、通常、月に1回もしくは2ヵ月に1回の通院となるため、その間隔では従来のESAでは十分な効果が得られない。十分な効果を得るには、ESA投与だけのための通院が必要となることから、通院頻度が月1回という患者でも治療可能な、血中半減期の長いESAが求められていた。4週間に1回の投与で目標ヘモグロビン濃度を達成 今回承認されたエポエチンベータペゴルは長時間持続型のESAであり、既存のESAより長い血中半減期を有する。そのため、維持用量として、皮下または静脈内投与のいずれにおいても4週間に1回という少ない投与頻度で、確実かつ安定した効果が得られる。また本剤の投与により、腎性貧血治療のガイドライン1)の目標ヘモグロビン値を達成することが確認されている。これらの特徴から、通院が月1回という保存期や腹膜透析の患者に、とくにニーズが高いと予想される。 なお、皮下投与だけではなく静脈内投与においても、4週間に1回の投与が可能であることも特徴の1つである。 安全性については、既存のESAと異なる副作用は確認されていない。なお、本剤は2007年欧州での承認以降、すでに100ヵ国以上で発売されている。透析患者におけるリスク低減 一方、透析患者にとっては、通院の負担という面では従来のESAでも問題はないものの、注射という医療行為によるリスクの低減につながる。きわめて稀とはいえ、薬剤や用量の取り違えや感染のリスクはゼロではなく、できる限りリスクを軽減することが求められるが、従来のESAから本剤に変更することで、月に13回の注射が1回に減り、リスクは13分の1となる。 さらに、医療従事者における業務負担の軽減、薬剤の保管スペースの削減など、本剤のメリットは大きいと言えよう。個々の患者に適したESA治療が可能に ミルセラの登場により、患者の状態に合わせた腎性貧血治療の選択肢が増えると考えられる。今後は、保存期や透析期の病期の違い、貧血の程度や患者の状態により、それぞれの特徴を考慮し、個々の患者に合った適切なESA治療が可能になると考えられる。

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便失禁治療、安定化ヒアルロン酸ナトリウムデキストラノマー粘膜下注入が有効

 便失禁に対する低侵襲性の治療として、安定化ヒアルロン酸ナトリウムデキストラノマー(NASHA Dx)の経肛門的粘膜下注入療法が有効なことが、スウェーデン・ウプサラ大学病院(Akademiska sjukhuset)外科のWilhelm Graf氏らの検討で示された。アメリカでは20~30歳の2.6%から70歳以上の15.3%までの頻度で便失禁がみられると報告されているが、その原因は多岐にわたり完全には解明されていない。治療としては、肛門管への充填剤注入療法を施行する施設が増加しているが、その有効性を証明した対照比較試験はないという。Lancet誌2011年3月19日号掲載の報告。欧米の13施設が参加した無作為化シャム対照試験 研究グループは、便失禁の治療における肛門括約筋粘膜下へのNASHA Dx注射の有効性と安全性を評価する二重盲検無作為化シャム対照試験を実施した。 2006年9月~2008年9月までにアメリカの8施設およびヨーロッパの5施設から、Cleveland clinic Florida便失禁スコア(CCFIS)≧10で、2週間に4回以上の便失禁が認められる18~75歳の患者が登録された。 これらの患者が、経肛門的粘膜下NASHA Dx注入療法を施行する群あるいはシャム対照群に無作為に割り付けられた。治療開始後6ヵ月間、患者と臨床評価を行う医師には割り付け情報が知らされなかったが、注射を行う医師にはマスクされなかった。患者は便失禁エピソードを記録し、2週間当たりの無失禁日の日数を算出した。 主要評価項目は、「ベースラインとの比較における便失禁回数の50%以上の低下」で定義された治療への反応とした。治療3、6ヵ月に臨床評価を行い、NASHA Dx群のみその後もフォローアップが続けられた(9、12ヵ月)。有効率:52% vs. 31%、無失禁日の増加日数:3.1日 vs. 1.7日 選択基準を満たした206例のうち、136例がNASHA Dx群に、70例が対照群に割り付けられた。治療6ヵ月の時点で便失禁回数が50%以上低下した患者の割合は、NASHA Dx群が52%(71/136例)と、対照群の31%(22/70例)に比べ有意に優れていた(オッズ比:2.36、95%信頼区間:1.24~4.47、p=0.0089)。 2週間当たりの無失禁日増加の平均日数は、治療6ヵ月ではNASHA Dx群が3.1日(SD 4.05)と、対照群の1.7日(SD 3.50)に比べ有意に高値を示したが、治療3ヵ月では有意な差はみられなかった[2.6日(SD 3.95) vs. 1.9日(SD 3.46)、p=0.1880]。 6ヵ月間の治療により、NASHA Dx群では128件の治療関連有害事象(直腸痛14%、発熱8%、直腸出血7%、下痢5%、注射部位の出血5%など)が認められ、そのうち重篤な有害事象は2件(直腸膿瘍1例、前立腺膿瘍1例)であった。 著者は、「経肛門的粘膜下NASHA Dx注入療法は便失禁に対する治療として有効である」と結論し、「この低侵襲性の治療法は、今後、患者選択基準、至適な用量と注射部位、長期予後が改善されれば、さらに高い支持を得る可能性がある」と指摘している。

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適度な飲酒、心血管アウトカムを改善:最新知見を含む包括的メタ解析

