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重症肺炎患児は1次医療施設で管理可能か:修正IMCIガイドライン

総合的小児疾患管理(integrated management of childhood illness; IMCI)のガイドラインを適切なトレーニングや監督の下に地域の実情に合わせて適応すれば、1次医療施設で重症肺炎患児の安全で効果的な管理が可能になることが、バングラデシュでの調査で明らかとなった。IMCIガイドラインでは重症肺炎患児は高次病院への紹介が推奨されているが、バングラデシュでは多くの高次病院が適切なケアを十分にできる状態にないため紹介された患児のほとんどが実際には治療を受けていないという。下痢性疾患研究国際センターのEnayet K Chowdhury氏が、Lancet誌2008年9月6日号(オンライン版2008年8月18日号)で報告した。従来のIMCIガイドラインと修正ガイドラインの安全性、有効性を比較研究グループは、危険な徴候などの重篤な病態を呈する重症肺炎患児のみを高次病院に紹介し、それ以外の患児は地域の1次医療施設で治療が可能となるように変更を加えたIMCIガイドラインを用い、その安全性および有効性を評価するための検討を行った。本研究は、バングラデシュでIMCIガイドラインを実施しているMatlab地区にある10の1次医療施設で行われた観察的コホート研究である。対象は生後2~59ヵ月の重症肺炎患児で、修正ガイドライン実施前の2003年5月~2004年9月にこれらの施設を受診した261例、および完全実施後の2004年9月~2005年8月に受診した1,271例の全情報を収集した。施設記録を元に病院への紹介や入院などの病態の背景や管理に関する情報を得た。医療スタッフが各家庭を訪問し、治療、社会経済的情報、死亡データを含む最終的な転帰の詳細を収集した。高次病院への紹介:94%→8%、適切な管理の実施:36%→90%危険な徴候や喘鳴を呈する重症肺炎患児の割合は、ガイドライン修正前は25%(66/261例)であったが修正後は2%(31/1,271例)にすぎなかった。危険な徴候や喘鳴の有無にかかわらず高次病院に紹介された重症肺炎患児の割合は、修正前の94%(245/261例)から修正後は8%(107/1,271例)にまで低下した(p<0.0001)。修正前は重篤な症状や喘鳴のない患児のほとんどが高次病院に紹介されていたが、修正後は約1/10にまで低下し、残りの患児は地域の1次医療施設で治療を受けていた。修正前に適切な管理を受けていた重症肺炎患児は36%(94/261例)であったのに対し、修正後は90%(1,145/1,271例)に改善された(p<0.0001)。修正前の受診患児死亡率は1.1%(3/261例)、修正後は0.6%(7/1,271例)であった(p=0.39)。著者は、「IMCIガイドラインを適切なトレーニングや監督の元に地域の実情に合わせて適応すれば、重症肺炎患児の安全で効果的な管理が可能になる」と結論し、「特に、地理的、経済的、文化的な障壁が原因で高次病院が紹介を遵守することが困難な場合に効果的である」としている。(菅野守:医学ライター)

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肝移植のための緊急性の指標に血清ナトリウム濃度も

現行の肝臓移植ガイドラインでは、移植用臓器は死亡リスクが最も高い患者に提供されることになっている。米国では肝移植のための移植片は医学的な緊急性に基づいて配分されるが、その緊急性は2002年からModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアを基に判定されている。MELDスコアは短期間の予後予測に使われるもので、血清ビリルビン濃度、プロトロンビン時間、血清クレアチニン濃度の3つを指標とし、スコア40以上で3ヵ月後の死亡率80%以上と判定するが、さらに最近、肝硬変患者にとって血清ナトリウム濃度が重要な予後因子であることが認められつつあり、MELDスコアとの関係が議論されている。本論は、メイヨー・クリニック医科大学のW. Ray Kim氏らの研究グループによる、血清ナトリウム濃度の指標としての有用性についての報告。NEJM誌2008年9月4日号より。MELDスコアに血清ナトリウム濃度を死亡予測変数に追加Kim氏らの研究グループは、2005年と2006年に米国のOPTN(the Organ Procurement and Transplantation Network:臓器提供ネットワーク)に登録され、初めて肝臓移植を受けた全成人のデータを用いて、登録後90日の死亡率を予測する多変量生存者モデルを開発・検証した。予測因子変数は、MELDスコアに対する血清ナトリウム濃度の追加の有無。MELDスコア(6~40のスケールで、値が高いほど重篤)は血清ビリルビン濃度、クレアチニン濃度、それと国際標準比に基づくプロトロンビン時間で算出した。2005年、OPTNのウェイティングリスト登録者は6,769人だった(肝移植を受けた1,781人と、登録後90日以内に死亡した422人を含む)。MELDNaスコアはMELDスコア単独より高率で死亡を予測解析結果から、MELDスコアと血清ナトリウム濃度はいずれも死亡率と有意に関連していることが明らかになった(死亡危険率はMELDポイントにつき1.21、血清ナトリウム濃度125~140mmol/Lの範囲内で1単位減少につき1.05、いずれの変数もP

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【レポート】第16回 日本乳癌学会学術総会開催前プレスカンファレンス

 2008年9月26、27日に大阪国際会議場にて開催される「第16回日本乳癌学会学術総会」に先立ち、9月3日にプレスカンファレンス(ファイザー株式会社共催)が開催された。そこで話された日本乳癌学会の取り組みと、本総会のトピックスについてレポートする。 初めに、日本乳癌学会理事長の園尾博司氏より、「我が国の乳癌の現状/日本乳癌学会の概要と活動実績」が紹介された。 日本乳癌学会が取り組んでいる全国主要施設の乳癌統計を、ウェブ上で会員だけでなく一般市民にも公開することで、乳癌の早期発見と診療の均てん化を目指しているという。しかし、検診による乳癌の発見率が不十分であることで、乳癌の見逃しが起こっていると園尾氏は訴え、視触診だけではなくマンモグラフィの受診率を高めることが重要であることを強調した。その他、乳房温存術、センチネルリンパ節生検、保険適用の取得状況、ガイドラインについて紹介した。 園尾氏は乳腺外科標榜についても言及し、学会としては賛成であるとの立場を明確にした。最後に、乳癌学会は常に患者の立場に立っていたい、と結び患者重視の姿勢をアピールした。 続いて、大阪府立成人病センター乳腺・内分泌外科の稲治英生氏より「日本乳癌学会学術総会のトピックス紹介~標準化から個別化へ~」が紹介された。 冒頭、今回のメインテーマである「標準化から個別化へ」について稲治氏は、「EBMに基づき治療の標準化が進んだことで、均一な治療が受けられるようになった。一方、標準化治療はあくまでレディーメイドであり、今後はそれぞれの癌の顔つきに最適化した治療を進めていくべきであろう、と考え、このテーマを掲げた」と述べた。 本総会では、臨床的な研究成果に偏らず、乳癌の基礎から臨床について学術的機運が高まることを期待していると稲治氏は述べた。 続いて、プログラム全体像が紹介された。乳癌診療ガイドライン改訂(薬物療法編を除く)、乳癌取り扱い規約改訂、センチネルリンパ節生検に対する多施設共同臨床確認試験の中間報告などの特別報告に多くの時間を当てている。その他、様々な基調講演、招待講演、ディベートセッション、教育・病理・画像診断・看護の4つのセミナーなどが行われる。

