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成人喘息増悪予防、ICS/LABA戦略が有効かつ安全/BMJ

 喘息増悪の予防において、低用量吸入ステロイド薬+長時間作動型β2刺激薬(ICS/LABA)治療戦略が最も有効で安全であることが、オランダ・アムステルダム大学のRik J B Loymans氏によるネットワークメタ解析の結果、報告された。解析では若干の不均一性はみられたが、ICS/LABA維持療法+リリーバー、もしくは固定用量/日のICS/LABA療法の2つが同程度に有効かつ安全であることが示された。結果を踏まえて著者は、「低用量吸入ステロイド薬では不十分な場合、これら2つの戦略の選択が好ましく、ステップアップ治療の根拠となりうる」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年5月13日号掲載の報告。15の治療戦略とプラセボ介入データをネットワークメタ解析 喘息治療への長時間作動型β2刺激薬の追加は、吸入ステロイド薬を増量するよりも増悪予防において好ましいとされる。これまで、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)や同吸入ステロイド薬との合剤(ICS+LTRA)といった他の戦略と評価したいくつかのメタ解析は行われていたが、研究グループは、ネットワークメタ解析の手法を用いて、現在行われている維持療法戦略の有効性と安全性を比較した。 文献データの検索は、コクランシステマティックレビューにて行い、24週以上の維持療法について無作為化された喘息成人患者が参加しており、全文の中で喘息増悪が報告されていた試験を適格とした。 低用量吸入ステロイド療法を比較群として、主要有効性アウトカムは、重症の増悪発作の発生率とした。副次アウトカムは、中等度~重症の増悪発作率とした。また治療中断率を安全性のアウトカムとして評価した。 文献検索により解析には、15の治療戦略とプラセボを比較・追跡した64試験5万9,622人年のデータを組み込んだ。ICS/LABA以外の組み合わせ戦略は、吸入ステロイド薬に対する優越性示されず 分析の結果、重症増悪発作の予防の有効性は、ICS/LABA維持療法+リリーバーと固定用量/日のICS/LABA療法が同程度に最高位に位置づけられた。 低用量吸入ステロイド薬療法と比較して発生率比は、ICS/LABA維持療法+リリーバーが0.44(95%信頼区間[CI]:0.29~0.66)、固定用量/日のICS/LABA療法は0.51(同:(0.35~0.77)であった。 その他の組み合わせ治療戦略は、吸入ステロイド薬療法に対する優越性は示されず、すべての単剤治療は、低用量吸入ステロイド薬の単独療法に対して劣性であった。 安全性は、従来最善(ガイドラインベース)の診療で、維持療法+リリーバーの組み合わせが最も良好であった。

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高血圧患者の妊娠における周産期リスク解析から学ぶこと(コメンテーター:三浦 伸一郎 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(204)より-

高血圧患者が妊娠した場合(慢性高血圧の妊婦)の周産期リスクには、妊娠高血圧症候群ガイドライン2009にも掲載されているように加重型妊娠高血圧腎症、常位胎盤早期剥離、small for gestational age、周産期乳児死亡率・早産率の増加が挙げられている。 今回、Bramhamらが発表したメタ解析においても、慢性高血圧の妊婦のリスクは、一般集団に比し、加重型妊娠高血圧腎症、帝王切開、早産、帝王切開、出生体重2,500g未満、NICU治療や周産期死亡が高率であることであり、今までの結果をほぼ追随する結果となっている。 一般的には、メタ解析のエビデンスレベルは高い。本試験も25の国から55の臨床研究を選び合計79.5万人を対象としたものであり、規模としては問題ない。しかし、55の臨床研究にはランダム化試験も含まれているが、集団研究、前向き・後向きコホート研究も多く含まれている。さらに、論文発表が1970年代から2010年代までと40年間にわたっており、このようなことも考慮に入れて結果を吟味しなければならない。 また、このメタ解析では、3,535の試験(スクリーニングした5,511の臨床試験から重複した試験を除く)から55試験を選択している。一定のルールに従って試験が選択されており、除外された試験には不備も多かったであろうが、解析に利用された試験は全体の1.6%に過ぎない。 今回のメタ解析の結果は、今までのエビデンスの補強といった側面が強く問題はないが、メタ解析で今までの方向性と異なる結果が出た場合は、熟考することが望まれる。 いずれにしても、慢性高血圧の妊婦のリスクは高く、重症高血圧合併妊娠では、降圧薬による血圧コントロールが必要であり、十分な説明と同意が重要である。さらに、妊娠の可能性のある高血圧患者の場合には、まず、二次性高血圧の除外と厳格な生活習慣修正による血圧コントロールの重要性を説明・指導することである。

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増悪を起こしやすいCOPD患者に高用量N-アセチルシステインは有用か

 高用量のN-アセチルシステイン(NAC)はハイリスクなCOPD患者に対して、増悪頻度を減少させ、初発の増悪までの期間を短縮させるが、ローリスクなCOPD患者に対しては効果がみられない可能性があることを香港・KwongWah 病院のHoi Nam Tse氏らが報告した。CHEST誌オンライン版2014年5月15日の掲載報告。 高用量のN-アセチルシステインはCOPDの増悪を減少させることが知られてきたが、どのようなカテゴリーのCOPD患者に最も有効なのかについては明らかではなかった。 本研究の目的は、ハイリスクなCOPD患者とローリスクなCOPD患者に対する高用量のN-アセチルシステイン(600mg×2回/日)の効果を比較することである。安定期のCOPD患者(スパイロメトリーで確認)をランダムに2群に分け、現在の治療に加え、一方には高用量のN-アセチルシステイン(600mg×2回/日)、もう一方にはプラセボを追加した。各患者群のフォローアップ期間は1年間で、16週ごとに評価した。現在のGOLDのガイドラインにより定義される増悪リスク分類ごとに、さらなる分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・120例のCOPD患者の背景は93.2%が男性、平均年齢70.8 ± 0.74歳、気管支拡張薬投与前の対標準1秒量(%FEV1)は53.9 ± 2.0%であり、ベースライン特性は2群間で同等であった。・1年間フォローアップできた患者は108例であった(NAC投与群52例、プラセボ投与群56例)。・ハイリスク患者89例において、プラセボ投与群と比べて高用量NAC投与群では増悪頻度が有意に減少し[0.85 vs. 1.59回/年、p=0.019(8ヵ月時点)、1.08 vs. 2.22回/年、p=0.04(12ヵ月時点)]、初発の増悪までの時間も有意に短く(p=0.02)、1年間1度も増悪を起こさない確率が有意に高かった(51.3% vs. 24.4%、p=0.013)。・ローリスクの患者では、高用量NAC投与群とプラセボ投与群で有意な差は認められなかった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第8回