適度な飲酒は、飲酒しない場合に比べ広範な心血管関連のアウトカムを改善するとともに、全原因死亡のリスクをも低減することが、カナダ・カルガリー大学のPaul E Ronksley氏らの検討で明らかとなった。これまでにも飲酒が種々の心血管関連アウトカムに影響を及ぼすことがいくつかの系統的なレビューで示されているが、いまとなってはこれらのレビューは古いもので、また広範な心血管関連のエンドポイントを包括的に調査、解析したものではないという。BMJ誌2011年2月26日号(オンライン版2011年2月22日号)掲載の報告。日本の7試験を含む84の試験の包括的な系統的レビューとメタ解析研究グループは、飲酒が多様な心血管アウトカムに及ぼす影響を評価した試験について包括的な系統的レビューを行い、メタ解析を実施した。Medline(1950~2009年9月)およびEmbase(1980~2009年9月)を検索して論文を抽出し、参考文献や会議記録などにも当たった。レビューの対象としたのは、飲酒と心血管疾患死、冠動脈心疾患罹患・死亡、あるいは脳卒中罹患・死亡との関連について検討したプロスペクティブなコホート研究であった。4,235試験について患者選択基準、試験の質、データ抽出法を評価し、最終的な解析の対象となったのは日本の7試験を含む84の試験であった。個々の解析項目のアウトカムについてプール解析を行い、変量効果モデルを用いて、非飲酒者との比較における飲酒者の調整相対リスクを算出した。1日1杯の飲酒で心血管イベントのリスクが14~25%低減全体として、飲酒者の相対リスクは、心血管疾患死(解析試験数:21試験)が0.75(95%信頼区間:0.70~0.80)、冠動脈心疾患罹患(29試験)が0.71(0.66~0.77)、冠動脈心疾患死(31試験)が0.75(0.68~0.81)、脳卒中罹患(17試験)が0.98(0.91~1.06)、脳卒中死(10試験)は1.06(0.91~1.23)であった。1杯の酒類のアルコール含有量を12.5g[ビール:355mLの缶または瓶、ワイン:グラス1杯(148mL)、40度の蒸留酒:グラス1杯(44mL)にほぼ相当]と規定して飲酒量とリスクの用量反応解析を行ったところ、冠動脈心疾患死のリスクが最も低かったのは1日1~2杯の飲酒者で、脳卒中死リスクは1日1杯以下の飲酒者で最も低かった。全原因死亡のリスクは、飲酒者のほうが非飲酒者よりも13%低かった(相対リスク:0.87、95%信頼区間:0.83~0.92)。著者は、「1日2.5~14.9gのアルコール摂取(約1日1杯以下)は、非アルコール摂取に比べ、広範な心血管関連アウトカムのリスクを全体として14~25%低減していた」とまとめ、「飲酒による心血管イベントのリスク低減効果は臨床的に重要だが、大量の飲酒は脳卒中の罹患、死亡リスクを増大させることに留意すべきである。これらの効果の根本的な病態生理学的メカニズムを解明する必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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教授 川合眞一先生「関節リウマチ治療にパラダイムシフトをもたらした生物学的製剤」