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「高血圧治療ガイドライン」改訂案に対する意見公募へ

日本高血圧学会は、「高血圧治療ガイドライン2004(JSH2004)」を改訂し、2009年1月に「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」を発行するのに伴い、2008年9月20日(土)~9月30日(火)に、実際にガイドラインを使用する実地医家の医師から広く意見を募集すると発表した。今回のガイドライン改訂では、作成過程をできるだけオープンにし、外部からの意見募集により、学術性と実用性を兼ね備えた公益性の高いガイドライン作りを目指しているという。意見はJSH2009だけでなく、さらに実用性を高めた縮刷版(2009年秋に発行予定)にも反映するとのこと。ガイドラインの作成過程で、ガイドライン(案)全文を公開して意見募集を行うのは前例がない。 改訂案は日本高血圧学会のホームページにて公開予定http://www.jpnsh.org/

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近年の婦人科がん医療の進歩:最近の学会報告から がん医療セミナー 「もっと知って欲しい女性のがん」より

 2008年8月10日、NP法人キャンサーネットジャパン、NPO法人ブーゲンビリア、卵巣がん体験者の会スマイリー、NPO法人女性特有のガンサポートグループオレンジティの4団体が主催する婦人科腫瘍啓発セミナーが開催された。セミナーでの、埼玉医大国際医療センター包括的がんセンター婦人腫瘍科、藤原恵一氏の講演の様子をレポートする。主な婦人科腫瘍とそれぞれの進行がん標準治療 婦人科の主な癌種は子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんである。これら3種の進行がん標準治療は概ね下記のようになる。・子宮頸がん:プラチナ製剤ベースの化学療法(CDDP)同時放射線療法・子宮体がん:術後放射線療法・卵巣がん:減量手術後化学療法 パクリタキセル(PTX)+カルボプラチン(CBDCA) 進行度別にみると、子宮頸がん・体がんでは早期例が多く0期からII期が半数以上である。特に頸がんでは0期が40%以上を占める。一方、卵巣がんでは進行例が多くIII期からIV期が半数以上を占める。卵巣がんの予後と治療 卵巣がんは予てから死亡率が高く予後が悪いといわれている。その言葉が示すとおり、卵巣がん(約7000人)罹患数は子宮がん(約18000人)の半分以下であるが、死亡数はほぼ同等である(子宮がん5500人に対し卵巣がん4400人)。その理由は、卵巣がんの進行例の割合が多いため(卵巣がんはIII~IV期が70%、子宮がんでは0期~I期が70%)だと考えられる。 進行卵巣がんはインオペ例とされていたが、1980年のCDDP登場、その後のタキサン系薬剤の登場で生存率は改善し、現在CBDCA+PTXが標準療法となっている。だが、その後は有効率の向上を目指し標準治療への抗がん剤のアドオン試験が行われたが予後改善をもたらすにはいたっていない。卵巣がんの治療の今後 そのような中、有効率の改善を目指すべく幾つかの研究が行われている。投与法も研究され、プラチナ製剤の腹腔内投与の有効性が米国NCI(National Institute of Cancer)が推奨されている。そして、2008年、日本発のエポックメイキングな研究がASCO2008で発表された。これは、医師主導治験JGOG3016で、PTX毎週投与の有効性試験有効性が立証された。今後、保健適応取得に向け行政への働きかけが重要となる。 さらに、分子標的治療薬の有効性も検討されており、医師主導の治験で、ベバシズマブの有効性研究も進行中である(GOG218)。 一方、ドラッグラグの問題も以前残っている。ドキシル(リボゾーマドキソルビシン)は世界80カ国で承認され、標準治療無効例における2ndライン薬剤として期待されておる。しかし、日本では以前未承認であり、現在自費投与1回あたり30~40万/回の金銭的負荷がかかる。子宮頸がんの治療 子宮頸がんは0期が多く、この段階で発見できれば多くの患者さんが助かることになる。 そのためには、まず、検診の普及が非常に重要である。実際、検査の普及率が高い国では子宮頸がんの死亡率は低いが、日本の検診普及率は22%であり後進国並みといえる。そのためか、日本では若年層での罹患数が増加しているという問題もある。 子宮がんの治療は、プラチナ製剤の化学療法(CDDP単独またはCDDP+5FU)と放射線治療同時併用が標準治療である。しかし、本邦での普及は依然高いとはいえない。今後の課題として日本人のCDDP適正ドーズの設定、ガイドラインでの積極的取り上げなど一層の普及が急がれる。子宮頸がんの治療の今後 そして、近年のトピックとして子宮頸がんにおけるHPV(ヒトパピローマウイルス)の関与があげられる。HPVは子宮頸がん患者の大部分が感染しており、確率こそ非常に少ないが子宮頸がんの発症因子である。そのため、HPVワクチンがHPVの感染予防および前がん病変への移行を防止するとして多大な効果が期待できる。現在、米国、オーストラリアをはじめ多くの国で承認されており日本でも早期の承認が望まれる。日本の婦人科腫瘍治療 日本の婦人科がんの取り組みは欧米に比べ遅れている。そこに昨今の婦人科医師不足が重なり、婦人科腫瘍の診療は大変な状況である。 婦人科腫瘍の場合、そのような状況下であっても製薬メーカーの協力を仰がず医師主導治験をしている例は多い。医師主導治験に携わる医師は診療後に何ら報酬もない中、ボランティアで協力している。しかしながら、医師主導治験を国に認めさせるシステムがなく、今後は医師主導治験で行政を動かしてゆく手法を検討する必要がある。 また、ドラックラグについても大きな問題である。ドキシルのように海外で実績があるのに日本では未承認という薬剤は多い。副作用発現などのリスクから優先審査への動き鈍ることも一つの要因であるが、一番の被害者は患者さんであることを忘れて欲しくない。この点については、マスメディアの取り上げ方が大きな影響を及ぼすため、正確な情報提供をお願いしたいと考える。

