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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第9回

第9回:外来で出会う潜在性の消化管出血へのアプローチをどのように行うか? 外来診療の中で、採血を行った際に鉄欠乏性貧血を偶然発見する、大腸がんのスクリーニング検査で便潜血検査を行うと陽性であった、といったことはしばしば経験することだと思います。しかし、出血源を正しく評価するためにどのようにアプローチしていくかは、検査の侵襲性の問題もあり、頭を悩ませることも時にはあるかと思います。原因の検索のために確立された評価法を確認することで、このよくある問題に対する診療の一助となれば幸いです。 以下、 American Family Physician 2013年3月15日号1)より潜在性消化管出血1.概要潜在性消化管出血とは、明らかな出血は認められないが便潜血検査が陽性である消化管出血、または便潜血検査の結果に限らず鉄欠乏性貧血を認めている消化管出血と定義される。消化管出血の段階的な評価は確立されており、上下部内視鏡で消化管出血が診断つく人は48~71%に上る。繰り返し上下部の内視鏡で精査されて、見逃されていた病変が見つかる人は、出血が再発する患者の中で35%程度いる。もし上下部内視鏡で診断がつかない場合はカプセル内視鏡を行うことで、病変の診断率は61~74%に及ぶ。便潜血検査が陽性でも、詳細な評価を行わずして、低用量アスピリンや抗凝固薬が原因であるとしてはならない。2.病因上部消化管から小腸にかけての出血が鉄欠乏性貧血の原因となることが多い。 上部消化管(頻度:29~56%)食道炎、食道裂孔ヘルニア、胃十二指腸潰瘍、血管拡張、胃がん、胃前庭部毛細血管拡張症 大腸病変(頻度:20~30%)大腸ポリープ、大腸がん、血管拡張症、腸炎 上下部消化管の同時性の出血(1~17%) 出血源不明(29~52%)年齢での出血の原因としての頻度は、 40歳以下小腸腫瘤(最も原因として多い)、Celiac病、クローン病 40歳以上血管拡張、NSAIDsが最もcommon まれな原因感染(鈎虫)、長距離走(⇒内臓の血流が増加し、相対的に腸管の虚血が起こると考えられている)3.病歴と身体診察消化管出血、手術の既往または病因の聴取が重要な診断の手掛かりとなる。体重減少は、悪性腫瘍を示唆し、アスピリンや他のNSAIDs使用者の腹痛は、潰瘍性の粘膜障害を示唆する。抗凝固剤や、抗血小板剤は出血を引き起こす可能性がある。消化管出血の家族歴では遺伝性出血性血管拡張(唇、舌、手掌に血管拡張)、青色ゴム母斑症候群(Blue rubber bleb nevus syndrome:BRBNS 皮膚・腸管・軟部組織の静脈奇形)を示唆するかもしれない。胃のバイパス術は鉄吸収不良を引き起こす。肝疾患の既往や肝の出血斑は門脈圧亢進性胃症・腸症を示唆している。その他の有用な身体所見として、ヘルペス状皮膚炎(celiac病)、結節紅斑(クローン病)、委縮した舌とスプーン上の爪(Plummer-Vinson症候群)、過伸展した関節と眼球と歯の奇形(Ehlers-Danlos症候群)、口唇の斑点(Peutz-Jeghers症候群)などが挙げられる。4.診断的検査診断法の選択・流れは臨床的に疑う疾患の種類と随伴症状によって決められる。上部消化管出血(Vater乳頭近位部までの出血)は上部消化管内視鏡により診断が可能である。小腸近位部の出血はダブルバルーン内視鏡で診断が行える。小腸の中~遠位部の出血はカプセル内視鏡、バルーン内視鏡とCT検査で診断が可能である。下部消化管 (大腸出血)は下部消化管内視鏡で診断を行う。術中に行う内視鏡検査は前述した方法でもなお出血源が特定できず、出血が再発している患者に対しての選択肢として考えられる。5.評価方法・便潜血検査陽性で鉄欠乏性貧血を認めない場合アメリカ消化器病学会では段階的な評価を提唱している。 ・便潜血検査が陽性有無に限らず、鉄欠乏性貧血を認める場合男性と閉経後女性では消化管より出血していると想定できる。閉経前女性であれば月経による出血の可能性も考慮する。しかしながら、この集団においてはがんも含む大腸、上部消化管の病変の報告もある。 すべての患者において腸管外の出血(鼻出血、血尿、産科的出血)の評価は行わなければならない。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Bull-Henry K, et al. Am Fam Physician. 2013; 87:430-436.

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潰瘍性大腸炎の新たな抗体製剤、臨床的寛解率達成/Lancet

