サイト内検索|page:137

検索結果 合計:2930件 表示位置:2721 - 2740

2721.

糖尿病を有するNSTE-ACSに、侵襲的治療は有効

非ST上昇型急性冠症候群(NSTE‐ACS)患者への早期の侵襲的治療は、ACC/AHAガイドラインで推奨されている。しかし、糖尿病を有するNSTE-ACS患者に対する侵襲的治療が、ベネフィットをもたらすかどうかを主目的に解析した臨床試験は、これまでなかった。今回、この検討結果がO'Donoghue ML氏らにより発表された。この結果、糖尿病患者への早期の侵襲的治療は、非糖尿病患者と比べ、全心血管イベントの相対リスクは同等ではあったが、再発性の非致死的心筋梗塞(MI)リスクを有意に低下させることが明らかになった。著者は、これらの結果は、最新のガイドラインが推奨している糖尿病を有するような高リスクのNSTE-ACS患者に対する、侵襲的治療を支持するものだ、と述べている。本試験は9件の無作為化臨床試験のメタアナリシスの結果。対象はNSTE-ACS患者9,904例。フォローアップ期間は12ヵ月。心血管イベントリスクは、糖尿病の有無と無作為化された治療戦略(侵襲的治療または保守的治療)で層別化され、解析された。相対リスク(RR)比と絶対リスクの減少については変量効果モデルを用いてデータ統合がなされた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象者9,904例のうち、1,789例(18.1%)が糖尿病であった。・侵襲的治療の保守的治療に対する、死亡、非致死的心筋梗塞(MI)、または急性冠症候群による再入院のRRは、糖尿病患者(RR:0.87、95%CI:0.73‐1.03)と、非糖尿病患者(RR:0.86、95%CI:0.70‐1.06、交互作用p=0.83)で同等であった。・侵襲的治療は、糖尿病患者に対しては非致死的MIを減少させた(RR:0.71、95%CI:0.55~0.92)が、非糖尿病患者では減少させなかった(RR:0.98、95%CI:0.74~1.29、交互作用p= 0.09)。・侵襲的治療によるMIの絶対リスク減少率は、糖尿病患者の方が非糖尿病患者よりも大きかった(絶対リスク減少率:3.7% vs 0.1%、交互作用p= 0.02)。死亡または脳卒中において、両群間に有意差は認められなかった(交互作用p=0.68、p=0.20) (ケアネット 佐藤 寿美)  〔関連情報〕  ・動画による糖尿病セミナー (インスリンなど)

2722.

ワルファリン服用の急性虚血性脳卒中へのt-PA、症候性頭蓋内出血リスク増大みられず

組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)静注療法を行った急性虚血性脳卒中患者の症候性頭蓋内出血リスクについて、ワルファリン服用中の患者のリスクは非服用患者と比べて増大しないことが示された。その他のt-PA合併症や院内死亡率についても、ワルファリン服用による増加は認められなかった。米国・デューク臨床研究所のYing Xian氏らが、約2万4,000人の急性虚血性脳卒中患者について行った観察試験の結果で、JAMA誌2012年6月27日号で発表した。t-PA静注療法患者について、ワルファリン服用有無で出血リスク増大との関連を分析最近のガイドラインでは、ワルファリン治療中の患者へのt-PA静注は、国際標準比(INR)1.7以下の患者への投与が推奨されているが、ワルファリン服用中の患者に関するt-PA静注療法の安全性に関するデータはほとんどない。そこで研究グループは、ワルファリン服用中患者と非服用患者とを比較する目的で、2009年4月~2011年6月の間に1,203病院で登録されたAHA Get With The Guidelines–Stroke(GWTG-Stroke)レジストリの患者データから、急性虚血性脳卒中を発症した国際標準比(INR)が1.7以下の人で、組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)を静注した2万3,437人について観察試験を行った。被験者のワルファリンの服用歴の有無と、症候性頭蓋内出血の発症リスクとの関連を分析した。被験者のうちワルファリン服用中だったのは1,802人(7.7%)で、INR中央値は1.20(四分位範囲:1.07~1.40)だった。ワルファリンを服用していた人は、そうでない人に比べ、高齢で、共存症が多く、脳卒中の程度も重度だった。症候性頭蓋内出血、重度全身性出血、t-PA合併症などいずれも発症率は同等症候性頭蓋内出血の補正前発症率は、ワルファリン服用群が5.7%と、ワルファリン非服用群の4.6%に比べ有意に高率だった(p<0.001)。しかし、試験開始時点における臨床的因子で補正後は、両群の同発症率に有意差は認められなかった(補正後オッズ比:1.01、95%信頼区間:0.82~1.25)。 ワルファリン服用群と非服用群では、重度全身性出血率(補正後オッズ比:0.78、同:0.49~1.24)、t-PA合併症率(同:1.09、同:0.93~1.29)、院内死亡率(同:0.94、同:0.79~1.13)のいずれも有意な差は認められなかった。INR 1.7以下のワルファリン服用患者への血栓溶解療法は、症候性頭蓋内出血リスクと統計的に有意な関連は認められなかった(補正後オッズ比:INR 0.1増大につき1.10、95%信頼区間:1.00~1.20、P=0.06)。 (當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

2723.