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胃癌手術でリンパ節拡大郭清を行っても生存率は改善しない

治療可能な胃癌に対して、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術は、東アジアにおける標準治療である。しかし、2群郭清に加えて大動脈周囲リンパ節郭清(PAND)を行う3群郭清(拡大郭清)が、生存率を改善するかどうかは論争の的となっている。国立がんセンター中央病院の笹子三津留氏ら日本臨床腫瘍研究グループが、国内で大規模な比較試験を行った結果、3群郭清は生存率改善につながらないと報告した。NEJM誌2008年7月31日号より。日本胃癌学会の胃癌治療ガイドライン速報でも取り上げられた報告。胃癌患者523例を2群、3群郭清に割り付け5年間追跡1995年7月~2001年4月にかけて、国内24病院で、治療可能な2b期、3期、4期の胃癌患者523例に対して胃の切除術を行う際、無作為に2群郭清単独(263例)か3群郭清(260例)に割り付けた。癌再発までは、いかなる補助療法も許可しなかった。主要エンドポイントは全生存率。5年生存率、再発までの期間でも有意差なし手術関連の合併症発生率は、2群郭清単独群で20.9%、3群郭清群で28.1%だった(P=0.07)。手術による死亡率は各群とも0.8%。術後30日以内で、両群間には吻合部縫合不全、膵瘻、腹腔内膿瘍、肺炎、全死因死亡率に有意差は見られなかった。3群郭清群では、手術時間の中央値は63分間長く、失血の中央値は230mL多かった。5年生存率は、2群郭清単独群の69.2%に対して、3群郭清群では70.3%で、死亡ハザード比は1.03(95%信頼区間:0.77~1.37、P=0.85)だった。再発のない期間でも両群間に有意差はなく、再発ハザード比は1.08(0.83~1.42、P=0.56)だった。このため「2群リンパ節切除単独と比較して、2群リンパ節切除術にPANDを加える拡大郭清を行っても、治療可能な胃癌の生存率を改善しない」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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プライマリ・ケアにおける急性腰痛症は回復に時間がかかる

オーストラリアの開業医によって管理される急性腰痛症患者の予後を評価する研究が、ジョージ国際健康研究所筋骨格部門(オーストラリア)のNicholas Henschkeらによって行われた。「診療ガイドラインにあるほど予後良好ではない」と報告されている。BMJ誌オンライン版2008年7月7日号より。170人の開業医らから集められた患者973例を1年間追跡試験は1年間の患者コホート追跡調査で、オーストラリア・シドニーにあるプライマリ・ケア・クリニックから患者が集められ行われた。追跡対象となった参加者は973例。市内170人の開業医、理学療法士、カイロプロテクターから、2003年11月から2005年7月までの間に、2週間以上痛みが持続し非特異的な腰痛症と診断された患者が集められた。平均年齢43.3歳、男性54.8%。主要転帰は、参加者記入による初診時アンケートの結果を基線に、6週間後、3ヵ月後、12ヵ月後に回復度について聞き取りが行われた。回復度は仕事への復帰、機能回復、痛みの消散によって評価された。予後因子と回復までの時間の関連はCox回帰分析で検定された。1年以内に回復したのは72%12ヵ月時点まで追跡調査ができたのは97%。そのうち基線で仕事ができない状態だった患者で2週間以内に仕事復帰できたのは約半数。3ヵ月時点で仕事復帰できていたのは83%だった。機能および痛みについてはより時間がかかり、機能回復までの時間の中央値は31日(25~37日)、痛みの消散までの時間の中央値は58日(53~63日)だった。そして12ヵ月以内に完全に回復していたのは72%にすぎなかった。高齢になるほど、また障害の程度、痛みの程度が重篤なほど、その持続期間は増す傾向にあり、回復により時間を要することも明らかとなっている。うつ感情やその持続の危険は、回復までにかかる時間と相関していた。「プライマリ・ケアで急性腰痛症を管理されているこの患者コホートにおける予後は、診療ガイドラインで示されているほど良好ではない。大半の患者は回復までに時間がかかり、3分の1は1年以内に回復には至らないことが明らかとなった」と結論している。

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椎間板ヘルニアに伴う坐骨神経痛には手術を

欧米では椎間板ヘルニアに伴う坐骨神経痛(1,000人中5、6人が毎年発症)の疼痛症状から軽減するためルーチンに手術が行われている。初発から6週間で70%は下肢痛減弱に至るが、大部分のガイドラインで手術が推奨されている。しかし障害が残ることへの恐れから保存療法を支持する手術慎重派も少なくなく、また手術の至適時期に関する知見も乏しいことから、オランダのライデン-ハーグ椎間板ヘルニア介入予後予測研究グループは、早期手術の有効性を保存療法群との比較で2年以上にわたり追跡調査を行い検討した。BMJ誌2008年6月14日号(オンライン版2008年5月23日号)にて掲載。283例を手術群と保存療法群に無作為化し2年以上追跡同グループは以前に追跡期間1年間での無作為化比較試験の結果を報告している。今回は追跡期間を2年以上として行った。オランダの9つの病院から集まった参加者は、坐骨神経痛を6~12週間有する椎間板ヘルニア患者283例。無作為に早期手術介入群と6ヵ月間の保存療法群(必要に応じた手術あり)とに割り付けられた。主要転帰は、ローランド障害アンケートによるスコア、下肢痛に関するビジュアルアナログスケールによるスコア、リカート自己評価法による回復度。手術はすみやかに痛みを軽減する早期手術を受けるよう割り付けられた患者141例中125例(89%)は内視鏡手術を受けた。保存療法に割り付けられた患者142例中62例(44%)は、結局は手術を必要とした。7例は追跡期間2年目に手術を実施している。2年の間の障害スコアに、全体的に有意な差は認められなかった(P=0.25)。下肢痛の改善は、早期手術に無作為化された患者のほうが有意に早かった(P=0.05)。この早期手術の有益性は、6ヵ月までよりも、6ヵ月~24ヵ月の間で高かった。患者満足度は、両群とも1年目よりも2年目で、わずかに減少した。全患者で見た場合2年目では、20%が不満足との結果を報告している。以上の結果から、「早期手術は保存療法より迅速に坐骨神経痛からの軽減を成し遂げた。予後に関して2年の間に、両群に差が生じることはなかった」と結論している。また手術至適時期については今回の試験では明らかにはできなかったとし、試験対象を疼痛発症2~4週以内の患者と設定しての試験が必要だとまとめた。

