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心房細動を伴う脳梗塞後のDOAC開始、早期vs.晩期/Lancet

 心房細動を伴う虚血性脳卒中後の直接経口抗凝固薬(DOAC)の投与開始時期について、早期開始(4日以内)は晩期開始(7~14日)に対して、90日時点での複合アウトカム(虚血性脳卒中の再発、症候性頭蓋内出血、分類不能の脳卒中、全身性塞栓症)発生に関して非劣性であることが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDavid J. Werring氏らOPTIMAS investigatorsが、第IV相の多施設共同非盲検無作為化エンドポイント盲検化並行群間比較試験「OPTIMAS試験」の結果を報告した。著者は、「われわれの検討結果は、心房細動を伴う虚血性脳卒中後のDOAC開始を晩期とする、現行のAHA/ASA脳卒中ガイドラインの推奨を支持するものではなかった」と述べている。Lancet誌オンライン版2024年10月24日号掲載の報告。90日時点の複合アウトカム発生を評価 OPTIMAS試験は、心房細動を伴う急性虚血性脳卒中患者におけるDOACの早期開始と晩期開始の有効性と安全性を比較した試験で、英国の100病院で行われた。対象者は、心房細動を伴う急性虚血性脳卒中の臨床診断を受けており、医師が最適なDOAC開始時期を確信していなかった成人患者とした。 研究グループは被験者を、あらゆるDOACによる抗凝固療法の早期開始(脳卒中発症から4日以内)群または晩期開始(7~14日)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。被験者および治療担当医は治療割り付けをマスクされなかったが、マスクされた独立外部判定委員会によって、すべての入手できた臨床記録、脳画像レポート、ソース画像を用いてすべてのアウトカムの評価が行われた。 主要アウトカムは、修正ITT集団における90日時点の、虚血性脳卒中の再発、症候性頭蓋内出血、分類不能の脳卒中、または全身性塞栓症の複合であった。解析にはゲートキーピング法による階層的アプローチを用い、2%ポイントの非劣性マージンについて検定を行い、次いで優越性の検定を行うこととした。早期開始群の晩期開始群に対する非劣性を確認、優越性は認められず 2019年7月5日~2024年1月31日に、3,648例が早期開始群または晩期開始群に無作為化された。適格基準を満たしていなかった、またはデータを包含することの同意を得られなかった27例を除く、3,621例(早期開始群1,814例、晩期開始群1,807例)が修正ITT集団に組み入れられた。 主要アウトカムは、早期開始群59/1,814例(3.3%)、晩期開始群59/1,807例(3.3%)で発生した(補正後リスク群間差[RD]:0.000、95%信頼区間[CI]:-0.011~0.012)。補正後RDの95%CI上限値は、2%ポイントの非劣性マージンを下回っていた(非劣性のp=0.0003)。優越性は認められなかった(優越性のp=0.96)。 症候性頭蓋内出血の発生は、早期開始群11例(0.6%)に対して晩期開始群12例(0.7%)であった(補正度RD:0.001、95%CI:-0.004~0.006、p=0.78)。

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第238回 広がる救急車利用の選定療養費化、茨城県では筑波大病院1万3,200円、土浦協同病院1万1,000円、その他病院7,700円と料金に違い

救急車利用の選定療養費化のスキーム、じわりじわりと広がる気配こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。野球シーズンはストーブリーグに突入、今年も日本からMLBに誰が行くのかで盛り上がっています。そんな中、千葉ロッテマリーンズは11月9日、佐々木 朗希投手(23)の今オフのポスティングによるメジャー挑戦を容認することを発表しました。あと2年待てばMLBの「25歳ルール」による契約金制限が解けるので、佐々木投手自身も、譲渡金の入る球団も金銭的にWin-Winとなったでしょうが、ロッテとしては、佐々木投手の“わがまま”に折れた形での容認となりました。2022年の完全試合の印象は強烈ですが、大事に育てられ過ぎたのか、故障も多く5年間で登板はわずか64試合で、29勝15敗、防御率2.10という「中の下」の成績です。中4日、中5日で162試合を戦うMLBで果たして通用するのでしょうか。日本で怪我がちだった選手の多くは、MLBでも早々と故障してしまう傾向にあります。同じくMLB挑戦予定の、“旬”を過ぎた読売ジャイアンツの菅野 智之投手(ストレートで150キロ出ない)とともに、今後の“活躍”を見守りたいと思います。さて今回は、全国で広がりを見せ始めた軽症患者の救急車利用の“有料化”について書いてみたいと思います。“有料化”とは言っても、厳密には保険外併用療養費制度の一つ、選定療養費の仕組みを活用したものですが、三重県松阪市に続いて、茨城県が全県での導入を決め、12月からスタートさせます。救急車利用の選定療養費化のスキームは今後じわりじわりと広がっていきそうな気配です。軽度の切り傷・擦過傷、風邪などを「緊急性が低い症状」としてガイドラインで例示茨城県は10月18日、「緊急性のない救急搬送患者から選定療養費を徴収する際のガイドライン」(救急搬送における選定療養費の取扱いに係る統一的なガイドライン)1)を策定、公表しました。県内22病院で12月2日から救急車による救急搬送の際、緊急性が認められなかった場合に、患者から選定療養費を徴収する予定です。対象となる患者については、軽度の切り傷・擦過傷、風邪などを「緊急性が低い症状」として例示しました。なお、県単位で救急搬送に選定療養費の仕組みを導入するのは全国で初めてです。茨城県によれば2023年度の救急搬送は14万3,046件で増加傾向が続いているとのことです。うち6万8,549件、47.9%を軽症等が占めており、この状況が続けば救急医療の体制が維持できなくなるとして、4月以降検討を重ね、厚生労働省や県医師会、各病院などと協議を経て、選定療養費化に至ったとのことです。「軽症」と診断された場合も救急車を呼んだ時点での緊急性が認められるケースは徴収の対象外同ガイドラインは、患者が救急車で搬送された場合、選定療養費の対象となる「緊急性が認められない」ケースかどうかを医療機関が判断する目安として作られました。具体的には、救急車要請時の緊急性が認められない可能性がある主な事例として、以下が提示されています。ア. 明らかに緊急性が認められない症状:1)軽度の切り傷のみ、2)軽度の擦過傷のみイ. 緊急性が低い症状(※ただし、別の疾患の兆候である可能性あり):1)微熱(37.4℃以下)のみ、2)虫刺創部の発赤、痛みのみで、全身のショック症状は無い、3)風邪の症状のみ、4)打撲のみ、5)慢性的又は数日前からの歯痛、6)慢性的又は数日前からの腰痛、7)便秘のみ、8)何日も前から症状が続いていて特に悪化したわけではない、9)不定愁訴のみ、10)眠れないのみイについては「緊急性が低いことから、基本的に緊急性が認められないものとするが、診断の結果、別の疾患の兆候である可能性を否定できず、評価が難しいケースや判断に迷うケースである場合は、緊急性が認められるものとして差し支えない」として、現場で選定療養費の徴収対象外と判断して構わないとしています。なお、熱中症、小児の熱性けいれん、てんかん発作などの症状は、病院到着時には改善して結果として「軽症」と診断された場合でも、救急車を呼んだ時点での緊急性が認められるケースに該当するため、徴収の対象とはならないとしています。徴収額は初診患者の選定療養費に準じる茨城県は7月に全県での導入を公表、12月から多くの救急患者を受け入れている県内22病院で一斉に運用を開始することにしました。紹介状なしの初診患者から選定療養費の徴収を義務付けられている県内22病院のうち、友愛記念病院と古河赤十字病院(いずれも古河市)は12月時点の参加を見送り、既に選定療養費を徴収していた病院が20病院、徴収していない病院が2病院となりました。徴収額は紹介状なしの初診患者の選定療養費と同額となるため、病院ごとに異なります。筑波大学附属病院が1万3,200円、総合病院土浦協同病院と筑波メディカルセンター病院が1万1,000円、白十字総合病院が1,100円で、ほかの病院は7,700円(いずれも税込)。なお、白十字総合病院と筑波学園病院は地域医療支援病院等ではなく、紹介状なしの初診の選定療養費徴収が義務付けられていませんが、今回、軽症救急患者に限って選定療養費を設定したとのことです。「救急車の有料化ではありません」と県は強調茨城県は今回の救急車利用の選定療養費化について、一般向けにQ&A集も用意しています。それによれば、「Q.救急車を有料化するということですか?」という質問に対しては、「救急車の有料化ではありません。既存の選定療養費制度の運用を見直し、救急車で搬送された方のうち、救急車要請時の緊急性が認められない場合には、対象病院において選定療養費をお支払いいただくものです」と、「有料化ではない」旨を強調しています。有料化と選定療養費化は制度が違うと言われても、県民にとっては“負担増”になるのは同じです。これまで無料だった筑波大学附属病院への搬送が1万3,200円というのは、かなりの出費と言えるでしょう。軽症者のタクシー代わりの救急車利用の抑止力としては、それなりに機能しそうです。三重県松阪市は3ヵ月間のモニタリング結果を公表ところで、救急車利用の選定療養費化の先駆けだった三重県松阪市は10月25日、三重県松阪地区で2次救急医療を担う3病院(松阪市民病院、松阪中央総合病院、済生会松阪総合病院)における、救急車利用時に入院に至らなかった軽症患者などから選定療養費を徴収する取り組みのモニタリング結果を報告しました2)。三重県松阪地区では3病院において、6月から救急車利用時に入院に至らなかった軽症患者などから選定療養費7,700円を徴収する取り組みを始めていました。報告されたモニタリング期間は、運用開始の2024年6月1日~8月31日の3ヵ月間で、救急車で3病院に搬送(病院収容)された人を対象に、搬送された時間帯や年齢、特別の料金の徴収有無に加え、主たる搬送要因・傷病名などを調査しました。選定療養費の徴収対象となったのは278人、7.4%3病院の救急搬送における費用徴収の状況について、救急車で3病院に搬送された3,749人のうち、帰宅となり、さらに費用徴収の対象となったのは278人、7.4%でした。徴収対象者の傷病内訳としては、最多は疼痛24人(8.6%)、次いで打撲傷21人(7.6%)、熱中症・脱水症21人(7.6%)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)16人(5.8%)、めまい15人(5.4%)、胃腸炎・食道炎等15人(5.4%)でした。徴収対象外となった1,778人の内訳は、「緊急の患者等、医師の判断による」が最多で1,014人(57.0%)。そのほか、再診が408人(22.9%)、交通事故等が178人(10.0%)、生活保護受給者が88人(4.9%)、紹介状ありが57人(3.2%)でした。費用を徴収した278人のうち高齢者が114人(41.0%)でした。「持続可能な松阪地区の救急医療体制の整備に一定の寄与が確認」と松阪市傷病程度別の救急搬送人員数は、軽症者率が52.9%と前年同期の59.4%から6.5%減少した一方で、中等症者率が42.8%と前年同期の37.0%から5.8%増加しました。一方、「松阪地区救急相談ダイヤル24の相談件数」は7,969件で、前年同期と比較して2,390件(42.8%)増加しました。以上の結果を踏まえ、松阪市は「医療機関の適正受診に繋がる状況が確認でき、今回の取り組みは、『一次二次救急医療の機能分担』、ひいては、『救急車の出動件数の減少』等、持続可能な松阪地区の救急医療体制の整備に一定の寄与が確認できたのではないか」と評価しています。松阪市、茨城県に続く自治体が今後続出することは必至モニタリング期間のため、ゴリゴリと選定療養費を徴収してはいない状況にあって、徴収対象が7.4%というのは結構高い数字と言えるのではないでしょうか。紹介状なしの200床以上の病院(特定機能病院、地域医療支援病院、紹介受診重点医療機関)の初診・再診時などに、病院が独自に設定した選定療養費を徴収する仕組みを軽症救急患者に適用するというスキーム、誰が考えたのか、なかなか名案だと思います。ただ、松阪市のように管轄の3病院だけでやるのではなく、茨城県のように全県で対応したほうが、国民に“正しい”救急車利用の仕方を周知できるでしょう。さらに言えば、茨城県のケースでも、病院によって選定療養費にバラツキがあるのは今後の制度定着に向けては具合が悪そうです。今後、軽症救急の選定療養費は紹介状なしの額とは別に「県内均一」にする、2次救急、3次救急で額を変える、といった工夫が必要でしょう。いずれにせよ、松阪市、茨城県に続く自治体が続出することは必至と考えられます。参考1)救急搬送における選定療養費の取扱いに係る統一的なガイドライン/茨城県2)三基幹病院における選定療養費について/松阪市