1977年慶應義塾大学医学部卒業。79年同大学内科リウマチ研究室。87年東京都立大塚病院リウマチ膠原病科医長。91年聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター講師。94年同助教授。99年同教授。2004年、東邦大学医学部付属大森病院膠原病科教授、09年同副医学部長。日本リウマチ学会理事、日本臨床薬理学会評議員前理事長、日本炎症・再生医学会理事、他。日進月歩の関節リウマチ研究関節リウマチは、滑膜が異常に増殖してパンヌスと呼ばれる塊ができます。パンヌスには、リンパ球T細胞やB細胞、マクロファージなどたくさんの細胞が集まって、炎症の元になる物質を作り出すという病態はわかっています。この炎症の元の代表的なものが、TNF-αを中心とした炎症性サイトカインです。この炎症性サイトカインを抑えることが、関節リウマチの治療に有効であり、ここ10年間で効果の高い治療薬が使えるようになり、早期に発見できれば格段に症状を抑えることができるようになりました。リウマチは中世から関節疾患として認識されています。長い歴史を持つ病気ですから、長期にわたり多くの学者によって研究されているにもかかわらず、いまだにその原因は解明されていません。診断基準にしても、これまでは1987年にアメリカで発表された分類基準でした。それが昨年、23年ぶりに米国リウマチ学会と欧州リウマチ連盟が共同で新しい診断基準を提唱しました。これによって、早期診断が可能となり、速やかに治療できるようになりました。この診断基準の一番のポイントは、早期から関節リウマチと診断してもよいところにあるのですが、他の膠原病ではないと否定しなければならないことが大前提です。そこで専門医の知識が必要となります。全身性エリテマトーデスにしても、強皮症にしても関節炎は主要な症状として現れますが、それ以外の疾患の特徴によって鑑別することが可能になります。特に初期症状は、関節リウマチとよく似ていることもあり、簡単に診断してしまい実はSLEであったとわかった場合、本来の疾患の治療が手遅れになり、結果的に、腎臓が悪くなったり肺が悪くなったりして臓器病変を引き起こしてしまう可能性があります。生物学的製剤によって改善された患者さんのQOLメトトレキサートと生物学的製剤の併用によって飛躍的に治療は進歩しましたが、関節リウマチ全体でみると、3割の人には効きません。また、効果があった7割の中でも、その効果はまちまちで、劇的に効いて完治に近い状態の人もいれば、現状維持にとどまっている人など結果に幅があります。もちろん、今まで大きな効果を得る治療法がなかったのですから、それに比べれば改善されましたが、今までが悪すぎたからともいえる結果なのです。それでも、患者さんのQOLは飛躍的に改善されています。数十年前は、関節リウマチに罹患することによって、職業を持つ若い女性が痛みによって仕事ができなくなり、既婚者であれば主婦としての仕事がままならなくなり場合によっては離婚につながることもありました。しかし、今は仕事上何の制約もなく働くことができ、結婚し出産して一般的な生活をおくれる人が増えました。QOLの視点から考えると、やはり画期的な治療ができているといえるのではないかと思います。ただ、薬価が高いという問題は残っています。メトトレキサートの場合は、妊娠を考えたら計画的に投薬をストップしなくてはいけませんが、生物学的製剤、一部の抗リウマチ薬や免疫抑制剤については妊婦への処方もリスクが高くないとの報告もあります。ただし、まだデータが不十分なので、現状では妊娠したら薬は中断しています。もしも妊娠中に痛みがひどくなった場合はステロイドホルモンを使い、出産後、抗リウマチ薬に戻します。このように、妊娠を恐れることなく治療できるようになったのは女性の患者さんにとって朗報だと思います。関節リウマチの場合、人によっては妊娠すると一時的に痛みが治まることがあるのですが、分娩後には症状が悪化することがあるので、元の治療に戻すことが必要です。関節リウマチの治療薬は、ここ数十年で飛躍的に進歩していて、種類も多くそれぞれの特徴も複雑になってきているので、専門医でなければ適切な治療は難しいと思います。だからこそ疑わしいと思ったら専門医に相談してほしいのです。滑膜組織の炎症機序を探る関節リウマチは滑膜細胞が増殖することが問題で、その増殖した滑膜細胞から様々な炎症関連物質が分泌され、炎症の悪循環を作ります。糖代謝の領域ではよいとされるアディポネクチンという脂肪細胞が分泌するサイトカインを使ってみたら、炎症を悪化させてしまいました。これは東邦大学の我々のグループが見つけた結果なのですが、当大学の発表から少し遅れてドイツからも報告されました。アディポネクチンは一方では糖代謝をよくする動脈硬化についてはよいファクターであるのに、局所では炎症を悪化させるという二面性があり、これらの詳細な機序を明らかにするのが現在の研究テーマの一つです。早期発見で3ヵ月以内に抗リウマチ薬を投与リウマチと診断されたら3ヵ月を待たず、すぐに抗リウマチ薬を使うのは大原則となっています。これは大切なポイントで難しいところもあります。元は抗がん薬として使われていたメトトレキサートが週1日少量をリウマチの患者さんに使うと、症状が改善されるということがわかり、アメリカでは1988年、日本では1999年にリウマチの治療薬として認められました。さらに2000年代になって生物学的製剤ができ、リウマチ治療においてパラダイムシフトをもたらしたのです。関節リウマチによる変形は、炎症が続いて初めて変形していくわけで、炎症の初期段階で発見してそれを抑えることができれば、高い率で制することができます。しかし、中にはどうしても抑えることができない患者さんのケースもありますので、さらなる薬の研究、開発が待たれるところです。現在でも治療に難渋している率は2割から3割なのですが、7割から8割の患者さんは薬の進歩や治療でコントロールできています。関節リウマチは長期にわたる病気なので、すでに関節破壊が始まってしまった患者さんに関しては進行させない。早期に発見された患者さんの現状維持はもちろん、それ以上進行させない。すでに進行してしまっていても、関節破壊を起こさせないことが重要です。関節が痛くなったその時が発症と考えていいのですが、ただの痛みか関節リウマチなのかわからない期間はあります。痛みを重視するよりは、関節が腫れ始めて慢性的(数週間)に続いたら疑うべきです。以前は多関節に症状があることが基準となっていましたが、今は一関節でも慢性的な関節腫脹がみられ、リウマトイド因子が陽性であったり、抗CCPが陽性であるなどの検査値の異常を考慮した上で、関節リウマチと診断されるようになりました。昔よりもより早期に診断して、治療介入する方向になっています。ですが、患者さん自身がいつから腫れ始めたのかよくわかっていない場合もあります。とにかく関節が慢性的に腫脹していたら、専門医に診てもらうことをお勧めします。専門医ではなく整骨院で治療を始めて、痛みが治まらないので総合病院へ行ったが関節リウマチとは診断されず、治療が遅れてしまったというケースは、少なくありません。リウマトイド因子が陽性でないからリウマチじゃない、といわれることも多いのです。実は、このリウマトイド因子は関節リウマチ患者の7から8割しか陽性反応がでません。陰性反応だったあとの2から3割の人はリウマトイド因子は陰性なのに関節リウマチなのです。つまり、検査の数字だけに頼っていては、正確な判断は難しいといわざるを得ません。坑CCP抗体は関節リウマチには出ますが、全身性エリテマトーデスには出ないという特異性は確かにありますが、この検査ですら2から3割の人は陰性です。つまり、検査数値の結果が100%ではないことを念頭におかなければならないのです。医学生のみなさんへ関節リウマチは未知の病気ですので、やらなければいけない研究課題は山積しています。東邦医大大森病院では医師2名にスタッフ1名でのスタートでしたが、現在は12名に増えました。免疫疾患、慢性疾患なので、一般には循環器、消化器のような急変する病気ではありませんが、慢性的な病気の患者さんを長期にわたって管理して、病気をコントロールしていくというのは、医者の醍醐味でもあり使命でもあると思います。そのためには知識がなければ管理できませんし、世界の文献を調べて研究し自分なりに解釈して治療を行うというステップが必要なのです。それとともに、病気の原因を究明するための基礎研究もでき、臨床研究もできる。患者さんにも協力していただいて研究していくのは、今後のリウマチ治療研究において意味のあることです。学生にとっては治療も研究も両方を体験できる科であると思います。東邦大学はそこに力を注いでいます。私が当大学に来たのもそこが一番の理由で、臨床に携わりながら研究をし、多くの学生に教えていきたいと考えたからです。そして、立派なリウマチ専門医を育てたいと希望しています。私の教育方針としては、実際に患者さんを診てもらうようにしています。たとえば強皮症の場合、写真では見たことがあるかもしれませんが、実際に診て触ったことがなければ正確な鑑別診断はできません。臨床の所見をとることが、目で見て触ってというクラシカルな行為が、関節リウマチの診断に最も重要なことなのです。これは臨床の現場で教えないとなかなか伝わりません。研修の段階で一番重視している教育の一つです。また、鑑別診断では、総合的な視点が重要です。膠原病は様々な症状を引き起こします。関節だけでなく、心臓も肺も悪くなって皮膚病変もあった場合、科学技術や検査結果にのみ頼るのではなく"診る""触る"などの最も初歩的でクラシカルな診断力が必要とされます。診察所見を大事にする。これが臨床医の本流だと考えています。質問と回答を公開中!