第8回:爪甲真菌症:疑えば繰り返し検査を、治療は適切な抗真菌薬と期間で 日本医真菌学会の調査によると、爪甲真菌症を含むすべての皮膚真菌症は皮膚科の新患患者の12.3%を占め、皮膚科医としても頻度の高い皮膚感染症であるとされます1)。 またプライマリ・ケア医が関わる診療現場でも、直面する頻度の高い皮膚疾患であります。他の疾患をフォロー中に見つける場面は少なからずあり、診断・治療については現場で悩みながら、もしくは経験的に治療する場面もあるかもしれません。 以下、本文 American Family Physician 2013年12月1日号2)より爪甲真菌症1.概要爪甲真菌症は手指爪や足指爪の真菌感染症で、変色・肥厚・爪床からの分離を来す。爪甲真菌症は人口の10%程度に生じるが高齢者に多くみられ、60歳以上では20%、70歳以上ともなると50%もの有病率に至る。高齢者の有病率が増える背景としては末梢血管疾患、免疫異常、糖尿病との関連がいわれている。糖尿病があると1.9〜2.8倍にリスクが増加するともいわれる。HIVを基礎疾患に持つ人では15〜40%の有病率といわれる。2.微生物学的原因さまざまな原因菌があるが、最も多いのはTrichophyton(白癬菌属)の中の皮膚糸状菌である。他の菌種は、Candidaで手指爪に多く、慢性の粘膜皮膚カンジダ症でみられる。3.分類形態学的な観点からいくつかの種類に分類される。 遠位側縁爪甲下爪真菌症(DLSO):下爪皮から爪甲・爪床へ向かい広がっていく。爪は肥厚し崩れ、萎縮する。色調は黄〜白色もしくは褐色〜黒色へ変化する。頻度は最多。 全層性爪真菌症:爪が乳白色変化し、でこぼこで、層状に分裂した状態。稀である。DLSOの亜系とも考えられる。 近位爪甲下爪真菌症(PSO):爪の近位部の下で沈殿が積み重なった状態。近位から遠位へ進行し白色変化する。免疫抑制状態を示唆する。 表在性皮膚真菌症(SO):爪表面に線状横断するような粉状の変化がみられる。 全異栄養性爪真菌症(TDO):長期の感染により爪構造が完全に破壊される。4.診断爪の変色・変形・肥大・角化、爪下沈殿あり:爪甲真菌症疑い  ↓70%イソプロピルアルコールで消毒し、切り落とした爪や爪下沈殿からの検体を採取  ↓KOHを使用し検鏡  ↓陽性:治療開始:起因微生物を同定するための検査も考慮  ↓培養確認、またPAS染色でも評価(陰性の際もこの過程を)(※PAS染色の感度:82%培養[ 53%、KOH法 46%])(※培養とPAS染色を合わせることで感度を96%まで上げられる)  ↓陽性:治療開始陰性:他の部位からの検体採取を検討5.治療と効果 臨床的治癒:爪の80〜100%が正常形態になっていること 真菌的治癒:培養、検鏡で病原体が検出されないこと フルコナゾール 100〜300mg/週 3〜6ヵ月(手指)、6〜12ヵ月(足指)カンジダ種に対して効果。副作用は嘔気・嘔吐・下痢・腹痛・頭痛・発疹。臨床的治癒率 41%、真菌的治癒率 48%。 イトラコナゾールパルス法 200mg 2回/日を1週間内服/月 2ヵ月(手指)3ヵ月(足指)持続法 200mg 1回/日 6週間(手指)12週間(足指)カンジダ種、皮膚糸状菌、アスペルギルス種などに効果。副作用は嘔気・嘔吐・低カリウム・トランスアミナーゼ上昇・中性脂肪上昇・発疹。臨床的治癒率 70%、真菌的治癒率 パルス法 63% / 持続法 69%。 テルビナフィン 250mg 1回/日を6週間(手指)12週間(足指)糸状菌、酵母菌(カンジダなど)の一部に効果。副作用は胃腸障害・発疹・頭痛。臨床的治癒率 66%、真菌的治癒率 76%。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 日本皮膚科学会雑誌.皮膚真菌症診断・治療ガイドライン 2) Westerberg DP, et al. Am Fam Physician. 2013 Dec 1;88:762-770.

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PCSK9阻害薬追加でLDLコレステロール値が改善/NEJM

 エボロクマブは前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9(PCSK9)を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体である。脂質異常症の治療において、食事療法やスタチン、エゼチミブによる薬物療法に本薬を加えると、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値が有意に低下することが、南アフリカ・ケープタウン大学のDirk J Blom氏らが行ったDESCARTES試験で示された。PCSK9は、主に肝臓で産生されるセリンプロテアーゼで、血中に分泌されて肝臓のLDL受容体に結合し、LDL受容体の分解を促進する。本薬の第II相試験でLDL-Cの改善効果が確認されている。NEJM誌2014年5月8日号(オンライン版2014年3月29日号)掲載の報告。基本治療無効例をプラセボ対照無作為化試験で評価 DESCARTES試験は、エボロクマブを用いた52週間の治療の安全性および有効性を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験。対象は、年齢18~75歳で、LDL-C≧75mg/dL、空腹時トリグリセライド≦400mg/dLの患者とし、全米コレステロール教育プログラム成人治療第3委員会(ATP III)の規定によるリスク分類で層別化した。 この分類に基づいて、4~12週の導入期間に、基本的な脂質低下療法として以下の4つの治療法のいずれかを開始した。1)食事療法、2)食事療法+アトルバスタチン10mg/日、3)食事療法+アトルバスタチン80mg/日、4)食事療法+アトルバスタチン80mg/日+エゼチミブ10mg/日。 導入期間の4週目の評価で、基本治療を行ってもLDL-C値が75mg/dL以上の患者を無作為割り付けの対象とした。4週ごとにエボロクマブ(420mg)を追加投与する群とプラセボを投与する群に2:1の割合で無作為に割り付け、引き続き48週の治療が行われた。 主要評価項目は、52週時における超遠心法で測定したLDL-C値のベースラインからの変化率とした。月1回のエボロクマブ追加投与でLDL-C値が57%低下 2012年1月〜2013年11までに9ヵ国88施設から2,120例が登録された。901例が解析の対象となり、このうち52週の治療を完遂したのは800例(88.4%)だった。 901例の内訳は、食事療法単独群が111例(プラセボ群37例、エボロクマブ群74例)、アトルバスタチン10mg群が383例(129例、254例)、アトルバスタチン80mg群が218例(73例、145例)、アトルバスタチン80mg+エゼチミブ10mg群は189例(63例、126例)であった。 プラセボ群の変化を考慮に入れたエボロクマブ群全体におけるLDL-C値のベースラインからの低下率の最小二乗平均値(±SE)は57.0±2.1%であった(p<0.001)。 基本治療別のエボロクマブ群におけるLDL-C値の低下率の最小二乗平均値は、食事療法単独群が55.7±4.2%,アトルバスタチン10mg群が61.6±2.6%、アトルバスタチン80mg群が56.8±5.3%、アトルバスタチン80mg+とエゼチミブ10mg群は48.5±5.2%であった(すべての比較に関してp<0.001)。 エボロクマブの投与により、アポリポ蛋白B、非高比重リポ蛋白(non-HDL)コレステロール、リポ蛋白(a)、トリグリセライドの値も有意に低下した。また、エボロクマブ群では鼻咽頭炎、上気道感染、インフルエンザ、背部痛が高頻度に認められた。 著者は、「エボロクマブは、さまざまな心血管リスクを有する脂質異常症患者において、食事療法単独、食事療法+低用量アトルバスタチン、食事療法+高用量アトルバスタチン±エゼチミブというガイドラインで推奨されているいずれの脂質低下療法に追加した場合でも、プラセボに比べLDL-C値を57%有意に低下させた」とまとめ、「この結果は、同一レジメンの12週投与に関する第II相試験で認められた効果と一致しており、12~52週まで効果の減弱はないとことが確認された」としている。

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「降圧薬服用患者が大幅に減る見通し、というより減らした」というほうが正確かもしれない:EBMは三位一体から四位一体へ(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(203)より-

今、世界の先進国は高齢化とともに医療費の膨張に頭を悩ませている。そのような中で、米国では2003年のJNC7から11年ぶりに2014年版ガイドラインが発表された。その中では、JNC7に比べて慢性腎臓病や糖尿病を合併高血圧、そして高齢者高血圧などの降圧目標基準が大幅に緩和された。 この10年の間には、このような疾患に対してより厳格な降圧が必要であるという大規模臨床試験の結果が相次いで発表されている。にもかかわらず、降圧目標値が緩和されたのはいかにも不自然である。当面の薬にかかる医療費を抑制しようとする国、あるいは企業の思惑があるのかもしれない。 本論文は、米国内ガイドラインにおける降圧目標緩和によって降圧薬服用者は60歳未満では20.3%から19.2%に減り、60歳以上では68.9%から61.2%への減少が見込めるといった試算をしている。降圧薬服用者が減少する見込みというよりも、減少させたと解釈するほうがよいかもしれない。 この降圧目標値の緩和でどのくらいの経済効果が出るかといった露骨な計算はさすがにしていないが、この変更が吉とでるか、凶とでるかは10年後にならなければわからない。一度、脳卒中や心筋梗塞になれば血栓溶解療法やステント治療、血管内視鏡、補助心臓といった高度医療で膨大な医療費がかかることまでは、この論文は見通してはいない。あるいは今回の基準値緩和は、脳卒中や心筋梗塞患者が増えることで、経済的に潤う米国の先端医療機器メーカーにとっては歓迎すべき試算なのかもしれない。むしろ、そちらからの圧力であることも否定できない。 Evidence-based Medicineは、臨床試験によるエビデンス、医師の裁量権、患者の臨床的背景の三位一体といわれているが、高齢化社会の到来で経済的効率が入りこむことで、四位一体の時代になったことをうかがわせる論文である。

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出血性ショックに対する輸血方法が不適切と判断されたケース