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尿路上皮がん1次治療の更新は30年ぶり、ペムブロリズマブ+EV併用療法とは/MSD

 2024年9月24日、根治切除不能な尿路上皮がんに対する1次治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)とネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)エンホルツマブ ベドチン(商品名:パドセブ、以下EV)の併用療法および、ペムブロリズマブ単独療法(プラチナ製剤を含む化学療法が選択できない場合のみ)が、本邦で適応追加に関する承認を取得した。尿路上皮がんの標準1次治療の更新としては30年ぶりとなる。10月31日、MSD主催のメディアセミナーが開催され、菊地 栄次氏(聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科学)が「転移性尿路上皮癌治療“ペムブロリズマブ+エンホルツマブ ベドチンへの期待”」と題した講演を行った。ペムブロリズマブ+EV併用は化学療法と比較しPFS・OSを約2倍に延長 併用療法の承認根拠となったKEYNOTE-A39/EV-302試験は、未治療・根治切除不能な局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者(886例、日本人40例)を対象に、ペムブロリズマブ(最大35サイクル)+EV(投与サイクル数上限なし)併用療法と化学療法(シスプラチンまたはカルボプラチン+ゲムシタビン、最大6サイクル)の有効性と安全性を評価した非盲検無作為化第III相試験。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)、副次評価項目は奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性などであった。 患者背景は年齢中央値が69.0歳、ECOG PSは0~1が96%以上を占めたがPS 2も2.5~3.4%含まれ、肝転移ありの患者は22.3~22.6%含まれた。追跡期間中央値17.2ヵ月におけるPFS中央値は化学療法群6.3ヵ月に対しペムブロリズマブ+EV群12.5ヵ月と有意に改善した(ハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.38~0.54、p<0.00001)。またOS中央値に関しても、化学療法群16.1ヵ月に対して、ペムブロリズマブ+EV群31.5ヵ月と、有意に良好であった(HR:0.47、95%CI:0.38~0.58、p<0.00001)。菊地氏は、ペムブロリズマブ+EV群の完全奏効(CR)が29.1%(化学療法群:12.5%)、進行(PD)は8.7%(同:13.6%)であったことに触れ、「10人に3人で完全奏効が達成され、進行は10%未満というデータは非常に魅力的」と話した。アンメットニーズであるシスプラチン不適格症例でも高い有効性 本試験では、シスプラチンの適格性が層別因子の1つとされ、以下の不適格基準に基づき判断された(1つ以上を満たす場合、シスプラチン不適格とみなす):腎機能(30≦GFR<60mL/分※GFR≧50mL/分でそのほかのシスプラチン不適格基準に該当しない患者は、治験担当医師の臨床的判断に基づき、シスプラチン適格とみなしてもよい)全身状態(ECOG PSまたはWHO PSが2)NCI CTCAE(NCI CTCAE Grade2以上の聴力低下、末梢神経障害)心不全クラス分類(NYHAクラスIIIの心不全) 上記の不適格基準に合致したシスプラチン不適格症例は両群で約46%ずつ含まれた。不適格症例におけるPFS中央値は化学療法群6.1ヵ月に対しペムブロリズマブ+EV群10.6ヵ月(HR:0.43、95%CI:0.33~0.55)、OS中央値はそれぞれ12.7ヵ月、未到達となり(HR:0.43、95%CI:0.31~0.59)、ペムブロリズマブ+EV併用療法の有効性が確認されている。とくに注意すべき有害事象とその発現時期 ペムブロリズマブ+EV群の曝露期間中央値は9.43ヵ月であり、薬剤別にみるとペムブロリズマブが8.51ヵ月、EVが7.01ヵ月であった。いずれかの薬剤の投与中止および休薬に至った副作用としては末梢性感覚ニューロパチーが最も多く(それぞれ10.7%、17.7%)、菊地氏はこのコントロールが重要と指摘した。 ペムブロリズマブ投与による有害事象としては、甲状腺機能低下症が10.7%と最も多く認められた。同氏は甲状腺機能低下症についてはホルモン補充により管理可能とした一方、肺臓炎が9.5%で発生していることに注意が必要と話した。 EV投与による有害事象としては、発疹などの皮膚反応が最も多く(69.1%)、末梢性ニューロパチー(66.6%)、悪心・嘔吐および下痢などの消化器症状(64.8%)が多く認められている。また肺臓炎は10.2%で発生しており、同氏は「定期的な肺臓炎のモニターが必要となる」とした。肺臓炎の発現時期中央値は3.94(0.3~14.5)ヵ月、高血糖(0.72ヵ月)や皮膚反応(0.49ヵ月)は比較的早く発現し、末梢性ニューロパチーの発現時期中央値は3.29(0.1~17.7)ヵ月であった。 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)やNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインではペムブロリズマブ+EV併用療法がすでに1次治療の第一選択として位置付けられている。日本のガイドラインでの位置付けについて菊地氏は、ペムブロリズマブ+EV併用療法が使えない患者を定義していかなければならないとした。その際に参考になるのがKEYNOTE-A39/EV-302試験の除外基準で、重度の糖尿病、Grade2以上の末梢神経障害、抗PD-1/PD-L1抗体薬治療歴を有する患者であった。また、全身状態だけでなく社会・経済的状況も影響する可能性があるとし、まずは日本の実臨床での使用データを積み上げていく必要があると話した。

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本邦初、がん患者の「気持ちのつらさ」のガイドライン/日本肺癌学会

 2024年10月、日本がんサポーティブケア学会と日本サイコオンコロジー学会は『がん患者における気持ちのつらさガイドライン』(金原出版)を発刊した。本ガイドラインは、がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズの第4弾となる。第65回日本肺癌学会学術集会において、本ガイドラインの作成委員長の藤澤 大介氏(慶應義塾大学医学部)が本ガイドライン作成の背景、本ガイドラインで設定された重要臨床課題と臨床疑問(CQ:クリニカルクエスチョン)を紹介した。気持ちのつらさはがん治療や生命予後に悪影響 がん患者における気持ちのつらさは、QOLの低下や痛みの増強を招くだけでなく、がん治療のアドヒアランスの低下を招き、入院期間の延長や生命予後の悪化にもつながる。しかし、その多くは予防や治療が可能であると藤澤氏は強調する。そこで、本ガイドラインでは臨床における気持ちのつらさへの対応方法をアルゴリズムとして示した。 まず、気持ちのつらさへの対応の大原則として「初めから精神心理の専門家が関わるのではなく、すべての医療従事者が温かく常識的な対応をすることが重要である」と藤澤氏は述べた。具体的には、(1)支持的なコミュニケーション、(2)気持ちのつらさの可能性への気付き、(3)ニーズの特定と対応、(4)気持ちのつらさに類似した医学的状況の除外、が必要である。これらの対応をしたうえで、気持ちのつらさが持続する場合や、症状の重い気持ちのつらさが存在する場合には、より精神・心理ケアに特化した介入を検討するという流れである。詳細はガイドラインを参照されたい(p.96~100)。閾値以上の気持ちのつらさの緩和に関する9つのCQを設定 本ガイドラインでは、気持ちのつらさを緩和するための介入について、6つの重要臨床課題と9つのCQを設定した。なお、介入の効果の指標としてはうつ、不安、両者を統合したdistressを用いた。また、気持ちのつらさは正常範囲のものではなく、臨床的介入が必要とされる一定の重症度以上(閾値以上)のものを対象としている。 藤澤氏は、本発表では9つのCQのうち「薬物療法(CQ1、2)」「協働的ケア(CQ4)」「早期からの緩和ケア(CQ5)」「ピアサポート(CQ7)」について紹介した。 9つのCQのなかで、唯一強い推奨となったのは、協働的ケアであった(CQ4、推奨の強さ1[強い]、エビデンスの確実性[強さ]:A[強い])。協働的ケアとは、プライマリ・ケア提供者と精神心理の専門家が協力体制を作って、系統的なケアを提供するというモデルである。海外では、プライマリ・ケア提供者はトレーニングを受けた看護師が担うことが多い。協働的ケアは、本ガイドラインでは強い推奨となったものの「本邦での現状を考えると、実施していない施設が多いのではないか」と藤澤氏は指摘した。そこで、解決策として「がん診療拠点病院には、認定専門看護師が在籍しており、がんカウンセリング料などが算定できる。また、緩和ケアチームが機能していることが多いと考えられるため、がん診療拠点病院にハブとして機能していただき、精神心理の専門家、精神科などと連携しながら系統的な介入の実施を検討していくのが良いのではないか」と述べた。 続いて、藤澤氏は薬物療法について説明した。薬物療法で用いられるのは抗不安薬(CQ1)、抗うつ薬(CQ2)であるが、これらは本ガイドラインでは弱い推奨となった。この根拠として、対象をがん患者に限定すると、薬物療法のエビデンスはあまり確立していないことが挙げられた。ただし、抗不安薬や抗うつ薬は、がん患者に限定しなければ、不安やうつに対して十分なエビデンスを有しているため、有害事象について慎重に考慮したうえで使用することを提案するという形であると、藤澤氏は説明した。 早期からの緩和ケア(CQ5)については、「気持ちのつらさの改善を目的とした場合、単独では推奨しない」という推奨となった。この根拠としては、閾値以上の気持ちのつらさを有する患者を対象とした研究がなかったこと、閾値を設定しない研究では良好な結果もあったものの有意差がない研究が多かったことが挙げられた。ただし、藤澤氏は「早期からの緩和ケアは、進行がんの患者における症状緩和やQOLの向上に有益であることがわかっており、すべてのがん患者に対して実施を考慮すべきという基本スタンスは変わっていない」と付け加えた。 ピアサポート(CQ7)についても、早期からの緩和ケアと同様に「気持ちのつらさの改善を目的とした場合、単独では推奨しない」という推奨となった。こちらも、その根拠としてはエビデンス不足が挙げられた。ただし、うつ・不安以外のアウトカムの改善(例:自己効力感の向上)を認める研究はあり、「実施を否定するものではなく、より専門的な精神心理的介入と併用しながら実施することは十分に考えられる」と藤澤氏は述べた。 本発表の結語として、藤澤氏は「気持ちのつらさに対する介入には、すべての医療者が行うべき対応と、より専門的な介入がある。すべての医療者が重要なプレイヤーであり、専門的な介入に関するエビデンスを踏まえながら協働的に実施する形を作っていきたい」と述べた。