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心血管疾患の生涯リスクを予測する新たなQRISKモデル

新たに開発されたQRISKの心血管疾患に関する生涯リスクスコア(http://www.qrisk.org/lifetime/)は、従来のQRISKモデルの10年リスクスコアでは確認し得ない、より若い年齢層における高リスク例の同定を可能にすることが、イギリス・Nottingham大学プライマリ・ケア科のJulia Hippisley-Cox氏らの検討で示された。QRISK2などのリスク予測アルゴリズムは、通常、心血管疾患の10年絶対リスク≧20%の場合に高リスク例と判定しているが、この20%という閾値では、若年者のうち10年絶対リスクは低いものの相対的に高リスクな例を見逃す懸念がある。生涯リスクによる予測は、特に若年例についてより多くの情報をもたらし、マネジメントの決定やライフスタイルの改善に役立つ可能性があるという。BMJ誌2011年1月8日号(オンライン版2010年12月9日号)掲載の報告。ルーチンのプライマリ・ケア・データを用いた前向きコホート試験研究グループは、心血管疾患の生涯リスクを予測する新たなQRISKモデルを開発し、その妥当性を検証、評価するためのプロスペクティブなコホート試験を実施した。解析には、イングランドとウェールズの一般医(GP)563名からルーチンに登録されたQResearchデータベースのプライマリ・ケア・データを用いた。対象は、1994年1月1日~2010年4月30日までに登録された30~84歳の患者で、心血管疾患の既往歴がなく、スタチンの処方歴がない例とした(導出コホート:234万3,759例、検証コホート:126万7,159例 )。生涯リスクの推算に用いた因子は、喫煙状況、人種、収縮期血圧、総コレステロール/HDLコレステロール比、BMI、冠動脈心疾患の家族歴(60歳未満で発症した一親等内の親族の有無)、Townsend貧困スコア、治療中の高血圧、関節リウマチ、慢性腎疾患、2型糖尿病、心房細動であった。生涯リスクに基づく介入が有益か否かは、さらなる検討を要する検証コホート126万7,159例のデータセットの解析では、生涯リスクが50パーセンタイルの場合の心血管疾患の生涯リスクは31%であり、75パーセンタイルの場合は39%、90パーセンタイルでは50%、95パーセンタイルでは57%であった。検証コホートにおいて生涯リスクモデルあるいは10年リスクモデルのいずれかでリスクが最上位の10%に相当すると判定された例のうち、双方のモデルのどちらもが高リスクと判定した例は14.5%(1万8,385例)にすぎなかった。10年リスクモデルで高リスクと判定された例に比べ、生涯リスクモデルで高リスクと判定された患者は、より若く、少数民族に属する例が多く、冠動脈心疾患の家族歴を有する傾向が強かった。著者は、「新たなQRISKの生涯リスクスコアを用いれば、QRISKモデルの10年リスクスコアでは確認し得ない、より若い年齢層における高リスク例の同定が可能になる」と結論する一方で、「より若い年代でのライフスタイルへの介入は有益な可能性があるが、65歳未満ではその恩恵は小さく、薬物による介入には薬物そのもののリスクが伴う。今後、生涯リスクスコアに基づく介入の費用効果や、このアプローチが許容可能か否かにつき、詳細な検討を行う必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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優れた臨床家は、睡眠、健康と表情の手がかりを結び付ける術を知っている

観察することの訓練を受けていない人でも、睡眠不足の人を見ると、その人がきちんと寝ている時に比べ、健康を損ない魅力を失い、くたびれていると見て取れることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJohn Axelsson氏らによって実証された。Axelsson氏は、「この結果は、人が社会性や臨床的な判断をされる際に、見た目が影響していることを示すものである」としたうえで、「臨床診断において見た目がどれほど影響しているかを理解することの根拠となり、ひいては対診の際に見た目を情報として付加できる根拠ともなる」と結論している。本論は、BMJ誌年末恒例のクリスマス特集論文の1本で、2010年12月18日号(オンライン版2010年12月14日号)に掲載された。訓練を受けていない人が、写真を見て不健康などを認知できるか検証Axelsson氏らは、シャーロックホームズのモデルとして知られるジョセフ・ベル教授の「優れた観察と推論で」という臨床診断の教えを基に本試験を行った。試験は、観察の訓練を受けていない人が、睡眠不足時に撮影された写真を見て、健康や魅力を損なっており、より疲れていると認知するかを検証するというものであった。ストックホルムにある睡眠研究所で、23人の健康な成人(18~31歳、女性11人)と、訓練を受けていない観察者65人(18~61歳、大半がカロリンスカ研究所の学生、女性40人)が参加して行われた。被験者は、通常睡眠(8時間)後と、睡眠不足時(睡眠を5時間に減じられた上で眠らずに31時間後)にそれぞれ顔写真を撮影され、それら写真を観察者にランダムに示し評価をしてもらった。主要評価項目は、観察者が評価した睡眠不足時写真と通常睡眠時写真との、健康度、魅力度、疲労度に関する視覚的アナログスケール(VAS、100mm)の差とした。結果は睡眠と健康の既存モデルに合致結果、健康度に関する平均VASは、睡眠不足時63(SE 2)vs. 通常睡眠時68(SE 2)で、観察者は睡眠不足時の方を健康的ではないと捉えていたことが認められた(p<0.001)。疲労度についても、同53(SE 3)vs. 44(SE 3)、魅力度についても38(SE 2)vs. 40(SE 2)で、睡眠不足時の方が疲労度が高く、魅力に乏しいと捉えていたことが示された(いずれもP<0.001)。また、健康度の評価が低下することと、疲労度の評価の上昇および魅力度の評価の低下は関連していることが認められた。著者は「これら結果は、既存の睡眠と健康の関連モデルに合致していた。今後、臨床設定で、表情の手がかり(facial cue)について検証を行うことが必要と思われる。おそらく優れた臨床家は、睡眠や健康と表情の手がかりとを結び付ける術を知っており駆使しているからだ。このように我々の研究成果は、ベル教授の教えや、俗に言われる“beauty sleep”に隠された健康や魅力に関する判断への洞察を提示するものである」とまとめている。