新たな冠動脈疾患の予測モデル、有病率が低い集団でも優れた予測能

オランダ・エラスムス大学医療センターのTessa S S Genders氏らが新たに開発した冠動脈疾患の予測モデルは、有病率が低い集団においても優れた予測能を示すことが、同氏らが実施した検証試験で確認された。検査前確率は、患者にとって最も有益な検査法を決めるのに有用とされる。ACC/AHAやESCの現行ガイドラインでは、安定胸痛がみられる患者における冠動脈疾患の検査前確率の評価には、Diamond and ForresterモデルやDuke臨床スコアが推奨されているが、いずれの方法にもいくつか欠点があるという。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年6月12日号)掲載の報告。新規予測モデルの予測能を後ろ向き統合解析で検証研究グループは、有病率の低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の評価に有用な予測モデルを開発するために、個々の患者データのレトロスペクティブな統合解析を行った。ヨーロッパおよび米国の18施設から、冠動脈疾患の既往歴のない安定胸痛患者が登録された。CTあるいはカテーテルベースの冠動脈造影所見に基づき、低有病率または高有病率の集団に分類した。主要評価項目は閉塞性冠動脈疾患(カテーテル冠動脈造影で1つ以上の血管に≧50%の狭窄)とした。予測モデルは、基本モデル(年齢、性別、症状、有病率の高低)、臨床モデル(基本モデルの因子、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙)および拡張モデル(臨床モデルの因子、CT冠動脈造影によるカルシウムスコア)で構成された。低有病率の集団のデータセットを用いて、交差検証法(cross validation)による解析を行い、識別能(C統計量)、キャリブレーション、純再分類改善度(net reclassification improvement; NRI)ついて評価した。冠動脈カルシウムスコアを加えると予測能がさらに改善解析の対象となった5,677例(男性3,283例[平均年齢58歳]、女性2,394例[同:60歳])のうち、5,190例(91%)でCT冠動脈造影が施行され、1,634例(31%)が閉塞性冠動脈疾患と診断された。このうち1,083例(66%)にカテーテル冠動脈造影が施行され、886例(82%)に閉塞性冠動脈疾患が確認された。CT冠動脈造影で閉塞性冠動脈疾患がみられなかった3,556例のうち、526例にカテーテル冠動脈造影が施行され、閉塞性冠動脈疾患が否定されたのは498例(95%)だった。全体として、カテーテル冠動脈血管造影が施行されたのは2,062例(36%)で、そのうち閉塞性冠動脈疾患と診断されたのは1,176例(57%)であった。単変量および多変量解析では、すべての予測因子が疾患の発現と有意に関連した。臨床モデルの予測能は、基本モデルに比べ優れていた(交差検証されたc統計量が0.77から0.79に改善、NRI:35%)。拡張モデルの冠動脈カルシウムスコアは主要な予測因子であった(同:0.79から0.88に改善、102%)。著者は、「年齢、性別、症状、心血管リスクなどから成る新たな予測モデルにより、有病率が低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の正確な予測が可能となった。この予測モデルに冠動脈カルシウムスコアを加えると、予測能がさらに改善された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

2724.

抗てんかん剤「Zonegran」の単剤療法、EMAより承認取得

エーザイ株式会社は3日、英国子会社であるエーザイ・ヨーロッパ・リミテッドが抗てんかん剤「Zonegran」(一般名:ゾニサミド)について、新規に診断されたてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤療法の追加適応の承認を欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)より受領したと発表した。Zonegranは、大日本製薬(現、大日本住友製薬)が創製した抗てんかん剤。欧州では同社が開発を行い、2005年3月に成人てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法として承認を取得した。また、2012年6月22日に欧州において、6歳以上の小児てんかんにおける併用療法の追加適応の申請が受理された。今回の承認は、新規に診断された部分てんかん患者様583人を対象に、1日1回投与のZonegranと、1日2回投与のカルバマゼピン徐放製剤を比較する目的で実施された多施設共同、無作為化、二重盲検試験の結果に基づいて行われたという。同試験の主要評価項目には「6ヵ月間の発作未発生率」を用い、Zonegranは高い忍容性をもって、てんかん発作の抑制効果を示したとのこと。主要評価項目の両投与群間の統計比較では、国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy: ILAE)の治療ガイドラインで推奨されている非劣性基準を満たした。また、同試験で報告された主な有害事象は、頭痛、食欲減退、眠気、めまい、体重減少、けん怠感、発疹、発熱であった。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news201241.html

2725.

新たな脂質マーカーによる心血管疾患リスクの予測能改善はわずか

心血管疾患発症の予測因子として、総コレステロール、HDLコレステロール、年齢や性別、喫煙の有無など従来リスク因子に、アポリポ蛋白B/A-Iといった脂質マーカーの情報を加味しても、同発症リスクの予測能はごくわずかな改善であったことが示された。英国・ケンブリッジ大学のJohn Danesh氏らが、約17万人を対象にした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年6月20日号で発表した。初回心血管疾患イベント発生予測に、様々な脂質マーカーの測定がどれほど役立つかという点については議論が分かれていた。中央値10年追跡、その間の心血管疾患イベントは約1万5,000件研究グループは、1968~2007年に行われた37の前向きコホート試験のデータを用い、試験開始時点で心血管疾患のない16万5,544人について、従来のリスク因子に脂質マーカーを加えることによる、心血管疾患リスク予測の改善について分析した。追跡期間の中央値は10.4年(四分位範囲:7.6~14)、その間に発生した心血管疾患イベントは1万5,126件(冠動脈性心疾患1万132件、脳卒中4,994件)だった。主要アウトカムは、心血管疾患イベント発生の判定と、10年発生リスクについて低リスク群(10%未満)、中間リスク群(10~20%)、高リスク群(20%以上)の3群への再分類改善率だった。新たな脂質マーカー追加、ネット再分類改善率は1%未満結果、新たな各脂質マーカーの追加による判別モデルの改善はわずかで、アポリポ蛋白B/A-Iの追加によるC統計量の変化は0.0006(95%信頼区間:0.0002~0.0009)、リポ蛋白(a)は0.0016(同:0.0009~0.0023)、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2は0.0018(同:0.0010~0.0026)だった。新たな各脂質マーカーの追加による、心血管疾患発生リスクのネット再分類改善率についても、いずれも1%未満に留まった。従来リスク因子のみで分類した結果、40歳以上成人10万につき1万5,436人が、10%未満および10~20%のリスク階層群に分類されると推定された。そのうち、米国高脂血症治療ガイドライン(Adult Treatment Panel III)に基づきスタチン治療が推奨される人を除外して残った1万3,622人について、アポリポ蛋白B/A-Iの検査値を加えた場合に20%以上の高リスク群へと再分類された割合は1.1%だった。リポ蛋白(a)を加えた場合は4.1%、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2を加えた場合は2.7%だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

2726.

データバンクでアルツハイマー病の治療実態が明らかに―仏BNA調査―

急速に超高齢社会に突入したわが国において、認知症診療のスキルは専門医だけでなく、かかりつけ医にも求められるようになってきた。2011年に新規抗認知症薬が次々と承認され、今後の薬物療法に関して議論が行われている。Tifratene氏らはデータバンクを活用し、フランス国内のアルツハイマー病(AD)の薬物療法の現状とその治療がフランスのADガイドラインに準じているかを検討した。その結果、ADのデータバンクがADの診療や関連疾患診療に有益な情報をもたらすことを、Pharmacoepidemiol Drug Saf誌オンライン版2012年6月20日付にて報告した。2010年にフランスのアルツハイマーデータバンク(BNA)に登録された191,919例を横断的に分析し、ADと診断された患者(29.9%)と対象期間で少なくとも1つ以上の認知機能検査(MMSE)スコアを示した患者26,809例を検討した。主な結果は以下のとおり。 ・76.9%の症例において、抗AD治療薬が投与されていた。・アセチルコリンエステラーゼ阻害剤単独投与が48.3%、メマンチン単独投与が14.2%、併用投与が14.4%であった。・20.7%の症例はガイドラインに準じた治療が行われておらず、低いMMSE平均スコア(13.6 vs 18.0、p

2727.