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固形がんにMRD検査は有用か?学会がガイダンスを作成/日本癌治療学会

 日本癌治療学会は、固形がんを対象に、がん種横断的にMRD検査の最新エビデンスを集め、検査の適正利用・研究を目指すことを目的としたガイダンス「分子的残存病変(molecular residual disease:MRD)検査の適正臨床利用に関する見解書 第1版」(日本癌治療学会:編、日本臨床腫瘍学会・日本外科学会:協力)を作成し、2024年10月に学会サイト上で公開した。※MRDの概念は複数あり、Pubmedでも以下の3つの名称が混在するが、今回のガイダンスにおけるMRDは2の概念に基づくもの。 1.Minimally Residual Disease…血液腫瘍における定義(現在のMRD関連論文の4分の3を占める) 2.Molecular Residual Disease…近年のctDNAに基づく、分子レベルの残存病変 3.Measurable Residual Disease…定量的に測定可能な残存病変 MRDは、抗がん剤の投与などにより一定の治療効果が確認された後も患者の体内に残る微小なレベルのがん病変を指す。もともとは造血器腫瘍における研究が先行しており、2024年4月には米国食品医薬品局(FDA)の委員会がMRDを多発性骨髄腫の臨床開発のエンドポイントとすることを認めるなど、研究・臨床への応用が進む。固形がんにおいても、血液を用いたリキッドバイオプシー検査の臨床導入を契機に、大腸がんなどを中心にMRD評価による再発リスク層別化を検証する臨床試験が多数行われ、臨床応用や保険承認を目指す流れができつつある。今回の見解書(ガイダンス)もこのような背景から作成されたものだ。 ガイダンスは以下の構成となっている。―――――――――――――――――――・総論:ctDNA、MRDについて、MRD検査に関する国内外のガイドライン記載・各論:各領域の臨床動向(消化管、肺、乳腺、泌尿器、肝胆膵、婦人科、頭頸部、皮膚)・クリニカル・クエスチョン(CQ1~9)・参考資料――――――――――――――――――― ガイダンス公開と同時期に行われた第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)では、「MRDがもたらす切除可能固形がん周術期治療の近未来―切除可能固形がんにおけるMRD利用ガイダンス発刊に寄せて」と題したシンポジウムが行われ、ガイダンスの作成ワーキンググループの委員が、ガイダンスに収載されたエビデンスや各領域における検査実施や応用の現状を報告した。 MRDに関するエビデンスが蓄積してきた造血器腫瘍領域と異なり、固形がん領域におけるMRD検査の臨床応用は道半ばだ。シンポジウムではMRD検査活用に対する「賛成派」「反対派」の立場に分かれ、ディスカッションを行った。賛成派がこれまで報告された研究結果を基に有用性を示す一方で、反対派は「がん種ごとに検出率が異なり、臓器横断的に利用できるのかは疑問」「複数のアッセイがあり、精度の検証や最適化がされていない」「膵がんのような予後の悪いがんでは、MRD陰性の中にも再発ハイリスク層が存在する。MRD陰性を理由とした治療中止に本当にベネフィットはあるか」「MRDの結果だけで患者を層別化するのは、個別化医療の流れに反するのでは」といった、現時点における疑問点や課題点を挙げた。 また、各領域の報告では、がん種ごとに重要なサブタイプと判定すべき時期・検査が異なるためMRD検査の実施判定が難しい、すでに確立されたバイオマーカーがありMRD検査の必要性が薄いなど、MRD検査に対するスタンスに違いも見られた。 最後にワーキンググループ委員長を務める小林 信氏(国立がん研究センター東病院)が、ガイダンスに掲載された9つのクリニカルクエスチョン(CQ)から5つを紹介した。CQ1:術後MRD検査には、どのようなアッセイが推奨されるか?推奨1-1:MRD検査として分析的妥当性及び臨床的妥当性が示された検査を強く推奨する。→「臨床的妥当性」がキーワードで、これはMRD検査の感度・特異度や的中率、陽性患者と陰性患者の予後の比較、MRD検出から再発までの期間などにより評価される。これらの指標が適切な臨床試験で示されているアッセイの利用を「強く推奨する」。CQ2:どのような症例を対象にMRD検査を行うことが推奨されるか?推奨2-1:術後再発リスク評価を目的として、根治的切除が行われている症例を対象にMRD検査を行うことを強く推奨する。→MRD検査は、がん患者を対象に低侵襲にctDNAを解析し、再発の証拠がある前に分子的再発を特定する検査である。従って、基本的に根治的切除が行われている症例が対象となる。具体的ながん種、Stageに関しては、適切な研究により臨床的妥当性を示すことが必要である。たとえば、大腸がんに関してはCIRCULATE-JapanによるGALAXY試験によってStageを問わず陽性例の再発リスクが高いことが示されているため、根治切除後の全症例が推奨の対象となる。一方、再発サーベイランスに関しては、がん種・Stageごとのリスクを考慮し、低リスク症例に高コストのMRD検査を続けることは望ましくないだろう。CQ4:MRD検査はいつ行うことが勧められるか?推奨4-2:術後再発リスクを目的とする場合、術後補助療法開始前且つ術後2~8週を目安としたMRD検査を推奨する。→MRD検査は術後再発リスクを評価し、術後の補助療法の適用を判断することが主な目的であり、検査実施は術後2~8週間が妥当とした。この根拠は、手術直後は侵襲の影響でctDNAが高値となり、術後2週以降に標準化することだ。あとはがん種ごとのガイドラインにおける術後補助療法の開始時期から逆算し、検査を実施することになるだろう。CQ6:術後MRD陽性の患者に対して、術後補助療法は推奨されるか?術後MRD陽性の患者に対して、各がん種に応じた術後補助療法を行うことを推奨する。→MRDが消失すると予後が良い、MRD陽性例に術後補助療法を行うと予後が良い、というエビデンスが、がん種横断的に示されている。ただ、こうしたデータは再発高リスク例を対象とした後ろ向き研究が多いことには注意が必要だ。MRD陽性・再発低リスク例に対する補助療法の有用性を示したエビデンスはなく、この点はがん種ごとにガイドラインの推奨も異なり、委員間で意見の相違もあった。CQ8:術後MRD陰性の患者に対して、術後補助療法は推奨されるか?術後MRD陰性の患者に対しても、各がん種に応じた術後補助療法を行うことを考慮する。ただし腫瘍因子・患者因子などを考慮して治療強度の低いレジメンの適用や術後補助療法を行わないことも選択肢となりうる。→大腸がんを対象としたDYNAMIC試験では、MRD陰性例であっても病理学的因子の不良例は有意に予後が悪いという結果が示されるなど、MRD陰性の結果だけで術後補助療法の省略・簡略化を決めることは難しい。ただ、がん種によってはMRD陰性例における術後観察群の経過が良好という報告もあり、このような推奨となった。現在進行中の大腸がんを対象にMRD陰性例の術後補助療法の有無を比較したVEGA試験の結果などを見て、再度検討することになるだろう。「MRD検査の適正臨床利用に関する見解書 第1版」/日本癌治療学会

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第216回 マイコプラズマ肺炎5週連続で過去最多更新、厚労省が注意喚起/厚労省