救急医療最終判決判例タイムズ 834号181-199頁概要大型トラックに右腰部を轢過された38歳女性。来院当初、意識は清明で血圧120/60mmHg、骨盤骨折の診断で入院となった。ところが、救急搬入されてから1時間15分後に血圧測定不能となり、大量の輸液・代用血漿を投与したが血圧を維持できず、腹腔内出血の診断で緊急手術となった。合計2,800mLの輸血を行うが効果はなく、受傷から9時間後に死亡した。詳細な経過患者情報とくに既往症のない38歳女性経過1982年9月2日13:50自転車に乗って交差点を直進中、左折しようとしていた大型トラックのバンパーと接触・転倒し、トラックの左前輪に右腰部を轢過された。14:00救急病院に到着。意識は清明で、轢かれた部分の痛みを訴えていた。血圧120/60mmHg、脈拍72/分。14:10X線室に移動し、腰部を中心としたX線撮影施行。X線室で測定した血圧は初診時と変化なし。14:25整形外科診察室前まで移動。14:35別患者のギプス巻きをしていた整形外科担当医が診察室の中でX線写真を読影。右仙腸関節・右恥骨上下枝(マルゲーヌ骨折)・左腸骨・左腸骨下枝・尾骨の骨折を確認し、直接本人を診察しないまま家族に以下の状況を説明した。骨盤が6箇所折れている膀胱か輸尿管がやられているかもしれない内臓損傷はX線では写らず検査が必要なので即時入院とする15:004階の入院病棟に到着。担当医の指示でハンモックベッドを用いた骨盤垂直牽引を行おうとしたが、ハンモックベッドの組立作業がうまくできなかった。15:15やむなく普通ベッドに寝かせバイタルサインをチェックしたところ、血圧測定不能。ただちに担当医師に連絡し、血管確保、輸液・代用血漿の急速注入を行うとともに、輸血用血液10単位を指示。15:20Hb 9.7g/dL、Ht 31%腹腔内出血による出血性ショックを疑い、外科医師の応援を要請、腹腔穿刺を行ったが出血はなく、後腹膜腔内の出血と診断した。15:35約20分間で輸液500mL、代用血漿2,000mL、昇圧剤の投与などを行ったがショック状態からの離脱できなかったので、開腹手術をすることにし、家族に説明した。15:45手術室入室。15:50輸血10単位が到着(輸血要請から35分後:この病院には輸血を常備しておらず、必要に応じて近くの輸血センターから取り寄せていた)、ただちに輸血の交差試験を行った。16:15輸血開始。16:20~18:30手術開始。単純X線写真では診断できなかった右仙腸関節一帯の粉砕骨折、下大静脈から左総腸骨静脈の分岐部に20mmの亀裂が確認された。腹腔内の大量の血腫を除去すると、腸管膜が一部裂けていたが新たな出血はなく、静脈亀裂部を縫合・結紮して手術を終了した。総出血量は3,210mL。手術中の輸血量1,800mL、輸液200mL、代用血漿1,500mLを併用するとともに、昇圧剤も使用したが、血圧上昇は得られなかった。19:00病室に戻るが、すでに瞳孔散大状態。さらに1,000mLの輸血が追加された。23:04各種治療の効果なく死亡確認。当事者の主張患者側(原告)の主張1.救急車で来院した患者をまったく診察せず1時間も放置し、診断が遅れた2.輸血の手配とその開始時間が遅れ、しかも輸血速度が遅すぎたために致命的となった3.手術中の止血措置がまずかった病院側(被告)の主張1.救急車で来院後、バイタルサインのチェック、X線撮影などをきちんと行っていて、患者を放置したなどということはない。来院当時担当医師は別患者のギプス巻きを行っていたので、それを放棄してまで(容態急変前の)患者につき沿うのは無理である。容態急変後はただちに血液の手配をしている。そして、地域の特殊性から血液はすべて予約注文制であり、院内には常備できないという事情がった(実際に輸血20単位注文したにもかかわらず、入手できたのは14単位であった)2.また輸血前には輸液1,000mLと代用血漿2,000mLの急速注入を行っているため、さらに失血した血液量と等量の急速輸血は循環血液量を過剰に増大させ、うっ血性心不全を起こしたり出血を助長したりする危険があるので、当時の判断は適切である3.手術所見では左総腸静脈の亀裂部、骨盤静脈叢および仙骨静脈叢からの湧き出すような多発性出血であり、血腫を除去すると新たな出血はみられなかったため、静脈縫合後は血腫によるタンポナーデ効果を期待するほかはなかった。このような多発性骨盤腔内出血の確実な止血方法は発見されていない裁判所の判断1.診断の遅れX線写真を読影して骨盤骨折が確認された時点で、きちんと患者を診察して直ぐに腹腔穿刺をしていれば、腹腔内出血と診断して直ぐに手術の準備ができたはずである(注:14:00救急来院、14:35X線読影、この時点で意識は清明で血圧120/60→このような状況で腹腔穿刺をするはずがない!!しかものちに行われた腹腔内穿刺では出血は確認されていない)2.血圧測定不能時の輸血速度は、30分間に2,000mLという基準があるのに、30分間に500mLしか輸血しなかったのは一般的な臨床水準を下回る医療行為である以上、早期診断義務違反、輸血速度確保義務違反によって死亡した可能性が高く、交通事故9割、医療過誤1割による死亡である(手術方法については臨床医学水準に背くものとはいえない)。原告側6,590万円の請求に対し、1,225万円の判決考察この事件は、腰部を大型トラックに轢過された骨盤骨折の患者さんが、来院直後は(腹腔内出血量が少なかったので)意識清明であったのに、次第に出血量が増えたため来院から1時間15分後にショック状態となり、さまざまな処置を講じたけれども救命できなかった、という概要です。担当医師はその場その場で適切な指示を出しているのがわかりますし、総腸骨静脈が裂けていたり、骨盤内には粉砕骨折があって完璧な止血はきわめて困難であったと思われますので、たとえどのような処置を講じていようとも救命は不可能であった可能性が高いと思います。本来であれば、交通事故の加害者に重大な責任があるというものなのに、ご遺族の不満がなぜ病院側に向いてしまったのか、非常に理解に苦しみます。「病院に行きさえすればどのような怪我でも治してくれるはずだ」、という過度の期待が背景にあるのかもしれません。そして、何よりも憤りを感じるのが、裁判官がまったく的外れの判決文を書いてしまっている点です。経過をご覧になった先生はすでにおわかりかと思いますが、もう一度この事件を時系列的に振り返ってみると、14:00救急病院に到着。意識清明、血圧120/60mmHg、脈拍72/分。14:10X線室に移動。撮影終了後の血圧は初診時と変化なし。14:25整形外科診察室前まで移動。14:35担当医師が読影し、家族に入院の説明。15:004階の入院病棟に到着(意識清明)。15:15血圧測定不能。15:20腹腔穿刺で出血は確認できず。後腹膜腔内の出血と判断。となっています。つまりこの裁判官は、意識障害のない、血圧低下のない、14:35の(=X線写真で骨盤骨折が確認された)状況からすぐさま、「骨盤骨折があるのならばただちに腹腔穿刺をするべきだ。そうすれば腹腔内出血と診断できるはずだ!」という判断を下しているのです。おそらく、法学部出身の優秀な法律家が、断片的な情報をつぎたして、医療現場の実態を知らずに空想の世界で作文をしてしまった、ということなのでしょう(この事件は控訴されていますので、このミスジャッジはぜひとも修正されなければなりません)。ただ医師側も反省すべきなのは、担当医師は患者を診察することなくX線写真だけで診断し、取り急ぎ家族へは入院の説明をしただけで病棟へ移送してしまったという点です。この時担当医師は、別患者のギプス巻きをわざわざ中断してまで、救急患者のフィルム読影と家族への説明を行ったという状況を考えれば、超多忙な外来業務中(それ以外にも数人のギプス巻き患者がいた)でやむを得なかったという見方もできます。しかし、裁判へと発展した理由の一つに「患者の診察もしないでX線だけで判断した」という家族の不満が背景にあります。そして、もしかすると、初期の段階で患者との会話、顔色や皮膚の様子、骨折部の視診などにより、ショックの前兆を捉えることができたのかもしれません(この約45分後に血圧測定不能となっている)。したがって、多忙ななかでも救急車で運ばれた重症患者はきちんと診察するという姿勢が大事だと思います。次に問題となるのが輸血速度です。このケースの来院から死亡するまでの出血や水分量を計算すると、 手術前手術中14:1014:10輸液500mL2,000mL1,000mL3,500mL代用血漿2,000mL1,500mL500mL4,000mL輸血 1,800mL1,000mL2,800mL出血量 3,210mL57mL3,267mLとなっています。この裁判で医療過誤と認定されたのは、輸血がセンターから到着してからの投与方法でした。輸血を開始したのは手術室に入室してから30分後、執刀の5分前であり、おそらく輸血の点滴ラインを全開にして急速輸血が行われていたと思います。そして、結果的には、約30分間の間に500mL(2.5パック)入りましたので、このくらいでよいだろう、十分ではないか、と多くの先生方がお考えになると思います。ところが資料にもあるように、出血性ショックに対する輸血速度としては、「血圧測定不能時=2,000mLを30分以内に急速輸血」と記載した文献があります。本件のような出血性ショックの緊急時には、血圧を維持するように50mLの注射器を用いてpumpingするケースもあると思いますが、その際にはとにかく早く輸血をするという意識が先に働くため、30分以内に2,000mL(10単位分)を輸血する、という明確な目標を設定するのは難しいのではないでしょうか。しかも緊急の開腹手術を行っている最中であり、輸血以外にもさまざまな配慮が必要ですから、あれもこれもというわけにはいかないと思います。しかし、裁判官が判決文を書く際の臨床医学水準というのは、論文や医学書に記載された内容を最優先しますので、本件のように出血性ショックで血圧測定不能例には30分に2,000mLの輸血をするという目安があるにもかかわらず、500mLの輸血しか行われていないことがわかると、「教科書通りにやっていないのでけしからん」という判断につながるのです。この点について病院側の、「輸血前には輸液500mLと代用血漿2,000mLの急速注入を行っているため、さらに失血した血液量と等量の急速輸血は循環血液量を過剰に増大させ、うっ血性心不全を起こしたり終結を助長したりする危険があるので、当時の判断は適切である」という論理展開は至極ごもっともなのですが、「あらゆる危険を考えて意図的に少な目の輸血をした」というのならなだしも、「輸血速度に配慮せず結果的に少量となった」というのでは、「大事な輸血という治療において配慮が足りないではないか」ということにつながります。この輸血速度や輸血量については、どの施設でも各担当医師によってまちまちであり、輸血後に問題が生じることさえなければ紛争には発展しません。ところがひとたび予測しない事態になると、あとから輸血に対する科学的根拠(なぜ輸血するのか、輸血量を決定した際の根拠、HbやHtなど輸血後に目標とする数値など)を求められる可能性が、かなり高くなりました。そこで輸血にあたっては、なるべく輸血ガイドラインを再確認しておくとともに、輸血という治療行為の根拠をしっかりとカルテに記載しておく必要があると思います。救急医療

