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米国成人の食習慣、13年間で改善/JAMA

 1999~2012年の米国国民健康栄養調査(NHANES)を分析した米国・モンテフィオーレメディカルセンターのColin D. Rehm氏らは、自己申告による食習慣が改善していることを報告した。ただし、人種・教育・収入による差が持続または悪化していることも示唆されたという。これまで食事に関する研究の多くが、主な多量栄養素またはわずかな食事因子のみを評価したもので、個々の食品・栄養素に関する食事の質や、さまざまな集団での違いなどについては評価していなかった。著者は、「今回の結果は、米国に住んでいる人々の食習慣を改善するための機会、新たな達成、配慮が必要な地域などについて考察を与えるものである」とまとめている。JAMA誌2016年6月21日号掲載の報告。食事パターンの変化を13年間にわたり調査 研究グループは、NHANESに登録された入院歴のない20歳以上の米国成人3万3,932例を対象に、24時間思い出し法を用い1999~2012年の間に7回調査を実施した。各調査における回答数は4,237例から5,762例の範囲であった。 評価項目は、調査で重み付けした補正平均エネルギー消費量、AHA 2020 Strategic Impact Goalsの食事ガイドラインに基づく食事スコアの目標達成割合、食事スコアの構成要素(主要構成要素:果物と野菜類、全粒穀物類、魚貝類、糖添加飲料、食塩/副次構成要素:ナッツ類、種子類、豆類、加工肉類、飽和脂肪酸)、およびその他の個々の食品と栄養素とした。全粒穀物やナッツ類の摂取増加など食事が改善、ただし、人種・教育・収入で差 AHA主要食事スコア(最高50点)は19.0から21.2点へ、副次食事スコア(最高80点)も35.1から38.5点へ、いずれも増加し、食習慣が改善していることが明らかとなった(それぞれ改善率11.6%および9.7%、どちらも傾向p<0.01)。これらの変化は、1999~2000年と2011~2012年の間で全粒穀物が0.43食/日(95%信頼区間[CI]:0.34~0.53食/日)、ナッツ・種子・豆類が0.25食/日(95%CI:0.18~0.34食/日)増加していたことと、糖添加飲料が0.49食/日(95%CI:0.28~0.70食/日)低下していたことに起因していた。魚貝類の摂取量もわずかに増加したが、果物と野菜類・加工肉類・飽和脂肪酸・食塩を含む他の構成要素では有意な傾向は確認されなかった。 栄養の乏しい食事(AHA食事スコアのアドヒアランスが40%未満)をしている米国成人の割合は55.9%から45.6%へ減少し、栄養が中程度の食事(アドヒアランス40~79.9%)の割合は43.5%から52.9%へ増加した。その他の食事の傾向として、果物の摂取増加(0.15食/日、95%CI:0.05~0.26食/日)や、100%フルーツジュースの摂取減少(0.11食/日、95%CI:0.04~0.18食/日)がみられた。 食事の質は、人種・教育・収入レベルによって差異があることが観察された。たとえば、栄養の乏しい食事をしている非ヒスパニック系白人の割合は有意に減少したが(53.9%から42.8%)、非ヒスパニック系黒人またはメキシコ系アメリカ人では改善が確認されなかった。また、調査期間中、これらの差が縮減するとのエビデンスは見当たらず、収入レベルによる悪化が確認された。

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循環器内科 米国臨床留学記 第10回

第10回 日本では使用されていない抗不整脈薬抗不整脈薬に関しては、日本と比べてアミオダロンを使用する機会が多いように感じます。おそらく、冠動脈疾患を伴う症例が多いため、フレカイニドなどのVaughan Williams分類Class Iの抗不整脈薬が使えない患者が多いことが一因だと思われます。米国では、日本では使用されていない心房細動に対する薬剤が幾つかありますので、紹介したいと思います。AHA/ACC/HRSのガイドラインに示されているように、器質的心疾患、とくに虚血性心疾患や心不全がある患者に使用できる抗不整脈薬は限られており、虚血性心疾患がある場合の選択肢はアミオダロン以外にdronedarone、dofetilide、ソタロールとなります。今回は、日本で使用されていないdofetilideおよびdronedaroneを取り上げたいと思います。dofetilide(商品名:Tikosyn)dofetilideはアミオダロンやソタロールと同じくClass IIIに分類される抗不整脈薬で、遅延整流外向きカリウムチャネルIKrに作用し心房および心室の不応期を延長します。dofetilideはQT延長作用が強いため、いろいろと制限があります。まず、開始前のQTcが440msより長い患者には使用することができません。また、腎機能によって投与量が異なり、クレアチニンクリアランスが20mL/min未満の患者では投薬できません。投薬後2時間の心電図によるQT間隔のチェックが必要で、かつ投与開始後最低3日間は入院のうえ、心電図モニターを継続することが推奨されています(いずれも添付文書より)。つまり、torsades de pointesなどが起きる可能性があるため、外来で始めることができないのです。実際、QTが著明に延長するため、標準投与量(500μg、1日2回)を投与できないこともよくあります。dofetilideの効果は用量と強く相関します。今年Heart Rhythm誌に発表された論文1)では、500μgを1日2回投与できたのは65.9%ですから、3分の1の症例で目標投与量に至らなかったようです。持続性心房細動に対してdofetilide導入入院中の薬物的除細動の成功率は41.9%で、1年後の洞調律維持は39.6%でした。同じClass IIIの抗不整脈薬のソタロールもQT延長作用が強く、米国ではdofetilideと同様、入院のうえ3日間モニタリングすることが勧められており、外来で開始することができません。dronedarone(商品名:Multaq)アミオダロンは抗不整脈薬の中でも最も有効性が高い薬剤ですが、ヨウ素剤による甲状腺や肺などに対する副作用のため、使用が難しい患者もいます。このアミオダロンからヨウ素を排除したのがdronedaroneです。半減期も13~19時間と、アミオダロンの2ヵ月前後と比べて短く、体内への蓄積が少なくて済みます。dronedaroneは薬理学的除細動の効果が低いため、除細動目的で処方することは推奨されていませんので、洞調律の維持のための処方となります。アミオダロンとの直接比較では、12ヵ月での洞調律維持がアミオダロンの75.1%に対して、dronedaroneは58.8%と有意に劣っていました2)が、最近のペースメーカーを用いた無作為化試験3)は、12週間の観察で心房細動の発生が54.4%減少することを示しています。dronedaroneは心不全を増悪させることがあり、心不全患者では注意が必要です。前述のガイドラインでは、NYHA Class IIIおよびIVの心不全患者で4週間以内に心不全のエピソードがある場合は禁忌となっています。上記のような制約のため、結果的に米国ではアミオダロンが頻繁に使われているのではないかと思われます。参考文献1) Huang HD, et al. Heart Rhythm. 2016 Feb 24. [Epub ahead of print]2) Le Heuzey JY, et al. J Cardiovasc Electrophysiol. 2010;21:597-605. 3) Ezekowitz MD, et al. J Interv Card Electrophysiol. 2015;42:69-76.

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全粒穀物の摂取は、あらゆる死亡リスクを下げる/BMJ

 全粒穀物の摂取は、心血管疾患、がん、全死亡、呼吸器疾患・感染症・糖尿病・非心血管疾患または非がんによる死亡のリスク低下と関連していることを、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのDagfinn Aune氏らが、前向き研究のシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。全粒穀物の摂取量の多さと、2型糖尿病、心血管疾患および体重増加のリスク低下が関連することが示唆されていたが、慢性疾患や死亡リスクを低下させるための全粒穀物の摂取量や種類はよくわかっていなかった。著者は、「慢性疾患や早期死亡のリスクを減らすために全粒穀物を多く摂取する食事ガイドラインが推奨される」とまとめている。BMJ誌オンライン版2016年6月14日号掲載の報告。穀物摂取と各種疾患の発症・死亡リスクとの関連を調査した45件の研究をメタ解析 研究グループは、PubMedおよびEmbaseを用い、2016年4月3日までに発表された論文を検索し、全粒穀物または他の穀物の摂取量と心血管・がん・全死因または死因別死亡リスクとの関連(補正相対リスク)を報告した前向き研究45件(64論文)を特定しデータを分析した。統計解析にはランダム効果モデルを用い、相対リスクと95%信頼区間(CI)を算出した。 全粒穀物の摂取量は、90gを3食分(1食分は全粒パン1枚、または全粒シリアル1ボウル、または全粒ピタパン1.5枚など)とした。全粒穀物90g/日摂取で、心血管疾患の発症リスクが22%、全死亡リスクが17%低下 全粒穀物の摂取量が1日90g増えた場合の発症の相対リスクは、冠動脈疾患が0.81(95%CI:0.75~0.87、I2=9%、7件)、脳卒中が0.88(0.75~1.03、56%、6件)、心血管疾患が0.78(0.73~0.85、40%、10件)であった。また、死亡の相対リスクは、全てのがん0.85(0.80~0.91、37%、6件)、全死亡0.83(0.77~0.90、83%、11件)、呼吸器疾患0.78(0.70~0.87、0%、4件)、糖尿病0.49(0.23~1.05、85%、4件)、感染症0.74(0.56~0.96、0%、3件)、神経系疾患1.15(0.66~2.02、79%、2件)、非心血管疾患または非がんによる死亡0.78(0.75~0.82、0%、5件)であった。 全粒穀物の摂取量が210~225g/日(7~7.5食/日)までは、ほとんどの評価項目でリスクの低下が観察された。また、全粒パン、全粒シリアル、ブラン添加など特定の種類の全粒穀物、およびパン全体ならびに朝食用シリアル全体で、心血管疾患や全死亡のリスク低下との関連が認められたが、精製穀物、白米、米全体あるいは穀物全体では関連がほとんどみられなかった。

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カテーテル関連尿路感染症の予防プログラム(解説:小金丸 博 氏)-555

 カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)は、デバイスに関連して起こる代表的な医療関連感染症の1つである。医療関連感染症を減少させることは非常に重要な課題であり、国を挙げて取り組みが行われている。本論文では、米国において国家的プロジェクトとして行われているCAUTIの予防プログラムが、非ICU患者における尿道カテーテルの使用率およびCAUTIの発生率を有意に低下させることが示された。 本研究には、全米規模で数多くの病院、ユニット(ICU、非ICU)が参加している。ランダム化比較試験ではないこと、プログラムへの参加は自由意思でありすべての病院に一般化できないこと、データ収集が不完全であることなどのlimitationはあるものの、信頼できるデータといえる。 本研究では、CAUTIの予防プログラムによって、ICU患者における尿道カテーテルの使用率とCAUTIの発生率を低下させることはできなかった。ICUには重症患者が多く、細やかな尿量測定のために尿道カテーテルの留置が必要な患者が多い。ICUにおける尿道カテーテル留置は適切と判断されることが多いため、予防プログラムによる啓発では減らすことができず、結果として、CAUTIの発生率も低下させることができなかった可能性が考えられる。 ガイドラインでは、CAUTIの予防のために、尿道カテーテルの適正使用、無菌操作での挿入、適切なメンテナンス、不必要となった尿道カテーテルの抜去を推奨している。尿道カテーテルを留置している患者では、毎日カテーテルの必要性を評価し、抜去や代替療法(コンドームカテーテルの使用や間欠的自己導尿など)への変更を検討することが望ましい。臨床の現場では、不要なカテーテルは留置しないこと、不要となったカテーテルは早期に抜去することを常に意識しておきたい。

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Vol. 4 No. 4 心房細動患者におけるDAPTを考える