<先週の動き>1.マイコプラズマ肺炎5週連続で過去最多更新、厚労省が注意喚起/厚労省2.新たな地域医療構想で、2次救急病院はどう分類? 定義が課題に/厚労省3.外科医不足解消へ集約化・重点化を検討 厚労省が提案/厚労省4.信頼できるがん情報はどこに? 半数近くの患者はがん情報が入手困難/国立がん研5.出生数減少、過去最少を更新 社会保障制度への影響も懸念/厚労省6.コロナ禍の補助金、不正受給21億円 会計検査院が厳正な対応を要求/会計検査院1.マイコプラズマ肺炎5週連続で過去最多更新、厚労省が注意喚起/厚労省マイコプラズマ肺炎の感染拡大が続いている。国立感染症研究所の発表によると、10月21~27日の1週間における定点医療機関当たりの患者報告数は2.49人で、5週連続で過去最多を更新した。都道府県別では、愛知県の5.4人が最も多く、次いで福井県(5.33人)、青森県(5.0人)、東京都(4.84人)、埼玉県(4.67人)と続いている。マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ細菌による呼吸器感染症で、咳や発熱が主な症状。子供や若者に多くみられるが、大人も感染する可能性がある。厚生労働省は、咳が長引くなどの症状がある場合は医療機関を受診するよう呼びかけている。また、感染拡大防止のため、手洗い、マスク着用などの基本的な感染対策を徹底するよう促している。一方、手足口病も依然として高止まりが続いている。10月21~27日の1週間における定点医療機関当たりの患者報告数は8.06人で、警報レベル(5.0人)を超えている。手足口病は、主に乳幼児がかかるウイルス性の感染症で、発熱や口内炎、手足の発疹などが主な症状。感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染や、接触感染。厚労省は、手足口病の流行状況を注視し、引き続き予防対策の徹底を呼びかけている。参考1)全数把握疾患、報告数、累積報告数、都道府県別(国立感染症研究所)2)マイコプラズマ肺炎が5週連続で過去最多 手足口病も高止まり 感染研(CB news)3)マイコプラズマ肺炎が猛威=感染者、4週連続で過去最多更新-厚労省「手洗い、マスク着用を」(時事通信)2.新たな地域医療構想で、2次救急病院はどう分類? 定義が課題に/厚労省2026年度から始まる新たな地域医療構想に向け、厚生労働省は病院機能報告制度の具体化を進めている。11月8日に開かれた「新たな地域医療構想等に関する検討会」では、地域ごとに整備する4つの機能と広域的な機能を担う大学病院本院の機能が提示された。地域ごとの機能は、(1)高齢者救急等機能、(2)在宅医療連携機能、(3)急性期拠点機能、(4)専門等機能(リハビリや専門性の高い医療など)となっており、1つの医療機関が複数の機能を併せ持つこともあり得るとされた。広域的な機能を担う大学病院本院は、「医育および広域診療機能」として、医師派遣、医師の卒前・卒後教育、移植や3次救急などの広域医療を担っていくこととされた。急性期拠点機能については、全国の2次救急医療機関(3,194施設)の半数以上が、救急車の受け入れが23年度に500件未満だったことから、手術や救急など医療資源を多く要する症例を集約化し、医療の質を確保するため、報告できる病院数を地域ごとに設定する方針となった。検討会では、機能の名称や定義が分かりにくいという意見や、高齢者救急等機能と急性期拠点機能の役割分担、2次救急病院の分類などについて議論があった。厚労省は、これらの意見を踏まえ、名称や定義を明確化し、2025年度中に新たな地域医療構想の策定ガイドラインを示す予定。参考1)第11回新たな地域医療構想等に関する検討会[資料](厚労省)2)医療機関機能4プラス1案示す、検討継続 厚労省「複数報告」も想定(CB news)3)新地域医療構想で報告する病院機能、高齢者救急等/在宅医療連携/急性期拠点/専門等/医育・広域診療等としてはどうか-新地域医療構想検討会(Gem Med)3.外科医不足解消へ集約化・重点化を検討 厚労省が提案/厚労省厚生労働省は10月30日に「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」を開き、外科医不足の解消に向け、外科医療の集約化・重点化を検討課題として提案した。背景には、外科医の増加がほかの診療科に比べて緩慢であること、時間外・休日労働の割合が高いことなど、外科医の労働環境の厳しさが挙げられている。検討会では、外科医の減少に対する学会の取り組みとして、日本消化器外科学会と日本脳神経外科学会からヒアリングが行われ、両学会からは、症例数の多い施設ほど治療成績が向上する傾向があること、救急対応など地域医療の均てん化が必要な領域もあることなどが報告された。構成員からは、集約化の必要性や、地域や領域に応じた対応の必要性などが指摘された。一方、集約化によって医師の都市部集中が加速する可能性や、地域での専門医育成の難しさなどが課題として挙げられた。厚労省では、これらの意見を踏まえ、新たな地域医療構想等に関する検討会に報告し、医師偏在対策の総合的な対策パッケージ策定に向けて検討を進める方針。参考1)第7回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会(厚労省)2)外科の集約化・重点化は医師偏在対策で「喫緊の課題」、厚労省が提案(日経メディカル)3)急性期病院の集約化・重点化、「病院経営の維持、医療の質の確保」等に加え「医師の診療科偏在の是正」も期待できる-医師偏在対策等検討会(Gem Med)4.信頼できるがん情報はどこに? 半数近くの患者はがん情報が入手困難/国立がん研国立がん研究センターなどが、2023年12月に実施したアンケート調査によるとオンラインでがん情報を入手する際に困難を感じているがん患者が45%に上ることが明らかになった。この調査は、インターネット上で約1,000人のがん患者を対象に行われ、オンラインでの情報収集における課題や情報源、情報活用について尋ねたもの。回答者の45%が「オンラインでがん関連情報を得る際に困難を感じたことがある」と回答し、そのうち5%は「常に困難を感じている/感じていた」と回答した。困難を感じた理由としては、「自分に合った情報をみつけることができない」「さまざまな情報が分散して掲載されている」「専門用語が多い」といった点が挙げられた。情報の入手元としては、検索エンジンが94%と最も多く、次いで動画共有サービスが30%、SNSが17%となった。この調査結果を受け、国立がん研究センターや全国がん患者団体連合会などは、「がん情報の均てん化を目指す会」を立ち上げた。同会は、アンケート調査の結果を踏まえて、患者が理解しやすい情報発信の必要性や、科学的根拠に基づかない情報への対応など、3つの課題と提言をまとめた。情報源に関する課題では、専門用語を避け、患者が理解しやすい情報発信が求められるとともに、信頼できる情報源の活用を促進するべきだと提言している。情報へのリーチに関する課題では、患者が適切な情報にアクセスできるよう、信頼できる情報を集めたポータルサイトの作成や、優良なWebサイト同士の相互リンクによる誘導強化を提言している。情報の活用に関する課題では、医師やがん相談支援センターによるサポート体制を強化し、患者が情報の意味を理解し、自分の状況に合わせて解釈できるよう支援するとともに、患者向けオンラインユーザーガイドを作成し、情報活用力を高めるための普及啓発を行うべきだと提言している。同会は今後、これらの提言を基に、具体的な対策を検討していく。参考1)がん情報のネットでの収集 半数近くが「困難」経験 患者調査で判明(朝日新聞)2)がん情報の均てん化に向けて~がん患者がオンライン上でがん情報を入手・活用する際の課題と提言~(がん情報の均てん化を目指す会)5.出生数減少、過去最少を更新 社会保障制度への影響も懸念/厚労省厚生労働省が11月5日に発表した人口動態統計によると、2024年上半期(1~6月)の出生数は、前年同期比6.3%減の32万9,998人だった。このペースで推移すると、2024年の年間出生数は70万人を割り込み、過去最少を更新する可能性が高まっている。出生数の減少は8年連続で、少子化に歯止めがかからない深刻な状況。背景には、未婚化・晩婚化の進行に加え、コロナ禍で結婚や出産を控える人が増えたことが挙げられる。出生数の減少は、労働力人口の減少や消費の冷え込みなど、経済への影響も懸念され、また、医療や年金などの社会保障制度の維持も困難になる可能性がある。政府は、少子化対策として児童手当や育児休業給付の拡充などを進めているが、今後、抜本的な対策が求められている。参考1)人口動態統計(厚労省)2)24年上半期の出生数は33万人 初の70万人割れか 人口動態統計(毎日新聞)3)ことし上半期の出生数 約33万人 年間70万人下回るペースで減少(NHK)4)今年上半期の出生数は33万人届かず 過去最低だった去年を下回る見込み 厚労省発表(テレビ朝日)6.コロナ禍の補助金、不正受給21億円 会計検査院が厳正な対応を要求/会計検査院会計検査院は11月6日、2023年度の決算検査報告を公表し、新型コロナウイルス対策の交付金や補助金を巡り、医療機関による不正受給など、計648億円の国費の不適切な取り扱いを指摘した。報告書によると、コロナ禍で医療体制を整備するために支払われた国の補助金において、約21億円が過大に交付されていた。中には虚偽の申請や制度の理解不足によるものなど、悪質なケースも含まれていた。具体的な事例として、空き病床とコロナ診療で休止した病床を重複申請するなどした病床確保料の過大請求、トイレや洗濯機置き場を診察室としてカウントするなどした発熱外来の補助金の不正受給、オペレーターの勤務時間を水増しするなどしたワクチン接種コールセンター業務の不正請求、納入されていない設備を納入したと虚偽報告などした救急・小児科医療機関の補助金不正受給などが挙げられている。会計検査院は、事業者側の制度理解不足や行政側の審査の甘さを指摘し、再発防止を求めている。また、コロナ交付金については、総額18兆3,000億円のうち約2割の約3兆2,000億円が不要になっていたことも判明した。使途に制限がないことから、「イカのモニュメント」や「ゆるキャラの着ぐるみ代」など、コロナ対策などとの関連性が不明瞭な事業に交付金が使われたケースもあり、批判が出ている。会計検査院は、自由度の高い交付金事業は、効果検証を行い国民に情報提供する必要があると指摘している。参考1)公金648億円余りが不適切取り扱いと指摘 会計検査院(NHK)2)コロナ医療支援21億円過大 トイレも「診察室」扱いで申請(日経新聞)3)今村洋史・元衆院議員の病院、新型コロナ診療体制の補助金1.6億円を不当申請…「考え甘かった」(読売新聞)

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次世代のCAR-T細胞療法―治療効果を上げるための新たなアプローチ/日本血液学会