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軽度でも毎日の運動がOA患者の障害発生・進行リスクを抑制/BMJ

 運動は強度よりも持続性が、障害発生・進行リスクの抑制に寄与することが明らかにされた。米国・ノースウェスタン大学のDorothy D Dunlop氏らが、変形性膝関節症に罹患しているかそのリスク因子を有している、49歳以上の地域住民1,680例を前向きに追跡したコホート研究の結果、報告した。運動は、身体的能力の衰えを含む健康アウトカムの改善に有用な、低コストのアプローチであることは知られている。身体活動ガイドラインなどでは、中強度の運動を推奨しているが、その強度が障害抑制に必要なのかどうかは不明であった。BMJ誌オンライン版2014年4月29日号掲載の報告より。膝に問題を抱える49歳以上の4地域の住民1,680例を2年間追跡 研究は2008年9月~2012年12月にかけて、米国内の複数地点(メリーランド州ボルチモア、オハイオ州コロンバス、ペンシルベニア州ピッツバーグ、ロードアイランド州ポータケット)で行われた多地点前向きコホート研究だった。客観的に測定した軽い運動をして過ごした時間が、障害発生と関連しているか、また障害の進行と関連しているかを検討した。 運動は加速度計で測定し、障害についてはベースライン時と2年時点でみた手段的および基本的日常生活動作(ADL)の制限により確認した。 主要アウトカムは、障害の発生とした。副次アウトカムは、ベースライン時と比較した2年時点の評価値(制限なし、手段的ADLのみ制限あり、基本的ADL制限が1~2、基本的ADL制限が3以上)で確認した障害の進行とした。軽度でも日々の運動時間が長い人ほど障害発生・進行リスクが低い ベースライン時で障害がみられず2年間の追跡を完了した被験者(49~83歳)は1,680例だった。そのうち2年間で障害発生がみられたのは149例だった。同コホートでは座りきりでない時間の平均時間は1日302分、運動時間は284分であり、運動強度は低い人が大半を占めていた。 2年間追跡の結果、同コホートにおいて、ベースライン時に過ごした軽度運動の時間と障害発生とに、有意な逆相関の関連が認められた。軽度運動の時間が長い人(四分位範囲で高い人)ほど、障害発生および障害進行のいずれもが有意に低かった。障害発生ハザード比[HR]は、社会経済的要因(年齢、性別、人種、教育、所得)と健康因子(併存疾患、うつ症状、肥満、喫煙、四肢の疼痛および機能が低いこと、膝の評価)で補正後では、対照と比べて、軽度運動時間の四分位範囲の低い群から順に1.00、0.62、0.47、0.58だった(傾向のp=0.007)。障害進行のHRは同じく、1.00、0.59、0.50、0.53だった(傾向のp=0.003)。 これらの関連性は、中強度の運動をして過ごした時間とは関連していなかった。 以上を踏まえて著者は、「今回の前向き研究データから、毎日の軽度の運動時間を増やすことが、変形性膝関節症に罹患しているまたはリスクを有している人の障害発生および進行を抑制することが示された。毎日の運動時間を増やすことが障害リスクの低下に結びつくことになる。運動強度は増やさなくともよいようだ」とまとめている。

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CliPS -Clinical Presentation Stadium- @TOKYO2013

