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乳がん温存術後の寡分割全乳房照射施行が増加/JAMA

 乳房温存手術後の放射線照射について、分割照射回数を少なくし1回照射線量を大きくする寡分割全乳房照射(WBI)の施行が増えていることが、米国・ペンシルベニア大学のJustin E. Bekelman氏らによる調査の結果、明らかにされた。2008~2013年の14の民間ヘルスケアプランに加入する女性患者の動向を調べた結果、診療ガイドラインに適合しタスクフォースが同照射を支持する患者群では10.6%から34.5%に施行が増え、適合基準に達していなかったが同照射を認可された患者群でも8.1%から21.2%に増えていた。またコストも従来照射法に比べて有意に低く抑えられていたという。JAMA誌2014年12月17日号掲載の報告より。米国女性を対象に2008年から2013年の施行動向を分析 2011年に米国放射線腫瘍学会では、無作為化試験のエビデンスに基づき、早期乳がんの乳房温存手術後の放射線療法について、寡分割WBIを行うことを支持し診療ガイドラインに明記した。施行を推奨する基準は、50歳以上、温存術後の病理学的ステージT1またはT2N0、全身化学療法未施行、中心軸平面での線量均一性が±7%以内の4つであった。しかし、基準に達していなくても推奨を支持するとして、とくに50歳未満でも行えることが示されていた。 研究グループは、後ろ向き観察コホート研究にて、2013年の米国成人女性の7.4%をカバーする14の民間ヘルスケアプラン加入者のデータを入手し、診療支払データから、早期ステージ乳がん患者で乳腺腫瘤摘出を受け、WBIを施行した患者について分析した。 患者は2コホートに層別化して検討した。(1)寡分割支持コホート(8,924例):50歳以上、化学療法未施行または腋窩リンパ節転移なし、(2)寡分割認可コホート(6,719例):50歳未満または化学療法施行または腋窩リンパ節転移あり。 寡分割WBIの治療期間は3~5週間、従来WBIは5~7週間であった。 主要評価項目は、寡分割WBIと従来WBIの総医療コスト、放射線関連コスト、患者の持ち出しコスト。患者および臨床的特性(治療年、年齢、併存疾患、化学療法歴、腋窩リンパ節転移、強化放射線治療、臨床設定、その他変数)も調べた。寡分割支持コホートで10.6%から34.5%に、コストは有意に低下 寡分割WBIの施行は、寡分割支持コホートにおいて、2008年の10.6%(95%信頼区間[CI]:8.8~12.5%)から2013年は34.5%(同:32.2~36.8%)に増えた。寡分割認可コホートでは、8.1%(同6.0~10.2%)から21.2%(同:18.9~23.6%)へ増えた。 補正後平均総医療コストは、診断後1年間で、寡分割支持コホートでは、寡分割WBI群は2万8,747ドル、従来WBI群は3万1,641ドルで、有意な差が認められた(両群差:2,894ドル、95%CI:1,610~4,234ドル、p<0.001)。寡分割認可コホートでは、WBI群は6万4,273ドル、従来WBI群は7万2,860ドルで、有意な差が認められた(両群差:8,587ドル、95%CI:5,316~1万2,017ドル、p<0.001)。 1年間の患者持ち出しコストの補正後平均額については、いずれのコホートにおいても両群間で有意な差はなかった。 今回の結果について著者は、「寡分割WBIは、早期乳がんの女性患者において施行が増えていたが、2013年時点では施行が支持される群でも34.5%、認可される群では21.2%であった」とまとめている。

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医療事故調シンポジウム開催のご案内

 2014年6月、紆余曲折を経て、いわゆる医療事故調査制度が創設されることとなり、現在、厚生労働省において、「医療事故調査制度の施行に係る検討会」が開催され、省令事項およびガイドラインについて検討がなされています。 厚生労働省ホームページ「医療事故調査制度に関するQ&A」に記載されているとおり、本制度の目的は、「医療の安全を確保するために、医療事故の再発防止を行うこと」です。そして、同Q&Aに記載されているように、「医療に関する有害事象の報告システムについてのWHOのドラフトガイドラインでは、報告システムは、「学習を目的としたシステム」と、「説明責任を目的としたシステム」に大別されるとされており、ほとんどのシステムではどちらか一方に焦点を当てていると述べています。そのうえで、学習を目的とした報告システムでは、懲罰を伴わないこと(非懲罰性)、患者、報告者、施設が特定されないこと(秘匿性)、報告システムが報告者や医療機関を処罰する権力を有するいずれの官庁からも独立していること(独立性)などが必要とされています。 今般のわが国の医療事故調査制度は、同ドラフトガイドライン上の「学習を目的としたシステム」に当たります。したがって、責任追及を目的とするものではなく、医療者が特定されないようにする方向であり、第三者機関の調査結果を警察や行政に届けるものではないことから、WHOドラフトガイドラインでいうところの非懲罰性、秘匿性、独立性といった考え方に整合的なものとなっています。 本シンポジウムでは、医療安全のための医療事故調査とはどのようにしなければならないか、現在の医療安全、報告システムの世界標準をお示しし、国民・患者がより安全な医療を受けることができるための制度について検討したいと思います。 開催内容は次のとおりです。【テーマ】 国民・患者のための医療事故調査制度へ向けてより安全な医療を築くために必要なこと【シンポジスト(予定)】(五十音順) 有賀 徹(昭和大学病院病院長・全国医学部長病院長会議「大学病院の医療事故対策委員会」委員長) 井上 清成(井上法律事務所) 大磯 義一郎(浜松医科大学医学部教授) 小田原 良治(一般社団法人日本医療法人協会常務理事) 佐藤 一樹(いつき会ハートクリニック院長) 田邉 昇(中村・平井・田邉法律事務所) 【概要】 日時 2015年1月18日(日) 開催時間9:00~13:00 会場 昭和大学病院 入院棟地下1階 臨床講堂    (〒142-8666 東京都品川区旗の台1丁目5−8) 費用 無料 申し込み 氏名、所属、連絡先を記載のうえ、下記事務局までお申し込みください。 lawjimu@hama-med.ac.jp

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【2014年コンテンツ閲覧ランキング】人気を集めた記事・スライド・動画のトップ30を発表!

デング熱やエボラ出血熱の流行、高血圧治療の新しいガイドライン、人間ドック学会が発表した新たな健診基準値など、今年の医療界での出来事が反映された記事やスライド、動画を多数お届けしてまいりました。そのなかでもアクセス数の高かった人気コンテンツ30本を紹介します。 1位 デング熱、患者さんに聞かれたら・・・ 2位 NHK特集で報道された「シロスタゾールと認知症の関係」についての患者さん説明用パンフレットを作りました。 (Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~) 3位 頓服薬の査定のポイント (斬らレセプト — 査定されるレセプトはこれ!) 4位 岩田健太郎が緊急提言!エボラ出血熱にこう備えよ! (CareNeTV LiVE! アーカイブ) 5位 高血圧治療ガイドライン2014が発刊 6位 医療者は正しい理解を。人間ドック学会“基準値”の解釈 7位 Dr.山下のアリスミアのツボ 第1回 8位 非専門医も知っておきたいうつ病診療(2)うつ病治療の基本 9位 カルベジロール査定のポイント (斬らレセプト — 査定されるレセプトはこれ!) 10位 ケアネットオリジナル『患者説明用スライド』 ~高血圧Vol.1~ 11位 デング熱での解熱剤に注意~厚労省がガイドライン配布 12位 ケアネットオリジナル 『患者説明用スライド』 ~高血圧Vol.2~ 13位 妊娠糖尿病の診断基準の覚え方 (Dr. 坂根のすぐ使える患者指導画集 -糖尿病編-) 14位 エキスパートに聞く!「血栓症」Q&A Part2 15位 知識を整理!GERD診療(2)症状を診る 16位 レビー小体型認知症、アルツハイマー型との違いは? 17位 アシクロビル(商品名: ゾビラックス)の査定 (斬らレセプト — 査定されるレセプトはこれ!) 18位 非専門医も知っておきたいうつ病診療(1)うつ病の現状と診断 19位 休診日(12月28日)の休日加算の査定 (斬らレセプト — 査定されるレセプトはこれ!) 20位 アジスロマイシンとレボフロキサシンは死亡・不整脈リスクを増加する (1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより~) 21位 休日診療をやってみた (スキンヘッド脳外科医 Dr. 中島の 新・徒然草) 22位 内科医のための睡眠障害(1) 知って得する睡眠の話 23位 自分の適正なお寿司の皿数、わかりますか? (Dr. 坂根のすぐ使える患者指導画集 -糖尿病編-) 24位 ナトリウムから食品相当量への換算方法を教えるコツ (Dr. 坂根のすぐ使える患者指導画集 -糖尿病編-) 25位 金属がなくてもMRIで熱傷を起こすことがある (Dr. 倉原の”おどろき”医学論文) 26位 出血性ショックに対する輸血方法が不適切と判断されたケース (リスクマネジメント 救急医療) 27位 知識を整理!GERD診療(1)基本を整理 28位 ケアネットオリジナル 『患者説明用スライド』 ~高血圧Vol.5~ 29位 非専門医も知っておきたいうつ病診療(4)抗うつ薬の副作用と対処法 30位 非専門医も知っておきたいうつ病診療(3)抗うつ薬の使い分け #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

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治療抵抗性の慢性咳嗽に対する新選択肢(AF-219)の有効性について(解説:小林 英夫 氏)-291