 抗α4β7/αEβ7インテグリン抗体エトロリズマブ(etrolizumab)は、潰瘍性大腸炎の治療において良好な臨床的寛解率をもたらし、忍容性も優れることが、ベルギー・ルーベン大学のSeverine Vermeire氏らの検討で明らかとなった。潰瘍性大腸炎は腸管内の微生物抗原に対する異常な免疫応答で特徴づけられる慢性炎症性疾患である。α4β7インテグリンとそのリガンドであるMAdCAM-1の相互作用を阻害することで、免疫細胞の腸への移動が阻止され、潰瘍性大腸炎やクローン病の治療法として有効であることが示されている。本薬は、α4β7およびαEβ7インテグリンのヘテロダイマーのβ7サブユニットに選択的に結合するヒト化モノクローナル抗体である。Lancet誌オンライン版2014年5月9日号掲載の報告。2種類の用量の有用性をプラセボ対照第II相試験で評価 研究グループは、中等度~重度の活動性潰瘍性大腸炎に対するエトロリズマブの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照第II相試験を行った。対象は、年齢18~75歳、従来の治療が無効であり、Mayo Clinicスコア(MCS、スコアが高いほど疾患活動性が高度)が5以上(FDAの要請によりアメリカのみ6以上)、病変が肛門縁から25cm以上に及ぶ患者であった。 これらの患者を、0、4、8週にエトロリズマブ100mgを投与し、2週にはプラセボを投与する群(100mg群)、負荷用量として0週に420mgを投与後、2、4、8週に300mgを投与する群(300mg群)またはプラセボ群に1:1:1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は治療10週時の臨床的寛解率とし、副次評価項目は6週時の臨床的寛解率および6週、10週時の臨床的奏効率などであった。臨床的寛解の定義は、MCS≦2点で、各サブスコアが≦1点の場合であり、臨床的奏効はMCSの3点以上かつ30%以上の減少+直腸出血サブスコアの1点以上の減少またはスコアが≦1点の場合とした。100mg群の臨床的寛解率は10週時21% 2011年9月2日~2012年7月11日までに11ヵ国40施設から124例が登録され、エトロリズマブ100mg群に41例、300mg群に40例、プラセボ群には43例が割り付けられた。プラセボ群で年齢が若く、男性が少なく、メサラジンの併用頻度が高く、100mg群で体重が重かったが、これ以外の患者背景は3群間で類似していた。なお、有効性の評価は119例(100mg群39例、300mg群39例、プラセボ群41例)で可能であった。 10週時の臨床的寛解率は、プラセボ群が0%であったのに対し、エトロリズマブ100mg群は21%(8/39例、p=0.0040)、300mg群は10%(4/39例、p=0.048)であり、有意な差が認められた(プラセボ群との比較)。6週時の臨床的寛解率はそれぞれ5%、10%、8%で有意差はみられなかった。 6週時の臨床的奏効率は、プラセボ群が34%、エトロリズマブ100mg群が49%、300mg群は38%であり、有意差は認めなかった。また、10週時の臨床的奏効率は、それぞれ29%、33%、31%であり、有意差はなかった。 有害事象の発現率は、プラセボ群が72%(31/43例)であり、そのうち重篤な有害事象が12%(5例)に認められた。エトロリズマブ100mg群での発現率はそれぞれ61%(25/41例)、12%(5例)、300mg群では48%(19/40例)、5%(2例)であった。エトロリズマブ100mg群で皮疹、インフルエンザ様症状、関節痛の頻度が高かったが、いずれも軽度~中等度であった。 著者は、「エトロリズマブはプラセボに比べ良好な臨床的寛解率を達成し、忍容性も優れていた」とまとめ、「α4β7およびαEβ7インテグリンの双方を遮断するアプローチは、潰瘍性大腸炎の治療法として有効と考えられる。長期的な有用性を検討する第III相試験を計画中である」としている。

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クローン病と歯周炎のカンケイ

 炎症性腸疾患(IBD)、とくにクローン病における肛門部病変は、歯周炎と関連があることがスイス・チューリッヒ大学病院のStephan R Vavricka氏らによる症例対照研究で明らかになった。IBDの治療においては、口腔の炎症にも焦点を当てた治療戦略を立てるべきであると考えられる。Inflammatory bowel diseases誌オンライン版2013年11月7日号の報告。 IBD、とくにクローン病の患者においては、しばしば口腔に悪影響が及ぶ。歯周炎は、全身性の自己免疫疾患や炎症性疾患に影響を与えると考えられている。本研究では、歯周炎/歯肉炎マーカーとIBDの関連について分析した。 IBD患者113例(クローン病69例、潰瘍性大腸炎44例)に対し歯科検診を行い、患者背景についても記録した。歯周炎マーカーは、プロービング※1時の出血、アタッチメントロス※2、歯周ポケットの深さ※3から評価した。歯肉炎マーカーは、乳頭部出血指数(PBI)から評価した。目に見える口腔内の病変についても、カルテに記載した。健常人113人を対照群とし、8ヵ月間前向きに比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・歯肉炎マーカー、歯周炎マーカーを認めた症例数は、対照群よりもIBD群で多かった。・単変量解析とロジスティック回帰分析の結果、クローン病の肛門部病変は歯周炎のリスク因子であった。・禁煙は、歯周炎のリスクを減少させた。・歯周炎と患者の重症度(血便や腹痛の程度)に明確な関連は認められなかった。・クローン病のみのサブグループでは、患者の症状が重いほど(Harvey-Bradshaw index > 10)、歯周炎マーカーのひとつである、歯周ポケット最深部位におけるアタッチメントロスと関連していた。・歯周炎・歯肉炎以外の口腔病変は、IBD患者の約10%で認められた。※1:歯周病の検査に使われるプローブ(探針)で歯肉辺縁からポケット底までの深さを測定すること※2:歯の頭と根の境目の部分からポケット底までの距離が深くなっていること(歯肉上皮とセメント質の付着喪失)※3:歯肉辺縁から接合上皮の最根尖側端の深さ

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新規抗α4β7インテグリン抗体、クローン病には?/NEJM

 クローン病に対する新規抗α4β7インテグリン抗体vedolizumabの有効性と安全性について、米国・カリフォルニア大学のWilliam J. Sandborn氏らが行ったGEMINI2試験の結果が報告された。活動期クローン病成人を対象とした検討で、6週時点で寛解を達成していた割合は14.5%でプラセボ投与群より有意に高率であったが、クローン病活動指数(CDAI)スコアが100ポイント以上減少(CDAI-100)の達成は有意差がなかった。また、寛解導入が有効であった患者について、治療を継続した群はプラセボに切り替えた群と比べて、52週時点に寛解であった割合が有意に高率であったことが示された。NEJM誌2013年8月22日号掲載の報告より。なお、vedolizumabの潰瘍性大腸炎に体する有効性と安全性を検討したGEMINI1試験では、その有用性が示されている(ジャーナル四天王2013年9月2日配信号)。活動期クローン病成人患者を対象にvedolizumab 300mg静脈内投与療法について評価 GEMINI2試験は、クローン病に対するvedolizumabの有効性と安全性について、寛解導入試験と寛解維持試験を別々に行い評価した統合的研究の第3相無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照試験であった。39ヵ国285施設から参加した、活動期のクローン病成人患者(期間3ヵ月以上、CDAIスコア[範囲:0~600]が220~450)を対象に、vedolizumab 300mg静脈内投与療法について評価した。 寛解導入試験は、vedolizumab(220例)またはプラセボ(148例)の投与群に無作為に割り付けられたコホート1(368例)と、非盲検下でvedolizumabの投与を受けたコホート2(747例)について検討した。両コホートとも投与は0、2週に行われ、6週時点で疾患の状態について評価した。 寛解維持試験は、vedolizumabが有効だった461例を、引き続きvedolizumabを8週間ごとに投与する群、または同4週間ごとに投与する群、プラセボに切り替える群に無作為に割り付け、52週まで投与を行い評価した。6週時点のCDAI-100達成は、vedolizumab群31.4%、プラセボ群25.7% 寛解導入試験について、無作為に割り付けられたコホート1において、6週時点でCDAIスコア150以下の臨床的寛解であった患者の割合は、vedolizumab群14.5%、プラセボ群6.8%だった(p=0.02)。CDAI-100の達成は、それぞれ31.4%、25.7%だった(p=0.23)。 コホート1および2の患者で導入療法が有効だった患者で52週時点において臨床的寛解だったのは、プラセボ投与群21.6%であったのに対し、vedolizumabの8週ごと投与群は39.0%(対プラセボp<0.001)、同4週ごと投与群は36.4%だった(同p=0.004)。 安全性に関する評価では、抗vedolizumab抗体が発現した患者は4.0%だった。vedolizumab投与群はプラセボ投与群と比べて、鼻咽頭炎の発生頻度が高かった。一方で頭痛と腹痛の発生頻度は低かった。またvedolizumabはプラセボと比較して、重篤な有害事象(24.4%対15.3%)、感染症(44.1%対40.2%)、重篤な感染症(5.5%対3.0%)の発生率が高かった。

