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早期中絶後のRh検査、免疫グロブリン投与の必要性/JAMA

 妊娠第1期の人工妊娠中絶はRh感作のリスクではなく、妊娠12週より前の人工妊娠中絶後のケアとして、Rh検査および免疫グロブリンの投与は不要であることが、米国・ペンシルベニア州立大学のSarah Horvath氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年9月26日号で報告された。米国の前向きコホート研究 本研究は、妊娠12週0日以前に人工妊娠中絶(薬剤、手術)を受けた女性506例の中絶前後の血液サンプルを用いて、胎児性赤血球(fRBC)が検出されるかを検証する米国の多施設共同前向きコホート研究である(米国・Society of Family Planning Research Fundの助成を受けた)。 主要アウトカムは、妊娠第1期の人工妊娠中絶後に、fRBC数がRh感作の閾値(総赤血球数500万個当たりのfRBC数125個)を超えた女性の割合であった。 506例のうち、319例(63.0%)が薬剤による中絶、187例(37.0%)は手術による中絶を受けていた。平均年齢は27.4(SD 5.5)歳で、313例(61.9%)が黒人、123例(24.3%)は白人だった。中絶後fRBC数と関連するベースラインの背景因子はなかった 506例中3例は、ベースライン時にfRBC数がRh感作閾値を超えて上昇しており、このうち1例(0.2%、95%信頼区間[CI]:0~0.93)は中絶後に上昇していた。これ以外に、人工妊娠中絶後にfRBC数がRh感作閾値を超えて上昇した例はなかった。 fRBC数中央値は、薬剤による中絶では4.0個(最大58個)、手術による中絶では3.0個(最大32個)であり、fRBC数が閾値を超えて上昇した例の割合は、それぞれ0%(95%CI:0~1.4)、0%(0~1.6)であった。 最適化された測定法では、薬剤による中絶と手術による中絶で、中絶後のfRBC数の分布に統計学的な有意差は認めなかった。 ベースラインからのfRBC数の変化量中央値は0個であり、fRBC数の95パーセンタイル値は24個、99パーセンタイル値は35.6個であった。 また、中絶前と後のfRBC数には強い関連性(p<0.001)を認めたが、中絶後のfRBC数と有意な関連を示すベースラインの患者背景因子はなかった。 著者は、「これらの結果は、妊娠第1期の人口妊娠中絶後にRh検査や免疫グロブリン投与は不要であることを示唆している。このエビデンスは、妊娠第1期の人工妊娠中絶後のRh免疫グロブリン投与に関する国際的なガイドラインに、有益な情報をもたらす可能性がある」としている。

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体重維持には朝に運動するのがベスト

 スリムな体型を保つには、タイミングこそが全てかもしれない。日常的に早朝に中等度から高強度の身体活動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を行う成人は、遅い時間帯にMVPAを行う成人に比べて太り過ぎや肥満になる可能性の低いことが、新たな研究で示された。米フランクリン・ピアス大学運動生理学分野のTongyu Ma氏らによるこの研究の詳細は、「Obesity」に9月4日掲載された。 Ma氏らはこの研究で、2003〜2004年と2005〜2006年の米国国民健康栄養調査(NHANES)参加者から抽出した5,285人のデータを用いて、MVPAを行う時間帯(早朝、昼間、夕方)と肥満(BMI、腹囲)との関連を検討した。参加者は7日連続で、起きている時間帯に腰部加速度計を装着するよう指示されており、週末を1日以上含む4日間(1日の装着時間が10時間以上)のデータがそろった場合を有効データとして用いた。このデータを基に参加者の身体活動(PA)のパターンを「朝」(642人)、「昼」(2,456人)、「夕方」(2,187人)の3群に分類した。 その結果、運動パターンが「朝」の参加者では、「昼」と「夕方」の参加者と比べて、BMIと腹囲の値が低いことが明らかになった。調整済みの平均BMIは、「朝」の参加者で27.4、「昼」の参加者で28.4、「夕方」の参加者で28.2であり、腹囲は同順で、95.9cm、97.9cm、97.3cmであった。また、PAに関するガイドラインで推奨されている週に150分以上のMVPAを行っていた参加者における調整済みの平均BMIは、「朝」の参加者で25.9、「昼」の参加者で27.6、「夕方」の参加者で27.2であり、腹囲は同順で、91.5cm、95.8cm、95.0cmであった。 このような結果についてMa氏は、「定期的に運動を行っている場合、朝に運動を行っている人の方が昼や夕方に運動を行っている人よりも、BMIが2単位低く、腹囲が1.5インチ(約3.8cm)小さかった」と述べ、「朝のワークアウトは、体重管理において有望な手段である」と主張している。ただしMa氏は、この研究により朝の運動が体重と関連することが示されたに過ぎず、両者の因果関係が明らかになったわけではないことも強調している。 Ma氏はまた、予想外の結果として、運動パターンが「朝」の参加者は、3群の中で座位時間が最も長かったことに言及。この点について同氏は、朝に運動をする人は、ソファーで過ごす時間が長いとしても、昼間や夕方に運動する人の活動量をしのぐ、「しっかりとした朝のワークアウトセッション」を行っている可能性が高いとの見方を示している。さらに、運動パターンが「朝」の参加者は、食生活が全体的に健康的であり、運動パターンが「昼」や「夕方」の参加者よりも摂取カロリーが少なかったという。 では、朝の運動が体型維持に有利となる理由は何なのだろうか。Ma氏は、「一晩の絶食を経た後の早朝には、われわれの体は低エネルギー状態にある。そのため、脂肪を使って運動に必要なエネルギーを作り出すことが多くなる。おそらくはこれが、朝の運動が体重管理に適している理由なのだろう」と述べている。 米国の栄養と食事のアカデミーの元会長であるConnie Diekman氏は、今回の結果についてはさらなる研究で検討する必要があるとしながらも、「結果に驚きはなかった」と話す。同氏は、「われわれは以前より、朝一番の運動がより効果的であるとして推奨してきた。現時点で得られたエビデンスは、朝の運動が代謝を高めるというベネフィットに焦点を当てているが、そのエビデンスの強さは、『朝に運動をしなければならない』と言い切れるほど強いものではない」と説明する。 Diekman氏は、自分の都合に合わせて運動を行うことを勧めており、「健康な体を維持するためには、PAを日課にする必要がある。これが、管理栄養士である私からの最も重要なアドバイスだ。週に150分以上のPAを、自分の毎日/毎週のルーチンに最も適した方法で行うように努力してみてほしい」と話している。

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地域ぐるみでの食事を作る家族への減塩指導が食塩摂取量を減少させ血圧を低下させる(解説:石川讓治氏)

 食塩の摂取過剰が高血圧の発症リスクであることが報告されており、日本高血圧学会による『高血圧治療ガイドライン2019』においても、食塩の摂取量を1日6g未満に減らすことが推奨されている。しかし、わが国の平均的な食塩摂取量はその2倍近くあり、減塩は思った以上に難しいことが多い。 本研究は、中国の地域一般住民をベースにした介入研究で、家庭で調理を行う家族に対して、減塩に関する教育、高食塩食の健康に対する影響、食事中の食塩量、代用塩の使用、調理における減塩のコツなどのレクチャーを行った。また、食塩摂取量を7日間の食事からアプリを使って計算してモニターを行い、減塩用のスプーンまで配っている。さらには、さまざまなメディア(ポスター、ビデオ放送、スピーカーでの放送、冊子、マニュアルなど)を用いて、減塩の重要性を地域ぐるみで訴えている。本研究の介入には、コミュニティーにおいて減塩を推進する雰囲気を作り出すことの重要性が示されている。その結果、1年間にわたる介入によって、コントロール群と比較して、24時間蓄尿で測定された食塩摂取量が有意に減少し、血圧の低下も認められたことが報告された。 本研究の素晴らしい点は脱落率がわずか10%しかなかったことである。栄養や運動といった生活習慣への介入は継続性が問題となるが、多くの参加者が最後まで減塩の努力を続けることができる方法であったことが重要であると思われる。今後も研究の枠を超えて、参加者は減塩を継続できるのか? 研究期間が終わったら元に戻ってしまうのか? 脱落してしまった10%の対象者(減塩を頑張れなかった人)に対する指導はどうするのか? 実際の保健指導の場では、まだまだ課題が多いと思われた。

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カテーテルアブレーションは心房細動を伴う末期心不全の予後を改善する(解説:原田和昌氏)