第1回「突然の片麻痺、構音障害」第2回「幸運にも彼女は肺炎になった」第3回「診断の目利きになる」第4回「Good Morning, NY!」第5回「不明熱」第6回「Ooops! I did it, again... 難しい呼吸困難の鑑別」第7回「Shock」第8回「外見の医療」第9回「What a good case!」第10回「首を動かすと電気が走る」第11回「木を診て森も診る」第12回「なぜキズを縫うのか」第13回「半年間にわたる間欠的な腹痛」第14回「高齢者高血圧管理におけるUnmet Medicak Needs: 『血圧変動』に対してどう考える?」第15回「患者満足度」第16回「ガイドラインって、そんなに大事ですか?」第17回「EBM or XBM?ーまれな疾患における診療方針決定の一例ー」第18回「原因不明を繰り返す発熱」第19回「脳卒中後の固定した麻痺 ―数年経過しても治療により改善するのか?―」第20回「眼科での恐怖の糖尿病」第21回「顔が赤くなるのは、すれてない証拠?」第22回「失神恐るるに足らず?」第23回「背部痛で救急搬送された82歳男性」第24回「免疫不全の患者さんが歩いてきた」第25回「初発痙攣にて搬送された 22歳女性  痙攣の鑑別に難渋した1例」【特典映像】魅せる!伝える!プレゼンの極意 『CliPS(Clinical Presentation Stadium)』は、限られた時間の中で、プレゼンター自身が経験した「とっておきの患者エピソード」や聞いた人が「きっと誰かに話したくなる」興味深い症例を「症例の面白さ(学び)」と「語りの妙(プレゼンスキル)」で魅せるプレゼンテーションの競演です。プレゼンターは、ケアネットでお馴染みの達人講師から若手医師・研修医まで。散りばめられたクリニカルパール。ツイストの効いたストーリー。ユーモアとウィットに富んだプレゼンの数々は、年齢、診療科にかかわりなく、医療者のハートをつかむことでしょう。あなたも『CliPS』の世界を楽しみ、学んで下さい!第1回「突然の片麻痺、構音障害」このタイトル『突然の片麻痺、構音障害』のような患者さんをみたとき、どのようなことを思い浮かべるでしょうか? おそらく診断は脳梗塞で良いだろうと。そして、治療計画、リハビリ、再発予防、介護状況など様々な側面にまで考えは及ぶでしょう。そういった様々な脳梗塞のマネージメントのうち、一番最初の診断のところでしていただきたい「あること」についてお話しします。患者さんの血液を採った時、一滴だけあることに使っていただきたいのです。第2回「幸運にも彼女は肺炎になった」近年、認知機能障害の患者さんに出会う機会は増えています。そして、その際にはしばしば「病歴のとりづらさ」や「診察への抵抗」に苦慮します。今回登場された伊藤先生も、正直言って、それらの患者さんには煩わしさや苦手意識を感じていたそうです。今回ご紹介する患者さんに出会うまでは・・・。治らないと思っていた病気が治るって素晴らしい!そんな症例です。第3回「診断の目利きになる」山中先生が日々の診断で気をつけていることはなんでしょうか?「はじめの1分間が何より大切」、「患者さんと眼の高さを合わせる」、「患者さんは本当のことを言ってくれない」、「キーワードから読み解く」、「診断の80%は問診による」、「典型的な症状をパッケージにして問う」など。診断の達人である山中先生の『攻める問診』メソッドの原点がここに表されています。患者さんの心をつかみ、効果的な病歴聴取や診察を行うためのさまざまなTIPSをご紹介いただきます。山中先生の話芸の素晴らしさにグイと引き込まれること必至です。第4回「Good Morning, NY!」岡田先生が、研修時代を過ごされたニューヨークでのお話。異国の病院で生き残るために、「日本人らしさ」と一貫した態度で信頼を勝ち得たそうです。2年目に出会った原因不明で発熱が続き、意識不明の患者さんとの感動的なエピソードを語っていただきます。第5回「不明熱」 不明熱をテーマに、膠原病科の岸本先生が、2ヶ月間も熱が下がらず、10kgの体重減、消化管に潰瘍、動脈瘤のある、36歳男性の症例をご紹介いただきます。学習的視点も踏まえた岸本先生の分かりやすいプレゼンテ-ションも必見です。第6回「Ooops! I did it, again... 難しい呼吸困難の鑑別」 呼吸困難をテーマに2つの症例を紹介いただきます。呼吸困難で典型的な疾患が心不全と肺炎。鑑別のキーポイントは、検査所見で十分でしょうか。一見ありふれた症例も、SOAPの順序を誤ると、、、非常に重要なメッセージが導き出されます。第7回「Shock」とびきり印象的なショックの症例を紹介します。イタリアンレストランに勤務されている61歳の男性。主訴は「気分が悪い」。ショック状態ですが、熱はなく、サチュレーションも正常。不思議なことに、毎年1回、同様の症状がでると。さて、この患者さんは?第8回「外見の医療」形成外科医の立場から人の「外見」という機能を語ります。顔の機能のうち「外見」という機能は、生命に直接関係ないものの、社会生活を営む上で需要な役割を果たしています。近い未来、「顔」の移植ということもあり得るのでしょうか?第9回「What a good case!」症例は29歳の女性。発熱と前胸部痛を主訴に見つかった肺多発結節影の症例。診断は?そして、採用された治療選択は?岡田先生の分かりやすいトークと意外性と重要な教訓に満ちたプレゼンテーションをお楽しみください。第10回「首を動かすと電気が走る」山中先生のかつて失敗して「痛い目」にあった症例です。60歳の男性で、主訴は「首を動かすと電気が走る」とのこと。しかし、発熱、耳が聞こえない、心雑音など異常箇所が増えていきます。せひ心に留めていただきたい教訓的なプレゼンテーションです。第11回「木を診て森も診る」46歳男性の糖尿病患者さん。 HbA1C が,この半年間で10.5%まで悪化。教育入院やインスリン導入を勧めるも、「それは出来ない」と強い拒絶。この背景にはいくつかの社会的・心理学的な要因があったのです。家庭医視点のプレゼンテーションです。第12回「なぜキズを縫うのか」なぜ傷を縫うのでしょうか? 額の傷を昨日縫合されたばかりの患者さんが紹介されてきたとき、菅原先生はすぐに抜糸をしてしまいました。なぜ?傷の治るメカニズムや、縫合のメリット/デメリットなどを形成外科のプロがわかりやすく解説します。第13回「半年間にわたる間欠的な腹痛」慢性的な下部腹痛の症例。半年前から明け方に臍周囲から下腹部の張るような痛みで覚醒するも、排便で症状は改善。内視鏡検査では大腸メラノーシスと痔を指摘されたのみで、身体所見も血液検査も異常なし。過敏性腸症候群?実際は・・・?第14回「高齢者高血圧管理におけるUnmet Medicak Needs: 『血圧変動』に対してどう考える?」高齢者の血圧の「日内変動」からいろいろなものが見えてくる。ある1ポイントの血圧だけでなく、幅広い視点からの血圧管理が必要。明日の高血圧治療にすぐに役立つプレゼンテーション!第15回「患者満足度」患者満足度にもっとも影響を与える因子は「医師」。その「医師」は患者満足度を上げるには、何をすればいいのでしょうか。岸本先生が研修医時代に学んだ心構えとは?第16回「ガイドラインって、そんなに大事ですか?」ガイドラインはどのくらい大切なのでしょうか。プラセボ効果の歴史を振り返りつつ、ガイドラインの背景にあるものに注目。第17回「EBM or XBM?ーまれな疾患における診療方針決定の一例ー」EBMだけでは対応できない稀なケースには、XBM(経験に基づく医療)で治療に臨まなければなりません。さて、今回の症例では?第18回「原因不明を繰り返す発熱」総合診療科の外来では「不明熱」の患者さんが多く訪れます。今回の「不明熱」に対して、記者出身の医師がしつこく問診を繰り返した結果、浮かび上がってきた答えは・・・。第19回「脳卒中後の固定した麻痺 ―数年経過しても治療により改善するのか?―」ボツリヌス療法と、経皮的電気刺激(TENS)とを併用して治療を行った症例についての報告です。さて、まったく動かすことのできなくなった患者さんの上肢には、どの程度の改善が見られたのでしょうか。第20回「眼科での恐怖の糖尿病」眼科医の視点から糖尿病を考えてみます。日本人の失明原因の第2位(1位の緑内障と僅差)が糖尿病網膜症となっています。内科医と眼科医の連携はまだまだ十分ではないと言えそうです。第21回「顔が赤くなるのは、すれてない証拠?」症例は70代男性の胸痛。1~2週間チクチクした鋭い痛みが一日中持続、緊急性は低そうです。検査をしても特徴的な所見に乏しく決め手に欠けました。さて、どんな疾患なのでしょう?実は大きなヒントがこの一見奇妙なタイトルに凝縮されているのです。第22回「失神恐るるに足らず?」患者が突然、目の前で意識を失って倒れたとします。まず一番最初に行うべきことは?「失神」は原因疾患によって予後が異なるため早期の正しい見極めが重要です。76歳女性の症例を題材に、日常臨床で遭遇する「失神」への対応を解説していただきます。第23回「背部痛で救急搬送された82歳男性」症例は82歳男性。背部痛を主訴に救急外来に搬送。しかしバイタルや検査では異常はなく痛み止めのみ処方。その一週間後に再び搬送された患者さんは激しい痛みを訴えているが、やはりバイタルは安定。ところが…。研修医時代の苦い経験を語ります。第24回「免疫不全の患者さんが歩いてきた」症例は59歳男性。悪性関節リウマチ、Caplan症候群という既往を持ち、強く免疫抑制をかけられている患者。発熱やだるさを主訴に歩いて外来受診。5日後、胸部CTで浸潤影があり入院。しかし肺炎を疑う呼吸器症状がありません。次に打つべき手とは?第25回「初発痙攣にて搬送された 22歳女性  痙攣の鑑別に難渋した1例」症例は22歳の女性。回転性めまいの後2分程度の初発痙攣があり救急搬送。診察・検査の結果、特記すべき所見はほぼ見あたらず、LAC5.1とやや上昇を認めるのみ。原因不明のまま「重篤な疾患はルールアウトされた」と判断。ところが全くの誤りでした。

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てんかん患者 発作後の運転再開時期は

 てんかん患者が、原因が明らかな誘発性発作もしくは、非誘発性発作を初めて起こしてから運転を再開できる時期に関する定量的なデータが、オーストラリア・Royal Perth HospitalのBrown JW氏らによって示された。Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry誌オンライン版4月25日掲載の報告。 初発発作後にてんかんを再発するリスクは40~50%であり、このリスクが最も高い初発発作後早期の段階で運転を制限することは正当な指導である。しかしながら、この制限は、患者が運転する資格がないために生じる、職業的、教育的、社会的な制約とのバランスを考慮する必要がある。初発発作後の運転制限推奨期間は、事故の許容可能な相対リスク(事故リスク比:ARR)に関する社会の認識を含むさまざまな要因の影響を受け、管轄区域によっても大きく異なっている。運転制限の設定にあたり、個別化されたリスク評価や全面的なガイドラインに基づくなどのアプローチも考えられるが、どちらも発作再発リスクの正確なデータが必要となる。 本研究では、初発発作を起こした1,386例のてんかん患者を前向きに調査・解析を行った。発作の再発は、生存分析を用いて評価された。発作の再発リスクの範囲およびARRから求められる運転すべきでない期間を算出した。加えて、実際に運転中に起きた発作についても、追跡期間中、前向きに観察された。 主な結果は以下のとおり。・非誘発性発作を初めて起こした患者の運転制限期間8ヵ月の間、および原因が明らかな誘発性発作を初めて起こした患者の運転制限期間5ヵ月の間、運転中の発作リスクは、1,000人あたり1.04人、ARRは2.6であり、発作の再発リスクは、1ヵ月ごとに2.5%ずつ減少した。・発作が再発した患者のうち、月次リスクが1/1,000以下に減少した6ヵ月後に、14例(2%)が運転中に発作を再発した。

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肺炎・気管支喘息で入院した乳児が低酸素血症となって死亡したケース