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Challenge DM study発表される! -血糖管理に加えて徹底した血圧管理が心血管系イベントを抑制する重要な戦略-

17,000例を超える糖尿病合併高血圧例の観察研究がお披露目 23日、第51回日本糖尿病学会年次総会において河盛隆造氏(順天堂大学医学部)は、17,000例を超える糖尿病を合併した高血圧症例に関する観察研究『Candesartan antiHypertensive Assessment for Long Life Enrolled by General practitioners - target on hypertension with Diabetes Mellitus (Challenge-DM) study』の結果を初めて公表し、血糖管理に加えて血圧を130/80mmHg未満にコントロールすることで、さらに30%の心血管疾患系イベントの発症を抑制できることを示した。Challenge-DM studyは、糖尿病を合併した高血圧症例17,622例にカンデサルタンをベースとした治療を施行し、平均2年5ヵ月追跡した観察研究である。総イベントは突然死、脳血管系イベント、心血管系イベント、脳・心血管疾患系イベント、重篤な不整脈、重篤な腎障害、その他の血管障害と設定された。130/80mmHg未満にコントロールされていた症例は20%に満たない 『高血圧治療ガイドライン2004年版』(JSH2004)では糖尿病を合併した高血圧症の降圧目標を130/80mmHg未満と設定しているが、Challenge-DM studyにおいてこの目標値に到達した割合は1年後で13.6%、3年後で18.0%に留まった。降圧目標未達例における使用降圧薬数は平均1.9剤、カンデサルタンの平均用量は7.3mg/日と、標準用量の8mgを下回っていた。 一方、血糖管理については『糖尿病治療ガイド2008-2009』では、HbA1c<6.5%を「良」とし、まずは「良」を目指すべき管理目標値として定めているが、この推奨値に到達した割合は1年後で44.8%、3年後で45.4%であった。血圧値、HbA1c値、総コレステロール値、トリグリセリド値の全てがガイドライン推奨値に到達した割合は3年後においてもわずか3.2%に過ぎなかった。血糖管理+血圧管理によって、さらに30%のイベント抑制が可能に 有効性評価対象症例数16,869例中、826例に総イベントが認められ、これは年間1,000人あたり20.7人が発現することになり、この成績について河盛氏は、「10年も前に発表された久山町研究と大きく変化していない」と治療の選択が増えたにも関わらず改善していない状況を問題視した。 これをHbA1c値が6.5%未満に到達した7,651例と、6.5%以上であった9,017例に分けて解析すると、6.5%未満にコントロールすることで総イベント発現率が15%有意に低下することが示された。さらに6.5%未満にコントロールされていた7,651例を血圧値が130/80mmHg未満であった1,391例と130/80mmHg以上であった6,260例に分けて解析すると、降圧目標に達していた130/80mmHg未満群では、達していなかった群に比べて30%有意に軽減できることが明らかにされた。このことは日本人の糖尿病を合併した高血圧症例においてHbA1c値を6.5%未満にコントロールすることの重要性を示した初のエビデンスであるとともに、血圧を130/80mmHg未満に低下させることの意義を示した。 >総イベントの発現率を使用されていた糖尿病治療薬別にみると、インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾンが投与されていた群では、非投与群に比べ有意に少なかったという糖尿病を治療する医師の立場にとって非常に興味深い結果が得られたと発表した。 以上、Challenge-DM studyについて発表された内容をまとめてみたが、ここからは既報の糖尿病合併高血圧症に関する知見より、今回発表されたChallenge-DM studyも交えて考察してみる。糖尿病と高血圧は合併しやすく、合併することで危険度が高まる 糖尿病症例では高血圧を併発しやすく、端野・壮瞥町研究によると糖尿病の実に62%が高血圧を伴っている1)。またその逆も然りで、高血圧患者において糖尿病の頻度は2~3倍高い。糖尿病患者は非糖尿病患者に比べ、心血管系疾患が2~3倍高率に発症する。高血圧の合併は心血管系疾患の発症率をさらに2~3倍増加させる。厳格な血圧管理によって心血管系イベントが抑制できることは証明済み このような糖尿病合併高血圧に対し、厳格な血圧管理(平均144/82mmHg)を行った群と、通常の血圧管理(平均154/87mmHg)を行った群を比較した介入試験UK Prospective Diabetes Study Group(UKPDS)試験において、厳格な血圧管理によって心血管系疾患の発症率が有意に少ないことが示された2)。また、最適な降圧目標を検証するために実施されたHypertension Optimal Treatment (HOT)試験では、拡張期血圧80mmHg以下を降圧目標にした群で、85mmHg以下群、90mmHg以下群に比べて心血管系イベントの発現リスクが有意に低かったことが示された3)。これらの試験結果より「糖尿病を合併した高血圧」においては130/80mmHg未満を降圧目標として設定されている。糖尿病患者さんの血圧コントロールは難しい しかし、この降圧目標はReal Worldでは20%も達成されておらず、わが国で2002年に実施された疫学研究によると、糖尿病合併高血圧症例のわずか11.3%しか130/80mmHg未満に達成していない4)。また、降圧薬を服用中の高血圧症例のうち、糖尿病を合併していた症例における解析においては、家庭血圧計において130/80mmHg未満に到達していた割合は18%に過ぎなかったことも報告されている5)。Challenge-DM studyにおいても目標血圧到達率は20%未満であり、目標到達の難しさを支持している。8割以上の医師が「糖尿病患者さんの血圧は130/80mmHg以下に!」と考えている 弊社が高血圧症例を10例/月以上診察しているケアネット会員医師を対象に実施した2007年6月に実施したアンケート調査によると、回答した81%の医師が糖尿病合併高血圧症に対しては130/80mmHg以下を治療目標としており、この点ではガイドラインが推奨する目標値との乖離はそれほど大きくない(ただし、58%の医師が130/80mmHgと回答)。心血管イベント発現抑制のカギは「徹底した血圧管理」 前述のUKPDS試験は収縮期血圧を10mmHg、拡張期血圧を5mmHg低下させることにより、HbA1c値を0.9%低下させるよりも、合併症のリスク低下が大きい傾向が認められ、糖尿病患者における血圧管理の重要性も示した。この結果は、糖尿病患者において血圧のコントロールが血糖のコントロールに勝るとも劣らない効果を有することと、血圧は低ければ低いほどよいことを示した。Challenge-DM studyは、血糖値に加えて血圧値もガイドラインで推奨されている範囲にコントロールできた場合、血糖値だけがコントロールできている場合よりさらにイベントの発現を30%低下させられることを証明した。この研究では血糖値と血圧値が目標レベルに達していたのは8%ほどであったが、とくに達成率が低かった血圧値をより厳格に管理することで心血管系疾患の発症を抑制されることができるのではないだろうか。カンデサルタンとピオグリタゾンの併用に新たな可能性 「HbA1c値を6.5%未満に管理した上で血圧を厳格にコントロールする」、Challenge-DM studyはもう1つイベントの発現を低下させる戦略を示している。ピオグリタゾン投与例では、非投与例に比べ、総イベント発現率が有意に少なかった。 これに関連して、最近、熊本大学 中村・光山氏のグループは、脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)においてピオグリタゾンの糖代謝改善作用と独立した心筋における抗炎症作用、線維化抑制作用、血管内皮機能改善作用、心筋・血管に対する抗酸化作用があることをHypertension誌に発表した6)。そしてこれらの作用はカンデサルタンの併用により増強されるというのである。 今回、Challenge-DM studyにおいてピオグリタゾン投与例でイベント発症率が低かったことは、基礎研究の結果が臨床においてその有効性が窺えたと考えられる。今後、無作為化比較試験が実施され、この新しいレジメンの有用性が証明されることを期待したい。1) Iimura O:Hypertens Res.1996;19(Suppl 1):S1-S82) UK Prospective Diabetes Study Group:BMJ.1998;317:703-7133) Hansson L et al:Lancet.1998;351:1755-17624) Mori H et al:Hypertens Res.2006;29:143-1515) Obara T et al:Diabetes Res Clin Pract.2006;73:276-2836) Nakamura T et al:Hypertensio