 外来診療で、咳止めを処方してくださいという声をしばしば耳にされませんか。そんなときはどう対処されていますか。当然ですが、疾患を問わずすべての咳嗽を抑制できる夢の薬は存在していません。細菌性肺炎に鎮咳薬のみを投与しても効果は期待できないので、まず咳嗽の基盤病態の鑑別が医師の出発点ですが、受診者は余計な検査などせず咳止めを出してくれればそれでけっこうです、と主張することも少なくないと思います。 無理とは思いつつ、幅広い病態に有効な鎮咳処方箋はないかと願うこともあります。 新薬AF-219は、気道の迷走神経に発現し咳嗽感覚の過剰反応に関与するP2X3 受容体に対する低分子拮抗薬で、米国Afferent製薬により治験が進められている。同社ホームページによると、P2X3受容体は無髄の細径C神経線維に特異的で内臓、皮膚、関節にも存在し痛覚や臓器機能に関与している。その機序はATPをリガンドとして活性化されるチャンネルで、痛覚感作経路に発現する。英国で慢性咳嗽への治験(本論文)、米国で変形性関節炎による疼痛治療、さらに膀胱痛への治験中とのことである。本来の役割からも咳嗽よりも鎮痛効果を狙っている印象である。本薬を鎮咳に用いた根拠は、気道の迷走神経C線維にP2X3受容体が存在すること、モルモットではATPやヒスタミン吸入させるとP2X受容体を介した咳嗽反射が強まることなどであった。 本研究は、基礎疾患の明らかでない難治性(治療抵抗性)慢性咳嗽患者を対象とし、第II相二重盲検無作為化プラセボ対照試験、単一医療機関でのクロスオーバー法(2週間服薬、2週間wash out、2週間服薬)で実施された。結果は、咳嗽頻度は75%低下し期待できる鎮咳薬である、となっている。 臨床的に満足できる鎮咳薬が少ない実状を踏まえればAF-219に期待したい一方で、論文を読み込むとまだまだ未解決点がある。評価できる点として、primary endpointである鎮咳効果を音響学的自動咳嗽記録機(VitaloJAK)により計測し客観的量的評価がなされている。同時に主観的なvisual analogue scale (VAS)などもsecondary endpointとしているが、咳嗽回数を記録することの価値は大きい。 マイナス点としては対象集団の曖昧さがある。本論文に限らないが慢性咳嗽の研究では回避できない問題である。エントリー基準は、閉塞性障害、胃食道逆流、喫煙、感染、薬剤性咳嗽などを除外し、明らかな咳嗽の原因疾患を有さず、治療によっても8週間以上咳嗽が継続する症例、が選択されている。本邦で重視されるアトピー咳嗽の概念は導入されていない。また、呼吸機能は施行されているが胸部CTについては記載がなく、英国での試験なので未施行と推測される。さらに平均咳嗽罹病期間は9年間である。どのような病態が混在しているのかが不明瞭であろう。次の問題点は、24例中6例が有害事象により服薬中止となっている。重篤な副反応はみられないものの、全例で味覚障害が出現している点が用量変更で解決できるかどうかが大きな課題であろう。これは舌味蕾にP2X3が存在するためで、減量により味覚障害が回避できる可能性があると考察されている。 抗てんかん薬であるガバペンチン、徐放性モルヒネ、サリドマイド、リドカイン吸入などが最新の咳嗽研究対象薬であるが、いずれも十分な鎮咳効果は得られなかった。鎮咳薬という分野での選択肢が少ない、遅れているという現状からは、P2X3受容体拮抗薬の今後に期待したいが、実臨床への過程には今いっそうの検討を経なければならない。さらに有効疾患の絞り込みも望まれる。なお、本邦の咳嗽診療指針として日本呼吸器学会編集の「咳嗽に関するガイドライン第2版(PDF)」は無料ダウンロード可能なので参照をお薦めしたい。

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難治性強迫性障害に有用な抗精神病薬は何か

 英国の国立医療技術評価機構(NICE)の強迫性障害ガイドライン2006では、SSRI治療抵抗性の強迫性障害(OCD)に対し、抗精神病薬が推奨されている。英国のキングス・カレッジ・ロンドン、サウスロンドン&モーズリーNHSトラストのDavid Veale氏らは、体系的な検討を目的に、OCDに対するSSRI治療の増強療法としての非定型抗精神病薬の臨床的な有用性についてメタ解析を行った。BMC psychiatry誌オンライン版2014年11月29日号の報告。 研究グループは、成人OCDを対象とした最低4週間のプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験を抽出した。主要評価項目は、Yale-Brown強迫尺度(Y-BOCS)スコア。包含基準は、Y-BOCSスコア16点以上、少なくとも1剤の適切なSSRIまたはクロミプラミン投与(ランダム化前少なくとも8週間)とした。データソースには、2013年9月までのMEDLINE、EMBASE、PsycINFO、システマティックレビューのコクランデータベース(CDSR)、トライアルレジストリ、医薬品データベース、メーカーデータベースを用いた。フォレストプロットでは、薬剤とプラセボ間のY-BOCSの差を示した。 主な結果は以下のとおり。・2つの研究から、アリピプラゾール治療は短期的に効果があることが示された。・リスペリドンや一般的な抗精神病薬における短期的な効果は、少しだけ認められた。・クエチアピンまたはオランザピンは、プラセボと比較して有用であるとのエビデンスは認められなかった。 以上の結果より著者らは、「SSRIや認知行動療法に反応しないOCD患者に対する増強療法としては、アリピプラゾールまたはリスペリドンを低用量で慎重に使用すべきである。また、有効性の評価のためには、4週間観察する必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 強迫症状に注意が必要な第二世代抗精神病薬は 難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」 SSRIで著効しない強迫性障害、次の一手は  担当者へのご意見箱はこちら

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【医療ニュース トップ100】2014年、最も読まれた「押さえておくべき」医学論文は?

今年も、4大医学誌の論文を日本語で紹介する『ジャーナル四天王』をはじめ、1,000本以上の論文をニュース形式で紹介してきました。その中で、会員の先生方の関心の高かった論文は何だったのでしょう? ここでは、アクセス数の多いものから100本を紹介します。 1位 日本男性の勃起硬度はアレと関連していた (2014/11/13) 2位 日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学 (2014/1/7) 3位 子供はよく遊ばせておいたほうがよい (2014/3/28) 4位 思春期の精神障害、多くは20代前半で消失/Lancet (2014/1/27) 5位 なぜコーヒーでがんリスクが低下? (2014/7/31) 6位 メロンでかゆくなる主要アレルゲンを確認 (2014/4/15) 7位 新たな輸液プロトコル、造影剤誘発急性腎障害の予防に有効/Lancet (2014/6/9) 8位 体幹を鍛える腹部ブレーシング、腰痛に効果 (2014/5/7) 9位 コーヒーを多く飲む人は顔のシミが少ない (2014/8/7) 10位 スタチンと糖尿病リスク増大の関連判明/Lancet (2014/10/9) 11位 スルピリドをいま一度評価する (2014/5/16) 12位 米国の高血圧ガイドライン(JNC8)のインパクト/JAMA (2014/4/16) 13位 インフルエンザワクチン接種、無針注射器の時代に?/Lancet (2014/6/16) 14位 新規経口抗凝固薬4種vs.ワルファリン-心房細動患者のメタ解析-/Lancet (2013/12/25) 15位 アルコール依存症、薬物治療の減酒効果は?/JAMA (2014/5/29) 16位 SGLT2阻害薬「トホグリフロジン」の日本人への効果 (2014/2/28) 17位 大人のリンゴ病 4つの主要パターン (2014/7/29) 18位 脳動脈瘤、コイルvs. クリッピング、10年転帰/Lancet (2014/11/12) 19位 ACE阻害薬を超える心不全治療薬/NEJM (2014/9/8) 20位 アルツハイマーに有用な生薬はコレ (2014/11/14) 21位 塩分摂取と死亡リスクの関係はJカーブ/NEJM (2014/8/25) 22位 スタチン投与対象者はガイドラインごとに大きく異なる/JAMA (2014/4/14) 23位 食後血糖によい食事パターンは?(低脂肪vs低炭水化物vs地中海式) (2014/3/27) 24位 成人ADHDをどう見極める (2014/5/21) 25位 各種ダイエット法の減量効果/JAMA (2014/9/16) 26位 牛乳1日3杯以上で全死亡リスクが2倍/BMJ (2014/11/13) 27位 腰痛持ち女性、望ましい性交体位は? (2014/11/21) 28位 ロマンチックな恋愛は幸せか (2014/3/26) 29位 無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与 (2014/5/8) 30位 下肢静脈瘤、ベストな治療法は?/NEJM (2014/10/10) 31位 せん妄管理における各抗精神病薬の違いは (2014/9/18) 32位 降圧薬投与量の自己調整の有用性/JAMA (2014/9/11) 33位 深部静脈血栓症の除外診断で注意すべきこと/BMJ (2014/3/20) 34位 StageII/III大腸がんでのD3郭清切除術「腹腔鏡下」vs「開腹」:ランダム化比較試験での短期成績(JCOG 0404) (2014/2/26) 35位 たった1つの質問で慢性腰痛患者のうつを評価できる (2014/2/21) 36位 スタチン時代にHDL上昇薬は必要か/BMJ (2014/8/7) 37位 就寝時、部屋は暗くしたほうがよいのか:奈良医大 (2014/8/29) 38位 認知症のBPSD改善に耳ツボ指圧が効果的 (2014/10/28) 39位 統合失調症患者の突然死、その主な原因は (2014/4/18) 40位 うつ病と殺虫剤、その関連が明らかに (2014/7/9) 41位 帯状疱疹のリスク増大要因が判明、若年ほど要注意/BMJ (2014/5/26) 42位 慢性のかゆみ、治療改善に有用な因子とは? (2014/7/1) 43位 女性の顔の肝斑、なぜ起きる? (2014/5/8) 44位 DES1年後のDAPT:継続か?中断か?/Lancet (2014/7/30) 45位 駆出率が保持された心不全での抗アルドステロン薬の効果は?/NEJM (2014/4/23) 46位 レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は (2014/10/30) 47位 アトピー性皮膚炎患者が避けるべきスキンケア用品 (2014/2/6) 48位 タバコの煙を吸い込む喫煙者の肺がんリスクは3.3倍:わが国の大規模症例対照研究 (2014/6/18) 49位 世界中で急拡大 「デング熱」の最新知見 (2014/10/17) 50位 円形脱毛症とビタミンDに深い関連あり (2014/4/10) 51位 不眠の薬物療法を減らすには (2014/7/23) 52位 オメプラゾールのメラニン阻害効果を確認 (2014/11/6) 53位 タバコ規制から50年で平均寿命が20年延長/JAMA (2014/1/16) 54位 ICUでの栄養療法、静脈と経腸は同等/NEJM (2014/10/15) 55位 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット (2014/3/17) 56位 COPDにマクロライド系抗菌薬の長期療法は有効か (2014/1/13) 57位 座りきりの生活は心にどのような影響を及ぼすか (2014/5/12) 58位 PSA検診は有用か:13年後の比較/Lancet (2014/8/22) 59位 気道感染症への抗菌薬治療 待機的処方 vs 即時処方/BMJ (2014/3/17) 60位 血圧と12の心血管疾患の関連が明らかに~最新の研究より/Lancet (2014/6/19) 61位 マンモグラフィ検診は乳がん死を抑制しない/BMJ (2014/2/21) 62位 機能性便秘へのプロバイオティクスの効果 (2014/8/14) 63位 超高齢の大腸がん患者に手術は有用か:国内での検討 (2014/2/14) 64位 糖尿病予防には歩くよりヨガ (2014/8/4) 65位 乳がん術後リンパ節転移への放射線療法、効果が明確に/Lancet (2014/3/31) 66位 75歳以上でのマンモグラフィ検診は有効か (2014/8/11) 67位 大腸がん術後の定期検査、全死亡率を減少させず/JAMA (2014/1/23) 68位 「歩行とバランスの乱れ」はアルツハイマーのサインかも (2014/5/13) 69位 食事由来の脂肪酸の摂取状況、国によって大きなばらつき/BMJ (2014/4/28) 70位 心房細動合併の心不全、β遮断薬で予後改善せず/Lancet (2014/9/19) 71位 薬剤溶出ステントの直接比較、1年と5年では異なる結果に/Lancet (2014/3/24) 72位 ピロリ除菌、糖尿病だと失敗リスク2倍超 (2014/8/21) 73位 認知症にスタチンは有用か (2014/7/25) 74位 RA系阻害薬服用高齢者、ST合剤併用で突然死リスク1.38倍/BMJ (2014/11/20) 75位 腰痛へのアセトアミノフェンの効果に疑問/Lancet (2014/8/6) 76位 食べる速さはメタボと関連~日本の横断的研究 (2014/9/12) 77位 うつになったら、休むべきか働き続けるべきか (2014/9/16) 78位 英プライマリケアの抗菌治療失敗が増加/BMJ (2014/10/1) 79位 総胆管結石疑い 術前精査は必要?/JAMA (2014/7/21) 80位 歩くスピードが遅くなると認知症のサイン (2014/10/8) 81位 前立腺がん、全摘vs.放射線療法/BMJ (2014/3/10) 82位 緑茶が認知機能低下リスクを減少~日本の前向き研究 (2014/6/3) 83位 高力価スタチンが糖尿病発症リスクを増大させる/BMJ (2014/6/16) 84位 乳がんの病理学的完全奏効は代替エンドポイントとして不適/Lancet (2014/2/27) 85位 Na摂取増による血圧上昇、高血圧・高齢者で大/NEJM (2014/8/28) 86位 抗グルタミン酸受容体抗体が神経疾患に重大関与か (2014/8/15) 87位 歩数を2,000歩/日増加させれば心血管リスク8%低下/Lancet (2014/1/8) 88位 肩こりは頚椎X線で“みえる”のか (2014/3/19) 89位 地中海式ダイエットと糖尿病予防 (2014/4/7) 90位 閉塞性睡眠時無呼吸、CPAP vs. 夜間酸素補給/NEJM (2014/6/26) 91位 揚げ物は肥満遺伝子を活性化する?/BMJ (2014/4/3) 92位 6.5時間未満の睡眠で糖尿病リスク上昇 (2014/9/4) 93位 セロトニン症候群の発現メカニズムが判明 (2014/3/14) 94位 日本発!牛乳・乳製品を多く摂るほど認知症リスクが低下:久山町研究 (2014/6/20) 95位 肥満→腰痛のメカニズムの一部が明らかに (2014/8/8) 96位 低炭水化物食 vs 低脂肪食 (2014/8/7) 97位 認知症患者の調子のよい日/ 悪い日、決め手となるのは (2014/3/21) 98位 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか (2014/7/2) 99位 血糖降下強化療法の評価―ACCORD試験続報/Lancet (2014/8/20) 100位 小児BCG接種、結核感染を2割予防/BMJ (2014/8/21) #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