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ギブンのカプセル内視鏡に保険適用 クローン病など全小腸疾患に拡大

ギブン・イメージング株式会社は5日、カプセル内視鏡検査前に実施する崩壊性カプセル「PillCam パテンシーカプセル」を使用した開通性評価技術が7月1日付で保険適用されたことを発表した。同時に、これまで小腸カプセル内視鏡検査において原因不明の消化管出血のみ保険適用だったが、「PillCam SB 2 plus カプセル」を使用することで、小腸疾患が既知または疑われる患者すべての小腸カプセル内視鏡検査が保険適用できることが厚生労働省より通知された。また、PillCam SB 2 plus カプセルは、特定保険医療材料として収載された。PillCam パテンシーカプセルには、消化管(小腸)の狭窄または狭小化を有する、あるいは疑われる患者に対して、カプセル内視鏡を使用する前に消化管の開通性を評価するために使用するバリウム(造影剤)が入っている。このカプセルは、PillCam SB 2 plus カプセルとともに、2012年3月に新規承認を日本の厚生労働省から取得している。従来、小腸カプセル内視鏡検査において禁忌疾患であったクローン病患者をはじめ小腸疾患の疑いのある患者に対して、安全かつ低侵襲な方法で小腸の画像診断検査が可能になる。また、造影剤が体内に存在した場合もX線検査で確認が可能である。「PillCam パテンシーカプセル」の特長は以下の3点。 (1)消化管(小腸)の狭窄又は狭小化を有する、あるいは疑われる患者に対してPillCam SB 2 plus カプセル内視鏡を使用する前に消化管の開通性を評価する(2)大き目のビタミン剤サイズのカプセル(26㎜×11㎜)を飲み込むだけで検査が行えるため、従来の評価方法(注腸造影など)に比べて侵襲性が低く、患者への身体的負担が軽減される(3)狭窄部で停滞した場合においても、嚥下後、100時間~200時間以内に自然崩壊し、非溶解性のコーティング膜だけが自然排出される詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.givenimaging.com/ja-jp/AboutGivenImaging/Documents/%E3%83%91%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%AB%E4%BF%9D%E9%99%BA%E9%81%A9%E7%94%A8%E6%89%BF%E8%AA%8D0705.pdf

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教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