掃本 誠治 氏熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学はじめに高齢化で増加している心房細動には、抗凝固薬が必須である。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行症例、心筋梗塞、それぞれに合併する心房細動頻度は、海外では約10%、本邦では6~8%程度と報告されている1-3)。心房細動とステントを伴うPCIを合併すれば、DAPT+抗凝固薬の3剤併用と考えるが、出血リスクが上昇する4-6)。心房細動合併PCIあるいは急性冠症候群(ACS)患者に対する抗凝固薬と抗血小板薬の組み合わせは、原疾患による血栓塞栓症リスクと抗血栓薬による出血リスクの有効性と安全性を考慮することが重要である。WOEST試験WOEST試験7)は、心房細動や機械弁留置後に抗凝固薬を服用する患者で、冠動脈ステント挿入後、クロピドグレルと抗凝固薬の2剤併用群[経口抗凝固薬(ワルファリン)+クロピドグレル284例]と、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)と抗凝固薬の3剤併用群(ワルファリン+クロピドグレル+アスピリン289例)で、安全性と有効性を比較した試験で、平均年齢70歳、男性80%、抗凝固薬投与の理由として、心房細動が2剤併用群で69.5%、3剤併用群では69.2%、機械弁はそれぞれ10.2%と10.7%だった。結果として、1年間の出血イベントは、3剤併用群が有意に高値だった(3剤44.4% vs. 2剤19.4%)。また心血管イベントは、2剤併用群が有意に低かった(複合エンドポイント;1次エンドポイント+脳卒中+全死亡+心筋梗塞+ステント血栓症+標的血管再血行再建術;3剤併用群17.6% vs. 2剤併用群11.1%)。抗凝固薬を服用している患者でステント留置術を受けたとき、アスピリンを止めてチエノピリジン系抗血小板薬単剤と抗凝固薬の合計2剤にするというこれまでの発想とは異なることが不可能ではないことを示した意義は大きい。また、心房細動合併のステント留置術後の患者において、CREDO-Kyoto PCI/CABG Registryコホート2が日本の実情を表している3)。2005年~2007年、26施設、1,057例、退院時ワルファリン群506例(48%)、非ワルファリン群551例(52%)を5年間フォローし、脳卒中(虚血性、出血性)、全死亡、心筋梗塞、大出血を評価。非ワルファリン群は、高齢、急性心筋梗塞、頭蓋内出血、貧血が多く、男性、薬剤溶出性ステント(DES)、末梢動脈疾患(PAD)が少なかった。そもそも、心房細動があってもDAPTで上記の因子が複数あれば、臨床現場においてはワルファリンを躊躇するのかもしれない。脳卒中は、ワルファリン群と非ワルファリン群で有意差がなく、虚血性、出血性でも有意差はみられず、心筋梗塞は、ワルファリン群で少なかった。プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)治療域内時間(TTR)が65%以上群では、65%未満群に比し脳卒中発症率が低値だった。非弁膜症性心房細動(NVAF)ACSやPCI直後ではない非弁膜症性心房細動(NVAF)患者を対象として、本邦からJAST試験においてNVAF患者へのアスピリン150~200mg/日投与は、大出血が多く、無効と報告されている8)。海外では、ACTIVE W試験において、脳卒中リスクの高い心房細動患者に対し(17.4%に心筋梗塞既往)、DAPT(クロピドグレル+アスピリン)は、OAC(経口抗凝固薬)に比し心血管イベント抑制効果を示せなかった9)。さらに、NVAFでワルファリン不適合者に対するアスピリンとクロピドグレルのDAPTはアスピリン単独に比し脳梗塞抑制効果がみられたが、心筋梗塞死、血管死は差がなく、大出血イベントが多かった10)。以上の結果は、心房細動には抗血小板薬より抗凝固薬が必要であることを示している。ワルファリンのエビデンス冠動脈疾患には低用量アスピリンを終生投与するのが現在のガイドラインであるが、ワルファリンは50年以上日常臨床で使用されている薬剤で、急性心筋梗塞後のワルファリン vs. プラセボの大規模臨床研究でワルファリンの有効性が示されている11)。さらに心筋梗塞後、アスピリン vs. ワルファリン vs. アスピリン+ワルファリンの3群での比較研究では、アスピリン+ワルファリン併用群、ワルファリン群、アスピリン群の順に心血管イベント抑制効果が優れていた12)。しかし、この試験でのPT-INRは2.8~4.2と現在の実臨床より高値で設定されており、出血合併症が多かったこともあり推奨されなかった。安定冠動脈疾患を合併した心房細動患者のデンマークでのコホート研究では、ワルファリンに抗血小板薬を追加しても心血管イベントリスクは減少せずに出血リスクが増加した13)。以上は、出血リスクが低ければ、抗凝固薬が冠動脈疾患にも有効であることを示唆するものである。実臨床においては、本来抗凝固療法の適応でありながら、あえてコントロール不要の抗血小板薬を投与して、ワルファリンが躊躇される症例が存在した。そのようななかで、脳出血が少なく、PT-INRのコントロールが不要なNOACの登場は実臨床においては魅力的である。心房細動患者におけるACS合併またはステント留置時のガイドライン欧州心臓病学会からACS合併あるいはPCI施行の心房細動患者での抗血栓薬のjoint consensus documentが2014年に発表された14)。(1)脳卒中リスク CHA2DS2-VAScスコア(2)出血リスク HAS-BLEDスコア(3)病態 安定冠動脈疾患か急性冠症候群(待機的か緊急か)(4)抗血栓療法 どの抗血栓薬をどのくらい使用するか基本的には、出血リスクの高い3剤併用(DAPT+抗凝固薬)の期間を上記の条件にしたがって層別化し、可能なら抗血小板薬単剤+抗凝固薬に減量し、12か月以上では、左冠動脈主幹部病変などを除き可能なら抗凝固薬単剤への切り替えが推奨されている。また、VKAはTTR70%以上が推奨されており、VKAとクロピドグレルand/orアスピリンの症例ではINRは2.0~2.5が推奨されている。また、アクセス部位は橈骨動脈穿刺が推奨されている。AHA/ACC/HRSの心房細動ガイドライン2014でも、PCI後CHA2DS2-VAScスコアが2点以上では、慢性期にはアスピリンを除いて、抗凝固薬+抗血小板薬単剤が合理的であると記載されている15)。現在進行中の試験ACSあるいはPCIを受けた心房細動患者に対するNOACの臨床試験が進行中である(本誌p16の表を参照)16)。 RE-DUAL PCI試験は、ステント留置を伴うPCIを受けた非弁膜性心房細動患者を対象に、ダビガトランの有効性および安全性を評価する試験である。PIONEER AF-PCI試験は、ACS合併心房細動患者において、抗血小板薬に追加するリバーロキサバンの用量を検討する試験で、アピキサバンでも同様の試験が進行している。これらはステント留置術後急性期からの試験だが、本邦ではステント留置術後慢性安定期の心房細動合併患者を対象としたOAC-ALONE試験やAFIRE試験が進行しており、結果が待たれるところである。今後現在進行中の試験から新たなエビデンスが創出されるが、個々の患者において最適な治療法を見つけ出す努力は常に必要とされる(表)。表 ステント留置AF患者における抗血栓療法画像を拡大する文献1)Kirchhof P et al. Management of atrial fibrillation in seven European countries after the publication of the 2010 ESC Guidelines on atrial fibrillation: primary results of the PREvention oF thromboemolic events--European Registry in Atrial Fibrillation (PREFER in AF). Europace 2014; 16: 6-14.2)Akao M et al. Current status of clinical background of patients with atrial fibrillation in a community-based survey: the Fushimi AF Registry. J Cardiol 2013; 61: 260-266.3)Goto K et al. Anticoagulant and antiplatelet therapy in patients with atrial fibrillation undergoing percutaneous coronary intervention. Am J Cardiol 2014; 114: 70-78.4)Toyoda K et al. Dual antithrombotic therapy increases severe bleeding events in patients with stroke and cardiovascular disease: a prospective, multicenter, observational study. Stroke 2008; 39: 1740-1745.5)Uchida Y et al. Impact of anticoagulant therapy with dual antiplatelet therapy on prognosis after treatment with drug-eluting coronary stents. J Cardiol 2010; 55: 362-369.6)Sørensen R et al. Risk of bleeding in patients with acute myocardial infarction treated with different combinations of aspirin, clopidogrel, and vitamin K antagonists in Denmark: a retrospective analysis of nationwide registry data. Lancet 2009; 374: 1967-1974.7)Dewilde WJ et al. Use of clopidogrel with or without aspir in in patients taking oral anticoagulant therapy and under going percutaneous coronary intervention: an openlabel, randomised, controlled trial. Lancet 2013; 381: 1107-1115.8)Sato H et al. Low-dose aspirin for prevention of stroke in low-risk patients with atrial fibrillation: Japan Atrial Fibrillation Stroke Trial. Stroke 2006; 37: 447-451.9)Connolly S et al. Clopidogrel plus aspirin versus oral anticoagulation for atrial fibrillation in the Atrial fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for prevention of Vascular Events (ACTIVE W): a randomised controlled trial. Lancet 2006; 367: 1903-1912.10)Connolly SJ et al. Effect of clopidogrel added to aspirin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 360: 2066-2078.11)Smith P et al. The effect of warfarin on mortality and reinfarction after myocardial infarction. N Engl J Med 1990; 323: 147-152.12)Hurlen M et al. Warfarin, aspirin, or both after myocardial infarction. N Engl J Med 2002; 347: 969-974.13)Lamberts M et al. Antiplatelet therapy for stable coronary artery disease in atrial fibrillation patients taking an oral anticoagulant: a nationwide cohort study. Circulation 2014; 129: 1577-1585.14)Lip GY et al. Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA) endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014; 35: 3155-3179.15)January CT et al. 2014 AHA/ACC/HRS Guideline for the Management of Patients With Atrial Fibrillation: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society. Circulation 2014; 130: 2071-2104.16)Capodanno D et al. Triple antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients with acute coronary syndromes or undergoing percutaneous coronary intervention or transcatheter aortic valve replacement. EuroIntervention 2015; 10: 1015-1021.

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急性期脳出血に対する積極的降圧療法は有効か?/NEJM

 超急性期脳出血患者において、ニカルジピンによる収縮期血圧140mmHg以下への積極的降圧療法は、140~179mmHgを目標とした標準降圧療法と比較し、死亡や高度障害は減少しなかった。米国・ミネソタ大学のAdnan I. Qureshi氏らが、多施設共同無作為化非盲検比較試験ATACH-2(Antihypertensive Treatment of Acute Cerebral HemorrhageII)の結果、報告した。脳出血急性期の収縮期血圧の降圧目標については、INTERACT-2試験にて、発症後1時間以内に140mmHg未満に下げることで3ヵ月後の転帰を改善する傾向が示されたが(急性脳内出血後の降圧治療、積極的降圧vs.ガイドライン推奨/NEJM)、これまで推奨の根拠となるデータには限りがあった。NEJM誌オンライン版2016年6月8日号掲載の報告より。脳出血急性期の降圧、収縮期血圧110~139mmHgと140~179mmHgを比較 ATACH-2試験は2011年5月~2015年9月に、米国・日本・中国・台湾・韓国・ドイツの110施設で実施された。 対象は、発症後4.5時間以内に治療開始可能で、出血量60cm3未満、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS:3~15、数値が低いほど状態は不良)5点以上、発症~治療開始までの測定時の収縮期血圧が180mmHg以上の脳出血患者であった。 積極的降圧群(無作為化後24時間以内に収縮期血圧値目標110~139mmHg)と標準降圧群(同140~179mmHg)に無作為化し、速やかに(発症後4.5時間以内)ニカルジピンを静脈投与した(5mg/時から開始し、15分ごとに2.5mg/時増量、最大量15mg/時)。 主要評価項目は、評価者盲検下における無作為化後3ヵ月時の死亡および重度の障害(修正Rankinスケール[0:無症状、6:死亡]で4~6)とした。3ヵ月後の死亡・重度の障害に差はない 1,000例が登録され(積極的降圧群500例、標準降圧群500例)、ベースラインの収縮期血圧(平均±SD)値は200.6±27.0mmHg、平均年齢は61.9歳、56.2%がアジア人であった。 主要評価項目である死亡・重度の障害の割合は、積極的降圧群38.7%(186/481例)、標準降圧群37.7%(181/480例)で、年齢・ベースラインのGCSスコア・脳室内出血の有無で調整後の相対リスクは1.04(95%信頼区間:0.85~1.27)であった。 治療に関連した重篤な有害事象の発現頻度(無作為化後72時間以内)は、積極的降圧群1.6%、標準降圧群1.2%であった。また、無作為化後7日以内の腎臓の有害事象の発現頻度は、それぞれ9.0%および4.0%で、積極的降圧群が有意に高値であった(p=0.002)。 なお、本試験は事前に計画された中間解析において無益性が認められたため、その後の登録は中止となっている。