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カテーテルベースの腎除神経術、治療抵抗性高血圧の降圧に有用

治療抵抗性の高血圧患者に対するカテーテルベースの腎除神経術は実質的な降圧効果を示し、安全に施行可能なことが、オーストラリアBaker IDI心臓・糖尿病研究所(メルボルン)のMurray D Esler氏らが行った「Symplicity HTN-2」試験で示された。腎臓の交感神経系の活性化は本態性高血圧の主病因とされる。降圧薬が一般化する以前から、重症高血圧の治療として非選択的な交感神経除去術の有効性が示されていたが、近年の血管内カテーテル技術の進歩により、腎動脈内腔にラジオ波を当てることで腎動脈外膜に局在する腎神経を選択的に除神経することが可能になった。Lancet誌2010年12月4日号(オンライン版2010年11月17日号)掲載の報告。腎除神経術の効果と安全性を評価する無作為化試験Symplicity HTN-2試験の研究グループは、治療抵抗性の高血圧患者に対する降圧療法としてのカテーテルベースの腎除神経術(Symplicityカテーテルシステム)の、効果と安全性を評価する目的で、プロスペクティブな無作為化試験を実施した。ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの24の施設が参加し、3剤以上の降圧薬を服用してもベースラインの収縮期血圧が≧160mmHgの患者(2型糖尿病を合併する場合は≧150mmHg)が、これまでの治療に加え腎除神経術を施行する群あるいはこれまでの治療のみを継続する群(対照群)に無作為に割り付けられた。データ解析の担当者には治療割り付け情報が知らされなかった。効果に関する主要評価項目は6ヵ月後の診察室における坐位収縮期血圧の変化とし、6ヵ月の時点でフォローアップを継続中の全例が解析の対象となった。6ヵ月後には33/11mmHgの差が2009年6月9日~2010年1月15日までに、適格基準を満たした190例のうち106例(56%)が、腎除神経術群(52例)あるいは対照群(54例)に割り付けられた。6ヵ月後に主要評価項目の評価が可能だったのは、腎除神経術群49例(94%)、対照群51例(94%)であった。診察室血圧は、腎除神経術群がベースラインの178/96mmHg(SD 18/16mmHg)から32/12mmHg(SD 23/11mmHg、p<0.0001)低下したのに対し、対照群はベースラインの178/97mmHg(SD 17/16mmHg)から1/0mmHg(SD 21/10mmHg、収縮期:p=0.77、拡張期:p=0.83)しか変化しなかった。6ヵ月後の両群間の血圧の差は33/11mmHgであり、有意差を認めた(p<0.0001)。6ヵ月後に収縮期血圧が10mmHg以上低下した患者は、対照群が51例中18例(35%)にすぎなかったのに比べ、腎除神経術群は49例中41例(84%)に上った(p<0.0001)。手技あるいはデバイス関連の重篤な有害事象はみられず、有害事象の頻度は両群間で差はなかった。腎除神経群の1例で動脈硬化病変の進行がみられたが、治療の必要はなかった。(菅野守:医学ライター)