 心房細動(AF)を伴う心不全にカテーテルアブレーションを行うと、AF burdenが減少し、左室の逆リモデリングが起こり、死亡率が下がることが知られている。AFを伴う末期心不全患者においても、カテーテルアブレーション+薬物療法は薬物療法単独に比べ、死亡、左心補助人工心臓(LVAD)の植え込み、緊急心臓移植の複合イベント発生を低下させることが、ドイツ・ルール大学ボーフムのSohns氏らによる非盲検無作為化比較試験(CASTLE-HTx試験)により示された。対象者は、心臓移植か人工心臓かの評価のためBad Oeynhausenの心臓・糖尿病センター(心臓移植年間約80例)に受診した、症候性AFを有する末期心不全患者である。 アブレーション群において、51例は肺静脈隔離のみ、30例は他の部位にもアブレーションを行った。処置関連合併症はアブレーション群3件、薬物療法群1件で、アクセス部位の血管合併症であった。追跡期間中央値18.0ヵ月において、主要エンドポイントはアブレーション群8例(8%)、薬物療法群29例(30%)で発生した(HR:0.24、95%CI:0.11~0.52、p<0.001)。内訳は、死亡がアブレーション群6例(6%)、薬物療法群19例(20%)(HR:0.29、95%CI:0.12~0.72)で、LVADの植え込みがアブレーション群1例、薬物療法群10例、緊急心臓移植がアブレーション群1例、薬物療法群6例であった。また、AF burdenが減少し、EFが改善した。 近年、重症心不全のハートチームに不整脈治療専門医を加えることが一部の施設で行われている。2021年改訂版の植込型補助人工心臓治療ガイドラインには、「薬物治療抵抗性の心房性頻脈性不整脈に対してはアブレーションを考慮し、治療抵抗性の持続性心室頻拍・心室細動については両心室補助も検討すべき」とあるが、これらの場合AFのアブレーションのみならずLVADのアウトレット周囲を起源とするVTのアブレーションなども含まれる。本試験の結果はある意味予想通りではあるが、手技の不成功がLVADの植え込みや緊急心臓移植(?)につながる可能性も否定できないため、わが国で一般的に推奨できるかどうかは明らかでない。

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若年期の心肺機能が高いと後年のがんリスクが低い可能性

 若い男性が心肺機能を高めておくと、後年にいくつかの部位のがんリスクを下げられるかもしれない。ヨーテボリ大学(スウェーデン)のAron Onerup氏らが、同国軍の兵士を対象とする大規模なコホート研究のデータを解析した結果であり、詳細は「British Journal of Sports Medicine」に8月15日掲載された。9種類のがんリスクが有意に低下する可能性があるという。 この研究の解析対象は、1968~2005年に同国で兵役についた16~25歳(平均18.3±0.7歳)の男性から、兵役以前または兵役後5年の間にがんと診断されていた人、兵役から5年以内に死亡した人、およびデータ欠落者を除外した107万8,000人。心肺機能は、徴兵検査で施行されていた兵士の適性検査に基づくスタニンスコアという指標から、低・中・高の3群に分けて評価。そのカテゴリーと18種類の部位別がんリスクとの関連を検討した。 平均33年の追跡で、8万4,117人が何らかのがんを診断されていた。年齢、兵役に就いた年、BMI、徴兵時の親の教育歴などを調整後、スタニンスコアのカテゴリーが高いほど、9種類のがんの有意なリスク低下が認められた。例えば頭頸部がんは、スタニンスコアが低値群を基準として高値群のハザード比(HR)が0.81(95%信頼区間0.74~0.90)、食道がんは同0.61(0.50~0.74)、胃がん0.79(0.67~0.94)、肝臓・胆管・胆嚢がん0.60(0.51~0.71)、結腸がん0.82(0.75~0.90)、腎臓がん0.80(0.70~0.90)、肺・気管支がん0.58(0.51~0.66)だった。 反対に、前立腺がんは、スタニンスコア高値群でHR1.07(1.03~1.12)、皮膚がんは1.31(1.27~1.36)であり、有意なリスク増大が観察された。著者によると、前立腺がんについては退役後のスクリーニング頻度が高いことにより早期発見が増加すること、皮膚がんについては兵役期間中の日光への曝露の影響が考えられるという。 全てのがんを統合して解析すると、スタニンスコア低値群に対し高値群はHR1.06(1.04~1.08)であり、有意なリスク上昇が観察された。ただし、徴兵検査時の最大酸素摂取量(VO2max)や最大パワー(Wmax)との関連は非有意だった。その一方で、前記の部位別の解析で示されたリスク低下は、VO2maxやWmaxとの関連の解析でも確認された。 Onerup氏は、「われわれの研究結果は、米国臨床腫瘍学会のガイドラインが運動を推奨していることと一致するものと言える」とする一方で、「観察研究であるため本研究のみでは因果関係の証明にはならない。運動以外のライフスタイル因子も、示された結果に関与している可能性がある。また、本研究は心肺機能の経時的な変化を追跡評価しておらず、遺伝的背景も検討していない」と述べている。それらの限界点はあるものの、「健康な若年男性において心肺機能が高いことは、検討した18の部位のがんのうち9種類のリスク低下と関連しており、特に消化管のがんリスクが低かった。この結果は、若年男性の心肺機能向上を目的とする介入促進のための公衆衛生戦略策定の根拠となり得るのではないか」とまとめている。

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第181回 大学病院への“甘さ”感じる文科省「今後の医学教育の在り方に関する検討会」中間取りまとめ、“暴走”する大学病院への歯止めは?