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アミオダロンは効く?効かない?よくわからない?(解説:香坂 俊 氏)-550

アミオダロンの登場10年以上前にさかのぼるが、アミオダロンが心肺蘇生の現場に登場したときは画期的であった。何しろエビデンスのエの字もなかった心肺蘇生の領域で、自分が知る限りでは初めての本格的ランダム化試験が行われたのだ。その試験の名前はALIVEといった(NEJM誌2002年掲載)。当時、心室細動(VF)や無脈性心室頻拍(pulseless VT)といった致死性不整脈には、種々様々な薬剤が使用されていた。主要なものとしては、昔からあったリドカイン、I群抗不整脈薬の雄ブレチリウム(現在米国では製造中止)、さらに抗狭心症薬からくら替えしてきたアミオダロンなどが選択肢として存在したが、ALIVE試験ではこのうちリドカインとアミオダロンが比較された。その結果はといえば、アミオダロンのほうが、蘇生されて病院に到達する率が抜群によく出たため(22.8% vs.12.0%)、これ以降ACLSのプロトコルにも採用され、アミオ(アミオダロンの米国での通称)は、救急医や循環器内科医にとってなじみ深い抗不整脈薬となった。ただ、ALIVEは300例程度の試験であったため、退院時の生死に関しては明確な結論が得られないままとなっていた(どちらの群でも80%以上の患者さんが最終的には死亡された)。アミオダロンの退場(?)前置きが長くなったが、今回のRCTはその「生存退院」というところにターゲットを合わせ、ALIVEのおおよそ10倍の規模で行われた臨床試験である(n=3,026)。さらに、アミオダロン、リドカインに加えて、ご丁寧に生理食塩水を使うコントロール群まで設定されるという徹底ぶりである。結果についての詳細は他稿(院外心停止に対するアミオダロン vs.リドカイン vs.プラセボ/NEJM)に譲るが、驚くべきことにアミオダロン群とリドカイン群の間に生存退院率の差は認められず(絶対値の差が0.7%、p=0.70)、さらに2つの薬剤投与群とコントロール群との差もわずかなものであった[アミオダロン群との差が3.2%(p=0.08)、リドカイン群との差が2.6%(p=0.16)]。この結果は衝撃的なものであり、今後アミオダロンのガイドライン上での扱いがどうなるか注目される(おそらく、今ほど絶対的な地位にとどまることはなかろうかと思われる)。よくわからないところよくわからないのが、アミオダロンとリドカインの2剤共「目撃されていた(witnessed)」心肺停止例に限れば、優れた効果を発揮できていた、というところだ。目撃者のいなかった心肺停止例は、いくらVFやVTといった波形を呈していたとしても、薬剤を使用するタイミングを逸してしまっていたということなのか? あるいは、きちんとバイスタンダーによる蘇生行為が行われていなければ、こうした薬剤は効果を発揮できないのか?自分はしばらくはアミオダロンを使い続けるつもりでいる。ただ、アミオダロンは有害事象(血圧の低下や徐脈)もある程度想定しなくてはならない薬剤なので(注)、もしもこちらをリドカインに切り替えて支障がないというのであれば、それは助かる。さらに、「目撃された」心肺停止例という群を別枠で考えなくてはならないかということについては、現場視点から考えると難しいのではないかと思う。このあたり、今後議論が深まっていくのではないだろうか?注)今回の試験でも、アミオダロン群では5%程度の症例で一時的なペーシングが必要となっている。

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気管支内コイル治療は重症肺気腫患者の運動耐容能を改善させるのか?(解説:山本 寛 氏)-549

 本研究は、肺気腫に対する気管支内コイル治療の効果と安全性を検討するため、2012年12月から2015年11月まで、北米21施設、欧州5施設が参加して315例を対象に行われた。患者は、ガイドラインに準拠した通常ケア(呼吸器リハビリテーション、気管支拡張薬の投与)のみを行う群(n=157)と、これに加えて両側気管支内にコイル治療を行う群(n=158)とに無作為に割り付けている。コイル治療群では、2回の治療を4ヵ月間隔で行い、1肺葉当たり10から14個のコイルを気管支鏡を用いて埋め込んだ。治療前と治療12ヵ月後の6分間歩行距離の変化を主要評価項目とし、6分間歩行距離の改善割合、SGRQ (St. George’s Respiratory Questionnaire)を用いたQOL(Quality of Life)の変化、そして1秒量の変化率がそれぞれ副次評価項目として設定されている。 その結果、6分間歩行距離の12ヵ月間での変化量はコイル治療群で+10.3m、通常ケア群で-7.6mであった。その群間差は14.6m(97.5%CI:0.4m~∞、片側p値:0.02)であり、有意にコイル治療群で優れていた。1秒量の変化率は中央値で7.0%(97.5%CI:3.4%~∞、片側p値0.01)であり、やはりコイル治療群で大きな改善が示された。SGRQスコアの群間差は-8.9ポイント(97.5%CI:-∞~-6.3ポイント、片側p値<0.001)で、コイル治療群において有意な改善が示された。 一方、コイル治療群において主要な合併症が34.8%も発生している。通常ケア群においては19.1%であり、コイル治療群では有意に合併症の頻度が高かった(p=0.002)。コイル治療群では、肺炎が20%(通常ケア群では4.5%)、気胸が9.7%(通常ケア群では0.6%)とそれぞれ有意に高頻度に認められた。 以上の結果から、肺気腫患者に対する気管支内コイル治療が、6分間歩行距離やQOL、肺機能の改善に有効であると結論することは早計である。主たる評価項目である6分間歩行距離の改善はわずかであり、設定されたMCID(minimal clinical important difference)=29mを超えるものではない。しかも、重大な合併症の頻度も高く、長期的な効果についても不明である。 しかし、本研究には残気量が予測値の225%以上という高度のair trappingを示す肺気腫症例が多く(235例)登録されている。探索的評価項目のうち、残気量と残気率に関しては、コイル治療を行うことによってそれぞれ0.31Lの減少、3.5%の減少が得られている。サブグループ解析の結果、air trappingが225%以上と高度で、heterogeneousな気腫症例においては、6分間歩行距離で+29.1m、1秒量で+12.3%、SGRQで-10.1ポイントと、臨床的にも意味のある効果が示されている。今後は、本治療法の長期効果についての追加報告がなされること、またheterogeneousな気腫分布を示す、air trappingが高度な肺気腫を調査対象としたランダム化比較試験が行われることが期待される。

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深部静脈血栓症後の弾性ストッキング、2年以上が理想的/BMJ

 近位深部静脈血栓症(DVT)患者に対する弾性ストッキングによる圧迫療法(ECS)は、2年以上が理想的であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学のG C Mol氏らが多施設単盲検非劣性無作為化試験OCTAVIAの結果、報告した。1年治療群の2年治療群に対する非劣性が認められなかったという。ECSはDVT患者の血栓後症候群予防のために用いられるが、至適期間は明らかではない。現行ガイドラインでは、24ヵ月間の使用としているが、最近の試験で、この現行戦略に疑問符を呈し、より短期間とする提案がなされていた。BMJ誌オンライン版2016年5月31日号掲載の報告。1年治療群を中止群と継続群に割り付け、血栓後症候群の発生を評価 OCTAVIA試験は2009年2月~2013年9月に、オランダの1大学病院を含む8教育病院の外来クリニックで行われた。超音波で確認された症候性の脚部近位DVTを呈し12ヵ月間ECSを受けた患者を対象とし、研究グループは被験者を、ECSを継続する群と中止する群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、DVT診断後24ヵ月間の血栓後症候群の発生率で、標準化されたVillaltaスケールで評価(intention-to-treat解析)した。本検討は、ECSの1年群は同2年群に対して非劣性であるとの仮定に基づき行われ、事前規定の非劣性マージンは10%であった。また、主な副次アウトカムとしてQOL(VEINES-QOL/Sym)を評価した。1年治療群の2年治療群に対する非劣性認められず、QOLは両群間で有意差なし 3,603例がスクリーニングを受け、ECS治療に応じ血栓後症候群を呈していなかった適格患者518例が、DVT診断後1年後に継続群(262例)と中止群(256例)に無作為に割り付けられた。 結果、中止群では、51/256例の血栓後症候群の発生がみられ、発生率は19.9%(95%信頼区間[CI]:16~24%)であった。一方、継続群の同発生は34/262例で、発生率は13.0%(同:9.9~17%)であった。継続群では、85%が週6~7日間ECSを使用していた。 両群の発生率の絶対差は6.9%(95%CI上限値12.3%)であり、1年治療群の2年治療群に対する非劣性は認められなかった。 ECS継続群で、血栓後症候群の発生1例を予防するのに必要な治療数(NNT)は14(95%CI下限値8)であった。 副次アウトカムのQOLについては、両群間で有意差は認められなかった。■「深部静脈血栓症」関連記事下肢静脈瘤で深部静脈血栓症のリスク約5倍/JAMA

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食習慣の改善項目として減塩は必要ないのか?(解説:浦 信行 氏)-546

 Lancet誌の5月20日号のEpubに掲載された4つのRCTのプール解析の結果は、食塩摂取過剰は高血圧例のみ心血管イベント・死亡リスクを増大させたが、食塩低量摂取では高血圧の有無にかかわらず、リスクを増大させたとするものであった。この結果から、摂取食塩量による心血管疾患リスクの血圧階層による差異と、過度の減塩のリスクを示した点で、興味ある研究といえる。しかし、データとして示されているのは簡易式を用いた尿中Na排泄量であり、24時間Na排泄量との相関性は保たれてはいるものの、食塩(NaCl)量に換算すると7.5g未満で高血圧の有無にかかわらずリスクが増大し、17.5g以上で高血圧例のみリスクが増大するという結果である。U字型のボトム、すなわち食塩の至適摂取量は10.0~12.5gという結果なのである。また、この数字はあくまでも尿中排泄量であり、食塩摂取量に関しては、Naの汗や糞便中の排泄も考慮に入れると、この尿中排泄量の1.15~1.20倍の摂取量ということになる。極論をいえば食塩摂取制限はほぼ必要ないともいえる結果である。 米国食品医薬品局(FDA)は6月1日に、食品業界に対し自主的に塩分の含有量を減らすことを求める指針の草案を発表している。現状での米国人の食塩摂取は8.6gであり、ガイドラインの推奨の5.8gのほぼ1.5倍である。わが国でもまだ10gを切っていない。私自身は、やはりガイドラインに示される程度の減塩は大変重要と考えている。この結果から直ちに至適食塩摂取量を10.0~12.5gにするのはどうあっても早計だが、大変解釈に困難なデータである。