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平成20年4月1日から「がん性疼痛緩和指導管理料(100点)」が算定可能に

平成20年度診療報酬改定で、がん性疼痛の緩和を目的に医療用麻薬(オピオイド鎮痛薬)を投与しているがん患者に対して、WHO方式のがん性疼痛治療法に従って、計画的な治療管理と療養上必要な指導を継続的に行い、麻薬を処方することに対して「がん性疼痛緩和指導管理料(100点)」が算定できるようになった。保医発第0305001号(平成20年3月5日付)の「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」で通知された(下欄参照)。WHO方式がん性疼痛治療法とは、世界標準のがん性疼痛治療のガイドライン。1986年、「がんの痛みからの解放(Cancer Pain Relief)」においてWHOが推奨する治療法が公表され、その後、疼痛治療の進歩や新知見が取り入れられ、1996年に第2版(改訂版)が刊行された。本治療法は、70~90%のがん患者で痛みを消失させる鎮痛薬の使用法であり、その有効性が実証され、次の5点に要約される。 1.経口的に(by mouth)  鎮痛薬は、できる限り経口投与とすべきである。2.時刻を決めて規則正しく(by the clock)  痛みが持続性であるときには、時刻を決めて規則正しく投与する。  頓用方式の投与を行ってはならない。 3.除痛ラダーにそって効力の順に(by the ladder)  鎮痛薬を除痛ラダーにしたがって順次選択していく。4.患者ごとの個別的な量で(for the individual)  鎮痛薬の適切な投与量とは、治療対象となった痛みが消える量である。5.そのうえで細かい配慮を(attention to detail)  患者にとって最良の鎮痛が得られ、副作用が最小となるように  治療を進めるには、治療による患者の痛みの変化を監視し  続けていくことが大切である。 (世界保健機関編. 武田文和訳. がんの痛みからの解放-WHO方式がんの疼痛治療法-.第2版. 金原出版株式会社; p.16-41.)今後は、WHO方式がん性疼痛治療法の5原則に従ってオピオイド鎮痛薬を投与し、副作用等を含めて計画的に治療を行うことで、管理料の算定が可能となる。 【参考】「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」保医発第0305001号B001 特定疾患治療管理料22 がん性疼痛緩和指導管理料(1) がん性疼痛緩和指導管理料は、医師ががん性疼痛の症状緩和を目的として麻薬を投与しているがん患者に対して、WHO方式のがん性疼痛の治療法(がんの痛みからの解放-WHO方式がんの疼痛治療法-第2版)に従って、副作用対策等を含めた計画的な治療管理を継続して行い、療養上必要な指導を行った場合に、月1回に限り、当該薬剤に関する指導を行い、当該薬剤を処方した日に算定する。なお、当該指導には、当該薬剤の効果及び副作用に関する説明、疼痛時に追加する臨時の薬剤の使用方法に関する説明を含めるものであること。(2) がん性疼痛緩和指導管理料を算定する場合は、麻薬の処方前の疼痛の程度(疼痛の強さ、部位、性状、頻度等)、麻薬の処方後の効果判定、副作用の有無、治療計画及び指導内容の要点を診療録に記載する。

2851.

消化不良にPPIによる胃酸分泌抑制は適切な初期治療

プライマリ・ケアにおける消化不良の初期治療では、ピロリ菌の検査・除菌とプロトンポンプ阻害薬(PPI)による胃酸分泌抑制の費用効果および症状抑制効果は同等であり、PPIは適切な治療戦略であることがMRC-CUBE試験の結果により示された。BMJ誌2008年3月22日号(オンライン版2008年2月29日号)で、英国Birmingham大学プライマリ・ケア科のBrendan C Delaney氏が報告した。英国の消化不良の治療ガイドラインでは、上部消化管の腫瘍が疑われる徴候がない場合は、これら2つの管理法が推奨されている。80ヵ所のGP施設に699例を登録MRC-CUBE試験の研究グループは、プライマリ・ケアにおける消化不良の初期治療としてのピロリ菌の検査・除菌と胃酸分泌抑制の費用効果を評価するための多施設共同無作為化対照比較試験を実施した。英国の80ヵ所のGP施設に、年齢18~65歳で上腹部痛、胸やけ、あるいはその双方が見られ、悪性腫瘍を疑わせる徴候のない699例が登録された。13C尿素呼気試験の陽性例に1週間の除菌治療を行う群あるいはPPI投与のみを行う群に無作為に割り付け、その後の患者管理は各GPの裁量に任された。費用効果はEQ-5Dを用いて生活の質で調整した生存年数(QALY)ごとのコストを算出し、消化不良症状に対する1年後の効果は略式Leeds 消化不良質問票のスコア、医療資源の使用度、患者満足度で評価した。ピロリ菌検査・除菌とPPIの費用効果は同等ピロリ菌検査には343例が割り付けられ、100例が陽性であった。そのうち78%が除菌に成功した。PPI治療には356例が割り付けられ、28日間にわたり治療が行われた。1年後の時点で、両群間にQALY、コスト、消化不良症状に差は認めなかった。初診時のピロリ菌の検査・除菌のコストは、1年後にはコスト抑制効果によって相殺されてPPI治療群と同等となった。Delaney氏は、「消化不良の初期治療におけるピロリ菌検査・除菌とPPI投与の費用効果は同等であった。PPIによる胃酸分泌抑制はプライマリ・ケアの初期治療において適切な治療戦略である」と結論している。また、同氏は「全体として両治療群のコストに差はないので、初診時にピロリ菌の検査を行うか、持続的な症状の評価のみを行うかは、各GPが個々の患者と相談して決めるべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