1981年滋賀医科大学卒業後、千葉大学医学部第二内科入局。アイルランド・トリニティ大学留学。2003年東邦大学医学部付属佐倉病院内科助教授、2004年同院消化器センター長、2006年より現職。日本消化器内視鏡学会認定指導医、日本消化器病学会認定専門医。難病「潰瘍性大腸炎」「クローン病」が日本で急増中「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」は、日本ではまだ歴史が浅い病気で、元々は欧米諸国の白色人種に多いことで知られています。特に北欧・西欧・北米地域で広がりをみせており、クローン病は近代化された地域の人たちに多く発症している病気であると認知されています。しかし、今、日本でこれら両疾患が急増しています。当院の診療科では約800人以上の患者さんを診療しており、外来には多い時で1日約100人位の患者さんが来院します。患者さんの絶対数は欧米諸国に比べまだまだ少ないのですが、増加率が他の国に比べ高いのが特徴です。私は日本人を取り巻く食生活、ライフスタイル、衛生環境などの変化が影響していると考えています。我々が最近注目している発症要因の一つに、腸内細菌のバランスがあります。まだ研究している段階ですが、腸というのは実は複雑な臓器で腸内の各種要因、特に細菌叢のバランスが重要で、それらは大脳へも強く影響している可能性もあることがわかってきました。最近話題にされるメタボリックシンドロームですが、その病因にも腸が関係している可能性があり、腸の働きがクローズアップされています。私たち人間の体は腸の働きによって健康を保っているとも考えられているのです。よって、我々は「潰瘍性大腸炎」「クローン病」と、腸内細菌叢のバランスとの因果関係に注目しているのです。難病相談、講演活動の日々が臨床開発のヒントに十数年前まで、千葉県には「潰瘍性大腸炎」「クローン病」を専門に診察する医師がいなかったこともあり、現在では急増する患者さんに対応が追いつかない医療機関が多くあります。また、最近では治療方法の選択肢が多くなったため、治療の質を上げてもらうために、それぞれの治療成績、治療戦略、対処方法などについて講演して回っている状況です。また、講演活動とともに地域での難病相談にも20年近く携わっています。県内全域を一人で回っていたこともありました。講演・難病相談とともに年々回数が増加していますが、今では後輩の専門医が参加してくれるようになり、手分けして対応できるようになりました。悩み相談に応じることにより、多くのことを学ぶことができました。病院の外来では、多い時で1日100人の患者さんを診察しなければならないため、残念ながら一人の患者さんに多くの時間を割くことができません。一方、難病相談では一人ひとりに時間を割けるため、様々なことを知ることができます。その中から研究開発のヒントを得たことは数多く、まさに臨床は研究の基礎でもありますね。患者さんには情報を開示して治療の道を迷わせない「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」はとても手ごわく、またきめ細かい診断が必要です。そのため私は内視鏡を用いた検査から診断まで、一貫して自分で行うようにしています。その他はチームで治療にあたることになりますが、良質のチーム医療を行うためにはスタッフ同士の意思統一が必要不可欠です。また、最近ではインターネット上に疾患の情報が氾濫しているため、疾患や治療方法に対する誤った認識をもたらしているようです。そのため、私は医師をはじめ、看護師、薬剤師、栄養士と患者さんたちが一堂に会する会合をもち、栄養・薬剤・治療などに関する正確な情報開示を行い、当院での治療方針を説明し共有してもらうようにしています。スタッフの意思を統一し、また患者さんの気持ちをきちんと落ち着かせるためにも、このような会合を大切にしています。海外研究留学でクローン病患者と再度出会ったことで私が入局した頃は、海外留学をして欧米から学ぶというスタイルがほとんどでした。私はEPAの抗炎症効果に関する共同研究をすることになり、アイルランドに研究留学しました。研修医として初めての受け持ち患者さんがクローン病だったのですが、不思議な御縁で、留学でクローン病とまた出会うことになりました。留学するまで、クローン病はまだまだ日本では珍しい病気でしたのであまり意識したことはありませんでした。また、それまでの私は、当時の先端医療をリードしていた内視鏡が好きで、特にがん領域での内視鏡治療に携わっていきたいとの強い思いがありました。しかし、この留学で2年間内視鏡から離れたこと、多くのクローン病の患者さんたちに出会い、おそらくこれから日本でも増加する病気の一つになるだろうと思うようになったことから、「潰瘍性大腸炎」「クローン病」の臨床研究をしていきたいと考えるようになりました。そして帰国後は、困っている難病患者さんを前にして留学での経験を生かして貢献したいという気持ちが日に日に大きくなり、今に至っています。今の若い人たちは海外留学を希望する人が少ないと聞いていますが、自分の専門分野がどこで一番臨床研究されているかと考えると、やはり留学は重要な位置を占めるのではないでしょうか。そういった意味でも後輩たちに留学を勧めています。海外の生活は苦労が多いのですが、その苦労が人生のプラスにもなりその後の医師としてのキャリアに大いに役立つと思います。若い人にはもっと外へ出かけ、知識や技術を磨くきっかけにして欲しいと考えています。グローバルに活躍できる医療現場がここにはある今現在、当院では世界同時進行で、新薬の臨床製薬治験を行っています。病院のある佐倉市は都市部からは離れていますが、この地で欧米諸国と肩を並べられる、最先端の診療体制を構築することができたと自負しております。私の場合、身近にこの分野の先輩・指導者はいませんでした。そのため積極的に外へ出かけていき専門医の先生たちとコミュニケーションを取る、海外に出向き最新治療の情報を入手するなどして勉強することが多かったです。特に難病の専門分野を極めるにはこれが一番大事だと私は思います。医師としてこの分野で頑張るという強い思い、志は高く持ち、視線は患者さんと同じでいるというのが私のいつも信条としていることです。患者さんと同じ目線で病気を診ていると、わからなかったこともみえてくるものです。医師は自分の思い込みだけで診療をしていては駄目ですね。困っている患者さんは大勢います。私が若い時は欧米からただ学ぶだけでしたが、今の日本は他国をリードすることができると思います。目の前で困っている患者さんのためにも、今まで以上に世界に先駆けた臨床研究を行って欲しいと思うのです。最近、診療など上手くこなせる若い医師は多いのですが、一歩踏み出していける人が少ないと感じています。難病は先がみえず、特にこの病気は再発を繰り返す特徴があり、患者さんにとっては一生を通じて苦痛が伴いますから、患者さんの情報をしっかり把握できることが望ましいでしょうね。私はチームスタッフや若い医師に、「私たちの治療は世界で肩を並べられるものである。自信を持つよう」と常々言い聞かせています。佐倉から世界へ最新治療・治験の発信を行っており、これからもここ佐倉から発信していくつもりです。これからの医療を創っていく若い医師たちには、どんな場所でも、どんな環境でも、自信を持って世界に通じる医療創りに挑戦していただきたいと思います。質問と回答を公開中!