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血友病A患者の活動域をさらに広げる

 5月31日、バクスアルタ株式会社(現シャイアー・ジャパン株式会社)は、血友病A治療薬「アディノベイト(静注用)」の発売を前に都内でプレス説明会を開催した。説明会では、「『出血ゼロ』を目指す血友病治療の最新動向」をテーマに講演が行われた。出血ゼロの追求 はじめに辛 栄成氏(同社医薬開発本部本部長・医師)が、「血友病A患者さんの新たな選択肢~半減期延長製剤 アディノベイト~」と題し、血友病の概要と新薬の特性について説明を行った。 血友病は、止血に関与する凝固因子が不足または欠乏している遺伝性疾患であり、とくに第VIII因子が欠乏する血友病Aの患者さんは、全国に約5,000人いると推定されている。 治療目標は「出血しない」ことであるが、定期補充療法でも、その達成率は低いという。その原因として、そもそも補充量が不足している、患者さんのアドヒアランスの問題などさまざまな要因がある。そんななか、患者さんの治療での負担を少しでも軽くするために開発されたのが、アディノベイトである。これは先行治療薬のアドベイトを基に創薬され、PEG化技術により作用時間を延長することで、従来の週3~4回の投与を週2回の投与に変更できる特性を持つ。 「現在さらに半減期を延ばす薬剤の研究中で、今後も『出血ゼロ』実現に向け、遺伝子治療をはじめ新製剤の開発に注力していきたい」と今後の展望を述べた。出血がない人生へ向けて 次に花房 秀次氏(荻窪病院 理事長/血液科 部長)が、「『出血ゼロ』時代の到来 ~血友病治療の新たなステージ~」と題し、現在の診療と新薬、そして診療の課題について解説を行った。 レクチャーでは血友病を決壊した堤防にたとえ、「決壊箇所の補修のため使われる石材が血小板であり、その隙間を埋め、補修し、強固にするセメントが凝固因子である。血友病は、このセメントを固める成分の1つが不足する疾患であり、治療薬で補充することで修復することができる」とわかりやすく説明を行った。血友病治療が普及する前の患者さんは、スポーツはおろか、関節症による後遺症に悩まされ、普通の生活にも困難を来していた。しかし、現在では、安全性の向上、定期補充療法の確立、安定供給ができるようになり、スポーツはもちろん、健常人と同じ生活を患者さんは送ることができるようになったという。 血友病で問題なのは、出血が止まりにくいことのほか、肘、膝、足首などの関節での内出血が挙げられ、年2、3回の出血でも関節に構造的な変化をもたらすことが知られている。また、頭蓋内出血は、1回の出血でも重篤なダメージを与えることが知られ、すべての年代の患者さんで「出血させないこと」が、重要な意味を持つ。そのためには、2013年にわが国の治療ガイドラインで初めて記載された定期補充療法が必要であり、現在では患者さんに広く普及しつつある。 しかし、定期補充療法が行われても患者さんのアドヒアランスの問題(例: 途中中断や投与回数、量のバラツキ)や患者さんに必要な個別化ができていない、地域・施設間格差の問題、専門医の絶対的な不足もあり、出血ゼロには至っていない状況である。 週2回の投与が患者負担を軽減 定期補充療法の治療薬として登場したのが、アディノベイトである。これはヒト・動物由来タンパクを添加していない遺伝子組換え製剤のため安全性が担保され、何よりも週2回の投与かつ固定用量のシンプルな投与レジメンで治療ができるという特徴がある。 効果について年間出血回数(中央値)でみた場合、出血時補充療法(n=17)が41.5回/年だったのに対し、定期補充療法(n=101)では1.9回/年と95%低値を示すとともに、定期補充療法(n=101)で出血回数がゼロだった被験者(実投与日50日以上または6ヵ月の試験期間)は39.6%と約4割で出血ゼロが実現できていた。また、効果の持続では、アドベイトとの半減期比較(n=26、凝固一段法)で、アドベイトの72時間に対し、アディノベイトは96時間と1.4倍の長さが報告されている(いずれもII/III相試験による)。 安全性については、156例中10例で副作用が報告され、頭痛、(注射部位の)疼痛、下痢、悪心などいずれも軽微なものであった。なお、第VIII因子インヒビター、抗PEG抗体の発現は報告されていない(いずれもI~III相試験)。 最後にまとめとして「現在は出血ゼロを目指せる時代であり、患者さんにも製剤の進歩を理解してもらう必要がある。患者さんに個別化治療ができていけば、治療の大きな変化になる。それにより、出血に伴う後遺症を予防することで、良好なQOLを保ったまま長寿を過ごすことができるようになる。今後は、個別化療法をいかに実現させていくかが課題となる」と語り、レクチャーを終えた。関連コンテンツ新薬情報:新発売(アディノベイト静注用500・1000・2000)

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パブコメ募集「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン

 日本老年精神医学会(理事長:新井 平伊氏、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学 教授)は6月8日、都内で開いたプレスセミナーにおいて、「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」の改訂に当たり、2回目のパブリックコメントの募集を行うと発表した。コメントは学会ホームページ上で受け付けており、募集期間は6月13日午後~27日(最終日は17時まで)となっている。 今回、第2版として改訂される本ガイドラインは、2015(平成27)年度厚生労働科学特別研究事業として、日本老年精神医学会のほか、日本認知症学会、日本神経精神薬理学会、日本神経治療学会、日本認知症ケア学会、日本神経学会の会員で構成する研究班が作成したもの。2012年に初版が作成されたが、先の研究事業において、かかりつけ医500人に対して行った調査によると、本ガイドラインを参考にしている医師は約10%にとどまっていた。さらに、薬剤の使用に当たって、患者家族に同意を得ている医師は28%と低い数字であることも明らかになった。これを受けて今回は、実臨床でBPSDに対して使用される向精神薬について、その有効性と副作用について明確に記載するなどの改訂が中心となった。 第2版の作成に当たっては、改訂事項を盛り込んだドラフトに対して今年4~5月に関係6学会のホームページでパブリックコメントを募集。2回目となる今回のパブリックコメントでは、その際に寄せられた約90件の質問やコメント、それに対する研究班の見解を掲示版方式で公開し、さらなるコメントを募集する。 このたびのガイドライン改訂について、研究班の班長を務めた新井氏は、「興奮性BPSDに対しては、抗精神病薬を使わざるを得ない場合もあるが、これまでに日本人の研究データはなく、EBMだけでは片付けられない問題もある。こうした中、実臨床でかかりつけ医が抗精神病薬を処方する際の医療安全面におけるよりどころとなるような、安全性の高いガイドラインを作成したい」と述べた。パブリックコメントの募集告知はこちら

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結節性多発動脈炎〔PAN: polyarteritis nodosa〕