2852.

第6回日本臨床腫瘍学会学術集会プレスセミナー

2008年3月20、21日に福岡国際会議場において開催された「第6回日本臨床腫瘍学会学術集会」に先立ち、19日にプレスセミナーが開催された。そのなかで、「承認相次ぐ分子標的治療薬-世界標準を見据えて-」についてレポートする。初めに、東京医科大学病院呼吸器外科の坪井正博氏より、非小細胞肺癌:エルロチニブ<上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤>が紹介された。国内外の臨床成績、ガイドラインの位置づけ、ゲフィチニブとの違いを紹介した。両剤とも、効果の得られやすい症例に使用したほうが良いと考えられ、その効果が期待できる集団として女性、非喫煙者などをあげたが、まだ明確な根拠はないという。エルロチニブは2次、3次治療として期待できる薬剤ではあるが、肺障害のリスクなどもあるため、リスクとベネフィットのバランスを患者さんと相談しながら薬剤選択することが重要とまとめた。続いて、東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科の薄井紀子氏より慢性骨髄性白血病(以下CML):分子標的療法の現状と課題が紹介された。薄井氏は、CMLの病態・治療についての概要、分子標的薬イマチニブ<ABLチロシンキナーゼ阻害剤>の治療成績、耐性の問題を紹介した。続いて新規チロシンキナーゼ阻害剤、ダサチニブ、ニロチニブなどについて、それぞれの特徴を交えて解説した。最後に薄井氏は、イマチニブをきちんと使うことが一番重要であり、イマチニブ耐性・無効例には変異に応じた薬剤を選択する時代になってくるだろう、その治療法はデータに基づき、きちんと選択しなければならないと結んだ。次に、国立がんセンター東病院内科の大津敦氏より、大腸がん:セツキシマブが紹介された。セツキシマブは2008年3月現在、未承認であることを冒頭に述べ、EGFRについて解説した。続いてセツキシマブの作用機序、特徴、海外・国内臨床成績、安全性を紹介し、大腸がん領域において、アバスチン、セツキシマブの登場により、本邦も海外と同じレベルの治療が出来るようになる、とまとめた。まとめとして、癌研究会有明病院化学療法科の畠清彦氏が、それぞれの講演におけるポイントを紹介し、さらに新規分子標的薬承認に向けて今後わが国において必要とされる対応について述べた。最後のディスカッションにおいては、韓国に比べて日本における申請から承認までの期間が長いこと、治験が中国や韓国に流れていること、分子標的治療薬では医療費が高額となり治療を続けられない患者さんが存在することなど、今後、解決していくべき問題があがった。

2853.

「空腹時血糖値≧126mg/dL」に合理性なし?

WHOならびにADAが採用している空腹時血糖値(FPG)正常上限「126mg/dL」は、これを超えると細小血管症のリスクが増加する値だとWHOでは解説している(WHO/NCD NCS/99.2) 。これに対しUniversity of MelbourneのTien Y Wong氏らは、Lancet 誌2008年3月1日号において、そのような閾値は存在しないと主張している。 3つの横断研究でFPGと網膜症の関係を検討同氏らが依って立つのは、大規模な横断的住民研究3件、Blue Mountains Eye(BME)研究(3,162例)、Australian Diabetes、Obesity and Lifestyle(ADOL)研究(2,182例)とMulti-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA:6,079例)──である。これらのデータより糖尿病性網膜症の発症が増加するFPG閾値を求めたが、MESAでは明白な値が得られず、BMS研究では93.6mg/dL、ADOL研究では113.4mg/dLだった。モデルを変更して解析し直しても、閾値はやはり得られなかったという。また「FPG≧126mg/dL」の糖尿病性網膜症に対する感度は40%しかなかった。規準の見直しが必要だこれらよりWong氏らは、FPG規準の見直しが必要だと主張している。しかしWHOガイドラインが126mg/dLをFPG閾値としているのは糖負荷後2時間値の200mg/dLと相関するというのが主たる理由であり、細小血管症との相関は副次的な扱いとなっている。(宇津貴史:医学レポーター)

2854.

救急外来受診例の約半数に深部静脈血栓リスク。予防は不十分

救急外来を受診後入院例で、外科的治療の適応となった患者の6割以上、内科的治療適応例の4割以上が、深部静脈血栓(DVT)のリスクを有しているが、それらのうち深部静脈塞栓(DVE)の予防措置を受けていたのは50.2%だった──とする国際的横断研究の結果がLancet誌2008年2月2日号に掲載された。研究の名称はENDORSE(Epidemiologic International Day for the Evaluation of Patients at Risk for Venous Thromboembolism in the Acute Hospital Care Setting)。King’s College Hospital(英国)のAlexander T Cohen氏らによる論文である。32ヵ国7万例弱で検討本研究には世界32ヵ国の358施設(50床以上)で救急外来を受診し入院した68,183例が登録された。内訳は、内科的治療を受けた40歳以上の37,356例と外科的治療の適応となった18歳以上の30,827例である。入院後、DVTリスクが調べられた。リスク評価には、米国胸部疾患学会(ACCP)が2004年刊行した「静脈血栓塞栓予防」ガイドラインを用いた。予防が行われていたのは外科的治療例58.5%、内科的治療例39.5%その結果、外科的治療例の64.4%、内科的治療例の41.5%にDVTリスクが認められた。東南アジアから唯一参加していたタイのリスクも世界平均と同様で、DVTリスクを認めた患者は、外科62%、内科49%だった。次に、これらのDVTリスクを認める患者において、上記ACCPガイドラインが推奨する深部静脈塞栓(DVE)の予防が行われていた割合を見ると、外科的治療58.5%、内科的治療39.5%だった。これらよりCohen氏らは、DVTリスクを持つ入院患者は多いにもかかわらず、適切な予防措置がとられていないと結論している。なお、上記ACCPガイドラインでは手術後「DVT低リスク」群に対しては、「早期からの“積極的”歩行」を推奨するが特にDVE予防措置をとる必要はないとしているが、本研究では術後「低リスク群」の34%が何らかの「予防措置」を受けていた。(宇津貴史:医学レポーター)

2855.