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気管支喘息、スピリーバ レスピマットへの期待

 2014年12月3日、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社によるスピリーバ レスピマット喘息適応追加記者発表会が都内にて行われた。当日は足立 満氏(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター山王病院アレルギー内科)が「喘息治療の現状とスピリーバ レスピマットへの期待」と題し講演した。■本邦における喘息コントロールの課題 本邦における喘息死は大きく減少し2012年には1,728人と2000人を下回っている。だが、一見コントロールされているようでも、実際は症状が残る患者は少なくない。 2012年の本邦の報告によれば、ICS(吸入ステロイド薬)またはICS/LABA(吸入ステロイド・長時間作用性β刺激薬合剤)を継続使用しても喘息症状が発現・悪化する患者は86.2%、そのうち31.5%は緊急受診や入院などの喘息増悪を起こしている1)。このように患者のコントロールレベルは万全とはいえない状況である。さらにコントロール不十分・不良患者は重症例だけでなく軽症例でも6~7割みられる2)。■喘息治療薬として見直される抗コリン薬 抗コリン薬は喘息治療薬としては本邦では主流の位置付けとはいえない。しかし、海外では中等症から重症例の救急治療において使用が推奨されるなど、その位置付けは本邦以上に確立しているという。抗コリン薬の作用機序はβ刺激薬をはじめとする気管支拡張薬とは異なる。また気管支拡張による肺機能改善以外にも、入院の減少などの効果も認められることから、近年は治療選択肢の1つとして期待されている。 そのようななか、COPD治療薬の定番である長時間作用性抗コリン薬(LAMA)チオトロピウムについても、気管支喘息の臨床エビデンスが続々と報告されている。ICS/LABAでコントロール不能な中等~重症の喘息患者におけるチオトロピウム(スピリーバ レスピマット)の有用性を明らかにした国際大規模試験PrimoTinA3)に続き、本邦の国内長期試験であるCadenTinA試験の結果が紹介された。本試験は、中用量のICSによっても症状が持続する軽~中等症の喘息患者を対象に行われた無作為化並行群間比較試験である。結果、最も薬剤効果の低下するトラフ値の評価において、ICS/チオトロピウム(レスピマット5μg/日)併用群は、ICS単独群に比べ110mL以上の有意なFEV1の上昇を認め、喘息関連QOLも改善している。■重症持続型喘息とはいえ適応は広い スピリーバ レスピマットの本邦での喘息の適応は重症持続型に限られる。ただし、この重症持続型とは、現在の治療ステップに、その治療による現状の症状を加味した評価である。つまり、ステップ2の軽症持続型の治療を行っていても、「症状が毎日ある」など現治療に対する症状が中等症持続型の基準を満たすほど不良な場合、重症持続型の治療適応となる(詳しくは喘息予防・治療ガイドラインを参照)。重症持続型の治療といっても、その適応範囲は広い。「調査データはないものの、現在の治療ステップに治療を加味した“真の重症持続型”はけっして少なくないであろう」と足立氏は述べた。 最後にレスピマット吸入デバイスのデモンストレーションが行われた。レスピマットは噴霧速度が遅く霧の状態が長く保たれることが、記者にも印象的であった。薬剤の効果以外にも薬剤噴霧と吸気を同調しやすいというメリットもありそうだ。【参考文献】1) 秋山一男. アレルギー・免疫. 2012; 19: 1120-1127.2) 大田健ほか. アレルギー. 2010; 59: 2010-2020.3)Kerstjens HA, et al. N Engl J Med. 2012; 367: 1198-1207.

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ALK陽性肺がんに対する標準治療を確立した重要な試験(解説:倉原 優 氏)-285

 このPROFILE 1014試験は、未治療のALK陽性進行非扁平上皮非小細胞肺がんの患者343例を、クリゾチニブ(商品名:ザーコリ)250mg1日2回(3週間1サイクル)投与する群(172例)と標準化学療法を行う群(171例)にランダムに割り付けたものである。標準化学療法群は、3週間おきにペメトレキセド500mg/m2、シスプラチン75mg/m2あるいはカルボプラチンAUC5~6を最長6サイクルまで投与している。重要な点は、両群とも増悪後にクロスオーバーが認められている点である。プライマリエンドポイントは無増悪生存期間(PFS)、セカンダリエンドポイントは奏効率、全生存期間(OS)などである。 試験の結果、PFSはクリゾチニブ群が有意に優れており、PFS中央値はクリゾチニブ群が10.9ヵ月、標準化学療法群が7.0ヵ月、ハザード比は0.45(95%信頼区間:0.35~0.60、p<0.0001)だった。クロスオーバーが認められているため、OSには差はみられなかった。奏効率もクリゾチニブ群が74%(95%信頼区間:67~81)、化学療法群が45%(95%信頼区間:37~53)で、群間差29%(95%信頼区間:20~39、p<0.0001)とクリゾチニブ群が有意に良好であった。 この試験は、ALK陽性非小細胞肺がんのファーストラインにクリゾチニブを用いることが標準治療と位置付けた歴史的な研究である。クロスオーバーが可能であるためOSには差は出なかったものの、PFSに大きな差が出たことは臨床医にとってインパクトが大きかった。過去のレトロスペクティブ解析によれば、ALK陽性例ではクリゾチニブ単剤投与の有無によってOSが大きく異なるのではないかと考えられており1)、本研究と併せて考えると、ALK陽性例に対してクリゾチニブを投与しないという選択肢は現時点ではないだろう。 ただし、現行の日本のガイドラインではパフォーマンスステータス(PS)不良例に対するクリゾチニブの使用は推奨されていない。今後、PS不良例に対するエビデンスが蓄積されれば、クリゾチニブを現場で使用する頻度が増えてくるかもしれない。 クリゾチニブはMET阻害薬として開発された経緯があるため、ALKのみを阻害するわけではない。これまでの肺がんに対する抗がん剤の歴史においてマルチターゲット阻害薬は結果が芳しくないが、ALK阻害薬に関しては期待ができそうな報告が多い。とりわけROS1阻害作用がホットトピックであり2)、最近取り沙汰されるアレクチニブ(商品名:アレセンサ)とクリゾチニブの位置付けが今後どうなるのか注目である。

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【CLEAR!ジャーナル四天王 トップ20発表】鋭い論文解説がラインナップ!

臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、日本の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しているNPO法人です。 本企画『CLEAR!ジャーナル四天王』では、CareNet.comで報道された海外医学ニュース『ジャーナル四天王』に対し、鋭い視点で解説します。 コメント総数は280本(2014年11月現在)。今年掲載されたなかからアクセス数の多かった解説記事のトップ20をお届けします。 1位 「降圧薬服用患者が大幅に減る見通し、というより減らした」というほうが正確かもしれない:EBMは三位一体から四位一体へ(解説:桑島 巌 氏) (2014/5/20) 2位 これがなぜLancetに!?(解説:桑島 巌 氏) (2014/9/19) 3位 慢性心不全治療のパラダイムシフト:ACE阻害薬はもはや標準薬ではない!(解説:平山 篤志 氏) (2014/9/8) 4位 脳動静脈奇形(未破裂)の予防的切除や塞栓術などの介入療法では予後を改善できない(解説:中川原 譲二 氏) (2014/1/13) 5位 過度な減塩は死亡率を増やすか? ガイドライン推奨1日6g未満に一石を投じる研究(解説:桑島 巌 氏) (2014/8/21) 6位 患者に「歩け、歩け運動」を勧める具体的なエビデンス(解説:桑島 巌 氏) (2014/1/17) 7位 心臓マッサージは深度5cmで毎分100回:その自動化への課題(解説:香坂 俊 氏) (2014/1/8) 8位 心房細動アブレーションにおける新しいMRI指標:そのメリットとデメリット(解説:山下 武志 氏) (2014/2/18) 9位 DESは生命予後改善効果を持つ!?従来の説に一石(解説:野間 重孝 氏) (2014/7/28) 10位 よいメタ解析、悪いメタ解析?(解説:後藤 信哉 氏) (2014/1/21) 11位 急性心不全治療には新たな展開が必要では?(解説:平山 篤志 氏) (2014/1/10) 12位 大腸腺腫切除後の長期的な大腸がん死亡率(解説:上村 直実 氏) (2014/9/30) 13位 急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略―4万5,000症例メタ解析(解説:中澤 達 氏) (2014/10/29) 14位 期待が大きいと失望も大きい:プラセボをおくことの重要性を教えてくれた試験。(解説:桑島 巌 氏) (2014/4/15) 15位 これでC型肝炎を安全に完全に治せる?(解説:溝上 雅史 氏) (2014/5/29) 16位 スタチン治療はやはり糖尿病を増やすのか?そのメカニズムは?(解説:興梠 貴英 氏) (2014/11/6) 17位 破裂性腹部大動脈瘤に対する開腹手術 vs. 血管内修復術(解説:中澤 達 氏) (2014/2/12) 18位 診察室での血圧測定はもういらない?-高血圧診療は、自己測定と薬の自己調整の時代へ(解説:桑島 巌 氏) (2014/9/17) 19位 小児BCG接種、結核菌への感染を2割予防-(解説:吉田 敦 氏) (2014/9/26) 20位 このテーマまだ興味がわきますか?アブレーション vs. 抗不整脈薬(解説:山下 武志 氏) (2014/3/6) #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

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糖尿病患者の治療実行度を高めるコツ

 2014年11月21日、都内にて 「糖尿病治療とライフスタイル」をテーマにメディアセミナー(主催:日本イーライリリー株式会社、以下イーライリリー社)が開催された。 第1部では、白井 未佳氏(イーライリリー社 広報・CSR部)より2型糖尿病患者とその医師を対象に同社が実施した意識調査の結果が発表された。その結果を受けて、第2部では石井 均氏(奈良県立医科大学 糖尿病学講座教授)より、患者と医師間におけるコミュニケーションの重要性が語られた。 石井氏は、「患者との良好なコミュニケーションを築き、“患者の主観”でQOLがより高くなると思う治療法を選択させることが重要である。そうすることで、治療の実行度が高くなり、良好な血糖コントロールの維持につながる」と述べた。■2型糖尿病治療とライフスタイル」意識調査概要 イーライリリー社は、日本における2型糖尿病患者のライフスタイルと糖尿病治療の実態を明らかにすることを目的として、2014年10月23日~10月29日にインターネット調査を行った。調査対象は、糖尿病治療として経口剤を服用している2型糖尿病患者408名および2型糖尿病患者に薬物治療を実施している医師348名であった。■調査結果からわかったこと(1)生活が忙しいと感じている2型糖尿病患者は多く、ライフスタイルは多様化している(2)患者はそれぞれのライフスタイルに合った治療を求めている(3)治療と生活の両立を困難にする要因として、医師は忙しさや不規則な生活と考えている一方、患者にとっては心理的な要因も同様に大きい(4)服薬を遵守している患者はわずか4人に1人。守れない最大の理由は、外出時に薬を忘れること(5)治療と生活の両立の難しさを、医師が考えるほど、患者は医師に相談できていない 白井氏は、「患者が医師に積極的に生活上の課題について相談をすることで、より個々のニーズに合った治療を受けることができる可能性がある」と述べた。■2型糖尿病治療の現状 糖尿病を治療する目的は、血糖値を管理することで合併症を予防し、健康な人と変わらないQOLを保つことである。 糖尿病と診断された患者は、医師から糖尿病治療の目的を説明され、血糖値の自己管理が合併症を予防するというエビデンス1)を基に、血糖値の自己管理方法を指導される。しかし、現実には実行度が高いとは言えない。■「患者自身が考えるQOL」が治療実行度に影響 石井氏は、糖尿病治療関連QOL(DTR-QOL)質問票を開発し、糖尿病患者におけるQOLの心理的特性が治療実行度に与える影響を評価した2)。その結果、至適血糖コントロールを得るためには、「患者自身が考えるQOL」が関係していることがわかった。 つまり、治療を受ける本人の考え方を優先し、自分のQOLがより高くなると思う方法を選択させることで、治療の実行度が高まると考えられる。それがHbA1cの低下につながり、健康維持年数の延長が期待できるという。■治療プランに納得して治療を受けてもらうために 2012年に改訂された米国・欧州糖尿病学会合同の2型糖尿病治療に関するガイドラインでは、より個別性を重視した血糖コントロールを行う“A Patient-Centered Approach”の概念が紹介されている。つまり、科学的な治療は患者の生活に根付いたものでなければならない。石井氏は、「そのためには、患者・医師間で良好なコミュニケーションを築き、患者のライフスタイルと両立しやすい治療プランをしっかりと話し合い、納得して治療を受けてもらうことが重要である」と強調した。

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肺がん患者と医療者の乖離を埋める―WJOG

 「患者さんのためのガイドブック よくわかる肺がんQ&A(第4版)」(編集:NPO法人西日本がん研究機構、以下WJOG)の発行を記念して、「肺がんの最新治療に関するセミナー~分子標的薬の登場で肺癌治療は大きく変わった~」が2014年11月28日、都内にて行われた。当日は、中川和彦氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 教授)、本書の編集を行った澤 祥幸氏(岐阜市民病院 がん診療局長)が講演した。 中川氏の講演では、肺がん診療の最新情報が紹介された。講演の中で、中川氏は次のように述べた。肺がんの治療は最近の20~30年で大きく進歩している。とくに2002年のEGFR–TKIゲフィチニブの登場以降、ALK阻害薬、第2世代EGFR-TKIが次々に登場している。今後も第3世代EGFR-TKI、PD-1やPD-L1など新たな免疫療法なども治療選択肢として加わってくると考えられ、肺がん治療は大きく変化していくことが予想される、と述べた。また、このように新たな臨床試験が数多く出てくる中、EBMや診療ガイドラインを踏まえ、肺がんについての正しい情報を研究者から一般社会に伝えることが重要であるとも述べた。 続いて、澤 祥幸氏が、肺がん患者の疑問とその対応に関して次のように述べた。がん患者は告知の際、医療者に対し自分自身の不安を解決するため希望的回答を期待している。しかし、がんであるという事実は最悪の知らせである。将来への見通しを根底から否定的に変えてしまうため、冷静な状態ではいられない。担当医にしてみれば、しっかり説明したのに理解してもらえない。一方、患者も家族も真剣に説明を聞いていたはずなのに覚えていないという事態に陥る。また、希望的回答への期待を裏切られたことが医療者への不信を招き、診療への否認行動をとるなど、その後のトラブルにつながることもある。さらに、悪い知らせを聞いた後、一部の患者は適応障害やうつ病に陥る。がん患者の自殺率は健康人の4倍との報告もあり、これも大きな問題である。 がんと診断された後、がん患者・家族はどのような情報を求めているのか? 肺がんの種類・進行度、標準治療といった情報を伝えようとする医療者とは乖離があるようだ。WJOGはその乖離を明らかにするため、各地で開催する市民講座の際、患者・家族の疑問や質問を収集した。その結果、患者の疑問・質問の上位は、「もっといい病院・医者は?」「抗がん剤治療が不安」「補完代替医療、免疫療法」「術後の痛み」「がん告知の問題」などであった。実際にサプリメントや高額な民間療法に頼る患者、治療拒否により手遅れになる患者、医療費控除制度を知らず経済的不安から治療を拒否するケースも少なくないと、澤氏は言う。 「よくわかる肺がんQ&A(第4版)」は、このように収集した疑問・質問をまとめる形で、本年(2014年)11月7日に発行された。Q&A は119項目からなり、医師向けのガイドラインにはない、補完代替医療の説明、不安・衝撃へのアドバイス、医療費といった項目も含まれる。今版は市民の要望に応え、書店でも購入可能である。価格帯も市民が気軽に買えるよう2,200円(+税)に設定。今後はwebフリーダウンロードの予定もある。amazon リンク:「患者さんのためのガイドブック-よくわかる肺がんQ&A(編集;西日本がん研究機構-WJOG)」はこちら。

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糖尿病患者へのルーチンCCTA、CADリスク低下せず/JAMA