小児科最終判決判例時報 1761号107-114頁概要2日前からの高熱、呼吸困難を主訴として近医から紹介された2歳7ヵ月の男児。肺炎および気管支喘息の診断で午前中に小児科入院となった。入院時の医師はネブライザー、輸液、抗菌薬、気管支拡張薬、ステロイドなどの指示を出し、入院後は診察することなく定時に帰宅した。ところが、夜間も呼吸状態は改善せず、翌日早朝に呼吸停止状態で発見された。当直医らによってただちに救急蘇生が行われ、気管支内視鏡で気管分岐部に貯留した鼻くそ様の粘調痰をとりのぞいたが低酸素脳症に陥り、9ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報気管支喘息やアトピーなどアレルギー性疾患の既往のない2歳7ヵ月男児。4歳年上の姉には気管支喘息の既往歴があった経過1995年1月24日38℃の発熱。1月25日発熱は40℃となり、喘鳴も出現したため近医小児科受診して投薬を受ける。1月26日早朝から息苦しさを訴えたため救急車で近医へ搬送。四肢末梢と顔面にチアノーゼを認め、β刺激薬プロカテロール(商品名:メプチン)の吸入を受けたのち総合病院小児科に転送。10:10総合病院(小児科常勤医師4名)に入院時にはチアノーゼ消失、咽頭発赤、陥没気味の呼吸、わずかな喘鳴を認めた。胸部X線写真:右肺門部から右下肺野にかけて浸潤影血液検査:脱水症状、CRP 14.7、喉にブドウ球菌の付着以上の所見から、咽頭炎、肺炎、気管支喘息と診断し、輸液(150mL/hr)、解熱薬アセトアミノフェン(同:アンヒバ坐薬)、メフェナム(同:ポンタールシロップ)、抗菌薬フルモキセフ(同:フルマリン)、アミノフィリン静注、ネブライザーメプチン®、気道分泌促進薬ブロムヘキシン(同:ビソルボン)、内服テレブタリン(同:ブリカニール)、アンブロキソール(同:ムコソルバン)、クロルフェニラミンマレイン(同:ポララミン)を指示した(容態急変まで血液ガス、経皮酸素飽和度は1回も測定せず)。10:30体温39.5℃、陥没気味の呼吸(40回/分)、喘鳴あり。11:15喘鳴強く呼吸苦あり、ステロイドのヒドロコルチゾン(同:サクシゾン)100mg静注。14:00体温36.7℃、肩呼吸(50回/分)、喘鳴あり。16:30担当医師は看護師から「喉頭部から喘鳴が聞こえる」という上申を受けたが、患児を診察することなく17:00に帰宅。19:30喉頭部の喘鳴と肩呼吸(50回/分)、夕食を飲み込めず吐き出し、内服薬も服用できず、吸入も嫌がってできない。22:00体温38.3℃、アンヒバ®坐薬使用。1月17日02:20体温38.1℃、陥没気味の呼吸(52回/分)、喘鳴あり。サクシゾン®100mg静注。06:30体温37.1℃、陥没気味の呼吸、咳あり。07:20ネブライザー吸入を行おうとしたが嫌がり、機器を手ではねつけた直後に全身チアノーゼが出現。07:30患児を処置室に移動し、ただちに酸素吸入を行う。07:40呼吸停止。07:55小児科医師が到着し気管内挿管を試みたが、喉頭部がみえにくくなかなか挿管できず。マスクによる換気を行いつつ麻酔科医師を応援を要請。08:10ようやく気管内挿管完了(呼吸停止後30分)、この時喉頭部には異常を認めなかった。ただちにICUに移動して集中治療が行われたが、低酸素脳症による四肢麻痺、重度意識障害となる。10:00気管支鏡で観察したところ、気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた。10月26日約9ヵ月後に低酸素脳症により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張肺炎、気管支喘息と診断して入院し各種治療が始まった後も、頻呼吸、肩呼吸、陥没呼吸、体動、喘鳴がみられ呼吸障害は増強していたのだから、気管支喘息治療のガイドラインに沿ってイソプレテレノールの持続吸入を追加したり気管内挿管の準備をするべきであったのに、入院時の担当医師は入院後一度も病室を訪れることなく、午後5:00過ぎに帰宅して適切な指示を出さなかった。夜間帯の当直医師、看護師も、適切な病状観察、病態把握、適切な治療を怠ったため、呼吸不全に陥った。病院側(被告)の主張小児科病棟は主治医制ではなく3名の小児科医による輪番制がとられ、入院時の担当医師は肺炎、気管支喘息の患者に対し適切な治療を行って、起坐呼吸やチアノーゼ、呼吸音の減弱や意識障害もないことを確認し、同日の病棟担当医であった医師へきちんと申し送りをして帰宅した。その後も呼吸不全を予測させるような徴候はなかったので、入院翌日の午前7:00過ぎに突発的に呼吸不全に陥ったのはやむを得ない病態であった。裁判所の判断入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息の診断を下してそれに沿った注射・投薬の指示を出しているので、ほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたことになる。そのため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった。ところが、入院後一度も病室を訪れず、経皮酸素飽和度を測定することもなく、ガイドラインに沿った治療のグレードアップや呼吸停止に至る前の気管内挿管の機会を逸し、容態急変から死亡に至った。患者側1億545万円の請求に対し6,950万円の判決考察1. 呼吸停止の原因について裁判では呼吸停止の原因として、「肺炎や気管支喘息に起因する気道閉塞によって、肺におけるガス交換が不十分となり呼吸不全に陥った」と判断しています。そのため、小児気管支喘息のガイドラインを引用して、「イソプロテレノールの持続吸入をしなかったのはけしからん、気道確保を準備しなかったのは過失だ」という判断へとつながりました。ところが経過をよくみると、容態急変後の気管支鏡検査で「気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた」ため、気管支喘息の重積発作というよりも、粘調痰による気道閉塞がもっとも疑われます。しかも、当直医が気管内挿管に手間取り、麻酔科医をコールして何とか気管内挿管できたのは呼吸停止から30分も経過してからでした。要するに、痰がつまった状態を放置して気道確保が遅れたことが致命的になったのではないかと思われます。裁判ではなぜかこの点を重視しておらず、定時の勤務が終了し午後5:00過ぎに帰宅していた入院時の担当医師が(帰宅後も)適切な指示を出さなかった点をことさら問題としました。2. 主治医制をとるべきか当時この病院では部長医師を含む小児科医4名が常駐し、夜間・休日の当直は部長以外の医師3名で輪番制をとっていたということです。昨今の情勢を考えると、小児医療を取り巻く状況は大変厳しいために、おそらく4名の小児科医でもてんてこ舞いの状況ではなかったかと推測されます。入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息と診断した乳児に対し、血管確保のうえで輸液、抗菌薬、アミノフィリン持続点滴を行い、ネブライザー、各種内服を指示するなど、中~大発作を想定した気管支喘息に対する処置は行っています。それでも呼吸状態が安定しなかったので、ステロイドのワンショット静注を2回くり返しました。通常であれば、その後は回復に向かうはずなのですが、今回の患児は内服薬を嫌がってこぼしたり、ネブライザーの吸入をさせようとしてもうまくできなかったりなど、医師が想定した治療計画の一部は実施されませんでした。そして、当直帯は輪番制をとっていることもあって、入院時にきちんとした指示さえ出しておけば、後は当番の病棟担当医がみてくれるはずだ、という認識であったと思われます。そのため、11:00過ぎの入院から17:00過ぎに帰宅するまで6時間もありながら(当然その間は外来業務を行っていたと思いますが)一度も病室に赴くことなく、看護師から簡単な報告を受けただけで帰宅し、自分の目で治療効果を確かめなかったことになります。もし、帰宅前に患者を診察し、呼吸音を聴診したり経皮酸素飽和度を測るなどの配慮をしていれば、「予想以上に粘調痰がたまっているので危ないぞ」という考えに至ったのかも知れません。ところが、本件では血液ガス検査は行われず、急性呼吸不全の徴候を早期に捉えることができませんでした。そして、裁判でも、「入院時の担当医師はほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった」という、耳が痛くなるような判決が下りました。ここで問題となるのが、主治医制をとるべきかどうかという点です。今回の総合病院のように、医師個人への負担が大きくならないようにグループで患者をみる施設もありますが、その弊害としてもっとも厄介なのが無責任体制に陥りやすいということです。本件でも、裁判では問題視されなかった輪番の小児科当直医師が容態急変前に患者をみるべきであったのに、申し送りが不十分なこともあってほとんど関心を示さず、いよいよ呼吸停止となってからあわてて駆けつけました。つまり、入院時の担当医師は「5:00以降はやっと業務から解放されるので早く帰宅しよう」と考えていたでしょうし、当直医師は「容態急変するかも知れないなんて一切聞いてない。入院時の医師は何を考えているんだ」と、まるで責任のなすりつけのような状況ではなかったかと思われます。そのことで損をするのは患者に他なりませんから、輪番制をとるにしても主治医を明確にしておくことが望まれます。ましてや、「輪番制であったことを考慮しても、(入院指示を出した医師が)患者の治療について第一に責任を負う」という厳しい判決がおりていますので、間接的ではありますが裁判所から「主治医制をとるべきである」という見解が示されたと同じではないかと思います。小児科