大学病院、と言えば『白い巨塔』こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。9月29日、NHKBSプレミアムで映画『白い巨塔』を放映していました。山崎 豊子が1965年に発表した小説『白い巨塔』を原作に、山本 薩夫監督が1966年に映画化した日本の医療映画の金字塔とも言うべき名作です。国立浪速大学付属病院第一外科助教授、財前 五郎を演じたのは今はなき亡き田宮 二郎。録画して久しぶりに観直したのですが、圧倒的な存在感を放つ田宮 二郎の財前のほか、東教授(東野 英治郎)、鵜飼医学部長(小沢 栄太郎)、船尾教授(滝沢 修)、財前の義父(石山 健二郎)ら希代の名優たちの演技を改めて堪能できました(石山 健二郎演じる大阪の開業医が笑えます)。『白い巨塔』と言えば、唐沢 寿明主演のフジテレビのドラマ『白い巨塔』(それでも20年前、2003年の作品です)も有名ですが、俳優の存在感では映画版が一枚も二枚も上手ですね。小説発表から60 年近くの時が経ち、手術の術式や病院のありようなど大きく様変わりしている部分があるとはいえ、根底に流れる医療問題は現代とあまり変わっていません。大学病院の持つ閉鎖性・独善性、大学教授の持つ権力、医局制、医師と患者関係、がん告知の問題……など、半世紀以上も前に『白い巨塔』が提示した医療問題のほとんどが今でもそのまま残っていることに驚かされました。ということで今回は大学病院の改革について書いてみたいと思います。来年から始まる医師の働き方改革が、医学部の教育・研究や、大学病院のあり方にも大きな影響を及ぼすであろうことなどを背景に、今年5月から検討を進めてきた文部科学省の「今後の医学教育の在り方に関する検討会」(座長=永井 良三・自治医科大学長)が9月11日、第5回の会合を開き、大学病院改革に向けた議論の「中間取りまとめ案」を大筋で了承、9月29日に文科省は「中間取りまとめ」として正式に公表しました1)。診療、教育、研究機能を維持するための「改革プラン」策定求める「中間取りまとめ」では、医師の働き方改革が始動しても診療、教育、研究の各機能を維持していくために、個々の大学病院の実情に応じた「改革プラン」を策定する必要性が明記されました。総務省が進める公立病院改革のように、近い将来、国が大学病院に対しても改革プランの策定を義務付けることになるのです。1973年、第2次田中 角栄内閣の元で閣議決定された「一県一医大構想」から半世紀、加速度的に進む人口減少や来年度から本格実施となる医師の働き方改革などを背景に、近い将来に「一県一医大」という枠組みすらなくなってしまうかもしれません。今後、改革プラン策定のガイドラインが作られますが、その具体的な内容は年明け頃から議論が再開される予定、とのことです。「国は支援の方策を検討し、大学病院の魅力をさらに高める取り組みを後押しすることが必要」「中間取りまとめ案」は、大学病院が、働き方改革を進めながら、医師派遣を含めた診療機能を確保しつつ、教育・研究機能の維持に取り組むことが課題だとして、1)診療規模の拡大と経常利益率の低減、2)教育・研究時間の減少、3)医師の時間外・休日労働の上限規制の適用、の3点を指摘、「国は、大学病院が医学教育・研究を牽引し、高度で専門的な医療を提供し続けるために、支援の方策を検討することが必要。また、国は若手医師が大学病院で働きたいと思えるような、大学病院の魅力をさらに高める取り組みを後押しすることが必要」としました。「地域の実情に応じて改革を進め、その機能を発揮できる持続可能な大学病院経営に取り組む必要」改革の全体の方向性としては、医師の働き方改革の推進と大学病院の機能を両立させるため、「自治体や地域の医療機関とも連携し、大学病院の運営、人員、教育・研究・診療、財務など、その実情に応じた改革」、「国は、大学病院に大学本部とも一体となった改革プランの策定を促すとともに、プランの内容に応じた支援を行うこと」、「高度で専門的な医療の提供や医師派遣等による地域の医療提供体制への貢献など、大学病院の機能を適切に評価し支援すること」などを挙げています。その上で、「具体的な取り組みの方向性」として、1)運営に関する項目(地域の医療機関との役割分担・機能分化、など)、2)人員に関する項目(大学病院の医師の勤務環境の改善、など)、3)教育・研究・診療に関する項目(研究マインドの醸成の取り組みや創薬・医療機器開発など起業家教育を推進、など)を具体的に提示し、持続可能な大学病院経営のため、「大学病院は、地域の実情に応じて上記のような改革を進め、その機能を発揮できる持続可能な大学病院経営に取り組む必要」があるとしています。病院収益増や、大学教官のポスト増産を第一目的 に“暴走”する大学病院も以上は、「中間取りまとめ案」の「概要」の内容を紹介したものですが、9月29日に公表された「中間取りまとめ」の本編(19ページもある)を読んだところ、総花的で大学病院に対して少々「甘い」印象を持ちました。本編前段には、「未曽有の困難に直面する中であっても、大学病院は、その機能を将来にわたって維持していかなければならない。国は、大学病院を取り巻く状況が危機的であり、一刻の猶予も許されないこと、また、仮に大学病院がその機能を維持できない事態が生じれば社会的損失は計り知れず、我が国の医療そのものの崩壊を招来しかねないことを十分に認識する必要がある」と、大仰な言葉が並んでいます。しかし、実際、未曾有のコロナ禍にあって、当初、コロナ患者をまったく受け入れようとしなかった大学病院があったことを考えると、ちょっと言い過ぎでは、と感じてしまいます。加えて、「中間取りまとめ」では、国立、公立、私立など設立母体の違いや、大学病院本院と分院の違いについてはほとんど言及されていない点も気になりました。私立医大の中には、積極的な分院展開を行っているところがあります。多数の付属病院をつくり、トータルの病床数や教授ポストを増やす戦略です。同じことは公立の大学病院についても言えます。たとえば名古屋市立大学は、名古屋市立の病院を同大学の付属にすることで、現在、本院の名古屋市立大学病院と合わせて計5病院、2,173床という国公立大学病院では最大規模の病院群を形成するまでになっています。規模拡大による病院収益増や、大学教官のポスト増を第一目的に、傍から見て“暴走”とも取れる拡大戦略を図る大学病院が、地域の民間病院の経営に深刻な影響を及ぼしつつあるとも聞いたことがあります。研究・教育は二の次に、自分の大学や関連病院のことだけしか考えない大学病院は、果たして「その機能を維持できない事態が生じれば社会的損失は計り知れず、我が国の医療そのものの崩壊を招来しかねない」存在なのでしょうか。「自治体や地域の医療機関等の関係者による合意の下で、地域の医療機能の集約化等に取り組むことが重要」かつてある病院経営者が、「地域医療構想調整会議に大学病院は出てこないんだよね」と不満を漏らしているのを聞いたことがあります。医療圏において患者供給の最上流に位置するにもかかわらず、地域医療構想には無関心、かつほぼ“無縁”だった大学病院ですが、これからはさすがに地域医療を意識した経営が求められることになるでしょう。「中間取りまとめ」では、そうした唯我独尊でやってきた大学病院への反省からか、これからの大学病院と地域医療との関わりについて、次のように地域の医療機関や行政との積極的な対話の必要性を指摘しています。「2025年問題以降は、ほとんどの地域で高度急性期病床及び急性期病床の需要は減少する見込みであり、大学病院が担う役割等に鑑みれば、(中略)今後、大学病院が担う診療規模の拡大は現実的ではない」、「今後の医療需要が減少していく地域においては、大学病院をはじめ自治体や地域の医療機関等の関係者による合意の下で、地域の医療機能の集約化等に取り組むことが重要であるが、その際、大学病院において教育・研究に従事する人材を確保し、教育・研究機能を維持・発展させるために、都道府県の意見も聴きながら大学病院がその中核的な役割を果たすことを通じて、地域の医療提供体制の再構築を進めることも検討すべきである」。確かに、これまで大学病院と地域の医療機関との対話の機会は少なかったようです。医師や患者の“供給元”でもあることから、地域の医療機関が大学病院に対して強くモノを言えない、という事情もあるようです。そう考えると、「今後の医学教育の在り方に関する検討会」で、大学病院の在り方や、改革プラン策定の検討を行う際には、地域医療構想の担当官庁である厚生労働省も入るべきだと思うのですが、皆さんどう考えますか?大学の教授は財前教授のころと比べると相当割に合わない仕事になったところで、映画『白い巨塔』が描くのは、「一県一医大構想」が推し進められる以前、旧帝国大学医学部が権勢を誇り、医学部教授の権力も凄まじく大きかった時代の医学部の姿です。医学部教授の数が大幅に増え、製薬企業等から大学への研究費や奨学寄付金の給付が厳格化され、さらにはパワハラ、アカハラがすぐに事件化される現在、教育、研究だけではなく大学病院の経営にまで目を配らなければならない大学病院の教授は、財前教授のころと比べると相当割に合わない仕事になったと言えるでしょう。それでも、「教授を目指す!」という若手医師がいなくならないのはなぜでしょう。「教授」という肩書が魅力的なのか、はたまた昔より小さくなったとはいえ「権力」に惹かれるのか。そのあたり、人間の欲望自体は『白い巨塔』公開時からほとんど変わっていないようです。参考1)今後の医学教育の在り方に関する検討会 中間取りまとめについて/文部科学省

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統合失調症とうつ病の治療ガイドライン普及に対するEGUIDEプロジェクトの効果

 国立精神・神経医療研究センターの長谷川 尚美氏らは、「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」を活用することによる、精神疾患の診療ガイドラインに関する教育のリアルワールドにおける効果を検証するため、本研究を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年9月8日号の報告。 EGUIDEプロジェクトは、「統合失調症薬物治療ガイドライン」と「うつ病治療ガイドライン」を日本国内で実践するための全国的なプロスペクティブ研究である。2016~19年、精神科病棟を有する176施設に所属する精神科医782人がプロジェクトに参加し、診療ガイドラインに関する講義を受講した。プロジェクト参加病院の統合失調症患者7,405例およびうつ病患者3,794例を対象に、ガイドラインが推奨する治療の実施割合を、プロジェクト参加者と非参加者から治療を受けている患者間で比較した。プロジェクト参加病院より毎年4~9月に退院する患者の臨床データおよび処方データも分析した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症に対する3つの質的指標(他の向精神薬の使用とは無関係の抗精神病薬単剤療法、他の向精神薬を使用しない抗精神病薬単剤療法、抗不安薬や睡眠薬の使用なし)の割合は、プロジェクト参加者のほうが非参加者よりも高かった。・うつ病治療ガイドラインでも同様な結果が得られた。・ガイドラインの推奨治療の普及におけるEGUIDEプロジェクトの有用性が確認された。 著者らは結果を踏まえて「精神疾患の診療ガイドラインに関する教育を実施することで、精神科医の治療に関連した行動を改善可能であることが示唆された。メンタルヘルス治療のギャップを解消するためには、EGUIDEプロジェクトのような教育ベースの戦略が重要であろう」としている。

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蘇生後呼吸管理でのPaCO2のターゲットはどこに置くか?(解説:香坂俊氏)

 「心肺蘇生の現場はドラマに溢れている…」などと思われがちだが、実は1から10までかなりプロトコールがはっきりと決められており、現代医療であまりそこに情緒が介在する余地はない。カギは低酸素性脳損傷(hypoxic brain injury)をいかに防ぐかというところであり、その思想にのっとりABCのうちのCが優先され、ACLSの手順も細かく決められ、低体温療法など蘇生後のケアも規定される。 しかし、蘇生後の「呼吸管理」についてはどうだろうか?この領域はいまだに解明されていない側面が多い。たとえば、蘇生後のPaCO2の目標値についてもはっきりとした規定はなされておらず、現時点でのガイドラインで推奨されているのは70~100mmHgあるいは酸素飽和度94~98%を目指す、というかなり広いターゲットが設定されている。 今回のTAME試験では、PaCO2の目標値の設定に関してランダム化が行われた。院外の蘇生後の患者1,700例を対象に、軽度のHypercapniaをターゲットとする群(50~55 mmHg)と正常PaCO2(35~45mmHg)にランダム化が行われ、6ヵ月後の神経学的転帰が比較されたが、軽度Hypercapnia群と正常PaCO2群で、ほとんど差は認められなかった(P値は0.76)。この試験の結果からどういった意味を見出すか? 先に述べたとおり、心肺蘇生後の患者管理においては、すでに高度に洗練されたプロトコールが存在し、ガイドラインも提供されている。今回のTAME試験の結果は、これらに大幅な変更をもたらすものではない。しかし、蘇生後管理はあまりミスが許容されない分野であり、呼吸管理で無理にHypercapniaの方向に持っていく必要がない、ということが示されたことは、かなり現場の助けとなるのではないだろうか(注意を向けなくてはならないことが1つ減れば、別のことに注意を向けられるようになる)。ただ、このTAME試験は、並行して低体温療法のランダム化も実施されており、もしかすると、そこに隠れた交互作用があったかもしれず、また、かなり自由度の高い試験プロトコールであったため、かなり現場判断が介在する余地があった(頭蓋内圧のモニターも全例で実施されていなかった)。この辺りは、試験の解釈に注意を要する点となるだろう。

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第179回 レカネマブで治療可能な患者数、独自試算してみると…