「症状出現」からの時間 と 「来院」からの時間。 臨床転帰に与える影響は?: CREDO-Kyoto

直接的経皮的冠動脈インターベンション(Primary PCI)は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の治療において中心的な役割を果たし、「症状出現」や「来院」からバルーン拡張までを短時間で行うことが米国や欧州のガイドラインで推奨されている。しかし、これまで、「来院」からの時間の短縮化に関しては、否定的な結果も報告されてきた。今回、わが国の大規模コホート研究CREDO-Kyoto AMI investigatorsから、PCIを施行したST上昇型心筋梗塞(STEMI)例において、「症状出現」から初回バルーン拡張までの短時間化は、3年臨床転帰を良くするが、「来院」から初回バルーン拡張までの短時間化による利益は、「症状出現」からの時間が短い患者に限られることが、報告された。研究グループは、臨床転帰を改善するためには、「症状出現」からバルーン拡張までの短時間化が推奨されると結論した。BMJ誌オンライン版2012年5月23日掲載の報告。対象は、わが国の3次救急病院26施設で治療された症状発現24時間以内にPrimary PCIを施行したSTEMI 3,391例とした。主要エンドポイントは、死亡、慢性心不全の複合エンドポイントに設定された。主な結果は以下のとおり。 ・「症状出現」から初回バルーン拡張までの時間で比較すると、バルーン拡張までの時間が3時間未満の患者は、3時間以上の患者と比較して、死亡とうっ血性心不全の複合エンドポイントが有意に低かった〔相対リスク減少29.7%、13.5%(123/964) vs 19.2%(429/2,427)、P

2728.

閉塞性睡眠時無呼吸症候群、持続気道陽圧療法で高血圧リスク低下

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は高血圧発症リスクを増大するが、持続気道陽圧療法(CPAP)によりそのリスクが低下することが、明らかにされた。スペイン・Miguel Servet大学病院のJose M. Marin氏らが約12年間追跡した前向きコホート研究の結果による。OSA患者では高血圧を呈する人が大勢を占める。これまで短期試験では、CPAPが同患者の高血圧リスクを低下することは示されていた。JAMA誌2012年5月23・30日合併号掲載報告より。高血圧を伴わない1,889例のOSAまたは非OSA患者を中央値12.2年追跡研究グループは、1994年1月1日~2000年12月31日に終夜睡眠ポリグラフィ検査のために受診した高血圧を伴わない1,889例について、2011年1月1日まで追跡し、高血圧発症について調べた。追跡期間は中央値12.2年、総計2万1,003人・年だった。基線から高血圧発症が認められた時点までのBMI変化値などの交絡因子で補正した多変量モデルで、非OSA患者(対照)群、未治療OSA患者群、国のガイドラインに基づくCPAP治療を受けた非OSA・OSA患者群の高血圧発症ハザード比(HR)を算出した。主要評価項目は、新規高血圧発症とした。CPAP治療群のみ、補正後ハザード比0.71と低下を示す高血圧発症例は705例(37.3%)だった。100人・年当たりの高血圧発症率は、対照群2.19(95%信頼区間:1.71~2.67)、OSA患者・CPAP治療非適用群3.34(同:2.85~3.82)、OSA患者・CPAP治療辞退群5.84(同:4.82~6.86)、OSA患者・アドヒアランス不良群5.12(同:3.76~6.47)、OSA患者CPAP治療群3.06(同:2.70~3.41)だった。補正後、対照群と比較して高血圧発症は、OSA患者・CPAP治療非適用群(オッズ比:1.33、95%信頼区間1.01~1.75)、OSA患者・CPAP治療辞退群(同:1.96、1.44~2.66)、OSA患者・アドヒアランス不良群(同:1.78、1.23~2.58)で高かったが、OSA患者CPAP治療群では低下した(同:0.71、0.53~0.94)。

2729.

神経内科医の注目が集まる「てんかん診療」高齢者のてんかん患者が増加!

第53回日本神経学会学術大会(5月22日~25日、東京国際フォーラム)における共催セミナー(グラクソ・スミスクライン株式会社)にて、産業医科大学 辻 貞俊氏が「高齢者てんかんについて」と題して講演した。高齢者てんかん患者は50万人以上てんかんは小児および若年者での発症が多い疾患である。一方、加齢に伴う中枢神経疾患は、高齢者におけるてんかんの新規発症の原因となる。高齢者のてんかんは若年者のものとは病態が異なり、若年者とは異なった治療が必要となる。わが国では急速な高齢化に伴って、このような高齢発症のてんかん患者が増えており、若年発症てんかん患者のキャリーオーバーともあいまって、高齢世代のてんかん患者が増加している。高齢者てんかん(65歳以上で発症)は対人口比2~7%と言われており、患者数は50万人程度と推定される。診断が難しい、高齢者てんかん高齢者てんかんは脳血管障害や脳腫瘍、認知症などを原因とする症候性てんかんである。約1/3は脳波が正常であり、鑑別診断が難しい。そのため、高齢者てんかんの特徴を理解し、診断・治療を行うことが求められる。中でも最も重要なのが「失神」である。失神は70歳以上の約23%が経験するともいわれている。また、神経疾患(TIA、TGAなど)、循環器疾患、代謝・内分泌疾患、睡眠時行動異常、心因性非てんかん性発作などとの鑑別を行う必要がある。高齢者てんかんの特徴は、・複雑部分発作、過運動発作が多い・約1/4は鑑別が難しく、診断できない(約1/3は脳波正常)・部分てんかん(側頭葉てんかん、前頭葉てんかんが大部分)が最も多い・二次性全般発作が少ないため見逃されている可能性が高い・発作後のもうろう状態が数時間~数日続くことがある・非特異的な症状(ボーとした状態、不注意、無反応など)が多い  などである。高齢者てんかんは抗てんかん薬単剤で奏功率約80%高齢者てんかんは診断が難しい側面はあるものの、薬物療法による奏効率は高く、比較的予後は良好である。ただし、再発率は高く、再発による患者の心理的負担を考慮し、初回発作時から薬物療法を開始することが推奨される。高齢者てんかんの薬物療法のポイントは以下のとおりである。・初回発作時から薬物療法を開始する・相互作用に注意し、少量から投与を開始する・米国ガイドラインでは部分発作の場合、合併症がなければカルバマゼピン、ラモトリギンの順、合併症があればレベチラセタム、ラモトリギンの順、全般発作の場合はラモトリギン、バルプロ酸の順で推奨されている・約80%は単剤にて効果が認められている(成人の投与量より少量)・海外データによると新規抗てんかん薬は発作軽減に有効である・長期にわたり治療を継続することが重要であるまとめ 高齢者てんかんが増加している現状を踏まえ、神経内科医によるさらなるてんかん診療の推進が求められる。また、発症後6年以上経過した認知症患者ではてんかん発作の発現率が一般の5~10倍に増加するともいわれており、注意が必要である。辻氏は「まずは、正確な診断、そして積極的な治療を行ってほしい」と締めくくった。(ケアネット 鷹野 敦夫)