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医療裁判では、医師にどんな尋問が行われるのか? 医学部で模擬証人尋問を開催

 4月10日(木)、群馬大学医学部において、病棟実習が始まる同学部の5年生(約100名)を対象に「医療裁判の模擬証人尋問」が行われた。同大の医学教育の一環として、今回初めて開催されたもので、講師として医師資格をもつ3人の弁護士が指導にあたった。 始めに大磯 義一郎氏(浜松医科大学教授)が、今回取り上げる事案である「アルコール性肝硬変の患者が外来通院していたところ、肝細胞がんで死亡した」ケースについて、その概要説明と基本的な民事裁判の流れをレクチャーした。 講義では、ケースの内容について肝細胞がんの発生機序、疫学、検査、診断、標準的な治療法などの臨床的事項や訴訟に至るまでの経過、裁判開始から証人尋問までの裁判のプロセスを詳細に説明した。また、レクチャーの中では、ケースで問題となった点(例として、本人や家族への説明内容やカルテへの記載など)のほか、将来医学生が医師として臨床現場に出た場合、どのような訴訟リスクが想定されるのか(たとえばガイドライン推奨ではない治療の実施やカルテ不記載の責任など)といった、実践的な視点からも解説がなされた。 続いて、医師への模擬証人尋問となり、原告(患者)側代理人として富永 愛氏(富永愛法律事務所)が、被告(病院)の医師役として大磯氏が、被告(病院)側代理人として小島 崇宏氏(大阪A&M法律事務所)が、それぞれ役割を演じ、実際の医事裁判での証人尋問を再現した。 医師への証人尋問は、提出された証拠書面(カルテや陳述書など)に基づいて、原告側が被告側のさまざまな義務違反が今回の結果を招いたことを証明すべく、約1時間にわたり行われた。 今回のケースでの尋問内容は、「肝細胞がんの経過観察」「精密検査義務」「検査結果報告義務」についてであり、被告側がそれぞれの義務違反を行ったか、また行ったとすればその義務違反と患者死亡という結果に因果関係があったかが、尋問にて争われた。 尋問では、被告側代理人が事実の確認と前述の3つの義務違反の存在を払拭するような尋問を行うのに対し、原告側代理人は提出された証拠との食い違いや各義務違反の証明を導くような尋問を医師役に対して投げかけた。実際に医事裁判で医師にどのような内容の質問がなされるのか、と見守る医学生たちの緊張感漂う空気の中、真に迫ったやり取りが繰り広げられた。 証人尋問後には、聴講した医学生に自身が裁判官として判決を下す「判決シート」が配布された。これにより、模擬裁判を聴講して原告、被告どちらを勝訴とするか、そう考える理由が集計され、報告された。講師の講評の後に質疑応答となり、医学生からは「カルテに書いてはいけない内容はあるのか?」との質問に対して、「カルテには、診断の推論過程を除き、原則何でも書いたほうがよい。とくに患者さんやその家族への伝達は後々裁判になった場合、大切な経過証拠となる」などの具体的なアドバイスがなされ、模擬証人尋問を終えた。 同様のレクチャーは、今後も全国各地で医学生、医療機関で開催され、医師・医療従事者への訴訟リスクの教育・啓発が行われる。●ケアネットの医事裁判のコーナー MediLegal リスクマネジメント

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初発の心血管疾患を予測する指標としてHbA1cの有用性は高くない…(コメンテーター:吉岡 成人 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(197)より-

糖尿病は心血管疾患(cardiovascular disease: CVD)の発症・進展に関連したリスク因子であり、糖代謝に関わる臨床指標がCVDの発症と密接に関連しているという結果を示す疫学データは多い。2010年のACC(American College of Cardiology foundation)/AHA(American Heart Association)のガイドラインでは、糖尿病患者ではなくとも、狭心症の症状がない成人におけるCVDのリスクアセスメントにHbA1cの測定は有用ではなかろうかと結論付けられていた。しかし、糖尿病患者におけるHbA1cの測定には臨床的な意味があるが、非糖尿病者ではその有用性がないのではないかという意見もあり、2013年に改訂されたガイドラインでは、HbA1cの測定は推奨されていない。 このような背景のもとに、73件の前向き試験から、糖尿病やCVDの既往がない29万4,998人を抽出して、従来リスク因子(年齢、性別、喫煙状況、収縮期血圧値、総コレステロール値、HDLコレステロール値など)とHbA1cなどの血糖値に関連した代謝指標に関する情報を加えた場合のCVDリスク予測モデルを新たに作成し、アウトカムのリスク層別化(C統計値)、10年リスク予測(低:5%未満、中:5~7.5%未満、高:7.5%以上)の再分類(ネット再分類改善)について検討したEmerging Risk Factors Collaborationのデータが本論文である。  今回の検討では、血糖値に関連した代謝指標として、HbA1c値(<4.5、4.5~<5、5~<5.5、5.5~<6、6~<6.5、≧6.5%)のみならず、空腹時血糖値、随時血糖値、経口ブドウ糖負荷後の血糖値のデータの有用性も検討されている。 検討の対象となった者の登録時における平均年齢は58歳、男女比はほぼ1:1で、86%がヨーロッパまたは北米民族、HbA1c 5.37±0.54%であり、追跡期間は中央値で9.9年、経過中の致死的・非致死的CVDの発生は、2万840例(冠動脈心疾患1万3,237例、脳卒中7,603例)であった。 従来の心血管リスク因子を補正した後の分析において、HbA1c値とCVDリスクとの関連性はJ-カーブを示し、HbA1c値が4.5~5.5%の群におけるハザード比を1とするとそれ以下の群ではハザード比が1.2、HbA1cが6.5%を超える群では1.5となっていた。CVDリスクと血糖値の指標がJ-カーブを示す傾向は、空腹時血糖値、随時血糖値、負荷後血糖値でも同様であった。HbA1c値とCVDのリスクに関しての関連性は、総コレステロール、トリグリセリド、またはeGFR値で補正した場合に相関がわずかに高まったものの、HDLコレステロール、CRPでの補正後には関連性が減弱した。 CVDリスク予測モデルのC統計値(リスクスコアの低い症例のほうが生存期間は長いことを、実際のデータでどのくらいの確率で正しいかを示す値、0.5~1で示される。将来の予測をする時間軸を加味した値)は、従来の心血管リスク因子のみでは0.7434(95%信頼区間[CI]:0.7350~0.7517)。HbA1cに関する情報を追加した場合のC統計値の変化は0.0018(95%CI:0.0003~0.0033)で、10年リスク予測分類のネット再分類改善値は0.42(-0.63~1.48)と報告されている。 75g糖負荷試験における2時間値とCVDの関連が示唆される疫学成績がある一方で、糖尿病患者の食後血糖値に介入して、CVDの発症リスクを軽減できたとする臨床成績はない。一般に、糖尿病ではなくとも食後高血糖や糖負荷後の高血糖を示す場合には、CVDの発症リスクが高まるのではないかと考えられている。しかし、今回の検討からは、非糖尿病患者において、高血糖のマーカーとしてのHbA1cを従来のCVDリスク因子に追加して検討を行っても、CVDの新規発症に関する予測精度が高まるわけではないことが再確認されたといえる。

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肝炎「検査無料」「高い治癒率」「医療費助成」認知度高めて