ついに9月25日、アルツハイマー病(以下、AD)を適応症とする抗アミロイドβ抗体薬のレカネマブ(商品名:レケンビ)が承認された。ADを適応症とする薬剤が承認されたのは2011年以来、12年ぶりのことだ。ただ、何度かこちらで書いているように、この薬をどのように使っていくかは大きな課題である。すでに9月27日に開催された中央社会保険医療協議会では、この薬剤を巡る薬価算定の方針に関する議論が始まり、やや緊迫感が漂う情勢だ。一足先に承認されたアメリカでの年間薬剤費は約390万円(9月28日時点の為替レートによる)。ADは患者数だけで見れば、生活習慣病並みの非常に巨大な規模。一体、どれだけの患者が投与対象になるのだろう? ここで極めてざっくりとした数字を考えてみたいと思う。まず、ご存じのように、レカネマブは軽度認知障害(以下、MCI)、軽度ADといった早期のADが対象である。現・九州大学医学研究院 衛生・公衆衛生学分野教授の二宮 利治氏らが2014年に行った「厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によれば、各年齢層の認知症有病率が 2012 年以降も一定であると仮定した場合、ADの患者数は、2025年に466 万人と推計されている。もちろんこれには軽度から高度までのすべての重症度を含む。同研究の推計によると、2025年時点で軽度認知症が占める割合は全体の41%。これを機械的にADにも当てはめると、その患者数は191万人となる。認知症患者の受診率は約7割と言われているので、これまた機械的に当てはめると、軽度AD患者のうち134万人が受診していることになる。もっとも軽度の場合は「歳のせい」で片付けて受診していないケースもまだあると考えられ、実際の受診者はこれよりも少なくなるだろう。とりわけ独居の場合はこの傾向が強いと考えられる。ここでさらに軽度ADの独居高齢者は、症状に気付きにくく、ほぼ受診はしないという仮定を置く。2019年の国民生活基礎調査によると、高齢者世帯の独居率が49.5%であり、これを加味すると、軽度ADの受診者は67万人になる。では、このうちの一体どれだけの人がレカネマブの処方を望むだろうか? 日本での薬価決定はこれからだが、アメリカの薬価をベースに考えるならば、3割負担ならば月間約10万円、70~75歳の2割負担ならば約7万円、75歳以上の1割負担ならば約3万円。もっとも隔週で通院し、高額な薬剤費を払うという前提では、患者自身や家族も相当程度コストパフォーマンスを意識するだろう。まず、実際に処方を検討するのは70歳前後が中心と考えるのが妥当な線ではないだろうか。そこで、レカネマブの処方を検討する層の月当たりの自己負担額を2割7万円と仮定する。総務省統計局によると、高齢者の家計に占める平均の保健・医療支出割合は約6%。裏を返せば、医療などにかけるお金が6%程度に収まるならば、高齢者では家計がなんとか回せるとも言える。そうなると単純に月収100万円程度、すなわち年収1,200万円以上はないと、レカネマブには手が届かない。もっとも軽度AD患者で年収1,200万円も稼げる人はそうそういないはずだ。おそらくは最後に預貯金を崩す、子供が費用を肩代わりするとするのが現実ではないだろうか? 厚生労働省の国民生活基礎調査では、年収1,200万円以上の世帯は約7%であり、これを前述の67万人に適用すると4万7,000人にまで絞り込まれる。もっともこの数字は経済性の観点のみで、患者と家族にとって、思っている以上に負担が大きい「隔週通院」というファクターは織り込んでいない。さらにこの薬剤の場合、厚生労働省による「最適使用推進ガイドライン」が作成されることはほぼ必定。同ガイドラインでは、定性的な表現ながらも必ず施設基準が設定される。今回のレカネマブの場合、陽電子放出断層撮影(PET)とアミロイド関連画像異常(ARIA)をチェックするMRIの撮影と読影に熟達した施設であることが求められると予想する。そこで日本核医学会のPET 撮像施設認証を受けている施設を参照すると、28都道府県の70施設弱しかない。これらを総合した私なりのきわめて粗い試算をすれば、軽度AD患者(MCIは除く)のうち、直近でレカネマブの処方を受けられる候補対象は1~2万人程度。現実はどうなるか、2~3年後に答え合わせをしてみようと思う。

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9月29日 世界心臓デー【今日は何の日?】

【9月29日 世界心臓デー】〔由来〕全世界で毎年1,750万人が心臓血管病を原因に亡くなっていることに鑑み、世界心臓連合が2000年より「世界ハートの日」を9月最終日曜日と定め、地球規模の心臓血管病予防キャンペーンを展開。その後、2011年から9月29日を「世界ハートの日」と制定し、この日を中心にフォーラムやイベントを各地で開催している。関連コンテンツ心不全の分類とそれぞれの治療法Update【心不全診療Up to Date】知っておきたい循環器科で使うSGLT2阻害薬【診療よろず相談TV】心不全の入院後30日死亡率、国の経済レベルで3~5倍/JAMA冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン、11年ぶりに改訂/日本循環器学会死亡・CVリスクを低下させる食事法は?40試験のメタ解析/BMJ

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がんに関する質問へのAIの回答は信頼できるのか

 人工知能(AI)は、特にがん治療に関しては、必ずしも正確な健康情報を提供するわけではない可能性が、2件の研究で示唆された。これらの研究は、がん治療に関するさまざまな質問に対してAIチャットボットが提供する回答の質を検討したもので、両研究とも「JAMA Oncology」に8月24日掲載された。 1件目の研究は、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院および米ハーバード大学ダナファーバーがん研究所のDanielle Bitterman氏らが実施したもので、2022年11月に発表されたChatGPTに焦点を当てたもの。研究グループは、ゼロショットプロンプティング(あらかじめ情報を伝えずに直接質問を提示すること)のテンプレートを4種類作成し、これを用いて、がん(乳がん、前立腺がん、肺がん)の診断に関する26種類の記述(がん種、がんの進展度などの情報を伴う場合と伴わない場合あり)に対して、計104個の質問を作成した。ChatGPTは2021年9月までの情報に基づくものであるため、ChatGPTの出した回答は、2021年の全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)ガイドラインと照合して、「治療法はいくつ提示されたか」などの5つの基準で評価し、4人のがん専門医のうちの3人の評価が一致した場合を、ガイドラインとChatGPTによる評価が一致したと見なした。 その結果、104個の質問に対するスコア(520点満点)のうちの61.9%(322点)で、3人のがん専門医の評価が一致していたが、残りは一致していないことが示された。Bitterman氏は、「いくつかの推奨内容は、明らかに間違っていた。例えば、不治の病であるにもかかわらず、根治的治療を勧めているようなケースが認められた」と述べている。また、標準治療の中には放射線療法や化学療法も含まれるのに、ChatGPTは手術だけを勧めているなど、より微妙な回答例も確認された。Bitterman氏は、「正しい情報の中に誤った情報が混じっている確率が高いため、特に専門家でも誤りを見つけるのは非常に難しかった」と述べている。 2件目の研究は、米ニューヨーク州立ダウンステートヘルスサイエンス大学のAbdo Kabarriti氏らが実施したもので、ChatGPT、Perplexity、Chatsonic、Bing(Microsoft Bing)の精度について評価が行われた。これらのAIチャットボットに、皮膚がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんに関して最も頻繁に検索エンジンにかけられている質問を尋ねた。回答内容は、検証された評価ツールであるDISCERNを用い、消費者向けの健康情報の質を1(低い)〜5(高い)で評価した。また、Patient Education Materials Assessment Tool(PEMAT)を使用して、情報の理解可能性と実行可能性(0〜100%、高いほど理解のしやすさと実施できる可能性が高い)の評価を行った。 その結果、4つのチャットボットが生成した100個の回答の質は「良い」と評価され〔DISCERNスコア中央値5(範囲2〜5)点〕、誤情報は含まれていないことが確認された。理解可能性は66.7%と中程度であったが、実行可能性は20.0%と低かった。また、どの回答も、「患者は、医師に相談することなく、提供されたデータに基づいて医療上の決定を下すべきではない」という包括的な警告を伴っていた。 Kabarriti氏は、「われわれが最も心配していた誤情報がほぼ含まれていなかった点は心強い。しかし、AIチャットボットが提供した情報は、正確ではあったが、一般の人が読んで理解できる内容ではなかった」と話している。同氏は、AIチャットボットは大学生の読解レベルの情報を提供するのに対して、平均的な消費者の読解レベルは小学6年生程度だと説明する。 Kabarriti氏はさらに、AIチャットボットが多くのがん患者をいら立たせ得る別の要因は、がんの症状に対して何をすべきかを教えてくれない点だと指摘する。「AIはただ、『医師に相談するように』と言うだけだ。おそらく責任問題があるのだろうが、AIが医師に代わって患者と対話する役目を担うことはできないという点は重要だ」と話す。 この研究論文の付随論評を執筆した米カリフォルニア大学ヘルスシステムのAtul Butte氏は、両研究が提起した懸念にもかかわらず、AIが患者や医療界全体にとって「大きなプラスになる」と見ている。同氏は、「AIチャットボットが提供する情報は、時間の経過とともに、より正確で利用しやすいものになることは間違いない」との見方を示し、今後、AIチャットボットは、医療情報やケアの提供において、これまで以上に重要な役割を果たすようになり、多くの患者にとって、その恩恵は目に見えるものになると予測している。