 冠動脈疾患(CAD)について症状のない糖尿病患者(1型または2型)への、冠動脈CT血管造影(CCTA)によるルーチンのCADスクリーニングに疑問を呈する所見が報告された。スクリーニング実施群の全死亡や非致死的心筋梗塞発生などが、標準的な糖尿病治療群と比べて有意な減少に結び付かなかったという。米国・Intermountain Medical Center Heart InstituteのJoseph B. Muhlestein氏らが行った無作為化試験FACTOR-64の結果、示された。CADは糖尿病患者において心血管イベント発生や死亡の重大要因であるが、心筋梗塞や冠動脈系による死亡の前に症状がみられない頻度が高い。JAMA誌オンライン版2014年11月17日号掲載の報告。無症候性CADのDM患者900例、CCTAスクリーニング群vs.ガイドライン治療群 FACTOR-64は、罹病期間最低3年または5年以上(性別、年齢により異なる)で無症候性CADの1型または2型糖尿病患者900例について行われた無作為化臨床試験である。被験者は、1つのヘルスシステム(ユタ州のIntermountain Healthcare)傘下の45のクリニックおよび開業医を介して登録された。 登録は、1コーディネーティングセンターで行われ、被験者はCCTAによるCADスクリーニングを受ける群(452例)と、米国ガイドラインに基づく至適糖尿病治療を受ける群(対照群448例、目標:血糖値<7.0%、LDL-C値<100mg/dL、収縮期血圧<130mmHg)に無作為に割り付けられた。 CCTA割り付け群へのCCTAは全例、コーディネーティングセンターで実施。所見に基づき、標準的治療または強化治療(目標:血糖値<6.0%、LDL-C値<70mg/dL、HDL-C値:女性>50mg/dL/男性>40mg/dL、トリグリセライド値<150mg/dL、収縮期血圧<120mmHg)を行うこと、もしくは侵襲的冠動脈造影(ICA)と強化治療を行うことが推奨された。 2007年7月~2013年5月に登録が行われ、2014年8月までフォローアップが行われた。 主要アウトカムは、全死因死亡・非致死的MI・不安定狭心症で入院の複合。副次アウトカムは、虚血性の重大有害心血管イベント(CAD死、非致死的MI、不安定狭心症の各項目)であった。追跡4年、全死因死亡・非致死的MI・不安定狭心症入院の発生率に有意差なし 平均追跡期間4.0(SD 1.7)年時点で、主要アウトカムの発生率について、CCTA群と対照群で有意な差はみられなかった(6.2%[28件]vs. 7.6%[34件]、ハザード比:0.80、95%信頼区間[CI]:0.49~1.32、p=0.38)。 副次エンドポイントの複合発生率についても、両群間で有意な差はみられなかった(4.4%[20件]vs. 3.8%[17件]、ハザード比:1.15、95%CI:0.60~2.19、p=0.68)。 これらを踏まえて著者は、「無症候性CADの1型または2型糖尿病患者について、CCTAによるCADスクリーニングは、追跡4年時点の評価で、全死因死亡・非致死的MI・入院を要する不安定狭心症の複合発生率の低下に結び付かなかった。今回の所見は、こうしたハイリスク患者におけるルーチンのCCTAスクリーニングを支持しないものであった」とまとめている。

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うつ病治療、概念や診断方法の相違が課題

 うつ病患者に対し、精神科医とかかりつけ医(general practitioner)が協同してケアを実践していくべきという考えの下、日常臨床でうつ病の概念がどう位置付けられているか、また、うつ病の診断方法に対する精神科医とかかりつけ医の認識について、デンマーク・コペンハーゲン大学のAnnette S. Davidsen氏らは調査を行った。その結果、精神科医はうつ病の概念を実用的であると考え、診断方法の正当性に疑問を感じていなかったのに対し、かかりつけ医はうつ病を「グレーな領域」と考えており、うつ病診断の臨床的有用性に疑問を持っている状況を報告した。International Journal of Qualitative Studies on Health and Well-being誌オンライン版2014年11月6日号の掲載報告。 うつ病の診断は精神科医によって行われ、うつ病患者に対する治療ガイドラインは精神科領域にて作成される。しかしながら、うつ病患者の大半はもっぱら一般診療で治療を受けている。この現状を踏まえ、かかりつけ医による治療は十分とはいえず、これを打開するためには精神科医とかかりつけ医によるコラボレーションケア(CC)モデルの導入が必要である、と精神科医は指摘する。ただし、CCモデルを成功に導くためには、うつ病の概念と診断方法について、精神科医とかかりつけ医の間で統一した見解を築いておく必要性が指摘されていた。 研究グループは、精神科医とかかりつけ医のうつ病に対する認識を調査することを目的とし、精神科医11人、一般開業医12人を対象に、質的に詳細な(qualitative in-depth)インタビューを実施し、解釈学的現象学的分析(Interpretative Phenomenological Analysis)を用いて解析を行った。 分析から得られた主な所見は以下のとおり。・うつ病という概念の実用性に対する見解、およびうつ病患者について話すときに使う言葉や話し方において、2つの医師グループの間でかなりの相違が認められた。・この相違は、2つのグループにおける経験の範囲を表す3つの局面により確認された。・精神科医はうつ病の概念を実用的であると考え、診断方法に対しても満足しており、その正当性に疑問を感じていなかった。・かかりつけ医は、うつ病を「グレーな領域」と考えており、一般診療におけるうつ病診断の臨床的有用性に疑問を持っていた。・その一方でかかりつけ医は、精神科領域で考案された基準に基づいて診断を行うよう、精神科医から求められていると感じていた。・これに対し精神科医は、自らの臨床的印象に基づいて診断しており、考案された基準は重症度の評価に用いていた。・全体的にかかりつけ医は、診断基準が判断をミスリードする可能性があると感じており、懐疑的であった。 所見を踏まえて著者は、「このような理解の相違がある場合には、CCモデルが導入されても主張の衝突につながる可能性がある。今回得られた結果が、CCを実施しているセクター間において、相違に対しどのように対応しているのかを探るための、実際の連携事例を調査する組織研究の有益な材料となることを期待する」とまとめている。関連医療ニュース うつ病患者とかかりつけ医、認識のギャップが浮き彫りに うつ病診断は、DSM-5+リスク因子で精度向上 うつ病+認知障害への有効な治療介入は  担当者へのご意見箱はこちら

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C型肝炎は内服でほぼ全例が治癒する時代へ

 C型肝炎ウイルスに対する治療は、2011年の直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals;DAA)の登場で大きく変換した。現在、効果のより高い薬剤・レジメンの開発が続いている。2014年11月26日、都内で開催されたC型肝炎プレスセミナー(主催:アッヴィ合同会社)にて、熊田 博光氏(虎の門病院分院長)がC型肝炎治療の進歩と著効率の変遷を解説、さらに開発中のレジメンを紹介し、「来年にはC型肝炎は内服薬のみでほぼ全症例が治癒する時代が到来するだろう」と予測した。■日本人で多いのは「ジェノタイプ1b型・高ウイルス量」 C型肝炎ウイルスの遺伝子型は民族によって異なり、日本人ではジェノタイプ1b型・高ウイルス量の患者が多く、5割以上を占める。しかしながら、1992年に承認されたインターフェロン(IFN)単独療法では、このジェノタイプ1b型・高ウイルス量の患者に対して、虎の門病院における著効率は11.7%と低く、全体でも著効率は3割と、つらい治療にもかかわらず7割が無効であったという。また、次に承認されたペグ-IFN+リバビリン(RBV)併用療法でも、2004年~2011年における、ジェノタイプ1b型・高ウイルス量の患者の著効率は48.8%と5割に満たなかった。しかし、2011年にDAAが登場し、IFN+RBV+プロテアーゼ阻害剤併用療法により、ジェノタイプ1型のSVR率は、初回治療例ではテラプレビルで73%、シメプレビルで88%、バニプレビルで84%と高い効果を示した。しかし、前治療無効例に対しては、順に34%、50%、61%と徐々に増えているものの低いことが課題であった。■IFNフリーの経口剤が登場 日本人のC型肝炎患者の特徴として、高齢者が多いこと、副作用(とくにIFN)に敏感なこと、高齢化のために欧米より肝がんの発生頻度が高いことが挙げられる。そのため、高齢者・うつ病・IFNが使えない患者にも使える、IFNフリーの経口剤治療が求められていると熊田氏は述べた。このような状況から、IFNフリーの経口治療薬であるダクラタスビル(NS5A阻害剤)+アスナプレビル(NS3阻害剤)併用療法が開発され、今年9月に両薬剤が発売された。 これら2剤の併用療法における第III相試験での著効率は、ジェノタイプ1b型のIFN治療に不適格の未治療または不耐容の患者で87.4%、IFN治療無効の患者で80.5%と、高い有効性が示された。また、この有効性には、性別、年齢、開始時HCV-RNA量、肝硬変などの背景因子の影響はみられなかった。有害事象については、鼻咽頭炎、頭痛、ALT増加、AST増加、発熱が多く、有害事象による投与中止例は5%であったと熊田氏は紹介した。■「前治療無効でNS5A・NS3耐性変異株あり」は著効率が低い この2剤併用経口療法の登場により、厚生労働省「科学的根拠に基づくウイルス性肝炎治療ガイドラインの構築に関する研究班 C型肝炎ガイドライン」が今年9月に改訂された。このガイドラインの治療選択肢の患者群ごとのSVR率をみると、・IFN適格の初回・再燃例:88%(IFN+RBV+シメプレビル3剤併用療法)・IFN不適格の未治療/不耐容例:89%(ダクラタスビル+アスナプレビル2剤併用療法)・前治療無効でNS5A・NS3耐性変異株ありの患者:43%(IFN+RBV+シメプレビル3剤併用療法)・前治療無効でNS5A・NS3耐性変異株なしの患者:85%(ダクラタスビル+アスナプレビル2剤併用療法)となる。 熊田氏は、前治療無効でNS5A・NS3耐性変異株ありの患者では43%と低いのが問題であると指摘した。■内服薬のみでほぼ全症例が治癒する時代が到来 最後に熊田氏は、わが国で経口剤のみの臨床試験がすでに実施されているレジメンとして以下を紹介し、このうち、ギリアド、アッヴィ、ブリストルの薬剤は来年には発売されるという見通しを語った。・NS5B阻害剤+NS5A阻害剤(ギリアド・サイエンシズ、2014年9月申請)・NS5A阻害剤+NS3阻害剤(アッヴィ、Phase3)・NS5A阻害剤+NS5B阻害剤+NS3阻害剤(ブリストル・マイヤーズ、Phase3)・NS5A阻害剤+NS3阻害剤(MSD、Phase2~3) これらレジメンの治療期間は12週と短くなっている。熊田氏は、これらの著効率が海外で95~100%、日本でもギリアドのNS5B阻害剤+NS5A阻害剤が99%(Phase3)、アッヴィのNS5A阻害剤+NS3阻害剤が95%(Phase2)と高いことから、「C型肝炎は内服薬のみでほぼ全症例が治癒する時代が到来するだろう」と述べた。