2730.

高齢者介護施設での身体拘束、ガイドラインや行動理論による介入で減少

高齢者介護施設(nursing home)に対し、ガイドラインや行動理論による介入を行うことで、身体拘束を受ける入所者の割合が減少することが示された。ドイツLubeck大学のSascha Kopke氏らが、36ヵ所の高齢者介護施設について行った集団無作為化試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年5月23・30日合併号で発表した。ドイツでは、身体拘束は法的に規制されており、また身体拘束の有効性と安全性についてエビデンスがないにもかかわらず、多くの高齢者介護施設でいまなお行われている現状だという。また米国の高齢者介護施設では20%で身体拘束が行われているとの報告もあるという。入所者の2割以上が身体拘束を受ける、36施設について無作為化試験研究グループは、2009年2月~2010年4月にかけて、高齢者介護施設36ヵ所を無作為に2群に分け試験を行った。試験適格とされた施設では、入所者の2割以上が身体拘束を受けていた。対象施設の一方の群(18施設、入所者数2,283人)にはエビデンスに基づき作成されたガイドラインおよび計画的行動理論に基づく介入を行い、もう一方の群(18施設、同2,166人)は対照群として特別の介入は行わなかった。介入を行った施設に対しては、看護職員に対するグループセッション、一部の看護師に対する追加的訓練、看護師や入所者、親戚などに対する教育的資料の配布などを行った。対照群には、一般的な情報を提供した。身体拘束を受ける割合、介入群は対照群より6.5%ポイント低率主要アウトカムは、試験開始から6ヵ月時点の、ベッド両側柵、ベルト、固定テーブルの設置、その他自由な行動を規制する仕掛けを用いた身体拘束を受けている入所者の割合とした。評価は、覆面調査員による1日3回の直接的評価で行われた。調査を開始したすべての施設で調査は完遂し、被験者全員について追跡を完了することができた。調査開始時点で、身体拘束を受けていた入所者の割合は対照群が30.6%、介入群では31.5%と同等だった。6ヵ月時点の同割合は、対照群が29.1%に対し、介入群では22.6%と有意に低率で、絶対格差は6.5%だった(95%信頼区間:0.6~12.4、クラスター補正後オッズ比:0.71、同:0.52~0.97、p=0.03)。同割合は、3ヵ月時点から6ヵ月時点に安定的に推移していた。転倒や転倒による骨折、向精神薬の処方率について、両群で有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

2731.

「双極性障害に対する薬物療法レビュー」世界精神医学会(WPA)での報告

Fountoulakis氏らは2012年3月10までに更新された双極性障害に対する薬物療法に関するランダム化比較試験のシステマティックレビューをおこなった。Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci誌オンライン版2012年5月24日掲載の報告より。主な結果は以下のとおり。 ・急性躁症状に対しリチウム、第1世代抗精神病薬、第2世代抗精神病薬、バルプロ酸、カルバマゼピンが有効であることが示唆された。・クエチアピンとオランザピン/フルオキセチンの併用は双極性障害のうつ症状に対し有効である。・抗躁薬の単剤投与を目指し、抗うつ薬は併用のみで使用した方が良い。・リチウム、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールは維持治療期に有効である。・ラモトリギンはうつ症状の予防に有効である。また、躁症状への有効性は明らかになっていない。・薬物療法の補助療法として心理社会的介入が有効であるとも報告されている。・電気ショック療法は難治例でのオプションとなりうる。・リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンに対し部分奏効した急性躁病患者では抗精神病薬の併用が効果的である。・急性双極性うつ病に対しリチウム+ラモトリギンは最良の選択肢である。・単剤治療移行中の悪化時にみられる急性症状に対しオランザピン、バルプロ酸、抗うつ薬、ラモトリギンの併用は有効である。著者は最後に、「双極性障害に対する治療選択肢は増えてきたが、まだ十分ニーズを満たしているとはいえない。併用療法をおこなうことで転帰の改善が期待できるようになったが、一方で副作用も問題となっている。今後、段階的かつ合理的な治療をおこなうためにガイドラインやアルゴリズムが整備されることを願う」としている。(ケアネット 鷹野 敦夫)

2732.