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機械的血栓回収療法後の脳卒中急性期の血圧管理目標レベル(解説:冨山博史氏)

背景: 現在、脳卒中急性期の治療法として血栓溶解療法に加え機械的血栓回収療法が施行されている。そして、日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021(2023改訂版)』では、脳卒中急性期の血圧治療に関して以下を記載している。“機械的血栓回収療法を施行する場合は、血栓回収前の降圧は必ずしも必要ないが、血栓回収後には速やかな降圧を行うことは妥当である(推奨度B エビデンスレベル中)。一方、血栓回収中および回収後の過度な血圧低下は、避けるように勧める(推奨度E エビデンスレベル低)” 前半の“血栓回収後には速やかな降圧を行うことは妥当”とする根拠はWaltimo T.らの報告で血栓溶解療法後での血圧高値は脳出血のリスクが高まるとの報告などを参考にしている1)。一方、脳は脳血流自動調節能を有するが、脳血管障害急性期は、この調節能が消失し、わずかな血圧の下降によって脳血流も低下することが知られている。すなわち、過度の降圧は脳障害を増悪させる可能性がある。 そして、ENCHANTED2/MT試験は、頭蓋内大血管閉塞による急性虚血性脳卒中に対して機械的血栓回収療法で再灌流に成功した症例が対象であり、非積極的降圧治療群(収縮期血圧140~180mmHg:404例)と比較して、積極的降圧治療群(収縮期血圧120mmHg:406例)では早期の神経学的悪化および90日後の主要機能障害が多かったことを報告した2)。すなわち、過度の降圧の有害性を示唆する結果であった。故に、“血栓回収中および回収後の過度な血圧低下は、避けるように勧める”と記載した。しかし、この試験以外、機械的血栓回収療法施行後の過度の降圧の有害性の検証はなく(故にエビデンスレベル低と記載された)、さらなる根拠が必要であった。知見: 今回コメントするOPTIMAL-BP試験は、こうした必要性に合致する研究である。同試験は、多施設共同無作為化非盲検評価者盲検比較試験で、韓国の19の脳卒中センターで実施された。機械的血栓回収治療を受けた大血管閉塞急性虚血性脳卒中患者306例を対象とした。介入は登録後24時間、積極的血圧管理(収縮期血圧目標140mmHg未満、n=155)または従来の血圧管理(収縮期血圧目標140~180mmHg、n=150)を受ける群に無作為に割り付けられた。主要アウトカムは3ヵ月後の機能的自立(modified Rankin Scaleスコア0~2)であった。そして、血栓回収療法で再灌流に成功した患者において、24時間の積極的な血圧管理は、従来の血圧管理と比較して3ヵ月後の機能的自立を低下させた。なお、本試験は、安全性に関する懸念を指摘したデータ・安全性モニタリング委員会の勧告に基づき早期に中止された。まとめ: 今回の結果は、脳卒中急性期の適切な血圧コントロールの重要性を確認する結果である。さらに、脳卒中急性期の脳血流自動能破綻の有害性を支持し、積極的な再灌流療法でも急性期には自動能が改善しないことを示唆している。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その1【「実践的」臨床研究入門】第36回

今回はO(アウトカム)を設定する際の要点を解説します。これまでブラッシュアップしてきたわれわれのResearch Question(RQ)のOは下記のとおりです(連載第34回参照)。O:1)末期腎不全(透析導入)、2)糸球体濾過量(GFR)低下速度O(アウトカム)は測定可能で臨床的に意義があるかまず、ここで設定したOが測定可能で臨床的に意義があるものなのか、再考してみましょう。末期腎不全(透析導入)は明確なイベントであり、カルテ調査でその発症日も容易に確認できます。GFRは血清クレアチニン値(Cr)と年齢、および性別で算出される腎機能評価の指標で、日本人の集団でも確立された計算式が論文で公開されています1)。GFR低下速度は、複数回のCrの経時的評価が行われていれば計算できますので、客観的な測定が可能です。末期腎不全(透析導入)は患者さんにとって、生活が大きく変わるハードエンドポイントであり、臨床的にも大きな意義があるOと考えられます。一方、GFR低下速度はサロゲートエンドポイントです(連載第3回参照)。しかし、GFR低下速度の持続的な加速は、慢性腎臓病(CKD)患者さんの末期腎不全発症を含めたハードエンドポイントの予測因子であることが多くの臨床研究の結果から示されています。したがって、これも臨床的に重要なアウトカムと言えるでしょう。さて、われわれのRQの曝露要因(E)は、低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日の遵守という厳格な食事療法です。すでに設定した腎予後に関するOの臨床的重要性は前述したとおりですが、厳格な食事療法に伴う負担など、負の側面も気になりませんか。たとえば、厳格な低たんぱく食事療法によるQOL悪化の懸念は、診療ガイドラインなどでも指摘されていますが、明らかなエビデンスはこれまでに認められていないとされています。今回、われわれが実施を予定しているのは、カルテ調査をベースにした、いわゆる「後ろ向き」の観察研究です(連載第1回、第6回参照)。QOL尺度(連載第3回参照)の経時的な測定は、日常診療では一般的に行われていないと思いますし、われわれのカルテ調査データでも収集はできませんでした。このように、通常の臨床現場で測定されないOについては「後ろ向き」ではなく「前向き」研究でなければ検討できない、ということです。ちなみに、前回紹介したDOPPS(Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study)は、血液透析患者さんを対象とした「前向き」観察研究です。DOPPSでは多大なコストをかけて、経時的な健康関連QOL尺度(連載第3回参照)の測定と収集も行っています。また、前回説明したとおり、研究の効率や実施可能性の観点から、できればP(対象)はOを起こしやすい集団である方が望ましいです。つまり、発生頻度が多いOを設定した方が研究の効率が良いということです。そこで、今回の「後ろ向き」観察研究の解析で使用するデータをざっと確認してみたとしましょう。保存期CKD患者さん600例余り、最長5年間の観察期間のカルテ調査データを収集・調べてみたところ、全体の約30%の症例でプライマリのOである末期腎不全(透析導入)の発生が確認できました。実施可能性の高い解析データが収集できたものとホッとした次第です。1)Matsuo S, et al. Am J Kidney Dis. 2009;53;6:982-992.