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ベンゾジアゼピン処方、長時間型は大幅に減少

 ベンゾジアゼピン系薬(BZD)やベンゾジアゼピン受容体アゴニスト(Z薬)の長期投与は、潜在的に生理的および精神的依存性や、その他の有害事象と関連している。デンマークのSophie Isabel Eriksen氏らは、同国における過去10年間の、BZDの処方の変化を調べた。その結果、長時間型は短時間型と比べて減少幅が大きかったことを報告した。Basic & Clinical Pharmacology & Toxicology誌オンライン版2014年11月10日号の掲載報告。 研究グループは、デンマークにおける過去10年間の、長時間型BZD(半減期10時間超)の処方について短時間型BZDと比較して分析した。デンマーク医薬品統計レジスターから、2003~2013年のプライマリヘルスケア分野における、個人に対する全BZDとZ薬の全販売データを記述的に分析した。処方箋データは、国内すべての地域薬局および病院薬剤部を対象としたものであった。 主な結果は以下のとおり。・長時間型BZDの処方は、住民1,000人当たりで2003年の25.8 DDD(defined daily dose:1日投与量)から、2013年は8.8 DDDへと減少していた(相対的減少66%)。・短時間型BZDの処方は、同26.1 DDDから16.4 DDDに減少していた(相対的減少37%)。・本調査の処方データは、治療開始にあたっての適応に関する情報が不明であった。また、コンプライアンス問題のために、処方薬は実際には処方通りに服用されていなかった可能性がある。・処方の減少は、依存性薬物に関する国のガイドライン新規導入に伴ってみられたが、今回の調査はその関連性を検出するようにデザインされておらず、因果関係は不明であった。関連医療ニュース ベンゾジアゼピン使用は何をもたらすのか 急性期精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用をどう考える 統合失調症治療、ベンゾジアゼピン系薬の位置づけは  担当者へのご意見箱はこちら

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【GET!ザ・トレンド】食物アレルギー

定義・病態1)2)食物アレルギーは「原因食物を摂取した後に、免疫学的機序を介して生体に不利益な症状(皮膚、粘膜、消化器、呼吸器、アナフィラキシーなど)が惹起される現象」を指し、食中毒や自然毒、免疫機序を介さない食物不耐症(仮性アレルゲンに伴う不耐症や乳糖不耐症など)は食物アレルギーと分けて区別する。疫学乳幼児期で5~10%、学童期で2~5%と考えられている。発症はそのほとんどが0~1歳であり、病型は即時型がほとんどである。主要原因食物は鶏卵、牛乳、小麦であり、全体の2/3を占める。また、これらの原因食物はほとんどが乳幼児期発症であり、そのうち3歳までにおよそ50%、6歳までに80~90%が耐性を獲得(食べられるようになること)する。原因食物は年齢ごとに異なり、学童期以降になると、甲殻類、果物類、小麦、ソバ、落花生、木の実などの発症が多い。表1を拡大する臨床病型1)新生児乳児消化管アレルギー7)早期新生児期に消化器症状(嘔吐、下痢、血便)を主に発症してくる。ほとんどは牛乳が抗原であるが、まれであるが大豆や米が原因のこともある。表2を拡大する2)食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎乳児期に顔面から前胸部にはじまり2ヵ月以上の慢性の経過を辿る。乳児の慢性湿疹のすべてが本疾患ではない。環境抗原が原因の古典的アトピー性皮膚炎であったり、乳児湿疹のコントロール不良例であったりするので慎重な鑑別が必要である。3)即時型8)誘発症状は蕁麻疹に代表される皮膚症状が90%程度の症例に認められる。以下、呼吸器、粘膜、消化器、全身症状の順に多い。アナフィラキシー症状も少なくなく、ショックの頻度は、7~10%と考えられている(図1)。図1を拡大する4)口腔アレルギー症候群果物や野菜に頻度が多く、症状は口腔喉頭症状のみであり、具体的には口腔内違和感(舌が腫れた感じ、口蓋のひりひり感など)、口唇周囲の症状が中心である。食品抗原と一部花粉やラテックス抗原との間に交叉性があり、合併しやすい傾向がある。5)食物依存性運動誘発アナフィラキシー9)原因食物(小麦、甲殻類、木の実類など)を摂取して、およそ4時間以内に運動を行ったときに誘発される。再現性は必ずしも高くない。診断されても、運動する前に原因食物を食べなければ良く、また食べたらおよそ4時間は運動をしなければ、除去の必要はない。診断1)2)診断のためのフローチャートを、乳児期に発症の多い、「食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎」と全年齢層に幅広く分布する「即時型」の2通り示す(図2-1、2-2)。いずれにしても十分な問診の情報を元に、他覚的検査を補助診断材料として用い、最終的には食物経口負荷試験の結果を基本に診断を進める。図2-1を拡大する図2-2を拡大する1)特異的IgE抗体検査(ImmunoCAP®、Skin Prick Test)特異的IgE抗体価の結果のみで、食物アレルギーの診断を行うことはできない。しかし、経口食物負荷試験実施は敷居が高く、検査結果で除去指導が行われている臨床の実態があるのも事実であり、食物アレルギー診療の1つの問題点である。主に行われる検査手法はImmunoCAP®法(Thermo Scientific社)であり、同結果を用いて負荷試験を実施したときの95%以上の陽性的中率となる抗体価の報告がある。とくにわが国からはprobability curveの報告があり(図3)、因子(年齢、原因食物)を考慮しながら本指標を利用することで、食物負荷試験の陽性リスクの確率的な高低を知ることができる10)。Skin Prick Test(皮膚プリックテスト)も同様に感度、特異度とも高いが、陽性的中率が低く、臨床的有用性は特異的IgE抗体検査に劣る11)。一般的には食べられる(耐性獲得)状況になっても、陽性になる傾向があり、耐性獲得の判断には向かない。図3を拡大する2)食物経口負荷試験食物アレルギーの診断は食物負荷試験がgold standardである。経口食物負荷試験は9歳未満の患児に対して、2006年に入院負荷試験、2008年に外来負荷試験に対して診療報酬が認められるようになった。実施には、小児科を標榜している保険医療機関、小児食物アレルギーの診断および治療の経験を10年以上有する小児科を担当する常勤医師が1名以上、急変時などの緊急事態に対応するための体制その他当該検査を行うための体制が整備されている必要がある。食物負荷試験を行うにあたって施行方法、適応、症状出現時の対応、検査結果の見方、その後の経過の追い方を詳しく理解する必要がある。その詳細は、「食物アレルギー経口負荷試験ガイドライン2009(日本小児アレルギー学会刊行)」に詳しい12)。食物アレルギーの治療1)必要最小限の除去と栄養指導食物アレルギーの診療の基本は“正しい診断に基づく必要最小限の除去”と“栄養指導”であり、積極的に治癒を誘導する治療方法や薬物は現状ではない。医師は定期的に特異的IgE値をチェックしながら、時期がきたら経口食物負荷試験を実施し耐性獲得の有無を確認するだけである。食物アレルギー児は、必要最小限ではあるが除去食をしながら耐性の獲得を待つことになる。除去食は、成長発達著しい乳幼児期に栄養学的リスクを取らせることになるため、医師は常に栄養評価を念頭に置き、管理栄養士とともに栄養指導を行いながら経過を追う必要がある。食物アレルギーの栄養指導には、厚生労働科学研究(研究分担者 今井孝成)で作成された「食物アレルギーの栄養指導の手引き2011」が参考になる13)。食物アレルギー研究会のホームページ(www.foodallergy.jp)などで無償ダウンロードできる。2)薬物療法クロモグリク酸ナトリウムは、食物アレルギーに伴う皮膚症状に保険適応があるのであって、耐性を誘導したり、内服することで原因食物が食べられるようになったりするような効果は持たない。第2世代以降のヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬なども、継続投与することで耐性を誘導するものではない。3)経口免疫療法(減感作療法)14)その効果は一目置くに値するが、治療中のアナフィラキシー症状(時にはショック症状)の誘発リスクがあるため、保護者および患児に対して十分なインフォームドコンセントを得て、かつ食物アレルギーおよびアナフィラキシー症状に十分な経験がある医師の監督下で慎重に行われる必要がある。安易に食物アレルギー患者に本法を導入することは、厳に慎むべきである。減感作のメカニズムは不明な点が多く、今後の研究の進展が期待される。アナフィラキシー15)アナフィラキシー症状は、アレルギー反応が原因で複数の臓器症状が急速に全身性にあらわれる状況を指す。小児における原因は食物が多いが、薬物や昆虫なども原因となる。アナフィラキシーショックは、アナフィラキシー症状のうち血圧低下、それに起因する意識障害などを伴う最重症の状態を指し、生命の危機的状況にある。症状の進行が速く、秒~分単位で進展していく。このため発症早期の発見と対処が重要である。アナフィラキシーの治療は、ショックおよびプレショック状態の場合には、できるだけ迅速にアドレナリン0.01mg/kg(最大0.3mg)を筋肉注射するべきである。アナフィラキシーショックに陥った場合には、発症30分以内のアドレナリン投与が予後を左右する。アドレナリンには自己注射薬(エピペン®)があり、0.3mgと0.15mgの2剤形がある。2009年には救急救命士は、自己注射薬の処方を受けている患者がアナフィラキシーに陥り、アドレナリンを注射すべき状況にあるとき、メディカルコントロールが無くても患者に自己注射薬を注射することが認められている。参考文献1)日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.食物アレルギー診療ガイドライン2012.協和企画;2011.2)「食物アレルギーの診療の手引き2011」検討委員会編.厚生労働科学研究班による食物アレルギーの診療の手引き2011.3)今井孝成. アレルギー.2004;53:689-695.4)海老澤元宏ほか. アレルギー.2004;53:844.5)長谷川実穂ほか. 日小児アレルギー会誌.2007;21:560.6)今井孝成、板橋家頭夫. 日小児会誌.2005;109:1117-1122.7)Miyazawa T, et al. Pediatr Int. 2009; 51: 544-547.8)今井 孝成.アレルギー.2004;53:689-695.9)相原雄幸. 日小児アレルギー会誌.2004;18:59-67.10)Komata T, et al. J Allergy Clin Immunol. 2007; 119: 1272-1274.11)緒方 美佳ほか.アレルギー.2010;59: 839-846.12)宇理須厚雄ほか監修.日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会 経口負荷試験標準化WG.食物アレルギー経口負荷試験ガイドライン2009.協和企画;2009.13)厚生労働科学研究班(研究分担者:今井孝成).食物アレルギーの栄養指導の手引き2011.14)海老澤 元宏ほか.日小児アレルギー会誌.2012;26:158-166.15)今井 孝成ほか.アレルギー.2008;57:722-727.