CKD診療ガイド改訂 -慢性腎臓病(CKD)は原疾患、腎機能と尿所見でリスク評価を-

日本慢性腎臓病対策協議会(東京都文京区、理事長:槇野博史、J-CKDI)は、1日、CKD診療に関して、かかりつけ医の標準化と腎臓専門医の連携を目的とした「CKD診療ガイド2012」を発行した。「CKD診療ガイド」は、2009年以来3年ぶりの改訂となる。本ガイド改訂委員長の今井圓裕氏は、今回の最も大きな改訂点として、CKDの重症度分類が腎機能だけでなく、原疾患、尿所見を評価した分類に変更されたことを挙げ、その他、血圧管理、貧血管理が臨床上に影響を及ぼす点として掲げた。最大の改訂点となった重症度分類の変更は、わが国でなく、国際腎臓病ガイドライン(KDIGO)も同様の見直しを行なっていると今井氏は言う。従来は糸球体濾過量(G = GFR)を基にした腎機能のみで評価してきたが、尿蛋白・尿アルブミン値(A = Albumin)、原疾患(C = Cause)を加えたいわゆるCGA分類で評価する。これはアルブミン尿や蛋白尿が、腎機能とは独立して末期腎不全、心血管死の発症リスクであることを示すエビデンスが確立してきたため。病期は4つに区分され、リスクに応じて腎臓専門医への相談・紹介基準や、腎臓専門医への通院間隔が推奨されている。次に注目すべき改訂点は、血圧管理。CKDにおける血圧管理については国際的に基準が変わってきており、現在の降圧目標レベルが過剰であると捉えられつつあると今井氏は述べた。これまでの蛋白尿が1g/日以上を認めるCKD患者の降圧目標値は「125/75mmHg未満」が推奨されてきたが、今回の改訂により撤廃され、「130/80mmHg以下」に統一された。高齢者においては、「140/90mmHg未満を目標に降圧し、腎機能悪化や臓器の虚血症状がみられないことを確認し、130/80mmHg以下に降圧する、収縮期血圧110mmHg未満への降圧は避ける」とさらに慎重な構え。特に夏期、RA系阻害薬投与例において、過降圧を来たし、急性腎障害で搬送される例も少なくないことも例に挙げ、高齢者における過降圧に注意を喚起した。また、推奨する降圧薬については、糖尿病and/or蛋白尿が認められる場合は、従来どおりRAS阻害薬を第一選択薬とすることは変わりないが、糖尿病も蛋白尿もみられないCKD例においては、降圧薬の種類を問わないことが記述された。貧血管理の改訂も注目すべき改訂点と言える。前回の改訂があった2009年以降、貧血の改善が臨床転帰につながらなかった試験が発表された。遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤の投与については、「投与開始Hb値=10g/dL、治療目標Hb値=10~12g/dL、13g/dLを超えないよう配慮する」と基準を明記している。今回の改訂において、「重症度分類の変更」が意味するところは、蛋白尿、アルブミン尿が末期腎不全、心血管死の独立した危険因子であるものとして捉え、尿検査を定期的に実施していくことの重要性を促すものと捉えている。(ケアネット 藤原 健次)

2733.

「今後の透析医療を考える」プレスセミナーレポート

2012年5月31日、「今後の透析医療を考える」と題したプレスセミナー(バイエル薬品株式会社主催)が開催された。第1部として、秋澤忠男氏(昭和大学医学部 腎臓内科教授)が、「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドラインによって変わる透析医療」を、第2部として、宮本高宏氏(全国腎臓病協議会 会長)が、「透析患者の治療における実態とガイドライン改訂への期待」を講演した。その内容をレポートする。「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドラインによって変わる透析医療」 わが国の透析患者に対する治療は、世界でトップレベルにあり、日本の透析患者の死亡リスクは、米国の1/4、欧州の1/2.5である。しかし、一般人と比較すると透析患者の余命は半分で、とくに心不全などの脳・心血管系疾患による死亡リスクが高くなっている。この原因として、血中リン(P)濃度による血管の石灰化が考えられる。 日本透析医学会は、この度、慢性腎臓病に伴う『骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン(CKD-MBD)』を発表した。CKD-MBDは、2006年に発表されたガイドラインの改訂版で、主な変更点は、以下の通りである。○対象を透析患者だけでなく、保存期や移植期のCKDや小児CKDに拡大する○血管石灰化や透析アミロイドーシスなどの病態を加える○新規治療薬の評価・使用法を加える○エビデンスレベル評価とガイドライン推奨度を明示する また、CKD-MBDでは、P、カルシウム(Ca)、副甲状腺ホルモン(PTH)の管理目標値も示されるとともに(P:3.5-6.0 mg/dL、Ca:8.4-10.0 mg/dL、PTH:60-240 pg/mL)、P、Caの管理を優先することが推奨されている。そして、管理方法としては、炭酸Ca、Ca非含有P吸着薬、活性型ビタミンD、副甲状腺作動薬を組み合わせて管理目標を達成する『9分割図』といわれる方法が提唱されている。 演者の秋澤氏は、「CKD-MBDを活用したPの適切な管理が、透析患者の予後向上につながることを期待したい」として、講演を終えた。「透析患者の治療における実態とガイドライン改訂への期待」 透析患者を対象とした治療に関する調査結果が発表された。調査は、2012年4月に、インターネットで実施され、人工透析を受けている患者200名から回答を得た。主な調査結果は以下の通りである。○透析患者の不安項目としては、合併症への不安(73%)が最も多く、とくに、循環器疾患への不安を覚えている人が多かった。○透析の治療に関するガイドラインは、約40%の人が認知していた。○ガイドラインに沿った治療を希望する人は、60%であった(わからない:34%)。○自分の服用している薬に対する意識調査では、薬について十分理解している人が91%おり、自分で調べたり勉強している人の割合も73%であった。 演者の宮本氏は、自らも30年来の透析患者であることを明かしたうえで、透析患者の医療費負担に触れた。「透析にかかる医療費は年間約1兆5千万円で、国の医療財政を圧迫しているが、患者の自己負担額はほぼゼロに近い。この事実を鑑み、患者は、自分達が提供してもらっている医療に感謝し、自ら食事療法などの自己管理をしっかりと行うことが必要である」と強調した。

2734.

血管疾患の低リスク例に対するスタチンによるLDLコレステロール低下の効果:17万超患者データのメタ解析

27の無作為化試験の個々データをメタ解析した結果、スタチンによる治療は、血管疾患の低リスク例でも、ベネフィットが大きいことが、Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboratorsにより発表された。5年主要血管イベント発症リスクが10%未満の患者において、LDLコレステロール1 mmol / Lの低下は、5年間で1,000人あたり約11人の主要血管イベントの絶対的減少を招き、この利益は、スタチン療法の危険性を超えているとされた。現在のガイドラインは、概して、血管イベントリスクの低い患者は、LDL低下療法に適しているとはされていないが、研究グループは「今回の報告は、これらのガイドラインに再考の必要性があることを示唆している」と主張した。対象は、スタチン治療をコントロールと比較した22試験(134,537例)およびスタチン間で比較した5試験(39,612例)を対象とし、それを、基線における5年主要冠動脈イベント発症リスクで5つのカテゴリに分けた(~5%, 5~10%、10~20%, 20~30%, 30%~)。主要血管イベントは、主要冠動脈イベント、脳卒中、冠動脈血行再建術の施行とした。主な結果は以下のとおり。 ・スタチンによるLDL低下は、年齢、性別、ベースラインLDLコレステロール値に関係なく、主要血管イベントを低下させた[1.0mmol/LあたりRR 0.79 (95%信頼区間 0.77-0.81)]。また、血管死、全死亡も低下した。・イベントリスクの低い2つのカテゴリにおける主要血管イベントの減少は、イベントリスクのより高いカテゴリにおけるイベント減少と同程度に大きかった。1mmol/LあたりRRは、低リスクカテゴリから高リスクに向け順に、0.62(95%信頼区間:0.47-0.81)、0.69 (0.60-0.79)、0.79 (0.74-0.85)、 0.81 (0.77-0.86)、0.79 (0.74-0.84)。傾向性p=0.04。・イベントリスクの低い2つのカテゴリにおいて、主要冠動脈イベント[同 0.57(0.36-0.89)、0.61(0.50-0.74)]および冠動脈再建術[(同0.52(0.35-0.75)、0.63(0.51-0.79)]が有意に減少していた。・脳卒中は、5年主要血管イベント発症リスクが10%未満の対象者でも、リスクの高いカテゴリのリスクリダクションに類似していた[同0.76(0.61-0.95)](傾向性p=0.3) 。・スタチンによるLDLコレステロール低下において、がんの発症[同1.00(0.96-1.04)]がん死亡[(同0.99(0.93-1.06)]、血管以外の死亡に増加は認められなかった。(ケアネット 鈴木 渉)