 2014年4月23日(水)、ヤンセンファーマ株式会社主催の「肝炎の検査・治療、医療現場の現状に関するメディアセミナー」が開催された。まず、同社政府機関・医療政策 日本担当のブルース J. エルズワース氏より、全国1万5,000人を対象とした肝炎ウイルスについての全国意識調査の結果が発表された。本調査は、日本における肝炎ウイルス検査率の向上、抗ウイルス療法の普及、医療費助成の認知を促進することを目的として行われたものであり、その結果、日本におけるウイルス検査率の低さ、早期治療による完治率や治療費助成についての認知度の低さなどが浮き彫りになった。 その後、武蔵野赤十字病院 副院長の泉 並木氏、広島大学の田中 純子氏よりC型肝炎の現状や治療について語られ、「最近の治療は、短期間で高い治癒率が見込め、医療費助成も受けられる。積極的に肝炎ウイルス検査を受け、陽性であればすぐに治療を始めてほしい」と訴えた。日本の肝がん死亡者を減らしたい 日本には、B型およびC型肝炎ウイルスの患者・感染者は370万人いると推定されている(B型肝炎:約110~140万人/C型肝炎:約190~230万人)。また、日本における肝がん死亡者数は、2010年時点で約3.3万人であり、その約80%はC型肝炎ウイルス、約10%はB型肝炎ウイルスの持続感染に起因しているという。C型肝炎の感染予防対策として、2002年から全国の地方自治体で無料検診が行われ、一定の成果が上がっているものの、自身の感染に気づいていないと考えられる感染者は約80万人と推定されている。B型肝炎の対策としては、1986年からB型肝炎キャリアの妊婦から生まれる新生児へのワクチン接種が開始され、キャリア率が0.04%にまで低下したものの、依然として課題が残されている。肝炎の検査率、治療率に影響を与える要素とは このような状況のもと、日本における疾患や検査、治療などの認識の実態を把握し、肝炎ウイルス検査の受検率や肝炎ウイルスの治療率に影響を与える要素を探ることを目的として、同社は2013年11月15日から20日まで、一般国民1万5,003人を対象としたインターネット調査を行った。対象者の構成は、日本全国および都道府県レベルにおいて性別、年齢(20代、30代、40代、50代、60歳以上)の項目で代表性が保たれるように設計された。検査を受けたことがない53%、受けたが自覚なし23% 調査した1万5,003人のうち、53%が肝炎ウイルス検査を受けたことがないと回答した。検査を受けていない主な理由は、「とくに理由なし」、「自分は感染していないと思うから」、「定期健康診断や人間ドックの検査項目に入っていないから」とのことであった。また、23%は外科手術や出産などの際に肝炎ウイルス検査を受けたと考えられるが、受検の自覚がなく、関心の低さが浮き彫りになった。肝炎ウイルス検査を受けていない人に聞いた、受けてみたいと思うきっかけとしては、「無料検査の知らせが送られてきたら」、「定期健康診断や人間ドックのついでに検査できれば」といった意見が多かった。肝炎の治療費、治療期間、治癒率に対する不安がある 肝炎の治療を積極的に受けるようになるきっかけとしては、「治療費の個人負担額が安い」、「仕事や家事を休まずに治療ができる」、「治療により完治する確率が高い」といった項目を選んだ人が多かった。また、肝炎の治療が格段に進歩し、完治する確率が高くなっていることについて、76%もの人が認識していなかった。さらに、肝炎治療費の公費補助制度の存在を認知していない人は90%にのぼった。検査が無料であることを知らない 行政の取り組みとして、肝炎ウイルス検査を無料実施していることに関する認知度はわずか13%であった。しかし、無料検査の周知や啓発活動、肝炎ウイルスに関する国民の正しい理解の促進に向けた取り組み、感染が疑われる人に対するフォローアップについては、80%以上がとても重要であると回答した。まとめ 日本の肝がん死亡者を減らすには、まず、肝炎ウイルス検査の受検率を向上させなければならない。とはいえ、「自分には関係ない」と考える人が多いなか、関心を高めるのは難しい。やはり、定期健診の際に検査が受けられるようになると、状況は大きく変わるのではないだろうか。もちろん、検査の結果、感染が判明した場合は、自覚症状がなくても必ず医療機関を受診することが重要である。現在の肝炎治療は大きく進歩し、短期間で高い治癒率が見込めるうえ、公費補助制度もある。「高い治療費は払えない」、「副作用も心配だし、長い間治療しても完治しないのでは?」といった懸念を持ち、治療をためらっている人がいたら、ぜひ、助言していただきたい。関連記事 2013年11月にC型肝炎治療ガイドラインが大幅改訂―新薬登場で

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妊婦の肥満、BMI 5単位増大で死産リスク1.24倍/JAMA

 妊娠中のBMI上昇はわずかであっても、胎児死亡や死産、新生児・周産期および乳児死亡のリスクを増大することが明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのDagfinn Aune氏らが、38件のコホート試験について行ったメタ解析の結果、BMIが5単位増大するごとに、同リスクは1.15~1.24倍増大することが示された。これまで両者の関連についていくつかの試験で示唆されていたが、各試験ではサンプルサイズや死亡報告例が少ないため、有意な関連を見つけるには至っていなかった。JAMA誌2014年4月16日号掲載の報告より。BMIが毎5単位増大で胎児死亡1.21倍、死産1.24倍、新生児死亡は1.15倍 研究グループは、PubMedやEmbaseを基に、妊娠中のBMIと胎児死亡、死産、乳児死亡のリスクとの関連について、リスク比を報告しているコホート試験を対象に、メタ解析を行った。 解析対象となったのは38試験(44件の結果を報告)で、胎児死亡の総数は1万147例、死産は1万6,274例、周産期死亡は4,311例、新生児死亡は1万1,294例、乳児死亡が4,983例だった。ランダム効果モデルを用いて、要約リスク比を推定した。 その結果、妊娠中のBMIが5単位増大することによる要約リスク比は、胎児死亡が1.21(95%信頼区間:1.09~1.35、7試験)、死産が1.24(同:1.18~1.30、18試験)、周産期死亡が1.16(同:1.00~1.35、11試験)、新生児死亡が1.15(同:1.07~1.23、12試験)、乳児死亡が1.18(同:1.09~1.28、4試験)だった。 非線形モデル検定の結果、いずれも関連は有意で、なかでも死産との関連が最も明白だった。BMIが30だと、胎児死亡発生リスクは1万妊娠件中102件、20だと同76件 BMIがそれぞれ20、25、30の女性では、妊娠した場合の胎児死亡発生絶対リスクは、それぞれ1万妊娠件数中76件、82件、102件だった。 死産はそれぞれ1万妊娠件数中、40、48、59件、周産期死亡は66、73、86件、新生児死亡は20、21、24件、乳児死亡は33、37、43件だった。 これらの結果を踏まえて著者は、「女性の妊娠プランに関する体重管理ガイドラインに、今回の所見を盛り込み、胎児死亡や死産、乳児死亡の負荷を減らすようにしなくてはならない」とまとめている。同時に、「今回の検討で、母体肥満が胎児死亡、死産および乳児死亡のリスクを増大するというエビデンスが示された。しかし予防のためのBMI最適値は判明していない」とも指摘している。

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にきび経口抗菌薬治療、6ヵ月超継続は約18%に減少

 にきび治療における経口抗菌薬治療について、使用期間とコストの変化を保険請求データベースで後ろ向きに分析した結果、使用期間は以前より短縮していることが報告された。米国・ペン ステートミルトンS. ハーシーメディカルセンターのYoung H. Lee氏らによる分析で、6ヵ月超の使用は17.53%であったという。また、6ヵ月超から6ヵ月に短縮したことで、1人当たり580.99ドルのコストが削減されたことも示唆された。にきび治療における経口抗菌薬の治療期間に関する研究は限定的であるが、最近のにきび治療ガイドラインでは、3~6ヵ月とすべきことが示されている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2014年4月8日号の掲載報告。 分析は、保険請求データベースのMarketScanを用いて、抗菌薬治療期間とコストを抽出して行われた。 主な結果は以下のとおり。・平均治療期間は129日であった。・治療経過のほとんど(93%)が、9ヵ月未満であった。・3万1,634例の経過のうち、1万8,280例(57.8%)では外用レチノイド(商品名:ディフェリン)の併用投与が行われていなかった。・外用レチノイド併用投与例における平均治療期間は133日(95%信頼区間:131.5~134.7日)、非併用例の平均治療期間は127日(同:125.4~127.9日)であった。・抗菌薬治療期間6ヵ月超の平均過剰直接コストは、580.99ドル/人であった。・本分析は、保険請求データベースからの分析のため、診断および医療者の特定、またにきびの重症度が不明であった点で限定的であった。 以上を踏まえて著者は、「以前のデータと比べて抗菌薬使用期間は短縮していた。抗菌薬の使用期間の短縮に注目が集まるなか、5,547例(17.53%)が6ヵ月超であった。6ヵ月超が6ヵ月に短縮されることで、1人当たり580.99ドルのコスト削減となる可能性があった」と示唆している。

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高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014) ~改訂のポイント~

欧州、米国でも改訂が相次ぐ中、2014年4月1日、遂に日本の『高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)』が公表されました。今回のライブセミナーでは、作成委員長の島本和明先生が、改訂の重要なポイントをわかりやすく解説します。本動画は、4月8日に実施されたライブ講演会のアーカイブ配信です。ご期待ください。1.ガイドラインの作成方針2.家庭血圧評価と降圧目標3.第一選択薬と併用4.脳・心・腎合併高血圧5.糖尿病合併高血圧6.高齢者・女性の高血圧7.質疑応答(1)8.質疑応答(2)9.質疑応答(3)

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