 2024年10月11~13日に第86回日本血液学会学術集会が開催され、13日のJSH-ASH Joint Symposiumでは、『次世代のCAR-T細胞療法』と題して、キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)療法の効果の毒性を最小限にとどめ、治療効果をより高めるための新たな標的の探索や、細胞工学を用いてキメラ抗原受容体(CAR)構造を強化した治療、およびoff the shelf therapyを目標としたiPS細胞由来次世代T細胞療法の試みなど、CAR-T細胞療法に関する国内外の最新の話題が紹介された。CAR-T細胞療法を最適化するための新しい標的の開発 CAR-T細胞療法はB細胞性悪性腫瘍や多発性骨髄腫(MM)などに対する効果が認められているが、毒性については解決すべき課題が残っている。ガイドラインでは主な合併症として、サイトカイン放出症候群(CRS)および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)が取り上げられているが、CAR-T細胞療法による新たな、または、まれな合併症とその管理についての情報は少なく、新たな標的の検討とともに明らかにしていく必要がある。米国血液学会(ASH)のCAR-T細胞療法のワークショップでは、CAR-T細胞の病態生理の理解、まれな毒性についてのデータの蓄積、on-target off-toxicityを回避するための的確な標的となる抗原などが検討されている。 Fabiana Perna氏(Moffitt Cancer Center)らは腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍特異的抗原(TSA)、さらに腫瘍特異的細胞表面プロテオームの解析を行っている。同氏らはこれまで、急性骨髄性白血病(AML)におけるCAR-T細胞療法の標的を同定するために、プロテオームと遺伝子発現の同時解析を行い、26個の標的を同定した。このうち15個は臨床試験で用いられ、その多くがAMLの正常細胞上に高発現する蛋白であった。 MMに対してはB細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T(BCMA-CAR-T)細胞療法の成績は良好とはいえず、新たな標的抗原が必要である。Perna氏らはMM患者約900例のサンプル約4,700検体を用い細胞表面のプロテオームを解析し、RNAシーケンスを行い、腫瘍組織に高発現するBCAAを含む6個の標的を同定した。そのうちSEMA4Aは再発/難治性MM患者での高発現が認められた。BCMA-CAR-T細胞療法後の再発はBCMAの発現低下に関連し、CARの機能低下を惹起すると考えられ、的確な標的の探索が必要である。Perna氏らはSEMA4AがCAR-T細胞療法の標的となりうると考え、SEMA4A-CAR-T細胞療法を試みている。なお、MM患者の免疫療法に関しては第I相試験が予定されている。 また、Perna氏らはmRNAスプライシングに由来する白血病特異的抗原の解析パイプラインを開発中であり、AML患者サンプルからスプライスバリアントの異常発現を認めたことから、同氏は、疾患特異的スプライスバリアントを標的とした治療法につながることを期待していると述べた。CAR-T細胞療法抵抗性克服と新たな応用の探求 CAR-T細胞療法は、CD19およびBCMA抗原を標的として、B細胞性悪性腫瘍(リンパ腫、白血病)およびMMに対して行われている。BCMA-CAR-T細胞療法は初期治療の奏効率は高いが、長期寛解率は低くとどまっている。CAR-T細胞の機能不全は抗原逃避、T細胞欠損、腫瘍微小環境(TME)などにより惹起される。そこで、酒村 玲央奈氏(メイヨー・クリニック 血液内科)は、CAR-T細胞療法の治療抵抗性克服と新たなストラテジーを探求するうえで、重要な鍵となる免疫抑制細胞について検討した。 がん関連線維芽細胞(CAF)は、CAR-T細胞の機能不全を誘導するが、同時にMM患者の治療効果を高める可能性があると考えられている。これまでの酒村氏の検討でMM患者由来のCAFがTGF-βなど抑制性サイトカイン産生を増加させ、PD-1/PD-L1結合を介してCAR-T細胞を阻害し、FAS/FASリガンド経路を介してCAR-T細胞にアポトーシスを誘導、制御性T細胞(Treg)を動員することが示された。また、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的としたCAR-T細胞はマウスの体重を有意に減少させ、off target効果による重篤な毒性を惹起すると考えられ、CAF表面上に発現するCS1およびBCMAの2つを標的としたCAR-T細胞は腫瘍細胞およびCAFを溶解することが示された。さらに、BCMA-CAR-T細胞療法施行患者由来の骨髄サンプルを用いたシングルセルRNAシーケンスを行い、non-responder由来のCAFが高頻度にデスリガンド(抗腫瘍性リガンド)を発現すること、non-responder由来のT細胞は慢性的に刺激され疲弊したphenotypeであることが明らかとなった。また、non-responder由来の骨髄サンプルではTMEを支配する腫瘍関連マクロファージ(TAM)とCAFの有意なクロストークの存在が示された。 間葉系幹細胞(MSC)は多能性細胞であり、免疫抑制および組織再生治療における効果が研究されている。そこで酒村氏は、MSCの免疫抑制効果を向上させるために、細胞工学技術を用い健康な人から得た脂肪由来のMSCにCARを搭載し、移植片対宿主病(GVHD)に対する治療戦略をマウスモデルで検討した。研究には、とくにGVHDをターゲットとしたE-cadherin(Ecad)特異的なCAR-MSC(EcCAR-MSC)を用いた。EcCAR-MSCの開発では、Ecad特異的な単鎖可変フラグメント(scFV)クローンが生成され、CAR-CD28ζ構造を設計し安定発現させてMSCの免疫抑制機能を強化したことが示された。 GVHDモデルにおいてEcCAR-MSCはマウスの体重減少を軽減し、GVHD症状を緩和し生存率を向上させた。また、Ecad陽性大腸組織へ特異的に移行し、T細胞活性を抑制し免疫調節機能効果を向上させた。また、シングルセルRNAシーケンスにより、抗原特異的刺激を受けたEcCAR-MSCにおいてIL-6、IL-10、NF-κBなどの免疫抑制シグナル経路の活性化が認められた。EcCAR-MSCのCD28ζシグナルドメインを含むCAR構造体はより強い免疫抑制効果を示した。 酒村氏は、CARを用いたMSCの免疫抑制機能を強化する新たな細胞治療とGVHDおよび腫瘍抑制における可能性を提示した。また、MSCの開発は免疫環境の調節を可能とし、炎症性腸疾患(IBD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)など自己免疫疾患の治療にも新たなアプローチを提供するものと考えると述べ、CAR-T細胞療法を進展させ、より多くの患者予後の改善を目指したいと結んだ。難治性腫瘍に対するiPS細胞由来次世代T細胞療法の開発 難治性NK細胞リンパ腫に対しては、L-アスパラギナーゼを含む抗がん剤治療や末梢血由来細胞傷害性T細胞(CTL)による細胞治療が試みられてきたが、治療効果は十分ではなかった。とくに末梢血由来T細胞は細胞治療後に疲弊し、長期的には腫瘍が増大することが知られている。そこで、安藤 美樹氏(順天堂大学大学院医学研究科血液内科学)はNK細胞リンパ腫患者の末梢血よりエプスタイン・バーウイルス(EBV)抗原特異的CTLを使用し、iPS細胞を作製後、再びT細胞に分化誘導し、iPS細胞由来若返りCTL(rejT)を作製し、NK細胞リンパ腫に対する抗腫瘍効果を検討した。その結果、rejTはNK細胞リンパ腫細胞株に対し強力な細胞傷害活性を示した。次いでNK細胞リンパ腫細胞株を腹腔内注射したマウスを用い、rejTおよび末梢血由来T細胞で治療し生体内での抗腫瘍効果を比較検討した結果、両群とも有意な腫瘍増大抑制効果が認められた。さらにrejTは末梢血由来T細胞に比べ有意な生存期間延長効果を示し、マウス体内でメモリーT細胞として長期間生存し、リンパ腫再増殖抑制効果が持続したことが示された。 次いで安藤氏は、末梢血EBV抗原LMP2特異的CTLからiPS細胞を作製し分化誘導後、iPS細胞由来若返りLMP2抗原特異的CTL(LMP2-rejT)がEBV関連リンパ腫に対し強い抗腫瘍効果を発揮することをマウスモデルで証明した。また、LMP2-rejTは生体内でメモリーT細胞として長期生存し、難治性リンパ腫の再発抑制を維持することを確認した。 安藤氏はこの手法を応用し、LMP2-rejTにCARを搭載することで、2つの受容体を有し、同時に2つの抗原(CD19、LMP2抗原)を標的にできるiPS細胞由来2抗原受容体T細胞(DRrejT)を作製した。マウスを用いた検討ではDRrejTは受容体を1つのみ有する従来のT細胞に比べ、難治性の悪性リンパ腫に対し強力な抗腫瘍効果と、生存期間延長効果を示し、メモリーT細胞として長期生存が示された。 また、安藤氏はiPS細胞に小細胞肺がん(SCLC)に高発現するGD2抗原標的キメラ抗原受容体(GD2-CAR)を遺伝子導入後、分化誘導したiPS細胞由来GD2-CART細胞(GD2-CARrejT)を作製し、SCLCに対する強い抗腫瘍効果を示した。さらに、GD2-CARrejTは末梢血由来のGD2-CART細胞に比べ、疲弊マーカーであるTIGITの発現がきわめて低いことを明らかにした。また、マウスの検討でGD2-CARrejTは末梢血由来LMP2-CTLに比べNK/T細胞リンパ腫を抑制することが示された。 さらに、安藤氏はiPS細胞由来ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原特異的CTL(HPV-rejT)を作製し、HPV-rejTは末梢血由来CTLと比較して子宮頸がんの増殖を強力に抑制することを確認した。子宮頸がん患者由来のCTL作製は時間とコストがかかり実用化には課題がある。一方、健康な人のCTLから作成した他家iPS細胞を用いた場合、これらの問題は解決するが、患者免疫細胞からの同種免疫反応により抗腫瘍効果が減弱する。そこでCRISPR/Cas9技術を用い、HLAクラスIをゲノム編集した健常人由来他家HPV-CTL(HLA-class I-edited HPV-rejT)を作製した。マウスを用いた検討で、HLA-class I-edited HPV-rejTは患者免疫細胞から拒絶されずに子宮頸がんを強力に抑制し、長期間の生存期間延長効果も認められた。また、末梢血由来HPV-CTLに比べ、細胞傷害活性に関するIFNG遺伝子や、組織レジデントメモリー細胞に関係するITGAE遺伝子などの発現レベルが有意に高く、組織レジデントメモリー細胞を豊富に含むことが示された。これらの機能解析により、HLA-class I-edited HPV-rejTはTGF-βシグナリングによりCD103発現レベルを上昇させ、その結果、抗原特異的細胞傷害活性が増強することが明らかとなった。現在、HLA-class I-edited HPV-rejTを用いた治療の安全性を評価する医師主導第I相試験が進行中である。 安藤氏はiPS細胞由来の抗原特異的、そしてHLA編集細胞が、off the shelfのT細胞療法に、持続可能で有望なアプローチを提供するものと期待されると締めくくった。

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無症候性重症AS、早期TAVR vs.経過観察/NEJM

 無症候性の重症大動脈弁狭窄症(AS)患者に対するバルーン拡張型弁を用いた経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の早期施行は、経過観察と比較して複合イベント(全死因死亡、脳卒中または心血管系疾患による予定外の入院)の抑制において優れることが示された。米国・Morristown Medical CenterのPhilippe Genereux氏らEARLY TAVR Trial Investigatorsが、米国とカナダの75施設で実施した無作為化非盲検比較試験「Evaluation of TAVR Compared to Surveillance for Patients with Asymptomatic Severe Aortic Stenosis trial:EARLY TAVR試験」の結果を報告した。無症候性の重症ASで左室駆出率(LVEF)が保たれている患者の場合、現行ガイドラインでは6~12ヵ月ごとの定期的な検査が推奨されている。これらの患者において、TAVRによる早期介入がアウトカムを改善するかを検討した無作為化試験のデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2024年10月28日号掲載の報告。全死因死亡と脳卒中・心血管系疾患による予定外入院の複合イベントを評価 研究グループは、無症候性の重症ASで、米国胸部外科学会の予測死亡リスク(STS-PROM)スコア(範囲:0~100%、高スコアほど術後30日以内の死亡リスクが高い)が<10%、LVEF≧50%の65歳以上の患者を、TAVR群および経過観察群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 TAVR群では、経大腿アプローチでバルーン拡張型弁(SAPIEN 3/3 Ultra、Edwards Lifesciences製)を用い、経過観察群ではガイドラインに従って標準治療を行った。 主要エンドポイントは、全死因死亡、脳卒中または心血管系疾患による予定外の入院の複合とし、ITT解析を実施した。TAVR群で複合イベントリスクが半減 2017年3月~2021年12月に1,578例がスクリーニングを受け、適格患者901例が無作為に割り付けられた(TAVR群455例、経過観察群446例)。患者背景は、平均年齢75.8歳、女性が30.9%、STS-PROM平均値は1.8%であり83.6%の患者は地域のハートチームによる評価で手術リスクが低いと判定されていた。 追跡期間中央値3.8年において、主要エンドポイントの複合イベントは、TAVR群で122例(26.8%)、経過観察群で202例(45.3%)に認められ、ハザード比は0.50(95%信頼区間:0.40~0.63、p<0.001)であった。各イベントの発生率は、TAVR群と経過観察群でそれぞれ全死因死亡が8.4%、9.2%、脳卒中が4.2%、6.7%、心血管系疾患による予定外の入院が20.9%、41.7%であった。 経過観察群では追跡期間中に446例中388例(87.0%)が大動脈弁置換術を受けた。 手技に関連した有害事象は、TAVR群の患者と経過観察群で大動脈弁置換術を受けた患者との間で明らかな差は認められなかった。

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さじ加減で過降圧や副作用を調整している医師にとっては3剤配合剤の有用性は低い(解説:桑島巌氏)

 Ca拮抗薬、ARB/ACE阻害薬の単剤で降圧目標値に達しない場合には両者の併用、それでも降圧目標値に達しない場合には、サイアザイド類似薬またはサイアザイド系利尿薬の3剤併用とするのが『高血圧治療ガイドライン2019』である。その場合、3剤を1つの配合剤とすることで服薬コンプライアンスの改善が見込まれるが、本試験は、Ca拮抗薬アムロジピン2.5mg、ARB(テルミサルタン20mg)、サイアザイド類似薬(インダパミド1.25mg)の3剤を配合したGMRx2(本邦未発売)半量の有効性と安全性を、各成分2剤併用と比較した国際共同二重盲検試験である。12週間追跡の結果、3剤配合は2剤併用よりも家庭血圧の有意な降圧をもたらし、外来血圧の降圧率も優れ、かつ副作用による中断率においては2剤併用と差がなかったというのが結論である。 さて、この試験結果が本邦の実臨床にどの程度役立つかが問題である。 本試験の3剤配合、2剤併用に用いられているアムロジピン、テルミサルタンの用量は、日本の初期用量と同じである。インダパミドは、わが国では1mg錠が最小用量であるが、本試験の1.25mg錠とほぼ同じと見てよいであろう。注目すべきは、テルミサルタンとインダパミドの2剤併用は平均値で見ると130/80mmHgを下回る有効性を示し、十分な降圧効果をもたらしており、2剤併用でも十分な降圧効果が得られている点である。ARB/ACE阻害薬とサイアザイド系薬の併用は非常に有効ではあるが、とくに高齢者では低Na血症や低K血症による不整脈や脱力などの副作用に十分な注意が必要である。その場合、配合剤では微調整がしにくいという難点が生じる。とくに、さじ加減で血圧や副作用により用量を微調整している医師にとっては、3剤配合剤の有用性は低いと思われる。

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乳がんにおけるADCの使いどころ、T-DXdとSGを中心に/日本癌治療学会