1 疾患概要■ 概念・定義主として中型の筋性動脈が侵される壊死性動脈炎である。国際的な血管炎の分類であるChapel Hill Consensus Conference 2012分類(CHCC2012)1)では、血管炎を障害される血管のサイズにより分類しており、本疾患はmedium vessel vasculitis(中型血管炎)に分類されている。剖検時に動脈に沿って粟粒大から豌豆大の小結節が多発して認められる場合があり、KussmaulとMaierにより結節性動脈周囲炎として1866年に提唱された。現在では、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)の呼称が一般的に用いられている。本症の壊死性動脈炎は、肝臓、胆嚢、脾臓、消化管、腸間膜、腎泌尿生殖器、皮膚、骨格筋、中枢神経系、心臓、肺など全身に認め、とくに血管の分岐部が侵されやすい。肺では気管支動脈に病変を認め、肺動脈が侵されることはまれである。原則として腎糸球体は侵されない。■ 疫学50~60歳に好発し、男女比では男性にやや多い。厚生労働省より結節性動脈周囲炎として、特定疾患医療受給者証を交付された患者数は2011年の時点でおよそ9,000人であるが、この中には顕微鏡的多発血管炎の患者も含まれているので、PANの患者が実際にどのくらい存在するかは不明である。しかしながら、PANの患者数は顕微鏡的多発血管炎に比べて圧倒的に少なく、500人未満と推定される。2006年以降、PANと顕微鏡的多発血管炎は別個に登録されるようになったため、今後その実数が明らかになるものと思われる。■ 病因不明である。アデノシンデアミナーゼ2(adenosine deaminase 2: ADA2)の一塩基多型による先天的機能欠損が、小児期のPAN類似血管症の原因となることが報告されている2、3)が、成人例でADA2の量的または質的異常があるとの報告はない。本疾患に特徴的な自己抗体は知られていない。■ 症状発熱や全身倦怠感、体重減少のほか、急速進行性腎障害、高血圧、中枢神経症状、消化器症状、紫斑、皮膚潰瘍、末梢神経障害などの多彩な症状を呈する。■ 分類本症の組織学的病期はArkinにより、I期:変性期、II期:炎症期、III期:肉芽期、IV期:瘢痕期に分類されている(Arkin分類)。変性期には内膜から中膜にかけて、浮腫とフィブリノイド変性が認められる。炎症期には中膜から外膜にかけて、好中球、時に好酸球、リンパ球、形質細胞が浸潤し、フィブリノイド壊死は血管全層に及ぶ。その結果、内弾性板は破壊され、断裂、消失する。炎症期が過ぎると、組織球や線維芽細胞が外膜より侵入し、肉芽期に入る。肉芽期には内膜増殖が起こり、血管内腔が閉塞するほど高度になることがある。瘢痕期では、炎症細胞浸潤はほとんどみられず、血管壁は線維性組織に置換される。このような場合でも、弾性線維染色を行うと内弾性板の断裂が認められ、診断に有用である。また、これら各期の病変が、同一症例内に同時期に混在して認められることも特徴である。■ 予後本症の予後は急性期の治療によるところが大きい。副腎皮質ステロイドによる治療を基本としたフランスの臨床研究では、57例中48例(84.2%)が初期治療により寛解し、残りの9例中8例も免疫抑制薬の併用などにより寛解導入されている4)。しかしながら、寛解導入された56例中、26例(46.4%)で再燃しており、再燃率は比較的高いといえる。5年生存率は90%強である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)厚生労働省指定難病診断基準(難治性血管炎に関する調査研究班2006年改訂)に基づいて行われる(表1)。重症度に応じて、1度~5度に分類される(表2)。表1 結節性多発動脈炎の診断基準(厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班2006年改訂)【主要項目】1) 主要症候(1)発熱(38℃以上、2週以上)と体重減少(6ヵ月以内に6kg以上)(2)高血圧(3)急速に進行する腎不全、腎梗塞(4)脳出血、脳梗塞(5)心筋梗塞、虚血性心疾患、心膜炎、心不全(6)胸膜炎(7)消化管出血、腸閉塞(8)多発性単神経炎(9)皮下結節、皮膚潰瘍、壊疽、紫斑(10)多関節痛(炎)、筋痛(炎)、筋力低下2) 組織所見中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎の存在3) 血管造影所見腹部大動脈分枝(とくに腎内小動脈)の多発小動脈瘤と狭窄・閉塞4) 判定(1)確実(definite)主要症候2項目以上と組織所見のある例(2)疑い(probable)(a)主要症候2項目以上と血管造影所見の存在する例(b)主要症候のうち(1)を含む6項目以上存在する例5) 参考となる検査所見(1)白血球増加(10,000/μL以上)(2)血小板増加(400,000/μL以上)(3)赤沈亢進(4)CRP強陽性6) 鑑別診断(1)顕微鏡的多発血管炎(2)多発血管炎性肉芽腫症(旧称:ウェゲナー肉芽腫症)(3)好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧称:アレルギー性肉芽腫性血管炎)(4)川崎病動脈炎(5)膠原病(SLE、RAなど)(6)IgA血管炎(旧称:紫斑病性血管炎)【参考事項】(1)組織学的にI期:変性期、II期:急性炎症期、III期:肉芽期、IV期:瘢痕期の4つの病期に分類される。(2)臨床的にI、II期病変は全身の血管の高度の炎症を反映する症候、III、IV期病変は侵された臓器の虚血を反映する症候を呈する。(3)除外項目の諸疾患は壊死性血管炎を呈するが、特徴的な症候と検査所見から鑑別できる。表2 結節性多発動脈炎の重症度分類●1度ステロイドを含む免疫抑制薬の維持量ないしは投薬なしで1年以上病状が安定し、臓器病変および合併症を認めず、日常生活に支障なく寛解状態にある患者(血管拡張剤、降圧剤、抗凝固剤などによる治療は行ってもよい)。●2度ステロイドを含む免疫抑制療法の治療と定期的外来通院を必要とするも、臓器病変と合併症は併存しても軽微であり、介助なしで日常生活に支障のない患者。●3度機能不全に至る臓器病変(腎、肺、心、精神・神経、消化管など)ないし合併症(感染症、圧迫骨折、消化管潰瘍、糖尿病など)を有し、しばしば再燃により入院または入院に準じた免疫抑制療法ないし合併症に対する治療を必要とし、日常生活に支障を来している患者。臓器病変の程度は注1のa~hのいずれかを認める。●4度臓器の機能と生命予後に深く関わる臓器病変(腎不全、呼吸不全、消化管出血、中枢神経障害、運動障害を伴う末梢神経障害、四肢壊死など)ないしは合併症(重症感染症など)が認められ、免疫抑制療法を含む厳重な治療管理ないし合併症に対する治療を必要とし、少なからず入院治療、時に一部介助を要し、日常生活に支障のある患者。臓器病変の程度は注2のa~hのいずれかを認める。●5度重篤な不可逆性臓器機能不全(腎不全、心不全、呼吸不全、意識障害・認知障害、消化管手術、消化・吸収障害、肝不全など)と重篤な合併症(重症感染症、DICなど)を伴い、入院を含む厳重な治療管理と少なからず介助を必要とし、日常生活が著しく支障を来している患者。これには、人工透析、在宅酸素療法、経管栄養などの治療を要する患者も含まれる。臓器病変の程度は注3のa~hのいずれかを認める。注1:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により軽度の呼吸不全を認め、PaO2が60~70Torr。b.NYHA2度の心不全徴候を認め、心電図上陳旧性心筋梗塞、心房細動(粗動)、期外収縮あるいはST低下(0.2mV以上)の1つ以上を認める。c.血清クレアチニン値が2.5~4.9mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.09~0.2の視力障害。e.拇指を含む2関節以上の指・趾切断。f.末梢神経障害による1肢の機能障害(筋力3)。g.脳血管障害による軽度の片麻痺(筋力6)。h.血管炎による便潜血反応中等度以上陽性、コーヒー残渣物の嘔吐。注2:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により中等度の呼吸不全を認め、PaO2が50~59Torr。b.NYHA3度の心不全徴候を認め、胸部X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人口ペースメーカーの装着のいずれかを認める。c.血清クレアチニン値が5.0~7.9mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.02~0.08の視力障害。e.1肢以上の手・足関節より中枢側における切断。f.末梢神経障害による2肢の機能障害(筋力3)。g.脳血管障害による著しい片麻痺(筋力3)。h.血管炎による肉眼的下血、嘔吐を認める。注3:以下のいずれかを認めることa.肺線維症により高度の呼吸不全を認め、PaO2が50Torr 未満。b.NYHA4度の心不全徴候を認め、胸部X線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人口ペースメーカーの装着、のいずれか2つ以上を認める。c.血清クレアチニン値が8.0mg/dLの腎不全。d.両眼の視力の和が0.01以下の視力障害。e.2肢以上の手・足関節より中枢側の切断。f.末梢神経障害による3肢以上の機能障害(筋力3)、もしくは1肢以上の筋力全廃(筋力2以下)。g.脳血管障害による完全片麻痺(筋力2以下)。h.血管炎による消化管切除術を施行。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)2006~2007年度合同研究班による『血管炎症候群の診療ガイドライン』の中で、「寛解導入療法と寛解維持療法の指針」が示されているので、以下に示す。■ 寛解導入療法1)副腎皮質ステロイドプレドニゾロン0.5~1mg/kg/日(40~60mg/日)を重症度に応じて経口投与する。腎、脳、消化管など生命予後に関わる臓器障害を認めるような重症例では、パルス療法すなわちメチルプレドニゾロン大量点滴静注療法(メチルプレドニゾロン500~1,000mg + 5%ブドウ糖溶液500mLを2~3時間かけ点滴静注、3日間連続)を行う。後療法としてプレドニゾロン0.5~0.8mg/日の投与を行う5)。2)ステロイド治療に反応しない場合シクロホスファミド点滴静注療法(intravenous cyclophosphamide:IVCY)または経口シクロホスファミド(CY)の経口投与(0.5~2mg/kg/日)を行う。IVCYは、シクロホスファミド500~600mg/生理食塩水または5%ブドウ糖溶液500mLを2~3時間かけて点滴静注し、4週間間隔、計6回を目安に行う6、7)。IVCY治療中は白血球減少に注意し3,000/㎜3以下にならないように次回のIVCY量を減量する。なお、CYは腎排泄性のため腎機能低下に応じて減量投与を行う(クラスIIb、レベルC)8)。表3に年齢、腎機能に応じたIVCY量を示す。なお、IVCYは経口CYに比べて有効性は同等だが副作用が少ないと報告されている9)。画像を拡大するその他の免疫抑制薬としてアザチオプリン、メトトレキセートも用いられる(クラスIIb、レベルC)9)。いずれも腎排泄性である。アザチオプリンは腎機能低下時には減量が必要であり、メトトレキセートは腎不全には禁忌である。3)重要臓器傷害の重症例肺・腎・消化管・膵などの重要臓器を2ヵ所以上傷害された重症例では、ステロイドパルスと共に血漿交換療法を行い、生命予後を改善させるようにする(クラスIIb、レベルC)10、11)。4)HBウイルス肝炎併発例活動性のHBウイルス肝炎を伴っている場合には、抗ウイルス薬および免疫複合体除去目的で血漿交換療法を併用する(クラスIIb、レベルC)5、6)。■ 寛解維持療法初期治療による寛解導入後は、再燃のないことを確認しつつ副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン)を漸減し維持量(5~10mg/日)とする。副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の治療期間は原則として2年を超えない(クラスIIb、レベルC)12)。CYは3ヵ月間用い、その後寛解維持薬として、より副作用の少ないアザチオプリンに変更し、半年~1年間用いる(クラスIIb、レベルC)13)。なお、免疫抑制薬、血漿交換療法は、本疾患に対する保険適用薬でないため、投薬時には十分なインフォームドコンセントが必要である。4 今後の展望血管炎症候群の中でも、顕微鏡的多発血管炎などのANCA関連血管炎の病因・病態解明が進み、新規治療法が考案されてきているのに対し、PANに対する基礎研究ならびに臨床研究は、ここ数年あまり大きな進展が得られていないのが実情である。とはいえ、厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班をはじめとする地道な基礎的・臨床的研究が継続されており、その中からブレイクスルーが生まれることが期待される。5 主たる診療科膠原病・リウマチ科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 結節性多発動脈炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本血管病理研究会(医療従事者向けのまとまった情報)1)Jennette JC, et al. Arthritis Rheum. 2013;65:1-11.2)Zhou Q, et al. New Engl J Med.2014;370:911-920.3)Navon Elkan P, et al. New Engl J Med.2014;370:921-931.4)Samson M, et al. Autoimmun Rev. 2014;13:197-205.5)中林公正ほか. ANCA関連血管炎の治療指針. 厚生労働省厚生科学特定疾患対策研究事業難治性血管炎に対する研究班(橋本博史編). 2002;19-23.6)Gayraud M, et al. Br J Rheumatol. 1997;36:1290-1297.7)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 2003;49:93-100.8)難病医学研究財団/難病情報センター 免疫疾患調査研究班(難治性血管炎に関する調査研究班). IVCY治療における年齢、腎機能に応じたシクロホスファミドの投与量設定表. 難病情報センター. (参照 2015.1月26日)9)Jayne D. Curr Opin Rheumatol. 2001;13:48-55.10)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 1995;38:1638-1645.11)寺田典生ほか. 日内会誌. 1988;77:494-498.12)Guillevin L, et al. Arthritis Rheum. 1998;41:2100-2105.13)Jayne D, et al. N Engl J Med. 2003;349:36-44.公開履歴初回2015年05月15日更新2016年06月07日

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左心室収縮能低下を伴う多枝病変、PCIかCABGか

 左心室の収縮機能低下を伴う多枝冠動脈病変について、ガイドラインは経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも冠動脈バイパス術(CABG)を推奨しているが、両者を比較した無作為化試験はこれまで行われていない。今回、レジストリに登録された患者から傾向スコアを用いて一致させた患者を抽出し、両者を比較した結果がCirculation誌2016年5月31日号(オンライン版2016年5月5日号)に発表された。傾向スコアを用いてPCI群とCABG群を比較 American College of Cardiology Foundation(ACCF)/American Heart Association(AHA)の安定虚血性疾患に対するガイドラインでは、左室駆出率(LVEF)35%以下の患者の生存率の改善に対してCABGがクラスII bの推奨度で推奨されている一方で、PCIは推奨されておらず、再灌流療法の選択に関しては付随する臨床情報を基に判断することになっている。 本試験のデータは、ニューヨーク州の非連邦病院で登録が義務付けられているレジストリ[New York State Percutaneous Coronary Intervention Reporting System(PCIRS)とthe Cardiac Surgery Reporting System(CSRS)]から抽出した。2008~11年にLVEF≦35%で多枝冠動脈病変を有し、エベロリムス溶出ステント(EES)を使用したPCIもしくはCABGを受けた患者が対象となった。なお、以下に当てはまる患者は除外された:1)50%以上の左主冠動脈病変を有する患者(CABGを優先的に施行するため)、2)CABGもしくは心臓弁の手術を受けた患者(再度開心術を受ける可能性が低いため)、3)PCIもしくはCABG前、24時間以内に心筋梗塞を起こした患者(PCIを優先的に施行するため)、4)PCI施行時にEES以外のステントを使用した患者、5)過去1年以内に再灌流療法の既往がある患者、6)血行動態が不安定もしくは心原性ショックの患者。 傾向スコアを用いてマッチングさせたPCIを受けた患者(PCI群)とCABGを受けた患者(CABG群)、各1,063例を比較した。1次評価項目は長期フォローアップ中の全死亡。2次評価項目は心筋梗塞、脳卒中、および冠動脈に対する再灌流療法の施行。フォローアップ期間の中央値は2.9年であった。死亡率は同等、2次評価項目に有意差あり 短期間(30日以内)のフォローアップでは、両群の死亡率に差は認められなかった(HR:0.62、95% CI:0.31~1.24、p=0.17)が、PCI群はCABG群に比べて脳卒中のリスクが95%も低かった(0.1% vs. 1.8%、HR:0.05、95% CI:0.01~0.39、p=0.004)。長期間のフォローアップでも両群の死亡率は同等であった(HR:1.01、95% CI:0.81~1.28、p=0.91)。PCI群は、脳卒中の発生率が有意に低かったが(HR:0.57、95% CI:0.33~0.97、p=0.04)、心筋梗塞(HR:2.16、95% CI:1.42~3.28、p=0.0003)および冠動脈再灌流の発生率(HR:2.54、95% CI:1.88~3.44、p<0.0001)は有意に高かった。 著者らは、日本でも使用が始まったエベロリムス溶出ステントなどの新世代のステントを使用したPCIがCABGの代替オプションになりうると結論付けている。しかし、傾向スコアを用いても測定されない交絡因子の可能性が否定できないこと、冠動脈病変の複雑性を評価するSYNTAXスコアやCABGリスクを評価するSTS、EuroSCOREなどを用いていないことを本試験の欠点に挙げている。

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認定内科医試験完全対策 総合内科専門医ベーシック vol.4

第10回 血液 第11回 神経第12回 循環器 第13回 総合内科/救急(※正誤表) 日本内科学会の認定内科医試験を受験する先生方、必見です。出題基準ランクAの疾患を中心に各領域の予想問題を作成、出題意図と関連知識を解説していく“完全対策”DVDができました(全4巻)。講師は、若手育成に定評があり数々の資格試験を突破してきた、聖マリア病院の長門直先生。総合内科専門医試験を受ける先生方にとっては、基礎固め、総復習に最適。これを見れば、勉強するポイント、頻出のトピックがわかります!第10回 血液 治療のアップデートが頻繁な血液領域は、必ず出題されるところが決まっています。そこを落とさないようにすることが得点を上げるカギです。AMLとALLの分類・検査・治療の比較や血栓性血小板減少性紫斑病の5徴など、頻出のポイントをしっかり押さえて試験に臨んでください。第11回 神経神経領域では、似た症状を持つ疾患でも使う薬剤や検査が異なる場合がよくあり、出題のポイントになることが多いようです。また、試験に出題されそうな箇所をまとめた脳卒中治療ガイドライン2009と2015の改訂点についても、しっかり確認してください。第12回 循環器 各疾患の検査所見に関する出題が多い循環器領域。中でも、弁膜症、心筋症、狭心症、心筋梗塞などの代表的な心疾患については、しっかりと整理をしておく必要があります。必ず出題されるポイントを押さえて、試験に挑んでください。第13回 総合内科/救急 最終回の総合内科/救急は、出題数は少ないですが、とくに確率統計に関する計算は毎年のように出題されているので必ず得点できるようにしておきましょう。また、心肺蘇生ガイドライン2010から2015への変更点についてもよく確認しておいてください。

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Vol. 4 No. 4 DAPTを検証した臨床試験の数々、それらが導いた「答え」とは?