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教授 鈴木康夫先生の答え

気分転換方法について潰瘍性大腸炎やクローン病などは、ある意味患者さんと一生の付き合いかと思います。私も慢性疾患を診ていますが、患者、家族とのコミュニケーション疲れから、医局を去る後輩もいます。先生のところでは、息抜きといいますか、コミュニケーション疲れを取り除くような気分転換について、何か取り組まれているでしょうか?もし極秘のノウハウ等あれば是非ご教示ください!残念ながら特別なノウハウはありませんし、特別な息抜き法もありません。確かに慢性疾患患者さん特有の気質があり、外来診療時間は長く神経を使う度合いも多いのはそれぞれ担当医の辛いところかもしれません。しかし、教科書や論文では判らない知識を個々の患者さんとの直接的対話や診療で初めて会得できることが未だ多くあるのも炎症性腸疾患の特徴ではないかと感じています。患者さんは日々の辛い思いを主治医に吐き出した時に初めて救われるのだ、と自分を納得させ、目の前の患者さんこそが生きた教材と知識の源だ、と思い日々の診療を楽しんでください。幸い、炎症性腸疾患は治療法が適切であれば患者さんは明らかに改善し満足いたします。患者さんが寛解し喜ぶ瞬間こそが我々主治医にとっての本当の息抜きを与えてくれる瞬間なのです。講演会の予定について是非先生の講演会に参加させていただきたいのですが、どこかに講演会のスケジュールなど掲載されているのでしょうか?ホームページなどがあれば教えていただきたく思います。宜しくお願いします。残念ながら、私個人の講演会のスケジュールをまとめてホームページでは掲載してはおりません。ただし、各市町村保健所が主催する講演会に関しては、各市町村の難病ホームページで開示している筈ですので参考にしてください。また、炎症性腸疾患に関するサイトがいくつか設立運営されており、そのようなサイト上に講演会の日程などが開示される場合もあるかもしれませんので、チェックして参考にしてください。患者・家族対応慢性疾患、特に難病だと、診断結果を患者・家族へ伝える瞬間が特に重要かと思います。先生が診断結果を伝えるときに気をつけていることや工夫していることをご教示ください。突然、難病と言い出すのは大変な誤りです。炎症性腸疾患患者さんに対して、いきなり難病ですと切り出すことは絶対にしてはならないことです。まずは病気の特徴や一般的な長期経過、そして治療法の説明をすること、個々の患者さんによって病状は様々であることを告げることも必要です。そして最終的には、現状では病因が不明であり完治が難しいという意味で、俗にいう難病に指定されている、ということを説明するべきです。難病といえども、以前に比べ格段に治療法は進歩し完治に近い治癒も可能であることも教えてあげる必要があります。後期研修について後期研修医は募集しておりますでしょうか?卒後4年目、肛門科にいますが、炎症性腸疾患の患者を多くみるようになり、興味を持っています。できれば専門としたいと考えております。情報あれば教えていただきたく存じます。当科では後期研修医制度を設け、積極的な受け入れ態勢を十分に準備しております。詳細は佐倉病院内科のホームページを参考にしてください。判りにくい場合には、ご連絡いただければいつでも対応いたしますし、参考のために来院され見学することや体験学習も可能です。 研究について現在行われている研究について教えてください。ホームページには、C型慢性肝疾患の発表資料は掲載されていますが、それ以外の情報がありません。他に何の研究を行っているのか教えてください。(医学部5年)炎症性腸疾患に関しては、基礎研究・臨床研究を含め多くの様々な研究を行なっています。その主な研究は:遺伝子工学技術を応用した細菌分析法により潰瘍性大腸炎・クローン病患者における腸内細菌叢変動の分析、その研究法を応用したprobioticsとsynbioticsの治療効果の解析、顆粒球吸着除去療法における有効性発現機序の解明、潰瘍性大腸炎病態形成と顆粒球機能異常の関連性、抗TNF-α抗体測定キットの開発、炎症性腸疾患患者抗TNF-α抗体製剤二次無効発現機序の解明、クローン病におけるre-set therapyの開発、免疫抑制剤至適投与法の開発、サイトメガロウイルス腸炎の診断と治療、新規内視鏡画像診断法の開発などを実施しています。その他、肝臓癌・膵臓癌に対する多剤併用カクテル療法の開発、肝炎・肝硬変に対するインターフェロン療法の開発なども行なっています。小児潰瘍性大腸炎記事拝見しました。毎日100人ほどの診察、恐れ入ります。外来患者のうち、小児潰瘍性大腸炎の患者さんはどの位いるのでしょうか?最近は小児潰瘍性大腸炎が増えてきたと聞くのですが、やはり増加傾向にあるのでしょうか?実際に診療されている先生の感覚値をお聞きしたく思います。私自身は内科医で小児科が専門ではありませんので、特段に潰瘍性大腸炎小児患者を多く診ているわけではありません。しかし、近隣の病院から小学生高学年以上の中学生・高校生で潰瘍性大腸炎・クローン病と診断された場合に私のところへ紹介されてくる場合が多いようです。最近では、以前に比べそのような若年者潰瘍性大腸炎患者さんの紹介率が増加傾向にあると感じています。以前には詳細な統計が存在していなかったようですが、最近炎症性腸疾患を専門にしている小児科の先生達が集計した全国統計では、小児潰瘍性大腸炎患者数は近年増加傾向にあり、重症化・難治化しやすい特徴があると報告されています。潰瘍性大腸炎罹患後の瘢痕症例は24歳男性。12年前潰瘍性大腸炎に罹患し、ステロイドパルスなどの治療を受け、現在は緩解。内服薬も必要としない。2年前のCFで、罹患時の影響か(?)5cmくらいの線状の瘢痕を認めた。この部分は将来、悪性化の可能性が他の部分に較べて高くなるのでしょうか。よろしくお願い致します。重症の潰瘍性大腸炎では、治癒寛解後も強い炎症部位に一致して瘢痕が残る場合があります。そのような部位が完全に瘢痕化したままで再燃を生じない限り、癌化の心配は通常はありません。潰瘍性大腸炎に関連した大腸癌の発生は、慢性的炎症が持続する結果として癌化を生じることが推測されています。従って、瘢痕化した部位は通常炎症が全く消失していますので特段に癌化の恐れはありません。潰瘍性大腸炎と他の腸炎との鑑別、治療方針について30代女性が粘血便で外来受診し、大腸内視鏡検査実施、所見としては盲腸と直腸にやや易出血性の発赤した粘膜があり、数か所を生検しました。病理診断は潰瘍性大腸炎の寛解期に矛盾しないがUCとの確定診断はできずとのことでした。ペンタサの投与で患者さんの症状は一旦軽減しましたが、ペンタサを中止して半年後くらいから、時に粘血便があり、なんとなく腹がすっきりしないとの訴えです。下痢はなく著名な下血はありません。再度CF生検でもUCの寛解期に矛盾せずとの診断です。現在、ペンタサを再度処方して様子を見ております。特に悪化するわけではありませんが、すっきりと良くなるわけでもなく、診断もはっきりせず、対応に苦慮しております。今後どのような方針あるいは検査、治療で臨めばよいのかご教示いただけるとありがたくよろしくお願いいします。実際の大腸内視鏡写真がないので明確なお答えは困難ですが、文面から推測すると直腸炎型潰瘍性大腸炎と診断されます。直腸炎型では盲腸にも同時に炎症所見を伴うことがよく観察されますので、潰瘍性大腸炎としては矛盾がありません。潰瘍性大腸炎では多くの患者さんが寛解後も再燃を繰り返しますので、症状が改善しても直ぐに服用は中止せずそのまま継続することが望まれます。直腸炎型でペンタサ服用によっても改善を認めない場合には、ペンタサ注腸剤の併用をお勧めいたします。ペンタサ剤の特性として病変部位に直接到達作用する必要があり、直腸炎型では注腸剤によるペンタサあるいはステロイド剤の直接的注入法が内服に比べ副作用が少なく有効性をさらに発揮してくれる可能性があります。潰瘍性大腸炎の食事私は管理栄養士です。先日潰瘍性大腸炎の患者さんから「生寿司を食べたい」の質問を受けました。潰瘍性大腸炎の症状にもよると思いますが時節がらノロウィルスの流行している時期であり、ノロウィルスに感染し下痢をすることは潰瘍性大腸炎にとって好ましくないと考えます。果物、大根おろし等は生で食べてもおかずになるものは原則加熱して食べることが必要と考えますがいかがでしょうか。アドバイスを頂きたく投稿しました。潰瘍性大腸炎の患者さんが、ウイルス・細菌感染による各種感染性腸炎や抗生剤・消炎鎮痛剤服用に伴う薬剤性腸炎の発症に注意することは、病状の再燃予防には重要であります。しかし、通常の感染予防・衛生管理を怠らなければ必要以上に過剰な食事管理をすることが医学的な意味を持つとは思えません。本来生で食することが可能である、新鮮で衛生的な食材であれば、加熱など必要ないと考えます。個々の患者・個々の病状に応じて適切な食事指導を実施すべきであり、科学的根拠のない画一的食事指導は人生の大事な要素である食の楽しみを奪いストレスを誘引してむしろマイナスになることを肝に銘じるべきです。潰瘍性大腸炎の合併症について潰瘍性大腸炎を発症3ヶ月で大腸の全摘出を受けた患者さん術後、膵炎を発症されたとのこと医師からは潰瘍性大腸炎の合併症で免疫性の膵炎だろうと診断されたとのことです現在は症状も治まっており、ときおりある自覚症状にフオイパンの服用をしているとのことでしたただ、膵炎が悪化した場合はステロイドを再開する必要がでてくるかもしれないと医師より言われているそうですせっかく大腸を全摘出しステロイドを中止することができたのにまた服用しなければならないのかと心配されています大腸を全摘出しても合併症は軽減されないのでしょうかまた、膵炎が悪化した場合の治療方法について伺えれば幸いですよろしくお願いいたします通常は膵炎を含めた様々な潰瘍性大腸炎の腸管外合併症は大腸全摘術によって改善するものですが、稀に大腸全摘術後に発症する場合もあります。その様な場合は、発現している症状・臓器に応じ限定した治療法も考慮されますが一般的にはステロイド剤を中心にした全身的治療薬の投与が必要となってきます。そして、ステロイド剤投与を避けたい場合には代わりに免疫抑制剤・免疫調節薬投与が有効性を発揮します。今回の場合、仮にフォイパンを服用しているにも関わらず自己免疫性膵炎が悪化しステロイド剤投与を避けたいとお考えであれば、主治医と相談し免疫抑制剤治療をご考慮してはいかがでしょうか。総括炎症性腸疾患は多彩な病像を形成する複雑な疾患群です。画一的にならず個々の患者さんの病状・病態を的確に判断し、適切な判断に基づいたきめ細かな医療の実践が望まれます。最近、炎症性腸疾患に関する情報が氾濫し一部には不適切な情報も含まれて患者さんに誤解を生んでいます。炎症性腸疾患における診療レベルは近年、著しいスピードで進化しています。我々主治医は勿論、薬剤師・看護師や栄養士といった患者さんに関わる全ての医療人は、科学的根拠に基づいた正確な情報を患者さんに対して迅速に適切に開示する努力を怠ってはなりません。教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