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第164回 新型コロナの医療体制、10月から大幅見直し/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナの医療体制、10月から大幅見直し/厚労省2.過労死ライン超える医師、労災未認定。兵庫4病院も違法残業で是正勧告/厚労省3.インフルエンザが異例の早期流行、ワクチン接種を推奨/厚労省4.電子カルテ情報共有サービス、健診結果や患者サマリーを統合して2024年度稼働へ/厚労省5.糖尿病の名称変更、新呼称「ダイアベティス」提案/日本糖尿病学会・日本糖尿病協会6.国立がん研究センター元医長、医療機器をめぐる賄賂疑惑で逮捕/千葉1.新型コロナの医療体制、10月から大幅見直し/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルスに関する複数の新たな方針を発表した。10月から専用病床の「病床確保料」が2割減少し、2024年3月までの適用が予定されている。また、新型コロナ治療薬の患者の自己負担割合について、9,000円を上限とすることが決定された。これまで全額公費であった治療薬について、一部自己負担が求められるようになる。入院医療費の補助は、最大2万円から最大1万円に減少する。医療機関の支援に関しても見直しが行われ、新型コロナの患者の受け入れのための「病床確保料」の支給が感染状況が一定の基準を超えるまで行われない方針となった。専門家は、医療機関の労力の大きさと、適切な支援策の必要性を指摘している。参考1)コロナ病床確保料、10月から2割減に 重点医療機関の補助区分を廃止、厚労省(CB news)2)新型コロナの患者支援 10月から見直し 治療薬の一部自己負担に(NHK)3)10月以降のコロナ感染症対応、「重点的・集中的な入院医療体制」確保目指し診療報酬特例や病床確保料などを縮減して継続(Gem Med)2.過労死ライン超える医師、労災未認定。兵庫4病院も違法残業で是正勧告/厚労省東京都内の大学病院に勤務していた50代の男性医師が、過労によるくも膜下出血で寝たきりの状態となり、労働基準監督署に労災申請を行ったが、宿日直許可を理由に宿直業務を労働時間から除外する扱いとされ、労災認定されなかったことが明らかとなった。男性は緩和医療科の唯一の臨床医として働いており、発症前の時間外労働は「過労死ライン」とされる月80時間を大きく超えていた。代理人弁護士の川人 博氏は、「宿直中に仕事をしていたことが事実であり、一切の労働時間を否定する事案は初めて。関係法令にも反している」と厳しく批判した。労基署は、宿直業務のうち、仮眠6時間を除く9時間15分を労働時間として認めたが、厚生労働省東京労働局の審査官は、宿直時間のすべてを労働時間から除外した。男性の妻は、「宿日直業務のすべてが『労働時間ではない』と否定されることは理解に苦しむ」と述べている。一方、兵庫県立の4病院が、労使協定に基づく上限を超える違法な時間外労働を医師にさせていたとして、労基署から是正勧告を受けたことも報じられた。勧告対象となった期間中に、月190時間の残業をしていた医師もいた。2024年度からは医師に時間外労働の規制が適用されるが、このような過労死の問題が続く中、改革の方向性やその取り組みが十分であるのかという疑問が浮上してきており、来年の4月以降も、過労死防止についてさらに議論が求められる。参考1)医療機関の宿日直許可申請に関する FAQ(全日本病院協会)2)医師の宿直を労働時間から除外、労災認められず 「ここまでやるか」(毎日新聞)3)病院で宿直中に死亡対応しても「労働時間ゼロ」 労災申請で国が判断(朝日新聞)4)医者の宿直、労働時間「ゼロ」扱いで労災認定されず 月100h超の残業でくも膜下出血発症…妻「理解に苦しむ」(弁護士ドットコムニュース)5)医師らに最大月190時間の違法残業させる 兵庫県立4病院 労基署が是正勧告(神戸新聞)3.インフルエンザが異例の早期流行、ワクチン接種を推奨/厚労省インフルエンザの感染拡大が全国で異例の早さで進行中であることが明らかとなった。厚生労働省のデータによれば、全国約5,000の医療機関からの報告で、1医療機関当たりの感染者数が前週の4.48人から7.03人へと急増した。とくに沖縄県では20.85人と最も多く、千葉、愛媛、佐賀と続く。首都圏でも東京都が11.37人と増加し、7都道府県で「注意報」の基準値10人を超えた。この背景には、14歳未満の若い世代での感染が目立ち、学級閉鎖や休校が増えている事情がある。一方、新型コロナウイルスの感染は前週比0.87倍と減少傾向にあるが、ピークを越えたかどうかは注視が必要との見解が出されている。厚労省は、インフルエンザについて「流行のピークが早まる可能性がある」とし、ワクチン接種の早期予約を呼びかけている。参考1)インフルエンザ、異例の早さで流行拡大…感染者数が前週比1・57倍(読売新聞)2)インフルエンザ、東京都内でも「流行注意報」 9月の発令は異例(朝日新聞)3)新型コロナとインフルエンザ 最新の感染状況(NHK)4.電子カルテ情報共有、健診結果や患者サマリーを統合して2024年度稼働へ/厚労省厚生労働省は、健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループを9月11日に開催し、電子カルテ情報の共有と活用に関して、新たな方針を明らかにした。2024年から稼働を開始する電子カルテ情報共有サービスでは、患者に「傷病名、検査、処方」の情報と「医師からの療養上の指導・計画」の情報をセット提供する予定となっており、患者自身がその情報を常時確認できるようにする見込み。また、厚労省側は電子カルテ情報共有サービスに新たに「健康診断結果報告書」を組み込み、特定の健診や高齢者健診、人間ドックの結果などの閲覧が可能になるよう提案を行なっており、今後のワーキンググループでの議論を通じて詳細が詰められる予定。今回新たに提案された「患者サマリー」には、外来受診の記録も含まれ、患者が自分の病態を理解しやすくなるよう整理される予定。このほか、救急医療現場で必要となる「医療情報」を全国で確認できる仕組みも検討されており、患者の緊急時の診療情報のアクセスに関するガイダンスやガイドラインの作成も提案されており、カルテ情報の共有化に向け、詳細を検討していく見込み。参考1)第18回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ(厚労省)2)電子カルテ情報共有サービスに健診結果の実装目指す サービス稼働時に 「患者サマリー」も、厚労省(CB news)3)患者に「傷病名、検査、処方」等情報と「医師からの療養上の指導・計画」情報をセット提供する新サービス―医療等情報利活用ワーキング(Gem Med)5.糖尿病の名称変更、新呼称「ダイアベティス」提案/日本糖尿病学会・日本糖尿病協会日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、糖尿病の新しい呼称として「ダイアベティス」とする提案を発表した。この提案は、糖尿病に関する誤解や偏見を解消するためのアドボカシー活動として去年より取り組みとして行ってきた一環。国内には現在約1,000万人の糖尿病患者が存在し、現行の病名には不正確な表現や不潔なイメージを持たれる問題があると指摘されてきた。この新しい呼称は、英語の病名に基づいており、学術的にも国際的にも受け入れられると期待されている。日本糖尿病協会が行ったアンケートによると、回答者の約9割が現行の病名に抵抗感や不快感を持っており、約8割が病名の変更を望んでいた。この新しい呼称「ダイアベティス」は、まず啓発活動などで使用され、将来的には正式な病名としての変更も検討されている。参考1)日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同 アドボカシー活動(日本糖尿病協会)2)糖尿病の負のイメージ、払拭へ 新呼称案は「ダイアベティス」(朝日新聞)3)糖尿病の新たな呼称「ダイアベティス」とする案発表(NHK)6.国立がん研究センター元医長、医療機器をめぐる賄賂疑惑で逮捕/千葉国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の肝胆膵内科の元医長(47歳)が、医療機器の選定・使用に関連して賄賂を受け取ったとして警視庁に逮捕された。逮捕された医師は、同院で医長になって以降、手術で使用する「ステント」について、医療機器メーカー「ゼオンメディカル」社の製品を優先的に使用した見返りとして、2021年におよそ170万円の賄賂を受け取った疑い。また、ゼオン社の元社長、柳田 昇容疑者(67歳)も贈賄の疑いで逮捕された。国立がん研究センターは、この事件を受け、公式サイトを通じて謝罪。「誠に遺憾」とし、「厳正に対処する」との声明を発表した。警視庁は、メーカーが製品の安全性などを確認する市販後調査に協力する契約をこの医師と結び、ほかの医師の使用分も加算していた可能性があるとして、さらに詳しい実態を調べている。事件の背後に、医療機器メーカーと医師との不透明な取引が浮かび上っており、業界の信頼性が再び問われることとなる。参考1)当センターの元職員の逮捕について(国立がん研究センター)2)医療機器「1本使えば対価1万円」…選定や使用巡り170万円贈収賄容疑 がん研元医長と販売会社前社長逮捕(東京新聞)3)国立がん研究センター東病院元医長 収賄容疑で逮捕 警視庁(NHK)4)贈賄容疑のゼオンメディカル、ほかのがんセンター医師の機器使用分も元医長に「謝礼」(読売新聞)5)業者と癒着、後絶たず 高齢化で相次ぐ参入 競争激化が背景に(日経新聞)

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脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕

新たなエビデンスを加え、66項目の大改訂!最新のエビデンスを反映させるなどの目的で、例年、全面改訂の約2年後に追補版を発売してきた『脳卒中治療ガイドライン』ですが、近年の本領域の進歩は長足であり、今回は全140項目中66項目を改訂しました。エビデンスレベルの高い新しいエビデンスを加えたほか、新しいエビデンスはないものの推奨度が現実と乖離しているものなども見直したため、今回は「追補」ではなく「改訂」として発売しました。主な改訂点●抗血栓薬や血栓溶解薬などの記載変更について抗血栓薬については、その1種であるDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)の高齢者適応のほか、DOACの中和剤に関する記載も増やしました。また、血栓溶解薬は使用開始時期によって効果が左右されますが、起床時発見もしくは発症時刻不明の虚血性脳血管障害患者に対するエビデンスなどを加えました。さらに、くも膜下出血の治療後に生じる可能性がある遅発性脳血管攣縮については、新たに登場した治療選択肢にも触れるなどの変更を行いました。●危険因子としての糖尿病・心疾患・慢性腎臓病(CKD)の管理について主に糖尿病治療で使われるGLP-1やSGLT-2などの薬剤には、近年、新たなエビデンスが得られていることから、推奨度を含めて記載を見直しました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕定価8,800円(税込)判型A4判頁数332頁発行2023年8月編集日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会

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適切な運動でがん患者の死亡リスク25%減、がん種別にみると?/JCO

 がんと運動の関係について、さまざまな研究がなされているが、大規模な集団において、がん種横断的に長期間観察した研究結果は報告されていない。そこで、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのJessica A. Lavery氏らの研究グループは、がん種横断的に1万1,480例のがん患者を対象として、がんと診断された後の運動習慣と死亡リスクの関係を調べた。その結果、適切な運動を行っていた患者は非運動患者と比べて、全生存期間中央値が5年延長し、全死亡リスクが25%低下した。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年8月31日号に掲載された。 前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がんのスクリーニング研究(Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian [PLCO] Cancer Screening Trial)に参加したがん患者1万1,480例(11がん種)を対象とした。対象患者のがんと診断された後の運動の頻度と死亡の関係を検討した。運動について、米国のガイドラインの基準(中強度以上の運動を週4日以上×平均30分以上および/または高強度の運動を週2回以上×平均20分以上)を満たす患者(適切な運動群)と基準未満の患者(非運動群)の2群に分類し、比較した。主要評価項目は全死亡、副次評価項目はがん死亡、非がん死亡であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値16年時点において、死亡が認められたのは4,665例であった。内訳は、がん死亡が1,940例、非がん死亡が2,725例であった。・全生存期間中央値は、適切な運動群が19年であったのに対し、非運動群は14年であった。・多変量解析の結果、適切な運動群は非運動群と比べて、全死亡リスクが有意に25%低下した(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.70~0.80)。・また、適切な運動群は非運動群と比べて、がん死亡リスク(HR:0.79、95%CI:0.72~0.88)と非がん死亡リスク(HR:0.72、95%CI:0.66~0.78)が有意に低下した。・がん種別のサブグループ解析において、全死亡リスクの有意な低下が認められたがん種は、以下のとおりであった。 -子宮体がん(HR:0.41、95%CI:0.24~0.72) -腎がん(同:0.50、0.31~0.81) -頭頸部がん(同:0.62、0.40~0.96) -血液がん(同:0.72、0.59~0.89) -乳がん(同:0.76、0.63~0.91) -前立腺がん(同:0.78、0.70~0.86)・一方、適切な運動群でがん死亡リスクの有意な低下が認められたがん種は、腎がん(HR:0.34、95%CI:0.15~0.75)、頭頸部がん(HR:0.49、95%CI:0.25~0.96)のみであった。

