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2017ACC/AHA高血圧ガイドラインでは、高血圧症の定義が、現行の140/90mmHg以上から130/80mmHg以上に改訂された。この新しい定義の米国・中国における高血圧有病率および数に及ぼす影響が、BMJに報告された。その結果、米国の45~75歳男女において、高血圧有病率は50%から63%まで増加し(絶対増加13%、相対増加27%)、高血圧者の数は1,480万人増加すると推測された。中国における増加はさらに顕著であり、45~75歳男女における高血圧有病率は38%から55%まで増加し(絶対増加17%、相対増加45%)、高血圧者の数は8,270万人増加すると推測された。 日本では、どの程度の影響があるのだろうか? 平成28年国民健康・栄養調査1)の成績を用いて、同様の検討を行った。残念ながら、国民健康・栄養調査で報告されている血圧分類が2017ACC/AHA高血圧ガイドラインのそれとは異なるため、血圧130/85mmHg以上あるいは降圧薬服用者の割合および数を平成29年推計人口から推定した。その結果、40歳以上の男女における高血圧有病率は140/90mmHg以上で定義した52%から130/85mmHg以上で定義した66%まで増加し(絶対増加14%、相対増加26%)、高血圧者の数は4,000万人から5,100万人まで1,000万人以上増加すると推測された。2017ACC/AHA高血圧ガイドラインどおりに130/80mmHg以上で定義した場合、この数はもう少し増えるものと推測される。 しかしながら、2017ACC/AHA高血圧ガイドラインは、130/80mmHg以上で定義したすべての高血圧者を薬物治療の対象とはしていない。したがって、新たに降圧療法の適応となる高血圧者の数は、有病者数の増加よりも少ないはずである。降圧療法の適応を拡大するにあたっては、Number needed to treat(NNT)や費用対効果を考慮に入れて総合的に議論してゆく必要があろう。■参考文献はこちら1)厚生労働省健康局健康課栄養指導室. 平成28年国民健康・栄養調査報告. 厚生労働省, 2017.