中川 義久 氏天理よろづ相談所病院循環器内科はじめに冠動脈疾患の治療においては、冠動脈血行再建を達成することが本質的に重要である。その手段として経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)が主流を占めている。冠動脈血行再建においてバルーン拡張によるPCIの有効性が報告されてから30年以上になる。バルーン拡張のみでは再狭窄率や再閉塞率が高いことが問題であり、これを解決するために金属製ステント(baremetal stent:BMS)が導入された。BMSを用いたPCIは通常治療として受け入れられるようになったが、それでも長期的には再狭窄によって再血行再建を要することが多く克服すべき問題であった。薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)は、BMSに比較して再狭窄を減少させることが示されている。第1世代DESであるシロリムス溶出性ステント(sirolimus-eluting stent:SES)とパクリタキセル溶出性ステント(paclitaxel-eluting stent:PES)が2004年8月から本邦で保険償還が認可され、実臨床において使用可能となった。これにより冠動脈ステント留置後1年の再狭窄率を10%以下に低下させた。現在のPCIではDES留置が通常である。DESは再狭窄を強く抑制するものの、これが血管内皮の修復反応の遅延をきたし、血栓性閉塞(ステント血栓症)の可能性が高い時期が長期間にわたってつづくことが問題とされる。ステント血栓症の予防のために抗血小板薬の適切な投与が重要となっている。ステント血栓症の予防のためにアスピリンと、チエノピリジン系抗血小板薬の併用投与(dual anti-platelet therapy:DAPT)が主流となっているが、その継続すべき期間については明確な指針はない。第2世代DESが登場し、臨床成績が向上してステント血栓症は減少している。さらに、2015年末からは第3世代のDESも実臨床の現場に登場する。DAPTの期間を短縮しても安全性が保たれるという方向の報告がある一方で、DAPTの期間を延長したほうがよいとの報告もあり、議論がつづいている。DAPTを継続することは出血性合併症を増す危険性があり、血栓症予防と出血性合併症の両者のトレードオフで比較すべき問題である。ステント血栓症の予防のためにDAPTを継続すべき期間について明確な結論はない。DAPTを長期間継続することによる頭蓋内出血などの重大な出血性合併症は患者の不利益ともなり、DAPTの至適施行期間を明らかにすることは、DES留置後の患者にとって大切である。DAPT導入の背景現在は使用頻度が減少しているが、BMSの臨床試験が日本で始まったのは1990年(平成2年)であった。その当時、筆者は小倉記念病院に在籍し、その現場を体験した。当時はDAPTという概念はなく、抗血小板薬としてアスピリンを投与し、さらにワルファリンによる抗凝固療法を行っていた。そのうえ、PCI術後には数日間のヘパリンの持続点滴も加えていた。しかし3%前後という高いステント血栓症の発生率と出血性合併症に悩まされていた。この経験からも明らかなように、抗凝固療法を強化してもステント血栓症を予防できないことはみな痛感していた。チエノピリジン系薬剤とアスピリンによるDAPTをBMS留置後1か月間施行することでステント血栓症の発生を抑制することが示され、ステント留置後の標準治療となった1)。その当時はチエノピリジン系薬剤としてクロピドグレルは存在せずチクロピジンのみであった。STARS研究の結果1)をみると、アスピリン単独や、アスピリンとワルファリンによる抗血栓療法に比べて、DAPTによってステント植込み手技の安全性が高まることがわかる。このデータをもとに、現在のDES時代においてもステント術後のDAPT療法として継承されている。現在では、チエノピリジン系抗血小板薬としては、チクロピジンよりも副作用が少ないクロピドグレルが最も頻用されている。short DAPTとlong DAPTDAPT継続期間については12か月間を基準として、それよりも短い期間(3か月から6か月間)で十分とする意見をshort DAPT派、1年を超えてDAPTを継続したほうがよいという意見をlong DAPT派と総括され、両派による活発な議論がつづいている。しかし、第2世代のDESが普及しステント血栓症は減少し、DAPTの期間は短縮する方向での知見が増加している。抗凝固薬を必要とする患者における抗血小板療法については、DAPTを含む3剤の抗血栓薬は避けたほうがよいとのコンセンサスは得られつつあるが、明確な指針は未だ存在しない。明確な指針はない状況においても各担当医は実臨床の現場で方針を決定しなければならない。DES留置後のDAPT期間、short DAPTで十分か?日本循環器学会のガイドライン2, 3)では、2次予防における抗血小板療法として、禁忌がない患者に対するアスピリン(81~162mg)の永続的投与(レベルA)、DES留置の場合にはDAPTを少なくとも12か月間継続し、出血リスクが高くない患者やステント血栓症の高リスク患者に対する可能な限りの併用療法の継続(レベルB)が推奨されている。本邦でのデータとしてCREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2に登録されたDES(主としてシロリムス溶出性ステント)留置患者6,309例における4か月のランドマーク解析がある4)。4か月の時点でのチエノピリジン系抗血小板薬継続例と中止例でその後3年までの死亡、心筋梗塞、脳卒中の発症率に差はなく、出血性合併症の発症はチエノピリジン系抗血小板薬継続例で多いことが報告されている。これは、日本人におけるDES留置後の至適なDAPT施行期間は、現在の第2世代DESよりもステント血栓症の頻度が相対的に高かった第1世代DESの時代においてすら、4か月程度で十分である可能性を示唆しているもので貴重なデータである。第2世代DESが登場し、臨床成績が向上しステント血栓症は減少しており、DAPTの期間を短縮しても安全性が担保されるという方向の報告が多い。この至適DAPT期間を検討するために大規模なメタ解析の結果が報告された5)。無作為化試験を選択し、DAPT投与期間が12か月間である試験を標準として、12か月未満のshort DAPT試験と、12か月超のlong DAPT試験の比較を行っている。アウトカムは、心血管死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・重大出血・全死因死亡である。10の無作為化試験から32,287例が解析されている。12か月の標準群と比較してshort DAPT群は、有意に重大出血を減少させた(オッズ比:0.58、95%CI:0.36-0.92、p=0.02)。虚血性または血栓性のアウトカムについて有意差はなかった。long DAPT群は、心筋梗塞とステント血栓症は有意に減少させたが、重大出血は有意な増大がみられた。また、全死亡の有意な増大もみられた(オッズ比:1.30、95%CI:1.02-1.66、p= 0.03)。この結果を要約すれば、short DAPTは、虚血性合併症を増大させることなく出血を減らし、ほとんどの患者においてshort DAPTで十分であることが示されたといえる。さらにDAPT期間についてARCTIC-Interruptionという無作為化比較試験の結果が興味深い6)。DESの留置後1年の間に虚血性または出血性イベントを経験しなかった患者において、1年以降のDAPT継続は1剤のみの抗血小板療法と比較し、虚血性イベントの抑制効果は示されず、重症または軽症出血のリスクの上昇が認められた。つまり、留置後1年間でイベントが起きなかった場合、その後のDAPT継続には有益性はなく、むしろ出血イベントのリスクが増大し有害であることが示されたことになる。この試験だけでなく、PRODIGY7)、DES LATE8)、EXCELLENT9)、RESET10)、OPTIMIZE11)などのshort DAPTとlong DAPTを比較した試験でも、長期間のDAPTは心血管イベントを減らすことはなく、出血性合併症を増加させるという結果が一貫性をもって示されている。本邦におけるshort DAPTを示唆する研究:STOPDAPT研究長期間のDAPT施行が抗血小板薬単独治療に比べて出血性合併症を増加させ、長期のDAPT施行をつづけても心血管イベントの発症抑制効果がないのであれば、DAPT施行期間はできるだけ短いほうが望ましいことは明確である。このためのエビデンス構築をめざして、本邦においてはSTOPDAPT研究が行われた。日本心血管インターベンション治療学会2015年学術集会(CVIT2015)においてNatsuakiらによって結果が発表された。この研究は、ステント血栓症の発生リスクが低い第2世代DESを代表するコバルトクロム合金のエベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)が留置された患者において、チエノピリジン投与期間を3か月に短縮可能と担当医が判断した連続症例を登録し、ステント留置後3か月の時点でチエノピリジン投与を中止し、ステント留置後12か月の心血管イベント、出血イベントの発生率を評価する研究である。冠動脈にCoCr-EESの留置を受けた3,580人のうち3か月でDAPT中止が可能と判断された患者1,525人が登録された。チエノピリジン投与は4か月までに94.2%で中止され、1年追跡率は99.6%であった。definiteのステント血栓症の発生は皆無であった。選択された患者においてではあるが、CoCr-EES留置後3か月でのDAPT中止の安全性が示唆されたSTOPDAPT研究の意義は大きい。DAPT期間は延長すべき? DAPT試験2014年の第87回米国心臓協会年次集会(AHA2014)でDAPT試験の結果が発表されるまでは、short DAPTの方向に意見は収束しつつあるように思われていた。つまり、DAPT期間を延長することにより出血性合併症の発症リスクは増加し、虚血性イベントの明確な抑制は認められない、というものである。1年間または6か月間のDAPTで十分であり、むしろ論点は3か月間などいっそう短いDAPT期間を模索する方向に推移していた。この方向性を逆転するような結果が「DAPT試験」として報告されたのである12)。DES後の患者で、DAPT期間12か月と30か月というlong DAPTを比較する無作為割り付け試験である。米国食品医薬品局(FDA)の要請により実施された多施設共同ランダム化比較試験であり、冠動脈ステントを製造・販売する企業など8社が資金を提供した大規模研究である。DES後の患者9,961例を対象に、DAPT期間の長短によるリスクとベネフィットが比較検討された。その結果、30か月のlong DAPT群でステント血栓症および主要有害複合エンドポイント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)が有意に低く、出血性合併症はlong DAPT群で有意に高かった。long DAPTのベネフィットが報告されたDAPT試験ではあるが、このDAPT試験に内在する問題点についての指摘も多い。本試験のデザインは、DES植込み直後にDAPT期間12か月と30か月に割り付けたわけではなく、植込み当初の1年間のDAPT期間に出血を含めイベントなく経過した患者のみを対象としている。背景にいるDES植込み患者は22,866人おり、そのうちの44%にすぎない9,961人が無作為化試験に参加している。この44%の患者を選択する過程でバイアスが生じている可能性がある。この除外された半数を超える56%の患者に、本試験の結果を敷衍できるのかは不明である。また、この試験の結果では30か月DAPT施行による主要有害複合エンドポイントの抑制は、心筋梗塞イベントの抑制に依存している。心筋梗塞が増えれば死亡が増えることが自然に思えるが、心臓死・非心臓死ともにlong DAPT群において有意差はないが実数として多く発生している。本試験で報告されている心筋梗塞サイズは不明であるが、心筋梗塞イベントが臨床的にもつ意味合いについても考える必要がある。PEGASUS-TIMI 54研究もlong DAPTを支持する結果であった13)。これは、心筋梗塞後1年以上の長期にわたるDAPTが有用か否かを検証する試験で、アスピリン+チカグレロルとアスピリン単独の長期投与を比較した研究である。その結果、有効性はアスピリン+チカグレロル群で有意に優れていたが、安全性(大出血)は有意に高リスクであることが示された。short DAPTかlong DAPTかの問題について決着をつけるには、さらなる研究が必要と思われる。DAPT試験の結果が発表されたあとに、DAPT期間についてのメタ解析がいくつか報告されている。その代表がPalmeriniらによって報告されたものである14)。その論文の結論は明確にDAPT期間の長短を断じたものではなく、患者個別のベネフィットとリスクを考えることを薦めるものであることに注目したい。全患者に均一のDAPT期間を明示することは現実的には困難であり、リスク層別化を考えることが大切と思われる。出血リスクが低く心血管イベントの発生するリスクが極めて高い患者でDAPT期間の延長を考慮することが現実的であろう。文献1)Leon MB et al. A clinical trial comparing three antithrombotic-drug regimens after coronaryartery stenting. Stent Anticoagulation Restenosis Study Investigators. N Engl J Med 1998; 339: 1665-1671.2)日本循環器学会ほか. 安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版).3)日本循環器学会ほか. ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版).4)Tada T et al. Duration of dual antiplatelet therapy and long-term clinical outcome after coronary drug-eluting stent implantation: landmark analyses from the CREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 381-391.5)Navarese EP et al. BMJ 2015; 350: h1618.6)Collet JP et al. Dual-antiplatelet treatment beyond 1 year after drug-eluting stent implantation (ARCTICInterruption): a randomised trial. Lancet 2014; 384: 1577-1585.7)Valgimigli M et al. Randomized comparison of 6-versus 24-month clopidogrel therapy after balancing anti-intimal hyperplasia stent potency in all-comer patients undergoing percutaneous coronary intervention. Design and rationale for the PROlonging Dual-antiplatelet treatment after grading stent-induced Intimal hyperplasia study (PRODIGY). Am Heart J 2010; 160: 804-811.8)Lee CW et al. Optimal duration of dual Antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: a randomized controlled trial. Circulation 2013; 129: 304-312.9)Gwon HC et al. Six-month versus 12-month dual antiplatelet therapy after implantation of drugeluting stents: the efficacy of Xience/Promus versus cypher to reduce late loss after stenting (EXCELLENT) randomized, multicenter study. Circulation 2012; 125: 505-513.10)Kim BK et al. A new strategy for discontinuation of dual antiplatelet therapy: the RESET trial (REal Safety and Efficacy of 3-month dual antiplatelet Therapy following Endeavor zotarolimus-eluting stent implantation). J Am Coll Cardiol 2012; 60: 1340-1348.11)Feres F et al. Three vs twelve months of dual antiplatelet therapy after zotarolimus-eluting stents: the OPTIMIZE randomized trial. JAMA 2013; 310: 2510-2522.12)Mauri L et al. For the DAPT study investigators: Twelve or 30 months of dual antiplatelet therapy after drug-eluting stents. N Engl J Med 2014; 371: 2155-2166.13)Bonaca MP et al. for the PEGASUS-TIMI 54 steering committee and investigators. Long-term use of ticagrelor in patients with prior myocardial infarction. N Engl J Med 2015; 372: 1791-1800.14)Palmerini T et al. Mortality in patients treated with extended duration dual antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: a pairwise and Bayesian network meta-analysis of randomised trials. Lancet 2015; 385: 2371-2382.