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腱症に対する注射療法のエビデンス

腱症に対するコルチコステロイド注射は、短期的には有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性があることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のBrooke K Coombes氏らが行った系統的なレビューで示された。現在、エビデンスに基づく腱症の治療ガイドラインはほとんどないという。腱症は、angiofibroblastic hyperplasia(細胞過形成、血管新生、蛋白合成増進、基質破壊などがみられる)を特徴とし、炎症性疾患ではないためコルチコステロイド注射には疑問の声もあり、ラウロマクロゴール(一般名:ポリドカノール)、多血小板血漿、ボツリヌス毒素、プロテイナーゼなどの注射療法の施行機会が増えているという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。腱周囲注射とプラセボ、非手術的介入の無作為化試験を解析研究グループは、腱症に対する注射療法の臨床効果および有害事象リスクの評価を目的に系統的なレビューを行った。8つのデータベースを、言語、発表の形態や時期を制限せずに検索し、腱症に対する腱周囲注射とプラセボあるいは非手術的介入の効果を比較した無作為化対照比較試験を抽出した。メタ解析にはランダム効果モデルを用い、相対リスクおよび標準化平均値差(standardised mean difference:SMD)を推算した。臨床効果に関する主要評価項目は、プロトコルで規定した疼痛スコアとし、短期(4週、範囲:0~12週)、中期(26週、同:13~26週)、長期(52週、同:52週以上)に分けて解析した。コルチコステロイド注射は短期的には有効同定された3,824試験のうち、適格基準を満たした41試験に登録された2,672例のデータが解析の対象となった。多くの質の高い無作為化試験では、コルチコステロイド注射の短期的な疼痛改善効果が他の介入法に比べ優れるとの一致した知見が示されたが、この効果は中期、長期には逆転した。たとえば、外側上顆痛の治療に関するプール解析では、コルチコステロイド注射は短期的には非介入群に比べ疼痛の抑制において大きな効果(SMD>0.8と定義)が認められた(SMD:1.44、95%信頼区間:1.17~1.71、p<0.0001)が、中期(同:-0.40、-0.67~-0.14、p<0.003)、長期(同:-0.31、-0.61~-0.01、p=0.05)には非介入群の方が効果は有意に大きかった。回旋腱板障害に対するコルチコステロイド注射の短期的な効果は、明確ではなかった。有害事象の報告のある試験においてコルチコステロイド注射を受けた991例のうち、重篤な有害事象(腱断裂)がみられたのは1例(0.1%)のみであった。外側上顆痛の治療のプラセボ対照比較試験では、ヒアルロン酸ナトリウム注入が短期(SMD:3.91、95%信頼区間:3.54~4.28、p<0.0001)、中期(同:2.89、2.58~3.20、p<0.0001)、長期(同:3.91、3.55~4.28、p<0.0001)に有効で、ボツリヌス毒素注入は短期(同:1.23、同:0.67~1.78、p<0.0001)に有効、prolotherapyは中期(同:2.62、1.36~3.88、p<0.0001)に有効であった。アキレス腱症の治療では、ラウロマクロゴール、アプロチニン、多血小板血漿はプラセボに比べ有効ではなかったのに対し、prolotherapyは伸張性運動よりも有効ではなかった。著者は、「外側上顆痛の治療では、短期的にはコルチコステロイド注射は有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性がある」と結論し、「しかし、腱症は部位によって効果にばらつきがみられるため、注射療法の効果を一般化すべきではない」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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グルコサミンとコンドロイチンは単独・併用でも関節痛への効果はない

グルコサミン、コンドロイチンのサプリメントを単独または併用服用しても、股関節痛や膝関節痛を和らげることはなく、関節腔狭小化への影響もないことが、スイスのベルン大学社会・予防医療研究所のSimon Wandel氏らが行ったネットワーク・メタ解析の結果、明らかにされた。Wandel氏は、「保健衛生を担う当局および健康保健事業者は、これらの製剤コストをカバーすべきではない。そしてまだ投与を受けていない患者への新たな処方を阻止しなければならない」と提言している。BMJ誌2010年10月2日号(オンライン版2010年9月16日号)掲載より。プラセボとの比較で、グルコサミン、コンドロイチン単独・併用の関節痛への効果を判定Wandel氏らは、関節痛とX線診断で股関節炎や膝関節炎の病勢進行が認められた症例に対し、グルコサミン、コンドロイチンを単独または併用の効果を判定することを目的に、ネットワーク・メタ解析を行った。Cochrane、Medline、Embaseなどの電子データベースを検索、および専門家へのヒアリング、関連ウェブサイトから適格試験を選定し、試験内直接比較を、異なるタイムポイントの統合を可能とするベイズモデルを使って、他の試験の間接エビデンスと結びつけた。主要アウトカムは疼痛強度とし、副次アウトカムは関節腔狭小化とした。製剤とプラセボとの臨床的に意義ある差異を示す最小値は、10cmビジュアル・アナログ・スケールで-0.9cmと事前特定された。疼痛強度、関節腔狭小化とも臨床的意義ある差異は認められず解析には、10試験・3,803例が含まれた。結果、10cmビジュアル・アナログ・スケールで、プラセボと比較して、疼痛強度の差異は、グルコサミン群は-0.4cm(95%信頼区間:-0.7~-0.1 cm)、コンドロイチン群は-0.3cm(同:-0.7~0.0 cm)、併用群は-0.5cm(同:-0.9~0.0 cm)だった。95%信頼区間値が、臨床的意義ある差異を示す最小値(-0.9)を越えたものはなかった。企業から資金提供を受けて行われた試験結果に比べて、独立して行われた試験では、より小さい効果量が示されていた(相互作用のP=0.02)。また副次アウトカムの関節腔狭小化の差異も、95%信頼区間値が0値に重なり合うほどわずかだった。(武藤まき:医療ライター)