地域救急医療システムの有効稼働には救急救命士の力が必要

ST上昇型心筋梗塞に対する、冠動脈カテーテル治療(PCI)実施のガイドラインは90分以内とされている。この基準に関して、よく訓練された救急救命士によって指定されたPCI専門センターに直接患者を搬送したほうが、救急治療部の医師が仲介をして転送した場合よりも達成率が高く、PCI実施のための地域体制構築の重要なポイントであることを、カナダ・オタワ大学心臓学研究所のMichel R. Le May氏らが報告した。NEJM誌2008年1月17日号より。全市的な初回PCIアプローチを開発ST上昇型心筋梗塞を起こした患者に対してまずPCIを行うことは、血流の再灌流のためには血栓溶解療法より優れており、患者の病院搬入からバルーン処置までの時間(door-to-balloon time)は90分以内に行うべきとされている。この目標を達成するためには、地域体制をいかに構築するかにかかっていることからMay氏らは、オタワ市において、ST上昇型心筋梗塞を起こしたすべての患者が初回PCIを専門センターで受けられるよう統合的大都市圏アプローチを開発した。そのポイントとして、door-to-balloon timeが、心電図解釈の訓練を受けた救急救命士によって救急現場から直接送り込まれた場合と、救急治療部の医師から転送された場合に差があるかどうかを検証した。救急救命士による搬入は8割が基準クリア2005年5月1日から2006年4月30日の1年間に、PCI専門施設に対し初回PCIを実施するよう依頼があったST上昇型心筋梗塞の患者は計344例。救急現場から直接搬入された患者が135例、救急治療部から引き継がれた患者が209例で、初回PCIは全体の93.6%に実行された。door-to-balloon timeの中央値は、救急現場から搬入された患者は69分(四分位範囲43~87分)で、病院間の搬送が必要だった患者の123分(同101~153分)より短かった(P

2856.

最重症肺炎患児に対するアンピシリン+ゲンタマイシンの有効性を確認

種々のバクテリアによって引き起こされる最重症市中肺炎は死亡率が高く、クロラムフェニコールの注射が標準治療とされるが厳格な検証はなされていない。Rai Asghar氏(パキスタン、ラワルピンディ総合病院)らは、医療資源が乏しい状況において最重症市中肺炎に罹患した生後2~59ヵ月の患児に対しては、アンピシリン+ゲンタマイシンがクロラムフェニコールよりも有効なことを明らかにした。BMJ誌2008年1月12日号(オンライン版1月8日号)掲載の報告。7ヵ国が参加した無作為化試験SPEAR(Severe Pneumonia Evaluation Antimicrobial Research)studyは、生後2~59ヵ月の最重症肺炎患児(WHO判定規準)を対象にクロラムフェニコールとアンピシリン+ゲンタマイシンの有効性を比較する無作為化試験。2000年8月~2004年4月の間にバングラデシュ、エクアドル、インド、メキシコ、パキスタン、イエメン、ザンビアの3次病院に入院した958例が登録され、クロラムフェニコール群に479例が、アンピシリン+ゲンタマイシン群に479例が無作為に割り付けられた。5日、10日、21日目の治療無効率はクロラムフェニコール群で高い主要評価項目である5日目における治療無効率は、クロラムフェニコール群の16%に対しアンピシリン+ゲンタマイシン群は11%と有意に低かった[相対リスク(RR):1.43)]。副次評価項目である10日目(19% vs. 14%、RR:1.37)および21日目(22% vs. 16%、RR:1.34)も、同様にアンピシリン+ゲンタマイシン群で優れていた。110例(11.5%)の血液および肺吸引物から112のバクテリアが単離され、そのうち黄色ブドウ球菌が47ともっとも多く、次いで肺炎球菌が22であった。菌血症はクロラムフェニコール群で21日目の治療無効のリスクを増大させたが(RR:2.09)、アンピシリン+ゲンタマイシン群では増大しなかった(RR:1.12)。同様に、肺炎球菌はクロラムフェニコール群において21日目の治療無効(RR:4.06)および死亡(RR:5.80)のリスクを増大させた。多変量解析では、治療無効の独立の予測因子として低酸素血症、クロラムフェニコール治療、女児、免疫抑制状態が挙げられた。以上により、Asghar氏は「医療資源が乏しい状況では、最重症肺炎患児の治療としてクロラムフェニコールよりもアンピシリン+ゲンタマイシンの効果が優れる」と結論し、「これらの知見は、最重症肺炎の第一選択薬としてクロラムフェニコールを推奨しているWHOガイドラインの改定時に大きな影響を及ぼす可能性がある」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

2857.

入院患者心停止への除細動の遅れは日常茶飯事

心肺蘇生法に関する国際ガイドラインでは、院内で心室性不整脈による心停止が起きた場合、2分以内に除細動を行うことを推奨している。しかしこれまで、その現場レベルの実証データは、ほとんど報告されていない。本研究は米国心臓協会(AHA)が、米国内の医療機関の実態について報告したもので、処置の遅れはどれぐらいあるのか、処置の遅れと生存率との関係について報告している。NEJM誌2008年1月3日号より。全米369病院で心停止患者6,789例を調査本研究は、米国心臓協会(AHA)の米国心肺蘇生登録に参加している369の医療機関から、心室細動または無脈性心室頻拍で心停止を起こした患者6,789例を同定して行われた。多変量ロジスティック回帰を用いて除細動の遅れに伴う影響を確かめ、さらに、患者・病院特性の違いを補正したうえで、除細動が2分以上経ってから行われた場合と、生存退院率との関連性を検討している。3割で除細動実施に遅れ心停止から除細動実施までの時間の中央値は1分(四分位範囲:1分未満~3分)だったが、一方で除細動の遅れは全体の30.1 %(2,045例)で起きていた。患者の生存退院率は、除細動が推奨時間以内なら39.3%、遅れた場合は22.2%で、有意な差がみられた(補正オッズ比0.48、95%信頼区間:0.42~0.54、P

2858.