2735.

日本睡眠学会第37回定期学術集会のご案内 会長の井上氏より

2012年6月28~30日にパシフィコ横浜にて日本睡眠学会第37回定期学術集会が開催されます。会長の井上雄一氏より寄稿文をいただきました。是非ご覧ください。来る平成24年6月28日から30日の3日間、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて、日本睡眠学会第37回定期学術集会を会長として主催いたします。本学術集会は毎年1回、睡眠ならびに生体リズムのメカニズムと病態、社会的意義を解明し、実生活に活かすことを目的に開催され、全国の基礎医学、社会医学、臨床医学、薬学、検査医学、臨床ならびに実験心理学、看護学等の研究者や臨床家が参加し、過去最多となる45のシンポジウムが予定されています。本年度は「睡眠研究 新世代への架け橋」をテーマに掲げ、快適な睡眠がストレス社会の現代で人間性を回復させるために重要であり、睡眠健康の増進が高血圧や糖尿病という生活習慣病の予防・治療や、うつ病に代表される精神疾患、ひいては自殺の抑制にも有益であることを訴求、提案していく予定です。今回は、睡眠学の学際的な進歩を広く若手研究者に普及・拡大させるのみならず、睡眠を専門としない医療関係者の皆様にも広く門戸を開くため、開催期間中は常時、学会員以外の医療関係者が聴講できるシンポジウムを開催いたします。本学会は、事前の参加申込み不要、当日会場にて参加登録頂けます。多くの医師、医療関係者の皆様のご参加をお待ちしております。 日本睡眠学会第37回定期学術集会会長 井上 雄一東京医科大学睡眠学講座 教授 医療法人社団絹和会 理事長公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター センター長 日本睡眠学会第37回定期学術集会テーマ:「睡眠研究 新世代への架け橋」会 期:2012年6月28日(木)/29日(金)/30日(土)会 場:パシフィコ横浜 http://www.pacifico.co.jp/(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1) 主なシンポジウム: ■6月28日(木)シンポジウムS2「睡眠呼吸障害と上気道~睡眠中の上気道と呼吸調節における進歩」シンポジウムS4「頭痛と睡眠障害」シンポジウムS7「不眠症治療薬開発の現状と未来」シンポジウムSS2「睡眠と生活習慣病がからむ血管内皮機能障害」 ■6月29日(金)シンポジウムS15「循環器領域における睡眠呼吸障害のガイドラインを検証する」シンポジウムS21「OSAS治療の長期化について考える」シンポジウムS22「産業保健と睡眠・睡眠障害」シンポジウムS26「高齢社会における睡眠障害の意義と対応」 ■6月30日(土)シンポジウムS30「我が国における不眠症に対する認知行動療法の現状(CBT-I up to date in Japan)」シンポジウムS34「睡眠関連運動障害」  *シンポジウムの最新情報はウェブサイトにて随時更新しています。 日本睡眠学会第37回定期学術集会ウェブサイト:http://www.c-linkage.co.jp/jssr37/本学会はFacebook、Twitterも開設しています。Facebook: http://www.facebook.com/jssr37Twitter: http://twitter.com/37jssr

2736.

乳がんにおける術後タキサン単独化学療法の忍容性は?:無作為化比較試験N-SAS BC 02

乳がんの術後化学療法においては、アンスラサイクリン系の薬剤が中心をなしてきたが、心毒性などの有害事象があることから、アンスラサイクリンを含まないレジメンの検討がなされている。わが国でも、無作為化比較試験によりタキサン単独療法が検討され(N-SAS BC 02)、現在、「乳癌診療ガイドライン」において術後化学療法の選択肢の1つとして勧められている。一方、タキサン投与により末梢神経障害が多くみられることから、忍容性の検討が求められる。立命館大学の下妻晃二郎氏らは、化学療法による末梢神経障害(CIPN)の重症度と健康関連QOLを用いて、タキサンを含む術後化学療法における相対的忍容性を評価。その結果、「患者評価によるCIPNは、タキサン単独療法がAC(アンスラサイクリン+シクロホスファミド〔商品名:エンドキサン〕)→タキサンに比べ有意に重篤であった。しかしながら、健康関連QOLの結果はタキサン単独療法の忍容性を支持している」と下妻氏らは報告した。この論文はSupport Care Cancer誌2012年5月15日付オンライン版に掲載された。本試験では、多施設第III相試験(N-SAS BC 02)で最初に登録された腋窩リンパ節転移陽性乳がん患者300例が以下の4群に無作為に割り付けられ、CIPNと健康関連QOLが評価された。 1)AC→パクリタキセル(商品名:タキソールなど) 2)AC→ドセタキセル(商品名:タキソテールなど) 3)パクリタキセル単独 4)ドセタキセル単独 CIPNの評価は患者評価(Patient Neurotoxicity Questionnaire:PNQ)と医師評価(NCI-CTC)が、また、健康関連QOLの評価は患者評価(Functional Assessment of Cancer Therapy -General:FACT-G)が用いられている。主な結果は以下のとおり。 ・PNQスコアは、タキサン単独療法群がAC→タキサン群に比べて有意に高かった(p=0.003)。パクリタキセルを含むレジメンとドセタキセルを含むレジメンの間に有意差はみられなかった(p=0.669)。・PNQスコアは、術後化学療法1年以内でほとんどが回復した。・FACT-Gスコアは、治療期間中、いずれのレジメン間においても有意差はみられなかった。(ケアネット 金沢 浩子)

2737.