 現在、わが国で乳がんに承認されている抗体薬物複合体(ADC)は、HER2を標的としたトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)とトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)、TROP2を標的としたサシツズマブ ゴビテカン(SG)の3剤があり、新たなADCも開発されている。これら3剤の臨床試験成績と使いどころについて、国立がんセンター東病院の内藤 陽一氏が第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)におけるシンポジウム「明日からの乳癌診療に使える!最新の薬剤の使いどころ」で講演した。開発が進むADC、現在3剤が承認 内藤氏はまず、「ADCは次々と開発が進んでおり、現在3剤が承認されているが、今後も新薬の登場や適応追加が予想される」と述べ、“明日から”というより“明日まで”使える内容と前置きした。 現在承認されている3剤の適応は、T-DM1がHER2+乳がん、T-DXdがHER2+乳がんおよびHER2低発現乳がん、SGがトリプルネガティブ(TN)乳がんである。T-DXdはさらにHER2超低発現乳がんにおける有効性が示され、SGは海外でHR+乳がんにも有効性が示されていることから、今後適応が広がる可能性がある。HER2+進行乳がん2次治療はT-DM1からT-DXdに HER2+進行乳がんに対するT-DM1の第III相試験には、トラスツズマブ+タキサンの治療歴のある患者に対してカペシタビン+ラパチニブと比較したEMILIA試験、3次治療以降で医師選択治療(TPC)と比較したTH3RESA試験が挙げられる。どちらも全生存期間(OS)の有意な改善が示されたことから、トラスツズマブ+タキサン後の2次治療以降の標準治療となったが、現在は以下のようにT-DXdに塗り替えられた。 T-DXdは、トラスツズマブ+タキサンの治療歴がある患者に対してT-DM1と比較したDESTINY-Breast03試験、T-DM1治療歴のある患者に対してTPCと比較したDESTINY-Breast02試験があり、どちらもOSの有意な改善が認められた。一方、同じ2次治療として、トラスツズマブ+タキサンの治療歴のある患者に対してT-DM1+tucatinibをT-DM1と比較したHER2CLIMB-02試験があり、無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が認められた。試験間での比較は適切ではないものの、ハザード比(HR)はHER2CLIMB-02試験では0.76(95%信頼区間[CI]:0.61~0.95)とDESTINY-Breast03試験の0.33(同:0.26~0.43)とは大きな差があり、脳転移症例に対してどちらも効果が認められること、tucatinibは現在日本では承認されていないこともあり、T-DXdがHER2+進行乳がんの2次治療の標準治療となっている。NCCNガイドラインでも2次治療にはT-DXdのみが記載されている。HR+進行乳がんには現在T-DXdのみ、開発中の薬剤も HR+進行乳がんでは、HER2低発現乳がん(IHC2+/ISH-またはIHC1+)とHER2超低発現(IHC0で染色細胞が10%以下存在)にT-DXdの有効性が認められ、現在はHER2低発現乳がんに対してのみ、2次治療以降で承認されている。 SGについても、2~4ラインの治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がんを対象としたTROPICS-02試験において、TPCに比べてPFSおよびOSの改善が報告されている(日本ではHR+進行乳がんには未承認)。さらにTROP2を標的としたdatopotamab deruxtecan (Dato-DXd)が開発中である。すでにSGが承認されている米国のNCCNガイドラインでは、HR+進行乳がんの2次治療として、HER2低発現ではT-DXd、それ以外はSGと記載されている。TN乳がんに対するT-DXdとSGの試験成績 TN乳がんに対するADCとしては、T-DXdとSGが承認されている。T-DXdについては、HER2低発現進行乳がんに対するDESTINY-Breast04試験において、HR-症例のみの解析でPFS、OSとも良好な結果であったが、症例数は58例(T-DXd群40例、TPC群18例)と少ない。一方、SGのTN乳がんに対するASCENT試験は529例と症例数が十分に多く、PFSのHRは0.41(95%CI:0.32~0.52)、OSのHRは0.48(同:0.38~0.59)と良好な結果が示されている。NCCNガイドラインでは、TN乳がん2次治療においてSGが上に記載されており、生殖細胞系列BRCA1/2病的バリアントなしかつHER2低発現にはT-DXdと記載されている。 内藤氏は、ADCにおけるもう1つの問題として、ADC後のADCは効果が低い可能性があるという報告がなされていることから、「ADC後に何を投与するかということが今後の課題」と述べた。わが国における現時点のADCの使いどころは? 最後に内藤氏は、日本における2024年10月時点のADCの使いどころについてまとめた。 まず、HER2+進行乳がんでは2次治療にT-DXd、3次治療以降にT-DM1が入る。HR+進行乳がんでは2次治療にT-DXd(HER2低発現)のみ入っているが、「今後、SG、Dato-DXdが承認されたときにどれを使うかは今後の議論」とした。TN進行乳がんでは2次治療にSGとT-DXd(HER2低発現)が入るが、ベネフィットの大きさにはあまり遜色ないと述べた。また、これらの注意すべき有害事象のマネジメントについて、SGでは好中球減少が比較的多いためG-CSF投与などのマネジメント、T-DXdではILDのマネジメントを挙げ、講演を終えた。

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造血器腫瘍も遺伝子パネル検査の時代へ/日本血液学会

 固形がんで遺伝子検査が普及しているなか、造血器腫瘍でも適切な診断・治療のために遺伝子情報は不可欠となりつつある。日本血液学会からは有用性の高い遺伝子異常と遺伝子検査の活用方針を示した「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン」が発行された。第86回日本血液学会学術集会では、Special Symposiumとして遺伝子パネルの実臨床での活用状況が発表された。臨床現場で進む造血器腫瘍の遺伝子解析 造血器腫瘍では対象となる遺伝子異常が固形がんとは違う。また、遺伝子検査の目的も固形がんでは治療対象の探索だが、造血器腫瘍ではさらに診断、予後予測が加わる。そのため、造血器腫瘍専用の遺伝子プロファイル検査が必要とされている。 九州大学では398遺伝子を標的としたDISCAVar panelを開発、すでに1,500以上の症例に活用している。名古屋大学では急性骨髄性白血病(AML)に関連する58種類の遺伝子を対象とした次世代シークエンス(NGS)解析を行っている。AML250例を超える解析結果から、従来の染色体検査に遺伝子検査を加えることで、より精密な予後層別化が可能になることを明らかにした。承認された造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト」 造血器腫瘍専用の遺伝子パネル検査の必要性が望まれるなか、国立がん研究センター、九州大学、京都大学、名古屋医療センター、東京大学医科学研究所、慶應義塾大学および大塚製薬が共同で開発した造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト」が2024年9月に製造販売承認された。 ヘムサイトは一塩基置換や遺伝子の挿入・欠損、また融合遺伝子や構造異常を含む計452の遺伝子をDNAとRNAの解析によって同定する。 国立がん研究センター研究所ではプロトタイプ検査を用いた前向き試験を実施し、この検査の臨床的な有用性を評価した。176症例の188検体を解析し、296個の遺伝子に1,746個の異常を同定した。85%の症例でガイドラインで認められているエビデンスを有する異常が確認され、遺伝子パネル検査の臨床的有用性を示す結果となった。

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「大腸癌治療ガイドライン」、主な改訂ポイントを紹介/日本癌治療学会

 第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)では「がん診療ガイドライン作成・改訂に関する問題点と対応について」と題したシンポジウムが開かれた。この中で今年7月に発行された「大腸癌治療ガイドライン2024年版」について、作成委員会委員長を務めた東京科学大学 消化管外科の絹笠 祐介氏が、本ガイドラインの狙いや主な改訂ポイントを紹介した。 「大腸癌治療ガイドライン」は2005年に初版を発行、その後7回の改訂を重ね、今回は第8版で2年ぶりの改訂となる。前回は薬物療法に関連した部分改訂だったが、今回は全領域を改訂し、クリニカル・クエスチョン(CQ)も刷新した。 本ガイドラインの特徴は、一般病院の医師が診療を行う際の指標になることを目的としていることだ。実臨床で使いやすいものとするため、多くのガイドラインが準拠する「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」は参考に留め、エビデンスと推奨の不一致を許容する方針としている。実務で使いやすいよう「できるだけ薄くする」ことも目指しており、今版のCQの数は28と旧版から変えず、本文や資料も凝縮することで157頁とほかのがん関連ガイドラインと比べてコンパクトになっている。 また、今版からの変更点としては、CQにおける推奨の合意度を記載して委員の意見の相違が見えるようにしたこと、集学的治療が進む大腸がん治療を鑑みて補助療法に関しては関連領域の委員が合同で原案作成、推奨度の決定を行う形式に変更したことがある。さらに作成期間中を通してパブリックコメントを募集し、内容に反映させる試みも行った。 今版で新設されたCQは以下のとおり。CQ3 大腸癌に対するロボット支援手術は推奨されるか?1)ロボット支援手術は、直腸癌手術の選択肢の1つとして行うことを強く推奨する(推奨度1・エビデンスレベルB、合意率:74%)。 2)また、結腸癌手術の選択肢の1つとして行うことを弱く推奨する(推奨度2・エビデンスレベルC、合意率96%)→ロボット手術が保険適用となったことを踏まえて新設。CQ9 周術期薬物療法の前にバイオマーカー検査は推奨されるか?1)RAS、BRAF、ミスマッチ修復機能欠損(MSIもしくはMMR-IHC)検査を行うことを弱く推奨する(推奨度2・エビデンスレベルB、合意率78%)2)Stage II/III大腸癌の術後についてはミスマッチ修復機能欠損検査を行うことを強く推奨する(推奨度1・エビデンスレベルA、合意率96%)→バイオマーカーによる予後予測の有用性に関する報告を踏まえ、初めて関連するCQを設定。CQ12 直腸癌に対するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)は推奨されるか?直腸癌に対するTNTは行わないことを弱く推奨する。(推奨度2・エビデンスレベルC、合意率:70%)CQ13 直腸癌術前治療後cCR症例に対するNon-Operative Management (NOM)は推奨されるか?行わないことを弱く推奨する。(推奨度 2・エビデンスレベル C、合意率:39%)→欧米を中心に広がりを見せるTNT(=術前の集学的治療)、NOM(=非手術管理)についてのCQを新設。いずれも「行わないことを弱く推奨」となったが、NOMに関しては委員の意見の相違も見られた。CQ19 切除可能肝転移に対する術前化学療法は推奨されるか?切除可能な肝転移に対する術前化学療法は行わないことを弱く推奨する。(推奨度2・エビデンスレベルC、合意率:91%)CQ20 肝転移巣切除後に対する術後補助化学療法は推奨されるか? 肝転移巣切除後に対して術後補助化学療法を行うことを弱く推奨する。(推奨度2・エビデンスレベルB、合意率:87%)→これまで術前術後が一緒になっていたCQを分けて新設。CQ22 大腸癌の卵巣転移に対して卵巣切除は推奨されるか?1)根治切除可能な同時性および異時性卵巣転移に対しては、切除することを強く推奨する。(推奨度1・エビデンスレベルB、合意率74%)2)卵巣転移および卵巣転移以外の切除不能遠隔転移を同時に有する場合、薬物療法を選択するが、卵巣転移の増大による自覚症状がある場合は、卵巣転移の姑息切除を行うことを弱く推奨する。(推奨度2・エビデンスレベルC、合意率91%)CQ28 肛門管扁平上皮癌に対して化学放射線療法は推奨されるか?遠隔転移を認めない肛門管扁平上皮癌患者に対して、化学放射線療法を行うよう強く推奨する。(推奨度1・エビデンスレベルA、合意率100%)→大腸癌研究会のプロジェクト研究から得られた新たなエビデンスを踏まえ、卵巣転移、肛門管扁平上皮癌に関するCQを新設。CQ25 切除不能大腸癌に対する導入薬物療法後の維持療法は推奨されるか?オキサリプラチン併用導入薬物療法開始後に、患者のQOLなどを考慮して、維持療法に移行することを推奨する。1)FOLFOXIRI+BEV後のフッ化ピリミジン+BEV(推奨度1・エビデンスレベルA、合意率100%)2)FOLFOX/CAPOX/SOX+BEV後のフッ化ピリミジン+BEV(推奨度2・エビデンスレベルA、合意率65%)3)FOLFOX+CET/PANI後の5-FU+/-LV+CET/PANI(推奨度2・エビデンスレベルB、合意率91%) このほか、新たなエビデンスが集積した周術期薬物療法に関連した項目が大きく改訂され、「高齢者の術後補助療法」に関するCQ8では「高齢者」の定義が旧版の70歳から80歳に引き上げられるなど、各項目の見直しを行った。 完成後にはガイドライン評価委員会に外部評価を依頼した。この委員会はガイドラインの質担保のため専門委員、外部委員を含めた委員が専用のツールを使って評価をするもので、この評価の結果も掲載されている。 絹笠氏は「外部評価において指摘された患者参加、費用対効果の記載などは今後の課題だ。またガイドラインの実臨床への影響の評価、フューチャーリサーチクエスチョンへの対応、委員構成、発刊間隔なども今後の検討事項だと考えている。ガイドラインではCQが注目されるが、本ガイドラインは長年記載されていたCQを本文に落とし込むなど、1冊全体を充実させる工夫をした。ぜひ、全体に目を通していただきたい」とした。