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炎症性腸疾患の静脈血栓塞栓症リスク、外来再燃時に最も高い

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患患者では、静脈血栓塞栓症の発症リスクが増大しており、特に緩解導入後の急性再燃時にそのリスクが高いことが、イギリスNottingham大学疫学・公衆衛生学のMatthew J Grainge氏らによるコホート研究で明らかとなった。下肢の静脈血栓塞栓症による短期的死亡率は6%で、肺循環に塞栓が発生した場合は20%にも達することが示されている。この生命に関わる疾患には感染や炎症が関与しており、特に炎症性腸疾患患者はリスクが高く、血栓塞栓症の発現時には活動性の炎症性腸疾患がみられることが多いという。Lancet誌2010年2月20日号(オンライン版2月9日号)掲載の報告。大規模データベースから約14年間の患者と対照の記録を抽出研究グループは、炎症性腸疾患の活動性の各段階における静脈血栓症の発症リスクをプロスペクティブに検討するコホート研究を行った。800万例以上のプライマリ・ケア記録が集積されたイギリスの大規模な縦断的データベースであるGeneral Practice Research Database(GPRD)を用いて1987年11月~2001年7月までに記録された炎症性腸疾患患者を同定し、個々の患者に対し年齢、性別、一般診療の内容でマッチさせた対照を5人まで選択した。疾患活動性を、緩解、再燃(フレア:初回コルチコステロイド処方から120日間と定義)、慢性活動性に分け、入院後の静脈血栓塞栓症のリスクを評価した。リスクは外来再燃時が最も高い、1次予防の臨床試験の実施を炎症性腸疾患患者13,756例[潰瘍性大腸炎6,765例(49%)、クローン病4,835例(35%)など]および対照群71,672人が解析の対象となった。静脈血栓塞栓症は、炎症性腸疾患患者の139例、対照群の165人でみられた。静脈血栓塞栓症の全体の発症リスクは対照群に比べ患者群で有意に高く、絶対リスクは1,000人・年当たり2.6であった(補正ハザード比:3.4、p<0.0001)。患者の静脈血栓塞栓症リスクの増大は再燃時の方がより顕著であった(補正ハザード比:8.4、p<0.0001、絶対リスク:9.0/1,000人・年)。再燃時の相対リスクは、入院治療期(同:3.2、p=0.0006、同:37.5/1,000人・年)よりも外来治療期(同:15.8、p<0.0001、同:6.4/1,000人・年)の方がより高かった。「静脈血栓塞栓症の予防の可能性を探るために、1次予防に関する臨床試験の実施が正当化される」と著者は結論しており、「炎症性腸疾患患者は静脈血栓塞栓症の発症リスクの評価時にはすでにリスクが増大しており、再燃患者では外来治療によるリスク低減は困難なことを明記すべきである。コルチコステロイド治療には骨粗鬆症の懸念もあるため、入院治療で使用されている低分子量ヘパリンの短期投与などを外来で施行する戦略も検討に値する」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」強直性脊椎炎に関する効能・効果を国内追加申請

アボット ジャパン株式会社とエーザイ株式会社は28日、国内で共同開発を進めてきたヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.8mL」(一般名:アダリムマブ、以下「ヒュミラ」)について、強直性脊椎炎に関する効能・効果の追加申請を行ったと発表した。国内においては、関節リウマチ(2008年4月製造販売承認取得)、尋常性乾癬および関節症性乾癬(2007年9月申請)、クローン病(2009年9月申請)に続き4番目の効能・効果を追加する申請となる。国内で実施した活動性の強直性脊椎炎患者様を対象とした臨床試験において、「ヒュミラ」は海外試験と同様、強直性脊椎炎の症状・徴候を改善し、良好な忍容性が認められたとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news200944.html