【速報】「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」はここが変わる!

 4月26日(木)、日内会館(東京・本郷)にて「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」の発行に関するプレスセミナーが行われ、本ガイドラインの主な改訂点が発表された。主な改訂点は以下の通り。●絶対リスクの評価による層別化 これまでのガイドラインでは、健常者に対する相対的リスクで評価がなされてきたが、個々を絶対リスクで評価できないことは課題とされてきた。しかしながら、NIPPON DATA80をもとにリスク評価チャートが発表され、個々のリスクを絶対評価で表現することが可能となった。これにより、個人が有する危険因子を総合的に評価でき、性差や加齢の影響も解消できると期待されている。●動脈硬化性疾患の包括的管理 多くの患者は生活習慣病を併せもっており、常に包括的な判断が求められてきた。今回初めて、それぞれのガイドラインのエッセンスを織り込み、動脈硬化性疾患予防のための各種疾患(脂質異常症、高血圧、糖尿病、その他)の包括的なリスク管理チャートが加わった。●診断基準境界域の設定 これまで脂質異常症における治療エビデンスはリスクの高い患者を対象とした試験が多かった。このため、あくまで絶対リスクが高い場合に限り、治療を勧めるものであり、診断基準がそのまま治療対象となるわけではないことを認識する必要がある。このことから、診断基準では「スクリーニングのための」という記載が加えられている。 その一方で、糖尿病や脳梗塞のような危険度の高い一次予防については、早期の治療介入が予後を改善させるという多くのエビデンスがある。このため、リスクの高さに応じて判断できる境界域が設定され、治療介入が可能な領域についても提案されている。●高リスク病態 近年、CKDに伴う脂質異常とCVDリスクの関係などの報告から、新たに慢性腎臓病(CKD)が高リスク病態として扱われることとなった。 また、強力なスタチンの登場により、家族性高コレステロール血症(FH)は認識されずに治療されていることも多く、かつ、そのリスクは高いことから「原発性高脂血症」とは別項目として取り扱われている。これまで検討されてきたLDL-C100mg/dL未満よりもさらに厳しい目標値(very high riskグループ)設定の是非については、日本人でのエビデンスがないことから継続的な検討課題とされた。●non HDL-Cの導入 non HDL-CとCVDの関係を示すエビデンスの報告から、non HDL-Cがリスク区分別脂質管理目標値に加えられた。高TG血症、低HDL-C血症ではLDL-C値に加えて、non HDL-C値を加えることにより、リスク予測力が高まるとされている。 また、TCとHDL-Cから簡便に計算でき、食後採血でも使用できる点やFriedewald式が適用できない高TG血症にも使用できる点などは利点といえる。 本ガイドラインは2012年5月末の発行を予定しており、その詳細内容については2012年の7月に福岡で行われる「第44回日本動脈硬化学会総会」にて紹介される予定となっている。

2738.

「ACC/AHA末梢動脈疾患診療ガイドライン2011」改訂のポイント

米国心臓病学会財団(ACC)と米国心臓協会(AHA)は、2005年に策定した末梢動脈疾患(PAD)の診療ガイドラインを見直し、2011改訂版を公表した。5年間で集積されたエビデンスを基に下記についての見直しが図られ、患者管理と予防の新たな臨床判断の指標とすることを促している。足関節上腕血圧比(ABI)、足趾腕血圧比(TBI)検査にかかる勧告見直し禁煙指導に関する勧告見直し抗血小板療法に関する勧告見直し重症肢虚血に対する勧告見直し腹部大動脈瘤に対する勧告見直しガイドライン2011の特徴は、下肢PAD予防と早期発見の重要性がさらに強調されたことである。まず、PADの過少診断を防ぐため、足関節上腕血圧比(ABI)実施対象患者の見直しが行われた。具体的には、2005年版では、対象者のひとつに「70歳以上」があったが、2011年版では、「65歳以上」に改訂された(クラスI、エビデンスレベルB)。その上で、ABI値について、正常値は1.0~1.4、異常値は0.9以下とし、0.91~0.99は境界値と明確に定義した(クラスI、エビデンスレベルB)。また、治療においては、禁煙指導と抗血小板薬に対する変更があった。禁煙指導については、下肢PAD患者に対する心血管イベントの抑制効果のエビデンスは乏しかったものの、医師の介入による禁煙率の上昇という点を評価し、プライマリ・ケア医による積極的な禁煙プログラムの推奨強化を図っている(表1)。薬物療法については、アスピリンおよびクロピドグレルのクラスIとしての位置づけに変更はなかったが、文言の明確化が図られた。新たな推奨項目として、クラスIIaとIIbが加えられた(表2)。重症肢虚血や腹部大動脈瘤に対する、手術とバルーン血管形成術のアウトカムについては、その一方の優位性を示す長期試験結果がないため、患者の個別の状態に応じ、最も適切な動脈瘤修復の方法を選択すべきであるとされた。なお今回の改定では、腎・腸間膜動脈疾患については、新たなエビデンスが乏しいため、同分野における見直しは行われなかった。表1 禁煙指導に関する勧告【2011年勧告の主な変更ポイント】●クラスⅠ1.喫煙者または喫煙歴のある患者は、毎回の診察時にタバコ使用に関する現状について問診を受けるべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>2.(喫煙者の)患者には、禁煙のために、薬物療法や(または)禁煙プログラムへの紹介を含む禁煙のための計画策定やカウンセリングを行うべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>3.下肢PADの患者で、タバコや他の種類のタバコを使用する人は、診察を受けるすべての医師から禁煙を勧められ、行動療法や薬物療法の提供を受けるべきである。(エビデンスレベルC)<以前の勧告の変更。文言を明確化し、エビデンスレベルをBからCに変更>4.患者に禁忌や他のやむにやまれぬ臨床適応がない限り、バレニクリン、ブプロピオン、ニコチン置換療法のうち、1つ以上の薬物療法を提供するべきである。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>表2 抗血小板薬と抗血栓薬に関する勧告【2011年勧告の主な変更ポイント】●クラスⅠ1.抗血小板療法は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する。(エビデンスレベルA)<以前の勧告の変更。文言を明確化>2.アスピリン(一般的には75~325mg/日)は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する、安全で効果的な抗血小板療法として推奨される。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。文言を明確化し、エビデンスレベルをAからBに変更>3.クロピドグレル(75mg/日)は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人を含む、症候性アテローム性下肢PADの患者に対し、心筋梗塞や虚血性脳卒中、血管死リスクを減少するための、アスピリンの代替となる安全で効果的な抗血小板療法として推奨される。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。文言を明確化>●クラスIIa1.抗血小板療法は、ABIが0.90以下の無症候性の人に対し、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少させる可能性がある。(エビデンスレベルC)<新たな勧告>●クラスIIb1.ABIが0.91~0.99の、ボーダーラインの無症候性の人に対する抗血小板療法が、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクを減少する効果があるかどうかについては、まだ立証されていない。(エビデンスレベルA)<新たな勧告>2.アスピリンとクロピドグレルの併用は、間欠性跛行または重症肢虚血、下肢血行再建術歴(血管内ステント留置術または外科的)や下肢虚血による切断術歴のある人で、出血リスクの増大がなく、既知の心血管リスクの高い人を含む、症候性アテローム性下肢PAD患者に対して、心筋梗塞や脳卒中、血管死リスクの減少を目的に考慮しても良い。(エビデンスレベルB)<新たな勧告>●クラスIII(利益なし)1.アテローム性下肢PADの患者に対し、有害心血管虚血イベントのリスク減少を目的に、ワルファリンを抗血小板療法へ追加投与することは、利益がなく、大出血リスクの増大のために、潜在的に有害となる。(エビデンスレベルB)<以前の勧告の変更。エビデンスレベルをCからBに変更>参照Rooke TW, et al. 2011 ACCF/AHA Focused Update of the Guideline for theManagement of Patients With Peripheral Artery Disease (updating the 2005 guideline):a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart AssociationTask Force on Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol. 2011; 58: 2020-2045.