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非ST上昇型ACSへのチエノピリジン、出血リスク3割増/BMJ

 非ST上昇型急性冠症候群(ACS)に対する、P2Y12受容体阻害薬のチエノピリジン系薬による前処置は、その治療戦略の種類にかかわらず、死亡率低下の効果はなく、逆に大出血リスクを3割程度増大させることが、フランス・フォンテーヌ病院のAnne Bellemain-Appaix氏らによる、7件の試験について行ったメタ解析の結果、示された。結果を踏まえて著者は、非ST上昇型ACSでの入院患者に対する、システマティックなP2Y12受容体阻害薬による前処置については、臨床ガイドラインも含め見直しが必要のようだと指摘している。BMJ誌オンライン版10月24日号で発表した。2名のレビュアーがMedlineやCochraneなどを基に調査 Bellemain-Appaix氏らは、MedlineやEmbase、Cochraneなどのデータベースを用い、2001年8月~2014年3月までに発表された、プラセボ対照無作為化比較試験や観察試験について、2名のレビュアーが再調査し、非ST上昇型ACSへのP2Y12受容体阻害薬チエノピリジンによる前処置の効果について分析した。 分析は、(1)すべての患者を対象に治療戦略別に実施、(2)経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行った人のみについて実施の2通りで行った。大出血リスクは治療戦略にかかわらず30~45%増 無作為化比較試験4件(うち1件は無作為化比較試験からの観察分析含む)、観察試験3件を含む計7件の試験結果について、メタ解析を行った。被験者総数は3万2,383例で、うちPCIを行ったのは55%だった。 すべての患者について調べたところ、チエノピリジンによる前処置は、死亡率低下とは関連していなかった(オッズ比:0.90、95%信頼区間:0.75~1.07、p=0.24)。またPCI実施患者のみを対象にした場合でも、同様の結果が得られた(同:0.90、0.71~1.41、p=0.39)。 一方で、治療戦略の種類にかかわらず、大出血リスクが有意に30~45%増となることが認められた(全患者について同:1.32、1.16~1.49、p<0.0001)。 クロピドグレル試験(CURE、CREDO)の結果によると思われる重大有害心血管イベントリスクの低下がみられたが(同:0.84、0.72~0.98、p=0.02)、PCIを受けた患者コホートの分析では有意差はみられなかった。またステント塞栓症、脳卒中、緊急血行再建術の群間差(前処置ありvs.なし)はみられていない。 結果には一貫性があり、感度解析でも確認されたが、本分析は被験者の個別データに基づくメタ解析ではなく結果は限定的だとしている。

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Dr.みやざきの鼠径ヘルニア手術テクニックコレクション

第1回 鼠径部ヘルニアの診断と分類 第2回 鼠径部の臨床解剖 第3回 手術手技の種類と術式選択の基準 第4回 鼠径部ヘルニア手術の術前・術後管理 第5回 鼠径部ヘルニア手術の麻酔法 第6回 手術手技の実際(1)高位結紮術第7回 手術手技の実際(2)Mesh-plug法第8回 手術手技の実際(3)Lichtenstein法第9回 手術手技の実際(4)UHS法第10回 手術手技の実際(5)Direct Kugel Patch法第11回 手術手技の実際(6)大腿ヘルニア手術第12回 手術手技の実際(7)女性の鼠径ヘルニア手術 手術の中で最も件数の多い手術の一つである鼠径ヘルニア修復術。「研修医やレジデントなどが行う初歩的な手術」と思っていませんか?しかし、侮るなかれ!鼠径部は解剖が複雑、手術手技は多種多様と、ヘルニア修復術を完全に理解するのは実は非常に難しいのです!そこで、日本でも有数の鼠径部ヘルニアの手術件数を誇るDr.みやざきこと宮崎恭介氏が講師として登場!鼠径ヘルニア症例数はなんと10年で4300例!この経験に裏打ちされた手術テクニックを余すことなくお見せいたします。臨床解剖、麻酔、術後管理、そして様々な手術手技-高位結紮術、プラグ法、DK法、UHS法、リヒテンシュタイン法、そして大腿ヘルニア、女性の鼠径ヘルニアなどなど、知りたかった、見たかった内容が網羅されています。こんなにたくさんの症例を、多様な手技を、見ることができるものはほかにはありません。しかも手術映像・画像は術者目線!明日からの手術が大きく変わります!第1回 鼠径部ヘルニアの診断と分類 鼠径ヘルニア修復術を理解する上でまず知っておかなければならないことは、鼠径部の解剖、ヘルニアの種類と分類、そして診断方法です。第1回では、鼠径ヘルニアの分類と、その診断方法について解説します。 診断の際は必ず立位で行うこと、そして大腿ヘルニアを見逃さないこと、この2つをおさえておきましょう。第2回 鼠径部の臨床解剖 鼠径ヘルニア手術を行うにあたっては、鼠径部の解剖の理解が重要なのは当然ですが、完全に理解することは難しいと言われています。 鼠径部の解剖をシェーマや写真などで理解したとしても、実際の手術現場では役に立たない事を経験した方も多いでしょう。それは鼠径部の構造が立体的であること、連続する組織(膜)でも部位によって名称が異なる場合があるからです。 そこで、今回は、鼠径部の臨床解剖ーすなわち術者として鼠径部を見た際の解剖をしっかりと理解していきます。最初のポイントは皮膚切開から。皮膚切開ひとつで、こんなにも視野が違います!第3回 手術手技の種類と術式選択の基準 鼠径ヘルニア修復術の手技は、多種多様。 ヘルニアの位置や大きさ、性別や年齢、既往など、術式を決めるための要素はたくさんあるなかで、患者さんにとって、そして、術者にとってよりよい手術手技は一体何か?様々な手術手技を行うヘルニアのスペシャリストはこうやって術式を決めている! 第4回 鼠径部ヘルニア手術の術前・術後管理鼠径ヘルニア手術は嵌頓例以外は手術の緊急性はありません。無理に患者さんへ手術を薦めず、患者さん自信が、手術を決意するまで待つことが大切です。さて、いざ手術となった場合、鼠径ヘルニア修復術の術前と術後の管理はどうすればよいのでしょうか?実は、鼠径ヘルニア手術の術前には特別な管理はほとんど不要です。Dr.みやざき曰く「抗凝固薬服用中、抗血小板療法中の患者でさえも、内服継続のままでも十分に手術可能。」はてさて本当に可能かどうか、どうすれば可能なのか、みていきましょう。また、術後では、「出血」「漿液腫」「SSI」「再発」「慢性疼痛」などが合併症として考えられますが、これらは起こった場合にどう対応するではなくて、「起こさない」ことが重要です。そのために何をするべきかを知り、実践してみましょう。第5回 鼠径部ヘルニア手術の麻酔法 鼠径ヘルニア修復術の麻酔は、日帰りの場合と、入院の場合と異なります。麻酔の3要素は鎮静(意識の消失)、鎮痛(痛みの除去)、筋弛緩(体動の防止)。この3つすべてを、麻酔するのが、麻酔科医による麻酔、すなわち外科医にとって最も手術を行いやすい麻酔です。入院手術の場合は、この麻酔方法で行います。しかし、日帰り手術の際は、筋弛緩は必要ありませし、意識があってもかまいません。鎮痛と鎮静を患者さんに与える手術侵襲を少しだけ上回る麻酔をかけてあげればよいのです。静脈麻酔、局所麻酔、硬膜外麻酔、気管挿管などの様々な麻酔を組み合わせ、術式、患者さんの年齢、BMI、嵌頓の有無等に合わせた麻酔方法を行っています。この回ではそれぞれの詳しい方法を解説します。第6回 手術手技の実際(1) 高位結紮術さて、いよいよ手術手技の実際に入っていきます。最初は高位結紮術です。高位結紮術は、内鼠径輪のみを閉鎖するというシンプルな術式ですが、他の手術手技の基本となる手技です、ここでしっかりと習得しておきましょう。高位結紮術は、若年男性や若年女性のⅠ-1型間接鼠径ヘルニアが適応となります。術者目線の手術映像を見ながら、実際の手術手技を体験し、習得してください。第7回 手術手技の実際(2) Mesh-plug法手術手技の実際:第2回はMesh-plug法です。Mesh-plug法はメッシュプラグでヘルニア門を閉鎖し、オンレイパッチで鼠径管後壁を補強するという術式です。鼠径ヘルニア修復術の中で日本で一番行われている手術法で、シンプルな術式ですが、一歩間違うと術後の疼痛や再発などを引き起こすことがあります。これらの合併症をいかに防止するかは、すべて手術手技にかかっています。そのコツをヘルニアスペシャリストのテクニックから学んでください。第8回 手術手技の実際(3) Lichtenstein法手術手技の実際:第3回はLichtenstein法です。リヒテンシュタイン法はヘルニア門を高位結紮術で閉鎖し、鼠径管後壁をメッシュで補強する術式です。日本においては、それほど多くの症例が行われているわけではありませんが、EHS(the European Hernia Society)の鼠径ヘルニアの診療ガイドラインではLichtenstein法が推奨されているように欧米では第一選択の術式となっています。Dr.みやざきは、腹膜前腔の剥離操作がないことから下腹部手術既往のある間接鼠径ヘルニアを適応としています。メッシュ固定による疼痛を予防するために縫合固定の必要のないメッシュを用いることも1つのポイントです。第9回 手術手技の実際(4) UHS法手術手技の実際:第4回はUHS法です。UHS法は、UHS(Ultlapro® Hernia System )というメッシュを使用して行う術式で、インレイメッシュ法、プラグ法、、リヒテンシュタイン法を1つにした欲張りな術式です。コネクターでヘルニア門を閉鎖し、アンダーレイパッチ、オンレイパッチで鼠径管後壁を挟み込むように補強します。Ⅰ-3型巨大陰嚢内ヘルニア以外の鼠径ヘルニアすべてが適応となります。メッシュ固定による疼痛を予防するためにオンレイメッシュは縫合固定しないこともポイントです。第10回 手術手技の実際(5) Direct Kugel Patch法手術手技の実際:第5回はDirect Kugel Patch法です。Direct Kugel Patch法はインレイメッシュ法の1つで、形状記憶リングにより、腹膜前腔への展開が容易な術式です。ヘルニア門の閉鎖をダイレクトクーゲル®パッチで行い、オンレイパッチは、鼠径管後壁の補強としてオプションとして使用します。ダイレクトクーゲル®パッチで筋恥骨孔すべてを覆うことができ、すべての鼠径部ヘルニアに適応しています。今回は、間接鼠径ヘルニア、直接鼠径ヘルニアともに実際の手術症例を術者目線の映像で提示します。第11回 手術手技の実際(6) 大腿ヘルニア手術大腿ヘルニア手術を解説します。大腿ヘルニアの術式は大きく、2つに分けることができます。1つは鼠径法、そしてもう1つが大腿法です。鼠径法は、鼠径靭帯の上からアプローチし、筋恥骨孔すべてを覆う方法で、大腿法は鼠径靭帯の下からアプローチし、大腿輪のみ閉鎖する方法となります。男性の大腿ヘルニアは症例としては稀ですが、他の鼠径ヘルニアを合併することが多いため鼠径法を適応とし、女性の大腿ヘルニアは、鼠径ヘルニアの合併がほとんどないため、大腿輪のみの閉鎖を行う大腿法を適応としています。本番組では、いずれの方法も術者目線の映像でご覧いただけます。第12回 手術手技の実際(7) 女性の鼠径ヘルニア手術鼠径ヘルニア手術テクニックコレクションの最終回は「女性の鼠径ヘルニア手術」です。女性の鼠径ヘルニアは、男性に比べると症例が少ないため、マニュアルや手順書などでも取り上げられる機会が非常に少ないようです。そのため、学習したり、修得したりする機会が少なく、重要なポイントを見落としてしまうことも。本番組では、見落とされがちなポイントを実際の症例に照らしあわせて解説し、その後、手術映像で手術手技を学んでいただきます。女性の鼠径部ヘルニアを診る場合に気をつけなければならないポイントは2つ。鼠径部ヘルニアの発生頻度と若年女性の鼠径ヘルニアです。そして、そのKey wordは大腿ヘルニアとNuck管嚢腫です。