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運動を週末にまとめてしても、200種類の疾患リスクが減少

 忙しくて運動を毎日続けることが難しいという人に、朗報といえるデータが報告された。毎日運動するのと週末に集中して行うのとで、健康に対して同程度のプラス効果を期待できるという。米マサチューセッツ総合病院不整脈センターのShaan Khurshid氏らの研究の結果であり、詳細は「Circulation」に9月26日掲載された。論文の上席著者である同氏は、「健康のための運動で最も大切なことは、運動のスケジュールではなく運動の総量なのかもしれない」と語っている。 運動に関するガイドラインでは一般的に、中~高強度の運動を1週間に150分以上行うことが推奨されているが、その運動を毎日20分ずつ程度に小分けして行うのと、数日にまとめて行うのとで、健康への影響力が異なるのかという点については、十分検討されていない。そこでKhurshid氏らは、英国の大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いた検討を行った。 2013年6月~2015年12月の間の1週間、加速度計を装着して生活してもらい運動習慣を把握し得た8万9,573人(平均年齢62±8歳、女性56%)を、加速度計の記録に基づき、毎日少しずつ運動している人(毎日運動群)、週末にまとめて運動をしている人(週末運動群)、および推奨される前記の運動量を満たしていない人(非運動群)という3群に分類。交絡因子を調整後に、678種類の疾患や状態・症状について非運動群を基準として比較した。その結果、毎日運動群は205種類のリスクが有意に低く(ハザード比〔HR〕の95%信頼区間の範囲が0.41~0.88)、週末運動群は264種類のリスクが有意に低かった(同0.35~0.89)。 それぞれの疾患や状態のリスクを個別に見ると、高血圧(毎日運動群はHR0.72〔95%信頼区間0.68~0.77〕、週末運動群はHR0.77〔同0.73~0.80〕)、糖尿病(同順にHR0.54〔0.48~0.60〕、0.57〔0.51~0.62〕)、肥満(HR0.44〔0.40~0.50〕、0.55〔0.50~0.60〕)、睡眠時無呼吸(HR0.49〔0.39~0.62〕、0.57〔0.48~0.69〕)などで、運動スケジュールにかかわらずリスクの大幅な低下が認められた。運動量が多い人(中央値の週当たり230.4分以上のサブグループ)で解析した結果も同様だった。 著者らは、「ガイドラインの推奨事項を満たす運動を行っている場合、200種類を超える疾患や状態のリスクが低下し、特に心代謝系に顕著な影響が及ぶことが示された。この影響は、運動を毎日均等に行うか週末に集中して行うかに関係なく、同等と考えられる」と総括。またKhurshid氏は、マサチューセッツ総合病院発行のニュースリリースの中で、「患者に対しては、自分が最も効果的と思うスケジュールで運動を行って、ガイドラインの推奨を遵守するように助言すべきだ」と述べている。

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ベンゾジアゼピン中止戦略、マスクした漸減+行動介入の効果

 ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動性催眠薬(BZD睡眠薬)の臨床試験では、プラセボ効果が観察される。臨床ガイドラインでは、とくに高齢者においてBZD睡眠薬を中止し、不眠症の第1選択治療として不眠症の認知行動療法(CBT-I)が推奨されている。BZD睡眠薬の減量中に1日投与量をマスクし、プラセボ効果のメカニズムを活用してCBT-Iを強化する新たな介入方法が、BZD睡眠薬中止を促進するかは、不明である。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のConstance H. Fung氏らは、BZD睡眠薬のマスクした減量と増強CBT-Iを併用した介入は、BZD睡眠薬の長期中止に寄与するかを検討するため、ランダム化臨床試験を実施した。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年10月7日号の報告。 対象は、大学および退役軍人省医療センターで現在または過去に不眠症に対しジアゼパム換算量8mg未満の用量でロラゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、temazepam、ゾルピデムを3ヵ月以上、2回/週以上使用した55歳以上の患者。2018年12月〜2023年11月のデータを収集した。データ分析は、2023年11月〜2024年7月に実施した。BZD睡眠薬のマスクした減量と増強CBT-Iを併用した介入(MTcap群)と標準CBT-IとマスクしないBZD睡眠薬漸減による介入(SGT群)との比較を行った。主要有効性アウトカムは、治療終了後6ヵ月(6ヵ月ITT)でのBZD睡眠薬の中止率とし、7日間の自己申告による服薬記録を行い、サブセットについては尿検査測定を行った。副次的アウトカムは、治療後1週間および6ヵ月後の不眠症重症度質問票(ISI)スコア、治療1週間後にBZD睡眠薬の中止率、治療後1週間および6ヵ月後のBZD睡眠薬の投与量とDysfunctional Beliefs About Sleep-Medication subscaleとした。 主な結果は以下のとおり。・詳細なスクリーニングを行った338例のうち対象患者188例(平均年齢:69.8±8.3歳、男性:123例[65.4%]、女性:65例[35.6%])は、MTcap群92例、SGT群96例にランダムに割り付けられた。・MTcap群は、SGT群と比較し、6ヵ月後のBZD睡眠薬の中止率向上、1週間後のBZD睡眠薬の中止率向上、1週間後のBZD睡眠薬の1週間当たりの使用頻度の減少が認められた。【6ヵ月後のBZD睡眠薬の中止率】MTcap群:64例(73.4%)、SGT群:52例(58.6%)、オッズ比(OR):1.19、95%信頼区間[CI]:1.03〜3.70、p=0.04【1週間後のBZD睡眠薬の中止率】MTcap群:76例(88.4%)、SGT群:62例(67.4%)、OR:3.68、95%CI:1.67〜8.12、p=0.001【1週間後のBZD睡眠薬の1週間当たりの使用頻度】−1.31、95%CI:−2.05〜−0.57、p<0.001・フォローアップ時のISIスコアは、両群間で有意な差がなく改善が認められた(ベースラインから1週間後:1.38、p=0.16、6ヵ月後:0.16、p=0.88)。 著者らは「プラセボ効果のメカニズムをターゲットとしたBZD睡眠薬の減量とCBT-Iとの新たな併用療法により、BZD睡眠薬の長期中止率を改善することが示唆された」と結論付けている。

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リラグルチドは小児肥満の治療薬として有効である(解説:住谷哲氏)

 『小児肥満症診療ガイドライン2017』1)によると、小児肥満の定義は「肥満度が+20%以上、かつ体脂肪率が有意に増加した状態(有意な体脂肪率の増加とは、男児:25%以上、女児:11歳未満は30%以上、11歳以上は35%以上)」であり、肥満症は「肥満に起因ないし関連する健康障害(医学的異常)を合併するか、その合併が予想される場合で、医学的に肥満を軽減する必要がある状態をいい、疾患単位として取り扱う」とされる。ここで肥満度は学校保健安全法に基づき、肥満度(%)={(実測体重-標準体重)/標準体重}×100が広く用いられている。さらに小児期からの過剰な内臓脂肪蓄積は早期動脈硬化につながることから、小児期メタボリックシンドローム診断基準もすでに作成されている。小児肥満症患者の多くが成人肥満症に移行することから、現在では小児肥満症は成人の非感染性疾患(non-communicable disease:NCD)抑制のための重要な対象疾患と認識されている。 わが国では肥満と肥満症が区別されているが、欧米では区別されず、ともにobesityである。本試験の対象者も肥満に起因ないし関連する健康障害の有無はinclusion criteriaに含まれておらず、obesity-related complicationsとして耐糖能障害や高血圧などを有する対象者が約半数含まれている。したがって、以下のコメントでは「小児肥満症」ではなく「小児肥満」を使用する。 成人と同じく小児肥満の治療も食事・運動療法が基本となる。しかし、薬物療法が必要な患者も少なからず存在する。現在のわが国では残念ながら小児肥満に適応のある薬物は存在しない。リラグルチド(商品名:ビクトーザ)はわが国では肥満治療薬として承認されていないが、欧米では高用量(3.0mg/日)が肥満治療薬として承認されている。これまで成人(>18歳)2)、青少年(12~18歳)3)でその有効性が報告され、すでに治療薬として承認されているが、小児(6~12歳)での有効性は不明であった。そこで本試験「SCALE-Kids試験」が実施された。 対象患者の背景は平均で年齢10歳、身長149cm、体重70kg、腹囲95cm、BMI 31kg/m2である。リラグルチドの投与量は成人、青少年と同量の3.0mg/日であり56週後のBMIの変化率が主要評価項目とされた。その結果は予想どおり、リラグルチド群で有意なBMIの減少を認め、有害事象も許容範囲であった。 本試験の結果に基づいて、リラグルチドはおそらく小児肥満治療薬として欧米で承認されるだろう。わが国でも肥満の有病率は増加しているが欧米の比ではなく、本年ようやく成人に対してセマグルチド(商品名:ウゴービ)が肥満症治療薬として使用可能となったばかりである。わが国では成人に対してもリラグルチドは肥満治療薬として承認されておらず、小児肥満治療薬としての道のりはまだまだ遠いと思われる。

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今後の高血圧治療における治療アプリの役割は?【治療用アプリの処方の仕方】第3回

高血圧治療用アプリの保険算定について保険算定の要件は下記のとおりです。アプリの入力率が7日間のうち5日(71.4%)以上必要というのは厳しいと感じるかもしれませんが、家庭血圧をしっかりとモニタリングするというところに重きを置いているためです。なお、臨床試験において、アプリ利用率は12週時で98.06%でした。保険項目の適用(CureAppホームページより抜粋)B005-14 プログラム医療機器等指導管理料:90点※特定保険医療材料[高血圧症治療補助アプリ]を算定する場合に月1回に限り算定B005-14 プログラム医療機器等指導管理料 導入期加算:50点※初回に限り算定特定保険医療材料[227 高血圧症治療補助アプリ]:7,010円※初回の使用日の属する月から起算して6か月を限度として、初回を含めて月1回に限り算定なお、前回算定日から、平均して7日間のうち5日以上血圧値がアプリに入力されている場合のみ算定することができる。これからの高血圧治療治療用アプリの登場によって「高血圧治療が変わるか?」と思うかもしれませんが、もう変えていかないといけないと思っています。通院している患者さんのうち、ガイドライン推奨の血圧値にコントロールできている人は半分もいません。55%がコントロール不良です。120~125mmHgくらいまでしっかりと家庭血圧を下げることで脳卒中リスクは5分の1くらい下がりますが、現在の方法や薬物治療ではやはり限界があります。ガイドラインは非常にしっかりとした内容のものではありますが、まだ「実装」されていません。これから大切なのは実装医学(Implementation Medicine)や実装科学(Implementation Science)です。エビデンスから日常診療につなげる具体的な施策、たとえば、クリニカルイナーシャの改善や患者さんとの血圧目標の共有、服薬アドヒアランスの向上などに落とし込み、患者さんの血圧をきちんと下げるとともに一人ひとりの行動を変えるというものです。行動変容を促す治療用アプリ、薬剤の組み合わせや新規の降圧薬、腎デナベーションなど、あの手この手でまずは早朝の血圧を下げていくことが重要です。キーワードは個別最適化療法高血圧の新薬や治療法の登場のほか、薬剤同士の組み合わせも活発に検討されていて、本当に面白い時代になってきたと思います。最近では、患者さんの環境を変えるという概念もあります。季節や大気汚染などの環境が患者さんの血圧や循環器に影響を与えることがわかっているため、周辺の環境を整えて血圧のピークを下げるよう試みます。薬剤だけでなく、行動や環境も変えて、患者さんのベストな状況にもっていってあげるという時代になっています。それらの指標は早朝の血圧と夜間の血圧と考えます。今後の高血圧治療は、個別最適化療法というのがキーワードでしょう。