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認知症患者の意思決定支援【非専門医のための緩和ケアTips】第60回

第60回 認知症患者の意思決定支援「意思決定能力」という言葉がありますが、認知症などを持つ高齢患者さんの場合、どれだけ話を理解して治療方針を決められる状態なのか、それを評価することが最初のポイントになります。そういいつつ、これがなかなか難しいのも事実です。今回は認知症を持つ高齢患者さんの意思決定支援について考えてみます。今日の質問緩和ケアにおいて、ご本人や家族と話し合いながら、望ましいケアを考えることは大変ですが、やりがいを感じます。一方、高齢の方が多く、本人の意向を伺うことが難しく感じることがあります。本当にコミュニケーションが難しいときはご家族と話し合いますが、「話はできるけれど、複雑なことは理解できない」といった状況の場合、どの程度対応をすればよいのか迷います。皆さんは意思決定能力をどのように評価するか、説明できるでしょうか? おそらく、部分的に取り組んでいることもあるでしょうが、網羅的に言語化して説明するのは難しいと思います。意思決定能力とは、以下の4つの機能が統合されたものとされ、2022年に発表された『がん医療における患者-医療者間のコミュニケーションガイドライン』(金原出版)でも示されています。1)理解力提供された情報を理解・保持し、自分の言葉で説明できる。診断や治療を理解できる2)認識する能力自分自身の診断や治療、治療の選択により将来起こり得る結果を自分のこととして認識し考える能力3)論理的な思考能力診断や治療に関する情報を参考に、論理的に比較考察する能力4)選択を表明する能力意思決定の内容を明瞭に表明する能力意思決定では、1)自分がどのような医学的状況にあるかを理解し、2)3)自分にとって何が良いかを論理的に考え、4)医療者や周囲の関係者に伝える、ということをしているわけです。そう考えると、これら4つのどれが障害されても医療分野における意思決定は難しくなることがわかります。そして、目の前の患者さんはどのポイントが障害されているのかを判断し、支援する方法を考えます。ここで重要なのが、意思決定能力は「“ある”もしくは“ない”」「“0”もしくは“100”」で判断できるものではない、という点です。多くのケースでは、「言葉で詳細に自身の考えを述べることは難しいものの、感情と共に嫌な様子は見てとれる」といったように、できることとできないことが複雑に混じり合っています。今回の質問の患者さんも、こうした意思決定能力を構成する能力のどこかが障害されているものの、保たれている部分もある、という状況かと思います。まずは「患者さんの意思決定能力を評価する」ことから始めましょう。その後、「説明において医学的・専門的な内容を減らす」、「話すだけでなく文字でも伝える」など、相手が残された機能で対応できるための工夫をしましょう。今回のTips今回のTips認知症の方の意思決定支援、まずは「意思決定能力を評価」し、「話し合いの工夫」をしてみましょう。

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がん遺伝子パネル検査、もっと多く、もっと早く/イルミナ

 イルミナは2023年8月31日に、都内でプレスセミナー「がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査の現状と課題」を開催した。演者からは、がん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング[CGP]検査)のさらなる活用と、早期適用についての要望が発せられた。一般大衆のがんゲノム医療への認知度は低い 同社メディカルアフェアーズ本部長である猪又 兵衛氏は、2023年5月に同社が一般成人1,000人を対象に行った「がんゲノム医療に対する意識調査」の結果を紹介した。 がんの根本的な原因について問う質問に対し、「喫煙」「遺伝」「飲酒、偏食」という回答が上位を占め、「遺伝子異常」と認識していた人の割合はそれ以下で5割強にとどまった。また、がんゲノム医療を知っているか、との質問に対し、知っていたと回答した割合は7%であった。 猪又氏は、「がん患者やその家族など、がんに関わっている方でさえ、がんゲノム検査の認知度とがんへの正しい理解度はまだ低く、さらなる向上の余地がある」と総括した。今以上に増やせる日本の遺伝子パネル検査の活用機会は 同社ゼネラルマネジャーのArjuna Kumarasuriyar氏は、世界と日本のCGP活用に関する統計データを示した。 日本ではCGP検査が保険承認されているものの、希少がんを除き、標準治療終了後という制限がある。制限の中でCGP検査を受けているがん患者は約1万7,000例で、日本における年間の新規がん罹患数の約100万人から換算すると、58対1の比率である。この比率は韓国では10対1、ドイツでは13対1で、CGP検査を受けているがん患者の比率は日本の4〜5倍多い。Kumarasuriyar氏は、「日本では今以上にCGPの活用機会がある」と述べた。CGPをさらに治療に結び付けるために必要な、基礎・臨床研究の増加 国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター(C-CAT)センター長の河野 隆志氏は、C-CATの実績について紹介した。 2019年6月以降のC-CATの登録累計は6万人に達する。登録者は増加傾向で、現在は月2,000件程度が新たに登録されている。CGP検査により治療薬が提示された患者は44.5%(1万3,713例)、CGP検査で提示された標的治療薬が投与された患者は9.4%(2,888例)であるという。 河野氏は、「多くの患者で遺伝子変異が見つかっているが、必ずしも薬剤に紐付いているわけではない。今後は遺伝子と薬剤の関係を導き出す基礎研究と、治療につなげる治験の増加が必要だ」と訴えた。CGP活用拡大に欠かせない、医師からの提案と診断初期からの適用 NPO法人パンキャンジャパン理事長の眞島 喜幸氏からは、希少がんと膵臓がん患者のアンケート結果が紹介された。 希少がんでは治療初期からCGP検査が認められている。しかし、医師からがんゲノム医療の説明を受けた希少がん患者は22.5%しかいない。結果、CGP検査を受けた希少がん患者は12%だった。CGP検査を受けなかった理由の第1位は「医師からの説明がなかった」である。眞島氏は、「患者から検査の要望を切り出せる状況には至っていない。医師からの提案が重要」と述べた。 また、同氏はCGPの活用時期についても言及した。膵がんではKRASやBRCAなど代表的な遺伝子変異が多い。米国のNCCNガイドラインでは、進行膵がんに対し治療初期からCGP検査が推奨されているが、日本では、膵がんでのCGP検査適用は標準治療後である。眞島氏は、「膵がんの治療は待ったなし。現在の制限を解除し、米国のように診断時からCGP検査を活用してゲノム医療につなげたい」と訴えた。

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機械学習モデルで心筋梗塞の診断能が向上

 心筋トロポニン値と臨床的特徴を組み込んだ機械学習モデルによって、心筋梗塞の診断能が改善されたという研究結果が、「Nature Medicine」に5月11日掲載された論文で明らかにされた。 心筋梗塞の診断の目安として心筋トロポニンの閾値を設定するようにガイドラインで推奨しているが、心筋トロポニン値は、年齢、性別、併存疾患、発症時からの経過時間などの影響を受けやすい。そこで、英エジンバラ大学のDimitrios Doudesis氏らは、心筋梗塞の診断能の改善を目的として、初診時または定期的な検査時の心筋トロポニンI値と臨床的特徴を統合し、心筋梗塞発症の確率を予測するCoDE-ACSスコア(Collaboration for the Diagnosis and Evaluation of Acute Coronary Syndrome score、0~100点)を算出する機械学習モデルとしてCoDE-ACSモデルを開発した。 CoDE-ACSモデルの訓練は、心筋梗塞の疑いで英スコットランドの2~3次病院を受診したコホート1万38例(年齢中央値70歳、女性48%)のデータを用いて実施した。このモデルの外部検証は、別のコホート研究の参加者で心筋梗塞の疑いがあるコホート1万286例(年齢中央値60歳、女性35%)のデータを用いて実施した。CoDE-ACSモデルによる心筋梗塞の診断能を、心筋トロポニンI閾値による診断能と比較した。 外部検証の結果、CoDE-ACSモデルによる心筋梗塞の診断能は高く、初診時の曲線下面積は0.953〔95%信頼区間(CI)0.947~0.958〕、定期検査時の曲線下面積は0.966(同0.961~0.970)であり、年齢、性別、虚血性心疾患の有無などのサブグループ間で診断能に大きな差はなく、どのサブグループでも良好な診断能を示した。 初診時において、心筋梗塞発症の確率が低いと判定された患者の割合は、CoDE-ACSモデル(CoDE-ACSスコア3点未満)の方が心筋トロポニンI閾値(5ng/L未満)と比べて高く(61%対27%)、陰性的中率はいずれも99.6%と高かった。同様に、初診時において心筋梗塞発症の確率が高いと判定された患者の割合は、CoDE-ACSモデル(同スコア61点以上)の方が心筋トロポニンI閾値(女性16ng/L、男性34ng/L)と比べて低く(10%対16%)、陽性的中率はCoDE-ACSモデルの方が高かった(75.5%対49.4%)。 CoDE-ACSモデルで初診時に心筋梗塞発症の確率が低い(CoDE-ACSスコア3点未満)と判定された患者における心臓死の発生率は、中程度(同スコア3~60点)または高い(同スコア61点以上)と判定された患者と比べて有意に低かった〔30日後(0.1%対0.5%対1.8%)および1年後(0.3%対2.8%対4.2%)のいずれもP<0.001〕。 著者らは、「CoDE-ACSモデルが医療現場で採用されれば、救急科での滞在時間の短縮、不必要な入院の防止、および心筋梗塞の早期治療の改善につながり、患者と医療提供者の双方にとって有益であると考えられる」と述べている。 なお、数名の著者が、あるバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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慢性便秘症ガイドライン改訂、非専門医向けに診療フローを明確に