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重症肺気腫、両側気管支内コイル治療で運動耐性が向上/JAMA

 重症エアトラッピングが認められる肺気腫患者に対し、気管支拡張薬などによる標準的治療に加え両側気管支内コイル治療を行うと、標準的治療のみに比べ、6分間歩行などのアウトカムの改善に有効であることが判明した。一方で、重篤合併症の発生率は、コイル治療群で高かった。米国・ピッツバーグ大学のFrank C. Sciurba氏らが、315例を対象に行った無作為化比較試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、さらなる検討を行い、健康アウトカムへの長期的影響を調べる必要があるとまとめている。JAMA誌2016年5月24・31日号(オンライン版2016年5月15日号)掲載の報告。12ヵ月後の6分間歩行距離の変化を比較 研究グループは2012年12月~2015年11月にかけて、北米21ヵ所、欧州5ヵ所の医療機関を通じて、重症エアトラッピングが認められる肺気腫患者315例を対象に、無作為化比較試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方の157例には肺リハビリテーションや気管支拡張薬を含むガイドラインに則した標準的治療を、もう一方の158例には標準的治療に加え両側気管支内コイル治療をそれぞれ行い、アウトカムを比較した。気管支内コイル治療では、4ヵ月間隔で2回の連続的処置を行い、一肺葉に気管支鏡で10~14コイルを装着した。 主要評価項目は、ベースラインから12ヵ月後の6分間歩行距離の絶対差だった。副次評価項目は、6分間歩行改善率、呼吸器疾患に関するQOL指標「St George’s Respiratory Questionnaire」(SGRQ)の変化幅、1秒量(FEV1)のベースラインからの改善幅それぞれに関する群間差などだった。 被験者の平均年齢は64歳、女性は52%だった。6分間歩行距離の改善、コイル治療群が標準治療群より14.6m延長 12ヵ月の追跡を終えたのは、被験者のうち90%だった。 その結果、6分間歩行距離のベースラインからの改善は、標準治療群が-7.6mだったのに対し、コイル治療群は10.3mと、群間差は14.6mだった(Hodges-Lehmann推定97.5%信頼区間:0.4~∞、片側検定p=0.02)。 6分間歩行距離の改善が25m以上だったのは、通常治療群が26.9%に対し、コイル治療群では40.0%と、有意に高率だった(オッズ比:1.8、同:1.1~∞)。補正前群間差は11.8%だった(片側検定p=0.01)。 FEV1中央値変化の群間差は7.0%、SGRQ変化の群間差は-8.9ポイントと、いずれもコイル治療群で有意な改善が認められた(いずれもp<0.001)。 一方で、入院を要する肺炎などの重篤な合併症の発生率は、通常治療群19.1%に対しコイル治療群は34.8%と有意に高率だった(p=0.002)。 その他の重篤有害作用としては、肺炎が4.5%、20%、気胸が0.6%、9.7%と、いずれもコイル治療群で高率だった。