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ヒュミラ、国内においてクローン病に関する効能・効果を追加申請

アボット ジャパン株式会社とエーザイ株式会社は30日、国内で共同開発を進めてきたヒト型抗ヒトTNFモノクローナル抗体「ヒュミラ皮下注40mg シリンジ0.8mL」(一般名:アダリムマブ)について、クローン病に関する効能・効果の追加申請を行ったことを発表した。国内においては、関節リウマチ(2008年4月製造販売承認取得)、尋常性乾癬および関節症性乾癬(2007年9月申請)に続き3番目の効能・効果を追加する申請となる。ヒュミラは、ヒト型抗ヒトTNFモノクローナル抗体で、自己免疫疾患の炎症反応に関わる中心的なタンパク質であるTNFを中和することにより、効果を発揮する。国内で実施された中等症または重症のクローン病患者を対象としたプラセボ対照二重盲検試験の導入療法及び維持療法試験において、ヒュミラ投与群は寛解導入及び寛解維持効果を示し、海外試験と同様の成績が得られたという。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news200939.html

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多発性硬化症のnatalizumab療法後に発症した進行性多巣性白質脳症

本報告は、多発性硬化症でnatalizumab療法を受けていた患者が発症した、進行性多巣性白質脳症についての短信。natalizumabの排出を促すため血漿交換療法を行った3週間後、免疫再構築症候群が発現し、神経症状が悪化したが、ステロイドパルス療法により数週間後に改善した。報告は、ドイツ・ルール大学のWerner Wenning氏らの研究グループによる。NEJM誌2009年9月10日号より。重篤な免疫再構築症候群はステロイドパルス療法で改善研究グループは、natalizumab療法施行後12ヵ月時点で、進行性多巣性白質脳症(Progressive Multifocal Leukoencephalopathy:PML)を発病した52歳多発性硬化症患者の臨床知見、および治療の流れについて解説している。患者は、神経・精神医学的な症状が出現した2ヵ月後に入院、血漿交換と免疫吸着によってnatalizumabを除去する治療を受けた。短期改善の後、患者は明らかな免疫再構築症候群を発症し非常に重篤となった。ステロイド大量静注パルス療法によって、患者の状況は臨床的に有意に回復し安定した。 この症例により、迅速な診断と治療が、natalizumab療法を受け重度PMLを発症した患者の、転帰改善の可能性があることを示したと述べている。natalizumabが脳の免疫監視機構に影響かnatalizumabは、VLA-4のα4鎖に対するモノクローナル抗体で、高度に活動的な再発性多発性硬化症の単独治療薬として、アメリカ食品医薬品局と欧州医薬品庁に承認された。2008年6月現在、40,000人以上の患者が臨床試験に参加した。そのうち、約14,000例は12ヵ月間服用し、少なくとも6,600例が18ヵ月間服用していた。本剤の認可直後、natalizumab療法に起因するPML患者が3例報告された。そのうち2例がインターフェロンβ-1aとの併用投与、1例は事前免疫抑制療法を受けたクローン病患者だった。第III相試験中に2例の患者が死亡、1例には持続性の重度神経障害が残ったことが報告されている。PMLは、JCウイルス(一般に高度な易感染患者に起こるポリオーマウイルス)によって引き起こされる中枢神経系のまれな脱髄疾患であり、しばしば致死的転帰を伴う。natalizumab療法と関連したPMLの素因的メカニズムは依然として不明だが、現在の仮説では、脳の免疫監視機構の易感染化、またはJCウイルスを運ぶ骨髄細胞のnatalizumabによる流動化が含まれると説明している。(医療ライター:朝田哲明)

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レミケードに関節リウマチへの効能・効果追加と用法・用量の一部変更の承認

田辺三菱製薬株式会社は7日、抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード点滴静注用100」(一般名:インフリキシマブ)について、同日付で関節リウマチに係わる「効能・効果」ならびに「用法・用量」の一部変更承認を取得したことを発表した。従来の用法・用量では、一部の患者において十分な効果が得られず、用法・用量の変更(投与量の増量・投与間隔の短縮)に対する要望が寄せられていたことから、同社は2005年より臨床試験を実施していた。その結果、同剤を増量した際の有用性が認められ、用法・用量の一部変更が承認された。また、欧米ではすでに承認されている「関節破壊の抑止効果」についても、同臨床試験から日本人においても優れた効果があることが確認されたため、効能・効果の一部変更も同時に承認された。レミケードは、2002年にクローン病の適応症にて国内で発売後、2003年に関節リウマチの適応を追加取得している。現在では延べ3万人の関節リウマチの患者に投与されているという。詳細はプレスリリースへhttp://www.mt-pharma.co.jp/shared/show.php?url=../release/nr/2009/rec_090707.html

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ペンタサに潰瘍性大腸炎活動期の用法・用量追加の承認

杏林製薬株式会社は22日、潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「ペンタサ錠250」「ペンタサ錠500」(一般名メサラジン)について、潰瘍性大腸炎の活動期における用法・用量追加の承認を取得したと発表した。今後は1日4,000mgを2回に分けて投与できるようになる。同剤の潰瘍性大腸炎(重症を除く)の用法・用量は通常、成人には1日1,500mgを1日3回に分けて食後に経口投与し、上限は1日2,250mg投与だった。海外ではすでに1日4,000mg投与での有効性が確認されていることから、同社は従来の上限用量で症状のコントロールが困難で、ステロイド剤等の治療法に移行せざるを得なかった活動期の患者に対する新たな緩解導入療法の提供と患者の利便性向上を図るため、今回の用法・用量の開発に至ったという。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.kyorin-gr.co.jp/ir/release2008/081224.pdf

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ヒュミラがクローン病患者の瘻孔治癒効果を3年間維持

アボット ジャパン株式会社は11月12日、10月にウィーンで開催された欧州消化器疾患週間(UnitedEuropean Gastroenterology Week, UEGW)の会議において、中等度~重度のクローン病患者におけるヒュミラ(一般名:アダリムマブ)の治療効果に関する新たなデータが発表され、同剤の3年にわたる瘻孔(ろうこう)治癒効果が示されたと伝えた。データによると、治療に反応しなかった瘻孔、または治療効果を失った瘻孔、およびインフリキシマブに対する忍容性がないなどの治療困難な患者においてヒュミラの効果が示されたという。詳細はプレスリリースへhttp://www.abbott.co.jp/press/2008/081112.asp