 慢性便秘症は、2010年代にルビプロストン(商品名:アミティーザ)、リナクロチド(同:リンゼス)、エロビキシバット(同:グーフィス)、ポリエチレングリコール(PEG)製剤(同:モビコール)、ラクツロース(同:ラグノス)といった新たな治療薬が開発されている。このように、治療の進歩とエビデンスの蓄積が進む慢性便秘症について、約6年ぶりにガイドラインが改訂され、『便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症』が2023年7月に発刊された。そこで、本ガイドラインの作成委員長を務める伊原 栄吉氏(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学)に改訂のポイントを聞いた。生命予後にも関わる慢性便秘症、待望のガイドライン改訂 慢性便秘症は、QOLが低下するだけでなく、長期生命予後に影響するコモンディジーズである1)。慢性便秘症には、結腸運動機能(便の運搬機能)障害(排便回数減少型)と直腸肛門機能(便の排泄機能)障害(排便困難型)の2つの病態が存在するため、病態に基づいた治療が必要となる。また、2010年代には新たな慢性便秘症治療薬が複数開発されており、これらのエビデンスをまとめ、非専門医向けに診療フローチャートを作成する必要があった。さらに、オピオイド誘発性便秘症の治療法も明らかにする必要もあった。これらの背景から、新たなガイドラインの作成が求められており、今回『便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症』が作成された。また、便秘は下痢と表裏一体であることから、慢性下痢症のガイドラインも新しく作成することになり、『便通異常症診療ガイドライン』という形で、「慢性便秘症」と「慢性下痢症」に分けて作成された。2つの病型を考慮した定義、診断基準を策定 慢性便秘症には、上述のとおり「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つの病態が存在する。伊原氏は「前版の慢性便秘症診療ガイドライン20172)では、排便困難型に重点が置かれていたため、バランスを取った便秘の定義を作成する必要があった」と述べた。そこで、今回の改訂では、これら2つの病態が考慮され、便秘は「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態(下線部が排便回数減少型に該当)」と新たに定義された。また、慢性便秘症は「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、身体にも種々の支障をきたしうる病態」と定義された。なお、便秘は状態名であり、(慢性)便秘症は疾患名である。つまり、「便秘のために日常生活に支障をきたしているものが便秘症(疾患)である」と伊原氏は述べた。 慢性便秘症の診断基準は、前版の『慢性便秘症診療ガイドライン2017』に準じており、内容には変更がない。しかし、ここでも「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つの病態が考慮され、従来の6項目が排便中核症状(排便回数減少型に相当)と排便周辺症状(排便困難型に相当)に分けて記載された。 慢性便秘症の診療について、今回のガイドラインではフローチャートが作成されている。そこにも記載されているが、腫瘍性疾患や炎症性疾患が隠れている可能性もあるため、警告症状や徴候の有無を調べることの重要性を伊原氏は強調した。「警告症状にあてはまるものがあれば、大腸内視鏡検査などを実施してほしい。そこで、機能性便秘症であることがわかってから、慢性便秘症の治療に進んでいただきたい」と述べた。警告症状・徴候の詳細については、「CQ4-1:慢性便秘症における警告症状・徴候は何か?(p.55)」を参考にされたい。フローチャートで診療の流れが明確に、刺激性下剤はオンデマンド治療 伊原氏によると、機能性便秘症の多くが排便回数減少型であるという。そこで、排便回数減少型の治療について解説いただいた。 便秘症の治療薬について、今回のガイドラインで強い推奨(エビデンスレベルA)となったのは、「浸透圧性下剤(塩類下剤、糖類下剤、高分子化合物[PEG])」「上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)」「胆汁酸トランスポーター阻害薬(エロビキシバット)」であった。そこで、これらの薬剤を中心に機能性便秘症治療のフローチャートが作成された。ここでの基本的な治療の流れは「生活習慣の改善→浸透圧性下剤→上皮機能変容薬または胆汁酸トランスポーター阻害薬」である。エビデンスが十分でないと判断された「プロバイオティクス」「膨張性下剤」「消化管運動機能改善薬」「漢方薬」は代替・補助治療薬として記載され、「刺激性下剤」「外用薬(坐剤、浣腸)、摘便」はオンデマンド治療であることが明記された。また、このフローチャートは、2023年5月にAmerican Gastroenterological Association(AGA)およびAmerican College of Gastroenterology(ACG)によって発表された『AGA/ACG Clinical Practice Guideline3)』と細かな違いはあるものの、おおむね同様の内容となっている。 新規作用機序の治療薬の使い分けについても、関心が高いのではないだろうか。そこで、今回のガイドラインでは「FRQ 5-1:ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットを用いるべき臨床的特徴は何か?(p103、104)」が設定された。回答は「ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットを用いるべき臨床的特徴は明らかになっておらず、今後のさらなる検討が必要と考えられる」となっており、ガイドライン上では使い分けについて明確には示されなかった。しかし、「少しずつわかってきたこともある」と伊原氏は述べた。「ルビプロストンは若い女性で嘔気が起こりやすいため、若い女性にはエロビキシバットやPEG製剤を選択する」「痛みを伴う便秘症にはリナクロチドを選択する」「PPIを用いている患者は酸化マグネシウムの効果が落ちること、ルビプロストンには粘膜バリアを修復する機能があることから、NSAIDsやPPIを服用している患者にはルビプロストンを選択する」「糖尿病患者など、腸の運動が落ちている可能性がある患者には、腸の運動を亢進させるエロビキシバットを選択する」といった使い分けも考えられるとのことである。ただし、「実際に使用して、効果を判定しながら治療を行ってほしい」とも述べた。 今回、オピオイド誘発性便秘症に対する治療のフローチャートも作成された。ガイドラインには「オピオイド誘発性便秘症が疑われる患者には、浸透圧性下剤、刺激性下剤、ナルデメジン、ルビプロストンが有効である」と記載されているが、伊原氏は「ナルデメジンについては、オピオイドの副作用としての便秘に対する効果はあるが、それ以外の機能性便秘症には効果がないので、どちらが主体の便秘症であるか考えて選択する必要がある」と付け加えた。詳細については、「CQ5-4:オピオイド誘発性便秘症に対する治療法は何か?(p.101)」と「フローチャート5」を参考にされたい。病態評価は、まず排便回数減少型と排便困難型の分類を 慢性便秘症の病態評価において、放射線不透過マーカー法やMRI/CTの有用性が報告されており、今回のガイドラインにも取り上げられている(CQ4-3、4-4)。しかし、日常診療での実施は難しいのが現状である。そこで、注目されるのが直腸エコー検査(CQ4-2)であると伊原氏は述べた。「直腸エコーで直腸内に便の貯留がみられない場合は直腸感覚閾値の異常、柔らかい便がみられた場合は便排出障害、三日月状の固い便がみられた場合は坐剤や摘便により改善する可能性が考えられる」と解説した。また、「浣腸を行う前に直腸エコーを行うことで、浣腸の必要性がわかるのではないか」とも述べた。 また、病態評価について「病態評価が難しい現状にあるため、症状分類で構わないので『排便回数減少型』『排便困難型』の分類を行い、排便困難型で症状が重い場合は直腸視診や直腸エコーを実施してほしい。そこで明らかな便排出障害が認められる場合は、専門医への紹介を検討していただきたい」とまとめた。改訂のポイントのまとめ 伊原氏は、今回の改訂のポイントを以下のようにまとめた。(1)便秘と慢性便秘症の定義を改訂した(状態名を便秘、病態[疾患名]を[慢性]便秘症とした)(2)「病態(疾患名)」は、「症」を語尾につけることで、病気ではない「状態名」と区別した(3)定義、分類、診断、治療とすべてにわたり、便が直腸へ運搬できない結腸運動機能障害型(排便回数減少型)、直腸に貯留した便が排泄できない直腸肛門機能障害型(排便困難型)の2つの病態を念頭にいれて作成した(4)慢性便秘症の病態評価において直腸エコー(便秘エコー)の有用性を初めて記載した(5)オピオイド誘発性便秘症の治療法を初めて記載した(6)診療のフローチャートを初めて作成した

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