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50~69歳の若年者大動脈弁置換における人工弁は、生体弁のほうが機械弁よりも妥当(reasonable)な選択肢か?(解説:許 俊鋭 氏)-269

日本循環器学会ガイドライン1)では、血栓塞栓の危険因子を持たない65歳以上の大動脈弁人工弁置換患者に対して生体弁の使用が推奨されている(クラス1)。逆にこれまで60歳以下の若年者に対する生体弁の使用は、ワーファリンコントロールが禁忌症例や妊娠・出産を希望する女性に適応が限定されてきた。 本論文では、ニューヨーク州在住の50~69歳の若年者大動脈弁置換症例を対象に生体弁と機械弁治療成績を後ろ向きに比較し、15年生存および脳卒中については両群間で有意差がなく、再手術率は高かったものの大出血合併率は生体弁症例で低いことから、50~69歳の若年者大動脈弁置換における人工弁は、生体弁のほうが機械弁よりも妥当(reasonable)な選択肢であると結論している。すなわち再手術率と大出血合併率をtrade-offの関係とみなし、治療成績が同等であるがゆえに、生体弁を若年者大動脈弁置換症例に使用することを推奨すると結論しているのである。 しかし、この論文の主張がそのまま日本の患者さんに当てはまるかどうかは十分検討する必要がある。一番大きな問題は、本論文でも指摘されているように15年再手術累積発生率は生体弁群が有意に高率(12.1% vs. 6.9%)とされる点である。 生体弁再手術の大部分は人工弁の構造的劣化に起因するものと考えられるが、論文には再手術要因については記載されていない。日本循環器学会ガイドラインでまとめられた構造的劣化に関する集計(表1)では、60歳未満の生体弁構造的劣化発生率(100%-非発生率)は24.6~45.6%であり、65歳未満では20.6~65.3%であった。若年者ほど構造的劣化発生率は高くなり、生体弁構造的劣化期間は12~20年程度推定される1)。 もちろん近年、再人工弁置換手術成績の向上には目覚ましいものがある2)。しかし、2005~2008年の日本心臓血管データベース機構のデータ分析3)では高齢者ほど初回大動脈弁単弁置換手術でも手術死亡率および合併症率は高い(表2)。 また、少し古いデータではあるが、再人工弁置換手術の手術死亡率は高齢者ほど著しく高くなる(表3)という報告4),5) もあり、高齢になっての再人工弁置換手術は回避できるに越したことはない。 高齢化が著しい日本で、50歳台の若年者に生体弁人工弁置換を行う場合、1回以上の再手術を前提として考える必要があり、生涯を通じての手術リスクならびに医療経済から見て妥当かどうか十分検討する必要があろう。 また、本論文では大出血合併率(6.6% vs. 13.0%)は生体弁患者で低い結果が出ているが、国民皆保険下にある日本のような長期にわたる人工弁置換後の綿密なワーファリンコントロールが米国で実施可能かどうかなど医療を取り巻く社会環境も大出血合併率に大きな影響を与えている可能性があり、十分に配慮しなければならない。 今後、さらに耐久性のよい生体弁の開発が期待されると同時に、On-X弁のように機械弁の標準レベル(PT-INR 2.0~3.0)よりも軽いレベル(PT-INR 1.5~2.0)のワーファリンコントロールでよいとされる抗血栓性に優れた機械弁の開発により、大出血合併症の問題も解決される可能性が高い。

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結核性心膜炎に対するプレドニゾロンおよび免疫補助療法(解説:小金丸 博 氏)-268

結核性心膜炎は、医療資源の限られたアフリカやアジアの国々において重大な問題となっている。とくにHIV感染者では合併頻度が高く、死亡率も高い。グルココルチコイドを併用することで炎症反応が弱まり、心タンポナーデや収縮性心膜炎による死亡のリスクが低下するとの報告もあるが、その有効性は確立しておらず、米国と欧州のガイドラインでは相反する勧告が示されている。 本研究は、結核性心膜炎を疑う患者に対するプレドニゾロン、またはMycobacterium indicus praniiによる免疫療法の有効性と安全性を調べるためにアフリカで行った、2×2 要因デザインのプラセボ対照ランダム化比較試験である。 1,400例の成人患者をプレドニゾロン投与群とプラセボ投与群に割り付けし、さらにそれぞれM. indicus pranii注射群とプラセボ注射群に割り付けした。死亡、心膜穿刺を要する心タンポナーデ、収縮性心膜炎の3項目のいずれか1つ以上の発生率を主要評価項目とした。M. indicus praniiは非病原性の迅速発育抗酸菌であるが、免疫付与による抗炎症効果を期待して投与された。本試験に参加した患者の3分の2がHIV感染者であった。 主要評価項目に関して、プレドニゾロン投与群とプラセボ投与群、M. indicus pranii注射群とプラセボ注射群は、ともに有意差を認めなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.77~1.18、およびハザード比:1.03、95%信頼区間:0.82~1.29)。 ただし、プレドニゾロン投与群ではプラセボ投与群と比較して、二次評価項目である収縮性心膜炎の発生率と、入院率を有意に低下させた(ハザード比:0.56、95%信頼区間:0.36~0.87、およびハザード比:0.79、95%信頼区間:0.63~0.99)。安全性に関しては、プレドニゾロン投与群とM. indicus pranii注射群では、両群ともプラセボ群と比較してがんの発生率が有意に増加した。これらは主にカポジ肉腫などHIV感染症に関連したがんだった。 本研究では、心嚢液の抗酸菌塗抹検査、培養検査、あるいは核酸検査が陽性、心膜組織で乾酪性肉芽腫の存在あるいは核酸検査が陽性、のいずれかを満たした症例を“確定例”と定義しているが、確定例は17.1%に過ぎず、多くは“疑い例”だった。 そのため、“疑い例”の中に結核性心膜炎以外の疾患が紛れ込んでいる可能性は否定できない。しかしながら、“疑い例”の診断基準が妥当と思われること、結核性心膜炎の確定診断は難しく、臨床の現場でも“疑い例”に対して治療していることのほうが多いと思われることから、本試験の結果は実臨床の参考にすることができると考える。 主要評価項目では有意差を認めなかったものの、プレドニゾロン投与群で収縮性心膜炎の発生率や入院率が有意に減少した点は、臨床的に意義あることだと考える。しかし、HIV感染者ではプレドニゾロン投与によりがんの発生率が増加するため、結核性心膜炎患者に一律に投与するのではなく、収縮性心膜炎を起こすリスクが高い患者に選択的に投与できれば理想的である。大量の心嚢液貯留や、心嚢液中の炎症マーカー高値などが参考になるかもしれない。 M. indicus praniiによる免疫療法は、結核性心膜炎に対する抗炎症効果の機序もわかっておらず、本試験の結果からも、現時点では有効な治療法ということはできない。

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