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潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「ペンタサ錠500」が新発売

株式会社キョーリンは10月1日、子会社である杏林製薬株式会社が、潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「ペンタサ(一般名:メサラジン)錠500」を新発売(剤形追加)したと発表した。今回、新たに発売された「ペンタサ錠500」は、1日服用錠数を減らすことによる患者負担の軽減、アドヒアランス(※)並びにQOLの改善を目的に開発された薬剤。また、剤形は円形錠である「ペンタサ錠250」と識別するため、カプセル型の変形錠となっている。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病)は、下痢や下血を頻回に生じ、社会生活に支障をきたすおそれのある難治性疾患であるが、その病因は特定されておらず根本的治療法がなく、ペンタサなどのメサラジン製剤やステロイド製剤等により、活動期症状を抑え、寛解に導入すること及び寛解状態を維持することが治療目標となっている。また、杏林製薬は同日に日清キョーリン製薬株式会社を吸収合併したが、1996年7月より「ペンタサ錠250」を並行販売していた。※アドヒアランス:医師や薬剤師などから指示されたことに従うというよりも、患者自身が責任を持って治療法を守るという考え方。詳細はプレスリリースへhttp://www.kyorin-gr.co.jp/ir/release2008/081001.pdf

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潰瘍性大腸炎、クローン病に対する待機的結腸切除術の症例選定基準は高すぎる

イングランドでは、炎症性腸疾患[潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)]対し年間約2,000件の結腸切除術が実施されている。結腸切除術や緊急結腸切除術を要する重篤な炎症性腸疾患患者には、手術によって重大なリスクがもたらされる。これに対し、待機的結腸切除術後の死亡率は短期的には低いことが示されているが、長期的なフォローアップデータはない。 Stephen E. Roberts氏(イギリス、スウォンジ大学医学部)らは、現行の待機的結腸切除術の症例選定基準の適否について評価するために、広範な地域集団において炎症性腸疾患入院患者の手術施行状況別の3年後の死亡率を比較した。BMJ誌10月30日付オンライン版、11月17日付本誌掲載の報告。炎症性腸疾患で3日以上入院した2万3,464例の記録を照合本研究は、1968~1999年のオックスフォード地区および1998~2003年のイングランドにおける記録照合試験(record linkage study)である。炎症性腸疾患で3日以上入院した2万3,464例の記録を照合し、解析を行った。結腸切除術は5,480例に施行されていた。待機的結腸切除術群、結腸切除術非施行群、緊急結腸切除術群の3年後の死亡率を調査した。イングランドでは、3年後の死亡率は待機的手術が有意に優れるオックスフォード地区では、炎症性腸疾患の3年後の死亡率は待機的手術が非手術および緊急手術よりも低かったが、有意差は認めなかった。イングランドでは、UCおよびCDに対する待機的手術施行後3年の死亡率(UC:3.7%、CD:3.3%)は、非手術(UC:13.6%、p<0.001、CD:10.1%、p<0.001)および緊急手術(UC:13.2%、p<0.001、CD:9.9%、p<0.01)よりも有意に低かった。非手術と緊急手術の3年後の死亡リスクは同等であった。また、3年以上が経過すると、待機的手術の死亡率は一般集団と同等になった。併存疾患で補正しても、これらの知見に影響はみられなかった。待機的手術の症例選定基準および至適施行時期の確立をRoberts氏は、「これらの知見は、イングランドでは待機的結腸切除術の症例選定基準が高すぎることを強く示唆する」と結論している。また、同氏は「コントロールが不良な炎症性腸疾患に対する待機的結腸切除術の症例選定基準および至適な施行時期を確立するにはさらなる研究を要する」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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クローン病治療に対するcertolizumab pegolの有効性

治験薬剤である抗腫瘍壊死因子(抗TNF)治療薬certolizumab pegol(CZP)については現在、クローン病と関節リウマチ(RA)についてそれぞれ臨床試験が継続されている。クローン病に対する同剤の臨床試験プログラムはPRECISEと呼ばれているが、本報告は、アメリカ・メイヨークリニックのWilliam J. Sandborn氏らによるPRECISE 1 Study:クローン病治療におけるCZPの有効性を検証する無作為二重盲検プラセボ対照試験の結果。NEJM誌7月19日号に掲載された。中等度~重度のクローン病患者662例を対象試験対象は、成人で中等度~重度のクローン病患者662例。患者をC反応性蛋白(CRP)の濃度レベルで階層化し、0週目、2週目、4週目と、その後は4週間ごとに、CZP 400mgとプラセボが皮下投与されるようランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、6週時点での奏功率と、6週目、26週目それぞれの時点での奏功率とした。わずかな有効性は認められるが緩解率の有意差は認められず母集団のうちCRPレベルが10mg/L以上の患者について、6週時点で「response」[CDAI(Crohn’s Disease Activity Index)スコアが100以下を達成した場合と定義]が認められた患者はCZP群37%、プラセボ群26%だった(P= 0.04)。また、6週、26週それぞれの時点で「response」が認められたのはCZP群22%、プラセボ群12%だった(P = 0.05)。母集団全体で見ると、6週時点はCZP群35%、プラセボ群27%(P = 0.02)、また、6週、26週各時点で認められたのはCZP群23%、プラセボ群16%(P = 0.02)だった。一方、緩解率(緩解:CDAIスコアが150以下を達成した場合と定義)については、6週時点と26週時点において両群に有意差は認められなかった(P = 0.17)。重篤な有害事象の発生はCZP群で10%、プラセボ群で7%の患者で報告され、重篤な感染症はそれぞれ2%、1%未満と報告された。また、CZP群のうち8%の患者で本剤への抗体が出現し、2%で抗核抗体が出現した。これらから研究グループは、「中等度~重度のクローン病患者へのCZP投与はプラセボと比較して、導入療法および維持療法いずれにおいてもわずかではあるが奏功率の向上が認められた。ただし緩解率について有意差は認められなかった」と結論付けた。(朝田哲明:医療ライター)

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