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スタチンの思わぬ効果・有害事象

スタチンの想定されていない効果および有害事象について検討する、英国人男女200万人超を対象とする前向きコホート研究が、英国ノッティンガム大学プライマリ・ケア部門のJulia Hippisley-Cox氏らにより行われた。思わぬ効果として、食道がんリスク低下の有益性が認められた一方、様々な有害事象リスク上昇との関連が確認されたという。BMJ誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月20日号)掲載より。スタチン各種、用量、投与期間ごとに効果・有害事象を定量化Hippisley-Cox氏らは、スタチンの思わぬ効果・有害事象について、種類・用量・投与期間別に定量化することを目的とし、イングランドおよびウェールズの開業医(GP)368人の診療データをQResearch databaseから収集し検討した。200万4,692例分の患者データ(30~84歳)のうち、スタチン服用新規患者は、22万5,922例(10.7%)だった。処方の内訳は、15万9,790(70.7%)がシンバスタチン(商品名:リポバスなど)、5万328例(22.3%)がアトルバスタチン(商品名:リピトール)、8,103例(3.6%)がプラバスタチン(商品名:メバロチンなど)、4,497例(1.9%)がロスバスタチン(商品名:クレストール)、3,204例(1.4%)がフルバスタチン(商品名:ローコールなど)だった。検討された主要評価項目は、心血管疾患の初回発生、中等度~重度ミオパシー、中等度~重度肝機能障害、急性腎不全、静脈血栓塞栓症、パーキンソン病、認知症、関節リウマチ、白内障、骨粗鬆症性骨折、胃がん、食道がん、大腸がん、肺がん、メラノーマ、腎臓がん、乳がん、前立腺がん。食道がんリスク低下、肝機能障害・急性腎不全・ミオパシー・白内障リスク増大スタチンとの関連が有意ではなかったのは、パーキンソン病、関節リウマチ、静脈血栓塞栓症、認知症、骨粗鬆症性骨折、胃がん、大腸がん、肺がん、メラノーマ、腎臓がん、乳がん、前立腺がんの各リスク。食道がんリスクについては低下が認められた。一方で、中等度~重度肝機能障害、急性腎不全、中等度~重度ミオパシー、白内障のリスクは増大することが認められた。有害事象は、スタチンの種類を問わず同等にみられた。ただし肝機能障害についてはフルバスタチンでリスクが高かった。用量反応効果は、急性腎不全、肝機能障害で明瞭だった。服用期間中の全リスク増加は、最初の1年目が最も高かった。白内障リスクは男女とも、服用中止後1年以内で標準に戻った。食道がんのリスクは、女性は1年以内に男性は1~3年以内で標準に戻った。急性腎不全リスクは、男女とも1~3年以内に、肝機能障害リスクは、女性は1~3年以内に男性は3年以降に標準に戻った。心疾患リスク20%閾値に基づく5年予防NNT(治療必要数、対患者1万例)は、女性の場合、心血管疾患が37例(95%信頼区間:27~64)、食道がんは1,266例(850~3,460)だった。男性はそれぞれ、33例(24~57)、1,082例(711~2,807)だった。一方、5年NNH(有害必要数、対患者1万例)は、女性の場合、急性腎不全が434例(284~783)、中等度~重度ミオパシーは259例(186~375)、中等度~重度肝機能障害136例(109~175)、白内障33例(28~38)だった。男性のNNHは、ミオパシーのNNHが91例(74~112)だった以外は、全体として女性と同等だった。Hippisley-Cox氏は、「食道がん以外の有益性は証拠立てることができなかったが、有害事象については母集団に潜在する事象が確認でき定量化できた。さらに、有害事象の最もリスクの高い患者をモニターできるよう個別リスクのさらなる検討を進める必要がある」と結論している。

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個人向け睡眠計測サービス「SleepSign-home」(スリープサイン ホーム)提供開始

キッセイコムテック株式会社は2日、個人向け睡眠計測サービス「SleepSign-home」(スリープサイン ホーム)の提供を開始したと発表した。2週間、行動計を腰につけて過ごすだけで、睡眠状態がわかるというもの。このサービスは、スリープクリニック調布の遠藤拓郎氏との共同企画で、遠藤氏の睡眠医療における豊富な経験・見識と同社の睡眠解析ソフト開発ノウハウを融合することで実現したもの。サービス利用希望者は、同社のWebサイトより申し込み後、送付される行動計を身につけて生活し、2週間後に機器を返送すると、データを解析して遠藤氏監修の睡眠レポートを受け取ることができる。価格は5,250円(税込)。詳細はプレスリリースへhttp://www.kicnet.co.jp/news/press/press2009/20091202.html

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成人喘息、遺伝子型の違いでLABA+ICSの効果に差はない:LARGE試験

成人の中等度喘息の治療では、β2アドレナリン受容体遺伝子型の違いによって長時間作用型β2刺激薬(LABA)と吸入コルチコステロイド(ICS)の併用療法の効果に差はないことが、Harvard大学医学部Brigham and Women’s病院のMichael E Wechsler氏ら国立心肺血液研究所(NHLBI)喘息臨床研究ネットワークの検討で明らかとなった。β2アドレナリン受容体の16番目のアミノ酸の遺伝子型がアルギニンのホモ接合体(B16 Arg/Arg)の喘息患者は、グリシンのホモ接合体(B16 Gly/Gly)の患者に比べLABA+ICS併用療法の効果が劣ることが報告されていた。Lancet誌2009年11月21日号掲載の報告。遺伝子型の異なる患者をマッチさせたペアにおいてLABA+ICS併用とICS単独をクロスオーバー研究グループは、遺伝子型の違いによるLABA+ICS併用療法の効果の差について検討するために、LABA+ICS併用とICS単独の効果を比較する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。対象は中等度喘息の成人患者で、β2アドレナリン受容体の遺伝子型がB16 Arg/Argの患者(42例)とB16 Gly/Glyの患者(45例)を、1秒量(FEV1.0)および人種でマッチさせたペアとして登録した。ペアの個々の患者は、二重盲検下に吸入LABA(サルメテロール50μg×2回/日)あるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、18週の治療が行われた。その後、8週のrun-out期間を置き、治療法をクロスオーバーしてさらに18週の治療が実施された。全症例に、治療開始時からオープンラベルにてICS(hydrofluoroalkane beclometasone 240μg×2回/日)が投与された。主要評価項目は起床時の最大呼気流量(PEF)。B16遺伝子型の違いにかかわらず、LABA+ICS併用療法をArg/Arg例における治療18週後の起床時平均PEFは、ICS単独群の401L/分に対し、LABA+ICS群は423L/分と21.4L/分高かった(p<0.0001)。Gly/Gly例の起床時平均PEFは、ICS単独群の405L/分に対しLABA+ICS群は426L/分とその差は21.5L/分であった(p<0.0001)。Arg/Arg例に対するGly/Gly例のPEF改善度(両群のPEFの差)は-0.1L/分であり、有意な差を認めなかった(p=0.99)。事前に規定された副次評価項目であるメサコリンPC20(FEV1.0の20%改善)は、Gly/Gly例ではLABA+ICS群がICS単独群の2.4倍であった(p<0.0001)。Arg/Arg例では、メサコリンに対する反応性は両群に差を認めなかった(p=0.87)。メサコリン反応性はGly/Gly例がArg/Arg例の2.5倍であった(p=0.0038)。Arg/Arg例の7例(ICS単独群:5例、LABA+ICS併用群:2例)、Gly/Gly例の6例(3例、3例)で喘息の増悪が見られた。重篤な有害事象は5例で認められた(pre-matchおよびオープンラベルのICSのrun-in期間中に1例ずつ、LABA+ICSの二重盲検治療中に2例、プラセボ+ICSの二重盲検治療中に1例)。喘息関連の有害事象は見られず、試験薬剤や処置に関連した有害事象も認めなかった。著者は、「B16 Arg/ArgおよびB16 Gly/Glyのいずれの遺伝子型の成人喘息患者においても、ICS単独よりもLABA+ICS併用のほうが気道機能の改善効果が有意に優れた」と結論し、「B16遺伝子型の違いにかかわらず、喘息患者ではLABA+ICS併用療法による治療を継続すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