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特発性拡張型心筋症〔DCM : idiopathic dilated cardiomyopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義拡張型心筋症(idiopathic dilated cardiomyopathy: DCM)は、左室の拡張とびまん性の収縮障害を特徴とする進行性の心筋疾患である。心不全の急性増悪を繰り返し、やがて、ポンプ失調や致死性不整脈により死に至る。心筋症類似の病像を呈するが、病因が明らかで特定できるもの(虚血性心筋症や高血圧性心筋症など)、全身疾患との関連が濃厚なもの(心サルコイドーシスや心アミロイドーシスなど)は特定心筋症と呼ばれ、DCMに含めない。■ 疫学厚生省特発性心筋症調査研究班による1999年の調査では、わが国における推計患者数は約1万7,700人、有病率は人口10万人あたり14.0人、発症率は人口10万人あたり3.6人/年とされる。男女比は2.5:1で男性に多く、年齢分布は小児から高齢者まで幅広い。■ 病因DCMの病因は一様ではない。一部のDCMの発症には、遺伝子異常、ウイルス感染、自己免疫機序が関与すると考えられているが、その多くがいまだ不明である。1)遺伝子異常DCMの20~30%程度に家族性発症を認めるが、孤発例でも遺伝要因が関与するものもある。心機能に関与するどのシグナル伝達経路が障害を受けても発症しうると考えられており、心筋のサルコメア構成蛋白や細胞骨格蛋白をコードする遺伝子異常だけでなく、Caハンドリング関連蛋白異常の報告もある。2)ウイルス感染心筋生検検体の約半数に、何らかのウイルスゲノムが検出される。コクサッキーウイルス、アデノウイルス、C型肝炎ウイルスなどのウイルスの持続感染が原因の1つとして示唆されている。3)自己免疫機序βアドレナリン受容体抗体や抗Caチャネル抗体といったさまざまな抗心筋自己抗体が、患者血清に存在することが判明した。DCMの発症・進展に自己免疫機序が関与する可能性が指摘されている。■ 症状本疾患に疾患特異的な症状はない。初期には無症状のことが多いが、病状の進行につれて、労作時息切れ、易疲労感、四肢冷感などの左心不全症状を認めるようになり、運動耐容能は低下する。また、動悸、心悸亢進、胸部不快感といった頻脈・不整脈に伴う症状を訴えることもある。一般には、低心拍出所見よりもうっ血所見が前景に立つことが多い。両心不全へ至ると、全身浮腫、頸静脈怒張、腹水などの右心不全症状が目立つようになる。右心機能が高度に低下している重症例では、左心への灌流低下から、肺うっ血所見を欠落する例があり、重症度判断に注意を要する。■ 予後一般に、DCMは進行性の心筋疾患であり、予後は不良とされる。5年生存率は、1980年代には54%と低かったが、最近では70~80%にまで改善したとの報告もある。標準的心不全治療法が確立し、ACE阻害薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬といった心筋保護薬の導入率向上がその主たる要因と考えられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)DCMの診断は、特定心筋症の除外診断を基本とすることから、二次性心筋症を確実に除外することがDCMの診断に直結する。■ 身体所見一般に、収縮期血圧は低値を示すことが多く、脈圧は小さい。聴診所見では、心尖拍動の左方偏移、ギャロップリズム(III・IV音)、心雑音および肺ラ音の聴取が重要である。■ 胸部X線多くの症例で心陰影は拡大するが、心胸郭比は低圧系心腔の大きさに依存するため、正常心胸郭比による本疾患の除外はできない。心不全増悪期には、肺うっ血像や胸水貯留を認める。Kerley B line、peribronchial cuffingが、肺間質浮腫所見として有名である。■ 心電図疾患特異度の高い心電図所見はない。ST-T異常、異常Q波、QRS幅延長、左室側高電位、脚ブロック、心室内伝導障害など、心筋病変を反映した多彩な心電図異常を呈する。また、心筋障害が高度になると、不整脈を高頻度に認めうる。■ 血液生化学検査心不全の重症度を反映し、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびその前駆体N末端フラグメントであるNT-proBNPの上昇を認める。また、交感神経活性の指標である血中カテコラミンや微小心筋障害を示唆するとされる高感度トロポニンも上昇する。低心拍出状態が進行すると、腎うっ血、肝うっ血を反映し、クレアチニンやビリルビン値の上昇を認める。■ 心エコー検査通常、びまん性左室収縮障害を認め、駆出率は40%以下となる。心リモデリングの進行に伴い、左室内腔は拡張し、テザリングや弁輪拡大から機能性僧帽弁逆流の進行をみる。最近では、僧帽弁流入血流や組織ドップラー法を用いた拡張能の評価、組織ストレイン法を用いた収縮同期性の評価など、より詳細な検討が可能になっている。■ 心臓MRI検査シネMRIによる左室容積や駆出率計測は、信頼度が高い。ガドリニウムを用いた心筋遅延造影パターンの違いによるDCMと虚血性心筋症との鑑別が報告されており、心筋中層に遅延造影効果を認めるDCM症例では、心イベントの発生率が高く、予後不良とされる。■ 心筋シンチグラフィ123I-MIBGシンチグラフィによる交感神経機能評価では、後期像での心臓集積(H/M比)の低下や洗い出し率の亢進を認める。201Tlあるいは99mTc製剤を用いた心筋シンチグラフィでは、patchy appearanceと呼ばれる小欠損像を認め、その分布は、冠動脈支配に一致しない。心電図同期心筋SPECTを用いて、左室容積や駆出率も計測可能である。■ 心臓カテーテル検査冠動脈造影は、冠血管疾患、虚血性心筋症の除外を目的として施行される。血行動態の評価目的に、左室内圧測定や左室造影による心収縮能評価、肺動脈カテーテルを用いた右心カテーテル検査も行われる。左室収縮能(最大微分左室圧: dP/dtmax)の低下、左室拡張末期圧・肺動脈楔入圧の上昇、心拍出量低下を認める。■ 心筋生検DCMに特異的な病理組織学的変化は確立されていない。典型的には、心筋細胞の肥大、変性、脱落と間質の線維化を認める。心筋炎や心サルコイドーシス、心ファブリー病などの特定心筋症の除外目的に行われることも多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)DCMに対する根本的な治療法は確立していない。そのため、(1) 心不全、(2) 不整脈、(3) 血栓予防を治療の根幹とする。左室駆出率の低下を認めるため、収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠する。■ 心不全の治療1)心不全の生活指導生活習慣の是正を基本とする。適切な水分・塩分摂取量および栄養摂取量の教育、適切な運動の推奨、禁煙、感染予防などが指導すべきポイントとされる。2)薬物療法収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠し、薬剤を選択する。心臓のリバースリモデリングおよび長期予後改善効果を期待し、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)といったレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬とβ遮断薬、抗アルドステロン薬を導入する。原則として、β遮断薬は、カルベジロールあるいはビソプロロールを用い、忍容性のある限り、少量より漸増する。さらに、うっ血症状に応じて、利尿薬の調節を行う。急性増悪期には、入院下に、強心薬・血管拡張薬といったより高度な点滴治療を行う。3)非薬物療法(1)心室再同期療法(CRT)左脚ブロックなど、心室の収縮同期不全を認める症例に対し、心室再同期療法が行われる。除細動機能を内蔵したデバイス(CRT-D)も普及している。心拍出量の増加や肺動脈楔入圧の低下、僧帽弁逆流の減少といった急性期効果だけでなく、慢性期効果としての心筋逆リモデリング、予後改善が報告されている。CRTによる治療効果の乏しい症例(non-responder)も一定の割合で存在することが明らかになっており、その見極めが課題となっている。(2)陽圧呼吸療法、ASVわが国では、心不全患者に対するASV(adaptive servo ventilation)換気モード陽圧呼吸療法の有用性が多く報告されており、自律神経活性の改善、不整脈の減少、運動耐容能およびQOLの向上、心および腎機能の改善などが期待されている。しかし、海外で行われた大規模臨床試験ではこれを疑問視する研究結果も出ており、いまだ議論の余地を残す。(3)心臓リハビリテーション“包括的心臓リハビリテーション”の概念のもと、運動のみならず、薬剤、栄養、介護など各領域からの多職種介入による全人的心不全管理が急速に普及している。(4)和温療法遠赤外線均等温乾式サウナを用いた低温サウナ療法が、心不全患者に有用であるとの報告がある。心拍出量の増加、前負荷軽減、肺動脈楔入圧の低下といった急性効果のみならず、慢性効果として、末梢血管内皮機能の改善、心室性不整脈の減少も報告されている。(5)僧帽弁形成術・置換術、左室容積縮小術高度の僧帽弁逆流を伴うDCM例では、僧帽弁外科的手術を考慮する。しかしながら、その有効性は議論の余地を残すところであり、左室容積縮小術の1つに有名なバチスタ手術があるが、中長期的に心不全再増悪が多いことから、最近は推奨されない。(6)左室補助人工心臓(LVAD)重症心不全患者において、心臓移植までの橋渡し治療、血行動態の安定を目的として、LVAD装着が考慮されうる。2011年以降、わが国でも植込型LVADが使用可能となり、装着患者のQOLが格段に向上した。現在、植込型LVAD装着下に長期生存を目指す“destination therapy”の是非に関する議論も始まっており、今後、重症心不全治療の選択肢の1つとして臨床の場に登場する日も近いかもしれない。しかし、ここには医学的見地のみならず、医療倫理や医療経済、日本人の死生観も大きく関わっており、解決すべき課題も多い。(7)心臓移植重症心不全患者の生命予後を改善する究極の治療法である。わが国における原疾患のトップはDCMである。不治の末期的状態にあり、長期または繰り返し入院治療を必要とする心不全、β遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA3度ないし4度から改善しない心不全、現存するいかなる治療法でも無効な致死的重症不整脈を有する症例が適応となる。(8)緩和医療高齢化社会の進行につれ、有効な治療効果の得られない末期心不全患者へのサポーティブケアが、近年注目されつつある。このような患者のエンドオブライフに関し、今後、多職種での議論・検討を重ねていく必要がある。■ 不整脈の治療致死性不整脈の同定と予防が重要となる。DCMによる心筋障害を基盤として発生し、心不全増悪期により出現しやすい。また、電解質異常も発生要因の1つである。そのため、心不全そのものの治療や不整脈誘発因子の是正が必要である。DCMにおける不整脈治療には、アミオダロンがよく使用される。カテーテルアブレーションが選択されることもあるが、確実に突然死を予防できる治療手段は植込型除細動器(ICD)であり、症候性持続性心室頻拍や心室細動既往を有する心不全患者の二次予防あるいは一部の心不全患者の一次予防を目的として適応が検討される。また、心房細動も高率に合併する。これまでリズムコントロールとレートコントロールで死亡率に差はないと考えられてきたが、近年これを否定するメタアナリシス結果もでており、さらなる研究結果が待たれる。■ 血栓予防治療非弁膜症性心房細動合併例では、ワルファリンのみならず、新規経口抗凝固薬の使用が考慮される。また、左室駆出率30%以下の低心機能例では、心腔内血栓の予防目的に抗凝固療法が望ましいとされるが、新規経口抗凝固薬の適応はなく、ワルファリンが選択される。4 今後の展望現在のところ、確立された根本治療法のないDCMにおける究極の治療法は、心臓移植であるが、わが国では、深刻なドナー不足により汎用性の高い治療法としての普及にはほど遠い。そのため、自己の細胞あるいは組織を用いた心筋再生治療の研究・臨床応用が進められている。しかしながら、安全な再生医療の確立には、倫理面などクリアすべき課題も多く、医用工学技術を応用した高性能・小型化した人工機器の開発研究も進められている。5 主たる診療科循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性拡張型心筋症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)友池仁暢ほか. 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009−2010年度合同研究班報告).2)奥村貴裕, 室原豊明. 希少疾患/難病の診断・治療と製品開発. 技術情報協会; 2012:pp1041-1049.3)奥村貴裕. 心不全のすべて.診断と治療(増刊号).診断と治療社;2015:103.pp.259-265.4)松崎益徳ほか. 慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版).循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告).5)許俊鋭ほか. 重症心不全に対する植込型補助人工心臓治療ガイドライン.日本循環器学会/日本心臓血管外科学会合同ガイドライン(2011-2012年度合同研究班報告).公開履歴初回2014年11月27日更新2016年05月31日

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認定内科医試験完全対策 総合内科専門医ベーシック vol.3

第7回 腎臓 第8回 消化器(肝胆膵) 第9回 消化器(消化管)(※正誤表) 日本内科学会の認定内科医試験を受験する先生方、必見です。出題基準ランクAの疾患を中心に各領域の予想問題を作成、出題意図と関連知識を解説していく“完全対策”DVDができました(全4巻)。講師は、若手育成に定評があり数々の資格試験を突破してきた、聖マリア病院の長門直先生。総合内科専門医試験を受ける先生方にとっては、基礎固め、総復習に最適。これを見れば、勉強するポイント、頻出のトピックがわかります!第7回 腎臓腎臓の領域では、ネフローゼ症候群の病型別の違いや、IgA腎症に関する出題が多い傾向があるようです。過去10年の試験を分析し、そうした試験に“出るところ”を細部にわたって解説していきます。試験前の復習にお役立てください。第8回 消化器(肝胆膵)出題数の多い消化器領域。今回は肝胆膵について取り上げます。肝胆膵は、疫学・検査と画像所見に関する出題が多い傾向があります。またC型肝炎に関しては新薬の上市やガイドラインの改訂が頻繁に行われるので、最新のものを常に確認しておきましょう。第9回 消化器(消化管)ガイドラインの改訂が続いている消化管領域。新ガイドラインで新しく取り上げられた項目や変更点を中心に予想問題を作成し解説します。消化管ポリポーシスについては毎年1~2題必ず出題される!といった過去の出題傾向もしっかり押さえています。

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増悪リスクの高いCOPD、LABA/LAMAの位置付けは?/NEJM

 インダカテロール(長時間作用性β2刺激薬[LABA])/グリコピロニウム(長時間作用性抗コリン薬[LAMA])は、過去1年間に増悪歴のある慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、サルメテロール(LABA)/フルチカゾン(吸入ステロイド[ICS])と比較し、COPD増悪抑制効果が優れることが認められた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJadwiga A. Wedzicha氏らが、両薬剤を直接比較する多施設共同無作為化二重盲検第III相試験(FLAME試験)の結果、報告した。大半のガイドラインにおいて、増悪リスクの高いCOPD患者の治療には、第1選択としてLABA/ICSまたはLABA/LAMAが推奨されているが、LABA/LAMAの位置付けは明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2016年5月15日号掲載の報告。増悪リスクの高いCOPD患者約3,400例を対象に非劣性試験 FLAME試験は、2013年7月~2015年9月に、43ヵ国356施設で行われた52週間の無作為化二重盲検ダブルダミー非劣性試験である。対象は、過去1年間に1回以上増悪の経験がある40歳以上のCOPD患者で、インダカテロール110μg/グリコピロニウム50μg 1日1回吸入群(1,680例)、またはサルメテロール50μg/フルチカゾン500μg 1日2回吸入(LABA/ICS)群(1,682例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目はすべて(軽度・中等度・重度)のCOPD増悪回数(回/人年)、副次評価項目はすべてのCOPD増悪初回発現までの期間、中等度または重度COPD増悪の初回発現までの期間ならびに年間発現回数などであった。増悪抑制効果はLABA/LAMAが優れる インダカテロール/グリコピロニウム群は、主要評価項目においてLABA/ICS群に対し、非劣性だけでなく優越性も示された。すべてのCOPD増悪回数はそれぞれ3.59 vs 4.03、増悪回数比は0.89(95%信頼区間[CI]:0.83~0.96、p=0.003)で、インダカテロール/グリコピロニウム群はLABA/ICS群と比較してすべてのCOPD増悪回数を11%減少させた。 また、インダカテロール/グリコピロニウム群はLABA/ICS群と比較し、すべてのCOPD増悪の初回発現までの期間が長く(中央値71日[95%CI:60~82] vs.51日[95%CI:46~57]、ハザード比[HR]:0.84[95%CI:0.78~0.91]、p<0.001)、中等度または重度COPD増悪の回数も少なく(0.98 vs.1.19、増悪回数比:0.83[95%CI:0.75~0.91]、p<0.001)、中等度または重度COPD増悪の初回発現までの期間も延長した(HR:0.81、95%CI:0.66~1.00、p=0.046)。 LABA/ICS群と比較したインダカテロール/グリコピロニウム群のCOPD増悪回数に関する有効性は、ベースラインで測定した好酸球値とは独立していた。 有害事象ならびに死亡の発現頻度は両群で類似していた。肺炎の発現率はインダカテロール/グリコピロニウム群3.2%、LABA/ICS群4.8%であった(p=0.02)。

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