2739.

DPP-4阻害薬、メトホルミン単独で目標血糖値非達成例の二次治療として有効

 ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を発揮することが、ギリシャ・アリストテレス大学のThomas Karagiannis氏らの検討で示された。経口血糖降下薬であるDPP-4阻害薬は、2型糖尿病患者のHbA1cを著明に低下させ、体重増加や低血糖のリスクも少ない。種々の血糖降下薬に関する間接的なメタ解析では、二次治療薬としてのDPP-4阻害薬は他の薬剤と同等のHbA1c低下効果を有することが示唆されているが、既存の2型糖尿病の治療ガイドラインはDPP-4阻害薬の使用に関するエビデンスが十分ではないという。BMJ誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月12日号)掲載の報告。DPP-4阻害薬の有効性と安全性をメタ解析で評価研究グループは、2型糖尿病の成人患者におけるDPP-4阻害薬の有効性と安全性の評価を目的に、無作為化試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。論文の収集には、データベース(Medline、Embase、Cochrane Library)、会議記録、試験登録、製薬会社のウェブサイトを使用した。解析の対象は、単独療法としてのDPP-4阻害薬とメトホルミンあるいはメトホルミンとの併用におけるDPP-4阻害薬と他の血糖降下薬(スルホニル尿素薬、ピオグリタゾン、グルカゴン様ペプチド1[GLP-1]作動薬、基礎インスリン)を比較した無作為化対照比較試験であり、HbA1cのベースラインからの変動について評価した試験とした。主要評価項目はHbA1cの変動、副次的評価項目はHbA1c<7%達成率、体重の変化、有害事象による治療中止率、重篤な有害事象の発生率などとした。HbA1c低下効果はメトホルミンに劣るが、悪心、下痢、嘔吐が少ない1万3,881例が参加した19試験に関する27編の論文が解析の対象となった。DPP-4阻害薬群は7,136例、他の血糖降下薬群は6,745例だった。抄録のみの1試験を除き、主要評価項目に関するバイアスのリスク評価を行ったところ、3論文では低かったが、9論文は不明、14論文は高いという結果だった。メトホルミン単独療法との比較では、DPP-4阻害薬はHbA1c低下効果(加重平均差[WMD]:0.20、95%信頼区間[CI]:0.08~0.32)および体重減少効果(WMD:1.5、95%CI:0.9~2.11)が低かった。二次治療におけるDPP-4阻害薬のHbA1c低下効果はGLP-1作動薬に比べて劣り(WMD:0.49、95%CI:0.31~0.67)、ピオグリタゾンとは同等で(WMD:0.09、95%CI:-0.07~0.24)、HbA1c<7%の達成率はスルホニル尿素薬を上回らなかった(リスク比:1.06、95%CI:0.98~1.14)。体重の変動については、DPP-4阻害薬はスルホニル尿素薬(WMD:-1.92、95%CI:-2.34~-1.49)やピオグリタゾン(WMD:-2.96、95%CI:-4.13~-1.78)よりも良好だったが、GLP-1作動薬ほどではなかった(WMD:1.56、95%CI:0.94~2.18)。二次治療としてのDPP-4阻害薬とメトホルミン単独あるいはメトホルミンとの併用におけるDPP-4阻害薬、ピオグリタゾン、GLP-1作動薬に関する試験では、いずれの治療群も低血糖の発生数は最小限であった。メトホルミン+DPP-4阻害薬とメトホルミン+スルホニル尿素薬併用療法の比較試験のほとんどでは、低血糖のリスクはスルホニル尿素薬を含む群でより高かった。重篤な有害事象の発生率はピオグリタゾンよりもDPP-4阻害薬で低かった。悪心、下痢、嘔吐の発生率はDPP-4阻害薬よりもメトホルミンやGLP-1作動薬で高かった。鼻咽頭炎、上気道感染症、尿路感染症のリスクはDPP-4阻害薬と他の薬剤で差はなかった。著者は、「DPP-4阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を有するが、コストや長期的な安全性についても考慮する必要がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

2740.

抗てんかん薬「ビガバトリン」サノフィとアルフレッサが共同開発契約を締結

サノフィ・アベンティスは5日、同社の抗てんかん薬「ビガバトリン」(γ-アミノ酪酸(GABA)分解酵素阻害剤)の日本における開発に関して、アルフレッサファーマと共同開発したと発表した。ビガバトリンは、1989年に英国で最初に承認されている抗てんかん薬です。欧米ではSabrilの製品名で販売されており、英国の治療ガイドラインでは乳幼児においてみられる点頭てんかんの第一選択薬に位置づけられている。日本では、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、この点頭てんかんに対するビガバトリンの必要性が検討され、同社がが正式に開発要請を受けたという。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/download.jsp?file=068EF964-EA25-4B42-A438-7B881FB6EB69.pdf

検索結果 合計:2930件 表示位置:2721 - 2740