378.

遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン注」がん化学療法に伴う貧血に対する効能追加で承認申請

中外製薬株式会社は19日、遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤「エポジン注」(一般名:エポエチン ベータ〔遺伝子組換え〕)の、がん化学療法に伴う貧血に対する効能追加の承認申請を厚生労働省に行ったと発表した。今回の申請の主体となる国内第Ⅲ相臨床試験は、がん化学療法施行により貧血を呈したがん患者を対象とした二重盲検比較試験として実施され、エポジン注36,000IUまたはプラセボを週1回、12週間投与し、有効性、安全性について検討したもの。エポジン注を投与した患者では、プラセボを投与した患者さんと比較して、主要評価項目である理論輸血率の有意な低下が認められたという。また、エポジン注を投与した患者において認められた副作用は、血圧上昇・高血圧、便秘、下痢等が主なものであったとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.chugai-pharm.co.jp/generalPortal/pages/detailTypeHeader.jsp;jsessionid=ZDUIDT4HYX2NWCSSUIHCFEQ?documentId=doc_16432&lang=ja

379.

関節機能改善剤SUPARTZ 米国で変形性肩関節症の適応症追加を承認申請

 生化学工業株式会社は28日、米国で販売している関節機能改善剤「SUPARTZ」について、2009年9月25日(米国現地時間)に変形性肩関節症の適応症追加の承認申請書をFDA(米国食品医薬品局)に提出したと発表した。 SUPARTZは、高純度に精製されたヒアルロン酸を有効成分とする関節内注射剤であり、米国では、2001年に変形性膝(ひざ)関節症の適応症で医療機器としてFDAからの承認を得ている。日本では、「アルツディスポ関節注25mg」の製品名で製造販売されており、変形性膝関節症に加え、肩関節周囲炎、関節リウマチにおける膝関節痛の適応症を取得している。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.seikagaku.co.jp/pdf/300.pdf

380.

プライマリ・ケアにおけるうつ病治療に、オンライン認知行動療法は有効か?

プライマリ・ケアにおけるうつ病治療では、セラピストがインターネット経由のオンラインでリアルタイムに実施する認知行動療法(cognitive-behavioural therapy; CBT)が有効であることが、イギリス国立ヘルス・リサーチ研究所(NIHR)プライマリ・ケア研究部のDavid Kessler氏らによる無作為化試験で明らかとなった。CBTは有効性に関する強力なエビデンスがあるにもかかわらずさほど普及していない。コンピュータ化されたプログラムによってCBTへの近接性(アクセスのしやすさ、accessibility)の改善が進められてきたが、これらの介入が個々の患者の必要性に対応するものか否かは明確でないという。Lancet誌2009年8月22日号掲載の報告。通常ケア+オンラインCBT群と通常ケア単独群を比較研究グループは、プライマリ・ケアにおいてセラピストがうつ病患者に対してオンラインで行うCBTの有効性について検討する無作為化対照比較試験を実施した。2005年10月~2008年2月までにブリストル市、ロンドン市、ウォリックシャー州の55の一般医(GP)施設から、ベックうつ評価尺度(Beck depression inventory; BDI)スコア≧14でうつ病の確定診断がなされた297例(18~75歳)が登録された。これらの患者が、GPによる通常のケアにセラピストによるオンラインCBTを併用する群(149例)あるいはオンラインCBTの待機中(8ヵ月間)にGPによる通常ケアのみを受ける群(148例)に無作為に割り付けられた。患者、登録に関係した研究者、セラピストには割り付けに関する情報は知らされなかった。主要評価項目は、4ヵ月後におけるうつ病の回復(BDIスコア<10)とした。回復率が有意に改善、効果は8ヵ月後も持続4ヵ月のフォローアップを完遂したのは、オンラインCBT併用群が113例、通常ケア単独群は97例であった。4ヵ月後におけるうつ病からの回復率は、通常ケア単独群の24%(23/97例)に対し、オンラインCBT併用群は38%(43/113例)と有意に優れていた(オッズ比:2.39、p=0.011)。8ヵ月後の回復率も、通常ケア単独群の26%(26/101例)に対し、オンラインCBT併用群は42%(46/109例)と有意差が認められた(オッズ比:2.07、p=0.023)。著者は、「プライマリ・ケアにおいてセラピストがオンラインでリアルタイムに実施するCBTは、うつ病治療として有効と考えられ、その効果は8ヵ月間にわたって持続した。インターネットを利用した方法は、CBTへのアクセスのしやすさを拡大する可能性がある」と結論している。また、「リアルタイムのオンラインCBTが実行可能でこれに魅力を感じる患者の増加が見込まれており、心理学的治療へのアクセスがしにくい地域や英語を母国語としない患者に対して有用となる可能性がある。対面方式のCBTの柔軟性や応答性も備えているため重症例にも適切な治療法と考えられ、さらなる効果の増強も期待できる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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