小児の重症肺炎は高用量経口アモキシシリンにより家庭で治療可能

開発途上国では、毎年、下部気道の急性感染症により5歳以下の小児が200万人以上の死亡している。WHOのガイドラインでは、重症肺炎は非経口抗生物質による病院での治療が推奨されている。パキスタン医科学研究所小児病院のTabish Hazir氏は、重症肺炎小児の治療において、高用量アモキシシリンを用いた家庭での治療の有用性を確認、Lancet誌2008年1月5日号で報告した。肺炎小児2,037例を入院治療と家庭治療に無作為に割り付け本試験はパキスタンの5都市7施設で実施された無作為化試験である。対象は、2005年2月~2006年8月の間に咳、呼吸困難あるいはその両方のために小児科を受診した生後3~59か月の小児2,037例。入院にてアモキシシリン(100mg/kg/日)を48時間静注投与したのち経口薬(シロップ80~90mg/kg/日)を3日間投与する群(入院治療群:1,012例)あるいは家庭で経口アモキシシリン(シロップ80~90mg/kg/日)を5日間投与する群(家庭治療群:1,025例)に無作為に割り付けた。フォローアップは登録後第1、3、6、14日に行い、主要評価項目は第6日までに確認された治療無効(臨床的増悪)とした。両群で効果は同等、WHO勧告は改訂すべきper-protocol解析では、入院治療群の36例および家庭治療群の37例がおもにプロトコール違反あるいはフォローアップ不可を理由に除外された。第6日までの臨床的増悪は、入院治療群の87例(8.6%)に、家庭治療群では77例(7.5%)に認められた(リスク差:1.1%、95%信頼区間:-1.3~3.5)。登録後14日までに5例(0.2%)が死亡した(入院治療群:4例、家庭治療群:1例)。いずれの症例も死亡の前に臨床的増悪が確認されており、抗生物質が変更されていた。治療関連死はみられず、重篤な有害事象も報告されなかった。以上の結果により、Hazir氏は「合併症のない重症肺炎小児の治療において、高用量アモキシシリンを用いた家庭治療は現在の標準治療として推奨されている入院によるアモキシシリン治療と同等の効果を示すことが明らかとなった」と結論し、「重症肺炎の治療に関するWHO勧告は改訂する必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

2859.

製薬会社スポンサー付きのメタ解析は解釈に疑問が

単独の製薬会社と経済的つながりを持つメタ解析では、解析結果は影響を受けないが、結論はその会社に好ましい内容になる傾向があるという。スタンフォード大学のVeronica Yank氏らによる検討で、BMJ誌オンライン版11月16日付けで早期公開、本誌12月8日号で報告されている。単独スポンサー付きメタ解析では、結果と結論の不一致が37%にYank氏らは2004年12月までに出版された降圧薬臨床試験のメタ解析から、重複を除いた124解析を抽出した。40%にあたる49解析が単独の製薬会社から資金提供を受けていた。まず製薬会社に好ましい「解析結果」をもたらす要因を単変量解析で求めると、「試験の高品質」、「バラツキ検定の実行」、「感度解析の実行」が有意な因子であり、「単独製薬会社との経済的つながり」は有意な因子となっていなかった。製薬会社に好ましい「結論」をもたらす因子は、唯一「単独製薬会社との経済的つながり」だけが有意だった。事実、単独製薬会社と経済的つながりのあるメタ解析では、当該会社製品の有用性を示す結果が得られていたのは27解析(55%)だったにもかかわらず、45解析(92%)がその薬剤が有用であると結論しており、結果と結論の不一致が18解析(37%)に認められた。スポンサーなしの場合の不一致はゼロ一方、複数製薬会社と経済的につながりのあるメタ解析14件では不一致率21%、経済的つながりの明記されていない25試験では12%、製薬会社以外と経済的つながりを持つ36解析では、結果と結論の不一致は1つもなかった。Yank氏らは結果と結論が一致していないメタ解析を掲載した編集者とピアレビュアーを指摘している。「データの解釈に問題がある」のであれば、いわゆる「総説」さらに「ガイドライン」も同様の問題を内包している可能性がある。元New England Journal of Medicine編集長だったJerome P. Kassirer氏は著書「On The Take(買収の危機)」(Oxford Press、2005)において、具体的事例を挙げながら警告を発している。(宇津貴史:医学レポーター)

2860.

心肺フィットネスは高齢者の死亡予測因子

身体活動および有酸素能力のレベルは年齢と共に減少し、一方で肥満症の有病率は年齢と共に増大する傾向がある。それにもかかわらず高齢者の心肺フィットネスおよび肥満と、死亡との関連についてはこれまで十分に調査検討されていない。そこで、サウスカロライナ大学アーノルド公衆衛生学校(アメリカ)運動科学部門のXuemei Sui氏らが調査を行い報告した。JAMA誌12月5日号より。60歳以上2,603人の心肺フィットネス、肥満と死亡との関連を調査研究対象は、1979~2001年の間に基線健康診査を受けエアロビクスセンター縦断研究に登録された60歳以上の2,603人。平均年齢64.4歳(SD 4.8)、女性が19.8%を占める。心肺フィットネスの評価は最大運動負荷試験にて行い、性特異的分布による最低5分位を低心肺フィットネスと定義した。肥満症の評価はBMI、腹囲、体脂肪率で行い、臨床ガイドラインに従ってグループ分けされた。主要評価項目は、2003年12月31日までの全死亡。死亡率は低心肺フィットネス群32.6、高心肺フィットネス群8.1平均追跡期間12年、31,236人年のうち死亡数は450人だった。1,000人年の死亡率(年齢、性、検査年補正後)は、BMI 18.5~24.9群、25.0~29.9群、30.0~34.9群、35.0以上群でそれぞれ13.9、13.3、18.3、31.8であった(P=0.01)。正常腹囲群では13.3、高腹囲群(女性88 cm以上、男性102 cm以上)では18.2(いずれもP=0.004)、標準体脂肪率群では13.7、高体脂肪率群(女性30%以上、男性25%以上)では14.6(いずれもP=0.51)だった。心肺フィットネスでは5分位増加ごとに32.6、16.6、12.8、12.3、8.1(P

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