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TN乳がんに対する初のADCサシツズマブ ゴビテカン、有効性と注意すべき有害事象/ギリアド

 2024年9月24日、全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性/HER2陰性(トリプルネガティブ)乳がん(TNBC)の治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)サシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)が本邦で承認された。10月29日にギリアド・サイエンシズ主催のメディアセミナーが開催され、岩田 広治氏(名古屋市立大学大学院医学研究科臨床研究戦略部)が「トリプルネガティブ乳がんに新薬の登場」と題した講演を行った。ESMOガイドラインでは転移TNBCの2次治療として位置付け 欧米では同患者に対するサシツズマブ ゴビテカンは約3年前に承認・使用されており、2021年のESMO Clinical Practice Guideline1)ではPD-L1陽性患者に対する免疫療法、gBRCA陽性患者に対するPARP阻害薬、PD-L1およびgBRCA陰性患者に対する化学療法などの次治療として位置付けられている。 乳がん領域で承認されたADCとしてはトラスツズマブ エムタンシン(商品名:カドサイラ)、トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)に続き3剤目となるが標的となる抗体が異なり、TNBCに対しては初めて承認されたADCとなる。岩田氏は、「新しい作用機序の薬剤が使えるようになることは朗報。われわれはこの新しい武器を有効に使っていかなければならない」と話した。ASCENT試験とASCENT-J02試験のポイント 国際第III相ASCENT試験(日本不参加)では、2レジメン以上の化学療法歴のある(術前化学療法後12ヵ月以内に再発した場合は1レジメンで参加可能)転移TNBC患者(529例)を対象として、サシツズマブ ゴビテカンと主治医選択による化学療法の有効性が比較された。PD-L1陽性で免疫チェックポイント阻害薬治療歴のある患者が26~29%、gBRCA陽性でPARP阻害薬治療歴のある患者が7~8%含まれており、再発診断から登録までの中央値は約15ヵ月であった。 最終解析の結果、無増悪生存期間(PFS)中央値はサシツズマブ ゴビテカン群4.8ヵ月vs.化学療法群1.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.413、95%信頼区間[CI]:0.33~0.517)、全生存期間(OS)中央値は11.8ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.514、95%CI:0.422~0.625)となり、サシツズマブ ゴビテカン群における改善が示されている2)。奏効率(ORR)は35% vs.5%であり、岩田氏はこの結果について「2レジメン以上の治療歴のある患者さんに対し、大きな治療効果といえる」と話した。 日本で実施された第II相ASCENT-J02試験においても、サシツズマブ ゴビテカン投与患者(36例)におけるPFS中央値は5.6ヵ月、OS中央値はNR、ORRは25%で、ASCENT試験で報告された有効性との一貫性が示されている。注意を払うべき有害事象と今後の展望 岩田氏は、有害事象の中でとくに注意すべきものとして好中球減少症、下痢や悪心などの消化器症状、脱毛を挙げた。Grade3以上の好中球減少症はASCENT試験で34%、ASCENT-J02試験で58%、下痢はそれぞれ10%、8.3%に認められた。欧米では好中球減少症への対策として60~70%で予防的G-CSF投与が行われているといい、岩田氏は好中球減少症のマネジメントが課題となると指摘した。 現在、転移・再発TNBCの1次治療におけるサシツズマブ ゴビテカンの有効性を評価する臨床試験がすでに進行中であるほか、同様の機序の薬剤の開発も進んでいる。岩田氏は今後はそれらの薬剤との組み合わせや使い分けが重要になってくるとして、講演を締めくくった。

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血圧測定、腕の位置により過大評価も

 自宅で血圧を測定する際には、腕の位置に注意する必要があるようだ。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部小児科臨床研究副委員長のTammy Brady氏らによる新たな研究で、血圧測定の際には、腕の位置によって測定値が過大評価され、高血圧の誤診につながる可能性のあることが明らかになった。この研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に10月7日掲載された。 米国心臓協会(AHA)によると、米国では成人の半数近くが高血圧であるという。高血圧を治療せずに放置すると、脳卒中、心筋梗塞やその他の重篤な心疾患のリスクが高まる。AHAのガイドラインでは、血圧は、適切なサイズのカフを用いて、背もたれのある椅子などで背中を支え、足は組まずに床につけた状態で、適切な腕の位置で測定することを求めている。「適切な腕の位置」とは、血圧計のカフが心臓の高さになるようにして、腕はテーブルなどの上に置くことだと説明している。しかしBrady氏らは、診察の際に、患者が腕をほとんど支えられていない状態で血圧を測定されることが多いことを指摘する。 このことを踏まえてBrady氏らは今回の研究で、血圧測定中の腕の位置(机の上に乗せた状態、膝の上に置いた状態、脇にぶら下げた状態)が測定値に与える影響を調査した。対象者の18〜80歳の成人133人(平均年齢57歳、女性53%)は、測定時の腕の位置の順序が異なる6つの群にランダムに割り付けられた。まず、全員が膀胱を空にし、2分間の歩行を行い、5分間休憩した。その後、上述の3種類の腕の位置で、上腕に合ったサイズのカフを装着して、30秒間隔で3回の測定を1セットとする血圧測定を3セット受けた。セットとセットの間には2分間の歩行と5分間の休憩をはさんだ。また、腕を机に乗せた状態で4セット目の測定も受けた。 その結果、腕を膝の上に置いた状態で血圧を測定すると、机に乗せた状態での測定に比べて収縮期血圧の平均値が3.9mmHg、拡張期血圧の平均値が4.0mmHg高くなることが明らかになった。また、腕を支えずに脇にぶら下げた状態で測定した場合には、机に乗せた状態での測定に比べて収縮期血圧の平均値は6.5mmHg、拡張期血圧の平均値は4.4mmHg高くなっていた。 論文の筆頭著者であるジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のHairong Liu氏は、「常に腕を支えずに血圧を測っていると、収縮期血圧の値が実際よりも6.5mmHg高くなる可能性がある。これはつまり、123mmHgであるはずの収縮期血圧が130mmHgに、あるいは133mmHgが140mmHgになる可能性があるということだ。収縮期血圧140mmHgはステージ2の高血圧に分類される値だ」と話す。 ただし研究グループは、これらの結果は自動血圧計による測定に限定されるもので、他の機器による測定に当てはまらない可能性があるとしている。それでもBrady氏は、「この研究結果は、臨床医がベストプラクティス・ガイドラインにもっと注意を払う必要があることを示唆している」と、ジョンズ・ホプキンス大学のニュースリリースの中で述べている。

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便失禁診療ガイドライン2024年版 改訂第2版

5つのCQを設定し、7年ぶりの改訂!初版以降の新たなエビデンスと日本の医療状況に立脚した実践的なガイドライン改訂版。便失禁の定義や病態、診断・評価法、初期治療から専門的治療にいたるまで基本的知識をアップデートし、新たに失禁関連皮膚炎や出産後患者に関する記載を拡充。また治療法選択や専門施設との連携のタイミングなど、判断に迷うテーマについてはCQとして推奨を示した。患者像により多様な病態を示す便失禁の診療とケアに携わる、すべての医療職にとって指針となる1冊である。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する便失禁診療ガイドライン2024年版 改訂第2版定価3,520円(税込)判型B5判頁数152頁発行2024年11月編集日本大腸肛門病学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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オピオイド使用障害、治療中止リスクが低い薬剤は?/JAMA

 オピオイド使用障害(OUD)に対するオピオイド作動薬治療(OAT)のレジメンに関する国際的なガイドラインでは、競合する治療選択肢の有効性の比較に関するエビデンスが限られているため、依然として意見が分かれているという。カナダ・サイモンフレーザー大学のBohdan Nosyk氏らは、メサドンと比較してブプレノルフィン/ナロキソンは、治療中止のリスクが高く、死亡率は両群で同程度であることを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年10月17日号で報告された。ブリティッシュコロンビア州の後ろ向きコホート研究 研究グループは、OUDの治療におけるブプレノルフィン/ナロキソンとメサドンの有用性を比較評価する目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(米国国立薬物乱用研究所[NIDA]などの助成を受けた)。 カナダ・ブリティッシュコロンビア州の9つの健康管理データベースを用いて患者のデータを収集した。年齢18歳以上、オピオイド依存と診断され、2010年1月1日~2020年3月17日にブプレノルフィン/ナロキソンまたはメサドンの新規処方を受けた全患者を対象とした。治療開始時に収監中、妊娠中、がん緩和療法中の患者は除外した。 主要アウトカムは、24ヵ月以内の治療中止(投薬中断日数が、ブプレノルフィン/ナロキソンは6日以上、メサドンは5日以上継続した場合と定義)および全死因死亡とした。initiator解析で24ヵ月治療中止率が高かった 研究期間中にOATの初回投与を受けた新規処方者3万891例(ブプレノルフィン/ナロキソン群39%、男性66%、年齢中央値33歳)をinitiator解析(ベースラインの交絡因子を調整するために傾向スコアと操作変数を用いた)の対象とし、このうち1週目の投与量が最適でなかった患者を除いた2万5,614例をper-protocol解析(ガイドライン推奨用量でのアウトカムを比較するために打ち切り法を用いた)の対象とした。 新規処方者のinitiator解析では、メサドン群に比べ、ブプレノルフィン/ナロキソン群で24ヵ月時の治療中止率が高かった(88.8% vs.81.5%、補正後ハザード比[HR]:1.58[95%信頼区間[CI]:1.53~1.63]、補正後リスク差:10%[95%CI:9~10])。また、per-protocol解析において至適用量で評価した治療中止率の推定値の変化は限定的なものであった(42.1% vs.30.7%、1.67[1.58~1.76]、22%[16~28])。死亡リスクは両群とも低い 投与期間中の24ヵ月時の死亡率に関するper-protocol解析では、新規処方者(ブプレノルフィン/ナロキソン群0.08%[10件]vs.メサドン群0.13%[20件]、補正後HR:0.57[95%CI:0.24~1.35])、および新規・既存処方者(prevalent new user)(0.08%[20件]vs.0.09%[45件]、0.97[0.54~1.73])のいずれにおいても両群とも値が低く、曖昧な結果が示された。 これらの結果は、フェンタニル導入後やさまざまな患者サブグループを通じて、また感度分析でも一貫していた。 著者は、「北米などの地域では、より強力な合成オピオイドの使用が増加し続けていることから、治療中止のリスクを軽減するために、OUD患者の治療のあらゆる側面に関する診療ガイドラインはその再考が求められる」としている。

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